約 5,017,193 件
https://w.atwiki.jp/tsundereidayon/pages/332.html
騙されやすい彼女 俺の彼女は騙されやすい。 とある日のこと、家に帰ると、ラッセンの絵を壁に飾って得意げにしていた。 「べ、別にあなたの部屋が殺風景だな~って思ったわけじゃなくて、 あたしが買いたかったから買ったんだからねっ!」 「いやそれはかまわんが、いったいどこで買ったんだ?」 「今日ちょっとアキ●バラに行ってみたら、駅前に小さな画廊があって、そこで勧められたの♪」 「ちょっっっおまっっそれ有名な詐欺画廊だっての」 「えええええっ! だ、だってこれほら、シリアルナンバー入ってるし」 「んなものは誰でもかけるっての。大体よく見ればこれカラーコピーってわかるだろ?」 「そ、それに『今ならバーゲンセールでお買い得だ』って進められたし……」 「芸術品がそこらの家電みたいにバーゲンやるわけねーだろ? 無茶苦茶きな臭いじゃないか。 まったく、ちょっとは鼻利かせろよ」 「……ふぅんだ。どうせあたしには目も鼻も無いですよ~だ」 いぢける彼女が愛おしく、そっと抱き寄せ口のあたりにキスをする。 そう、俺の彼女はのっぺらぼう。きれいなものに目が無いくせに目が利かず、鼻がないから勘もない。 お陰でだまされやすくてすぐいぢけるけど、ホントは優しい女の子。 おまけ 「……でもさ、口も無いのにどうしてこんな話に食いつくんだろうな?」 「ううっ……」 「あっ、そうか♪ 上に無くても下に」 「ジェノッサァーイッ」
https://w.atwiki.jp/god14/pages/1569.html
発言者:綾瀬香純 対象者:ヴァレリア・トリファ Dies irae香純ルートにて、トリファ神父との問答の中で出てきた、彼女の本質的な聡明さを如実に表す台詞。 基本的に香純は常人であり、本人の認識では蓮たちに迷惑かけてばっかりである。 だが香純は、だからといって、悩むのを辞めるのはおかしいと思う。 何にでも、逃げずに正面から受け止めたいし、考えたい。 本当に何をしたらいいのかを、いつも真剣に悩みたい。 失敗したり後悔しても、じゃあもういいやって、極論に走りたくない。 そういうのは、 「選ばされてる、気がするじゃないですか」 その結末は、きっと何かに転嫁してしまいたくなる。 永劫回帰の世界において、全ての人は予めその人生を決められている。言い換えれば選択肢を選ばされている。 特に、聖槍十三騎士団の面々は、メルクリウスから魔名や呪いという形でそのことを突きつけられ、実感させられている。 また、彼ら黒円卓の大半は創造・流出位階に達している……謂わば極論に走って「何か」に責任転嫁してしまった人間の代表格でもある。 香純本人は上記のことについては知らず、会話の流れで素直な本音をいっただけである。だが、だからこそ彼女のこの考え方は、トリファ神父に心の底からの尊敬の念を抱かせた。 香純はこの台詞のシーンのトリファ神父に限らず、櫻井螢やメルクリウスなど、非常に一途で、だからこそ頑迷な人物たちから、形は違えど高評価されている。 登場人物の殆どが異能を持っている中で、数少ない常人だが、決して無力でも無価値でもないことを示すセリフである。 これはマリィを除いて恋をしそうになったと水銀に言わせる月のように生きた太陽ですわ -- 名無しさん (2021-05-29 16 28 42) 第五神座での香純のポジションってどうなってんだろ?月にように生きる太陽ってことだから、邪宗門とは違うニッチな宗教の主神とか? -- 名無しさん (2021-05-30 14 48 31) それは香純の性格を表したものであって、本人は普通に生きて普通に死んでるだろ -- 名無しさん (2021-05-30 18 42 23) 神座自体がもう始まりから選ぶ余地が無いって酷いよな -- 名無しさん (2021-05-30 23 11 19) 第一神座はもうその極論しか生き残れないのですが -- 名無しさん (2021-05-31 18 18 00) 正田卿作品は好きだがちょっとうーんと思う所は人間なんだから転嫁したりどうにもならないから縋り付いたりする事だって有るんだし結局弱い者の立つ瀬を無くしちゃう所にはうーんってなるんだが私だけだろうか、勿論そう言うのに縋らないのは素晴らしいと思うけどさ -- 名無しさん (2021-06-10 01 26 57) ↑でも -- 名無しさん (2021-09-21 18 15 46) ↑×2ゴメン、ミス。でも、そのまま転嫁し続けたり、縋り続けるのは、もはや一時的な逃げでも処世術でもなく、ただの甘えだからな。別に、一時的な心の拠り所として転嫁したり、縋り付くのは正田卿作品は否定していないよ。ただ、いつまでも甘え続けちゃいけないと言いたいだけ。それを立つ瀬を無くしてる、世間に対して面目を保てなくしてると言うのなら、それはそれで正田卿作品も含めて、阿片おじさん案件だと思う -- 名無しさん (2021-09-21 18 33 31) ↑↑↑捉え方が違う。これは例えるなら足の不自由な人に他に頼るな自分の足で立てとか無理なことを言っているわけじゃない -- 名無しさん (2021-09-21 19 08 19) ↑送信ミス)周囲に迷惑かけてしまうけれど足が悪いんだから仕方がないと諦めて考えを止めるんじゃなくて、自分は何が出来るのか、自分を助けてくれる人に何を返せるかと考えて少しでも自分の意志で前に進もうってことでしょう -- 名無しさん (2021-09-21 19 13 14) 強者の理論を振りかざしても結局自分が弱ったときに跳ね返ってくるんだよな -- 名無しさん (2021-09-21 20 04 02) 何かのせいにしないままブッ潰れても本末転倒だとは思うけどな -- 名無しさん (2021-09-22 10 40 36) ↑そういった(他人の責任すら自分の責任に転嫁して背負い込みかねない屑兄みたいな)極端な例を持ち出すのも極論ではあるし、それを言い訳に責任転嫁しまくるのもいるしなぁ -- 名無しさん (2021-09-22 12 30 52) ↑↑それは、確かにその通りだけど、話がズレてないか? 別に、香純は「何かのせいにするな」とは一言も発言してないだろ? 「選ばされてたら、きっと、何かに転嫁したくなるから、自分に出来ることを自分の意志で決めたい」のであって、別に「転嫁するな」とは一言も言ってない。↑の人もコメしてるけど、「極論に走りたくない」と項目に書かれてるのに、「極論に走る」のは論点をすり替えているように見えるよ -- 名無しさん (2021-09-22 17 14 09) 正田の作品って弱い奴はさっさと死ねって感じだよな -- 名無しさん (2021-09-23 07 07 31) 弱者に優しくないのはまぁそうだが、じゃあヒエラルキーの頂点である神には優しいかというと最終的に自身の世界を巻き込んでの死が確定してるから別に強者にも優しくないという 観測者ですらただの虜囚ですし -- 名無しさん (2021-09-23 10 24 41) 常人でメンタルも強めだから、渇望なんていう現実逃避しなくても生きていける。そりゃ神父も水銀も賞賛しますわ -- 名無しさん (2021-09-23 11 44 05) このセリフをマグサリオンが知ったら、どんなリアクションをするのやら -- 名無しさん (2021-09-23 17 45 54) ↑お隣のミリィに対する閣下みたいになりそうやな⋯とは思った。勿論、最後は理解して殺す -- 名無しさん (2022-11-30 16 37 12) こういう奴ほどさぁ~上位者の都合で使いつぶされるんだけど! -- 名無しさん (2022-12-18 01 36 50) 正田世界で優しいというか気持ちよく生きて死ねるのは甘粕やバフラみたいな突っ切ったバカだけだからね -- 名無しさん (2022-12-18 17 23 00) 物理的な意味でなら、当てはまるんじゃねえの? 弱い奴はさっさと死ね理論 -- 名無しさん (2023-01-07 13 27 30) ↑×3 それが現実だし、香純も√によっては普通に殺されるからな。まあ、正田卿作品をプレイしてると、「真面目一辺倒で生きていけるほど、人間強くないぞ」って思うけどな -- 名無しさん (2023-04-20 14 39 20) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vipdepfs/pages/15.html
ここに名前晒して申請しよねwwwwwwwwww 申請した入ってるはいった -- 竹島幼女 (2012-11-15 12 52 46) はよ -- ぬるでぃ (2012-11-16 07 00 13) 第一に申請しました -- ラスボッシュ (2012-11-16 15 24 58) 申請する -- かんづめ (2012-11-17 23 56 25) はいったる 第二 -- アギト (2012-11-18 01 03 21) 第一いくわ -- せいどれい (2012-11-18 03 41 08) 第一で、よろしくです。 -- 春巻龍子 (2012-11-18 13 31 51) 第一ぶっこむわ -- 底辺 (2012-11-19 00 52 08) スレないからこっちに書くぞ申請すっぞおら -- 三十歳未経験 (2012-11-20 12 55 49) スレないからこっち書くぞ早く拾えちんこ -- maidpower (2012-11-20 19 36 06) スレ見当たらない新規ちゃんはよ -- おちびのちびた (2012-11-22 19 52 58) 作ったぞはよ -- 壁殴り系女子 (2012-11-23 13 28 59) まだ勢いあるなら今からはじめる。 -- 名無しさん (2012-12-08 22 26 05) 正月から新規ちゃんだよ拾え -- gomidori (2013-01-01 09 41 17) ギルド一覧にでてこないレベルも50になっちゃいました生き残りはもういないのか -- gomidori (2013-01-03 18 32 10) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/1627.html
【種別】 ローカルルール 【元ネタ】 17巻P140 【初出】 鎌池和馬スレッド236「とある魔術の禁書目録」 【解説】 拳銃に熱い紅茶をかけ、熱膨張で動作不良にする上条さんのニュースキルにして、決め台詞。 この新たなネタに、ネタバレ解禁日から熱膨張でスレ内は沸いた。 略してねぼし。 なお、一般的に考えるとありえなさそうな現象が故にネタとされたこの言葉だが、 鎌池和馬スレッド288,326において以下の様な考えが提唱されている。 ただし569の書き込みは「火薬が炸裂するのは薬室内で熱が伝わるのもその辺り」としておきながら、 「薬室には余裕が無いので熱膨張で動作不良が起きる可能性がある」という真逆のことを言っているので、 考証としてそもそも問題がある(なぜならもしそれが起こりえるならオートマチック拳銃など連射した日には動作不良おこしまくりである)。
https://w.atwiki.jp/roborowa/pages/250.html
認めるということ ◆vPecc.HKxU 「ハァッ……ハァッ…………っ」 どこまでも続く暗黒の天と地の狭間。 無明の世界をエックスはただひたすらに走る。 エックスの足に硬いものが当たる。 それらは散らばっているは破壊された、哀れなレプリロイド達の残骸。 機械片が、動力炉が、一つ一つのレプリロイドを形作っていたもの達が転がっている。 そんな世界を、終わることなき道を走りどこへ行こうというのか。 それはゼロにもシグマにも、駆けるエックスにすら分からない。 当てもなく、果てもなく。 ただ走るエックスの前に立ちはだかる巨大な影が現れる。 「エッ……クス………!!」 「……ッ! マグマード・ドラグーン !?」 暗黒色の水の中から姿を見せる、マグマように赤い、 竜の姿を基調としたレプリロイドがエックスの前に手をつく。 エックスの記憶に残るその姿は雄雄しく力強い拳の持ち主であった彼の姿。 だが、突き出たパーツ、断面から覗く細かいコードなど、 それは今は見る影もないまでに酷い有り様であった。 続いて同じように壊れた何かがエックスの周囲に現れる。 「ックス………」 「……エッ…くス……」 「エックス……!」 「クリスター・マイマイン…、ストーム・イーグリード、スプリット・マシュラーム………」 エックスが口にする名前の数々。 それはどういった形であれ、エックスの目の前で散っていったレプリロイド達であった。 ドラグーンと同じく無残に破壊されたイレギュラー。 それらは5…10…20…と次第に増えてゆき、とうとうエックスの周囲全てを覆った。 「みんな………俺は…っ…俺はっ…!」 エックスはそれら全てを覚えている。 誰もが誰も、ただ破壊だけを目論む者達ではなかった。 話し合えれば、分かり合えれば、今も共に戦う友であれたかもしれないその者達。 彼らの存在をエックスは決して忘れない。 それ故にエックスは苦しみ、悩む。 彼らがエックスを取り囲む中、レプリロイド達の影からある1人の姿が浮かび上がる。 「…………」 「!? お前は……!?」 それは白と赤のスーツを身にまとい、額から2本のアンテナを伸ばしていた。 大仰なベルトを腰に巻き、手にはエックスが見たことのないはずの棒状の武器を構える。 その男の名を、エックスはこう呼んだ。 「…X………」 己と同じ名を持っていると思わせるその男の目から血がたらり、と垂れた。 それはXの足元に落ちて弾ける。 そしていくつもの血の雫が垂れては落ち、漆黒の空間を赤く色づけてゆく。 「……………エックス」 エックスもまたXの名を呼ぶ。 だが、2人の言葉は同じであれど、発音も語感もまるで違う。 「!?」 スチャ、とXが手に持つ棒状の武器を剣状に変える。 エックスはそれを見てXから距離を置こうとする。 だが、その足には無数のイレギュラー達の残骸がまとわりつき、身動きが取れない。 亡者達に引きずり込まれる感触― 死の予感を確かにエックスは感じた。 (ゼロ…ソルティ……X………俺は……) Xがその剣を振りかざす。 エックスはかろうじて構えたバスターをXのその胸に……… ◇ ◆ ◇ 「……………スさん! エックスさん!」 「………………ぅ」 自分の名前を呼ぶ誰かの声でエックスはおもむろに目を開ける。 視界がボヤけていて誰なのかよくわからない。 ただ、目の前の人物は緑色の髪の………… 「……ソルティ、かい?」 「よかった…気がついたんですね。うなされているみたいだったので…」 エックスの視点が定まったときには、安堵するソルティの姿がそこにあった。 なぜソルティがここにいるのか。 エックスはそれに対し大方の推察をし、言うべき言葉を捜しつつ問う。 「ここは…?」 「あっ、えっと、ここです」 そう言い、ソルティは手持ちのPDAに地図を表示させ、指差す。 それを見てエックスは自分がXと闘った学校付近からシャトル発着場へ運ばれたことに気付いた。 随分と長い距離を移動している。 エックスは辺りを見回すが、室内にソルティ以外の姿はない。 あの後、どうなったのだろう? 当然ながらの疑問がメモリーに浮かぶが、 それよりも先にソルティに言うべきことがある、とエックスは思った。 「あの後いやな予感がして、すぐ引き返したんです。 そうしたらアルレッキーノさんと会って、エックスさんが倒れてて…」 「…どうしてテレビ局に向かわなかった?」 「………っ」 思いがけない静かで厳しい口調。 ソルティが小動物のようにびくりと体を震わせ、胸に拳を当て縮こまる。 「確かにあの時は言わなかったから危険だと分からなかったかもしれない。 けど、俺が信じられなかったのか?」 ソルティの行動結果など全く気にしていないと言わんばかりの言いよう。 当然それらは八つ当たりなどではない。 自ら進んで危険へと飛び込もうとしたことへの叱責。 「俺をここまで運んでくれたことは感謝してる。けど、ソルティがしたことは…」 無謀だ、とはっきりと言い放つ。 涙目になるソルティを見て、エックスはこれでいい、思った 結果としてアルレッキーノと共に負傷したエックスのもとへ駆けつけることができたとはいえ、 エックスを信じることができなかったのは事実。 もしこれで少しでも行動を自重してくれるのなら多少恨まれてもいい。 対するソルティは、怒られるのは好きな性分ではない。 エックスのその厳格な――ロイに似た目線を逸らせるものならば逸らしたい。 だが、敢えてそこから逃げるような真似はしなかった。 ―したくなかった。 「私もエックスさんと同じです。助けられる人は助けたい。 悪い人でも死なせたくない。そう、思いましたから」 たおやかに、それでいて力強くソルティは言い放つ。 失いたくないから。取り零したくないから。 その言葉の意味するところは単純にして明快。 裏打ちを持たない理由だけにそれは強い。 そしてそれはエックスが志すそれと相違なかった。 エックスが気絶する以前とは何かが違った。 その正体は分からないが、この娘はきっと意思を曲げないだろう。 それならば、とエックスはそれ以上に追求しなかった。 「そうか……厳しく当たって悪かった」 その後に続いて「すまない」とひと言。 そのままエックスは黙って再び閉じる。 ソルティが例え不安定ながらも自分の意思をしっかり持ってくれたことへの嬉しさ。 また戦いに向かわなくてもよい者が戦場へ招かれてしまうことへの無情さ。 それが自分の力不足が招いたということへの嫌悪。 そして全ての元凶であるシグマへの怒り。 見た目だけでは分からない、様々な感情が彼の中に渦巻いていた。 それらを整理すると、エックスはしっかりとその記憶をメモリーに焼き付ける。 過去に散ったもの達の記憶と共に。 再び目を開けたエックスは凛とした表情でソルティに向かう。 「現状が確認したい。俺が気絶していたときのことを話してくれないか?」 ◇ ◆ ◇ 「……―放送はそれで終わりです」 ソルティの話した死亡者の内容にメモすると、エックスはPDAの画面を閉じる。 10名。 その中にゼロはいなかった。 だが、それだけの想いがシグマの目論見のために消えていった。 そして、エックスはそれを止めることができなかった。 中でも気になったはXのその後の顛末。 エックスは、ソルティが自分と共に倒れているXを危険人物と判断し、 自分だけをここまで連れてきたのかと思っていた。 だが、真相はソルティと共に駆けつけたアルレッキーノという者によってトドメを刺された、という。 死んだ10名の中にXの名はなかったが、恐らく推測は外れていたのだ、とエックスは思う ソルティづてに聞いたアルレッキーノの言葉は確かに正しかった。 恐らく自分よりも優秀なイレギュラーハンターなら、ゼロならばそうしただろう。 だが (また、俺は無力だったのか……) エックスの言う力。 それは敵を打ち倒す物理的なパワー――イレギュラーでも、イレギュラーハンターでも持っているものとは違う。 救える者を救う力。 それが自分にはなかった、とエックスは思っていた。 アルレッキーノの行動は、力無きもののための無力な行動。 夢の中でエックスが放とうとしたバスターと同じなのだ、と。 結果としてXは死に、止めることはできなかった。 打ちひしがれるエックスに、ソルティは戸惑う。 エックスは強い意志の持ち主だ。 恐らくソルティがその場に居ずともいずれは立ち直ることだろう。 だが、ソルティは自分にできることを探す。 言葉でも、行動でも、できる何かを。 そして 「………………~~……~…♪」 「……?」 鼻歌。と言うには無粋か。 ソルティの口元から、微かなメロディーが漏れる。 それを聞き、エックスが一瞬驚いたような顔をしたのを見て、ソルティは歌を止める。 だが、エックスの「そのまま続けてくれ」と言うような頷き見て続けた。 ひと言で表現するならば、それは「優しい」歌だった。 歌詞を知らないであろうソルティが一生懸命に奏でるメロディー。 それは、ソルティが完全な機械である、ということを忘れさせてくれるものであった。 そのうち、ソルティの歌が終わる。 「その歌は?」 「ローズさんって言う私のお友達が歌ってたんです。 この歌を聞くとなんか落ち着くんだー、って。だからエックスさんにも…って」 「?」 おっかなびっくりにソルティが問う。 ソルティ自身少し空気が読めてなかったと思ったのかもしれない。 「ダメでしたか?」 おっかなびっくりにソルティが問う。 ソルティ自身少し空気が読めてなかったと思ったのかもしれない。 「いや、ありがとう。確かに、落ち着いたよ」 だが、そんな不安を拭うようにエックスは笑顔で答えてみせる。 そんな何気ない行動が自分のパワーだ、とでも言うように。 実際にそうなのかもしれないが、その真相は製作者でなくば分かるまい。 いや、或いは製作者ですら分からない未知の"何か"かもしれないが。 「ソルティ。俺と一緒に戦ってくれるかい?」 「……はい!」 エックスは確かに感じた。ソルティから「救う」力を。 【D-5 シャトル発着所内/1日目・午前】 【エックス@ロックマンXシリーズ】 [状態]:疲労大、全身に大きなダメージ [装備]:無し [道具]:支給品一式、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 赤い仮面@現実 [思考・状況] 基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す 1 シャトル発着場を捜索。 2 ソルティと共に戦うがギリギリまで無茶はさせない。 3 X……本当に死んでしまったのか? 4 ゼロと合流(ゼロは簡単には死なないと思ってるので優先順位は低い) [備考] ※神敬介の名前を、Xだと思っていましたが、勘違いだったと思っています。 また、神敬介が死んでしまっていると考えています。 【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】 [状態]:健康 強い決意 [装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン 紫の仮面@現実 K S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ、神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険 [思考・状況] 基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す 1 シャトル発着場を捜索。 茶々丸と言う人物が着たら合流したい。 2 ロイさんやローズさんの元に帰りたい 3 ミラクルショットはエックスがOKというまで出来る限り撃たない。 [備考] ※スラッシュクローの武器チップの事をエックスに言い忘れています。 ※マッハキャリバーをただの首飾りと思っています。仮に詳細を知った場合、操れるかどうかは不明です。 ※参戦時期はアニメ10話~11話です。 ※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。 ※神敬介が死んでしまっていると考えています。 時系列順で読む Back 破壊戦士物語 Next 怪人タイプゼロ C-6ブロックの決斗! 投下順で読む Back missing you true Next 怪人タイプゼロ C-6ブロックの決斗! 077 Strays in the dawn ソルティ 105 鬼【イレギュラー】(前編) 077 Strays in the dawn エックス 105 鬼【イレギュラー】(前編)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2864.html
(準決勝・実況席) 恒子「さぁ、準決勝先鋒戦前半戦もいよいよ大詰め、オーラスを迎えました! ここまで下馬評通り宮永選手の圧倒的リードで進んでおります」 恒子「対して新道寺、かなり大きなマイナスを背負っています。これは苦しいか!」 健夜「さすが宮永選手、だね。おととしよりも去年、去年よりも今年、着実に進化してる」 照『リーチ』 123s4567778p發發發 恒子「おぉっと! オーラスで駄目押しのダブリーが入った!」 健夜「しかも4面張。豪快なフィニッシュになりそうだね」 煌『……』 『煌手牌』 125m289s23369p東南 ツモ南 ドラ4s 健夜「うーん、これはもしかしたら新道寺の子から出ちゃうかもね。手なりで打つなら9筒が不要牌だし」 恒子「なるほどー。さすがプロ生活20年ともなればそれぐらいの予想はお手の物だね」 健夜「だからアラフォーじゃ……って、ずいぶん長考だね」 恒子「まぁねー。これだけ点数取られた状況でダブリーかかっちゃ無理もないか」 健夜「俯いて……ちょっと震えてる。大丈夫かな?」 煌『……』 煌『……』 煌『……』スゥ 健夜「ん? 深呼吸してる?」 恒子「出しちゃうのかな?」 煌『……』ギリッ 煌『ッ!』打5萬 恒子「ブッ!」 健夜「こ、これはずいぶんと思い切ったね」 恒子「す、すこやん。これはどういう打牌なのかな?」 健夜「うーん、おそらく123の三色とチャンタ、ピンズ一通とピンズの混一色を見た一打……かな?」 健夜「この格好から5萬周りを引いても高い手にはならないからね。 赤頼みも阿知賀の彼女がいる状況じゃ望み薄だし。だったら手役を作らなくちゃいけないとなると」 恒子「5萬切りってことかー。でも、この手牌から? まぁ、点数取り戻すために高い手狙うのはわかるけど、うーん」 健夜「そうだね。ダブリー入っている状況でやるにはなかなか勇気があるというか無謀だけど……成就、するかなぁ」 (新道寺控室) 姫子「は、花田ってあんな豪快な一手が打てる奴だっけ?」 美子「」ブンブン 仁美「驚いたわ」ポカーン 哩「(……そか。そうだな)」 哩「(花田、頑張れ。お前の意地、見しぇてやれ)」 (会場) 照「(随分脂っこいところを通してきた……。でも、この待ちだったらいずれ)」カチャッ 煌「……れ……ない」打8索 照「?(何か言ってる)」 煌「ま……ら……」打9索 煌「………れない」打2索 煌「……け………」打1萬 煌「………れ……」打2萬 照「(この子……危険牌を6枚も……!)」 煌「……」打5索 煌「……」打6萬 煌「……」打東 煌「……」打發 玄「(新道寺の人が突っ張ってくれてるから安牌には困らないけど……)」パシッ 怜「(あの宮永照のダブリーの前にここまで……)」パシッ 照「(引けない……嫌な、感じがする)」パシッ 煌「っ!」チャッ 煌「……9筒。暗カン」 照「(私の待ちの一つを……!)」 煌「……けられない」打中 照「えっ?」 煌「決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです」 煌「今更出て行って、私の言葉は届かないかもしれないけど。強くもない先輩ですけど。それでも、それでも」 煌「先輩として……かわいいかわいい後輩と」 煌「どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです」 煌「だから」 煌「だからっ!」 煌「だから、ここで、負けられないんです!」ギッ 煌「リーチっ!」打2筒 照「(追いつかれた!?)」 玄「(嘘……ダブリーを掻い潜った)」 怜「(ありえへん……)」 照「くっ……」ツモ5筒 照「(アガれない……! しかもこれはっ!)」パシッ 煌「ロンッ!」 『煌手牌』 3335567p南南南 カン9999 ドラ4s、中 煌「リーチ、一発、南、混一色、三暗刻……こんな場でも、乗るものですね。裏3で24,000」 (白糸台控室) 尭深「嘘……」カシャン 誠子「わっ、尭深! 湯呑湯呑!」 菫「……初めてだ」 淡「えっ?」 菫「あいつが、照が三倍満に打ち込んだのを初めて見た。そもそも跳萬以上に振り込むこと自体、いつ振りか」 淡「……新道寺の先鋒は実績もなくて、捨て駒だって話じゃなかった?」 菫「あぁ、そのはずだった。そのはずだったんだが……」 誠子「途中までの打牌も平々凡々だったのに」 菫「なんだ。いったい、あの選手に何があったんだ?」 (実況席) 恒子「」 健夜「こーこちゃん、しっかり」 恒子「はっ。あまりのことに思わず言葉を……」 健夜「危険牌12枚切って三倍満打ち取りだからね。しょうがないよ」 恒子「いや、出来過ぎでしょ」 健夜「うん、私だって普通に宮永選手がアガって終了だって思ってたもん」 恒子「でも結果として、あのチャンプが三倍満放銃とは……」 健夜「あの子の打牌にすごく強い意志を感じたよ。想いや意志で麻雀が勝てるなら苦労はしないけど、それでも」 健夜「それがなくちゃ、勝てないときもあるんだよね。本当にすごかったよ」 (会場) 煌「はぁ、はぁ、はぁ」 怜「(えらい消耗しとるな。あんな真似すりゃ無理もないか)」 玄「(負けられない……か)」 ――――決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです ――――どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです 玄「……私だってっ!」 照「?」 玄「私だって、負けられないのです。決勝に行って、会わなくちゃいけない人がいるんです」 玄「大切な、大切な友達で」 玄「そこまで長い付き合いじゃなかったかもしれないけど、それでも大切な友達で」 玄「だからっ、私だって!」 玄「絶対に、負けれないんです」ゴッ 煌「……」コクリ 怜「なんや、二人して熱くなって……」 怜「……ふふ」 怜「でもこういうの、嫌いやないで。こっちも……負けてられんなぁ」ゴッ 照「(この子たち……!)」 (観客席) 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……優希」 優希「……なんだじぇ?」 京太郎「あの、新道寺の人って中学の時の先輩なんだって?」 優希「そうだじぇ」 京太郎「……いい先輩だな」 優希「うん……後輩思いで面倒見がよくて、世話になったものだじぇ」 京太郎「そうか……和」 和「……なんですか」 京太郎「あの阿知賀の人が……」 和「はい、昔の友人です」 京太郎「いい人だな」 和「はい、あんなに私のことを想ってくれてるなんて正直思ってもみなかったです」 京太郎「そうか、よかったな?」 和「……はい」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……決勝、何が何でも行かなくちゃな」 和「……ええ」 優希「……そうだな」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 3人「(どうしよう……)」 (会場某所) 照「……」 菫「お疲れ、照」 照「うん」 菫「何とか2着通過だったな。危なかった」 照「……ごめん」 菫「な、なぜ謝る?」 照「本当は私がもっと点数を叩きたかったけど……7,000点しか稼げなかった。前半戦のリードを大分食いつぶされたから」 菫「謝ることではないだろう、プラスはプラスだ。だけど、正直驚いた。照が準決勝でここまで手こずるとは」 照「その……」 菫「いや、別に攻めているわけじゃない。本当に驚いただけ」 照「……」 菫「……私は」 照「菫?」 菫「私は照とあの清澄の大将の関係はよく知らない」 照「っ」 菫「デリケートな話なんだろ? だから無理に聞き出そうとはしない。だけど……聞いてるんだろ? あの話」 照「……」コクリ 菫「で、これはさっき試合後に聞いたんだが、新道寺と阿知賀の2人はどうやら 清澄のメンバーと知り合いらしいな。……だから、会って話がしたいと」 照「……」 菫「本当になのか。本当だとしたら、どうしてそんなことになってしまったのか。 大切な友人だから、かわいい後輩だから、できるなら止めない。泣かせる話だな」 照「……何が言いたいの?」 菫「阿知賀は勝ったが新道寺は落ちた。私たちはあの子の願いを踏みつけて行くわけだ」 照「……菫」 菫「わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ」 照「せお、う?」 菫「きっと、話をして、できるなら止めたいんだかったんだろうな、あの子は」 照「多分」 菫「で、だ。……お前だって、話したい子がいるんじゃないか。あの話を聞いていたってことは何も感じなかったことはないと思うが」 照「……」 菫「……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 照「えっ?」 菫「『妹』なんだろう?」 照「っ」 菫「『姉』として、『家族』として、できることができるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか」 照「……」ウツムキ 菫「悪かった。ズケズケとプライベートなことに踏み込んだことは謝る。だけど、考えてみてほしいんだ。頼む」 照「……うん、わかった」 菫「そうか、よかった。……さっ、何か食べて帰るか?」 照「うん」コクリ 京太郎「今日こそは……」 我等が清澄高校の準決勝を翌日に控えた夕暮れ時、本日は部員一同ゆっくりと過ごすこととなった。 こんな状況なので人目を気にしているというのもあるが、最近はいろいろありすぎてみんな疲れ気味だ。 和などは最近は掲示板の内容に目を通しつつ怒ると言う大変不毛な行為を繰り返している。 見るのをやめればいいもののどうしても気になるそうな。 俺もホテルでゆっくりしていようと思ったが、どうしても行きたいところがあったのでこうして東京の街を歩いている。 京太郎「さて、今日は居るかな?」 財布の中の小銭を確かめながら、俺は目的地であるゲームセンターに足を踏み入れた。 入り口に設置されているクレーンゲームや大型筐体には目もくれず、 比較的奥に設置されている格闘ゲームのコーナーに足を向けた。 休み中なので俺と同じような高校生と思われる人間も多い。 その人ごみをかき分けながら、筐体の一つ一つに目を向ける。 京太郎「居たっ」 思わず口に出てしまう。 プレイヤーネームに『AwaAwa100』という表示。 筐体の向こう側でプレイしているため顔は見えないが、間違いなく彼女だ。 相変わらずのえげつない腕で、俺の目の前で対戦している少年が操作しているキャラクターを固め殺している。 京太郎「あの6Cを1発目から小パンで……」 考えてきた対策を軽く口に出して復習する。 まぁ、この状況で分かったと思うが俺はリベンジにやってきたわけである。 大会始まる前の期間にぶらりと寄ったゲーセン。 せっかく東京に来たんだからと軽い気持ちでよくやっている格ゲーをプレイしてきたときに乱入してきたのがこいつだ。 正直自分の腕はそこそこあると思っていたが、そんなプライドをメタメタのギッタギタにしてくれたのがこいつだ。 負けも負けたり20連敗。しかも対戦していたのが自分と同じぐらいの女の子とあっては凹みに凹んだ。 あれから何度か対戦を挑んでいるが今のところ全敗である。 しかし、この前対戦した時は惜しいところまで行ったのだ。 最終セットまでもつれこみ、大技が入ってコンボを完走すれば勝ちというところだった。 京太郎「まさか、残影牙拾いに失敗するとは……牙昇脚にしておけばよかったなぁ……」 あとちょっとで勝ちというところで痛恨のコンボミス。 そしてグチャグチャっとなったところであえなく敗北した。 思わずうがーっと叫んだところで、お互い顔ぐらいは知っている程度に対戦していたが 会話はしたことがないはずのあいつにこう言われたのだ。 ?『コンボミスをすることで勝ち確を逃すことができるwwwwwねーねーアレ落とすってどうなのwwwwww今どんな気持ちwwwww』 人は言った。格闘ゲームは人の性格を悪くする、と。 若干記憶が脚色されている気もするが、ファーストコンタクトがこれだからかわいい女の子といえども印象最悪である。 で、そう言われて顔真っ赤になった俺は懲りずにこうやってリベンジにやってたのだ。 ちょうど目の前の少年がパーフェクト勝ちをされ、肩を落として席を立った。 俺は入れ替わるように席に座ろうとして、気になっていたことを思い出し、筐体の向こう側を覗いてみた。 ?「~♪」 そこにはCPUを相手に楽しそうにコンボ練習をする姿。癪な話だがかなりの美少女、というやつだろう。 そうやって、改めて顔を見直して俺は確信した。 京太郎「(……やっぱり)」 3人で観戦したAブロックの準決勝。 観客席から見つめる画面の向こうに、俺をぼっこぼこにした奴が白糸台の大将として恐るべき実力を発揮する姿があった。 その立ち振る舞いは負けた俺を煽る姿とは一致せず、思わず呆気にとられたものだ。 京太郎「(白糸台の大将……大星淡、だったか。麻雀も強くて格ゲーも強いとかなんだよそれ)」 この世の不公平さを嘆きつつ、俺は100円を入れてカードを筐体に読み取らせた。 今日こそは勝ってやる。 こうやって負け続けるのは精神衛生的にも財布の中身的にも大変よろしくないからだ。 (対戦中) 京太郎「っつつつ」ガチャガチャ 淡「画面端ごあんなーい。固めるよー」ガチャガチャ 京太郎「あぶねっガードできた……」ガチャガチャ 淡「ふーん、大分頑張ってきたみたいだねー」ガチャガチャ 京太郎「ここで暴れてッ」ベシベシ 淡「あっ、やばっ」イタイニャス 京太郎「中段通った!」イキマスヨ、ジャヨクホウテンジン! 淡「立った! 立ったって!」ガチャガチャ 京太郎「よっしゃ! ここで蛇翼からODでっ!」コレカラガホンバンデスヨ! 淡「あーあ、さすがにこのセットは取られたかな」ガチャガチャ 京太郎「よし、これで蛟竜で締めれば……あっ」ガチャガチャ 淡「あ、繋がってない。んじゃ、美味しくいただきますっと」ニャスニャス 京太郎「あああああああああああああああああ! 保障高過ぎだろぉぉぉぉぉ!」ディストーションフィニッシュ! 京太郎「」 結論から言おう。 負けた。負けました。10連敗しました。 しかも何戦かは勝ちが見えてたのにお手手プルプルしてコマンド入力をミスるとかいうあまりにもアレな負け方。 ベッコベコに凹まされて現在は自販機コーナーのベンチで自棄コーヒー中である。 京太郎「ふぅ」 いつもよりコーヒーが苦く感じる。これが敗北の味というやつか。 完全に負け癖がついてしまった。家庭用が出たら練習しよう。 長野に帰る前に1度ぐらいは勝ちたいなぁ。 湯だった頭でそんな風に取り留めのないことを考えているときだった。 淡「ねーねー」 京太郎「俺?」 淡「そうに決まってるじゃん」 話しかけてきたのはあいつだった。 というかまともに話しかけられたのはこれが初めてだったからちょっと戸惑ってしまう。 そいつは探るような視線を俺に遠慮なく向けながら口を開いた。 淡「ねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど、いい?」 京太郎「別に、いいけど」 淡「清澄の須賀京太郎って、あんた?」 考えてみれば当たり前の話だ。 相手も麻雀部員だ、例の噂を聞きつけていて居るのは当然だろう。 だが、あの噂が流れていることを知ってから他校の人間とこうやってまともに話すのは初めてなので、 内心めんどくさいことになったな、とちょっと焦る。 京太郎「……そうだけど」 淡「やっぱり? ネットの画像の通りだ。へー、ふーん」 そう言いながらジロジロと上から下まで品定めするように見てくる。 こいつ(いいよね、こいつならこいつ呼ばわりで)は礼儀というものを知らんのか。 このゆとりめ。いや、俺もゆとりだけど。 一方的に聞かれるのもしゃくなので、ちょっと反撃してやる。 京太郎「そういうそっちは、白糸台の大星淡さんだよな?」 淡「へぇ、私のこと知ってるんだ」 京太郎「準決勝、見てたしな。うちが決勝に行けば、当たる相手だし」 淡「なるほどねー。いやー、有名になるのも大変だー」 ケラケラと笑うこいつを見て驚きの表情一つも見せないことにげんなりする。 こいつ大物だわ。 それともただのバカなのか。 個人的な所感では間違いなく後者。 うん、確信。 京太郎「で、何の用だ?」 淡「あ、もしもしテルー? うん、そう、いまね……」 京太郎「聞けよ」 俺の問いには答えず目の前の珍種は気づけば俺を無視して電話を始めていた。 思わず乱暴な突込みが入ったけど、いいよね。同い年だし。 黙って帰ってもいい気がしたけど、それはそれでめんどくさいことになりそうだし、仕方なく電話が終わるのを待った。 淡「うん、それでね、大会が終わったらね……」 淡「それでね、たかみーが抹茶ケーキを……」 淡「ケーキといえば駅前のモールに……」 淡「そうそう、Aちゃんに彼氏が……」 淡「この前会ったんだけど、なんかすごい電波で……」 淡「哲っちゃん達者で打ってるかいってブツブツ言いながら体がプルプル震えてて……」 京太郎「お前何の話してるんだよ」 5分間我慢したんだけどもういいよね。 横で聞いてる限りどう考えても俺と関係する話をしているとは思えない。 付き合ってられんとばかりに踵を返そうとしたとき、そいつは俺の顔を見て『あっ、やっば忘れてた』って顔をした。 淡「あっ、やっば忘れてた」 京太郎「おい」 一点読みが通ったのにまったく気持ちよくない。 というか俺はこんなツッコミキャラだっただろうか。 部の皆といるときは結構ボケるほうだと思っていたのだが。 淡「うん、そう。噂の清澄の、うん、会いたいって言ってた」 淡「そうそう、そいつ。今ゲーセンに居るよ」 淡「あっ、ゲーセンに行ったことはスミレには黙っておいてね? また怒られるから」 淡「うん、それで、どうする……うん、うん」 淡「わかった、あそこだね。りょーかい」 俺を置き去りにすることたっぷり10分。 俺は途中で痺れを切らしクレーンゲームでぬいぐるみを3つ取ってで 『妹の彼氏を姉が寝取り泥沼になった姉妹に挟まれ精神崩壊する彼氏ごっこ』をして遊んでいた。 彼氏が追い詰められた挙句の自殺後、葬式帰りに二人が刃傷沙汰になるという佳境のシーンでこいつはようやく電話を切った。 即興のシナリオにしてはなかなかいい出来だと思う。 なんかの賞にでも応募してみようか。 淡「明日なんだけど、ちょっと時間ある?」 電話を切って一言目がこれ。 単刀直入である。突然すぎて色気も何もあったもんじゃない。 女の子の誘いだからもっとテンションが上がってもよさそうだが心はコールアングレの音が響く 中央アジアの草原のような穏やかさである。 こいつはあれだ、優希と同じカテゴリだ。 京太郎「うち、明日試合なんだが……?」 淡「自分が出るわけじゃないでしょ。それに開始前に時間は調整したから問題なし!」 京太郎「おい」 返事を聞く意味があったのだろうか。 あと、そろそろ殴っても文句は言われないだろうか。 淡「明日10時に会場最寄駅の横にある喫茶店で人が待ってるから。じゃ、よろしくっ!」 そう言ってそいつは振り返り帰ろうとする。 俺はそれを呆然と見送りかけたが肝心なことを聞いてないことに気づいてあわてて声を掛けた。 京太郎「ちょ、ちょっと待てよ。待ってるって、誰が!? 何で!?」 淡「んー?」 俺の呼び止めの声にそいつはくるりと踊るようにその場で回って、少し考え込むようなそぶりを見せる。 うーん、とちょっと考え込んでいるような声が漏れて聞こえてきた。 淡「何でかは私もよくわかんない。一度話がしたいーって言ってたのを聞いただけだから。あと、誰が、だけど」 そこまで言うと、不意ににやっという音が聞こえそうな感じで笑った。 その笑い方がなかなかにピッタリで、ちょっとというかかなり可愛くて、正直ドキッとした。 した後ですごく悔しくなった。謎の敗北感である。 淡「うちで一番有名な人、っていえばわかるでしょ?」 京太郎「それって……」 淡「じゃあね、絶対行ってよ! それともっと練習してきなよー。コンボミスりすぎっ!」 びしっと指を突き付け、そう言いながらあいつは去って行った。 俺はあまりに突然の事態に呆然とそれを見送るしかなかった。 京太郎「一番有名な、人」 そう言われると心当たりは一人しかいない。 しかし何故、という気持ちが大きい。 麻雀を始める前からおぼろげにその存在は知っていた。 だが、所詮はそのレベルの話であってお互い面識もないのに突然どうしてなのかが全く分からない。 意図が読めない。 行くべきなのだろうか。 部の皆には話すべきなのか。 そんな感じにもやもやしたものを抱えながら俺はホテルへ足を向けた。 淡「あ、そうそう」 京太郎「どわっ! なんだよ、いきなり戻ってくるな!」 淡「そのぬいぐるみ、かわいいね。ちょーだい!」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……ほら」 淡「え、本当にくれるの?」 京太郎「……暇つぶしで取っただけだし」 淡「やった、ありがとう! じゃーねっ!」 うん(困惑) うん(現状認識) うん(把握) なんだあいつは(戦慄) 新種の生命体と対話した次の日、俺は予定時間の15分ほど前に指定の店に着いていた。 部のメンバーはもうそろそろ会場入りしているころだろう。 俺はこのことを報告するか悩んだが、結局黙っていた。 ここに来ることを適当にごまかして、皆とは現地で合流する手はずになっている。 本来であればこんな状況だしちゃんと話すべきだと思ったんだが……。 京太郎「言えないよなぁ、やっぱり」 あの癖っ毛たくましいポンコツ娘の顔を思い浮かべると、どうしてもその気になれなかった。 そんな感じで、心にしこりを抱えながら水をすすっているとドアベルが小さく鳴った。 ちらりと視線を向ける 京太郎「(あぁ、やっぱり)」 まさか、という気持ちはあったが、やはり想像通りの人がそこにいた。 その人は店内をきょろきょろと見回し、俺の姿を見つけるとゆっくりと近づいてくる。 そして、少しの沈黙の後に口を開いた。 ?「須賀、京太郎君?」 京太郎「はい、そうです」 ?「はじめまして、宮永照と言います」 咲、やっぱりお前には言えないよ。 お前のお姉さんと会ってくるなんて。 咲に姉がいるのは知っていた。 それと同時に二人の間に簡単に口に出せないような『何か』があるのも知っていた。 そもそも離れて暮らしているのだ、いろいろあるんだろう。 中学の時、家族の話になったら咲が露骨に辛そうな顔をしていた時以来、咲に家族の話はしないようにしてきた。 友人とは言え、触れてはいけないところ、触れてほしくないところってのは誰にだってあるだろう。 そう、だからここに来ることを言えなかった。 照「来てくれてありがとう」 京太郎「いえ……」 俺の向かいの席に座る……この人を何と呼べばいいのだろう? 宮永さん? 当たり障りないが、咲のことを名前で呼んでるせいでなんとも変な感じだ。 照さんとか? いや、初対面で下の名前は馴れ馴れしすぎだろう。 チャンプ? お互いに恥ずかしすぎだろ。 あいつが言ってたテルー? 命を大切にしない奴はうんにゃらっていうあのセリフを思い出すな。 どう口火を切ればいいのかわからず俺は手元の水に口を付けた。 照「何か飲む?」 京太郎「あ……えと、はい」 照「コーヒーでいい?」 京太郎「大丈夫、です」 どうにも緊張する。 そもそも女の子と二人でお茶をするなんて初めて……いや、咲は例外ね。 いや、女の子っていうのも何か微妙だ。 相手は年上の人だし、見た目からも『女の子』というより『女性』と言ったほうがしっくりする。 水を持ってきた店員さんに対して穏やかに注文する姿はとても大人っぽく感じた。 年齢としては2歳しか違わないのに、不思議だ。 店員さんが去った後は再び気まずい空気が流れる。 斜向かいの席に座っているおばさんたちの楽しげな笑い声が妙に耳に入ってくる。 目の前の人も同じく落ち着かないような感じだったが、一口水を飲んでから口を開いた。 照「突然呼び出してごめんなさい」 京太郎「いえ、別に……」 照「その、私のこと、知ってる?」 唐突な問いだった。 どういう意図なのか、どう答えるべきなのか。 どんな回答を求めているのか、何を聞きたいのか。 いまいちわからなかったが俺は頷いた。 京太郎「あの、俺からもいいですか?」 照「うん」 その一言を口に出すのは結構勇気が必要だったが何とか絞り出す。 京太郎「咲の、お姉さんですよね?」 俺の問いに少しの沈黙ののち、小さく頷いた。 わかりきっていたことだったが、これで確信に変わった。 確かによく見ると顔立ちとか少し咲に似ている。 ただ、纏う雰囲気は大違いなせいかあまりピンとこない。 店員「お待たせしました」 そうこうしているとちょうどコーヒーが運ばれてくる。 コーヒーは嫌いではないが砂糖なしで飲むほど俺の味覚は子供から脱却できていない。 テーブルの上にあったスティックシュガーをひとつ取り、コーヒーに混ぜていく。 向かいではどこか憂いを帯びた感じでコーヒーにミルクを入れる咲のお姉さんがいた。 普段周りにいる女性陣が絶対にしないようなその表情はちょっとドキッとする。 照「」サラサラサラサラサラ 照「」ドバー スティックシュガーを5本、ミルクピッチャーに入っていた2人分のミルク全部をコーヒーに投入しているのはちょっと気になるけど。 別に俺は入れないので俺の分のミルクまで使っているのは構わないのだが、甘すぎないのだろうか。 いや、それ以前にあれをコーヒーと呼んでいいのだろうか。カフェオレ? そういえばカフェオレの定義ってなんだろう? 照「」カチャカチャ コーヒー(?)を混ぜている咲のお姉さんを見ているとふと昔を思い出した。 咲も中学生の時に「京ちゃんが思ってるより私は大人なんだから!」とか強がってブラックコーヒーを勢いよく飲んだ結果、 チョコレートファウンテンの如く口からコーヒーを垂れ流したことがあったな、と。 そんなことを考えていると、俺の視線に気づいたのか、少し顔を伏せたまま口を開いた。 照「今日、来てもらったのは、その……」 そこまで言ってまた口ごもる。 若干の沈黙ののち何か思い悩んだ表情で手元のコーヒーカップに手を伸ばした。 何かを流し込むかのように、咲のお姉さんはコーヒーに口を付けた。 照「熱っ!」 そして、思ったより熱かったのか慌てて口を離し 照「あっ」 勢い余って手まで離し 照「あちちちちちちち!」ガシャーン! そしてコーヒーは見事に咲のお姉さんの胸のあたりにぶちまけられた。 床に落ちてけたたましい音を立てて割れるコーヒーカップ。 散らばる破片 照「あっつ! あっちゅい!」バタバタ 胸元にこぼれたコーヒーが扱ったのか慌てて胸元をつまみ服を肌から離している。 てんやわんやとはまさにこのことか。 俺は一瞬ポカンとするが慌てて手元のおしぼりを差し出した。 お姉さんはそれを受け取り胸元のコーヒーのシミを必死にこすり始める。 こするんじゃなくて叩かないといけないんじゃと思っていると仕事の早い店員さんが颯爽と飛んできた。 店員「お客様、大丈夫ですかっ!」 照「すみません、大丈夫です……」 店員「すぐに掃除いたしますので!」 照「本当にすみません……」 俺は店員さんが持ってきてくれたおしぼりで机の上を拭きながら、しみ込んだコーヒーと格闘している咲のお姉さんを見てふと思った。 ――この人、間違いなく咲のお姉さんだわ。 ――血は争えん。 それと同時にこうも思った。 ――こぼれたのが水だったら着けている下着ぐらいは見えたかな。 ほら、思春期真っ盛りだし、これぐらいの下心は許してもらえるよね? 俺は机をおしぼりで拭きながらそんな自己弁護に走っていた。 15分後、落ち着きを取り戻した俺たちは再び向かい合って座っている。 咲のお姉さんの手元にはサービスで用意してくれた新しいコーヒーがある。 照「それで、来てもらった理由は……」 大変シリアスな面持ちをしているが、胸元に広がる大きなコーヒーのシミがぶち壊しにしている。 白糸台の制服が真っ白ということもあり、大変目立っているのが悲劇以外の何物でもない。 何とも微妙なテンションに陥っていた俺だが、次の一言にはさすがに衝撃を受けた。 照「どうしても、謝りたくて。ごめんなさい」 そう言った後、頭を下げられる。 初対面の女性にこうやって頭を下げられる経験などあるわけがない俺は 京太郎「いや、えっ、ちょっと、へっ?」 当然キョドるわけである。 さっきの騒ぎで微妙に店内の注目を浴びてることもあり焦る。 ほら、さっきはあれだけ騒がしかったおば様方がチラチラとこっちを見ながらヒソヒソ話をしている。 そんな俺の返事を待たず、頭を下げたまま畏まり、重い口調で喋り始めた。 照「須賀君が今どういう状況に置かれているか、っていうのは聞いています」 照「私は妹と長く離れて暮らしているから妹がそんなに荒れてるなんて知らなくて……」 照「昔は気弱だったあの子がどうしてそうなっちゃったかはわからないけど」 照「でも……私が、近くに居たら止められたかもしれない。だけど、それが、出来なくて……」 照「だから、ごめんなさい」 下げた頭をさらに深く下げ、年下の俺に妙に丁寧だが絞り出すような謝罪の声を出すお姉さん。 ここまで言われて俺はようやく理解した。 京太郎「(姉として、妹の行いを謝罪してくれてるってことでいいんだよな)」 京太郎「(……すごく仲が悪いとか、確執があるのかとか勘ぐってたけど、そうでもないのか?)」 そうだとしたらそれはそれで大変喜ばしいことなのだが、そもそも謝る原因が大きな誤解だというのが大問題である。とんだ謝り損だ。 どう訂正したものかと頭を悩ませているとお姉さんはとんでもない右ストレートを繰り出していた。 照「その、私にできることは何でもします。だから……」 ん? 何でもする。 何でもすると言いましたよこのお姉さん。 恐らくはお姉さんとしては、現在の問題を解決するために何でもするっていう意味だろうけど、言っちゃったよ。 性に目覚め、色を知り、一番肉に飢えているこの年代の男の子に何でもすると仰いましたよ。 食事のシーンに定評がある某漫画でも言ってたよね、『強くなりたければ喰らえ』って。 つまり、わかるな? 和が知ったら斬刑に処された後、諏訪大社に必勝祈願の贄として捧げられそうなことを考えること10秒。 俺は脳内に繰り広げられたR-18劇場を若干名残惜しさを残しながら幕を下ろした。 京太郎「頭を上げてください。その、誤解なんですよ!」 照「……えっ?」 頭を下げ続けていたお姉さんはようやく頭を上げてキョトーンとした顔で俺を見てくる。 俺自身、この状況を誰かに面と向かって釈明するのは初めてなので若干混乱していたが、これまでのあらましを話した。 あくまで誤解であり、別に俺自身は虐げられてはいないということ。 せいぜいほかの学校でも下っ端がやるようなことをやっているにすぎないこと。 まぁ、多少からかわれることはあるけど苛められているとか、そういうことはないこと。 ほかのメンバーも別に北○の拳の登場人物やヤクザみたいなそれではなく、いたって普通の女の子であること。 むしろ彼女たちのおかげで俺は楽しく過ごせていること。 たっぷり20分ほどかけて、俺自身なんて説明するべきか若干悩みながらも説いていった。 照「……なるほど、言われてみれば確かにおかしい」 京太郎「よかったです、わかってもらえて」 照「咲が悪魔合体をして人修羅になったとか、冷静に考えればありえない」 京太郎「長野はボルテクス界ではありませんし、アマラ経絡とも繋がっていません」 照「須賀君もオリジナルはもう死んでいて実は3人目だっていう噂もありえない」 京太郎「生憎と人造人間のパイロットでもなければ電光機関の使い手でもないです」 どっかで聞いた設定だが、大方騒ぎに便乗した愉快犯が書き込んだのだろう。 現在流れている噂の9割方がそうだけれども。 と言うより、何故明らかにおかしい噂を信じちゃったのだろうか。 照「でも、よかった」 京太郎「えっ?」 照「さっきの須賀君の話を聞いて思ったけど……咲、みんなで仲良く、楽しくやってるんだ」 京太郎「はい、それは保証します」 中学時代は殻にこもりがちだったアイツが最近は社交的になった。 笑った顔を見る機会だって増えた。 そう考えると麻雀部に誘った俺としても誇らしいものがあり、胸を張ってそう答えられた。 照「須賀君のおかげかな?」 京太郎「俺だけじゃないですよ。ほかのメンバーや、他校のライバルたちのおかげですよ」 照「それでも、ね。ありがとう、須賀君」ニコッ 京太郎「(うぉ……)」 あまり感情の起伏が大きくない人なのか、ほんの口元が笑ったぐらいだったけど、今日初めて見たその笑顔にちょっと落ちかけた。 危なかった、服に広がるコーヒーのシミがなければ即死だった。 照「」モグモグ 京太郎「えーっと、宮永さん?」 照「照でいい」モグモグ 京太郎「じゃあ……照さん」 照「何?」モグモグ 京太郎「ほっぺたにクリームが」 照「」ゴシゴシ 誤解も解け、ひと段落したタイミングで俺たちは現在ホットケーキをつついている。 クリームとブルーベリーソースがかかったそれはなかなかに美味である。 どうやらこの喫茶店の一押しメニューらしく、照さんが奢るから食べたいと訴えたため、相伴にあずかっている。 本当はさっさと会場に向かうべきなのだろうが……。 照「それにしても、そんな噂が広まってるとなると、やりにくくない?」モグモグ 京太郎「はい。遠巻きから見られて白い目で見られるし、対局している人たちは怯えてるし……」 1、2回戦の阿鼻叫喚っぷりを思い出すと思わずため息が出る。 出場メンバーでもない俺ですらこんな始末だから、女性陣の心労はいかほどか。 京太郎「最初は放っておけば沈静化すると思ってたんですけど、なかなか……。少なくともこの大会中は消えそうにないですね」 照「うーん」モグモグ 京太郎「弁解しようにもネットに否定意見書いたところでほかの多数意見に流されて終わりですし、 かと言って参加者全員に一人一人釈明するのは無理ですし」 照「なるほど」モグモグ 京太郎「いろいろ部内でも考えたんですけど正直お手上げ状態で」 照「」モグモグ 京太郎「それで……」 照「」モグモグ 京太郎「……」 照「」モグモグ 京太郎「……美味しいですか?」 照「うん」モグモグ 聞いているのかホットケーキに夢中なのかよくわからない照さんは一応返事を返してくれる。 白糸台のレギュラーというのはマイペースな人間しかなれないという決まりがあるのだろうか。 照「わかった」 俺が雀力と性格の因果関係について考えていると、ホットケーキを食べ終えて表情は変わらないけど 心なしか満足そうな照さんが口を開いた。 照「正直、私もどうすればいいかわからない。だから私も帰って皆に相談してみる」 京太郎「皆って……」 照「うちのメンバー。ちょうどこの後Bブロックの観戦とミーティングだし」 京太郎「おぉ……」 天下の白糸台のメンバーが解決案を考えてくれるというのか。なんと豪華な。 レギュラーの中の約1名は全くアテにならないが気になるけど、まぁ、それはそれだ。 京太郎「でも、いいんですか? こんな面倒なこと」 照「うちは準決勝終わったから少し時間がある。それに……」 京太郎「それに?」 照さんは少し思い悩むような表情を見せる。 俺は残り1切れになった最後のホットケーキを口に含んでコーヒーで流し込みながら、返答を待った。 照「私は、咲のお姉ちゃんだから。それじゃ理由にならない?」 京太郎「……いえ」 その一言が聞けただけで、少し胸のつかえが取れた気がした。 ここ最近微妙な話ばかり聞いていたので余計にうれしく感じる。 照「ただ、このことは咲には黙っておいて」 京太郎「それはいいですけど……。ただ、その、ちょっとお願いが」 照「?」 京太郎「二人の間に何があったかはわからないですけど……よかったら咲が東京にいる間に、会ってやってくれませんか?」 照「……」 京太郎「咲、口には出しませんけど寂しがってます」 照「……うん」 京太郎「大きなお世話ってのはわかってます。何様だっていうのもわかっています。だけど……お願いします」 照「……わかった」 頭を下げた俺に照さんが返事をしてくれるまでに少し間があったが、肯定の返事が聞けたことにほっと胸を撫で下ろした。 大きなお世話だったかもしれないし、これが火種でまた争うことになってしまうかもしれない。 だけど知らんぷりを決め込むよりはずっとずっとマシなはずだ。 渡りに船とばかりに勢いで言ってしまったが、後悔はない。 照「じゃあ、また私から連絡するから、番号だけ」 そう言って照さんは携帯を取り出す。 妹はいまだに持っていない携帯だが、さすがに都会人は格が違った。 それにしもて、全国に行ったら女の子の知り合い増えるかなーと若干妄想じみた期待をしていたが、まさか叶うとは思わなかった。 色っぽい何かではないけれども、まぁ、それはそれだ。 照「じゃあ、行こうか。そろそろ時間でしょ?」 京太郎「あ、そうですね。そろそろいかないと不味いです」 時間を確認すると大会開始までにもうあまり時間がなかった。 さすがにこれ以上遅れると部長に叱られてしまう。 照「ここは私が」 京太郎「悪いですよ、そんなの」 いくら友人のお姉さんとは言え、会ったばかりの人に奢られるのもどうなのだろう。 そう思い、伝票を持って立ち上がった照さんを慌てて追いかける。 すると照さんは振り返って若干ふんぞり返る感じで口を開いた。 照「いいから、先輩に任せて」フンス ちょっとドヤ顔というか偉そうな顔というか、その表情が俺に対して偉ぶるときの咲に本当にそっくりで思わず軽く笑ってしまう。 しかたない、ここはおとなしく奢られておこう。 恐らく妹と一緒で、ここでさらに抵抗するとヘソを曲げてしまうだろう。 そう結論付けて俺は照さんにご馳走様です、とだけ伝えた。 そう言うと照さんは満足そうに伝票をレジのお姉さんに差し出した。 店員「お会計2400円です」 照「」ポケットゴソゴソ 照「」カバンゴソゴソ 照「」ポケットパンパン 照「」カバンバサバサ 照「」 照「財布忘れた」 京太郎「……」 照「……」 京太郎「……払っときます」 照「……ごめんね」 京太郎「いいですよ、(妹さんで)慣れてますし」 あの妹にしてこの姉有。 1時間にも満たない逢瀬だったのに、俺内カテゴリにおける照さんのランクが『年上の綺麗な女性』からグーンと下がり 『ポンコツ』(現在のところ咲のみ該当)に落ちて行ったのが悲しい。 現実の非情さと財布へのダメージに俺は涙を禁じ得なかった。 (白糸台控室) 照「遅れてごめん」ガチャ 菫「遅いぞ、照……ん?」 淡「テルー、なんで冬服着てるの? 暑くない?」 照「暑い。けど、コーヒーこぼして制服の替えがなくなったから……」ダラダラ 菫「……昨日カレーこぼしたばっかりだろ」 尭深「一昨日はチョココロネのチョコレートこぼしてましたね」 誠子「つまり全部クリーニングに出したから着替えがなくなったってわけですか」 照「そういうこと」 尭深「(この人は社会に出てちゃんとやっていけるんでしょうか……)」 淡「そう言えば、清澄の須賀、だっけ? 会ってきたんでしょ? どうだった?」 菫「お、おい。聞いてないぞ。昨日の今日で会ってきたのか!?」 尭深「だ、大丈夫でしたか?」 照「うん、何も問題なかった。と言うか……」 (説明中) 誠子「つまり」 淡「すべて誤解だったってこと?」 照「そう」 誠子「現実的に考えておかしい噂もありましたけど、もろもろひっくるめて全て嘘っぱちだったってことですか」 照「そうらしい。ひどい扱いの目撃証言もあくまで仲間同士でのじゃれあいレベルで 須賀君も別に怒ってるとかそういう認識はなかった」 菫「そうだったのか……」 尭深「まぁ、冷静に考えれば現実的にありえない話が多かったですし……」 菫「(ん、と言うことは……)」 ――前話より―― 菫『わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ』 菫『……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 菫『妹なんだろう?』 菫『姉として、家族として、できることがあるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか』 ――回想終わり―― 菫「(あああああああああああああああああ!)」 菫「(は、恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいい!)」 菫「(『妹なんだろう(キリッ』だってああああああああああああああああああああああ!)」 菫「(誰か私を殺せえええええええええええええええ!)」 誠子「先輩は何をもがいてるんだ?」 尭深「さぁ……?」 (5分後) 菫「で、だ。私たちに知恵を出してほしいと?」 照「うん」 誠子「でも、解決案って言われても……」 菫「部として付き合いのある、知り合いの記者に取り上げてもらうか? いや、面白おかしく扱われるのがオチか」 尭深「そう言う意味だと、下世話な雑誌とかにこの騒ぎが取り上げられると取り返しがつかないかも……」 菫「決勝で戦うかもしれない相手だ。できればそういうことは避けたいな」 誠子「やっぱり、一度広まった噂を鎮めるっていうのはなかなか……」 一同「うーん」 淡「へー、阿智賀の監督にプロ復帰の噂ねー。というか元プロだったんだ」パソコンカチカチ 誠子「皆で悩んでるってのに何やってんだ。ほれほれ」ムニムニ 淡「へいじぶぁんみるあいふぁにみへはだへだっへばー(掲示板見る合間に見てただけだってばー)」 照「何を見てたの?」 淡「麻雀関連のニュースに特化したサイト。飛ばしも多いけどなかなか面白いよ」 照「どれどれ……『小鍛冶健夜プロ、熱愛発覚』」カチカチ 尭深「ガセネタですね」 菫「即答はやめてさしあげろ」 照「『咲-saki-第12巻、本日2013年12月25日発売』」カチカチ 淡「皆買おうね!」 尭深「安易なメタネタはちょっと……」 照「『牌のお姉さん。WEBにて麻雀教室の生放送配信決定。新衣装お披露目に期待大』」カチカチ 誠子「荒れそうだなぁ……いろんな意味で」 菫「しかし、淡の言うとおり玉石混合だな。流石ネットと言ったところか」 尭深「あっ」ピコーン 淡「どうしたの? どっかのゲームみたいに頭の上にひらめきの電球マーク出してるけど」 誠子「抜刀ツバメ返し、最後までひらめけなかったなぁ……」トオイメ 菫「なんだその例え……。で、どうした?」 尭深「もしかしたら……この方法ならいけるかもしれません」 照「?」 尭深「かくかくしかじか」 (説明中) 菫「……おい、流石に不味いだろ」 淡「えー面白そうじゃん! 本人に断りを入れれば問題ないでしょ。そう、あれ、毒を持って毒を制す的な」 照「確かに、効果はありそうかも。部員全員を当たれば必要なものは揃えられそう」 誠子「元手もかからないし、まぁ、こっちの負担は少ないか」 菫「本当に上手くいくのか? 私は本人に会ったことないから何とも言えないが」 淡「大丈夫、あいつは何度か会ってるけど、性格上絶対うまくいくって! ね、テルー?」 照「……うん。それは、確かに」 淡「ねー、いいでしょ? 目立つところは私とテルーでやるし」 菫「しかし……」 照「菫」 菫「ん?」 照「お願い」ジッ 菫「うっ……」 照「」ジーッ 淡「」ジーッ 尭深「」ジーッ 誠子「」ジーッ 菫「あー……」 菫「まったく」ハァ 菫「わかった。わかったから、そんな目で見るな。私がまるで悪者じゃないか」 照「よかった、ありがとう菫」 淡「よし、決まりだね! じゃあ、さっそく準備準備ー」タタタッ 誠子「(不安があるとすれば淡が遊び半分だってことか)」 尭深「(大丈夫だよ、きっと、多分、おそらく)」 菫「うーん……」
https://w.atwiki.jp/initialdvswangan/pages/61.html
終電を逃した勤め人を乗せるタクシーの姿も大分減り、時折オールクリアの状態を見せるC1にFCの姿があった。 路面の継ぎはぎが車体を細かく上下に揺らす。 限界まで攻めるでもなく、かと言って中途半端に流すでも無い。 「こうしているとまだ走り始めた頃のコトを思い出すよな」 流れる景色を見ながら啓介が呟いた。 「どうした?急に」 「覚えてるか?兄貴・・俺がレッドサンズに入る前のコト」 「忘れるもんか 初めてお前をFCのナビに乗せた時ときたら・・・・地元では名の知れたワルが泣きそうになったのは笑ったぜ」 「しょーがねえだろ 俺だってあんな経験初めてだったんだから・・それからしばらくは兄貴の横に乗ってたよな」 「こうしてお前とタンデムするのは秋名以来だな・・あれからもう1年か 早い物だ」 ハンドルを握りながらこれまでの思いを馳せる涼介。 群馬最速を目指した遠征、拓海との出会い、プロジェクトD、そして首都高。 既にただ楽しいだけでは済まなくなった走るという行為、だがその中で得た掛け替えの無い物、それを継いでくれる仲間に対し 伝えられるのは走るという行為を通してのみ。 北の丸トンネルを抜け、赤坂STへ。 FCの車速が乗っていく。 「啓介・・今夜のタンデムがお前との最後のタンデムだ」 「え?」 「な・・待ってくれ兄貴!そりゃどういう意味だ!?」 涼介の突然の申し出に狼狽する啓介。 「そう泣きそうな声を出すな・・・・お前は俺の考える公道最速理論の完成型に限りなく近い 既に俺から学ぶ技術は無いだろう・・勿論またこうやって出かけるコトもあるだろう・・だが これからはお前がお前の意思で考え走る番だ」 「・・・・」 呆然とする啓介を乗せFCは芝公園方面へ抜けて行く。 迫る浜崎橋、200km台からのブレーキングにFCは鼻を沈める。 フロントに荷重がかかり切った事を確認し、ブレーキをリリースしながらブラインドの浜崎橋へ。 徐々にアクセルを入れ荷重をリアに移しながら加速を始めるFC。 「啓介・・だから今日はお前に伝える 走るというその意思を───!」 汐留めJCTに合流。 100kmを割る速度から再び加速を始めるFC、その時だった。 羽田線方向から聞こえる”音”を二人は聞いた。 FCのエキゾーストノートに重なり、飛び込んでくる音の主はFCの右をかすめ走り去る。 遭遇───ブラックバード。 「行くぞ!啓介」 戦闘態勢に入ったFCの追撃が始まった。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/60262.html
【検索用 あんまりやってるとよう 登録タグ 2009年 UTAU あ 曲 曲あ 欲音ルコ 穂歌ソラ 重音テト 釣られ獏P】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:釣られ獏P 作曲:釣られ獏P 唄:欲音ルコ・重音テト コーラス:穂歌ソラ 曲紹介 曲名:『あんまりやってると酔う』(あんまりやってるとよう) 歌詞 (動画より書き起こし) その万華鏡今何が見えてるの/カラーセロファン、ビーズ、スパンコール 絶えず変わるきれいな幾何学模様/見えるものは何一つ変わらない くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる その万華鏡今何が見えてるの/切り取った世界の欠片の増殖 複製のひとつで今何か動いた/ほんものはひとつ動かないのはどれ くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる 見えているものは世界の何もかも 見えてないものは世界のほとんど さあ何が見えているのか/いないのか 君にはもう/まだ わかっているの? その万華鏡まだ何が見えてるの/誰かの落し物セロファンにビーズ 映りこんで増殖する幾何学模様/本物丸ごとどこにいったの くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる くるくるくるくるくるくる/くるくるくるくるくるくる 足元ご注意(ころんじゃうよ) コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/3508.html
あの町は嫌いだった。 嫌で忘れたくて、それでもどうにもならない思い出ともいえない記憶がこびりついてるから。 毎日学校に通い、授業を受け、友達とだべり、そして帰りたくもない家に帰る。 何も新しいことなど始まらないだったのに。 朋也(……………) やたらと自然の多い場所だった。 山を迂回しての一々面倒な登校。 すべての山を切り開けば、どれだけ楽に登校できるのだろうか 直線距離を取れば、20分ぐらいは短縮できそうだった。 朋也(一日、20分……。するとそういやあの時は諦めたが一年でどのくらい、俺は時間を得することになるんだ…) 計算しながら、呆ける。 朋也(ああ、やっぱよくわかんねぇ……) 辺りに友達の姿は愚か顔見知りはいない。 本来であれば繁盛していて賑わっていてもおかしくないであろうショッピングモールがあった。 今日が休日というわけでもない。 つまりは…そんな買い物を出来るような状況ではない、ということ。 そんな閑散としたした光景を目の当たりにしても俺は焦ることなく、悠長に歩き続けた。 ……。 一度、立ち尽くす。 朋也「はぁ」 ため息と共にコンクリート固めの天井を仰ぐ。そして、視線を戻す。 視線の先には、何もなかった。強いて言うなら衣服がいっぱいあった。 特に俺は意に介さず、歩き進めようとする。 声「はぁ」 別のため息。俺のよりは小さく、短かった。 発生源である背を見ている。 そこには、俺の背でゴロゴロ言ってるなんとも惨めな女生徒がいた。 聞いた話だと同じ三年生らしい。 けれど見慣れない顔だった。当然の話だ、聞き慣れない学校の生徒だというのだから。 少し長い髪が、俺の背中で踊っている。 女の子「………」 何故だか知らんが怒った顔だった。 俺は特に衣服に興味がないから素通りしたが、こいつは違うのだろう。 こんな異例な場に置いてよくもまあそんなこと思えると逆に俺はその胆っ玉に称賛するよ。 女の子「うんうん……」 何かを自分に言い聞かせるように、目を瞑って、こくこくと頷いている。 女の子「………」 そして少女は目を見開く。 じっと、目の前に広がる衣服の山を見つめた。 女の子「おにーさんはさ、服が好きかい?」 名指しで指名される。 けど、俺に訊いているのではなかった。 一人で、誰ともなしに問いているのだ。 俺だったら、どう答えるべきなのだろうか。 女の子「ぼくはとってもとっても好きだぜ」 女の子「けどさ、たとえお気に入りの服があったところで何時までをそれを着るわけにはいかない」 女の子「なにもかもさ、変わらずにはいられないんだよ」 女の子「汚れるし、解れるし、そして流行おくれになるもんね」 女の子「たとえ高くても、お気に入りでも、安くても、杜撰でも」 女の子「変わらずには、いられないんだよ。その度にぼくは、泣きそうになる」 過去捨ててきた服を思い返しているんだろうか。 なんか泣きそうな口調で、話し続ける。はっきりいってどう対処すればいいのか困る。 女の子「それでもさ、服を一々好きできるのかなあ」 …………。 俺は思い出していた。 以前、俺は長い長い、校門へとつながる坂で、似たようなことを聞いたんだった。 尤もあっちの方が言ってることは高尚だったんだがな。 あの少女は、止まっていた。立ち止まっていた。立ち竦んでいた。けれど、前に進んだ。 ならば、この少女はどうなんだろうか。 この少女は、弱いんだろうか。……俺と同じ様に。立ち止まってしまうんだろうか。 女の子「ぼくは……」 朋也「だったら、もう一回見つければいいだけだろ」 女の子「うん……?」 少女の視線が、こちらに向く。 まるで、俺の言葉を待ってたかのように、嬉しそうに言葉を返す。 朋也「何回でも見つければいいんだよ。次の可愛い服とか、お気に入りの服とか」 朋也「というよりも服じゃなくたって嬉しいこととか、楽しいこととか、あるんだろう。なければそれも探せばいい」 朋也「おまえの楽しいことや、嬉しいことはひとつだけなのか? 違うだろ」 結局は、俺もまだ弱かったのだろう。 なにが支えになって、強くなったと錯覚していたのか。 この女の子に言うと同時に、俺自身に言い聞かせているのだ。 女の子「…………アハッ」 笑う。 そう。 何も知らなかった。何もできなかった無垢な頃。 誰にでもある。 朋也「ほら、行こうぜ」 俺は女の子を背に乗せたまま、歩く。 衣服売り場を目指して、坦々と歩き始める。 ○ 岡崎朋也は超がつくほどのお人好しだった。 岡崎朋也はどのように言っても不良だった。 反する性質。 善に位置する、一つの根源。 悪に位置する、一つの肩書。 上っ面の偽悪者。 故にこの現状を受け入れ難かった。 殺し合い。 生と生のもぎ合い。 生と死の奪い合い。 こんな現状が――――嫌で嫌でたまらなかった。 何も変わらない日常が、今では何故か恋しかった。 あんなに変わってほしかったのに。 あんなに終わってほしかったのに。 今では、この変わり果てた現実を前にしては、そんなのは戯言でしかなくて。 望んでいたがために、願ってしまったがために。 その激変を受け入れきれなくて。感情が溢れ出して。どうしようもなくて。 どうしようもなくて。 どうしようもなくて? どうしようもなくて、どうしたいんだろうか。 せっかく手に入った異常をぶち壊すのか。 三年という長い月日の間、ずっと待ち望んでいたものを、もう一度手放すのか。 その通りだ。 実際、岡崎朋也はこの異常は要らなかった。 不要。不必要。 どうにも扱いきれなくて、実感する。 夢は夢でしかない。それも悪夢。 早く目を覚ましたかった。目覚めるのが、いつものあの帰りたくもない家でいい。 そしてまた行きたくもない学校に行き、ぼんやりと過ごし、親友のいる寮へと足を運ぶ。 だから。 彼は殺し合いなんか、捨てたのだ。 現実逃避に逃げ込んだのだ。 弱さ故の、行動だった。 一度、幼き身体の少女と共に掴んだ強さは、儚げに見えた。 ○ 先に言っておくと、飯島遥光という少女は精神年齢が幼い。ついでに言うと身体的成長も乏しい。 病気とかではない。ただ単に家での環境や、根本的な遺伝子レベルの話なだけであって、深く考える必要はない。 とは言っても、彼女は既に、高校三年生。 永劫学院の三年生にして、熊本潤平と恋仲。 いや、主観的にみると確かにそうなのだろう。 両者が両者とも、恋に落ちたともっているし、愛している。 しかし客観的な事実では違う。 熊本潤平は飯島遥光を保護している。 そんな共通認識ができているのだ。 しょうがないのかもしれない。どうしようもなく釣りあうわけもないのだから。 幼すぎるが故に、それはもはやいじめの対象、そこまで言わずとも所謂“浮く存在”にまで自然と伸し上がった。 だからこそ、熊本潤平と出逢う前の彼女は直ぐ様孤立するようになる。 兎にも角にも冷たい印象のクラスだったのだ。実際は明るさも併せ持つクラスだったのだが、当時の彼女には関係がない。 遥光(………面白くないなあ) 学校生活が、相変わらずつまらないものであった。 相変わらずという継続する形を取ったのも簡単な話で中学のころからだったから。 だから、彼女は学校を転々と移動していたという経歴を持つ。 そんな典型的な虐められっ子体質。 だが、彼女は何時だって学校をやめようだなんて思わなかったし、 何時だって彼女は前向きに生きてきた。いじめに屈することなんて―――無かった。 たとえ面白くなくとも、その先に希望があると信じてやまなかった。 そんな中。 彼女は巡り逢った。 同じく孤独―――孤高を自ら貼っていた彼に。 性格の殻に悩まされていた熊本潤平に中学三年生の時に出逢った。 そして彼女は命じる。 特に出逢ったことのない人間だったけど、直感めいたものを信じて幼き彼女は、ただ言った。 子供がものをねだるかのように。 遥光「変態になってよ。そしてさぁ、ぼくだけのものになってよ」 潤平「いや意味分かんねえし」 類は友を呼ぶ。 悩まされる者たちは自然と引き合い、そして何時しか惹かれあい。 ロワイアルに参加させられるということになった。 ○ そして、岡崎朋也が飯島遥光を拾ったのは、ショッピングモールの衣服売り場。 淋しげに、怯えた感じに、隅っこで固まっていたのを見つけたのが始まりだった。 ○ 服売り場。 はあ、俺は何やってるんだろう。 早く古河や、春原と合流したいって言うのに。 なんで俺はこんな小さいガキと戯れているんだろうか。 朋也(………けど、なんか懐かしいな) 不思議だった。 今までこんなガキと遊んだ記憶なんて無かったのに。 思いとは裏腹に、懐かしかった。温かかった。 朋也(そういやさっきも………) さっきも、名簿を見たときもなんかそういう感じになったよな。 確か伊吹風子っていたっけな。その名前を見たとき、何故だか心が、チクリとした。 さながら恋に落ちたかのような……。 朋也(……バカバカしい) 本当にバカバカしい。 ありえない、名前だけ見て恋するとか俺はどれだけ情緒不安定な人間なんだ。 そう言う役柄は春原に任せるべきだ。 あいつなら女っぽい容姿してりゃあ、男でも惚れそうな勢いだからな。 朋也(さすがにそりゃないか) ていうかあったら困る。 俺が色々と危ない。せめてそういうのは柊勝平とかそんな名前の人に放り投げてほしい。 全国の柊勝平さんには申し訳ないが。 朋也(まあさすがにそんな都合よくいないだろうがな) と、ここで俺は視線を、現実へと戻す。 そうだった。 ここから、生き返らないと……それすらも叶わなくなる。 朋也(…………はあ) 心の内で溜息を吐く。 そして、目の前ではしゃいでいる女の子に目をやる。 しかしどうみても高校三年生には見えないな。 よくて中学の一年生にしか見えない。精神年齢はもっと低いだろうが。まあ春原とどっこいどっこいって感じかな。 妖怪(あんた、人がいないところでなにいってるんすかねぇ?!) なんか聞こえた気がするけど、いいや。 馬鹿(よくねえよ!) うっさい。幻聴。 本当春原の幻聴だけあるな。 金髪(金髪を馬鹿にすんなよっ! ………もういいです) なんか泣きながら立ち去る春原の幻影が見えた。 俺も疲れているのかな。 …………はあ。 遥光「みてください! おにーさん! 似合いますか!?」 そんなことを考えると、あの子がトテトテと可愛らしく走ってくる。 言われたのでみると、それは先ほどまでの制服から一変して、カジュアルなファッションだった。 うん、ファッションセンスはある。あとは素材の残念さがなければ完ぺきだったのに。 朋也「うん、似合ってる似合ってる」 遥光「投げやりですぅ! ―――うぅ、もっと可愛くなってやるぅ!」 というと、せっかく褒めてんのに制服をこっちに投げやって衣服売り場に逃げ込んだ。 ていうかもっと緊張感を持てないのだろうか。 朋也(…………いや) そこで俺は気付く。 思いのほか、自分がリラックスできていることに。 朋也(…………) 開始してしばらく俺は物にあったり、色々やってしまっていたが、今は割と落ち着いている。 あり得なかった。 朋也(…………まあ) 本当に、懐かしい。 もしも□吹□□と遊んでいたら、こんな感じになったんだろうな。 …………ん? なんだ今の記憶。 なにか、元に戻ったかのような。そんな感覚。 朋也「………はあ」 三度目のため息。 その色は、不思議と温かかった気がした。 ○ その一方の飯島遥光 遥光「うぅ…。おにーさんとはお友達になれそうなのに!」 ぼくは手当たり次第に服を手に取る。 せっかく、せっかく友達が出来そうなのに……ぼくって駄目だ。 がっかりさせちゃだめじゃんか! 服装を見せて喜ばせることすらできないなんて。 遥光「せっかく慰めてくれたのに………恩返しすらできないのかなあ………」 ぼくの声は小さく響く。 うぅ。うぅ。 隅っこで固まっていたぼくにせっかく手を差し伸べてくれたのに。 こんなぼくに。嫌われ者のぼくに。 なんの同情――――まあここにいるってこと以外の同情以外なく接してくれた稀な人なのに……。 ぼくってダメダメだ……。あぅ……。 ……潤ちゃんだったら、こういう時、どうするのかなあ。 あんなことやってて、退学にならないのは、やっぱり潤ちゃんの人徳故だと思うし、こういう悩み、無いんだろうな。 比べぼくは、人と関わったことがないから………。 正直言って、羨ましいなあ………。うぅぅ。 遥光「あ、そういえば………」 潤ちゃんのお部屋に前遊びに行った時、なんか本があったんだけど、 その時にあれの写真がいっぱいあったよね! きっと男の人はみんなあれが好きなんだよね。なにがいいのかよくわかんないんだけどさ……。うぅ。 けど恥ずかしがってちゃだめだよね。 ぼくは変わらなくっちゃ。 そうだよね、変わらずにはいられないんだよね。 ぼくも、何時までも潤ちゃんに頼ってはいけないんだよね。 そう、これはきっと神様のお告げだよ。 今まで甘えてきた、ずっと甘えてきたぼくに対する、罰だったんだ。 潤ちゃんに、パパに、ママに、お姉ちゃんに。 失うのは怖い。 ぼくは知っている。だからこそ怯えていた。 だけど、手に入れればいいもんね。見つければいいもんね。 おにーさんが教えてくれた。 ぼくにとっての幸せを、手に入れなきゃいけないんだよね。 自分から。積極的に。 うんうん、ぼくも理解できたね! またひとつ賢くなった! やったよ、潤ちゃん! 遥光「よーし、ぼくもがんばっろか!」 ぼくは一つの売り場に走った。 孤独はいや。―――知ってる。 孤高もいや。―――知ってる。 団欒がすき。―――知ってる。 親密がすき。―――知ってる。 ぼくは一人ぼっちはいやだ。 けど、一人ぼっちになっちゃう。理由も知ってる。努力だってしてきた。 たとえば牛乳たくさん飲んだりとか、早く寝たりとか。 それでも、一人ぼっちのげんいんは消えて無くならない。 いやだった。 いやだった。 にげたかった。 にげたかった。 こわかった。 こわかった。 それでもぼくは、にげなかった。 ぼくのゆいいつのトリエだから。 めげないのが、たったひとつのほこれるものだから。 でもひとは、ぼくのそのトリエがきらいらしい。 それは、みにくいらしい。いらだたせるらしい。がんばるすがたは、うざいらしい。 ぼくはこりつした。ここうではなくて、こりつした。 そんなときに、ぼくたちはであった、であってしまった。 ふしぎと、みとれちゃった。 なぜだか、なかまいしきがめばえた。 だからぼくはじゅんちゃんとであってから、ずっとたよりっぱなしだった。 いやだったから。ひとりはいやだったから。 あまえた。ねだった。きょうせいした。 でも、だめなんだよね。 だめだめだよね。 うん。まえにすすまなきゃね。ひとりで。ひとのてをかりずに。 ぼくはぼくは。 せいちょうしなきゃね。もうだれにも、めいわくはかけたくないから。 そう、そうなんだよ。 ぼくはまなんだから。 たたかうんだ、ひとりで。そしてみんなで。 遥光(まずは、おにーさんから! ぼくのみりょくでめろめろにしてやるー! ……あれ、なんかちがうかな?) ○ その後の話。 スクール水着をきて颯爽と登場した飯島遥光は岡崎朋也に怒られました。 【一日目/深夜/G-1 繁華街-ショッピングモール】 【岡崎朋也@CLANNAD】 [状態]健康 [装備] [道具]KS×1、RS(1~3) [思考] 基本:生き残る 1:みんなと合流 2:こいつ(飯島遥光)と行動 3:伊吹風子……? [備考] ※風子ルート、結婚式直後からの参戦です 【飯島遥光@オリキャラ】 [状態]健康 [装備] [道具]KS×1、RS(1~3) [思考] 基本:生き残る 1:おにーさん(岡崎朋也)と行動 2:熊本潤平と合流 【飯島遥光】 [身体的特徴]よくて中学生程度にしか見えない。髪はセミロング、艶のある黒髪 [備考] ※永劫学院三年生所属 ※熊本潤平と恋仲。ちなみに当人は覚えていないが桂馬悠木との面識あり。 ※精神的にも幼い。一生懸命になると漢字が使えなくなる。 ※親しくなるとあだ名をつけたくなる。その程度の中二病 無題――――NoTitle―――― 投下順 ばとるろわいあるのじゆーけんきゅー GAME START 岡崎朋也 [[]] GAME START 飯島遥光 [[]]
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/3324.html
このページはこちらに移転しました 生きるということ 作詞/7スレ152 僕らは何故生まれて そして何故しぬのだろう? そんな事より聞いて欲しい 「なぜナポリタンは赤いのだろうか」 簡単に見えて 奥の深い問題だ 「赤いから赤いのだ」などと トートロジーを並べて 悦に入る浅薄な人間もいるが それは思考停止に他ならず 知性の敗北以外なにものでもない 「赤方偏移」という現象がある 宇宙空間において 地球から高速に遠ざかる天体ほど ドップラー効果によりそのスペクトル線が 赤色の方に 遷移するという現象である つまり 本来のナポリタンが 何色であろうとも ナポリタンが我々から 高速で遠ざかってならば 毒々しく赤く 毒々しく赤く 見えるはずなのだ 目の前のナポリタンは 高速で動いているか否か? それは ナポリタンの反対側に回ればわかる 運動の逆方向から観察することで スペクトルは青方遷移し 青く 蒼く 碧く 見えるはずなのだ 逆に回ってみたところ ナポリタンは赤かった毒々しく赤く 毒々しく赤く (このページは旧wikiから転載されました)