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太郎坊宮 滋賀県東近江市に鎮座する太郎坊宮の御朱印です。現在は「太郎坊宮」「阿賀神社」の2種類いただくことができます。 金泥の御朱印です。 近江聖徳太子霊跡の御朱印「太郎坊権現」「阿賀大明神」です。 ★この神社にはオリジナル御朱印帳があります。 木製の御朱印帳です。16cm×11cmです。このほか、シンプルなオリジナル御朱印帳もあります。 ★住所 滋賀県東近江市小脇町2247 - 名前 コメント
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佐倉 弥太郎 「ええはいはいもうそれはそれは!きー様の”ゆーとおり”ですとも!」 名前 佐倉 弥太郎(サクラ ヤタロウ) 性別 男 学年 紅瓜学院高等部1年目(Sランク) 身長 174cm 血液型 :AB型 誕生日 2/15 家族構成 ? 部活 ? 委員会 -- 得意科目 社会 苦手科目 ? 好き 蕎麦 嫌い 海老 特技 記憶すること 一人称 ボク 二人称 キミ・〇〇クン(くん)/サン(さん) 誰に対しても敬語で喋る。 口数が多く、同じ単語を2度繰り返す癖がある。 低姿勢なようでなんだか図々しい。 喜怒哀楽のうち、基本的に「喜と楽」の感情しかない。 浅倉杞紗の事を病的に崇拝している。 学園内アイドル「ZOC」メンバー。 ◆関係メモ 浅倉 杞紗(2)(きー様):神。ZOCのリーダー様。 御神楽メロ(メロくん):ZOCの仲間。 ◆登場作品 なし
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「行くぜ真治!」 【人物名】 郡 遼太郎 【読み方】 こおり りょうたろう 【年齢】 18歳 【性別】 男 【出身世界】 不明 【変身】 仮面ライダー電王 【登場作品】 仮面ライダーディケイド NEO 【詳細】 仮面ライダー電王に変身する青年。 無駄に明るい性格で、真治同様戦うのが好きな様。 またその性格のおかげで皆にひかれることもしばしば。
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. ある日、お母さんがこんなことを言い出した 雅枝「なあ、絹って今好きな男とかおるん?」 絹恵「男の子?いや、いないなぁ」 雅枝「そうか、じゃああの男の子とはもう別れたん?」 絹恵「別れるも何も、付き合ってすらないって」 雅枝「ふーん、じゃあ明日少し一緒に出かけへん?」 絹恵「別にええけど、どこに行くん?」 雅枝「絹に会わせたい男がおるんや、ま、要はお見合いやな」 絹恵「お見合い!?」 絹恵「ど、どうして?」 雅枝「私が絹とあの子が合う思たから、やな」 絹恵「どんな理由やねん、わけわからん」 雅枝「せやから絹、明日はちゃんとした服着ろよ!」 絹恵「えぇぇぇ~そんな……相手はどんな人なん?」 雅枝「そりゃあ、会ってからのお楽しみやな」 絹恵「なんやそれ」 雅枝「まあ、楽しみにしときや」 絹恵「はぁ……」 洋榎「ハンバーグおいし~」 その夜、夢を見た 5年も前の、だけれど私にとってはとっても大事な思い出の夢を。 パシーン パシーン 「私も、お姉ちゃんみたいになるんや、サッカー上手くなるんや!」 「えい!」パシーン ポカッ 「いってー、なんでボールが飛んで来るんだよぉ」 「す、すみません!大丈夫やった?」 「ま、まあ大丈夫だぜ!男だからな!」ヒリヒリ 「そうか……ほんまにごめんな」ナデナデ 「だーっ!大丈夫だっつってんだろ!ところでお前、何してるんだよ、こんなちっちゃい公園で」 「へ、見てわからんか?どっからどうみてもサッカーの特訓中やろ」 「サッカー?でもお前、あんまし上手くなさそうじゃん」 「そ、その通りやけど、これでも結構頑張ってるんやで!」 「自分で『頑張ってる』なんて言うやつの努力は当てになんねえんだよ」 「な!」 「お前、上手くなりたいんだろ?なら、俺が手伝ってやろうか?」 「え、ほんまに?ええの?」 「おうよ!俺はサッカー上手いんだぜ、長野のペレとは俺のことなんだぜ!」 「そ、それは頼もしいな」アハハ 「あー!お前信じてないだろ!」 「まあいいや、お見せしよう!王者の蹴り筋を!」 「夕方かー、そろそろ集合時間だなー」 「集合時間?」 「おう!大阪・京都2泊3日の修学旅行中だぜ!」 「え……そ、それじゃあ、もう遊べないん?」 「そうなるけど、うーん……」 「まあ、またいつか会えるだろ!」 「ところでお前、名前は?」 「愛宕絹恵や、君は?」 「そうか、キヌエか。俺は須賀京太郎っていうんだ」 「あ、もう行くわ、じゃあな、キヌエ」 「ちょっ、ちょっと待って!」 「ん、どうした?」 「ペンと紙、貸してくれるか?」 「別にいいけど……ほらよっと」 「ありがと…」カキカキ 「よし!」 「こ、これウチの電話番号やから!家に帰ったら電話してな!」 「ふーん……おう、ソッコーでかけてやるぜ!それじゃあもう本当に行くな!」 「今日はおおきに。じゃあね、京太郎!」 「じゃあな、キヌエ!」 京太郎「今日のノルマ終わりーっと」ノビーッ 京太郎「もう寝るか」 ヴッーヴッー 京太郎「電話か、誰からだろう」 京太郎「はい、須賀ですが」 雅枝『須賀、明日暇か?』 京太郎「ああ、愛宕監督でしたか」 京太郎「まあ土曜日ですし、暇ですけど」 雅枝『じゃあ明日石戸の家に来い、じゃあな』ガチャ 京太郎「どういうことですか?って」 京太郎「もう切れてる……」 京太郎「とりあえず、行ってみるか」 京太郎「さあ寝よ寝よ」 ――――石戸宅 京太郎「お邪魔しまーす」 郁乃「邪魔するなら帰ってや~」 京太郎「じゃあそうさせていただきますね」 雅枝「須賀来よったか、こっちだ」 京太郎「はーい」 雅枝「……なあ須賀、お前今好きな女の子とかおるか?」 京太郎「いませんけど……なぜ?」 雅枝「そうか、ならよろしく」 京太郎「よろしくって、大体今日は何を」 雅枝「お前に会わせたい子がおるんや」 雅枝「いわゆる、お見合いってやつやな」 京太郎「お見合い?誰とですか?」 雅枝「ウチの下の娘とや、さ、着いたで」 ガララ 京太郎「娘さんって、あそこに座ってる人ですか?」 雅枝「せや、絹恵いうんや、ほら入った入った!」ゲシッ 京太郎「うわわっ」 雅枝「ほなごゆっくりー」 京太郎「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!」 ガララ ピシャ 京太郎「嘘だろ……」 ――――隣室 憩「は?」 照「ひ?」 咏「ふ?」 憩照咏エイ(((((何この展開))))) 憩「郁乃ちゃんから面白いから来てみいや~って言われて来てみたけど……」 照「なんで、京がお見合いをしているんだ……」 エイスリン「イクノ、ナニミテルノ?」 郁乃「これはな~あの部屋に置いておいた隠しカメラの映像なんやで~」 良子「私がやりました!」ビシッ 咏「お~流石は元傭兵だねぃ」 良子「ノーウェイ、傭兵は関係ないだろう」 京太郎「痛た、あ、すみません」 絹恵「な……」 絹恵(この子……似とる……あの子に) 絹恵「それで、えーっと君の…名前は?」 京太郎「あ、俺、須賀京太郎っていいます」 絹恵「ふーん、須賀京太郎くんかーなるほどなるほ……は!?」 京太郎「え!?」ビクッ 絹恵(ほ、ホンマにマジモンの京太郎なんかいな……) 京太郎「えーと、絹恵さんでしたっけ?」 京太郎「初めまして、今日はよろしくお願いします」 絹恵「え……」 絹恵(どうして…覚えて、ないん?) 京太郎「?」 京太郎「さっきからどうかしましたか?」 絹恵「え、な、何が?」 京太郎「急に驚いたり、なんかポカーンとしていたり」 京太郎「やっぱり絹恵さんも愛宕監督に無理矢理連れて来られたんですか?」 絹恵(京太郎……どうしよ、話してみようかな、でもあっちは憶えとらんみたいやし……) 絹恵(なら私も知らんふりしよか) 絹恵「あー、いや何でもないで、まあ確かに無理矢理やったな」 絹恵「あんなお母さんでごめんな、迷惑やろ?」 京太郎「そんなことはないですね、周りにもっと面倒くさい人がいるんで」 京太郎「それに、そのおかげでこうして絹恵さんみたいな綺麗な方と出会えたわけですし」 絹恵「き、綺麗て……」 照「面倒くさい人って誰なんだろうね」 憩「え……じゃあみんなで一斉に指差してみよか」 照「うん、そうしよう」 「「「「「せーの!」」」」」ビシッ 照「え、私!?」 郁乃「なんで私まで指さされとるん~?」 絹恵「ま、まあこうしてお互い連れて来られたんだし、気楽にいこうや」 京太郎「はい、そうですね」 京太郎「じゃあこれはお見合いごっこってことにしましょうか」 絹恵「せやね」 良子「なんだ、ごっこ遊びか……はぁ」 郁乃「ねえねえ、なんで私が面倒くさいん~?」 照「ねえねえどうして?」 憩「うるさいわ、話が聞こえへんやろ」 絹恵「最初は質問タイムやな」 京太郎「そうですね、まずはオーソドックスな質問からしましょうか」 京太郎「絹恵さんのご趣味は?」 絹恵「麻雀とサッカーやな、サッカーは中学までやっとったんやけど姫松に入ってからは麻雀一筋や」 京太郎「なぜ麻雀を?」 絹恵「お母さんとお姉ちゃんが麻雀やっててな、それに憧れて始めたんや」 絹恵「須賀くんの趣味は……麻雀やな」 京太郎「え、どうしてわかったんですか?」 絹恵「そりゃあお母さんの知り合いには麻雀やっとる人しかおらんからな」 京太郎「それもそうですね」 エイスリン「イイフンイキダネ!」 咏「どうしてあんな大きくなるんかなー、わっかんねー全てがわっかんねー」 郁乃「憩ちゃ~ん、この紐解いてや~」 照「早くするんだ!」 憩「ホンマに黙っとれ!」ガムテープビシッ 照「~~」モゴモゴ 郁乃「~」モゴモゴ 憩「ふぅ……これで大丈夫やな」 郁乃(憩ちゃん憩ちゃん) 憩「え?」 郁乃(早く助けてや~) 憩「直接脳内にっ!?」 ――――そんな良い雰囲気のまま、時間は過ぎていきました 京太郎「夕方かー、そろそろ夕食作らなきゃなー」 絹恵「須賀くん、自炊しとるん?」 京太郎「はい、ご馳走しましょうか?」 絹恵「ええ案やけど……ええわ」 絹恵「そないなことお母さんの思う壺やからな」 京太郎「そうですね、じゃあまた今度にしましょうか」 絹恵「な、なあ須賀くん」 京太郎「なんですか?」 絹恵「また……また、会えるよね?」 京太郎「勿論じゃないですか、俺たち友達なんですから」 絹恵「友達……か」 絹恵「じゃあ、携帯出してくれるか?」 京太郎「別にいいですけど……はい」 絹恵「ありがと…」ポチポチ ピローン! 絹恵「よし!」 絹恵「こ、これウチの連絡先登録しといたから、メールしてくれな」 京太郎「はい!ソッコーでしますよ!何百通も送ってあげますよ、迷惑だなぁ……って思っても遅いですからね!」 絹恵「ふふっ、おおきに」 京太郎「それじゃあ、今日はお疲れ様でした」 絹恵「お疲れ様、須賀くん」 雅枝「なあ、どうやった?」 絹恵「お母さん……わかってやったやろ」 雅枝「さ、さーなんのことかわからんなー」 絹恵「はぁ……でも、ありがとな、お母さん」 雅枝「いやぁ~オカン愛しとる!なんて照れるなぁ~」 絹恵「言っとらんよ!それと前見て!前!」 雅枝「う、うわ!赤信号やった!」 絹恵「危なっかしいなぁ……」 雅枝「すまんすまん、てへっ☆」 絹恵(結局言えなかったな、あの日のこと) 絹恵(京太郎……今は須賀くんか……) 絹恵(やっぱりまだ……好きみたいや) あの後、俺は度々絹恵さんと連絡を取り合い、一緒に出掛けたりもしていた 目的は主に絹恵さんのお姉さんへのプレゼントや監督へのプレゼントを買いに行く、というものだったが…… そんなこんなで、絹恵さんとのお見合いから1ヶ月後 京太郎「実家だなぁ」 京母「何ぼーっとしてるのよ」 京太郎「実家に帰ってのんびりしてて悪いか?」 京母「悪いよ、何より邪魔。自分の部屋の掃除でもしてきなさい」 京太郎「えぇ……」 京太郎「まあ……こんなものか」 京母「お、綺麗になってんじゃん」 京太郎「だろ!流石だろ!」 京母「ああ、流石は私の子どもだな」 京母「昼飯はどうする?外でモモちゃんとか咲ちゃんとかと食べるか?」 京太郎「そうだな、そうするよ」 京母「少し用事で出かけるから、はい、お小遣い」 京太郎「ん、ありがと」 京母「じゃな~」 京太郎「行ってらっしゃい」 バタム 京太郎「んーっ」 京太郎「次は本棚を片づけるかな」ガサゴソ 京太郎「うわっ、卒業アルバムだ、懐かしいなあ」ペラペラ 京太郎「そういえば、卒業アルバムの後ろの方にある空白のページってなんであるんだろうな……」 京太郎「ん?」 京太郎「アルバムとアルバムの間に何か挟まってるな……」 京太郎「よし、取れたぞ」 京太郎「これは……電話番号か?」 京太郎「誰のだろう?」 京太郎「一応持って帰ってきたけど、うーん」 京太郎「電話してみるっていうのもアリだけどな……」 ヴーッ ヴーッ 京太郎「っお、絹恵さんからメールだ」 絹恵『急にすまないんやけど、明日買い物に付き合ってくれへん?』 京太郎「明日は……予定も無いしいいか」 京太郎『はい、じゃあいつもの駅に9時集合、でいいですか?』 絹恵『うん、OKやで』 絹恵『また明日な!』 パタム 絹恵(絶対絶対ぜーーったい!) 絹恵(明日こそは告白するんや!) 絹恵(……) 絹恵(でもやっぱり次の次……いや、ダメや!……でもなぁ……) 京太郎「さてと、そうと決まれば早く寝ますか」 京太郎「電話番号……かぁ」 布団にくるまりながら、例の電話番号のことを考えてみる 考えても考えても、何も浮かんでこない 頭がモヤモヤする……何か大事なものを失ったような、そんな感覚もあった 次第に俺は眠りについていた、そして…… 夢を見た 「なんだよ、みんな『グリコ見に行くー!』とか言いやがって」 「おかげでひとりぼっちじゃねえか」 「咲とモモの班に入っておけばよかったな」 「ん?公園?」 パシーン ポカッ 「いってー、なんでボールが飛んで来るんだよぉ」 (ボール硬ぇよ……) 「す、すみません!大丈夫やった?」 (女、女子か……よし) 「ま、まあ大丈夫だぜ!男だからな!」ヒリヒリ 「そうか……ほんまにごめんな」ナデナデ (ああ、気持ちいいなぁ……じゃなくて!) 「だーっ!大丈夫だっつってんだろ!ところでお前、何してるんだよ、こんなちっちゃい公園で」 「へ、見てわからんか?どっからどうみてもサッカーの特訓中やろ」 「サッカー?でもお前、あんまし上手くなさそうじゃん」 「そ、その通りやけど、これでも結構頑張ってるんやで!」 「自分で『頑張ってる』なんて言うやつの努力は当てになんねえんだよ」 (お、結構かっこよくね?) 「な!」 「お前、上手くなりたいんだろ?なら、俺が手伝ってやろうか?」 「え、ほんまに?ええの?」 「おうよ!俺はサッカー上手いんだぜ、長野のペレとは俺のことなんだぜ!」 (呼ばれたことないけどな……) 「そ、それは頼もしいな」アハハ 「あー!お前信じてないだろ!」 「まあいいや、お見せしよう!王者の蹴り筋を!」 俺たちは遊び続けた 彼女のおもちはなかなかのなかなかで、ボールを取るときに揺れて……良い 彼女と遊ぶのは、これまでにないほどに楽しくて 彼女がボールを上手く取れたり、蹴れたりしたときに見せた笑顔に、俺は次第に惹かれていった できることならば、ずっと彼女とこうして遊んでいたいと思うようになっていた しかし、時は止まることを知らなかった 「夕方かー、そろそろ集合時間だなー」 「集合時間?」 「おう!大阪・京都2泊3日の修学旅行中だぜ!」 「え……そ、それじゃあ、もう遊べないん?」 「そうなるけど、うーん……」 「まあ、またいつか会えるだろ!」 「ところでお前、名前は?」 「■■■■や、君は?」 「そうか、■■■か。俺は須賀京太郎っていうんだ」 「あ、もう行くわ、じゃあな、■■■」 「ちょっ、ちょっと待って!」 「ん、どうした?」 「ペンと紙、貸してくれるか?」 「別にいいけど……ほらよっと」 「ありがと…」カキカキ 「よし!」 「こ、これウチの電話番号やから!家に帰ったら電話してな!」 「ふーん……おう、ソッコーでかけてやるぜ!それじゃあもう本当に行くな!」 「今日はおおきに。じゃあね、京太郎!」 「じゃあな、■■■!」 好きだ!とは、言えなかった そう言うとなんだか俺が軽い男みたいに思えるし…… 彼女とまた会うその日まで、その言葉は取っておくことにした 絹恵「まっ、待った?」 京太郎「いえ、今来たばかりですよ」 絹恵「いっつもごめんなぁ、お姉ちゃんを起こすのに手間取って」 京太郎「構わないですよ、さあ行きましょう」 郁乃「京太郎くんのデートを尾行し隊~~!」 照「おー」 憩「ウチ、何してるんやろ……」 良子「毎週女の子と出掛けて……なんとも羨ましい……」 京太郎「それで、今日は何を買いに行くんですか?」 絹恵「同学年の子の誕生日が近いからそのプレゼントを買いに来たんや」 京太郎「ふんふむ、それじゃあまずはあそこの店にします?」 絹恵「アクセサリーショップか、ええな、ほな行こか」ギュッ 絹恵「あれ?」 京太郎「今日結構人多いですし、はぐれたら困るので……嫌だったら離しますけど」 絹恵「うっ……うぅ……///」 京太郎「どうします?」 絹恵「はい、そのままで……」 京太郎「さ、行きましょうか」 憩「う、ウチなんて手を繋いでもらったことなんて無いのに……」 照「あんのメガネ女……捻り潰してミンチにしてやろうか」 郁乃「わ、わわっ、だ、大胆やな~」 良子「私が最後に友だちと出掛けたのって…………」 絹恵「これピッタリやな、これにしよか」 京太郎「あれ、もう決定なんですか?」 絹恵「うん、あの子こういうの好きやから」 京太郎「あ、このネックレス絹恵さんに似合いませんか?」 絹恵「こ、これか?」 京太郎「はい、かけてあげますね」 京太郎「こんな感じ……でしょうか」 絹恵(か、顔が近いって!///) 京太郎「お、付けられましたね、どうですか?」 絹恵「う、うん……いいと思うで」 京太郎「じゃあこれ、俺から絹恵さんのプレゼントです」 絹恵「プ、プレゼントなんてそんなん悪いよ」 京太郎「いつも俺を遊びに連れて行ってくれてるお礼ですよ」 絹恵「で、でも!」 京太郎「あ、すみませーん」 照「あのたこ焼きおいしそう……」 憩「ちょっと待てぃ!」 郁乃「あのクレープもおいしそうやな~」 憩「ばらけんといて!ほら、戒能プロも手伝って!」 良子「友だち……いないな……あれ、そもそも友だちって何?どうしたら友だちなんだ?あれ?」 憩「もういややこのメンバー……」 京太郎「もう夕方ですね」 絹恵「せや!須賀くんウチでご飯食べていかへん?」 京太郎「いいんですか?」 絹恵「その代わり、買い出しにも付き合ってなー」 京太郎「了解です」 憩「あの子たちどこ行きよった……」ゼェゼェハァハァ 絹恵「今日はハンバーグやなー」 京太郎「夕食はいつも絹恵さんが作ってるんですか?」 絹恵「せやで、お母さんは帰ってくるの遅いし、お姉ちゃんは家事が全くできへんからな」 京太郎「そうなんですか……あれ」 京太郎「この、公園は……」 絹恵「どうしたん?」 京太郎「あ、すみません、少し待ってください……」 絹恵「うん」 絹恵(ここって確か……) 京太郎(ああ) 京太郎(そうか、そういうことだったのか) 京太郎(昨日の夢は、昔の思い出) 京太郎(俺は昔、ここで) 京太郎(絹恵さんと出会ったのか) 京太郎「はぁ……」 絹恵(ようやく、気付いてくれたみたいやな) 絹恵「な、須賀くん、話したいことがあるんやけど」 京太郎「俺も、です」 絹恵「じゃ、あのベンチに座って話そか」 絹恵「先、須賀くんからええで」 京太郎「はい、では……」 京太郎「…………えっと」 京太郎「昨日、夢を見たんです」 京太郎「この公園で女の子と遊ぶっていう、昔の楽しい思い出の夢をみました」 京太郎「俺はその女の子に電話番号をもらって、修学旅行から半年、俺はその子と電話をしました」 京太郎「でも、いつの間にか電話をすることは無くなって、あの女の子のこともいつからか忘れていてしまった」 京太郎「けど、俺は今日になってようやく思い出しました」 京太郎「俺の電話を待っていてくれて」 京太郎「俺と話していたのは」 京太郎「俺に電話番号をくれたのは…………」 京太郎「あなただったんですね、キヌエさん」 絹恵「……うん」 絹恵「やっと……やな」 絹恵「その通り、やで」 京太郎「あ……泣いてるんですか?」 絹恵「な、泣いてなんかいないわ!」ヌグッ 絹恵「それで、そっちの話は終わりなんか?」 京太郎「いえ、これが本題です」 京太郎「…………ふぅ」 京太郎「キヌエさん、俺はあなたのことが好きです」 京太郎「"初めて"会った時から」 京太郎「ずっと好きだったんです」 絹恵「……私も」 絹恵「私もそう言お思っとったのにな……」 絹恵「京太郎くん、私は、君が好きや」 絹恵「ずっと好きやった」 絹恵「せやから、これは今まで思い出せへんかった罰や」 京太郎「えっ……」 カン! 【公園の茂みの中】 洋榎「あわわわわわ」 洋榎「みみみみ、見てしもた」 洋榎「絹がちゅ、チューしとるところ!」 洋榎「どど、どうしよ、せや携帯や携帯」 洋榎「誰に電話しよ、恭子?いや、ここは由子や」 洋榎「や、ゆ、ゆーこ……ぬわっ」 洋榎「あっ、ケータイが!」 トンットンッ 洋榎「あかん、そっちは水たま……」 ポチャ 洋榎「」 もいっこ、カン
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―ももたろう とある魔術の禁書目録 も 魔導書 言わずと知れた童話『桃太郎』である。 「とある魔術の禁書目録」において魔導書とされているので、記録に加えることとする。
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【作品名】乳はShock!! パイを取り戻せ! 【ジャンル】世紀末救世主伝説北斗のパロティ 【名前】薄靄 拳太郎 【属性】Bus斗神拳伝承者 【大きさ】ケンシロウ並 【攻撃力】【防御力】【素早さ】 YOUはSHOCK!!! 【特殊能力】 秘孔を突くと乳が大きくなったり射精が止まらなくなったりする 【長所】一応北斗神拳伝承者であるケンシロウと同等の能力 【短所】乳プレイ中は情けない 【戦法】 ケンシロウと全く一緒。全くの互角。 ただしこちらの攻撃を受けた場合は情けない「ひでぶ」になる 【考察というか・・・原作設定的な】 カイム>薄靄 拳太郎=ケンシロウ=ネイキッド・スネーク≧雷電 反論求むwww
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哩「京太郎、そこに正座たい!」 京太郎「えっ、あっ、はい」 姫子「今日は雑用せんでよかと言ったはずちゃ」 京太郎「嫌でも、俺がしないと…」 哩「そげんなこと誰も聞いとらん!だいたい京太郎は…」 煌「あれは何があったんですか?」 美子「京太郎がまた買い出しとかをすませたみたい」 煌「ああ、それでですか」 仁美「なんもかんも京太郎が悪い」 美子「そげんな事もないと…」 仁美「あると。駄目ちゃ言われとる事をやるのは悪い」 美子「そうやけど…」 哩「聞いとるんか京太郎」 京太郎「き、聞いてますよ!」 姫子「部長、やっぱり一回縛っとかんとあかんとですよ」 哩「そやね…」 京太郎「ちょ、そ、それだけ勘弁してください!!」 仁美「……なんもかんもリア充が悪い」 カン!
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早朝 ??「……っ…」 京太郎「……」首を動かして状態確認 霞「…zzz」 初美「……zzz」 京太郎「…とりあえず抜け出すか」 ゴソゴソ… 京太郎「朝ごはんとお弁当…良子義姉さんも大事な試合があるし、霞さん達は今日帰るしな…人数分作らないと」 京太郎「朝ごはんとお弁当ができたぞ」 朝 京太郎「何をしようか」 カピー「パカパカ(どうした?」 京太郎「いや、何をしてるのかなって」 カピー「パカパカ(見ての通り、大人しくしてるのだ」 京太郎「姫様達が居るからか?」 カピー「パカパカ(違う、マンゴーの為だ」 京太郎「本当に欲望に忠実だな」 京太郎「あのさカピー、妹尾さんと仲良くなるにはどうしたらいいんだ?」 カピー「パカパカ(あの歩く幸運と仲良くなりたいのか?主、私に神託を聞くのがつるぺたか爆乳なのかはどうにかならないのか?」 京太郎「き、気のせいだろ」 カピー「パカパカ(まあいい…あの女と仲良くなりたいと言っても十分だろ」 京太郎「そうか?」 カピー「パカパカ(果実の譲渡まで済ましてる相手だ…あとはどうにでもなるだろ」 京太郎「……」 京太郎「う?ん…」 カピー「パカパカ(あーもう面倒だな。あのラーメン女の事だな」 京太郎「ラーメン?いや、ダヴァンさんの事だけど」 カピー「パカパカ(強制力が一つあるし、ラーメンを食べに行けばいい。東京なら?ラーメンと?ラーメンとかがお勧めだな。もしくは主の手料理とかでもいいぞ」 京太郎「なんだそれ?」 カピー「パカパカ(胃袋を制すれば勝つということだ」 サイドストーリー 義姉とはやりのお話☆ 合宿後 健夜「それで話って何かな?」 良子「一応、スケジュールがあるんですが…」 はやり「すぐ終わるから大丈夫だよ☆あのね…二人はなんで未来の記憶があるのかな☆?」 健夜「未来の記憶?何を言って…」 はやり「誤魔化してもダメだよ☆私、聞いたんだから」 良子「…盗み聞きですか」 はやり「偶々、聞こえたんだよ☆それに岩手の人達も記憶があるんだね☆」 健夜「仮にそうだとしても貴女には関係ないです」 はやり「それがあるんだよ☆私ね、京太郎と結婚したいんだ☆」 良子「はっ?」 健夜「えっ?」 はやり「だからね、未来の記憶にしがみついてる貴女達が邪魔なの☆」 健夜「何を言ってるのかわかってるんですか?」 良子「貴女の父親は京太郎の…」 はやり「京太郎はそれを赦すって言ってくれたから良いんだよ。それにね…貴女達も京太郎に隠してるよね?」 健夜「っ…!」 良子「っ…!」 はやり「記憶に縋って京太郎を手にいようとするなら私は貴女達を認めない」 健夜「それは貴女に記憶がないから…」 はやり「関係ないよ。私は今の京太郎が好きなんだ。あったか解らない記憶の京太郎なんかに恋い焦がれなんかしない」 良子「私達も今の京太郎が…!」 はやり「本当かな☆京太郎の中に都合の良い京太郎を本当に見てないのかな」 健夜「…」 良子「それは…」 はやり「話はそれだけだから、それじゃあね☆」 スタスタ… はやり「ああ、忘れてた☆これも言っておかないと☆」 はやり「********♪」 はやり「それじゃあね☆」 霞「これは?」 京太郎「お弁当ですよ」 霞「いや、それはわかるけど…」 京太郎「折角岩手に来たのにおもてなしができてなかったから」 霞「ありがとう…大変だったんじゃないの?」 京太郎「そうでもないさ。作りがいがあって楽しかったよ」 霞「ふふふ…京太郎らしいわ」 京太郎「なんだそれ」 霞「いえ、貴方は変わらないと思っただけよ」 京太郎「?」 霞「なんでもないわ。それより私達も全国に行くから、その時に御礼しないとね」 京太郎「いや、今回は俺が頼んだから…」 霞「それもそうだけど、お弁当は頼んでないわ」 京太郎「それもそうだけど…」 霞「なら御礼しない。期待しててね」ニコニコ 京太郎「は、はい」 昼 京太郎「姫様達、起きてこなかったな」 白望「ダルい…」 京太郎「お、おう…なんでベンチで項垂れてるんだ」 白望「なんとなく…」 京太郎「そうか…お昼は?」 白望「忘れた」 京太郎「待ってたな…」 白望「……」目空し 京太郎「全く…今日は気合いをいれて作ったから量はあるぞ」 白望「やった…」ニコ ーーーーーーーー 白望「あーん」 パク…もぐもぐ 京太郎「美味いか?」 白望「うん…なかなか」 京太郎「素直じゃないぞ」 白望「少し味が薄い」 京太郎「あっ、そうだった」 白望「まだまだだね…あーん」 京太郎「くっ…精進するか」 放課後 京太郎「今日の夜に飛行機で大阪だ…今日はどうしたものかな」 京太郎「よし部活に行こうか」 京太郎「なんか久しぶりだな」 京太郎「俺の必殺技を教えよう」どや顔 豊音「あの槍の事?」 京太郎「ああ、今の豊音になら理解してくれる気がするからな」 豊音「頑張るよ!」 豊音「それでどうしたらできるの?」 京太郎「念じる…?」 豊音「えっ?」 京太郎「いやだから…こうなんと言うか念じたらできる」 豊音「そんなんじゃあわかんないよ…」 夕方2 京太郎「ただいまー」 シーン… 京太郎「あっ、そっか、誰もいないのか」 京太郎「あれ机の上に何かあるぞ」 京太郎「これって御守りかな?…手紙もある」 京太郎へ 泊めてくれた御礼に御守りをを置いていきます。中身は絶対に見てはダメですよ。見たら呪いますからね。 初美より 京太郎「……何が入ってるんだ?」 ーーーーーーー 初美「今頃見てるんでしょうか?」 霞「どうでしょうね」ニコニコ 夜 京太郎「大阪行きの飛行機はこれだな…ふぅ…やっと一安心だな。まだ時間はあるな」 京太郎「トキさんにメールしてみるか?」 京太郎「そういえば麻雀を打つ約束をしてたな……とりあえずそれについてと大阪に今から向かう事を言っておくか」 From トキ 連絡無いから捨てられたと思ったわ( *`ω´)? 予定通り、明日の昼頃に難波の雀荘で打つんでいいんかな? 京太郎「…この前もこのどや顔があったぞ。それで大丈夫ですよっと…」 From ?トキ 了解やで。身内の三人も楽しみにしとるし、お手柔らかに。 京太郎「あれ…三人なら一人余るんじゃ無いのか?」 From トキ 一人はデータが取りたいらしいから大丈夫やで。 京太郎「データね…」 アナウンス「間もなく…」 京太郎「あっ、やばいそろそろ時間か」 京太郎「それじゃあそろそろ飛行機に乗るので、おやすみなさいと…」 From トキ 気をつけてな。明日は楽しみにしとるから! 夜2 関西国際空港付近ホテル 京太郎「チェックインの為に名前を出しただけで態度が変わったぞ…恐るべき龍門渕」 ーーーーーー 朝 京太郎「……なんか虚しいな」 京太郎「外で食べるか…待ち合わせは昼前だったからとりあえずラピッドβに乗って難波に行って…」 ーーーーー 難波 京太郎「人が多い…いや当たり前か。スタバで朝食を済まして、適当にぶらつくか」 京太郎「リクロおじさんのチーズケーキか…食べて見たいな」コーヒーを飲みながら携帯で情報をチェックして 雅枝「阿呆らしいは…全く。もうすぐ大会が近いのにレギュラー四人が今日は用事があるとか急に言いおってほんまに…明日とっちめたろ」 京太郎「うん…?」顔をあげて 雅枝「……」目が合う 京太郎(なんだか嫌な予感がする) 雅枝(何処かで見たことが…気のせいか) スタスタ…歩き去っていき 京太郎「なんだったんだろ」席を立ち店を出る、 雅枝「何処かで……あっ!あっ、あー!洋榎の思い人や!」慌てて戻り 雅枝「逃げられた!」 昼1. 京太郎「場所はここであってるんだよな…」 ??「あ、あの」 竜華「京さんであってますか?」 京太郎「そうですけど…貴女がトキさん?」 竜華「いや、ウチは違うねんけど…トキはちょっと寝坊で…」 京太郎「ハハ…トキさんらしいですね」 竜華「怒ってないんですか?」 京太郎「何をですか?」 竜華「いや、トキが遅れてきてる事とか…」 京太郎「怒ってませんよ」 竜華「えっ?」 京太郎「誰にだってこんな事はありますよ…えっと…」 竜華「あっ、清水谷です」 京太郎「清水谷さんか…俺は……どっちがいいんだろ?トキさんの友達だから…京って呼んでください」 竜華「わかったで」ニコニコ 竜華「京さんは何回か大阪にきた事があるんや」 京太郎「ええまあ、家族と何回か」 竜華「そうなん…旅行かなんか?」 京太郎「義姉の応援でですね」 竜華「応援?」 京太郎「はい、大阪でよくタイトル戦があるので」 竜華「それって京さんのお姉さんが…」 セーラ「おーい、竜華」 竜華「えっ?あ、皆やっときたん?」 浩子「園城寺先輩が走ったらもう少し早かったんですが…」 怜「酷!病弱やからしかたないねん…あの京さんであってるんかな?」 京太郎「ええ、そうですが…初めましての方がいいのかなトキさん」 怜「いやあの、その…トキで大丈夫やで」 京太郎「ならトキって呼びますね」 怜「うん…それであの…遅れてごめんなさい」 京太郎「気にしてないかべつにいいですよ」 セーラ「なんやあれ、怜が萎れてるで」小声 竜華「解らへん…ウチもあんなん初めてや」ごめん セーラ「船Qはどう思う…どうかしたんか?」小声 浩子「予想通りやった…園城寺先輩の言っていた事と京ってHN…岩手の大魔王須賀京太郎…」京太郎を見ていて セーラ「大魔王って個人戦歴代1の得点を上げたあの?」小声 浩子「そうです。今週は女子麻雀個人があるから違うと思ってたんですが…写真そっくりです」小声 セーラ「ならあの兄ちゃんは麻雀強いんか?」小声 浩子「男子最強と言われてます」小声 セーラ「そうかそうか…燃えてきたで!」小声 怜「とりあえず雀荘にいこか」 京太郎「そうですね」 怜「皆もそれでいい?」 セーラ「いいで!」 浩子「かまいません!」 竜華「大丈夫やで」 京太郎(なんであんなに張り切ってるんだろ) 雀荘 怜「さっそく打とか」 京太郎「いや、その前にそちらの人達を紹介して欲しいんですが…」 怜「それもそうやな。左からセーラ、フナQや」 セーラ「よろしくやで」ニコニコ 浩子「よろしくです」 竜華「それで予定通り浩子は見学でいいん?」 浩子「はい、直に観れるならそれだけでデータになりますから」 京太郎「聞いた時から思ってたんですが俺のデータをとってもあんまり意味無いような…」 浩子「…それは一方的に終わるって事ですか?」イラッ 京太郎「それは違います。ただ男子の俺のデータをとってもフナQさん達とは公式でまず試合しませんよね?」 浩子「そういう事ですか…データ取りは趣味みたいなもんですから気にせんといてください」 京太郎「はぁ…」 セーラ「そんな事よりもはやく打とうや。強いんやろ、京は?」 京太郎「強いですよ。これでも全国レベルですから」 竜華「なんやそれ」 京太郎「リアルの話は秘密です」ニコニコ 怜「とりあえず座りや」 京太郎「そうですね」 セーラ「燃えてきたで」 竜華「まあ、勝つのはウチや」 浩子(岩手の大魔王…データとってしゃぶり尽くしたる) 一同「よろしくお願いします」 怜「親決めやな」 竜華「ウチが親やな」 京太郎(トキさんは確か一巡先が見えるんだよな…ならそれに挑戦してみよう!)ゴゴゴゴゴ 怜「…っ!」 怜(直に打つとよう解る…京さんは化け物や) 竜華(空気が変わった…) セーラ(なんや面白くなってきたで!) 京太郎(まだだ…まだ上がる)ゴゴゴゴゴ。 竜華(なんや、なんなんや、あの槍は!) セーラ(あれはあかんやつちゃうかな…) 怜「させへんで…」小声 一巡先を視る者発動 怜(これをこうすれば…) ??「未来は不確定だから美しい」 怜「えっ?」 天沼鉾発動 バリン… 怜(未来が視えへん…なんでや!) コトン…ドス… 京太郎「ロン、国士無双!」 京太郎 57000 怜 -7000 竜華 25000 セーラ 25000 京太郎「ありがとうございました」 セーラ「ありがとうございました」 竜華「ありがとうございました…」 怜「ありがとう…ございました……」 浩子(化け物や…チャンタの高め倍満の手から普通はああはなれへん…全国クラスの化け物や) 怜「もう一回や…もう一回だけしよ」 竜華「怜?」 セーラ(何をあんなに焦ってるんや?) 京太郎「……」 京太郎「別にかまいませんよ」 怜「ウチが親やな…」 怜(視えんようになったとかありえへん…あれがなかったら…あれがなかったらウチは!) 京太郎(…こっちだ…) 怜(視えんへん…なんで視えへんねん!) セーラ(トキがおかしいな) 竜華(なんかあったんやろか?) コトン…ドス… 竜華「えっ?」 京太郎「ロン、四暗刻単騎」 京太郎 57000 怜 25000 竜華 -7000 セーラ 25000 浩子(また役満…ありえへん) 京太郎「ありがとうございました」 竜華(今、槍が刺さってたはず…なんやったんや)胸の辺りをペタペタと触り 怜「……」レイプ目 セーラ「なあ京…あと一回だけせえへんか?やられっぱなしは主義じゃ無いんや」 京太郎「…」 京太郎「俺は別にかまいませんよ」 京太郎「俺が親ですね」 京太郎(トキさんの様子が明らかにおかしい…) 怜「ウチなんて…所詮」ボソボソ 京太郎「それポン」 竜華(發鳴き…特許券か?) 怜「またや…なんでや…」 セーラ(これで三倍満まであと一手…) コトン…ドス… セーラ「はっ?」 京太郎「ロン、緑一色、48000です」 京太郎 73000 怜 25000 竜華 25000 セーラ -23000 京太郎「ありがとうございました」 浩子(千里山のレギュラー三人が東一局で飛ばされた…) 怜「ウチ、もう今日は帰るわ…」フラフラ セーラ「俺もごめん…帰るわ」 竜華「トキ!」 怜「ごめん竜華…今はこんといて欲しい…」 竜華「えっ?」 怜「ウチにもう…千里山のレギュラーの力は無いねん」ポロポロ ダッ…走り 竜華「トキ!」追いかける 浩子「すいません…私も追いかけますんで」 京太郎「あっ、はい…」 浩子「それじゃあ」 京太郎(……やり過ぎたか) 京太郎「…困ったら直感に従うベキだよな」 怜(どないしよ…未来が視えへんウチなんてただの病弱や) ぐぅ… 怜(そう言えば朝ごはんも食べてないからお腹空いたな…でもご飯を食べる気分でもないし) グラ… 怜(あかん…視界が歪む…) 怜(竜華…ごめん) バタ…ギュ… 怜(えっ?誰に…?) ??「大丈夫ですか!」 怜(あかん…金髪とか…ウチもついお迎えがきたみたいや……) 京太郎「おいおい…とりあえず病院に…」 怜「お腹空いた…」 京太郎「飯だな」 パク…もぐもぐ 怜「……」 パク…もぐもぐ 京太郎「……」 怜(気まずい) 京太郎(…コンビニのおにぎりを久しぶりに食べたがありだな) 怜「あの…何も聞かないん?」 京太郎「…聞いても答えてくれないでしょ?」 怜「うっ…」 京太郎「女の子を泣かしたまま放置するのは義姉の教えに反するからきたんです」 怜「…嘘やな」 京太郎「えっ?」 怜「ほらやっぱり」 京太郎「カマかけたんですか…」 怜「京さんがウチ達を虐めたからな」 京太郎「虐めたつもりはないんだけどな…ただ最近はずっと勝つ為に麻雀を打ってる」 怜「それ以外になんかあるの?」 京太郎「…自分は強いから手を抜いてやらないといけないとか考えてた」 怜「なんやそれ、感じ悪いな」 京太郎「…俺もそう思うよ。それを部活の仲間に麻雀でフルボッコにされて気づかされた」 怜「えっ、京さんをフルボッコにできる人なんておるの?」 京太郎「いくらでも居るぞ。部活の仲間や義妹も最近強いからな」 怜「…なんか凄いな」少し笑い 京太郎「やっと笑った」 怜「えっ?」 京太郎「麻雀してから死んだ魚の眼をしてたから…多分、原因は俺だし」 怜「っ…どうなんやろうね…京さんには言ってたっけ…ウチな一巡先が視えるねん」 京太郎「言ってましたね。俺も今日、槍投げてたでしょ?」 怜「あれにはびっくりしたで…」 怜「それでな…今日になって一巡先が視えへんかってん…変な声が聞こえて、ウチの力が無くなってん…」ポロポロ 京太郎「……」 怜「あの力が無かったらウチは千里山のレギュラーにはなられへん…竜華達と同じ舞台に立たれへん」ポロポロ 京太郎「それで立ち止まるんですか?」 怜「えっ?」 京太郎「未来が視えなくなったから麻雀から逃げるんですか?」 怜「ウチは逃げてなんか…」 京太郎「逃げてますよ。逃げて、泣いて、自分は何もできないって言って誤魔化してるだけじゃないですか」 怜「っ!京に何が解るねん!自分だってあんな強い槍があるやん!あれがなくなったら今の実力は出されへんやろ!」 京太郎「槍がなくても弓があります。弓がなかったらまた頑張ればいい。何かがないから麻雀に勝てないと俺は言いたくない」 怜「っ…!ウチは…ウチはそんなに強く無いんや!病弱で死ぬ思いして偶々手に入れた力なんや…いいやないか…逃げてもいいやないか。ウチは弱い人間なんや」ポロポロ 京太郎「……」 京太郎「手を出してください」 怜「えっ?」 京太郎「俺が貴女に新しい力をあげます」 怜「そんな事できるわけ…」 京太郎「できます。ただしもう泣かないで下さい」 怜「……ほんまにできるの?」 京太郎「…多分」 怜「なんやそれ…まあ、その嘘に乗ったる…今は藁にも縋りたいから」 さっ…手を出して 京太郎「……やっぱり勇気じゃダメですか?」 怜「あかんで京さん…男に二言は無しや」 京太郎「うっ…いきますよ」 ギュ…手を両手で握り 怜「なっ!」カァァ 京太郎(……力を…いや、なんだろうな……) コプ…… 果実が連鎖反応を起こしていき 京太郎(……強くじゃないな…この人が泣かなくても良いように…未来に頼る事なく歩いていけるように) ドクン… 怜「何が起ころうとしてるんや?」 京太郎(この人に俺が与えられる全部の力を…トキさんに…!) グワァ… 怜(京さんからなんか変な感覚が…あかんこれ…耐えら…)ジュワァ バタン…怜が倒れる 京太郎「えっ?」 精神世界 怜「あれここ何処?」 洋榎?「やっと気がついたみたいやな」 怜「なんで姫松の愛宕姉がおるねん…」 絹恵「ウチもおるで」 怜「えっ?」 健夜「私達もいるんだけど」 良子「ノーウェイ」 はやり「ギュルビーン☆」 怜「プロもおるんか…夢かなんか?」 豊音「惜しいよー、ここは夢であって夢じゃないんだよー」 怜「えっ?誰、あんた?」 塞「貴女が京太郎に望んだでしょ?」 怜「京太郎?京さんの事か?」 白望「私達が叶えてあげる…だるい」 怜「叶えるって何をや…」 胡桃「そんなの決まってる。貴女の望み」 怜「ウチの望み?」 エイスリン「強くしてあげる」 怜「…ほんまか?」 小蒔「嘘はいいません」 怜「なら…」 霞「ただし条件があるわ」 怜「条件?」 初美「簡単な事ですよー」 怜「……」 巴「それは…」 怜「それは?」 春「秘密」 怜「なんやそれ…そんなおかしいやないか」 久「何がおかしいのかしら?」 怜「そんなんウチが不利…」 智葉「甘えるな、タダで手に入る力などない」 怜「うっ…」 慧宇「どうする?」 怜「う、ウチは…」 京太郎「大丈夫なのかな…トキさん…」膝枕していて 怜「うー…」 京太郎「さっきからずっとうなされてるんだよな…」 怜「……っ…」眼を開けて 京太郎「大丈夫ですか?」 怜「……」 怜「京君…?」 京太郎「えっ?」 怜「京君がおるって事はウチ…生き残ったんや…やったで、やったで京君!」 ギュー…抱きしめて 京太郎「ちょ、どうしたんですか?」 怜「京君、ウチが間違ってた……ウチ頑張るからな」 スッ…京太郎と向き合って 怜「能力だけが麻雀じゃないってようわかった…それに京君がくれた力がウチにはある」 京太郎「は、はぁ…」 怜「これはそのお礼や」 チュ…頬に 京太郎「えっ?」 怜「口と本番はもう少し仲良くなってからな!それじゃあ、ウチはもう帰るから」カァァ ダッ… 京太郎「本番ってあの本番か?………な、なんだって!」 夕方 京太郎「……きっとあれは夢だ……いや、流石にそれはクズすぎるだろ。夢で何かあったのか?」 京太郎「ぶらついてみるか」 京太郎「適当にぶらつくか」 京太郎「何時の間にか引っ掛け橋まで来てしまった……ナンパするので有名らしいなこの橋」 竜華「お断りします」 男「え、ダメなのなんで?」 京太郎「そうそうあんな風にナンパが……あれ、あの人どっかで見た気が」 竜華「私は忙しいんです!」 男「いいじゃんか、そんな事より俺と遊ぼうぜ」 竜華「いやです!」 京太郎(あれって清水谷さんじゃないか……助けるか) 男「…人が下手にでてたら調子にのりやがって…」 竜華「えっ?」 バシ… 男の手を握り 京太郎「あの、俺の彼女に何かようですか?」 男「ヒッ!」 男(なんだよ、このガキ…眼がヤバすぎるだろ!) 京太郎「もう一回聞きますけど俺の彼女に何かようですか?」 ギュ…林檎を余裕で握り潰せる握力で腕を握り 男「な、なんでもありません!」 バッ…ダッ…逃げて行く 京太郎「あの大丈夫でしたか?」 竜華「……えっ、あっ、うん大丈夫やで」カァァ 京太郎「それなら良かった…すいません、彼女呼ばわりして」 竜華「えっ、いや別に気にしてないから大丈夫やで」カァァ 竜華(お、大人の余裕を見せなあかん…彼女って呼ばれた位でなんでこんなに嬉しいねん!) 京太郎「そう言ってくれると助かります…それじゃあ、俺はこれで」 スタスタ… 竜華「えっ…ちょっと待って!」 京太郎「はい?」 竜華「お礼、そうや、お礼さして!」 京太郎「お礼ですか?」 竜華「そうや、京さん大阪あんまり来た事ないんやろ。ならウチが美味しいもん紹介したる」 京太郎「良いんですか?」 竜華「任せとき!」 パク…もぐもぐ 京太郎「美味しい…」 竜華「当たり前や、うちのお勧めの店やからな」ニコニコ 京太郎「それもそうですね…串カツがこんなに美味しいなんて知りませんでしたよ」 竜華「そうやろ、そうやろ。そう言えば京さん、トキの事ありがとうな」 京太郎「えっ?」 竜華「さっきなトキから電話があってもう大丈夫やでって元気な声で言われてな…気が抜けた時にさっきの男に引っ掛けられたんや」 京太郎「そ、そうなんですか」 竜華「そうやで、だから京さんには感謝してるんや」 京太郎「俺なんて何も…」 竜華「それはない。私も助けてくれて、トキも十中八九京さんに救われたはずや」 京太郎「……」 竜華「あかんで、人の好意は素直に受け取らな」 京太郎「すいません、慣れてなくて」 竜華(…嘘なんやろうな…まあ、いいか) 竜華「まあ、今回はこれで勘弁したる」 京太郎「ありがとうございます…あれ、でもなんかこれって変じゃ…」 竜華「それもそうやな…ハハハ」 京太郎「ハハハ」 京太郎「ごちそうさまでした」 竜華「ごちそうさまでした」 京太郎「割り勘でいいですかね?」 竜華「かまへんで。正直、奢ったると言われたらどないしよかなって思ってたし」 京太郎「奢ってもいいですよ?今日のお礼と清水谷の美貌に…なんてね。少しくさすぎますね」ワハハ 竜華「ほ、ほんまやで、ドキッとしたやないか!」カァァ 京太郎「顔真っ赤ですよ」 竜華「赤くなんてない!」 京太郎「それじゃあ、行きましょうか」ニコニコ 竜華「うぅ…京さんなんて嫌いや」 京太郎「いやまあ、竜華さんが綺麗なのは事実ですから」 竜華「あぅ…」ボン… ーーーー 京太郎「また会いましょう」 竜華「せやね…また大阪に来たら会おな」 京太郎「是非」 夜1 京太郎「……知らない街で一人だと妙に淋しいよな」 京太郎「夜の新世界に見てみるか…嫌な予感がするけど」 京太郎「酔っ払いと客引きしかいなかった…まあ、当たり前か」 夜2 ♪~ 京太郎「電話か?もしもし」 洋榎「もしもし、京太郎!」 京太郎「洋榎かどうかしたのか?」 洋榎「どうかしたもこうしたもない!なんで大阪に来てるのにウチに連絡せえへんねん!」 京太郎「いや、今日は別の友人と…」 洋榎「約束したやないか!」 京太郎「うっ…明日、誘おうと思って…」 洋榎「ほんまやな?」 京太郎「本当ですよ」 洋榎「なら明日、ウチとその…で、デートやで」カァァ 京太郎「はい、楽しみにしてます」 洋榎「ぜ、絶対やで!約束破ったら針千本のますからな!」 京太郎「約束は守りますよ」 洋榎「なら、明日朝にまた連絡するから…でるんやで」 京太郎「はい、待ってますね」 ーーーーーー 洋榎「…えっとまず、服やな…」 ポン… 絹恵「抜け駆けはあかんでお姉ちゃん」 洋榎「絹、なんでここに…」 絹恵「外に声が漏れてたで」ゴゴゴ… 洋榎「な、なんやて…」 絹恵「ウチも行くから」ニコニコ 洋榎「うっ…しかたないな」 朝 京太郎「……大切な何かを踏み躙った気がする」 朝食 京太郎「とりあえずご飯を食べるか」 ーーーーー 強制イベント ♪~ 京太郎「メールが着たな」 From 愛宕洋榎 11時に梅田で待ち合わせ。 京太郎「11時に梅田か……そろそろでとくか」 京太郎「待ち合わせ場所はここだよな…あれ?」 絹恵「あっ、京太郎!」 洋榎「えっ?あっ、ほんまや、京太郎」ブンブン 京太郎「…一時間前だぞ。二人とも早すぎませんか?あれ、そう言えば絹恵も来るのか?」 絹恵「あかんかったかな?」 京太郎「いや、全然もんだ…っ!」 ぎゅー…洋榎に足を思いっきり踏まれて 京太郎(…怒ってる。何でか解らないがとりあえず不機嫌なのはわかった…)洋榎をチラ見して 京太郎「び、美人姉妹とデートなら喜んで行くよ」 京太郎(こ、これでどうだ…) グリ…踵で踏みにじられる 洋榎「ばかやろ…」カァァ 京太郎(間違っただと…!) 絹恵「嫌やわ、美人姉妹なんて照れるやん」ニコニコ 京太郎(今日は精神的に疲れるかもしれない) 絹恵「とりあえず行こか」 ギュ…右の手を握られ 洋榎「むっ、ずるいで絹」 ギュ…左の手を握られる 京太郎(落ち着け、落ち着くんだ…なんでテンパる…冷静に何時も通りにやれば大丈夫だ) 京太郎「両手に華ですね、これ」ワハハ 京太郎(これで突っ込みがとんでくるはず!) 絹恵「そ、そうやね」カァァ 洋榎「あ、当たり前やろ」カァァ 京太郎(な、なんだと…) 洋榎「と、とりあえず近くにおかんから教えてもらった店があるからそこでご飯にせえへん?」 京太郎「別にいいですよ」 絹恵(お姉ちゃん、何時のまにそんな事を…)目で会話 洋榎(甘いな絹、お姉ちゃんはやりてなんや)目で会話 洋榎「ここや」 京太郎「お洒落な洋食屋ですね」 絹恵「あれ、ここって…」 洋榎「せやろ。はよ、はいろか」ニコニコ ガラン… 店員「いらっしゃいませ」 洋榎「三人で禁煙で」 店員「こちらになります」 スタスタ… 店員「こちらです」 京太郎(どうやって座ろう…) 絹恵「京太郎とお姉ちゃんはそっちに座っていいよ」 洋榎「えっ?」 絹恵「ウチはこっちでいいよ」 京太郎「ならこっちに座ろうかな」 洋榎「そ、そうやな」 洋榎(おかしい…) 絹恵(ここがおかんが言ってた店ならあのメニューがある筈や…) 京太郎「何を食べようかな…」 京太郎(裏メニューって言ってみたい…絶対にあるんだよな…メニューは一通りあるしな…わからん。普通にビーフシチューにしとくか) 洋榎「決まったんか?」 京太郎「ええ」 洋榎「絹は?」 絹恵「ウチも決まってるで」 洋榎「なら呼ぼか、すいません!」 店員「はい!ご注文はお決まりでしょうか」 洋榎「ウチはクリームシチューのセット」 京太郎「俺はビーフシチューのセットで」 絹恵「ウチは…あの、ふわふわオムライスで」 店員「あら、良く知ってたわね」 絹恵「母が前に言ってたんですよ」 店員「そうなんですか…わかりました。失礼します」 京太郎「ふわふわオムライスってありましたか?」 洋榎「せや、そんなんあったん?」 絹恵「裏メニューやで。おかんの思い出の」 洋榎「…まさか…」 絹恵「ウチの勝ちや」口パクで 洋榎「あのオムライスか!」悔しがり 京太郎「?」 店員「以上でよろしいでしょうか?」 京太郎「大丈夫です」 店員「ごゆっくりどうぞ」 絹恵「これが思い出のオムライス…」 京太郎「思い出のオムライスってどういう意味なんですか?」 絹恵「秘密」 洋榎「絶対に言わんで」 京太郎「なんだよそれ…」 洋榎「女の秘密や」 絹恵「そうやで、女の子の秘密や」 ーーーーーー パク…もぐもぐ 京太郎「美味しい…丁寧に作られてるな」 洋榎「クリームシチューも美味しいで」 絹恵「オムライスもありやで」 京太郎「流石、二人のお母さんのお勧めの店だな」 洋榎「当たり前やで」ニコニコ 店の外 京太郎「また行きたいな」 絹恵、洋榎「えっ?」 京太郎「いや、美味しかったからまた行けたらいいなって」 洋榎「そうやな…またこよか」 絹恵「うん、また行こね」 京太郎「それで今からどうするんですか?」 洋榎「買い物やな」 絹恵「えっお姉ちゃん、普通は大阪城とか見に行くんと違うん?」 洋榎「ありきたりすぎるやろ。それに京太郎も大阪城くらい言った事あるやろうし。なあ、京太郎」 京太郎「まあ何回か大阪にきてるんで大阪城は見た事くらいはあるぞ」 京太郎(良子義姉さんと半日かけて巡ったしな) 洋榎「そうやろ。だから買い物でええやん。正直、大阪は通天閣と大阪城、食い倒れしかないんやで」 絹恵「…それもそうやけど…」 京太郎「買い物でいいぞ。デートだしな」 洋榎「そうやこれはデート……何いわしとんねん!」かぁぁ 絹恵「デート…」ポッ… 京太郎(突っ込みが飛んでこないだと!) 洋榎「ハルカスで買い物や」 京太郎「ハルカスってあのハルカスか?」 洋榎「そうやで日本一大きいビルらしいからな…眺めもいいやろうし、絹もそれでええやろ?」 絹恵「かまへんで。私もハルカス行ってみたかったし」 洋榎「なら決まりやな」 ーーーーーーーーー ハルカス一階 京太郎「デカイな…」 洋榎「そうやな…」 絹恵「最上階に雲がかかってる…」 京太郎「写真とらないか?」 洋榎「えっ?」 京太郎「いや、旅行に着てるのに一枚も写真とってないから…どうかなって」 絹恵「それいいな」 洋榎「なら誰かにとってもらわんと…すいません!」 漫「えっ、うちですか?あれ、主将に絹ちゃん…ここでなにしとんの?」 洋榎「げっ…なんで漫がここにおるん」 漫「げって酷いですね…うちだって用事があるんです…そっちの男って岩手の大魔王じゃ…」 京太郎「大魔王って…どうも。合宿以来ですね」 漫「もしかして主将達、デー…むぐぅ…」口を塞がれて 洋榎「ちょっとこっちこよか」 ズルズル… 洋榎「いいか、漫」鬼の気迫 漫「は、はい!」 洋榎「部活のメンバーにこの事言ったら解るな?」 漫「い、言いません!」 洋榎「それでいい…言ったら油性ペンでデコと頬に肉って書くからな」 漫「は、はい!」ぶるぶる 洋榎「流石、ハルカスや。色んな物が置いてるで」 絹恵「何を見に行くん?」 漫「なんでうちも何ですか」 洋榎「共犯やと喋られへんやろ?」 漫「うちにも用事が…」 絹恵「用事って今話題のあの映画を…」 ?漫「あー、言ったらダメや!」 洋榎「何の映画を観に行くん?」 漫「何でもないです!本当に何でも…」 絹恵「純愛映画やで」 漫「あっ…」 洋榎「純愛?…ほんまなんか?」ニヤニヤ 漫「ダメですか?」ぷんすか 洋榎「別に、だめやなんて言ってないやん」 絹恵「お姉ちゃん、悪ノリしたらあかんで」 京太郎「その映画なら俺も観に行こうって思ってましたよ?」 三人「えっ?」 京太郎「いや、原作の小説を義姉が持ってたから結構気になるんですよ」 漫「そ、そうなんや…うちも小説読んでるんですよ。ラストの話とか良いですよね」 京太郎「そうですね。知らなかった真実を知った時の衝撃とか今でも覚えてますもん…それにそのまえの…」 漫「わかります!あのシーンで主人公が…」ペチャクチャ 絹恵「なあ、お姉ちゃん…」 洋榎「言うな絹…言ったら悲しくなる」 絹恵「そうやね…でも反省せなあかんで」 洋榎「うん…肝に命じとくわ」 漫「それにあの…」 京太郎「あっ、待ってください。あのこれ俺の連絡先なんでまた良かったら連絡ください。今はデート中なんで」洋榎達の方を向いて 漫「あっ、そうやった…すいません、主将」 洋榎「別にかまへん…淋しくなんてなかったんやからな!」 京太郎、漫(淋しかったんだ) 絹恵「それで何を見に行くん?」 京太郎「……」 京太郎「時計を見に行きませんか?」 洋榎「時計?」 京太郎「ああ、ここにならあの時計があると思うんだ」 絹恵「でも私、お金ないんやけど…」 京太郎「五千円で買えますよ」 絹恵「そうなん?」 京太郎「ええ。俺が欲しい二本の時計のうちの一つです」 漫「二本も欲しいん?」 京太郎「ええまあ…憧れなんですよ」ワクワク 洋榎「それやったら別にかまわんけど…」 京太郎「ありがとう!」 ーーーーー 京太郎「ここが一番大きい時計店だな」 洋榎「なんであんな嬉しそうなん」小声 絹恵「あれはなんかに夢中な男の子の眼や」小声 漫「生き生きしてますね…」小声 京太郎「すいません!」 店員「はい、どうしましたか?」 京太郎「時計を探してるんですけど」 店員「ブランド品ですか?」 京太郎「いや違うんです。セイコー5の時計を後ろの三人にあったタイプはありますか?」 店員「……セイコー5ですか。若いのによくご存知ですね」 京太郎「時計が好きなんです。一番欲しいのはオメガのスピードマスターが欲しいんですが…あれに見合う位になったら買うつもりです」 店員「本当に不思議な方だ…今時の若い人は高級ブランドばかりを求める。特にこんな所に店を構えるとそんな客しか来ない。久しぶりの客が貴方みたいな方で良かった。少しお待ちください。在庫の確認をして参ります」 洋榎「なあ京太郎、そのセイコー5ってなんなんや?」 京太郎「えっとその…なんて言えばいいんだろ。日本が世界に誇る普通の腕時計です」 絹恵「普通の腕時計?」 京太郎「ええ。輸入でしか入らない時計なんですけどね」 漫「日本の時計やのになんで輸入するん?」 京太郎「海外モデルしか無いからです。残念な事にね」 漫「そうなんや…」 店員「お待たせしました。当店にあるセイコー5、13本です」 洋榎「…本当にただの時計やな。それになんか古い気がするし」 京太郎「えっ、あのこれって…」 店員「サービスですよ。価値も解らない客に売るより貴方達に売った方が時計も喜びますから」 絹恵「でも私はこの時計でいいと思う」 漫「かっこいいってよりも年代を感じる」 京太郎「……気に入った時計はあったか?」 洋榎「ウチはこれかな」指差し 絹恵「私はこっち」指差し 漫「ウチはこれに惹かれたかな」 京太郎(どれも良い品だな…何も知らずに決める時計が1番なのかもしれないな) 京太郎「すいません、その三本と右の1番右の一本をください」 洋榎「ちょい待ち、高いんと違うんか?」 絹恵「そうやで、他の時計の値段見ても諭吉さんが何枚も飛んで行ってるで」 漫「わ、悪いですよ…」あたふた 京太郎「樋口でお釣りが来るから大丈夫ですよ。美人三人とデートしてるんです、漢気を見せないと駄目でしょ」 京太郎(今年のお年玉が吹き飛ぶけど仕方ないか) 店員「畏まりました。それでは調整をするのでそちらのお嬢様達は向こうにいってもらえますか?」 洋榎「う…これは借りやからな」 絹恵「そ、そうやで」 漫「あ、ありがとうございます…」あたふた スタスタ… 京太郎「ふぅ…それで一本幾らですか?」 店員「幾らだと思いますか?」 京太郎「通常の三倍?いや五倍かな?」 店員「やはり貴方は不思議な方だ。二倍で良いですよ。保障もつけましょう」 京太郎「赤字じゃないんですか?」 店員「高級時計を一本売ったら大丈夫ですよ。それに貴方とはこれからも長く取引がしたい」ニヤニヤ 京太郎「……五年待っててください。二十歳になったらマスターが似合う男になります」 店員「楽しみにしておきます。その時が来る事を。それまでこの店に眠っているあの子は保管しておきます」 京太郎「あるんですか!」 店員「どうでしょうね」ニコニコ 夕方 京太郎「今日は本当にありがとうございました」 洋榎「ウチらの方こそありがとうな。時計も買ってもらったのに…」 絹恵「また大阪来たら…いや、全国で会おな」ニコニコ 漫「あの…また連絡するから」 京太郎「はい。待ってます。それじゃあ」 夜1. 京太郎「まだ時間はあるな…」 京太郎「飯を食べるか…」 京太郎「唐翌揚げ…いやカツカレーもありだな」 ガシ… 京太郎「えっ?」 雅枝「ちょっと私と話せえへんか?」 京太郎「は、はい」 京太郎(絹恵に似てる…目元は洋榎にそっくりだし…まさかな) 雅枝「そんなにびびらんでええよ。ただちょっと娘の話を聞くだけや」 京太郎「洋榎達の事ですか?」 雅枝「なんや気がついてたんか?」 京太郎「髪の色と口元は絹恵、目元は洋榎そっくりですよ」 雅枝「本当に洋榎達が言ってた通り只者じゃなさそうやね」 ーーーーーーーーー 雅枝「そうやろ!おかんがおるから行かへんとか言ってやで、楽しみにしてたのに!」酔っ払い 京太郎「そうなんですか…でも千里山も十分強いじゃないですか」 雅枝「当たり前や!ただな…洋榎と三箇牧の荒川憩が居れば楽になったんや!でもまあ、そんな事はどうでもいいんやけどな…」 ごく…ごく…ぷはぁ… ビールを飲み切り 京太郎「あっ、どうぞ」 雅枝「気が利くな。さっきからありがとうな」ニコニコ 京太郎「いえいえ、これくらい普通ですよ」 雅枝「ほんまにええ男やね、あんたは…ウチがもう少し若かったら、アタックしたんやけどな」ワハハ 京太郎「今より綺麗になってたら俺が緊張してしまいますよ」 雅枝「口もうまいんやから!」 バシ、バシ… 京太郎「事実ですよ」 雅枝「もう一軒行くで?」酔っ払いできあがっている 京太郎「いやいや、ここら辺は危ないから駄目ですよ」 京太郎「わかりました、解りましたから、とりあえずタクシーに乗りましょうね」 雅枝「乗ったらもう一軒行くんやな?」 京太郎「行きます」 雅枝「ならさっさと捕まえなな」 京太郎「あっ、ダメですよ酔ってるんだから」 ギュ…手を握り 雅枝「えっ?」 京太郎「こっちですよ」 雅枝「は、はい…」 京太郎(急にしおらしなった?) 雅枝(手握られとる…このままもしかして…)妄想にふける キィー…タクシーがとまり 京太郎「乗りますよ」 雅枝「えっ、どこにいくん?」 京太郎「……」 京太郎「雅枝さんの最寄り駅までですよ」 雅枝「最寄り駅、なんでなん?」 京太郎「帰れなくなるでしょ」 雅枝「帰れるわ!京太郎はウチの事どう思っとんねん」 京太郎「酔っ払った美人です。襲われたら大変ですから早く乗ってください」 雅枝「えっ、は、はい」 運転手(天然のジゴロだな、このあんちゃん) 京太郎「えっと…洋榎が言ってた駅は…」携帯でメールを確認して 京太郎「○○駅までお願いします」 運転手「解りました」 雅枝(あかん…眠なってきた…)ウトウト 運転手「着きましたよ、4320円です」 京太郎「はい、お釣りお願いします。雅枝さん、降りますよ」 雅枝「すぅ……zzz」 京太郎「マジかよ…」 運転手「これ、お釣りの680円。うまくやりなよ、あんちゃん」 京太郎「が、頑張ります」雅枝をおんぶして バタン…ぶうぅぅうん走り去って行く 京太郎「とりあえず洋榎か絹恵に連絡だな」 京太郎「洋榎だな…」 ーーーーーー ♪ー 洋榎「もしもし、京太郎どないしたん?えっ、おかんと○○駅におるん?おかん、寝てんの!ああ、待っててすぐ行くわ」 バタバタ… 絹恵「どうかしたん、お姉ちゃん?」風呂上がり 洋榎「おかんが酔いつぶれて○○駅で京太郎とおるんやて。ちょっと迎えに行って来るわ」 絹恵「えっ、そうなん!?でも京太郎って新幹線乗ってるんじゃ…」 洋榎「あっ…今、何時なん?」 絹恵「10時過ぎ…」 洋榎「どないしよう……でもとりあえず迎えに行って来るわ」 絹恵「気いつけて」 洋榎「京太郎ー!」自転車で爆走 京太郎「こっちだ」 洋榎「ごめんな、おかんが迷惑かけて」 京太郎「いや迷惑なんかじゃなかったぞ」 雅枝「……zzz」 洋榎「ほんまに寝てるんやな」 京太郎「爆睡してて起きない…まあ、飲んでたからな」 洋榎「どんなけ飲んでたん?」 京太郎「……秘密だ」 洋榎「相当飲んだんやな…まあ、とりあえず行こか」 京太郎「えっ、どこに行くんだ?」 洋榎「ウチの家に決まってるやろ」 京太郎「いや、俺、新幹線の時間が…」 洋榎「…京太郎、時間わかってる?」 京太郎「時間?そんなの……」サー…血の気がひいていき 洋榎「あはは…ごめんな」 京太郎「お、おう…別にいいぞ」遠い目 京太郎「お邪魔します」 洋榎「中々の家やろ」ニコニコ 京太郎「そうだな」 京太郎(女物の靴しかない…あれ、これってまずくないか?) 洋榎「とりあえずおかんはソファーに横にやっといて」 スタスタ 京太郎「お、おう…とりあえずゆっくり降ろしてと…」 雅枝「うん…あれ、ここ家か?」 京太郎「あ、起きました?」 雅枝「なんで京太郎がおるねん…っ…頭痛いわ」 京太郎「ああ、待ってください。昼間に買った未開封の ミネラルウォーターです。よかったら」 雅枝「あ…ありがとう」頭を抑えて ごく…ごく… 雅枝「……なんで自分まだおるん?」 京太郎「えっ…」 雅枝「はよ帰りや…親御さんが心配するやろ…」 京太郎「えっ、あっ…すいません…」 洋榎「あれ、おかん起きたん?」 雅枝「洋榎か…京太郎がもう帰るから…送ったって」頭を痛めて 洋榎「何を言ってんねん。京太郎は今日、ここに泊めるで」 雅枝「はっ?何言ってんの?あかんに決まってるやろ」 洋榎「おかんこそ何言ってるんや。おかんのせいで京太郎が新幹線に乗り損ねたんやろ」 京太郎「あっ、洋榎、それは言ったら…」 雅枝「どう言う事や?」 京太郎「あ、あの…」 洋榎「おかんが酔い潰れてタクシーで京太郎が○○駅まで送ってくれたんやろ。それに今の時間見て見いや。もう11時やで」 雅枝「本当なんか?」京太郎の方を向いて 京太郎「…事実です」 雅枝「はぁ…めげるわ。この年で娘と変わらん男に酔い潰されて介抱されてたんか…ほんまにめげるわ」 京太郎「すいません」 雅枝「謝らんでいい。今日は泊まっていいから。新幹線代も渡す…本当にすまんかった」 京太郎「いや、俺の方こそ…」 雅枝「もう何も言わんでいい…ちょっとお風呂入ってくるわ」 スタスタ… 京太郎「なんか悪い事したな」 洋榎「京太郎は悪ない。おかんが酔い潰れるなんて滅多にないんや。それだけ京太郎に気を許したって事やろ」 京太郎「そうだと良いんだがな…」 洋榎「まあ、大丈夫やで。ちょっと待っとき。毛布もってくるから」 京太郎「あっ、手伝うぞ」 洋榎「いや京太郎は客やからなゆっくりしとき」 スタスタ 京太郎「…お言葉に甘えるかな」 京太郎(…あかん、いろいろとあり過ぎて眠く…なっ…きた……zzz) ツンツン… 京太郎「うっ…だれだ?」 雅枝「ウチや…ちょっと付き合い」ジャージ姿 京太郎「は、はい」 ーーーーーー 雅枝「あんたはちょっとは飲めるんか?」向かいあって座っており 京太郎「いや、お神酒程度なら」 雅枝「なんやそれ…まあいいけど。それでや…ウチはあんたになんて言った?」 京太郎「何がですか?」 雅枝「いや、だから…酔っている時になんか言わんかったか?」目をそらしながら聞いて 京太郎「特に何もなかったですよ。洋榎達が千里山に…」 雅枝「あー…それ以上言わんでいい。そんな事を言ってたんか…他には?」 京太郎「いや、特には聞いてないですよ」 雅枝「……」京太郎の眼を見て 京太郎「……」 雅枝「嘘は言ってないみたいやな…絶対に洋榎達に言ったらあかんで」 京太郎「恥ずかしいんですね」 雅枝「ち、違うわ」 京太郎「はいはい、眼が泳いでますよ」 雅枝「まったく、子供らしくないであんた」 京太郎「よく言われます」 雅枝「……小鍛冶健夜と戒能良子の義弟はそうせな務まらんかったんか?」 ガタ… 京太郎「…」 雅枝「顔が引きつってるで…知らんと思ったんか?」 京太郎「予想外でした」 雅枝「舐めたらあかんで。でもまあ、その表情の方がウチは好きやな」 京太郎「あまりいじめないでくださいよ」 雅枝「あんたが本音を話さないから仕方ないやろ」 京太郎「…何が聞きたいんですか?」 雅枝「ぶっちゃけて、洋榎か絹恵、どっちが好きなん?いや、もっと生々しくきこか。もう深夜やしな。どっちが抱きたいん?」 京太郎「ぶっ、言ってる意味わかってますか?」カァァ 雅枝「なんや顔真っ赤やで?もしかしてまだ自分、どう…」 京太郎「あー…何も聞こえない!」耳を手で抑えて 雅枝「案外子供なんやな。それでどっちなん?」 京太郎「……」 雅枝「黙秘か…沈黙は金じゃないで」 京太郎「……」 雅枝「強情やな…なら尋問や」 京太郎「……」 雅枝「洋榎の方が好きなんか?」 京太郎「……」 雅枝「反応無し…いや、無表情か。なら絹恵か?」 京太郎「……」 雅枝「これも無表情か。面白ないで自分。あれか実はウチが1番やったりしてな」 京太郎「そうです」 雅枝「えっ?」 ガタガタ…奥で音がして 京太郎「……」 雅枝「も、もう一回言ってもらっていいか?」 京太郎「……」 雅枝「また黙りか…自分、それズルいで?」 京太郎「なら俺が言ったらどうするんですか?」 雅枝「言うつもりもないのにそんな事を言うのは無しやで」 京太郎「俺はあんた達三人を抱きたい」 雅枝「はっ?」 京太郎「だから俺は…」 雅枝「待って、それ本気で言ってるん?」 京太郎「本気ですよ?寧ろ雅枝こそ何を言ってるんだ?」 ごく…ごく…コップに入った飲み物を飲み切り 雅枝「なんで私もなん?こんな年増より洋榎達の方が…」あたふた 京太郎「逃げるなよ、俺は答えたんだあんたの答えを聞かせろ」 ドバドバ…飲み物を注いで 雅枝「…それはできひん。洋榎達の思い人を母親の私が手を出すはずがないやろ。もうこの話は終わりや、眠なってきたわ。あんたも早くねえや」 京太郎「……」 バタン…何かが倒れる音 雅枝「はっ?」後ろを振り返り 京太郎「むきゅう……」酔っ払って倒れており 雅枝「……日本酒飲んで倒れたんかい。ほんまになんなんやこいつは。担ぐにしては重いしな…ほら、あんた達も手伝い」 洋榎「なんや気付いてたん?」 絹恵「ごめん、おかん」 雅枝「別にかまへん…それにしても難儀な漢に惚れたな」 洋榎「えっ?」 雅枝「なんでもない。ただこの漢はモテるからな気をつけりや」 絹恵「な、何を言ってるんやおかん!」カァァ 雅枝「冗談じゃないで。こいつが欲しいと口に出したらあんた達は逃げられへん。寂しいのに寂しいって言われへん人間なんやこいつは…全く、難儀な人間やで」 ズルズル…京太郎を引きずり 雅枝「私があと20歳若かって元旦那と出逢ってなかったら、さっきのでベタ惚れやで」 洋榎「なんやそれ」 雅枝「女は自分より強くて弱い漢に惹かれるって事や」 バサ…毛布をかけてやり 雅枝「ウチはもう寝る。あんた達も早く寝りや。おやすみ」 二人「おやすみ」 スタスタ… 洋榎「なんなんやろ…ウチは京太郎の大事な事を知らんのかもしれん…」 絹恵「私も…」 サイドストーリー 白糸台優勝インタビュー 照「ありがとうございます。白糸台が優勝できたのは日々の努力と皆様の御声援があったからです。今年も全国優勝を目指して頑張りたいです」 記者「今年の全国大会は長野から二校と変則的な形になっていますが注目している高校はありますか?」 照「どの高校も県大会を勝ち上がってきた猛者だと私は思っています。ですが警戒している高校は幾つかあります」 記者「それはどこの高校ですか?」 照「先程仰った長野県の二校を初めとして岩手の宮守、臨海、鹿児島県の永水高校は充分に対策していきたいです」 記者「常連の千里山や姫松は警戒しないのですか?」 照「大阪府大会がまだなのにそれは言えません」 記者「確かに…最後に一言お願いできますか?」 照「…私はある人との約束でこの三年間戦い続けてきました。今年、その約束をした人が全国に仲間を連れてやってきます。ですが私はそれを全力で潰します。私達に敗北の二文字はありえません」 記者「ある人ですか…がんばってください。応援しています。以上が白糸台のエース宮永照選手のインタビューでした」
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ 京太郎「東横ー。いるか?」 桃子「いるっすよ。席に座ってるっす」 京太郎「ああ、そこにいたのか。何やってるんだ?」 桃子「パソコンで麻雀をやってるっす。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見ればってお前……」 桃子「……」 京太郎「……」 桃子「……はぁー。ノリ悪いっすね! ここは『いや見えねえよ!』とか言うところっすよ!」 京太郎「それで悩んでる奴にいきなりそんなこと言えるか!」 桃子「まったく、次からは気をつけるっすよ」 京太郎「はいはい……。で、麻雀って誰とやってるんだ? ネット麻雀ってやつ?」 桃子「んーネットはネットっすけど、学内ネットでやってるっす」 京太郎「そういうのもあるのか。てことは相手は同じ学校の人だな」 桃子「そうっす。麻雀部が最近始めたみたいっすね。掲示板にチラシが貼ってあったっす」 京太郎「へー。挑戦者来たれ! みたいな感じか?」 桃子「そういう感じではないっすね。チラシには麻雀に興味ある人歓迎って書いてたし」 桃子「何度か勧誘も受けてるから部員集めの一貫だと思うっす」 京太郎「初心者歓迎ってことか」 桃子「興味あるなら須賀くんもやってみたらどうっすか?」 京太郎「いや、俺はいいよ。ノートパソコン持ってないし、そもそも麻雀の役もわからないしな」 京太郎「興味はあるからよければ観戦させてくれ」 桃子「いいっすよー。私の勇姿を見るがいいっす!」 京太郎「おう、期待してるぞ」 桃子「くーっ! また勝てなかったっす!」 京太郎「麻雀部3人を相手に2位なら十分凄いじゃないか」 桃子「これでも麻雀の腕には自信があるんすよ。そこらの麻雀部員にも引けをとらないくらいには」 桃子「なのにこのかじゅって人にはなかなか勝てないっす」 京太郎「麻雀って運に左右されるんだろ? そういうこともあるさ」 桃子「20局以上打って勝ったのは数回だけ。さすがに悔しいっす……」 京太郎「20局で数回……。麻雀はよくわからないんだけど、それはどのくらい強いってことなんだ?」 桃子「ええと、そうっすね。風越女子は知ってるっすか?」 京太郎「そりゃもちろん。長野の女子麻雀部では一番強いとこだろ」 桃子「その風越でレギュラーになれる。少なくともそれくらい強いと思うっす」 桃子「まあもちろん、実際に打つのはダメって人も中にはいるっすけどね」 京太郎「そんなに強いのか……ん? なんか書いてるみたいだぞ」 かじゅ『打ち筋からしていつも打ってくれている人だろうか? 今日も来てくれてありがとう』 むっきー『また負けちゃいました。やっぱり強いですね。一度だけでも麻雀部に見学に来てくれませんか?』 カマボコ『しつこかったらごめんなー。でも毎日来てくれて本当に嬉しいんだ』 カマボコ『見学に来たから入れ、なんてことは言わないし、それに来てくれればきっと気に入ると思うんだ』 かじゅ『気が向いたら来て欲しい、と言いたいところなのだが私たちには時間がない』 かじゅ『だから君が麻雀のことを好きなら、ぜひ部室に来て欲しい。後悔はさせない』 京太郎「おお……。凄い勧誘だな。ほら、返事書こうぜ」 桃子「……今書くっす」 default player『気持ちは嬉しいです。でもごめんなさい』 ---default playerはログアウトしました--- 京太郎「……ってあれ?」 桃子「どうかしたっすか?」パタン 京太郎「いや、見学くらい行ってもいいんじゃないか? あれだけ熱心に言ってくれてるんだしさ」 桃子「……まあいいじゃないっすか。ほら、帰るっすよ」 京太郎「あっ、おい」 桃子「先に行ってるっすよー」 京太郎「ちょ、ちょっと待て。先に行かれたらまた見つからなく……」 桃子「校門から出るまでに見つけられなかったら明日の昼ご飯おごりっす!」タッタッタッ 京太郎「いきなり何言って……って待て、走るなー! 見つからなくてもおごらないからな!」 桃子「見つけたら私がおごってあげるから頑張って探すっすよー!!」タッタッタッ 京太郎「絶対見つけてやる……!!」 その後東横のことは校門の辺りで電話をかけて、その着信音で見つけた。 東横には卑怯っす! ノーカウントっす!! と怒られた。理不尽だ。 ---3日後--- 京太郎「東横ー、いるか? 今何やってる?」 桃子「パソコンで麻雀っすよ。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見れたらこんなこと聞かないっての」 桃子「……他人のコンプレックスにズバズバ切り込んでくるっすね」 京太郎「この前スルーしたらノリ悪いとか散々言ったよな!?」 桃子「記憶にないっす!」 京太郎「まったく……。麻雀はこの間の麻雀部の人とか?」 桃子「そうっすよー」 京太郎「俺あれから役とか覚えてみたんだよ。また見せて貰っていいか?」 桃子「いいっすよ。今ちょうど終わったところなんでちょっと待つっす」 京太郎「了解」 桃子「……いつもはすぐ次の局に入るんすけど今日はちょっと時間かかるっすね。席を外してるみたいっす」 京太郎「まあそういうこともあるさ。ゆっくり待とうぜ」 京太郎「……ん? あれ、今日はこの前みたいにチャットで勧誘されてないんだな」 桃子「そうなんすよね。今日は勧誘してこないみたいっす」 京太郎「脈なしと思って諦めたんじゃないか?」 京太郎「4月が終わっても勧誘してたってことはメンバーが足りないんだろうし、他の人を探すことにしたとか」 桃子「そう、かもしれないっすね。まあ何度も断っちゃったししょうがないっす」 京太郎「……毎日のようにパソコンで打ってるんだし麻雀は好きなんだろ? なんで入らなかったんだ?」 桃子「んー、まあ大した理由じゃないっす。こういう体質っすから集団行動とか苦手なんすよ」 桃子「今までこんなに必要とされたことがなかったから嬉しかったは嬉しかったっすけどね。ただ……」 京太郎「ただ?」 桃子「言うのはちょっと恥ずかしいっすけど、やっぱり、直接言ってもらうのに憧れる」 桃子「目の前で、私の目を見て必要だって言って欲し――」 そこまで言ったとき、突然教室のドアが開かれ ゆみ「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」 そんなことをいいながら、上級生が1人教室へと入ってきた。 穏やかな放課後に突如乱入してきたその人は、教室の真ん中までツカツカと足を進め、 忙しげに周りを見渡したかと思うと大きく息を吸い込んだ。 そして―― ゆみ「私は君が欲しい!!」 京太郎・桃子「「!?」」 大声でそんなことを叫んだ。 クラスメイト達は遠巻きにして成り行きを見守っている。 下級生の教室で突然あんなことを大声でいう上級生が相手だ。普通なら俺だって関わろうと思わない。 でも事情を知っているからにはどうにかしないとなーみたいな責任感が芽生えてしまう。 だからまずは、目を白黒させている友人を焚きつけてやろう。 京太郎「東横。よかったな、まだ勧誘諦めてなかったみたいだぞ!」 桃子「その笑顔をやめるっす!」 京太郎「でもほら、東横の望み通り直接誘いに来てくれたわけだし」 ワタシノハナシヲキイテホシイ!!> 桃子「まあそれは心底嬉しいっす」 桃子「須賀くんは茶化してると思うっすけど、私の中では嬉しさが溢れかえってるっすよ」 マジか。いやまあ茶化しているわけではないんだけど。 桃子「ただそれはそれとして、今あそこに行くのはちょっと恥ずかしいっす……」 ワタシニハキミガヒツヨウナンダ!!> 京太郎「注目の的になれるぞ。本望じゃないか」 桃子「限度があるっす!」 今も叫んでるもんな。見た目と違って情熱的な先輩らしい。 スコシデイイ、ハナシヲシヨウ!!> 京太郎「冗談はともかく、ここまで来てくれたんだし、麻雀部に入りたいとは思ってるんだろ?」 桃子「それはそうっすけど……」 京太郎「よし、じゃあ行くぞ」 桃子「ちょ、手を引っ張らないで……!」 ゆみ「頼む、姿を見せて――」 京太郎「あの、ちょっといいですか?」 ゆみ「!! ああ! もち、ろん……だ…………」 念願の新入部員が来たというのになぜか語尾が弱々しい。 ってそうか、東横のこと見えないんだったな。 ゆみ「その、もしかして君が私たちと麻雀を一緒にやっていた人、なのか……?」 俺しかいないと思って目に見えて落ち込む先輩。 美人のしゅんとした姿を見ていると、なんというか、もっといじめたくなってしまう。 まあかわいそうだからやらないけど。 京太郎「あれは俺じゃないですよ。ちゃんと女子です」 ゆみ「本当か!! あ、い、いや、これは君が悪いとかそういうわけではなくてだな」 落ち込んだ様子から一転して明るい表情に。そして間を置かず見せる焦った姿。 ああ、可愛いなこの人。クールビューティーな見た目とのギャップが凄くいい。 京太郎「大丈夫ですよ、事情は聞いてますしわかってます」 ゆみ「そ、そうか。ありがとう」 京太郎「それで俺の隣にいるのが先輩の探しているやつです」 ゆみ「……? すまない。隣には誰もいないように見えるのだが」 京太郎「見えないけどいるんですよ。ほら、ここです」 桃子「どうも、初めまして。東横桃子っす」スゥ ゆみ「」ビクッ 京太郎「あ、やっぱり驚きますよね。いつものことなんで気にしないでください」 桃子「他人に言われると無性に腹が立つっすね」 ゆみ「君は一体いつからそこに……いや、そうか。君はそういう体質なんだな」 桃子「自分で言うのもなんですけど、受け入れるの早いっすね」 ゆみ「チャットの会話から何か理由がありそうだとは思っていたのでな」 ゆみ「我ながら少々派手なことをしたかなと思ったが、結果的には間違っていなかったようだ」 京太郎「いま少々って言ったか?」ヒソヒソ 桃子「言ったっすね。ちょっと見習いたいっす」ヒソヒソ ゆみ「聞こえてるぞ……まあ、それはともかくだ。改めて言わせてもらいたい」 ゆみ「東横くん。私は、私たちには君が必要だ。麻雀部に入って欲しい」 加治木先輩は、真っ直ぐに東横の目を見つめてそう言った。 傍から見ていてもこの上なく真剣に言っているのだと感じる。 東横の望み通り、もしかしたらそれ以上のシチュエーション。 これならきっと麻雀部に入るだろうと東横のほうを見ると 桃子「…………」 あれ、なんか微妙な表情。 京太郎「東横?」 桃子「うーん」チラリ 京太郎「?」 ゆみ「……」ソワソワ 桃子「えっと、一つ条件、というかお願いがあるっすけど……」 ゆみ「何だ? 何でも言ってくれ」ガタッ 東横はなぜか加治木先輩ではなく俺の方を向く。 そして―― 桃子「……須賀くんも麻雀部に入って欲しいっす」 京太郎「……は?」 突然、そんなことを言い出した。 ゆみ「……その、須賀くん……でいいのかな」 京太郎「……へ!? あ、はい!」 ゆみ「今の東横くんの提案なのだが君としてはどうだろうか」 京太郎「ええと、そのですね……。と、東横? なんでいきなりそんなこと」 桃子「えっと、どうしても嫌なら無理にとは言わないっす。わけも……」チラリ ゆみ「?」 桃子「……別に隠すようなことじゃないしすぐ教えるっす。ただ、出来れば須賀くんにも麻雀部に入って欲しいっす」 桃子「ダメっすか……?」ウワメヅカイ 京太郎「う……」 京太郎「か、加治木先輩はどうなんですか」メソラシ ゆみ「あ、ああ。突然で驚いたが麻雀部としては断る理由はない」 ゆみ「……というか、その、入って貰わないと凄く困る」 ゆみ「君にとっても突然みたいだし困惑していると思う」 ゆみ「君にも都合があるだろう。だから助けると思ってとは言わない」 ゆみ「それでも、君がもし少しでも麻雀に興味を持っているなら、麻雀部に来て欲しい」 ゆみ「……だめだろうか?」ウワメヅカイ 京太郎「うう……!」 右を向けば東横が、左を向けば加治木先輩が、上目遣いで俺を見ている。 タイプは違うけれど美人といって差し支えない2人。 京太郎(……こんなの断れるかー!!) 京太郎「俺でよければよろしくお願いします」 ゆみ「本当か! ……ありがとう」フカブカ 京太郎「ちょ、頭を下げるのはやめて下さい!」 京太郎「さっき麻雀に興味があるなら来て欲しいって言ってたじゃないですか。だから入るんですよ」 ゆみ「……うん、そうか。須賀京太郎くん。入部してくれてありがとう」 ゆみ「東横くんは……」 桃子「女に二言はないっす! 加治木先輩、よろしくお願いします」 ゆみ「ああ、よろしく。……東横くん、ありがとう。君のおかげで私たちは大会に出ることが出来る」 桃子「私も興味があったからネトマしてたんですよ。何度も断ってたのに直接誘いに来て貰えたなんて……本当に嬉しいっす!」 桃子「それより、誘った私が言うのもなんっすけど須賀くんはこの場で決めちゃってよかったんすか?」 京太郎「どうせ放課後暇してたしさ。それに麻雀に興味を持ったってのも本当だぜ」 桃子「無理してないならよかったっす」エヘヘ ゆみ「2人とも、入部ありがとう」 ゆみ「それでは早速だが、2人がよければ今から麻雀部に来て貰いたい。部員の紹介もしたいんだ」 桃子「私は大丈夫っす」 京太郎「俺も特に予定はないです」 ゆみ「よし、じゃあ私は先に廊下に出ているよ。あまり長居しても迷惑だろうし」 京太郎(……はっ!? 急展開すぎてここが教室だって忘れてた) 京太郎(冷静になるとクラスメイトの視線が痛い……!!) ゆみ「ん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ、なんでもないです。廊下で待ってて下さい」 京太郎(明日の反応が怖いな……)ハハハ 加治木先輩が先導して、俺と東横はその後をついていく。 意識しないと声が聴こえないくらいの距離を取り、ついて来ているか確認しているのかときおりこちらを振り返る。 京太郎(東横と話しやすいように気を遣ってくれたのかな) 京太郎(せっかくだし今のうちに聞いておくか) 京太郎「なあ、東横。俺を誘った理由って何だったんだ?」 桃子「え? ああ、ほら、私ってこういう体質じゃないっすか」スゥ 京太郎「話してるときに消えるな!」 桃子「冗談っすよ。こうやって意識して消えることも出来るっすけど、基本的には人に見つけてもらえない厄介な体質なんすよ」 京太郎「ああ、知ってる。俺が見つけられたのも偶然だったしな」 桃子「加治木先輩が教室に来て、誘ってくれて嬉しかった。でも私がこういう体質なのは知らなかったじゃないっすか」 京太郎「まあそんな体質があるなんて普通思わないよな」 桃子「それで、こういう体質の私とコミュニケーション取るのって大変っすよね」 桃子「私から話しかければ驚かれる。話しかけて貰おうにも私のことは見えないから、いるかわからないところに声をかけるしかない」 京太郎「ん……楽と思ったことは確かにないな。けど面倒だとか思ったことも一度もないぜ」 桃子「ありがとうっす。須賀くんはそうやって受け入れてくれたっすね」 桃子「麻雀部の人たちは私を必要としてくれた。でもそれと私を受け入れるかっていうのは別っすよね」 桃子「加治木先輩もきっと私に合わせてくれると思うっす。だけど他の人たちもそうやって受け入れてくれるか不安だったっす」 桃子「だから私との付き合いに慣れてる須賀くんが入ってくれたら安心だなって。それが理由っすよ」 京太郎「……気にしすぎじゃないか?」 桃子「そういうと思ったっす。須賀くんは私の体質は知ってても苦労までは知らないっすからね」 京太郎「それを言われるとな……。まあ不安だっていうなら、俺でよければいくらでもいくらでも入るよ」 京太郎「でもあそこまでして必要としてくれる麻雀部だ。きっと東横の心配するようなことにはならないと思う」 桃子「私の取り越し苦労だったらそれが一番っすね。そうすると須賀くんには迷惑かけただけになっちゃうっすけど」ニコッ 京太郎「さっきも言ったろ。好きで入ったんだって。……お、着いたみたいだぞ」 ゆみ「ここが麻雀部だ。入ってくれ」ガラッ 京太郎「おじゃまします」 桃子「おじゃまするっす」 智美「ゆみちんおかえりー。期待の新入部員はどうだ……ってあれ?」 睦月「ええと、先輩。もしかして麻雀の相手はそっちの男の子だったんですか?」 ゆみ「ああいや、ちゃんと女子だったよ。ええと……」キョロキョロ ゆみ「すまない東横くん。姿を見せて貰えるか」 桃子「はいっす。私はここっすよ!!」バーン 智美「」ビクッ 睦月「」ビクッ ゆみ「」ビクッ 京太郎(おー、みんな驚いてるなー) ゆみ「すまない、どうもまだ慣れていないようだ……」ドキドキ 桃子「私は慣れてるので気にしないで欲しいっす」 ゆみ「そうか……なるべく早く慣れるようにするよ」 智美「ゆ、ゆみちん……」 ゆみ「ん? どうした」 智美「私はついに霊感を獲得したみたいだ!」 ゆみ「失礼なことをいうな!」 睦月「その、先輩。彼女が新入部員ですか? 今のは手品かなにかですか?」 ゆみ「ああ、彼女が今日から麻雀部に入部する東横桃子くんだ。今のについては彼女自身から聞いたほうがいいだろう」 桃子「改めまして、今日から麻雀部に入部することになりました東横桃子っす」 桃子「私は極端に存在感が薄くて、中々気づいて貰えない体質なんすよ。 さっきのも隠れていた訳じゃなくて私はずっとそこにいたっす」 桃子「こういう体質っすから迷惑かけることもあると思うっすけど、これからよろしくお願いします」ペコリ 睦月「そうだったのか……ごめんなさい、驚いてしまって」 智美「私もごめんなー。でももう驚かないぞ」ワハハ 智美「しかし世界は広いなー。こんな体質もあるなんて」 睦月「そうですね。目の前にいたのに気づけなかったなんて……」 京太郎(2人とも驚いたみたいだけど、気味悪がったりはしていない) 京太郎(別に特別な反応じゃない。普通の人なら誰だってこんな反応をするはずだ) 京太郎(まあでも……)チラリ 桃子「……」 京太郎「な、俺の言ったとおりだったろ」 桃子「……そうっすね!」 智美「ところでゆみちん。そこの金髪の子は誰なんだー」ワハハ ゆみ「ああ、こっちは須賀京太郎くん。彼も同じく新入部員だ」 京太郎「須賀京太郎です。麻雀は初心者ですがよろしくお願いします!」 睦月「うむ、よろしく。一気に2人も入ってくれて嬉しいよ」 智美「君も新入部員かー。鶴賀麻雀部史上初めての男子部員だな!」 睦月「まあ共学化したのも今年からですしね」 京太郎「ははは……泥を塗らないように頑張ります」 智美「頼むぞー少年」ワハハ ゆみ「さて、次は私たちが自己紹介する番だな」 智美「まずは部長の私からかなー」ワハハ 京太郎「えっ」チラリ 桃子「えっ」チラリ ゆみ「……私は部長じゃないぞ」 智美「……このくらいでは泣かないぞ」ワハハ 京太郎「す、すみません!」 桃子「ごめんなさい!」 智美「冗談だよ、冗談。期待通りの反応してくれて嬉しいぞー」ワハハ 智美「私は蒲原智美だ。麻雀部の部長をやってるぞー」 京太郎「いやその、すみません。よろしくお願いします、蒲原部長」 智美「智美」 京太郎「え?」 智美「智美って下の名前で呼んでくれ。私たち3年生は早ければ6月の頭には引退しちゃうからなー。早く仲良くなりたいんだー」ワハハ 京太郎「ええと、それじゃよろしくお願いします。智美部長」 智美「よろしくなー京太郎」 桃子「よろしくっす! 智美部長!」 智美「よろしく……モモって呼んでいいかー?」ワハハ 桃子「……! はいっす! 嬉しいっす!」 智美「よかったー。よろしくなーモモ」 睦月「じゃあ次は私が。私は津山睦月。部長たちとは違って2年生だ」 京太郎「よろしくお願いします、えっと……」 睦月「……? ああ、そうか。よろしく、京太郎くん」 京太郎「はい! よろしくお願いします、睦月先輩」 睦月「うむ」 桃子「私もよろしくっす! 睦月先輩!」 睦月「うん、よろしく。モモ」 ゆみ「さ、最後は私か……」 京太郎「どうかしましたか?」 ゆみ「い、いや。なんでもないんだ」 ゆみ「2人とも知っていると思うが改めて」コホン ゆみ「私は加治木ゆみ。3年生だ」 桃子「よろしくっす! ゆみ先輩もモモって呼んで欲しいっす」 ゆみ「ああ、わかった。よろしくな、モモ」 京太郎「よろしくお願いします、ゆみ先輩」 ゆみ「――!」カアァ 京太郎「……ええと、本当に大丈夫ですか?」 ゆみ「だ、大丈夫だ!」 ゆみ「よろしく、きょ、きょう……うぅ」 ゆみ「ちょ、ちょっと待ってくれ」スーハー 京太郎「はい、ゆみ先輩」 ゆみ「――――!!」カアァァァ 桃子(空気読まないっすねー) 睦月(あれはわざとやってるのかな) 智美(期待の新人だなー)ワハハ ゆみ「……その、すまない。須賀と上の名前で呼ぶことにしていいだろうか」 京太郎「え? え、ええ。いいですよ」 ゆみ「それと私のことも加治木先輩と呼んでくれると助かる」 京太郎「わかりました……」 京太郎(俺嫌われたのかな……)ズーン 桃子「そんなことないから安心するっす」ポン 京太郎「え、今の声に出てたか!?」 桃子「顔見れば須賀くんの考えてそうなことくらいわかるっす」 桃子「……あ、そうだ。今度から須賀くんも私のことはモモって呼んで欲しいっす」 京太郎「ああ、これから頑張ろうな。モモ」 桃子「一緒に頑張るっす! 京太郎!」 --------------------------------------- ゆみ「自己紹介も済んだことだし麻雀を打とうか。モモとはネットで何度も打っているが実戦での実力も知りたいしな」 桃子「私は実戦のほうが得意っすよー」フフフ ゆみ「それは楽しみだな。須賀くんも一緒に入ってもらっていいか?」 京太郎「いえ、俺は実戦どころかネットでもやったことないので……」 ゆみ「それなら最初は見学からだな」 京太郎「はい、そうさせてもらいます」 智美「誰か一人のをじっくり見てるといいと思うぞー」 京太郎「わかりました。じゃあモモ……」 桃子「あ、私はやめたほうがいいっすよ」 京太郎「え?」 桃子「勉強するつもりなら私のは見ないほうがいいっす」 京太郎「……? まあそういうなら。ええとそれじゃあ――」 京太郎(やっぱり強い人のほうがいいよな。かじゅは加治木先輩だろうし) 京太郎「加治木先輩。見てていいですか?」 ゆみ「わ、私か!?」 京太郎「だ、駄目なんですか?」 ゆみ「い、いや。ちょっと驚いただけだ」コホン ゆみ「私で良ければ参考にしてくれ」 京太郎「え、ええ。もちろんです」 智美「ゆみちん。そういうのちょっと直した方がいいなー」ワハハ ゆみ「わ、わかってるっ」 智美「じゃあ始めるぞー」タン 桃子「負けないっすよ」タン 睦月「ネトマで何度も負けてるけど、先輩として最初くらいは……!」タン ゆみ「私も譲る気はないぞ」タン ………… ……… …… … 【南二局】 智美「リーチ。ゆみちんをまくってやるぞー」ワハハ 桃子「……」タン 睦月(うーん……降りよう)タン ゆみ(蒲原の捨て牌は……)チラ ゆみ(こっちかな)タン ……… …… … 智美「テンパイ」 桃子「ノーテンっす」 睦月「ノーテンです」 ゆみ「テンパイだ」 智美「うっ、また止められてたか。今回はわからないと思ったんだけどなー」ワハハ ゆみ「蒲原とは何度も打ってるからな。なんとなくわかるさ」 京太郎(南二局まで終わって、振り込んだのは睦月先輩と蒲原先輩が一回ずつ) 京太郎(加治木先輩ももちろんだけど、他の3人も全然振り込まないな) 京太郎(……見ててもどうやって止めてるのかさっぱりわかんねえ!!) ゆみ「須賀くん? どうかしたか?」 京太郎「あーその。染め手とかは分かるんですけど、今のとかどうやって止めてるのかなと思いまして」 ゆみ「ああ、なるほど。基本的には捨て牌を見て予測しているんだ。筋とか色々あるんだが……まだ君には早いな」 京太郎「はい」キッパリ ゆみ「そう断言されても困るな」ハァ ゆみ「他にも相手を直接観察して理牌や目線を見ているが、これは慣れるまではやめたほうがいいだろう」 ゆみ「まあ特に理牌は相手の癖を知らなければわからないから、あまり使うべきではないのかもしれないが……ん?」 京太郎「」ポカーン 智美「」ポカーン 睦月「」ポカーン ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。そんなことまで考えて麻雀をしているんだなと」 ゆみ「まあ必ず当たるわけではないし、そんなに大したことではないさ」 ゆみ「というか須賀くんはともかく、蒲原と津山は知っているだろう」 睦月「いえ、そういう技術があるのは知ってますがこんな身近に実践している人がいたなんて……」 智美「私はそこまでの余裕はちょっとないなー」 ゆみ「何もずっと見ているわけじゃないぞ? 重要なところだけ見ればいいんだ」 ゆみ「まあその辺りは対局が終わったら教えようか。雑談はこの辺りにして、次の局に行こう」 桃子「…………」 京太郎(そういえばモモのやつさっきから全然話してないな。集中してんのかな……?) 【南三局】 睦月(ラス親かあ。まだ焼き鳥だしここでなんとか)タン ゆみ(今のところトップで2位のモモとは約1万5千点差) ゆみ(配牌は四向聴か)タン タン タン タン タン タン…… 桃子「リーチっす」タン 京太郎(モモは索子の染め手っぽいな。これくらいはわかるぞ!) 睦月(一向聴から中々進まない……!)タン ゆみ(形聴は狙えそうだな)タン 智美(ううん、引きが悪いなー)タン 京太郎(あれ、リーチしたのにみんなあんまり反応してないな) 桃子「……」タン ゆみ(役牌が重なった。これなら上がりも狙えるか)タン 京太郎(索子!? しかも1枚も見えてない三索!?) 桃子「ロン! 立直、混一色で7700っすよ!」 ゆみ「なっ!?」 智美・睦月「えっ!?」 ゆみ「モモ、リーチ宣言は……」 桃子「ちゃんとしたっす!」 京太郎「俺も聞いてました。そんな小さな声じゃなかったと思うんですが……」 ゆみ「ん……そうか。それはすまない」 ゆみ(さっきの反応からして蒲原も睦月も、モモのリーチ宣言を聞いていない) ゆみ(かといってモモも須賀くんもそんな嘘を付きはしないだろう) ゆみ(つまりおそらく――――) 【南四局】 ゆみ(配牌はあまり良くないか……どこまで対抗できる分からないが、やるだけやってみるとしよう)タン 智美(今のは何だったんだー?)タン 桃子(フッフッフ。ネトマのリベンジ達成はもうすぐっすよー)タン 睦月(リーチが聞こえなかったなんて、こんなの初めて)タン ゆみ「チー!」タン 桃子(仕掛けが速いっすね) ゆみ「ポン!」タン 智美(東を鳴かれたかー。いや、でもこれは速いというか……) ゆみ「チー!」タン 睦月(こんな先輩らしくない無理矢理な仕掛けをなんで……?) ゆみ「ポン!」タン 京太郎(四副露!? なんでここまで急ぐ必要が……) 桃子(ううー、なるほど。そういう手もあるんすね……) ゆみ「ロン。東のみ」 1位 加治木ゆみ 2位 東横桃子 3位 蒲原智美 4位 津山睦月 【終局】 桃子「いやー参ったっす。初見では絶対負けない自信があったんすけどねー」 ゆみ「たまたま運がよかっただけだよ。トータルではおそらく私が負け越すさ」 桃子「そもそも東場で消えられるのが普通なんすよ。まさか南二局までかかるとは思わなかったっす」 京太郎「ええと、モモ。何の話?」 桃子「最後の二局のことっすよ。ゆみ先輩が私に振り込んだのは見たっすよね?」 京太郎「ああ。加治木先輩にしてはおかしいなと思った」 ゆみ「あのときだが、私にはモモの捨て牌が見えていなかった……いや、それでは正確ではないな」 ゆみ「私にはリーチ宣言も聞こえていなかった。モモのことが認識できていなかったんだ」 京太郎「……はい?」 睦月「よかった。聞こえなかったの私だけじゃなかったんですね」 智美「むっきーも聞こえてなかったか。私も聞こえてなかったぞー」ワハハ 京太郎「いや、確かにモモは存在感薄いですけど一緒に麻雀してて消えるなんて……」 桃子「ほら、来る途中にもやったじゃないっすか。私は自分の意志でも消えられるんすよ?」 京太郎「……あー。そういえば」 桃子「麻雀でやると私だけじゃなく牌も消せるんすよ。正確に言えば気づかなくさせるっすけど」 京太郎「つまり相手に警戒されなくなるし、振り込むこともなくなるってことか? そりゃすごいな」 桃子「気づかれない私の唯一の利点といっても過言じゃないっす! まあまさか初見で破られるとは思わなかったっすけど……」 京太郎「ああ、加治木先輩が鳴きまくってたのはそれで……」 ゆみ「破るなんて大層なものじゃないさ。たまたま運よく行っただけだ」 ゆみ「どうせ見えないなら防御するのも不可能だからな。上がられたら確実に まくられてしまうし、なら鳴いて速く手を進めてしまえというだけだよ」 桃子「まあ理屈ではそうっすけど……私が鳴けないから手が遅いってのもわかった上でやったんすよね。凄いっす!」 ゆみ「ネトマのときから極端な面前思考で気になっていたから試してみたんだ。上手くいって幸いだった」 京太郎「なんというか……追いつける気がしない」 智美「気にするな京太郎。私もだー」 睦月「私なんてリーチ宣言聞き逃したとしか思ってませんでしたよ……」 ゆみ「さて、じゃあもう1局打とうか」 桃子「次は負けないっすよー」 智美「京太郎、私が抜けるから代わりに入るんだー」ワハハ 京太郎「え!? でも俺ほんと初心者で……」 睦月「私も入ってすぐ打たされたよ。とりあえずやってみよう?」 ゆみ「とりあえず簡単なルールさえ分かっていれば大丈夫だ。別に練習だし軽い気持ちでいいぞ」 京太郎「……そうですね。よろしくお願いします!」 ………… ……… …… … 京太郎「」ズーン 智美「見事に飛んだなー」 桃子「見事に飛んだっすねー」 睦月「先輩の倍満と跳満に続けて振り込み……」 ゆみ「その、すまない。どうも運がよすぎたようで……」アセアセ 京太郎「い、いえ。手加減しちゃ練習になりませんしね……」ハハハ ――帰り道―― 智美「それじゃあ私たちはこっちだから」 桃子「また明日っすー!」 睦月「さようなら先輩。京太郎くん、また明日」 京太郎「はい、お疲れさまでした」 ゆみ「ああ、また明日」 下校途中の大きな交差点。鶴賀の生徒の多くはここで大きく二手に分かれて帰宅する。 俺達麻雀部もそのご多分に漏れず、俺と加治木先輩は右へ、部長と睦月先輩とモモは左へと分かれることになった。 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……その、加治木先輩自転車押してますけど家遠いんですか?」 ゆみ「あ、ああ。学校まで大体自転車で20分ちょっとかかるな」 京太郎「そうなんですか。……急いでるようでしたら俺に気を遣わなくても大丈夫ですよ」 ゆみ「いや、今日は特に何もないから大丈夫だ。途中まで……い、一緒に帰ろう」 京太郎「そうですか……」 ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク 京太郎(……き、気まずい!!) 京太郎(なんか会話もぎこちないし、嫌われたのか苦手に思われたのか……) 京太郎(こっちから話しかけないほうがいいかな。でもこのまま無言ってのも……) 京太郎(うん、悪いところがあったら直せばいいんだしな。もう一回声をかけて) ゆみ「須賀くん!」 京太郎「は、はいぃ!!?」 京太郎(な、なんだ!? なんかしたか俺!?) ゆみ「その、だな……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎「…………」 ゆみ「……すまない、ちょっと情けないことで話すのに心の準備が必要でな」 京太郎「……?」 ゆみ「ふぅ……」スーハー ゆみ「……その、私は男子と話すのが得意ではなくてな」 京太郎「……は?」 ゆみ「君に対してそっけない態度を取っていると思うのだが、決して君のことが嫌いとかそういうわけではないんだ」 京太郎「え、いやでも部活とか教室ではそんなこと全然」 ゆみ「麻雀なら君に対しては指導するという立場でいられるからな。普通に話すのに比べれば大した緊張はない」 ゆみ「教室は……あのときの私はどうかしていた」カァァァ ゆみ「部員を見つけることだけを考えていて、他のことは何も頭になかった。緊張なんてする暇もなかったよ」 京太郎「そうだったんですか」 ゆみ「だから、その、だな。君を不快にさせてしまったかもしれないが、決してわざとというわけではないんだ」 京太郎「ははは、嫌われたのかと思ってましたよ」 ゆみ「す、すまない……」シュン 京太郎「い、いえ。そういうつもりでは」 京太郎「言ってくれて嬉しかったですよ。言われなかったら誤解したままだったかもしれないです」 ゆみ「ん……そうか。そういってくれると助かる」 京太郎「でも意外ですね。男子とか苦手な風には見えないです」 ゆみ「ふむ、まあ女の子らしい見た目ではないからな」 京太郎「そんなことないですよ!」 ゆみ「はは……うん、そう言ってくれるのは嬉しいよ」 京太郎(本心なんだけどなあ……) ゆみ「男子と話すのが苦手な理由は、まあ単純に話す機会がなかったんだ」 京太郎「小さい頃から女子校だったんですか?」 ゆみ「いや、そういうわけではないんだが、私は小さい頃から何かと男子を注意するような役回りになることが多くてな」 京太郎「あー……」 ゆみ「今日一日一緒にいただけだが、何となく分かるだろう?」 京太郎「ええ、なんとなくわかります」 ゆみ「自分から言うことはそんなになかったんだが、女子から注意してくれとよく頼まれた」 ゆみ「そのせいで男子からは敬遠され、女子からはさらに頼られ、男子と普通に話す機会をほとんど持てなかった」 ゆみ「その上女子校に入学してしまったからな。自業自得ではあるんだが、慣れようがなかったんだ」ハハハ 京太郎「共学化したときとかはどうだったんですか?」 ゆみ「麻雀部に来るかもしれないと思ってやはり緊張したよ。結果は……まあ今日見た通りだが」 京太郎「あはは……」 ゆみ「まさか1人も入らないとは思わなかった。まあ確かに麻雀をやりたい子がわざわざ鶴賀に来るわけはないんだが」ハァ ゆみ「だから今日、モモと君、2人も入ってくれて本当に感謝している」 京太郎「モモはわかりますけど俺もですか?」 ゆみ「ああ、もちろんだ」 京太郎「でも俺は男子ですし、麻雀も初心者ですよ」 ゆみ「確かに大会には出たいし、そのために部員を集めていた。 でも私が卒業した後、部員不足で麻雀部が潰れてしまっては悲しいだろう?」 ゆみ「女子だろうと男子だろうと、麻雀の経験があろうとなかろうと関係ない。私は君が入ってくれてとても嬉しかったよ」ニコッ 京太郎「――!」カァァ ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 京太郎(ほんと先輩はストレートだな……!) 京太郎「そういえば部員って今日いたので全員なんですか?」 ゆみ「? あれで全員だがそれが?」 京太郎「いえ、麻雀の団体戦って5人でやるじゃないですか。1人足りないんじゃないかと」 ゆみ「ああ、そのことか。確かに説明していなかったな」 ゆみ「蒲原には幼馴染がいるんだが、その子が4人集まったら入ってくれると言っているらしいんだ」 京太郎「ああ、じゃあモモが入ったからその人も入ってくれるんですね」 ゆみ「そういうことだ。彼女は初心者と言っていたかな。君と一緒だ」 京太郎「へーそうなんですか。よかったです、1人初心者で気後れしてたんで……」ハハハ ゆみ「誰だって始めたときは初心者だよ。これから上手くなればいい」 京太郎「今日の加治木先輩とモモの会話聞いてたらそうは思えませんよ……」 ゆみ「モモのは彼女の生まれ持った資質だけど、私のは練習の賜だ。努力次第だが私くらいにはなれるさ」 京太郎「うーん、なれますかねえ」 ゆみ「なに、これから私たちが教えるんだ。独学で学んできた私より上手くなって貰わないとな」 京太郎「ははは、そうですね。ご指導よろしくお願いします」ペッコリン ゆみ「ああ、任された」フフッ 京太郎「それじゃあ俺はこっちなんで」 ゆみ「ああ、それじゃあ……もうこんなところか。君との話に夢中で気がつかなかった」 京太郎「ありがとうございます。――あ、そうだ。加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「加治木先輩が男と話すの苦手っていうの、きっと思い込みだと思いますよ」 ゆみ「そうだったらいいが、現に私は君にぎこちない態度を取ってしまっていたと思うのだが……」 京太郎「全くないとは言いませんが、そういうのって大体俺が急に話しかけたときとかじゃないですか」 京太郎「多分話すのが苦手というよりは、何を話せばいいのか分からないんですよ」 ゆみ「それは確かにそうだが、その2つにあまり差はないんじゃないか……?」 京太郎「だってほら、先輩と俺、帰り道は普通に話してたじゃないですか」 ゆみ「ふむ、確かに言われてみればそうだな」 京太郎「あんまり固く考えなければいいんですよ。そうすればきっとすぐ直ります」 ゆみ「ああ、君の言うとおりかもしれないな。でも、須賀くんだからというのもあると私は思う」 京太郎「えっ……」ドキッ ゆみ「私に話しかけてくる男子はほとんどいなかったからな。高校に入ってからは須賀くんが初めてだ」 京太郎「あ、ああ。そういう……」 ゆみ「すぐには慣れないと思うが、これからも話しかけてくれると嬉しい」 京太郎「え、ええもちろんです」 ゆみ「ありがとう。それではまた明日。部室で」 京太郎「さようなら……」 京太郎「……」 京太郎「…………」 京太郎「天然でやってんのかあれは!?」 ――自室―― 京太郎「お、咲からのメールか」 京太郎「1日ぶりだな。どれどれ……」 咲『京ちゃん元気?』 京太郎『おう、元気だぞ。昨日はメールなかったけどどうしたんだ?』 咲『本を読んでたらそのまま寝ちゃって……』 京太郎『はは、お前らしいな』 咲『うぅ……そ、そんなことより、今日私文芸部に行こうとしたんだよ!』 京太郎『おお、ついに入部し……行こうとした?』 咲『う、うん。その、ドアの前までは行ったんだけど、中がすごく和気あいあいとしてて入りづらくて……』 京太郎『まあもう5月だからなあ』 咲『どうしよう京ちゃん! 私文芸部に入れないよ!!』 京太郎『いやそのくらい気にせず入れよ……そもそもなんで4月に入らなかったんだ?』 咲『ええと、ほら、清澄に行った友達がいるじゃない?』 京太郎『ウチの中学から清澄に結構行ってたよな? 図書委員のやつ?』 咲『ううん、そっちじゃなくて班で一緒だったクラスの子』 京太郎『ああ、あいつか。結構仲良かったよな』 咲『そうそうその子。まあ京ちゃんとほどじゃなかったけどね』エヘヘ 京太郎(俺基準って……まあいいか) 京太郎『それでそいつがどうしたんだ?』 咲『うん、その子に一緒に文芸部に見学に行かない? って誘ったんだけど断られちゃって』 京太郎『へー、見学くらい行ってくれてもいいのにな』 咲『まあ先週誘った私も悪かったんだけど』 京太郎『先週!? ちなみにあいつ部活入ってるのか?』 咲『入学してすぐ園芸部に入ったよ。私も見学に付き合ったの』 京太郎『断られるに決まってんだろ!!』 咲『やっぱりそうだよね……』 京太郎『っていうか4月に行ってない理由にはなってなくないか?』 咲『ええと、さっき言ったとおり4月の初めにあの子と一緒に園芸部に行ったんだけど、私も体験入部したんだ』 京太郎『咲は花育てるのも好きだったよな』 咲『うん、最初はお花を育てるの楽しいし、本は1人でも読めるからここに入ろうかなと思ったんだけど……』 京太郎『ふむふむ』 咲『園芸部って土とかお花の鉢運んだりするんだ。それが結構重くて……』 京太郎『あー、それがきつくてやめたのか』 咲『そのくらいじゃやめないもん!』 京太郎『え? じゃあなんでやめたんだよ』 咲『ええと、頑張って運ぼうとしたんだけどお花植えてるプランターこぼしちゃって……』 京太郎『お、おう。まあでも一回くらいならやめるほどではないんじゃないか』 咲『ううん、何度も』 京太郎『…………』 咲『無言はやめてぇ!!』 京太郎『ま、まあ居づらくなって園芸部やめたのはわかった。それで?』 咲『え?』 京太郎『体験入部のうちにやめたんだろ? なら文芸部だって体験入部期間に行けたんじゃないか?』 咲『そ、それはそのう……』 京太郎『……うん、言わなくていいぞ。大体わかった』 咲『うぅ……で、でも勇気出したよ! 先週は友達誘ったし、今日は部室の前まで行ったもん!』 京太郎『まあなんだ。咲が頑張ったのはよくわかった。でももう少し頑張ろうな』 咲『京ちゃぁん……』 京太郎『入っちゃえば意外となんとかなるもんだぜ。俺も今日部活入ったけどみんな歓迎してくれたよ』 咲『京ちゃん部活入ったの!? 何部?』 京太郎『麻雀部』 咲『麻雀……京ちゃん麻雀出来たっけ?』 京太郎『いや全く。完全に初心者だよ。でも歓迎してくれた』 咲『そっか』 京太郎『咲は麻雀出来るのか?』 咲『……うん、出来るよ。昔よく家族でやってた』 京太郎『へー、なら麻雀部入ったらどうだ?』 咲『麻雀部?』 京太郎『ほら、清澄の麻雀部って聞いたことないからきっと強くないだろ? なら5月からでもウチみたいに歓迎してくれるさ』 京太郎『それに麻雀部なら大会でお前と会えるかもしれないしさ』 咲『……そうだね。考えてみる』 京太郎『まあ最終的には咲が後悔しないようにすればいいと思うけどな』 咲『これだけ言っておいて結局それ? ……うん、でもありがと』 京太郎『おう』 咲『ところで京ちゃん。大会で会えるかもってもしかして女子と合同の部活なの? そういえば鶴賀って元女子校だったよね?』 京太郎『ああ、というか俺以外全員女子だよ』 咲『な、何それ!!』 京太郎『何って……去年まで女子校だったし麻雀部も俺含めて今のところ5人だしな。そういうこともあるだろ』 咲『どうせハーレムだー! とか思ってるんでしょ!』 京太郎『初心者俺1人だぜ? そんな余裕ねえよ。……まあ嬉しくないって言ったら嘘になるけど』 咲『京ちゃんのバカ! もう知らない!!』 京太郎「おおう……まあ部活入れないって相談してきたのに、俺は部活でハーレムだって言ったらそりゃいい気分はしないか」 京太郎「なんて返すかなあ。ってあれ、咲からメールが」 咲『言い忘れてた、おやすみ!!』 京太郎『おやすみ。別に男子が俺だけだから入ったわけじゃないからな!』 咲『うん……その、私急に怒っちゃったけど、京ちゃん怒ってない? 明日もメールしていいよね?』 京太郎『これくらいで怒るわけないだろ? 明日は俺からメールするよ』 咲『京ちゃんありがとう!!』 京太郎『俺も悪かった。また明日』 京太郎「10時半か。ちょっと早いけどもう寝……ん? 加治木先輩からメール?」 ゆみ『今日はありがとう。男子と話したのは久々だったよ』 京太郎『いえ、俺も楽しかったですよ。それにしてもアドレス交換しましたけど、まさか今日メール貰えるとは思いませんでした』 ゆみ『蒲原に話したらその日のうちにメールするべきだと言われたんだが……』 京太郎(早く仲良くなるようにって部長が気を遣ってくれたのかな……うん、まあ嬉しいんだけど) ゆみ『男子にメールしたのは初めてなのだが何かおかしなところがあっただろうか』 京太郎『いえありませんよ。せっかくですし、教本で気になったところがあるのでよければ教えて下さい』 ゆみ『勉強熱心だな。いいぞ、なんでも聞いてくれ』 京太郎『それじゃあ――』 ………… ……… …… … 京太郎「ロ、ロン!! 立直平和で裏ドラは……乗った! 3900です!」 ゆみ「む……」 京太郎「よっしゃあ! やっと加治木先輩から直撃取れた!」 智美「ついにゆみちんから直撃かー。気分はどうだー」ワハハ 京太郎「最高です!」 桃子「後は私から直撃取れば全員制覇っすね!」 京太郎「モモ、一度消えないでやってみないか?」 桃子「消える前に頑張るっす!」 京太郎「せめて東場は消えないでくれよ……」 桃子「気合で頑張るっす!」 京太郎「うぅ……」 佳織「うわー凄いね京太郎くん!」 京太郎「ははは、佳織先輩には負けますよ」 佳織「? 私加治木先輩からロンしたことないよ?」 京太郎「あははは……」 京太郎(代わりに初めての麻雀で役満上がってるんだよなあ……) 睦月「おめでとう京太郎くん。でもまだ打ってる最中だからほどほどに」 京太郎「あ、すみません。つい嬉しくて」 睦月「ふふ、私も初めてのときははしゃいだから気持ちはわかるよ」 京太郎「睦月先輩がはしゃぐのってあんまり想像つかないですね」 ゆみ「今の須賀くんのような感じだよ。まあそのうち見られるさ」 京太郎「そのうち?」 ゆみ「津山はプロ麻雀せんべいをよく食べているだろう?」 京太郎「そうですね。俺も睦月先輩に影響されて食べ始めましたよ」 ゆみ「いつの間に……まあいい。津山はレアカードが当たったとき、人が変わったように喜ぶんだ」 睦月「そ、そんなことないですよ!」 京太郎「へー。楽しみにしてますね」 睦月「しなくていいから!」 智美「3人とも、そろそろ次の局行くぞー」 ゆみ「そうだな。すまない」 京太郎「この勢いでトップを狙います!」 ………… ……… …… … 京太郎「結局3位か。配牌は良かったんだけどなあ」 桃子「京太郎は牌効率がまだまだっすね。いくら配牌がよくてもそれじゃ勝てないっすよ」 京太郎「一応考えてるつもりなんだけど難しいな。筋とか壁とかそういうのは決まってるから覚えやすいんだけど」 桃子「え? もう覚えたんすか?」 京太郎「ああ、教本読んだり加治木先輩に教わったりしてるからな。もうバッチリだ!」 桃子「見た目と違って真面目っすねー……ってゆみ先輩に?」 京太郎「見た目は関係ないだろ! そうだけどどうかしたか?」 桃子「部活でそんなにじっくり話してるの見たかなーと」 京太郎「ああ、帰ってからメールで教えて貰ってるんだよ」 桃子「む。個人指導っすね」 京太郎「まあそうなるな」 桃子「羨ましいっす!」 京太郎「は?」 桃子「私もゆみ先輩に教えてもらいたいっす!」 京太郎「それを俺に言われてもなあ」 ゆみ「私なら構わないぞ」 京太郎「加治木先輩!?」ビクッ ゆみ「あんまり驚かれると傷つくな……」 京太郎「す、すみません」 ゆみ「い、いや、冗談だ。気にしないでくれ。……それよりモモ、聞きたいことがあったらいつでもメールしてくれて構わないぞ」 桃子「ほんとっすか!?」 ゆみ「ああ、後輩の指導も先輩の役目だ。なるべく速く返信するよ」 桃子「嬉しいっす! ゆみ先輩大好きっすー!」 智美「ゆみちん、ちょっと来てくれ」コイコイ ゆみ「?」テクテク 智美「部員が集まって嬉しいのはわかるけど、最近ちょっと詰め込み過ぎてないかー?」 ゆみ「そんなつもりはないんだが……」 智美「牌譜持ち帰る量も増えたし、他校の研究も本格的に始めたんだろー?」 ゆみ「バレていたのか」 智美「これでも部長だぞー」ワハハ ゆみ「……まあそうだな。お前の言うとおり以前より熱心にやっているよ」 ゆみ「折角部員が集まったんだ。1回戦で負けて終わりなんて嫌じゃないか」 智美「それには同意だなー。でも少しくらい分けてくれてもいいんだぞ」 ゆみ「そうだな……」ムゥ 智美「私とゆみちんの仲だろ? 遠慮せず言ってくれていいぞ」 ゆみ「ん……こういうのはなんだが、私のほうが向いていると思うんだ」 智美「やっぱり私じゃ力不足かー」ワハハ ゆみ「いや、性格的に」 智美「想定外の方向から突き刺さったな……」 ゆみ「遠慮するなと言ったのはお前だろう」 智美「そっちから来るとは思わなかったぞ」 ゆみ「まあ1人でやったほうが効率的だというのもなくはないがな」 智美「じゃ、じゃあアドバイスの方なら! それなら私でも出来るぞ!」 ゆみ「私がやると言ったことだしな。それを任せるというのも」 ゆみ「それに……」チラッ 智美「?」 ………… ……… …… … 桃子「むっちゃん先輩! この間話してた喫茶店に行く話っすけど、今日の帰りどうっすか?」 睦月「今日は予定もないし……うむ、行こうか」 桃子「かおりん先輩はどうっすか?」 佳織「~♪」 京太郎「佳織先輩、モモが呼んでますよ」 佳織「えっ!? ご、ごめんね桃子さん」 桃子「私はこっちっすよ」 佳織「あわわわ……」 京太郎「気にしないでください。そのうち見つけられるようになりますよ」 桃子「京太郎が言うんじゃないっす!」 睦月「あはは、京太郎くんはどうする? 一緒に行く?」 京太郎「行きたいんですが課題が残ってるので……」 睦月「そう……あ、そうだ。この前約束したプロ麻雀カード、ダブってるやつ持ってきたよ」 京太郎「おお、ありがとうございます!」 佳織「キラキラだねー」 睦月「結構貴重なレアなんだ。大事にしてね」 京太郎「はい!」 ゆみ「」ジー 智美「どうしたゆみちん。恋する乙女かー」ワハハ ゆみ「なっ!? バ、バカを言うな!!」 智美(からかいがいがあるなー)ワハハ ゆみ「……私はあんな風に仲良くなれていないからな。せめて麻雀で距離を縮めたい」 智美「そんなことないと思うけどなー」 ゆみ「それに実際大した負担ではないんだ。頼ってもらえるというのは純粋に嬉しいしな」 智美「まあゆみちんがそういうなら。でも無理はダメだぞ」 ゆみ「ああ、わかってるよ」 京太郎「智美部長、加治木先輩! 早く帰りましょう!」 ゆみ「すまない、今行く……っと」フラッ 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「少しふらついただけだ。心配ない」 桃子「先輩も喫茶店行かないっすか?」 ゆみ「ありがとう。だけど牌譜の整理があるから遠慮しておくよ」 桃子「残念っす……」 智美(……やっぱり心配だなー) 京太郎「こんにちはー……ってあれ。部長だけですか」 智美「みんなまだみたいだなー」 京太郎「じゃあ来るまで教本でも読んで……」 智美「なあ京太郎、息抜きするなら何がいいと思う?」 京太郎「唐突ですね」 智美「いいからいいから」 京太郎「そうですねー……まあ普通に遊びに行くのが一番じゃないですか?」 智美「やっぱりそうだよなー」ワハハ 京太郎「急にどうしたんですか?」 智美「最近ゆみちん根詰めてるだろ? 息抜きに買い物に誘ったんだけど断られちゃってなー」 京太郎「そういえばたまに辛そうにしてますね」 智美「だろー? 大会まで時間がないのは確かだけど、あれで持つのか心配なんだ」 京太郎「時間がないといっても無理が続くほどではないですしね」 智美「気を抜いてくれればまた違うと思うんだけどなー。京太郎、何かゆみちんに息抜きさせるいい方法はないかー?」 京太郎「ただ誘うだけだとダメだったんですよね? うーん……」 智美「まあすぐじゃなくてもいいさ。考えておいてくれ」 京太郎「わかりま……」 ゆみ「」ガラッ 京太郎「」ビクッ 智美「」ビクッ ゆみ「ど、どうしたんだ?」 智美「い、いや。なんでもないぞー」ワハハ ゆみ「怪しいな……何かよからぬことでも考えてたんじゃないだろうな」 京太郎「そ、そんなことないですよ! それよりその雑誌はなんですか?」ガタタッ 智美(ナイスフォローだ京太郎!) ゆみ「バ、バカっ! 近い!」カアァァ 京太郎「はっ! す、すみません!」カアァァ 智美(……わざではないんだろうなー) ゆみ「ざ、雑誌だったな。これは麻雀の専門誌だよ」コホン 京太郎「そ、そういえばそういう名前の見たことあります」 ゆみ「初心者向けのコーナーもある。参考になるだろうから読んでみるといい」 京太郎「へー、読んでみますね」ペラペラ 京太郎「……ん?」 ゆみ「どうかしたのか?」 智美「どれどれ……高校生チャンプ宮永照?」 京太郎「ええ、はい」 智美「確かに美人だから気になるのもわかるけど、女子2人の前でそれは感心しないなー」ワハハ ゆみ「須賀くん、そうなのか……」ジー 京太郎「違いますよ!」 智美「ワハハ、冗談だ」 ゆみ「わ、私はわかっていたぞ」 京太郎「加治木先輩……まあいいです。えっと、前に住んでたところに宮永って幼馴染がいるんですよ」 ゆみ「なるほど、同じ名字だな」 京太郎「そいつも女子なんですけど、なんとなく雰囲気が似てるなーと思いまして」 ゆみ「宮永照のいる白糸台は東京だろう? 須賀くんは前に住んでいたところも長野だったと聞いた覚えがあるのだが」 京太郎「ええ、そうなんですけど他人の空似とは思えなくて」 智美「ふーん。なら親戚なのかもしれないなー。その子も麻雀は強いのか?」 京太郎「いえ、そもそも打ってるところも見たことが……」 京太郎「あ、いや。そういえば家族麻雀はしていたみたいです。俺も最近聞いたんですが」 ゆみ「ふむ、仮に宮永照がその幼馴染の親戚だとすると、我が部には高校生女子麻雀チャンピオンの 親戚の幼馴染がいることになるわけか」 智美「世間は狭いなー」 京太郎「近いのか遠いのか微妙な繋がりですけどね」ハハハ 佳織「何を話してるんですか?」ガラッ モモ「私も入れて欲しいっすー!」 佳織「わっ! 桃子さん!?」 睦月「最初からいたよ」クスクス 智美「みんな来たかー。今は京太郎が女子麻雀チャンプの知り合いだって話をしてたんだー」ワハハ 京太郎「ちょっと部長!?」 桃子「なんと、衝撃の事実っす! さては今までの麻雀素人っぷりも演技っすね!?」 佳織「京太郎くんそんな人と知り合いなの!? 凄いねー。でもおんなじ初心者だと思ってたからちょっと寂しいな」 京太郎「モモ悪ノリするな! 佳織先輩、智美部長のもモモのも嘘ですからね!?」 佳織「智美ちゃん嘘だったの? もう、信じちゃったじゃない」 ゆみ「正確にはチャンピオンの親戚の幼馴染かもしれないというところだな」 睦月「反応が難しいですね……」 京太郎「雑誌見てての雑談ですから! もうやめて下さい……!」 桃子「その屈辱は麻雀で晴らすっすよ! さあ勝負っす!」 京太郎「お前のせいでもあるからな!? 畜生、今日こそは勝ってやる!」 桃子「受けて立つっすよー!」 ゆみ「はは、今日は最初は1,2年生に譲ろうか」 智美「私たちは見学だなー」 睦月「ありがとうございます。モモも京太郎くんも、2人で盛り上がってるけど私も負けないよ」 佳織「私も頑張ります!」 ………… ……… …… … ――帰り道―― 京太郎「それじゃみなさんまた明日」 佳織「また明日」 睦月「さようなら」 智美「2人ともまたなー」 モモ「今日の雪辱はまた果たすっすよ!」 京太郎「今日だけで何度も果たされたよ!」 ゆみ「はは、4人ともまた明日」 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎(何度も一緒に帰ってるけど、やっぱり別れてすぐは会話が途切れるなあ) 京太郎(俺から話しかければいいんだろうけど……)チラ ゆみ「……」ソワソワ 京太郎(……うん、もうちょっと待ってみよう) 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク ゆみ「……す、須賀くんっ」 京太郎「はい、何でしょう」 ゆみ「その、だな。今日は初めての2位おめでとう」 京太郎「ありがとうございます!!」 ゆみ「うわっ」ビクッ 京太郎「いやもうほんと嬉しかったんですよ! いつ話振ってくれるかなってそわそわして……って」 ゆみ「」 京太郎「そ、その、すみません……」 ゆみ「ふっ、くくっ……」 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「ふふ、すまない。ついおかしくてな」 京太郎「う……ついはしゃぎすぎましたけど、初めての2位なんですよ。嬉しくて当然じゃないですか」 ゆみ「それにモモの上を行ったのも初めてだった」 京太郎「そうです。目標が2つ同時に達成できたんですよ。そりゃ喜びますって!」 ゆみ「うん、まあ気持ちはわかる。でもな」 京太郎「?」 ゆみ「まだ君は部に入って間もないが、その努力を私は誰よりもよく知っているつもりだ」 ゆみ「君はよく努力している。そんなに喜ばなくともこれから何度でもなれるし勝てるよ。私が保証する」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「うん? どうした」 京太郎「いえ、感動してました」 ゆみ「なっ!?」 京太郎「他人に真正面から評価されるってこんなに嬉しいものなんですね……!」 ゆみ「大げさだな……そういう感動はもっと大事なときに取っておいたほうがいい」 京太郎「じゃあ今度は1位になったときにまた言って下さい」 ゆみ「ん……まあいいだろう」 京太郎「はい、頑張ります!」 ゆみ「ではそのためにはもっと実力を上げなければな」 京太郎「え……」 ゆみ「須賀くんの牌譜も集まってきたしな。ちょうど言いたいことがあったんだ」 京太郎「ええと、今日のところはいい気分のままでいさせて頂けたりとかは……」 ゆみ「1位を目指すんだろう? わかっているとは思うが、須賀くんの実力はまだまだ足りていないぞ」 京太郎「それはまあ、最初に2位になった後はいつも通り3位や4位ばかりでしたし……」 ゆみ「なら勉強だ。まず君は対子を集める傾向があるな。何か意味はあるのか?」 京太郎「いや、その、ポンってどこからでも鳴けるから得だなーと」 ゆみ「まあそんなところだろうと思っていた」ハァ ゆみ「単純に有効牌の数を考えてみてくれ。塔子なら両面待ちで8枚、嵌張や辺張でも4枚あるだろ? 対して対子では2枚しかない」 京太郎「……おお、言われてみれば!」 ゆみ「まあもちろん場に出ている枚数や手役との兼ね合いもあるがな。基本的には対子より塔子を残すことを考えてくれ」 京太郎「勉強になります」 ゆみ「さて、次は……」 京太郎「ま、まだあるんですか!?」 ゆみ「当たり前だ……む、もうこんなところか」 京太郎「あ、分かれ道ですね。それでは俺はここで……」 ゆみ「帰ってからメールするから返信するように」 京太郎「ですよね……」 ゆみ「ああ、それじゃあまた夜に」カラカラカラ 京太郎「はい、さようなら」テクテク 京太郎「加治木先輩結構スパルタだよなあ。まあ親身になってくれてるってことだけど」テクテク 京太郎「……ん? あれ、なんで加治木先輩歩いて帰ってたんだ? ……ん、メールが」 ゆみ『さっきはああ言ったが、正直君がモモに勝てるのはもっと先のことだろうと思っていた』 ゆみ『モモのステルスは偶然だけで勝てるようなものじゃない。麻雀を初めて一週間ほどで勝てたのは誇っていいと思う』 ゆみ『君の打ち方については帰ってからメールで言うつもりだったんだが……その……』 ゆみ『君に言われたことが恥ずかしくて、誤魔化すように言ってしまった』 ゆみ『きつい言い方になってしまったと思うんだが、よければこれからも頼ってほしい。すまなかった』 京太郎「……頼らないわけないのになあ」ハハ 京太郎(歩いてたのはすぐメールするためだったんだな) 京太郎「さて、なんて返そうかな。まずは気にしてないということと、それからお礼と……」 ――自室―― ゆみ『今日はここまでにしておこう。また明日』 京太郎『ありがとうございました。また明日よろしくお願いします』 京太郎「ふー……おお、2時間も付き合って貰ってたのか!?」 京太郎「部長に言われたばっかりなのに頼りすぎた……ちゃんと息抜きのしてもらい方考えないとなあ」 京太郎「ま、今はそれより咲からのメールに返信を……っと」 京太郎『悪い悪い、返信遅れた』 咲『もーいつもはすぐ返ってくるのに1時間も来ないから心配したよ』 京太郎『悪かったよ。それより今日は何かあるのか?』 咲『ううん、特にはないかな。今日は京ちゃんの話聞かせてよ』 京太郎『その言葉を待ってた! 聞いてくれ!』 咲『な、何?』 京太郎『今日初めて2位になれたんだよ!』 咲『京ちゃんおめで……2位?』 京太郎『2位だよ! 悪いか!』 咲『すっごく喜んでたから1位になったのかなって思ったんだけど……』 京太郎『初心者が麻雀部相手に2位になったんだから十分凄いだろ!』 咲『京ちゃんも今は麻雀部じゃない』 京太郎『それはそうだけど! 初めてトップ2になれたんだよ!』 京太郎『咲も麻雀やってたなら初めて2位になったときの気持ちわかるだろー』 咲『……そうだね。きっと嬉しかったんだと思う』 京太郎『思う?』 咲『昔のことだもん。でも、うん。昔は楽しくやってた気がする。だから思う、かな』 京太郎『そうか……それと、咲に聞きたいことがあるんだけどいいか?』 咲『なあに?』 京太郎『今日麻雀の雑誌読んだんだ』 京太郎『それに高校生女子麻雀チャンピオンのインタビュー載ってたんだけど、そのチャンピオンの名前が宮永照っていうんだよ』 京太郎『その宮永照って人は東京の高校に通ってるんだけど、なんとなく雰囲気がお前に似てるから気になったんだ』 京太郎『もしかして親戚だったりするか?』 ………… 京太郎「メール返って来ないな……なんかマズイこと聞いちまったか? とりあえず……」 京太郎『その、答えにくかったら無理に答えなくていいぞ? こっちも突然聞いて悪かったし』 咲『ううん、大丈夫……その人は、宮永照は私のお姉ちゃんだよ』 京太郎『お前にお姉さんなんていたのか?』 咲『うん、京ちゃんと会う前にお父さんとお母さん別居しちゃってたから』 咲『私は長野でお父さんと住んでるんだけど、お姉ちゃんは東京でお母さんと一緒に住んでるの』 咲『……そういえば京ちゃんに私の家族の話したことなかったね』 咲『ちょうどいいし聞いてもらっていいかな? ちょっと相談したいこともあるんだ』 京太郎『確かになかったけど……俺が聞いていいような話なのか?』 咲『別に隠すようなことじゃないし気にしないで』 京太郎『そっか。それなら咲、久々に電話かけてもいいか?』 咲『うん、いいよ。……ありがとう京ちゃん』 京太郎『もしもし、聞こえるか?』 咲『もしもし、聞こえるよ』クスクス 咲『それじゃあ話すね。ええと、どこから話そうかな』 咲『家族麻雀をよくしてたって話はしたよね?』 京太郎『ああ、この間聞いた』 咲『私ね、実は家族麻雀そんなに好きじゃなかったんだ』 京太郎『そうなのか? 家族で出来るなんて楽しそうだななんて思ってた』 咲『うん、私の家ではね。お金をかけて麻雀やってたんだ』 京太郎『それで負けてたのか?』 咲『ううん、そんなことないよ。多分勝ち越してた』 京太郎『じゃあお金をやり取りするのが嫌だったとか?』 咲『それもちょっと違うかな。勝っても怒られてたんだ。負けたらお金を取られるし、勝ったら怒られる。京ちゃん、これどう思う?』 京太郎『なんというか……酷い話だな』 咲『でしょ? だから私は麻雀のことがそんなに好きじゃないんだよ』 京太郎『……』 咲『それで相談っていうのはここからなんだけど……』 京太郎『おう、ゆっくりでいいぞ』 咲『えっとね。京ちゃんが読んだっていう雑誌なんだけど、私も見たんだ』 京太郎『もう知ってたのか?』 咲『うん、お父さんから見せてもらってたんだ』 咲『私ね、一度東京へ、1人でお姉ちゃんに会いに行ったことがあるんだ』 京太郎『1人で行けたのか?』 咲『ちっちゃい子じゃないんだから行けるよ! 京ちゃんは私のことをなんだと思ってるの!?』 京太郎『悪い悪い。続けてくれ』 咲『うん、それで家まで行ったんだけど、お姉ちゃんは一言も口を聞いてくれなかった――』 咲『お姉ちゃん、きっとまだ私のこと怒ってるんだ』 京太郎『怒ってる?』 咲『家族麻雀の話で、負けたらお金を取られる、勝ったら怒られるって話はしたよね? それで私はどうしたと思う?』 京太郎『どうしたって……麻雀をやらなくなったとかじゃないのか?』 咲『ううん、違うよ。私はね、±0にしちゃえばいいんだって思ったんだ』 咲『それならお金を取られないし、取らないから怒られることもないから』 京太郎『……は? いや、そんなの狙ってできるものじゃないだろ?』 咲『狙ってやったんだ。狙えるようになったって言ったほうがいいかな。ちっちゃい私の精一杯の抵抗だった』 京太郎『……凄いな』 咲『あはは、ありがと。でもお姉ちゃんは私の勝ちを狙わないやり方が気に入らなかったんだと思う』 咲『きっと、だから今でも私と話してくれないんだ』 京太郎『……咲はお姉さんと仲直りしたいのか?』 咲『うん、だから雑誌の記事を見て、麻雀部に入ればお姉ちゃんとまた会えるかもしれないって思ったんだ』 京太郎『ああ、俺もそう思う』 咲『それで麻雀部に入ろうかどうか迷ってるの』 京太郎『結局文芸部には入らなかったんだろ? 麻雀部に入ればいいじゃんか』 咲『でもさ、京ちゃん。お姉ちゃんを怒らせた原因は麻雀なんだよ?』 咲『その麻雀を使ってお姉ちゃんに会おうなんて余計に怒らせたりしないかな?』 京太郎『それは……』 咲『麻雀部に入らなければ、時間はかかるかもしれないけどその内お姉ちゃんは私のことを許してくれるかもしれない』 咲『麻雀部に入ればすぐお姉ちゃんに会いに行ける。でも、もっと怒らせて私のことをずっと許してくれなくなるかもしれない』 咲『京ちゃん、私はどうしたらいいのかな……』 京太郎『……咲は麻雀のことどう思ってるんだ?』 咲『え?』 京太郎『だからさ、咲は麻雀のこと好きなのか?』 咲『……さっき言ったじゃない。あんまり好きじゃないよ』 京太郎『でもさ、それは勝つことじゃなくて、±0を目指してたからじゃねーのかな』 咲『……』 京太郎『俺はさ、麻雀始めたばっかだけど、勝てるとすげー楽しいよ』 京太郎『初めて3位になれたときでも嬉しかったし、今日初めて2位になれたときなんかは思わず叫んじまった』 京太郎『まだ1位になったことはないけど、なれたらきっともっと楽しいんだろうなって思う』 京太郎『咲はどうだ? 1位になって楽しいとか嬉しいって思うことなかったか?』 咲『……昔、まだ家族で仲良く麻雀でやってたとき、1位になれたら凄く嬉しかった』 咲『そうだね。京ちゃんの言うとおり、あの頃は家族仲良く、楽しく麻雀やってた』 京太郎『そっか。それなら咲は麻雀部に入るべきだ』 京太郎『今度は勝つことを目指して、楽しんで麻雀をすれば、それをお姉さんに見てもらえば、きっと咲のこと許してくれるよ』 咲『そう、かな』 京太郎『ああ』 咲『……うん、そうだね。会わなきゃ何も始まらないよね。わかったよ京ちゃん。明日、麻雀部に行ってみる』 京太郎『ああ、それがいいよ』 咲『相談に乗ってくれてありがとう、京ちゃん』 京太郎『気にするな……そうだ。咲、ちょっといいか?』 咲『何?』 京太郎『さっきお前麻雀部に入ればお姉さんにすぐ会えるみたいなこと言ってたよな? 県大会に勝つ前提とは随分偉くなったなあ』 咲『ふぇっ!? も、もう、揚げ足取らないでよ! 京ちゃんのバカ!』 京太郎『ははは……実際咲は強いのか?』 咲『京ちゃんなんか足元にも及ばないくらい強いよーだ!』 京太郎『……』 咲『な、何か言い返してよぉ……』 京太郎『いやまあ、あの宮永照と家族麻雀で±0狙ってるやつだと思うと……』 咲『お、お姉ちゃんだって高校入って上手くなってるはずだよ!』 京太郎『と言ってもなあ』 咲『うぅぅ……』グスン 京太郎『はは、冗談だよ』 咲『もう、あんまりからかわないでよ……』 京太郎『面白いからついな』 咲『ついじゃないよ! こっちは本気で気にするんだからね!』 京太郎『悪かったって。それじゃあな』 咲『またね。……京ちゃん、今日はありがとう』 京太郎『気にするなって。またなんかあったら電話しろよ。大会で会おうぜ』 咲『うん、大会で』 女生徒「残りは私がやっておくから。須賀くんは部活行ってていいよ」 京太郎「いいのか?」 女生徒「いいっていいって。私帰宅部だし。部活頑張ってねー」 京太郎「おう、ありがとな」 京太郎(今日こそは1位になるぞー! ……あ、階段に加治木先輩が) 京太郎「加治木先輩、これから部活に行くところですか?」ウエミアゲ ゆみ「ん、須賀くんか。そのつもりだよ」 京太郎「じゃあ一緒に行きましょう。昨日聞きそびれたところがあるんですけど途中で聞いていいですか?」 ゆみ「ああ、構わな……」フラッ 京太郎「加治木先輩!?」 ドタッドタタタタッ! 京太郎「いてててて……加治木先輩、大丈夫ですか?」シタジキ ゆみ「あ、ああ、大丈夫だ。ありがとう、今どく……痛っ!」 京太郎「どうしたんですか!?」 ゆみ「き、気にするな。なんでもないっ」 京太郎「なんでもないわけないじゃないですか! ……足ですか?」 ゆみ「……そうだとしても君に迷惑をかけるわけにはいかない。先に部室に行っていてくれ」 京太郎「……そういうこと言うならこっちにも考えがありますよ」ムッ ゆみ「?」 京太郎「だっことおんぶと肩を貸す。どれがいいですか?」 ゆみ「……は?」 京太郎「保健室まで連れて行くって言ってるんです。さ、だっことおんぶと肩を貸す。どれにします?」 ゆみ「ま、待て! そんなどれを選んでも恥ずかし……い、いや。そもそも必要ないと言っているだろう!?」 京太郎「あんな声出して何言ってるんですか。選ばないならだっこで運びます」 ゆみ「なっ」 京太郎「よいしょっと」グイッ ゆみ「う、うわっ! な、なんでよりにもよってお姫様だっこなんだ!? というかそもそも重いだろう!?」 京太郎「一番持ちやすいからです。それとむしろ軽いくらいですから大丈夫です……さあ、保健室まで行きましょうか」 ゆみ「わ、わかった! 肩を借りるから! だから下ろしてくれ!!」 京太郎「始めからそうやって人の好意を受け取ればいいんですよ……っと」 ゆみ「好意じゃないとは言わないが、とてもではないが素直には受け取れないな……」 京太郎「加治木先輩、腕はちゃんと肩に回しました?」 ゆみ「ああ、回した」 京太郎「じゃあ行きますよ。ゆっくり歩きますね」 ゆみ「ありがとう」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎(加治木先輩と話すのは最近慣れてきたけどさすがにあんなことした後だとキツイな……) 京太郎(なんであんなことしたんだろう……)ズーン ゆみ(ん……私が肩に手を回しやすいように少し屈んでくれているのか) ゆみ(その体勢で歩くのは決して楽ではないはずなのに。……優しいやつだな) ゆみ(さっきの強引な三択も、普段の須賀くんなら絶対にやらないはずだ) ゆみ(それでもやったということは、それはきっと――) ゆみ「なあ須賀くん」 京太郎「はっ、はい!」 ゆみ「そんなに力を入れなくても……いやそういう話になるかもしれないな」 ゆみ「その、さっきのことなのだが……」 京太郎「?」 ゆみ「さっきの君は怒っていたのか?」 京太郎「……当たり前じゃないですか」 ゆみ「……理由を聞いてもいいか?」 京太郎「決まってるじゃないですか。加治木先輩がまた無理しようとしたからです」 ゆみ「私は無理なんて――」 京太郎「してるから倒れたんです」 ゆみ「ぐっ」 京太郎「無理して倒れたのに、なんでさらに無理しようとするんですか」 ゆみ「君には――」 京太郎「関係ない、なんて言わないでくださいよ。自分が麻雀部にどれだけ大切か知らないわけでもないでしょう」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「ほら、早く言わないとまたお姫様だっこしますよ」 ゆみ「や、やめろ! わかった、言うから!」 ゆみ「……麻雀部は私が麻雀をもっと本格的にやりたいから、なんて身勝手な理由で作ったんだ」 ゆみ「だから自分で出来ることなら自分でやりたい。他人に無駄な負担はかけたくない」 ゆみ「雑務は私がやるから、君たちには純粋にただ麻雀を楽しんで欲しいんだ」 京太郎「……はあ」 ゆみ「な、なんだ」 京太郎「加治木先輩は優秀なんですから、出来ること全部やろうなんて思ってたらパンクするに決まってます」 ゆみ「そんなことは……」 京太郎「実は部長から加治木先輩をなんとか息抜きに誘えないかって相談を受けてたんですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「部活の仲間が辛そうにしてるのに純粋に麻雀を楽しむなんて出来ませんよ」 ゆみ「…………」 京太郎「あ、保健室ですね。その、無理しないって考えて貰えると嬉しいです」 ゆみ「……ああ」 京太郎「失礼します……先生はいないみたいですね」 ゆみ「ああ、外出の張り紙はないからすぐ戻ると思うのだが……」 京太郎「とりあえずこの椅子に座って下さい。湿布探しますね」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「ええと、湿布は……お、あった」 ゆみ「ああ、それじゃ渡してく――」 京太郎「それじゃ脱がしますね。足上げて下さい」 ゆみ「ああ……って、え?」 京太郎「」スルッ ゆみ「んっ」 京太郎「」スルスルスルッ ゆみ「ふあ」 京太郎(綺麗な足だな……触ってみた――はっ!?) 京太郎(な、何やってんだ俺!? 咲の手当てずっとしてたからその癖か!?)ダラダラダラ 京太郎(か、加治木先輩が意外と平気にしてるかも……) ゆみ「……」カアァァァァ 京太郎(やっちまったー! ど、どうする!?) 京太郎(……ああ、でも白くてスラっとして艶々としてて、いつまでも見ていたくなるような――) ゆみ「す、須賀くん。あまり見られていると、その、恥ずかしいのだが……」カアァァァ 京太郎「す、すみません!!」バッ ゆみ「あ……」 京太郎「あ……」 謝ろうと顔を上に向けると、顔を真っ赤にした加治木先輩と目があった。 ゆみ「……」 京太郎「……」 ゆみ「…………」 京太郎「……………」 ゆみ「――き」 保険医「誰かいるの? ごめんね席外しちゃ……」ガラッ 保険医「……ええと、お邪魔だったかしら?」 京太郎・ゆみ「「そんなことないです!!」」 保険医「んー軽い捻挫ね。病院に行く必要はなし。湿布を貼ってれば明日、明後日には治ってると思うわよ。もちろん安静にね」 ゆみ「ありがとうございます」 保険医「それと疲れてるみたいね。顔色悪いわよ。若いから無理は効くでしょうけど、ちゃんと休みは取ったほうがいいわ」 ゆみ「……はい」 保険医「部活はやってるの?」 ゆみ「麻雀部に入ってます」 保険医「それならやっても大丈夫ね。これから行くのかしら」 ゆみ「そのつもりです」 保険医「そう。ここには松葉杖とかはないから、彼氏くんはちゃんと連れてってあげるのよ」 ゆみ「かっ……!? 京太郎「ただの後輩です!」 保険医「そう」クスクス 保険医「まあ無理はしないことね。大会も近いんだし怪我で実力を発揮できないのはつらいわよー」 ゆみ「……わかりました。ありがとうございます」 保険医「お大事にー」 京太郎「ありがとうございました」ガラッ 京太郎(……さっきまでは怪我に気が行って意識しなかったけど、肩を貸すとかなり密着するな……) 京太郎(加治木先輩、普段凛としてるけど触れると女の子らしく柔らかいんだな……特に胸とかバストとかおもちとか) 京太郎(それになんかいい匂いも……) ゆみ「須賀くん」 京太郎「ひゃいっ!」 ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 ゆみ「そうか。……須賀くん、ちょっと聞きたいことがあるのだが」 京太郎「なんです?」 ゆみ「……君は躊躇せずお姫様だっこをしたり私のソックスを脱がしたりしてきたが……女性の扱いに慣れているのか?」 京太郎「……はい?」 ゆみ「普通はああいうことをやるときは多少なり躊躇するものだと思うのだが」 ゆみ「君は自然にやるものだからこっちも反応が遅れてな……」 京太郎「お姫様だっこなんて慣れてないですよ! やったのも初めてです!」 京太郎「……その、あのときはちょっとカチンと来まして、勢いでといいますか……」 ゆみ「ふむ」 京太郎「脱がした方はですね。その、幼馴染みの手当てをいつもやっていたのでついそれと同じように……」 ゆみ「なるほど……須賀くん」 京太郎「はい」 ゆみ「それは直したほうがいい。いつかきっと問題を引き起こす」 京太郎「あはは……でも大丈夫ですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「大切な相手じゃなきゃあんなに焦ったりしませんから。そういう相手ならきっと怒るくらいで許してくれます」 ゆみ「――っ」カァァ 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「だからそういうところを直せと言っているんだ……」ハァ 京太郎「す、すみません。もしかしてそんなに嫌でした……?」 ゆみ「そういうわけじゃ……いや、もういいか」 ゆみ「須賀くん」コホン 京太郎「は、はい」 ゆみ「意地を張っていた私を引っ張ってくれてありがとう」 ゆみ「1人じゃ保健室へ行くのは正直厳しかったと思う。手当てをしようとしてくれたこと、嬉しかったよ」 京太郎「……はい!」 京太郎「すみません。遅くなりましたー」ガラッ 智美「おお、2人とも何してた……」 睦月「そ、そんなにくっついてどうしたんですか?」 ゆみ「くっつ……! あ、足を捻ったから肩を貸してもらっているだけだ!」 佳織「歩けないみたいですけど大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、座っていれば大して痛まないし、明後日には治ると言われたよ」 桃子「そんなに重傷じゃなくてよかったっす」 智美「今日は部活やらずに帰るのかー?」 ゆみ「いや、痛むのは足だけだし参加するよ。須賀くん、すまないが椅子まで運んでもらっていいか?」 京太郎「もちろんです」 ゆみ「……っと、ありがとう。対局が終わるまで君の牌譜を見ていこう」 京太郎「よろしくお願いします」 ………… ……… …… … 智美「それじゃそろそろ帰るかー」 ゆみ「まだ早くないか?」 智美「怪我人は早く帰って安静にしなさい」 ゆみ「む……」 京太郎「はは……そういえば加治木先輩、その足で自転車に乗れますか?」 ゆみ「さっきに比べれば痛みも引いているしまあ大丈夫だろう」 智美「……ゆみちん、ちょっと歩いてみてくれるか?」 ゆみ「ああ……痛っ」 智美「ゆみちん、そんな足で自転車漕ごうなんて無理はよくないぞー」 睦月「そうですよ。悪化しちゃいます」 ゆみ「そう言われてもな。バスを使おうにも私の家からバス停までは遠いし、両親も仕事だ」 京太郎「家まで肩を貸す……のはちょっと外では恥ずかしいですね」ハハ ゆみ「出来れば校内でもそう思って欲しいんだがな。もちろん感謝はしているが」ハァ ゆみ「それに、そもそも須賀くんに家まで付き合わせるのは悪いだろう」 京太郎「俺が歩く分には大丈夫ですよ。いい運動です」 ゆみ「ん、そうか……」 ゆみ「……ああそうだ。そんなことをしなくてもタクシーを呼んで――」 智美「思いついたぞー!」ワハハ ゆみ「もら……蒲原、嫌な予感はするがとりあえず言ってみろ」 智美「失礼な。今回は名案だぞー」 桃子「どんな案なんすか?」 智美「京太郎がゆみちんの自転車でゆみちんを送ればいいんだ」 睦月「ああ、二人乗りですか」 ゆみ「ま、待て。他人の前でそんな……」 智美「肩を貸すくらい密着してたんだからこれくらいは大丈夫だろー?」 ゆみ「うっ……」 佳織「でも智美ちゃん、二人乗りなんてやってたら危ないし注意されちゃうんじゃないかな?」 ゆみ「そ、そうだ。だからタクシーを――」 智美「非常事態なんだしいいだろー。それに学校が見えなくなるまではゆみちんを乗せて押せばいいし」 佳織「そっか。それもそうだね」 ゆみ「妹尾!?」 桃子「まあいいじゃないっすか。タクシーは高いっすし、それに二人乗りやってるくらいじゃ誰も見ないっすよ」 睦月「二人乗りそんなに嫌なんですか?」 ゆみ「い、嫌というわけでは……す、須賀くんはどうなんだ!?」 京太郎「二人乗り自体は中学の頃よくやってたので、加治木先輩が嫌でなければいいですよ」 ゆみ「」 桃子「問題が片付いたところで帰るっすー!」 智美「ゆみちん、置いてくぞー」 睦月「それじゃ、肩貸しますね」 ゆみ「ありがとう。ついでに頼みがあるんだがタクシーを――」 睦月「京太郎くん、自転車乗り場からはよろしく」 京太郎「任されました!」 ゆみ「ああ、うん。わかっていた。私はいい後輩たちを持ったよ」 京太郎「照れますよ」 睦月「照れますね」 佳織「照れちゃいます」 桃子「照れるっすよー!」 ゆみ「よし、お前たちは明日までに『麻雀何切る?』を1冊終わらせて来い」 智美「後輩たち、あんまりからかっちゃダメだぞー」ワハハ ゆみ「蒲原は2冊だ」 智美「ワハ!?」 智美「ゆみちん、ここまで自転車を押して貰った気分はどうだ?」 ゆみ「見られてばかりで全く落ち着かなかった……二人乗りくらい目立たないと言ったのは誰だ」 桃子「二人乗りじゃなくて京太郎が押してたじゃないっすか。6人いて1人だけ自転車に乗って押されてればそれは目立つっすよ」 智美「どこの女王様だって感じだなー」ワハハ 京太郎「まあ嘘は言ってなかったですね」 ゆみ「嵌められたか……」 桃子「人聞きが悪いっすねー」 睦月「まあまあ、明日には誰も覚えてませんよ」 ゆみ「そうだといいんだがな」ハァ 京太郎「じゃあ前乗りますね」 ゆみ「ああ、今後ろに移る」 京太郎「よっ……と」 ゆみ「……そ、それじゃあ捕まるぞ」ギュッ 京太郎「!?」ビクッ ゆみ「ど、どうかしたのか?」 佳織「わわわ……」カァァ 睦月「凄い……」カァァ 桃子「だ、大胆っすね」カァァ 智美「どうかってゆみちん、それはこっちのセリフだぞ」カァァ ゆみ「え、えっ?」 ゆみ「だ、だって少女漫画とかでは二人乗りするときはこうやってギュッと抱きしめて……」 桃子「どんだけ乙女っすか!」 智美「本気で言ってるんだよなー……」 ゆみ「ど、どこがおかしいんだ!? ちゃんと捕まらないと危ないだろう!?」 睦月「抱きしめなくても腰を掴んだり荷台やサドルを持ったりすれば落ちないのでは……」 ゆみ「……!!」 智美「いや、そんなその発想はなかったみたいな顔されてもなー」 佳織「と、とりあえず京太郎くんを離してあげたらどうでしょう?」 ゆみ「え?」 京太郎「」パクパク ゆみ「う、うわっ! す、すまない!!」バッ 京太郎「……はっ!? い、いえ! こちらこそ!」 桃子「何がこちらこそなんすか?」 京太郎「……いや、なんでもないぞ?」 桃子「ところで感想は」 京太郎「柔らかくていい匂いがし……しまった!?」 睦月「素直だね」 智美「正直者だなー」ワハハ ゆみ「」プシュー 桃子「……さて、それじゃあそろそろ帰るっすか」 智美「邪魔者はお暇するかー」 京太郎「ま、待った! せめてこの空気をどうにか――」 睦月「そうですね。早く帰りましょう!」 佳織(何でもいいからここから逃げ出したいなあ……) 京太郎「睦月先輩!? 佳織先輩もだんまりはやめましょうよ!」 智美「それじゃあまた明日なー」ワハハ 京太郎「ちょっとー!?」 スタスタスタスタ…… 京太郎「ほ、本気で帰りやがった……」 ゆみ「」プシュー 京太郎「え、ええと、その加治木先輩。さっきのは……」 ゆみ「い、いや、いいんだ。悪いのは私だから」 京太郎「そんなことは……」 ゆみ「と、ともかく! 自転車を出してくれ!」 京太郎「は、はい! 加治木先輩の家遠いですもんね!」 ゆみ「あ、ああ! 早く行かないと日が暮れてしまう」 京太郎「わかりました! それじゃしっかり捕まって――」ハッ ゆみ「あ……」ジー 京太郎「そ、そういう意味じゃないですからね!?」 ゆみ「わ、わかっている! それじゃあ荷台を掴んで……」 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、ちゃんと掴んでいる」 京太郎「それじゃ出しますよー」 ゆみ「よろしく頼む」 京太郎「……」シャー ゆみ「……」シャー 京太郎(中学のとき、咲とよくこんなふうに二人乗りしてたなー) 京太郎(初めてやったときは咲が憧れだったって言って横乗りしたっけ) 京太郎(ちょっと漕ぎだしたら咲が倒れそうになったからすぐやめたけど。あいつ悔しそうな感じで涙目になってたな) 京太郎(その後も何度か挑戦しようとしたから止めるのが大変だった。あいつ変なところで頑固だからなあ) 京太郎(咲とのどうでもいい話とか結構楽しかったな。そのうちあいつの重さがない自転車が物足りなくなったりして) 京太郎(風を切る感覚も感じる重さも似てるけど、見える景色はやっぱり向こうと違う。……当たり前か) 京太郎(……おんなじ長野なのにな)ハァ ゆみ「なあ、須賀くん」 京太郎「なんですか?」 ゆみ「二人乗りはよくやっていたと言っていたな」 京太郎「そうですね。前に言った幼馴染をよく乗せてました」ハハ ゆみ「そうか。……間違っていたらすまないのだが、今そのときのことを思い出してはいなかったか?」 京太郎「……もしかして声に出したりしてました?」 ゆみ「そういうわけではないが、ため息をついたり考え込むような顔をしていたからな」 京太郎「はは……加治木先輩には敵わないですね」 ゆみ「それで、これももしなんだが」 京太郎「何がです?」 ゆみ「今、寂しい、と思っていないだろうか」 京太郎「寂しい……ですか」 ゆみ「ああいや、違っていたらそう言ってくれ。別に何か特別な根拠があって言っているわけではないんだ」 京太郎「ん……考えたこともなかったですけど」 京太郎「けど、言われれば寂しかったのかもしれないです」 京太郎「俺、幼馴染……咲って言うんですけど、そいつと毎日メールしてるんですよ」 京太郎「昔からよくメールはしてたんですけど、引越す前は毎日なんてことはなかったです」 ゆみ「ふむ。聞いた私が言うのも何ではあるが、違うところにいるんだ。それくらい普通じゃないか?」 京太郎「いえ、そこじゃないんです」 京太郎「咲は地元の高校に行ったんで、やっぱり中学の友達もたくさん一緒のところ行ってるんですよ」 京太郎「咲とのメールにもよく出てくるんですけど、それがちょっと羨ましいなとかいいなとか思っちゃうんです」 京太郎「こっち来て使ってる道も、普段登校に使ってる道はもう見慣れた風景になってるんですけど」 京太郎「今こうやって違う道を行くとやっぱり全然見覚えがなくて」 京太郎「前のところはどこ行っても大体見慣れてたんで、自分はここの人間じゃないんだなとか感じたんです。 京太郎「それでさっきため息ついちゃったんですよ」 京太郎「そんなこと考えてると、俺はなんで1人でこっち来たのかなってちょっと後悔が」 ゆみ「……そういえば須賀くんがこっちに来た理由を聞いていなかったな」 京太郎「ああ、親の仕事の都合ですよ。まあ向こうで一人暮らしすることも出来たんで、決めたのは自分です」 ゆみ「高校生が1人で暮らすのは言うほど簡単じゃない。自分のせいだなんて思う必要はないさ」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「……まあ私もしたことはないからどんなものかわかるわけではないが」 京太郎「加治木先輩……」ジー ゆみ「と、ともかくだ! 自分が選んだからしょうがないなんて思わず、寂しければ素直にそう思えばいい。そのほうが楽になる」 京太郎「……そうですね。ありがとうございます」 ゆみ「……」シャー 京太郎「……」シャー ゆみ(あまり表情は明るくなっていないな……ああ) ゆみ「寂しくて、じゃあどうするかまで言わなければ片手落ちか」ボソッ 京太郎「何か言いました?」 ゆみ「いや、なんでもない」 ゆみ「……須賀くん。この先に急な坂道があるのが見えるか?」 京太郎「ああ、結構急ですね。しっかり捕まってください」 ゆみ「ああ」ギュッ 京太郎「っ!? か、加治木先輩!?」グイッ ゆみ「きゃっ! ハンドルを急に切るな! 危ないだろう!?」 京太郎「それはすみません! でも何ですかいきなり!?」 ゆみ「き、急な坂だからしっかり捕まったんだ。それに……」 京太郎「それに?」 ゆみ「……このほうがいいかと思ってな」 京太郎「……ええと、それは、まあ、さっきのも嬉しかったですけど」 ゆみ「そ、そういう意味じゃない! 君は寂しいのかもしれないと言っていただろう?」 京太郎「そ、そっちですか」 ゆみ「私は地元を離れてはいないから、君がどれほど苦しいか分からない」 ゆみ「でも、君のつらさを和らげたいとは思う。そのためにはこうするのがいいと思った」 ゆみ「君の故郷にいなかった私が君のその寂しさを埋めたいというのはおこがましいかもしれないが、それでも私を頼って欲しい」 ゆみ「君は、私の大切な後輩だからな」 京太郎「……そんなに心配されるような顔してました?」 ゆみ「ああ、何かしてあげたいと思うくらいにはな」 京太郎「……まったく、加治木先輩は背負い込みすぎですよ。 麻雀部のことだけで倒れちゃったのに、俺のことまで背負ってどうするんですか」 ゆみ「う……」 京太郎「でも、ありがとうございます」 ゆみ「ああ、いい声だ」 京太郎「これからも頼っていいですか?」 ゆみ「もちろん。いつでも頼ってくれ」 京太郎「それじゃ、加治木先輩も俺を頼ってください」 ゆみ「うん?」 京太郎「麻雀はまだ全然敵いませんけど、でも牌譜の分析とか出来ることはやりますから」 ゆみ「しかし……」 京太郎「ただでさえ倒れたのに、この上さらに加治木先輩に頼るなんて言ったら部長に何言われるかわかりませんよ」 ゆみ「だが私が勝手にやっていることで負担をかけるわけには……」 京太郎「加治木先輩が俺に大切だって言ってくれたのと同じで、俺にとっても加治木先輩は大切な先輩なんですよ!」 ゆみ「……それを言われるとはな」フゥ ゆみ「量を減らそうと思っていたんだが、そう言ってくれるならお願いするよ」 京太郎「任せてください!」 京太郎「…………」シャー ゆみ「…………」シャー --------------------------------------- ゆみ(……今まで意識していなかったが、背中、広いな。それに固い) ゆみ(男子とこんなに密着したのは初めてだが、体の作りがこんなに違うのか)ポー ゆみ(……前はどうだろう)サワッ 京太郎「」ビクッ ゆみ(腹筋の辺りも引き締まっている。細身だけど筋肉質だ。鍛えているんだな……今さらか。部活の前にお姫様だっこをされ――) ゆみ(いかん、自分で考えていて恥ずかしくなってきた)カアァァ ゆみ(いつの間にか鼓動も速くなっている)ドクンドクン ゆみ(こ、これは須賀くんに伝わっているんじゃないだろうか)ドクンドクン ゆみ(……もっとこう、トクントクンと可愛らしくならないものかな)ハァ ゆみ(……須賀くんも緊張しているんだろうか) ゆみ(……えい)ピト ドキドキドキドキ…… ゆみ(私よりも速い。私よりも緊張してくれているのか。……なんだか嬉しいな) ゆみ(心地いい音だ。もう少し、家に着くまでこのまま――) --------------------------------------- 京太郎(……ぴったりくっついてるな)ドキドキ 京太郎(加治木先輩と密着したの今日何度目だ!? 今まで一度もこんな経験なかったのに!) 京太郎(ああ、背中に柔らかいおもちが……いかん、運転に集中しろ集中!) 京太郎(ふー……うん、少し落ち着いてきた) 京太郎(柔らかく包まれてるみたいでなんか安心する。こういうの母性っていうのかな) 京太郎(加治木先輩が言ったとおり、ギュッとされてると寂しさが和らいできた) ドクンドクン…… 京太郎(……ん? なんだこの振動) 京太郎(これは……心臓の音か。もしかして加治木先輩も緊張して――) ゆみ「」サワッ 京太郎(って!? な、何やってんだこの人!?)ドキドキドキドキ 京太郎(寂しさなんか吹っ飛んだけど! ただでさえ我慢してんのに!) 京太郎(この人ついこの間まで男と話すの苦手とか言ってたよな!? 話してなきゃいいのか!?) ゆみ「ん……」ピト 京太郎(背中に耳を……まさか俺の心臓の音聞いてるのか? うおお、恥ずかしい!!) 京太郎(ど、どうしよう。何か話しかければ離れてくれ――) ゆみ「――もう少し、このまま――」ボソッ 京太郎(……まあ、俺も加治木先輩の音聞いたんだしお互い様か) 京太郎(家まであと少しだし、このままでいいか) 京太郎(俺もそのほうが嬉しい……って何考えてんだ俺)ドキドキ --------------------------------------- ――加治木宅前―― 京太郎「加治木先輩、家ってここですか?」 ゆみ「……ん? ああ、ここだ――」ポー ゆみ「――っ!?」バッ ゆみ「す、すまない! ずっとこんな、だ、抱き締めるような真似を……!」 京太郎「い、いえ、大丈夫です。全然」ドキドキ ゆみ「そ、そうか。それとその、さっきの君のお腹を確かめようと思ったのも……」 京太郎「そっちも少しくすぐったかっただけですから大丈夫です」ドキドキ 京太郎「……って確かめ?」 ゆみ「っ! な、なんでもない!」 ゆみ「そ、そんなことより」コホン ゆみ「私のためにこんな遠回りまでしてくれてありがとう、須賀くん」ニコッ 京太郎「っ!!?」ドキィ!! ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」ドキドキ ゆみ「そうか、それならいいのだが……」 京太郎(な、なんだ急に? 加治木先輩の笑ったとこ初めて見たってわけでもないのに)ドキドキ ゆみ「なんだか顔が赤いな……もしかして私が重くて疲れたのだろうか」シュン 京太郎「」ムッ 京太郎「そんなことないです!!」 ゆみ「わっ!」 京太郎「部活の前にも言ったじゃないですか! 加治木先輩は重くなんてないです!」 ゆみ「そ、そうか。そこまで強く言われると照れるな……」カアァァ 京太郎「あ……すみません」 ゆみ「まあそう言ってくれたのは嬉しいよ。ありがとう」フフッ 京太郎「っ!」ドキッ 京太郎(さっきからのこれは) 京太郎(加治木先輩が自分のこと卑下するのがなんか嫌で、笑うと胸が高鳴って) 京太郎(ああ、もしかして) 京太郎(――俺、加治木先輩のこと好きになったのか) ゆみ「須賀くん? 本当に大丈夫か?」 京太郎「大丈夫です。むしろスッキリしました」 ゆみ「? まあそれならいいんだが」 京太郎「それより加治木先輩。牌譜渡して貰っていいですか?」 ゆみ「ああ、そうだったな。それじゃあ半分――」 京太郎「全部下さい」 ゆみ「何?」 京太郎「これからは牌譜の整理と分析は俺がやります」 京太郎「加治木先輩は作戦を考えたり自分の練習をしたり、加治木先輩じゃなきゃ出来ないことをやって下さい」 ゆみ「しかし……」 京太郎「最初はやり方を聞くことになると思いますけど、でもすぐに覚えます!」 京太郎「麻雀部の、加治木先輩の役に立ちたいんです!」 ゆみ「……自転車に乗っているとき、お願いすると言ったしな」フゥ ゆみ「わかった。それじゃあ牌譜の整理と分析は君に頼んだよ」 京太郎「はい!」 ゆみ「ちなみにこれだけあるんだが本当に大丈夫か?」ドサッ 京太郎「お、おお……すごい量ですね」 ゆみ「やはりこの量は……」 京太郎「いえ、大丈夫です! やってみせます!」 ゆみ「そうか……ただ、失敗を経験した者として言うが、無理だと思ったら私を頼るんだぞ」 京太郎「倒れる前に頼ります」ハハ ゆみ「それじゃあ須賀くん、自転車の鍵を取ってもらっていいか?」 京太郎「あ、はい、これです。足まだ痛みます?」 ゆみ「ん……歩くのは少しつらいな。まあ明後日には治ると言っていたから大丈夫だろう」 京太郎「そうですか……その、加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「明日の行きも送らせて貰えませんか」 ゆみ「なっ!? あ、明日の行きとはつまり登校のことか」 京太郎「はい」 ゆみ「し、しかし登校時間には人も多いし朝からというのは目立ちそうだな……」 京太郎「二人乗りが目立つなら、人が多くなったらまた押しますよ」 ゆみ「余計に目立つだろう!?」 京太郎「じょ、冗談です」 京太郎「無理にではないですけど、もし痛むようなら明日も大変かなと思ったので……」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 ゆみ「……そうだな。お願いしてもいいだろうか」 京太郎「はい、喜んで!」 ゆみ「ありがとう。それじゃあこれを」 京太郎「これは……自転車の鍵ですか?」 ゆみ「ああ、明日も来るんだ。自転車のほうが楽だろう? どうせ私は使えないしな」 京太郎「ありがとうございます!」 ----------------------------------------- 京太郎「そろそろ帰りますね」 ゆみ「ああ、今日は助かった」 ゆみ「保健室へ連れて行ってもらって、家まで送ってもらって、牌譜を引き受けてもらって、明日も来てもらう」 ゆみ「君には借りが随分と出来てしまったな」 京太郎「どれも好きでやってることですから。気にしないでください」 ゆみ「私はいい後輩を持ったよ。……何か埋め合わせをしないとな」 京太郎「いえ別にそんな……」 ゆみ「後輩に助けて貰いっぱなしの先輩というのも情けない。私に出来ることなら何でもいい、考えておいてくれ」 京太郎「……わかりました。考えておきます」 ゆみ「ああ」 京太郎「それじゃあ加治木先輩、また明日」 ゆみ「また明日。今日はありがとう」 京太郎(いい後輩かあ……)シャー 京太郎(いつか、後輩としてじゃなく俺を見てもらえるように、頑張ろう) -----------------------------------------
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保護ページです!!編集はできません!! 刃牙太郎とは 人物概要 氏名 刃牙太郎(ばきたろう) 生年月日 BC?????年3月11日 身長 173cm(仮) 性別 ♂(仮) 役職 幹部 7/16日来訪 経歴 日本にて爆誕 特にこれと言って特徴的なく、自称、大体のゲームはすぐに慣れてやり込めば上達も早いゲーマー だがどうにもやり込み要素があってもストーリーに終わりが来るものはとてつもなく飽きやすく過激なものには飽きにくいらしい 飽きやすい ポケモンなどのストーリーにENDがあるもの 飽きにくい アクション要素が多く頭を使うゲーム、スプラ等TPS(FPSは稀に酔う模様) 普段の日常 学校が終わると部活以外は即帰宅し、ゲームとネットに没頭する毎日を送る ネットに対応し様々なゲームのコミニュティがあることを知りdiscordにて色んな鯖を渡り歩く。そこで出来た多数の仲間と交流を持ち、矢岬とも「#コンパス」のコミニュティで出会った 参加してからの活動 矢岬の彼氏としてこのサーバーにやって来た 当初から彼氏としていろいろ質問責めにあったりし、名前はその際船長に命名された。 サーバーに入り約一日で2人目の船長に電凸した人間となる 余談 数週間後の7/25にとある幹部(笑)を撃退してしまい副幹部に昇進、その後幹部となりサーバーの監視、wikiの編集係となっている 名前について 今は刃牙太郎としているが元はバキバキ陰茎太郎であり、その後のバリエーションとして生まれたものである 現在は聖母神刃牙太郎でこの聖母神は矢岬が「ママみたい」と感じそれっぽいのが名前に着いていたところに刃牙太郎が勝手に改変させていった成れの果てである なおサムからは唯一カーセックス兄貴と呼ばれている サムから引用↓ カーセックス→バキバキ陰茎太郎→バギー→刃牙太郎 現在は自称聖母神としてファミリーに謎の助言やら祈りを唱え密かに布教している(最近はめんどくさくてなかなか出来ていない模様) 自己紹介 聖母神刃牙太郎と申します。呼び方は基本刃牙太郎ニキやカーセックス兄貴と呼ばれていますが個人的には刃牙ニキにして欲しいなぁと実は思っていたりしました。今は聖母様とお呼びください(本人は自由奔放なスタイル) 日頃は聖母神として訳の分からない事を言ったりしてたまに敬語が外れ、1部からもっと暴れろ等暴走することに定評があります。 聖母神として、神託を授けます。何卒よろしくお願いします その他 船長とは考え方が似ていることもありたまに話す仲の模様。 本人曰く相談事を持ち込まれるのが昔から好きだとのこと。なにか困ることがあるならDMで彼に凸して持ち前の聖母のような優しさに包まれながら神託を授かるといいだろう(管理者談) とある人物のリンクから飛んできた人なら分かるかもしれないが2人はかなり謎が包まれている。真実を知っている者は幹部のひと握りしか知らないという… それってもしかして元カn…… 2021/01/9彼女と別れている 過去、詳細 小学、中学共にいじめの経験があり9年の内5年弱いじめられていたらしい。よくいじめていた主格の人物に対し一切証拠を残さずに物を隠す、捨てる、盗む等していたらしい。いじめられた結果人に対して失望、逆にどうすればそこまで他人を陥れるのかと興味を持つようになる。極度の人間不信であり、一切信用、期待しないと思いながらどうしても優しく接してしまい期待してしまうという自己矛盾を抱え悩んでいる。 また自身の拠り所となる存在を探しているが逆にどう接していいから分からずに受け身になってしまい、どう行けばいいのか分からない事に悩んでいるのだとか。 常に他者を想い他者の為に行動しようとするが他者のために行動するのは無意味と思う矛盾を抱え、今日もまたメンバー達の悩みや思いに耳を傾け助言している