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【名前】クリスタルズ=リング 【性別】女 【所属】科学 【能力】生物十声(トゥルースヴォイス)レベル不明 【能力説明】 原石にカテゴライズされる能力。葉っぱの上に止まる虫、ビルの屋上で毛繕いしている鳥、路地裏を走る猫、建物の壁に刻まれた人の残留思念。 およそ生物のカテゴリーに入る全ての生き物達が発し、あるいは残した『言葉』をクリスタルズは聴く。傍に相手がいるのであれば自らの『言葉』を相手へ送り届け、心を通わす。 平たく言えば生物と話せる力。厳密に言えば生物の思念を自らの言語に翻訳し、意思疎通を図る『言葉』として自らの言語に再翻訳を施し、生物へ確実に送り届ける力。 クリスタルズ=翻訳機という解釈。間違っても生物を思うがままに操作する能力ではない。強いて言うなら、『言葉』を交わす生物達はクリスタルズを自分達と同類の生き物と見做すようである。 虫と喧嘩したり、鳥と近況を報告したり、猫とじゃれあったり。もちろん同類と見做されるからといって襲われないとは限らないが、今までクリスタルズが襲われた事例は1つも存在しない。 クリスタルズ曰く「虫や動物達へ敬意を払い、不用意に縄張りを侵さず、隣人として共に歩みたいと『言葉』を送り届ければ彼等は理解してくれる」との事。 この辺りの原理は原石らしく今のところ解明されていない。人間相手には一見意味がないように思えるが、錯乱や洗脳を施されている人間を正常に戻したという報告がある。 人間にしろ動物にしろ虫にしろ、クリスタルズは生物達の思念の中に隠れている本心・本音を引き摺り出し、そこへ自身の『言葉』をダイレクトに響かせる事ができるようである。 【概要】 ロシアに存在する、ある地方に生まれた少女。父子家庭で一人っ子。今年で13歳になる。愛称クリス。 神秘的と形容するしかない独特な雰囲気を醸し出し、右が灰色・左が青紫色を映すオッドアイと膝裏まで伸びる白銀の髪の艶は目にする者達へ強烈な印象を与える。 付近には自然保護区が有り、珍しいものを含めて様々な生物と触れ合う機会を持ちながら幼少期を過ごした。 鹿などの草食動物だけではなく虎などの肉食動物などに遭遇する事も多くあったクリスタルズが無事に育ったのは先天的に超能力を発現した原石だったからであろう。 自然に恵まれた環境で育った所以か、はたまたそれ以外の要因があったのか、しかしながら現在に至るまで能力発現の理由は特定されていない。 クリスタルズは虫や動物達と言葉を交わすのがとても好きで、普段は単身赴任で海外へ出張している父親と一緒にいられない寂しさを彼等と共に過ごす事で埋め合わせてきた。 偶の休暇に帰宅するクリスタルズの父は、動物が好きな娘への埋め合わせとしてよくクリスタルズを動物園やサーカスへ連れていった。 ロシアでも有名なものを父自ら選んだ末の小旅行のようなものだったが、そこでクリスタルズを待っていたのは動物達の悲鳴であった。 全ての動物達がそうであるというわけではない。だが、狭い檻の中に閉じ込められて人々の好奇的な視線を集める動物園の動物達、本来芸を行う事を目的としているわけではない動物達に火の輪を潜り抜けさせたりしているサーカスの動物達は叫んでいた。 視線を集めるストレスを。火を潜る恐怖を。躾と称して人間達から暴力を振るわれる動物達の悲鳴をクリスタルズは受け止め続け、あるサーカスの観覧中に限界を迎え意識を喪失した。 娘を思って旅行へ連れていってくれる父の為にそれまで我慢していたクリスタルズの限界を超えた当時の一件で、初めて父親は我が娘が常識では説明できない異能の力を抱えている事に気付いた。これが後にクリスタルズが父の勧めで学園都市へ転入する契機となった。 現在白帝学園に通う中学1年生。日向永弌と同じクラスに通う。学園都市に住むと決めたのはクリスタルズが12歳の時で、来日するまでに一通りの日本語を独学で習得済み。 父の判断でクリスタルズは白帝学園へ通う事となった。よって、クリスタルズが学園都市へ来たのは今年初め。貴重な原石という事もあって学園側もクリスタルズの編入試験を認めた。クリスタルズのレベルは初めて行った『身体検査』において情報不足が散見されるため不明とされている。 異国の地で父と離れて暮らす寂しさは確かに抱えているが、それ以上に父の愛情を強く感じるクリスタルズは父に依存するのではなく、自立した立派な女性となる事を目標としている。 そして、父兄らが気兼ねなく学園都市に入れる数少ない機会である大覇星祭までに少しでも1人の人間として成長していようと勉学に励んでいる。 日向永弌には色々世話になっている。新入生ながらとりわけ教師から期待されている者同士とでもいうべきか、教師から日向へクリスタルズの世話役を指示された事がきっかけとなり友達になった。 家族との確固たる繋がりを手に入れられていない日向を心配しており、世話を焼いてくれる彼の為に何かできる事がないか思案している。 最近では、自分と同じく異国から学園都市へ来たケリィ=エイトビットと仲良くなった。ケリィのマッサージの虜になってしまったのがきちんと会話するきっかけとなった。 神秘的な雰囲気を醸し出しながらも人当たりは良い方なクリスタルズでも唯一気に入らない人間が存在した。 自分に異能な力が宿っていると父が気付く契機となり、自身が学園都市で暮らす起因となったサーカスのメンバー募集の為に白帝学園の生徒へ声を掛けている帝白紫天である。 サーカス=動物虐待と考えていたクリスタルズは、どこで知ったのか動物と会話できる自分を勧誘しにきた帝白を延々と批判し続けた。 「あんなものは動物の虐待でしかない」「サーカスなんて興行が未だ続いている現状が嘆かわしい」「あなたには火に怯え、叩かれる鞭を恐れる動物達の気持ちがわからない」「学園都市でしか見られないサーカス一団を結成したい?それは動物達をモルモットとして使い捨てるという事か?」「あなたのような人間が私達生徒のトップだなんて私は認めない」等々それはもう散々に言い捨てた後、帝白の意見を聞かずに勝手に去っていく有様であった。 言いたい事も言ったし、これであの男も少しは自分の愚かさに気付くだろう―などと勝手に1人で納得していたクリスタルズだったが、次の日もその次の日も帝白が自分の前に姿を現した。 それら全てを一切無視し避けていたクリスタルズだったが、ゴキブリのような帝白のしぶとさに遂に根負けし渋々話に付き合った。 その後どういう経緯を経たのか、クリスタルズは帝白サーカス団『スタンティーク』の団員の1人に数えられるようになった。 クリスタルズ当人は団員を含め他人に入団に至るまでの経緯を聞かれる度に入団そのものを否定しているものの、帝白サーカスが開かれる際には殆ど顔を出している。 帝白サーカス団でのクリスタルズの担当は動物を用いた火の輪くぐりや自転車操作、縄跳びなどを代表とする動物演芸……ではなく、帝白サーカスを目にした周囲の生物達が人間の行っている芸についてどのような感想を抱いたのかを記録する係。 『生物達が人間の言動に対してどのような反応をするのか、どんな感情を持つのか』という自主研究テーマに合致しているとしてクリスタルズは渋々請け負っていると話している。 その過程で、団員である神輿庭麒太郎や御神楽帝達と交流を持つようになった。帝白の指示を受けた麒太郎が操縦するアクロバイクの後ろに乗っていつも各現場へ向かっている。 あれだけサーカスを動物虐待とイコール付けていたクリスタルズが、どんな経緯を経て帝白サーカス団の活動に付き合うまでに至ったのか、詳細は当人達にしかわからない。 断片的に判明しているのは2つ。いずれも帝白からクリスタルズへ向けられた偽りのない『言葉』。それは『謝罪』と『帝白が考えるサーカスの在り方』。 【特徴】 150センチに僅か満たない低身長に女性として起伏が乏しい体格に関わらず見る者達に強い印象を残す。右が灰色・左が青紫色を映すオッドアイ。目元はパッチリ二重まぶた。 膝裏まで伸びる白銀の髪。前髪も伸びており、白銀の毛先から覗くオッドアイと雪のような真っ白い肌が一際目立つ。 ロシア帽の形状を参考にした耳当て付きの青紫色の帽子を被る。時々能力が無意識に発動する為、負担を和らげる意味合いがある。 上質な青いウールにイチイの葉・花・果実が模様として描かれているウールショール、日本ではプラトークと呼ばれる伝統的な四角のショールを右肩から羽織り、ショールの先を首に巻いて落ちないようにしている。 私生活はおろか学校に通う時もプラトークを羽織っている。私生活では白系統の上着に青系統のスカートなどを着る。 日本に来てそれ程経っていないので、自分の知らない日本の文化に触れると内心興奮する。特に、食事前のあいさつである「いただきます」に込められた意味に感銘を受けた。 日向から日本発祥のマンガ文化やゲーム文化について教わって以降は、コンビニで毎週発売されるマンガを立ち読みするのが習慣となりつつある。 動物をこよなく愛するがベジタリアンというわけではない。魚も牛も豚も鳥も食べる。クリスタルズが本当に動物の死を全て許せない性分ならば、かつて暮らしていた村付近にあった自然保護区で肉食動物が草食動物を食らうのを黙って見てはいなかっただろう。 ここにクリスタルズ=リングが抱く価値観の1つが凝縮されており、帝白紫天との話し合いで彼及び彼が語るサーカス観と折り合いをつける事ができた最大の理由が秘められている。 【台詞】一人称「私」。二人称「君」「あなた」。他人の名を呼ぶ時は年上だろうが年下だろうが男だろうが女だろうが「~君」と呼ぶ。独学の影響のようだ。 歯に衣着せぬ言葉遣いが特徴。虫や動物に変な渾名や愛称を付ける癖がある。しかも、どれも石の名前である。その時々の直感で名称を決めるとの事。 「お父さん。ごめんなさい。私…これ以上ここにいれない。聴こえるの。あそこ…にいる動物達の悲鳴が。恐怖に染まった叫び…が……」 「日向君に私がしてあげられる事ってなんだ?きっと、日向君の家族は日向君を見捨てたりしていない。遠く離れた私のお父さんが、今もずっと私を愛し続けてくれているように」 「そうだ。この言葉は私の祖国には存在しないんだ。初めて言葉に込められた意味を知った時、私は涙が出た。生き物の命を頂き自らの生命に活かす。自然の恵みに対する感謝に有り触れた挨拶を共に紡ごう。……いただきます」 「日向君。ケリィ君。紹介する。あそこの黒い猫が閃亜鉛鉱君。隣の白い猫がホワイトバッファロー君。少し離れた場所で欠伸をしているのが橄欖石君だ。皆良い子達だ。仲良くしてやって欲しい」 「麒太郎君。もうちょっと君のお腹に回してる腕の力を強めていいか?…そうか。それでは失礼。それにしても、私が思う以上にアクロバイクはスピードが出るんだな。まあ私のせいで遅刻しそうになっているんだ。文句は言えない…ど、どうした麒太郎君?スピードがさらに上がったぞ?へ、返事をするんだ麒太郎君!」 「G君は私にこう言ったんだ。『おぬしの話を聞いてわしは思ったぞ。折角学園都市でしか見られぬサーカス一団を結成するのだ。楽しんでくれる観客が人間限定では些か勿体無い。ここは強欲にいこうぞ。クリス。動物達も楽しんでくれるサーカス一団結成の為におぬしの力をわしに貸してくれ』とな。最初耳にした時はボケたのかと思った。だが……ふぅ。この話はもうお終い」 【SS使用条件】 特になし
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>>next 朝、キュルケは寝ぼけ眼をこすり、大きく背伸びをして目を覚ました。 そして窓を開ける。早朝特有の弱い日差しと涼やかな風、それに乗ってくる腐った沼の瘴気のような鼻を突く臭い。 爽やかな朝の気分は一気に台無しとなった。 まただ、また臭いが強くなっている。先々週辺りからルイズはまた部屋に引きこもり始めた。 それを契機に、今までは隣から漂う微かな空気の濁りだったものは、段々と明らかに鼻を突く異臭に進化していた。 一体何をしているのかキュルケは想像もしたくなかったが、正直この臭いは耐え難い。 一言文句を言っても罰は当たるまい。 そう思い部屋を出て、ここ最近で人嫌いになった友人の部屋を訪ねる。 「ルイズー? ちょっとお話があるんだけれど」 強めに扉を叩き、声をかける。出てこない。 今度はさらに強く叩き、大声で呼びかける。それでもルイズは出てこない。 いい加減業を煮やしたキュルケが『開錠』を使おうと杖を振りかざした時、漸く返答があった。 相変わらず暗い顔つきのルイズが不機嫌そうに半開きの扉から顔を出す。 キュルケの顔を認めると、また瞳に隠し切れない悪意が溢れる。 「五月蝿いわ、ツェルプストー」 「っ! ……最近空気が悪くありませんこと? お掃除は欠かさずやっているのかしら」 その言葉に、あからさまに顔を顰めたルイズは、キュルケから視線を外した。 「ちょっと立て込んでいるのよ。すぐに解決するわ……これでいい?」 「──結構」 勢い良く閉じられた扉に向けて嘆息し、キュルケは湧き上がる吐き気を手で抑えた。 もっと追求するはずだったのに、あっさりと手を引いたのはもちろん理由がある。 扉が開かれた瞬間に、我慢の限界を超える疑いようの無い悪臭が襲ってきたからだ。 堪らずその場を離れようと会話を打ち切り、荒く息を吐きながら寮の玄関口へ向けて歩き出した。 臭いの元を確かめる気は起きなかったが、ある程度の想像はつく。彼女の使い魔だ。 怒りっぽくて高慢ちきで、でも努力家で正義感の強かった彼女を、見事に豹変させた使い魔にキュルケは怒りを禁じえなかった。 足を止め、暫く考えていたキュルケだったが、意を決したように顔を上げ方向転換する。 向かうのはこの寮の少し離れた場所にある親友の部屋。 以前交わした会話を思い出す。 タバサは、あの使い魔について何か知っているはずだ。 ── タバサは自室で一心不乱に本を読み進めていた。 机の横には山のように書物が積み重なっている。 無い、やはりどこにも載っていない。 タバサは捜し求めるものが手元の本に無い事を知ると、あっさりそれを投げ捨てた。 ─手がかりは、やはりこの一冊だけ? 書物の山とは分けて置いてあった、ぼろぼろの本を手に取る。 「~星の厄神と始祖ブリミル~」 何度も読み直したその本を再び開く。タイトルはよくある子供向けの童話のようだ。 世界に多く存在するブリミルに関する御伽噺の一つ、この本を図書館の奥で見つけた時、タバサはそう思った。 しかし何となく軽そうな見た目に反し、その内容は果てしなく重いものだった。 簡単に本の中身を説明するとこうなる。 遥か昔、流れ星と共に恐ろしく醜悪な生物の群れがある国に降り立った。 その生物は人を食らい、畑を荒らし、その国に住む人間達の生活を蹂躙していった。 普通の物語ならここで旅の勇者だの、光の巨人だのが現れて、人々を救い一件落着だがこれは違う。 生物は人を食うだけでなく、人を自分と同じ醜悪な姿に変え仲間を増やし、やがてその国を滅ぼしてしまう。 被害はそれだけに留まらず、隣国や大陸を超えてハルケギニア全土まで拡大しかけた。 世界に暗黒の時代が来ると思われたその時、漸く始祖ブリミルがおっとり刀で駆けつける。 ブリミルは自慢の虚無で滅ぼされた『国ごと』生物を焼き払う。そこで話は終了している。 こんな内容が所々挿絵付きで描かれている。実にシュールだ。 そもそも話にオチも救いも無いこの本は、物語として三流もいい所だ。 まるで御伽噺ではなく、実際の出来事を歴史として残したようだった。 中途半端に現実感を覚えるそんな所に、どこか言い様の無い不気味さを感じる。 そして重要なのは件の挿絵の事である。 降り立った生物というのが、そっくりなのだ。ルイズが召喚したあの使い魔に。 あの、『ロングビルを食らった』恐ろしい使い魔に。 目撃したのは偶然だった。 誰もが寝静まる深夜、タバサは突然尿意を催して手洗いに部屋を出た。 無事に用を済ませ、部屋に戻ろうと寮の廊下を歩いていた時、何となく窓から本塔の辺りを見た。 何か蠢く物が見えたような気がして、窓に近づいて目を凝らしたが良く分からない。 たまたま、シルフィードに乗る時に使う小さなスコープを持っていたので、覗いてみる事にした。 遠くの様子が良く見えた。ついでに見たくない物も見えた。 学院長の秘書が必死の表情で己の体に纏わりつく何かに抵抗するも、 善戦空しく腹を抉られ、頭を齧られた辺りでスコープを横に逸らした。 その先でどこか恍惚とした表情のルイズを見つけた時、流石のタバサも恐ろしさで顔が引きつった。 トイレを済ませておいて本当に良かった。 この事は既にオールド・オスマンに告げてある。 しかしオスマン氏は報告を受けた後、深刻な顔をして「口外を禁ずる」と述べただけだった。 現在に至るもルイズとその使い魔は何の処分も受けていない。 あの様な危険な生物を放って置く事など、正気の沙汰ではないというのに。 故あってこの学院から離れられないタバサは、己の安全の為に調査へと乗り出したのだ。 しかし図書館の本を読み漁り始めて既に一ヶ月以上、成果は芳しくない。 手がかりになりそうなのは、今のところこの童話モドキ一冊だけだ。 やはり生徒が入れる一般区域には重要な書物は無い。 教職員用の『フェニアのライブラリー』へ入る方法は無いものか? あそこは常に教師の誰かが当直に就いている為、余程の理由が無い限り入るのは難しい。 そんな事を考えていた矢先、部屋にノック音と聞きなれた声が響いた。 サイレントをかけるのを忘れていたらしい。 タバサは一旦本を閉じたところで、閃いた。扉が開く。 「こんにちはタバサ、ちょっと聞きたい事が──」 「来て」 「え、ちょ、ちょっと痛いわよタバサ。一体何なの?」 顔を出したキュルケの腕を引っ張り、タバサは図書館がある本塔へと向かっていった。 ── 「それで、どういう事なの?」 魔法学院の図書館内、高さ30メイルにも及ぶ書棚に囲まれたその一角で、二人は話し合っていた。 無理やり連れて来られたキュルケは、掴まれて赤くなった腕を擦りながら不機嫌そうに尋ねる。 タバサはこの一ヶ月、独自に調べていたルイズの使い魔の事を説明した。 ロングビルに関しては、一応口止めされているので話さないでおく。 暫く黙って聞いていたキュルケだったが、彼女に一つ疑問が浮かんだ。 「何でルイズの使い魔を調べてるわけ?」 「あれは危険」 「……どの辺が?」 急に探るような目つきとなったキュルケから目を逸らすタバサ。 キュルケはそんな様子を見て溜息をつくと、笑って小さな頭を撫でる。 「まぁ、良いわ。貴女の秘密主義は今に始まった事じゃないし。 もともと用件もあの使い魔だったからね。それで、ここに来たって事は手がかりがあるの?」 「あるかもしれない。でも一人じゃ無理。手伝ってほしい」 珍しく自分を頼るその姿に、何でも言いなさい! と大口を叩くキュルケ。 しかし続くタバサの言葉に一瞬頭が真っ白になった。 何かの間違いだろうと思い、聞き返す。 「……もう一回言ってくれないかしら?」 「フェニアのライブラリーに忍び込むため、協力してほしい。色仕掛けで」 ── 上手くいった。 本日の当直はコルベール師で、彼がキュルケの誘惑に葛藤している間に、小柄なタバサは二人の間をすり抜けた。 そして首尾良くフェニアのライブラリーに忍び込む事に成功したのだった。 今頃、コルベール師は滅多に無い色事に四苦八苦しているだろう。 彼女には感謝してもし足りない。渋々という様子だったが──何で私があのコッパゲに!── 頭を下げて上目遣いで頼めば一発だった──計画通り。 腹黒い感情を無表情で覆い隠し、奥へ進むタバサ。 入り込んだはいいものの、書物の量は膨大だ。一冊一冊探していたのでは日が暮れる。 そこでタバサは、重要な物はダンジョンの最奥にあるのがセオリーとばかりに一心不乱に突き進む。 暫く歩くと突き当たりに辿り着いた。 いい具合に古臭い書物が揃っている。ここから調べていこう。 『レビテーション』を唱え、書棚の一番上から、それらしいタイトルの本が無いか目を凝らす。 ─一段目、無し。二段目、無し。三段目、『出来る! 魔法で豊胸』……気になるが関係無い。 そうやって棚を一つ一つ注意深く観察し、四つ目の書棚に取り掛かった頃。 ─十ニ段目、無し。十三段目……これらは何だ? この段から異様な雰囲気の書物が数多く並んでいる。 血で染まったような不気味な紅い書物。何かの皮で出来ているのか、光りに異様な反射をする書物。 その中で、ある一冊がタバサの目に留まる。 『ヴォイニッチ手稿』 二百頁ほどのその本を手に取ってみると、中には不気味なイラストが多数描かれている。 タバサは歓喜した。これならあの生物が載っているかもしれない、と。 言語は現代のものではない。古代ルーン文字に似ている様な気もする。 一枚一枚丁寧に捲る。だが十数頁を越えた辺りで、タバサは異変に気がついた。 頁を捲る手を止められない! まばたきが出来ない! 視線を離せない! 全身に冷や汗が流れる。得体の知れない恐怖に体が震える。 これは不味いと思い、腋に挟んでいた杖に精神を集中させる。 しかし魔力は霧散し何の効果も表せない。結果、手を止める事も出来ない。 その事実に普段は冷静なタバサも焦った。 読み進める内に、もはや本を読んでいるのではなく『読まされている』状態となる。 目の前が段々と暗くなり、平衡感覚が薄れてくる。 割れるような激しい頭痛、それと同時に『何かが自分の中に入ってくる』のを感じて、タバサは正気を失いかけた。 その時、急に目の前へ『杖』が振り下ろされる。 「そこまでじゃ」 杖から放たれる魔力で一気に目が覚めたタバサ。 本の呪縛から解放され、気が抜けた事で『レビテーション』が解けた。 空中に投げ出される彼女を、歳に見合わぬ逞しい腕で受け止めたのは── 「んっ……オールド……オスマン」 「うむ」 汗を流して荒い息を吐く美少女という、一種アレな姿のタバサに、鼻の下を長く伸ばした魔法学院の長、オールド・オスマンだった。 >>next
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(スレ23より) 924 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 12 06 40 ID 4wq1Ekl2] 頻繁に親子で我が家へ遊びに来る奥の自宅に初めて招かれてお邪魔した。 さすがに床は片付いていたが台所は洗い物の山少し異臭・・・ 暑かったので3回促したら渋々エアコンを入れてくれたが全然冷えずカビ臭い。 出された麦茶はかすかに色が付いてる2番茶w 出された袋菓子も湿気てる。 手土産のシュークリームは冷蔵庫にしまったまま出てこない。 そりゃ我が家の方が居心地良い罠って思ったよ。 30分ほどで帰りました。 今後、付き合い方を変えなければorz 925 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 12 55 34 ID CEE8jYrb] 確かにちょっとあれ。。。なお宅かもしれないけど。 お呼ばれされたお宅で、エアコンを再三催促するって・・・ 926 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 11 51 ID YjoXqaWB] 914ですが、食器や文房具(やや高額なもの)、CD、スリッパやタオルですね。 その人の家に、我が家やよそのお宅にあったものがあったので聞いたら、 「うちにあったほうが良いと思ってもらってきてあげた」 とのこと。 うちの食器やCDもあったので取り返したら、 「こちらは奉仕の精神で、もらってあげているのに、がめつい。空気読みなよ」 と言われて、以後FOです。 927 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 13 16 58 ID 1zE15xfJ] 924の家に来ると、 「エアコンつけて、つけて、つけてぇぇぇ」 といつも言われてるから、やり返してみたとか。 ところで、そういうお宅に、何て言って招いてもらったのかが知りたい。 それから頻繁に遊びに来るときには、手土産は持ってくるの? 928 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 28 29 ID GXMdwUI7] 926 すげー、ドロボーじゃない。 929 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 33 25 ID dGnJuVr8] 926 うわああ、完全に頭おかしいねそりゃ。 縁切れてよかったねー。 930 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 33 45 ID CEE8jYrb] 926 ドロボーというより、本当に少しおかしい人なのでは... 931 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 19 54 ID lYDA7noF] もらって!と言われたわけでもないのに、奉仕の精神!? 932 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 48 18 ID /7u48ezf] 926 >がめつい。空気読みなよ この一言が特にすごい。泥棒にがめついと言われるとはw 完全におかしい人だ。 933 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 49 25 ID yFzv1aJG] 空気を読まずに警察を呼べ。 938 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 16 06 32 ID f+UzLEP/] 924 とりあえず人様の家なんで、エアコンは我慢すべきかと。 939 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 16 52 56 ID CrJdILzD] つか、異臭なら「ねえ、ちょっと窓開けていい?」の方が効果的な気が。 エアコン催促よりも言いやすいし 940 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 17 03 25 ID 6ohk/bao] 私も、いつも来るばかりの人に何て言って家に招待したもらえたのかが気になる。 941 名前:924 [2005/07/11(月) 18 10 03 ID 4wq1Ekl2] 925 936 買い物に行って偶然会ったので帰りに寄ったのですが、それまで締め切ってたみたいで湿気と熱気がムンムンで 外の倍くらいの不快指数だったんです。 座って1~2分で私も子供も奥の子供もじっとりとした汗が・・・ 私「汗が引くまででいいからエアコンつけようよ。」 奥「ごめん、窓開けて我慢して。」ここで二番麦茶登場。 1~2分我慢したが風が全く入ってこない。更に汗が滴り落ちる。 私「お願いだからつけてよ、子供も汗が引かないのよ。」 奥「今年はまだ一度も使ってないのよね。」ここで湿気た袋菓子登場。 タオルで汗を拭きながら奥の旦那実家への愚痴を聞かされてる最中に汗がテーブルに落ちた。 「ごめん、暑くて耐えられないから帰る。」 ここで渋々エアコンを入れてくれたのですが、匂いに耐え切れず用事を思い出した振りをして帰りました。 927 たまに封をあけて洗濯ばさみで止めた湿気てない袋菓子を持ってくる。 私も子供も封を開けて無くても袋菓子は好きではないので食べない。 940 買い物中偶然会って、「いつも行ってばかりで悪いから帰りに寄っていく?」 「そう、じゃあお土産かって行くからお茶でも飲ませてね。」って感じです。 942 名前:924 [2005/07/11(月) 18 14 06 ID 4wq1Ekl2] 意地になってるわけではありませんが、 袋菓子の湿気の件、好きではなくても出されれば一口や二口は摘みますよ。 夕飯の仕上げしなくちゃ。 943 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 18 38 ID Rd0GSC1+] なんつーか・・・相手のことを下に見てる感がムンムン。 相手は好意で呼んでくれたというのに・・。 シュークリームの件は「さっそく食べようよ!」ってサラっといえばいいじゃん。 945 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 19 31 ID m5PB9SVt] エアコンつけなきゃ熱中症で死にかけるぐらい暑い家はあるよ。 …うちがそうだけど。 神奈川だけど、今日は室温が38度でした。 特に、エアコン慣れしてると汗が滝のように流れ、ほんとに危ない。 でも、友達…ましてや初めてなら、汗だらだら垂らしてる時点でエアコン入れるよね…。 さすがセコケチ 946 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 28 47 ID vRrncdXn] 暑い、寒い、とお客さんを気遣うよりは さらっと「暑いからエアコン付けて」とか「冷えすぎだから止めて貰える?」 って言って貰った方が有難いな。 セコケッチンで付けない人は、悪いけど私も見下すと思うよ、、、、 947 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 18 44 27 ID LnPFiveF] 941 そのくらい性質の悪いセコケチさんって、その後は縁が切れてもいいと 思ってるんだろうか?なんかこう、気持ちが汲めないよね。 952 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 19 00 50 ID 6VC0RfYK] 普通に暑い日にエアコンつけてない家って関東にあるの? 乳幼児は体に悪いとはいえ、軽くドライくらいはつけるでしょ?うちわで扇げば涼しい程度に・・・。 別に家はそれほど裕福な家庭ではないけど、催促しなきゃついてないって言うのがよくわからない・・・。 953 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 19 05 01 ID ahKAoeF3] 自分だけしか家にいないときに我慢するのは節約。 お客さんにまで我慢を強いるのはセコケチ。 ってことでつね。 954 名前:sage [2005/07/11(月) 19 07 34 ID nA23MyPB] 952 エアコン嫌いって人いるからね。 頭痛とか手足が冷たいとか言って、ものすごく 暑いのに付けないんだ。今月その家で集まりがあって うちの主人が「あ~この時期にあそこの家はキツ~っ!」 って今から言ってる。 964 名前:924 [2005/07/11(月) 22 16 05 ID X+Ya3SIU] ご意見は人それぞれで当然ですので・・・ 我が家では室温30度超えたらエアコン入れると決めてますので、 話題の奥とは考え方が違うと思って切ることに決めました。 私は細身ですが主人がデブとマッチョの境目で暑がりw 冬は室温ヒトケタにならなければ子供が居ない限り暖房は入れません。 現在は室温27度、部屋着の調整をしてドライすらも入れてません。 実は私がセコケチ? 965 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 22 20 33 ID HLV7EQO5] 964 どっちがセコケチかどうかじゃないと思う。 しかしアレだけのレスがありながら、切る事に決めましたって・・・。 エアコン要求も然り、場の空気が読めないんだろうね。 966 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 22 51 57 ID heWn5sn2] 私は 941(= 924)の「ごめん、暑くて耐えられないから帰る。」 に引きましたよ。 どうやら何でもズバズバ言い合えるほど仲良し・・・ というわけではないみたいだし。 最初から急用思い出したふりすればいいじゃない。 976 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 24 17 ID zcqoozSo] 凄く古いエアコンだったりして。冷えない=フロン切れ、もしくは 稼働するまでに時間がかかるおばあちゃんの様なエアコン。 冬はエアコン以外の暖房器具使ってるとか。 でも自分すっごい汗ッかきなんで、三度目には切れ気味で 帰ると言いたくなるのも分かる・・・サウナ状態の部屋で我慢大会しながら お茶飲みたくないもん・・・ 978 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 42 39 ID iPFz4+uC] >976 まあそれにしても、「暑くて耐えられないから」なんて正直にいわず、 適当な理由つけて帰ればよかっただけのことで。 頭使ってないのは三度エアコン催促もいっしょだなw 979 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 50 40 ID zcqoozSo] 978 「帰り」は適当な理由つけてるみたいよ?>用事を思いだしたフリ 986 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 07 49 22 ID ccvwIZPE] 924は デ ブ なんだろ。要するに。 988 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 08 29 25 ID 9vvvBywF] うちも新聞とらないしクーラーつけると頭痛くなるから極力しない。 ゲームは子が寝た後にしてるけど、ドキュと思われてたのか・・・ 990 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 04 38 ID bm1oUzHU] エアコンは付けなくても平気だったり、付けると具合が悪くなるなら 付けなくても全然変じゃないけど、ガマンして付けないならセコケチでしょう。 「私は付けると具合が悪くなるから!セコケチじゃないから!」と 鼻息荒くする必要は無いと思うけど・・。 新聞は「ネットでニュース読めるから」って人もいるけど ローカルな話題とか全く知らない人がいて(新聞取ってるだけで読んでない人もだけど) 節約も良いけど、何だかなあと思う事はある。 991 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 41 39 ID oTaLtJxE] 節約の為だけに新聞を取っていないと決め付けている件について。 993 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 59 19 ID bm1oUzHU] 991 だーかーらーエアコンの件でも書いてるじゃない、 節約とかセコでお金を掛けてないわけじゃないんなら気にする必要ないでしょ。 決めつけてるように読めるとしたら被害者意識が強すぎる希ガス。 994 名前:名無しの心子知らず [2005/07/12(火) 10 13 26 ID Fhg/H5RG] 他人に迷惑をかけているわけでもないのに、そこまで感情移入できる なんて、立派なトメになりそう。 そうですねって答えるまで「だーかーらー」とか言われるんだろうな。
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ブランド アトリエさくら Team.NTR ジャンル アドベンチャー メディア DVD-ROM 原画 綾風柳晶 シナリオ 中森南文里 発売日 2019/7/26 価格 2,800円(税別) 選評 【2019】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 2本目 https //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1559821854/ 567: 寝取られ妻・絵理奈 選評 ◆Ra9j1sVq3. :2019/07/30(火) 16 48 09 ID 30t8YOYY 寝取られ妻・絵理奈 ~愛する妻は他の男の上で腰を振る~ ジャンル アドベンチャー ブランド アトリエさくら Team.NTR 発売日 2019年7月26日 価格 2800円+税 6月末に「淫らに堕ちる、最愛彼女」をリリースしたアトリエさくら Team.NTRの新作。 前作の最愛彼女はNTRなのかはさておき話としては一応成立しておりまだマシであったが今作は完全にイカれてしまっている。 ○登場人物 西田 伸二郎 本作の主人公。 大学でヒロインと知り合い、その後大学を休学してヒロインと駆け落ちした。 いつヒロインを連れ戻しに来る奴が現れるか分からないのでなるべく目を離すまいと在宅ワークで生活費を稼いでいる。 鴻ノ池 絵理奈 本作のヒロイン。 バリバリのお嬢様育ちだったが普通の大学生として在学してる間に主人公と知り合う。 現在主人公と駆け落ち先で同居しており、主人公曰く「事実婚の妻」らしい。 作中ではキチガイじみた言動が目立つが実際ガチのキチガイである。詳しくは後述。 冷泉 敏彦 絵里奈の幼馴染で元婚約者。(元と主人公に呼ばれているが別に婚約は解消された訳では無いので正当な婚約者のはずだが・・・) 主人公曰く「金持ちらしくいけ好かない奴」らしいがあまりそういう雰囲気は無い。 おそらく作中で最もマシな人物。 ○シナリオ フルコンプまで2時間かからない位とボリューム自体はロープライス相応。 終盤まで一本道だが選択肢いかんで5つのエンディングが有る。 共通部分 ヒロインと駆け落ちして半年。 在宅ワークで生活費を稼ぎ駆け落ち生活を続ける主人公と絵里奈であったが主人公の仕事が上手く行かなくなって来た為に生活費に困窮し始める。 そんな折、今まで影も見せなかった敏彦から宅配便が送られてきた上に主人公に呼び出す電話をしてくる。 絵里奈に注意を促す主人公だがとっくの昔から敏彦と連絡先交換してると言い放つ絵里奈。 何故敏彦や絵里奈の実家が殴り込んで来ないのか不思議に思う主人公であったが取り敢えず敏彦の呼び出しに応じ待ち合わせ場所に向かう。 待ち合わせ場所に現れた敏彦に主人公は絵里奈を連れ戻す気なのか問いただすが、別にそんな気も無いし絵里奈の実家にも知らせてないと言う。 一安心した主人公であったが敏彦に駆け落ち生活を続ける資金が無い事実を突かれてしまう。 そんな主人公に対して敏彦は絵里奈と風呂に入らせてくれれば1ヶ月の生活費を貸すと提案する。 初めは拒否する主人公であったが金が無い事実に屈し絵里奈にこの提案を伝える。 てっきり絵里奈は嫌がってくれる物だと思ってたがアッサリ受諾する上に一緒に風呂なんて子供の時以来だと大はしゃぎする。 この態度に主人公は訝しむが自分の為に嫌な気持ちを抑えてくれているのだと思いこむ。 結局この場は本当に風呂に入っただけで約束通り敏彦は生活費を貸してくれるのであった。 主人公は生活費の為にこんな事を絵里奈にさせてはいけないと口だけは達者に語るが結局それから毎月絵里奈を敏彦に差し出しては生活費を貸して貰う。 敏彦が絵里奈に行う行為は毎月エスカレートして行きその内中出しセックスまで行うが絵里奈は相変わらず全く嫌がらないどころか非常に嬉しそうに行為に及ぶ。 この態度を不思議に思う主人公に敏彦は「お前はまだ絵里奈の本当の姿を理解出来ないのか?」と詰る。 ある日敏彦から「今日こそ絵里奈の真実を教えてやるから2人で俺の家に来い」と連絡が有り渋々主人公は絵里奈を連れて敏彦の家に向かう。 家に着くと敏彦は主人公と絵里奈でセックスをするように指示する。 主人公は嫌がったものの絵里奈はノリノリで結局敏彦の前でセックスをする2人。 行為の後に主人公が一息ついていると、なんと敏彦も絵里奈とセックスすると言い出す。 金も絡まないのに絵里奈が受け入れる訳無いと主人公は激怒するが絵里奈はアッサリ受諾。 主人公の眼前で敏彦とのセックスに励みだし、主人公は呆然とする。 一通りセックスが終わるとようやく絵里奈の正体について語りだす敏彦。 主人公は「絵里奈はビッチだったのか?」と聞くが敏彦曰く実際には「愛してると言われれば複数人相手だろうが躊躇いなく受け入れるという精神病質者」であると明かされる。 なんでも厳格な家庭環境のせいでその様になったらしく、この事を知っていた敏彦は婚約者としての立場を利用して治療の一環で普通の人らしく大学に行かせる様に仕向けていたのに 主人公が迂闊にも絵里奈に愛してると言って駆け落ちに誘った為に御破算になってしまったのだった。 愛してると言ってしまった以上絵里奈は主人公に依存状態になっているので、これを解消するには主人公側から絵里奈を拒絶する必要があった為、 主人公が絵里奈に愛想を尽かす為に敏彦は正体を知る様に仕向けていたのだった。 (ここから先の選択肢で5つのエンディングに分岐) ルート1 絵里奈の正体を知った主人公は最後に出会いの地である大学に2人で赴きセックス。 絵里奈を手放す事にした主人公は絵里奈に分かれを告げる。 その後絵里奈は敏彦の下に戻ったらしいがどうなったのかは分からず終了。 ルート2 やはり絵里奈を手放す事が出来ない主人公は2人でこれからも頑張ろうと言った所で打ち切りエンド。 ルート3 愛してるとさえ言ってれば絵里奈は自分の所に居てくれるんじゃね? と開き直った主人公は絵里奈にライブカメラ越しに売春させるという変態プレイで生活費を稼がせる様になる。 これを知って激怒した敏彦が家に殴り込んで来て終了。 ルート4 俺だけに夢中にさせてやるぜ! とばかりに主人公は絵里奈を開発しハメ撮り映像を敏彦に送り付ける。 すっかり主人公に夢中になった絵里奈の映像を見ながら敏彦が幼馴染として昔の回想をして涙しながら終了。 ルート5 逆に敏彦がルート4と同じ様に身体で分からせてやるモードに突入して終了。 ○問題点 何を狙ってるのか意味不明 ロープライスの抜きゲーらしからぬ変化球を駆使しすぎているせいでコンセプトは愚か普通の話としても何が焦点なのかサッパリ分からなくなっている。 色々とおかしな点はあるが最高にマズイのがヒロインの頭が狂ってるという誰得設定だろう。 +... 主人公についてきてるのも間男役と絡むのも全部頭がイカれてる事の延長線上でしかないのでNTR物に必須であろう主人公への恋慕や 間男と絡む事への後ろめたさ、心情の移ろい等が微塵も存在していない。 単に好きと言えばホイホイ付いてきて股を開くだけのBOTである。 百歩譲ってヒロインが病気の為に寝るという設定にするにしても、身体が男を求めてしまうので心に反して寝てしまう と言った塩梅であればまだ擁護も可能だろうし 主人公夫婦が金に困って仕方なくヒロインが身を売る・・・という話でも良かったと思うのだが。 また単純な話として整合性やジャンルの定義云々を抜きにしてもヒロインの頭がクルクルパーなどという設定自体気持ち良い物では無いだろう。 少なくともテーマを絞って抜きに徹するロープライスゲーでやる事ではない。 テーマと言えば「寝取られ妻」というタイトルではあるが、実際には主人公が勝手に妻だと思ってるだけのタイトル詐欺なのもどうしたものか。 間男以外全員頭クルクルパー このゲームにおいては設定があるヒロイン以外も皆頭がイカれてる。 間男役の敏彦はマシではあるが。 まずヒロインが狂ってるのは愛情云々という点だという設定だが、実際には日常生活や通常の倫理感すらもぶっ壊れている。 ・仮にも駆け落ち中なのに婚約者からの宅配便を受け取って平気な上に何故連絡を取って悪いのかも分からない。 +... +... ・それはお風呂だから当然よねえ(笑) +... ・実質売春 借金に何の抵抗も無いどころか親切だと思ってる +... +... また意図的な人選なのかは不明だが不気味な位声が幼く、人妻キャラとはとても思えない。 これも含めて狂ってる事の演出の可能性も捨てきれない所ではあるが・・・。 これに負けず劣らずイカれてるのが主人公である。 まず事の発端であるヒロインへの告白と駆け落ちの動機からして「彼女には許嫁がいて、そいつがいけ好かないから」である。 お前が寝取り体質でどうするんだ。 +... なるべく目を離したくないというもっともらしい理由で在宅ワークに固執しているがそれでは成立せず破綻すると分かって居ても改善する気はゼロである。 その結果毎月ヒロインを売りに出す事になり、その度に「来月はこんな事させない!」と決意するが数クリックで飛ぶ翌月になっても特に何も変えず同じことを繰り返してる。 敏彦にド正論でその事を批判されるが、逆に敏彦の陰謀による物だと言い出したりと非常に香ばしい。 +... +... その癖に土下座まがいの事をしてまで対価無しで借金出来るように敏彦に縋ったりと男気の欠片も無い。 +... またヒロインが毎度ノリノリで売春に応じているにも関わらず「本当は嫌なんだけど自分の為に隠してるだけだ」と都合の良い解釈で片付けてしまう。 一方でまだマシなのが敏彦である。 確かにヒロインの正体を主人公に伝える手段が回りくど過ぎたりと彼も変な所はあるが、全体的には正論で主人公を批判する側である。 またヒロインがイカれてる事を承知の上で幼少期から変わらず愛してるという筋の通った男でもある。 +... 基本的にヒロインと主人公が不幸にならない方向になるように動いてる事もあり真人間らしい。 終盤でヒロインの正体を主人公に明かした際は自分を信じてヒロインと決別してくれれば借金を帳消しにする上に復学にも手を貸すとまで言い放つナイスガイなのだ。 というか結果的にはある意味彼こそがNTRの被害者とも言える。 ○まとめ 前作の「最愛彼女」は変化球でNTRと呼べるか際どいラインを攻めすぎてはいたものの、物語としては成立しており それも専門ブランドならではの試行錯誤の為に生まれたのであろうなという「ヤル気は感じられる」一作であったのに対して 本作はただひたすらにコンセプト無視、意味不明な展開、不快な登場人物、誰得設定を詰め込んだだけのクソゲーである。 ちなみにシナリオライターの中森南文里氏は2017年次点作の「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」でもシナリオライターとして参加しているので コンセプト無視等の傾向もさもありなんと言った所なのだろうか?
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「なぜ・・・何故そんなこというの!!」 いきなり豹変した私の態度に驚きを隠せない唯。 「唯の気持ちは分かってる!好きだなんて言わないで!余計・・・惨めになるじゃない・・・」 唯に向かって一気に私の気持ちを捲くし立てると抑えていた感情が爆発して涙が溢れた。 脅してるからって唯がそこまでする必要はないのに、嘘で言われるくらいなら嫌いだと言われた方がマシだわ・・・。 「のどかちゃん・・・」 「触らないで!」 唯の手を払いのける、自分でも支離滅裂なのは分かっているでも抑えきれない。 ぎゅっっ! 不意に唯が私を抱きしめた。 「さわらな・・・」 「嫌わないで!!」 えっ!? 嫌わないでって・・・。 嫌っているのは唯でしょ、ひどいことをしてる私に・・・。 「嫌わないで、許してくれるなら私なんでもするから。だから私のことを嫌わないで!!」 顔を上げると顔中をぐしゃぐしゃにして泣く唯の顔が目の前にあった。 どうして私が唯を嫌いになるの・・・そんなことありえないのに。 「ごめんね・・・私が突き飛ばしたから、だから・・・怒ったんだよね、私の事嫌いになっちゃったんだよね」 鼻をすすりながらたどたどしく唯が話す。 「びっ・・・びっくりして手が動いちゃったの、すごくうれしかったの・・・に・・・でもそれで私が和・・・ちゃんを傷つけたから・・・ それに私が好きって言ったからおこ・・・怒ったんだよね迷惑なのは分かってるけど・・・もう好きって言わないから、 私に出来ることなら何でもするから嫌わないで!・・・ううん、私の事は嫌ってもいいから死んじゃいやだ!お願い!のどかちゃん・・・」 私はやっと理解した、『勘違い』それもまるっきり逆の!! 唯が好きだと言ってくれたのは本当だったんだ、勝手に勘違いして思い込んで・・・。 そんな勘違いした私に言われた「嫌い」って言葉と「死ぬ」って言葉を唯は信じてしまっていたんだ・・・。 「唯・・・ごめんね、本当にごめんね!」 ぎゅっと唯を抱きしめる。 「・・・のどかちゃん?」 「嫌いになんてなってないよ全部私の勘違いだからごめんね唯!・・・嫌いって言ったのも死ぬって言ったのも全部嘘なの!」 「・・・嘘?」 「うん、私が勝手に唯に拒絶されたと思い込んでただけなの。それで、その・・・それが悔しくて嘘をついちゃったの・・・ごめんなさい」 ぽろぽろと涙が溢れる、そんな私の頭を唯が優しく撫でてくれた。 「ううん、私が悪いの。和ちゃんは何にも悪くないの!」 「唯・・・」 「私が和ちゃんを傷つけたから、だから私が悪いの!和ちゃんは悪くないの!」 「唯・・・ありがとう、ごめんね大好きだよ」 「私も、あっ・・・の、のどかちゃん・・・好きって言っても怒らない?」 「うん、唯から好きって聞きたい、いっぱいいっぱい聞きたい!」 「えへへ、私も和ちゃんが好き!だーいすき!」 ぎゅうっ。 私の勘違いで大きなまわり道をしてしまったが、今やっと唯と一つになれた事がうれしかった。 「唯、本当にごめんね、ひどいことして。痛かったでしょ?」 「ううん・・・私もごめんね、痛くてびっくりして泣いちゃったりして、でも和ちゃんだからうれしかったの、本当だよ。それに・・・んと・・・ちい・・・欲・・・」 「ん?なぁに、聞こえない?」 「その・・・和ちゃんに触られてるとすごく気持ちいいの・・・だからまたして欲しいの・・・」 顔を真っ赤にしながら私を恥ずかしそうに見つめてきた。 そのまま唇を重ね、その日はくたくたになるほど愛し合った。 3日目- 昨日の疲れはあったけれどいつもより早めの時間に学校に着く、昨日サボって帰った分の雑務があるからだ。 「和さん」 下駄箱で憂ちゃんに呼び止められ、真剣な表情で人気がないところへ促された・・・もしかして。 「和さん・・・」 まさか唯・・・。 「お姉ちゃんをよろしくお願いします!!」 ぺこりと頭を下げる憂ちゃん・・・えぇ!? 「あの・・・憂ちゃん・・・」 「お姉ちゃんから全部聞きました」 ゆいー!あーーーっ・・・。 「でも、和さんだから許すんですよ!それに次にお姉ちゃんを泣かしたら・・・絶対許さないですよ?」 目が怖い・・・この子絶対本気だ・・・。 「うん、これからは絶対唯を泣かせたりしません、約束します!」 憂ちゃんは、私の返事を聞いて納得してくれたのかクスッと笑った。 「でも、よかった。お姉ちゃんずっと和さんのこと好きだったから」 「えっ?」 「お姉ちゃんから聞かなかったんですか?幼稚園のころからずーっと好きだったって」 ええっー! 「私なんて、和さんのお嫁さんになる!って何度聞かされたことか・・・」 そんな事、私は言われた事ない・・・いや、そう言えば子供のころ何度かお嫁さんにしてねって言われた覚えが・・・。 「あれって本気だったんだ・・・」 「もぅ、和さんだってお姉ちゃんの性格十分知ってるでしょ?」 ちょっとふくれっつらで指摘された。 確かに、あの子は思った事をそのまま口にするから・・・。 「!」 「どうしました?」 唯にそっくりのキョトンとした仕草で聞いてくる。 「憂ちゃんがきてるってことは、唯ももうきてるの!?」 「ええ、今日は朝練だからって・・・」 憂ちゃんの返事もそこそこに音楽準備室を目指す。 バタン!! 息を切らせて軽音部の部室の扉をくぐると・・・。 「おっ、唯!だんな様のお迎えだぞ!」 ニヤニヤとからかうように(間違いなくからかってるけど)話しかける律・・・。 「和ちゃんおめでとう~」 満面の笑みを湛えて祝福する紬・・・。 「そっ、その・・・おめでとう・・・」 何故か真っ赤になっている澪・・・。 「えっと・・・そ・・・その、お幸せに!」 こちらも真っ赤な顔の梓ちゃん・・・。 「えへへ~」 唯がテレつつも私の腕にしがみついてきた。 「ゆ・・・唯・・・」 「なぁに?和ちゃん?」 「だっ、誰にどこまで話した!?」 「えっと、まだ憂と律ちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、あずにゃんだけだよ」 どうして?って顔をしながら答える唯。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔だらけの中で、一番真っ赤な顔をして叫ぶ私だった。 【エピローグ】 私が恐れていた最悪の事態はなんとか回避された。 唯は約束通り憂ちゃんと軽音部メンバー以外に私達の関係を話すことはなく、私もやっと日常の日々を取り戻していた。 ただ、日常といっても今までの空虚な日常ではなく私の横には唯が居てくれた。 それに心強い仲間も出来た。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔で懇願する私に渋々といった感じで唯は了承した。 「まぁ、なんにしても良かったよな」 「うん、良かったね唯、和!」 「先輩、良かったですね!」 「うふふ、おしあわせに!」 軽音部のメンバーが再度お祝いの言葉をくれた。 「えへへ、ありがと~」 「みんな、ありがとう」 唯と二人で感謝の言葉を返した。 本当に感謝していた、普通ならこんなに暖かい反応は返ってこないだろう。 軽音部のメンバーと憂ちゃんに、もう一度心の中で感謝した。 「そっかーでもこれから先は二人に見せ付けられることになるのか・・・」 別に見せ付けるつもりはないが・・・多分そうなってしまうのかな。 今でさえうれしそうに唯が私の腕に絡まっているし・・・。 「うふふ、うらやましい限りね」 そう言う紬だが羨ましそうに見ている風には見えず、どちらかと言うと鑑賞されてるような気がする・・・。 「悔しいからこっちも見せ付けてやろうぜ、澪」 そう言った瞬間、律は隣に座る澪を引き寄せて・・・。 「んんっ!?」 もがく澪を押さえ込んで長々と唇を重ねる律。 「あらあらまぁまぁ♪」 うれしそうにそれを眺める紬。 ゴクリ。 両手で顔を覆ってはいるが、ちゃっかり指の隙間からのぞいて興味津々といった感じで眺める梓ちゃん。 「ねぇーねぇー、和ちゃん。私もしたくなっちゃった・・・」 「だっ、だめ・・・ここじゃ」 「えーっ、したいの・・・」 頬を高揚させ上目遣いに見てくる唯に欲求を抑えられなくなりそうだったがかろうじて我慢した。 「だめだって。・・・その・・・あとでしてあげるから、ねっ?」 最後は唯にだけ聞こえるように耳元でささやく。 「んっ、ちゅくっ・・・んふっ・・・」 澪は次第に抵抗をやめてぐったりとしてきた。 「ぷはっ・・・ってことで私たちのほうが先輩だからな!」 唇を離し、一息ついて律が自慢げに言い放った。 唇が離れたあとも、心ここにあらずといった感じだった澪の顔が徐々に紅く染まっていく。 「りっ・・・律!みんなのまえでその・・・するなんて、それにあれほど言っちゃダメだって!!」 「いーじゃん、唯達だって言ったんだし、ずっと黙ってるのって嘘ついてるみたいで嫌だったしさぁ・・・」 「そっ、それはそうだけど・・・でもはずかしい・・・じゃないか・・・」 「それで、それで!二人はいつからお付き合いしてたの!」 フンッ!と鼻息まで聞こえそうな勢いで紬が二人に詰め寄った。 「いや~、実は中学のときから」 若干照れた感じだが自慢げに律が話す。 「そっ、それでもちろんキスだけの関係じゃないわよね!」 紬の好奇心は留まるところを知らないようだ。 「それはもちろ・・・ムグゥ!?」 「わぁっっ!それ以上しゃべるなーー!」 両手で律の口を塞ぐ澪、もう遅い気もするけれど・・・。 「うふふふっ」 どんな妄想をしているのか、一人微笑む紬を見てこの子にだけは恋愛相談をしてはいけないと思った。 その後は、ところかまわず抱きついてくる唯の行動に当初は周りにバレてしまうのではないかと危惧していたが、唯の今までの性格や行動のためか気にしているのは私だけのようだった。 つまり、私たちの関係はこの上なく良好であり幸せな日々を送っている。 これからも色々な事があるだろう、楽しい事も辛い事も。 ただ、信頼できる仲間達が居てくれるから大丈夫だ、何があってもこの先ずっと唯と二人で進んでいく事を改めて心に誓った。 END- 戻る おまけ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員 第2章(1) 「なンだァ、今日も超電磁砲の愛妻弁当かよ」 上条が広げた弁当を見て一方通行はからかうように言った。 青髪ピアスは上条の弁当を見てハンカチを銜えながら涙を流し、 土御門は何故か学園都市に侵入した魔術師に向けるような殺気を放っている。 上条は普段この三人と昼食を共にすることが殆どだ。 そして上条は特に意に介した様子も無く嬉しそうに言った。 「いやー、美琴が毎日弁当を作ってくれるお陰で昼休みに飢えることもないし、 おまけに待ち合わせに間に合うように部屋を出るから遅刻することもない。 上条さんとしては大助かりですよ」 上条の話はそこから自然な惚気話へと発展していく。 先日、上条から結婚を前提とした交際を申し込まれた美琴は上機嫌な日々が続いていた。 特に態度などに変化があったわけではないが、付き合いの長い上条には分かる。 そして美琴から昼食の弁当と夕食は毎日作ってあげたいと提案があったのだ。 『な、何よ、将来は朝食も含めて全部作ってあげるんだからいいじゃない!? それとも私が作った料理が食べられないって言うの?』 と、これまたテンプレ通りの言葉に押し切られた上条は 素直に美琴の厚意を受け取っているのだった。 一緒に並んで学校に登校するなど、前に比べてより恋人らしくなった関係に 上条と美琴は気恥ずかしさを感じながらも充実した日々を送っている。 ちなみに上条の惚気話を聞いた三人は… 「くっ、これだからリア充は嫌いだ。 男の友情なんて簡単に捨て去っていきやがる」 と、青髪ピアスは関西弁を用いるのを忘れ去り、 「俺には舞夏がいるから何も問題はないはずにゃー。 でもこの敗北感は何ぜよ? 教えてくれ、舞夏ーーーー!?」 と、土御門は奇声を発して、 「あン、何だか妙ォにこのコーヒーは甘く感じやがるなァ?」 と、一方通行は無糖のブラックコーヒーを片手に首を傾げている。 そして一方通行は自分が話を振ったことに責任を感じたのか、 話題を変えるべく自身は初めて参加する大覇星祭について話を始める。 「それよりも大覇星祭ってェのは、毎年こンなに面倒臭ェもンなのか? 正直放課後の準備とか、かったるくて仕方ねェンだが…」 「まあこんなもんじゃないかにゃー」 土御門が何処か面倒臭そうに言うと上条と青髪ピアスは相槌を打つ。 「まあ中学と高校じゃモチベーションが違うって部分も少なからずあるな。 特にウチのクラスは吹寄が運営委員をやってて張り切ってるっていうのもあるし…」 「でも実際の本番は暑さにやられて、だらけてしまうことが大半やな」 「あー、分かる分かる。 特に開会式なんかは地獄だよな」 一方通行は三人の話を聞いて、大覇星祭はやはり面倒臭いものだと偏見を持ってしまう。 吹寄あたりが聞いたら怒りそうな話だが、 どういうわけか仲のいい番外個体と転入してきたばかりの姫神と一緒に席を外している。 そんなこんなで四人の平和な昼休みは過ぎ去っていく。 しかし上条には放課後、思いも寄らぬ『執行部』としての仕事が待っているのだった。 放課後になり『執行部』の仕事が非番だった上条と美琴は共に夕食の買出しをし、 二人で並んで上条の部屋へと向かっていた。 するとエレベーターから降りた途端に甘ったるい匂いが漂ってきた。 顔をしかめる美琴とは対照的に、上条はその匂いに覚えがあった。 部屋に向かって走り出す上条の後を美琴も追う。 そして上条の部屋にいた人物は思った通りの人間だった。 「ステイル!!」 「やあ、待っていたよ上条当麻」 明らかに訝しげにステイルを見つめている美琴に上条は事情を説明する。 「前にインデックスっていう女の子について話したことがあっただろう? その時に一緒に戦ったイギリス清教の神父だ」 「…はじめまして、御坂美琴です」 先日のシェリー=クロムウェルの件もあってか、 イギリス清教と聞いても不信感が拭えないのだろう。 美琴の声音にはまだ警戒している様子が滲み出ていた。 それを悟ってかステイルの言葉にはいつもの刺々しさはあまり感じられなかった。 「先日のシェリー=クロムウェルの件はすまなかったね。 ただ彼女…いや僕達全体にも色々と問題があるのも事実なんだ。 許してくれとは言わないが、事情を察してもらえると嬉しいよ」 「イギリスは今どんな状態なんだ?」 「はっきり言って良い状態とは言い難いね。 本格的な戦闘こそ起こっていないが、各地で魔術師同士の小競り合いが続いている」 「そうか…」 「今日は君達に依頼があって来た。 学園都市の上の人間には既に話をつけてあるから心配しなくていいよ」 「依頼ですか?」 「そういえば美琴は初めてだったな。 偶にこうやってイギリス清教から直々依頼がくることがあるんだよ」 「今回はオルソラ=アクィナスという修道女を攫って来て欲しい」 「何者だ?」 「ローマ正教のシスターで何でも『法の書』の解読に成功したらしい」 「…」 上条はステイルの言葉に押し黙る。 美琴はそんな上条の様子を不思議に思うが、上条の代わりにステイルと会話を続ける。 「『法の書』って何なんですか?」 「僕達の世界で『伝説級の魔術師』と言われる エドワード=アレクサンダーによって書かれた魔道書だよ。 人間には使えない『天使の術式』が記されているとか、 解読と同時に十字教の時代が終わるとか、色々といわくが尽きない代物でね。 ローマ正教に兵器として利用されると厄介だから、 君達の手でオルソラ=アクィナスを回収してもらいたいんだ。 流石にバチカン図書館にある『法の書』自体はどうしようもないからね」 「オルソラは今何処に?」 今まで口を閉じていた上条が仕事の時の顔つきと口調になってステイルに尋ねた。 「どうやら天草式と呼ばれる魔術師の集団に拉致されて日本にいるらしい。 天草式の目的が僕達と同じローマ正教の戦力の補充の阻止だったらいいけど、 そればかりは話を聞いてみないと何とも言えないからね。 僕達イギリス清教は表立ってローマ正教と対立するわけにはいかないから、 学園都市の対魔術師のエキスパートである君達『執行部』に依頼することになった。 全て任せきりにするのは心苦しいが、よろしく頼むよ」 「…分かった」 上条と美琴は天草式のいると思われる大まかな位置をステイルから聞き、 今後の取り決めを行うと学園都市の外に向かって歩き出すのだった。 「美琴、天草式っていうのは相当手強いみたいだ。 何せローマ正教の部隊から一人の人間を奪取できるくらいだからな。 俺と違って美琴は対複数の魔術師との戦闘に慣れてない。 今回は基本的に俺を前衛として美琴は後方からの支援に徹するんだ」 「私だって当麻の隣で戦えるわよ」 「これは『執行部』の上司としての命令だ。 命令を破るなら『執行部』を抜けてもらう、分かったな」 「…分かった」 美琴は何処か不満が残るようだったが渋々といった様子で頷いた。 本当は美琴も分かっていた。 上条は『執行部』の名を出したものの、本当は恋人の自分の身を気遣っていることを… そして自分がまだ上条の隣で戦うには実力不足だということも… すると突然、美琴の前髪からバチンと静電気のようなものが飛び出した。 「どうやら当たりのようだな」 今のは今のが『人払い』という人間の感覚や認識に影響を及ぼす術式の効果と、 美琴の能力の制御法が競合を起こした結果、軽く美琴の能力が暴走したものだった。 実はこれか魔術師のねぐらを探すのに役立つ。 上条は『幻想殺し』という異能を打ち消す右手を持つため、 例え『人払い』という術式が張り巡らされていても 気付かず通り抜けてしまうことが殆どだった。 その場合、例え魔術師が近くに潜伏していても見逃してしまうことが多い。 しかし美琴と行動を共にすることで、そういった術式にも気付くことが出来るのだった。 「話し合いで済めばいいが上手くいかなかった場合、 俺が囮になって敵を引き付けるから、美琴は電磁波のレーダーで敵の動きと オルソラが囚われていると思われる場所の特定を急いでくれ」 「うん!!」 そして上条と美琴の共同任務が幕を開けるのだった。 結果として話し合いは決裂に終わった。 というよりも話し合いに至る前に天草式が襲ってきた。 『人払い』の術式を抜けられたことにより焦りが生じたらしい。 「くっ!?」 しかし上条に攻撃を仕掛けたはいいが、約50人にも上る天草式の戦闘メンバーは 一人しかいない上条相手に苦戦を強いられていた。 天草式は幕府の迫害から逃れつつも十字教を信仰するために仏教や神道で カモフラージュに『偽装』を重ねた宗派であり多角宗教融合型十字教とも称される。 用いる戦術もまさしく『偽装』で、 本命かと思えばフェイントで、フェイクかと思えば本物の魔術が襲ってくる。 よって天草式の術式を初見、しかも何の知識もなしに見切るのは不可能に近い。 にも拘らず上条は正確に物理攻撃と魔術による攻撃を見抜き、 確実に攻撃を仕掛けダメージを与えてくる。 それは上条の長年に渡る戦闘訓練と幾多に渡る魔術師との戦闘経験が生む技能だった。 「全員、下がるのよな!! ここは俺が引き受けるからオルソラ嬢の護衛に就け!! 敵がこの男一人とは限らないのよな」 恐らく天草式の代表であろうクワガタみたいな髪型をした男が言った。 まだ意識を失っていなかった数人の天草式の少年少女達が走り出す。 上条は心の中で毒づく。 天草式は決して弱くない。 実際に上条も壁を背にして直接相手にする人数を極力抑えて戦っていた。 このレベルの相手が五人以上いたら美琴も苦戦を強いられるに違いない。 上条は走り去った少年少女達の後を追いかけようとしたが、 その前に天草式の首領の男が立ち塞がる。 「まさかこれほどの男が科学側にいるとは思わなかったのよな。 名乗らせて貰おうか、天草式教皇代理の建宮斎字だ」 「…学園都市『執行部』の上条当麻だ。 話を聞いてくれ!! 俺はオルソラを保護してイギリス清教に匿ってもらおうとしてるだけだ。 別にお前達と争うつもりはない!!」 「必要以上に我らを傷つけようとしないお前さんの戦い方を見てれば、 お前さんが信頼に足る人間だということは分かるのよな。 だがイギリス清教を必要以上に信頼するなと女教皇様から言われてるのでな」 「…」 上条は建宮の言葉を否定することが出来ない。 上条自身が個人的な知り合いはともかく、イギリス清教のトップを信頼してないからだ。 上条と建宮は互いに睨み合い、相手の出方を模索する。 しかし二人の間に流れていた沈黙を突き破るように、辺りに爆発音が鳴り響いた。 「何だ!?」 互いに仲間の身を案じた上条と建宮は顔を見合わせると、 共に爆発が起こった場所へと走り出すのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員
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予選から、丸一日が経過した。 重傷を負ったジローではあるが、吸血鬼―――それも齢百年を超える古き牙の再生能力は伊達ではない。 既に、己の足で歩き回れるまでに回復していた。 月灯りが照らす白玉楼の庭園。縁側にそっと腰を下ろし、坐禅を組む。 涼やかな風が頬を優しく撫でる、いい夜だった。 月の光は、彼の身体を優しく包んでくれる。 その祝福の中、しばしジローは思索に耽った。 「ジローさん」 「ん…?」 呼びかけられ、思索を中断する。そこには、半人半霊の少女が立っていた。 「御身体の方、もう大丈夫なんですか?」 「ええ。心配をおかけしました」 「か、勘違いしないでよねっ!べっ、別にあんたの心配なんてしてないんだからねっ!」 「…妖夢さん。属性は無闇にたくさん付ければいいものではありませんよ」 「そりゃそうです。眼鏡っ子でお嬢様で優等生で知恵袋で天然で健気でスタイル抜群でドジっ子と、ハイブリッド で完全無欠の萌えキャラになるはずだった幸運☆の某ピンクさんなんて、人気的な意味で悲惨でしたもんね」 「どうしてそう無駄に敵を増やす発言を…」 「ま、某みゆきさんの話なんてよして、本題に入ります。これをどうぞ」 「む…」 妖夢が差し出したのは、一振りの刀―――望月ジローの愛刀にして、彼の二つ名の由来でもある<銀刀>。 受け取ったジローは、それを鞘から抜き出す。 銀のコーティングを施された傷一つない刀身が、月の光に煌めいた。 「しかしこれは、レッドとの闘いで折れたはず…何故?」 「幻想郷には様々な異能を持った連中が百花繚乱ですから―――<壊れた物を直す程度の能力>の持ち主くらい、 探せばいるものです」 値は少々張りましたが、と妖夢は親指と人差し指で円を作ってみせた。 「それはかたじけない。ただ、その…情けない話ですが、私は手持ちが…」 「んなもん、ミミコさんに養われてるヒモ吸血鬼のあなたに期待しちゃいませんよ」 「むっ…!」 容赦ない言い草に、日頃は温厚なジローも流石に腹に据えかねた。 ここは一つ、ガツンとかまさねば漢(おとこ)ではない! 「何たる無礼か、魂魄妖夢!誇り高き<賢者>の血統に連なるこの望月ジローを愚弄するとは、言語道断っ!ええ、 認めましょう。確かに私は弟共々ミミコさんに生活基盤の全てを委ねている―――しかし!それはお互いの信頼と 同意の上に成り立つ尊き関係なのです!それを<ヒモ>などと侮蔑的な一言で表すとは、笑止千万っ!そもそも が私はミミコさんの護衛役として日々を誠実に勤勉に送っているのです!いやまあ確かに遅刻率ほぼ100%ですし、 そのせいでミミコさんは下手すれば死んでた事もありますし、とある水曜日には機関銃をぶっぱなして建物を倒壊 させ、危うくミミコさんを巻き添えにしかけた事とかもありますが―――それでも私は断じて<何か縛るモノ>など ではないのですっ!半人半霊の剣士・魂魄妖夢っ!先刻の貴女の悪意と偏見に満ち満ちた発言に対して、私は 正式に謝罪と賠償を要求させて頂くっ!」 と、颯爽と立ち上がり妖夢に向けて毅然と言い放つ―――事が出来たらいいなあ、と空想してみた。 もちろん空想してみるだけであり、実際は何も言えずに口をへの字にしただけである。 <空しい想像>と書いて空想。 「ともかく、お金に関してはジローさんに請求するつもりはありませんよ」 「はあ。しかし、それでは…」 「この刀の修理を依頼してきた男とその友人達が、支払ってくれています」 「え?」 「ただ、彼等も懐具合が芳しくなかったので…労働という形で返す事と相成りました」 「それは一体、どういう…」 「まあ、別に難しい話じゃありません。要するに―――」 「あー、チクショウ!何だってこんな無駄にデケーんだよ、この家は!」 ―――サンレッドは手にした雑巾を放り投げて、大の字になった。 「朝から三人がかりで掃除してんのに、全然終わんねーぞ!?どーせここにゃ大食い亡霊と毒吐き従者の二人 しか住んでねーんだから、もっと慎ましやかな家に引っ越せよ!」 「あらあら、サンレッドったら」 くすくすと、様子を見守っていた幽々子が笑う。 「あなたが自分で言ったことでしょ?<銀刀を直すのにかかった金の分、働いて返す>って。だからこの白玉楼 の大掃除を頼んだんじゃない」 「そりゃそーだけど…ここまで広いとは思わなかったんだよ、くそっ」 「まあまあ、レッドさん。これもジローさんのためですよ」 ハタキを持ったヴァンプ様が、レッドさんを宥める。 「うるせーよ、ヴァンプ。つーかお前、何を当然のように正義の味方の手伝いやってんだ。悪の将軍のくせに」 「いや、それはほら。レッドさんとジローさんは<正義の味方>である前に、ご近所さんですから。ははは」 「そう!友情には正義も悪もないんだよ、レッドさん」 箒を握り締めたコタロウが、力強い笑顔で語る。 彼もまた敬愛する兄のため、過酷な労働に精を出しているのである。 「ったく…この脳味噌お花畑コンビが」 起き上がり、雑巾を拾って掃除を再開するレッドさん。 はあ~、と溜息をつきながら呟きを洩らす。 「俺、こんな他人のために身を粉にするお人好しなキャラだったっけ…」 「―――確かに、あなたのキャラではありませんね」 そう言ったのは、黒い髪と瞳を持つ、赤いスーツの吸血鬼―――望月ジロー。 いつの間に現れたのか、彼はモップを手にしてそこにいた。 「ジローさん!」 「兄者!もう起きて大丈夫なの?」 「ええ。もうすっかり良くなりました」 駆け寄る悪の将軍と弟に、ジローは笑顔を返した。 「だから、私も手伝いが出来ればと思いまして、ね」 「そんな…ダメですよ、まだ安静にしてなきゃ!」 「いいんです。我が愛刀の修理代くらい、自分で捻出しますよ」 構いませんよね、と、ジローはレッドとコタロウに目を向けた。 「まっ、本人がやるっていうんなら手伝ってもらおーや」 「そうだね。でも、無理はしちゃダメだよ、兄者」 「何を言います、コタロウ。お前は兄を甘く見ていますね?このくらいが無理なら、私はとっくの昔に灰になって いますよ」 「それもそっか…じゃ、兄者も一緒に大掃除~♪」 バスバス箒を振り回すコタロウである。余計な埃を撒き散らしているも同然であった。 ジローはふっと笑い、最愛の弟の脳天にエルボーをムエタイ式に鋭角で決めた。 コタロウは浜に打ち揚げられたカニのように泡を吹いて失神・昏倒する。 床にだくだくと赤色が嫌な感じに広がった。 それを見下ろし、ジローは真面目くさった顔つきで言い放つ。 「コタロウ。掃除は真剣に、そして丁寧にやりなさい」 「あのー、ジローさん…スパルタ教育にも程があるのでは…」 「ヴァンプ将軍。昔の人はこう言いました…痛くなければ覚えませぬ、と」 「…お前は大丈夫なのかよ、ジロー。掃除が得意そうには見えねーぞ」 「心配なさらず」 にやりとほくそ笑むジローさん。 「これでもミミコさんから給料を頂く前日には、自主的に家の掃除をしているのですよ?」 「そ…そうか…」 俺もかよ子の給料日には掃除してる、とは言えないレッドさん。 そんな二人を見ながら、ヴァンプ様はこっそり呟くのであった。 「この二人が妙に仲良しなのは、ヒモ共鳴してるからなのかも…」 「おい。何か言ったか、ヴァンプ。正義を行使しなきゃならねー気がすんだけどよ?」 「直ったばかりの銀刀の試し斬りをしなければならない気もしますが?」 ※レッドイヤーと吸血鬼は地獄耳です。 「いえ、何も。あは、あはは…」 日本人的な笑顔を浮かべるヴァンプ様。ちょっぴり殺気を発しながら詰め寄るレッドとジロー。 そして、未だに泡を吹き続けるコタロウ。 彼等を微笑ましく見つめながら、幽々子はそっとその場を後にするのだった。 「おや幽々子様。そんなゴキゲンな様子でどうしました?」 主の姿を見つけた妖夢は、開口一番にそう言った。 「あら、分かるかしら?ふふ」 「分かるわよ、そりゃ。にやけた顔しちゃって」 虚空にぽっかり開いた<スキマ>―――そこからぬうっと、八雲紫が顔を出した。 「…もっと普通に現れて頂く訳にはいきませんか、紫様。貴女様の登場の仕方は非常に心臓に悪いのですが」 「スキマ妖怪としてのレゾンデートルよ、これは」 「は、それは失礼をば」 反論はしない。この大妖怪に、自分如きが何を言おうがどうにもならない事など、妖夢とて弁えている。 「で、幽々子様は何故にそんな今にもマッパでリンボーダンスしそうな程に浮かれているのです?」 「長い亡霊生活の中でも未だかつてそこまで浮かれた事はないわよ…それはともかく、コタロウがね」 ふふ、と幽々子は優しげに微笑む。 それはただ純粋に、友の幸せを祝福するための笑顔だった。 「あの子は家族や友達に恵まれてるな、と思って」 「恵まれてる…そうですか?周りにいるのは甲斐性のない兄に、ヒモでチンピラのヒーロー、うだつの上がらない 悪の将軍ですよ?ミミコさんという方はどうだか知りませんが、恐らく一見まともそうでいて問題大ありの女性で ある可能性大です。むしろ残念な人間関係しか築けていない気もしますが…」 「貴女も意外に見る目がないわね」 クスクスと、紫は笑う。 「あんな混沌として面白い連中が周りにいてくれるなんて、最高じゃない―――ねえ、幽々子」 「ええ。きっと退屈とは無縁の毎日を送ってる事でしょうね。羨ましいくらいだわ」 「楽しければそれでよし…そういう事ですか?」 「そうよ」 「その通り」 境界を司る遊惰なる大賢者と、死を司る幽雅なる亡霊姫は、あっけらかんと答えた。 「楽しくおかしく面白く―――それこそ生きる醍醐味でしょう?」 「ま、私はもう死んでるけれどね」 「…貴女方は偉大な御方です。それは心の底から認めています。けど、その思考はよく分かりません」 妖夢は無駄と知りつつ、言い募る。 「楽しいだけじゃあ、やってけないでしょう」 「そう―――楽しいだけじゃ、やっていけないの」 「特に、コタロウは―――<賢者イヴ>の血統は、ね…」 返って来たその言葉は、妖夢にとって意外なものだった。 「あの子の未来に待ち受ける宿命は…とても重い」 「…………」 「だからこそ、ああいう友達は貴重なのよ」 幽々子は笑みを消して、遥か未来に想いを馳せるように月を仰ぐ。 「コタロウに何があろうとも…きっと、サンレッドやヴァンプさん、それにミミコさんとやらは、変わらずあの子の傍 にいてくれるでしょう。あの子の友達であり続けてくれるでしょう―――」 「そんな得難い仲間達を、コタロウは手にしている…それはそれは、有難い話だわ」 紫は目を閉じ、黙祷するように両手を合わせる。 妖夢はまだ納得できない、とばかりに仏頂面をしていたが、やがて。 「まあ、確かに」 渋々という様子ではあったが、こう言ったのだった。 「ヒモだったり悪の将軍だったり、その割にお人好しで―――面白い連中には、違いありませんね」 「でしょう」 紫は楽しげに答える。 「特にサンレッドには期待しているわ。どれだけカオスな事をやってくれるのか―――本当に、楽しみ」 「結局、御自分の享楽優先じゃないですか…」 やれやれだぜ、と言わんばかりに妖夢は深く溜息をつくのだった。 <境界の妖怪>八雲紫。 サンレッドと彼女の対決は、正しく頂上決戦―――トーナメント決勝戦にて実現する事となる。
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窓から注ぎ込んでくる日差しで、ルイズは目覚めた。 「うぅ~ん…」 ルイズはベッドの上で起き上がった。 直射日光が入り込むので部屋の中は眩しい位だ。 この調子なら、今日は一日中晴れだろう。 きっと清々しい一日になるだろう…同級生に会うまでは。 いや、ちょっと待って…何かもう一つ……頭痛の種になるものがあったような気が… それに、ぐっすり眠った筈なのに、何故だかあっちこっちの筋肉が痛い。 まるで昨日の夜、怒りに任せて同級生ごと爆破した廊下の瓦礫を一人で片付けさせられた様な… い、いや、きっと気のせいね。 「とりあえず新鮮な空気を入れましょう」 外の冷たい空気で深呼吸すれば、謎にド~ンと重いこの気分も少しは晴れるでしょう。 ルイズはベッドから立ち上がり、フラフラと窓へ進み、開け放った。 「ああ、やっぱり朝の空気は気持ちがいいわ」 そういいながら深呼吸をするルイズ。 深く息を吸い込み… 「?!ぐほ!!」 噴出すルイズ。 「ごほごほごほごほッ!」 ルイズの視線の先に居た物とは (ジョー・クールが大学のキャンパスでブラついてるところ) そう呟きつつサングラスを掛け、タートルネックのシャツを着て、腕組みしながら犬小屋によりかかっている、自分の使い魔だった。 「……あの犬!何やってるのよ!?」 答えは直ぐに出た。 (そこのお嬢さん、いっしょにカフェしないかい?) 近くを通りかかった黒髪のメイドに声を掛けるスヌーピー。 「え?あ、私ですか?すみません、今仕事中なので…」 頭を下げて去っていくメイド。 それを見送るスヌーピー。 (…こういう時はしつこく追わないものさ) そんな光景を見て、使い魔の主人は頭を抱えてしまった。 しばらく【使い魔性偏頭痛】でうずくまっていたルイズ。 「…あのマヌケ犬!!絶対にとっちめてやるわ!!あんな所で朝っぱらから軟派してるなんて!!! ご主人様の顔に泥を塗るような行為を!!!!ぜっっっったいにゆるさないわ!!!!」 頭痛は治まったが、今度は高血圧になってしまったらしい。 素早くネグリジェを脱ぎ、今までに無い速さで制服に着替えると、ドアを吹き飛ばさん勢いで開けて自室を出て行った。 ルイズが部屋を出ると、丁度隣の部屋からキュルケが出て来るところだった。 「あらルイズ、今日は朝からハイテンショ「おはよう!キュル!!」 そう叫んで地響きみたいな足音を立てながら、その場を去っていくルイズ。 残されたキュルケはキョトンとした顔をしている。 「おはよう…キュル?」 「きゅる?」 使い魔もキョトンとしていた。 「そ~こ~の~馬~鹿~いぬ~!!!!」 朝の喧噪の中、それを吹き飛ばす怒声が響く。 音の発生源たるルイズは、広場の真ん中の自分の使い魔の所まで、ドスドスと歩いてきているのだった。 歩いていた割に、なにやら息が荒い。 息どころか、火を吹きそうだ。 「…あんた!!一体何様のつもり!!!」 両手を腰にあて、叱り付けるルイズ。 (ジョー・クール) サングラスを掛けたまま、涼しい顔で答える使い魔。 「何よ!ジョー・クールって!知らないわよそんなの!」 (知らない?) ちょっと驚いた様子のスヌーピー。 (この大学では有名なんだけどな) 「はぁ!?ここは大学じゃないわよ!!トリステイン魔法学院よ!!!」 (そうかい?似たようなものさ) 「何であんたが決めるのよ!それよりも何よ朝っぱらから、そんな見っとも無い格好して!主人として恥かしいったらありゃしないわ!!」 (見っとも無い?女の子はタートルネックに弱いものなんだよ。知らなかったのかい) 「知らないわよそんなの!!!!!」 (怒ってると折角の顔が台無しだよカワイコちゃん) そう言って鼻にキスするスヌーピー。 Chu 「キャッ!……キャアアアアアアアァ!!」 叫びまくるルイズ。 「またキスしたわ!!信じられない!……もういいわよ」 使い魔に背を向け、改めて深呼吸をするルイズ。 怒りは収まらないが、落ち着いてきた様だ。 「判ったわよ。そこでそのマヌケな格好で軟派していたなら、いつまでもしてればいいわ」 (そうさせてもらうよ) 「でもね、朝ご飯は貰えないわよ。朝ご飯が欲しかったらさっさとその格好を止めてご主人様の…」 そういって振り向いた時には、ルイズの使い魔は、普通の格好で口に自分のお皿をくわえて立っていた。 (食堂ってどこかな?) 「………(タメイキ)」 何もいう気になれないルイズだった。 食堂に到着した二人。 あるいは、一人と一匹。 (へえ、凄いなあ) 自分のお皿を頭に被りながら呟くスヌーピー。 「へー。あんたみたいな犬にもここの凄さは判るのね。ここは【アルヴィースの食堂】っていうのよ。 本当は犬は入れちゃいけないんだけど、特別の計らいで入れてあげるわ。感謝なさいよ」 (それにしても広いなあ) 「でしょ。トリステイン魔法学院の自慢の一つよ」 ちょっと鼻が高くなるルイズ。 (ショッピングモールのフードコーナーみたいだ) 「そう…それ褒めてるの?」 (バーガーキングがあればね) 「言ってる意味がわからないわ」 そういいながら奥に進むルイズ。 その後をトボトボと追従する使い魔。 自分の席までたどり着くルイズ。 すでに、そこにはおいしそうは朝食が準備されている。 「ちょっと!私の使い魔なんだから、イスぐらい引きなさいよ」 イスを引こうとするスヌーピー。 (…背もたれに手が届かないよ) 内心しまったと思うルイズ。 「…考えて無かったわ」 (でもイスの足を引いてあげる) 「う~ん、これでいいのかしら?何か違うような気がしてならないわ」 (結果オーライさお嬢さん。さて、僕の食事はどれかな) と、背伸びをしてテーブルの上を見回す使い魔。 フッフッフ、と笑い出すルイズ。 「残念だけど、あんたの食事はそこには無いわよ!」 (ないの?) 「そうよ!」 昨日の夜、同級生を爆破する前に仕込んでおいたのだ! この生意気な使い魔に、下僕であることを思い知らせる惨めな食事を!! 「あんたの朝食はね、これ!この床に…って!どこ行ったのよ!!」 「やあルイズおはよう」 ギーシュがやって来た。 「何か朝から妙に頭痛がするんだけど、まあいや。君の使い魔なら、あそこだよ」 「どこよ!?」 ギーシュが指差す方を見ると、自分のお皿を咥えて厨房に入っていく使い魔が見えた。 「あいつ!何するつもりよ!とっちめてやるわ!!」 「止めときなさいよ」 と青い髪の子を連れたキュルケがやって来た。 「もう、食事の時間よ」 ギーシュもそれに頷く。 「そうだよ。でも僕は何故か食欲が無いんだけどね。頭のコブと関係があるのかな?」 二人に言われ渋々席に作るルイズ。 祈りを終えて、食べ始めたところで、空いていた隣の席に誰かが座った。 「…あんた!!!」 そこに居たのは、自分のお皿に貴族諸君と同じ食事を盛った、自分の使い魔が座っていた。 器用にナイフとフォークを使いながら食べ始めるスヌーピー。 「何やってるのよ!!」 (知らなかったんだ) 「何をよ!!」 (貴族の食堂がセルフサービスだなんて) 「あ…あ、あんたね~!!」 食堂で怒鳴りはじめるルイズ。当然ながら、全員の注目を浴びている。 ちょっと恥ずかしい。 「だ、だだだ大体あんたみたいな平民は貴族と同じテーブルで食事しちゃいけないのよ!」 「なあ」 テーブルの向かいに座っている、太っちょの生徒が声を掛けてきた。 「いっちゃあ悪いんだが、彼は平民ですらないんじゃないか?」 「おだまり!」 太っちょは無い首をすくめて黙ってしまった。 「いいこと!今すぐその料理を返してきなさい!!」 (どの料理だい?) 「あ、あれ?」 既にお皿は空だった。 (失礼、ウェイトレス君) 近くに居た黒髪のメイドを呼ぶ使い魔。 「はい、何でしょうか?」 (僕、朝はワインを飲まない主義なんだ) 「申し訳御座いません」 頭を下げるメイド。 「ちょっと!何頭下げてるのよあんた!」 ルイズが怒鳴る。 (その代わり、ルートビアを一杯!) 「ルートビアって何よ!」 「かしこまりました。ルートビアですね」 「だからルートビアって何よ!!」 (ただの飲み物だよ) 「…訳がわかんないわ」 ちょっとしてから、泡立つ飲み物が、大きめのコップに入れられ運ばれてきた。 それを美味しそうに一気飲みするスヌーピー。 (ご馳走様) といって席からヒョイと飛び降りる。 (コック長に美味しかったと伝えといてよ) 食堂から出て行きながら、さっきの黒髪のメイドに声を掛けた。 「ありがとう御座います」 (礼には及ばないよ。だけど…) と立ち止まって振り返る。 (次からはドッグフードの方がいいな) そう言って今度こそ去っていった。 それを眺めていたルイズは、全く食が進まなかったという。 「うっかりしてたわ!」 殆ど手付かずの食事を残して食堂を出た時、ルイズは気がついた。 「授業に使い魔を連れて行かなきゃならないんだったわ!!」 慌てて探すが目の付く所には居ない。 犬小屋の方にも行って見たがやはり居ない。 「どうしよう…」 途方にくれるルイズ。 「そうだ」 が、直ぐに答えは出た。 「つれていかなきゃいいんだ。あの風竜を召喚した子だって、授業には連れていけないだろうし」 むしろ、連れて行かないほうが良い気がしてならなかった。 しかし、教室についてみると。 「……何これ?」 「あの子の使い魔よ」 とタバサを指しながら言うキュルケ。 教室の中には、体を屈めて窮屈そうに縮こまっている風竜が居た。 「…やりきれない」 トリステイン魔法学院のヴェストリの広場一角に、いつの間にか見慣れぬ屋台のような物がポツンと立っている。 屋台と言っても、上に掲げた看板と、テーブル代わりの台とイスが一脚あるだけである。 いや、四角い台の反対側にもイスがあるのだろう。 我らがスヌーピーがそこに腰掛、テーブルに足を乗っけて暇を持て余していた。 (誰か来ないかな?) しばらくすると、一人の青い髪の女の子が歩いてきた。 メガネと本が良く似合う子だ。 その子が来た方向から、爆発音が響き渡った。 (なんだろう?) スヌーピーはちょっと驚いたが、青い髪の子は驚かない。 きっと年中行事なんだろう。 青い髪の子ことタバサが、スヌーピーの屋台の前で立ち止まった。 「……」 上の看板を指差すタバサ。 「何?」 (精神分析 一回5セント、さ) 「5セント?」 (100分の1ドルの事さ) 「…わからない」 (なんだって!) 「こっちは?」 下を指差すタバサ。 (医師在院中…まさか読めないのかい?) 「読めない。私の知っている言語じゃないから」 (ここ人は皆英語が喋れるのに読めないのか!困ったな…どうしよう) 「…」 (ねえメガネの君、ここの字を書けるかい?) 無言で首をコクコクと頷くタバサ。 (読める字で書き直してくれないかな?) 「……わかった」 (ありがとう!) そう言って鼻にキスするスヌーピー。 無表情なタバサもこれにはちょっと驚いた。 「…不潔」 ハンカチで鼻を拭き始めるタバサ。 (そうかな…今朝もちゃんと『水のみ』の水で洗ったんだけどな) さらに力を入れてハンカチで擦るタバサだった。
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「ミィ♪」 1匹の子タブンネがガラス越しに外の様子を見ている。 天気は雨。ガラスを流れていく水滴をおもしろそうに目で追いかけていく。 「タブンネ、外で遊ぶ時間だ」 後ろから声をかけられて子タブンネが振り向くと、いつもと同じ白い服を着た男が立っていた。 子タブンネは「ミィ♪」と笑顔になって男のもとへ歩いていく。嬉しい気持ちを表すかのように、尻尾がパタパタと揺れる。 1日中、せまい部屋の中に入れられている子タブンネにとって、外で遊ぶことはご飯の次に楽しみな時間なのだ。 「ミィッ♪ ミィッ♪」 激しい雨の中を子タブンネが楽しそうに走り回る。 固くて灰色の地面に溜まった水を手ですくったり、水たまりの中で転がったり。 せまい部屋の中では過ごす間は感じることのない楽しさ。 子タブンネは雨の日が大好きだ。 「ミィ……?」 しばらくして遊び疲れた子タブンネはふと気づく。 いつもなら傘をさして見守っているはずの男の姿がどこにも見当たらない。 不安になった子タブンネは、キョロキョロとあたりを見回し、「ミィッ! ミィッ!」と大きな声で男を呼ぶ。 しかし、どれだけ待っても男が姿を見せる様子がない。 子タブンネは男を探すために、激しい雨の中を歩きはじめた。 ……いったいどれだけ歩いたのか。子タブンネにはわからない。 ふわふわの尻尾は水を吸ってぐっしょりと重く濡れている。 体をプルプルと振って水を飛ばしても、雨の中ではすぐに濡れてしまう。 固い地面を歩き続けた小さな足には疲労がたまり、足の裏にはズキズキと鈍い痛みがある。 それでも男を見つけるために、子タブンネは歩き続けなくてはならない。 子タブンネ1匹だけでは何もできないのだから。 ……とても寒い。力尽きた子タブンネの頭にあるのはその言葉だけだ。 雨は子タブンネから体温を奪い、小さな体から容赦なく体力を奪っていった。 薄れていく意識の中で子タブンネは思う。 雨なんて降らなければいいのに。 子タブンネが次に目を覚ましたのはいつもの部屋の中だった。ふかふかの毛布に包まれていて、とても温かい。 自分の体を包んでいた毛布から出てくると、部屋の中にはいつもと同じ白い服を着た男がいた。 子タブンネは男のもとに歩いていき、男の足にひしっと抱きついて再会できたことを喜ぶ。 男は子タブンネの体を優しくなでながら尋ねてくる。 「タブンネ、雨の日は好きかい?」 子タブンネは首を振る。 寒くて寂しいのは嫌だった。 子タブンネは雨の日が大嫌いになった。 「ミィ♪」 子タブンネがガラス越しに外の様子を見ている。 天気は晴れ。ガラス越しでもわかるほど外は暖かいようだ。 「タブンネ、外で遊ぶ時間だ」 白い服を着た男が子タブンネに声をかける。 子タブンネは嬉しそうに男のもとへ歩いていく。 せまい部屋の中はとても退屈だ。広くて自由な外に出ることはとても楽しい。 それに雨の日と違って、晴れている日は寒くない。 子タブンネは晴れの日が大好きなのだ。 「ミ゛ィィィィ……」 強烈な日差しが子タブンネの体を焼く。 固くて灰色――コンクリートの床や壁は熱を蓄え、子タブンネの体に熱を加えていく。 上下から襲ってくる熱量に、子タブンネの体は熱を逃がすことを許されない。 ヒィヒィと息を吐く子タブンネの口から粘度の高いよだれが流れる。 よだれはコンクリートの床に落ちると、シュワッと音を立てて蒸発する。 タブンネという種族のもつ高い耐久性が、子タブンネを苦しみを長引かせていく。 体が焼け、水分を奪われていきながら子タブンネは意識を失った。 子タブンネが次に目を覚ましたのはいつもの部屋の中だった。 空調が効いた部屋はとても快適で、部屋の外の熱気とは無縁の環境だった。 目を覚ました子タブンネに、いつもの白い服―白衣をきた男が尋ねる。 「タブンネ、晴れの日は好きかい?」 子タブンネは首を振る。 とにかく暑くて苦しかった。 子タブンネは晴れの日が大嫌いになった。 子タブンネはあられの降る日が大好きだった。 いつものように白衣の男に連れられて、外に遊びに行った。 そして、目を覚ました子タブンネはあられの降る日が大嫌いになった。 子タブンネは砂嵐の日はもともと好きではなかった。 男に言われ渋々遊びに行き、子タブンネは砂嵐の日が大嫌いになった。 「ミィ……」 せまい部屋の中、子タブンネは壁に寄りかかりながらガラス越しに部屋の外を見ていた。 部屋の外は激しい雨のようで、ガラスに雨粒が次から次へとたたきつけられていく。 「タブンネ、外に遊びに行くかい?」 白衣の男にそう尋ねられ、子タブンネは首を横に振る。 部屋の外に出ればひどい目に遭う。それなら、退屈であっても部屋の中で過ごす方がよかった。 子タブンネは「ミィ……」と鳴いて、外には遊びに行きたくないと伝える。 「そっか、タブンネは部屋の中の方がいいんだね?」 自分の気持ちを理解してもらえたことで、子タブンネが笑顔になる。 尻尾を振りながら「ミィミィ♪」と鳴いて、男に感謝の気持ちをアピールする。 男は子タブンネを優しくなでながら、ドアの方に向かって「入ってきていいよ」と声をかける。 ガチャリとドアが開くと、部屋の中に次々と人間が入ってくる。彼らの手には様々なものが握られている。 何かが入っていそうな箱。トゲのついた金属の棒のようなもの。変な色をした水が入った容器。 入ってきた人間も、彼らが手に持っているものも、どれもが子タブンネには見覚えがなかった。 不思議そうな顔をする子タブンネに男が説明する。 「みんなで今からこの部屋で遊ぶんだよ」 子タブンネは大喜びした。 澪簿のない人たちが持っている見覚えのないものは、自分の知らないおもちゃか何かなのだ。 これから、たくさんの人たちに遊んでもらえる。子タブンネはそう考えた。 笑顔で手を振りながら、部屋に入ってきた人たちのもとへ歩いていく子タブンネ。 「たくさん遊んでね」と、ペコリと頭を下げる。 「ああ、嫌になるくらい遊んでやるよ」 次の瞬間、子タブンネの頭に強い衝撃が走った。 立っていることができなくなり、子タブンネは床の上にへたり込む。 何が起こったのかわからない子タブンネであったが、床の上に赤い液体が広がっていくのが見えた。 そして、それをきっかけに、激しい痛みが子タブンネの頭を襲い始めた。 「ミッ!? ミミィッ!? ミィィッ!?」 次々と襲いくる状況に、子タブンネは完全に混乱していた。 顔を上げて、救いを求めるように白衣の男の顔を見る。 「言ったじゃないか。みんなで今から遊ぶって。みんな、タブンネで遊びたいってさ」 子タブンネの首にひもが巻きつけられ、強い力で後ろに引っ張られる。 子タブンネの視界に映るのは、ニヤニヤと笑う人間たちと、その手に握られたいくつもの道具。 これから何が起こるのかを理解した子タブンネに、容赦のない暴行が加えられていく。 子タブンネの悲鳴を聞きながら、おもしろそうに男がつぶやく。 「部屋の外に遊びに行きたいって言ってればこういうことにはならなかったのに。 部屋の中がいいっていったのはタブンネ自身なんだから、しょうがないよな」 「…………」 うつろな目をした子タブンネが壁に寄りかかっている。 苦痛を与えられるだけの毎日。楽しみも、安らぎも、何もかも奪われてしまった。 ふわふわの尻尾も、カールした触覚も、ハート形の肉球も、何もかもなくなってしまった。 子タブンネには何も残されていなかった。 そんな子タブンネのもとに、白衣を着た男がやって来る。子タブンネは男の方を見ることもしない。 男がやって来たということは、これから苦しい時間が始まるのだから。 男の方を見ないのは、子タブンネにできるかすかな抵抗だった。 「タブンネ、『本当の外』に出てみたくはないか?」 その言葉に子タブンネの顔が上がる。『本当の外』という言葉に反応したのだ。 男の顔に視線を向けて、子タブンネは男の次の言葉を待つ。 「今までタブンネがいたところは実験施設の中なんだよ。 雨も晴れもあられも砂嵐も、どれもポケモンの技で作り出したものだったんだ。 施設の中じゃなく『本当の外』なら、あんなにひどい天気になることはないんだよ。 タブンネが望むのなら、そこに連れて行ってあげてもいいけど。……どうする?」 子タブンネは間を置かずにうなずいた。 ひどい天気でもなく、苦痛を味わうでもない、未知の世界に行ける。 それは子タブンネにとって、あまりにも魅力的な提案だった。 「よしわかった。こっちにおいで」 男にそう言われ、子タブンネは立ち上がる。 まともに力が入らないうえに、激しい痛みが全身を襲う。 それでも子タブンネは立ち上がり、不安定な足取りで1歩1歩進んでいく。 今の状態から抜け出せるという希望を目指して。 「ミィ……!」 外に出た子タブンネは今までにないものを感じていた。 ぽかぽかとあたたかい光。風に乗って運ばれてくる土や草のにおい。施設の中とは違うやわらかい地面。 それは子タブンネが初めて見る『本当の外』の世界。 「ミィ……♪ ミィ……♪」 ヨタヨタと子タブンネは歩き出す。 何もかもが新鮮で、何もかもが楽しい。世界は素敵なものだったのだ。 子タブンネは、生きることの素晴らしさをかみしめる。 子タブンネは近くの草むらへと足を向ける。草むらがかすかに揺れる。 「ミ……ッ!?」 草むらが揺れたと思ったそのとき、子タブンネは地面に押さえつけられていた。 次の瞬間、子タブンネの首が圧迫されて呼吸ができなくなる。 徐々に意識が薄れていき、体からゆっくりと力が抜けていく。 「あーあ。無警戒に草むらに近づくから」 白衣を着た男は楽しげな様子でつぶやく。 男の目の前では、肉食ポケモンにのどを噛みつかれ、力尽きた子タブンネの姿がある。 やがて、肉食ポケモンは子タブンネの体を離すと、小さな体をガツガツと食べ始める。 「施設の中で生きることを選んでいたら、こういうことにはならなかったのに。 次からはよく考えて……って、もう聞こえてないか」 男の目の前には、子タブンネを貪る肉食ポケモンと、お腹の中が空っぽになった子タブンネ。 ため息をついて立ち上がり、「次のタブンネを用意しないと」と言って施設の中に入っていった。 その光景を、かすかに残った意識で子タブンネは見つめていた。 タブンネの持つ生命力が、子タブンネが簡単に死ぬことを許さない。 生きながらにして自分の体が食べられていく感覚を子タブンネは味わい続けている。 やがて、肉食ポケモンの牙が子タブンネの頭に食い込んでくる。 目を失って視界がつぶれ、耳を失い音が何も聞こえなくなる。 自分の体を食べられることだけを感じながら、やがて子タブンネの意識は、二度と覚めることのない闇の中へ沈んでいった。 (おしまい)
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20 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 09 09.60 ID manA8BLGO [1/9] 上の上の階からこの教室まで聞こえる合宿部の練習が七回目にさしかかった頃、私は作業を一旦止めた。 クラスメート全員分のプリントをのけ、カバンからペットボトル飲料を出しフタを開き口をつけた。 「ん……」 喉をゴクリと鳴らして心地よく飲み込み身体の活力にする。 ポパイであればほうれん草。マリオであればキノコであるように、私のパワーアップアイテムはこれなのである。 もちろん彼らほど劇的に力があふれ出るわけではないが……作業で溜まった気だるさを吹き飛ばすには十分に足る好物だ。 「やーやー これはこれは委員長サマやないですかー えっへへー」 そこへクラスメートのイズミがやってきた。 彼女は家に着くまでが部活動の帰宅部のはずだが……何故まだ校内に残っているんだろう。 というか揉み手をしながらヘコヘコと媚びへつらっているのが気になる。 今までの事と、関西生まれだからか香る(ような気がする)お好み焼きスメルで、彼女の胡散臭ささが倍増中だ。 「あー……委員長! お願いがあるんや!」 21 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 14 23.34 ID manA8BLGO [2/9] ……ここまでで何を言い出すかは大体予想できたので、机の中からクラス日誌を取り出す。 それも流麗に、予備動作も感じさせず、コマンドキャンセルで。 「苦労も努力もせんで先生お墨付きのかわいい生徒って思われたいから、明日の数学の宿題写させて!!」 「なめんな」 少し斜め上の発言だったが……クラス日誌を顔面にHITさせた音が、二人しかいない教室に『すぱーん』と響いたのであった。 ―――――――――――――― 「あイター……もー、何するん。雪女並にキツい委員長って評判のチナミ様に勇気出してお願いしたのに……」 「……目ぇキラつかせてするお願いが、勇気を出しての懇願のようには見えなかったけれど」 確かに私はクラスメートから微妙に避けられ孤高の存在になっているのは認める。 しかし一人なのは嫌いじゃない。今日もこうして放課後に一人残りプリント整理をしていたが、静寂だからこそ聞こえる運動部や合唱部の練習声は中々いいBGMなのである。 勿論それにばかり耳を傾けクラスメートの頼みを無視するわけにはいかないが こんな学生の本分をなめたお好み焼き女にはただただ呆れてしまうばかりだ。 23 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 19 09.08 ID manA8BLGO [3/9] 「というか……今まで宿題はちゃんと嫌々ながらも教えてあげてたでしょう……」 そう。私は今までこの学年になってから、何度も彼女に勉強を教えた事がある(渋々と。これ大事)。 週刊少年ジャンプで言うなら、打ち切りレース優勝作品に顕著な、目新しさがないマンネリ展開を私達は幾度も繰り返していた。 頭が悪いなとは評価はしていた一方で、何度も挑戦する気概は買っていた…… しかしこの女には今まであったそれがなくなり、挙げ句の果てにはクラス委員長にイカサマの助力を求めている。 「いやー……それがな?」 【1】解き方教えてもらって提出出来たでー\(^o^)/ ↓ 【2】先生曰わく「なんだ、この素っ頓狂な答えは……」 ↓ 【3】先生から私に職員室へアブダクションのお・さ・そ・い☆ ↓ 【4】さっきまでコッテリ大目玉くらってもーた。仕方ない、応用出来ないなら丸写しで 「というワケなんよ。にゃ、にゃはは」 ………………なるほど。彼女は筋金入りのアホらしい。今まで私が眉を歪めながらも教えてやった事が身につけてないのを実感したら、目からさっき摂取した水分が流れ落ちてきた。 24 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 24 16.01 ID manA8BLGO [4/9] 「ああっ。で、でもいつかはちゃんと自分で予習復習するで! 赤ペン先生不要なほどに!」 いつかっていつだろうか。未来を定めるだけなら誰にでも出来るはずだが。 『明日って今さと』と命がけで行動した某漫画の某少年を見習って欲しい。 というかその言いぶりだと、予習はともかく復習していないようだが、そんな態度では赤ペン先生の顔の方が紅潮し赤くなるだけなんじゃ。 「どうしてもダメって言うなら土下座して床舐め掃除するし! ノート拝借するし!」 ……だから仮にもクラス委員長の前でそんな発言するだろうか。 ここまで発言する人間は……もう自身でプライドのない薄っぺらな人間なのを吐露しているだけだ。 「……はぁ」 私はため息を漏らすと、作業途中だったプリント用紙全てまとめ机でトントンと整える。 そしてカバンを取り出した私に、教えてくれるのかとイズミは期待の眼差しを送っていた。 「おぉう? もしかして教えてくれるん!?」 「帰る」 26 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 29 27.22 ID manA8BLGO [5/9] 今まで通り単に宿題を教えてと言うなら私は嫌な顔をしながらも手伝ってやっていただろう。 しかし土下座し床を舐め掃除してもいいから宿題を写させてと言う人間を評価し協力してあげようと思うだろうか? 答えは……『NO』である。私は彼女に『失望』したのだ。 「え」 「先生にまた怒られてきてね……それじゃ」 私は彼女を尻目に掛けながら、まとめたプリントとペットボトルをカバンにしまう。 プリントの作業はまだ残っているが八割のチェックが終わっている。 これなら家で15分程度時間を割けば終わるだろう。そして明日の朝に先生へ渡せばいい。 そんな事を考えながら立ち上がろうとすると、彼女が、イズミがいきなり私の手を取ってきた。 「そんな事……言わんといて……っ」 ……こんな顔もするんだと普段の態度とのギャップ差に私は目を見開いていた。 何せいつも笑顔のイズミが涙をうっすら浮かべながら唇を噛んでいたのだから。 「うち……勉強ただ見てるだけでもチンプンカンプンで……教えてもらって頑張っても、チナミに教わった事無駄にして…… そんなら最初から答え丸写しにした方がまだチナミのメンツが立つと思って……」 28 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 34 29.28 ID manA8BLGO [6/9] メンツ……か。 なるほど。勉強が出来なくても無神経に何にも考えてなかったわけじゃないらしい。 カンペキな丸写しの方がその場限りとは言え有用出来るのも事実だ。 「もう他に手伝ってくれるクラスメートが校内にいるわけでもあらへんし……チナミ以外頼れないんや。せやから……帰らんといて……」 そう言い終わると、イズミはこれ以上掴んでいるのは厚かましいと判断したのか力なく手を離した。 …………正直やめてほしい。こういう先が読めそうな展開は。 私は『廃部寸前の部活動に磨けば光る逸材が』といったご都合展開は嫌いだし 『友だちになりたいんだ』と全力全開でバトルした上で友人関係が築かれる王道展開もあざとい上に暑苦しくて大嫌いだ。 そして今回の場合は『私が結局イズミに突き動かされる』?そんな事はしたくない。 何分ひねくれた私はそういった展開を望まないのだ。 「あ……チナミ……?」 「…………」 そう、望まない。望まないのだ。 しかし私は……私はそんな展開に沿ってしまい、着席した上で数学の教科書とノートを取り出そうとしてしまっていた。 29 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 39 31.52 ID manA8BLGO [7/9] 「チナミ……も、もしかして……!」 彼女の曇っていた顔は一変し、期待に溢れた笑顔になっていく。 ……全く嫌だ。都合のいい方向に持っていかれるのもシャクだが、結局は人情を捨てきれず心動かされる自分が負けた気がするから。 「勘違いしないで。丸写しはダメ……けど今度は分かりやすく教えるよう私も努力するから」 「うん! うん! チナミはやっぱり……いーや。チナミはスッゴく、スッゴく優しいなー」 …………心外である。そんな事はない。ないったらないよ。 「だって『また?』とか『イヤ』とか渋っても最後には協力してくれるやん。せやから……チナミだぁーーーい好きや!」 何を言っているんだ、このお好み焼き女は。 二人きりの放課後の教室でめったな事言わないでほしい。恥ずかしいし恥ずかしい。 「だ、だから……そんなのただの勘違い。自分の知識を得意気に教えて優越感を得たいからやってあげるだけ」 やはりやめてもらいたい。こんな事を言わせて。これじゃあ私がホントに甘くて優しいみたいだ。 いや、でもこれは私が自ら発言したからであって別に誘導されたからとかじゃなく……あーうーあぁぁ、もうワケが分からない。 30 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 44 29.50 ID manA8BLGO [8/9] 「ジーッ」 気がつくとイズミが私を見ている。地の文もとい脳内で慌てふためいてたはずだが、顔と声に出してしまっていたのか。 だとしたら遺憾ながら私が呆気なく感情を揺さぶられていたのがバレたも当然になってしまう。 そればかりは勘弁してほしい。 「えへへ。本当はかわいい孤高の美少女委員長を独り占め出来てラッキーや」 「…………………………飲まなきゃやってられない!!!!!」 「うへぇ!?」 そう。こんな私の感情を簡単にぐらつかせる女といたら間がもたないしメンタルポイントももたない。 私は精神とテンションを安定させるために、大急ぎでカバンにしまったペットボトルを取り出しフタを外して口に含む、が。 「!!? ッ……げほっげほっ!」 変なところに入りむせた。 31 名前:『甘くないよ』[sage] 投稿日:2012/04/13(金) 00 49 25.42 ID manA8BLGO [9/9] 「あ、ああー……もう。いきなり飲み込むからや。へーきか?」 現在進行形でむせてる私が平気なわけない。 というか違う。いきなり飲み込んだからむせたんじゃなく、こうなった原因はそもそもイズミのせいだ。 本当にこのお好み焼き女は……たまにこうやって私を乱すからたまったものじゃない…… これからは私のアドバイスが反映されてないのを確認する度に青海苔でもかけて復讐してやるべきか。 そんな仕返しの算段をしながら口元を手で拭っていると、イズミは私が吹き出してしまったペットボトル飲料を手に取り眺め始めた。 「ふぅーん……しかしあれやなー。チナミは無味無臭なミネラルウォーターなんかよく好むなあ」 「………………無味じゃないよ」 そう。無味じゃない。前々は本当に味一つない無色透明なミネラルウォーターだったが、私がこの学年に進級してから味が急に変わった。 不思議だが外見が変わったわけでもなく、メーカーが改良したとも聞かない。 しかしその味には不満があるわけでもなんでもなく…… 「とっても…………甘い、よ」 ~\終幕/~