約 1,857,974 件
https://w.atwiki.jp/demoinfo/pages/88.html
報告会「2018年夏 子どもたちの保養・チェルノブイリと福島」 http //ccfj.la.coocan.jp/saishin.html 汚染されていない土地で、安全な食べ物を食べて過ごす保養。 のびのびと遊ぶことで子どもたちの免疫機能は回復し、病気になりにくくなります。チェルノブイリと福島、それぞれの保養の現場から、子どもたちの様子と課題をお伝えします。 【プログラム】 「チェルノブイリの子どもたちの保養」佐々木真理(チェルノブリ子ども基金 事務局長) 「福島の子どもたちの保養」麻生治成(沖縄・球美の里 ボランティア) 「講演 放射線と健康」黒部信一(小児科医、未来の福島こども基金 代表、いわき・たらちねクリニック 顧問医師) 【日時】2018年12月1日(土)14:00〜16:00(開場13:30) 【会場】パルシステム東京 新宿本部7F 会議室 住所:新宿区大久保2-2-6ラクアス東新宿 最寄駅:都営大江戸線・東京メトロ副都心線「東新宿駅」B2出口から徒歩5分 http //www.palsystem-tokyo.coop/map/shinjuku_new.html 【定員】70名 【参加費】500円(資料代として) 【共催】チェルノブイリ子ども基金 未来の福島こども基金 【後援】生活協同組合パルシステム東京 【お申込・お問い合わせ】チェルノブイリ子ども基金 〒177-0041 東京都練馬区石神井町3-16-15-408 TEL/FAX 03-6767-8808 E-mail cherno1986@jcom.zaq.ne.jp ※当日緊急連絡先: 090-8725-6840 (当日10:00〜通話可能)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/39.html
欧州評議会・子どもに関わる面会交流に関する条約(2003年) 原文英語(平野裕二仮訳) 前文 欧州評議会の加盟国およびこの条約の他の署名国は、 子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する欧州条約(ETS NO. 105)を考慮し、 国際的な子の奪取の民事面に関する1960年10月25日のハーグ条約、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約を考慮し、 婚姻問題および子に対する両配偶者の親責任の問題についての管轄権ならびに判決の承認および執行に関する2000年5月29日の評議会規則(EC)No. 1347/2000を考慮し、 欧州評議会の種々の国際法文書および子どもの権利に関する1989年11月20日の国際連合条約第3条で定められているとおり、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないことを認め、 人権および基本的自由の保護に関する1950年11月4日の条約(ETS No. 5)第8条で保護されているとおり、子どもとその親および子どもと家族的つながりを有する他の者との面会交流を保障するためさらなる規定を設ける必要があることを認識し、 子どもの権利に関する国際連合条約第9条で、親の一方または双方から分離されている子どもが、子どもの最善の利益に反しないかぎり、定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ権利について定められていることを考慮し、 子どもの権利に関する国際連合条約第10条第2項で、異なる国々に居住する親をもつ子どもは、例外的な状況を除き、定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ権利について定められていることを考慮し、 親のみならず子どもも権利の保有者として認めることが望ましいことを認識し、 したがって、「子どもへのアクセス」の概念に代えて「子どもに関わる面会交流」の概念を用いることに合意し、 子どもの権利の行使に関する欧州条約(ETS No. 160)を考慮し、かつ、親および子どもと家族的つながりを有する他の者との面会交流に関わる事柄について子どもを援助するための措置を促進することが望ましいことを考慮し、 子どもは親のみならず子どもと家族的つながりを有する他の一定の者とも面会交流できる必要があること、および、親およびこれらの他の者が子どもの最善の利益を条件として子どもとの面会交流を維持することが重要であることに合意し、 とくにこの分野における国際文書の適用を促進する目的で、諸国が子どもに関わる面会交流に関する共通の原則を採用する必要があることに留意し、 子どもに関わる面会交流についての外国の命令を実施するために設置された機構は、これらの外国の命令の基礎となる原則が当該命令を実施する国における原則と同様のものである場合に、より満足のできる結果を生み出しやすくなることを認識し、 子どもと親および子どもと家族的つながりを有する他の者とが異なる国々に居住している場合に、司法機関に対し、越境面会交流をより頻繁に活用すること、および、当該面会交流が終了すれば子どもは返還されるという関係者全員の信頼感を高めることを奨励する必要があることを認め、 実効性のある保護措置および追加的保障を定めることにより、とくに越境面会交流の終了時に子どもの返還が確保される可能性が高まることに留意し、 とくに子どもに関わる越境面会交流についての解決策を用意するため、追加的な国際文書が必要とされていることに留意し、 子どもとその親および子どもと家族的つながりを有する他の者との面会交流を促進しおよび向上させ、ならびに、とくに越境面会交流に関わる事案における司法協力を促進するため、すべての中央当局その他の機関間の協力を確立することを望み、 次のとおり協定した。 第1章-条約の目的および定義 第1条-条約の目的 この条約は、次のことを目的とする。 a. 面会交流命令に適用されるべき一般的原則を決定すること。 b. 面会交流の適正な行使および面会交流期間終了時の子どもの即時返還を確保するための適切な保護措置および保障を定めること。 c. 子どもとその親および子どもと家族的つながりを有する他の者との面会交流を促進させおよび向上させるため、中央当局、司法機関その他の機関間の協力を確立すること。 第2条-定義 この条約の適用上、 a. 「面会交流」とは、次のことをいう。i. 子どもが、第4条または第5条に掲げられた者であって子どもが通常生活をともにしていない者のもとに限られた期間滞在し、または当該人物と会うこと。 ii. 子どもと当該人物との間の、いずれかの形態のコミュニケーション。 iii. 子どもについての情報を当該人物に対し、または当該人物についての情報を子どもに対し、提供すること。 b. 「面会交流命令」とは、面会交流に関わる司法機関の決定をいう。これには、面会交流に関わる取決めであって、権限ある司法機関によって確認され、または公正証書として公式に作成もしくは登録されかつ執行可能なものを含む。 c. 「子ども」とは、締約国においてその者に関する面会交流命令が発令または執行される可能性がある18歳未満の者をいう。 d. 「家族的つながり」とは、法律または事実上の家族的関係に基づく、子どもとその祖父母または兄弟との関係のような緊密な関係をいう。 e. 「司法機関」とは、裁判所、またはこれと同等の権限を有する行政機関をいう。 第2章-面会交流に適用される一般的原則 第3条-原則の適用 締約国は、面会交流命令を発令し、修正し、停止しまたは撤回する際にこの章に掲げられた原則が司法機関によって適用されることを確保するため、必要と考えられる立法上その他の措置をとる。 第4条-子どもとその親との面会交流 1.子どもおよびその親は、相互の定期的な面会交流を確保しかつ維持する権利を有する。 2.当該面会交流は、子どもの最善の利益のために必要な場合でなければ、制限しまたは禁止することができない。 3.親のいずれかとの監督なしの面会交流を維持することが子どもの最善の利益にかなわないときは、該当する親と監督付で対面しまたはその他の形態で面会交流を行なう可能性が検討される。 第5条-子どもとその親以外の者との面会交流 1.子どもの最善の利益にかなうことを条件として、子どもと、その親以外の者であって子どもと家族的つながりを有する者との面会交流を確立することができる。 2.締約国は、1に掲げられた者以外の者に対しても、自由にこの規定を拡大適用することができる。このような拡大適用を行なう際、国は、第2条aが定める面会交流のいずれの側面が適用されるか、自由に決定することができる。 第6条-情報を提供され、相談されかつ意見を表明する子どもの権利 1.国内法によって十分な理解力を有すると見なされる子どもは、その最善の利益に明らかに反する場合を除き、次の権利を有する。 関連のあらゆる情報を受け取る権利。 相談される権利。 自己の意見を表明する権利。 2.これらの意見ならびに確認可能な子どもの希望および気持ちは、正当に重視される。 第7条-面会交流に関わる紛争の解決 面会交流に関わる紛争の解決に際し、司法機関は、次の目的のため、あらゆる適当な措置をとる。 a. 双方の親に対し、その子どもとの定期的な面会交流を確立しおよび維持することがその子どもにとっておよび双方の親にとって重要であることについて、十分な情報が提供されることを確保すること。 b. 親および子どもと家族的つながりを有する他の者に対し、面会交流について、とくに家族調停その他の紛争解決手続を通じて友好的合意に達するよう、奨励すること。 c. 子どもの最善の利益にかなう決定を行ない、かつ必要なときは他の関連の機関または者からさらなる情報を得る目的で、決定の前に、とくに親責任を有する者からの十分な情報が活用できる状態にあることを確保すること。 第8条-面会交流に関する取決め 1.締約国は、適当と考える手段により、親および子どもと家族的つながりを有する他の者に対し、子どもに関わる面会交流に関する取決めを行ないまたは修正する際に第4条から第7条までに掲げる原則を遵守するよう奨励する。 2.司法機関は、国内法で別段の定めがあるときを除き、要請に基づき、子どもに関わる面会交流に関する取決めを確認する。ただし、当該取決めが子どもの最善の利益に反するときは、このかぎりでない。 第9条-面会交流命令の実行 締約国は、面会交流命令が実行されることを確保するため、あらゆる適当な措置をとる。 第10条-面会交流に関してとられる保護措置および保障 1.各締約国は、保護措置および保障を整備し、かつその使用を促進する。締約国は、当該締約国についてこの条約が効力を生じた後3か月以内に、この条約の第4条第3項および第14条第1項bに掲げられた保護措置および保障に加えて国内法で利用可能な、少なくとも3種類の保護措置および保障について、自国の中央当局を通じて欧州評議会事務総長に通告する。利用可能な保護措置および保障の変更については、可及的速やかに通告する。 2.事案の状況によって必要とされるときは、司法機関は、命令が実行されること、および、面会交流期間の終了時に子どもが通常の生活場所に返還されまたは子どもが不適正に連れ去られないことを確保する目的で、いつでも、面会交流命令をいずれかの保護措置および保障の対象とすることができる。 a. 命令が実行されることを確保するための保護措置および保障には、とくに次のものを含むことができる。面会交流の監督。 子どもおよび適当と考えられるときは子どもに付き添う他のいずれかの者の旅費および宿泊費を負担する義務。 子どもとの面会交流を求める者が当該面会交流を妨げられないことを確保するため、子どもと通常生活をともにしている者が供託すべき保証金。 子どもと通常生活をともにしている者が面会交流命令にしたがわない場合に科される金銭的制裁。 b. 子どもの返還を確保しまたは子どもの不適正な連れ去りを防止するための保護措置および保障には、とくに次のものを含むことができる。パスポートまたは身分証明書類の提出、および、適当なときは、面会交流を求める者が権限ある中央当局に対し面会交流期間中の当該提出について通知したことを示す書類の提出。 保証金。 裁判所に対する誓約書または約定書。 子どもと面会交流を行なう者が、面会交流地にある青少年福祉機関または警察署のような権限ある機関に、子どもとともに定期的に出頭する義務。 子どもとの面会交流を求める者が、監護命令もしくは面会交流命令またはその両方が執行可能である旨を承認しおよび宣言する、面会交流地である国によって発行された証明書を、面会交流命令が言い渡される前または面会交流が行なわれる前に提示する義務。 面会交流が行なわれる場所に関して条件を付すこと、および、適当なときは、子どもが面会交流地である国から出国することの禁止をいずれかの国内的または越境的情報システムに登録すること。 3.いかなる保護措置および保障も、書面により作成されまたは証明され、かつ面会交流命令または確認された取決めの一部をなすものとする。 4.保護措置および保障が他の締約国で実施されるときは、司法機関は、可能であれば、当該締約国において実施可能な形で当該保護措置および保障を命令する。 第3章-越境面会交流を促進しかつ向上させるための措置 第11条-中央当局 1.各締約国は、越境面会交流の事案においてこの条約が定める任務を履行するため、一の中央当局を指定する。 2.連邦制の国、二以上の法制を有する国または自治権のある領域的単位を有する国は、二以上の中央当局を指定し、かつその職務が及ぶ領域的または属人的範囲を定めることができる。二以上の中央当局を指定した国は、いずれかの連絡が自国内の適当な中央当局に転送されるよう、連絡先となる一の中央当局を指定する。 3.欧州評議会事務総長は、この条に基づいて行なわれたいかなる指定についても通告を受ける。 第12条-中央当局の職務 締約国の中央当局は、次のことをする。 a. 条約の目的を達成するため、相互に協力し、かつそれぞれの国内の権限ある機関(司法機関を含む)間の協力を促進すること。中央当局は、必要な最大限の迅速さをもって行動する。 b. この条約の運用を容易にする目的で、面会交流を含む親の責任に関する自国の法律についての情報、ならびに、第10条第1項にしたがってすでに定められているもの以外の保護措置および保障ならびに自国の利用可能なサービス(公的資金によるものその他の法律サービスを含む)に関するより詳細な情報、ならびに、これらの法律およびサービスのいずれかの変更に関わる情報を、要請に基づき、相互に提供すること。 c. 子どもの所在を明らかにするため、あらゆる適当な措置をとること。 d. 権限ある機関からの情報の要請および係属中の手続に関わる法律上または事実上の問題に関わる要請が確実に転送されるようにすること。 e. 条約の適用上生ずる可能性があるいずれかの困難について相互に十分な情報を得ているようにし、かつ、可能なかぎり、条約の適用の妨げとなる要因を解消すること。 第13条-国際協力 1.それぞれの権限の範囲内で行動する関係締約国の司法機関、中央当局および社会機関その他の機関は、越境面会交流に関する手続に関して協力する。 2.とくに、中央当局は、締約国の司法機関が相互に連絡し、かつこの条約の趣旨を達成するために必要と考えられる情報および援助を獲得することを援助する。 3.越境事案において、中央当局は、とくに、子ども、親および子どもと家族的つながりを有する他の者が越境面会交流に関する手続を開始することを援助する。 第14条-越境面会交流命令の承認および執行 1.締約国は、適用可能なときは関連の国際文書にもしたがい、次の制度および手続を設ける。 a. 面会交流および監護権について他の締約国で発令された命令を承認しおよび執行するための制度。 b. 面会交流および監護権について他の締約国で発令された命令が、その対象となる国において面会交流が行なわれる前に承認されかつ執行可能宣言を受けられるようにするための手続。 2.締約国が、外国の命令の承認もしくは執行またはその両方について条約の存在または相互主義を条件としているときは、締約国は、この条約を、外国の面会交流命令の承認もしくは執行またはその両方の法的根拠と見なすことができる。 第15条-越境面会交流命令の実施条件 他の締約国で発令された越境面会交流命令の実施地である締約国の司法機関は、当該面会交流命令を承認しもしくはその執行可能宣言を行なう際またはその後のいずれかの時点で、当該命令の実施の条件、および、当該面会交流の実行を容易にするために必要なときは当該命令に付されるいずれかの保護措置または保障を、当該命令の本質的要素が尊重されることを条件として、かつ、とくに状況の変化および関係者による取決めを考慮しながら、定めまたは修正することができる。いかなる状況においても、外国の決定について実質的再審査を行なうことはできない。 第16条-子どもの返還 1.面会交流命令に基づく越境面会交流期間の終了時に子どもが返還されないときは、権限ある機関は、要請に基づき、適用可能なときは国際文書および国内法の関連規定を適用することにより、かつ適当なときは面会交流命令に定められた保護措置および保障を実施することにより、子どもの即時返還を確保する。 2.子どもの返還に関する決定は、可能なときは常に、返還申請の日から6週間以内に言い渡すものとする。 第17条-費用負担 各締約国は、送還費用を除き、自国の中央当局自身が申請者のためにこの条約に基づいてとったいずれかの措置について、申請者によるいかなる支払いも請求しないことを約束する。 第18条-言語要件 1.関係中央当局間で締結されるいずれかの特別協定にしたがうことを条件として、 a. 対象国の中央当局への連絡は、当該国の公用語または複数の公用語の一で、または当該言語への翻訳を添付して行なう。 b. 対象国の中央当局は、aの規定に関わらず、英語もしくはフランス語で行なわれる連絡またはそのいずれかへの翻訳が添付された連絡を受理する。 2.対象国の中央当局からの連絡(実施された調査の結果を含む)は、当該国の公用語もしくは複数の公用語の一または英語もしくはフランス語で行なうことができる。 3.ただし、締約国は、欧州評議会事務総長に宛てた宣言により、自国の中央当局に送付されるいずれかの申請、連絡その他の文書においてこの条の1および2に基づいてフランス語または英語のいずれかを使用することに異議を申し立てることができる。 第4章-他の文書との関係 第19条-子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する欧州条約との関係 子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する1980年5月20日の欧州条約(ETS NO. 105)第11条第2項および第3項は、この条約の締約国でもある締約国間の関係においては適用されない。 第20条-他の文書との関係 1.この条約は、この条約の締約国が現に締約国であるまたは締約国になるものとされる他の国際文書であって、この条約が規律する事柄についての規定を含んでいる他の国際文書に影響を及ぼすものではない。とくに、この条約は次の法的文書の適用を妨げるものではない。 a. 未成年者の保護に関する公的機関の権限および準拠法に関する1961年10月5日のハーグ条約 b. 子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する1980年5月20日の欧州条約(ただし前掲第19条にしたがうことを条件とする) c. 国際的な子の奪取の民事面に関する1960年10月25日のハーグ条約 d. 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約 2.この条約のいかなる規定も、締約国が、この条約の規定を完全に履行しもしくは発展させまたはその適用分野を拡大する国際協定を締結することを妨げるものではない。 3.欧州共同体の加盟国である締約国は、その相互関係において共同体規則を適用するものとし、したがって、関係する特定の主題を規律する共同体規則が存在しない場合を除き、この条約から生ずる規則を適用しない。 第5章-条約改正 第21条-改正 1.締約国がこの条約について行なったいかなる改正の提案も、欧州評議会事務総長に送付され、事務総長により、欧州評議会加盟国、すべての署名国、すべての締約国、欧州共同体、第22条の規定にしたがってこの条約への署名を慫慂されたすべての国および第23条の規定にしたがってこの条約への加入を慫慂されたすべての国に送付される。 2.締約国が提案したいかなる改正案も欧州法的協力委員会(CDCJ)に通告され、同委員会は、閣僚委員会に対し、当該改正案についての意見を提出する。 3.閣僚委員会は、当該改正案およびCDCJから提出された意見を検討するものとし、欧州評議会加盟国以外のこの条約の締約国と協議した後、当該改正を採択することができる。 4.この条の3にしたがって閣僚委員会が採択した改正文は、受託のため、締約国に送付される。 5.この条の3にしたがって採択されたいかなる改正も、すべての締約国が改正の受託を事務総長に通告した日の後1か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第6章-最終条項 第22条-署名および発効 1.この条約は、欧州評議会加盟国、その作成に参加した非加盟国および欧州共同体による署名のために開放しておく。 2.この条約は、批准、加入または承認されなければならない。批准書、加入書または承認書は、欧州評議会事務総長に寄託する。 3.この条約は、少なくとも2か国の欧州評議会加盟国を含む3か国が、前項の規定にしたがって条約に拘束されることへの同意を表明した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 4.1に掲げられたいずれかの国または欧州共同体が、その後、条約に拘束されることへの同意を表明したときは、条約は、当該国または欧州共同体について、その批准書、加入書または承認書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第23条-条約への加入 1.この条約の発効後、欧州評議会閣僚委員会は、締約国との協議を行なった後、欧州評議会の非加盟国であって条約の作成に参加しなかったいかなる国に対しても、欧州評議会規程第20条dに定められた過半数による決定をもって、かつ閣僚評議会に出席する資格を有する締約国の代表の全会一致の投票をもって、この条約に加入するよう慫慂することができる。 2.条約は、加入したいかなる国についても、欧州評議会事務総長に加入書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第24条-領域的適用 1.いずれの国または欧州共同体も、署名時または批准書、受託書、承認書もしくは加入書の寄託時に、この条約が適用される単一のまたは複数の領域を特定することができる。 2.いずれの国も、その後のいかなる時点においても、欧州評議会事務総長に宛てた宣言によって、当該宣言で特定され、かつ国際的関係について自国が責任を負っているまたは自国が代わって保証を行なうことが認められている他のいずれの領域に対しても、この条約を新たに適用することができる。当該領域については、条約は、事務総長が当該宣言を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 3.1および2の規定に基づいて行なわれたいずれの宣言も、当該宣言で特定されたいずれの領域についても、欧州評議会事務総長に宛てた通告によって撤回することができる。撤回は、事務総長が当該通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第25条-留保 この条約のいかなる規定についても、いかなる留保も付すことができない。 第26条-廃棄 1.いかなる締約国も、欧州評議会事務総長に宛てた通告を行なうことによって、いつでもこの条約を廃棄することができる。 2.当該廃棄は、事務総長が通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第27条-通告 欧州評議会事務総長は、欧州評議会加盟国、すべての署名国、すべての締約国、欧州共同体、第22条の規定にしたがってこの条約への署名を慫慂されたすべての国および第23条の規定にしたがってこの条約への加入を慫慂されたすべての国に対し、次の事項を通告する。 a. すべての署名。 b. すべての批准書、受託書、承認書または加入書の寄託。 c. 第22条および第23条にしたがってこの条約が効力を生ずるすべての日付。 d. 第21条にしたがって採択されたすべての改正および当該改正が効力を生ずる日付。 e. 第18条に基づいて行なわれたすべての宣言。 f. 第26条の規定にしたがって行なわれたすべての廃棄。 g. とくにこの条約の第10条および第11条に関わる他のいずれかの行為、通告または連絡。 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。 2003年5月15日、ストラスブールにおいて、ひとしく正文である英語およびフランス語により本書1通を作成した。本書は、欧州評議会に寄託する。欧州評議会事務総長は、欧州評議会の各加盟国、この条約の作成に参加した非加盟国、欧州共同体およびこの条約に加入するよう慫慂されたすべての国に対し、その認証謄本を送付する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月11日)。/「面接交渉」を「面会交流」に修正(2022年1月11日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/187.html
総括所見:タイ(OPSC・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/THA/CO/1(2012年2月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月25日に開かれた第1683回会合(CRC/C/SR.1683参照)においてタイの第1回報告書(CRC/C/OPSC/THA/1)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1697回会合(CRC/C/SR.1697参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPSC/THA/Q/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直かつ建設的な対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関わる分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに人身取引禁止法(2008年)を歓迎する。 5.委員会はまた、選択議定書の実施を促進する制度の創設ならびに国家的計画およびプログラムの採択に関して達成された進展も歓迎するものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 「女性および子どもの人身取引の防止および抑止に関する国家的政策および行動計画(2012~2016年)」の採択。 (b) 「子どもの商業的性的搾取の防止および抑止に関する国家的政策および行動計画」の採択(1996年)。 6.加えて委員会は、以下の国際人権文書が批准されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)(2001年)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号(1999年)条約(2001年)。 III.データ 7.委員会は、訴追件数、人身取引および強制労働の被害者数および援助を受けた子どもの人数に関して締約国から提供されたデータを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、選択議定書上の犯罪に関するデータ収集が依然として一般的かつ断片的でありかつ深刻に制限されていること、および、条約に基づく委員会の総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)で指摘したように条約および両選択議定書を網羅する効果的なデータ収集システムが存在しないことを、依然として懸念するものである。委員会はとりわけ、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地域ならびに社会経済的地位によって細分化されたデータならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する情報が存在しないことにより、選択議定書上の犯罪を監視し、評価しかつ防止する締約国の能力が非常に制約されていることを懸念する。 8.委員会は、締約国が、条約に基づく総括所見で指摘されているように条約および両選択議定書が対象とするすべての分野を網羅したデータの収集、分析、監視および影響評価に関する、包括的な、調整のとれた、かつ効果的なシステムを発展させかつ実施するための努力を強化するよう、勧告する。データは、選択議定書上の犯罪の被害を受けるおそれがある子どもにとりわけ注意を払いながら、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地域ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。罪種別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会は、締約国が、前掲の勧告についてとくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的支援を求めることを検討するよう、勧告する。 IV.実施に関する一般的措置 立法 9.委員会は、選択議定書上の犯罪の定義が、法律として位置づけられていない2005年11月23日の省令で定められているのみであることを遺憾に思う。委員会は、締約国の立法において、選択議定書上のすべての犯罪が適正に定義されているわけではないことを懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書と調和させるための努力を行なうよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、選択議定書第2条および第3条にしたがって、選択議定書上のすべての犯罪について法律で明確な定義を定め、かつこれらの犯罪を禁止するよう促すものである。 国家的行動計画 11.委員会は、国家人身取引対策行動計画(2005~2010年)が採択されたこと、および、やはり人身取引をとくに対象とし、選択議定書上の犯罪の一部も網羅している新たな行動計画(2012~2016年)が最近採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの計画が選択議定書上のすべての犯罪を網羅しておらず、人身取引関連の犯罪のみに限定されていることを懸念するものである。委員会はまた、条約に基づく総括所見で指摘されているように、「国家子ども・若者育成計画(2012~2016年)」で選択議定書上の締約国の義務も取り上げられているかに関する情報がないことも遺憾に思う。委員会はまた、2005~2010年の計画に基づく諸プロジェクトについて2008年に実施された評価の成果に関する情報がないことも、遺憾に思うものである。 12.条約に基づく総括所見を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての問題をとくに対象とした包括的な行動計画を「国家子ども・若者育成計画(2012~2016年)」に含めるとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会は、締約国が、その際、現行の行動計画に基づく諸プロジェクトの評価および検討の結果を考慮に入れるよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された第1回・第2回・第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に注意を払うよう勧告する。 調整および評価 13.委員会は、弱者の福祉促進・保護・エンパワーメント局(社会開発・人間安全保障省(MSDHS)内)および国家子ども保護委員会を含むいくつかの調整機関を締約国が挙げたことに留意する。委員会は、条約に基づく総括所見のパラ13および14を参照しつつ、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施がMSDHS内の諸機関に割り当てられており、かつ、条約および選択議定書に基づく、国および国以外のあらゆる関連の主体の活動の調整を担当する全般的な調整機構が存在しないことを、懸念するものである。 14.委員会は、条約に基づく総括所見のパラ13および14を参照しつつ、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するとともに、条約およびその選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の実施の監視および評価に関して、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告する。 普及および意識啓発 15.委員会は、選択議定書がタイ語に翻訳され、かつ、2001年以降さまざまな機関(政府機関、非政府機関、地方行政機関およびメディアならびに全国のさまざまな学術機関および地方行政機関〔ママ〕を含む)に対して普及されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において選択議定書に関する体系的かつ包括的な普及および意識啓発活動が行なわれていないことにより、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間における、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの犯罪に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) コミュニティ、子どもおよび被害を受けた子どもと緊密に協力しながら、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止措置および有害な影響に関する広報教育プログラムを発展させること。 (b) 関連するすべての専門家集団、とくに警察官、裁判官、検察官、メディア代表およびソーシャルワーカーならびに子ども保護機関の構成員の間で選択議定書を体系的に普及すること。 研修 17.委員会は、内務省、教育省、法務省、保健省および社会開発・人間安全保障省、検察庁、タイ王立警察ならびにいくつかの非政府組織によって実施された、条約および選択議定書に関する意識強化措置および研修に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(国家子ども保護委員会の委員、保健省、法務省および内務省で子どもの権利について活動している公務員、警察、ソーシャルワーカーならびに裁判官および検察官を含む)が、選択議定書の規定にとくに関連する体系的な、十分な、かつ対象の明確な研修を受けているかどうかに関する情報がないことを遺憾に思うものである。委員会はさらに、これらの研修プログラムの効果に関する評価が行なわれていないことに、特段の懸念とともに留意する。 18.委員会は、コミュニティおよびその他の関係者の関与を得た参加型のプロセスを通じて開発された、選択議定書で対象とされているすべての分野に関する学際的な研修プログラムに対し、締約国が十分なかつ対象を明確にした資源を配分するよう勧告する。このような研修は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団、省庁および機関を対象として行なわれるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、研修プログラムの効果および関連性を高める目的で、選択議定書に関するすべての研修プログラムについて組織的評価が行なわれることを確保するよう、促す。 資源配分 19.人身取引被害者のケアおよび援助のための予算配分額には留意しながらも、委員会は、担当省庁が選択議定書を実施するための活動に割り当てられた、明確に特定可能な予算配分額についての情報が、締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。加えて委員会は、国家子ども保護委員会および挙げられた他の調整機関の予算上のニーズおよび配分額に関する情報がないことを遺憾に思うものである。 20.委員会は、選択議定書の実施のために十分な資源が配分されることを確保する目的で、締約国があらゆる可能な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、子ども保護委員会、法執行機関および社会保護センターに対し、選択議定書に関する活動のために必要な十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されるべきことを勧告するものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 21.委員会は、すべての者、とくに脆弱な立場に置かれた集団が教育に平等にアクセスできるようにするための締約国の努力、および、労働市場における子どもの搾取を防止するためにとられている措置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、売春が違法であるとはいえ、この法律がほとんど無視されており、かつ多数の子どもを関与させる形で売春が非常に堂々と行なわれていること、および、汚職が行なわれており、かつ子どもの性売買に関与する警察官の事案があるためにこの問題が助長されていることを、懸念するものである。委員会は、締約国の現行法、行政措置、社会政策およびプログラムが不十分であり、子どもがこれらの犯罪の被害者となることの十分な防止につながっていないことを懸念する。 22.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止を目的とした法律(およびとくに現行法の執行)ならびに行政措置、社会政策およびプログラムを強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、警察官、とくに子どもの性売買に関与している警察官の汚職事件を防止しかつ訴追するためにあらゆる必要な措置をとることも、勧告するものである。 子どもセックス・ツーリズム 23.委員会は、疑わしい行動をする者または動機が疑わしい者の入国の制限、および、県観光局および民間観光部門関係者を対象とする研修の実施など、子どもセックス・ツーリズムを防止するために締約国がとっている措置を歓迎する。しかしながら、締約国における子どもセックス・ツーリズムの問題に鑑み、委員会は、子どもセックス・ツーリズムを防止しかつ子どもを被害から保護するための十分な立法上および行政上の手続ならびに社会政策が存在しないことを、懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムを防止しかつ根絶するため、効果的な規制の枠組みを定めかつ実施するとともに、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの防止および根絶のための多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力を強化するよう、奨励するものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間で観光名誉憲章およびWTO〔世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促す。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 25.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもの売買の犯罪を構成するすべての要件が締約国の法律で明確に定義されているわけではないこと。 (b) 児童ポルノの犯罪について規制している法律が、いまのところ、児童ポルノについて具体的に触れていない一般的なコンピューター犯罪統制法(2007年)および出版登録法(2007年)のみであること。 26.委員会は、締約国が引き続き刑法その他の関連法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう、勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもの売買(とくに、選択議定書第3条1項(a)(i)b.、1項(a)(i)c.、1項(a)(ii)および第5条にしたがい、不法な養子縁組、強制労働に子どもを従事させること、および、利得を目的とした子どもの臓器移植のための子どもの売買)を選択議定書にしたがって定義しかつ犯罪化すること。 (b) 児童ポルノに関する刑法の規定を改正し、選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させること。 不処罰 27.委員会は、選択議定書に定められたすべての犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関して締約国報告書で包括的データが提供されなかったこと、および、人身取引の訴追件数が少ないことを懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪が捜査されることおよび容疑者が訴追されかつしかるべき制裁を科されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会は、締約国が、選択議定書に定められた犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を、次回の定期報告書で提供するよう勧告するものである。 裁判権および犯罪人引渡し 29.委員会は、締約国の法律において、選択議定書第4条2項に掲げられたすべての場合について域外裁判権が明示的に認められているわけではないことを、遺憾に思う。委員会はまた、選択議定書上の犯罪について裁判権を行使するためには双方可罰性が必要とされていることも、遺憾に思うものである。犯罪人引渡し法(2008年)、および、法定刑が死刑または1年以上の収監刑である犯罪について14か国との間に締結された犯罪人引渡し協定には留意しながらも、委員会は、選択議定書が犯罪人引渡しの法的根拠として援用されていないこと、および、犯罪人引渡しのためには締約国と申請国との間に条約が締結されていなければならないとされていることを、懸念する。 30.委員会は、締約国が、国内法により、選択議定書上の犯罪について域外裁判権(双方可罰性の基準が満たされない場合の域外裁判権も含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書が犯罪人引渡しの法的根拠となると見なすよう勧告するものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 31.売春防止・抑止法(1996年)、女性および子どもの人身取引の防止・抑止対策(1997年)および人身取引禁止法(2008年)に被害者への援助が含まれていることには留意しながらも、委員会は、人身取引被害者だけではなく、選択議定書で禁じられたすべての犯罪の被害を受けた子どもを特定するためにとられた措置についての情報がないことを、遺憾に思う。委員会はさらに、送還の過程で、人身取引の被害を受けた子どもがその意に反して非常に長期間収容されることが多く、その結果、このような子どもが、シェルターを退所して母国に帰還する許可を得るために警察に虚偽の証言を行なう事態が生じていることを、懸念するものである。委員会はさらに、ビデオ録画による早期の宣誓証言が法律で認められているにも関わらず、裁判官が、子どもの被害者または証人によるこのような証言を認容することに消極的であり、しばしば子どもの出廷を要請する場合があることを、懸念する。 32.委員会は、締約国が、選択議定書に定められたすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための措置を強化し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法執行機関、関連省庁および子ども保護委員会間の協力のための機構を設置する等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを早期に特定するための機構および手続を設けること。 (b) 人身取引の被害を受けた子どもが退去強制まで長期間待機させられないことを確保すること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもまたは当該犯罪の証人である子どもによる証言の録画ビデオが常に証拠として認容されることを確保するため、法律を強化すること。 被害者の回復および再統合 33.委員会は、締約国が列挙する再統合プロジェクトとは、外国のドナー機関、国連機関および非政府組織から資金が拠出されているプロジェクトであることに留意する。委員会は、国が運営するリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムならびに被害を受けた子どものためのシェルターについての情報がないことを、遺憾に思うものである。委員会は、人身取引被害者への補償のための基金を確保した旨の締約国の情報に留意しつつ、人身取引および選択議定書上のその他の犯罪の被害者が補償を受けた事例についての情報がないことを遺憾に思う。 34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもへの援助および支援を確保しかつ調整する、政府機関の能力を強化すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに対して適切な援助(このような子どもの全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のための援助を含む)が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、加害者から被害賠償を得られない事案のために被害者補償基金を設置すること。 (d) これらの勧告の実施についてユニセフおよび国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。 ヘルプライン 35.条約に基づく総括所見を参照しつつ、委員会は、締約国が、効率性を高めるため、既存のヘルプラインを単一の全国的ヘルプラインに統合することを検討するよう、勧告する。当該ヘルプラインは、国全体を網羅し、24時間アクセスでき、覚えやすい3~4ケタの番号を有し、かつ、十分な財源および技術的資源、ならびに、子どもに対応し、かつ適切な行動のために通話を分析する訓練を受けた要員を備えたものであるべきである。 VIII.国際的な援助および協力 36.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 37.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局ならびにそれぞれ中央および地区に設置されている子ども保護委員会およびその他の調整機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 38.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 39.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/254.html
移住労働者権利委員会・一般的意見2号:非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利 国連子どもの権利委員会の関連文書一般的意見6号(2005年):出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い 一般的討議勧告(2012年):国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会 CMW/C/GC/2(2013年8月28日/原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 目次 I.はじめに(パラ1-5) II.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する規範的枠組み(パラ6-12)A.条約第3部(パラ6) B.その他の国際法文書(パラ7-12) III.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利に関連する条約上の保護(パラ13-79)A.基本原則(パラ13-17)1.入国および滞在を規制する権限(パラ13) 2.法令遵守義務(パラ14) 3.正規化(パラ15-16) 4.国際協力(パラ17) B.差別の禁止(第2部)(パラ18-20) C.市民的および政治的権利の保護(第3部)(パラ21-59)1.暴力からの保護(パラ21-22) 2.恣意的な逮捕および拘禁からの保護(パラ23-35) 3.非人道的な取扱いからの保護(パラ36-47) 4.追放手続における保護(パラ48-59) D.経済的、社会的および文化的権利の保護(第3部)(パラ60-79)1.労働の搾取からの保護(パラ60-66) 2.社会保障に対する権利(パラ67-71) 3.緊急医療ケアに対する権利(パラ72-74) 4.教育に対する権利(パラ75-79) I.はじめに 1.国際的情報源によれば、世界の国際移住者の10~15%は非正規な状態にあると推定される [1]。もっとも、非正規移住の性質そのものにより、この現象の規模についての信頼に足るデータを見出すのは困難である。就労先を求める多数の若年男性(若年女性も増加しつつある)を開発途上国経済が吸収できない一方で、人口の減少および高齢化により先進国の労働人口は減少しており、そのため多くの経済部門で低技能および中技能の移住労働者への需要が生み出されている。しかし、正規の移住経路はその需要に見合う形で拡大されていない。その結果、雇用者はしばしば、不足を補うために非正規な状態にある移住労働者を頼りにすることとなる。 [1] International Labour Office, International Labour Migration A rights-based approach (2010), p. 32. 2.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員が自国の領域に入りまたは滞在することを抑止するため、各国は、非正規移住の犯罪化、行政拘禁および追放のような抑圧的措置にますます頼るようになりつつある。非正規移住の犯罪化は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族は「不法な」二級の個人であり、または職および社会給付を求める不公正な競争相手であるという公衆の見方を助長促進することにより、反移民的な公的言説、差別および外国人嫌悪を煽ることにつながる。さらに、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員は、公共役務の提供者もしくはその他の公的職員によってまたは私人によって出入国管理当局に通報されることを恐れながら生活しているのが一般的であり、そのため基本的人権へのアクセスおよび司法へのアクセスを制限され、かつ労働その他の態様の搾取および人権侵害の被害をいっそう受けやすい立場に置かれる。 3.「非正規な状態にある移住労働者」という用語は、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(以下「条約」)第5条で定義されている。同条の定めによれば、移住労働者またはその家族構成員は、就業国の法律およびその国が当事国である国際協定にしたがい、入国し、滞在しまたは報酬を得る活動に従事することを許可されていないときは、資格外であるまたは非正規な状態にあるとみなされる。 4.委員会は、「非正規な状態にある」(in an irregular situation)または「資格外(である)」(non-documented)という用語が、これらの者の地位に言及する際の適正な用語法であるとの見解に立つ。非正規な状態にある移住労働者について説明するのに「不法(な)」(illegal)の語を用いることは、これらの者を犯罪と関連づけて考えることによってスティグマにつながる傾向にあるため、不適切であり、避けるべきである [2]。 [2] 国連総会決議3449、パラ2参照。 5.移住労働者の状態は、正式に認められていないやり方で就業国に入国したことからその国で滞在し、在留しまたは働くことを許可されていないために非正規なものとなることもあれば、滞在許可期限を超過し、もしくはその他の点で滞在許可条件に違反したために非正規なものとなることもある。正規な移住者も、疾病のため、または自分自身もしくは家族構成員に影響を与えるその他の予見不可能な事情により、自らの過失によらずにその地位を失うことがありうる。委員会は、移住者が、その滞在態様の如何を問わず、非正規な状態にあることを理由として条約第3部で保護されている基本的権利を奪われることがあってはならないことを強調するものである。 II.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する規範的枠組み A.条約第3部 6.条約第3条は、非正規な状態にある者を含む、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利を保護している。第3部で保護されている権利のほとんどは、市民的および政治的権利に関する国際規約ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約を含む一群の国際人権条約と共通である。第3部で保護されている市民的および政治的権利のなかで、身体の自由および安全についての移住労働者の権利(第16条)ならびに自由を奪われた移住労働者が人道的に取り扱われる権利(第17条)は、この権利保有者集団の状況を考慮して文脈に応じた修正が行なわれている。やはり他の人権条約では明示的に保護されていない移住労働者の具体的権利としては、身元関連の書類を不正に没収されまたは破棄されることからの保護(第21条)、ここの追放手続における手続的保障(第22条)ならびに領事的または外交的保護および援助を求める権利(第23条)が含まれる。すべての移住労働者の経済的、社会的および文化的権利のなかでは、文化的アイデンティティを尊重される権利(第31条)ならびに就業国での滞在の終了時に所得および貯蓄を移転する権利(第32条)が条約に固有である。加えて、第3部では情報についての権利が定められており(第33条)、かつ就業国または通過国の法律を遵守するすべての移住労働者およびその家族構成員の義務が確認されている(第34条)。 B.その他の国際法文書 7.委員会は、条約は保護の最低基準を定めているにすぎないことに留意する。第81条第1項では、締約国が、移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)に対し、当該締約国の法律もしくは実務によって、または当該締約国について効力を有するいずれかの二国間条約もしくは多国間条約によって、この条約に掲げられたものよりも有利な権利または自由を認めることは、何によっても妨げられないと規定されている。委員会は、条約に基づく国の義務は、その国が締約国となっている中核的人権条約および他の関連の国際文書との関係で理解されなければならないとの見解に立つものである。これらの条約は、それぞれ別でありかつ独立しているとはいえ、補完し合い、かつ相互に強化し合っている。 8.非正規な状態にある移住者に対して他の国際人権条約で保障されている権利は、条約第3部に掲げられた対応する権利よりも範囲が広いことが多い。これらの条約には追加的権利も掲げられている。これらの条約で保障されている権利は、一般的には、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生またはその他の地位(在留資格を含む)に関わるいかなる種類の差別もなく、すべての者(移住者および国民でないその他の者を含む)に適用される。 9.たとえば、市民的および政治的権利に関する国際規約は、平和的集会に対する権利、自由に婚姻する権利ならびに配偶者間の権利および責任の平等に対する権利、特別な保護に対するすべての子どもの権利、法律の前の平等および法律による平等な保護に対する権利ならびにマイノリティの諸権利について、より幅広い範囲の保護を規定している。加えて、規約に掲げられたその他の権利(結社および労働組合を結成する権利ならびに家族の保護に対する権利など)は、正規な状態にあるか非正規な状態にあるかにかかわらず、すべての移住労働者に適用されるものである。他方、条約では正規な状態にある移住労働者と非正規な状態にある移住労働者が区別されている。規約および条約のいずれも、移動の自由および居所の選択の自由に対する移住者の権利は、当該移住者が締約国の領域内に合法的にいるかぎりで保護している。 10.同様に、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約も、同盟罷業をする権利、自由に婚姻する権利、母性保護に対する権利、子どもおよび青少年の特別な保護に対する権利、十分な生活水準(十分な食料および衣服を含む)に対する権利ならびに一定の文化的権利を含む、より幅広い一連の権利を定めている。条約は、正規な状態にある移住労働者との関係でしか、このような権利について定めていない。加えて、規約は、労働の権利、職業指導および職業訓練に対する権利、労働組合を結成する権利、家族の保護に対する権利、居住の権利ならびに文化的生活に参加する権利を認めている。条約は、正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員との関係ではこれらの権利を認めている。加えて、条約第3部に掲げられた経済的、社会的および文化的権利のほとんどは、それに対応する規約上の権利よりも適用範囲が狭い。 地域人権条約 11.地域人権条約は、すべての移住者をルフールマン〔移住者の生命・自由等が脅かされるおそれのある国への追放・送還〕 [3] および集団的追放 [4] から保護している。しかし、個別の追放手続における手続的保障措置として地域人権条約に掲げられているものが適用されるのは、締約国の領域内に合法的にいる移住者のみである [5]。欧州社会憲章で保護されている諸権利は、「外国人(他の締約国の国民であって関係締約国の領域内に合法的に居住しまたは正規に労働する者に限る)」または「合法的にその領域内にいる」移住労働者もしくはその家族に適用される [6]。ただし、欧州社会権委員会の見解では、欧州社会憲章は、在留資格を有していない子どもの移住者のうち脆弱な立場に置かれたカテゴリーの子どもにも適用されるとされる。さらに、教育に対する権利は、すべての地域人権システムにおいて、移住者としての地位の如何を問わず、移住者であるすべての子どもに保障されている [7]。 [3] 欧州人権条約第3条、米州人権条約第22条(8)、人および人民の権利に関するアフリカ憲章(アフリカ憲章)第5条参照。 [4] 欧州人権条約第4議定書第4条、米州人権条約第22条(9)、アフリカ憲章第12条(5)、アラブ人権憲章(アラブ憲章)第26条(1)参照。 [5] 欧州人権条約第7議定書第1条、米州人権条約第22条(6)、アフリカ憲章第12条(4)、アラブ憲章第26条(2)参照。 [6] 欧州社会憲章第19条(4)-(9)および附則参照。 [7] 欧州人権条約第1議定書第2条(欧州人権条約第14条とあわせて解釈した場合)、アフリカ憲章第17条(1)、子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章第11条参照。また、改正欧州社会憲章第17条(2)に関する欧州社会権委員会の先例、米州人権条約第19条に関する米州人権裁判所の判例も参照。 国際労働機関 12.国際労働機関(ILO)の国際労働会議が採択する国際労働基準は、別段の定めがある場合を除き、非正規な状態にある者を含む移住労働者に適用される。8つのILO基本条約 [8] に掲げられた労働における基本的原則および権利は、国籍および移住者としての地位の如何を問わず、すべての移住労働者に適用される。労働における基本的原則および権利に関するILO宣言(1998年)ならびにそのフォローアップにより、ILOのすべての加盟国は、これらの条約に掲げられた基本的権利に関わる原則を促進しかつ実現するよう要求されているところである。雇用、労働監督、社会保障、賃金保護、職業上の安全および健康の分野ならびに農業、建設業、旅館および飲食店ならびに家事労働等の部門における、一般的に適用される他の多くのILO基準および移住労働者についての具体的規定を掲げる基準は、非正規な状態にある移住労働者にとって特段の重要性を有する [9]。最後に、労働移動および非正規な状態にある移住労働者の保護についての国内法および国際政策を立案するに際し、各国は、就労目的の移住に関するILO第97号改正条約(1949年)[10]、劣悪な条件の下にある移住ならびに移住労働者の機会および待遇の均等の促進に関するILO第143号条約(1975年)ならびにこれらに付属する第86号勧告および第151号勧告も指針としなければならない。 [8] 強制労働に関する第29号条約(1930年)、強制労働の廃止に関する第105号条約(1957年)、就業が認められるための最低年齢に関する第138号条約(1973年)、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する第182号条約(1999年)、結社の自由および団結権の保護に関する第87号条約(1948年)、団結権および団体交渉権に関する第98号条約(1949年)、同一報酬に関する第100号条約(1951年)、差別(雇用および職業)に関する第111号条約(1958年)。 [9] たとえばILO条約第19号、第91号、第95号、第110号、第121号、第129号、第131号、第155号、第167号、第172号、第181号、第184号、第189号、第200号および第201号。 [10] 第97号条約は、原則としてある国の領域内に合法的にいる移住労働者にしか適用されないが、締約国に対し、移住労働者が非正規な状態に陥るのを防止する効果を有する措置をとるよう求める若干の規定も含まれている。 III.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利に関連する条約上の保護 A.基本原則 1.入国および滞在を規制する権限 13.条約は、国境を管理し、かつ移住労働者およびその家族構成員の入国および滞在を規制する締約国の主権と、条約第3部に定めるすべての移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)の権利の保護との均衡を図っている。この均衡は条約第79条に反映されている。 2.法令遵守義務 14.条約第34条は、条約の第3部のいかなる規定も、移住労働者およびその家族構成員の、いずれかの通過国および就業国の法令を遵守する義務またはこれらの国の住民の文化的アイデンティティを尊重する義務を免除する効果を有するものではない旨、定めている。就業国またはいずれかの通過国の法令を遵守する義務には、国の安全、公の秩序または他の者の権利および自由に対するいかなる敵対行為もとらない義務が含まれる。 3.正規化 15.条約第35条は、第3部においてすべての移住労働者およびその家族構成員の権利が移住者としての地位の如何を問わず保護されていることについて、非正規な状態にある移住労働者またはその家族構成員の状態が正規化されることまたはそのような正規化に対する何らかの権利があることを意味するものとして解釈することはできない旨、明らかにしている。締約国は、移住労働者またはその家族構成員の状態を正規化する義務は負っていないものの、自国の領域内にいる移住労働者またはその家族構成員が非正規な状態にあるときは常に、当該状態が固定化されないことを確保するための適切な措置をとらなければならない(第69条第1項)。したがって締約国は、これらの者の入国の事情、滞在期間および関連の考慮事項(とくにその家族状況に関連するもの)を顧慮しながら、適用される国内法および二国間または多国間の協定にしたがい、個別事案ごとにこれらの者の状態を正規化する可能性を検討するものとされる(第69条第2項)。締約国が国内法で移住労働者の正規化について定めている場合、非正規な状態にあるすべての移住労働者およびその家族構成員が当該正規化手続に差別なく効果的にアクセスできること、および、当該手続が恣意的に適用されないことを確保しなければならない(第7条および第69条)。 16.委員会は、正規化が、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員が有する極度の脆弱性に対応するもっとも効果的な措置であることを想起する [11]。したがって締約国は、移住労働者およびその家族構成員が非正規な状態に置かれ、またはそのような状態に陥るおそれがある状況を回避しまたは解決するための政策(正規化プログラムを含む)を検討するべきである。 [11] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ52。 4.国際協力(第4部) 17.締約国は、国際移住の健全、公正、人道的かつ合法的な条件を促進するにあたって協力するものとされる(第64条第1項)。移住労働者およびその家族構成員が、労働市場の――あらゆる技能水準に関する――実際のニーズまたは想定されたニーズおよび資源に基づいた正規の移住経路にアクセスできることを確保する、調整のとれた政策(第64条第2項)は、そのような協力の重要な要素である。正規の移住経路を利用可能とすることにより、締約国は、不法なまたは秘密裏に行なわれる移動および非正規な状態にある移住労働者の就労を防止しかつ解消するという目的(第68条)にも貢献することになる。 B.差別の禁止(第2部) 18.差別の禁止の原則は、あらゆる国際人権文書および国際連合憲章の中核である。条約第7条は、差別禁止事由に国籍を明示的に含めている。諸条約機関も、差別の禁止について、法律上の地位および資格の有無の如何を問わず、移住労働者を含む国民でない者も含まれると解釈してきた [12]。条約第3部に掲げられた権利は、非正規な状態にある者を含む、すべての移住労働者およびその家族構成員にも適用される。したがって、国籍または移住者としての地位に基づくいかなる異なる待遇も、そのような待遇の理由が法律で定められており、条約上の正当な目的を追求するものであり、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例している場合を除き、差別に相当する [13]。 [12] 経済的、社会的および文化的権利における差別の禁止に関する社会権規約委員会の一般的意見20号(2009年)、パラ30。 [13] 差別の禁止に関する自由権規約委員会の一般的意見18号(1989年)、パラ13、および、教育への権利〔経済的、社会的および文化的権利における差別の禁止〕に関する社会権規約委員会の一般的意見20号、パラ13参照。 19.第7条は、締約国に対し、条約で定められた権利を、すべての移住労働者およびその家族構成員に対し、差別なく「尊重しかつ確保する」ことを要求している。第7条は自律的権利を規定したものではない。その適用は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利であって、条約(およびとくに第3部)で保護されているものに限定されている。第7条は法律上の差別および事実上の差別の両方を対象とするものである。この文脈において、法律上(de jure)とは法律に存在している差別をいい、また事実上(de facto)とは、公式にまたは法的に認められてはいなくとも事実として存在しておりまたは〔差別的〕効果を有している差別をいう。締約国は、自国の法令および行政実務において移住労働者およびその家族構成員が差別されないことを確保することにより、差別の禁止を尊重しなければならない。委員会は、法律上の差別に対応するだけでは事実上の平等を確保することにならないとの見解をとるものである。したがって、締約国は、移住労働者に対する事実上の差別を引き起こしまたは固定化する諸条件および態度を防止し、減少させかつ解消するための積極的措置をとることにより、すべての移住労働者を対象として条約上の権利を保護しなければならない。 20.第7条は、移住労働者に対する直接差別および間接差別の両方を禁じている。他の国際人権機構の先例にしたがい、移住労働者に対する間接差別は、法律、政策または実務が、額面通りには中立のように見えても、移住労働者の権利に対して不相応な影響を及ぼす場合に生ずる〔ものとする〕。たとえば、就学のために出生証明書を要求することは、そのような証明書を所持していないことが多い(またはその発給を拒否された)非正規な状態にある移住労働者に、不相応な影響を及ぼす場合がある。 C.市民的および政治的権利の保護(第3部) 1.暴力からの保護 21.非正規な状態にある移住労働者、とくに女性は、私人(雇用主を含む)および国の官吏の双方から不当な取扱いおよびその他の形態の暴力(たとえば性暴力、殴打、脅迫、心理的虐待および医療ケアへのアクセスの否定を含む)を受けるおそれがいっそう高い状況に置かれる。締約国は、第16条第2項に基づき、すべての移住労働者およびその家族構成員を暴力、身体的傷害、脅迫および威嚇(公務員によるものか、私人、私的集団または私的組織によるものかを問わない)から保護する義務を負う。この義務により、締約国は以下の措置をとるよう要求される。 (a) そのような行為を禁止する法律を採択しかつ実施すること。 (b) 虐待および暴力の事件を効果的に捜査すること。 (c) 責任者を訴追し、かつ適切な刑罰を持って処罰すること。 (d) 被害者およびその家族構成員に対し、十分な賠償を行なうこと。 (e) 公務員を対象として人権研修を実施すること。 (f) そのような行為を防止する目的で、国の代理機関の行為を効果的に監視し、かつ私人および私的主体の行為を規制すること。 22.締約国はまた、ヘイトクライム、憎悪の扇動およびヘイトスピーチ(政治家によるものおよびメディアにおけるものを含む)など、移住労働者およびその家族構成員(とくに非正規な状態にある者)に対する人種主義、外国人嫌悪または関連の不寛容のあらゆる表出と闘うこと、ならびに、そのような行為の犯罪的性質に関する公衆の意識を高め、かつ移住労働者の人権の尊重を促進することを目的とした、効果的な措置をとることも要求される。 2.恣意的な逮捕および拘禁からの保護 23.第16条は、身体の自由および安全に対する移住労働者およびその家族構成員の権利を保護する(第1項)とともに、移住労働者の身元管理は法律の定める手続を遵守して行なわれなければならない旨、定めている(第3項)。第16条第4項は市民的および政治的権利に関する国際規約第9条第1項を補完するものだが、移住労働者およびその家族構成員は、「個別にも集団的にも」恣意的な逮捕または拘禁の対象にされないことを付けくわえている。移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)の逮捕および拘禁は、恣意的にならないため、法律によって定められ、条約上の正当な目的を追求しており、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例していなければならない。 24.委員会は、ある国の国境を公的に認められていないやり方でもしくは適正な書類を所持せずに越えることまたは滞在許可期間を超えて滞在することは犯罪ではないと考える。非正規な入国を犯罪化することは、非正規な移住を管理しかつ規制する締約国の正当な利益を超えており、かつ不必要な拘禁につながる。非正規な入国および滞在は、行政法上の違反行為となる場合はあるものの、それ自体は人身、財産または国の安全に対する犯罪ではない [14]。 [14] 移住者の人権に関する特別報告者が人権理事会に提出した報告書(A/HRC/20/24)、パラ13参照。 25.第16条第4項は拘禁が認められる理由を定めていないものの、移住労働者およびその家族構成員は、法律の定める理由および手続によらなければその自由を奪われないと規定している。さらに、拘禁は、法律によって定められ、条約上の正当な目的を追求しており、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例するものでなければならない。 26.委員会の見解では、自由に対する権利を制限するいかなる収容措置または非収容措置も、例外的であり、かつ、常に詳細なかつ個別の評価に基づいてとられるものでなければならない。当該評価においては、いかなる自由の制限についても、その必要性および適切性(当該制限が達成されるべき目的に比例しているかどうかも含む)についての検討が行なわれるべきである。比例性の原則により、締約国は、移住労働者の拘禁を最後の手段としてのみ行ない、かつ、追求されている目的を達成するために強制の度がより低い措置で十分な場合には常にそのような措置(とくに非収容措置)を優先させるよう、要求される。そのようなあらゆる場合に、個々の事案ごとにとりうる、侵襲および制限の度合いがもっとも低い措置が適用されるべきである。 27.移住者の行政拘禁は、当初は合法的でありかつ恣意的ではなくとも、締約国がしかるべき正当化事由を示すことのできる期間を超えて継続するときは、恣意的なものとなりうる。そのような状況が生じないようにするため、行政拘禁の期間の上限を法律によって定めるとともに、しかるべき正当化事由がなければ、被拘禁者は当該期間の終了と同時に自動的に釈放されなければならない。行政拘禁が無期限に行なわれ、または過度に長期に及ぶことがあってはならない。移住労働者を拘禁し続けることの正当化事由は、恣意的とみなされるであろう長期のかつ正当化されない拘禁を防止するため、定期的再審査の対象とされるべきである。移住労働者の予防拘禁は、曖昧な基準に基づく長期の拘禁につながることが多い。したがって、そのような拘禁は、条約第16条が規定するすべての手続的保障を遵守しながら、事案ごとの個別評価の後にかつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれるべきである。拘禁されている移住労働者にはどうしようもない理由によって追放命令を執行できない場合、無期限に続く可能性がある拘禁を避けるため、当該移住労働者は放免されなければならない。 28.第16条第5項は、締約国に対し、逮捕される移住労働者およびその家族構成員に、逮捕のときに、かつできるかぎりその者の理解する言語で、逮捕の理由を告げることを要求している。さらに、逮捕された者は、自己に対する被疑事実を、その者の理解する言語で速やかに告げられなければならない。この義務を遵守するため、締約国は、統一告知書式(とくに利用可能な救済措置に関する情報を記載したもの)を、当該締約国において非正規な状態にある移住労働者がもっとも頻繁に使用しまたは理解する言語で作成することを検討するべきである。ただし、このような統一告知書式は、事実関係の情報および逮捕に関連する法的理由を記載した逮捕令状の発行を補完するものであることが求められる。 29.第16条第6項に基づき、収容および未決勾留の対象とされた移住労働者およびその家族構成員が有する一定の権利の保障は、犯罪の嫌疑をかけられまたは犯罪を行なったいかなる者に対しても適用される。 30.第16条第7項は、自由を奪われた移住労働者がその出身国またはその利益を代表する国の領事機関または外交機関と通信する権利を定めている。同項はまた、締約国に以下のことも要求している。 (a) 当該移住労働者の要請がある場合に、その逮捕または拘禁について当該当局に遅滞なく通知すること。 (b) 当該人物と当該機関とのいかなる通信についても、その便宜を図ること。 (c) 当該人物に対し、この権利および適用される他の条約に基づく諸権利を遅滞なく告知すること。 (d) 当該当局の代表者との連絡および会見を行ない、かつ当該人物の法的代理の手配を当該代表者とともに行なうこと。 31.拘禁された移住労働者が前掲(c)の諸権利を効果的に利用できるようにするため、締約国は、関連の情報を遅滞なく――すなわち、自由を奪われる施設への収容と同時にまたは収容後まもなく――、かつなるべくその者の理解する言語で、提供しなければならない。前掲(a)との関連では、委員会は、拘禁を行なった国が当該機関と接触するのは拘禁された移住労働者の明示的要請がある場合に限られなければならないことを強調する。とくに、保護のニーズを有している移住労働者については、当該移住労働者が知らないままにかつその同意を得ずに当該当局に知らせてはならない。 32.第16条第8項は、逮捕または拘禁によって自由を奪われたすべての移住労働者およびその家族構成員が、当該拘禁が合法的であるかどうかについて裁判所が遅滞なく決定できるよう、裁判所において手続をとる権利を定めている。裁判所は、拘禁が違法であると認めたときは、拘禁された移住労働者の釈放を命じなければならない。委員会としては、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の必要的拘禁は、当該移住労働者が有効な入国許可を得ずに締約国に入国したかどうかの形式的評価しか司法審査の対象にできず、当該拘禁が第16条第4項と両立しない場合にも釈放の可能性がないときは、第16条第8項と両立しないと考える。 33.委員会は、出入国管理上の目的のみを理由として逮捕されかつ拘禁されたいかなる者も、当該逮捕および(または)拘禁が合法的であり、かつ引き続き必要であるかどうかを審査すること、および、無条件の釈放および(または)強制の度がより低い措置が妥当である場合には当該措置を命ずることを目的として、裁判官または司法権を行使することが法律によって認められている他の官吏の面前に速やかに連れていかれるべきであると考える。拘禁が引き続き必要かつ合法的であるかどうかのさらなる審査が、裁判官または司法権を行使することが法律によって認められている他の官吏によって定期的に行なわれるべきである。自由の優先の推定が排除されるべきであることを示す立証責任は、拘禁を行なっている機関が負わなければならない。移住労働者は、拘禁の合法性を争うため、弁護士による代理および助言に、必要なときは無償でアクセスできなければならない。子ども(およびとくに保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども)は、出入国管理上の目的のみを理由とする拘禁の対象に、けっしてされるべきではない。 34.条約第16条第8項は、このような手続に参加する移住労働者が、そこで用いられる言語を理解しまたは話すことができない場合に、必要であれば自ら負担を要求されることなく、通訳者の援助を受ける権利を定めている。委員会の見解では、締約国は、入管拘禁施設に収容されたすべての移住労働者(自主的帰国を選択する者を含む)が、とくに領事機関の援助を受ける権利、自己の拘禁の合法性を争う権利および(または)釈放される権利、庇護を要請する権利ならびに人身取引の被害者または証人が利用可能な保護措置について情報を得る権利との関連で、自己の権利をその者が理解する言語で速やかに告知されることを確保するための効果的措置をとるべきである。 35.第16条第9項は、違法な逮捕または拘禁の被害を受けた移住労働者およびその家族構成員が賠償を受ける、執行可能な権利を定めている。この権利は第16条違反に依存するものではない。逮捕または拘禁が国内法または国際法に基づいて違法であったと認められれば十分である。締約国は、賠償を受ける権利が権限のある国内機関において効果的に執行できることを確保しなければならない。締約国はまた、移住労働者およびその家族構成員が、その請求が検討されている間は追放されないことも確保しなければならない。 3.非人道的な取扱いからの保護 36.条約第17条第1項にしたがい、締約国は、自由を奪われた移住労働者およびその家族構成員を、人道的に、かつその固有の尊厳および文化的アイデンティティを尊重しながら取り扱う義務を有する。自由を奪われた移住労働者およびその家族構成員の固有の尊厳を尊重するため、締約国は、適用される国際基準にのっとった十分な条件を義務として確保しなければならない。このような条件には、たとえば、十分な衛生設備、入浴設備およびシャワー設備の整備、十分な食料(食事に関する宗教的戒律を遵守する者のための適切な食料を含む)および飲料水、親族および友人と通信する権利、資格のある医療従事者へのアクセスならびに信仰を実践する十分な機会が含まれる。同項はまた、締約国に対し、これらの移住労働者およびその家族構成員が看守または他の被拘禁者もしくは同房者によるいかなる形態の非人道的な取扱い(性的な暴力および虐待を含む)を受けないことを確保するように要求している。したがって、締約国は以下のことをしなければならない。 (a) 監督職員その他の職員の研修を行なうこと。 (b) 移住労働者が自由を奪われている場所またはその可能性がある場所を定期的にかつ独立の立場から監視できるようにすること。 (c) これらの移住労働者が効果的なかつ独立の苦情申立て機構にアクセスできること(弁護人および通訳者へのアクセスを含む)を確保すること。 (d) 移住労働者またはその家族構成員が自由を奪われている場所における拷問および他の形態の不当な取扱いについての苦情を調査すること。 (e) 責任者を裁判にかけること。 37.条約第17条第2項は、罪を問われている移住労働者およびその家族構成員は有罪の判決を受けた者から分離され、かつ、有罪の判決を受けていない者としての地位にふさわしい制度の対象とされなければならない旨、定めている。加えて、罪を問われている少年は成人から分離され、かつ可能なかぎり迅速に審判の対象とされなければならない。 38.第17条第3項は、行政拘禁の非刑罰的性質を明らかにしている。同項では、移住に関連する規定に違反したことを理由として拘禁された移住労働者またはその家族構成員は、実行可能なかぎり、有罪の判決を受けた者または未決勾留者とは分離して収容されるものとする旨、規定されている。このような拘禁が長期間続きうることに鑑み、移住者である被拘禁者は、そのためにとくに設けられた特別施設に収容されるべきである。さらに、移住労働者およびその家族構成員は、安全な収容および良好な秩序を確保するために必要な程度を超えるいかなる制限または厳格な対応にも服させられるべきではない。委員会としては、締約国は行政拘禁に代わる手段を求めるべきであり、かつ行政拘禁は最後の手段としてのみ用いられるべきであるという見解をとる。 39.委員会は、移住労働者の行政拘禁は原則として官立施設で行なわれるべきであると考える。民間が運営する移住者収容施設は、監視の観点から特段の困難を生じさせる。締約国は、人の拘禁を民間営利企業に外部委託することによって人権法上の義務を免れることはできない。締約国は、このような機能を民間企業に委ねるとしても、条約第17条で規定されている、拘禁された移住労働者の権利の尊重を確保しなければならない。締約国は、拘禁施設の職員が人権、文化的感受性ならびに年齢およびジェンダーに関わる考慮事項について研修を受けることを確保しなければならない。 40.第17条第4項は、刑事司法制度の本質的目的、すなわち罪を犯した者の矯正および更生を強調している。罪を犯した少年は、成人から分離されるとともに、その年齢および法的地位にふさわしく、かつ、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を含む国際基準にしたがって取り扱われなければならない。 41.第17条第5項は、拘禁および収監の対象とされている移住労働者およびその家族構成員に対し、家族構成員による面会について国民と同一の権利を保障している。締約国の法律で、自由を奪われた国民に対して一定の面会の権利(面会に訪れた家族構成員との直接の接触等)が付与されているのであれば、拘禁または収監の対象とされている移住労働者(非正規な状態にある者を含む)に対しても平等な権利を確保しなければならない。締約国は、面会権の平等な享受を妨げる実際上の障壁(家族構成員にとってアクセスが困難となる遠隔地での拘禁等)を取り除くことにより、拘禁された移住労働者に対する事実上の差別を撤回しなければならない。 42.第17条第6項は、締約国に対し、自由の剥奪によって家族構成員、とくに配偶者および未成年の子どもに生じる可能性がある問題に注意を払うよう要求している。委員会としては、このような場合、締約国は行政拘禁に代わる措置を模索するべきであるとの見解をとる。行政拘禁は、配偶者および子どもにとって、経済的にも心理的にも甚大な影響を及ぼすことが多いためである。 43.第17条第7項には、拘禁または収監の対象とされている移住労働者およびその家族構成員は同様の状況にある就業国または通過国の国民と同一の権利を享受できなければならないと定める、具体的な差別禁止規定が掲げられている。この規定は、第17条に掲げられたもの以上の追加的な手続的保障(電話等によって外部と通信する権利、保健専門家へのアクセスおよび教育に対する権利等)を、それが国民に対しても提供されている場合には、拘禁された移住労働者に対して適用する効果を有するものである。 44.この規定は家族拘禁の問題を提起するものでもある。一般的原則として、子どもおよび子どものいる家族は拘禁されるべきではなく、締約国は、子どもおよび家族が関係する場合には、拘禁に代わる措置を常に優先させるべきである。家族拘禁が避けられない場合、子どもの拘禁は、子どもの権利条約第37条(b)にしたがい、「最後の手段として、かつ最も短い適当な期間でのみ」用いられなければならない。さらに、子どもの権利条約第3条第1項で定められているように、子どもに関わるすべての行動において、子どもの最善の利益の基準が第一次的に考慮されなければならない。締約国は、拘禁された子どもが人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ年齢にふさわしいやり方で取り扱われ、かつあらゆる法的保障を提供されることを確保するものとされる(子どもの権利条約第37条)。したがって締約国は、子どもにふさわしい生活区画を整え、かつ教育、遊びおよび余暇のための便益にアクセスできるようにするとともに、親とともに拘禁されている子どもの場合には特別な家族区画においてこのような対応をとらなければならない。子どもは、分離が子どもの最善の利益のために必要である場合を除き、親の意思に反して親から分離されるべきではない(子どもの権利条約第9条第1項)。保護者のいない子どもに対しては法定後見人を任命し、拘禁施設外で子どもをケアする義務を委託するべきである。 45.締約国はまた、拘禁された女性の移住労働者女性の特別な状況も考慮しなければならない。締約国は、男女別の施設を確保し、ジェンダーに固有の保健サービスが提供されることを確保し、かつ、妊婦、授乳中の母親および幼い子どもがいる母親の具体的ニーズにも対応しなければならない。国は、女性の移住労働者が分娩まで数か月である場合または授乳中である場合、その拘禁を避けるべきである。女性被拘禁者の処遇および罪を犯した女性のための社会内処遇措置に関する国際連合規則(バンコク規則)は、このような状態にある国にとって有益な指針を提供している。 46.拘禁は、脆弱な状況に置かれたカテゴリーに属する移住労働者にとってとりわけ有害となり、その心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。このような移住労働者およびその家族構成員としては、拷問の被害者、保護者のいない高齢者、障害のある人およびHIV/AIDSとともに生きている人などが考えられよう。脆弱な状況にあって自由を奪われた人々を保護するために、十分な保健サービス、医薬品およびカウンセリングを含む特別措置がとられるべきである。さらに、障害のある移住労働者および障害のあるその家族構成員に対しては、他の者との平等を基礎としてその人権および基本的自由を享受する権利を確保するための「合理的配慮」 [15] が行なわれるべきである。 [15] 障害のある人の権利に関する条約第2条。 47.第17条第8項に関して、委員会は、「移住に関する規定の違反の有無を確認する目的」の拘禁には行政拘禁の全期間が含まれており、したがって、行政拘禁の対象とされた移住労働者およびその家族構成員は、当該拘禁から生じたいかなる費用も負担を負わされてはならないと考える。 48.自由を奪われた移住労働者が、その苦境および不確定な事情のゆえにとりわけ脆弱な状態にあることに鑑み、委員会は、拷問ならびに他の形態の不当な取扱いおよび虐待を防止するうえで独立の監視が重要であることを確信する。国内人権機関、関連する市民社会の主体、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)、赤十字国際委員会および〔国際連合〕高等弁務官事務所は、移住者が拘禁されているまたはその可能性があるすべての場所に広くアクセスできるべきである。 4.追放手続における保護 49.条約第22条は、正規および非正規の移住労働者ならびにその家族構成員のいずれについても、集団的追放を禁止し、かつ個別の追放手続における手続的保障措置を定めている。第22条が規制しているのは手続のみであって追放の実体的理由ではないが、同条の目的は、恣意的追放を防止し、かつ一定の状況において追放からの実体的保護を提供するところにある。第22条は、国内法で追放と述べられているか他の文言が用いられているかにかかわらず、移住労働者の義務的出国を目的とするすべての手続に適用される。 追放からの実体的保護:ノンルフールマン 50.国際的および地域的な人権法および難民法に掲げられたノンルフールマンの原則とは、いかなる者についても、いかなる方法によるかにかかわらず、その者が迫害または深刻な人権侵害を受ける真のおそれがある国または領域に強制的に送還することを禁じたものである。委員会の見解では、この原則は、拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰(送還先の国で移住者が非人道的なかつ品位を傷つける環境で拘禁され、または必要な治療が受けられないことを含む)のおそれならびに生命に対する権利が脅かされるおそれを含む(条約第9条および第10条)。この原則はまた、個人がその後のルフールマンから保護されない状況にも適用される。委員会は、追放が家族および私的生活に対する権利への恣意的干渉となる場合には移住労働者およびその家族構成員は保護されるべきであるとの見解をとる。非正規な状態にある移住者およびその家族構成員であって国際保護のニーズを有している者も、追放から保護されるべきである。 集団的追放の禁止 51.条約第22条第1項は、集団的追放を明示的に禁止し、かつ、追放の各事案の審理および決定が個別に行なわれることを要求している。締約国は、自国の追放手続において、移住労働者1人ひとりの個人的事情が真正にかつ個別に考慮されるようにするための十分な保障が定められることを確保する義務を有する。この義務は締約国が実効的に管理しているすべての空間について適用され、これには公海上の船舶も含まれる場合がある [16]。 [16] 欧州人権裁判所・Hirsi Jamaa and Others v. Italy事件判決(申立番号27765/09、2012年2月23日)参照。 個別の追放手続における手続的保障 52.第22条第2項は、「権限ある機関が法律にしたがって行なう決定によって」実行される追放だけを認めることによって、恣意的追放を防止しようとしている。第22条第3項は、追放に関する決定が、当該移住労働者に対し、その者の理解する言語で、ならびに、書面による告知が義務的でない場合でもその者の要請があるときは書面によっておよび国の安全を理由とする例外的事情がある場合を除いて決定理由とともに、伝えられるべきことを規定している。これらの権利は、移住労働者がこのような決定に関する主張を準備できるようにすることによって適正手続を確保するために、重要である。これらの権利について決定が行なわれる前にまたは遅くとも決定が行なわれる時点で告知される当該者の権利も、同じ目的に役立つ。 53.自己が追放されるべきではない理由を提出し、かつ権限ある機関に自己の主張を審査させる権利(第22条第4項)には、追放の決定について審査が行なわれている間、当該決定の執行停止を求める権利が含まれる。決定の執行停止は、手続の期間中、当該者の地位を正規化するものではないが、最終決定が行なわれる前に締約国による追放が行なわれることを防止するものである。条約第83条にしたがい、締約国は、効果的な救済(条約で認められている権利および自由を侵害された移住労働者およびその家族構成員が、権限ある機関による審査を受ける権利を含む)を提供する義務を有する。委員会は、移住労働者およびその家族構成員に対し、審査を受ける権利の実効性を確保する目的で、追放からの当該救済措置を追求するための十分な時間および便益が与えられなければならないことに留意するものである。このような便益は、必要なときは法的援助および通訳者による援助を受ける権利が含まれるべきであり、かつ、当該事案の事情によって必要とされるときは無償とすることが求められる。追放の決定を審査する権限ある機関は、理想としては裁判所であるべきである。条約第22条第4項に基づいて追放に不服を申立てる権利は、「国の安全に関するやむを得ない理由」による場合のほかは制限できない。 54.条約第22条第5項は、すでに執行された追放決定が後に取り消された場合、党会社は法律にしたがって補償を求める権利を有すると定めている。追放を行なった国は、たとえば法的代理人を任命することによって、追放された者が国外から補償の請求を行なうために必要な便益を与えられることを確保しなければならない。さらに、追放を行なった国は、当該者による再入国を否定するために従前の(取り消された)決定を援用することはできない。 55.第22条第6項は、追放決定の当事者に対し、出国の前または後に、自己に帰すべき賃金および受給資格を有するその他の給付の請求ならびに未処理の責任を清算する合理的機会が与えられるべきことを規定している。この規定は、劣悪な条件の下にある移住ならびに移住労働者の機会および待遇の均等の促進(補足規定)に関するILO第143号条約(1975年)第9条第1項の規定をあらためて定めたものである。請求、賃金およびその他の給付を清算する機会は、実際上、効果的なものでなければならない。移住労働者は、いったん出身国に帰還すれば、就業国で法的請求を行なう際にしばしば問題(高額な争訟費用または証拠提出上の困難を含む)に遭遇する。したがって締約国は、可能なときは常に、移住労働者およびその家族構成員に対し、追放の前に賃金および給付の請求を行なう合理的期間を与えるべきである。締約国はまた、移住労働者によるこれらの請求に対応するための、期間を定めたまたは迅速な処理の対象とされる法的手続も検討することが求められる。加えて、締約国は、出身国に帰還した移住労働者が、侵害についての苦情を申立て、かつ未払いの賃金および給付を請求するために就業国において司法にアクセスすることができるよう、二国間協定を締結するべきである。 56.第22条第7項は、追放決定の対象となった移住労働者およびその家族構成員が、追放決定の執行を妨げないことを条件として、出身国以外の国への入国を求めることができる旨、定めている。移住労働者およびその家族構成員によるこの選択の行使は、当該第三国の同意を条件とする。 57.第22条第8項は、移住労働者およびその家族構成員はその追放にかかる費用の負担を免除される旨、定めている。追放を行なう国は、移動にかかる費用を移住労働者およびその家族構成員が自弁するよう求めることはできるものの、移住労働者に対し、その追放につながった法的手続の費用またはその行政拘禁の費用の支払いが求められてはならない(第17条第8項も参照)。ただし委員会は、自らの責によらずに非正規な状態にある移住労働者(たとえば契約期間終了前の整理解雇による場合または雇用主が必要な書類の作成を怠った場合)については、移動の費用も含めて追放費用を負担させられるべきではないことに留意するものである。 58.第22条第9項は、第22条第6項および第25条第3項を補完する形で、移住労働者およびその家族構成員が、賃金および「受給資格を有するその他の給付」(社会保障給付または当該給付との関連で行なわれた拠出金の償還を含む)を受け取る権利等の既得権を奪われるべきではない旨、述べている。したがって締約国は、移住労働者およびその家族構成員が、追放前に受給資格が生じた社会保障給付の額についての情報にアクセスできることを確保するべきである。 領事保護 59.条約第23条は、追放決定の対象となった移住労働者およびその家族構成員が、自己の権利について遅滞なく告知され、かつ出身国の領事機関または外交機関の保護および援助を依頼できなければならない旨、定めている。同条はまた、追放を行なう国の公的機関に対し、この権利の行使の便宜を図ることも要求している。したがって、追放を行なう国は、当該者に対し、遅滞なく、すなわち当該者に対して追放決定の告知を行なう時点でまたはその後ほどなくして、かつ、なるべくその者の理解する言語で、この権利を告知しなければならない。追放を行なう国は、当該者と出身国の領事機関または外交機関とのいかなる通信についても、その便宜を図らなければならない。 D.経済的、社会的および文化的権利の保護(第3部) 1.労働の搾取からの保護 強制労働および義務的労働ならびに児童労働からの保護 60.条約第11条は、締約国に対し、移住労働者が行なわさせられるあらゆる形態の強制労働または義務的労働を禁止するための効果的措置をとるよう要求している [17]。これには、たとえば債務奴隷制、旅券の取り上げおよび不法な監禁が含まれる。第21条は、締約国に対し、雇用主および募集業者が移住労働者の所有する渡航書類または身分証明書類を没収しまたは破棄しないことを確保するよう要求している [18]。締約国は、法執行官を対象として研修を行なうとともに、家事労働 [19] および一部の形態の興行など移住労働者(とくに女性の移住労働者)が多数を占める職業が労働法によって保護され、かつ監察の対象とされることを確保するべきである [20]。 [17] ILO第29号条約(前掲注8参照)。 [18] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ39参照。 [19] 家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)。 [20] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ41参照。 61.条約第25条第1項(b)は、就労の最低年齢に関する法令が子どもである移住者にも平等に適用されるべきである旨、定めている。当該最低年齢は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)第2条にしたがい、15歳を下回ってはならない。さらに、条約第11条にしたがい、締約国は、子どもの移住労働者が、いかなる形態の奴隷制、買春またはその子どもの教育、安全、道徳もしくは健康を危うくする労働(長時間労働等)からも保護されることを確保する義務を有する [21]。締約国は、子どもの移住労働者を暴力から保護し、かつ、教育、余暇および労働衛生に対するそのような子どもの権利を確保しなければならない。 [21] ILO第182号条約(前掲注8参照)。 平等な待遇 62.第25条第1項は、移住労働者が、その地位の如何を問わず、報酬、その他の労働条件および就労条件について国民と平等の待遇を享受する旨、定めている [22]。締約国は、就労許可を持たない移住労働者が自国の労働市場にアクセスすることを拒否できるものの、いったん雇用関係が開始すれば、当該雇用関係が終了するまで、すべての移住労働者(非正規な状態にある者を含む)は平等な労働な条件および就労条件を享受する資格を有する。第25条第1項(a)および(b)に列挙された労働条件および就労条件は非網羅的な例である。平等な待遇の原則は、母性保護など、国内法および国内実務にしたがって労働条件または就労条件と考えられる他のいかなる事項も対象とする。 [22] 差別(雇用および職業)に関するILO第111号条約(1958年)。 63.締約国は、雇用主に対し、自由な、公正なかつ全面的同意のもとで締結された契約のなかで、移住労働者(非正規な状態にある者を含む)の就労条件を当該労働者の理解する言語で明示的に明らかにし、当該労働者の職務、労働時間、報酬、休日その他の労働条件を略述するよう要求するべきである [23]。締約国は、賃金を支払わないこと、支払いを出国まで延期すること、移住労働者がアクセスできない口座に賃金を入金すること、または移住労働者(とくに非正規な状態にある者)に対して国民よりも低い賃金を支払うことを禁止するために効果的な措置をとるよう求められる。締約国はまた、移住労働者が日常的に働いている場所の監察を強化するとともに、労働監察官に対し、移住労働者の移住者としての地位に関するデータを出入国管理当局と共有しないよう指示することも求められる [24]。工業および商業における労働監督に関するILO第81号条約(1947年)第3条第1項(a)にしたがい、労働監察官の第一義的職務は、労働条件および就業中の労働者の保護に関わる法規定の執行を確保することであるためである。 [23] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ38および40参照。 [24] 前掲、パラ41および49-50。 労働権の平等の水平的効果および執行 64.第25条は、国民と移住者との間における報酬その他の労働条件についての待遇の平等を定めるとともに、私的な雇用契約においても、移住労働者の地位の如何を問わず、この権利を保障している。第25条第3項では、雇用主は、移住労働者の滞在または就労にいかなる非正規な点があっても、これを理由として、いかなる法律上または契約上の義務も免れず、かついかなる形でもその義務を限定されない旨、述べられている。締約国は、非正規な状態にある移住労働者との私的な雇用契約において平等待遇原則から逸脱した雇用主に対する適切な制裁を規定するとともに、これらの労働者が、その権利を侵害された場合に、退去強制を恐れることなく労働裁判所その他の司法的救済措置にアクセスできることを確保しなければならない(第83条)[25]。委員会は、この規定を実効あらしめるため、締約国は、とくに非正規な状態にある移住労働者を雇用していることで知られる産業において、効果的な職場監視システムも整備しなければならないという見解をとる。 [25] 前掲、パラ49-50。 労働組合に加入する権利 65.団結権および団体交渉権は、移住労働者が、とくに労働組合を通じて自己のニーズを表明しかつ自己の権利を防御するために必要不可欠である [26]。条約第26条は、自己の利益を保護する労働組合その他の団体に加入する、すべての移住労働者の権利を掲げている。第26条は、労働組合を結成する権利の保護については定めていない。ただし、この規定を他の国際人権文書とあわせて解釈すれば、両方の文書の締約国である国にとっていっそう幅広い義務が生じることがある。たとえば、結社の自由および団結権の保護に関するILO第87号条約(1948年)第2条と市民的および政治的権利に関する国際規約第22条第1項はいずれも、非正規な状態にある移住労働者に適用される。第26条はまた、法律にしたがって設立された労働組合および他のいかなる団体の会合および活動にも参加し、かつその援助を求める移住労働者の権利も保護している。締約国は、団体交渉権を含むこれらの権利を確保し、移住者としての地位の如何を問わず移住労働者の自己組織化を奨励し、かつ、援助を提供しうる関連の団体についての情報を移住労働者に対して提供しなければならない [27]。 [26] 前掲、パラ45。 [27] 前掲、パラ46-47。 66.第26条第2項について、委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第8条第1項(a)と市民的および政治的権利に関する国際規約第22条第2項でも同様の制限が定められていることに留意する。委員会は、何が条約第26条第2項に基づいて許容される制約にあたるかを解釈する目的で、関連の条約機関の先例を参照するよう求めるものである。 2.社会保障に対する権利 67.社会保障について、条約第27条第1項は、すべての移住労働者およびその家族構成員が、就業国で適用される法律ならびに適用のある二国間条約および多国間条約に定められた要件を満たすかぎり、就業国の国民に認められているものと同一の待遇を受ける権利を有する旨、定めている。締約国が、事前の拠出金の支払いが条件とされているか否かにかかわらず社会給付の支払いについて定める法律を制定しており、かつ関係の移住労働者が当該法律に定められた要件を満たしているときは、締約国は、当該移住労働者について当該給付からの恣意的排除または当該給付へのアクセス制限を行なうことはできない。差別の禁止は社会保障に対する権利にも適用されるためである。したがって、国籍または移住者としての地位に基づくいかなる区別も、法律で定められ、条約上の正当な目的を追求し、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例したものでなければならない [28]。締約国には、その他の点では同様の状況にある者同士の違いによって異なる待遇が正当化されるか否かおよびどの程度正当化されるかを評価するにあたって一定の裁量の余地が認められているが、もっぱら国籍または移住者としての地位に基づいて行なわれるそのような異なる待遇がどのように第7条および第27条と両立するか、説明しなければならない [29]。 [28] 前掲注19、Koua Poirrez v. France事件判決(申立番号40892/98、2003年12月30日)、パラ39参照。 [29] 前掲、Gaygusuz v. Austria事件判決(申立番号17371/90、1996年9月16日)、パラ42。 68.第27条第1項では、社会保障に対する移住労働者の権利は適用のある二国間条約および多国間条約に服し、かつ、出身国および就業国の権限ある機関はいつでも、この給付の適用様式を決定するために必要な取決めを行なうことができる旨、定められている。ILO・労働移住に関する多国間枠組みで勧告されているように、締約国は、移住労働者(適切なときは非正規な状態にある者を含む)を社会保障の対象とし、これらの者に対して社会保障給付を行ない、かつ社会保障受給資格の移管を可能とする目的で、二国間、地域間または多国間の協定の締結を検討するべきである [30]。ただし、第27条第1項について、就業国が出身国と互恵協定を結んでいないというだけの理由で、移住労働者が、就業国で適用される法律に基づいてその他の点では受給資格を有する給付を剥奪されるという解釈を行なうことはできない [31]。 [30] ILO「労働移住に関する多国間枠組み-労働移住に対する権利基盤アプローチについての非拘束的原則および指針」(ジュネーブ、2006年)、指針9.9。 [31] 前掲注19、Koua Poirrez v. France事件判決、パラ39。 69.第27条第2項では、適用される法律によって移住労働者およびその家族構成員に対する給付が認められない場合、当該締約国は、国民との平等な待遇を基礎として、当該給付との関連で当該移住労働者等が行なった拠出に相当する額を償還する可能性を検討しなければならないと述べられている。これとの関連で、締約国は、当該拠出金の償還が不可能と判断される各事案において客観的な理由を示さなければならない。移住労働者または家族構成員による当該拠出金を償還しない旨の決定においては、その国籍または移住者としての地位を理由とする差別が行なわれてはならない。さらに、委員会は、移住労働者の社会保障給付受給権は職場の変更による影響を受けるべきではないと考える。 70.第27条第2項で「拠出」に言及されていることは、第27条第1項にいう「社会保障」とは拠出方式の社会保障制度のみをいうことを意味するものではない。このような狭い解釈は、「社会保障」が「社会保険を含む」ことを認めている経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第9条に反するものである。規約第9条が、法律上の地位および資格の如何を問わず、すべての移住労働者に適用されることを想起し、委員会は、条約第27条にいう「社会保障」にはすでに設けられている非拠出型の社会給付も含まれ、かつ、非正規な状態にある移住労働者は、適用される当該締約国の法律で受給権が定められているかぎりにおいて、当該給付に差別なくアクセスできなければならないと考える。 71.委員会は、極度の貧困および脆弱な状態が生じている場合、締約国は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員に対し、緊急の社会的援助(障害のある者に対する緊急サービスを含む)を、それが必要とされる期間、提供するべきであると考える。委員会は、たとえ非正規な状態にある移住労働者の多くが拠出方式制度に参加していなくとも、これらの移住労働者は間接税を支払うことによって社会保護のための制度およびプログラムへの資金供給に貢献していることを想起するものである [32]。 [32] 経済社会理事会に対する国際連合人権高等弁務官の報告書(E/2010/89)、パラ46参照。 3.緊急医療ケアに対する権利 72.条約第28条は、移住労働者およびその家族構成員が、国民との平等な待遇を基礎として、その生命の維持のためまたは回復不能な健康被害を回避するために緊急に必要とされるいかなる医療ケアも受ける権利を有する旨、定めている。ただし、第28条を他の国際人権文書とあわせて解釈すれば、両方の文書の締約国である国にとっていっそう幅広い義務が生じることがある。経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第12条は、到達可能な最高水準の健康に対するすべての者の権利を定めている。したがって締約国は、すべての者が、その移住者としての地位の如何を問わず、少なくとも最低水準の保健ケアに差別なく効果的にアクセスできることを確保する義務を負う。経済的、社会的および文化的権利に関する委員会は、これにはプライマリーヘルスケアならびに予防的、治療的および緩和的保健サービスが含まれると考えている。子どもの権利委員会は、子どもの権利条約第24条に基づき、移住者であるすべての子どもは国民と同一の保健ケアを受ける資格を有するとしている。そのため締約国は、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員が必須医薬品にアクセスでき、かつ移住者である子どもが主要な感染症の予防接種の対象とされることを確保しなければならない。締約国は、移住者である女性が、産前産後の適切な保健ケア、安全なリプロダクティブヘルス・サービスおよび緊急産科ケアにアクセスできることを確保しなければならない。 73.委員会は、緊急医療ケアに対するアクセスが、国民との平等な待遇を基礎として、したがって差別なく、すべての移住労働者に対して確保されなければならないと考える。医療ケアは必ずしも無償である必要はないが、待遇の平等により、移住労働者およびその家族構成員に対しても、料金の支払いまたは支払い免除について国民と同一の規則が適用されなければならない。締約国は、非正規な状態にある移住労働者に対して過剰な料金を請求すること、または即時の支払もしくはサービス提供前の支払い証明を要求することを禁止するべきである。料金を支払えないことを理由に緊急医療ケアが提供されないことはあってはならない。締約国はまた、提供される医療ケアについての情報および健康権に関する情報が移住労働者およびその家族構成員に提供されることも確保するべきである。締約国はまた、移住労働者およびその家族構成員のための保健ケアに関する、文化的に配慮された研修が医師および保健専門家を対象として実施されることも確保するよう求められる。 74.第28条は、移住労働者に対するこのような医療ケアを、当該移住労働者の滞在または就労が非正規であるという理由で拒否することを禁じている。締約国は、保健ケアを出入国管理の手段として利用するべきではない。そのような対応は、実質的に、非正規な状態にある移住労働者が退去強制を恐れて公的保健ケア提供機関に接触しようとしないことにつながる。この目的のため、締約国は、患者の移住者としての地位に関するデータを出入国管理機関に報告しまたはその他のやり方で出入国管理機関と共有することを公的保健機関に対して要求してはならず、保健ケア提供機関もそのような対応を要求されるべきではない [33]。さらに、締約国は、医療ケアを提供する施設に対してまたはその近辺で出入国管理法制執行のための組織的行動を実施してはならない。このような対応は、移住労働者およびその家族構成員が当該ケアにアクセスすることの制限につながるためである。 [33] 前掲注12、パラ43参照。 4.教育に対する権利 75.条約第30条は、移住労働者のすべての子どもが「当該国の国民との平等な待遇を基礎として」「教育にアクセスする基本的権利」を保護している。第30条はまた、公立の就学前教育機関または学校へのアクセスが、当該の子ども自身またはその親の移住者としての地位に不利益となってはならないとも定めている。委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第13条にしたがい、締約国は、移住者としての地位の如何を問わず移住労働者の子どもを含むすべての者に、無償のかつ義務的な初等教育を提供しなければならないとの見解をとるものである。したがって、締約国は、直接的な就学の負担(授業料など)をすべて撤廃し、かつ間接的負担(教材費および制服費など)の悪影響を緩和する義務を負う。移住労働者の子どもによる中等教育へのアクセスは、国民との平等な待遇を基礎として確保されなければならない。したがって、国民である子どもが無償の中等教育にアクセスできる場合は常に、締約国は、移住労働者の子どもによる平等のアクセスを、その移住者としての地位の如何を問わず、確保しなければならない。同様に、締約国が種々の形態の中等教育(職業教育を含む)を提供している場合、当該教育を移住労働者の子どもに対しても利用可能とするべきである。同じ原則が、無償の就学前教育または奨学金制度についても適用される。したがって、締約国は、国民である子どもが無償の就学前教育または奨学金にアクセスできる場合には常に、移住者としての地位の如何を問わず、移住労働者の子どもによる平等なアクセスを確保しなければならない。 76.委員会は、移住者である子どもが、たとえば人種、民族、ジェンダーおよび障害を理由とする複合的形態の差別の被害を受ける可能性があることに留意する。平等待遇原則により、締約国は、教育制度における、移住者である子どもに対するいかなる差別も撤廃することを要求される。したがって締約国は、学校教育における隔離および移住労働者の子どもに対する異なった待遇基準の適用を回避するとともに、移住労働者の子どもに対して教室で行なわれるいかなる形態の差別も撤廃しなければならない。締約国はまた、これらの子どもに対する差別を防止するための効果的なプログラム、政策および機構を確保する必要もある。 77.委員会はまた、教育へのアクセスを確保するために、締約国は、児童生徒またはその親の正規な地位または非正規な地位に関するデータを出入国管理機関に報告しもしくは出入国管理機関と共有することを学校に要求し、または学校施設に対してまたはその近辺で出入国管理法制執行のための組織的行動を実施してはならないとの見解もとる。このような対応は、移住労働者の子どもによる教育へのアクセスの制限につながるためである。締約国はまた、学校管理者、教員および親に対しても、そのような報告または共有を行なうよう要求されてはいないことを明確に告知するとともに、これらの者を対象として、移住労働者の子どもの教育権に関する研修を実施することが求められる。 78.条約第45条第3項にしたがい、母語および母文化の教育を促進するよう努める就業国の義務の明示的対象とされているのは正規な状態にある移住労働者の子どもであることに留意しながらも、委員会は、自己の文化的アイデンティティを尊重される権利(第31条)はすべての移住労働者およびその家族構成員(子どもを含む)が有するものであることを強調する。これらの2つの規定を、すべての子どもに適用される子どもの権利条約第29条第1項(c)の規定とともに考慮し、委員会は、正規の資格を有する移住労働者の子どもであって母語を同じくする者に対してすでに母語による指導が利用可能とされているときは、非正規な状態にある移住労働者の子どもに対しても当該指導を確保するべきであるとの見解をとる。 79.法律上の身元は、多くの基本的権利にアクセスするための前提条件となっていることが多い。非正規な状態にある移住者の子ども、とくにそのような移住者の存在を承認していない受入国で出生した子どもは、生涯にわたって権利を侵害されやすい状態に置かれる。締約国は、移住労働者の子どもが、その親の移住者としての地位の如何を問わず、出生後間もなく登録され、かつ出生証明書その他の身分証明書類を提供されることを確保する義務を負う(第29条)。締約国は、子どもを登録するために在留許可証を提示するよう、移住労働者に要求してはならない。このような対応は、実質的に、非正規な状態にある子どもの移住者から出生登録に対する権利を奪うことにつながり、これによってこのような子どもが教育、保健サービス、就労その他の権利へのアクセスも否定されることにもつながりうる。移住労働者が子どもの出生登録義務を遵守しなかったことが、その子どもを教育から排除することの正当化につながることはあってはならない。 更新履歴:ページ作成(2014年10月13日)。/訳語の「不正規」を「非正規」に修正(2018年4月7日)。
https://w.atwiki.jp/childreninfukushima/pages/78.html
(情報掲載日:2011.05.13) 家族で避難、ではなくて子どもだけ避難するホームステイ(滞在費用負担なし、往復の交通費くらい)がある。 ただしまだ要請がないから、という理由で事業としては始まってません。受け入れ家庭側は石川県内350家庭の登録がされてます(5月9日現在)。 登録先からの情報 このたびは東日本大震災の被災児童生徒のホームステイ事業にお申し込みくださって、誠にありがとうございます。さっそく受け入れ家庭として登録させていただきます。 被災地では力強く復興の歩みを始めたとはいうものの、子どもたちの教育環境は依然として厳しいものがあるようです。現時点ではまだホームステイの依頼・要望は届いていませんが、今後おそらくそういった要望が寄せられると思っています。 皆様方のあたたかい善意が生かされますよう、わたくしどもボランティアセンターも最善を尽くす所存です。いつ頃になるかはっきりは申し上げられませんが、実際に受け入れをお願いする段になりましたら連絡を差し上げますので、それまでお待ちください。 皆様のあたたかいお気持ちに感謝しつつ、お礼のお便りとさせていただきます。 お問い合わせ 石川県PTA連合会ボランティアセンター 〒920-0918 金沢市尾山町10番5号 石川県文教会館内 電話 076-261-3887 FAX 076-261-7811 情報提供元 こども福島ML 伊藤さま(電話および、ホームステイ登録者からの情報)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/255.html
子どもの権利委員会・一般的意見18号/女性差別撤廃委員会・一般的勧告31号:有害慣行(前編) 一般的意見一覧 女性差別撤廃委員会 子どもの権利委員会 CEDAW/C/GC/31-CRC/C/GC/18(2014年11月14日/原文英語) CEDAW/C/GC/31/Rev.1-CRC/C/GC/18/Rev.1(2019年5月8日/原文英語) 訳者注/子どもの権利委員会の第80会期(2019年1月)および女性差別撤廃委員会の第72会期(2019年2~3月)において、パラ20とパラ55(f)の後半を削除する改訂が行なわれた。そのほか、各一般的意見の採択年が追加されているが、煩雑になるのでこのページには反映させていない(日本語訳PDFには反映済み)。 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに II.一般的勧告/一般的意見の目的および範囲 III.合同一般的勧告/一般的意見を作成する根拠 IV.女性差別撤廃条約および子どもの権利条約の規範的内容 V.有害慣行と判断するための基準 VI.有害慣行の原因、形態および表れ方A 女性性器切除 B 児童婚および/または強制婚 C 複婚 D いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪 VII.有害慣行に対応するためのホリスティックな枠組みA データ収集および監視 B 立法および法執行 C 有害慣行の防止 → CRC/CEDAW 有害慣行 後編 D 保護措置および応答性の高いサービス VIII.一般的勧告/一般的意見の普及および活用ならびに報告 IX.条約の批准または加入および留保 I.はじめに 1.女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約および子どもの権利に関する条約には、有害慣行の解消に一般的にも具体的にも関連する、法的拘束力のある義務が掲げられている。女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会は、監視権限を遂行するなかで、女性および子ども(主として女子)に影響を及ぼすこれらの慣行に対して一貫して注意を喚起してきた。両委員会がこの合同一般的勧告/一般的意見を作成することに決定したのは、このように権限が重複しており、かつ、有害慣行がどこでおよびどのような形態で行なわれるかにかかわらず、これを防止し、これに対応しかつこれを解消することへの決意を共有しているためである。 II.一般的勧告/一般的意見の目的および範囲 2.この一般的勧告/一般的意見の目的は、両条約に基づく有害慣行の解消義務を全面的に遵守するためにとられなければならない立法上、政策上その他の適切な措置に関する有権的指針を提示することにより、両条約の締約国の義務を明らかにすることである。 3.両委員会は、有害慣行が、直接にも、かつ/または女子として対象とされた慣行の長期的影響によっても、成人女性に影響を及ぼすことを認知する。そこでこの一般的勧告/一般的意見では、女性の権利に影響を及ぼす有害慣行を解消する女性差別撤廃条約の締約国の義務について、関連する規定との関わりでさらに詳しく述べる。 4.さらに、両委員会は、男子も暴力、有害慣行および偏見の被害を受けていること、ならびに、男子を保護し、かつジェンダーに基づく暴力ならびにその後の人生における偏見およびジェンダーの不平等の固定化を防止するために、男子の権利についての対応がとられなければならないことを認識する。そこで、ここでは、男子の権利の享有に影響を及ぼす差別から派生する有害慣行について子どもの権利条約の締約国が負っている義務にも言及する。 5.この一般的勧告/一般的意見は、両委員会がそれぞれ公にしてきた関連の一般的勧告および一般的意見、とくに女性に対する暴力についての一般的勧告19号(女性差別撤廃委員会)、ならびに、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(子どもの権利委員会)とあわせて読まれるべきである。女性性器切除に関する一般的勧告14号(女性差別撤廃委員会)の内容は、この一般的勧告/一般的意見によって更新されるものとする。 III.合同一般的勧告/一般的意見を作成する根拠 6.女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会は、有害慣行が、ステレオタイプ化された役割に基づいて女性・女子を男性・男子よりも劣っているとみなす社会的態度に深く根ざしていることに、一貫して留意している。両委員会はまた、暴力が有するジェンダーの側面も強調し、かつ、ジェンダーに基づく態度およびステレオタイプ、力の不均衡、不平等および差別が、しばしば暴力または強制をともなう慣行の広範な存在を固定化させていることも明らかにしている。家庭、コミュニティ、学校、その他の教育現場および施設ならびにより幅広い社会における女性および子どもの「保護」または管理の形態としてのジェンダーに基づく暴力 [1] を正当化するためにもこれらの慣行が利用されていることについて、両委員会が懸念を有していることも、重要なこととして想起しておかなければならない。さらに、両委員会は、性およびジェンダーに基づく差別が、女性 [2] ・女子(とくに、不利な立場に置かれている集団に属しておりまたはそのように認識されていて、有害慣行の被害を受けるおそれがより高い女性・女子)に影響を及ぼすその他の要因と交差しあっていることに、締約国の注意を喚起する。 [1] 女性差別撤廃員会・一般的勧告19号、パラ11;子どもの権利委員会・障害のある子どもの権利についての一般的意見9号、パラ8、10および79;子どもの権利委員会・到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号〔2013年〕、パラ8および9。 [2] 女性差別撤廃委員会・条約第2条に基づく締約国の中核的義務についての一般的勧告28号、パラ18。 7.したがって、有害慣行は、性、ジェンダー、年齢その他の理由に基づく差別に根ざしており、かつ、社会文化的・宗教的慣習および価値観ならびに不利な立場に置かれた一部の女性・子どもの集団に関連する誤解を援用することによってしばしば正当化されてきた。全般的に、有害慣行は深刻な形態の暴力と関連していることが多く、またはそれ自体が女性・子どもに対する暴力のひとつの形態となっている。これらの慣行の性質および広がりの度合いは地域および文化によって異なるものの、もっとも蔓延しておりかつ十分に記録されているのは、女性性器切除、児童婚および/または強制婚、複婚、いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪ならびにダウリー関連の暴力である。これらの慣行は両委員会で提起されることが多く、かつ立法上および計画上のアプローチを通じて目に見えて減少したケースもあるため、ここではこれらの慣行を主要な実例として用いる。 8.有害慣行は、ほとんどの国で、多種多様なコミュニティに根づいている。これらの慣行のなかには、主として移住の動きが原因で、これまで当該慣行が記録されてこなかった地域・国でも見出されるようになったものもある一方、このような慣行が消滅したものの、紛争状況等の多くの要因が原因となって再び行なわれるようになりつつある国もある。 9.有害慣行として特定された慣行は他にも数多く存在する。いずれも、社会的に構築されたジェンダー役割および父権的権力関係制度と強く関係しており、かつこのような役割および制度を強化するものであって、時には不利な立場におかれた一部の女性および子どもの集団(障害のある個人および白色症の個人を含む)に対する否定的な見方または差別的信条を反映していることもある。これらの慣行には、女子のネグレクト(男子に対する優先的なケアおよび処遇と関連するもの)、妊娠期におけるものを含む食事についての極端な制約(食事の強要および食べ物の禁忌を含む)、処女性検査および関連の慣行、縛ること、傷をつけること、焼印を押すこと/部族の印をつけること、体罰、投石、暴力的通過儀礼、寡婦に関わる慣行、魔女であるとの告発、新生児殺ならびに近親姦が含まれるが、これに限られるものではない [3]。有害慣行には、女子・女性を美しくすることもしくは婚姻できるようにすることを目的として(太らせること、隔離すること、口唇拡大板を使うことおよび首輪で首を伸ばすことなど [4])、または若くして妊娠しないようにもしくはセクシュアルハラスメントおよび性暴力を受けないように女子を保護しようとして(加熱した石等で胸を平らにしようとする「ルパサージュ(アイロンかけ)」など)行なわれる身体改造も含まれる。加えて、世界中の多くの女性および子どもが、医学上または健康上の理由のためではなく身体に関する社会的規範を遵守するための治療および/または形成手術をますます受けるようになっているほか、ファッションとして痩せるようプレッシャーを受けて摂食障害および健康障害の発生に至る女性および子どもも多い。 [3] 女性差別撤廃委員会・一般的勧告19号、パラ11および子どもの権利委員会・一般的意見13号、パラ29参照。 [4] A/61/299、パラ46参照。 IV.女性差別撤廃条約および子どもの権利条約の規範的内容 10.両条約の起草時は有害慣行の問題について現在ほど知られていなかったものの、いずれの条約にも、有害慣行を人権侵害として対象とし、かつ、これらの慣行が防止されかつ解消されることを確保するための措置をとることを締約国に義務づける規定が含まれている。加えて、両委員会は、締約国報告書の審査および締約国とのその後の対話の際にならびにそれぞれの総括所見において、この問題をますます取り上げるようになってきた。この問題についての見解は、両委員会の一般的勧告および一般的意見のなかでさらに詳しく明らかにされてきている [5]。 [5] これまでのところ、女性差別撤廃委員会は9つの一般的勧告で有害慣行に言及してきた。条約第5条の実施についての3号、14号、19号、婚姻および家族関係における平等についての21号、女性と健康についての24号、暫定的特別措置についての25号、条約第2条に基づく締約国の中核的義務についての28号、婚姻、家族関係およびそれらの解消の経済的影響についての29号ならびに紛争の防止、紛争時および紛争後の状況における女性についての30号である。子どもの権利委員会は、一般的意見8号および同13号で、有害慣行を非網羅的に列挙している。 11.両条約の締約国は、女性および子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務の遵守義務を負う。両方の条約の締約国はまた、女性および子どもによる権利の承認、享有および行使を害する行為を防止し、かつ、私人が女性・女子に対する差別(女性差別撤廃条約との関連ではジェンダーに基づく暴力または子どもの権利条約との関連では子どもに対するあらゆる形態の暴力を含む)を行なわないことを確保する相当の注意義務 [6] も有する。 [6] 相当の注意とは、両条約の締約国が負う、暴力または人権侵害を防止し、かつ被害者および証人を人権侵害から保護する義務、責任者(私人を含む)を調査しかつ処罰する義務ならびに人権侵害に対する救済措置にアクセスできるようにする義務として理解されるべきである。女性差別撤廃委員会・一般的勧告19号、パラ9;28号、パラ13;30号、パラ15;個人通報および調査に関する女性差別撤廃委員会の諸見解および諸決定ならびに子どもの権利委員会・一般的意見13号、パラ5参照。 12.両条約は、人権の保護および促進を確保するための、明確に定められた法的枠組みを確立する義務の概要を定めている。そのための重要な第一歩は、両文書を国内法上の枠組みに編入することを通じてとられる。両委員会はともに、有害慣行を解消するための法律には、予算の確保、実施、監視および効果的な執行のための適切な措置が含まれなければならないと強調している [7]。 [7] 女性差別撤廃委員会の一般的勧告28号、パラ38(a)および諸総括所見ならびに子どもの権利委員会・一般的意見13号、パラ40。 13.さらに、保護義務により、締約国は、有害慣行が速やかに、公正にかつ独立の立場から調査されること、効果的な法執行が行なわれること、および、そのような慣行によって危害を受けた者に効果的な救済措置が提供されることを確保するための法的体制を確立することを要求される。両委員会は、締約国に対し、有害慣行を法律で明示的に禁止し、かつ当該犯罪および引き起こされる危害の重大性にしたがって十分な制裁または刑罰の対象とするとともに、防止、被害者の保護、回復、再統合および救済のための手段を整え、かつ、有害慣行が処罰されない状況と闘うよう求める。 14.有害慣行に効果的に対応しなければならないという要件は、2つの条約に基づく締約国の中核的義務のひとつに数えられるので、これらの条項その他の関連条項 [8] に付された留保であって、有害慣行の対象とされずに生活する女性および子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する締約国の義務を広範に限定しまたは修正する効果を有するものは、2つの条約の趣旨および目的と両立せず、女性差別撤廃条約第28条(2)および子どもの権利条約第51条(2)にしたがって許容されない。 [8] 女性差別撤廃条約第2条、第5条および第16条ならびに子どもの権利条約第19条および第24条(3)。 V.有害慣行と判断するための基準 15.有害慣行は根強く残る慣行および行動であり、性、ジェンダー、年齢その他の理由に基づく差別、ならびに、暴力をともない、かつ身体的および/または心理的危害もしくは苦痛を引き起こすことが多い複合的なかつ/または相互に交差しあう形態の差別に根ざしたものである。これらの慣行が被害者に引き起こす危害は直接の身体的および精神的影響に留まらず、女性・子どもの人権および基本的自由の承認、享有および行使を害する目的または効果を有することが多い。女性・子どもの尊厳、身体的、心理社会的および道徳的不可侵性、発達、参加および健康の状態ならびに教育上、経済上および社会上の地位にも悪影響が生ずる。したがって、これらの慣行については両委員会の活動において検討の対象とされる。 16.この一般的勧告/一般的意見の適用上、ある慣行を有害であるとみなすためには、当該慣行が次の基準を満たしていることが求められる。 (a) 当該慣行が、個人の尊厳および/または不可侵性を否定するものであり、かつ2つの条約に掲げられた人権および基本的自由を侵害していること。 (b) 当該慣行が、女性・子どもに対する差別であり、かつ、個人または集団として女性・子どもに悪影響(身体的、心理的、経済的および社会的危害ならびに/または暴力、ならびに、社会に全面的に参加する能力もしくは自己の可能性を全面的に発達させかつ開花させる能力の制限を含む)をもたらす限りで有害であること。 (c) 当該慣行が、伝統的な、再興されつつあるまたは新たに行なわれるようになりつつある慣行であって、性、ジェンダー、年齢およびその他の相互に交差しあう要因に基づく女性・子どもの男性支配および不平等を固定化させる社会的規範によって定められかつ/または維持されているものであること。 (d) 当該慣行が、女性および子どもに対し、被害者が全面的な、自由なかつ十分な情報に基づく同意を与えておりまたは与えることができるか否かにかかわらず、家族、コミュニティの構成員または社会一般によって押しつけられていること。 VI.有害慣行の原因、形態および表れ方 17.有害慣行の原因は多次元的であり、性およびジェンダーに基づくステレオタイプ化された役割、両性のいずれかが優れておりまたは劣っているという推定、女性・女子の身体およびセクシュアリティを管理しようとする試み、社会的不平等ならびに男性優位の権力構造の蔓延が含まれる。これらの慣行を変革しようとする努力においては、伝統的な、再興されつつあるまたは新たに行なわれるようになりつつある有害慣行の根底にあるこれらの組織的および構造的原因に対応するとともに、女子・女性ならびに男子・男性が、有害慣行を容認する伝統的な文化的態度の変容に寄与し、かつそのような変革の主体として行動できるようにそのエンパワーメントを図り、かつ、これらの過程を支援するコミュニティの能力を強化しなければならない。 18.有害慣行と闘うために行なわれている努力にもかかわらず、その影響を受ける女性・女子の全体数は著しく多いままであり、かつ、たとえば紛争状況下において、またソーシャルメディアの広範な活用のような技術的発展を原因として、増えている可能性もある。両委員会は、締約国報告書の検討を通じて、有害慣行を実践しているコミュニティの構成員であって移住を通じてまたは庇護を求めるために目的地国に移り住んだ者が引き続き有害慣行を支持していることが多いことに留意してきた。これらの有害慣行を支持する社会的規範および文化的信条は根強く残っており、かつ、時として、新たな環境で自分たちの文化的アイデンティティを維持しようとしてコミュニティがこれらの規範および信条を強調することもある(とくに、目的地国のジェンダー役割によって女性・女子の個人的自由が拡大する場合)。 A 女性性器切除 19.女性性器切除、女性割礼または女性性器切断は、医学上または健康上の理由とは関わりなく、女性の外性器を部分的にもしくは完全に除去し、またはその他のやり方で女性の性器を傷つける慣行である。この一般的勧告/一般的意見では女性性器切除(FGM)という。FGMは、世界のすべての地域でおよび一部の文化圏内で行なわれている慣行であり、婚姻の要件とされており、かつ、女性・女子のセクシュアリティを管理する効果的な手段と考えられている。この慣行は、即時的かつ長期的にさまざまな健康上の影響をもたらす可能性があり、これには激痛、ショック、出産時の感染症および合併症(これは母子双方に影響を及ぼすものである)、瘻孔などの長期的な婦人科的問題ならびに心理的影響および死亡が含まれる。世界保健機関および国連児童基金による推計では、世界中で1億~1億4千万人の女子・女性がいずれかのタイプのFGMを受けさせられてきた。 B 児童婚および/または強制婚 20.児童婚(早期婚とも呼ばれる)とは、少なくとも当事者の一方が18歳未満であるすべての婚姻をいう。児童婚では、正式な婚姻であるか非公式なものであるかを問わず、圧倒的多数で女子が関与している(ただし、時には女子の配偶者も18歳未満であることがある)。当事者の一方または双方が全面的な、自由なかつ十分な情報に基づく同意を与えていないことに鑑み、児童婚は強制婚の一形態であると考えられる。 訳者注/採択当初はこれに続けて次のように述べられていたが、2019年の改訂により削除された。 「自己の人生に影響を与える決定を行なうことについて子どもの発達しつつある能力および自律を尊重するという観点から、例外的状況においては、成熟した、判断能力のある18歳未満の子どもの婚姻を認めることもできる。ただし、その子どもが16歳以上であり、かつ、そのような決定が、法律によって定められた正当な例外的事由および成熟していることを示す証拠に基づき、文化および伝統におもねることなく、裁判官によって行なわれることを条件とする。」 21.状況によっては、子どもが非常に幼くして婚約または婚姻をさせられることがあり、多くの場合、幼い女子が強制的に婚姻させられる相手の男性は数十歳も年上である可能性がある。2012年に国連児童基金が報告したところによれば、世界中で4億人の女性(20~49歳)が18歳に達する前に婚姻しまたはこれに準ずる結合関係に入っていた [9]。そのため両委員会は、女子がその全面的な、自由なかつ十分な情報に基づく同意に反して婚姻させられた事案(当該女子の年齢が低すぎるために、成人としての生活を送ることまたは意識的なかつ十分な情報に基づく決定を行なうことの用意が身体的および心理的に整っておらず、したがって婚姻に同意する状況にない場合など)に特段の注意を払ってきたところである。他の例としては、慣習法または制定法にしたがって保護者が女子の婚姻に同意する法的権限を有しており、そのため自由に婚姻する権利に反して女子が婚姻させられる場合などがある。 [9] http //www.apromiserenewed.org/ 参照。 22.児童婚には早期のかつ頻繁な妊娠および出産がともなうことも多く、そのため妊産婦罹病率および妊産婦死亡率が平均より高くなる。妊娠関連死は、世界的に、15~19歳の女子(婚姻しているかしていないかは問わない)の死因の筆頭である。非常に幼い母親から生まれた子どもの新生児死亡率は、より年長の母親から生まれた子どもよりも高い(2倍に達することもある)。児童婚および/または強制婚では、とくに夫が新婦よりも相当に年上である場合または女子が限られた教育しか受けていない場合、女子は自分自身の人生との関係で限られた意思決定権限しか持たないのが一般的である。児童婚はまた、(とくに女子の)学校中退率の上昇、退学、ドメスティックバイオレンスのおそれの高まりおよび移動の自由についての権利の享有の制限も助長する。 23.強制婚とは、当事者のいずれかまたは双方が全面的かつ自由な同意を自ら表明していない婚姻をいう。強制婚は、前述の児童婚のほか、交換婚または相殺婚(たとえばバアドおよびバアダル)、奴隷婚およびレビラト婚(寡婦に対して死亡した夫の親族との婚姻を強制すること)を含む、その他のさまざまな形態で行なわれる場合がある。状況によっては、強姦加害者が被害者と(通常は被害者の家族の同意に基づき)婚姻することによって刑事罰を免れることが認められる場合に、強制婚が行なわれることもある。強制婚は、移住の動きを背景として、女子が家族の出身コミュニティ内で婚姻することを確保するために、または拡大家族の構成員等に対して特定の目的地国に移住しかつ/もしくはそこで生活するための資格証明書類を与えるために、行なわれる場合もある。武装集団による紛争中の強制婚の利用も増えつつあるほか、強制婚が、女子が紛争後の貧困を免れるための手段とされることもある [10]。強制婚はまた、当事者の一方に解消または離脱が認められていない婚姻と定義される場合もある。強制婚は、女子が人身の自律権および経済的自律権を欠き、かつ婚姻を回避しまたは婚姻から抜け出すために逃走しまたは焼身自殺その他の自殺を試みるという結果につながることも多い。 [10] 女性差別撤廃委員会・一般的勧告30号、パラ62。 24.ダウリー(持参財)および花嫁代償金の支払いのあり方は当該慣行を実践しているコミュニティによってさまざまだが、このために女性・女子が暴力および他の有害慣行の被害をいっそう受けやすくなる可能性がある。夫またはその家族構成員は、ダウリーの支払いまたはその額面についての期待を満たさなかったという理由で、殺害、焼殺および酸による攻撃を含む身体的または心理的暴力行為に及ぶことがある。場合によっては、家族同士が、金銭的利得と引き換えに娘の一時的「婚姻」に同意することもあるが、これは契約婚とも呼ばれる人身取引の一形態である。子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の締約国は、ダウリーの支払いまたは花嫁代償金をともなう児童婚および/または強制婚に関して明示的義務を負っている。これは議定書第2条(a)で定義された「子どもの売買」に相当しうるからである [11]。女性差別撤廃委員会は、そのような支払いまたは選択によって婚姻を成立させることを認めるのは配偶者を自由に選択する権利の侵害であることを繰り返し強調するとともに、一般的勧告29号において、このような慣行は婚姻を有効に成立させるための要件とされるべきではなく、またこのような取決めが締約国によって執行可能なものとして承認されるべきではないことを説明した。 [11] 第3条(1)(a)(i)も参照。 C 複婚 25.複婚は女性・女子の尊厳に逆行し、かつその人権および自由(家族における平等および保護を含む)を侵害するものである。複婚のあり方は、法的および社会的文脈によって、また同じ法的および社会的文脈の内部でも、さまざまに異なる。複婚の影響には、身体的、精神的および社会的ウェルビーイングと理解される妻の健康への害、妻が負うことになる可能性がある物質的危害および剥奪ならびに子どもに対する情緒的および物質的危害(これによって子どもの福祉に重大な影響が生じることも多い)が含まれる。 26.多くの締約国が複婚の禁止を選択してきた一方で、いくつかの国では、合法的か不法であるかにかかわらず、複婚が実践され続けている。歴史を通じ、一部の農業社会においては、個々の家族のためにより大きな労働力を確保するための方策として複婚家族制度が機能してきたとはいえ、研究によれば、複婚は逆に(とくに農村部では)家族の貧困を強化する結果につながることが多いことが明らかになっている。 27.女性・女子の双方が複婚的結合の対象とされているが、女子は相当に年上の男性と婚姻または婚約をさせられる可能性がはるかに高いことが証拠により明らかにされており、そのため暴力および権利侵害のおそれが高まっている。制定法と宗教法、身分法及び伝統的慣習法ならびにこれらに基づく慣行とが共存している場合、この慣行が根強く残ることの助長要因となることが多い。もっとも、複婚が民事法で認められている締約国もある。文化および宗教に対する権利を保護する憲法上その他の規定が、複婚的結合を認める法律および慣行を正当化するために用いられることもある。 28.複婚は女性差別撤廃条約に反する [12] ので、同条約の締約国は、複婚を抑制しかつ禁止する明示的義務を負っている。女性差別撤廃委員会はまた、複婚が女性およびその子どもの経済的ウェルビーイングにとって相当の影響をもたらす [13] ことも主張するものである。 [12] 女性差別撤廃委員会・一般的勧告21号、28号および29号。 [13] 女性差別撤廃委員会・一般的勧告29号、パラ27。 D いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪 29.いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪とは、行なわれた疑いがある、行なわれたと認識された、または実際に行なわれた行動が家族またはコミュニティに不名誉をもたらすと家族構成員が考えたという理由で、完全にではないにせよ不相応な割合で女子・女性が対象とされる暴力行為をいう。このような行動には、婚姻前に性的関係を持つこと、取り決められた婚姻に同意しないこと、親の同意を得ずに婚姻すること、姦通を行なうこと、離婚を求めること、コミュニティにとって受け入れられないと捉えられる服装をすること、家の外で働くこと、またはステレオタイプ化されたジェンダー役割にしたがわないこと一般が含まれる。いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪は、女子・女性に対し、性暴力の被害を受けたという理由で行なわれることもある。 30.このような犯罪には殺害も含まれ、またしばしば配偶者、女性もしくは男性の親族、または被害者が属するコミュニティの構成員によって行なわれる。いわゆる名誉の名の下に行なわれる犯罪は、女性に対する犯罪行為と捉えられるのではなく、コミュニティによって、逸脱とされる行動が行なわれた後にコミュニティの文化的、伝統的、慣習的または宗教的規範を保全しかつ/または回復するための手段として是認されることが多い。状況によっては、国内法もしくはその実際の適用によって、または法律が定められていないことによって、これらの犯罪を行なった者の違法性阻却事由または情状酌量事由として名誉の抗弁を行なうことが認められており、減刑または刑の免除が行なわれている。加えて、事件について知っている者が裏付け証拠の提出について消極的な態度をとることにより、事件の訴追が阻害されることもある。 VII.有害慣行に対応するためのホリスティックな枠組み 31.両条約とも、有害慣行の解消に具体的に言及している。女性差別撤廃条約の締約国は、適切な立法、政策および措置を計画しかつ採択するとともに、その実施において、有害慣行および女性に対する暴力を生じさせる差別の撤廃にとっての具体的な障害、障壁および抵抗に対する効果的対応がとられることを確保する義務を負う(第2条および第3条)。ただし、締約国は、何よりも女性の人権が侵害されないことを確保しながら、とられた措置が直接の関連性および適切性を有することを実証できなければならず、また当該措置によって所期の効果および成果が達成されるか否かを実証できなければならない。さらに、そのような対象を明確化した政策を追求する締約国の義務は即時的性質の義務であり、締約国は、文化的および宗教的理由を含むいかなる理由によっても、いかなる遅延も正当化することができない。締約国はまた、両性のいずれかの劣等性もしくは優越性の観念または男女のステレオタイプ化された役割に基づく偏見および慣習その他のあらゆる慣行の解消を達成する目的で男女の社会的および文化的な行動様式を修正し(第5条(a))、かつ、子どもの婚約および婚姻がいかなる法的効果も有しないことを確保する(第16条(2))ために、暫定的な特別措置(第4条(1))を含むすべての適切な措置をとる義務も負う [14]。 [14] 女性差別撤廃委員会・一般的勧告25号、パラ38。 32.一方、子どもの権利条約は、締約国に対し、子どもの健康にとって有害な伝統的慣行を廃止する目的で効果的かつ適切なあらゆる措置をとることを義務づけている(第24条(3))。加えて、身体的、性的または心理的暴力を含むあらゆる形態の暴力から保護される子どもの権利を規定する(第19条)とともに、締約国に対し、いかなる子どもも、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたは処罰を受けないことを確保するよう、要求している。条約の4つの一般原則、すなわち差別からの保護(第2条)、子どもの最善の利益の確保(第3条(1))[15]、生命、生存および発達に対する権利の擁護(第6条)ならびに意見を聴かれる子どもの権利(第12条)は、有害慣行の問題にも適用される。 [15] 子どもの権利委員会・一般的意見14号(自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利)。 33.どちらの場合にも、有害慣行の効果的な防止および解消のためには、明確に記述された、権利を基盤とする、かつ地域的関連性を有するホリスティックな戦略であって、支援的な法律上および政策上の措置(あらゆるレベルにおける相応の政治的コミットメントおよび説明責任と組み合わされた社会的措置を含む)をともなう戦略を確立することが必要である。両条約に掲げられた義務は、有害慣行を解消するためのホリスティックな戦略の策定の基礎となるものであり、以下にこのような戦略に含まれるべき要素を掲げる。 34.このようなホリスティックな戦略は、垂直的にも水平的にも主流化および調整が図られなければならず、またあらゆる形態の有害慣行を防止しかつこれに対処するための国家的努力に統合されなければならない。水平的調整のためには、教育、保健、司法、社会福祉、法執行、出入国管理および庇護ならびに通信およびメディアを含む諸部門を横断する組織化が必要である。同様に、垂直的調整のためには、地方、広域行政圏および国のレベルにおける諸主体間の組織化ならびに伝統的および宗教的権威との組織化が必要になる。このようなプロセスを促進するため、既存のまたはとくに設置された上級機関に、あらゆる関係者と協力しながらこれらの活動を進める責任を委任することが検討されるべきである。 35.いかなるものであれ、ホリスティックな戦略を実施しようとすれば必然的に十分な組織的、人的、技術的および財政的資源の提供が必要であり、かつこれらの資源を補完する適切な措置および手段(規則、政策、計画および予算など)がともなわなければならない。加えて、締約国は、有害慣行からの女性・子どもの保護ならびに女性・子どもの権利の実現における進展を追跡するための独立した監視機構が整備されることを確保する義務を負う。 36.有害慣行の解消を目的する戦略はまた、他の広範な関係者(独立の国内人権機関、保健、教育および法執行の専門家、市民社会の構成員ならびに有害慣行に従事している人々を含む)の関与を得るものでもなければならない。 A データ収集および監視 37.量的および質的データの恒常的かつ包括的な収集、分析、普及および活用は、政策の有効性の確保、適切な戦略の策定および措置の立案にとって、また効果の評価、有害慣行の解消に向けて達成された進展の監視ならびに再興されつつある有害慣行および新たに登場しつつある有害慣行の特定にとって、きわめて重要である。データが利用できることにより、傾向の検討が可能になり、かつ、政策ならびに国および国以外の主体による効果的なプログラム実施と、これに対応した態度、行動様式、実践および蔓延率の変化との妥当な関係を確立することができるようになる。性別、年齢、地理的所在、社会経済的地位、教育水準その他の主要な要素によって細分化されたデータは、有害慣行に対応するための政策立案および行動の指針となる、女性および子どものなかでもリスクが高い状況および不利な立場に置かれた集団の特定にとって中心的重要性を有するものである。 38.このような認識があるにもかかわらず、有害慣行に関する細分化されたデータは依然として限られており、かつ国別および経時的に比較可能なものであることも稀であるため、問題の規模および変遷についての理解、ならびに、十分な適合性および対象の明確性を有する措置の特定が限定的なものとなっている。 39.両委員会は、両条約の締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 有害慣行に関する量的および質的データ(性別、年齢、地理的所在、社会経済的地位、教育水準その他の主要な要素によって細分化されたもの)の恒常的な収集、分析、普及および活用に優先的に取り組むとともに、当該活動に十分な資源が提供されることを確保すること。保健ケア・社会サービス部門、教育部門および司法・法執行部門に、保護関連の問題に関する恒常的なデータ収集システムが設置されかつ/または維持されるべきである。 (b) 人口動態および諸指標に関する全国的な調査ならびに国勢調査を活用してデータを収集すること。このようなデータを、全国的な代表性を有する世帯調査から得られたデータによって補完することも考えられる。フォーカス・グループ・ディスカッション、多種多様な関係者を対象とする詳細なキー・インフォーマント・インタビュー、構造的観察法、ソーシャル・マッピングその他の適切な手法を通じた質的調査が実施されるべきである。 B 立法および法執行 40.いかなるホリスティックな戦略においても、その鍵となる要素のひとつは関連の法律の作成、制定、実施および監視である。各締約国は、有害慣行を非難する明確なメッセージを発し、被害者を法的に保護し、危険な状況にある女性・子どもを国および国以外の主体が保護できるようにし、適切な対応およびケアを提供し、かつ、救済措置が利用できることおよび処罰の免除に終止符が打たれることを確保する義務を負っている [16]。 [16] 女性差別撤廃条約第2条(a)-(c)、第2条(f)および第5条ならびに子どもの権利委員会・一般的意見13号参照。 41.ただし、法律の制定だけでは、有害慣行と効果的に闘うのには不十分である。したがって、相当の注意の要件にしたがい、法律は、その実施、執行およびフォローアップならびに達成された成果のモニタリングおよび評価を促進するための、一連の包括的措置によって補完されなければならない。 42.多くの締約国は、両条約に基づく義務に反して、有害慣行を正当化し、認め、または有害慣行につながる法規定を維持している。児童婚を認める法律、女子・女性に対して行なわれた犯罪の違法性阻却事由または情状酌量事由としていわゆる名誉の抗弁を規定している法律、または強姦その他の性犯罪の加害者が被害者と婚姻することによって制裁を回避できるようにしている法律などである。 43.複数の法体系が存在している締約国では、たとえ法律で有害慣行が明示的に禁じられていても、慣習法、伝統法または宗教法の存在によって実際にはこれらの慣行が支持されている可能性があるために、禁止規定が効果的に執行されない場合がある。 44.慣習法を扱う裁判所もしくは宗教裁判所または伝統的な裁定制度の裁判官が偏見を有しており、かつ女性および子どもの権利について扱う能力を十分に有していない場合、および、そのような慣習的制度の権限内にある問題は国その他の司法機関によるいかなる再審査または吟味の対象にもされるべきではないと考えられている場合には、有害慣行の被害者による司法へのアクセスが否定されまたは制限される。 45.有害慣行を禁止する法律の起草に関係者が全面的にかつインクルーシブに参加することにより、有害慣行に関わる主要な懸念が正確に特定され、かつ対応されることを確保することができる。当該慣行を実践しているコミュニティ、その他の関係者および市民社会の構成員の関与および意見を求めることは、このプロセスにとって中心的重要性を有する。ただし、有害慣行を支持する支配的な態度および社会的規範によって法律の制定および執行の努力が弱められないようにするため、配慮が行なわれるべきである。 46.多くの締約国は政府の権限の委任および委譲を通じて地方分権化を図るための措置をとってきたが、これによって、有害慣行を禁じた、自国の管轄全域で適用される法律を制定する義務が縮減されまたは否定されるべきではない。地方分権化または権限委任のために、地域および文化圏によって有害慣行からの女性・子どもの保護に関わる差別が生じることにならないようにするための保障措置が設けられなければならない。権限の委任にともなって、有害慣行の解消を目的とする法律を効果的に執行するために必要な人的、財政的、技術的その他の資源が提供される必要がある。 47.有害慣行に関与している文化的集団は、国境を越えたそのような慣行の拡散を助長する可能性がある。このような事態が生じている場合、拡散を封じこめるための適切な措置が必要である。 48.国内人権機関は、有害慣行の対象とされない個人の権利を含む人権の促進および保護ならびにこれらの権利に関する公衆の意識の増進において果たすべき重要な役割を有している。 49.女性・子どもにサービスを提供している個人、とくに医療従事者および教員は、有害慣行の実際のまたは潜在的な被害者を発見するうえで他に例のない立場にある。ただし、このような個人が秘密保持の規則に拘束されていることも多く、そのような規則が、有害慣行が実際に行なわれたことまたは行なわれる可能性があることを通報する義務と衝突する場合もある。このような事態は、このような事案の通報をこれらの者の義務とする具体的規則によって克服されなければならない。 50.医療専門家または政府の被用者もしくは公務員が有害慣行の実行に関与しておりまたは当該行為の共犯者である場合、その地位および責任(通報する責任を含む)は、刑事上の制裁または行政上の制裁(専門職免許の喪失もしくは契約停止など)の決定における加重事由とみなされるべきである(制裁を科すに先立って警告を行なうことが求められる)。関連の専門家を対象とする組織的研修は、この点に関わる効果的な防止措置と考えられる。 51.刑法上の制裁は、有害慣行の防止および解消に寄与するやり方で一貫して執行されなければならないが、締約国はまた、被害者に対する潜在的脅威および悪影響(報復行為を含む)も考慮しなければならない。 52.金銭的賠償は、発生件数の多い地域では実行可能性に欠ける場合もある。ただし、有害慣行の影響を受けた女性および子どもは、あらゆる場合に、法的救済措置、被害者支援およびリハビリテーションのサービスならびに社会的および経済的機会にアクセスできるべきである。 53.子どもの最善の利益ならびに女子・女性の権利の保護が常に考慮されるべきであり、またこれらの者がその視点を表明できるようにし、かつその意見が正当に重視されることを確保するために必要な諸条件が整備されなければならない。児童婚および/または強制婚の解消ならびに支払われたダウリーおよび花嫁代償金の返還が子どもまたは女性に与える可能性がある短期的および長期的影響についても、慎重に考慮されるべきである。 54.締約国ならびにとくに出入国管理官および庇護担当官は、女性・女子が、有害慣行の対象となることを避けるために出身国から避難してきた可能性もあることを認識しておくべきである。これらの官吏は、このような女性・女子を保護するためにどのような措置をとる必要があるかについての、文化および法律に関わる、ジェンダーに配慮した適切な研修を受けるべきである。 55.両委員会は、両条約の締約国が、有害慣行への効果的な対応およびその解消を目的とした法律の採択または法改正を行なうよう勧告する。その際、締約国は以下のことを確保するべきである。 (a) 法律を起草する過程が全面的なインクルージョンおよび参加を保障するものであること。この目的のため、締約国は、当該法律の起草、採択、普及および実施について公衆が広く知り、かつこれを支持することを促すべく、対象を明確にしたアドボカシーおよび意識啓発を行ない、かつ社会的動員のための措置を活用するべきである。 (b) 当該法律が、女性差別撤廃条約および子どもの権利条約ならびに有害慣行を禁ずるその他の国際人権基準に掲げられた関連の義務を全面的に遵守しており、かつ、とくに複数の法体系が存在する国においては、当該法律が、いずれかの有害慣行を認め、容認しまたは定めている慣習法、伝統法または宗教法に優越すること。 (c) 有害慣行を容認し、認め、または有害慣行につながるすべての法律(伝統法、慣習法または宗教法を含む)、および、いわゆる名誉の名の下で行なわれる犯罪の遂行における抗弁または情状酌量事由として名誉の抗弁を認めるすべての法律を、これ以上遅れることなく廃止すること。 (d) 当該法律が、一貫性および包括性を有し、かつ、防止、保護、支援およびフォローアップのためのサービスならびに被害者の援助(被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に向けたものを含む)に関する詳細な指針を明らかにするとともに、民事法上および/または行政法上の十分な規定によって補完されていること。 (e) 当該法律において、有害慣行の根本的原因(性、ジェンダー、年齢およびその他の相互に交差しあう要因に基づく差別を含む)への十分な対応(暫定的特別措置をとることによるものを含む)が定められており、被害者の人権およびニーズに焦点が当てられ、かつ、子どもおよび女性の最善の利益が全面的に考慮されていること。 (f) 女子および男子の婚姻に関する最低法定年齢が、親の同意の有無にかかわらず18歳と定められること。 訳者注/2019年の改訂により、これに続けて述べられていた以下の指摘が削除された。 「例外的事情がある場合に18歳未満での婚姻が認められるときは、絶対的最低年齢が16歳を下回らないこと、許可事由が正当であり、かつ法律によって厳格に定められていること、および、当該婚姻の許可が、一方のまたは双方の子どもによる全面的な、自由な、かつ十分な情報に基づく同意(当事者である子どもは出廷しなければならない)を踏まえて、裁判所によってのみ与えられることという条件が満たされなければならない。」 (g) 婚姻登録の法的要件が定められるとともに、意識啓発、教育、および、管轄内のすべての者が登録にアクセスできるようにするための十分なインフラの存在を通じて効果的実施が行なわれること。 (h) 児童婚を含む有害慣行を効果的に防止するため、義務的な、アクセスしやすい、かつ無償の全国的な出生登録制度が確立されること。 (i) 国内人権機関に対し、秘密が保持される、ジェンダーに配慮した、かつ子どもにやさしい方法で個人の苦情申立ておよび請願(女性・子どもに代わって行なわれるものまたは女性・子どもが直接行なうものを含む)を検討し、かつ調査を実施する権限が委任されること。 (j) 子ども・女性のためにならびに子ども・女性とともに働く専門家および機関が、有害慣行が行なわれたまたは行なわれる可能性があると考える合理的根拠がある場合に、事件の発生またはそのおそれについて通報することを法律により義務づけられること。義務的通報の責任を課すにあたっては、通報者のプライバシーおよび秘密の保護が確保されるべきである。 (k) 刑法の起草および改正を目的とするすべての取り組みは、被害者および有害慣行の対象とされるおそれがある者を保護するための措置およびサービスと組み合わせて行なわれなければならないこと。 (l) 法律により、有害慣行の犯罪について、たとえそれが当該有害慣行の犯罪化に至っていない国で実行された場合であっても、締約国の国民および常居者に適用される裁判権が設定されること。 (m) 出入国管理および庇護に関連する法律および政策において、有害慣行の対象とされるおそれまたはそのような慣行の結果として迫害されるおそれのあることが庇護を付与する理由のひとつとして認められること。当該女子・女性に付添っている場合がある親族に対して保護を与えることも、個別の事案ごとに検討されるべきである。 (n) 当該法律に、実施、執行およびフォローアップに関するものを含む定期的な評価および監視についての規定が含まれること。 (o) 有害慣行の対象とされた女性および子どもが司法に平等にアクセスできること(時効など、法的手続の開始を妨げる法律上および実際上の障壁に対応することも含む)、ならびに、実行犯および当該慣行を幇助しまたは容認した者の責任が問われること。 (p) 当該法律で、有害慣行の対象とされるおそれがある者の安全を守るための必要的な差止命令または保護命令が定められ、かつ、そのような者の安全についての規定および被害者を報復から保護するための措置に関する規定が置かれること。 (q) 違反の被害者が、実際に、法的救済措置および適切な賠償に平等にアクセスできること。 (CRC/CEDAW 有害慣行 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2015年2月6日)。/パラ5「一般的勧告4号」を「一般的勧告14号」に修正(9月13日)。/2019年の改訂(パラ20)の結果を反映(2019年12月27日)。
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/95.html
(4)体調不良、食物アレルギー、障害のある子どもなど、一人一人の子どもの心身の状態等に応じ、嘱託医、かかりつけ医等の指示や協力の下に適切に対応すること。栄養士が配置されている場合は、専門性を生かした対応を図ること。 全職員が連携・協力して食育の推進に当たりますが、特に栄養士が配置されている場合には、子どもの健康状態、発育・発達状態、栄養状態、食生活の状況を見ながら、その専門性を生かして、献立の作成、食材料の選定、調理方法、摂取の方法、摂取量の指導に当たることが望まれます。また、必要に応じて療育機関、医療機関等の専門職の指導・指示を受けることが必要です。 ①体調不良の子どもへの対応 病気の始まりの状態、さらに病気の回復期等、病気や一人一人の心身の所見に応じた食事の提供は、病気の悪化を防ぐこと、病気の回復を早めること等の目的もあります。必要に応じて嘱託医やかかりつけ医の指導・指示により、食事を提供することが必要です。 ②食物アレルギーのある子どもへの対応 食べ物によって種々のアレルギー症状を呈する子どもの食事、特に除去食については、専門医や、かかりつけ医などの指導・指示が必要です。保護者の申し入れが、子どもの健康や発育・発達に支障をもたらすことも考えられます。除去食等が提供される場合には、除去食品の誤食などの事故防止に努め、当該の子どもだけでなく他の子どもや保護者にもその旨を理解してもらうことが必要です。 ③障害のある子ども 障害のある子どもに対し、他の子どもと異なる食事を提供する場合があり、食事の摂取に際しても介助の必要な場合があります。療育機関、医療機関等の専門職の指導・指示を受けて、一人一人の子どもの心身の状態、特に、咀嚼や嚥下の摂食機能や手指等の運動機能等の状態に応じた配慮が必要です。また、誤飲をはじめとする事故の防止にも留意しなければなりません。さらに、他の子どもや保護者が、障害のある子どもの食生活について理解できるように配慮します。 ④食を通した保護者への支援 家庭と連携・協力して食育を進めていくことが大切です。保育所での子どもの食事の様子や、保育所が食育に関してどのように取り組んでいるのかを伝えることは、家庭での食育の関心を高めていくことにつながります。家庭からの食生活に関する相談に応じたり、助言・支援を行います。 具体的取組としては、毎日の送迎時での助言、家庭への通信、日々の連絡帳、給食やおやつの場を含めた保育参観や試食会、保護者の参加による調理実践、行事などが考えられます。懇談会などを通して、保護者同士の交流を図ることにより、家庭での食育の実践がより広がることも期待できます。 地域の子育て家庭において、子どもの食生活に関する悩み等が子育て不安の一因となることもあります。食を通して子どもへの理解を深め、子育ての不安を軽減し、家庭や地域の養育力の向上につなげることができるよう保育所の調理室等を活用し、食生活に関する相談・支援を行うことも大切です。
https://w.atwiki.jp/wikiwiki2/pages/262.html
河合隼雄 『子どもの本を読む』 岩波現代文庫 2013.6 1.エーリヒ・ケストナー 飛ぶ教室 県立 6FYBケス 市立 新任教師が読むのにうってつけ。 当時、ヒットラーが政権をとり、ケストナーの著作は出版禁止になり、これが最後となった。 (参考 高橋健二 ケストナーの生涯) 2.フィリパ・ピアス 『まぼろしの小さい犬』 県立 青森 市立 1962 A Dog So Small 県立 まばろし(ファンタジー)がいかに大切かを極めてリアリスティックに描き出した稀有の作品 3.J・ロビンソン 思い出のマーニー 岩波少年文庫 県立 市民・企画 市立1,2 やる気のない子の癒しの道 4.今江祥智 『ぼんぼん』 兄貴(県立 9F 市立) おれたちのおふくろ(県立 9F 6FY91イマ 市立)(3部作) 5.ペーター・ヘルトリング ヒルベルという子がいた 県立 9F 市立 ドイツ語で、ヒルンは脳とか知能、ヴィルベルは渦とか混乱。だから、ヒルベル少年の脳には渦が巻いている。 6.A・リンドグレーン 長くつ下のピッピ(県立 7F児・文学J94リ 市立J943リ) ピッピ船にのる(県立 7F児・文学J94リ 市立岩波少年文庫) ピッピ南の島へ(県立 7F児・文学J94リ 市立岩波少年文庫)(3部作) 恵まれた子。「あしながおじさん」がきっかけ 7.ルーマー・ゴッデン 『ねずみ女房』 8.長新太 つみつみニャー、ごろごろ にゃーん、おなら、ぼくのくれよん 非日常空間を描くことにかけては稀有の才能 9.佐野洋子 『わたしが妹だったとき』 女の子にとっての兄の存在
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/326.html
国連人権高等弁務官事務所:COVID-19ガイダンス 原文:英語(2020年4月3日掲載確認) 日本語訳:平野裕二 日本語訳PDF:5月16日現在/4月29日現在/4月20日現在 注:参考資料は別のページに移行させました。 COVID-19ガイダンス(国連人権高等弁務官事務所) COVID-19は社会、政府、コミュニティおよび個人にとっての試金石である。いまこそ、このウィルスに対応し、COVID-19拡散阻止のための措置が――しばしば意図しない形で――もたらす影響を緩和するための連帯と協力を進めなければならない。さまざまな領域の人権(経済的・社会的権利および市民的・政治的権利を含む)を尊重することは、公衆衛生上の対応が成功するための基本となろう。 保健ケアへのアクセス 保健戦略においては、エピデミックの医療的側面だけではなく、保健対応の一環としてとられた措置がもたらす人権およびジェンダーに固有の即時的、中期的および長期的な影響も扱われるべきである。 治療は、差別なくすべての人(もっとも脆弱な状況に置かれた人々および周縁化された人々を含む)に対して利用可能とされるべきである。すなわち、アクセスを妨げる既存の障壁に対応するとともに、治療費を払えないこと、年齢、障害、ジェンダーもしくは性的指向を含む差別的根拠、またはスティグマのために治療を受けられなくさせられていることを理由に時宜を得た適切な治療を拒否される人がひとりも出ないようにしなければならない。 保健対応の参考とし、かつ取り残されるおそれがもっとも高い人々を特定する目的で、少なくとも性、年齢および障害によって細分化された、パンデミック関連の匿名化されたデータを収集しかつ公表する。 緊急措置 政府はCOVID-19への対応に際して困難な決定を行なわなければならない。重大な脅威への対応として緊急措置をとることは国際法で認められているものの、その措置は、評価されたリスクに比例しており、必要であり、かつ差別のないやり方で適用されなければならない。すなわち、具体的な焦点および期間が定められなければならず、公衆衛生の保護のために可能なかぎり制限の度合いが低いアプローチをとらなければならないということである。 緊急事態宣言が行なわれた場合、市民的及び政治的権利に関する国際規約の締約国は、国連事務総長を通じて公式な通知を行なう法律上の義務を履行するべきである。地域人権条約にも同様の義務が掲げられている。 COVID-19に関連して、緊急権限は正当な公衆衛生上の目標のために使用されなければならず、異論を抑え、人権擁護者またはジャーナリストの活動を封じ、その他の人権を否定し、または保健状況に対応するために厳に必要とされるもの以外の他のいずれかの措置をとる根拠として用いられてはならない。 一部の権利はたとえ緊急事態であっても制限することができず(逸脱禁止)、これにはとくにノンルフールマンの原則、集団的追放の禁止、拷問および不当な取扱いの禁止、思想、良心および宗教の自由に対する権利が含まれる。 政府は、影響を受ける住民に対し、緊急事態とは何を意味するのか、それがどこで適用されるのか、および、どの程度の期間の施行が予定されているのかに関する情報を提供するとともに、この情報を定期的に更新し、かつ広く利用可能とするべきである。 政府にとって重要なのは、このような対応が今回の危機のさまざまな段階のニーズに適合したものでなければならないことを認識し、実現可能なかぎり早期に通常の生活への復帰を確保することであって、日常生活を無期限に規制するために緊急権限を用いないことである。Emergency Mesures and COVID-19 Guidance(PDF)参照。 誰ひとり取り残さない すべての社会に、多種多様な理由(そのなかには根深い差別、排除、不平等または政治的分断を反映したものもある)で周縁化され、公的な情報およびサービスへのアクセスに関して困難に直面している人々が存在する。COVID-19に関する広報および対応の取り組みにおいては、見落とされまたは排除されるおそれがあるかもしれない人々(国民的、民族的もしくは宗教的マイノリティ、先住民族、移住者、避難民および難民、高齢者、障害のある人、LGBTIである人々または極度の貧困の影響を受けている人々など)を特定するために特段の配慮が必要となろう。 国内人権機関および市民社会は、対策をとらなければ見落とされまたは排除される可能性がある人々の特定を援助し、これらのコミュニティに情報が届くようにすることを支援するとともに、措置がコミュニティに及ぼしている影響に関するフィードバックを当局に提供することができる。 居住 人々が自宅に留まることを求められるなか、政府として、十分な住居を持たない人々を援助するための措置を緊急にとることがきわめて重要である。自宅に留まることおよび社会的距離をとることは、過密な環境下で暮らしている人々、ホームレスの人々および水・衛生設備にアクセスできない人々にとっては著しく困難であるためである。住環境が不十分な人々およびホームレスの人々に対応する望ましい実践には、ウィルスに感染して隔離されなければならない人々を対象とするサービス付き緊急住居の提供(空き室および放棄された住戸の利用、利用可能な短期貸室を含む)が含まれる。 当局は、たとえば所得を失ったために住宅ローンや家賃が払えなくて立ち退きに直面する場合など、ホームレスになる人々がさらに増えないようにするために特段の配慮を行なうべきである。立ち退きの一時的禁止、住宅ローンの支払いの繰り延べといった望ましい実践を他でも広く行なうことが求められる。 封じ込め措置が実行される場合、何人も、ホームレスであることまたは住環境が不十分であることを理由に処罰されるべきではない。 障害のある人々 障害のある人々はCOVID-19に関わるリスクがはるかに高い状況に置かれており、国の対応には、これらの人々に対処するための焦点化された措置が含まれなければならない。危機対応措置、保健面での介入策および社会的保護のための介入策はすべての人にとってアクセシブルなものでなければならず、障害のある人々を差別するものであってはならない。 物理的距離戦略、自主隔離およびその他の緊急措置においては、生存のために必要不可欠な支援ネットワークに依存しており、かつその一部は外出禁止にともなって相当のストレスを経験している可能性がある、障害のある人々のニーズが考慮されなければならない。 国は、危機の期間全体を通じて障害のある人々のための支援ネットワークの継続性を保証するための追加的措置を整備するべきである。家族支援および社会的支援のための既存のネットワークが移動制限によって阻害されるときは、他のサービスによって置き換えられるべきである。 不足している資源(たとえば人工呼吸器)の配分に関する決定が、既往機能障害、支援ニーズの高さ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)評価または障害のある人々に対する医学的先入観に基づいて行なわれないことを確保する。 国は、可能なときは常に障害のある人々を施設、介護施設、精神医療施設その他の施設から解放するとともに、このような施設にいる人々の保護を確保するための措置をとるべきである。 障害のある人々およびその家族にとって、追加的な金銭的援助および社会的保護へのアクセスはきわめて重要である。その多くは停止されたサービスに頼っており、また基礎的ニーズをまかなうための資源を持たない可能性があるためである。COVID-19 and the Rights of Persons with Disabilities Guidance(PDF)参照。 高齢者 高齢者は、他のあらゆる年齢層の人々と同一の権利を有するのであり、パンデミックの間、平等に保護されるべきである。高齢者が直面する特有のリスク(物理的距離の確保から生じる孤立およびネグレクトならびに治療その他の支援へのアクセスにおける年齢差別を含む)に対し、特別な注意を払うことが求められる。 医療上の決定が、年齢または障害ではなく、個別の臨床評価、医療上の必要性および利用可能な最善の科学的エビデンスに基づいて行なわれることを確保する。 拘禁・施設措置の対象とされている人々 刑事施設、未決拘禁、入管収容、施設、義務的な薬物リハビリテーション施設その他の拘禁場所等で自由を奪われている人々は、アウトブレイクが生じた場合、いっそうの感染リスクにさらされる。汚染のリスクは高く、社会的距離をとることは難しい。危機に関する計画および対応においては、このような人々の状況が具体的に取り上げられるべきである。 国は、自由を奪われたすべての人が情報、予防ケアおよびその他の保健ケアにアクセスできるようにするための特別措置をとるべきである。 国は、拘禁場所内での危害リスク緩和のため、釈放および拘禁に代わる手段の選択肢を緊急に模索するべきである。その対象とすべき者には、軽罪、微罪および非暴力的犯罪を行なった者、まもなく釈放予定日である者、入管収容下にある者および移住者としての地位を理由に収容されている者、基礎疾患を有する者ならびに未決拘禁または行政拘禁の対象とされている者が含まれる。法律上の根拠のないまま拘禁されている人々は、義務的な薬物拘禁施設または薬物治療プログラムに措置されている人々と同様に、解放されるべきである。 子どもの拘禁は一時的に停止されるべきであり、国は、安全に解放することのできるすべての子どもを拘禁から解放するべきである。 施設で生活している障害のある人々および高齢者の状況はとりわけ重大である。家族との接触を制限することは、緊急保健措置の一環として正当である場合もあるものの、障害のある人々および高齢者がネグレクトおよび虐待にいっそうさらされることにつながる可能性もある。コミュニティを基盤とする支援およびアクセシブルな暴力防止手段が整備されるべきである。Interim Guidance on COVID-19 Focus on Persons Deprived of Their Liberty(PDF)参照。(日弁連仮訳PDF) Technical Note COVID-19 and Children Deprived of their Liberty(PDF)参照。 情報と参加 COVID-19パンデミックおよびCOVID-19対応に関連する情報は、例外なくすべての人々に届けられるべきである。そのためには、容易に理解できる形式および言語(先住民族言語および国民的・民族的・宗教的マイノリティの言語を含む)で情報を利用可能とすることとともに、特定のニーズ(視覚障害および聴覚障害を含む)を有する人々に合わせた情報を用意すること、および、読む能力が限られているもしくはまったくない人々またはインターネットにアクセスできない人々にも手を差し伸べることが必要となる。 ウィルスの影響を受けている人々に情報が届くようにするためには、インターネットへのアクセスが不可欠となる。政府は、インターネットへの接続を一時的に中止させまたは遮断するいかなる措置も取りやめ、インターネットを常時接続可能としておくべきである。国はまた、デジタル・ディバイド(ジェンダー・デジタル・ディバイドを含む)を縮小するための措置をとることにより、インターネット・サービスへのアクセスを可能なかぎり最大限確保するために活動することも求められる。 人々は、自分の生活に影響を及ぼす意思決定に参加する権利を有する。開かれた透明な姿勢を保ち、かつ意思決定に当事者の関与を得ることは、自分自身の健康およびさらに幅広い住民の健康を守るための措置に人々が参加し、かつこれらの措置が人々の具体的な状況およびニーズも反映することを確保するための鍵である。 医療従事者および関連の専門家(科学者を含む)は、自由に発言し、かつ正確かつ重要な情報を相互におよび公衆と共有できなければならない。ジャーナリストおよびメディアは、恐怖を覚えまたは検閲を受けることなく、今回のパンデミックについて報じること(政府の対応に批判的な報道を含む)ができるべきである。恐怖および偏見を煽る虚偽情報または誤解につながる情報に対抗するため、国際社会および国のレベルで協調のとれた努力が行なわれるべきである。 アウトブレイクへの備えおよび対応に女性の視点、声および知識を取りこむこと(COVID-19に関わる国際的、国際地域的および国内的場面で女性が代表され、かつリーダーシップを発揮できるようにすることを含む)は、必要不可欠である。 スティグマ、排外主義および人種主義 COVID-19パンデミックは、一部の国民的および民族的集団に対するスティグマ、差別、人種主義および排外主義の高まりを引き起こしつつある。私たちは、この疾病を(地名への言及を用いるのではなく)COVID-19と呼ぶことなどにより、この趨勢を押し戻すために協働しなければならない。 政治的指導者および影響力があるその他の人々は、この危機が生み出してきたスティグマおよび人種主義への反対の声を力強くあげるべきであり、またこのような差別を煽るような言動をあらゆる手を尽くして回避しなければならない。国は、恐怖を煽る言説に対抗するために速やかに行動するとともに、COVID-19への対応によって一部の住民が暴力および差別の被害をいっそう受けやすくなることがないようにするべきである。 正確かつ明確な、エビデンスに基づいた情報の普及および意識啓発キャンペーンは、誤った情報と恐怖によって支えられる差別および排外主義に対抗するもっとも効果的な手段である。差別および排外主義の事件をモニターするために追加的努力が必要であり、またいかなる事件に対する対応も迅速に行なわれ、かつ十分に周知されるべきである。 差別および固定化された不平等は、一部の国民的、人種的または民族的マイノリティにとって十分な健康アウトカムが出ないことを助長している。パンデミックへの取り組みおよびCOVID-19からの復興のための努力においては、これらの問題に対応するために細分化されたデータを収集することが必要である。Racial discrimination in the context of the COVID-19 crisis(PDF)参照。(日本語による概要) 移住者、避難民および難民 移住者、避難民(IDPs)および難民は特有のリスクに直面している。キャンプや居留地に閉じ込められる可能性、または過密で、衛生状態も劣悪な、かつ保健サービスもぎりぎりの状態もしくはアクセス不能になっている都市部で生活している可能性があるためである。入管収容施設および移住者・難民が自由を奪われるその他の場所に収容されている者は、とりわけ危険にさらされる。 移住者は保健ケアへのアクセスに関して障害に直面することが多い。言語面・文化面での障壁、費用、情報へのアクセスの欠如、差別、排外主義などである。非正規の状況にある移住者は、出入国管理上の地位の結果として収容、退去強制または処罰の対象となるのではないかという恐れまたはリスクがあるため、保健ケアにアクセスしたり自分の健康状態に関する情報を提供したりすることができず、またはそれを望まない可能性がある。 国は、国家的なCOVID-19予防措置および対応に移住者、IDPsおよび難民を包摂するための具体的行動をとるべきである。これには、その地位にかかわらずすべての移住者、IDPsおよび難民を対象として情報、検査および保健ケアへの平等なアクセスを確保すること、ならびに、移住者・難民が保健サービス、食料配布その他の必須サービスにアクセスできることから出入国管理執行活動を切り離すための遮断措置を設けることが含まれるべきである。 受け入れ国が――移住者、IDPsおよび難民ならびに地元住民の双方を対象とする――サービスを増強できるように援助し、かつこれに全国的なサーベイランス、予防および対応のための体制が含まれるようにするための国際的支援が緊急に必要である。そうしなければすべての者の健康が危険にさらされ、敵意とスティグマが強まるおそれもある。移住者、IDPsまたは難民に対する敵意および排外主義に対抗するための具体的措置もとられるべきである。 国境管理、渡航制限または移動の自由の制限が強化される場合に、戦争または迫害から避難しようとしている可能性またはその他の理由で人権法上の保護を受ける資格を有している可能性のある人々が安全および保護にアクセスできなくなることがないようにすることも、きわめて重要である。国は、移住者、出入国管理職員および社会全体を保護するための一手段として、移住者を入管収容から放免することおよび強制送還を一時的に停止することを考慮するよう求められる。OHCHR Guidance on the Human Rights Dimensions of COVID-19 Migrants(PDF)参照。(日弁連仮訳PDF) 社会的・経済的影響 学校閉鎖の場合にも、たとえば、かつ可能なときは、アクセシブルで適合性の図られたオンライン学習ならびにテレビおよびラジオの特別放送を通じて、教育に対する権利は保護されなければならない。女児は、その多くがすでに就学を妨げる相当の障害に直面している可能性があり、かつ現在は自宅でいっそうのケアワークを引き受けるよう期待されるようになっている可能性もあることから、不均衡な影響を受けることも考えられる。インターネットその他の遠隔学習ツールにアクセスできない者の教育機会が制限されることは、不平等および貧困の深刻化につながるおそれがある。女児・男児ともに、学校から提供されていることの多い栄養のある食事その他のサービス(精神衛生ならびにセクシュアルヘルス・リプロダクティブヘルスに関する教育など)にアクセスできなくなる可能性もある。 社会的保護制度においては、身体的、知的および情緒的発達が早期の段階にあることを理由にいっそうの脆弱性に直面する子どもたちに対し、特別な注意が払われるべきである。もっとも望ましい実践には、子どもの権利の保護において効果を発揮してきた、子どもがいる家庭に向けた現金給付が含まれる。 今回の危機の社会的および経済的悪影響の双方を緩和するために政府、官民両セクター、国際機関および国内組織が行なっている望ましい実践が共有されるべきである。 今回の危機のさなかに働いている人々(とくに保健従事者)の労働安全衛生に関するアセスメントおよび対応を実施するべきである。何人も、仕事または収入を失うのが怖いという理由で、健康を不必要に危険にさらす条件下で働くことを強制されていると感じることがあってはならない。 今回の危機に対処する能力をもっとも欠いている人々に向けた財政刺激策および社会的保護パッケージは、今回のパンデミックがもたらす甚大な影響の緩和にとって不可欠である。有給病気休暇の保障、失業手当の給付拡大、食料の配布およびすべての人を対象とするベーシック・インカムのような即時性のある経済的救済措置は、危機によってもたらされる急性影響からの防護に役立つ可能性がある。 食料 COVID-19危機は不安定な食料状況を悪化させつつある。移動の自由の制限および防護器具の欠乏のため、農業労働者(そのなかには何らかの形で移住者である者も多い)に影響が生じているためである。食料の生産を確保するため、農業労働者の移動および安全な労働条件を確保するための措置が緊急に整備されるべきであり、同様に小規模農業従事者(とくに女性)を対象とする焦点化されたアプローチ(金銭的支援および信用融資、市場および種などの農業投入物へのアクセスなど)がとられるべきである。 最貧層およびもっとも周縁化された住民層の不安定な食料状況に対処するため、緊急の措置が必要とされる。食に関する人々のニーズを満たすための即時的支援を、食料面および栄養面の援助の提供等も通じて行なうための措置が整備されるべきである。 プライバシー 保健モニタリングには、個人の行動と移動の追跡およびモニタリングを行なうさまざまな手段が含まれる。このようなサーベイランスおよびモニタリングは、公衆衛生に特化した目的にとくに関連した、かつそのような目的のために活用されるものであるべきであり、期間および範囲のいずれの面においても特定の状況において必要とされる限度を超えるべきではない。このようないかなる措置も、公衆衛生危機とは関係のない目的で秘密の個人情報を収集するために政府または企業によって濫用されないことを確保するための、しっかりした保障措置が実施されるべきである。 子ども 子どもはCOVID-19による症状がより少なく、かつ死亡率もより低いように思われる一方で、感染予防およびウィルスの封じ込めのためにとられた措置の結果、子どもの保護に関わる相当のリスクが日常的に発生している。国は、パンデミック対応・復興計画の立案および実施にあたり、子どもの保護のニーズおよび子どもの権利にいっそうの注意を払うべきである。子どもの最善の利益を第一次的に考慮し、かつ対応の中心に位置づけることが求められる。 188か国が全国的な休校措置を課すなか、世界中で15億人以上の子どもが教育に対する権利を阻害されている。女児はその影響をもっとも強く受ける可能性が高い。多くの場合にケアの責任と教育とのバランスをとるよう期待され、遠隔学習の機会に平等にアクセスできておらず、かつ学校を完全に離れる特別なリスクにさらされているためである。このことは、女児の教育、健康および経済的機会に特別な長期的影響を及ぼしてきた。 自宅待機命令およびロックダウンも、子どもの身体的および精神的健康を損ないつつある。自宅で待機させられることにより、子どもは暴力(不適切な取扱いおよび性暴力を含む)を受けるいっそうのリスクにさらされる可能性がある。危険な状況にある子どものための支援サービスおよびシェルターは、引き続き優先的事項とされなければならない。 家族構成員が病気になりまたは働けなくなるなか、数百万人の子どもが貧困に直面している。脆弱な状況に置かれた子ども(路上で生活している子ども、移住者および難民である子ども、人身取引または人を密入国させる行為の被害者である子ども、紛争地域で生活している子どもならびに障害のある子どもを含む)は、とりわけ危険な状況にある。 若者 COVID-19のアウトブレイク以前、世界の若者の5人に1人は就労、教育または職業訓練のいずれにも従事しておらず、また若者の失業率は労働人口における他の年齢層よりも3倍高かった。2007年の世界金融危機は、インフォーマル経済で就労している可能性がより高く、低賃金の、より不安定で保護されていない職に就いていることの多い若者(とくに若い女性)に不均衡な影響を及ぼした。国は、今回のパンデミックの影響を緩和しかつこれに対処するための努力に、若者の固有の状況を敏感に考慮し、かつ人間にふさわしい職および社会的保護等を通じて若者の権利を擁護する対応が含まれることを確保するべきである。 ジェンダー COVID-19への効果的対応においては、女性、女児およびLGBTIである人々の固有の状況、視点およびニーズが全面的に考慮されかつ対処されなければならず、またいかなる措置をとる場合にもジェンダーに基づく直接的または間接的差別が行なわれないことが確保されなければならない。 女性・女児は家庭でいっそうのケアを担う役割に直面する可能性が高く、さらなるストレスのもとに置かれるとともに、感染のリスクが高まる可能性もある。女性は世界全体で保健従事者(助産師、看護師、薬剤師および最前線のコミュニティ・ヘルスワーカーを含む)の70%を占めており、曝露および感染のリスクが高まっている。今回の危機が女性・女児に及ぼす不均衡な影響に対処するための、焦点を明確にした措置が必要である。 多くの国で、女性は職業面でも不均衡なリスクに直面する可能性がある。多くの女性はインフォーマル部門(たとえば家事労働、他人の子どもの世話、農業または家業の手伝い)で働いており、真っ先に職を失い、または社会保障、健康保険または有給休暇がないために危機の影響に苦しむ可能性がある。保育にアクセスできることおよび無理のない費用で保育を利用できることに依存している女性も多く、現在ではそれが減少していることから、働いて収入を得る女性の能力がさらに制約されることにつながる。 高齢女性は貧困下で、または低年金もしくは無年金の状態で生活している可能性がより高く、そのためウィルスの影響をより強く受け、かつ物資、食料、水、情報および保健サービスへのアクセスを制限されるおそれがある。 隔離を含む制限的な公衆衛生措置により、ジェンダーに基づく暴力、とくに親密なパートナー間の暴力およびドメスティック・バイオレンスにいっそうさらされる状況が生じている。ジェンダーに基づく暴力の被害者を対象とする支援サービスおよび避難施設は、効果的な付託も含む形で、かつ被害者の安全のための手段の利用可能性およびアクセス可能性を確保しながら、優先的に運用され続けなければならない。COVID-19関連のメッセージには、ホットラインおよびオンライン・サービスに関する情報が含まれるべきである。 セクシュアル・ヘルスおよびリプロダクティブ・ヘルスに関するサービスは、救命のための優先事項であって対応に不可欠なものととらえられるべきである。これには、避妊・妊産婦ケア・新生児ケアへのアクセス、STI〔性感染症〕の治療、安全な中絶ケアおよび効果的な付託経路が含まれる。セクシュアル・ヘルスおよびリプロダクティブ・ヘルスに関する必須サービスから他のサービスに資源を転用することは、とくに女性・女児の権利および健康に影響を及ぼすことになり、行なわれるべきではない。 LGBTIである人々が直面するリスクもこのパンデミックに際して高まるのであり、これらの影響に対処するための対応計画に具体的措置が盛り込まれるべきである。利用可能なデータが示唆するところによれば、LGBTIである人々はインフォーマル部門で働いている可能性がより高く、かつその失業率および貧困率もより高い。LGBTIである人々にとくに関連する保健サービス(HIVの治療および検査を含む)は、この危機の最中にも継続されるべきである。 政治的指導者および影響力があるその他の人々は、今回のパンデミックを背景としてLGBTIである人々に対して向けられるスティグマおよび差別に反対する声をあげるべきである。 自宅待機制限により、LGBTIである若者のなかには、支援的ではない家族構成員または同居者とともに敵対的な環境に閉じ込められて、暴力にいっそうさらされ、かつ不安および抑うつを高めている者がいる。国は、この期間中、これらの者が支援サービスおよびシェルターを利用し続けられることを確保するべきである。COVID-19 and Women's Human Rights Guidance(PDF)参照。 Guidance on COVID-19 and the Human Rights of LGBTI People(PDF)参照。 水および衛生 石鹸と清潔な水で手を洗うことはCOVID-19から身を守るための第一歩だが、安全な給水サービスにアクセスできない人は22億人にのぼる。脆弱な状況に置かれた住民(水へのアクセスが不十分な人々を含む)のニーズに対応することは、COVID-19との世界的闘いの成功を確保するうえで必要不可欠である。 役に立ちうる即時的措置には、水道料金を払えない人々に対する給水停止を禁止することや、貧困下にある人々および来たるべき経済的困窮の影響を受ける人々に対し、危機が続いている間、水、石鹸および消毒剤を(十分な衛生設備にアクセスできないコミュニティに移動ディスペンサーを設置する等の手段を通じて)無償で提供することなどが含まれる。 先住民族 国は、健康に関する先住民族の特有の概念(先住民族の伝統医療を含む)を考慮に入れるとともに、COVID-19に関する予防措置の策定に関して先住民族と協議し、かつ十分な同意に基づく先住民族の自由な事前同意を検討するべきである。 国は、先住民族の領域への立ち入りの規制に関する措置を、とくに当該先住民族を代表する機関を通じた当該先住民族と協議および協力に基づき、整備するべきである。 自らの意思による隔離または初期接触の状況下で暮らしている先住民族について、国その他の当事者は、これらの先住民族をとくに脆弱な状況に置かれた集団と考えるべきである。いかなる接触も回避するため、これらの民族の領域への部外者の立ち入りを防止する交通遮断措置が厳格に実施されるべきである。COVID-19 and Indigenous Peoples' Rights(PDF)参照。 マイノリティ 国は、マイノリティが、遠隔地または遠隔地域において、しばしば基礎的物資およびサービスへのアクセスが限られた状況下で暮らしているためにこうむる可能性のある、COVID-19による健康危機の不均衡な影響に対処するための追加的措置を整備するべきである。マイノリティは過密な居住条件下で生活していることが多く、その場合には物理的距離の確保および自主隔離に関していっそうの課題に直面する。デジタル・アクセスおよび親による教育が限られていることも、家庭学習をより困難にする可能性がある。 マイノリティに属している人は、資源もしくは公的身分証明書を持たないために、またはスティグマもしくは差別のために、保健ケアから排除される可能性がより高い。国は、健康保険または身分証明書類がない人々を含め、マイノリティのために保健ケアへのアクセスを確保するべきである。COVID-19 and Minority Rights Overview and Promising Practices(PDF)参照。 ビジネスと人権 すべての企業は、たとえ経済的苦難と公衆衛生上の危機の時代にあっても、また政府が自らの義務を果たしているか否かおよびどのように果たしているかにかかわらず、ビジネスと人権に関する国連指導原則に掲げられているように、人権を尊重する独立の責任を有する。 経済的援助、景気刺激策または企業を対象とするその他の対象化された支援介入の形で行なわれる、COVID-19の経済的影響を緩和するための国の介入策においては、受益者である企業はビジネスと人権に関する国連原則にしたがうべきであることが明記されるべきである。危機に際して企業を支援するための国の措置の中核に、労働者、とくにもっとも不安定な状況にある労働者の保護を位置づけることが求められる。 国際的および一方的制裁 国際社会は、COVID-19パンデミックと効果的に闘う能力を妨げ、かつ生死に関わる医療を必要としている者からそれを奪うことにつながるすべての制裁の解除(または少なくとも一時停止)を唱道するべきである。 制裁を適用している国の政府は、COVID-19パンデミックに対応する各国の努力を阻害する可能性がある措置を直ちに再検討しかつ撤回するよう促される。このような措置には、医薬品、医療器具その他の必須物品の購入もしくは輸送を妨げるもの、医薬品、医療器具その他の必須物品の購入のための資金拠出を阻害するものまたは人道援助の提供を妨害するものが含まれる。 人身取引 国際労働機関の推定によれば、パンデミックに関連して職を失う労働者は約12億5千万人にのぼる。これは世界の労働力人口の38%に相当し、何百万人もの人々が危険なまたは搾取的な就労の被害をいっそう受けやすくなることにつながる。同時に、シェルターおよび支援サービスが縮小に直面することおよび取り締まりの努力がパンデミックの影響を受ける可能性があることから、人身取引への対応が阻害されかねない。 国は、人身取引被害者に保護および援助を提供する国内機構を引き続き支援するべきである。 国際的な協力および連帯 COVID-19は、国内および国家間に存在する不平等を白日のもとにさらし、かつ悪化させている。グローバルな連帯および責任共有の精神に立ち、諸国およびすべての主体による多国間主義および国際協力を強化することが緊急に必要である。 困窮している国およびコミュニティへの金銭的・技術的支援は、生命および生計維持手段を救うことにつながりうる。国際社会による短期・長期の集団的対応においては、発展の権利を含むすべての人権が指針とされなければならない。国際的な連帯および協力によって裏づけられた発展の権利は、貿易、投資および金融に関する国内・国際政策ならびに持続可能な開発を可能にする環境を通じて、よりよい状態への復興の一助となるであろう。 更新履歴:ページ作成(2020年4月6日)。/~/原文の修正を反映させる形で、子どもの項を新たに追加し、障害のある人々の項を大幅に修正。ジェンダーの項でも原文の修正(1番目のガイダンスの下線部の追加など)を反映させたほか、参考資料を2点追加。参考資料(全般)にヒューライツ大阪・新型コロナウイルスと人権へのリンクを追加。その他、詳しくはこちらを参照(4月20日)。/ガイダンス本文日本語訳のPDFと国連・社会権規約委員会の声明日本語訳を追加(4月21日)。/障害とジェンダーの項などに参考資料を追加(4月22日)。/参考資料(全般)に国連事務総長の声明を追加したほか、参考資料を追加(4月23日。/子どもの項などに参考資料を追加(4月24日)。参考資料を別のページに移動。/緊急措置の項にOHCHRのガイダンスを追加したほか、一部ガイダンスの日弁連仮訳へのリンクを追加(4月27日)。/新規項目として若者、ビジネスと人権、人身取引、国際的な協力および連帯を追加。その他の修正箇所は後送(4月29日)。/障害のある人々の項にOHCHRのガイダンスを追加し、その他の修正箇所を反映。主な修正箇所は日本語訳PDFを参照(4月30日)。/ガイダンス原文の修正箇所を反映。主な修正箇所は日本語訳PDFを参照(5月16日)。/マイノリティの項にOHCHRのガイダンスを追加(6月4日)。/スティグマ、排外主義および人種主義の項にOHCHRのガイダンスを追加(6月22日)。/先住民族の項にOHCHRのガイダンスを追加(6月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/86.html
総括所見:インドネシア(第1回・1994年) 予備的所見(1993年)/第2回(2004年)/第3回・第4回(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.25(1994年10月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1993年9月22日および23日に開かれた第79回~第81回会合(CRC/C/SR.79-81)においてインドネシアの第1回報告書(CRC/C/3/Add.10)の検討を開始した。同会期中には多数の質問を全面的に明確にする充分な時間がなかったことを踏まえ、委員会は同報告書の検討を終了しないことに決定した。締約国は、第7会期における委員会の検討に供するため、委員会の予備的所見に掲げられた懸念(CRC/C/15/Add.7、パラ7~18)への回答として1993年12月31日までに追加的情報を提供するよう要請された。委員会は、1994年9月28日および29日に開かれた第161回および第162回会合(CRC/C/SR.161 and 162)においてインドネシア政府から提供された追加的情報(CRC/C/3/Add.26)を検討した後インドネシアの第1回報告書の検討を終了し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1994年10月14日に開かれた第183回会合において。 A.序 2.委員会は、第1回報告書への追加的情報を提供し、かつ同報告書の検討を第7会期に再開するという委員会の要請にしたがった点について、インドネシア政府の協力に評価の意を表する。しかしながら、委員会は、締約国における条約の実施に関して以前に提起した懸念のいくつかは、いまなお効果的に対応されないままであると考えるものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、子どもの権利の実施を向上させるためにとるべき措置についての委員会の助言および援助を締約国が重視していることに満足感とともに留意し、かつ、子どもの状況を増進させることを目的とした政策およびプログラムを見直しかつ発展させるため、締約国が委員会、他の国際連合機関および非政府組織との協力に決意を示していることを歓迎する。 4.委員会は、条約にもとづく義務に照らして国内法を見直すことについて締約国が前向きな姿勢を表明したことに留意する。委員会は、とくに、ウィーン宣言および行動計画に一致する形で、かつ1993年国家政策基本指針および国内人権プログラムにしたがって、子どもの権利が国家開発プログラムに統合されたことを歓迎するものである。子どもの権利に関するさらなる意識および子どもの福祉を草の根レベルで促進する目的で「村プログラム」を導入する決定がなされたこと、および人権分野でセミナーおよびワークショップが開催されていることは、その他の積極的な進展である。 5.委員会は、条約第1条、第14条、第16条および第29条に関して批准時になされた留保(締約国の代表団は宣言と見なしている)を撤回するという締約国の決定を歓迎する。委員会はまた、条約のすべての規定が締約国において適用可能と見なされる旨をまもなく事務総長に通告するという、締約国の発言にも留意するものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、締約国における条約の迅速な実施を阻害する困難、とりわけ、360の民族集団が存在すること、人口がインドネシア群島全域に散らばっていること、締約国一般およびとくにインドネシア住民の一部の層がいまなお経済的問題に直面していることに、留意する。 D.主要な懸念事項 7.批准時に行なわれた留保、とくに条約第17条、第21条および第22条に関する留保の地位が、現時点では全面的に明確ではない。しかしながら、委員会は、締約国が、近い将来これらの規定に関わる留保の撤回を構想することに前向きな姿勢を見せていることを、心強く思う。 8.委員会は、国内法を条約の規定と一致させ、インドネシアの管轄下にあるすべての子どもが条約で保障されている権利によって充分に保護されることを確保し、かつ、具体的に目標を定めた戦略および達成された進展の監視の基盤を提供するため、国内法の包括的見直しが必要であると考える。 9.委員会は、子どもが婚姻できる年齢に関わる国内法が、条約第2条に反映された差別の禁止規定と両立しないことを懸念する。 10.委員会は、子どもも含む一般公衆および子どもに直接接して働いている職員のあいだで条約の規定および原則に関する意識水準が低いように思えることに懸念を表明する。 11.委員会は、条約の一般原則、とくに第2条、第3条および第12条の実施に対していまなお適切な注意が向けられていないことを懸念する。委員会は、これらの原則の実施は予算の制約に依存するものではないということをあらためて指摘するものである。 12.委員会は、経済的、社会的および文化的権利は利用可能な資源を最大限に用いて実施されるべきであると強調した条約第4条の規定に反して、社会部門、とくにプライマリーヘルスケアおよび基礎教育に対してわずかな割合の予算しか振り向けられていないことを、依然として懸念する。委員会はさらに、締約国において社会部門に配分されている資源の現行水準を国際機関が問題にしてきたことに留意するものである。 13.委員会は、条約第14条および第15条の実施に関して懸念を表明する。委員会は、公式な認定を一部の宗教に限定することは差別の慣行を生ぜしめる可能性があることをあらためて指摘するものである。委員会はまた、宗教、表現および集会の自由の行使の「合法的目的」による制限を公的機関が幅広く解釈しているように思え、それによりこのような権利の全面的享受が阻害される可能性があることも懸念する。 14.委員会は、少年司法制度が第37条、第39条および第40条を含む条約の規定およびこの分野における他の関連の国際連合基準、とくに「北京規則」、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則の規定と両立していないことを、とくに憂慮するものである。 15.締約国は、ディリにおいて平和的にデモ行進していた子どもに対して治安部隊が過度の暴力を振るった1991年11月の事件と同様の侵害は二度と起こらないことを保証した。しかしながら、委員会は、集会の自由への権利の侵害が一貫して行なわれていること、および、とくに逮捕および身柄拘束の状況下における警察、治安部隊または軍隊要員による子どもの不当な取扱いの苦情申立てが多数行なわれていることに、依然として深刻な不安を覚えるものである。委員会はまた、そのような侵害で有罪とされた者を処罰し、かつそのような行為の被害者のリハビリテーションおよび補償を行なうために、公的機関が効果的な措置をとっていないことにも不安を覚えるものである。 16.委員会は、生き残るために路上で暮らしかつ/または働くことを余儀なくされた子どもが多数にのぼることを憂慮するものである。 17.委員会は、児童労働に関する国内法にいまなお深刻な乖離または欠落が存在することを遺憾に感ずる。とくに、委員会は、法第1/1951号が全面的に制定されまたは実施されたことがないこと、および働く子どものために必要な保護を1987年行政規則が提供していないことに留意するものである。委員会はまた、法律で規定された罰則が寛大であること、および人材省の査察官による監督が行なわれていないことも懸念する。 E.提案および勧告 18.委員会は、インドネシア政府に対し、子ども関連の法律と条約の規定との一致を確保するためにその見直しを完了させるよう奨励し、かつ、これとの関連で、国際連合人権センターの助言サービスおよび技術援助のプログラムによって発展させられてきた活動にあらためて注意を促す。子どもの最善の利益および子どもに関わる差別の禁止の原則は国内法に編入されるべきであり、かつ裁判所での援用も可能であるべきである。 19.政府は、条約に掲げられた規定の尊重および効果的な実施を確保し、かつそれによって児童労働に関するものも含む国内法に条約の規定が反映されることを確保するために、あらゆる必要な措置をとるべきである。あらゆる子ども関連の法律または規則の実施を国および地方のレベルで監視するため、関連の機構が設置されるべきである。条約の実施およびその監視に携わる非政府組織との協力が強化されるべきである。 20.委員会は、締約国が少年司法制度の包括的改革を行なうこと、および、その見直しにあたっては条約、および「北京規則」、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のようなこの分野における他の国際基準を指針と見なすことを、勧告する。条約第39条にしたがい、社会復帰および社会的再統合のための措置にも注意が向けられるべきである。 21.公的機関は、子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、路上で暮らしかつ/または働いている子ども、ならびにマイノリティ・グループに属している子どもおよび他の傷つきやすい立場に置かれている子どもに対して充分な資源が配分されることを確保するため、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるべきである。 22.委員会は、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループに属している子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、路上で暮らしかつ/または働いている子ども、へき地で暮らしている子どもおよびマイノリティに属する子どもに対する差別と闘うため、ジェンダーにもとづくもののような差別的態度および偏見を解消するための措置も含む緊急の措置をとるよう勧告する。 23.委員会は、働く子どもおよび青少年の保護に関わって充分な基準を採択しかつ規制を実施するために現在進められている努力を奨励する。条約の実施を評価し、かつ法律と運用との乖離を狭める目的で、働く子どもの状況を監視するために設置された機構が強化されるべきである。委員会は、とくにILOの技術的助言がこれらの問題に関して適切ではないかと考える。 24.委員会は、締約国が未成年者の失踪、拷問、不当な取扱いおよび違法なまたは恣意的な拘禁を防止するためにあらゆる必要な措置をとり、そのような行為の容疑者を起訴するためにそのようなあらゆる事件を制度的に捜査し、かつ、有罪とされた者を処罰しかつ被害者に補償を行なうよう促す。 25.委員会は、一般公衆、ならびにとくに教員、ソーシャルワーカー、法執行官、矯正施設職員、裁判官および条約の実施に関わる他の職業従事者のあいだで条約の規定を広く広報するよう勧告する。 26.委員会は、第1回報告書および追加的情報を、関連の議事要録ならびに委員会が採択した予備的所見および総括所見とともに、非政府組織を含む公衆一般が広く入手できるようにするよう勧告する。 27.最後に、委員会は、条約第44条4項に照らし、前掲パラ18~20で構想された法改正およびその実施に関わる進展についての追加的情報を2年以内に委員会に提出するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月28日)。