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才葉さくら、OLです 今日も大波くんは私の膝の上 最近はよく乗せてくれって言ってくるんですよ やっぱり宇宙に行く前ともなると心もとなくなるのかな? 「大波くんは宇宙で何をしてくるの?」「いろんな実験」「楽しみ?」「楽しみではあるんだけど…やっぱり怖いな」 この間思いっきり泣いてからは気持ちを包み隠さずに出してくるようになってきたんだよなあ大波くん 「みゃはは、すぐに慣れるよ」 ……大波くんと出会ってからいろんなことがあったなあ… 「いや、ありすぎでしょ」「うわぁっ!?ホンフーさん!?」いつも唐突に現れる人だなあ… 「うふふ♡…それはさておき、さくらさん、カズさんが動き始めましたよ、湯田さんも一緒です」 ……ついに、か 覚悟はしていたけどやっぱり怖いなあ…でも 「五年や十年待ってるのが辛いだなんて、人それぞれだと思うんですよね…」そりゃあ五年経ったら私は33 十年なら38、まず子供が産めるかとか危うい でもそれ以外に難点は特に見つからない、だってなあ… 「いきなり立ち去るようなことはまずないだろうし」ね?どっかの誰かさん 「へーっくし!」「どうかしましたか?あなた」「いやなんでもないよ、るりか」「……?」 「おやおや、あなたももしかして辛い別れを経験してましたか?」「そんな訳じゃないですけど…」いなくなったときは心配したんだよなあ、大事な友達だったからこそ余計に 「お姉ちゃん……」そうだ、今日は大波くんがいるんだった…ってか 「大波くん知ってたの!?」 「私が教えておきました、これは大波くんにも関わる問題なので」 と、なると…懸念されるのは 「俺が父さんをぶっ飛ばすよ」……男の子ってどうも荒っぽい 「これもあなたの与えた愛ゆえですね、私は別に構いませんr」「駄目でしょ?ホンフーさん、にゅ?」 家庭崩壊させるつもりかいっ でも大波くんは抑えておかないと 突っ走る悪い癖が出てきてるからなあ こうなってくと大波くん頑固になってワガママ言い出すんだよね… あ~どうやって抑えるかなあ…そうだ 一石二鳥の手があった、じゅるり 「ホンフーさん、少しばかり目を閉じてもらっていいですか?」 「ええ、いいですよ、なるべく早く落としてくださいね」バレテーラ きょとんとする大波くんを私はがっしり押さえつけ 「今回だけの…特別だからね、みゃはは」「なに言ってるのングッ!?」 思いっきりキスをした、ファーストじゃないけどね 大波君の甘い香りが私の中にとろけるように入ってくる 蜜のように甘いキス 大波君の口を塞ぐのと、大波君への宇宙に行く前に手渡す大人のチケット ホンフーさんは短くって言ったけれど 私たちはしばらくこのまんまでいた 途中で少し塩辛くなったのは、大波君からのスパイス 「……ぷはっ、それじゃあ大波君、大人しくしててね、みゃはは」「……」 まるで人形みたいな顔をしている大波君を背に 私とホンフーさんは玄関先へと向かっていった 「あなたって、度胸の面では私たちとおんなじなんじゃないかって疑ってしまいます♡」「あれはその…今回だけの特例です」 玄関の向こう側にはカズさんが立っている、湯田さん……いやお父様も一緒だ、どうも一筋縄ではいかなそうな雰囲気はある、けれど 進むしかない
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千聖もう寝てるんじゃないの、とか 今会ってもしょうがないよ、とか そんな口を挟む間もなく、私は舞美ちゃんのお兄さんが運転するワンボックスカーに詰め込まれた。 仲間を思う舞美の気持ちがどうとか、絆がどうとか、舞美ちゃんがそのまま男になった感じの男の人が喋っている。 時刻は午前3時。まさか千聖の家まで3時間もかからないだろう。本気なのか、この人達は。 「私ね、やっとわかったんだ。」 私のことは着替えさせたくせに、自分はネグリジェのままの舞美ちゃんが語りだした。 「舞が今のちっさーを受け入れられないなら、それはもう仕方ないと思ってた。 仕事の時にちゃんとやってくれるならっいいかって。でもそれは違うよね。 舞ももう現実と向き合っていかないといけなかったんだ。」 やだ。何言ってるのお姉ちゃん。だって、舞は。 「私やえりが最初に気づいておくべきだった。舞がどれだけしっかりしてたって、まだたったの13歳なのに。 何もかも自分で判断させるなんておかしかった。舞がもし良くない態度でちっさーに接したら、その場で注意するべきだったんだよ。なっきーはちゃんとそうしてたのに、リーダーの私は」 「待って、舞美ちゃん。何で今そんなこというの?っていうか、今私たち何しに行くの?」 「何しにって。」 舞美ちゃんは相変わらず無表情のまま顔を近づけてきた。 「今までのこと、謝りに行くんだよ。」 「・・・・・なんで。やだよ。別に私は悪くない。」 「だって、舞泣いてたじゃない。千聖に会いたい、謝りたいって。」 ああ、それは違うんだよお姉ちゃん。あの千聖に謝りたいんじゃなくて、前の千聖にだよ。 「ちっさーは優しいし、人の思いやりがわかる子だから大丈夫だよ。私もついていってあげるから。 このままじゃ舞のためにも、ちっさーのためにもならない。そうだよ、うんそうだ。」 舞美ちゃんは完全に舞美ワールドに入ってしまって、私の声なんか聞こえてないみたいだ。何だか悲しくなってきた。 「降ろして。私があの千聖に謝ることなんて何もない。舞美ちゃんには関係ないじゃん。それにあれはなっきーが」 「舞。じゃあ何でちっさーは泣いてたの?あんなに雨ふってたのに、何で一人で帰るなんて言ったの?なっきーが全部悪いとでも言うの?」 舞美ちゃんの声はあくまで冷静だったけれど、私を見据えたまま一歩も引かない。 年上だけど、リーダーだけど、どこかで私は舞美ちゃんをなめていたのかもしれない。 でも今の射抜くような視線は、言い逃れや責任の押し付けなんて許さないような迫力がある。 「このままじゃだめなんだよ、舞。」 「降りる、降ろして。舞歩いて帰る。」 「バカなこと言わないの。できるわけないでしょ。舞、逃げないの。」 「もう、やだ何で・・・舞だって、いろいろ考えてるのに。みんなでそうやって舞を責めるんだ。」 もう悔し紛れの逆ギレしかできない。 車はどんどん加速していく。 こんな気持ちのままあの千聖に会って、何をしろっていうんだろう。 「みんな舞よりも、あの千聖を取るんだね。なっきーも、舞美ちゃんも、もう舞の味方じゃないんだ。どうでもよくなっちゃったんだ。」 「それは違うよ。みんな心配してるんだよ、舞とちっさーのこと。どうでもいい人のために、ここまでするわけないじゃないか。」 少しだけ、舞美ちゃんの表情が緩んだ。 「舞、辛いかもしれないけど聞いて。ちっさーはもうずっと今のままかもしれない。治るかもしれないし、そんなことは誰にもわからないよね? だから、舞も意地張ってないで今のちっさーを受け止めてあげてほしいんだ。」 ・・・ああ。どうしよう。もうこの件で人前で泣くのは終わりにしたかったのに。私の目の前はまた霞んできた。 「わ、わかってるもん。」 「うん。」 「あの千聖が、前と同じで舞のこと思いやってくれてることも、見ていてくれてることもわかってる。 千聖が、私にひどいことされても、私の前で泣かないようにしてたのも知ってるよ。 でも舞には前の千聖じゃなきゃだめなの。どうしても会いたいんだよ。あきらめられないの。」 「そっか、うん、わかった、ごめん。ごめんね舞。急すぎたよね。」 舞美ちゃんのぬくもりが体を包む。抱きしめられると、どうしようもなく胸が切なくなって涙が止まらなくなる。 “お兄ちゃんごめん、やっぱり行かない戻って” “ちょ、おま” どうやら引き返してくれるらしい。私の背中をさすりながら、舞美ちゃんも少し鼻を啜っていた。 「ごめんね、私暴走して。どうしても今じゃなきゃって思っちゃって。アホなリーダーでごめん。」 「ううん、ありがとう。・・・舞、昨日のことだけはちゃんとあの千聖に謝るから。 明後日レッスンあるでしょ?できたら明日、相談に乗ってほしいな。」 「うん、うん。わかった。明日起きてから、ゆっくり話そう。そうだね、ゆっくりでいいんだ。」 ありがとう、お姉ちゃん。 まだキュートは私の居場所でいいんだね。優しい腕の中で、ゆっくりと目を閉じた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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遠ざかるちっさーの背中を見送るなっきぃは、また落ち込んだ表情に戻ってしまった。 「何かごめんね。茉麻ちゃんも、友理奈ちゃんも。」 「あ、ううん全然。」 沈黙が訪れた。 なっきぃが涙目になってしまっていることに気がついて、私も熊井ちゃんも声をかけようがなくなってしまったのだった。 「私、千聖のために何にもできない。悔しい。」 なっきぃはキュートのまとめ役みたいなところがあるから、すごく責任を感じてしまっているみたいだ。 「なっきぃ、・・・千聖のこと、どうしてもうちらには話せないかな?」 思い切ってそう切り出してみると、なっきぃは明らかに動揺した表情で、瞳を揺らした。 「千聖のことも心配だけど、何だかまぁはなっきぃのことも心配だよ。 話して楽になるなら、そうしたほうがいいと思う。 ベリーズじゃ、力になれない?」 「そうだよ、なかさきちゃんが元気なくなるとつまんないよ。」 私たちはグループこそ違うけれど、同じキッズ出身の仲間で。 その大切な仲間達が何か抱え込んでいるなら、一緒に悩んで解決したいと思うのは自然なことだった。 しばらく考え込んだ後、なっきぃは険しい表情のまま、私と熊井ちゃんの顔を見比べた。 「ありがとう。・・・・・・・・・みぃたんに相談してみる。一緒に来てくれる?」 「みぃたん。」 みんながいる部屋に着くと、なっきぃはちぃと喋っていた舞美ちゃんを端っこに連れ出して、ぼそぼそと話しを始めた。 ところどころで舞美ちゃんが「えぇっ!何で」とか「でも・・・待って」とか結構な大きさの声で叫ぶから、だんだんとみんなの視線は2人の方へと集まっていった。 「茉麻、なっきぃと舞美ちゃん誰の話してるかわかる?」 私がなっきぃと一緒に帰ってきたからだろう、舞ちゃんがとても強張った顔をして、おそるおそる話しかけてきた。 誰の、と言っている時点で大方話の予想はついているのかな。 それでも私は千聖のために、今は知らないふりをしておくことにした。 「わかんない。ちょっと深刻そうな顔してるね。」 「ねぇ~まぁ。千聖どこにいったか知らない?」 今度は梨沙子と愛理だ。 「戻ってこないの。ケータイはおきっぱなしだし、ももと一緒にいるのかな?もものも電源入ってないんだ。」 あんまり不安そうな顔をするから、私はそれで、梨沙子がすでに千聖の件について何か知ってるということを悟ってしまった。 「千聖はもものところだよー。大丈夫だよ梨沙子。」 熊井ちゃんがそう答えると、梨沙子はほっとした顔になった。 「そっか、ももならいいんだよね、愛理?もう知ってるし」 「ちょっと梨沙子!シーッ」 「あばばばば」 普段はおっとりマイペースなくせに、熊井ちゃんはこういうのは聞き逃さない。 「なーに?ももと梨沙子は千聖のあの変な喋り方のこと知ってるの?」 「えっ・・・!」 「熊井ちゃん待って、その話は」 あわてて止めたけど、少し遅かったみたいだ。 依然話し合いを続けるなっきぃと舞美ちゃん以外の、キュートメンバー全員の視線がこっちに向けられた。 何も言わない。 どう切り出したらいいのかわからないんだろう、みんな黙って私と熊井ちゃんを見ている。 「・・・・・ねー!!!もう!!!なんなの今日!!!みんな内緒ばっかり!」 その時、空気が不穏になってきていた楽屋に、思いっきりテーブルを叩く音が響き渡った。 今日の不機嫌MVP、千奈美の爆弾が落ちた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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雪の降る高原に、私は一人ぼっちでいた。一面真っ白で、何も見えない。 不安にかられて歩いていると、遠くの方から楽しそうな笑い声が近づいてきた。 「かまくら作ろう。」 「みんなで座れるソファを作ろう。」 「ソリで遊ぼうよ。」 なぜか懐かしい気持ちになる。キュートの皆だ。私は声のする方に向かって走り出す。 「舞美ちゃん。」 雪玉を栞菜にぶつけようとふざけている舞美ちゃんに声をかける。 振り向かない。 二度、三度と名前をよんでも、私のことなんか気が付かないみたいに誰も反応してくれなかった。 怖くなって舞美ちゃんに飛びつこうとしたけれど、私の体は舞美ちゃんをすり抜けた。雪の中にしりもちを付く。 「栞菜。えりかちゃん。ねえってば!」 とっさに投げた手元の雪さえ、誰にも届かずに地面に落ちた。 「楽しいね。」 「面白いね。」 「あっちでソリ競争やろうよ。」 またみんなが遠ざかっていく。 誰も私に気づいてくれない。私なんかいなくて当たり前のように、世界が循環していく。 嫌だ、舞はここだよ。誰か私を見つけて。ここにいるんだよ。 「舞ちゃん。」 ふりむくと、ベージュのハンチングを被った千聖が立っていた。 「舞ちゃん。遊ぼうよ。」 おそるおそる、差し出された手に触ってみる。 すり抜けない。暖かい千聖の手が、ぎゅっと握り返してくれた。 「舞ちゃん手冷たくなってるー」 千聖はうへへって楽しそうに笑っている。 よかった、千聖元に戻ったんだね。そして、ちゃんと舞のこと見つけてくれた。 誰も気づいてくれなくても、千聖だけは。 「皆のとこ行こう。一緒にソリ乗ろうよ。」 手を引っ張られて、転がりそうになりながら2人で走る。 「千聖。私、千聖にまだ謝ってない」 「なーに?聞こえないよぅ」 「うわっ」 千聖があんまり早く走るから、私はつまずいて転んでしまった。 手が離れる。千聖は気づいていないかのように、笑い声をあげながらみんなの輪の中に入っていく。 待って、やだよ。千聖、千聖!!」 「舞!大丈夫!?」 ? いきなり、舞美ちゃんのドアップが目の前にきた。 「舞、大丈夫?うなされてたけど」 何だ。夢か。千聖の手だと思って握っていたのは、舞美ちゃんの手だったのか。 「あれ、ここ・・・」 「ああ。タクシーの中でぐっすり寝てたから、とりあえず家にお泊りしてもらうことにしたんだ。舞のママには連絡してあるから、大丈夫。」 壁にかかっている時計を見ると、もうすぐ日付が変わるぐらいの時間だった。 よっぽど熟睡していたんだろうな。レッスンスタジオを出てからここにたどり着くまでのことが全く思い出せない。 「なっきーは?」 「家に帰ったよ。舞によろしくって。」 「ふぅん」 目が覚めてくると、今日一日にあったことが次々と頭をよぎっていく。 ダンスレッスン中に栞菜となっきーがケンカして、なっきーが居残り練習をするっていうから、ロビーで待っていた。 約束していたわけじゃないけど、千聖のことを話したかった。 なっきーは千聖のことを話せる、唯一の理解者だったから。ついさっきまでは。 しばらくたってもなっきーが階段を降りてこなかったから、様子を見にロッカーまでいくと、中で「あの千聖」が歌を歌っていた。 なっきーとの約束で、最近は挨拶ぐらいはするようにしてたけれど、やっぱりなるべく係わりを持ちたくなかった。 前の千聖と同じで、自分のパートと愛理のパートだけをずっと練習している。 何だよ。頭打っても愛理のことはちゃんとライバルだって覚えてるんだ。私が千聖にとってどんな存在だったのかも忘れちゃったくせに。 苛立つ気持ちを押さえて、廊下の端まで移動する。ちょうど入れ替わるようなタイミングで、なっきーがロッカーに入っていった。 しょうがない。もし2人が一緒に出てきたら、今日はあきらめて帰ろう。・・・話ぐらいは、聞いてもいいよね。 そう思ってドアの前まで行くと、千聖がなっきーに「私のライバルは愛理です」とかなんとか言っていた。 たよりない変なお嬢様キャラに変わっても、そういうことははっきりした口調で言えるんだね。むかつく。 そして、次になっきーが信じられないことを言った。 「千聖は変わってないね。前の千聖のままだね。」 その後のことは、あんまり覚えていない。 なっきーに文句を言ったような貴がする。 千聖を怒鳴りつけた気もする。 もしかして、暴力を振るったのかもしれない。 気がついたら、舞美ちゃんにすがりついて大泣きしていた。 こんなに泣いたのは初めてかもしれない。まだこめかみが痛い。 「舞、熱いココア入れたから、あっちで飲もう。」 こんな真夏に、Tシャツにハーフパンツでホットココアって。 「ありがとう。」 カップを受け取って、口をつける。 熱いけど、おいしかった。舞美ちゃんはかなりの天然だけど人の好みをよく記憶していて、 たまにこういう風にお茶を入れてくれることがあると、いつもそれぞれが一番おいしく飲めるように気を使ってくれる。 「おいしい?」 汗だくだくになりながら、舞美ちゃんが首をかしげる。 「うん。舞は砂糖少な目でミルクが多いのが好き。ちゃんと覚えていてくれたんだ。」 「そりゃあそうだよ、大好きなキュートのことですから。みんな特徴あって面白いから、なんか覚えちゃうんだよね。 愛理は味薄めでしょ、栞菜はココア粉大目にミルクたっぷり。ちっさーなんてココアも砂糖もミルクもがんがん入れて!とか言ってさ。・・・・あ、」 「・・・いいよ、別に。舞の勝手で今の千聖を受け入れられないだけなんだから、そんな風に気使わないで。」 心がかすっかすになっていたけど、まだ笑顔を作ることぐらいはできた。 「ねえ、舞。千聖のことなんだけど」 「今はその人の話したくない。」 「舞。・・・・ううん、そうか、それじゃ仕方ないね。違う話しよっか。あのさ、友達の話なんだけどね、最近。・・・」 舞美ちゃんの顔がちょっとだけ曇ったけれど、それを打ち消すように不自然に明るく振舞ってくれた。 「うそー。ありえないよ。」 「でも本当なんだって、私もびっくりしちゃってさあ」 “・・・バカじゃないの、周りの人傷つけて、あんた何で笑ってんの” 舞美ちゃんに調子を合わせて、楽しげに話す自分を、もう1人の自分が責めている声が聞こえた気がする。 会話が盛り上がれば盛り上がるほど、心には虚しさが降り積もっていった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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千聖と離れた私は、しばらく舞美ちゃんやちぃたちとバカ話で盛りあがった。 時々聞こえる千聖の楽しそうな声が、私を安心させてくれる。 「何か舞ちゃん、大人になったよね。」 「そう?まあ、いろいろあったから。」 「うん、舞は本当によくできた妹だよ。心も外見も急成長した!舞は最高にいい妹だね!」 「・・・・恥ずかしいから2回も言わないでいいよ。」 考えてみれば、千聖が頭打ったあの事件から、まだ1ヶ月もたっていない。 喜怒哀楽の全てをフル活用した、あまりにも中身の濃すぎる数週間だった。 「ねー、もうそろそろお開きにしませんか!あんまり遅くなると中学生組はお父さんお母さんも心配しちゃうだろうし。」 30分ぐらいして、キャプテンが大きな声でみんなに呼びかけた。 「えー」 「えー、じゃないの。またすぐ会えるんだから。早くお菓子片付けよう。」 チョコやクッキーはみんなで山分けして(ポテチの残りは舞美ちゃんがなっきぃにカ゛ーッした)、ゴミをまとめると、急ぎ足で部屋を出た。 ベリキューそれぞれのロッカーで荷物を持って、大階段のあたりで再び合流する。 「いい?行くよー」 まるで集団下校みたいだ。舞美ちゃんとえりかちゃんが先頭で、一番後ろはキャプともも。 私と千聖は前から2番目。後ろには茉麻となっきぃがいた。 年長組に挟まれて、みんなでキャーキャー言いながら階段を降り始めた。 「あ・・・嫌だわ、私ったら。いただいたお菓子、ロッカーに置いてきちゃった。」 私が手に提げていたお菓子の袋を見て、千聖が声をあげた。 「また今度でいいんじゃない?レッスンすぐあるし。」 「でも・・・明日菜たちにおみやげで持って帰りたいの。すぐに追いかけるから、私ちょっと戻ります。」 千聖はそういうと、くるっと後ろを振り返った。 「茉麻さん、ちょっとごめんなさい。私・・・」 「えっ!?」 茉麻は私たちに完全にお尻を向けて、後ろ歩きしながら熊井ちゃんとおしゃべりしていた。 急に話しかけられてびっくりしたんだろう、若干オーバーリアクション気味に、体全体で思いっきり振り返った。 茉麻のほうへ駆け寄っていった千聖の胸のあたりに、いきおいよく茉麻のひじがぶつかった。 「あ」 「あ」 「あ」 何人かの唖然とした声が重なる。 デジャヴ。 こんな光景を、私は知っていた。 もっとずーっとずーっと昔、茉麻に飛びつこうとした千聖が、振り返った勢いで吹っ飛ばされてしまった事件があった。 私は直接見たわけじゃないけれど、あとでビデオかなんかで見て、おなかが痛くなるほど大笑いしたからよく覚えている。 もうあんなに子供じゃないけれど、千聖はやっぱり体が小さいし、茉麻は大きい。 驚いた顔のままの千聖が、階段から押し出されて宙に浮いた。スローモーションのように、体が倒れていく。 「危ない!」 舞美ちゃんの大声で、私の時間感覚は元に戻った。 階段から落ちかけた千聖を、舞美ちゃんが両腕で抱きとめた。 千聖をかばったまま、2人は階段の一番下に落ちてしまった。 「千聖!!!!」 私は自分の口から、こんな金切り声が出たのを初めて聞いた。 もう大事な人を失いたくない。恐怖で足がガクガク震えて、座り込んでしまった。 「舞美!千聖!」 茉麻が真っ青になって、2人のところへ走っていく。 「ごめん、私・・・!」 「えっ何?どうしたの?」 「落ちたの?大丈夫?」 後ろの方のみんなも、人が落ちる鈍い音に驚いて集まってきた。 「舞ちゃん、立てる?」 肩を貸してくれたなっきぃの体も震えている。 「舞美・・・・」 「・・・・イタタタ・・・背中打ったー・・・。一瞬息止まったんだけど」 しばらくして、舞美ちゃんが照れ笑いしながら、体を起こした。 「平気なの?舞美。」 「うん、もうあと5段ぐらいだったから。なんてことないよ。それより・・・よかった。今度は守れた。」 舞美ちゃんは優しい顔で、千聖の体を抱きしめなおした。 でも 「・・・・ちっさー?ちっさー?・・・・・どうしよう、ちっさー、どこか打ったのかもしれない。起きないよ。」 舞美ちゃんの腕の中の千聖は、目を閉じたまま全く動かなかった。 「舞ちゃん?」 大切な人を失う恐怖で、体から力が抜けていく。 「・・・私、マネージャー呼んでくる。」 「私も。」 愛理と栞菜の声が遠ざかっていくとともに、私の意識もゆっくり遠のいていった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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そこにあるのは、おもちゃの手錠。 数日前、打ち合わせの席に、「キューティーミニスカポリスガールズってどうかな?ケッケッケ」と愛理が持ってきた物だった。 結局その話は笑って流れたはずなのに、どういうわけか私のカバンの中に入っていた。 返さなきゃと思いつつ、習慣になっている“痴漢のアレ”を妄想する時に使わせてもらったりしていたので、結局私の手元から離れていないという経緯がある。 千聖を押し倒したまま、思いっきり手を伸ばして手錠を掴む。ガチャッと大げさな音がして、千聖の視線がそれに釘付けになった。 「舞ちゃん」 「うるさい」 「ねえ、やだ。やめて」 手首にわっかを通そうとすると、さすがに千聖は身を捩った。 「話があるんじゃなかったの?だから千聖舞ちゃんち来たんだよね?」 そこまでは覚えてるのか。 千聖はお嬢様から前の人格に戻るとき、前後の記憶があいまいになってたりすることがある。そういう時は少し遡って、千聖が把握していることを確認しながらしゃべるのがキュート内でのルールだった。私は千聖のことなら何でもわかってるから、いちいちそんなのしないけど。 「ねえ、明日ゲキハロじゃん。千聖用事ないなら今日は帰りたい。遊ぶなら違う日にしようよ。舞ちゃん・・・ちょっと、やだってば!」 千聖は私のわがままを封じようとする時、こうやってお姉ちゃんの口調になって諭そうとしてくる。でも生憎、今はそれに従ってあげる気分ではなかった。私を説得するのに夢中になってるところを見計らって、もう一度千聖の手首を掴んだ。 今度はうまくいった。丸いわっかのなかに、右の手が収まる。 「最悪・・・」 千聖はそうつぶやいてから、あわててまだ自由な左手を背中に隠した。 こんなことになって困った顔をしているけど、怒ってはいないみたいだ。まだ私が何を考えてるのか、わかってないのかもしれない。 私は私で、なぜか妙に落ち着いていた。ドアの外からは、家族の楽しそうな声が聞こえる。この状況で千聖が大きな声を出したり、ママがうっかり部屋に入ってきたら、大変なことになるというのに。 千聖の目をまっすぐ見つめたまま、私は手錠のもうかたっぽのわっかを引っ張った。繋がれると思ったのか、千聖はまた身を捩った。 「・・・違うから。暴れないで」 私は苦笑して、それを自分の左手首にはめた。冷たい金属を通して、私と千聖がつながる。 「・・・・なにやってんの、舞ちゃん」 「ねえ、千聖はどこまで覚えてるの?」 その声をさえぎるように、私は千聖の耳元に顔をうずめてささやいた。 「ひゃあ」 甲高い声。あのDVDみたいなエロい声ではないけれど、ぞくっとするような興奮が体を突き抜ける。 「どうなの?」 「ちょ、耳くすぐったい。やめて。何が?」 「だから、舞とエッチなことしたの覚えてるの?」 「え」 千聖の動きが止まった。口を半開きにしたまま、私の顔をまじまじと見つめる。 「私、舞ちゃんともそういうことしてたの・・・?」 ――も、って。さっきも“舞ちゃんもなの?”とか言ってたけど・・・きっとえりかちゃん本人に聞いたんだろう。キュートのみんなは、このことを勝手に話したりはしないはず。 でも、いつ?どこで?どうやって?どこまで聞いたの?それで、千聖はどう思ったんだろう? 私はいつでも千聖のことを把握していたいのに、こうやってえりかちゃんに先を越されてしまう。こういうのは不本意だし、悔しい。 「舞と海でキスしたり、舞のこと温泉で触ったりしたの覚えてないの?千聖が触ったんだよ。裸で」 「や、え、嘘。ちが、だってそんな」 千聖は赤くなったり青くなったりしながら、自由になるほうの手で私を押しのけようとした。 「大人しくしてってば。」 その手を自分の指で握りこんで、恋人つなぎにする。千聖の手のひらはひどく湿っていて、ドクンドクンと鼓動が伝わってくるぐらい緊張していた。 「千聖・・・」 本日二回目のキス。 ビクッと跳ねる左手を全力で押さえる。千聖は手錠の方の手は動かさないはず。・・・変に力が入れば、私の手首に傷がついちゃうかもしれないから。 「・・・顔、振らないで。唇切れちゃうよ」 小さくて柔らかい唇に、軽く歯を立てながらそんなことを言ってみる。その一言で千聖が動かなくなったから、今度角度を変えたりして何度も啄ばむ。さすがに舌を入れたりはできなかったけど、さっきのよりはずっと大人のキスができた。頭がくらくらする。 鼻から漏れる息がくすぐったい。チュッと音がするたびに、千聖がもじもじ動くのがたまらない。千聖も私の唇の感触を感じてるんだと思うだけで、私は毎晩“アレ”をする時みたいなそわそわした気持ちになった。 数分間後、やっと唇を離すと、千聖はぼんやり目を開けていた。ずっとくっつけていたからか、いつもより少し唇が濡れてぷっくりしている。呆然とした表情のまま、私の顔を見て、ゆっくり何度か瞬きを繰り返す。 「わ・・わたしに、どうしろっていうの・・・?」 明るい千聖らしくもない、泣き出しそうな声。こんな顔されたら、いつもならごめんと謝り倒していたかもしれないけれど、今の私は完全に悪いスイッチが入ってしまっているみたいだ。 「いいでしょ、キスぐらいしたって。どうせえりかちゃんとだってしてるんでしょ」 「・・・してないよ。たぶん。あんまり。えりかちゃんがそう言ってた。なんか、そういう、ルールだってえりかちゃんが」 千聖は一度言葉を切って私から目を逸らすと、「これ、痛いから外して。」と手錠のついてる手を軽く動かした。 「やだ。」 「ねえ、舞ちゃん!」 「えりかちゃんえりかちゃん、ってうるさい千聖。」 「だって舞ちゃんが聞いたんじゃん!ねー、もうやだってば。本当に。ていうか、何で手錠とか持ってるの?ヘンタイじゃーん」 「うるさいな。愛理のだから、これ」 「でも舞ちゃんが持ってるんだから舞ちゃんがヘンタイでしょ。今使ってるし。ねえ、あと重いから上乗っかるのやめて」 お嬢様の千聖とじゃありえないような、久しぶりのちさまいバトル。こんな状況じゃなかったら私も楽しんでいただろうけど、正直それどころじゃない。 案の定、このやりとりが面白くなってきた千聖は、笑うような場面じゃないのに目が半月になっている。だから、私は声のトーンを変えてみた。 「ねえ千聖、私が千聖にどうしてほしいのかって聞いたよね?」 また笑顔が消えた。 「舞ちゃん、そういうのやだってば・・・」 その乾いた声は無視して、あんまり体重をかけないように馬乗りになる。大好きな千聖のことを支配しているみたいな錯角を覚えて、少し優越感が高まった。 「っ!舞ちゃん!」 私はおもむろに自由な方の手を伸ばすと、千聖の胸を掴んだ。自分のとは全然違う感触。ふにゃっと指が沈む。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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かんらちゃん 携帯画像 都道府県 群馬県 肩書き 甘楽町イメージキャラクター 公式サイト http //www.town.kanra.gunma.jp/kannrachann/20140704183031.html 解説 楽山園をイメージした緑の鎧兜と町を流れる雄川堰と町の花ソメイヨシノが描かれ、胸には町章が輝いている。 攻略難易度 ★易。甘楽町のイベントにて。 名刺の有無 ? 狙い目イベント イベント情報
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そこは真っ暗だったけれど、とても暖かくて、甘いお菓子みたいな匂いがただよっていた。 私は一人ぼっちでうずくまっていた。不思議と寂しくはない。 柔らかい綿みたいなものに包まれながら、ウトウト目を閉じたり開いたりしてまどろんでいた。 どこだろう、ここ。 長い時間ここにいたような気もするし、さっき来たばっかりのような気もする。時間の感覚がよくわからない。 たしか私、舞ちゃんと喧嘩してたんじゃなかったっけ?その後舞美ちゃんとふざけっこしてて・・・・ 「・・・眠い・・・・」 いろいろ考えようとしても、頭がボーッとしてうまくいかない。 体に力が入らない。 私、もしかして死んじゃうの? 嫌だ、まだやりたいこといっぱいあるのに。 キュートでいっぱい活動して、学校の友達といっぱい遊んで、パパやママや妹弟たちとももっとたくさんの時間を過ごしたいのに。 フラフラする体を無理矢理起こすと、なんと私の目の前に私がいた。 「うわっ。」 完全に真っ暗な空間だったのに、私の姿だけはなぜか見えた。 「ねえ、あのさ、千聖だよね?ていうか私も千聖なんだけど」 とりあえず話しかけてみるけれど、私はにっこり笑ってるだけで、何にも言わない。 よく見てみると、今私が見ている私は、私自身とは少し違うような気がした。 私、こんな大人っぽい顔してたかな?服も、私じゃ絶対選ばないようなお嬢様っぽいスカートなんて履いてるし。 「ねえ、」 もう一度話しかけようとしたら、目の前の私はいきなり手を伸ばして私を抱きしめてきた。 私はどうしていいのかわからなくて、とりあえず私を抱き返してみた。 その瞬間、2人の体が、ピッタリと一つにつながったような気がした。 「あぁ・・・・」 唇から大きなため息があふれ出た。 頭の中に、たくさんの映像が流れ込んでくる。 私の手を抱いて、みんなの輪の中に引き入れてくれる愛理。 私と一緒に、笑いながらグラウンドを走る舞美ちゃん。 私の名前を叫びながら、傘もささずに夜の街を駆けるなっきぃ。 目に涙をいっぱいためながら、どこにも行かないでと私を引き止める栞ちゃん。 暗い部屋の中で、黄色いリボンで指をつないだまま、私と寄り添っている舞ちゃん。 どんなシーンでも、優しい顔で私を後ろから見守ってくれているえりかちゃん。 桃ちゃん、りーちゃん、ベリーズのみんな、パパ、ママ、妹に弟。みんなが私に向かって笑いかけている。 長い長い映画を観ているような感覚だった。 なぜだかわからないけれど、すごく胸が痛くて、私はボロボロと涙をこぼしていた。 みんなに会いたくてしかたがなかった。早くここを飛び出したくてたまらない。 「みんなのとこ、戻らなきゃ。」 私がそういうと、もう一人の私は、肩越しにしっかりとうなずいた。 暗闇の中でぼんやりと光っていた目の前の私の体が、だんだんとさらに強い光を放っていく。 「まぶしっ・・・・」 目を開けていられない。 私は光の洪水の中で、しばらくの間きつく目を閉じていた。 たくさんの人の気配で目が覚めた。 ちょっと黄ばんだ天井。薬くさい空間。 レッスンで使うスタジオの、医務室のベッドに私は寝ていた。 右手が熱を持ったようにジンジン痛い。強い力で握り締められているみたいだった。 「茉麻ちゃん・・・?」 舌が引きつれてうまく喋れなかったけれど、私の声を聞いた茉麻ちゃんは、うつむいていた顔をガバッと上げた。 大きな丸い目が、裂けちゃいそうなぐらい大きく見開かれている。 「手、痛いよ茉麻ちゃん・・・・」 「千聖・・・・!」 茉麻ちゃんの顔が歪んで、私のほっぺたに涙が落ちた。 「千聖、千聖!ごめんね、私のせいで」 茉麻ちゃんは放っておいたら土下座でもしそうな勢いだった。何が何だかよくわからなかったけど、私はあわてて「私、大丈夫だよ。」と背中をさすった。 「・・・ちっさー」 今度は後ろから名前を呼ばれた。 振り返ると、至近距離に舞美ちゃんの顔。まるでお化けでも見るような顔で、私を見つめている。 よく見たら、狭い部屋の中にたくさんの人が集まっていた。 キュートのみんなだけじゃなくて、ベリーズも。マネージャーさんやスタッフさんも端っこの方にいた。 「えっ、これ何っ・・・私、どうしたの?何かあった?」 「千聖・・・喋り方」 「え?何か変?ごめんわかんないけど」 「元に戻ったんだ・・・・・」 めったに泣かない愛理が表情を崩したのを合図にしたように、キュートもベリーズも、皆が泣き出してしまった。あのももちゃんまで。 「え・・・ええっ・・・・!ちょ、ちょっと、やだなあ。舞美ちゃん?えりかちゃん?アハハ、やめてよぅ」 ドッキリでもしかけられてるのかと思って笑いかけるけれど、誰も「なんちゃって!冗談冗談ー♪」と言ってくれない。 りーちゃんや栞ちゃんなんて、吐いちゃうんじゃないかってぐらいヒーヒー言いながら泣いている。 「っ痛・・・・!」 何気なくおでこに手をやると、包帯が巻かれていた。右のほっぺたも湿布で覆われている。 なんだろう、この感じ。前にもこういうことがあったような気がする。 「あ、あのごめん、私なんで怪我してるの?」 キュートのみんなはもうまともに喋れるような感じじゃなかったから、どうにか話を聞いてもらえそうなキャプテンと雅ちゃんに声をかけてみた。 「・・・覚えてないの?千聖今、階段から滑って落ちちゃったんだよ。」 「それで、キャラが変わ・・・違う、元に戻って・・・・・でも良かった、本当に」 2人はそこで声を詰まらせて、また泣いてしまった。 「キャラって・・・」 いったい何のことを言ってるのかわからない。 階段から落っこちたっていうのは、多分舞美ちゃんとくすぐり合いっこしてたからだと思うけど。 でもそれなら何でベリーズの皆がいるんだろう?ていうか、そもそも何でみんなこんなに泣いてるんだろう。 「ねえ、みんなそんなに泣かないでよー・・・」 私は何だか悲しくなってきて、つられて泣き出してしまいそうになった。 「・・・・・・・・・・・・・千聖。」 その時、泣き続けるみんなをうまく避けながら、舞ちゃんが私のところに近づいてきた。 「あっ舞ちゃん。ねーこれっ何で・・・・」 質問しようとした私の唇を、舞ちゃんの手が覆った。 ひんやり冷たい手が、ほっぺたを辿って鼻、まつげ、髪の毛に触れた。 どうしてだろう。 こうやって舞ちゃんが私の顔に触れるのは、初めてじゃない気がする。 “くすぐったいわ、舞さん” 頭の中に、そんな不思議な声が聞こえた。 「ちさと・・・・ちさと・・・・」 舞ちゃんは私の名前を何度も呼んで、細い腕で私を抱きしめた。 「舞ちゃぁん・・・」 壊れやすいガラス細工を扱うように、とても優しく包まれて、私もついに泣き出してしまった。 どうしてなのかわからないけれど、胸が締め付けられるようにズキズキ痛んだ。 思いっきり泣いてみんな落ち着いた頃、舞美ちゃんからいろいろ教えてもらった。 それによると、私は3週間ぐらい前にも階段から落ちて、頭を打ったらしい。 「舞美ちゃんとふざけてて、落ちた?」 「それは3週間前。・・・ちっさー、今日何日だかわかる?」 私が答えると、みんなが落胆のため息をついた。どうやら3週間分の記憶がすっぽり抜けているらしい。 「本当に覚えてないの?」 「うーん・・・」 何かが引っかかっているけれど、思い出すことができない。 「ちっさー、お嬢様になってたんだよ。」 ――お嬢様。 その単語を耳にした途端、私の心臓がドクンと波打った。 すっかり忘れかけていた、さっきの夢のことを急に思い出した。 もう一人の私が見せてくれたあの光景が、頭をいっぱいに満たしていく。 「千聖?大丈夫?」 思わずこめかみを押さえてキツく目をつむる。 「思い・・・・出した、かも」 「ええっ!」 「まだ全然、ざっとだけど。自分がお嬢様キャラとか全然わかんないし。」 それでもみんなにとっては嬉しい報告だったらしく、安心したようなおだやかに笑ってくれた。 「お帰り、千聖。」 困ったようないつもの笑顔で、愛理が手を差し出した。 「ただいま。」 握った愛理の手は、何だかいつもより暖かくて頼もしかった。 その後。 キュートのみんなは元に戻った(らしい)私をすぐに受け入れてくれて、いつも通りのキュートになった。 舞ちゃんは最初すごく優しくしてくれたけど、今はもうすっかりもとどおりになった。私とつまんない喧嘩をしながら毎日キャーキャー騒いでる。 パパやママなんて、3週間の間いい子だった私と今の私を比べて、「また部屋汚くして!勉強は?お嬢様千聖を見習いなさい!」なんて言ってくる。 明日菜は「キモかった」「変だった」を連発した後、「おかえりなさい。」と呟いた。可愛い奴め。 結局私は、全ての記憶を取り戻すことはできなかった。 あの時夢で見たみたいに、ダイジェストみたいな形で、大まかな出来事は思い出せる。でも細かいことや、自分がお嬢様言葉で喋っていたり、可愛い服装をしていたことなんかは実感がない。 そういわれればそう・・・なのかな?という程度。 「ちっさー、本当に可愛かったんだよ。」なんて時々栞ちゃんが私をからかう。みんなは真顔でうなずいたりする。 「やめてよ恥ずかしいよ」 照れ隠しに変顔やったりしてごまかすけれど、お嬢様の話をされると、なぜかいつも胸の奥が甘くざわめく。 「まだここに、お嬢様の千聖はいるのかな。いたら面白いなあ。おーい。ごきげんよう。」 独り言をつぶやいて、胸をノックしてみても、当然何の反応も返ってこない。 それはみんなが知ってて、私だけが知らない、ひと夏の不思議な出来事だった。 戻る TOP コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「な、な、そ、ど、なっ・・何それ・・!」 「いいリアクション。さすがおちんちん見せたいキャラ№1のなっきぃだね。」 「何って、見ればわかるでしょ」 「ザッツライ。ディスイズペニ」 「そ、そういうことを聞いてるんじゃない!だ、だ、だってそんなの今までついてなかったでしょ!?」 同じキュートのメンバーである舞美ちゃんやえりかちゃんとは、今まで数え切れないぐらい着替えを共にしている。一緒にお風呂に入ったことだってある。友理奈ちゃんだって、仕事が被ればそういうことはあった。 だから、こんな、乙女の秘密の花園にあるまじきブツが鎮座していらっしゃったら、絶対に気づいているはず。 万が一私が見落としていたとしても、千奈美ちゃんとか、明るい方の千聖とか、そのあたりが大騒ぎするに違いない。 「人は変わるんだよ、なっきぃ。」 「そう。パパもママも知らないうちに僕らはおちんちん付いたみたい。とかいってw」 「みみみぃたん!なんてはしたないことを!」 バカな・・・みぃたんは清純派だったはずなのに。キュートのみんながうっすーい下ネタで盛り上がってるとき、その意味すらわからずにあいまいに笑っているようなピュア乙女だったのに。ちんこか。ちんこがみぃたんを変えたのか。実にけしからん! 「なかさきちゃん、そんなことよりうちのおちんちんを見てくれ。こいつをどう思う?」 「ギュフー!やめろ近づけるな!」 私がみぃたんのアレに憤っているうちに、いつのまにか私の顔の横に移動してきていた友理奈ちゃんが、セクシーポーズで腰を突き出してきた。 「興味あるくせに。」 「な、ないよ。」 嘘、ホンマはある。私は横目で、初めてみるその物体をこっそり観察した。 へ、へー・・・なるほど、こういう風になっているんだ・・・。目を凝らすと、奥の方にはまだちゃんと女の子のアレがついている。男になったんじゃなくて、いわゆる、ふたなり?(ってアダルトサイトに載ってたケロ!)というやつなのか。 で、肝心の熊井ちゃんのブツだけど・・・・何か、グロい。食べたら死ぬキノコ図鑑とかに載ってそう。でも、何か思ってたより・・・ 「どう?」 「・・・・・小さい。」 とりあえず、率直な感想を言ってみる。すると友理奈ちゃんは「ヒーン!」とか言いながら、マトリックスみたいにのけぞった。勢いで、それのさきっぽが私のほっぺにペタッと当たる。 「ギャー!」 「なっきぃ、なんて恐ろしい子・・・!普通そんなこと、思っても言わないよ!」 「思ってたのかよ!」 「例えばの話だってばー」 そして、Belloは仲間割れを始めた。これで、「もういい!解散だ!」となってくれることを望んで、私はしばらくその言い争いが止むのをおとなしく待っていた・・・けれど。 「もー!それもこれも全部なかさきちゃんのせいなんだからねっ!」 熊井ちゃんはいきなり私に話を振ってきた。 「何で!私どう考えても被害者じゃん!」 「だって、大きいとか小さいとかおちんちんの悪口はいけないんだよ!!って弟が言ってたもん!」 見た目こんなに大人っぽいのに、子供みたいにびーびー泣きながら迫ってくる友理奈ちゃんが怖くて、私はつい「す、すいません」と謝罪してしまった。 「まぁまぁ、なっきぃは熊井ちゃんのを悪く言ったわけじゃないんだよね?ただ、自分で想像していたより、アソコっていうものが小さくて、ついそう言っちゃったんでしょ?」 「う・・・ん。」 フォロー上手なえりかちゃんの気遣いはうれしいけれど、こんなわけのわからない状況で、気を回すところが間違ってるような気が・・・。 えりかちゃんの言うとおり、別に友理奈ちゃんがどうこうっていうわけじゃない。 よくエッチな雑誌とかで“初体験は痛い”とか書いてあったり、ネットで見たエッチな体験の投稿サイト(18歳未満閲覧禁止ケロ!)にも、そういうような書き込みがあったから、アソコが裂けちゃうぐらいの物体を想像していた。 ちなみに、痴漢男のアレはモザイク処理が巧妙でよくわからなかった。 つまり、バナナを想像していたら、大きいしいたけ?ぐらいの大きさだったということ。単なる私の思い違いだった。 「ごめんね、友理奈ちゃん」 「・・・」 「ごめんってば。怒ってるの?」 友理奈ちゃんは鼻を真っ赤にして、恨めしげに私を見る。 「怒ってないよ。でも、うちの、そんなに小さくないってことわかってもらわなきゃって思って。」 「だから、それはぁ」 「これ、言っとくけど最高の状態じゃないから。まだまだ本気出したらこんなもんじゃないし。」 どこかで見た“ニートの言い訳”のような口ぶりに、キュフッと笑い声を漏らしてしまった。友理奈ちゃんの目つきがさらに鋭くなる。 「笑ったなー!わかった、じゃあ証拠見せる!ちょっと待ってて!」 そう言うと、友理奈ちゃんはクルッと後ろを向いて、「フンフフンフン♪」とくまくました鼻歌を歌いだした。時折、「ホゥ!」だの「フゥ!」だの変なシャウトが混じるのが気になる。 「じゃあ、なっきぃも準備しないとね。」 「準備・・・?ん、あ、みぃたン・・・くすぐったいよぉ」 また、顔にみぃたんの長い髪がかかる。私はこそばゆいのはどうもだめで、首を振って髪をどかそうとするけれど、みぃたんの長い指に、顔をやんわり包まれて身動きが取れなくなってしまった。 「みぃたん・・・」 みぃたんは、チュッチュッと私の唇を啄ばむ。その行為自体はすごくやさしいのに、思いっきり頭を固定されているから、息苦しい=気持ちいい。 「キュフ、ンフ・・・」 みぃたんはキスをしたまま、椅子の背もたれを倒して、また私を逆さづり寸前の状態に追いやる。・・・最高です! 「なっきぃ、アドレナリン全開だね。こっちもよくしてあげる。」 「ヒャッ!」 ふいに、足にピリッとした痛みが走った。でも、顎を固定されて上を向いているから、えりかちゃんの行動は見えない。 「えりこ・・・キュフゥ!」 歯を立てられてる・・・?いつぞや雅ちゃんに、乱暴に扱われたことを思い出して、ゾクッとした。それに、見えそうなのに見えないというのは、最初から目隠しとかされてるより興奮する。そのちょっぴり痛い感触は、足の指から踵、足首、すね・・とだんだん上に上がってきた。 「ンフ・・・ンン」 そして、その感触がついにひざの少し上の辺りに到達した頃、唐突に「オッケー!!」と友理奈ちゃんの明るい声が響いた。 「あ、本当だ。」 「よかったよかった」 余韻に浸る私とは対照的に、みぃたんもえりかちゃんもパッと体を離してしまった。なんてドライなの! だけど、そんな不満も、再び私の顔の前まで戻ってきた友理奈ちゃんの“アレ”を見た瞬間、すべて吹っ飛んでしまった。 「ひっ・・・・ひぃ・・・・!!」 「どう?これでもまだ、小さいと言うのか!」 とんでもない。私は青ざめて首を横に振った。 「な・・・なんっ・・・」 たとえて言うなら、アポロチョコから固定電話の受話器。柿の種からマジックバルーン。熊井ちゃんのアレは、超大変身を遂げていた。 「どどどどど」 「どうしてかって言いたいの?なかさきちゃん、保健の授業ちゃんと聞いてなかったの?これはね、ぼ」 「それは知ってる!そうじゃなくて、常識的に考えて大きくなりすぎでしょうが!」 無理だ。さっきのシイタケ状態ならともかく、こんなものをINしたら死ぬ。比喩じゃなく死ぬ。nkskならぬmtsk(股裂き)とか言ってwとか言ってる場合じゃない。私は熊井ちゃんから目を逸らして、「みぃたぁん・・・」とできる限り甘えた声を出してみた。 「どうしたの?」 「私、こんなところで死にたくないケロ・・・」 「えぇっ!死ぬなんて言わないで、なっきぃ。」 「そうだよ、ウチ死姦はちょっと・・・」 「Umelyは黙るケロ!」 三人は、うっすら涙を浮かべて懇願する私を見て、円になってひそひそ話を始めた。旗色が変わったかもしれない。 いたぶってくださるのはうれしいけど、さすがに生命の安全は保障してほしいものだ。何て考えていたら、 「なっきぃ、喜んで。今から特別ゲストを呼ぶからね。」 「・・・・え?」 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -