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石村貞夫(1994)『すぐわかる統計処理』(東京図書)は、 卑屈なくらいマニュアルに徹した本。 『どの統計処理を使えばよいのか、すぐわかる本がほしい』という要望にこたえてくれる。「自分の調査対象や研究対象についてのデータを集めたら、それはこの本の目次にもなっている15のパターンのどれかに必ずあてはまる。あとはそのページを開き、データに合った統計処理の中から、自分の目的に合ったものを探すだけでよい」というシロモノ。 データを集める前に,どんな統計処理をするかも含めてあらかじめ決めておくのが全うなやり方だと思うが,そういうタテマエは抜きにして,とにかく抱えた(集まってしまった)データを処理する方法を,「パターン合わせ」で教えてくれる。 パターン1 パターン2? パターン3? 変量1種類グループ1 変量1種類グループ2 変量1種類グループ3以上 パターン4? パターン5? 変量1種類対応したグループ2 変量1種類対応したグループ3以上 パターン6? パターン7? 変量2種類グループ1 変量3種類以上グループ1 パターン8? パターン9? 変量2種類グループ2 変量2種類グループ3以上 パターン10? パターン11? カテゴリー2 カテゴリー2×2 パターン12? パターン13? パターン14? カテゴリー3以上 カテゴリー2×3以上 カテゴリー3以上×3以上 パターン15? カテゴリー3以上×3以上、対応したグループ3以上 この本の例題を統計環境Rでなぞってみる。 「データはどんな形の表にまとまってるか/まとめることができるか」からはじめて,「どの統計処理を選べばいいか」「それだったらRで何をすればいいか」に導いてくれるものになるだろう。 さらに親切なものを作るとすれば,東京図書のSPSSの本みたいに「社会調査・経済分析のためのSPSSによる統計処理」「臨床心理・精神医学のためのSPSSによる統計処理」「建築デザイン・福祉心理のためのSPSSによる統計処理」「健康・スポーツ科学のためのSPSSによる統計解析入門」などなど,業界別/用途別にRの使い方を解説したものがあればいいのかもしれないが(なにしろ「すぐわかるSPSSによるアンケートのコレスポンデンス分析」なんて本まであるのだ。学校でSPSSがただで使えて,とりあえず本一冊買ってくれば卒論が書けて,あとは一生統計なんて触れもしない,というマスなニーズに応えている),とりあえず「ウルトラ・ビギナーのためのSPSSによる統計解析入門」みたいなもののR版ができれば,よしとする。 もっともデータを集めてから,統計処理のことを考える人は,マウスでクリックするだけで統計処理できるソフトを選ぶのかもしれないけれど(と決め付けるのは過度の一般化だろう)。 下記のサイトを大いに参考にした。というより実質的には「切り貼りした」という方が正確な気がする。 統計処理の羅針盤 http //phi.med.gunma-u.ac.jp/swtips/compass.html まとめ関数 http //phi.med.gunma-u.ac.jp/swtips/sumfunc.html 統計解析用フリーソフト・R-Tips http //cse.naro.affrc.go.jp/takezawa/r-tips/r.html Rによる統計処理 http //aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/
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出席表 出欠についてのデータをまとめます。 メンバー別出席表 本放送以外 回 放送日 種 清水 嗣永 徳永 須藤 夏焼 石村 熊井 菅谷 ゲスト K太郎 レコメン! 2004/03/17 前 ○ ○ 欠 ○ ○ ○ ○ ○ ○ レコメン! 2004/04/13 前 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 課外授業編?1 2004/06/00 CD 課外授業編?2 2004/06/00 CD 真夏の登校日? 2005/08/29 公録 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 後藤真希/美勇伝/矢口真里 ○ 本放送 回 放送日 種 清水 嗣永 徳永 須藤 夏焼 石村 熊井 菅谷 ゲスト K太郎 第1回? 2004/03/30 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第2回? 2004/04/06 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第3回? 2004/04/13 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第4回? 2004/04/20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第5回? 2004/04/27 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第6回? 2004/05/04 ○ ○ ○ ○ ○ 第7回? 2004/05/11 ○ ○ ○ ○ ○ 第8回? 2004/05/18 ○ ○ ○ ○ ○ 第9回? 2004/05/25 ○ ○ ○ ○ ○ 第10回? 2004/06/01 公録 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第11回? 2004/06/08 ○ ○ ○ ○ ○ 第12回? 2004/06/15 ○ ○ ○ ○ ○ 第13回? 2004/06/22 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 後藤真希 ○ 第14回? 2004/06/29 公録 ○ ○ 欠 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第15回? 2004/07/06 ○ ○ ○ ○ 後藤真希 ○ 第16回? 2004/07/13 ○ ○ ○ ○ ○ 第17回? 2004/07/20 ○ ○ ○ ○ ○ 第18回? 2004/07/27 ○ ○ ○ ○ メロン記念日 ○ 第19回? 2004/08/03 ○ ○ ○ ○ ○ 第20回? 2004/08/10 ○ ○ ○ ○ ○ 第21回? 2004/08/17 ○ ○ ○ ○ ダブルユー ○ 第22回? 2004/08/24 ○ ○ ○ ○ ダブルユー ○ 第23回? 2004/08/31 ○ ○ ○ ○ ○ 第24回? 2004/09/07 公録 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ダブルユー ○ 第25回? 2004/09/14 ○ ○ ○ ○ ○ 第26回? 2004/09/21 ○ ○ ○ ○ ○ 第27回? 2004/09/28 ○ ○ ○ ○ ○ 第28回? 2004/10/05 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 村上愛/鈴木愛理 ○ 第29回? 2004/10/12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 村上愛/鈴木愛理 ○ 第30回? 2004/10/19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (松浦亜弥/後藤真希/メロン記念日) ○ 第31回? 2004/10/26 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第32回? 2004/11/02 ○ ○ ○ ○ ○ 第33回? 2004/11/09 ○ ○ ○ ○ ○ 第34回? 2004/11/16 ○ ○ ○ ○ 松浦亜弥 ○ 第35回? 2004/11/23 ○ ○ ○ 鈴木愛理/岡井千聖 ○ 第36回? 2004/11/30 ○ ○ ○ ○ ○ 第37回? 2004/12/07 ○ ○ ○ ○ ○ 第38回? 2004/12/14 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第39回? 2004/12/21 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第40回? 2004/12/28 年末 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第41回? 2005/01/04 年始 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第42回? 2005/01/11 ○ ○ ○ ○ ○ 第43回? 2005/01/18 ○ ○ ○ ○ ○ 第44回? 2005/01/25 ○ ○ ○ ○ ○ 第45回? 2005/02/01 ○ ○ ○ ○ ○ 第46回? 2005/02/08 ○ ○ ○ ○ ○ 第47回? 2005/02/15 ○ ○ ○ ○ ダブルユー ○ 第48回? 2005/02/22 ○ ○ ○ ○ ダブルユー ○ 第49回? 2005/03/01 ○ ○ ○ ○ ○ 第50回? 2005/03/08 ○ ○ ○ ○ ○ 第51回? 2005/03/15 ○ ○ ○ ○ ○ 第52回? 2005/03/22 ○ ○ ○ ○ ○ 第53回? 2005/03/29 ○ ○ ○ ○ ○ 第54回? 2005/04/05 ○ ○ ○ ○ ○ 第55回? 2005/04/12 ○ ○ ○ ○ 安倍なつみ ○ 第56回? 2005/04/19 ○ ○ ○ ○ 安倍なつみ ○ 第57回? 2005/04/26 ○ ○ ○ ○ ○ 第58回? 2005/05/03 ○ ○ ○ ○ ○ 第59回? 2005/05/10 ○ ○ ○ ○ ○ 第60回? 2005/05/17 公録 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第61回? 2005/05/24 公録 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第62回? 2005/05/31 ○ ○ ○ ○ ○ 第63回? 2005/06/07 ○ ○ ○ ○ ○ 第64回? 2005/06/14 ○ ○ ○ ○ ○ 第65回? 2005/06/21 ○ ○ ○ ○ 後藤真希 ○ 第66回? 2005/06/28 ○ ○ ○ ○ 後藤真希 ○ 第67回? 2005/07/05 ○ ○ ○ ○ ○ 第68回? 2005/07/12 ○ ○ ○ ○ ○ 第69回? 2005/07/19 ○ ○ ○ ○ ○ 第70回? 2005/07/26 ○ ○ ○ ○ ○ 第71回? 2005/08/02 ○ ○ ○ ○ 欠 第72回? 2005/08/09 ○ ○ ○ ○ 欠 第73回? 2005/08/16 楽屋 ○ ○ ○ ○ ダブルユー 欠 第74回? 2005/08/23 楽屋 ○ ○ ○ ○ ダブルユー 欠 第75回? 2005/08/30 ○ ○ ○ ○ ○ 第76回? 2005/09/06 ○ ○ ○ ○ ○ 第77回? 2005/09/13 ○ ○ ○ ○ ○ 第78回? 2005/09/20 ○ ○ ○ ○ ○ 第79回? 2005/09/27 舞波 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第80回? 2005/10/04 ○ ○ ○ ○ ○ 第81回? 2005/10/11 ○ ○ ○ ○ ○ 第82回? 2005/10/18 ○ ○ ○ ○ (後藤真希) ○ 第83回? 2005/10/25 ○ ○ ○ ○ ○ 第84回? 2005/11/01 ○ ○ ○ ○ ○ 第85回? 2005/11/08 ○ ○ ○ ○ ○ 第86回? 2005/11/15 ○ ○ ○ ○ ○ 第87回? 2005/11/22 ○ ○ ○ ○ ○ 第88回? 2005/11/29 ○ ○ ○ ○ ○ 第89回? 2005/12/06 ○ ○ ○ ○ 後藤真希 欠 第90回? 2005/12/13 ○ ○ ○ ○ 後藤真希 欠 第91回? 2005/12/20 ○ ○ ○ ○ 欠 第92回? 2005/12/27 年末 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 第93回? 2006/01/03 年始 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 日直、出席確認順 データ 出席率 出席回数 連続出席 連続欠席 最高連続欠席 徳永千奈美? 連続5回(第66回(2005/06/28)~第70回(2005/07/26)) 組み合わせ 同日録音
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第118話 鎌石村大乱戦 第二幕 ~龍を屠る赤き一撃~(後編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ (クソッ、視界がぼやける。腕にも力が入らない。結局俺はこのまま誰一人守り抜く事すら出来ずに死んじまうのか…。 クレス悪い…。あれだけ大口叩いて別れたってのに、アーチェの仇を討つ事も、この娘を守る事も出来なかった…) 思い返せばここ最近の記憶は後悔ばかりだ。 村を守れなかった事。再会したクレス達の足手纏いにしかなれていない事。 ここに来てから起きた分校での出来事。アーチェの死。 そしてこの女の子の事。 (せめてアシュトンだけは止めないと…。俺がこの娘に持ってきちまった災いだからな…。 くそっ、俺に力があれば…。何でもいい。俺に力をくれ。この娘を守れるだけの力をっ!) そう俺は願った。神様なんていないって思っている。それでも祈らずにはいられなかった。 心の底からこの女の子を守りたいとそう思った。その思いを遂げる為強く、強く願った。 そして、その願いが何かを起こした。 先程この女の子のデイパックから転がり落ちていた水晶玉が、俺の足元で赤く眩い光を放っている。 (これは…? あの娘の荷物から出てきた…。一体なんだろう?) 俺はそれに思わず手を伸ばした。触れた途端体に何かが流れ込んで来る。 その瞬間。今まで俺の頭の中にあった微かにしかない、 雲の様に掴み所の無い断片的なイメージが、一つ、また一つと、まるで実体を持つかの様に収束していった。 そう、これは特訓の中で浮かんでいた断片的なイメージ。これを習得できればきっとクレス達の助けになれる。 そう感じ、いつも掴もうとしては霞のように消えていってしまっていたその感覚が、今俺の中に確かに一つの形を成して存在していた。 触れていた水晶玉は光を失い、透明な水晶玉に戻っている。 今の現象が俺に何か影響を及ぼしたのかわからない。 わかる事は唯一つ。俺にはまだこの娘を守れる可能性が残されているという事。 矢を構える。 この技に必要なのは送った闘気が拡散しない様に矢に定着させる事。 そして、それを幾重にも重ね合わせ、ただ一点のみを貫く為に研ぎ澄ます。 そう、どんなに強固な鱗に覆われた龍でさえ、その一撃の下に屠る。 そんな意味を込めたこの技の名前は、 「『屠龍』! ぶちぬけぇええええ!!」 解き放たれた赤き必倒の一撃。 俺の想いの全てを乗せた一筋の光がアシュトンに襲い掛かった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「フギャー!(やばいぞアシュトン! 避けろ!)」 (出来ない。体が重くて思うように動かせない。『トライエース』の反動? 違う、もう呼吸は整えられてるし、さっきまでこんなに体が重いなんて事は無かった) ふと、前を見ると女の子と目が合った。その手に持っている杖が輝きを放っている。 (あの娘の紋章術? 重力操作の?) 「ギャース!(チッ、世話の焼ける宿主だ!)」 「フギャー!(全力で行く、踏ん張れよ!)」 ギョロとウルルンが同時に巨大なブレスを真っ直ぐ向かってくる赤い闘気を纏った矢に浴びせる。 それでもチェスターの放った矢は一向に止まる気配を見せない。二人の吐く炎と氷の渦を受けながらも真っ直ぐに迫ってきている。 体は未だにあの女の子の紋章術で動かせない。だから、せめて二人の応援をしようと彼らを見上げた時、僕は自分の目を疑った。 何故かはわからないけど二人の体が透けてきているのだ。 「二人共もう止めるんだ! このままだと君達が魔力を使い果たして消滅してしまうよ!」 こんな事今まで無かったけど、どう考えても今魔力を使い果たそうとしている事が原因なのは明白だ。 「ギャッ(何寝言を言っている)」 「ギャフッ(お前が死んだらどの道俺達も死ぬんだ。無駄口叩いてないで手伝え)」 「駄目だ、あの娘の紋章術の所為で体が動かないし剣も持ち上げられない」 尚も迫り来る赤い闘気を帯びた矢に懸命にブレスを放ち続ける二人。 それでも勢いを少し落とすのが精一杯。確実に僕らの命を奪おうとそれは迫って来ていた。 「ギャギャ(ウルルン)」 「ギャーフ(そうだな…)」 「どうしたのさ? 二人共?」 僕はいつもと違う雰囲気の声を発する二人に急に嫌な感覚を覚えた。 「ギャッギャギャフン(今まで楽しかったぞ。アシュトン)」 「ちょっと!? ウルルン? 何言ってるの?」 「ギャース(このままでは3人纏めてあの世行きだからな。お前だけでも生きろ、アシュトン)」 「ギョロ!? 何勝手な事を言ってるのさ?」 「ギャフフギャフー(なんだかんだ言って俺たちはお前の事が気に入ってるんだ)」 「ギャッギャー(だから、お前にはもっと生きていて欲しい)」 二人が信じられない事を言っている。僕を生かす為に死のうとしている。 止めなくちゃ、そんな事受け入れられるはずが無い。 「待ってよ! また僕を困らせる様な事を言って! お願いだからたまには言う事を聞いてよっ!」 「ギャー(いいか? これを凌ぎきれたら一旦退け。北西の方角から二人。まだ遠いが近づいてきている)」 「ギャッフ(ボーマンが味方を連れて来たとは考えにくい。『トライエース』を撃った疲労状態でこれ以上の戦闘は危険だ)」 もう二人の姿は目を凝らさなければ視認出来ない程に薄くなっている。 「ギョロ! ウルルン! 話を聞けよっ! 僕達はこれからもずっと3人でっ!」 つい語気が荒くなってしまったけど、二人が思い直してくれるならそんな事構わない。 「ギャフー(生きろよ)」 「ギャース(生きろよ)」 そう言い残し二人は更に吐き出すブレスを巨大にさせた。 僕らに迫る矢は漸く止まり、そして纏わせた闘気を拡散させるように巨大な爆発を起こした。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「これで決まって無ければ…」 もう駄目だ、立っているだけで精一杯だ。血と一緒に残された気力も流れ落ちてるみたいだ。 爆煙の先に人影が蹲っているのが見える。 突如として吹いた夜風が煙を晴らしてくれた。 ぼんやりとした視界で捕らえたアシュトンのシルエットに違和感を覚える。 (何かが違う…。いや、それよりも倒せたのか?) しかし、どうやら俺の願いはさっき叶えて貰った分で受付が終了したらしい。 フラリと立ち上がるその姿が見えた。でもおかしい。さっきより小さく見える。 完全に晴れた視界のおかげで漸くその違和感の正体に気付いた。 背中の龍がいないのだ。 「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」 突然叫び声を上げたアシュトンが続けて、ものすごい形相で俺を睨んできた。 「殺してやる! 次に会った時は必ず殺してやるっ! 二人が受けた苦痛を何倍にして味合わせてから殺してやるからなっ!!」 怨念の様なものを込めながら呟くアシュトンを中心に霧が発生したかと思うと、ややあってから霧が晴れた。 その時にはあいつはこの場から姿を消していた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ (なんとか追っ払えたみたいだな…) チェスターが張り詰めていた緊張を解いた瞬間、急に膝がガクリと崩れ落ちた。 前のめりに倒れる彼を受け止めたのは硬い地面の感触ではなく、 何か別のやわらかい、擬音で例えるならフニャンといった感触だった。 「だっ、大丈夫ですか?」 意識を失いかけていたチェスターはその呼びかけで瞼を再び開けた。 その彼の目に飛び込んできたのは (特盛りっ!) 何が特盛りなのかは敢えて説明するまでも無い。 「ごっ、ごめん! 大丈夫、大丈…」 慌てて飛び退いたものだからまたしてもグラリときてしまう。 再び倒れようとするチェスターを受け止めようとしたソフィアだったが、 散らばった瓦礫に躓いてしまい、チェスターを支えきる事は出来ず二人仲良く転倒してしまった。 「ホントッ、ごめん。もう大丈夫だから゛!」 意図せずソフィアを押し倒すような形になってしまったチェスター。 そんな彼の眼前に広がった光景は童顔巨乳美少女のあられもない姿。 激しい戦闘の末所々破けてしまっているストッキング。 チラリと白い下着が見える様に捲くれ上がったミニスカート。 そして、先ほど彼を受け止めた豊かな胸。 その周囲の布地はアシュトンの『ハリケーンスラッシュ』やら何やらを受けて白い肌や下着が見え隠れしている。 更に、チェスターは健全な17歳男子である。目を逸らそうとしてもどうしてもチラチラとそれらに目が行ってしまう。 そう、彼は将来的には仲間内から『スケベだいまおう』というありがたい称号を賜る身。 そんな彼の男としての悲しい性がそうさせるのであった。 (イカン鼻血が…) そして、彼は昏倒した。 ただでさえ脇腹に穴が開いて血が足りない状況だというのに、余計なところからも出血してしまったのだから無理も無い。 チェスター・バークライト享年17歳出血多量にて死亡 【チェスター・バークライト死亡】 ○●○●○●○●○●○●○●○● (ここは…?) 俺はやけに眩しい所に寝転がっていた。 起き上がると鼻からツツーっと鼻血が垂れて来るのを感じ取ったので素早く袖で拭った。 (おかしい、さっきまで夜だったのに…。しかもさっきの女の子がいない) 「チェスターさん」 背後から聞き覚えのある声に呼びかけられた。俺は立ち上がって声の主の方に向き直った。 「お久しぶりです。お元気にしてましたか?」 そう言って礼儀正しい一礼と共に優しい笑顔を俺に向けたのは 「ミント? ミントじゃないか!?」 「はい」 そう、目の前にいるのはサラリと流れるような長い金髪と、聖母の様な微笑みを併せ持つ女の子。 どこからどう見てもあのミントだ。 そして、その横には栗色の髪をした小さな女の子が立っている。 その女の子は俺と目が合うと小さな会釈をしてきた。 俺はその会釈の返答として軽く微笑み返した後に、俺の中に湧き出た疑問をミントにぶつけた。 「どうして死んだミントが俺の前に? 待てよ? もしかして、俺死んじまったのか?」 錯乱する俺の質問に首を左右に振るミント。 「いいえ、チェスターさんはまだ生きていますよ。ただ、近くを通りかかるって話を伺ったものですから。一言挨拶を、と思いまして。 それと、どうしてもあなたに会いたいという人を連れてきました」 そう言ってミントは俺の視界から外れるように横に移動した。 ミントの背後に隠れていた人物が俺の目の前に現れた。 見間違うはずも無い。アイツの姿がそこにはあった。 ピンク色の髪をポニーテールに纏め、その髪と同じ色をした瞳でいつも挑みかかるように睨んできたアイツだ。 「アーチェ!」 アーチェに歩み寄る。話したい事がいっぱいあった。沖木島では再会して直ぐクロードに殺されちまったから。 だけど急に現れるものだから何を話せばいいかわからなくなっちまった。 よく見るとアーチェは俯いて小刻みに震えている。 そうかそうか。俺と会えてお前も嬉しいのか。こういうところはやっぱりかわいいなと思ってしまう。 「アーチェ…」 ズドム! 呼びかけながら一歩踏み出した俺の顔面にアーチェの鉄拳が炸裂した。 2HIT! 3HIT! 「何よ! 何よ! ちょっとあの娘がかわいいからってデレデレしてっ!」 4HIT! 5HIT! 6HIT! 「そんなに大きいのがいいのか!? 大きいのがいいのかぁー!!」 7HIT 8HIT! 9HIT! 「このスケベだいまおう! チェスターなんかーっ!」 訳もわからず連打を浴びた俺はグロッキー状態。頭の周りをヒヨコ達がくるくると回っている。 「巨乳の角に頭をぶつけて死んじゃえー!!」 10HIT! アーチェのアッパーカットが俺の顎にクリーンヒット。俺はマットの上に沈んだ。 「しばらくこっち来んな! 行こっ! すずちゃん! ミント!」 アーチェはそう叫び踵を返すと、ミントの傍らにいた少女を伴って光の中へと消えていった。 「あっ! 待って下さいアーチェさん。それではチェスターさんごきげんよう。クレスさんとクラースさんにも宜しくお伝え下さい」 (えっ!? ちょっとミント! この扱いは酷くないっすか?) そうして俺は、この眩しい真っ白な世界の中で暗闇へと落ちていった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ってか、待てアーチェ! 巨乳に角なんてないぞ!!」 アーチェに向けて手を伸ばした俺の手は擬音にしてフニュンといった感触のモノを掴んだ。 【チェスター・バークライト生存確認】 次第に覚醒していく意識。今俺の右手に掴んでいるモノの正体を知覚するのに2秒程かかった。 どうやら俺はさっき助けた女の子に膝枕されている状態な様だ。 そして、伸ばした手は彼女の豊かな胸を下から持ち上げている様な格好になっていた。 「キャアッ!」「うわぁ、ごめん!」 慌ててその場から飛び退く俺。しまった。また急に動いちまったら。 「って、あれ? 傷が塞がっている」 「あの…、うなされていた様ですけど大丈夫ですか?」 胸を抱きかかえ、ちょっと涙目になりつつ上目遣いで俺に尋ねてきた。 (何だこれは? 反則だろ…) 「いや! もう! ホント大丈夫だから。それよりも君が傷を治してくれたのか?」 「はい。これを使って」 そう言って彼女はなにやら複雑な構造をした金属の塊を俺に見せてきた。 「もうエネルギーが切れちゃったから使えないけど、まだ痛みますか?」 傷はもう痛まない。服を捲くって確認してみたが綺麗に傷が塞がっている。 (どういった原理か判らないけど、きっとミントの法術を貯めこんでおける道具かなんかなんだろう。っとそれよりも) 「なぁ、君に聞きたい事があるんだ」 突然まじめな顔になった俺にこの娘も表情を強張らせる。 「君言ったよね。金髪の女の子を殺したって。アシュトンから君を守ったけど、事と次第によっては君を…」 殺す。そう続けようとしたが、どうしてもその続きは声に出せなかった。 命がけで守った娘だからだろうか。それとも、ずっとそばにいる長髪の男を守りながら戦っていた姿を見た所為だろうか。 不思議とこの娘が理由も無くあんな惨い殺し方をする訳が無いという確信があった。 少女は目を伏せポツポツと言葉を紡いでいく。 「多分あなたが言っている女の子は私達との戦いで負った傷が原因で亡くなったんだと思います。 でも、そうするしかなかったんです。でなければ私達は皆あの子に殺されていた…」 「ちょっと待ってくれ! あの女の子に? だって君達はそこの男の人と、 もう一人の金髪の男の人も含めて3人もいるじゃないか! それがあの子一人に?」 「そうだ! クリフさん! あの人はとても強いからきっと大丈夫だとは思うけれど、やっぱり心配。助けに行かなくちゃ」 そう言ってこの女の子は横たわる男を背負おうとして 「キャッ!」 つぶれた。 「おいおい、大丈夫か? 君の体格でそいつをおぶってくなんて無理だ。 それよりもさっきの続きを聞かせてくれ。納得できたら俺も手を貸すから」 男の下敷きになったこの娘を引っ張り出して、服についたホコリを払ってやった。 別にセクハラ目的とかそんなんじゃないんだからな。勘違いすんなよ。 「すみません。ありがとうございます。それでは続きですけれど…」 こうして彼女は自分達と金髪の少女との間に何があったのかを俺に話してくれた。 【D-5/深夜】 【ソフィア・エスティード】[MP残量:10%] [状態:疲労中] [装備:クラップロッド、フェアリィリング、アクアリング、ミュリンの指輪のネックレス@VP2] [道具:ドラゴンオーブ、魔剣グラム、レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:レナス@ルーファスを守る] [思考2:クリフと合流する] [思考3:フェイトを探す] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:自分の知り合いを探す] [思考6:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [思考7:レザードを警戒] [思考8:チェスターを信頼] [備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています] [備考2:ヒールユニット@SO3を消費しました] 【チェスター・バークライト】[MP残量:50%] [状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)] [装備:光弓シルヴァン・ボウ@VP、矢×15本、パラライチェック@SO2] [道具:チサトのメモ、アーチェのホウキ、レーザーウェポン@SO3、荷物一式] [行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)] [思考1:クロードを見つけ出し、絶対に復讐する] [思考2:このままソフィアについて行く] [備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません] [備考2:クレスに対して感じていた劣等感や無力感などはソフィアを守り抜けた事で無くなりました] [備考3:スーパーボールを消費しました] [備考4:レーザーウェポンを回収しました] 【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:40%] [状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中] [装備:連弓ダブルクロス、矢×27本] [道具:なし] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:???] [思考2:ルシオの保護] [思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:協力してくれる人物を探す] [思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます] [備考2:ルーファスの意識はほとんどありません] [備考3:半日以内にレナスの意識で目を覚まします] [現在位置:D-5東部] ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「一体何が起きたっていうんだ?」 E-4を北東方向に突っ切ろうとしていたクロードが、目的地の確認をしようと探知機にスイッチを入れた時だった。 そこに表示されていたのは六つ集まっていた反応の内二つが北西に移動していた。 そしてそれを追う様にして少し離れた位置にあった光点も移動している。 他の三つの光点は位置を変えていない事から何かあった事は明確であった。 それを確認したのが一時間位前の出来事。 そしてD-5に足を踏み入れたので、再確認の為に探知機を起動したクロードは目的地に更なる変化が訪れている事に気が付いた。 「近くに誰かいる?」 目的地としていた三つの反応があった場所には現在二つしか反応が無かった。 そして、おそらくさっきまでその地点にいたと思われる反応が自分の直ぐ近くにあるのだ。 (何があったのかを聞かなくちゃ) 探知機の反応を頼りに周辺を探すクロード。 「この辺りの筈なんだけれど…。うわっ!」 夜の暗闇の所為で足元にあった何かに躓いてしまった。 やけに重たい感触だったのだが、今のは一体なんだろうと振り向いたクロードは驚いた。 「ちょっ!? 君大丈夫? って、アシュトンじゃないか!? しっかりしろアシュトン!」 アシュトンを助け起こし、肩を揺さぶる。 「うっ、クロード?」 目を開けたアシュトンと目が合った。何故倒れていたのか? とか、平瀬村に向かったんじゃないのか? 等の疑問が浮かんだが、 まず最初にクロードはアシュトンの体の変化について尋ねた。 「アシュトン。ギョロとウルルンはどうした?」 二人の名を呼ばれたアシュトンその身を強張らせる。 「…。あいつらが…」 今までクロードが見たことも無い暗い怒りを秘めた表情のアシュトンが先程の戦いで起きた出来事を語り始めた。 「…」 アシュトンの語った内容を聞き終えたクロードは言葉を失った。 「僕行かなくちゃ…」 フラリと立ち上がったアシュトンを慌ててクロードが止める。 「行かなくちゃってどこに? そんな体でどうするつもりなんだよ?」 「決まってるじゃないか、二人の敵討ちだよ。僕はあいつらが許せないんだよ。僕から大切な友達を奪っていったあいつらが。 あの時は二人が逃げろって言ったから逃げてきたけどさ、このままだとあいつらがどこかに行ってしまうからね。 少し休んで疲れも取れたから大丈夫だよ」 「アシュトン、君がどれだけ悲しいのかはよくわかるよ。でもね、敵討ちなんかしてもあの二人は生き返らないんだよ」 (そう、ここで死んでしまった皆も…) 「そんな事はわかってるよ! でもあの二人の為に何かして上げられる事がこれ位しかないんだ! だから僕は行くよ。クロードが止めたって無駄だからね」 それを聞いたクロードは少し悲しげな顔をした。 (あの温厚なアシュトンがこんなにも憎しみに囚われてしまうなんて…。 それにねアシュトン。ギョロとウルルンが命がけで守ろうとした君に対して望む事は、敵討ちとかそんな事じゃなくて、 二人はなにがあろうと君に生き抜いて欲しいって思っているんじゃないのかな?) そう口に出そうとしたがクロードはやめておいた。 今の彼にはきっと何を言っても心に届かない。そう判断したのだ。 だから変わりに 「わかった。僕も行くよ。敵討ちを認めることは出来ないけど、そんな危険な連中を野放しにするなんて出来ない」 アシュトンに対して同行を求めた。 こんなにも危うい状態の友人を放っておくなんて事は彼には出来なかったし、 近くにいればアシュトンの無茶を止める事が出来るかもしれないと思ったからだ。 「そう…。じゃあついて来て、こっちだよ」 アシュトンは剣を掴んで虚ろな眼をしながら北の方向へと歩みだした。 クロードも荷物を纏めてアシュトンの後について行く。 これが良くない兆候だとはわかってはいたものの、今のクロードにはどうする事も出来なかった。 【D-5/黎明】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)] [装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード] [道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:アシュトンと共に行動] [思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考3:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい] [思考4:ブレア、ロキとも鎌石村で合流] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:アシュトンの説明によりソフィアとチェスターは殺し合いに乗っていると思っています] 【アシュトン・アンカース】[MP残量:60%(最大130%)] [状態:疲労中、激しい怒り、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲・ギョロ、ウルルン消滅] [装備:アヴクール、ルナタブレット、マジックミスト] [道具:無稼働銃、物質透化ユニット、首輪×3、荷物一式×2] [行動方針:第4回放送頃に鎌石村でクロード・プリシスに再会し、プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考2:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考3:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] [備考1:ギョロとウルルンを殺された怒りが原因で一時的に思考1しか考えられなくなっています] [思考2:イグニートソード@SO3は破損しました] [現在位置:D-5南西部] 第118話← 戻る →|―| 前へ キャラ追跡表 次へ 第118話 チェスター ― 第118話 ソフィア ― 第118話 レナス@ルーファス ― 第118話 クロード ― 第118話 アシュトン ―
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前へ 怒りと興奮で、頭がクラクラする。ついこの前までは舞波さんを応援するような気持ちだったのに、我ながら感情的だなとは思うけれど、口が勝手にベラベラと言葉をつむいでいく。 「お嬢様が声出なくなっちゃったの、別に舞波さんのせいだなんて思ってないよ。でも、舞波さんが傍にいれば治るかもしれないでしょ。どうして一緒にいてあげないの?」 「・・・大丈夫です。あの症状はちゃんと治まりますから」 「それも、未来が見えてるっていうの?でも100%じゃないんでしょ?どうしてそんなにここを出て行くことにこだわるの?・・・舞波さん、冷たいよ」 舞波さんの声はあくまで冷静で、そのことが余計に私を苛立たせる。どうして私の方が焦っているのか、舞波さんは淡々としていられるのか、全然理解できなかった。 “旦那様が、明日戻られると・・・” “主治医の診察の時間が・・・” ドアの外で、他のメイドさんや執事さんが話している声が耳に入るけれど、どこか遠い世界の出来事のように感じられた。まるで、このお屋敷には私たちしか存在していないかのように。 「めぐさん」 舞波さんの真っ黒な瞳は穏やかに光って、暗い室内の中でも、私をじっと見つめているのがはっきりわかった。 「私は、お嬢様の近くにいないほうがいいんです。」 しばらくして、舞波さんが発したその言葉に、私は心臓を突き刺されたような痛みを覚えた。 「・・・どういうこと」 「今のお嬢様は、私のことしか見えていないから。私がそばにいる限り、これから何度でも同じことが起きると思うんです。」 息が詰まって、返事ができない。私はその先に続くであろう言葉を、もう知っていた。 “私とばっかりいることで、みやびの世界が・・・” 「私の存在がお嬢様の世界が狭めてしまうから」 “私たち、いつまでも今のままじゃいられないんだよ” 「お嬢様だって、いつまでも、お屋敷から出ないわけにはいかないですし」 “私たち、もっと自立した上でまた・・・” 「一度離れてみて、お互いの生活基盤ができたら、また・・・」 「やめて!!」 私は怒鳴るように、大声で舞波さんの言葉を遮った。ぴたりと口をつぐんだ舞波さんの顔を、見ることはできなかった。目を合わせたら、私の心が砕けてしまいそうだったから。 私は乱暴に舞波さんの肩を離すと、ベッドから飛び降りた。 「・・めぐさん」 「・・・舞波さんは、お嬢様のためだって思ってるのかもしれないけど。そうやって勝手に決めちゃったことが間違ってたら、取り返しのつかないことになるんだから。」 そのまま、ドアを閉めて小走りに非常口へ向かう。ドアを開けて、鍵を閉めて。ズルズルと扉にもたれかかって、私はもう一歩も動けなくなってしまった。 「みやび・・・」 やっと、私は自分がみやびに投げつけた言葉の重さを理解した。さっき舞波さんにぶつけた言葉は、自分自身に投げつけたようなものだった。 「ごめん」 唇が震えた。 「ごめんね、みやび」 ずっと、口にするのを避けていた大好きな友達の名前。思い出すのは、くだらないことで一緒に笑いあっていた頃のみやび。隣にいられなくなったときから、心に開いたままの大きな穴に、強い風が吹き抜けていったように胸が痛んだ。 私は誰よりも舞波さんの気持ちがわかる。わかるからこそ、私と同じ過ちを繰り返してほしくなかった。あんな形で友達を失うのは、もう私一人でじゅうぶん。 舞波さんは、優しそうな外見のわりに、かなり頑固者なんだと思う。お嬢様が弱れば弱るほど、舞波さんはお嬢様を引き離して、袋小路に迷い込んでしまう。私にはそれが、手にとるようにわかる。 「でも、言い過ぎちゃったかな・・・」 あまりにも自分のことと重なるから、余計にもどかしくて、ついキツイことを言ってしまった。舞波さんがどれだけお嬢様のことを思っているのか、わかっていたのに。 実際、このまま舞波さんが残ったところで、お嬢様の声が元に戻るなんて保証はどこにもない。だけど私は、自分の過去の過ちを、舞波さんに払拭してほしかった。 突き放すんじゃなくて、寄り添うことが正しかったと教えられたかった。それを目の当たりにし、苦しむことが、みやびへの贖罪になると思っていたのかもしれない。また自分の勝手な思いで、人を傷つけてしまった。 「もー・・・なんで私ってこうなんだろう・・・」 新鮮な外の空気に晒されていると、少しずつ頭が落ち着いてくる。私がバカだったって、よく考えればわかる。何でもずけずけ言いたい放題言った後後悔するなんて、子供か私は。 「すー、はー。すー、はー。・・・よしっ」 何か言う前に、一歩立ち止まって考える。考えるのが間に合わなかったら、後でもいいから思い返す。大きく深呼吸。それで、悪いと思ったらすぐに謝る。 案外へこみやすい私のために、みやびが考えてくれた反省の手引きは、まだまだ有効だった。 地面にべったりへばりついていたおしりを上げて、気合を入れて体を起こす。 舞波さんに謝る。それが、今すぐにやらなきゃいけないことだと思う。 私と舞波さんは違う。どんなに似た状況にあったとしても、舞波さんには舞波さんのやりかたや考え方があるんだから、自分の正義を押し付けたりするのはよくない。 メイドルームの扉は、うっすら開いていた。・・・中から光は漏れていない。さっき2人でいた時より、日が落ちてもっと暗くなっているのに。 さほど広くない部屋の奥、満月の覗く出窓に、舞波さんは深く腰掛けていた。何となく声を掛けるのがためらわれて、私はその静かな横顔に見入った。 「・・・ね」 「え・・?」 ふいに、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声をキャッチしたような気がして、少しだけ足を進めた。 「・・・めんね・・・・」 「舞波さん・・」 「ごめんね、千聖・・・」 舞波さんは、泣いていた。表情も変えず、ただ静かに、ごめんねと繰り返しながら。 こういう悲しみ方もあるんだ、と初めて知った。 私のように、悲しみに怒りを乗せてぶつけるわけでもなく、お嬢様のように、打ちのめされて身体を損なってしまうわけでもなく、穏やかで、どこまでも深い悲壮。 私は言葉を失って、茫然と立ち尽くした。 「・・・めぐさん」 5分か、それとも1時間か。 時間の感覚も忘れて、月明かりの下の舞波さんを見つめていると、漸くその顔が、私の方に向けられた。 不思議なことに、もう涙は頬を伝っていなかった。いつもの舞波さんの顔。仄かに微笑みが浮かんでいるようにすらみえる。 「あ・・・あのね、さっき、あの・・・」 私らしくもない。口ごもったり言いよどんだりすることなんてめったにないのに、まるで心の中を見透かされているみたいで、心がざわついた。 「ごめんなさいね、さっき。言いにくいことを言わせてしまって」 ちょっと眉を寄せて、申し訳なさそうに頭を下げる舞波さん。私はあわてて首を横に振った。 「えっ!そんな、全然。謝らなければいけないのは私のほうだから。私本当、頭と口が直結してるってみや・・・友達にも言われてるぐらいで。だから、なんていうか、さっきのは別に嘘の気持ちじゃないけど・・・・とにかく、ごめんなさい!私・・・」 尚もベラベラと喋り続けていると、胸の辺りで柔らかい感触がぶつかった。 「うわっわっ」 舞波さんが、抱きついてきていた。あんまりこういう愛情表現を受けたことがない私は、手の置き場に困って、舞波さんの腰のあたりで両手をぎこちなく組んだ。付き合いたてのカップルか。 「私、ちゃんと千聖お嬢様のこと、好きです」 「うん、わかりました。その言葉が聞けてよかったです」 舞波さんが出て行くまで、あと3日。結局、ここに残るとは言ってくれなかったけれど、私の心は少し軽くなった。 次へ TOP
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前へ その夜、私はさっそく舞波さんにメールを送ることにした。 千聖ちゃんの拒絶は気になるところだけれど、やっぱりあそこで働かせてもらいたい。 文章を作るのはあんまり得意じゃないけれど、なるべく失礼のないよう推敲して、送信。 「おおっ」 数分後、手の中のケータイから、メール受信ではなくて、着信音が鳴り響いた。反射的に通話ボタンを押す。 「もしもし?」 “あ・・・夜分にすみません。私、今日お会いした・・・” 「舞波さん!?」 “はい。先程のメールに電話番号も書いていらっしゃったので、電話で連絡させていただきました。 先程は、追い返すような形になってしまってすみませんでした。それで、できたらもう一度、お屋敷の方へ着ていただきたいのですが・・・メールの方にお書きになっていた件についてもお話ししたいので” ラッキー!私はベッドの上で姿勢を直して、「はい、もちろん!すぐにお伺いします!明日にでも!」とやたらすがすがしい声で返事を返した。 “よかった。では、明日の13:00に・・・” 舞波さんはお屋敷までの道のりを、丁寧に説明してくれた。これなら迷わないですむかもしれない。 “舞波ちゃん?どなたとお話しているの?” そのまま少し雑談をしていると、ふいに、今日一日ですっかり耳になじんだ声が受話器越しに聞こえてきた。千聖ちゃんだ。 “ええ、ちょっと。すみません・・・では、また。” すると舞波さんは、ほんのり慌てた様子で、電話を切っってしまった。 こんな時間までべったりとは・・・千聖ちゃんは、そんなに舞波さんのことが好きなのか。さっきの豹変っぷりも、私に舞波さんを取られてしまうんじゃないかって心配からだったのかもしれない。 あんまり一人の人間に固執しすぎるというのも考えものだけど・・・そんなことを私が言う権利はないわけで。とりあえず、不安にさせてしまったことは明日謝ろう。 遠足の前の日みたいにドキドキがとまらないけれど、とりあえず私はベッドに入ることにした。 翌日。 今日は面接も兼ねていると予想して、私は私服の中でも一番まじめそうに見える、紺色のアンサンブルを選んだ。 昨日と同じバス停で降りて、歩くこと15分。少しばかり迷ったものの、舞波さんのおかげで私は無事にお屋敷へとたどり着くことができた。 「めぐさん。」 門扉の前に、舞波さん。と、千聖ちゃんが待っていてくれた。 「こんにちは。」 「こんにちは。今日は暑いですね。」 「ふんっ」 千聖ちゃんに笑いかけてみるも、ぷいっと横を向かれてしまう。 「千聖は舞波ちゃんがめぐみさんをお出迎えするって言うから着いてきただけよ。」 「へいへい。わかってますがな。千聖はんはほんまに舞波はんのこと大好きでんなー」 「まあ!何て失礼な!」 その口調に若干カチンときて適当な返事を返すと、千聖ちゃんの眉がぴくんとあがった。 「・・・・ふふふ」 そんな私たちのやりとりを見て、舞波さんはまた楽しげに笑った。 「まあ、立ち話もなんですから。昼食もご用意してあります、中でお話しましょう。お嬢様、よろしいですね」 「・・・わかったわ。」 3人並んでお屋敷へ向かう途中も、千聖ちゃんは舞波さんの横をがっちりキープして離れない。 腕を組んだり寄り添ったりはしていないけれど、「舞波ちゃんの隣は誰にも譲らないわ」という無言のオーラをぎんぎんに放出している。 そんなに好きか、舞波ちゃんのことが。 じろじろ眺めていると、私の視線に気がついた千聖ちゃんが「あっかんべー」をしてきた。 このっ・・・むかつく! 私は一人っ子なせいか、こういうのをスルーする技術がない。さっそく「くるくるぱー」のジェスチャーをやり返すと、千聖ちゃんは悔しそうに地団太を踏んだ。 長い廊下を抜け、1階の奥にある食堂につくと、そこにはすでに三人分のお食事が並べてあった。 「どうぞ、お召し上がりになってください。」 実はすでに家でカレーを食べてきたのだけれど、これは別腹だろう。胃袋の中身はどこへやら、おなかがきゅるっと音を立てた。 「いただきまーす・・・」 ハーブチキンとチーズのクロワッサンサンド。ミネストローネ。シーフードサラダ。 料理人さんの腕もさることながら、きっと食材も良いのだろう。どれもすごくおいしい。 「お口に合うかしら?」 千聖ちゃんが上品な手つきでサンドイッチを口にしながら、首を傾げて話しかけてきた。 「ええ、とってもおいしい。毎日こんなお食事だなんて、うらやましいな。とかいってw」 「うふふ。それはよかったわ。」 さっきまでの低レベル争いはどこへやら、千聖ちゃんはにこにこ笑顔に早がわり。 笑ったり、泣いたり、怒ったり。千聖ちゃんは感情表現がストレートな子だ。 「・・・さて、めぐ・・・村上さん。」 一通り食事が済んで、デザートの器が下げられたタイミングで、舞波さんが表情を真顔に戻した。 「昨日おっしゃっていた件ですが、おじさま・・・じゃなくて、旦那様にお伺いしたところ、先ずは試用期間という形で雇うのなら、と許可がおりました。」 マジですか!と小躍りしそうになるのを抑えて、私は努めて冷静に「ありがとうございます。」と頭を下げた。 ふと、千聖ちゃんの方を見ると、今日はもう何も言わなかったけれど、やっぱり不快そうな顔をしている。 「・・・舞波ちゃんが、今日は何も言わないでっておっしゃるから、千聖は黙っているだけよ。」 意外と察しのいい千聖ちゃんは、またも私の視線から、言いたいことを悟ってくれた。 「・・・あの、千聖ちゃ・・・様は、私のことが嫌いですか?」 「えっ」 就労許可がおりたとはいえ、それははっきりしておかなければいけないことだ。 「ほら、私けっこうずけずけものを言っちゃうところがあるので。もちろんそういうところは改善していきたいんで、その上でこちらで働かせてもらいたいと思うんですけど。 でも、お嬢様が私のことをお気に召さないのであれば、それはもう直す以前の問題ですし。」 千聖ちゃん、もとい千聖お嬢様は私の問いかけに瞳を揺らして「・・・違うわ」とゆるゆる首を振った。 「違う?」 「そうじゃないの。私はめぐみさんが嫌いなわけではなくて・・・・もう、いいわ。職が見つからなくて困っていらっしゃるのでしょう?お屋敷で働かせて差し上げます。」 なんて上から目線!と突っ込もうと思ったけれど、私はその表情を見て固まった。 苦しそうで、辛そうで、今にも泣き出しそうな顔。まるで、この世の悲しみを一身に背負っているかのような・・・ 「舞波ちゃん、私、部屋に戻るわ。後のことはお願いします。・・少し、一人になりたいわ」 「わかりました。」 そんな状態のお嬢様を見ても、舞波さんはいつものふんわりした雰囲気を崩さない。 やがてお嬢様が食堂を出て、廊下からその足音が完全に消えてから、舞波さんはくるっと私のほうへ向き直った。 「今日はこの後、時間ありますか?お屋敷と、学生寮を案内したいんですけれど。」 次へ TOP
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小さいときから勉強ばかりしていた舞波にとって、自分がアイドルになるなんて夢のまた夢だったらしい。 「僕がたまたまテレビをつけた時、自分よりもちょっとお姉さんたちが歌って踊っていたんだ。それをみて、自分もやってみたいなんて思ってしまってさ。最初は馬鹿げてるとわかっていたんだけど、女装してみたら案外いけるかもって。お母さんも初めはすごく驚いていたなぁ。結局、受かるわけないんだし、やってみようって言ってくれて受けてみたんだ。それで気づいたら、どんどんオーディションを進んでいって受かっちゃったってわけ」 オーディションからそんなに月日がたったわけでもないのに、舞波はとても懐かしそうに語ってくれた。 彼には何だか遠い日に夢をみていた頃が、幸せだったとでもいうように切ない表情をしている。 こういう時、私は話に聞き入って静かにしてしまうよりも大きいリアクションを取って反応をしたがる。 自分でも賑やかな方が私らしい気がするもん。 「そっか~舞波も千聖と同じってわけなんだ。あ、あのね、これは本当は皆には内緒なんだけど、千聖も男の子なんだって。だからね、舞波の話を聞いたときも他にもいたんだって意味で驚いたよ。うん、本当に」 千聖には内緒にしてね、って言われてはいたけど、舞波を信用してついしゃべってしまった。 言っておきますが別に私、嗣永桃子がおしゃべりな口の軽い女だからってわけじゃないんですからね。 「えぇと、千聖も男の子ってそれ本当?」 小学四年生の子供に似合わず、寂しそうな顔ばかりしていた舞波が、ここにきてようやく好奇心に満ちた表情をみせてくれた。 ぐいっと顔を近づけてきて、答えを聞くまでは決して帰さないとでも言いたげである。 こんな調子の舞波を見るのは初めてだったものだから、どう反応していいかわからず、首を縦に振るしか出来ない。 「そ、そっか~そうだったんだ。よかった~自分以外にも仲間がいたって嬉しいよ。桃子、ありがとう」 「ど、どういたしまして。本当はバラしちゃいけないんだろうけどさ、あははは」 「それくらい僕だって同じ立場だからわかるよ。平気、誰にも言わないよ。本人には確認してみるかもしれないけどさ」 これがきっかけかはわからないけど、舞波と千聖の仲は一気に縮まった。 千聖にとって、舞波は同じ夢をみた仲間であり、良い相談相手のお兄さんとなったみたいだ。 逆に舞波には、手をやかせるやんちゃで可愛い弟が出来たみたいなものだったらしい。 二人の仲良く遊んだり、勉強を教えてもらっている場面は本当の兄弟に見えて、微笑ましかった。 何かあるとすぐに舞波を見るのが当たり前になっていた私は、キャプテンに言われるまで自分がそこまでしていると気付けなかった。 「桃、ニヤニヤして何してるの?」 「う、うわぁぁ。え、や、やだなぁ~何でもないって。全然何もないからね。気にしないで」 「桃はダンス遅れてるんだから、ちゃんと練習するんだよ。」 キャプテンをうまく誤魔化しはしたものの、自分の中にある疑問が生まれてもいた。 あれ、私ってそんなにも舞波ばかり見ていたのだろうか?、と。 舞波をみて嬉しそうに観察している自分の顔が鏡に映し出される。 私ってば、舞波をこんな顔して観察してたんだ。 「バカバカ、そんな顔しないの。まるで舞波を好きみたいじゃん・・・好きみたいじゃなくて、好きなのかな?」 鏡に映る自分にそう問いかけても、答えはまるでなし。 自分と全く同じ動きをするもう一人の自分が映し出されるだけで、おとぎ話とはまるで違う。 可愛いって問いかけたわけじゃないんだから、答えてくれたっていいのに。 「桃、そんな顔してどうしたの? レッスンでついていけないところでもあったとか?」 「きゃ!! ま、舞波。お、驚かさないでよぉ。びっくりしたじゃん」 私はずっと背後から近づく舞波に気づかずに夢中で鏡と睨めっこをしていたようで、突然のことに驚いて悲鳴をあげた。 舞波も舞波で私が悲鳴をあげたものだから、つられて驚いている。 「ご、ごめん。驚かすつもりはなかったんだけどさ。鏡みて首傾げたりしてたから、どうしたのかなって」 「う、うん。いやぁ~鏡がたまには自分と別の動きしないかなって思ってさ。す、するわけないよね」 「うん。鏡はただ単に自分と同じ動きを映すだけだからね」 「だよね~」 もう自分でも笑うしかなかった。 まじまじと不思議なものをみる目を向けてくる舞波に、自分の気持ちを気づかれたくなかったから。 そう、私はこの時点で自分の気持ちに気づいてしまっていたんだと思う。 私は舞波を好きなんだってことを。 「千聖、さっきキスしたことは冗談として。舞美とのことは真剣なの?」 「い、いきなり何言うかな。真剣だよ」 千聖からおどけた調子が一気に抜けて、久々に真剣な顔がみられた。 真剣な顔になると、やっぱり男の子だけあって凛々しい。 こういうところでも全力投球できるなら、私と舞波のようにはならないかもしれない。 「何があっても好きでいられる?」 「な、何さ。何で桃ちゃん相手にそんなことを言わなきゃならないのさ」 「いいから、好きでいられるかどうか言いなさい。それによってはこっちも本気で応援するかどうか決められないじゃん」 「・・・わ、わかったよ。僕は何があっても舞美ちゃんを好きでいるよ」 私の真剣さが伝わったか、千聖も本音で話してくれた。 舞美を何があっても好きでいる、とは言葉にしてしまうとものすごく陳腐だ。 確かにカッコいいとは認めるのだけど、それも舞波とのことがなければの話だ。 私は既にこういう言葉が陳腐に聞こえてしまうような体験をし、そんなものに心躍るほど乙女でもない。 アイドルの仕事柄、そういった受け答えはする場合もあるにはある。 それはあくまでアイドル嗣永桃子であって、ホントのじぶんではない。 私だって女の子だから、千聖の言葉を信じてあげたい。 でも信じられないのは、自分たちは厳しい現実にぶつかって諦めた恋の先輩だからだ。 「本当に信じていいんだね?」 「うん」 「わかった。真剣なあんたに免じて、舞美に本気なのは信じてあげる」 「ありがとう、桃ちゃん」 「信じてあげる。ただし、あんたたちには今から話す二人にはなってほしくないの。私と舞波みたいには」 私は決心をしていた。 グループ内での恋愛をしてしまった舞美には、自分と同じ悲しい別れだけはしてほしくないから、全てを話そう。 千聖には舞美に悲しい思いをさせたくなんかなかったから。 ←前のページ 次のページ→
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結果発表2 『この手紙を読んでいるという事は結果の書いた紙を読んだという事でしょう。 フフフッ。何も書いてない白紙だった事に怒っていらっしゃるのかしら? 誰がどのチャーハンを作られたかは当然聞いて無いわ。唯……13日目のチャーハンは “あれ”でしたけど』 13日目と“あれ”という言葉に寮生達を除く六人が一斉に佐紀の方を見た。 当の本人は頭の上一杯に?を浮かべている様子だったけども……。 『あくまで結果に拘るのでしたら15日目に食べたチャーハンかしら。デザートに苺が 添えられたチャーハン』 「苺?」 「15日目って事は当然、私達じゃないよね」 「………舞波だよ」 「「「「「えっ?!」」」」」 「ももが舞波に連絡したの。ももと舞波はメル友だからね。千聖には言ってないけど」 「ねぇ、舞波…ちゃん? って誰?」 「あ、栞菜は会った事無かったっけ? お嬢様と血が繋がっていない遠い親戚だよ。 ……舞ちゃんが嫉妬する程、お嬢様は舞波さんに懐いてたなぁ」 「え・り・か・ちゃん! それは今言わなくてもいい事じゃん!」 「はいはい。でも舞波さんか…。それなら納得するなぁ」 「確かに。で、お嬢様からの手紙はそれで終わり?」 「待って。……あ、小さい字で続きが書いてある」 『P.S. 今度は私も参加したいわ。でも……もうチャーハンは止めて下さいね』 ◇ ◇ ◇ おまけ 「だって」 「じゃあ、次回のテーマは決まったね!」 「せ~~の」 「「「「「「「「「「「「「第2回 対抗! 炒飯キング決定戦!!」」」」」」」」」」」」」 ゾクッ 背筋に悪寒が走った様な感覚に首を傾げる千聖お嬢様。けれど然程気にした様子もなく 舞波へのメールを懸命に作成されています。 …………千聖お嬢様。次回も無事である事を祈ります。 リl|*´∀`l|从 ・ゥ・从ノソ*^ o゚)州´・ v・)(o・v・)ノk|‘-‘)<ど~~も 川´・_・リル* ’ー’リ从´∇`从从o゚ー゚从ノl∂_∂ ル川*^∇^)||州*‘ -‘リ<ありがとう リ|*‘ヮ‘)| 从 ’w’) リ ・一・リ<ございました~~♪ 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 結果発表2 『この手紙を読んでいるという事は結果の書いた紙を読んだという事でしょう。 フフフッ。何も書いてない白紙だった事に怒っていらっしゃるのかしら? 誰がどのチャーハンを作られたかは当然聞いて無いわ。唯……13日目のチャーハンは “あれ”でしたけど』 13日目と“あれ”という言葉に寮生達を除く六人が一斉に佐紀の方を見た。 当の本人は頭の上一杯に?を浮かべている様子だったけども……。 『あくまで結果に拘るのでしたら15日目に食べたチャーハンかしら。デザートに苺が 添えられたチャーハン』 「苺?」 「15日目って事は当然、私達じゃないよね」 「………舞波だよ」 「「「「「えっ?!」」」」」 「ももが舞波に連絡したの。ももと舞波はメル友だからね。千聖には言ってないけど」 「ねぇ、舞波…ちゃん? って誰?」 「あ、栞菜は会った事無かったっけ? お嬢様と血が繋がっていない遠い親戚だよ。 ……舞ちゃんが嫉妬する程、お嬢様は舞波さんに懐いてたなぁ」 「え・り・か・ちゃん! それは今言わなくてもいい事じゃん!」 「はいはい。でも舞波さんか…。それなら納得するなぁ」 「確かに。で、お嬢様からの手紙はそれで終わり?」 「待って。……あ、小さい字で続きが書いてある」 『P.S. 今度は私も参加したいわ。でも……もうチャーハンは止めて下さいね』 ◇ ◇ ◇ おまけ 「だって」 「じゃあ、次回のテーマは決まったね!」 「せ~~の」 「「「「「「「「「「「「「第2回 対抗! 炒飯キング決定戦!!」」」」」」」」」」」」」 ゾクッ 背筋に悪寒が走った様な感覚に首を傾げる千聖お嬢様。けれど然程気にした様子もなく 舞波へのメールを懸命に作成されています。 …………千聖お嬢様。次回も無事である事を祈ります。 リl|*´∀`l|从 ・ゥ・从ノソ*^ o゚)州´・ v・)(o・v・)ノk|‘-‘)<ど~~も 川´・_・リル* ’ー’リ从´∇`从从o゚ー゚从ノl∂_∂ ル川*^∇^)||州*‘ -‘リ<ありがとう リ|*‘ヮ‘)| 从 ’w’) リ ・一・リ<ございました~~♪ 次へ TOP
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前へ その冷たい感触は、気がつくと背中に回されていた。優しいコロンの香りが、私を包む。・・・お嬢様が、私を抱きしめていた。 あまり体の接触を好まないお嬢様の抱擁は、生まれたての動物の赤ちゃんがお母さんにしがみつくようにぎこちないものだった。 どうしていいのかわからなくて、私もお嬢様を抱き返そうとした。すると、お嬢様はするりと私の手を抜けて、今度はしゃがみこむ愛理さんの頭を抱え込むようにして抱いた。 「おじょう、さま・・・?」 次は、目一杯背伸びして舞美さんの首筋に顔を押し付ける。最後に、萩原さんの細い体に腕を巻きつけるように優しく包んだ。 声が出せない代わりに、せめて感謝の気持ちが伝わるようにと、苦手なスキンシップを試みてくれたお嬢様。 微笑んではいたけれど、その笑顔はどこか遠かった。淡くて、儚くて、触れたら壊れてしまうシャボン玉のようだと思った。 「・・・千聖」 眉をしかめた萩原さんが、体を離そうとするお嬢様の両腕を掴んで、無茶な体勢で抱きしめる。2人はベンチに倒れこんだ。 「だ、大丈夫ですか?舞、お嬢様・・・」 慌てて近寄る舞美さんに反応もせず、萩原さんはキツく目を閉じて、ベンチにお嬢様を押し付けたまま、固まっていた。 「・・・帰ろ、千聖」 やがて萩原さんはゆっくり体を起こして、無理やり唇を歪めて笑顔を作った。 「靴、履いてないじゃん。汚れちゃってるよ。千聖は舞がいないとダメなんだから。しょうがないなあ」 「あ、それは私が」 「いいから。舞がやる。・・・やりたいの」 萩原さんはお嬢様の足元に跪いて、綺麗に揃えられたバレエシューズを、冷え切った足に被せてあげた。 まだあどけなさの残るその横顔が、切なさに染まる。それがとても哀しく感じられて、私と舞美さんは手を繋いだまま、黙って立ち尽くすしかなかった。 “ありがとう” 口パクでお嬢様が告げると、少しだけ萩原さんの表情が緩む。すっごく気が強い子という印象を持っていたけれど、本当は繊細で優しい心を持っているんだろう。冷えたお嬢様のふくらはぎを、萩原さんは何度もさすってあげていた。 「今、お屋敷の方に連絡を入れました。温かい食事を用意しておいてくれるそうです」 電波が入らなかったのか、少し私たちから離れていた愛理さんが、ケータイを片手に戻ってきた。お屋敷、という言葉を聞いて、お嬢様は不安そうに吐息を漏らす。 「あ、あの、大丈夫ですっ!愛理が手紙を見つけて、すぐに村上さんと私たちに教えてくれたんで、お屋敷の人にはみんなで林道にランニングに行くって言っておきましたから!だから、大丈夫です!何なら帰り、本当に走って帰ります?とか言ってw」 「もう、そんなこと言ったの舞美ちゃん?舞とかメイドさんがランニングとかおかしいじゃーん」 「ケッケッケ、私も走るのはちょっとなぁ~」 お嬢様を気づかって、明るい声が湖に響く。お嬢様もうっすらと笑っている。その頬は、愛理さんのカイロのおかげか幾分赤みを取り戻してきていた。 「じゃあ、行こうか」 だけど、萩原さんが手を引っ張って立ち上がらせようとすると、お嬢様は体を引いた。 「千聖・・?」 小さく首を振って、まだここに居たいとばかりに足を踏ん張らせる。 「お嬢様、これからどんどん冷え込んでくるから、もう戻りましょう。ね?」 “もう少し、待って” 「何でよ。だってもう・・・」 言いかけた萩原さんは、千聖の後ろに視線を固めて、絶句した。つられて振り返った私たちも、そこに佇む人を見て、呆然としてしまった。 「・・・舞波さん・・・・・」 湖と林道を繋ぐ入り口に、舞波さんが立っていた。 セミロングの髪が乱れて、この寒いのにおでこにうっすら汗が滲んでいる。 一体どこから走ってきたのだろうか。荒い息もそのままに、舞波さんはずんずんとお嬢様に近づいていく。おっとりと物腰の柔らかい印象だったのに、すごい気迫を感じる。私たちは思わず、家来のように背筋を伸ばして道を開けてしまった。・・・あの萩原さんまで。 「・・・」 お嬢様は、驚いてはいないようだった。表情を変えずに、ベンチに座ったまま、舞波さんをまっすぐに見ていた。 「・・・」 舞波さんも、何も言わない。そのまま随分長い事、2人は見つめ合っていた。 そして、お嬢様の唇が震えながら開いた。 「まぃ、は、ちゃん・・・」 搾り出すような小さな声だけど、お嬢様は確かに舞波さんの名前を呼んだ。 「お嬢様、声・・・!」 「ごめ・・・なさ、しんぱい、かけて・・・」 「ううん、そんな・・・よかった、お嬢様・・・!ね、村上・・・あ、あれ?舞・・?」 泣き笑いで喜ぶ舞美さんと愛理さんは、顔をこわばらせる私達を見て、首をかしげた。・・・どうやら、萩原さんも私と同じようなことを考えているみたいだ。 ――こんなことを言ったら、せっかく取り戻したお嬢様の声をまた奪ってしまうかもしれない。でも、言わなければもっと・・・ 「お・・・お嬢様、・・・・・あの・・舞波さんは・・・・・」 「だい、じょうぶよ・・むらかみさん・・・」 意を決して口を開くと、お嬢様は私に儚く笑いかけた。そのまま、舞波ちゃんに向き直る。 「まいは、ちゃん、は、おわかれを、いいに、きたのね?」 萩原さんが、深いため息をついた。 「残れないのに、ここに来てごめんね・・・。このまま千聖の顔を見ないで、黙って出て行くなんて・・・やっぱり、できなかった。」 それは、この状況において非情な言葉だったはずなのに、お嬢様はいいのよ、とつぶやいて、さっき私たちにしたように、舞波さんを両手で包んだ。 「千聖・・・パーティの日、私を呼んでくれてありがとう。お屋敷に置いてくれてありがとう。歴史の本、いっぱい貸してくれてありがとう。メイドさんのお仕事、経験させてくれてありがとう。私と友だちになってくれてありがとう。 ずっとずっと優しくしてくれてありがとう。」 舞波さんは時折声を詰まらせて、長い間お嬢様へのお礼の言葉を言い続けた。どちらかと言えば口下手で、感情を表に出す事が不得意な舞波さんの、次々溢れるお嬢様への思い。 頬を滑る涙を拭おうともせず、目を真っ赤にした愛理さんは優しく笑って2人を見ていた。 2人の邪魔をしないようにと、舞美さんはしゃくり上げる音を一生懸命こらえながら、両手を硬く握って立ち尽くしていた。 萩原さんの手は、救いを求めるように震えて踊り、私の手と触れ合った。私はその手を握り締めた。振り払われなかったから、そのまま手を繋ぎ続けた。こんなに寒いのに、私たちの手はひどく湿っていた。 しばらくして舞波さんの言葉がとぎれても、2人は静かに抱き合っていた。 お互いの感触を体に残すように、硬く、強く。 「まい、は、ちゃん」 「うん」 「わたしも、まいはちゃんに、であえてよかったわ」 お嬢様は、とても幸せそうだった。久しぶりに発された声はまだ掠れてぎこちない小さなものだったけれど、不思議な力強さと温かさが伝わってくる。 「まいはちゃんは、ちさとの、はじめてのおともだちよ。 はなれても、ずっとだいすき」 「ありがとう。・・・手紙、書くからね。たまには電話で話したりもしよう。またいつか、会いに来るから」 ゆっくりと、重なっていたシルエットが二つに分かれる。 別れの時が来たのだと、私は悟った。 「愛理さん、読書会楽しかったです。お餞別の本、読んだら感想送りますね」 「またお屋敷に来たら、いつでも開催しましょう。ケッケッケ」 「舞美さん、いろいろ気にかけてくださってありがとうございます。生徒会のお仕事、頑張ってください」 「こちらこそ!学校のこととか、心配なことがあったら何でも言ってくださいね!一応生徒会長なんで・・・あ、でも違う学校だからあんまり関係ないか、とかいってw」 「舞さん。・・・千聖をお願いします。」 「・・・」 萩原さんは何も応えなかったけれど、はっきりとうなずいた。 舞波さんは嬉しそうに笑うと、ゆっくり私のほうに向き直る。 「ウフフ・・・。めぐさん。」 「はい」 「一緒に働けてよかった。めぐさんは、強いです。強くて、優しい。私の昔の話に本気で怒ってくれて、嬉しかった。もっといっぱいお話したかったな。」 「そんなの、これからだっていくらでも。・・・私こそ、舞波さんにいろんなこと教えてもらいました。今まで周りにはいなかったタイプで、もし学校とかで知り合ってたなら、友達になれたかは微妙なとこだけど・・・でも、こういう縁があって・・・ ごめん、自分でも何を言ってるんだかよくわからなくなってきた、とかいってw」 頭を掻く私を見て、皆が笑った。・・・よかった、こういう空気でお別れすることができて。誰もさよならを言わず、再会を当たり前に信じているのがわかった。 「・・・めぐさんの忘れ物も、きっとすぐ近くで見つかりますよ。」 「え・・・」 「お心当たりは?」 「・・・・あるっちゃあります」 忘れ物、たくさんありすぎて、どれのことだかわからないけど。舞波さんがそういうなら、そうなんだろう。無意識に顔がほころんだ。 「では、そろそろ」 「・・そうですね。舞波さん、本当にひとりで大丈夫ですか?お屋敷までは一緒に・・・」 「いえ、少し経ったらここに両親が来てくれるので。大丈夫」 「わかりました」 舞美さんと愛理さんが先頭。お嬢様と萩原さんが真ん中。私が一番後ろ。名残惜しいけれど、湖の入り口へと足を進めた。 「舞波さん、ありがとう。」 「バイバイ、またね」 林道に入っても、いつまでも後ろを向いては手を振る私や舞美さんたちとは違って、お嬢様はまっすぐ前を見て、一度も舞波さんの方を振り返らず、歩き続けた。 舞波さんのシルエットがどんどん小さくなる。 そして、完全にその姿が見えなくなった頃、お嬢様は急に足を止めた。 「・・・お嬢様?」 「っ・・・・」 夢遊病のようにフラフラと2,3歩歩いたところで、木の根元に倒れこむようにうずくまるお嬢様。 「ぅ・・・」 両手で顔を覆って、激しく肩を震わせている。 「あ・・・」 さっき泣かなかったのは、もう悲しみを乗り越えていたからじゃない。ただ、お嬢様は我慢していただけだったんだ。 旅立つ舞波さんを心配させないように、舞波さんが見る最後の自分の顔が、笑顔であるように。必死で抑えてきた感情が、ついに爆発してしまったようだった。 「まいは・・・ちゃっ・・・まい・・・は・・・・」 嗚咽の切れ間に、お嬢様は何度も舞波さんの名前を呼んだ。愛理さんは何か言おうと口を開いたけれど、言葉が見つからなかったようで、再び口を閉ざして立ち尽くしていた。 「・・・千聖。」 お嬢様の傍らに座り込んでいた萩原さんが、髪を撫で、頭をコツンとぶつけて寄り添う。 「千聖。舞、寮に入る。・・・しばらくは、舞波さんの代わりでもいいよ。これから舞のこともっと知って、好きになってくれるなら。 私、千聖の大切な人になりたい。これからは舞が守ってあげる。だからもう泣かないで、千聖。私がずっとそばにいるから、泣かないで・・・」 こんな優しい顔もするんだ、と思うほど、萩原さんは柔和に微笑んで、お嬢様の体を支えていた。 深い悲しみの中で泣きじゃくり続けるお嬢様に、その声が届いているのかはわからない。 今のお嬢様はもう心の容量がいっぱいで、何も考えられないかもしれない。けれど、萩原さんの無償の愛情は、これからゆっくりお嬢様の心を癒してくれる。舞波さんの超能力じゃないけど、なぜかそう強く確信する事ができた。 「・・・行きましょう、お嬢様」 私は2人に近づくと、少し強引に、お嬢様の手を引っ張って立ち上がらせた。 萩原さんがお嬢様の隣で一緒に歩いていくのなら、私は後ろから背中を押して、お嬢様を幸せな未来へ導いていきたい。そのためには、いつまでもここに立ち止まっているわけにはいかないと思った。 「歩けますか?」 「だ、だい、じょうぶ、よ」 「さ、行きましょう!今日のごはんは何でしょうね?私、おなかグーグーです、とかいってw」 明るく笑ってまたお嬢様の前を歩こうとした舞美さんは、ふと思い立ったような顔になって、私と愛理さんの腕を取ってお嬢様の横に並んだ。 「せっかくだし、みんなで一緒に歩きましょう。昔、こういうドラマありませんでした?Gメン750なんとか」 「Gメン多っ!ていうか古すぎてわかんないし」 「いやいや、わかってんじゃん!」 漫才みたいなやり取りで、お嬢様もついに「・・・ウフフフ」と小さく笑い出した。 ――きっと大丈夫。この人達がいれば、お嬢様は悲しみの淵から這い上がってこれるはず。大切な友だちは、何も1人だけじゃなくたっていいんだから。 「あ・・・・」 ふいに、愛理さんが空を指差した。 厚い雲に覆われたそこから、小さな白い粒がふわふわと舞い落ちてきていた。 「雪だ・・・」 「嘘みたい・・・もう5月なのに」 大粒の塊が次から次へと降りてきて、地面を白く飾り始める。 「・・・まいは、ちゃん、かしら」 ほっぺたや鼻の頭に雪の粒を纏ったお嬢様が、ぽつりと呟いた。 「・・・私も、同じこと思ってました」 この雪は、舞波さんの涙。 感情表現の少ない舞波さんが、お嬢様を思って静かに零した真っ白で淡い気持ち。手のひらや髪に落ちてすぐに消えてしまうけれど、しっかりと心に染み込んでくる。 「また、会えますよ。今度はお嬢様が、舞波さんのお家にお邪魔するのもいいかもしれないですね」 「ええ・・・いつか、また」 雪を体に纏ったまま歩き続けていたら、ずっと奥の方で光がちらついてきた。お屋敷の、外灯だ。気配で、メイド仲間や執事さんたちが何人も外で待っているのがわかった。 「・・・お嬢・・・・千聖。」 「え・・・」 「千聖には、私たちがいますから」 小声でそう告げると、お嬢様は泣きはらした目をパチパチさせて、「やっぱり、むらかみさんは、おもしろいわ」と笑ってくれた。 ――大丈夫だよ、舞波さん。これからは、私が。 手のひらに落ちてきた一際大きな雪の塊は、まるで舞波さんから私へのバトンのようだった。 「めぐ?千聖のお話を聞いてるの?」 「へ?・・ごめん、聞いてなかった」 「もう、ひどいわ!舞波ちゃんに書くお手紙のこと、相談しようと思ってたのに。ねえ、写真を送ろうと思ってるのだけれど、どれがいいかしら?なっきぃとえりかさんと栞菜のことも紹介したいわ。」 ――そして、現在。 言うまでもないけれど、お嬢様――千聖は、もうすっかり元気を取り戻した。学内にも寮にもたくさんの友だちが出来て、毎日楽しそうに笑っている。 千聖と舞波さんとの文通は、あれから半年以上経った今もまだ続いている。遠く離れても、二人の友情は途絶えることはなかった。私はそれがとても嬉しかった。 「あのね、舞波ちゃんは歴史が好きでしょう?最近、あの、インターネットの・・・チャット、というのかしら?そこで歴史のお話をして仲良くなった方と、メル友さんになったそうよ。 その方がレキジョ?さんになりたいと言うから、舞波さんがいろいろ教えてさしあげてるみたい。ハンドルネームが“プリンセスピーチ”さんですって。ウフフ、何だかももちゃんみたいな人ね」 「プッ、たしかに、センスが・・・」 「舞波ちゃん、学校でも趣味の合うお友だちと、歴史研究同好会を作って充実していらっしゃるみたい。・・・よかったわ。もう舞波ちゃんをいじめる人はいないのね」 今でも、舞波さんの話をするお嬢様の表情は優しい。その顔は、私を勇気付けてくれる。 ――いつになるかわからないけれど、私もこんな風に、大切な人と微笑み合う事ができるようになりたい。 「・・・それにしても、桃子さんといえば。ムフフ」 「え?」 「千聖、舞波さんとお別れするとき“舞波ちゃんが千聖の初めてのお友だち”って言ってたじゃん?だけど、あの時ってもう、桃子さんと友だちだったんだよね?中1の時点で、もう知り合いだったんでしょ?」 「あ、え、えと、それはあのとっさにももちゃんのこと忘れフガフガフガフガ」 「あーあ!かわいそーな桃子さん!今度お屋敷に遊びにいらしたら言いつけてやろっと。では、わたくしはこれで♪」 「ま、待ってめぐ!違うの、だめよももちゃんに言ったら!命令よ!」 わめく千聖を置き去りにして、私は部屋を出た。妙に晴れやかな気分で、鼻歌が自然にこぼれてくる。 「ありがとう!おともだち。心が強くなるぅ~・・なんつって」 もし舞波さんと再会できる時が来たら、その時は私の最高の友達を笑顔で紹介したいな、と思いつつ、私はケータイに貼ってある色あせたツーショットのプリクラを、そっと指でなぞった。 次へ TOP
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44 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 39 59.44 0 プチホテルの駐車場で、感動の再会を果たした二人は、寄り添ってその場を離れていった。 当然のように、私たちも後ろをつけていく。・・・ただし、何となく抜き足差し足忍び足で。 「舞・・・」 心配そうに顔を覗き込むお姉ちゃんを、私はあえて無視して前方に意識を集中させた。 2人の肩が触れ合うたび、胸が痛む。 暑いような寒いような変な感覚で、頭がボーッとする。 恋人を奪われる、ってこんな感じなんだろうな。激情じゃなくて、じわじわと心を侵食していく虚脱感。 「ふふふ・・・」 「ちょっと、舞ちゃん大丈夫?」 今日のことは、私が計画したことだっていうのに、何て自分勝手なんだろう。あまりのガキッぽさに、笑いがこみあげてきた。 千聖の16歳の誕生日。私が初めて祝う、大好きな人の大切な1日。 だから、千聖が一番喜ぶことをしてあげたかった。そのために、私は1ヶ月も前からずーっとずーっと頭を捻っていた。 ありきたりじゃなくて、千聖が顔中くしゃくしゃにして笑ってくれて、できたらそのまま嬉し泣きでもしてくれちゃうぐらいのサプライズ。 そういうのを追求していったら、やっぱり彼女――舞波さんの力を頼らざるを得ないんじゃないかって結論に至った。それで、連絡を取って、こうして足を運んでもらったわけだけど・・・。 湖の畔に移動した二人は、何も言葉を交わさず、ただじっと見つめ合っていた。 千聖の黒目がちな瞳に、舞波さんの小動物みたいな瞳に、お互いの姿を映すだけ。 あの日、この場所で、2人がお別れした時と同じぐらい、静かな愛情に満ちている。そんな気がした。 45 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 40 40.46 0 ――いっそ、もっとはしゃいでくれたら良かったのに。 舞波さんがお屋敷に滞在していた時みたいに、もう誰の事も見えないってぐらいに舞波さんに夢中になってくれたら、ヤキモチのやきようがあったのに。 千聖はすごく喜んでいる。嬉しさのあまり、感情が停止して、目のまえの舞波ちゃんを目に焼き付けることしか出来なくなっているんだろう。 誰もさわれない二人だけの国。まさにそんな感じだ。 「・・・ちょっとホテル戻ってるから」 私は隣にいた鬼軍曹にそう告げると、踵を返した。 バカじゃないの。ほんとみっともない。好きな人の幸せ、一緒に喜んであげられないなんて。 理性ではそう思っていても、感情は抑えきれない。こんな気持ちを持て余しているって、誰にも気づかれないようにするのが精一杯。 「・・・舞の千聖なのに」 いつもの独り言も、今は虚しく心を空回りするだけ。 自分で計画したこととはいえ、予想以上、いや、もはや予想外といってもいいほどの千聖のリアクションは、私の心を確実に打ちのめしてしまった。 湖畔のホテルに戻り、フロントで部屋の鍵を受け取った私は、ポーンとベッドにダイブした。 舞波さんと千聖が一晩一緒にいられるよう、寮生と鬼軍曹でお金を出し合って取った部屋。 私が一番乗りに入ってゴロゴロするなんてありえないけど、今ものすごくへこんでるわけですし、これぐらい許して欲しい。・・・はいはい、どうせガキですよ、舞は。 46 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 41 20.29 0 いつもと違う天井を眺めながら、千聖と舞波さんのことをボーッと考える。 例えば、私と舞波さんが海でおぼれていたら、千聖はどっちを助けるんだろう。 例えば、私と舞波さんが激しく言い争っていたら、千聖はどっちの味方をするんだろう。 そんな不毛な疑問がエンドレスに頭を駆け巡って、がりがりと頭をかいた。 もう、どうして千聖のこととなると、私はこんなにもバカになってしまうんだろう。 栞菜やなっちゃん相手なら負ける気がしないのに、何で舞波さんには敗北感を味わわされてしまうんだろう。 せめて、私を挑発してくるような気の強い人だったら張り合えたのに。舞波さんはふわふわの雲みたいにつかみ所がなくて、最初からライバルにすらなってもらえない。 こんなことで悩むなんて全然私らしくないし、かっこ悪くて嫌だ。 「はぁ~あ・・・」 どうせ、まだみんなは戻ってこないんだし、思う存分マーキングしてやる。 ベッドにほっぺをすりすりさせながら、私はいつしか深い眠りに落ちていた。 * 「・・・舞?舞、起きてちょうだい。舞」 「んー・・・?」 乱暴に肩を揺すられて、深く閉じていた瞼を開ける。 「うわっ」 47 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 42 48.16 0 目に飛び込んできたのは、千聖のドアップ。 反射的に鼻をつまんでやると、仔犬みたいに顔をしかめて「ふにゃあ」とまぬけな声を出す。 「あははは」 「もう、何をするの、舞ったら!」 怒ってる顔を見せられるのも、何か嬉しい。 だって、こんな顔、舞波さんには見せないでしょ、絶対。 「舞、どれぐらい寝てたの?」 「そうね・・・小1時間ぐらいかしら」 「ふーん。・・・舞波さんは?」 あまり不機嫌が顔に出ないよう、注意深くそう聞くと、千聖はパチパチと目を瞬かせた。 「舞波ちゃんは、もうお帰りになったわ。御両親の滞在なさっているホテルに泊まるそうよ」 「は!?え!?嘘、え、何で」 私が計画していた予定は、こうだった。 千聖と舞波さんを対面させる→頃合を見て寮生は退散する→千聖と舞波さんはここで一泊する→明日の朝迎えに来る 舞波さんにも電話でその旨伝えておいたはずなのに、予想外の出来事に、私の思考は停止してしまった。 「・・・あのね、舞。上手く言えないけれど、私も舞波ちゃんも、何だか満足してしまったのよ」 「満足って」 48 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 44 07.86 0 「湖でね、私と舞波ちゃん、ほとんど何も話さずに、ただずっと見つめあっていたの。 言葉なんてなくても、舞波ちゃんのいろいろな気持ちが私の中にたくさん入ってきて。とても温かくて、安心したわ。 そうしたらね、舞波ちゃんも同じ風に感じてくれたのか、自然に、“じゃあ、また今度ね”なんて言葉が同時に出てきたのよ。だから、今日はもう、これでお別れするって決めたの」 舞波ちゃんと千聖は、テレパシーもできるのかしら、なんて千聖は微笑んだ。 「舞波さん、遠くに住んでるのに、本当にそれでいいの?次いつ会えるかわからないんだよ?」 「ええ。物理的な距離なんて、あまり問題ではないわ。今日、舞波ちゃんに会って、改めてそう思えたの。 どこにいても、私は舞波ちゃんを感じられるし、きっと舞波ちゃんもそう思ってくれている。・・・せっかく、ホテルまで用意してくださったのに、ごめんなさいね、舞」 「それは別にいいけどぉ・・・」 ふだんはボケーッとしてて危なっかしいくせに、妙に大人びた口調でそんなことを言われると、憎まれ口も引っ込んでしまう。 妙に大人っぽいっていうか、長女っぽいっていうか・・・。こういう時の千聖って、ちょっと近寄りがたいぐらい神秘的だと思う。 「・・・舞、帰りたくないな。ここに泊まりたい」 だから、私は感情の赴くまま、千聖に甘えてみることにした。 「あら・・・」 「いいでしょ?だって、キャンセル料もったいないじゃん。明日早起きしてここから歩いて学校行けば・・・ねえ、いいでしょぉ?」 イメージ的には、りーちゃんっぽい声色。・・・上手く出来てるかわからないけど。 自分の中の、最大限の“妹力”を引き出しながら、千聖の肩に頭をくっつける。 49 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 45 13.51 0 「ウフフフ・・・」 「何で笑うの」 「ウフフ、ごめんなさい。だってね、さっき、このお部屋をキャンセルしないと、っていう話をしていた時に、舞波ちゃんがこう言ったの。 “舞さんが、ちゃんと有効に使ってくれると思うから、このままとっておいたほうがいいよ”って」 「・・・・あっそ」 ――さすが、というかなんというか・・・。 行動を読まれちゃったって思うとなんかむかつくけど、それ以上に、やっぱすっごい人だなあなんてしみじみ思わされる。 んま、完全無欠(とかいってw)の舞様にだって、一人ぐらい敵わない相手がいたっていいんじゃないの?なーんて、やけに心地よい敗北感に、笑顔がこぼれてしまう。 「・・・ありがとう、舞」 ふと、千聖は真顔に戻って言った。 「素敵な誕生日プレゼントだったわ。私は幸せ者ね。大好きよ、舞」 「千聖・・・」 「ウフフ、いやだわ、私ったら。早くめぐに連絡して、荷物を・・・きゃんっ!」 照れて逃げようとする手を捕まえて、思いっきり自分の方へ引っ張る。 「舞・・・?」 「まだ。もうちょっとこのままでいて」 抱き着かれるの、あんまり好きじゃないってわかっているけれど、私は千聖の膝を枕にして、顔をうずめた。 50 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/29(火) 17 46 04.36 0 「16歳の千聖も、舞のなんだからね」 「もう、舞ったら」 明日になったら、どうせみんなの千聖お嬢様に戻ってしまうんだから。 せっかく舞波さんがくれたチャンスだもん、今日は舞だけの千聖でいてもらおう。 「あまえんぼうなのね・・・ウフフ、何だか可愛いわ、舞」 「ふふん、うるさいよ・・・」 髪をすべる千聖の指の感触に身をゆだねながら、私は再び目を閉じて、つかの間の幸せの余韻に浸った。 **** ノk|‘-‘)<とかなんとか言って、実は隣の部屋に泊まってるかんな!(ガチャ)ハロー、センt・・・マイ。アーンドプリティバストガール・チサト。ハーワーユ? (o・ⅴ・)! リ*・一・リ! 从・ゥ・从<よーし、みんなでマクラなげしよう(z)! ワクワク リ*・一・リ ワクワク (o・ⅴ・)<せっかくのいいムードが・・・ ノソ*^ o゚)<いいムード?はじめからそんなものなかったケロ!2人きりになんてさせるものか! 州 ´・ v ・)<ついでなのでもぉ軍団の皆さんも呼んでみました。ケッケッケ リ*・一・リ<まあ、楽しそう!やっぱり、皆さんで盛り上がるのが一番ね、舞? (o・ⅴ・)<ち・・・ちしゃとおおおおおおうおおおうおお 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -