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主に放射能汚染瓦礫に関する記事を載せています。 2011.3.11大震災・福島原発大人災 がれき受け入れ自治体マップ〔2012.4.16 現在〕 このページで取り上げているサイトおよびがれき処理関連サイト一覧 がれき関連ニュース 関連資料 ☆ 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法案 「衆議院」より / 保護 ■ がれき広域処理に反対する、ささやかな声 (ゲストポスト) 「EX-SKF-JP(2012.3.26)」より ・このブログで今年の1月にご紹介した、ネクタリーナさん(「原発事故、放射能汚染を親しい人と語れない」)のお友達が書かれたものです。東京から山口に避難なさって健康を取り戻したものの、山口県防府市ががれきを受け入れる意向、と知って、以下に掲載する文とほぼ同文の手紙を山口県知事宛に送ったそうです。 ネクタリーナさんと似た素直な文章で、ご自分の体験から書かれています。 ▼ ■ (必見:TVはやらない動画)川崎駅前の瓦礫受入演説に市民が猛烈な批判→黒岩知事・細野大臣・阿部川崎市長・林横浜市長・自民党(川口・田中)民主党(城島・田中・笠・本村・勝俣) 「portirland(2012.3.22)」より ・細野さん、線量計で普通に測ってるけど、これでは測定無理ですよ。 他県で搬入時に不検出だったものが、焼却で濃縮、焼却後に放射性セシウムが大量に検出されています。 この動画ですが、測定のパフォーマンス演説時に猛烈な批判を浴びています。 実は、測定以外でも演説が、猛烈な批判に晒されています。 html2 plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 ----------------------------------- ■ ガレキ拡散の真の目的とその黒幕について 石川栄一 「さてはてメモ帳(2012.3.28)」より ・私は、生まれも育ちも生粋の道産子です。 この度の札幌市長の「ガレキ受け入れ拒否」について、強く支持すると共に、安心しているところです。 東日本大震災の被災地のガレキは、各方面で問題になっているように「助け合い」や「絆」といった綺麗事ではなく、利権やTPP問題などと深く結びついていると思います。 (※ 長文略。) ★ がれき受け入れ 道知事、全市町村に要請文 「北海道新聞(2012.3.28)」より / 魚拓 東日本大震災で発生したがれきの受け入れに向けて、道は道内の全179市町村と、一般廃棄物処理を行っている全44の一部事務組合・広域連合に、協力を要請する文書を送付した。 要請文は23日付で、26日に電子メールで送付した。 文書は高橋はるみ知事名で、道として「被災地の復旧・復興のため、受け入れに向け積極的に協力したい」と説明。「それぞれの地域の実情や施設の状況もあろうかと思いますが、(がれきの)広域処理の実現に向けた取り組みについて、ご検討をよろしくお願いいたします」と求めている。 政府が16日付で、岩手、宮城両県のがれき受け入れを求める要請文を、これまでに受け入れを表明していない35道府県の知事や札幌など10政令都市の市長を対象に一斉送付したことなどを受けた。高橋知事は「スピード感をもって対処する」と、市町村の受け入れを支援する考えを示している。 ☆ 東日本大震災により発生したがれきの受入れについて :札幌市長 上田文雄 2012.3.23 「札幌市ホームページ」より (※ 長文略。) ・何度も自問自答を繰り返しながら、私は、「市長として判断する際に、最も大事にすべきこと、それは市民の健康と安全な生活の場を保全することだ」という、いわば「原点」にたどり着きました。 私自身が不安を払拭できないでいるこの問題について、市民に受入れをお願いすることはできません。 市民にとって「絶対に安全」であることが担保されるまで、引き続き慎重に検討していきたいと思っています。 ※ ■ 3月4日沖縄ガレキ反対デモはサタニスト・カルトが主催 「カレイド・スコープ(2012.3.3)」より ・明日、3月4日、沖縄の那覇市でガレキ受入れ反対のデモを行うようですが、このデモの主体はラエリアン・ムーヴメントというカルトですので、警戒心を緩めないでください。 ・彼らの教理を貫いているのは「アンチ・キリスト」です。 崇拝しているのは、宇宙人のエロヒムです。(そんなもの現実に存在していない。目を覚まして!) ラエリアン・ムーブメントとはフリーメーソンというサタニズム結社から出てきたものですので、絶対に関わりを持たないでください。 --------------- ■ ラエリアン・ムーブメントはフリーセックスを推奨。 「ヘリオス40の沖縄(琉球)裏情報(2011.11.27)」より ・★ラエリアン・ムーブメントはSEX宗教?(やや日刊カルト新聞) http //dailycult.blogspot.com/2010/08/blog-post_23.html ラエリアン・ムーブメントは、いろんな人とセックスをすると脳のニューロンが発達して頭がよくなるなどと言ってフリーセックスを推奨する宗教団体です。 【バズビー博士】 ■ 調子に乗り過ぎた「反原発」・・・バズビー教授の退場 「人力でGO(2012.1.6)」より ・「放射線はとっても怖い」という方達が神輿を担がれていた、バズビー教授が高額なサプリメントと計測(※ 器?)を販売していたとして、色々と非難されている様です。 ・一部の「反原発派」は「バズビー教授は詐欺師に嵌められたんだ」と主張しますが、どうやら、ガーディアン紙の取材の内容を見る限り、バズビー教授がこの件に全く無関係だとは考えられません。 --------------上記記事中のバズビー博士関与のサイト↓----------------- ■ CBFCFのMission 「Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima」より ・この映像(※ サイト参照)の中でバズビー博士が、皆様にお伝えしているバズビー博士考案の サプリメントは、4u-DETOXで、購入が可能です。現在、ご注文が殺到して おります関係上、在庫が少なくなってきておりますので完売時はご了承くだ さい。 これらの売り上げは。放射能がれき処理法撤回訴訟に経費として使用 されます。 ■ 放射性汚染がれき処理法撤回訴訟 「Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima」より ※※ Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima のサイトに以下の“注意書き”があります。 【ご注意】 現在、バズビー博士 の承諾を得ずにバズビー博士の名前や写真を使用した募金や 寄付活動を行っているバズビー博士支援基金は。バズビー博士とは、全く関係 のない基金であり.この基金が、募集している土壌検査・食品検査のプルトニウム90に対する機器の使 用や数値の読み込みなどに関する問題や金銭的な問題が発生した場合、当会、及びバズビー博士は全く、責任を負えませんので、ご注意ください。 バズビー支援基金のサイトページにある森田玄という名前に見覚えがあり、調べてみたら⇒Google検索、なるほど・・・。 ただ、文章を読む限り、バズビー博士と森田玄氏はやり取りがあるわけで、無関係ということにはならないだろうと思う。なにせ、森田氏の団体から計75万円が寄付されており、博士もバズビー支援基金を承認していることは明らか。 「Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima」と「バズビー支援基金」そして「バズビー博士」は何をしてきたのか? 危険を煽って商売しているだけだと思われても仕方がないのでは? ■ 日本中に広めるなよ 「二階堂ドットコム(2012.1.5)」より ・みんなで災害なんてわかり合いたくないし、だいたいだな、がれきの全部をいちいち検査していると思うか?ダンプで運ぶのは土建屋とかそういう業界の奴らだぞ。適当に決まってるだろ。 あんな放射性廃棄物は、福島に埋めるのが一番だよ。福島第一当たりにデイジーカッターでめいっぱい穴開けて埋めちまうほかにないだろう。それか、海に捨てて希釈させるか。もうそれしかないんだから。 ■ がれき処理による放射能の拡散 「むすびの郷(2012.1.4)」より ・7分46秒あたりから重大なことを指摘している。 放射能がれきについて8000ベクレル/キログラムを焼却するということは、米国の基準で言えば、完全に放射性廃棄物であるものを燃やすことであり、周囲に放射能をまきちらす結果にしかならない。 瓦礫焼却で放射能再拡散!福島原発再臨界していた事を米NRC証明!8/21(字幕) 下記動画は7分46秒から再生するように処理しました。 ---------------------------------------------------------- ■ 放射能汚染物質は着々と全国に拡散されている。 「nYoの どうにも、真実が気になる。(2011.12.30)」より ・相変わらずの放射性廃棄物の拡散という二次被害がどんどん拡大している。 「汚染瓦礫処理法案」というものが2011年8月26日に可決されている時点で、これは幾らでも処理できるし、幾らでも脱法的処理が出来ることは前にも書いた。 ■ 東京「汚染がれき」処理、「利権」優先か 「新井哉の危機管理・国民保護ブログ(2012.1.3)」より ・宮城県女川町の「汚染がれき」を東京都内で焼却する問題で、財団法人東京都環境整備公社が災害廃棄物処理で巨額の運転資金を得ることが判明した。同公社の理事長は森浩志元東京都環境局次長。この典型的な「天下り団体」に東京都は3年間で約280億円を貸し付ける予定で、同公社が事業者と処理・運搬契約を結ぶ。石原都知事は被災地の支援を主張し、都民の反対があるにもかかわらず人口密度の高い東京都内で焼却実施を強行しようとしているが、石原都知事と都庁、リサイクル・産業廃棄物処理業者ら政・官・財の不透明な「利権の構図」が明らかになったことで、「汚染がれき」焼却は見直しを迫られるのは必至だ。 ☆ 〔財〕東京都環境整備公社 ★ がれき処理反対には「黙れ」 石原都知事「皆の協力必要」 「msn.産経ニュース(2011.11.4)」より / 魚拓 ※ 【2012.1.6時点での、過去記事収集】 ■ 小出裕章が震災がれき処理に警鐘ーー「焼却灰は、各自治体で埋めてはいけません」 「ざまあみやがれい!(2011.12.22)」より ■ がれき処理だけで1兆円超!震災復興需要に群がるゼネコン 「週刊ダイヤモンド(2011.10.12)」より ■ 8月26日成立した「放射能汚染瓦礫処理法」を検証してみた。 「ふじふじのフィルター(2011.9.3)」より ■ 汚染がれき処理法(全文テキスト) 「できない、困って→問題解決(2011.9.2)」より ■ 速報:「汚染がれき処理法」本文官報掲載/成立4日後にやっと全文を公開 「できない、困って→問題解決(2011.8.30)」より ■ 「汚染がれき処理法」は昨日(2011.08.26(金))成立/何故か本文は未公開 「できない、困って→問題解決(2011.8.27)」より ※ 【資料】 ☆ 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法案 「衆議院」より / 保護 ☆ 東京都環境局:廃棄物 ここに『都内一般廃棄物焼却施設における飛灰等の放射性物質等測定結果について』のファイルリンクあり。 ※ 【がれき関連ニュース】 ★ がれき検査費「国が負担を」 市町が要望 静岡 「msn.産経ニュース(2012.1.6)」より / 魚拓 ★ がれき処理で市長会と町村会が国に申し入れ(静岡県) 「静岡第一テレビ(2012.1.5)」より / 魚拓 ★ セシウム規制値超え農産物、公表せず焼却 静岡でも茶19トン 「中日新聞(2011.12.29)」より / 魚拓 ★ 福島がれき再利用指針…1kg3千ベクレル程度 「読売新聞(2011.12.25)」より / 記事保護 ★ 被災地のがれき受け入れへ黒岩知事が再表明、横須賀の処分場など/神奈川 「カナロコ(2011.12.21)」より ※ 【このページで取り上げているサイトおよびがれき処理関連サイト一覧】 ■ Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima 子供達が健康に生きるためには、何をするべきか、どうあるべきかを真剣に考え、そして、躊躇することなく実行する。 『子供達の生きる権利を守る!』という共通の目的を持ち、一人では不可能な事であっても、すべてのものが助け合い、利害や利益を追求せずに、子供たちの未来・地球の未来を考え、新しい波をつくることを目的としています。 ■ できない、困って→問題解決 ■ 二階堂ドットコム ■ むすびの郷 ■ ふじふじのフィルター ■ 放射性廃棄物スソ切り問題連絡会 スソ切り処分とは、放射能が一定レベル以下の放射性廃棄物を規制の対象から外すことで、正式にはクリアランス制度と呼ばれています。 ■ nYoの どうにも、真実が気になる。 .
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#blognavi 続報が出たので追加します。 マジンシアで消滅した瓦礫は内装に使ったものだけではないそうです。 「Rubbleを持たせたキャラクターが、今回の問題の発生期間中(2011年4月1日定期メンテナンス後~4月12日定期メンテナンス前まで)にマジンシアでログインした可能性がある場合」もご確認ください。 詳しくは公式の こちら なお、消滅した瓦礫の申請期限は2011年4月20日までと発表されました。 お心当たりの方はお急ぎください。 この下は4/12の記事です。 パブ70で生まれ変わったニューマジンシア。 土地の抽選も終わり、既に家を建築して内装された方もあるでしょう。 そのマジンシアで発生したバグなのですが、ロックダウンした瓦礫(Rubble)が消滅したそうです。 このバグは4/12のメンテで修正済みですが、被害に遭われた方は瓦礫の変換を受けられるので、玄関先にメールボックスかそれに代わるセキュアを設置しておいてくださいとのことです。 詳しくは公式の こちら カテゴリ [カスタマ・内装ニュース] - trackback- 2011年04月12日 22 00 00 #blognavi
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イルのこと。
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ゲヘナAnセッション『瓦礫の街に彷徨う獣甲』 ◆OP1 GM 君は今、酒場で友人の愚痴に付き合っている。友人の名はムアイド。中々に腕の立つ獣甲技師です。 ヘサームド:「何だよ、今日は口を開けば愚痴ばかりだなぁ」と酒を勧めよう。「一体どうしたっていうんだ?」 GM/ムアイド:「あぁ、俺には才能がないんだ!!どうすれば、今まで以上の獣甲を作れるって言うんだ…」どうやら、自分の才能の行き詰まりを感じているようです。 ヘサームド:「今だって十分に才能を発揮しているじゃないか。何か、あったのか?」 GM 確かに、ムアイドは獣甲技師としての腕はそこそこですね。このシェオールでも、そこそこ名は通っています。 ヘサームド:なるほど。「何か、すごい獣甲でも見かけたのか?」 GM/ムアイド:「……いや、最近アイディアが浮かばないんだよ。獣甲の性能を上げるなら、お金をかければそれだけ強い物ができるだろう?だけど、それじゃダメなんだ!!俺は獣甲の基本性能を上げたいんだ」 ヘサームド:「基本性能かぁ」 GM/ムアイド:「例えば、ただの鎧獣の性能を改式並にまで上げられれば、駆け出しの獣甲闘士でもより強くなれる……」 ヘサームド:「……ふむ」 GM/ムアイド:「そうすれば、それだけ犬死が減るって事じゃないか!!……だが、俺はダメだ……俺には、それをするだけの力が……」そう言って、彼は頭を抱えます。 ヘサームド:肩を叩きつつ、酒をつぎ足しておこう。「力ばかり捕らわれるのではなくて、何かこう……小さな力で効率良くみたいに。発想を変えるのはどうなんだ? 俺も獣甲に助けられているから」 GM/ムアイド:「小さな力で効率よく…発想を変える……か……」頭を抱えながら、呟くムアイド。 ヘサームド:「ムアイドの考えが実現すれば、俺も助かる。協力できそうな事は言ってくれよ」 GM ヘサームドの言葉に、無言だったムアイドですが……しばらくして、突然弾かれたように立ち上がります。 GM/ムアイド:「ありがとう、ヘサームド!!お前のお陰で、突破口が開けそうだ!!」 ヘサームド:ビックリしてつられて立ち上がろう。「そ、そうか?何か思いつけたようだな」 GM/ムアイド:「そうだな、そうすれば……よし、行けそうだ!!だったら、すぐに取り掛からなくては!!」と、酒場から飛び出すムアイド。 ヘサームド:呆然と見送ろう。そして、後で酒の差し入れでも持って行ってやるか。 GM/ムアイド:「それじゃな、ヘサームド!!俺はしばらく研究に取り掛かる!!今日の酒代は、俺にツケておいてくれ!!」そう、憑かれたように捲くし立てるムアイド。 ヘサームド:「わ、わかった。頑張れよ」 GM/ムアイド:「ヘサームド、今度暇な時にお前の獣甲のメンテもしなくちゃな!それじゃ、また!!」そういい残して、彼は自分の工房に向かって走り去っていきます。 ヘサームド:ムアイドの背中を呆然と見送ろう。 ◆OP2 GM さて、ある日シェオールの街中をぶらついている帝王。 キスラー:愧風堂々と。 GM 愧風かよ。ちょっと面白かった。で、偶然ばったりと知った顔と遭遇します。 キスラー:「ぬぅ」 GM 彼の名はアブドバ。手練の獣甲闘士です。年齢は30ちょい前の、ヒゲが素敵なダンディ。 GM/アブドバ:「おう、キスラーではないか」 キスラー:「久しいな、アブドバ。息災そうだな」 GM/アブドバ:「わはは、お主もな、キスラー。聞けば、例の娼婦の失踪事件を解決したのはお主だそうだな?流石は我が友。わはは」 キスラー:「結局、黒幕は突き止められなかったがね」アブドバもガタイのいい男? GM 当然筋力と強靭は5ですだよ。 キスラー:身長2m越えの男と筋力強靭が5の男が道のど真ん中で話し合ってるのか。 GM/アブドバ:「大方、お主に恐れをなして逃げたのだろうな」 キスラー:「ふっ…だが未だ我は天を掴むに至らぬ。まだまだ修行が足りぬようだ」 GM/アブドバ:「わはは、それは我とて同じ事よ……獣甲と愧拳、選んだ道は違えど、我らの志は同じ」 キスラー:「うぬより先に天を掴むのは我だがな?」にやり笑いかけつつ。「さて、このような所で会うというのも珍しい。何があった?」 GM/アブドバ:「それは我の台詞よ(ニヤリ)……おぉ、忘れるところであった。我はここに用があってな」と、気づけばそこは獣甲工房の前でした。 キスラー:「ほぅ、獣甲でも新調するのかね」 GM/アブドバ:「いや、今日のところは調整だけよ。我が身に宿りし獣甲を、完全に使いこなせる高みには今だ至らぬ」 キスラー:「うむ、成る程な… 良き武具を使うもまた一つの戦術というわけか」 GM/アブドバ:「うむ。それでは、そろそろ約束の時間故、我は行くぞ。キスラーよ、近いうちにまた手合わせたいものだな」そう言って、彼は工房に入っていきました。 キスラー:「あぁ、縁があればまた会おう」獣甲工房を見上げつつ見送り。「ふっ…我とて遅れを取るわけには行かぬのよ」拳をぽきぽき鳴らし、また一段と強いオーラをまとった戦友の姿を思い浮かべながら後にする。 GM では、無闇に世紀末っぽい雰囲気を醸し出しつつ、キスラーが去り行くところで切ります。 ◆OP3 GM さて、ここは鐘杏の本部(娼館)。とある一室に、アザリーがやってきています。 アザリー:拉致監禁!? GM で、ティサウとアフルは直属の上司に呼び出されました。エザレラじゃないよ! ティサウ:謀ったな!(笑) GM アザリーは、とある仕事のお願いに、鐘杏に送り込まれたのです。ちゃんと、客として扱ってもらえるよ(笑)。 アザリー:セレブ御用達の眼鏡クイクイしてますよ。 GM/鐘杏上司:「すみませんね、 凌渦 の方。お待たせしてしまっておりまして」 アザリー:「いえ。気にしてません」 GM で、そこにティサウとアフルもやってきてください。 アフル:「(コンコン)失礼します。急にどうかしたのですか?神語の解釈理論を別の一面からアプローチを試行している最中だったのですが……」 ティサウ:「あの、ほら。俺、いや私は決して何もしていないんですが。必要なことも…」入ってまず言い訳からはじめなければ! GM/鐘杏上司:「まぁ、とりあえず必要な事はやってくれ………アフル、ティサウ、こちらは 凌渦 からいらしたアザリー女史とリーフ女史だ。ティサウは面識があったな?」 アザリー:「先日はどうも」 アフル:「はじめまして、アフルです。よろしくお願いしますね」 ティサウ:「うわ。これは何かとても面倒な予感がする…」 アザリー:「初めまして。アザリーです」会釈 ティサウ:「では、後は若い人同士でごゆっくり……」こそこそ GM/鐘杏上司:「待て、お前もまだ若い部類だろう。……さて、アザリー女史がいらっしゃったのは……あの件ですね?」と、アザリーに笑顔を向ける鐘杏の上司。しかし、その眼は冷たくアザリーを値踏みしている。 アザリー:「ええ。近頃の、獣甲闘士が行方不明となり獣甲だけが残される、例の事件について」 アフル:「(……二人ともすごい美人だけど……、まさか、娼館関係の仕事じゃないよね?)」 アザリー:いや!リーフは妖霊ですから!人化持ってませんから! ティサウ:「この間のが癖になって、また娼婦の服装をしに来たんですね、わかります!」 アフル:「……ティサウ?落ち着きなさい?」 GM/鐘杏上司:「………すみませんな。こんなのしかいなくて」 アザリー:「いえ、うちにも大差ないのがいますから」 GM で、アザリーの話を補足すると。最近のシェオールでは、獣甲闘士の行方不明事件が相次いでいます。本人が行方不明で、その獣甲だけが残される、と。 アフル:「大変ですねー」(他人事のように) ティサウ:「(奇矯な言動をすることで仕事から外されて働かなくて済むという俺の高度な作戦がまったく通じない…)」 GM で、それは獣甲を剥ぎ取られて本人だけが誘拐されたのか、とか考えられたのですが、どうやらそうじゃないらしい、と。獣甲闘士の強さ自体、結構な腕の者も含まれていて、単純に何者かに敗れたとも考えづらいのです。 アフル:「……・ほう?解析ですか?調査ですか?」 GM で、その件を調べるのに協力して欲しい、と。鐘杏を訪れたのです。 ティサウ:「しかし、その事件にあたるのに、獣甲闘士がいないという…」 アザリー:なんで界螺外すの?容疑者? GM 君以外の凌渦外交員が、界螺にもいっていると考えてください(笑)。実際、行方不明になっている獣甲闘士は皆凌渦のメンバーなのです。なのでアザリーは、鐘杏に対する牽制の役目も持っていると考えてください。 アザリー:「うちの獣甲闘士も噛ませています。鐘杏に獣甲は期待していません」 GM で、少なくともティサウやアフルレベルでは、鐘杏が今回こんな事件を起こしているとは聞いてないので。鐘杏としても、疑われんのメンドクセーし、まぁここは恩を売っておいちゃろ、と。 ティサウ:「まあ、どうしても逃げられないみたいだから…とりあえず、何か手がかりとか目星とかはありますのですかね?」 GM/鐘杏上司:「それを調べるのがお前たちの仕事だ。まぁ、消えた獣甲闘士の周囲にでも、聞き込みに行きなさい行方不明者のリストは、アザリー女史が用意してくれた」 アフル:「聞き込みかぁ……・。私苦手だな。ティサウは?」 ティサウ:「そう言う地道な作業に俺を選ぶのは人選ミスだとしか思えないと言う話が…」 アザリー:まあ被害者が全員凌渦らしいからリストくらいはね……(笑) アフル:「……・お互い人選ミスだよね、この仕事」 アザリー:「呼ばれてここにいるという時点で適切な人選でしょう。決まったことをごちゃごちゃ言わない」←苛々し始めた ティサウ:「まあ、地道、というところを無視すれば、人に話を聞くのは別に苦手ではないと、前向きに考えてみるのはどうだろうか」 アフル:「ふっふっふ、研究と追求は得意ですよ?」 GM/鐘杏上司:「頑張ってくれ。あ、必要経費はなるべく抑えてな」 アザリー:「では行きますよ」 アフル:「うん、行きましょうか」 ティサウ:「はいでは行ってらっしゃい」 アザリー:耳ひっぱる(笑) ティサウ:「くっ、失敗…」 アフル:「上司、ティサウ専用首輪あります?」 GM/鐘杏上司:「紐で十分だろう。ヒモだけに」 アザリー:「うちのデカブツは耳引っ張ったってついてこないから、まだマシよ」 アフル:「あははは。じゃあ、行ってきますね」 GM じゃあ、この辺で切りますねー。何かあればどうぞー ティサウ:「昔の偉い人が、働いたら負けd(ry」以上! アザリー:「(今回は獣甲だし、そのデカブツは関わってない……ああ、楽に進みそうな予感!)」 ◆ミドル1 GM OP1から10日ほど経ったある日、ヘサームドの家の戸がノックされます。 ヘサームド:一応用心しながら戸を開けよう。「誰だ?」 GM/組合員:「獣甲技師組合から来ました。ヘサームドさんのお宅ですか?」 ヘサームド:「そうだ。組合が俺に何の用だ?メンテは怠ってないぞ」 GM/組合員:「それは結構な事です……あ、いや。今日はちょっと、ムアイドの事でお聞きしたいことがありまして」 ヘサームド:「ムアイドがどうかしたのか?」 GM/組合員:「はぁ、実はここ数日連絡が取れなくなっていまして……」 ヘサームド:「何だと?」 GM/組合員:「ヘサームドさん、ムアイドの行方を知りませんか?」 ヘサームド:「10日前に酒を飲んだきりだな工房へすっとんで帰る後ろ姿を見たのが最後か?」 GM/組合員:「10日前……?なるほど、そうですか……それでは、もしムアイドを見かけたら、組合の方へご連絡いただけますか?」 ヘサームド:むっ。「なるほど、とは何だ?」と組合員を引き留めよう GM/組合員:「えっ!?あ、いや……いえいえ、なんでもありませんよ。ははは……」と、眼を泳がせながら手を振る組合員。 ヘサームド:「いやいや、思わせぶりはやめようぜ。何か問題が起こったのか?」 GM/組合員:「な、何の事ですか?わ、私は何も知りませんよ?」とそそくさと立ち去ろうとします。 ヘサームド:「おいおい」と言いながら自分の牙をちらつかせてみようかな。「ムアイドとは知らぬ存ぜぬの仲じゃないんだ」 GM/組合員:「よ、よしてくださいよ、そんな怖い物はしまってください。ま、紫杯連に報告しますよ?」と、声が震えています。あ、ちなみに彼もムアイドも凌渦の息のかかった工房に勤めてますんで。 ヘサームド:「まぁ、噛みつくわけないだろ?」と肩に腕を回して引き留めよう GM で、彼はすぐにでも逃げ出そうとしてますので……これ以上話を続けるならば、交渉術で判定を。必要達成値は2です。紫杯連内での立場が悪くなっても構わないなら、拷問とかでも良いですが(笑) 判定は失敗。 GM では、組合員は今にも泣きそうになりながら、君の手を振り払います。 ヘサームド:「この獣甲はムアイドに調整してもらってるんだ。ヤツに何かあったら、俺だって困る」 GM/組合員:「や、やめてくださいよぅ!私が悪いんじゃないですよ!!と、とにかくムアイドを見つけたらすぐに報告してください!い、良いですね!!」 ヘサームド:仕方ない、ここは頷こう。「わかった、脅すようなことしてわるかった」 GM/組合員:「お、お願いしますよ!!こ、この事は紫杯連には内緒にしておきますから……そ、それじゃ!!」と、組合員は怯えながら帰っていきます。 ヘサームド:「うーむ、確か獣甲の新しいやり方を思い付いたって言っていたよなぁ」ヘサームドはムアイドが他にいきそうな場所ってわかりそうですかね? GM まぁ、いくつかは思いつきますね。 ヘサームド:「とりあえず、まずはヤツの行きそうな場所を軽く当たってみるか……」 ◆ミドル2 GM OP2から、大凡1週間ほど経ちました。しかし、あれ以来アブドバとの連絡が取れません。 キスラー:しかし、何時消えるかわからない世の中。ちょっと気にかけながらも積極的に探すことはなさそうだが GM なので、アブドバの家にでも行ってみないかね? キスラー:おお、丁度この街への道はアブドバの家方面ではないか。というわけでちょっと立ち寄ってみよう GM では、アブドバの家。享受者にも関わらず、質素な家です。地下にトレーニングルームがあるくらい普通の家。 キスラー:「実にあやつらしい家だ…我も人の事は言えぬが」 GM ただ……その家の中から、低い呻き声が… キスラー:ぬ。これは警戒しつつ慎重に堂々と入る。 GM じゃあ、アブドバの家の重い鉄の扉を指先で押して家に入る帝王。帝王の目に入った物は……!!床に倒れ、呻くアブドバの姿!! GM/アブドバ:「ぐむぅ………ぬぅ……キ、キスラーか……」 キスラー:「これは…!」周囲に一通り目を配って~。何も無さそうならアブドバに近寄るぞ。 GM あの、全身を切り刻まれても呻き声ひとつ上げなかったアブドバが、苦痛に顔を歪めている。 キスラー:「ぬぅ、何があった」ところで キスラー:アブドバは全身ちゃんとあるの?手足もぎ取られて顔が半分無いとか? GM あるッスな。まだ大丈夫(笑) キスラー:ふむ、外傷による苦痛じゃないようだ。内臓イッパツ食らってるかもしれないけど GM/アブドバ:「我にも分からぬのだ……数日前から、突然このような……フ、情けないところを見せたな……ぐっ」 キスラー:「うぬの様な兵(つわもの)が情けないことを言うでないわ。 むぅ、我にもよく分からぬがともかく医者か」 GM で、アブドバに触れると分かるのですが。彼の獣甲が、異常な熱を持っています。自販機で売ってる缶コーヒーくらい。 キスラー:「こ、これは…アブドバ、立てるか」たぶん立てないから倒れてるんだろうけど GM/アブドバ:「……気づいたか?獣甲が、突然このような……すまんが、肩を貸してくれるか?」そう、立てない……しかし、友の助けがあれば!! キスラー:「そうか、ならば。すこしかりるぞ」え~っと、近くにあった大き目の布(掛け布団みたいなのでもいい)を手に取り、アブドバを背負って!!!布で身体に巻く。大丈夫、剛力なら3Lvある。筋力も5ある。 GM/アブドバ:「キスラー……借りが出来たな」 キスラー:こうして、大男を背負った大男が。「ふ…この程度、借りとは思わぬ。それよりも今は問題を解決する事が先決であろう」獣甲の工房かな?必要な場所は GM/アブドバ:「……忝い」 キスラー:「多少揺れるが耐えよ!」では工房へ!鉄の扉をばかーんとあけて走り去ったところでどうぞ。 ◆ミドル3 GM では、アザリーズリストを基に、聞き込みに来た3人。行方不明になった獣甲闘士の家族に聞き込み中です。 アザリー:外出先で行方不明になったのかな? GM/家族:「どうしてこんな事に……」そう言う例もあれば、室内に獣甲だけが残っていたケースもあります。この家族の場合、家の中から突然消えました。 ティサウ:「運が悪かったということで一つ…」だらだらと聞き込んでるぜお茶とかいただきながら!頑張れアザリー! アザリー:獣甲は特定の工房? GM お。鋭い。リストに載っている人間は、皆同じ工房で調整を受けてます。凌渦の息のかかった工房の一つですね。 アザリー:「同じ工房ね……」 GM/家族:「獣甲の調整をしたばかりで……お金がかかった分、働かなくちゃって……そう言ってくれていたのに……」よよよ アフル:「……・・でも、結局いきなり消えたことに対する謎は残るわね。せめて目撃情報あるといいのにね」 アザリー:「そうね。でも怪しい線は浮かんだから行ってみましょう」 ティサウ:「まあほら、無い物強請りも仕方ないし、アザリーの言うようにとりあえずは共通点が見つかったのだし、そこから手をつけてみるということで」 GM/家族:「あの人が消えた夜は、あの人の寝室から呻き声と妙な音が聞こえて来たんです……でも、私は怖くて朝まで動けずに……」 アザリー:「妙な?どんな音です?」 GM/家族:「なんと表現すれば…呻き声のせいで、よく聞き取れなかったのですが、硬いものを擦り合わせるような音や、くちゃくちゃと言うような小さな音が……」 アザリー:なんか心当たりあります? GM んんー。ちょっと漠然としすぎていて、思いつきませんね。 アザリー:「ありがとうございます」では会釈して出ようか! アフル:GM、現場に血が残ってたりはしてない? GM 血は残ってなかったようです。獣甲の体液は残ってました。 ティサウ:「ああ、そう言えば。被害の拡大を防ぐとかは別に考えたりしなくても良いのだろうか。ほらそこは言われてないし」だらだら アザリー:「良いわけないでしょ!」 アフル:「まぁ、私たちの役目は原因究明だよね」 アザリー:「行くわよもう!」というわけで工房行くんだ! ティサウ:「まあそうだよねうん。なら、そのリストに載ってない獣甲使いのトコロに、注意を促しにでも行った方が良いんじゃないかなぁとか思ったりした次第で」 アフル:「その辺は紫杯連使えばいいんじゃない?私たちが動くのは効率悪そうだし」 アフル:とティサウと話しながらアザリーの後ろをついていく(笑) ティサウ:「それを口実に一人サボりに行く俺の深淵な策略が…」いや実はキスラーとかと会えるかなと思ったんだけど(笑) アザリー:キスラーもその工房にいると思ったんだけど(笑) ティサウ:ああ、そうか…(笑) アザリー:「(あのデカブツとたいして変わんねェ!!)」 アフル:「(獣甲も研究対象にすると忙しすぎるよねぇ)」 ◆ミドル4 GM あの後、ムアイドを探してシェオール中を歩き回ったヘサームドですが。結局、ムアイドを見かける事はありませんでした。 ヘサームド:「あの野郎、一体どこへ行ったんだ?」 GM で、例の組合員のことが引っかかっていたヘサームドは、ムアイドが勤めていた工房の前に来ています。そこに、アザリーたちがやってきます。 ヘサームド:「何だ?」 GM で、凌渦の人間が工房に入ろうとしていますよ。 アザリー:「ヘサームド?」 ヘサームド:「あぁ、アザリーか」 アフル:「……知り合い?」 アザリー:「凌渦の享受者よ」 ヘサームド:「どうしたんだ、そんなゾロゾロと連れて?」 アザリー:「どうしたの?獣甲のメンテだったらちょっと見合わせてほしいんだけど」 ヘサームド:事情を説明します。「実はここに勤めている技師が~うんぬん」 アフル:「……これはクロ、かな?」 ティサウ:「重要な手がかりが消えたと同時に何やら嫌な感じに怪しい話になったな…」 アザリー:「ふむ……」ではこちらの事情も説明しましょう ヘサームド:「獣甲絡みか……」 ティサウ:「まあこれは、何か関わりがあるのは間違い無いんじゃあないかなぁとは思う」 アザリー:「ムアイド、ね」 ヘサームド:「実は、少し心当たりがある」とムアイドが獣甲の基本性能を上げたいと言っていた事も話しておこう GM さて、そう言う話を工房の前で話していると……遠くから、地を揺らすような音が聞こえてきます。 キスラー:ずどどどどどどど!あと、ぬぉ~~~~! という叫び声のようなものまで。 アザリー:「聞きたくない声が!感じたくない震動が!」 アフル:「……・なに?敵?まさか……こんな街中に、邪霊?」 キスラー:身長2m級の大男が身長2m級の大男を背負って走ってきますよ。 ティサウ:「つまりはこの事件は力づくで解決するようなものになるということですね、わかります」 キスラー:「ぬおおぉぉぉぉーー!!」ずしんずしんずしん アザリー:「きやがった」 アフル:「アズリー?アズリー?何でそんなに絶望した表情なの?」 GM と言うわけで、工房の前まで到着したぜ!なんか見知った顔が工房の前にたむろってるぜ! キスラー:うむ!なんと人を背負ってはいるが布で固定してるから両腕が使えるんだぜ帝王キック! ティサウ:「一言で説明するならまあ、アザリーの相方という言葉が」 アザリー:「一緒くたにしないで!!」 GM/リーフ:「アザリーの相棒は私のはずなのに……」 キスラー:「む!そこに居るのはアズリー!何故ここにいるのだアズリー!それよりも今はこちらが先決!どぁー!!」 ヘサームド:「賑やかだな……」 アザリー:「いい加減名前覚えろぉッ!!」 キスラー:というわけで帝王キックで工房の中に入れますか? GM おっと。キスラーが帝王キックのために踏み出そうとしたその時!! ティサウ:「ああいや、ちょっと待ったキスラー。今、ここの工房の人は留守d(ry」一応止める、うん、止まらない!(笑) GM/アブドバ:「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!!」キスラーの背のアブドバが、野太い悲鳴を上げる!! キスラー:「何っ!」 ヘサームド:「どうした?」 アフル:「……ティサウ。とりあえず、他人のふりをしておくことがジャスティスかな?」 ティサウ:「いやはや、どうも、そんな場合でも無さそうだよ?」>アフル キスラー:ひとまず降ろして様子を見る。「どうしたぁ!!」 GM キスラーが、アブドバをおろそうとした瞬間!! アザリー:「離れなさいキスラー!!」 GM/アブドバ:「ぐぁぁぁっ!!」ブシャァ!!キスラーの背に、鮮血が広がる!! キスラー:「ぬぅ!!」 アフル:「!?」 ヘサームド:「!?」 アフル:「まずい!?獣甲をはがして!」 キスラー:とりあえず背から降ろす! GM キスラーに背負われていた男の体から、鮮血が吹き上がる!! GM/アブドバ:「ぐぉぉぁぁあああ!!!」地に下ろされたアブドバが身悶える!! キスラー:「何が起こっているというのだ!」獣甲外す、まえにちょっとみてみよう GM 見れば……アブドバの体の、獣甲との接合してるところから血が噴き出している!そして、肉を裂くような音が…… キスラー:よし、引き剥がそう! アフル:「……やっぱり、獣甲が装着者を食べてる?」 アザリー:癒しの準備をするぜ!「キスラー!」やれ! GM/アブドバ:「ぐぁぁああああ!!」激痛に悶え、暴れるアブドバ!!押さえ込むのは難しそうだ! キスラー:「ぬぅ!なんと面妖な…すまぬな、アブドバ!」 帝王チョップで獣甲とれないかな? GM 帝王チョップじゃ仕方ないな。 キスラー:おお。じゃあ帝王チョップ!接合部を狙って斬! GM アブドバの剣腕が宙に舞う!! GM 獣車輪とかもチョプる? キスラー:血が出てるところはとりあえず全部。…っていうかまぁ、外に見えてる獣甲全部。 GM ういうい。じゃあ、アブドバが達磨(グロ表現でごめんね☆)になります。 キスラー:まぁ仕方あるまい。「ぬぅ…これで全てか」中のやつはいかんとも。 アザリー:ほぼ同時に癒し暖める炎!ファイヤー!「手当できる人はやりなさい!」 アフル:《応急手当》はします。 GM アザリーの白炎により、アブドバの四肢からの出血は止まりますが…… ティサウ:「いやはや、こういうことか」舞って落ちた獣甲に触れずに観察しておこう。どこか行くようなら、何かするが! ヘサームド:「獣甲は移植者なしでは生きていけないはずじゃ?」 GM/アブドバ:「……キ、キスラー……」荒い息をつきながら。 キスラー:「どうした、アブドバ!」 GM/アブドバ:「すまん……約束は…守れそうに……ゴボッ!!」アブドバが大量に吐血!! キスラー:くっ、中にも仕込んでいたか GM そして、アブドバの腹を突き破って獣甲(粘丹獣)が飛び出す!! アフル:《応急手当》は続ける! GM そうやって、アブドバの手当てをしていると……獣甲に注意していたティサウ。 ティサウ:む! GM アブドバから剥ぎ取られた獣甲が……生物のように激しい動きで襲い掛かってくるぞ!! GM/獣甲:「ギチギチギチギチギチギチィィ!!!」はい、ここから戦闘でーす。獣甲は、剣腕っぽいが1、射具っぽいのが1、哭砲っぽいのが1。それらが、襲い掛かってくる!! キスラー:帝王チョップを出鼻にかました粘丹獣はぶっとんだか GM 粘丹獣、まだ生きてますが戦闘力がないんです!獣車輪もそこで空転してる(笑) ヘサームド:「こんな獣甲聞いたことないぞっ」 ティサウ:「手が空いてる人、とりあえずこっちに加勢をしてくれるととても助かると思う!」 GM [獣甲ズ]5m[ティサウ]3m[他の4人+アブドバ] アフル:「……・私が補助します。前衛はお願いします!」 キスラー:「ぬぅ…奇怪な獣甲め」 ティサウ:「あの、俺も基本的に後衛なんですが…」(笑) アフル:回復がないから、アブドバは放置するしかないなぁ…… アザリー:わたしがやるよ。 キスラー:助かる、アザリー。 GM じゃあ、戦闘行きますよ。まずは魔物知識で判定どうぞー。 判定の結果。 アフル:1,2匹目がわかった。 アザリー:だめだ、3つ目だけ誰もわかんない!(笑) アフル:先にたたきますか、3匹目!(笑) GM 1R、イニシアチブ確認!先制(または敏捷力)判定だ!………19:ティサウ→13:剣腕&射具→12:ヘサームド→9:アザリー→7:キスラー&アフル→7:謎獣甲。これで。 GM/獣甲ズ:「ギチギチギチギチチチチチチィ!!!キシャァァァァ!!!」 ティサウ:「…いやあの、何かちょっと誰も来ないうちに相手が来るんだけどこれは一体……」まあ、とりあえず、準備行動で暗器を用意して。とりあえず、謎の甲獣に投げつけておこう。牽制で。 GM こっちの回避は3だ!!クラッシュ!!でもカキーン。 ティサウ:では渾身!そして外れた…(笑)。「……腕が、腕が錆びたまま……」(笑) GM じゃあ、獣甲ズだな!!まず、剣腕蟲が近づくお!……おや、ティサウさんが一人突出しておる(笑)。牽制で4命中! GM/剣腕蟲:「ギィィィィィ!!!」 ティサウ:「待て!話せばわかるんじゃないかな!」避け!あたるぜ…。 アフル:【身をかわせ】いきましょうか。では、発動!回避点2上昇。 ティサウ:では回避っぽいぜ! アフル:「まだ始まったばかりです、注意してください」 ティサウ:「注意してもどうにもならないことが世の中にはあると言う!」 GM アフルのゴッドワードパワーにより、ティサウがマトリクス回避!で、次は射具蟲さんいくおー。アザリーに!牽制で5命中! アザリー:命中。 GM じゃあ、6点!で、続いて渾身!3命中。 アフル:【身をかわせ】いきますか。 GM 同値は回避。 GM/リーフ:「あ、アザリー!大丈夫?」(´;ω;`) アザリー:「痛ぁ……」あぶなっかしくへろへろ避けた(笑)。 ヘサームド:近づいて射倶を斬る。って出来ますよね? GM ちょい待ち……あぁ、迂回すれば射具まで余裕だな、獣車輪だし(笑)。 ヘサームド:うし、行きます。牽制。 GM 回避値3なの……命中。 ヘサームド:ダメージ7点。 GM やっぱ銘刀はなぁ……牽制でもダメージ食らうわ(笑)装甲値5点なので、チョビット抜けた。じゃあ連撃こーい。 ヘサームド:通常で行きます。 GM 回避できねぇ……命中です。ゲェー!さらに切り刻まれる!3回目どうぞー。 ヘサームド:渾身いきます。 GM あ、それは回避。 アザリー:では、アブドバに《癒し暖める炎》 GM あ、それは良いッスわ(笑)。 アザリー:いやいや。 キスラー:キャラ的にかな。 GM キャラ的にか。ならば仕方ないな!アブドバの出血が止まり、呼吸が安定します。まぁ、瀕死である事には変わりないのだが!! アザリー:というわけで大本命!「リーフ!」というわけで妖霊ぱーんち! GM/リーフ:「任せて、アザリー!」抵抗できん……こっちの精神抵抗2。 アザリー:与ダメ決定で妖乱舞!乱舞系必殺技です。 GM あ、対象は? アザリー:射倶。あ……非実体化すんの忘れた……というわけで乱舞!17てーん! GM 射具蟲「ドッゲェーーーーー!!!」再起不能!!射具蟲がリーフオーバーアタックでミンチに…… アザリー:「意識をしっかり持って!」 GM/アブドバ:「フ……我としたことが、情けない……」 キスラー:「そこで寝ておれ、我が行こう」ぽきぽき。哭砲まで届く? GM 移動力が16以上あれば。 キスラー:む、15だ。しかたない、剣腕にいくしかないか。たまには使いたい帝王キック!踏み込みで剣腕に接触してキックを放つぞ。牽制キーック!ぬぁー!べち。5てんだけ。 GM それはぴったりカキン。 キスラー:つづけて帝王ローキーック!(通常)10点。「シィッ!」ローキックを剣腕蟲にベシィ! GM/剣腕蟲:「ギチッ!!」5点抜けたー。じゃあ、謎獣甲!!キスラーに……獣甲キャノン!!渾身で5命中! キスラー:いきなりか!防御~、ぼ~うぎょ~。「うぬぅ!」 GM 12点ドカーン!! キスラー:よし。帝王マッスルボム! 愧鎧!「ふんぬぅ!」 GM キスラーの腹筋に弾かれる…だと…。じゃあ、連撃……渾身で。 キスラー:防御!帝王さばき!べし GM 続けざまに獣甲キャノン二発…め…?獣甲弾頭が空中で軌道を変えられた…!? ティサウ:「…凄く、おかしいと思うのは気のせいか…」間近で見ているんだぜ… キスラー:「狙いが甘いな、主の無い獣甲など所詮は蟲よ」 GM/哭砲さん:「ギッ!?」驚愕の表情を見せる哭砲さん。 GM/アブドバ:「流石は……我が友にしてライバル、キスラーよ……」 キスラー:「いや、主が無いとはいえ良くぞここまで鍛え上げた。うぬの腕も上がっていたようだな」 ティサウ:闘技チットは一枚保存しておけば良いので、準備行動で魔薬・閃。そして今の凶悪な砲台獣甲に、暗器を投げる!たぶん無駄だけど!とりあえずは牽制さー!1点!カキン!(笑)渾身!は、8点!(笑 GM ぬ、抜けた…(笑)4点も! ティサウ:「……まさか刺さるとは思わなかった!」 GM/哭砲さん:「ギィァァァ!!」耳を劈くような悲鳴が!! GM/アブドバ:「フ……剣腕め……キスラーの覇気に怯えているわ……」 ティサウ:「……あれ、俺、ここから下がらなくて良かったんだろうか…」 GM 剣腕蟲………ティサウだ。牽制で4! ティサウ:避ける!「いやはや、危ないな。俺はそこの人間を超えた方のようには行かないんだからまったく…」 ヘサームド:哭砲へ接近して斬る。牽制!7点 GM 薄いからなぁ……3点ダメージ受けた(笑)じゃんじゃん来い! ヘサームド:連撃、通常………チット払って瞬閃。 GM 待って、3じゃ当たらない(笑)回避値3だから(笑) ティサウ:GM!射竦める眼を使おう。何か悲しいから!(笑)回避値-1だZE! GM 回避値が2に下がります。なので、命中。んで、ダメージ14点か……(笑)ズンバァー!!哭砲さんの体が半ば以上断ち切られる!! ティサウ:「ああ。とおくにいるやつまできすらーのはきにやられてるなぁ!」棒読み アザリー:「覇気があるとゴムにも打撃が効きます」 GM 3撃目カモン! ヘサームド:渾身………うがーーーーーーーー! 絶 対 失 敗 GM うぉ……(笑)。ヘサームド渾身の一振りが、大地を割る!!……大地を割った!! アザリー:癒し暖める炎ー!あぶどばーん! GM/アブドバ:「アザリー……我の方は良い…それよりも、キスラーたちを……」アブドバの顔に生気が戻る(笑)。 アザリー:であ!妖霊ぱーんち!とうりゃ!こくほうー! GM 無理無理。 アザリー:乱舞系必殺技ー!17てーん! GM/哭砲さん:「GYAAAAAAAA!!!!」あぁっ、哭砲さんまでミンチに!! GM/リーフ:「これで撃墜マーク2つめね、アザリー」 アザリー:「雑魚数えてんじゃないの」 キスラー:あとは剣腕さんをつぶすだけか。「ゆくぞ!」では~、連破を準備でつかって連撃回数を+1するぜ。行くぞ!帝王コンビネーション!帝王ジャブ1! GM ぐっふふん。ド命中。だがカキン! キスラー:つづけて帝王ジャブ2! GM ド命中!だがカキン!! キスラー:本命帝王ストレート!渾身ね。 GM こ、こい! キスラー:16点。 GM 16点?ゴシャア!!ぴくぴくと痙攣する剣腕蟲……その痙攣が次第に治まり、動かなくなる……。 アフル:「はぁ……。すごいですねー」 GM と言うわけで、戦闘終了! アフル:「さて、では他の人の獣甲も同じ現象になった可能性がありますね。急いで、紫杯連に報告に行ったほうが良くないですか?」 アザリー:「そうね。行ってきてもらえる?」 アフル:〈鐘杏〉に戻って状況報告に急ぎます。 キスラー:ところでアブドバはへいきか! GM アブドバは、とりあえず一命を取り留めてます。タダ、しっかりした治療は必要ですね。と、そんな騒ぎを聞きつけて。工房の中から、技師達が出てきます。 GM/技師:「いったいなんの騒ぎだ!?ゲェ、これは!!」 ヘサームド:事態を説明しよう。 ティサウ:「とりあえず、これ何か知ってる人はいないか?」ヘサームドの説明の後、動かなくなった獣甲を指しながら。 GM/技師:「な、なんと……」説明を聞いて。「それは……分かりました。もはや、隠し通せますまい。お話しましょう。そちらの方の治療もせねばなりません。とりあえず、中へどうぞ……」 瓦礫の街に彷徨う獣甲(後編)へ続く!!
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瓦礫の死闘-VS守護機・砕けない宝石- ◆wqJoVoH16Y ――――全部喰われたのか、無様だな。 ――――皮肉くらいは言わせてくれよ。 何かを遺せたお前と、何も残せなかった俺。比べるまでもない。お前の勝ちだなんだから。 ――――ケアルガを使ってみたが、てんで効かん。 あの焔に焼かれた代償だな。生命そのものが炭になってるのさ。 この分だと、おまえにかけられた呪いも、戻るか分からんな。もっとも、その前に命脈が尽きるだろうが。 ――――そうだ。一度燃えたものは、二度と生<ナマ>に戻れん。 死んでるよ、俺は。願いも、罪も、魂も、合切を燃やしたのだからな。 ――――なのに、なのにな。 ――――笑ってくれ、魔王。こんな枯れ木なのに、腹が痛むんだ。握り拳の、骨の形だけが、こびりついて離れない。 誓いの傷も、後悔も、全部が全部燃え尽きたってのに、あいつに懸けて手放した一欠片が、今更戻って来やがった。 ――――ああ、身の程くらいは弁えている。俺は夢破れた敗者だ。 何も残せやしないし、何も残らない。“だから、こんな欠片を抱えたまま逝けないんだよ”。 ――――返しにいってくる。それまで、ラヴォスの中で待っていろ。 「くっ、ちょこちゃん……アキラくん……アナスタシア……!!」 爆煙の中からブライオンを握ったゴゴが飛び出る。 フードの中に秘められた表情には、明らかな焦燥が生じていた。 高らかに歌われたオペラは既に止んでいるが、ゴゴの中では忌々しく響き続けていた。 そして、その後に生じたアルテマの波動や、アキラ・ちょこの叫び声が重なり、最悪の旋律と化していた。 押し返したはずの戦況がひっくり返り、この場を離れた彼女らが窮地に陥っているのは想像に難くなかった。 今すぐにでも助けに向かいたい。救いたいと、唇を噛む。 だが、眼前の相手はそれを許すほど緩くはなかった。 ゴゴと対峙するゴーストロードが、再び時の声をあげる。 それと同時にラグナロクと賢者の指輪が燃え上がるように輝き、ゴゴの目の前に莫大な熱量を収束させる。 召喚獣ラグナロックの魔石より鍛えられた黄昏の剣ラグナロク。 ただの剣としても破格の威力を持つこの剣を神剣たらしめる特性は3つ。 1つは担い手に戦いの加護を与え、担い手の能力を満遍なく強化すること。 1つは担い手の魔力を供物として会心の一撃<クリティカル>を引き出すこと。 そして、アルテマ・メテオに次ぐ最上級魔法――フレアを発動する能力である。 臨界にまで収斂した熱量が瞬間的に解放される。 炎などという生易しい領域を踏み越えた地獄の太陽が、ゴゴの肉体を容赦なく灼く。 ブライオンを楯にしなければ、素顔どころか骨まで晒すことになっただろう。 「なんて、威力。とても戦士系の魔法とは思えない!」 ゴゴも当然、自分の世界の神剣であるラグナロクの恐ろしさは理解していた。 だが、3つの特性のうち、この力に関しては思考の埒外に置いていたのだ。 如何に神剣といえど、その魔法の威力はあくまでも担い手の魔力に依存する。 だからセリスやティナでなければ発揮できないフレアではなく、 ヘクトルの長所とかみ合う残り2つの特性を警戒していたのだ。 だが、この威力は戦士系の魔法の力ではない。明らかに、トップレベルの魔法使いのそれだ。 ヘクトルではこの威力を引き出せない。ならば、これはなんなのだ。 「ニノの魔力だ。それ以外、考えようがない」 目の前で起こる現象に、ストレイボウは口惜しげに答えを出した。 どれほどの大魔法であろうと、魔法である以上魔法の理には逆らえない。 ヘクトルの魔力ではこの力が出せないのだから、別の魔力で使っているとしか考えられないのだ。 その可能性は考えたくはなかった。ジョウイが魔力を供給していると思いたかった。 だが、それではここまでフレアを牽制以外に使わなかった理由が説明できない。 加えて、あのヘクトルではない左手にある指輪の輝きと、 かつて決闘した時に感じたメラミの魔力を思い出せば、それ以外の結論はあり得なかった。 爆煙に生じた隙を縫うように、亡候は左手の得物を神剣から和刀に切り替え、ゴゴの首を落とさんと逆手を走らせる。 それは、かつて戦場をともに駆け抜けた緑の少女の剣。 この死せる屍が、ただ唯一ヘクトルであったならば、フレアもマーニ・カティもこれほどまでの力を発揮しなかっただろう。 だが、彼らの前に立つのはヘクトルでありヘクトルではない。天雷の亡将なのだ。 民も、誇りも、愛も、未来も、何もかも死して砕けた残骸ども。 それをかつてオスティア候だったモノに寄せ集め、継いで接いで、かろうじて1つの人間の形に収めた妄執。 そう、これは国。既に滅んでしまった、オスティアという国の骸なのだ。 この滅び逝く肉体が、唯一の遺された国土にして民たち。 故にコレに当たるのであれば、国を滅ぼすという気概でなくば話にならない。 首の皮一枚で一閃を回避したゴゴは唸るようにストレイボウ達を見た。 (コレの相手は、私じゃなきゃ出来ない。退いたら、イスラくん達が! でも、ちょこちゃん達が) 本来驚異ではないはずの飛び道具が驚異となった時点で、均衡状態は崩れ去った。 最早こちらからアナスタシアやちょこ達を助けにいける状況ではない。 自分が向こうに行けば、イスラ達が襲われる。 それはだめだ。救われぬ者を救うと決めたのだ。ここで退くわけにはいかない。 だが、それではちょこは、アキラは、アナスタシアはどうなる。 ここで戦おうが、向こうで戦おうが、救われぬ者を救えなくなってしまう。 (一体、どうすれば――――ッ!?) 思考に溺れたゴゴの隙を見逃さず、亡将は再び持ち替えたラグナロクで宙を幾度と無く斬る。 愛した男の剣と、愛した女の指輪が強烈な愛の光に包まれる。 顕現したラフティーナの力が、自分を目覚めさせた男も認めた少女の愛に祝福を与え、賢者の魔力となって神剣へと注がれた。 「―――f、laa、aaaare Zta、erアアアアアアアアッ!!!!!」 フレア×フレア×フレア――――“フレアスター”。 周囲を包むように現れた太陽の灼熱を前に、体勢を崩したゴゴに避けうる隙間はなかった。 「シルバーフリーズッ!!」 だが、ストレイボウがフレアとフレアの狭間に氷塊を顕現させた。 本来生じるはずのない間隙を、ゴゴは見逃すことなくブライオンでこじ開け、焔星の結界を脱出する。 「ごめん、助かったわ」 「…………ゴゴ、ここは俺に譲れ」 謝罪の後直ぐにゴーストロードに向かおうとしたゴゴだが、 自分の前に躍り出たストレイボウの背中に足を止める。 「ちょこが気になるんだろう。行って、救ってやれ」 「でも、そうしたら貴方達が!」 ストレイボウの提案に、ゴゴは頭を振って否定する。 ゴゴとてストレイボウの能力が分かっていないわけではない。 だが、ストレイボウは『魔術師』だ。どれほど優れた魔法を持っていようと、 『重騎士』を食い止め、この場に押さえつけることは出来ない。 「なあ、ゴゴ。あの雷を見たのは、お前だけじゃないんだ。 全てを背負い込む気概は悪くないが“効率”くらいは重んじてもいいだろう」 だが、ストレイボウは爆風に赤き外套を翻しながら、更に一歩前進する。 救いたい。あの時仰ぎ見た光は、誰もの胸に刻まれている。 だからこそ、ゴゴが救えぬと苦しむのであれば、誰かがそれを救うべきなのだ。 「でも――」 「“お前はナナミとリオウの祈りも刻んだのだろう”。これ以上は重量オーバーだ。いいから荷を寄越しやがれ」 そのストレイボウの言葉に、食い下がろうとしたゴゴの手が止まる。 ストレイボウは、リオウともナナミとも立ち会っていない。 なのにその言葉は、まるで見てきたかのようにゴゴの物真似を掴み取っていた。 自身の中に眠る想いを共有するストレイボウの背中に、ゴゴはかつて触れた炎を思い出した。 「…………信じていいな」 「死んだフリだけは二度と御免だ」 その答えに満足したか、ソードセイントを脱ぎ捨てたゴゴは踵を返し別の戦場へと向かう。 絶対という確信はない。ストレイボウはゴゴを決戦に送るべく命を死に晒そうとしている。 だが、それでもゴゴがこの選択を甘受できたのは、彼の中にあったのが贖罪ではなかったからだ。 死に場所を求めての自己陶酔ではない。あれは“生きるために思考を尽くす者の決意”だ。 (きっと、あれもまた“そう”言うのだろうな。なあ――――) かつて自らも物真似した信念の光を懐かしむように見送り、ゴゴは走り出した。 救わなければならない者達の元へ。そして、自らの因業を精算する場所へ。 「3分凌ぐ。出来るだけ遠くに逃げろ」 ゴゴのいなくなった戦場で、ゴーストロードに向かい合ったストレイボウが、蹲ったイスラに淡々と告げた。 最高3分、でもなく、最低3分、でもなくきっかり3分と断定した口調だった。 「うるさいよ、今更格好を付けて、満たされたような面しやがって! お前みたいに世界で2番目で満足できなかった奴に、僕の気持ちが分かるものか!!」 だが、イスラはその手も突き放してストレイボウへ呪いを吐き捨てる。 ストレイボウは呪いを避けようともせず、ただ僅かに安堵したように息をついた。 それが、かつて自身を許したイスラがストレイボウに抱く澱の正体なのだ。 オルステッドへの執着さえ捨てられれば、彼は何一つ失わず、満たされていたはずだ。 ならばイスラはそんな男を蔑むしかない。 たった一つ失えば満たされた男に、たった一つ抱いたものさえ失った自分の乾きなど理解できるはずがないと。 「分からない。だから、生きてくれ。生き延びて、俺に教えてくれ。 俺があの日まで理解できなかった罪を。そのために、ここは退かん!」 ストレイボウはその無知を受け入れ、眼前の骸に立ち向かう。 まだ自分は何も知らない。目の前を走るオルステッドだけを見続けてきた自分はそれ以外の何一つも知らない。 それを知らずに友には向き合えないのだ。 「AAAAAAAA!!!!!」 「レッドバレット!」 ゴーストロードが放ったフレアが、ストレイボウの前で収縮する。 だが、ストレイボウはそれを避けることはせず、その収縮点に向け炎弾を放った。 フレアとレッドバレット。威力は山と小石の差があるだろう。 されどフレアはその力を発揮するため、収縮・臨界・爆破の手順を要する。 ならば臨界するよりも早く火種を生じさせ、先んじて爆破してしまえば威力は落ちる。 たとえ異なる世界の技であろうと“誰かが何度も使ってきた魔法”であれば、陥穽の一つ位は承知している。 本来ならば誰も穿たぬ穿てぬ抜け道――――されど、ストレイボウにはそれを穿つ十分な技量があった。 ――――先ずは分析。全てを揃えようとは思わなくていい。それでも対象を知ることを放棄しない。 フレアが効かぬと承知したのか、ゴーストロードが剣を構え吶喊する。 それを見るや、すぐさまストレイボウは呪文の詠唱を開始した。 ゴゴと亡候が戦っている間、ストレイボウは自分が矢面に立つことを想定し、亡候を分析し続けていた。 体重が違う。接近戦ならば5秒保たない。 魔術ではどうか。最高火力であるブラックアビスは悪属性。 控えめに見ても、屍に効くと思えない。故に、威力にて一撃の下に仕留める魔術は存在しない。 連打すれば別だろうが、その前に隣接されて死ぬ。 ――――次いで失敗。成功を夢想することは容易い。 負けを認める。壁の高さを知る。母がいなければ子は産まれない。 ならば重視するべきは威力ではなく“妨害”。相手の進軍を阻むことが最重要。 帯電による麻痺。否定する。天雷の斧相手に雷は避けるべき。 砂煙による方向阻害。否定する。眼ではなく命を感知して駆動している。 精神魔法による阻害。否定する。あれを動かしているのは、天雷の斧だ。 ――――そして、成功。1000回失敗しても、その次成功すればいい。それが―――― 「シルバーファングッ!!」 使用すべき属性は“氷”。 ストレイボウの背後から寒波が吹き荒れ、ゴーストロードの周囲の大地を氷漬けにしていく。 ダメージはほぼ無いに等しく、ゴーストロードは更に一歩を進めようとする。 「!?」 しかし、ゴーストロードは氷漬けになってしまった大地に足を滑らせ、地面に膝をついてしまう。 「シルバーフリーズッ!!」 立ち上がろうとする亡候の膝を凍らせ、凍結床と固着させる。 当然、亡候はその膂力で無理やり氷を割って立ち上がろうとするが、踏ん張りが利かずもんどりを打ってしまう。 再び立ち上がろうとする亡候の体の一部を凍らせて、ストレイボウは死せる巨人の足を止めた。 センサーも駆動方法も、全うな人間のそれではない。 だが、四肢があり五体がある以上、身体が封じられてしまえば動きようはない。 とにかく相手を氷で滑らせて、足を引っ張り続ける。それがストレイボウが出した結論だった。 「卑怯だと言うなよ。自分が一番分かってるから」 傍目から見ればあまりに滑稽な光景だった。巨人が一人で勝手にすってんころりと転げまわっているのだから。 それは同時に、そんなことをし続ける側も滑稽に映させる。華々しいものでは断じてない。 だが、それを彼は真剣に行い続けた。汗をだくだくと垂らしながら、ストレイボウは間断なく詠唱を続ける。 無様を晒したストレイボウは、それなりにスマートを気取っていた頃をふと懐かしむ。 だが、これが己の偽らざる本性だ。泥臭く、意地汚く、足を引っ張り続ける嫉妬の化生。 それを受け入れる。全てを認め、許容し、されどそこから前に向かうのが―――― 「サイエンスと言うのだろうッ!!」 自身の内に生じた未知なる単語に、ストレイボウの技が研ぎ澄まされていく。 幾千の敗北<しっぱい>を認めてなお己が最後の勝利<せいこう>を疑わず。 負けを恥じて呪い続けてきたストレイボウにとって全く存在しなかった価値観が、 自身にも想像できなかった、己の能力の限界を研ぎ澄ます。 (だが、それでもやはり3分か!) されど、相手はかつてのヘクトル。 何度転べど、砕けかけたアサシンダガーで氷を割りながらじりじりと近づいてくる。 それでもストレイボウは詠唱を続けるしかなかった。 移動で詠唱のサイクルを中断してしまえば、亡候は間違いなく立ち上がりきるだろう。 そうなれば二度と引っかかってはくれまい。故、ストレイボウは分かっていても死体の足を引き続けるしかなかった。 だから3分。そして足止め。限界を尽くして、現実を受け止めた数字なのだ。 とにかく距離を離して、あとは逃げながら時間を稼ぐ。それがストレイボウの導き出した最善だった。だが―――― (まだ動かないのか、イスラッ!) ストレイボウが死力で勝ち得た寸毫の時間さえも、全てを失った少年は湯水の如く浪費し続けていた。 (知るかよ、こっちはそんなの一度も頼んでないんだ) とはいえ、物の価値は相対的だ。誰かにとって喉から手が出るほど欲しいものでも、別の誰かにはそうでもない。 今目の前で繰り広げられている戦闘を、何の感慨もなく見続けているイスラにとってそうであったというだけの話だ。 かつて自分を突き動かしていたのは『死』だった。 死ねず、ただ害悪なる生を続けることしか出来なかったから、死に意味を見出した。 マイナスでしかなかったから、せめてゼロになりたかったのだ だが、彼は二度の生と自由を経て、ゼロの虚無を知った。 望んだのが死だったから、したいことも成すべきことも無かった。 思いつくのはせいぜいが巻き込まれた大切な人のためにオディオ打倒くらい。 もしも何処かのギャンブラーに対面していたら、死人と蔑まれただろう。 どこまでいこうが、ゼロはゼロだ。 だが、ゼロはプラスを知った。未来を願い、理想を謳う若き覇者の背中にそれを見たのだ。 誰もが受け入れられ、どんな人でも笑っていられる理想郷。 あの島に残ることが出来なかったイスラは、その場所に夢を見たのだ。 この背中について行けば、きっとたどり着ける。 そこでならばきっと本当の意味で生きられるのではないかと思ったのだ。 生きたいと思った。生きて役に立ちたいと思った。 こうして生きていることに意味<プラス>があると信じたかった。 そして、イスラは全てを失った。力も、夢も、未来も、全て。 やはり自分の生はどこまで行こうがマイナスなのだ。加算するだけで害になる。 だが、ゼロの無意味さを知ってしまった彼は、もう死に焦がれることさえ出来なかった。 イスラはかつて己の拠り所としたゼロさえ失ったのだ。 プラスになどなれず、ゼロにも戻れない。永遠にマイナスであり続ける。 それが自分だ。存在すること自体が害である。 ストレイボウが害を被るのも当然だ。だから感謝もなにもない。 イスラは泣きはらしたような赤目で、ついに氷の沼から這い出たかつての夢を見つめる。 願うことは、ただ一つ。貴方に光を見た。貴方が僕から死を奪った。 ならばせめて、最後まで連れて行ってほしい。貴方の国へ。 どうか殺してください。僕が夢見た理想郷よ。 その切なる願いが届いたのか、詠唱の限界に達し喉から血を吐いたストレイボウを無視して、 亡候は砕けきったアサシンダガーを捨てて最後の短刀を取り出し、イスラに投げる。 狙いは精密とは言い難い。だが、その膂力から投げられた一撃は、急所でなくとも死へと誘うだろう。 イスラは自分に迫り来る死に、ふうと溜息をついた。 これで終われると。ヘクトルと共にヘクトルの理想郷で眠れるのだ。 後悔など微塵もない。そこでならば、きっと僕は笑い続けられるだろう。 「短刀、なんの恐れることあらん――――」 だからどうか、どうか理想郷よ。“あなたも笑ってくれよ”。 「見切ったり、亡霊の騎士ッ!」 瞬間、イスラの目の前に緑色の影が飛来し、イスラの首まで迫った短刀を掴み取る。 そしてそのまま、威力を殺さぬように軌道を回転させ、ゴーストロードに投げ返した。 咄嗟の事態に亡候は反応することできず、槍に貫かれた鎧の亀裂を精密に抜いて、短刀が突き刺さる。 たかが短刀、ましてや屍である亡候にとってはダメージと呼べるほどではない。 「―――!? ダ、ダダガ……ッ!?」 されど、亡候は、屍を支配する天雷の斧は驚愕に唸りをあげる。 ダメージなどない。だが、“この躯が動かない”。 どれだけ動こうと思っても、突き刺さった短刀以外微動だにしない。“まるで影を縫われたように”。 そう、投げ返された短刀は影縫い。殺傷力も高く、仕損じても対象の時間を止める、二段重ねの暗殺刃である。 氷と同様、いくら死体でも、時間が凍ってしまえば動きようがないのだ。 「お前は……」 「随分と無様だな適格者。それでよくもあの時俺に大口を叩いたものだ」 イスラは目の前で背を向ける、自分を死なせてくれなかった影を見た。 妙に小柄な身体はあちこち黒ずんで、頭部はマントを千切って巻き付けられて、その素顔は伺いしれない。 だが、その正体を誰が見誤ろうか。 「カエルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」 「まったく煩すぎて……おちおち燃え尽きてられねえよ」 もう一つの騎士の残骸が、灰をまとって戦場へと帰参したのだ。 ストレイボウが、驚きと喜びをない交ぜにした表情で、カエルに近づく。 詠唱のし過ぎと過呼吸で、言葉を紡ぐもままならずカエルを見続ける。 だが、なんと声をかければいいのか分からなかった。 ケガは大丈夫なのか、その覆面はどうした、俺たちと戦ってくれるのか、それともまだ俺たちと戦うつもりか。 色々と言葉は浮かぶが、うまく形にならなかった。 全てはあの拳に込めてしまったから、これ以上はカエルの返事が聞きたかった。 「なあ、見ろよ。あの重騎士を」 そんなストレイボウの思いを汲んだのかどうか、世間話をするような調子でカエルは何気なく目の前の亡候に視線を促した。 「あれが誰なのかはよく知らん。だが、あの鎧の傷と鍛え上げられた肉体。さぞや名のある国の将なのだろう。 そして、死してなお護国の悪鬼たらんと、如何なる障害も破砕せんと刃を振るい続けてる。まさに俺の理想のそのものだ」 覆面の中の目が、眩しいものを見るように目を細めた。 ガルディア王国という歴史を守るため、全てを捨てて鬼となろうとしたカエルにとって、眼前の亡霊は誓いの結晶だった。 捨てたい、全てを捨てて国のための剣となりたかったカエルがこうありたいと思う完成形だったのだ。 「なのに、不思議だ。あれだけなりたかったものが、何故、あんなにも醜いのだろうな」 醜い。カエルはそう思った。 ああなりたかった。国を守れるのならば美醜などどうでもいいし、なれるものならばカエルは喜んで醜くなっただろう。 だからただ思ったのだ。終わってしまった今だからこそ、ただ思ったのだ。 全てを燃やし尽くした今ふと背中を省みて、その轍を見返したならば、きっとあれくらい醜いのだろうと、客観的に思っただけだ。 純粋で、完全で、混じり気のない願いとは、こんなにも醜いのだと。 「ああ、許せん。許せんよストレイボウ。俺の目指したものがあんなものであるはずがない。 もっと崇高で、偉大なるもののはずなのだ。吐き気がする。見るに耐えん。 “あんな願い、問答無用で叩き潰されても文句は言えん”だろう」 だから、カエルは今生最終最強最大の自虐を以て、参戦の言い訳とした。 口にしてしまえば一言で終わる理由を言わずに済むのであれば、無様すら心地よかった。 「償いと笑いたければ笑え、だが俺は――/――お前の意志で、友<オレ>を救ってくれるんだろう?」 そして、その無様を見て見ぬ振りをするのもまた友情だった。 ストレイボウの言葉に、カエルが何を思ったのかはわからない。 ただ、その肩が僅かに震えていたのだけはストレイボウも見逃さなかった。 「……使え。もうオレには過ぎた代物だ。暴君はどこにある?」 その震えを誤魔化すように、カエルはストレイボウにフォルブレイズを渡す。 目の前では、ゴーストロードに刺さった影縫いに亀裂が走り始めていた。 効くとはいえ矢張り相手は神将器だ。倒しに行くには時間がなさ過ぎた。 「ジョウイ、俺たちの……仲間……が、持って行った。禁止エリアにだ」 「遺跡か。分かって持って行ったのなら、よほどのバカか天才だ」 戦闘態勢に移行しながら、カエルはストレイボウから聞いた事実に眉をひそめた。 ラヴォスと遺跡と魔剣。その全てのカードが一人の手の内に揃うことの意味を僅かにでも理解出来るのは、現時点ではカエルただ一人だけだった。 「ラヴォスだって!?」 「……クロノにでも聞いたのか? 一から説明している暇は無いぞ」 「分かる……いや、分からんのだが……そういうことか、この断片的な記憶は……」 ストレイボウが渡そうとした勇者バッジを拒みながら、カエルはストレイボウの驚愕に怪訝そうな声を上げた。 だが、ストレイボウは納得できないということを納得したように一人ごちる。 その真剣そうな表情にカエルは言葉を続けるのをやめ、座り込むイスラの傍に立った 「一振り借りるぞ適格者。使う気の無い奴が持っているより、剣も冥利に尽きるだろう」 「……お前は……」 天空の剣を掴んで背を向けようとするカエルに、イスラは掠れるように小さな声でカエルに尋ねた。 「どうして、ここに来たのさ……全部無くなっただろ……終わって……どうして、足掻けるんだ……」 カエルは全てを失った。望みもかつての仲間も、災厄の力も、全てを出し尽くした。 全てを出し尽くし、失ったのならば潔く去るべきだ。 いてもいなくても同じ。否、居残るだけで晩節を汚している。 それなのに、カエルは再び舞台に戻ってきた。同じく全てを失ったイスラは、その理由を知りたかったのだ。 それでも厚かましく舞台にしがみつく、その動機をこそ知りたかった。 「……ああ、全部無くした。燃え尽きたよ。風が吹けばたちまち消えるだろう。それが今の俺だ」 カエルとて愚かではない。 今更ストレイボウとの友情を利用して生き残ろう、或いは隙を見て優勝しようなどと虫のいいことは考えていない。 カエルは終わる。それは覆せない決定事項だ。 「だが、俺の終わり方を決めるのは他でもない俺だ。 たとえラヴォスにその終わりさえ喰われるとしても、それだけが、誰にも盗めない宝石だ」 だからこそ、カエルはここにいる。醜くても、蛇足だとしても、自分を真に終わらせるために。 自己満足でも構わない。全てを尽くして終わらせるために、彼はここにいる。 「お前はどうだ、適格者。お前は、終わらせられるのか? 決めるのはお前だ。お前しかいないんだよ」 そういって、カエルは前に進み、ストレイボウとゴーストロードの間に立った。 亡候を封じていた影縫いの亀裂が決定的なものとなり、ぽろぽろと砕けていく。 「……柄にもないことを言っちまった」 「カエル、一つだけ、お前に伝えなきゃいけないことがある」 天空の剣を構えるカエルに、背後からストレイボウが声をかける。 「ルッカ=アシュティアは、ただの一度も、お前を怨んでいなかった」 「…………そうか」 カエルがぼそりとそう呟く。それと同時に影縫いが砕け、ゴーストロードがカエルめがけて進撃した。 「何故お前がそれを言うのかはさっぱり分からんが、お前が言うのならそうなのだろうな」 突進する暴力を前に、カエルは一度目を閉じ、自分の状態を再確認する。 劣化も劣化。魔力は枯渇し、回復は効かず、右手は無い。 「ああ、そうか……これで……」 全盛期には程遠い。象と蟻の戦力差だ。だが―――― 「最後のつかえが取れたぞッ!!」 振り下ろされた雷速の一撃を、カエルはベロを相手の手首に延ばし僅かに軌道を変える。 そしてその僅かな軌道の変化に沿わせるように天空の剣を重ね、必殺の打ち下ろしを紙一重で捌く。 コンマ何秒かのミスも許されない超絶技術が、ゴーストロードの攻撃からカエルを救う。 「さあ来いッ! さぞ名のある騎士だったのだろう。 全ての技を見せて見ろ! こちらも大盤振る舞いだ。ガルディアの剣、余す所なく出し尽くしてくれるッ!!」 全てを失ったカエルの技は、今この瞬間、限りなく“絶好調”だった。 カエルという盾役が生まれたことで、形勢は僅かにストレイボウ達に向いた。 物理攻撃を至近距離で片っ端から捌き続けるカエルの地力によって、ゴーストロードは完全にその足を止めた。 カエルもカエルで、相手から放たれる怨念の闘気すら、戦場の空気心地よしとばかりに楽しんでいる。 あれならばもうしばらくは保つ。ここにストレイボウがサポートに入れば、さらに相手を押し込むこともできるだろう。 「なんでだよ……なんで殺してくれないんだ……」 その優勢の光景すら、イスラには疎ましかった。 終わりたいのに、終われない。誰も終わらせてくれない。見捨ててくれるだけでいいのに、それすらしてくれない。 もうなにも見たくないのだ。続けるだけ、生きているだけで苦痛なのだ。 「終われよ……誰でもいいから、終わらせてください……」 ――――終わりを決めるのは、お前だ。 「なら、お前の終わりってなんだ」 塞ぎ込むイスラに、ストレイボウが声をかける。 甘やかすことの無い、冷たさすら感じる声だった。 「このまま座り込んで、ヘクトルに頭割られて死ぬことか。何もせずに、何も成せずに、そのまま餓死することか。 違うだろ。それだったら、もうとっくに自殺する。俺ならそうしている」 だが、何処か鉄のように固く、山のように大きな何かを感じさせる声だった。 「死ねないんだよ。自殺すれば一番楽だって分かってるのに、選べないんだ。 心の何処かで、それ以外の終わりを求めているんだ。違うか?」 死にたいと、終わりたいと何度も願った。罪も犠牲も全部投げ捨ててしまいたかった。 だが、それでもストレイボウは生きた。それでは終われないのだと歩き続けた。 裁かれて死のうと、その終わりだけは誰にも譲らなかった。 「違わないなら立ち上がれよ。曇りを払って、自らの瞳で世界を見据えて、真実を捉えろ。 終わりを選べない程度の、半端な意志じゃ――――死ぬこともできやしない」 「――――ッ!!」 イスラの腹の奥底から、何かがこみ上げる。 同族であるストレイボウの言葉なぞに、イスラの心は響かない。 だがその言葉は、ストレイボウの口を通して投げかけられた言葉は、誰の言葉よりも、内側からイスラを震わせた。 「それを、誰から……」 「俺に『勇気』を教えてくれた人の言葉だ。お前にも伝わるって、信じるよ」 そう言い残して、ストレイボウもまたフォルブレイズを携え戦場へと舞い戻った。 また一人となったイスラは再び塞ぎ込もうとする。 だが、その手はいつしか残された魔界の剣を握っていた。 「あんなやつにまで、人が良すぎるよ……おじさん……」 脳裏に浮かぶのは巌の如きもう一つの背中。 誰よりも死の尊さを知りながら、それでも生の意味を見出した英雄。 その言葉は、どれほどに心を閉ざしたイスラにも染み渡り、響き渡った。なぜならば。 「僕は……」 ――――俺の最高の友からの受け売りだ。この言葉、軽く受け流したら承知しねえからな? 「僕は……ッ!!」 イスラの目が、凛と輝き見開かれる。 その胸の中には、もう1人の英雄が残した言葉が今も輝いて残っていたのだから。 時系列順で読む BACK△144-5 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(後編)NEXT▼144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲- 投下順で読む BACK△144-5 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(後編)NEXT▼144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲- 144-5 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(後編) アナスタシア 144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲- ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ ジョウイ ▲
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星3にしてはなかなか強くない? - 名無しさん 2017-06-24 22 57 00 何気にステ補正がHP寄りの平均型だから、マグダラの完全下位互換にはなってないんだな - 名無しさん (2017-08-19 10 47 03) コストが違う時点で完全下位互換になるわけがないんだよなぁ - 名無しさん (2018-04-21 14 06 09) カレンの演奏が新宿のヤンキーの火力を爆下げしてると考えると草 - 名無しさん 2017-09-12 20 59 15 今回の超高難易度で大活躍。やっぱりこういう特定の状況で強いカードはこのゲームでは強いな。それとコストが違うからマグダラと比べるのは無意味だよ。どちらが強いかは結局コストと相談するべき問題 - 名無しさん 2017-09-16 11 31 54 男性限定だけど鋼の鍛錬と同等の効果をコスト5で使えるのは助かる。凸1枚持ってて損は無い。 - 名無しさん (2018-04-21 13 15 39)
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「某県某市でひっそりと発行されている建築系の同人誌「言語石」の前身、「紙風船」に五度ほど掲載された小説の事。 文章は異常な細かさの特殊なフォントで印刷された為、一般書籍に直せば1500ページを越える弁当箱。その内容はと言えば、隠花植物じみた諧謔趣味を膨大な語彙と多数の言語でデコレーションした内容が尋常ではない言葉遊びで埋め尽くされる、ある種の拷問。全貌を把握する為にはラテン語からヘブライ語、果ては使用される複数の言語から汲み出されるパターンを図表化し、そこに表出する言葉を暗号的に扱わなければならず、そのため、一読して読み解ける内容ではなかったと言われている(内容を把握するだけでも困難な為、仮にこれを記憶して書き写そうなどと考えれば『物語の一面を切り取る』だけになりかねない)。 『紙風船』休刊後、一部サイトに数篇がアップされて反響を呼び、国内・海外を通してフォーラムが現在も拡大を続けており、マニア達による『暗号表』や翻訳リストが各サイトに日々更新されている。 ちなみに作者は「E.C.H」とだけイニシャルが振られている。」 原文そのまま。 誤字と思われる場所だけ修正させていただきました。「前進」→「前身」
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瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(後編) ◆wqJoVoH16Y 強烈な光が止み、アナスタシアが瞑った眼を開くと、そこにはデスピサロとなる前のピサロがいた。 傷もそのままであったが、その気力の充実はともすればこの島に呼ばれた直後よりも高いものかもしれない。 「すまんな。少し無様を見せた」 そう言うピサロの静けさは、それまでアナスタシアの力と剣に狼狽していたのがまるで嘘のようだった。 アナスタシアの力も意志も、もはや意に介さぬという強固な何かでピサロは立っている。 『クク、クハハハハッ! まさかよりにもよってお前が敵に回るとはなッ!! 世界の守護者たる貴種守護獣の役目よりも一人の愛を選ぶとは、ずいぶんと情熱的だな、ラフティーナッ!!』 そのピサロを支える力に、ルシエドが大爆笑する。 ピサロの手に握られた金色のプレートは紛れもなく上位ミーディアム、愛の奇蹟<ラフティーナ>だ。 顕現しただけならばともかく、敵に回るなどと誰が予見できようか。 「うん、何故か分からないけど貴方が言わないほうがいいわよルシエド。その、ブーメラン的な意味でッ!!」 軽口をたたきながらもアナスタシアは即座にルシエドに跨り、先制攻撃を仕掛ける。 あれが本物のラフティーナだとすれば、その特性は回復。万一にでもフルリペアなど使われる前に仕留めなければならない。 斬撃一閃。ルシエドの速度を乗せたアガートラームの一撃がピサロを切り裂く。 だが、聖剣にはなんの手ごたえもなく、切られたピサロも何のダメージも追っていない。 「どうした? 侘び代わりに斬らせてやったのだ。まさか全力だというまいな」 「……じゃあ、お言葉に甘えてッ」 アナスタシアは再度ルシエドの背に乗り飛翔し、可能な限りの高度を確保したのちルシエドを聖剣にシフトした。 彼女の持つ欲望を最大限に乗せて、これまでで一番巨大な天空の聖剣を形成。 「私の欲望フルスロットル。果てなさいッ!!」 そしてその聖剣ルシエドを蹴り、自らもろともピサロへと急降下する。 現状で考えうる最大攻撃。これならばピサロとて無事ではいられまい。 「砕けん。消えん。永遠に忘れぬと決めた、私の炎は」 ピサロの体が蜃気楼の如く歪み、アナスタシア必殺の逆鱗を素通りさせる。 その愛不可視にして不朽不滅。どんな武器も、どんな魔法も、それを傷つけること能ず。 二度とお前を忘れない。その誓いの体現は絶対防御となりて、聖剣すら凌ぎ切る。 カスタムコマンド・インビシブル――――永遠の愛を破壊できるものなど、存在しないのだ。 「嘘……」 「なるほどな。感情そのものを力と変換する。これがお前やオディオの力の理か。 今ならば理解できる。お前達のその出鱈目な強さも――――“お前のそれが弱くなっている”ことも!!」 「!?」 その一言に走る彼女の動揺を無視し、ピサロは魔砲をアナスタシアに向ける。 込めるのは魔力ではなく、感情そのもの。アナスタシアが欲望にてルシエドを剣や狼に実体化させるように、 その愛を砲弾として充填する。火でも水でも雷でもない、限りなく純粋な無属性のエネルギーとして。 冠する名は、かつてこの砲に込められた幻獣の愛。 「葬填ッ! アルテマ、バスタァァァァァァッッ!!!!」 全てを消滅させる青き一撃が、周囲の石壁ごと消し飛ばしながら、 まるで恋路を邪魔する障害を全て消し去るようにアナスタシアを狙う。 アナスタシアはその一撃を聖剣で受け止めるがしかし、天空の剣を模したはずの聖なる剣はたちどころに亀裂を生じた。 「なんで!? 私の剣が、私の欲望がッ!!」 『不味いな、アナスタシア。奴の心臓を踏み台に、強大な欲望が生れようとしている。 このままでは遠からず、奴が俺の支配権を獲るぞ。俺の剣は使うなッ』 狼狽するアナスタシアの疑問に、ルシエドが忌々しげに答えた。 ラフティーナの顕現と同時に感知した、欲望に限りなく近い何かが、この付近で暴れまわっている。 そしてルシエドが欲望を司る守護獣である以上、本能的にその欲望が強くある方に引き寄せられてしまうのだ。 「そんな、ことって……」 『強く欲せ! 強く望め!! お前の願いは、その程度では――――』 ついにルシエドはその実体を維持できなくなり、聖剣が砕けてしまう。 とっさに両手でプロバイデンスを展開するが、それでも押されてしまう。 何故、どうしてなのか。ただの女に過ぎない私にある力はただ欲望1つだけ。それだけは誰にも譲れぬものだったはずだ。 それが、愛に、夢に追い縋られて今にも追い抜かされようとしているなどと。こんなことは今までなかったのに。 「飢えが足りん。呪いが足りん。僅かにでも満たされた狼など、恐れるに値せずッ!」 その疑問を快刀乱麻に断つがごとく、アルテマの光の中をピサロが斬り込んでくる。 そう、ピサロ達の願いが極限まで高まったのは確かだ。だがそれだけではアナスタシアの欲望には僅かに届かない。 かつてひとりぼっちだったアナスタシアは、生に飢えていた。 絶対的な死を前に、生贄とならなければならない自分の人生に飢えていた。 シニタクナイ、コンナジンセイミトメナイ、マダマダマダマダオワレナイ。 その拒絶こそが欲望の源泉であり、本来完全にあの世に行くべきアナスタシアを、 あの世とこの世の境である彼女の世界に縫い付けたのだ。 だが、今彼女は知ってしまった。仲間を、絆を、謳歌すべき生を、 彼女が望み手に入らなかったものを僅かなりとも手にしてしまった。 叶ってしまえば、欲望は去ってしまう。飢えなければ、叶わずにいなければその力を発揮できないのだ。 「終われ、勇者の影よ。ただの女として果てるがいいッ!!」 故に、愛に飢え切ったピサロの剣は、聖なる盾を一撃のもとに断ち切る。 凍てつく波動を装填された一閃は、プロバイデンスを無効化し、アナスタシアを瞬く間に血に染め上げた。 「旦那も随分と猛ってやがるな。匂いだけで酔っぱらいそうになる」 セッツァーはそういって、鼻の骨を戻して気道を確保しながらピサロの戦闘しているであろう方角を見た。 その戦闘の凄まじさを感じるだけで、ピサロがどのような高みにいるのかがわかるというものだ。 「まあ旦那も後で潰さなきゃいけなんだが――――そろそろくたばれよ、お前ら」 「ざっけんな、コラ……!」 カラカラと笑うセッツァーを遮るように、アキラとちょこが立ち塞がる。 その姿は乱戦が始まった時から比べれば見るも無残、セッツァーよりもボロボロになっていていた。 それでも行かせぬとアキラとちょこは不断の意志でセッツァーを睨み付ける。 しかし、セッツァーは薄ら嗤うだけで、何の変化も見られない。 顔面に塗りたくった鼻血の化粧もあいまって何とも不快だ。 (なんだ、こいつ、本当に俺たちを見ているのか?) だが、アキラを本当に不快にさせたのはその瞳だった。 確かにアキラという存在を認識してはいるが、その癖本当の意味でアキラを映していない。 見下す、という言い方でも不足している。そう、もっと正確に言うなら――“見下ろし”ている。 「返してください! それだけは、アシュレーさんの、その願いだけは――――ッ!!」 その薄ら笑いに耐えかねたか、ちょこが再び翼をはためかせて突撃する。 セッツァーの掌で転がされる白黒のダイスを睨み付けながら、最高速度で飛翔した。 「回れ――――止まれ、止まれ、止まれ」 衝突すれば今度こそ内臓をぐちゃぐちゃにされるであろう一撃を前にしてもセッツァーの瞳はちょこを映さず、 ただダイスを中空に放り、手に戻す。そのとき、突如としてセッツァーとちょこの間に、地面から巨大な石の壁がせせり立った。 ジョウイの召喚した石細工の土台ではない。もっと生命力に溢れた、てのひらのような巌の壁だった。 「く、闇に還re、 「回れ――――止まれ、止まれ……止まれ」 Va, i ……――――?」 せせり出た謎の壁にぶつかることを避けたちょこは、ならばと闇の魔力を発動しようとする。 だが、その隙間を縫うようにセッツァーは再度ダイスを掌の中で転がした。 すると、いずこからか竪琴の旋律が響き、ちょこの呪文を遮ってしまう。 物理障壁に、音波干渉。まったく異なる“5つ”の新しい技に、不思議に感動を覚えるちょこでさえも面食らう。 立ち上がって最初にダイスを回し始めたとき、まずヒヨコッコ砲から突如黄色い大きな鳥の群れが現れ、アキラとちょこに襲い掛かった。 おそらくはゴゴが言っていたチョコボという鳥であろう。だが、そんなことを思うよりも先に、突如として爆撃が彼女たちを襲った。 突然行われた地面と空中からの同時攻撃を避ける術などあるはずもなく、彼女たちは大きく吹き飛ばされる。 挙句、その倒れたところを見計らったように、一角獣の聖なる角が現れ、セッツァーの傷を癒し始めたのだ。 鳥の突撃、空からの爆撃、その上回復。あまりに統一性のない技の数々に、2人とも手品に化かされているのかと思うしかなかった。 このような技を隠し持っていたというのか。ならば何故今まで使わなかったのか。 子供ながらに疑問こそ浮かべど、回答など出るはずもない。ならばただ攻めるより処する方法はなかった。 「うおおおおおッ!!!」 アキラが一気呵成にセッツァーに肉薄する。距離を空けると、何を呼び出されるか分かったものではない。 故に限界まで接近し、打撃と超能力の2段構えで仕留める。 今度は先ほどのような障壁は展開されず、アキラはローキックが当たる位置まで接近することができた。 どれほど回復の手段があろうと、セッツァー本人の耐久力のなさは先ほどの拳で体験済みだ。 足を潰して、ヘブンイメージで一気に眠らせる。その作戦を実行しようと、軸足を大地に固定しようとする。 「いや、本当にすまなかったな。俺が間違ってた」 「おおおッ!?」 だが“運悪く”、力を貯めんと踏みしめかけた左足に瓦礫があたり、アキラはつんのめってしまう。 何度も繰り返してきた喧嘩殺法をしくじるとは何という“不運”か。 だがそんな“不運”を嘆く暇などない。セッツァーからの反撃が来る前に、アキラは急ぎ距離を空ける。 当然、セッツァーはアキラを撃つべくマグナムの銃口を持ち上げる。 しかし、その挙動は緩慢でアキラは回避するのに十分な距離を得た。 (なんだ、あの目、俺を本当に狙ってんのか?) 「認めるよ。おまえ達に夢があろうがなかろうが、おまえ達の夢が大きかろうが小さかろうが、それで俺の夢が貴くなるわけじゃない」 なにより、その瞳はやはりアキラを見据えていない。“多分この辺だろうなあきっと”と言わんばかりの適当さだ。 その口からは放たれる謝罪も同様。星の反対側に語りかけるように、セッツァーとアキラ達の位置が遠すぎる。 当然、放たれた銃弾の方向もてんで適当で、アキラが躱すまでもなく銃弾はアキラに当たらず、空を切る。 「“認めるよ”。おまえ達の夢を、夢を探すおまえ達を。おまえ達はチップやカードじゃない。お前達も“ギャンブラー”だ」 「お前――グハァッ!?」 ぞくり、とセッツァーの瞳とアキラの目が交差したとき、アキラは心臓を鷲掴みされたような悪寒を覚えた。 その時、外れた銃弾が石壁に当たり軌道を変え、さらに地面に当たって軌道を変え、アキラの腿に風穴を空ける。 跳弾による銃撃。サンダウンでもない限り不可能な攻撃を、セッツァーはこともなげに行った。 無茶苦茶な連続攻撃の後に超絶技術の攻撃。 理解できない。意味が分からない。反則にもほどがある。理不尽の極み。 だが、アキラは銃弾に込められたセッツァーの想いの一部に触れて、理解できない意味を理解した。 空だ。紅き夕陽に照らされ、雲と風を切って進む大空。 今のセッツァーが抱くイメージはただそれのみだ。 これまでのセッツァーは高い位置からあらゆる夢を嘲け笑っていた。 あらゆる夢は自分のチップであり、カードだった。 自分の夢を叶えるために無視できぬものであり、時には切り捨て、時には愛でた。 だが、その認識が変化する。セッツァーの夢が、さらなる高みへと飛翔した。 地表より遥か高い場所にあるここの空からでは、地面はあまりにも小さすぎる。 ましてや、そこで儚くも生き抜いている命たちなど“認識すらできない”。 「だから、俺はもうお前たちを嘲らず、利用しない。ただ――――」 「この、屑や、うが……」 蹲ったアキラが落としたデイバックの中から転がった龍殺しの空き瓶を何の気なしにセッツァーは拾った。 落し物を拾ってあげるような気安さで。淀みなく、何の感慨もなく。 「同じギャンブラーとして、1ギル残さず破産させる」 自分の飛翔を邪魔するゴミの頭を瓶でかち割った。 ぐちゃ、という軟体的な音。 ゆっくりと上半身を地面に預けるアキラが、まるで眠りについたのかと思えるほどだった。 「お、ま、えェェェェェェェッッ!!!」 彼女の考えうる限り最大の“悪い言葉”を放ちながら、ちょこの周囲に闇の力が噴出する。 許せなかった。この銀髪のナニカの、爪先から髪の先まで受け入れられなかった。 彼女の脳裏に浮かんだのはロマリアの4将軍、人の形をした悪の化身だった。 こんなものと、アシュレーお兄さんや、ゴゴおじさんが同じものだなんて、許せるはずがない。 ことここに至るまで彼女は自身の感情がどうであれ、決着をゴゴに任せるつもりでいた。だが、もう無理だ。 コレはゴゴおじさんが話をしたがっていたセッツァーという人間ではない。 ゴゴが取り戻したかったものは、ここにいるナニカの中に一欠けらもないのだ。 だから、闇に還す。たとえゴゴに“悪い子”と思われたとしても、こいつをゴゴに逢わせてはいけないのだ。 「回れ――――止まれ・止まれ、止まれ」 だが、ちょこが振り絞った殺意さえも、セッツァーは一切意に介さない。 彼女がヴァニッシュを放つよりも早くダイスは止まり、6つ目の技が招来される。 ちょこの頭上の空間が歪み、龍の顎が現れる。 出現したのは口だけだが、それだけでもその龍がいかに巨大なのかは推し量れる。 その牙一つをとっても強靭で、龍の王と呼ぶに相応しき威容の顎だった。 それほどに巨大な龍の口が開き、蒼き力がその咽喉に収束する。 ヴァニッシュを発動しようとしていたちょこにその一撃を避ける術はなく、龍の咆哮が彼女に降り注いだ。 「あ―――」 正体不明の直撃を受けたちょこは、糸が崩れ落ちたかのように膝を折り、地面に倒れようとする。 だが、彼女が地面に倒れることはなかった。彼女に近づいたセッツァーがその片翼を掴んで釣っている。 一体何を、と彼女が怪訝そうにセッツァーを見ようとしたときだった。 「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああッッ!!!!」 銃声が4度、ちょこの背中で爆ぜ、肩甲骨の付け根あたりに猛烈な熱が走る。 ちょこの翼の付け根にぐいとねじ込まれたマグナムが火を噴き、その魔なる白翼に穴をあけ、引き千切った。 背中から垂れた血と白き羽根が舞い散る中で、片翼をもがれ苦悶を上げる少女の姿は、どこまでも幻想的だ。 だが、その中で銃に弾丸を装填する黒き鷹は、場違いなほどその幻想から乖離していた。 手を差し伸べるかは別にしても、耳に入れば誰もが足を止め振り返るだろう少女の嗚咽を間近で聞きながら微動だに反応しない。 罪悪感など欠片もなく、少女をいたぶる嗜虐も、必殺の好機に命を奪わなかったという傲慢さえも微塵もない。 「ここで飛ぶんじゃねえよ。うっとおしい」 ただ、少女が翼をはためかせて宙に浮いているのが不快なだけ。 自分の空に舞う小鳥が目障りだったから、その羽を毟り取ったに過ぎなかったのだ。 翼を失い、地に落ちた少女にセッツァーの興味はもうなかった。 その異形の姿からみて、ただの人間よりも耐久性がありそうで、仕留めるのに時間がかかりそうだということもある。 軽々に足を動かして別の場所に行こうとするセッツァーはどこまでも自由だった。 「い、か、せない……おじさんの……と、ころ、には……」 コートが引っ張られ、足を止めたセッツァーが表情で振り向く。 そこには、顔を砂で汚しながらも毅然とした表情でセッツァーに向き合う少女がいた。 涙を湛えながらも凛としたちょこの瞳がセッツァーの視線と交差する。 自分にまとわりつく汚物を拭うように、セッツァーはちょこを蹴り転がし、見上げる少女と体が向き合う。 「どうして……」 そのセッツァーの瞳を見たちょこはセッツァーというナニカが全く理解できなかった。 あのルカでさえ、ちょこのことを憎悪すべき敵と認識してくれたのに、その瞳にはそれさえもない。 うっかり犬の糞を踏んでしまったかのような、ただただ汚らわしいものを見る瞳だった。 空だけを映す瞳は、誰も見ていない。この美しい空に、セッツァーはどこまでもひとりぼっちなのだ。 「殺して、ひとりぼっちになって……それで、いいんですか。寂しく、無いんですか……?」 どうしてなのだろう。 この人も、ジョウイも、どうして一人になろうとするのだろう。 拒んで、嫌がって、離れて……そうまでして手に入れたいものはなんなのだろうか。 王冠? どれだけそれが綺麗でも、誰も綺麗だねといってくれないのに。 そうじゃない。そうじゃないはずだ。一人であることの寂しさを知っているからこそ、彼女は断ずる。 どんな綺麗なものだって、この寂しさは埋められない。 その寂しさを埋められるのは、誰かと繋いだ手の温かさだけなんだ。 おじさんだって、そういってくれた。おにーさんだって、わかってくれた。 だから、押し殺さないで。“一人じゃ寂しいことを、貴方だって知っているはず”。 「寂しい?」 だが、紡がれたちょこの問いに対する返答は、心の底からのオウム返しだった。 糞を見る目から、打ち上げられて腐乱しかかった魚を見る目に変わる。 コンフュに侵された者の奇行妄言に示される原初の嫌悪だ。パクパクと動く口から腐臭がする。 意味が分からない。一人であることが、寂しい? なんだそれは、どんな冗談だ。 “まるで独りであることがさも悪いことのようじゃないか”。 「本気で生きてたらそんな暇あるわけないだろうが」 ちょこが抱える闇さえも、この大空の夢には届かなかった。 全力で空を走り抜けるときに、風を切る音以外のものが聞こえるだろうか。 聞こえるというのならそれは全力ではない。もっと速く飛べるはずだ。 寂しさとは“隙間”だ。余剰であり無駄なスペースだ。限界には程遠い。 後ろを省みて寂しいと思う暇があったら前を向いて突き進めばいいだけ。 そんなものはただの甘え。かつてのセッツァー同様、真に全力を出さぬ者の言い訳だ。 かつて夢を失くし、生じた隙間を酒とギャンブルで埋めていたセッツァーだからこそ、その洞を無意味と断ずる。 もうこの身体に隙間はなく、四肢の末端まで夢に満たされている。 それを孤独というのならば、最高じゃないか。それは全ての重しからの解放――――『自由』なのだから。 「『手を繋ぐ』? 『足を引っ張る』の間違いじゃないのか。 『絆』?『鎖』だろうそれは。 わざわざ遅くしてやらなきゃついてこれないものなんて、俺の空には要らねえよ」 だから、最速の空には誰もいない。遥か彼方の光を追う男の夢だけで充溢した完全なる世界だ。 「あなたは……終わってる……」 その世界を垣間見たちょこは、アキラと違う言葉で、同じ言葉をセッツァーに告げた。 ルカと同じかある意味それ以上、善悪を超えたおぞましさしか湧き上がらない。 あの狂皇と比べれば、セッツァーは生物的に弱いだろう。ちょこがセッツァーに劣る箇所など存在しない。 しかし、ちょこは目の前の存在に気圧されていた。 あれほど自分が忌み嫌った『孤独』を是と歓待する狂気に嫌悪した。 「そんな人に、負けたり、なんか、しない……ッ!」 それでも、ちょこは毅然と抗った。羽根をもがれ地に落ちても、空を覆うこの夢に刃向った。 一人でいることが強さだと、みんなと並ぶことが弱さだと嘲るこの空だけは認められない。 「みんな、いっしょにお家に、帰るんです……アナスタシアおねーさんとけっこんして、ゴゴおじさんや、みんなと。 アシュレーお兄さんや、シャドウおじさん、ユーリルお兄さん……帰れない人たちの分も、みんなと。 その夢が、願い、要らないだなんてあるわけなあううううううッ!!!!!」 命の限りの歌が、命の傷む叫び声に変わる。 雑音の源を断ち切るように、セッツァーはアキラを撲壊させて半分に割れた龍殺しの酒瓶をちょこの下腹部に投げつけた。 最初から彼はちょこの話など聞いてはいない。負け犬の遠吠えがこの空に届くはずがない。 「う、うう……こんな、くらい、じゃ……」 それでもちょこは挫けない。 あの責め苦に比べれば、あの永遠の孤独に比べれば、何も痛くはないと、ちょこはダメージに耐える。 それは精神論だけに留まってはいなかった。ちょこの膨大な魔力は強大な武器であり鎧だ。 その鎧の硬さは、かのルカ=ブライトにブレイブを抜かせるまで耐え続けたことからも折り紙つきだ。 覚醒によって魔力を外側に出している分、子供の時より耐久度は落ちているだろうが、 それでも、そのステータスの差は歴然。セッツァーがいかなる攻撃をしようが、ちょこの命までは届かない。 例えどれだけ絶対命中するマグナムだとしても、必殺とまではいかないだろう。 「――――え……?」 だから、ちょこはその後のセッツァーの行為が理解できなかった。 セッツァーは瓶を踏む足の力を緩めたのだ。肉の反動に追い出されるように瓶が少しだけ外側に押し戻される。 そして――その瓶の口を少しだけ上に蹴りあげて、硝子の荊をちょこの“下腹部”に向け直した。 「え? え? え? え?」 ちょこの口から気泡のような疑問が湧き出る。ただ刺される場所が変わっただけだ。 なのに、何故、おなかと違うのか。骨折した。剣で腹を貫かれた。殴打に次ぐ殴打で滅多打ちにもされた。 それらの時には一つも湧き上がらなった疑問が、とめどなく溢れてくる。なにこれ、なんだこれ。 その疑問に答えを乞うように見上げたセッツァーの瞳は、ただ単に慣れた日々の仕事をこなすような無感動だった。 セッツァーは非力である。人並みにはあるだろうが、人以上の力はない。 ルカのように巧みに暴力で破壊することもできない。比べれば己の刃など縫い針一本かそこらだろう。 だが、それで十分だった。そしてセッツァーは騎士でも武人でも殺し屋でもない。ギャンブラーだ。 ならばその仕事とは。ギャンブラーとは何を糧にして糊口を凌ぐ生き物であるか。 ぐい、と足に力が入る。臍の真下、微かに膨らんだ肉の丘に、みちり、みちりと硝子の荊が食い込み、つうと血を垂らした。 それと共にちょこの中に疑問がぶじぶぢと膨張する。どれだけ外側からの力に耐えようとも、内側からの負圧には耐えられない。 わからない。なにをしている。なにをしたい。わからない、わからない――――わからない? 皮膚一枚のところまで圧するほどに疑問が体内を充たした時、ちょこはそれが疑問ではなく、恐怖であると知った。 「いや……」 ――――ちょこちゃんも大人になれば分かるかもね。 いつか、今は遠い潮騒の記憶が浮かぶ。何故、あの時満ち足りた表情でそういったアナスタシアを思い出すのか。 アナスタシアならば、これがなんなのかを教えてくれただろうか。 だが、ちょこはそれを知りたいとは思えなかった。 こんなの知らない。こんな痛み知らない。知りたくない。いやだ、こわい、きもちわるい。 後ずさりたいと手に力を込めるが、それだけで荊がさらに食い込み、彼女の恐怖を増殖させて縛り上げた。 ――――本当!? 大人になるっていつ? すぐなれる? 「いやッ! やめて!! いい子でいい! 悪い子でもいい!! だから、それは、それだけは……!!」 内外を侵食し続ける『未知という恐怖』に、ちょこは涙を溢しながら拒絶した。 戦士としての痛みは知っている。命としての痛みも、心の痛みも知っている。だけど、それは、それだけはまだ知らない。 それは、いつかなるものだ。それは、子供の国から抜け出たちょこがいつか知るものだ。 でも今はまだ知らないから、ただ本能が叫ぶ悲鳴を止められない。 ――――うん。すぐよ。 それは、希望を啄み、欲望を啜って飛翔する鷹。 命を殺さぬ。ただ、その輝かしき夢を喰らうだけだ。 誰よりも夢を喰いつづけてきたからこそ知っている。 人の生死とは、心臓の鼓動に拠って切断されるものではないことを。 くるな、こないで。そんなものこんなものしらないしりたくない。 しってしまったら、しってしまったら―――― そんな叫喚と共に、全ての夢が吐き出されたとき、 誰よりも誰かの夢を貪り続けてきた夢喰い<ギャンブラー>は、 その体重を酒瓶に傾けて、ゴミ処理の終了を宣言した。 「尻の穴は残してやる」 「わあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」 ――――ちょこと結婚してくれる? もお、けっこんできない。おかあさん<おとな>になれないよ。 時系列順で読む BACK△144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編)NEXT▼144-6 瓦礫の死闘-VS守護機・砕けない宝石- 投下順で読む BACK△144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編)NEXT▼144-6 瓦礫の死闘-VS守護機・砕けない宝石- 144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編) アナスタシア 144-6 瓦礫の死闘-VS守護機・砕けない宝石- ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ ジョウイ ▲
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瓦礫の死闘-VS鬼神・泣き止んだ僕が願ったこと- ◆wqJoVoH16Y アナスタシアの大斬撃は他の戦場にまで影響を及ぼしていた。 「ぬおおうッ!?」 突如、巨大な衝撃波2度も地面を切り裂き、それまで柳の如く捌き通していたカエルの体幹が崩れる。 だが、持ち前の筋力と体重を発揮したゴーストロードは地震に耐えきり、体勢を崩したカエルにラグナロクの一撃を放つ。 「ファイアッ!!」 だが危地を見逃さなかったストレイボウが、フォルブレイズを開いて魔術を行使する。 異界の魔導書を精読するにはあまりに時間がなく、魔導書の真の技を解き明かすに達せていない。 だが炎魔術の触媒として使うにはそれで十分事足り、脳裏に浮かぶ未知の知識を再現する。 今のところファイガまでしか復元できていないが、今はこれで十分だ。 生じた火炎は蛇のようにゴーストロードを襲い、ラグナロクを弾く。 「この魔法は? おいストレイボウ、まさかスペッキオがこの島に――――」 「その話は後で……前だ、カエルッ!!」 ストレイボウのフォローで一呼吸を入れようとしたカエルに、マーニカティの刃が襲い掛かる。 これまで互いにほぼ無呼吸で撃ち合っていたため、流石のカエルも互いに一呼吸を入れると思ってしまったのだ。 だが、互いに騎士といえど、死に体と死体には巨大な差があり、呼吸の概念がないゴーストロードはカエルより半歩先手を取る。 限界ギリギリの反応でカエルは一の太刀を弾くが、これまでの疲労から威を流しきれなかったカエルの体が浮いてしまう。 「カエルッ!!」 ストレイボウは急ぎ詠唱を行おうとするが、自身の呪文よりも先に撃鉄を叩く音が耳に入った。 反射的にストレイボウが振り向いたその先には、ドーリーショットを構えたイスラがいた。 イスラが立ち上がったことにストレイボウは顔を綻ばせようとしたが、すぐに怪訝へと変化した。 (構造から見てあの銃は大口径弾か、散弾。どちらにしたって、あの距離じゃ命中するかどうか。 いや、それどころか下手したらカエルを――――) 浮かぶ記憶とこれまでの戦いから、イスラの持つドーリーショットが接近戦用の銃であることは理解している。 構えるイスラは銃をゴーストロードの方向へと銃口を向けてこそいるものの、接近する気配はない。 まさか、ヘクトルを助けるためにカエルを討つつもりか、それともやはり自殺をするつもりか―――― (いや、違う! あの眼、あの瞳はッ!!) だが、その思考はイスラの瞳に掻き消された。 全を見失った盲目の黒ではない、意志の込められた闇があった。 ストレイボウは、その瞳に吸い込まれそうな気分を覚えた。その胸に抱いた勇者バッジの淡い輝きにすら気づかないほどに。 ――――銃を使ったのは初めてか? だとすれば、筋は悪くない。 そういわれたのは、ケフカを撃ったときだったか。 砲身と引鉄に手を添えながらイスラはそんなことを思い出していた。 銃。引鉄を引いて、火薬に火をつけ、爆発力で弾を発射して、仕留めるこの武器が好きにはなれなかった。 勿論、帝国軍・無色の派閥ともに銃撃員はいるし、 この支給品をして当たりと判断した自分がその有用性・効力について異を挟む気はない。 ただ、僕は剣の方が好きだった。相手の武器を紙一重で躱して殺す。 そうすることで、自分が死に近づけているような気がするのだ。 だから、撃たれて遠くの誰かが死ぬことが、自分が安全な距離にいることができる銃が、少し好きではなかった。 ――――そこまで世の中は甘くない。一朝一夕で上手くなるなどとは思うな。 最後に恃むのはやはり自分が一番慣れた得物だ。 それを察したのか、銃器の扱いに長けた彼は特別自分に何かを教えることはなかった。 筋が少し良かろうが、本人の気質と噛み合わなければ教える価値もない。 ――――だが、最初と最後の一歩は覚えていて損はない。 ARM使いのまじない……言葉遊びのようなものだ。そもそも何故これがARMと呼ばれるか? だから、きっとこの言葉はほんの気まぐれだったのだろう。 何かの理由で、この銃を恃まなければならなくなったときのために、ほんの少しの力となるようにと。 きっとその時は、銃を握る者の何かが変わっているだろうから。 「わかってるのに見えないふりを続けると大事な物を見失う」 眼を見開き、イスラは目の前の光景を見据える。 カエルが、ストレイボウが戦っている。己が終わりに辿り着くために、今を懸命に生きている。 そして、今、危地に陥っている。今を懸命に駆け抜ける死体の手によって、潰えんとしている。 「曇りを払い自らの瞳で世界を見据え真実を捉えろ」 かつてヘクトルが夢見て、自分が憧れた理想郷の成れの果てが、今を生きる者たちを脅かしている。 その真実を、イスラはついに直視する。他ならぬ、二人の英雄達の言葉に支えられて。 「今、分かったよ、おじさん。銃も剣も、同じなんだ。距離は関係ない。 この目に映るものに、触れたいと、関わりたいと思う気持ち。それを形にする」 イスラの意識が澄み渡り、純粋なる力へと変換されていく。 引鉄をにかかる金属の質感、銃身の重さが意識に溶けて、まるで自分自身になっていく。 これより行うは弾を飛ばすことではない。手を伸ばすこと。 「掴み取るものを見つめて、延ばす。この銃は……僕の“腕<ARM>”の、延長――――ッ!!」 発射された弾丸が、まるで生きているかの如く軌跡を描いてマーニカティに直撃し、刀身を真っ二つにした。 見つめた真実に眼をそむけることなく、手を伸ばそうとする意志の体現。 それこそがフォース・ロックオンプラス――――ARMの原点にして真髄だ。 「お前に助けられるとは……だが好機! そっちの神剣も落としてもらおうかッ!!」 その隙を見逃さず、カエルは剣閃をラグナロクへ走らせる。 だが、ゴーストロードは剣で向かい合うことなく、腹に一撃を許した。 その様に驚愕に喉を鳴らす。いくら死体だとしても武器で撃ち合えばいいものを、何故体を張ってまで左手を避けるのか。 「奪ワセナイ……侵サセナイ……」 深く、昏い場所から、せせりあがるように言葉が漏れ出す。 臓腑を捩じり絞って吐き出されたのは後悔と決意だった。 「アイツガ……アイツラガ……一緒ニ……イラレル国……ヲ……」 また一人、喪ってしまった。受け継いだはずの緑色の祈りさえ、零れ落ちていく。 だからこそ、もう喪えない。約束まで奪わせない。 身体なんていくらでもくれてやる。だが、この指輪と左腕だけは許さない。 「戦ワセロ……終ワレナイ……俺、ハ……此処ニ、イル……イルンダ……ッ!!」 失われた左眼の虚空から、全てが漏れ出す。 『意志』が、『願い』が、『夢』が、『約束』が、『誓い』が。 彼が失ってきたもの全てが呪いの闘気となって、支配する領域を拡大する。 ここにいるのだ。剣を振るい抗い続けているのだ。 まだ終わっていないと、高らかに笑い続けて、何も終わっていないと、その証を大地に刻むように。 (なんて、重み! これが……国の重みッ!!) 距離をあけているはずのストレイボウさえも、心臓を鷲掴みにされる。 人の命を数で数えてはいけないと分かっていても、その背負ったモノの桁の違いに気が遠くなる。 ルクレチアを滅ぼしてしまったストレイボウには、その重みが押し潰されそうなほど理解できた。 ならば真正面でそれを受けるカエルがどうなるかなど言うまでもない。 これは、鬼だ。屍を抱えて阻むもの全てを滅砕する、鬼の戦神。 この鬼神こそが、カエルがなろうとしたものの極みなのだから。 たとえ目の前でラグナロクを震われようが、首を差し出すしかない。 「我ガ名ハ、アルマーズ……我ガ名ハ、ヘクトル……ッ!! 我ノ、我等ノ『理想郷』ハ……終ワラナイ……!!」 「それでも、終わらせなければならないんだ!!」 だが、その黒き闘気の領域を一筋の黒い刃が切り裂いていく。 魔界の剣を突き立てて、カエルの前にでた男がラグナロクを受け止めた。 「イスラ!?」 ストレイボウは戦いに割って入ったイスラに驚愕した。 接近戦ではあの領域の前に、勝ち目がない。だから銃を使ったのではないのか。 「生きたいとは、まだ思えない。消えてしまえるものならすぐにでも消えてしまいたい。 でも、ここで何もしなかったら、僕はきっと死ぬことも出来ない!!」 そんなストレイボウの不思議など構いなしに、イスラは剣越しにゴーストロードの目を見つめた。 眼の無い左目も、白濁した眼球が見るもの全てを呪い殺そうとする右目も、決して目を逸らさず見つめた。 「わかってるのに見えないふりを続けると大事な物を見失う。 貴方が教えてくれた言葉だ。だから、見るよ。貴方を見る!」 そのためにイスラはここまで来た。 彼を見るために。全てを受け止めて、己の生死を定めるために。 どれほどの戦慄が立ちはだかろうとも、この胸に抱く英雄の勇気を抱いて前に立つ。 「誰もが笑いあえる国を創るっていったじゃないか。なのに、あんたが笑えなくちゃ、意味がないだろう!!」 見て、答えはもう決まっていた。 たとえその体の中にどれほどの想いがあろうとも、失われた残骸が必死に身を寄せ合っている最後の場所だとしても。 そこはもう理想郷ではない。ヘクトルが夢見たのは、オスティアの全てが笑いあえる国なのだ。 オスティアの『全て』――――ならば、誰よりも笑っていなければいない人物がいるのだ。 「今更偽るなよ。僕とあんたじゃ、笑顔を張り付けてきた年季が違うんだッ!!」 だから、イスラは亡霊の願いを否定する。 たとえどれほどに全てを捨てて、楽園を作る一本の剣となって笑い続けても、オスティア候ヘクトルが笑えるはずがないのだ。 「それでもまだ続けるなら……僕が、僕が……」 「僕たち、だろう」 ストレイボウとカエルが口ごもるイスラの前に並び立つ。 イスラの勇気、勇猛果敢の意志が2人にも伝わり、この闘気の渦の中でもなんとか動けるようになっていた。 「もう手は握れん。だが、肩を並べ戦うことはできるだろう」 カエルが天空の剣を構え直す。理想の極みを見た以上、成すべきことはきまっている。 「補助魔法なんて初めてなんだ。精度は期待するなよ」 2人より数歩後ろに下がったストレイボウが詠唱を行うと、カエルとイスラにプロテクトの障壁が形成された。 この亡霊の後ろには魔剣が、そして新たな魔王がいる。ならば、この亡霊すら倒せないようではなにもできはしない。 3人の揺るがぬ決意を感じ取ったか、ゴーストロードはついに右手に力を込める。 幾つものナイフを失い、精霊剣マーニカティを失った今、残るは2本。 神剣ラグナロク、そして、亡霊を形作る核たる天雷の斧アルマーズ。 右に雷鳴を轟かせ、左に灼熱を震わせて、ついに鬼神がその真なるを顕す。 「魂を灼かれた後に、亡霊退治とはな。なかなか体験できるものではない」 「……亡霊退治なら、後でやってるよお前。で、どうするイスラ」 ストレイボウが最後にイスラの背中を押す。 カエルも虫の息で、ストレイボウでは正面を晴れない。 そしてやはりというか、他も同じだろうが、援軍も期待できない。 勝負の要は闘気を無効化できるイスラとなる。ならば、その始まりは彼が告げるべきだ。 「お前はどうするイスラ。自滅まで待つなんて甘い考えじゃこちらがやられる。お前はどうしたい?」 「終わらせる……!」 イスラは間断なく応じた。誓いを確固たるものとするように繰り返す。 「ヘクトル。僕は行く。貴方の理想郷を、終わらせる」 すでに涙は止まっている。やるべきことは、もう決まっていた。 誰よりもその理想郷に憧れたから、そこに生きることを夢見たから。 「それが……! 貴方への最後のはなむけだ!」 どうかお願いします。それを、僕の大切な終わりとさせてください。 【カエル@クロノ・トリガー】 [状態]:書き込みによる精神ダメージ(大)右手欠損『覚悟の証』である刺傷 瀕死 疲労(極大)胸に小穴 [装備]:天空の剣(開放)@DQ4 覆面@もとのマント [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:燃え尽きた自分を本当の意味で終わらせる 1:亡霊を倒す 2:友の願いは守りたい [参戦時期]:クロノ復活直後(グランドリオン未解放) [備考] ※ロードブレイザーの完全消失及び、紅の暴君を失ったことでこれ以上の精神ダメージはなくなりました。 ただし、受けた損傷は変わらず存在します。その分の回復もできません。(最大HP90%減相当) 【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(極)心眼 勇猛果敢@ゴーストロードの闘気を無効化 [装備]:魔界の剣@DQ4、ドーリーショット@アークザラッドⅡ [道具]:確認済み支給品×0~1、基本支給品×2、 [思考] 基本:生きたいとは思えないが、終わり方に妥協はしない 1:ヘクトル、貴方を終わらせる……ッ! [参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている) [備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。 フォース・ロックオンプラスが使用可能です。 【ストレイボウ@LIVE A LIVE】 [状態]:ダメージ(小)、疲労(極)、心労(中)勇気(大)ルッカの知識・技術を継承 [装備]:フォルブレイズ@FE烈火の剣 [道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、基本支給品一式×2 [思考] 基本:魔王オディオを倒してオルステッドを救い、ガルディア王国を護る。 1:急ぎ天雷の亡将を倒し、他の仲間達の援護に向かう 2:ジョウイ、お前は必ず止めてみせる…! 参戦時期:最終編 ※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) ※記憶石によってルッカの知識・技術を得ました。 ただしちょこ=アクラのケースと異なり完全な別人の記憶なので整理に時間がかかり、完全復元は至難です。 また知識はあくまで情報であり、付随する思考・感情は残っていません。 フォルブレイズの補助を重ねることで【ファイア】【ファイガ】そして【プロテクト】は使用可能です。 ※首輪に使われている封印の魔剣@サモナイ3の中に 源罪の種子@サモサイ3 により 集められた 闇黒の支配者@アーク2 の力の残滓が封じられています 闇黒の支配者本体が封じられているわけではないので、精神干渉してきたり、実体化したりはしません 基本、首輪の火力を上げるギミックと思っていただければ大丈夫です ※首輪を構成する魔剣の破片と感応石の間にネットワーク(=共界線)が形成されていることを確認しました。 闇黒の支配者の残滓や原罪によって汚染されたか、そもそも最初から汚染しているかは不明。 憎悪の精神などが感応石に集められ、感応石から遥か地下へ伸びる共界線に送信されているようです。 【天雷の亡将@???】 [状態]:クラス『ゴーストロード』 左目消失 腹に傷 戦意高揚 胸に穴 アルマーズ憑依暴走 闘気(極) 亡霊体 HP0% [装備]:アルマーズ@FE烈火の剣(ミスティック効果中。耐久度減。いずれにせよ12時までに崩壊) ラグナロク@FF6 勇者の左腕 [思考] 基本:オワレナイ……ダ、カラ……レ、ヲ……戦ワセロ……ッ! 1:戦う 2:肉を裂き、骨を砕き、生命を断つ 3:力の譲渡者(ジョウイ)には手を出さない *聖なるナイフ@DQ4、影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI マーニ・カティ@FE烈火の剣は破壊されました *ラフティーナが周辺にいる影響で、賢者の指輪を介し、魔力ステータスがニノ相当になっています *アナスタシアの二撃により、石細工の土台が破壊され、他の戦場間に隆起が生じました。 他の戦場への移動は困難です。 時系列順で読む BACK△144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲-NEXT▼144-9 瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……- 投下順で読む BACK△144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲-NEXT▼144-9 瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……- 144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲- アナスタシア 144-9 瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……- ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ ジョウイ ▲
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瓦礫の死闘-VS地獄・泥の下の宴会- ◆wqJoVoH16Y 玉座の間は赤かった。 蝋燭の灯に照らされた玉座の間は、紅い絨毯と相まって部屋全体を赤く染め上げている。 だが、そこには欠片ほどの暖かさも無い。 天井の一部には穴が穿たれて熱気を吸い上げ、その下には瓦礫が散乱している。 そしてなにより、吹き飛ばされた玉座の残骸が、この部屋が本来持つ権威を、荘厳を奪い取っていた。 王が座るべき場所、その座は王の威光が一番満たされているべき場所だ。 その崩壊が意味するのは、その威光が失われている――既に王はいないということだ。 王どころか玉座すら失われた空間に、熱など残るはずもなく、ただ冷たい赤色だけが王室を満たしている。 そんな死の御座に、伐剣の王は目を瞑って佇んでいた。 魔王セゼクはよほどの巨人であったのだろう。 瓦礫となっても玉座はあまりにも巨きすぎて、王はその横に腰掛けることができた。 王が瞼を開け、ぼんやりと空を見上げると、直ぐに視線は天井へ突き当たった。 燭台の淡い灯に赤みがかった天井に注ぐ視線を、少しずつスライドさせると、天井に空いた穴に目がいく。 位置からみて、この大穴はリルカが魔王に繰り出した最後の一撃が作ったものだろう。 非垂直による減衰分散の上で、地上から地下50階までをも貫通させた一撃。 その結果に、王は彼女の魔法に改めて感嘆する。 だが、その魔法により地上と50階までの間に障害物はなくなってしまったことは皮肉だった。 もっとも、その成果なくばこうも早くこの場所にたどり着くことも出来なかっただろうが。 その皮肉に王の表情が崩れようとしたとき、その穴からケンタウロスの騎兵が降りてくる。 王が棍を杖代わりに立ち上がると、騎兵は整然と王の御前に整列した。 その数は5。整列した騎兵を前に、ジョウイは僅かに肯くと王の額の紋章が輝き、騎兵達が霞の如く消失していく。 全ての騎兵が門の向こう側へ消え失せた後、王は若干の失意を込めて嘆息した。 蒼き門の眷属に命じたのは、1階から50階までの各10階分の調査だった。 召喚獣を端末として、その召喚獣が見聞きした情報を識る……王の右手に込められた核識の力の一つだった。 王は召喚獣によって得られた情報を吟味していく。 遺跡ダンジョンと名の付くとおり、宝箱とそれを手に入れんとする野盗・盗掘者溢れる遺跡だったのだろう。 だが、その宝箱は既に誰か――おそらく元の世界の人間――の手によって収奪された後。 残るのは空の宝箱と夢を抱いたまま遺跡に取り殺された者達の屍、遺骨だけだ。 この場所を城と見立てるのならば、最終門を除き全部抜かれている状態だ。 可能ならば穴を修復したいが、そんな時間も人手もない。 なにより、ちょこから得た情報によれば元からこの遺跡には50階まで直通する隠し通路があるらしい。 この穴を塞いだところで、それで抜けられれば意味がない。 玉座を降り、ジョウイは本来玉座があったであろう場所にあった隠し階段を見つめる。 守るにしても、この50階からが勝負となるだろう。 そう思いながら、王はさらなる地下への道を下りた。 草を踏む音と共に、王は深く深く降りていき、ついぞ最下層にたどり着く。 戻るなり王は、花畑の中心で燦然と輝く感応石を前に跪いていた。 先達への敬意を評するように、あるいは、謝罪するように深く頭を垂れている。 この場所の過去に対する哀悼と、未来に対する謝罪だった。 ふと、首を垂れる中、魔王に見せた少女の涙が脳裏を掠め、王の心に僅かな痛みを覚えさせる。 何故今思い出したのか、王はその意味を理解できなかった。 遺跡ダンジョンに精通していた彼女はこんな楽園があることを知っていたのだろうか。 あの変身後の姿を鑑みれば、彼女もまた魔界を追われ、 魔王ゼセクに率いられ人間の世界に逃れた魔族の一人なのかも知れない。 そうであるならば、これからの王の行いは彼女を泣かせてしまうのだろう。 父と呼んでくれた2人目の娘を―――― 突如、王の右腕に激痛が走る。 そのような甘えなど許さぬとばかりに、迷いに揺らいだ隙間をくぐり抜けた憎悪が、王の身を浸す。 その中で王は――ジョウイ=アトレイドはその痛みを摺り潰すように奥歯を噛んだ。 理想の楽園、ただそれだけを願い、迷いを抱き潰す。 戦わねばならぬ。殺さねばならぬ。進まねばならぬ。 あの娘の嘆きを背負えないようで、楽園など造れるものか。 痛みの収まったジョウイは、花畑に顔を埋めたまま息を整える。 この痛みでさえも、オルステッドが抱いてきた痛みの幾分でしかないのだろう。 紋章と核識の力があっても狂いそうなほどの憎悪に、ジョウイといえど気が遠くなった。 日没まで保つかどうか。なにより、完全な形でオディオを継承したとき、 はたしてこの身は自分のまま理想を抱いていられるのか―――― その迷いを握り潰すように、ジョウイは爪が掌に食い込むほど右手を強く握りしめた。 抱き続けて見せると。壊れたのならば、壊れ続けてでも、導いてみせると誓いながら。 痛みが落ち着き、立ち上がろうとしたジョウイが耳を澄ませる。 音だった。先のオディオと違い、脳に直接響くのではなく、実際にこの部屋で響いている。 ジョウイはゆっくりと音の元――感応石の裏側に回った。 そこには、眠ている女がいた。 だが眠れる美女ではない。頬を赤らめているが、寝たままも掴んだ酒瓶があっては台無しだ。 「……ぶぅおぉぉぉおおさぁんがァ、屁をこ~~いたぁぁぁ……Zzzz」 起こすかどうか、ジョウイが真剣に考え続けている中、 酒で焼けた肌を晒し、大股を開いて楽園に眠る眼鏡の女はとても幸せそうな顔をしていた。 感応石から少し離れた場所に地図を広げながら、ジョウイはメイメイと名乗る侵入者から話を聞く。 まだ誰も来ることは出来ないと索敵を怠っていたことを差し引いても、彼女の登場は突然に過ぎた。 このタイミングでこんな隠しエリアに転移してくる存在が、全うな参加者だと思うほどジョウイも愚かではない。 十中八九オディオの配下。目的はやはりジョウイに対する監視か牽制か。 「配下なんて淡白なのじゃなくってぇ、オル様のし・も・べって言って頂戴。気持ちいやらしめに」 ジョウイの警戒に気づいてか気づかずか、冗談めかしながらメイメイは髪留めを解いて濡れそぼった髪を指で梳かす。 雫は滑らかにその艶髪を下って仄かに赤みがかった胸元に降り注ぎ、彼女はそれを指で掬って小さな舌で舐めとった。 「……ちょっとは反応しなさいよ。目の前の熟れたてフレッシュな果実があるのに」 胸を抱えて少し揺らしてみたが、ジョウイは目を細めるだけで全く反応しない。 元魔族の王以上に無反応な魔王を前にして、眼鏡を拭きながらメイメイは唇を尖らせる。 どこの世界の魔王もこういうものなのだろうか。 「ぬう、若衆道は非生産的よ。それとも青い果実の方が好みかしら。だったら残念だけど今品切れなの」 珍妙というより配慮のないメイメイの言葉に、ジョウイは額を揉みながら視線を地面に下げる。 内心目のやり場に困っていたからというのもあるが、彼女の存在を測りかねているというのが本音だ。 彼女を遣わせたオディオの意図もそうだが、彼女の存在そのものを、ジョウイの神経が警戒していた。 その警戒の印象はジョウイが知る女性に相似していた。ジョウイとリオウを運命へと誘った、魔術師レックナートに。 「ぬ、汗の混じった水が仄かに酒の味。私からお酒が出てくる……私が、私たちがお酒! そういうのもあるのね!! 酒力による憎悪根絶! 対話<ノミニケーション>のとき来たれり! にゃは、にゃはははは!!!」 この如何ともし難い道化ぶりを除けば、であるが。 「じゅぅ。ん、あと、監視じゃなくてぼーかんね。 多分、貴方が首輪を外しちゃったからじゃない? 閉じこめられてたから助かったわ」 けらけらと笑いながらひとしきり服を乾かしたメイメイは升に酒を注ぎ、ぐいと煽る。 聞けば、どこかの異空間に閉じこめられていた彼女をオディオが突如ここに飛ばしたらしい。 その際にただ一つ言われたそうだ――――そこで傍観しろ、と。 その意味が、死喰いにもっとも近い場所であるここに到達したジョウイに対するものであることは想像に難くない。 魔剣から得られた知識により、目の前の存在がリィンバウムの住人であることは理解できた。 察するにオディオとメイメイの間には召喚獣の誓約があるのだろう。 ならば、ジョウイが先ほど召喚獣で遺跡を調査したように、メイメイが視たことはオディオに筒抜けとなる。 「首輪を外してなお通信用の感応石を回収したってことは、 魔剣を使って逆にテレパスラインに改竄を仕掛ける腹積もりだったんでしょう。にゃははは、残念賞だったわねぇ」 メイメイの閉じた扇子が指し示したジョウイの右手の中で、感応石が握りしめられる。 島に覆われた死喰いのシステムは同時に、オディオがこの戦いを運営する監視手段でもある。 先ほどのオディオの干渉からも、ここの巨大感応石がオディオのいる場所と直接繋がっていることは明らかだ。 魔剣を使いこなせば、オディオに偽の情報を送り込むことも不可能ではないだろう。 だが、その可能性はこの奇矯な女性の存在によって不可能となった。 首輪による直接的な監視・制御方法が無くなった今、目の前の女性はその代用品ということか。 この監視は破壊できない。相手にするには、あまりにもリスクが高すぎる。 「ま、そういうわけでぇ、おひとつよろしく。 私はお邪魔にならないように隅っこでお花見してるから。あ、これ、つまらないものですけど」 自分を見定めようとするジョウイの思惑を知ってか、メイメイはどこからか宝箱を召喚する。 この場所に居座ることへの手土産のつもりだろうか。ジョウイが怪訝そうに宝箱を開き、その中身を見て絶句した。 ハイランド王国の象徴である純白で彩られた士官服――リオウと袂を分かった後に纏っていた衣に他ならなかった。 「これは、私個人のサービス。汚れきった今の貴方に、一番必要なものじゃない?」 ジョウイの動揺を肴にするように、メイメイは升縁の塩を舐める。 それは如何な意味だったのだろうか。腹を串刺しにされて血に汚れた衣服のことか。 それとも、光に住まう彼らと袂を分かち、憎悪をこの身に纏ったことか。 いずれにせよ、目の前の占い師はこの衣が持つ意味――ジョウイという人間の背景を見抜いている。 それだけでレックナートと同等であろうこの女店主の実力は否応にも理解できた。 「堅いわねぇ。ま、安心なさいな。オル様のことだから、私を力とは使わないでしょ ……怖い? 今更、オル様に喧嘩を売ったことに後悔してる?」 意を決するようにその衣を拝領するジョウイに、メイメイはおどけるように言った。 ジョウイが恐怖に身を震わせていることに気づいたからだった。 無理もない。ただ魔剣と無色の憎悪を奪うだけに飽きたらず、この若き魔王は堂々とこの世界の主に喧嘩を売ったのだ。 勝者の中の勝者――勇者オルステッドの歩んだ悲劇だけを見て哀れんで。 敗者となって足掻き、もがき苦しんだ魔王オディオを知らぬままに。 だが、ジョウイの瞳を見たメイメイから軽薄な笑みが消える。 恐怖に震えながらも、ジョウイの視線はただ一点、オディオの玉座をしかと見据えていた。 確かに、感応石越しとはいえ直接オディオに語りかけられたことで、 これまでは伝聞と主催者としてしか知らなかった、オディオの憎悪に直接触れ、心胆を震え上がらせた。 それは逆を返せば、その憎悪を直接感じられる位置にまで上り詰めたことを意味する。 アシュレーやユーリル、魔王ジャキなどと異なり、オディオにとって一介の村人に過ぎなかっただろうジョウイが、 目指すべき玉座に君臨する王と対面し、僅かなりともその人物を見定めることが出来る位置まで到達できたということだ。 「……オル様の逆鱗の位置を確かめたかったと。無茶をするわねえ」 そう言いながら酒を口に含むメイメイは、ジョウイの意図の一部を理解する。 ハイネルとの会話から遺跡ダンジョン制圧に至る一連の動きは、オディオと面会するためでもあったのだ。 ジョウイはオルステッドのことはストレイボウから聞いていても、オディオについては主催者としての露出以上のこと知らない。 これからの戦いを進める中で、ジョウイは先ず何よりも魔王オディオを見極める必要があったのだ。 戦場の天気を調べるようなものだ。 たとえどれほど緻密な戦略を立てても、感情という嵐が吹けば飴細工のように砕けてしまう。 だが、逆に言えばその感情さえ弁えれば、戦略の立てようがあるのだ。 オディオの言葉を反芻しながら、ジョウイは自分に力を継がせた召喚師を思う。 今にして思えば、ハイネルは理解していたのだろう。 魔剣を得たとはいえジョウイがここから優勝しようと思えば、相応の綱渡り――死喰いの力を手にする必要があるということを。 だからこそ、ハイネルはオディオが聞いていることを承知で……“オディオに聞かせるために”ジョウイの決意を言葉にさせたのだ。 その結果、ジョウイは魔王に賊として誅伐されることなく、無知な道化の王として、首の皮一枚で生かされている。 そして、僅かとはいえジョウイはオディオの輪郭を捉えたのだ。 「ルカ=ブライトに取り入るだけはあるわねぇ。才能?」 呆れた調子で酒を呑み直すメイメイを尻目に、地図を広げながらジョウイは成程、と思う。 この状況は、ルカの幕下で力を蓄えているときに似ている。 今この瞬間、ジョウイが生かされているのは、オディオがジョウイの理想を不可能と断じているからだ。 自ら滅びに向かう哀れな道化の末路を見たいがために、ジョウイは生かされている。 ならば、あの時と同じように今はせいぜい楽しませるだけだ。 その果てにオディオの期待を裏切ってみせる。優勝し、不可能だとオディオが嘆いた、楽園の創造を以て。 「ん。ちょいまち。なんで50階に行ってたの? 死喰いを手に入れるんじゃなかったの?」 神妙な面持のジョウイをしばし見つめた後、メイメイはふと気づいたように言った。 ジョウイの目的は死喰いを手に入れることではなかったのか。 その問いに、ジョウイは少し考えた後メイメイに語りだした。 メイメイが来るよりも先に降りて知った、死喰いの正体、そして泥の中での出来事を。 ――――潜る。 あの滝壺に落ちるように、ジョウイの精神は暗黒へと流れ落ちていく。 ジョウイより魔剣へ、魔剣より感応石へ、 そして首輪を含めた島中の全てよりエネルギィを受けた感応石より、遺跡ダンジョンよりも遙か深くへと伝っていく。 恨み、痛み、苦しみ、恐れ。死にまつわるあらゆる意識に流されるのは、さながら墨汁の滝を落ちていくようだった。 その中でジョウイが染まらずに自我を保てたのは、皮肉にも自分を侵そうとする憎悪のおかげだった。 抜剣して、憎悪という外套を纏ったジョウイはジョウイとしてその闇を降りていく。 ここを堕ちていくのは、ジョウイにとって2度目だった。 1度目、ディエルゴを降した時は無我夢中であったため、 気づいたときにはあの都――死喰いの内的宇宙にまでたどり着いてしまっていた。 内的宇宙、リルカの世界における心の内側の世界。 それが存在する以上、そこにたどり着く前に必ず肉体を通るはずだ。 どれだけ小さかろうが、その姿を見逃すまいとジョウイはより慎重にと、周囲の地形を慎重に見ながら潜行していく。 しかし、いくら潜れど土と石しかなかった。地下の施設は数あれど、流石にあの地下71階が一番深かったのだろう。 それより下に空洞など無いように思えた。 ならば、死喰いは土の中で蛹の如く眠っているということなのか。 しかし、それではハイネルの語った死喰いという存在に今一つそぐわない気がした。 蛹が蝶へと生まれ変わるようなイメージはあまりにも『生』でありすぎる。 『死』を喰らうものがそんな命であるのだろうか。 ラヴォスの幼体という言葉に囚われ過ぎてはいないか。 そんなことを思ったとき、ジョウイの意識は空洞へとたどり着いた。 生命が形を得る前の時代、全ては泥だった。泥が星で、星が泥だった。 遺跡ダンジョンよりも深き、背塔螺旋の最下層。泥の海。原初の命。白痴の力。ファルガイアの“始まり”。 ありもしない英雄の姿を追い求めた男と、そんな哀れな男に全てを捧げた女の墓標。 ――――泥のガーディアン【グラブ・ル・ガブル】。 黒い流れからその身を切り離し、ジョウイの意識は泥の海に佇み、周囲を見渡す。 ただ泥が静かに揺らめいている。だが、その泥の一粒一粒が純粋な『命』だった。 その命の海の中で、ジョウイは己が目的である死喰いを探すが、その姿は見つからない。 魔剣を得てこの島を巡るネットワークを知覚できるようになった今だからこそジョウイは確信する。 死喰いはこの近くにいる。だが、その泥の下にはもう何もない。 あのルクレチアが存在する以上、死喰いは確かに存在するはずなのに、見当たらない。 まるでとんちのような状況に、ジョウイは思索を巡らせる。 もしくは、逆ではないのだろうか。 内的宇宙があるのに肉体がない、と考えるのではなく、最初から内的宇宙しかないのではないか。 その着想に至ったとき、ジョウイは泥の中で小さな光を見つけた。 まるで、砂漠の中の宝石のように、儚く、されど貴く光る輝きだった。 しかしその輝きは泥に覆われ、泥に汚されようとしていた。 捕食、吸収、略奪。ジョウイはその光景にそれらの言葉をイメージした。 そう、目の前の泥はこの輝きを喰おうとしているのだ。 その様子こそが『死を喰らう』ことなのだろう。 ハイネルの語ったことと目の前の事実を並べ、ジョウイはそう結論づける。 生きている間、そして死の間際に生ずる『想い』が、首輪の感応石を伝い、ここに送られ……喰われる。 グラブ・ル・ガブルの泥へと沈められて、汚され、あのルクレチアを構成する欠片となる。 つまりこの泥の海“そのもの”が―――― ジョウイは眼前で泥にまみれる輝きを見つめた。 己が推測を確かなものとするため、その輝きが喰われる様を確認したかったのだ。 それが確かだと分かれば、死喰いの全貌を理解できる。戦局を優位に進められる。 だからジョウイは、この輝きを犠牲にしようとした。 誰の想いかはわからないが、相当前からこの場で喰われ続けていたのだろう。 その輝きはもういつ消えてもおかしくないほどに穢されている。 それでも、消えられないと足掻き続けているように見えた。 もうこの輝きは救えない。ならばせめて背負い、自分の糧にしようと思ったのだ。 ………が、…………ますか? 魔王か、ニノかはたまたマリアベルか。それが誰の「死」なのかは分からない。 だが、誰であれ、その死を決して無駄なものにはしまいと思った。 ―――私の声が、届いていますか? はずだった。だが、いつの間にかジョウイの右手には煌々と始まりの魔剣が輝き、 その輝きに気づいた時には、輝きに絡み付く泥の全てを切り裂いていた。 ジョウイが自分が何をしてしまったかを理解したとき、 光は役目を達せたと安堵するように、粒子となって魔剣の中に消えていった。 そして“光の中で守られていたもう一つの光”が強く強く輝きだす。 その光も、ほとんどを死に喰われていた。燃え尽き果てた最後の火種だったのだろう。 だが光はその死さえも踏み越えるように輝き、泥の海から昇り出す。 どこまでも強く、天に向かって疾走するそれは、暑苦しいほどの炎にも見えた。 その炎を見上げていたジョウイの背後で、泥がわなわなと震えだす。 餌を奪われたと、ひもじいと、満ち足りないと、怒り狂う。 本来のグラブ・ル・ガブルは意志を持たぬ純粋な生命エネルギーであるはずなのに。 こいつには“意志が入っている”。 泥が、異物を喰らわんとジョウイに襲い掛かろうとしたとき、ジョウイは魔剣を泥に突き立た。 そして、魔剣を介して己が意志を流し込む。 死喰いよ、無念なるまま喰われたルクレチアよ。 伐剣王の名の下に、2つを約束する。 1つは、楽園。死喰いに囚われた貴方たちも許される場所へと連れて行く。 そして、1つは誕生――――“まだ生まれていないお前を、誕生させると約束しよう”。 伐剣王の名の下に未来に誓約を刻む。 死喰いよ、もしも生まれることができたなら、その時は、真名を以てどうか力を貸してくれ。 その願いが伝わったか、グラブ・ル・ガブルの泥は――――“死喰いの肉体”は、僅かに打ち震え、静まっていく。 喜んだのか、道具と利用する気か……いずれにせよ、後に残ったのは、穏やかに流れる泥の海だけだった。 「……古臭い匂いがしたと思ったらそういうこと。 で、要約すると、オル様が召喚した『ラヴォスの幼体』なるモノは既に死んだ亡霊みたいなもんで、 それが新たな肉体としてグラブ・ル・ガブルに憑依した存在――――それが死喰いってこと?」 ジョウイの話を聞き終わった後、メイメイが要約した内容に、ジョウイは静かに首肯した。 恐らく、メイメイは『ラヴォス』の本当の意味を知っているのだろう。だが、それを言う気はないらしい。 「まあ、妥当なところねえ。星の命そのものであるグラブ・ル・ガブルに巣食えば、それだけでネットワークになるでしょ」 その話しぶりを見る限り、グラブ・ル・ガブルと『ラヴォス』の相性は最高のようだ。 となれば、この島の命である泥が『ラヴォスの幼体』に憑依されているというのは、 いわばこの島がラヴォスそのものであることに等しい。なにせこの島の憎悪を喰いつづけることができるのだから。 「で、そんな死喰いはまだ本当の意味で存在している訳じゃ、ないと。 それもまた道理ね。死を喰らい続けたところで生命にはなれないわけだし」 それこそが、ジョウイが死喰いを手に入れずに引き上げてきた理由だった。 死喰いがどれほどの死を喰いつづけたところで『ラヴォスの幼体』は既に死んだ怨霊だ。 死<マイナス>に死<マイナス>を足したてもマイナス、自力では生<プラス>にできない。 誰かが、憎悪<マイナス>を掛けて、このあらゆる死を喰いつづけた亡霊を、新生させる必要があるのだ。 その役を担うのは、当然魔王オディオ。 限界まで死を喰い続け膨大なデータをルクレチアに揃えた死喰いは、 グラブ・ル・ガブルの命とオディオの力によって、己が最適な進化を果たした姿で誕生する。 それこそが、真の死喰い。敗者の全てを喰らい生まれる、最後の怪物だ。 「お、めでと~~~~。本当だったら、直ぐにでも護衛獣か何かにするつもりだったんでしょ? でも死喰いはまだ生まれていない。生まれないものに名前なんてない。真の名がなければ誓約はできない」 メイメイの皮肉に、ジョウイは無言を以て肯定した。 死喰いの亡霊だけを魔剣に取り込むことも考えてはいたが、それでは恐らくジョウイの精神が耐えられない。 故に、ジョウイは死喰いという存在を魔剣で護衛獣の契約を結ぶつもりだったのだ。 しかし、生まれてもいないものと誓約を結ぶことはできない。 オディオはこれを見越していたのかもしれない。現時点ではジョウイはまだ死喰いを手にすることはできないと。 そう、現時点では。 つまり、死喰いを誕生させた後ならばその可能性も出てくる。 そして、ジョウイには死喰いを誕生させる力――不滅なる始まりの紋章があった。 偽りとはいえオディオを内包したこの魔剣ならば、死喰いを誕生させることもできるだろう。 「でも、今は無理。というか時間がかかる、って所かしら。 そりゃあ、死喰いは不完全で、しかも力は模造品。条件が劣悪すぎるしねえ」 耳に痛い本質を気楽に投げつけてくるメイメイに、流石のジョウイも渋い顔をした。 だが事実は事実だ。40人以上の死を喰らってもなお、 死喰いはまだまだ死が足りない、現状の進化に満足できないと、飢え続けている。 更にこちらのオディオも本物に数段劣る贋作。生まれてくる死喰いも、生む魔王も、まだまだ不完全なのだ。 魔王オディオなら今の死喰いの成長度合いでも、無理やり生むことはできるだろうが、ジョウイでは不可能だ。 今から力を行使しはじめたとしても、恐らく数時間はかかるだろう。 「時間との勝負ねえ。死喰いの力は如何に強力でも、その力を行使する時間が無ければ意味がない。 日没までに間に合わなかったら、それこそ台無しだし」 さらりとジョウイの刻限を明かされたことも、もはや驚く暇はない。 そう、ジョウイの目的は死喰いを手に入れることではなく、その力で優勝することだ。 手段に拘泥して、目的を達成できなくなれば意味がないのだ。 限られた時間と絶大な力。その天秤こそが、ジョウイにとって全ての悩みだった。 「で、どうするの?」 ジョウイが抱える現状の全てを露わにしたメイメイは、ついにその問いを投げかける。 諦めて仲間の下にいくのか、死喰いを棄てて別の手を考えるか、死喰いを誕生させることに注力するか。 ジョウイという人間を見極めるのに、これほどに相応しい問いは他に無いだろう。 酒精と眼鏡に隠れたその慧眼が見つめる中、 新しい魔王は、噛み締めるように考えたうえで、答えを出した。 時系列順で読む BACK△143 堕天奈落NEXT▼144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル- 投下順で読む BACK△143 堕天奈落NEXT▼144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル- 142-9 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(後編) アナスタシア 144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル- ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ 143 堕天奈落 ジョウイ ▲