約 19,731 件
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/12153.html
今日 - 合計 - 提督の決断IV with パワーアップキットの攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 12時56分57秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/kyoumoheiwada/pages/4.html
1~200/ 201~400 / 401~600 / 601~800/ 801~1000 ☆朝☆ 加賀「提督、朝食の用意が出来ました。起きてください」 提督「Zzz……」 加賀「朝です。提督」 提督「あともうちょっと~Zzz……」 加賀「……起きないのであれば艦載機鼻に突っ込みますよ」 提督「……Zzz」 加賀「えい」ブスッ 提督「ふがっ……Zzz」 加賀「ぷっ」 ☆まるで不自然☆ 天龍「ふあ~、眠い……」 天龍「ん? ああ、加賀。おは、よ……う゛?」 加賀「ええ、おはようございます」 天龍「あ、ああ……」 愛宕「どうしたの?こんな所で固まってて」 天龍「……加賀が笑っていた」 愛宕「えっ」 ☆笑顔☆ 愛宕「それって何かおかしいことなの?」 天龍「いや、よく考えても見ろよ! あの加賀だぞ!」 愛宕「うーん、確かに珍しいかもしれないけど。 あの娘、提督の話をする時は表情からは分かりづらいけどずっと笑顔よ?」 天龍「えっ、そうだったのか」 天龍「いや、なんて言うか、もう笑顔は笑顔なんだけど ニコニコを通り越してニヤニヤしてたんだよ……」 愛宕「やだ何それ怖い」 ☆早とちり☆ 加賀「電。ちょっといいかしら」 電「おはようございます」 加賀「私の代わりに提督をお越しに行ってくれないかしら」 電「私がですか?」 加賀「はい……私にはっ、もう、あの方は、無理です」ブルブル 電「えっ」 電。。(もしかして、司令官さんに振られて泣いてるのです!?) 加賀。。(これ以上あの可笑しな寝顔見てたら腹筋崩壊しちゃう) ☆こっちも☆ 電「女の子を泣かしたりしたらいけないのですっ」 電「司令官さんっ」ガチャ 提督「ん? ああ、おはよう……」 電「あれ、もう起きてました?」 提督「そりゃあ今日も仕事あるし」 電「……鼻に艦載機刺さってます」 提督「ハッ、本当だ……おま、まさか電、俺のことそんなに嫌いなのか?」 電「それをやったのは電じゃないのです!」ガーン ☆そういう意味じゃねえよ☆ 愛宕「提督~、ポッキゲームしましょー」 提督「何馬鹿みたいなこと言ってるんだ」 愛宕「だって~、今日ポッキーの日よ?」 提督「11月11日の棒がポッキーに見えるって奴だろ?」 愛宕「そうそう」 提督「うちの鎮守府ではあの棒はポッキーとかいう企業の陰謀ではない」 愛宕「えっ、じゃあ何?」 提督「魚雷だ」 愛宕「ふぅ~ん、つまり咥えるのは提督の淫棒ということね?」 提督「誰がうまいことを言えと言った」 ☆なんて闇ゲーム☆ 天龍「ポッキゲームか……ふっ」 提督「何か可笑しなことでもあったか?」 天龍「生ぬるいな。なんて生ぬるいんだ」 提督「えっ」 天龍「やっぱり男ならポッキーの代わりに刀を咥えるべきだろ」 提督「お前馬鹿だろ」 ☆自滅に猪突猛進☆ 電「ポッキゲーム……やったことないのです」 提督「へえ、じゃあ加賀とやれば?」 加賀「御意。では、いつでもどうぞ」パクッ 電「えっ!?」 提督「ほら、加賀が咥えながら待ってるぞ」 電「で、では、電の本気を見るのですっ」サクサク 加賀「……」ジィ~ 電「はわわっ(サクサク)……はわわっ(サクサク)」 提督。。(あ~、なんだこの可愛い生き物) ☆魚雷ゲーム☆ 電「す、すごく、どきどきしたのですっ」 提督「ああ、ある意味俺も」 加賀「手前で折れてしまったのが残念です」 提督「ちょっと黙って」 加賀「それより提督。今日は提督の中では魚雷の日だそうですが」 提督「ああ、魚雷だろ。あの棒は」 加賀「ポッキゲームのように魚雷の端っこを咥えて」 提督「死んでまうわ」 ☆魚雷装填ゲーム☆ 電「では、魚雷を装填する魚雷装填ゲームはどうでしょう!」 加賀「なるほど。多く装填できた人が勝ちと」 電「なのです」 提督「さっそくやってみるか」 電「それでは魚雷装填ゲーム、開始なのですっ」 天龍「おうっ!」 愛宕「負けないわよ」 加賀「ここは譲れませんっ」 提督「うむ、ほどよく汗を流し、良い光景……ん?」 この時、提督はやっと気がついた。「ただの訓練じゃねーか」 ☆コタツ☆ 提督「この机もコタツにするか」 加賀「提督はコタツで寝て風邪を引くのでいけません」 提督「その時は看病してくれ」 加賀「もちろんします。ですが、それ以前の問題と言っているのです」 提督「なんだかんだ言って加賀はしてくれるもんな~」 加賀「聞いていますか?」 ☆ごもっとも☆ 鈴谷「提督じゃん。ちーっす」 提督「じゃんじゃねーよ。執務室来たらそりゃ俺はいるわ」 鈴谷「いやー、暇でさー」 提督「演習行って来いよ」 鈴谷「やだよー、疲れるしぃ」 提督「何をだらしないこと言ってるんだよ、全く」 鈴谷「コタツに肩まで入って加賀に膝枕されてる奴に言われたくないよ」 ☆狂犬も見とれる☆ 加賀「摩耶ッ!」 摩耶「ハッ、しまっ、ぁぁああ゛あ゛!」大破 ………… …… … 加賀「戦闘中に他所見だなんてらしくないですね」 摩耶「チッ、悪かったよ」 加賀「野生のイルカに見とれるだなんて」 摩耶「っるせえよ!! 絶対あいつに言うなよ!!」 ☆上下☆ 提督「お見舞いに来たぞ。大丈夫かー?」 摩耶「んだよ、ウッザいなぁー。別に平気だよ」 加賀「折角、時間を作ってお見舞いに来てくれたんです。礼くらいは」 摩耶「……ぐぬぅ、ありがとよ」 提督「今日はヤケに素直だが、なんかあったのか?」 加賀「いえ、別に」 ☆バレてないと思ってるのはお前だけだ☆ 電「あ、あのお見舞いにクッキーを焼いたのです」 摩耶「おう、サンキュー」 電「あの、開けてみてください……です」 摩耶「?」カサッ 電「摩耶お姉ちゃん、可愛いの好きだから……クマさんの形にしてみたのです」 摩耶「なぁあ……! か、可愛い~~!! 食べるの勿体無いくらいだ!」 電「喜んでくれて電は嬉しいのです」 摩耶「へへっ電には頭が上がらねえや。で、でも秘密だからなっ」 電「えへへ。はいなのです」 ☆大事件☆ 天龍「ん? 提督?」 提督「ぐがー」 天龍「アイマスクにイヤホンして寝てやがるし。 おーい、こんな所で寝たら風邪引くぞ」 天龍「起きないか。一体何を大音量で聞いてやがんだ? イヤホン引っこ抜いてスピーカーにでもしてやるか」 天龍「おらっおい提督起きr」 <ああんっ!らめぇぇえ!いぐぅぅ!おち●ぽぉ!気持ちいいのぉぉおち●ぽぉぉ!! 天龍「うわぁぁあああーーー!!」 ☆バッドタイミング☆ 天龍「な、なんだ今の……咄嗟にイヤホン戻せたから良かったが、 誰かに聞かれてないだろうなぁ……」 加賀「今誰か叫んでませんでした?」 天龍(よりによってお前かよ……) 加賀「天龍? 顔が真っ赤ですが」 天龍「いや、今の声は俺じゃねえぞ!?」 ☆サボり魔☆ 加賀「そうですか。それはそうと、またこんな所でサボって……」 天龍「そうなんだよ」 加賀「執務室に強制連行しますか。よいしょっと」 天龍「提督をお姫様抱っこできるのはお前くらいだよ……」 加賀「ん? 何かコードみたいなのが引っかかって」 天龍「ま、待てーー! それはイヤホンの! やめろぉぉーーー!」 ☆二次災害☆ 加賀「なんですか?」 天龍「いや、とにかく一旦置こう。なっ!?」 加賀「……? まだ提督には仕事が山ほど残っているんです」 天龍「いや、それは分かるが! ダメなんだってば!」 加賀「離してください。提督を甘やかそうたってそうはいきません」 天龍「そんなんじゃねえけど! とにかくちょっと待ってくれって!」 電「はわわ……天龍お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんが提督を奪い合ってるのです……!」 ☆仕方がない☆ 提督「暇だ」 加賀「仕事、終わってないですよ」 提督「リフレッシュターイム! ゲームやろ加賀!」 加賀「だめです」 提督「こういう息抜きも必要なんだよ。じゃあ加賀は一緒にやらないのか?」 加賀「……何やるんですか。マリオカートなら」 提督(……やってくれるんだ) ☆鬼畜☆ 提督「いやでも加賀、マリオカート強いし、いつもクッパで俺のピノキオいじめてくるし」 愛宕「ふふ、それはR指定な意味も含まれてるのかしら?」 提督「どっから湧いて出た。ねーよ、そんな意味」 愛宕「私も混ぜて~」 加賀「構いませんよ」 愛宕「やったー!私、提督の書庫のダミーの棚の底を剥がした所から出てきた この『陵辱!レイプ沖海戦』ってパソコンゲームが」 提督「うおおおおおおおおおおお!!」 加賀「今、なんて?」 提督「なんでもない! なんでもないから!」 ☆愛宕流交渉術☆ 提督「ちょっとこっち来い。どうやって見つけた」 愛宕「さぁ~? どうやって、かしら?」 提督「いいか。あれは加賀には絶対に言うなよ!」 愛宕「61cm五連装酸素魚雷」 提督「は?」 愛宕「61cm五連装酸素魚雷、欲しいのよねぇ~」 提督「お、お前……うちにも一つしかないあれを。ホロのあれを」 愛宕「ふふふふ」 ☆電車のゲーム☆ 愛宕「いっちば~ん!」 提督「またボンビーかよ……」 天龍「ほんとついてないな。あ、エンジェルきた」 加賀「宇和島を買い占めます」 提督「手加減なしかよ」 加賀「勝負の世界にそのようなものは不要です」 ☆遊びすぎ☆ 提督「負けました」 天龍「一番酷い時で10億の借金か。まあ充分健闘した方だな」 愛宕「じゃ、罰ゲームね」 提督「はい?」 加賀「ええ、罰ゲームですね」 提督「罰ゲームって……何するの?」 加賀「残りの仕事を今日中にしてもらいます」 提督「……はい」 ☆クッキー☆ 加賀「提督、コーヒーを淹れました」 提督「む、ありがとう」 加賀「クッキーもどうぞ」 提督「む、ありが……ん?」 加賀「クッキーです。電に教わりましたので」 提督(クッキーがコーヒーと同じ色をしているんだけど) ☆下手な奴特有のアレンジ☆ 提督「ああ、チョコクッキーね」 加賀「はい、チョコチップでは小腹が空いてくるこの時間帯 物足りないかと思いましたので代わりに焼きそばを入れてみました」 提督「なんで!?」 加賀「バタークッキーの甘さと焼きそばの香ばしさで脳には糖分が行き、 お腹も満たされるかと思います」 提督「なんでそんなアレンジ加えたの!?」 提督「これもう、備長炭を輪切りにしたものにしか見えないよ」 ☆水分補給は後にしろよ☆ 提督「まさかコーヒーも……」コク 提督「糞不味ぅッゴブァッ!!」 加賀「提督!? 大丈夫ですか?」 提督「なんだこれ……何混ぜたんだ」 加賀「この後の予定である全体訓練の時に汗をかかれるかと思ったので スポーツドリンク、アク●リアスを配合しました」 提督「なんで!?」 ☆何でもは出来ないわよ出来ることだけ☆ 提督「まさか何でも出来る加賀がなぁ」 天龍「へえ、何でも出来る……ねえ」 提督「信じてないだろお前」 天龍「まあ何でもは出来ないだろ」 提督「執務室に二人でいて暇だった時にな、 ホッピングって子どもの頃遊んだぴょんぴょん跳ねるおもちゃあるだろ」 天龍「懐かしいなぁ」 提督「あれに乗せて縄跳びやらせたんだよ」 天龍「お前ら執務室で何やってんだよ」 提督「二重跳びからはやぶさまでやってみせてくれたよ……」 天龍「うわぁ……すごいけど引くわ」 ☆その時の様子☆ 提督「加賀! 見ろこれ! ほっ、よっ!」びょいんびょいん 加賀「どこ行ってたんですか。ホッピング……懐かしいですね」 提督「だろ? 加賀もやってみてよ」 加賀「結構です。それより仕事が終わってないです」 提督「たまには仕事のモチベーションを上げるためにもこういう娯楽を 提督である俺に見せて楽しませることも重要だと思うぞ」 加賀「ですが」 提督「へえ、出来ないんだ」 加賀「貸してください」 ☆無茶ぶり☆ 加賀「ふっ、ふっ」びょいんびょいん 提督(可愛い……少し意地悪したい) 提督「あー、人の見るのは面白く無いな。 加賀、そのままこの縄跳びで飛んで見せて」 加賀「……何飛びですか?」 提督「じゃあ二重跳び」 加賀「ふっ、はっ」びょいんヒュンヒュンびょいんヒュンヒュン 提督「うおおおお! 加賀すげえーー!」 ☆誇り高き一航船☆ 提督「それでなんならはやぶさも出来ます、とか言ってやりだした」 天龍「まじかよ」 提督「なんで聞いたらちょっと額に汗かきながらドヤ顔で 加賀「一航船ですから、これくらい当然です」 って言ってた」 天龍「一航船怖ぇぇ~~」 ☆密林からの使者☆ 電「司令官さん、あの、外国から郵便物が届いたのです」 提督「外国……? ああ、Amazonか」 電「アマ……ゾン? どういう方なのですか?」 提督「人じゃねーからな?」 ☆最早言い逃れできぬ☆ 提督「やっとこの時が来たか。加賀には遠征という名の ちょっと遠目の買い出しに出かけてもらったし、ふふふ」 提督「あれ? ダンボールがない!? どこへ」 愛宕「ふぅ~ん、なぁに、 この『艦隊の性感帯調査~こんなに感じちゃあかんたい~』ってぺらっぺらの本」 提督「げっ……」 愛宕「加賀さんを遠征に行かせたのはこういう理由なんだ~?」 提督(どっから湧いたんだこいつ) ☆持ってけ泥棒☆ 提督「お願いします!加賀には黙っていてください!」 愛宕「空電探」ボソッ 提督「13号」 愛宕「破いちゃおうかしら。それとも加賀さんに報告してもいいのよ?」 提督「さ、33号で勘弁してください」 愛宕「32」ニコッ 提督「ひぃぃ」 ☆今回の敗因☆ 加賀「提督?何やら複雑そうな顔をしていますね」 提督「例えるなら、高級風俗店に行ったのに化け物が出てきて すごい萎えたのにテクニックはやっぱり高級で何か満足出来ちゃった時の あの言い得ない感覚に似ている……」 加賀「……何を言っているのか理解できないのですが」 提督「タイミング悪く入渠してた愛宕が復活したことが今回の敗因……か」 加賀(いつになく真面目に艦隊の指揮を取ろうとしている……?) 提督「やはり次からは遠征に出す時もタイミングを見計らうべきだな」 ☆眠気覚ましに永眠薬☆ 加賀「ふあ……。はっ、し、失礼しました」 提督「あくび? 眠いのか?」 加賀「いえ、大丈夫です。提督は」 提督「俺は大丈夫だよ」 加賀「コーヒーでも淹れましょうか?」 提督「結構です!ほんと!大丈夫ですので!!」 ☆挑戦はする☆ 提督「暇だからなあくびも出るさ」 加賀「はあ。忘れてください。というか仕事してください」 提督「そうだ!加賀、なんかラップでもやってくんない?」 加賀「は?何故私が……」 提督「だってこの前大抵のことはできますって言ってたじゃん」 加賀「今ですか?」 提督「うん、やってくれたらしばらくは黙って仕事するからさ」 加賀「ですが、やったことなんて」 提督「え?ないの? なんだ……加賀ならできると思ったのになぁ」 加賀「……」 提督(あ、やべ怒ったかなぁ……) 加賀「誰得要望♪提督横暴♪手痛い指揮から感じる死期♪ 艦隊アイドル即解体♪YO!」 提督(やっぱりやるんだ……) ☆悪意なき悪意☆ 電「す、すごいのです!やっぱり加賀お姉ちゃんはすごいのです!」ガチャッ 加賀・提督「 !? 」 電「加賀お姉ちゃんくらいのレベルになるとラップも簡単に出来るようになるのですね!」キラキラ 加賀「……い、電、お願いだからやめて」 電「? 私もあんな風に何でも出来るようになりたいのです!」 加賀「……電、ほんと、お願いだから黙ってください」 提督(珍しく加賀が泣きそうになってる……悪いことしたなぁ) しらばく加賀は電恐怖症になった。 ☆ジェネレーション☆ 電「司令官さん、倉庫の整理をしていた時に見つけたのですが、これはなんですか?」 提督「ああ、ご苦労様。ん? それはゲームボーイだよ」 電「ゲームボーイ? これで何をするのですか?」 提督「えっ」 電「古い小型の通信機でしょうか」 提督「……一番最初に遊んだことのあるゲーム機は何?」 電「DSなのです」 提督「なん……だと」 ☆自室の鏡の前で☆ 摩耶「……」キョロキョロ 摩耶「……ふぅ、誰にも見られてない、な」 ガサッ 摩耶「えへへ、可愛いヘアピン買っちゃったぜー!」 摩耶「似合うかなぁ?似合うかなぁ~?」サッ 摩耶「えへへ」 コンコン ガチャ 加賀「摩耶、入りますよ……? 何故鏡の前で腕立てを?」 摩耶「あ、あぁ? べ、別になんでもいいだろうがよ! そういう気分なんだよ!」 ] ☆かーちゃんはだいたいそう☆ 摩耶「だ、だいたいちゃんとノックしろよな!」 加賀「? したじゃない」 摩耶「ノックしてから開けるのが早えって言ってるんだよ!」 加賀「そう、ごめんなさい」 摩耶「ったく、気をつけろよな。すればいいってもんじゃないんだからな!」 ☆実は遠征の時に見つけてこっそり買った☆ 摩耶「で、用事ってなんだよ」 加賀「提督が遠征の報告書を早く持ってこいって」 摩耶「チッ、いつもは仕事しないで遊んでるくせによー。ほらよ」 加賀「ありがとう、渡しておくわ。それじゃ」 摩耶「あ、おい」 加賀「何かしら」 摩耶「あたしがさ、その……可愛いヘアピンとかつけてたら変かなぁ」 加賀「そんなことないわ。とても可愛いと思う」 摩耶「ほんとか!?」 ☆恐怖の音☆ 提督「知ってるか?ここ横須賀鎮守府には出るらしいんだよ」 加賀「何が?」 提督「幽霊だよ幽霊。幽霊が近づいてくる音が聞こえるんだよ。 カーン、カーン、カーン……」 加賀「はあ。確かに怖いですね」 提督「あんまり怖がってないんだな……」 加賀「いえ、そんなことはないですよ」 提督「そうなの?」 加賀「はい」 ☆可愛い子ほどいじめたくなる☆ 提督「ここ横須賀鎮守府には幽霊が出るらしいんだよ」 電「はわわわわ」 提督「近づいてくるとな、音が聞こえるんだよ。 カーン、カーン、カーン……」 電「はわわわわわわわわわわわわ」ガタガタガタガタ 天龍「いじめんなって」ゴンッ 提督「痛ってぇぇ~~!ちょっとからかっただけじゃんよー」 電「天龍お姉ちゃん~~!!」 天龍「お~、よしよし」 ☆その夜☆ 加賀「……」 加賀「……」 加賀「……」 加賀「……」 加賀「……眠れない」 ☆ちょうど良いところに☆ 加賀「……提督のベッドに忍び込もうかしら」 加賀(……夜の鎮守府は暗くて怖い) 加賀(……? 提督の部屋の前に誰かが) 加賀「そこにいるのは?」 電「はわわわ!ご、ごめんなさいなのです!」 加賀「電? 眠れないの?」 電「うぅ……なのです」 加賀「……」 電「うぅ……」 加賀「こっちへいらっしゃい電。一緒に寝ましょう」 電「ありがとうございますぅ……」 ☆みんなで朝食☆ 電「お、遅れてごめんなさい、なのです!」 天龍「ぷっ、あははは!お、お前、パジャマのまんまだぞ!あははは!ドジだなぁ~」 電「はわわわ!す、すぐ着替えてくるのですっ!!」 摩耶「ったく、気ぃ抜きすぎなんだよなぁ~、そうだろ?加賀」 加賀「え?ええ、そうね」 加賀(電のパジャマ、可愛い……) ☆まだまだ子供ね☆ テレビ「魔女っ娘パワーでプリティ~アターック!」きゃぴる~ん 電「おお~」 電「こほん、魔女っ娘パワーでプリティ~ア コンコン ガチャ 加賀「電、ちょっといいかし……ら」 電「ターック……はわわわ!!」 ☆完璧主義なために☆ 電「す、すみませんすみません」 加賀「……」 電「子供みたいですよね……」 加賀「……電、さっきの腕を振るのが逆だったわ」 電「へ?」 加賀「そのアニメ、提督も見てるので、それを横で私も見ているんです」 電「そ、そうなのですか!」 ………… …… … 電「魔女っ娘パワーでプリティ~アターック!」 加賀「違います。もう少し腕の角度を上げてください。 こうです。魔女っ娘パワーでプリティ~アターック!」 電「はわわ!さ、さすが加賀お姉ちゃんなのです!」 ☆重武装ボディ☆ 愛宕「提督~、肩もんであげますよ~」 提督「ん?ああ、悪いな」 愛宕「最近お疲れ気味ですか?」 提督「そんなことはないよ。仕事してないもん」 愛宕「んもうっ、加賀さんは苦労するわ」 提督「うん、肩揉むって言っておきながら手止まるの早いし 俺の頭をおっぱい置き場にして休むのやめてくれないかな」 愛宕「提督のえっち~!」 提督「俺のせいなのか!?」 ☆構って欲しいの☆ 愛宕「ねえ提督、明日二人きりでデート(遠征)行きましょう?」 提督「二人で? 加賀に何て言えばいいんだよ」 提督(っていうか高いもの買わされそうですごい嫌なんだけど) 愛宕「いいじゃないたまには~。ね?」 提督「うーん、どうしよっかなぁ~」 愛宕「ふふ、決まりね!明日、鎮守府の正門で待ってるから 来なかったら承知しないんだからねっ」 ☆ちょっとだけ嫉妬☆ 提督「……というわけで明日は一日出てくるよ」 加賀「愛宕と二人で、ですか。分かりました。道中気をつけてくださいね」 提督(あれ?意外とすんなり了承したな) 提督「ああ、ありがとう」 加賀「さて、提督。今晩は桃鉄99年でも一緒にどうですか?」 提督「俺を寝かさないで遅刻させる気だな!?」 ☆次の日☆ 提督「んで、正門来てもいねえし……ってかやべえ眠い」 提督「妥協して20年くらいならとか言って一緒にやるんじゃなかったわ」 愛宕「提督ぅ~お待たせしましたー! ふふ、待ちました?」 提督「さては遅刻の原因はそれがやりたかっただけだな!?」 愛宕「さ、行きましょうー!」ギュッ 提督「ちょ、あんまりくっつくと歩きづらいって……」 ☆一方こっちは大事件☆ 加賀「という訳で今日は提督がいないので、 私が代わりに食事当番をします」 天龍「へえ、そうなのか」 鈴谷「何々!? 今日はカレー!?」 電「加賀お姉ちゃんのご飯、楽しみなのです!」 加賀「……提督の留守でも私が完璧に仕事を行い、 再度提督に私の必要性を認識させる」 摩耶「な、なんかいつにもまして燃えてるな……」 ☆せっかくなので全力でバカップル☆ 愛宕「提督~、クレープ買って~」 提督「えぇ~、愛宕はしょうがないなぁ~!」 愛宕「はい、あ~ん」 提督「あーむ、ほっほっほ、美味いのう~」 愛宕「やだもう、クリームつけちゃって!」 提督「えー、取って取って」 愛宕「しょうがないんだから~」 ☆阿鼻叫喚☆ 天龍「ぐぼァッ!!」大破 摩耶「ごふぁッッ!!」大破 電「……ブクブクブクブク」大破 鈴谷「……こ、こんなの、か、カレーじゃ……ない」大破 加賀「みんな優秀な娘ですから。お残しは許されませんよ」 ☆地獄へ超特急☆ 天龍「ま、まさかこんなに酷いとは……」←逃げてきた 鈴谷「知ってたんなら言ってよ!」 天龍「そうだ、提督がもしもの時に開けなさいって残していったものがあるぞ」 摩耶「あいつは去り際のドラ●もんかよ……」 天龍「ば、バケツだ!みんなの分もあるぞ!」 摩耶「……これで回復してもう一度死地へ迎えってことかよ」 天龍「……」 ☆イルミネーションに囲まれて☆ 提督「暗くなってきたなぁ」 愛宕「そうねぇ」 提督「そろそろ帰るか?」 愛宕「……」 提督「今日は楽しかったよ」 愛宕「ほんとう?」 提督「ああ、本当だ」 愛宕「また一緒に遊びに行ってくれる?」 提督「ああ、またいつかな」 ☆帰ってきた☆ 提督「ただいま~」 摩耶「てめぇ、ふざけるなよ!!」大破 提督「何が!?って大丈夫か!?」 摩耶「いつも加賀には頭が上がらないのをいいことに……!」 天龍「このだめ提督」 鈴谷「あほ提督」 電「し、しれいか……んさん」 提督「ふぅ、全く。こんなこともあろうかと。ちゃんとバケツ買ってきたぞー」 天龍「提督ぅーー!」 鈴谷「やったー!!」 提督「現金な奴らだなぁ」 ☆そういうことにしておこう☆ 加賀「お疲れ様でした」 提督「ああ、加賀もお疲れ様。……どうした、なんか浮かない顔をしているな」 加賀「はい。厨房への出入りが禁止されました」 提督「……そっか」 加賀「何故納得するのですか」 提督「みんなお前が好きだから包丁持ったり火を扱う危ない仕事をして欲しくないんだよ」 加賀「……はあ。そうですか」 提督(すごい喜んでるな) ☆朝の運動☆ 加賀「……ふぅ」 愛宕「あら?早朝からランニング?さすがよね~」 加賀「?はい、このあとは基礎体力トレーニングです。どうですか、ご一緒に?」 愛宕「え、遠慮しときまーす」 加賀「そうですか。私のメニューはダイエットにも最適なのですが」 愛宕「さ、早くトレーニングルームに行きましょう!」 ☆マシュマロ☆ 電「これはなんでしょうか?」 提督「マシュマロだよ。美味いよ?」 電「食べたことないのです。い、いただきます」 電「は、はわわ~~……。あ、あの!もう一個食べても!」 提督「ん? ああ、いいよ。別に一個とか言わなくても普通に食べてていいよ」 電「で、ではもう一つ。はわわ~~~……。甘くて柔らかくて美味しいのです~……」 提督「どうやら痛く気に入ったようだな」 ☆鬼のいぬ間に命の洗濯☆ 提督「……いや、今日は暇だな。とは言っても仕事はしてるんだぞ?」 提督「ほら、こうやって喋りながらでも一応はできるし」 提督「な、なぁ、ちょっとゲームしないか?」 摩耶「お前ほんっとウザいな。黙って仕事しとけよ」 提督(何故加賀は非番に摩耶を置いて行ったんだ) 摩耶「それと、茶だ。これでも飲んで落ち着いて仕事しろっての」 提督「お、おう。ありがとう」 提督(やりづれえ) ☆パジャマパーティー☆ 愛宕「加賀さんのパジャマ可愛い~!」 天龍「今どき三角の帽子がついたパジャマとは……」 加賀「電と一緒に買いに行きましたので」 電「一番可愛いのを選んだのです」 加賀「電は優秀な娘ですから」 電「愛宕お姉ちゃんのピンクのワンピースもとっても可愛いのです」 愛宕「ふふ、そうでしょう?」 天龍「電にはセクシーが行き過ぎて目に毒だよ、こりゃ」 愛宕「上下グレーのスウェットには言われたくないわよ」 天龍「俺はこれでいいんだよ!」 ☆ぬいぐるみ大好きっ娘☆ 天龍「いざって時に動きやすいだろう?」 愛宕「そんなのないわよ」 鈴谷「ねえねえこれからどうするどうする!?お菓子あるよ?電も食べる?」 電「こ、こんな時間に食べていいのでしょうか?」 鈴谷「いいのいいの!加賀姉も食べて~」 加賀「いただきます」 摩耶「あのさあ」 愛宕「どうしたの?犬の着ぐるみがパジャマだった摩耶ちゃん」 摩耶「っるさいな~いいだろうが!っじゃなくて!」 摩耶「なんであたしの部屋でやるんだよ」 愛宕「だってぬいぐるみばっかりで一番可愛い部屋なんだもーん」 ☆殺生はよろしくない☆ 愛宕「きゃーー!虫が!」 天龍「ああ?どうしたよ」 愛宕「あそこの窓から虫が入ってきたの!天龍なんとかして~!」 天龍「ったく、しょうがねえなぁ~。こんなのさっと潰して」 愛宕「えっ、やだ天龍の野蛮人」 天龍「どうしろってんだよ!!」 ☆何をしている早く行くぞ☆ 提督「加賀~、キャッチボールしようよ」 加賀「何故?」 提督「暇だから」 加賀「少しは落ち着いて執務を行っては……」 提督「えぇ~、じゃあいいよもう」 加賀「で、グローブは?」 提督「はい、加賀の」 加賀「少しだけですからね」 ☆カレーが大好き☆ 鈴谷「カレー食べたいなぁ……」 提督「今日の夕飯はハンバーグです」 鈴谷「間をとってカレーハンバーグにしようよ!」 提督「おいおい、普通ハンバーグカレーじゃないのか?」 鈴谷「どっちでもいいよ!海軍のカレー美味しいよねぇ~」 提督「確かに士官学校の時に食ったカレーはいつも美味かった」 鈴谷「はあ~カレー。愛しのカレー。カレー好きすぎて血液の代わりにカレーが流れてたらいいのに」 提督「それはいやだ」 ☆その作り方はあかん☆ 電「あの……子供ってどうやって作るか知ってますか?」 提督「ぶほぁッ!」 加賀「……提督、頑張ってください」 提督「えぇえ!? えーっとだなぁ……電、勉強熱心なのは分かるし良いことだが」 電「わくわく」 提督「まずはその手に持ってる錬金術の本をしまってきなさい」 ☆初めて見ちゃった☆ 摩耶「提督ー、遠征の報告書出しに来たぞ」ガチャ 提督「ん?」←着替え中 摩耶「きゃあああああああ!き、着替えてんなら言えよ!!」 提督「ノックもしないで入ってきたのはお前だろ!」 摩耶「ば、ばかーーーー!!」 提督「摩耶!?どこ行くんだ!報告書ーーー!」 加賀「今、走って行ったのは摩耶?どうしたんですか? ……提督、そんな格好でいつまでもいると風邪をひきますよ」 提督「加賀はぶれないなぁ」 ☆提督のパソコンで☆ 加賀「……子供、作り方、検索……と」カチカチ 加賀「……ふむ。なるほど」 加賀「……」 加賀「さっぱり分かりません」 加賀「しかし提督のパソコンにはよく分からないものが多い……」 加賀「これは? 新しい作戦、もしくは機密事項……?」 加賀「xvieos……一体どのような作戦概要なのでしょうか」カチカチ 加賀「ぶほぉッ!?」 ☆全部バレた☆ 電「焼き芋美味しいのです」 愛宕「たまにはこんな秋らしいイベントもいいわね~」 加賀「ええ、ちょうどいらない紙や資材が出たので燃やすついでに」 天龍「そ、そんな泣くほど美味いか?」 提督「ほんと……美味しいよなぁ~、うん」 ☆モノノ怪☆ 天龍「電、紙粘土で何作ってんだ?」 電「秋の夜長にわく創作意欲に任せて小さな司令官さんを作ってるのです……」コネコネ 天龍「へ、へぇ~、頑張れよ……」 天龍(もののけ姫に出てくるこだまにしか見えない) 天龍(しかし、作って……何をするんだ?) ☆ハミ乳って言うと出てくるらしい☆ 加賀「コピー機が故障してファミリーマートまで来ることになるなんて」 愛宕「そういえば提督がファミチキも買ってきてって言ってたわよ」 加賀「では私が買ってきましょう」 店員「しゃーせー」 加賀(略称で呼ぶよりも正式名称で注文したほうが 店員さんにも分かりやすいのかもしれない) 加賀「ファミ……ファミ……」 加賀「ファミリーチキン一つください」 愛宕「ファミチキはファミチキでいいのよ」 ☆心配性☆ 加賀「待ちなさい電。北のアルフォンシーノ方面への遠征はとても寒いのでこれを」 電「マフラー……ありがとうございます。すごく暖かいのです」 加賀「それから手袋もちゃんとしていきなさい」 電「は、はいなのです」 加賀「あと耳あてもしないと耳が凍傷になるので」 電「はわわ、もふもふなのです」 加賀「それからホッカイロは背中に貼れるタイプと」 摩耶「もうお前一緒に行けよ」 ☆もちろん嘘です☆ 提督「この前、電がさー」 電「愛宕お姉ちゃんはとても綺麗でスタイルも抜群で…… どうやったら愛宕お姉ちゃんみたいになれるのでしょう」 提督「って悩んでたぞ」 愛宕「あら、直積聞いてくれればいいのに」 提督「で、綺麗の秘訣なんかあるのか?」 愛宕「そうね、強いて言うなら●ックスよ」 提督「お前それ絶対に聞かれても電には言うなよ」 ☆お前にかよ☆ 愛宕「もちろん嘘よ」 提督「全く……」 愛宕「私、初めての人は決めてるんです」ズイ 提督「あ、あの……近いんですけど」 愛宕「提督はもし私が良いって言ったらどうします?」 提督「あんまり滅多なことはやらない方がいいぞ、愛宕」 愛宕「え?」 提督「そろそろ彗星一ニ型甲がすっ飛んでくるぞ」 提督「俺に」 ☆そうだったの!?☆ 提督「そういえば天龍の眼帯は……なんなんだ?」 天龍「ああ?これか?別に何もないけど?」ペロン 提督「えぇーーーー!?そうだったの!?」 天龍「ついでに言うけど、俺、実は男だったんだ」 提督「えぇーーーー!?そうだったの!?」 天龍「あと、実はサイボーグだったんだ」ガショーン 提督「えぇーーーー!?そうだったの!?」 提督「ハッ、夢か……」 ☆ウキウキウォッチング☆ 提督「あれから気になってしょうがない」 加賀「でしたら聞いてみたらどうですか?」 提督「ば、バッキャロウ! 聞かれたくないこともしれないだろ!」 加賀「……の割りにはさっきから天龍の部屋を双眼鏡で覗くとは興味津々ですね」 提督「いつ取っても見れるように監視しないとな」 加賀「軍法会議は免れませんね」 ☆カレー臭☆ 摩耶「何だよその大鍋」 鈴谷「摩耶ー!カレーパーティしようよ!」 摩耶「全部カレーかっ!?というかまたあたしの部屋でか!?」 鈴谷「この前やったパジャマパーティのカレー版だよ」 摩耶「いや、さすがにカレーはぬいぐるにも匂いがつきそうで……」 鈴谷「あっ」ドンガラガッシャーン バシャー 摩耶「あああああああああああああ!!」 ☆激おこプンプン丸☆ ドォン……ズドォンッ!! ゴゴゴゴ……! 提督「な、なんだ!?」 鈴谷「ご、ごめんってばぁぁーーー! 提督、どいてどいて!」 提督「鈴谷!? おいこの騒ぎはなんだ!」 摩耶「待て鈴谷ぁぁああああーーーーー!!そこを退けぇぇぇ!!」 提督「ぎゃあああーーー!」 ☆それは多分ノリで☆ 愛宕「んもう、昨日の晩、うるさいから全然寝付けなかったじゃない」 天龍「なんでもカレーをこぼして摩耶の大事なぬいぐるみの ……えっと、なんだっけスミス?を汚したとか」 摩耶「違え、シェリーとココアとガンジーだ」 愛宕「……最後のはどうにかならないの?」 天龍「まあそんな訳で鈴谷は大広間に吊るされたって訳よ」 愛宕「え?じゃあなんで提督もその横で一緒に吊るされてるの?」 天龍「さ、さあ?」 ☆無知なる☆ 提督「……おい、誰だこんな所に三角木馬置いた奴」 天龍「ああ、それこの前近海にいた海賊を討伐した時に船内で見つけたんだよ」 提督「そういえば報告書にそんなこと書いてあったな。で、誰が持って帰ってきたんだ?」 天龍「積み木か何かかと思ったのか……電が……」 提督「……そうだな、これは積み木だ。そういうことにしよう」 ☆有効活用☆ 提督「こら、鈴谷。食事中くらい携帯をいじるのをやめなさい」 加賀「そうね。行儀が悪いわ」 鈴谷「うぇえ……はーい。でもさ~」 提督「なんだよ」 鈴谷「なんで提督の椅子、電の積み木なの?」 提督「べ、別にいいだろそんなこと!」 ☆一旦にツボに入ると☆ 愛宕「はぁ……」 天龍「珍しいな、ため息なんかついて」 愛宕「実は、この前摩耶のぬいぐるみの名前がツボに入って 以来、摩耶と顔合わせると笑いを堪えるのが大変なのよ」 天龍「ああ、ガンジーのことか?」 愛宕「ぷっ、もうっ!やめてったら!」 ☆絶対に笑ってはいけない☆ 提督(おい、誰かあいつに注意しろよ) 加賀(そこは提督が) 天龍(あの事件以来、みんなにバレたのが吹っ切れて 鎮守府にいる時は必ず一体ぬいぐるみを持ち歩くようになったんだよ) 提督「あ、あの……摩耶さん。そのアライグマのぬいぐるみなんだけど」 摩耶「ああ?可愛いだろ?こいつはどぶろくって言うんだ」 愛宕「ぶふぅッ!提督のばかぁあ!」 電「どぶろくちゃん可愛いのです」 愛宕「やめて!もうやめて!」 ☆落命の危機☆ 提督「あ、図書館の本の返却期限が昨日で切れてる!」 加賀「では今から行きますか」 ………… …… … 加賀「ふむ、なるほど」 提督「……ん?何をさっきから熱心に読んでいるんだ?」 提督「『愛しの男性を落とす料理の本』……」 提督「おい加賀、早く帰るぞ!」グイ 加賀「も、もう少しだけ……」グググ ☆何も大丈夫ではない☆ 天龍「ふふふ、ふっふっふ」 愛宕「今日はずいぶんご機嫌じゃない。どうしたの?」 天龍「ついに……ついに夜間哨戒の任務を任されたんだ!」 愛宕「へ、へぇ~、そうなの。良かったじゃない」 天龍「愛宕もどうだ?」 愛宕「夜更かしは美容の敵だからやらないわ。あなたも女の子なら少しは」 天龍「大丈夫だ。顔パックしたまま行く!」 愛宕「…………」 ☆唐突に始まるバカップルコント☆ 提督「おーい、愛宕~!」 愛宕「なあにダーリン」 提督「なんだその呼び方……」 愛宕「いいじゃないたまには。私のこともあーちゃんって可愛く呼んで?」 提督「あーちゃんにちょっと遠征に出かけてほしいんだけど~」 愛宕「いや~ん、てっちゃんはあーちゃんと離れたいって言うの~?」 提督「てっちゃんって俺のことか!?」 ☆母なる愛☆ 加賀「先ほどから何をしているのですか。提督は早くしないと東京の会議に遅刻しますよ?」 愛宕「いや~ん、なんかあの人こっち見てる~!てっちゃんなんとかしてー」 提督「あーちゃん、ごめん。俺、行かなくちゃ」 愛宕「何よ!そっちの女の方がいいって言うの!?てっちゃんのばかぁ!」 加賀「いつまでそのコントしているつもりですか、早くしてください」 提督「あーちゃん、すまない。俺にはかーちゃんがいるから」 加賀「提督、ちょっとお話が」 ☆シュールな光景☆ 提督「ん?これは電の日記帳か?」 加賀「みたいですね。あの子、ほっぽり出してどこへ行ったのかしら」 提督「ほほう、何々?」 加賀「あまり人の日記を覗くのはいい趣味とは言えませんよ」 提督「○月○日、今日はにんむも出げきもなく、一日中ちんじゅふをおそうじする ルンバの後ろをついて歩きました」 提督「俺が言うのもあれだが、この鎮守府大丈夫か?」 加賀「まあ、平和なのは良いことですし」 ☆おめでたい奴らだな☆ 提督「タイムマシンがあったら何をしよう」 天龍「そうだなぁ~。俺は侍を見に行くかな」 愛宕「私は未来に行ってみたいわ」 電「電はたくさんの歴史を見てまわりたいのです」 加賀「私は一刻も早く提督のお力添えができるよう 生まれたての私を鍛え抜きにいきます」 提督「加賀、嬉しいけど自分のことはもっと大切に扱いなさい」 ☆レロレロレロレロレロレロ☆ 電「プーピ~ヒョロロ~♪」 提督「縦笛?どっから見つけてきたんだ?」 電「倉庫にあったので少しお借りしたのです。えへへ、懐かしい音色なのです」 提督「だめじゃないか勝手に持ちだしたら。それに埃で汚れてるかもしれないだろ?」 電「はわわ、ごめんなさいなのです」 提督「これは俺が預かっとくよ」 ………… …… … 電「……ということがあって怒られてしまったのです」 加賀「彩雲、急いで提督を探して。 震電改、流星改、彗星一ニ型甲は見つけ次第爆撃を許可します」 ☆親父は誰だ☆ 天龍「……まだトレーニングしてたのか」 加賀「ええ、日々の鍛錬が重要なのよ」 天龍「ふぅーん。ねえ、ちょっと腹筋見せてよ」 加賀「はい、これでいいかしら」ペロン 天龍「こ、これが幻のシックスパック!」 電(加賀お姉ちゃんお腹見せて何してるんだろう……) 電(まさか……あ、赤ちゃんが!?) ☆ちゃんと加賀が保存してます☆ 電「司令官さん、あの……おめでとうございます」 提督「ん?」 提督(この前の皇帝陛下からもらった変な賞状のことかな?亡くしたけど) 提督「ああ、ありがとうな。でもなんで今さら?」 電「もうお名前は決まってるのですか?」 提督「名前?なんだったかなぁー……横須賀平和維持感謝状だったかな」 電「ざ、斬新なお名前ですね」 提督「そうか?普通だろこんなの」 電「最近だと普通なのですか!?」 ☆多聞丸とかの丸らしい☆ 電「電も授かるのなら……えっと、大日本帝国世界統一快勝丸って名前がいいのです」 提督「丸?丸ってなんだ? まあ日本の統一は無理だろうけど、世界が平和になればいいなあ」 電「世界の平和?なるほど、司令官さんは自分の身内こそが全て。 身内こそが自分のあるべき世界だと、そう仰るのですね」 提督「それだとまるで俺が世界の支配者みたいにならないか?」 加賀「あら、電。どうしたの?」 電「加賀お姉ちゃん、電は横須賀平和維持感謝状ちゃんが元気に育つことを祈っているのです」 加賀「……賞状を人に見立てる斬新なままごと遊びですか?」 その後、加賀が理解したらしく勘違いは解消した ☆あざとい☆ 提督「電のあれ、あいつ本気で言ってるのだろうか」 加賀「あれ、とは?」 提督「はわわ~~」 加賀「今のは電の真似でしょうか?非常に不愉快だったのですが」 提督「あざといよな~、可愛いからいいけれど。 試しに加賀もなんかあざとい感じに喋ってみてよ」 加賀「ほよよ」 提督「あれ?なんか古い」 ☆下敷き☆ 提督「おまっ、おいこの汚い報告書はなんだ」 鈴谷「ん?あたしの字は綺麗だし読めるでしょ?」 提督「そうじゃねえよ。よれよれだし、カレーのシミがあるし」 鈴谷「完成したあとにカレー食べるのに下に敷いてたんだよね」 提督「報告書はランチョンマットじゃねえぞ」 ☆ぬいぐるみの気持ち☆ 摩耶「なあシェリーも連れてっていいだろ?なあなあ!」 提督「だめったらだめ!汚したらあとでうるさいのお前なんだから」 摩耶「心配すんな!ちゃんと透明で中が見えるビニール袋に入れておくから!」 提督「窒息しちゃうよ~~。 可哀想だよ~~~」 摩耶「ほら、中に海水も入ってこないように口を結んだし、 それに首のあたりに紐でも巻いとけば持ちやすいだろ!」 提督「苦しいよ~~。 見てて苦しいよ~~」 加賀「大事だという割りには扱いが意外と雑ですね」 ☆ピコピコ動きそうだよな☆ 摩耶「じぃ~」 天龍「な、なんだよ」 摩耶「その頭についた耳みたいなの」 天龍「ああ?これか?」 摩耶「……可愛い。あたしもそういうの欲しい」 天龍「えっ!?」 ☆じゃあ代わりにこれでいいか☆ 摩耶「一回でいいから貸してよそれ」 天龍「さすがの摩耶でもこれはだめだ」 摩耶「そっか、残念だな」 ………… …… … 提督「あ、それからみんな遠征に行く前に~なんだけど、 摩耶……そのうさぎ耳のカチューシャは外して行くように」 摩耶「ふっざけるな!あたしはこれがいいんだ!!」 提督「ふざけてんのはお前だ!!」 ☆備えあれば憂いなし☆ 愛宕「加賀さん可愛い~!」 加賀「ありがとうございます。みんなもとても似合ってますよ」 電「なんか不思議な気分なのです」 鈴谷「これ着けて出るの!?面白いね!」 提督「全員でつけるならいい。って言ったら まさか全員分のうさぎ耳持ってくるとは……」 バニーガールが一番似合いそうなのはこの子達の中なら愛宕だなぁ、 と密かに思う提督だった。 ☆電はしっかり見ている☆ 電「恋してるってどういう気持ちですか?」 愛宕「うーん、例えば電がこの男の人になら無茶苦茶にされてもいい!って思ったり この人となら一緒にいたいって思ったり~」 電「……電にはまだ分からないのです」 愛宕「そうねー、提督なんてどう?」 電「司令官さんですか?大好きですけど、 お姉ちゃん達をたぶらかす所は嫌いです」 愛宕(うわー、たぶん私のせいもあるけど……提督どんまいっ) ☆うっかり本音が出ていた☆ 天龍「へえ、電がねー」 愛宕「そういうお年頃になったのかしら」 天龍「ところで……」 愛宕「なに?」 天龍「無茶苦茶にされたいってのは完全にお前の願望だよな?」 愛宕「な、なんのことかしら?」 ☆底が見えない☆ 加賀「恋ですか?」 電「はい。提督への気持ちはどのようなのですか?」 加賀「電。あなたにはまだ分からないかもしれないけれどこれは愛よ」 天龍「加賀が言うと重いな……」 加賀「深いと言って頂戴」 天龍「どちらにしろイヤだ」 ☆ブルマでもイケる時はイケる☆ 提督「ふんふふーん♪」 天龍「提督が珍しくご機嫌で掃除をしている……」 提督「へいへい!見たか、このドリフト雑巾がけ!」ドタドタドタ 提督「あっ、」ズボッ 天龍「きゃああああ!ちゃ、ちゃんと前見ろよな!!どこ頭突っ込んでんだ!!」 提督「あ、あ……、最近ちょっと寒いからってブルマなんか履きやがって……糞ぉ!」 天龍「狙ってやったのか。おう歯ぁ食いしばりな」 ☆雑念を掃除しろ☆ 天龍「そういうのは加賀にでもやれよな」 提督「あいつが応えてくれるわけないだろ?おーい、加賀、今日の下着は何色だい?」 加賀「しょうもないこと言ってると 廊下の掃除が終わりませんよ」 提督「ほらな?っていうか天龍も手伝えよーう」 天龍「ったく……ほんとしょうがねえ奴らだなぁ」 ☆帰り道☆ 提督「日が落ちるとやっぱり寒いなぁ」 加賀「早めに帰った方がいいですね」 提督「そうだな。みんな待ってるだろうし」 加賀「提督、手を」 提督「手? 手がどうかしたのか?」 加賀「手、出してください」 ☆みんなそうだよ☆ 愛宕「あたしはやっぱりきのこかしら」 鈴谷「ええー!たけのこでしょ!」 愛宕「ねえ提督は?」 提督「俺?うーん……」 鈴谷「やっぱりたけのこだよね!?」 愛宕「きのこよね?」 提督「金のなる木かな」 ☆オーバーテクノロジー☆ 提督「ん?鈴谷?パソコンの前で何してるんだ?」 鈴谷「ああ、提督じゃん。これスイッチが全然つかないんだよね」 提督「ええ?もう壊れたのか? おかしいなぁーまだ買い換えて1年も経たないぞ」 鈴谷「だって目の前で待っててもつかないもん」 提督「そりゃあつかないわ」 ☆びっくり☆ 提督「ほら、ここの横のスイッチを押すんだよ」 鈴谷「ほ、ほんとに?これ押したら変なサイトに通じて 今すぐ指定の口座に振り込んでくださいとか出ない?」 提督「でねーよ。余計な知識があるせいでごっちゃになっとるじゃないか」 鈴谷「えいっ」ポチッ 提督「どーーーん!!!」 鈴谷「きゃあああああああああ!!!」 提督「あははは!冗談冗談、って鈴谷!? どこ行くんだおい!おーーい!」 鈴谷は少しパソコンがトラウマになった。 ☆知らなかったのかよ☆ 愛宕「ほら摩耶、じっとしてて」 摩耶「い、いいって髪の毛くらい自分でやるよ」 愛宕「嘘つき、そう言って摩耶、全然私のあげた櫛使わないんだもん」 提督「おや?あんな所に珍しい組み合わせだな」 電「……そうですね」 摩耶「だ、誰かに見られたら恥ずかしいからいいよ。愛宕姉」 提督・電「ね、姉……!? ええぇぇぇええ!?」 摩耶「 !? 」 ☆仲良し高雄型☆ 提督「ほ、本当だ。ちゃんと書類見たら姉妹になってやがる」 愛宕「もうっ、私達のこと知らなすぎよ」 加賀「ついに仕事を全くしてないことが裏目に出ましたね」 提督「ふぇえ」 摩耶「別に愛宕姉のことをなんて呼ぼうが勝手だろ!」 愛宕「昔は”ねえね”って呼んでたもんねー?」 摩耶「い、言うなよ!!」 愛宕「今でも二人きりで甘えてくる時は”ねえね”だもんねー?」 摩耶「やーめーろーよー!!」 ☆妹属性☆ 愛宕「でも実は私だって妹属性を持ってるんだからね?」 提督「そうなのか。俺の中で愛宕の株が急上昇したな」 加賀「どれだけ単純なんですか」 電「電もお姉ちゃんがいるのです!」 摩耶「電はみんなの妹って感じだし、本当にいても驚かないな」 電「がーん……なのです」 ☆4-2☆ 提督「はい、今月分の給料だよ」 電「ありがとうございます! これでわたパチが買えるのです」 提督「お前がいいなら俺は止めないが、 その使い方で本当にいいのか!?」 鈴谷「ねえ、お給料って2億とかにいきなりならないの?」 提督「ならねーよ。ってかそんなにもらって何する気だよ」 鈴谷「2億なんてもらったらカレーの海が作れるくらいカレーが買えるよ」 提督「これがほんとのカレー洋ってか。やかましいわ!」 ☆美味しいけどそれは絶対不味い☆ 提督「ん?なんだこのおにぎり……赤飯というよりかは茶色いぞ」 提督「いただきま糞不味ゥッ!ぐぼァッ!!」 加賀「冷蔵庫にあったバン●ーテンココアでご飯を炊いてみました」 提督「お、お前それ電の好物のバンホーテンココアじゃねえの!? っていうか加賀、厨房には出入り禁止だったんじゃなかったの?」 電「い、電のバンホー●ンココア……」 加賀「えっ!?」 電「電が楽しみにしてたバ●ホーテンココアが……」シクシク 加賀「電っ、その……ご、ごめんなさい」 ☆かがねえ☆ 鈴谷「え?二人が姉妹なの?うん、知ってたよ?」 提督「鈴谷が……あの鈴谷が知ってるだと」 鈴谷「失礼しちゃうなー提督ってば」 提督「そうは言ってもなぁ」 鈴谷「あたしが愛宕姉のことをそう呼んでるのは摩耶がそう呼んでたからだよ? 加賀姉なんかもそこから来てるよ」 提督「ああ、今まで触れなかったけどそういうことだったのか」 ☆キュロット考えた奴絶対許さん☆ 提督「あ、加賀。そっちの上の方にあるファイルなんだけど」 加賀「あれですね。んっ……ん」 提督(あれ、届かなかったかな?んんっ!? ふ、太ももの隙間からパンツ見えるかも!!) 加賀「提督、机に突っ伏して無いで手伝ってください」 提督「頑張れ加賀。俺はだらけながら全力で応援しているぞ!」 ☆軍の宣伝の一貫で☆ 提督「なんだこの仕事の依頼」 加賀「どうしました?」 提督「いや、みんなにグラビアアイドルみたいな仕事の依頼が来てて……」 加賀「ふふ、そうですか。そうですか」 提督(あれ?まんざらでもない?) ☆ウキウキルンルン☆ 加賀「で、どうするのですか?」 提督「どうするって言われてもなぁ~」 加賀「受けないのですか?」 提督「やりたいの?」 加賀「いえ、どちらでも」 提督「じゃあ断ろうかな」 加賀「……そう……ですか」 提督「……。いや、でもたまにはこういうのもいいよな……やってみるか」 加賀「提督の命令とあらば」 ☆この世はマニアだらけ☆ 愛宕「ねえ、私だけ水着で露出多すぎないかしら」 提督「そんなことないよーマニア向けだよー」 天龍「なんで俺だけガチガチの軍服なんだよ」 提督「マニア向けだよー」 電「い、電はどうして幼稚園児みたいなスモッグなのです?」 提督「マニア向けだよー」 加賀「普通のファッション誌だと聞いていたのに何故私はメイド服を着させられているのですか」 提督「マニア向んがが……鼻に艦載機突っ込むのやめてくだぱい」 ☆全ては愛のターメリック☆ 鈴谷「あたしカレーの妖精の格好が良かったなぁ~」 提督「分かった。今度同じ仕事の依頼きたら用意してやるから絶対着ろよ」 鈴谷「嘘!嘘だってば!でもみんなに可愛い格好用意してくれてありがとうね」 提督「鈴谷もそうやって普段から大人しくしてれば可愛いんだから」 鈴谷「えー!何それひっどーい!あとで提督の机の引き出しに 並々カレー入れてあげるんだから!」 提督「それの方がひっどーい!」 鈴谷「ちゃんとその隣の引き出しにはご飯入れとくから大丈夫!」 提督「うわー親切!これでいつでも机の引き出し 開けたらカレーが食べれるね!……って馬鹿!!」 ☆奥までグッサリ☆ 提督「ぬいぐるみを増やすのはいいが、もう少し整理しろよ」 摩耶「あたしの勝手だろ!」 提督「勝手じゃないよ。最近部屋に飾れないからって飽きてきた奴を 鎮守府の至る所に飾るのはやめてくれ!」 摩耶「可愛いからいいだろ!」 提督「上の連中が視察に来た時に見られたらどうするんだ」 摩耶「喉元を一突きで黙らせる」 提督「刺殺してどーする」 ☆拒絶の最果て☆ 加賀「提督があまりにうるさいから摩耶が拗ねてますよ」 摩耶「ぶすー」 提督「そんなしょぼくれたってだめだ。明日までには片付けるんだぞ」 摩耶「ようこそ ここは よこすかちんじゅふ です」 提督「おい聞いてるのか?」 摩耶「ようこそ ここは よこすかちんじゅふ です」 提督「NPC化しても無駄だぞ」 ☆AVK☆ 提督「エイリアンVS艦娘? なんだこの仕事の依頼。上の連中は馬鹿なのか?」 天龍「なんだよそれ。そんなことしてねえで仕事しろよな……」 提督「でもこれ受けると資材の支給結構あるんだよね」 天龍「なんで給料が現物支給なんだよ」 ………… …… … 天龍「そういえばあれどうなったんだ?」 提督「他の所にたらい回しにしてやらせたら 映画自体はどんずべりして結局首絞まってるらしいよ」 天龍「だろうねー」 ☆理由はスモッグだったから☆ 提督「何!?電がグレた!?」 電「がむがむくちゃくちゃ」 提督「……電、どうしてこうなっちまったんだ」 天龍「よく見ろ提督」 提督「あ、あれは!噛んだガムはちゃんと包み紙に包んで ポイ捨てしようか迷った挙句、ちゃんと机に置いたァーー!」 天龍「悪にはなりきれない所が愛らしいなぁ」 提督「ふっ、天使のイタズラよ」 天龍「何かっこつけながら置いていったガム拾ってんだコラ」 ☆鎮守府の正門付近で☆ 子供1「あっ、見ろよ!軍だ!今から遠征だよあれ!」 子供2「違えーよ、きっともっと大きい作戦に出るに違いないよ!」 子供1「あの軍服のが司令官だろうな!」 子供2「たぶんな!その隣にいるのもしかして正規空母じゃねえの!?」 子供1「かっけぇー!」 子供2「すっげぇー!」 加賀「良かったですね、提督。とてもこれからコンビニにアイス買いに行くなんて言えませんね」 提督「しっ、聞こえたらどうするんだ。子どもたちの夢を壊すのはよくないだろう」 ☆戦車は浪漫☆ 子供1「あ、あのもしかしてここの提督ですか?」 提督「ああ、私が横須賀鎮守府に勤務する第一艦隊の提督だよ」 子供1「あの!握手してください!」 提督「ああ、いいとも。君はもしかして海軍志望かい?」 子供1「いえ、陸軍です!やっぱ今の時代ガルパn痛たたたた!」 加賀「提督。提督!」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4794.html
前ページ次ページゼロな提督 「さて、泣くのはこのへんで終わりにしておくれ。 そして、これからどうするか、急いで考えようじゃないか」 ロングビルの言葉は冷たかった。 だが、急いで考えなければいけないことだ。泣いている暇はない。今は涙を一滴流す時 間がエキュー金貨の詰まった革袋より価値がある。 第26話 世界が変わる日 最初に声をあげたのはシエスタだった。 「それだったら、タルブへ行きましょう!しばらくブドウ畑に囲まれて、静かに過ごしま しょうよ」 その意見にロングビルは肩をすくめ首を振った。 「何いってんだい?タルブはトリステイン国内じゃないか。これからアルビオンとゲルマ ニアに焼かれる国になんか、いられるかね」 その言葉にシエスタは絶望的現状を改めて気付かされた。顔は青ざめ、口を両手で覆っ てしまう。 ロングビルはヤンの方を見た。 「あたしの村にみんなでおいでよ。今となっちゃ、ハルケギニアで安全なのはアルビオン だけだろう?テファも喜ぶよ」 いきなり三人の間に、長い杖が差し込まれた。 いままでずっと傍観していたタバサが、いつのまにやらすぐ隣にまでやって来ていた。 「うちに来るといい」 無表情なまま、突然の申し出。三人はキョトンとして青いショートヘアーの少女を見下 ろした。 後ろからきた青く長い髪を持つ女性が、無口なタバサに代わって話を続けた。 「きゅいきゅい!あのね、お姉さまはね、ガリアにお家があるの。オルレアンって言って ね、とっても大きなお屋敷なの!きゅい!」 三人は、今度は唖然とした。 どう見ても年下のタバサを姉と呼び、成人女性なのに子供のような口調で、セリフの最 初と最後に「きゅい」なんておかしな言葉が付く。そんな事を気にしていられる状況では ないのだが、どうにも奇異なものを見る眼で見てしまう。 「おでれーた、ヘンな女だ」 ヘンな剣が失礼な事を呟いた。 まぁそんな事はどうでもいいや、とヤンは気を取り直し、改めて女性の言った言葉を思 い返してみた。 オルレアン家といえば、ガリアの王弟だ。王宮の命でビダーシャルを学院へ案内してき たのは、その縁か。ということは、ガリア王から自分の監視と護衛、必要に応じてエルフ との連絡役を命じられているだろう。 だが、最悪の場合は・・・。 「僕の護衛役を買って出てくれる、ということかな?僕だけじゃなく、ここにいる僕の関 係者全員も含めて?」 「そうなのね!きゅい!」 見た目二十歳くらいの女性は、まるで子供のように天真爛漫な笑顔で答えてくれた。 タバサも小さく頷いた。 「おそらくはガリア王から、僕が危機に陥った時は拉致してでも保護してガリアに連行し ろとか、ガリアに仇なす時は殺せ、とか命令されてるだろうけど。今は敵対も妨害もしな い、ということだね?」 ストレートすぎるヤンの言葉に、タバサは一瞬遅れて頷く。 隣の女性は「きゅ、きゅい!?」と呻いて目を逸らした。 さてどうしよう。ヤンは腕組みして思案にふける。 トリステインは数日以内に灰になる。アルビオン艦隊はおそらくトリステイン近くの上 空で待機しているはずだから、ウェールズとアンリエッタを回収次第トリスタニアへやっ て来る。ただでさえ混乱を極めている王宮とトリスタニアへさんざん砲撃を加え、抵抗の 意思も可能性も完膚無きまでに破壊し尽くしてから、地上部隊が降下してくるだろうか。 それとも、まずはラ・ロシェールを占領して地上侵攻拠点とするかもしれない。そうだ、 まだトリステインとゲルマニアの艦隊がラ・ロシェールにいるから、まずそっちを狙うだ ろう。 いずれにせよ、トリステイン占領に一週間もかからないだろう。その次はゲルマニアの 都市国家群だ。ゲルマニアもトリステインへ報復のため攻撃する。実際の侵攻には数日か かるだろうが、ゲルマニア国内を戦場にしないために一気に侵攻して、戦端をトリステイ ンで切ろうとするか。 ゲルマニアの諸侯は皇帝への忠誠は薄いから、もし戦局がアルビオン優勢とみれば即座 になだれをうってレコン・キスタに付く。残るはガリアとロマリア。この二国の出方次第 にかもしれないが、両国も戦火が及ぶのは避けがたい。 そういえば、ガリアの動きが分からないな。完全に沈黙を守るって、どういうことだろ う?どこかと同盟するなりなんなりの動きがあっていいはずなのに。無能王って呼ばれて るけど、ガリアの発展具合を見ると、無能とはほど遠い。単に魔法の才が低いというだけ で、為政者としての才は長けている。なのに動かない。でも僕の護衛や強制連行をタバサ さんに命じているなら、今の事態は予想していたということだろうか?…この点は情報不 足だな。 なんにせよ、今は逃げた方が良いな。 ウェストウッド村で静かに暮らそうか、いったんガリアに渡ってエルフと連絡をとろう か…。 「ウェンリーよ」 ヤンを呼ぶ声が、彼を思考の海から現実世界へ引き戻した。 そこには、悲壮な決意を秘めた表情を見せる公爵がいた。公爵夫人は愛娘の背を押し、 ヤンのもとへ行くよう促している。 「逃げるのであれば、ルイズも連れて行け」 その言葉は、あまりにも苦渋に満ちた言葉に聞こえた。 ルイズは悲壮な色を浮かべた瞳で父と母を見上げる。 「ま、待って下さい父さま!母さまも、私だけ逃げよとはどういうことですか!?父さま と母さまは、どうなさるつもりですか?」 「私と父さまは、トリステインに殉じます」 公爵夫人の言葉は、苛烈なる眼光そのままに苛烈だった。一切の迷いも恐れも含んでは いなかった。 「そんな、それでは!私も、私も残ります!侵略者から国を守るため戦います!!」 縋り付いてくる娘に、母の眼光には寂寥が混じった。 「ダメです。もはや、トリステインは終わりです。エレオノールとカトレアもガリア辺り に亡命をさせます。マリアンヌ陛下と共にトリステインの大地を覆う屍になるのは、私達 だけでよいのです」 「ダメです!死んではダメです!そんなの、そんなのダメ!…あたしの、あたしの魔法な ら、『虚無』なら戦えます! 私、分かるのです。自分の中に溜め込まれた精神力なら、アルビオン艦隊もゲルマニア 艦隊も、まとめて吹き飛ばせます!!この国を、ヴァリエール家を、トリステインを守れ るんです!」 ルイズの言葉は、系統魔法の常識からはかけ離れたものだ。 だが、ルイズの言葉を聞いた公爵が首を横に振ったのは、娘の言葉と魔力を疑ったから ではなかった。 「確かに、お前の『虚無』は大きな力を秘めている。それは先ほど聖堂を消した事からも 分かる。だが、残念だが…もはや、艦隊を倒せばどうにかなる、という段階ではないのだ よ、ルイズ。 アルビオンもゲルマニアも、艦隊が潰れたなら再建すればいい。だが、トリステインは もはや再建出来ない。アルビオンとゲルマニアに挟まれているという地理に変化はなく、 アンリエッタ姫が貴族達の忠誠を裏切ったという事実は隠せないのだよ。地の利も人の輪 も失ったのだ。 利に聡い者達は早々にゲルマニアかレコン・キスタのいずれかにつく。特に我がヴァリ エール家はゲルマニアのツェルプストー家と隣接している。ゲルマニアの侵攻を一番に受 けるのだ。そして王家も他の貴族も援軍には来ない、来る事が出来ないのだ」 ルイズの背を押して逃亡を促していた母も、悲壮感を漂わす口調で絶望的未来像を語っ た。 「ベアトリス殿下は、この一件を報告するためクルデンホルフ大公国へ戻りました。かの 地はゲルマニアとの縁が深いので、すぐにゲルマニア側に立ち、トリステインへ杖を向け る事でしょう。 いかにルイズの『虚無』が強き力を持とうとも、アルビオン側とゲルマニア側の両方に 立つ事は出来ないのです。それに、敵は艦隊だけではないの、地上から騎士隊も銃士隊も 傭兵も来るのよ。 そして精神力が尽きた時、あなたも敵に討たれ、死んでしまうのですよ」 「そ、そんな、そんなの!でも、だったら母さまだって、父さまだって!もう、トリステ イン王家に忠誠を尽くす必要は無いではないのですか!?」 王家への忠誠を捨てる。 これまでのルイズからは、ヴァリエール家の者としては有り得なかった言葉。 そして、その言葉を投げかけられた夫妻は、哀しげに微笑んだ。 「わしはな、ルイズ。もう年をとりすぎた。もはやトリステイン貴族として以外の生き方 が出来ん。今さら新しい人生を歩めなど、酷な事をいわんでくれ」 「でもルイズは、私達の娘達なら、過去を捨てて新しい人生が歩めます。どこかハルケギ ニアの片隅でも良い、貧しい平民としてでも構いません。生きなさい。決して死んではな りません」 「そ、そんな、そんなことって、そんな・・・」 もう、ルイズの瞳からは涙すら流れなかった。 顔は血の気を失い、足からは力が抜け、指は動かし方を忘れたかの如く震えるのみ。 ただ死を覚悟した父と母の手に支えられて、どうにか立っているだけだ。 その思考からは、何一つ現状に希望を見出す事が出来なかった。 どうして?どうして、こんなことになったの? ヴァリエールの名を捨てるだなんて 貴族の地位を失うだなんて 敵に背を向けるだなんて 名誉の為に死んではならないだなんて 生き恥を晒すだなんて トリステインから逃げろだなんて 父さまも母さまも見捨てろだなんて 貧しい平民として生きろだなんて あたしの、あたしの人生は何だったの!?やっとの思いでメイジになったのに、すぐに 死ななきゃいけないの?今度は貴族じゃなくなるというの!? もう、終わりなの?本当に、本当にもうどうしようもないの? 何でもいい!何か、何か出来る事はないの? 何か上手い手は、一発逆転なんて調子の良い事は言わないから、なんとかトリステイン を、いえヴァリエール家だけでも、ああもう父さまと母さまとちい姉さまとついでにエレ オノール姉さまだけでいい! どうか助けて!みんなを救って!! この状況を、何かいい手は、助けてくれる人は・・・助けて、くれる、人・・・そんな 都合の良すぎる人がいるわけが・・・? い る いるじゃ、ない…いるじゃないの! ルイズは、ヤンを見上げた。 もはや涙は枯れ果てた目で、それでも輝く大きな鳶色の瞳で。 父と母の手を振り払い、黒い燕尾服へすがりついた。 どこへ逃げようかと算段を立てていたヤンへ、自分の執事へ。 「ヤン!お願い!みんなを助けて!! トリステインを、いえ、ヴァリエール家だけでも!ああ、父さまと母さまだけでも!え と、ちい姉さまと、エレオノール姉さまも!」 「る、ルイズ…」 縋り付かれたヤンは、急激な思考の方向転換を要求され、些か混乱してしまった。この 絶望的状況をなんとかしろとは、さすがの彼も「無茶言うなぁ」と呆れた。 だが、ルイズはいたって本気だった。彼女にとり、ヤンの頭脳はまさに最後の希望だっ た。その細い腕で力の限り、精一杯ヤンにしがみついていた。 「お願いよ!あんたしかいないの! あんた、元帥だったんでしょ!?強大なローエングラム王朝軍を相手に、圧倒的不利な 状況でも戦い続けてたって教えてくれたじゃない!『ふりーぷらねっつ』の軍最高司令官 だったんでしょ!? なら、その力を見せて!あたし達を助けて!!」 ヤンは、困惑していた。 いや、ヤンだけではない。何も言いはしないが、公爵夫妻もロングビルもシエスタも、 タバサ達もルイズの懇願に困惑していた。彼女の気持ちは分かる。だが、こんな状況をど うにかできるはずがない。デルフリンガーですら何もしゃべろうとはしない。 哀しげな視線がルイズへと集中する。 ヤンは溜め息をつき、しゃがんでルイズと目線を合わせ、小さな肩に手を置いた。 「ルイズ・・・逃げよう。もう、トリステインの事は諦めた方がいいよ」 「ダメよ!あたしは逃げない、諦めない!父さまも母さまも助けたいの!みんなを、みん なを助けて!力を貸してっ!!」 ヤンの言葉にルイズは力一杯首を振る。長い髪を振り乱してヤンへ懇願し続ける。 「ルイズ、ルイズ・・・」 ヤンは、主の肩を掴む手に力を込めた。 「トリステインは、このままじゃ、もうすぐ火に包まれるんだ。いや、ハルケギニアの中 で安全なのは、おそらくアルビオンだけだろうね。 僕は、ヴァリエール家の執事じゃないんだ。ルイズ、君個人の執事なんだよ。僕が助け なければならないのは、君なんだ。君を死なせるわけにはいかないんだ」 「そんな!あんたでも、どうしようも無いって言うの!?」 「この国に君を残すなんて危険な事、僕には出来ないよ。 昔、僕の父にも等しい人を戦争で失った時に思ったんだ。誘拐してでも助けるべきだっ たって。 もう、あんな辛い想いはゴメンだよ。必ず君の命を守るから、一緒に来て欲しい。僕ら と一緒に安全なところへ逃げて欲しい」 「ダメェッ!!そんなこと、そんなの出来ない!あたしだって、あたしだって父さまも母 さまも失いたくない!」 「ルイズ…」 小さくて可愛い主は、再び涙を流す。 ぼろぼろと大きな雫が、クシャクシャになった顔の上を流れ落ちる。 噴水の水で濡れたピンクのドレスを、さらに濡らしていく。 今度は、ヤンに視線が集中する。 ヤンは天を仰ぐ。 まったくもって、女の涙というのは最強の武器だ。 しかも自分の命の恩人で、召喚以来ずっと一緒に暮らしてきた少女。 ユリアンのように、自分の娘かとすら思える愛しい女の子。 色々な事があったけど、杖で脅されたり死地に向かわされそうにもなったけど、今では 大事な家族だと思ってる。 執事なんて言い訳だ。本当はこの子と、マチルダと、シエスタと、みんなと一緒に平和 に暮らしたいんだ。 分かってる、分かってるんだ。 今逃げても、どこへ行っても、必ず戦火が追ってくる。 飢えた難民が、傭兵崩れの盗賊が、度重なる飢饉が、屍の山から湧き出す疫病が、重税 を取り立てる貴族という名の強盗達が襲ってくるんだ。それはアルビオンでもガリアでも 変わらない。 どこへ逃げたって、平和じゃないんだ。安全とは言い切れないんだ。 でも、この状況をなんとかしろ…と言われてもなぁ。 果たして、どこかへ逃げるのと比べてマシと言える策なんてあるのだろうか? 平和を守る手段か・・・ ヤンは、天を仰ぎ続ける。 かつて皇帝ラインハルトすら元帥の地位をもって旗下に加える事を望んだ慧眼を。ジョ アン・レベロが独裁者になる事を恐れた頭脳を。人類の歴史を学び続けたことにより得た 知性を。その頭蓋に収められた全てを総動員する。 寝たきり青年司令官とか、むだ飯食いとか、非常勤参謀とか呼ばれる事を自慢にすらし ていた節のある彼が、その悪名を返上するかのように灰色の脳細胞を働かせた。脳神経細 胞が超過勤務手当を求めてストをするのではなかろうか、とバカな事を考えてしまうくら い必死で。 しばしの時が過ぎる。 ヤンは何も言わず、天を仰ぎ見て考え続ける。 その場の誰もが口を閉ざし、中肉中背で収まりの悪い髪を持つ男を見つめている。 ヤンは目を閉じる。 口元を引き締める。 そして、寝ぼけまなこを開いた。公爵夫妻へ向けて。 「公爵様、そして奥様」 いきなり声をかけられた二人は、何事かと目を見開いた。 「お二方にお伺いしたい事があります」 二人は顔を見合わせる。 口を開いたのは公爵だった。 「良かろう、何を聞きたいのだ?」 しゃがんだままのヤンは公爵を見上げ、真っ直ぐに問いただした。 「先ほどの言葉、真ですか?」 「さっきの、言葉?」 「聖地奪還の過程で流れる血と国土の荒廃を考えよ、民草を守れ、間違いを指摘するのも 忠義…これらの言葉です」 公爵はヤンの意図が掴めなかった。いきなり見当違いなことを聞かれたかと思ったが、 何か意味があるのだろうと想い、ヤンの話に応じる事にした。 「真だ、嘘偽りはない。 われら貴族は民の安寧を守るための力を始祖より授けられたのだ。決して無為に戦乱を 起こすためではない。特にヴァリエールのごとき旧き貴族は、トリステインの品位と礼節 と知性の守護者たるべき地位にある。 …いや。あった、と言うべきだな。わしの若い頃は、名誉と誇りと忠誠だけを守れば、 誰からも後ろ指を指される心配はなかった。しかし、それは今日をもって終わりを告げた ようだ」 公爵は笑った。自嘲と無念を含んだ笑みを浮かべた。 そんな公爵を、ヤンは変わらぬ口調で問い続ける。 「それでも、平和を守りたいと望めますか?名誉より、忠誠より大事なものがあると。メ イジだけでなく、平民も含めた全ての人々が、戦乱で傷つき死に逝くことのない世界であ るべきだ、と言えますか?」 「・・・何を、言いたいのだ?」 ヤンはゆっくりと立ち上がる。 自分にしがみつくルイズの背に手を回しながら、公爵夫妻を正面から見据えた。 「あなたの命、いえ…あなた達二人の命、名誉、忠義。平和のため、私に預けて下さい」 それは、この場の誰もが耳を疑う言葉。 ヤンの言葉は、平和を守る手があるということ。 ただの平民が、ハルケギニアでも指折りの有力貴族であるヴァリエール家の当主に、自 分に従えと言う。 命はおろか、王家への忠義も、貴族にとり命を上回る価値を持つ名誉すら、彼に渡せと 命じている。 皆はヤンを見る。 疑念・疑惑・不信・軽蔑・怒りも含めた全ての視線が、目の前のとぼけた男に集まる。 だが、エル・ファシルの英雄は一片の迷いも恐怖も見せていない。 公爵は、重々しくバリトンの声を響かせた。 「手が、あるのだな?」 ヤンは頷く。 「極めて危険で、成功の可能性は低いです。ですが、このままでもトリステインは来月を 待つことなく亡びます。国民の多くが、戦火に死に絶えます。ならば、無為に戦端を開く よりはマシでしょう」 「そのために、われらの命と名誉を捧げよ、というのだな?我らがお前に膝を屈すれば、 トリステインの平和を守ってみせる…そういうのか?」 この言葉には、首を横に振った。 「膝を屈する必要はありません。ただ、協力して下さい。私の言うとおりに動いて下さる なら、最小限の犠牲と引き替えにハルケギニアは戦乱の業火に焼かれずに済む…かもしれ ません」 「犠牲?…わしとカリーヌか…」 「お二人だけではありません。アルビオン艦隊の侵攻はもはや止められないのです。この 点は覚悟せねばなりません。 ですが軍人以外の、別の人達があえて犠牲になることで被害を最小限に抑える事が出来 ます。ただ、この策が上手く行けば、その人達も絶望的な戦乱と、死だけは免れる可能性 を得るのです。 無論その人達も、彼等の名誉とひきかえに、ですが」 「別の…人達、だと?」 別の人達、それは誰の事か。 公爵の目は、ヤンの次の言葉を促す。 ヤンは、ハッキリと犠牲となる予定の人物を宣言した。 「マザリーニ枢機卿。そして…大后、マリアンヌ陛下」 絶句した。 ヤンを取り囲む全ての人が、息を呑んだ。 彼は、始祖より王権を授けられた、貴族が忠誠を尽くすべき王家を生贄にしろと言って いるのだ。しかも、よりにもよって、旧き貴族として仕えてきたヴァリエール公爵夫妻自 身の手で。 一瞬の空白。 公爵夫人が残像も見えぬ速さで杖を引き抜いた。 同時にシエスタが手に持っていたままのブラスターを構える。 ロングビルも杖を婦人へ向けた。 デルフリンガーはカシュッと音を立てて半ば飛びだし、自らの刃を煌めかす。 公爵夫人は、シエスタとロングビルに銃と杖を向けられても、怯む様子は見せない。 ヤンと公爵は視線をぶつけ合ったまま動かない。 ルイズは二人の男に挟まれ、視線をせわしなく左右させる。 空気が凍り付く。 「やめるのだ、カリーヌ」 公爵は妻へ視線を向けた。その目は、トリステインに殉じると語った時よりも悲壮な覚 悟に満ちているようだった。 「ですが、あなた…」 「このままなら、陛下は死ぬ。レコン・キスタに粛正されるか、アルブレヒト三世に今回 の責を問われるか…いや、アルビオン王家と同じように、貴族の名誉を穢され尽くした後 に、名も無き一兵卒の剣に倒れるだろう。そして、我ら二人も、トリステインの全ての民 も等しく、だ。 しかも、それら全てがトリステイン王家アンリエッタ姫の仕業と歴史に記される。品位 も礼節もあったものではない。もはや伝統だの、名誉や忠義に拘っていられる時ではない のだ。 ならば、賭けるしかあるまい…陛下のお命を、ハルケギニアの平和を守れるというウェ ンリーの策に、な。 なにより、この不始末の責任は、誰かが負わねばならぬ。責を負うに相応しい者が、負 わねばならんのだ」 「あなた・・・」 公爵も、そして婦人も顔を伏せる。 二人は唇を噛み締めていた。 その手は強く握りしめられている。 肩が小刻みに震えているのは、押さえきれぬ怒りと悔しさゆえだろうか。それとも己の 無力に絶望しての事か。 「ウェンリーよ、聞いての通りだ。お前の策を話すが良い」 「ご協力、感謝致します」 深々と頭を下げる。 その彼の頭に、婦人の峻烈な言葉が降ってきた。 「そこまでの大言壮語を語る以上、失敗は許しません!必ずやトリステインを、ハルケギ ニアを救いなさい!もし失敗すれば、お前も我らと共に、トリステインの土となってもら います!!」 「承知致しました、奥様」 かつて英雄と呼ばれた男は頭を上げる。そして、彼を囲む人々全てに語りかけた。 「さぁ!聞いての通りだよ。悪いけど、もしできるなら、みんなも協力して欲しい! もちろん強制はしない。なにしろ、かなり分の悪い賭だからね。おまけにスピード勝負 なんだ。既に手遅れになっている可能性だってある。 逃げる人は、急いで逃げてくれ!でも手伝ってくれる人は、この場に残って欲しい!」 「あ~に言ってんだい?今さら、まったく…」 ロングビルは、呆れたように肩をすくめた。 「ここまであんたに付いてきたんだ。最後まで付き合うよ」 横に立つシエスタも小さくガッツポーズ。 「あたしだってです!アルビオンが攻めてきたら、タルブだってただじゃ済まないんです から!サヴァリッシュ家の力を見せてあげます!」 デルフリンガーも元気にツバを鳴らした。 「オレッちはおめーの剣だぜ!好きに振るいな!」 「きゅいぃ~…お姉さま、どうするの?」 尋ねられたタバサは、相変わらず無表情に答えた。 「ヤンの監視と護衛が主たる任務。ガリアへの連行は最後の手段」 「あうう~、やっぱりい… シルフィ、お肉もらうんだから!あとで、いっぱいいっぱいお肉もらうんだからね!」 シルフィと名乗った女性は、溜息とやけくそ混じりにご褒美を要求した。うら若き美女 が報酬として大量の肉を要求する姿、かなり珍妙だ。 「ヤン・・・」 鳶色の瞳が、涙を一杯に溜めて見上げてくる。 ヤンは再びしゃがんで、ルイズと視線を合わせる。 「いいかい、ルイズ。最後に聞くよ。僕の策に、乗れるかい?」 二人の瞳が真っ直ぐに見つめ合う。 「時計の針は戻せない。トリステインも、王家も、ハルケギニアも、全てを元通りにする 方法はないんだ。 でも、泥沼の戦乱だけは回避できる可能性がある。貴族の名誉、王家への忠誠…君がい つも、ヴァリエール家の貴族として命より大事と言ってきたものを、平和のために犠牲に する事ができるかい? 命を惜しんで名を捨てれるなら、貴族の名誉より名も無き平民達の命が大事と言えるな ら、僕は、公爵夫妻を救いたいという君の願いを叶えるよ」 ルイズは、細い腕で涙を拭った。 ヤンの体から一歩身を引く。 そして腰に手を当てて胸を張った。 「分かったわよ…あんたの策に乗ってあげるわ! さぁ、あんたの主が命じるわ!この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ ヴァリエールの命に従い・・・」 大きな声でヤンに命じようとしていたルイズだが、途中でその言葉が止まった。 真っ直ぐに自分を見下ろす使い魔を見上げながら、一瞬の迷いを見せる。 そして、すぐに迷いは消えた。腰に当てていた手を下ろし、細くしなやかな太ももの前 で手を重ねる。 そして、自分の使い魔へ、深く頭を下げた。 「ヤン、お願い!トリステインを、ハルケギニアを救って! 貴族とか、メイジとかじゃなくて、ただのルイズとしての、お願いなの! みんなを助けて下さい!お願いします!!」 ただのルイズとしての願い。 貴族の名を捨てる、ヤンの言葉を彼女なりに体現した行動。 それは、名誉を捨てるヤンの策を受け入れる覚悟。 それは、彼女の使い魔を満足させるに十分なものだった。 「オーケー!合格だよ、ルイズ」 ヤンと、顔を上げたルイズは、満面の笑みで向かい合った。 そして彼は大声を張り上げる。 「さぁ!さっきも言ったけど、この策はスピードが勝負だ!まず大急ぎで城へ戻るよ!」 と言ってヤンはタバサを見た。 タバサはシルフィと名乗った女性を杖でつついた。 「シルフィードを連れてきて」 「うぅ~、しょうがないのねぇ。呼んでくるのね」 青く長い髪の女性は、街の路地へと走っていった。 次の瞬間、突然街並みの向こうから、タバサの使い魔シルフィードが飛んできた。 青く輝く竜は広場に降り立ち、きゅいっ!と一声鳴いてヤン達に背へ上がるよう促す。 その場の全員が「バレバレだ…」と思ったが、指摘するのは気の毒だし余計な事に費や す時間がないので口にはしなかった。 こうして一行はシルフィードの背に乗り、トリステイン城へと飛び立った。 ヤンはトリステイン城へ向かう間に、彼の策を皆に説明していた。 その策に公爵も、不承不承という感じだが頷いた。 「た、確かに…もはや、戦乱を回避するにはそれしかあるまい」 公爵夫人は、その策の困難さを考えて、しきりにこめかみを押さえる。 「やると決めた以上、全力は尽くしますわ。ですが、それでも上手く行く保証はありませ んわね。どうやって説得したものやら…」 ロングビルは、既にフーケの地を晒していた。 「ま、せいぜい頑張るっきゃないね!これに失敗したら、あたしゃヤンをかっさらって逃 げるとするよ」 シエスタはブラスターを顔の前で握りしめる。 「そうは行きません!絶対成功させて、タルブに平和を取り戻して、ヤンさんと一緒に蒸 留酒を造るんです!名前は、えっと、ヤンシエスタ!…ゴロが悪いなぁ」 ルイズは、シルフィードの一番前で城を杖で指しながら立ち上がっていた。風で乾いた ピンクのドレスが旗のように翻る。 「行けー!急げーっ!絶対トリステインを救うんだからねー!」 その真後ろのタバサは、黙って城を目指している。 ヤンは、皆に策の説明を続けながら、ふと考えこむ。 「ん~?ヤンよ、やっぱ不安なのか?」 背中から尋ねてくる長剣に、ヤンは諦めたような笑いを向けた。 「いやあ、そうじゃないんだよ。結局、自分はどこへ行っても負け戦の後始末をさせられ るんだなぁ…と思ってね」 「おめぇ、苦労してんのな」 「まったくだよ。はぁ…早く引退したい。トリステインにも年金があるといいんだけど」 ここへ召喚された時に家族も、友も、兵も、地位も、信用も、何もかも失った。 全くのゼロだった。 魔法成功率ゼロだったルイズに、何もかも失ってゼロになった僕。 ゼロなメイジと、ゼロな提督。 全く、お似合いの主従だなぁ…。 そんな呑気な事を考えてる場合でもないのに、つい頭に浮かんだ言葉遊びに少し笑って しまった。 そして、ついにシルフィードは降り立った。 既に混乱を極め怒号が飛び交うがため、中庭に突然降り立った彼等を咎める者もいなく なったトリステイン王宮に。 その頃、衛星からの画像を表示する管制室でも怒号が飛んでいた。 「次回同調まで48時間…ですってぇ!?そして、気象兵器の攻撃をかいくぐって、現場 に向かって…それじゃ間に合いません!」 それはイゼルローン共和政府軍司令官、ユリアン中尉の怒号だった。 ポプランも、そして他のイゼルローン士官達も、シャフトの胸ぐらを掴もうかという勢 いで詰め寄る。 「あんた、提督の状況がわかってんのか!?どうみても戦闘状態にあるぞ!あんな無茶苦 茶な超能力者共を相手に!すぐ救助を、いや援軍を送らないと間に合わないかもしれない んだ!!」 「そ、そんな事を言われても!」 詰め寄られるシャフトは、撃墜王の怒気に押されて滝のように汗を流している。 部屋に待機する警備兵達は、既にブラスターの引き金に指をかけ、事態の推移を見守っ ていた。 立派な体格を持つ美男子が、司令官席の皇帝を見上げ、睨み付ける。 「このローゼンリッター第13代連隊長、ワルター・フォン・シェーンコップが直々に向 かうとしましょう。小型機を一機貸して下されば結構。ゲート拡大の必要もありません。 あんな泥人形の壁なぞ、華麗にすり抜けてみせよう」 「おーっと!そいつは俺の役目だ。陸戦隊の出番じゃねえぜ!」 シャフトの首を締め上げようとしていたポプランが口を挟む。今度は撃墜王と陸戦隊長 が睨みあう。 「静まれ!落ち着くのだっ!」 皇帝の声が管制室に響き渡る。人々は、その威厳を湛えた張りのある声に打たれた。一 瞬にして静寂が支配する。 「皆、忘れるな!!あのゲートは、人一人がくぐる程度の大きさしかない!ワルキューレ も通過できぬ!あれを通過出来る程度の現有の小型機では、湧き出す大地の障壁を突破出 来ぬのだ!」 その言葉に、イゼルローンの将官達は唇を噛み締める。 皇帝は、ようやくポプランの詰問から解放されて一息ついていた男を睨む。 「シャフト!そして総員に命じる。座標算定作業を一時中断せよ。ゲート拡大に全力を尽 くせ!早急にヤン・ウェンリーへ救援を送るのだ!!」 そして背後に立つ主席秘書官にも矢継ぎ早に指示を飛ばす。 「技術開発班に命じる。あの土の化け物共を突破出来る小型機を造れ!強襲降下艇の強化 も急がせよ」 伯爵令嬢の返事も待たず、ラインハルトはモニターへ視線を戻す。 そこには中庭から城内へ駆け込むヤンの姿があった。 モニターに映るヤンの姿が一瞬歪んだ。 だが、モニターの故障では無い事を皇帝は承知していた。軍服の袖で自分の目を拭い、 視界を歪ませた汗を取り除く。 「く…このような時に、また!」 フロイラインは、皇帝の白皙の頬に薄明るい赤さを帯びているのに気が付いた。 第26話 世界が変わる日 END 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/kyoumoheiwada/pages/35.html
番外編 ☆サバイバルアイランド☆ 天龍が仲間に加わったことにより私と提督の二人きりの空間はもうなくなってしまったのでした。 でも別にそれが嫌だというわけではない。 仲間が増えたことで仕事の効率もあがるし、 何より天龍は覚えも早いし訓練も真面目に行ってくれている。 どこかの誰かさんと違って。 そんな私達の平凡が終わりを告げるのは早く 天龍が仲間に加わってから一ヶ月ほど過ぎた頃。 一通の手紙が届いたのがきっかけだった。 加賀「提督。提督宛に手紙が届いていますよ」 提督「提督は留守です。って書いて送り返せ」 加賀「そういうワケには行きません。 提督にはこれは中々嬉しいお知らせですよ?」 提督「なるほど。とうとう俺のハーレムウハウハランドが建国される訳だな」 加賀「そんなのここにあるじゃないですか」 提督「ここ、仕事、強要。それ、良くない」 加賀「何故、片言なのかは分かりませんが」 天龍「何やってんだよ。ほら、貸しな」 そう言って私の手から手紙を引ったくる天龍は 雑な手つきで封を破り中から綺麗な便箋を取り出しました。 天龍「なになに? えーっと、二週間後に行われる 式典へ参加されたし……とのことだ」 提督「式典? やはりハーレムウハウハランドが」 天龍「そうじゃなくて……まあ何の式典なのかはさっぱりだな」 提督「ん? 待てよ。おいそれどこで開催されるんだ」 天龍「この招待状には豪華客船って書いて―― 提督「行く!!」 加賀「……はぁ。また突然ですね」 提督「だってお前考えても見ろよ。 豪華客船と言ったらついてくるのは確実に豪華なディナー!」 提督「飯! 飯! 飯! 食い放題が相場だろ!!」 加賀「そ、そんなので釣られる訳がないじゃないですか」 天龍「顔ニヤけてんぞ」 失礼な。そんなことありません。 でもさすがに気分が高揚しますね。 提督「他にどんな奴が来るんだ」 天龍「えーっと、他の司令官も来るみたいだぞ」 天龍「あとは……ああ、ここ最近有名になった名探偵が……」 提督「やっぱり行かない!! 絶対行かない!!」 加賀「なんですか今度は」 提督「ばっか、お前考えても見ろよ! 豪華客船に名探偵!? もうやだよ~~! 事件の匂いしかしないよ~~」 提督「完全に劇場版の舞台設定だよ~~~」 天龍「でも飯は食い放題なんだろ?」 加賀「行くしかないですね。決してご飯が食べたい訳ではないですが」 それから私達は提督の猛反対を押し切り 式典が行われる豪華客船に乗り込むことに。 提督の身柄を引きずるように私達は船に乗り込むことに。 提督「んん゛~~!」 提督の口はテープで塞がれているために何を喋ってるのかは分かりませんでした。 私達の他にも色々な人が乗っているこの客船。 各業界の著名人達が集まっているようでしたが、 皆一様に私達のことを怪しげに見ていました。 それもこれも提督が簀巻き状態で引きずられているせいです。 全く、無駄な注目を浴びたくはないのですが。 船への搭乗手続きの際にその提督のせいで怪しまれたので手こずりました。 提督は「お前らが拘束してるせいだろ!」と言っていました。 はて、なんのことやら。 私達は部屋へ案内されました。 部屋は2つ、一人用と二人用。 加賀「じゃ、天龍、ドレスに着替えてから集合よ」 天龍「待てコラ。何で俺が一人部屋なんだよ」 提督「ハッ、確かに!」 加賀「何でって……それが普通だと」 天龍「そんな訳ないだろ、アホか。 普通は男子と女子で別の部屋なの! ほらこっち来い」 加賀「待っ、あっ、て、提督!」 提督「おうじゃあまたあとでな」 そのまま私は天龍に引きずられ二人部屋に。 私はこの時のことを思い出しては何故か少し悔しい思いをします。 正しいことを言われたのに何故か納得できない。そんな気分です。 その後、三人揃ってパーティ会場へ。 会場に入った時には既に船は沖に出ていて 誰か知らないけれど、偉そうな髭面のおじさんが壇上で話をしている時でした。 まあ、十中八九、今回の会の主催者であることは確かでした。 隣には金髪の胸元が大胆に空いたドレスを纏った女性が。 おじさんは壇上から退いてその女性にマイクを手渡しする。 どうやらその女性が乾杯の音頭を取るようでした。 提督「ほら、なんか乾杯するみたいだぞ」 そう言ってどこかから引ったくってきただろうグラスを 私と天龍に渡してきました。 中身は……綺麗な色をした葡萄酒。 提督「お、見ろよ。あれ、すんげえおっぱいだな」 加賀「……」 提督「痛っっ!!」 提督の足を踵で踏みつけた時、それとほぼ同時に壇上の女性は 可愛らしい声で乾杯の音頭を取りました。 愛宕「ぱんぱかぱーん! それじゃあ平和の祭典を開催しまーす♪」 愛宕「乾杯~♪」 提督は足を踏みつけられた痛みで体制を崩し、 葡萄酒を服に溢していました。 この時の女性こそが愛宕でした。 この瞬間私達は彼女のことを ”あぁ、なんか派手な女がいるな……”程度にしか思っていませんでした。 それから……。 私達は心ゆくままに食事を楽しみ……たかったのですが、 各方面の方が次から次へと挨拶に来て 提督は落ち着かない様子でした。 提督「お前も食ってばかりいないで相手してくれよ」 加賀「ここは譲れません」 天龍「なあ、何で俺は用心棒みたいな扱いなんだ?」 提督「な、何だろうな。俺の半歩後ろに常に控えてるせいじゃないか?」 天龍「いやなんて言うか、人見知りじゃないんだけどよ。 俺だって偉そうな連中ばかり来て怖いんだよ」 などと話している時、提督の元へ一人の女性が……。 それは壇上で挨拶をしていた愛宕でした。 愛宕「こんばんは~。どうですか? 楽しんでます?」 提督「ああ、君のような綺麗な娘が来てくれたおかげで 私は今とてもいい気分だよ」 提督を睨みつけると咄嗟に目線を逸しました。 提督が目線を動かした先は愛宕の胸でした。 愛宕「あ、あの……提督さんが深海棲艦との戦争を止めてくださったんですよね?」 提督「ああ。そのことかい。なんて事はないよ。 至極当然のことをしたまでさ」 愛宕「まあ、素敵ですね。そういうのとても格好いいなって私思っちゃいます」 提督「だが、私は今も自分のしたことが正しいのかは分かっていない」 愛宕「そんな……」 提督「戦争が止まるまで、一体いくらの人間が犠牲になったか……」 愛宕「きっと間違っていないと思いますよ」 そう言いながらそっと提督の肩に触れる愛宕。 さすがにそれは見逃せません。 提督の服の裾を引き愛宕から距離を取らせる。 しかしそれでも近づく愛宕。 愛宕「……あの、もう少しだけお話聞かせていただけませんか? すごく……興味があるんです。英雄という人に」 加賀「あのいい加減に―― その時。 大きな揺れが会場を襲う。 天龍「な、なんだ!? 地震か!?」 加賀「ここは海の上ですよ……っ!」 愛宕「きゃあっ!」 悲鳴と同時にさりげなく抱きついて……この雌狐。 許すまじ。 天龍「おい! こっちだ!」 提督「失礼!」 愛宕「何!? 何なの!?」 私も提督のあとを追い、海の外が見える場所まで走る。 そこには客船を囲うように大量の船が……。 天龍「こいつはぁ……」 提督「海賊だ……。囲まれてやがる」 加賀「狙いはこの船の著名人の財産か何かでしょうか」 愛宕「な、何が起きたの!?」 提督「おひょっ!?」 この雌狐……着いてきた上に提督の腕に絡みついて……。 つい強めに愛宕の肩を引き提督から引き離す。 加賀「ここは危険です。中に入っていて下さい!」 提督「お嬢さんも頼むから安全な所にいてくれよ!?」 天龍「行くぜ! 一人残らずお縄につきな!!」 叫びながら天龍が一番近くの船に飛び込んでいく。 同じように提督が別の近づいてきた船に飛び降りる。 二人が降りて行った船からすぐに阿鼻叫喚の声が上がる。 一方私は客船にいる人達へ向けての安全確認と非難誘導を済ませることに。 しかし、いくら二人が出迎えたとしても相手は何隻もの船で囲ってきてる。 その船に敵が一体どれほどの数が乗っているのかも不明。 ゆえに客船にはすぐに乗り込まれてしまった。 乗り込まれた敵の方は次から次へと私がなぎ倒していく。 全く、さきほど食べたというのにいきなり運動してしまっては 消化されてしまうじゃないですか。 でもいざとなれば燃料補給はいくらでも……。 いや、今は目の前の敵を誰一人奥に通さないことを考えなくては。 しかし結局私の抵抗も虚しく私が守っていた入り口とは 全くの反対側から侵入を許すという不測の事態。 さすがに一人きりでは侵入してくる全ての敵を排除するのは不可能……。 客船は大混乱に。 この感じ……どこかで。 あの最後の戦闘の時、確か深海棲艦が母艦へ乗り込んできて 船が戦場となっていたのを思い出す。 あの時、私がもっと強ければ赤城さんは死なずに済んだ。 私がもっと強ければ……。 提督「加賀ッ! 侵入されちまったか……仕方ない!」 加賀「天龍は!?」 提督「今、包囲網を突破するのに十分なだけの船を潰してきた。 残りは天龍に任せてあるからすぐに合流できるだろう」 提督は海に出たせいで折角の一張羅がびしょ濡れになっている。 まあ元々その前に葡萄酒こぼしていたし……まあいいか。 そんな大混乱の中、提督の耳に飛び込んだSOS。 愛宕「た、助けっ……」 「おらこっち来い!!」 提督「チッ。加賀、天龍ここは任せたぞ!」 加賀「はい! ……提督!?」 この時私はまさかあの女を助けに行くとは思っても居ませんでした。 そしてここからは提督とは別行動をしたので 後から愛宕や提督から聞き出した情報をまとめていきます。 愛宕は甲板まで連れられていき人質に。 提督はそれを追っていくが愛宕の首元に突きつけられたナイフで動けなくなる。 提督「その娘を離せっ」 提督はこの時既に勝ちを確信していたようですが 酒が入っていたせいもあってかいつもよりも勘が鈍っていたそうです。 提督「お前は運が悪かったな。海の男を相手にしたのが海だったなんて」 提督「お前は嫌でも10秒後そのナイフを嫌でも離すことになる」 10秒後。突然の高い波しぶきが愛宕を人質にしている海賊を襲う。 水が目眩ましになったと同時に走りだし提督がナイフを奪い取る。 ここまでは全て提督の計算通り。 だが、ここからは予想外だったそうだ。 第二波の高い波しぶきが予想外に高さで提督と愛宕を襲う。 さらに海賊が愛宕を海に向かって突き飛ばす。 波しぶきによってバランスや視界を奪われた愛宕は夜の海に転落。 そして、提督はそのあとを追い海へ。 一方私達は船の上にいた、海賊や上がってきた輩を全て制圧していた頃でした。 加賀「ふぅ、これれで全部ですね」 天龍「……ったく手間取らせやがって」 加賀「提督、終わりましたよ……。ってそういえば」 天龍「どっかに行ったっきりだったな」 その後、船内をくまなく捜索するも提督の姿は見当たらない。 私はだんだん足の震えが止まらなくなって……。 こ、今度は船の上の戦闘で赤城さんではなく提督までも失ったのかと。 そんな混乱状態の私にさらに悲報が飛び込んでくるのでした。 「さっき誰か二人海に落ちたらしいぞ!」 「軍服の奴と金髪の人らしい」 天龍「お、おいおいまさか……」 加賀「提督……そんな」 あの人が海賊ごときとの戦闘でやられる訳がないし、 何かのアクシデントで海に転落した……だとしたら。 生きている可能性は……。 と引き伸ばした所で今現在ぴんぴんしているあの人。 確かにここで死ぬような人ではないのです。 後日、提督は謎の浜辺で目を覚ました。 提督「……嘘でしょ。ここどこよ」 提督はとりあえずびしょ濡れの服を脱ぎ、 日差しの下で全裸に。 辺りを見渡すとそこには同じように脱ぎ捨てられた服が。 このドレスどこかで……そう思った提督はすぐに辺りを捜索することに。 どうやらこの静けさが無人島であることに何となく予想がついていた提督は とりあえず自分たちの住居を確保するために色々と動きまわるのでした。 燃やせる木の枝を集めている時、 川の流れの音を聞いた提督はすぐにそちらに向かいました。 そこでは金髪の女性が水浴びをしていたそうです。 このあとのことは私は不快なので省きます。 提督と愛宕が合流し、寝床、食料、暖を確保した頃。 日はすっかり落ちてしまっていました。 愛宕は昼間にあったことで提督を警戒し全く話してくれなくなっていました。 ざまあありませんね。 何があったってそんなの私は知りませんけれど。 無人島生活二日目。 愛宕が起きてくる頃には提督はすっかりお目覚めで 朝食である食料も確保済み。 食べられる木の実を中心にした食事だったそうです。 提督は一人で食料を確保しに。愛宕は海岸を見張ることに。 それは愛宕が提督が話しかけてもその場からじっと動かなかったもんだから そういう役割分担に自然となったんだとか。 その日は救助は来ず……。 日が暮れるまで提督は愛宕に食べられる木の実を運んでくるだけだったそう。 無人島生活三日目。 火が消えて夜明け前の寒さに愛宕が目を覚ますと 既に提督はいなかった。 ちなみに夜は愛宕は徹底的に提督を避け、 もし仮に襲ってきたら再起不能になるまで太い流木で叩きつけると宣言。 さすがの提督も「こんな状態でそんなことしてる余裕なんかない」と言ったそう。 それから……。 日中の出来事。 提督がどこへ行ったのか分からないまま 愛宕は浜辺に座り込んで海岸を見張ることに。 愛宕「どこ行ったのよあの馬鹿……」 愛宕「はぁ……。お腹空いた」 愛宕「……」 空腹と寂しさからイライラしてきた愛宕。 そのもとに 提督「ういーっす。あら、起きてた?」 愛宕「……こんな日が登ってればだれでも起きるわよ」 提督「ほい、ご飯ですよ。まあごはんですよって言っても 桃屋の海苔のあれじゃないんだけどね」 愛宕「うるさい。 だいたいどこ行ってたわけ!?」 提督「ご飯取ってきてたんだけど」 愛宕「不味い。何なのこの木の実。硬いし不味いし」 提督「じゃあいらないの?」 愛宕「いる!!」 結局この日も救助は来ない。 何故こんなにも救助が遅れたのか。 提督はすぐに島の調査を始めていたようでしたが依然として不明。 そして4日目。 愛宕は海岸沿いの救助隊の到着を待ちながらぼうっとしてる所に……。 またしても呑気なあの男は……。 提督「おい愛宕! こっち来いよ! 変な洞窟あった!」 愛宕「……」 提督「おい一緒に行ってみようぜ!」 愛宕「……そんなんで体力使うなんて馬鹿みたい」 提督「そんな所で待ってても気が滅入るだけだぞ。 幸い食料も確保できるし、水だって川のが何とか飲める」 愛宕「だからってここで暮らせっていうの? 馬鹿言わないでよ。……ほんと最悪」 提督「会場の時よりだいぶキャラぶれてるけどいいのか?」 愛宕「もう死ぬかもしれないってのに こんな所までキャラなんて作ってらんないわよ」 提督「じゃあ人生最後に俺と洞窟に探検しようぜ!」 愛宕「聞いてたの?」 提督「頼むよ~、来てくれよ~」 愛宕「……」 提督「おい無視かよ。なぁ~なぁ~」 愛宕「……」 提督「チッ、今日のご飯はムカデ、蟻、バッタ、蜘蛛」 愛宕「ぐっ……あー!! もう! 行けばいいんでしょう!?」 愛宕「そんなんで行ってその間に救助船見逃したりして 体力付きて死んだりしたら一生恨むから!」 提督「いやっっほう! こっちこっち!」 それから提督に嫌々ながら着いて行くことにした愛宕。 着いて行くと島の奥の方の密林になっているようなところに洞窟が見えた。 それは提督が言うほど変な洞窟というわけではなかったらしいけれど。 暗いし、じめじめしてるし、変な虫とか居そうで 入るのを躊躇っていると。 提督「ほら」 愛宕「……」 着いて行くとは言ったもののこんな気味の悪いところに入らされる羽目になって そこで頼りになるのがこんな奴だったことに愛宕は非常に悔しい思いをしたとか。 提督の手を取り洞窟に入ることに。 しばらく暗い中を提督の持った松明の明かりだけを頼りに歩く。 ボトッ。 と愛宕の頭に何か落ちてきた。 ガサガサと違和感のある感触に鳥肌がたつ。 愛宕「ぎゃあああああああ!!」 提督「お、落ち着け! 虫が落ちてきただけだろ。 取ってやるから動くなっての」 愛宕「早く! 早くぅぅう!」 提督「取ったぞ」 愛宕「殺した?」 提督「いや殺してはないけど……」 愛宕「……馬鹿! 死ね!」 提督「俺が!? なんでじゃ……」 提督「ほら、見えた」 愛宕「……何が」 提督「見ろってほら」 提督が見せたのは洞窟の中で光り輝く水だった。 青の洞窟と同じ原理で出来たその場所はとても幻想的で 虫のことや空腹のこと、救助がいつまでもこないことに イライラしてばかりいた愛宕の心を一瞬にして救ったのだった。 愛宕「……綺麗」 提督「だろ?」 愛宕「まさかこれ見せるためにしつこく……」 提督「まあ、イライラしてばっかりいてもしょうがないだろ?」 愛宕「そう……。ごめんなさい。少し辛く当たってたかもしれない」 提督「命あるだけまだいいさ」 愛宕「でも……」 提督「心配するな。今頃、必死になって探してくれているだろう連中がいるから」 愛宕「あの会場で提督と一緒にいた人達?」 提督「ああ。奴らは信用できる連中さ」 愛宕「ねえ……」 提督「なんだ?」 愛宕「いつも……どんなことしてるのか教えて。 会場で聞いたでしょう? もっと詳しく知りたいって」 提督「え、でもあれはお前作ってたんじゃ」 愛宕「あの時はね。今は別よ」 提督「普段……ねえ。普段何してんのかなぁ?」 愛宕「あの……あの人達の役目って私にも出来る?」 提督「お前に? あー無理だな」 愛宕「どうして!?」 提督「だって一応軍人だし、訓練とかたくさんするぞ?」 愛宕「そ、そんなの平気だもん」 提督「どうかなぁ~? こうやって今みたいな サバイバル訓練もするかもしれないんだぞ?」 愛宕「それは……」 提督「やめておいたほうがいいさ。 あんたには戦う理由がない」 提督「あの会場の時みたいに綺麗なドレスでも着ていた方がお似合いさ」 愛宕「……提督には戦う理由があるの?」 提督「約束したからね」 愛宕「理由なら今出来たわ」 提督「……?」 愛宕「守りたいものが私にもあるもの」 提督「……俺は止めたぞ?」 愛宕「私ね……。本当はあなたみたいな人全然興味ないの」 提督「何となくは分かってたよ」 愛宕「えー、本当?」 提督「本当だよ」 愛宕「本当はあの会って……私のお見合いのための会だったの」 提督「へえ……」 二人は光り輝く水に足だけ入れるように座った。 愛宕「両親が跡取りのために結婚を急かしてくるのよ。 それで用意された場所があれ……」 愛宕「1つ上のお姉ちゃんは頭がいいから 両親に跡取り云々言われる前に家を出て行っちゃったし」 愛宕「下の妹はいい子なんだけど不器用で、そういうの向いてないって」 これは皆もご存知の通り、摩耶のこと。 愛宕「もう一人の下の妹は学業に専念したいって……頭のいい子だから」 提督「姉妹思いなんだな」 愛宕「そうでもないわよ? 意外だった? 私こう見えてお嬢様なのよ?」 提督「全然意外じゃない」 愛宕「なんかそういう跡取りがどうとかって疲れちゃってね……」 愛宕「親の敷いたレールの上をずーっと走り続けてるの」 愛宕「私も少し前はお姉ちゃんみたいにこの家を出て、 そこからが私の本当の人生が始まるんだって……そう思ってた」 愛宕「さすがにお姉ちゃんを一人逃がしてるだけあって今度はそう簡単にいかなくて」 提督「そこまで馬鹿じゃないってことだろ。 そんなに嫌なのか?」 愛宕「嫌よ。自由にやりたことしたい」 提督「やりたいことって」 愛宕「護りたいものなら……たくさん」 提督「……。だったら護るための力が必要だな」 愛宕「え? うん、そうなんだけど」 提督「お前……しばらく俺の所に来い」 愛宕「うん! 行く! 行きたい! いいの?」 提督「まあいいよ。一から鍛え直してやるよ、俺じゃないけど」 愛宕「そっかー、そんな近くで……」 提督「近くで?」 愛宕「ううん、何でもない」 提督「だが、気をつけて欲しいのが、奴は鬼教官だからな」 愛宕「私結構根性あるし大丈夫っ!」 提督「根性ね。それを聞いて安心したよ」 愛宕「……?」 提督「いや、何この綺麗な場所から元の海岸に戻るのに 道は一本しかないのよ。君がさっき泣き叫んだ虫のいる道をもう一度通ることに」 愛宕「うぅ……、が、頑張る……」 提督「さて、じゃあ行くか」 愛宕「う、うん……あっ!」 立ち上がった拍子に愛宕は何かを 綺麗な光る水の中に落としてしまいました。 提督「何落としたんだ?」 愛宕「指輪……。お母さんの古いのを貰ってて これを大事に取っておいていつか好きな人に渡しなさいって」 提督「マジかよ結構大事なもんじゃねえか」 提督「待ってろ、今取ってくるか……ら?」 そう言いかけて提督が水を覗きこんだ時、 謎の生物が水面下を泳いでいるのを見つけたそうです。 うようよと漂うその生物は段々と浮上してきました。 そして――。 ヲ級「……ヲッ?」 ザバァーッと勢いよく水から出てきたのは いつかバナナで捕まったことのある深海棲艦でした。 提督「お、お前は! ヲ級じゃねえか」 ヲ級「貴方ノ 落トシタ ノ バターチキン? ソレトモ コノ Vジャンプ?」 提督「選択肢おかしいだろうが。ってかだいぶ日本語上達してんな」 愛宕「あ、あの……私が落としたのは指輪なんですけど……」 ヲ級「ロード・オブ・ザ・リング?」 提督「普通の奴だよ」 ヲ級「指輪? 正直者ニハ 全部贈呈」 提督「いやこのしわくちゃのVジャンプもどきはいらねえよ」 ヲ級「残念。……サラバ」 愛宕「あっ、ちょっと!」 愛宕の静止の声も無視してヲ級は水に沈んでいきました。 が……とても綺麗な場所だったために下で待機しているのが丸わかりだったので。 提督は水の中にVジャンプを落としました。 するとすぐにヲ級は浮上してきて ヲ級「ポイ捨テ ダメ」 提督「お前がここにいるってことは……もしかしてこの島って」 ヲ級「正解。ココ 深海棲艦 ノ 領海。 貴様等 不法新入社……新入社員?」 提督「いや確かに不法侵入はしちまったけど、お前らの島は株式か何かなのかよ」 ヲ級「マサカ…… 駆ケ落チ? ドラマティック! 否、リア充溶解シロ」 提督「怖いわ! ってか人の話を聞け! お前の力で本島まで送ってくれないか?」 ヲ級「浦島太郎 ノ 亀 デハ 無い。無理」 愛宕「この人? 大丈夫なの?」 提督「まあ昔馴染みって奴だ。色々あってな。 じゃあ何かこの島で一番美味いものってなんか無い?」 ヲ級「美味イ? トカゲ 一番!」 提督「木の実系で頼む」 ヲ級「品種改良マルーラ 有リ。度数高メ」 提督「マルーラ!? なんでこんな所にあんだよ」 ヲ級「趣味」 提督「あぁ、そうかい。ありがとうな。あと、救助船来ても沈めないように言っとけよ!?」 ヲ級「ヲイ」 提督「ん? なんだ?」 ヲ級「姫 ニ タマニハ 会イ ニ 行ク OK?」 提督「分かった。今は忙しいからまた今度な。じゃあありがとうな!」 ヲ級「感謝感激雨嵐~」 そう言いながら水に沈んでいき今度は見えなくなっていった。 それから提督達は海岸に戻り、提督の謎の早業で火を起こし、 いつものように提督は食料、愛宕は見張りにつくのだった。 しばらくして提督が戻ってきて嬉しそうに愛宕に見せたのは 今まで取ってきたことのない木の実だった。 愛宕「なにこれ」 提督「さっきあの妖怪が言ってた木の実だ」 愛宕「なにそれ?」 提督「本来こんな所じゃ育たないはずなんだが……。 深海棲艦の謎の技術で育ったんだろう。それを拝借してきた」 愛宕「だから何なのよ」 提督「天然のアルコール入りの果実」 愛宕「……ほんとに?」 提督「一杯やろうぜ! 焚き火もつけて今夜は二人のキャンプファイヤーだ!」 愛宕「……馬鹿じゃないの」 提督「うっっひょー! テンション上がってきたぁぁあ!」 愛宕「もう食べてるし!」 提督「多分ヲ級が連絡してくれただろうからもうすぐ救助が来るぞ!」 愛宕「もうすぐって言ったってもう夜になるのよ!?」 提督「夜だから船が出せないとでも? 加賀がそんなに待つ訳ないし!」 愛宕「そうなの……?」 提督「だから今夜はここで踊ってれば朝には来るさ! さあ食え! そして踊ろう! レッツパーリィー!」 愛宕「……」 この時のことを愛宕本人はこう語る。 愛宕「あの時何故乗せられたのか今ではさっぱり分からないわ。 ホント、吊り橋効果ってどうにでもなるのね……」 翌日。 朝になる頃、私達はようやく例の島を発見し近づいていくのでした。 深海棲艦の領域なのだから人がいない無人島なのは当たり前だった。 私達は島の海岸から上がる煙の近くをぐるぐる回る2つの影を発見。 加賀「提督ーーーーー!!」 天龍「おーーーーーい!」 提督「違う違う! いいかもう一回見てろよ? この次はこうで~~~」 愛宕「あはははははは! 分かんないってば! もう一回! ね!」 加賀「提督ーーー……」 天龍「おーー……い」 提督「おいおい、見ろよ! 練習した俺達の最高のダンスを披露する時がさっそく来たぜ?」 愛宕「あははははは! やだ本当~? しちゃう?」 加賀「……」 天龍「……」 救助船が到着した浜辺には お手製の葉っぱで作られた腰巻き一枚の阿呆と ボロボロになったドレスだったであろう布切れをまとう露出狂が 二人仲良くハルヒダンスを披露しているところだった。 提督「あれ? なんかあいつ加賀に似て ぐぼぁっっ!!!」 提督は横っ面を殴られ砂浜に綺麗な一本線を残し遠くで倒れる。 加賀「私がどれだけ心配したと思ってるんですか」 愛宕はその様子を見て半分くらい正気に戻ったらしい。 目は若干とろーんとしていたけれど。 加賀「本当に……無事で良かった」 提督は起き上がることなくそのまんな救助船に乗せることに。 私が本島に着くまでずっと泣いていたのは提督は知らない。 そうして後日。 鎮守府にけたたましくチャイムの音が鳴る。 そして出迎えた先にいたのが愛宕だった。 提督「……何だその荷物」 巨大なボストンバッグを2つ下げて 手には大きめのスーツケースを。 提督「一体何ヶ月単位の旅行に行くんだよ」 愛宕「何言ってるの? 永住よ~自分で言ったことの責任取ってくれるんでしょ?」 提督「えっと、まあ……そうだけど永住とは誰も……」 愛宕「責任、取ってくれるでしょう?」 加賀「責任ってなんですか」 天龍「おいおいどうなってんだよこりゃ」 愛宕「あ、今日から私もここに住むからよろしくねっ」 天龍「お、おう俺は構わないけど」 加賀「提督……」 提督「いやーその……まあそういう訳だよ」 加賀「どういう訳ですか!」 こうして愛宕が私達の鎮守府に仲間になるのでした。 今回の後日談。 愛宕「加賀さん、はいこれ使って」 加賀「……指輪?」 愛宕「私のお母さんからのお下がりなんだけどね」 加賀「お母さんの? にしてはこれは男性用じゃ」 愛宕「ふふ、これは女の子から女性に渡す用の奴なんだって」 加賀「でしたらお母さんは渡してしまって持っていないのでは……」 愛宕「お母さんも実はお父さん渡さなかった秘蔵の一品らしいの」 加賀「……私は今猛烈にあなたの家庭を心配しています」 愛宕「これ使ってね。あのお馬鹿さんのことだから どう受け取るかはわからないけれど……」 愛宕「加賀さんの頑張り次第だから」 加賀「いいんですか?」 愛宕「いいのよ。私は。ほんっとズルいわよね。 あんな誘い方しといて自分は加賀さんみたいな人がいてさ」 加賀「何か言葉に刺を感じますね」 愛宕「ふふ、冗談よ冗談。私は本当に二人に幸せになって欲しいの」 加賀「私はあなたみたいな人にそう思われるだけでも幸せです。 ありがとうございます」 愛宕「ほんと……ずるいわよね」 今回のさらなる後日談。 4人に増えた私達は資材不足に悩まされながらも 上からの命令により艦隊を結成させることになった。 なんでも英雄の艦隊がちゃんと揃ってると箔がつくとか 何だか曖昧な表現をされそのまま受け入れることに。 ……とは言っても誰をどう加えていいのか分からずにとりあえず 面接を始めることに。 提督「えー、君がうちを志望した理由はなんですか」 鈴谷「面白そうだからです!」 提督「どうして海軍なの?」 鈴谷「カレーが美味し……じゃなくて! とっても素敵で格好いい提督さんがいるって聞いたからです!!」 提督「ほほう。えー、ちなみに脱げと言われたらどれくらい脱げますか痛っっ!!」 加賀「何聞いてんですか」 鈴谷「脱げば合格?」 提督「本当に入りたいならね」 鈴谷「おっけー任せて! じゃあ提督さんは後ろ向いててね」 提督「え?」 加賀「……これは一本取られたんじゃないですか?」 提督「い、嫌だ」 鈴谷「じゃあ脱げないよ?」 提督「鏡は?」 鈴谷「無し。使っちゃだめ」 その後、提督は壁と向き合い、その後ろで鈴谷は全裸に。 提督の首には天龍が刀を添え少しでも動いたらサクッといくように。 これが鈴谷が鎮守府に来た時の話でした。 そして摩耶は……。 鈴谷ので面接に懲りた提督はどうしようか迷っていた所に。 愛宕「だったら私の妹をここに入れて欲しいの」 提督「なるほど。愛宕の妹か。だったらまだいい子が来そうだな」 そうして蓋を開けてみたら……。 摩耶「慣れ慣れしく触んじゃねえよ! 糞が!」 提督「えっ、やだ何この娘、怖い」 摩耶「アタシは摩耶ってんだ。まあ愛宕姉が 世話になってるらしいしよろしく頼むよ」 鈴谷「おお~~、同期の子だね!?」 摩耶「な、なんだお前! 近寄んな!」 愛宕「ごめんね~ちょっと口が悪いんだけどいい子なのよ?」 提督「俺の威厳はどうなっちまうんだよ」 天龍「……ど、どんまい」 そうして最後。 最終的に提督がたどり着いた結論は……。 提督「摩耶や鈴谷みたいなちょっとお年を召した奴はだめだ!」 摩耶「ばあさんみたいに言うんじゃねえよ」 鈴谷「そうだよー。まだピチピチだよ?」 提督「ええい、うるさい! 最近では艦娘も小等部コースがあるようだし」 提督「そこの子から抜粋していこう」 天龍「いいのか? そんな子供が来たら大変だぞ?」 愛宕「まあでも優秀な子を取ればきっと素直でいい子よ」 そして、小等部のトップクラスにいた電の技量、 才能を見ぬいた提督はすぐに呼びつけ合格通知を無償で渡す。 電には最初から最後まで優しく接した提督だった。 電「今日からお世話になるのですっ!」 提督「ああ、よろしくな。こっちが秘書艦の加賀だ」 加賀「よろしく」 天龍「俺が天龍だ」 愛宕「愛宕よ~」 鈴谷「鈴谷だよ! 可愛いねえ、抱っこしてもいい?」 摩耶「やめとけってアホか。アタシは摩耶。よろしくな」 加賀「では早速ですが、まずは館内の案内をするんですが…… なんでみんな着いてくるんですか」 提督「いや可愛いから」 鈴谷「高い高ーーい!!」 電「ほに゛ゃぁあ!」 提督(純白か……うむ、最高だ) 愛宕「どこ見てんのよスケベ」 提督「どこも見てない」 加賀「いいから電以外は仕事に戻って下さい」 電「び、びっくりしたのですっ」 加賀「ごめんなさいね。うちはいつもこうなの」 電「とても賑やかで楽しいのです」 加賀「ふふ、そうね。うちはいつだって賑やかで とっても平和だから」 ……こうして私達横須賀鎮守府は全員が終結することになったのだった。
https://w.atwiki.jp/kyoumoheiwada/pages/16.html
番外編 ☆加賀とラーメン☆ またしても私と提督の話……というわけではない。 むしろ私と提督の話に見せかけた別の人達のがメインの話。 そして、いつものように提督が適当な人間であることが分かる話。 提督曰くこの話は私の意外な一面が分かる話だそうで。 愛宕「そういえば二人は私が来る前は二人で何してたの?」 加賀「私と提督ですか?」 天龍「あー、それ俺も気になってた。 まさか永遠と二人でイチャイチャしてたとか」 加賀「それならばどんなに幸せだったことか」 加賀「あのお人好しのすることに振り回されてばかりでしたよ」 ……こんな会話から思い出したのでこの話をしようと思う。 私と提督が横須賀鎮守府に勤務が決まり、 まだ愛宕も天龍も鈴谷も摩耶も電もいなかった頃。 仕事をしようとしない提督の横で仕事をしている私。 まあこれは今も変わらないのだけど。 そこに一人の来訪者が来ました。 その人はこの鎮守府の近辺に住む人で、 鎮守府の正門を掃き掃除している時によく挨拶をしてくれるおじさんでした。 提督「それで話とは……」 おじさんから聞いた話では、 何やらここ最近、近辺に勝手に商売をしている厄介な屋台があるとかで それを辞めさせるのを手伝って欲しいとのことだった。 例によって外面だけは完璧な提督なので、 その近隣住宅からも信頼されている提督が言えば退くだろう、と 仕事を引き受けてしまうのだけど。 提督「参ったなぁ~。うちは何でも屋じゃないんだけどなぁ」 加賀「引き受けてから言わないでください」 提督「ふぇぇ……。面倒くさい」 加賀「仕方がありませんね。とにかく一度行ってみませんか?」 提督「んだな。行ってみるか」 ということで私と提督はその厄介な屋台とやらに行くことに。 夜。 鎮守府からは10分くらいの距離にある 商店街の中にそのお店はありました。 堂々と商店街の中に居を構えていたあたり 文句を言われても仕方ないだろうと納得する。 提督「……”北上ラーメン”」 加賀「ラーメン屋さんでしたか」 提督「ちわーっす」 物怖じしない提督はすぐにのれんをくぐる。 割烹着を着た女性が二人で経営しているらしかった。 大井「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたらどうぞ?」 提督「えっ? えっと、じゃあこの北上ラーメンで」 加賀「私も同じのを」 大井「北上さん、北上さん2つ」 北上「あいよー」 提督「……狭いな」 加賀「提督、謹んでください。屋台なんだから当然です」 提督「まあとりあえず食べてみないと分かんないよね」 加賀「そうですね」 しばらくして。 北上「あいよー。北上ラーメン二つー」 ゴトン、と陶器の器に並々入ったラーメンが出てくる。 見た感じ、特別な具はない。 細麺にメンマ、海苔、なると。 提督・加賀「いただきます」 割り箸を割って食べだす二人。 黙々と食べ進め、完食。 提督「ふぅー、食った~」 加賀「どうでした?」 提督「……うん、普通。にてしてはこれで800円は高い」 屋台の中には私と提督の二人だけ。 ここからが本題。さっそく提督は店主である北上に話をすることに。 提督「あの、この店っていつからやってます?」 北上「んー? 半年くらい?」 提督「二人で?」 北上「そう。大井っちと二人でね」 提督「そうか、私は横須賀鎮守府に勤務する第一艦隊の提督なんだが」 大井「軍人が何の用事なの」 提督「え? ああいや、君達にっていうよりかは君達の店に」 大井「帰ってよ」 加賀「あの話だけでも聞かせて」 大井「帰ってよ!!!!」 大井「そうやって私からまた北上さんを奪っていこうとするのね!?」 大井「これだから軍人はこれだから軍人は……!」 しかし全く動じない提督。 それもそのはず、彼は学生時代、 もっとヒステリックな女性に付き纏われていたのですから。 提督「……この場所で勝手に商売をやられては困るって」 大井「うるさい!! 帰りなさいよ!!」 提督「近隣の人からも迷惑がられているんだって」 大井「あああああああああああ!!」 提督「熱ッッ! スープ!? こらお前食べ物を粗末にするんじゃ熱いっ!」 加賀「提督、ここは引きましょう」 提督と屋台から走って逃げ出す。 提督「全く、とんでもねえ店だな。二度と来るかよ」 提督「……とかってみんな思うから来ないのかね?」 加賀「さあ。お客さんみんなにあんな風にはならないと思いますけど、 少なくとも第一印象は普通でしたし」 日を改めて……。 提督「ちわーっす」 北上「らっしゃー、ああ、提督か」 加賀「こんにちは」 北上「この前はごめんねー」 加賀「ストレス解消になるのでしたらいくらでも殴ってどうぞ」 提督「そうだね、頑丈な方だし、興奮しちゃうしってコラ!」 北上「あはは、二人は仲良しさんだねー。 で、今日も立退きの件でお話?」 提督「まあな。商店街からお手上げが出てるんでさ」 北上「そっかー、でももうちょっとだけ待って欲しいんだ」 提督「なぜ?」 北上「追い出されるとかじゃなくて、 きちんと自分達でお世話になった人達にお礼がしたいんだよ」 北上「うちらのラーメンって正直そんなに美味しくないでしょ?」 提督「まあね」 北上「うわー、傷つくな~。だから今一生懸命美味しく作れるように頑張ってるの」 提督「それで最後に色んな人に出してやろうってか」 北上「そうそう。迷惑かけちゃったのは本当だし」 北上「それに……私と大井っちの居場所を取らないで欲しいんだ」 提督「……」 大井「なんであんた達がまたここに来てんのよ」 提督「げっ!」 大井「……出禁よ出禁!! 帰れ帰れ帰れ!!!」 こうして話は途中にしてまたしても撤退。 またしても後日。 今度は大井だけがいる日にやってきた私と提督。 提督「……どうする。強行作戦で行こう」 加賀「了解」 提督「オラァー! 動くなぁ!手あげろ!」 加賀「それでは強盗みたいですよ。ここは素早く無効化するんです」 あっという間に大井を押さえつける私。 大井は抵抗もできずに提督を睨みつけるだけだった。 提督「まあ落ち着いて話を聞いてくれ」 大井「これで落ち着いていろって?」 提督「君達はなんでここで屋台をやってるんだい?」 大井が話した内容はこうだった。 元軍人同士の二人はバディだったために非常にコンビネーションもよく 最高のコンビとしてもそれなりに有名ではあった。 しかし、平和が訪れてしまったためにその活躍は 結局戦場の実戦であまり披露することもできず。 すごいすごいと口だけで言われても成果が出ていないので解散することに。 私のような戦場に出ることが出来た艦娘は軍属で残れることもあるが、 成果をあげてない場合首を切られることもあるようで。 数多の艦娘達の中でも最も不幸なコンビだと思われる。 (不幸戦艦姉妹がどうやって生き残ったのかは不明。 おそらくだが呉さんが個人で拾ってきた可能性がある) ちなみに、横須賀鎮守府にいる者は 上層部が首を切ったあとに入ってきているので 比較的新しい人達が多い。 そんな訳で自らの職を失った二人は路頭に迷い、 軍属中に北上がこぼしたという、 北上「あたしラーメンって好きなんだよねえ~」 という他愛無い雑談を記憶していた大井が屋台を購入し、 二人で切り盛りしていこうと持ちかけ……今に至る。 しかしながらこの横須賀の近辺ではこのような無断の路上販売は 許可していないために住民から非難の声が出ている。 提督「なるほど。で、北上は北上で迷惑をかけたから最後に美味いのを みんなに食わせてやりたいと……そういうことか」 大井「そうよ……悪い!?」 提督「誰もそんなこと言ってないよ」 提督「仕方がない。俺たちでその美味いラーメン作るの 手伝ってさっさと立ち退いてもらうしかないようだな」 加賀「あの、提督。お言葉ですが、我々には我々の執務がありまして」 提督「もちろんそいつをやったあとでだ」 ……。提督が仕事をするのであればいいのだけど。 そうして私達は毎日の執務のあと、北上と大井の屋台に合流して 試作を開始するのだった。 大井「まずは私の作ってみた奴なんだけど」 提督「豚骨?」 大井「ううん、ホワイトクリームソース」 提督「なんで!?」 加賀「ごちそうさまでした」 提督「食べきったの!?」 加賀「出されたものくらい残さずに食べるのが流儀です」 提督「そ、そう。じゃあ次は加賀のね……。なんで黒いんだよ」 北上「醤油ラーメン……?」 大井「いただきます……ズルル、ブバビュゥ゛ーーッ!! ゲホッゲホッ!!」 提督「きったねえな。ちゃんと食えよ。出されたものは残さず食べるのが流儀だろ」 提督「ったく……ズルル、ブバホッ!! ゲホッゲホッ!!」 提督「ぶぇええ!! ぶぇぇええーー!」 この時、提督は(本人曰く)イャンクックのモノマネを突然するのでしたが、 あまりおもしろくありませんでした。 あとでこの時の感想を聞いたら 「お前にもこんなことがあるんだな。初めて知ったよ。 ところであれ、何いれたんだよ」 と喜んでくれていました。 提督「えっと、加賀は試食係でいいよ。いっぱい食べたいでしょ?」 加賀「そんなにはしたない女ではありません。 ですが、ご厚意に甘えさせていただきます」 結局、北上の作ったラーメンが一番ましだったので、 これを改良していくことに。 しかし、来る翌日。 提督は何やら町民に呼び出しを受けていたので私一人で屋台に合流することに。 本当は私も提督に付き添う予定でしたが提督が先に行ってくれと言うので仕方なく。 たぶん提督は仕事の以来がいつまでも遂行されないことに苛立つ町民に 呼び出されてお叱りを受けているに違いないのですが。 しかし事件はすでに起きていたのだった。 普段屋台のある場所に屋台はなかった。 正しく言えば屋台の形をしていたであろうバラバラになった木材があった。 その目の前で跪き泣きわめく大井と それを抱きしめる北上がいた。 そしてそれを取り囲むように町民達がいて、 バラバラになった木材に火を放っていたところだった。 加賀「止めなさい」 加賀「これ以上の騒動は横須賀鎮守府第一艦隊隊長、一航戦の加賀が許しません」 堪らず止めに出た私だったが、 もちろん知らない人も中にはいる訳で 私にすら突っかかってくるのだった。 「誰だお前!」 「おいやめろ……こ、こいつ終戦にまで持ち込んだって噂の」 「チッ、この辺にしてやるか。行こうぜ」 大井と町民の間に割って入った私を見て町民達はようやく解散しバラけていく。 私は北上から事の経緯を聞くのだった。 私が到着する以前。 いつもの場所で用意をしていた大井と北上の所へ 町民がやってきて文句を言ってきた。 大井「うるさいわね!! さっさとあっち行きなさいよ! これから忙しくなるんだから!!」 北上「大井っちだめだよ。そんな乱暴に言ったら」 「いつもいつもお前らには迷惑してるんだよ!」 「そんな凶暴な奴がこんなところに要られたら困るんだよ!」 「お前らが出て行かないって言うんだったらこっちにだって考えがあるんだ!」 何十人もの人間に暴言を吐き捨てた大井は その数も分からず、とにかく疎まれていることに違いはなかった。 とうとう口だけの喧嘩だったが、大井が先に手を出すのだった。 温厚な中年男性が話し合いに近寄ってきたのを突き飛ばしたのだった。 尻もちをつく男性に対しそれでも罵声を浴びせる大井に対し 他の町民がとうとう大井の胸ぐらを掴もうとした。 その時、大井はあっという間にその人をひっくり返し地面に叩きつけた。 そこから乱闘にまで発展し、過激な集団により 屋台は破壊されてしまった。 加賀「……なるほど」 大井「あんた……終戦にまで持ち込んだって?」 加賀「……職を、居場所を失ったことで私達を恨みますか」 大井「……」 大井「……まさか。戦争なんてするもんじゃないよ。終わってよかった」 大井「それにあのまま戦い続けてたら 北上さんも私も無事じゃなかったかもしれない」 加賀「もしよろしければ」 加賀「……もしよろしければ、私の所へ来ませんか?」 試作の時から奇妙な友情を感じている私達だったが、 何の考えもなしに誘ってしまった。 北上「ありがとう。でもごめんね」 北上「もし戦争がまた起きたとしても……。 もう大井っちはあの場所には連れて行きたくないな」 大井「……北上さん」 加賀「そうですか。残念です」 それから沈黙が流れる。 しかしここにようやくあの男が現れるのだった。 提督「いやー、遅れてごめ……えぇぇええ!?」 加賀「遅いです。何してたんですか」 提督「あー、こういうことだったのか」 加賀「……?」 提督がこの時、何をしていたのか。 実はこの男、町民に呼び出されて何をしていたのかと言うと、 ラーメンとは全く関係のない町おこしの話を持ちかけられていたのだった。 しかし、その実態は私達をこの場所に 合流させないようにするための罠だった。 提督の勘ではあるけれど、この屋台の破壊は町の過激派達の計画的犯行。 しかし元をたどればルールを先に破っているのは大井と北上の方。 あまり強く反論できない。 提督「いや町おこしに新しく作ろうってなったお菓子の”横須賀ばなな”の 試作品が美味いのなんのって」 加賀「……それで足止めされてたんですか」 提督「あ、一個もらってきたんだけど食べる?」 私が提督の顔面をグーで殴った二回目のことでした。 横須賀ばななは美味しかったです。 しかし、実際のところ、これだけで遅れきたわけではなかった。 提督「実はいい物件があってね」 提督「前は小さな食堂というか大手会社が経営していたチェーンだったんだけど、 大手会社が丸々潰れて、店そのまんまの形で売り出されててさ」 提督「お前らそこで新しく店やればってー思ったんだけど」 壊されてパチパチと音を立てながら燃える屋台を一瞥する提督。 提督「どうやらすごいタイミングが良かったみたいだね」 なんとも偶然が偶然を呼ぶのであった。 大手会社は丸々潰れて社長一家は離散したとか噂を聞いた。 結局、実のところ大井と北上は町の一角でお店を開いているそう。 ただ……売れ行きはあまりよろしくなく、かなり苦しい生活をしているそう。 私と提督はたまに行くのだけど、 その度に提督は毎回出禁だと怒られるほどケチをつけるのだった。 今回の後日談。 龍驤が企画してくれた空母同士の対談というか懇親会のようなものの席で。 龍驤「なんや自分、舞鶴さんとこ拾われるまで大変だったらしいな?」 加賀「龍驤……あまりそういうことは」 隼鷹「ああ、いいよいいよー別に」 隼鷹「あたしもさー、昔は社長令嬢のお嬢様~なんて言われてちやほやされてさ」 隼鷹「執事までいたんだよ? お付の人っていうの?」 龍驤「ほんまかそれ~?」 隼鷹「でもそれが全部無くなっちゃった時は大変だったなぁー」 隼鷹「家に帰ってきたら家がないんだもんねー」 加賀「……ちなみに、どういった会社を経営していたんですか?」 隼鷹「あれ? 知らない? 数年前に潰れた大手チェーン店だけど」 まあそんな偶然もある訳だったのでした。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/25.html
「はぁ……疲れた」 俺は腰を叩き、大きくのけぞった。ここは提督執務室。 隣には秘書官である加賀さんが立っている。 「呆れてモノも言えないわ」 「ははは…加賀さん、悪いけどお茶入れてくれる?」 「もう入れました」 ドンと机に置かれる緑茶…にしては何か濃すぎる色してるけど。 加賀さんの眼は冷ややかだ。口調もいつもどおりだが、何か非難しているっぽい。 「あ、ああ…ありがと」 「貴方の性欲が旺盛なのは結構だけど…睦月、如月、皐月、文月、長月、菊月、 三日月、望月……あの睦月型姉妹達と何度も何度も…耐久力が低いからといっても限度を考えて」 「い、いやぁ…皆、可愛くて…素直な娘ばかりだし」 「ロリコン、どうしょうもない変態ね。これ明日のスケジュールよ」 「明日?」 「彼女達の催促がしつこいので提督へのお仕置きの意味もこめて受託したの」 「か、加賀さん、このスケジュールは!?」 「睡眠時間を3時間として、複数の艦娘と性交してもらうわ。士気高揚の意味も 含まれているから提督に拒否権はないわ。あと個人的に電報をもらっているの」 金剛=英国産戦艦金剛デース。溜マッテ溜マッテ、限界デス。 提督の濃いLove、私に注いで下サーイ 千歳=もう水上機だけのなんちゃって母艦はいやなんです。 きっと満足させますから、軽空母に改修してください 千代田 =わ、私も!絶対に満足させるから 千歳姉と同じ軽空母にして下さい。千歳お姉、千歳お姉と同型に なると思うだけで、もう手が勝手に…はぁ 扶桑=爆沈させて、もう我慢できない ……最後の扶桑さんだけ内容が短い文、怖い。 欠陥品、違法建築、ジャックと豆の木、ジェンガ、九龍城、垂れ乳 ババア等々、不名誉なあだ名が山ほどある分、日頃のうっぷんがたまっているんだろう。 「加賀さん…体力のない俺にこの艦娘達、その辺りの解決策は大丈夫だよね?」 「もちろんよ」 「待ちくたびれマシタ。私に提督の特濃Love注いで下サーイ」 はあはあと女豹のように俺に迫る金剛さん。英国淑女とは程遠い。 外国産戦艦はなんと淫らなんだろう。 「ご開帳デース!提督、英国産のオッパイどうデスか?」 ぷるんと零れる真っ白なおっぱいは確かにイイ。 その天辺に鎮座している桜色の乳首も素晴らしい お尻も逆さハート型の柔尻。色白の英国のかほりが香しい。 クンカクンカスーハースーハーして頬ずりしたいが何とか押し止まる。 「……もうちょっとお淑やかな方がいいかも」 「何とでも言うデース、シャイな提督ネ。私の騎乗位で昇天ヨー!」 それが金剛の最後の台詞だった。 「どうしたの?金剛さん、落馬しちゃダメじゃないか」 「あひ…はひッ…だ、出し…う、動いちゃ…NO~」 最初の方こそOhOh…come!come!SOgood!と俺の上で 腰を振っていたが、5回目くらいから段々と腰使いが弱くなり 『提督…ちょっとtimeデース、き、休憩ヨ…』 と言いだし結局、落馬。なので馬みたいに立ちバックで種付け。 「どうしたの、もう終わり?」 既に8回は絶頂を迎えたであろう、俺は金剛さんに 埋め込んだまま掻き回した。 「またイ…イク…げ、限界…デ」 金剛さんの痙攣する膣に射精し、自身を引き抜く。 が、それは一向に萎える様子はない。 加賀さんのあのお茶は、かなり強力な精力増強剤だったようだ。 「英国産の金剛さんも言うほどたいしたことないなぁ…これじゃあ 改造や増強の件はなしだね?」 「うっ…無念デス…」 動くたびにお尻の谷間からドロリと流れ出る白濁液。ずるずると床に倒れ 満足に起きあがることもできない金剛さんはふてくされたように言った。 「提督の性欲monkey…腰振りdoll…lowestネ」 「あっあっあっ…提督、提督、私の中はどうですかぁん」 次の相手に水上機母艦の千歳さんだった。千代田のお姉さんだけあって しっかり者でお淑やかな千歳さん。が、水上機を射出するカタパルトをもっている だけあって見かけによらず耐久力はかなりある。それだけに腰使いは激しかった。 「あはっ…素敵です。もっともっと、もっとぉ!て、提督何か飲みますか?」 「もちろん、千歳さんのおっぱい」 「ああッ、は、はい…どうぞ」 ぽるんと飛び出してくるおっぱいを寄せて両成敗。給油も欠かさない。 「あ、ああッ!おっぱい、おっぱいから出てるぅ!ふぁああん」 俺は千歳さんの細い腰を掴み、一気に下から挿入したまま押し上げた。 コツンと奧に俺の先端が当たる。なんて気持ちいいんだろう。 白い背が反り返り、豊満なおっぱいを突き出したまま千歳さんは身を震わせた。 「はぁ…は…はあ…相変わらずお強いですね…も、もう一回、どうぞ…」 ぐったりと俺の胸板に頬を擦りつけ、千歳さんは甘い声で言った。 胸板で潰れるおっぱいの感触が最高だ。普段からは考えられないくらい乱れた千歳さん。 そして4回目の膣内射精の後、大きく胸元をひろげ、おっぱいをさらけ出して 下は捲り上げ、ドッキング部からはトロトロと溢れ出す精液を見ながら 「さぁ、次で5回目ですね。まだまだ頑張れそう……これで念願の航空母艦になれます」 「あああって、提督、そ、そんなに激しくされると…わ、私」 もともと明るく活発な千代田さんは、性交の時に声を出すタイプらしい。 恥ずかしがって、うじうじしてる千代田さんが望ましかった俺は少し幻滅した。 が、提督の決断は迅速さが肝心だ。俺は嬌声を上げる千代田さんを徹底的に犯すことにした。 「出して、提督の精子…の、飲ませて下さい。私のタンクに!提督の燃料で タンクいっぱい、いっぱいにして欲しいのォ!千歳お姉みたいにしてぇ!」 千歳さんより積極的な千代田さんは既に全裸。 四つん這いの格好で俺と交わっていた。元々、そういったM気があるのかもしれない。 年齢に不相応な豊かな双乳が後ろからパンパンと突く度に ぷるんぷるんと揺れおどっている。千歳さんよりも大きいのは内緒だ。 「あっあああっ、提督の提督の大砲に千歳お姉のエッチなお汁が! 千歳お姉の!千歳お姉の!エッチなお汁が私の中に入ってる!あはああ!、 千歳お姉大好き!愛してる!も、もうエンジン爆発しちゃう!!」 びくんびくんと尻を震わせ、これで5回目になる射精を千代田さんに解き放つ。 千歳さんと同じ回数だ。 「熱い…提督のが出てます…提督と私…これなら正規空母並みですよね…ああ、 千歳お姉…」 「あひぃ、もっともっと罵ってぇ!わたひは、わたひは欠陥戦艦でしゅううう!」 一応、超弩級戦艦?とは思えないほどの嬌声を上げ、扶桑さんは乱れた。 色々と溜め込んでいた欲望が一気に吹き出たのだろう。 (思えば修理ドックにオナ禁状態で、整備員にいじくりまわされるどころか 見向きもされず。修理の毎日。それでこの痴態か…むしろここまでくると 逆に引いちゃうな……) 「い、いつもすましてる顔してるけど、エッチなことばっかり考えてる 淫乱戦艦なんでしゅうう!う、裏で出回ってる、エッチな写真!、 私のだけ無くて、あッはああッさ、寂しいのォ!山城や日向、伊勢はあるのにィ!」 「あ、あの扶桑さん…そろそろ出るけど」 「主砲の火力だけは自慢にゃの!防御力と速力たりゃないけろ!欲しいけど! い、いま、いまは提督の西村艦隊!わたひのレイテ湾に突入して欲しいのォォ! 提督で妄想オナッってる雌豚扶桑を爆沈させてえええ!!」 ……ここまで乱れる扶桑さんはかなり危ない。適当に出撃させてストレス解消 させないと何かの拍子に弾薬庫が爆発してガチ爆沈になりかねない。 下半身のアレは未だに強度を保っているが、そろそろ切り上げよう。 「これで最後だ、淫乱扶桑さん、爆沈だ」 「て、提督うううう!扶桑のおっぱいでるでるの おっぱいでるのおおイク、イクッ、扶桑いっちゃいましゅうううう!!」 と、さんざん犯してきた俺だが、 (お、おかしい…い、一向に萎えず未だに勃起している) 執務室に戻って時間が時間だ。 未だに勃起がおさまらないモノは昨夜の睦月達から 「僕達のぶっかけ用でーす」とか「全裸写真だよ」「お尻なんだ、エッチ♪」 「いっぱい使ってね」と渡された写真で抜くか…と考えていた時、後ろから声が掛かった。 「お帰りなさい、提督。今夜の予定よ」 また別の艦娘から誘いがあったのだろう。俺はうんざりとして言った。 「加賀さん…もう今夜は…」 「まだ提督のアソコが勃起したままでしょう?」 「加賀さん?」 「最後の御相手を務めるのは私、正規空母『加賀』よ」 俺は椅子にもたれた背をビクっと反らせた。 加賀さんがジッパーを開き、勃起しているモノを舌でチョロチョロと舐めたのだ。 「申し訳ないわ。薬の量が少々多すぎたようね」 軽い鳥の囀りのような接吻。ゾクゾクゾクと背筋を登ってくる快感に 俺はまたしても背をのけ反らせた。 「ど、通りで……で、治るの…クッ」 加賀さんは俺が言い終わる前にズボンをずり降ろし、下半身を顕わにした。 「ええ、薬が切れるまで勃起が持続し、どうしょうもない程の性欲にかられるわ。 でも、そのままでは赤城さんや蒼龍さん、飛龍さん、それに他の艦娘に被害がでる恐れが あるから私が提督を相手をします。勘違いしないでくださいね、これも仕事ですから」 ガチガチに勃起している俺のモノに舌を這わせ、指先で 鈴口を軽くノックするように指を使う。普段から抜いてくれる所為か、上手い。 俺の弱いところを的確に攻めてくる。 「う……」 「ん…あはっ、猛々しい…ん、ちゅ」 竿に添わせ、歯で軽く甘噛みしながら、唾液を擦りつけ始めた。 「くッ…はぁ!?さ、加賀さ!」 俺は段々と荒くなる息を押さえ、股間に踞る加賀さんの頭部に手を添えた。 「私の顔に、何かついていて?」 上目使いに加賀さんは俺を見た。その表情には微笑が浮かんでいた。 「……くっ…あ…さ、加賀さん…くはっ」 「提督、舌だけでなくこちらも使わせて頂くわ」 加賀さんは着物の胸元を開き、たわわなおっぱいをさらけ出した。 いつもおっとりとしている赤城さんには及ばないが、 白いお椀型のおっぱいの上に申し訳程度についている桜色の乳首。 俺は生唾を飲み込んだ。 加賀さんはその反応に満足して、起立したモノを挟み込んだ。 「うっ…く…ぁ…」 圧倒的な圧迫感に俺は思わず唸った。ぐにゅぐにゅと脈動する 極上の柔乳に挟み込まれる感覚は何とも形容しがたい。 「ん……ピクピクッってしてる……ん、ちゅ…はぁん、ちゅる、にゅちゅ…」 ゆっくりとおっぱいを上下させ、先端が飛び出る瞬間を狙って、 そこを口で責め、裏筋を舌を這わせ、硬く勃起した乳首を剛直に擦りつける。 「ぐう…あっ…さ、加賀さん」 おっぱいを両手で抱えシュッシュッとリズムよく扱き上げる加賀さんの 淫らな性技に俺は思わず天を仰ぐ。隙間なく肉棒を扱く乳肉の猛烈な圧迫感は 昼間の艦娘達にはなかったものだ。 「提督、我慢しないで、面倒だからそのまま出して」 俺が拳を握りしめ、モノがビクンビクンと大きく反応する。それを見て射精の 前兆と悟った加賀さんは扱くスピードを早めた。 「ぐ、うう…も、もう……あああっうっ…ぐう!」 俺がついに限界に達した。それを加賀さんは見逃さず、剛直の先端に 唇を被せた。モノの先端がビクビクと震え、グワッと大きくなると 透明な液がピュッと出され、続いてドロッとした大量の白濁液が加賀さんの口にぶちまけられた。 「ん…はぁんくううっ、はむ…んぐんっんんっ」 唇を深く被せ、手で竿を扱きながら加賀さんは俺の射精を口内で受け止めた。 「ぐ…あ、ああ……か、加賀さ…ンンっ」 腰をガクガク振るわせながら、身をかがめ加賀さんの頭部に手を回し、 腰を突き出す。加賀さんは眼を閉じ、肉棒を舌で絡め取るように動かした。 「うっ…ううう…く…」 ようやく長い射精を終え、俺は萎えた肉棒を加賀さんの唇から引き抜いた。 その口元からとろりと白濁液が垂れ落ちた。 「んぐぐ…ううん…んっんっんん…ケホッケホッ…濃すぎね…ん…ちゅ」 加賀さんは頬に付着した精液を舐め取ると、口を漱ぎ 愛おしそうに俺の唇にねっとりとした唇を重ねた。 「まだ、満足していないわね……こっちを味わって」 加賀さんはそう言って立ち上がると、机に手をつき、スカートをたくし上げ、 お尻を露わにさせた。黒いニーソックスは正規空母ならではだ。 他の艦娘にはない艶ののったお尻に食い込んでいる下帯は何とも淫靡だった。 「提督…私のアソコに魚雷を撃ちこみたい?」 加賀さんは妖艶に笑いながら言った。 「加賀さんの中で俺の魚雷を爆発させたい」 「素直ね……提督、履かせたままでも、引き裂いても構わないわ。 正規空母、加賀を堪能して下さい」 加賀さんはそう言って、さらにお尻を突き出した。 たわわな尻肉がさらにT字の下帯からはみ出し、俺の魚雷を高ぶらせた。 「……加賀さん」 「提督…」 加賀さんは豊満な尻を突き出し、ゆっくりと弧を描いてみせた。 たわわな、それでいてぷりっと引き締まった官能的な女の尻が俺の魚雷を 誘っている。俺は夢遊病者のようにふらふらと歩き、加賀さんの後ろに立った。 盛り上がった尻肉に手の平をあてがい、ぐにゅと捏ねた。指が沈むような錯覚。 きゅっと引き締まった加賀さんの尻は扶桑さんとまた異なった色気がある。 スカートの下で揺れ踊る尻肉を不本意ながらも横目でみていた事や、 風に捲れたお尻を見た時はそのまま襲ってしまいそうな衝動にかられた。 「あ…はっ…提督…手つきが…あっ」 俺は加賀さんの声を遮り、尻肉に頬をあて、太股とつつーと舌で舐めた。 白い肌と黒ニーソックスがまた雄を滾らせる。限界であった。 俺は立ち上がり、下帯の両端に指を引っかけ一気に太股までずり下げた。 その反動で尻肉がぷるんと揺れ踊り、中心がきゅっと締まるのがわかった。 既に下腹部に当たるように反り返っている自身を加賀さんの秘部にあてがい、一気に貫いた。 「ああ…さ、加賀さん…加賀さん…くう…はぁああ」 そして俺は加賀さんの濡れそぼった秘部に後ろから挿入したと同時に腰が 砕けそうな快感が走った。眼下で加賀さんの中に入っている俺の魚雷が 十分に潤んでいる柔肉にくわえ込まれている。 「んんんん…いきなり…あ…か、硬い…」 押し込むとどこまでも沈み、引き抜くと未練がましそうに食らい付いてくる。 さすが古参の虎の子機動部隊の航空母艦だ。 すっかり俺の形を覚え、その形にフィットするようになっているのだろう。 「うう…はっ…んう…ああ」 獣のような後背位での性交。加賀さんの黒髪に顔を埋め、うなじを舐め回し 丸い尻に腰を叩き付けた。ぬぶっという粘着音とぷりんとした尻肉の感触が たまらない。 「あッ…暑いわ……そ、それに…ン、この感触… …ふっ、ゴ、ゴムなしなんて…度胸あるのね」 加賀さんはとろけたような表情で俺の剣突を嬉々として受け入れていた。 「加賀さんの膣中…まとわりついて…締めすぎだ…もう…んあああっ!」 「あはっ提督の…特大魚雷…ンン」 「…あんん…こ、こんな……止められないよ…ぐうう」 「うん…うふ…はあ…提督の…中で大きっく…んんんっ!」 俺は眼を閉じ、背後から加賀さんの零れるような双乳を両手で鷲掴み、 その背に舌を這わせた。つきたての餅のような感触が、 熟した桃のような尻肉が痛いほど雄の本能を刺激する。 「あは…提督…あん…はああ」 「な…何…だい?加賀さんくうう…ん」 「…顔…私に…ん…見せてくださ…提督の顔を…」 加賀さんが妖艶に微笑み、俺と繋がったまま、こちらを向いた。 「あっあっわ、私の…おっぱいどうですか?」 「あ…ああ…ん…はあああ、や、柔らかすぎるよ」 加賀さんのおっぱいの谷間に顔を埋め、猛り狂ったように腰を進ませ スパートをかけた。パンパンパンと拍手のような音が執務室にこだます。 「あッあッあッあッ!」 加賀さんの色っぽい声がピストン運動とハモって聞こえる。 「う…ダ、ダメだ……で、出る…さ、加賀さん」 「うっんんんっ…わ、私も…な、中に…中にいいわ 私に、提督の魚雷で撃沈させ…はっんんんう!」 「あっあっああっく…ううっ!」 指をぐにゅうと加賀さんの豊満な尻に食い込ませ、 俺は一滴も漏らすまいと肉棒を最奧までたたき込んだ。 「で、出る―――うっ!」 「て、提督―――」 絡みつく加賀さんに肉壺が一滴も逃すまいとぎゅううと収縮した。 ボビュッドブッと俺の特濃の白濁魚雷が加賀さんの中で爆発した。 「加賀さん!加賀さん!おっ…おおっ……ん」 眉間に皺をよせ、歯を食いしばって最奥で射精を続ける。 加賀さんの唇を貪りながら、ようやくその射精が終わった。 「はぁ…ああ…爆発してる…すごく濃いの…私の中で爆発してる…」 俺は汗だくになりながら性交を終えると倒れ込むようにファ沈んだ。 加賀さんは机の上で仰向けから、うつ伏せになり、はあはあと息をついている。 捲り上げたスカートから覗くお尻、秘部からドロリとした白濁が太股を伝ってゆっくりと 流れ落ちてくる。 「はっ…はあはぁ…最高…だ…加賀さん」 「はあはあ…具合はよかったようね…提督、まだ治まってないわ、後ろからして」 未だにおさまらない勃起。お尻を突き出す加賀さん。 「も、もうおかしくなりそうだ、エロすぎるよ加賀さん」 乱れた衣服のまま荒い息をつくお尻に欲情した俺は加賀さんの バックからねじ込んでさらに3回ほどイッた。 「は…はあ…な、治った…か」 「提督…悪いけど……そ、そこの小物入れから錠剤を取って」 ソファに横たわる加賀さんの服はかき乱れ、額、顔、頬、鼻、うなじ、胸元、腹部 ありとあらゆるところに精液を付着させ、膣からは未だに精液が垂れ落ちている。 「こ、腰が…あ、上がらなくて……申し訳ないわ」 「無理につきあわせてごめんね、はい、コレ」 加賀さんは小物入れから錠剤を出すと、用意してあった水と共に一気に煽った。 「加賀さん、どこか具合でも悪いの?」 「いえ、これはアフターピルです。提督に用意したアレは精力増強剤でも 特に強力な物で、膣内射精は妊娠する確率がかなり高くなるわ。 昼間の艦娘達には当然、ゴムを使うから問題ないけど、 私は生出しだから……仕事に私情を挟むことはいけないけど、 もし子供が欲しくなったら言って、私の一番、危ない日に生出しして孕んであげてもいいわ 提督の母艦になってあげる。母艦でないと子供を生めないもの」 「……………え?」 顔を赤らめて身支度を始めた加賀さんとは対照的に俺は真っ青になった。 そして後日…… 「これはどういうことかしら?」 「………はい、すいませ―――」 「もう一段追加」 おごッ…加賀さんの往復ビンタを何度も何度も食らい ボロボロにされた後、正座のまま足を縛られた。 そして三角形の木を並べた台の上に正座させられ、 背後の柱にしっかり括り付けられた。これはもしかして江戸時代の 拷問、い、石抱ィ!? 一枚45キロもある石がどんどん追加される。 追加される度に三角の木材の鋭角の稜線が体重で脛に食い込んで…も、もうヤバイ。 「か…がさ…こ、これ―――」 「何枚くらいで生命の危機に及ぶのかしら?」 まず膝の上に乗る石の板は4枚。今、追加されて5枚目。 その加賀さんの手には電報の束があった。 「まずは金剛さんと扶桑さんから電報『この間の生出しで妊娠デス 責任とって戦艦空母に改修ネ、しないと艦砲射撃するデース』 『提督の御子を授かりました。認知して戦艦空母に改修して下さい 認知しなければ私、このお腹の子と海の底へ自沈します』 さらに千歳さんと千代田さんから『先日の営みで姉妹共々で孕みました。 これで軽空母艦に改修決定♪約束は守ってくださいね』と続けて電報がきてるわ」 「だ、だから…俺」 「もう一枚追加」 あががががが、も、もう脚!脚!! 「百歩譲って千歳姉妹はいいとしても貴重な戦艦を戦艦空母に改修? 提督は『気が狂った』『私とは遊びだったの?』『このゲス野郎』『ケダモノ』 と他の艦娘から抗議の電報が殺到してるわ。 特に睦月姉妹からは『氏ね』と2文字だけ。もう一枚追加」 「や、やめてくれ!ほ、本当に悪かった!加賀さん、や、やめてくれ! そ、そうだ!これからは飛行機の時代だから、機動部隊を作ろう!ね、加賀さん」 「そうね、その強化は良い判断ね」 加賀さんはニッコリ笑ってさらに5枚の石板みを用意した。 「あ、あはは…か、艦載機の練度上げた…ず、瑞鶴や翔鶴も―――」 「五航戦の子なんかと一緒にしないで」 ドスン、メリメリメリ………バキ。 おしまい
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/7772.html
フブキの空挺提督 スカイストーム R 光/自然文明 (8) クリーチャー:アポロニア・ドラゴン/ビーストフォーク/ヴァリアント 6500+ ■マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。 ■パワーアタッカー+5000 ■W・ブレイカー ■相手のカードの効果によって、このクリーチャーが手札から捨てられる時、かわりにバトルゾーンに出してもよい。そうした場合、バトルゾーンにある相手の進化ではないクリーチャーを1体選ぶ。相手はそれを新しいシールドとして、自身のシールドゾーンに裏向きにして加える。 作者:赤烏 フレーバーテキスト DMW-25 「テンプレア編III テンペスト・ミスター」「大突撃だぜフブキ船団 !!」 ――ウルトラ大勇者「百満開のフブキ」 収録 DMW-25 「テンプレア編III テンペスト・ミスター」13/55 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4588.html
前ページ次ページゼロな提督 ウルの月、第四週ティワズ、イングの曜日、正午。 トリステイン王国首都トリスタニアの中央広場、サン・レミ聖堂前。 中央広場を囲む群衆は、静まりかえった。 町中の鐘も、今は鳴らない。 警備の騎士達は動かない。今、目の前に展開する現状を把握出来ず、士官は命令を下せ ない。 聖堂のファーサードには、中から何人もの貴族が駆け寄ってくる姿が見える。そして中 央広場に見える姫の姿を見た瞬間に息を呑み、硬直した。 上空を旋回する竜騎士達は、遠い地上で何が起こっているのか分からず旋回を続けてい る。 いや、何が起こっているのか分からないのは全員同じだろう。 目の前で起きているのに、理解出来ないのだ。 ただ一人、ヤンだけが正確に理解していた。 想像はしていたが、まさか現実に起きるとは思わなかった。あんぐりと口が開いたまま 動けない。 ヤンの次に理解したのは、ヤンの隣で呆然としていたシエスタ。彼女は直前にヤンの想 像を聞いていたので、何が起きたのか理解出来たのだ。 「まさか・・・ウェールズ皇太子を使って・・・アンリエッタ姫を・・・」 デルフリンガーすらも声がかすれる。 「姫を、亡命させる・・・お、おでれーたぁ・・・」 凍り付いた中央広場の中、大群衆と騎士達に囲まれたアンリエッタ姫は、ウェールズ皇 太子と抱き合い、口づけを交わしていた。 第24話 破局 ―――御伽噺でよくあるお話。 昔々、とある小さな国にそれはそれは美しいお姫様がいました。 北の帝国を治める悪い皇帝は、お姫様をお嫁さんにしようとしていました。 でも、お姫様は西の国の王子様の事がずっと好きでした。 王子様も、戦争に負けて敵に捕らえられていたけど、お姫様の事が忘れられません。 そしてお姫様と悪い皇帝の結婚式の最中に、不思議な魔法使いに助けられた王子がお姫 様に会いに来てくれたのです! お姫様は王子様に助けられ、悪い皇帝の追っ手を振り切り、二人で幸せに暮らしたので した。 めでたし、めでたし――― 「―――めでたくないっ!」 ヤンは怒鳴った。 御伽噺なら「姫と王子が幸せになりました。めでたしめでたし」で終わりだが、これは 現実だ。時の流れは止まらないし、歴史は全ての人が主人公だ。今、目の前の事象から新 たなる波紋が世界に広がるんだ。 同盟は決裂し、アルビオンが侵攻してくる。更にゲルマニアまでもが侵攻しかねない。 レコン・キスタの脅威があるとはいえ、こんな恥辱を与えられて国交断絶程度で済ませて は、アルブレヒト三世の沽券に関わる。ただでさえ始祖の血を引かず権威に欠ける皇帝、 威信を傷つけられては統治に支障がでる。多少の危険を冒してでも、血をもって贖わせよ うと考えても不思議はない。 トリステインは四分五裂の戦国時代となり、戦火に街も田畑も全て焼き払われ荒廃する。 それをアンリエッタはアルビオンのロンディニウムから「おお、この罪深き姫をお許し下 さい」と涙しながら見下ろすんだ。愛しの皇太子の腕の中、最高級のお菓子をつまみなが ら、悲劇のヒロインを演じて。 あとはレコン・キスタが平定した、かつての故郷にお飾りの御輿として君臨し直す。彼 女にしてみれば昔と変わらぬ飾り、名称が王女から女王に変わっただけ。それでも愛しの ウェールズと添い遂げれたから最高だろう。 ハルケギニアが戦乱の時代に突入しようと、名も無き人々がどれ程命を失おうと、聖地 周辺でビダーシャル達エルフを相手にどれ程の血が流されようと、気にもとめないのは間 違いない。ファンタジーな御伽噺では血を流し倒れる一般人なんか語られないから。 「ふざけないでくれっ!!」 再び、心の底から怒声を上げた。 王族として絢爛豪華な生活を貪った代償が自由の剥奪だとするなら、自由が欲しかった なら、勝手に出奔でも出家でもすればよかったんだ!なんでわざわざ自分を信じ、精一杯 仕えてくれた人々を害するような行為をするんだ!? かつてこれほどの怒りに震えた事があったろうか? 記憶に鮮明なのは、自身の良き理解者であったビュコック提督の死。 ヤンがイゼルローン要塞再奪取(宇宙暦800年/新帝国暦2年1月2日~14日、第10次 イゼルローン攻防戦)を実行している間、ビュコック元帥は皇帝ラインハルト率いる帝国 軍本隊を引きつけるべく、死を覚悟して戦いを挑んだ(同年2年1月16日、マル・アデッ タ星域会戦)。 結果、イゼルローン要塞の再奪取には成功したが、ビュコック提督は戦死した。その訃 報を聞かされたヤンは、自らの無能を責め立てた。誘拐同然でも良いから提督を自分と共 に連れてくるべきだった、と。手に持っていた熱い紅茶が煎れられた紙コップを握りつぶ して火傷を負った事にすら気付かないほど。 しかし、今日この場面の怒りは違う。ベクトルが明らかに正反対だ。 自責の念ではない、他者への怒り。 想像力の欠けた無能な主を生み出す無能者の国への怒り。 魔力を偏重し理性や科学を軽視する社会への怒り。 姫をここまで歪ませ追いつめた貴族制度への怒り。 いや、同じベクトルの怒りも混じっている。 こんな国で新しい人生を踏み出そうと考えた、自分の甘さと愚かさへの怒り。 信じられない。本当に信じられない。自分はこんな間抜けだったのか? 皇帝ラインハルト、今こそ君の気持ちが良く分かった。 こんな主を戴くのは間違いだ。のさばらせるのは悪だ。歴史の汚点だ。 打ち倒した門閥貴族に対する苛烈なまでの粛正と追放は正しかった。 ついさっき裏切ったばかりの国民の目前で自分一人の幸せに酔いしれているような珍獣 を、いや害獣を生かしておいて何の得がある?そう考えるのは自然な事だ。 ハルケギニアに来たばかりの自分なら、「自分はこの国の者ではないから…」と、傍観者 を気取った事だろう。 だが今は違う。 もう故郷には帰れない。『門』を塞ぐ為、帰ってはならないんだ。 意地っ張りで寂しがりやな可愛いルイズ、愛してると言ってくれた美しいマチルダ、タ ルブの村には自分が必要と言ってくれた元気なシエスタ、正体不明な流れ者の自分を信頼 してくれた寛大なヴァリエール公爵と枢機卿…他にも色んな人がいる。見習いだけど執事 という仕事もある。 今は一介のトリステイン国民だ。 そう、過去はどうあれ、今の自分はトリステイン国民だ。 では、そのトリステインを害する存在がいれば、どうするべきだろう? それがよりにもよって国の支配者たる王族だった場合は? そうだ、落ち着け、落ち着くんだ。 僕はヤン・ウェンリーだ。イヤだったけど、不敗の魔術師とか英雄とか智将とか呼ばれ てたんだ。この程度の危機は今までいくらでもあったじゃないか。 考えろ。灰色の脳細胞を叩き起こせ。この状況で、これから展開される絶望的な歴史の 奔流の中で、自分はどうすべきか。 策を練るんだ。 確かマザリーニ枢機卿とマリアンヌ陛下は、まだ城にいるはずだ。今回はヴィンドボナ へ移動するだけだし、のんびりパレードに参加していると国政が滞るので、結婚式当日に ラ・ロシェールから艦隊で直接ヴィンドボナへ向かう。…そうか、そこを突かれたのか。 姫を諫めうる人物がいない、この瞬間を。 いや、ここにいなくて良かった。あの女が口で諫められたくらいで反省なんかするもん か。絶対、無視して同じ事をする。もしこの現場を目にしたら、二人とも脳梗塞か心筋梗 塞で即死しかねない。 ゲルマニアの大使は…どこにいるのか知らない。だが、パレードにはいないから、城か ラ・ロシェールのゲルマニア艦隊だろう。なら、まだこの事実を秘密裏に処理出来る可能 性があるかも知れない。 姫の説得は、もはや不可能。あのファンタジーに理屈が通用するもんか。 では、どうする?姫が騙されてました、とでも言い張るか!?いや、まて、よく考える んだ。あの女が国より男を選んだという事実を誤魔化すのは今さら無理…男? 男?ウェールズ皇太子?? アンリエッタが、ウェールズ皇太子と、抱き合ってる…? ウェールズ、皇太子が、ここにいる!!! 突如、中央広場に突風が吹いた。 硬直して動けない人々の輪の中に、一騎の風竜騎士が舞い降りたのだ。 「姫!お乗り下さいっ!!」 騎乗する騎士が叫ぶ。その騎士の後ろには一人の貴族が竜にしがみついている。立派な 衣装に身を包んで、必死な形相で騎士の後ろに隠れている。 「ジョンストン!?」 聖堂入り口に立ちつくしていたベアトリスが叫んだ。その名は公爵の話で知っている。 アルビオン艦隊司令長官及び貴族議会議員である政治家サー・ジョンストン、今回のアル ビオンからの大使だ。 ウェールズは杖を掲げルーンを詠唱する。アンリエッタを抱えたまま飛翔し、風のよう に風竜へと舞い降りた。 風竜は翼を広げ、甲高い咆哮を響かせ、再び疾風を中央広場に巻き起こした。 警護の魔法衛士隊も、上空の竜騎士隊も、唖然とする群衆も、今まさに風竜の飛び立つ 瞬間を目にしながら、動く事も声をあげることも出来なかった。 閃光が貫いた。 中央広場から飛び立とうと飛翔したばかりの風竜を、幾筋もの光が貫通した。 人々は、その光が何か知らなかった。だがヤンだけは知っていた。それがブラスターの 生み出す熱線だと。 しかし、ヤンはまだブラスターを撃っていなかった。 着ている燕尾服の胸元には、自分と一緒に召喚されたブラスターが入っている。そして それを今まさに撃たんと、グリップに手をかけた所だったのだ。その時、別のブラスター が光を放った。 「ふざけないでよおーーーーーーーーーーっっ!!!!」 シエスタがブラスターを乱射していた。 宙に浮いた風竜へ、さらに熱線が襲いかかる。 ヤンはシエスタの行動も理解した。予め聞いていたヤンの話から、目前の事態を把握し た彼女は、同じく怒りに我を忘れた。そしてタルブの村から隠し持って来た銃を取り出し たんだ。 そう、もう一つの事を忘れていた。シエスタは只のメイドじゃない。オイゲン・サヴァ リッシュの直系子孫。魔法世界にありながら科学知識を身につけた、タルブのエージェン ト。ワイズからヤンの護衛を命じられ、ブラスターを手渡されてても不思議は無かったん だ。 風竜の巨体に対して、拳銃の熱線では出力が弱い。硬い鱗を突き破りはしても、筋肉や 内臓にまで必殺のダメージを与えるのは難しかった。宙に浮く巨体の向こう側にいる人間 にも当たらない。だが、それでも風竜に傷を負わせ、薄い皮膜を穴だらけにするには十分 だった。 宙に浮いて飛び去ろうとしていた風竜が苦痛に身体を歪ませ、突然浮力を失った翼が巨 体を支えきれなくなる。 風竜は墜落した。 きりもみしながら、広場周囲の建造物へと頭から突っ込んだ。 轟音と共に建物の上部が砕け、破片を飛び散らせ、周囲の群衆に竜の血と石が雨の如く 降り注ぐ。建造物の下で硬直していた人々はようやく動き出した。悲鳴を上げて逃げまど い、破片で受けた傷を押さえ、倒れた隣人や家族を安全な場所へと運ぼうとする。 そして広場を囲む全ての人々も動き出した。紳士達が怒号と困惑の声を荒げる。淑女達 が失神する。子供達が泣きわめく。パニックが広がりつつある群衆を押さえようと騎士達 が杖を振り上げ大声を上げる。だが彼等が騎乗する幻獣達も、突然の騒乱に驚いて命令を 聞けず暴れ回る。 そんな中、ウェールズがアンリエッタを抱えて広場中央に降り立った。『フライ』をかけ たままだったため、風竜の墜落に巻き込まれる前に逃げる事が出来たのだろう。 「シエスタ!」 「は、はい!?」 風竜が墜落したのを見て、ようやく引き金を引くのを止めたシエスタにヤンが叫ぶ。 「ウェールズを捕まえるんだ!!」 「え、え?捕まえるんですか!?」 「そう!援護してくれ!!」 言うが早いかヤンはブラスターを手にして駆け出した。慌ててシエスタも後に続く。 既に群衆にはパニックが広がり、広場の中にまで人が溢れ始めている。 人垣の隙間をすり抜け、ウェールズ達に気付かれぬよう身を隠し、広場へと進む。 そして二人は群衆から抜け出し、とうとうアンリエッタを地面に降ろした皇太子の横顔 を視界に入れた。ブラスターの銃口を凛々しい若者へと向ける。 だが、ヤンとウェールズ達の間に一人の人物が立ちはだかった。 「そこまでだよ、ヤン・ウェンリー」 「ワルド、子爵…」 グリフォン隊の制服に身を包んだ羽帽子の男、ワルドが王族を背にして立っていた。 ヤンは、驚愕に一瞬動きが止まる。後ろから来たシエスタも魔法衛士隊隊長の姿にたじ ろいでしまう。 その瞬間を逃さず、ワルドはルーンを詠唱した。 「ユビキタス・デル・ウィンデ…」 呪文が完成すると、ワルドの体はいきなり分裂した。 一つ…、二つ…、三つ…、四つ…、本体と合わせて、五体のワルドが現れた。分身達は 皇太子と姫と、ワルド本体を囲んだ。 ただし、杖は王族二人でなく、平民二人に向けられている。 杖と銃を向け合う彼等は、互いに動けない。 ヤンは知っている。ワルドが風のスクウェアである事を。ワルドの分身達を相手にして いる間に本体が逃げるなり攻撃するなり出来るから。シエスタもいきなり現れたグリフォ ン隊隊長への対応に迷っている。 ワルドも動けない。二人が持つブラスターが竜すら容易く撃ち殺す銃だと知ってしまっ たから。そして万が一にも王族二人に当たってはならないから。 怒号と悲鳴と咆哮が響く中央広場。いまだ群衆が駆けてこない、ぽっかりと開いた空間 で、王家の二人とグリフォン隊隊長と平民二人は睨みあっている。 「ヤン!?」 ファーサードから声がした。 横目で見ると、扉前で未だに硬直していたベアトリスの隣にルイズが出てきていた。他 にも公爵夫妻、オールド・オスマンとロングビル、タバサ、ギーシュなどが聖堂から外へ 出て、中央広場の騒乱に目を丸くしている。 「ルイズ!ウェールズを捕らえるんだっ!!」 「ちぃっ!」 瞬間、ヤンの前に立つワルドの分身が舌打ちし、次いで唇から呪文が漏れる。 更にヤンの背からカシュンッと長剣が飛び出した。 「俺を構えろ!」 「え!?」 構えろとデルフリンガーに言われても、いきなり何なのかヤンには分からない。 「急げっ!」 慌てて背に左手を伸ばし、柄を握りしめる 「『ウィンド・ブレイク』!」 空気の塊がヤンとシエスタに向けて放たれた。 だが、ヤンが剣を抜き放つのが一瞬だけ早かった。風の魔法は輝く刀身に吸い込まれて いく。目の前で起きた事に彼は目を疑った。 「これは…」 「これがおれっちの力の一つさ!安心しな、相棒。ちゃちな魔法は全部、俺が吸い込んで やるよ!」 それを見ていたワルドも目を疑い、さらに舌打ちの音を響かせる。 ヤンもシエスタもウェールズに向けてブラスターを構えている。だがその射線上にはワ ルド達が立ち塞がっている。二人とも、このままワルドを殺すべきか否か判断が付かず、 再び睨み合いに陥ってしまう。 そしてウェールズは、未だ動かない。チラリと視線を上に向け、空を見上げただけだ。 アンリエッタは自らの目と耳を塞ぐかのように、皇太子の胸に顔を埋めている。 その姿に、ようやく公爵が声を出せた。 「ウェンリー!これは一体何事だ!」 ヤンはワルド達と睨みあったまま、彼が生涯出した事が無いであろう、あらん限りの大 声で答えた。 「レコン・キスタは王女亡命を謀ったんです!皇太子をエサに!まだ間に合う!皇太子を 捕らえるんだっ!!」 ヤンの言葉にルイズも公爵夫妻も、オスマンも、ロングビルも、ギーシュも、ベアトリ スも、ファーサード付近から外を見ていた全てのトリステインの要人達が息を呑んで絶句 した。 皇太子の捕縛。 それが唯一、この絶望的状況を逆転させうる選択肢。王女を確実に釣るため、目の前に いるのは皇太子本人のはずだ。 アルビオン王家の生き残りを失えば、レコン・キスタは旧王党派に対する求心力を失っ て内部分裂を起こし自壊する。アンリエッタが大観衆の面前でウェールズと抱き合い口づ けをかわしたのも、ウェールズを捕らえるための演技、と皇帝に言い訳が出来る。だが逃 がせば、全てはトリステイン滅亡へと動き出す。 最悪、皇太子もワルドごと殺すしかない。 そう分かってはいる。分かってはいるが、引き金を引く事が出来ない。ウェールズに身 を寄せるアンリエッタも邪魔だ。何とかして生かして捕らえたい。立ち塞がるワルド子爵 を説得出来ないかと思考を巡らしてしまう。 「静まれぇー!」 ワルドが叫んだ。分身含めて5体全部が同時に、大群衆が生む騒乱の中ですら響き渡る 大声で。 「姫の御前である!皆の者、控えい!!」 威風堂々たる合唱が広場を満たす。そして王族という言葉に民も騎士も反応した。 我に返り、広場にいるアンリエッタ姫の姿を思い出し静まりかえる。そして広場の中央 から外側へ、慌てて跪く人々の動きが水面に広がる波紋のように移動していく。 ここにいたって、ようやく広場は静けさを取り戻した。 未だ跪いていないのは幻獣に騎乗していた騎士達、上空の竜騎士、そしてワルドへ銃を 向けるヤンとシエスタ。5メイルほどの間をあけて対峙している。 広場中央の、抱き合い睨みあう男女に全ての視線が集まる。 ワルドは膝を屈しようとしないヤンとシエスタへ杖を突き出す。 「無礼であろう!跪け!」 だがヤンは膝をつこうとはしない。左手にデルフリンガー、右手に銃を構えたままワル ドと睨みあう。シエスタは次の行動が判断つかず、抱き合う王族とワルドとヤンの間で視 線を彷徨わせてしまう。 ことここに至っても飄々とした口調で、ヤンは応じた。膝を屈するという行動でなく、 彼の頭脳が生み出した言葉で。 「君が内通者だったんだね、ワルド子爵」 内通者、即ち裏切り者。 ヴァリエール家の人々は悟った。城でヤンが語った予想は真実を見抜いていた事を。そ して彼がその先の事実を、王女亡命を早期に察知した事を。 だが、ワルドは首を横に振った。 「それは違う。僕は殿下の卑しき僕に過ぎない。王家に仕える臣下として、アンリエッタ 姫に付き従うのは当然の事だよ」 「それが国を裏切る事になっても、かい?」 「国を裏切る?何を言ってるんだ。殿下は始祖より授けられた王権を有している。殿下に 仕える事は国に忠誠を尽くす事と同義だ」 「そのために、トリステインが戦火に沈み、数多の国民が死ぬとしても、かい?」 「全ては始祖より授けられし王権の依って立つ所。その王権が正道に立ち直るというなら 僕は犠牲を恐れはしない」 「正道?」 ヤンの脳裏にイヤな予感が駆けめぐった。 レコン・キスタに与するワルドと、アルビオンへ亡命するアンリエッタこそが正道だと いう。だとすれば、その正道とは…。 今まで何も語らず、チラチラと視線を空へ向けていただけのウェールズが、ようやく口 を開いた。威風堂々と、歌うように楽しげに。 「我らレコン・キスタは聖地を奪還する!余は王権の正道に立ち直りし者なり!」 一瞬、ヤンもルイズも、ファーサードでじっと話を聞いていたロングビルも視界が真っ 暗になった。めまいがした。あんぐりと口が開いた。よろけそうになった。頭も腹も痛く なってきた。 「わ、ワルド子爵…まさか、あなたも聖地奪還を?」 「そうだ。聖地、それこそが俺の目的さ」 ワルドは堂々と認めた。ヤンは本当に頭痛がした。こめかみも後頭部もガンガンしてく る。 よりにもよって、こんな所で、こんなバカな理由で、最悪の事態を引き起こしてくれた なんて。しかも聖地の真実を知らないのだから、ウェールズやワルドを含めた、この場の 全ての人々が同調しても非難のしようがない。 だからって聖地の真実を語ったって信じるはずがない。それが狂信者であればなおさら だ。 なら、信仰以外の点を突くしかない。 「わ、ワルド子爵。わかってるんですか?このままではアルビオンと、もしかしたらゲル マニアも侵攻して、トリステインが滅ぶんです。ルイズも死ぬかもしれないんですよ?あ なたの、婚約者でしょう!?」 「もちろん分かっている。だからルイズも来ればいい。そして、君もだよ」 「僕も!?」 「そう、君も。そして君の恋人のフーケも」 ヤンは息を呑む。まさか、そこまで知られていたなんて、と。レコン・キスタの、いや ワルドの真価を見誤っていた事を、今さらに悔やんでしまう。 「おっと、ここではミス・ロングビルだったね、失礼」 今さら謝られたところで、ヤンの心臓はヘタなダンスを止めてくれなかった。二の句が 継げない。 「もうトリステインは終わりだ。だから早く三人ともアルビオンへ来たまえ。僕はアルビ オンで爵位と領地をもらってルイズと結婚する。皇帝陛下には、既に君を参謀として推挙 してあるよ。フーケについては、父君の名誉回復とサウスゴータ太守の地位も確約を得て いる」 あまりの手際の良さに、あんぐりと口が開いてしまう。まったくもって筋が通ってる。 とてつもなく魅力的な申し出だ。というか、まともに考えたらワルドについていくのが正 解だ。 そう。極めて魅力的で筋の通った常識的な申し出だ。幾つかの点を除いて、だが。 乾ききった舌を、やっとの思いでツバで潤し、 「その、まともに考えると、とっても嬉しい申し出なんですが…幾つか問題が…」 「ふむ、何かな?」 「聖地って…どうしても回復しないと、ダメですか?」 「無論だ。それこそがレコン・キスタの大義だからね。何より、俺自身が行きたいんだ」 当然の如く、自信を持ってワルドは肯定した。 「僕はブリミル教徒じゃないんですが…」 「大丈夫、皇帝陛下は寛大なお方だよ。それに、これからゆっくり始祖の教えを学べばい いし」 ヤンは頭の中で「勘弁してくれ…」と呟いた。 頭が痛いとか目まいがするどころじゃない。視界が歪んできた。この上なんでブリミル なんて大バカを朝な夕なに拝まなきゃならないんだ。 「でも、トリステインが火の海になるし、ハルケギニアが血に染まるし、おまけにそこま でやってもエルフ相手に勝てる見込みなんか…」 「怖いのは分かる。だが、だからこそ!君の知略を貸して欲しい、流れる同胞の血を僅か でも減らすために。君たちの力を、ハルケギニア全ての力を束ねる必要があるんだよ!勝 利のため、聖地回復のために!」 本当に、本当にもう、勘弁してくれ!ヤンは叫びたかった。 聖地なんか無いんだ。そこは千年前から荒野なんだ。でっかいクレーターだ。始祖のせ いで世界は滅びの危機にあるんだ!そう大声で皆に言いたかった。第一、僕は戦争なんか まっぴらだ!ルイズの執事として働いて、ヒマな時は学院で本でも読みながらタルブのワ インを飲んでいたいんだ! が、言っても無駄だという事も百も承知だった。ワルドはハルケギニアの人間として正 論を述べてるだけだから、何も言えない。 オマケにティファニアがいる。ハーフエルフで虚無の使い手。公になればただではすま ない。悪くすればモード大公事件の二の舞だ。まだビダーシャルにティファニアの事を話 してもいないから、サハラに連れて行けるかどうかも分からない段階だし。 そんなヤンの沈黙を、ワルドは好意的に誤解した。 「迷うのは分かる。いきなりの事だからな。君やルイズ、フーケの命は保証する。ヴァリ エール家についても皇帝陛下への口添えをしてもいい。後からでもアルビオンへ来てくれ ればいいよ」 ヤンには分かっていた。ワルドの申し出は破格の条件だという事を。自分たちを戦力と して、本当に必要としていると。ワルドにしても、アンリエッタと共にアルビオンへ行く 以上は反逆でも裏切りでもない、滅ぶ国に忠義を尽くす必要はない、恥じ入るべきものは 何もない、と。 だからこそ、ワルドを説得するのは不可能だと理解した。 そして皇太子は演説を続ける。 「アンリエッタ姫は余の呼びかけに応じ、始祖への真の信仰に目覚めてくれた! 聞けっ!トリステインの民よ、我らレコン・キスタはエルフより聖地を奪還すべく立ち 上がった!そのために、王家の務めを忘れ惰眠を貪り私腹を肥やして国を傾かせた王党派 を打ち倒したのだ!」 皇太子の演説内容は、ブリミル教徒としては筋の通ったものだ。混乱して理性を失いか けていた人々に大きな説得力を与えているようで、静まりかえって広場に響く涼やかな声 に耳を傾けている。 だから、彼等はすっかり忘れている。エルフを打ち倒すなど夢物語だと。この6千年に 成功した者はいないと。エルフの10倍の軍勢をもって、ようやく勝利が得られるという ほどに力の差がある事を。レコン・キスタ自身も私腹を肥やさんとする貴族が集まった烏 合の衆だと。 そして、アンリエッタ姫はゲルマニア皇帝との結婚式へ向かう最中だという事も。 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4743.html
前ページ次ページゼロな提督 ジョアン・レベロ。 元は同盟の最高評議会議員の一人で、財政委員長だった。 宇宙暦798年/帝国暦489年8月~翌年5月までのラグナロック(神々の黄昏)作戦で自 由惑星同盟が銀河帝国に敗北(5月25日バーラトの和約)した以後は最高評議会議長に就 任していた。 敗戦前においては有能な政治家であり、ヤンと協力すれば最高の組み合わせであろうと 言われていた。が、敗戦後という混乱期を乗り切れなかった。同盟の存続に固執する言動 をとり、視野の狭さを露呈した。帝国高等弁務官レンネンカンプの干渉に抗しきれず、自 分に似合わない権謀に手を染めてしまった。 ヤンを暗殺しようとした。 レンネンカンプはヤン・ウェンリー退役元帥を反和平活動防止法違反容疑で逮捕するよ う同盟政府に「勧告」した。この「勧告」には、証拠も法的権限も何もなかった。だがレ ベロは、帝国の怒りを買って同盟を危機に陥らせるより、ヤンを犠牲にして同盟を救う事 を考えた。 逮捕すれば反帝国派が暴発、帝国軍が彼等を一網打尽にして同盟を完全支配。逮捕しな ければバーラト和約違反で帝国の再侵攻。ヤンが国家を蔑ろにして、いずれは独裁者にな るのではないか…そんな不安を抱いてもいた。なら帝国軍の介入を受ける前にヤンを始末 しよう…この策謀をレベロは命じた。ヤンは逮捕され、中央検察庁へと身柄を移された。 秘密裏に暗殺するために。 国民的英雄であり、気の良い友人でもあった上官への暗殺を察知した彼の部下達は、陸 戦隊ローゼンリッターを筆頭に集結。同盟政府に叛旗を翻した。部下達への監視者と追撃 者を尽く返り討ちにし、レベロを誘拐し、中央検察庁で暗殺されかかっていたヤンを救出 した。その上、帝国高等弁務官府が置かれたホテル・シャングリラを襲撃、レンネンカン プを人質にして脱出した。 レンネンカンプ誘拐後、一気に心身とも憔悴したレベロ。最期は第2次ラグナロク作戦 の際、自己保身を図った軍部に射殺された。かつてヤンに対して行った事を、次は自分が 受けた。彼は自分が歴史上の悪役になった、と自覚していた。己の最期もヤンを謀殺しよ うとした報いと受け入れた。 ヤンはレベロへ怒りを向けたりはせず、同情すらしていた。それがレベロの私利私欲で なく、同盟存続の為の行動であり、そのような立場に追い込まれたのは彼のせいではない と理解していた。 そして今日、アンリエッタは国を捨て、自由を求めて逃げた。 望まぬ結婚から、王の重責から、城という牢獄から、逃げた。 第25話 その頃、舞台裏では 自分と何が違う?ヤンは考える。 客観的には違いすぎる。でも主観的には変わらない気がする。 ヤンは暗殺。それは民主主義国家、法治国家では許されぬ暴挙。 アンリエッタは政略結婚。貴族社会では当然の倣わし。 当人にとっては死、または死に等しい。少なくともアンリエッタは恋人を忘れられず、 見知らぬ中年男との家庭を築く気になれなかった。それは人生の放棄であり未来の死と感 じたろう。 …ゲルマニアの皇帝がどういう人か詳しく知らないが、極めて有能だろうし、それほど 異常な人ではないはずだ。幸せな家庭を築くチャンスはあったろう。ただ、その意思が無 かった。 ヤンは同盟存続のための生贄。だが同盟は既に滅亡へのカウントダウンに入っていた。 カウントを少し送らせても滅亡という結果に変わりはない。無意味な行為。 アンリエッタは軍事同盟のための生贄。これが為れば両国はレコン・キスタの侵攻に対 し強固な防衛体制を築ける。有意義な行為。 当人にしてみれば、同じ生贄。どうして自分が犠牲にされなければならないのか?小を 殺して大を生かす?殺される方が黙って殺される理由はない。だからヤンもアンリエッタ も逃げた。 …アンリエッタには「生贄になりたくない」と主張する機会くらいはあったんじゃない かなぁ?でも他人の言うなりになるよう育てられたし、彼女の意見なんか誰も聞かなかっ たろう。 ヤンが逃げた後、同盟は滅んだ。彼はイゼルローン要塞を再奪取。民主共和制の芽を未 来へ残すために帝国軍と渡り合い、皇帝を和平交渉の席に着かせる事に成功した…が、ヤ ンは暗殺された。 アンリエッタはどうするだろう?まず、ウェールズと結婚する。ハヴィランド宮殿で蝶 よ花よと大事にされる。たまに城や馬車の窓から手を振って、アルビオン国民の人気を取 る。トリステインは滅ぶ。レコン・キスタとゲルマニアが蹂躙し尽くした荒野に降り立ち 「苦難の時代は過ぎ去りました。これからは始祖への真の信仰を胸に、共に聖地を奪還し ましょう!」と宣言する。アンリエッタがいればトリステイン王家の芽は残る。トリステ インは復活する。傀儡国家として。 両方とも国を滅ぼし、更なる戦乱を起こし、死者を山と築くのは変わりない。王家の血 筋と民主共和制、それぞれの時代と社会に置いて一定の価値を持つものだ。 あ、ここは大きく違うな。 皇帝ラインハルトとの和平交渉が為れば永きにわたる戦乱が終結する、はずだ。アンリ エッタはトリステインを滅ぼしてからハルケギニア全土も戦火に沈めるんだ。悲劇の主人 公を演じる涙と共に。 僕が求めた和平交渉が上手くいけば、未来に平和が来る可能性がある。でもレコン・キ スタがハルケギニアを統一出来ても、今度はエルフとの絶望的戦争が待っている。しかも 聖地には召喚の門を中心としたクレーターがあるだけ。 そうそう、このことも考えなきゃ。聖地の消失は『虚無』の暴走が原因なんて、ハルケ ギニアの人々は絶対認めないだろう。「エルフが原因だ!」と決めつけ、信じ込もうとす る。結果、エルフとの抗争は果てしない泥沼へ突入し、力量差から人間側の壊滅という形 で終結する。 はぁ~…今になって、ホントにレベロの気持ちがよく分かるよ。 小を殺して大を生かす。でも小は死にたくない。同じく大だって死にたくないさ。 そして今回の結果は簡単。大は小に逃げられた。だから大が死ぬ。 トリステイン、ハルケギニア、ひいては貴族制度という大は、アンリエッタという小に 逆襲されたんだ。 「僕は民主共和制、アンリエッタはウェールズとの幸せな家庭…か。 ま、ここまでやったんだから、しっかり幸せになりなよ。僕は、ちょっと祝福出来ない けどね」 ヤンは右手にデルフリンガー、左手に祈祷書を持ち、そんな事を考えていた。 血だまりの中に浮かぶ王女の右手をぼんやりと見下ろしながら。 今や大を構成する一員になってしまったヤンとしては、アンリエッタに声援を送る事は 憚られた。 「ヤン…もしかして、それが例の指輪かい?」 背後からロングビルの声がした。彼女は濡れるのも気にせず水たまりの中に立ち、冷た い目で王家の右腕を見つめている。 「ああ、そのようだね。ほら、祈祷書もあるよ」 そういって左手の古い本を示す。 ロングビルはフンッとつまらなそうに鼻を鳴らし、ヤンの横に立つ。 そして無造作に、まだ暖かい右腕を拾い上げた。 「王家の秘宝、『水のルビー』…ハッ!何が王家だよ!やっぱり学院でひっくり返った時 に、トドメ刺しときゃ良かったのさ!」 毒づきながら、血で朱く染まったオーガンジーグローブで包まれた指から指輪を引き抜 いた。そしてポイッと用済みの肉塊を背後へ投げ捨てた。 ビチャッと水音を立てて水たまりに落ち、泥水にまみれた。 ヤンはロングビルの行為を咎めなかった。別に何の感慨も湧かなかった。人としての良 識だの、王家への敬意だの、そんなものは姫自身が捨てた。なら彼女の腕の扱いも気にす る必要は無いと感じていた。 「そうかもしれないね。僕も甘かったよ」 「ホントだ。あんたは甘過ぎだよ。…といっても、もうどうしようもない話だね」 「おめーら、結構ひでえなぁ」 右手のデルフリンガーが率直な感想を漏らす。 緑髪の美女は、ふぅ…と指輪の血をハンカチで拭きながら溜め息をつく。 真昼の太陽にかざすと、キラリと陽光に輝く。さっきまで王家の血に濡れていたのが嘘 のように。 水音を立てながら、シエスタもやって来た。そして水溜まりの中に落ちていたティアラ に目を向ける。 「これ、どうしましょう?お城に返しましょうか」 この状況では、随分と的はずれなセリフかも知れない。ロングビルにフフンッと笑われ た。 「んな必要は無いだろ?もうトリステインは滅ぶんだから。もらっちまいなよ」 遺失物取得を勧められたシエスタは、眉をひそめてしまう。 「ん~。でも元々が血まみれの斧なんですよね。こんな騒ぎがあったし、縁起悪いなぁ。 とりあえずほったらかしも何だし、持っておきますね」 シエスタは拾い上げてハンカチで水気を拭き取り、懐に収めた。 そして三人は聖堂の方を見る。 そこには、未だに茫然としている貴族達が残っていた。演技ではなく、本当に呆けてし まったかのようなオスマン。ひっくり返って気絶したままのグラモン家親子。肩を落とし て膝をつく公爵夫妻。その他、狼狽したままの司教や失神したままの淑女等、王家を支え て来た人々がいる。 そして、地面にしゃがみ込んだルイズ。うつむき、肩を落とし、小さな体がますます小 さく見える。 ヤンは左手の祈祷書とロングビルの指輪を見た。 「それじゃ、やろうか」 ロングビルは頷いた。 「最後の仕上げ、かい?」 「けじめってやつかもよ」 デルフリンガーもツバを鳴らす。 シエスタは黙って事の推移を見守る。 ルイズは、何も考えられなかった。考えたくなかった。 ずっとゼロとバカにされてきた。一人前のメイジになりたかった。ヴァリエールの名に 相応しい立派な貴族になるのが夢だった。 友達はいなかった。優しくしてくれたのはワルド子爵とちい姉さまだけ。みんな私を可 哀想な出来損ないと見下し、同情し、無視し、鬱陶しがってた。 でも姫さまだけは、私をおともだちと言ってくれた。 トリステイン貴族として王家に忠誠を誓っていた。姫さまのためなら、本当に地獄の釜 でも竜のアギトの中でも行くつもりだった。 その姫さまが、逃げた。 トリステインから、逃げた。 おともだちと呼んだ私の話を聞かずに、逃げた。 聖堂の貴族達へヘクサゴン・スペルを放った。皆殺しにしようとした。 民を捨てた。王家を捨てた。レコン・キスタやゲルマニアに滅ぼされるのを百も承知で 国を捨てた。始祖から授けられた王国を戦争の業火へ投げ捨てた。 自分一人が幸せになるために仕えてきた貴族を、平民を、トリステインを、ハルケギニ ア全部を放り出した。 小さな少女の前に三人の影がさす。 「ルイズ」 優しい男の声が彼女を呼んだ。でも、顔を上げる元気もない。 男は片膝をつき、少女の右手を取った。自分の薬指に指輪がはめられるのを、まるで他 人事のようにボンヤリと眺めていた。 次に男は左手を取り、古い本を乗せてくれた。少女は、やっぱりボンヤリ眺めているだ けだ。 「開いてごらん」 声に促され、のろのろとページをめくる。ただの紙切れなのに、重い。紙ってこんなに 重かったのかな…そんな事を考えてると、指輪と祈祷書が光り出した。 ルイズは光の中に文字を見つけた。 序文。 これより我が知りし心理をこの書に記す。この世の全ての物質は、小さな粒より為る。 四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの 系統は、『火』『水』『風』『土』と為す。 少女の小さな手は、のろのろとページをめくった。 神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、更に小さな粒 よりなる。神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さな 粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零(ゼロ)。零す なわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。 「虚無の系統…。やっぱり、私は虚無の系統だったんだ…」 虚ろに呟いてページをめくる。自分の系統が分かったと言うのに、伝説の虚無だという のに、胸に何も湧き上がらない。 ルイズの前に立つ三人は、けだるそうにページをくるルイズを黙って見下ろした。 生気の抜けた顔は俯いたままだ。 ただ、その青ざめた唇から、弱々しい声が漏れてくる。祈祷書を朗読しているらしい。 「・・・これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための 力を担いしものなり。『虚無』を扱う者は心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、 異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。『虚無』は強力なり。また、その詠唱 は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその 強力により命を削る。したがって我がこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪 を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、 この書は開かれん。 ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」 ヤンとロングビルは顔を見合わせ、頷きあった。シエスタも目の前で行われている事を 把握した。 やはり予想は正しかった。ルイズは虚無の系統であり、指輪が鍵であり、祈祷書が呪文 書であること。そして、ブリミルが歴史に名を残すに相応しい程の、神話級バカだという こと。 注意書きまで封印したら、注意書きの意味がない。おかげで虚無の系統に関する知識は 散逸し消失した。歴史上、どれだけの虚無の使い手が封印を解除出来ず、失意と絶望を胸 に苦難の人生を生きねばならなかったか。 ルイズがゆっくりと立ち上がった。 左手に祈祷書を開いたまま、右手に杖を取り出す。 その口からは、変わらぬ調子で言葉が漏れていた。 「以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。 初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』」 水に濡れたピンクのドレスは肌に張り付き細身のラインを露わにする。ピンクの髪から は雫がしたたり落ちる。そんな自分の姿にも気付かないかのように、ルイズの口からは低 い詠唱の声が漏れ続けた。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ 体の中をリズムが駆けめぐる。神経が研ぎ澄まされる。 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド 何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転していく感じ・・・。 ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ ルイズは、ゆっくりと杖を上げた。そして、何かに導かれるように一点を指し示した。 ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…! 長い詠唱の後、呪文が完成した。その瞬間、ルイズは呪文の威力を、理解した。 そして、感じた。 今、自分が何を求めているのか。 何をしたいのか。 杖は、真っ直ぐに掲げられていた。 トリスタニア中央広場、この騒乱ですら荘厳にして神秘的な佇まいを見せる、ひときわ 大きな建造物。 サン・レミ聖堂へ、真っ直ぐに。 広場に残っていた全ての人が、見た。 トリスタニアの街にいる人々、大急ぎで荷物をまとめていた婦人も、荷車を引っ張って きた小麦商店の店主も、金貨を詰め込んだ袋を馬の背に乗せていた両替商も、慌てて走る 母に手を引かれた子供達も、城へと走っていた騎士達も、早くしろと侍女達を怒鳴りつけ ていた貴族達も、空を見上げた。 ヤンもロングビルもシエスタも、見上げた。 中央広場上に突如現れた、太陽を。 光が、聖堂を包み込んだ。 音はない。純粋な光だ。 目を焼く程の光が消えた時、聖堂は無かった。 周囲の建物には何の変化もなく、ただ聖堂だけが消えていた。 トリスタニアのブリミル教徒が集う信仰の中心サン・レミ聖堂は、吹き飛び、砕け散っ て、塵へとかえったのだ。 姫の暴挙に呆然としていた人々は、今度はサン・レミ聖堂の消失に呆然とした。 「・・・ふ」 ルイズの口から、息が漏れた。 「ふふふ、ふふふふ・・・」 それは、どうやら笑い声だったらしい。ただ、自分が魔法を使えるようになったことを 喜ぶ笑いには聞こえない。 バシィッ! 祈祷書は、地面に叩き付けられた。 ドスッ! さらに踏んづけられた。 「こぉんの…このっ!バカァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 ドスドスドスドスドスドスッッ!!!! 祈祷書は、これでもかと言わんばかりに何度も何度も踏みつけられた。 ボロボロの表紙は千切れ、泥水に汚れ、それでもさらに踏みつけられる。 「何が『虚無』よっ!!何が『聖地』よっ!!そんなの、そんなもの…千年前から無いの よっ!とっくに消えちゃったのよぉっ!! あんたの、あんたのせいで!!今まで、どんだけ!辛い思いをしてきたかっ!!」 ドスドスドスドスドスドスッッ!!!! 血走った目はつり上がり、こめかみに血管を浮かべ、汗を飛び散らせ、長い髪を振り乱 す。生気の抜けた視線が集まる中、怒りに我を忘れて始祖の秘宝を、虚無の呪文書を踏み つけ続けた。 茶色くくすんだ紙が散乱した足下、肩で息をするルイズ。 薔薇の蕾のように愛らしかったはずの口から、耳障りな歯ぎしりが広場に響く。 小刻みに震える手が、さらに天を突く。ルーンの叫びと共に、足下に散乱した祈祷書と 千切れたページへ向けて振り降ろす―― ――祈祷書へ向けられようとしていた腕は、男の手に掴まれて止められた。 「離してっ!」 男の右手は優しく、だがしっかりとルイズの腕を止めた。 「離してよ!ヤン、あんただって…あんただって!このバカのせいで!!」 「よすんだ、ルイズ」 ヤンは、ルイズをしっかりと抱き寄せた。 小さな主は執事の腕の中、しばらくは怒りに身を任せて逃れようとしていた。 しばらくして疲れたのか、もがくのをやめた。 「・・・うぅ・・・ふぇ、ううう・・・」 ヤンの腕の中から、押し殺した嗚咽が漏れてくる。 噴水の水と汗で濡れたルイズの顔を流れ落ちる雫が、さらに彼女を濡らす。 怒りに震えていた彼女の肩は、今は鳴き声と共に震えていた。 「うぁ、ああ、ぐす・・・うああ・・・」 小さな手でヤンの燕尾服に縋り付き、男の胸に顔を埋め、声を殺して泣いていた。 ヤンは彼女の背を、優しくさすり続けた。 シエスタは淡々と、散らばり泥まみれになったページを拾い集める。 水と泥を払い落とし、トントン、と一纏めにする。 メイドの手に束ねられた書を、ルイズは見ようともしない。 そんなルイズへ、シエスタはぎこちない笑顔を向ける。 「…サヴァリッシュの書は、タルブを豊かにしました。でも、同時にタルブを滅ぼしうる 危険な書です。 これ、虚無の呪文書ですよね?これも同じだと思います。使い方さえ間違えなければ、 きっとミス・ヴァリエールを助けてくれます。怒るのは分かるけど、怒りにまかせて本を 焼いたりしたら、必ず後で後悔すると思うんです」 だが、ルイズはシエスタの言葉に何も答えず、ただ泣き続けた。 ロングビルは腕組みしながら三人の姿を見ている。何も言わず、哀しい瞳で。 鞘に戻されたデルフリンガーは、ヤンの背で静かにしている。 そんな彼等の所へ、ようやく立ち上がった公爵夫妻がやって来た。 二人とも青ざめ、足取りも覚束無い。 公爵は、小刻みに震える唇から必死に声を絞り出す。 「る、ルイズ…ルイズや。ウェンリーも…今のは、今の、聖堂が消えたのは…?」 公爵夫人も、あの苛烈を極めた眼光を失い、一気に老け込んだかのような張りのない声 をかけた。 「まさか、ルイズ…?魔法が…でも、あんな大魔法は…一体、何の?」 まだ嗚咽が続き、口を聞く事が出来ないままヤンの腕の中で泣くルイズ。彼女に代わっ てヤンが答えた。 「我々の調査の結果、ルイズ様の系統は『虚無』であり、封印された状態にあると判明し ました。それが魔法失敗と爆発の原因です」 ウェールズに続いて飛び出した『虚無』の言葉に、公爵夫妻は目を見開く。 「ここにある王家の秘宝、『水のルビー』と『始祖の祈祷書』が解除の鍵でした。聖堂を 消した魔法がルイズ様の得た魔法です」 青ざめていた二人の顔に、生気が戻る。 老人の様に老け込んでいたかのような姿に力が戻る。 公爵は、今度は喜びに震えたまま、ヤンに抱きつくルイズへ手を伸ばす。 「ルイズ…魔法が、使えるように、なったのだね?」 その言葉にルイズはヤンの胸から顔を上げた。 涙と鼻水でクシャクシャになった顔を父へ向ける。 そしてぎこちなく、小さく首を縦に振った。 「おお…ルイズ、ルイズや…」 公爵はルイズを優しく抱き寄せる。 ルイズも、今度は公爵の胸に顔を埋めた。 そしてカリーヌもルイズの頭を抱きしめた。 「よかったわ・・・全てを無くしたかと思いましたが、そうではなかったのですね…」 母の喜びの言葉、だがルイズは再び激しく嗚咽しだした。 「こんな、うぐっ、こんなの!『虚無』なんかいらないっ!うぅええん…何が魔法よ!何 が、何が王家よ!!何が始祖よぉ・・・ふぇえぇえええっ・・・」 絶望に泣くルイズ。 それでも公爵夫妻は、魔法に目覚めた娘を祝福した。その瞳に涙を浮かべて。 「よいのだルイズよ。これで、お前は一人のメイジとして生きていけるんだ」 「そうですよ。母はあなたの、メイジとしての新たなる旅立ちを祝福します」 「何言ってるのよぉ…もう、もうヴァリエール家は終わりなのよ!これで、もう、トリス テインも、全部終わりなのよぉ・・・うええん、もう、遅いのよ!意味無いのよぉ!うわ あああん」 ルイズは完全なる絶望で、両親は絶望の中の希望を喜び、涙を流した。 今まで、ずっと腕組みしたままロングビル。 だが、その整った口元をようやく開いた。申し訳なさそうに、だが目の前の五人をせか すように。 「さて、泣くのはこのへんで終わりにしておくれ。 そして、これからどうするか、急いで考えようじゃないか」 デルフリンガーもヒョコッと飛び出してツバをせわしなく鳴らす。 「大急ぎで逃げた方がいいんじゃねえか?すぐアルビオンとゲルマニアの艦隊が来るだろ うからよ! あ、ゲルマニアは地上からも来んのか?東西から大変だな、こりゃ」 その言葉にヤンもシエスタも、抱き合って泣いていたヴァリエール家の三人も顔をあげ た。そして不安と困惑で彩られた視線をぶつけ合う。 同時刻、縦横40m四方、高さ30m程の巨大な空間の中。 鋼鉄で包まれた空間を見下ろす高みに司令席、大きなデスクはそのまま三次元ディスプ レイと操作卓を兼ねている。デスクを前に、素っ気ないが機能的な椅子に座っていた金髪 の青年が座っている。横には美貌の秘書、部屋の壁には警護兵達が整列している。 金髪の青年は立ち上がり。マイクを通さずとも広い部屋全体に響く声を発した。 「我らは何をすべきか、急ぎ答えを出さねばならん」 青年が問いかける先、下に見下ろす部屋の中央には、巨大な立体モニターが浮かんでい た。その下の投影装置をぐるりと囲むように、床を埋め尽くすモニターと端末を前にした オペレーター達が幾重にも並んでいる。さらにその周囲には、大勢の人間達が映像を食い 入るように見つめていた。 真正面の壁面を埋める平面巨大モニターには、別宇宙へうち上げた観測衛星からの映像 が、即ちトリステイン王国中央広場で顔を見合わせるヤン達を高度数百キロから撮影した 画像が表示されている。 他にも各種センサーが得た、室内に大量に設置されたモニター全てを使用しても表示し きれないほどの大量のデータが、肉眼では捕らえきれないほどの速度で表示されスクロー ルしている。これらのデータは青年が立つ司令席の下方、床から一段高い場所で低い唸り を上げ続ける三大の巨大コンピューターへ送られる。三角形に並んだ機械の頭脳は、高速 で衛星から送られてきた情報の収集・分析・記録・表示等の処理をし続けていた。 ところで、それが本当に同時刻と言って良いのか、現段階ではこの場の誰にも分からな い。何故なら、時間の流れは均一ではないのだから。 重力の強さと時間の流れの速さは反比例する。例えばブラックホールの極大重力下では 時間の流れが停止していると言っていいほど遅い。地上と周回軌道上の衛星でも重力差か ら時差が生じるため、常にこの時差を修正する必要がある。同一宇宙内ですら時間の流れ に差が出る。良く知られている事だが、物体を光速近くまで加速すると時間の流れが遅く なる。 異なる宇宙間で同一時刻という概念が存在しうるのか、いまだ調査を始めたばかりの彼 等には、結論を出せてはいない。 各種ディスプレイを見上げていた者達やオペレーターたちは、司令席から立ち上がった 人物、他に類を見ない程の美貌を持つ若き主君を見上げる。彼等の何人かが意見を述べる べく口を開こうとした。 だが部屋の右壁際、金髪の青年を主として戴かぬ人が先に声を上げた。 「考える必要はありません!我らが向かいます」 声を上げたのは、まだ少年のあどけなさを残す若い兵士。その周囲には同じ服を着た人 々が歓喜と焦りを顔に浮かべていた。 青年と、彼を主とする人々は、黒を基調として各所に銀色を配した服。そして若い兵士 と、彼の周りに集う人々は、白のスカーフを仕込んだ黒いジャンパーと白のスラックス。 彼等は二種類の制服に身を包む。 それは銀河帝国と自由惑星同盟の軍服。 指令席に立つ青年は、メイン立体ディスプレイの前で操作卓にかじりつく細身の男にア イス・ブルーの視線を送る。 「シャフト」 名を呼ばれた禿の男は、知的好奇心に目を輝かせたままディスプレイを凝視し、主の呼 びかけに答えない。かつてはビアホールの店主のように恰幅の良かった人物は、すっかり 痩せた体を手持ちの端末やコンソールの操作に集中しきっていた。 「シャフト!」 「はっ!はいっ!」 大声で呼ばれ、ようやくシャフトは慌てて、汗を飛び散らす程の勢いで振り返り、顔を 司令卓へ向けた。 「帰還方法は見つかったか?」 「い、いえ…件のゲート、『アインシュタイン・ローゼンの橋』は一方通行です。エネル ギーのみ双方向で」 「そんな事は分かっている!平行宇宙の座標算定は未だ不能、ゆえにワープによる帰還は 不可能、ゲートを一度通過したら、二度と戻れない。 だからお前に特例をもって恩赦を与えて監獄から呼び戻したのだ!」 「はいっ!しょ、承知しております。皇帝陛下の寛大なるご処置には感謝の言葉も」 「おべっかなど使っている暇があったら、さっさと帰還方法を考える事だ。それが出来な いのであれば、再び己の罪を監獄で償わせるのみ」 「は、はいぃっ!」 シャフトは再びディスプレイにかじりついた。ただし、今度は知的好奇心ではなく、自 らの命運を賭けた決死の覚悟を目に秘めて。 アントン・ヒルマー・フォン・シャフト。 元は技術大将で科学技術総監。工学博士と哲学博士の学位を有している。指向性ゼッフ ル粒子の開発責任者。かつてガイエスブルグ要塞に1ダースのワープ・エンジンを搭載さ せ要塞ごとワープさせる事に成功。イゼルローン要塞にガイエスブルグ要塞をもって対抗 させた。 ただし技術力より政治力に長け、策謀にてライバルを追い落とし、ゴールデンバウム王 朝から続けて科学技術総監部のボスに君臨した。横領・収賄・特別背任・軍事機密漏洩等 の罪状で逮捕投獄されていた。 今回の作戦では、ワープの専門家が必要とされた。そこで若き皇帝が記憶の端からたぐ り寄せたのは、彼がかつて直々に逮捕を命じ、「くずがっ!」と吐き捨てた人間だった。 皇帝は、同盟の軍人達を見下ろした。先ほどのシャフトに対する冷酷な視線ではなく、 敬意と冷静さを湛えた目だった。その視線を受ける同盟軍人に対し、長年に渡り帝国と鉾 を交えた優秀な軍人として、少なからず敬意を抱いていた。 「ミンツ司令官、そして同盟軍士官達よ。卿らの気持ちは分かる。いや、予とて同じ気持 ちだ。だが、それは許さん。これ以上の被害者を出すわけにはゆかぬ。帰還方法が確認さ れるまで待て」 被害者。その言葉を放つ時、皇帝は少なからず苦々しさを含んでいた。 だが、ミンツと呼ばれた若者は引き下がる気配を見せない。 「構いません!提督が、ヤン提督の生存が確認されたんです!帰還方法は後々考案して戴 ければ結構です。まず、我らが提督の身柄確保に向かいます!」 「そうだ!あんなものぐさでも、俺達にゃ大事な上司なんでな!」 「これからの人生を楽しく生きるためにも、ヤンは必要なんでね。それに、俺は独身だ。 別にあっちの世界でも構わないぜ」 「そうですな。なにせ、あのヤン提督ですら二ヶ月も生存できた世界です。私なら無事に 天命をまっとうできるでしょう」 居並ぶ士官達は、誰一人として救出の意思を翻そうとはしない。彼等の活力と歓喜に満 ちた声は、この中央司令室全体を震わさんばかりだ。 そのうち一人がシャフトに声をかけた。 「おーい!シャフト博士よ、要はワープ・インとワープ・アウトの座標が確認出来ればい いんだろ?それと、その近くに大きな重力源が無い事。 だったら、俺たちは提督を救出してくるから、そっちはゆっくり座標算定とかしてくれ ればいいんじゃねえか?艦を貸してくれれば、提督を助けてから勝手に重力圏を離脱する からよ」 その軽い調子の言葉に、シャフトは著しく気分を害したようだ。禿げた頭がみるみる赤 く染まり、憤慨した目が向けられた。 「君は、ポプラン中佐だったね?」 「おう!同盟の撃墜王だ。空戦でも、ベッドの上でもな」 「数だけだ。質では俺に及ばん」 隣の立派な体躯を持つ美男子からかけられた言葉を、ポプランは故意に無視した。 「で、どうなんだ?時間さえあれば出来るんだろ?」 シャフトの内包する憤怒は、一気に爆発した。不良生徒の無知で無責任で後先考えない 言葉を叱責する生活指導教師のように。 「そんなわけがあるか!一体、何度説明したら分かるんだ! いいか、そんな簡単な話なら、とっくにあの平行宇宙の原始惑星の空を、銀河帝国の大 艦隊が覆い尽くしている! たとえあの星の住人が、我らの偵察機や無人探査機を数千機、尽く破壊しつくす気象兵 器を持っていようが、分身の術を使うニンジャだろうが、大陸を何故か大気圏内に浮かし 続ける重力制御技術を持っていようが、一瞬で建造物を原子の塵に変える超能力者だろう が! 宇宙戦力を持たない以上、栄光ある銀河帝国の敵ではない!」 シャフトの形相は凄まじく、歴戦の勇者であるはずのポプランも科学者というより政治 屋兼犯罪者の矢継ぎ早な言葉に口を挟む隙を見いだせなかった。 彼等は見ていた。中央広場での戦闘を。 竜がブラスターで撃墜された。 人間が五体に分身した。 突然竜巻が起こった。 手に持った棒で人間の首を切り落とした。 突風をぶつけ合った。 地面から盛り上がった土の塊が人型になり歩き出した。 水の竜巻が人型を削り溶かした。 ヤンと隣の少女がブラスターで分身を撃ったら幻のようにかき消えた。 その二人は竜に乗った男が杖を向けると突風で吹き飛ばされた。 マントを着た人々が宙を飛んでいった。 とどめに、広場に面した教会らしき建造物は、少女が杖を向けると光に飲み込まれて消 えた。 管制室の人々は、開いた口が塞がらなかった。ヤンの生存に一瞬は驚き喜んだが、次々 に起きる異常現象に目を奪われた。 皇帝が立ち上がり声を響かせるまで、誰一人として口をきくことができなかったのだ。 その前から火山周囲を飛び回る竜の群れや、宙を飛ぶ巨大大陸に驚嘆した。だが、これ ら映像に示された現象が生む驚愕は、そんな比ではなかった。 シャフトは近くのオペレーターがデスクの上に置いていた水をひったくって一気に飲み 干す。荒い息づかいに上下する肩をどうにか押さえ、真っ赤な顔はそのままに、科学者と して話を続けた。 「そもそも平行宇宙とは、五次元空間という海の中に浮く四次元時空という名の島なので あり、平行宇宙間を移動出来るのは重力子だけなのだよ!君とて学校で習っただろう!こ の宇宙、4次元時空に存在する根源的な4つの力と、それを伝える粒子だ。 陽子と中性子を結びつけ原子核を作る『強い力』と『グルーオン』。中性子のダウン・ クォークをアップ・クォークに変えて陽子に作り替えたりする『弱い力』と『ウィークボ ソン』。電子と原子核をまとめ物質を作る『電磁気力』と『光子』。そして『重力子』、空 間の歪みが生む『重力』を伝える粒子だ! これら粒子は1cmの10のマイナス33乗の長さしかない紐の形状で、常に振動して いる。このうち最初の三つ、『グルーオン』『ウィークボソン』『光子』は『開いた状態』 にあり、この4次元時空、『ブレーン』と呼ばれる宇宙に両端が付着してる。本来離れる 事は出来ない!この宇宙を離れて別世界、平行宇宙へ移動出来るのは、粒子の紐が『閉じ た状態』にある『重力子』だけだ!輪を描く粒子である『重力子』は常に、無の空間であ る平行宇宙の狭間、五次元空間へ漏れている。巨大な惑星の重力下、小さな磁石が砂鉄を 吸い上げれるのはそのためだ。『重力子』が別次元へ漏れているため、小さな磁石の生む 磁力に負けるほど重力は極めて微弱だ。 そして平行宇宙を移動することは、これらの粒子を宇宙から、『ブレーン』から無理矢 理引きはがす事を意味する!当然、その瞬間に移動しようとした物体は支えを失い崩れ去 る!純粋なエネルギーへ戻り、次元の狭間に無となって、虚数の海を漂う一滴となってし まうんだ! 本来、ワープだって別次元を通過する事で宇宙をショートカットするものだ。だがワー プ・エンジンによってワームホールを造り、強引に『ブレーン』の任意の場所2点を繋げ る事でエネルギーへ還る事を防いでいる。厳密には異次元を通過せず、この宇宙の中を移 動しているんだ。 本来、座標の算定が不十分な段階で、空間が大きく歪んだ場所からワープすればどうな るか?時空の歪みに巻き込まれて次元の狭間に落ちる!しかも今回は平行宇宙だぞ!両宇 宙がどこにあるのか、どう並んでいるのか分からない、のではない!そんな概念が存在し ない五次元、高次元空間だ!どんな高性能のコンピューターを搭載していても移動は理論 上不可能!何故なら、移動する先を計算出来ないから、どこにワームホールを繋げればい いのか分からないからだ! よしんば座標の算定に成功したとしよう。それでも!本来はワープによる移動は出来な い!我らは一万光年のワープすら出来ないんだぞ!?今回は一万光年どころじゃない、別 銀河ですらない!別『ブレーン』だ!!本当なら、まともに考えれば出力が足らないと分 かるだろう?全人類のワープ・エンジン全てをかき集め、全て同時に稼働させても無理か もしれないんだ! 幸い、今回はあの『アインシュタイン・ローゼンの橋』、1600年も前にアンドレイ・リ ンデ博士が存在を予言した、ブレーン間を繋ぐ『時空のくびれ』という基準点がある。ど ういうワケかブラックホールでもないのに一方通行な、奇妙奇天烈摩訶不思議な、あの謎 のゲートだが、それでも座標の計算は不可能ではない。それに、既にゲートが通じている という事は、両『ブレーン』を繋ぐワームホールを造る為のエネルギーは意外に低く済む 可能性がある。 だがそれでも!座標の算定は困難を極めるんだ。何故なら、あのゲートの出入り口は両 方とも、重力圏内にあるからだ!入り口はイゼルローン回廊、出口は惑星の地上…何故か 惑星の自転・公転に完全同期している…おまけに巨大な衛星が二つもある!例えれば、数 人がかりで力の限り掻き混ぜられている池の水面上の小さな泡の一つを基準にするのと同 じだ! 私とて科学者のはしくれ、この現象に知的好奇心を抱かないわけがない。自分の自由の ためでもある。必ず算定は成功させてみせる!だが、すぐには無理だ!全力は尽くすが、 いつとは言えん。 それまではこれまで通り、見ての通り、全宇宙から艦船をかき集めて、改造ワープ・エ ンジンを交代でフル稼働させて、ゲートを固定させ続けるしかない!」 シャフトは一気に語り終えた。肺の中の空気を全て使い切って、肩の上下運動だけで鉄 の床を揺らすほどに。一体何度目なのか、何百人に同じ説明をしたろうか、あまりに同じ 事を繰り返したため、これほどの長い説明を詰まりもせず一気に出来てしまった…と、う んざりしながら。 そして改めて目の前の、軽口を叩いて科学者としての矜恃を傷つけた男を見てみる。 見なかった方が良かったろうか?これだけ力を込めて、本人としては可能な限り分かり やすく説明したにも関わらず、どうみても右耳から左耳へ素通りしたとしか思えない顔な んて。いやポプランだけではない。帝国同盟通じて、かなりの数の軍人がぼんやり呆けた 顔をしていた。 もっとも彼等は職業軍人であり、科学者ではない。自己の専門外な知識に関して完全に 理解しろ、というのは酷というものだろう。 「もうよい、シャフトよ。そう簡単に解決できるものでもない事は承知している。今は時 間が惜しい。作業に戻るのだ。追加のコンピューターもエル・ファシルから調達される予 定だ」 「はっ!」 皇帝に命じられ、獄中生活の間に痩せてしまった男はモニターへと視線を戻した。 次に皇帝は元同盟軍士官達を見下ろす。 「卿らも、気がはやるのは理解する。だが、千年に渡る怪奇現象、あの『橋』による数多 の失踪爆発事件を解決に導くべく我らは集結したのだ。独断専行も蛮勇も事態を悪化させ るのみと心得よ」 ユリアン達は明らかに不満と反発を示していたが、ここで暴発するほど浅はかなではな かった。視線を衛星からの映像に戻しつつ、ヤンの救出手段について協議を続けた。 そしてラインハルトも視線をデスクの立体モニターへと向ける。立体モニターの中には 多数の映像と文書、メインコンピューターからのデータ等が綺麗に整理されて表示されて いる。 映像の中に、宇宙空間に浮かぶ鏡のようなものを映すものがあった。光りを放つ鏡の背 後に、艦船の舷側が見えている。 その映像の隣には、鏡周囲に同盟と帝国の戦艦・巡洋艦が十隻ほど円を描いて並んでい る光景が映し出されていた。それは鏡に向けてワープ・エンジンを稼働させ、『門』を固 定する艦船だ。艦船に比べて鏡は極めて小さく、モニターでは星のような微小の光点にし か見えない。 そしてさらに隣の映像には、鏡を囲む艦船を上下左右前後、全方位から取り囲む艦船数 千隻が存在していた。そしてその宙域に急遽設置され、今も建設改造の途上にあるステー ション、『アインシュタイン・ローゼンの橋』監視観測司令所も映像の端に映っている。 数々の観測機器を搭載し、鏡を包囲固定する帝国・イゼルローン含めた全艦船への司令所 であるステーションの司令室に、銀河帝国皇帝ラインハルトはじめ帝国と同盟の高官達が 集結していた。 加えて別の映像では、鏡の一番近くに存在する有人惑星も映している。ただしそれは、 直径60kmの人工天体。流体金属で覆われ銀色に輝くイゼルローン要塞だ。 ステーション建築資材を運搬する多数の輸送船が出航し、オーバーヒート寸前までワー プ・エンジンを稼働させた戦艦の列が補給と整備のため帰港する。ただし、帝国同盟の区 別無く。 難攻不落の要塞イゼルローンは、今や、『門』を捕獲し管理するイゼルローン共和政府 と銀河帝国の前線基地として機能していた。 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/kyoumoheiwada/pages/29.html
番外編 ☆人斬りの涙☆ 提督「ああ! 俺のザクの斧がない!」 加賀「あの小さい斧ですか? 何かのゴミかと思って捨てました」 提督「なんだと!? それじゃあ俺のザクが手持ち無沙汰になるだろうが!」 加賀「知りませんよ。だったらちゃんと持たせてあげてください。 その玩具が持ってるの斧じゃなくてチュッパチャプスじゃないですか」 提督「なんかこっちのほうが強そうで……」 加賀「ああ、それはそうと提督。また横須賀の住民から依頼が来ていますよ」 提督「ザクの斧を探す依頼以外はしない」 加賀「分かりました。では受諾しますね」 提督「そうなの!? 本当に斧探す依頼なの!?」 加賀「依頼内容は人探しです」 提督「はあ? 誰だよ。ザク? それとも斧田さんとかってオチ?」 加賀「違います。ああ、でも人でもないようですね」 提督「やっぱりザクじゃねえか」 加賀「人斬りを探し討伐する依頼です」 提督「人斬り?」 加賀「最近この辺りで噂になっているんです」 提督「へえ……」 加賀「何でも、近いうちにこちらの方に現れるとか現れないとか」 提督「全くどこのるろうに剣心だよ。アホか人斬りなんぞ。 そんなもん流行りもしないっつうの」 提督「要は通り魔事件が横行しまくるかもしれないってことだろ?」 加賀「はい」 提督「そんなのかもしれないの領域だろ。 しかも町民の噂レベルのものだし」 加賀「それもそうですね。すみません」 提督「いやいいさ。ただ警戒しておくことに越したことはない」 この話は私と提督、そして彼女の出会いの話。 無力である私達の前に容赦なく襲い掛かる狂気。 どうすることも出来なくなった私達の前に 皆もよく知っている心優しい彼女はどう動いたのか。 これはそういう、悲しみの上に立つあの子の話。 噂は噂でしかない。 そういう考えがあったが、 あまりにも危険な噂ではあったために 警戒を強化しようという結論に至った私と提督。 しかしやはり噂でしかなかった”人斬り”の話。 私達で調べることは調べたがあまりいい情報は手に入らず。 そんな中で……。 北上「へえ~。それで人斬りってのは出てないんでしょ?」 提督「あったりめえだろ。そんな古臭いアホが出てたまるか」 提督と共に北上ラーメンに行った時でした。 珍しく客が一人だけ入っていたその日、 提督は北上さんに愚痴を溢していました。 北上さんは私と提督以外の唯一の客にも 話を振ることにしたようで……。 北上「お客さんは何か知ってる? 人斬りのこと」 提督「おいおい、こんな普通のお客さんをビビらせたらダメだろ」 北上「ああ、そっか。すいませんね。えへへ」 大井「もう、なんかもう少し明るい話題はないの?」 加賀「本当ですね。すみません」 「知ってるよ。聞いたことある」 提督「マジ?」 「ああ、マジさ。大マジだよ」 この時、私達は初めて出会いました。 服のフードを取るとそこには片目に眼帯をした女性だった。 それが天龍でした。 天龍「ああ、俺も長年追い続けていた奴さ」 提督「何?」 天龍「ああ。この目をやられた時からな。 あいつには仕返しをしなくちゃいけねえってずっと探して歩いてるのよ」 提督「そいつは助かる。何か情報はないか?」 天龍「教えてやってもいい。 だが、こいつは誰にも言っちゃいけねえ。いいな?」 提督「任せろ。そんな必要はねえよ。 そいつは俺が捕まえるからな」 天龍「ははは、そいつは頼もしいぜ。 あんた俺と協力しないか?」 提督「あんたとか?」 天龍「ああ、俺の名は天龍。よろしくな」 提督「いいだろう。協力しよう」 加賀「提督……」 提督「大丈夫さ。こいつは悪い奴じゃない。 俺には分かる」 こうして北上ラーメンで偶然の出会いを果たした 私達はその場で人斬りの情報を交換したのだった。 天龍は北上さんと大井さんに聞かれるのを嫌がる素振りを見せたが 二人は普通に仕事をしている最中だし聞かないようにする、 と言っていたのでそのまま続けた。 得た情報。 最初の人斬りは自身の親と殺したことから始まったそう。 人斬りは親を殺し、その重罪で故郷を追われた。 しかし、自分を追ってくる連中を次々に返り討ちにし殺すうちに 人斬りの異名で呼ばれるようになったとか。 人斬りには最愛の者がいた。 その人を連れ、その人を護るために刀を取り、 そしてついに最愛の者が病気で倒れた時、 救うために必要な薬と金を人から奪うようになってしまった。 追ってくる連中を返り討ちにし殺して逃げ延びていた間に すっかり自分の心を失ってしまい、本当の人斬りとして目覚めた。 今もその逃げの旅の中で人斬りをしながら移動を続けている。 天龍は被害者の一人で目をやられたそうだ。 その仕返しのために今は旅を続けているそうだ。 提督「なるほどねえ……」 加賀「なんだかにわかには信じ難い話ですね」 提督「ああ、人斬りに同情でもしちまうぜ」 天龍「最初俺も聞いた時は笑っちまったぜ」 提督「あんたもこの話は自分で調べたものじゃないのか?」 天龍「ああ、すまんな。信ぴょう性がなくて」 加賀「いえ、情報はいくつあってもいいものです。 ありがとうございます」 提督「心配すんな。俺と加賀がいれば…… きっと捕まえられるさ」 それから天龍と別れたあと提督と二人で鎮守府に帰宅する途中。 提督「しかし偶然もあったもんだなぁ」 加賀「はい。中々有益な情報だと思いますよ」 提督「そうか? まあ人斬りの裏の話は分かったのかもしれないけど、 結局はどうやって止めるか、だよな」 加賀「討伐するんじゃないんですか?」 提督「そうだなぁ~。まあそうなんだけども」 加賀「それより提督―― きゃああああああああ!! 提督「悲鳴!? 行くぞ加賀!」 加賀「!? はい!」 現場まではさほど遠くなくすぐに到着しました。 それがこの事件の始まりでした。 提督「人が倒れてやがる……」 加賀「……提督、この傷は刀で斬られたものです」 提督「マジかよ……。出やがったのか」 加賀「はい。……人斬りでしょう」 倒れていたのは若い女性。 この近辺に住む一般人だろう。 応急処置をし、救急車を呼ぶ。 ちょうど電話で呼び出しているあたりで先ほど別れたばかりの 天龍と再び合流したのでした。 天龍「……遅かったか。この人が殺られた時は見ていたか?」 提督「いや俺達も悲鳴を聞いてから駆けつけたから、その時にはもう……」 天龍「そうか」 加賀「これはやはり先ほど言っていた――」 天龍「ああ、間違いない。こいつは俺が追いかけている人斬りの仕業だ」 提督「とうとうこの町にも来たってことか」 天龍「そのようだな」 提督「やっぱり警戒は強化するに限るな」 加賀「ええ、そうですね」 それから救急車はすぐに現れ、 被害者を乗せていった。 私達は事情を近くにいた野次馬達に 話を聞いてみたところやはり誰も何も見ていないとのこと。 その事件が起きた次の日。 夜になると天龍から電話が。 内容はもちろん人斬りの被害についての電話。 天龍「ああ、今はもう被害者は病院に搬送された。 こんなに早いペースで襲われ続け居ているのは初めてだ」 提督「そうか……すまないな」 天龍「ああ、こっちの動きは任せろ。何かあったらすぐに連絡してやる」 提督「助かるよ」 提督は電話を切ると被害報告があった場所を大きめの地図に丸で印をつけていた。 一つ目の現場の丸と見比べるも結局は何も分からなかったようで、大きくため息をついた。 提督「まだ関連性は見えないか……」 加賀「こういった犯罪者は関連性など無く 無作為に行っている可能性の方が高くないでしょうか?」 提督「確かにそうかもしれない。だが、現場を抑えておくのに越したことはない。 予防線は張れるだけ張っておけ。」 今の所、共通点はどちらも夜になると人通りが少ない裏道であること。 まあ2件目の被害の時も誰も目撃者はいないとのことで、 そこを狙って行っているのだろうけれど。 後日。時間帯は夜ではなく夕方でした。 提督「まだ事件の起きていない夜になると人通りが少ない道に来てみた訳だが」 加賀「ええ、遅かったようですね」 提督「……とりあえず搬送しなくちゃな」 天龍「またか。すまん」 提督「いやいいんだ」 加賀「……提督?」 この時提督は妙に天龍と距離を取っていました。 何かを察したかのように。 いつもの超人的な直感で何かを感じたようでした。 被害者が病院へと搬送されたあと、 私達は現場に残っていた。 提督「……俺こそすまん。まだ日が沈みきっていないから油断していた」 天龍「ああ、今日はイレギュラーかもしれない。 いつもは日が完全に落ちた夜にしかやらないからな」 提督「なあ……天龍」 天龍「ん? どうした。何か分かったことがあったか?」 提督「お前……人斬りが誰なのか知ってるんじゃないのか?」 加賀「……提督、何を」 提督は薄々ではあるが感づいていた。 提督「一番最初に話した時から何か引っかかると思ってたんだよ」 天龍「何が言いたい」 提督「北上ラーメンでお前と話した時。 一番最初に絡んできたのはお前の方だった」 提督「それもちょうど人斬りの話をしている時に」 天龍「そうだったな。それがどうかしたのか? 俺は人斬りを追っているんだぞ。 何か新しい情報がないか普通は知りたいってもんだ」 天龍「それが全然知らない奴の適当な噂話のレベルだとしてもだ」 提督「……まあそれはいいさ。でもよ、あんたちょっと詳しすぎやしないか?」 提督「そしてあんたは確実に現場にいる」 天龍「……」 提督「それだけ詳しくて……どうして捕まえられない」 提督「何か理由があるんだろ?」 天龍「理由? なんだよそれは」 提督「……お前が人斬りだからだよ」 天龍「……」 提督「凶器はどこに隠した」 天龍「俺が人斬り? はははは! 馬鹿だなぁ」 天龍「それは根拠がなくて言ってるんだろ?」 天龍「何を言ってるんだあんたは……」 天龍「あんたは人斬りの現場にも遭遇したことない。 それなのに俺を犯人だと決めつけるのか?」 天龍「ちょっとそいつは早計すぎたな。 捜査ってのはもっと慎重にやるもんだぜ?」 天龍「答えはNOだ。残念ながら違うね。俺は人斬りじゃない」 天龍「だが、そう思うなら捕まえてみろよ。もちろん現場でな」 天龍「今は何も証拠がないんだろ?」 天龍はそれだけ言うと去って行きました。 私達はそれを無理に追わなかった。 ……というよりかは追えなかった。 角を曲がったところですぐに天龍は姿を消していたのだから。 私と提督は鎮守府に帰ってきて作戦を立てることにした。 加賀「どうするつもりですか」 提督「ふふふ、俺に策がないとでも?」 加賀「思ってました」 提督「作戦は単純だ。囮作戦を結構する」 加賀「分かりました」 提督「いや、まだちゃんと……。内容を聞きなさいよ」 加賀「私が囮になるのでは?」 提督「違うよ。俺だよ」 加賀「だめです」 提督「いいんだよ俺で。俺が捕まえるの!」 加賀「そんな子供のわがままみたいに言ってもだめです」 提督「……という訳でさ。加賀の服が欲しいんだ」 加賀「なっ……」 話を聞くとどうやら私の私服を借りて人通りの少ない道を 一人で歩いていれば襲われる可能性があると思ったらしい。 というかそれなら普通に私が私服で歩いていればいのでは? 後日。その作戦を結構する前の日。 私はある情報を手に入れて提督のもとへと走っていた。 加賀「提督っ。重要な情報が手に入りました」 提督「何?」 加賀「被害にあったものは重症ではあるが無事で その後事情を聞いた所、新しい法則がわかったんです」 加賀「それは事前に人斬りの噂話を聞いているということです」 提督「は? どういうことだよそれ」 加賀「ですから、襲われる前日かに天龍との接触があるんです」 提督「じゃあ結局俺達だって狙われる可能性があるってことか。 ますます加賀を私服で歩かせる囮作戦なんかできねえな」 提督「……待てよ。天龍と関わった奴が危ない……」 提督「北上達がやべえ! 急げ加賀!!」 私達は全力で北上ラーメンに走った。 辺りは暗くなり始めていて北上ラーメンはすでに営業中。 相変わらず人は入ってなかった。 提督「北上ぃ!」 北上「わっ、びっくりしたー。どしたの?」 提督「ふぅ無事か」 北上「え? 何が?」 加賀「大井さんは?」 北上「大井っち? 暇だしちょうど切らしてた材料の買い出しに」 提督「どこまで行った!?」 北上「何々さっきからどうしたのさ」 提督「いいから! 大井がやばいんだって!」 北上「えっと、駅前のスーパーまで行ったと思うよ」 提督「加賀はここに残って北上の護衛だ! 俺が行ってくる!」 加賀「はい。気をつけて下さいね」 ここからは提督が行っただけなので後から提督や他の人に聞いた話ですが……。 駅前まで全力で走ってスーパーの方まで行った提督。 そしてスーパーの帰り道を歩く大井さん。 大井「北上さんへのチョコまで買っちゃった。 喜んでくれるかなぁー? ふふ」 大井「ん? 誰?」 大井さんが見たのは黒いコートでフードを深くまで被った いかにもな変質者だったそうだ。 袖からチラチラと見えるのは刃物。 手ぶらだった大井はすぐに何かやばいと感じたらしい。 そして同時に店で提督達が話していた人斬りの噂を思い出す。 いざという時、いきなり自分の命の危機を感じた時 足がすくんで動けなくなるというのは本当らしく、 迫りくる人斬りにその場にへたり込むしかなかった。 大井「な、何あんた……だ、誰」 人斬りは返事もせずただ刃物を振りかざすだけ。 このまま刺されれば見事に新しい事件現場が出来上がる訳だったが……。 忘れてはいけないのは彼女も元軍人。 寸での所で刃物を避けてみぞおち辺りに蹴りをぶち込んだ。 怯んだ隙に刃物を奪わなくては、と思ったらしいが ぶんぶん振り回して近づくに近づけなくなったと。 そこにようやく遅れて登場するのがあの男。 提督「オラァァ!」 人斬りに卑怯にも後ろから羽交い締めにし 提督「大井!! 俺に構わずやれ!!」 あなたはラディッツ戦のピッコロさんですか。と言わんばかりの必死の羽交い締め。 大井「分かった!」 そして即答する大井さん。 躊躇なく蹴りをお見舞いし、提督ごと吹っ飛ばす。 倒れた所に提督が苦しみながらも詰めかけてフードに手を伸ばす。 提督「捕まえたぜ……天龍。ざまあねえな」 大井「危ないっっ!」 近づいた提督の油断を誘い反撃に別の刃物を懐から取り出した。 しかし斬りつけたのは提督ではなく提督を突き飛ばし庇った大井さんだった。 大井「あ゛ぁ゛ぁあ……ッ!!」 軽傷だったらしくまだ大井さんは動ける状態にあった。 そこに人斬りは止めをさしにきたが、それを止めたのは意外な人物だった。 天龍「おい、お前ら……!!さっさと逃げろ!!」 提督「天龍!? お前……お前が人斬りじゃなかったのか?」 加賀「提督……!!」 提督「加賀!? なんでここに!」 加賀「事情を説明したところどうせ人来ないし 閉店にして助けてに行きたいって聞かなくて」 北上「大井っち!! 大丈夫!? 大井っち!」 大井「北……上さん。ごめんね」 加賀「提督……ここで仕留めましょう」 提督「そのつもりだ。死んだ大井のためにも敵は討つ!」 北上「大井っち死んでないし。勝手に殺すなし」 天龍「待て!」 提督「何でお前が止めるんだよ」 天龍「だめだ」 私達と人斬りの間に仲介するようにいる天龍。 人斬りは不思議と天龍が間にいても天龍を攻撃することはなかった。 そしてその隙に人斬りは逃げていった。 提督「おい! 待ちやがれ!!」 提督「てめえ天龍!! どういうつもりだ!」 天龍「すまん。だが、今じゃないんだ」 天龍「あいつを捕まえるのは今じゃないんだ」 提督「……何言ってやがる」 提督「お前あの人斬りについて知ってることがあるんだろ!?」 天龍「何もない」 提督「ふざけんなお前! 俺が必ずなんとかしてやる……だから」 天龍「すまんっ」 それだけ言い残して天龍は走って居なくなった。 提督はすぐに追いかけていったがまたしても角を曲がった所で 姿を消されたらしくすぐに戻ってきた。 もう少し根性見せて追いかけたらどうなのかと思ったが黙っておく。 それから大井を病院に送った。 私達は急遽閉店にした北上ラーメンに戻ってきて、 護衛と称して一晩はそこに泊めてもらうことにした。 次の日の夜。 あの作戦はついに結構された。 天龍の言う捕まえるのは今じゃないという言葉。 次々と被害者が出る中でそんな時期は待っていられなかった。 私は私服に着替えた。 提督の設定だと”OL生活4年目にして早くも仕事に疲れを感じ始めた 木曜の夜の残業終わりで疲労しきった女性会社員”らしい。 一度顔を見られているので分からないように 眼鏡をかけて、髪はほどいていた。 提督たちが遠くから見守る中でハンドバッグに入れたサバイバルナイフ一本で あの狂気じみた人斬りから護身できるか少し不安だった。 ヒールをカツカツあえて大きく鳴らしながら歩く。 周囲の警戒は怠らない。 何も考えずにこの辺をうろつけばいいと言われていたのでそうしていたが 中々現れない人斬り……。 ぐるっと回ってきてこの辺も二周目に差し掛かるかもしれないと 思いながら道を曲がった時、ハッとした。 人斬りが道の真ん中に立っていた。 「加賀じゃねえか」 加賀「……?」 喋った? 前に大井さんが襲われた時は喋りもしなかったのに。 私はすぐに信号弾を発射した。 人斬りは深く被ったフードを取った。 それと同時に提督が現れた。 加賀・提督「……天龍?」 提督「何で……天龍! お前なんだ! 人斬りはお前じゃない! 昨日そう分かったはずだ! そうじゃないのか?」 天龍「いいや。この前にあったあいつこそが偽物」 提督「何言ってんだよお前……!」 天龍「俺が本物の人斬りだ」 天龍「人斬り天龍様だ」 天龍「ふふ……怖いか?」 天龍「一度殺ってみたかったんだよ。現役の将校をよぉ」 提督「狙いは俺か?」 天龍「いいや。お前たち全員さ」 天龍「提督、あんたを殺し、加賀も殺す。 あの仕留め損ねたラーメン屋二人も殺す!!」 天龍は大きな刀を持っていた。 やはり武器が違う。奴……じゃない? 提督「どういうことだ。説明しろ天龍!」 天龍「知られてたら困るんだよ」 提督「人斬りを……か?」 天龍「そうだ。人斬りの存在を知られていたら困るんだよ」 天龍「お前らみたいな奴が追いかけてくるからこっちは安眠もできねえ!!」 天龍「だから知ってる奴を殺す!!」 天龍「俺達の安眠のために!!」 俺達……? 提督「加賀、天龍は俺に任せろ。 お前は後ろを頼む」 天龍「……なっ、何で出てきやがった!! クソ……!!」 後ろを振りむくと……そこには別の人斬りが。 天龍「何で出てきたんだよ! 最悪のタイミングだぜ……龍田!!」 龍田「天龍ちゃんに何しようとしてるの」 天龍「やめろ龍田! 家に帰れ! お前は何も心配しなくていいんだ!!」 提督「そうか……。お前が本物の人斬りだな……」 龍田と呼ばれる女性は懐から刃物を取り出した。 あの時と同じ刃物。だがそれはすぐに形状を変え薙刀のような大きさになった。 刃渡りが随分大きいものだと思っていたら 持ち手の部分が伸びたようだったが仕組みは不明。 龍田「あたしの天龍ちゃんにいいいいいいいいいい!!!!! 何勝手に関わってんだああああああああああああああああ!!!!!!」 提督「加賀ァッッ!!」 提督の投げて寄越した軍刀を受け取る。 正直刀は専門外なのだし、刀で薙刀相手をしたことはなかったのだが…… もうやるしかない。 龍田「どけぇえええええっっっ!!」 一撃一撃が嫌に重い。 本気の殺意を感じる。 その私の背後でも同様に つばぜり合いが続く。 提督「訳を全部話してもらうぜ……」 天龍「チッ……退けよあんた!あいつは俺が止めなくちゃいけないんだ!! 加賀が殺されちまうぞ! いいのか!?」 提督「馬鹿が。うちの一航戦を舐めるなよ」 天龍「違うんだ! あいつじゃなくて本当に俺が人斬りなんだ……!」 提督「もうそんな嘘はやめろ!」 天龍「あいつは……あいつは違うんだ!」 提督「何でそんな嘘をつくんだ!」 天龍「嘘なんかじゃねえって」 提督「だったら何で辛そうに泣くんだ」 天龍「……俺の妹だからに決まってんだろ!!」 提督「……ッ」 天龍「……あいつがああなっちまったのは全部俺のせいなんだ。 だから俺が止めなくちゃいけないんだよ……」 生まれた時から仲の良かった姉妹は近所でも評判だった。 二人は順調に育っていった。仲が良すぎと評判になるほど仲の良さは一層増した。 ある時、天龍には恋人が出来た。 しかし、天龍の彼は軍人だった。 天龍の彼は深海棲艦との戦争で死んだ。 悲しみにくれた天龍を慰めたのは妹の龍田だった。 龍田は姉を溺愛し異常なまでに姉に執着していた。 龍田はそれ以来、天龍を悲しませる者が誰であろうと近づけなくしたのだった。 親も友人も。何もかもから天龍を遠ざけた。 天龍は次第に孤独になり龍田に頼るようになったが、 すぐに天龍もこれが龍田による陰謀だと気付き龍田に猛抗議する。 その時の喧嘩で目を負傷したらしい。 罪の重さから龍田は心に病を持つようになった。 守ろうと思っていた天龍を傷つけているのは自分だったと気づいたからだった。 その時、龍田の心は壊れてしまったらしい。 天龍と離れ次々と天龍と関わっていった人を斬りつけるようになった。 天龍関わった奴が一人もいなくなれば また天龍は自分の所に帰ってくると思ったらしい。 なんとも愚かな考えである。 天龍は龍田を止めるべくあとを追った。 だが、天龍は空回りばかりしていたことに最後まで気がついていなかった。 自分が別の町に行き、行く先々で龍田のことを聞いてまわれば 今度はその匂いを嗅ぎつけ町で龍田が人斬りをする。 そして辿り着いたのが私達のいる町だった。 そこでようやく天龍は龍田に追いつくことができたのはいいが、 取り逃がしてしまった。その後も人斬り行為は続き……。 そして大井が襲われた時、 天龍は思ってしまったのだった。 解放されたい。この呪いから何もかも解き放たれて自由になりたい。 いや、いっそのこと死んでしまいたい。 だが、最後に……龍田だけは何としても助けてやりたい。 その気持ちだけは残っていた。 彼女を救うために彼女を追いかけ始めた最初の心を忘れていなかった。 天龍はついに自分が人斬りとして名乗り出ようと決意した瞬間だった。 幸いにも龍田の顔はバレてなかったみたいだったし。 そして昨晩龍田と合流できた天龍は忠告した。 二度と人斬り行為はしないで欲しいと。 自分はもう大丈夫だから、傍にいてやるから、と。 自分が人斬りだと名乗り出ることで龍田は捕まらない。 龍田の罪を自分が被り、それで終わりにしよう。 姉思いの妹の優しさから生み出された間違いを 妹思いの姉の優しさで何としてでも助けてやりたい。 龍田「ハァ……ハァ……私の天龍ちゃんにぃいいいい!!」 加賀「……予想通り持久戦に持ち込めばこちらのが何枚も上手のようですね……!」 龍田「ハァー……ハァー……あ゛あ゛ああああああッッッ!!!!」 素人の薙刀など動きが読めれば何てことがない。 私は龍田の一振りを完全に見切り、避け、 顔面に拳を4,5発叩き込む。 加賀「ハァァッ!」 龍田「……がっ、あ、ぅぅぅ~……ッッ!!」 隙をついて龍田の関節を決め、薙刀を落とす。 龍田「ざ……触るなぁァアア!! ぐ、うぐゥォエ……」 本気で絞め落としにかかる。 天龍「やめろおおおお!! 龍田に乱暴をしないでくれえええええ!!」 提督「しまった! 加賀!」 天龍に突き飛ばされた私は龍田から手を離し地面に倒れる。 龍田はその場に力が抜け座り込み、その上から天龍が覆いかぶさるように守る。 天龍「本当は龍田はいい奴なんだよ……! 俺のせいで……俺のためにこんなことをしてるんだ」 天龍「もういいんだ……もういいんだ龍田」 天龍「俺は大丈夫だから」 天龍「もうやめてくれ……頼むから」 衰退しきった龍田に涙を流す天龍。 その光景はまるで私達のほうが悪者かのようだった。 天龍「二人で自首するからよ……もう許してくれよ」 提督「罪があるのはその人斬りだけだ。 天龍、お前は釈放される結局は離れ離れにになるのがオチだ」 天龍「だったらいっそのことここで俺達を殺してくれ」 提督「だめだ」 龍田「天龍……ちゃん? だめよ」 天龍「……龍田?」 龍田「ごめんね天龍ちゃん。天龍ちゃんは……ちゃんと生きなきゃだめよ。 罪に裁かれるのは私だけで十分……そうでしょ?」 提督は黙って頷いた。 それに天龍は提督を睨みつけるが提督は怯みもしなかった。 龍田「……提督さん……? 天龍ちゃんのこと……お願いできる?」 提督の返事は言うまでもない。 それから龍田は刑務所に入れられた。 提督の根回し(主に舞鶴さん方面)のおかげで死刑にはならずに済んだ龍田。 天龍は週一、多くて週ニで必ず通っている。今でもそう。 ちなみに根回しとっていもそれは殆ど舞鶴さんがやったらしい。 提督は舞鶴さんの元へ100回以上土下座しに行っただけとのこと。 最初は死んだ彼がいた軍に入るのはどうかと思ったが、 天龍に聞くと 天龍「ああ? んなもんの傷は龍田のおかげで癒えたから別に平気さ。 それに死んでった元カレが守ろうとしていたもんを今度は俺が守る。 あいつの代わりになれたら……それでいいかなって」 加賀「そう。ならいいわ」 こうして私達の鎮守府には提督と私に加わり新しいメンバーが来た。 天龍。 心優しき姉。 彼女の眼帯の下の秘密は私、以外は知らない。 提督も知らない。 今回の後日談。 お風呂の脱衣所でこんな会話が聞こえてきた。 鈴谷「うわぁっ!!びっくりしたぁぁ! 天龍姉の眼帯の下初めて見ちゃったよ~~……」 天龍「ああ? そうだっけか? 別に隠してたわけでもないけど」 摩耶「そうなのか? 思いっきりタブーに思ってたから触れなかったけど」 電「はわわっ痛そうなのです……」 愛宕「それで眼帯してたんだ。知らなかった~」 天龍「何だよそんなに気になってたのかよ。 だったらもっと謎の感じにしたままのが良かったか?」 鈴谷「で、それどこで傷つけたの? 転んだ?」 天龍「そんな訳ねーだろ」 電「摩耶お姉ちゃん膝隠してどうしたのです?」 摩耶「な、何でもねえよ! ほら、電さっさと風呂はいるぞ!」 鈴谷「誰かさんはさっき漫画みたいに転んでたもんねー? 効果音を付けるならずべーって転んでたよ」 摩耶「っっるせえ!!」 愛宕「まあ無理に聞くのも悪いわよ。人に歴史ありって言うでしょ?」 天龍「まあな。そうだなー。強いて言うならこいつは―― 天龍「愛の証かな」