約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/ourresource/pages/36.html
祈祷/其它
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2528.html
「始まったか」 皺枯れた声でそう言ったのは、マザリーニ枢機卿だった。 骨と皮しかないような体で戦場から響く振動に転ばないように足を踏ん張り、時折酷い咳をする。巷で鳥の骨と揶揄される見た目通り、この男の体力は常人と比べても多くは無い。ここ数日の政治とは一歩違った作業の連続に、少なくない疲れを溜め込んでいた。 しかし、休むことは出来ない。戦いの間にもやるべきことは多く、戦いの後には多くの事後処理と戦争の間に溜まった仕事を片付けなければならない。深く眠れるのは、夏が終わってからになるだろう。 少しでも早く身体を休めたいなら、出来ることは全て、迅速に行わなければならない。 窓辺に佇み、早くも命が散ったのを見届けたマザリーニは、傍らで膝を付く若い兵士を下がらせると、足音を立てて歩き出した。 冷たい石の壁と床を進み、幾度も階段を上る。急ごしらえであるせいか起伏のある石畳に足を痛くしながら、狭く短い廊下の突き当たりにある飾り気の無い木戸を四度叩いた。 暫くして、どうぞ、と声が聞こえたのを確認して扉を開く。 身を滑らせるように扉の向こうに移動させると、そこで一礼してマザリーニは口を開いた。 「姫殿下。我が軍がアルビオン軍との戦闘を開始しました」 広くも狭くも無い部屋に響く声に、無骨な岩肌の内装に似つかわしくない豪奢な椅子に腰掛けるアンリエッタが、静かに頷いた。 「わかっています。振動が、ここまで響いていますから」 矢や大砲が飛び込む可能性から、この部屋には窓が無い。だが、明かりとして置かれた蝋燭の火は絶え間なく揺れ動き、部屋の中を明滅させていた。 「空軍も、敵艦隊の姿を捉え、戦闘を開始しているようです。今日は雲が厚いため、空は地上とは別々の戦いとなりましょう。彼我の砲の性能差を埋めるために機動戦をしかけると決めた時点で、元々そうなるとは考えておりましたが」 言いながら、マザリーニは奥歯を噛む力を強くする。 地上と空。戦力差は、地上ではトリステインが勝ち、空ではアルビオンが勝っている。この事実は、頭を痛める大きな要因だ。 地上の攻撃は空に届かず、空の攻撃は地上を用意に破壊する。 空軍が早々に負ければ、折角有利である地上の戦線も、空からの砲撃によって崩壊することになるだろう。 空軍には可能な限り敵を引き付け、地上の戦いに決着が付くまで時間稼ぎをするようにと命じてあるが、それも何時まで続くか分からない。 トリステインは、明らかにアルビオンに負けている。 その事実が、愛国者であると同時に国に献身し続けてきたマザリーニには悔しかった。 しかし、アンリエッタから返って来た言葉は、まるで戦争の行方すらどうでもいいかのような口調で放たれていた。 「報告は、それだけですか?」 抑揚もなく、感情を感じられない一言。 「……はい」 一瞬絶句したマザリーニは、それでもなんとか口を動かした。 まだ拗ねているのだろうか? アンリエッタの態度の原因を知るマザリーニは、未だ子供染みた王女の性格に頭を悩ませる。 親善訪問を囮としたアルビオンの奇襲攻撃に対して、急遽開かれた会議の場で真っ先に反撃を訴えたのはアンリエッタだ。婚姻の準備の為、寸法を合わせたばかりの眩い白いドレスに身を包んだ王女は、アルビオンの卑劣な行為に憤り、ドレスの裾を破って駆け出した。 王女一人を行かせてはなるものかと腰の引けていた貴族も追従し、開戦と成ったわけなのだが……、やはり王女を戦場に立たせるわけにはいかないと、先日の作戦会議で多数の将軍の支持をもってアンリエッタは要塞内での待機が決められていた。 自分で兵を先導してここまで来たアンリエッタとしては、面白くない決定だ。しかし、王女の権限を持ってしても戦中における将軍達の発言力を覆すことは出来ず、こうして今朝から不満をぶつけるように不貞腐れているのである。 戦いが始まれば多少は改善されるだろうと期待していたマザリーニの考えは、見事に外れていた。 「そろそろお機嫌を直されては如何か?兵が血を流して戦っているというのに、王族がそのような態度では民に示しが付きませんぞ」 普段よりも棘のある口調でマザリーニが窘めると、アンリエッタも自分の行動に問題があることを理解しているのか、膝の上に置いていた手を強く握って顔を俯かせた。 「……分かってはいるのです。トリステイン王家の一粒種であるわたくしが、危険な戦場に身を置くなどということが許されないことくらいは。しかし、民に戦いを強いながら一度も戦地に立たずして、どうして支持を得られましょう?まして、此度は国の命運を決める戦い。兵達を鼓舞する意味でも、わたくしが先陣を切るべきなのではないでしょうか」 マザリーニにはマザリーニの考えがあるように、アンリエッタにはアンリエッタの考えがある。将軍達の反対を受けたとはいえ、全てを納得するのは難しいのだ。 特に、今回の敵は想い慕っていたウェールズの母国アルビオンを滅ぼしたレコン・キスタを前身とした現在の神聖アルビオン共和国だ。アンリエッタにしてみれば、恋人を殺した仇に等しい。感情で戦争をするのは愚か者の所業かもしれないが、それでも耐え難い想いがあるのだ。 この手で一矢報いたい。そんな想いは押し込められ、民に代行させる始末。 戦争が始まったこと自体はアンリエッタに非はないとはいえ、不貞腐れるのもある意味では仕方のないことだった。 「お気遣い痛み入りますが、王女殿下の身を危険に晒さなければならないほど我が国は追い詰められてはおりません。決戦に近いものであっても、勝てぬ戦いではないのです。内戦の後の強引な侵略行為による損害を考えれば、アルビオンの継戦能力は疑わしい。たった一度、ここを耐え凌ぐだけで敵は勝手に崩れるのですから、負う必要の無いリスクは回避するべきだと、会議の場で二度三度と渡って説明したはずですぞ」 「しかし……」 「食い下がった所で、決定が覆ることはありません。王族たる者、戦の結果を座して待つのも役目の一つ。思うところもありましょうが、今は耐えていただきたい」 アンリエッタの思いも、マザリーニにしてみればいつもの我が侭と変わりない。 いつも通りに説教臭い口調で頭を押さえられたアンリエッタは、これ以上言っても無駄だと悟り、言葉に表せない不快感に身を沈めて口を閉ざす。 こうして、最終的には不貞腐れた態度に戻るのだった。 「はて、さて……、どうしたものやら」 部屋に押し込めている限り、アンリエッタの態度はこのままだろう。 放っておいても良いが、それで後々までヘソを曲げられては困ると、マザリーニは皺だらけの顔に更に皺を刻んで頭を悩ませる。 そんな時、部屋の扉をノックする音が響いた。 「……誰だね?」 不貞腐れたままのアンリエッタの代わりにマザリーニが扉の向こうに向けて声を放つと、驚いたかのようにガタリと扉が揺れる。 その様子に不審なものを感じたマザリーニは、ローブの内から杖を取り出して、いつでも魔法が放てるように準備をした上で、扉の向こうに居る人物にもう一度訊ねた。 「誰かと聞いている」 「あ、っいえ、その……、間違えましたっ!」 声に不穏なものが混じっているのを察したらしい扉の向こうの人物が、慌てた声を響かせて石畳の廊下を走り出した。 まさか、王女を狙った暗殺者か。 地上での戦いの不利を悟って外道な手段に出たのかと、マザリーニは足音も消せない不審人物を追うべく、扉を開けて廊下に飛び出した。 「あっ」 乱暴に開かれた扉の音に前身を硬直させた不審人物の背中をマザリーニが睨みつけると、その瞬間、その人物は床の小さな起伏に足を引っ掛けて盛大に転んだ。 痛々しいまでに額を打ち付けて。 「……こんなところでなにをしているのかね?ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」 額を押さえて涙目になっているアンリエッタの幼少の遊び相手を見下ろして、マザリーニは深く溜息を吐いた。 「えーっと……、その……」 「学院への援軍要請は出したが、それが到着するのは三日後と報告を受けておる。なのに、貴女一人がここにいるのはどういうことか」 大体予想は付いているのだが、といった顔で語りかけたマザリーニに、ルイズは顔に冷や汗をびっしりと浮かべて誤魔化すように笑うと、視線を彷徨わせながら立ち上がってピンと背を伸ばした。 「く、国の一大事と聞いて、その、少しでも何かの役に立てればと、早馬を乗り継いで馳せ参じた次第で、あの……」 もごもごと口の中に声を篭らせても必要な部分は聞き取れたのだろう。マザリーニはもう一度深く溜息を吐くと、ルイズの肩に手を置いて、きっぱりと言い放った。 「帰りたまえ」 「え?」 「君が来たところで、なにが変わるわけでもない。こう言ってはなんだが、子供が一人増えたところで足手纏いにしかならんのだ。特に君は……」 言いかけて、マザリーニは自分のミスに気付いて咳払いをする。 ルイズが魔法を使えない落ち零れであることは公然の事実だが、それを理由に差別することは高潔な貴族の品位に欠ける。今回は、あくまでもルイズを説得する為の口実として、その特徴を思い出してしまっただけで、マザリーニ自身にはルイズを特別落ち零れ扱いをするつもりはなかった。 だが、当のルイズはそうは思わなかったらしい。 憤りと哀愁に瞳を染めて、なにかを言い返そうと口をパクパクと動かすものの、相手がマザリーニであるとあって、何も言えずに口を閉ざしてしまう。 マザリーニが言葉を途中で止めてしまったのは、心無い行為だったかもしれない。はっきりとルイズが魔法を使えないことを指摘してしまえば、ルイズだって開き直るなり受け入れるなりといった態度を取ることが出来るのだが、止めてしまっては気を使わせているとルイズに思わせることになる。 分別のある良い大人であることが、逆に災いした結果だった。 「いや、そうだな。ミス・ヴァリエール。一つだけ、頼みたいことがあるのだが……、いいかね?」 自分のミスをフォローするわけではないが、ルイズをこのまま追い返すのも大人気ないと判断したマザリーニは、ちょうどルイズが抱えている問題の一つを解決するのに最適な人材であることを思い出し、皺だらけの顔をぎこちない笑顔に変えた。 「枢機卿?」 訪問者を追って枢機卿が出て行ってから閉まったままの扉の向こうに人の気配を感じて、アンリエッタは声をかけた。 マザリーニなら直ぐに部屋に入ってくるだろう。そうではないということは、扉の向こうに居る人物はマザリーニではないということだ。となれば、相手は先程の訪問者か、他の誰かか。 訪問者が自分の命を狙った暗殺者で、それを察して追いかけた枢機卿が返り討ちにあったなんてことも、考えられなくはない。 少しずつ鼓動を強める心臓を落ち着かせるために左手を胸に置いたアンリエッタは、右手で自分の杖を握り締めると、椅子から立ち上がって身構えた。 「姫様?」 不安に胸を満たしていたアンリエッタの耳に、扉の向こうから声が届く。 扉越しのせいか、はっきりとは聞こえない声質に首を傾げると、アンリエッタは訪問者が間違えましたなんて言って逃げ出そうとしていたことを思い出し、そういう事を言いそうな知人の存在に思い当たる。 だが、その人物がこんなところに居るなんて、考えられない。 僅かな不信感を残したまま、アンリエッタは扉の向こうの声に応えた。 「もしかして、ルイズ?」 確かめるように言った言葉に、扉の向こうの気配が動いた。 「はい。姫様、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールです」 遠慮がちに木造の扉を開いて顔を覗かせた少女に、アンリエッタは胸に抱えていた色んな感情を落として、緊張に固まっていた頬を緩ませた。 「ああ、なんてことなのルイズ。こんな危険な場所に、どうして貴女が?」 「そのことで、お話がありまして……」 部屋に入り込んだルイズは、後ろ手に扉を閉めて周囲に人がいないことを確認すると、自分の杖を取り出してコモン・マジックを使おうとする。 ぽん、と音を立てて小さな爆発が起きた。 「……?」 なにをしているのかと首を傾げたアンリエッタに、ルイズは恥ずかしそうに顔を俯かせる。 「すみません、姫様。ディテクトマジックをお願いしてもよろしいでしょうか?」 「あ、ああ。そういうことですか」 ルイズのやりたかったことを理解したアンリエッタは、握ったままの杖を振ってディテクトマジックを部屋にかける。すると、壁全体がキラキラと光を反射して、そこに魔法がかけられている事を示した。 「あああぁ、そうかぁ。そうよねぇ。要塞なんだもの、固定化や硬化かけられてるに決まってるわよね……」 ウェールズに送った手紙を取り戻して欲しいと、ルイズに頼みに来た時のアンリエッタのようには行かないらしい。ディテクトマジックで外部からの干渉が無いことを示そうとして、逆に干渉だらけであることを証明した形になっていた。 「ええっと……、落ち込まないでルイズ。監視されているというようなことは無いはずですから、内緒話も出来るはずですわ」 もともと、急ごしらえの要塞だ。細工をする時間的余裕も無いだろう。 そう思って励ましの言葉を送ったが、ルイズにはそれが同情のようで余計に堪えたのか、自分の情けなさを嘆くように目元に涙を浮かべて鼻を啜っていた。 「お気遣いありがとうございます、姫様。でも、ちょっとだけ気持ちを整理する時間をいただけますか?」 「え、ええ……」 色々と意気込んでこんな所にまでやって来たルイズだが、マザリーニに追われて転ぶわ見栄を張って失敗するわで、良いところが一つも無い。盛り上がっていた気持ちの分だけ、落ち込み方も大きいようだ。 真っ赤になった顔で目元と鼻周りをハンカチで拭うと、ルイズは何度か鼻を啜って深呼吸をする。 それでやっと落ち着いたのだろう。まだ赤い頬のまま、ルイズはアンリエッタに向き直って深くお辞儀をした。 「大変お見苦しいところをお見せしました」 「いいえ、ルイズ。お陰で、戦中とあって肩に入っていた力が抜けた気がしますわ。昔と変わらない、ちょっとドジなルイズを見ることが出来て嬉しい限りです」 アンリエッタがクスクスと笑い、ルイズは真っ赤になった顔を両手で隠す。 「や、止めてください!もうっ、お戯れが過ぎます!」 「ふふふ、ごめんなさいね?わたくしも、少し疲れていたものですから。八つ当たりみたいになってしまいましたわ」 笑うことを止めないアンリエッタの様子に、ルイズは拗ねたように唇を尖らせ、ふと表情を笑顔に変えた。 「ご気分が優れないと聞いていましたけど、その様子なら、もう良さそうですね」 そんな言葉がアンリエッタの顔から笑みを消した。 「マザリーニに頼まれたのですか?人に散々と立場の重みを説いておきながら、わたくしの機嫌を直させるためだけにルイズを戦地に呼び寄せるなんて……」 湧いた憤りを抑えきれず、アンリエッタは杖を両手できつく握り締める。 血が頭に上っているのが傍から見て分かるほど、アンリエッタの顔は赤く染まり、憤怒に満ちていた。 これに慌てたのはルイズだ。 「ち、違います!枢機卿に姫様の話し相手を頼まれたのは事実ですが、それは今さっきのことで、わたしがここに来たのは、また別の理由からなんです!」 「庇うことはありませんよ、ルイズ。あの鶏がら、一度鍋にでも放り込んで茹で上がってしまえば宜しいんですわ。いいいえ、今からでも遅くはありません。湯を沸かし、思いっきり浴びせかけてしまいましょう。そうするべきです!」 話の流れだと、確かにマザリーニがルイズを動かしているようになってしまったが、まったくの誤解である。しかし、その誤解を正そうと声を上げるルイズの言葉をアンリエッタは聞こうとはせず、怒りのままにズンズンという足音が聞こえてきそうな歩き方で部屋を出て行こうとしていた。 このままだと、水場まで行って本当に湯を沸かし、マザリーニにぶっかけてしまいそうな勢いだ。 「あ、あああ、ええと、ええっと、どうすれば……、あ、そうだ!」 アンリエッタを行かせては不味いと分かっていても、止める手段は無い。そこで、ルイズは自分がここに来た本当の理由を説明してしまえばいいと思い付き、腰の後ろ、ベルトに結ぶ形で下げた鞄に手を伸ばした。 「姫様、これを見てください!」 「今度こそ、あの憎らしい皺を倍に……、って何ですか、ルイズ?」 見向きもされなかったらどうしようかと思ったが、そこまで暴走しているわけではないらしい。 一欠けらの理性に感謝したルイズは、こちらに意識を向けてくれたアンリエッタをこの期に説得するべく、ルイズは鞄を押し付けるようにしてアンリエッタに差し出した。 「これは?」 「中に、わたしがここに来た理由があります」 受け取った鞄を訝しげに見詰めていたアンリエッタは、ルイズの言葉に不思議そうにしながらも頷いて、留め金の無い鞄の口を開く。 出てきたのは、紙の束と固い感触。 「これが、ここに来た理由なのですか?」 そう訊ねるアンリエッタに、ルイズは耳の先まで顔を真っ赤にしたかと思うと、今度は死人のように真っ青に変えて、肺の中にある空気を吐き出した。 「なんで祈祷書と指輪がここにあるのよおおおおおぉぉぉッ!?」 アンリエッタの手に収まった、最近まで親の敵のように睨み合っていた始祖の祈祷書と王家の秘宝である水のルビーを見て、ルイズは今日何度目になるかという失敗に絶望の叫びを上げたのだった。
https://w.atwiki.jp/h_session/pages/4536.html
ナイトウィザード → NW我妻市 NIGHT WIZARD The 2nd Edition Character Sheet TXT Ver1.2 キャラクター名:エルンスト・V・パラミルム プレイヤー名:kunashi 種族:人間 ワークス:研究者 年齢/性別:19歳/女性 髪の色:金色 瞳の色:紫色 肌の色:白色 身長/体重:158㎝/42㎏ ウィザードクラス:錬金術師 1LV スタイルクラス:ヒーラー 1LV 属性:〈天〉/〈地〉総合レベル: 2LV CF修正値:3 プラーナ 内包値:7 解放力:3 基本能力値 ベース 成長値 現在値 基本能力値 ベース 成長値 現在値 【筋力】 8 -- 8 【知力】 7 3 10 【器用】 6 -- 6 【信仰】 11 -- 11 【敏捷】 4 -- 4 【知覚】 7 -- 7 【精神】 9 -- 9 【幸運】 11 -- 11 戦闘値 ベース クラス修正 特殊 総合 未装備 装備 最終戦闘値 【命中】(器用+知覚)÷2 = 6 2/ 2 -- -- 10 -2 【命中】 8 【回避】(敏捷+知覚)÷2 = 5 --/-- -- -- 5 -3 【回避】 2 【攻撃】(筋力+器用)÷2 = 7 2/-- -- -- 9 3 【攻撃】 12 【防御】(筋力+信仰)÷2 = 9 --/ 2 -- -- 11 1 【防御】 12 【魔導】(精神+幸運)÷2 = 10 3/ 4 1 -- 18 5 【魔導】 23 【抵抗】(敏捷+幸運)÷2 = 7 1/ 1 -1 -- 8 1 【抵抗】 9 【魔攻】(知力+精神)÷2 = 9 3/ 2 -- -- 14 5 【魔攻】 19 【魔防】(知力+信仰)÷2 = 10 1/ 3 -- -- 14 3 【魔防】 17 【耐久力】 = 15 2/ 5 -- -- 22 -- 【耐久力】22 【魔法力】 = 16 5/ 6 -- -- 27 7 【魔法力】34 【行動値】(筋力+敏捷+知力+信仰)÷3= 11 1/-- -- 2 14 -5 【行動値】 9 錬/ ヒ 【移動力】 ベース 特殊能力 未装備 装備 最終値 (未装備状態【行動値】)÷10+1 = 2 -- -- -- 2Sq ■ライフパス 出自:呪われた家系 特徴:魔導の血/【魔導】のベースを+1し、【抵抗】のベースを-1する。 生活:結社の一員 特徴:組織の力/関係:組織のコネクションを一つ得る。 コネクション /関係 桂木祐太郎/ビジネス オクタヘドロン/組織 ■特殊能力 名称 :SL: タイミング : 判定値 :難易度: 対象 : 射程 : 代償 :効果 --汎用-- 《月衣》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :所持品を隠せる。マイナーアクションで飛行できる。(代償:1D6MP) 《月匣》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :月匣を展開できる。 《伝家の宝刀》 :2: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :[100万+100×SL万]v.以下のアイテムをSL個取得。 --ヒーラー-- 《蘇生の光》(自動取得) :-: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :3sq: 1P :1シーンに1度、[[生死判定]]を自動的に成功させる。 《代償軽減:付与魔法》 :2: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :「種別:付与」のMPコストをSL点軽減。最低1。 《代償軽減:付与魔法CT》 :1: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :「種別:付与」のCコストをSL点軽減。最低1。 --錬金術師-- 《ミラクルガジェット》 :1: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :1sq: 5C :ダイス目をC値に変更する。Fの場合使用不可。1シナリオSL回。 《ワンダーガジェット》 :1: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :SL個の錬金兵装を入手・常備化。 《サポートガジェット》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :知力+3。 --装備品-- 《マジカルシンフォニー》 :-: マイナー :自動成功: なし :範囲選択(2):0sq: 5C :直後のメジャーで使用する魔法・魔装の射程をこのスキルに変更。1ラウンド1回。 《禁断の知識》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :【魔法力】+10。 《アンラック》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :【幸運】ジャッジ-5。 《エアストラグル》 :-: 常時 :自動成功: なし : 自身 : なし : なし :箒搭乗&飛行中、【行動】ジャッジ+3。 ■魔法 魔法記憶容量[【知力】+総合レベル]:12 名称 :LV:種別: タイミング : 判定値 :難易度: 対象 : 射程 : 代償 :効果 プリズムアップ :2:付与: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :1sq: 1MP1C :【魔防】:+[【魔導】-10](最大10)。 アースシールド :2:付与: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :1sq: 2MP2C :【防御】:+[【魔導】-10](最大15)。 ヴァニシング :3:付与: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :1sq: 3MP1C :【防御】【魔防】:+[【魔導】-8](最大10)。 リフレクトブースタ :3:付与: Aアクション :自動成功: なし : 自身 : なし : 1MP :【行動値】:+[【魔導】-13](最大7)。 ヒートシフト :1:付与: Aアクション :自動成功: なし : 単体 :0sq: 3MP :達成値+2。ただしCが発生しなくなる。 ヒール :1:治癒: メジャー :【魔導】: 12 : 単体 :1sq: 2MP :【治癒力】:【魔防】-10(最大3)。 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ■武装/魔装 重量上限[【筋力】+総合レベル]:8+3 魔法装備可能レベル合計[【知力】+総合レベル]:12 名称 :種別:部位:重量/LV:命中:回避:攻撃:防御:魔導:抵抗:魔攻:魔防:耐久力:魔法力:行動:移動: 射程 :備考 ハーモトピア :武器:両手: 5/ :-1:-2:+3:+2:+1:+1:+2:+3: : :-2: :0sq:錬金兵装。「タイプ:魔法」「スロット:3」 └スタビライザー : : : 1/ : : : : : : : : : : : : : : ダンガルド製黒ローブ :防具:衣服: 2/ :-1: : :+1:+2:+1: :+2: : :-2: : : 外道祈祷書 :防具: 他 : 1/ : :-1: :-2:+2:-1:+3:-2: : :-1: : : : : : / : : : : : : : : : : : : : : パワーブースタ :魔装:付与: / 2: : : : : : : : : : -3: : : : : : : / : : : : : : : : : : : : : : : : : / : : : : : : : : : : : : : : 合計 : : : / :-2:-3:+3:+1:+5:+1:+5:+3: : -3:-5: : : 武装/魔装 ■所持品 月衣収納上限[【筋力】×2+GL]:18+3 名称 :重量:効果 スマート0-Phone : 0:あらゆる言語での通信可能。メモリ領域あり。 MUGEN-KUN : 0:借金可能 幸運の宝石 : 1:ファンブル打ち消し効果、1シナリオ1回 ■経験・お金残り 経験:2 お金:105,200v. ■設定 「何かな。用かい私に?」「帰りなさい。来るべき場所じゃない、貴方には。」 金の長い髪と薄い紫色の瞳を持つ、元大魔導士の家系の娘。 元――というのは理由がある。彼女の先々々々々代である先祖が魔王に敗北し、その際『魔導士』としての力を全て奪われたからである。 そのため、連綿と受け継がれていた魔導の才能はそこで途絶えてしまう。 しかし、そこで諦めるパラミルム家ではなく…「自分が魔導を操れないならば、自分以外に操らせればいい」との発想の元、錬金術師への道を歩む。 その第4次集大成が彼女。祖母は全てホムンクルスというある意味ハーフホムンクルスであるエルンストである。 彼女は楽器を好み、以前日本の漫画で見た「ワンマンオーケストラ」に心を馳せ、結果として「一人でオーケストラ演奏が可能な箒」を完成させるに至る。 結果として音の波動を元に魔術を行使することにも成功したため、今度は名誉を挽回すべく日本の地へと降り立った。 そこは我妻市。天然のウィザードが生まれづらいという特異な地。 果たしてそこで、彼女は何を掴むのだろうか――
https://w.atwiki.jp/rarecasejinro/pages/97.html
(実装 Ver. 1.5.0 α4 / 最終更新 Ver. 3.1.0 α1) 表示 祈祷師 所属 村人陣営 / 司祭系 判定 占い結果 「村人」 / 霊能結果 「村人」 夜投票 無し 他能力 【神託】天候発生前日 翌日発生する天候【天候】5日目以降3n+2日目 一定条件で天候発生 耐性 護衛 制限対象 登場 (Ver. 1.5.0 α4実装)超闇鍋村 ログ表記 [祈祷師] / [祈] 説明 司祭系役職です。 神託内容は「翌日発生する天候」です。 護衛制限対象 [祈祷師]は護衛制限対象です。 神託内容 神託能力により、翌日発生する天候を知ることができます。 オプション「天変地異」で2日目に発生する天候を知ることはできません。 固有の能力 [祈祷師]が生存している場合、4日目以降の3n+1日目(4日目、7日目、10日目……)朝において、 「メイン役職が村人陣営でも人狼系でもない生存者」が「人狼系生存者」より多い場合、 その翌日(5日目、8日目、11日目……)に何らかの天候を発生させます。 [恋人][愛人]による陣営の変化は天候発生条件に関与せず、メイン役職のみで判定されます。 天候発生能力は、オプション「天候あり」に関係なく有効です。 他役職との関係 天狗陣営 [祈祷師]による天候発生能力の発動条件において、加担先に関係なく天狗陣営(= 村人陣営以外)のままされます。 村人陣営に加担している場合でも天候発生の要因になります。 [恋人][愛人] [祈祷師]による天候発生能力の発動条件において、[恋人][愛人]は考慮されません。 例えば、[恋人]になった[村人]が何人いても、天候発生の要因にはなりません。 備考 天候を発生させる可能性があるため、特定の出現率変動オプションを適用しても、本来発生しないはずの事象が発生する可能性があります。 オプションなど オプション「天変地異」 オプション「天変地異」で2日目に発生する天候を知ることはできません。 天候が毎日発生するため、天候発生能力は実質無意味となります。 過去バージョン情報 Ver. 1.5.0 α4~Ver. 1.5.0 α5 [祈祷師]が死亡している場合でも、天候発生能力は有効です。
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/2691.html
暗黒祈祷師 2緑緑 クリーチャー・ギコ・シャーマン 3/1 ~が場から墓地に置かれたとき、あなたのライブラリーから基本土地カードを2枚探し、それを公開して、1枚をタップ状態で場に出し、もう1枚をあなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。 2青・~を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーのカードを上から4枚見る。それらのうちの1枚をあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。 再来 4黒緑 35版の332 [部分編集]
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6841.html
前ページ次ページゼロと損種実験体 オーク鬼と呼ばれる亜人の種族がいる。身長二メイルほどの巨漢で、豚に似た顔を持つ性根の凶悪な種族である。 十数体いるそいつらが、タルブの村の近くに移動してきたのには理由がある。 この種族はハルケギニアに広く生息しており、どこで出会ったとしても不思議ではないのだが、この一団がトリステインに住んでいた者ではなく他国からやってきた二つの集団の合流したものと知れば人々は驚愕しただろう。 その二つの集団は逃げてきたのだ。恐ろしい力を持ったバケモノから。 二つの集団の片側が出合ったそいつは、最初人間の少年の姿をしていた。 多数の幻獣と熊や狼のような肉食の獣を従えた二人の少年の一方。それが、オーク鬼たちが住処とする廃村に現れたバケモノである。 人間の子供を好物とする嗜好を持つオーク鬼に襲われ村人が逃げ出したという、ハルケギニアには珍しくもないそこに少年が現れたのは、もちろんオーク鬼を討伐してこの村を人間の手に取り戻すためである。 少年たちの命令に従い獣たちが囲むと、オーク鬼たちは少年たちに襲い掛かった。知能が低いと見られがちなオーク鬼だが、命令をしている人間を倒せば、周囲の獣たちを追い払えるだろうという推測ぐらいはできる。 それこそが少年たちの狙いだったと気づいたのは、その直後。 片方の少年の肉体が膨れ上がり、オーク鬼の身長を上回る体格と獣の顔を持つ亜人へと変化する。長い爪を生やした豪腕が振るわれると、先頭にいたオーク鬼の頭がざっくりと引き裂かれる。 その後ろを走ったオーク鬼が手にした棍棒で、そいつを殴りつけるが、少年が変化した亜人はダメージを受けた様子もなく、その棍棒を奪い取り、逆に殴りつけられたオーク鬼が脳漿をぶちまけて倒される。 こうなればオーク鬼たちも気づく。 自分たちを討伐に来たのは、このたった一人の亜人で、獣たちは自分たちを逃がさないように取り囲む目的のためだけに連れてこられただけなのだと。 そして、オーク鬼たちは逃げ出すことになる。そのほとんどが倒され、数体のみが逃げ延びることができたのは、幸運なことであったと言えよう。 もう片側の集団が出合ったのは、不可解な外観をした亜人であった。体格はオーク鬼たちよりも小柄で、頭部には一本の角を生やし、体中を薄い紫色の甲殻で包んだ生物というより魔法で動くゴーレムの類を思わせる外観の持ち主。 そいつはこう言ったのだ。 「たまには、こっちの力も使って慣れておかないと、いざという時に困るかもしれません。悪いけど、遊んでもらいますよ」 そうして虐殺が始まった。その時のオーク鬼の一団は数十の大集団であった。それがたった一人の亜人によってほとんどが殺しつくされた。 その亜人は強かった。強すぎた。 オーク鬼は一体で人間の戦士五人に匹敵すると言われる戦闘力を誇る亜人である。その彼らが、そいつには手も足も出なかった。 最初に仕掛けた棍棒の一撃は左手一本で受け止められ、そいつが振るった拳の一撃でそのオーク鬼は胴体を分断された。 そいつにとってオーク鬼の肉体は豆腐の如く脆いらしく、無造作に振るわれる一撃だけで、彼らは絶命していく。 遠く離れた別の国のオーク鬼たちが獣の顔を持つ亜人に思ったように、彼らもこの亜人には勝てない事を理解した。 だが、こちらも逃げられたものは、そう多いものではなかった。 逃げようとした者に、亜人が顔を向けると、その額が光り、そうと気づいたときには、そのオーク鬼たちは頭部を失った屍を晒すこととなっていたのだ。 ほとんどが殺しつくされ、逃げ延びた二つの集団はトリステインで合流し、その心にこびりついた恐怖から逃避するため、山を越え森を抜 けここまで来れば大丈夫だと判断したこの地で、タルブの村を襲撃することを決めた。 「すごい! すごいです! あの凶暴なオーク鬼たちを二人だけで皆やっつけちゃうなんて、ミス・ヴァリエールもアプトムさんもすごいで す!」 興奮した面持ちで叫ぶシエスタに、ルイズは、あー、うん、そうね。と気まずい顔で答えた。 ルイズの気晴らしとシエスタの休暇の里帰りに来たタルブの村で、三人が最初に見たのは村を襲う巨漢の亜人の群れであった。 「あれが、この村の住人か?」 などと聞いてしまうアプトムだったが、「そんなわけないでしょう!」とシエスタが返してくる。 まあ、そうだろうなと思うアプトムが、ではどうするかと頭を捻ったところでルイズが駆け出した。 アプトムにとっては見知らぬ村人がどうなろうと知ったことではない。 だが、ルイズは違う。貴族には外敵から民を守る義務がある。魔法の使えない貴族であるルイズにとって、貴族としての在り方は、何に換えても守らなければならないものなのだ。 そうして、飛び出したルイズを見捨てるという選択はアプトムになく、二人はオーク鬼を退治することになった。 はっきり言ってしまうとオーク鬼は弱かった。 ただの平民からすると、圧倒的な戦闘力をもつ生物なのだが、アプトムからすれば、ただ腕力が強いだけで特別な能力も持たない亜人の集団など、相手にならない。弓でも撃ってきていたならルイズを守るのに苦労していたかもしれないが、棍棒で殴りかかってくるだけの相手の腕を掴み投げ飛ばすなど容易なことであった。 そうして、アプトムに守られたルイズは呪文を紡いだ。 それは、いつもどおりの爆発の魔法。いつもと違ったのは、唱えた呪文、威力、精度。 ルイズが呪文を唱えるたびにオーク鬼の足元や顔のすぐ前に爆発が起こり、吹き飛ばされる。 だが、その爆発は威力に反していつも通りに殺傷力に乏しく、オーク鬼たちに大したダメージを与えなかった。 だから、本当の意味でオーク鬼を追い払ったのはルイズではなくアプトムである。 いや、それも正確とは言えない。現実にオーク鬼たちに恐怖を植え付け敗走させたのは、ここに来る前に彼らの仲間を殺害した亜人である。 彼らは、人間のものと思えない腕力で自分たちを、あしらうアプトムの姿に、ここに来る原因となった虐殺者の影を見たのだ。 そんなわけで、傍目にはルイズこそがオーク鬼を追い払ったように見えていたが、事実はそうでないと知る少女は、素直にシエスタの賞賛を受け取ることができないのだった。もちろん、オーク鬼が恐怖する影など知らず、アプトムに対して恐れをなしたのだろうという程度の認識ではあるが。 ちなみに、アプトムの方はルイズの唱えた呪文が気になっていた。彼は、ルイズと違って呪文に詳しくないので、それが今まで聞いたことのないものであると、始祖の祈祷書に記されていたものだなどと分からない。 分かるのは、その呪文は、何度も途中で中断させていたものだったのではないかという不自然さだけであった。 その日は、ルイズとアプトムはシエスタの生家に泊まることになった。元々シエスタはそのつもりだったし、村に着いたら宿を借りればいいだろうと簡単に考えていたルイズの方は、是非とも泊まっていって欲しいと懇願するシエスタの両親に押し負けてしまった。 というか、本人に実感はないが、ルイズは村を救った恩人である。 アプトムからすれば、雑魚もいいところのオーク鬼も、多くの平民にとっては充分な脅威であるし、大抵の場合、民を守るべき領主は、倒しても得がなく犠牲者を出すこともあるオーク鬼の討伐に兵を出すことを嫌い、見捨てる事も珍しくないのだと知る村人たちが感謝するのも当然であろう。もちろん、全ての領主が民を見捨てるような貴族ではなく、この村の住人が近在の領主を信用していないというわけでもなかったのだが。 そんなわけで、オーク鬼を追い払ったルイズと、その従者であるアプトムの所に多くの村人が駆け寄り、両手を合わせて拝む者まで現れた。 更に、シエスタから奉公先でお世話になっていると聞かされた彼女の両親が、宿を決めていないという二人を家に誘うのは当然の事であっ ただろう。実際に学院で世話になっていたのは、むしろルイズの方であるが。 そうして、ルイズは慣れぬ賞賛に悩まされることになった。 シエスタの家族はもちろん、村長を含めた村中の人間が集まり、ルイズの勇敢さと魔法を褒めちぎるのたが、魔法を賞賛されるというのは始めての事で、なんだか居心地が悪い。彼女の使う爆発の魔法は失敗として叱責されたり嘲られるばかりで賞賛の対象になったことなどないのだから。 なのに村人は、さすが貴族さま! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ。そこにシビれる! あこがれるゥ! だの、こんな凄い魔法は見たことがないだのと褒めてくる。 こんな居心地の悪いのは初めてだ。助けてアプトムーっ! なんて思うが彼はここにはいない。 二人は、ただオーク鬼を村から追い払っただけで、根本的には何も解決していない。 だから、始末をつけてくるとアプトムは出かけた。その始末という言葉が、オーク鬼を皆殺しにするという意味なのか、もう二度と村を襲えないよう遠くに追い払うのかルイズは知らない。アプトムが言わなかったという事は、自分が知る必要がないことなのだろうとルイズは、理解する。 そして翌日、ルイズは村の近くの草原を横目に眺めながら、シエスタとアプトムを連れて歩いていた。 別に、どこに行こうという目的があるわけではない。元々、この村に来たのは単なる気分転換であるのだから当然か。 昨夜は、村の名物料理だというヨシェナヴェやら秘蔵のワインやらを振舞われ、夜遅くまで村人の相手をしていた彼女は、当然のごとく今朝も中々起きられなかった。 別に、早起きしなければならない理由はないのだが、起きてみると家にはアプトムとシエスタしかいなくなっており、他の村人たちはともかく、家のみんなはどうしたのかと聞いてみて、全員がもう仕事に出ていて、七人いる弟妹も手伝いに行っていると言われると、なんだか何もしないで寝ている自分が悪いような気がしてくる。 シエスタは、わたしもいますよと言ってくれるが、彼女は休暇を取ってきているのだし、自分がいなければ家のみんなの手伝いをしていただろうと予想ができてしまうので、やはり申し訳ない気がしてくる。 それで、家を出てみたのだが、会う人間みんながルイズの顔を見ると仕事を中断して挨拶してくる。 昨夜、ルイズは村の恩人であるだけでなく、この国の大貴族ヴァリエール公爵家の娘でもあると明かしてしまったので、これも当然の事態なのだが、やはり申し訳がない気がしてしまうのである。 そんなルイズを見かねてか、シエスタに誘われたのが、この草原である。 青い空の下、どこまでも続くように見える緑色の絨毯。それは、このハルケギニアでは、それほど珍しくない風景なのだろうけど、それがとても美しいものだとルイズは感じた。 そして、シエスタに感謝した。疲れていたのだ。体がではなく心が。 自覚はなかったが、アプトムを召喚してからのルイズは、ずっと気を張り詰めていた。そして、アンリエッタから受けた任務。ウェールズの死。ワルドの裏切り。そこから受けた心の傷を癒す間もなく渡された始祖の祈祷書。 おそらく自分は、張り詰めて切れる直前の糸のようなものだったのだろうと今は分かる。そんな自分を連れ出してくれたシエスタには、どれだけ感謝しても足りない。心からそう思う。 そんなことを考えるルイズに、何かを思い出した様子でシエスタは言う。 「そうだ。この先の寺院に、『竜の羽衣』って秘宝があるんです。見に行きませんか? どこにでもある名ばかりの秘宝なんですけど、ちょっとした話のタネにはなると思いますよ」 「秘宝って、どんなの?」 「えーと、実はそれ、わたしのひいおじいちゃんの持ち物だったんですけど、なんでもそれを纏ったものは、空を飛べるそうです」 「飛べるそうです? 本当に飛んでるところを見たことは?」 「ありません。ていうか、飛ぶわけないんです。マジックアイテムってわけじゃないし、誰かが飛んでみろって言ってもひいおじいちゃんは、もう飛べないって言うだけで。だから、村のみんなも、インチキだって言って信じてないんだけど、おじいちゃんは、とてもいい人だったからって好かれてて、今も大切に保管されてるんです」 へー。と、口に出し、たまには、そういうのを見に行くのも悪くないかなとルイズは思う。 特にすることもないのである。珍しい物ではあるのだろうし、今度下の姉に会った時にでも話せば、インチキでも喜んでもらえる自信がある。 そう思って行った先で見た物は、なるほど確かに、空など飛びそうもない代物で、だが、それを見て少しだけ表情を変えるアプトムがいた。 「お前の曽祖父の事を聞いていいか?」 そう言ったアプトムの顔は、いつも通りの感情を読みにくいもので。だから、シエスタも特に思うことなく、知ることを伝え彼を曽祖父の墓に案内した。 海軍少尉佐々木武雄。異界ニ眠ル。そう書かれた墓石を見て。アプトムは思う。 これは、自分や『破壊の杖』を持ち込んだ誰かと同じく地球から来た者の眠る墓である。 だが、どういった方法で来ることになったのか。自分のように誰かに召喚されて来たのであれば、何の参考にもならない。だが、違う方法なら……。 そう考えて、首を振る。その男が、どんな方法でハルケギニアに来ることになったのだとしても、本人がもういなくなってしまっているのであれば、意味がないではないか。 そんなどうでもいい一幕はあったが、タルブの村での数日、ルイズは、とても穏やかな日々を過ごした。 そして帰る時になって、詔をまったく考えていない自分に気づき、夏休み最終日の小学生のように狼狽する事になるのである。 「師匠。ぼくは、もっと派手な方が好みなんですけど」 「知ったこっちゃないね。あんたの好みなんて」 自身の要求を、ばっさりと切って捨てられギーシュは落ち込む。 アルビオンに来たはいいが、帰れなくなってしまった彼を拾ってくれたのは、マチルダという名のこの女性と、その護衛をしている顔全体に包帯を巻いた怪しげな風体の男である。ちなみに『ソムルム』と名乗っていた。 マチルダはともかくとして、男の方は声といい体格といい、彼の見知ったある人物によく似ていたのだが、本人の口からはっきりと違うと言われたし、念のためにこっそり確認した男の左手には、その人物にはあった印がなかった。 考えてみれば、彼の知る人物は常にルイズの傍にいるはずなのだから、こんなところで見知らぬ女性と行動を共にしているはずがないし、あちらが剣を持ってはいたが使うどころか持ち歩きさえしなかったのに対し、こちらの男は普通に剣を使っている。 これは別人だなと結論付けた彼は、その後、男の剣が聞いたことがあるような気がする声で話すインテリジェンスソードだと知っても、偶然ってあるんだなぁとしか思わなくなっていた。 それはともかく、二人に拾われたギーシュがここに来てやっていることは二つ。トライアングルメイジであり、いろいろと実戦を経験しているらしいマチルダの教えを受けることと、アルビオン軍の軍艦の建造、整備、修理やら何やらの手伝いであり、トリステインに出兵する際の人員となる事も決定している。 もちろん、これは本人が言い出しての事というわけではない。本人としては、祖国トリステインの敵に与するくらいなら死んだほうがマシだと思っていたのだから。 だが、現実問題として、この地でそんなことを言っていても意味がないのである。 ここで自分はトリステインの貴族だなどと言っても捕まって拘束されるか、悪くすれば殺されるだけであるし、軍艦の整備などにしても彼がやらなくてもこの街の他の誰かがやるだけである。 一時は、出兵できないように船を沈めてやろうかと出来もしないことを考えもしたが、現状では表向きトリステインとアルビオンは不可侵条約を結んでいる。ここで、トリステイン貴族である自分が騒ぎを起こしても自国に迷惑をかける結果にしかならない。 ならば、ここにいる間は正体を隠し積極的にアルビオン軍に協力して、あわよくばトリステインに戻った時に役に立つような情報を集め、いざ出兵した時に抜け出してアルビオンからトリステインを守るため戦おうというのが、彼の出した結論である。 と言っても、自分で考え付いたことではなく、拾ってくれた二人に、こうすればいいのではないかと言われたことを、受け入れただけなのだが。 しかし、自分は、それでいいとして、二人は、それでもいいのかと聞いてみたが、二人はレコン・キスタという組織に対する忠誠心はないので、別に構わないと答えが返ってきた。 ただし、聞いたところ、二人の上司はあのワルド子爵で、そちらはレコン・キスタの掲げる大儀とやらを真に受けて婚約者すら欺き裏切った者なので気をつけろと言われ、出来るだけ接触を避けようと誓ったギーシュである。 ちなみに、拾われて数日経ち、彼は多くの時間を二人と共にしていたが、ワルド子爵と鉢合わせる事態に陥った事はない。 ギーシュは知らないことだが、ワルドは、包帯の男に疑念を抱いており、その為その男を連れてきたマチルダも信用できぬと、接触を控えるようにしていたのだった。 前ページ次ページゼロと損種実験体
https://w.atwiki.jp/fragra_cc/pages/25.html
基本形 祈祷語の文章は、以下の三つのパートで構成される。 ①奏上句 ②宣誓句 ③祈願句(省略可) これを日本語にするとだいたい下のような感じになる。 ①献身のために ②我が主君を、身命を賭して守り抜くことを誓う ③願わくば、我に守りの加護を与えたまえ 一つ一つ説明していこう。 ①奏上句 定型詞(仮) + 啓示(=神名。テンプレから選択) 神を呼び出す部分。神は人々の心の声を聴くことが出来るが、個人個人の声を聴き分けるには対象に意識を払わねばならない。奏上句はいわば「呼び鈴」である。 定型詞部分が神への呼びかけ、美徳部分(「啓示」?)が力を貸してほしい神の名前を表す。敬虔な信者でなくとも心を込めて呼び出せるよう、神の名は市井には美徳や啓示として訳されて伝えられている。 具体的には下記のような内容。 慈愛とともに。 慈愛のために。 慈愛のもとに。 ②宣誓句 動詞 + 目的語 + 補語 神に誓いを立てる部分。自分がこれからしたいことを宣言する。神の助力のあるなしに関わらず、自分が必ず実現するぞ!と強く願うもの。もちろん、①で選んだ教えに即した行動でなくてはならない。 意識せずとも教えの遂行が大前提となり、それにたいして誓いを立ててしまうのが祈祷術のプロ。そうすると、神さまが「できもしないことをやろうとしてないか」とか「楽勝でできることを神頼みしていないか」などを勝手に判断して、ほどよい力添えをしてくれる。(日本語にすると「あいつを倒すよ!」とか「今月中に3キロ痩せるよ!」とかになる。) 主語がないのは、神と自分しか会話の参加者がおらず、動作の主体は自分しかありえないから。 ただし人の身には余る、もっともっと大きな奇蹟を願う場合は、さらに神との交渉が必要になる。そこで次の部分が必要になってくる。 祈願句 1 祈祷詞 + 目的語 + 祈祷動詞 + 補語 2 祈祷詞 + 仮主語 + 祈祷助動詞 + 汎動詞 + 補語 日本語にすると 1の場合 例:「願わくばどうか、私に、力をお与えください!」とか「願わくばどうか、あいつに、浄化の雷を!」 2の場合 例:「願わくばどうか、彼がこの勝負で勝てますように!」とか「願わくばどうか、あいつが転んで1ターン無駄にしますように!」 といった感じになる。 祈祷詞は「願わくばどうか~」の部分。祈願句は神さまに期待するアクションを願う部分なので、動作の主体は神。 神が関わる動作や形容詞は、祈祷語においては、通常のものに特殊な装飾が加わる(あるいは専用の語句を使う)ので、これを祈祷動詞などという。 祈祷語に主語が必要ないのは、動作の主体が自分か神だけであり、動詞も自分と神の分しか存在しないため。 (2の例では「彼が勝負で勝つ」となっているが、これは日本語訳のあや) 祈祷語の語順 基本的には(S)OV。(「おれぁ、きさんを、むっころす!」とか「神よ、我に、力を!」みたいなニュアンス。) SOVを意識して祈願句を見ると、仮主語と書かれているところが目的語となる。 2の例文は正確に訳すと「願わくばどうか、(神よ)彼に、下記のことをさせてください、勝利することを、この勝負で」となる。 祈祷助動詞 「対象を~~の状態にする」という意味を持つ祈祷動詞の一種。感覚的に分かりづらいらしく、見慣れない名前がつけられている。 汎動詞 「~すること」という、なんだ要するに名詞じゃん……でも動詞みたいな語順で使える品詞、らしい。(調整中) 祈願句は省略が可能。むしろ省略して使われるのが一般的。なぜなら、祈願句は前述した通り実現の難しい願いを叶えるために神に交渉を持ち掛ける部分であり、それだけ扱いの難易度もあがるからである。 神は③祈願句で要請された内容に対して、②宣誓句が見合う内容であるかどうか、そもそも自分が推奨する①に適っているのかというのを判断する。そして不適切だと感じたら、①と②の時点では問題がなくても③の内容次第で力を貸してくれないことがある。結果でいうと魔法は不発に終わる。 なので、魔法的な魔法を発動するためには、③に見合った代償を②で宣言する、あるいは如何に①に即した内容かを③でアピールするなどが必要になる。つまり、神への深い理解や、強い信心(意志)による詠唱が必要とされる。 ちなみに魔法的な効果を期待できる祈祷術の文章については"教国"がある程度テンプレ化しており、「何が何でもこいつを助けるぞって全身全霊で祈りながら、ここに書かれた言葉を唱えなさい」みたいに練習させることで聖者たちに祈祷術を教えている。言葉の意味が分からなくても、言葉に込められた想いと、その場で抱く切なる願いが一致すれば、神はちゃんと受け取ってくれる。 補足 日常のコミュニケーションに不向きな言語。 文法は定型的かつシンプルゆえ市井にはこれでも受け入れられている。 民間ではよく③祈願句を取っ払い、①と②だけで掛け声のように使われたりもする。なんとなく縁起の良い言葉として唱えられたり、意味するところである誓うぜ!という部分だけ伝わっていたりする。(アーメンとかエンガチョとか?) ③祈願句の文法をいじって、もう少し叙述的に語る方法もある。(製作中)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/564.html
「宇宙の果てのどこか(ry」 呪文の内容なんてどうでもいいですけど、それは使い魔を呼び出す『サモン・サーヴァント』の魔法です。 “魔法が一切使えない魔法使い”と馬鹿にされている『ゼロのルイズ』ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは顔をすすだらけにしながら、それでも呪文を唱えていました。 他の生徒たちのあざ笑う声を聞きながら、それでもコルベールに言い渡された最後のチャンスに彼女はかけたのです。 ていうか一生懸命がんばる女の子をあざ笑うなんて、なんて品位のない方々でしょう。 まあそれはともかく、爆発の煙が晴れて出てきたのは、変態としか呼べない男でした。 「へ、変態だ!」 「ゼロのルイズが変態を呼んだぞ!」 ルイズは呆然とその男を見つめていました。 年のころは60前くらいでしょうか? ひげが白いせいか顔つきや体つきに比べふけて見えます。 服装は太陽を模したようなおかしなサークレット、そして腰みの、ただそれだけ。 ミスタ・コルベールに再召喚すら却下され、ルイズは絶望に打ちひしがれながら周りを見渡している男にに近づきました。 男は何か言っているようでしたが知ったことかとばかりに顔を引き寄せ、無理やりコントラクト・サーヴァントを行いました。 ルーンが刻まれる熱にのたうつ男を少しゆがんだ笑みで見つめた後、ルイズは問いかけました。 「あんた名前は?」 「私ですか? 私はアドバーグ・エルドルと申しますが……ここはどこですかな?」 その変態はとても強かったのです。 最初はギーシュとの決闘でした。 脇でおにぎりを作ろうとしてマルトーにジャーマンスープレックスを食らってぼこぼこの顔のまま食堂の手伝いをしていたアドバーグさんが、ギーシュの八つ当たりを受けていたメイドをかばったのが始まりでした。 高らかにバラの杖を掲げるギーシュと、それをいつもの変態的な格好で見るアドバーグさん。 だが次の瞬間、メイジたちは凍りつきました。 キタキター! の声に合わせて動く腰と手足。 変則的なチョップに見えなくもないそれが、ワルキューレを粉々に粉砕していきます。 恐怖に駆られたギーシュはさらに六体のワルキューレを出しますが、それらもすべて華麗にキモイ動きで避けられ、砕かれていきます。 最後にアドバーグさんのヒップアタックの直撃を受け、ギーシュは気絶してしまいました。 その何日か後に、アドバーグさんと同じ格好で目の幅の涙を流しながら踊るギーシュの姿が見られたそうです。 二番目は『土くれのフーケ』でした。 “破壊の杖”という名前のロケットランチャーを狙って学園の宝物庫を襲ったのでした。 まあ謎はさておきフーケ戦の前にルイズはアドバーグさんを伴って町に買い物に出かけました。 理由は格好です。 アドバーグさんが言うには自分の出身地に伝わる伝統舞踊の衣装とのことですが、まあたしかに普段着には適していません。 そんなわけで普段着を買いに来たのです。 途中すりをヒップアタックで吹き飛ばしたりしましたが、無事に普段着を買うことができました。 「あれ? 俺の出番は? なあ!」 ガンダールヴ? 知りませんよそんなもの。 フーケにとっては悪夢だったのではないでしょうか? 自慢のゴーレムで殴りつけても気の抜ける音楽と共に振るわれる突きで簡単に砕かれてしまいます。 鉄に錬金しても結果は同じです。なんで素手で鋼が砕けるんでしょう? とにもかくにもフーケは退治されました。 普通なら衛兵とかに連れて行かれたりするんでしょうが彼の名はアドバーグ、贖罪代わりにフーケことマチルダさんはキタキタ踊りの弟子にさせられました。 ギーシュが開放されてうれしそうにしていたのが印象的でした。 ちなみに“破壊の杖”ですが、アドバーグさんとはこれっぽっちも関係ないのでそのまま宝物庫に戻されました。 彼が「あれは杖ではなく筒ですなぁ」とか言っていたのが印象的でした。実は結構賢い人なのです。 さて、フーケ関連のイベント(?)も終われば使い魔の品評会です。 アドバーグさんは当然キタキタ踊りを披露しようとしましたが、ルイズの必死の説得で踊るのは彼本人ではなく弟子のミス・ロングビルになりました。 さて、ここで思い出すべきはキタキタ踊りの本来の姿です。 アレは若い女性の踊りでしたが、後継者がいないため彼が忘れないように踊っていたのです。 ミス・ロングビルは美人でスタイルもグンバツです。 それはもう映えました。 気の抜けたような音楽はキレイな舞踊の歌に変わり、キモイはずのその動きは艶やかさをかもし出します。 やっぱり女性のための踊りを体の硬い男が踊っちゃいけないってことですね。 品評会の一位はタバサのシルフィードでしたが、キタキタ踊りは男性陣の中ではダントツで一位でした。 夜中にアンリエッタ王女が尋ねてきました。 なんでも政略結婚の邪魔になるかもしれない昔の恋人への手紙を取り返して欲しいそうです。 え? ネタバレしていいのかって? 長編じゃないから問題ありません。 にしてもこの王女、この態度はわざとなのか天然なのかどっちでしょう? わざとなら腹黒いことこの上ないですし、天然ならそういう演技が身につく生活環境ってことです。どっちにしろ泣きそう。 「それにしてもあなたの使い魔の踊りは美しかったですわね」 「あ、あはは、そうですねぇ……」 真実は言わぬが花というやつです。 ちなみにアドバーグさんはといいますと、今夜も広場でミス・ロングビルと一緒にキタキタ踊りの練習です。 ミス・ロングビル、なにやら吹っ切れた様子で楽しそうに踊っています。 最近は踊り子としてかなりの額を稼いでいるとか。 「盗賊なんでヤクザな商売はもうやめよ! 私は踊りに生きる!」 向こう側の勇者がブーたれる声が聞こえるような気がします。 ちなみに彼女を脅迫に来た白仮面(遍在)ですが、踊りに見とれているうちに背後から近づいてきたアドバーグにキタキター! とばかりに吹っ飛ばされてしまいました。遍在だからそのまま消えます。 「こんな時間にこんな場所まで覗きに来るとは! 世も末ですなぁ」 違うんだ! 星空で白仮面が叫んだような気がしました。 さて、お手紙を回収に出発です。 アドバーグさんはルイズを馬の前に乗せパカラパカラ。ちなみにちゃんと普段着です。 アドバーグさん、キタの村にいたころは移動手段に馬を使っていましたから手馴れたものです。 旗から見ていると乗馬している男とその孫のようなほほえましさです。 ワルド? そんなのいましたっけ? 「あれ? どこだい、僕のルイズ!」 置いてきぼりになっていた模様です。 勇者と魔王を倒す旅までしたアドバーグさん、宿屋の部屋でそのころの話を物語のようにルイズに聞かせます。 ちなみにルイズ、現在は買ってきた染色剤で茶髪になっています。 これはアドバーグさんの知恵でした。 「密命ですからな、ルイズどのの髪の色では見つかってしまう恐れがあります。薄い金色か茶色か迷いましたが茶色なら平民と同じでばれにくいでしょう」 「良くこんなこと考え付くわね」 「魔法は使えませんからなぁ。知恵を使わねばなりませんよ」 「ま、確かにそうね」 「急ぎですから早めに寝るとしましょう」 この案が功を奏したのか、レコン・キスタは二人を見つけることができませんでした。 さすがアドバーグさん、勇者と魔王を倒しに行っただけあります。まあ魔王に踊りを勧めるような人ですが。 「ああまずいぞ、これはまずい。ルイズはどこに行ったんだ?」 ワルドはピンク色の髪を目印に捜しているようでした。……なんで染めていると考えないのかしら? 船はどうやら何日か待たないと出せないらしいです。と思ったら風のメイジが風石の代わりをしてくれるとのこと。 ラッキーとばかりに便乗します。 でもいきなり海賊と鉢合わせです。運がない。 貴族の人は魔力切れの上船底に監禁中だそうです。 しょうがないからアドバーグさん、ルイズを背にかばいつつ奮戦しました。 海賊の副船長っぽいのを伸したあたりでルイズが叫んでいるのが聞こえたので戦闘を中断です。 ……どうも依頼の相手のウェールズ皇太子だったようです。なんたること。 手紙はお城まで行かないとないそうです。 ルイズ、アドバーグさんとアルビオンのお城まで。 ルイズがウェールズ皇太子に必死に何か言ってますけど、アドバーグさんは特に関係ないのでパーティの御馳走をほおばっていました。 次の日風のルビーを受け取っていると、爆音と共に数名の白仮面が攻め込んできました。 どうもレコン・キスタっぽいです。予定調和ってやつでしょうか。 その一人が不意打ちでウェールズ皇太子の胸を貫こうとした瞬間、横からの衝撃で吹っ飛び消えてしまいました。 我らがアドーバグさんの参上です。 遍在、意味がありません。アドバーグさんに次々撃破されていきます。 最後の一体から仮面が落ちました。どうやら本体だったようです。 その顔は少なくともルイズには見覚えのあるひげ面。 「ワルド様!? まさか、まさか裏切ったのですか!?」 「ルイズ、僕には君が必要なんだ。一緒に来て欲しい。君がいれば世界を手に入れられる!」 予想外のことがおきすぎてぶっ飛んでしまったようです。何の脈絡もなくそんなこと言っても言われてるほうには寝言にしか聞こえません。 「ふざけないで! 私を裏切って! アドバーグ、やっちゃってぇ!」 「キッタキター!」 アドバーグさんにはギャグ補正がかかっています。 何があっても死なない彼に、魔法があたるわけがありません。 「何故だ、何故当たらない!」 「にゃんこらしょー!」 ワルドはアドバーグのヒップアタックに吹き飛ばされました。 それを彼のグリフォンが拾って天井の穴から逃げていきます。 レコン・キスタの軍が攻めてきます。 王子は逃げろといいますが、おかしなスイッチが入ったのかルイズは目が渦巻きになっています。 「あははははは! 行くわよアドバーグ!」 レコン・キスタの兵はルイズの失敗魔法とキタキタ踊りの前に敗れ去りました。方法? そんなもの『キタキタ親父だから』ですよ。深く考えると禿げます。 ルイズは二つのルビーをこっそり着服しました。まるでどこかの世界の勇者のようです。 何かいろいろあってルイズたちは現在タルブの村にいます。 いる理由はシエスタがルイズを誘ったからです。仲いいですね。人気の百合の花でしょうか? まあいいや。 ちなみにマチルダさん、耳がとがってる女の子を連れてきた模様。 気のせいですと言い張ってヨシェナヴェをむさぼっています。 しかしみなさま、「ああ、気のせいか」はないんじゃないでしょうか? ルイズは始祖の祈祷書とか言うのを読んでます。読むって言っても白紙ですけど。 アドバーグさんが表紙の絵を見ながら「ククリどのの魔法書と同じ表紙ですなぁ」とか言ってるのは無視しましょうね。 さっさと帰ればいいのに酒を入れるから村で寝込んだままになっちゃいました。 回復して帰ろうとしたら、アレに見えるはレコン・キスタ。 ウェールズ皇太子は亡命してがんばってるというのに遠慮や美学のない人たちです。 この村には『竜の羽衣』とか呼ばれてるゼロ戦がありますけど、アドバーグさんが知ってるわけがありません。 トマ君とかがいれば別ですがアドバーグさんからすれば「変わった代物ですなぁ」でおしまい。 「ルイズどの、早く避難しないといけませんぞ!」 「らによう! あらしのみゃほうをくらいらさい!」 酔っ払ったままの頭で炸裂する失敗魔法、同時に光る始祖の祈祷書。 そのままぶっ倒れかけたルイズを支えるアドバーグさんの目に、爆発が描いた魔法陣が飛び込んできました。 それは見覚えのある、ネコのような猫の目のような魔法陣。 まあなんということでしょう。大きな、ネコのような間抜けな顔をしたオブジェが出現しました。 『ナアアアァァァア~~~~~~~オ』 あまりに気の抜ける声に、レコン・キスタの皆さんは総崩れです。 立ちたくても足腰がなえて動くこともできません。ほら、ドラゴンもぼとぼと落ちてます。 それは旗艦レキシントン号にいるお偉いさん方も同じです。 気が抜けて立っていられないワルドの目に飛び込んできたのは、かつて己を吹き飛ばした腰みのの理不尽という恐怖でした。 ビ~ヒャラ~ラ~という間抜けな音と共に、ピンク色を背負った何かが戦場の真ん中を土煙を上げて疾走しています。 かろうじて動ける兵士たちをそのクイックイッキュッという擬音が似合いそうな動きで吹き飛ばし、その恐怖はただレキシントンへ向かって一直線。 それでもワルドは何とか立ち上がり、その人影に向かって杖を向けます。 「この変態がぁ! 食らえ! 『ライトニング・クラウド』!」 その魔法よりも一歩早く、アドバーグさんが背負っていたルイズが酔ったままの勢いで杖を振るい、失敗魔法が魔法陣を描きます。 それは目と多角形を組み合わせた、すべてを台無しにする魔法陣。 『はぁ~さっぱりさっぱり!』 ワルドの頭の上でくるくる回る扇を持った妖精。 ワルドの杖から放たれたのは雷鳴と雷光ではなく、破裂音と紙ふぶき、それに紙リボンでした。 「ななななな、ウウウウウインド・ブレイク!」 眼前に迫るアドバーグさんに向けて振られた杖から飛び出したのは、見たこともないクリーチャーでした。 「野菜を食べよう!」 ただそれだけを叫ぶとアドバーグさんを飛び越えかなたへ。 唖然とするワルドの視界が腰みので埋め尽くされ、彼はそのまま意識を失いました。 「にゃんこらしょー!」 ワルド撃沈。 レキシントンの各部から連続して崩壊音が響きます。 「あははははははは! 食らえ食らえ~!」 狂ったように叫ぶ杖を振るうルイズから放たれる失敗魔法、それは着弾地点に魔法陣を描きます。 魔法陣から生えたつたがレキシントン号に絡みつき、爆発するイチゴをばら撒きます。 同じように魔法陣から飛び出した炎が地面をもぐり兵士たちを吹き飛ばします。 何とか立ち上がった兵士が剣を構えますが、同じく出現した嫌な感じの顔のネコがどこからともなく取り出したガラスを引っかいて動きを止めてしまいます。 武器を落とし耳をふさいだ瞬間横合いからのキタキタ一撃、哀れ彼らは青空に笑顔で決め! 声と音に耐性がつき始めたのでしょう、よろよろと起き上がりすわ攻撃だと杖を振るうルイズと踊るアドバーグさんめがけドラゴンたちが殺到します。 杖を掲げたルイズとそれを守るように構えるアドバーグさんの真下で、ひときわ大きな魔法陣が輝きました。 それは怒れる大地、それは地下の魔神。 魔神ベームベーム顕現せり。 見上げる高さとあふれる威圧感、そびえ立つその巨体をぐるりと回る無数の目、それらが一斉に輝きけたたましい雷光を放ちました。 とどろく爆音、吹き飛ぶレコン・キスタ。ベームベームの上で踊るアドバーグさん。 雷光のいくつかがレキシントンを吹き飛ばし、ワルドがハヒフヘホ~とか叫びながらお星様になったころ、寝こけるルイズと一心不乱に踊るアドバーグさんだけになっていました。 せっかく駆けつけた軍隊は、その惨状にただただ唖然とするほかありませんでした。 村を上げて祝杯です。 オールド・オスマンも出席日数がどうとか忘れて酒盛りです。 舞台ではアドバーグさんが後ろのほうで見守る中、ミス・ロングビルと養女のティファニアがキタキタ踊りを披露しています。 男たちは全員そろって前かがみです。ギーシュなど下品にも口笛を吹いてモンモランシーにフルボッコです。 アドバーグさんは感動の涙を流しながらうんうんうなっています。後継者ができてよかったね。 後ろのほうでルイズがわめいています。どうやら魔法が使えるようになったのをキュルケに信じてもらえず憤っているご様子。 「証明してやるわ!」と杖をとりいつもの失敗魔法を唱えました。 かっこつけずに魔法陣を書けばよかったのに、いつものように詠唱なんてしちゃうからいけなかったんです。 舞台の下で小さな炸裂音がしたと思ったら舞台が踊り子とアドバーグさんを乗せたまま浮かび上がりました。 なんということでしょう。舞台の真下にできた魔法陣から幻獣ヨンヨンが召喚されてしまったのです。 踊りに夢中で気づかないキタキタ三人衆を乗せたまま、ヨンヨンは日食に消えていきました。 ルイズはとりあえずごまかすために、美しく締めることにしました。 「アドバーグ、いろいろありがとう! あなたのこと、きっと忘れないから!」 ルイズは美しい涙を流します。でも“きっと”とか言ってるあたりもう駄目です。 他の人たちも一応ルイズに習い、日食に向かって涙を浮かべます。 後ろのほうですごい顔をしているたまねぎっぽい何かを気にしたら負けです。 「宇宙の果てのどこか(ry」 使い魔がどこかへ行ってしまったため、ルイズは特別措置として再召喚が許されました。 系統はまったく違いますが魔法が使えるようになった彼女を笑うものはもういません。 魔法は唱えられ、爆発の代わりに魔法陣が輝きます。 そして新たな使い魔が、ここトリステインに顕現しました。 それはあまりに美しく それはあまりに気高く それはあまりにセクシーで それはあまりにたくましい そして何よりそれは、息が止まるほどかっこいい 魔法陣の上で浮かび上がり輝く四つの影。 あまりのかっこよさにその場の全員が言葉を失い、オールド・オスマンに至っては涙を流していました。 運命に導かれ「すぎた」世界最強の四人衆。60年間無敗の男たち。 彼らこそ『爺ファンタジー』!! ルイズはひどくさめた思考で、ただポツリとつぶやきました。 「絶対アドバーグと同じとこのやつだ……」 女王は今日も道を行く 四つの指輪をその手にはめて 四つの秘法を携えて 四人の使い魔引き連れて 女王は今日も道を行く 虚無の女王は道を行く 次回:『ゼロのかっこいい奴ら』 続くわけがない。 アドバーグさんは結局最後まで、異世界だと気づかなかったのでした。
https://w.atwiki.jp/doliland/pages/210.html
基本情報 初期能力 能力MAX(例) 入手方法 備考 基本情報 図鑑№148 名前 祈祷師マナ 属性 火 ランク レア フォース 22 初期能力 攻4760 防2510 能力MAX(例) レベル30 攻8640~9600(最大値) 防5850~6500 入手方法 備考 キングレア 安心!!サクラ無し ハンター図鑑
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/554.html
前へ / トップへ / 次へ ルイズが巫女に選ばれた日から、数日あまり姿を見せなかった残月が、久しぶりに学院に姿を現したのは午後、コルベールの授業 中のことであった。 ちょくちょく学院内をうろついているところを多くの生徒に目撃されていたため、(しかしこの学院のセキュリティはどうなっているのだ) もはや誰もその変態仮面には驚かなくなっていた。が、今日は少し様子が違った。 「うほおおおおおおおおおお!ふはああああ!!」 まず一番驚いたのは誰あろう、教師のコルベールであった。本来生徒がこのような態度を取れば注意してしかるべき立場の人間が、 いつものえんじんがどうこうという授業を放り出して、残月に駆け寄った。 正確には、残月と共にやってきた竜騎士隊が運んできた、ものに駆け寄った。 突然放置された生徒たちはなすすべなく教室からその光景を見ていた。コルベールが興奮して、運んできたものをあちこち見て 回っているのが、窓越しに見える。 やがて、誰かが 「先生を連れ戻して来ようか?」 と言いコルベールの下へ駆け寄ったが、ネコの子犬の子を追い払うように帰されてきた。 「自習でいいって」 ワッと歓声が起こる。言いだしっぺの子はコルベールの様子から自習になることはある程度予期していたらしい。だが、無断で自習を してしまえばあとでどんな咎めが来るかわからない。仮にコルベールに非があったとしても、だ。そのためあえてコルベールにお墨付き を貰いに向かったというわけである。 「あれってタルブの村に鉄人とかいうゴーレムと並べてあったマジックアイテムじゃない?」 さほど熱心でもなく、ちらっと窓越しに見えたものにたいしてキュルケが問いかけた。 「………竜の羽衣。」 さっそく本を取り出し、開いているタバサがチラリとも見ず答える。 「なんであんなもの、あの仮面は持って来たのかしら?ルイズ、あなたはご存知?」 残月がルイズの部屋に頻繁に出入りしていることを知っているキュルケがルイズに話を振る。最近姿を見せないのでほっとしていた 変態仮面が威風堂々授業中に現れ、しかもそのせいで授業が停止したことに頭を抱えていたルイズは、 「……知らないし知りたくもないわ。」 と答えた。そもそも今の彼女にとっては巫女の大役を果たすことが重要であり、この機会にと机の上に白の祈祷書を広げて詔の草案 を練っているところである。 「ところでルイズ、あなた、なにしてるの?」 真っ白な本を広げてうんうん唸っているルイズを見て、キュルケが心配そうに問う。この状態のルイズは、はたから見ると頭の可哀想 な子にしか見えない。 「見ればわかるでしょ。読書よ、読書。」 いや、見てもわからないから聞いんだけど、とつい口に出そうになるキュルケ。真っ白な本を読書など聞いたこともない。あやしい精 神カウンセラーにでもかかったのだろうか? 「でも、その本真っ白じゃないの。」 「これは始祖の祈祷書っていう国宝の本なのよ」 ルイズは説明する。王女の結婚が正式に決まり、自分はその結婚式で詔を捧げる巫女に選ばれたことを。そのときこの始祖の祈祷 書が必要なこと。云々。 キュルケは先日のアルビオン行きが、結婚となにか関係があるとすぐ感づいたが、それは厳重に口止めして話はついた。 そういえばギーシュにはすでに口止めをしておいたし、タバサは気づいても言うはずがない。もっともギーシュはそのためモンモラン シーに「この前、授業を休んで何してたのよ。」と詰め寄られ、答えるに答えられず、窮地に追い込まれていた。 まあ、ルイズはそんなこと知ったこっちゃないのでどうでもいいことだ。 さて、場面はコルベールと残月に移る。 奇声を上げて飛び出したコルベールは運ばれてきたものを今にも食いつきそうな勢いで観察している。昆虫記で名高いファーブル 博士も、こういう格好で昆虫を観察していたのだろうな、とつい感慨にふけってしまう。 「きみ!こ、これはなんだね?よければ私に説明してくれないかね?」 目を輝かせ残月に尋ねるコルベール。当年とって42歳。学院に奉職して20年。『炎蛇』の異名をほこるメイジである彼の趣味は、 先にも述べたとおり研究と発明である。激しくコルベールの知的好奇心を刺激したのだ。 「これは『飛行機』ですよ。」 バビル2世が教室のある風の塔から降りてきて、そう告げた。それを見て残月が馬から降り、丁寧に一礼する。 「ひこうき?なんだね、それは??」 「わかりやすく言えば空を飛ぶ機械です。風と、先日先生が作ったエンジンをさらに発展させたものの力で空を飛ぶ。」 「ほう!もしかしてこれが翼かね!羽ばたくようにできておらんな!」 「それはですね。」 バビル2世は地面に拾った木の枝で図を描いて説明をする。翼の上と、下の気流に差ができる、いわゆるベルヌーイの定理である。 運んできた竜騎士を始め、集まった生徒たちもなにごとかと図を覗き込む。 「いろいろな説はありますが、この図のようにして揚力というものを浮かべる力が発生し、それによって飛行機は浮くんです。ちょっと 待ってください。」 懐から紙を取り出し、それを折り始めるバビル2世。そう、紙飛行機を作っているのだ。 それを投げると、ふわっと紙飛行機は10mばかり飛んだ。 おお!という驚嘆の声が野次馬から起こる。 「つまり、この紙飛行機のように、翼が固定されることで逆に身体を持ち上げる力が発生するということです。」 慌てて紙飛行機に駆け寄るコルベール。紙飛行機を慎重に拾い、目を皿のようにして構造を観察する。 「そういえば大きい鳥の中には羽ばたかずに滑るように飛んでるやつがいるな。あれと同じことかい?」 竜騎士の中の1人が問いかけてくる。 「ええ、そうです。」バビル2世は頷く。 「なるほど!なるほど!この後ろの翼や、上に飛び出た翼は姿勢を安定させるためのものだね?」 ふはっ、と鼻息も荒くコルベールが言う。この説明と、紙飛行機を見ただけでそこまで理解するとは、この男は只者ではない。 「さて、ではこの風車はなんだね?」 「プロペラですよ。」 きょろきょろと辺りをうかがい、木の板を見つけたバビル2世は、それをデルフリンガーで削り始めた。 「おい!/オレは肥後の守じゃねえって!/工作に使ってんじゃねぇよ!/久しぶりにものを切ったと思ったら木の板かよ!/」 抗議をするデルフリンガーにお構いなしに木の枝も削るバビル2世。本当は竹があればよかったんですが、と言い完成したものを 両の掌に挟んで、擦りあげた。 ウォオンと、完成したもの…竹とんぼが虚空に舞い上がった。観客に歓声が起こる。 もっとも木製のため、あっという間に落下して来たのだが、それでもコルベールには充分だったようだ。 「なるほど!これを回転させて、風の力を発生させるわけか。回転させるのはえんじんで、前に進むことで翼に揚力が発生する、と。 なるほどよくできておる!」 興奮してウォーウォー叫ぶコルベール。なんとなく嫁の来てがない理由が推察できる。 「残月、これをなぜここに運んできたんだ?」 紙飛行機を生徒や竜騎士の何人かに混じって飛ばしていた残月が、慌てて駆け寄ってくる。 「コウメイ様が今後必要になるはずゆえ、ショウタロウ翁にお借りして来いと……。もっとも『鉄人があるから』といただいてしまったの ですが。」 恐縮し、ポリポリ頭をかく残月。中身がプリンスオブウェールズと言っても信じる人間はいないだろう。 「孔明が?ふーむ。」 顎に手を当てて考えるバビル2世。いったい何を企んでいるのだろうか。 「おい、ビッグ・ファイアくん!いや、バビルくんだったかな?さっそく飛ばせてみせてくれんかね!ほれ、もう好奇心で手が震えておる」 ぶるぶる震える両腕を突き出すコルベール。まごうことなき武者震いというやつだ。 「ええ、ですがこれを飛ばす燃料が必要です。」 「燃料?」 「はい。ガソリンといいまして、石油を蒸留して作る特殊な油なんですが。」 「バビル2世様。」 残月が後ろから声をかけてくる。 「コウメイ様の指示に従い、ガソリンは用意してあります。ただ、時間が足らずこれだけなのですが。」 ドラゴンのうちの一体がに縛り付けてある皮袋を指差す。それを外してもってきて拡げると、独特の異臭がした。間違いなく、ガソリン だ。おそらく燃料タンクの底にこびりついていたものから錬金したのだろう。 コルベールは匂いをかいで、何かをメモにとっている。おそらくガソリンの科学的な特徴をさらさらっと書いているのだろう。 「これと同じ油を、どれぐらい作ればよいのかな?」 予想で、少し大目の量をいうバビル2世。 「おもしろい!調合は大変だが、やってみよう!」 「あと、それから、こういったものは空を飛ぶのにある程度の速さになる必要があります。そのため直線距離をとれる場所か、あるい は一気に加速してやる装置がなければ飛ぶことができません。降りるときもそれなりの距離か、機体を停止させる装置が必要にな ります。」 「なら正門外の草原がいいだろうな。うん、面白くなってきたぞ。」 「あの……」 盛り上がっているところをすみませんが、と竜騎士の1人が口を挟んできた。 「運び賃のほうは?」 さて、こちらは孔明である。 孔明はこのところトリスタニアの街をうろついていた。 やっていることは、今風に言えば経営コンサルタントである。 最初はくたびれた屋台が舞台であった。 簡単な歌、今で言えばコマーシャルソングを作り、子供たちに金を払ってそれを広めさせ、流行歌にしてしまったのだ。 妙に耳に残るその歌のため、町の人々は自然にその屋台の名前を覚えた。やがて、歌に出てくる店としてみな商品を買うように なり、今では押しも押されぬ行列店となっている。 最初はダメでもともと、半信半疑であった店主も、日に日に増えていく客に目を丸くし、今では孔明を 「先生」 と呼んでいる。 やがて噂を聞いた別の店が、「うちにもぜひ商売のコツを」と孔明に尋ねてきた。それをも成功させると、雪だるま式に孔明に教えを 請う店が増えていき、今では商店の8割近くが、孔明にアドバイスを受けている有様である。今ではちょっとした顔役になっている。 孔明の巧みなところは報酬をほとんど受け取らないところであった。まったく受け取らないのではなく、逆に多く受け取るのでもない。 ほんの少しだけ受け取る。それにより恩を売り、また自分についてくれば間違いないと店主に刷り込ませる。 すなわち、これ全て孔明の策略であった。 こうなれば黙っていてもあらゆる商品の、日々の値段の移り変わりが情報として入ってくるようになる。商人同士のネットワークで、 遠い街や国の情報をすぐに仕入れられる。各屋敷に出入りしている商人から、各メイジの実力や懐具合、その他あらゆる情報を入手 できる。 そうして得た情報を、バベルの塔のコンピューターに転送し、分析。あの恐るべき策略を立てていた。 その日も、何軒かに請われてアドバイスをしていた。そのとき、表の通りで諍いが起こったのである。 出てみると、金髪の女兵士が、あらくれものたちと揉めているところであった。 「なにごとですかな?」 と、近くにいた顔見知りの商人に尋ねる孔明。「これは、先生」と商人は挨拶し、 「どうもね、旅の商人と娘が、酒場で性質の悪い兵隊に絡まれたようなんですよ。ふりきって逃げたものの、追いかけてきた連中に 捕まっちまって。そこにあの女の兵隊さんが絡んだってわけで。」 ふむ、と対峙する両者を見比べる孔明。 女兵士のほうは短く切った金髪に碧眼、細身の身体。細く長い剣を腰に挿している。年齢は20歳前半というところか。 対するあらくれものは30歳前半。あごひげを生やし、髪は赤色の長髪。分厚い鉈のような剣を腰にぶら下げ、背丈は2m近い。胸に さそりのマークのついた、刃物の飛び出た鎧を着こんでいる。他にも仲間はいるが、この男が中心となっているようで、まわりでニタニタ しながら女兵士と親子連れを囲んでいる。 その娘を渡せ、なんならお前も相手をしてくれるのか?などと悪役・やられ役の典型的な台詞を吐き威嚇するあらくれもの。この時点 でもうあかんなーという気にさせられる。 一方、女兵士のほうは威嚇するあらくれものに対抗するためか、激昂した様子があるものの、その態度はあくまで落ち着き払い、 3人相手に一向に臆することがない。 「ジャック、女の子相手でおびえてるのか?正義を振りかざすアマちゃんに、人生の厳しさを教えてやれ」 あらくれもの以外にも仲間がいたのだろう。野次馬の中からジャックと呼ばれた赤毛の男を挑発する声が上がった。 「うるせえぞ!」とジャックが目を離したすきに、商人親子が逃げ出そうとした。 が、商人は蹴り転がされ、娘の身体へ腕が伸びた。 「逃がすかよ!」 腕が娘の身体を捉える瞬間、赤毛のジャックの身体がぐるんと一回転して地面に顔から突っ込んだ。 「下郎が。」 冷たく言い放ち、女兵士が腕を捻りあげた。さらに剣を抜いてジャックの喉下に当てる。 伸びた腕を引っ張り、足を引っ掛けてバランスを崩し、投げ飛ばしたのだ。 「動くな。動けば、この男の首を掻っ切るぞ。」 周囲に警告し、刃をジャックの喉下に当てる。ツ…と赤い糸が皮膚に浮かぶ。 「ひっ。」 と赤毛のジャックが怯えた声を上げた。 「これ以上暴れるなら、わたしがそっちの全員と相手になってやろう。どうする?」 鋭い視線を向ける女兵士。他の傭兵はてんでバラバラに逃げ出した。 「貴様ももう行け。こんど悪さをしでかしているのをみつければ、下の小さいものを切り取るぞ。」 剣を引く女兵士。ものすごい形相で、赤毛のジャックが立ち上がった。 その途端、ズボンが切れて落ち、一物を公衆にさらす嵌めになる。 「どうした?いますぐ切り落として欲しいのか?」 すこし淫靡な光を湛えた目で、女兵士がジャックを見る。「あわわ」と小さく悲鳴を上げ、前を隠し、捨て台詞を吐きながらジャックは 逃げ出した。 ウワッ!と周囲の野次馬が歓声を上げた。 「何用かな?」 騒ぎも収まり、歩き出した女兵士をつける孔明に、女兵士が振り向いて、言う。 「ストーカーというやつか?」 冷たい視線で孔明を睨みつけてくる。その視線を笑みでいなす孔明。 「いえいえ。先ほどのお手並みを拝見していたものです。あの手際、感心いたしました。大の男を軽くいなされるとは…」 「別にどうということもない。拳を使うまでもない、たやすい相手だった。」 プイ、と顔を背け、再び歩き出す女兵士。孔明はニコニコしながらその後をついて行く。 「いえいえ。見事なお手並みでしたぞ、この孔明、感服いたしました。アニエス様。」 完全に無視を決め込んでいた女兵士の歩みが、ぴたりと止まる。 「おや、自分の名を知っているのが意外でしたかな。なに、種を明かせば簡単。偶然、私の近くにいた方が、あなたの名前を知って いただけですよ。」 こういうとき、孔明のネットワークは便利である。あらゆる場所に出入りしている商人は、人の名前と顔を覚えるのが得意な人間ば かりである。その中に、王軍に所属するこの女兵士の名を知るものがいたのである。 「べつに悪さをしようというのではございませぬ。こう見えても、私は占いが趣味でして、あなたを一目見て気になるところがございま したので…」 「……占いなど、あてにはならぬ。」 再び歩き出すアニエス。その背中に「ですが」と語りかける孔明 「それが、あなたの大願成就に影響があると言ってもですかな?」 ふたたびアニエスが静止する。今度は孔明のほうを振り向いた。しかも殺気すら感じる。 「いえいえ、べつに私はあなたのことを知っているわけではございませぬ。ですが、偶然顔の相を拝見させていただきましたところ、 あなたにはある悲願があると出ましたものでして…」 完全に孔明を正面から見据えるアニエス。腰の剣はいつでもぬけるようになっている。 「……聞かせて、もらおうか。」 いつでもお前を切り殺すぞ、といわんばかりの殺気を孔明に浴びせかけるアニエス。しかし孔明は全く動じていない。そのため、 アニエスは逆に興味が少しわいてきたようであった。 そうなったところで、孔明はようやく口を開いた。 「あなたにはしばらく後、祝いの日を迎えんとするとき、転機が訪れるでしょう。南へと向かうことになるはずです。南の地で、光を 見るときに、恐れ退くことがなければ、あなたの悲願を叶える道は開けるでしょう。」 「……南……?光……?」 「はい。おそらく、もし私があなたと再び会うことがあれば、それはあなたに転機が訪れてからでしょう。」 そう言い、会釈をすると孔明は立ち去った。 アニエスなる女兵士は、じっとその言葉の意味を考えているようであった。 老人が意識を取り戻したのは、ラ・ロシェール近くの山小屋の中であった。 「こ、ここは……」 周囲を見渡すが、少々の家財道具があるだけであとはほかに何もない。囲炉裏に火がくべてあり、老人の身体を冷やさぬようにし てある。老人の身体は全身が包帯で覆われ、まるでミイラ男のようであった。 「お気づきになられましたか?」 扉が開き、中に男が入ってきた。 長身の男だ。 髪は長髪で、黒。オールバックにしており、あごひげがぐるっと回って髪と一体化している。 奇妙なのは、なぜか服の色がピンク色ということだ。 「おお、ズイか……。」 「左様です、呂尚様。お久しぶりです。」 深々と礼をするズイ。両膝を床につき、手を胸の前で組んでいる。目には涙を浮かべ、心配そうに顔を覗き込んでいる。 「呂尚様は知り合いの男が運んで来たのです。ラ・ロシェールの街で空に消えた老人が、北の森の中で倒れていた、と言っていま した。全身が酷い火傷なので、以前その男を山の中で骨折していたのを偶然治療してやったことがあり、知っていた私の元へ運んで きてくれたのです。」 何かを言おうとする呂尚を、ズイは制して、寝かしつけた。 「呂尚様……丸々2週間も寝続けていたのです。まだ傷も癒えきっておりませぬゆえ、今はゆっくりお休みください。師匠…」 呂尚の布団を直し、扉を開け外に出るズイ。外は日が沈み始め、空は赤く燃えていた。 「……あの呂尚様を、いったい誰があれほど痛めつけたというのだ…。うーむ、わからぬ。」 腕組みをして、太陽を追うように沈んでいく二つの月を眺めた。 前へ / トップへ / 次へ