約 42,572 件
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/156.html
第15回トーナメント:準決勝② No.7525 【スタンド名】 ウォームハンド・コールドハート 【本体】 イェルズェラ・ムラージョ 【能力】 スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする オリスタ図鑑 No.7525 No.7117 【スタンド名】 サンバ・テンペラード 【本体】 リリス・クド・カラオストロ 【能力】 人ひとり程度、ぶら下げて飛ぶことができる オリスタ図鑑 No.7117 ウォームハンド・コールドハート vs サンバ・テンペラード 【STAGE:廃村】◆C4zT4u8GVA イェルズラがほぼ「拉致」に近い形で次の会場に召集されたのは、一回戦を終えた20時間後であった。 杉人が事前に手配していたというホテルについたのが対戦終了から30分後。すぐ近くにあったそれだ。 彼女は無論断ったが、こちらもほぼ「拉致」に近い形で収容されたのだ。 豪華な部屋に放り込まれて、母国語で杉人のことをひとしきり罵ってから、疲れがどっと出てすぐに眠った。 そして、目が覚めたら霧の深い荒野に立たされていた。 いや、荒野……? 少しだけ建物の跡が残っているが、いずれも骨組みだけで人が住んでいるとはとても思えない。 そして、霧が発生しているというのに地面は異様に固く乾いている。 「ここは昔、大規模な坑殺があった土地なんです」 声がして、後ろを振り返るとそこにはパーカーを着こんだ少年が立っていた。 「……」 「そして、80年前まで村がありましたが、見ての通り今では滅んでいます」 「まあうちが定期的にこっちでの取引とか「処理」で使ってるから建物とかも手入れしてるんですけどね」 イェルズラは身構え、押し黙るが少年は続ける。 「……ああ、聞かなくて良いですよ。僕が立会人です。そして――」 「それ以上前に進まない方がいい」 霧が少し晴れ、そして見えてきた風景にゾッとし、坑殺という意味を理解した。 深く、そして大きな地割れ。その眼前には平均台ほどの太さしかない足場が、5mほど先の足場に二つ、伸びていた。 そこに立たされていたのが、イェルズラと対戦相手であった。 「なっ!!?」 思わず声を挙げた。そして無闇に歩を進めることをしなかった軽率ではない自分に感謝した。 そして、右側に目をやると、自分の背丈と同じくらいの大きさの裂け目で隔てられた地点に、彼女はいた。 リリス・クド・カラオストロ。 ヨーロッパの小さな公国の、カラオストロ公の城に住まう正真正銘の姫であるのだが、 その姫が今は両腕の先端に包帯が巻かれ、痛々しい傷跡が残るのみ。 服はドレスだろうか? だがあまりにみすぼらしい。 あちこちビリビリに破れ、そういうダメージ系ファッションなのかと思うほど、ぼろぼろだ。 「それでは始めます――」 「ちょっと待てそこのお前。彼女は――」 見て分かるくらい、明らかに再起不能であった。 スタンドを出せるかどうかさえ分からないほど憔悴しきっているのはイェルズラにも一目でわかったし、 自分が目を覚ますより以前にいたパーカーの少年にそれが理解できないわけがない。 「何ですか? この状況でルールを理解できないと?」 「先に向こう岸まで渡った方が勝ちですよ。スタンドを駆使して相手を落としても勝ち。シンプルでしょう」 「あそこの彼女にも説明はしたのか?」 イェルズラのこの言葉に、少年は少し黙って、意外そうに答えた。 「何で? この勝負は始まる前からあなたの勝利って決まってるのに」 「…………」 イェルズラはこの少年に付いて何も知らない。 だがこの少年からは杉人とは似て非なる邪悪さがにじみ出ている。 「……始めないなら、強制的に開始させるとしようか」 そう言って、少年は指を鳴らした。 すると物音がほとんどしないこのひたひたとゆっくりとした足音が響く。 「!!? いやああ?!!」 イェルズラはもちろん、リリスも反射的に後ろを振り向くが、リリスの場合はその光景に震撼した。 全身が腐敗し、不思議な色のガスが肩から噴き出していたが、それでもその顔はまだ残っており、 そしてリリスはその顔を知っていた。 「彼女は賀苅緋紋(ががり ひあや) 彼女の一回戦の相手ですよ」 少年はイェルズラが聞いてもいないのに語り出した。 「賀苅さんはほぼ不慮の事故で、追いつめていた彼女によって命を落とした」 「時計塔の歯車に全身を砕かれて死んでいました。と言っても、回収しに行ってから20分生きていましたけどね」 「……罪悪感でも煽っているのか」 「おや、話に乗ってくれるんですか? まあもう勝負は決まってますからねえ」 リリスは、やはりその顔を見て恐慌した。 そして歩き出そうとして転び、右の足首を物言わぬ緋紋に掴まれた。 無論、死体なのでスタンドは出ない。だが、その腐食した掌から腐食はリリスの足首に伝わってくる。 「いや いやいやいやいやあああああ」 痛みはやはり感じない。だがハンカチをくしゃくしゃにするように筋肉も皮膚も、骨すらも萎縮していき そして千切れ、血さえ出なかった。 「い゙」 叫び過ぎた。そして泣き過ぎた。最早声は出ない。 奇しくもリリスは、緋紋が体勢を崩したように倒れ込む。 今度は頭から。まず助からない。そう考えた。そして考えるのをやめようとした。 そして空中に投げだされた。 「勝負ありですね。あなたにも僕の『腐食ゾンビ』は差し向けていたのに」 「まさか本当に渡らずに勝つなんて。正直驚き」 イェルズラは少年の言葉を最後まで聞かず、『腐食ゾンビ』と化した緋紋に掛け寄り、左手を振り上げる。 右手の出力は人体を発火させられるほど。 つまり、左手は周囲の霧を凍結させられるほどの出力を秘めている。 「直接触れるのは不味いことくらい分かっている。だがッ」 イェルズラは集中した。まず何に集中するかというと『ウォームハンド・コールドハート』の左手に氷の刃を纏わせること。 そして第二に、持てる精密性全てを切開に回す。 「ムラムラムラムラムラ――」 腐敗している緋紋の、水疱が出来ている箇所のみを切開し、血を噴き出させる。 「ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラァ!!!! そしてぇッ」 膿交じりの血を瞬時に凍結させ、それをロープのようにつなぐ。 そのスピードゆえに間にあってはいないが、それでも裂け目に飛び込むことに躊躇はなかった。 左手で不揃いな血のロープを掴んで、飛び出した。 落下中の過程であってもロープは拡大していた。周囲の霧によって少しずつ。 落下している過程で、イェルズラがリリスに追いつくのにほんの数秒しかかからなかった。 「それにしてもこの裂け目。何mあるんだ? 谷底の間違いじゃあ」 そんなことをイェルズラは思ったが、声には出ていない。 と言うかすでに感覚がおかしくなって、まだ1秒すら経っていないのではないかと彼女は思えてきた。 「手を伸ばせッ スタンドを出せお前のッ!」 ロープと化した血と霧を、イェルズラはリリスに伸ばす。 だが、伸びきったところで血は突然爆ぜた。 そしてリリスの顔に掛かり、そのまま落ちて行く彼女を見送った。 能力の、左手の反動だ。 周囲の霧を凍結させるほど強い冷気は、右手にもそれ相応の強い熱気をもたらしたのだ。 イェルズラのスタンド、『ウォームハンド・コールドハート』の精密性はそんなに高くない。 集中しなければさきほどの血でロープを形成するなんてこともできないから、 だから熱が迸り、凍ったロープを溶かした。 そして自分も落ち―――――― 「全く、死なれちゃあ困るんですよ。この勝負は最初から勝敗が決まってるんだから」 少年が発現した人型スタンドは、イェルズラの眼前に突然現れ、その細い体を掴み上げ、谷の上に放り投げた。 今わの際に見えた1回戦で見えたあの女の人の幻影は、きっと自分の罪を著したものなのだろう。 これはきっと断罪だ。 リリスはそれを悟っていた。 先ほど顔にかかった血に入っていた膿には、微量だが『腐食ゾンビ』の腐食能力が宿っていた。 顔が痛みなく腐り始めているのを、右目が「なくなる」ことで認識した。 恐らく、頭が固い地面とキスをしても、痛みなどほとんどないのだろう。 「…………セバスチェン。ごめんなさい」 血の花が咲き、脳漿が腐臭と共に爆ぜ、岩肌にこびりついた。 「さっきいった賀苅さんはうちの構成員なんですよ。彼女は一国の姫君だけどうちが本気を出せば潰せない事もない小国」 「うちを、ディザスターを敵に回すことの怖さを彼女の母国も身を以て知るで――」 気が付いたら、イェルズラの右手は少年の胸を貫いていた。 少年のスタンドは破壊力こそ高いが遠隔操作型ゆえに能力のしわ寄せはスピード面に出て来ている。 つまり少年を護るものはいない。あまりに無防備だが、彼には絶対に攻撃などされないという自信はあった。 「……は、話聞いてました? ディザスターを敵にまわ……」 貫いた胸は焼き潰れ、瞬時に少年の命を刈り取った。 「…………ムラディアス(さようなら)」 ★★★ 勝者 ★★★ No.7525 【スタンド名】 ウォームハンド・コールドハート 【本体】 イェルズェラ・ムラージョ 【能力】 スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする オリスタ図鑑 No.7525 < 第15回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/155.html
第15回トーナメント:準決勝① No.7520 【スタンド名】 ロード・トリッピン 【本体】 デズモンド・ウォーカー 【能力】 触れた箇所を『滑走路』にする オリスタ図鑑 No.7520 No.7384 【スタンド名】 アモルフィス 【本体】 ソドム・メタトロン 【能力】 『非生物』だけを溶かす オリスタ図鑑 No.7384 ロード・トリッピン vs アモルフィス 【STAGE:廃村】◆pFj/lgiXE. イラク戦争。 2003年、イラクが大量破壊兵器を保有していることを理由に、アメリカ・イギリス軍がイラクを攻撃、そのままイラクのフセイン政権を崩壊させた出来事である。 イラクへの攻撃を指揮したジョージ・W・ブッシュがホワイトハウスを去り、バラク・オバマによってアメリカ軍がイラクから全面撤退した現在でも、国連決議を待たずに攻撃したことや、後の調査で大量破壊兵器は見つからなかったことから、この戦争について、国際的に疑問の声があげられている。 アメリカ・イギリスがイラクを攻撃した理由として、当時のフセイン政権が9・11テロを起こしたテロ組織「アルカイダ」の指導者であったオサマ・ビンラディンに兵器の提供を行っていたからであるとか、アメリカとイギリス両政府が中東の石油利権の独占を目論んでいたからとか、色々な説がある。 デズモンド・ウォーカーとソドム・メタトロンはあの戦争が行われた理由なんて知らないし、大量破壊兵器が本当にあったのか、あったとすればどのようなものだったのかなんて分かるはずがない。 だが、彼らはトーナメント二回戦において、イラク戦争が蒔き散らした火種に出会うこととなる。 4月某日。 ウォーカーとソドムは、イラクのある村の真ん中に立っていた。かつて村人が暮らしていたであろうその村は、イラク戦争の際に欧米軍によって蹂躙され、今は瓦礫と小石と砂利しかない廃村と化していた。 二人はトーナメントの運営側が用意したヘリに乗ってトーナメントの試合開催地に向かう際に上空から村を見ていたが、空からでは村の様子は分からない。 地に足を着けて見ることで、村が先の戦争で廃れてしまったことを二人は知った。 「酷いもんだな…。これがあの戦争の爪痕か。この村には多くの人達が日々の生活を送っていただろうに…。その村人達の生活をめちゃくちゃにして、あんたらの国の正義とやらは果たされたのかい?」 ソドムはウォーカーを横目で見ながら訊いた。ウォーカーは「さあな」と答えた。 「俺は海軍だから、あの時の戦争に召集されてない。あの戦争に駆り出されたのは空軍や陸軍の連中だからな。空軍や陸軍があの戦争の時、ここで何をしたかなんて分からないし、イラクの国民が報道の裏でどんな仕打ちをされたかなんて知りようが無い」 「そして、あの戦争の始まった理由である『イラクに隠された大量破壊兵器』がどこにあったのかも『分からない』か?」 「それについては、あんただって同じだろう」 「………」 「そもそも、その大量破壊兵器が本当にあったのかどうかは誰にもわからないし、その言いだしっぺである奴も病気でくたばった。あの時のアメリカ大統領であるジョージ・W・ブッシュも戦争終結を宣言して、数年後にホワイトハウスから出て行った。真相は闇の中へ葬り去られた」 「そして、大量破壊兵器は見つからないまま、現アメリカ大統領のバラク・オバマによって、欧米軍は全軍撤退。今も中東地域は混乱に陥っている。果たして、あの戦争は誰のための戦争だったんだろうな?」 ソドムは皮肉交じりにそう言った。ウォーカーは何も答えることが出来ない。 と、その時、ヘリの操縦席から黒いパイロットスーツを着た人間が降りて、二人の下へ歩いてきた。 操縦士は二人を見ながら手を叩いた。 「ハイハ #65374;イ! お二人はもうとっくの昔に終わった戦争について論議をするためにここへ来たんじゃあないですよね #65374;? トーナメント戦を勝ち抜くために来たんでしょ #65374;?」 その鈴の鳴るような声から、操縦士は女性だと二人は思った。操縦士はパイロットスーツの上から身体を掻き毟る。 「う #65374;ん、それにしても中東地域はやっぱり暑いですね #65374;! 黒いパイロットスーツを上に着たのが間違いでしたよ #65374;!」 操縦士は二人の前でパイロットスーツを脱ぎだした。パイロットスーツの下には、緑色のバニースーツを着たうら若き女性が隠れていた。 バニーガールは二人の前で一礼した。 「では、改めましてこんにちは。今回トーナメント二回戦の立会人を担当させていただきます『アマンダ・ラルーゼ』といいます。よろしくお願いいたします」 「ほぉ、二回戦の立会人はこの地域に似つかわしくないバニーガールか。運営側もサービス旺盛だな」 「正直、目のやり場に困る」 ウォーカーとソドムがそう言うと、アマンダは微笑みを浮かべると、試合についての説明をした。 「さて、試合の内容についてですが、ずばり、時間無制限の一本勝負! 相手を倒すか降参させた方がトーナメント決勝戦に進出できます!」 「ほぉ、今回の試合は簡単なんだな。てっきり『しっぽ鬼』のようなルールなのかと思ったが」 ウォーカーは一回戦の内容を思い出しながらアマンダに訊くと、彼女は笑顔で答えた。 「はい。スタンド使い同士の戦いは、やっぱり一対一のタイマン勝負が王道でしょう? やたらとルールが複雑だったり、勝利条件の難易度が高い試合では、出場者もげんなりしてしまうでしょうから」 「ならば良い。私は一回戦の際に冷凍庫の中で戦わされたからな。こういう普通の戦いの方がシンプルでやりやすい。それでは、早く始めるとしようか」 ソドムはウォーカーの方に目を向けて言った。ウォーカーは首を縦に振った。 「そうだな。俺だってこのトーナメントで勝ちぬいて、自分の名を上げたい。あんただってそうだろう?」 「フッ、その通りだ。だから…」 「「早めに貴様を倒させてもらうッ!!」」 二人がそう同時に言うと、二人の背後からスタンドが現れる。 ジャンボ旅客機を模した人型スタンド『ロード・トリッピン』、本体はデズモンド・ウォーカー。 巨大な蛇の姿をしたスタンド『アモルフィス』、本体はソドム・メタトロン。 両者が戦闘態勢になったのを見て、バニーガールが手を振り上げる。 「それでは、第二回戦、はじめッ!!」 二人のスタンドがまさに激突しようとしたその時である。ウォーカーは背後からただならぬ気配を感じた。 (ッ!? 背後から気配を感じるぞ…、しかも殺意をあらわにしているッ!) ウォーカーは瞬時にその殺意を秘めた者が、自身の背後にある大きな瓦礫にいることを察知した。 彼は自分のスタンドに命令する。 「ロード・トリッピン! 俺の背後に滑走路を作れッ!!」 ロード・トリッピンはウォーカーの背後の地面に滑走路を作った。ウォーカーはその滑走路の上に自分を滑らせた。 ソドムとアマンダはウォーカーの奇妙な行動に驚いた。 「ッ!? 貴様、何をしているんだ!?」 「ウォーカーさん、もしかしてこの暑さで頭をやられちゃいましたかッ!?」 二人の声をよそに、ウォーカーは滑走路を滑って勢い良く加速すると、その勢いのまま瓦礫の陰に隠れていた者の腹部を蹴飛ばした。 瓦礫の陰に隠れていた者は、飛んできたウォーカーの蹴りをまともにくらい、その場で倒れこんだ。 ソドムとアマンダは、瓦礫の陰に隠れていた何者かが、ウォーカーの攻撃を受けて倒れたのを見て、納得した。 「成程、自分の後ろにある瓦礫に隠れていた者を攻撃したというわけか」 「トーナメント運営は、ここは人一人いない廃村と聞いていたのに、まさか人がまだいたなんて…」 二人はウォーカーの近くに近寄ると、ウォーカーと共に倒れこんでいる者の顔を見た。 ウォーカーの前に倒れているのは、あどけなさの残る幼い少女だった。少女は左側の顔をネジを打ちつけた鉄板で覆い隠しており、鉄板の下から見える肌は痛々しい火傷の痕が残っている。 ウォーカーはまだ少女が気絶していないのを確認すると、少女にこう訊いた。 「まだ焼けていない箇所の肌の色から考えるに、お前はこの国の住民だな? 何故、今俺を背後から襲おうとした?」 「………」 少女は口をつぐんだまま答えない。ウォーカーは続けて少女に質問をする。 「お前はこの村の住民の生き残りか? 見たところまだ幼いようだが、親はいるのか?」 「………」 少女は口をつぐんだまま答えない。ウォーカーはさらに続けて少女に質問をする。 「俺がお前に狙われた理由…。それは、2003年のイラク戦争が理由か?」 「ッ!!!!」 今まで口をつぐんでいた少女は、今のウォーカーの質問を聞いて、再び殺意を露わにした。 その瞬間、少女の背後から、一つ目の大型ロボットのヴィジョンが現れた。大型ロボットの左腕は、回転式のガトリングガンとなっている。 少女がスタンドを出したことに、ソドムとアマンダは驚愕した。 「なッ!? まさかこの少女ッ!!」 「スタンド使いだったんですかッ!?」 ウォーカーは「なるほど、それがお前のスタンドか」と冷静な口調で言った。 少女はロボットに命令する。 「『クイックサンド』、そのアメリカ人を、側にいる二人ごとハチの巣にしろッ!!」 クイックサンドという名のスタンドは、右手で地面の砂を掬った。すると、その砂はスタンドの掌の上で、ガトリング用の銃弾へと変わった。 クイックサンドはその銃弾を左手のガトリングガンに装填し、その銃口をウォーカー達三人に向けた。 「いかんッ、攻撃されるぞ!」 「まかせろッ!」 ソドムは自身のスタンドであるアモルフィスに命令する。 「アモルフィス、敵スタンドの銃口目掛けて液を吐け!!」 アモルフィスはクイックサンドのガトリングガンの銃口に向かって液を大量に吐いた。 と同時に、クイックサンドのガトリングガンが回転する。 少女は、クイックサンドのガトリングガンで三人は全身穴だらけになって死ぬと思っていた。 が、ガトリングガンの銃口から発射された銃弾は、アモルフィスの吐いた液体によって全て溶かされてしまった。 「そ、そんな…、わたしのクイックサンドの銃弾を、全部溶かしちゃうなんて…」 「悪いが、アモルフィスの吐く液体は『生物以外を溶かす』んだ。だから、スタンドの銃弾も必ず溶かす。残念だったな」 ソドムが少女にそう言うと、続けてウォーカーが言った。 「さて、まだ戦う気か、お嬢さん?」 「……くそぉッ!!」 少女はその場から逃げだそうとするが、 「逃がさないッ!!」 ソドムのアモルフィスが少女の身体に巻きつき、身動きをとれなくする。 少女はもがくも、蛇のヴィジョンは少女の身体にガッチリと巻きついて、その幼い体を締め上げる。 「ぐぅ…!!」 少女は呻き声を漏らした。 ウォーカーはソドムのスタンドが少女を締め付けている光景を見ながら、アマンダに言った。 「なぁ、これはあんたらトーナメント運営が用意した仕掛けか?」 「いえいえ、とんでもない!! 第三者がお二人の戦いに横槍を入れるなんて、そんな仕掛けは私達は用意してません!!」 「なら、あの少女は一体何なんだ? 見たところ、俺達を狙っていたようにしか見えないが?」 「さぁ…。とりあえず、あの女の子に訊いてみましょうか?」 アマンダはソドムに対して「そろそろ、その女の子を締め付けるのは止めたらどうですか?」と言った。 ソドムは「そうだな」と答え、自身のスタンドを解除した。少女は束縛から解放され、その場で尻もちをついた。 ウォーカーは少女に近づいて、こう訊いた。 「おい。お前は見たところまだ年端もいかない子供のようだが、お前はいったい何者だ? なぜ俺達の戦いに割り込んだ? なぜ俺達を攻撃しようとした?」 少女はウォーカーの質問に答えた。 「……わたしの名前は『サラサ・ラサ』 あの戦争で、あんたらアメリカ軍がめちゃくちゃにしたこの村の住人よ!」 サラサはそう言うと、自分の過去を語り始めた。 「…イラク戦争が起こったあの時、わたしはまだ1歳だった。わたしは仲の良いお父さんとお母さんといっしょに過ごし、幸せな生活を送っていた。もしこのまま何もなければ、わたしはお父さんやお母さんや村の人たちと、このまま平穏な生活を過ごせていたのかもしれない…。でも、あの日を境に、全ては変わってしまった!!」 サラサという名の少女が言う『あの日』とは、3月17日のことだなとウォーカーは思った。 アメリカ・イギリス両軍が先制攻撃の空爆を行った後、当時の大統領であるジョージ・W・ブッシュは、『サダム・フセイン大統領とその家族が48時間以内に国外退去をすること』を命じ、全面攻撃の最後通牒を行った。 サダム・フセインはブッシュ宛に『アメリカ政府がフセイン政権の交代を求めなければ、あらゆる要求に完全に協力する』との手紙を送ったが、ブッシュはその手紙の受け取りを完全に拒否し、3月20日に予告通りアメリカ・イギリス両軍は『イラクの自由作戦』と称し、イラクの侵攻を始めた。 戦争は、小規模の兵力でありながら、ハイテク兵器の投入をしたアメリカ・イギリス軍が圧倒的に勝ち進み、5月1日に『戦闘終結宣言』がされ、形式的にイラク戦争はアメリカ・イギリス軍の完全勝利で終わった。 だが、ジョージ・W・ブッシュは気づいていなかった。 たとえイラクとの戦争に勝利し、フセイン政権を潰したとしても、イラク戦争が蒔いた火種は、後の時代において燃え盛る業火と化すであろうことを。 (その火種が成長した業火は、今俺達の目の前にいる) ウォーカーはそう感じながら、ソドム、アマンダと共に、サラサの話を黙って聞いた。 「わたしが1歳だった頃、村はアメリカ軍とイラク軍の戦争に巻き込まれた。村は『敗走したイラク軍の兵士達を匿っている』との理由で、アメリカ軍の侵攻を受けた。 家は焼き払われ、村の人達はフセイン政権の支持者とみなされて、酷いことをされて、わたしも左の顔半分に酷い火傷を負った。 お父さんとお母さんはアメリカ軍の連中に殺されて、わたしは一人ぼっちになった。 わたしは叔父さんの家へ引き取られたけど、年月が経つにつれ、わたしの住んでた村やお父さんとお母さんを奪ったアメリカ軍の奴らへの憎しみは膨れ上がっていった。 あの時、あのチンピラジジィがイラク攻撃を指揮しなければ、あの時、アメリカ軍の奴らが村にやってこなければ、わたしは幸せに暮らせたのに…!!」 サラサの言う『チンピラジジィ』というのは、あの時自分達の国の大統領だったジョージ・W・ブッシュのことだなと思いながら、ウォーカーはサラサに訊いた。 「お前のそのスタンドは、アメリカに対する憎しみがきっかけで発現したものか?」 「そうよ。わたしの相棒『クイックサンド』は、わたしのアメリカ軍に対する憎しみを栄養にしたせいか、あんなに大きくなった。だから―――」 サラサは自身のスタンドをもう一度発現させた。 「わたしはクイックサンドを使って、お前達に復讐するんだぁッ!!」 クイックサンドは右手で地面の砂利を集めて、ガトリング用の銃弾に変えようとした。 「アモルフィス!」 ソドムはアモルフィスを発現させ「液体をサラサのスタンドの周りに巻き散らせ!!」と命令した。 アモルフィスは口から液体を吐き、クイックサンドの周囲にまき散らした。 クイックサンドの周りにあった小石や砂利は、直射日光によってドロドロになったチョコレートのように溶解した。 サラサはフンと鼻で笑う。 「クイックサンドの周りにある砂を溶かして、ガトリングガンの銃弾を作らせないようにしようってんでしょッ! でも場所を移動すればッ!!」 サラサはクイックサンドと共に液体がまき散らされた場所から、後方へと三歩移動した。その時である。 「ッ!? こ、これは…!!」 サラサが移動した場所が、乾燥した大地から、コンクリートで舗装された滑走路へと変化していく。 自分の立っている場所が変わっていく様を見て、サラサはさっき軍人らしき男が自分の腹部を蹴飛ばしたことを思い出した。 サラサはどうやって軍人があの距離で自分に向かって飛び蹴りを喰らわせたのか、理解できなかった。しかし、今ならば理解できる。 「まさか、さっきの蹴りって…!!」 「そう。『地面に滑走路を作る』 それが俺のスタンド『ロード・トリッピン』の能力だ。お前があの男のスタンドに気を取られてる間、お前が移動しそうな場所に俺のスタンドが触れた」 ウォーカーはさらに説明を続ける。 「スタンドの滑走路を滑った物体は、そのまま加速して移動する。さっき俺がお前を蹴飛ばすことが出来た理由はそれだ。滑走路は長ければ長いほどより加速する。今お前が立っている滑走路の長さは約20メートルってところか」 「…だ、だけど、ようは滑らなければいい話でしょ? こんな滑走路、すぐに移動して…」 サラサが滑走路を移動しようとした瞬間、「移動はさせない」とソドムが言った。 ソドムのスタンドである蛇は、サラサに向かって液体を勢いよく吐いた。 サラサは自分に向かってくる液体を見て、「あの液体をまともに浴びたら、自分は溶けて死んでしまう」と思い、思わず後ずさりするが、バランスを崩した。 それが、彼女の敗北の引き金を引いた。 サラサの敗因は、ソドムのスタンド『アモルフィス』の能力が『生物以外の物質を溶かす液体を吐く能力』であることを知らなかったこと。 そして、自分より強いスタンド使いと戦っていなかったことの二つだった。 「あ、あああ、ああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」 サラサの身体は滑走路を勢いよく滑り、地平の彼方へと飛んでいった。 アメリカ軍への憎しみを抱いた少女を対戦相手と共に撃退したウォーカーは、一回戦で自分が倒したスタンド使いの少女のことを思い出した。 (一回戦で対戦相手の少女の希望を踏みにじり、二回戦ではアメリカ軍に憎しみを抱いた少女を対戦相手と共に打ち破った…、二回続けて幼い少女を倒すとは、後味が悪すぎるな) 一回戦で敗退したあの少女は、今ごろどうしているだろうか? 地平の彼方へと飛んでいった少女は、無事生きているだろうか? このトーナメントが終わったら、自分はあの少女達に殺されるかもしれない。 だが、ここで試合を放棄するわけにはいかない。イラク戦争で大勢の人間に侮蔑の眼差しを向けられながらも発展を続けてきた祖国のように、自分は勝利への道を外れるわけにはいかないのだ。 ウォーカーは第三者の撃退に協力した対戦相手のソドムに目を向けた。 「横やりを入れる奴もいなくなったようだし、そろそろ試合の続きをするか?」 ソドムは首を縦に振った。 「ああ。スタンドの能力は割れてしまったが、逆にいえば相手のスタンドの対策を取ることも出来る。あの少女が割り込んできたのは、お互いにとって正解だったかもしれないな」 「フッ、そうかもな。じゃあ…はじめるか」 ウォーカーとソドムが再び戦闘態勢に入ったのを見て、すっかり置いてけぼりとなってしまったアマンダは、慌てて気を取り直した。 「で、では試合を続行いたします!! 試合開始!!」 アマンダの声と共に、ウォーカーはロード・トリッピンに命令する。 「ロード・トリッピン、滑走路を作れ!!」 ロード・トリッピンはウォーカーの立っている地面を殴った。殴られた地面はたちまち滑走路に変わった。 「そのまま滑走路を滑って、私に飛び蹴りを食らわすつもりかッ! だが、甘いぞ!!」 ソドムはアモルフィスに「あの滑走路に液体を吐け!」と命令した。アモルフィスはサラサに向かって液体を吐いた時と同じように、ロード・トリッピンの作った滑走路に向かって、液体を水鉄砲のように噴射した。 滑走路は、生物以外の物質を溶かす液体によって溶解する。 だが、ソドムのスタンドがそうすることをウォーカーは想定していた。 滑走路が完全に溶ける直前、ウォーカーはソドムに向かって全速力で駆け、その勢いでソドムの身体にタックルをかけた。 ソドムは思わず胃液を吐いて、あおむけに倒れた。 「か、滑走路は単なるブラフだったのか…、滑走路を使ってあの少女に飛び蹴りをしたように、同じ手を使うだろうと私に思い込ませるために…」 「その通りだ。二度も同じ手を使うほど、俺は馬鹿じゃあない」 ウォーカーの言葉を聞きながら、ソドムは立ち上がる。 「さ、流石はアメリカ合衆国の軍人…。だが、私はここで負けるわけには…いかないのだ!」 ソドムはウォーカーに向かって叫んだ。 ソドムは自分の婚約者を殺した者を探し出すために、その犯人が所属している『ディザスター』という組織に入った。 このトーナメント戦で優勝し、ディザスター内での信頼を勝ち取れば、潜伏がやりやすくなる。 そして、愛する彼女を惨たらしく殺した犯人を、隙を作らずに倒すことが出来る。 そのためにも、ここで負けるわけにはいかない。ソドムはアモルフィスに命じる。 「アモルフィス、そいつを噛めッ!!」 ウォーカーの後方からアモルフィスが接近し、ウォーカーを噛みつこうと、その口を開けた。 が、アモルフィスの身体に、ロード・トリッピンの拳がめり込んだ。 ソドムは口から赤い血を吐いた。 ウォーカーはアモルフィスを殴ったロード・トリッピンを背に、ソドムの目を見た。 「お前もあの少女達と同じように、色々と背負っているんだろう…。だが、俺は希望も、復讐心も、ありとあらゆる思いを叩き潰して突き進む! 『栄光なる勝利』への道をッ!!」 ロード・トリッピンは叫び声を上げながらアモルフィスに拳の連打を浴びせる。 『ローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーード・トリッピーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!』 ロード・トリッピンの拳の雨を食らったアモルフィスは消滅し、ソドムはその場で気絶した。 アマンダは「勝負あり!」と声を上げた。 「おめでとうございます! ウォーカー様は二回戦に勝利したことにより、決勝戦へと進出することが出来ました!!」 アマンダの言葉に対し、ウォーカーは「どうも」と返した。 「ところで、負けたこの男はどうするんだ?」 「あぁ、ソドム様ですか。ソドム様は残念ながら、トーナメント運営が用意した病院に入院することになりますね」 「そうか。戦いに横槍を入れたあのサラサという少女はどうする?」 「あぁ、あの子についてですか…。あの子は決勝戦でまた横槍を入れてくるかもしれませんね」 「そうだな。あの少女が狙っているのは、アメリカ軍人である俺だからな。その可能性が高いだろう」 「ですねぇ…。とりあえず、あの子については運営側に頼みこんで、ブラックリストに入れることにします」 「ありがたい」 ウォーカーはアマンダにそう返事をした。 ウォーカーは思った。 ついに決勝戦に進出となった。このトーナメント戦で優勝するために、三人の希望を打ち砕いてきた。 それは、他国の民衆の人生を踏みにじりながら繁栄を続けてきた祖国とよく似ている。 おそらく自分は決勝戦でも、対戦相手の望みを打ち砕くのだろう。 だが、良心が疼くからといって、今までの自分の歩みを止めることはできない。 賽は投げられた。 自分は輝く勝利への道を歩み続ける。 友人であるアルベルト・シラードが目にすることが出来なかった『トーナメントの優勝』と言う名の頂を目にするまで。 ウォーカーはそう思いながら、決意を新たにした。 ★★★ 勝者 ★★★ No.7520 【スタンド名】 ロード・トリッピン 【本体】 デズモンド・ウォーカー 【能力】 触れた箇所を『滑走路』にする オリスタ図鑑 No.7520 < 第15回:準決勝② > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/25.html
第02回トーナメント:準決勝① No.4343 【スタンド名】 バッド・バード・ラグ 【本体】 煤架 耶樹(ススカ ヤギ) 【能力】 楔を打ち込んだモノを真っ二つに割る オリスタ図鑑 No.4343 No.3409 【スタンド名】 ゴースト&ダークネス 【本体】 グリシア・ハーミット 【能力】 食欲も増幅させる二丁拳銃 オリスタ図鑑 No.3409 バッド・バード・ラグ vs ゴースト&ダークネス 【STAGE:大聖堂】◆aqlrDxpX0s 真夜中の大聖堂の中は柱の燭台に灯りがともされ、月明かりを受けた大きなステンドグラスが色鮮やかに照らされている。 大聖堂の中で『グリシア・ハーミット』は立ち止まったまま、ステンドグラスの上に飾られた十字の紋章を見上げていた。 グリシア(……"因果"なものだ。) ――――15世紀 イギリス。 小さな島国のはずれの小さな村に、魔法のような不思議な力で洪水から村を守ったという女性がいた。 彼女はその不思議な力を持っていることに驕らず、人柄も良かったため村人からの信頼と尊敬を集めていた。 平和な毎日が続いていた彼女のもとにある日、教会からの手紙が届いた。 内容を見て彼女は驚いた。彼女が民衆を邪悪な力で惑わし、教会に仇なす魔女だとみなされて裁判を受ける事になってしまったのだ。 当時、欧州では「魔女狩り」が流行っており、裁判をするといってもほぼ確実に有罪とされ即日に処刑されてしまう。 もちろん彼女には悪意などない。しかしこれは彼女の人望が教会への信仰を上回り、力を失う事を恐れた教会による策略だった。 彼女は当然、この裁判を拒むつもりだった。しかしもし拒否したらどうなるか。この報せは村人達にもじきに届くだろう。 彼らはおそらく教会よりも私のことを信じてくれるのだろう。だとしたら、彼らは私を守ろうと教会に抵抗しようとするかもしれない。 そしてそうなったら………魔女に加担した者達だとして、村ごと教会につぶされてしまう……。 彼女は村人に黙ったまま、教会で裁判を受ける事を決意した。 村から遠く離れた、ただっ広い荒地に建つ小屋に、まだ幼い我が子を置いて彼女は教会へ向かった……。 この日、小さな農村に住んでいた女性が教会の司祭により魔女と認定され、処刑された。 罪人の名は『グレイシア・ハミルトン』。 この女性こそが、社会から関わりを断った『ハーミット(隠者)』と呼ばれる魔女の一族のはじまりだった……。 大聖堂の十字架を睨みグリシアは思った。 ――――まさか、ここに来る事になるとは。 教会に虐げられたの者の末裔が、教会を訪れる。 ……それも、"命を賭けた戦いのために"。 これは偶然なのか。それは彼女自身にも、誰にもわからない。 その男は自分のことをよく知らなかった。 記憶喪失なのか何なのかはわからないが、一番古い記憶でさえ自分が16の時に今の仕事に就いたときのことであるという始末だ。 彼は木を伐採する仕事をしているが、それは自分のスタンド能力にもっとも適しているからであって、 伐採の仕事をしているからこの能力が身についたわけではなかった。 自分がなぜこんなスタンド能力を持つようになったのか。 しかし彼にはそんなことはどうでもよかった。 彼にとって大事な事は未来の事で、過去に執着する気はなかった。 このトーナメントに参加したのも、単なる好奇心と力試しのためである……。 夜露で濡れた草を踏みしめて煤架耶樹(ススカ ヤギ)は戦いの舞台へ向けてまっすぐ歩いていた。 草原のど真ん中にそびえ立つ大聖堂は満月の光を受けて淡く光っているようだった。 その神秘的な様子が耶樹にはかえって不気味に思えた。 しかし、ここで引き返すわけにはいかない。過去を振り返らないのと同じく、尻尾を巻いて逃げる事も彼はしたくなかった。 耶樹が大聖堂に入ったとき、中にはだれもいなかった。 祭壇の前にいたはずのグリシアも、すでに身をどこかに隠していた。 耶樹「ほぉー……」 耶樹は広い大聖堂を見渡して感嘆の声を上げた。 体育館ほどの広さの大聖堂には、祭壇に向けて二列に並べられた多くのベンチのほかにも、 コンサートホールのように2階部分にも祭壇にむけて多くの席があった。 何か教会の特別な儀式があるときには、この2階まで参拝者でいっぱいになるのだろう。 一階のベンチの間に敷かれた赤いカーペットの真ん中で耶樹は周囲を見渡していた。 美しい大聖堂の中をもっとよく眺めようと思ったわけではない。耶樹はすでに臨戦態勢に入っていた。 まだ大聖堂の中で敵の姿を見たわけではなかったが、もしかしたらすでに中に入っていて、自分の隙をつこうとどこかに潜んでいるかもしれない……。 自分の勘がそう言っていた。 そして…… パァン! 静かな大聖堂の中に乾いた銃声が響いた。 耶樹「こっちかッ!」 耶樹は銃声に即座に反応し、音のした方向を向く。 放たれた銃弾は……『バッド・バード・ラグ』が指で挟んで持っていた『くさび』によって二つに『割れて』、耶樹の体には当たらなかった。 耶樹が銃弾の放たれた二階の座席の方を見たときには、かすかにグリシアの姿は見えたものの、グリシアはすぐに身を隠してしまった。 グリシア(即座に銃弾に対応するスピードと精密性……不意をつかなければ攻撃は不可能……) グリシアは身を屈めたまま足音をたてずに移動する。 闇に生きる彼女にとって、気配を消して歩く事など造作もないことだった。 一階にいた耶樹からは二階は見上げる形になり、グリシアが身を屈めただけで姿を見失ってしまった。 耶樹「ッチ、どこいったんや……。」 耶樹はそばに立っていた大理石の石像のカゲに身を隠し、二階を見上げた。 耶樹から見える範囲にはグリシアの姿は見られなかったが…… パァン! 耶樹「!?」 パラパラ…… 銃声の響いたあと、耶樹の目の前で白い粉が降り落ちるのが見えた。 耶樹「あ、あかん!!」バッ ドドォン!! 耶樹が即座に石像のそばから離れると、銃弾に打ち抜かれた石像が自分の背後に倒れた。 耶樹「あぶなぁ……」 耶樹はすぐに別の石像のカゲに隠れた。しかし…… パァン! 耶樹「またかッ!!」 ズズゥン…… またも耶樹のそばの石像が壊されてしまう。 耶樹(これはやばい……やばいな。俺がヤツを見つける前にヤツは俺をおびきだそうとしよる。 ヤツはおそらく銃がスタンド能力。遠距離では勝ち目はない!) 耶樹は再び隣に立つ石像のカゲに隠れる。 パァン! ガラガラ…… 耶樹「くそッ!」 耶樹はまた石像を壊され、隣の石像のカゲに身を移す。 耶樹はもはやグリシアの姿を探す事さえままならなかった。 耶樹(しかも身を隠す場所にも限りがある。このままじゃやられてまう……!) パァン! ドドォン…… 耶樹「クッ……!」バッ 耶樹は祭壇横にある教壇に身を隠した。 耶樹(そろそろ……覚悟決めなあかんな……。) 二階でグリシアは姿をゆっくりと現し、銃口を教壇に向けた。 グリシアから耶樹の姿は見えなかったが、教壇に隠れているのはわかっていた。そこへいくように石像を壊し、誘導したからだ。 そこへ耶樹を誘導したのは大聖堂の入り口から耶樹を遠ざけて、耶樹が逃げるのを防ぐため。 そして、『教壇へ隠れさせ、攻撃を確実に当てるため』だった。 勝ちを確信しても、グリシアの表情は一切変わらなかった。 彼女にとって、勝利は何の意味も持たないからだ。 たったひとりで生きる魔女にとって、勝利の喜びなどというものは必要のないものだ。 パ ァ ン ! 彼女の銃から銃弾が放たれる。 弾道は教壇に向けてまっすぐのびていき、『木製の教壇』を突き破った。 耶樹「ぐああああーーーーーーーッッ!!!!!!」 大聖堂の中に耶樹の断末魔が響き渡る。 教壇のカゲから耶樹の腕がハタリと倒れるのが見えた。 グリシアは二階からそれをじっと見つめた。 耶樹の手はピクピクと少し動いた後、ピタリと動かなくなった。 ……銃弾が確実に当たったことをグリシアは確信した。 グリシア「…………」 グリシアは銃を下ろし、一度大聖堂を出て室外の階段から1階へ下りた。 再び大聖堂の中へ入り、教壇へ近づく。 中央のカーペットからも教壇のカゲから倒れて見えた耶樹の腕が動かずにいたままだった。 もしかしたら、まだ生きているかもしれない。そう思い、トドメを刺そうとグリシアは教壇のカゲへまわり、銃を構えた――――。 グリシア「………………!!」 グリシアが教壇のカゲを見たとき、そこに耶樹の姿はなかった。 耶樹は、『自らの腕をそこに残したまま姿を消した』。 耶樹「……やっと、つかまえたで。」 グリシア「…………!」 背後から耶樹の声が聞こえ、グリシアは振り返った。 するとそこには、外から壁をくさびで裂いて中へ入ってきた耶樹の姿があった。右腕は刃物で切られたかのようにスッパリ落とされている。 耶樹「よう見てみィ……教壇の中を。」 グリシアが教壇の中を見ると、床部分に大きな『裂け目』ができていた。薄暗い大聖堂の教壇の中はさらに暗く、グリシアは裂け目に気づけなかった。 耶樹「『バッド・バード・ラグ』……あんたが銃を撃つ前に俺は、床をくさびで割ってそこに身を隠した。 銃を撃ったあと、俺は右腕を切り落とした。俺が叫んだのは銃弾をくらったからやない、自分で腕を切り落とした痛みからや。 そいで俺はさも撃たれたかのように教壇のカゲから右腕を置き、くさびで地面を掘り進んで外へでた。 あとは……あんたが近づいてくるのを待つだけや。」 グリシア「……………ッ!」 耶樹「さあ……『バッド・バード・ラグ』の射程距離内やで……!」 パァン! パァン! パァン! グリシアは右手に持った銃を耶樹に向け連射した。 キィン!キィン!キィン! 耶樹「あかん、あかんで……至近距離でもあんたの銃は俺にはきかへん。」 耶樹は『バッド・バード・ラグ』に銃弾をくさびではじかせながらグリシアに近づき…… 耶樹「オオラッ!!」 グリシアの腹を蹴り上げ、ふっ飛ばした。 グリシア「…………ゴフッ!」 歴戦の魔女とはいえ、体は華奢な女性である。耶樹のキックはグリシアに相当のダメージを与えた。 耶樹「……女をいじめるのはシュミやないが……だからといって殺されるわけにはいかん。 さっきは左腕一本で銃弾を防ぎながらやったからな、追撃はできんかった。……だが!」 耶樹は教壇のそばに落ちていた自分の右腕を拾い上げた。 グリシアはうつぶせになって苦しみ、立ち上がれないでいた。 耶樹「これが……くさびのもうひとつの奥義や。『バッド・バード・ラグ』!」 耶樹は切られた右手を自らの右腕の断面に当てた。 B・B・R「オオオオオオオオオオッッ!!!」 『バッド・バード・ラグ』……耶樹は自らの右腕を『くさびで割って』千切れさせた。 そして、くさびで割ったものは、能力を解除すれば元通りにすることができる……。 そのつもりで耶樹が右腕をくっつけようとしたとき、耶樹はその右腕にある違和感を抱く。 耶樹「なんやコレ。腕に………『穴』?」 グリシア「……………」 ドドドドドドドドドドド…… グリシアは戦いにおいては常に冷静で、あらゆる事象に即座に対応できる思考力と判断力を持っていた。 耶樹が教壇のカゲでまさか床を掘って隠れるとは当然グリシアには予想できなかった。 グリシアは耶樹の右腕に釣られ、教壇に近づいてしまった。 敵のワナにかかったグリシアだったが、即座に頭を切り替えて瞬時に思考する。 敵は右腕を落として姿を隠した。だが、右腕を残す必要はあったのだろうか? たしかに、自分を釣るには有効な手段だったが、攻撃を逃れるだけなら、姿を隠すだけなら右腕を切り落とす必要はないはずだ。 自分を釣るためとはいえ……『リスクが高すぎる』。 だがもし……そのリスクがなかったら?『腕をもとどおり治す』ことができる上での作戦だったら? それを瞬時に思考し、耶樹が向かってくる前にグリシアが取った行動は……! 耶樹「この穴、まさか銃痕…………!!『バッド・バード・ラグ』、戻すのは待て!何かイヤな予感がする!!」 耶樹が不吉な予感を感じ取る前に、耶樹の右腕は『元通りにくっついた』。 そして……『ゴースト&ダークネス』の銃弾を受けた右腕が、耶樹と一体化した…………!! 耶樹「う……お、お、おおおおお!!何だッ……『食い』……てェ……ッ!!?」 耶樹は、カーペットの上に崩れた石像の破片が散らかっているところに飛びつき、両手に破片を持って口へ運び出した。 耶樹「おぐッ!オゴェッ!!がグッ!ぐえぇえっ!!」 『ゴースト&ダークネス』の能力により、耶樹は欲望に逆らえず石を食いはじめた。 耶樹は目に涙をうかべ、咳をしながら石像の破片を口に入れていく。口の中を切って血が出ても、食うのを止める事はできなかった。 耶樹「がうッ!ゴベッ!おグアッ!グッ……!」 耶樹(なにやってんだ……やめねえと……やめねえと……!!) グリシアはゆっくりと立ち上がり、座り込んで石を食い続けている耶樹に近づいていく。今度こそ……トドメをさすために。 耶樹「おおっ、おおっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 そのとき、耶樹が握っていたのは石ではなく、『バッド・バード・ラグ』のくさび。 耶樹はくさびを自分のふとももに振り下ろし、突き刺した。 耶樹「ググ………グ…………」 耶樹の動きが止まった。今度は能力を発動せず、ただ、くさびを突き刺した。痛みで自分を律する為に。 耶樹「ハァーッ……ハァーッ……ハァーッ……ハァーッ……」 グリシア「……………………」 耶樹「耐え……たで。」 耶樹は近づいてきたグリシアを見上げ、その顔を見た。 耶樹「あんた………なんて………」 グリシア「ッ!」チャッ グリシアは銃を耶樹に向けて、引き金を引いた。 耶樹「あかんて。」 ドズッ!! 耶樹は『バッド・バード・ラグ』の左手のくさびで銃弾をはじき、右手のくさびでグリシアの左胸を突いた。 グリシア「…………」 バタッ グリシアは左胸をおさえてうつぶせに倒れた。 『ゴースト&ダークネス』の能力が解除された耶樹は立ち上がり、口の血をぬぐって倒れたグリシアを見下ろした。 耶樹「あんた………なんて悲しい目をしとるんや。……今すぐにでも死にたいと思ってる人間の目や。」 グリシア「…………!!」 そして耶樹は大聖堂の扉へと振り向き、ゆっくりと歩き始めた。 立ち上がることのできないグリシアは力を振り絞って身を起こし、耶樹の背中を見上げた。 銃を一発、撃つだけの力は残っていた。しかし、グリシアは耶樹を撃とうとはしなかった。できなかった。 これまでの戦いで……耶樹だけが『自分の気持ちに気づいてくれた』人間だった。 グリシアはこれまでの生涯でずっと……消えてなくなりたかったのだ。 薄れゆく意識のなか、グリシアは自分の出生を思いかえした。 『グリシア・ハーミット』はこの少女の名前ではない。一族の末裔が継ぐ名前が『グリシア・ハーミット』なのだ。 この名前は一族の始祖『グレイシア・ハミルトン』を変えたものだ。 何世紀にもわたって引き継がれてきた"魔女"『グリシア・ハーミット』は、ずっと石造りの地下室で暮らしてきた。 一生のほとんどを地下室の中ですごし、戦いのときだけ外へ出る。 誰とも……関わらずに。 少女が物心ついたとき、そばには母がいた。 『グリシア・ハーミット』は自分の娘がひとりで生きられるようになるまで育つと、娘に『グリシア・ハーミット』の名を継がせて姿を消す。 そして、その娘にまた娘が生まれると、一定の年齢まで育てて、『グリシア・ハーミット』の名を継がせる……。 『グリシア・ハーミット』はそうやって何世紀にも渡って生き継がれてきた。 少女の母も……すぐにどこかへ消えていった。 少女はずっと不思議に思っていた。何故だろう、母も私と同じ『グリシア・ハーミット』だったはずだ。 他の人間と関わりを断った人間なのに、どうして『私』を産むことができたのだろうか。 『グリシア・ハーミット』はだれとも関わらないはずだ。『戦いのとき以外は』……… グリシア(…………!) そのとき、耶樹の背中を見つめるグリシアの冷たい目つきが少しだけゆるんだ。 グリシア(ああ……そうだ。そうだったのだな。) 少女は気づいた。『グリシア・ハーミット』は戦いの中で出会ったのだ。……『自分を理解してくれた男』に。 …………今の自分のように。 生涯の伴侶と出会った『グリシア・ハーミット』は、魔女の汚名を娘に着せ、孤独の地下室に残していったのだ。 これが……一族の伝統だったのだ。 忌まわしき魔女『グリシア・ハーミット』は、引き継がれし名前ではなく、後代に『押し付けられた』名前だったのだ。 しかし少女の胸中にはそんな先代への怒りよりも、大きな喜びを感じていた。 グリシア(ああ……『グリシア・ハーミット』には、幸せになる権利があったんだ……。) このとき、少女には生涯背負っていたみじめな気持ちはなくなっていた。はなれゆく耶樹の背中を見つめる少女の表情にも冷たさは見られなかった。 最期に私の心の内を見抜いたあなたに出会えてよかった。 わたしはもう死ぬけれど、幸せだ。 『グリシア・ハーミット』はわたしで終わりにしよう。 もう、誰にも狭い部屋の中に閉じこもるような生活をしてもらいたくはない。 そう……魔女なんてどこにもいないのだから。 グリシア「…………さようなら。」 耶樹が大聖堂の扉に手をかけたとき、そのか細い声は聞こえたのかどうかはわからない。 しかしその声はすでに死神のささやきなどではなくなっていた。 満月はすでに沈み、日の出が近いのか東の空がほんのり明るくなっていた。 大聖堂を離れた耶樹は、自分と似たような能力を持つ者のなかには色々なものを背負った人間がいるのだということを知った。 もしかしたら、自分にも知らないところで何か背負っていたのではないだろうか。 それは耶樹の思い過ごしなのかもしれないし、そうでないかもしれない。 しかし、それを確かめる術がない限り、耶樹は前へ進むしかなかった。 残る戦いはあと一つだ。 大聖堂でひとりになったグリシアは、目を閉じて動かなくなっていた。 彼女の祖先『グレイシア・ハミルトン』は教会に虐げられた。 ……しかし、神は彼女を見放したりはしない。 キリスト教の神は誰に対しても平等に祝福を捧げる。 神の前では『グレイシア・ハミルトン』も『グリシア・ハーミット』もたった一人の人間にすぎないのだ。 大聖堂には『ゴースト&ダークネス』の銃に壊されなかった、たったひとつの石像が残されていた。 魔女の末裔『グリシア・ハーミット』は聖母マリアの優しいまなざしに包まれて、静かに息をひきとった。 ★★★ 勝者 ★★★ No.4343 【スタンド名】 バッド・バード・ラグ 【本体】 煤架 耶樹(ススカ ヤギ) 【能力】 楔を打ち込んだモノを真っ二つに割る オリスタ図鑑 No.4343 < 第02回:準決勝② > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/146.html
第14回トーナメント:準決勝② No.7156 【スタンド名】 ディメンション・トリッパー 【本体】 三船 重兵衛(ミフネ ジュウベエ) 【能力】 触れたものを急加速させる オリスタ図鑑 No.7156 No.7160 【スタンド名】 エリミネーター 【本体】 八坂 巡子(ヤサカ メグリコ) 【能力】 爬虫類の生物に変身する オリスタ図鑑 No.7160 ディメンション・トリッパー vs エリミネーター 【STAGE:崖】◆UbkAjk7MJU 三船君は働き者だねー。どうだい、正社員になるつもりはないかい? 責任ある仕事だし、君になら安心して任せられる。やりがいも………… ……また、逃げ出してしまった。 他人に期待されると、耐えられなくなる。 このままこんな生活を続けていては、いつか限界が来るのはわかっている。 僕は安心がほしい。安心して安全な、安定した生活がほしい。 だからこそこのトーナメントに参加した。 ここにくれば、ここで勝てばそれが得られると思ったから。 「この力を使って……」 僕は自分に期待をかける。 「天の腰かけ」と呼ばれるその場所は、とある山の中腹にある大きく突き出した崖の名前である。 標高およそ1000メートルに位置するその崖は地上まで垂直に切り立っており、非常に危険であるため通常は立ち入り禁止となっている。 「落ちたらひとたまりもないな……まぁだからこそ、自殺の名所ってわけか」 重兵衛は崖の底を覗きながらつぶやいた。 少しでも勝負を有利に進めようと、下見のつもりで予定よりも早くこの場所に到着したのだが、 予想以上に何もないこの場所で重兵衛は手持ち無沙汰になっていた。 仕方なくせめて戦いやすいようにと躓いて邪魔にそうな石を拾っていると、背中から声を掛けられた。 「やや、そのスムーズに落ちているものを拾う仕草、グレッグ式ごみ拾い術とお見受けしたー」 「……巡子ちゃん?」 声の主に聴き覚えがあったが、記憶の中の彼女とは大きく変わったその姿に重兵衛は驚いていた。 「やっぱり重兄ぃだー。ひさしぶりだねー」 「本当に、4,5年ぶりかな。なんていうか、見違えたね」 「あれーどこ見ながら言ってるんですかー?」 「……もちろん身長だよ」 重兵衛はかつてのアンカーの警備部長、グレゴリー・ヘイスティングスが管轄していた警備会社でアルバイトをしていた経歴がある。 そこで当時まだ幼さの残っていた巡子とはよく遊び相手にさせられていたものだが、時の流れとは残酷で今ではすっかり巡子の方が視線が高くなっていた。 それからしばらく、二人は思い出話に花を咲かせていた。 昔の話はもちろん、一回戦はグレゴリーと戦ったことも話した。 「グレッグさんに勝ったんだ。強いね巡子ちゃん」 「そりゃあ私も今はアンカーで鍛えてるから」 そんな他愛のない会話を続けているうちに、重兵衛の中にひとつの迷いが生じた。 今から彼女と戦う上で、自分は全力をぶつける事ができるのだろうか。 もし戦いに敗れてしまったら、何も手にすることはできない。 何かを手にするためには勝たなければならない。しかし勝つには彼女を傷つけることになるだろう。 ……いっそのこと自分に敵意を向けてくる赤の他人だったらよかったのに。そう思っていた。 「重兄ぃ?」 「……あ、ごめんなんだっけ」 「私、プロだから。手加減しないでね」 「……。見透かされてたかな」 大きくなったなぁ。と、まるで親のような気持ちになる。 それと同様にして胸につっかえていたものは無くなり、重兵衛目に力が入った。 「もちろん、僕も本気で行くよ」 そう言うと、巡子は嬉しそうにして目を細め、ジャージについた土を払いながら立ち上がった。 「よーしじゃあ重兄ぃ、私が勝ったらアンカーに入ってもらうからね」 「……えっ。え?」 巡子がその場で一回転したかと思うと、重兵衛は硬い尻尾のようなものに弾き飛ばされた。 「おー綺麗な受身」 「ちょっと巡子ちゃん、その約束は……」 「まーまー、調子付けだと思って。代わりに私が負けたら何でもするから!」 間髪入れずに巡子は重兵衛をめがけて突進した。 体制を整えた重兵衛は今度は能力を使って攻撃を受け流そうと構える。 巡子が目前まで迫ると、突然重兵衛の視界が何かに覆われた。 と同時に、わき腹へ先ほどの尻尾と同じ感触……が倍以上の衝撃となって襲い掛かってきた。 「ぐあっ!!」 吹き飛ばされながらも、なんとか崖から落ちるギリギリの所で踏みとどまった。 「相手が防御行動をとってるときは、親切に真正面から攻撃しちゃ駄目だって小父さんが」 「……なるほどね、エリマキの目くらましで死角から尻尾か。骨、折れたかな」 いつの間にか人間のものではなくなった巡子の姿を見て、重兵衛はその能力をトカゲのような姿に変わる能力だと予想した。 (トカゲというよりは恐竜だな……次また攻撃をもらったらまずい) 「重兄ぃ、まさに崖っぷちだね。私的には降参してほしいな」 「いやいや、まだ始まったばかりだよ」 そう言って重兵衛は手元にあった小石を親指の上に乗せて、軽く弾いてみせた。 次の瞬間、バスン!と衝撃音が巡子の耳元に響く。 見るとエリマキに小さな穴が開いていた。 当然ダメージもあるが耳にピアス穴を開けたようなもので、気にするほどでもない。 再び重兵衛のほうに目をやると、重兵衛と重なるようにしてスタンドが出現していた。 「『ディメンション・トリッパー』、僕のスタンドだ」 巡子は重兵衛のスタンドを分析した。 この穴を開けたのはおそらく指で弾いた小石。それが物凄いスピードでエリマキを貫いた。 もしそれがスタンドの純粋なパワーによるものならば、相当なパワー型と考えられる。 しかし、ディメンション・トリッパーの細身な外見からしてそれは考えにくい。だとすれば…… 「うーん、投げたもののスピード強化とかかな」 「はは、ほぼ正解。鋭いね」 この一瞬で能力を見抜かれたことに驚いた重兵衛だったが、それだけでは怯まない。 むしろ見抜かれたおかげで、次の一手がどれだけ強力なものであるかを理解して、降参するかもしれない。 重兵衛が両ポケットの中から引っ張り出したのは、大量の石だった。 「巡子ちゃんが来るまで僕が石を拾っていたのは、何も地面を整備しようとしていただけじゃないんだ。 この大量の石、さっきと同じように飛ばすことができるんだけど、できれば僕も巡子ちゃんが傷つく前に降参してほしい」 重兵衛は巡子の言葉をつき返すようにして脅迫する。 手の上には指で弾いた小石よりも大きな石がゴロゴロと転がっていた。 今度はピアス穴程度では済まない。 しかし巡子はその脅迫に臆することなく歩み始める。 勝算あってか、もしくは玉砕覚悟か。どちらにせよその足取りに迷いは無かった。 「それが巡子ちゃんの答えなら……!」 重兵衛は持っていた石を振りかぶって投げつけた。 まずは右、そして左、最大で直径10cmはあろう20個程度の石がすべて、弾丸のごとく巡子に降り注ぐ。 「つまり、爬虫類全般になれるってことか」 次に見た巡子の姿は、ゴツゴツとした甲羅をもったカメの姿だった。 「全部になれるわけじゃないんだけどねー」 強靭なアゴで石を噛み砕いているその表情は笑っているように見えた。 「あとはクロコダイルとかー、ヤモリとか。ちなみにグレッグ小父さんにはキングコブラが決め手になったんだよ」 正直なところ重兵衛にはこれ以上の手を持ち合わせてはいなかった。 故に、投石による攻撃が無効となれば、あとは直接攻撃か地形を利用して崖から突き落とすかしかない。 (せめてあのカメの甲羅さえなければ……) 巡子はワニガメの姿で、一歩一歩確実に重兵衛の元へ近づいていた。 巡子にとっても、あの投石攻撃をいなす事ができるのはこれしかないからだった。 やがてお互いの距離が、お互いの攻撃範囲内に差し迫った時。 重兵衛は飛んだ。自分の背後、崖に向かって。 「重兄ぃ!?」 あわてて崖下を覗く巡子であったが、雲がかかっていて数十メートル先も見えなかった。 巡子は無駄とは思いつつもヤモリの姿に変化して崖肌を降りようとする。 「……ンション……」 しかしすぐに、かすかに声が聞こえ、その声が次第に近づいてることに気づいた。 「ディメンション……トリッパアアアアァァァァァァア!!!」 さながらウルトラマンの様にして右腕を掲げ上げた重兵衛が、巡子に向かって飛んできた。 そのスピードは先ほどまでの石と同じ速さで、巡子は動転していたこともあって為す術も無く体を持ち上げられた。 「僕の能力は投げたもののスピード強化。巡子ちゃんはそう言ったね。 正しくは、触れたものを急加速させる能力。つまり投げる必要は無いんだ」 「触れて加速したものを握ったまま触れ続け、さらに加速を重ねがけする。 そうすることでこの上昇を可能としている。今までの僕には思いもつかなかった」 そう言っている間も二人は上昇を続け、やがて崖すらも見えなくなっていった。 「じゅ、重兄ぃ、これどこまで……」 「そりゃあ巡子ちゃんが降参してくれないと、僕にはもう他に手が無いからね」 「はやく降参するからはやく」 「よーし、僕の勝ちだ」 「で、どど、どうやって降りるの」 「えーと、落ちながらこまめに加速して徐々に……とかかな」 重兵衛が崖から落ちてから、自分の計り知れない出来事の数々に、巡子の頭は完全に混乱していた。 しかし重兵衛はかつて無いほど気持ちが昂っており、そのまましばらく上昇を続けていた。 それから重兵衛が正気に戻ったのは、巡子のビンタが15往復目を数えようとしたときだった。 二人分の体重を支え続け、幾度もの加速に耐え続けた右腕は使い物にならなくなっていたが、重兵衛の気持ちはいまだ昂っていた。 「他人に期待されるのは凄く嫌なのに、僕は自分の可能性を信じたくなった。これは矛盾してるかな」 「んー難しいことはよくわかんないけど……」 「少なくとも私は、重兄ぃがそうやって自分のやりたいことを見つけて輝いてるところを見ていたいって思った。 ほら、これって私の期待だけど、それなら別に嫌じゃないでしょ?」 今まで道をそれる事でできるだけ大きな波風を立てることなく生きていこうと考えていた重兵衛だったが ここにきて初めて、自らの力で道を切り開いていこうと覚悟に決めた瞬間だった。 「あ、でもアンカーにきてくれたらもっと嬉しいかも」 「……それはまた後で考えるよ」 ★★★ 勝者 ★★★ No.7156 【スタンド名】 ディメンション・トリッパー 【本体】 三船 重兵衛(ミフネ ジュウベエ) 【能力】 触れたものを急加速させる オリスタ図鑑 No.7156 < 第14回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/shorttrackss/pages/37.html
バンクーバー五輪 女子500m 準決勝 バンクーバー五輪 女子500m 準決勝 各組4名中上位2名が決勝(A決勝)に、3位と4位は順位決定戦(B決勝)に進出する。 Q=A決勝進出、A=救済措置によりA決勝進出、QB=B決勝進出、DSQ=失格 OR=オリンピック新記録、WR=世界新記録 また、スタートリストにある「枠」というのは、スタート位置を意味する。 数字が小さいほど内側からのスタート。 Semifinal1 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Katherine Reutter キャサリン・ロイター 21 アメリカ 8位 2 Jessica Gregg ジェシカ・グレッグ 21 カナダ 5位 世界選手権3位 3 Zhou Yang 周洋 18 中国 - 世界選手権4位 4 Arianna Fontana アリアナ・フォンタナ 19 イタリア 7位 トリノ11位,欧州選手権1位 2組に比べれば少しだけレベルは下か。とはいえベスト8。強豪揃いである。 わずかに格上なのは地元カナダのグレッグか。この距離で一番実績があるのは彼女だと思われる。 あるいは1500mで世界ランク1位、1000mで世界ランク3位の周洋がこの距離でどこまでいけるか。 さらに、予選、準々決勝と1コースからロケットスタートを決めてそのまま楽に逃げ切っているアメリカのロイターが ここでも1コースに入った。彼女が今回も先頭を奪うと非常に恐ろしい。 そして19歳にして2度目のオリンピックのフォンタナも、準々決勝で韓国のチョ・ハリを抑えきった実力者。 絶対王者の王濛もいないし、かなりの混戦が予想される。 <レース展開> 2コーススタートのグレッグが先頭に立つ。 2番手争いは、1コースのロイターが取るかと思いきや、大外スタートのイタリアのフォンタナが 目を見張るような加速を見せ、2番手を奪う。3番手がロイター、4番手が周洋。 グレッグがかなり飛ばし、後ろに差を開く。2番手のフォンタナの後ろもまたかなり開いている。 後ろの2人は末に賭けるしかなくなった。 残り2周。いよいよ後ろの2人が前との距離を詰めてきた。4人の差があまりなくなった。 残り1周半。周洋がコーナーの入り口ですっとロイターのインに入り込み、3番手を奪う。 残り1周。周洋はさらに2番手のフォンタナもインから捉えようとする。さらにインからはもう一度ロイター。 2番手に3人がほぼ並んだが、ここは結局フォンタナが2番手を保持する。 一旦の減速を強いられた周洋。だが諦めない。残り半周。こんどは外目を通って加速。 そして最後の直線でフォンタナよりかなり外を周って2番手目がけ襲いかかる。 フォンタナと周洋が2番手でほぼ並んだところがゴール。 勢いは完全に周洋が勝っていた。だがゴールライン上で前にいたのはどちらか。 <結果> 1着 Jessica Gregg ジェシカ・グレッグ カナダ 43.854 Q 2着 Ariannna Fontana アリアナ・フォンタナ イタリア 43.991 Q 3着 Zhou Yang 周洋 中国 43.992 QB 4着 Katherine Reutter キャサリン・ロイター アメリカ 44.145 QB なんと1000分の1という差でフォンタナに軍配が上がる。熱いレースだった。 グレッグはスタートが決まったことが大きかっただろう。激しい2番手争いを尻目に悠々と通過。 フォンタナも4コーススタートながら2番手につけた好ダッシュがモノを言った。健闘の決勝進出。 周洋とロイターはまあ、1500m,1000mに更なる期待が持てる選手なのでここは仕方がないところか。 ロイターはスタートで前を取られたのが痛すぎた。 Semifinal2 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Wang Meng 王濛 24 中国 1位 トリノ金,世界選手権1位 2 Kalyna Roberge カリナ・ロバージ 23 カナダ 2位 トリノ4位 3 Marianne St-Gelais マリアナ・サンジュレー 19 カナダ 4位 4 Lee Eun-Byul イ・ウンビョル 18 韓国 13位 金メダルへまっしぐらにも見える王濛が登場。ここまでの滑りは他を圧倒している。 これに地元カナダの2選手が登場。実績と経験ではロバージ、若さと勢いではサンジュレーか。 そこに、スタートで遅れても追い上げがある韓国のイ・ウンビョルも加わる。 <レース展開> ロバージがフライング。2回目でスタートが決まる。 王濛が悠々と先頭。2番手争いは、1回のフライングで余裕がなくなったロバージを サンジュレーが上回る形で外から2番手に立つ。 ロバージは3番手から。イ・ウンビョルは全く前についていけず4番手。 王濛は相変わらず余裕の滑りで後ろを引き離そうとする。2番手のサンジュレーが必死に食らいつく。 ロバージは最初は前と距離を取り、徐々に徐々に差をつめ、残り1周半でインから前を交わそうとする。 しかし交わし切れず。むしろそこからサンジュレーが再加速。 最後は逆に後ろに差を広げる形でゴールした。 <結果> 1着 Wang Meng 王濛 中国 42.985(OR) Q 2着 Marianne St-Gelais マリアナ・サンジュレー カナダ 43.241 Q 3着 Kalyna Roberge カリナ・ロバージ カナダ 43.633 QB 4着 Lee Eun-Byul イ・ウンビョル 韓国 44.899 QB 42秒台という破格のタイムを叩きだし、王濛が快勝。 しかしそれに最後まであまり離されなかったサンジュレーも凄まじい。 それだけの力を持っていたということだろう。このタイムで前を走られてはさすがのロバージもお手上げだったか。 それにしてもサンジュレーは元気一杯の選手。ゴールした瞬間、カメラ越しにも ハッキリと聞こえるほどの金切り声wまだメダル取ったわけではないのに^^ Semifinals → B Final 通過順位 選手名 選手名(日本語) 国 タイム 印 3着 Kalyna Roberge カリナ・ロバージ カナダ 43.633 QB 3着 Zhou Yang 周洋 中国 43.992 QB 4着 Katherine Reutter キャサリン・ロイター アメリカ 44.145 QB 4着 Lee Eun-Byul イ・ウンビョル 韓国 44.899 QB 以上が順位決定戦(5-8位決定戦)に進出。 Semifinals → A Final 通過順位 選手名 選手名(日本語) 国 タイム 印 1着 Wang Meng 王濛 中国 42.985(OR) Q 1着 Jessica Gregg ジェシカ・グレッグ カナダ 43.854 Q 2着 Marianne St-Gelais マリアナ・サンジュレー カナダ 43.241 Q 2着 Ariannna Fontana アリアナ・フォンタナ イタリア 43.991 Q 以上が決勝に進出。
https://w.atwiki.jp/rcmuseum/pages/885.html
[97/11/15 16 44] E.Watanabe 「[大会] WWW大会 準決勝戦 第2試合」 ★準決勝戦 第2試合 SONIC-EX Cherry-Blossom in the Autumn SONICEX(6,LSR,MIS) vs CHERRY-B(6,POW,MIS) o(^^)o E.Watanabe Ruy-Macmiran(IRI) ********************** FIGHT! ********************** 【3'00"】 SONICEX、高速後退開始。 【2'55"】 CHERRY-B、一歩下がり。機体を右に向ける。 SONICEX、左壁に当たり、画面下方向に下がり続ける。 【2'49"】 CHERRY-B、右壁に到達。SONICEX同様、画面下方向に向かう。 【2'47"】 SONICEX、下壁に到達。壁沿いに更に後退。 【2'41"】 下壁から上がってきた SONICEXと 下がってきた CHERRY-Bが 5ヘクスの遠距離で互いに相手をキャッチ! 飛び交うミサイル! 双方被弾!! SONICEX、2発目発射! しかし CHERRY-B、それを下がって避ける! 【2'36"】 SONICEX、下壁沿いに進み、CHERRY-Bを再度捕捉。 CHERRY-Bのミサイルが先に出る! 少し遅れて SONICEXの攻撃! 同ダメージを負った二体!! 【2'32"】 CHERRY-B、SONICEXに急速接近。 両者並ぶ! 殴る殴る CHERRY-B! SONICEX、必死の応戦!! 燃える燃える CHERRY-B!! あーーーーーーーーーーーーっっ!!! 【2'30"】 ずどごごごおおぉぉおぉおぼごおおおぉぉぉぉぉぉぉぉんっっ!! 殴り勝ち BREAK DOWN! CHERRY-Bの勝利! ************************************************************ つづく www01 (33)「優勝決定戦」へ移動 《第1回 R.C.大会 in WWW》へ戻る
https://w.atwiki.jp/netabokeothers/pages/42.html
準決勝終了時 ┏━ 観音 ┏━┛(8) ┃ └─ Revin助手(穴埋め) ┏━┛(4) ┃ | ┏━ メン坊 ┃ └━┛(9) ┃ └─ かるかん ┌━┛(2) | | ┌─ いけめん | | ┌━┓(10) | | | ┗━ 回転神社 | └━┓(5) | ┃ ┏━ ぐh | ┗━┛(11) | └─ タタミタイプ★┤(1) | ┌─ 新人QP | ┏━┓(12) | ┃ ┗━ ぺんぎん | ┏━┛(6) | ┃ | ┌─ 西園寺くまー | ┃ └━┓(13) | ┃ ┗━ さかも党<駄作王> └━┛(3) | ┏━ P様 | ┏━┛(14) | ┃ └─ ロケットマン └━┛(7) | ┏━ ろりはら └━┛(15) └─ クニオ このページはトーナメント表作成支援ツール・改をお借りして30秒で作られました。
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/86.html
第08回トーナメント:準決勝② No.6130 【スタンド名】 クリスタル・ピース 【本体】 新房 硝子(シンボウ ショウコ) 【能力】 微細なガラスを操作する オリスタ図鑑 No.6130 No.6352 【スタンド名】 ゾディアック 【本体】 G・T (ジー・ティー) 【能力】 双手剣と棍を駆使する オリスタ図鑑 No.6352 クリスタル・ピース vs ゾディアック 【STAGE:広大な墓地】◆4bPWteQyKA 欧州某所 5 00 息も詰まるほどの濃い緑色を湛えた森。 その奥の少し開けた土地に『そこ』はあった。 地面を覆い尽くすのは文字の刻まれた石の塊。墓石。 その事実からこの場所が墓地であることは明らかであったが、 通常我々が目にするものとは大きな違いがあった。 どの墓石もかなりの時間手入れされた様子がなく、朽ち果て、苔むしていたのである。 この森の中の広大な墓地の中心に鎮座する煉瓦造りの廃屋―― この場所にあることを考えると恐らく教会であろう、も同様の荒れ果て具合あった。 それもそのはず。 この墓地は14世紀に全ユーラシアを襲い、ヨーロッパの人口を約半分まで減少せしめた疫病―― 『黒死病』によって甚大な被害を受けた町の跡地に作られたものである。 町は疫病によって住民の大部分が死亡し放棄されたが、犠牲者の墓地だけは残されたのである。 そして、600年以上もの間、開発の波を受けることもなく、 森の中に埋もれていたのであったのだが、どういうわけか、この日に限っては人影があった。 廃教会の外壁にもたれかかる人影は東洋人だった。 赤いシャツに黒いスーツを纏ったその男は、何をするでもなくただ徐々に白みつつある空を眺めていた。 立っているだけであるのだが、男には鋭い緊張感を含んだ空気が絡みついており、 男がカタギの人間ではないことは明らかだった。 事実、この男は、中国南部ではかなり名の通った殺し屋で、その通り名を『G・T』と言った。 「もうそろそろ時間か……そこに居るんだろ?遠慮せず出てきてもいいんだぞ」 G・Tは数十メートル離れた場所にある墓石の一つに向けて言い放った。 果たしてG・Tの言った通り、墓石の後ろから小ぶりな影が現れた。 「あなたが『トーナメント』の対戦相手ですか?」 声の主はまだ十代も半ばと思しき眼鏡をかけた少女であった。 相手が自身の半分の歳も行かぬ娘であったことが意外であったのか、 男は一瞬呆気にとられたような表情を浮かべたが、すぐに表情を引き締める。 そして、値踏みをするような目で少女を見つめながら、語りかける。 「こんな場所に散歩やピクニックに来る酔狂な輩はそうそう居るまい。 いかにも俺があんたの対戦相手だ。名を『G・T』と言う。 変な名前だと思うかもしれないが、仕事用の通り名みたいなもんだ、気にしないでくれ」 「わ……私は新房硝子です」 G・Tは顎に手を当て数秒悩むような表情を浮かべた後、再び口を開いた。 「……言おうか迷ったんだが、正直に言っておくとしよう。 最初あんたを見た時、『こんな小娘が対戦相手なのか』という思いが一瞬過ぎった ……がそれはすぐに打ち消された、あんたの目を覗きこんでな」 「……どういうことですか?」 舐められる事は予想していた。が、相手の口から出たのはそれとは反対の言葉。 「職業柄なんとなく判るんだよ……他人の目を見るとな…… そいつが『人を殺したこと』があるか否かがな」 「……ッ!」 男の言葉が脳で理解された瞬間、硝子の体に電流が走った。 思い出されるのは『あの夜』の情景――血塗られた水晶柱、苦痛に歪む男の顔、赤い池に映り込む自身の顔。 少女は強くなりたかった。ただ強くなりたかった。 そして、『スタンド』と呼ばれる力を手に入れ、さらに強くなるためにスタンド使いの集う『トーナメント』へと参戦した。 強くなることに対して、幻想的とも言える希望を抱いて…… しかし、一回戦での経験は、『強くなること』がそう甘美な面だけでないことを彼女に教えるに十分すぎた。 少女が表情を露骨に変化させたのを見て、男の表情が曇る。 「察するに先の試合が『初めて』だったんだな……」 男の言葉に対して、少女は頷くでも否定するでも無く、ただ黙っていた。 「これからあんたが俺を殺したとしても別に病む必要は無いし、逆に、俺があんたを殺しても病んだりはしない。 『戦い』とは、そういうものだと『割り切れ』。 丁度あんたぐらいの歳で最初の『仕事』をした時は何度も吐いたものだし、最初は仕方ない。 寧ろあんたは『正常』だ、世の中には最初からなんの躊躇も無く命を刈り取れる人間もいるが、 そういう奴らは心から『何か』が抜け落ちた破綻者どもだ。 さっき『割り切れ』って言ったのと矛盾するように思うかもしれないが、 前の戦いであんたが味わった感情と全く同じものはこれから二度と体験できないだろうから大事に取っておいたほうが良いと思う。 ……おっと、俺としたことが柄にも無く長々と説教じみたことを話してしまったな、済まない。 それじゃ、時間も過ぎていることだし、そろそろ始めるとするか」 「……はい」 返事を確認すると、男は自らスタンドの名を吐き出した。 「ゾディアックッ!」 男の手に東洋風の装飾がされた双手剣が現れた。 対する硝子も自らのスタンドを具現化する。 「クリスタル・ピースッ!」 硝子の背後にゴーグルをかけた人型のヴィジョンが朧気に浮かび上がる。 「……人型スタンドか」 先手必勝とばかりに、硝子は勢い良く地面を蹴り、G・Tにスタンドで殴りかかろうとする。 G・Tも剣を構え直し、攻撃に備える。 「ラーララララララララララララララララララララララララッッ!」 『クリスタル・ピース』全身全霊のラッシュを打ち込もうとするが、人間離れしたG・Tの剣技はその上を行っていた。 正確にプログラミングされている機械のごとく剣を動かし、次々に迫り来る『クリスタル・ピース』の拳を捌く。 「素人にしてはいい動きだが、その程度では俺の首を取ることはできんぞ」 ラッシュが緩んだ一瞬の隙を突いて大剣を振り上げ、『クリスタル・ピース』に振り下ろす―― が、G・Tの剣撃は虚空を斬るだけとなった。 「スタンドにも干渉できる俺の剣撃がヴィジョンを素通りしただと……!?」 予想外の出来事に驚きを隠せないG・Tに対して、硝子は淡々と語りかける。 「私の『クリスタル・ピース』のヴィジョンに対してただの斬撃や打撃の類は効きません。 あなたのスタンドは私のと些か相性が悪かったようですね」 「なるほどな……だが問題は無い、それならば『本体を叩けばいいだけ』のことだ」 G・Tは再び双手剣を構え直す。 不利な状況であるはずなのにその表情には不安の色は全く見えない。 「シャアアアアアアアアアア!!!」 G・Tは叫び声を上げると、剣を振り上げ、猛スピードで硝子に斬りかかろうとする。 (は、速い!……でも、あの剣と『クリスタル・ピース』のリーチの差を考えれば、無傷で私を斬ろうとすることは無理なはず) 硝子の心中をよそに、G・Tはその目前へと迫る。 射程距離ギリギリまで前に出した『クリスタル・ピース』に迎撃体制を取らせ、 それに構わず突っ込んでくるG・Tの身体に対して、『クリスタル・ピース』の拳を捩じ込もうとする。 そして、GTの決死の突撃は敢え無くカウンターされてしまった。 ――かと思われたが、『クリスタル・ピース』の拳は『硬い何か』に阻まれ、G・Tの体には到達しなかった。 それは男の体と重なるように浮かび上がる鎧を纏った異形。人型のスタンドヴィジョンであった。 その両手には3メートル近くはあろうかという長柄武器――『戟』が握られていた。 その先端部に取り付けられた刃は、硝子の肘から下の左腕を無残にも引き千切り、鮮血に染まっていた。 「これが俺のスタンド、『ゾディアック』の完全な姿だ。本体を斬るにはリーチが足りないと思っただろうが、 『ゾディアック』の人型ビジョンを発現させた上で、長柄武器を扱わせれば何の問題は無い…… 心臓を狙ったつもりが手元がぶれて、左腕を切り落とすだけに終わってしまったのは計算外だったが」 圧倒的絶望。硝子にとって、その言葉がまさに相応しい状況だった。 切断された左腕からは血が流れ出ていたが、絶望が苦痛に勝るという奇妙な状態のせいで、痛みは全く脳に届かない。 傍らに目を遣ると、数秒前まで疑いなく自身の一部だった左腕がだらしなく落ちていたが、現実だと思うことが出来ない。 G・Tは、目の前に倒れこむ硝子に対してなおも語りかける。 「俺は快楽で人を殺す殺人鬼でも、何の意識も無く人を殺す精神病質者でも無い。 だが、この『ゾディアック』の本当の姿を見せてしまった、いや、見せざるを得なかったというべきか…… とにかく、このビジョンをあんたが見てしまったからには、俺の殺し屋としての矜持として、生かしておくわけにはいかない」 圧倒的有利な立場にあるにもかかわらず、G・Tは緊張を緩めない。 無闇に近寄ろうとせず、射程ギリギリからジリジリと詰め寄る。 「……『詰み』だ」 『ゾディアック』が、先ほどの血も乾き切らない戟の穂刃を硝子の胸に突きつける。 「……まだ『詰み』じゃない、私にはまだ最後の一手が残されている」 「何だと?」 もう完全に戦意喪失したと思われていた相手からのまさかの一言。 G・Tの表情がわずかに歪む。 そして、『違和感』に気づく。 さっきまでそこにあった物が見当たらないことに。 「……腕か!俺がさっき切り落とした左腕は何処に消えた!?」 「……すぐそこよ」 その言葉を聞いた瞬間、G・Tは自身の背中に嫌な汗が流れているのを感じた。 恐る恐る背後を振り向こうとする。 そこにあったのは、自身の首を掴まんと迫り来る、先ほど自身が切り落とした硝子(と『クリスタル・ピース』)の左腕だった。 『クリスタル・ピース』の本体である硝子自身にも全く予想できなかったことであった。 いや、予想できるはずがないだろう。 『ゾディアック』の斬撃によって体本体と分離されてしまった、 自身と『クリスタル・ピース』の左腕が、本来の射程距離を越えて操作出来たことは。 切り離された『腕』がG・Tの喉を力強く掴む。 「『クリスタル・ピース』」 G・Tの喉を掴む『クリスタル・ピース』の腕は、自身を部分的に鋭利な水晶柱に変化させ――男の喉を貫き、後頭部に達した。 「……ガハァ…ッ!」 男の喉から血液が滝のように噴き出して池を作る。そして、男は力なくその中に倒れ込む。 一方の硝子も精神的・肉体的な消耗が限界まで達していたのだろう。気絶してその場に倒れ込んだ。 墓場の夜はもう完全に明けていた。 ★★★ 勝者 ★★★ No.6130 【スタンド名】 クリスタル・ピース 【本体】 新房 硝子(シンボウ ショウコ) 【能力】 微細なガラスを操作する オリスタ図鑑 No.6130 < 第08回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/cwfo/pages/33.html
準々決勝 vs帝京(東京) 相手 0 0 0 2 0 0 0 2 8 || 12 自分 0 3 0 3 0 0 2 0 5x || 13 本塁打:馬場2,上羽,広井,橋本 これは歴史に残る試合です 4本のホームランで快勝かと思ってましたが 9回表2アウトからまさかの8失点 泣きそうになりましたよ まあ絶対に勝つとは思ってましたが・・・・・ さてその裏の攻撃 2四球のあとの橋本の3ラン また泣きそうになりました とわいえまだ1点差なので気は抜けません ランナーを1,2塁において代打の青石 とても大きい体格でったので外野も深めに守備位置をとっていたようです 綺麗にセンターに打ち返し同点 そのあと押し出しでサヨナラという結果でした この試合では5つの記録が生まれたようですよ ・9回に8得点 - 帝京 ・4点差からの逆転サヨナラ勝利 - 智辯和歌山 ・1試合7本塁打 - 智辯和歌山5本(馬場2、上羽、廣井、橋本)、帝京2本(塩沢、沼田) ・チーム1試合5本塁打 - 智辯和歌山(馬場2、上羽、廣井、橋本) ・勝利,敗戦投手とも投球数1 - 松本(智辯和歌山)、杉谷(帝京) なんかすごいですね 準決勝 vs駒大苫小牧(北海道) 自分 1 2 0 1 0 0 0 0 0 || 4 相手 4 0 1 0 2 0 0 0 x || 7 お互いにエラーでチャンスがあったのですが ものにするかしないかで勝敗が分かれました 智辯は田中の当番の前にもうすこし点が欲しかったですね でもまあ頑張りました お疲れ様です 余談ですが・・・・・・ 実はこの試合、サッカー部が欠席でした 私はサッカー部の応援があれば勝てたと思います 私はね・・・
https://w.atwiki.jp/penmawasi/pages/19.html
785 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 21 02 42.23 ID AkVm8q0q0 (´・ω・`)「これに勝てばいよいよ決勝だ。がんばってほしい」 ( ^ω^*)「燃えてきたお!」 ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ相手チームの発表よ!」 実況「準決勝第一試合はチームくそみそ対―――― チームトンファーです!!」 ( ´Д`)「相手チームはあんなのか・・・こりゃ勝てるな」 ( ´Д`)「だな」 ( ´Д`)「潰してやるか」 ( A`)「(あいつら何かいってる・・・・俺のことなんだろうな)」 (; ^ω^)「か、顔が同じで区別できないお・・・」 (´・ω・`)「そりゃそうだよ、トンファーといえばあの顔だからね」 (=゚ω゚)ノ「ところで先生、あのチームはどんなチームなんだヨウ?」 (´・ω・`)「彼らのペンは・・・トンファー仕様なんだ」 3人「な、なんだってー!」 795 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 21 12 53.33 ID AkVm8q0q0 審判「それでは準決勝第一試合を開始します。先行はチームトンファーです。」 ―――はじめっ 一見馬鹿げたトンファーペンはその出っ張りをいかした不思議なフリースタイルを可能にする 観客も息をのんだ ( A`)「な、なかなか上手いぞ・・・」 ( ^ω^)「大丈夫だお、俺たちなら多分勝てるお」 ξ゚⊿゚)ξ「でもこれは本当にやばそうね・・・・勝てるかしら」 (´・ω・`)「大丈夫、彼らには決定的な弱点がある」 ξ゚⊿゚)ξ「弱点?」 (´・ω・`)「見てればわかるだろう・・・フフ・・・・」 そして、フリースタイルも中盤に差し掛かる――― トンファーの出っ張りを利用して連続してガンマンをやってのける (=゚ω゚)ノ「あれはいくらなんでも反則だヨウ。。。審判ちゃんとしてくれヨウ」 (´・ω・`)「(審判の眉間にしわが・・・・勝負あったな)」 803 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 21 24 01.19 ID AkVm8q0q0 そしてフリースタイルもスクエアで綺麗に〆られ演技が終わる ( ´Д`)「ちょろいちょろい」 ざわ・・・・ざわ・・・・ (´・ω・`)「ふむ、一試合目は勝てそうだ」 ξ゚⊿゚)ξ「どういうこと?」 ( ^ω^)「おっおっおっ、審判が何やら相談してるお」 審判「お待たせいたしました。協議の結果、ただいまの試合でチームトンファーの( ´Д`)選手が行ったフリースタイルにクリップを不正に利用した常軌を逸する行為が認められたため、一試合目はチームくそみその( A`)選手の勝ちとします」 ( ´Д`)「な、おい。ちょっと待てよ審判さん」 審判「協議の結果です。残念ですが席にお戻りください」 ( ´Д`)「うるせー、トンファービーム!!」 審判「えー・・・、それでは二回戦を行います」 ( A`)「まじかよ・・・・回さないで勝てちゃった」 (=゚ω゚)ノ「俺の出番が来たヨウ。ドクオ君の分も頑張るヨウ!」 810 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 21 39 24.88 ID AkVm8q0q0 審判「それでは二回戦、先行のチームトンファーどうぞ」 ( ´Д`)「やべえ、間違えてトンファーガンマンやったら終わりだ・・・・」 ( ´Д`)のフリースタイルは( ´Д`)の失格の影響を受け、かなりカクカクしたものになっていた (´・ω・`)「どうやら動揺しているようだ・・・・またも勝てそうだ」 ( ^ω^)「これなら楽勝だお!」 そして〆はバックアラウンドだ。しかし汗のせいでキャッチが変になってしまった 審判「それではイヨウ選手どうぞ」 ( A`)「僕の分も頑張ってね・・・」 (=゚ω゚)ノ「あんなのには負けないヨウ!」 言ったとおり、相手とは比べ物にならないフリースタイルでイヨウは( ´Д`)を圧倒した 審判「イヨウ選手の勝ちです」 ( ^ω^)「最後はしっかりきめてやるお」 817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 21 50 14.64 ID AkVm8q0q0 審判「それでは三回戦を行います。( ´Д`)選手はじめてください」 ( ´Д`)「どいつもこいつもここまで来てだめになりやがって・・・せめて俺だけは勝たないと・・・」 ( ´Д`)は大将というだけあってかなりの実力だった。 丁寧なパスから滑らかなソニックへと続き、豪快なアラウンドと、教科書通りであったがこれまでの相手とは核が違った (; ^ω^)「これはやばいお、勝てる気がしないお」 ξ゚⊿゚)ξ「ばかっ、弱気になってどうするのよ!」 ( A`)「でも二勝してるんだ・・・焦らず頑張れば勝てるさ」 (´・ω・`)「(フフ・・・・大丈夫だ、だって彼の〆技は・・・・)」 そして終盤 ( ´Д`)「くらえ、トンファーアルティメットファイナルインパクト!!」 ―――!! 822 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 00 57.63 ID AkVm8q0q0 ( ´Д`)「くらえ、トンファーアルティメットファイナルインパクト!!」 ―――!! ξ゚⊿゚)ξ「な、なんなのあの技は・・・・すごそうだけどただの4-ソニックにしか見えないわ」 (´・ω・`)「その通り、あれはただのソニックだ」 ξ゚⊿゚)ξ「そんなのあり!?」 思わぬ〆技で会場はどよめいていた・・・・というよりドン引きだった ( ´Д`)「〆が決まった・・・俺の勝ちだな」 審判「・・・・そ、それではブーン選手どうぞ」 (#^ω^)「変な技に怒ったお、俺様を怒らせると痛い目に遭うお!!」 ブーンの演技が始まる・・・・しかしいつものブーンとは違いフリースタイルは荒く、乱雑なものだった (#^ω^)「おっおっ、あんなやつはこてんぱんにしてやるお」 (´・ω・`)「危ないな・・・・いつものブーン君ではない・・・・」 そして終盤― ぽーん (;^ω^)「あっ、ペンがどこかに吹っ飛んじゃったお!!」 826 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 09 20.24 ID AkVm8q0q0 ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと何やってるのよ!上よ!」 (´・ω・`)「だめだ、焦っている・・・・聞こえてないみたいだ」 ξ゚⊿゚)ξ「このままじゃ・・・・」 落下したペンはブーンの脳天めがけて落ちてきた ―――さくっ ξ゚⊿゚)ξ「いやぁあああああーーーー!!!」 審判の静止を振り切ってブーンの元に駆けつけるツン ξ゚⊿゚)ξ「いやっ、しっかりして・・・・」 ( ^ω^)「ツン、大好きだお・・・・勝てなくてごめんお・・・」 836 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 16 57.28 ID AkVm8q0q0 かくしてブーン達の夏は終わった・・・・ (´・ω・`)「おーい、聞いているか?」 ξ゚⊿゚)ξ「え、あっ、すいません。ちょっと考え事を・・・・」 (´・ω・`)「まぁいいだろう、私もいつも君に関するそそる考え事をしているからな」 ξ゚⊿゚)ξ「そういうのやめにしませんか・・・・って試合はどうなったの!?」 (´・ω・`)「ブーン君の勝ちだ。落ちてきたペンがたまたま胸ポケットに入り3-0で勝ったよ」 (;^ω^)「セフセフ、もうちょっとで負けてたお」 (=゚ω゚)ノ「よくやったヨウ!お疲れ様だヨウ」 ( A`)「最後の・・・・すごかったよ」 (´・ω・`)「しかしブーン君、今回は勝てたが次からは感情で回さないように。次はないぞ」 (;^ω^)「つ、次は気をつけるお・・・・」 ξ゚⊿゚)ξ「何はともあれこれで決勝ね!」 ( ^ω^)「ツン・・・・?決勝に進んだのがそんなにうれしいのかお?涙でてるお」 ξ゚⊿゚)ξ「こ、これは関係ないわよ!!!いいから早く次に備えて準備しなさい!!」 おk、バトンタッチだ。決勝がんばってくれ 決勝編 842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 23 40.33 ID vApuIb0A0 地区大会決勝 チームくそみそ 先鋒 ドクオ( A`) 次鋒 ブーン( ^ω^) 大将 イヨウ(=゚ω゚)ノ チームレディース 先鋒 しぃ(*゚ー゚) 次鋒 クー川 ゚ -゚) 大将 渡辺さん从 ー 从 (´・ω・`)「決勝の相手はチームレディーズ。見ての通り、女性ばかりのチームだ」 (* A`)「女の子がいっぱい・・・フヒヒヒ」 ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとドクオ、決勝なんだからしっかりしてよ。何そのニヤニヤ笑い」 (;^ω^)「ドクオ、どうしたお?いつものドクオじゃないお・・・」 (=゚ω゚)ノ「(そうだったヨウ、ドクオは女の子の前だと緊張して本来の力が出せないんだヨウ・・・)」 (=゚ω゚)ノ「(これはちょっとまずいかも知れないヨウ・・・)」 (´・ω・`)「心配ない。ペンを回す勢いで彼女たちも輪姦(まわ)して来ればいい」 ( ^ω^)「おまwwwwwwww」 (* A`)「輪姦、輪姦、フヒヒ・・・」 ドクオは酔っ払いのような足取りでステージに向かって行った。 846 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 28 46.44 ID vApuIb0A0 先鋒戦 ( A`)ドクオ VS しぃ(*゚ー゚) (*゚ー゚)「よろしくお願いしm」 (* A`)「フヒヒヒヒヒよろよろよろよろしくおねおねお願いしまフヒヒヒヒ!!!」 (;゚ー゚)「・・・」 審判「ではレディース先鋒のしぃ選手から」 審判「はじめっ」 (;゚ー゚)「お、落ち着かなきゃ・・・」 しぃの右手に握られた細身のペンが静かに回り始める。 女性らしい繊細なフリースタイル。その華奢な指先が軽快にしなる。 回転するペンもステージのカクテルライトにキラキラと輝き、 美しく、煌びやかに、観客の目を魅了する。 ( ^ω^)「これが決勝のレベルかお!すごいお!」 (´・ω・`)「あの光るペンは恐らく"PDS-COMSSA V7"・・・しぃ君、本気だね」 ξ゚⊿゚)ξ「きれい・・・」 ξ゚⊿゚)ξ「・・・フ、フン!見とれてなんかいないんだからね!」 849 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 29 35.47 ID vApuIb0A0 3-ソニックひねりからネオバック23-23へ。 ネオバック23-23からバックタップ32-43へ。 バックタップからそのまま流れるようにシャドウ43-32へと入り、そして――― (*゚ー゚)「そしてフィニッシュの・・・ッ! ・・・!?」 (* A`)「・・・」 いつの間にかしぃの正面斜め下、見上げるような角度で、 食い入るようにその演技を見つめているドクオ。 その飢えた獣のような瞳に動揺し、一瞬しぃの集中力が途切れてしまう。 (*゚ー゚)「しまっ・・・!」 カランカラン。 会場に、ペンの落ちる音が空しく響いた。 852 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 30 48.26 ID vApuIb0A0 (;゚ー゚)「・・・やられた」 今のはドクオの旋転妨害ではないかとレディース顧問から抗議があったが、 直接ペンに触れてはいないためペナルティ無し。試合は続行。 審判「ではチームくそみそ、先鋒。ドクオ選手」 審判「はじめっ」 (* A`)「さっきあの子と一瞬目が合ったぜフヒヒヒ!!」 物凄い勢いでペンを回し始めるドクオ。 予選、準決勝の時とは比べ物にならないパワーとスピードだ。 (;=゚ω゚)ノ「・・・どうなってんだヨウ」 ( ;^ω^)「・・・いつものドクオじゃないお」 (´・ω・`)「ふむ。愛のなせる技、か。なるほど」 締めは3-ソニックひねり⇒ネオバック23-23⇒シャドウ43-32 2-バックアラウンドリバース。 決まった瞬間、会場から大きな歓声と拍手が巻き起こる。 (;゚ー゚)「あ・・・あたしの構成そのまま・・・」 (* A`)「あの子と同じ技!おそろいフィニッシュ!フヒヒ!」 判定は3-0でドクオの圧勝だった。 855 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 32 10.65 ID vApuIb0A0 意気揚々とドクオがベンチに戻ってくる。 (;=゚ω゚)ノ「ド・・・ドクオは女の子の前だと緊張するんじゃなかったのかヨウ?」 (* A`)「あの子はタイプだった」 ξ#゚⊿゚)ξ「・・・」 (´・ω・`)「ふむ、ドクオ君にこんな積極的な一面があったとは・・・」 (;^ω^)「びっくりだお」 860 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 34 28.56 ID vApuIb0A0 次鋒戦 ( ^ω^)ブーン VS クー 川 ゚ -゚) ( ^ω^)「よろしくだお」 川 ゚ -゚)「・・・」 (;^ω^)「?」 ブーンが握手しようと差し出した右手に目もくれず 明後日の方角を向いているクー。 (;^ω^)「あ、あの・・・」 川 ゚ -゚)「まぐれは一度までだ」 (;^ω^)「・・・はぁ」 (;^ω^)「(怒ってるお。なんかまずいことしたかお)」 川 ゚ -゚)「しぃは技術的には一人前だが心理的に甘い部分がある。そこをお前たちに突かれた」 川 ゚ -゚)「だが私にあのような姑息な手は通用しない」 川 ゚ -゚)「覚悟することだな」 (;^ω^)「・・・(文句はドクオに言えお)」 なおも握手を迫るブーンの手を振り払い、クーは所定の位置についた。 審判の合図も待たずに、懐から2本の黒いペンを取り出し、胸の前に交差して構える。 「―――二刀流!?」 大歓声の中、彼女のフリースタイルが始まった。 863 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 36 59.97 ID vApuIb0A0 ( A`)「何なんだ、あの女・・・」 (=゚ω゚)ノ「二刀流のペン回しなんて初めて見たヨウ!」 ξ゚⊿゚)ξ「・・・」 華麗なクーの演技に、チームくそみそベンチは騒然となる。 いや、チームくそみそだけではない。 今や会場の全観客がクーのペン回しに魅了されていた。 (´・ω・`)「2P2H(2 pens, 2 hands)フリースタイルだね」 (´・ω・`)「しかも回しているのはDr.KT・・・?いや、あれは」 彼女が回しているのは国内最重量とされる「Dr.KT」。 本来ならしぃの回していたV7と同じく、 表面にはホログラムコーティングを施してあるはずなのだが。 ξ゚⊿゚)ξ「・・・ビニールテープね」 そう。このペンは光らない。 黒のビニールテープでコーティングされた、改造KTだ。 ステージ上にはスポットライトが当てられているが、 彼女の手元にだけは漆黒の闇が現出している。 川 ゚ -゚)「・・・」 左手でバックアラウンド。 右手でトルネード。 キャッチ。 観客席は、水を打ったように静まり返った。 877 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 52 26.25 ID vApuIb0A0 審判「・・・で、ではチームくそみそ次鋒、ブーン選手」 (;^ω^)「はいだお・・・」 (;^ω^)「(何なんだおこの女・・・こんなの勝てるわけないお!」 そのときベンチからチームメイトの声援が届く。 ξ゚⊿゚)ξ「あきらめないでブーン!」 ( A`)「そうだ、自分を信じろ!」 (=゚ω゚)ノ「僕たちが見守ってるヨウ!」 (´・ω・`)「勝てなかったらフリスクにハバネロの粉まぶしてぶち込むぞ」 (;^ω^)「そうだお・・・みんなが見てるのに負けるわけにはいかないお」 ( ^ω^)「せめて引き分けには持ち込むお!」 審判「では、はじめ!」 879 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 22 58 07.42 ID vApuIb0A0 ( ^ω^)「パワー全開でいくお!」 ( ^ω^)「⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーーーーーーン!!!」 ブーンの手の中で、ペンが凄まじい勢いで回り始める。 ( A`)「出だしからトリプルアクセル!?」 (´・ω・`)「よく見たまえ、ドクオ君。今のはクアドラプル(4回転)だ」 ξ゚⊿゚)ξ「そんな、締め技を最初に持ってきてどうすんのよ・・・?」 クアドラプルからいったんリバースで引き返してソニック系に入る。 4-ソニック⇒3-ソニックひねり⇒ノーマル⇒リバース⇒4-ソニック⇒3-ソニックひねり・・・ (;=゚ω゚)ノ「・・・?なんかループしてないかヨウ?」 (;´・ω・`)「まずいな。同じ技の繰り返しは減点対象になる」 ξ;゚⊿゚)ξ「(何を考えてるの、ブーン・・・?)」 ( ^ω^)「ここだお!」 その瞬間、その場にいたものは、ブーンの手の中で竜巻が起きたように見えただろう。 1回転、2回転、3回転、4回転・・・あとはわからない。 気づいたときには、再びその手の中にペンが納まっていた。 わざと単調な反復動作をはさんでの大技。 視覚的効果を最大限に利用した、技ありの一撃だった。 900 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 23 14 54.60 ID vApuIb0A0 審判「ではただ今の試合、判定を行います」 審判「判定の結果は、引き分けです」 川 ゚ -゚)「何だと!?」 血相を変えて審判に詰め寄るクー。 川 ゚ -゚)「なぜだ!?」 川 ゚ -゚)「私の方が上なのは、誰の目にも明らかだ!」 審判「技術点は確かにあなたの方が上でした」 審判「しかしあなたは試合前、ブーン選手との握手を放棄しました」 審判「また審判の合図を待たずにフリースタイルを開始してしまいました」 審判「これらの考慮点を差し引くと、ブーン選手とクー選手のポイントは同点になったのです」 ( ^ω^)「マジかお!ラッキーだお!」 川 ゚ -゚)「しかし・・・!」 905 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 23 26 07.41 ID vApuIb0A0 川 ゚ -゚)「・・・しかし、ポイントが同点とはどういうことだ!?」 (*゚ー゚)「そうですよ、審判は3人いるはずじゃないですか!」 チームメイトのしぃも応援に駆けつける。 チームくそみそ同様、彼女たちも必死なのだ。 審判「非常に申し上げにくいのですが・・・」 審判「もう一人の審判は、準決勝で観客に突き飛ばされた際に重傷を負って・・・」 川 ゚ -゚)&(*゚ー゚)「!!!」 ( ^ω^)「うはwwww観客GJだおwww」 ( A`)「その観客誰だよw」 ξ;゚⊿゚)ξ「さ、さあ・・・」 ( 826参照) 从 ー 从「もういいです」 (*゚ー゚)「しかし・・・」 从 ー 从「まだスコアは1敗1分。私が勝てば同点で再戦できますから」 川 ゚ -゚)「・・・すまない。では大将に任せる」 川 ゚ -゚)「(大将・・・頼りにしているぞ・・・)」 ゆっくりと立ち上がり、ステージに向かう大将―――渡辺さんを、 レディースのチームメイトは頼もしく見送った。 从 ー 从「あれれー、私のペンがないよー?」 川;゚ -゚)「・・・」 910 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 23 37 13.52 ID vApuIb0A0 大将戦 (=゚ω゚)ノイヨウ VS 渡辺さん从 ー 从 从 ー 从「よろしくお願いします」 (=゚ω゚)ノ「こちらこそよろしくだヨウ!」 从 ー 从「・・・準備OKです。審判さん、コールお願いします」 審判「ではチームレディース大将、渡辺選手。はじめ!」 渡辺さんの指先がゆっくりと動き出す。 使用ペンは―――。 ( ^ω^)「R.S.V.P-MXだお!かっこいいお!」 ( A`)「いよいよエースの登場、ってわけか」 (=゚ω゚)ノ「僕もほしいヨウ・・・」 (´・ω・`)「いや三人とも、よく見てくれ。あれはMXじゃない」 ξ゚⊿゚)ξ「尻側のキャップにグリップが入ってない・・・?」 (´・ω・`)「うん、よく気づいたね。あれはPentrix最初期型のV1仕様だ」 ξ゚⊿゚)ξ「(そんな時代遅れのペンをあえて使う理由・・・この女、何を企んでるの?)」 ~チームレディースベンチ~ 川 ;゚ -゚)「・・・なあ、しぃ。そこに置いてあるMXは何だ・・・?」 (;゚ー゚)「渡辺さん、間違えてV1持って行っちゃったみたいですね・・・はは・・・」 915 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 23 50 25.92 ID vApuIb0A0 从 ー 从「・・・」 渡辺さんの手の中で、ペンが回り続ける。 正確には手の中ではない。 ペン先を指先でつまむように持ち、 指と指の間をくぐらせるように動かす。 インフィニティ系統のフリースタイルだ。 ( ^ω^)「おおー、滑らかだお」 ( A`)「・・・でもなんか地味じゃねーか?」 (´・ω・`)「そうだね。最新型のMXに比べて旧式のV1は尻側が極端に軽い」 (´・ω・`)「また先端のグリップもチップも換装されておらず、指先ではつかみにくい」 (´・ω・`)「インフィニティ系のFSをするには全く向いていないペンだ」 クアドラプルインフィニティの途中から1.5-ではさんでハーフウィンドミルリバース。 その勢いに乗せて直接フィンガーレスリバース、さらにバックアラウンド。 技自体のレベルは凄い。スピードもある。 だが明らかに、旧式のペンがその勢いを鈍らせている。 (*゚ー゚)「このままじゃまずいよ、審判に頼んでペンの交換を・・・」 川 ゚ -゚)「やめろ、しぃ。ただでさえうちのチームは審判の印象が悪いんだ」 川 ゚ -゚)「(その原因を作ったのは私だがな・・・すまない)」 (*゚ー゚)「そうだね・・・今は渡辺さんを信じて待とうか・・・」 その時。渡辺さんの手から、ペンが、消えた。 917 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/28(木) 23 59 33.29 ID vApuIb0A0 確かにその瞬間。 渡辺さんの手から、ペンは「消え去った」。 (*1)))ノ「・・・!?」 (´・ω・`)「落ち着くんだ、イヨウ!ただのアイソニックだ!」 掌の裏側にペンを挟み込んで隠す技、「アイソニック」。 http //www.kitcat-tricks.net/penspinning/videos/i-sonic.wmv 普通のソニックが出来ればさほど難しい技ではない。 (;=゚ω゚)ノ「でも、でも・・・!」 从 ー 从「あれれー、私のペンがないよー?w」 その状態から、渡辺さんは、手を開いて「振って」みせた。 手の表にも。裏にも。どこにもペンはない。 完全なる、消失。 会場が、どよめきに包まれた。 925 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 00 20 06.23 ID OeYM3wKB0 (*゚ー゚)「ね、ねえ。渡辺さんはまさかこの技のために、わざと軽いV1を・・・?」 川 ゚ -゚)「わからん。昔から何を考えてるかさっぱりわからん人だ・・・」 あまりの驚きに、審判も次の言葉を発するのを忘れていた。 ξ゚⊿゚)ξ「審判!次はうちのチームの番よ!」 審判「で、では次。チームくそみそ、イヨウ選手。どうぞ」 (;=゚ω゚)ノ「・・・はいだヨウ」 (=゚ω゚)ノ「よし、気を取り直して頑張るヨウ!」 審判「では、はじめ!」 コールと同時に、イヨウの”指先”でペンが回り始める。 (;´・ω・`)「あ、あれ?」 ( ^ω^)「どうしたんだお?」 (;´・ω・`)「イヨウ君、昨日まで練習してた構成と違うんだよ・・・」 イヨウはもともとミスに弱いという欠点がある。 そのため決勝が大将戦にもつれこんだ場合、確実な「ソニック系」でつなごうと決めていた。 だが、今イヨウがやっているのは。 (*゚ー゚)「あの動き、渡辺さんと同じ・・・?」 指先をくぐらせる、「インフィニティ系」だった。 930 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 00 45 03.41 ID OeYM3wKB0 イヨウの指先を、ゆっくりとペンが渡っていく。 インフィニティリバースからフィンガーレスリバースにつなぎ、 そこからまたインフィニティリバース・・・ 川 ゚ -゚)「・・・時間稼ぎか?」 イヨウの繰り出す技はとても遅い。 ゆっくりと、しかし大きく確実な軌道で、得点と時間を稼ぐフリースタイルだ。 ξ゚⊿゚)ξ「そう、それでいいの・・・とにかく時間を稼いで」 この作戦を指示したのはツンだ。 旋回時間の長いインフィニティ系で時間を稼ぎ、 その間に先ほどのアイソニックの正体を暴く。 (´・ω・`)「相手と同じ系統の技を使うことで、何か気づくことがあるかも知れない。」 (´・ω・`)「ツンくんの作戦に賭けてみよう」 933 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 00 51 36.27 ID OeYM3wKB0 (=゚ω゚)ノ「時間稼ぎも限界だヨウ、早く何とかしてくれヨウ!」 幸いにもイヨウのペンは両端にグリップを仕込んでいるため、 渡辺さんのV1よりは技をつなげやすい。 それでも慣れない系統の技、いつミスをしてもおかしくない。 ξ゚⊿゚)ξ「考えろ・・・考えるのよ・・・さっきペンが消えた一瞬、何が起こったか・・・」 (;^ω^)「あー暑いお。アイスうまいお」 ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン、アイスなんか食べてる場合じゃないでしょ!しかも上半身裸で」 (;^ω^)「だってもう10月なのに記録的猛暑だお。ツンも脱いだ方がいいお」 ξ///)ξ「ば・・・! え? 脱ぐ?」 934 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 00 59 58.82 ID OeYM3wKB0 ステージに向かって、赤いハンカチが振られる。 時間稼ぎは終わり。ツンからの合図だ。 (=゚ω゚)ノ「合図だヨウ!」 (=゚ω゚)ノ「よーし本気でいくヨウ!」 すぐにインフィニティ系統をやめ、 予定通りソニック系中心のオーダーに切り替える。 残された制限時間で目いっぱい技を詰め込み、 アドリブで最後まで突っ走る。 3-シメトリカルソニック 3-ムーンウォークソニック⇒4-シメトリカルソニックリバース⇒・・・ フィニッシュは渋くシザースピン⇒1.2-FLスプレッド1.5で決める.! 時間ギリギリまで得点を稼ぐフリースタイルだった。 (=゚ω゚)ノ「キャッチ!終了だヨウ!」 審判「では判定に移ります・・・」 ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと待って」 942 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 01 29 31.60 ID OeYM3wKB0 ツンが渡辺さんに詰め寄る。 ξ゚⊿゚)ξ「あなた、右手の袖見せて」 从 ー 从「!」 慌てて右手を背中の後ろに隠す渡辺さん。 しかしその拍子に袖のボタンが外れ、 バラバラになったペンの部品が床に落ちた。 キャップ、ボディ、グリップ、チップ・・・全てが判別不能なまでにひび割れ傷ついている。 (=゚ω゚)ノ「なるほど、袖の中に隠してたのかヨウ!」 ξ゚⊿゚)ξ「それもそのままでは入らないから、バラバラに分解してね」 (´・ω・`)「単純なV1ならではの構造を生かした技というわけだね」 ξ゚⊿゚)ξ「単純。まったく単純ね。大体こんな暑い日に長袖着てりゃバレバレよ」 从;ー;从「ふええー・・・」 こうして渡辺さんは不正改造(ペンの破壊行為)により減点。 イヨウはかつてない高得点で文句なしの優勝を手に入れた。 从;ー 从「・・・これで、良かったんですよね?」 ???「ああ、問題ない」 渡辺さんは左手に持った無傷のV1を握り締め、軽く微笑んだ。 943 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/09/29(金) 01 30 11.76 ID OeYM3wKB0 その日の夜。 決勝戦が終わり、照明の落とされた会場を片付けていた係員が、 床に落ちている壊れた部品を拾った。 「おっ、接着剤でくっつけたら上等のV2になった。もうけた」 地区大会決勝編 おわり