約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1979.html
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨なバトルを頻発 女性に肉の芽植えるのは日常茶飯 恫喝したけでモット伯が泣いて謝った、老化する貴族も あまりにも格好良いからバオー来訪者のゼロ魔クロス小説でもジョジョ魔扱い その小説もヒット ルイズを最後まで護り抜くなんてザラ、2巡どころか無限に死んでルイズの使い魔をするガンダールヴも 昔を思い出しただけで5万人くらいカタツムリになった ガリア王ジョゼフとその使い魔シェフィールドをデルフでなく単なる鏡で処理してた 『スタンドなしでフーケ戦の終盤ギリギリまで戦い抜く』というファンサービス あまりに投下があり、中には最初から死んでるという新感覚なガンダールヴも スタンド全開にすると仲間の見せ場が無くなるので力をセーブしてた ガンダールヴがフェノメノンした姿にキュルケのレーダー(性的な意味の)が反応してしまうのでフェノメノン中は警戒されていた 返答は常に『逆に考えてみるんだ』 ガンダールヴのおかげで触手、調教、姉妹・親子丼に目覚めました ガンダールヴをワルキューレで殴りつづけてもレなない 神砂嵐の原因は、ガンダールヴが敵に手を振ったせい ガンダールヴって吸血鬼から生まれたんだよね 死んだ仲間に『過去に囚われず、仲間の影に縛られない事』を約束 ガンダールヴ対策のためにルイズの洗脳が実行されたが、なんなく洗脳を解いたのは有名 ガンダールヴの体液がちい姉さまを『最ッ高に「ハイ!」ってやつ』にさせているのはあまりにも有名 ガンダールヴは、いつも店先のペンダントを物欲しそうに眺めるルイズにペンダントを爆破してあげたことがある ガンダールヴが一睨みしただけでキメラ犬が怯えて飛んでいく ガンダールヴが剣とかスタンドとか、役割間違えてんだろうが…萌えすぎじゃねえか… 納得が出来なければ相手が王女であろうと説教する、手を踏むことも ツンデレ、無口キャラ、巨乳、メイド、美女怪盗とのフラグが立った事にまだ気づいていないガンダールヴも多い 変態orカオスorタバ茶に奇妙な縁を持つガンダールヴのせいかジョジョ・ゼロ魔キャラ以外の作品のキャラまで見える ルイズの代わりにツンデレになったガンダールヴも 惚れ薬イベントでルイズを百合に目覚めさせた デルフ無しで三章までルイズを護った ガンダールヴの精神操作のおかげでおっぱい子爵が誕生したのはあまりにも有名だったんだがなあ とある貴族と決闘する時、スタンドが発現出来ないので覚悟と誇りと知恵だけで決闘に勝ったという話はあまりにも有名 ルーン効果で加速もしてるけどスローでよく見ると爪先立ち歩きなんだよな 対峙したばかりの閃光のワルド、ガンダールヴが手で撃った銃弾で撃沈 ガンダールヴは以前、飛行中のアルビオン行きのフネに飛び乗ってルイズに追いついたことがある 神の左手ガンダールヴ、勇猛果敢な神の盾 左に握った大剣と、その身に宿す能力で、導きし我を守りきる 神の左手ガンダールヴ、心優しき神の笛 砕けぬ覚悟は時を超え死を超え、導きし我を守りきる 神の左手ガンダールヴ、知恵のかたまり神の本 知識、経験、記憶を使い、導きし我を守りきる 神の左手ガンダールヴ、強くて優しくて賢くて…本当に我の大切な… べ、別にあいつの事なんか好きでもなんでもないんだからね!?ちょっと感謝してるだけよ!!! ガンダールヴを我はどう思っているか、記す事すらはばかれる… 鳥捨印書房発行 著者不明『ハルケギニアの伝説(使い魔編)』及び『始祖の祈祷書に挟んであった謎の紙切れ』より抜粋
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7417.html
前ページ次ページゼロの黒魔道士 「ルイズおねえちゃんを、離せ!!」 声を、一際高くあげる。 そうでもしないと、体に伝わるしびれに負けてしまいそうになるからだ。 「――よく分かったな?」 あのエルフは、ルイズおねえちゃんを人質にとっている。 ルイズおねえちゃんの細い首をすぐにも握りつぶせそうにつかんで。 さっきまでの『部屋の中央にいた』エルフでは無く、『見えなかった』エルフだ。 顔は同じだけど、まとっている空気は別のものだった。 さっきまで戦っていたエルフが魔力の壁、と言うとするなら、 今このエルフは魔力に溶け込んでいる空気そのものだ。 実体がつかめないほど、たゆたっている存在。 無駄をそぎ落としたような、実体のある幽霊って感じだ。 「……ギーシュの攻撃、少しだけかすったから」 身体の痛みを引きずるように、言葉を口から出していく。 頭がまだ冷静さを保てているかどうかを試すように、ゆっくりと。 「ほう?だが、それだけで……」 「物理攻撃も跳ね返してたのに、『グラビデ』で引かれた小石は跳ね返して無かった。 だから、意識しないと物理攻撃は跳ね返せない……そうでしょ?」 このエルフは、物理攻撃を跳ね返した。 それも全部じゃなくて、致命的なものだけを。 違和感は、そこだったんだ。 「それで?」 ルイズおねえちゃんの首を抑えたまま、エルフが問う。 少しだけ、楽しげな様子に見える。腹立たしく、なるほどに。 「そうなると、『意識した攻撃』って、普通『目に見える攻撃』だよね? だけど、死角から攻撃したものを跳ね返したのに、ギーシュの隙だらけの真正面からの攻撃がかすったのはおかしいから……」 ボク達の世界の『リフレク』とは違う魔法。 その理屈を、起こった結果から逆の順番で考えていったんだ。 隙だらけの攻撃を跳ね返さずに、死角からの攻撃を跳ね返した。 ということは、死角が死角じゃなかったってことを意味するんじゃないかと思ったんだ。 ……だから、答えは『目に見える物だけが敵ではない』…… ボクがいた世界にも、『バニシュ』って姿を消す術を使ったモンスターがいたから分かったんだ。 ギーシュとクジャに助けられる結果になってしまったなぁと思う。 「『他所よりの観測の存在』というわけか。 やるな、少年」 『よくできました』とでも言いたそうな軽い言い方。 痛みを堪える頭に、嫌な感じで響いてくる。 「さぁ、ルイズおねえちゃんを離してっ!!」 もう一度、声を高く上げた。 身体がバラバラになりそうになるのに、顔をちょっとだけ歪むのを感じながら。 ゼロの黒魔道士 ~第五十五幕~ 死闘 ― Fight To The Death ― 「だが、勘違いが1つ」 エルフは、微動だにしなかった。 それどころか、眼すらつぶっていた。 「ぐわっ!?」 「ギーシュ!?」 ギーシュがエルフの背後から弾けて転んだ。 死角から攻撃しようとしたらしいけど、どうして? 「私自身が使う『反射(カウンター)』は精霊の力を最大限に借りるため、『意識する』という工程は必要ない。 先ほどの土人形にまとわせた物とは違って、な」 このエルフが使っているのは『リフレク』と同じ効果を物理攻撃にも当てはめてしまっているらしい。 つまり、このエルフを狙った攻撃は全部跳ね返される…… 「うっへ、流石先住……チートもいいとこだわ」 クラクラしてくる頭で、デルフに同意してしまう。 これって、ズルいどころじゃない。 でも、こんな強さなら、どうして…… 「――何故?と問うか?最初から私自身が姿を現すべきであったと?これも、約束のためだ」 エルフが、ボクの心を読んだように答える。 「約束って、何よ!さっきから……」 ルイズおねえちゃんが、首を握られたまま苦しそうに反発した。 「指輪と、『始祖の祈祷書』。渡してもらおうか」 「なっ!?」 「え!?」 ルイズおねえちゃんから、うめき声が漏れ出た。 「どうした?お前が所持しているのだろう?」 「な、何であんたがそんなものをっ!」 それ以上に、なんでエルフが指輪と祈祷書のことを知っているんだろう? なんで、エルフが『虚無』にまつわるアイテムのことを? 「何度も言わせないで欲しい。約束だ。果たさない限り、私は何でもしなければならない」 「くっ……」 「ルイズおねえちゃん……」 その言葉を裏付けるように、ルイズおねえちゃんの首をしめる力が強くなるのが、見て分かる。 どうにかしたい、でも、一歩が踏み出せない。 ルイズおねえちゃんんを助ける方法を、必死で考えながら、エルフをにらみつけるしかなかった。 「――渡せば、他の人は傷つけないのね?」 「少なくとも、私はそのつもりだ」 ルイズおねえちゃんのうめき声に、エルフの静かな声が答える。 ルイズおねえちゃんは、渡す気だ。『虚無』の大切なアイテムを。 「ルイズ、渡しちゃいなさいよ、早く!」 キュルケおねえちゃんもそれを後押しする。 確かに、ルイズおねえちゃんの身を守るためにはそれしか方法は…… それで、助かるというなら、それが正解だと思うんだけど…… 何かが、何かがおかしい気がした。 「――仕方ないわ……」 苦しそうな顔をしながら、ルイズおねえちゃんがローブの隙間から『始祖の祈祷書』を取りだして渡そうとする…… 「ふむ――むぉっ!?」 瞬間、エルフの身体がぐらついた。 よろけた拍子に、ルイズおねえちゃんが投げだされるような形で床に落ちていく。 「ルイズおねえちゃん!」 床に頭をぶつける一瞬前に、ボクの身体をすべりこませる。 ルイズおねえちゃんは、ケホケホと苦しそうな咳をしたけれど、無事そうだった。 「ちょ、ギーシュっ!?」 キュルケおねえちゃんの鋭い叫び声に振り替えると、 エルフの真下の床が、ボロボロに崩れていた。 「あ、足元がお留守だったでしたのでっ!?」 ギーシュが、バラをまっすぐと崩れた床に向けている。 『錬金』。 床をもろい土くれにでも変えてしまったのだろう。 でも、なんでこんな危険なことを? 「小癪な真似をする……ほう、今のは、お前か?」 今度は、崩れた床がドロドロの沼のように溶けだしている。 モンモランシーおねえちゃんが、ギーシュの後ろで杖を震える手で構えていた。 「み、みみみみみずみず水の使い道は治療だけではなくってよ!!」 溶けた床に、くるぶしまで埋まって、エルフの身動きは簡単に取れそうにない。 水魔法にこんな使い方があるって素直に感心してしまった。 「蛮人共の小賢しき知恵か」 エルフの周囲の空気がぐらりと歪んだ。 いや、そう錯覚するほどに、魔力が満ちているのが分かる。 壁や本や石畳が、その魔力に合わせて鳴き声を上げる。 まるで、パイプオルガンの全部のキーを押したみたいな唸り声だ…… 「だが、正解だな。 私は諸君を傷つけるつもりは無いが――」 何重奏にもなって共鳴する魔力の中、エルフの透き通る声だけがその空間を貫いて、聞こえてくる。 「――諸君らの『再起不能』も約束の内だ」 ギーシュ、すごい。そう、素直に思った。 エルフの足場を崩す『錬金』が無ければ、ルイズおねえちゃんも、ボク達の命ももう無かっただろう。 ……逃げ場、無し。 状況は、最初と変わらない。 だから。 「とんでもない約束もあったものねぇ……」 諦めたように髪をかきあげ、つぶやくキュルケおねえちゃんも、 「――ほんっと、冗談じゃないわ!タバサを助けてさっさと帰るつもりだったのに!」 『始祖の祈祷書』を大事に抱えてエルフをにらみつける、ルイズおねえちゃんも、 「どの道帰すつもりねぇってことかよ。さぁて、相棒、どう戦う?」 相変わらずあっけらかんとした声で、ボクを支えてくれるデルフも、 「……デルフ、防御は任せていい?」 ギーシュも、モンモランシーおねえちゃんも、 ……そしてもちろん、タバサおねえちゃんも。 シルフィードをこれ以上、待たせるわけに行かないものね! 「ケケ、『神の盾』の盾ってか?あいよっ、メイン盾になってやろうじゃねぇのっ!」 「……行くよっ!」 このエルフを倒して、タバサおねえちゃんを助ける。 ボクがやるべきことは、それだけだ! 「無駄なことを」 空間に漂う魔力を、石畳や本、あらゆる物に纏わせて、踊るように、それらが降り注ぐ。 纏った魔力が、あらゆる物を重く、鋭く、大砲の弾のように変化させている。 激流や嵐の中の中にいるみたいだ。 それを、避ける。防ぐ。いなす。弾く。斬る。 デルフがボクを躍らせる。 波に逆らわずに漂う羽のように、足が勝手に運ばれる。 その動きを心地よくさえ感じながら、ボクは、呪文を唱えることに集中できたんだ。 「大気に集いし溢るる涙よ、 集いて固まり満ちるがいい! ウォータ!」 唱えられた大粒の水球、魔力の大波にもまれて球の形を保てないでいる。 そのまま、嵐に揺れてエルフの足元で弾けて消えた。 「どこを狙っている?」 エルフは、涼しそうな顔でそれを見ていた。 少し、鼻で笑いながら。 「ビビちゃんが外したっ?」 「し、しっかりしなさいよビビ――きゃっ!?」 全部は、防げない。キュルケおねえちゃんの炎や、ギーシュの剣でも。 石畳が、本によって砕かれて、それがまた新たな弾となって襲いかかる。 「これで……後は……」 息が、切れそうになる。 後少し、後少しなんだ。 「あぶねっ!相棒よぉ、そろそろなんとかしてくんねぇとこちとら燃料不足だ!」 デルフ、もう少しだから、と言いたくなるけど、呪文の詠唱を急ぐ。 デルフどころか、ボクも燃料切れだな、って思いながら。 「天空を満たす光、一条に集いて……」 「わちゃっ!?……そうか、ビビ君!」 ギーシュの声が、うっすらとだけ聞こえる。何か、気づいたみたいだ。 「も、もももういやぁーっ!な、何何なんなのよっ!!」 モンモラシーおねえちゃんの問い返す声も、少しだけ。 「エルフさえ狙わなければ、跳ね返されないってことさ!」 ギーシュ、大正解。 物理攻撃を跳ね返す、とんでもない魔法。 でも、その基準は結局は『リフレク』と同じ、と思ったんだ。 ギーシュやモンモランシーおねえちゃんの魔法……エルフの足元への攻撃がそれの証拠だ。 『リフレク』は、魔法の対象となった場合に、それを感知して跳ね返すという鏡のような魔法だ。 だから、“魔法の対象”にさえし無ければ跳ね返らない。 つまり…… 「 神の裁きとなれ! サンダガ!」 足元にばらまいた、水。 これに攻撃しても、跳ね返されないんだ!! 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 ギーシュが崩した土と、モンモランシーおねえちゃんの水がうまく混ざっているから、さらに効いた。 骨も見えそうなぐらい雷の直撃を食らったら、流石のエルフだってひとたまりもない、よね? 「……や、やった?」 魔力の嵐が止んで、少しだけ息をつく。 ……なんか、息の仕方まで忘れちゃった感じがする。それぐらい疲れていた。 「ビビちゃん、やっるぅ~!」 「――あー、やったにゃやったが……こりゃ、ヤベぇかな」 デルフの、嫌な予感。 当たらなければいいなぁって、何度思ったんだろう…… 「――なかなかに、効いた……もう、容赦せんっっっっ!!!」 黒こげになりながら、エルフの目がギランっと光った。 ぶり返した魔力の嵐は、ビリビリとしびれるような感じがした。 ボクの雷を吸い取って、そのまま吐き出すかのような、そんな空気。 それが何か所かにまとまってより濃密になっていって、床に浸みこんでいって…… それは、信じたくない光景だった。 「ふ、増えたっ!?」 「やめてやめてやめて!?悪夢よ嘘よ冗談よ何かの間違いよっ!?」 モンモランシーおねえちゃんの泣き叫ぶ声が共鳴する。 「風の遍在ってわけでも無さそうねぇ……」 キュルケおねえちゃんがつぶやく横で、ルイズおねえちゃんがあんぐりと口を開けている。 「ゴーレムかっ!?」 ギーシュが、ゴーレムと呼んだそれらは…… エルフと全く同じ姿をしていた。 「万の精霊よ、我は古き盟約に基づき対価を支払う!我が写し身を成して全てを滅ぼせ!」 速い。 一瞬の内に、間合いを詰められて、ボク達は分断されてしまった。 それぞれのエルフの姿が、仲間の姿を覆い隠すように動いて、全く様子が分からない。 「相棒、策は?」 全く、無い。 「……デルフは?」 「――お互い、万策窮すってぇわけか」 だからって、諦めるわけには、いかない。 「とにかく……防ぐしかないっ!」 「それしかねぇわなぁ……あぁ、ちきしょ!これなら7万の兵隊相手にした方が楽だぜっ!」 デルフがそううそぶいて、ボクを勇気づけようとする。 槍のように研ぎ澄まされたエルフの近接魔法の中、あぁ、これが『死闘』って言うんだなって、そんなことを考えていた。 でも、『死闘』は、『死にに行く闘い』なんじゃない。 『死に抗う闘い』なんだ。 だって、そうだよね? ボクには、ボク達には…… 帰る場所が、あるんだから。 「はぁぁああああ!!!!」 そしてボクは、嵐の中へと飛び込んだ。 ピコン ATE ~英雄~ 「厄介なことになったなぁ……!」 一撃を避けようとすると二撃を喰らう。 二撃を正面で受け止めると、連撃が背後から襲う。 エルフというヤツは、辺境の地にいるためか遠距離からこちらを狙ってくるというイメージばかりあったが、 こうも中から近距離での攻撃が得意であったかと、ギーシュは舌を巻いていた。 突いたかと思えば離れ、離れたかと思えば急襲し、全く捕え所が無い。 「もうイヤッ!イヤよ!こんなのあり得ない!耐えられない!」 背後には、顔中が洪水のように崩れた恋人の姿。 「モンモン、しっかり僕の後ろに……」 わずかに訪れた攻撃の合間を縫って愛しき人へと声をかける。 「ギーシュ!あ、あああ貴方、平気なの!?ここここんなピンチが危険だってのに!?」 恋人は、混乱していた。 当たり前だ。ハルケギニアで最強と言われる存在が、いきなり増えたのだ。 おまけに、モンモランシーは戦うように作られていない。 キュルケや、ギーシュといった軍閥とでも言うべき家の子息でも無ければ、 ルイズのような名家の娘でも無い。 ほんの小役人にすぎない、小じんまりとした家系に生まれた、 平々凡々である娘なのだ。 「……平気なわけないさ」 だが、ギーシュはそんな彼女を、一切卑しむことも、憐れむこともせず、優しく声をかけ続けた。 「でででででしょ!?ななななな、ならににに逃げましょ――」 「だけど、それはできない」 まるでそれが、最期の言葉になるかもしれない、と言うようにだ。 「はぁぁぁっ!?あ、ああああんた、さっき頭ぶつけたの!? エルフよ!?それも十数体も!?ふざけてるの!?バカなの!?死ぬの!?」 彼女の中で、エルフの数が明らかに増えているのにため息をつきつつ、 ギーシュは、ニヤリと、せいぜい強がって笑って見せた。 「ライバルが、戦っている。それに……」 「何!何だって言うのよ!!!」 「この世で一番大切な人の前で、かっこ悪い所を見せるなんて男じゃない!」 「……え」 『男なら、誰かのために強くなれ』 ギーシュが師と仰ぐ平民の女騎士が、そう教えてくれた。 『歯を食いしばって、思いっきり守り抜け』 そう、迷うことは無い。それが、今、自分にできる、最大の『カッコいいこと』なのだ。 「 『錬金』っ!!装着っ 魔導アーマー! 」 男なのだ。 男なのだから、『カッコいい』ことは当然だろ? そう言わんばかりに、ギーシュは錬金でできた鎧をさらに強化し、 英雄たらんと、その青銅の剣を振りかざした。 「ば、バカよアホよマヌケよ……あぁ、私もバカっ!!」 モンモランシーは、悪態をつきながら、ギーシュの回復の準備をする。 バカな恋人を持つと、バカさ加減が似てきてしまうのかと思いながら。 『逃げたい』から、『守られたい』へ。 さらに、そこから『助けたい』へ。 彼女もまた、小さいながら英雄の資質を持っていた。 ピコン ATE ~光~ 「な、何か何か何か何か……」 せわしなく、ページの上を指が行き来する。 細く頼りない、重い物を持ち上げたことの少ない、貴族の娘の指だった。 「ちょっと、ルイズ!このバカ!何やってんのよ!しっかり私の後ろに隠れてなさいっ!」 その頼りない娘の姿を、もう1人の娘が咎めた。 先ほどから炎の弾のバーゲンセールである。 どれもこれも、散り散りに弾かれたり跳ね返されたりと、相対するエルフには届かない。 それでも、炎を繰り続けることしか、彼女にはできなかった。 さもなければ、憎まれ口ばかり叩きあってきた、背後の頼りなさげな少女と共に命を落としてしまうだろう。 ましてや、友情を誓い合った青い髪の少女の命すら…… だから、彼女は、炎を紡ぎ続けた。 それしかできぬ自分に、歯噛みしながら。 「わ、私だって、私だって何かできるのよっ!」 「それは分かってるわよっ!でも、まっ白けな本広げる以外にあるはずでしょっ!?くっ……」 一撃を、食らう。歪んだ空気をそのまま押しあてられたかのような、鋭い刺撃。 彼女が知るどんな風魔法よりも鋭いそれは、彼女の左肩に鮮血の花弁を撒き散らしながら軽々とえぐった。 「――お願い、答えてよっ!始祖っ!答えなさいよっ!」 「ルイズ?」 ルイズの、妙な様子にキュルケが気づく。 後ろを見る余裕など無いはずだが、少しだけ、視線をそちらに振り向けた。 「こう何度も色んな背中に守られてねっ、耐えられるほど私は強く無いのよっ!私だって、私だって!」 その目は、死んじゃいなかった。 最初に出会ったときと同じ、理想に燃えていた、幼い少女のまんまだった。 「ルイズ……もう!こいつ、しつこいっっ!エルフって女日照りなのかしらっ!!!」 その姿に、キュルケは少しだけ余裕が出、安心したのか、軽口を叩いてみる。 憎まれ口を叩き合った仲だ。ここで怯えた姿でもしていたら、やる気も何もそがれていたかもしれない。 こうでなくては。キュルケは、激戦の中に少しだけ笑ってみた。 「答えてよっ!」 一方のルイズはというと、焦っていた。 乱戦。 それこそが、最大の焦りの種であった。 『エクスプロージョン』は、対象が大きく多数あるような場所でこそ効果を発揮する。 その事実は、最初に呪文を唱えたときに既に理解していた。 だが、このような乱戦では。 的も小さく、敵味方の入り乱れる乱戦では。 爆発の魔法は危険極まりない牙となり、自分はおろか、大切な友人達の命すらも飲み込んでしまうだろう。 だからこそ、彼女は焦っていた。 ページをめくる手は止まらない。 彼女は求めていた。 「このままじゃ……このままじゃ……私、みんなを守りたいっ!!」 その、答えを。 それは、純粋な願いであった。 だからこそ、であったのかもしれない。 「え?」 「な、何?この光……」 『始祖の祈祷書』が放つ光は、どこまでも透き通るような、暖かい色をしていた。 その光に包まれるは、『虚無の担い手』である少女。 どこまでも純粋に、友を守ることを祈った少女は、その呪文を理解する。 瞬きをした目が見開かれた時には、為すべきことが分かっていた。 「……キュルケっ!」 少女らしく輝くような笑み。 その眩しさは、キュルケがルイズを知ってから、1度も見たことが無いものだった。 「な、何よっ」 「あと30数えるだけ耐えて!」 「は!?」 「お願い!あんたを信頼してるからっ!」 「あぁ……炎は守るのに不向きだっていうのに!」 そう文句を言うものの、キュルケは嬉しそうに正面を向いた。 エルフが何だと言うのだ? こっちはハルケギニア最強の、女同士の友情だ! 「ウル・スリーサズ・アンスール・ケン……」 朗々と謳いあげられる不可思議な呪文に、キュルケは一種の充足感を感じていた。 「……歌?」 それは、どう聞いても歌だった。 この魔力の嵐の中、誰かが、歌っている? 「相棒っ!? うぉっ!! よそ見、 どぅわっ!? すんじゃねぇよ!!」 デルフに動かされるように踊りながら、ボクは確かに、その歌を聞いた。 「これって……」 メロディーは、違う。 でも、この暖かさを、ボクは確かに知っていた。 「ビビ!デルフを構えて!」 「……うん!」 飛び交う石畳や魔力の応酬の中、聞こえるはずの無い声が聞こえる。 そして、安心するんだ。 ルイズおねえちゃんが、無事であることに! 「『解除(ディスペル)』!!」 歌そのものが、鮮やかな小さな光となって散らばったように感じたんだ。 それが部屋の中を満たすように渦巻いて、魔力も何も優しく優しく包み込むように、飛んでいく。 「何……!?」 「え、エルフが消えた……っ!?」 光のシャワーの向こうに、ギーシュも、モンモランシーおねえちゃんも、キュルケおねえちゃんも、 そしてもちろん、ルイズおねえちゃんの姿もあった。 そして、残るエルフは、あと1人。 「あー!やっと攻撃できるわね!」 「はぁぁぁぁぁ!!」 「 『ギーシュローゼン……』」 何故か、みんな理解できたみたいなんだ。 『あの光が、エルフの魔法を全部消し去った』って。 だから、みんな一斉に攻撃できたんだと思う。 「食らいなさい!!」 「せぇいっ!」 「『大凶斬り』!!」 「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」 二降りの剣撃と、炎の塊が、エルフを貫いた。 前ページ次ページゼロの黒魔道士
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2129.html
610 :yukikaze:2013/11/09(土) 23 22 21 では講和条約締結以降のアメリカ。いやぁ・・・経済って怖いですね。 1936年の大統領選挙は、共和党のアルフレッド・ランドンの圧勝で終わった。 民主党はどの州でも勝利することが出来なかったという最悪の結末で、殆ど押し付けられる形で大統領選挙に出馬させられたガーナーは、 「ナッツ」 という下品な言葉を残して政界から完全に引退をすることになる。 (なお、彼の回顧録が残っているが、基本的に自分以外の全てに対する呪いの言葉で書かれており「回顧録ではなく呪詛の祈祷書」呼ばわりされている) さて、大統領になったランドンの初の仕事は、戦争によって有名無実と化したニューディール政策の完全な廃止を決定した。 実の所、ランドンはニューディール政策そのものは共感を覚えていたのだが、財政均衡主義者の立場として、財政赤字の増加と政府の効率の悪さの観点から廃止せざるを得なかった。 国家工業復旧法が違憲判決を受けた事もあいまって、ランドンのこの行動は共和党支持者から諸手を挙げて歓迎されることになるのだが、問題はランドンが掲げ、共和党支持者が賛同した「財政均衡主義」と「企業の自助努力」が、好景気時ならばともかく、不景気時においては、自殺としか言いようがない政策であったという事であった。 よくよく考えてみればいい。 企業の自浄努力に頼るという場合、業績が低迷した企業が採る手段は、徹底的なコスト削減である。 採算の取れない工場は閉鎖され、労働者は路頭に迷う。そうなると購買層は減少し、ますます企業の業績は悪化するという悪循環に陥るのである。 そして財政均衡主義は、収入が減ればその分支出も減るので、政府による公共事業政策が極めて限定的になり、企業がもらえる仕事がますます減るということにも繋がるのである。 もうお分かりであろう。 世界恐慌以前の過剰投資で供給力が完全飽和状態だったアメリカは、戦争による海外市場の大幅喪失と、財政均衡主義並びに政府救済策がなされないというコンボ攻撃によって、完全に止めをさされることになったのである。 町には失業者が溢れ、職を求める抗議デモが起き、銀行は自らの利益を確保する為に、貸し渋りや貸し剥がしを強行し、それなりに体力のあった企業さえ命脈を絶たれることになった。 そうした死屍累々の大地にあって、一人ほくそ笑んでいたのは日本の企業マンだけであった。後に「シャイロックですら奴らに比べれば善人だ」と、アメリカの大企業の重役が吐き捨てたように、彼らはアメリカ経済界の残骸から心行くまで墓荒らしをすることになる。 優秀な人材の引き抜きや、将来有望な特許を持つ企業の買収などまだかわいい方で、酷いケースでは提携を断ったライバル企業を株価操作で潰すわ、新聞社やラジオ会社をペーパー会社に買収させて共和党の政策を賛美するキャンペーンを張り、更に経済を悪化させるという悪魔な所業までしている。まさに好機とあらば徹底的に攻める日本の恐ろしさを示す行動であったと言えよう。 612 :yukikaze:2013/11/09(土) 23 25 08 今日はこれまで。 ちなみに今回の日本側の行動は、辻と商工省の岸がタッグを組み、 日本のビジネスマンが嬉々としてそのシナリオに乗ったという流れです。
https://w.atwiki.jp/rohan_coralreef/pages/33.html
ボスアクセ ブンブン ブンブンのオニックスネジ 力+7、体力+7、敏捷+7、舜発+7 魔人ヘズワード 修道院長の祈祷書 知能+10、精神+10、魔法攻撃力+30 モレック 怪力の環 力+10、体力+10、近距離攻撃力+30 堕落した魂の守護者 守護者の閃光 瞬発力+10、敏捷+10、回避+20 ブラッディーロード ブラッディロードの目 知能+10、命中率+30、MP+250 ヴィクトル男爵の亡霊 堕落した騎士のペンダント 敏捷+10、体力+10、MP+400 青髭のニッドホッグ ニッドホッグの怒り 力+10、敏捷+10、HP+300 紅龍リンドブルム リンドブルムの狂気 瞬発力+10、体力+10、HP+300 暗黒の支配者 虚無のカメオ 知能+15、精神+15、HP+200 アマデウス・デ・ロハ 荘厳なる死の翼 力+15、体力+15、敏捷+15 ヤヌス・ウネ・ロハ 黒い天使のスタッフ 知能+15、精神+15、体力+15 アクエリオス 神獣の魂 知能+15、力+15、敏捷+15、HP+200 4Fボス共通 ダークソウルピースの指輪 力+20、敏捷+20、体力+20 ダークソウルピースのネックレス 知能+20、精神+20、体力+20 ダークソウルピースの腕輪 敏捷+20、瞬発+20、体力+20 シャインソウルピースの指輪 力+15、敏捷+15、物理防御;50 シャインソウルピースのネックレス 知能+15、精神+15、魔法攻撃力+100 シャインソウルピースの腕輪 瞬発+15、体力+15、近距離攻撃力+100 シャインソウルピースのブローチ 敏捷+15、体力+15、遠距離攻撃力+100 グロト グロトの紋章 力+20、敏捷+15、体力+20、物理防御+30 レビゲル レビゲルの紋章 敏捷+25、瞬発+25、命中+30、回避+30(スンダン用) バルシオン バルシオンの紋章 体力+25、知能+20、物理防御+30、魔法防御+30 ヘルカルゴ ヘルカルゴの紋章 知能+30、精神+30、MP+100 デスガイゼル デスガイゼルの紋章 敏捷+30、HP+200、近距離攻撃力+100、物理防御+40 ストゥラトゥス ストゥラトゥスの紋章 力+20、体力+20、近距離攻撃力+100、命中率+30 ルインテ ルインテの紋章 体力+15、近距離攻撃+300 ベルゼブ ベルゼブの紋章 体力+10、敏捷+5、遠距離+300 イグシルト イグシルトの心臓 体力+20、HP+1000、MP+500 シュリエル シュリエルの羽 知能+30、精神+30、魔法攻撃+250 シュリエルのアミュレット 敏捷+20、体力+20、遠距離攻撃力+150 シュリエルのイヤリング 知能+15、精神+15、HP+300、MP+200 シリア・ロン シリア・ロンの羽 体力+30、敏捷性+30、遠距離攻撃力+250 シリア・ロンのアミュレット 体力+20、瞬発+20、近距離攻撃力+150 シリア・ロンのイヤリング 力+15、瞬発力+15、HP+300、MP+200 シリア・ロンの破片 知能+15(風属性タリスマン) シレフィス シレフィスの羽 力+30、体力+30、近距離攻撃力+250 シレフィスのアミュレット 知能+20、精神+20、魔法攻撃力+150 シレフィスの目 力+15 敏捷+15 HP+300 MP+200 シレフィスの破片 力+15(風属性タリスマン) シルバ シルバの羽 全ての能力値+20、HP+500、MP+100、攻撃力+300 シルバのアミュレット 体力+50、HP+500、MP+300、防御力+30 シルバの目 HP+500、MP+300、攻撃力+20 女神シルバの破片 全ての能力値+10(風属性タリスマン) エルチェベート ベルゼミュート ベルゼミュートの両翼 攻撃力+250、全ステータス+40 カシャー
https://w.atwiki.jp/coral_reef/pages/20.html
ボスアクセ ブンブン ブンブンのオニックスネジ 力+7、体力+7、敏捷+7、舜発+7 魔人ヘズワード 修道院長の祈祷書 知能+10、精神+10、魔法攻撃力+30 モレック 怪力の環 力+10、体力+10、近距離攻撃力+30 堕落した魂の守護者 守護者の閃光 瞬発力+10、敏捷+10、回避+20 ブラッディーロード ブラッディロードの目 知能+10、命中率+30、MP+250 ヴィクトル男爵の亡霊 堕落した騎士のペンダント 敏捷+10、体力+10、MP+400 青髭のニッドホッグ ニッドホッグの怒り 力+10、敏捷+10、HP+300 紅龍リンドブルム リンドブルムの狂気 瞬発力+10、体力+10、HP+300 暗黒の支配者 虚無のカメオ 知能+15、精神+15、HP+200 アマデウス・デ・ロハ 荘厳なる死の翼 力+15、体力+15、敏捷+15 ヤヌス・ウネ・ロハ 黒い天使のスタッフ 知能+15、精神+15、体力+15 アクエリオス 神獣の魂 知能+15、力+15、敏捷+15、HP+200 4Fボス共通 ダークソウルピースの指輪 力+20、敏捷+20、体力+20 ダークソウルピースのネックレス 知能+20、精神+20、体力+20 ダークソウルピースの腕輪 敏捷+20、瞬発+20、体力+20 シャインソウルピースの指輪 力+15、敏捷+15、物理防御;50 シャインソウルピースのネックレス 知能+15、精神+15、魔法攻撃力+100 シャインソウルピースの腕輪 瞬発+15、体力+15、近距離攻撃力+100 シャインソウルピースのブローチ 敏捷+15、体力+15、遠距離攻撃力+100 グロト グロトの紋章 力+20、敏捷+15、体力+20、物理防御+30 レビゲル レビゲルの紋章 敏捷+25、瞬発+25、命中+30、回避+30(スンダン用) バルシオン バルシオンの紋章 体力+25、知能+20、物理防御+30、魔法防御+30 ヘルカルゴ ヘルカルゴの紋章 知能+30、精神+30、MP+100 デスガイゼル デスガイゼルの紋章 敏捷+30、HP+200、近距離攻撃力+100、物理防御+40 ストゥラトゥス ストゥラトゥスの紋章 力+20、体力+20、近距離攻撃力+100、命中率+30 ルインテ ルインテの紋章 体力+15、近距離攻撃+300 ベルゼブ ベルゼブの紋章 体力+10、敏捷+5、遠距離+300 イグシルト イグシルトの心臓 体力+20、HP+1000、MP+500 シュリエル シュリエルの羽 知能+30、精神+30、魔法攻撃+250 シュリエルのアミュレット 敏捷+20、体力+20、遠距離攻撃力+150 シュリエルのイヤリング 知能+15、精神+15、HP+300、MP+200 シリア・ロン シリア・ロンの羽 体力+30、敏捷性+30、遠距離攻撃力+250 シリア・ロンのアミュレット 体力+20、瞬発+20、近距離攻撃力+150 シリア・ロンのイヤリング 力+15、瞬発力+15、HP+300、MP+200 シリア・ロンの破片 知能+15(風属性タリスマン) シレフィス シレフィスの羽 力+30、体力+30、近距離攻撃力+250 シレフィスのアミュレット 知能+20、精神+20、魔法攻撃力+150 シレフィスの目 力+15 敏捷+15 HP+300 MP+200 シレフィスの破片 力+15(風属性タリスマン) シルバ シルバの羽 全ての能力値+20、HP+500、MP+100、攻撃力+300 シルバのアミュレット 体力+50、HP+500、MP+300、防御力+30 シルバの目 HP+500、MP+300、攻撃力+20 女神シルバの破片 全ての能力値+10(風属性タリスマン) エルチェベート ベルゼミュート ベルゼミュートの両翼 攻撃力+250、全ステータス+40 カシャー
https://w.atwiki.jp/shikayaku/pages/86.html
侍祭 君は特定の神や神々のパンテオンに仕える寺院に人生を捧げてきた。神聖な領域と人間世界とを仲介する者として、神聖な儀式を執り行い、生贄を捧げて、信仰する者たちを神聖な存在の前へと教え導く。君がクレリックである必要はない。神聖な儀式を行うことと、神の力を授かることは別なのだ。 神、神々のパンテオン、あるいはその他の神格に準ずるような存在、“歴史ファンタジーのパンテオン”のリストにあるもの、あるいはGMが指定したものの中から選び、GMと協力して君の宗教的奉仕の内容を決めること。君は幼いことから神聖な儀式で司祭を補佐するために育てられた神殿の下級神官だったのだろうか、それとも突然別の方法で神に仕えるよう召命された大祭司だったのだろうか。もしかすると、君は既存の寺院組織から外れた小さなカルトのリーダーだったかもしれないし、ひょっとするとそれは、今は離れるに至ったが、悪魔のような主人に仕えるオカルト集団だったかもしれない。 技能習熟:〈看破〉、〈宗教〉 言語:任意のものを2つ選択すること 装備:聖印(君が聖職につく時贈られたもの)、祈祷書またはマニ車、お香5本、法衣、普通の服1着、15gp入りのベルトポーチ 特徴:信仰あつき者の保護 君は侍祭として、同じ信仰を有する者たちからの尊敬を集め、その神の宗教的儀式を執り行うことができる。君と仲間は、寺院や祠など、君の進行する宗教の存在する場所で、無料で治療や世話を受けることができる。ただし、呪文に必要な物質要素はすべて君が提供せねばならない。 加えて、君は君が進行する神やパンテオンに捧げられた特定の寺院とゆかりがあり、そこに住居を持っているかもしれない。君がこれまでに仕えてきた寺院と良い関係を保っているなら、その寺院を“特に結びつきの在る寺院”としてもいいし、君が新しく居場所を見つけた寺院でもいい。寺院の近くにいる間、君はその司祭に援助を求めることができる。ただし、求める援助が危険なことでなく、その寺院と良好な関係を保っている必要がある。 おすすめの人物像 侍祭は寺院や他の宗教的コミュニティでの経験によって形作られる。彼らの学ぶ歴史や教義、寺院や社、または階級と彼らとの関係は、彼らの癖や“尊ぶもの”に影響を与える。彼らの“弱味”は隠された偽善や異端的な思想かもしれないし、“尊ぶもの”や“関わり深いもの”が極端すぎた結果かもしれない。 d8 人格的特徴 1 私は信仰上のある英雄を崇拝していて、その人物の行いや規範を常に参考にしている。 2 私は最も対立する敵同士の間でさえも共通する点を見つけることができ、彼らに共感し、常に平和に向けて努力している。 3 私はすべての出来事や行動に前触れを見出す。神々私たちに語り掛けようとしている、私たちはそれに耳を傾けるだけでいい。 4 何事も私の楽観的態度を崩すことはできない。 5 私はほとんどすべての状況で、聖句やことわざを引用(あるいは誤引用)する。 6 私は他の信仰に対して寛容(または不寛容)であり、他の神々への信仰を尊重(または非難)する。 7 私はおいしいものを飲食し、私が属する寺院の高位の間でエリート生活を享受してきた、粗野な生活は嫌だ。 8 私は寺院で長いこと暮らしてきたから、外世界の人々と付き合うのには慣れていない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4729.html
前ページ次ページ大使い魔17 レコン・キスタ 外道の軍団 この国狙う黒い影 世界の平和を守るため ゴー ゴー レッツゴー!! 輝くマシン ライダージャンプ! ライダーキック! 仮面ライダー! 仮面ライダー! ライダー! ライダー!! 「クノイチメイド嵐、けんざーん!!」 煌めく稲妻 燃えるハヤブサオー 行くぞ嵐 萌えろ嵐 嵐よ叫べー! 変身、変身、影写し 正義のメイド 空駆け見参! 嵐! 嵐! シエスタは嵐! くノ一メイド嵐 けんざーん!! 第十一話「邪国への花嫁王女」 ある廃村の教会。 ジローとサブローとアンリエッタとレイが、内部を漁っていた。 アンリエッタは、ジローとお揃いのジーンズ生地の服を着ていた。 そして、レイが目当ての物を見つけた。 「……コレ、真鍮だよね?」 「真鍮だな」 「真鍮だ」 「真鍮ですね」 レイは、真鍮の装飾品を思いっきり壁に投げつけた。 装飾品は、衝撃で粉砕された。 「……フリージンガメルじゃ無いのかよ」 ことの始まりは、昨日。 ジローが王宮に戻った次の日であった。 ジローの部屋では、ジロー以外にサブローとレイもいた。 「俺の、もう一人の弟……」 「初めまして、ジロー兄い」 レイと初めて会ったジローは非常に感慨深げであった。 「まあ、仕方ないな。レイが造られたのは、あんたがこの世界に来てからだ」 「しかし、光明寺博士はどうしてお前を造り変えただけでなく、レイも造ったんだろう?」 「……聞かない方が良い」 「何か、あったんだな?」 「俺の口からはとても言う気になれん。光明寺に聞いてくれ」 「……無茶なことを言う」 そこに、ドアをノックする音が響いた。 「誰だ?」 「アニエスにございます」 「どうしたんだ?」 「妃殿下がお呼びです。至急、妃殿下の御部屋に」 マリアンヌの部屋。呼ばれたのはあくまでもジローだけであり、サブローとレイは部屋の外で懸命に聞き耳をたてていた。 「アンリエッタが、結婚!?」 「ええ。わが国とゲルマニアは、軍事同盟を結ぶ事となりましたが、その際に皇帝が締結の条件として、アンリエッタとの結婚を要求してきたのです」 「あの皇帝……!」 「我がトリステインは小国。大国であるゲルマニアの要求を跳ね除けることは出来ません」 「だけど、アンリエッタの意思は? アンリエッタはずっとルイズのことが……」 アンリエッタは不意に声を荒げて、ジローの発言を制した。 「兄上!」 「アンリエッタ、お前だって……」 「この国と民衆のためなら、自分一人の想いなど押し殺せます。第一、『ミツコ』さんの思いに応えなかった兄上が言えることではありません!」 「……」 ガックリとうな垂れるジローに、マリアンヌは優しく諭した。 「堪えるのです、ジロー。我が国だけでは、レコン・キスタの攻勢を押し退けることは出来ません」 「俺とサブローにレイ、それにワンセブンもいる。レコン・キスタぐらい……」 「敵が常に正攻法で来るとは限りません。策謀も使ってくるでしょう。いかにあなたが強くても、あなたの実弟たちが強くても、ワンセブンが強くても、向こうが頭を使って補うのは目に見えています」 「……義母さん、俺にはどうすることも出来ないのですか?」 「……」 「兄上、せめて私が嫁ぐまでの間、側にいてください……」 一方、廊下では。 「サブロー兄い、本当にどうすることも出来ないの?」 「……難しいな。出来るとしたら……、レイ、あの地図、すぐに持って来れるか?」 「この間裏通りで起きた火事で、焼け落ちた店の跡から俺が盗ってきた宝の地図のこと?」 「そうだ」 「……店の焼け具合が見事すぎて、二枚しか盗れなかったけど」 「かまわん。最後の思い出作りぐらい、それなりにスリリングでないとな」 数分後、再びマリアンヌの部屋。 「宝探しですか?」 「そうだ。兄妹の最後の思い出ぐらい、スリルが無いと味気ないからな」 「サブローさん、肝心の地図は?」 「レイが部屋まで取りに行ったんだが……」 急にドアが開いた。 「レイ、ノックぐらいしろ!」 「ゴメン、テファと王子様をはぐらかすのに時間かかっちゃて……。とりあえず、もって来たよ」 レイは、息を切らしながら二枚の地図をアンリエッタに手渡した。 「コレは……?」 「宝の地図。二枚しかないけど」 「どこで手に入れたんですか?」 「実はね……」 レイの説明に、サブロー以外の全員が呆れた。 かくして、ジローとアンリエッタの最後の思い出作りとして、宝探しが決行されることとなった。 期限は三日。 四日後には、アンリエッタはゲルマニアに行くこととなっている。 そして、冒頭に戻る。 「それにしても、この様な廃村があるとは……」 「ハルケギニアじゃよくある事だって、義父さんが言っていたな」 「貴族でありながら……」 領主の怠慢のせいで廃村になったこの村の実情を知り怒りに震えるアンリエッタとは対照的に、ジローは淡々と静かに怒りを燃やしていた。 「アンリエッタ、この村がある領地って、誰が治めているんだ?」 「確かこの地方は高等法院の……」 二人のことをとりあえず放って置いて、レイは二枚目の地図を広げた。 「次はタルブか。お宝は……霊馬(れいば)の柩(ひつぎ)か」 「柩?」 「実際に行ってみないと分からないね」 数時間後、タルブ村。 「ココか……」 「廃村ではないな」 フリージンガメルの時とは違って、ちゃんと住人がいる村であったため、レイとサブローは驚いていた。 「のどかでイイ村じゃないか」 村人たちの生き生きとした表情を遠目で見ていたジローは、きっぱり言い切った。 「兄上、どうします?」 「村人たちに聞いてみるか」 というわけで、ジローたちは『霊馬の柩』について、聞き込むことにした。 「あの、尋ねたいことがあるんですが」 「はい?」 ジローに声をかけられた女性は、振り向いて、固まった。 「王子様!?」 「シエスタじゃないか!」 数分後、シエスタの実家。 ジローはこの村に来た経緯を、シエスタはこの村にいる経緯を説明しあった。 「お休みをもらったのか」 「はい。それにしても、まさかあの柩を探しに来たとは……」 「知っているのか?」 「知っているも何も、あの柩は元々曽祖父の持ち物です」 「……詳しく、聞かせてくれないか?」 「……私の曽祖父は、ある日突然馬に乗って、この村に流れ着いたそうです。その馬は、白骨化していた上に全身に蒼い炎みたいなものをまとっていました」 シエスタの説明に、ジローだけでなくアンリエッタも、サブローとレイも思わず固まった。 「当時の村のみんなは当然気味悪がりましたが、曽祖父は地面に頭をこすり付けてまでみんなをなだめました。馬の方も不気味なだけでとても大人しかったから、曽祖父はそのままこの村に住み着いてしまいました」 「よく受け入れてもらえたな」 「私もそう思います。みんなは曽祖父が何者なのかを聞いたのですが、本人は「俺はこの『ハヤブサオー』と共に異世界から来た」の一点張りでした。ちなみにハヤブサオーは、曽祖父の馬の名前です」 「ハヤブサオー!?」 ジローは面食らった。 「なるほど、君のひいおじいさんは『化身忍者』だったのか」 「どうして『ケシンニンジャ』のことを!?」 「知り合いに、『ハンペン』という奴がいるんだが、彼から聞いたことがあるんだ。大昔、獣の能力を宿して、異形の姿と力を手に入れた忍者がいて、そいつらのことを『化身忍者』と呼んでいたそうだ」 「その通りです。曽祖父は、村のみんなに自分の素性や、この村に来た経緯を洗いざらい全部しゃべったそうです。ハヤブサオーと、実際に変身した曽祖父の姿を見た以上、みんなは信じるしかありませんでした」 シエスタは、少し複雑そうに続けた。 「結局、生真面目で温厚な曽祖父はすぐに村になじみ、ハヤブサオーも村の家畜たちと打ち解けました。何故かその内、曽祖父と同じ「二ホン人」たちが何人もこの村に流れ着くようになりました」 「一体何故?」 「本人たちも分からずじまいだったそうです。曽祖父が結婚する頃にはピタリと止んだそうですが……。小さい頃、曽祖父に聞いたんです。「どうしてケシンニンジャになれるの?」って」 「ハヤブサオーに選ばれたから、そう言ったんだな?」 「はい。曽祖父は、「ハヤブサオーは、俺の実家の家系の当主を選び、化身忍者にする役目を持っていた。俺が化身忍者になれるのも、ハヤブサオーに当主と認められたからだ」って言っていました」 「……ハヤブサオーは、俺やサブローにレイが元いた世界の元々ある一族が所有していた霊獣だった。何十年も昔の大地震で当時の当主ごと行方不明になっていたが、まさかこの世界に流れ着いていたとは」 「曽祖父も、「地震が収まって、その次に火にまかれたと思ったら、気がついたらハヤブサオーにまたがって砂漠を彷徨っていた」なんて言っていました」 霊馬の柩が納められている寺院の内部。 その寺院は、殆ど神社そのものであった。 ただ、光が入らないような造りになっていた。 「数年前に曽祖父や、当時を知る人たちがたてつづけに死んじゃったショックで、滅多なことではこの柩から出なくなって……」 シエスタの説明を聞きながら、ジローは霊馬の柩を開けた。 その中には、馬の遺骨が納まっていた。 そして、突如として骨から蒼い炎のようなものが吹き上がり、柩の中の骨が動き出した。 「コレが、ハヤブサオー……!」 “ソウ、俺ガはやぶさおーダ。オ前、コノ世界ノ者ドコロカ、人間デスラ無イナ?” 「良く分かったな」 この会話を聞いたシエスタは、度肝を抜かれた。 「王子様、ハヤブサオーの言っていることが分かるんですか!?」 「……一応、な」 その日の晩、村は大騒ぎだった。 この国の王女であるアンリエッタ一行が来たのだ、村長まで挨拶に来た。 心なしか、村人たちはアンリエッタの側にいるジローの姿を見て、非常に喜んでいるように見えた。 「みんな、嬉しそうだな」 「兄上が、私たちのところに帰ってきてくれたからですわ」 そんな二人の姿を、一人の青年がシャッターに収めた。 カメラのシャッターを切る音に反応した二人が振り向くと、青年は人懐っこそうな笑顔を見せた。 「失礼、二人の姿が余りにも絵になっていたもので」 「あなたは、一文字さん!」 「久しぶりだな、ジロー」 その青年、一文字隼人、地球びとは「仮面ライダー2号」とも呼ぶ。 一方、魔法学院の広場にいる、要塞ワンセブンの内部サロン。 ルイズが、見たことのない本を持っていたので、ロボターが尋ねた。 「ルイズちゃん、その本は?」 「これ? 「始祖の祈祷書」よ」 「これが、始祖の祈祷書かぁ……。何でルイズちゃんが持ってるの?」 「姫様から直々に預かったのよ。この国の王族の結婚式では、貴族の中から選ばれた巫女が詔(みことのり)を読み上げる慣わしなのよ」 「ふ~ん。でもそれ、何にも書いてないよ」 「そうなのよ」 「不思議な本だよね~。ん?」 ロボターは、ルイズが指につけている指輪に注目した。 「どうしたの?」 「その指輪、どうしたの?」 「これ? 始祖の祈祷書とセットで王家に伝わる秘宝で、「水のルビー」って言うのよ。姫様が「いっその事これも預かってください」って言ったから、応じることにしたの」 「水のルビー……」 ロボターは水のルビーをまじまじと見ていた。 そしてルイズが祈祷書のページに、ルビーをはめている方の手を置いた瞬間、祈祷書が光り、文字が現れた。 ルイズは夢中でそれを読み、自分の系統に気付き始めた。 零すなわちこれ『虚無』。 我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。 初歩の初歩の初歩。 『エクスプロージョン』。 「私が、虚無!?」 「ルイズちゃん!?」 ルイズの素っ頓狂な声に、ロボターが驚いた。 「虚無。それがルイズちゃんの系統なのか」 ワンセブンがそう言った直後、シャルルが驚いたようにルイズを凝視した。 「まさか、この光景をまた見ることになるとはね」 「シャルル殿下、いたんですか!?」 「……君が詔を考えている間に来たんだよ」 「そういえば、さっき「この光景をまた見ることに」と……」 「地球に漂流する前の話だよ。僕は、兄さんが虚無の系統に目覚める一部始終に立ち会ったことがあるんだ」 「……!!」 「これなら、この間のジロー君とサブロー君の兄弟ゲンカを、他の生徒たちの使い魔たちまでもが止めようとしたのにも納得がいくね」 「どういうことですか?」 「君の系統が虚無であるということは、ワンセブン君が虚無の使い魔であることも意味している」 シャルルは普段は絶対に見せないような、厳しい表情を見せた。 「ワンセブンが……!」 「私はあらゆる獣を操る使い魔、「ヴィンダールヴ」だ」 「ワンセブン、あなたはそのことを知っていたの!?」 「……コルベール先生に教えられたが、口止めされていた」 「あのコッパゲめ!」 ワンセブンが「神の右手」であることを知ったシャルルは、どこか納得していた。 「なるほど、『笛』だったのか……。よくよく考えてみれば、その巨体じゃ笛以外に適合できないよな……」 「どういうことだ?」 「考えても見たまえ、君は『盾』の力無しでも、有り得ないほど強く、その巨体ゆえに人のようにそう簡単に武器を持つことは出来ない。『本』になっても、大きすぎてマジックアイテムが使えない。『四番目』に至っては、君の胸のマークとルーンの位置が被ってしまう」 「……『笛』以外にはなれなかった、ということか」 「そして、『笛』としての力も、その巨体に合わせて変形している可能性もあるな」 「想定したくはないな」 「現実なんだから受け入れないと」 時は過ぎ、アンリエッタが出発する当日。 アルビオン政府からの国賓を歓迎するために派遣された艦隊が壊滅したとの報告に、王宮は揺れた。 マザリーニが、特使の派遣を提案した直後、アルビオンの艦隊がラ・ロシェール近郊の草原地帯―タルブ村―に降下、占領行動に移ったとの報告が入った。 会議室の貴族たちが騒然とする中、アンリエッタは意を決して、会議室を出た。 マザリーニたちがそれに気付いたのは、約一分後である。 中庭にある謎の保管庫。 そこの扉を開け、アンリエッタは中にあるものを見た。 義兄のもう一つの姿を意識した意匠の鎧と、サイドマシーンを模したバイクであった。 「この鎧をまとい、この鉄の馬に乗る日が来るとは……」 装飾品も、ウエディングドレスも、パンツも脱ぎ、一糸まとわぬ姿になり、鎧を身に着けた。 「父上、私に力を……!!」 アカデミーが、キカイダーを参考にして開発した強化甲冑「エンゼルサタン」を身に着け、口元を黄色いマフラーで隠したアンリエッタは、「サイドマシーンMk-II」に乗った。 サイドマシーンMk-IIは、中庭を、王宮の門を、城門を抜け、タルブを目指して突っ走った。 タルブの村は、騒然となっていた。 アルビオンの戦艦から、次々と兵士たちが降りて、村目掛けて突き進んできた。 村人たちが付近の森や、霊馬の柩がある寺院へと避難する中、シエスタは呆然としていた。 「逃げないのか?」 そんなシエスタに、隼人が声をかけた。 「逃げてはいけない気がしたんです」 「そうか」 「ハヤトさんは逃げないんですか?」 「逃げる気はない。むしろ、全力で迎え撃つつもりだ」 「そうですか……」 シエスタの隣には、いつの間にかハヤブサオーがいた。 普段は、当の昔に腐ってなくなった皮と筋肉の代わりに、骨だけになったその体を覆っている鬼火と同じ色であるはずの眼の色が、怒りのあまり深紅になっていた。 “しえすた、俺タチモ行クゾ” 「そうね、行こう、ハヤブサオー」 竜が飛び、村に火の手が上がる中、アルビオンの兵士たちは我が物顔で草原を進んでいた。 兵士たちを引き連れていたのは、「ジョージ」から派遣された殺戮構成員、カッパマンであった。 「奪え! 燃やせ! 男と老いぼれどもは見せしめのために殺し、女子供は慰み者にしろ!!」 カッパマンの雄たけびに、下品極まる兵士たちは歓喜し、色めきたった。 そこに、サイドマシーンMk-IIが突撃し、カッパマンの眼前で停車した。 「貴様、誰だ?」 「人造人間、キカイダー……!!」 サイドマシーンMk-IIから降りて、義兄のもう一つの名を名乗り、アンリエッタは兄同様ワイクルーの舞を披露してから戦闘態勢に入った。 「行け!」 カッパマンの号令と共に兵士がアンリエッタに切りかかったが、その内の一人はアンリエッタのパンチで吹き飛ばされた。 「ダブルチョーップ!」 兵士の一人が、アンリエッタのダブルチョップで両肩を深く切り裂かれ、事切れた。 「デンジ・エーンド!!」 更にもう一人、今度はデンジ・エンドの直撃によって爆発した。 強化甲冑、エンゼルサタンを装着しているアンリエッタの前に、兵士たちは劣勢を強いられていたが、カッパマンは冷静だった。 「ウソはいけないなぁ、アンリエッタ王女殿下!」 カッパマンは両手の、とがった指でアンリエッタのマフラーを切り裂いた。 マフラーが切り裂かれ、完全に面が割れたアンリエッタを見て、兵士たちは騒然とした。 「キカイダーだと? 本物のキカイダーは、貴方が身にまとっている鎧より、更に醜い姿をしている!」 カッパマンは針のようにとがった口で、エンゼルサタンの肩アーマー部分を貫通した。 「ぐ……!」 肩に鋭いものが突き刺さった激痛にうめきながら、アンリエッタは言い返した。 「兄上は、兄上のあの姿は、人の心そのものを表したもの。断じて醜くなどありません……! 醜いのは、貴方の方です!」 「そこまで言うとはな……。王宮の貴族連中への見せしめだ、まずはこの王女を慰み者にしろ!!」 エンゼルサタンの胸アーマー部分を切り裂き、カッパマンは傭兵たちに命令した。 (兄上……) 兵士たちが我先にとアンリエッタに群がろうとした中、突如として銃声が響き、一人の兵士が蜂の巣にされた。 更に、三名ほどが蜂の巣にされた直後、ギターの音色が響いた。 「どこだ!?」 「どこにいる!?」 「あ! あそこだ!!」 一人の兵士が指差した方向に、カッパマンと残りの兵士たちが視線を合わせると、そこにはギターを弾くジローの姿があった。 「ほ、本物だと!?」 「犯罪ロボット派遣ギルド、ジョージの殺戮構成員カッパマン、妹へのこれ以上の狼藉は俺が許さん!!」 兵士たちが浮き足立った直後、ジローはチェンジした! 「チェンジ! スイッチ・オン! 1、2、3!!」 アンリエッタが人の心そのものを表したものと断じた、正義と悪の青と赤の左右非対称ボディーが宙を舞う。 「とぉー!」 きゅるるるる~、フォッ、カシンッ! 「俺はジロー・トリステイン。またの名を、人造人間キカイダー!!」 アンリエッタの眼前にその背を見せ、キカイダーは啖呵を切った。 「兄上……」 「アンリエッタ……そこで大人しくしているんだ。兄である俺が、お前が守りたかったものをお前の代わりに守り抜く!」 そして、サイクロンに乗った隼人と、ハヤブサオーにまたがったシエスタがその場に駆けつけた。 「一文字さん、シエスタ!」 「俺たちも加勢するぜ、お二人さん」 “コノ馬鹿ドモハ、俺タチガ蹴散ラス” 「私も、戦います!」 そして、隼人とシエスタは、変身した。 「……変身っ!! とぉー!!」 「吹けよ、嵐! 嵐! 嵐ぃっ! 」 そこにいたのは、二人の異形の戦士だった。 片方はドクロにも見える仮面をかぶり、その手と足は深紅だった。 もう片方は、銀色の、二の腕まで届く長い手袋を着け、オーバーニーソックスを履き、忍者の服を模したようなメイド服を着て、鳥を表したかのようなドミノマスクをつけていた。 「き、貴様ら、何物だ!?」 カッパマンの動揺した声にこたえるように、片方は静かに、片方は叫ぶように答えた。 「正義。仮面ライダー2号」 「くノ一メイド嵐、けんざーん!!」 今度は、トランペットの音色が響き、終わったと思ったら次は口笛の音色が辺りに響いた。 「チェンジ、キカイダー……01!」 「変身、ストロンガー!」 異形の戦士が、更に二人増えた。 「「天が呼べば悪のいる所に必ず現れ、地が呼べば悪の行われる所に必ず行き、人が呼べば悪の軍団を必ず討つ。 悪を倒せと俺たちを呼べば正義の力で何度でも蘇る。 聞け、悪の軍団レコン・キスタ! 俺たちは正義の戦士」」 「キカイダー01!!」 「仮面ライダーストロンガー!!」 チェインジ01! 聞こえてくる~ 正義の叫び~ ダブルマシーンが 空飛ぶ轟音 見える~(ゴーゴー) 見える~(ゴーゴー) 光り集まる太陽電池の 01ボディ~(イエ~!) オーオー01! 僕らの キカイダー01!! 「仮面ライダーストロンガー!!」 突っ走れ~ 異世界で~ レコン・キスタを潰すため 守るぞ 平和を トリステインの カーッと燃えるぜ 正義の心~ 見~よ~ 必殺 電ショック 男の命を懸けてゆく その名は その名は 仮面ライダー スト~ロ~ンガァ~!! 前ページ次ページ大使い魔17
https://w.atwiki.jp/kenkyotsukaima/pages/58.html
謙虚な使い魔~アンドバリの呪縛~ トリステイン城下町、ブルドンネ街では派手に戦勝記念パレードが行われていた。 狭い街路にはいっぱいの観衆が詰めかけている。 聖獣ユニコーンにひかれた馬車から覗く王女アンリエッタの姿を一目見ようと人々は通り沿いの窓や屋上からパレードを見つめ、口々に歓声を投げかけた。 「アンリエッタ王女万歳!」 「トリステイン万歳!」 観衆達は熱狂していた。 王女アンリエッタが率いたトリステイン軍は先日、数に勝るアルビオン軍をタルブの砂浜で打ち破ったばかり。 『聖女』と崇められ、いまやその人気は絶頂であった。 この戦勝記念パレードが終わり次第、アンリエッタには戴冠式が待っている。 母である太后マリアンヌから、国主の証である王冠を受け渡される運びであった。 マザリーニ枢機卿を筆頭に、ほとんどの宮廷貴族達もこれに賛同した。 また、トリステインは皇帝とアンリエッタの婚約を解消する事を決定し、隣国ゲルマニアは渋々ながらこれを受け入れた。 ゲルマニアは援軍を出すのが遅れ、同盟であったトリステインを見捨てた形なってしまった負い目もあり、強硬な態度を示せるはずがなかった。 ましてや同盟の解消など論外である。 アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインはいまやなくてはならぬ強国である。 賑々しい凱旋の一行を、中央広場の片隅でぼんやりと見つめる敗軍の一団がいた。 捕虜となったアルビオン軍の貴族達であった。 己の目を疑うような奇跡を見せつけられ、空のアルビオンへと戻る自分達のフネが全て落とされてから、アルビオン侵攻軍の殆どがすぐにトリステイン軍に投降していた。 捕虜と言えど、縛られる事も無く、思い思いに突っ立っている。 杖こそ取り上げられ、周りには形として見張りの兵が数人置かれてはいたが、逃げ出そうなどと考えるものはいなかった。 貴族は捕虜になる際に、捕虜宣誓を誓う。 ただでさえ不可侵条約を破った侵攻軍に参加していたばかりだ、その捕虜宣誓を破って逃げだそうものなら、それこそ貴族としての名誉と家名は地に落ちる。 その一団の中、日焼けした浅黒い肌が目立つ精悍な顔立ちの男の姿があった。 サー・ヘンリー・ボーウッドである。 彼はやはり同じく捕虜となった傍らの貴族をつついて言った。 「見ろ。私達を負かした『聖女』のお通りだ」 つつかれた貴族は、でっぷりと肥えた体を揺らしながら答えた。 「ふむ……、女王の即位はハルケギニアでは例がない。いくら我々に勝利したとはいえ、まだ戦争が終わったわけではない。大丈夫なのかね、しかも年若いという話ではないか」 「君はもうすこし王家の歴史を勉強すべきだな。かつてガリアで一例、トリステインでは二例、女王の即位があった」 ボーウッドにそう言われて、太った貴族は頭をかいた。 「ヘンリー、君の歴史に対する関心には相変わらず頭が下がるよ。しかし、してみると、我々はあの『聖女』アンリエッタの輝かしい歴史の一ページを飾るにすぎない、リボンの一つというべきかな。あの光!僕の艦を含む、君が率いた我々の艦隊を殲滅したあの光!驚いたね」 ボーウッドは頷いた。 レキシントン号の上空に輝いた光りの玉は、見る間に膨れ上がり、艦隊を炎上させたのみならず、積んでいた風石を消滅させ、アルビオン艦隊の針路を地面へと向けさせた。 そして驚く事に、その光は誰一人として殺さなかった事である。 光は艦を破壊したものの、船員達にはなんの影響も与えなかった。 火災や不時着で怪我人は何人もでたが、死者は発生していない。 「奇跡の光か、確かにそれもあるが。それよりも砂浜に発生した竜巻の方が私は気になったが……」 「それは本当にあった事なのか?何せ部下達が口々にする事の真偽がいまいち掴めてなくてね」 「ああ、私の知っている事が間違いでなければ、あれは確か……」 そこまで言いかけて、ボーウッドは言葉を飲みこんだ。 あくまで自分の憶測にすぎない。 あの時、砂浜を駆けた竜巻は王家の者達だけに許されたヘキサゴン・スペル。 しかし、それを行うには王室の血を受け継ぐものが二人以上いなくてはならない、しかお互い息があう程に親しい仲でなければ完成しない魔法だと伝えられている。 王女アンリエッタ以外でトリステインに残された王家の血筋と言えば太后マリアンヌしかいない。 しかし太后が自ら戦場に赴いたと言う話しは聞いていない。 ともなれば他の王家の者が関与していた可能性が高い。 『祖国』の皇太子ウェールズがアンリエッタと恋仲である、とボーウッドがレコンキスタにいた頃は良くのその噂を耳にした。 アルビオン王家の血は、ニューカッスルを陥落した時に潰えてしまったと思っていたが、もしかして今もまだ健在なのか? ボーウッドの中で、小さな希望の様な光が差し込んでいた。 「おい、ヘンリー。何ぼやっとしているんだ」 「ん?ああすまない。何か聞いたか?」 太った貴族は溜め息を吐く。 「我々の様な捕虜でも、希望があればトリステイン軍への志願者を募っているとさ。特に空軍士官は優遇するらしい。それで君はどうするつもりだ?と聞いたのだ」 ボーウッドは少し考え込んだ。 「そうだな、その志願とやらの話に、私は乗るだろうな」 「おや?あの堅物のボーウッドにしては珍しいな。かつての仲間に矛を向けられるのか?」 ボーウッドはにっと微笑む。 「それならば既にニューカッスルでお互い経験済みだろう。それより、私はこのトリステインの『王権』がどんなものなのか、この目で見てみたくなった」 「その王家に対するこだわり、筋金入りだな。まあ、僕はもう軍人を廃業して、このまま故郷の家が身代金を出すのを大人しく待つとするよ。あんな光を見てしまったあとでは、恐ろしくてもう戦場にでる気がしないよ」 太った貴族は身震いをして、ボーウッドはそれを見て笑った。 馬車の中で、マザリーニ枢機卿はアンリエッタの隣で、にこやかな笑顔を浮かべていた。 ここ十年は見せた事のない、屈託の無い笑顔だった。 馬車の窓を開け放ち、観衆の声援に、手を振って応えている。 彼の両肩にのった二つの重石、内政と外交、この二つが軽くなった事を素直に喜んでいた。 しかし、それよりも傍らに座ったアンリエッタの毅然、堂々とした姿が何よりも彼を喜ばせた。 今亡き先王の姿をマザリーニは思い起こした。 「強くなられましたな、殿下」 アンリエッタは観衆に手を振りながら、マザリーニに答える。 「わたくしは昔と何も変わっておりませんわ、枢機卿」 「そうでしょうか?以前の殿下であれば、女王に即位する事を嫌がったと思います。しかし此度は殿下自ら申し出るとは思っておりませんでした」 アンリエッタはにこやかな笑顔のまま答えた。 「ええ、わたくし自身は女王になりたいと微塵にも思っておりませんわ」 「で、殿下!?」 マザリーニは座席から落ちそうになった。 「貴方がおっしゃったではありませんか、利用できるものは利用しろ、と。ならば、あの方との誓いを一日でも早く成就するため、わたくしは女王だろうと奴隷だろうとなって見せますわ」 「いえ、確かにそう言いましたが……あれは……」 「傲慢でしょうか?もし、不服であれば枢機卿、貴方が王冠を被ればよろしいわ。その方が、わたくしとしても王家のしがらみなど気にしなくて済むので話が早いのですが」 マザリーニは気を持ち直してこほんと咳をした。 「このマザリーニをあまり困らせないでください。その様な事をすれば、私は三日もしないうちに民によって討たれるでしょう」 「ならば仕方ありません。枢機卿、貴方にもわたくしの我儘に付き合って貰いますわ。このわたくしがどこのだれと結ばれても、誰にも文句を言わせない程強い国の女王となるために」 マザリーニは開いた口がふさがらない。 「そ、その……本当に強くなられましたな……殿下。どことなく父君に似てきましたぞ」 「何よりも換え難い心強い味方を得たのです。その方を失望させないためにも、わたくしは立ちあがっただけです」 「殿下……」 アンリエッタは、マザリーニ枢機卿に向き直り、真剣な眼差しで語る。 「何度も言いますが、わたくしは強くなどなってはおりません。政務ではわからぬ事ばかりで、まだまだ枢機卿に頼らねばなりません。メイジとしての腕も上がった訳でもありません。ただ、自分の背後に怯える必要が無くなったわたくしが、枢機卿の目にそう映るのでしょう」 マザリーニは首を振る。 「いえ、それが強さなのですよ、殿下。民や臣下が『王』に求めるのがその堂々とした強き心です。彼の英雄は一人で、このトリステインに幾万の兵以上の強さもたらしてくれたそうですな」 マザリーニはにこやかに微笑む。 「英雄は一人じゃありませんわ」 アンリエッタは手元の羊皮紙を見つめた。 先日、アンリエッタの元に届いた報告書である。 それを記したのは、捕虜の尋問にあたったアンリエッタの信頼する衛士でもあるアニエスによるものである。 タルブで撃墜された竜騎兵の話が書いてあった。 竜騎兵軍をかく乱させ、いつの間にかアルビオン竜騎兵隊を次々と撃墜していった謎の竜騎兵がいたと、その捕虜となったアルビオン兵は語ったらしい。 そんな竜騎兵はトリステイン軍には存在しない。 そう疑問に思ったアニエスは調査を続けたらしい。 その後に、タルブの村での報告が書かれていあった。 村の一人のメイドの話によれば、青い風竜に跨り、村の『御神体』でもある楯を掲げてタルブの空を飛びまわったのは、アンリエッタと旧知の間柄であるラ・ヴァリエール嬢とその使い魔である事。 主人とその使い魔は、戦の後ほんの少しの間だけ休んだ後、風竜に急かされるようにして学院に帰ったとの事で、そのメイドもそれ以上、詳しい話は知らないようだった。 アニエスはこれらの事から、大胆な仮説を立てていた。 ラ・ヴァリエール嬢か、その使い魔が、あの光を発生させたのでは?というものである。 事が事だけに、アニエスは学院に赴いて直接その二人に接触してよいものかどうか迷ったらしい。 報告書はアンリエッタの裁可を待つ形で締められていた。 自分に勝利をもたらした光。 再会を果たした自分とウェールズを守った、太陽の様に眩い光。 あの光を思い出すと、胸が熱くなる。 「貴女なの?ルイズ」 アンリエッタは小さく呟いた。 一方、魔法学院。 戦勝で沸く城下町とは別に、いつもと変わらぬ日常が続いていた。 朝食の際に、タルブでの王軍の勝利を祝う辞がオスマン氏の口から軽くでたものの、授業も普段通り続けられ、他に取り立てて特別な事も行われなかった。 学び舎であるからして、一応政治とは切り離されていた。 それよりも、ハルケギニアの貴族にとって戦はあり意味年中行事でもある。 いつもどこかで小競り合いを行っている。 始まれば騒ぎもするが、戦況が落ち着いてしまえばいつもの如くである。 そんな中、あまり人が来ないヴェストリの広場では、一人で小さな戦いを興じ、熱中する者がいた。 「<ドラグーン>!そこを跳躍で避けろ!ああ、足を止めずに周りを回って攻撃を避けないと!」 ブロントに教わった事のコツを掴めてきたギーシュは、この所授業が終わるとすぐにヴェストリ広場に来ては色々なゴーレムを組み合わせて戦術を練る事に夢中になっていた。 今では同時に三種類程のゴーレムを織り交ぜて使う事が自然とできるようになっていた。 自分で自分のゴーレム達を戦わせて、そこから気付いた事で生成するゴーレムの装備を変え、立ち回りを考えるのが楽しくて仕方がなかった。 「ここで<ダークナイト>が叩きこめば完璧だな!む、いやでもそうするとこの正面に立つ<サムライ>の武器の隔では届かないか」 そんな様子をベンチに腰掛け、頬杖をついているモンモランシーがつまらなさそうに見つめている。 最近他の女の子に声も掛ける事無く、ギーシュが真面目になってくれたのかと喜んだモンモランシーだった。 しかし、時折ギーシュは昼食を摂るのも忘れて、何をしているのかと思って探してみれば、人気の無い広場で子供の様な兵隊ごっこであった。 所構わず口説きまわるギーシュの浮気でやきもきしなくなったのは良いが、そのかわり最近あまり構ってくれなくなっていた。 「この三種は意外と扱いが似ているな。<エース>とでも名付けようか!」 誰に聞いているわけでもなく、ギーシュは嬉々として叫び、ゴーレムをガチャガチャ叩き合わせている。 たまに通りがかる他の生徒が、ギーシュが一人で興じる姿を見て笑って行くのを見て、モンモランシーは少し恥ずかしくも思ったりした。 などと自分に云い聞かせたりしてギーシュをぼんやりと見つめていた。 自分だけを見てくれるようにならないかしら。 ふと、自分が以前調合していたポーションの事を思い出した。 秘薬が足りなくて作成をしばらく止めていたポーションが一つあった。 最近になって、街の秘薬屋の仕入れが改善されたので、今なら材料も容易く揃うだろう。 モンモランシーは首をかしげて、考え込んだ。 うーん、いい機会だし……。効果の程も試せるし……。 このポーションが完成したら、ちょっと使ってみようかしらとモンモランシーは思った。 その頃ルイズは、部屋で一人『始祖の祈祷書』を開いていた。 水のルビーを指に嵌めて、読んでみたが、タルブ上空で最初に読んだページ以外は相変わらず空白だった。 指輪の石でページに触れたり、祈祷書を持ちかえてみたり、色々試してみたが、あの時の様に光らない。 「まったく、ブリミルの説明書きは全然参考にならないじゃないの」 ペラペラとページを捲っていると、突然部屋のドアの鍵がカチリと音を立てた。 「あ、ブロント!帰って……」 ベッドに寝転がって祈祷書を読んでいたルイズが飛び起きると、 「やっほ」 ドア口にキュルケが立って軽く手を振っていた。 「あんた、また勝手にカギを……」 「ヴァリエールに用はないわ。ブロントさんいる?」 ルイズは不機嫌そうに鼻息を鳴らす。 「いないわよ。昨夜何か伝書フクロウがブロント宛に来て、それを受けてすぐにどっか行ったわ。わかったら早くこの部屋からでないと、蹴りだすわよ」 ルイズは手でキュルケを追い払う。 「どこへ行ったの?」 「知らないわよ、伝書に書いてあった内容はそこの机の上にあるわ」 キュルケが机の上に置いてある紙一枚を拾って見つめた。 表と裏をひっくり返してみたが、別に文字が書いてある訳でもなく何か小さな絵が描いてあるだけだった。 「何この落書き?仮面?」 キュルケはひらひらと紙を振りながらルイズに聞く。 「知らないわよ、それだけしか描いてなかったんだから。それよりブロントに何か用事なの?誰かの命の危機に瀕しているのなら、ツェルプストーの伝言を伝えてあげるのも考えてあげるわ」 キュルケはぱっと紙を離して、紙をふわりと空気に流して机の上に戻す。 「別に用は無いけどね。タバサは使い魔を連れてどこかに出かけて、あたしは退屈しているから、代わりにブロントさんとお話でもしようかなと思っただけ。まあ、あんたと一緒じゃないのならあたしは別にブロントさんのする事にとやかく言うつもりはないわ」 「あっそ、じゃそのまま自分の部屋に帰ってくれると凄く助かるわ」 キュルケは手をひらひらと振ってドアを出た。 「あーそうそう、ヴァリエール。あんたがあまりにも張り合いが無いから忠告してあげるけど、男は待っているだけじゃ振り向いてはくれないわよ。世の女性と言うのはあの手この手で意中の相手を振りむかせようと努力しているのだから」 ルイズはパタンと祈祷書を閉じて、眉を顰める。 「どういう意味よ」 「べーつに。一緒に住んでいるからって、呑気に待っているだけじゃ、愛しの彼はあんたの事を好きになっているとは限らないって事よ」 「べ、別にブロントはそんなんじゃないわよ!」 「あら、あたしは別にブロントさんと言ってないわよ」 キュルケはけらけらと笑う。 「ツェルプスト―!からかいに来たのならいい加減にして、余計なお世話よ!」 「あー、可笑しい。ヴァリエール、あんたのお陰でちょっと退屈が凌げたわ。じゃあ、またね」 ルイズはぷんすかと怒っている。 「いいから、帰って!」 ルイズはキュルケをドアから押し出して、ドアをばたんと閉め、カギをおろした。 今度街に出たら、<アンロック>の魔法で開く事が出来ないドア止めでも見つけてこようかとルイズは思った。 そして、そのまま自分のベッドにぽてんと倒れ込んだ。 胸元からリンクパールを取り出して、手にとって眺めてみた。 「馬っ鹿じゃない。これじゃまるでわたしツェルプストーに言われたから、早速やってみているみたいじゃない」 ルイズはぽいっと枕の上にパールを投げた。 (別にブロントとはそういう訳じゃないから。ただの使い魔だから……) ルイズはぐてんぐてんとベッドの上を転がる。 「で、でも使い魔が何をしているかを知っておくのも主人の務めよね……」 そっと、パールに手を伸ばして、触った所で手を引っ込める。 (それじゃあ、まるで自分の使い魔の事疑っているみたいじゃない!そんな事でブロントの仕事の邪魔しちゃ……) 「ああーもう!」 ルイズは両手で頭をわしわしとかきむしった。 そしてパールをがしっと取って、それに語りだした。 「ブロントいる?」 [――どうした?何かあったのか?――] 「べ、別に。ただどうしているのかな、と思って」 [――今俺はオルレアんにいるんだが。戻ろうか?――] 「いや、いいわよそこまでしなくても」 [――そうか――] 「オルレアンって確かラグドリアン湖がある所だったわよね……」 [――そこでウェントゥスに会った――] 「ええ本当!?」 [――もちろんリアル話――] 「リアル話……って、もう、それより……」 そうしてルイズはブロントと他愛の無い会話を夜まで続けた。 第24話[後編] 「追憶の風に抱かれて」 / 各話一覧 / 外伝・タバサと仮面 「スモークオンザマウンテン」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8918.html
前ページ次ページるろうに使い魔 ルイズは、部屋のベットで目を覚ました。 見慣れた部屋…トリステイン学院の、女子寮の一室。 横を見れば、既に起きていた剣心が、今まさにルイズを起こそうとしている所だった。 「おはようでござる、ルイズ殿」 「…うん…おはよう…」 急に目が覚めたものだから、どこか頭の回転がボンヤリだったのかもしれない。ルイズは、どこか寝ぼけたようにそう言うと、剣心が予め畳んでくれた制服に手をやった。 そして着替えようとして…ルイズは剣心を見て、ハッとするように叫んだ。 「ちょ…見ないでよ!!! どっか行ってて!!!」 「お、おろろ!!?」 その声に、慌てて剣心は部屋を出る。どうせまた着替えを手伝わされると、軽く準備をしていたため、少しびっくりしたのだ。 余りの出来事に驚きを隠せない剣心であったが…。 「ルイズ殿も、ようやく女子としての恥じらいを持ってくれたのでござるな」 とまあ、こんな風に解釈していた。 第二十四幕 『癒えぬ傷心』 しかし、アルビオンからの旅が終わってからというもの、ルイズはかなり変わった。 前みたいに、剣心に負担を強いるようなことは、しなくなったのである。 身の回りに関しては、大体給仕か自分で片付けるようになった。 食事についても剣心が、ちゃんとテーブルにつけるようにルイズは取り計らった。 寝床についても、ルイズは剣心を思ってか、「隣で寝ていい」と言ったこともあった。無論そこは断ったが。 「今更、大丈夫でござる」 「でも…」 「それに、ベットはどうにも寝付けないのでござるよ」 そこまで言われると、ルイズも納得せざるを得ず、ただ「そう…」と呟いて、少し寂しそうにベットに潜り込んでいった。 これらについては、剣心も思うところがあった。 アルビオンでの、最後の戦い。そこで、良かれとして移した行動が、結果的に大事な人の死に繋がってしまった。そして、最も敬愛する姫の、悲しみを招いてしまった。 それは、ルイズの中では決して消えないだろう傷跡でもあった。 「ねえ、あんた達一体全体どこ行ってたワケ?」 いつも通りの、授業を受ける教室の光景。そこでモンモランシーが、まくし立てるようにギーシュ達に詰問していた。 「ああ、いや! 何でもないさ。ハハ…」 「へ~え、そうなの。私には言えないんだ」 ルイズ達がお忍びでどこかへ行っていたというのは、結構知れ渡っていたものだったらしい。 タバサやキュルケは、黙して語らない。ギーシュは、時々浮ついたように口を開きかけるが、慌てて自制心を利かせることで、それを防いでいる。 そんなわけで、今度はモンモランシーは、ルイズのとこまでやって来た。 「そんで、何してたの?」 「別に、なんでもないわよ」 巻き毛を揺らして聞くモンモランシーに対し、ルイズはそっぽ向くように返した。 「ま、どうせ大したことじゃないんでしょ? ゼロのルイズに何か出来るとは思えないし、むしろ足しか引っ張って無かったんじゃ……」 そこまで言いかけて、ギーシュは泡を食ってモンモランシーの口をふさいだ。 「ちょ…ちょっと待ってくれ、モンモランシー。それ以上は駄目だ!!」 「ぷはっ…!! 何がどう駄目なのよ…!」 ギーシュの手をどけて、訝しげに睨んだモンモランシーは、そこで初めて異変に気づく。 ルイズが、肩を震わせて俯いていることに。そこから不気味なオーラを漂わせていることに。 「これって…ヤバい…かな」 もはや手遅れ…。そう悟ったギーシュは、剣心の方に向き直った。 キュルケは、いそいそと机を盾にし始め、タバサは何時でも大丈夫なように杖を構える。 剣心はそれでも、なおも食い止めようと、今や何時爆発してもおかしくない、不発弾状態のルイズに近付いた。 「あ、あの…ルイズ殿…?」 …そして気付いた。彼女が、誰にも分からぬ所で、涙を零していた事に……。 (ルイズ殿…) どうしたものか…と考える内に、教師のコルベールが入ってきたので、この騒ぎも終わった。 「はい、それでは皆さんに、今回は『火』について、別の視点で授業を見てもらいたいと思います!!」 そう言って、コルベールは、生徒達には見慣れない装置を取り出して、自慢気な顔をした。 「見てください、この仕掛け!」 熱を上げた声で、コルベールは『ふいご』を踏んで、円筒に発火の呪文を唱える。 すると、円筒のクランクが動き出し、箱の扉が開いてヘビの人形がぴょこぴょこ表れ出した。 「どうです、この完成度!! この愉快なヘビくん。すごく面白いでしょう!!」 しかし、剣心以外の生徒たちはそう思わなかったのか、冷えきった目でコルベールを見ていた。 中でも、特に興味なさそうに見るキュルケは、気だるさを隠そうともせずに尋ねた。 「それが、どう凄いのですか?」 「これを使えば、馬を使わずとも車輪を動かすことも、帆もなく船を動かすとこも可能だと、私は確信しているのですぞ!!」 「そんなの、魔法を使えばいいじゃないですか」 一人の生徒の言葉に、そうだそうだと言わんばかりの視線を、コルベールに送る。 「いや…だからこれはだね…」 コルベールが、何とかこの装置の素晴らしさを教えようとしたとき、不意に剣心が教壇へと近づいて、その『愉快なヘビくん』に手を触れた。 すると左手のルーンが急に輝き出す。そして今度は頭の中にその『愉快なヘビくん』の詳しい情報が流れ込んできたのだ。 最初はもしかして…と思っていたが、改めてこの左手から教えてくれた情報は、やはり剣心の予想通りだった。そして驚いた。 「驚いたでござるな…それは動力でござるか?」 剣心は、何となくではあるが理解したのだ。これは、元いた自分の世界では、盛んに使われ始めている『蒸気機関』の一種だと。まあ実際には少し違うのだが。 そう言えば、ここには技術に特化した文明が、あまり発達していないことに気付いた。 魔法という便利な代物が発達したこの時代では、そういった科学が進歩していないのだろう。 「これは凄いでござるな。コルベール殿、これは大発見でござるよ」 「そうだろうそうだろう!! 君だけさ、そう言ってくれたのは!!」 自分の研究を素直に評価してくれたのがよほど嬉しかったのだろう。コルベールは嬉々として叫んだ。 「…そんなに凄いものなの? あたしにはそんな風には見えないけど…」 それでもキュルケを始め、未だに納得いかなさそうに首をかしげる者もいるが、それでも剣心は力強く言った。 「これは、『火』という魔法を、どう人に活かそうと考えた結果、生まれたものでござろう? 拙者も、ただ破壊に火を使うよりも、そう言った使い道の方が有意義だと思うでござるよ」 (……………) その剣心の答えに、コルベールは嬉しく思いながらも、しかし、彼の言葉の裏を、それとなくだが気付いた。 何でだろう…彼とはシンパシーを感じるのだ。同じ地獄を知った眼。それに苦しんできた眼。そして、その末に答えを見つけてきた眼。 だからこそ、馬鹿にしかされない自分の研究を、彼は素直に評価してくれているのかもしれない。 彼も私と、同じ境遇なのだろう…そう思って、しかしコルベールは余計なことを言わずにお礼を言った。 「ありがとう、素直な感想をしてくれたのは君だけさ。君は確か…」 「剣心でござる。ああ、えっと…『東方』の出でござるよ」 ルイズが言うには異世界から来た。って言うのは抵抗があるらしかったので、今は『東方(ロバ・アル・カリイエ)』出身を名乗ることにしていた。 コルベールも、それを聞いて納得したようだった。そして更に目をキラキラ輝かせて言った。 「成程、通りで私の技術も分かってくれるわけだ。なあきみ、後でその『動力』について詳しく教えてはくれぬかい?」 「構わないでござるよ。拙者の知っている範囲でいいのなら、喜んで」 何故か異様に意気投合を始めた二人だったが、ここでようやく授業中だということに気付き、コルベールはコホン、と咳をした。 「で、ではまあ、これを誰か体験してくれる人はおらんかね? ミス・ヴァリエール、どうかね?」 ここで、コルベールはさっきから俯いたままのルイズを指名した。 剣心はギョッとした。まさかいきなり地雷を踏むとは思わなかったのだ。 「あ、あ~~、ルイズ殿?」 しかし、それとは裏腹に、周りの生徒たちはここぞとばかりにはやし始めた。 「やってごらんなさいよ。ルイズ」 モンモランシーの言葉に、とうとうルイズは立ち上がった。 顔を覗かせず、つかつかと教壇の上まで行くと、『発火』の呪文を唱え始める。 その瞬間、教室に爆発の音が轟いた。 「………」 装置ごと吹き飛ばされたコルベールは、地雷を踏んだことを軽く後悔しながらも、いつもの様に黒こげに立つルイズに優しく言った。 「ま、まあミス・ヴァリエール…こんな事もあるさ、もしかしたら、装置の不具合もあったかも知れない。だから気に病むことは―――」 言いかけて、気付いた。いつものルイズなら、どんなに悔しくてもそれを他人に見せまいとするために、強がりの一つや二つ言ったものだ。でも、今回は違う。 「…何で………」 杖を持つ手を震わせて…剣心やコルベールからの視点でしか見えなかったが、ルイズは泣いていたのだ。 「何で私は失敗ばかりなのよ!!!」 今まで見せなかった、ルイズの悲痛の叫びが、さっきの爆発以上に、教室に響きわたった。 一瞬、教室はシーンと静まり返った。ルイズの本音に誰もが圧倒されていたからだ。 そのまま人目をはばからず、泣き出してしまったルイズに手を差し伸べたのは、やはり剣心だった。 「コルベール殿、今日はちょっと、いいでござるか?」 「ああ、構わないさ。学院長には私から言っておくよ」 コルベールからの許可を貰った剣心は、ルイズと一緒にそそくさと教室を去った。その間、生徒たちは何も言うことができなかった。 その日、ルイズは自室のベットで、ずっと泣いていた。 今でも思う。あの時のこと。 力もないのに、自惚れて、ウェールズを死なせてしまった。あの時のことを…。 自分に、もっと魔法の力があったなら、誰も悲しまずに済んだかもしれないと。 今でも頭から離れない。ウェールズの安らかな死に顔。アンリエッタの悲しい表情。 「わたしを、守ったせいで……」 そんな風に泣いていた時、不意にドアをノックする音が聞こえた。 ルイズは、気だるそうにドアの方を見た。剣心だろうか? と思ったが、それならノックせずに普通に入ってくるだろう。 「誰…?」 と思いながら、ルイズはドアを開けた。そこにいたのは、学院長のオールド・オスマンだった。 「おお、急な訪問に、スマンの」 ここで、ルイズはハッとした。泣いてたせいで制服にかなりシワが寄っていたため、人に会える格好ではなかったのだ。 しかし、オスマンは、特に気にせずに続ける。 「話は聞いておるよ。ミス・ヴァリエール。お主には、かなり辛いものだったであろう。しかし、少なくともこれで、同盟は無事に相成り、トリステインの危機は去ったのじゃ。それだけでも充分な働きじゃよ」 オスマンなりの慰め言葉だったが、ルイズは静かに首を振った。 「それを成したのは、私の使い魔と、他の人達で、私ではありません…私は…」 「旅に、役に立たぬ人などおらぬよ。お主はお主で、これが正しいと決めてきた筈じゃ。ただ、それをお主が気付いておらぬだけじゃよ」 オスマンの言葉に、ルイズは顔を上げた。そこには一切の茶化すような感じはない、オスマンの真剣な顔つきがあった。 「それで…この私に一体何用で…」 「おおう、それじゃそれじゃ」 オスマンは、いつもの茶目っ気たっぷりの笑みをすると、懐から一冊の本を取り出した。 特に何も書かれていない。ボロボロで色褪せた古本だ。 「これは『始祖の祈祷書』じゃ。君も名前くらいは、知っておろう」 それを聞いて、ルイズは改めてその本を、まじまじと見つめた。 『始祖の祈祷書』といえば、かの始祖ブリミルが、祈りを捧げたときに使われたと言われる、由緒ある伝説の品だ。 勿論『本物』であればだが……。 有名であるために、また主な具体性が無いために、これこそが本物だと言い張る国や貴族は少なくない。偽物の品も普通に出回るほどだ。 そして今オスマンが持っているものも、その可能性は否定できない。何せ呪文どころか文字の一つも書かれていないのだから…。 「まあ、この際紛い物かはどうでもいいわい。頼みというのはな、君に王女と皇帝の結婚式で、読み上げる詔を、考えて欲しいのじゃ」 「ええっ!?」 突然の重要な指名に、ルイズは驚きの声を上げた。 「で、でも私に…そんな大役…」 「もちろん、草案は向こうが考えるそうじゃが、この指名は姫直々のものじゃ。これは大変な名誉じゃぞ」 姫さまが…そう聞いて、ルイズはアンリエッタの事を思い出した。 ウェールズが死んだ。それを聞いた時の彼女の表情。現実を受け入れられず、只ショックで何も言えなくなったあの表情は、今でもルイズの胸を痛ませていた。 (わたしが…詔を…?) 正直にいえば、自分は巫女なんて器じゃない。そう思っている。 でも、アンリエッタが直接自分を指名してくれたのであれば、少なくともそれには応えてあげなくてはならない。 暫くルイズは悩んで…そして決めた。 「……かしこまりました。謹んで拝命いたします」 ルイズは、そう言って『始祖の祈祷書』を受け取った。 その頃、アルビオンでは、今やすっかり『レコン・キスタ』の軍勢と、相成っていた。 その中で、表向きの新皇帝オリヴァー・クロムウェルは、巨大戦艦『レキシントン』号を見上げていた。 「何とも雄大な船ではないかね、艤装主任」 「そうですな、この『ロイヤル・ソヴリン』に適う船は。世界中どこを探しても見当たりませぬ」 艤装主任、サー・ヘンリ・ボーウッドは、わざと名前を間違えてそう進言した。彼は、略奪同然に王政を奪い取ったこの男に対し、反感に近い感情を持っているのだ。 しかし、クロムウェルはそれをあっさりと聞き流した。 「ミスタ・ボーウッド。アルビオンにはもう『王権(ロイヤル・ソヴリン)』は存在しないのだよ」 「……。それより、何故結婚式に大砲を…それを新型のを積み込む必要が?」 「おお、そう言えば君には『親善訪問』の意味を説明してなかったね」 クロムウェルが来る前に、その命を受けてた時から何やら嫌な予感がしていたボーウッドだったが、今クロムウェルの説明を改めて聞いて、その予感は的中したのだと悟った。 「馬鹿な!! そのような破廉恥な行為が、許されるとでも!?」 激高するボーウッドに対し、クロムウェルはどこまでも飄々としていた。 「許されないなら、どうするとでも? 言っとくが、これは盟主直々の命令だぞ」 盟主? それを聞いたボーウッドは、ここで何者かがこちらへと向かってくるのを感じた。 振り向けば、そこには志々雄と…死んだとされたウェールズがそこにはいた。 「やあ、ボーウッド、久しぶりだね」 この言葉、この態度、間違いない、ウェールズ殿下そのものだった。ボーウッドは、慌てて膝をついて、忠臣の仕草をとった。 (何故…殿下がこんなところに…?) ボーウッドの頭の中は、激しく混乱していた。 その隣で、志々雄は『レキシントン』号を眺めていた。その後ろには、義手をつけたワルドが従いている。 「ほう、中々にでけえ船だな」 「『レキシントン』号…このハルケギニアでこれに勝る船はいないと聞き及びます」 ボーウッドは、ここで改めて志々雄の方を向いた。 ウェールズがいたために今まで忘れていたが、軍人としての本能が、この男はクロルウェルなんかより余程危険だということを知らせていた。 「どうでございましょう、シシオ様。これなら派手に宣戦布告ができるというもの」 このクロムウェルの態度からして、この男こそが、真の黒幕なのだろうとボーウッドは思った。 あの男は、一体…。見かけからしてメイジではなさそうだが、纏う雰囲気は、ここの人間達にはとても出せないようなものを醸し出していた。正直、自分もこの男の雰囲気に呑まれかかっていた。 およそ常人には理解し得ない功名心、支配欲、野心。それを一手に抱えているような目。 「あの…彼は一体…?」 「ああ、君にはまだ言ってはいなかったね」 そう言うと、クロムウェルは畏まった仕草を取りながら、志々雄に向かってこう説明した。 「彼がこの『革命軍』本当の盟主、シシオ・マコト様だ。シシオ様、彼が名うての指揮官、ヘンリ・ボーウッドです」 では、この男が…此度の戦の原因か。 しかし、ボーウッドは志々雄への視線を無意識にそらしていた。 何ていうか…恐ろしかったのだ。目を合わせたら、地獄に引き込まれそうな引力が、その目にはあった。 「そうかい。ま、よろしく頼むぜ」 そんなボーウッドに対して、志々雄軽くそう言うと、ワルドとクロムウェルを連れて悠々と船に乗った。 「今度はこっちから人斬りの先輩様に、ご挨拶に行くとするか。俺も先輩思いだな」 そんな事を平然と言い放ちながら、志々雄は口元を笑いで歪めた。それを受けてクロムウェルが口を開く。 「それよりシシオ様、予ての件ですが…」 「ああ、『始祖の祈祷書』とやらか?」 クロムウェルが確認するように聞き、志々雄は思い返すように呟く。 「ええ。もしかしたら本物の『虚無』の使い手が、現れるとも限りませぬ。手は早めに打ったほうが……」 自身も『虚無』の使い手であるにも拘らず、どこか怯えた様子で進言するクロムウェルだったが、志々雄は、ただ愉しそうに口元を歪ませるだけだった。 「いいじゃねえか、現れたら現れたで。俺もその伝説の虚無の使い手とやらを、この手でぶった斬ってみてえもんさ」 「しかし…」 「まあ、指揮はお前に任せるから好きにしな。だが忘れるな、俺はどっちに転んでも楽しめるんだぜ」 志々雄は、ここぞとばかりに狂気に満ちた笑みをワルド達に見せながら、大声で高笑いをした。 彼は楽しんでいるのだ。国盗りと、あの男との決着をつけられる機会を、もう一度与えられたのだから。 (やはり…この御方は計り知れない…) 心底愉快そうに笑う志々雄を見ながら、ワルドとクロムウェルは同時に、そんな感想を抱いた。 前ページ次ページるろうに使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1489.html
「ナランチャは……あそこね」 怪我をした村民達を庇いつつ、襲い掛かってくる兵士を爆発で弾き飛ばしていくルイズ。そして、トドメはキュルケ。 余計な精神力は使えないので、タバサ、ギーシュは力を温存していた。 突如として上空に現れた『竜の羽衣』のおかげで地上にも影響が出ており、散り散りになって混乱している兵士も少なくはない。 だが、旗艦『レキシントン』号には全く傷を与えられていないのが現状であった。 「ワルドが火竜を使ってるってことは……風竜とかは温存してるって事?」 その疑問は、後々分かる事になるが、今はこの兵士達を止めるべきだ。 トリステインの兵士達も加勢してくれているが、数では差がある。 しかし、段々と敵も落ち着きを取り戻す。 統制の取れた動きを乱すためにあちらこちらに爆発を起こし、散開させたところを堅実にキュルケが叩いていった。 「そろそろいいわね?タバサ、飛ぶわよ」 シルフィードの翼が開かれる。 大きな風を巻き起こして、一旦敵を吹き飛ばした跡に、ルイズたち全員が乗り込んで飛翔した。 「主人を差し置いて……勝手に死ぬんじゃないわよ……ナランチャ」 今まさに、一瞬でも隙を生み出せば死に直結する戦場へ、蒼い巨体が突っ込んでいった。 「死んでもらわねばならん!貴様が邪魔なのだ、ガンダールヴッ!」 「俺にとっちゃお前が一番邪魔だよッ!」 機銃の弾数を、あの旗艦用にも取っておかなければならないのに、ワルドは火竜さえも使いこなす。 焦りと疲れを感じて来たナランチャは、デルフリンガーを抜いた。握るわけではないが。 「久し振りに俺を抜いたな、相棒」 「なんとなくな。気分転換でもしないとやってらんないつーのよッ!」 エアロスミスの機銃を撃ち出す。 極限まで接近して爆弾を放ったが、それを回避され、弾丸はまたしてもエア・ニードルで弾かれた。 ウィンド・ブレイクで巻き起こった風が機体を大きく揺さぶるが、体勢を立て直し様に操縦桿に力を込め、何とかして後ろへ回り込もうと画策する。 結果的には、確かに回りこめた。 それに対応すべく、ワルドがウィンド・ブレイクを放ってくる。そのために、容易な反撃が出来ない。 下手をすれば墜落死しかねない強風だ。 次に、連続でライトニング・クラウドが放たれた。それも『前後』から。 「前後から電撃が来るッ!?『遍在』……しまった!火竜に乗ってんのは……!」 火竜が他の者より大型であり、二酸化炭素を多く排出していた為、排出量の差に気づけなかった。 本体のワルドは、きちんと風竜に乗っていたのだ。 今まさに本体のワルドがトドメを刺そうと出てきた為、接近に気づけなかったとは言え、ゼロ戦のスピードに任せて避ける。 「チッ、外した?なら、これで!」 火竜を無理やり突進させ、ゼロ戦にぶつける遍在。 そして、火竜の喉にあった、ブレスを吐く為の油に火を撃ち、引火。 ウィンド・ブレイクでゼロ戦へ叩き付け、自身はフライを唱えて、ゆっくりと地面に着地した。 ゼロ戦の装甲が燃え、剥がれ落ちる。 この攻撃だけで、甚大とは行かないまでも、結構な損害を受けてしまった。 「て……テメェ、あの竜……『味方』……」 「味方だとッ!?違うねッ、こいつは生まれついての『道具』だッ!ガンダールヴさん、早えとこ成仏しちまいなぁーッ!」 またぶっ壊れたワルドが、挟み撃ちの形でエア・ニードルを構えて突っ込む。 上空からは竜に乗った本体、下からはフライで浮き上がった遍在。 こういう時はかわすと勝手に相打ちしてくれるものだが、現実はそう甘くなかった。 抜け出したにもかかわらず、追ってくる。 ワルドの風竜には、遍在と本体が同時に乗ることとなり、二つのライトニング・クラウドが手負いのゼロ戦を襲う。 逃げ惑うナランチャに高笑いするワルドだが、後ろに気配を感じたため、上昇。 ついさっきまでワルドが居た地点を、氷柱が撃ち抜いた。 「外した」 タバサの呟きを受けて、ルイズがシルフィードの上で立ち上がった。 「ワルド……遍在を下に下ろしなさい。私が倒すわ」 「ちょ、ちょっとルイズ?相手はスクウェア……」 「……ルイズ、僕も行こう」 ギーシュが、応じたワルドが遍在を下ろすのを見て、ルイズと自分にレビテーションをかけて着地する。 「あ、あんたもドットじゃないのよ!」 「大丈夫」 キュルケが頭をかきむしるが、タバサがシルフィードにレキシントン号へ向かうよう指示した為、程なくその姿は掻き消えて言った。 (2人の力が、レキシントン号を落とすために必要なはず……ワルドの遍在を一体でもいいから倒せば、少しでも有利になる。やるしかないのよ、ルイズ) ギーシュが着いてきたのは予想外だったが、ここまで来たらもう何も言うまい。 本当はワルド本体を倒したかったが、耐久力が下がっている遍在の方が勝てる確率が高い。 感情でただ闇雲に突っ込むのではなく、役に立つ為に今、ここに居る。 ナランチャの一番の障害であるワルドの魔力を少しでも削ぐのが、自分自身の役目だと、ルイズは思う。 ギーシュも同じ思いであった。 「残念ながらおまけがついてきちゃったわ。本当は一人でやりたかったけど……」 「お……おまけ……」 「寧ろ2人でかかってきてくれたほうが好都合だ、まとめて倒せる」 ワルドの挑発にギーシュがちょっと引っかかっている。 「そう。こっちもそんなに時間かける気ないから」 我慢。こんな軽い挑発にかかってはいけないのだ。 その代わり、その怒りは杖に込める。 前触れもなしに、爆発が起きた。 当たり前のようにワルドは避けるが、着地地点にワルキューレを作り出し、槍で待ち伏せをする。 ウィンド・ブレイクで吹っ飛ばされ、軽々と退けられるも、ワルドの背後にワルキューレを2体。 剣を振うが、それすらエア・ニードルで両断され、2体のワルキューレはあっという間に袈裟切りにされる。 爆発が二度起こるも、回避されて逆にエア・カッターで反撃され、ギーシュの右肩をいっそ気持ちいいほど綺麗に切込みを入れた。 血が噴出すが、まだ始まったばかりである、倒れるわけには行かない。 長い青銅の槍を、ワルキューレが振り回す。 歯が立たないと分かっていても、足止めぐらいにはなるはずだ。 エア・ニードルがワルキューレの両腕を切り落とす、その隙にルイズが接近。 遍在の頭を杖で殴った拍子に、爆発を起こす。 吹っ飛ぶワルドの遍在の体に、ワルキューレの剣が投げ込まれた。 それを杖で防ぎ、ウィンド・ブレイクで未だに宙を浮いていたルイズを吹き飛ばし、地面へとたたきつける。 ギーシュの視線がそれた隙に、エア・カッターを放つも、気づいたルイズが瞬時に爆発を起こして拮抗させ、消滅させた。 立て続けに地面へと爆発を起こす。土煙が巻き起こり、破片が宙に舞う。 その宙に舞った土の破片を青銅へと錬金、上空から落ちてくる青銅。 だが、いとも簡単に払いのけられる。 ワルキューレをワルドの目の前へと配置するが、限りのあるワルキューレがなんともない様に裂かれ、ギーシュの魔力の半分ぐらいは無駄になっていた。 頼みの綱のルイズの攻撃も、僅かな風の変化を読み取って、全て避けられる。 「う……勝てるのか?」 「さあ、分からないわね」 懐から落とした祈祷書を拾い上げながら言う。 その際、何かが見えた。 「……文字?」 いや、白紙だ。 早くも疲労が積もってきているのか、と不安がりつつ、まだ諦めないとばかりに土を蹴り上げる。 杖で払いのけるワルド。 その一瞬にギーシュが花びらを飛ばし、油へ錬金。 足元に出来た油が、ワルドの足を取った。 「むッ!?」 「ええいッ!」 ついでにギーシュが発火させ、そこにルイズの攻撃が飛んだ。 爆発で吹っ飛ばされたワルド。足には、燃え盛る炎が移っていた。 風で炎を吹き飛ばす。 ギーシュは火についてはあまり得意ではない。使えるのは発火ぐらい。 勢いはそれほどよくなかったので、すぐ消えてしまうが、十分。 ワルドにルイズが飛び掛って、顔面へ杖を押し込んだ状態で、レビテーションを唱えた。 もちろん、失敗。そして―― 次の瞬間には、脇腹に突き刺さったワルドの杖が見えていた。 杖を滴る血。激痛に顔をゆがめつつ、爆発を制御しようとするが、見当違いの方向へ爆発の衝撃が走った。 力づくで引き抜いて離れようとするが、少しだけ離れた所でライトニング・クラウドが飛んだ。 回避は不可能。その電撃の奔流は、爆発でも押しとめる事は出来ない。 「ル、イズッ!これでぇぇッ!」 ワルキューレの残骸から咄嗟に見つけた剣を投げつける。 その動きはあくまで素早い。 電光が出る直前のことだった。 「そっか!ギーシュ、ありがとッ!」 思いついたようにその剣を握り、すぐそこにせまるライトニング・クラウド目掛けて投げつけた。 正確に命中、青銅が電気を通し、宙で勢いを相殺されて静止する。 そこへ、ここぞとばかりに狙い済ました一撃を叩き込んだ。 爆風がその剣をワルドに突き刺す。 バチィッ、と弾ける様な音が鳴った。声を出す間もない。 たった一瞬の出来事。 その遍在は凄まじい勢いで感電し、消えた。 自らが放ったライトニング・クラウドを撃ち返されて、その電撃を含んだ剣が突き刺さった為、内部から強烈な電気を流し込まれたのだ。 消える直前に放たれた置き土産のエア・カッターがルイズの腹部を浅く切り裂いたが、まだ生きている。 案外パパッと片付けることが出来たが、ルイズの出血が尋常じゃなかった。 「うぅ……ギ、ギーシュ。歩くの手伝って……」 「あ、ちょっと待って!肩はダメ!肩は怪我してるってアッー!」 その後、村民に応急処置をしてもらい、出血が収まってきたが、完全には止まらず、激痛の中、祈祷書をぼんやりと見つめる。 コレで役目は終わったのだろうか、と。 「でも……ギーシュ、案外やるじゃない」 「う、なんで?」 「だってさっき……ライトニング・クラウドの対処、偉く早かったじゃない?動きを読んでるみたいな」 ルイズからの予想外な褒め言葉に、目を丸くするギーシュ。 しかし、いつものように笑うと、ルイズから変な視線を送られることとなった。 複雑な表情を取らざるを得ないギーシュを、今度はルイズが笑う。 そして、また祈祷書に目を通し―― 「……え?ギーシュ!これ見える!?」 さっきまで白紙だった祈祷書に、じわりじわりと字が浮かんでくる。 頬をつねる。痛い。 腹をつねる。死ぬかと思った。 現実である。 「見えるって……何が?」 「……見えない、の?」 とにかく、変な使命感に駆られて読み進める。 傍から見ていたギーシュは、どんどん変化するルイズの表情に笑いを堪えている。 「……虚無……って、そんなことが……私が……使い手?だとしたら!」 今、眼前に浮かぶ光景には、苦戦しているナランチャたちの姿が映る。 それを、打開できるかもしれない力が、自分にあるとしたら? こんな所で寝ているわけには行かない。 起き上がる。激痛にも耐え、顔を気丈なまま保って、走った。 助けるのだ、今度は、自分が。 ゼロ戦の機銃の弾丸が、底を突いた。 エアロスミスで応戦するが、ワルドは素早く回避して、ブレスを叩きこんでくる。 ゼロ戦は装甲が所々剥がれ、無残な姿を晒していた。 さらにレキシントン号の砲撃もある。 シルフィードに乗った2人は、全力で防御して、全力で反撃しているが、それでも火力不足だ。 押し切られるのも時間の問題。 誰もがそう思っていた。 そう思わざるを得ない。前までの勢いをなくしたゼロ戦に、村民達も不安を抱く。 「あ、ちょっと!」 「被弾」 「きゅいッ!?」 くるくる回って一旦着地する。シルフィードの体から血が流れ始めていた。 流石に全ては防ぎきれるわけではない。 体勢を立て直し、もう一度飛び立とうとした刹那。 「待ってッ!私も行く!」 「ルイズ!?あんたじゃ……」 「あんたはそうやって、他人を見下すことしか出来ないの!?さっさと行って!ナランチャを助けるのよ!いいんでしょ。タバサ!」 「肯定」 今までで一番、シルフィードは力を振り絞った。 凄まじい加速で、ワルドの風竜に体当たりを敢行、吹き飛ばす。 が、同時にシルフィードの体勢が崩れる。その時に、ルイズが飛んだ。 「バッ……ルイズッ!」 ダンッ、とゼロ戦に取り付き、強引に操縦席に入り込んだ。 わたわたしていると、またブレスが飛んでくる。ナランチャは懸命に回避した。 「おま、お前何してんだよ!死ぬ気か!?つーか怪我……」 「いい、聞いて?私、今から虚無の初歩の初歩の初歩、エクスプロージョンって言う呪文をあの旗艦とワルドにブチ込むの。その詠唱の時間を稼いで!出来るだけターゲットには接近してよ!」 「……はぁ、なんと細かい注文してきますか。やってやろうじゃねぇのさぁ!」 不思議と、その言葉をすんなりと信じる事が出来る。 まるでこうなることが分かっていたかのように。 既に日食は始まっているのだ。早くしなければ間に合わない。 高揚感を得て、ルイズは詠唱をはじめる。 出来るだけ素早くやるようにしているが、ガンダールヴとは言え、もちろん不慣れなゼロ戦の操縦をするナランチャは、左右へ揺らし放題の操縦をしていた。 舌を噛みそうになりながら、詠唱を進めていった。 「何をするつもりだ?ルイズが乗っている?まさかとは思うが、注意しておくに越したことはない」 とことん回避されまくったワルドも、既に遍在を作り出すほどの余裕はない。 竜のブレスで追撃する。 エアロスミスの弾丸が牽制として飛んでくるが、ひらり避けて、エア・カッターとエア・ハンマーを時間差で撃った。 「ぐ、ド畜生が!右翼がヤベーぞォッ!」 (ま、まだ終わんないのよ!) 必死に詠唱を進めていく間に、ナランチャがルイズの詠唱を邪魔しないように気遣いながら操縦するので機動力が落ち、かすりつつも確実に装甲へダメージが与えられる。 元々、ゼロ戦の装甲はそれほど厚くない。 空を裂く風の刃を耐えしのぐように、エアロスミスの機銃で迎え撃つ。 そのうちの一発が、ワルドの胸に命中。 鋭く肉を抉り、激痛を走らせた。 「ガンダールヴッ!どこまで邪魔をォォォッ!虚無だろう、虚無なのだな?ならば私が止める!」 「他人の詠唱邪魔するヤツはッ!」 エアロスミスが機尾を振り、加速していたワルドに凄まじい衝撃を与えた。 宛ら蹴りである。 首を狙ったので、詠唱が止まる。 「スミスに蹴られて地獄に落ちろ、だ」 クイッ、と親指を下に向ける。 「いや……寧ろ、『撃たれて』かなァ?」 エアロスミスの銃口が、光った。 スピードを得て、弾丸の威力を倍増させたエアロスミスが迫る。 苦しむワルドを狙い、加減も何もない、零距離での射撃。 次々と体に開く穴を見て、ワルドはあの光景を思い出す。 『ガンダールヴ』の腕から飛び立ったエアロスミスの射撃を受けたときの、光景が。 「ルイズッ!撃て!」 レキシントン号と、目と鼻の先。目の前にはワルドが立ちはだかるように、倒れかけながら踏ん張っている。 「ワルド……」 昔の記憶を一通り思い出し、今までのことを噛み締めて。 虚無の魔法の性質。 破壊するか破壊しないかは使い手次第。そして、強大すぎる力。 自分が使い手だとは、夢にも思わなかった。 前はキュルケにからかわれ、ギーシュに鼻で笑われ、タバサには関心を示してさえもらえなかった。 その自分が。そのルイズが、伝説の呪文の詠唱を終えた。 「私が……虚無(ゼロ)のルイズ……」 膨大な光、まさに魔力の塊が、アルビオン艦隊の中心で炸裂した。 弾幕を潜り抜けるのにさえ苦労した、あのレキシントン号が。 アルビオン艦隊が次々と沈む、だが、ワルドは殺さなかった。 殺す気になれなかった――といえば、そうなのだろうが。 ただ感傷かもしれない、思い出。その全てが浮かんだ今、ワルドを自分の手で殺す気にはなれなかった。 そんなルイズを、ナランチャは絶対に責めない。 トリステインの兵士達が、咆哮する。その様子を見ていたアンリエッタさえも、閉口して、唾を飲み込んだ。 その後の展開は明らかだ。竜騎兵、艦隊。 二つの要素を失くし、スクウェアであるワルドももう戦えない。 気を失ったレコン・キスタの兵も多く、総崩れとなった。 「あ……行っちゃうんだ」 キュルケは、何か拍子抜けな声を出した。 「もっとロマンチックに決められないのかしら、ルイズ」 ゼロ戦が日食へと飛ぶ。 シルフィードがまた飛んだ。見送りに行くのだ。ギーシュも乗せて。 思えば、このレコン・キスタとの戦いがナランチャと一緒に居られる最後の時だった。 過ぎるのは早かった。 そして、日食がそろそろ終わろうとしている。 「おいルイズ、降りろ。お前まで行く事はねーよ」 「嫌よ!使い魔が主人を置いて勝手にどっか行くなんて、許さないわ!」 頑固に操縦席にしがみつく。 もうすぐ日食へと突入できる距離まで近づいていた。 スピードが落ちている分、シルフィードが後ろから追いついてきている。 今なら落としてもレビテーションが間に合うだろう。 ルイズの瞳に涙が浮かんでいるのを見て、ナランチャは溜まらずため息をつく。 こういうのは自分のキャラじゃない。 とりあえず、不意を突く。 「……ルイズ」 「な……何よ」 「……世話かけさせんな、ボケ」 「うぇッ!?」 ぐわしっ、と引き寄せられ、一瞬のうちにナランチャに抱きつかれた。 それはもう驚きまくるルイズ。 キュルケとタバサ、ギーシュは口を開けていた。 (うわーッ、やっちまったよ……でもいいよな、もうここに来る事はないし……) すっかり力の抜けたルイズを、ゼロ戦から放り投げた。 ルイズの体に、タバサの唱えたレビテーションがかかり、減速する。 異次元への帰り道へは、もう殆ど距離はない。 ゼロ戦が、日食に溶けていく様子が、やけにぼやけた視界からでも、見えた。 景色がスローモーションになり、自分が何を言っているのか、周りが何を言っているのかがよく理解できない。 絶望にも似た感情が体を駆け巡る。 手を伸ばす。日食に。 「私も……行くのよッ!」 「ちったぁ考えろよ、こっち来たらもうキュルケたちと会えねーかも知れねーんだぞッ!お前は元々『ここ』の人間だッ!」 「それでも……主人を置いていく使い魔なんて!」 「やめろ、来るなルイ……」 暫くの静寂が、訪れる。 キュルケはため息を吐いて、タバサは、なんともない様に本を読んでいる。誤魔化しているだけかも知れないが。 デルフリンガーまで落ちてくる。シルフィードは華麗に回避した。 「ホント、ルイズ、あんたは友達思いじゃないわね。あんな事言うなんて」 返事は、返ってこない。 このタルブに居る全員の人々が、終わる日食を見つめていた。 「……頑張んなさいよ?」 それだけ、呟いた。 第3章『イタリアまでは何メイル?』 完 To Be continued...『?』