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――――code geass ◆Wott.eaRjU 巨人だ。 其処には機械の巨人が居た。 力強さとしなやかさを内包した、全長4m程の躯体が聳える。 両肩に西洋の盾を思わせる装甲が覆われ、頭部を始め全身の至る所からワイヤーが伸びている。 風にたなびく度に人間の毛髪を思わせる。 二足歩行型可能な機動兵器、ナイトメアフレームを模した唯一無二の機体。 ナナリー曰く“新しい身体”――“マークネモ”が地に降り立つ。 そしてその心臓部とも言える操縦室にナナリーは居た。 但し、意識の主導権はネモの方へ。 マークネモに搭乗している間には、全面に出る人格の交代が起きるという事だ。 『やめて、ネモ!』 「未だそんなコトを言うのか、ナナリー! お前も感じたのだろう、奴らのおぞましさを……奴らの醜さを!!」 『そ、それは……』 マークネモはネモとの契約で得た力だ。 ナナリーが抱く負の感情――怒りや憎しみ等の感情を糧にする必要がある。 では、今回はどうだったのだろうか。考えるまでもない。 今、この場にマークネモが出現した事が何よりの証拠と言える。 確かにナナリーは感じた。 自分を売ろうとした詩音。意気揚揚と殺人に手を染めようとするラッド。そしてその状況に身を委ねるミュウツー。 それがわかった時、ナナリーは何よりも悲しかった。 こんな事をしている場合じゃないのに――その時、ネモが敏感に感じ取っていた。 ナナリーの中で芽生えた怒りと憎しみ。彼ら三人とこの状況全てに対する負の感情をネモは力という鎧に変えた。 この場に存在するどんなものよりも力強い、生身のナナリーとはかけ離れたものだ。 「……こいつはちょいと逃げた方がいいかもな」 「ちっ……!」 そして、流石の二人もこの状況で闘い続けるのは得策ではないと判断したのだろう。 機転を利かし、ラッドとミュウツーは直ぐにマークネモから走り去っていく。 しかし、当然、マークネモの一歩は彼らとはわけが違う。 跳躍――そこまではする必要もない。一、二歩だけ踏み込んで右拳を叩きつけようとする。 刹那。ネモは確かな違和感を覚えた。 (馬鹿な! マークネモの動きが……遅いだと!?) 衝撃が起き、大きなクレーターが生まれる。 其処はほんの一瞬前にラッドとミュウツーが居た場所付近。 ラッドとミュウツーは身を投げ出す事でどうにか難を逃れていた。 外れた。その事は勿論腹立たしいがそれよりも引っかかる事がある。 己の身体とも言える、マークネモに何か異変が起きている事についてだ。 しかもそれは決して小さなものではない。 自分の方には特に異常はないと思われるが心残りはある。 ギラーミンがマークネモに、自分に何らかの処置を施したのだろうか。 有り得ない。普通では有り得ない。 何故なら自分はエデンバイタルを司る存在、“魔王”だ。 あの魔女――C.Cの一部でしかない泥人形とはもう違う。 自分は自分の力で立つことが出来る、一つの存在だ。 そんな自分が知らぬ間に、他人に言いように弄られていたなど――ネモに認められるわけがない。 違和感などなかった。そう自分に言い聞かせるようにネモは意識を集中させる。 拳による打撃は外れてしまった。 だが、それがどうした。 マークネモが只、殴りつけるためだけのナイトメアフレームであるわけがない。 ナナリーとの出会いで、漸く手に入れた自分だけの力を発現する。 「ブロンドナイフッ!!」 全身に付属したワイヤーがまるで蛇のように動めく。 縦横無尽、一本一本が意思を持っているのかと錯覚する程に、その動きは複雑だ。 その先端にはナイトメアフレーム用のナイフ。 直撃すれば人間など刺すと言うよりも押し潰してしまうくらいに。 たとえ不死者や遺伝子改造によって生まれたポケモンでさえも、確実な死が訪れることだろう。 但し、本当に当ればの話だが。 「かああああああああああ! スゲぇ、こいつはスゲぇ!! 腕が刀になっちまう女、宇宙人野郎、んで次はバカみてぇなロボットか!! おいおいおいおい、どんだけ俺を飽きさせねぇんだよ――このバトルロワイアルってヤツはよぉ!!」 場違いな声が響く。 声の主は言うまでもなくラッド。 寸前のところでブロンドナイフを避けて、未だ致命傷を貰っていなかった。 ピョンピョンと、よくもまあこれ程までに柔軟に動けるものだ、と感嘆する程に曲芸染みた身のこなしを見せている。 「これほどとはな……」 一方、ミュウツーの方もラッドとは対照的に、碌に口を開かず黙々と身体を動かしている。 ミュウツーはエスパーポケモンだ。 得意中の得意とも言える超能力を用い、ブロンドナイフの軌道を僅かに変えている。 勿論、大きさの違いもあり、それだけで攻撃を避けているわけではない。 持ち前の身体能力、更にはいつの間にか右腕に握ったスプーンを駆使しながらなんとか凌いでいた。 共に余裕はないラッドとミュウツーの二人。 この殺し合いに呼ばれる前も、様々な経験を積んだ二人は共にかなりの実力者と言えるだろう。 だが、幾ら二人といえども、マークネモとのサイズ差をどうにか出来るものではない。 ならば何故二人は未だ致命傷を貰うまでに至っていないのか。 答えの一つは二人が専念しているためだ。 攻撃は考えず、隙を狙った反撃すらも一切考えていない。 流石のラッドですらも全くと言っていい程に。 不自然な話ではない。 ラッドはバズーカを持っているものの、狙いをつける瞬間に逆に狙われる場合がある。 あちらとは違い、こちらは常に一発を貰うだけで危うい。 周囲から殺人狂と称されるラッドだが、決して頭が悪いわけではなく寧ろ回転は速い。 特に喧嘩や揉め事に関する際の、頭の切れ具合は。 故に二人は全ての意識を回避行動に注ぎ、今、未だ己の命を永らえている。 そしてもう一つの理由は――マークネモの方だ。 (何故だ!? マークネモの動きだけじゃない、ナナリーのギアスの精度も明らかに可笑しい……。 どうなっているんだ、これは……?) 確かにネモの意識が通常よりも押し出されているといっても、その肉体はナナリーのものだ。 また、ネモがナナリーに与えたものはマークネモだけではない。 ギアス、簡単に言えば一種の超常能力とも言うべき力。ギアスを持つ者をギアスユーザーと呼ばれる。 ナナリーが受け取ったものは未来線を読む力を持ったギアス。 俗に言う未来予知とでも言った方がいいのだろうか。 相手の攻撃の軌道、そして相手が次に行うであろう行動の予測が能力の一端。 しかし、それは完全な予知というわけでもない。 事実、この殺し合いに参加させられる前も、とあるギアスユーザーのナイトメアフレームの動きを読み切れはしなかった。 只、問題なのはその誤差があまりにも大きい事について。 そう。今しがた打ち放ったブロンドナイフで仕留められなかった事実が苛立たせる。 同時にまたも思う。やはりマークネモには何か、自分の知らない力が働いている事に。 実際、マークネモのスペックは意図的に何段階も落とされている。 全長が約4m程のナイトメアフレーム。しかも、マークネモは特別なナイトメアフレームだ。 単純計算で起動時のエネルギーは、一般のナイトメアフレームのそれの50倍以上。 まさに化け物といえるマークネモが本来のスペックを発揮すれば、この殺し合いはあっという間に終わってしまうだろう。 そうさせないための処置なのだがネモに気付くわけがない。 マークネモに異常があるならば、尚更自分に気の緩みは許されない。 一切の反撃を許さずに、ラッドとミュウツーを釘付けにしている。 気休めにもならない。自分はマークネモまで持ち出しているのだ。 この時点で二人を、少なくとも一人は殺せないようではあまりにも不甲斐ない。 そう。ナナリーとは相容れない、明らかに敵だと断定できるこいつらを――しかし、障害は未だあった。 僅かな焦燥の念に駆られながらも、ネモがマークネモで追撃を掛ける。 『もうやめて、ネモ! 人間相手にマークネモを使うなんて……どんな事情があっても、私には出来ないわ!』 されども、その動きにはどうにもぎこちなさが目立つ。 マークネモの攻撃に精彩が欠けているにはナナリーの存在があった。 ナナリーは心優しい少女だ。かつては只人であった、一人の男が心の拠り所にしていた程に無垢な心の持ち主。 そしてナナリーは元来の大人しい性格から争いごとは好まない。 今まで、この会場に呼ばれる前までにマークネモを使用していたのは、そうする必要があったためだ。 避ける事が出来なかったナイトメアフレーム同士の戦闘を切りぬけるためには。 だが、今回は勝手が違う。 幾ら判り合えないかもしれない存在だろうと、ラッドとミュウツーは生身だ。 人とは言い難いがナイトメアフレームを相手にするのは明らかに訳が違う。 よってナナリーは嫌悪感を覚える。 あまりにも過ぎた力であるマークネモに乗って彼らを蹂躙する自分自身に。 故にナナリーは今も試みている。 マークネモの解除はどうにも出来そうにない、ならばせめて自分の意識で足止めを掛ける。 その意思の成果が、確かに現在のマークネモの状態に現れていた。 しかし、ネモは大声で叫ぶ。 「いい加減にしろ、ナナリー! 自分の感情に素直になれ! こいつらが許せないとお前は思った筈だ、それがお前の本音だ! 私に全てを委ねれば楽になれる、私に全てを任せてくれればそれでいい……!」 ナナリーに反抗するように、ネモはマークネモを懸命に動かそうとする。 揺るぎはしない、意固地なまでに強い意志の現れ。 その行動の理由は、ネモはナナリーを軽く見ているわけではない。 寧ろ逆だ。ネモがナナリーの意思に背く事を喜んでするわけがない。 「私はお前の騎士だ、だから私がお前を全てから守る……! 私だけを信じろ! どこの馬の骨かわからない奴らと関わるからこんな目に合うんだ……!」 『ネ、ネモ……?』 ナナリーの騎士という、ネモの自称は伊達ではない。 だからこそネモはここまでして、この状況をどうにかしたかった。 ナナリーがいわれのない危機に襲われ、その命を散らせてしまう。 許せる筈もない。もし、本当にそんな運命が待っているのだとしたら。 この身を賭してでも――全力で反逆を行う必要がある。 だが、まるでネモとナナリーを嘲笑うかのように状況は加速していく。 「う、動かないで!」 恐れを必死に押し殺したような、大声が響く。 マークネモの頭部を回し、ネモがそちらを確認する。 見れば人影があった。緑色のロングヘアーを生やした、園崎詩音と目線が合う。 マークネモの異形の顔を改めて認識してしまったのだろう。 心なしか詩音はマークネモから視線を逸らした。 但し、しっかりと己の腕で抑えつけている。 自分の前に、まるで盾にように立たせた少女を――ブレンヒルトを。 詩音はブレンヒルトを人質にした形で、言葉を突き付けていた。 「……こいつに死んで欲しくなかったら、さっさとその二人を殺しなさい!」 詩音は既に手段は選んでいない。 自分よりも弱い存在、最後の砦だと思っていたナナリー。 そんなナナリーが唐突にこの場で、最も強大な存在とのし上がったのだ。 堪らない。なんであの子がこんな力を、と悔しむよりもやることが先にある。 自分の身を守るために何をやればいいか。 迅速に、只、こんな場所では死にたくないという一心から詩音は選択した。 漸く立ち上がろうとしていたブレンヒルトの後頭部を殴りつけ、そのまま後ろへ回る。 ラッドとミュウツーの二人がマークネモと立ち回っていた間に起きた出来事であり、現在に至っている。 「キサマァ!!」 そしてマークネモが――ネモが吠える。 隠しようのない怒りを露わに、こうまでして醜態を晒す詩音に対する激情が一気に駆け上る。 今まで特に危険だと感じていたラッドとミュウツーに気を取られ過ぎた。 詩音は取り敢えず放っておいても碌な行動も起こさないだろう、と考えていた。 全てが自分自身の推測による、完全な判断ミスだ 二人を殺す事に躊躇いはないが、人質を取られてしまえばこちらの行動に支障が出る。 結果としてナナリーを更なる危機に追いやってしまった後悔の念。 やがてその感情も新たな怒りとなり、ネモの精神は更に興奮をきたし出す。 最早躊躇いはない。ラッドとミュウツーから離れ、一直線に詩音の方へ。 右腕を振り上げ、詩音に向けて一切の加減を行わずに振り下ろす。 『ネモ! ブレンヒルトさんが!!』 「くっ……ナナリー。奴の狙いはそれだというのに……!」 だが、マークネモの拳が詩音を叩き潰すことはなかった。 直前で、かなり際どい位置でナナリーの意思がマークネモを抑える。 直撃はなかったが、生じた風圧により詩音の身体がブレンヒルトごと後方へ跳んだ。 しかし、多少の恐れのような感情はあるものの詩音の表情に驚きはない。 きっと詩音はネモと同じく予想していたのだろう。 ナナリーの優しい性格を、言葉を換えれば甘い性格を。 ブレンヒルト前に出されてしまえば、ナナリーはなんとしてでも助けてしまう。 わかっていたものの、自分達が詩音のペースに乗せられている事に、ネモは人一倍歯がゆく感じた。 「ブレンヒルト・シルト……お前が!」 ネモにとって見ればブレンヒルトは所詮、この場で知り合った他人でしかない。 確かにナナリーの面倒を見てはくれたが、本心では何を考えているかは計り知れない。 裏切りや妬み、そういった感情は負の感情を力に変えるネモだからこそ良く知っているものであり、どんな人間でも有り得るものだ。 故にこの瞬間、ネモはブレンヒルトを邪魔な存在だと思った。 ナナリーの制止がなければ――死体がもう一つ増えた事になったかもしれない。 別段驚きもしない。そういうものか、と嫌に冷静に己を分析する思考が確かにあった。 されども、いつまでも考えに耽っているわけにもいかない。 詩音を相手にするよりは、ラッドとミュウツーの二人を相手にする方がやりやすいだろう。 心外ではあるが、それで詩音が示す条件を満たすことも出来る。 どうせ殺すのだ。ナナリーの敵は、どうせ一人残らず殺すのだから順番などどうでもいい。 マークネモのボディを翻し、ネモは再びあの二人へ狙いをつけようとする。 「なに!?」 「よそ見してんじゃねぇ!」 だが、その瞬間、マークネモの左肩辺りで何かが爆ぜた。 バズーカの、ラッドが先程まで投げ捨てていたバズーカからの砲撃の痕跡。 勿論、いつの間にかラッドはバズーカを手元に持っている。 一瞬とはいえ、注意を向けられなくなった途端に反撃を試みる。 改めて、ラッドという男の凶暴性には流石のネモも呆れかえるしかなかった。 更にネモはマークネモの違和感を自覚する。 どうせ同じナイトメアフレームによる攻撃でもなく、大した損傷ではない。 それでも予想以上には損傷が大きい。所詮、人間用の装備であるバズーカの筈なのに。 駆動系だけでもなく、装甲面についてもか――ネモは思わず表情を顰めるしかない。 極々自然な動作で、数本のブロンドナイフをラッドに向けながら。 速さは十分。ラッドが避けるのに必要な距離は不十分。 もらった――ナイフが行き着く先を見据えながら、ネモはそう確信した。 「――ッ!」 不意に一つの影がラッドを引っ掛け、そして跳んだ。 ブロンドナイフの射程外へ。ネモは慌てて追撃のブロンドナイフを放つ。 けれども結果は同じ。正確さを失ったギアスでは、その影の完全な軌道を読む事が出来ず、仕留めることは叶わない。 やがて影はラッドを肩に担ぎながら、地に降り立つ。 白色と紫の異形――ミュウツーが其処に居た。 「なんのつもりだ、てめぇ」 「勘違いするな」 ラッドの表情に感謝の色は見られない。 殺してやりたい相手に助けられる。 これほど屈辱的な事もないだろうが、ミュウツーは特に意に介してないようだ。 乱暴に、且つそれでいてラッドの身に危険が及ばぬように更に跳躍。 マークネモから距離を取り、ラッドから腕を放す。 ミュウツーがラッドの補助を行ったのは、単に善意からの行動ではない。 「……キサマにはもっと動いてもらわないと困る。 その方がオレにとっても……都合が良い。それだけだ」 ラッドの存在は貴重だ。 持ち前の価値観や倫理を見れば判る。 ラッドは常人という枠には、到底当てはまることはない。 此処で死なれるよりも、生き残った方が他の参加者の障害になり得る。 当に不死身とも言うべき肉体、人間離れした怪力と強力な武器。 何より殺す事に、なんら罪悪感を生じないラッドは人数減らしには最適だろう。 よって、ミュウツーはこの場ではラッドの生存を優先した。 たとえ自身の危険が及ぼうとも、少しでもマスターの生存に繋がれば構わない。 詳細な理由は口には出さない、きっとラッドの方も望んではいないだろうから。 そうだ。ラッドはそんな事は望んではいない。 「……ああ、わかった。てめぇは今、思ってんだろ? “俺はお前には殺されない”……だからこんな舐めたマネしてくれんだろ? いいねぇ、これでもかってぐらいにイラつかせてくれるねぇ……ホント、てめぇは俺をイラつかせてくれるわ」 ラッドが知りたい事は極めてシンプルなもの。 ミュウツーがどんな考えをしているか、自分に殺されるに相応しい存在か。 その答えは既に一回目の出会いから出てはいたが、更に確信は強まっていく。 胸中に滾る、全身全霊を掛けた殺意に答えるように両拳を握る。 今すぐブチ殺そうか、とラッドは嫌に冷めた頭で自然と感想を漏らす。 どう考えても余裕をかましているようにか見えないこの野郎を―― だが、ラッドは唐突に握り締めていた拳を緩め出す。 同時に浮かべるものは冷酷な眼差しを眼前のミュウツーに向けて。 そして歯車が噛み合ったかのように、ラッドが流暢に口を開く。 「決めた。俺はてめぇを必ずブチ殺す。最後の最後で、てめぇがあと一歩で最後の一人になるって瞬間にブチ殺す。 手段は……何でもいいか。まあ、そんなコトだ。 だからよぉ――」 つい数時間前に殺し合った相手に助けられる。 最大級の屈辱を与えられたと言っても過言ではない。 単に、殺してやるだけでは到底ラッドの気は収まらなかった。 最後の瞬間、ミュウツーを殺す状況に自分から新たな条件をつける。 それはきっとラッドなりの落とし前の付け方なのだろう。 誰にも理解出来ない、理解してもらうつもりもこれっぽちもない。 ラッドが準ずるものは己の価値観や理想――世間一般ではそれを“狂気”というのかもしれない。 只、自身の心に命ぜられるようにラッドは腕を伸ばしす。 高く、天高く――愉快さと不愉快さがごちゃ混ぜになった感情が見えた。 声を張り上げて、バズーカを肩に担いで、ミュウツーを呼びつける。 「先ずはこいつからブチ殺そうぜ。なぁ――この“クソ宇宙人野郎”!!」 跳び出した意味は、この場での一時休戦を示す言葉。 共同目的は――マークネモの破壊。 ◇ ◇ ◇ 「クソ……なんなんだ、こいつらはああああ!!」 マークネモ内部でネモが叫ぶ。 かれこれ5分、いやそれ以上の時間が経った事だろう。 マークネモの不調は今に始まった事ではなく、半ば諦めがついている。 先程から何度も問題の解決を試みているが無駄なのだ。 どこか落ちつける場所でもあれば話は変わるかもしれないが、直ぐには期待出来ない。 その事は今は置いていく。そうだ。ネモの叫びには別の理由がある。 視界に映る人影の全てがネモには気に食わなかった。 「ギアスが使い物にならないだけで、これほどとは……!」 ネモの視界に映る人影は合計四つ。 強者から潰そうと言うのだろうか。 急に連携を取り出し、しぶとい抵抗を続けるラッドとミュウツーの二人が特に眼につく。 次に銀色の奇妙な物体を展開し、必死に逃げ惑っている詩音の姿が。 そして何よりも厄介な存在、ブレンヒルト・シルトは未だ詩音の傍で意識を失っていたままだ。 厄介というより、寧ろ邪魔でしかない。 ブレンヒルトの存在が詩音への決定的な攻撃を鈍らせる。 ならばラッドとミュウツーの方をと思いたくもなるが、この二人も一筋縄ではいかなかった。 「おい、てめぇ! なんか良い手段でも考えろや。今回だけは乗ってやる」 「知るか」 一足す一は二となって一よりも大きい。 あまりにも判り切った事だが、ラッドとミュウツーの二人はネモの予想以上に善戦していた。 信頼関係もへったくれもない、綱渡りのロープのように不安定な関係ともいえる。 元々互いに単独での戦闘を得意とするせいなのだろうか。 それぞれ好き勝手に動き合い、それが功を奏して不思議と噛み合っていた。 偶然にも片方がマークネモに狙われた際に、もう片方が攻撃を開始するように。 「ああ? てめぇ、真面目に考えてねぇだろ。ちっとは努力ってモンを知りやがれ」 「……くだらん」 だが、それでマークネモにダメージがあるかと聞かれればそうとも言えない。 幾らミュウツーやラッドのポテンシャルが優れているといっても、彼らに2メートルを超す身長もない。 対してマークネモは約4メートル程。 三倍程の大きさの敵を相手にするのは容易い事もでないのは至極当然な事だ。 所詮あまり意味を成さない攻撃しか、ミュウツーとラッドには加える事が出来ない。 しかし、それでも全くの無意味というわけでもなかった。 マークネモの手元を狂わせるような、そのくらいの妨害ぐらいは可能だ。 そこにミュウツーとラッドの身体能力が加われば、致命傷を喰らうまでには届かない。 「あ、あはははは! そうです、その調子で早く殺っちゃってください!」 更に詩音の存在がマークネモの足枷になっていた。 詩音は流石に自分がマークネモを打ち倒す程の力を持っていると思っていない。 よって碌に戦闘に参加はせずに身の安全に専念している。 じっと、月霊髄液を駆使し、そしてブレンヒルトを盾に構える。 死にたくはないとう一心から詩音が見せる隙はあまりにも少なく、ネモの焦りを誘うのにはもってこいだ。 ブレンヒルトが傷つくことはナナリーの望みではない。 ましてやブレンヒルトが巻き添えで死ぬこととなれば――明らかな痛手となるのは言うまでもない。 己の主、守るべき主であるナナリーのためにネモはこの状況をどうにか打開しようと一人奮戦していた。 終わらない膠着状態。しかし、不意にその状況に変化が訪れてゆく。 「うらああああああああ!」 依然として続いていたブロンドナイフの掃射をラッドが切り抜ける。 尋常でないない速度で一気に突っ込んでくる姿は、大砲から撃ち出された弾丸のようだ。 身体の節々には大き過ぎる赤黒い傷が目立つ。かすり傷といえど大きさが大きさだ。 かなりの痛みを伴っているだろうが、ラッドに臆する様子はない。 未だ気づかぬ、不死者の恩恵を存分に享受しながら目の前の敵へ猛然と疾走。 更にラッドは右腕に持ったバズーカを放つ。弾丸から弾丸が飛んでゆき――爆発が起きる マークネモが左腕を振い、飛来した弾丸を叩き落としたためだ。 休める暇は与えない。そう言うかのように、マークネモから最早何度目かわからないブロンドナイフが射出。 十は超えているブロンドナイフの群れが我先にとラッドへ迫る。 「……わかんねぇのかな。俺はさ……こういう感じの方が燃えちゃうわけよ」 だが、ラッドの表情に焦りは見られない。 軽く首を回して、意味深なセリフを吐いて、そしてまるでバネのように宙へ身を投げ出す。 何故か自分から鋭い光を持ち続けるブロンドナイフの方へ。 そして――咆哮。 「こんな風に! 気ぃ抜いちまったらサックリ逝っちまうこんな状況がよおおおおおおおおおおお!!」 ブロンドナイフを蹴り飛ばし、ラッドが斜め上へ跳躍する。 時間差で離れた次のブロンドナイフに向かい、またもや同じように。 三角跳びの要領でラッドはどんどんと宙へ舞い上がる。 一瞬の判断、ブロンドナイフの軌道を読み間違えれば命はない。 たとえ不死者の身体を以ってしても、追撃の分も考えれば再生が追いつかないだろう。 しかし、ラッドはやって見せた。 リスクなど微塵も恐れぬ様子で、出来る事がさも当然のような様子すらも漂う。 「いい気になるな! キサマッ!!」 対してネモがマークネモの左腕を奮う。 チョロチョロと跳び回るラッドが心底憎らしく思う。 だから今回もまた遠慮なく拳を向けることが出来た。 楽々とラッドの全身を押し潰すことの出来るマークネモの左腕。 ナナリーの抵抗は未だ続いているが、ブレンヒルトごと詩音を殺そうとした時かは緩い。 好都合だ――同時にナナリーの悲しむ顔が浮かんだが仕方ない。 此処でラッド達を殺しておかなければ、間違いなくナナリーの障害となり得るためだ。 そんな時、ネモの視界に何かが映った。 「な……に……?」 それは銀色の逆向けになったスプーンだった。 マークネモの横を過ぎ、一直線に何処かへ向かっていく。 何処からやってきたのか。その疑問は直ぐに解けた。 問題はそのスプーンが向かう先だ。 やがてネモは知った。 スプーンの主、ミュウツーの恐るべき意図を。 そう。そのスプーンが向かう先には人影が二つあった。 「――ッ!?」 簡単な消去法だ。 ラッドでもミュウツーでもなければ残っているのはあの二人。 詩音とブレンヒルトの方へスプーンが飛んでいくのをネモは眼で追った。 このままラッドへ向けようとした腕を伸ばせば叩き落とせるだろう。 しかし、それではまたもラッドを仕留めきる事が叶わないかもしれない。 それにだ。幾ら詩音と言えども自分の身に危険が及べば何らかの手段を講じるだろう。 今までずっと展開させていた、銀色のあの奇妙な物体でどうにかするに違いない。 咄嗟にネモは思った。だが、そう結論づけた瞬間、唐突にビジョンが脳裏に浮かぶ。 何故かこの瞬間だけ、今までのどんな時よりも色濃く――ギアスがブレンヒルトの未来線を読み取った。 そこには胸からスプーンを貫かれ、口元から赤い鮮血を零す姿が。 詩音に身代りにされ、絶命の瞬間を迎えるブレンヒルトが居た。 「園崎詩音! キサマというヤツはああああああああああ!!」 何故ブレンヒルトの結末がハッキリと観えたのかは定かではないが心当たりはあった。 それはナナリーがブレンヒルトに抱いていた感情による所以のため。 決して恋愛感情ではないが、信頼を結んでいたのは確かだ。 この戦闘中にもナナリーは頻りにブレンヒルトの様子を気にしていた。 ネモから与えられたといえども、未来線を読むギアスはナナリーの力だ。 この一瞬だけでも、制限されたギアスの力がナナリーに答えのかもしれない。 ブレンヒルトを、死なせたくはない彼女に危機が降りかからないために。 だが、生憎ネモにとってはそれは都合が良いとは到底言えなかった。 「まさか、あいつはこれを狙って……!」 やられた。ネモは忌々しげに視線を飛ばす。 やがてミュウツーと視線が合う。特に変えようとしない、何を考えているかわからない表情。 いや、きっと観察しているのだろう。 ネモがどう動くか。ネモがブレンヒルトを見捨てるか否かを。 どう動こうとも隙があれば見逃さない。 言葉に出さずともミュウツーの眼を見ればそう言っているのは判る。 そしてこうしている間にも刻一刻とブレンヒルトの元へスプーンは近づいている。 『ネモ! ブレンヒルトさんを守って!』 「……くっ! ナナリー!!」 ナナリーの言葉が痛い程に伝わってくる。 命令ではない、必死に懇願する感情を確かに感じ取る。 腕だけでなく、身体ごとブレンヒルトの危機を消し去って。そんな願いを感じた。 自分はナナリーの騎士だ――ならばナナリーの言葉に逆らう理由などある筈がない。 しかし、ネモは納得がいかなかった、出来るわけがなかった。 「何故こんなコトに……」 ナナリーは優しい少女だ。 争いごとは好まず、きっと今もマークネモの中で身が引き裂かれる思いに違いない。 自衛のためとはいえ、破壊をもたらすナイトメアに乗って闘う運命を突きつけられたあの日が全てを変えた。 その事についてネモが言える事は特にない。 理由はどうあれナナリーを異常な世界に引き込んだのはネモ自身だ。 弁解はしないが、只どうにも腑に落ちなかった。 今も、自分の身を顧みずにブレンヒルトを助けようとするナナリーが。 出会ってから10時間程しか経っていない人間のために、ここまで出来る彼女が。 どうしてラッドやミュウツー、詩音のような存在よりも危険を背負わなければならないのか。 ネモにはどうしてもその現実が我慢出来なかった。 不満を抱えるだけでは駄目だ。 この状況は、この歪んだ世界は何も変わらない。 ネモは全ての意識をマークネモの左腕に注ぐ。 ブレンヒルトを奪い、その後全力を以って三人を皆殺しに――刹那、ネモは己の異変を感じ取った。 今までに襲ったどれよりも強く、そして決定的な違いを。 身の危険を覚悟させる、予想だにしなかった異常が唐突に顔を出す。 「こ、これは……?」 見ればマークネモの全身がドロドロと溶け出している。 10分間、この場でのマークネモに与えられた起動時間のせいだ。 再びマークネモを呼び出すには2時間の間隔を挟まなければならない。 ナナリーとネモにとって知りようもなかった事実だが、今更知ったところでどうにか出来るものでもはない。 仕方ない。咄嗟にネモはこの場からの離脱を試みようとする。 知らなかった事が多すぎた。 新たに知りえたマークネモの異常を次に生かすためにも、一旦体勢を整えるべきだろう。 ラッド達を仕留めきれない悔しさはあるが、ナナリーの安全とは換えられない。 しかし、ネモの意思に反するものがあった。 「ナナリー!?」 『ブレンヒルトさんを……死なせたくはない!』 マークネモの左腕が未だもブレンヒルトの方へしっかりと伸ばされていた。 もう、既に全身がボロボロと崩れ落ちているにも関わらずに。 やがてスプーンを代わりに受け、マークネモの左腕が音を立てて崩れる。 それほどまでにも時間が迫っているのだ。 直ぐにでもマークネモは形を止めることが出来なくなるだろう。 ナナリーもその事はわかっているに違いない。 判っている上での行動だ。ネモにもそれは良く判っている。 何故そうまでして――そんな疑問を問う事は出来ない。 ナナリーの性格故に、彼女がブレンヒルトを見捨てられないの事も予想がついた。 「ナナリー……私は、私は……!」 マークネモの崩壊が進むと共にネモの意識も薄れていく。 状況を考えればマークネモが居なければナナリーの命はない。 そんな事はさせない。絶対にさせるわけにはいかない。 視界の隅ではさも下品そうに笑い、そしてバズーカをこちらに向けたラッドの姿が見えた。 それでもネモは必死にマークネモの存在を確立させようとする。 避けられない運命に必死に足掻くその姿は――ネモの意思に反し、酷く哀れ染みたものであった。 「私はお前の騎士だ! お前は――私が守ってみせる、ナナリー!!」 そして状況は変わり出す。 マークネモの崩壊――それが全ての終わりきっかけでもあり、始まりの加速でもあった。 ◇ ◇ ◇ 時系列順で読む Back ――――――geass Next ――the code geass 投下順で読む Back ――――――geass Next ――the code geass Back Next ――――――geass ナナリー・ランペルージ ――the code geass ――――――geass ブレンヒルト・シルト ――the code geass ――――――geass 園崎詩音 ――the code geass ――――――geass ミュウツー ――the code geass ――――――geass ラッド・ルッソ ――the code geass
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彼の者もまた―――― ◆KKid85tGwY 街。と、呼べばいいのだろうか。 材質も様式もまるで未知の物だったが、明らかな人工建造物が建ち並ぶその景色は 街と呼ぶ他は無い場所であった。 見知った物は何1つとしてない、全く得体の知れない場所に突如連れて来られ尚 その男の様子には、疑問の色は有れど怯えは無い。 巨体の男。 天を衝く長身に、高密度の筋肉が内からはち切れん程発達している。 短く切り揃えられた髪は天に逆立ち、瞳は円く見開いていた。 男の名はゾッド。 二つ名と共に”不死の(ノスフェラトゥ)ゾッド”とも呼ばれる。 100年を超える戦歴で、上げた首は1000を超え、戦場の神とすら呼ばれる伝説の傭兵。 そして男は真に人に在らざる存在。 この世ならざる者に、転生した使徒。 殺し合い。ゾッドがこの地に召喚された理由は、そう説明された。 前触れ無く突き付けられた、殺し合いと言う要求。 それにすら、ゾッドが恐れも怒りも抱く事は無い。 沸き立つのは、これより行う戦いへの猛りと喜びのみ。 本よりゾッドが傭兵となり戦場に出るのは、如何なる大儀情義にも因らずゾッド自身が戦いを求める故。 それは如何な戦争で、何処の軍に付こうが変わらない。 300年に渡る闘争の日々。 その中でひたすらに殺した。数多の敵を、正に殺戮したのだ。 全ては己が満足し得る、強敵との闘いを得る為。 だから意味の無い殺戮であろうと構わない。 己が命を賭けて抵抗する者を全霊を持って打倒する、そんな戦いこそがゾッドの求める物なのだ。 命を繋ぐ為の戦いではなく、闘争の為の命 それこそが如何に時を隔てようとも変わらぬ、ゾッドの生き方に他ならない。 早速行動に移る為、デイパックの中身を漁り支給されたと言う武器の確認する。 見付かったのは1本の剣。 剣自体は扱いなれた得物ではあるが、細い刀身に反りの有る見慣れない形状の物であった。 その上ゾッドが武器とするには、些か小さい。 しかし外れかと落胆しながら手に取れば、材質と言い重心と言い 意外な程に良く出来ている。 満更鈍らでもないのかと、切れ味を試すべく地に切りつける。 この地は見た事も無い濃紺色の材質で、石の様に堅く塗り固めてあった。 それが細身の剣に拠って、容易く切り裂かれた。 ゾッドはこの意外な業物を、武器として携える事として 目標も定めず出発する。 地図を見た所で、何か当てが有る訳でも無し。どうせここは、殺し合いの為の会場なのだ。 適当に歩けば、その内誰か接触出来ると踏んだ。 そして男は女と出会った。 曲がり角の向こうの物陰から、奇妙ないでたちのまだ幼さの残る少女が現れる。 これが創作なら、恋物語でも始まりそうな出会い。 しかし、ここは殺し合いの場であり 何より相手は、人に仇なす魔性を討つ使命を帯びた巫女であった。 ◇ ◇ ◇ 無人の街に和服を着込んだ長い黒髪の少女が1人。 少女の名前は鷺ノ宮伊澄。 代々妖怪退治を生業とする鷺ノ宮家の末裔。更にその中でも、歴代最強の力を持っている。 そして現在の伊澄は、かつて無い強敵に挑んでいた。 何しろ攻める手掛かりが、まるで見えないのだ。 どう目を凝らし頭を働かせても、付け入る隙さえ見付けられない。 苦戦の末、この強敵に対し伊澄はある推測をする。 『このデイパックは開かない』と。 そう考えデイパック攻略を諦め様とした瞬間、手元で弄んでいたジッパーが滑り出した。 苦節10分の末ようやくデイパックを開けた伊澄は、中の荷物を改める。 食料や地図等の存在を確認し、武器の確認に移る。 まず目に付いたのは、4つの手榴弾。 世間知らずの伊澄と言えど、テレビ等で見た事のある物だが 実物をこうして手に取るのは初めてだ。 説明書によれば、ピンを抜いて投擲して使う物らしい。 普通の人間にとっては、強力な武器になるだろうが 伊澄にとってはハズレ武器でしかない。 ピンを抜いて投げるという言葉にすれば簡単な作業も、伊澄が実戦で行うには難し過ぎるし 何より伊澄にはもっと強力で使い慣れた武器、『術式八葉』が有る。 2種類目は、巨大な突撃槍と思しき武器。 それが伊澄の手から零れ、地面に落ちる。 明らかにデイパックより大きい物体。 どうやって入ったのかと疑問が沸くが、今更そんな事を考えても仕方ないと気持ちを切り替える。 武器として扱えるかと言えば、勿論答えは否だ。 どうやら使用者の法力を使う、武法具らしいが そもそも持ち上げる事も出来ない物を、どうやって扱えと言うのか。 しかしこれも捨て置くのは勿体無いので、デイパックの方を動かし苦心して仕舞う。 他に武器になる物は無い。 出来れば護符が欲しかったが、無いもの強請りしても仕方ないので 武器も持たずに出発する。 目的は最初に集められた場所に居た古くからの親友、三千院ナギとの合流。 そうあの場所で多くの声に混じって、でも確かに聞いたのだ。ナギの声を。 あの場で行われたムルムルの説明は、伊澄にとっては早口過ぎてほとんど聞き取れなかった。 何とか理解出来たのは、殺し合いが行われている事と武器が支給された事位か。 とにかくこんな場所でナギを1人にしておく訳にはいかない。 ナギは今も暗闇に包まれ怯えているに違いない。彼女がそうなったのは、自分の責任でも有るのだ。 一刻も早く助けに行かなければ。 そして女は男と出会った。 曲がり角の向こうの物陰から、奇妙ないでたちの屈強な男が現れる。 これが創作なら、恋物語でも始まりそうな出会い。 しかし、ここは殺し合いの場であり 何より相手は、魔性を内に秘めた血塗られし狂戦士であった。 ◇ ◇ ◇ 男――ゾッドは伊澄を一瞥する。 まるで鍛えられた様子の無い、細身の身体。覇気も闘気も感じない。 ゾッドは伊澄を求める強者から程遠いと判断し、眼中に無きかの如く立ち去ろうとしだした。 「…………あなたは、人間ではありませんね?」 その背中に伊澄の声が掛かる。 ゾッドは足を止め、伊澄の方へ向き直った。 先程とは気配が違っている。 戦場を知る、兵のそれに。 「ほう……見抜いたか、我が身が人ならぬ物だと。ならば小娘よ、貴様もまた……只の人間では無いと言う事だな」 ならばとゾッドも気を放つ。 戦場において百軍を震え上がらせた、狂戦士の闘気を。 ゾッドのまるで質量を持って叩き付けて来る様な威圧感に、伊澄はかつて無い脅威を覚える。 自分の知る如何なる妖怪とも魑魅魍魎とも違う、魔性を帯びた存在。 しかしその血生臭い気配から、人に仇なす存在だと容易に読み取れる。 だからこそゾッドを見て早々、自分の意識に”仕事スイッチ”を入れたのだ。 「あなたが人に仇なす存在なら、私は鷺ノ宮の一族の者として討たなければなりません」 「ク……ククク……クハハハハ!! 宣戦布告と言う訳か、面白い。それ程の大言を吐いたからには小娘、オレを失望させるな!!」 言うが早いか、ゾッドは伊澄に向かって踏み込んだ。 一足飛びに間合いが詰まる。ゾッドの巨躯からは想像もつかぬ早さ。 踏み込む勢いのまま手に持つ日本刀を天へ掲げ、真っ向から振り下ろした。 怪物の力任せでは決して叶わぬ早さの武技で、伊澄の顔面へ剣が落ちる。 それを伊澄が、指先だけで受け止め――――切れない。 剣圧に負け、身体毎背後の街路樹に叩き付けられた。 ゾッドは伊澄に、自分の剣が届かなかった事に驚く。 見えない力に阻まれた様な手応え。恐らく実際に伊澄が、見えない力を振るったのだろう。 「…………八葉…………六式……」 伊澄の声が聞こえる。 人知を超えた使徒の勘が、戦場で鍛え抜かれた武人の勘が ゾッドに危険を告げた。 「…………撃破滅却」 ゾッドは咄嗟に後ろに飛び、両手を面前で交差し防御の構えを取る。 次の瞬間、閃光と爆音がゾッドを包んだ。 術式八葉における最強の術、『八葉六式・撃破滅却』。 伊澄が放ったその術の爆発を受け、ゾッドは後ろへ仰向けに倒れた。 木に叩き付けられた痛みから目に涙を浮かべながら、伊澄はゾッドの様子を窺う。 全身に夥しい傷を負い、一部は内臓まで達している様子だ。 直撃こそ避けられたものの、爆発の余波を受けたのだから重傷も当然だろう。 倒し切れなかったゾッドの耐久力にこそ、驚嘆に値する。 どうにも術の調子が悪い様にも思える。 威力が僅かに弱まっている上、何より消耗が激しい。 ゾッドへのトドメ刺したいが、もう少し時間が経たなければ『撃破滅却』は使えない。 「驚いたぞ……」 不意にゾッドがする。 「何の道具も使わず、これ程の威力を出すとはな…………」 ゆっくりと体を起こすゾッド。 「…………貴様が初めてだ。オレの体にこれだけ多くの傷を付けた人間は…………」 そのゾッドの身体に――――内から異形を現れた。 「三百年に渡る殺戮の日々においてな!!」 その身体を更に肥大させた巨躯。 全身から黒い体毛を生やし、頭からは牛角が伸びる。左の角は何故か根元より折れていた。 あれだけ帯びていた傷も、見る間に直っていく。 それは正しく超越者の姿。 しばしゾッドの変容を、呆然と眺めていた伊澄だが やがて何か意を決した様子で、ゾッドに背を向け走り出す。 「どこへ行く? まさか逃げるつもりか? よもや逃すと思うか!!?」 ゾッドは怪我も治り切らぬ内に立ち上がり、伊澄を追う。 既にかなりの距離を稼がれていたが、ゾッドの伊澄に対する体力的優位はそれを補って余りある。 たちまちに両者の距離は縮まった。 伊澄はビルに挟まれた2m程の幅の路地に入った所で立ち止まり、ゾッドを待ち受ける。 そしてゾッドも路地の入り口前で立ち止まり、伊澄と睨み合う。 ここまでは伊澄の作戦通り。 伊澄の立てた作戦は単純。 ゾッドから逃げて距離を取り、『撃破滅却』を使えるだけの力が回復するまで時間を稼ぐ。 そしてこの路地の様に狭い空間で、ゾッドを待ち受ける。 後は攻撃を仕掛けて来たゾッドに、カウンターで『撃破滅却』を叩き込む。 恐らくゾッドの異常な耐久力に通用する術は、『撃破滅却』のしかも直撃のみ。 ならばこちらは待ちに徹して、ゾッドが攻撃する隙を狙うのが最も効果的な戦術。 この路地ならゾッドが仕掛けてくる方向も限られる。 如何にゾッドの踏み込みが速くとも、タイミングを合わせる事は可能の筈。 「成る程、左右を壁に阻まれたその場所ならオレの攻め口も限定されると言う訳か。 だが、そんな事でオレの動きに対応し切れるとでも?」 ゾッドは日本刀を上段に構える。 今のゾッドの巨体には、まるで日本刀が玩具の如く小さい。 その日本刀を天に掲げたまま伊澄目掛け、轟と踏み込んだ。 先程の踏み込みより更に速い。 が、それでも真っ向からの直進。何とか対応出来る。 そう思い『撃破滅却』を撃とうとした刹那 2歩目の踏み込み。 しかも進行方向をほぼ直角に曲げ、ゾッドは壁の向こうへ破り抜けてビルの中へ姿を消した。 意表を付かれ呆気に取られた伊澄は、瓦礫に足を取られ 後ろに尻餅をついた。 その直後ゾッドが壁を破り抜け、先程まで伊澄が居た地点を斬り付けた。 日本刀がアスファルトに、深々と突き刺さる。 ゾッドの体勢は日本刀を、両手で握り締めた状態。 この体勢からなら、『撃破滅却』は避わせない。 期せずして伊澄に訪れた、絶好の勝機。 それを物にすべく、伊澄は術を放つ体勢に入った。 「八葉六式」 同時にゾッドの背中から、蝙蝠の様な羽が生え広がり 「撃破滅却」 それが羽ばたき、暴風を生んだ。 宙を舞いながらも、伊澄は『撃破滅却』を放つ。 それが直撃したか否かも確認出来ないまま 伊澄は路地を抜け、車道脇の植え込みまで吹き飛ばされた。 今日2度目の閃光と轟音。今度は側面から叩き付けられた。 羽ばたきに拠って生んだ突風と相殺しても、尚威力は殺し切れず ゾッドは爆発に全身が焼かれ、地面を何mも転がされた。 剣を手放さなかったのは、ひとえに矜持ゆえ。 使徒の自己治癒力が傷を治していくが、完治にはもう少し間が要る。 その間痛む身体を無理やり起こし、周囲を警戒する。 幸い、伊澄が追撃してくる様子は無い。 その間にも傷がふさがっていく。 怪我の8割方治った所で、ゾッドは伊澄が飛ばされていった路地の反対側に駆け出す。 そこは大きな道路が伸びていた。 そして伊澄の姿を見付ける。 道路の上を渡る橋から、伊澄は険しい視線を送っていた。 伊澄はどうあっても、この場でゾッドと決着を付けたいらしい。 面白い、とゾッドは笑う。 あれ程の強者が仕掛けてくる勝負。どうして無碍にする事が有ろうか。 黒い剣士や髑髏の騎士と対峙して以来の喜び。 沸き立つ血のままに、ゾッドは勝負に踏み出す。 伊澄が次に勝負の場として選んだのは、歩道橋の上。 下手に狭い場所を選んでも、逆にこちらが敵の出方が見えず不利になるだけ。 ならばいっそ全方位を見渡せる場所に立ち、敵を待ち構えればいい。 自分が『撃破滅却』を叩き込むのが早いか、敵がこちらに攻撃を当てるのが早いか。 何れにしろ一撃勝負。己の術者としての腕に賭けるのみ。 ゾッドは羽を羽ばたかせ、空中に飛翔。 そして伊澄の居る歩道橋から離れていく。 逃げるのかと思ったが、50m程離れた空中で静止し伊澄に向き直る。 加速の為の距離と言うわけか。 ゾッドは、一旦身体を縮め 弾丸の如き急発進で伊澄に掛かっていった。 途轍もなく速い。 だが補足出来る。 今の自分は常の鈍な鷺ノ宮伊澄ではなく、鷺ノ宮の一族最強の術者なのだから。 捉えた。 そう確信する。 途端、ゾッドが急旋回する。 遮蔽物の無い空中で何故? そう伊澄が疑問に思う内に、弾丸と化したゾッドが 伊澄から向かって歩道橋の左端部分を貫いた。 歩道橋を支えるちょうど片側部分が、ゾッドと言う砲弾によって爆砕する。 余りの揺れに、伊澄はその場に倒れる。 それでも勝負を捨てる訳には行かない。必死にゾッドを目で追う。 ゾッドは伊澄と一定の距離を置きながら、空中を旋回し 歩道橋のもう片側部分を破砕した。 支えの無くなった歩道橋は、伊澄を乗せたまま引力に引かれ自由落下。 が、途中で止まる。 空中に静止したゾッドが、両手で欄干を持って歩道橋を支えていた。 そして両手を交差し、歩道橋は縦方向の軸を中心に半回転。 伊澄は呆気無く、歩道橋から零れ落ちる。 約2mの高さから落下し、地面に叩き付けられた衝撃が伊澄の身体を走る。 更にその上から、歩道橋が落ちて来た。 自分の直上に落ちて来た部分は、術で爆砕。 何とか直撃は避けるも、これで全ての力は使い切った。 落下した歩道橋が地を揺らし、至る所の骨が折れた伊澄を痛め付ける。 轟音が鼓膜に叩き付けられ、何も聞こえなくなった。 伊澄は悟る、自分は敗北したと。 最早ここからゾッドを相手に逆転劇を演ずる等、絶対に不可能だ。 自分は術者として力を尽くしたのだ。その事に悔いは無い。 だが、このまま座して死を待つと言う訳にはいかない。 あの怪物は危険過ぎる。 放置すれば、更なる被害者が出るだろう。 そしてナギにも累が及ぶかもしれない。 だから、最後までゾッドとの戦いを止める訳にはいかない。 勝てないまでも、少しでもゾッドに手傷を負わせねば。 伊澄はデイパックから手を抜く。 僅かな動きでも激痛が走るが、必死に耐える。 そしてデイパックから1つの武器を取り出した。 「何をしている?」 背後からゾッドの声が掛かる。耳がおかしくなっているのか、もうほとんど聞こえないが。 「貴様の心臓はまだ動いているぞ。戦え!! 肢体がちぎれるまでこのオレと……」 伊澄は武器を和服の袖に仕舞う。 「これまでか……!? こんなものなのか!? 貴様の力は……!? 戦えぬのなら……その体引き裂く!!」 ゾッドは伊澄の身体を、両手で軽々と掲げ 両断すべく、両手に力を込める。 凄まじい痛みが伊澄を襲うが、同時に奇跡的な好機が訪れた。 今のゾッドは、ちょうど伊澄の斜め下の位置に居る。 そして袖の中に隠し持った武器の存在には気付いていない。 伊澄は袖の中でピンを抜いた手榴弾を、放り落とす。 (さようならナギ…………どうかあなたは死なないで) この至近距離で手榴弾の爆発を受ければ生きていられない事位、伊澄にも分かる。 だがゾッドと言えど、無事では済まないだろう。 次の瞬間、伊澄の身体はゾッドの手で急激に振られ 手榴弾を巻き込んで、地面に叩き付けられた。 自分の身体の下から発する光。 それが伊澄の最後の知覚となった。 ◇ ◇ ◇ 全身の傷が癒えていく。 元々ゾッドが受けた、爆弾の被害は大した事は無かった。 咄嗟に伊澄の身体を防護幕代わりにして、爆弾を覆い地面に叩きつけたからだ。 伊澄の身体は四散しゾッドも爆発の余波を受けたが、被害を最小限にする事が出来た。 文字通りの意味に、伊澄は肢体がちぎれるまで戦った事になる。 伊澄のデイパックを拾い、中身を改めた。 中からは先程の爆弾が3つと、ランスの様な武器が出て来る。 説明書きの様なものが添えられている。 それによると、このランスは法力僧が妖怪を退治する為に作った物らしい。 (……ククク、面白い。破魔の武具を、魔なるこのオレが使うか!) ランスを右手に持ち、剣を左手に持つ。 長短一対の二刀流。戦場での勝手は悪く無さそうだ。 しばらくはこれで、いって見るか。 爆弾の方も、説明書きが付いていた。 使い方はピンを抜いて投げるだけ。 ゾッドの膂力が有るならば、頼る事も無さそうだが 一応は持てるカードとして、取っておく。 それにしても、あの様な妙な術を使う兵が居たとは。 あの取るに足らぬ様に見えた小娘が、久しく出会う事の無かった強者であったとは。 全く未知の強者。その存在に、ゾッドの心は沸き立つ。 力量は申し分無し。だが、些か脆過ぎた。 まだ喰らい足りぬ。未だ満足は見えぬ。 ならば次なる敵を求めるだけ。 どうやらこの殺し合いに集められた者は、見た目から戦力を判断出来ないらしい。 ならば出会った者、片っ端から挑んで行けば良い。 取るに足らぬ弱者なら、唯死ぬだけ。 強者ならば、そのまま見えるのみ。 果たしてこの殺し合いに場だけで、どれ程の強者と見えるか。 まだ見ぬ強者に思いを馳せ、ゾッドは殺戮の地に臨む。 不死の(ノスフェラトゥ)ゾッド、彼の者もまた――――狂戦士(ベルセルク)。 【鷺ノ宮伊澄@ハヤテのごとく! 死亡】 【一日目深夜/H-9】 【ゾッド@ベルセルク】 [装備]穿心角@うしおととら、秋水@ONE PIECE [支給品]支給品一式、手榴弾x3@現実、未確認(0〜1) [状態]疲労(小) [思考・行動] 基本:強者との戦いを楽しむ 1 出会った者全てに戦いを挑み、強者ならばその者との戦いを楽しむ。 [備考] ※未知の異能に対し、警戒と期待をしています。 時系列順で読む Back うふふふふ Next 二人の声重な…てるよな? 投下順で読む Back うふふふふ Next 二人の声重な…てるよな? GAME START 鷺ノ宮伊澄 GAME OVER GAME START ゾッド 059 まろやか牛風味
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アニメ生徒会役員共は2010年7月より放送。 主幹事はチバテレビ 声優 津田タカトシ/浅沼晋太郎 天草シノ/日笠陽子 七条アリア/佐藤聡美 萩村スズ/矢作紗友里 津田コトミ/下田麻美 横島ナルコ/小林ゆう 三葉ムツミ/小見川千明 畑ランコ/新井里美 五十嵐カエデ/加藤英美里 出島サヤカ/田村睦心 スタッフ 原作:氏家ト全(講談社 週刊少年マガジン連載) 監督:金澤洪充 シリーズ構成:中村誠 キャラクターデザイン・総作画監督:古田 誠 美術監督:野村正信(美峰) 色彩設定:小松さくら 音響監督:髙橋秀雄 音響制作:ドリームフォース 音楽:森悠也 音楽制作:スターチャイルドレコード アニメーション制作:GoHands 製作:桜才学園生徒会室
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☆ 寂れた村の中、美女―――リサリサは、佇んでいた。 (まさか...こんな...) 突如巻き込まれたこの殺し合い、不可解な点は幾つもあったが、名簿を確認した瞬間、それらはどこかへ吹き飛んだ。 DIO。 エリナやスピードワゴンから聞かされていた、悪の化身。 自分の命の恩人であり義父でもあるジョナサンと共に爆発に巻き込まれ、海に散ったと聞かされていたが... もしも、このDIOが彼らから聞かされていた吸血鬼"ディオ"であるならば、波紋戦士として倒すべきだろう。 だが、そんなことよりも。 (ジョジョ...) 名簿に記載されている『ジョセフ・ジョースター』。 間違いない、カーズとの戦いの果てに死んだはずの息子だ。 なぜ、彼の名があるのか。 実は生きていたのか。それとも、あの都城とかいう男が蘇らせたのか。 そんなことよりも。 そう、義父の代からの因縁の吸血鬼なんかよりも。ジョセフの生死の真偽なんかよりも。 (生きているのなら―――会いたい) ジョセフには、未だ母親であることを名乗ったことはない。 彼との関係は親子ではなく、波紋の師弟というだけだった。 ...彼と親子として普通に接したいと思ったことが、何度あっただろうか。 にも関わらず、彼は逝ってしまった。 最期まで憎まれ口を叩いて、真相をなにも知らぬままその命は潰えてしまった。 そう思っていた彼がここにいるのだ。 だから。いまは―――ただ、会いたい。 もしも彼女を知る者がいまの彼女を見れば、一様に驚愕するだろう。 これほどまでに弱弱しい目をした彼女が、本当にあのリサリサなのだろうか、と。 奇妙な因縁に翻弄された息子の生存は、それほどまでに彼女の精神を骨抜きにしていたのだ。 「―――バギクロス」 だからだろう。 放たれる竜巻に、寸前まで気が付くことができなかったのは。 ☆ 「中々思い切りがいいではないか」 「......」 二足歩行の馬面の怪人―――というより、筋骨隆々の馬が、傍らに立つ紫ターバンの青年に意地汚い笑みを向ける。 「ウィヒヒヒ...そう睨むな。いまは同志だろう」 青年、リュカの殺気を伴う眼孔を向けられた馬の魔物・ジャミはそれを軽く受け流す。 「さて。儂は南へ向かうが...お前はどうする?」 「...僕は、この辺りを探し回るよ」 二人は、それだけを確認すると、すぐにそれぞれの道へと歩き出した。 ここで、リュカという青年について語るとしよう。 彼は、最初に見せしめとして殺された少女の父親である。 彼は、決して薄情な親ではない。どころか、彼は八年間も石にされていたために、ようやく再会できた子供への愛情はこの会場内でもとりわけ深いだろう。 だが、そんな彼でも、妻であるビアンカや仲間のピエールがいるこの殺し合いで優勝して娘を蘇生させようとすぐには思わないはずだ。 ましてや、殺し合いに乗ることを決めたとしても、彼の父を殺し、ビアンカを攫った憎き魔物であるジャミと手を組むなど考えることは決してない。 さて。 そんな彼だが、ご覧の通り、リュカはリサリサを殺すために奇襲をかけ、更には怨敵であるジャミとも手を組んでいる。 なぜか。 勿論、それには理由がある。 時間はほんの数分前にまで遡る――― ☆ 「ん...」 激しい眩暈と共に、意識は覚醒する。 「ここは...」 きょろきょろと辺りを見回し、状況を確認する。 真っ暗だ。 ただ夜だから暗い、といった様子ではなく、本当に暗いのだ。 だが、そんな中でも自分の手足はくっきりと見える。実に奇妙な空間だ。 どこだここは。 なぜ自分はこんなところにいる。 「ようやく目が覚めたか」 声が聞こえた。 どこかで聞いたような、それでいて思い出したくないなにかを思い出させるような声が。 振り向いた先にいたのは見る者全てに自意識過剰な印象を植え付ける金髪の男だった。 「貴様だけをここに呼んだのは他でもない。実は、見せしめのことで少々詫びをしたくてな」 見せしめ...?詫び...?なんのことだろう。 思わず首を傾げそうになるリュカに構わず男は続ける。 「見せしめに貴様の娘が選ばれたのは本当に偶然だったのだ。だから―――」 見せしめに、タバサが選ばれた?いったいなんの――― 『そうそう、この首輪には面白い仕掛けがあってな。コイツに強い衝撃を与えたり、六時間毎に行う死亡者放送と共に発表する禁止エリアに踏み込んだりすると...』 「―――――ぁっ」 思い出す。思い出してしまう。 首輪の見せしめ。タバサが殺された。 彼女の血が、肉が飛び散った。 ぼくとビアンカの大切な娘が―――この男に――― 「あああああぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」 絶叫。 思い出した。 オモいだした おもいだした。 タバサがころされた。勇敢なあの子は、あまりに呆気なくころされた。 この男にこのおとこ二コノオトコに! 殺す。 絶対に、こいつだけは! 「落ち着け―――と言っても聞かんだろうな。では、とりあえず『ひれ伏せ。』」 男―――王土の言葉と共に、グシャリ、とリュカは頭を自ら地面に叩きつけ、身動きがとれなくなる。 「ぐ...がぁ...!」 「えぇっと、どこまで話したか...そう、見せしめの詫びをしたいというところだったかな」 潰されそうな重圧に晒されるリュカを余所に、王土は彼へと視線すら移さず指を鳴らす。 「貴様の娘の不運はこの俺も少々不憫に思ったのでな。これから俺の余興に従ってもらう貴様に対してのせめてもの褒美だ」 王土の背後の空間から現れたのは、筋骨隆々の馬面の怪人。 リュカは、そいつの名を忘れない。 憎きこの魔物―――ジャミの名を! 「き、さま...!」 「ブルルル...睨むな睨むな。お前にとっておきのものを連れてきてやったというのに」 ジャミは、いやらしい笑みを浮かべ、背後の空間を弄り引っ張り出す。 それの正体は、金髪の子供であり、リュカのよく知る者。 即ち 「タバサ...?」 「お、おとうさん!」 タバサは、ひれ伏す父に駆け寄り、何度もおとうさんと呼びかける。 「タバサ...本当に、きみなのか?」 「うん...うん...!」 突如消えた身体の重みになんの疑問も抱かず、涙を流しながら抱き着いてくるタバサをリュカは抱きしめる。 温かい。 偽者なんかじゃなく。いまここにいるタバサは本物の、生きているタバサだ。 「タバサ...!」 これは幻想なのか。 それともタバサが死んだことこそが幻想なのか。 どっちでもいい。叶うならば、どうかこのまま目が覚めないで――― 「これでわかっただろう?死者は確かに生き返ると」 王土の言葉で、リュカは我を取り戻す。 そうだ。なにを思ってタバサを連れてきたかは知らないが、リュカが殺し合いに巻き込まれたという事実に変わりはないのだ。 「褒美の存在も確かにしたのだ。それでは、俺の余興に付き合ってもらおうか」 「...なにを言っている。僕には、お前なんかに従う理由はない。ここでお前達を倒して全て終わらせる!バギクロ―――」 「まぁ待て。ヒトキチにも言ったが、冷静さを失えば長生きはできんぞ。『娘の首を見てみろ』」 王土に言われた通り、リュカは呪文の詠唱を遮られ、タバサの首を見ることになる。 彼女の首には―――やはり首輪が巻き付いていた。 あの、一度は娘の命を奪った忌々しき首輪が。 「理解したか?娘を見捨てて俺に歯向かうというならそれでもいい。その時は、娘だけでなくお前の息子もこうなるだろうがな」 「―――――――!!」 絶望の二文字がリュカの胸中に渦巻く。 一度は喪った娘も。伝説の勇者である以上にかけがえのない息子も。 王土の命令に従わねば、全てを失うのだ。 リュカは、すでに逃げ場のないフラスコに閉じ込められていた。 「なぜ...こんなことを...!」 「言っただろう?これは単なる余興だと―――では、俺の命(めい)に従ってもらおうか」 ☆ (まったく、『あのお方』はこういった催しに目がないのだから) 王土のリュカへの依頼。 それは、殺し合いに乗り、他の参加者を殺害してまわること。 娘のみならず、息子までも人質にとられたのだ。 彼が従う他ないのは一目瞭然だった。 (儂も首輪をつけられているのは少々不満だが...まあ、ハンデとでも思っておくとするか) ジャミもまた、殺し合いを混沌に陥れるために主催から派遣された、所謂ジョーカーである。 そのため、リュカは仇敵であるジャミを殺せないし、ジャミもまたリュカを殺しはしない。 一方のリュカはというと。 (ビアンカやピエール...それに父さんまでいるなんて) ビアンカ。リュカの幼馴染であり大切な妻。 ピエール。旅の道中で仲間にした、頼れるスライムナイト。 そしてパパス。 リュカの尊敬し敬愛する屈強な父。だが、彼は死んだはず...なのに。 (父さんがここにいるのも、死者を蘇らせることができることの強調だろうか...) 王土は言っていた。 殺し合いを進める過程で、他の参加者を脱出させることは禁じないと。 始めは意味がわからなかったが、名簿を見てようやく納得できた。 彼らの首輪のランクはわからないが―――できれば、脱出させるその時まで会いたくはないものだ。 そしてもうひとつ。 もしも第三回放送までにジャミとリュカが生き残っていた場合、褒美としてジャミを殺しても不問に問うと。 これにはリュカも疑問に思う。 (ジャミはあの王土の手先のはず。なのに、なぜ殺すことが許されるんだ...?) ジャミはリュカと同じジョーカーである。しかし、しばらく経てば殺してもいい。 確かにジャミは憎むべき敵であるが、殺すのを許可されるとは? (―――いや、考えるのはよそう。僕は、僕のやるべきことをやるだけだ) もしそれも王土の余興とやらなら考えるだけ無駄だ。 殺し合いを進め、ビアンカ、パパス、ピエールの三者を生還させる。 第三回放送までジャミが生き残っていれば、奴を殺す。 いまはただそれだけでいい。 それだけで、いいんだ。 【D-7/一日目/カボチ村/深夜】 【ジャミ@ドラゴンクエストV】 [状態]:健康 [首輪ランク]:怪物 [装備]: [道具]:基本支給品一式、 不明支給品1~3 基本方針:ジョーカーとして殺し合いを円滑に進めつつ愉しむ。 0:基本的に殺してまわる。ただしリュカとは共に行動しない予定。 1:南から見てまわろうか。 ※参戦時期は死亡寸前 ※一人称は小説版の「儂」でお願いします。 【リュカ(主人公)@ドラゴンクエストV】 [状態]:疲労、精神的疲労 [首輪ランク]:超人 [装備]: [道具]:基本支給品一式、 不明支給品1~3 基本方針:ジョーカーとしての仕事を果たし、ビアンカとパパスとピエールを優先的に脱出させる。 0:ビアンカ≧パパス ピエールを脱出させるために他の参加者を殺してまわる。彼らとはできれば脱出させる時までは会いたくない。ジャミは第三回放送後に殺す。 1:この付近から狩ろうか。 ※参戦時期はプサンと出会う前(トロッコの洞窟あたり) ※主催に人質としてタバサとレックス(息子)をとられています さて。 冒頭でバギクロスを受けたリサリサであるが、結果だけを述べると彼女は生存していた。 バギクロスは風の呪文である。 当てやすくはあるが、炎の呪文であるメラや爆発のイオの系統よりは直接的な殺傷力は低い。 とはいえ、そこはバギ系の最高位の呪文である。 如何に波紋戦士であるといえど流石に無傷では済まない。 身を切り刻まれ、身体が引きちぎられそうになるほどの風圧に晒されるが―――運よく耐えた。 彼女の華奢でありながら鍛え上げられた戦士としての身体は、数少ない勝機を勝ち取っていたのである。 だが、運が良かったのはここまでだ。 竜巻によって巻き上げられた彼女の身体は、遙か上空に晒されていたのである。 (このままでは...!) この高さから落下すれば、間違いなく死に至るだろう。 地面への激突まであと30秒程度か。 その刹那、リサリサの脳裏に様々な生存策が駆け巡る。 足から地面に着地し波紋で衝撃を和らげる―――不可能だ。それでも耐えられるとは到底思えない。 どうにかして水辺まで移動―――できるはずもない。この空中では身動きはとれないし、例え水に落ちようがその衝撃はやはり甚大だ。 万事休す―――諦めかけたその時、ふとデイバックの存在を思い出す。 リサリサはすぐにデイバックを漁った。 なにか道具がないか。なにか――― 落下まで残り5秒。 もうなにかを考えている暇などない。 彼女は無我夢中で中にあったものを握りしめた。 ぶつかる―――!! 死を覚悟したその時! 『ドレスフォーム!!』 リサリサの服が一瞬で溶解し、一糸纏わぬあられもない姿が晒された! 彼女の美しき肢体を包むように、白を基調としたコスプレ染みた衣類が彼女のボディラインを際立させる! その間、わずか1秒! そして、地面に激突する寸前、彼女の身体は―――浮いていた! 超能力の類を持たないはずの彼女が、まるでマジックのように宙に浮かんでいたのだ! 「これは...?」 自らが包まれた衣装を目を白黒とさせて見つめ直す。 鏡が無いため全貌はよくわからないが、どうやら衣装が変わっているようだ。 苦し紛れに掴んだモノのせいだろうか。 ...もしも、鏡で己の姿を確認できればおそらくこう思うだろう。 「なんて恥ずかしい恰好だ」と。 いや、あの伝説のテキーラ娘(ジョセフ)の母なのだ。『これはこれでアリ』と思うかもしれないが今はおいておこう。 とにもかくにも、こうして無事に生き残ったリサリサは、先程の竜巻を放った青年に警戒しつつ、息子の安否を望むのだった。 【D-8/一日目/深夜】 【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:全身にダメージ(中)、出血(小)、精神的疲労 [首輪ランク]:超人 [装備]:ペケ@TOLOVEる [道具]:基本支給品一式、 不明支給品0~2 基本方針:ジョセフと会う 0:ジョセフを探し出し、脱出する。 1:DIO(ディオ?)、ターバンの青年には要警戒する。 ※参戦時期はジョセフのカーズ撃破後~ジョセフの墓参り前です。 ※ペケは自立行動が出来ず、常にバッジ型の状態です(ただし、意思は持っています)。 ※現在、ララのコスチュームを装備しています。 GAME START リサリサ GAME START リュカ GAME START ジャミ
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帰り道――――120%悪巧みで書かれた小説です―――― ◆xR8DbSLW.w ◎ ◎ ◎ 「過負荷って何だと思う」 「知りません、過剰な不可思議の略なんじゃないですか。 身近に一人は欲しいですけれど、そんな満足いくような人は中々いませんし。 右往左往するのも納得かもしれませんね。よっぽど大変なのでしょう」 「求めているんじゃなくて、見下したいだけなんじゃないの。だからみんな大変なんだよ。 案外みんなは自分に醜いところはないと思い込んでるし、いや思い込みたいのからかな。自分より下に人がいると、安心するからね」 「あなたは、どうなんですか?」 「ぼくは普通になりたいよ」 「よくそんなへらへらと言えるものですね」 「きみはどうなの?」 「わたしは既に手遅れですよ。何に関してもです」 「そりゃあよかったね――――いや、悪かったのかな」 「ですかね」 ◎ ◎ ◎ なぜこうなった、と訊かれたらぼくが聞きたいと疑問を疑問で返す真似をするだろう。 なんでこんな真宵ちゃんは溌剌としているんだろう、とは心の中では思うけれど、やはり無茶をしているとは傍目から直ぐに分かる訳で。 けれどぼくがなにも言えないのは、真宵ちゃんが、いい意味で暦くんのことを吹っ切れた。 いや、多少なりともまだわだかまりはあるだろう、けれどそれを感じさせないほど、元気でいてくれている。 それが例え無茶でも、もしくは苦茶でも、二つ合わさって無茶苦茶でも。 いい切っ掛けだと信じて。ぼくは放置している。 「ていうわけで、コミカルにいきましょう、コミカルに。暗いのばかりでは疲れます」 「うん、そうだね。時たまには空気を読まず笑い飛ばすのもいいかもしれないね」 まあそんなかんじで、真宵ちゃんが笑いながら、 笑みを浮かべ――――貼り付けながら、喋りかけてくる。ぼくはわざわざその不自然さを指摘したりはしなかった。 「ええ、これぞコミカライズですね」 漫画化されていた。 ちなみにコミカライズにそんな意味はない。 「なんです、戯言さん。その『ぼくが本来は大先輩でアニメ化されるならぼくの方をやってほしいと願いながらも、 まさかの後輩の方に先を越されてやるせなさに暮れている中、それをさせる張本人が目の前にいてどうしようもない憤りを感じる』みたいな顔をなさって」 「十割捏造の嘘ていうのも中々珍しいよね」 漫画化の次はアニメ化だった。 「ま、それはそうとで」と、真宵ちゃんは続け、 どうやら話の続きをするよう。 今現在ぼくらは、互いの情報交換をしている最中である。 真宵ちゃんから話を初めて、放送のこと、死亡者のこと、ツナギちゃんのこと、さっきの大男――――日之影空洞と言う人のこと。 全てがつながった。なにか小規模なパズルを完成させた、そんな感覚。 で、今度はぼくが話をし始め、安心院さんのこととかを話したところで、次の言葉に行く。 「なるほど、つまりは戯言さんは、僕と契約して『主人公』になってよ! と……なんでしたっけ、そう、安心院さんと言う人に言われたんですね」 「……? まあ大体そんな感じだね。それはそうとなんかすごい似ていたね。いまの契約して云々のところ。もしかして声真似得意なの?」 「ええ、わたしはよく加藤英美里さんみたいな声だと近所から評判ですからね」 「やけに具体的だな」 「きっと戦場ヶ原さん辺りは、『その必要はないわ』とか阿良々木火憐さんていう人はきっと『あたしって、ほんとバカ』とか言ってるんですよきっと」 「ぼくはその人たちを知らないし、その人たちの正体が何であるか分かんないけれど、具体的すぎるだろ、って言うツッコミはできるからね」 「それはそうとじゃれごとさん」 「割とシンプルな噛み方だけど、ぼくの呼称は戯言で一貫してくれ」 「失礼噛みました」 まあ一回の失敗を咎めるほどぼくも人間小さくない。 ここはスルーの方向に行こうと思う。よかったね、真宵ちゃん。ぼくが大きな人間で。 「あれ、不思議と戯言さんが自分を棚に上げているような」 「おいおいおい、あらぬ理不尽な申しつけでぼくを陥れようとしないでよ。やだなあ」 「…………そう、ですか」 言い切ったぼく。 そう、後ろめたいことなんて何一つない。 戯言も程々にしてほしいよね、まったく。 「まあともあれです、戯言さん」 「ん?」 「主人公なんていうものは本来誰かがなりたくてなれるようなものじゃないんですよ」 「だろうね、ぼくもそう思う」 「つまるところ、主人公なんてものは宿命なんです。 足掻こうだなんて、それは神を冒涜するかのような行為なんですよ。 そう、言うなれば千石さんにマリオがクリボーにするかような踏みつけをするみたいな、そんな冒涜です」 わたし的には千石さんはこれから何かしでかすとみています、とのこと。 …………誰だよ、千石って。 「まあ努力云々だとかでどうこうできるものではないってことですね。 けれども、それを人為的に行おうとしている安心院さんとやらは、正直言って夢見がちな中学生的思考の持ち主で無い限り。 そんな人が本当にいれば大変危険な事態ですよ、戯言さん。理解しているだろうとは思いますが」 「……まあね」 「そしてそれを真に受けるような人も相当かと思いますが」 「……同感だね、きっとそんな言葉を真に受ける人はそうとうなキチガイに違いない。 けれどぼくはあの人の言葉には、不思議とそれすらも可能にさせる。そんな魔力っつーか魅力があると感じたからね」 もしくはぼくが無力なだけかもしれないけれど。 「ともあれ、余計な伏線はこれからのストーリー展開に支障をきたしますからね。気を付けてくださいよ」 「ダメだしっ!?」 まさかのぼくの完全なる巻き添え! 十割方安心院さんが悪いのに!? 訴訟したら今ぼくは勝てる! 「まったく、わたしという逸材を有しているんですから少しぐらい上手く事を運んでほしいです」 「さっきまで泣いていた人間の言葉じゃないよね! それ」 なんかオーバーヒートしてるけど。 大丈夫か。この子。 色々、背負いこみ過ぎてないといいけれど。 目的を追いかけ過ぎて自分に余計な負荷を与えてなければいいんだけどね。 「まったく、わたしは今度は戯言ハーレムいりですか。やれやれ、人気者はつらいものです」 「待て。なんだその不可解な悪趣味グループは。ぼくはそんなものを組織しちゃいないよ」 「初期メンバーの鳳凰さんは退会してしまいましたからね……。後継ぎを探すのは一苦労でしょう」 「鳳凰とやらはきみの夢の中の話であるし、そもそもあんな一瞬出会っただけの人を一々入れるな! 後継ぎ探すのは簡単すぎて逆に苦労するよ!」 「『あんな一瞬』……ですか。まるでわたしの夢の中をのぞいたかのような言い分ですね」 ……げ。 ……まあ正直言っちゃえば、暦くんの死を乗り越えれた彼女のこと。 今更あの時のことを言っても動揺はしないんだろうけど、それこそ今さらだし。 隠していたこと、っていうのがまあなんていうか釈明がめんどいし、隠したままにしておくか。 「実を言うとね真宵ちゃん…………ぼくは超能力者なんだよ」 …………。 はっきりいって反吐が出そうになった。 何が悲しくてあの島にいた、占い師とおなじ役柄に就かなければならないのか。 不条理だ。……戯言か。 「な、なんですって……っ。ならわたしたちの出会いは……」 なぜか真宵ちゃんは乗ってきた。 ノリノリだ。 まあ話を逸らす上では都合がよかったので特別何を言うわけでもない。 ぼくも話に乗っておく。 「ああ、実を言うと仕組まれたものでね。ぼくたちがこうして話すであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「地味にむかつきますね、その語尾」 「そうなるであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「なんかやめてください! 気持ち悪いです」 ずいぶんな言い草だった。 本人や巫女子ちゃんあたりに謝ってほしい。 「死にたい気分ダ」 「一つのツッコミがまさかの展開に!?」 「例え相手が幽霊であろうとも、ぼくの称号は戯言使い。ぼくの前では悪魔だって全席指定、 正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」 「全面対決ですか!?」 「さあ、十全だから行くよ、お友達(ディアフレンド)。 あなたも戦う覚悟を決めたのなら、防御だの守備だの、そういう甘ったれた言葉を安易に使うのはやめたら。みっともないよ」 「わたしはそんな物理的な意味では戦いをする気はさらさらありません!」 「はぁん? 何でこのぼくがきみの命令に従事しなくちゃなんねーの?」 「ただの横暴ですよ! ていうかいよいよわたしにパクリキャラとか言えなくなってきてますよ!」 「パクリじゃないよ、オマージュだ」 「……くぅ」 あ、折れた。 まさかの展開である。 「そういえば、わたしもパクリキャラを目指そうだとかそんな設定を付け加えられてましたね」 「そうだったね、そういえば。キャラの薄い真宵ちゃん」 「……墓穴を掘りました」 しかし今思えばなんかこれも伏線に見えてくるよな。 なんていうか主人公にはキャラの濃さは付き物だし、同時に主人公と同行する人たち。 いわばパーティメンバーもキャラが濃くなきゃ面白くないからね。 「で、結局どうなりそうなの? 真宵ちゃんのキャラは」 「ふっ、戯言さん。やはりわたし思うのですよ。わたしはこのままのキャラでいようと」 「へえ」 「ですから戯言さん。わたしは貫き通す勇気をもって、これから過ごしていこうかと思っているんです」 「そりゃ御立派だね。ぼくには到底まねできない」 「まあ勇気という言葉を加味することで前向きに誤魔化しているだけで、本当はただの意地っ張りなんですけどね!」 「……」 せっかくいい言葉言ったと思ったら、ぶっちゃけやがった。 「勇気と言う言葉を最後に付ければ大抵の日本語はポジティブに置換できますよ」 「んな馬鹿な事言わないでよ。そんなわけないだろ。日本語はそんな単純なものじゃねーよ」 「……やってみますか?」 「やってみせてよ、きみの惨敗は目に見えているけどね。 そうだな、どっちかが負けたら、お互い知られたくない秘密でもバラそうか」 「秘密の暴露ですか」 「うん、結果的にどんな謝罪なんかよりも一番効率的だと思うからね。 相手の弱みを握るということは。そこから相手を一生脅し続けるのは最高だよ」 ほら。 こんな格好よく言っても言ってることがダメなら格好良くならない。 これが日本語だよ、真宵ちゃん。 「ふふ、その勝負なら……あの時みたいには、なりそうにないですね。いいでしょう、受けて立ちます」 「その無駄な度胸だけは認めるよ」 「飛んで火にいる冬の虫とはあなたのことです、戯言さん」 「なんか入る前からぼく死にかけだよね!? それ!」 「では」 こほん、と咳払いする真宵ちゃん。演出過剰だ。 「まずは小手調べから行きましょう。恋人に嘘を吐く勇気」 「お」 やるね。 やってることは普通に恋人に嘘を吐いているだけなのに、 後ろに勇気と付けるだけで、まるでそれが優しい嘘であるかのようだ――――。 そんなこと一言も言っていないのに。 「仲間を裏切る勇気」 「むむ」 わーお。 結果としては仲間を裏切っただけなのに、まるでそうすることで、 仲間を助けたような行動をとった印象が残る。 ――――そんなことは、一言も言ってないのにね。 「加害者になる勇気」 「お、おお……」 唸らざるを得ない。 ただ単に人に迷惑をかけているだけなのに。 まるで自分から汚れ役を買って出たような男の中の男を見せつけられた気分になる。 ――――そんなことは一言も言ってないのに。 「痴漢をする勇気」 「く……くそ」 完璧に劣勢じゃないか。 痴漢という卑劣極まりない(ちなみにぼくが崩子ちゃんを抱き枕……もとい奴隷……もとい「ともだち」にしているのはこれに含まれない) 犯罪を犯しているのにも関わらずに、まるで別の目的があって、その確固たる目的のためにやむなく冤罪を被ってあげましたよ的なものを感じる。 ――――やっぱそんな事は一言も言ってないのに。 「怠惰に暮らす勇気」 「こ、これは……」 最早後がない。 何もしてなく無駄に時間を浪費しているだけのはずなのに。 わざわざあえてその境遇に身を置き、大義のため、貧窮にあえいでいるかのようでさえあった。 ――――そんな事は一言も、本当に一言も言っていないのに! 「負けを認める勇気」 「…………ま、負けを」 と。 言いかけてぼくは止まる。 い、いや待ってよ。 この戯言遣い、精々が小学生に口喧嘩に負けるのか……? お、落ち着くんだ、ぼく。 なにかあるはずだ、なにか……。 「――――認めない」 「ほう」 自分でもそれこそたかだか小学生相手になにをムキになってんだとも思いつつ、 自分のターンへと、強引にもってった。 「じゃあぼくもちょっとはその勇気シリーズに便乗して、言ってみてもいいかな」 「ええ、どうぞお好きに。どうせ戯言さんの負けは目に見えていますけどね!」 では、とぼくも同じく咳払いをして、演出過剰に語り始める。 「一日一時間殺戮を犯す勇気」 「……はい?」 一見、殺戮を犯す上でもなにかしょうがない理由があって、殺戮をしているかのように見える。 しかし一日一時間と言う無駄に謙虚な言葉を付属させることで、その意識を薄めることが出来る。 結果的に涙ながらに、一時間だけ殺戮を犯す光景も浮かぶけれど、本当はもっと殺戮を犯したいけれどしょうがなしに一時間に抑制している。 そんな光景も同時に再生することが出来たりする。 真宵ちゃんも同じ考えに至ったのか、ガクガクと震え始めていた。 「勇気を出す勇気」 「な、なんですか……それ」 もはやこれは卵が先か鶏が先か、的なやつである。 勇気を出すのに勇気が必要であるが、その勇気がない。その勇気を生み出すためには、勇気が必要な訳で。 これは実を言うと、根暗な子を想像させる。 そう、活発な子ではありえない悩みな訳で、どう足掻いてもこれはネガティブなのだ。 たとえば一世一代の告白のをするためにこれが必要なのかもしれない。 けれど最終的に必要なのは、勇気ではなく勢いだ。 故にぼくはこれはポジティブにはならず、ネガティブになるんじゃないかと講じる。 そしてぼくは静かに言う。 「――――負けを、認める勇気」 「…………ま、負けを認めます」 実際には、負けを認めただけであり。 実際にやられると、それはどんな幻覚もなく、ただただ敗者の姿が在るだけであった。……何か悲しい。 ちなみに、真宵ちゃんは、「ああ! 言葉の格好よさにつられて言ってしまいました! 実際はただ負けを認めただけです! 日本語って難しいですね!」と、 両肘両膝と、両掌を地へと付け、頭を振り乱しながら喚いていた。 「う、うう……。まさか自分の技に溺れて逆に傷を負うなんて……」 「まあ別に秘密は今は暴露しなくていいよ。聞いてよさそうなことなんてないだろうからね」 「う、うう…………」 何ていいながらも、立ち直り始めたのか。 うろめきながらも徐々に足元をしっかりとさせてゆく。 …………そんなに負けたことショックだったのかな。 「ま、まあそれはともかくとしてですね、洒落事さん」 「なんとなくオシャレなイメージがあって、ぼくとしてもまんざらではないんだけど、 やはりその辺りはしっかりして欲しいからね。ぼくの呼称は戯言さんに一貫して」 「失礼噛みました」 「違う、わざとだ」 「噛みまみた」 「わざとじゃない!?」 「神マミった」 「神様殺しちゃダメだよ。ていうかまさかの振り出しに戻った!」 もしかしてぼくは、彼女の手のひらに踊らされていたとでもいうのか。 なんということだ。 これで某アニメのキャラ。赤い子以外全員出てるじゃないか。――――赤い子、ねえ。 「話を戻しますよ、戯言さん」 「あ、ああ、うん」 戻された。 「ともあれ、『主人公』なんてものは、目指してなれるものではありません」 「…………」 「わたしは、そう思いますよ」 「……うん、ぼくも、そう思うよ」 正直、正義の味方になることはできても、それはイコールして主人公につながる、というのは違うのだ。 最近では、ダークヒーローなんていうものも流行っている。 暑苦しい正義が必ずしも『主人公』なんていうことでも、やっぱりないのだ。 そんな風に思っていると、彼女。 八九寺真宵ちゃんは言葉を、繋いだ。 「ですが、それでも、わたしは戯言さんを応援してみようかと思います」 「…………」 「わたしだって最低限の観察眼ぐらいありますからね、今までの触れ合いを見て、不思議とそんな風に感じます」 「……そう」 ぼくは素っ気なく返す。 けれどその言葉は、確かにぼくの胸に届いて、温かかった。 「別にそれこそ戯言ハーレムではありませんが、わたしは、あなたを信じてみたいと思います」 「……ぼくは戯言遣いだよ。きみに接してきた全てが、戯言塗れの大嘘なのかもしれない」 「それでも、ですよ。あなたの主人公の物語であれば、それはきっとハッピーエンドで、終わるんですよ。そう、思います」 …………。 この子は、強かった。 ぼくが見届けることもなく、単純に、強かった。 大切な人が死んだというのに、それでも、強く生きている。 凄いことなんだと思う。 凄まじいことなんだと思う。 ……無理をしている感が、正直否めないけど。 それでも、健気に生きている。前に進んでいる。 この子は、凄かった。 「……ま、なんであれ一人ぼっちはさみしいですからね、わたしが一緒にいてあげます」 「…………」 全員でたよ。 この子凄いや。 「……そっか、ありがと。――――時に真宵ちゃん。ねえ、ひとつお願いがあるんだけど」 「はい、なんでしょう」 「一回さ、『師匠』って呼んでみてくれない?」 「はい? え、ああはい、『師匠』?」 「うん、ありがと」 ……。 …………うん。 やっぱり違う。 姫ちゃんとは、やっぱり違う。 代理品は代理品でしかなくて。 もしかしたら見当違い甚だしくて、代理品ですらなかったのかもしれない。 けれども、今更ぼくの決意は揺るがなかった。 友は、勿論。真宵ちゃんも当然。 ぼくは、救ってみせよう、と。 故に、ぼくは歩く。 一歩、一歩、また一歩と。 さっさと、この物語の幕を閉じるべく。 加速していく物語に終止符を打つべくぼくは、歩く、歩く。 ◎ ◎ ◎ 「特別って何だと思う」 「どうでしょうね。他人と区別の略なんじゃないですか? まあ特別って言うぐらいなんだから、おなじと言うわけにはいけませんしね。 求めることも仕方のないことなのかもしれません。右往左往しすぎだとは思いますが」 「そうだね、特別な人って言うのは欲しいものなのかもね。 とはいえ互換性と唯一性は相反するものだと思ってるからね、いや思い込みたいのかな」 「あなたはどうなんです?」 「ぼくは別に」 「さいですか」 「きみはどうなんだい?」 「さあ、そんなのはわたしの決めることではありませんよ。 他人の評価は他人が決めるものですし、同じくわたしの評価は他人が決めることですからね」 「そりゃそうだ」 ◎ ◎ ◎ 戯言遣いこと、戯言さんがわたしの前を歩く。 その背中は大きくて、まあ成人男性としてみれば少し小さめなのかもしれませんが、 阿良々木さんに見慣れていると、とても、とても大きな姿に見えてしまいます。 そう、今わたしの隣にいるのは、戯言さん。 最初は、なんだこの人、と本能的に、身体の奥底から湧いて出るような、そんな衝動な気がします。 けれど、今は、隣にいる。一緒にいてくれている。 実際、なんだかんだで察する能力は高そうな戯言さんのこと。 きっと、わたしが無理して元気を出していることぐらいは、察しているんでしょう。 それでも黙っていてくれている。 優しさなのかなんなのか。もしかしたらわたしが高く見過ぎて気付いていないだけかもしれませんけれど。 それを含めて、戯言さんのいいところなんでしょう。 そう思います。 わたしの空元気。 ギャグをしようと、一生懸命笑おうと、心の底から楽しもうと。 まだ少々慣れないですけど、戯言さんとの会話は、面白いですし。 そう、先ほどの通り。 阿良々木さんが、綺麗に。潔く、天国に行けるように。 そりゃ、わたし以外にも心残りな方はたくさんいるでしょう。 戦場ヶ原さんだとか。羽川さんだとか、妹さんだとか。 けれども、いえ、だから。 わたしなんかに構っていないで、大事な皆さんに、すこしでも憑いてあげたら。 そう、思うんです。 わたしは元気です。 わたしは大丈夫です。 わたしは泣きません。 わたしは喚きません。 わたしは既に一人じゃありません。 わたしはもう、一人じゃない。 もう、何も怖くない――――訳では勿論ないですが。 頑張るには、たります。 傍には戯言さんも付いていてくれます。 わたしだって、もう、弱くはないんです。 だから。 言わせて下さい。 最後に一つだけ。 まだ阿良々木さんが見ているなら、わたしに一言だけ言わせてください。 そう。 最後に、わたしは、言いたいことがあるんです。 今更過ぎるかもしれませんが、だけど遅すぎることは、何の理由にもなりません。 わたしのけじめの問題だから。決着をつけたいんです。 ゆらゆらと揺れる変幻自在のアホ毛を付けた、少し伸びた黒髪の男性。 いつでもわたしの雑談につきあって、本当に楽しそうにしていてくれたあの男性の姿を――――今でもここにいるかのように、 見ることが出来る、わたしの唯一無二の親しかった、愛しかった、小さな、だけども大きな人を思い浮かべて。 「さようなら」 ――――お別れの台詞はいらない。 そうでしたね。 ……失礼、噛みました。 【一日目/午前/E-3】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、 [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達) [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ランダム支給品(4~6)、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 1:真宵ちゃんと行動 2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流 3:診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。 ※名簿、八九寺の動向について知りました(以後消してもらって構いません) ※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている) ※球磨川禊との会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。 ※何処に向かっているかは後続の書き手様方にお任せします。 ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]健康、精神疲労(中) [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:生きて帰る 1:戯言さんと行動 [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 ※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします 「ありがとう、ございました」 阿良々木暦さん。 あなたに遭えて、幸せでした。 泰平に向けて 時系列順 交信局(行進曲) 泰平に向けて 投下順 交信局(行進曲) この世に生きる喜び 戯言遣い 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード この世に生きる喜び 八九寺真宵 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
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