約 204,990 件
https://w.atwiki.jp/haruhipsp/pages/22.html
涼宮ハルヒの約束IVまでもマップ選択画面ではハルヒを優先的に選択しておく。 もちろん、ストーリーが進まなくなるほど選ぶのはタブー。 涼宮ハルヒの約束IV 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムを出す。 ↓ 午後に、古泉との、難易度は普通にやれよで、ミニゲーム渚のビーチバレーで勝つ。 ↓ 最後に、夜にハルヒと会話して終了。 涼宮ハルヒの約束V 朝の古泉との会話で、信じるを選ぶ。 ↓ 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムで終わらせる。 ↓ 午後と夜は、誰を選んでもいいが、シャミセンと話す場合、SOS会話あり。 ↓ 深夜のみくるとの会話での選択肢では、いきましょうを選ぶ。 涼宮ハルヒの約束VI 午前の古泉との会話で、古泉を止めるを選ぶ。 ↓ 午後はハルヒと、夜はみくるとの会話のみ。 涼宮ハルヒの約束VII 朝での会話では、団員として恥ずべきことだわを選択。 ↓ 午前は、ハルヒとの会話のみ。 ↓ 夜のハルヒとの会話。本物と偽者のハルヒとSOS会話を行う。 会話から違いを見つけ、偽者を見破る。 もし、失敗すると、基本的にはバッドエンド。 そして、エンディング。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1038.html
「おかえりなさいませ、ご主人様」 夕焼けで学校が赤く染まる頃、学校にようやくたどり着いた俺を待っていたのは、変態野郎からの気色悪い発言だった。 あまりの不気味さに、俺はその言葉を発した古泉に銃を向けたぐらいだ。 古泉は困った顔を浮かべて両手をあげて、 「失礼しました。いろいろつらい目にあったようですから、癒しを提供して差し上げようかと思っただけです」 「癒されるどころか、殺意が生まれたぞ」 俺はあきれた口調で、銃をおろす。まあ、本気で撃つつもりもなかったけどな。どうせなら朝比奈さんを連れて……う。 あの後、俺たちは北山公園を南下して無人の光陽園学院に入ったが、敵に動きが悟られないように、 そのまま数時間そこで待機していた。もちろんハルヒには連絡を入れておいたが。 俺はしばらく学校内を見回していたが、古泉が勝手に解説を始める。 「北高の方はほとんど無傷ですね。敵歩兵の襲撃もありません。涼宮さんに作戦失敗を印象づけるには、 北山公園に僕らが入ったのと同時に学校を襲うのがもっとも効果的だと思いますが、 どうして敵はその手を使わなかったんでしょうか。僕が相手の立場なら必ずそのようにしますがね。 ま、大体察しはつきますが」 「しらねえし、今はそんなことを考える気分でもないな」 古泉を無視しつつ、俺は学校内を歩き回る。どこにいるんだ? ふと、俺の目に学校の隅に並べられている黒い物体が目に入った。見るのもいやになるその形状は、 明らかに死体袋だった。あの中に谷口も入れられているのだろうか。 「死者52名、負傷者13名。これが北山公園攻略作戦で出て犠牲です。 死者よりも負傷者が少ないという事態が、今の我々の力のなさの現われかもしれません」 やや声のトーンを起こした古泉が言う。俺の小隊も合計16人の命が失われた。 鶴屋さん小隊なんて生き残った方が少ないし、ハルヒや古泉の小隊の損害もかなりあるはずだ。 と、そこでスマイル野郎が重苦しくなった空気を変えるようにわざとらしくぽんと手を叩き、 「ああ、なるほど。涼宮さんを探しているのですね。それなら、前線基地に詰めていますから、学校にはいませんよ」 「なんだと?」 古泉に向けた俺の表情は、鏡がないんだから確認しようがないんだが、どうやら抗議めいたものだったらしい。 めずらしくあわてたように、 「いえいえ、僕はきちんと止めましたよ。いつもとは違い、かなり食い下がったつもりです。 涼宮さんと言い争い一歩手前までいくなんて初めてでしたからね。閉鎖空間が発生しないかヒヤヒヤものでした。 しかし、どうやってもあそこにいると言い張りまして。ああなったら、てこでも動かないことは あなたもよくご存じでしょう?」 しかし、何でまた前線基地にいるんだ? 敵の襲撃が予想されるのはわかるが、 総大将がいる必要もないだろうに。 「何となく予想がつきますけどね」 古泉はくくと苦笑し、 「涼宮さんはあなたの帰還を学校でただ待っているなんてしたくなかったんですよ。 ぼーっとしているといろいろ悪いことを考えたりしますからね。何かして気を紛らわせたかったんでしょう。 あとは……」 古泉がちらりと背後を見る。そこには朝比奈さんが相変わらずのナース姿でこちらに走ってきていた。 「鶴屋さんのことを直接言いたくなかったんではないでしょうか。これはあくまでも僕の推測ですけどね」 「キョンく~ん!」 息を切らせて走ってくる朝比奈さんに、俺は激しく逃げ出したい衝動に駆られた。こんな気分は初めてだ。 「よかった……無事だったんですね……!」 感激の涙を浮かべる朝比奈さんに、俺の心臓はきりきりと痛んでしまった。この後、確実に聞かれるんだ。 鶴屋さんのことについて。 「本当に心配したんですよぉ……。学校からはなにも見えなくて、どうなっているのか全然わかりませんでしたから」 「ええ、いろいろありましたが、無事に帰って来れてなによりです」 「あ、あと、鶴屋さんは?」 この言葉とともに、俺は心臓がつかみ出されたのではないかと言うぐらいの痛みが全身に走った。 だが、次に朝比奈さんが言った言葉は予想外のものだった。 「古泉くんから聞いたんですけど、鶴屋さん、足を怪我してどこかの民家に隠れているんですよね? あたしもう心配で心配で……」 俺ははっと古泉の方を振り返ると、ウインクで返してきた。この野郎、しっかりと朝比奈さんに事前に告げておいたのか。 変なところで気が利きやがる。でも助かった。そして、つらいことをいわせちまってすまねえ。 「鶴屋さんは無事ですよ。いつものまま元気です。ただ、ちょっと動くには厳しそうなんで、 ばかげたドンパチが収まるまで隠れていた方が良いと思います。幸い、隠れ家には食料もあるらしく、 3日間隠れるには十分だそうですよ」 「無線とかではなせないんですか? あたし、鶴屋さんの声が聞きたくて」 俺はぐっとうなりそうになったが、ぎりぎりで飲み込む。 「えーあー、無線ですか、あー無線なんですけど、なにぶん学校から離れたところにいる関係で、 あまり連絡できないんですよ。敵に――そう敵に傍受されて発信源を突き止められたらまずいですからね」 「そうなんですか……」 がっくりと肩を落とす朝比奈さん。すみません、本当にすみません……! でも、朝比奈さんはそんな俺の大嘘を信じてくれたのか、 「仕方がないですね。みんな大変なんですから、あたしばっかりわがままは言えませんし」 「3日経てば、また会えますよ。それまでがんばりましょう」 何とか乗り切れたか。こんな嘘は二度とつきたくねえ。 と、朝比奈さんはいつものかわいい癒しの笑顔を浮かべて、 「あ、そういえば、皆さんご飯まだなんじゃないですか? 長門さんがカレーを作ってくれたんです。 ぜひ食べに来てください」 神経が張りつめたままだったせいか気がつかなかった。学校中を覆うカレーのにおいに。 ◇◇◇◇ 「食べて」 食糧配給所になっていた教室で待ちかまえていたのは、迷彩服の上に割烹着を着込んだ長門だった。 これだけ見ると、あの正確無比な砲撃の指揮官とは思えない。ちなみに朝比奈さんは作業があると言って、 またぱたぱたとどこかへ行ってしまった。 「すまん、もらうぞ」 「いただきましょう」 俺は紙製の皿にのったカレーを受け取ると、がつがつとむさぼるように食いついた。 よくよく考えれば、15時間近くなにも食べていない。戦闘中は携帯していた水筒の水ぐらいしか口にできなかったからな。 「おいしいですよ、長門さん」 こんな時まで格好つけたように、優雅にカレーを食する古泉。全くどこまで行っても余裕な奴だぜ。 しかし、長門は大丈夫なのか? 相当疲労もたまっているはずだろ。 「問題ない。身体・精神ともに異常は発生していない」 そうか。それならいいんだが、あまり無理はするなよ。 「今のわたしにできるのはこのくらい。できることをやる。それだけ」 「でも、あきらめるのが少し早すぎるのではありませんか?」 背後から聞こえた最後の台詞は俺でもないし、古泉でもない。どこかで聞き覚えがあるようなと思って振り返ると、 「なぜ、ここにいる」 長門の声。トーンはいつもと変わらないが、内面からにじみ出ている感情は【驚】だとはっきりと見えた。 声の正体はあの喜緑さんだったからだ。生徒会の人間であり、また長門と同じく宇宙的超パワーによって作られた 対有機生命体インターフェース……で良かったんだよな? 北高のセーラー服を纏っているが、 やたらとそれが懐かしく見えるぜ。 「私の空間・存在把握能力で確認した限り、ここには存在していなかったはず」 「この固定空間での時間座標で10分ほど前にこちらに来ました」 ひょうひょうと喜緑さん。ちょっと待て、最初はいなくてさっき来たと言うことは…… 長門はカレーをすくってお玉から手を離し、喜緑さんの元に駆け寄る。 「この空間に干渉する方法を有していると判断した。すぐに提供してほしい」 「残念ながら、それは無理です」 「なぜ」 「外側から必死にアクセスを試みて、本当にミクロなレベルのバグを発見することができました。 ここにはそれを利用して侵入しましたが、現在は改修されています。同じ手で、ここから出ることはできません。 思った以上にこの世界を構築した者は動きが速いです」 喜緑さんの言葉に長門はがっくりと肩を落として――いや、実際には1ミリすら肩を動かしてもいないんだが、 俺にはそう感じた。 「不用意。打開のための機会を逃したのだから」 「すみません。外側から一体どんな世界になっていたのかわからなかったんです。 まさか、こんな得体の知れないものが構築されているとは思いもよりませんでした」 めずらしく非難めいたことを言う長門を、あの生徒会室で見せていたにこにこ顔で受け流す。 「しかし、一つの問題からこの世界に介入することが可能だったのは紛れもない事実です。 なら、まだ別の方法が残されていると思いませんか?」 「…………」 喜緑さんの反論じみた台詞に、長門はただ黙るだけだ。 どのくらいたっただろうか。俺のカレー皿が空になったが、空腹感が埋まるにはほど遠くおかわりがほしいものの、 なんだか気まずい雰囲気の中でそれもできずにどうしたものかと思案し始めたくらいで、 「わかった」 そう返事?を長門はした。さらに続ける。 「協力を要請する。この空間に関しての情報収集及び正常化を行いたいと考えている。 ただし、私一人では効率的とは言えない。状況は悪化の一途をたどっているため短時間で完了する必要がある」 「もちろんです。そのためにここに来たのですから。お互い、意志は別のところにありますが、 現在なすべき目的は一致しています。問題はありません」 なにやら交渉がまとまったらしい。二人は食糧配給所の教室から出て行こうとする。 おいおい、こっちの仕事はどうするんだ? 「するべきことができた。そちらを優先する。現在の仕事は別の人間に変わってもらう。問題ない」 「砲撃の指揮はどうするんだ?」 「そちらは続行する。今持っている情報を精査した中では、私がもっとも的確にそれが行えると判断しているから」 長門の言葉にほっと俺は胸をなで下ろす。あの正確無比な援護射撃がなくなったら、 正直この先やっていく自信もない。しかし、一方でこの非常識世界をぶっ壊してくれるならそうしてほしいとも思うが。 「どちらも行う。状況に応じて切り替えるつもり。その時に最も有効な手段をとる。どちらにしても」 長門は俺の方に振り返り、 「私はあなたを守る」 ◇◇◇◇ さて、なにやら長門が頼もしい事を言ってくれたし、 少しながらこのばかげた戦争状態から脱出できる希望が見えてきたわけだが、 どのみちもうしばらくは俺自身もがんばらなければならないことは確実だ。 そのためにはいろいろとやるべきこともあるだろうが、 「台車でカレーを運搬するのを護衛するのは何か違うんじゃないか?」 「いいじゃないですか。腹が減っては戦はできぬというでしょう。これも生き延びるためです」 俺の誰に言ったわけでもない愚痴を、古泉がいつものスマイル顔で勝手に返信してきた。 今俺たちは、学校から前線基地へ移動中だ。別に散歩しているわけではなく、 2台の台車に乗せたカレー満載な鍋とご飯の詰まった箱を載せて、それを護衛している。 まあ、ストレートに言うとハルヒたちに夕飯を届けている最中というわけだ。 しかし、武装した10人で護衛して運搬するカレーとは一体どれだけの価値があるんだ。 「美味しかったじゃないですか、長門さんのカレー。犠牲までは必要ありませんが、厳重・確実に 涼宮さんたちに届ける価値は十分にあると思いますよ」 「それに関しては別に否定しねえよ」 実際にうまかったしな。腹が減っているからという理由だけではないほどに美味だったぞ。 護衛を担当しているのは、俺と古泉、他北高生徒10名だ。とは言っても、俺と古泉の小隊の生徒はいない。 さすがに疲労の色も濃かったので、今の内に休ませている。国木田もだ。今ここにいるのは、 その辺りをほっつき歩いていた生徒をかき集めて編成している。だんだん気がついてきたが、 生徒一人一人の戦闘における能力は全く同じだ。身体能力も銃の扱いも。そのため、生徒を入れ替えても 大した違和感を感じない。 そんな中、俺と古泉はカレー護衛隊の一番後ろを務めていた。古泉がこの位置を勧めていたのだが、 どうせ何か話したいことがあるんだろ。 「せっかくですし、お話ししたいことがあるんですが」 「……俺にとって有益なら聞いてやる」 「有益ですよ。それも命に関わる話です。ただし、内容はいささか不愉快なものになるかもしれませんが」 気分を害するような話は有益とは言えないんじゃないか? まあ、そんなことはどうでもいいが。 古泉は俺が黙っているのを勝手にOKと解釈したのか、いつもの解説口調で語り始める。 「まず、率直にお伺いしますが、あなたが生き残って鶴屋さんが亡くなった。この違いはなぜ起こったと思いますか?」 「俺は腰を抜かしてとっとと逃げ帰った。鶴屋さんは勇敢に戦い続けた。それだけだろ」 「言葉としては同じですが、意味合いは違うと思いますね」 どういう意味だ。もったいぶらないでくれ。 「敵は最初からあなたと鶴屋さんが植物園まで撤退することを阻止しようとしていなかったんですよ。 だから、あなたは犠牲者は多数でましたが、意外とあっさり戻れています。 これは、敵の目的は涼宮さんに自らの決定した作戦でぼろぼろに逃げ帰ってくる生徒たちの姿を 見せつけようとしていたのではないでしょうか」 「おい待て、それだと鶴屋さんもとっとと逃げれば死ななかったって言う気かよ?」 「率直に言ってしまえば、その通りです」 なんだかむかっ腹が立ってきたぞ。おまえは鶴屋さんの命をかけてやったことを非難するつもりなのか? どうやら俺の内心ボイスが表情に浮かんできていたのか、古泉はあわてて、 「いえ、別に鶴屋さんの判断が間違いだったとは言っていません。逆に、敵から主導権を奪い去ったという点では、 これ以上ないほどの英断だったと思いますね。おかげで敵は一部の作戦を変更する必要までできた」 「公園南部を散らばった鶴屋さん小隊を追いかけ回す必要ができて、さらにロケット弾発射地点を守る必要ができた。 そのくらいなら俺にだってわかる」 「それだけではありません。敵は鶴屋さんを仕留める必要に迫られたんです。 必死にあなたたちを鶴屋さんと合流させなかったのはそれが理由だと考えていますね」 「何だと?」 「敵は涼宮さんに逆らう――そこまで行かなくても反抗する人物なんていないと踏んでいたのでしょう。 見たところ、ある程度は涼宮さんとその周辺の人物の下調べも行っているようですし。 ところが真っ先に鶴屋さんは涼宮さんの指示を拒否して、自らの意志で行動した。 これはこの状況を仕組んだ者にとって脅威であると映るはずです。明らかに予定外の人物ですからね。 だから、あの場で確実に抹殺する必要に迫られた。今後の予定に影響を及ぼさないためにも」 古泉の野郎の言うとおりだ。なんだかだんだん不愉快になってきた。有益な情報はまだか? 「今、これを仕組んだ者はこう考えているでしょう。何とか鶴屋さんは抹殺できた。 ところがどっこい、今度は別の人間が涼宮さんに反抗――それどころかある程度コントロールした。 ならば、次の標的は当然あなたですよ」 古泉の冷静な言葉に俺はぞっとする。突然、周辺の見る目が変わり、その辺りの物陰に敵が潜んでいて、 今にも俺を狙撃しようとしているんじゃないのかという不安が頭の中に埋まり始めた。 「ご安心ください。そんなにあっさりとあなたを仕留めるつもりはないと思いますよ。 なぜなら、あなたは涼宮さんにもっとも影響を与える人物です。敵も扱いは慎重になるでしょう。 下手に傷つけて一気に世界を再構築されたら、元も子もありませんからね」 古泉は俺に向けてウインクしてきやがった。気色悪い。 まあ、しかし、確かに有益な情報だったよ。敵が俺を第一目標としながら、早々に手を出せない状態らしいからな。 うまく利用できるかもしれん。珍しくグッドジョブだ古泉。 「僕はいつもそれなりに良い仕事をしているつもりですよ」 古泉の抗議じみた声を聞いた辺りで、ようやく前線基地の到着した。 ◇◇◇◇ なにやら前線基地ではあわただしいことをやってきた。窓を取り外したり、どこからか持ってきた鉄板を廊下などに 貼り付けている。ハルヒはここを要塞にでもするつもりか? そんな中、ハルヒはトランジスターメガホン片手に指示をとばしまくっていたが、 「くぉらあ! キョン!」 俺の姿を見たとたんに、飛び出してきた。やれやれ、どうしてこいつはこう元気なんだろうね。だが―― 「あんたね! 帰ったなら帰ったと一番にあたしに報告しなさいよ! いい? あたしは総大将にして総指揮官なの! 常に部下の状況を把握しておく必要があるってわけ! 今度報告を怠ったら懲罰房行きだからね!」 怒っているのに、顔は微妙に笑顔というハルヒらしさ満点だ、と普通の人なら思うだろ。 でもな、付き合いが長くなってくると微妙な違いに気づいちまったりするんだ、これが。 ハルヒは運んできた台車上のカレー鍋をのぞきこみ、 「なになに? カレー? すっごいじゃん、誰が作ったの?」 「長門だそうだ」 「へー、有希が作ってくれたんだ。じゃあ、みんなで遠慮なく食べましょう」 ハルヒは前線基地の建物に戻ると、 『はーい! よっく聞きなさい! 何とSOS団――じゃなくて、副指揮官である有希からカレーの差し入れよ! いったん作業を止めて休憩にしなさい!』 威勢の良い声が飛ぶと、腹を空かした生徒たちがぞろぞろとカレー鍋に集まり始めた。 ただ、その中にハルヒはいない。 「では、僕はいったん学校に戻りますね。あとはお願いします」 そう古泉は何か言いたげな表情だけを俺に投げつけて戻っていった。言いたいことがあるならはっきりと言えよ。 俺は前線基地とされている建物の中に入り、 「おいハルヒ。せっかくの差し入れなのに食わないのか?」 そう玄関口に寝っ転がっているハルヒに声をかける。 「あたしは最後で良いわ。あんなにいっぱいあるんだし、残ったのを独り占めするから。 その方がたくさん食べられそうだしね」 「そうかい」 俺はヘルメットを取り、ハルヒの横に座る。 じりじりと日が傾き、もう薄暗くなり始めていた。がやがやとカレー鍋に集まる生徒たちの声が建物内に響いているのに、 「静かだな……」 「そうね……」 俺とハルヒは共通の感想を持った。 「あんなにいた敵はどこに行っちゃったのかしら。てっきりすぐにまた攻撃して来ると思ったのにさ。 ちょっとひょうしぬけしちゃったわ」 「来ないに越したことはないだろ。まあ、そんなに甘くはないだろうけどな」 ――またしばらく沈黙―― 「大体、何で連絡くれなかったのよ。いろいろ考えちゃったじゃない」 「何だ、心配してくれたのか?」 「あったりまえでしょ! 部下の身を案じるのは上官なら当然よ、トーゼン!」 ――ここでまた会話がとぎれる。そして、もう日がほとんど降りてお互いの表情も見えなくなった頃―― 「ねえ……キョン……あ、あのさ……」 「なんだ?」 「その……」 「はっきり言えよ。どもるなんて珍しいな」 ――それからまた数分の沈黙。俺はただハルヒが話を再開するのを待ち続け―― 「その……鶴屋さんなんだけどさ。なんか……言ってなかった?」 「何かって何だよ?」 「……恨み言とか」 俺はハルヒに気づかれないように、視線だけ向けてみる。しかし、もう辺りは薄暗く、その表情は読み取れなかった。 「そんなこと言ってねえよ。また学校で会おうだってさ。いつもと同じだった――最期まで」 「そう……」 ハルヒが俺の言葉を信じたのか信じていないのかはわからなかった。ただ、明らかに落ち込んでいるのはわかった。 いつものダウナーな雰囲気どころではない。完膚無きまで叩きのめされているような感じだ。あのハルヒが。 それを認識したとたん、激怒な感情がわき上がる。額に手を当てて必死に我慢しないと、すぐに爆発しそうなほどだ。 あのハルヒをこんなになるまでめちゃくちゃにしやがった。絶対に許さねえ……! ~~その5へ~~
https://w.atwiki.jp/mirror421/pages/11.html
涼宮ハルヒの憂鬱 haruhiSnap012.jpg 「東中学出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」入学初日早々、ぶっ飛んだ自己紹介をした涼宮ハルヒ。そんな、ハルヒを中心に発足したSOS団を取り巻く非日常系学園ストーリー。 原作・構成協力:谷川流原作イラスト・キャラクター原案:いとうのうぢ製作総指揮:安田猛・宇田川昭次・八田陽子・酒匂暢彦監督:石原立也 シリーズ演出:山本寛超監督:涼宮ハルヒシリーズ構成:涼宮ハルヒと愉快な仲間たち アニメーション制作:Kyoto Animation製作:SOS団 ・作品について・登場キャラクター・レビュー・用語集
https://w.atwiki.jp/gamebag/pages/251.html
涼宮ハルヒニュース 『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサーが「ゼスティリアは危機」との言及を謝罪。作品を否定する意図はなかった - AUTOMATON 【このラノ】「このライトノベルがすごい!」の歴代トップ作品で好きなのは? 3作品を解説!(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース あなたが一番好きなアニソンは?Eve「廻廻奇譚」、LiSA「炎」など…20年~21年の若い曲が上位にランクイン (アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ヒーラーガールズ、2ndライヴ開催 TVアニメ『ヒーラー・ガール』放送&主題歌担当、朗読劇イベントの開催も発表(CDジャーナル) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース LiSA『鬼滅の刃』で2年連続1位!2021年カラオケ年間ランキング(アニメージュプラス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース “クリスマス”アニメといえば?「東京ゴッドファーザーズ」や「School Days」、「アイカツ!」“斧”シーンも人気!「毎年見たくなる」【#クリスマスツリーの日】(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 読書メーターの年間おすすめ本ランキング『読書メーター OF THE YEAR』を発表 - PR TIMES ラノベの越境性とメディアミックス 歴史を紐解く書籍『ライトノベルの新潮流』 - KAI-YOU ファン想いで歌を愛する「天神子兎音」―愛され度満点のパーソナリティとボカロ愛あふれる音楽性 【バーチャルタレント名鑑】(インサイド) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 2021年で一番売れたライトノベル『ロシデレ』の最新3巻発売中!ナレーター・立木文彦さんによるストーリー紹介PVも公開! - PR TIMES PUBG Mobileで『涼宮ハルヒの憂鬱』コラボ開催中。SOS団になって戦場を駆けよう - Engadget日本版 人気女性声優8人が王道アニソンなど披露、【AMUSE VOICE ACTORS CHANNEL FES 2021】レポート(Billboard JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 着てみたいアニメの学生服は? 3位「呪術廻戦」都立呪術高専&「コナン」帝丹高校、2位「ヒロアカ」雄英高校 【男子編】<21年版>(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【京アニ】京都アニメーションのテレビアニメ作品で好きなのは? 3作品を紹介(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「ハルヒ」「らき すた」「けいおん!」楽曲もスペシャルカバーでお披露目! 京アニ初の音楽フェス開催(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 名作アニメ映画「涼宮ハルヒの消失」 12月18日“世界改変の日”に1日限りの劇場上映会(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 映画「涼宮ハルヒの消失」、“世界改変の日”に復活上映 - AV Watch 秋に聞きたいアニソンは?「鬼滅の刃」「ラブライブ!」「名探偵コナン」…主題歌や“ハロウィン”アイドル曲も人気 (アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「涼宮ハルヒ」最新グッズが続々登場! “長門のメッセージ”デザインのTシャツからマグカップまで(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 杉田智和のハマり役といえば…『銀魂』銀時VS『ハルヒ』キョン、第1位はどっち? (2021年11月13日) - エキサイトニュース 「京アニ」人気作品投票1位に「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 作画の美しさも話題(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【京都アニメーション】おすすめしたい「京アニ」作品ランキング! 第3位は「涼宮ハルヒの憂鬱」!(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『らき☆すた』『涼宮ハルヒの憂鬱』などアニメ見放題も「ニコニコプレミアムDAY」初開催 - ドワンゴジェイピーnews 「涼宮ハルヒの憂鬱」、「らき(ハート)すた」他大人気アニメのプロデュース統括を手がけた元KADOKAWA常務執行役員【安田猛】氏がPolkaFantasyのカルチャーアドバイザーに就任 - PR TIMES 「君の名は。」や「涼宮ハルヒの消失」など! 「Amazonタイムセール祭り」にてBD/DVDが特別価格となってラインナップ - GAME Watch 声優「平野綾」さんが演じたテレビアニメのキャラクターで好きなのは誰?(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『涼宮ハルヒの憂鬱』再放送(28話)は“サムデイ イン ザ レイン”。とある雨の、何も起きない1日 - 電撃オンライン 「涼宮ハルヒ」×「ROLAND」スペシャルコラボ第二弾!【期間限定販売】いとうのいぢ先生の描き下ろしグッズが登場! - PR TIMES 読書の秋!“読書家”キャラといえば? 3位「涼宮ハルヒの憂鬱」長門有希、2位「ヒプマイ」夢野幻太郎、1位は…<21年版> - アニメ!アニメ!Anime Anime 『ハルヒ』でブレイクした平野綾さんの誕生日 本人は読書好きの長門キャラ(マグミクス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース SOS団vsコンピ研、因縁の対決。『涼宮ハルヒの憂鬱』再放送(27話)は“射手座の日” - 電撃オンライン 『涼宮ハルヒの憂鬱』再放送(26話)は“ライブアライブ”。ハルヒの熱唱に鳥肌! - 電撃オンライン 人気コスプレイヤー・猫田あしゅが涼宮ハルヒに変身!「ハルヒそっくり」「キョンになりたい」と絶賛の声 | ニュース - ABEMA TIMES 『涼宮ハルヒの直観』表紙のハルヒがフィギュアに! - 電撃オンライン 「『涼宮ハルヒ』シリーズ 原作版 涼宮ハルヒ 1/7スケールフィギュア化! 9月17日(金)より予約受付開始! - PR TIMES 『涼宮ハルヒの憂鬱』再放送(24話)は“涼宮ハルヒの溜息V”。この作品はフィクションであり… - 電撃オンライン 「涼宮ハルヒ」シリーズのトレーディングアクリルキーホルダーの受注を開始!!アニメ・漫画のオリジナルグッズを販売する「AMNIBUS」にて - PR TIMES 「涼宮ハルヒの憂鬱」や「文豪ストレイドッグス」の楽曲が弾けるようになる!世界で500万人が利用するピアノアプリ「flowkey」が超人気アニメソングレーベル「Lantis」の楽曲を追加 - PR TIMES 『アイドルマスター シンデレラガールズ』×『涼宮ハルヒの憂鬱』コラボ開催中!【アイマス日記第82回】 | スマホゲーム情報ならファミ通App - ファミ通App 『デレステ』で開催中の『涼宮ハルヒの憂鬱』コラボの追加楽曲として『God knows...』(北条加蓮)、『Lost my music』(中野有香)が登場 - ファミ通.com 『涼宮ハルヒの憂鬱』再放送(19話)はエンドレスエイトの終わり回(第8回)。ループする日常の結末とは? - 電撃オンライン 神前暁:「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」作曲家が「クラシックTV」に 劇伴の魅力語る - MANTANWEB ハルヒたちが『ワーフリ』の世界へ!? 『ワーフリ』×『涼宮ハルヒの憂鬱』がコラボ! - 電撃オンライン 「ぼくたちのリメイク」×「涼宮ハルヒの憂鬱」コラボ!志野亜貴がハルヒに扮するビジュアルを公開 - アニメ!アニメ!Anime Anime 『アイマス』未来に向けたコンセプトムービーが発表。2022年初夏に765プロAS単独ライブの開催や『デレステ』と『涼宮ハルヒ』とのコラボなど最新情報が多数発表 - ファミ通.com 『デレステ』と『涼宮ハルヒの憂鬱』のコラボが決定!! - 電撃オンライン 『涼宮ハルヒ』ブレーク後に“ライフライン発言”で炎上… レジェンド声優・?... - まいじつ 涼宮ハルヒ、冴えない彼女、ガンダム…浮世絵とコラボ 人間国宝職人の越前和紙で版画制作、福井県越前市 - 福井新聞 涼宮ハルヒがROLANDの出版をお祝い!? 「涼宮ハルヒ」シリーズ異色のコラボ! 限定グッズ発売のほか、谷川 流&いとうのいぢによる推薦コメントも到着! - PR TIMES ポニーテール女子は好きですか―― 「涼宮ハルヒの憂鬱」ハルヒ「ひぐらし」魅音ら、ABEMAで“厳選ポニテ特集” (2021年7月7日) - エキサイトニュース 「涼宮ハルヒ」シリーズとSuperGroupiesのコラボアイテムが予約開始!腕時計や財布、マフラーが登場|ゲーム情報サイト Gamer - Gamer 『涼宮ハルヒ』シリーズのコラボ腕時計、財布、マフラーが予約受付開始へ。『消失』長門のマフラーや北高制服カラーの腕時計で日常に非日常を - ニコニコニュース 『涼宮ハルヒの消失』や『メイドインアビス』『この素晴らしい世界に祝福を!』などの劇場アニメ5作品が10時間連続で一挙放送 - 超! アニメディア 勢いは「涼宮ハルヒ」シリーズ級! ロシアンラブコメ第2弾『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん2』が今夏発売決定! - PR TIMES 人気劇場アニメを怒濤の10時間連続放送!『涼宮ハルヒの消失』『メイドインアビス』『ゴブリンスレイヤー』など一挙 | ニュース | ABEMA TIMES - AbemaTIMES 「涼宮ハルヒ」シリーズのSOS団 パーカーの受注を開始!!アニメ・漫画のオリジナルグッズを販売する「AMNIBUS」にて - PR TIMES 涼宮ハルヒの声優、平野綾(33)の現在が衝撃的すぎると話題に - ニコニコニュース 「八月のシンデレラナイン」,マフィア梶田さんがゲストの“涼宮ハルヒの憂鬱”コラボ記念動画が公開 - 4Gamer.net 『八月のシンデレラナイン』5月1日(土)より『涼宮ハルヒの憂鬱』とのコラボ開催決定!コラボ限定のフルボイスイベントに加え、ログインすると涼宮ハルヒがもらえる! - PR TIMES 【ビブリオエッセー】アラサーも安心のSOS団 「涼宮ハルヒの直観」谷川流(角川スニーカー文庫) - 産経ニュース 【涼宮ハルヒ】好きなSOS団メンバーランキングTOP5! 第1位は「長門有希」に決定!【2021年最新結果】(1/2) | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 『涼宮ハルヒ』名曲ランキング!ハルヒ役・平野綾が『ハレ晴れユカイ』に“SOS団の絆” - ふたまん+ 『鬼滅の刃』大ヒットに、ハルヒシリーズが与えた影響とは - ダイヤモンド・オンライン 涼宮ハルヒ:聖地・西宮のハルヒ時計がペーパークラフトに - MANTANWEB 【涼宮ハルヒ】SOS団人気No.1を決めよう! あなたが一番好きな団員は誰?【アンケート実施中】 | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 『涼宮ハルヒ』シリーズのオリジナルグッズが手に入るくじが「くじ引き堂」に登場!特大タペストリーやブックカバーなどがラインナップ! - 電撃ホビーウェブ 「涼宮ハルヒ」人気投票結果発表! “令和”に1番支持されたのは、やっぱり長門? 主人公ハルヒ? それとも... - アニメ!アニメ!Anime Anime 『涼宮ハルヒの直観』なぜ“本格ミステリ”な作風に? 17年続く人気シリーズの文脈を紐解く - リアルサウンド BS11の年末年始はアニメざんまい、「涼宮ハルヒの消失」「ガンダムNT」などOA - ナタリー 深夜連続!アニメ祭り 「ハルヒ」「けいおん!」「銀魂」放送決定 - PR TIMES 『涼宮ハルヒの直観』発売記念 ENOZスペシャルライブレポート - WebNewtype honto週間ランキング発表「涼宮ハルヒ」9年半ぶりの最新刊『涼宮ハルヒの直観』が総合ランキング第1位に登場 - PR TIMES 「冒険でしょでしょ?」や劇伴など「涼宮ハルヒの憂鬱」関連楽曲557曲サブスク配信開始 - アニメハック 声優・平野綾、「涼宮ハルヒ」シリーズの9年半ぶり新作発売を祝福「涙が溢れました」 | ニュース - AbemaTIMES 映画「涼宮ハルヒの消失」テレビ愛知で地上波初・ノーカット放送! 最新刊発売で盛り上がる今、名作をもう一度 - アニメ!アニメ!Anime Anime 映画『涼宮ハルヒの消失』テレビ愛知にて12/27に地上波初、ノーカットで放送決定 - ファミ通.com 9年半ぶり「ハルヒ」新刊、発売前から大きな盛り上がり ライトノベル週間ランキング - リアルサウンド 「涼宮ハルヒ」9年ぶりの新刊は「毎週、書きあがった分を……」スニーカー文庫編集部を直撃! - 文春オンライン 小説『涼宮ハルヒ』シリーズのエピソード別・時系列順番まとめ。『憂鬱』から『驚愕』までの既刊や、最新作『直観』のあらすじを紹介 - アニメイトタイムズ 小説『涼宮ハルヒの直観』発売に総勢100名の著名人から応援コメント!「SOS団の100人応援コメント!」第1弾が公開! - PR TIMES 「涼宮ハルヒ」シリーズ、なぜ大ブームになった? 優れたストーリーとキャラの魅力を再考 - リアルサウンド 涼宮ハルヒ:9年半ぶりの新作発表 影響力とその秘密 - MANTANWEB 11月25日発売『涼宮ハルヒの直観』アニメイト限定セットに付く「フルグラフィックTシャツ」の絵柄が解禁! - PR TIMES 9年ぶりの新刊発売も大きな話題に 『涼宮ハルヒの憂鬱』の社会現象を振り返る - リアルサウンド 『涼宮ハルヒの直観』小説カバー初公開! 表紙イラストは いとうのいぢ 描き下ろし「ハルヒ&鶴屋さん」で限定リバーシブルカバーも! 大好評予約受付中 - PR TIMES 完全新作『涼宮ハルヒの直観』表紙イラストが初公開!! - 電撃オンライン 涼宮ハルヒ:9年半ぶり新刊「涼宮ハルヒの直観」カバー公開 いとうのいぢ描き下ろしのハルヒ&鶴屋さん - MANTANWEB 『涼宮ハルヒ』シリーズ|小説 最新刊(次は「直観」)発売日まとめ - アニメイトタイムズ 9年半ぶりのシリーズ最新作『涼宮ハルヒの直観』が11月25日に発売決定! 特典フルグラフィックTシャツが付属するアニメイト限定版が同時発売! - アニメイトタイムズ 「涼宮ハルヒ」シリーズ9年半ぶり完全新作!『涼宮ハルヒの直観』11月25日発売 - ほんのひきだし 「涼宮ハルヒ」完全新作小説、9年半ぶりに発売決定! 250P超の書き下ろし「鶴屋さんの挑戦」ほか2つの短編収録 - アニメ!アニメ!Anime Anime 『涼宮ハルヒ』9年半ぶりの新作小説『涼宮ハルヒの直観』11月25日に発売! 完全書き下ろしエピソード“鶴屋さんの挑戦”と2つの短編を収録 - ファミ通.com 『涼宮ハルヒ』シリーズ最新作が11月25日に発売決定!アニメイト限定セットの予約受付を9月1日より開始! - PR TIMES 【ハルヒ新作】9年半ぶりの小説『涼宮ハルヒの直観』11月発売決定 - 電撃オンライン 最新作『涼宮ハルヒの直観』の発表を受けて秋葉原のアニメイト、ゲーマーズ、書泉で急遽チラシの配布を実施! ゲーマーズでは店員がキレキレの“ハルヒダンス”を披露!? - アニメイトタイムズ 涼宮ハルヒ9年半ぶり新作『涼宮ハルヒの直観』11.25発売 9.1より限定セット予約開始 - クランクイン! 【アニメ今日は何の日?】8月17日は『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイトが発生した日! 終わらない夏休みが始まった! - アニメイトタイムズ 『涼宮ハルヒの憂鬱』公式サイトが謎の更新を実施。本当によくわからない - ファミ通.com 『涼宮ハルヒの憂鬱』笹の葉ラプソディ展が開催決定 - 電撃オンライン 「涼宮ハルヒ」平野綾の「#お家で全力ハレ晴レユカイ」に“コンピ研部長”がコメント 「パソコン返せよ!!」 - アニメ!アニメ!Anime Anime 涼宮ハルヒくちこみ情報 #bf 公式サイト 涼宮ハルヒ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/952.html
第 三 章 太陽の光で目が覚めた。 微かににせせらぎが聞こえる。どうやら俺は眠っていたようだ。 太陽の位置からすると、昼前か昼過ぎあたりだろうか。 ちょうど木影になっていた俺の顔に日光が差してきていた。 季節はどうやら真冬のようだった。一月か二月か。空気が肌を刺すように冷たい。 ――ここはどこだ? 起き上がり、辺りを見回してみる。少し頭が痛む。 小川と遊歩道に挟まれた、並木が植えられている芝生の上に俺はいた。 公園のようだった。見慣れない風景。いや、見慣れないというのとは何か違う。 奇妙な感覚。 ――今はいつだ? 腕時計を見た。それは二月二十四日の午後二時五分を表示していた。 俺の格好は春先を思わせるような軽装だった。 真夏の格好よりは幾分マシとは思ったが、やはり少々寒さが身にしみる。 何だ、この違和感は? そうして俺は、場所や時間よりも重大な疑問に思い当たった。 ――俺は誰だ? 思い出せなかった。 冷静に考えてみたところ、どうやら俺は記憶喪失という状況におかれているようだった。 俺は目の前にあった遊歩道のベンチに腰掛け、所持品を調べてみた。 あったのは財布と手帳。 身につけているものはデジタル表示の腕時計とサングラス、それに季節外れの衣服。 財布に何か手がかりになるものが入っていないかと調べてみたが、俺の身元を確認出来るものは何ひとつない。 手帳も同様だった。 手帳のスケジュール欄の書き込みは九月十三日で始まり十月二十日で終わっていた。 それはそもそも予定ですらなく、以下のような意味不明の単なるメモ書きだった。 9月13日 29D03H48M 9月14日 29D03H57M 9月15日 29D04H08M 335×24×60÷20=24120 9月16日 29D04H18M ・ ・ 10月14日 01Y01M10D 10月15日 01Y01M12D ・ ・ 10月20日 06Y00M05D こういった書き込みが十月二十日まで一日も欠かさず毎日続いていて、十月二十一日の日付には赤い丸印が記されていた。それ以降の日付は空白だった。 一体何だこれは? アルファベットはおそらく年月日や時分を表していて、数式にも24×60という数字があ ることから、何か時間に関係することを書き留めているように思える。 これは俺が書いたものなのか? 試しに同じ字を手帳に書き込んでみた。同じ筆跡。俺の字に間違いないようだった。 せめて、日記のようなものでも書いておいてくれればありがたいのだが、どうも俺にはそう いう習慣はないらしい。 手帳のページを繰ると、後半のメモ欄に携帯電話の番号と住所が書かれてあった。 その番号も住所も、俺には全く心当たりはなかった。 俺は今まで何をやっていたんだ? 何となくだが、俺には何かしなくてはいけない重要なことがあったように思える。 だが、それは何だ? 足元を眺めながら俺はしばらく考えてみた。三十分ほどそうしていたが、思い出せることは何もなかった。 とにかく今の俺にとって必要なのは、何でもいいから情報を仕入れることだ。 公園を出てしばらく歩いた俺はコンビニエンスストアを見つけ、新聞を買ってみた。 日付はやはり二月二十四日。 手帳のスケジュールの日から、およそ四ヶ月が経過している。 手帳を四ヶ月間全く記入しなかったということだろうか。 それまでの日付は一日の抜けもなく毎日埋っているにもかかわらず。 だが、俺が四ヶ月以上記憶とともに意識を失っていたという推測はさらにありえないことだった。 一体どうなってんだ? 新聞の記事を読んでも特に手がかりになるようなものは見出せなかった。記事のほとんどはあまり理解出来なかったしな。俺の頭はどうもあまり出来がよくないらしい。 そしてまた途方に暮れた。 公衆電話を見つけ、手帳に記されていた番号に架けてみたが、現在その番号は使われていないというメッセージが返ってくるだけだった。 寒さに耐えかねた俺は、商店街の洋服店で適当な上着を買い、見覚えのある風景でもないかと、周辺を歩き回った。 商店街を出て二時間ほど歩いただろうか。辺りが暗くなり始めている。 腕時計の数字は夕方の五時過ぎを表していた。 行くべきところも解らず、ただ呆然と歩いていた俺は、いつしか人気のないところに迷い込んでいた。 いや、迷い込むという表現は適切じゃないな。 今の俺には知っている場所がどこにもなく、つまり俺は常に迷っているのだ。 不意に、右奥の路地の方から、口論をしているような声が聞こえた。 路地を覗いてみる。数人の男と、中学生と思われる長髪の少女がそこにいた。 少女の進路前方を塞ぐ男たち。三人だ。しばらく何かを言い合った後、男の一人が少女の肩を強引に掴み、少女を拘束しようとする。 少女は素早い動作でその男の手首を取ると、脚の付け根まで届こうかという長髪がふわりと揺れた次の瞬間には、男が少女の後方に吹っ飛んでいた。合気術かあるいは柔術か、どちらにせよ凄まじい身のこなしだ。 だが、投げられた男も他の二人も、それでひるむような気配はなかった。 じりじりと少女との間合いを詰める。 俺は急いで元の道に戻り、置かれてあったゴミバケツを見つけるとそれを左脇に抱えた。 路地まで助走をつけ、角を曲がる遠心力も使って、それを男たちに思いっきり投げつけた。 空中で蓋が取れ、逆さになったゴミバケツは内容物を散乱させながら放物線を描く。 蓋が手前の一人に、本体が奥にいた一人に命中。ゴミは三人に――厳密に言えば少女を含む四人に――漏れなく降り注いだ。我ながら見事なスローイングだ。 動きの止まった男三人がこちらを睨んだ。俺はなんとなくだがリーダー格と思しき男に見当をつけ、そいつを睨みかえした。どうやら俺は案外胆の据わったやつらしい。 男たちが襲い掛かってくることを予想して身構えた俺だったが、男たちは顔を見合わせると、俺とは逆方向に走り去っていった。 「助かったよ、ほんとありがとっ! あははっ、臭うなこのゴミっ!」 少女はゴミを払い落としながら笑っていた。今さっきあんなことがあったというのに、全く 動じていないようだ。俺以上に胆が据わっている。 「今のは知り合いか何かか?」 「いやっ、全然っ」 「じゃあ、なんだってあんな目に遭ってたんだ?」 「実はねっ、前にもあったんだよこういうこと。でもさすがに今のは危なかったよ。男三人がかりはあたしもツラいからさっ」 襲われやすい体質か何かなのか? などと思っている俺に少女が言った。 「ほんと助かったよっ! お礼がしたいんだけど、時間はあるっ?」 時間があるのかどうかは実際のところ俺自身にも解らなかったが、俺には他に行くべき場所も思い当たらず、少し迷ったがそれに応えることにした。 少女の家に案内された俺は、ただただ驚いた。門から家が見えない。左右を見回すと塀が遠近法に従って延々と続いていた。ここはどこかの武家屋敷か何かなのか? 一体どんな悪いことをすればこんな家に住めるんだろう、などと考えていた俺に既視感のような不思議な感覚が襲ってきた。そしてそれは一瞬で過ぎ去っていった。 残念なことに、やはり思い出せることは何もなかった。 家屋の玄関前で、当主と名乗る初老の男性が向かえてくれた。 「娘から事情は聞きました。危ないところを助けていただいたそうで、私からも礼を言います。本当にありがとうございました。こんなところでは何ですから、とにかく中へ」 この屋敷から察するに、さっきのはおそらく誘拐未遂事件か何かだったのだろう。 俺は身代金の額を想像しようとしたが、途方もない数字になりそうですぐさまあきらめた。 屋敷の応接に通された。家屋は日本風だがこの部屋は洋風の造りだった。 当然ながら、一般家庭のリビングを三つか四つばかり足したくらいに広い。 ゴテゴテとした飾りや置物などは一切なく、一枚の絵が掛けられているだけのシンプルな部屋。そうしたものがなくともこの部屋が充分に手のかかったものであることは一目で解る。なんと言うか、滲み出る品格のようなものがこの部屋からは感じ取れた。 純和風の衣服に着替えた少女は腕や髪を鼻に当て、匂いを調べていた。あれだけ髪が長いとさぞかし洗うのも大変だったろうな。ゴミバケツを投げつけたのはさすがにやりすぎだったか。 「失礼ですが、この近くにお住まいの方ですか?」 当主からの質問だった。俺の服装からそう思ったのだろうか。上着を買ったとはいえいささか季節外れの感は否めない。家の周りの散歩か、あるいは近所に買い物にでも行くような格好に違いなかった。 だが、俺は少し考えて旅行者ということにしておいた。 記憶を失っているという説明をすんなりと信じてもらえるようには思えなかったし、近所の話題を振られても困る。 今思えば俺は記憶を失ったことについてかなり楽観的に考えていたのだろう。すぐにでも記憶は戻るだろうと。 少女はニコニコしながら俺の返答を聞いていた。 「でしたら、もしご都合がよろしければしばらく当家に滞在されてはいかがですか。海側や少し西側の方に行けば、見るものもたくさんありますよ」 これは願ってもないことだった。 俺には行くべきところも解らなければ、帰るべきところも解らないのだ。 「そうしなよっ、お兄ちゃん!」 少女の言葉が、なぜか心地よく響いた。 不思議な懐かさとでも言おうか、そんな暖みがあった。 俺はありがたくその提案に甘えることにした。 そうして俺は、詳しくは書かないが今までに食べたこともないであろう豪華な夕食をご馳走になり、詳しくは書かないが小振りの銭湯としてすぐにでも営業出来そうな客用の浴室で疲れを取り、詳しくは書かないが老舗の高級旅館に泊まるときっとこんな部屋なんだろうという客間に案内された。 しばらく今日一日のことを振り返っていると、少女がやってきた。 「お茶持ってきたよっ!」 この娘は、一日中こんなにテンションが高いのか? 「いやー、おやっさんにこってり絞られちゃったさっ。いつもはあんな時間にあんな道通らないんだけどねっ。今日は学校でやることがあって特別なのだっ!」 「やっぱりあれは誘拐とかそういう類のものだったのか?」 少女は俺の持っていたサングラスに興味を示し、手渡したそれを眺めながら話しを続けた。 「多分ねっ。ここいらも物騒になったもんだよ。前にもあったってのは三ヶ月くらい前。ほんと危なっかしくておちおち学校にも行けやしないよっ」 会話の内容とはうらはらに、少女が楽しそうにしているのは気のせいか? 「まあそんなこと気にしすぎてもしょうがないっさ!」 当主も少女も、本当に気持ちのいい人たちだった。 俺は自分が嘘をついていることに関して、申し訳ない気分になっていた。 少女はしばらく話したあと、また明日と言って席を立った。 去り際に、 「お兄ちゃんって何だかちょっと変わった人だねっ」 と言い残して。 彼女は俺にも解らない何かを見抜いたのだろうか? それについてしばらく考えてみたが、早々にあきらめて俺は床についた。さすがに今日は色々と疲れた。 雪が舞っている。俺はベンチに座っている。見覚えのない風景。 辺りを見回す。遊歩道。ベンチ。外灯。柵に囲まれた茂み。 どこからか少女の泣き声を耳にした。 声を頼りに歩く。少し開けた場所に出た。ブランコや滑り台がある。 物憂げにうつむいた少女が一人、ブランコに腰掛けている。 少女は泣いてはいない。にもかかわらず泣き声はまだ聞こえている。 わずかにブランコを揺らしながら、足元を見つめる少女。 何かをじっと考えているようだ。 やがて静止するブランコ。 少女は静かに立ち上がると、うつむいたまま立ち去っていく。 目が覚めた。奇妙な夢だった。見覚えのない風景。公園だろうか。 あれはこの家の少女ではなかった。俺の失われた記憶に関係しているのだろうか。 朝食の後、俺は初老の当主に、少し時間をいただけないかと願い出た。 話したいことがあると。 あまり長くは時間を取れませんが、という前提で当主の書斎に通された俺は、これから少し奇異な話をしますが驚かないで聞いて欲しい、と前置きをしたうえで自分の身の上を正直に話した。 昨日の昼過ぎに、川沿いの公園で目を覚ましたこと。 そこがどこなのか、今がいつなのか、自分が誰なのかすら解らなかったこと。 自分の所持品から、自分の身元を調べようとしたが、全く手がかりがなかったこと。 手帳に電話番号と住所が書いてあったが、電話は繋がらず、その住所にも全く心当たりがなかったこと。 しばらく当てもなく歩いていると、偶然少女と男たちが争っている場面に出くわしたこと。 昨日はなんとなく記憶喪失であることを言わないほうがいいように思え、嘘をついたこと。 そして、自分には何かやらなくてはならないことがあったと思えること。 「それが事実だとしたら興味深い話ですな」 当主はにこやかに話した。 「こうして今話しているのも何かの縁。もしよろしければあなたの身元調査に協力させていただきますが。私もそれなりの情報網を持っておりますので、きっとお役に立てると思います」 「今の私には頼るものが何もありません。恐縮ですが、お言葉に甘えさせてください」 「ええ、ええ。どうかお気になさらずに」 当主は一呼吸おいて、 「では、まず私にも所持品を確認させていただきたいのですが。包み隠さずに申し上げますと、身元の解らない人物を当家に滞在させるとなると、こちらとしてもそれなりに調べさせていただくことがあります。ですがあくまで形式的なものだと思ってください。私もこういう立場の人間ですのでそれなりに人を見抜く目を持っています。私にはあなたが何かを企むような人間には思えませんので」 当主の要求は当然のことだ。早速俺は、財布、手帳、それに腕時計を差し出した。 しばらくの間、それらを検分した当主の見立てによれば、財布、手帳に関してはありふれた市販品で、特に手がかりになるようなものは見当たらない。 手帳に書かれていることも、電話番号と住所を除けば特に身元の解るようなことは書かれてはいない。 腕時計は一般的なクォーツ時計ではなく電波時計であるが、数万円あれば買える市販品とのことだった。製造番号の刻印などはなく、やはり手がかりにはなりそうにない。 そして当主は、疑問を正直に語った。 「あなたの所持品には不自然さが残ります。あなたは何らかの理由で敢えて自らの身元が所持品から判断されないようにしていると見受けられます」 それに関しては俺も同じ意見だった。大抵の場合、財布の中には身元が判断出来るようなものが必ず入っているはずだ。でないと、ビデオテープ一本借りれやしない。 「もしかしたら、あなたは諜報活動のようなことを生業とする方なのかもしれませんね」 当主は冗談っぽく言った。 仮にそうだとしても悪いようにはしませんので、記憶が戻られたら必ずお知らせください、とも。 「ひとまず電話番号と住所の線で調査してみます。あなたは調査が終わるまでは遠慮なく当家にご滞在ください」 「重ね重ねお礼申し上げます」 俺は深々と頭を下げた。 「いえいえ、もとはと言えば、娘を救っていただいた恩がありますし。それとあなたが記憶喪失であることを家人には話しておきたいのですが、よろしいですかな?」 「ええ、構いません」 ひとまず、俺は当面の宿を確保することが出来て、胸をなでおろした。 その日は当主の了解を得てまた周辺を歩き回った。 だが今日も手がかりは何も得られなかった。見知らぬ街並み、見知らぬ人々。 屋敷に戻った俺は、これからお世話になる身で客間を使わせていただくのは恐縮なので、出来れば別の部屋に移してもらえないかと当主に頼んだ。 広すぎる部屋は今の俺の身分ではなんとも落ち着かなかった。 「そうおっしゃるのであれば、こちらは全く構いませんよ」 当主は快諾し、俺に離れの部屋を用意してくれた。 「この部屋は先代が時々使っていた部屋でして」 俺がいかにも恐縮しきりなのを気の毒に思ったのか、当主は、 「もしよろしければ、ご滞在のあいだ娘の学校への送り迎えをしていただけると誠にありがたいのですが。いかがでしょうか?」 と提案してくれた。 俺は、是非そうさせてくださいと即答した。断る理由など欠片もない。 「やっほーっ! お兄ちゃん記憶喪失なんだってねっ。どおりでおかしいと思ったさっ!」 当主が去ってしばらく後、今度は少女がやってきた。 「俺におかしなところなんてあったか?」 「だってお兄ちゃんの言葉って、アクセントとかがうちらと一緒じゃない。明らかにこの地方の言葉だよ。それで旅行者ってのは不自然さっ!」 なるほど、そう言われてみれば確かにその通りだった。実に頭のいい少女だ。 だとすれば、やはり俺はこの近辺に住んでいたのだろうか。 ところで、君の言葉は周りの人とはかなり違うと思うぞ。 「あははっ、そうかいっ?」 あいかわらず、屈託のない笑顔。 「でも、おかしなのはそれだけじゃないんだけどねっ。それは記憶が戻ったらまた聞かせてもらうよっ」 少女にはまだ何か含むところがあるらしい。 「じゃあ、明日からよろしくねっ!」 次の日から、俺は少女とともに登校し、記憶を取り戻すために街中を散策し、少女とともに下校するという日々を過ごした。 「あー、お兄ちゃん、読みたい本があるから、悪いけどお迎えのときまでに買っておいてくれないっかな?」 「今日は、ちょっと別の道で帰りたいんだけど、大丈夫っかな?」 「スモークチーズ買っておいてくれないっかな? あたしの大好物なんだっ!」 「昨日のスモークチーズより別の店の方が美味しいから、今日はちょっと遠出してもらっていいかなっ?」 と、俺に色々と注文をつけてくれた。 おそらく彼女なりに俺を色々なところに出向かせて、少しでも記憶を思い出せるきっかけになるようにと考えてくれているのだろう。 単なるお使い要員なのか、スモークチーズにうるさいだけかもしれないが。 そして、結局のところ俺は記憶を取り戻す糸口すら全くつかめなかった。 また夢を見た。数日前と同じ、雪の舞う公園。 どこからか聞こえてくる少女の泣き声。ブランコに佇む少女。 ある日の朝食後、当主に呼ばれた。調査の結果が出たということだった。 「結論から申し上げますと、芳しくありませんでした。まず電話番号ですが、どうも今までに一度も使われていない番号のようです。あれは電話番号ではなくて何か別の意味を持つものかもしれませんね」 電話番号に似せた暗号か何かということだろうか。 俺はやはりスパイとかそういった職業の人間なんだろうか。 「住所は実在しましたが、あなたとの関連性は全く見出せませんでした。住人の家族、親戚だけでなく、友人や知り合い関係なども洗ってみましたが、行方不明者や旅行者あるいはこの近辺に住んでいる者、つまりあなたに該当しそうな人ですな、そういった方は見つけられませんでした」 当主は残念そうに首を振り、 「これであなたの所持品からの調査の線は断たれたということになります」 俺は率直な疑問を率直に訊いた。 「俺はいつまでここにいてよいのでしょうか?」 「実は、娘を誘拐しようとした連中がほぼ特定出来まして。ですがまだ確証は得られていない状態で、それが解るまでは娘も狙われ続けるということになります。よろしければ、しばらくの間は娘のボディーガードを続けていただけるとありがたいのですが。その後のことはまたそのときに考えましょう」 「申し訳ありません。記憶が戻りましたらいつか必ずお礼をさせていただきます」 「いえいえ、こちらとしても大変助かっておりますので。娘もあなたにはよくなついているようですし。実を言うとこれまでも何度かボディーガードを雇おうとしたことはあったのですが、いつも娘に断られて困っていたものですから」 お気遣い痛み入ります。俺は頭を深々と下げて、書斎を後にした。 もしこのまま記憶が戻らなければ、いずれこの家を出なければならないだろう。 いつまでも当主の好意に甘えるわけにもいかない。そうなれば俺は自力で生活の手段を考えながら記憶を取り戻す努力をしなければならない。 俺が自由に使える時間はあまり残されていないだろう。 俺は、あの奇妙な夢にかけてみることにした。 書店で近辺の地図を買い、公園を調べ、印を書きみ、しばらくの間それらを重点的に廻ってみることにした。 遊歩道。ベンチ。外灯。柵に囲まれた茂み。そしてブランコ。 どこの公園にもあるようで、しかし夢の情景を満たしているものはなかなか見つからない。 何よりも、夢で見た風景である。それを鮮明に思い出せるはずもない。 この近辺の公園だという保障はどこにもなかった。だが、俺にはこれ以外に記憶を取り戻すための手がかりは何一つないのだ。 三日間かけて、俺は地図上の公園全てに足を運び、さらに元の地図を中心として周囲八箇所の地図をあらたに買い求め、二週間かけてそれらを踏破した。 だが、結局俺の夢に該当する公園は一つも見つからなかった。 もしかしたら見落としがあったのかもしれない。 あるいは、ここよりもっと離れた場所にある公園なのかもしれない。 俺は途方に暮れていた。何しろ公園が本当に俺の記憶を呼び覚ますためのきっかけになるのかどうかすら解らないのだ。 俺がほとんど諦めかけていた頃、それは起こった。 ある日の昼過ぎ。俺は私鉄の駅前にいた。既にこの周辺には一度足を運んでいる。 駅前の道沿いには商店が立ち並び、北側には豪華そうなマンションが見て取れる。 俺はここ数日の間、念のためにと幼稚園や小学校に付随しているような公園を探し歩き、この日の午前中にそれら全てを調べ終わったところだった。 もはや打つべき手は何も思いつかなかった。 何の意図もなく予感もないまま、線路沿いの通りから人気のない路地に入った。 そして角を曲がってすぐのところにそれはあった。 「あれ……、こんなとこに公園なんてあったっけか?」 疲れのあまり思わず独り言が出る。 既に肉体的にも精神的にも疲労はピークに達していた。 地図と照合する。載っていない。公園の造りから、比較的新しく出来た公園のように思えた。 やれやれ、新しい地図を買ってもう一度洗いなおす必要があるかもな。 俺は大した期待もなくその公園に入った。 遊歩道、ベンチ、街灯の雰囲気などが夢の場所に似ているように思えた。 だがなにしろ狭い公園だった。ブランコや滑り台がないのは一目で解る。 俺はベンチに腰掛け、頭を抱えながらこれからのことを考えていた。 何も思い浮かばなかった。そして俺はいつの間にか眠っていた。 夢を見た。いつもの公園。雪が舞っている。 少女の泣き声とともに、ブランコの音がどこからか聞こえてくる…… 目を覚ました。薄暗がりの公園には外灯の明かりが点っている。 寒い。雪が降り始めていた。 山側から吹き降ろす風が頬を冷やす。 どこからか少女の泣き声が聞こえる。 ブランコの音が鳴り続けている。 待て? なんだって? 泣き声? ブランコ? あらためて耳を澄ませる。夢の続きでも幻聴でもない。 それは微かではあるが、確かに聞こえる。 俺はブランコの音を頼りに走った。 その公園は、樹木が植えられている茂みを挟んで、二箇所にエリアが分かれていたのだ。俺が寝ていたベンチがある一画とは反対側に、確かにブランコと滑り台が置かれていた。 そして、ついに俺はブランコに座る憂鬱げな少女を発見した。 夢のとおり、彼女は泣いていない。だが泣き声は依然として聞こえてくる。 俺の姿に気づいたのか、少女は、 「あんた、さっきベンチで寝てた人でしょ。こんなとこで昼間から居眠りなんて、大人ってのも随分暇なものなのね」 随分と口の悪いガキだな、そう思いながらも俺は話しかけた。 「お前こそ、こんなとこで一人で何やってんだ?」 しかし、そいつは俺の問いを無視して言った。 「あんたどう思う? 世界ってつまらないものだと思わない? あたしはもうこんな世界うんざりよ。誰も私の話なんか聞いちゃいないわ」 お前こそ俺の話を聞いちゃいないだろうが。 「どうしたんだ? 家か学校で何かあったのか?」 「あんたは……自分がこの地球でどれだけちっぽけな存在なのか自覚したことある?」 何を言い出すんだ、こいつは? 「あたしね、この前野球場に行ったの。家族に連れられて……。あたしは野球なんかには興味ないんだけど。でも着いてみて驚いた……」 突然俺は、頭の中を揺さぶられるような違和感を覚えた。 「……日本の人間が残らずこの空間に集まってるんじゃないかと思った……」 誰かが俺の頭の中で、何かを叫んでいる。 「……実はこんなの、日本全体で言えばほんの一部に過ぎないんだって……」 少女は話を続ける。頭の中の叫びは次第に大きくなり、はっきり感じ取れるようになっていた。 言葉の主は繰り返していた。『思い出せ』と。 「……世の中にこれだけ人がいたら、その中にはちっとも普通じゃなく面白い人生を送ってる人だってきっといるわ。でもそれがあたしじゃないのはなぜ?」 少女は一呼吸置いて、俺に質問を投げかけた。 「あんた、宇宙人っていると思う?」 唐突に頭の中に一人の少女の顔が浮かんだ。短髪の、無表情で儚げな印象を与える少女。 「未来人は? 超能力者は?」 短髪の少女の隣に、無邪気に微笑む栗色の髪の美少女と、爽やかに如才なく微笑む美少年の二人が加わった。 思い出せ、思い出せ。 あらためて俺は目の前の少女に目をやった。 腰まで届く、長くて真っ直ぐな黒髪、それにカチューシャ。 意思の強そうな、大きくて黒い瞳。 俺は何かを思い出そうとしている。 「お前の……、名前を教えてもらっていいか?」 「そんなこと聞いてどうすんのよ」 俺の真剣な表情を見てあきらめたのか、少女は言った。 「まあいいけど。あたしの名前は、涼宮……」 俺は無意識に立ち上がって、叫んでいた。 「ハルヒ!」 ハルヒはブランコから立ち上がり、鋭い眼光でもって俺を睨みつけた。 「ちょっと……なんであんたがあたしの名前知ってるのよ?」 俺はその問いには答えず、興奮しながら続けた。 「宇宙人? そんなのは山ほど知ってるぞ。幽霊みたいにネットワークやらシリコンやらそういうのにとり憑く奴だっている」 いきなり何を言い出すのか、という表情で俺を見つめるハルヒ。 おそらくさっきの俺の表情がこんなだったに違いない。 「未来人? ありふれてる。現代人よりはるかに多いぞ。今より未来に生きてる奴らはみんな未来人だ」 ハルヒは呆気に取られていたが、そんなことはお構いなしに俺は続けた。 「超能力者? いくらでもいるぞ。奇妙な集団を作って奇妙な空間で奇妙な玉になってるような奴らがな」 ハルヒは呆れを通り越して訝しげな表情でこちらを見ていた。 俺は言った。ハルヒの目をじっと見据えて。 「いいか、よく聞けハルヒ。いずれお前はそういった連中の中心になって、好き放題、勝手気ままな人生を送るんだ。この地球、いや全宇宙の中でもそんなことが出来るのはお前だけだ」 ハルヒは目を見開らき、あらためて俺の表情をうかがっていた。 いつの間にか泣き声は聞こえなくなっている。 「だから周りのことなんか気にすんな。お前はお前が信じる道をただひたすら突き進めばいい。しばらく辛い時期があるかもしれんが、俺が保障する。お前は絶対に幸せになる。だから頑張って生きてくれ」 ハルヒは再び顔をうつむかせ、何かを考え始めた。 しばらくそうした後ハルヒは勢いよく俺を仰ぎ見た。 「よくわかんないけど覚えとくわ!」 そこには、俺が英語の授業中に初めて見たときと同じ、ハルヒの灼熱の笑顔があった。やっぱりお前にはその表情が一番よく似合う。 「話聞いてくれてありがと!」 そう言い残すと、ハルヒは俺がよく知る短距離走スタートダッシュの勢いで走り去った。 俺はハルヒの後姿が見えなくなるまで立ちつくしていた。 ハルヒよ、頑張って生きてくれ。 俺のためにも。 こうして、俺は全てを思い出した。 光陽園駅前公園から鶴屋家に戻った俺は、重要な話があると言って当主に時間を取ってもらった。 これからかなり奇異な話をしますが驚かないで聞いて欲しい、と前置きをしたうえで、俺は 話し始めた。 記憶が戻ったこと。 自分は十年先からやってきた未来人であり、詳細は明かせないがこの時空にいる俺はまだ小学生であること。 涼宮ハルヒという存在とその能力のこと。 宇宙規模的存在とそのインタフェース端末のこと。 俺よりはるか未来にいる未来人たちのこと。 ハルヒにより生み出される閉鎖空間、超能力者とその役割についてのこと。 そしてこれから自分はそれら超能力者を集めた機関を作らなければならないこと。 話し終えるのにざっと二時間はかかった。 俺はハルヒを救うために行動していることについては話さなかった。 それを説明するためには、情報統合思念体の企みについて話さなければならず、そうすると、俺がやつらと敵対する立場であることも明らかにしなくてはならない。 その事実を語ることについて俺は、慎重にならざるをえなかった。 結局のところ俺が当主に話したのは、俺が未来人であることに加え、俺が高校一年の時点で既に知っていた知識と、機関を作る必要があるということである。 当主は怒り出すこともなく、我慢強く話を聞いてくれていたが、その表情には当然の反応として明らかな困惑の色が見えていた。 「あなたの目に嘘は感じられません。それならば、あの電話番号についても納得がいきますからな。ですが、何か確証になるものがあるとよいのですが」 今の俺にとって、この電波話を信じてもらうのにさしたる苦労は必要なかった。 俺は当主の目の前で時間移動をおこない、三日後の新聞を入手して、それを当主に手渡した。当主は三日後を待つまでもなく、その場で新聞の内容にざっと目を通しただけで、俺が未来人であること、そして俺の話が全て真実であることを確信したようだった。 当主とは今の話を機密事項としてお互い他人に一切口外しない約束を取り交わた。 そして、当主は俺の機関立ち上げに全面的に協力する意向であること、詳細な計画を立てるためになるべく明日以降時間を取れるように努力することを表明してくれた。 結局俺は引き続き鶴屋家にお世話になることとなってしまった。 もはや俺には下げる頭も残っていない。 「いえいえ、私どもとしても地球滅亡の危機は避けたいですからな」 当主はどこまでも気立てのいい人物だった。そういうところは確実に鶴屋さんに受け継がれている。 「お兄ちゃん、記憶が戻ったんだってねっ。おめでとっ!」 離れに戻った俺に、将来の鶴屋さん――まあ今も鶴屋さんなのだが――がいつものテンションでお茶を持ってきてくれた。 妹からお兄ちゃんと呼ばれることは長きにわたる俺の念願だったのだが、それがまさか鶴屋さんによって実現されるとは。 「ありがとよ」 俺は笑顔で応えた。 「お兄ちゃん、名前なんていうのっ?」 俺は既定事項に則るならばこの名前を告げるしかないと思い、素直にそれに従った。 「ジョン・スミスだ」 「あははっ! それってどういう冗談っ?」 実に愉快そうに鶴屋さんは笑った。 「そういうことにしておいてくれ」 「まあいいさっ! でさっ、前に言ってたおかしなことだけど、聞いていいっかな?」 「ああ、なんでも聞いてくれ」 俺はお兄ちゃんと呼ばれたこともあって、とても気を良くしていて、かつ気を大きくしてい た。そして、俺は明らかに油断していた。 「ジョン兄ちゃんって、もしかして未来の人っ?」 お茶を含んでいたら、それは間違いなく俺の口から霧散していたはずだ。またしても、そして前回以上に俺は腰を抜かした。動揺が隠せない。 「ま、待て、なんだってそういう風に思うんだ」 満面の笑みを浮かべながら鶴屋さんは言った。 「だってお兄ちゃんのサングラス、割と有名なブランドだけど、それって今年の夏に初めて出る予定のモデルだよっ?」 参った。俺が数週間かけて、まさしく偶然とも僥倖とも言える奇跡で得た真実を、鶴屋さんは俺と初めて会った日からお見通しだったとは……。 「あー、ええとだな……」 考えながら話すのは未だに得意ではない。 「俺にはその、サングラスのメーカーに知り合いがいて、」 鶴屋さんが興味深かそうに俺を眺めている。 「……それでだな、そう、たまたま運良く発売前の試作品を譲ってもらったんだよ、これが」 「へぇーっ」 鶴屋さんの表情はとても楽しげだった。 「でもあのサングラス、随分とくたびれてたように見えたけど」 確かに……ハルヒにプレゼントされて以来、ロクに手入れもしてなかったからな。 そして、俺はやはりこの方を騙し通せるほどの才覚が自分にはないであろうという事実を受け入れ、うなだれながら白状した。 「これは君のお父さんにしか話してないことだ。君のお父さんも含めて絶対に誰にも内緒にしておいてほしい」 「わかってるよっ! 今までもこれからも誰にも言わないさっ。こんなこと他の誰も信じちゃ くれないしねっ!」 こうして俺と当主との約束は、この俺によって一時間を待たずして反故にされたのだった。 俺は情報統合思念体の統括者である老人から逃れるために時間移動し、その直前に老人によって記憶を奪われたのだろう。 ここはあのときから六年、つまり元の時代から十年半ほど遡った過去だ。 俺は最大でも六年間の時間遡行しか出来なかった。つまり少年が言っていた飛び石的時間移動がいつの間にか可能になっていたのだ。 これからのことは当主が言ってくれたとおり、明日からじっくり考えよう。 俺は床につき、すぐに眠りに落ちた。 それも束の間、俺は体全体が大きく揺さぶられる感覚に飛び起きた。 俺が幼い頃に経験した大地震、それを思い出させる強烈な衝撃だった。 だが冷静に辺りを見回してみると、おかしなことに何一つ揺れているものはない。 そして見たところ俺の体にも揺れは生じていない。 しかし俺は確かに激しい揺れを感じている。 何が起こっているのか、ようやく俺は理解した。時空振動だ。それもかなり特大の。 そして理由はすぐに思い当たった。 ハルヒによる最初の情報爆発が今まさにおこなわれている。 未来からでも観測出来た、という朝比奈さんの言葉を思い出す。 今まさに時空振の強大さを俺自身が感じていた。 おそらく今日の俺とハルヒとの会話が、この情報爆発を引き起こしたのだ。 そして驚くべきことに、つまり俺は、六年間の時間移動によりハルヒが作り出したという時 間断層を突破していたのだ。 あの老人ですらそれは不可能なことだと言っていた。 ハルヒは俺のために特別な抜け道を作ってくれていたのだろうか? 老人はあのとき、二度と情報爆発は起こらないだろうと言った。 超自然的かつ奇跡的な確率でおこなわれたことだと。 そしてそれは俺とハルヒの出会いにより再び引き起こされた。 もし運命というものが存在するのなら、俺はそれを信じてみてもいいと思った。 いや、今の俺にはそれを信じる以外に道はない。 第四章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3938.html
九章 まどろむ朝。今日もまたSOS団雑用係としてのハルヒに振り回される一日が始まるのか、という北高に入学して以来、 ずっと抱いている憂鬱ながらまんざらでもない感傷に浸り、 その直後、現在自分の身体に起こっている異変を思い起こし、絶望する。 それが俺のここ一日二日の朝だった。 それだけでも俺は今すぐ自分の首を締め上げたい衝動にかられるのに、今日はさらに最悪だ。 俺は昨日ハルヒにお別れを………… 何だ、もう学校に行く必要もないじゃないか。 お袋、親父、それに妹よ。悪いな、俺は今日この家を出て行く。お前達は無事生き延びて帰ってきたら、今まで通りの日常を過ごしてくれ。 やったな、これで一人分の食費、生活費、その他諸々が浮くぞ。 何だ。最悪だと思ってたが案外清々しいじゃないか。昨日はいい夢も見れたしな。 ハルヒが抱き締めてくれる夢…………を?ん?あれは本当に夢だったのか? 布団の中で、そこまで思考を展開していると………… 「コラーーー!!あんたいつまで寝てるのよ!いい加減起きな!!!さい!!!」 その声とともに俺を覆っていた布団が舞い上がり、俺の体は外気に触れブルッとなる。 妹か?なんて思考を巡らす暇もなく、俺はそこにいる人物が誰かを理解した。 「えー、あー……ハルヒ…なのか?学校……は?」 「あんたまだ寝ぼけてるの?今日は日曜でしょ!それに明日からは冬休みじゃない!ほら、朝ご飯出来てるわよ!さっさと顔洗って来ちゃいなさい!」 何だ、その休日なんだからいて当然!みたいな言い方は。 何故こいつがここにいる?夢か、これも夢なのか?いやだが妙にリアルに感じるな。 まるで昨日の夢みたいな……いや、そもそもあれは夢なのか?夢であってほしい。 というか、そうでないと困る。だって夢の中のハルヒは俺の今の状態を………… 「ぶつぶつ夢だなんだ…うるさいわね。」 しまった、混乱しすぎて口に出していたか。いや、でもこれも夢なら別に問題は………… 「はぁ…………夢じゃないわよ。昨日も、今もね。」 ハルヒは妙に説得力のある声で言った。 「じゃあもしかして……お前……………」 「ええ、あんたが何をしていたのか……全部……………知ってるわ……そう……全部ね…」 ――ずっとあんたと一緒にいるから―― 夢と思っていた記憶の奥底にある、その言葉を思い出した。 「帰れ!!!」 突如、俺の心に羞恥にも似た不快な感情が溢れだし、それはその言葉を発するまでに至った。 「俺を見るな!お前は俺と関わるべきじゃないんだ!!お前のためなんだよ!!帰れよ!ほら早く!!!」 叫び始めた寝起きの俺を前にしても、ハルヒはその目を少しも泳がせたりせず、じっと見ている。 「何ヤケクソになってんのよ!あんた今のまんまじゃどうなるか分かってんの?!」 「ああ、分かってるさ!!こんな命……ましてお前の世話になって得る命なんて願い下げだ!」 ハルヒの表情がみるみる怒りの感情をあらわしていく。 「はぁ~、ダメ、我慢しようと思ってたけど…やっぱ感情のコントロールって難しいわね。」 その言葉を聞き終わらないうちに俺の部屋に『パン!!』という心地よい音が響き渡った。 ほっぺた、いてぇ…… 「ふ…ざけんじゃないわよ!!許さない……死ぬなんて絶対許さないんだからね! 言いなさい!何であんたは覚せい剤なんてバカなことやったの!!」 ……何でだ…クソ!何でだよ!何で思った通りに動いてくれないんだ!ちくしょう!ちくしょう!………………そうかよ…………なら……… 「こっちにだって考えがある。」 俺はそう言うと台所に駆けていった。大丈夫、理性はある。脅すだけ……ギリギリの所で止められるはずだ。 お前のせいだからな。もし万が一が起こってもお前の責任だ。お前が俺の思い通りにならないのが……悪いんだからな。 台所には味噌汁のいい香りがしたが、そんなのに構ってられる程の余裕は今の俺にはない。 調理に使ったであろうその包丁を手に取る。 ドクン!! それを持った途端、心臓の鼓動が、鼓膜にダイレクトに聞こえてきた。 一瞬、朝倉がそこにいるような感覚がしたが、すぐに消える。 だ、大丈夫だ。落ち着け、俺。早まるなよ。脅すだけ、そうだ脅すだけだ… 俺は急いで部屋に戻るため階段を駈け登り、扉を強引に開く。 ……とハルヒは部屋を出て行く前と同じポーズでそこにいた。 「ったく!あんた何しに行ってたのよ!悪いけど、あれはもうこの…い……」 ハルヒの目がわずかに下に下がり、 俺の両手で前に突き出すように握っている包丁を捕らえると、その顔は一気に蒼白くなっていった。 大丈夫…忘れるな。理性を忘れるな。 「悪いが本気だ!これ以上俺の家に居座るならどうなるか…こいつを見りゃわかるだろ。 今の俺は正気じゃないからなぁ!!何するか分からないぞ!」 自ら作り出した狂気じみた演技に飲み込まれそうになる。落ち着け…落ち着け! 「キョン…あんた…」 ハルヒがみるみる恐怖に染められていく……はずだった。 何でだ…何でお前はこの状況でそんな顔が出来る… 俺の前には、もう何十年ぶりになるのではないかと思うくらい、久々に感じる、 大胆不適で強気な笑みがあった。 ズン!と音がするくらいしっかりとした足取りで、ハルヒが一歩ずつ近付いてくる。 一歩、また一歩。ついには俺とハルヒの距離は、俺が突き出した包丁一本分しか無くなってしまった。 あと一歩踏み込んだら、確実に包丁はハルヒに突き刺さる。 後ろに下がろうにも、部屋の壁がそれを許さない。 完璧に追い詰められてしまった。ちくしょう…こんなときまで俺はハルヒに…… !!!!! 俺の思考はそこで中断してしまった。ハルヒが前に踏み出すかのように右足を僅かに浮かせたからだ。 「バッ!!!」 咄嗟に包丁を横に投げた瞬間、ハルヒは俺にのしかかってきた。 仰向けの俺に覆いかぶさっているハルヒの顔は俺の胸に押しつけているため、確認出来ない。 そうか、こいつはこれを狙っていたのか。だけど、もし俺が動揺せず包丁を構えたままだったら、こいつは…… 「はあ……はあ……」 ハルヒの超高速で鳴っている心臓の鼓動が伝わってくる。それと同時にハルヒの肩が小刻みに震えているのも確認出来た。 「ハルヒ…………」 「黙ってなさい。」 その言葉と同時にハルヒは顔をこちらに向けた。 なんつーか……俺は何てことをしてしまったんだろう。ハルヒの顔は冷や汗でびしょびしょだった。 「………から……」 「え???」 「負けないから。絶対にあんたを治すまで……もう…決めたんだから……!」 俺は何て声をかけたらいいか分からなかった。俺がずっと黙っていると、ハルヒは、 俺の上からどき、素早く包丁を取り上げると言った。 「さっさと顔洗って来ちゃいなさい。」 俺はハルヒに言われた通り、顔を洗うため洗面所にいる。やれやれ、結局ハルヒに言いくるめられちまった。 …………あいつ、あんなに震えてた。当たり前だ。一歩間違えれば死んでいた、その恐怖は計り知れない あの時、あいつは信じたのだろうか。ドラッグに侵され、おかしくなっちまった俺を。 命をかけるだけの価値、俺にはもうねえだろうが……俺は…お前を裏切ったんだぞ? ふと俺は顔を上げ、鏡を見た。 「何だよ、こりゃ……」 お前はバカな奴だよ、ハルヒ。こんな目の下にクマがあって、 肌は土気色で表情筋が暴走したように引きつってる奴が包丁持って目の前にいたら、普通逃げ出すだろ………… リビングに戻ると、何とも豪華な朝食と、エプロンを脱いでる途中のハルヒが俺を出迎えた。 献立は……魚の塩焼きに味噌汁、厚焼き玉子、肉じゃが、これ以上ないってくらい純粋な日本の朝食だ。 ハルヒがこういう純和風なメニューを作るのは新鮮だな。何となく、サンドイッチとか洋風なイメージがあった。 「ちゃっちゃと食べちゃいなさい。」 「あ、ああ…………」 そういや昨日は何も食ってなかったな。一気に空腹感が増してきた。 急いでイスに座り、味噌汁を一口飲む。途端、俺に衝撃が走った。 「…………!!!」 声にならないとはこのことだろうな。この世のものとは思えないくらいうまい、冷えきった心身が温まってくる。 魚を箸でほぐしもせずかぶりつく、うまい、うまい……幸せだ……… こんな当たり前のことが、今の俺にはどうしようもなく嬉しかった。 「ハ……ルヒ……」 涙が止まらない。俺は…人間に戻れる…… 「なあに?」 にじむ視界の先にはハルヒが微笑んでいる。 「俺……生きたい………」 この時のハルヒの顔は忘れられないね。どうしたらあんなにも喜びを表情で表せられるのだろう。 「当たり前よ!!」 「それから、もう一つお願いがあるんだ。」 もっと生きてる喜びをかみ締めたい。 「ポニーテール……してくれないか?」 機関運営の葬式場。そこでオレは河村から衝撃の告白を受けた。 「神を……殺す?それって涼宮さんのことを言ってるのか?」 目の前の男は狂気に顔を歪ませ、続ける。 「他に誰がいるんだよ。お前なら奴を呼び出すくらい簡単だろ?センパイの苦しみを味合わせてやるのさ。」 思考がまとまらない。こいつは今何と言った? 確かに今までにも河村は涼宮さんへの不満をよくオレに漏らしていたが、これは明らかに別物だ。明確な悪意と殺意。 「い、言ってる意味が分からない。」 「お前だって嫌気が差してたんじゃないか?俺達の進む人生は奴によって180度ねじ曲げられたんだぜ? 神様ごっこはここいらでやめにしようじゃないか。」 冗談じゃない、確かに涼宮さんを恨んだ事がないと言えば嘘になるし、 もし自分がこの力を与えられなかったらどれだけ平和な毎日を送れていただろうと考えることもあった。 それは嘘じゃない。 だけど、この力のお陰でオレはSOS団に出会えた。何もない、平凡な暮らしから脱却出来たんだ。 オレはいつの間にか、涼宮さんに感謝していた。殺すなんて有り得ない。 「少し、考えさせてくれ。」 思考とは裏腹に、オレの口から出たのは臆病で怠惰な先送りの言葉だった。 「ああ、分かった。いい返事期待してるぜ。それから美那にこのことは言わないでくれ。余計な心配かけたくない。」 「田丸さん、少しいいですか?」 場面は変わってオレは田丸さん(兄)と話している 「実は………」 この時オレは親友を売った。 「そうか、河村が…いつかはこんな時が来るかもしれんと思っていた。…………古泉。」 田丸さん(兄)は真剣な表情でオレを見つめている。 「私はこのことをたまたま耳に入れた。お前達の会話を盗み聞きしてな。 お前は誰にも、このことを漏らしていないし、これから私がやろうとしていることも何も聞かされていない。いいな。」 オレは数人の機関の面々に取り押さえられている河村を目の当たりにしている。 「大人しくしろ!!」 田丸さんや荒川さんが激をとばす。 「古泉!お前……裏切ったな!何故だ!答えろ!!古泉ぃ!!!」 「タックン!タックン!!やめて!タックンを放してよぉ!」 オレはその時河村を見捨てた。涼宮さんを守るために。 それから河村は自らを捕縛しようとする仲間達を何とか振りほどき市内を駆け回った。 最後にたどり着いたのは春日さんの家だ。家の周りを包囲されると抵抗する気力もなくしたのか、大人しく捕まった。 その時は夢にも思わなかった。河村が春日さんの家で押収され残した覚せい剤を手に入れていたなんて。 河村は、機関本部の地下に幽閉された。人権無視も甚しい話だが、何せ世界の破滅がかかっている。 だから、この決定に疑問を抱く者はいなかった。あの春日さんですら。 「春日さん……オレ……」 「気にしなくていいよ。機関にいる以上、涼宮さんに害を及ぼす存在は抹消しなければならない。 古泉くんにはあれ意外の選択肢はなかったもんね…」 正直、かける言葉が見つからなかったオレは、 「ごめん……」 という謝罪の言葉が精一杯だった。 「あれ~?古泉くんは告げ口してないって話じゃなかったの~?」 いじわるそうに聞いてくる春日さんの笑顔は、今にも壊れそうで。 「別に恨んでないよ。全ては……涼宮ハルヒが悪いんだから……」 だからこそ、その言葉を聞いた時はゾッとした。 それから日がかなりたったある日、河村は食事を持ってきた見張りの一瞬のスキをついて、屋上に脱走した。 その時、河村は見るもの全てに自殺願望を与えるような表情をしながら言った。 「なあ、古泉、美那……」 地獄から響いてくるようなその声を、オレは忘れられそうもない。きっと春日さんも同じだろう。 「俺は今、とても清々しい気分なんだ……」 その言葉を最後に、河村は人間とは思えない程の跳躍でフェンスを飛び越え………落ちた。 授業が終わり、HRが終わり、いつものようにオレはSOS団部室にその足を運ぶ。 「古泉くん!!」 春日さんが走ってきた。あんなことがあったから休んでいるとばかり思っていた。強い人だ。 「どうしたんです?」 「え?ちょ、敬語……ううん、別にいいや…今日もあの部室に行くの?」 「そうですが。」 オレが行かない事で涼宮さんがイライラを積もらして閉鎖空間を作ったら大変だからな。……なんて、自惚れすぎか。 「何で?だって…だって涼宮さんは…!」 「聞きたくない。」 オレは咄嗟に言葉を遮った。 「僕だって何かにすがりついてなきゃやっていけない気分なんです。」 その言葉の持つ残酷さを知っていたが、自分のことだけで精一杯だった。 春日さんは呆然と立ちすくしていた。それをOKの合図と無理矢理解釈して、オレは歩き出した。 ノックを数回。無言が自己主張しているのを確認すると、オレは扉を開けた。 部室に入ると一番に目に入ったのは長門さんだった。いつもの指定席で本を読んでいる。 「他の皆さんはまだ来てませんか。」 ゆっくりと長門さんが目を合わす。 「休まなくていいの?」 ああ、やっぱりこの人は気付いているのか。彼女なりの気遣いが嬉しい。 「おや、僕の心配をしてくれるのですか?」 「……………」 ドガン!! 突然の爆音だ。それと同時に残りの三人がなだれ込んでくる。 「さぁ~みくるちゃん!さっさとこれに着替えるのよ!!」 変わらない。 「ふぇ~、やめてください~」 あんなことがあっても関係なく回り続けている。 「おい、ハルヒ!朝比奈さんがいやがってるじゃないか!何だっていきなりこんな服を着せようとしてるんだ。」 オレはこっちの居場所を選んだ。 「何でって、みくるちゃんもあと半年後には卒業じゃない!今のうちに出来る格好は全てやっておくべきよ!!」 楽しいな。 「だからってだなぁ。もう少し朝比奈さんの心労やその他諸々も考えてやって……」 「っだーー!うっさいわね!あたしはみくるちゃんの為を思ってやってるんだから!うれしいわよね!みくるちゃん!」 あの場所を霞ませてくれる程に。 「ふぇ、あの、あたし………」 「ほら!これとーっても可愛いでしょ!こんなのみくるちゃんに着せちゃったら男共は失禁モノよ!ね!有希!」 「……………そう」 次はオレにくるな。もう既に答えは用意してある。 「ね!古泉くん!!」 何も知らない、だからこそ明るい笑顔で涼宮さんは尋ねてくる。さて、オレもとびきりの笑顔を作ってと…… 「誠に結構かと。」
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1539.html
作者から注意 1.長いです。 2.『涼宮ハルヒの分裂』が収束した後の世界を舞台にしています。 『涼宮ハルヒの驚愕』が出てしまった後は読まない方が良いかもです。 3.長門さんの喋りを自然にするためだけに佐々木さんに下の名前を勝手につけています。 4.オリキャラは出ませんが、佐々×キョンが駄目な方、オリジナル設定が気になる方はNG推奨です ep.00 プロローグ (side kyon) 佐々木が俺に告白した。 ハルヒのわがままにつき合う非日常の日々は苦労しつつも楽しかったのだが、一年余りも振り回され続け、 長門や朝比奈さんや古泉達と一緒に尻拭いばかりやらされ、財布の中身共々いささか疲弊の色が濃かった 俺は、無意識に心を癒せる存在を求めていたのかもしれない。世界の分裂騒ぎの後で、自分の中の佐々木の 存在に改めて気付かされた俺は、何の躊躇いもなく佐々木の告白を受け入れていた。 いつも冷静沈着で小難しい言葉を操るペルソナが剥がれ落ち、頬を赤らめ、夢見る少女のような表情を 浮かべた佐々木が抱きついてきた時には、俺も正直ハルヒのことなんぞ頭の中から完全に欠落し、 公園という人目につく場所も弁えずに佐々木を思い切り抱きしめてしまった。 ゆえに、それはすぐにハルヒの知るところとなり、初めてのデートから帰った夜に、佐々木と俺は理不尽にも ハルヒの閉鎖空間に閉じ込められることと相成ったわけだ。 「もしお二人が争う事態になったら双方とも無事である保証はありません」 古泉に予め警告を受けていたが、まさかハルヒがこんなことまでやらかすと思っていなかったのは、俺の 見通しが甘かったのに尽きるのだろう。 何とか潜り込んできた古泉は、世界をとって佐々木を見捨てるか、佐々木をとって今の世界を崩壊させるかの 選択肢しかないことを告げた。外の様子が分からない俺達にはそれが客観的な事実を告げたのか、ハルヒの ために事実を捻じ曲げて伝えたのかは判断のしようが無かった。『機関』の連中がどんなに申し立てようが、 閉鎖空間のせいで世界が崩壊した事実は今まで無かったのだからな。 常々俺は思っていたのだが、佐々木は俺とは比較にならないほど頭が良いうえに、何かあると自分が一歩引く ことで解決してしまおうという傾向がある。それが己の生死を分ける場面でも発揮されるとは、あいつらしいと 言えばらしいのだろうが、無論俺はそんなことを少しも望まず、閉鎖空間崩壊まで時間の許す限りハルヒと 佐々木の共存の途を探り続けていた。 しかし、佐々木はやはり佐々木であり、あの場面で俺の腕の中からすり抜けて自分が消える途を選んだのだ。 そして、俺は一人で閉鎖空間から帰ってきた。佐々木はその瞬間に残された最後の力を振り絞ってくれたに 違いない。 出会ってから別れるまでの記憶と、喩えようのない後悔の念を俺にだけ残して、佐々木は俺の目の前で消えた。 44-99「―佐々木さんの消滅―」 44-99「―佐々木さんの消滅―ep.00 プロローグ」 44-101「―佐々木さんの消滅―ep.01 消失」 44-120「―佐々木さんの消滅―ep.02 訣別」 44-134「―佐々木さんの消滅―ep.03 二年前の少女」 44-157「―佐々木さんの消滅―ep.04 彼女の想い」 44-182「―佐々木さんの消滅―ep.05 特異点」 44-235「―佐々木さんの消滅―ep.06 二人だけの記憶」 .
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6015.html
11 36 キョン「はぁ、なんでこんなに遅く帰らなきゃいけねんだよ。」 俺はハルヒに付き合わさせられて遅く帰っていたときだった。 もぞもぞと動いていた物があった。 それを見てみると視界が暗くなった。俺が覚えている事はこれくらいしか無い。 7月6日 午後4 00 SOS団部室 ガチャ ハルヒ「みんないる~て、有希と古泉くんだけ~、みくるちゃんは。」 古泉「朝日奈さんなら少し遅れてくると、そういえばキョンさんは。」 ハルヒ「キョンだったら今日は休みよ。」 ハルヒ「なんか暇だから今日は帰るわ、古泉くんと有希も早く帰りなさいよ。」 古泉「そうですかではお言葉に甘えて帰らしてもらいます、では。」 続く
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/27646.html
登録日:2014/02/23 Sun 13 50 31 更新日:2024/05/03 Fri 10 16 20 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 Wii キャラゲー ゲーム ダンス マゾゲー 涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの激動 2009年1月22日に発売されたゲーム。対応機種はWii。 アニメ版涼宮ハルヒの憂鬱の楽曲とWiiリモコンを用いハルヒたちを躍らせるという内容。 涼宮ハルヒの激奏(イベント)に使用された一部の振り付けとハレ晴レユカイfullバージョンもばっちり収録されている。 ◆あらすじ 某月某日。 今日も今日とてハルヒの思いつきにより商店街主催のダンス大会に参加することとなったSOS団。 ところが全員ダンスの経験などあるわけがなく、本番当日まで放課後に特訓することになるのだった。 ◆操作 画面下側に太鼓の達人みたいなラインと人間のシルエット、ニュートラル(⚫︎ ←こんなの。Wiiリモコンを構えなおす)が表示される。 タイミングを合わせてシルエットに描かれた通りの向きにWiiリモコンを動かすと成功、上手く動かせないと失敗。 一定以上失敗するとしばらく操作不能になってしまう。 例えば 左→ニュートラル→右下→左上 と指示されたら 左に動かし元の位置に戻して右下に動かしてからそのまま左上に動かせばいい。 高難易度になるとボタン操作や小刻みに振る動きも要求される。 結構反応がシビアなので注意。 Wiiリモコンを床に対して垂直に構え、ややゆっくり動かしてみよう。 ◆モード ストーリーモード 全12章。一つクリアすることで次のストーリー、楽曲や衣装などが解禁される。 10章までにスコアを30万点とれないと……? フリーモード 自由に難易度、楽曲、衣装、ダンサー、背景を選んでプレイできる。 プレイ内容は保存可能。 ◆キャラクター 涼宮ハルヒ ダンサーその1。 各章で数々の思いつきを実行する。 キョン 振付師(プレイヤー) 多分一番の苦労人。 長門有希 ダンサーその2。 なんか胸が増量してる気がうわなにをする 朝比奈みくる ダンサーその3。 一人だけバテるとかそういうことは無い。 古泉一樹 レフ板およびチュートリアル役。 朝倉涼子 ダンサーその4。 ここより下の隠しキャラは衣装変更が不可。 喜緑江美里 ダンサーその5。 朝比奈みくる(大) ダンサーその6。 鶴屋さん ストーリーモードの一部で茶々入れてる。 大変残念ながらダンサーとして使用できない。 キョンの妹 鶴屋さんと同じ。 本作ではボイスを使い回すためかハルヒたちを「お姉ちゃん」と呼ぶ。 ◆楽曲 これ以外にも楽曲ではないが特訓メニューとして動物ダンスと部活動ダンス(?)が存在する。 恋のミクル伝説 記念すべき最初の曲。 最初のテンパってる動きはみくる以外もやるためちょっとシュール。 冒険でしょでしょ? ご存知アニメ版オープニングテーマ。 ゲーム開始時にもアニメと同じ映像が使われている。 雪、無音、窓辺にて。 長門のキャラソン。 サビの振り付けは茅原実里が実際に踊ったのと同じになっている。 みらくるアンコール みくるの本作オリジナル曲。 指さしポーズやウインクが可愛らしい。 Greed's accident 長門の本作オリジナル曲。 空前未満は見せないで ハルヒの本作オリジナル曲。 そのキャラクターを表した元気なダンスを披露する。 最強パレパレード ラジオ版第2期オープニングテーマ。 とろでん 本作オリジナル曲。 唯一ハルヒシリーズの声優が関わっておらず基本的にゲーム内で選択することでしか聴けない。 ハレ晴レユカイ ご存知アニメ版エンディングテーマ。 とろでんを除き、踊れる曲の中でfullバージョンが選べるのはこれだけ。 ハレ晴レユカイ TVサイズ フリーモードのみ。 BE BE BEAT!! 本作エンディングテーマ。 踊ることはできないが自分で勝手に振り付けてもいいだろう。 ◆おまけ要素 ◼︎ボーナスゲーム あっちむいてホイ ハルヒ、長門、みくるとの対決。 それぞれ癖があるのでそれを理解するのが攻略の鍵。 ホームラン対決 同じくハルヒ、長門、みくるとの対決。 ハルヒは速い球を、長門は変化球を、みくるは遅い球を投げてくる。 ◼︎コスチュームコレクション キャラクターと衣装を思う存分眺められる。 ◼︎アイテムコレクション ゲーム中で特定の条件をクリアすることでもらえるアイテムとその説明が見られる。 ぜひ全ての元ネタを調べてみよう。 ◼︎涼宮ハルヒのお告げ 隠し要素その1。 ハルヒによる占いを聞ける。 ◼︎長門ビューワー 隠し要素その2。 ひたすら部室で読書する長門が見られる。放置するとたまに何かリアクションする。 ◼︎みくるリモコン 隠し要素その3。 Wiiリモコンにみくるの台詞を登録し好きな時に聞ける。 ハルヒと長門の声も隠し要素として存在する。 追記修正は踊りながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 喜緑さんがダンス出来て鶴屋さんが出来ないって珍しいゲームだな…喜緑さん好きだけど -- 名無しさん (2014-02-23 16 17 53) で、タグにマゾゲーを入れた理由は -- 名無しさん (2016-07-15 08 23 23) ↑一年以上前のコメントにマジレスするが、実際に3章くらいまで遊べば分かる -- 名無しさん (2017-12-17 22 23 17) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5262.html
第2周期 nOiSEleSsphAnTOmGIrL3 場面は転じて、夜の公園。しかも一人ベンチで寂しく……はないが座っている。 何故こんなところに居るかというと、此処で待つように指示するメモ書きが下駄箱にあったためである。 で、それを見た俺は素直にその指示に従って此処で待っているということだ。飯は食ってきたから長時間待っても大丈夫である。 まあ、この手段で呼び出しというのであれば、SOS団の緊急召集ではないことは皆さんもお分かりであろう。 「お久しぶりです」 朝比奈さん(大)がやってきた。 「今日は、ハルナについてですよね」 「はい、そうです」 取り敢えずベンチに座り、話を切り出した。 「今回のことで未来はどうなったんですか」 「不思議なことに、影響は少ないんです。確かに大きな変化が無かったとまでは言えませんが、私達が動く必要性はないとの見解です」 「そうなんだー」 「!!!!!!!!!」 !!!!!!!!! 何ということでしょう、そこにはニヤニヤしながらこちらを見ている団長の姿があるではありませんか。 勿論、慌てるとかいうレベルではない俺と朝比奈さん(大)。 「は、ハルヒ!?」 「あ……えっと……」 朝比奈さん、今更隠れようとしても無駄ですよ……。 「うーん、やっぱり大人になったみくるちゃんのもなかなか。これは揉みがいがありそうね…」 何だその品定めするような視線は。そしてその怪しい手の動きを止めなさい。というかさっきからどこを見ているんだ。 「決まってるでしょ、みくるちゃんのその立派な」 「あー、それ以上は言わなくていい」 駄目だ、あれは完全に獲物を見る目だ。 「例えおっきくなってもみくるちゃんはみくるちゃんよ!!」 「えっ、あ、ちょっと…! ぃゃ………………!!」 ハルヒが朝比奈さん(大)に飛びかかった瞬間には俺は即座に後ろを向いて見ていないので何があったのかは分からない(ということにしておいて貰いたい)。 背後から天使の悲鳴が聞こえるが俺にはどうにもできません、ごめんなさい……。 しばらくして悲鳴は止んだ。どうやらハルヒが満足したらしい。嗚呼無力な自分が悔しい。 「いやーやっぱり気持ち良いわねー」 「ぅぅ……涼宮さん…」 やはり泣いていらっしゃる。だがしかし俺にはどうすることも以下略 こうやってこそこそしていたわけだし、ハルヒに見つかってしまうのは相当まずいことなのではないのだろうか? 「はい、以前まではそうでした。涼宮さんに見つかることだけは避けなければならなかったんです。でも、涼宮さんによるリセット以降、これは規定事項になってたんです」 これ、とはつまり、ハルヒに見つかって…… 「い、言わないで下さい……」 「なに? つまりあたしから逃げられなくなったってこと?」 「簡単にいえばそうなります。その原因は分かっていませんが、リセットされたことで私達の未来とはほんの少しではありますが方向が変わったのかもしれません」 「少しねえ。その『少し』の影響量が気になるわね」 「それについては調査中ですので何とも言えません」 「調べ終わったらまた報告してくるの?」 朝比奈さんの言うことをしっかり聞いているのは、罪悪感などが残っているからなのだろうか。 「ここにおっきなみくるちゃんがいるってことはキョンに何か大事な話があるんでしょ?」 「え?」 再び二人は仰天である。何でそこまで知ってるんだ。恐るべし、全能の涼宮ハルヒ。 「お邪魔しましたー、ごゆっくりー」 ハルヒはそう言い残すと俺達に何も言わさぬままどこかへ行ってしまった。 ぽつーんと残された二人は呆気にとられていた。 あんなにあっさりしていたのは全くもって予想外であった。ハルヒがあれほど追い求めていた未来人に対面したのだから、もっと首を突っ込んでくると思ったのだが 「それにしても、なんかあの言い方はむかつくな」 「私があまり長時間この時間平面に留まれないことも知っているのかもしれません」 「あ、なるほど」 しかしまさかハルヒが配慮するなんてな。『事件』とやらが与えた影響はかなり大きいのかもしれん。 しばらくの沈黙ののち、本題へ戻った。 「リセットの影響はあるのにハルナの出現の影響はないというのはどういうことですか? ハルヒが二人になったも等しいというのに」 「そう思われたのですが、これが私たちの調査結果です」 「この先、何か重大なことが起こるんですか?」 「それはキョン君の結論次第です」 朝比奈さん(大)は真っすぐ俺を見てそう言った。 俺達がハルナを認めるか否か、それによって朝比奈さん(大)の時代で予測されているのとは異なる未来に向かうかもしれないのだ。 「では、そろそろ失礼します」 朝比奈さん(大)がベンチから立った。 「最後に一つ聞いてもいいですか」 「何ですか?」 「朝比奈さんはハルナのことはどう思いますか?」 「そうですね」 しばらく空を見上げていた。その後こちらを向いて微笑みながら言った。 「妹って、なんか羨ましいです」 翌日、ハルヒによる世界改変でハルナは元々いたことになっていたという報告を長門から聞いた。 「現在、涼宮ハルナは近所の小学校に通っている」 長門は廊下で俺が登校するのを待っていたのだ。朝会うなりそんな重要なことを聞かされるとはな。 「この改変に対し幾つかの派閥が苦言を呈している」 長門は付け足すようにそう言った。そんなこと無視してしまえばいいと思ってしまうだろうが、相手が相手だけに注意しなければならない。 「だが暫定的であってもそうでもしなけりゃハルナの居場所がないぞ」 「そう主張したが受け入れられなかった」 「そうか……、済まんが引き続き説得を頼む」 「わかった」 僅かに頷いた長門はカバンを持って教室へと入って行った。 その姿を見ていてしばらくその場に突っ立っていた俺であったがが、「廊下のど真中で何してんだこいつ」という周囲の視線を喰らったため教室へ入ることにした。 教室には既にハルヒがいた。頬杖をしてぼんやりと外を眺めている、やはり考え事をしているようだ。 俺が来たことに気付き、こちらを向いた。 「おはよ」 「おう」 綿菓子のように軽い挨拶だけすると、また視線を外に戻していた。 「……」 「……」 着席して以降お互いに話しかけようとせず、会話が成立することはなかった。 その後は雑談もしたが、さすがにハルナのことについて教室で話すのはまずいと考えたのでそれを話題にすることはなかった(ハルヒも同じ考えだったようだ)。 放課後、真っ先に部室へ向かうとすでにみんな揃っていた。団長様は腕を組んで仁王立ちしていた。 「遅い!」 「そんなに遅くないと思うんだが」 「もうみんな揃ってんのよ、あたし達を待たせたのがアンタが遅れた証拠」 「そうかい、そりゃあ失礼」 「まあいいわ、全員揃ったことだし、早速会議を始めましょう」 というわけで各々が着席する。議題は言うまでもなくハルナについてである。 「そういえば、ハルナちゃんは小学校に通ってるんですよね」 朝比奈さんも知っているのか、長門はみんなに報告して回っていたのだろうか。 「そうよ」 「何歳なんですか?」 その質問に及んだ瞬間、ハルヒがわざとらしくため息をついた。 「それを考えてなかったのよ。突然生み出されたんだから自分でも年齢なんて分からないのよ。二人で随分考えたけど、アンタの妹ちゃんより二つ下ということにしたの」 つまり4年生か。 「あの骨格からすればそのあたりが妥当」 長門がそう言うのだから、ハルヒの勘は正解だったということか。 だとしても、あいつの頭脳からしたらまさしく某小学生名探偵のような状態だな。 「仕方ないじゃない。あの姿で高校に来てもいいけど飛び級なんて……そうよ! 飛び級ってことにすればいいのよ!」 ぶっ飛んでいらっしゃる。この国に飛び級の制度はなかったと思うんだが。 「ちょっとまて、いいのかそれ」 「あたしがいいって言ったらいいのよ!」 自分中心に回るハルヒ節が復活していた。それもそれで悪くはないんだがな。 「だがハルナはそれに賛成するのか?」 「それはハルナに聞いてみないと分からないわ。あくまでもハルナの意見を最優先にするつもりだけど」 「古泉君、そっちには何か動きはあった?」 「機関からは正式な結論は出されていませんが、賛成意見が多数を占めているので心配はいらないと思います」 「そうか、まず一つは良しだな」 朝比奈さん(大)が言っていたことを賛成意見と捉えてもいいならば、早くも統合思念体以外はOKということになる。順調と言えば順調だが、ここからが正念場である。 「有希の方はどう?」 「こちらとしては結論が出ない限りは無暗に行動できない」 「まだ結論は出てないの?」 「審議中。なかなか折り合いがつかない」 「大変みたいね、ちゃんと休んでる?」 「大丈夫」 「そう、ならいいけど。無理はしちゃダメだからね」 そのいたわる気持ちを小さじでもいいから俺に対しても持ってほしい。 「じゃあ今日はこれで解散ね」 いきなりの終了宣言であった。 「やけに早いな」 「あたしにだって色々あるのよ、じゃあね」 自分のカバンを持ってさっさと出て行ってしまった。 昨夜同様、取り残された形となって呆気にとられていたが、気を取り直して気になっていたことを尋ねた。 「なあ古泉」 「なんでしょうか」 「閉鎖空間はどうなってる」 「やはり悩んでいるようです。小規模ながら高い頻度で発生しています」 長門に言っておきながら、お前が無理してどうすんだよハルヒ。 ハルヒが帰ってから十分と経たないうちに、自然と解散になった。 だが俺はまだ帰らず、一人で廊下を歩いていた。 実に不覚である。教室に課題プリントを忘れるとは。 教室に入る時に、どっかの誰かみたいに『忘れ物の歌』なんか歌わないぞ、と思ったものの結局脳裏にあのリズムが浮かんだまま席に向かっていた。 「あったあった」 目的のプリントを見つけ、それを四つ折りにしてカバンの奥にねじ込んだ瞬間であった。 一瞬にして明かりが消えて真っ暗になった。 「おいおい……」 蛍光灯がすべて同時に寿命を迎えるなんて奇跡的なことがあるのだろうか。経験者はぜひともSOS団に連絡してほしい。 驚いたのは勿論のことだが、すぐさま身構えた。この真っ暗な教室は見覚えがある。窓も扉も、無機質なコンクリートのようになっていたからな。 暗がりの中、机に座って待っていたのは予想通りの人物であった。 「朝倉、またお前か」 「そう。悪い?」 十分悪い。 「今回はハルナの件についてだろ? あいつの能力が未知だからって、俺を殺して涼宮ハルナの出方を見るとか言うなよ?」 「残念ながら貴方の予想はハズレね」 「どのみち俺には生命の危機がやって来るんだろ?」 「あら、でもこれからの動向によってはキョン君の運命も変わるかもね」 わざわざウインク付きの笑顔をありがとう。あまり嬉しくないね。 「キョン君の予想通り、今回は涼宮ハルナちゃんについてなんだけど」 ちゃん付けなんだな。まぁハルナは見た目は幼いからな。 「こんな場所に閉じ込めたんだから、お前の派閥が賛成じゃないってことは確定なんだろうな」 朝倉はあの時のように俺の正面に立つと下を向いた。 「ごめんなさい。急進派としてはあの要求は不都合みたい」 「一体どこが不都合なんだ。ハルナの存在か? 不干渉という条件か?」 「残念だけど両方。私達の正体を知ってしまった以上、こちらにも涼宮さんの影響が現れかねないという見解なの」 で、俺を人質にしてハルナの要求の撤回を迫っているって訳か。 「警告はしたはずです」 その声に仰天した。 「え……おい……」 まるで最初からいたように、俺の隣にハルナがいた。いつ来たんだろうか。 「まあ、これは想定の内なんだけどね」 余裕の表情を見せる朝倉をハルナが睨みつけている。 初対面のはずなのにお互いをよく知っているようだ。 「警告を無視すると、言った通りになりますよ」 「貴方の脅し文句は統合思念体の無力化、だったかしら? 残念だけど、貴方にそれは出来ないわ」 そう言うと背中を向けて教室内を歩き回る。 「貴方には涼宮さん……貴方のお姉さんみたいに意志を貫くことが出来ない。貴方には強い責任感があるから」 朝倉が立ち止まると、誰かの机の中から忘れ物らしき教科書を手に取った。 「強い願望を抱いても、現実が伴い『でも』等と考えてしまう。だから願望が完全に実現することはないわ」 それは瞬く間に槍へと形を変えた。 「たとえそうだとしても、彼を殺させはしません」 ハルナが更に語気を強くしているが、朝倉は相変わらず挑発的な笑みを浮かべて俺とハルナを交互に見ている。 「更に残念だけど、キョン君は只の撒き餌なの。本当の目的は貴方ってこと」 だろうな、俺を殺すなら以前にでも来たはずだろうし。 「私に与えられた仕事は貴方を殺すことだもん、ハルナちゃん」 壁が一瞬光った。嗚呼やっぱり強烈なデジャヴを感じる……。 それを見たハルナは明らかに動揺していた。 「空間が上書きされて封鎖が強力になっています。私一人では突破出来ません」 「そうよ、逃げられないの。だから、抵抗しないで殺されて」 それだけは避けなければならない。ハルナがどれ程の力を持っているかは知らんが、朝倉に対抗できるかどうかは更に分からない。もしかしたら敵わないか可能性だってある。 急進派の好き勝手を許してなるものか。 俺は傍にあった椅子を掴んで投げ飛ばした。勿論、効果はないのは承知済みである。しかしささやかな妨害くらいにはなるだろう。 「ん? キョン君は私達とは逆の意見のようね」 「そうみたいだな」 そう言った瞬間、強烈な痛みを感じた。 朝倉が持っていたはずの槍が左肩に刺さっていた。投げたモーションが見えなかったぞおい。 傷口から止めどなく熱い液体が流れている。 「てめぇ……」 「あら? その目はまだやる気ってことかな? 勇敢ね」 またしても気付いた時には朝倉が目の前に移動していた。そして俺を壁に押し付け、肩に刺さっていた鎗を握った。 「うるさくしてもいいんだけど、邪魔しないでね?」 「うあああああああああああああああああ!」 鎗がねじ込まれ、肩に猛烈な痛みが走る。右手で必死にそれを止めようとするが力は相手に比べりゃ圧倒的に少ない。 「やめろおおおおおおおおおおおお…………!!」 叫んでも全くもって無駄である。容赦なく肉を裂き骨を割り、鋭利な金属が奥まで侵攻してくる。 遂には貫通して壁に深く刺さっていた。俺は磔にされたも同然だった。 「利き腕にしなかっただけましだと思ってね」 俺が身動きできなくなったのを見届けると、ハルナのほうを振りかえった。 ハルナはじっと動かずにこちらを見ていた。 「お待たせハルナちゃん、そろそろいくね」 朝倉がナイフを手にハルナに近づく。 「くそっ、やめろ……」 少しでも動けば傷に刃が食い込み激痛に襲われる。 「逃げないの? いい子ね」 朝倉がハルナを切りつける。ハルナは慌てる様子もなくナイフの刃を掴んでいた。 しばらくの無音の後、ハルナの手から血が滴り落ちた。 「どうしたら、許してくれますか?」 その問いかけに朝倉はまた笑っていた。 「それ無理。許すも何も、私は貴方を殺さなきゃいけないもの」 「私を殺したら、姉さんの分も許してくれますか?」 「さあ。私には決定権はないの」 その時、普通に扉が開いた。ハルナいわく頑丈に封鎖されていたにも関わらずである。 やって来たのはハルヒと長門だった。 「あら客さん?」 「また随分と行動が早いのね、早速攻撃をしてくるなんて」 磔にされた俺を見た長門が高速呪文詠唱をすると、左肩を貫通していた鎗が消えて傷も痛みも全く無くなっていた。 鎗は教科書に戻って床に落ちていた、って谷口の数学の教科書じゃねえかこれ。 「あんまり面倒を起こしたくなかったんだけどね」 そういうとハルナの前に立ち、朝倉と対峙した。 だがこれにも朝倉は動揺することはなかった。それどころかクスクスと笑ってやがる。 「もう、みんな邪魔が好きなのね」 朝倉がジャンプしたかと思うと、ハルヒが吹き飛ばされて壁に衝突した。とんでもない速さの跳び蹴りだった。 「ハルヒ……!?」 急いで駆け寄ったが、頭を強打したらしく気を失っていた。 ちょっとまて、朝倉強すぎないか? 長門に心の声が届いたのだろうか、その答えを出してくれた。 「反対派が朝倉涼子に協力している可能性がある」 「だとしたら対抗できないんじゃないか……?」 「こちらも協力を要請している。それまで私が時間を稼ぐ。貴方は涼宮ハルヒを」 そう言って朝倉に攻撃を仕掛けようとした長門であったが、朝倉の方を向いた瞬間に動かなくなった。 「…………」 「何……」 長門がそう呟いた。何かあったのか? そう言おうとした瞬間だった。 全身の毛が逆立つのを感じた。 人の目を見てあれほど怖いと思ったことはなかったな。 悲しみか怒りか、ただ黒いだけではない黒い影がハルナを中心としてブラックホールのように全てを喰らい尽くそうとしていた。 それを間近で見た朝倉は硬直している。ただ動かないだけなのか、動けないのだろうか。 )H??繼bモM、・.09wSS瞑Iコen 蹣、、h.1ae,顳コ・f%HdL、 udjmx劉_??KU、夊? ・F?Vz? 何と言っていたのかはノイズ混じりだったのでさっぱり聞き取れなかった。 ノイズはさらに増幅して防犯ブザーに負けず劣らずの大音量となって耳を襲い、俺の聴力を狂わせていた。 「ハ、ハルナ……?」 そう呼び掛けたであろう自分の声も骨伝導でわずかに聞こえただけであった。 耳を押さえても無駄であった。そのノイズは耳を介さず直接脳に響いているようであった。 気付いた時には、教室は荒野に変貌していた。 机と椅子はそのままにして、現実離れしたほどに荒れ果てた大地である。 ここはどこだ? 見上げると、異常な早さで雲のようなものが流されている。 とうとうノイズは聴力だけに飽き足らず、視力さえ侵食し始めていた。 目の奥が焼けるように痛い。視界がぼやけ、時折テレビのチャンネルを合わせていない時に映るあのノイズが見える。 「……何……………これ…………」 朝倉に何が見えているのだろうか。 「…………めて……………来……で……!!」 視力を奪われつつある俺の目には、金切り声を上げながらナイフを振り回す朝倉の影がかろうじて映っていた。 何に襲われているのだろうか、俺には朝倉が怯えるほどのものは確認できていない。 視力がほとんどないので無暗に動けない。 俺はただ朝倉が発狂する様を見ているしかなかった。 「何が起こっているのか全く分からない」 長門の声が聞こえた。この異様な光景を前にした宇宙人は一体どんな表情をしているのだろう。 「いったぁ……生身の人間相手にあんな強くやるなんて……」 ハルヒが意識を回復した。 「大丈夫か?」 「なんとかね」 だが周囲の様子を見るや否や、ハルヒの表情は一変した。 「派手にやってくれたわね……全く」 怪我は大したことなかったようにすっと立ち上がると、何やら念ずるように目を閉じた。 「……は?」 またしても一瞬の出来事であった。次の瞬間には、荒野が再び元の教室へ姿を変えていた。 もう何が何だか。 だが完全に元の世界に戻ったわけではなかった。灰色に染まった見覚えのある空間だ。 「閉鎖空間……って言うんだっけ? それに上書きしたのよ」 淡々と語っていつその目は、真っすぐハルナを向いていた。 「それしか戻し方を知らないから」 その視線に刺されたハルナは、悪戯が見つかってしまった子供のような表情で固まっていた。 ハルヒは硬直しているハルナに歩み寄ると、思いきり頬を叩いた。 それはもう凄い音が教室に響いていたから、本気で叩いたのではないだろうか。 「ハルナ、それは使わないって約束だったよね?」 「……」 怒りに満ちたその声を聞いた俺と長門は、こちらに向けられたものではないのに委縮してしまいそうだった。 「二度目は無いからね!! 分かった!?」 「……ごめんなさい」 これほどまでに厳しく叱りつけるのは、その力がどれだけ恐ろしいかを知っているからなのだろう。 そのころ朝倉はというと、一体何を見たのだろうか、震えたまま教室の隅で子供のように丸くなっている。 「これはやり過ぎね……」 そう言ってハルヒが近付くと、朝倉が弱々しい悲鳴を上げる。 「や…………め………て………」 もはや言葉は一文字ずつしか発することが出来ないらしい。 ハルヒはしゃがむと怯える朝倉の頭に手を置いた。 すると朝倉の呼吸が少しずつ落ち着き、恐怖一色だった表情が段々穏やかになっていく。 「……」 落ち着いたとはいえ、言葉が出ないらしい。 「貴方達は……何なの?」 ようやく出た言葉は、高い能力を誇る宇宙人らしからぬものであった。 「あたしは涼宮ハルヒ、でこっちが妹のハルナ」 「そうじゃなくて……」 「あたし達にとってはそれ以上もそれ以下もないわ」 「……でも貴方達は我々にとっては脅威なのよ。だからこんな命令が下っ」 「そう思ってるだけよ、あたしはアンタ達を敵視してるつもりはないわ」 ハルヒがこちらに振り返った瞬間、朝倉が床に横たわってそのまま動かなくなった。 「言っとくけど眠らせただけよ」 ナイフのように鋭利な眼光であった。こいつ、最近で一番と言っていいほどに苛立っているな。能力のことに関して神経質になっているのだろうか。 その表情を緩めると長門と対面した。 「有希、このことは上には報告しないってことは出来る?」 「それは不可能。既に送信されている」 「そう……じゃあせめてさっきの記憶だけでも消してあげてくれる?」 「分かった」 長門が朝倉の記憶を修正している間にハルヒは教室を出ていってしまった。 ハルヒが帰ってから数分後、閉鎖空間は消滅し、窓からは夕闇が差し込んでいた。 ハルナはすっかり落ち込んでいた。夕日よりも真っ赤に腫れた頬を涙がつたっていく。 教室を荒野に変えてしまったあの時からずっと動かずに立っている。俺はその小さな背中の後ろに行くと、ハルナが呟いた。 「……ごめんなさい」 「失敗から学ぶっていうだろ? 学習学習」 頭を軽くぽんぽんと叩いた。 「同じ過ちを繰り返さなけりゃいいんだよ」 ハルナは少しだけ頷いた。 そう言ったものの、その力がたった一回の過ちで世界を滅ぼしたのではなかったか。 俺が言っていることは矛盾していた? 「繰り返さなきゃ……な」 二回目のそれは、どちらかといえば自分に言い聞かせているように思えた。 朝倉の記憶修正を終えたらしく、長門が立ち上がった。 「終わった」 「御苦労さま」 「いい。朝倉涼子のことは私に任せて、貴方は涼宮ハルナを」 「長門、あの時言ってたことに間違いはないんだな」 「何」 長門がこちらを振り向いた。その奥で朝倉はいまだに眠っていた。 「あの時言った『無理はしていない』ってのは嘘じゃないだろうな」 「嘘ではない。無理をするのは反対派との全面衝突になった時」 答えるまでに少しの無音があったので、図星なのかと思ってしまった。 まさか長門がジョークを言うとは思わなかった。あまり笑えないのだが。 「分かった、それなら安心だ。それと、もう一つ頼みがあるがいいか?」 「何」 「ハルナのケガを治してやってくれ」 「分かった」 長門がハルナに近づき、その手を取った。 ナイフの刃を握っていた小さな手からは、未だに血が流れていた。高速呪文を呟くと、傷は跡形も無く消えた。 「……」 ハルナは傷の消えた手の平をずっと見ていた。 「ほら、お礼」 「え、あ、ありがとうございます」 俺が促すとはっとしたようにそれだけ言って、また視線を手の平に戻して黙り込んだ。 「いい。……また明日」 「おう、またな。行くぞ、ハルナ」 やっぱりこの名前を呼ぶのにはまだ違和感がある。早いとこ慣れないと。 「……」 「いつまでもここで落ち込んで立って仕方ない、帰るぞ」 今度は頷くことはなかった。だが、俺が廊下に出でもう一度呼ぶとついて来た。 廊下を歩く俺の隣の小さい影は下を向いていた。何と言ってやればいいのか分からず、帰って墓穴を掘りかねないので黙っているほかなかった。 無言でいる間、さっきのことを思い出していた。 砂漠のように荒れた大地、激しいノイズ、何かの叫び声のような音、現れたものは散々ハルヒのことに巻き込まれてきた俺でさえ全て未体験のものばかりで、それらはハルヒの閉鎖空間とは似ても似つかぬ光景を生み出していた。 何より気になったのが、ノイズに視力や聴力を奪われていてもしっかりと感じたあのどんよりとした重たい空気である。 あの空間はあの『事件』とやらの記憶が影響しているのだろうか。ハルヒが詳細を言わないので推測にすぎないが、好んであんなものを創造するとは到底思えないからな。 ハルナは事件の記憶を引きずっているのだろう。その時にハルナが関与していたのかもしれない。 昇降口に差し掛かった時に俺は立ち止まり、こう切り出した。 「さて、そろそろ仲直りタイムにしようか」 「あ……」 ハルナもすぐに気付いたようだった。 「どうして分かったの」 そこにハルヒが待っていた。 「勘、だな」 「なによそれ、カッコつけてるの?」 「これでもいたって真面目の回答なんだがな」 「ふぅん」 夕日に照らされながら坂を下る三人。結局ハルヒと合流しても無言に変わりはなく、気まずい雰囲気が持続していた。 「……さっきはごめんね。思いきり叩いたりなんかして」 で、ハルヒが口を開いたかと思えば……。 「……」 「あたしが無茶苦茶してた時は、ハルナは何にも咎めず許してくれたのに、あたしは散々怒鳴り散らしちゃって……」 ハルナはそれを黙って聞いていた。 「ハルナを苦しめ続けてきたのよ、あの時からずっと」 俺もなかなか割り込むチャンスを得られなかった。 「あたしばっかりが勝手に怒って、勝手に泣いて。ハルナのことを思ってのはずなのにそれは二の次三の次にしちゃって」 「ちょっと止まれ」 急な命令に驚いたのか、二人はすぐに立ち止まった。 「どうしたのよ急n……」 こっちを向いた瞬間に、二人同時にでこピンをお見舞いした。 「いっ」 「ぅぅ……」 「何すんのよ!」 「本当にそっくりだよな、自分にばっかり責任を感じちまうところも」 その指摘を受けた二人は、額を押さえながらお互いを見ていた。 「何と言ったらいいかよくわからんが、あんまり深く考えない方がいいんじゃないか? この世界は崩壊してないんだし……な」 返事がない。そりゃあ俺のどうにも言葉足らずなものではどうにもならないか。 「なんかごめんね。じゃ、あたし達はこっちだから、またね」 「おう」 何か気の利いたことが言えないのか俺。 だんだんと小さくなっていく二人の背中を見ながら、おれは自分の手の平を見ていた。 どうも違和感があったんが敢えて何も言わなかった。 「現実までこうなんのか……」 俺の手の平には赤いべとべとがついていて、鉄の臭いがした。いつついたんだよこれ。 第3周期へ