約 42,572 件
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/126.html
第12回トーナメント:準決勝② No.1057 【スタンド名】 バタフライ・キッス 【本体】 壮周(ソウシュウ) 【能力】 とまった場所に蝶々型の穴を空ける オリスタ図鑑 No.1057 No.4140 【スタンド名】 ボンドガール 【本体】 ロザリンド・ルーシー・ステイル 【能力】 指先から何でも瞬間的に接着する接着剤を発射する オリスタ図鑑 No.4140 バタフライ・キッス vs ボンドガール 【STAGE:お寺】◆NUrKfv0wng 幸福とは人それぞれだ。 家族を持つことが幸福である者がいれば、 孤独こそが幸福だと言う人もいる。 また、愛こそが幸福だと言う人もいれば、 地位と名誉こそが幸福だと言う人もいる。 そして人生においてこの幸福を求める事は人間らしき欲である。 ある男はこれらの幸福を自分にとって 『ドミノ倒し』と例えていた。 真夜中の寺 一歩踏み入れる。 ギギギ、変な音がなる。これだけ綺麗にしてあるのに今にも壊れそうな音を出す床で日本人は恐ろしくないのか。彼女は心の中で呟いていた。 ロージー、改めてルーシー。 彼女は寺から出た後、玄関らしき場所に座り込んだ。 そして周囲を見渡す。何かが気になっているようだ。 まず柱を見た。その柱はとても綺麗だった。 次は畳を見た。その畳はとても綺麗だった。 思わず顔を顰める。 綺麗なのは悪い事じゃない。むしろいい事だ。 ここの住居人がいたら褒めたいところだ。そう、住居人がいたら、だ。 実はこの寺の住居人は3年前からいなくなっている。 老朽化が激しく、些細な事で壊れてしまうようま寺だという。 この情報は先日、組織の者が事前調査した結果の話だ。 柱を思いっきり殴る。しかしビクともしない。 見た感じ、大雑把な耐久チェックからして老朽化しているなど言い難い。それに彼の視力は3.0だ。見間違うわけがない。 それではどういう事か。 嘘の情報を伝えたはあり得ない、と思う。 となると、何者かが、ここを立て直した可能性があ 一体何故?そう悩んでいるとある物に目がいった。 それは寺ではならよく見かける鐘だ。誰かがそこにいる。 目を凝らして見ると鐘を・・・磨いている? 何やら白く輝く蝶のような物で磨いていた。 後ろから分かる容姿は長い長髪に帽子を被っており、恐らくあの服は唐服であろう。 唐服、確か戦う相手の普段着はそれだった話を聞いている。 名前は壮周。元テロリストであり、マフィアに所属していた。 「挑戦者か」 「!!」 壮周は鼻に乗せた小さな眼鏡を弄りながら振り向いた。 そして何故か舌打ちをした。 「解せん」 「・・・・・何が?」 「継ぎ接ぎだらけの服を着ているのか」 サッとドレスを手で抑えた。裏地が見えていたらしい。 イラっとしたがルーシーは今だけは堪えた。 「そんな物着るぐらいなら裸の方がマシではないのか 御嬢様はそんな事もできないか?」 「・・・・・」 「まあいい。そこまで言うほど汚れてはいない ・・・始めるか」 小声でそう呟くと壮周は鐘を思いっきり蹴って戦闘体制に入った。 そして彼のスタンド、【バタフライ・キッス】が人型として背後に現れた。 それと同時にルーシーも遅れをとらず【ボンド・ガール】を発現させた。 「まずは貴様の作法を見せて貰う」 壮周が左手を挙げるとスタンドの左手の表面が皮が剥けるように剥がれ、剥がれたそれが蝶となった。 「行け」 左手を前方に素早く突き出すとその突き出した速度で蝶がルーシーの元へ襲いにかかる。 「ボンド・ガールッ」 ボンド・ガールの両手を前にかざすと指先から濃く白い何かがショットガンのように放たれる。 蝶はそれらをなす術なく食らってしまい地へ落ちてしまう。 (蝶の集合体のスタンドか・・・相性は悪くないか) 「・・・ボンドか」 スタンドの身体中の蝶模様から再びリンゴの皮皮がめくれるように剥がれていき、蝶の群れを形成した。先程より数が多い。それらは一気に加速し襲い掛かってきた。 「!!」 彼女は柱の影に飛び込むように隠れると、夥しい数の蝶の群れが先程いた場所に乱暴に張り付いた。 するとそこに張り付いた蝶はまるで型抜きでパン生地をくり抜くように蝶模様の穴を生み出した。 一匹一匹の穴の深さは浅いようだが群体型だ。群れの攻撃を食らっては命はないであろう。 ルーシーは柱から顔を覗かせ様子を伺った。 壮周のスタンドは半身だけになっていたがその周りにはかなりの数の蝶がいる。先程のスタンド攻撃を思い返した。 (間違っていなければ突破するにはアレでいけるはず) 「早く表に出ろ。この壮周を倒す気はないのか?」 「・・・・・」 「仕方ない。こっちから行く」 一歩踏み出した途端に柱から影が飛び出す。 壮周は何も驚かなかった。どうせ出てくると踏んでいた。そのまま冷静に無数の蝶を飛ばしその影へ張り付いた。はずだった。 「・・・・なに?」 壮周は自分に腕を見るとそこから血が出ている。 「あなたが近距離パワー型と遠隔操作群体型の二種類のモードを持つように、私にも二種類のモードを持ってる・・・ 射程1m範囲内のボンドを自在に操る纏依装着のスタンド・・・ それが【ボンド・ガール・コーディネート!】」 そこには身体をボンドで身を包んだルーシーの姿がいた。 ボンド・ガールの纏依装着モード。両手は刃のように変幻しており、その刃には蝶の羽がついていた。 さっきの蝶は切り刻まれたのだ。 「あなたの能力は張り付いた箇所をくり抜く能力。 最初はとても厄介だと思ったわ。ボンドで射撃してもあの数を捌き切れないし殴ったら張り付かれて腕が使いものにならなくなる。 でもこのスタンドモードなら問題ない。刃をつくればいい。面積の小さい箇所には張り付きようがないわ」 ルーシーが説明した後、壮周は。 「・・・・・・・ふぅ」 息をついた。 「降参するの?」 すると壮周はしっかり目を合わせて言った。 「人は何故幸福を求めると思う?」 「・・・・は?」 この状況であまりにもふざけた事を言われたあまりに思わず声が出た。しかし彼の顔は大真面目だ 「それは己の欲が求めるからだ。 だから人間は幸せを手にする為に色んな努力を積んでいる。 小さい事でも努力を積み続ければそれは山となる。 それはその人にとって財産であり城でもある大事なものだろう」 壮周はスタンドの全身が全て蝶となり大空へと舞い上がった。 ルーシーは思わず身構えた。すごく嫌な予感がする。空にいる蝶に警戒をする。 数百匹ぐらいはいる蝶の一匹一匹の羽が『太陽の光』で輝いている。 壮周はポケットから何かをいくつか取り出す。 「だが壮周にとっては財産には見えない。城にも見えない 何故なら私にとって、」 「壊しがいのあるおもちゃにしか見えない」 突然、空が発光する。 あまりの強い閃光で全く見えなくなる。 直後、ルーシーは身体に何か押し付けられその後強い衝撃を受けた。 この光は壮周が投げたフラッシュバンによるものだ。 そしてバタフライ・キッスは視覚的な囮だ。こうすることでルーシーは空を見上げ本体の壮周から集中を逸らす事ができ、気づかれないようにフラッシュバンを投げれた。 そしてボンドの鎧を着たルーシーに向かってC4爆弾を押し込み、爆破させた。スタンド着ているとは言えこの衝撃には耐えることは無理がある。 壮周はなんと、この一連の動作を直様に思いつき実行したのであった。 「他人が努力して積み上げたものを崩して楽しむ。 例えるならば【ドミノ倒し】だな。 まあその崩して楽しむのは、この壮周だけだがな」 独り言を言った後、 気絶して横たわる彼女を男は歩み寄り見下ろしていた。 ★★★ 勝者 ★★★ No.1057 【スタンド名】 バタフライ・キッス 【本体】 壮周(ソウシュウ) 【能力】 とまった場所に蝶々型の穴を空ける オリスタ図鑑 No.1057 < 第12回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/115.html
第11回トーナメント:準決勝① No.6741 【スタンド名】 オネスト・ウィズ・ミー 【本体】 秘森 セレナ(ヒモリ セレナ) 【能力】 本体の予言が当たるたびに強くなる オリスタ図鑑 No.6741 No.5394 【スタンド名】 Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!! 【本体】 仰木 健聡(オオキ ケンソウ) 【能力】 体液に衝撃を込める オリスタ図鑑 No.5394 オネスト・ウィズ・ミー vs Make Some Noizeee…e!!!! 【STAGE:夕日が差す展望台】◆dMoz/OKkYY 昼を過ぎた頃の暖かい陽光が差し込む部屋。 品のあるアンティークの小物や調度品が並んでおり、この部屋の住人の几帳面さを表している。 占い師・秘森セレナは自室の机に向かい、息を整えた。 目を閉じ、意識を集中させ、これから行う行為について、一切の妥協を許さないことを心に誓う。 彼女の前の机には、少し大きめのカードが何枚か重ねて置かれてるだけだった。 とても年季の入ったカードで、紙質は変化し、変色もしていた。 しかし、「汚い」という印象ではない。長い間使われ続け、使い手の「手」に馴染んでいる証拠だ。 セレナはそのカードを手に取り、一枚一枚丁寧に並べ始めた。 『タロットカード』。 占いの中では基本中の基本である。 彼女は数多ある占いの中から、その「基本」に立ち返るようにこの方法を選んだ。 セレナが彼女の師匠から、最初に教わった占いだった……… 22枚のタロットカードを幾何学模様に並べ、そこから一枚を引く。 普通、タロット占いではカードを何枚か引き、その関連性から結果を導き出すのだが、今回はルールを変えた。 運命はひとつだけ…………ならばカードも一枚だけ引こう、と。 セレナは再び目を閉じ、しばし瞑想する。 都会の外れにあるこの部屋の中で、彼女は運命を見据え、世界を感じた。 これからの恐怖を取り除き、過酷な現実に立ち向かうために必要な「夢」だった。 彼女は目を開け、カードのひとつに手を伸ばす。 そして手に取った一枚のカードを裏返し、絵柄を確認した。 「…………」 セレナはじっとその絵を見続けた。 これから起こる「戦い」について、このカードが全てを掌握しているように感じていた。 やがて、セレナは微笑んだ。 彼女はそのカードをポケットに仕舞い、他のカードを片付けた。 戦いが終わるまで、この引いたタロットを持っておこうと思っていた。 10分後には、部屋はもぬけの殻になっていた。 部屋の主は、「戦い」の場所に向かった。 セレナが引いたカード、それは「完成」と「約束の成就」を示す、正位置大アルカナ21番・【世界(The World)】であった。 潮風が吹くその場所は思ったより暖かく感じられた。 気温が高めなのもあったが、橙色になりつつある陽が周囲を染め始めているせいもあった。 セレナは自宅の最寄り駅から電車を乗り継ぎ、1時間半かけてこの場所まで来た。 試合の場所にたどり着くだけで少々くたびれ気味だったが、この試合に「甘え」は許さない。 目的の展望台は、海岸に面した岬の上にあった。 柵はあるものの、それを乗り越えた先の断崖絶壁から落ちたらひとたまりもなさそうだ。 展望台は広場のように整備されており、備え付けの双眼鏡や石碑が設けられている。 セレナが着いたとき、既に2人の人物が彼女の到着を待っていた。 片方はまだ幼さの残る少年、もう一人は浮浪者のようにボロボロの服を何枚も纏った男だった。 他の人影は誰一人として存在しない。 恐らく、試合の途中に部外者が入ってくることもないだろう。 「遅れました。【秘森セレナ】です」 セレナはすぐ、浮浪者のような男に話しかけた。 「大変失礼しました!秘森セレナ様ですね」 男は急に話しかけられ、驚いたようだった。 セレナには彼が浮浪者でないことを知っていた。 動作がしっかりしており、かつ若い。さらによく見ると、眉毛や髪は整えられている。 そして彼の身体からは、高級な男性用の香水の匂いが微かに漂ってきていた。 セレナの常連客の中に、同じ匂いを発する富豪の息子がいるからすぐに分かった。 理由は分からないが、多分ファッションの一環としてこういった服を敢えて着ているのだろう、と思った。 「わたしは今回の試合の立会人を務めさせていただきます、【阿武隈渡(アブクマ ワタル)】と申します……」 立会人がうやうやしくお辞儀をする。 彼の肩越しには、少年がセレナの方をじっと見ていた。 ぱっと見ただけでは普通の少年だが、その瞳の色ははカラスの羽根のようにどす黒く不気味だった。 あいつが対戦相手なのか……セレナの心が少しだけ翳(かげ)る。 「それではルールの説明をさせていただきます………」 渡が2人に向かって言い始めた。 「ちょっと待って!」 突然少年が渡の言葉を遮った。 「どうかいたしましたか?仰木健聡さま」 「ルールって、僕達が決めてもいいんだよね?」 「その通りでございます……」 「じゃあさ、ちょっと時間くれない?」 「かしこまりました」 健聡と呼ばれた少年はセレナの方へ近づいてきた。 「仰木健聡っていいます、仰ぐ木に、健康の健とみみへんの聡(サトシ)で健聡。よろしくお姉さん」 「秘森セレナです……よろしく」 「あのさ、お姉さんは今回……勝ちたい?」 「……え?」 「僕に勝利を譲ってくれたりしないかな~、なんて」 健聡はいきなり大胆な事を言い出した。 挑発のつもりだろうか?真面目に答えるべきなのか? セレナはゴクリと唾を飲んだ。 「………」 セレナは改めて自分がこのトーナメントに参加した理由を考えた。 (私は……そう……) 師匠との約束を果たすため…… このトーナメントに望んだのだ。 「それは不可能ね……」 「そっか~、じゃあ交渉決裂ってことで……【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】!!」 「!!」 全身に口がついた近距離型のスタンドがセレナに迫った。 「【オネスト・ウィズ・ミー】!」 空間が震えるような轟音を立てて2つのスタンドがぶつかり合う。 健聡はすぐにスタンドを退かせ、後ろに飛び退いた。 「お姉さんも近距離パワー型か……やっぱり近づくと危ないな」 「健聡くん……アナタ、あんまり後先考えずに行動しちゃうタイプでしょう?」 「あぁ……よくそう言われるよ」 「ねぇ健聡くん、アナタ占いは信じる?」 「占い?……そうだな~、信じるよ。僕にとって都合のいい結果だけね!」 健聡はそう言うと、スタンドに整備された地面を殴らせた。 その圧倒的な破壊力によって、地面に1mほどの穴が空き、瓦礫が飛び散る。 「じゃあ中距離戦開始だ!」 【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】は、飛び散った瓦礫を空中でそのままラッシュによって弾き飛ばす。 細かくなったコンクリートの破片が、散弾のようにセレナに襲いかかる。 「……」 『WRYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』 怯まず、セレナは【オネスト・ウィズ・ミー】に破片を弾かせた。 弾き出された勢いで、無数の破片が遥か遠くに飛んでいく。 「へぇ、結構素早いんだね、お姉さんのスタンド……でも、周りをよく見なきゃダメだよ」 「……うっ!」 突然セレナの肩に、何かが落ちてきた。 ベチャッという音を立てて、液体が顔と肩にかかった。 セレナがそれに気を取られた瞬間、コンクリートの散弾が何発か彼女の身体に命中した。 「ああああッ!!」 大きさも重さも不揃いなコンクリートが、セレナの身体に勢いよくめり込んだ。 セレナはその衝撃で後ろにふっ飛ばされた。 「僕はお姉さんだけを狙ってなかった。【カモメ】を撃ち落としたんだよ。お姉さんの気を逸らすためにね」 「ぐ……!」 何発当たっただろうか。 全身が、内部まで熱い。 大量に出血はしていないから、急所には当たっていないのだろう。 しかし、思うように身体を動かすことはできなくなっていた。 (まだ……まだ戦える…この程度で……!) セレナは力を込めて身体を起こす。 目に入る夕日の色が頭の中をグチャグチャにかき回しているように思えた。 「ハァー……ハァー……」 「お姉さん、かなり重傷っぽいよ?もう降参する?」 「まだ……いけるわ」 フラフラのままセレナは立ち上がろうとする。 力を込めるほど、身体の軸がブレてふらついてしまうように感じられた。 だが、ここで力を込めないわけにはいかなかった。 「私には……【覚悟】がある!」 そう言ったセレナは二本の足に全力を込め、健聡に向かって突進した。 「【オネスト・ウィズ・ミー】!!」 「そんなに傷ついたままで……僕に勝てるとでも?【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】!!」 セレナと健聡が互いの射程内に最接近する。 その瞬間、【オネスト・ウィズ・ミー】のパンチが暴風雨のように浴びせられた。 「!?このパワーはッ!」 健聡の【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】はスピードこそ難があるが、破壊力は文句なしだ。 ほとんどのスタンドを一撃で捻じ伏せられる自身がある。 しかし、今まさに攻撃してきているセレナのスタンドは、これまで味わったことがないほどのパワーとスピードで押してきていた。 ダンプカーかロードローラーか、そういう重機が束になって押し寄せるような力だった。 健聡は何とか攻撃を防いでいるが、どんどん後ろに追いやられていた。 「まずいッ!」 彼は今まで、夕日と断崖絶壁を背負って戦っていた。 つまりこのまま押されると…… 「や……やめろ!」 「うおおおおおおおおおおおおおお!!」 セレナは前を見ないで猛進してきている。 このまま、限界まで健聡を押し切るつもりだ。 ――――― ――― 「占い」とは何のためにあるのか。 セレナが師匠から教わったことだ。 占いは近い未来を予想して計画を立てる「推測」とは違う。 山勘で将来を左右させる「博打」でもない。 「占い」とは【安心】を得るためにある。 視えた未来を正直に受け容れ、伝えることで、それが【安心】に繋がる。 たとえ悪い未来が見えたとしても、自分の運命を【覚悟】として受け容れれば、結果的に心は安らかになるのだ。 だから、占いの結果を偽ってはならない。 この世で最も正直な占い師であれ。 そう、師匠から教わった。 ――― ――――― 「私のスタンドは、予言を当てるたびに強くなる!占いっていうのは、どんな物でもできるのよ。手相や人相……お茶の飲みカスで占う方法だってあるッ! 私は、ここに来る途中5回の占いを成功させた!そしてここでさらに3回!立会人の素性を見破り、アナタの性格を言い当てた!アナタのスタンドが近距離型ってことも分かったわ!わざわざ近づいてくる辺り、怪しかったものね!」 「占い……だと!?」 健聡は、自分から墓穴を掘っていたことに気付いた。 さっき自分が名乗った時、漢字まで教えてしまったことだ。 恐らくプロの占い師なのであろう彼女に、即席の姓名判断をさせてしまったのだ。 そうこうしているうちに、健聡の真後ろに鉄柵が迫っていた。 「うわッ!」 破壊音を立てて、頑丈な柵があっさりと破られた。 まるで主を通す玄関の扉のように、すんなりと開いた。 「降参しなさい!そうしないとアナタをこのまま突き落とすッ!」 健聡の背後、5mほどの場所に崖が迫る。 それでも勢いを落とさず、セレナは健聡にラッシュを浴びせ続けていた。 「くっそオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 健聡は叫びながら、ポケットから飛び出しナイフを取り出した。 「降参はしないッ!だったら僕も……【覚悟】を決めてやるゥゥゥ!!」 健聡がそう言った時、セレナは決心した。 『WRRRRRRRRRYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』 【オネスト・ウィズ・ミー】は、夕日に染まる海に向かって健聡とそのスタンドを思いっきり弾き出した。 足場を失った健聡は、そのまま奈落の底に落ちていく…… はずだった。 「!!」 次の瞬間セレナが見たものは、健聡の背中から血しぶきが発生している光景だった。 橙色の夕日が淡く見えるほど、深紅に染まった血。 さながら、健聡の背中から血の翼が生えたように見えた。 「【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】!!!殴られた衝撃を逆噴射しろオオオオオオオオ!!」 健聡の声とともに、彼の身体が跳ね返るようにグンと前進した。 崖の下に落ちたのは、血の着いた健聡のナイフだけだった。 「そして……お前が落下するんだアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 「………」 セレナの頭上を飛び越し、健聡は展望台の方向に戻る。 その途中で、彼はセレナを足蹴りにし、バランスを崩させた。 もはやセレナに、踏ん張る力など無かった。 「…………」 「ハァー……ハァー……」 セレナは落下しなかった。 崖につかまってぶら下がっている。 しかし、傷だらけのセレナに這い上がる力は残っていない。 「ど……どうする?お姉さん。降参したら、助けてあげるけど?」 「……私は」 セレナは潮風に飛ばされそうな囁き声で言った。 「私は自分の運命を知っている。私は『勝った』の」 「どういうことだッ!……アナタの触れている部分には僕の血が付いているんだ!能力を発動したら『ナイフに刺される衝撃』が指先を襲うぞ!アナタはもう勝利する見込みが無いッ!」 「……いいの。私は…約束を果たしたわ。降参するつもりはない。だから構わずやっちゃって」 「………!」 セレナの言ったことはハッタリではなかった。 【覚悟】している。 自分の運命を知っている態度だ。 「ウオオオオオオオオ!!【Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!!】」 能力を発動した瞬間、セレナが自らを支える手を離した。 そして一言も悲鳴を発することなく、まるで浮遊するかのような体勢で、荒波が渦巻く崖の下に落ちていった。 「ハァー……ハァー……」 「お疲れ様でした仰木様。貴方の勝利でございます」 立会人の阿武隈渡が健聡のもとに歩いてきた。 「……どうも…」 「怪我は大丈夫でしょうか?救急隊を呼びましょう」 「いや、大丈夫だよ……見た目は豪快だったけど、大して傷は深くない」 「ところで、これは仰木様の物でございましょうか?先ほどスタンドが押されていた時に、どちらかが落とされたのだと思いますが……」 「ん……?」 渡が、健聡に何かを差し出してきた。 「何これ……知らないよ。あのお姉さんのじゃない?」 「タロットカードのようですね。【ザ・ワールド】……完成と成就を表すカードです」 「タロット……?」 健聡はそのカードをまじまじと見つめた。 その絵の人物は、運命を全て見透かしているかのような表情をしていた。 健聡はカードを受け取ると、ヒョイと裏返した。 「……え?」 そこには、信じられないことが書き込まれてあった。 「……これは…!」 さすがの立会人も、驚きを隠せない様子だった。 【決勝戦のご武運をお祈りしています。 Serena】 「嘘でしょ……どういうこと!?」 「……あの方は腕利きの占い師だったようですが、まさか……」 つまり、こういうことだ。 占い師・秘森セレナは、この場所に来る前に、『まだ見ぬ対戦相手』すなわち『健聡のために』、タロット占いを行なっていた。 そして健聡にとって、この良い知らせを示すカードが出た。 要するに、セレナは『自分が負けることを知りながら』この戦いに臨んだのである。 「………」 健聡は口を開けたまま、【世界】のカードを見続けた。 そして渡に向かって言った。 「これ……僕がもらっておくよ」 「わかりました」 「決勝戦のお守りにしよう。僕は占いを信じるからね……」 その日、もう一つ渡が驚いたことは、セレナが生きていたことだった。 遺体を回収しに行こうとしたところ、そこには岩につかまって呆然としているセレナの姿があったのだ。 恐らく、落下する瞬間に無意識にスタンドが岩を殴り、スピードを緩めたのだろう。 占い師という儚げな仕事とは裏腹な「したたかさ」を、渡は彼女に感じた。 救急隊によってセレナが運びだされる時、セレナに話しかけた。 「落下する前に貴女は『勝った』とおっしゃっていましたが……あれはどういった意味で?」 「……そんなに深い意味はないわ。『試合に負けて勝負に勝つ』みたいな意味よ」 「確かに……仰木様は相当驚いていたようですが」 「それもあるけど、私と師匠との『約束』よ。ある意味、叶ったからね……ふふふ」 「約束……?」 渡はそう問いかけたが、彼女からこれ以上聞き出すのは野暮なことだと感じた。 どちらにせよ、セレナは満足そうだった。 日が沈み、展望台には静かな灯りがともり始めた。 ★★★ 勝者 ★★★ No.5394 【スタンド名】 Make Some Noizeeeeeeeeeeeeeee!!!! 【本体】 仰木 健聡(オオキ ケンソウ) 【能力】 体液に衝撃を込める オリスタ図鑑 No.5394 < 第11回:準決勝② > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/shortll/pages/19.html
バンクーバー五輪 男子1500m 準決勝 バンクーバー五輪 男子1500m 準決勝 各組6名中上位2名が決勝(A決勝)に進出する。3位と4位は順位決定戦(B決勝)に進出する。 Q=A決勝進出、QB=B決勝進出、Adv=救済措置によりA決勝進出、DQ=失格 OR=オリンピック新記録、WR=世界新記録 また、スタートリストにある「枠」というのは、スタート位置を意味する。 数字が小さいほど内側からのスタート。 Semifinal1 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Lee Jung-Su イ・ジョンス 20 韓国 1位 2 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ 28 イタリア 15位 欧州選手権1位,トリノ14位 3 Sjinkie Knegt シンキー・クネフト 20 オランダ 23位 欧州選手権5位 4 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン 25 カナダ 2位 トリノ4位 5 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ 27 アメリカ 5位 ソルトレーク金 6 Peter Darazs ピーター・ダラズ 24 ハンガリー 25位 トリノ11位 7 Jumpei Yoshizawa 吉沢 純平 24 日本 30位 チャールズ・ハメリンが予選2位通過であったこともあり、なんと 金メダル候補が3人も揃うという事態に。 トップランカーのイ・ジョンス、地元カナダのエースハメリン、ソルトレークの覇者オーノ。 この中から1人は決勝に進むことすらできない、緊張のレース。 他4人はどれだけついていけるか。筆頭格はヨーロッパチャンピオンのロディガリか。 <レース展開> 吉沢が先頭に立ち、カナダのハメリン、韓国のイ・ジョンス、イタリアのロディガリと続く。 ライバルが前へ行く中、アメリカのオーノはまずは最後方に位置取る。 やはりこの強豪ひしめく混戦。有力選手が積極的に動いてくる。 残り11周で地元カナダのハメリン先頭に。しかし10周で韓国のイ・ジョンス先頭。 また残り9周でオーノが3番手まで上がってきて、早くも3強が前の3人に。 終盤一気に追い抜く、なんていう芸当ができる相手ではないと見たのだろう。 そして欧州王者ロディガリが4番手。 その後先頭をカナダのハメリンと韓国のイ・ジョンスが激しく争うが、 結局イ・ジョンスが守りきって一旦争いは落ち着く。 このまま終わるのか?と思った残り1周半。3番手のオーノが外から仕掛け気味に動く。 しかしハメリンは2番手を譲らない。すると!今度は残り1周で内に進路を切り換え 2番手のハメリンをついに交わす!同時に先頭のイ・ジョンスも交わしたが若干の接触。 イ・ジョンスは両手を上げて妨害を受けたとアピールしつつ、余裕で先頭を奪い返す。 そしてこのままゴール。オーノはガッツポーズ。 <結果> 1着 Lee Jung-Su イ・ジョンス 韓国 2.10.949(OR) Q 2着 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ アメリカ 2.11.072 Q 3着 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン カナダ 2.11.225 QB 4着 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ イタリア 2.11.402 QB 5着 Sjinkie Knegt シンキー・クネフト オランダ 2.13.870 6着 Jumpei Yoshizawa 吉沢 純平 日本 2.15.129 7着 Peter Darazs ピーター・ダラズ ハンガリー 2.18.349 2分10秒。予選で自身が出したオリンピックレコードをさらに大幅に更新する走り。 これに最後までついていった上位4人はどれも本当に素晴らしいと言えよう。 今回のオリンピックの男子1500mのレースの様子は、4年前からすると一変した。 4年前までは、1500mというと、スタート直後はかなりスローで流れていき、 中盤あたりで誰かが仕掛けてペースを引き上げる、という展開が普通であった。 しかし今回は、スタート直後から一定以上の速いペースで進んでいく。 まるで500mや1000mの延長線上であるかのように皆が滑っていく。 オリンピックレコードの頻発にはこんな背景もあるだろう。 ところで、オーノとイ・ジョンスの接触については、審判の審議の末お咎めなしに。 正直ギリギリだったと思うwオーノは涼しい顔をしていたけれども、たぶんポーズw なんというか、失格にされないオーラを持っているような気がするwさすがスター。 一方、地元の期待を一身に背負ったハメリンは悔しい敗北。4年前の結果を越えられず。 Semifinal2 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Olivier Jean オリビエ・ジャン 25 カナダ 11位 2 Lee Ho-Suk イ・ホソク 23 韓国 4位 世界選手権1位,トリノ銀 3 Jack Whelbourne ジャック・ウェルボーン 18 イギリス 41位 4 Liang Wenhao 梁 文豪 17 中国 - 5 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス 29 ドイツ 31位 トリノ21位 6 Pieter Gysel ピーター・ギセル 29 ベルギー 9位 トリノ準決勝失格 7 Jean Charles Mattei ジャン・シャルル・マティー 27 フランス 40位 トリノ24位 1組とは打って変わって、ここはトリノの銀メダリスト、イ・ホソクの一人勝ちムードが漂う組み合わせに。 他の選手は決勝を狙うチャンスと言えよう。特に世界ランク一ケタのベルギーのギセルや 地元カナダの2番手選手のジャン、ダークホース的存在の中国17歳梁文豪などが注目どころか。 <レース展開> 最有力のイ・ホソクが後方2番手に控える中、先頭は序盤から カナダのジャン、中国の梁、ベルギーのギセルと次々変わっていく。 ギセルが先頭に立ったところでかなりペースが上がってきたため、 このままギセル→梁文豪→ジャンという隊列でしばらく落ちつく。 残り5周。ジャンが仕掛け、外から一気に前を狙う。 しかし、それを察知した前のギセルと梁がペースを引き上げ、ジャンはなかなか順位を上げられない。 そんな中さらに後方からフランスのマティーも仕掛けてきたが、カーブでバランスを崩して転倒。 その転倒したマティーに足を引っ掛けて、ジャンも転倒してしまう。 このアクシデントをきっかけにレースが動き、残り3周、今度はインから イギリスの伏兵・ウェルボーンが一気に3人交わして先頭に踊り出る。 そしてここでついにイ・ホソクが仕掛ける。もの凄いスピードで外外を周り、 残り2周で早くも先頭に。それに合わせる形でギセルもインから2番手に上がり、 決勝進出圏内への粘りこみを図る。 ところが、もう一人凄い勢いで外から捲ってきた選手がいた。中国の梁文豪だった。 あっという間にギセルを捉え、悠々と2番手に上がっていく。 こうして群雄割拠の大混戦に決着が着いた。 <結果> 1着 Lee Ho-Suk イ・ホソク 韓国 2.14.833 Q 2着 Liang Wenhao 梁 文豪 中国 2.15.453 Q 3着 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス ドイツ 2.16.240 QB 4着 Pieter Gysel ピーター・ギセル ベルギー 2.16.249 QB 5着 Jack Whelbourne ジャック・ウェルボーン イギリス 2.17.156 6着 Olivier Jean オリビエ・ジャン カナダ 2.32.358 Adv 7着 Jean Charles Mattei ジャン・シャルル・マティー フランス 2.36.291 抜けた選手が1人だけだっただけに、 各選手の、何としても決勝進出を狙ってやると言う意識が顕著に見えたレースだった。 その中で1枚上手だったのが梁文豪だった。まだ17歳。非常に楽しみな選手である。 ベルギーのギセルは結局ラストはバテて、終始後方にいたドイツのプラウスにまで交わされてしまった。 一方、オリビエ・ジャンは2番手に上がろうかどうかという所での転倒で、救済されるか 微妙なところかと思われたが、救済措置が適用。地元カナダ陣営としては救われたところだろう。 Semifinal3 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 J.R. Celski J・R・セルスキー 19 アメリカ - 世界選手権3位 2 Liu Xianwei 劉 顕偉 22 中国 26位 3 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ 23 イタリア 8位 4 Sung Si-Bak ソン・シバク 22 韓国 3位 W杯第一戦1位 5 Haralds Silovs ハラリド・シロフス 23 ラトビア 13位 6 Takahiro Fujimoto 藤本 貴大 24 日本 - 7 Niels Kerstholt ニール・ケルストホルト 26 オランダ 27位 欧州選手権3位,トリノ10位 ここは予選1位通過の韓国のソン・シバクとイタリアのコンフォルトラ、そして 超強豪ながらこれが大怪我からの復帰戦という不安があるアメリカの19歳セルスキーが登場。 その他、トリノでB決勝まで進んだケルストホルト、一昨年の欧州総合チャンピオンのシロフスなど。 <レース展開> 中国の劉顕偉、オランダのケルストホルト、アメリカのセルスキーの3人による先頭争いが序盤から激しく起こる。 一方韓国のソン・シバクとイタリアのコンフォルトラの2有力選手は最後方に待機。仕掛けどころを伺う形に。 残り6周半でセルスキーが外から先頭に立って勝負に出る。ようやく隊列が固まる。 以下、劉顕偉、さらにラトビアのシロフスと続く。ソン・シバクはここでインをついて4番手に上がる。 イタリアのコンフォルトラも徐々に徐々に前へと進出加減。 日本の藤本は最後方からインをつき5番手に上がるも、誰かに接触してしまいまた最後方に落ちる。 残り2周。ソン・シバクが今度は外を回って位置を上げ、セルスキーの後ろ、2番手に入ろうとする。 負けじとイタリアのコンフォルトラは内をついて2番手に上がり、ソン・シバクをブロック。 しかしソン・シバクは落ち着いて、このセルスキーとコンフォルトラの間の僅かな隙間に入り込み、2番手奪取。 3番手となってしまったコンフォルトラは前の二人を必死で追いかけ、 最後ゴール前外から食らいつくも届かず。ゴール前でソン・シバクはセルスキーも交わして1着フィニッシュ。 <結果> 1着 Sung Si-Bak ソン・シバク 韓国 2.13.585 Q 2着 J.R. Celski J・R・セルスキー アメリカ 2.13.606 Q 3着 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ イタリア 2.13.645 QB 4着 Haralds Silovs ハラリド・シロフス ラトビア 2.14.009 QB 5着 Liu Xianwei 劉 顕偉 中国 2.14.500 6着 Takahiro Fujimoto 藤本 貴大 日本 2.15.984 7着 Niels Kerstholt ニール・ケルストホルト オランダ 2.16.352 この有力3選手の死闘は、バンクーバー五輪でも屈指の好レースだったと思う! 中でも怪我の影響を感じさせないセルスキーの滑りは素晴らしかった。 また、これで準決勝は全て韓国選手が1位通過という結果になり、決勝も大いに期待されるところ。 4番手争いは、ずっと積極的に前を滑っていた劉は最後失速し、シロフスがB決勝に進出することとなった。 Semifinals → B Final 3着 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン カナダ 2.11.225 QB 4着 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ イタリア 2.11.402 QB 3着 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ イタリア 2.13.645 QB 4着 Haralds Silovs ハラリド・シロフス ラトビア 2.14.009 QB 3着 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス ドイツ 2.16.240 QB 4着 Pieter Gysel ピーター・ギセル ベルギー 2.16.249 QB 以上6名が順位決定戦(8-13位決定戦)へ進出。 Semifinals → A Final 1着 Lee Jung-Su イ・ジョンス 韓国 2.10.949(OR) Q 2着 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ アメリカ 2.11.072 Q 1着 Sung Si-Bak ソン・シバク 韓国 2.13.585 Q 2着 J.R. Celski J・R・セルスキー アメリカ 2.13.606 Q 1着 Lee Ho-Suk イ・ホソク 韓国 2.14.833 Q 2着 Liang Wenhao 梁 文豪 中国 2.15.453 Q 6着 Olivier Jean オリビエ・ジャン カナダ 2.32.358 Adv 以上7名が決勝へ進出。
https://w.atwiki.jp/shorttrackss/pages/31.html
バンクーバー五輪 男子1500m 準決勝 バンクーバー五輪 男子1500m 準決勝 各組6名中上位2名が決勝(A決勝)に進出する。3位と4位は順位決定戦(B決勝)に進出する。 Q=A決勝進出、QB=B決勝進出、A=救済措置によりA決勝進出、DSQ=失格 OR=オリンピック新記録、WR=世界新記録 また、スタートリストにある「枠」というのは、スタート位置を意味する。 数字が小さいほど内側からのスタート。 Semifinal1 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Lee Jung-Su イ・ジョンス 20 韓国 1位 2 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ 28 イタリア 15位 欧州選手権1位,トリノ14位 3 Sjinkie Knegt シンキー・クネフト 20 オランダ 23位 欧州選手権5位 4 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン 25 カナダ 2位 トリノ4位 5 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ 27 アメリカ 5位 ソルトレーク金 6 Peter Darazs ピーター・ダラズ 24 ハンガリー 25位 トリノ11位 7 Jumpei Yoshizawa 吉沢 純平 24 日本 30位 チャールズ・ハメリンが予選2位通過であったこともあり、なんと 金メダル候補が3人も揃うという事態に。 トップランカーのイ・ジョンス、地元カナダのエースハメリン、ソルトレークの覇者オーノ。 この中から1人は決勝に進むことすらできない、緊張のレース。 他4人はどれだけついていけるか。その筆頭格はヨーロッパチャンピオンのロディガリか。 <レース展開> 吉沢が先頭に立ち、カナダのハメリン、韓国のイ・ジョンス、イタリアのロディガリと続く。 ライバルが前へ行く中、アメリカのオーノはまずは最後方に位置取る。 やはりこの強豪ひしめく混戦。有力選手が積極的に動いてくる。 残り11周で地元カナダのハメリン先頭に。しかし10周で韓国のイ・ジョンス先頭。 また残り9周でオーノが3番手まで上がってきて、早くも3強が前の3人に。 終盤一気に追い抜くなんていう芸当ができる相手ではないと見たのだろう。 そして欧州王者ロディガリが4番手。 その後先頭をカナダのハメリンと韓国のイ・ジョンスが激しく争うが、 結局イ・ジョンスが守りきって一旦争いは落ち着く。 このまま終わるのか?と思った残り1周半。3番手のオーノが外から仕掛け気味に動く。 しかしハメリンは2番手を譲らない。すると!今度は残り1周で内に進路を切り換え 2番手のハメリンをついに交わす!同時に先頭のイ・ジョンスも交わしたが若干の接触。 イ・ジョンスは両手を上げて妨害を受けたとアピールしつつ、余裕で先頭を奪い返す。 そしてこのままゴール。オーノはガッツポーズ。 <結果> 1着 Lee Jung-Su イ・ジョンス 韓国 2.10.949(OR) Q 2着 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ アメリカ 2.11.072 Q 3着 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン カナダ 2.11.225 QB 4着 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ イタリア 2.11.402 QB 5着 Sjinkie Knegt シンキー・クネフト オランダ 2.13.870 6着 Jumpei Yoshizawa 吉沢 純平 日本 2.15.129 7着 Peter Darazs ピーター・ダラズ ハンガリー 2.18.349 2分10秒。予選で自身が出したオリンピックレコードをさらに大幅に更新する走り。 これに最後までついていった上位4人はどれも本当に素晴らしいと言えよう。 今回のオリンピックの男子1500mのレースの様子は、4年前からすると一変した。 4年前までは、1500mというと、スタート直後はかなりスローで流れていき、 中盤あたりで誰かが仕掛けてペースを引き上げる、という展開が普通であった。 しかし今回は、スタート直後から一定以上の速いペースで進んでいく。 まるで500mや1000mの延長線上であるかのように皆が走っていく。 オリンピックレコードの頻発にはこんな背景もあるだろう。 ところで、オーノとイ・ジョンスの接触については、審判の審議の末お咎めなしに。 正直ギリギリだったと思うwオーノは涼しい顔をしていたけれども。 なんというか、失格にされないオーラを持っているような気がするwさすがスター。 一方地元の期待を一身に背負ったハメリンは悔しい敗北。4年前の結果を越えられず。 Semifinal2 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 Olivier Jean オリビエ・ジャン 25 カナダ 11位 2 Lee Ho-Suk イ・ホソク 23 韓国 4位 世界選手権1位,トリノ銀 3 Jack Whelbourne ジャック・ウェルボーン 18 イギリス 41位 4 Liang Wenhao 梁 文豪 17 中国 - 5 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス 29 ドイツ 31位 トリノ21位 6 Pieter Gysel ピーター・ギセル 29 ベルギー 9位 トリノ準決勝失格 7 Jean Charles Mattei ジャン・シャルル・マティー 27 フランス 40位 トリノ24位 1組とは打って変わって、ここはトリノの銀メダリスト、イ・ホソクの一人勝ちムードが漂う組み合わせに。 他の選手は決勝を狙うチャンスと言えよう。特に世界ランク一ケタのベルギーのギセルや 地元カナダの2番手選手のジャン、ダークホース的存在の中国17歳梁文豪などが注目どころか。 <レース展開> 最有力のイ・ホソクが後方2番手に控える中、先頭は序盤から カナダのジャン、中国の梁、ベルギーのギセルと次々変わっていく。 ギセルが先頭に立ったところでかなりペースが上がってきたため、 このままギセル→梁文豪→ジャンという隊列でしばらく落ちつく。 残り5周。ジャンが仕掛け、外から一気に前を狙う。 しかし、それを察知した前のギセルと梁がペースを引き上げ、ジャンはなかなか順位を上げられない。 そんな中さらに後方からフランスのマティーも仕掛けてきたが、カーブでバランスを崩して転倒。 その転倒したマティーにジャンも足を引っ掛けて転倒してしまう。 このアクシデントをきっかけにレースが動き、残り3周、今度はインから イギリスの伏兵・ウェルボーンが一気に3人交わして先頭に踊り出る。 そしてここでついにイ・ホソクが仕掛ける。もの凄いスピードで外外を周り、 残り2周で早くも先頭に。それに合わせる形でギセルもインから2番手に上がり、 決勝進出圏内への粘りこみを図る。 ところが、もう一人凄い勢いで外から捲ってきた選手がいた。中国の梁文豪だった。 あっという間にギセルを捉え、悠々と2番手に上がっていく。 こうして群雄割拠の大混戦に決着が着いた。 <結果> 1着 Lee Ho-Suk イ・ホソク 韓国 2.14.833 Q 2着 Liang Wenhao 梁 文豪 中国 2.15.453 Q 3着 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス ドイツ 2.16.240 QB 4着 Pieter Gysel ピーター・ギセル ベルギー 2.16.249 QB 5着 Jack Whelbourne ジャック・ウェルボーン イギリス 2.17.156 6着 Olivier Jean オリビエ・ジャン カナダ 2.32.358 A 7着 Jean Charles Mattei ジャン・シャルル・マティー フランス 2.36.291 抜けた選手が1人だけだっただけに、 各選手の、何としても決勝進出を狙ってやると言う意識が顕著に見えるレースとなったと思う。 その中で1枚上手だったのが梁文豪だった。まだ17歳。非常に楽しみな選手である。 ベルギーのギセルは結局ラストはバテて、終始後方にいたドイツのプラウスにまで交わされてしまった。 一方、オリビエ・ジャンは2番手に上がろうかどうかという所での転倒で、救済されるか 微妙なところかと思われたが、救済。地元カナダ陣営としては救われたところだろう。 Semifinal3 <スタートリスト> 枠 選手名(英語表記) 選手名(日本語) 年齢 国名 世界ランク その他の情報 1 J.R. Celski J・R・セルスキー 19 アメリカ - 世界選手権3位 2 Liu Xianwei 劉 顕偉 22 中国 26位 3 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ 23 イタリア 8位 4 Sung Si-Bak ソン・シバク 22 韓国 3位 W杯第一戦1位 5 Haralds Silovs ハラリド・シロフス 23 ラトビア 13位 6 Takahiro Fujimoto 藤本 貴大 24 日本 - 7 Niels Kerstholt ニール・ケルストホルト 26 オランダ 27位 欧州選手権3位,トリノ10位 ここは予選1位通過の韓国のソン・シバクとイタリアのコンフォルトラ、そして 超強豪ながらこれが大怪我からの復帰戦という不安があるアメリカの19歳セルスキーが登場。 その他、トリノでB決勝まで進んだケルストホルト、一昨年の欧州総合チャンピオンのシロフスなど。 <レース展開> 中国の劉顕偉、オランダのケルストホルト、アメリカのセルスキーの3人による先頭争いが序盤から激しく起こる。 一方韓国のソン・シバクとイタリアのコンフォルトラの2有力選手は最後方に待機。仕掛けどころを伺う形に。 残り6周半でセルスキーが外から先頭に立って勝負に出る。ようやく隊列が固まる。 以下、劉顕偉、さらにラトビアのシロフスと続く。ソン・シバクはここでインをついて4番手に上がる。 イタリアのコンフォルトラも徐々に徐々に前へと進出加減。 日本の藤本は最後方からインをつき5番手に上がるも、誰かに接触してしまいまた最後方に落ちる。 残り2周。ソン・シバクが今度は外を回って位置を上げ、セルスキーの後ろ、2番手に入ろうとする。 負けじとイタリアのコンフォルトラは内をついて2番手に上がり、ソン・シバクをブロック。 しかしソン・シバクは落ち着いて、このセルスキーとコンフォルトラの間の僅かな隙間に入り込み、2番手に。 3番手となってしまったコンフォルトラは前の二人を必死で追いかけ、 最後ゴール前外から食らいつくも届かず。ゴール前でソン・シバクはセルスキーも交わして1着フィニッシュ。 <結果> 1着 Sung Si-Bak ソン・シバク 韓国 2.13.585 Q 2着 J.R. Celski J・R・セルスキー アメリカ 2.13.606 Q 3着 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ イタリア 2.13.645 QB 4着 Haralds Silovs ハラリド・シロフス ラトビア 2.14.009 QB 5着 Liu Xianwei 劉 顕偉 中国 2.14.500 6着 Takahiro Fujimoto 藤本 貴大 日本 2.15.984 7着 Niels Kerstholt ニール・ケルストホルト オランダ 2.16.352 完全に上位3人による争いとなったが、中でも怪我の影響を感じさせないセルスキーの滑りは素晴らしかった。 また、これで準決勝は全て韓国選手が1位通過という結果になり、決勝も大いに期待されるところ。 4番手争いは、ずっと積極的に前を滑っていた劉は最後失速し、シロフスがB決勝に進出することとなった。 Semifinals → B Final 3着 Charles Hamelin チャールズ・ハメリン カナダ 2.11.225 QB 4着 Nicola Rodigari ニコラ・ロディガリ イタリア 2.11.402 QB 3着 Yuri Confortola ユーリ・コンフォルトラ イタリア 2.13.645 QB 4着 Haralds Silovs ハラリド・シロフス ラトビア 2.14.009 QB 3着 Sebastian Praus セバスチャン・プラウス ドイツ 2.16.240 QB 4着 Pieter Gysel ピーター・ギセル ベルギー 2.16.249 QB 以上6名が順位決定戦(8-13位決定戦)へ進出。 Semifinals → A Final 1着 Lee Jung-Su イ・ジョンス 韓国 2.10.949(OR) Q 2着 Apolo Anton Ohno アポロ・アントン・オーノ アメリカ 2.11.072 Q 1着 Sung Si-Bak ソン・シバク 韓国 2.13.585 Q 2着 J.R. Celski J・R・セルスキー アメリカ 2.13.606 Q 1着 Lee Ho-Suk イ・ホソク 韓国 2.14.833 Q 2着 Liang Wenhao 梁 文豪 中国 2.15.453 Q 6着 Olivier Jean オリビエ・ジャン カナダ 2.32.358 A 以上7名が決勝へ進出。
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/145.html
第14回トーナメント:準決勝① No.6866 【スタンド名】 Every Kinda People 【本体】 那栄 龍(ナバエ リュウ) 【能力】 名刺に書かれた人物のコピーを生み出す オリスタ図鑑 No.6866 No.6039 【スタンド名】 フィール・ソー・ムーン 【本体】 本結 久良來(モトイ クララ) 【能力】 本体が身につけているリボンを操る オリスタ図鑑 No.6039 Every Kinda People vs フィール・ソー・ムーン 【STAGE:学校】◆aqlrDxpX0s 「リーダー、もう出かけるのですか」 外出の支度を始める上司に向かい部下は半ば呆れた顔でそう言った。 そのすでに聞き飽きた質問に対し、リーダーと呼ばれた男はこう答えた。 「新米リーダーはまずお客さんに顔と名前を覚えてもらわなきゃな。もう俺の仕事は机にかじりつくようなことじゃない」 男は胸ポケットから名刺入れを取り出し、自分の名刺の枚数を確認する。 その名刺には、『経営企画室 那栄龍』と書かれている。 リュウは最初は違和感があったが、もう慣れてしまった。 「じゃあ、行ってきます!」 リュウは無理やり明るい声でそう言って部屋から出て行った。 残された4名の部下たちはリュウがエレベーターでフロアから離れるころを見計らって いつものように彼についての話をはじめた。 「新米リーダーか、リーダーやるにしては若すぎるよな。29だっけ?」 「27だよ、俺より一回り近く若い。確かに能力はありそうなんだけどな」 「いわゆるエリートさんなんでしょ、どうせここも出世コースの通過点にすぎないのよね」 「それにしても研究部門から来るってのは聞いたことないけどなあ。まあ研究よりもコッチの仕事のほうが向いてそうではあるけど」 リュウの部下たちは新しいリーダーを歓迎していたというわけではないが、 リュウがリーダーに就任してからのわずかな時間でリュウの素質を認め始めていた。 だが、それが信頼に値するかというとそこまでではないらしかった。 「そういや、あの名刺見た?」 「名刺? ……ってあのリーダーの?」 「うん……いやリーダーがもらってきた名刺のほうさ」 「なんかあったのか?」 「いや、この間机においてたのをチラッと見たんだけど、明らかに関係のない業種の名刺もあるんだよね」 「ああ、俺も見た。うちと取引の見込みもないところとかあったな」 「それがどうしたの? 関係のないところでも名刺交換することくらいあるじゃない」 「そういえば……リーダーが会議室で1人でいた時にさ、名刺を机に並べて何か考え込んでいたんだよなあ…… サッカーのフォーメーションみたいに並べて、時々並べ替えたりしてて……」 「……エリート様の考えていることはわかりませんなあ」 ************************************************************************** 校舎を見下ろす空は灰色の雲に覆われていた。 昼間だというのにその学校には人の気配がない。 それどころか、校庭から見える正門の向こうの道路にも、そこを横切る人や車の姿は見られなかった。 校舎の壁時計が10時を示すと、2人の人物がほぼ同時に正門から現れた。 オールバックの髪型に濃いグレーのスーツを着た男『那栄龍』と、 制服を身に纏いリボンを体のいたるところに巻き、結び付けている少女『本結久良來』だ。 正門の前で面と会ったときから2人はトーナメント出場者であるというお互いの素性を察していたが、言葉に出そうとはしなかった。 目を合わせようとはせずに距離を保ちつつ並行して学校の正門へ向かっていた。 どちらかといえばクララのほうが警戒心を強めていた。 そしてほぼ同時に正門から校庭へ足を踏み入れたことで戦いへの合意がなされた。 リュウはすぐさま胸ポケットから10枚の名刺を取り出した。 しかし、それと同時にリュウの体には2本の長いリボンが巻きつき、動きを止められてしまう。 そのリボンはクララの両腕から伸びていた。 「『フィール・ソー・ムーン』!!」 「うぐっ……!」 両腕をリボンで固められたリュウの首にさらにもう一本のリボンが巻きつく。 「オジさんには悪いけど……早々に決着付けさせてもらうからね!」 リュウの首に巻きつけたリボンをいっそう強く締め上げる。 クララはリュウから3メートルほどの距離をあけて、近距離パワー型スタンドのおおよその射程に入らないようにしている。 さらに何らかのスタンド能力を発動させる前にリュウを失神させるつもりだった。 だがその前にリボンを巻きつけたリュウの姿が霧のように消えた。 「……えっ!?」 リュウが持っていた名刺の束がバラバラと地面に落ちていく。 「まさか、モクモクの……いや、それは違うか」 クララは地面に散らばった名刺を見下ろした。 乱雑に地面に伏せる名刺の中に1枚、『経営企画室 那栄龍』と書かれた名刺が落ちていた。 そのとき、クララは校舎の方向に遠くから足音がするのをかすかに聞いた。 クララが視線を下から前に向けると、先ほど自分がリボンで締め上げていたはずの男が こちらをちらりと見ながら校舎の中へはいっていくのが見えた。 戦闘開始直前にクララに鉢合わせたリュウは、リュウのスタンド能力によって『名刺から生み出されたコピー』だったのだ。 それは、学校敷地外に隠れていた本物のリュウが対戦相手から距離をおきコピーに時間稼ぎをさせるためだった。 「あのオジさんめ……!!」 だがリュウの作戦はまだ終わってはいなかった。 むしろここから始まると言っても過言ではない。 「待てっ……きゃっ!!」 校舎の中へ入り見えなくなったリュウを追おうとしたクララだったが、 『何者かに足をつかまれ』うつぶせの状態で地面に突っ伏した。 地面に寝そべったクララが足元を見ると、クララの足を掴んでいたのは体長15センチくらいの小人だった。 それもラガーシャツを着た体格のいい『小さなおっさん』だったのだ。 しかも小人はラガーシャツだけでなく、そのほかに9人の小人がクララを囲んでいた。 いつのまにか、地面に落ちていた名刺は『経営企画室 那栄龍』のみとなっていた。 クララを囲む10人の小人がそれぞれ名乗りをあげた。 『大学時代ボクシング部に所属し五輪強化選手にも選ばれた那栄龍の会社の後輩!』 『数々の名だたる格闘家たちを輩出した空手の師範代!!』 『不祥事で角界引退を余儀なくされた元力士、居酒屋チェーンのオーナー!』 『元暴走族総長、補導回数100回超の建設会社現場代理人!!』 『総合格闘技全盛時代キックボクシングで名を馳せたジムインストラクター!』 『オリンピック出場経験もある大学柔道部コーチ!!』 『本塁打王獲得経験もある元野球選手、現スポーツメーカー営業マン!』 『暴力事件でクビになった元プロレスラーのラーメン屋店主!!』 『陸自所属経験もある、那栄龍の会社のガードマン!!』 『製薬会社のラグビーチームに所属する体重150kg超のラガーマン!!』 そして10人の小人は一斉にクララに飛びかかった。 「く……『フィール・ソー・ムーン』!」 2本のリボンが元野球選手と空手の師範代に巻きついた。 体が小さいためリボンは体すべてに巻きつく。 そしてギュッと締め上げると、元野球選手と空手の師範代はうめき声をあげて先ほどのリュウと同じく霧のように消えた。 だが、その隙に8人の小人のうち元力士と柔道部コーチと元プロレスラーとラガーマンがクララの両手両足に掴まった。 クララは寝転がった体制のまま立ち上がれなくなってしまう。 元野球選手と空手の師範代を締め上げたリボンをほどくと、くしゃくしゃになった名刺が地面に落ちた。 (……ああ成程、この人たちは名刺から生み出された人たちなんだ。きっと、その名刺の人物のコピーそのものが現れる……) 身動きが取れない状態であってもクララは冷静だった。 1回戦で体験した極限状態が彼女を成長させていた。 血溜まりのプールに比べたら、今の状況など退屈で仕方ない。 クララにとって、手足が動かないことなど大した問題ではなかった。 手足よりも自在に動くリボンさえ無事であったなら。 クララは両手首のリボンを使って、両腕につかまっている柔道部コーチと元プロレスラーを締め上げる。 「女の子1人に男の人がよってたかって……みっともないよッ!!」 クララが柔道部コーチと元プロレスラーを消すと、それを見てガードマンとジムインストラクターが飛びかかってくる。 しかし、それを迎え撃つようにクララは髪を結わいているリボンでガードマンとジムインストラクターの体を槍で突くように貫いた。 肉を突く感触がリボンを通して伝わってくる。 ガードマンとジムインストラクターがリボンに貫かれ力尽くと、その2人の姿も消えた。 このまま残る4人も倒してしまおうとしていたクララだったが、ここである違和感を抱く。 両脚の膝下を掴んでいたはずの元力士とラガーマンが、いつのまにか太ももを抱えてクララの体をおさえていたのだ。 『嬢ちゃん、やるじゃねえかあ……』 『人は見かけによらないスね』 (……うそっ!? さっきは15センチくらいだったのに……4~50センチくらいに大きくなってる?) さらに、元力士とラガーマンは足でクララの足首のリボンの端を踏みつけて操れないようにしていた。 (この人たち……『学習』している? ただのスタンドじゃあないの?) 『そん布ッ切れをぶんぶん振り回されちゃあうっとうしいのォ』 『ところで先輩はどこ行ったんですか?自分だけ高みの見物とは気分が悪いですが……』 元暴走族とリュウの後輩のボクサーはそう言った。 (会話を聞いていると、やはりスタンドには思えない……いや、スタンドには間違いないだろうけど、あのオジさんの能力は名刺の人をほとんどそのまま複製する能力なんだ!) 『ッオラアアアアアアアア!!』 元暴走族と後輩ボクサーがクララに駆け寄る。 クララは髪のリボンと手首のリボンの4本で二人を迎え撃つ。 だが、先ほどまでは簡単に攻撃できていたが、リボンで動きを止められたのは元暴走族だけで、 後輩ボクサーにはボクシング仕込みのフットワークでかわされてしまう。 もはや単調な攻撃は通用しなくなっていたのだった。 リボンに締め付けられた元暴走族が消えると、残る元力士、ラガーマン、後輩ボクサーの体はさらに大きくなった。 すぐ目の前に後輩ボクサーが拳を振りかぶって向かってくる。 『おおおおおおおおおおおおおッッ!!』 しかし、後輩ボクサーの拳がクララに届くことはなかった。 クララの首に巻かれたリボンが後輩ボクサーの胸元を貫いた。 『……っくっ……うう…………』 後輩ボクサーはうめき声をあげるがなかなか消えなかった。 クララは髪のリボンを戻してさらに突き刺す。 そこでようやく後輩ボクサーは消えた。 残るは元力士とラガーマンの2人。 だが2人の体はすでに1メートル近くまで大きくなっており、 もはやクララは両脚を掴まれているというよりは体を両側から抱え込まれている状態になっていた。 『自分ら2人を残したのは運が悪かったスね……』 『嬢ちゃんには悪いが、これもアイツのためだからよ』 『『そうりゃあッッ!!』』 両側から元力士とラガーマンがクララの体を持ち上げる。 (……まっずいなぁ、最初は小人だと思ってナメてたけど。1体消すごとに残った人たちがどんどん大きく、力も強くなってる……耐久も増してるし) 『いっせいのっ……せいっ!』 元力士とラガーマンがクララの体を放り投げる。 体重の軽いクララならば、いかに体が小さいとはいえ重量系アスリート2人にかかれば校庭の木の幹に向かって投げることは可能だった。 フェンス際に生えた桜の木の幹に体を打ちつければ、大ダメージを受けることは避けられないが、それでもクララは冷静だった。 『フィール・ソー・ムーン!!』 クララは体を放り投げられるとほぼ同時に両足首のリボンを元力士に鞭のように振るった。 2本のリボンは元力士の体にぐるぐると巻きつき、体重の重い元力士からリボンに引っ張られてぶん投げられたクララの勢いは抑えられた。 桜の木の直前でクララは地面に立ち、髪に結わいたリボンで元力士の体を貫いた。 『ぐうう……ウウウウ……』 元力士はうめき声をあげるが、いまだ倒れず立ち続けていた。 「……くっ、しぶといッ」 クララはさらに両手首のリボンで元力士の体を突き刺した。 元力士はしばらく立ち留まったが、土俵際の粘り虚しく倒れて消えた。 (これで残り1人……だけど、おそらくあのラガーマンは……) クララの前に『製薬会社のラグビーチームに所属する体重150kg超のラガーマン』が立ちはだかる。 その姿はもはや小人ではない。彼が名乗りあげた時と同じ体重の大男が仁王立ちしていた。 『俺を最後に残したのは間違いだったな……あとはとっ捕まえればノーサイド(試合終了)だ!』 「…………」 クララは桜の木を背に動かない。 クララのもとへリボンがもどっていく。 (このラガーマンを倒して、早く校舎へ向かわなきゃ。あのスーツのオジさん、今頃どんなワナをしかけているかわからない……) (……あれ? でもなんでわざわざ校庭を突っ切って校舎に向かったんだろう。せっかく最初に私を出しぬけたのに、なんで姿を現して校舎に入ったの?) (隠れたままこっそり校舎に入ればよかったのに……) 『うおおおおおおおおお!!』 ラガーマンが雄たけびをあげてクララに向かい突進しようとしてくる。 (もしわざと姿を現したのだとしたら……その意図はどこにある?) (校門で鉢合わせたダミーのオジさん……校舎の中に入ったオジさん……私の足を掴んで倒したラガーマン……) ラガーマンがクララに手が届くほどの距離まで迫ったとき、クララの体に結び付けられたリボンがラガーマンの体を一斉に貫いた。 両脚に1本ずつ、腹に1本、胸に2本のリボンが突き刺さり、ラガーマンの動きは止まった。 (……正直、この感触は好きじゃない……) ラガーマンは消える直前、一言だけつぶやいた。 『君は……気づいていたのか…………』 クララのリボンは1本だけ別の場所に向かっていた。 クララの背後にある桜の木の幹を伝って、その上へ。 リボンを強く引くと、桜の木の上から『那栄龍』が足にまかれたリボンに引っ張られて落ちてきた。 「ぐおっ!!」 「やっぱり、『校舎に向かったオジさん』もフェイクだったんだ」 「いてて……よく気づいたな」 「オジさんの能力……名刺の人のコピーを、人ひとりのサイズで生み出せるのは1人が限界なんでしょ? 私がラガーマンに足を引っ張られたのは、校舎に向かったオジさんが校舎の中に入って見えなくなってからだった。 ちょっとおかしいよね? 10人の小人たちを発現させてから校舎に行けば安全だったのにね」 「…………」 「オジさんは桜の木の上に隠れて、不意打ちする機会を伺ってたんでしょ?」 「……まあ、そうだな。もし君がラガーマンさんに対しリボンをすべて使っていたらそうするつもりだった」 リュウは深くため息をつき、両手をあげる。 「降参だ、降参しよう。勝ちは君にゆずる」 「……えっ?」 リュウがあっけなく降参したことにクララはつい驚いてしまった。 クララはリュウを今一度出し抜いたとはいえ、互いに戦闘不能にはほど遠い状態だったからだ。 「機会をうかがってるうちに、名刺をもらった人たちがどんどん消えてくのがどうも耐え切れなくなってなあ……。ダメだな、俺はやさしすぎる」 「……いいの?」 「ああ……欲しいものは自分で手に入れることにするさ」 そう言ってリュウはクララに握手を求めるように手を差し出す。 クララがにこりと笑ってその握手に応えようと手をのばした。 「!」 そのとき、リュウの手のひらから一本の腕が突き出て、クララの鼻先に拳が突き付けられた。 「……っと、今もこうやって不意打ちすることはできたんだけどな」 リュウは能力を解除して名刺から飛び出させた腕を消す。 名刺にはリュウの後輩の元ボクサーの名前があった。 「だが言った通り、これ以上は俺の心が痛みそうだからな。けど、君はすぐごまかされそうだから気を付けなよ?」 「…………うう」 「けれどまあ……複数のリボンを同時に動かせる頭の柔軟さや窮地での冷静さは君の才能だと思うぜ」 リュウは最後にクララに激励を送り、戦場を去って行った。 まるで無傷、ついたのは少しの砂ぼこりだけ。 それだけを手土産にリュウは立ち去っていった。 「何を考えてるか……まるでわかんない人だったなあ」 リュウの背を見送るクララはぼそりとそう呟いた。 ★★★ 勝者 ★★★ No.6039 【スタンド名】 フィール・ソー・ムーン 【本体】 本結 久良來(モトイ クララ) 【能力】 本体が身につけているリボンを操る オリスタ図鑑 No.6039 < 第14回:準決勝② > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/56.html
第05回トーナメント:準決勝② No.5002 【スタンド名】 ブレイク・フリー 【本体】 相羽 道人(アイバ ミチト) 【能力】 触れたものの「束縛」を解放させる オリスタ図鑑 No.5002 No.4698 【スタンド名】 クローサー・ユー・ゲット 【本体】 安西 歩(アンザイ アユム) 【能力】 「性質」を手錠および手錠をかけたものに付与させる オリスタ図鑑 No.4698 ブレイク・フリー vs クローサー・ユー・ゲット 【STAGE:港】◆iL739YR/jk 古びた倉庫が立ち並ぶ港。 数隻の小型船が停まっているものの、その乗組員すら姿はなく、その港に人気は全くない。 ……一人の少女を除いて。 「……遅い。それともこの前みたいに既に何処かに来ているの?」 そう呟く一人の少女、安西歩。 海から吹き付ける潮風が少女の髪を揺らした。 ふと、歩が視線を遠くへと移すと、見えてきたのはこちらへと走ってくる学生服を着た少年の姿。 「……よかった。今度こそ人間が相手みたいね」 歩は少年、相羽道人を見て、そう呟いた。 「間に合った……えぇっと……君は立会人? それとも対戦相手?」 息を切らし、駆け込んできた道人。開口一番に歩へと問いかける。 「立会人? へぇ……運営側が立ち会うこともあるんだ」 そう言うや否や、歩の背後に重なるようにスタンドヴィジョンが現れる。 「な……!?」 有無を言わさず、スタンドを展開してきた少女の姿を見て、道人は確信する。 この少女は立会人ではない……今回の相手だと……! 「クローサー・ユー・ゲット!」 道人が状況を理解しきる前にケリをつけようと、歩は速攻をしかけた。 クローサー・ユー・ゲットのスピードを活かしたラッシュが道人に叩き込まれ、その体は力なく宙を舞い、電柱へと弾き飛ばされる。 「ぐ……いきなりこれか……」 スピードだけではなく、そのパワーもなかなかのもの。 再帰不能ではないが、道人が相当量のダメージを負ったのは事実。 「(スピードは僕よりも上みたいだ……正面から殴り合ったら歩が悪いかも……)」 体勢を立て直すため、道人は電柱を背に、もたれ掛かるようにして立ち上がる。 ……ジャラ そのとき、道人の足元から鳴る金属音。 「(……手錠? なんで電柱に嵌められて……まさか!?)」 何かを察した道人が電柱から慌てて飛び退いたのと、クローサー・ユー・ゲットが火の点いたマッチを投げたのは、ほぼ同時だった。 ドゴォォン!! マッチによって電柱は「着火」し、爆発した。 「うわぁぁぁ!!」 咄嗟に逃げた道人だったが、その爆発範囲から完全に逃れることはできず、爆風に弾き飛ばされる。 「く……ブレイク・フリー!!」 何度も地面に叩きつけられていては体がもたない。 自身のスタンド、ブレイク・フリーに支えられ、道人は無事に着地する。 「近距離型のスタンドね……だったら、近づけさせなければこっちのものってわけ!」 歩は懐から瓶を取り出すと、その中の液体へ指を突っ込む。 そして、道人の足元へと手錠とマッチを投げ付ける。 「まずい……!」 先程の攻撃で全てを察した道人は即座にその場から走り去る。 手錠は誰も居なくなった地面へ落ち、次いでそこに落ちてきたマッチによって着火、爆発を起こす。 歩が持ってきた瓶の中身はガソリン。 その性質を得た手錠や拘束物をマッチで着火させる。 そう、クローサー・ユー・ゲットの能力を活かした爆発攻撃である。 「(いじめなんて、この能力があれば簡単に仕返しできる……運命は変えられる……でも……)」 歩は道人目掛けて、手錠とマッチを投げ続ける。 「(こんな残酷な手段をとる覚悟……これまでの私にはなかった。この闘いで……私は非情になる!!)」 何度も何度も繰り返される爆破の嵐に巻き込まれ、道人は傷つき、逃げ惑う。 その集中力はたいしたもので、常人ならばとっくに爆発に巻き込まれるか、あるいは手錠で拘束されて自身がガソリンとなっているところだ。 しかし、次第に道人も追い詰められ、倉庫の扉を前に立ち尽くす。 「古い倉庫らしくてね。鍵も壊れて、ひしゃげたその扉が開くことはないわ……」 地の利を活かしたものが有利となることを、彼女は前回の闘いで身をもって学んだ。 今回は、事前に下調べは十分にしてある。 これまでの連続爆破は道人をここまで追い込み、退路を絶つために行っていたのだ。 「……これで終わりよ!」 歩が投げた手錠は道人の両足を捕らえ、彼にガソリンの性質を付与する。 そこへ投げ込まれたマッチ…… 「うわぁぁぁ!!」 道人の体は爆発とともに跡形もなく消えうせる…… 「……はっ!」 と……想像したところで歩は一瞬手を止めていた。 まだ、手錠は投げられず、手元に残っている。 「ブレイク・フリー!!」 歩が躊躇したその一瞬、何が起こったのか。 固く閉ざされていたはずの倉庫の扉が開き、道人はその中へ逃げ込んだ。 「なんで……? あの扉は私のスタンドのラッシュでも開かなかったのに……!?」 ……ゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴ 低い地響きのような音が倉庫から発せられ、辺り一帯に鳴り響く。 そして、倉庫から大量の白い粉が津波のように溢れ出し、歩へと迫り来る!! 「これは……小麦粉!? 何がどうなって……!?」 訳の分からない歩は押し寄せる小麦粉の津波に巻き込まれる。 「きゃあぁぁぁ!!」 道人が倉庫の中で見つけたのは古い貿易船の積み荷の数々。 中でも目をつけたのは小麦粉を入れた大量の箱。 道人は倉庫の扉を開いたのと同様にブレイク・フリーの能力で積み荷の封を切っていく。 そして、あの小麦粉の津波が引き起こされたのだ。 「……こほっ。酷いね……目茶苦茶よ」 下半身が大量の小麦粉にすっぽりと埋まって身動きのとれない歩。 そこへゆっくりと近づいてくるのは……道人とブレイク・フリー。 「あんまり同年代の女の子を殴りたくないんだけど……まだ続ける?」 「当たり前でしょ! 情けなんてかけないでよ! ……アンタには覚悟ってもんがないの? 勝負は非情なのよ!!」 歩は必死の形相で道人を睨みつけ、なんとか小麦粉から抜けだそうと力を込める。 「そう……分かった。ブレイク・フリー!!」 トコトコトコトコトコ トコトコトコトコトコトコトコ 軽快なラッシュが歩に叩きつけられ、小麦粉の山からすっ飛んでいく。 ブレイク・フリーの能力によって、「束縛」が解除されたためだ。 「……アンタ、どういうつもり?」 しかし、歩にダメージは殆どない。 「わざと手加減したの……? 情けはかけないでって言ったでしょ!」 「……それはお互い様じゃない?」 「え……?」 「確かに、君のやり方は非情だった……でも、とどめを刺そうとしたとき一瞬戸惑ったよね? もし、君が本気だったら僕は今ごろこの世にはいない」 「……それは」 「僕のスタンド、ブレイク・フリーの能力は束縛を解除し、秘められたものを解き放つこと……」 そう言うと、道人は歩に背を向けて歩き始める。 「もし非情な闘いを続けたかったら、いいよ……僕の背後を襲っても」 道人は一度立ち止まり、顔だけで振り向いて言葉を続ける。 「僕は君の本心を信じる……」 「私は……」 「お゛めぇーの席ね゛ぇーがら!!」 あの一言が私の運命を狂わせた。 始めは確かに些細な冗談だったのかもしれない…… でも、皆が皆がそれを冗談だと受け取ったわけでもなかった。 それは私自身も同様で、それが反って「ノリが悪い」と取られ、いじめはエスカレートしていった。 突然目覚めた私のスタンドは、この運命を変えるための力…… 突然招待されたこのトーナメントは、私が覚悟を決めるためのチャンス…… ずっと、そう思っていた。 そう頑なに思い込むことでしか、私は前に進めなかった。 「……私の負けね」 でも、彼が教えて……いや、解き放ってくれた。 歪んだ覚悟に束縛されていた私の本心を…… そう、壊す以外にも道はある。 「ねぇ……貴方、名前は?」 「ミチト……相羽道人」 少女の問いに背を向けたまま答え、道人はその場を後にした。 ★★★ 勝者 ★★★ No.5002 【スタンド名】 ブレイク・フリー 【本体】 相羽 道人(アイバ ミチト) 【能力】 触れたものの「束縛」を解放させる オリスタ図鑑 No.5002 < 第05回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/netrhyme/pages/528.html
【第二回子音十段位】しゃん VS inge【準決勝】 2 inge 宙に浮くオタク こと ジーニー降誕 血肉を断つ為 一韻入魂だ 後に回る アホ•ニワカ に解らす 先攻もingeの箱庭か と 挿入歌は " A Whole New World " 魔法産むランプで今葬らん さァ上手く擦れよ MY 4 LINES 2020/2/1 20 11 3 しゃん ? あ~チンケに書いて煽るアンチ意見か もうあっち逝けっか?葬ってする安置に献花 熱っちい喧嘩せず比喩頼みのI氏に限界 足りないんだよバトルへの愛に知見が 2020/2/2 13 30 【第二回子音十段位】Byzanz VS 141【準決勝】 2 Byzanz 実は密輸にも噛んで掻い潜って来た関税官、税関。この手の犯罪も所詮は現行犯 か ん ぜ ん か ふ か ん ぜ ん か 続く品薄状態。よく麻の入手方どうしてる?って聞かれます! これからお巡りさんに聞かれてきます つまり翌朝のニュース報道指定 2020/2/2 18 46 【第二回子音十段位】141 VS しゃん【決勝】 2 しゃん 尻とscottie に出すだけなら 死のうシコって。 大会セイシ統一する俺、秦の始皇帝。 届かせる。つまりぶっかけっこ上等と ネットでぶち上げる文化系根性論 2020/2/7 20 05 3 ア行141段活用 近くて遠い金鉱、皆悔しがる同音異義語に どの良い銀行 より先に一番抵当打つbandit 探る音感secret code 紐解くakashic record 可笑しく連呼し 鼓膜犯し狂える歌詞くれ 2020/2/8 1 21
https://w.atwiki.jp/papuyasai/pages/24.html
第1試合 ● papuyasai VS 文字化け × 第2試合 ● RPG VS mjpksm ×
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/156.html
第15回トーナメント:準決勝② No.7525 【スタンド名】 ウォームハンド・コールドハート 【本体】 イェルズェラ・ムラージョ 【能力】 スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする オリスタ図鑑 No.7525 No.7117 【スタンド名】 サンバ・テンペラード 【本体】 リリス・クド・カラオストロ 【能力】 人ひとり程度、ぶら下げて飛ぶことができる オリスタ図鑑 No.7117 ウォームハンド・コールドハート vs サンバ・テンペラード 【STAGE:廃村】◆C4zT4u8GVA イェルズラがほぼ「拉致」に近い形で次の会場に召集されたのは、一回戦を終えた20時間後であった。 杉人が事前に手配していたというホテルについたのが対戦終了から30分後。すぐ近くにあったそれだ。 彼女は無論断ったが、こちらもほぼ「拉致」に近い形で収容されたのだ。 豪華な部屋に放り込まれて、母国語で杉人のことをひとしきり罵ってから、疲れがどっと出てすぐに眠った。 そして、目が覚めたら霧の深い荒野に立たされていた。 いや、荒野……? 少しだけ建物の跡が残っているが、いずれも骨組みだけで人が住んでいるとはとても思えない。 そして、霧が発生しているというのに地面は異様に固く乾いている。 「ここは昔、大規模な坑殺があった土地なんです」 声がして、後ろを振り返るとそこにはパーカーを着こんだ少年が立っていた。 「……」 「そして、80年前まで村がありましたが、見ての通り今では滅んでいます」 「まあうちが定期的にこっちでの取引とか「処理」で使ってるから建物とかも手入れしてるんですけどね」 イェルズラは身構え、押し黙るが少年は続ける。 「……ああ、聞かなくて良いですよ。僕が立会人です。そして――」 「それ以上前に進まない方がいい」 霧が少し晴れ、そして見えてきた風景にゾッとし、坑殺という意味を理解した。 深く、そして大きな地割れ。その眼前には平均台ほどの太さしかない足場が、5mほど先の足場に二つ、伸びていた。 そこに立たされていたのが、イェルズラと対戦相手であった。 「なっ!!?」 思わず声を挙げた。そして無闇に歩を進めることをしなかった軽率ではない自分に感謝した。 そして、右側に目をやると、自分の背丈と同じくらいの大きさの裂け目で隔てられた地点に、彼女はいた。 リリス・クド・カラオストロ。 ヨーロッパの小さな公国の、カラオストロ公の城に住まう正真正銘の姫であるのだが、 その姫が今は両腕の先端に包帯が巻かれ、痛々しい傷跡が残るのみ。 服はドレスだろうか? だがあまりにみすぼらしい。 あちこちビリビリに破れ、そういうダメージ系ファッションなのかと思うほど、ぼろぼろだ。 「それでは始めます――」 「ちょっと待てそこのお前。彼女は――」 見て分かるくらい、明らかに再起不能であった。 スタンドを出せるかどうかさえ分からないほど憔悴しきっているのはイェルズラにも一目でわかったし、 自分が目を覚ますより以前にいたパーカーの少年にそれが理解できないわけがない。 「何ですか? この状況でルールを理解できないと?」 「先に向こう岸まで渡った方が勝ちですよ。スタンドを駆使して相手を落としても勝ち。シンプルでしょう」 「あそこの彼女にも説明はしたのか?」 イェルズラのこの言葉に、少年は少し黙って、意外そうに答えた。 「何で? この勝負は始まる前からあなたの勝利って決まってるのに」 「…………」 イェルズラはこの少年に付いて何も知らない。 だがこの少年からは杉人とは似て非なる邪悪さがにじみ出ている。 「……始めないなら、強制的に開始させるとしようか」 そう言って、少年は指を鳴らした。 すると物音がほとんどしないこのひたひたとゆっくりとした足音が響く。 「!!? いやああ?!!」 イェルズラはもちろん、リリスも反射的に後ろを振り向くが、リリスの場合はその光景に震撼した。 全身が腐敗し、不思議な色のガスが肩から噴き出していたが、それでもその顔はまだ残っており、 そしてリリスはその顔を知っていた。 「彼女は賀苅緋紋(ががり ひあや) 彼女の一回戦の相手ですよ」 少年はイェルズラが聞いてもいないのに語り出した。 「賀苅さんはほぼ不慮の事故で、追いつめていた彼女によって命を落とした」 「時計塔の歯車に全身を砕かれて死んでいました。と言っても、回収しに行ってから20分生きていましたけどね」 「……罪悪感でも煽っているのか」 「おや、話に乗ってくれるんですか? まあもう勝負は決まってますからねえ」 リリスは、やはりその顔を見て恐慌した。 そして歩き出そうとして転び、右の足首を物言わぬ緋紋に掴まれた。 無論、死体なのでスタンドは出ない。だが、その腐食した掌から腐食はリリスの足首に伝わってくる。 「いや いやいやいやいやあああああ」 痛みはやはり感じない。だがハンカチをくしゃくしゃにするように筋肉も皮膚も、骨すらも萎縮していき そして千切れ、血さえ出なかった。 「い゙」 叫び過ぎた。そして泣き過ぎた。最早声は出ない。 奇しくもリリスは、緋紋が体勢を崩したように倒れ込む。 今度は頭から。まず助からない。そう考えた。そして考えるのをやめようとした。 そして空中に投げだされた。 「勝負ありですね。あなたにも僕の『腐食ゾンビ』は差し向けていたのに」 「まさか本当に渡らずに勝つなんて。正直驚き」 イェルズラは少年の言葉を最後まで聞かず、『腐食ゾンビ』と化した緋紋に掛け寄り、左手を振り上げる。 右手の出力は人体を発火させられるほど。 つまり、左手は周囲の霧を凍結させられるほどの出力を秘めている。 「直接触れるのは不味いことくらい分かっている。だがッ」 イェルズラは集中した。まず何に集中するかというと『ウォームハンド・コールドハート』の左手に氷の刃を纏わせること。 そして第二に、持てる精密性全てを切開に回す。 「ムラムラムラムラムラ――」 腐敗している緋紋の、水疱が出来ている箇所のみを切開し、血を噴き出させる。 「ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラァ!!!! そしてぇッ」 膿交じりの血を瞬時に凍結させ、それをロープのようにつなぐ。 そのスピードゆえに間にあってはいないが、それでも裂け目に飛び込むことに躊躇はなかった。 左手で不揃いな血のロープを掴んで、飛び出した。 落下中の過程であってもロープは拡大していた。周囲の霧によって少しずつ。 落下している過程で、イェルズラがリリスに追いつくのにほんの数秒しかかからなかった。 「それにしてもこの裂け目。何mあるんだ? 谷底の間違いじゃあ」 そんなことをイェルズラは思ったが、声には出ていない。 と言うかすでに感覚がおかしくなって、まだ1秒すら経っていないのではないかと彼女は思えてきた。 「手を伸ばせッ スタンドを出せお前のッ!」 ロープと化した血と霧を、イェルズラはリリスに伸ばす。 だが、伸びきったところで血は突然爆ぜた。 そしてリリスの顔に掛かり、そのまま落ちて行く彼女を見送った。 能力の、左手の反動だ。 周囲の霧を凍結させるほど強い冷気は、右手にもそれ相応の強い熱気をもたらしたのだ。 イェルズラのスタンド、『ウォームハンド・コールドハート』の精密性はそんなに高くない。 集中しなければさきほどの血でロープを形成するなんてこともできないから、 だから熱が迸り、凍ったロープを溶かした。 そして自分も落ち―――――― 「全く、死なれちゃあ困るんですよ。この勝負は最初から勝敗が決まってるんだから」 少年が発現した人型スタンドは、イェルズラの眼前に突然現れ、その細い体を掴み上げ、谷の上に放り投げた。 今わの際に見えた1回戦で見えたあの女の人の幻影は、きっと自分の罪を著したものなのだろう。 これはきっと断罪だ。 リリスはそれを悟っていた。 先ほど顔にかかった血に入っていた膿には、微量だが『腐食ゾンビ』の腐食能力が宿っていた。 顔が痛みなく腐り始めているのを、右目が「なくなる」ことで認識した。 恐らく、頭が固い地面とキスをしても、痛みなどほとんどないのだろう。 「…………セバスチェン。ごめんなさい」 血の花が咲き、脳漿が腐臭と共に爆ぜ、岩肌にこびりついた。 「さっきいった賀苅さんはうちの構成員なんですよ。彼女は一国の姫君だけどうちが本気を出せば潰せない事もない小国」 「うちを、ディザスターを敵に回すことの怖さを彼女の母国も身を以て知るで――」 気が付いたら、イェルズラの右手は少年の胸を貫いていた。 少年のスタンドは破壊力こそ高いが遠隔操作型ゆえに能力のしわ寄せはスピード面に出て来ている。 つまり少年を護るものはいない。あまりに無防備だが、彼には絶対に攻撃などされないという自信はあった。 「……は、話聞いてました? ディザスターを敵にまわ……」 貫いた胸は焼き潰れ、瞬時に少年の命を刈り取った。 「…………ムラディアス(さようなら)」 ★★★ 勝者 ★★★ No.7525 【スタンド名】 ウォームハンド・コールドハート 【本体】 イェルズェラ・ムラージョ 【能力】 スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする オリスタ図鑑 No.7525 < 第15回:決勝① > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/85.html
第08回トーナメント:準決勝① No.6219 【スタンド名】 グッバイ・スーパースター 【本体】 犬養 由基(イヌカイ ユキ) 【能力】 殴った(触った)対象の庇護欲を操作する オリスタ図鑑 No.6219 No.4919 【スタンド名】 フェイセズ・イン・ザ・クラウド 【本体】 寿(コトブキ)=ガブリエラ=コジョカル 【能力】 接触したものから水分を吸収して膨張する オリスタ図鑑 No.4919 グッバイ・スーパースター vs フェイセズ・イン・ザ・クラウド 【STAGE:広大な墓地】◆aqlrDxpX0s 真夜中の墓地は周囲を樹木が取り囲んでうっそうとしており、 整然と並ぶ墓石の間を身を刺すような冷たい風が通りぬける。 その中をひとりの少女が歌いながら進んでいる。 スキップするたびに赤いポンチョがふわりと舞い上がった。 「おばけな~んてなーいさ♪ おばけなんてう~そさっ♪」 『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』のスタンド使い、寿=ガブリエラ=コジョカルは 不気味な墓地だというのに、ニコニコ笑いながら飛び跳ねていた。 「ねぼけたひとが♪ みまちがえたのさ♪ だけどちょっとだけどちょっと♪ ぼーくだってこわいな♪」 墓地を奥へ奥へと進んでいくと、開けた場所に出た。 正面には何十年か前のであろう、自然災害被災者の慰霊碑がそびえている。 風化して角が丸くなり、苔が張りついている様子が、墓地の不気味さをいっそう引き立てていた。 その慰霊碑の下にもうひとり、少女が座っていた。 ガブリエラが少女に笑いかける。 「こーんにーちわー?」 「…………」 髪を二つに結わいた少女はニコニコ笑うガブリエラをじっと見たまま黙り込んでいた。 「……れれ? こーんにーちわー?」 ガブリエラがもう一度声をかけると、少女は立ち上がった。 「……にわかには信じがたいけど、ホントにあんたが対戦者なんだな」 「うふふー、どうやらそのようだなー」 「気の毒だけど、さっさと勝負を決めさせてもらうよ、『グッバイ・スーパースター』!」 少女、犬養由基は幾十ものスタンドの魚を発現させ、ガトリング砲のようにガブリエラに向けて放った。 犬養とガブリエラのちょうど真ん中あたりに、ガブリエラの『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』が立ちはだかった。 しかし、ガブリエラのスタンドは雲のスタンド。向かい来るイワシの魚群のような犬養のスタンドは『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』を突き抜けていく。 「んふふー?」 だが、それでも犬養の攻撃はガブリエラに届かなかった。 『グッバイ・スーパースター』は雲を突き抜ける瞬間、『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』の能力によって水分を奪われ、 カラカラのニボシのようになってパワーを失いガブリエラの目の前で落ちていった。 魚群のスタンドが突き抜けていく度に水分をどんどん吸収する『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』は徐々に膨れ上がっていった。 そして反対に犬養の手足の皮膚がひびわれ、かさつきはじめていた。 犬養はこれ以上やっても不利と判断し、攻撃を取り止めた。 「……くそっ」 「ふふ、私のスタンド『フェイ……』、あれ? えーと……ふぇ…………えーと、『フェイなんとかクラウド』ですよー」 (あの雲……思ってた以上にやっかいだな。まあ、でも『想定内』かな) 「わすれちゃったー。雲さんのなまえ、なんでしたっけ?」 (とにかく私のするべきことは、あの雲に触れさせず近づくこと……!) 慰霊碑の正面、ガブリエラの立つ背後には、墓地の中央にそびえる大きなケヤキの木があった。 そのケヤキの木の枝にはガブリエラと犬養を映すカメラが取り付けられていた。 寺の本堂の中央には、二人を映すモニターとその前に座り込む男がいた。 無言でモニターを見つめる男の背後からもう一人、黒のスーツを着た男が近づいてきた。 座り込んでいた男はモニターを見つめたまま呟いた。 「なンの御用ですかねン」 「あなたを粛清しに来ました」 「ほうン?」 「あなたが出場者から金を受け取り、勝負に加担したとの嫌疑がありまして」 「そりゃあン……肩入れしてるンのはあなたも一緒でしょ?」 「……あなたのは度がいきすぎている」 「五十歩百歩、目クソ鼻クソですよン」 「……ま、いいでしょう。兎に角あなたは『今回も』犬養から1回戦以上の金を受け取り、寿さんの情報を渡した」 「…………」 カメラを背にし、墓地の広場でガブリエラは両手をぶらつかせながらニコニコ笑っていた。 「さあーて、なにして遊びましょーかー?」 2メートルほどの大きさになった『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』はガブリエラの周囲を浮遊していた。 (あの雲に直接つかまれれば、ものの10秒でミイラにされてしまう。だが離れていても勝機はない……だったら!) 犬養は重心を左方に向けて走り出した。 ガブリエラには近づかず右方へ回り込み、そのまま墓の並ぶ中へと駆け込んでいった。 「鬼ごっこですかぁ、ようし、がんばってつかまえますよー」 犬養を追いガブリエラも墓地の中へ入っていった。 (……? あいつにとっては追わずに離れていたほうが有利なはずなのに、わからないヤツだな。 まあいいや、追ってきてくれたほうが手間が省ける。『あの場所』に誘い込めば……) 寺の本堂での尋問は続いていた。 「そして、それだけではないでしょう」 「…………」 「前回同様、あなたは対戦ステージに『トラップ』を施した。犬養だけが知ってるトラップを」 「……ほおン」 「そのトラップに寿さんがかかった時、勝負の結果にかかわらずに即刻あなたを粛清します」 「そうはいきませンねえン」 「……抵抗する、ということでしょうか」 男が見つめるモニターには、墓地の中を走る犬養と、それを後ろから追うガブリエラの姿が映し出されていた。 「はあっ、はあっ、はあっ」 「まてー、まてー!」 ガブリエラに追われながら犬養は通り過ぎていく墓石の形を確認していた。 (この墓地は15×15のマス目にならって墓が置かれている。北から3列目、楕円の墓石の前に『それ』は仕掛けられている) そして、犬養が楕円の墓石の位置を確認すると、身を屈めてその前を通り過ぎていった。 ガブリエラは何の疑念も抱かずそのまま追い続ける。 (薄暗い墓地の中、首を刈る死神の鎌……0.2ミリの『鋼鉄線』が) ガブリエラが楕円の墓石を通り過ぎると同時に犬養はチラリと後ろを見た。 「抵抗? するまでもないンですね。なんせ『未遂』なんですンから」 「『未遂』ですって?」 「仕掛けられンなかったンですよ。勝負ン開始の1時間前、私ンが来たときにはすでに寿サンがいましたから」 「え?」 「慰霊碑の前ンで犬養サンが待ち構えてるようンに見えたでしょうが、実は先に来てンたのは寿サンなンです」 「……!!」 (鋼鉄線が、張られていない!) 「ふふー、そろそろおはかのすみっこですよー?」 犬養の走る先には墓は3つほどしかなく、柵が囲う先は森林となっていた。 走り方のおぼつかないガブリエラを、犬養が本気をだせば引き離すことは可能だった。 だが、犬養は墓石の間を通り抜けなければならないのに対し、ガブリエラの雲のスタンドは墓石を無視して移動できる。 墓地の隅まで来てしまった以上、犬養が『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』から逃れるのはほぼ不可能といえた。 ガブリエラには天性の『直感と本能』という才能があった。 それは決して『幸運』というものではなく、彼女のとった行動が起因し、それが正解に結びつくのだ。 彼女が開始時間の1時間前に来たのはなんの理由もないことだったが、それにより『鋼鉄線』のトラップが張られるのを防ぐこととなった。 「えへへー、フェイちゃんつかまえなさーい!」 追い詰められた犬養に『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』が迫る。 しかし、犬養の目の前でその不定形の雲は、文字通り雲散霧消してしまった。 「……あれれー?」 犬養は右手に枯れた花束を持って『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』に向けていた。 左手にはライターが握られている。 花は炎に包まれ、花束は『たいまつ』となっていた。 ガブリエラの才能が『直感と本能』ならば、犬養の才能は『推察と懐疑』にあった。 彼女はすべての行動要因を分析し、その後の行動を『推察』する。 その行動への対策のための調査や買収というものは彼女にとっては手段に過ぎない。 ともかく彼女はその『推察』だけで1回戦を難なく勝ち上がることができた。 しかし彼女は推察に基づく対策を100%信じているわけではない。 特に、今の鋼鉄線のトラップは5割程度の成功率と見ていた。 彼女は自分の立てた策すらも『懐疑』し、次なる対策、そのまた次の対策まで果てしなく立てている。 いくら対策がはずれようが、戦闘が彼女の予測の外に出ることは有り得なかった。 「……墓地には、墓の数だけ花束があるよな。だけどそのほとんどは枯れている。枯れた花はよく燃えるよね? 雲には火がよく効くようだ。火の起こす風が雲を寄せつけず、熱が水を蒸発させる」 散り散りになった『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』だが、正確に言えば雲の形が吹き飛ばされただけで、 犬養と離れた場所でまたすぐもとの形に戻った。 そして再び犬養に迫るが、犬養はまたもう一束の枯れた花束に火を移し、『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』に向ける。 「あーうー」 攻めきれないガブリエラを尻目に、犬養は墓地の隅に追い込まれていた状況から脱出した。 犬養にとってみればガブリエラのような相手は最もやりにくい相手であった。 考えの読めない、時には自分が不利になるような行動を平気でとる相手には対策をとりづらく、どうしても後手になる場合が多い。 だがそれでも、犬養はこの試合に負けるとは思ってはいない。 (鋼鉄線が張られていない理由は何だ? 有り得る事実はシンプルに二つ。あの立会人が鋼鉄線を『張らなかった』か『張れなかった』からだ。 『張らなかった』理由は? あの立会人が金を受け取ったまま私を裏切ったか? それなら1回戦で裏切ってたはずだ。それとも1回戦だけは従うつもりだったか? 『張れなかった』理由は? 『張れない』状況にあったとするならば、阻害する要因があったんだろ。もしかしたら、あの頭のユルいあの子か?) 「もし、あの子が私が来るずっと前にこの墓地に来ていたなら……」 犬養は墓地の中で立ち止まり、振り返る。 ガブリエラは追って来ていなかった。 「私があの子だったら……『雲のスタンドをこの墓地を覆うほどに膨れ上がらせておく』。墓地の水道を使ったりしてな。 そうすれば私が墓地に入った瞬間、勝負が決まるんだから」 犬養はそう推察した。 しかし事実は犬養が見たように『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』は2メートル弱の大きさだった。 その結果から犬養は鋼鉄線が張られていない理由を『立会人の裏切り』と推察した。 犬養が知ることはないが、もちろんその推察は外れていた。 ガブリエラは『ふつう一般に考えられる』最適な行動をとることはできない。 ゆえに、ガブリエラが『墓地に到着した後にとった行動』を犬養が推察できるはずがなかった。 持っている花束の火が弱まっているのを見て、犬養は近くの墓の花束を手に取り、火を移そうとした。 だがそのとき、犬養の腕に雫が落ちた。 「……!」 ポツポツと、雫がいくつも落ちてくる。しだいに水滴の数が増えてから犬養はそれが雨だと気づいた。 「ま、まさか……雨なんて……!」 花束の火が雨に濡れて消えてしまう。 犬養はライターを取り出し先ほど手に取った花束に火をつけようとするが、すでに湿っていた。 「あっめあっめふれふれ♪かーあさんがー♪」 雨の中、ガブリエラが歌いながら犬養に近づいていった。 「じゃっのめっでおっむかえ♪ うれしいなー♪ ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ♪ らんらんるー♪」 「……まさか、この雨はあんたが……?」 「へへー、ここへきたとき、ヒマだったので『あまぐも』をつくっておいたですよー『そなえあればうれしいな』ですー」 雨を受けて、『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』はどんどん膨らんでいく。 「……そんなバカな。それなら、はじめからそのスタンドを膨らませておけばよかったじゃん」 「あー、なるほどそうですねー。えへ、わかんなかったなあ。でもいま火は消せたんですからおっけーでしょうー?」 「…………」 犬養の策は尽き果てた。 彼女は、対策の次なる対策を練り続けていれば負ける可能性はほとんどないはずだった。 ただし、その対策とはあくまで『常人の考え方』に基づいていた。 だが、ガブリエラの考え方は常人のそれではない。 ガブリエラの行動は予測できるものではなく、また天性の直感と本能によってその行動はすべてガブリエラに有利になるよう働いていた。 そのような常軌を逸したことを予測できるはずがなかった。 犬養は手に持っていたコゲた花束を地面に落とした。 「この勝負……私の負けだな。知ってか知らずか、あんたは私の推察を上回った」 「あれれぇ、こうさんしますか?」 「いいや、決着はちゃんとつけるよ」 犬養は瞬時に全体重を前方に傾け、ガブリエラへ向かって駆け出した。 「……! フェイちゃんっ!」 急接近する犬養に『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』が立ちはだかる。 だが犬養は止まることなく突っ込んでいく。 犬養の体を取り込んだ『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』は一気に犬養の体の水分を吸い上げる。 犬養はガブリエラにもう少しで手が届くところで力を奪われて倒れたが、犬養にはその距離で十分だった。 「『グッ……バイ…………スーパー……スター』」 手の先から、懸命に搾り出した一匹の魚のスタンドがガブリエラの腿をかすめた。 「だがこの『試合』……勝った……のは、私だ……」 「…………」 『グッバイ・スーパースター』に触れられたガブリエラは動きを止めた。 『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』も犬養の体の水分を吸い取る攻撃を停止している。 犬養はかろうじて意識をつなぎとめていた。 (最後の、最後の手段……こいつの『庇護欲』を操作した。私を護りたくさせ、攻撃しないように……) 『グッバイ・スーパースター』の真の能力は『庇護欲を操作すること』。だが、犬養はこの能力を勝負において使うことを嫌っていた。 飽きっぽい性格の自分にとって、すぐに決着のついてしまうこの能力は戦いの興を削ぐものだった。 自分で立てたあらゆる対策のすべてを疑う犬養だったが、この能力だけは100%成功するものであった。 なぜなら『庇い護らせる』ことは、戦いの本質を打ち消すものだからだ。 (早く……早く私の体に水分を戻すんだ……息が、つらい…………) だが犬養は改めて思い知る。 ガブリエラが、『常人』ではないことを。 「…………フェイちゃん」 『フェイセズ・イン・ザ・クラウド』が犬養の体に纏わりつく。 そして――犬養の体の水分を『さらに』絞り上げた。 「…………かっ!」 (な……なぜ…………?) 「うふふふ……」 犬養を見下ろしてガブリエラは不敵な笑みを浮かべる。 犬養の体からはゆっくりと水分が抜かれていった。 じっくり、じっくりと乾いた雑巾をさらにしぼるように。 手足はどれも動かすことはできず、 まばたきをすれば瞼が眼球にはりついた。 眼球がグシャグシャにしぼんでいくのが犬養にもわかる。 口の中は乾ききって砂を嘗めているような感触がする。 皮膚がところどころパリパリと音をたてていた。 しかし、犬養は意識を保ったままでいた。 苦しみを味わいながら。 「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」 犬養は、本当に降参しようと思った。 もはや勝負なんてどうでもよく、とにかく解放されたかった。 だが、喉からはかすかな乾いた音しか出てこない。 「まもってあげますよ、ずうっと、私のそばで、ずうっと、ずうっと、かわいい私のおにんぎょうさん……」 犬養の弱点は、彼女の才能である『推察』が『常人の考え方』に基づいていたことだった。 切り札である『庇護させる』ことも、切り札たりえたのは『常人』に対してだった。 ガブリエラには犬養のスタンド能力が効かなかったわけではなかった。 ただ、彼女にとっての『庇護』が、犬養を誰にも触れさせないように、犬養を危険な目にあわせないように、 『動かなくてもいいように』し、自分の手元にずっと置いておくことだったのだ。 それから犬養は人知れぬ場所に運ばれ、ずっとガブリエラに護られた。 狭く暗い場所でくたりと壁にもたれかかり、生命だけを繋ぎとめられ、ガブリエラが時々話しかけにきた。 犬養はその度にどうにかしようとしたが、声は出ないし魚のスタンド1匹出すことも出来ないので能力を解除することもできない。 そして死にたいと思っても死ねないので そのうち犬養は考えるのをやめた。 ★★★ 勝者 ★★★ No.4919 【スタンド名】 フェイセズ・イン・ザ・クラウド 【本体】 寿(コトブキ)=ガブリエラ=コジョカル 【能力】 接触したものから水分を吸収して膨張する オリスタ図鑑 No.4919 < 第08回:準決勝② > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]