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『修行を始める。』 その言葉から私の新しい生活は始まった。 世界を創るには想像力、集中力が必要らしく、修行といっても最初は林檎の皮むきや小さな複雑な模様を写し取るようなことをしていた。 どちらも集中力を鍛えるのが目的らしく、想像力はどうするのかと聞いたらそれはどうしようもない、といわれた。 想像力は幼いころから養っていくものだから今から鍛えるのは難しいらしい。 それと、一年して気づいた事だけど、この空間に来てからと体の成長スピードが極端に遅い。。 身長などがここに来たときとほとんど変わっていなかった。 私は2年目にして漸く世界を創ることに成功した。 大地は・・・ソレを見届けると、 「また、会おうな。」 という言葉を残して消えた。 急激に心細さが出てきたため、すぐに世界を創り、前はそこで暮らしていた。 私が世界を創ることに成功して身体の年齢10歳年をとった。その間の出来事を、話そう。 今から話す世界は―――前の世界にはありえなかった、架空の生物が住み着く世界の、物語。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/3832.html
…………。 苦しい。どうしてこうも苦しいのか。 俺、樫山堅司は考える。 回想する。 死業式とかぬかしてやがったあのとき。 俺は問われた。 死んだ松宮先生をどうするか――と。 ただ、そのときの俺はというと。 怖かった。 んな小心者みたいな気持ちでいっぱいだった。 それもそうだろ。 たった今、目の前で、人が。それも慣れ親しんだ人が。――死んだのだから。 首を刎ねられ、無残にも、残酷にも、酷虐にも、抵抗する暇もなく、刎ねられた。 こう、なんつーかサバイバルナイフみたいなので首をスッっと。 骨も斬ったのか? と疑いたくなるぐらい綺麗に、鮮やかに、殺す。 そんな光景を俺は、眺めていた。 声を荒げるわけでもなく、気分を沈めるわけでもなく、行動に移すわけでもなく、眺める。 無心状態で、立ち尽くし、ぼんやりとしていた。 ようは絶句と言う奴。俺ははじめて「これが絶句か」なんて思ったりして。 それほどまでに、時の流れは遅く、景色の色合いが薄れ、いつしか俺以外の全てが、モノクロトーンになってるかのよう。 口をポカンとあけて――――――松宮先生の生首が、地面に落ちた時に、意識は再び覚醒した。 頭がどうにかなったのかと思った。 脂汗がたぎる異様な状況下を前にして、俺はどうにかなったのかと思った。 けれど、それすらも幻想。 坦々と、淡々とした口調で、あいつは俺に。よりにもよって、この俺に、問いたのだ。 『いま、この場で、望むものを求めよ』なんて、荒唐無稽な戯言を。 当然、俺は困惑の極みだよ。意味が分かんねーもん。 身体が地震でもあったかのように震えて、脳が木槌にでも叩かれたかのように揺れて。 訳も分からず、俺は――――先生を返してもらうことを、望んだ。 無意識。 もはや無意識の領域。無我の境地。 言うまでもなく、先生を返してほしい、そう思っていた。 あんな理不尽。許せるわけもなく、本心から思っていたことを、そのまま嘘偽りなく、言った。 けれどすぐに俺は後悔――いや、違う。そうじゃない。 なにか禁忌を犯したかのような、背徳感、罪悪感。 背筋が凍るかのような、悪徳行為。 なにせ、人が本当に生き返るとは、思うまい。 首をドッキングさせ、瞬きを数回し、一拍のタメの後、 なにかトチ狂ったかのように奇声をあげ始めた先生を見てたら、正直、嬉しいというよりも、悲しささえ覚えた。 自分が。 自分の声が、人の生死を変える。 たとえそれが――死から生という、希望の変換であったとしても、受け入れたくなかった。 恐ろしかった。 おぞましかった。 なにが一番こわいって、生き返った後、なにか狂ったかのように――いや、狂った先生の阿鼻叫喚が、鼓膜を叩いたこと。 恨まれてるかのような錯覚を覚え、 妬まれてるかのような幻覚を感じ、 犯されてるかのような感覚を悟る。 本音を言ってしまえば、あの男がもう一度殺してくれて、安堵すら――一瞬ばかりとはいえ、覚えたのだ。 俺が……。 俺が、そうさせた。生き返らせた。 無理難題をぶつけて、一休さんのように、華麗に。 さもこのぐらい朝飯前ですよ、と言わんばかりに、常識を壊す(つくる)。 ……超人的。 いや、もしかしたらあれは人でなかったのかもしれない。 人ではない、人を超越した――化物(ヒト)。 …………。 …………。 …………。 さて、と。 いま、俺は植物庭園というこの学校の唯一といっていいほどの誇るべき施設である。 そこで、俺は通路になぜか放置されていたスコップ(ちなみに大きいやつの方)を手に握る。 先っぽが、四角ではなく三角形――剣先シャベルっていうらしいそれを、手に握り、肩に乗せ、辺りを見渡す。 ――人はいない。 「……」 ……喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。 俺は――どうするべきなのか。 そこまで考えて、俺は首を振る。 だめだ、こんな考えじゃ……だめだ。 俺は――クラスメイトを、殺すんだから。 甘ったれていたら……ダメなんだ。 ○ 俺は昔から、妹がいる。最愛の――そして不治の病に罹った妹だ。 余計な説明は省く。どうせここまでいったら分かるだろう。 俺は、妹の病気を治すべく、人を殺す。クラスメイトを殺す。 いつも俺を支えてくれていた、風香、それに、卯月だって、殺すんだ。 あいつな、木幹葉枝と名乗ったあの男なら、治せる。 もはや確証を通りこして、確定。人の生死を操ることが出来て、病気を治せないなんて、あってたまるか。 苦しいよ。 見苦しいよ。 わかってるさ。 醜いよ。 汚いよ。 わかっている。 わかってるんだよ、そんなこと。 人殺し――級友殺しなんて、もっての他ってことぐらい。 背に腹を変えるレベルのことだってくらい、理解してる。 けど。 それでも、さ。 俺は。 俺は――。 「………ッ ―― ――!」 情けなくて、バカ野郎で、反吐が出る。 こんな自分に、果てしなく自責の念がこみ上げる。 良心の呵責。良心の最後の警告が俺の心を勢いよく鳴らし続ける。 けれど俺はそれすらも無視する。 警告は無視し、警報は無碍と化し、警鐘は無化とし、俺は殺す。戮する。害する。 たとえ、誰であろうとも――――っ! 「…………」 俺がそうして、俺がそうして立ち尽くしている頃。 とうとう俺の周りにも、不確定要素が立ち憚った。 タッタッと懸命と言うよりも必死に走る姿を。地面を蹴る音を。 見つけた。聴いた。 見つけてしまった。聴いてしまった。 「――――っ!!」 不格好な走り方をした、見慣れた少女。 ……中学からの親友、楓之風香の姿である。 ○ 「……風香」 「――――」 零す。言葉を零す。 遠目で、見つけたその姿で、俺は直ぐに分かった。 その姿は、紛れもなく楓之風香のものであり、肩が不自然に垂れ下がっているところをみると、骨折でもしたんだろう。 ただ、そんなことはどうでもいい。 そんなことより目に付くのは、風香が、あっちの方になっていることが、不思議だった。 中学生の時、俺は一回だけ、あの光景を目にしたことがある。 風香が親について、過度に責め立てられていた時のこと。 あいつは癇癪を起したのを、今でも鮮烈に覚えている。 ――まさしくそれだった。 つまり、今の彼女は、誰かにその琴線でも触れられたんだと思う。 てか十中八九それで間違いない。 まあ。いいや。 ――――怖い。 アッチノホウガ、ヤリヤスイ。 ――――やめろよ。 俺はヒトヲこロすんダ。 こっチのホうが、かん情イニュうでキナクて助カる。 ――――違う! そうじゃないだろ! サア、覚悟はできたか。風香。 ――――違う! やめろよ! 親友だぞ! 俺は駆けだす。 ――――いつかみたいに風香を救えばいいだろ! なにすんだよ! 風香の元に。スコップを持っていようがあの遅いあいつの足には負けない。 ――――おい……おいっ! ……おい…… ほら。 直ぐに辿りついた。 「悪いな――風香」 ほら。 シャベルを上に構えて。 「――――あ、堅司く」 ほら。 下におろす。 「うおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」 ほら。 これでお終いだ。 ――――あ? ほら。 これで、死んでった。 「……ァあ?」 ほら。 まずは一人だぜ。 ――――なにやってんの? 俺 【樫山堅司:生存中:シャベル】 【楓之風香:死亡中:もちものなし】 【5人】 Back:● 話順 Next:○
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[部分編集] http //www.nicovideo.jp/watch/sm12304147 投稿者コメント1.コメント2.コメント3.コメント この作品のタグ:PV 生徒会役員共 第41回MAD晒しの宴 レビュー欄 ギャップネタらしいけど普通にかっこいいと思った。 最後の余韻の残し方が特に好き。あれはクールだわ。 -- 名無しさん (2010-10-10 07 35 13) 名前 コメント PV 生徒会役員共 第41回MAD晒しの宴
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静かに時は過ぎた。 どれだけ経ったんだろうか。校舎に設置されている大きな時計が指していた時間は、この悪夢が始まってからどうしようもなく進んでいた。 それでも一日にも満たない時間で、もう既に二人死んでいる。 楓之風香。 樫山堅司。 ……。 二人は、隣にいる柳沼の、親友であった。 樫山が楓之を殺し。柳沼が、樫山を殺した。連鎖的に死んでいった二人。 理不尽に。不条理に。きっとわけもわからなく、二人は混沌のままに死んでいったんでしょう。 思い出す。思い返す。 やったところで、表れる景色は真っ黒、もしくは真っ赤に染まったものではあったけれど、あたしは思う。 色々あった。 この二年間、そしてこの一日。 本当にいろいろあった。この身を以て痛感する。 生きるって素晴らしい、なんて今のあたしに言う権利なんて無いけれど、それでも充実な二年間であり、その分辛き今日。 ……。 さて、と。 じゃあ、今日という日を終わらせよう。 残った四人で、とっととあのふざけたことをぬかした異常な男をぶっ飛ばす。 ――――これで、終わらそう。 ○ 「いや、もう榊田も死んじゃってるけどね」 場所はグラウンド、ど真ん中。 あたしと柳沼は、樫山をちゃんと弔った後でグラウンドに来ていた。 理由は分かりやすいためだ、校舎からも分かりやすい。 実際に銃がどれほどの機能を有しているかなんて知らないけれど、あたしらが銃を持っている以上、そんな遠距離からの攻撃だって余程は心配ないし。 さっきあんなこと口走っていて何だけれど、榊田が殺し合いに乗っちゃっていたから、最低限の保安は必要であった。 で、まあ。予定調和と言ってもいい。楔音が躍り出て、あたしらに気がついてトコトコと歩いてきたわけだけれど、 こいつが言ったのは、そんな台詞だった。――――。 「まあ、僕が責任を以て殺した訳だけど。幼馴染として当然の処置だねー。仕方がない」 「「――――ん?」」 まてまて。待って頂戴。 ゆらゆらとさながら生きてるかのようにゆられる楔音の俗に言うアホ毛を目で追いながら、考える。 ――――いや考える必要もなかった。 「――――本当に、殺したのか」 あたしの言葉を代弁するかのように、柳沼は楔音に真摯な口調で訊ねる。 対する楔音の口調は実に爽やか。あっけらかんとしたもので。 「うん、校舎内で殺したよー。だってまあこれって殺し合いだし? 殺されても文句は言えないよねー」 ――――今までの二人とは、違うタイプであり、同時に榊田が居た堪れなかった。 なんのために、あの子は駆けていたのか、本当に哀れ以外の何者でもない。 「……本気で言ってるのかよ」 柳沼は蒼白した表情で問いかける。きっとあたしの顔だって、これ以上なく真っ青だろう。青髪と重なって実に青い人間になってることが予想付く。 楔音は変わらず、「?」と言った具合に首をかしげてる。きっと榊田からの歓声があがるでしょうね、普段なら。 そしてこのあたしも、「無邪気そうだなあ」といつもは思うだけかもしれないが、今はただその笑顔が、怖かった。 「じゃないと流石に不謹慎すぎて言えないでしょー、柳沼くん」 楔音契也。 予想外の、爆弾であった。 その艶やかな黒髪が、今は怪しく見える。 まあ、とはいえれども。 「そうか、なら今からでも遅くはない、一緒にあのふざけた木幹葉枝って野郎をぶっ飛ばすぞ。異論は認めねえ、強引にでも連れだす」 柳沼が言うように、あたしらのすることは変わらない。 一緒に――――あの木幹葉枝を倒す。それだけのこと。 言うなれば、あたしらだって、既に人殺しと大差ないんだから、過程はどうあれ、こいつとは何ら変わらない。 見殺しにしたあたしだって、十分に共犯者だ。 「おー、いつも榊田が言う柳沼くん節ってやつだね。いやはや凄く格好いいねー。ただ、僕はそんな危ない橋を渡りたくはない。 あんなさ、化物じみた相手をするぐらいなら、よっぽどきみたちを殺した方が手間が省けるしー。うん、そういうわけで僕はきみたちを殺します」 楔音の言葉を聞いて、背筋がゾクッっと震える。冷や汗や脂汗が、途方もないぐらい溢れ出る。 幾重にも交差し錯綜する思考の裏に「あ、こいつ本気だ」という確固たる意識、直感が冴えた。 「……楔音、お願いだから、やめましょう? こんなの」 「えーやだよー」 あたしも試みるか、返ってくる反応には全くの手応えがない。 馬に念仏。柳に風。 正しく今のあたしらと楔音を体現してるといっても過言じゃない。 徐々に一歩、一歩と鉄パイプ片手に近づいてくる。 鬼神と言うにはあまりに緊張感なく、聖人と言うには、あまりに安心感がない。 目算あと十歩。鉄パイプの範囲に届くためには、あと八歩。 あたしはたじろいで一歩引いてしまう。 柳沼とて、依然としてそのスタンスは変えようとはしないけれど、樫山から引き継いだシャベルを構える。 拳銃は……使わない。あれは、一撃必殺だから。使ったら、説得の意味がなくなってしまう。 「……おまえ、本気でおれに勝てるとでも?」 「あははー。柳沼くんそれ架空の物語であったらただの悪役、三流悪役の死亡フラグだよ。言動には気を付けたほうがいい。――もしかしたら神様は見てるかもしれないぜ」 「はん、言うじゃねえの。――――ただ、悪いが今は正義の味方気分に浸りたくてね、おまえだけでもこっちへ引き連れてやる」 そして、楔音は鉄パイプの届く範囲に――――踏み入った。 同時に聞こえる、風を切り裂く音、そして目撃する、柳沼に鉄パイプが襲いかかる光景を。 あたしは「ひぃ」と情けない悲鳴をあげて、二、三歩後ろに下がり、思わずお尻から転んでしまった。 「や、柳沼!」と、心配と不安とまああたしの転んだ際に生じた混乱で声を荒げるが、 「はいはい、大丈夫だから」と、返ってきた言葉は冷静だった。 疲弊を含む声。下がった視線を上に持ってくると、鉄パイプは、シャベルの柄の部分でしっかりと止められている。 安堵するとともに、まだ相応の危険が待機していることに、気付く。 鉄パイプを上から振りかざしたんであろうポーズのまま固まる楔音、 対し、両手で柄を持ち、シャベルで鉄パイプを受け止めている柳沼。 (「手がしびれた」なんて言葉は聞かなかったことにしよう) 硬直。 あたしも、腰が抜けたまま力が入らない。 ……なんで、こう言うノリになるのかしら。 あれ? 全員で主催を倒しましょー、じゃなんでいけないの? それが正しいんじゃないの? なんで今こうやって楔音はあたしらを攻撃するの? 『――――。…………。』 答えは返ってくるわけがない。向こうでは、未だ柳沼が説得を試みようとしている模様だが、生憎あたしの耳には届かない。 第一、楔音自体には、明確な意志が見えないのだから、答えなんてないのかもしれない。 楓之は、わからないけれど。 樫山は、妹の為に動いていた。 榊田は、楔音のために動いていた。 この辺は明確すぎるぐらいによくわかる。 なら、楔音はなんなのか――――わからなかった。 なんて。 ぼんやりと考えていたら、止まっていた時が動いた。あっさりと。 「――――は?」 柳沼は、とぼけた声を挙げる。あたしも遅れて、「あ」とハッとした感じに漏らす。 楔音は、鉄パイプを手放した。鉄パイプは勿論重力に従い、そのまま下へと落ちていくが、見向きもせずに、 あいつは柳沼の懐まで一瞬で入り込み、腹に、きっと勢いが付いているであろう蹴りを食らわした。 軽い万歳状態であった彼の腹に蹴りを入れるのは、実に容易であったということ――なのか。 柳沼から零れた声は、明らかに苦しげなもの。 咳き込む柳沼に楔音は容赦の欠片もなく両手で握り合せた大きな拳で脳天へと追撃を食らわす。 直後、ドサッ、といった具合に大きな音がした。……みると、柳沼がうつぶせで倒れていた。 ――――え? なんで? 楔音にそんな格闘が強いなんて裏設定は隠されてないわよ。 ……いや、違う。 「や、柳沼ぁっ!!」 さっきよりも大きな呼び声で、叫ぶ。 そうじゃなかった。 ――――今の柳沼は、確実に手加減をしていた。楔音をちゃんと前に向かせるために傷つけないようにしていた。 そして、その手加減は認識が甘かった。 ……たしかに柳沼は運動神経がこのクラスの誰よりもいいけれど、だからといって喧嘩慣れをしているとは限らないじゃない。 こんなルールもへったくれもない無法な戦闘に置いては、単純な運動神経は通用しないことも多い――――。 最近読み始めている少年漫画などでも、よくあることでもあった。「影の番町」的な存在が活躍できるのも、その為。 柳沼からの返事はない。 軽い脳震盪だろうか。まさかあれぐらいでは死なないとは思うけれど。 そんな最中。目線を移す。楔音だ。楔音契也だ。あいつは今、なにし――――ああ、シャベルを握っていた。 …………。 ん? あれれ。おかしいな。 急激にあたしの脳内サイレンが逞しく鳴り続けているんけれど。 あたしの心中を無視して、楔音は続ける。 容赦情けなく、言葉を繋いだ。――――最悪の言葉を。 「じゃあ、まずは柳沼くん、悪いけれど眠っていて、もらえるかな」 振り上げる。 振り下げる。 終わった。 「――――え」 漏れる。声が漏れる。 視界を染める煌く鮮血。 鼻をくすぐるは鉄の臭い。 肌に伝わる返り血は、実に熱く気持ち悪い。 「――――え?」 漏れる。声が漏れる。 溢れる血を前にして呆然と、座り込む。 頭から、血が流れる。 よくわからないけれど、きっと近い内死ぬだろうな、と思わせる量の血液。 「――――え」 ……うそ? 死んだ? そんな単純な感想しか湧いてこない。 もっと溢れ出てもいいだろうとは思うけれど、こんな僅かな気持ちしか出てこない。 …………。 悲鳴の一つも出てこないあたし。 呑気に座り込んでいるあたし。 刻々と迫る死の瞬間に、走馬灯すら湧いて出ない、あたし。 実に間抜けなバッドエンドだ、デッドエンドだ。 くだらないぐらい黒に染まった現実。目の前の楔音に視線を向けたまま、固まる。 それでも、耳には砂を躙る音が木霊する。 じゃり、じゃり、じゃり、じゃり。数えること計四回。計四歩。 傍観者ぶって、冷静――――ではなく、他人事のように、眺める。 「じゃ、次は榎本さん、だね? そういや濃硫酸、理科室にあったんだけど御望みならそっちでもいいんだけど?」 おぞましいことを言う。 常軌を逸した言葉を聞いて、あたしの腰はますます腑抜ける。 選択の余地のない選択を迫られ、あたしはどうすることもできなかった。 つん、と鼻につく異臭の臭いは、樫山のものと大差なく、それでも決して慣れるものでもない。 吐き気がこみ上げてくる。 楔音は、シャベルの状態を確かめつつ、あたしに声を――――もしかしたら独り言を続ける。そして独り言は自然と終える。 「結局鉄パイプ片手に持ってくるのは面倒だったから持ってこなかったんだけどねー。……ま、面倒だから、これでいっか」 と。 そこで、あたしと楔音の目が合った。必然的なアイコンタクト。助けの懇願はやはり無下にされて、 こいつは、フッと小さなため息にも似た笑みを浮かべ、一言。 「んじゃ、バイバイ。榎本さん」 ――――。 ああ、うん。 さようなら? さようなら。 碌に覚悟もなにも満たさず。 弱いままにあたしは終わる。 ああ、うん。 そう。 そうですか。 諦め――――あるいはただの強がり、あるいはあくまで現実逃避。 ある意味では一色に澄みきった綺麗なようで根本では淀んでいる気持ちで、あたしは静かに死期を待つ。 まあ。 ぶっちゃけ、何にも考えちゃいなかったけれど。 頭の回路なんて、ショートどころか爆発した。さながら昔のマンガでよくある研究が失敗した時に起こる爆発。ポンッ! といった感じかな。 なんて。なんて、どうでもいいくだらないことを思っていた頃。急展開。超展開。 ――――乾いた銃声が、パンッ! と鳴った。 ○ 即死。 背中から血飛沫をあげる楔音は、「……あ、はは」と笑みかなにかを浮かべたまま、一人の男の姿をしっかりとその瞳に捉えて、あたしの身体に向かって、倒れこんできた。 幾ら先ほどまで、恐怖していた相手とはいえ、クラスメイト。それを避けるなんて真似なんて、できなかった。 実にご都合的、その場限りな思考回路である。爆発しておかしくなったのかしら、と場違いなことを思う。 いや、場違いなことでも違う何かを考えたかった。 ……楔音を抱きかかえたまま、前を見る。そこには、一人の男――――柳沼卯月が、臥せている。 先ほど確認したものとは、微妙に光景が変わっていたが、正確に表記すると、身体や顔を若干こちらに向け、手には拳銃を握っていたが、それでもそこには柳沼しかいなかった。 ……。 なにが起こったかなんて、説明なんぞしなくともわかる。 目を覚ました柳沼が、楔音を殺したことなんて、一目瞭然。 ……。 本来は、喜ぶべきなのでしょう。 本当は、安堵するべきなのでしょう。 けれど、できない。 この孤独感。 この寂寥感。 倖せなんか、感じる隙すらない。 ……。 ……。 ……。 時が止まる。 これ以上ないぐらいに、時は止まった。 停止。 何も聞こえない。 何も感じない。 何も視えない。 何も臭わない。 何も味わえない。 何も何も何にも。 混乱の極みに達した混濁の意識。昏睡する自我。 ぐるぐると回る。 ただただ、受け入れきれない意味難解な現実を前に。 拒否する。拒絶する。拒んで、否んで、絶する。 ……? あれ、どうしてこうなった? ……なるほど、わからん。 わからない。どうしてあたしは生きてるの? どうしてみんなは死んでるの? 実感がない。故に怖い。 今でも声が快活な声が聞こえて来そうで――。 「――――は、はは」 ――――聞こえた。柳沼の擦れた声が。 瀕死と言うしかないぐらいに、ピンチな彼を救う手立てなんてあたしにはない。 どこぞの青狸ではないのだ。無免許の天才外科医でもない。――――どこまでも弱すぎて、普通すぎたあたしには、どうしようもない。 ――――ただ。 「柳沼っ!」 楔音を一旦置いて、声を荒げながら柳沼の元へ駆けつける。 やはり、それとこれとは事情が違う。幾ら助けるのは無理でも、余計自分を傷つける自傷行為だと悟っていても、しないわけにはいけなかった。 柳沼の手を握る。冷たい。若干固い。それが男ゆえの隆々しさなのか、瀕死故のものなのか。 わからない、けれどあたしは手を握って、こいつの隣に座る。 ……実に漫画らしい、ラノベらしい展開。まだ生きているかなんて、思いもしなかった。ご都合主義も、甚だしい。 とはいえ、理解はしてる。どうせ近い内に、そのご都合だってあたしらを見捨てていくのは。柳沼の頭上から流れ出る、髪よりは淀んだ赤色の血を見れば、それは、痛感。 文字通り痛いぐらいに、痛く感じることが出来る。 柳沼の顔を窺う。 ……真っ青だ。真っ白だ。紫だ。どんな表現が似つかわしいか、わからない。 彼の唇が、動く。 「……しくっ…たな。ま、あ、あれだ。あとは頼ん、だ」 よく、映画のワンシーンなどでは、「もう喋らないで! お願いだから!」みたいな感じに言ってるが。 正直、話してほしかった。もっと、もっとたくさん、話してほしかったから。『命の芽』を摘まれないように。 柳沼は、うつぶせから、きっと今持てるであろう最大渾身の力を使い、うつ伏せから仰向けへと姿勢変形。 そして制服の内ポケットをガサガサと弄り、一つの紙きれを取り出した。 「――――遺書?」 受け取る。けれどそれはあたしのものではない。あたしはこんな三つ折の表面に無駄に綺麗な字で「遺言」となんて書いてない。 ……? 「……本……と、う、はわた、す気なん……て、なかっ……たんだ、けよ」 と、 そこであたしは直感を働かしてた。 ああ、こいつももう、お終いだ。きっともう終わる。 ……理解出来るのは容易かった。 どこかで、ゴクリと息を飲む音がした。 あたしか、こいつか。わからない。 それでも、こいつの口は最期の言葉を紡いでいく。 「おれはお前を守って死ぬ。だからお前に託す。ずっとその責任を胸に刻み込んでおけよ」 瀕死のものとは思えないほどはきはきと。 ……多分これは、こいつの意地が、そうさせているんだろう。 だからあたしは、恐らくいつも通りに、返す。言葉を返す。 「……本当、自分勝手ね」 「身勝手はおれの座右の銘だ」 「はいはい……」 「ああ」 そこで、持っていたこいつの力が抜ける。 急速に、急激に。 ……死んだのだ。柳沼も。柳沼卯月も。 だからこれで、あたしは独りきり。苛む孤独は、実に害悪。 ドクン、ドクン、と。 脈打つ心拍は、それでもあたしを生かしていることを明かしてくれる。 握った「遺書」を、ぐちゃ、と握りつぶす。 ……そうして、こうして、あたしのバトルロワイアルは終わっていく。 立った独りを残して、終わろうとしている。 認めれる訳がなかった。 それでも、現実はこうして進む。――――進んでしまう。 その証がここに一つ。 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン。 今まで碌に機能していなかった学校の機能が、役目を果たすかのように、チャイムを鳴らす。 次の瞬間、鼓膜をつんざいたのは、 「えー、はい。3年A組の榎本夏美さん。呼び出しです。急がなくても構いませんが体育館までお願いします」 放送。 まさしく呼び出し。 ……時は――――進む。 【柳沼卯月:死亡中】 【楔音契也:死亡中】 【榎本夏美:優勝】 【――1人】 【ゲームエンド】 Back:● 話順 Next:○
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その瞬間は、やはり唐突に訪れた。 樫山だったそれから放たれる異臭なんか気にせずに、あたしらは未だそこにいた。 どれだけたったのか。どれだけの時間が流れたのか。 あたしの人生に置いて、一番、時の流れが遅かった気がするわ。 授業の時間よりも、親の説教の時間よりも、なによりも。 不快感の塊である時間を止めたのは、他ならぬ柳沼だった。 声を掛けられた。弱々しい、漲らない、衰弱した声。枯れ切った声を。 「なあ」 一瞬本当に柳沼の声かすら疑った。が、やはり柳沼以外に考えられず。 あたしは柳沼の方を見る。そこには相変わらず膝こそ付いてるが、天を仰いでいる柳沼の姿があった。 なにを見てるのだろうか、あたしもつられて天を仰ぐ。――――特別何もなかったが、あたしはそのまま天を仰ぎ続けた。 あたしの方なんか見ていない柳沼はさして態度も変えず、あたしに語りかける。 「……樫山はな」 「……っ」 不意に出てきた、一つの単語。 ――樫山。 思わずあたしは視点を天から柳沼に戻してしまう。そして、息を飲んだ。 わかっているはずなのに。このタイミングで、樫山以外の話題はないことぐらいわかるのに。 「……」 「……」 流れる静寂。 居心地が悪い。流石に空気を察したのか、柳沼はこちらをちろりと見る。 そして視点をまたしても天に戻すと、同じ言葉を呟いた。あたしももう一度視点を天へ戻す。 「樫山はな、妹がいたんだよ。彩土っていう、可愛らしい妹がよ」 「……」 「まあ、ぶっちゃっけると、遺書にそれは書いてあったんだけどよ。『どうかおまえが優勝したら、彩土を守ってやれ』ってよ。けどまあ、 さっき思わず言っちまったし、ここで言っとくよ、さっきの遺書は捨てちまっていいぜ。――――どうせおれも死ぬに死ねねえよ」 「……」 シリアスなところ悪いわね。 それは既にどっかいってるわ。残念ながら。 「でな、おれが思うに樫山が……楓之を殺したのはその妹のためだったんだと思う」 「……不治の病……だったっけ」 「そう、不治の病。さすがにおれは病名までとかは知らねえけど、まあ一回会ったことあるし、そうなんだよ。これはこのクラスではおれしか知らねえことだ。 で、ここで問題なのは、不治って部分だよ。――――不治ってのは「治らず」って書いて不治だ。 つまりは治る見込みはなかったんだよ、妹さんは。少なからず現代医学に置いては」 「……ああ、そういうこと」 「そういうこった。――――願い。あの男がほざいてやがった願いの使用権。 そりゃあ、みんなが倖せになるならば、おれも場合によっては、殺し合いに乗ってたかもしれねえよ。 実際、『人を生き返らせるほどの能力』があるんだから。……そして、それをある意味で一番実感できたのも、樫山かもしれねえな」 「あいつが、松宮を蘇生させたんだっけ……ね。そういや」 「だな。で話戻して。しかしその『能力』には一つ制約があったな、覚えてるか? 榎本」 「うーん……」 しかし。 違和感すら覚える。柳沼は、先ほどからやけに冷静に、冷血に。 理路整然と、あたしに……樫山の過去を曝け出す。……なにか、違和感。 とてつもなく大事なことを見落としている、そんな感覚。この状況は、あっていいのかな。 思考の裏でそんな事を思いながら、 ようやくのことで、その制約とやらっぽいのを、脳内ヒットさせる。 「……あー、人間が対象である場合、それは自分のことを含めて、『一人』に限る。そして願い事自体は『一回』しか叶えることが出来ない」 あの男が、死業式なる開会式で、言ってたことだ。 なにかと強調させて、その言葉を連ねていた。願い。――そして制約。 「うん、その通りだよ。……たとえばこの『一人』に限る。がなければ、おれはきっと殺戮の道にでも走って、あとで全員を生還させる、とかそんなことやったかもしれんな。 たとえば『一回』に限る。がなければ、おれはきっと優勝して、一回一回一人づつ懇切丁寧に生き返らせてやることだってできるし、億万長者になることだってできる。 だが、制約はやっぱり揺るがないものだぜ。『一人』までで、『一回』まで。……生き返らせるのだって、一人までだ。 そしてもちろん、不治の病に対する治療に使うにしても、『一人』であり『一回』。願いの価値は対等なんだよ。――――妹でも、クラスメイトでも、天秤の上ではおなじ重さだ」 「……」 しかし何だろう。 違和感が止まらない、違和感の列車は暴走している。 ……わかんない。あたしは、苦笑する。わけもわからなく。きっと理由なんてこれっぽっちもないけれど。 「別にあいつがシスコンというわけではないんだろうけど、それほどまでに、人生を投げ捨てれるほど妹のことが大切なんだ。 少なくても、夢を捨てれるほどには、大事だったってことをおれは知っている。あいつは元々医者志願者ではなかったしな」 「……」 ……ここに来てからなにかと衝撃的なことばかり聞いている。 仕方のないことで、一括してもいいのかしら……。普段からこうも皆は、秘密を抱いている。 それは当然のことで、あたしだって一つ二つもっているけれど。……相談ぐらい、してくれたっていいのに。 まあ、それが出来ないからこその『秘密』なんでしょうね。……なんだか悲しい。 「まあ、あいつがそれだけでクラスメイトを殺せるような人間じゃなかったのかもしれない……そう思いたいがな、 強いて理由づけをするんだったら、先生の命を、自らの行動によって、どうこうさせたという、『高揚』ではないと思うが、『恐怖』が苛んだんだろう。 そりゃまあ自分の一言で、人の生死を左右させたら混乱ぐらいするだろうよ。……おれ……おれたちの心は、そこまで図太くない」 「……そうね」 と。 ここにきて、感傷に浸っていた内に、ようやく違和感が分かった。 テトリスでいう縦一列だけ残していたところに、まっすぐな棒を入れたみたいなそんな感覚が身体を巡る。 ようはこいつ、柳沼卯月はらしからぬほど、他人のことについて話していることだ。 いや、他人のことについて、考えているという時点で、柳沼卯月という人間は、できていない。 自他称「自己中心野郎」にとって、他人とは何時だって、二の次だったはずなのに。 ……つまりは、そういうことなのかもしれない。 彼は彼なりに。なにかを感じているのかもしれない。 樫山堅司という人間を殺したことについて。 親友殺しという大罪を曲がりなりにも背負ってしまったこと。 ……。うん。 それは理解出来たわ、榎本夏美。 で? どうしたいの? 榎本夏美としては。あたし個人の問題としては。 そりゃあ、こいつには前向きにいてほしいわよ。それは確か。 けれど。 心のどこかで、これはあたしの口出しすべき問題ではない、と、思っているあたしもいる。 結局あたしはどこまでも弱くて、一人の力では、前に進めない。 人を支えることなんて、いつもやっていたことなのに。肝心な時にこうにも狼狽ばかり。 「ま、結局は。その大罪に挫けやがったらしいがな。情けねえったらねえ……あぁあ」 「……」 見るに堪えなかった。 涙ぐむ、その声を聞いて何も思わないわけにはいかなかった。ため息すらも、暗く。 ……あたしは自然と、声を漏らしていた。 「ねえ」 「んだよ」 「……なんで、あんたは樫山を殺したのよ」 「……死にてえ言ったからだろ」 ……そりゃそうだ。普通ならば、いや、ある一定条件を付けると確かにそれで通じたのかもしれない。 けれどこの男は、その条件に当てはまらない。その答えでは、あまりに納得のいくものじゃないわよ、そりゃ。 「……でも、あそこからいつものあんたならどうにかもちなおそうとしたじゃんじゃない? あそこで「はいそうですか」って言う柄じゃないでしょうが」 あたしはあたしが分からない。 故にあたしは他人を語る資格もないし、そもそも全貌なんか全く知らない。 ……たとえば、樫山の妹さんのことをあたしが知らなかったように。 この柳沼という男にだって、それは言えることだった。……この二年間が無駄だったわけじゃないけれど、説得や叱責をぶつけれるほど、知っていないのかもしれない。 ……それ、でも。 「そうかもしれない。そうだったかもしれない。けれどおれは……それに対しては、後悔はしてない。――――自分勝手に、あいつを殺した」 「あんたは、そんな嘘を吐いて、辛くないの?」 「嘘じゃ……」 「せめて嘘は、はっきりと胸を張って言いなさいよ。……見てるこっちが、辛いんだから」 「……バレバレだな。わかるよな、そりゃ。――――悪い」 涙を拭おうともせず、呆然と尽くす姿は、見ていて痛々しい。 あまりにその姿は、柳沼卯月という人物からかけ離れていて、より一層、気持ちが悪い。 自己中心的の自分勝手。 そんな姿しか知らないあたしにとって、こいつが後悔しているという姿は、見たくない。それこそ自分勝手な意見ではあるけれど、見たくはない。 ――――むしろ、守ってあげたくなるような、庇護欲にくすぐられる。 守ってあげなきゃいけない。そんな錯覚に、陥る。 実際は、あたしにそこまで強い人間じゃないのに。むしろ守ってもらわなくっちゃ、すぐに崩れてしまいそうな人間なのに。 あたしに、そこまでの力なんて、全然ないのに。どうしてこうも――――。 いや、違う。そう言う考えじゃ、なかったのかも。 あたしには――――守られる姫君は向いていなかった。 あたしには――――駆けてく騎士が、向いていた。もしかしたら、そういうことなのかも、しれない。 誰かの後ろでなく、誰かの前を。 ……とはいいつつも、あたしはそんな格好いいものになれる資格なんて、どこにもない。 今まで散々迷って、あたふたして、乱れまくったあたしには、そんな権利はない。 柳沼は、口を開く。 「……まあ、後悔してないってのは、嘘じゃねえよ。おれは後悔なんて絶対しない。 けど、それでも、やっぱ辛えな。……まったく、あいつは無責任なんだよ。残った奴のことも考えろってんだ」 「あたしはそのままあんたにその言葉を押し付けてあげるわ」 「はっ、違いねえ」 嘲る。彼は乾いた声で、ただ嘲る。 それだけの簡単な行為の癖して、悲愴感は徒ならない。ままならない。 「おれは今こうして途方に暮れている。自分でも自分らしくないとは思うけど、こうやってる。―――やっぱ救われねえよな、こんだけじゃ」 「……」 「改めて言うけどよ、おれとあいつは仲が良かった。多分家族を除くと一番仲良くできたのって、あいつじゃねえかなって思えるぐらいには」 「なら」 ならなんで殺した?、と返そうかと思ったけれど、それは幾らか不謹慎である。 あいつの気持ちを、あまりにも察していない、不躾な言葉であることに気付いた。 ……なんて心の中で思ったけれど、始めた言葉は、終わらなかった。 「なら、なんでよ。なんで、殺したのよ」 「あいつが望んだから――――なんていうとおれらしくもねえか。ああ、言う。 おれが怖かったからだ。見たくなかったからだ。あんな震えて、死を懇願するあいつを見るのが、この上なく辛かったから。 だからおれは――――説得するまで隙もなく、自分をへし折った。逃げた。自分の便利な性格を利用して、逃げた」 今にも再び泣きだしそうなその詰まった声はあたしの耳に、確かに届いた。 どうしようもならない、叫びだった。心だった。 きっとあたしが思っている以上に、あいつの心は今、荒んでいるでしょうね。わからない――――だけど、伝わる。 「普段のおれなら、きっと迷わず説得でもしてたさ。そう思う。思うんだけどよ。 今のおれにはそれができねえ。ただそれだけだ。 なんつーんかな、きっと疲れてたんだよ、俺も。ここに来て、榊田みたいな乗ってる奴とあって。――――拳銃なんつー物騒なもんもって。 おれは弱かった。おれはダメだった。肝心な時に、おれは本ッッ当に弱虫だ。救えねえよ、マジで。周りもおれも」 結局は強がりで。強がる相手がいなくなった途端に、その鍍金は散っていった。 言葉に表すときっとそれだけの簡単な話でしかなくて、こんな苦悩なんて、思い過ごしの一言で片付くのかもしれない。 けれどそれじゃダメ。 この苦悩を噛みしめて生きてもらわなくちゃ、いけない。 樫山の為にも、楓之の為にも。それは、それだけは甘んじちゃいけない。 苦しんで、苦しんで、初めてその先を見つめてほしい。 それはあたしにはできないことだけど。あたしはあまりに弱くてできないけれど。 ――――こいつは、強いんだから。 だからそろそろ、恩返し。 初めに助けてもらった義理は、ここで返さしてもらいましょう。 「でも、あたしは救われた。それは確かよ。助かった。助けられた。 ……誇れる、ものよ。いえ、ここでは敢えて命令にさせてもらうわ――――誇りなさい。 あたしを救った、あんたを、あんた自身を、誇りなさい。そうでないと、あたしも、樫山も、何よりあんたも救われない。それはごめんよ」 あたしは言う。 正しく呆然といった顔色を、こちらに窺わせ、つまり視点を天からあたしに向けて、耳を傾けている。 「なにが正しくて、何が間違っている……なんてのはどうでもいいわ。あたしにはわからないもの。あんたが正しいと言えない代わりに、 あんたが間違ってる、なんて言うことはない。何の足しにもならない。あんたが幾ら弱かろうと、構わない。あたしだって弱いんだし、そんなの関係ないもの。 どう足掻いても、樫山は死んだし、殺したのはあんた。……けど、そこで挫けるのだけは、よくない。負けるのも仕方がないと思う。あたしにはその重荷がわからない。 だけど――――あたしだって、あんたを救える。助けられる。例え弱かろうと。意志薄弱であろうとも、あんたを救いたいという気持ちはここにある」 親指で自分の胸を指しながら。後からしてみると恥ずかしい様な台詞を。 さながら小学生がお遊戯会で見せるような一生懸命さで、実際一生懸命に、胸を張って、言い張った。 目を真ん丸として、口を格好悪く、ポカーンと開けている姿は、普段の勉強以外完璧人間のこいつを知ってると実に滑稽に見える。 「あんたは強いよ。羨ましいぐらいに。自分が殺したという過ちに、友達の死に、嘆くことが出来るなんて、十分強いじゃない。 あたしなんて、『ああ、仕方のないことだな』なんて僅かに思っちゃったのに。あんたはそうならなかった。あたしにとっては、憎いぐらい、凄いと思う」 「でもおれは……」 「あんたがどう思おうとも、これはあたしの意見。そこにまで言われる筋合いはないわ。 なにもあたしはあんたに立ち直らそうとしてるわけじゃない。思ったことを言っただけ。あんたがどう捉えようとも勝手だわ。 だからこそ、あたしはあんたに提案する。――――とっとと、みんなと合流して、あたしと一緒に、頑張りましょう。あのふざけた野郎をぶっ倒しましょう」 簡単なことである。 ――――こいつが一番最初に言ったことだから。 申し訳ないぐらいに、簡単で単純なこと。 故に、心に響く。素朴なために、反響するものだって――――ある。 目が合う。 あたしと、柳沼の瞳が。 ぶれない。逸らさない。見つめる。 あの瞳の奥に、何があるかなんてあたしは知らない。 鏡の中のあたしを見たところで、それがわからない様に。あいつの瞳の裏に何が孕んであるのかなんて知らない。 けれど。 「――――ね?」 「……。……っくく」 そんなことなんて。 「あーダメだダメだ。ダメダメだ。おまえなんかに言われてるようじゃおれもまだまだあめぇ。おまえがそんなに気高いのにおれがこんなんじゃまだまだだ、な。 いいよわかった。乗ってやる。おれはそれが正しいと思う。あん野郎はぶっ飛ばすに限る。――――樫山――――いや、おれの為にもな」 何かが吹っ切れたかのように、捲くし立てる。 煙らずに、晴れやかな態度で、宣誓する。 ――――久々に、実に久しく、こいつらしい姿の片鱗を、拝見出来た気がする。 立ち上がる。振り返る。あたしに向く。話す。 「――――まったく、おまえじゃなかったら惚れてしまいそうだったよ」 「そうね、あたしもあんたが相手じゃなかったら惚れてしまいそうよ」 「うっせえ、蹴飛ばすぞ」 「だったら先に蹴飛ばしてやるわ」 皮肉、あるいは不毛なやり取り。 いつも通り――――というほどいつも通りじゃないやり取り。 樫山の死体が傍らにあるという時点で、それはやはり逸脱したやり取り。 あたしたちの倫理は既に崩れてる。 そう、誰ともなしに、現実は語っているのかもしれない。 それでもあたしらは、抗う、立ち向かう。既にあたしらが壊れていたとしても、それは挫ける理由にはならないから。 壊れ者だからこそ、たとえばオズの魔法使いのキャラクターの如く、進んでいかなければならないのだろう。 「……なあ、ちょっとだけ。ちょっとだけ。もう少しだけ後悔していいか」 「ええ、しっかり弔ってあげないさい」 「ちょっと、榎本、身体借りるぞ」 つかつかと歩いてきて、あたしの有無も聞かず、抱きしめられた。 ただでさえ、水に濡れて肌寒く、気持ち悪い感じに、生温かい感触が伝わってくる。 ――――ただ、それは嫌な感触ではない。静かに、遅れてあたしは答えを返す。 「はいはい、こんな水浸しで貧相な胸でよろしければ」 「……まだ根に持ってたのか…………ハ、ハハッ」 ふと笑いが零れ、あたしも綻び始めたころ、誰かの嗚咽が漏れる。 誰のものかなんて、わかりきったもの。膝を再び付けた柳沼を、胸に抱きとめて、頭を静かに撫でながら。 「……っ っっず」 釣られて、あたしも嗚咽が漏れる。 氾濫した心のダムが、とうとう決壊して、激流を起こす。 一度泣きだしたら止まらない。 この弱い心には受け止めきれない。 流す涙は、幾億万。 この涙の正体は何なのか。 樫山に対する贖罪なのか。現実に対する悲嘆なのか。あたしに対する不甲斐なさか。 理解できない。されど涙は止まる兆しを見せない。 抱き合って、涙を流す高校生二人。 傍から見たら異様の一言。わかっていても止まらない。 今はただ、人肌が恋しかった。泣く、泣き続ける。 まだ、休息の時間。休息が必要な時間だから。 どうかいるのかさえ分からない神様――――せめてもう少しだけ、こうさせてください。 今だけは、必要だから――――。 【柳沼卯月:生存中:手紙、グロック17、シャベル】 【榎本夏美:生存中:水浸しの衣服】 【3人】 Back:● 話順 Next:○
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日が射し込む廊下を歩く。 運動靴で、歩く。 静かに、辺りを警戒しながら、そうやって、ぼくは一つの場所を目指していた。 ……。 ……。着いたわね。 扉に手をかける。 自然と、手に力が入り、身体が固まる。 ……いけないわ。これでは、ぼくはまだいけない。 目的のためには、負けるわけには――いかないっ! 意を決めると、ぼくは乱暴に扉を開けた。 家庭科室。 誰も――いない。 よかった。――いや、よくなかったわね。 まあ。 そこまで考えて、不自然な歩調で、一つの場所まで歩いて、止まり、しゃがむ。 六台あるの薄汚れた白の机の一つの下の扉をあける。 中には、ボウルやら調理器具があるわね。けれどボウルとかは今回いらないもの。 ぼくが興味あるのは、こっち。 「……包丁、ね」 言葉に出して、確認。 扉の裏側に在った、一丁の包丁。まめな家庭科教師だから、割と(今時じゃないけど)砥石で研がれている。 ……明らかに殺傷目的につくられたものじゃないけど、人を殺すことは、きっとできるんでしょう。そう信じるわ。 そう、人を、殺す。 誰が――ぼくが。ぼくが、クラスメイトを、殺す。 害意を放って、敵意を孕んで、殺意を抱いて、残酷なまでに、冷酷なほどに、殺す。殺す。殺す。 一人の男の為に。 いや、それではいけないわ。これは独りよがりの、行為なんだから。 勝手に生きてほしいと願って、身勝手な理由で他人を殺すのは、誰に頼まれた訳でもなく、ぼくだから。 ――ぼく、こと榊田神菜は考える。 この一件のこと。《バトルロワイアル》。 始まりはなんだったかしら。そう、一通のメールが、始まりだった。 確か土曜日に学校側から、 『タイトル:明日のこと「明日、3年A組全員8時30分体育館集合」』 こんな風にメールが来たんだっけ。今は没収されてるから確認はできないんだけどね。 だから、来た。 なんの不安とか、なんの遠慮とか、なんの予感もなく、のこのこと自ら、敵の住む籠に入りこんだってことね。情けない。 まあ。 そうはいったところで、回避の仕様もなかったんだから、ぼくには非はないんだけどね。 さて、そんな件で始まったこの《バトルロワイアル》。 ぼくは、泣くに泣けない状況下にある。もう今のぼくは、本来であれば泣いて崩れたいところではあるけれど。 それは――守るものとしては、不適格。 楔音契也。 一人の男の子の名前。ここのクラスメイトの、名前。つまるところ――――参加者。 楔音契也。 幼馴染と言うと、一番聞こえはいいんだろう。萌え属性ね。 そう、楔音契也。 ぼくは彼のなにげない動作だって。ありふれた科白だって。 大好きで、大好きで、飲み込まれたいぐらい、愛している……といっても過言ではなく真実なわけよ。 わかる? この気持ち――わかる? 近づくだけで、胸が締め付けられる、この感覚。 幼稚で、拙い、そんな言葉でも十分と伝わる、この感情。 契也に対する想いを形容するなら、どんな言葉がいいんだろうか。 恋? 愛? ……多分、そのどちらかに部類するであろう。 ぼくのこの感情は、いつでも、そしていつまでも、ぼくの心を蝕んで、浸食して、 ぼくの想いを、満たしてくれる。生きがい、というものをひしひしと感じることだって、できるのよ。 彼に愛されたい。 彼に尽くしたい。 その一心で。 ――――その一心だったのに。 包丁を、強く握りしめる。 もう柄の部分にひびが入るんじゃないかってぐらい強く、強く。 実際は握力がさしてないため、ひびが入ることはなかったけれど、私……いや、ぼくの心は確かに包丁に込められた。 立ち上がる。周りに人はまだいない。 ふと、窓の外を見れば、快晴の青空。うざったいぐらい、空気読めよって突っ込めるぐらい、綺麗で、澄んだ青空。 とても、人殺しなんて、非人道的、非道徳的な、殺し合いなんて、非日常的な行いが行われているだなんて、思えないでしょうね。 「……ふ」 自嘲的な、笑みが零れる。 なにも面白くないのに、彼だって死ぬかもしれないのに。 楔音、契也。 ぼくの、愛しの人。愛している人。 死ぬ。 ありえない。 そんなことは、させない。 だから、ぼくは動くのよ。 殺人鬼として、級友殺しとして。 たとえ宇宙上の誰からにも摘み出されようと。 たとえ世界中の誰からにも忌み嫌われようと。 たとえ形而下の誰からにも呪い殺されようと。 ぼくは、人を。 大切な、クラスメイトを、殺すんだ。 ――――怖くない? 怖いに決まってるでしょ。 でも。 でも、だよ。 ぼくは、彼を失う方が、怖いから。 だから、ぼくは、阿修羅に成りきらないといけない。 自己満足の、自己責任の、上で。 義務でも、責任でもなく、決意の上で。 嫌われるなんてことは百も承知よ。 好かれる行為だなんて思わない。ヒーローなんて言語道断。 だから。もう、いい。 好感度とか、どうでもいい。 最悪のアンチヒーローで構わないもの。 嫌われ者でも、憎まれ者でも。 誰からも疎外され、誰からも非難され。 どうしようもなくなっても、どうにでもなくなってしまっても。 ぼく……いや、私は、奔ろう。 揺るがざる、目的をもって。 【榊田神菜:生存中:包丁一丁】 【6人】 Back:● 話順 Next:○
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「生きるとは何だろうね?」 何の事は無い、どうせいつもの言葉遊びだ 目の前の男は特別深い意味を以て言った訳じゃない どうせまた何か本でも読んだんだろう 「それを知る為に生きているのかもしれませんね」 真面目な返答ではない。それっぽい事を言っておけば満足してしまうから その程度なのだ。 別段重要ではない会話を真面目に考えるほどの時間の浪費は無い 神岡 輝(カミオカ テル) 高校2年、生徒会長 んで、「テル」って下の名前で呼ぶと怒る 実力重視の性格と虚像の権力に惑わされる事の無い確固たる自信家 生徒の為、そして何よりその生徒に含まれる自分の為に行動する 行動理念はともかく、実際に結果を残している為に支持率は高い また、1年の頃から生徒会長を務めている 僕の仕える生徒会長様の情報は概ねこんな所 家族構成とかそういったプライベートな情報は抜きにして、ね あ、申し送れました。僕の名は三橋 蓮(ミハシ レン) 高校2年、生徒会長補佐の役目を仰せつかっています え?生徒会長補佐とは何かって? 文字通り、生徒会長を表裏で支える、秘書のような存在ですよ 副会長と違うのは………あくまで補佐に準じる、と言う事でしょうか あぁ、そうそう。1年が生徒会長になれるのか? とか、その辺の事情は学校側のある意味放任主義が招いた結果です 僕に言われても知ったことじゃないですね 「で、会長?現実逃避はそろそろ止めて貰いましょうか」 「何の話だ?」 傍らのプリント群を会長の机へと降ろす かなりの厚さと重さの紙束は、見るだけでヤル気を失わせる 「フン………」 それらに軽く目を通して、机へ放り捨てた 嘲りの溜息までセットで 会長は回転する椅子を180度稼動させ、丁度真後ろを向く 「少しは自分達で絞ろうとは思わないのかね?これじゃ欲望の蛇口だ」 「蛇口って事は、出ない様にも出来る訳ですね」 あ、少し不機嫌 日が傾き始めた校庭に、野球部の声が響く 「……………」 黄昏てるのか、それとも部活動にでも興味を持ち始めたのか……… 会長は少しも動かない 音を立てないように机を回り込み、椅子のそばへ 「はーい、起きてくださーい」 椅子の背を全力で蹴った 栄える者は必ず衰える、なんて言葉があったような それとはまったく関係の話だけれど 最近は猛暑を振るっていた夏の足音も遠く、秋を思わせる風が吹いている 下手するとクーラーをつけるより 窓を開けた方が涼しいかもしれないな……… 等と考えながら生徒会長の私室も兼ねているような生徒会室の扉を開ける 「失礼しまー………?」 自信に満ち溢れた表情を浮かべて机に陣取る生徒会長様の姿は無かった その変わりの様にに、恐らくは見た覚えの無い女生徒が一人、立っていた 「此処は―」 生徒会以外、立ち入り禁止ですよ 言いかけた言葉を飲み込む その女生徒に、何かしらの既視感を感じた 光り輝くと錯覚せんばかりのロングの金髪 線が細く、しかししっかりとした存在感を表す体躯 一寸の乱れも見せない制服 それら全てが引き立て役となるような 確固たる意思を持った者特有の自信満ち溢れた顔 美人、と称していいようなその姿を、知っている気がした だけど脳内の人物像にどうしても結びつかない 何か見落としてる気もするが あの自信に満ち溢れている所は誰かに……… ん?自信? 「………会長、女装趣味でも?」 脛を蹴られた 「今日一日、誰も俺と気付かなかったな」 「へぇ、知った事ではないですね」 どうやら女体化してしまった生徒会長様 何処から調達したんでしょうね?女子制服 そう言えば今日は会長の誕生日でしたか……… 「………会長、何歳でしたっけ?」 「17だ。ま、15~16ってのはあくまで目安だからな」 外見が女の子になっても中身は変わりないんでしょうかね? そういえばフリルの白ですか。いいですねぇ、清潔で 「そう言えばお前の誕生日は何時だったか。気を付けた方が良いぞ」 「あぁ、大丈夫ですよ」 「へ?」 女体化するのはあくまで「女性経験の無い男子」ですからねぇ……… そう言えば会長が引き入れた一年の………八月一日君、でしたか 彼、来ませんねぇ ま、半ば強制的でしたし、 別に無理に来る必要は無いと言えば無いんですが……… 「………経験済み?」 「えぇまぁ。中学三年の時に」 「へ、へぇ~。か、彼女とかい?」 「? それ以外に無いでしょう?」 「うん、そうだな、うん………」 おや、目に見えて意気消沈していらっしゃる 一体どうしたのでしょうか …………なんて、どこぞの漫画の主人公のようですね、このセリフ 「その後直ぐに別れましたけどね。 どうやら惚れっぽい性格のようでして、付き合ったの僕は3人目だとか」 「じゃあ、今彼女は……」 「居ませんね」 今度は元気になりました しかし先程から全然仕事が進んでやがりませんね そう言えばこの書類の束、本当は先生の仕事なのでは? 生徒の自主性を高めると言えば聞こえはいいですが、 仕事を押し付けるのは間違いだと思うんですがねぇ 「……あぁ、体を赦したのは僕が初めてだと言ってた様なない様な?」 「ふ、ふぅん?そうなのかぁ~」 空気って重さあったんですね。何か物理的に重くなってるんですけど さっきから疲れないんですかね、この人は というか、人の色恋話なんて聞いて楽しいんですかね 女子じゃあるま………あ、女子でしたね にしてもこれは異常な気が……… 「会長」 「何だ」 「もしかして、僕に惚れましたか?」 「っっっんなぁ!?そそそ、そんな事あるはずないだろう!」 うわ、わっかりやす ………会長を弄れるネタが、一つ増えましたね 「………これでチェックです」 「くそっ………!条件が同じなら、負けはしなかった!!」 部室が与えられるのは一定人数に達している部活、つまり「部」として認められているところ 一定人数以下の「同好会」になった場合、部室立ち退きを進言するのも生徒会の役目 しかし頭ごなしに言っても反発を呼ぶので、チャンスを与えるのが今の所の方針 それ即ち相手の土俵で勝負するというので 今は囲碁将棋部とチェスで勝負し、無事に勝利した所です ………何故、チェス? 会長が女体化してから数日、結構馴染んでいた 男の時は「冷血」「狡猾」といわれていた政策も今では何故か大歓迎 このマゾ共め ま、遣りやすいなら何でもいいんですがね、僕は そう言えば名前が「テル」から「ヒカリ」になった 女の子らしくていいですね 「囲碁将棋、漫画研究部、スリッパ卓球部にベーコン・レタス研究会………」 これでノルマは達成ですが……… つか、部員集まったんだ、スリッパ卓球 今日はもう仕事も無いですし、これ報告したら解散ですかね………… 「失礼しまーす………」 おや、誰も居ないんですかね? ってあぁ、僕が用事を言いつけたんでしたか……… 「ふぁ………」 さて、どうしましょう。立場上帰る訳にも行きませんし かといって後どれくらいかかるかわかりませんし……… ま、生徒会の予備室で仮眠でもとらせて貰いましょう。最近寝不足ですからね 夕焼けに響く野球の金属音は、何処か哀愁を感じますね 寝過ごしました 夕焼けといっても既に暗くなり始め………もう皆帰ってますかね 『―――……好きです!』 おやぁ?ロマンスの匂い……わざわざ生徒会室でやらなくても 生徒会室は関係者以外立ち入り禁止なんですがね……… 『ゴメン……私は、好きな人がいる』 この声……会長? なるほど、会長に告白するのなら生徒会室は絶好の場所ですが…… 何時も居るし、邪魔も入りませんしね でもフラれちゃったみたいですね。どうしましょう、凄く気まずい ……とか思いながらも覗いてるあたり、僕も人の子ですか 相手方は………確か、同じ学年の人ですね サッカー部で、結構活躍してて異性にもおモテになるとか ということはプライドが高いですから、あの断り方じゃあ……… 『………やっぱ、三橋なのかよ』 『………彼は関係ないよ』 『………嘘だっ!!』 ……女体化して数日で目をつけるだなんて、手が早いというか 『嘘じゃ、無い』 『ふぅん……そうか、よ!』 会長が壁へと押しやられる。ム?抵抗しないのか? 『な、何を!?』 『鍵は閉めた………どうせ誰も来ないんだろうがな』 『離せ!』 『女の力で抵抗できる筈、無いだろ?』 ………ん?僕は何か凄い思い違いをしてないか? 今迄が意見以外の差異が無い故に男のように扱ってきたましたが 女になるって事は、やっぱり筋力も落ちるのでは? そういえば当たり前か、『女の子』ですものね…… (カメラカメラ…………有った) 何でもあるね、此処 行ってる間にサッカー君が強引に攻めていった ボイスレコーダーのスイッチを切って、シャッターをパシャリ 何時仕掛けたのかって?それは聞く事無かれ 「こぉんにぃちはぁー」 「み、三橋!?」 「よ、よう、居たのか」 見るからに動揺するサッカー君 そして、涙を浮かべる会長。初めて見た 珍しい物を見せてもらった事に感謝はしますがそれとこれとは別な訳で 「期待のストライカー様がレイプ紛いとは、いけませんねぇ」 デジタルカメラをこれ見よがしに見せつける と同時に諦観を表すような表情になる、いいですねぇ、理解が早くて 「未遂ですが………この写真と声があれば、 一体どれだけの信用と名声が消えるんでしょうねぇ?」 「…………いくらだ?」 「はい?」 「いくら出せば、それを譲る?」 「これはこれは、理解が早くて助かりますね」 「でも、別にお金なんか要らないんですよねぇ」 カメラを一回転。恐らく僕の言う事を理解した様なサッカー君 苦虫を噛み潰した、といった表情 「ただ、今後は 僕のお願いをちょーっと聞いてくれるだけで良いんですが………」 「………チッ、解ったよ」 ふむふむ、頭の回転も速いようですね 未練がましい捨て台詞も無く非常によろしい 人の弱みは自分だけが握ってこそ価値がある、という良い例ですね 「さて、会長?」 「勘違いするなよ。私は別になんとも思ってないからな」 顔真っ赤にして否定されても というか、何の追求もしてませんがね 「………いやぁ、格好いい人でしたねぇ」 「女子にも結構モテているし、顔も良いからな しかも成績優秀で運動も得意と言う、完璧超人だからな」 「ふぅん?詳しいんですねぇ」 知識を持っている人は少なからず知識を持っている事に優越感があるわけで それを披露したいと思うのは人として当然と言うか、仕方が無い事な訳で こちらが知らないような素振りを見せたら すかさず知識を披露してしまうのは、誰もが一度はなってしまう物です ま、墓穴を掘ったって事を言いたいんですが 「………いや、これは、お前が知っていろというからだな?」 「記憶によれば、頭ごなしに拒否していたと思いますがね」 「いやいや、あの後流石に悪いと思ってな? しかし教えろと言うのも尺だからこっそり……」 「格好良い男の人に目をつけていたと?」 「いやいやいや、そういう訳じゃなくて」 冷や汗を流す会長。墓穴掘った時点で逆転は無いのにね☆ うわ、キショ。思いのほかキショい 恐らく会長の頭は今堂々巡りと言う奴でしょうか ま、言い訳は苦手分野ですからね しかしまぁ、女になっちゃってからキャラ変わりましたね クールな感じだったのですが、前は やはり女体化すると性格にも違いが……… 「あー、うん!私はだな!」 両の腕で僕の顔を挟み込み、ムリヤリ顔を向かせる まるで沸騰寸前なまでに赤くなった顔が近くにあった 「私は、お前以外の男は眼中に無い!」 照れ隠しのように大声を出す これはこれは、彼………いや、彼女ですか 彼女らしくない直情的な告白を聞けましたね ま、可愛いから良いんですけど? 会長の腕を取り、傍の机へと文字通り押し倒す 「三橋?」 「僕はですね、会長。口で言われてもそうそう信じれないんですよ」 長机に足以外を乗せた形の会長を、上から見下ろす 今の拍子に着崩れた制服から白磁のような肌が覗く 「僕が望むのは、態度での意思表示です」 野球部の怒声が小さく聞こえる 部屋の中が急に暑く感じて、額を一筋、汗が伝う 会長の顔にも流れる汗は、その女としての魅力を引き立てるようにも見えた 「嫌なら止めておきますが…………どうしますか?」 言い終わると共に笑みを浮かべる 「笑い」や「微笑」などというポジティブな物ではなく 謀を思わせる黒い笑み 会長が熱に犯されたように、とろんとした表情を浮かべる その凄艶を思わせる唇は、消えるように危うく言の葉を紡いだ 「許す」 その声に本気を汲み取り、ようやく僕の中にあった迷いが消える ま、あくまで目線が上なのはご愛嬌? 静かに笑みを浮かべ、自分の体の高度を下げる 唇と唇が重なった ※しばらくお待ちください……… 「降ろせ」 「お断りです」 空も夕暮れから夜へと変わる、妙に寂しくなる時間 会長を背負って下校中 何故かと問われればまぁ、 会長は女性になって数日、勿論経験なんか無かった訳で 多分下半身は今も痛みを引き摺っているのでしょう。抵抗も弱いですし 「恥ずかしいから降ろせ」 「嫌です」 妙に視線を集めていますが気にすることもないでしょう 注目を集めるのは慣れてますからね 「あぁ、会長。これどうぞ」 「何だ?紙袋?」 「バイブですよ」 後頭部に痛撃。良い頭突きだ 「お前………頭よさそうだけど、実は馬鹿だろ?」 「さっきまで乱れていた人に言われたくないですねぇ」 「なっ!?お前、アレはお前が!!」 「声大きいです声」 でも、まぁ、なんというか ちゃっかりバイブを持ち帰ろうとしてるその強かさ、僕は好きですよ 「…………というのは、おおよそ一年前の事ですか」 「長い前フリだな」 女性姿もすっかり板に付いた会長。進路は何処にするんでしょうかね? 「それで先日、八月一日君が女体化してしまったらしいですが………」 「あぁ、彼か。告白騒ぎで有名な」 「会長に似ていますね。2年での女体化といい、 彼の考え方には共通する物を感じます」 「ま、引き抜いた私の目に、狂いは無かったな」 煽てると直ぐに調子に乗りますね。二人っきりの時に限り、ですが 「で、これをプレゼントしてみようと思います」 「…………何だこれは」 「双頭ディルドーです」 「言わなくていい。というか、これは女同士で使うものじゃないのか?」 興味津々ですねぇ たまにはそういったアブノーマルなプレイでも期待してるんですかね 「女同士だったら良いでしょう? どうせ坂下さんとお付き合いするでしょうし」 「女になったんだから、男と付き合うんじゃないのか?」 「ハァ………ダメですね。ホントダメだ。何かもうダメダメですね」 「………何がだ」 「貴女は、自分で彼女と似ていると言ったのでしょう?」 「僕は、貴女の事を一番知っている人間なんですよ?」
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……。 人の命の重さって、いつだって変動する。 株価並みの速度で、変わっていく。 日常生活においての人の命は、とても重い。 戦争最中においての人の命は、とても軽い。 なら、今のあたし達にとっての命はなんなのか。 日本の法律すら、学校の規律すら、生活の旋律すらをも掻き乱した、この催しに限れば、何だっていうんだろう。 ……。 軽い、わよね。 面白いぐらいに、笑えないぐらいに、軽い。 ふわっふわ。 もう宙に浮かんでるんじゃないかってぐらい、手応えがない。 現実感なんてものはすべて幻影で、手で、もがいて、足掻いて、必死につかみ取ろうとするけれど空を切り、 感覚が、麻痺して、ぼやけて、犯されて、壊れる。 ――――。 そう。 これが始まってから。 あたしの倫理観なんてものの崩壊の序曲は流れていて。 ボロボロに成り果てて。ズタズタに成り果てて。 人が死んだところで、 “ああ、仕方のないことだな” なんて刹那ばかりとはいえ思った自分自身が怖くて。 人の死を、受け入れてしまうのが、こんなにも簡単にしてしまう自分が。 同時に。 人の死よりも、自分の変貌ぶりを悲しむ自分がいるのに呆けて。 壊れて。 壊れて。 壊れて。 壊れて。 ぶっとんでいる。どうしようもなく今のあたしはぶっとんでいて。 榎本夏美という人間は、もう取り返しのつかないほど、壊れていて。 目の前の死体に悲しい以上の感情が抱けず、不甲斐なさ過ぎて、泣けてくる。 けれでも確かに、悲しいという感情はあたしの中で氾濫して、それも踏まえて泣けてくる。 ああ。ぐちゃぐちゃだ。 あたしですらなにを考えているのか分からない。とりとめがない。 思考回路なんかすでにパンクしている。 文がしっちゃかめっちゃか、ハチャメチャである。 狂う人生。 終わる人生。 確かに今あたしはそんな瀬戸際にいて。 苦しい。なにか劇薬でも飲まされた気分。 「……ああ」 本当にさっきからあたしはなにを言ってるんだろう。 それぞれの言葉に脈絡がない。無関係の言葉を書き連ねて、なにがいいたいんだろう。 ……。 いや、答えなんて最初から決まっている。 あたしは最初っからこれをいいたかったんだ。 ……人が、クラスメイトが――――死んだ。 ○ さてはて。 さてはて。 さてはて。 これは一体全体どういうことなのだろうか。 そう。 目の前にいるのは樫山だ。 樫山堅司。 それが如何にして「殺してくれ」と頼んでいるのだろうか。 いやいや。 いやいや。 いやいや。 樫山の手には血の付いたシャベルが握られている。 ……。 まあ意味は多分理解できる。きっとそういうことなんでしょう。 ……。 恐ろしいほど、理解に容易い。 先ほどでピンチというものに慣れてしまったのか。いやな慣れである。 ……。 人を殺したんでしょう。 ころした。ころした。ころした。 楔音のことかもしれない。楓之のことかもしれない。榊田のことかもしれない。 ……。 隣を見る。 柳沼がそこにはいた。柳沼卯月は、樫山堅司の親友であったはずだ。 顔を見る。 「柳沼」はそこにはいなかった。いつもの自信に溢れる気合に満ちた彼はそこにはいなかった。 紅蓮に染まる赤よりも紅く。それは果実のように瑞々しいオールバックの紅い髪も今は力なく見える。 目の前で、シャベルを片手で柳沼に差し出す樫山の顔は、どこにも冗談のようには見えない。 今ここで逃げたところで、追ってでも殺されたいと思う自殺志願。そんな意思がそこにはあった。 ふわふわとした今風(最近流行りである髪型らしい。前に豪語された)の茶髪はその表情と合わせてもしっくりこない。 故にあたしたちは蛇に睨まれた蛙の如く動けない。一歩でも動いたら逆に殺されるのではないかという錯覚すら覚える。……実際の立場は逆なのに。 考えていると不意に。 柳沼が言葉を返した。 「……なあ、本気なのかよ」 それは何を思っての言葉だったのか。 他人であるところのあたしでは、やっぱりそれはわからない。 自分が何であるかすらわからないあたしには、他人の気持ちなんて察することなんてできなかった。 ……でも、青ざめた表情を見れば、そこはかとなく、伝わっては来る。――――当のあたしが他人事でないためもあって。 不安げな柳沼の声とは対照的に、返ってきた言葉は短く、そのかわりにあまりにも堂々としていて、活気に溢れていた。――――内容と、反してるのに。あまりにも気高く。 「本気さ」 「「……」」 あたしら二人は黙することしかできない。 柳沼……まああたしも基本的に活気な人間ではあるのだけれど、それでもここで気さくに接するほど、とりあえずあたしの心は広くはない。 あたしは元より。柳沼だって、自分がいいと思ったことにはとことん突っ走るが、逆に自己意識に通じない行為にはとことん否定的な人間。 この状況を良しとしないとするならば、顔を顰めるのも当然ちゃ当然なんだ。 けれど。 そんな風に思っていたあたしの考えとは裏腹に。 柳沼の台詞は、おかしかった。耳を疑った。冗談であってほしかった。 「……本気の、本気なんだな」 「ああ、なんだったら、そのおまえの腰に付けている拳銃だって構わねえぜ。 どっちにしろ風香に対する贖罪にはなんら遠く及ばねえし、そもそもこんなことで拭いきれる罪じゃねえんだよ。 死にたいんだよ、俺は。嫌なことから逃げたいんだよ。俺は。惨めたらしく格好悪く、逃げるんだ。 貶されることが怖いから。貶められるのが怖いから。怖くて怖くて怖いんだ。だからこの世からさっさと立ち去りたいんだよ」 「あんなぁ……。なら妹はどうすんだよ。不治の病をおまえが治すんじゃなかったのか? 嘘だったのかよ」 「……嘘じゃ……なかったよ。嘘のつもりはなかった。けれどもうそれは俺には無理だよ。 人を殺しておいて、人を治すだなんて、どんな横暴で自分勝手で、救えない奴だ。……だからどのみち俺にはもう無理なんだ」 「妹が悲しまないと?」 「いーや、きっと悲しむね。これ以上なく悲しむだろうよ。……でも、だから言ってるだろ。 俺は自己満足に甘んじたいんだよ。あいつに見せる顔がない以上、俺は生きたくねえんだよ。そんな図太い性格俺はしてない。 俺が死んで何かが救われる訳でもないことぐらい知ってるし、痛感してる。……でも、だからといって生きたい感情なんて、今の俺にはこれっぽっちもねえ。……だから、死にたい」 「……あっそ。わかったわかった。ならおれが責任もってお前を殺してやる。……ふう、覚悟はいいかよ」 「ああ」 それは。 ほんの二、三回の応答の繰り返しだった。 しかしその間に行われていたやり取りは、あまりにあたしに濃密過ぎた。 今の彼には自殺志願があること。 樫山は既に人を殺していて、被害者は楓之。 樫山の妹のこと(そもそも存在すら知らなかったわ)。 けれど。 そんな重大要素が一瞬でどうでもなるような。 もう全てが吹き飛んだ――――最後の柳沼の言葉のよって。 「――――え?」 あたしが、意識を急速に現実世界へもっていき、言葉を漏らした頃には、遅かった。 ――――ん? なんつった? こいつ。 ――――ころすとかなんとか。いわなかったか? 柳沼は、樫山から借りて。 胡坐をかいている樫山の頭上を目掛けて、降ろす。 降ろす。 ――降ろす。 ――――降ろす。 エコーするあたしの思い。 制止の声をかける間もなく、互いになにかのコンタクトが生じたのか如く。 あたしは呆けている間に全てが終わってしまった。……終わった。 「……ああ、いてえな。こんちくしょう……」 「そっかよ」 「……あ、あ」 脳天から、血が噴き出している。溢れ出している。 シャベルは形を変形させていた。……当然ちゃ、当然であり、そんな些細なことからも、柳沼は今人を殺したんだ、と。 理解出来た。理解できてしまった。 動かない。 樫山は動かない。もうどうしようもないぐらいに、死んでしまった。 「死んじゃった」という描写でも間違ってはないのかもしれないぐらいあっさりと。 絶叫するにも、理解が間に合わない。 それぐらいあたしにとっては唐突に。 意味が分からないぐらい、何も見えない、真っ暗な結末、あるいは現在進行形。 「ああ」 柳沼は言葉を零す。 短く、力なく、それ故に違和感しか生じない言葉。 叱責をするにも、あたしにはどうすればいいのかわからない。 あたしだって、どうすればいいのかわからなかったし。今だって、実を言うとあたしが間違えているんじゃないか、なんてすら思える。 あそこで殺すべきだったのか、殺さないべきだったのか。どっちか正しく、どっちがよりよいのか。 ――――あたしにはわからない。意志薄弱だからとか、今回はそんな大層な理由ではなく、単純な意味合いで理解に遠いから。 そんな事を思っていた時。 ふと、視界の内で異変が起こった。 …………。 直立不動を保っていた柳沼が、手に握っていたシャベルを、落とし、膝をつけた。 瞬間、あたしが目撃するのは、普段からは考えられない、光景。 「……うぁ、う、うがあああああ」ああぁぁぁああああああ」あああああぁぁぁぁぁあああ」あああああああああああああああああああ!!」 鼓膜が破裂しそうは愚か、視界すらもよろめくような、轟々なる叫び。 両手を顔へ持っていき、うずくまるように、ひたすらと言葉を吐き捨てる。 そんな光景を見て、あたしはただただ黙して、見つめるしかできなかった。 助ける、という行動とか。どうしたの、と訊くとか。見捨てる、とか。 何もできずに、あたしは硬直してなにもできなかった。……その悲痛の叫びを、聞くしかなかった。 ……あたしは、役立たずだ。 想いは、この身に、響く――――響く。 【柳沼卯月:生存中:手紙、グロック17、シャベル】 【榎本夏美:生存中:水浸しの衣服】 【樫山堅司:死亡中:もちものなし】 【3人】 Back:● 話順 Next:○
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登録日:2010/12/23(木) 18 14 49 更新日:2024/03/04 Mon 17 59 57NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 ちなみに1フレンチは1/3mm エロネタ 一覧項目 下ネタ 会則 全ラ 名言? 天草シノ 天草語録 日笠の本気 日笠陽子 生徒会役員共 迷言 アニメ『生徒会役員共』のOP前及び、ネットラジオ番組「アニメ『生徒会役員共』が全部わかるラジオ、略して全ラ!」の冒頭において流れる台詞。 ■アニメ版 ●第1期 毎回天草シノの台詞とともに津田タカトシによるツッコミが入る。 最初に必ずシノが「桜才学園生徒会会則……、〇(数)!」と言いながら七条アリアと萩村スズ(たまに面子が変わる)による三三七拍子が入る。 ちなみに本編ではピー音が入る台詞がここでは何故か入っていない。 1話:シノ「ひとーつ! 秘め事は……、全て報告せよ!!」 津田「全て!?」 2話:シノ「ふたーつ! 筆下ろしは、慎重に」 津田「それって会則!?」 3話:シノ「みっつ!見られたら〜、見せ返せ!」 津田「……何を?」 4話:シノ「よっつ! 読んだエロ本は、資源ゴミに!」 津田「あ、案外まとも」 5話:シノ「いつーつ! いじりすぎは〜、ほどほどにね!」 津田「え、どこを!?」 6話:シノ「むっつ! 胸の話は絶対するな!!」 津田「ハハハッ、この人マジだ」 7話:シノ「ななーつ! ナプキン派だ!私は!!」 アリア「私はタンポン派よ〜。」 8話:シノ「やっつ! やり過ぎは及ばざるが如し」 津田「意味分かんないっす」 9話:シノ「ここのーつ! コンドームは、忘れずに持ち歩け!」 津田「言うと思ったー!」 10話:シノ「とおーっ! トイレの目的外使用は、禁止!」 津田「いやいや、しませんよ」 11話:シノ「11! 授業中の私語は駄目だ!」 津田「そんな〜! あれ、今真面目な事だった?」 12話:シノ「12! 柔道は寝技からこう……、スン!」 津田「全国の柔道愛好家に謝ってください!」 13話:シノ「13! じ〜んせい……」 津田「これ以上止めて〜!」 (以下、1期OAD・OVA) 14話:シノ「14! 辞書に"縮れ麺"って単語がない!」 津田「調べたの!?」 15話:シノ(小6)「桜才学園児童会会則 その15!」 天野ミサキ「14までは?」 シノ「イチゴパンツは子どもっぽく見られるぞ」 ミサキ「子どもです…」 16話:シノ・魚見「その16! 色付きコンドームは」 シノ「青!」魚見「赤!」 津田「どっち?つうかこだわり派?!」 17話:シノ「その17! 18歳まであと1年、いろいろ耐えろ!」 津田「いろいろって…ああ言わんでいいです…」 18話:シノ「その18! 18歳未満も楽しめるぞ!」 津田「よく考えたらえらいことだよなぁ」 19話:シノ「その19! イクなら一緒に…」 津田「ああ、やっぱりそのネタね…」 シノ「集団登校!」 津田「フェイントかーい!」 20話:シノ「その20! 二兎追う者はバニーガールさんたちに嫌がられるぞピョン!」 津田「高校生は行けません、そういう所」 21話:シノ「その21! お兄ちゃん、私の部屋の引き出し開けたでしょ!」 (一同津田を見る) 津田「えっ?こっち見んな!」 ●第2期 アニメ2期にもこれは存在。 その際の入りは「桜才学園生徒会会則……、第2条第〇(数)項!」(ただし、7話のみなぜか「第2項第7条」)となっている。 1話:シノ「第2条第1項! 1発は朝ヌイていいよ!その若さなら!」 津田「またこういう感じなんだ…」 2話:シノ「第2条第2項! 兄さんのエロ本見つけても、見て見ぬフリで!」 (一同津田を見る) 津田「こっち見んな!」 3話:シノ「第2条第3項! 水着の修正は中指使って色っぽく!」 津田「あ~あ」 シノ「○○ポジ修正!」 津田「男のほうかよ!」 4話:シノ「第2条第4項! 読んだエロ本はクラスのみんなで回し読み!」 津田「ダメ!ダーメッ!」 5話:シノ「第2条第5項! ゴリ押しの頼み事は心のフィス○○○ック!よく相談してから」 津田「一見いい話!」 6話:シノ「第2条第6項! ムラっとしたら我慢しないで!」 津田「え?」 シノ「わっ、私あっち向いてるから…」 津田「今日はこっち見ろーっ!」 7話:シノ「第2項第7条! なくて七癖いじり癖か?津田」 津田「もう何言ってるかわかんないっす…」 8話:シノ「第2条第8項! パットの大きさはバレないくらいでな!」 津田「はっはっはー!ジーザス!」 9話:シノ「第2条第9項! キュウリはなるべく上の口で食べてね」 津田「なるべくじゃなく絶対!」 10話:シノ「第2条第10項! 飛びまくるのはエッチな漫画だけ!」 津田「この作品も大概だよ?!」 11話:シノ「第2条第11項! 人と人が支えあって対面座位!」 津田「え~はい、腐ったミカンです」 12話:シノ「第2条第12項! 12時に 裸で駆けてくシンデレラ♪」 津田「ツッコミづれえ!」 13話:シノ「第2条第13項! 父さん母さんのプロレスごっこは実は…」 津田・スズ「うわあああああ!」 (以下、2期OAD・OVA) 14話:シノ・古谷「第2条第14項! イイヨイイヨも好きのうち!」 津田「この2人の後継ぐんだよなぁ…」 15話:シノ「第2条第15項! 他人事ではないぞ、君の皮!」 津田「大きなお世話ですよ~」 16話:津田「あれ?あれ、コトミ?あれ、コトミなんでいるの?血ぃ繋がって…」 シノ「第2条第16項! 16歳になったから、お嫁さんにしてね!ね、ね!」 津田「…コトミ!」 17話:シノ「第2条第17項! いなせなあの娘は露出好き!」 津田「"いなせ"の意味わかってますぅ?!」 18話:シノ・魚見「第2条第18項! いっぱい出たね、パッチンコ玉!」 津田「本遊技場は18歳未満お断りでございます」 19話:シノ「第2条第19項! 一休!このグラビアポスターの娘を縄で縛ってみよ!」 津田「性的趣味が違(ちご)うございます」 22話:シノ「第2条第22項! 焦って二重にハメなくていいよ!日本製品!」 津田「…チッ、あーもうちょっと何言ってっかわかんない!」 23話:シノ「第2条第23項! 踏みつける!愛情込めて 踏みつける!」 津田「ホントあんたはいっつもそうだよ!」 25話:シノ「第2条26項! ニッポンムダゲチェックキョウカイメイヨカイチョウ ツダタカトシクン」 津田「もう今更だけど会則とは!」 ●劇場版:シノ「特別追加条項! 劇場では静かに!」 アリア「映画泥棒しないでねぇ~」 畑「ズンダズンダズンダ…」 津田「なんでこれ5.1チャンネル?」 ■ラジオ版 毎回天草シノ役の日笠陽子では無く、その回のパーソナリティの人が務める事になっている。 ラジオの場合だと「桜才学園生徒会会則、附則その○(数)」になる。 1回:シノ「位置を直す時は手早く」 津田「何の!?」 2回:シノ「二ップレスに負けない乳首たれ!」 アリア「どうやったら強くなるのかしら〜」 スズ「ツッコミの津田はっ!? 津田ァー!!」 3回:スズ「サドルは外しましょう」 コトミ「タカ兄の自転車外しておいたよ」 津田「うん、座りごごちが刺激的……、って外すなよ!!」 4回:津田「寄せて上げてに騙されるな!」 コトミ「寄せられる程あれば充分だよね〜」 スズ「会長が居なくて良かったわね…津田」 津田「ホントに」 5回:津田「ご褒美は乗馬鞭で……?」 出島「かしこまりました。ただ、鞭の中でも一番痛いですよ?」 津田「ちょっ、出島さんちょっと待って、ストップー!」 6回:外国人「附則そのS〇X。ぺラぺ〜ラぺロぺ〜ロ」 津田:「ぺロぺ〜ロってなんだよ(笑) ちゃんとシックスっていえよ。てか学校入ってきちゃ駄目でしょ!」 外国人「ハッハッハ〜」 7回:シノ「茄子や胡瓜は……、洗ってから使え!」 ケンジ「えっ、えーっと……茄子と胡瓜って……お盆的な意味ですか?」 スズ「ホントごめん……、無理にツッコミやらせて。」 8回:シノ「配達員にもバレないようにスポーツ器具と書いて貰え〜」 ケンジ「成る程〜。分かりました!」 スズ「津田ァー! ツッコミの津田ァー!!」 9回:シノ「旧約聖書を読め。オ○ニーの語源は分かるから!」 校長「いやそんな事の為に読むものじゃぁありませんから」 津田「あっ、ツッコミありがとうございます。ってどちらさまでしたっけ」 校長「先生...です」 10回:シノ「ジュースだと思って……、飲め!」 津田「何を?」 出島「少々お待ちください。只今お出ししますので……」 津田「出島さんドコから出すつもり!? ちょっとストップストップー!」 11回:スズ「妹とは結婚出来ません!」 アリア「えっ、そうなの? 津田君に教えておいてあげなきゃ」 スズ「いやこれ法律ですから……」 12回:アリア「ニコニコするのもいいけど、アニメイトTVでも聴きましょう〜ねっ☆」 スズ「アクセス数少ないと終了ですからね……」 アリア「ヤダヤダ! 私、全ラが好きなのにぃ〜!!」 13回:津田「最後まで……、諦めるな! ……あれ、普通だ」 畑「副会長は遅漏……と」 津田「あぁ、そういう解釈……ってコラ!」 14回:畑「弱みを握れるような写真を……撮れ!」 津田「うわぁ〜、ホント近寄りたくない」 畑「構いませんよ。もうたくさん撮りましたから」 津田「仕事早ッ!」 15回:横島「ゴムに細工するのはルール違反だからやめなさい」 畑「ルール違反……、ですか?」 横島「ルールは破るためにあるんだけどね☆ ゴムだけに」 畑「今日はツッコミ居ませんからボケても無駄ですよ?」 16回:畑「ローアングルで、それこそ地を這うようなローアングルで撮れ!」 横島「いいよぉ〜ドンドン撮ってぇ〜!!」 畑「あの……、ズボンじゃ意味ないんで……」 横島「そっか〜。じゃあ脱げばいいのかな?」 畑「いえ、結構です!(需要ありませんし)」 17回:スズ「無い物ねだりはせずに……、胸を張って生きましょう! ……ツッコまないわよ? 会長じゃないんだから(身長のこと言ってんなら突っ込むけど)」 18回:スズ「腹は立てず……、みんな仲良く! あれっ、普通だ……」 アリア「別の所を勃てなさい、って事だよね」 スズ「津田ァー! ツッコミの津田ァー!!」 19回:津田「くつ下は履いてよし。冬仕様にすべし」 ケンジ「良かったぁ〜。これなら風邪引かないな、津田」 津田「引くだろ! 上も着ろよ!」 20回:ケンジ「受験勉強のお供に、全ラ! 高一といえども大学行くつもりなら、コツコツ勉強しなきゃだよな。最近成績落ちてきてるしさ……」 津田「いや、そのお供のせいだから……。悪い事は言わない、違うラジオにしなさい」 ケンジ「あっ、やっぱり? だってさ、受験生諸君!」 21回:津田「イメージトレーニングは欠かすな。成る程、全校集会とか緊張するしやっとくべきかもなぁ」 出島「ハァハァお嬢様、そんな大胆な……ハァァ、あっあっお嬢様ぁー!」 津田「出島さん漏れてる、イメージが漏れてるよー!」 22回:出島「尿道カテーテルをプレイで使用する時は消毒に留意し、挿入時は医療用ジェルを多用して下さい。 尚、初心者の場合、14フレンチから始めるのがオススメです」 津田「意味は分からないけど、要らん知識だという事は分かりました……」 23回:アリア「サンタさんにお願いしてもいいのはこ・ど・もの玩具だけだぞぉ〜」 シノ「子供サイズならOKという事だな!」 津田「そうじゃねぇよっ!」 24回:シノ「余計なものは、纏うな!」 アリア「ほら津田君、全ラの最終回だしここは一つ脱いでみよ〜ぅ☆ せ〜の」 シノ&アリア「全裸! 全裸! 全裸! 全裸! 全裸!」 津田「いや〜、ホント終わって良かったわ……」 原作ではこのやり取りは無く全てアニメオリジナル。 追記・修正は……、常に報告せよ!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ひとつ!ひらめいたからと言って、普段と違う手段のお◎にーはするな!きっと後悔する! -- 名無しさん (2014-08-15 19 56 41) ↑ここでいうなよ!てかひらめくなよ! -- 名無しさん (2014-08-15 21 22 25) ふたつ!ふたなりはみさくらなんこつに任せておけ! -- 名無しさん (2014-08-16 01 21 18) スズ「御桜軟骨?そんな部位、あった?」津田「多分知らなくていい部類だと思う」 -- (2014-08-16 01 38 20) みっつ!見たいのはパンツではない!恥じらいだ! -- 名無しさん (2014-08-16 01 45 33) よっつ!幼女ではない!登場人物は全て18歳以上です! -- 名無しさん (2014-08-16 09 27 13) いつつ!「いつまで起きてるの!早く寝なさい!」「母ちゃん、俺、今起きたとこなんだけど。」それがニートの生活! -- 名無しさん (2014-08-16 19 46 59) むっつ!剥くなら優しく丁寧に!何ならレーザーメスに頼ってもいいんだ!いい医者紹介するよ? 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https://w.atwiki.jp/nicomad_srs_event/pages/1275.html
http //www.nicovideo.jp/watch/sm22549762 作品名:【MAD】ガーネット【生徒会役員共】 作者名:ぶんた 作者コメント: 生徒会役員共はこういう素敵なアニメですよ。 この作品のタグ:第7回ニコニコ紅白MAD合戦「黒組」 レビュー欄 本編を見ていないと騙される「一見様誤解シリーズ」の典型(褒めてます)。 やっぱりBGMってすごく重要ですねwww -- エッチルガム2号 (2013-12-28 17 49 03) とても素敵でした。題材が一見誤解シリーズネタチックではありますが、素直にこういうMADは好きだといわせてもらいます。 文字演出や間奏での加工とかもいい役割をしていますが、なんといっても全体を通しての雰囲気が好きです。 -- ku (2013-12-29 08 27 08) ギャルゲーだと誤解してしまいそうになりました! ああいう(?)アニメでも丁寧に作るとドキっとする感じにできるんですね! -- hghgf (2013-12-31 12 03 46) 名前 コメント