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太陽が昇る。 僅かに肌寒い風が、二人の男の肌を撫でる。 方や、ブリタニア最強の騎士として名を馳せた男───枢木スザク。 方や、イレギュラーだが『暗殺者』のクラスとして現界した剣豪───アサシン。 戦士として飛び抜けた技量を持つ二人は、その場から動かない。 一度刀と銃を交えたその瞬間に互いの実力を把握した両者は、下手には動かない。 間合いを測っているのか、タイミングを合わせているのか。 そのどちらかはわからないが、両者は凛として見合ったまま、微動だにしなかった。 そして。 その沈黙を破ったのは、アサシンだった。 「───どうした。敵と見定めた者には容赦無く、そして誇りを持って戦に臨む獅子の類いかとお見受けしたが……私の見誤りだったか?」 「……君の間合いに入る訳にはいかないからね。此方の間合いで仕留めさせて貰う」 「ほう。其れならば結構、不粋なことをした。 その足捌き、身のこなしから判断して剣士と見たが、其方が飛び道具を使うというのならば此方も遠慮はいるまい」 あくまでアサシンの口調は軽い。 飄々としたその軽さは、スザクの勘に障っていた。 スザクの脳内では常にギアスが叫んでいる。 生きろと。 逃げろと。 その場から背を向け生存を得るために逃亡せよ、と。 それだけの強敵なのだ。 だが、スザクはそのギアスを意思の強さで強引に捻じ曲げる。 生きるためにはこの男を殺すしかない、と。 逃げろためにはこの男を殺すしかない、と。 この場から逃げても殺される、勝って生存を掴み取れ、と。 それにより『生きろ』というギアスは彼の身体能力、反射神経の強化として作用する。 その瞳は既に、紅く染まっていた。 「───」 「───」 両者の間に、沈黙が再び訪れる。 呼吸を。鼓動を。神経を。 全てを研ぎ澄まし、攻撃へと備える。 そして、次の瞬間。 スザクの頬を伝って地面へと、ポツリと汗の雫が零れ落ちる。 それが、合図だった。 ドンッ!!!、と。 グロックから弾丸が吐き出され、スザクそのまま左に跳ぶ。 前後は危険だ。追いつかれれば斬り伏せられる。 ならば左右へと飛び、複数の角度から弾丸を叩き込む───それが、スザクの作戦だった。 始動はスザクの方が速い。ギアスによるブーストの効果のおかげもあるだろう。 弾丸も既にアサシンの正面、左斜め、左に一発ずつ放っている。 複数の角度からの合計三発。避けられる筈がない。 ───避けられる筈が、なかったのに。 「ほう、そのような小さき筒から玉を吐き出すか。確かに速いが───直線過ぎる、見切るのは容易いぞ」 キンキンキンと軽い金属音を響かせ、全ての弾丸を斬り伏せたのだ。 まるで空中に止まった物を切り捨てるような鮮やかさで。 それはスザクを驚愕させ、動きを止めるには十分だった。 「我が剣先は燕ですら逃れ得ぬ。直線に飛ぶだけの玉では、些か力不足であったな。 ───では、次は此方から行くぞ」 その動きは、美しさすら感じた。 まるで川が穏やかに流れるような、静かで流麗な歩法。 普段なら思わず見惚れそうになるほどであったが、ギアスがそれを許さない。 強制的に生存へと結び付けられたその意思は、スザクの肉体を全力駆動させる。 脚部の損傷など気にしている暇はない───既に、アサシンは目前へと迫っていた。 「ふッ───!」 「くうッ……!!」 アサシンの横薙ぎを、地面に伏せるようにして躱す。 掠る程度ならいい。 しかし直撃したら最後、あの刃は此方の肉体を容赦無く切り離すだろう。 それが分かっているからこそ、ギアスは全力で躱すことを肉体に命じる。 恐怖や緊張すら感じている余裕はない。 全神経、全体力をただ生存のためだけに注ぐ。 だが、一回躱しただけでは収らない。 返す刃で首を刈り取ろうと、袈裟斬りにしかけてきたその斬撃を、地面を跳ねることで躱す。 その勢いのまま掲げられた刃が、スザクの首を狩らんと振り下ろされる。 それを地面に手を突き身体を横に逸らし、逆立ちの要領で回避。 しかし、完全には避けきれない。 浅く、スザクの首の皮を切った。 次は振り下ろされた刃をそのまま横薙ぎに振るう。 狙いは地面についた手首。その手首を切り落とし、行動力を削ぐ。 それを片手で地面を殴り、僅かに空中へと浮くことで回避。 超至近距離。 僅かに対空したスザクと、刀を振り終えたアサシンの目線が交差する。 そこからのスザクの行動は迅速だった。 このチャンスを逃すまいと、至近距離でグロックの銃口をアサシンへと突きつける。 直後、発砲。都合三発、アサシンの身体を食い破らんと接近する。 だがしかし、当たらない。 アサシンはその身をまるで風に揺れる柳の葉のように、力の流れに逆らわずその場で態勢をゆらりと変える。 それだけで、銃弾は掠りもせずに去っていく。 生前は、風の流れを読み飛び回る燕を斬るために研鑽を積み続けたアサシンだ。 ただ直線にしか飛ばない銃弾が、当たる筈もなかった。 そして発砲した直後隙を突き、アサシンがその刀を振るう。 その隙を狙われたスザクには、躱す余裕などなかった。 「ぁ、かぁ───ッ」 痛みに意識を手放しかけるが、ギアスが強引にその意識を手放すまいと引き戻す。 無様に地面に倒れ伏せるスザク。 しかし、両断されるには至っていない。 胴体に斜めに切り裂かれた傷はついたものの、スザクはまだ行動が可能だった。 「───まだ息があるとはな。首を飛ばし心の臓を両断するつもりだったのだが、存外丈夫らしい」 アサシンの言葉は、もうスザクへと届いていない。 ───生きろ。 ───生きろ。 ───生きろ。 生存の意思のみがスザクの脳を支配し、会話に応じようとなどという余裕は既に残されていなかった。 「俺、は……ま、だ」 スザクは辛うじて動くその口を開く。 まだなんだ。 まだ、生きなきゃいけないんだ。 生きて欲しかった人がいる。 幸せになって欲しかった人がいる。 護りたいと願い───護れなかった人がいる。 だから、まだ死ねない。 彼女の───ユフィの騎士として。 彼女を傷つける、全てのものから護らなきゃならないんだ。 一度はこの手から零れ落ちてしまったれど。 再びこの手で救い出せる瞬間が来たのだから。 だからこそ。 「───俺は、死ねない」 ───赤き輝きを瞳に携えた、白き騎士は再び立ち上がる。 しかし、その手にはグロックしか握られていない。 倒れた際に何処かに落としたのか、スタンガンは無くなっていた。 だが、構うものか。この銃一つでも、勝ち抜いてみせる───そう誓ったスザクの瞳を、アサシンは読み取った。 「……これを使うといい」 アサシンがデイパックから何かを取り出し、スザクの足元へと放り投げる。 手榴弾かと身構えたが、どうやら違うらしい。 スザクは放られたそれを拾い、それがなんなのかを把握する。 ───これは、剣だ。 突きを主体とする細身の剣……レイピアと呼ぶべきだろうか。 しかし、振るうことでも中々の切れ味を持っているらしい。 その剣には装飾が施してあり、貴族用の剣だと予想できた。 「『ドレスソード』……という刀らしくてな。 私の支給品らしい。 だが煌びやかな装飾の西洋剣は私には合わぬ───この身には、この刀で十分」 その手に握った刀……千本桜を手に、アサシンは語る。 しかし、スザクは逆に疑問を浮かべていた。 「……何故武器を俺に?」 「何、其方も騎士なのであろう?ならば全力を出せずに敗北するのは不本意であろう、とな。 どうやら其方の身体から見て繰り出せるであろう反撃はもはや一撃程度、長く続ける時間もなかろう。 ───ならば、その本気をこじ開けてやろうと思うただけよ」 獲物をやるから本気を見せてみろ、と。 アサシンはそう言っているのだ。 その言葉を聞いた瞬間、スザクの視界が驚くほどクリアになっていく。 生きろと命じたそのギアスが、スザクの全ての力をその一振りへと注いでいるのだ。 打ち倒せ、と。 斬り伏せろ、と。 そして勝利を掴み取れ───と。 ああ、ならばやろう。 ユフィの騎士として───ここは、負けられない。 「……良い目になった、其方のような誉れ高き騎士と刀を交えることができるとは、この催しも意味があったと言うものよ。 ……其方、名前は?」 アサシンの問いかけに、枢木スザクは反応する。 名前は、と聞かれたのだ。 名前。 ラウンズの七番手、ナイトオブセブン。 ブリタニア最強のラウンズ、ナイトオブゼロ。 そして、仮面の男ゼロ。 既に、名乗る名など捨てたものばかりだ。 だが、しかし。 敢えて名乗る名があるとすれば、もう一度この名を名乗りたい。 「───ユーフェミア皇女殿下の選任騎士、枢木スザク」 「ほう、朱雀とな。雄々しい良い名だ。 ───私はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」 名乗り終わると同時に、両者は互いに刀を構える。 そして、再び訪れた沈黙。 だが今回の沈黙は、3秒と持たなかった。 「ハァッ───!」 スザクはその場で、駆け出したのだ。 ギアスの効力により身体能力を最大にまで引き出し。 その贅力を全て使った、跳躍。 そして次に行うのは、回転だった。 グルグルと、その場で回転し遠心力を働かせた一撃を放つための、跳躍。 凄まじい勢いでアサシンに迫るが、当のアサシンは刀を構えたまま、ひっそりと呟いた。 「───秘剣」 構えを崩さないアサシンの元へ、遠心力を味方に付けたスザクの剣が迫る。 しかし、アサシンは受け止めようとすらしない。 そして。 「おおぉぉぉォォォォォォォッ!!!」 「───『燕返し』」 両者の一撃が、互いの首を狩らんと激突した。 ◆ ◆ ◆ ぼと、ぼとり、と。 地面に堕ちたその肉塊を見つめ───アサシンは一人立ち尽くす。 「全く……勇猛な獅子の類かと思えば、知恵を回す鴉であったか」 その地面に堕ちた肉塊───具体的に述べるならば、枢木スザクの『左腕』を眺めながら、アサシンは呟く。 最後の一騎打ちの、その瞬間。 アサシンの燕返しの一の太刀をその刀で受けたスザクは、左手に握っていたグロックを発砲したのだ。 しかし、それだけで止まる程度の技ではない。 同時に迫った回避を封じる二の太刀が発砲した直後の左腕を切断した。 しかし、同時に放たれた最後の三の太刀が首を切り取るはずが───慣れてない刀を振るった影響か、僅かに逸れ、スザクに躱されたのである。 そして放たれた銃弾は燕返しを放った直後の隙のアサシンを捉え、その左肩を貫通したのだ。 そしてアサシンが怯んだ隙に、枢木スザクは脱兎の如く、逃げ出したのである。 「まさか、我が秘剣を躱すとはな」 ふと呟いたその言葉に潜んでいるのは、僅かな苛立ちと尊敬の念だった。 次こそは燕返しでその身を断ち切るという決意と。 人の身でありながらこの秘剣を躱してみせたその技量に。 「───枢木スザク。その首、次こそは私が貰い受ける」 暗殺者の剣豪は、密かにその闘志を燃やす。 【C-5 野原/朝】 ※どこかに詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に が落ちています。 【アサシン@Fate/stay night】 【装備:千本桜@BLEACH】 【所持品:支給品一式 ランダム支給品×1】 【状態:疲労(中)、左肩に銃創】 【思考・行動】 1:強い者の為に刀を振るう。 2:枢木スザクとの決着を。 3:相沢祐一といずれ決着を付ける。 4:自分の行く先を見つける。 【備考】 ※セイバールートのセイバー戦以後からの参戦。 ※一応燕返しは出来ますが物干し竿がないと本来の力は使えません。 ※このバトルロワイアルを特集な聖杯戦争だと思っております。 「ぁ、あ、はぁ、は───」 枢木スザクは、生きていた。 だが、そこに本人の意思はない。 最後の一撃の瞬間心身共に限界だった枢木スザクは、生きろというギアスに支配された。 勝つ道ではなく、強制的に生存のための逃走を選ばされた。 左腕という大きな犠牲を払いながら、それでも逃げ延びたのである。 もし、この場にナイトメアフレームがあったならば。 枢木スザクも、アサシンにここまでやられることはなかったであろう。 互角───またはそれ以上の戦いができたはずなのだ。 しかし、現実にはナイトメアフレームは存在しなかった。 パイロットとして、枢木スザクは全力を出せる状態ではなかったのだ。 重ねて戦闘前から脚部に深い傷を負っていた。 戦闘を振り返れば───枢木スザクの不利であった。 あそこは戦うべきではなかった。 枢木スザクは、逃げるべきだったのだ。 「俺、は、生きる───」 しかし。 現実は覆らない。 その瞳に赤き光を携えたまま、枢木スザクは生存のみのために生き続ける───。 【C-5(西) 野原/朝】 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【装備:ドレスソード@とある魔術の禁書目録 グロック17(15/17)@現実】 【所持品:支給品一式 手榴弾11/15@現実 ランダム支給品×1】 【状態:足に怪我(深い切り傷)、胸に刀傷(致命傷ではない)、左腕欠損】 【思考・行動】 0:生きる。 1:ユフィを優勝させる為に殺し合いに乗る。 2:ここから逃げる。 3:ルルーシュには………会いたくない。 【備考】 ※R2最終話からの参戦。 ※生きろギアス発動中。 【ドレスソード@とある魔術の禁書目録】 天草式十字正教の浦上が使用する西洋刀。 細身のレイピアを金銀宝石で豪華に飾りつけた貴族用の西洋剣。 本来突きが主体の剣のはずだが、大抵の物は両断してしまう様子。 剣としては軽い部類に入り、重みで叩き斬る使い方はできない。 先端が球根のように丸く膨らんでいるのが特徴。 アサシンに支給。 107 CODE Revise 時系列 096 シャングリラ 110 circulation(前編) 投下順 112 [[]] 082 光と絶望の境目 枢木スザク アサシン
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html2 plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 微かな光の世界を往く一団 は 古き衣の民草 目深に被ったフードに吹き込む風 を 避け 指で引き寄せ歩く裸足の 男と女 の 群れ ぬかるんだ轍に脚を取られながら 無言の行進は終わらない 残りわずかなパン に 手をつけられるわけもなく 明日 に 残そうとする 痩せ細り柔らかな泥の道にでさえ足は痛み 吹き付ける風に皮膚は凍え 時折り差し込む幽かな日差しにさえ 弱った眼は細める他なく 足元の闇に 視線を落とす なぜ と 問うさえ忘れ 重いだけの一歩を進める それだけ の 行軍 生きるとか死ぬとか 幸せとか絶望だとか 一切が風景の中に溶けた木であり石 花であり蛇である .
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. 開始:2スレ目 2588 終了:2スレ目 2996 次:外伝2/学者からの文章 行動内容 トウカと門人の先輩の三人で護衛を行うことになりました 黒さんに相談。長脇差(業物)貸してもらいました 両替屋 涼宮でハルヒと合流。あまり良く思われていないようです 先輩と雑談。報酬は基本一人3両、後は出来高のようです トウカと雑談。青森から江戸まで護衛の経験があるそうです ハルヒと身の上話。シナリオ崩壊と 1さんの苦悩の始まり 襲撃者3人と戦闘。門人&隠密無双
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131 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 25 33 ID SE784J3q ある梅雨の時期の、じめじめと蒸し暑い日の午後。 私は通う高校の校長室にいた。 呼び出された理由は簡単である。 私が他所の高校の生徒を殴って、怪我をさせたのだ。 相手は二人。一人は打撲で済んだが、もう一人は足を骨折した。 校長室には私と殴られた二人の他に、先生方、そしてそれぞれの保護者。 私が殴った事実を認める一方で、殴られたうちの一人は必死に私を庇った。 ――私が怪我をさせたのは、兄とその彼女であった。 それは、三日前のことである。私は母と喧嘩していた。 「こないだも! その前も! 何なのよこの成績は!! あんたちゃんと勉強したの!? どうせ毎日遊び呆けてたんでしょ!!」 喧嘩の話題は、その日返ってきたテストの結果のことだった。 母の一方的な物言いに、私も声を荒げた。 「してたわよちゃんと!!」 実際、私は今回いつも以上に勉強を頑張った。 テスト前に帰りが遅い日が続いていたので、母は遊んでいたのだと決めつけているが、実際は学校の図書室で勉強をしていただけである。この家族のいる家で、勉強する気になれなかったのだ。 「じゃあ何なのよ、この成績は!!」 そして母はそう言うが、前回に比べればかなり成績は良くなったし、全体から見てもそれほど悪いほうではないのだ。それでも母には不満だった。 母の言い分は、決まっていつもと同じである。 「まったく! 隆史に比べてあんたは!!」 隆史――私の兄は、頭が良かった。県内で一番頭の良い進学校に通い、その中でも上位をキープしている。 母は、そんな兄を自慢に思っていた。そしてその兄と私を比べ、いつも私を非難する。 私にはそれが、我慢ならなかった。 その夜、私は家を飛び出した。 小さい頃からの親に対する不満が、私の中に積み重なっていた。兄ばかりを褒め、私の努力を見ようとしない親が嫌いだった。 私だって、努力はしているのだ。いつも褒められる兄に少しでも追いつこうと、毎日勉強を頑張っていた。 そして、自分としては結果を残しているつもりでもあった。 兄の通う高校には及ばないとは言え、寝る間も惜しんだ受験勉強の末、担任に無理だろうと言われた高校に合格することもできた。その高校の授業にも、毎日の勉強を欠かさずについていくことができていた。 だがそれでも、親は私を褒めてはくれないのだ。そして私の努力を認めてくれないばかりでなく、まるで私を不良少女のように扱うのである。 勉強が出来ないから、裏で煙草でも吸ってるのだろう。勉強が出来ないから、変な奴らとつるんでるんだろう。勉強が出来ないから、駄目な人間なのだろう。 そう謂れのないことを言われるのが、私はひどく嫌だった。 家を出た私は、適当に街をブラブラと歩いていた。衝動的に飛び出してきてしまったが、行く宛があるわけでもない。 結局すぐに家に帰ることになるのだろうと思ったが、帰ったとき親がどんな反応をするのか、それを考えると怖くて仕方がなかった。 賑やかな商店街を離れしばらく歩いていると、やがて小さな公園があった。 疲れていた私は、そこにあったベンチにポツンと座った。公園に設置された時計を見ると、時刻はちょうど十一時を回ったところである。 空気が冷えてきているのを感じて、空を見上げる。 黒い雲が一面に広がっていて、 ――ポタ。 雨が、降りだした。 最初は小降りだったそれもだんだんと強くなり、やがて打ち付けるような強い雨になった。 私は周囲を見回した。しかし雨宿りできそうなところはなく、しょうがなく葉の生い茂った樹の下に移動する。 何もないところよりはマシだったが、それでも葉から滴る水滴が、体を濡らした。 132 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 25 55 ID SE784J3q 寒い。私はしばらくそこに居た。 雨は強くなる一方で、まったく止む気配がなかった。 体が震える。思わず手で体を擦ったが、気休めにしかならなかった。 寂しかった。 そして家を出てこんなところで震える自分が、滑稽だった。 ――結局、私は親の言う通りの駄目人間なんだ。 心が弱っていたからだろうか、そんな考えが頭に浮かんだ。 「優奈!!」 突然、私の名前を呼ぶ声がした。 眩しい光が私に向けられ、ぬかるんだ地面を駆ける足音がした。 私が顔をあげると、そこには走り寄る兄の姿があった。 兄が、憎かった。 いつも親に褒められ、そして私には決して手の届かない兄が、私は大嫌いだった。 だからその時も、 「何で来たの!!」 私は叫んだ。 私の近くに来た兄は、おそらく走り回っていたのだろう、荒く息を吐いていた。 「優奈……! 見つかってよかった……!!」 兄は私の言葉には答えず、自分の差している傘とは別に、腕に提げた袋から傘を取り出し私に差し出す。 「これ、使って」 その手を私は無視した。 「私はお兄ちゃんに来てくれなんて行ってない!!」 私の剣幕に、兄は少し狼狽えた。 「お、俺は優奈が心配で……」 「隆史くん! 優奈ちゃん見つかったの!?」 兄の来たほうから、高い女の声がした。 「舞! こっちだ!」 その女は跳ねた泥に服が汚れるのも構わず、ぬかるんだ地面をこちらに向かって走ってきた。兄と同じ学校に通う、兄の彼女の舞さんであった。 「はあ、はあ、よかった……優奈ちゃん無事で……」 「来ないで!!」 舞さんの顔を、私はキッと睨みつけた。 だが兄と違って、彼女は動じなかった。 「傘、差さないと風邪引いちゃうよ?」 そんな舞さんの様子が、私の癪に触った。 「来ないでよ! 母さんも! 父さんも! あんたたちも!! 私は大嫌いなの!! お兄ちゃんやあんたなんかに、私の気持ちがわかるもんか!!」 兄に助けられるのが、嫌だった。 私では決して敵わない、兄に助けられるのが、情けをかけられているようで嫌だった。 私のことなんて、放っておいてくれればいいんだ。 「……帰ろう、優奈」 だがそれでも、兄は私に手を差し伸べた。 カッとなって、気付いたときには拳を振り上げていた。 「隆史くん!」 舞さんが悲鳴をあげる。 殴られた兄は吹っ飛び、近くにあった遊具に思いきり足を打ち付けた。 私は倒れた兄に覆い被さり、さらに何発も殴りつける。 133 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 26 22 ID SE784J3q 「やめて! やめて優奈ちゃん!!」 舞さんが傘を手放し、私の腕を抑え付けた。私は抵抗し、勢いなく彼女の顔にも拳を当てたが、それでも彼女は手を離さなかった。 「放して! 放してよ!!」 「お願い、落ち着いて! 優奈ちゃん!!」 「あんたなんか……! あんたなんか!!」 「おい! お前ら何してる!!」 突然遠くから声がして、懐中電灯を持った警官がこちらに走ってきた。 それを見て私の気持ちが、何だか急に覚めていった。 結局私はその警官に抑えられ、兄と舞さんとともに近くの交番に連れていかれた。 兄は足をひどく痛めたようで、舞さんに支えられながら歩いていた。 交番では、痛さに呻く兄に変わって、舞さんが事情を話した。 やがて救急車が来て、兄はタンカに乗せられて運ばれていった。 それからしばらくして、連絡を受けた私の両親が来た。交番に入ってきた母に、私は真っ先に頬を叩かれた。 母のことは嫌いだが、これに関して彼女を責める気はない。家出した挙句、兄を殴って大怪我をさせたのだ。彼女の反応は当然だった。 私は、自分が惨めだった。 親に不良少女と罵られても、実際にそうはならないことで守っていたプライドを、私は自らの手で崩したのだ。 公園で考えていたことが、再び頭に浮かぶ。 結局、私は本当の駄目人間だったのだ。 舞さんも怪我はしていたがひどいものではなく、兄とのことは身内のイザコザだということで、幸い警察沙汰にはならずに済んだ。 警察に厳重注意を受けた後、私たちは舞さんと一緒に父の運転する車で病院に向かった。 兄は足をギブスで固定し、松葉杖をついて出てきた。時折顔をしかめ、足を痛そうにする。 兄は、右足を骨折していた。おそらく私が殴った衝撃で兄が倒れ、遊具にぶつかったときに折ったのであろう。 「ああ、隆史、大丈夫? 優奈のせいでこんなことに……」 「う、うん、大丈夫だよ、母さん」 兄はそう言った後、ちらりと私のほうに顔を向けた。私はすぐに顔を背けた。 兄と目を合わせるのが、何故だか怖かった。 ついでに病院で舞さんの顔の傷の手当てもしてもらった後、私たちは舞さんと別れ、兄と一緒に家に帰った。 「この馬鹿娘が!!」 家に入った途端、予想した通りすぐに父親から殴られた。 「まったく! 兄妹だってのに、隆史と違って何でお前はそうなんだ!!」 父の怒号が家に響き、それに母の声も加わる。 いつもと違って、さすがに今日ばかりは私も何も言えなかった。ただ黙って、親の言葉に身を小さくする。 だが、私は泣けなかった。家に着くまでは、今日は今まで親に見せたことのない涙を見せてしまうことになるだろうと、何となくそう思っていた。 だが何故だかその日、私は泣けなかった。 結局親の説教は、日が昇り始め、兄が止めに入るまで続いた。 134 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 26 48 ID SE784J3q 舞さんの親から電話があったのは、その次の日だった。 顔の傷を見た親が彼女に問い詰め、舞さんは渋々事情を話したらしい。 舞さんの親は被害届を出すとこそ言わなかったが、私の学校に連絡すると言っていた 加害者側である私とその家族は何も言うことが出来ず、そうして今日、私たちは校長室にいるのである。 「この度は私の娘が、おたくの娘さんにお怪我を負わせてしまって、本当に申し訳ありませんでした」 母が舞さんの親に、深々と頭を下げた。 「申し訳ありませんでした」 その横で、私も頭を下げる。 「まあ、そんなかしこまらずに」 だが舞さんの父親はそう言って、私たちに頭を上げさせた。 彼は、娘とおたくの隆史くんがお付き合いしていることは知っているんだがね、と前置きして、私に向かって話し始めた。 その話をまとめると、こんなところだった。 娘が付き合っている相手の家族に、他人を殴るような人間がいるということは、正直親として心配でならない。 だが娘も、そして隆史くんも、君は本当はいい子なのだと言っている。 隆史くんのことは娘からよく聞いて知っているし、実際に何度か会ったこともあるが、根の真っ直ぐな非常に優しい子だ。 その隆史くんが、骨折をしておきながら君を優しい子だと言っている。そして私たちの娘も、同じように言う。 だから私は彼らと君を信じて、責めることはしない。 「でもね」 最後に、東条さんの父親はこう締めくくった。 「どんな事情があったにせよ、君が人を殴ったという事実は変わらない。だから私は君を責めないけど、学校には連絡させてもらうことにした。悪いことをすれば、罰を受けなきゃいけない。それが社会のルールだ」 私は、聖人君子のような目の前の男に感服した。そして同時に罪悪感を感じた。 いくら信じてもらっても、私はそんないい子ではない。駄目人間なのだ。 その後は、先生方を中心に私の処分をどうするかという話になった。 兄が一人、処分をしないように訴えた。 「自分が妹を怒らせてしまっただけなんです! 妹は悪くないんです!」 だが舞さんの父親が言うように、私が誰かを殴った事実は変わらない。 私は、一週間の停学処分になった。 処分の決定した次の日、私は家にいた。 父は仕事で、母はパートに行っている。 そして兄は、学校を休んでいた。ギブスをしていても少し動く度にまだ足が痛み、一人で行動するのはきついらしい。 もう二、三日休むことになるだろうと、そう言っていた。 ベッドに横になりながら、私は考えていた。 ――何故私は、こんなに駄目人間なのだろう。 頭に浮かぶのは、兄のことだった。 駄目人間でない兄が、羨ましく、妬ましい。 親に褒められる兄。私には決して手の届かない兄。 だがそれでも、兄は小さい頃から私に優しくしてきたのだ。 私が親に理不尽なことで怒られる度に、お前は悪くないと、私を慰めてくれた。 そしてその度に、私は兄を嫌いになっていったのだ。 私が欲しくても貰えない、親からの愛情を独り占めしておきながら、どの口でそんなことを言うのだと。 兄が私に優しくすればするだけ、浅ましい嫉妬で、私は兄への憎しみを募らせてきたのだ。 ――コン、コン。 不意にドアを叩く音がして、それから兄の声が聞こえた。 「優奈。話があるんだ。入っていいか?」 私は答えずに、ベッドに寝たまま天井を見上げていた。 その沈黙を肯定の返事ととったのであろうか、兄がドアノブを回した。滑りの悪いドアが、ギィッと嫌な音を立てて開く。 松葉杖をついた兄が部屋に入り、後ろ手にドアを閉めた。 「優奈」 兄が呼びかける。 事件のあった日から、私は兄と会話をしていなかった。どんな顔をして、何を言えばいいのかわからなかった。謝罪の言葉さえ、一言も述べていなかった。 136 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 27 27 ID SE784J3q 「こないだのこと、話しにきたんだ」 黙ったままの私に、兄は続けた。 「その、こないだはごめん」 何で、お前が謝るのか。 私はすぐにそう思った。 「俺が優奈の気持ちを全然わかってなくて、優奈を怒らせちゃって……」 違う、悪かったのは私だ。 兄のことが憎くても、それに関しては私は自分の非を認めていた。 「ごめん。本当に悪かった」 違う、謝らなければいけないのは私なのだ。 私が、憎いお前に謝らなければいけないのだ。 「ごめん、何度でも謝る。許してくれ」 繰り返す兄に、私はベッドから起き上がった。 「そんなことで、お兄ちゃんを許すと思ってるの?」 だが口をついて出てきた言葉は、思っていたのとは正反対のものだった。 「私が! 謝られただけで! お兄ちゃんを許すと思う!?」 違う、私は謝らなければ……。 そう思えば思うほど、私の口からは兄を非難する言葉が出てきた。 「お兄ちゃんのことがどれだけ憎かったか! 私がどれだけ惨めな思いをしてきたか!! お兄ちゃんにわかる!?」 「ごめん! ごめん優奈! 何でもする!!」 兄はさらに声を大きくし、必死に謝り続けた。 違う。違うのだ。 何でお前が謝るのだ。 お前は、怒ればいいのだ。 人のことを殴っておきながら、何だその態度はと、私を怒ればいいのだ。 お前がそんなに優しいから……。 「うるさい!!」 ――お前がそんなに優しいから、私はお前が憎いのだ。 私はベッドから飛び降り、兄の胸ぐらに掴みかかった。 兄の体が壁に打ちつけられる。 その拍子に兄は持っていた松葉杖を手放し、バランスを崩した。 兄は床に崩れ、私は引っ張られて、その上に馬乗りになる形になった。 「つっ……!」 兄が呻き声をあげた。おそらく、骨折している右足が痛いのだろう。 それでも兄は、私に謝り続けた。 「ごめん、ごめん優奈……」 ――パチンッ。 思わず、私は兄の顔を平手で打ち付けていた。 137 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 28 12 ID SE784J3q 「何で……!」 「なっ……!?」 「何で!!」 私は叫んだ。 何で。何で。何で。何で。何で。 私の頭の中で、その言葉が渦巻いていた。 何でお前は、そんなにも優しいのだ。 何でお前は、私を慰めるのだ。 何でお前は、駄目な私に優しくするのだ。 何でお前は……。 「……っ!」 私は兄の顔を両手で掴み、 「ゆ、優奈……!」 「黙れ!!」 その口に、私の唇を押し当てた。 激しく口を吸い、舌で口内を蹂躙し、唾液を飲ませる。 兄がジタバタと暴れたので、私はギブスに巻かれた右足を軽く叩いてやった。 しばらくそんなことを続け、やがて兄が諦めたように抵抗をやめてから、私は口を離した。 「ぷはぁっ、はぁっ……! ど、どうして……!!」 兄の問いに、私は答える術を持たなかった。 私にも、その理由がわからなかったからだ。 だがそれでも、私は衝動に任せて手を兄の股間に伸ばした。 「や、やめろ! やめてくれっ! ゆ、優奈!!」 兄の制止の言葉など、聞く気はなかった。 ズボンに手をかけ、ズルズルと下に引っ張る。 途中でギブスに引っかかったが、私は痛がる兄を無視して無理矢理それを脱がした。 さらにパンツをずり下げると、ひょろんと寝ている兄のぺニスが現れた。 「ふふっ……オチンチン曝け出して不様な格好ね、お兄ちゃん……」 「ううっ、お、お願いだ。ゆ、優奈、やめてくれ。頼む、頼む……!」 私は兄の言葉を無視して、兄のぺニスに手を触れた。 兄の体がビクンと震える。 しばらくそれを手で弄っていると、やがて不完全ながらぺニスが立ってきた。 私はそれを迷わず口に含む。 「うっ……!」 兄が、痛みによるものとは違う呻き声をあげる。 またジタバタと抵抗し始めたので、何度か兄の右足を叩いた。 ジュブジュブと音をたてて、私は兄のぺニスを口に出し入れした。 そのぺニスを蹂躙するように、出来るだけ激しく、出来るだけ卑猥に。 138 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 28 42 ID SE784J3q 「ゆ、優奈……ううっ……! ゆ、許してくれ……!!」 兄は泣いていた。 私は、妙な征服感に包まれた。 私より優れている兄が、私の下で喘いでいる。 憎い兄が、私の下で許しを請うている。 「ううっ……や、やめてくれ! 優奈……!」 「しっかりオチンチンおったてておいて、何言ってるのよ」 私は兄のぺニスから口を離すと、履いていたズボンを脱いだ。さらに下着も脱ぎ捨て、床に放る。 私のそこは、既に濡れていた。 セックスの経験はなかったが、そこをいじったことはあった。 特に生理前などでムラムラしたときにはよく行う。 だがそれでも、それは私にとってちょっとした息抜きであり、昂った性欲を抑えるためのものでしかなかった。 しかし今、私のそこは濡れていた。 兄のぺニスを舐めただけで、私のそこはひどく濡れていた。 私は今まで味わったことのないような、強い性的興奮の中にいた。 私が下半身を露にしたことに気付いた兄が、声をあげた。 「ゆ、優奈! 何を……」 「ふふっ、お兄ちゃん、舞さんとはもうセックスした?」 「セ、セックスするつもりなのか!? 俺たちは兄妹だぞ!!」 「ねえ、質問に答えてよ。舞さんとはセックスした?」 「……そ、そういうことはまだしてない……! お願いだ! やめてくれ優奈……!!」 それを聞いた瞬間、私のそこはさらにジュンと濡れた。 あの女の前では出したことのないような声を、兄は今私の下で出しているのだ。 頭がよくて、優しくて、美人で、私では何一つ敵わない女の彼氏を、私は今襲っているのだ。 兄を奪っていった女の彼氏の童貞を、私は今奪おうとしているのだ。 「お願いだ! ゆ、優奈! それだけはやめてくれ!!」 「さっき、何でもするから許してくれって、そう言ったでしょう? あれは嘘だったの?」 「う、嘘じゃない! だけど……! だけど……!!」 「ふふ、これを舞さんが知ったらどんな顔をするかしら」 見てみたかった。 これを知ったときの、あの女の顔を。 さすがにあの女も、私が彼氏を襲ったことを知れば怒るだろう。 もしかしたら温厚なあの女でも、ビンタの一つくらい私に浴びせるかもしれない。 いい気味だ。 泣き叫べばいい。 怒鳴り散らせばいい。 あの女の表情を、醜く崩してやりたかった。 139 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 29 21 ID SE784J3q 「お願いだ! ううっ! 優奈、やめてくれ!!」 今さら引き返すことなど、できなかった。 私は左手でいきり立った兄のぺニスを掴むと、既に十分に濡れた自分のそこに宛がった。 「そ、そのまま入れるのかっ!? お願いだ、優奈! 落ち着いてくれ!!」 私は再び兄の右足を叩いて、黙らせる。 避妊など、どうでもよかった。 後のことなど、どうでもよかった。 兄をめちゃくちゃにしてやりたかったし、私もめちゃくちゃになりたかった。 兄への憎しみに身を任せて、狂ってしまいたかった。 「入れるよ、お兄ちゃん」 「ううっ、優奈……!」 私は、一気に腰をおろした。 「……っっ!!」 「ああああっ!!」 声にならない私の叫びと、兄の叫びが重なる。 破瓜の痛みは、想像を絶するものだった。 そのまま倒れこみたくなるのを必死で堪える。 死ぬほどの激痛とはよく言ったものだ。 私のそこから、赤い液体が流れていた。 「……!? お、お前……!!」 「ふぅっ……ふぅっ……!」 痛みに、呼吸が荒くなる。 「お、お前初めてなのか!? い、いったい何考えて……!!」 「うるさい……!」 私が初めてかどうかなど、どうでもいいことだ。 そんなことは問題ではない。 私は痛みを我慢しながら、ゆっくりと腰を上下に動かし始めた。 「ああっ! 優奈! 優奈!! お願いだやめてくれ!!」 「ふっ……そう、うっ、言いながら……ふぅっ、ふっ……しっかり、感じてんじゃ、ないの」 動く度に全身に激痛が走り、声が漏れる。 私の額からは嫌な汗が流れていた。 私は痛みに感じるどころではなかった。 だがそれでも、兄を犯しているという状況に、興奮はどんどん高まっていった。 私は必死に腰を動かし続けた。 140 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 29 46 ID SE784J3q 「ふぅっ……! ふぅっ! あぁっ……! ああっ!!」 私は叫んだ。 それは痛みをごまかすためでもあったし、気持ちが昂って思わず漏れたものでもあった。 この状況に、私の頭の中ではたくさんの記憶がフラッシュバックしていた。 親に叱られる私。 それを慰める兄。 冬に玄関から閉め出された私。 こっそり窓から入れてくれた兄。 親から褒められる兄を、遠くから見ている私。 私の頭を撫でる兄の手。 兄と手を繋いで歩いた、あの道。 『優奈のことは、ずっと俺が守ってやるから』 小さい頃の、兄の言葉。 「ああっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃん!!」 私は叫んだ。 気付けば、私の目からは涙が流れていた。 それでも私は腰を振り続けた。 「優奈……! 優奈!! ううっ、ごめん……! ごめん……!!」 「謝らないで! ああっ! 謝らないでよ!! 憎いあなたが、私に謝らないで!!」 「優奈……!」 「ああ! ああっ!! 謝らなきゃいけないのは私なの!! だから……!!」 私の感情の昂りにあわせて、腰の動きはどんどん速まっていった。 「と、止まってくれ! 優奈!! お、俺もう……!」 「止めない……! 離さない!! 離れないでよ!! ずっと! ずっと私を守ってよ!! 私の傍にいて!!」 「も、もう駄目だ! 優奈! お願いだ! 優奈!!」 「来て! お兄ちゃん!! 来て!! ああ! ごめんなさい! お兄ちゃん! ごめんなさい!! ああ!! ああああっ!!」 「ううう!! ああああっ!!」 その瞬間、私の中に兄の精が放たれた。 私は兄の体の上に倒れ込んだ。 私も、兄も、荒い息をしてしばらくそのままだった。 「優奈……」 上を見上げると、そこには涙まみれの兄の顔があった。 私はそこに顔を近付け――短い、キスをした。 今度は、兄は抵抗しなかった。 141 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 30 13 ID SE784J3q そして、急に現実的な感覚が戻ってきた。 自分が今しでかしたことの意味を、今更ながら理解した。 私は兄を弾き飛ばした。 兄の体が転がり、兄が右足を痛そうにして呻く。 「ゆ、優奈!?」 「出てって!」 「は!?」 私は大きく息を吸った。 「出てって!! 今すぐこの部屋から出てってよ!!」 そう叫んで、私は兄の衣服と松葉杖を兄に投げつけた。 「ちょっ! ちょっ……!?」 「出てって! 出てって!!」 私はさらにそこら中のものを、手当たり次第兄に向かって投げつけた。 兄は困惑しながらも、何とか立ち上がり右足を引きずりながら急いで出ていった。 「優奈! 優奈!?」 疑問の声をあげる兄を前に、私は部屋のドアをピシャリと閉めた。 その後、私はずっと泣いていた。 大声をあげてワンワンと泣いた。 母が帰ってきても、父が帰ってきても、私は泣いていた。 親が部屋の前で怒鳴っても、机をドアの前に引っ張って、部屋にこもり続けた。 今まで溜め込んでいた気持ちが、全部出ていくようだった。 親のこと。勉強のこと。舞さんのこと。兄のこと。私のこと。 やがて泣き疲れて眠ってしまい、そして起きたのは次の日の朝だった。 私は、妙に清々しい気分だった。 カーテンを開けると、眩しい日差しが部屋の中に差し込んだ。 窓から見える光景が、いつもと違って見えた。 とりあえず早急にしなければいけないことが、ひとつあった。 机の引き出しをいくつか漁って、目的のものを見つける。 その封を破って口に入れ、唾液と一緒に飲み込んだ。 それから、母がパートの仕事に行くのを待った。 それまでに何度か部屋の前に来て怒鳴られたが、私は黙っていた。 昨日から、親は私が兄を襲ったことに関しては何も言っていなかった。おそらく兄が、親に言わないでいてくれているのだろう。 母が家を出ていくのを確認してから、私はドアの前の机をどかして部屋を出た。 真っ直ぐに兄の部屋に向かい、そのドアをノックする。 ――コン、コン。 「お兄ちゃん、入るよ」 「え、あ、優奈!?」 素っ頓狂な声をあげる兄を無視して、私はドアを開けた。 兄はベッドの上に、ギブスの巻かれた右足を放り出して座っていた。 私は部屋に入り、後ろ手にドアを閉めた。 「ゆ、優奈。どうしたんだ?」 「ちゃんと、謝りにきたの」 心臓が、小さく跳ねた。 私は深呼吸をしてから、続きを言った。 「昨日のことと、あとこの前殴っちゃったこと。ごめんなさい」 私は兄に向かって頭を下げた。 「謝って済むようなことじゃないけど、それでも謝らせて」 142 私の生き方 ◆YMBoSzu9pw sage New! 2009/09/01(火) 20 30 55 ID SE784J3q 兄は少し慌てて言った。 「いいよ、そんな謝らなくても」 「私が、謝りたいのよ」 「そ、そうか」 私は頭をあげて、兄の顔を見た。 「それと、舞さんにも謝りたいの。……舞さんには、本当に悪いことをしちゃった」 「……舞なら、許してくれるよ」 「うん……」 それから、私たちはしばらく無言だった。 数十秒か、あるいは数分してから、私が口を開いた。 「私は今まで、全部お兄ちゃんのせいにしてたの」 「え?」 「お兄ちゃんが羨ましくて、妬ましかった。だからお兄ちゃんが嫌いで、お兄ちゃんなんかいなければって……」 兄は、黙って聞いていた。 「だけど、違うの。お兄ちゃんと比べられるのを嫌がってたのに、誰よりも私とお兄ちゃんを比べてたのは、私自身だった」 「優奈自身?」 「自分に、自信がなかったのよ。いつも親からお兄ちゃんと比べられて、それで私もいつしか、自分とお兄ちゃんを比べるようになってた。自分に自信を持ってれば、そんなことはしなくていいのに ……だから、決めたの。私はもう母さんの声も、父さんの声も気にしない。自分に自信を持って生きていく。 まだ自分でも胸を張って生きられるような自分じゃないけど。私は私の道を行く。お兄ちゃんの背を追っかけるようなことはもうしない」 「……それが、正しいよ」 兄の声は優しく、私の心をなごませた。 「あ、そ、そう言えば」 兄が慌てた声をあげた。 「何?」 「そ、その、昨日、な、中に……」 兄の言葉に、私は言い忘れていたことを思い出した。 「それならたぶん、大丈夫だと思う。朝、アフターピルを飲んだの」 「アフターピル?」 「性交後に飲むピルよ。友達に貰ったのがあったの、本当に偶然だけど。それに昨日は、生理周期的には安全な日だったし。……まあ、100%大丈夫とは、言えないけど」 「そっか……よかった……」 兄は安堵した声をあげた。 「そのことも、本当にごめんなさい。今回はよかったけど、ひょっとしたら大変なことになってた」 私はまた深々と頭を下げた。 「うん……」 私の謝罪を、兄は黙って受け入れた。 それからまたしばらく無言の時間が続き、もう言うことのなかった私は部屋を出ようとした。 「じゃあ……」 「あ、ゆ、優奈」 部屋から出かかった私を、兄が引き止めた。 「その、優奈、昨日が初めてだったんだろ? それで、その」 「謝らないで」 私はピシャリと言った。 「昨日は、私が悪かったのよ。……受け入れたつもりだけど、そうやって謝られると、私はまたお兄ちゃんのこと嫌いになっちゃうかもしれないから」 「そ、そうか。じゃあ謝らない……。だけど、初めてが俺なんかで……」 まだぐだぐだと続ける兄に、私は言った。 「私もお兄ちゃんの初めてを貰っちゃったんだから、お互いさまよ」 それから、私はこう付け加えた。 「それに、初めてがお兄ちゃんで、私はよかったと思ってるよ?」 「え? え!?」 顔を赤くする兄に、私は笑って部屋を出た。 今日からは今までと違う毎日が始まりそうだと、そんな気がした。
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お昼頃 唯はまたあずにゃんと散歩をしていた。 唯「桜が綺麗だね、あずにゃん♪」 犬「にゃあ」 唯「あずにゃんは、桜とか好き?」 犬「にゃ」 唯「そうだよね~、桜が丘高校の三年生だもんね~」 犬「にゃあにゃあ」 ?「……あれ? 唯じゃないか」 唯「あ、澪ちゃん」 澪「おう。なんか久しぶりだな。今日は休みか?」 唯「う、うん。そうだよ。澪ちゃんはなんでここに?」 澪「ああ、新しいベースでも買おうかと思って」 唯は適当に道を進んでいき、 偶然にも、昨日見たギターショップの前にいた。 唯「へー」 犬「にゃー」 澪「?」 澪「……その、犬? みたいなやつはどうしたんだ?」 唯「あ。拾ったんだよ。あずにゃんって言うんだ」 澪「あずにゃん?」 唯「うん」 澪「……」 犬「にゃあ」 澪「……」 犬「にゃあにゃあ」 澪(……か、かわいい……)ポッ 澪「さ、触ってもいいか?」カアアアア 唯「いいよ~」 澪はしゃがみ込んで、あずにゃん(犬)をさわさわなでなでした。 澪(気持ちいい……最高に……気持ちいい……)ウットリ 唯「澪ちゃんはまだベースやってたんだ」 澪「え?」 唯「バンドとかも組んでるの?」 澪「あ、ああ。大学の軽音楽部に入ってる」 唯「そっか」 澪「全員バラバラで、残念だな」 唯「うん」 澪「……でも、左利きはもうやめたんだ」 唯「どうして?」 澪「しゅ、種類が少ないから……だ。それに、両方使えるとカッコいいし、便利だし……」 唯「じゃあこれからは、左利きの澪ちゃんには会えないんだね」 澪「い、いや! だけど別に、左利きが嫌になったとかそういうわけじゃないぞ!」アタフタ 唯「じゃあ私が澪ちゃんの代りに左利きになろうかな」 澪「……まだギター、やってるのか?」 唯「ううん。もう半年近く触ってないよ」 澪「……そっか」 犬「……そっか」 澪「?」 澪「ん? なんか今、どこからか変な声がしなかったか?」 唯「しないよ?」 澪は頬を掻きながら犬の顔を見つめた。 澪(いや……まさかな)ワナワナ 澪(あっはははは! そんな馬鹿な話があるか!)ワッ ワナワナワナ 唯「じゃ、もう行くね」 澪「お、おう……」 唯「じゃあね」 犬「じゃあね」 澪「!?!?!?」 澪は青ざめた。 犬の口が動いたように見えた。声がしたように思えた。 澪はしゃがみ込み呪文を唱えた。 澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイミエナ……」ブルブルブル ある日の夕方。 唯がいつものように散歩から戻ってくると、玄関に見慣れない靴があった。 唯「ただいま~」 憂「おかえりお姉ちゃん」 ?「あ、お邪魔してます。先輩」 その人はリビングでまったりとしていた。 唯「あー! 純ちゃんだ!!」 純「お元気そうですね」 唯「うん。今日はどうしたの?」 純「憂から聞きました。その、例の不思議な犬のこと」 唯「あずにゃんのことだね」 犬「にゃあ」 純「へぇー……ホントに猫みたいな鳴き声するんだ」サワリサワリ 唯「あれ? 本物のあずにゃんは来てないの???」キョロキョロ 憂「あ、あのね。梓ちゃんはちょっと風邪をひいちゃったみたいで――」 唯「カゼ!? じゃあお見舞いに行かなきゃ!!!11」バタバタ 純「だ、大丈夫ですよ先輩! 二、三日で直るような流行り風邪ですから!」 唯「でも心配だよ! 一人きりで寂しくて苦しくて泣いてるんじゃないかな!?!?」ドタバタ 憂「う、うつしちゃやだから来ないでほしいって言ってたから! 落ち着いてお姉ちゃん!!!」 唯「あずにゃあああああああぁあぁぁーーーん!!!!!」ドッタンバッタン 犬「にゃあにゃあ」 純(……この犬、妙に落ち着いてるし) ~憂の部屋~ 憂と純は、二人で宿題をやりながら話していた。 憂「どう思う?」 純「うーん。どうと言われてもなぁ」 憂「お姉ちゃんはまだ梓ちゃんが生きてると思ってる」 純「それはまあ……確かにそう見えたけど」 憂「このままでいいと思う?」 純「良くはないと思うけどさ」 純「やっぱ、私なんかより、先輩たちに相談した方がいいんじゃないの?」 憂「そうかな」 純「そうだよ。悪いけど、私なんかじゃ力になれないっぽい」 憂「でも、先輩たちとも連絡取りにくいし」 純「連絡先は知らないの?」 憂「……うん」 憂「……それにもう、一生会えないかもしれない先輩もいるし」 純「? どういうこと?」 憂「紬さんは、梓ちゃんがいなくなってからずっと海外にいるらしいから」 純「そうなの? でも確かに姿見えないよなぁ、最近」 憂「いや、それはわたしたちが三年生だからだと思うよ……」 純「あ。そういや最近、律先輩に会ったとか言ってなかった?」 憂「うん……で、でも……ちょっと喋っただけだよ」 純「連絡先聞かなかったの?」 憂「突然だったし、そこまで頭回らなかったよ。だからお姉ちゃんしか知らないんだと思う」 純「じゃあ、唯先輩のケータイを勝手に見るしかないじゃん」 憂「そ、それはちょっとなあ……」 純「だー! ならもう少し様子を見てみるしかないってば!」グシャグシャ 憂「でももう、あれから半年も経ってるし……」 純「でも治りかけてたんでしょ?」 憂「うん。……いや、あの犬が来てから、また……なんていうか……」 純「つまり、あの犬が邪魔なわけだ?」 憂「……そこまで言うとあれなんだけど」 純「なら、これならどうかな?」 純は、さささっとノートに文字を書いて憂に見せつけた。 ~一ヶ月後~ 唯「あずにゃん? あずにゃん!?」ドタバタ 唯は部屋中を駆け回り、犬の名前を連呼していた。 憂「お姉ちゃん?」 唯「あずにゃんが! あずにゃんがいなくなっちゃった!?」 唯は錯乱状態に陥っていた。 顔が赤くなったり青くなったりしていた。 憂「ああ、あの犬のことね」 唯「え? ……あずにゃんはどこに!?」 憂「他に飼い主が見つかったから、その人に渡したよ」 唯「えっ……?」 憂「やっぱりウチで買うのは無理だったんだよ」 唯「そんな……!」 憂「お金も随分とかかってるしね」 唯「嘘だ……!」 憂「結局、お母さんもお世話する羽目になっちゃってたし」 唯「…………」 憂「だからね、もう忘れよう?」 唯「」 憂「あずにゃんはもういないんだよ。犬も、本物も」 唯 憂「こっち見て、お姉ちゃん?」 ――――――― 憂「……おねえちゃ――」 唯「うそだああああああああぁぁぁあぁああああぁああぁあぁぁあぁあ!!!!!」 唯は家を飛び出した。 妹の制止も振り切り、走り出した。 唯「いやだいやだいやだいやだいやだ! あずにゃんがいないなんていやだ!!」 ひとり走り叫び泣き喚きながら、どこか遠くへと一目散にかけていく。 まだ信じることができない。 まだあずにゃんは生きている。 この現実世界で生きている。 そう思うことだけが、彼女の唯一の救いだったのに、 唯「あずにゃああああああぁあああぁあぁぁぁあぁぁあぁあーーん!!!!!11」 それを完全に見失ってしまった唯は、自分をも見失いかけていた。 それから一時間ほどが経った。 体力も精神力も未熟だった彼女は、いつでも倒れてしまえるほどに衰弱していた。 唯「あ……あ……あず……にゃ…………あぁ…………」 足を引きずるように使い、ようやくたどり着いた公園。 そのブランコに座った。 もう自分では何もできなことを知った。 唯「…………」 最初に間違ったのは自分だ。 それがわかっていても、あの犬のことを諦められない。 今更なのだ。 もう一ヶ月以上も一緒に過ごしているのだ。 諦められない。 でも諦めるしかない。 でも、でも、 ――だけど。 だけどもう一度だけ、もう一度だけあのあずにゃんを抱きしめられるのであれば、 唯「……」グスッ そう考えるだけで涙がこぼれてきた。 ようやく罪滅ぼしができると思ったのに。 また彼女を見失って、 もう生きる意味さえ見失って―― ?「……泣くなよ」 そして唯は、そんな誰かの声を聞いた。 唯はとっさに顔を上げた。 唯「だ……だれ?」 ブランコを囲う柵のあたりから、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。 でも姿は見えない。 ?「泣くなよ。みっともない」 声はするのに姿は見えない。 そんな時だった。 ?「下だよ。僕はここにいるよ」 さっきよりも声が近づいていた。 唯は下を見た。 唯「えっ?」 そこには、唯が探し求めていた一匹の犬がいた。 唯「しゃ、しゃべれるの……?」 犬「当たり前だろ」 唯「――」 そうか。私は今、超鮮明な幻覚を見ているんだ。 唯はそう解釈した。 犬「過去のことをいつまでもいつまでも引きずって」 犬「へらへらとした顔で当たり前のようにまわりの人たちに迷惑かけて」 犬「そしてそのまわりの優しさにも気づかずにのうのうと暮らし生きているだけだなんて」 犬「――唯。」 犬「お前って最低だな」 これは犬が喋っているんじゃない。 きっと、もう一人の自分が喋っているのだ――。 唯「うん。やっぱりそうだよね」 犬「ああ」 唯「最低だよね」 犬「ああ」 唯「ねえ」 犬「なんだ」 唯「私はこれから、どうすればいいの?」 唯は、自分を頼ることができなかった。 涙を流すことくらいしかできない、ふがいない自分を。 犬「逃げるなよ」 犬「あの時何があったのか、ちゃんと話してみせろ」 犬は思いっきり女っぽい声で、だけど男らしいせりふを口にした。 3
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※オリジナルキャラの少年が出演します。名前も便宜上付けさせてもらいました。 きずな②~触れ合い~ めーりんの今にも寝入りそうな顔に少年は焦りを感じた。 「ダ、ダメだよ!今寝たら…死んじゃうよ!」 実はめーりんは丈夫な体と高い再生力を持つ為、この程度の傷であれば半日程安静すればほぼ治癒する。だがそれは安全な状態にあるという前提の下に保証されること。 あのまま5匹のゆっくりに攻撃を続けられていたら間違いなく絶命していたに違いない。その点において少年がめーりんを救ったと言っても過言ではない。 だが、そんなことを知らない少年にとっては当然の焦りと言えよう。 少年はめーりんを落とさぬようにしっかりと抱きかかえ、駆け出した。自宅に向かったのだ―――めーりんを助ける為に――― 少年疾走中… 走ること15分、息も絶え絶えに家に着くと勢い良くドアを開ける。 「ただいまー!!」 「お帰りなさい、進(すすむ)。」 少年―進―の母親が奥から出てきた。が、進の泥だらけの服が目に入るとすぐに顔をしかめる。進は母親の姿を認識した瞬間さっとめーりんを背中に隠した。 「もう…こんなに服を汚して…ん?…今、何か持ってなかった?」 「な、何でもないよ!…うん、何もでもない!」 ばればれの嘘である。ひきつった笑みを浮かべ、自分の部屋へと向かう。 「こら~進!手を洗いなさーーい!!後、服も脱いどいて、洗うから!」 はーいという返事が響く。 「全く…何を持って帰ったのかしら…」 手を洗い、脱衣所で服を脱ぎ着替えると大急ぎで自室へ入った。めーりんをちょこんと床に降ろす。 「ふう…大丈夫…なのかな?」 めーりんの傷は先刻と比べると幾分かマシになっているように見えるが…。進がめーりんの傍で耳を立てる。すやすやと安らかな寝息が聞こえてきた。進はようやく安堵する。めーりんが大事に至っていないということに気づいたのだ。 「この子、結構丈夫なんだなぁ…」 ゆっくりはまんじゅうの化身などと聞いたことがある。もっと脆い生き物だと思っていた進だが、めーりんのその生命力の高さに感服していた。緊張感が一気に抜け始めるとゆっくりと床に伏す進であった。 うつ伏せになりめーりんの安らかな寝顔を見る。 「なんか、良く見るとかわいい…かな?」 めーりんの頬はいかにも柔らかそうで触ってみたいという欲求が芽生えてくる。 「寝てるのに悪いけど…少しぐらいなら…」 つんと人差し指で触れてみる。 「うわぁ…すごいぷにってする。」 予想以上に柔らかく指がめりこんだ。思わず感嘆の声が上がる。と、めーりんの重そうな目蓋が徐に開いてゆく。 「JA…O…?」 人の寝起きのようにぼけーとしていた。 「あ、ごめん…起こしちゃった?」 めーりんは目をパチパチさせ進をじっと見つめる。進もめーりんを見つめ返す。…だが、何も喋らない…否、喋れないのだ。 そのまま2分程経過した。と、進はようやく気づく。 (あ、そっか…この子は喋れないんだっけ…?) 進から沈黙を破る。 「えっと…ケガは大丈夫?」 聞いても言葉が返ってくる訳ではないのだがめーりんの場合、知能が非常に高い。その為、人間の言葉を正確に解することができるのだ。 「JAOOOOOO!!」 元気な鳴き声が部屋に響く。めーりんは自身が無事であるということを顕示するかの如く飛び跳ねてみせた。 「良かった…元気みたいだね。」 「JAOOO!!JAOOO~JAOOOO!!」 めーりんはぺこりと頭を下げる。 「えっと…ありがとう…って言ってるのかな…?」 「JAOOOO!!」 今度は正解だと言わんばかりにぴょんぴょん跳ねる。進は相手の機微を察することの出来る子だ。たとえめーりんが言葉を喋れなくともこれ位読み取るのは容易いようだ。 「ははは…どういたしまして。」 一時はどうなるかと思った進だが、これ程元気ならば心配はなさそうだ。 「そうだ、えっと…君の名前は…めーりんだっけ?僕は進って言うんだ。よろしくね。」 「JAO、JAOOOOO!!」 めーりんが進に近寄り、胡坐の上に乗る。 「JAOOOOOOO!、JAOOOOOO!!」 「お…っと…はは、僕のこと気に入ってくれたのかな?」 今のめーりんの鳴き声はゆっくりで言うなら『すすむのあんよ、めーりんのゆっくりぷれいすにするね』と言ったところだろうか。 と、突然ぐーーーーという音が鳴る。 「ん?…なんだろう…今の音…」 不審に思う進はめーりんの表情を窺う。すると、めーりんは頬を赤らめて俯いている。 「もしかして…お腹減ったの?」 「JAOOOOOOO…」 めーりんはどこか恥ずかしそうな素振りを見せる。 「う~ん…あ、そうだ!確か…」 進はめーりんを手のひらに乗せ移動する。 「JAO…?」 自分の机の上にめーりんを置き引き出しを開けた。 「えっと…この辺に…あ、あったあった。」 進が見つけ取り出した物は板チョコだった。 「って…チョコ食べられるのかな?」 進は少し考え込む。一方のめーりんは野生である為、進の手の中にあるものが何なのかは分からないで首を傾げている。 「うーん…ちょっとだけなら…大丈夫だよね?」 板チョコをほんの一欠けら程割る。 「JAOO?」 「食べてみる?」 「JAOO!」 めーりんは食べるという意志を示すようにちょんと跳ねる。 「そっか。じゃあ、あーんて口開いて。」 「JAAAAAAN」 大きく開いためーりんの口の中にチョコを入れる。 「JAO♪JAO♪」 ゆっくりと咀嚼するめーりんを進はじっと見守る。 「どうかな…?食べられそう?」 そう尋ねるとめーりんの顔がぱあぁと輝き始める。 「JAOOOOOOOOOOOOO!!!」 チョコレート。それは自然界では決して存在することことのない人工的な甘味。えも言えぬ味というのは正にこのことかもしれない。それを始めて口にしためーりんの感動は谷よりも深かった。そして、その美味しさから満面の笑みを浮かべるのだ。 「良かった…すごく美味しいみたいだね。…もっと食べたい?」 「JAOOOO!」 催促するかの如く飛び跳ねるめーりん。結局その後、板チョコ半分程をあっさりたいらげてしまった。めーりんは幸せな顔を浮かべる。今にも天に召されそうだ。 「まだ、子供なのに…よく食べるんだなあ。」 進はその食欲に感服しながら、めーりんのだらけきった顔を突付いて遊ぶ。ヘブン状態となった表情を見て触れてみたくなったのだろう。 すると、めーりんがうとうとし始めた。どうやら、また眠くなってきたらしい。 「むう…眠たそうだね。…あ、さっき起こしちゃったからかな?」 進は、先程無理に起こしてしまったことを反省した。だが、食事を取って眠気に襲われるのは仕方が無い生理現象である。ゆっくりにとっても例外ではない。ただ、めーりん種は何故か他の種よりも遥かに多くの睡眠を取るという習性がある。 「JAOOOO…」 めーりんは欠伸をすると、徐に目蓋を閉じていった。 「あらら。もうよだれ垂らしちゃって…しょうがないなあ…」 くすりと笑うとそっとテッシュで拭き取る。 進は率直にこのめーりんと一緒に暮らしたいと思った。 この子と過ごせばきっと毎日が新鮮で、楽しくなる―――そう感じて――― これからのめーりんとの日々に思いを馳せ始める進であったが、その際、最大の難関になるであろう存在に気づいてしまった。 (…母さん…、許してくれるかな…?) そう、進少年の母親は…大のゆっくり嫌いなのであったのだ… ~続く~ 以上、ひもなしでした。 今、この話の構想を練り直してましたが思った以上に長引きそうなので削り中です。 あまり超長編になってもgdgdで途中で投げ出しそうで…そしてそんな失礼なことは避けねば。なんとか10話位には修まりそうなのですが…。 なんとか約週一のペースですが維持できないかもしれません。申し訳ないです。 来年の春を目処に完結を目指します。 最後に拙い文章を最後まで御覧いただきありがとうございました。 投下乙、ゆっくりと少年の交流が和む。しかしお母さんはゆっくり嫌いなのか、その経緯はこれからの話で明かされるのか?それとも単純な好き嫌い? -- 名無しさん (2008-10-05 00 48 46) 2008-10-05 00 48 46 コメントありがとうございます。 まだ明かすつもりはありませんでしたが… 母親は…ここでは割愛しますが過去にゆっくりとの因縁があるという設定です。 その内また詳しく投下しようと思っています。 -- ひもなし (2008-10-05 01 11 30) めーりん可愛(・∀・)イイ!!続き、ゆっくりとお待ちしておりますー -- 名無しさん (2008-10-05 08 17 29) 名前 コメント
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【検索用 たそかれをいきる 登録タグ 2023年 MEIKO VOCALOID た テルハ ヤヅキ 傘村トータ 曲 曲た 殿堂入り】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:傘村トータ 作曲:傘村トータ 編曲:傘村トータ Guitar・Bass:ヤヅキ 写真:テルハ 唄:MEIKO 曲紹介 曲名:『黄昏を生きる』(たそがれをいきる) 傘村トータ氏の101作目。 歌詞 死ぬこと以外かすり傷 かすり傷を死ぬほど作った 人間ってほら、もうちょっとさ 上手に生きれるもんなんでないの? 人生、ノイズが大きくて 君の声も聞こえやしない でも 僕の為ボロボロの君が 走ってくんのが見えたよ 黄昏を生き抜いて 翔け抜けて しがみついてやれ いつでも終われるのなら 今じゃなくたっていいだろう 夢見たっていいだろう 君に呪われようじゃないか 死ぬこと以外かすり傷 何にも知らずによく言えるよな 消えてしまえば一番早いんだ 全部解決する気がして 人生、僕はもう疲れたよ 誰のこと信じればいいの でも 僕の為君は泣いてる 君だって満身創痍だ 黎明を生き抜いて 駆け抜けて 喰らいついてやれ いつでも終われるのなら 今じゃなくたっていいだろう 願ったっていいだろう 君に騙されようじゃないか 死ぬこと以外かすり傷 でもこのままじゃ君が壊れちゃう 君が掛ける 呪いのような 命がけの魔法 僕は絶対破れない 黄昏を生き抜いて 翔け抜けて しがみついてやれ いつでも終われるのなら 今じゃなくたっていいだろう 夢見たっていいだろう 君に呪われようじゃないか コメント 最高! -- 名無しさん (2024-03-07 21 50 30) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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これを作成している私の心境を代弁しているかのような文を見つけたので、引用します。 我、生きずして死すこと無し。 理想の器、満つらざるども屈せず。 これ、後悔とともに死すこと無し。 望まれることなく、浮き世から捨てられし彼らを動かすもの。 それは、生きる意志を持つ者の意地に他ならない。 株式会社トレジャー『斑鳩 IKARUGA』より
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3匹は地面に降り立ち、周囲を見渡す。 空からでは植物が生い茂っているせいで細部まで見えなかった。かと言って、地上に降り立っても視界がマシになるという訳でもなかった。 やや短絡的だったかも知れない。 「うー…誰もいない…」 「どなたかー、いませんかー?」 「JAOOOO!?」 これだけ立派な花園だ。ゆうかがいても良さそうなものだが。 3匹が奥へ進もうとすると、正面にゆうかの集団が現れた。 「あ、ゆうかですわ!!」 「うー♪うー♪み~つけた!」 探しゆっくりにとうとう出会え顔が綻ぶ3匹だったが、それとは対照的に、ゆうかたちの表情は恐ろしく険しい。明らかな警戒心を読み取れる。 不穏な空気を察したのか、さくやが「ゆっくりしていってくださいですわ!!」と言い、敵意がないことを示そうとしたが。それよりも大きな号令に阻まれてしまった。 「だいいちぶたい、かまえー!…はっしゃ!!」 その号令と共に、3匹に向かって石が投げられた。 「JAO!?」 「ゆ!!?」 避ける暇もなく、めーりんとさくやは反射的に目を瞑る。 …しかし、石はおろか、米粒すら飛んで来ない。 恐る恐る目を開けると…ふらんが正面に仁王立ちしていた。 「JAOOOO!!」 「い、いい、いもうとさまああ!!」 ふらんは…自ら全弾受けることを引き換えに、咄嗟に2匹を庇ったのだ。 「…うー…ふらんがまもるから…じっとしてて…」 痛みに耐えながらも力なき笑みを返す。 だが、ゆうかたちは容赦なかった。数で圧倒出来ると踏んだのだろう。第2撃、第3撃と攻撃は続く。 その度にふらんは石を全て受け止めた。2匹が傷つかぬよう。 「JAO!!JAOOO!!」 「もうやめてください!!いもうとさまがしんでしまいますわ!!」 ふらん以上に、2匹は悲痛な面持ちだった。ふらんに止めてくれと、ゆうかたちに止めてくれと懇願する。 そんな様子を指示を出していた一回り大きいゆうかがまじまじと見る。 「…ぜんぶたい、ほうげきやめ!!」 倒したと判断したのか…はたまた、2匹の願いが通じたのか。ともかく、石弾の嵐は止んだ。 「…うー…めーりん、さくや…ぶじで…よかっ…た…」 そう言い残し、ふらんは膝を突いた。 「ごめんなさい!!…さくやのせいで…いもうとさまが…」 「JAOOOOO…」 慌てて駆け寄った。2匹は悔しそうに唇を噛み、涙を溜めている。 一方のふらんは、傷だらけになりながらも無事に安堵の笑みを投げかけた。 「…とも…だち、まもる…の、あたり…ま…え…」 倒れそうになったふらんを支えるめーりんとさくやにリーダーらしきゆうかがゆっくりと近づいて来る。 めーりんはふらんに寄り添いながら怯えていた。生まれてから、すぐ家族を失い…他の種から虐めを受け、先日には人間の子供にも暴力を受けた。 …分かっている。立ち向かわなくていけないのは痛いほど分かっている。 それでも…竦んだ。怖かった。この圧倒的な数を見ると。 その横でさくやは憤慨していた。何故、こんな目に遭わないといけないのか。 しかしながら、ここで思い出す。野生の頃の本能を。あの頃は生きるのに必死だった。油断すれば天候にやられ、他の動物に食われる。強き者が正義、弱き者が悪の厳しい世界。 このゆうかたちがここまで警戒することは仕方が無いことだ。 …ならば、ここで反撃をするのも…仕方が無いこと。 さくやの目が赤く染まる。…それは、鮮血の色だった。 「…わたくしたちにたたかういしはなかったのに…それをあなたたちは、むしし、こうげきをしかけた…かくごはできて…?」 臨戦態勢だ。場に緊張が走る。 ジリ…ジリと間合いを取った。 めーりんは戸惑った。普段のさくやからは想像出来ないその殺気に。…だが、その殺気を以ってしてもここを制圧するのは至難の業に違いない。 このままでは…ふらんだけでない…自分の苦しみを理解してくれた、一緒に泣いてくれた、暖かく抱きしめてくれた、さくやまでもがやられてしまう。 めーりんは考えた。みんなが無事に済む方法を。誰も傷つかない方法を。 「…いきますわよ…いもうとさまのいたみ、おもいしりなさい!!!」 いざ、飛び掛ろうとするさくやの前に間一髪で表れ、体当たりを喰らいながらも、なんとか阻止した。 跳ね返ったさくやは一瞬、驚きを隠せないでいたが、すぐに先程の鋭い瞳に戻った。 「…そこをどいてください…めーりん。」 静かに言い放つ。威圧を感じながらもめーりんは一歩も譲らなかった。 「JAO、JAOOO!」 攻撃は止めるよう懇願した。 「…どうしてですか!?いもうとさまを、あんなにいいようにぼこぼこにされて…ゆびをくわえてだまってるなんて、おくびょうのすることですわ!わたしは、ゆうかたちをゆるせません!!」 さくやの言い分、怒りは当然だ。めーりんにも痛切に伝わる。…両親と離れ離れになった時、何もしなかった。泣いてるだけだった。…さくやの言う臆病者とは、当に、自分のことなのだから。 「JAOOO、JAOO、JAO!JAOO、JAOOOOOO!!」 それでも泣きながらに訴えた。 ここで怒りに任せても、ふらんは傷ついたままであることを。さくやまでもが傷ついてしまうのは見たくないことを。話し合い分かってもらうのが先決だということを。 さくやの怒りは話を聞いているうちに、静まっていた。元の穏やかな表情、優しい目に戻る。…どうやら、めーりんの毅い思いが伝わったようだ。 「…めーりんのおっしゃるとおりですわ。わたし、まちがっていたのかもしれません…」 目を一度閉じ、開き、傷ついたふらんを見つめる。 めーりんとさくやは、お互いに頷き、リーダーゆうかの方へ向かう。 「わたしたちには、てきいはありませんわ!あるはなをさがしていただけです!」 「JAO!JAOOOO!」 周りのゆうかたちがざわめき始めた。 「…たいせつなゆうじんの、いもうとさまがきずついてしまいました…おねがいします…いもうとさまをたすけてください…!!」 「JAOOOOOO!!」 顔を下げ、地面に付けた。心からの願いだった。 「ゆ!だまされちゃだめだよ!きっと、はなをうばいにきたんだよ!」 どこからともなく、声があがる。 「そうだよ!このさくやは、さっきはんげきしようとしたよ!ゆっくりできないよ!」 第一声に続いた。 「ゆっくりできないさくやはゆっくりしね!」 そして、ゆっくりしね!のコールが巻き起こった。 2匹は黙っているしかなかった…このリーダーゆうかに、自分たちの思いが伝わるのを祈って。 「ゆゆっ!みんな、ゆっくりだまってね!」 リーダーゆうかの一言で、場が静まり返る。 「…さくや、めーりん…かおをゆっくりあげてね。」 一体どうなってしまうのか…2匹は全身を震えながら顔をあげた。 「…いきなり、こうげきしてごめんね…ゆうかは、ふたりのことばをしんじるよ。」 …願いは、届いた。しかし、他のゆうかたちは納得いかないのか、文句を垂れる。 「ゆ!どうして!?」 「その3びきはてきだよ!」 「はいじょしなきゃ、ゆっくりできない!!」 「みんな…ゆっくりきいてね!このふらんは、さくやとめーりんをまもるために、からだをはってきずついた!」 再度、黙り込む。 「さくやは…たしかに、こうげきしようとしたけど…それも、ふらんのかたきをとるためにしたんだよ!みんなも、なかまをきずつけられたらだまっていないでしょ!?」 ゆうかたちはゆうも出ないようだ。 「そして、なによりめーりんは…ふらんをたすけるため、さくやをきずつけないために、はなしあうことをていあんした。…ね?みんなも、しんじてあげてね!おねがいだよ!」 すると、なんとリーダーゆうかまでもが頭を下げる。その様子を見て、ゆうかたちは困り果てた。 自分たちのリーダー自らの頼みだ。無下にするわけにもいかない。 途端に集まり、緊急会議が始まった。 「ゆううううぅぅぅぅ…みんな、どうする?」 「どうって…リーダーがああいってるし…」 「でも、でも…やっぱりこわいよ…」 「ゆゆ!ゆうかもさくやたちは、いいゆっくりだとおもうよ!」 「そうだね!すごくなかまおもいで、ゆっくりしてるよ!」 「はなしくらいは、きいてあげようよ!」 「「「「「「さんせい!」」」」」」 意見が固まったようだ。一斉に散らばる。 「ゆ!ゆうかたちはさくやたちのはな―――「うー!うー!ふらんをいじめるなぁ~だどぉ~!!」 ゆうかたちの結論を遮る大声がこだました。 「…ゆ!?このこえはいったい…だれ?」 「JAOOO?」 ゆうかたち、めーりんが周囲をキョロキョロと窺う…が、何も見つからない。 「こ、こここ、ここ、このこえは!!!!まさか!!!11!1!」 さくやは何やら興奮している。 「うー♪そこじゃないどぉ~♪」 皆、上空を見上げる。そこには、ふっくらとした頬、ちょっぴりババ臭い桃色の帽子、さわやかな空色の髪、こうもりのような漆黒の翼、そして、ふらんと同じような肢体―――ゆっくりれみりゃが羽ばたいていた。 しかし、ほっぺを赤く膨らませ今にも泣きそうな顔をしている。 「ふらんをいじめるゆうかたちはゆるせないんどぉ!!ぷんぷんだどぉー!!」 …どうやら、傷ついたふらんを見て怒っているようだ。 「きゃーーーーーーーー、お、おお、おおおおぜうさまあああああーーーーー!!!」 良く分からないがさくやが歓喜の悲鳴を上げながら鼻血を噴出す。 「れ、れれれ、れみりゃだあああああああああ!!!」 ゆうかたちはふらんが来たという報告を受けたように慌てふためいた。 「JA、JAO!、JAOO!」 めーりんは、今にもどこかの世界に飛び立ってしまいそうなさくやと、怯えるゆうかたちを見比べ、オロオロとしている。 「うー!まっててね、ふらん☆いま、たすけるどぉー!!」 意気揚々と急降下し、倒れているふらんの前に立った。 「うー!さぁ、どこからでもくるがいいどぉー!!れみりゃがぜんりょくでまもるどぉー!!」 明らかにワンテンポ遅い。空気が一瞬固まった。どうしたもんかと。 と、状態が回復したのか、ふらんが頭を起こして口を開いた。 「…おねぇさま…たすけにくるの、おそいよ…」 「…うー?」 ふらんの一言で、れみりゃを除くその場にいたもの全てが笑い出す。 「ゆっゆっゆっ!!」 「JAOOOOOOO!!」 「さすがはおぜうさま、じつにかりすま☆なぼけですわ!!」 「うー?れみりゃはかりしゅま☆なのらー♪」 何故皆が笑っているのかが良く理解出来ず、戸惑いと疎外を何となく感じていたが、かりすま☆という言葉に気を良くし、一緒に笑う。 さっきまでの警戒心が、いがみ合いが、まるでどうでもいいように笑いと共に吹っ飛ぶ。 笑う門には福来るとはよく言ったものだ。 確かに、笑いとは温く、幸せな気持ちにしてくれる。 突然、思い出したようにれみりゃが後ろを向いた。 「はっ!ふ、ふらん、だいじょうぶぅ!?」 「う~…おねぇさま…ふらんはだいじょうぶだよ。」 傷はまだ残っているが、ふらんは屈託のない笑みで大事に至らないことを伝える。れみりゃ…いや、めーりんとさくや、ゆうか達全員が胸を撫で下ろした。 「ゆ!さくや、ゆうかたちにゆっくりじじょうをはなしてね!みんな、さくやたちをしんじることにしたよ!」 「そうだよ!さっきはいしなげてごめんねええ!!」 「みんな、むかしほかのゆっくりに、おはなさんをめちゃくちゃにされたことがあるの…」 「それでいまも、まもろうとしてこうげきしたの。ほんとうにごめんなさい。」 口々に謝罪の意を述べるゆうかたち。 「わかってもらえればうれしいですわ!これでなかなおりです。」 リーダーゆうかとさくやがその証に頬をすりよせた。いわゆるすりすりだ。この行為は親愛、信頼等を表すと言われている。 すると、誰からともなく拍手が鳴った。 始めは迷いが含まれるかすかな音だったが、同調するように、支えるように1人、2人と強くなってゆく。 そして、この場全員の意志を表す盛大なものへとなった。 温かい風が優しく包み込む。 渦中、リーダーゆうかが誰にも聞こえない声で呟いた。 「…ゆっくりも、まだまだすてたもんじゃない…かな?」 めーりん、さくや、ふらん、れみりゃを見つめながら。 拍手が鳴り止み、あるゆうかがふとさくやたちに向けた。 「ゆ!そういえば、さくやたちはなにかさがしてる…っていってたね!」 「ゆゆっ!ゆうかたちにできることがあったらなんでもいってね!」 先程の敵意が嘘のようだ。 「ゆ!そうですわ!実は…」 さくやはこれまでの経緯を話した。 めーりんが、友人のプレゼントとして花を贈ろうと決め3匹で“極・六王栄華”をの手掛かりを探し求めていたこと。 そして、花が大好きで育てる習性があるゆうかに会えば何か知ってるのではないかということ。 「…と、いうしだいでございます。」 話終えると、ゆうかたちは困った表情を浮かべていた。 「JAOOO?」 雲行きが怪しくなり、めーりんが不安げにどうしたのかと尋ねる。 リーダーゆうかが重々しく口を開いた。 「…あなたたちがさがしているはな…たしかにじつざいするわ…でも…」 「でも…?」 一瞬返答に詰まったが、続けた。 「…ごく・ろくおうえいがをつむためには、しれんをのりこえなくてはならないの。」 「しれん…ですか…いったいどんな?」 すると首を横に振った。 「…ごめんね。くわしくはわからないよ…でも、うわさだと2どとゆっくりできないめにあうとか…」 2度とゆっくりできない。どういう意味かは計りかねるが、ともかくゆっくりにとっては大変なことなのだろう。 れみりゃががくがくと怯え始めた。 「めーりん…どうします?」 「JAO!?」 話を振られてめーりんは困り果てた。 確かに大好きな進のために伝説の花を持ち帰りたい。…しかし、試練が待っているという。これ以上大切な仲間を傷つける訳にはいかない。 「…めーりん、さくやならだいじょうぶですわ。」 「…ふらんも…ついていくよ…3にんで、ちからあわせようね…」 ふらんがふらつきながらも立とうとする。が、れみりゃがそれを止めた。 「…おねえたま?…」 「うー!だめだどぉ~!ふらんはけがしてるどぉ!」 れみりゃが心配してくれるのは分かる…それでも、、 「で、でも…さくやとめーりんだけじゃ…」 すると、れみりゃが自らの胸を叩いた。 「うー♪あんしんするのら!こわいけど…れみりゃがふらんのかわりについていくどぉ~♪」 なんとこのれみりゃ、ただの通りすがりなのにも関わらずふらんの代わりを申し出た。…なんとまぁ、良くできたゆっくりか。…いや、単なるお人好しなのか… 「ゆうかもついていくわ。なにかのやくにたつとおもうの…れみりゃ、3にんのれる?」 リーダーゆうかもついて行くことを表明した。 「れみりゃにまっかせるどぉ~♪おおぶねにのったつもりでゆっくりしててねぇ♪」 「うー…ふらんも、けがをなおしてもらってからごうりゅうする!」 「JAOOO…!?」 めーりんはこのやりとりに驚いた。…かつては誰一人として頼れるものがなかったのに… 「…めーりん、あなたにはこんなにもなかまがいますわ。めーりんはとてもやさしいゆっくりです。…でも、めいわくをかけたくないとおもわないでくださいまし。わたしたちは、なかまのためにぜんりょくをつくしたいだけですわ!」 その言葉に勇気付けられた。めーりんは思わず感涙を流しそうになる。そうだ、もう一人じゃないんだ。 「ゆうか、どこにとべばいいんだどぉ~?」 「えっとね…ちょうど、たいようのほうがくにあるもりよ。まずはそこにむかって。」 目的地はまた変わるものの、心強い友が加わった。 天候は快晴。風向きは追い風。どんな試練が待っていようと固い絆があればきっと… ~続く~ 以上ひもなしでした。以下駄文。 れみりゃ口調は良く分からなかったので、ティガれみりゃの人のものを拝借しました。 ちなみにれみりゃはただの通りすがりのゆっくりです。 ちょっと長くなりそうなので今回は3分割とします。ってしまったお…中半なんて言葉あんのか…?orz あ、後“ひもなし”という私の名前の由来が気になった人がいたみたいなので。 えっと…その…ひもなしパンツのひもなしです… ひもなしバンジーの人、惜しかった。実に。 …え?手がないのにどうやって拍手をしたか?…いや…く、口…そう、口でパチパチって言ったんじゃないっすか? 続き読みたい・・・。 めっちゃ楽しみにしてますんで・・・。 -- 名無しさん (2009-04-16 09 19 18) 続きゆっくり待ってます。どんぱっちゅ再登場希望w -- 名無しさん (2009-09-01 20 18 46) おお、まちわびまちわび -- きめぇ丸 (2013-03-10 01 02 36) 名前 コメント