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ずるずるずる ちゅるるるっ 唯「あ~、食べたね~」 紬「私、カップラーメンって生まれて始めて食べたけど おいしかったぁ~」 唯「よかったね、ぺっ」 べちょっ 紬「あ……」 またもムギが遠まわしに 「庶民のしみったれた食べ物なんて普段は絶対に食べません、嗚呼 食べませんとも」 というセレブアピールを始めたので 唯が別荘の床にツバを吐いた でも、やり慣れない事をしようとしたためか 唯自身の太ももにツバが べちょっとかかっただけだった 唯「わぁっ、きたないよぉ~;;」 バカかコイツは 唯「……ムギちゃん、エアコンの音頭下げてよ」 紬「え、えぇ」 ぴっ ぴっ 唯「違うよ、エアコンの温度じゃなくてエアコン音頭だよ~」 「わかんないかなぁ。あっ、お金持ちだから わかんないんだねっ?ねっ、澪ちゃん」 澪「そうかも知れないな」 紬「……」 ぼたゃっ ムギがポケットに隠し持っていた大福を壁に叩きつけた ちなみに私も、唯が何を言っているのか分からなかった 結局、私たちは無事、カップラーメンを食べることに大成功した しかし確かに海で食べるシーフードヌードルは格別だったが 何かが足りないような気がした 紬「オマールエビ?」 ムギがポケットから巨大なザリガニを取り出す 澪「違う、……律だ」 思い返してみれば別荘に着いてから、あいつと会話した記憶が私には無い 唯「ほえ?」 澪「律だよ律!!分からないのか!?」 唯「わ、分かるよ。分かるけど……」 紬「りっちゃんが どうかしたの?」 澪「どうかしたのかって……さっきからずっと律がいないじゃないか!!」 唯「だってそれは……」 紬「澪ちゃんが海に着くなり、血の海に沈めたんじゃない……」 澪「そういえば そうだったな……」 ハァ──とため息をつく 考えてみれば打楽器で人間の頭を叩くのは大変、良くないことだった そもそもベースは打楽器ですら無いのだ 学校ではなかなか教えてくれないことだが こういった経験から、少しずつ 私たちは大人になっていくのか…… まぁいいや 澪「しかし それはそれとして」 「今になってもアイツが姿を見せないのはおかしくないか?」 紬「あんまり言いたくなかったけど、りっちゃんはたぶんもう……」 唯「うん……」 澪「なんだよ」 唯「だから、ね……?」 澪「……!!」 そのとき、私の頭脳に稲妻のような電撃が走った 稲妻も電撃も似たようなものだが そんなことよりもしかして、田井中律は死んだのか? そう考えると、これまでのアイツの行動の辻褄がすべて合点がいく だから律は今日一日、姿を見せなかったのだ くそっ、アイツめ ……などと愚痴をこぼしている場合ではない 私が 律の頭でスイカ割りをしたことが明るみになったら…… 大人として、いくつかの手を打たざるをえないな、と私は ほくそ笑んだ 澪「あっw!!」 唯「ひっ、ど、どうしたの?」 澪「もしかしたら、『おゆおに』の仕業かも知れない……」 紬「えっ」 澪「おゆおにが気絶している律を食べちゃったのかも知れない」 唯「そんな……」 澪「きっと そうだ、きっと そうだよ!!」 私はイチかバチか、唯の生み出した架空の妖怪『おゆおに』に 全ての責任をなすりつける事にした 唯「うーん。でも、おゆおにって お湯が好きな鬼だよ?」 「りっちゃんを食べたりするのかなぁ」 澪「だったら、どうして律は帰ってこないんだ?」 「他に理由があるっていうなら言ってみろよ!!えぇ!?」 おずおずとしゃべる唯の胸倉をつかみあげる 唯「ひっ、だ、だからそれは澪ちゃんがころ……」 澪「見えないよ!!聞こえないよ!!」 紬「……」 紬「じゃあ、みんなで砂浜へ行きましょうか」 紬「りっちゃんの確認に」 澪「へぁっ!?」 ムギめ……まったく、とんでもない事を言い出すヤツだ 紬「りっちゃんが本当に食べられているなら その体に異変が見られるハズよ」 「鬼に かじられた痕とか」 唯「ふぇぇ……」 澪「で、でも跡形もなく食べられたかも知れないよ?」 紬「だったら 砂浜には何もなくなっているハズね」 くすくす、とムギは笑う クソっ、なに笑ってるんだ 人が一人死んでるんだぞ!! と、私は憤りを感じた ざっ、ざっ じゃりっ、じゃりっ 私とムギと唯の三人が懐中電灯の灯りを頼りに 砂浜へ向かう夜道を歩く いつもはにぎやかな唯も、存在感の薄いムギも一言も発しない もし、砂浜に、律の死体が、あったら、わたしは、いったい、どうなるのだろうか ムギと、唯は、通報、するのか? もし、正直に自白するとしても、私はおまわりさんに、動機を、なんて話せばいいんだ? 海に来てテンションがあがって、ついベースを振り下ろして……なんて言ったらアタマが変な子だと思われてしまう 結構、恥ずかしいぞ、それ そんな事態だけは、なんとしてでも避けねばならない どうする どうする いろいろな思考がぐるぐるぐるると頭の中を駆け巡る中 ふと、唯が道端に座り込んだ 紬「どうしたの、唯ちゃん」 唯「お腹いっぱい過ぎて気持ち悪くって……」 澪「お腹いっぱいって、カップラーメン一個で?」 唯「夕飯の前にちょいと、つまみぐいを……」 へへ、と笑う 澪「なに食べたんだ?ハンバーグ?ねぇハンバーグ?ハンバーグ!?」 紬「ねぇ、あんまり無理しない方がいいんじゃないかしら」 唯「うん……じゃあ悪いけど、私、横になってるね」 澪「ああ」 澪「ぁあ?」 道の真ん中で唯は ごろりと寝そべった 紬「唯ちゃん、そんなところで眠ったら お服が砂まみれになっちゃうよ?」 唯「ふんす……」 とろんとした目つきの唯の耳にはもう、ムギの言葉は届いていなかった 唯を置き去りにした私たちは夜の砂浜に到着した ムギと2人きり…… 別にロマンチックなことを考えているワケではない ムギ一人なら口封じ出来るかなぁ、なんて事を考えていた 澪「ムギ」 紬「なぁに、澪ちゃん」 澪「1000円あげる」 紬「え……?ど、どうもありがとう」 やった!! 商談成立だ!! やったった!! ワイロを受け取ったムギとはもはや一蓮托生 これで私をおまわりさんに売れば、ムギも贈収賄罪とかで捕まるハズだ!! たぶん 澪「唯には内緒だぞ?」 ムギ「え、えぇ……」 唯には10円でいいだろう 紬「えっと、りっちゃんが いたのはあの辺りだったかしら」 澪「そうだな」 「そうだけど」 紬「?」 「だけど……なぁに?」 ムギがキョトンとした顔でこちらを見返してくる 澪「今、私1000円あげたよね?」 紬「うん」 私の賄賂を受け取ったのだから、捜索は切りあげて別荘に戻れば いいんじゃないの? 分かんないかなぁ 私はムギの目を見つめてテレパシーを送る 澪「届け、私の想い」 紬「えっ……///」 紬「澪ちゃん……」 澪「あっ、一緒に死体を処理してくれるってこと?」 紬「??」 澪「どうなんだ、ムギ」 紬「ごめんね。澪ちゃんが何を言っているのか分からないわ」 澪「……!!」 こいつ……金だけ受け取って約束を反故にする気か……!? くそっ、ウンコめ!! 私はムギにヒドイ事をしようと決心する 紬「あらっ」 澪「えっ」 ムギをどうにかしようと背後から近づいたが 興味はすぐさま別のものに移った 月の光に照らされた白い砂浜に、赤黒いシミがべったりと広がっている しかし、そこにはシミ以外、何もなかった 何も 紬「りっちゃん……? りっちゃんは?」 澪「……」 私の記憶と推察が確かならば 頭から血を流した律が ここに倒れていなければならないはずだ だけど…… ということは…… 澪「やっぱり『おゆおに』が食べちゃったんだ!!」 これで全部、おゆおにの仕業になった!! 夢は信じれば叶うって、ホントだったんだなぁ 紬「そ、そんなハズは……」 澪「あっ、ということは口止め料を払う必要もなかったんだ」 「ムギ、さっきの1000円返してくれ」 紬「えっ、なに?」 澪「1000円。さっき渡しただろ?」 じりっ、とムギとの距離を詰める 紬「い、いやよ」 じりっ、とその分、ムギも後ろに あとずさる 澪「このッ……」 「いいから返せええええええええ!!!」 紬「いやぁあああああああ!!」 私は その場でクルクルとブレイクダンスを踊って叫びだすと ムギは一目散に走り出した 澪「ムギッ!!」 紬「あっ!?」 どしゃり ゴンッ 転んだ 砂に足をとられたムギが宙に放物線を描いて倒れこんだ 放物線って言いたかっただけなんだ だってカッコいいから それにしても慌てて駆け出したとはいえ、何もない砂浜で転ぶとは不思議な娘よ 澪「まったく、1000円を返さないからバチが当たったんだぞ」 「ムギ……?」 私は ふらついた足取りで近づいてみるが ムギは逃げようとも起き上がろうとすらしない 私は異変を感じて、急いでムギの元に駆け寄る 紬「……」 倒れこんだムギの頭の下に、黒っぽい流木が落ちていた 澪「お、おい」 体をゆすってみるが、ムギは口をだらりと開いたまま、目を開ける様子が無い ぬるり 澪「……!!」 ムギの頭から赤い何かが流れていた 澪「ム、ムギ!!おい、しっかりしろ!!」 私はムギの肉体が硬直してしまう前に握り締めていた1000円を慌てて奪い返した 澪「ふぅ、損するトコだった。しかし、これってあんまりよくない状況だよね……」 ムギは勝手に転んで流木に頭をぶつけただけだ 私は何一つ悪くない だけど唯は、私とムギが2人きりで砂浜に向かったのを知っているし 律のこともある もしかしたら、この光景を目の当たりにすれば あらぬ誤解をしてしまうかも知れない 澪「……よし」 ざりっ ざりざり 私は砂浜に「おゆおに参上」と書いて 速やかにドヤ顔でその場をあとにした ムギと2人で来た道を、今は1人でたどって別荘に戻る 私はとりあえず唯になんて説明しようか考えていた 「いきなり、おゆおにが突撃してきてムギをペロリと食べちゃったんだ!!」 ……いくら唯が相手とはいえ、こんな雑なデタラメが通じるのだろうか そもそもペロリと食べたといっても、ムギは頭から血を流してただけで 食べられた形跡はない !! じゃあ、こういうのはどうだろう まず、おゆおにがムギを突き飛ばして、食べようとしてた所を 私がゲンコツで追い払った…… そしてムギは死んだ 決まりだな 分かりやすいし、私の活躍シーンがあるのも気に入りました 私はなんだか自分が大変 立派な人間になったような気がして 暗い夜道をずんずんと歩き始めたのです 澪「ん……唯?」 先ほど、唯が眠りだした場所まで引き返してきたが そこには誰もいない 地面に「ふんす」と書いてあるので、唯が寝ていたのは この場所で間違いないと思うが…… 目を覚まして どこかに移動したのだろうか ここから私の来た砂浜までは一本道で、それで出くわさなかったのだから 別荘に戻ったか…… 人が2人も死んでるのにのんきなヤツだな しかし、それも唯らしいか くすり、と私は笑った 別荘は しん……と静まり返っていた 楽しくて賑やかな合宿になるハズだったのに どうしてこんな事になってしまったのか…… あぎゅyがgclずjぎゃぎゃぎゃがy 澪「!?」 突如、どこか遠くの方から、耳をふさぎたくなるような醜い音が聞こえる あぎゅあksldjかいおすいほあ;d 澪「な、なに、なんの音?」 これは……獣の雄叫びのような、そんな音だ だけど、こんな鳴き声の動物なんて、ちょっと記憶に無い そして、イヤなことに「遠くの方から」といってもすぐ近くではないというだけで 下手をすると、この別荘の奥の方から聞こえたのかも知れない 私は思わずあたりを見回す まさか得体の知れない何かが、いるんじゃないだろうな 今の音に驚いて誰か出てこないか期待したのだが…… 考えてみれば律もムギもいない、唯は……別荘の中にいるのか?いないのか? そういえば梓は? 夕飯のあとから、部屋に こもりきりだったな 澪「よし、いざとなったら梓を生贄に差し出して自分だけ助かろう」 「私は梓の先輩だから、その権利があるハズだからな」 私はひとまず梓の部屋の様子を見に行くことにした コンコン 澪「梓、梓、いるかい?」 ノックをしたが返事がない もちろん私は部屋のドアを蹴破って中に入った 澪「!!」 「あ、梓……!?」 梓「あぎゃぎゃがぎゃがyぎゃぎゃぎゃぎゃww」 おぞましい獣のような雄叫びは、ベッドに横たわる梓の口から発せられていた 澪「お、おい、梓」 「正気か?」 ゆさゆさと体をゆするが梓はニタニタと笑顔を浮かべながら目を開く様子はない 梓「あぴややおpさおhsしおはしおch:あ」 澪「……寝てる」 どうやら悪質なイビキのようだった 私は濡れた布を梓の顔にそっと かぶせる こうすることで、息苦しくなりイビキがおさまると思ったからだ いちまい にまい さんまい… 148 --- 梓「……」ンフーッ ンフーッ よんまい 梓「……」ンフーッ ンフーッ ごまい 梓「……」ンフーッ ンフーッ ろくまい 梓「……」ンフーッ ななまい 梓「……」ンフーッ ンフーッ はちまい 梓「……」ンフーッ きゅうまい 梓「……」ン…… じゅうまい 梓「……」 今、梓の顔の上には月刊ジャンプスクエアくらいの厚さになった濡れた布が重ねられている そして梓は動かなくなった さようなら 4
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『くあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』 雄叫びを上げながら、瘴気で出来た大狐が飛び掛かる。その四肢が踏みしめた場所、その身体の触れた場所は、何もかもがたちどころに腐り果てていく。 「シャアァァァァァァ!!!!」 奇声を発しながら、それを迎え撃つのは八つ首、八つ尾の大蛇。組み付こうとする大狐を、その頭をまるで鞭のように振り回し、弾き飛ばす。 『ぐ……!』 弾かれた大狐は地面を転がりながら、何とか体勢を整える。その身体の通り抜けた場所は崩れ、地肌が剥き出しになっていた。 戦いが始まってから、まだものの数分しか経過していない。しかし、周囲の地形はすっかり変わってしまっていた。 大蛇ののたくった後はすり潰され、蛇腹状に抉れている。大狐の周囲は何もかもが腐り落ち、劣化し、ところによってはまるで泥の塊の様な場所まである。そこは先程まで樹木の生い茂る茂みであった場所であり、大狐の毒気によって腐敗し、溶けてしまったのだ。 廃墟は面影すら残っていない。跡にあるのは崩れて粉々になった、瓦礫の塊だけだ。 『燃えろ!』 大狐が、口から青白い火炎を吐き出した。熱量を持たない狐火などではなく、高温の火炎だ。炎を吹き付けられ、大蛇の身体がぐすぐすと燃え上がる。 「シャア――!!!!」 身体を大きく振り、大蛇が炎を吹き飛ばす。しかし炎が消えても、その身体からは煙が上がっており、所々が焼け焦げていた。流石の八岐大蛇と言えど、炎が効かない訳ではないようだ。 だが、 『く……駄目か……!』 負傷した場所が泡を吹き、見る見る負傷した場所が癒えていく。修復は速く、すぐに大蛇は、何事も無かったかのように快調な姿を現した。 『復元じゃと……その様な能力、本来の八岐大蛇には無かった筈じゃ……!』 「蛇は不死の象徴。自らの傷を癒す事など、容易い事だ」 大蛇の背の上から、僧侶が言う。これだけ激しい戦闘の最中にいると言うのに、この男は男で、それこそ何事も無いようにそこに居る。その衣装には傷どころか汚れ一つ付いていない。 『戦いは大蛇に任せて、自分はその背中から文字通り高みの見物とは、全くふざけた坊主じゃ……』 「私はふざけてなどいない」 僧侶の指令に従い、大蛇が大狐へと向かう。その重量に押し負けた大地が抉れ、向かって来る様は地を割りながら流れゆく土石流の様だ。 『くっ……!』 体格差があり過ぎる。まともに突進を受けては、この瘴気を固めて作った大狐でも一溜まりもない。そう判断し、タマモは大蛇の突進をかわそうとした―― ――しかし、 『な!?』 大狐の目の前で、大蛇がその首を四方八方へと大きく広げた。その様はまるで、獲物を捕らえようとして身体を広げた蛸にも似ている。タマモの視界全体を覆い尽くす様に、大蛇の首が襲い掛かる。 (これでは、逃げられん――!!) 退路を失い、大狐と大蛇が激突する。重量差では、大蛇の方が上だ。大狐の身体は吹き飛ばされ、 『ぐ……は……!』 地面に叩き付けられた。大狐は身体を痙攣させるように震えた後、元の瘴気となって霧散した。大狐の姿は無くなり、代わりにその場所には、傷だらけになったタマモが倒れていた。色鮮やかな着物は引き裂け、体中に打撲の跡や切り傷が出来ている。瘴気の鎧を纏っていたからこの程度で済んだだけで、実際にかかっていた負荷を考えれば、タマモはとっくに十は死んでいる。 「がはっ……がっ……」 血を吐き、地面にタマモは蹲っている。身動きの出来ない彼女に、大蛇がゆっくりと近付いて行く。 「く……」 間近で見ると、改めてその大きさを感じる。まさに蟻と像の差だ。その威圧感だけで押し潰されてしまいそうになる。確かにこの怪物なら、世界を終わらせる事くらい、可能なのかもしれない。 「これで終わりだ」 八岐大蛇の首の一つが、ガパリと口を開いた。そのまま一気に、タマモを呑み込もうと突っ込んで来る。 (……ここまでか……) もはや、毒を生成するだけの妖力が残っていない。それに、この傷では逃げる事も叶わない。潔く腹を括り、タマモは目を閉じた。 (神話の怪物と戦って討死か……妾らしくも無いのぉ……) 自分の二度目の死がよもや、この様な形で訪れるとは。皮肉そうに、タマモは口端を歪めた。しかしすぐに、彼女の表情は悲しげなものに変わった。 (すまんの、おりん……お主を助けてやれなくて……) 悔いはある。人より永く生きたが、それでもタマモにはやり残した事が多くある。主たる春美の事、仲間である百物語の妖怪達の事。そして、何より「りん」を救えなかった事。 しかし、ここまでだ。もはやこうなっては、足掻くだけではどうにもならない。どんなに他人を欺く事に長けたイカサマ師でも、百年を超える年月を経た妖狐でも、この状況を引っ繰り返す事など―― 「――……?」 所が、何時まで経っても大蛇の大口がタマモを呑み込む事は無かった。奇妙に思い、恐る恐るタマモが瞳を開けると、 「――な、」 そこに、信じられない事が起きていた。 「う、うぅ……」 「お……」 「く……うあ……!」 「おりん!」 タマモを呑み込もうとした、大蛇の首の一つ。その眉間の部分から、人間の子供の上半身が生えていた。タマモが見紛う筈がない。見間違えるものか、それは「りん」の身体だった。 「だ、だめ……!」 「おりん! お主なのか、おりん!」 「タ……マモ……逃げて……!」 「りん」は必死に何かを堪えるように、辛そうな表情を浮かべている。よく見ると、八岐大蛇自体が、小刻みに震えている。まるで、何かを堪えているかのようだ。 「タマモ……いまの……うちに……! う――あぁぁぁぁ!!」 「おりん!」 突然、「りん」が苦しげに声を上げた。見れば、その身体が再び大蛇の中へと呑み込まれようとしている。 「おりん、待て!」 反射的にタマモは手を伸ばすが、その瞬間全身に激痛が走った。タマモの場所からは余りにも遠く、「りん」の姿は再び大蛇の中へと消えた。 「まだ幼いと言うのに、大蛇を抑え込むとはな……」 八岐大蛇の身体が戦慄き、まるで痙攣でもするようにのたうつ。暴れ回る大蛇によって地面は抉られ、土埃がまるで煙幕の様に巻き上がった。 「……おりん……妾を、助けようと……」 タマモは、空を切った右手を見つめていた。 大蛇に呑み込まれる寸前の、「りん」の必死な姿が脳裏に焼き付いていた。彼女はあんな小さな体で、タマモを守ろうと、あの巨大な八岐大蛇の意識と戦っていた。その結果、タマモを殺そうとしていた大蛇の動きを止め、そして今も、大蛇の動きを封じようとその胎内で力を尽くしている。 「りん」に救われた。その事実に、タマモの目頭が熱くなった。 「何を……諦めておったんじゃ、妾は……!」 頬を流れる涙が熱い。その熱さは紛れも無く、自分が生きている証だ。 生きているなら。命があるなら。その生すべてを全うしなければ、そんな命は死んでいるのと変わらない。それこそ、僧侶の言う通り「必要の無い」ものになってしまう。そんなものは、妖怪でもなければ、ましてや獣ですらない。 「妾にはまだ――こんなにもやり残した事があるではないか!」 立て、身体よ。痛みなど気にするな、むしろ喜べ。その痛みは紛れも無く、己が生きている証明! 「はあぁぁぁぁ…………」 全身に残った、ほんの僅かな妖力。そのすべてを掻き集める。 「くくくく……」 思わずタマモは笑ってしまった。ほら見ろ、まだやれる。まだこんなにも、力が残っているではないか。 己のすべてを振り絞り、タマモは妖力を集める。だが、それに集中していたせいだろう。 「――な、」 眼前に迫る、巨大な大蛇の尾。まるで巨大な大木の様なそれが、タマモに向かって来る。大蛇はまだ制御を取り戻していない。おそらくは、ただの偶然だろう。しかし、偶然だろうと、意図的であろうと、それがタマモにとって脅威である事に変わりは無かった。 「全くもって、間の悪い――!!」 今からでは、到底回避など間に合わない。防御しても、あの丸太の様な尾に耐えられるのか。否、無理だ。満身創痍のタマモに、あんなものを防ぎきれる訳が無い。 ここまでか。ここまでなのか。 今度こそ、ここで終わり―― 「ふ――ざけるでない――!!」 迫り来る大蛇の尾に――タマモは掻き集めた妖力のすべてを叩き付けた。 「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 紫色の閃光。タマモの手と大蛇の尾の間で、彼女の妖力が炸裂していた。バチバチと紫電が走り、衝撃がビリビリとタマモの身体に伝わる。その全身に、大蛇の重量が掛かり、彼女の身体が地面に沈み、更には数メートルも後方へと後ずさっていく。 だが、負けていない。 「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 圧倒的質量差、圧倒的膂力差、圧倒的重量差――しかし、タマモは負けていない! 妖力の過剰放出に耐え切れず、爪は割れ、皮膚は破れて血を吹いている。だが負けていない! 彼女の両足は地を踏みしめ、大蛇の一撃を間違い無く、紛れも無く、受け止めている! そして―― ぐん、と突然、タマモは前方からかかっていた負荷が無くなったのを感じた。 「あ――?」 突然の出来事に、身体が反応出来なかった。勢いに流され、身体が前のめりに倒れそうになる。しかしその細い体を、受け止める者がいた。 「……全く、無茶をしおって」 聞き慣れた声が、頭上から振って来た。だが、聞き慣れた声であるが故に、タマモは混乱していた。何故、今この場で「彼」の声が聞こえて来るのか、全く状況が分からない。 「何故……お主がここにおるんじゃ……?」 顔を上げると、血の様に赤い二つの眼が目に入った。普段とは違い、本当に驚いて放心しているタマモの姿に、「彼」は苦笑を浮かべた。 「何故? そんな事、決まっておるじゃろう?」 ヒュンヒュン、と言う音と共に、ゴクオーの手の中に鉄槌が収まる。見れば大蛇の尾は、その槌に弾き飛ばされ地面の上を跳ねていた。 『タマモ―――!!!!』 自分を呼ぶ声が聞こえる。 振り返ると、そこには―― 「タマモ、大丈夫――!?」 「助けに来たぞ――!!」 「助太刀に来たぞ――!!」 「主……それに、皆の衆……!」 <大集合・秋山妖怪百物語組> (さぁ、幕を閉じよう、八岐大蛇) (セカイの幕を引くのは、怪物の役目ではない) (物語を始めるのも終わらせるのも、) (何時だってヒトの役目だ)
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梓「ブハッ!?」 「む、ぬの!?」 突如、梓が跳ね起きて、口や鼻をふさぐ布を払いのける 澪「おぉ、なんだ、あれだ、元気?」 梓「み、澪先輩!?澪先輩が布をかぶせたですか!?」 「死ぬかと思ったじゃないですか!死ぬかと思ったじゃないれすか!」 顔を真っ赤にして早口でまくしたてて私に詰めよってくる それはもう、さながら ちょっと唇を突き出せばキスしちゃいそうな距離だよ うっとおしいヤツだなぁ 澪「あー……」 「梓のイビキが、ちょっとあまりにもアレだったからさ」 梓「イビキ?」 「嫌だなぁ。私がイビキなんか かくワケないじゃないですか」 「変な先輩!」 澪「変なのはお前なんだよ」 梓「そんなウマイ事いって、私をからかって楽しんでいるんだ!!喜んでいるんだ!!」 そういうと梓は旅行かばんからナイフを取り出した 澪「お、落ち着け梓」 「アレだ。おゆおにの仕業だよ、やっぱり」 梓「へぁ?」 「お、おゆおに……?」 澪「ほら、夕飯のとき、唯が言ってただろ」 「お湯が大好きな鬼がいるって。きっとソイツがお前の顔に布をかぶせたんだよ。何故か」 私はまたも、おゆおに様に罪をかぶっていただくことにした 梓「でもイビキがうるさいから 澪先輩が布をかぶせたみたいな事を言ってたじゃないですか、今」 澪「そこは お前…………うそだよ」 梓「ホッ。なんだ、うそか」 「澪先輩が私を殺そうとするワケないですものね!」 満面な笑みを浮かべ大いに納得したようだ バカなヤツめ 澪「そういえば律やムギも、おゆおにもやられちゃったんだぞ」 梓「えっ」 「や、やられちゃったって、お2人ともどうなったんですか?」 澪「し、死んだ」 梓「ひぃっ」 澪「つまり、お前も おゆおに にやられそうなところを 私が部屋にかけつけた事で命拾いした、というワケさ」 梓「へぇ~~!」 これで梓はもっと私を尊敬することだろう 大変よいことだ 梓「それで、ゆ、唯先輩は……唯先輩はどうなったんですか?」 澪「唯?」 「唯は、えーっと……お腹いっぱいで、眠くなって……いなくなった」 梓「なにを言ってるんですか」 澪「私にもサッパリだが事実だ。受け止めてくれ」 梓「そんな……」 梓「私、唯先輩を探しに行きます!!」 ツインテールを振り回していきりたつ梓 コイツは、唯を性的に慕っている可能性があるからな…… まぁ、それはいいんだが、一緒に探しにいこうと言い出しかねない空気を察知した私は なんとか引きとめようと思った 何故ならば、外に探しに出れば暑いし、ヤブ蚊もいるからだ 澪「探すったってムチャだ。いいか、どこにいるか見当もつかないんだぞ」 「ほっとけば、唯もそのうち戻ってくるさ」 「だって、この別荘は外より涼しいから」 梓「でも……変なバケモノがいるんでしょ!?」 澪「なんだ、バケモノって」 「そんなもの この世にいるワケないだろ」 「お前はバカか?」 梓「だって澪先輩が、おゆおにがいるって言ったんじゃないですか」 「そうじゃなくて もしかして、やっぱり 私の顔に布をかぶせたのは澪せんぱ……」 澪「おゆおにはいる、必ずだ」 私はナイフを振り上げる梓の目をじっと見つめて言い放った 梓「じゃあ一緒に唯先輩を探しに行きましょう!!」 澪「わかった、お前は別荘の外を勢いよく探せ」 「そして別荘の中の探索は、この私に任せるんだ」 梓「ラジャーです!!」 そういうと、梓は別荘から飛び出し Bボタンダッシュで走るマリオのように 暗闇の中を猛スピードで駆け抜け、すぐに見えなくなった 澪「さて、ついにこの別荘には私一人きり」 「たとえ裸んぼうになっても、もう誰も私を止めることはできないんだ」 そういうと私は服を脱ぎ捨てパンツも放り投げ、別荘の中を全力疾走する 澪「あはははっ、私は王様だぞ!逆らうものは死刑だ!!」 ガチャンッ カラカラッ 澪「ッ!?」 突如、ガラスの割れる音が、した それも、そう遠くない距離から いや。唯なら何故ガラスを割る必要があるんだ まぁ、アイツは おっちょこちょいだからなぁ 可能性が無い事は無いけど…… みし…… みし…… ガラスが割れた音のした方角から廊下を歩く足音が近づいてくる 唯なのか、それとも梓? そのとき、私の中で ひそかに ひっかかっていた事が脳裏をよぎる そういえば律の体は、なぜ海岸に無かったのだろう??? あのときはテンションがあがって、本当に おゆおにが食べてくれたと思ったが 本当にそんな事があるのかなぁ もし律が生きていて、私に復讐しようと考えていたら……? 澪「り、律……律なのか?」 おそるおそる呼びかけてみる みし…… みしみし…… ミシミシミシミシミシミシ 足音が猛スピードで近づいて、きた 澪「わぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ 私は怖くなって、その場にあったナイフをひっつかみ 別荘の外へ駆け出していった ドンッ 澪「わぁあああああああああ!?」 紬「きゃぁああああああ!???」 外に出るなり、何かとぶつかったかと思えば頭から血を流したムギがいた 律「お、おい 何してんだ澪」 「全裸でバイブ持って」 澪「えぁっ!?り、律!?」 「そしてバイブ!?」 ナイフだと思ったら バイブだった 澪「まいったよ。これじゃまるで私が変態みたいじゃないか」 陰毛丸出しでバイブをもったまま カッコイイポーズをとろうとするが、なかなかサマにならない 紬「それより澪ちゃん……私たち、なぜか海岸に倒れていて……」 「昨日の晩あたりから記憶がないんだけれど、一体、何があったの……?」 澪「え?」 律「アタシも気がついたら、頭から血を流したまま、砂浜をふらふら歩いててさ」 「携帯電話は海水でぐちょぐちょに濡れて使い物にならなくなっちまってて 連絡もとれないし……」 澪「……」 「マジで?」 紬「うん、マジなの」 澪「…………」 これは…… うまくすれば、この状況を乗り切れるかも知れないぞ 澪「実はな、おゆおにが出たんだ」 神妙な顔で私は切り出した 紬「ね、りっちゃん。言ったとおりでしょ?」 律「そうだな……」 そういうと、律はゾッとするような無機質な目で 私の みぞおちに拳を叩き込んだ 澪「……マ?」 目を覚ますと、私は、なんか、暗くて狭いところに押し込まれていた 上を見上げると、星空が見える ただし、視界はかなり狭い どうやらここは縦穴の底らしい 気を失っている間に、律たちに放り込まれたというワケか…… 私は律に殴られたお腹をさする 穴の広さは、足を曲げれば座れるが、寝転がることは出来ないくらいで 深さは……5メートル、といったところか…… と、口を半開きのマヌケ面で夜空を見上げていると ムギがひょっこりと穴の淵から顔をのぞかせた 澪「あっ、ムギ!!」 「なぁムギよ。な、なぜ私はこんな所にいるんだ?」 紬「おゆおに」 澪「えっ」 紬「おゆおにが澪ちゃんを穴に放り込んだのよ」 澪「い……」 穴の上からムギがスイカに、しゃくっと かぶりつき 私の頭に ぼたぼたと赤い果肉が落ちてくる 私はノドが渇いていたので、それをうまく口でキャッチする おいしい 澪「いや、しかし、待て、待て」 「私のお腹をパンチしたのは律だったよね?」 紬「なにを言っているの、りっちゃんがそんな事するハズないじゃない」 「出来るハズないじゃない」 「だって、りっちゃんは澪ちゃんが……」 澪「えっ、だって さっき いただろ、律」 紬「ふふ」 そういうとムギはすぐに顔を引っ込めてしまった 澪「もぐらたたきめ」 「次に顔を出したら絶対に叩いてやるぞ」 さて、少し状況を整理する必要があるな…… どうやら律とムギは生きていて、私に仕返しをしようとしているみたいだ 「おゆおにの仕業」みたいな事を言っていたが 意趣返し、というヤツだな、きっと 問題は律たちがどの程度の復讐を望んでいるかということ たとえば3日後の合宿最終日まで私を穴の底に閉じ込める程度のイヤガラセなら まぁ別にあせることもあるまい しかし、まさか、私の命を奪う気だったら……? う~ん アイツら、気はいいヤツらだけどバカだからなぁ…… 殺す気はなくとも 加減を間違えて、うっかり死なせてしまったとかやりそうだ くそっ、まったくどうしようもない連中だよ どうする? いっそ謝ってみるか? 澪「お~い、ごめんごめん」 謝ってみた べしゃっ 澪「?」 べしゃっ 澪「わっ、ぷわっ!?」 穴の上から、何かが ばらばらっと投下された 一瞬、またムギが食べかけのスイカを吹き散らしたのかと思ったが どうも土を放り込んでいるらしい スイカだと思って口を開けてキャッチしようとしたため 口内が土まみれ 澪「ぺっ、ぺっ」 「ひどいや」 ざくっ べしゃっ ざくっ べしゃっ 次々と土が放り込まれ、もう膝元まで土が溜まってきている 澪「くっ、まさか私を生き埋めにするつもりか!?」 でも足元に降り積もる土をうまく踏み固めていくと それは足場となり、私の体は少しづつ穴の出口に近づいていくではないか このまま放り込まれた土を全部、踏み固めていけば、そのうち脱出できそうだぞ 澪「アイツらは本当にバカだな」 私は聖母マリアのように自愛に満ちた表情で高笑いした ん……?自愛?慈愛? まぁどっちも似たようなもんだろう 慈愛も所詮、自己満足のためさ ざくっ べしゃっ ざくっ べしゃっ などとカッコいいことをほざきながら どんどん放り込まれる土を踏み固め 私はついに5メートルの深さがあった穴を脱出できる位置まで来れた それにしても私が機転を利かせたから いいようなものの これが唯とかだったら窒息死していたぞ 怖いなぁ 私は穴から出たら律とムギをバラバラにしてやろうと思った 澪「よっ」 穴から出ると、そこにはシャベルをもった鬼がいた 澪「えっ?」 鬼「えっ!?」 毛むくじゃらの鬼がシャベルになみなみと土を盛り込んだまま こちらを見ている 体の大きさはゆうに2メートルを超えているだろう 私は恐怖した 澪「なっ、えっ、なんだ、おまえっ」 鬼「お……」 澪「……お?」 鬼「お湯もませろぉおおおおおおおおッ」 「ガァアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 澪「お湯もませろ?」 「飲ませろ、の間違いじゃないんですか?」 鬼「あっ///」 澪「バカヤロウッ!!」 ばちぃんッ 私がイラッとして鬼に平手打ちをはなつと 鬼は死んだ あっけなく死んだ2メートル超えの鬼を見ていると 私はなんだかチェ・ホンマンを思い出した そういえば以前、佐々木希と付き合ってるって噂があったけど 本当だったのだろうか まぁソースは東スポだから、アレだけど…… しかし、それにしても、この鬼はなんだったのだろう 私も唯もムギも罪を犯し そして、その罪を、いもしない架空の鬼のせいにした だけど、そういったウソが迷信となり 歪みをもった信じる力が、本当に妖怪を生み出す…… なんか よく ありそうな話だな まぁ、こういった場合 報いとして嘘をついた私が 鬼にひどい目に合わされるんだろうが 鬼が弱かったのも時代のなせるワザか もう鬼とか幽霊とかの時代でもあるまい UFO番組とか怪奇現象番組とか全然、見なくなったもんね そういって、ふと近くの草の茂みをのぞいてみると 唯や律、ムギ、梓がいた みんな、笑顔でバーベキューをしている ハンバーグもあった 誰も私のことなど気にも留めず ムシャムシャむしゃむしゃ おいしそうなものを食べ続けている アウト オブ 眼中、か 澪「みんな」 私が声をかけると みんな、ぎょっとした顔をして お肉を隠した 私は中学時代、卒業式の直後、ママと焼肉屋に行ったら 焼肉やで私以外のクラスメイト全員と出会ったことを思い出した 冷たい体 渇く心 私はなんだか無性にお湯が飲みたくなり みんなの元へ駆け出した ─御湯鬼─ 終わり 5
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作品情報 作品形式 小説 作者 京極夏彦 出版社 KADOKAWA 巻数 3巻 1巻初版発行日 2016/10/22 妖怪が目視されるようになり社会が混沌としていく中、京極夏彦氏等、実在の妖怪・怪談関係者が立ち向かう。 クトゥルフ神話要素 黒史郎氏の頭部にクトゥルーが取り憑き、ラヴクラフト信奉者を中心に邪神救済ネットワークが結成される。 インスマウスや深きものども、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト、オーガスト・ダーレス、黒氏の著作『未完少女ラヴクラフト』などについても言及される。
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106 :彼氏いない歴774年:10/03/20 23 00 03 ID Qr2T84io 102 おお! いいですね! やっぱり動くとイメージはっきりする。 本読みモードは今みたいな黒っぽい背景(もしくは本のページ)に統一して、 背景画像とかは現実の話の時のみ表示する、とかにすると 本読んだり現実に戻ったりの差別化が出来ていいかも? 読んでいる途中で突然現実に戻るとか……ちょっと間違えると混乱するけど。 以下妄想。 読んでいる途中に突然携帯がピリピリ鳴り出して本読み強制終了 ↓ 電話に出る。他愛もない会話。(友達がいるかは謎だけど、親とか業者でもいいと思う) ↓ 怪奇現象が起こる。(電話が勝手に切れる、物が壊れる、声が聞こえすぎて会話できない等) こんなのを何話目かに、はさんでもいいんじゃないかな。 で、そのタイミングで読んだものは携帯で中断の時点で既読になっていてもう読めないとか。 あるいは何度読んでも途中で邪魔が入る話が一つあるとかでも怖いかも。 107 :102:10/03/20 23 29 53 ID qXx6/Fvc 102です ああ、なんだか何人かダウンロードしてくださった方がいるみたいで良かった… アドバイスとかダメ出しとか大歓迎ですのでなんでも言ってください 105 立ち絵もあったほうがいいよね、やっぱり 私は絵は全然ダメなので今回は一切なしで作ってみました 誰か描いてくれる方がいらっしゃれば立ち絵もしくはスチルがあるといいな シナリオもとりあえずまとめにあがってるものを書きだしてみたけど 細かい設定までは決まっていないようなので読めない仕様にしました 百物語シナリオ担当の方も求む!w 106 本読み時だけセピアもしくはモノクロ調の背景にしようかなと思ってたけどそれもいいね 確かに現実世界との区別がはっきりできるし 電話が鳴って、出るかでないかを選択性にしてもいいかも ひとつのゲームに10話(10人)ほどヤンデレをいれて 話の中にいくつか選択肢を設けてそれの選び方によってポイントがつくようにして 一番ポイント高かったヤンデレが全部読み終わった後に現実世界に具現化する っていうのを考えてたんだけど、 106の案も取り入れるとおもしろそうw 108 :彼氏いない歴774年:10/03/21 00 25 43 ID nJoHAWdB 107 立ち絵なしでもそれはそれでいいかもですよ! そういえば本の中に出てくる喪子の名前って、主人公の喪子と同じ名前なのかな。 本が"読む"ものなのか"演じる(入り込む)"ものなのかでも変わりそう。 ヤンデレ(世界?)具現化もいいなあ。ノックの音とかするんですね。いや、チャイムか。 109 :彼氏いない歴774年:10/03/21 00 33 17 ID b8X3ShHg ベッドの下から鉈を持った男がズルッ…とか 突然窓に何かぶつかる音がしたり…とかですね
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タイトル 動画リンク コメント 東方百物語~They are 100 tales east. ~ 1786人目の幻想入り 作者 ひとこと 主人公 白塚真一 動画リンク 新作 一話 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
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当日進行 規制対策に複数名必要。 以下はまとめサイト-百物語2010/運営の役割より転載。 【進行】 語り部さんの投稿完了を見届け、ろうそくAAを貼ります(同時に次の語り部さん呼び出し)。 ろうそくAAの『○○さんありがとうございました。次××さんどうぞ』という部分を 受付スレのリストを見て書き換え、貼り付ける。案内人かつ雰囲気盛り上げ役。 過去の百物語まとめやログでその仕事ぶりが見られると思うので、それらを参考に。 進行の例↓ 52 名前 一郎 ◆1111111111 投稿日:2010/08/20(金) 21 44 26 ID 1SP26gEK0 (投稿本文) 【完】 ※【完】などの「締め」を見てから蝋燭AAを貼る たまに締めを忘れる語り部さんもいるが、その場合は 受付スレで締めてない語り部さんに呼びかけ確認するか 他の運営陣と相談してから蝋燭AAを貼る 53 名前 進行 ◆108wame/da 投稿日:2010/08/20(金) 21 45 21 ID 1SP26gEK0 十五本目の蝋燭が消えようとしています…… ※本数を変える(終わった話数) 一郎 ◆1111111111 氏 ありがとうございました… ※名前を語り終わった人のに変える (蝋燭AA略) 第十六話 ※次の話数 二郎 ◆2222222222 氏 お願いします… ※次の語り部さんへのスタート合図 以下は蝋燭AA。スレッドテンプレのものと同じ。 xx本目の蝋燭が消えました・・・ ○○○さん、ありがとうございました γ ( _ノ / __ ,、 " . ` 、 i`ー _ , . l| !| i""!| } }i |{ !j 〈| J |! }j } _ノ;し i} {J | ,、-,、 ハ- 、 ( .( 、_ _ ,ノ ノ i ) ,、 ""`ー---‐ "フ、_ - _,、 - " ( _ ,、 "  ̄ `ー--─ " □□□さん、第xy話をお願いします 語り部希望は【語り部受付スレ】で、 雑談と感想は【雑談スレ】で、 規制中の方は【避難所】でお願いします。
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/4109.html
2番手◆VW9ify6uH. ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 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唯「ふにゃ~、ごろごろ、ごろごろごろり!」 梓「もう、だらしないですよ唯先輩~」 梓「あっ、波乗りあずにゃんやるです!」 いいことを思いついた一休さんのような表情で高々とジャンプする梓 ドォーン 唯「ぐぇあっ」 荷物を抱えたまま唯の お腹の上に勢いよく飛び乗ってバランスをとり 梓の愛らしい足指が唯の内臓をえぐる 梓「ふふ~ん♪ どうですか!?どうですか唯先輩!!」 なんだかんだいって大の仲良しの唯先輩に思い切り甘える梓後輩 唯「う~ん、う~ん、あずにゃんが楽しいなら いいよぉ~」 梓「やったぁ~!!」 普段はマジメな梓も、海に来たことで ちょっぴりハシャぎ気味のようだ 澪「こらっ、梓。荷物を持ったまま胃の上に乗ったら唯が重たいだろ?」 梓「あっ、ごめんなさい井上先輩!」 ペロリと舌を出し、梓は誰だか分からない先輩に謝ったあと ギターや旅行用カバンを 唯の頭の上に落下させた ドシャドカッ 唯「ぺぁっ」 くたり……と白目をむいて動かなくなった唯を 不思議そうに梓が眺めていた 唯のことはさておき、私はあらためて建物の内装を観察する 別荘は洋館風で、もちろん床や天井にはシックな畳が敷き詰められており 中はひんやりと涼しげだ 唯が だらけたくなった気持ちも分からないでもない エアコンがついているワケでもないのに こんなに快適な室温が保たれているとは さすがに避暑地というだけの事はあるなぁ…… 紬「暑かったら言ってちょうだいね?」 「エアコンのパワーをパワーアップさせるから」 エアコンが ついていた 私たちは二階に上がり、各自 割り当てられた部屋に それぞれ荷物を置きに向かう 澪「ふぅ……」 どさり 今朝、駅で みんなと合流してから騒ぎっぱなしで 少し疲れていた私は 柔らかなベッドに横たわり しばしの間、一人で休むことにした 澪「……」 澪「…………」 澪「………………」 澪「……………………」 澪「…………………………」 澪「………………………………」 澪「……」 澪「…………」 澪「………………」 澪「……………………」 澪「…………………………」 澪「………………………………」 コン コン コンコン 澪「…………?」 コン コン コンコン ドアを叩くノックの音で ふと目を覚ます どうやら5分ほど寝てしまっていたらしい おや、あたりは既に真っ暗じゃないか やっぱり8時間ほど寝てしまっていたらしい せっかくの合宿なのに……くそっ……くそっ…… コンコン コン コン 命短し恋せよ乙女 貴重な青春の1ページのムダ使いに関して猛省する中 ノック音がしつこく鳴り響く まどろんだ頭を覚醒させつつ、ドアに向かって声をかける 澪「はぁい、どうぞ~」 「鍵は開いてるから~」 ガチャガチャ ガチャガチャガチャ ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ 外から誰かがドアノブを何度も回しているようだが 一向にドアが開く様子はない 鍵が かかっていたw ガチャリ 梓「開いてないじゃないですか!!開いてないじゃないれすか!?」 鍵を開けてやるなり、梓が部屋の中に飛び込んできて猛烈な勢いで抗議してくる こうるさいヤツよ しっかり者の私とて、うっかりするくらいの事はあるさ そうだろ? 私はイライラしたので梓をからかうことにした 澪「おかしいな……確かに開けておいたハズなんだけれど」 「ひょっとしてオバケが 私の眠っている間に鍵をかけたのかも知れないな……」 梓「えぇっ、なんですかソレ!?」 「こ、怖い!!オバケこわいよぉぉおぉおお!!ふぎゃあああああああ」 梓は目をカッと開き、耳をふさぎ その場にしゃがみこんで大声で喚き始めた 病気なのかコイツは 梓「憧れの澪先輩の真似をしてみまみた!!」 澪「ふーん」 右拳に腕時計を巻きつけて 硬い文字盤の部分で 梓のアゴを 打ち抜いてやろうと思ったが かわいい後輩に そんな事はできない 澪「それで、何か用事があって来たんじゃないのか」 梓「あぁ……それが さっきから律先輩の姿が見えなくって」 澪「なんだって、律が?」 梓「あっ!あと、もうすぐ晩御飯の時間だから みんなを呼んできてほしいってムギ先輩が」 澪「なに、晩御飯だって!?」 「献立はハンバーグ? ねぇ、ハンバーグかなぁ!?」 梓「さぁ、そこまでは私も……」 澪「晩御飯か……一体、なんなんだろうな!」 梓「ハンバーグだといいですね」 澪「あぁ!!」 私はヨダレをビシャビシャと廊下にまきちらし、舌なめずりしながら食堂に向かった 紬「あっ、澪ちゃん」 「好きなのを選んでね?」 食堂のテーブルの上にはカップラーメンが5個置いてあった 唯「澪ちゃん澪ちゃん!」 「澪ちゃんはシーフードヌードルとカレーヌードル、どっちがいい?」 澪「ハンバーグが いい」 梓「では私は普通のヤツを」 紬「私はカレーにしようかしら」 唯「あははっ、大食いイエローといえばカレー好きだもんね!」 「ムギちゃんには なんか お似合いだねっ!」 紬「そうね」 ムギがジッと下を見つめながら テーブルの上をよたよたと歩いていた小さな羽虫を みちゃみちゃと何度も何度も指で潰していた 澪「ところで唯。その包帯どうしたんだ?」 私は唯の頭に、痛々しく巻かれている包帯に目をやった ところどころ血が滲んでいる 唯「分からないよ……」 「さっき目を覚ましたらグルグル巻いてあって……あずにゃんが お腹の上に乗っかってて」 梓「ぎひひっ」 澪「そっか」 適当に聞き流した私はシーフードヌードルを食べることにした カスッ カシュッ お湯の入ったポットの、押したら お湯がごぼぼって出るところを押したが 妙な空気音がするだけだった 澪「ムギ、お湯が入っていないようだけど……」 紬「えっ、そんなハズは」 がぱっ、とポットのフタを開けてみるが、 なんと そこには やっぱりお湯が入っていなかった 澪「おい、ムギ!!」 紬「わ、私は悪くない……!!」 「だって私、唯ちゃんに水を入れておいてって頼んで……」 唯「えっ、おかしいな~」 「私、絶対にポットに お水入れたよ~!?」 と、不満げな顔をする 梓「じゃあコレは一体、どういうことなんですか」 澪「あ、もしかしたらオバケの仕業かも知れないな」 唯「!」 梓「ぷぎゃああああああああおばあああああk 私は梓を蹴り飛ばした 唯「……もしかして」 「ポットにお湯が入っていない理由は……」 澪「入っていない理由は?」 紬「唯ちゃんがアホだから?」 唯「……」 唯「『おゆおに』の仕業かも知れないよ」 紬「───おゆおに?」 澪「唯、おい唯よ。なんだい、おゆおにって?」 唯「……お湯が大好きな妖怪だよ」 「お湯を飲むためならなんだってする、全身が真っ黒な体毛で覆われた恐ろしい鬼で なんと お湯を飲むならなんだってするという…… 梓「そこのくだり二回目ですよ」 澪「お湯を飲むのと毛深い以外に、その恐ろしい鬼の情報は無いのか」 唯「無いよ……」 唯は下を向いたまま、それっきり口をつぐんでしまった どうやら この平沢 唯という少女は 架空の 『お湯が大好きな妖怪』に全ての罪をなすりつけるらしい 「ポットに水を入れ忘れて ごめんなさい」と 一言謝れば済む話なのに…… トボけた顔して大した女の子だ 梓「ハァ、バッカバカしいなぁ もう」 「妖怪なんているワケないじゃないですか」 唯「あっ…」 澪「あ~あ 梓、お前死んだな」 梓「えっ?」 紬「ホラー映画だと『そんな事あるわけない』とかって バカにする人から真っ先に殺される約束でしょ?」 梓「あ……」 唯「かわいそうな あずにゃん」 紬「じゃあ どうせ食べさせてもムダだから 梓ちゃんのカップラーメン返してもらうわね?」 梓「く……」 食べたかった大好きなカップラーメンを取り上げられ 梓の愛らしい顔がみるみるうちにちるちるみちる 梓「冗談じゃないですよ!!」 「こんな怖いこと言う人たちと一緒にいられるもんか!!」 「私は一人で部屋にいます!!」 ドタドタドタ バタン!! 梓は青い鳥を求めて旅立った さようなら 澪「アイツ、完全に終わったな」 唯「あれが死亡フラグなんだね」 紬「えぇ、そうね」 ムギはポットにジャァアアアッて水を注ぎ始めた さようなら 梓 3
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6番手 ◆MPy9nxtvXs 梓「田舎に泊まろう」 …… …… あれ? ええっと…… ……なんだったっけ…… …… ……お腹減ったなぁ …… 梓は窓ガラスを伝う雫をぼんやりと見つめていました。 宵口から降りだした雨 その雨脚は夜半を過ぎても強くなるわけでも弱まるわけでもなく しとしとと陰鬱に降り続いています。 そこは暗く長い廊下。 旧い日本民家独特の湿った土と木の匂いが辺りを満たしていました。 真夏というのにひんやりと冷たい板貼りの床 そこにじっと腰を下ろしていると、 自分もこの古い家と同化して朽ちていくような気がします。 外は灯りもなく、今梓に見えるのは窓ガラスを伝う水滴とそこに映る自分の顔だけでした。 ぴちゃん…… ぴちゃん…… もうどのくらいの時間こうしているのだったでしょうか 先ほどまではあれだけ煩く思えた蛙の鳴き声もなぜか今は聞こえません。 耳に入ってくるのは、雨垂れなのでしょう、水滴の落ちる音と そして扉の向こう側から漏れ聞こえてくる苦しみを堪えるような声。 ぴちゃん…… ぴちゃん…… 『んっふ……あぁ……』 住み慣れた街から遠く離れた山奥の村 誘われるがまま訪れた、この旧い屋敷での最初の夜です。 旅先での心細いような切ないような、感傷的な気分。 今自分がここにいる、そんな事が何故か不思議に感じられてしまいます。 そして梓は思い出すのです。 そう始まりはこんな他愛の無い会話からでした。 ---------------------------------- 純「あー、夏休みまであと一週間かぁ」 梓「純、今年も夏祭り一緒に行くでしょ?唯先輩に誘われてるんだけど」 純「いいねー、当然澪先輩も一緒だよね?」 梓「うん、またみんなで行こうって」 純「よーし夏休みの心躍るイベントがまたひとーつっ」 憂「夏期講習もあるけどね」 純「えーそれは言わない約束でしょ」 梓「純、受験勉強進んでるの?」 純「うぅ~、割とヤバめかな……」 梓「受験は一夜漬けじゃ無理だよ」 純「わかってるよ……でもまああれだ、私の家系って霊感強いからさ、選択問題なら自信あったり」 梓「またそんないい加減なこと言ってるよ」 純「ほんとだよ~田舎のおばあちゃんとか凄いんだよ」 梓「でさ憂は……」 純「スルーしないでよっ」 憂「そう言えば純ちゃん田舎帰るって言ってなかったっけ?」 純「大丈夫だよ、お祭りの前の日には帰ってくるようにするから」 梓「純は毎年帰省するんだね」 純「うんまあね」 憂「純ちゃんの田舎ってどんなところなの?」 純「え?うーん、なんにも無いところだよ、山と川と田んぼと……」 憂「それっていわゆる自然がいっぱい?」 純「そうそう、自然だけはね、たっぷりあるんだ、涼しいしね」 梓「へーっいいなぁ」 純「おおおーっ!釣れたーーっ!」 憂「えっ」 梓「なにが?」 純「あんた達が」 梓「は?」 純「ねっねっ、二人とも泊まりに来ない?」 梓「泊まりに?」 純「実際のとこ一人じゃ寂しいんだ、ほんとなんにも無いから退屈で死にそうになるんだよね」 憂「でもご両親と一緒なんでしょ?」 純「ところがところが、今年は私一人なんですよねっ」 梓「一人ででも行くんだ」 純「……だってさ、おばあちゃんが私の顔みたいって言うから」 憂「わぁ、純ちゃんいい子だねー」 純「へへっ」 純「だからさー行こうよー、ねー梓ー憂ー」 梓「うーん、どうしようか……受験勉強もあるし」 純「そんなの向こうでみんなでやればいいじゃん、マイナスイオンいっぱいで、もう勉強が捗る捗る」 憂「ほんと?」 純「と思うんだけどね、まあ向こうで勉強したことないから……」 梓「もう調子いいんだから」 純「いやははは、でもね綺麗な川で水遊びできるよ、そこで冷やしたスイカも美味しいし」 梓「憂はどう思う?」 憂「梓ちゃん行ってみたいんでしょ」 梓「それはそうなんだけど」 憂「だったら行こうよ、私も行きたいし」 梓「そう?」 憂「うん」 梓「よし、じゃ行こっか」 純「やった!決まりだね!」 期末テストも終わって気分はもう夏休み、 どこかに受験勉強からの逃避したい気分もあったのでしょうか 梓は憂と共に純の帰省に同行することに決めたのでした。 ---------------------------------- 梓「えっと、あれが何日のことだったっけ……」 梓の手は無意識に携帯電話を求めてパジャマのポケットを探りますが、 その手に触れるのもは何もありません。 梓「あ、そうか純に渡したんだった」 そして梓の心配気な視線は自然と声の聞こえる方へ、扉へと向けられます。 梓「純……大丈夫なのかな」 ぴちゃ……ぴちゃ…… 『あぁ……んっ、くぅ……』 ぴちゃん…… ぴちゃん…… 雨は一向に止む気配がありません。 梓「あーあ、着いたときはあんなに晴れて爽やかだったたのに……」 ---------------------------------- 朝6時に出発して、特急からローカル線へと幾度か電車を乗り継ぎました。 人気のない駅でバスへ乗り換え、山を4つ越えてようやく目的地へ着いたのは もう日が落ちる少し前の予定通りの時刻です。 しかし予定とは異なったこともありました。 山の端に隠れる前の夕陽が伸ばされる影が三つではなく二つだったことです。 バス停に降りたのは純と梓の二人だけでした。 純「ふぅ……やっと着いた」 梓「ここまで山奥とか思ってなかったよ」 純「うぅ……おしり痛い……」 梓「そりゃあもう5時間もバスに乗ってたんだから、でも純は慣れてるんじゃなかったの?」 純「だっていつもはお父さんの車なんだもん」 梓「ああ、そういうことかぁ」 純「さすがにこっちは涼しいね、憂も来られればよかったのになぁ」 梓「仕方ないよ、唯先輩家に帰るなり熱出しちゃったんだから」 純「残念がってたけど妙に嬉しそうでもあったよね」 梓「そりゃあね、久しぶりにたっぷりお世話できるからでしょ」 純「ま、そういうことだよね、あのお姉ちゃん大好きっ子は」 梓「あはは」 純「で、唯先輩大好きっ子としてはその辺りどうなんですか?」 梓「な、何わけわかんないこと言ってるのよ」 純「梓も会いたかったんじゃないの?」 梓「そ、そんなことないよ……あっでも会いたくないってことじゃなくてね」 純「わかってる、わかってますよ」 梓「それに帰ったら夏祭りで会えるし」 純「それまでに唯先輩の熱が下がってるといいね」 梓「うん……」 梓「そうだ、憂に無事着いたってメールしようかな……あれっ?」 純「あーダメダメ、この村じゃ電波届くとこ限られてるから」 梓「そうなの?電波届かないとなんか心細いな」 純「電波の入るポイントが何か所かあるから、後で教えてあげるよ」 梓「うん……」 純「さあ行くよ、ここから歩いて峠越えなきゃ」 梓「ええっ?」 純「あはは、うっそー」 純「といっても結構歩くんだけどね、おばあちゃんとこバス停とは反対側の村の端っこだから」 梓「それってこの村の端から端まで歩くってこと?」 純「うん、でも村全体でもそんなに広くないんだよ、山と山の間に流れてる川の回りに村が出来ただけだし」 梓「ふうん、人間ってどんなんとこでも生きて行けるんだなあ」 純「あー梓、それちょっと失礼だよ」 梓「あっごめん」 純「まあ私もそう思うけどさ」 梓「あれ?あっちの畑で誰か手を振ってるよ」 純「えっ?」 村人「おーい、純ちゃんじゃないかねー」 純「あっおばさん!お久しぶりでーす!」 村人「あらあらまた可愛くなっちゃって」 純「へへっ今年は友達連れてきましたー」 梓「あ、こんにちはー」 村人「はいはい、こりゃまた可愛いお友達だねえ、中学生かい?」 梓「えっ?いえ……純と同い年なんですけど……」 村人「あ……ああーいやーごめんごめん、あんまり可愛いからさ~、あっはっは」 梓「ああ、いえいいんです……あはは」 純「ぷぷっぷ」 梓「ちょっと純?」 純「おおっとのんびりしてちゃ日が暮れちゃう、じゃあ行きますねー」 村人「はいはい、またスイカでも食べにおいで」 純「はーいありがとうございまーす」 村人「あ、そうそう、今日は朔月だからね、夜は早く寝るんだよー」 純「あ、そっか……はーい」 梓「今の、親戚のひと?」 純「ううん、違うよ」 梓「でもよく知ってるみたいだった」 純「ああ、村中知合いみたいなもんだから」 梓「さっきあのひとの言ってた、さくつきってなんのこと?」 純「新月のことだよ、お月様の」 梓「ああその新月、確か新月って月が見えないんだよね。それで?」 純「田舎でしょ、古い言い伝えとかいろいろ残ってるんだ」 梓「へえ」 純「おばあちゃんとこでもね、離れに開かずの間なんてあったりさ」 梓「開かずの間……」 純「特に朔月の夜は良くないことが起こるから早く寝ろとか」 梓「良くないことって」 純「いやいやそんな顔しないでよ、はは迷信迷信、決まってるじゃないそんなの」 純「あれは子供を早く寝かせるための作り話だよ」 純「おばちゃんまだ私のこと子供だって思ってるんだなー、ははは」 梓「私なんて中学生って言われた」 純「あーうん、いや梓はちゃんと高校三年生に見えるって」 梓「純、本当にそう思ってる?」 純「え?んー……あっ!それより梓あそこ、高い木があるでしょ」 梓「あ、話逸らした」 純「違う違う、ほらあの右お地蔵さんあるから、そこでだったら電波受信できるよ」 梓「あ、お地蔵さん、ここね」 梓「えーと……あアンテナ立った」 新規メール ================== To 憂 Sub 着きました! ================== さっき着きました。 思ったよりずっと山奥で自然に囲まれて 気持ちいいよ。 唯先輩の様子どうですか? 少しだけ心配です。 こちらは電波が悪いのですぐに返信できな いと思いますけど、何かあれば連絡下さい。 -----END----- 梓「っと……送信」 ピッ ---------------------------------- 梓(あのメール……少しだけ心配って、変だったかな?) 梓(それに何かあればって……何があるっていうのよ、もう) 梓(バカだな私、なんでいつもこうなんだろ) 梓「……」 梓「まだかな……」 ぴちゃ……ぴちゃ…… 『ううっ……』 ぴちゃん…… ぴちゃん…… 『……んっ……あぁぁ』 ---------------------------------- すっかり陽が落ちた頃に二人がようやくたどり着いた家は 旧くそして大きなお屋敷でした。 長く高い土塀がまるで何かを覆い隠すように、屋敷を囲い込んでいます。 梓「わあずいぶん大きな家だね」 純「大きいだけだけどね、古いしカビ臭いし」 純「廊下もさぐねぐね長くて馴れないとマジで迷子になるから気を付けてよ」 梓「この家に何人で住んでるの?」 純「ん?おばあちゃんとお手伝いの人だけだよ」 梓「え?それだけで?こんなに広いのにお掃除とか大変でしょ?」 純「そのへんはまあ色々と村の人達が入れ替わり面倒見てくれるからさ」 梓「へえ、田舎ってそんな風になってるんだ」 純「まあ色々とね」 梓「色々って?」 純「それは……まあいいじゃん、大したことじゃないよ」 梓「ふうん」 純の祖母に挨拶を済ませた後、長い廊下を幾度も曲がり 梓が通された部屋は離れの一角にある畳の間でした。 純「梓ースイカ食べるー?」 梓「私はもういいよ」 純「じゃあ梓の分も食べちゃうねー」 梓「純お風呂上りにカキ氷いっぱい食べてたくせに」 純「甘いものは別腹ー」 梓「かき氷も甘いでしょ、寝る前に冷たいもの食べるとお腹壊すよ」 純「ん、平気平気……」シャクシャク 梓「太るよ」 純「んあーそれは困るなー」シャクシャク 純「そう言えばお風呂どうだった?シャワーも無くて、使いにくかったでしょ」 梓「そんなことないよ、木のお風呂なんて初めてだから面白かったよ」 純「来て後悔してたりしない?」 梓「してないよそんなの」 純「ほんとにー?」 梓「ほんとほんと」 純「ならいいけどさー、この家陰気だしちょっと怖いでしょ」 梓「まあそれは……うん、ちょっと、ね」 純「だよねー、ひとりで寝るの怖いよ~」 梓「えっ、ひとりで?純と一緒じゃないの?」 純「私はおばあちゃんと寝るんだよね」 梓「そんなぁ……」 純「ふふふ……う、そ」 梓「……なによもぉ……」 純「ごめんごめん、なんなら同じ布団で抱き合って寝てもいいよ?」 梓「それは遠慮します」 純「あーずにゃーん!」ギュッ 梓「こ、こらあっ」 ゆったりと時間が過ぎて行きました。 純「じゃあ歯も磨いたし寝ようか、もう11時だし」 梓「まだ早いんじゃない?」 純「母屋の方はもう寝ちゃってるし、今日は早く寝る日だから」 梓「そう言えば挨拶した時におばあさんもそんな事言ってたね、やっぱり純も気にしてるんだ」 純「ち、違うけどさ、ほら郷に入ればとか言うじゃん、ほらお布団敷くよ」 梓「そうだ、ねえ、メール受信したいんだけど、電波届くところってどこかな」 純「えっ?このうちの中は……」 梓「ないの?」 純「うーん、ないことはないんだけど今夜はねえ」 梓「そうかあ……」 純「梓、唯先輩のこと心配なんだ」 梓「そういうんじゃないんだけどさ……」 純「あーもう、ちょっとは素直になりなよ、心配なんでしょ?」 梓「……うん」 純「もう仕方ないなあ……ちょっと携帯貸して、受信してきてあげる」 梓「ほんと?じゃあ私も」 純「梓はダメ、ほんとは怒られるんだよ」 梓「そんな……だったら諦めるよ」 純「いいから貸して、せっかく梓が付いて来てくれたんだから、この位サービスしなきゃ」 梓「……いいの?」 純「まかせなさいって」 純「そうだ、言っとくけど梓は絶対に出てきちゃダメだよ、夜は余計に迷うからね」 純「よっ、と」 ガタガタッ 純「ホントは私もトイレ行きたかったんだよね、へへっ、すぐ帰ってくるから」 ガタ……ピシャ そう言って純は建付けの悪い襖を開け部屋を出ていきました。 しかしすぐ帰るといったはずの純は10分待てど20分待てど 一向に帰って来る様子がありません。 30分……純は帰ってきません。 そして40分を過ぎた頃には梓はすっかり心細くなっていました。 梓「遅すぎるよ……」 梓「そうだトイレ行くって言ってたけど、まさか本当にお腹壊して苦しんでるのかも」 梓「冷たいものいっぱい食べてたし」 梓「心配だなあ……」 梓「ちょっとだけ様子見てこよう、迷いそうになったら引き返せばいいんだし 梓「よっ……と」 ガタッ とうとう梓は廊下へ出てしまいました。 梓「こっちかな……ええと私達の部屋があそこだから……あれ?」 10歩ほど歩いて振り返って見ましたが、今出てきた部屋の位置がわかりません。 廊下には同じ柄の襖戸が幾つも並んでいたのです 梓「まああの辺だよね、部屋の前の廊下さえ覚えてれば大丈夫」 梓「確かトイレは……こっちか」 どの廊下も全く同じ造りです。 夕食前に何とか覚えたはずの道筋も、夜となってはまた全然違って見えました。 灯りと言えば曲がり角ごとのボウッっとした電球のみです。 ぎっ ぎっ ぎっ 梓は足音を抑えて歩くのですが、床板の軋む音が矢鱈と響きます。 梓「何でこんな入り組んでるんだろ…… 梓「昔のお城みたいに侵入者避けなのかな」 ぎっ ぎっ ぎっ 『ぁ……』 梓「あれ?なんだろ?」 『うっん……』 廊下を左へ曲がった途端、微かな声が耳に届きました。 『はぁっ……ぅ』 梓「これ……純の声だ」 声が聞こえてくるのは廊下の奥のほうからです。 梓「どこ?」 その声を頼りに進んでいくと、 長く続く壁に頑丈そうな木の扉が一つぽつんと付いていました。 声はどうやらこの中から聞こえてきます。 梓「ここもトイレなのかな」 ぴちゃ……ぴちゃ…… 『んんっ……あっ、ああっあああっ!』 『はぁはぁ……んひぃ……』 苦しそうで聞き取りにくいけれど、確かに純の声です。 梓「やっぱりお腹壊してたんだ……」 梓「純、大丈夫?」 『ぐぅ!』 がたんっ! 梓「どうしたの純?」 …… 梓「お腹痛いんでしょ?だから言ったのに」 …… 『……だい……じょうぶ』 梓「ほんとに?薬持ってこようか?」 『まって……』 梓「なに?」 『そこに、いて……』 梓「え、でも……」 『そこに、いて……』 梓「わかった、ここで待ってるよ」 そうして梓は扉から少し離れた窓際の床に腰をおろしたのです。 真夏というのにひんやりと冷たい板貼りの床 そこにじっと腰を下ろしていると、 自分もこの古い家と同化して朽ちていくような気がします。 梓は窓ガラスを伝う雨の雫をぼんやりと見つめていました。 9
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4番手:◆zzEUmCA7VVnh 憂「お姉ちゃんとおかたづけ」 唯「うー」 唯「ういー……」 憂「お姉ちゃん」 唯「え?」 憂「お姉ちゃん、おかたづけしよっか」 唯「うい?」 憂「うん」 唯「でも……」 憂「早くしないと、みなさん来ちゃうから、ね?」 唯「うん」 唯「でも、なにからすればいいかなあ」 憂「んーと、まずは……」 憂「ゴミ袋用意しよっか」 唯「はーい」 憂「あ、それじゃなくてそっちの黒いやつ」 唯「なんで?」 憂「いーの」 憂「えっと、そしたらまずは……」 唯「ねえ、憂。でもどうして?」 憂「えー? だって、お姉ちゃん、困っちゃうじゃん」 唯「そうかなあ」 憂「そうだよ。私がいないと、だめなのお姉ちゃんは」 唯「そうだね」 唯「でもさぁ……」 憂「なあに?」 唯「ういはさっき」 憂「お姉ちゃん、そっち持って」 唯「うん」 憂「そしたら、こう」 唯「こう?」 憂「そう。じゃあ、持つよ」 唯「重いよー」 憂「……」 唯「怒ってる?」 憂「なに?」 唯「ううん、なんでもない」 唯「なんでもない」 憂「じゃ、はこぼっか」 唯「どこに?」 憂「とりあえずお父さんの部屋」 唯「わかったー。うんしょ」 唯「ねえ、憂。私いまちょっと混乱してるんだ」 憂「無理もないよ」 唯「ねえ、これってやっぱり」 憂「お姉ちゃん、そこ壁あるから気を付けて」 唯「……」 憂「なんか寒いねー。手とか冷たいし」 唯「冬だからね」 憂「冬かー」 憂「私ね、冬って好きだなー」 唯「えー、寒いじゃん」 唯「あ、でもコタツでごろごろできるのとかはイイかも」 憂「お姉ちゃんにあったかあったかして貰えるし」 唯「……てへへ」 憂「階段のぼるよー」 唯「うん」 憂「足元気を付けてね」 唯「うん、おっとっと」 憂「お姉ちゃん、だいじょうぶ!?」 唯「だいじょぶだよー」 唯「だいじょぶっていうか」 憂「……」 唯「ねえ、憂。わたしさっき、うい」 憂「あ、雪?」 唯「え?」 憂「憶えてる?」 唯「なにを?」 憂「お姉ちゃん、昔わたしにホワイトクリスマス、プレゼントしてくれたよね」 唯「ほわいとくりすます?」 唯「んー」 憂「ふふ、なんでもない」 唯「そっか」 唯「ねえ、憂、やっぱり」 憂「やめて」 唯「だって……」 憂「やめてやめて」 唯「うい」 憂「あーあーあー」 唯「ねえ、うい。聞いて、私やっぱりちゃんと」 憂「お姉ちゃん、お願い」 唯「でもさっき、憂は」 憂「これいじょう私をいじめないで」 唯「いじめるっていうか……」 憂「お願い」 唯「……わかった」 憂「よいしょっと……」 唯(ねえ、憂。) 唯(でもやっぱり……こんなのおかしいよ) 憂「おかしくなんてない」 唯「え?」 憂「おかしくなんてないもん!」 唯「うん」 憂「しょうがないじゃん」 唯「しょうがない、か」 憂「ごめんね」 唯「ううん、こっちのほうこそ、なんだかいろいろしてもらいまして」 憂「あはは」 ぴんぽーん 憂「!」 唯「や、やばい!」 唯「どうしよう憂、みんな来ちゃったよ」 憂「お姉ちゃん、それいいからもうここに放り込んで!」 唯「う、うん」 憂「んと……」 唯「わ、わたしどうすればいい!?」 憂「どうもしなくていいよ」 憂「私玄関に出てくるから」 唯「うん」 紬澪律「おじゃましまーす」 憂「いらっしゃーい」 憂「どうぞー」 律「やっほー、ゆーいー来たぞー」 憂「あ、スリッパどうぞ」 紬「ありがとう憂ちゃん」 澪「相変わらず出来た妹だな」 律「おーい、ゆいー?」 憂「……」 律「わー、すげえごちそう!」 澪「これ全部憂ちゃんが作ったの?」 律「なあ憂ちゃん、唯は?」 憂「えっと、お姉ちゃんは」 律「ゆーいー、どこだー」 憂「えっとえっとえっと」 澪「お手洗い借りてもいい?」 憂「あ、はい」 澪「……」ガチャ 憂「だめ!澪さんその扉は」 どさっ 澪「ひいっ、なにこれ!?」 憂「あ……」 律「どうした、澪」 律「なんだこれ?」 紬「なあに、これ?憂ちゃん」 憂「えっと。お姉ちゃん」 あ、やっぱりわたし、さっき ――――― …… ――――― 唯「ねー、ういーキスしようよー」 憂「もうすぐ皆さんが来ちゃうから……」 唯「いーじゃん、ちゅー」 憂「だめっ」ばんっ ガン 唯「うー」 どくどくどく 唯「ういー……」ガクッ 憂「……!」 唯(あれ、なんか体が軽くなって・・・・・) 憂「……お姉ちゃん」 唯「え?」 憂「おかたづけしよっか」 おしまい 7