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3.5話 「ラジヲ 武装神姫・お手紙相談室」 白「白い子と!」 黒「黒い子の!」 白黒「「武装神姫、お手紙相談室~~っ」」 どんどんひゅーひゅーぱふぱふー 白「今週もやってまいりましたこのコーナー!」 黒「SSの中で”それって何? あの時どうなっていたの?”を」 白「2006年の皆様にわかりやすぅぅく丁寧に!」 黒「2036年の未来から!」 白「わたくし白い子と!」 黒「黒い子がお送りする文字放送でございますー」 ※なぜなに武装神姫だったんだけど、先越されちゃったので変更☆ 白「さて本日のお便りはS県にお住まいのNさん!」 黒「こんばんわ、白い子さん黒い子さん」 白黒「「こんばんわー!」」 黒「放送になったばかりの『遺品』で、 マオさんがレーザーを避けていましたよね?」 白「うんうん、そうだねー。 すごいよねー」 黒「なんで光速のレーザーを避けられるのでしょう? 見てからじゃ絶対間に合いませんよね? でも実際に避けていた訳ですが、 レーザーを避けられる速さをもったマオさんが なんで小姫さんの弓を避けられなかったのでしょう? この事が気になって僕は夜も眠れません」 白「うーん、そうだねー。 なんでなんだろうねー」 黒「これはやはり本人に聞くのが一番! マオさん出番ですよー!」 マオ「こんばんはー、マオです。 にゃんこ侍じゃないです」 白「あ”ー、もう広まっちゃいましたからねぇ… それは難しいと思いますよ?」 マオ「しくしく」 黒「それではマオさん、お答え下さいっ」 マオ「あれはですね、トリガーを引く指の動きを主に見ているんです。」 白「指…ですか?」 マオ「ええ、トリガーを引く段階になると大抵の方は銃の向きを変えませんから。 そして指は0秒で動かす事はできないでしょ? もうひとつ、トリガーを引ききってもレーザーが照射されるのには 一瞬の間があるんです。 ある程度の電圧を装置にどばっ!と流さなきゃならないんですけど、 普段の待機電圧から照射に必要な電圧にするのにも ちょっぴりですけど時間がかかるんですよ。」 黒「と、言う事は…よーく見てれば避けられない事はない!のですね」 マオ「ですが装備が重かったりするとダメですね。 ブースターに頼るのも悪くは無いのですが、 なまじ大きな力で移動するだけに 1発目を回避できても2発目・3発目と どんどん避け難くなっていっちゃいます」 白「なるほどなるほどー。では小姫さんの弓を避けられなかったのは…?」 マオ「彼女の弓はね、かなり優秀な射撃武器なんですよ」 黒「そういえば弓とは思えない弾速と威力でしたね」 マオ「弓と矢自体は普通の物なのですが、彼女の周りに展開している防御用の [反発フィールド]を矢の前方一点に集中し、 亜光速レールガン並の加速を乗せる事ができるんです」 白「な、なんとっ」 マオ「弾速はレーザーに迫り、尚且つ発射はトリガーを引くのではなく矢を持った ”指を緩めるだけ”ですから、見ていても遠距離で回避に専念してなんとか、 中距離以下でダッシュしたら当たる位置をずらすので精一杯でした。」 黒「まさに必殺の武器ですが、それが小姫さんの弱点に、 マオさんの勝利の鍵になったんですよね」 マオ「戦いの場が霧の漂う高原でなかったら、兄がいなかったら… 私の勝利はありえませんでした」 白「その後、小姫さんは装備を強化したそうですね?」 マオ「そうなんですよー(にこにこ) ミラー粒子を反発フィールドに対流させて ビームとレーザーにも対応ですよ? 近接防御用にショットガンを両の肩に装備して 弓発射直後の弱点も克服してます。 結局勝てたのは最初の一回だけで、 あとは負けっぱなしですよー♪」 黒「う、嬉しそうですね?」 マオ「はい♪ 家賃を兄と折半しているのである程度の賞金を稼ぐのも バトル参加の目的なのですが、やはり一番は全力で戦う事ですからね! ギリギリで勝つのが理想ですが、大勝ちする位なら ジリ貧で負けたほうが戦いとしては面白いです♪」 白「にゃんこ侍さん、本日はわざわざお越しいただいて有難う御座いました!」 黒「それでは次回の放送まで」 白黒「「まったね~ ノシ」」 マオ「ちがうもん… にゃんこ侍じゃないもん…」 il||li _| ̄|○ il||li
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「ただいまー」 「あ、おかえりなさい」 家に帰ってきて、部屋に入るとシオンが出迎えてきてくれた。 ああ、いいな。ただいまが言えるって。 別に家を空ける父さんが嫌いなわけではないけど、もう少し家にいてくれたら嬉しいのになと思う。仕事なのだから、しょうがない。 第一、僕がちゃんと暮らしているから安心して仕事ができるのだ。僕がわがままを言ったらいけない。 「特に何もなかったかい?」 「はい、異常はないですよ」 異常なんておおげさな。と思うけど、神姫にとって留守を任されるのは大変な任務らしい。淳平に聞くと、家を空けるなら一緒に行くことは多いらしいけど、バイト先とかに持っていけないらしいから。 今度は学校にも連れて行って、ミスズとかにも会わせてみようかな。神姫にも友達は必要だし。 でも、その前に大事な話しをしよう。これからの為にも。 「あー、シオン。ちょっとこっちに来て」 「? ……螢斗さん、どうしましたか」 不思議そうに僕の傍に来てくれる。 僕もその場に座って紙袋にあるものを取り出す。持つと意外とズッシリと重い。 部屋のテーブルにそれを置く。正面に『武装神姫』と書かれたロゴがはっきりと見える。 「これが何かわかるよね?」 「……もしかして……」 僕がちょっと大きいぐらいであるケースの留め具を外すと、中からはパステルピンクのアーマー一式とハンドガンと数本のバレル。 これが、アーティル型の公式装備らしい。各神姫には専用と呼べるような一式装備が発売されていて、それを元に、色々な、別の装備を取り付けていって、自分だけの武装神姫を創るみたいだ。 「これは……どうして……」 「ごめん、嘘ついた。今日、アルバイトじゃなくって、実は……シオンの前のオーナー宮本 凛奈さんと会ってきたんだ。それで、これを預かった」 テーブルの上で狼狽しているシオンにそう告げる。これは自分が使っていた装備だとわかったらしい。 バトルの恐怖と共にあった戦うための装備。いまそれが目の前にある。 「……でも、螢斗さんには、凛奈さんと会う意味なんか……」 「意味はあるよ。シオンを知る為に会ってきたんだ」 「わたしを……」 目線を同じにして、顔を下げているシオンの頭を撫でる。これが多分一番落ち着くと思う。僕にとっても、シオンにとっても。 「色々聞いたよ。シオンのお姉さん、イスカのこと。なんで家出することになったのかとか。そして、バトルのこととか」 シオンの肩が『バトル』の部分でピクッと動く。 「シオンは時々、物思いにふけってる時があるよね。ずっと外の方を向いて、遠い目をしててさ。多分、前にいた所を思い出してるんだろうなって」 「……自分でもわからないですけど、そうなのかもしれないです。螢斗さんってそういうの鋭いですよね」 「うん。一人で暮らすようになって、しっかりし続けようとしてて、他人を見てたらいつのまにかそういうのに敏感になってた。そうして出来ることを見つけるんだ。僕が出来ることをね」 「だけど、結局、私に何をしてほしいんですか? バトルですか? 武装神姫のクセに戦えない神姫だってわからせたいんですか?」 シオンの慟哭。目元を隠し、涙を流す。 「違うよ」 「でも、これじゃあ……」 「後悔させないためかな」 「えっ?」 泣きながらも、顔を上げるシオン。もう一回「ごめん」と謝りながら、ハンカチで目元を拭う。ほんと、よく泣くよな。 「宮本さんはいずれ、日本を離れるんだって。外国の方で仕事を習うために。気軽に日本には帰れなくなるから。だから、いなくなったシオンを気にして探し続けてたんだ」 「……それじゃ、お姉ちゃんも」 「一緒に行くことになるね。今すぐに、行ってしまうってわけじゃないけど。このままお姉さんに嫌われたままでいいのかな」 シオンにそう語りかける。 このままなにもせず、時間が忘れさせてくれるまでいることもできる。だけど、これはシオンが本当の意味で、“武装神姫”になるための必要なことだと思う。 自分勝手だと思えるけど、このままなんて悲しいじゃないか。僕にはシオンを拾った責任がある。 「神姫バトルをしてみないか」 「……」 シオンは僕に背を向けて、窓の方、夜の外を見ている。どんな感情が中で渦巻いているのかはわからない。 「イスカお姉さんに、シオンを認めさせるためにも。戦えないからって僕はシオンを蔑まない。僕も一緒に戦うさ」 「ここに置いておくよ」と言って部屋のドアに向かう。 傍にいても仕方がない。今は一人で整理させる時間が必要だ。 言いたいことを全部言ったのはいいけど、来た当時の、また塞ぎ込んだ状態に戻ってしまうかもしれない。 さっきも思った通り、なにも出来ず終わるかもしれない。このままバトルができないかもしれない。 (でもさ、重い後悔を残したまま、今を過ごすのは良くないよな。父さん) 今はどこかの飛行機に乗って、空を飛んでいる父親の顔を思い出しながら、僕はリビングに降りていった。 ―――― 螢斗さんは部屋から出て行った。 ドアの方に私は振り返る。 目の前には、私の使っていた武装。たいして使えていなかった私の装備。前マスター凛奈さんが揃えてくれた物だ。 中にある銃を手に取る。 『フェリス・ファング』 これに色々、バレルを組み替えて、武器を転送しなくとも装備をその場で変えられる利点がある。バレルはそのままリアのユニットに取り付けていれば、銃器として扱う事ができる。 私のデータ上にはそうなっていて、覚えているけれど、ちゃんと使えなきゃ意味がない。ちゃんと弾を当てたことも、組み替えられたこともない。 トレーニングの時はしっかりできるのに、本番でできなきゃいけないのに。 これを持つとあの頃の出来事が思い出された。 ……わたしはイスカ。お前のお姉ちゃん ……マスター。この子私の名前を呼んでくれたぞ。嬉しいな ……何をやってる。相手をしっかり見て撃つんだ ……ほらほら、初めてのバトルだったんだから、泣くな 私にも前マスター凛奈さんに対しても無口で無愛想だったけど、ものすごく優しくて、私にとっては大好きなお姉ちゃん。 だけど。 ……お前はなにもできない、玩具なんだな どんなバトルでも、恐怖感に捕らわれて何も出来ずに終わる。 ある日、筐体の空間から前マスター凛奈さんのもとに帰った時、赤い瞳で睨まれてそう告げられた記憶のメモリ。 武装神姫は戦うための玩具。そうお姉ちゃんにも教わって、トレーニングも欠かさなかった。 だけど、どうしても抜け出せない。勝てない。腕も足も震える。銃口が定まらない。当たらない。指示にも満足に動けない。そして負ける。 前マスター凛奈さんは怒りはしなかったけど、ただ「次、頑張ってみよう」との探り探りのような言葉。 凛奈さんも嫌いではない。もちろん、尊敬しているから。 お姉ちゃんともバトルなんかしないで、ただ一緒にいられれば良かった。無表情な顔で、でも声は優しくて名前を呼んでいてくれたら良かった。 ……ただの人形 そう呟かれて、苦しかった。 機械人形の私たちの口から、直接「人形」と呼ばれる苦しさは並大抵ではない。 私は何も言い返せず、お姉ちゃんはそのまま会話もしてくれなくて、前マスター凛奈さんもお姉ちゃんを、それと私をどう扱っていいか、戸惑っていた。 だから、逃げ出した。 窓から外に飛び出して。走って、走って、走って。野良猫に標的にされ追いかけられて、そして……。 「……螢斗さん」 フェリス・ファングのグリップを握りしめて、今のマスターの名前を呟く。 助けてくれたのに失礼にも警戒していた私に優しくしてくれて。 素性もわからない神姫の私に新しい居場所をくれた人。 一人ぼっちは寂しいと思うけどな キズのあるクレイドルの中にずっといたら、声が聞こえた。拾ってくれた人が出した声だとはわかってはいたけど。 私のCSCの中にその言葉が染み込んだ。 寂しかった。ぬくもりが欲しかった。 人形の私が大層な考えなのかもしれないけど、ただ飢えていたんだ。 そう思ったら、声の主に話しかけていた。 そして今、私はこうして、此処にいる。 マスターは私の抱えている物も背負い込もうとしている。 とても優しい人。 この人になら、私は全てを賭けられる。拾ってくれた恩も傍にいてくれる恩も私はまだ返せていない。だったら、私はもう一度………。 「よし」 濡れていた目元を腕で拭う。肘の関節を伸ばし、手首のジョイントを固定し、トリガーに指をかける。それを確認して、銃口を前方に向ける。 目を瞑り、バトルでの情景を鮮明に思い出す。 少し腕が震えてくる。 だけど、清算するためにも、私は克服しなきゃいけない。 前マスター凛奈さんの為に、お姉ちゃんの為に。そして、螢斗さんの、マスターの為に。 「っ!」 指に力を込め、トリガーを引く。瞬間、カチっと音がする。 もちろん、弾が入っていないのはわかってる。 これで、 私の脳内で仮想の相手に当てるイメージをする。 これを本番でする。やってみせる。 ―――― 「ねぇ、本当に大丈夫?」 「はい、なんとかやってみせます」 休日の日。昼ごろの時間帯、ゲームセンターの前には突っ立っている僕と、服の胸ポケットには、妙に意気込んだシオンがいる。 話しをしたあの日、塞ぎ込んでたらどうしようとか嫌われたらどうしようとか考えながら、オドオドと自室に戻ってみたら。 『今度、バトルをしに行きませんか』 と、開口一番言われた。 唖然として生返事で了承し言い返すと、「よかったです」ともらし持っていた銃を持ち撃つような練習をし続けていた。 よくはわからないけど、スッキリした顔立ちになっていたから、自分の中で整理がついたんだろう。 僕の独り善がりじゃなかったんだ、よかったよかった。とホッとしたのも束の間。 淳平に今度の休日、神姫と一緒にゲームセンターに来てくれるように連絡をして頼んだ。 いきなり、見知らぬ人とバトルをしかけても、僕が対処できないし、淳平の方が神姫バトルは先輩なんだから、良い先生になれるだろう。 特にミスズに期待しよう。そうしよう。 そして、今はその淳平たちを待ってはいるんだけど……。 「お友達の方に何かあったんでしょうか」 「いや、今日は休みの日だし、寝坊だよ、多分。今はお昼だけどね」 心配している様子のシオンに言い聞かせる。 淳平のことだから、朝起きれないと思って昼に待ち合わせにしたのに、こんなに待たされるとは。 朝はミスズと母親の、二人がかりで起こすらしいが、それでも起こすのに苦労するらしい。 母親は昼にはもういないとすると、ミスズだけで一体どんな状況になっているやら。 すると、ヴゥーヴゥーっとズボンから携帯のメール着信振動。 ――ミスズです。マスターは今から支度をし始めたので、中で待っててください。ご迷惑をおかけします―― ……案の定これだ。嫌になっちゃうよね。まったく。 ミスズが淳平の携帯を操作してメールをうっているんだろう。自分のマスターのフォローをする神姫。泣けてくる。 「シオン、中に入ろう」 「でも、まだ、お友達が」 「遅れるから、中で待っててってメールが来たからさ。心配する必要はないよ」 「そうですか。よかったです、お友達の方に何もなくて」 (シオンはいい子だなー……) と、心の中で、シオンをべた褒めしつつ、両開きのドアを潜る。 見回してみると、前に来た時よりも、人が幾分か多い気がする。休日ということもあり、学生くらいの年代の人が多い。 前回、来た時に見ていなかった案内板を見てみる。 広く使われている一階は神姫の専用バトルスペースになっていて、二階や三階には普通のゲームセンター通りのメダルゲームやアーケードゲームがあるみたい。 ここは、この街で神姫バトルが一番流行っているらしいから、神姫バトルを前面に押し出した結果なんだろう。 ……それで、どうしようか。 いきなり、暇そうな神姫オーナーに『バトルしようぜ!』とか僕には無理だぞ。 中で待つぐらいなら、他の人の神姫バトルとかを見てたらいいのだけど、今は誰もやってない。 お昼時でご飯だからなのかな。休憩所にも人がいるけど、バトルする雰囲気は出してない。 暇つぶしの為に、いっそのこと、二階のゲームでもするか。……いやいや、ここに来た目的は神姫バトルなんだからシオンの前でうつつをぬかせないよ。 ああ、どうしよう。僕は行き場を失っている。これがあるから、淳平を呼んだのに。くそう、恨むぞ、淳平。 そして、僕がちょっと挙動不審に陥りかけていると。ポケットから上を見上げて僕に向こうを促した。 「螢斗さん。あの方に話しかけてみては」 「うーん、うん? 誰のこと?」 指の指す方、奥の方に顔を向けると、僕と同じようなちょっと挙動不審になっている少女が神姫と話していた。 遠目から見て、同い年ぐらいに見える。黒く肩までの髪に赤いリボンをアクセントにしている可愛らしいと思える子だ。 そして僕と同じように挙動不審に見えると言う事は。 (仲間だーー!!) おもわず脳内で叫んだ。 よかった、僕たちは一人と一体じゃなかった。 「あの人にバトル申し込ませてもらおうか」 「……そうですね」 焦りが出てこないよう口にする。 そう例えば、高校入学式の日、自分のクラス。見知らぬ人たち。元の中学の友達がいない中、クラスでは緊張している自分。偶然その隣が自分と同じような緊張感を生みだしている気がして、話しかけて意気投合する、そんなきっかけを醸し出すんだ。 (…………よし、行くぞ!) 「こ、こんにちわ。バ、バトルできますか?」 うわ、すごくどもってしまった。 恥ずかしいけどしょうがない。即行でこのままいこうと開き直る。 けど。 「え! あ、は、はい。できます……よ」 顔を赤面させながら、相手の方もどもった。 (仲間だーー!!) 僕はなぜかむせび泣いた。希望はここにあった。 無人島の中、一人で生きてきて心細かったけど同じように難船して漂流してきた人を見つけたぐらいの感動だ。 さっきから僕のテンションがおかしい。けど気にしない! 「螢斗さん、よかったですね」 「ちょ、ちょっと、どうしたんですか!?」 「あー、リミちん泣かしたー。いーけないんだー、いけないんだー」 シオンの嬉しそうな声と、目の前の彼女の戸惑った声と、茶化すような神姫の声が同時に聞こえた。 前へ 次へ
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イントロダクション―武装神姫・異説― ◆ACT//GA03c 全高15cmのミクロウォーズ、始まる。 西暦20XX年。 第三次世界大戦も、宇宙人の襲来も、悪の秘密結社の暗躍も、 巨大怪獣の出現も、異能力者の台頭もなかった、ごく当たり前の世界。 その時代では、日常的に人を支えるロボットが存在し、様々な場面で活躍していた。 『神姫』。 それは全高15cmのフィギュアロボである。 「心と感情」を持ち、最も人の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。 その神姫に人々は、思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。 名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は『武装神姫』と呼ぶ。 ▼ ▼ ▼ ――何もないところで、「私」は目を覚ましました。 正確には、単純なパターンが無限にペーストされたような床と、空間に格子状のワイヤーフレームだけが浮かぶだけの世界。 無機質というよりほとんど現実味がなくて、すぐに私はここが電脳空間のようなものなのだと思い当たりました。 それにしても、私はどうしてこんなところで目覚めたのでしょうか。 直前の記憶を検索してみましたが、どういう訳か該当するものがありませんでした。 該当するメモリーがないのではなく、過去のメモリー自体がうまく検索出来ないことに、私は首を傾げました。 もしかしたら、私はたった今はじめて「目覚めた」のかもしれない。 そうだとしたら、何も知らないままの状態でいるのもおかしくないですから。 目を落とすと自分の、人間の少女を模した……でも、人間ではあり得ない姿が視界に入りました。 だって本物の人間の手は、手首のところでパーツが分割されていたりしないでしょう。 手足にネジ穴もないでしょうし、ボディはペイントではなく、ちゃんとした服を着ているはずです。 そう、私は人間ではありません。 私は神姫。 人間のパートナーとして生み出された、身長15センチのフィギュアロボット。 形式番号はFL016、天使型MMS「アーンヴァルMk.2」。 そして名前は……。 「……あれ?」 やっぱりメモリー障害なのでしょうか。自分の名前が、思い出せない。 神姫は起動時に、マスターによって個体名を登録されるはずなのに。 なんだか、嫌な感じがします。 まるで何か大変なことが私の身に起こっているのに、私自身がそれに気付いてないような―― 『お目覚めですね、アーンヴァルMk.2』 「ひゃあっ!?」 突然の呼びかけに声が裏返ってしまい、とっさに私は両手で口を塞ぎました。 そして、自分の目の前に当たり前のように立っているもう一人の存在に気がつきました。 さっきまではいなかったはずなのに。ここは電脳空間だからなんでもありなんでしょうか。 だけど、最初の驚きの波が退いた後で私の目を惹いたのは、彼女の外見でした。 「あなたは……ネイキッド素体? ううん、パーツの分割が神姫と違う……あなたはいったい……」 彼女は……体つきからして女性型なのは間違いないと思うのですが、目も口もなく、最低限の凹凸だけしか持たない姿をしていました。 加えて全身は半透明で成形されていて、内部のメカニックがうっすらと見えています。 ただ、ボディの構造とか、関節の繋がり方とか、明らかに神姫の素体じゃない。ネジ穴もありません。 神姫じゃない、別のフィギュア。私が知らない、別のなにか。あなたは、だれ? 私の疑問を察したのでしょうか。彼女は、自分から口を開いて(実際に口が動いたわけではないですけど)、自己紹介を始めました。 『自己紹介が遅れましたね。私は、figma(フィグマ)シリーズの女性型素体です。 個体名はございませんので、呼称が必要な際は便宜上"Archetype she(アーキタイプ・シー)"とお呼びください』 「figma……?」 私のメモリーには存在しない単語です。武装神姫とは別のフィギュアロボットのシリーズなのでしょうか。 ううん、そんなことよりも、今は彼女が私のことを知ってるってことの方が大事です。 意を決して、私は質問を投げかけました。 「それで、えーと……Archetype sheさんでしたっけ。私、どうしてこんなところにいるんでしょう? なんだか記憶がぼんやりしてて……」 「良い質問です。率直に申し上げましょう」 良かった、彼女は事情を知っているようです。 私は安心の吐息を漏らしました。そして、彼女の次の言葉を聞いて――そのままの姿勢で、固まりました。 『おめでとうございます。あなたは、この特殊状況自律総合戦闘実験、プロジェクト名"BATTLE ROYALE"の被検体に選出されました』 ……彼女は何を言っているのでしょうか。 戦闘実験? バトルロワイアル? 神姫バトルとは、違う? いったい何を、何のために……。 私が思考を纏められないでいるうちに、彼女は淡々と言葉を繋いでいきました。 『この世界に存在するアクションフィギュアは、武装神姫だけではありません』 彼女の言葉と共に、単調なワイヤーフレームだけの空間に次々と立体映像が浮かび上がっていきます。 神姫もいる……だけどそれだけじゃない。 男性タイプもいます。それどころか、変身ヒーローも、ロボットも、怪獣も。 私自身も含めて、全部で60体。 どれも姿がぼんやりとしか分からないけれど、私と同じくらいの大きさの、きっと同じ境遇のフィギュア。 そして一人だけ別の場所に立っている彼女――Archetype sheの言葉が、冷徹なほど静かに続きます。 『関節部に特殊機構リボルバージョイントを採用し、堅牢な構造と安定性を獲得した"リボルテック"。 癖のない構造と広い可動範囲、そして豊富な拡張性による高水準の性能を備えた"figma"。 変身ヒーローの立体化シリーズをルーツに持ち、互換性に欠ける反面戦闘向けのモデルが揃う"S.H.シリーズ"。 リアルタイプの巨大ロボットを中心に多彩なバリエーションを有する"ROBOT魂"。 その名の通り構成材に超合金を採用し、他のフィギュアとは一線を画す強固なボディを持つ"スーパーロボット超合金"。 武装神姫とは別の角度から、少女型素体の外部装甲メカニックによる拡張を試みた"アーマーガールズプロジェクト"。 それから――』 「ちょ、ちょっと待ってください! それが今の私が置かれてる状況と、何の関係があるんですか!?」 叫ばざるを得ませんでした。 全く話が見えなくて、それなのに嫌な予感だけが膨らんで、今にも押し潰されてしまいそうで。 すると彼女の目が――正確には目があるはずの部分にあるくぼみが、真っ直ぐに私の方へ向いて、私は思わずたじろぎました。 そしてその後に続く言葉を聞いて、私は彼女に本質を尋ねたことを後悔したのです。 『単刀直入に言いましょう。私のマスター、正確にはマスターを含む人間たちは、貴女達60体のフィギュアによる殺し合いを望んでいます。 多種多様なアクションフィギュアによる総合的な戦闘実験データ。貴方達はそれを得るために用意された被験体です。 ああ、命を持たない貴女方に殺し合いという表現は不適当ですね。とにかく、貴女がすべきことはただひとつ。 貴女自身の自我を保存したいのであれば、持てる武装の限りをもって、速やかに自分以外の59体の自我を消去するだけです』 その意味を理解するのに掛かった時間はほんの僅かでしたが、それを受け入れるのには数倍の時間を要しました。 自分以外を皆殺しにして生き残る。それが、この実験の、意味。 彼女、いえ、その背後にいる人間達の実験材料として、私や他のフィギュア達は、互いに殺し合わなければならない……? そんなのおかしいと、そう言おうとしました。 何で殺し合う必要があるのかと、そう言おうとしました。 いくら作り物だからって私達には心があるんだと、そう言おうとしたんです。 だけど思考が絡まって、うまく言葉にならなくて、どう伝えたらいいのかも分からなくて。 ようやく私の口から出てきたのは、ひどく自分本位な、自己嫌悪さえ覚えるような一言でした。 「……私のマスターも、それを望んでいるんですか?」 もしかしたら、そうだと言ってほしかったのかもしれません。 マスターが望んでいるのだとしたら、どんなに辛くても、どんなに理不尽でも、戦えるはずだと、そう思ったから。 だけどArchetype sheは、何を馬鹿なことを言っているんだと言わんばかりの口調で、こう告げました。 『貴女にマスターなんていませんよ。この実験のためだけに起動された、名無しの神姫さん』 その一言を最後に私の意識は遠のいて、彼女も、ワイヤーフレームの世界も、59体のフィギュア達の映像も、見えなくなりました。 ▼ ▼ ▼ 「う、ううん……」 今度こそ、私は現実の空間で目覚めました。 時刻は深夜零時。室内に照明は灯っていないので、視界を暗視モードに切り替えて見渡します。 ここは民家の一室……子供部屋でしょうか。勉強机の上に横たわっていた体を起こすと、徐々に自分自身の状態が認識出来てきました。 私は、アーンヴァルMk.2。個体名、無し。マスター登録――無し。 武装チェック。戦闘用パーツは問題なく使用可能。ただ……武装のリミッターが解除されてるみたい。 この状態なら、壊せる。他の神姫も、あるいはそれ以外のフィギュアも。何の問題もなく、コアやチップごと壊してしまえる。 それから……記録領域に複数のデータファイルを確認。実験の詳細ルールと補助アプリケーションがインストールされてる。 もう、疑いようはありません。 「夢じゃなかったんだ……本当に、私、これから殺し合いを……」 私は、交差させた腕で自分自身の両肩を抱いて、震えました。 これから、恐ろしいことが始まる。私ひとりでは逃れられないような、恐ろしいことが。 その予感が実感に変わるのが、ただ怖くて。 その時、あのサイバースペースで聞いた「彼女」の声が、直接電脳内に響いたのです。 《おはようございます、皆様。現時刻を持って戦闘実験『BATTLE ROYALE』を開始します。 申し遅れましたが、今後のオペレーションは私、Archetype sheが行います。 改めて確認するまでもありませんが、皆様は人間によって管理された機械人形に過ぎません。 くれぐれも反抗などという身の程を知らない行動は謹んでくださいますようにお願い致します。 願わくばこの実験で、各々が自分の存在をつまらないオモチャでないと証明してくれますよう。 それでは、健闘を祈ります。六時間後にまたお会いいたしましょう》 声はそれっきり途絶えて、再び夜の静寂が帰ってきました。 電子頭脳へと直接情報を送り込んできたのは、やろうと思えばそれ以上のことも出来るという警告なのかもしれません。 私はおぼつかない足取りで勉強机の端まで歩みを進め、それから身投げするように宙へと体を投げ出しました。 直後、全身を光が包み――転送された武装を纏い、開いていた窓の隙間から、私は真っ暗な夜空へと飛び立ちました。 まだ頭の中はごちゃごちゃです。誰かを壊してしまうなんて嫌です。 だけど……何も分からないまま壊されるのも、嫌だったから。 こんな時、私にマスターがいてくれたら……ありもしない仮定を首を振って打ち払うと、私は風を切って加速しました。 闇の中へ……あるいはもしかしたら、絶望の運命の中へと。 【総合自律戦闘実験"BATTLE ROYALE"――開始】 【残り60体】 投下順に読む 次:THE BEGINNING 時系列順に読む 次:THE BEGINNING アーンヴァルMk.2 次:教皇からの挑戦状!一角獣を狩猟せよ! Archetype she 次: ▲上へ戻る
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戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -08 楽屋 イオ「こんばんは。今回のお話ではリペイント版として登場いたしました、イオです。あ、塗色ですか?これ、絵の具なんです。」 リゼ「マスターに恋する神姫ってのはよくいるけれどねー。ここまで歪んだ愛を『求める』神姫はそうそういないだろうねぇ。」 イオ「さすがの私も、今回の役は・・・もう二度とやりたくないですよ(苦笑」 リゼ「あはは、そういうと思ったよ。さすがはイオだ。」 イオ「・・・。何か引っかかりますが・・・」 リゼ(汗) イオ「まぁ、いいでしょう・・・ささ、夜も更けてまいりました。それでは・・・」 リゼ「おやすみ~。」 <<トップ へ戻る<<
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武装神姫のリン 鳳凰杯篇 その3 「ふう、何とかなったな。」 鶴畑大紀は表情には何も表さないが、小さく安堵の声をだす。 ミカエルの勝手でセカンドランカー相手に黒星をこんな形でつけることになれば、自分は周囲の笑いものになると分かっていたからだ。 昨夜の出来事でミカエルのコアを変えることは確定していたが、それでもこの大会は兄に自分の力を示すための絶好の舞台なのだ。 ここで棄権という形をとることは出来ない。 だからこそ、何らかの要因でミカエルが戦う気をなくした場合の緊急用のプログラムとして"現在のミカエル"自身から体のコントロールを乗っ取り、戦闘行動を行う独立AIを仕込んでおいた。 これがこんな形で作用することになるとは思わなかったが、AIを仕込んだ彼の選択は正しかったのだ。 今このとき、"ミカエル"は生意気なことにも言葉巧みにミカエルをサレンダー一歩手前まで貶めた悪魔型に砲撃を加えている。 荷電粒子砲を撃ち、その反動を殺しつつも正確にレールガンを撃ち込む。 何とか紙一重で避けられているようだが、その尋常ならざる威力は確実に相手にダメージを与えていることだろう。 砂煙の向こうに、悪魔型の姿が消える。 砂煙の向こうに消えていくミカエルを見てもその表情は変わらない。 完全に"乗っ取られた"ままなのだ。 そう燐は確信している、たぶんこの戦闘を終らせなければ彼女と話すことも不可能だろう。 彼女を消させない。そのためにそして自分のために、勝つ。 「いくら威力があろうとも…直撃しなければ!!」 砂煙が晴れるのを待っていてはやられる、とはいえ迂闊に飛び込むのも危険。 そのため、燐は一度距離を置く。 出来るだけ音を立てずに足を思い切り曲げ、一気に蹴りだす。そうして砂煙から脱出す… 「チリとなれ」 そこを荷電粒子砲が襲う。 「それぐらい…!」 燐は滞空中に無理やり武装腕部の右手の爪を地面に突き立て、それを軸としてコンパスのように回転して進行方向を変更。 そのまま"ミカエル"へと跳ぶ。 「倒します、貴女を!!」 左手の鎌を振りかぶり、また大きくなった右腕の爪を光らせてミカエルへと突進する。 一撃目、爪による攻撃はビットのシールドに防がれるが衝撃はビットを吹き飛ばす。 そこから刹那遅く繰り出される本命の一撃。 鎌による一閃をミカエルは荷電粒子砲で受ける。 それで粒子砲は使い物にならなくなった…しかし。 「…切り裂け。ゼロ」 突然切断された粒子砲の中から飛び出した何かによって燐本体の右腕に傷が出来る。 「なっ…」 それに気をとられた隙にレールガンが撃ち込まれ、直撃は免れたものの燐は後退せざるを得なかった。 思わずひざをつく燐。 右腕の傷は浅いものの、痛みによって集中力が鈍る。 こんなことではダメだと分かっていても痛みは予想以上だ。粒子砲から出てきた"ゼロ"の刃は毒付きだったのかもしれない。 とにかく、体制を立て直す。 右腕をかばいつつも立ち上がる。 細かな傷はあるものの、武装が使用不可能になるようなダメージは無い。まだ戦える。 左手にはフルストゥシリーズによる連結刃。右腕はそれに添える。 3段攻撃。 あの技ならば、たとえ後ろから攻撃されて背部武装が砕けようがその次が己自身を撃つ前に届く。 防御は考えないで、攻撃あるのみ。 「燐、あせるな。絶対できるぞ!!」 マスターの声が聞こえる。そう言われてコレを試さないわけには行かなかった。 「行きます、風琴!」 燐はまたもミカエルへと突っ込む。ビットは先ほどと同じく防御体制だ。攻撃は通らない。 はずがビットが次々と爆発していく。 ふと見れば燐の傷ついた右手にはリボルバーが握られ、ビットが防御フィールドを張るために突き出す1点のユニットを次々撃ち抜いていく。 ミカエルもこの事態に身を翻し距離ををろうとする。が足が引っ張られる。 見れば連結刃が脚に絡まり、そこから伸びたワイヤーが燐の武装腕部につながっている。 「ち…」 ミカエルは腰から引き抜いたレーザーブレードでワイヤーを切断する。 が切断される寸前で燐がワイヤーを引き。ミカエルの体勢がを崩す。 「ゼロ!!」 また見えない何かが襲ってきてその刃はまた己の体を切るだろう。 それでも燐は止まらない、ミカエル交わした約束。 それを守るために突き進む。 「…!」 ミカエルの目前、1瞬だが鏡に光が反射したかのようなきらめきが燐には見えた。 そこにゼロがいる。そう燐は信じて右手を振り上げてトリガーを引く。 "カシャン"というあっけない音を立ててゼロが砕ける。 ゼロの正体は通常は不可視の円盤型のビット。ほぼ完璧なステルス性を持った円盤のふちが刃になった兵器。 ただ特性上、通常反射する光を98%カットしたとはいえ、まれな条件が重なった場合。神姫であればその反射光を探知可能かもしれない。 そう技術者が言っていたのを鶴畑大紀は思い出した。 そんなゼロを打ち破る唯一の手がかり。 それが燐に見えたのは持ち前の集中力の賜物だったのか、それとも運命のいたずらなのかは分からない。 それでもゼロがあっけなく落とされたのは鶴畑大紀にとって衝撃だった。 「なっ…」 ミカエルもそれは予想だにしていなかったらしい、戦闘用AIとはいえ多少の感情の幅は残っていたのか。うつろだった目が見開かれた。 「させん!!!」 いままで気がつかなかったが、腰にもう1本装備されたレーザーブレード。 それを両手に取るミカエル。 砲撃戦が得意な天使型であるにもかかわらず。あくまで立ち向かって来るらしい。 燐は気を引き閉めつつ、一度深呼吸。 それと同時にブースターを思いっきり吹かせてミカエルに迫る。もう左手に握られた鎌をぶつけるのみ。 それはミカエルも同じだった。ゼロを失った今レールガンを撃つ距離も余裕も無い。レーザーブレードで迎え撃つしかなかった。 「これで!!」 「させん!」 2つの影が交差する。 一方は銀の翼を持つ悪魔。もう一方は白き翼を掲げた天使。 どちらもがほぼ同時に墜落した。 "両者同時に墜落だ~激しく砂煙が上がる~立ち上がるのはどっちなのか…もしくはどちらも立ち上がるのか…" 実況も息を呑んでいる。 そして会場を静けさが包む。 「…まだ、折れません。」 「まだだ…」 スピーカーに燐、ミカエルの声が響く。 いっせいに歓声が湧くがまだ砂煙は晴れない。 ようやく晴れた砂煙の向こうには、右足のランディングギアをすねから下を失いつつも両手の剣は離さないミカエル。 そして武装腕部を両方とも二の腕から失って武器を失った燐。 "立ち上がった両者だが燐選手は武器が無い!!これで勝負は決まってしまうのか~" しかし燐は正面向いたまま、ふと俺のほうを見て微笑んだ。 これで俺が言いたいことが燐には伝わっているということが分かって安心する。 「武器が無いのにどうするつもりだ?」 少し余裕を見せたのか…ミカエルが聞いてくる。 「いえ、まだ私には剣が残されています。」 ガシャンという音を立てて背部ユニットが落下。 そして燐の姿は素体に基本のアーマー類のみといいう出で立ち…だた右手に光る宝石が一つ。 「バルディッシュ…ある少女を守るために使い魔によって作られた杖であり武器。たとえ天使であっても切り裂きます。」 サイドボードの容量ぎりぎりに詰め込んだバルディッシュこれで決着が付くだろう。勝つにしろ負けるにしろ。 「いくよ、バルディッシュ…」 "yes sir" 宝石が光り、魔法の杖…バルディッシュ・アサルトに変わる。それと同時に燐の背中に大きなマントが現れた。 バリアジャケットのフル装備はサイドボードに入りきらなかったため、機動能力が上がるマントを優先した結果だ。 「ふん…その程度で」 「そちらも満身創痍にみえますが?」 突然ミカエルの背後にビットが浮かぶ。全機撃ち抜いたと思っていたが生き残ったものがあったらしい。 そして最後の舞が始まる。 「……ふん、動くか…終わりにさせてもらう。」 「まだ動きますか…やっかいですね」 ミカエルが構えるのは翼につながったレールガン。弾切れもしくは壊れたと思っていたが、まだ使えるらしい。 今の燐の防御力は薄い。あのレールガンを受ければ負けだろう。 マントによって機動力こそ戦装束のときより上がっているが、その代わりとして防御力がゼロに近い状態。 レールガンの弾速からしてこの数を全弾避けるということはかなわない。 横や後ろがダメなら…飛び込むしかない。 「行きます!!」 燐は全速力で飛ぶ。 「砕けろ!!」 連射されるレールガンを避け、時にはバルディッシュでたたき落とす。 しかしそれでも少しづつ身体に傷が増え、それにつれて反応が遅れ、またしても傷を負う。それでも燐は止まらない。 「堕ちろ、堕ちろ!!」 敵ももうがむしゃらに、しかしねらいは正確に撃ち込んでくる。 マントもだんだんとその形を保てないほどぼろぼろになっている。あと…数メートル。 たったそれだけの距離だ。たどり着いてみせる。 「ええい、堕ちろといっている!!」 ビットが背後から砲撃を加えてマントの推進、滞空能力を奪おうとする。 ハーケンフォームとなったバルディッシュ・アサルトを背後に振り抜き残り3機の内2機を撃墜、残り1機は…矢のようなプラズマエネルギーの塊を発射する「プラズマランサー」で仕留める。 そして一瞬だけ肉眼では捉えられなくなるような速度へと加速する技であるブリッツラッシュを使うことにより"紙一重"でレールガンを回避。 これで使える技は無くなった。後はこのハーケンフォームの刃のみがたよりだ。 一方のミカエルも先ほどの砲撃でついにレールガンが弾切れを起こし、頼れるのは腰に備えたレーザーブレードのみになった。 「くっ、死ねぇ!!」 「私は…負けない!!」 お互いが、最後の力を振り絞って、跳ぶ。 ミカエルがレーザーブレードを振り上げ、燐がバルディッシュを横に振りかぶる。 激突。 レーザーブレードがハーケンの刃とつばぜり合いを演じる。 しかしコンディションの分だけミカエルの方が有利。しかし 「はぁ!!!」 「なっ…」 気迫は明らかに燐がミカエルのそれを上回った。 そして、 「もう、終わりにしましょう。」 「ほざくな!!」 ミカエルがレーザーブレードを力づくで振り切り、バルディッシュをはじき飛ばした。 「これで私の勝t…がぁ!」 勝利を確信していたであろうミカエルのほほに、衝撃。 燐はバルディッシュを支える腕の力を抜き、ミカエルがレーザーブレードに加える力のベクトル利用して体を回転。 そしてその遠心力を使った回し蹴りを叩き込んだのだ。 ミカエルの手から離れたレーザーブレードをキャッチし、燐はミカエルの胸の中心を穿つ。沈黙。 "勝者、燐。" スクリーンに静かにジャッジAIが下した勝敗が表示された。 ~鳳凰杯篇その4?~
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戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -07 楽屋 リゼ「どーもー。主演のリゼだよーん。」 イオ「監督のイオです。」 リゼ「この話、細かい設定一切なしなのねん。 皆様で、どういう場面かをどうぞ考えてくださいって方向で。」 イオ「それから・・・マスターが勢いで作ったということなので、お見苦しいこと、どうかご容赦を。」 リゼ「そろそろ本編も進めてもらわないとね。ねぇ、ヌシさ・・・あれ?」 イオ「ふとんの中はマオチャオのぬくもりとか言いながら寝てしまいましたよ・・・」 リゼ「まぁ、いっか。 あたしもヌシさんと寝るー!」 イオ「あ、こら! 監督の私をさしおいて・・・」 かくして、夜は更けてゆく。 <<トップ へ戻る<<
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花型ジルダリア コアユニット: 得意武器 投刃 苦手武器 短剣、大剣、斧 素体: LP SP 攻撃 命中 回避 防御 機動 重装 暗視 水中 耐熱 △(1) ★(6) △(2) ○(3) ○(3) △(1) ○ △(30) △ ○ ○ 基本装備 武器 名称 系統 重量 攻撃 命中/HIT数 射程 必要 準備 硬直 スタン ダウン スキル・効果 属性 備考 モルートブレイド 剣(両):近 3 260 180/3HIT 0~80 - 40 60 0 50 - 無 - アレルギーペタル 槍:近中 3 280 150/2HIT 50~150 - 70 180 120 80 [攻]アナフィラキシーショック 無 - フレグランスキラー 短銃:近中 2 260 125/1HIT 70~140 - 60 50 140 0 - 無 - ポーレンホーミング 短銃:中 2 245 100/7HIT 100~200 - 80 80 50 0 - 無 - グラースプアイビー 長槍:近中 3 220 150/1HIT 80~150 - 50 150 150 0 [攻]フラクシャスバインド 無 - 防具 名称 系統 重量 防御 対スタン 対ダウン 索敵 回避 機動 攻撃 命中 対水 耐熱 必要 スキル NORMAL 属性 備考 トランクチェストアーマー ボディ 2 40 30 - - 20 - - - - - - - ○ 無 ブルーミングガーデン(2)/6 バドヒップアーマー アセンブル(腰) 2 10 5 - - 10 - - - - - - - ○ 無 ブルーミングガーデン(3)/6 セパルヴァンブレイス L/R アセンブル(肩) 1 5 5 - - 5 - - - - - - - ○ 無 ブルーミングガーデン(4)/6 リーフガントレット L/R アセンブル(腕) 2 5 5 - - - - 15 - - - - - ○ 無 ブルーミングガーデン(5)/6 ルートグリーヴ L/R フット 2 - 10 - - 20 5 - - - - - - ○ 無 ブルーミングガーデン(6)/6
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第4話 「night-4」 西暦2041年 5月21日 23:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 シンと静まり返った公園内の大池の端の桟橋で何人かのオーナーと神姫たちが集まっていた。 チーム名「アルファ艦隊」 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 オーナー名「伊藤 勝成」♂ 70歳 職業 古物商店主 □ 航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 オーナー名「金川 登」♂ 40歳 職業 模型店長 □重巡洋戦艦型MMS 「マキシマ」 SSランク「ワルキューレ」 □重巡洋戦艦型MMS 「ヴィクトリア」 SSランク「砲女神」 □巡洋戦艦型MMS 「ノザッパ」 Aランク オーナー名「野木 恵」♀ 24歳 職業 ネオニート □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス オーナー名「立花 一樹」♂ 24歳 職業 事務機営業マン □夜間戦闘機型MMS 「ツクヨミ」 Aクラス オーナー名「衛山 進」 ♂ 24歳 職業 物流設備管理者 □ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス □ステルス戦闘機型MMS 「アネット」 Aクラス オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員 □ 剣士型MMS 「ノロヴァ」 Aランク □ 騎士型MMS 「バートリー」Aランク □ 戦乙女型MMS「オタリア」Sランク □ 悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク □ 戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク □ 戦闘機型MMS「カグラ」 Aランク □ 天使型MMS 「レコア」Sランク □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク 桟橋に横付けしてある巨大な航空母艦型神姫の甲板でナターリャが煙草を一服する。 ナターリャ「・・・・」 ナターリャはぼんやりと暗闇の湖を眺める。 桟橋の上でガヤガヤと騒ぐ完全武装の神姫たち。ガチャガチャと武装を鳴らしてあにやら喚いている。 金川「夜帝?夜帝だとォ!!!」 小太りの男性が上ずった声で叫ぶ。 アオイ「な、あの夜帝だってェ!!そいつが今日の相手かよ」 ツクヨミ「ま、マジかよ・・・やべえ」 戦闘機型のアオイとツクヨミは目をまん丸と開いて叫ぶ。 ノザッパ「なんだぁ、てめえら知ってるのかよ」 マレズ「有名だぜ、夜帝はよォ・・・こりゃ下手すると全滅すッぞ」 立花「その夜帝ってそんなにヤバイのか?」 衛山が肩をすくめる。 衛山「あんまし聞いたことねーな」 金川「き、君たちは知らないのか・・・」 アオイ「真夜中の12時にしか現れないSSS級のランカーだ。何がヤバイってこいつは本物だからだ」 衛山「本物?何が?」 ツクヨミ「ガチで最強なんだよ・・・夜間戦闘でアイツに勝てる神姫は存在しねえ・・・」 マレズ「ああ・・バトルロンドではソイツは夜中にしか出没せず、遭遇することはめったにないから今まで存在はあまり知られてないのもあるが、一番の理由は対戦相手をほとんど一撃であっという間にすれ違いざまに撃破していくので姿を見ることも不可能だ。倒された神姫は相手の姿を見ることが出来ないので実際には存在しない架空のランカー神姫だと思われていたぐらいだ。姿を見ることも出来ずにぶっ殺されるんだよ・・・」 衛山「ええええ!!?」 アオイ「SSSランカーの武装神姫を舐めるなよ、連中は他の武装神姫とは一線を画している。イリーガル神姫とか、そんなチャチで生易しいものじゃないんだ。違法改造された強化イリーガル神姫よりも数万倍も恐ろしいのが連中、SSS級のランカー神姫だ・・・この関西地方になんで、イリーガル神姫がいないのか理由が分かるか?」 立花「し、知らん」 アオイ「ほんの一握りのSSS級ランカー神姫が一匹残らず喰い殺したからだ・・・今から戦う相手はそんな連中なんだ・・・」 ツクヨミ「はあーーーエライことになったぞ」 ノザッパ「もう、お前らそんなこと言うなよ!!アホ」 金川「おう、なんてことだ・・・」 今宮「上等じゃない」 スラッとしたスーツを着た今宮が、缶コーヒを飲む。 今宮「SSS級と言っても所詮は、一体の神姫・・・今日は戦艦型神姫もいれば航空母艦型もいる・・・艦載機も数は十分、ざっと見ただけでも数十体はいる。1個機動MMS艦隊を丸々投入するんでしょ?」 立花「おおー遥、お前も来ていたか」 衛山「久しぶりー」 今宮「立花に衛山、野木までいるの?ちょっとした高校の同窓会かな?」 今宮のカバンの中から黒い神姫が顔を出す。 フェリア「どうやら着いたようですね」 アネット「どうせ、またろくでもない神姫と戦うんだろうさ・・・」 ため息をつくアネット。 今宮「今日の相手はSSS級のランカー、『夜帝』よ」 アネット「そらきた」 フェリア「・・・上等じゃない・・・」 野木「よく来てくれた遥、立花に衛山、君たちの力が必要だ」 野木がひらひらと手を振る。 立花「SSS級だって?勝てるのかよ」 野木が甲板にいるナターリャに指を指す。 野木「今日は諸葛亮のような優秀な軍師を呼んだ。SSS級の将校型MMS、ナターリャ将軍だ」 ナターリャがぴっと敬礼をする。 ナターリャ「ナターリャだ。今宵のバトルロンドは私が航空母艦内で指揮を取る。諸君らは神姫のサポートをお願いする」 立花「なるほどね」 今宮「高級将校か、贅沢の極みだな。おまけに戦艦型に航空母艦型神姫もいやがる」 衛山「一体なにがはじまるんです?」 ナターリャ「第三次世界大戦だ」 ブオオオーブオオオオー ツラギが汽笛を鳴らす。 桟橋に集まる神姫たち。 ナターリャがカツカツと靴音を立てて、ツラギの甲板に上がる。 ナターリャ「諸君 私はバトルロンドが好きだ」 虚ろな目でつぶやくナターリャ ナターリャ「諸君 私はバトルロンドが好きだ」 ナターリャ「諸君 私はバトルロンドが大好きだ」 殲滅戦が好きだ 電撃戦が好きだ 打撃戦が好きだ 防衛戦が好きだ 包囲戦が好きだ 突破戦が好きだ 退却戦が好きだ 掃討戦が好きだ 撤退戦が好きだ 平原で 街道で 塹壕で 草原で 凍土で 砂漠で 海上で 空中で 泥中で 湿原で このバトルロンドで行われるありとあらゆる戦闘行動が大好きだ 戦列をならべた砲台型神姫の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ 空中高く放り上げられた敵神姫が効力射でばらばらになった時など心がおどる 戦車型神姫の操るインターメラル3.5ミリ砲が敵戦車型神姫を撃破するのが好きだ 悲鳴を上げて燃えさかる武装から飛び出してきた敵神姫をM7速射拳銃でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった 銃剣先をそろえた歩兵型神姫の横隊が敵神姫の戦列を蹂躙するのが好きだ 恐慌状態の新兵神姫が既に息絶えた敵神姫を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える 敗北(サレンダー)主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない 泣き叫ぶ慮兵達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるアルヴォ軽機関銃にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ 哀れな抵抗者達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを装甲列車型神姫の列車砲撃が都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える 圧倒的な物量の機甲MMS師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ 必死に守るはずだった仲間たちが蹂躙されむごたらしく殺されていく様はとてもとても悲しいものだ 機動MMS艦隊の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ ヘリ型神姫、戦闘攻撃機型神姫に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ 諸君 私はバトルロンドを地獄の様なバトルロンドを望んでいる 諸君 私に付き従う武装神姫戦友諸君 君達は一体何を望んでいる? 更なるバトルロンドを望むか? 情け容赦のない糞の様なバトルロンドを望むか? 鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」 桟橋に集結した神姫たちが叫ぶ。 『バトルロンド! バトルロンド! バトルロンド!バトルロンド! バトルロンド! バトルロンド!!!バトルロンド! バトルロンド! バトルロンド!バトルロンド! バトルロンド! バトルロンド!!!』 ナターリャ「よろしい ならばバトルロンドだ 我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ だが起動してきてから戦い続けてきた我々にただのバトルロンドではもはや足りない!! 大戦争を!! 一心不乱の大バトルロンドを!! 我々はわずか1個機動MMS艦隊 数十人に満たぬ武装神姫にすぎない だが諸君は 一騎当千の古強者だと私は信仰している ならば我らは 諸君と私で軍集団となる!! 我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう髪の毛をつかんで引きずり降ろし 眼を開けさせ思い出させよう SSS級のランカーに恐怖の味を思い出させてやる 連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる 天と地のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる 桟橋にいる神姫たちが胸を叩く 神姫「CSC、CSCの火だ!!」 ナターリャ「我々の戦闘団でバトルロンドを燃やし尽くしてやる」 神姫たちが叫ぶ。 「将軍、閣下、将軍殿、指揮官殿!!艦隊指揮官殿!!!将軍、閣下、将軍殿、指揮官殿!!艦隊指揮官殿!!!将軍、閣下、将軍殿、指揮官殿!!艦隊指揮官殿!!!将軍、閣下、将軍殿、指揮官殿!!艦隊指揮官殿!!!」 野木「なんだこれ?」 立花「うわあ・・・」 衛山「武装神姫のノリってようわからんわ」 ナターリャ「そこ、うるさいよ」 ナターリャが苦笑いをするオーナーたちに指を指す。 今宮「はいはい、どうぞ続けてください将軍」 ナターリャ「SSS級のランカーMMSでさえ、恐怖で怯え、逃げ出すようなバトルロンドを!!」 すっとナターリャが手を掲げる。 ナターリャ「さあ・・・諸君、地獄を作るぞ・・・時間、合わせ・・・5・4・3・2・1・・今!作戦開始!!」 神姫たちがタイマーをセットする。 野木「リアクターに火を入れろ」 マキシマ「こちらマキシマ、機関始動」 ノザッパ「ノザッパ、出港します」 立花「アオイ、エンジンの暖気は?」 アオイ「へへへ、十分だぜ」 金川「ツラギ、錨を上げよ」 野木が呆れた顔でナターリャに聞く。 野木「おい、将軍閣下殿?作戦開始と言ったが、作戦名はなんだ?」 ナターリャ「ミッドナイトブルー」 野木「どういう意味だ?」 ナターリャ「ミッドナイトブルー (Midnight Blue) は色のひとつ、直訳すると「真夜中の青」となる」 野木「ほっ!そりゃぴったりの作戦名だな」 野木はシンと静まりかえった湖に照らし出され濃いブルーに包まれた湖を眺める。 ナターリャ「ミッドナイトブルーだ」 暗闇の桟橋から出港する・・・・艦隊を見送るオーナーや神姫たち・・・・ 23:30 アルファ艦隊は出港した。 それが見送るオーナーや神姫たちにとって最後に見た姿だった。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第5話 「night-5」 ? 前に戻る>・第3話 「night-3」 トップページに戻る
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戦うことを忘れた武装神姫 その12 ・・・その11の続き・・・ 「在庫じゃないんだからああぁあぁぁ!!!」 ひときわ大きく絶叫すると、イオはLC3とツガル装備のHEMLを取り出した。 さらには妙なコードを取り出すと、背中の翼に載る推進器と、LC3・HEMLを接続。右手にはLC3、左手にはHEML・・・それぞれを片手で軽々と扱うその姿は、もはや武装神姫ではなく、武装鬼神・・・!!! 「な、ななな・・・そんなこけおどしが通用すると思っているのか!」 大型の射出型パイルバンカーを取り出し、すぐさま一発打ち出すディサ。だが、撃ち出されたされたパイルは、イオまで到達することはなく「消滅」した。 先端が真っ赤になっているLC3・・・そう、推進器のエネルギーの大半を、両手に持つ得物へそそぎ込み、機材の限界をはるかに越える弾を撃ちだしているのだ。そして、エネルギーの強さのみならず、速射の能力も-。 「オラオラオラ!!! ちょこまか逃げるんじゃねぇ!!!」 左右の得物が、あり得ないレベルの弾を射出し続ける。ディサは、反撃する隙すらも与えられず、当たったら即・分解されかねない弾の雨の中を必死に逃げるのみ。時折かすめる弾により、自慢の特別装飾が施された鎧が徐々に変形し、溶けていく。 フィールド上は地獄絵図だった。厳かな雰囲気を醸し出していた柱や台座は粉々に粉砕され、ダミ−とはいえきらびやかな財宝の入っていた宝箱はあとたかもなく消滅。 「どこだ、どこへ逃げた!! 出てこい!!!」 粉塵でフィールドが煙る中でも、イオは乱射を止めようとしない。 『やむを得ん・・・ディサ、アーマー解除! 軽装モードにて待避せよ!』 サイトウが叫ぶ。ディサは鎧を捨て、粉塵に紛れイオの背後になるような立ち位置を探る。やがて、イオのLC3が限界を超え、アラートがなると同時に銃口が溶解。続いてHEMLも銃身が真っ赤になり、射出不能となった。 「ちっ・・・軟弱な機材だぜっ!! ・・・ん?やつはどこへ行った?」 蹴り飛ばすように両の手の得物を捨て、ディサを探す。・・・すでにその時、ディサはイオの真後ろに飛び上がれる位置へと移動していたのだ。 『今だ、行けっ!!!』 タイミングを伺っていたサイトウに命令を受けたディサは、飛び上がり掘り出したパイルバンカーを構え、イオの真後ろに狙いを定めた。 (取った!!!) そうディサが思った瞬間だった。 「ふん、後ろか・・・」 イオは呟くと、翼の角度を調整し、推進器の噴射口がディサへ向くように、瞬時に調整。あれだけ乱射をしながらも、各種センサー類はしっかりと機能させていた。 「Good-Bye,Baby-Girl.」 迫るディサを横目でちらりと見ると、悪魔のような笑みを浮かべて推進器をフルパワーに。 「ぁ・・・うわあぁぁあああああ!!!」 推進器からの猛烈な熱風の直撃を受けるディサ。重量のあるパイルバンカーを抱えて飛び上がっていたこともあり、バランスを崩して背中から落下。 「がはっ!」 鎧を着けていなかったこともあろうか、しばらく動くことすら出来なかった。 ディサがようやく体を起こすと、イオが静かに目前に降り立った。 「まだだ、まだだぁっ!」 ディサはまだ地に足を着けていないイオめがけ、自慢の俊足を活かし、大柄な太刀を振り上げ斬りかかった。かえでの猫子・ティナの腕を斬り落とした、あの太刀だ。。。 フィールドの脇では、その光景にギャラリーモニターを見ていたかえでが思わず叫んでいた。 「イオ、逃げてー!!!」 あの日の記憶がよみがえったのか、ティナは顔を伏せ、かえでの服をぎゅっと掴んでいる・・・ キィン! 金属と、別の物質が当たる音が、フィールドの外までも聞こえてきた。 「何ぃっ?!」 「・・・甘ぇんだよ・・・。」 太刀は、イオに届いていなかった。イオが手にしていたのは、なんと酒瓶! 銘柄は地元の酒造メーカー「澤野伊」生一本。イオの大好きな逸品である。 イオはその酒瓶を軽々と振り回し、太刀VS酒瓶という、異色のチャンバラを演じる。やがてダメージがボディーブローのように効果を示し、さらにイオの気迫に圧倒されたディサは徐々に押され気味となり、 ・・・ざくっ 太刀がはじき飛ばされ、天井に突き刺さった。 得物をすべて失い、にじり寄るイオに対し何も出来ない・・・ 腰の力が抜け、へたり込むディサ。 「てめぇがあたしに『在庫』っていう筋合いは無いんだよ! あぁん?」 手にした酒を含みながら、ティナの目前に立つイオ。 「わかったか・・・ わかったら返事しろっ!!!」 「は、はいぃっ!!! 申し訳ありませんでしたっ!!!」 頭を地面にゴリゴリこすりつけて土下座をする。 「おぅ、そういやお前・・・ ティナって猫子の事、覚えているな?」 恐怖に歪んだ顔を持ち上げ、イオを見上げつつ首を縦に振るディサ。 「あいつがどれほどの恐怖を味わったか・・・てめぇにはわかるか?」 酒瓶に口を付け、ぐっと一口含んで栓をすると、左手で瓶をポンポンと叩く。 「まぁ、分からなくてもいい。 今ここで分からせるだけだからなっ!!」 と、手にした酒瓶を振り上げるイオ。ディサの目に、今まで一度も浮かべたことの無かった涙がわき上がった。 ・・・ディサに、戦意はかけらも無くなっていた。 もう、これ以上はなんになるの? なんでそこまでするの? お願い・・・ 助けてっ!! 頭が砕かれるっ!!! ・・・が、いつまでも衝撃は来なかった。 「・・・少しは分かったか、やられる側の気持ちが。」 酒瓶は、ディサの頭上スレスレで止まっていた。 「あ・・・・・・ わ、分かりましたああぁっ!!!」 「よーし、それでいい。」 再び、地面にゴリゴリと頭をこすりつけて土下座のディサ。イオはその様子をジャッジマシンにアピールする。 「ディサ、戦意喪失により戦闘続行不能。勝者、アーンヴァル・イオ!!!」 判定が下され、試合終了。 わぁっ! とギャラリーが盛り上がる。 その声に、ふっと我に帰ったイオ。瓦礫の中でキョロキョロと廻りを見渡すと、 「あら・・・やだ、私ってば・・・またやっちゃったの・・・? えっ・・・皆さん見ていました? いやー! 恥ずかしい。。。」 いつもの調子でクネクネ恥ずかしがる。 そのあまりのギャップに、モニターをみていたギャラリーも一斉に固まってしまう。 もちろんかえでとティナも、目を丸くして茫然と見る事しかできなかった。。。 「まるで普段は優等生ぶってる『レディース』の頭のだな、おい・・・。」 その姿に、久遠はちょっと恐怖心を抱いていた。それは、神姫たちも同様であった。ぼそり呟くリゼ。 「なぁ・・・イオには・・・逆らわないようにしような・・・。」 エルガとシンメイも、その一言に強く首を縦に振るのであった。 ・・・>続くっ!>・・・ <その11 へ戻る< >その13 へ進む> <<トップ へ戻る<<