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ザクッ。 音にするなら、そんな感じ。 掘る。掘る。 植物庭園。 この芽吹高校の植物庭園は、この学校を語る上で特徴的な制服に次いでいわば学校の特徴として扱われる。 なにせ植物庭園の敷地面積が学校の敷地面積の三分の一を使っているというのだから驚きだ。 学校でそんな育てなくてもいいだろう、という声もある(主に俺)が、まあ確かに見栄えもよく、 よくある授業風景として生徒がその植物の手入れをするわけでもないし、文句をつけるにつけれない。 まあ。 どうでもいい。そんなことを説明したい気分じゃない。 ただただ無心で穴を掘る。 理由は一つ。 ――――楓之風香を、弔うためだ。 ○ 胃の中がなにかでぐちゃぐちゃ。 口に溜まるは酸の味。 もう何度、吐いたことだろう。 血の臭いと重なって、ただならぬ異臭が俺を襲う。 しかしそれは俺が受ける罰としてはあまりに軽く。どう足掻いても対等ではない。 血痕の異臭。 反吐の異臭。 混沌の異臭。 俺は人を殺した。その罪や罰がある。 受けるべき。然るべき結果。 文句を言うつもりはない。はなから俺はそのつもりだったんだ……っ。 これが当然で至極尤もな結末だったんだよ。 「 」 なにかを呟いた。 俺にも分からない、ナニカ。得体のしれない、もしかしたら言語ではなかったのかもしれない。 されど俺の体中に蔓延るナニカは確実に、俺を犯す。 殺人。 重いようで、軽い。 一発。たった一発。 頭上に向けて、一発お見舞いしただけなのに。死ぬ。死ぬ。シヌ。 モザイクなんてかからない、裸眼の状態でそれを見るのだ。 18禁がどうとか。条例がどうだとか。そんな範疇なぞとっくに吹っ切れており。 グロイそれは、燦然と俺の瞳に映り、脳に届き、全身を震わせる。 描写なんかしたくないほど、あまりにそれはリアルすぎた。 背筋が冷たい。なんか汗が出てくる。 興奮なんかしている訳じゃない。猟奇的殺人鬼とは違うのだ。 それでも、汗は止まらない、止まらない、止まらない。 寧ろ徐々に増していく。止まらない。増していく。止まらない。 唾だって。すでに反吐と一緒になんど吐き出したことか。 異様なぐらいに溜まっていく、氾濫しそうになる。 「 」 もう一度俺は、ナニカを呟いた。 そして掘った穴に、楓之風香だったモノを、そっと静かに、入れる。 ○ なにもない世界。 広がってたのは、なにもなかった。 妹を助ける為に人を殺す? おいおい。 おいおいおいおい。 馬鹿じゃないのか俺。 自分の手で、運命を覆したくて、今まで医者になるために一生懸命勉強してきたんだろ? なんで。 何で俺はこんな風に人を殺してるんだよ。 くらい世界。 風香の声。 風香の気持ち。 風香の温もり。 全て奪った。 俺が。狂いに狂いまくった俺が。 この手で。この身体で。 「――――」 言葉が出ない。 喉がカラカラだ。声がガラガラだ。 脳が正常に作動しない。 グラングランする。揺れて揺れて揺れて揺れて。 視界が。 濁り淀みまくった俺の視界が、廻る、色彩が消える。 昔の映画みたいに、白黒で見える。 かわった世界。 結局のところ、人を殺したところで俺に在ったのは、寂寥感と罪悪感だけ。 達成感なんて、満足感なんて、どこにもなくて。 穢れた身体(にくたい)と。 朽ちた精神(たましい)が。 ここにあるだけであって。 どこにも妹に対する正義なんて。 どこにも妹に対する慈愛なんて。 なにもない。 ないないない。いないいない。 残るものは皆無。 余るものは絶無。 俺のしたことで得れたことは、なにもない。 むしろ――――失うものばかりが大きくて。 わかっていたことなのに。 自覚していたことなのに。 踏まえたうえで、俺は、殺そうと、決意したのに。 なんでこうにも。 どうしてこんなに。 ムカつくんだろう。俺は自分に怒ってるんだろう。 いっそ振り切れたらどんだけ楽だったか。 思い切って、心を捨てればどれだけ倖せだったか。 つーか、こう言う独白だって。 実のところ、全然なにも籠めれない。 悲しみと言う感情。 哀しみと言う感情。 嬉しさと言う感傷。 卑しさと言う感傷。 なにも籠めれない。今の俺はいうならば、抜け殻。ただの抜け殻。 魂の抜けた、抜け殻。 今の俺はきっと、セミの抜け殻のように、ちょっとしたなにかで、簡単に潰れてしまうじゃないか。 責任だとか。 義務だとか。 後悔だとか。 懺悔だとか。 記憶だとか。 記念だとか。 そんな圧力に。 そんな重圧に、俺はすぐに沈んで、壊れる。 親友を殺して、戦う気力もなくし、魂を手放して。 もう一度だけ言う。 ……俺は、なにがしたいんだよ……っ。 「――――俺はぁ」 零す言葉は儚くて。 放つ言葉は虚しくて。 誰の耳にも入ることはなく、脆弱に崩れる。 まるで世界に一人きり。 舞台に一人、無人客席に応答なき裏方。 たった一人の一人芝居。 見るにも堪えない無残な抜け殻人形劇。 本当に俺はどうしたいんだろう。 本当に俺はどうしたんだろう。 妹を救うんじゃなかったのかよ。 せめて贖罪の旅路に歩くんじゃねえのかよ。 こんな救われないだなんて知らねえよ。 人一人殺しておいて、親友を殺しておいて、今更挫けるなんてありえねえだろ。 狂うだけ狂えばいいじゃないか。 殺すだけ殺せばいいじゃないか。 なにを躊躇う。 なにが心残りだ。 俺にもはや良心なんてものはないだろう。 ヒーローなんて望んでない。 悪役だって、悪者だって構わない。 たったひとつの冴えないやり方で、俺は勝ち抜こうと決めた……はずだったのに。 どうしてこうも、滞る。 おかしいだろ。あっちゃならないだろ。 あー笑えない。 笑えない、綻ぶなんて無理だ。もう俺の何もかもが滅びそうだ。 「……あ、は、はは」 苦い。 苦しい。 苦い。 苦しい。 身体の奥底から湧き立つナニカが、暴れる。 身体の内側からドンドンと勢いよく叩く。 激流のように、全てを巻き込みながら、流れていく。 きしむ世界。 きしむ、きしむ、ゆがむ、ゆがむ。 俺は……。 俺は……! どうすればいいんだろう。 【樫山堅司:生存中:シャベル】 【5人】 Back:● 話順 Next:○
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この世の総ての悪(アンリ・マユ)。 長きに渡った魔術師たちの戦争の果てに求められた万能の願望器『聖杯』――――その中身、全てを呪い叶える呪詛の権化。 結局、それを初めて知ったのは四度目の戦争。 心を殺した、正義を求め奔走した一人の悲しき暗殺者が掴んだ勝利。 彼は知った。 自らの求めたモノが、世界最悪の害悪だったのだと。 宿敵を討ち果たし、『彼』―――――衛宮切嗣は、聖杯を破壊した。 結果、戦争の舞台は黒き灼熱の泥に呑まれ、多くの命が散った。 一つの物語が終わった時に、『宿敵』は何を思うか。 『宿敵』―――言峰綺礼は、金色の英雄王と共に、再び『この世全ての悪』を求める。 更に。魔術師たちは新たなる戦争に招かれるのだ。 『バトルロワイアル』―――殺し合いの果てに、願望器を夢見て。 神父・言峰綺礼は再び、久遠の果てを願う。 自分の求めるモノを、ただひたすらに求め続ける―――――。 □ また。言峰綺礼とは違う方向に、何かを求める者も居る。 彼女――――否。 『彼』が求めるモノは、綺礼とは違いはっきりと、理解できていた。 求めるのは―――単純に、ヒトとしての強さ。 強くなりたい。 それが、彼・不二咲千尋の心からの願いだった。 一度味合った『死』を、不二咲は憎悪してはいない。 自分を殺した、『憧れの強者』のことも、憎悪はしていない。 ただ、憎悪しているのは自らの弱さだった。 強くなれないまま、生涯を終えた。強さを手に入れる機会など、沢山有ったのに、目を背けてきた自分の『弱さ』がただひたすらに憎らしい。 皮肉な話だ。 彼を殺害した人物は、彼を『自分より強い』と評したのに、彼は自分自身の強さに気付けなかったのだ。 彼にとってもまた、『バトルロワイアル』は救済に近かったのかもしれない。 今度こそ強く在りたいと願う少年と、今度こそ莫大な悪を手にしたいと願う神父。 彼らの行き着く先は何処か。 残念ながら、世の中はハッピーエンドで終わることは非常に稀だ。 綺礼と不二咲が一度辿った末路のように、不幸な終わりが殆ど。 二人の求道者が交差したとき、祝福の女神はどちらに微笑む―――? ■ 不二咲千尋は、迷走していた。 正確には、彼の思考回路が自問自答の迷路に落ちているのだ。 強くなりたいの? 強くなりたい。 怖くないの? 怖い。 怖かったら、それは弱いって証拠じゃないの? だから、強くなりたい。 でも、怖がってたら強くなんてなれないよ。 もう一人の自分は、辛辣な質問を幾度と無く浴びせかける。 結局、殺し合いは彼にとっての救済などでは無く―――むしろ、更なる絶望の坩堝に月落とされたと言った方が正しい。 迷う、迷う、迷う、迷う。 今の不二咲には、答えが見つけられなかった。 自分は本当に強くなれるのか? そんな、絶望に限りなく近い不安が、彼の心を覆い隠していく。 「……強くなりたいか」 確かな、声がした。それは深層心理に語り掛けるような声であった。 声の主は、光彩の消えた瞳の男性。 怖い。怖い。この人は悪い人だ。逃げたい。叫んで喚いて、逃げたい。 そんな弱さを、彼は圧し潰して、ただ小さく呟くのだった。 「僕……強くなりたい……弱い自分は…捨てたい…」 男性は薄く微笑む。期待通りの答えに、満足したかのように。 しかし、その笑みも、言葉も、不二咲千尋の為ではない。 言峰綺礼は、見たかっただけだ。 『呪い』に侵された、無垢な子供の姿を。 「なら、私が君を強くしてやる―――精々足掻くんだな」 シュッ、と、銀の刃が一振りされた。 不二咲の頬に一筋の傷が生まれ、彼の瞳が病的な紅色に変わっていく。 正気を、刀に破壊されて、不二咲千尋は確かに『強く』なった。 ――――――――――――余りにも汚れた、呪われた強さを得た。 ◇ しかし―――効果は予想以上だったな。 興味深い『物』を引き当てた故、あくまで実験台の筈だったが……。 妖刀罪歌。愛の呪いで斬った者を侵す刀、これは素晴らしいな。 私が殺し合いを楽しむ為に、一役買ってくれそうだ。 待っていろ、衛宮切嗣。 貴様は、今度こそこの私の手で冥府に送ってやる。 それまで――――正義の味方を気取っているが良い、紛い物が。 【深夜/B-6】 【言峰綺礼@Fate/Zero】 [状態]健康 [所持品]妖刀・罪歌@デュラララ!! [思考・行動] 0 殺し合いを楽しみ、堪能してから優勝する。 1 『罪歌』の子達を増やしていく。 2 衛宮切嗣と出会ったなら今度こそ殺す。 ※原作終了後からの参加です 【妖刀・罪歌@デュラララ!!】 斬った相手を『罪歌の子』として暴走させる妖刀。 持ち主は精神に罪歌の呪いを受けるが、言峰は今『生きてはいない』ため、呪いを一切受けていない。 ◆ ローマ正教20億人の信徒のトップ・『神の右席』の一角。 『前方』のヴェントもまた、バトルロワイアルに招かれた参加者である。 「……ふざけた真似してくれるわねぇ」 ヴェントの発する感情は『怒り』。彼女のプライドは、自分を勝手にこんな催しに巻き込んだ主催者達を許さなかった。 必ず、グチャグチャにぶち殺してやる。 そして、『神の右席』の力をその身に刻みつけてやる。 支給されたのは、彼女にとって必要不可欠なハンマーではなく、ただの金属バットだったが、彼女はそれを適当に振る。 そして、対主催とは思えないほどの邪悪な笑みを浮かべるのだ。 まるで、余裕だとでも言うかのように。 ―――しかし。 前方のヴェントは、いかんせん運に恵まれなかったのだろう。 背後から接近してくる外敵には気付けても、その攻撃までは予測していなかった、という、余りにも致命的なミス。 「――――ン、な」 短い断末魔。 前方のヴェントの背中に、数本のナイフが刺さっていた。 彼女が最後に見たのは、両の瞳を真っ赤にした一人の少女――――いや、少年の姿であった。 ◇ 愛しましょう?愛しましょう?愛しましょう。愛しましょう、愛しましょう愛しましょう愛しましょう。愛しましょう?愛しましょう? 愛愛愛愛愛愛、愛愛愛愛愛。 罪歌の歌が、ただただ、不二咲千尋の脳内を埋め尽くしていた。 彼女の願いは、叶った。 ただ、本人の望んだ形でかどうかは知らないが。 強くなりたかった少年は、今やその『強さ』に狂わされる。 言峰綺礼にハメられたとも知らずに、不二咲はただ、殺すのみ。 罪歌の声に従い、斬って刺して抉っていくだけ―――――――――――――。 【ヴェント@とある魔術の禁書目録】 死亡 【残り135/141人】 【不二咲千尋@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】 [状態]『罪歌』による重度の精神汚染 [所持品]投げナイフ(残り14本)@現実 [思考・行動] 0 愛のままに斬り、刺し、抉る。 ※死亡後からの参加です ※自我は殆ど残っていません 失われた者たちのバトル・ロワイアル 投下順 世界が違うって本人たちには大問題だよね GAME START 言峰綺礼 [[]] GAME START ヴェント GAME OVER GAME START 不二咲千尋 [[]]
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夢を見た。 大切な人が祈りを捧げながら消えていく、悲しい夢を。 ☆ 「なんだよコレ...どうなってるんだよ」 振りしきる雨の中。 少年、天野凪はくしゃりとルールの説明書を握りつぶした。 あの神子柴という老婆が見せた映像。あれは間違いなく帆高と陽菜を中心にした出来事―――つまりは自分たちのこれまでの軌跡だ。 なんであんなものがある。警察に捕まった時には既に作られていた? そんな馬鹿な。もしそうであるならば、帆高と出会った時から警察に捕捉されていたことになるが、それならばもっと早くに動くはずなのでこの線はあり得ない。 なにより衝撃的だったのは、陽菜が消えたことに神の意思が介在していたことだ。 正直、普段なら眉唾物だと笑い飛ばして相手にもしないだろう。けれどあの映画の顛末が自分たちにあまりにも酷似しており、且つあの状況で陽菜が消えること自体がまともではない。 ならば、神の意思は確かにあったのだと信じざるを得ないだろう。 (けど、これってつまり、あの婆さんは姉ちゃんをどうにかできるってことなのか?) あの老婆はわざわざ陽菜と帆高を関連付けた殺し合いを開いている。 死者の蘇生すらこなすほどの力を持っているのだから、よほど神の領域を穢せる自信があるのだろう。 それどころか、既に陽菜を手中に収めているのかもしれない。いや、そちらの方が辻褄があう。 そして、陽菜を連れ戻すのなら、殺し合いのルールに従い、制限時間以内に主催本部へ留まる5人に収まればいい。 自分が誰かを殺さなくても願いが叶うのならば当然賛同したい。 だが、その最大の障壁が帆高だ。 願いを叶えるということは、彼を犠牲にするということになる。 無論、陽菜と帆高、どちらが大切かと問われれば陽菜だと即答する。 けれど、優先順位の優劣はあれど、それで帆高を見殺しにするのをよしと割り切れるはずもない。 「ちくしょう、どうすればいいんだよこんなの...!」 神や神にすら干渉できる力を持つ老婆が相手では、ただの小学生などあまりにも無力だ。 それがわからないほど、凪は愚かではなく純粋でもなかった。 己の無力さに打ちひしがれながらも、とにかく動こうとしたその時だった。 「え、あれ?」 動かない。まるでなにかに掴まれてるかのように足を動かせない。 「まさかこんなに簡単に見つけられるとは思わなかった」 建物の曲がり角から現れた少女がそう独り言ちた。 ☆ 私の世界は変わらない。 どれだけ頑張っても、いつかはルールが増えて世界が変わる。 それでも私の道は変えられない。 だからこれは運命。決して逃げられぬ運命だ。 そう言い聞かせてずっと戦ってきた。捕まえてきた。殺してきた。ずっと。ずっと。 そして、ようやく愛しい人に死(さいこうのおわり)をプレゼントされた。運命から解放されたと思った。 でもダメだった。 神様が変わっても、私の世界は変わらなかった。 ☆ 「...結局、こうなっちゃうか」 ジーナは曇天の空を眺めながらふぅ、とため息をついた。 自分は死んだ。愛しい男に胸を撃たれ、彼の連れ合いに託し、最期の口づけと共に命果てる。そんな最高の死を迎えた。 なのにこうして生きている。いや、生き返らせられている。化粧直しも完璧に。 しかも、一つの対象を捕縛あるいは殺害しなければ大勢が死ぬという、兼ねてからの課題と同じような条件付きでだ。 お前は死んだところで逃げられない―――そんな、意地の悪い神様からの嗤い声が聞こえてくるようだった。 「はぁ、若いっていいなあ」 このゲームの開始前に見せられた映画。 彼らもまた神に運命を弄ばれた存在であった。 己の身を犠牲にしなければ二度と陽の光が差し込まない世界になると、勝手に秤にかけられ、決定権さえ彼女たち自身には存在していない。 顔も知らない大多数の為に消費される存在として同情心が湧かない筈が無かった。心情的には彼らの恋を手助けしてあげたいとも思えた。 けれど、ジーナには立場というものがある。役目というものがある。 地球に理(ルール)を追加する髪を否定する者たち、『否定者』たちの組織(ユニオン)。 席は最愛の者へと譲ったが、しかしだからといって今も戦い続ける仲間たちを放っておくことはできない。 正規メンバーでないならないなりに助力をしなければならない。 その為には、まずここから生きて帰らなければならない。それはつまり、帆高と陽菜の犠牲を意味する。 「あーあ、あの子たち殺したくないなあ」 いつものことだ。 進んで殺したいと思ったことなど殆どない。 だからこれはいつもの課題だ。自分がやらなければならないことだ。 方針を決めたジーナが歩き始めて数分、早速、建物の影に身を潜め荷物を検分している参加者を発見した。 双眼鏡を取り出し横顔を改める。 どこかで見たことのあるその顔に、ジーナは、ああ、とポンと手を打つ。 (確かほだかちんとひなちんと一緒に逃げてた子) 帆高がセンパイと称し、陽菜とは仲良し姉弟だった少年、名前は確か凪だったか。 彼らの関係者まで巻き込む性根の悪さには呆れるが、しかしこれはある意味好機だ。帆高の身内である彼を確保すれば、帆高も下手な抵抗はしないかもしれない。 (...今さら、手段を選べる立場でもないよね) 相手はこちらに気づいていない。ならば拘束は容易だ。 ジーナの能力『不変(アンチェンジ)』があれば。 手をかざし、能力を発動させようとして気が付く。普段よりも能力の精度と強度が落ちていることに。 「ふぅん、そういうこと」 ジーナの不変の防御力は驚異的だ。それも、その気になれば殺し合いなど破綻してしまう程に。 彼女は空気の変化を『否定』することで空気の壁を作ることが出来る。 この空気の壁は本来ならば、たとえ隕石程の衝撃があったとしても壊すことが出来ない程強固だ。 当然、そんな中に引きこもられれば絶対防御が完成し殺し合いが成立しなくなってしまう。 この弱体化はそれを防ぐための措置だろう。いまのジーナの空気の壁は、耐えられる上弦が定められている。 それでも人智を超えた力が損なわれるわけではない。 伸ばした空気の手は凪が気づく前に到達しあっさりと捕縛してしまった。 現れたジーナの、陽菜と同い年くらいのその姿に凪は目を丸くする。 「あなた、あの映画に出てた凪くんだよね」 「な、なんだよあんた...これあんたがやったのかよ」 「質問に答えて」 「...そ、そうだよ」 可憐な外見とは裏腹の鋭い目つきとドスの効いた声音に、凪は下手に刺激すべきではないと察し素直に答える。 「時間も無いし先に言っておくね。あなたを帆高との交渉役に使わせてもらうから」 「交渉?」 「仲のいいあなたが傍にいればあの子も妙な抵抗はしないでしょ」 「なっ」 いきなり現れて拘束され、しかも告げられた内容は身内を害するものときた。 当然、感情のままに怒りたくなる衝動に駆られるも、しかしジーナの放つ殺気がそれを押し留めさせる。 「わかるでしょ。ルールに則れば、彼が死ななければ皆死んじゃうの。貴方も私も、みんな」 「それは...」 「神子柴に従ってもなにも変わらないかもしれない。でも、こんな滅茶苦茶なことをしておいて、ルールに書かれてることすら無視するとは思えない」 「......」 反論の芽すら許さぬジーナの威圧に凪は口を噤む。 彼もわかっている。神子柴が約束を守るにせよ守らないにせよ、帆高が死ななければ自分含めた参加者は生きて帰ることはできない。 それに、あの映画で見せられた部分では、姉が消えたのも自分たちの自業自得だと思う人も少なくないだろう。 「...勝手なこと、言うなよ」 尤も、それが納得できるかどうかはまるで別問題である。 それを看過できるほど、凪は大人ではなかった。 「みんな勝手すぎるんだよ、姉ちゃんも、帆高も、神様って奴も。何にも知らない俺の気持ちなんて全然知りやしないんだ」 感情のままに噛みつく。 自己犠牲に。元凶に。理不尽に。 「だからッ...放せよ...ぐ、がああああ!!」 空気の手による拘束から逃れようともがくもビクともしない。 例え主催からの制限をかけられていても、一般人からすれば十分すぎるほどの硬度だ。 いくら子供が頑張ったところで抜け出す術などない。 「下手に抵抗すると身体を痛めるよ」 「知るかよ、こんなところで止まってる暇はないんだ」 歯を食いしばり、どれだけ必死にもがいても抜け出せない。 空気の手は少年の意思を『否定』する。 それでも。 それでも―――凪は叫ぶ。ジーナの言葉を『否定』する。 助けたいから。押し付けたくないから。死なせたくないから。 「帆高じゃない...姉ちゃんは俺が助けるんだ!!」 「言うじゃねえかボウズ」 上空より声が飛来した。 凪でもジーナでもない、第三者の声が。 「その"反逆"―――俺が引き受けた!!」 ☆ 突如連れて来られた謎空間。踊り狂うカメラとポップコーン。映画。巻かれた爆弾首輪。謎のババア。湧いてくる大量の化け物。死んだ奴の蘇生。 馬鹿な俺でもわかる。 今の状況は、あの荒野で腐るほど戦ってきた経験ですらぬるま湯浸かってたと思えるほどヤバイってことは。 『だったら―――どうする?』 頭の中で声が問いかけてくる。 俺が兄貴として尊敬し憧れた、イキでイナセなあの男、ストレイト・クーガーの声が。 『この掛け値なしの異常事態だ。お前自身を含む大勢の参加者の身を護るなら帆高を殺すのが最適解だが』 ノゥ!! 『ならば帆高を陽菜に合わせて自分(テメェ)は大人しく水の底に沈むとするか?』 絶対にノゥ!!! 『ならばどうする』 をいをいをいをい...決まってんだろうがそんなことはよ。 このゲーム自体も、女生贄にしてご満悦の神様も、ソイツを利用してこんなクソゲームを開くババアもなんもかんもが気に入らねえ。 ああそうさ。こんな理不尽、気に入るはずもねえ。 だったらやることはひとつだろうが。 『どうやって!?』 この拳で! 『だったら―――やれ!!!』 言われるまでもねえ!! さあ―――反逆だ!!! ☆ 「ウラアアアアアア!!!」 雄たけびと共に、ジーナと凪の間に落下する影が一つ。 その影は地面に着地すると同時、轟音を立てて地盤を砕き砂塵を巻き上げる。 空気の壁によりダメージこそはないものの、その破壊規模にジーナは思わず目を見開く。 全貌を確認できた訳ではないが、乱入者は殆どが生身の男だった。 唯一右腕だけが金属のようなものに覆われていたがそれだけだ。 ジーナの知る中で、それだけの装備でこれほどの破壊力を有する存在は二つ。一つは性別や病気のような概念を司るUMA。もう一つは 「『否定者』!?」 「否定者だぁ?いいや違うね」 砂塵が雨にかき消され、乱入者の全貌が明らかになる。 立っていたのは、男。右腕に金属の装甲を纏い、逆立つ頭髪からギラついた双眸を覗かせる男。 男は獰猛な笑みを携え声高々に叫んだ。 「『反逆者(トリーズナー)』だ!!」 曰く、全てを断罪する能力者(アルター)。曰く、ソイツに目をつけられたら未来はない(ノーフューチャー)。 反逆者―――反逆者『カズマ』、いまここに反逆を宣戦する!! 【カズマ@スクライド(漫画版)】 [状態]健康 [装備]なし [道具]基本支給品、ランダム支給品1~3 [行動方針] 基本方針:この殺し合いに反逆する 0:手始めに目の前の女に反逆する。 ※参戦時期は『s.CRY.ed』を刻まれた後です。 【天野凪@天気の子】 [状態]疲労(小)、空気の手で拘束されている [装備]なし [道具]基本支給品、ランダム支給品1~3 [行動方針] 基本方針:姉ちゃん(天野陽菜)を助ける。 0:帆高や姉ちゃんを助けに行きたい。 1:なんだこの兄ちゃん!? ※参戦時期は逮捕されて以降です。 【ジーナ@アンデッドアンラック】 [状態]健康、精神的疲労(中) [装備]なし [道具]基本支給品、ランダム支給品1~2、双眼鏡@現実 [行動方針] 基本方針:帆高を止めてゲームを終わらせて帰還する(可能ならば願いを叶えて仲間たちの戦いを終わらせる)。 0:凪を手に入れて効率よく帆高を仕留める。 1:反逆者...!? ※参戦時期は死亡後です。 ※『不変』の能力は制限により精度や硬度が弱体化しています。
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50:幾つもの苦しみの先に―――― 学校のとある部屋は、遺体安置所になっていた。 白いシーツをかけられた遺体達。部屋には死臭が漂い始めている。 「……」 葉月は、めくられたシーツの下の黒い狼の死体をぼーっと眺め続けていた。 ついさっきまで、生きていたのに。 ついさっきまで、自分を愛してくれていたのに。 今はただの冷たい屍だと言う現実を、葉月は自分なりに受け止めようとしていたが、上手く行かなかった。 「神様って酷い……折角会えたのに……レックス……」 レックスの死体を撫でる葉月。 まだ微かに温もりが残っていたが、やがて完全に冷たくなるであろう。 なぜか涙は出なかった。余りの出来事にショックを受け過ぎているのだろうかと葉月は思った。 「稲垣、さん…」 「ああ、xR君……」 部屋に◆xR8DbSLW.wが訪れる。 レックスの死体を見に行った葉月を心配して来たのだ。 葉月自身も浅からぬ傷を負っている事もあった―――一応の手当はしているが。 「ごめんね、私はもう大丈夫」 「そう、か……?」 「うん……今、戻るね……」 葉月はレックスの死体に再び白いシーツを掛けた。 ◆ 「……」 これで二人を殺した。 野比のび太はとある教室内の椅子に座りながら、考えていた。 この殺し合いにおいて彼は二人の人命を奪っていた。 どちらも殺し合いに乗った参加者だったがそれでものび太にとって、 「他人の命を故意に奪った」と言う現実である事に変わりは無い。 「のび太さん…」 「静香ちゃん」 静香がのび太に声を掛ける。 放送前、のび太が静香のいたグループを襲撃した男を射殺した時、再会を果たした。 「……静香ちゃん、僕……ここに来る前も、一人、撃ったんだ……」 「えっ」 「その人も、殺し合いに乗っていて、ドラえもんを、殺したって……それを聞いて僕は……」 「ドラちゃん……」 「……っ……」 「……のび太さんは……のび太さんは悪くないわ、こんな、こんなゲームが悪いのよ。 こんなゲームに私達を巻き込んだ、あのヒリューって人が、悪いのよ……余り自分を責めないで」 「静香ちゃん……ありがとう」 何を言ってものび太には気休めにもならなかったかもしれないが、 静香にはどうしても何か言葉を掛けてやれずにはいられなかった。 ◆ カイテルはメモ帳にまとめた首輪についてのデータを改めて確認していた。 今は亡きレイ・ブランチャードと一緒に首輪を解析して得られた情報がメモ帳に詰まっている。 (レイちゃんと一緒に頑張ったんだから、絶対成功させないとな……) カイテルは胸の内で決意を固める。 振り向き、待機しているムシャと糸賀昌明の方を向く。 「それじゃムシャ、それと糸賀さんだったかな、他のみんな呼びに行こうか」 「ああ」 「あ、ああ」 カイテルは荷物をまとめて、ムシャと昌明と一緒に学校内にいる生き残りの仲間達を集めに向かう。 数分後。 学校内の多目的室にこの殺し合いの生存者全員が集まった。 カイテル、稲垣葉月、糸賀昌明、ムシャ、◆xR8DbSLW.w、野比のび太、源静香。 知人を失い、殺し合いの中で出会った仲間も失い、生存者の心中には、 様々な感情が渦巻いていたが、一つだけ一致する感情があった。 主催者ヒリューへの憤怒である。 「誰か、希望者はいる?」 カイテルが他の6人に訊く。 カイテルが解体作業をするのが、失敗すれば解体作業を受けている者の命は愚か、 生存者全員の命が失われる危険があった。 解体する側もそうだが、受ける側も相当な覚悟が必要であると、全員が思った。 「俺が」 名乗り出たのはxR。 「……いいか?」 「信じてる」 「……よし、椅子に座ってくれ」 カイテルは椅子にxRを座らせ、工作室で調達した工具を手に持つ。 残りの5人は少し離れた所で様子を固唾をのんで見守る。 二、三回深呼吸をした後、カイテルは両手に持った工具を、xRの首輪に宛がった。 教室内に、小さな金属音と、呼吸音が響く。 カイテルは全神経を集中させ、工具を操る。 xRは固く目を瞑り、金属音に耳を澄ませていた。 祈るような気持ちだった。 知らず知らずの内に震える両手を固く握り締め、カイテルを信じ、ただ、待った。 そして。 ガチャリ。 目を閉じていたxRの耳に何かが外れる音が入り、首から金属の感触が無くなった。 それが何を意味するか、xRが理解するまでにそう時間は掛からなかった。 「……やった」 xRが目を開け、立ち上がり振り向く。カイテルの手に、外れた首輪が持たれていた。 教室が歓声に包まれた。 そして、糸賀昌明、稲垣葉月、ムシャ、野比のび太、源静香の首輪も外される。 「最後はカイテルだな」 xRがそう言った。 「よし! もうここまで来たんだ、もう何も怖くないぜ!」 カイテルが嬉々として言った。 直後。 ピィーーーーーッ。 バァン!! カイテルの首輪が爆発し、6人に血飛沫が掛かった。 カイテルは床に崩れ落ち、喉元を押さえしばらく苦しみ、やがて静かになった。 「……え?」 「…い、や、あああぁああああぁあ!?」 「何て、こった…」 「……!」 「そんな……」 昌明、葉月、ムシャ、のび太、静香が呆然とする。 「何だよ、これ…あとちょっとだったじゃないかよ、カイテル……! 畜生、畜生……!」 xRが悔恨の声をあげた。 直後、教室のスピーカーからハウリング音が鳴り響く。 何事かと6人がスピーカーの方に目を向ける。そして聞き覚えのある声がスピーカーから流れた。 『まさか首輪外すなんてなぁ、もうちょっとちゃんと作るべきだったよ……』 「ヒリュー!」 『やあ、枷を外された6人、お前らには特別ステージを用意しといたから、今から来て貰うよ』 ヒリューがスピーカー越しにそう言った直後、6人を光が包んだ。 まばゆい光に包まれ、そしてその光が消える頃には6人の姿も無くなっていた。 ◆ 「ようこそ、特別ステージへ」 赤い竜、ヒリューが目の前に立っていた。 意識を取り戻した6人の視界にこの殺し合いの主催者である憎き存在が映る。 周りを見れば、石造りの四角い広い床。奈落の上に建っている闘技場のような場所。 「俺の事が憎いだろう?」 「当たり前だ、この糞野郎! 何人死んだと思ってやがるんだ!」 吠えるxRに、ヒリューは見下したような笑みを浮かべる。 「お前さ、それ言ってて心痛まない? 自分の物語ん中で何人も殺してる癖してよォ、 何今更善人振ってる訳ェ? カッコ良いと思ってんのか? この偽善者が」 「…ッ、このっ…!」 「よせxR、ただの挑発だ…」 飛び掛かろうとするxRをムシャが制止する。 しかしそのムシャも、煮え滾る怒りを必死で自制しているようにxRには見えた。 いや、全員が同じ気持ちだろう。 「まあ良いや、お前らに良い条件出してやる……俺を殺してみろ。 俺殺せたなら、お前ら帰れるようにしたからよ。まあ、出来るかどうかは知らないけどな」 「…へぇ、お前を殺せば俺達は生きて帰れるんだな」 「真偽が怪しいが、どちらにせよ、魔王様や娘様、嫁様、他の皆を死に追いやった貴様は、 俺が叩き斬ってやろうと思っていた所だ」 「お前のせいで、ドラえもんが、スネ夫が、ジャイアンが……許さない!」 「取り敢えず、馬鹿な俺でも分かるよ、お前は最悪の野郎だって」 「貴方がこんな事しなければ、レックスは死ななかったのに!」 「貴方は、許せない! ドラちゃんや、スネ夫さん、武さんを返して…!」 「ごちゃごちゃ言ってないでかかってきなさいよ」 尚も挑発を続けるヒリューに、6人がそれぞれ武器を構えて向かって行った。 xR、葉月、昌明、のび太、静香はそれぞれ持っている銃でヒリューに向け銃撃する。 ヒリューの身体に銃弾が食い込み、血が噴き出すが、ヒリューは特に動じる様子は無い。 「おお、痛い痛い、銃弾食らうとやっぱ痛いなぁ……ねぇ狐君!?」 「ひっ!?」 ヒリューが突然ダッシュし、PPSh41を撃っていた昌明の頭を掴み持ち上げた。 「がっ、は、放、せ」 「ああ放すよ」 グシャッ!! ヒリューの手の中で昌明の頭が簡単に潰れた。 血と脳漿がヒリューの指の間から溢れ出る。 「この!!」 ザクッ!! ムシャが背後から、刀でヒリューの身体を刺し貫く。 「うぐっ……やるじゃない、けど、甘いなまだ」 「がはっ!?」 多少効いたようだが、それでも動きを止めるには至らず、ヒリューの強烈な後ろ蹴りによりムシャは吹き飛ばされ、 リングの壁に激突し、吐血して倒れ込んだ。 「ムシャ!」 「ムシャさん!?」 「ほら、他人の心配してる場合じゃねーよ!」 吹き飛ばされたムシャの方に気を取られたxRと静香に向け、ヒリューは口から猛烈な勢いの炎を吐き出した。 紅蓮の炎は瞬く間に二人を包み、全てを焼いた。 「うわぁああぁあああああああぁアアアアアァアアアアアアァアアアアア!!!!!」 「キャアアァアアァアア熱い熱いアツイアツイアツイィ、ア、ああぁあーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」 悲痛な叫びが炎の中から響いていたがそれもすぐに止み、後には、 真っ黒に煤けた床と焼け焦げた炭と化した二人が横たわるのみだった。 「し、ずか、ちゃん…!?」 「ああ、何て事…」 目の前で、ようやく再会出来た友達が炭にされ呆然とするのび太。 仲間が目の前でどんどん殺され、ショックを受けるしかない葉月。 「……よくも、よくもおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 激昂したのび太が我を忘れてヒリューに向かって行った。 「! だ、駄目、のび太く――――」 葉月が止めようとしたが、時既に遅し。 数メートル前で、少年の首が飛んだ。 「あ、あ……」 葉月はもう、すっかり戦意を失っていた。 その場にへたり込み、絶望の表情を浮かべる。 首輪が外れた時は「生きて帰れるかもしれない」と言う希望を持てたのに、現実はやはりそう甘くは無かった。 身体中に傷を負いながら平然としている赤竜が、ゆっくりと座り込む葉月に近付く。 「いや、いや、こ、来ないで、来ないで…!」 ダァン! ダァン! … 手に持った拳銃をヒリューに向けて乱射する葉月。 だが、銃の弾もすぐに底を突く。 「あ…!」 「俺にそんな物通じないよ……残るはお前だけだな、安心しろ、痛いのは一瞬にしてやる」 ヒリューがにいっと牙を覗かせ、血塗れの右手を振り被る。 あれが振り下ろされれば、葉月の身体など容易く細切れにされるだろう。 立ち上がって逃げ惑ったとしても逃げ場などどこにも無い、いずれ、辿る道は同じ。 もう助からない。 絶望。ただ絶望だけが葉月の心を満たしていく。 「レックス…………」 自然と、今は亡き最愛の狼の名前が口から出た。 ドカッ!! しかし、爪が葉月に振り下ろされる事は無かった。 葉月の目の前で、ヒリューの首が斬り飛ばされ、血の噴水が高く噴き出す。 葉月に文字通り、血の雨が降り注ぎ、そして首を失った赤竜の身体は崩れ落ちた。 その向こうに、刀を持った鎧武者の姿が見えた。 「む、ムシャ、さん」 「…詰めが…甘いな……こいつも……死んだ事ぐらい、確かめろっての」 仮面が外れ、素顔を晒したムシャは、血を吐きながら屍と化した赤竜に言い放つ。 そして、間も無くムシャも倒れた。 我に返った葉月は倒れたムシャに駆け寄る。 「ムシャさん…!」 「葉月……ガハッ……悪いな、別嬪さんを汚い、血で……汚しちまって……」 「そんなのどうでも良いよ! それより、しっかりして!」 「無理だ…どうやら、折れた肋骨が内臓突き破ったみてぇ、で、ゲホッ、ゴフッ…!」 「そんな…!」 「……もう、ヒリューも死んだ、きっとこれで帰れる、ぜ……」 「……」 「……愛する人、失った人生ってのは……辛いかもしれねぇけど」 「……」 「生きろ……きっと……あんたの愛した……レックスも………それ…………を…………………」 ムシャの言葉が最後まで紡がれる事は無かった。 紡がれる前に、彼の命の灯は燃え尽きた。 生き残ったのは、葉月ただ一人。 見れば、光の道が暗闇の向こうに出来ていた。 あれを辿れば、帰れるのだろうか。 「……これで、終わり? じゃあ、後は、エンディング、スタッフロール、だよね……」 ふらふらと、葉月は光の道に向かって歩き出した。 「……レックス」 途中で、葉月は両目から込み上げるものを感じた。 それは、最愛の狼を失った時でさえ、出てこなかったと言うのに、今になって抑えられなくなった。 「……レックス……レックス……ぅ……あ……ああぁあぁ……あああぁあああぁあぁあ…………!」 葉月の号泣が、静寂と化した空間に響いた。 【カイテル@オリキャラ 死亡確認】 【糸賀昌明@オリキャラ 死亡確認】 【◆xR8DbSLW.w@非リレーロワスレ書き手 死亡確認】 【源静香@ドラえもん 死亡確認】 【ムシャ@VIPツクスレ・もしもシリーズ 死亡確認】 【ヒリュー@オリキャラ 死亡確認】 【稲垣葉月@オリキャラ バトルロワイアルより生還】 049:第二回放送(俺得ロワ6th) 目次順 051:永遠を生む透明な瞬間(とき) 048:見苦しい程腹を空かせて カイテル 死亡 048:見苦しい程腹を空かせて ◆xR8DbSLW.w 死亡 048:見苦しい程腹を空かせて ムシャ 死亡 048:見苦しい程腹を空かせて 稲垣葉月 051:永遠を生む透明な瞬間(とき) 048:見苦しい程腹を空かせて 源静香 死亡 048:見苦しい程腹を空かせて 野比のび太 死亡 048:見苦しい程腹を空かせて 糸賀昌明 死亡 049:第二回放送(俺得ロワ6th) ヒリュー 死亡
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体育館。別名、体育館ホール。何だっていいんだけれど。 そこに異様な男はいた。最初となんら変わらず、壇上に一人偉そうにふんぞり返っていた。 あたしは用意されていたパイプ椅子に座る。ちなみに場所は体育館のど真ん中。――――嫌がらせにも程がある。 「さて、ご苦労だったな。榎本夏美さん」 「労いありがとう」 「いやいや、、こちらこそ中々に面白かったよ」 不毛である。あたしはともかく向こうも悟ったのか、とっとと本題に入ることとなった。 「で、見事六人の中から生き抜いてきた榎本夏美さんは、これからどうしたいのかな? 願いを得たいか?」 「……ええ、ここまできたら勿論じゃない。その願いとやらを、いただきましょう」 哀哭は既に済んでいる。「あたし」の願いは変わらない。 慟哭は既に終えている。「あたし」の祈りは代わらない。 もう、迷わない。迷う時間はもう済んだ。――――そのうえであたしは来たのだから、貫くべきだと思う。 「……では、聴かせてもらおうか、榎本夏美――――その身で戦い抜いた先に見た願いを」 異彩な男、木幹葉枝はあたしに問う。だから、あたしは答える。「あたし」の、答えを――――。 はっきりと、言わせてもらおう。 ……。 息を吸う。 重い空気だ。空気に重さはないけれど、想いはあるというものだ。 意思によって空気は変わる。居合わせる者によって変動する。 例えば柳沼といる時と、この異様な男といる時とでは、やはりテンションもボルテージもかわっちゃうということ。 しかし息を吸ったところで、全然心地が良くならない。 むしろ毒ガスを吸っているかのように、身体が重くなっていく。 今からあたしが行う、非人道的な行い、神をも超越する、あるいは馬鹿にする行いに対しての、罪悪感、いやあたしの残念さに対する憐れみでしょう。 それが身体を支配していく。一度回り出したら止まらない。この劇薬(おもい)に抗生物質は存在しない。 けれどいい。もう後戻りはしないから。――――いや、この言い方は正しくなかった。 息を吸う。 決して軽くなったわけじゃないこの身体で、この口で。 願いを、祈りを。奉げる。 「――――」 指先に神経が届かない。凍ったかのように固まった指。 同時に感じる硬直する、唇。成程、今のあたしの声は届かなかった。 ならばもう一度だ。 言う。言う。言う。 震える唇。構わない。 凍える胸。構わない。 動かぬ指。構わない。 直立不動な姿勢で、あたしは言う。今度こそ、「あたし」の願いを。 一瞬の静けさ、そして響くあたしの声。 「――――――時を戻し、もう一度この殺し合いを、させてください」 ○ 『この手紙を見てる時、おれ……まあ柳沼卯月は死んでいるだろう、なんて書くとそれっぽいけど、やはりその通りなはずだからそう、書いとく。 多分この手紙を渡すのは榎本夏美、楓之風香、樫山堅司が当てはまると思うけど、楔音や榊田も見ていたら応じろ。異論は認めん。 つーわけで、ひとつお願いだ。おれが死んだら、誰か優勝しろ。そして願え。願いの自由なんて与えさせるか。 おれの言ったことを願ってくれ。辛いかもしれねえ、だがやれ。これはこん願ではなく、命令だ。 じゃあ、書いとくが「このバトルロワイアル前にタイムリープして、もう一度このバトルロワイアルをやれ」。 そしてハッピーエンドを目指してくれ。実によくある話を、おまえらの手で掴み取ってくれ。 この願いであれば、「願い」は「一回」だし、記憶を引き継がせる「者」も「一人」。理、ルールには一応乗じている。 以下は詳細なことを書いておく、が。先に謝らせてもらうと。 おれは仮に一人でも死んでいたら、みんなを殺してこれをするつもりだった。それは謝らせてほしい。 いつも通りの、おれのエゴだと思ってくれて全然構わねえ。貶してくれたっていい。何と言われたって変える気はなかった。 ずっと最初に出会った榎本夏美だって、きっと冷たく切り捨てただろう。おれはそう言う人間だ。わかってるとおもうがな。 じゃあ、細かいことを話そうか。まず、願いを言う時はこう言え』 ○ 「正確には、『優勝者の記憶を引き継いで、理想の結果を得るまで、繰り返させてほしい』」 ○ 『こう言う理由は分かるか。まず、優勝者ってするのは、それをしたら仮に…まあ、おまえが死んだところで、記憶を次週以降引き継いでくれる人がいるからだ。 まあ「○○の記憶」』として、次週以降も「○○」の名義として記憶を引き継いでくれるのかもしれないけれど、 多分此の先、一度失敗したら心を折られるかもしれない。「死んだ」って事実は結構辛いからな。…予測でしかねえが。 そしたらきっとお終いだよ。おまえは恐らく、この日を延々に繰り返すことになるかもしれない。…流石にそれはきついだろう。だから、優勝者って名義にしておく。 で、理想の結果てするのはあれだ。先生を切り捨てるとしても「六人を生き返らせるまで」とするとさすがにあからさま過ぎて「対象」は「一人」まで のルールを破る可能性がある。そうしてもう一度願えるチャンスが来ればいいけれど、危ない橋渡るぐらいなら、先にこっちを言ってても損はねえだろう。 ちなみに間違っても「身体ごと」…タイムトラベルはしねえでな。そしたら今は大丈夫でも次週以降、怪我をしたら圧倒的に不利だ。 だから記憶だけ、過去に移す。まあ、気をつけろよ (以下略) ――――柳沼卯月より』 ○ よくこんなに書いたな、とは思えるけれど、この乱雑な字は通称「柳沼語」と呼ばれる、 速筆なかわりに読める相手が限られるという、まあいわば雑な字。……。あたしは最近読めるようになってきてしまった。 恐らく最初に書いてあった、「多分あたし、楓之、樫山に渡すと思う」っていうのはこれを読めるかどうかっていう話だと思う。 なんて回想もさておいて。 あたしは願いを言った。 対し、木幹葉枝は、一瞬目を丸くして、仄かに笑う。 顔を引き締めると、あたしの方を向き、返事を返す。 「ええ、了承した。それでは、日を跨ぐ頃に、タイムリープさせていただきます――――ですがその前に確認です」 「なにかしら」 少しだけ言葉を選ぶような仕草をした後、木幹葉枝は言った。 「ゲームの『優勝者』が、『このバトルロワイアルを行う――――まあ死業式の直前』にまで『記憶を飛ばし』、 『今の榎本夏美』さんが『本心から願う理想の結末』を獲得するまで、『今日』を『何度』でも『繰り返す』。そういうことでよろしいですね?」 「ええ。そう言うことで」 優勝者、今はあたし。榎本夏美。 死業式直前、まあそこはしょうがない。下手打って相手の機嫌を損ねるのは最悪だ。 記憶を飛ばし、ここは、柳沼が言う通りだと思う。さすがに痛いままでは話にならない。 今の榎本夏美、逆にこのロワイアルやる前ではダメだし、ロワイアルやっていく最中であたしが考えを狂わす、それが一番怖い。 理想の結末、ええ、やってやろうじゃない。ちゃんと六人全員で、生還してやる。樫山や楔音や榊田だって、改心してやるんだから。 今日を何度でも繰り返す、その覚悟は、さっき決めてきたから。……大丈夫、大丈夫よ、あたし。 何の問題もない。 ――――いや、問題は山積みなんだけど、意欲の問題なら、大丈夫。 ――――今のあたしなら、出来る。 守られてばかりがあたしではないことを、証明しましょう。 守る側が正しい立ち位置だということを、明かしてやりましょう。 ……。 「それでは、これにて閉壊式を、終わります」 ……。 時は進み――――時間は戻る。 ○一週目:時をかける少女(Edit Decision List)○ ――――END 【EDLロワイアル――――再始動】 【6人】 Back:● 話順 Next:○
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散る―――(後編) ◆Vj6e1anjAc ◆ ここで今一度思い出してほしい。 ルーテシアのレリックと融合し、本来なら相性の合わない組み合わせで目覚めた聖王ヴィヴィオは、 いくつもの欠陥をその身に抱えた、不完全なレリックウェポンと化していた。 現時点までに発覚していた変化は、2つ。 1つはかつてのゼスト・グランガイツのそれと同じ、身体を蝕む拒絶反応。 1つはレリックの暴走による、一時的な魔力量の向上。 一度に発揮できる魔力の量こそ増えたものの、同時に身体へのダメージさえも助長され、 本人の意識せぬままに、より早いペースで身体にダメージを溜め込んでいくという悪循環である。 しかし――本当に、それだけだろうか? ヴィヴィオの身体に起きた変化は、本当にその2つだけだったのだろうか? 考えてもみてほしい。 ヴィヴィオが何者であるのかを。 聖骸布のDNAから生み出された人造魔導師が、一体何者なのかということを。 ヴィヴィオはかつての聖王のコピーだ。 古代ベルカ技術の直系を受け継いだ、最高のレリックウェポンの素体だ。 身に溜め込んだ戦闘力と魔力は、並の人間を遥かに凌駕している。 そのベルカ最強の生体兵器として生まれた彼女の身体を、凡百の人間と同じ定規で計っていいものなのか? いかにストライカー級騎士とはいえ、突き詰めればただの人間に過ぎないゼストと、全く同一のケースと見なしていいものなのだろうか? 回りくどい言い方はここまでにしよう。 ここからは率直に事実のみを述べることにしよう。 言うなれば聖王ヴィヴィオの身体は、その莫大な魔力を内に溜め込み、コントロールするための器だ。 大量の水を貯水池に留め、必要量のみを放出する、ダムのようなものである。 では、そのダムが壊れたらどうなるか? 水を抑え込めなくなるほどに脆くなったらどうなるか? 拒絶反応の影響で、ボロボロになった肉体が、魔力制御の限界域を突破したら? その先に待つのは、たった1つのシンプルな回答。 それはその身に宿った全魔力の――――――暴発。 肉体の限界を超えた魔力が、器を破り全面放出されることによる、魔力エネルギーの大爆発である。 これまではギリギリ耐えることができた。 今までに蓄積されたダメージでは、ダムを決壊させるまでには、ほんの僅かに至らなかった。 しかしそこへ、とうとう決定打が叩き込まれる。 完全破壊までには至らなかったとはいえ、スバルの放ったディバインバスターが、レリックにダメージを与えたのだ。 衝撃を与えられたレリックは安定性を失い、体内の魔力は大きく掻き乱された。 そんな水流の大きく乱れた状態へ、更に追い討ちをかけるように、 最大出力でディバインバスターを放つべく、ダムのほぼ全ての水門が開け放たれたのである。 そうなれば、どうなるか。 結論は決壊の2文字しかない。 レリックの魔力のみならず、ヴィヴィオ自身の体内に潜在される魔力まで、根こそぎ放出されるのみである。 こうしていくつもの条件が重なったことによって、薄氷の上に成り立っていた聖王の身体は――遂に、限界の瞬間を迎えたのであった。 ◆ 「ぐォッ……!」 その瞬間を、その場にいた誰もが目撃していた。 超巨大魔力スフィアを発射しようとしていたヴィヴィオが、突如としてもがき苦しみ始めたのだ。 両手で自身を抱くように掴み、呻きと共に肌を掻き毟る。 スフィアは緩やかに消滅し、代わりに聖王の身体から、魔力が霧のように漂い始める。 そしてそこに宿された光は、カイゼル・ファルベの虹色だけではない。 不穏な気配を放つ赤色が、その中に混じり始めたのだ。 赤はロストロギア・レリックの色。 それが漏れ出したということは、ヴィヴィオの魔力回路を介することなく、直接レリックから漏れていることに他ならない。 見る者が見れば、容易に危険だと推測できる状況だった。 「う……ゥ、ォオオオオオ……ッ!」 遂に堪え切れなくなったのか、膝をついて崩れ落ちた。 四つん這いの姿勢になったヴィヴィオの身体が、びくびくと小刻みに痙攣を始める。 美貌にはじっとりと脂汗が滲み、サイドポニーの金髪がへばりついた。 地に着いた四肢はがくがくと震え、口からは明らかに危険な量の涎が零れた。 それどころかその中には、薄っすらと血が混ざっているようにさえ見える。 「ゥ、ア……あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」 瞬間。 絶叫した。 叫びが上がった。 これまでの怒りの滲んだ怒号ではない、断末魔さえも思わせる悲痛な叫び。 不意に弓なりに身体を反らし、中腰の姿勢となって放たれた咆哮。 それが破綻の始まりだった。 それが全ての合図となった。 ヴィヴィオの絶叫を皮切りに、霧が間欠泉へと転じる。 濁流のごとき勢いで、赤と虹の光が発せられる。 さながら火山の噴火のように、漆黒の聖王の肢体から、膨大な魔力が放出されたのだ。 轟々と渦巻くそのさまは、さながら小規模な暴風雨。 暴力的なまでの閃光と爆音が、殺人的破壊力を伴ってぶちまけられた。 「何だ、あれは……?」 相川始との予期せぬ再会によって、幾分か頭の冷えたエネルは、その光景を悠長に構えて見つめていた。 不届きにも己と互角の勝負を展開していた小娘が、突然もがき苦しみ始めたのだ。 そして身を起こしたかと思えば、この有り様。 一体何が起きているというのか。 見たところ、体調が悪くなったのは間違いないらしい。 攻めるなら今をおいて他にないのだろうが、はてさて、あの身体から噴き出したエネルギーをどうするか。 これまでの経験則からして、あれは当たったら痛そうだ。 いくら回復手段があるとはいえ、痛みを覚えるのは面倒くさい。 できれば下手に怪我することなく、あれを突破したいのだが――。 「ヴィヴィオ……一体、どうしたの!?」 ディバインバスターを直撃させ、意図せぬうちにこの状況を作ったスバルは、不安げな声でヴィヴィオに呼び掛けていた。 あの状態はまずい。 何が起こったのかはさっぱり分からないが、尋常ではない苦しみ方からして、彼女が生命の危機に瀕していることは分かる。 できることなら助けたい。いいや、助けなければならない。 たとえディバインバスターが効かなかったとしても、一度助けると決めたからには―― 「なっ!?」 そう思った、次の瞬間。 「逃げるぞ!」 不意にカリスに手を掴まれ、そのままぐいと引き寄せられた。 「待ってください! ヴィヴィオを、ヴィヴィオを助けないと……!」 「もう限界だ! このままだと、俺達まで危険に晒されかねない!」 「そんな……!」 始は本能的に察していた。 あれは危険な現象だと。 ヴィヴィオ1人のみならず、自分達周囲の人間にさえ、危険を振り撒きかねない現象であると。 具体的に何が起こるのかは分からない。 ただ漠然と、危険な気配だけは感じ取っていた。 振りかえって見るだけでも分かる。 見えない脅威を振り払わんと、巨大な憑神鎌を振り回し、先端から余剰魔力を光波として放つさまは、明らかに常軌を逸している。 見捨てることで心が痛むのは確かだ。 それでも今は、出会ったばかりの小娘よりも、ギンガの妹の方が大事だった。 彼女だけは絶対に守る。 人の想いの力を教えてくれたスバルを、絶対に死なせはしない。 その一心で彼女の手を引き、得体の知れないカタストロフから、必死に逃げのびようとしていた。 「ゥウッ! グゥァアアアッ!!」 獣のごとき雄叫びを上げ、狂ったように鎌を振るう。 我が身を苛む何物かを、懸命に遠ざけようとするように。 魔力の嵐の中心で、ヴィヴィオは苦痛の真っただ中にあった。 燃え燻る森の火種も、挑みかかって来る敵の姿も、空の満月も見えはしない。 全天360度の光景は、有象無象の区別なく、慈悲なく容赦なく万遍なく、神々しくもおぞましき虹色へと埋め尽くされる。 浮かび上がる紅蓮の影は、手にした憑神鎌の力の顕現だったのか。 レリックより滲み出る赤い魔力が、処刑鎌の待機形態を彷彿させる顔をした、三つ目の死神の姿を浮かび上がらせた。 「グェ、ェ、ェエエエエ……ッ!」 痛い。痛いよ。 身体中が苦しいよ。 何でこんなことになっちゃったんだろう。 どうしてこんなところまで来てしまったんだろう。 仕方がないことだと思っていた。 身体が痛いのも苦しいのも、人を殺そうとするヴィヴィオが悪い子だから、その罰を与えられたんだと思っていた。 でも、本当はこんな苦しい思い、しなくていいのならしたくはなかった。 こんな怖い思いなんて、本当はしたくなかったのに。 「ァ……ァアー、ア……」 ママ。 どこにいるの、なのはママにフェイトママ。 一緒にいてくれると思っていたのに。すぐ傍で見ていてくれると思っていたのに。 もう嫌だよ、ママ。 痛いのも苦しいのも怖いのも、もうこれ以上味わいたくない。 だから助けてよ。 ここまで助けに来てよ、ママ。 なのにママはどこにもいない。 どこにもなのはママを感じられない。 ああ――私、見捨てられちゃったんだ。 あんまりヴィヴィオが悪い子だから、そんな子はもう知らないって、なのはママにも捨てられちゃったんだ。 これで私は、独りぼっち。 生まれた時と同じ、独りぼっち。 誰にも助けられなくて、誰にも愛してもらえない。 ヴィヴィオはもう――独りぼっち。 「……がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 ◆ それはただただ圧倒的で、暴力的で冒涜的な力の発現。 燃え滓となった灰色の木々も。 森林に鎮座したコンクリートのホテルも。 そこに立つ人影達さえも。 全てが区別なく平等に、光の中へと飲まれていく。 地面の絨毯をひっぺ返し、大口開けて酸素を取り込み。 恐怖さえも煽る虹色のドームが、全てを無へと帰していく。 衛星のように駆け巡る赤色の線が、全てを切り裂き消し去っていく。 影さえも飲み込む死の光。 闇を切り裂く七曜の闇。 全てが虹色に支配され、それ以外の何もかもが見えなくなって。 たっぷり10秒間は続いた大爆発は、エリアF-9に現象する一切合財を、余すことなく飲み込んだのであった。 ◆ かつてホテル・アグスタと呼ばれていた、その施設の面影は既にない。 ヴィヴィオの巻き起こした魔力爆発が、これまで健在であった建物に、遂にとどめを刺したからだ。 コンクリートの壁も鉄骨も、情け容赦なく粉砕された。 今その土地にあるものは、焦げた臭いを漂わせる、煤けた瓦礫の山だけだ。 「あの、女ぁぁぁ……!」 そしてその灰色の山の中で、怒りに震える男がいる。 全身をコンクリートに埋めながら、額に青筋を立てる男がいる。 男の名は、神・エネル。 スカイピアの神を自称し、恐怖こそが神であると自論し、恐怖による支配体制を敷き続けた雷の男である。 その男が、生きていた。 あれほどの爆発の中にあっても、驚くほどの軽傷を負うに留まり、こうして生きながらえていた。 決め手となったのは、周囲の自然や建造物から電力を集めた、あの巨大な積乱雲だ。 恐るべきことにこの男は、自らの支配した雷全てを使って、自らに襲いかかる魔力を、完全に相殺しきったのだった。 「最初から最後まで神を愚弄し……おまけにこんな屈辱を味わわせるとは……!」 何だというのだ、この有り様は。 全能の神を自称していた自分が、一体何という体たらくだ。 か弱い少女を狩らんとしたら、あろうことか川に突き落とされ。 神を信じぬ不届き者も、殺したと思っていたのに殺しきれず。 赤いコートの男に返り討ちにされ、訳の分らぬ感情に心を乱され。 男だか女だか分からないような奴に、いいように騙され利用されて。 自らを檻に閉じ込めた紫鎧も、結局自分の手で殺す前に死に。 あの女には見下ろされ技を盗まれ、挙句せっかく溜めた電力も使い切らさせられた。 ひどい有り様だ。 ここに飛ばされたから自分は、まったくもって嘗められっぱなしではないか。 「もう堪忍袋の緒が切れた! この場に生き残った全員、ただの1人として生かしては帰さん!」 許さない。断じて許すわけにはいかない。 これ以上醜態をさらすのは、自分のプライドが許さない。 殺す。 殺してやる。 この場に集った全員を、自分自身の手で殺してやる。 恐怖という名の崇拝を掴み取るために、再び最強の恐怖の象徴として返り咲いてやる。 そうだ。 もう誰も取りこぼしはしない。 「全員私の手で殺して――」 ――ばぁん。 【エネル@小話メドレー 死亡確認】 銃口からたなびく硝煙が、男の顔を静かに撫でる。 脳天を真上からぶち抜かれ、物言わぬ死体となったエネルを、冷淡な視線が見下ろしている。 いつからそこにいたのだろうか。 そこにいつから立っていて、いつから神を見下ろしていたのか。 「怒りってのはよくないな。気が散って危機管理が疎かになる」 スマートな体型を有した青年――金居が、デザートイーグルを構えてそこに立っていた。 四つ巴の激闘から、真っ先に尻尾を巻いて逃げだしたこの男が、エネル達の生死を確かめるために戻って来たのだ。 (ボーナスは……これだな) がさごそとデイパックを漁ってみれば、新たな手ごたえをその手に感じた。 鞄から引き抜かれた御褒美は、長大な柄を持った鉄槌だ。 殴打する部分には痛々しげな刺が連なっており、凶悪な破壊力を醸し出している。 重量こそあるものの、アーカードの持っていた、やたら長い刀よりは使い勝手がいいだろう。 当面はこれを得物としようと判断し、デザートイーグルをデイパックにしまうと、そのまま左手にハンマーを持つ。 ついでにエネルの手から剣をひったくると、本人のデイパックに詰め、それも奪った。 「それにしても、とんでもない被害だな」 そこで思い出したように、高みから周囲を見回し、呟いた。 数分前に起こった大災害には、さしものカテゴリーキングも肝を冷やした。 何せ逃げのびたかと思えば、いきなり目の前で虹色の大爆発が起きたのだ。 あの時真南のG-9ではなく、F-9エリアに留まったままだったら、巻き込まれ消し炭になっていたかもしれない。 これまでの情報を整理すれば、あのカラミティを巻き起こしたのは、間違いなくあのヴィヴィオだろう。 何にせよ、厄介な2人が共倒れになってくれたのは幸いだった。 死んだのか否かはまだ調べていないが、ヴィヴィオも小さな子供の姿になって倒れている。もはや脅威となることはあるまい。 (さて、これからどうするか) ともあれ、これで当面の目的は果たした。 であれば、次の目的はどうすべきか。 エネル達という不安要素が排除され、はやて達とも別れた今、自分がすべきことは何か。 同行者が1人もいなくなったのだから、工場に立ち寄る理由もない。つまり、やることがなくなってしまったのだ。 そこまで考えたところで、ふと、デイパックに入れたきりになっていたアイテムの存在を思い出した。 学校で見つけ、それきり調べる機会のなかったUSBメモリだ。 せっかく1人になったのだから、いい加減こいつの中身を調べてみよう。 とりあえずは市街地に行って、適当なパソコンを調達し、こいつを開いてみることにしよう。 そうと決まれば善は急げだ。 コンクリートの山を滑り降り、倒れ伏す人影のすぐ横を、悠然と歩き去っていく。 乾いた夜風が吹き抜けた。 瞬間、金居の視界の中でちらついたのは、見覚えのある10枚のカード。 「……感謝するよ、お嬢ちゃん」 ふと。 不意に、にやり、と口元を歪め。 すたすたと歩いていた足を止め、首だけを背後へと振り向かせる。 「本当に厄介な奴を始末してくれたことを、さ」 キングの視線の先にあるものは―― 【1日目 真夜中】 【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】 【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状況】疲労(小)、1時間変身不可(アンデッド)、ゼロ(キング)への警戒 【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~ 【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、 首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル@オリジナル(4/7)、 アレックスのデイパック(支給品一式、L、ザフィーラ、エネルデイパック(道具①・②・③) 【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、 ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、 レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ 【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)) 【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、ランダム支給品(エネル:0~2) 【思考】 基本:プレシアの殺害。 1.USBメモリの内容を確認するために市街地に戻る。 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。 【備考】 ※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。 ※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。 ※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。 ※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。 ※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。 「う……」 呻き声と共に、目を覚ます。 未だがんがんと痛む頭を振り、ぼやけた瞳を指先で擦る。 ヴィヴィオにやられた鈍痛の残る身体を、片腕でのそのそとと起こした。 あれから一体どうなったのだろう。 いいや、あれだけのことがあって、何故自分は生き残ることができたのだろう。 徐々に冴えてきた脳内で、スバル・ナカジマは思考する。 最後に記憶したものは、聖王の背後で吼える死神の姿と、網膜を蒸発させんばかりの魔力光だ。 前後の状況から推察するに、恐らくはヴィヴィオの身体から発せられた魔力が、とんでもない規模の爆発を引き起こしたのだろう。 あまりの光量と音量に、意識が吹っ飛んだほどの破壊力だ。 まともに考えるのならば、今ここで自分が生きているのはおかしい。 何が死期を遅めたのか。 あの圧倒的な火力の中、一体何が自分を救ったのか。 「……ッ!」 そして。 次の瞬間、見てしまった。 上へと持ち上げた視線に、その存在を捉えてしまった。 自分が倒れている目の前に、異形の怪物の死体が立っていた。 「あ……ああ……!」 見覚えのない、禍々しい背中。 頭部から伸びた触角に、おぞましく歪んだ甲殻から覗く緑色の肌。 全身を煤けさせながらも、倒れることなく逝った立ち往生の死に様。 いかにも怪物らしいこの怪物の背中を、自分はこれまでに見たことがない。 それでも、確かに悟ってしまった。 否応なしにも、理解させられてしまった。 「始、さん……!」 これは相川始だと。 あの素顔も知らない仮面ライダーカリスが、自分をここで庇っていたのだと。 圧倒的な魔力に身を焼かれても、それでも決して引き下がることなく、そしてそのまま最期を迎えたのだと。 不意に、死体が光る。 おぞましい昆虫の亡骸が光に包まれ、縮小し、一枚の紙切れへと変わった。 トランプのようなカードの意匠は、生前彼が使っていたのと同じものか。 それで本当に何もかもが終わってしまったのだと、何となく理解していた自分がいた。 また、目の前で人が死んだ。 死なせないと誓った人を、結局救えず死なせてしまった。 皆を守ると約束したのに、結局守られてしまった。 その厳然とした事実はスバルを苛み、涙腺に熱いものを込み上げさせる。 きりきりと胸を締め上げる悔しさと情けなさが、瞳から涙を落とさせようとする。 「………」 それでも。 だとしても、泣くことはしなかった。 静かに身体を起き上がらせ、視線を左側へと逸らす。 始の死体の向こう側にいたのは、焼け焦げた大地の中心で倒れ伏す、元の小さな姿のヴィヴィオだ。 すぐ近くに突き刺さっていたナイフは、始を殺したことで手にしたボーナス支給品だろうか。 無言で立ち上がり、歩み寄る。未だ真新しいナイフを回収し、気絶した少女の身体を抱き上げる。 ひゅーひゅーと響く呼吸音は驚くほど小さく、心臓の鼓動はあまりにもか細い。 誰の目にも明らかな、満身創痍の有り様だった。 「……あたし、泣きませんから」 ぼそり、と。 消え入るような声で、呟いた。 そうだ。こんな所で泣いている暇はない。 こうして立ち止まっているうちにも、目の前の命はどんどん蝕まれていく。 今ここで涙し膝をつけば、せっかくレリックの呪縛から解き放たれたヴィヴィオの命が消えてしまう。 「ヴィヴィオを死なせないためにも、前を向いて歩きますから」 振り返ることはしなかった。 始の遺したカードを拾い上げると同時に、すっぱりと思考を切り替えた。 落ちていたデイパックを自分のバッグへと詰め、ジェットエッジのローラーを回転させ、北へ北へと進んでいく。 今は涙を流せない。 始の死を悲しんでやることも、弔ってやることさえもできない。 今目の前で死にかけているヴィヴィオを、スカリエッティのアジトへと運び、その命を救うこと――それがスバルの使命なのだから。 「だから、もう行きます」 白のバリアジャケットがはためく。緑の瞳が光り輝く。 胸にこみ上げる悲しみよりも、なおも大きな決意を抱いて、満月の下を進んでいく。 「ありがとうございました――始さん」 それが相川始との、最期の別れの言葉だった。 【1日目 真夜中】 【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意 【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー) 【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具③】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。 2.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……? 【備考】 ※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。 ※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。 ※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。 ※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。 ※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ 【装備】フェルの衣装 【道具】なし 【思考】 基本:????? 1.ママ…… 【備考】 ※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。 ※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。 ※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。 ※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。 ※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。 ※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。 時は僅かにさかのぼる。 これはヴィヴィオの魔力が暴発した、その瞬間の出来事である。 悪い予感は的中した。 否、正直予感以上だった。 これほどの規模の大爆発は、これまでのバトルファイトを振りかえっても一度も目撃したことがない。 腕に抱き止めたギンガの妹は、あまりの音と光に気絶してしまった。 人間の開発したスタングレネートやらを、遥かに凌駕する音と光だ――正直自分自身さえも、未だ意識を保っているのが不思議だった。 爆発が背後にまで迫る。 目と鼻の先にまで光がにじり寄る。 このまま飲み込まれてしまえば、それで何もかも終わりだ。 身体はあっという間に蒸発し、骨まで残さず消え果てるだろう。 自分はどうなろうと構わない。だが、それ以上に死なせたくないのはスバルだ。 昏倒した少女を背後へと放ると、迫り来るカラミティへと正対する。 『REFLECT』 カリスアローにラウズしたのは、ハートの8番目のカード――リフレクトモス。 ギラファアンデッドの攻撃にも耐えられなかった防壁が、どこまで有効かは分からない。 それでも手にしたラウズカードの中で、最もましな防御力を持っていたのがこれだ。 すぐさま光の壁が出現し、カリスの盾となって立ちふさがる。 爆発と正面から衝突したのは、ちょうどそれから2秒後だ。 すぐさま、強烈な反発が襲いかかった。 ばちばちと耳触りなスパークが響き渡り、衝撃が大気越しに身体を震わす。 ハートのマスクの下の眉間を、苦悶を宿した皺に歪めた。 見ればリフレクトの障壁には、既に亀裂が走っている。恐らくはあと数秒と保たずに、この壁は消滅するだろう。 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」 それでも、諦めてなるものか。 膝をついてなるものか。 全身から暗黒色の飛沫を放ち、本来の姿たるジョーカーへと変幻。 黒と赤の鎧が消失し、黒と緑の甲殻が姿を現す。 リフレクトがばりんと音を立て砕け散ったのは、ちょうどこの瞬間だった。 「くっ、お、おおおおおお……っ!」 轟――と身を襲うのは、耐えがたいほどの灼熱と圧力。 カリスの姿なら即死していたであろう殺人的破壊力に、無敵のジョーカーの体躯すら、じりじりと焦がされていく。 命が遠ざかっていくのを感じた。 不死身であるはずのこの命が、驚くほど静かに消えていくのを感じた。 このままでは遠からず自分は死ぬだろう。 たとえスバルの盾となり、彼女を守り通したとしても、その未来に自分の命はないのだろう。 ふ――と。 不思議と、笑みが込み上げた。 まったくもって、不思議なこともあるものだ。 殺戮のために生まれたジョーカーの最期の仕事が、命を守ることだとは。 魔力の炎に焼き尽くされながら、しかし不思議と穏やかな気分で、自分の奇妙な運命を見据える。 少し前まではこんなこと、考えたことすらもなかった。 そんな自分を変えたのは、愛すべき人間達の心だ。 スバルが懸命に説得してくれたからこそ、人の想いの強さを知ることができた。 ギンガに命を救われたからこそ、人の想いに触れることができた。 そして、最初に人の心を教えてくれたのは、あの栗原遥香と天音の親子だ。 すいません、遥香さん。ごめん、天音ちゃん。 俺はどうやらここまでらしい。ここから生きて帰ることはできないようだ。 そして、それでも。 だとしても、これでよかったと思える自分がいる。 自分の命の捨て方としては、十分に満足できる死に様だと思っている自分がいる。 人を殺す運命にあった自分が、人を守って死ねるのだ。こんなに上等な死に方はなかった。 これで、いいんだよな。 今は亡き少女が最期に見せた、穏やかな笑顔へと問いかける。 俺はしっかり生き抜いたよな。 お前が言ってくれた通り、人間の心に従って、真っ当に死ぬことができたんだよな。 そうだよな……ギンガ―――――― 【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード 死亡確認】 【全体の備考】 ※F-9にて大規模な火災と魔力爆発が発生し、以下の被害が生じました。 ・F-9が壊滅状態となりました ・ホテル・アグスタがほとんど全壊状態となりました。 ・装甲車@アンリミテッド・エンドラインが大破しました。 ・ヴィヴィオの支給品一式が消滅しました。 また、火災は魔力爆発によって鎮火しています。 ※F-9に落ちていたラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレードが、風に吹かれて飛ばされました。 どこに飛んでいったのかは、後続の書き手さんにお任せします。 【ラウズカード(ジョーカー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 不死の怪物「アンデット」のうち、4つのどのスーツにも属さない「ジョーカー」を封印したカード。ラウザーに通す事により、カードが持つ能力を使用者や武器に付加させる事が出来る。 あらゆるラウズカードの能力を有しており、使用者が望むカードの代用として使用することができる。 【バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~】 金居に支給されたボーナス支給品。 未確認生命体第45号ことゴ・バベル・ダの使用する大金槌。 高い殺傷能力を有しており、バベルの怪力と相まって、紫のクウガの鎧に傷をつけるほどの威力を発揮した。 【黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK】 ヴィヴィオに支給されたボーナス支給品 「組織」に所属する契約者・黒(ヘイ)が使用するナイフ。 Back 散る―――(中編) 時系列順で読む Next A to J/運命のラウズカード 投下順で読む Next A to J/運命のラウズカード スバル・ナカジマ Next A to J/運命のラウズカード 相川始 GAME OVER ヴィヴィオ Next A to J/運命のラウズカード 金居 Next Ooze Garden(軟泥の庭) エネル GAME OVER
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【生徒会役員】一ノ瀬トキヤ No. 531 TOTAL DANCE VOCAL ACT 特技 ライフ回復ノーツを3個追加 レア度 UR Lv50 4382 1573 1853 956 サブ特技 LIFE80%以上でクリア時+17000スコア 属性 ドリーム MAX 5940 2140 2420 1380 メインスキル ドリームのVOCALパフォーマンス60%上昇
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なんか嫌な予感がする。リゾナントで誰かが窓に切り取られた青空を見上げた時 病室にいた絵里の左手首から大量の血が噴き出していた。 絵里は右手で手首をきつく掴み、屋上へ向かって走った。理由はない。 ただ屋上だという直感だけが絵里を動かしていた。 「ちょっと、手首を切ったのはあなた?」 止まることのない鮮血が手を濡らす。お気に入りのパジャマは真っ赤に染まっていた。 「―――!」 「残念だけどね、この屋上では死ねないことになってるんだよ。経験者は語る、なんだから」 絵里はカッターナイフを片手に、同じく左手首から真っ赤な血を垂れ流す少女へ歩み寄る 「そのカッターちょうだい」 手首を掴んだまま左手を差し出した。きつく握っている所為で指先は紫色に変色している。 「…」 少女は答えない。答えないどころか血にまみれた左手首に押し当てていた。 左手首に鋭い痛みが走る。 「えぇ!?ちょっとさゆがいない時だけは絵里ちゃん勘弁してほしいんだけどなぁ」 絵里が言い終わるより早く、少女はゆっくりと そして力を込めてカッターナイフを持った右手を引いた。 「――――――っ!!!!!」 ぱっくりと皮膚が引き裂かれるのを右手の下で確かに感じて、絵里は身体を震わせる。 流れ落ちる血液の量がみるみるうちに増えていく。 「…なんで」 「うぅぅ…」 「なんであなたの腕も切れてるんですか?」 「…あなたが痛みを感じない理由と、同じかな」 少女は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれは消えた。 「あなたは痛いんですか?」 「痛いよバカ」 痛いを通り越して熱さを感じていた。 目の前が揺らぐ。意識が朦朧とし、思考が鈍くなる。 でも、それだけじゃない。この子に近付いたときから『思考回路』が鈍くなっている気がする。 難しいことはわからないけど、絵里の直感がまたそう言っていた。 「あたしは痛くないんです」 「だろうね。ムカつくほど平気そうだもん」 「あたし、痛みを感じないんです。だから痛くもないし、悲しくもない。 あなたが今どんな気持ちでいるか全然わかんない」 少女は淡々と話し出す。表情ひとつ変えず、流れ落ちる血液を止めることもしない。 絵里は舌打ちしたい気分だった。土壇場の集中力には自信があったはずなのに。 それなのに今、目の前にいるこの子の気持ちが全く分からない。 死にたいの?傷つきたいの?見せ付けたいの?感じたいの? 「痛いですか?悲しいですか?…もうすぐ死んじゃいますね、あたしたち。…誰か会いたい人とかいるんですか?」 ふにゃり、と表情を崩した。笑ったように見えた。泣き出しそうにも見えた。 「あたしはいつだって痛くないし、悲しくない。だから誰の気持ちもわかんない。 …ふふふ。サイテーっちゃろ?やけん誰からも好かれん。誰からも愛されん。誰のこともわからんし、分かってくれん。 空気みたいっちゃろ?ここにおるのに、誰にも相手にされん。認められんとよ?気付いたら、そんな人間になっとった。」 あぁ。と、絵里はこの場に及んで微笑んだ。 鈍っていたはずの思考回路がゆっくりと動き出す。 助けられてばかりいる絵里が、この少女を助けてあげられるような気がした。 「ごめんなさい、巻き込んでしまって」 少女がペタリと座り込む。絵里は座っていることも出来ず、血液にまみれたコンクリートにゆっくりと身体を預けた。 空が、蒼い。 「巻き込まれた覚えないし。あなたの自殺に、巻き込まれたくもないし。 …それに言ったよね。この屋上では、死ねない、って」 あの日も、こんなに透き通るような綺麗な青空だった。 そして絵里を助けてくれた人は、状況とは不釣合いに優しい顔をしていた。 あなたがつけたその傷が、生きてる証。絵里の手首に付く傷があなたがここにいるっていう証拠。 絵里が助けてあげる。あたなを認めてあげる。 心から信頼できて、いつでも会いたくなるようなそんな人になってあげる。 それから… 優しくて涙もろくてたまに叱ってくれて甘やかせてくれて強くて元気をもらえて気がつかえて ぎゅって抱きしめてくれてお腹が痛くなるくらい笑わせてくれる、そんな人たちに出会わせてあげる。 絵里は震える指先を少女に伸ばした。 「あなたの名前は?」 「…衣梨奈、です」 「奇遇だね。絵里の名前はね、絵里っていうの」 「ふふふ…一文字違いですね」 「衣梨奈ちゃんはね、目が覚めたらきっと一番にお説教だよ」 少女の意識が途絶えた。 絵里は叫ぶ。 愛ちゃん!衣梨奈ちゃんを助けてっ… 刹那、二人は光の粒になった。
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