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朝食を終えたルイズと康一は、授業が行われる教室へと向かっていた。 今後、どうやったらルイズと衝突せずに生活できるか、などと考えている康一。 ちびの癖に生意気な犬をどうやって躾けようかしら、などと考えているルイズ。 二人とも無言で、今後についてのことを一生懸命考えていた。 そんな二人の前に、一人の色気を放っている赤い髪のナイスボディな女性と、真っ赤な巨大トカゲが現れる。 思案に暮れていた康一は、目の前に現れた魔物とおっぱい星人に気づいておらず、 おっぱい星人の使い魔である、真っ赤な巨大トカゲと思い切りぶつかった。 「うわっ!?」 尻餅をつき、顔とお尻をさすりながら前を見ると、のっそりとした巨大トカゲが康一をジーッと見ていた。 「うわぁぁあああああっ!?」 その姿に思わず驚き、康一は半身起こしただけの状態で後ずさりする。 「あら、大丈夫? おチビちゃん」 「ちょっとキュルケ! 私の使い魔に何するのよ!」 「あら、余所見をしていたのは貴方の使い魔でしょ」 そう言って、キュルケと呼ばれた女性はせせら笑う。 康一は床に手をつきながら立ち上がり、ペコリと頭を下げて謝った。 「す、すみません、考え事をしていたもので……」 素直に謝る康一を見て、ルイズは不機嫌そうな顔をする。 「ちょっと! こんな奴に謝らなくてもいいの!」 「僕が余所見してたんだから、悪いのは僕だし、ちゃんと謝らなくちゃいけないよ」 そんなやり取りを見ながら、キュルケはニヤニヤと笑いながら康一を見ている。 「それにしても、平民を使い魔にするなんて、貴方らしいわ。さすがはゼロのルイズ」 「うるさいわね」 とっとと目の前から消えろと言った感じの表情で、ルイズはキュルケを睨みつける。 「ところでそっちのおチビちゃんは、誰かさんと違って随分と礼儀正しいみたいね。一瞬、どっちが使い魔なのか分からなかったわ」 立て続けに嫌味を言うキュルケに、ルイズは康一を指差しながら怒鳴った。 「こいつのどこが礼儀正しいのよ!」 「少なくとも貴方よりは品性があるわね」 「ど・こ・が! 目が腐ってるんじゃないの!?」 「あらあら、品性のかけらもない言葉遣いね、ヴァリエール」 余裕のある笑みを浮かべるキュルケと対照的に、ギリギリと歯軋りさせながら怒りの形相を浮かべるルイズ。 少なくとも、彼女達は礼儀正しくないよなぁ、などと思いながらルイズ達を見ている康一。 「何か用でもあるわけ!? 用がないなら鬱陶しいから早く私の視界から消えて」 「あら、用ならあるわよ。あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 そう言って、巨大トカゲの頭を撫でるキュルケ。 「えーと、その大きなトカゲがキュルケさんの使い魔って奴ですか?」 康一は物珍しそうに、キュルケの隣でのっそりとしている巨大トカゲを見て言った。 「そう、素敵でしょ。火トカゲよー。見て? この尻尾。 ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランドものよー」 康一は、あんなにそばにいて熱くないのかなぁ、などと思いながらサラマンダーに近づいた。 「凄いなぁ~、こんな生き物見たことないよぉ~。 カッコいいなぁ~」 「そうでしょ? 貴方、見る目があるわ。誰かさんと違って」 康一は、サラマンダーを触ったり撫でたりして、目を輝かせている。 自分の使い魔を称えられているキュルケも、気分よさそうに康一に色々とサラマンダーについての説明をしていた。 和気あいあいとした雰囲気の中、一人だけ暗黒の空気に包まれている者がいた。 他でもない、ルイズである。 目を逆三角形にしながら、康一の背中を引っつかんで自分のそばに引き寄せる。 「何楽しそうにおしゃべりしてんのよ! あんたは私の使い魔でしょ!」 「あら、私の使い魔になりたがってるんじゃないかしら? あなたと違って、魅力があるしね」 そう言われて、キッと康一を睨みつけるルイズ。 康一は、必死に顔を横に振って否定の意を表す。 「ハイ、そーです」なんて肯定したら、殺されそうな勢いだった。 「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね」 「あ、広瀬康一です」 「ヒロセコーイチ? ヘンな名前ね。ま、覚えておいてあげるわ」 そう言うと、炎のような赤髪をかきあげ、颯爽とキュルケは去っていった。 大柄な体に似合わない可愛い動きで、サラマンダーがその後を追う。 「くやしー! ただ自慢しにきただけじゃない! 火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!」 「ま、まぁまぁ……」 ルイズは、自分をなだめようとしてくる康一を睨みつける。 「うるさいわね! 今日は晩御飯もヌキッ!」 「えぇ~ッ! 何でェー――ッ!?」 「ご主人様をそっちのけにして、他人と仲良くした罰よ! なによ、私にはあんな顔しない癖に!!」 そりゃ、キミがワガママ言うからだよ、などとは口が裂けても言えない康一。 これ以上刺激したら、もっと空気が悪くなりそうだ。 「行くわよ! フンッ!!」 ドッカドッカと、品性のかけらも無い歩き方で教室へ向かう。 康一は、どっと疲れたような足どりで、肩を落としながらルイズの後を追った。 重い空気の中、やっとのことで教室につく。 康一とルイズが中に入っていくと、先に教室にやってきていた生徒達が一斉に振り向いた。 そして、康一とルイズの姿を見るなり、クスクスと笑い始める。 そんな生徒達を無視して、康一は辺りをキョロキョロと見回す。 教室は、大学の講義室のようだった。 ちょうど、教室の真ん中くらいの所には先ほどのキュルケもいた。 周りには、数人の男が取り囲んでいる。どうやら相当モテるらしい。 よく見ると、皆、様々な使い魔を連れていた。 キュルケのサラマンダーをはじめ、フクロウや、巨大な蛇や、よく分からない謎の生物も沢山いた。 「へぇ~、色んな使い魔がいるなぁ~」 「あんたも使い魔でしょ。まったく、少しは自覚しなさいよ」 ルイズは不機嫌そうな声で答え、席の一つに腰をかけた。 康一も隣の席に座る。ルイズが康一の横っ腹を肘で小突いた。 「イテッ! こ、今度はなに?」 「ここはね、メイジの席。使い魔のアンタは床」 康一は、ムッとしながらも、床に座った。 机が目の前にあって窮屈だったが、康一は我慢する。 そうこうしている内に、扉が開いて、先生が入ってきた。 紫色のローブに身を包んだ彼女は、教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズは俯いた。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズが、康一を見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 キュルケの件もあって、かなり不機嫌だったルイズは、机をバンッ叩いて大きな声で怒鳴りつける。 「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができ……ッ! ッ!!」 突然、ルイズをバカにしていた男が、一言も喋れなくなる。 周りで笑っていた生徒は、突然喋らなくなった男を不思議そうに見ていた。 「フン! 言いたいことがあるなら最後まで言ってみなさいよ、かぜっぴきのマリコルヌ!」 マリコルヌと言われたその男は、反論しようとしたが、声が出なかった。 否、出ないというよりは、防音室にいる時のように、声が全く響かなかった。いくら喋っても、声が届かない。 「みっともない口論はおやめなさい。授業を始めますよ」 シュヴルーズは、こほんと重々しく咳をすると、杖を振った。机の上に、石ころがいくつか現れた。 「私の二つ名は『赤土』。 赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」 授業は淡々と進んでいき、康一はその光景をボーっと見ていた。 『火』、『水』、『土』、『風』の四つの魔法があるだとか、『土』系統の魔法は重要だとか、そんな話だった。 「今から皆さんには、『土』系の魔法の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます」 シュヴルーズの話を聞いていた康一の横から、ルイズが話しかけてくる。 「ねえ」 「なに~? 今、先生が何かやってるみたいだよ。ちゃんと見なくていいの?」 「そんなことはいいの。あんた、さっき『何か』した?」 「『何か』って?」 「だから……さっき、マリコルヌがいきなり喋らなくなったでしょ?」 康一は、「ああ、あれね」と言った表情でルイズを見た。 「そうだね。何でだろうねぇ~。でもま、静かになって良かったんじゃない?」 「……そうね。ま、いいわ。良く考えたらあんたが何か出来るわけないし」 そう言って、ルイズは再び授業に参加した。 康一はエコーズで、マリコルヌに張り付いていた『シーン』という文字を密かに回収し、 誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。 「いくらワガママでも、自分の主人をバカにされるのは、気分が良くないからね……」 「……今、何か言った?」 「何も~?」 康一はとぼけたような声で言った。 ルイズが、康一を怪訝な目で見つめていると、シュヴルーズに声をかけられる。 「ミス・ヴァリエール」 「え……? は、はい!」 「今日はあなたにやってもらうわ。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 「え? わたし?」 ルイズは立ち上がらずに、困ったようにもじもじとしている。 その様子を見て、頭に?マークを浮かべながら康一は質問する。 「……行かないの?」 「……」 ルイズは康一の質問を無視し、困った顔をしているだけだった。 なかなか立ち上がらないルイズに、シュヴルーズは再び声をかける。 「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか? 早く立ち上がってこちらに来なさい」 しかし、それでもルイズは立ち上がらない。 「ねえ、行かなくていいの?」 その様子を見ていたキュルケが、困ったような声で言った。 「止めた方がいいと思いますけど……」 「どうしてですか?」 「危険です」 キュルケがきっぱりと言うと、教室のほとんど全員が頷いた。 「危険? どうしてですか?」 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。でも、彼女が努力家ということは聞いています」 そういう風には見えないけどなぁ、などと思いながら康一はルイズを見る。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」 「ルイズ。やめて」 キュルケが蒼白な顔で言った。 しかし、ルイズは立ち上がった。 「やります」 そして、緊張した顔で、つかつかと教室の前へと歩いていった。 せめて声援は送ろうと思った康一が、ルイズに向かって言う。 「頑張ってねー!」 しかし、周りの生徒たちは「余計なことを言うな」という顔をしている。 皆、何であんなにおびえた表情をしているのかなぁ? と康一は思った。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 こくりと頷き、ルイズが手に持った杖を振り上げた。 唇をへの字に曲げ、真剣な顔で呪文を唱えようとする。 すると、他の生徒たちが一斉に椅子や机の下に隠れた。 何で皆、机の下に隠れてるんだろう? と康一が思った瞬間――。 ドグォンッ! ――大きな音を立てて、机と石ころが爆発した。 爆風をモロに受け、ルイズとシュヴルーズ先生は黒板に叩きつけられた。 「うわあああああっ! な、な、何事!? まさか敵スタンドッ!?」 大きな爆発によって、康一は半ば混乱しながら、ACT2を出して辺りを見回した。 過去に、敵を爆破するスタンドに襲われた康一は、汗をダラダラと流しながら、攻撃に備えている。 もっとも、爆発を引き起こしたのはルイズなので、敵スタンドなど存在はしない。 そうこうしてる内に、驚いた使い魔たちがあっちこっちで暴れていた。 キュルケのサラマンダーがいきなり叩き起こされたことに腹を立て、炎を口から吐いた。 その炎で、マリコルヌが黒焦げになった。 マンティコアが飛び上がり、窓ガラスを叩き割り、外に飛び出していった。 割れた窓ガラスのシャワーがマリコルヌに全部突き刺さった。 「うわあああッ! そ、そこにいるのかッ!?」 窓ガラスの音に反応し、康一がACT2の音攻撃をする。 バゴーンという文字は、不幸にもマリコルヌに命中した。 口から血ベトを吐いて、痙攣するマリコルヌ。 駄目押しと言わんばかりに、割れた窓の隙間から入ってきた大蛇が、マリコルヌを飲み込んだ。 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。教室の隅では、丸飲みにされたマリコルヌの救出活動が行われていた。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「ええい! ヴァリエールなんて退学になればいいんだ!」 「マリコルヌーッ! しっかりしろーッ! 食われちゃいかーんッ!!」 康一は呆然としていた。 誰かの攻撃かと思っていたが、生徒全員が口を揃えてルイズの文句を言っている。 つまり、さっきの爆発はルイズの仕業である可能性が高い。 至近距離で爆発に巻き込まれたシュヴルーズ先生は、ピクピクと痙攣している。 何やらうわ言で「ビ・チ・グ・ソ・が……」と言っているような気がしたが、康一は聞かなかったことにした。 一方、爆発を引き起こした張本人であるルイズは、煤で真っ黒になっていた。 ハンカチを取り出して、顔についた煤を拭うと、淡々とした声で言った。 「ちょっと失敗みたいね」 当然、他の生徒達からは猛然と反撃を食らう。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」 「そうだ! お前のせいで、マリコルヌが…マリコルヌがなぁ……!」 「いや、マリコルヌは生きてるぞ」 康一は、何でルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれて、バカにされてるのか理解した。 シュヴルーズ先生――この後、治療を施された。 マリコルヌ――再起不能。 To Be Continued →
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トリスティン魔法学園、春の使い魔召還。 それはこの学園に通う生徒にとってもっとも重要な行事。 皆が思い思いの使い魔を召還し、あるものは歓喜し、あるものはがっくりとうなだれた。 それはもちろん彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも同じであった。 彼女が使い魔召還のための呪文を詠唱を終えると まばゆい光が辺りを包んだ。 そして ドオン! 「うわ! ゼロのルイズがまたやったぞ!」 「建物が崩れるぞ、逃げろー!」 地震のような地鳴りと巨大な爆音。 いつもの彼女の失敗にしては少々大きすぎる爆発。 辺りを覆う煙が晴れると、そこには 「・・・・・・・・・なによ、コレ」 巨大な『鉄塔』がそこにはそびえ立っていた。 それは高さ20mくらいはあろうか。 塔とは言うものの床がなく、側面に鉄の棒が繋がっていてかろうじて塔と分かるだけだ。 そう、ちょうど塔に骨があるとするのなら、こんな感じなのだろう。 「ぶ・・ふふ・・・あーっはははは、さすがね、ルイズ・・・まさか生き物以外を召還しちゃうなんて」 キュルケの笑い声が引き金となりほかの生徒もどっと笑い出す。 「ぶははははは、塔ってなんだよ! どういう使い魔だよ!」 「これなら失敗のほうがよかったんじゃねーの?」 「違いねえ」 わはははははは、と生徒は笑う。 本来誇り高き貴族たるルイズは侮辱に怒りを露にするはずだが、 「あ・・・あはははは」 もはや笑うしかなかった。いくら自分に才能がないとしてもコレはあんまりだ。 みなの言うとおり失敗して爆発のほうがまだ救いがあっただろう。 「あー、コホン、ミス・ヴァリエール」 「・・・ミスタ・コルベール、もう一度召還の機会を与えていただけますか?」 「それはダメだ、ミス・ヴァリエール。使い魔召還は今後の属性を固定しそれにより・・・」 「お言葉ですが、ミスタ・コルベール」 「これと『どう』契約しろというのですか?」 契約は使い魔との口付けでなるのは周知の通りだ。 だが『こいつ』には口はない。 あまつさえ顔もない。 それ以前に生き物ですらない。 「ううむ・・・確かに。春の使い魔召還の儀式はあらゆるルールに優先する・・・と言っても限度があるな。 さすがに契約できないものを使い魔とすることはできない。やむ終えません。今回の件は特例として オールドオスマンと協議の上再度仕切りなおしと致しましょう」 「ありがとうごさいます! ミスタ・コルベール」 「やめといたほうがいいんじゃない? 今度召還したら風車が出てくるとかいやよ」 「うるさい、キュルケ!」 いつもの通りの嫌味に腹を立て鉄塔の外に出ようとしたとき、ルイズの体に異変が起きる。 バキバキバキ 「! ルイズ、あんたそれ!」 「へ?」 見ると鉄塔の外に出ている右手と左足が『鉄』に変わっていた。 「きゃああああああああ」 あわてて手と引っ込めると拍子に転んで鉄塔の中に戻る。 手と足は元に戻っていた。 「なによこれ・・・」 「ややや、コレは・・・!」 コルベールが鉄塔に腕を出し入れする。しかし今度は何も起きなかった。 「・・・・・・」 バキバキバキ ルイズが手を出そうとする再び鉄に変わった。 あわてて手を引っ込める。 「・・・信じられないが、どうやらこの鉄塔から出ようとした人間は『錬金』されてしまうようですね」 「そんな! 人間が錬金されるなんて聞いたことありません」 「そうですね、ミス・ヴァリエール。私も聞いたことがありません。建物を使い魔として召還すると言うことも含めてね」 うぐ、とルイズは痛いところを突かれる。 「とにかく、すぐオールドオスマンと相談してまいりますので、本日は皆さんこれで解散。 ミス・ヴァリエールはそのまま残っておくように」 言われなくてもどこかにいけるわけがない。 いったいなんだと言うのだこの使い魔は。 使い魔は主人に有益なものをもたらすのが普通なのに、有益どころかもたらすのは不利益ばかり。 いや、そもそも契約もしてないし使い魔かどうかすら怪しいのだが。 「一体・・・なんだってのよ・・・」 どっと吹き出てきた疲れに身を任せ、ルイズは鉄塔の中で倒れこんだ。 コレが彼女と鉄塔、「スーパーフライ」の出会いであった。
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康一とギーシュが、ヴェストリの広場で決闘を始めていた頃、学院長室ではコルベールが泡を飛ばしてオスマン説明していた。 春の使い魔召喚の際に、ルイズが康一という平民を呼び出したこと。 そして、その康一に刻まれたルーン文字が気になり、それを調べると、『始祖ブリミルの使い魔たち』という文献に、全く同じルーン文字が載っていたことを。 「なるほどのう……」 オスマンは、コルベールが描いた康一のルーン文字のスケッチを見ながら呟き、言葉を続けた。 「して、これは何の使い魔のルーンなんじゃ?」 「それなんですが、ここを見て下さい!」 コルベールは、『始祖ブリミルの使い魔たち』に書かれていた、ルーン文字の項を開いた。 そこには、様々な使い魔に刻まれていたルーン文字が表のようになって載っていた。 その表の中に、康一の手に刻まれたルーン文字と全く同じルーン文字が載っている。 オスマンは、そのルーン文字を見ながら目を見開いた。 「ふむ……。ほほう、これは……」 「もうお分かりかと思いますが、このルーンは何の使い魔のルーンであったか、書かれてないんです!」 オスマンは、長い髭を弄りながら首を傾げた。 「妙じゃのう……。他のルーンは全て名前が記されておるぞ。 ここに書かれている『ガンダールヴ』とかな……。なぜこれだけ記されてないんじゃ?」 何も名前が記されてないルーン文字を指差して質問してくるオスマンに戸惑いながらも、コルベールは質問に答える。 「自分なりに、二つの仮説を立てて見たのですが……」 「ふむ、言ってみなさい」 コルベールは、禿げ上がった頭をハンカチで拭きながら言った。 「まず一つは単純なものでして、単に書き忘れたか、ここの文字だけ剥げてしまったか……です」 「なるほど。して、もう一つは?」 「召喚後すぐに、何らかの原因でその使い魔が死に至ったか……です」 コルベールは、コホン、と咳払いをしてから話を続けた。 「この場合、何の種類で、どんな能力を持っていたのかわからず、名を記すことすら出来なくなりますからね……」 オスマンは瞑っていた目を静かに開くと、悟ったように言った。 「つまり、こういうことか? 『あの平民は未知の能力を持った、未知の使い魔である可能性がある』」 「Exactly(その通りでございます)」 コルベールが頭を下げながら答える。 そんなやり取りが行われてる時、ドアをノックする音が聞こえてきた。 「誰じゃ?」 オスマンがドアの前までいくと、ドアの向こうからロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。 止めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて、止められないようです」 オスマンは、髭が揺れるほど深いため息をついて言った。 「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 『暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はいない』と聞き、 貴方もその一人よ、クソジジィ! と思いながら質問に答えるロングビル。 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 その名前を聞き、やれやれと言った感じで俯くオスマン。 「あの、グラモンとこのバカ息子か。あんな寄生虫なんぞ、放っておきなさい」 「しかし……」 「おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ? どうせマリコルヌのカスあたりじゃろう」 仮にも自分の生徒を、寄生虫だのカスだの酷い男だ……。などと思いながらコルベールは聞き耳を立てている。 「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」 オスマンとコルベールは顔を見合わせた。 「……なんじゃて?」 「ミス・ヴァリエールの使い魔の少年です。教師達が、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可がほしいと……」 オスマンの目が、鷹のように鋭く光った。 「アホか。たかがそんなことの為に、秘法を使えるか。もう一度言うぞ、放っておきなさい」 「……わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマンに質問した。 「オールド・オスマン、まさか……」 「うむ、その『まさか』じゃ。もしかしたら凄いものが見られるかもしれんぞ」 そう言って、オスマンは杖を振った。 壁に掛かった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出される。 「オールド・オスマン! 危険すぎます! 万が一、あのルーンにとてつもない能力が秘められていたら……」 「その時は私が責任を取ろう。私はただ純粋に、どんなものか見てみたいのじゃよ。キミだってそうだろう?」 コルベールは静かに目を瞑り、軽く頷いた。 オスマンは、鏡の前にあった椅子に座り、ギーシュと康一の戦いの様子を静観し始めた。 康一の怒りは頂点に達していた。 目の前いる男、ギーシュは何の関係もないシエスタを傷つけた。 彼女は気絶しただけで済んだが、もし当たり所が悪ければ最悪の事態もありえた。 「よくもシエスタさんを……」 そう言って、康一は怒りの眼差しでギーシュを睨みつける。 一方、ギーシュは突然の乱入者によって完全に動揺していた。 「ぼ、僕のせいじゃない……あ、あんなの予測できるはずがない……!」 ギーシュは、今まで女を泣かしたことは何度もあったが、殴ったりしたことは一度も無かった。 それは、貴族だろうと平民だろうと、美人であろうとブスであろうと例外は無い。 ギーシュにとって、女を殴ったり蹴ったりするのは、この世でもっとも最低の行為であると思っているからだ。 「あ、あれは……あれは不可抗力だ……」 しかし、不可抗力とはいえ、女を殴ってしまった事実は揺ぎ無かった。 康一は、どんどんギーシュに近寄ってくる。 ギーシュの頭の中は、後悔、混乱、恐怖といった感情がぐるぐると交差していた。 「ち、近寄るな……」 ガタガタと震えながら後ずさりするギーシュ。 康一が迫ってくる恐怖に我慢できなくなり、ギーシュの理性が弾けた。 「ぼ、僕のそばに近寄るなああー――ッ!」 鬼でも見たかのような表情で薔薇を振り、ゴーレム達に攻撃を命じる。 一体のゴーレムが康一を攻撃しようとした瞬間、『ドガァァァン』という音と共に、粉々に弾けとんだ。 「あ……ああ……うわぁぁぁああああああー――ッ!!」 二体目、三体目のゴーレムが康一に殴りかかる。 康一が、少し体をずらした次の瞬間、二体目と三体目のゴーレムが『ズバッ』という音と共に、豆腐のように切り裂かれた。 二体のゴーレムは、真っ二つになって地面に転がる。 「く、来るなッ! 来るなッ! 来るなぁぁぁあああああー――ッ!!」 残りのゴーレムで、一斉に康一を攻撃する。 四方を取り囲み、完全に康一の体を捕らえたと思った瞬間、『ドンッ』という音と共に、全てのゴーレムが上空に吹っ飛んだ。 康一の後方で激しい金属音を立てながら、ゴーレムは思い切り地面に体を叩きつけ、バラバラに分解した。 「うぁ……ぁぁああ……」 全てのゴーレムがやられ、無防備になったギーシュを守る者はどこにもいなかった。 ギーシュの頭に絶望の二文字が浮かんだ。 一瞬でゴーレム達を倒したバケモノ、勝てるわけがない……。 そう思いながら、震えていたギーシュの目の前に康一が迫る。 「ひッ! く、来るなッ! 来ないでくれぇぇぇぇええええー――ッ!」 ギーシュは自分の杖である薔薇を投げ捨て、康一から逃げようとする。 しかし、ACT2は既に、ギーシュに『ピタッ』という音を張っており、ギーシュは一歩も動けなかった。 康一は、身動きが取れないギーシュを、鋭い眼差しで睨みつける。 ギーシュは、まるで巨大な鬼か悪魔に見下ろされたような気分になり、全身をガタガタと震わせていた。 「ひぃぃッ! こ、殺さないでくれ……! た、頼む……!」 康一は、命乞いするギーシュを無言でブン殴った。 エコーズではなく、自分自身の拳でギーシュに右ストレートを浴びせていた。 『ピタッ』という音が剥がれ、ギーシュは地面に転がった。 「あが……ぐぐぐ……ぐ……」 「いいかッ! 今のは、シエスタさんを侮辱した分だッ! そしてッ!」 康一は、ギーシュの胸倉を掴んで、さっきよりも強く拳を握り締める。 「これはお前のガラクタに殴られた、シエスタさんの痛みだァー―――――ッ!!」 「うわぁぁぁあああああああああー――――――ッ!!」 康一の渾身を込めた一撃が、ギーシュの顔面ど真ん中にクリーンヒットする。 前歯が一本抜け落ち、ギーシュは顔面を押さえながらもだえている。 康一は、地面を転げまわっているギーシュに馬乗りなった。 「も、もう止めてくれッ! 僕が悪かったッ! 謝るッ! 謝るからもう許してくれぇ……」 情けない声を上げながら、ギーシュは涙を流した。 「僕のことなんてどうでもいい……」 康一は、気絶しているシエスタをチラリと見て言葉を続ける。 「シエスタさんに言った言葉を取り消せ。そしてちゃんと頭を下げて謝るんだッ!」 「わ、分かった……。取り消す! ちゃんと謝るッ! なんでもするッ!」 馬乗りになっていた体勢を解き、康一は立ち上がった。 「本当だな? 嘘をついたら承知しないぞッ!」 「き、貴族の誇りに誓う!」 康一はニヤリと笑って、ギーシュを指差して言った。 「よし、なんでもするって言ったな……。 それじゃあ明日からさっそく……炊事、洗濯、家事の世話を全部やれ!」 「えッ!!」 「フフ……ジョーダン! ほんのジョーダンだって! フフフ……」 ギーシュの肩にポンっと手を置いて、康一はシエスタの所へ向かった。 康一に脅されたギーシュは、涙を流しながら呆けていた。 「……。(じょ、冗談に……き、聞こえなかった……)」 シエスタを抱え、歩き出そうとする康一の元に、ルイズが駆け寄った。 「コーイチ!」 「どうだい、勝ったぞ……。少しは僕のこと見直してくれたかい?」 「ふ、ふんだ。ギーシュが弱かっただけよ!」 突如、康一に重い疲労感が襲った。膝が抜け、力が一気に抜ける。 「そ、そんなことより、治療……」 「ぼ、僕は後回しでいいからさ……シエスタさんのこと……頼むよ……」 抱きかかえていたシエスタをそっと置いて、康一は地面に倒れた。 意識が朦朧とする康一に、ルイズの叫び声が聞こえてくる。 ――そういえば……僕のエコーズACT2は、物理的ダメージはないはずなのに…… どうしてあのゴーレムに対しては爆発させたり、分断させたりできたんだろうか? しかも……今までにない物凄いスピードで……まあ、今は……休みたい……な―― そんな風に思いながら、康一の意識は闇へと沈んだ。 それと同時に、康一のルーン文字の光もふっと消えた。 広瀬康一――気絶。ルイズの治療を受ける。 シエスタ――大した怪我じゃなかったため、この後、すぐに目を覚ました。 ギーシュ――この後、シエスタに謝りに行った。前歯が一本抜けたため、『歯抜け(マヌケ)のギーシュ』というあだ名がついた。 To Be Continued →
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雲ひとつ無い空、まさに快晴と呼べる日だったがルイズの心は暗かった。 トリステイン魔法学院から少し離れた草原に黒いローブをまとったメイジたちと使い魔が集まっている。 照りつける太陽が、彼らと同じ数だけの黒い影を作っていた。その中にルイズもいた。 そう今はサモン・サーヴァントの真っ最中。 学生たちは使い魔が現れるたびに、歓声を上げては好き勝手な感想を言い合っている。 ここまで少々手間取った生徒はいても、完全に失敗した生徒はいない。そしてとうとう最後のルイズの番となった。 「最後が『ゼロ』かよ。帰るの遅くなるなコレ」 「ここ危ねーな。離れとこー」 「召喚を失敗するに…おれの『魂』を賭けるぜ」 「グッド」 みんな好き勝手なことを言っている。ルイズはそんな雑音をかき消すように自分に言い聞かせた。 (大丈夫。私にだってできる。『信頼』するのよ自分を) そう『信頼』だ。人が人を選ぶに当たって最も大切なことは『信頼』すること。 それはメイジと使い魔の関係にも言えることだろう、とルイズは思っている。 (自分を信じることもできないメイジに、使い魔も仕えたくないでしょ) ルイズは杖を握る手をさらに強める。そして眼を閉じ、集中力を高めていく。 これから召喚されるのがドラゴンだろうが吸血鬼だろうが平民だろうがそんなことはどうでもいい。いやよくないか。 まぁいいや。私が呼び出す使い魔を私は信頼する。そして使い魔から信頼されるために私は自分を信じる。 身体の奥底から力が湧いてくるのを感じる!眼を見開く!呪文を叫ぶ! 一瞬の静寂 そして爆発 青空に向かって黒煙が昇っていく。 25回目の爆発によりいつもより大きめにできたクレーターの回りから、いつもより大きめの生徒たちの歓声があがる。 「すげぇぇ!今の爆発逆にすごくね!?」 「使い魔が月までぶっ飛ぶこの衝撃!」 「だ…だめだ…恐ろしい…声が出ない…ビビっちまって…ヒッ…息がッ!ヒッ!」 真っ白に燃え尽きてしまった生徒もいるようだ。 (そう簡単に成功しないのぐらい想定範囲内よ。そう!コーラを飲んだらげっぷが出るっていうくらい想定範囲内じゃ!) ルイズは多少動揺しながらも、まだ熱気を帯びている前方のクレーターを見据える。 これ以上草原をぶっ飛ばし環境破壊をするのもためらわれるので、さっき作ったクレーターの上に狙いを定めて、26回目の挑戦をしようと構える。 「ちょっと。ルイズ。あれクレーターの真ん中、何かあるわよ」 後ろから声をかけられ集中力が途切れてしまう。振り向くとキュルケがクレーターの方を指差している。 何かあるって、あの爆発に巻き込まれたらみんなヤムチャになるだろう。常識で考えて。 そう思いながらもよく見てみると、煙と砂ぼこりでまだよく見えないが確かに『何か』がある。 小さな箱のような……いやでもあれ使い魔じゃないだろ。常識で考えて。 「キュルケ。ちょっと取ってきてよアレ」 「なんで私が」 「熱いし。微熱でしょあんた」 「微熱でも熱いものは熱いのよ!それになんであたしがあなたの言うこと聞かなきゃならないのよ!」 「ちっ」 すでに褐色の肌なんだからもうちょっとぐらい焼けてもいいだろうに。常識で(ry それは箱ではなかった。片手にすっぽりと収まる程度の大きさの長方形の物体。 丸みを帯びたラインや曲線を重ねたような装飾。そして金属特有の鈍い銀色の光沢が不思議な雰囲気をかもしだしていた。 しかしそんなことよりもルイズを驚かせたのは、それを触った時熱さを感じなかったことだ。 今ルイズはクレーターの真ん中にいる。一応立ってはいられるが汗が吹き出るのを感じる。 しかしこの物体は触ってもひんやりと冷たかった。 (ただのガラクタではなさそうね……) 「どうしたんです、ミス・ヴァリエール? サモン・サーヴァントが成功したんなら早く契約をしてください」 コルベールから声をかけられ、ルイズは手元から視線をはずした。太陽の光をその禿頭で嫌がらせのように反射してくる。 「これは成功したといえるんでしょうか?」 ルイズは思わず握っていた奇妙な物体をコルベールに見えるように掲げた。 しかしそれはコルベールの後ろにいる他の生徒たちにも見せつけることになってしまったようだ。 「なんだ!?『ゼロ』のルイズがとうとう成功したみたいだぞ!」 「でもなんだあれ……生き物じゃないじゃん(笑い)そこらへんに落ちてたの拾っただけだろ(笑い)」 「さすがは『ゼロ』のルイズ!俺たちに(ry」 (うるさい。あんたたちには聞いてない) ルイズは多少イラっとしつつ無視することに決めた。 コルベールが禿頭をかきながら答える。 「契約の儀式をしてみれば分かるのではないかね?ルーンが出ればそれが使い魔。出なければたまたまそこに落ちていたガラクタだろう」 言われてみればそうだ。ファーストキスから始まる~と昔の偉い人も言っていた。 (もしこれが使い魔だったらどうしよう。箱って……箱が使い魔なんて聞いたことありません!とか言えばやり直しさせてくれるのかな。 いや、どうせ『この使い魔の儀式は神聖で伝統があるから』とかなんとか言うにきまってるわ。でも箱って……いや箱ではないみたいだけど) どうかルーンが出ませんように。そう祈りながら唇を近づける。 ルーンでました。しかもコルベールも見たことないレアなルーンだって。 (逆に考えるのよルイズ!とりあえず留年は免れた。ルーン出てよかったじゃないって考えるのよ) ルイズがなるべくポジティブに考えようとしているところに、回りから容赦ない嘲笑とヤジが飛ぶ。 「はははははははは!本当にアレが使い魔なんだ!」 一番笑っているのはかぜっぴきのマリコ…リヌ?だ。その少し横でキュルケもニヤニヤしながらこっちを見ている。 「君たち。もう教室に戻るから準備をしなさい」 コルベールがなんとかまとめようとしているがなかなか言うことをきかない。 ルイズは短く嘆息すると使い魔?をいろいろいじくってみる。 インテリジェンスソードなんてのもこの世にあるくらいだ。もしかしたらコレも……あ、動いた。 いじくっているうちに物体の上部分(どっちが上か下かもよく分からないが)が横にスライドされるように動いた。 中には小さな突起物がある。その突起物には穴が開いていて、何かがそこから出てくるように思える。 ただのガラクタであって欲しくない。その一心でルイズはさらに調べてみる。 「君たち!いい加減にしなさい!遠足に来てるんじゃないんですよ!使い魔の儀式と言うのは……」 コルベールがまだ何か言っているがルイズはもはや聞いてない。 なにか空気の漏れてる音がする……それにちょっと臭い……あ、ここ押せる…… 「うわッ」 思わず上げたルイズの声に最初に反応したのはキュルケだった。 「燃えてるじゃない!」 あまりにストレートな感想のとおり、ルイズの手から火が吹きだしている。 「ミス・ヴァリエール!?火の魔法を!?」 続いてコルベールも驚きの声を上げる。単に火に驚いたのか、ゼロのルイズが魔法を使っていることに驚いたのかは分からないが。 もちろん最も驚いていたのはルイズだった。使い魔から急にすごい勢いで火が出てきたのだ。 皆の注目がコルベールから再び自分に集まっているのを感じる。 「この火は私の魔法じゃありません。この使い魔から」……そうルイズが言おうとしたとき、声が聞こえた。 それはルイズの背後から聞こえた。本当に背中の、すぐ後ろに立っているんではないかというような場所から。 まるで洞穴の奥底から聞こえてくるような奇妙なくぐもった声。とても人間のとは思えない感情の感じない声。 ルイズはその声の発した言葉の意味をすぐに理解することはできなかった。 だがこの声は危険だということ感じていた! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………… 「おまえ…………『再点火』したな!」 と べ continued・・・・ ?
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「やめて!!」 ギーシュとドッピオの決闘の間に誰かが割って入りました 「ミス・フランソワーズ、そこをどいてくれないかな?」 ギーシュは一度、ピッと杖を突きつけ言います 「もう勝負は決まったようなものじゃない!続ける必要なんて・・・」 「僕はその平民に誇りを汚されたんだ。だったらそっちが負けを認めるまでこれは続けるさ」 ルイズは一度ドピッオに振り返り 「・・・ドッピオ、負けを認めなさい。これ以上続けたらアンタ死ぬわよ!」 ルイズはそう言いました 「・・ルイズさん?いつから来てたんですか?」 ドッピオは見当違いのことを言います。ドッピオ自身気になっていたからです 「そんなのどうでもいいから!何が目的でやったか知らないけどこんな傷まで負って・・・」 「ルイズさん」 言いくるめようとしたルイズを一言で止めました 「使い魔って言うものがどういう者か最初に説明してくれましたよね」 「確かに説明したけどそれとこれとは・・・」 「使い魔はつねに主を守り、敬愛する者・・・だったら」 ドッピオはギーシュの方を向き 「あだ名だかよく分かりませんけど、ゼロのルイズとか言ってバカにしているような人には・・ッ」 力が入らない足に渇を入れて立ち上がり 「絶対に・・ッ謝らないッ!!!」 その意気に呑まれたのかそれとも感動したのか 「・・・平民の方、頑張れ!」 「ルイズの使い魔!頑張れよ!!」 「ドッピオさん!負けないでください!!」 「ドッピオ?・・ドッピオ!ギーシュなんかに負けるな!」 「「「ドッピオ!ドッピオ!ドッピオ!」」」 周囲から湧き上がるドッピオコール 「え?え?なに?」 ルイズ自身は戸惑っています 「・・よし」 その声援に少々力づけられたドッピオはギーシュを倒そうと歩こうとしますが (駄目だ、力が・・・) たとえ気力が充実したとしても肉体が拒否する。痛みにドッピオは耐えられないのです (ドッピオ) 不意に聞こえる声 (よくここまでやった。可愛い部下がここまでやっているというのに私がやらないわけにはいかん) この声は・・まさか (後は私に任せろ。あの男が気に入らぬのは私も同じなのだ) ドッピオの意識はそこで途切れました 「ドッピオ・・・?」 一番最初に異変に気づいたのはルイズでした 「・・・・・・」 目の前でだんまりしている自分の使い魔が別の何かに・・・最初のときのような人になっていることを 「・・・どうかしたのかな、ドッピオ君。そうまでして立ち上がったのだから僕と戦うのだろう?」 ギーシュはまだ気づいてません。目の前の男がドッピオではなく 「戦いなんかにならないだろうけどね!」 ドッピオにボスと呼ばれた絶頂の能力を持っている人だということを 「キング・クリムゾン」 そう男が呟きました 「ハッ?!」 ギーシュは気がつきました 「あ、あれ?」 さっき確かに召喚したはずのワルキューレがいません 「そ、そんなバカな!」 もう一度召喚しようとしますが 「キング・クリムゾン」 どの呟きに邪魔されてしまうのです 今、ドッピオと呼ばれた人はその人にボスと呼ばれた人に入れ替わっています 名をディアボロ。エピタフとキング・クリムゾンという絶頂の能力を持っている人です 肉体が痛みで動くのを拒否するのをそれを超える精神で肉体を支えています (この程度の痛みッGERで与えられた痛みに比べればまだましだ!) GER、その効果の所為でディアボロは地獄を味わい続けていました 終わりが無いのが終わり、それを救ってくれた少女。それをバカにする周り (我が救いを侮辱するなど許さん!) そう思い、目の前を男に歩みを進めるのでした ギーシュはいくら召喚しようとも召喚できていないことに不安を覚えました 自分が魔法を使えなくなってしまったのではないかと思ってしまうのです 「くっくそ、くそくそくそ!!」 目の前の男がなにをしているのかさえ分かりません ただ自分の魔法をなにかで消している。そう思わないと不安につぶされてしまうのです 「ひっ・・!」 とうとうその男が目の前までに来てしまいました エピタフで未来を予知し、それをキング・クリムゾンで消し飛ばす それが絶頂の能力の正体、最強の守りのことです 攻撃はキング・クリムゾン自体の攻撃です。こういうと些細なものと思われてしまいますがその力も尋常ではありません ディアボロは今、目の前の男が未来になにするか予知してその時を消し飛ばしながら進んでいるのです そして、その男の目の前まで来ました (・・・殺すか?) ディアボロは殺すかどうか考えていました (・・とりあえずこうしとくか) 殺すかどうか以前に目の前の男の杖をへし折りました 「あ・・・僕の杖が!」 「・・・・・・」 決闘はこれで終わりです。その後は、キング・クリムゾンで目の前の男を・・・ 「ストップ!」 殺そうとして止められました。止めたのはルイズです 「・・・なぜだ?」 「え?」 「この男は君をバカにしていただろう。他にも大勢の者が・・・だ」 「・・・そんなの一々気にしてたら仕方無いし魔法をちゃんと使えない私が悪いのよ!」 「・・・そうか」 キング・クリムゾンをしまい・・・目の前の男に近づきます そして一発殴ります 「ギャッ!」 男は変な声を出して地に伏しました 「・・・ぐっ」 男を殴ってから少し経つとディアボロも倒れました 精神が支えていたのですから倒したことで安直するとこちらだって倒れてしまいます 「あ・・・いけない!誰か救護・・・」 ルイズの心配する声も聞こえなくなってきました 「ぐ・・・はあ」 一度、呼吸をしてディアボロは妙な達成感を覚えながら意識を遮断しました 7へ
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爆発の罰として教室を一人で片付けたルイズは昼食を取る為、食堂に居た (最初は全部ディアボロにやらせようとしたが、探しても見つからないので断念した 爆発で吹っ飛んだと気付いたのは掃除が終わった後だ) 隣にはディアボロが居る ある事の為に食堂に来る前に召喚しておいたのだ 「小娘、何だこれは」 「アンタの食事よ」 ディアボロの目の前にはパンにシチューが並んでいる まあ、人並みな食事といってよいだろう、周りに目を向けなければの話だが 周りには比べるのが愚かしくなる程、豪華な料理が所狭しと配されている この差にはあからさまな区別の意図が見て取れた そう、ルイズは食事に託けて、教室を一人で片付けさせられた憂さ晴らしを兼ねて上下関係を教育しようとしているのだ 「このアルヴィーズ食堂で食事出来るだけでも結構大変なことなのよ、他の使い魔たちは全部外で食べてるんだから 感謝しなさいよね、もしどうしてももう少しいいものが食べたいって言うんなら食べさせたあげないことも無いわよ 貴族の使い魔にふさわしい態度を取るって言うんならね、まず呼び方ね、小娘じゃなくって御主人様………」 ルイズの使い魔の在るべき態度についての演説が続く 一方、ディアボロはルイズの話を無視して食べ始めている (もちろん周りの料理にも手を出している) 唐突に隣から聞こえた何かがぶつかる様な音にルイズは振り向いた ディアボロが白目を剥いて泡を吹きながらテーブルに突っ伏している はて、何が起きたのだろうか? ルイズが疑問に思っていると厨房の方から一人のメイドが小走りに此方にやって来た 表情から察するにかなり焦っている様だ 「失礼致します、ミス・ヴァリエール」 「どうしたの?」 「ミス・ヴァリエールが此方に運ぶように仰られましたシチューなのですが、 あれは鼠退治用の毒餌でございまして…」 ああ、そういうことだったのかと納得の表情を浮かべる そして、笑みを浮かべながらメイドに皿を下げる様に告げ、こうも言う 「大丈夫よ、何も問題はないわ」 ■今回のボスの死因 殺鼠剤の入ったシチューを口にして中毒死
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ワルキューレの振り下ろした槍は、ブラック・サバスの後頭部に勢いよくヒットした。 その結果、そのままブラック・サバスは地面とディープキスをする破目になった。 それを見たギーシュはフンッと鼻を鳴らす。すると再びワルキューレが槍を高々と掲げた。 もう4,5発ぐらい喰らわせないと気がすまない。 ドゴォ!ドガ!ボゴォ!メメタァ!ドスゥ!!! 「君がッ!謝るまで!殴るのをやめない!」 徹底的に叩きのめしてやる!それも正々堂々とな! 一応女であるルイズを傷つけるのは、女性に優しいギーシュの評判をさげることになる。 だが、この使い魔なら!殺すつもりはないが、派手にやらせてもらう! それに決闘でなら、例え死んでも文句はあるまい!もし死んじゃっても、もう一度呼び出せばいい訳だしね! 『ゼロ』のルイズでも一度は召喚できたんだ!もう一度召喚するぐらいできるだろ! このまま!!槍の先端を!こいつの!目の中につっこんで!振りぬく! ブラック・サバスが宙を舞い、そして仰向けに倒れる。 「サバス!!」 ルイズはさらに槍を振り下ろさんとしているワルキューレに杖を向ける。 自分の考えが甘かった。なんでブラック・サバスが強いなんて思ったんだろう? ルイズを押さえつけたあのパワーも、きっと自分の勘違いだったんだ。 初めて成功した魔法の結果があいつだったから、きっと特別な力があるって思いたかったんだ。 『ゼロ』の私を押さえつけた私の使い魔は、『ゼロ』よりもほんの少しマシだっただけなんだ。 今さらになって後悔の念が心の中を支配しそうになる。 …………違う!今はそんなことしている場合じゃない!助けないと!私の使い魔を! 自分の魔法は絶対に失敗するかわりに爆発を起こす。効くかは分からないが、助けるにはこれしかない。 しかし、それを阻止するかのように、もう一体のワルキューレがルイズの前に立ちふさがった。 最初にブラック・サバスに突撃してきた奴だ。 ルイズは狙っていたコースを塞がれ、魔法を出すことができない。 「どきなさいよ!」 焦りながらルイズは、ブラック・サバスがまだ無事か確認する。そこで使い魔の様子が変わっていることに気づく。 ブラック・サバスは仰向けに倒れたままで、ルイズを指差し、じっとこちらを見ているのだ。 回りから見たらそれこそ、ルイズに助けを求めている姿にしか見えなかっただろう。 だが、ルイズは頭の中に響く声を聞いた。 それは、使い魔と主は意識を共有しているとか、信頼関係が生まれたとか、そんな大げさなことではなかった。 だが、確かにブラック・サバスはルイズにこう言っていたのだ。 (チャンスをやろう!お前には選ぶべき道がある!) 「とどめだ!ワルキューレ!」 ギーシュが機嫌の良さそうな声で命令を下す。 ルイズは叫んだ。呪文を唱えるように力強い意志を持って。 「ギーシュをやっつけて!!」 観客席で顔を赤らめていたシエスタは、派手な音でブラック・サバスが殴られるのを見て我に返り。 さらに数発槍が振り下ろされたのを見ると、思わず顔を背けた。 あの使い魔は殺される!そんな恐ろしい考えが浮かぶ。 そのとき叫びを聞いた。それは断末魔の叫びではなく、ルイズの命令だった。まだミス・ヴァリエールは諦めていない! だが次の瞬間、今までとは質の違う軽い音が聞こえる。きっと槍で貫かれたにちがいない。 ……恐怖で顔を背けたまま数秒たつが、どうも様子がおかしい。 自分の周りにいるメイジたちがざわめいている。何が起きたのだろうか。 恐る恐る戦いの場へ視線を向ける。 「え……?」 シエスタは絶句するしかなかった。 自分が顔を背けた数秒の間に何が起きたのか? ワルキューレの槍は黒づくめの使い魔にではなく、地面に突き刺さっていた。 さっきまでその場所にひれ伏していたブラック・サバスが消えている。 横にいるキュルケをみると、彼女も何が起きたか把握していないようだ。 タバサはじっとギーシュの方を見つめている。そのとき。 「うわあああああああああああ!!?」 断末魔の叫びのようなその声は、ブラック・サバスではなくギーシュのものだった。 慌てて、シエスタもギーシュの方を見てみる。それは彼女の理解の範疇を超えるものだった。 消えたブラック・サバスがいつの間にかギーシュの横に現れ、そのゴツゴツした両手を彼に向けている。 「つかんだ」 そのセリフはさっきと全く同じものだったが、今度はやけに凄みがあるように感じた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………… ブラック・サバスはギーシュの隣に立ち、両手を彼に向けて伸ばしている。 しかしそれらは決してギーシュには触れられてはいない。 宙ぶらりんのその両手は、しかし、何かを力強く捕らえているかのように固定されていた。 いや………確かに何かをつかんでいる………それは白くボンヤリと闇の中で存在している。 一方のギーシュはピクリとも動かずに、ただ悲鳴をあげているだけだ。 ブラック・サバスの方を見ようともせずに、最後にワルキューレに命令を下した時と同じポーズのまま固まっている。 変化した点といえば、その顔が恐怖で歪んでいることだけだ。 「うわあああああああ!離せ!くそ!」 慌てふためく声を上げながら、硬直しているというギーシュの異様さに、しだいに回りのメイジたちは薄気味悪さを覚え始めていた。 『ゼロ』のルイズの使い魔が「何か」をしているのは間違いなかった。 しかしその「何か」が分からない。 ギーシュはなぜ急に動かなくなったのか?何に怯えているのか?あの使い魔がつかんでいる「ボンヤリとしたもの」は何か? 「な、何をしているんでしょうか?」 シエスタがキュルケに尋ねる。しかしその質問に答えたのはタバサだった。 「分からない。だけど魔法ではない」 めずらしく即答したのは、タバサも興味が湧いているからだ。 「あの…白いのは?」 「それも分からない」 「もしかして幽霊かしら」 キュルケのその言葉にタバサがビクッと震えた。 ルイズはブラック・サバスとギーシュを見て、戦況が一転したことを理解した。 ワルキューレはすべて動きを止めている。これではゴーレムではなく、ただの銅像だ。 あれだけ派手に殴られてたはずなのに、ブラック・サバスには外傷が無いようだ。 仰向けに倒れていたところから、ギーシュの隣……いや影の前までの瞬間移動。 …それだけ早く動けるなら、相手の攻撃を避けるなりなんなりしなさいよね。心配して損したわ。 改めて、今の状況を確認してみる。 そこでやっと、ブラック・サバスがつかんでいる「白いもの」がギーシュの形をしていることに気づいた。 ブラックサバスはギーシュの影から、「ボンヤリと白く光るギーシュ」を引っ張り出してつかんでいる。 まるで夢でも見ているかのような気分だ。だが、ルイズは心当たりがあった。 (あれが……私が今までやられていたことか) 気づいたらブラックサバスの目と鼻の先で捕らえられている感覚。今日の朝も昨日のサモン・サーヴァントのときも。 ブラック・サバスは、ルイズの影から幽体離脱のように魂?いや精神?だけ引っ張り出していたのだろう。 まぁ詳しくは分からない。とにかく今はすることはひとつだ。 このままあいつが抑えてる間にすべてのワルキューレを破壊する。 もちろん、このままギーシュの杖を取り上げて勝ちにするほうが楽だろう。 だがあのプライドの高い男に、この後シエスタに謝罪をさせるにはそれなりの勝ち方じゃないといけない。 それにせっかくだから、回りの観客にも見せ付けておきたい。もう勝ったも同然だし。 しかし、その甘い考えを打ち砕くかのように、ギーシュの叫びが響く。 「ワルキューーーーーレ!!!!」 ギーシュの叫びと共に、沈黙していた7体のワルキューレが活動を再開する。 その動きは滅茶苦茶だった。……本当に滅茶苦茶だった。 しっちゃかめっちゃかに槍で空を斬ったり、ワルキューレ同士でぶつかり合ったりしている。 「ちょ、ちょっと!ギーシュ!」 「うおおおおおおおおおおおおおお!」 ルイズにワルキューレが突っ込んでくる。当たると間違いなく、致命傷になりそうな速度だ。ルイズは杖を強く握った。 「ファイヤーボール!」 炎は出ずにワルキューレの上半身で、爆発が起きる。 さらに追撃しようと身構えるが……その必要はなかった。ワルキューレの上半身は粉々に砕け散っていた。 「やった……!」 予想外の戦果に思わずガッツポーズをしてしまう。そのとき。 「ファイヤーボール!」 聞き覚えのある声のした方を見ると、キュルケの前でワルキューレが上半身をドロドロに溶かして倒れている。 「キュルケ!余計な事しないで!」 「私は私の身を守っただけよ。余計な事させたくないなら、そういう風に戦いなさい。ホ~ラ、来るわよ」 「言われなくても分かってるわよ!」 ルイズは再び杖を強く握り、ワルキューレを睨む。こうなったら意地でも全部倒してやる! そんな決意を固めるルイズを、キュルケは微笑を浮かべながら見つめていた。 ………そしてそんな二人を、この人たち実は仲いいのかしら。なんて思いながらシエスタは見つめていた。 「な、なんだぁ!それはぁ!」 いきなり、今までで一番大きいギーシュの悲鳴が上がる。 見るとブラックサバスが大きな口を開いている。 (安心しなさい。ギーシュ。そいつは噛み付きはしないわよ) ルイズは笑いながら杖を構える。 だがブラックサバスはルイズの予想外の行動にでた。 口から何かを吐き出したのだ。 ギーシュは何が起きているのか理解できずにいた。 「つかんだ!」という声のとおり、ギーシュはこの不気味な使い魔に拘束されている。全く動くことができない。 自分の肩を掴むその両手からは恐ろしいほどのパワーを感じる。とにかく指一本動かすことができない。 ワルキューレに命令するも、これもやはり思いどうりに動かすことができなかった。 というか、今ワルキューレがどこでどう動いているかが理解できない。 見て確認したいのに、使い魔の仮面のような顔から視線をそらす事ができないのだ。 急に使い魔が大きな口を開ける。その中を見てさらに驚いてしまう。 歯や舌という生物として必要なものが無いかわりに、「何か」がある! そしてそう思った次の瞬間ソレがこちらに向かって飛び出してきたのだ! 「!!」 とっさに目を閉じ衝撃に耐えようとする。しかし何も起きない。後ろから「ドガッ」という衝撃音が聞こえる。 恐る恐る目を開ける。まだ口は開かれたままだ。その中は何もない暗闇。 思わず目をそらそうと横を向く。すると視界の端に誰かの足が見える。 助けに来てくれた!もはや決闘のことなど忘れギーシュは安堵する。 しかしその誰かの足はピクリとも動かない。 (誰なんだ!助けてくれ!は!声がでない!) ギーシュは無理矢理首を捻り、ギリギリまで黒目を動かし自分の後ろにいる人物を確認しようとする。 (ん?あれ?なんだおかしいぞ?後ろのやつ倒れてる!?しかも顔から血を流して!? はっ!!なるほど!!うわははははははははははははははははは倒れてるのは僕でしたぁー!!) ギーシュは自分の後ろに、頭から血を流し下着に囲まれて倒れている自分を発見した。 ルイズはブラックサバスの口から何か箱のようなものが飛び出すのを見た。 自分のいる位置からではそれが何かは分からなかったが、それは発光体ギーシュの頭を通過した。 そして、その後ろでフリーズしていたギーシュ(本体)の頭に向かって飛んでいき、当たって跳ねた。 そこから先に起きたことは、ルイズにはスローモーションのように。 血を出しながらゆっくりと倒れていくギーシュ(本体)、宙を舞う箱、その箱の中から出てくる無数の白いモノ。 上手いこと風に乗った一枚がヒラヒラと自分の足元に舞い降りてきたとき、それが何かを理解した。 それはパンツだった。 (はぁ???) なんでパンツ?誰のパンツ?…………あれ?このパンツどこかで見た覚えが…………。 今はワルキューレを倒すべき時なのに、気になる……。こまかいことが気になると夜もねむれねえ質なのよ私。 朝、ブラック・サバスにカゴごと洗濯物を渡した。ブラック・サバスはそれを口の中に入れてどこかへ行ってしまった。 それ以来姿を見ていなかった。そして今あいつは口からカゴを吐き出した。 なぜか?そういえばさっきブラック・サバスにギーシュをやっつけろって命令した。これは攻撃手段のつもりだったのかもしれない。 実際今、ギーシュ(本体)は倒れている。さっき血を流していたようにも見えた。軽傷だろうが。 それよりも、鬼の形相をしながら下着に囲まれて倒れていることで、傷つく尊厳の方が重症のような気がする。 観客の方を見てみる。キュルケがパンツを持ち、こっちを見て笑っている。……コッチミンナ。アア、ヤジウマタチノホウマデトンデイッタノネ。 いろいろ考えた結果。 ……………………もしかしてこれは私のパンツですかーッ!? YES!YES!YES!OH MY GOD! 「……………………バカァー!!!!」 その日一番の破壊をもたらす爆発がブラックサバスとギーシュを飲み込んだ。 ギーシュ・ド・グラモン→再起不能 ブラック・サバス→消滅 To Be Continued 。。。。?
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「魔法…って!ジョ、ジョルノさん、いえジョルノ様って貴族の方だったんですか!? そうとは知らず無礼な真似をして申し訳ございませんっ。」 「いや、貴族であるかないかと聞かれたら僕は貴族ではありません。 説明しにくいのですがこれは魔法ではなく……」 どう理解できるように説明すればいいか考えているとさらなる訪問者が。 「朝から騒がしいわよ、あなた達。」 部屋を覗き込んだトカゲの風貌をしたモンスターを従えるその女はキュルケという名。どうやら彼女にも僕のG・Eは見えていないようだ。 ではこの生物はどう説明できる?スタンドでは無いとすると…しかし大柄なトカゲと言い切るには尻尾の先に灯る炎が余計だ。 絵本や漫画で見るようなファンタジックなモンスターが目の前にいる。 G・Eで確認すると確かに生物としての器官や骨格を持っていることが分かる。 どうにもスタンド能力としては説明できない結果。 「へぇ、改めて見るけどなかなか整った顔をしてるわねぇ、貴方。」 なんだこの女。僕の嫌いなタイプだ。 「で・も。やっぱりアタシのフレイムの方がよっぽど使い魔として使えそうよね。 平民の使い魔なんかで役に立つことなんてあるのかしら?身の回りのお世話 意・外・に。 まぁルイズにはお似合いだけど。」 やはりこのトカゲは彼女達に“見えて”いる。 「何よ、ジョルノには物を生きも…もがもが」 ふぅ、あぶない。すんでのところで口を塞ぐことが出来た。 スタンド能力を不特定多数に知られるということは弱点を作ることに繋がる。 「ご主人様に向かって何をしてるのよ、この、馬鹿犬!」 「痛ッ!」 容赦なく向う脛を蹴り飛ばされる。酷い女だ。 「へぇ、ジョルノって言うんだ。またね、ジョルノ。」 「は、はぁ…」 キュルケという女はそのまま階段の方へと向かっていったようだ。 朝食、の時間か。そういえば昨日から何も食べていないな。 故郷ネアポリスに帰ってピッツァが食べたいな……シンプルなマルガリータを… 「あ、仕事に遅れちゃいますのでこれで失礼します、では。」 シエスタも続けて去っていった。 「ッ!何をしているんだ君はッ!?」 「何って着替えよ、着替え。あなたが着替えさせてくれないから仕方なく自分で着替えてるんでしょう。」 問題はそこじゃない、僕は一応男なんだ。その目の前でいきなり裸になる女性がいるかッ? 「別に使い魔に見られたって何も恥ずかしくは無いわ。」 ああもうッ!こいつと話していると神経が磨り減る。 バタンッと扉を閉めて廊下に出て待ってみたが、別に待つ必要も無いことに気づいたので勝手にあちこちを見て回ることにした。 G・Eを出現させたまま廊下で人とすれ違ってみるがやはり何の反応も無い。 拳を顔の前で寸止めさせても不自然な瞬きさえしない。 やはり…スタンド能力として片付けられないものなのだろうか。 ふと上着の中に何か物体の感触があることに気づく。 そうだ、携帯電話を持っていたんだった。 その方面に仕事を持つファミリー員から送られた、試作機ではあるがGPSによる位置情報確認も出来る代物だ。 最近公的利用に向けた衛星を使ったサービスの実用化が進められているという話。 そのテスターとして作られたこの携帯ならば、今いる場所がどこなのか容易に分かるはずだ。 「…おかしいな、地図のどこにも表示されないぞ…?」 ひょっとしたら電波が不安定なのかもしれない。 中庭に出てみれば少しはマシになるか? ここに来て幾度と聞いた使い魔、魔法、貴族といったふざけた単語。 そのせいでスタンドとスタンド使いの概念を他所へ一時保管して置かざるを得なかった僕の頭。 多数生まれたあらゆる疑問は中庭に出て一瞬で吹き飛んだ。 ようやく上り始めた太陽と空に淡く残る月。 この目は異常を来たしていない筈だが月は確かに二つに見える。 携帯の画面にはやはり自分の現在地は表示されていない。 ともすれば。 僕は、紛れもなく異世界に迷い込んだ訳だ。 使い魔、魔法、貴族。 その言葉は新興宗教故に拾ってきた言葉ではない。 この“世界”に在るべくしてある言葉だったのだ。 「何を空なんて見上げているのよ。珍しいものでも無いでしょうに。」 いつのまにか傍にルイズが到着していた。 ───── ────────── ──────────────────── 「ふ~ん。月が一つで、貴族と平民という概念が無ければ魔法さえ存在しない世界、ね… 面白い作り話ね。小説にすればどこかの偏屈な人間なら買っていってくれるんじゃない?」 まぁ想像通りの返答か。いや仕方ないさ、逆に彼女が一人で僕の世界に迷い込んでしまったとしたら、 誰も彼女の言う話など本気にする訳が無い。 「大体ね。あなた、あんな凄い魔法が使えるじゃない。何故隠そうとするのか理解できないけど。 でもあなたの世界には魔法なんて存在しないなんて言っておきながらいきなり矛盾してるじゃない。」 ここでルイズにスタンドの詳細を教えた方がいいのだろうか。 いや、ここが異世界であるとしても敵がいないという訳ではない。 スタンド使いだけが脅威ではない。使い魔と呼ばれるモンスター達を見れば分かる。 そしてスタンド能力を魔法と呼ばれた、ということはスタンド能力に近い何か、がこの世界にはある。 そう考えればここは黙っていた方がいいだろう。 「それにしてもさっきの魔法、一体どの系統に属するのかしら。 召喚……とはまた違った感じよね。物質自体が変化してたんだから。それにしても謎よね…」 「そんなことよりも。何故僕は床の上で食事しなければならないのです?」 「あなたは貴族じゃないから。 魔法が使える=貴族って訳じゃないし、それに自分でもそう言っていたでしょう? 平民が貴族と一緒に椅子に座って食事するなんてあり得ないことよ。 あなたは私の使い魔だから特別に床の上で食べさせてあげてるの。それが嫌なら──」 指差す方向は中庭。見れば使い魔達が揃って餌を食べている。 僕はアレと同類、ッて訳ね…… 「はぁ…大体、使い魔の能力の凄さは主人の能力の凄さってことの証明になるのに…… なんで隠したがるのかしら…ブツブツ…… むしろ無理やりにでもさっさと披露しちゃうのがいいわね…ブツブツ……」 となんだか厄介な事を言い出したが、ここは無視しておこう。
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深夜 ドッピオはルイズから渡されたカードを使っていろいろと不思議に見せるための特訓をしていました ちなみに渡されたカードはトランプでした。案外この世界に流れ着いているこちらのものはあるようです カードの扱いに慣れてきたところでもう眠気がきたので寝床に就こうとしますが コッ・・・コッ・・・ 物音が聞こえます。これは足音でしょうか コッ・・・コッ・・・・・・・・・ ルイズの部屋の前で足音は止まりました ・・・こんな深夜に誰かと思いドッピオはドアを開きました 「・・・あれ?」 そこには誰もいませんでした。確かに足音は聞こえていたはずですが・・・ 「あの」 「うひゃい?!」 突然左から話しかけられました。そこにいたのは 「・・・どちら様でしょうか」 「あの・・・アンリエッタと申しますが・・・貴方がルイズの使い魔ですか?」 「はい、そうですけど・・・ルイズさんに用ですか?」 「はい・・・」 よく見ると服装も学院生とは違う服装です 「・・・ルイズさん。起きて下さい」 ユサユサとルイズを起こします 「・・・なによ。こんな時間に・・・」 寝ぼけ眼で起き上がるルイズですが 「・・・?!」 アンリエッタを見た瞬間とても驚いた顔をします 「・・・ルイズさん?」 「す、すいません!このような無礼な格好で・・・」 いきなりあわただしくするルイズを見てドッピオは (・・・もしかしてアンリエッタさんは偉い人なんですか?) 小声でルイズに聞きます。帰ってきた返答は (当たり前じゃない!トリステイン王国の王女・・いや、今は女王になった方よ!) そう返されました 「早く部屋へお入りください。この様なところにいたと知られれば・・・」 そう言ってルイズはアンリエッタを手招きしました 「そうですね。でもそんな言葉遣いなんてしなくていいですよルイズ ―――私たち、友達でしょう?」 友達という言葉に一瞬気を取られそうになったルイズですが 「いえ、たとえ幼少時の遊び相手である私でも失礼に値するような言葉遣いなんて・・・」 そう言って自制しました 「・・・ところで」 アンリエッタの視線はドッピオに流れました 「これが貴女の使い魔ですか・・・」 その言葉にルイズは 「あ、あのえっと・・こ、こんな平民でもとても強くて―――」 「分かっています。なの土くれのフーケを倒したのでしょう?」 「え?」 ルイズはなぜ知っていると言う顔でした 「王家から守れと言われている破壊の杖を学院は秘密裏に取り戻したつもりだったんでしょうが そんな一大事が発生したら王家からの諜報が働きます。活躍も聞きましたよ、ルイズ」 「そ、そんな・・殆どこの使い魔が倒したようなものですし・・・」 ルイズはしどろもどろになりながらそう答えました 「・・・明日の品評会。楽しみにしていますよ」 「はい!」 そう言ってアンリエッタは戻っていきました ドッピオは結局何も喋らずじまいで女王さまを見送りました 「・・・女王様と知り合いだったんですね」 「ええ・・・」 ドッピオはアンリエッタが品評会を楽しみにしていると言うことを聞いて 「もしかして見に来ちゃったりしますか?」 そういうことかと思って聞いてみました 「そうよ・・・だから絶対ドジ踏んだりとかしちゃダメよ」 ようするにルイズはいいところを友人に見せたいのです 「それにしても驚いたわ。まさか前日にたずねてくるなんて」 「案外行動力のあるお姫様なんですね」 「そうね・・・子供のころはいっつも私が連れまわしてあげてたんだけどね・・・」 遠い昔を見つめるように窓から空を見上げているルイズ 「・・・絶対に失敗は出来ないな」 少しでも友人にいいところを見せたいと願う主人に愛らしさを覚えながらも明日の品評会に熱意を燃やすドッピオでした 14へ
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戦国BASARAシリーズより黒田官兵衛を召喚 第一章 召喚。不運の軍師、異世界へのいざない 暗の使い魔 プロローグ 暗の使い魔 第一話『異世界』 暗の使い魔 第二話『魔法学院外の決闘』 暗の使い魔 第三話『トリステイン魔法学院』 暗の使い魔 第四話『ゼロのルイズ』 暗の使い魔 第五話『ヴェストリ広場の戦い』 暗の使い魔 第六話『微熱のキュルケ』 暗の使い魔 第七話『魔剣とゴーレム』 暗の使い魔 第八話『ルイズの誇り』 暗の使い魔 第九話『メイド奪還戦』 暗の使い魔 第十話『モット伯邸の戦い』 暗の使い魔 第十一話『盗賊追討戦』 暗の使い魔 第十二話『動き出す物語』 第二章 繚乱!乱世より吹き荒れる風 暗の使い魔 第十三話『異国の男』 暗の使い魔 第十四話『アンリエッタ現る』 暗の使い魔 第十五話『ワルド』 暗の使い魔 第十六話『青銅新鋭戦』 暗の使い魔 第十七話『亀裂』 暗の使い魔 第十八話『ユグドラシルの攻防』 暗の使い魔 第十九話『白の国を目指せ』 暗の使い魔 第二十話『激震』 暗の使い魔 第二十一話『ニューカッスルの夜』 暗の使い魔 第二十二話『仮面の下』 暗の使い魔 第二十三話『羽虫』