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配置 弔火踊る果道のぬし万火産む燐狐 弔火踊る落命モンスター短命樹オトメノクロツバキ グリーンウィドウマンティス 落葉焚蟲 落書顔の案山子 アカハゲコンドル 幻燈幽火 ヌルヌルサルスベリ 落雷感電シビレドリ 弔歌列唱パレードフロッグ雑感 配置 短命樹オトメノクロツバキ 落書顔の案山子 幻燈幽火 4 5 6 7 落雷感電シビレドリ グリーンウィドウマンティス アカハゲコンドル 11 12 万火産む燐狐(ぬし) 落葉焚蟲 14 ヌルヌルサルスベリ 弔歌列唱パレードフロッグ ※-:出現しないマス 弔火踊る果道のぬし 万火産む燐狐 種族 種 属性 命炎 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 炎命+~ 魔撃 2.5 万火祝踊により属性付与 スキル 燐火神楽 炎命+~ 魔撃 2.5 敵単 ダメージ必ずエレメンタルブレイク スキル 燐尾大万界 炎+~ 魔撃 2.5 敵広 ダメージ ガード その他 万火祝踊 自身 通常攻撃に炎命属性を付与 ※(魔銃)所持 弔火踊る落命モンスター 短命樹オトメノクロツバキ 種族 植物 属性 命 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 命+~ 打撃 1.5 スキル ハートリーフストーム 命+~ 打撃 1.5 敵単 5回ダメージ ガード ブロッキング 直接 ダメージ軽減 その他 ※乙女戦斧クリティカルハート(戦斧/命/命22%)所持 グリーンウィドウマンティス 種族 蟲 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 斬撃 1.5 恐怖追加 スキル グリーンヴェール 闇+~ 斬撃 1.5 敵縦 ダメージ ガード カウンタ 直接 確率で反撃 その他 ※切落ウィドウメーカー(鎌/恐怖追加Lv13)所持 落葉焚蟲 種族 蟲 属性 炎 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 炎+~ 斬撃 1.5 スキル 落葉崩焔 炎木+~ 斬撃 1.5 敵単 ダメージ ガード マイティガード 全 ダメージ軽減 その他 ※長火箸オチバタキ(刀/炎/追尾効果Lv13)所持 落書顔の案山子 種族 精霊 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 射撃 3.5 魂魄還元 スキル ブラックインクサークル 無 射撃 3.5 敵円 ダメージ ガード ディフレクト 直接 確率で回避 その他 ※破魔の墨筆弓(弓/魂魄還元Lv15)所持 アカハゲコンドル 種族 鳥 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 爆撃 2.5 敵十 スキル 抜羽毛ナイトメア 闇+~ 爆撃 2.5 敵× ダメージ恐怖追加 ガード サイドステップ 魔法 確率で回避 その他 ※禿弾頭の赤礫弔砲(大砲)所持 幻燈幽火 種族 精霊 属性 炎 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 炎+~ 魔撃 3.0 スキル 幻炎世界 炎+~ 魔撃 3.0 敵広 ダメージ混乱追加 ガード マジックバリア 魔法 ダメージ軽減 その他 ※炙出幻紙(カード/炎/炎22%)所持 ヌルヌルサルスベリ 種族 植物 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 神撃 2.5 猛毒追加 スキル スライダーモンキーボム 無 神撃 2.5 敵十 ダメージ ガード マイティガード 全 ダメージ軽減 その他 ※滑汁注射器サルマワシ(注射器/猛毒追加Lv19)所持 落雷感電シビレドリ 種族 鳥 属性 雷 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 雷+~ 魔撃 3.5 スキル 四尾連羽根 雷+~ 魔撃 3.5 敵単 4回ダメージ麻痺追加 ガード マジックカウンタ 魔法 確率で反撃 その他 ※『無限シビレドリのレシピ』(本/雷/雷22%)所持 弔歌列唱パレードフロッグ 種族 爬虫 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 音撃 3.0 スキル デスパレードソング 音撃 3.0 敵単 ダメージTPダメージ追加必ず呪い追加 ガード ディフレクト 直接 確率で回避 その他 ※パレードドラム(楽器/呪い追加Lv13)所持 ※共通所持品 裏盆盾トレイシールド(盾/命/呪い恐怖抵抗*3) 黄泉送りの無垢手袋(手袋/命/呪い恐怖抵抗*3) 紅帯の白薄弔衣(ドレス/無/斬打防御Lv4) 赤章の葬送喪服(戦闘服/法術防御Lv4) 火装経文布(マント/炎/炎命12%) 荼毘紙冠(髪飾り/炎/炎命12%) タイプ:フィールド 属性:命&炎(鉄に弱く地に強い)(水に弱く木に強い) マップLv:310(~313) スキップLv:323~325 クリアボーナス:SB+15 ぬしLv:325~ ぬし魂片 名称 種族 Lv 属性 ギフト 万火産む燐狐 精霊 101 命 万火強化 万火強化 アイテムの魔攻力が+315 / 制御力が+200 / 炎命属性値が+19性能変化のみ生成強化時にも効果適用 / 生成使用時、固有スロットに『炎命19%』付与 重複× 雑感 白星輝く石粒砂漠、綺羅めく虹鉄の埋まる丘からつながっている道。 人の手が入らなくなって久しい古道。その道なりにいくつもの小さな木製の祠がある。 道を進んでいくと、地面をすり抜けるように「万火産む燐狐」が現れる。 狐火を消し去るとマップクリア。各種クリアボーナスと暗雲黒雨の闇暮れる森のマップを獲得する。 道の両脇に続く灯火の列を追いかけていくと、いつのまにか火祠導く古道へと踏み込んでいる。 コメント すべてのコメントを見る
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▼ ▼ ▼ 「何十年ぶりになるんだろうな。なあ、抜刀斎」 「知らんよ、そのような些末事など」 漆黒の闇の中。煌々と輝きを湛える月が見下ろすビルディングの屋上にて、二人は向かい合った。 全てが凪いでいた。両者は構えを取ることもせず、ただ在るがまま、静謐な面持ちで互いを見つめていた。 時を超えた邂逅か、それとも因縁がもたらした悪戯か。 この再会にどのような意図が絡んでいるのか、あるいは単なる偶然か。 どちらでも良かった。ただ、この場に人斬り抜刀斎・緋村抜刀斎と、元新撰組三番隊組長・斎藤一が存在する。二人にとっては、その事実だけで十分であった。 既に加藤鳴海の姿はない。新たに発生したサーヴァントの気配、それに対処するため二人の下を離れている。 それでもいいと、二人は思った。 何故なら分かるからだ。剣客として培った洞察力、そして生前における記憶によって。 あれはある意味で"流浪人緋村剣心"と同類の男であると。 最初の会敵時、あの男はマスターである音無結弦や仲村ゆりを狙えた立場にあってなお、それを実行することはなかった。実力が足りない、あるいは迂遠な策、そのどちらもでもない。奴は"そういう"人間なのだ。 だから放置する。人を殺せない敵など、今の二人にとって何ら害にならないのだから。 「緋村抜刀斎、稀代の人斬りにして伝説の剣客。貴様の強さは特に多く戦った新撰組(おれたち)が最も深く知っている。 そして貴様は、よりにもよって"その姿"で現界した」 「ならばどうする、ここで殺すか」 「愚問だ」 ただ一言を以て返す。それ以上のやり取りなど、この二人には不要だった。 何故この男が流浪人・緋村剣心ではなく人斬り抜刀斎として現界したのか、その理由については最早問うまい。 戦士とは、如何なる不条理な現実をも疑わぬもの。ただ認識し、対処するのみ。 「あの日の続きだ、抜刀斎。貴様の抱く人斬りとしての性も、築き上げた不敗の伝説も、一切を抱えたまま地獄へ落ちることは許さん」 思い出すは血風渦巻く京の都か、武士が生きそして死んだ最後の戦場たる鳥羽・伏見の戦いか。 戦乱の幕末にて幾度も出会い、斬り合い、そして決着は付かず十年の時が無情に流れた。 その果てに彼らは再び出会い、しかしその時には既に「人斬り抜刀斎」は死に絶えていた。 腰の刀に手をかける。抑え込まれた闘気は臨界点寸前であり、最早収まることもない。 「現世(ここ)へ置いてゆけ。せめてもの手向けだ、俺の渾身を以て太刀打ち仕ろう」 「見上げた大言壮語だ、斎藤。ならばその首級を貰い受ける」 斎藤と呼ばれた剣鬼と、抜刀斎と呼ばれた剣鬼。 旧縁持つ二人はそれで対話を切り、斎藤は刃を抜き放ち、抜刀斎は柄へと手をかけた。 最早二度と共有できまいと悟っていた、悪・即・斬の正義を共に抱いて。 あの日つけられなかった決着を、ここに結実させるのだ。 斎藤一は腰を深く落とし、切っ先を前方へ向けて構えた。一撃必殺、敵を突き殺す両手平突の構えである。 対する抜刀斎は納刀したまま中段に手をかける居合の構えだ。一刀両断、敵を斬り伏せる抜刀術の構えである。 そうして相対し。 両者は凝固した。 時が徒に流れ過ぎゆく。 手に汗握るとはこのことか、唖然と見守るとはこのことか。 しかしこの場に一切の立会人はおらず、故にただ時間だけが過ぎてゆく。 両者が静止する意味、それは武芸に傾倒した者ならば容易に洞察することが可能であり、故に勝負の行方はこの時点では分からない。 両者いずれも、意図するところは明らかである。 中段に構えた斎藤は、刺突にて敵手の喉元を狙う。 この構えより斬撃せんとすれば、剣を振りかぶる余計な動作が入用となり、敵に遅れを取るため、まず突く以外の選択肢はないと言っていい。 そして脆弱な人間と違い、魔力を形として現界したサーヴァントにはかつての常道……すなわち、一寸の切れ込みさえ入れれば即死するという常識は時に通じなくなっている。 ならば狙うは破壊が死に繋がる急所のみ。すなわち脳髄、心の臓、あるいは首か。腕で庇える胴体部、そして狙いの付けにくい頭部と違い、その最も致命的たる弱点が喉周りの隙。これを突くに如かず。 対する抜刀斎は、居合中段にて相手の首元を狙う。 そこもまた構造的に守りきれぬ隙であり、放つ角度をやや上向きに寝かせ斬り込めば、頭と胴体を繋ぐ細い首筋へ刃先を打ち入れることが叶う。 他の箇所を狙おうとすれば、肉体に備わる諸々の器官が邪魔となり余計な動作が必要となる。それは敵に対しての遅れとなって現れるだろう。 斯様に両者共、攻め手は決している。 しかし両者共、不動にて時を送る。 それは両者共、攻め手に併せて受け手を用意しており、対敵にその備えがあることを疑っていなかったからである。 斎藤が牙突にて打ち込めば――― 抜刀斎は僅かに身を捻るのみでその鋭鋒を躱し、反転しつつ遠心力を利用してその後頭部へと抜刀し、勝負は決するであろう。 抜刀斎が先に斬り込めば――― 斎藤は一歩退いて剣撃を外し、すぐさま跳ね戻って宿敵を刺し殺すであろう。 攻め手が必殺ならば受け手もまた必殺。 互いに対敵の手の内を知りつくし、読みつくし、故に動けず、戦況は膠着する。 かかる情勢、勝負はすなわち、体力気力の削り合い。 斎藤と抜刀斎、対峙する二者は今、敵を一足一刀にて仕留め得る体勢と敵の微細な変化をも見逃さぬ集中力、その二つを維持しながら向かい合っている。 ならばこその膠着。 これが両者の心身に多大な負荷をかけることは論ずるまでもない。 渓谷を綱渡りするにも等しい過酷さである。 やがては一方が力尽き、構えを崩す。 その時もう一方が余力を残していたならば、即座にその崩れを狙って攻めかかり、勝利者となるだろう。 元新撰組隊士、斎藤一。 人斬り抜刀斎、緋村剣心。 いずれがいずれの役を背負うか。 時がまた流れ、戦いは静粛なまま、閉幕へと向かい――― 「―――ッ!」 あるいは、それは同時だったか。 斎藤と抜刀斎は共に勝負に出た。強い息吹を吐き出しつつ、己の体を前方へと撃ち出す! 互いに必殺の構え。さてこそと一瞬の遅れなく、互いは互いの攻撃へと反応した。 けれど、いいや必然か。 機は未だ熟してはおらず、互いの必殺はしかし必勝とは成り得ない。 状況は定まっていない。不確定のまま繰り出した二つの必殺は、虚しく宙を空振り、あるいは儚く宙を空撃ちするのみ。 勝負は振出へと戻る。 そうであると、思われたが…… 「ッ!」 前方へと渾身の力で突きいれられた斎藤の突きは抜刀斎を捉えることなく空を穿ち、しかし中空にて軌道を変え眼下の抜刀斎へと斬りかかる。 これぞ斎藤が必殺、牙突の神髄。刺突を外されても間髪入れずに薙ぎの攻撃へと転換できる。戦術の鬼才土方歳三が考案した平刺突に死角はない。 対する抜刀斎の剣閃は斎藤を捉えることなく流れゆき、しかしそれを追随する後追いの一閃が遅れて襲来した。 これぞ飛天御剣流が誇る二段抜刀術、双龍閃。抜刀が躱された無防備を補うために考案された鞘による疑似抜刀。 白刃の幻で敵を退かせ、その隙を追い、本命の一刀を繰り出す。 "呼吸外し"の術である。 初めの必殺は共に外れた。しかし必殺が一つきりなどとは誰も言っていない。 第二撃の剣閃は、果たして互いの首元を狙い――― 「やはり、強いな。抜刀斎」 「……」 結果は相討ち掠りもせず……勝敗は未だ定まらない。 斬り下ろされた斬撃は鞘で防がれ、斬り上げた鞘が打ち据えるは刃のみ。そのどちらも、敵手の体を貫くには至っていない。 共に伯仲、互角の勝負。幾度も戦い、戦い、戦い続けてその度に生き残り続けた両者は、互いの手の内を知り尽くしているが故にその刃を身に受けることがない。 「分かってはいたが、簡単には死ねんようだ。俺も、貴様も」 「それこそ分かりきったことだろう。何度戦い、何度殺し合ったと思っている」 「違いない」 この程度でどちらかが倒れる程度ならば、そもそも彼らは宿敵になどなってはいない。 呼吸の読み合い、技の妙。その粋を尽くしての決闘すらも彼らには不足というのか。 「ならば、行儀のいい行いはここで終わりにするとしよう」 「……そうか、お前はそのつもりか」 「ああ、そうだとも。俺と貴様の決着に、これほど相応しいものはあるまい」 故にこそ、彼らが死地を決するには最早人の業では到底足りない。 人を超え、剣客となりて、果てにサーヴァント(英雄)として現界し、それでも足りぬと吼え猛る。 ああ、そのザマは、まるで。 「ここからは死合いではなく、喰らい合いだ」 ―――まるで、鬼畜生のようではないか。 ▼ ▼ ▼ 『大嘘吐き(オールフィクション)』 『きみの"殺意"を【なかった】ことにした』 この世のあらゆる"負"が凝縮したかのような存在が、窓辺に腰かけ嗤っていた。その影は人の姿をしていたが、けれどあやめには、それが人であるとは到底思えなかった。 見るだけで、聞くだけで、存在感を感じ取るだけで脊椎を掴まれたかのようにおぞましい。発する圧が明らかに異常だった。 荒唐無稽な悪夢を現実に映しだし、臓物と糞尿を混ぜて煮詰めればこのようなものが出来上がるかもしれない。人型をとっていることさえ、人間に対する冒涜だった。 不幸にもそれを直視してしまったあやめは、当然の如く精神ごと肉体が硬直した。あまりにも強烈な嫌悪感から、逆に彼から目を逸らすことができない。 それは、かつて彼女が慣れ親しんだ異界の風景とも似て。 しかし、どこかが決定的に違う負の存在であった。 『似合わないことはするもんじゃないぜカワイコちゃん。そういうのは過負荷(ぼくら)の領分だ』 その言葉を境に我を取り戻し、しかし次の瞬間には再びの忘我があやめを襲った。 「な、なんで……」 気付けば、本田未央の首にかけていた手が、その力を失っていた。 指一本動かすことができなかった。いや、正確には「動かす気になれなかった」と言うべきか。 それも当然である。何故なら、先ほどまでの彼女を突き動かしていたのは"殺意"であるのだから。 殺さねばという使命感はあった。殺して彼に報いなければという気持ちもあった。けれど、肝心要の「殺そうとする意志」は、何故か根こそぎ失われてしまっていた。 あやめは極めて善良な少女である。義憤であれ、使命感であれ、報いたいと思う心であれ、そんなもので人を殺せるほど、彼女は人道から外れた存在ではない。 この聖杯戦争に参加したサーヴァントにあって、彼女はある意味では最も人に似つかず、しかしある意味では最も人に近しい存在であったのだ。 「ッ! 未央チャン!」 この場にいない新たな第三の声が、病室内に響いた。 悠然と窓に腰かける男を押しのけるようにして現れたそれは、眼鏡をかけた利発そうな少女だった。年の頃は恐らく本田未央と同じほどか。いっそ哀れなほどにやつれ憔悴した様子で、しかし万感の思いが籠った声を上げ、彼女は病室内に転がり込んだ。 この時既に、本田未央は意識を取り戻していた。肺に大量の空気を取り込むためか激しく咳き込み、酸欠により白濁としていた思考も徐々に纏まりつつある。そんな彼女は、悲壮な様子で転がり込む少女をぽかんとした様子で見つめ、次いで自分の状況すらも呑みこめない様子で首を傾げていた。 「未央チャン、生きて……生きてた……私、もう駄目だとばっかり……」 「……えぇっと、みくちゃん? なんでそんな泣いて…… ていうか、ここ病院? 何があって……」 訳も分からないといった風体で、未央は周囲を見渡し。 「……」 『……』 「……」 『やあ』 やっほーと手を振る男を見た瞬間、未央は再びその意識を手放した。白目を剥いてベッドの上に倒れ込む。 過負荷を目撃したことによる精神の許容量の限界、お手本のような失神であった。 『あっれーおかしいなぁ、僕は一応彼女を二度も助けた恩人のはずなのになー。 怖がられる要素なんてどこにもないよ、ねえみくにゃちゃん?』 「…………。 ……もういいよ。ルーザーはそういうのだって十分過ぎるくらいに分かったから」 涙を拭い、微かに嗚咽を漏らしながらも、けんもほろろなみくの態度に、男―――ルーザーは芝居がかった態度で嘆息していた。 しかしそんなみくの態度も、どこか柔らかい。それも当然の話というべきか、今まで死んだと思われた本田未央が、みくの友人たる彼女がなんと生きていたというのだから。 理由は分からない。推測するならあの白銀のサーヴァントの力か。ともかく望外の奇跡にみくは涙ぐみ、それを見つめる球磨川は何とも形容のし難い表情をしていた。 『まあ、そっちはハッピーエンドめでたしめでたしってことでいいとしてさ。 それじゃあこいつどうしよっか。あんま時間かけてもしょうがないしねぇ』 「あう……!」 言うが早いか、球磨川は未だ呆然と座り込んでいたあやめの小柄な体躯を片手で掴みあげた。苦悶の声をあげる少女を嗤いながら睥睨する様は、何の慈悲もないように見える。 彼ら主従がこの場を訪れたのは、決して偶然の産物ではない。無論多くのサーヴァントの気配……斎藤一や緋村抜刀斎、加藤鳴海など……を感じ取ったということもあるが、それ以上に彼らは「あやめ」個人の気配を追跡してここまで来たのだ。 無論、ルーザーたる球磨川禊に気配察知系統のスキルなどなく、そもそも過負荷の王たる彼がそんな有用な手段を持つことも用いることもあり得ない。ならば何故彼女の気配が分かったかと言えば、それはあやめの持つ怪異としての気配が"限りなく過負荷に近く、そして限りなく遠い"異質なものであるからだ。 あやめというサーヴァントは、元は単なる村娘の一人でしかない。 何ら超常的な力を持たず、武芸にも魔術にも思想にも通じず、まして世間一般での知名度や信仰などあるはずもなく。本来であるならば英霊の座に押し上げられるなどありえない普通(ノーマル)こそがあやめという少女だ。 ならば彼女の一体何がサーヴァントたるに相応しい超常と成り得るのかと言えば、それは"怪異"の性質に他ならない。 あやめは忘れられた村娘である。より正確に言うならば、"異界への供儀として捧げられた娘"である。 異界に堕ちた彼女は、『彼等』によって"そう"成り果ててしまった存在なのだ。人間の心を保ちながら、しかし永遠に異形として在り続ける、『彼等』と同じモノに。 いわば後天的な形質変容である。普通(ノーマル)でしかなかったあやめは、しかし普通(ノーマル)の心を持ちながら、過負荷(マイナス)とも悪平等(ノットイコール)とも似て非なる怪異(モンスター)へと変貌した。 過去の邂逅において、球磨川が彼女を一瞬でも過負荷と見間違えてしまったのはそれが理由である。そして、当然ながら怪異である彼女は通常のサーヴァントとは異なる過負荷に近しい気配を放ち、それを隠蔽するための気配遮断スキルは最早球磨川には一切機能していない。 遠隔ならばともかく、一度気配の感知圏内に捉えてしまえば追跡は容易であった。冬木に並み居るサーヴァントの中で、唯一球磨川だけが成し得る捕獲劇だったのだ。 ……本田未央が生きてそこにいるとは、流石に球磨川も想定してはいなかったけど。 『僕としては、みくにゃちゃんの言う"音無結弦の真意"を聞きだすまでは、まあ穏便に済ませてやろうって考えてたんだけどね。 でも本田ちゃんが生きてた以上、もうそんなまだるっこしい真似はナシだ。許すも許さないもないよ、【またあんなことになる】前に不穏な芽は潰しておくべきだよね』 「ルーザー、それ……」 『ああでも困ったな、今ここで殺したら色々と"良くない"ことになりそうだ。 あー、人手が足りないなぁ。どっかに都合よく動かせる駒でも落ちてないかなぁ』 躊躇いがちなみくの言葉を余所に、球磨川は勝手気ままにあやめを掴みあげながらあーでもないこーでもないと一人で盛り上がっている。あやめは愚か、彼のマスターであるみくですら、彼が一体何を考え何を望んでいるのか理解できなかった。 すると、中空を向いて思案するそぶりを見せていた球磨川の目が、突如として細められた。瞳に宿る底の無い空洞じみた虚構の闇は、ぐるぐると渦巻いて何か恐ろしいものでも映し出すかのように揺れていた。 『……そうだね、そういやあいつがいるんだっけ。ちょうどいいや』 「ちょっとルーザー、さっきから何を……」 『気をつけなみくにゃちゃん、さっきぶりに"あいつ"が来るよ』 忠告するかのような球磨川の言葉と同時、病室と廊下を隔てるスライド式の扉が思い切り押し開かれた。 バン、という大きな音と共に飛び込んできたのは、みくや球磨川よりも一回りも二回りも巨大な、鍛え上げられた偉丈夫の姿。 しろがねのサーヴァント、加藤鳴海であった。 「てめえは……!」 焦燥した表情で病室へと駆けこんだ鳴海は、球磨川の姿を認めるや、即座にその表情を警戒と困惑の色に染めた。覚えのある相手であったが、敵かも味方かも分からないからだ。いいや、そもそも鳴海は球磨川のことを敵としても味方としても関わり合いになりたくないとさえ考えていた。 困惑はすぐさま敵意となり、鳴海はその拳を迎撃に固めた。球磨川はただ嗤うだけだ。 『やあカンフーくん、お互い生きてたようで何よりだよ! ところでなんでそんなカッカしてんの? カルシウム足りてる?』 「てめえ何しに来やがった……! いやそれはどうでもいい、てめえは俺のマスターから離れやがれ……!」 激昂するその様に、球磨川の背後で事の推移を見守っていたみくが思わず恐慌の声を上げた。鳴海はそれを見て一瞬だけたじろぐも、すぐさま元の狂相を取り戻して球磨川へと詰め寄る。 鳴海の丸太のように太い腕が、軽々と球磨川を掴みあげた。そして威嚇するように顔を突き合わせる。敵意に相貌を歪ませる鳴海とは対照的に球磨川はどこまでも涼しい顔だ。 『ふーん、きみはマスターの恩人に対してそんなことするんだ。わー幻滅ぅー、カッコ悪いなぁカンフーくん』 「黙りやがれ、それとこれとは話が別だ。どうにもてめえは信用ならねえんだよ……!」 それ以上の問答は無用とばかりに、鳴海はもう片方の腕を振り上げる。そのまま、球磨川の顔面を打ち据えようと――― 『ところでカンフーくん、これを見てくれ。こいつをどう思う?』 「な――――ッ!?」 その拳を直進上、すなわち球磨川自身の顔の高さに、彼は"それ"を持ち上げ"紹介"した。 「何の前触れもなく」「突如として出現した少女」を目の前に、鳴海は混乱と驚愕の極みに陥り、思わずその手を止めてしまい。 『だから甘えってんだよ、きみは』 致命的な隙を晒し、がら空きとなった鳴海の胴体に、一本の長大な螺子が突き刺さった。 鳴海の体は一瞬大きく痙攣し、しかしすぐに静止して崩れ落ちるように動かなくなった。鳴海の剛腕より解放された球磨川は、やだなぁと白々しく嘯きながら軽く埃を払うように学生服をはたいた。 『こうまでみくにゃちゃんを狙わなかったことからも分かってたことだけど、改めて言っておこうか。 きみの甘さ、きみの弱さは子供を殺せないということ。いや、それどころか傷つけられないってところかな? サーヴァントとしちゃ、つくづく甘い』 『でもその甘さ、嫌いじゃないぜ』 鋭く指を突きつけて、如何にも格好つけたポーズで球磨川は言い放った。残念なことに、それを真面目に見聞きした者は誰一人として存在しなかった。 「る、ルーザー……それ、どうしたの。 ……殺しちゃったの?」 『まっさかぁ、人畜無害かつ善良な一般市民の僕がそんな物騒なことするわけないじゃん』 みくのほうへと振り返り、大仰な手振りで力説した。まるで説得力がない。 『ただ、ねえ』 『今のままじゃ碌に話も聞いてくれないだろうからさ』 『ちょこっとだけ、大人しくしてもらおうかなって』 『本当にそれだけさ』 「……それだけ?」 『それだけ。この螺子は特注品でね、殺すどころか掠り傷一つ付けることもできない、武器としちゃ【負】出来な代物なんだ』 そう言うと、球磨川は項垂れて蹲る鳴海の髪を掴むと、無理やりにその顔を上げた。 現れたのは、生気というものがこそげ落ちたような、鳴海の顔。 『でもその代わり、こういう時には役立ってくれるよ。何せどんな奴だって【僕】の位置まで引きずり下ろしてやれるんだからね』 そう語る球磨川の目の前で。 呆けたような面をした鳴海が、初めて口を開いた。 『なんだよお前、面倒臭えなぁ』 「……は?」 『ほら、見なよみくにゃちゃん。まるで僕みたいに露骨に最低に陰気溌剌になってるでしょ!』 「なにこれ、気持ち悪……」 鳴海が口にした、まるで球磨川のような負愉快な口調と、一目で分かる異常事態に、みくはあからさまにドン引きしていた。 『却本作り(ブックメーカー)。 安心大嘘吐きに続く、僕のもう一つの宝具さ』 『この螺子で貫かれた者は、何もかもが僕と同じになる。 強さ、知性、感情、思想、あらゆるものが僕まで堕ちる。何とも使い勝手の悪い、僕にお似合いの欠陥能力さ』 『ま、今回のは一時的なものに留めておくつもりだけどね』 言うや否や、球磨川は鳴海に顔を近づけ、言った。 『さて、大人しくなったところで講義の時間だ。今から言うことをよーく聞けよ?』 その顔は、まるで面白い悪戯を思いついた子供のように、なんとも愉快気な笑みに彩られていた。 ▼ ▼ ▼ 仲村ゆりと音無結弦は、既に満身創痍だった。 サーヴァントに襲撃されながら未だ存命しているという事実は、何も彼らが優秀であるとか、あるいは幸運であるということを意味していない。 むしろ、彼らはこの上なく不運だったと言えるだろう。 生かさず、殺さず。 彼らを襲ったサーヴァントとは、そういった拷問めいた生殺しを愛する、生粋の加虐趣味者なのだから。 「ぎ、ぃ……あ……!」 それは絶叫だった。 か細く、今にも途切れてしまいそうにか弱く、けれどそれは絶叫であった。辛うじて襲撃者にのみ聞こえる程度の絶叫。 ゆりの腹から絞り出される、最早大声を出す気力すら尽きた苦悶の声。 先刻まであった闊達な少女の面影は、もう何処にも残されていなかった。 「プッククククク、もう終わりかいお嬢さん。駄目だね、張り合いってものがまるでないよ」 「ほら、もっと抵抗しなよ! このっ、このっ!」 せせら笑う長身の影はキルバーンのものだ。彼は悠然と、余裕の表情でゆりを見下ろしている。ピロロは獲物の抵抗が無くなったことに不満なのか、倒れたゆりの頭を何度も蹴り上げていた。 ゆり達の抵抗は、キルバーンたちにしてみれば文字通りの兎狩りにしかならなかった。窮鼠は猫を噛むことはなく、そもそも彼我の戦力差を考えればキルバーンは猫どころか大型の肉食獣にも等しい。この顛末は順当どころか必然と言えるだろう。 「セイ、バー、あたしたちを……」 「おっと、そうはさせないよ」 ごりっ、という鈍い音がして、声にもならないゆりの悲鳴。鎌の柄の先端で"軽く"ゆりの腕を突いたのだ。無論、絶妙なまでの手加減によりダメージと痛みだけを与えている。ちぎったり砕いたりなんて論外だ。だって"そんなもので死なれてもつまらないのだから"。 (くそ、こいつら……) 死神とその従者が悪趣味な遊びに興じる背後、音無は頭から血を流して蹲っていた。彼らは音無のことも遊びの対象にしていたが、もっぱら傷つけるのはゆりが中心であった。音無は知る由もなかったが、ゆりと彼らの間にある会敵の因縁が、ゆりに対する加虐を加速させていたのだ。 つまり音無は最低限痛めつけられただけで半ば無視されているようなものだったが、それが何らかの救いになるかと言えば、それは否だ。逃げるどころか、令呪を使う隙さえない。一度どころか二度三度と試して、その全てが失敗に終わっているのだから間違いなかった。こいつらは、自分たちを逃がす気など毛頭ないのだと。 「あ~あ、つまんないの。ねえキルバーン、もういいからこいつら殺しちゃおうよ」 「ボクとしちゃもう少し弄びたかったんだけどねぇ。でもピロロが言うなら仕方ないかな。あんまり遊び過ぎるとサーヴァントが戻ってくるかもしれないしね」 「うんうん。遊ぶのは大事だけど、余裕を持つのはもっと大事だよ」 二人揃ってクスクスと嘲笑。キルバーンの爪先がゆりの体を蹴り上げ、無理やりに仰向けにする。 手に持つ鎌がくるりと回り、その刃先がゆりの首元へと突きつけられた。 「それじゃあ名残惜しいけどさよならだ。バイバイ、可愛いお嬢さん」 そのまま、死神の鎌は円を描くように高く振り上げられて――― 「ま、待ってくれ……」 「うん?」 そこに待ったをかけたのは、他ならぬ音無であった。 傷む腹部を抑えながら、音無は立ち上がる。今そうしなければ自分たちはすぐさま殺されてしまうのだと分かったから、立ち上がらざるを得ない。 「交渉を、させてくれ。俺達が知ってる情報を教える、だから……」 「見逃せ、と。いいねぇ、そうこなくちゃ」 キルバーンは鎌持つ手を止め、話を聞く段となった。 首の皮一枚で、彼らは命の綱を繋いだ。 そうして音無は、促されるままに訥々と今までのことを語った。 本田未央、前川みく、ネギ・スプリングフィールド。今までに自分が遭遇したマスターのこと。彼らが使役しているサーヴァントの情報。 それらを入念に、できるだけ長く、音無は説明した。 ゆりが出会ったマスターたちのことも語った。しかしこちらは、ほとんどが遭遇の場にキルバーンも関わっていたため、彼にとって有益な情報はほとんどなかった。唯一、キリヤ・ケイジというマスターのことだけは興味深そうに聞いていたが。 「なるほどねぇ……意外や意外、きみたちは中々に優秀なマスターだったみたいだ」 全てを聞き終えたキルバーンは、心底から愉快気な様子で頷いていた。 「学校、学校か。所詮は子供ばかりの環境と思ってたけど、結構な数のマスターが紛れ込んでいたみたいだね。これは今日の予定を入れ替える必要があるかな?」 「お人形がいっぱいの遊び場だね、キルバーン!」 「ああ、そうだねピロロ。準備が整ったら盛大に遊んでやろうか……ククククク……」 「そして―――」 「きみもそろそろお終いだ」 「……く、そっ」 キルバーンは嘲笑の相を浮かべ、ゆりと音無のほうへと振り返る。 空を裂く鎌が、不可思議な音色を立てて旋回した。 「きみの魂胆なんて分かっていたよ……情報を引き換えに見逃されるなんて最初から期待していない、きみが狙っていたのは時間稼ぎだ。 セイバーか、それともきみのサーヴァントか。令呪も使えないきみたちは、だからサーヴァントが自発的に戻ってくるのを待っていたわけだ。 けど、アテが外れたみたいだねぇ……!」 「ッ、くそ!」 跳ね飛ぶように駆け出そうとして、しかしあっさりと足を掬われ転倒する。 無様に顔から地面に突っ込み、音無は奇しくも倒れるゆりの隣へと投げ出された。 「最期くらいは潔くしたまえよ、坊や。 なに安心したまえ、隣のお嬢さんもすぐきみのところへ連れて行ってあげるからね」 そうして、彼らの命を刈り取る鎌は振るわれた。 音無の目に映ったのは、見ることも叶わない速度の白刃と、その向こうに浮かぶ煌々とした月だった。 視界が真っ黒に染まる。 掴む感触が無くなる。 その最中。 「―――たすけて」 スローモーションになった世界の中で。 失われゆく聴覚が、か細く囁かれた声を聞いたような。 そんな気がした。 ▼ ▼ ▼ 静寂の空間に刃が激突する反響音が間断なく響き渡る。道ならぬ道を、ビルディングで構築された石造りの森を、影も捉えきれぬ何者かが駆け抜け、跳ね合い、颶風となりて相交わる。 影が交錯する度に散らすは刃鳴、舞うは剣弧。煌めき光るは刀刃に映る月光か。 三次元空間を縦横無尽に渡り歩き、そこかしこで激突する様は天狗かはたまたその化身か。 地に足つける人とは思えず、中空にて舞うは縮地の業なり。塔や壁すら彼らにとっては主戦場、今は懐かしき戦場にて踏みしめる土の感触である。 ―――彗星となりて散る火花。閃光となった刃撃の逢瀬が、再び対となって両雄の間で灼光する。 苛烈さは嘗ての比に非ず。互いの機を読み一刀のみを繰り出す剣客同士の構図は崩れ、今は共に二体の修羅。繰り出すは幾重に織り成す剣刃乱舞、これぞ悪鬼羅刹の喰らい合いなり。 剣閃、乱れ飛びて剣戟と化し――― 剣戟、狂い踊りて剣嵐と成る――― よって双極、乱れ狂いて仕手と化し、血煙渦巻く死合とならん。 寄越せ、寄越せ、その首寄越せと刃が血肉を求め打ち震える。 剣に宿るは純なる殺意。修羅道を彩る絢爛の血道。ひとたび鞘走れば散華なしに戻りはしない。 一刀一撃、必殺の領域に突入している。音速を遥か超越した斬撃の応酬は、まるでよくできた殺陣のようでもあった。 「おおおおおおおォォォッ!」 「ぬぅううううああああッ!」 一呼吸の間もなく跳躍、反転して狙い穿つは敵手の眉間。逆手に構えた切っ先は垂直に天下る神の杖として飛来し、下方より迎え撃つは天に突き上げる神速の対空平刺突。 飛天御剣流龍槌閃・惨、牙突・参式。両者の激突は大気を切り裂く波濤となって反響し、仕切り直しとばかりに地に足つけて再度の剣戟を開始する。 鏡合わせであるかの如く、鉄刃と鉄刃が交差する。袈裟に逆袈裟、八相に正眼、技とも言えぬそれらはしかし極大の剣気を伴い、無双の一閃となりて空間を断割する。 どれ一つをとっても並み居る剣士ならば百度は命を散らす魔剣の応酬に、しかしそのような攻撃など見るに値しないと言わんばかりに共に意識の外へと追いやる。眺めるのは、滾る互いの眼のみ。 そこには最早、人の目など映ってはいなかった。ここには既に人などいない。疑うべくもない戦鬼の業、修羅道へ堕ちた二人の悪鬼がそこには在った。 「いざ、ここに倒れろ抜刀斎ッ!!」 「抜かせ、散るのはどちらか知るがいいッ!!」 束の間の会話と同時、対の剣戟を放ち合う。 力を上回る技術をぶつければ、技術を上回る力をぶつけてくる。 術理を上回る直感を見せつければ、直感を押しつぶす術理で以て相殺する。 永劫に続くと錯覚させる剣乱舞踏の中、二人は吼えた。自らの気概を振り絞るために、これが俺だと叫ぶように。 その叫びに身を任せる斎藤に対し、しかし抜刀斎は心中にてその趣を異としていた。 (猛っているのか、俺は……) そこにあるのは疑念、そして抑えきれない高揚か。待ち遠しいとでも言うかのように、その心臓は鼓動を早めて止まらない。 それは斎藤とて同じだった。猛る、昂ぶる、待ち遠しいと叫んで止まない。されど、その心を是とする斎藤とは違い、抜刀斎の思考は真逆のものだった。 すなわち―――"やめろ、そんなものは必要ない" 抜刀斎はあくまで暗殺の任を負ってこの場に立っていた。斎藤との決着を望む心は本物であるし、それに応えたのも事実ではあった。しかし因縁を全てに優先するつもりは毛頭ない。 当然の話だろう。緋村抜刀斎は個人的な妄執を実現するためではなく、万人の未来のためにこそ戦っているのだから。 交差の瞬間を狙い己が刃で地を穿つ。外したわけではない、その剣閃は衝撃となって地面を伝い、抉り貫いて斎藤へと殺到した。 飛天御剣流が一、土竜閃。例え石であろうがアスファルトであろうが、舗装された地面であっても刃は容易く地を切り裂き技の一部と為す。 「はああああァァァッ!!」 広範囲に広がった衝撃波を、しかし斎藤は薄布を切り裂くかのように牙突で以て貫いた。 地を抉る衝撃の嵐を己が身一つで踏破する様はまさしく修羅戦鬼の現人か。抜刀斎は身を捻ると同時に回転、半身を滑り込ませ逆向きの抜刀を繰り出す。 飛天御剣流・龍巻閃。最上の返し技は、しかしそれを熟知した斎藤相手には通じず一刀の下に防がれる。 炸光する火花、弾け飛ぶ対の刀剣。 戦闘の余波によって飛び散る瓦礫の中で、大義と信義が牙を打つ。 斬る、斬る、斬る、斬る―――斬って貫き穿って捌く。 苛烈に、熾烈に、猛然と。超至近距離で放たれる剣戟の嵐は閃光とも形容できる火花によって彩られた。 振るわれる剣閃は拮抗している。その嵩を増すことなく、まして減らすこともなく。一手をしくじれば即座に首が飛ぶ死の領空域。 刃がぶつかる毎に発生する轟音は大気を貫いて、怒涛の奔流となって止まらない。 修羅同士の交錯、醜きは人の成れの果てと言うかのように、それは刃と刃、信念と矜持の衝突に他ならなかった。 決闘などと呼べはしない。これは精神の支柱ごと砕き、相手の道を粉砕する喰らい合いだ。 戦闘開始より既に幾ばくか、正確な時間などどちらにも判別できていない。 休む暇もなく剣を振るい、ただ一度の停止もなく連撃を放ち続けた彼らに、時間の概念など意味を為さない。 だが故にか、互いの呼吸、疲労の密度。それらが合わさり、神域のタイミングによって、両者は同時にその足を止めた。 「……」 「……」 ここが限界だった。あと一度技を放てば、それで全ての力を使い切る。 そう悟っていた。斎藤も、抜刀斎も。自分と相手が共に"その状態"であると理解した。 皮肉にも、それが当初と同じにらみ合いの構図へと互いを誘導していた。 互いに言葉はなかった。この期に及び、この二人にそんなものは不要だった。 言葉なく、各々の必殺へと構えを移行する。 斎藤は先と同じ、両手平刺突の構え。彼の十八番である牙突を放つための構えだ。 そして抜刀斎もまた、同じく納刀しての中段居合の構えだ。そこから何が飛び出すのかは、抜刀術を生業とする飛天御剣流故に判別がつかない。 修羅へと堕ちたはずの二人は、最期の一幕においてただ一時、その身を人へと戻したのだ。 「これで最期だ」 「是非もない」 ……ただ一言だけ。 一言だけ交わし、二人は最後の突撃を敢行した。 「――――ッ!」 声にもならない雄叫びと共に突進するは斎藤一、放つは必殺の牙突・弐式。 弾丸が如くその身を撃ち出し、後手を取るは未だ納刀したままの抜刀斎。 唸りを上げる斎藤の剣が空を切り裂き疾走する。その切っ先が目前まで迫り、ここでようやく、抜刀斎がその刃を抜き放った。 狙うは後の先か、それとも返しか。そのどちらをも叩き潰さんと斎藤が吼え猛り――― 「……!」 しかし、前方へ抜き放たれるはずだった刀は、その軌道を変じ目にも止まらぬ速度で再び納刀された。小気味良い金属音が辺りに反響する。 同時、突撃を仕掛けていた斎藤の動きに乱れが生じた。 「ぐッ……!?」 ―――飛天御剣流・龍鳴閃。抜刀と対を成す、神速の納刀術。 その奥秘とは、「納刀の衝撃波による聴覚の破壊」。 抜刀の欺瞞、騙し討ち。 フェイントと呼ばれるそれは、相手が集中していればしているほど、本命であれば本命であるほど効力を増す。 例えば、このように"命を懸けた最後の交差"であるとか。 言うまでもなく、効力は覿面である。 納刀された居合で狙い撃つは無防備となった敵手の胴体、あるいは首。横薙ぎに両断できる箇所。 対手が失敗を悟って跳ね戻るよりも先に、その死命を斬り伏せ得るだろう。 意表を突かれた者と、想定通りの者。 どちらが速く動けるかは自明の理である。 かくして、先手を取ったはずの斎藤は動きを封じられ。 後手を取った抜刀斎こそが後の先を得る。 状況は刹那の間に激変を遂げた。 今度こそ本当に、抜刀斎の剣が抜き放たれる。 前方へと攻め入り、未だ身動きの叶わぬ斎藤に横薙ぎの居合を繰り出す。 勝敗が、決する。 ………。 ……。 …。 ▼ ▼ ▼ 「何……?」 驚嘆の声は一体誰のものであるのか。 キルバーンか、ピロロか、あるいは音無かゆりであるのか。 瞠目し、空けた声を上げるような、荒唐無稽な光景が彼らの眼前にて展開されていた。 ―――光の剣が、死神の鎌を防いでいた。 青白く光る光条の剣、大気を灼く甲高い音を響かせて。命を切り裂く鎌と一人でに鍔競り合いを行っていた。 瞬間、キルバーンはそれまでの遊び感覚ではなく戦闘用の思考へと切り替え、瞬時に刃を引き戻し渾身の斬撃を繰り出した。およそ人では捉えられない超速、しかしそれすらも光の剣は捌き、容易に弾き返す。 「う、うわ、あああ!!?」 その光景を前に、音無はただ悲鳴を上げると、そのまま走り去った。必死に、死にもの狂いで、キルバーンとは反対の方向に。 けれど、それに構っている余裕など、今のキルバーンにはなかった。 「剣、セイバーかッ……! いいや違う、前にみたあいつはこんなもの使っちゃいなかった。だったら……!」 後方へと飛びのき周囲を振り返る。見間違いではない、そこには"誰もいなかった"。 自分の感覚が狂ったわけではないと、キルバーンは確信した。あまりにもあり得なさすぎて、自らの耄碌不覚すら、彼は一瞬疑ったのだ。 だが違う、彼は今も正常だ。 ならば、だというのなら。 サーヴァントの気配知覚範囲、半径およそ数百m。 攻撃を防がれるまで、その警戒網のどこにも気配が引っ掛からなかったのは。 一体、どういうことであるというのか―――! 「―――待たせたな」 声が――― 涼やかな声が届く。 それは、キルバーンの背後から。 振り返る死神から、倒れ伏す少女を守るように。 声の主を、死神は見た。白い男だった。 何時の間に現れたのか。彼は、仲村ゆりを庇うように立って。 「機械帯、起動―――」 告げる言葉だけが、伽藍の空間に澄み渡った。 ▼ ▼ ▼ ―――男の。 ―――姿が。 ―――変わって。 ―――黒の襟巻、たなびいて。 閃光が奔る。 雷鳴が轟く。 眩い光が奔る。 それは蒼白色をした輝きだった。 それは遥かな果ての輝きだった。 空の彼方に見えるもの。 漆黒に染まった空に輝くもの。 雷の――― 輝き――― 「輝きを持つ者よ。尊さを失わぬ若人よ」 「お前の声を聞いた。ならば呼べ、私は来よう」 揺れる道化の視線を受け止めながら。 腕を組み、輝きの中で彼は言った。 その腰部には機械帯(マシンベルト)が。 その腕部には機械籠手(マシンアーム)が。 たなびく黒い襟巻は僅かに雷電を帯びて。 白い詰襟服には見たこともない意匠。 遠い異国の服を纏い、 空の果ての雷を纏い、 刹那に、彼はその姿を変えていた。 漆黒領域の中心。 そこで、弱者を守るが如く佇む。 ―――そして。 ―――彼の瞳、輝いて。 ―――周囲に浮かぶ光の剣、4つ。 「……ひか、り……?」 「お前の輝きだ。少々、遅くなってしまったがな」 僅かに身を起こすゆりが呟く。その双眸は周囲に瞬く紫電の光を映していた。 眩い輝きはゆりにある光景を幻視させる。それは、遠く記憶の彼方に埋もれた、幼い日の情景。 雨降りしきる山景に映える、一条の稲妻――― 「メインディッシュを邪魔してくれちゃって……! ボクと同じアサシンか、奇襲を成功させたからって調子に乗られちゃ困るんだよねぇ……!」 「否、我がクラスはアサシンに非ず。 隠れ潜み闇討つは、貴様が如き影の専売特許と知れ」 黒を纏った道化師を前に、彼は堂々と言った。 慌てるそぶりなんて少しもなくて、目元を少し歪ませる程度。 飛び退いたキルバーンと、腕を組み仁王立ちする白い男。両雄が睨みあう。 「ライダー、大丈夫!?」 路地の向こうから駆け寄り、大声で呼びかける少女が一人。小柄な、艶やかな黒髪を腰まで伸ばした少女だ。 少女―――南条光は辿りついた現場を一目見るや、「はっ」と息を呑み、倒れ伏すゆりを相手に行われていたであろう惨状を朧気ながらに理解した。 「マスターか。そこな少女を連れて後ろへ下がっているといい。ここは今から戦場となる」 「わ、分かった! お姉さんこっち!」 小柄な体躯に見合わぬ膂力で、光は力なく倒れるゆりの肩を組み後退する。 それを見たキルバーンは、吐き捨てるように叫んだ。 「戦場になるだって―――そんなの願い下げさ!」 そしてそのまま反転し、脱兎の如くに逃走した。一歩の跳躍で10mの距離を稼ぎ、息を吐く間もなく疾走。その体は瞬間的に亜音速にも到達し、最早人の追い縋れる速度ではありえない。 そもそもの話、キルバーンにはサーヴァントを相手に戦うつもりなど微塵もないのだ。ゆりと音無を襲撃したのは、あくまで彼らがサーヴァントを連れない格好のカモだったからで、仮にゆりが使役するセイバーなりの気配が感知圏内に入ってきたならその時点で遊びを打ち切って、ゆりと音無の命を手土産にさっさと逃げ去るつもりだったのだ。 例え死んでも蘇生できる「命のストック」という保険がないというのに、誰が命がけの戦いなどするものか。そんなものは頭の足りない猪サーヴァントだけがやっていればいい。自分はその隙を突き存分に漁夫の利を得させてもらうだけだ。 故に選択するのは逃走の一択。無駄に遊んだだけに終わってしまうのはもったいないが、命の危険に比べれば遥かにマシである。 魔力回復のアテも、遊びのアテもまだまだたくさんあるのだ。こんなところとはさっさとおさらばして――― 「残念だが、遅い」 声が聞こえた瞬間、疾駆するキルバーンに追いつくように、四条の光閃が踊りかかった。 今まさに獲物を呑みこまんとする猛獣の咢の如く。迫りくる衝撃の余波で地面のアスファルトを砕き捲れ上がらせながら、光剣は握る者もなく自在に襲い掛かる。 「ぬぅ……ッ!?」 受けきれない、そう判断したキルバーンは疾走の勢いのままに跳躍。戯画的なまでに身を捻ることで無理やりに電刃を回避する。 回転する雷刃はキルバーンの衣服を浅く切り裂くに留まり、しかしキルバーンは逃走の足を止めることを余儀なくされる。 危うげなく着地し、振り返った先にいたのは、いつの間にかキルバーンの直近へと移動を完了していたライダーの姿だった。瞬間移動でも行ったのかと、瞠目する。 「中々どうして、やってくれるじゃないか……! そこのガキは見逃してやるってんだから、潔くお別れしようっていうボクの心遣いを理解できないのかい……!?」 「貴様のような道化を見逃すものか。その不遜、その傲慢。 世界には貴様以外の知性もあると、どうせ認識もしない輩だ。端的に、醜い」 ピクリ、と死神の眉が動いたような気配があった。その素顔は仮面に覆われて、けれど変質する感情の影が如実にそれを伝えてくる。 「醜い……醜いと言ったか。侮辱したな、ボクを……!」 「ならば何だと言う。その鎌で我が喉笛を掻き切ってみせるとでも言うか。生まれてこの方他者を貶める真似しかできていない貴様が」 「……いいだろう。ボクをその気にさせたこと、後悔するなよ……!」 声と同時、キルバーンはその痩躯を漆黒の旋風と化して疾走した。 振るうは手に持つ死神の鎌。一振りごとに人の命を刈り取る魔刃が、独特の風切り音と共にライダーへと殺到する! 舞い踊る光の剣、その一本が躍り出て死神の鎌を受け止める。鋼鉄の刃が彼の雷電を反射し、眩んだ光を一筋、瞬かせる。 「フフ、驚いたかい?」 喜悦を滲ませるキルバーンの言葉通り、ライダーの眉は微かな驚きに顰められていた。 その剣閃、その速度。暗殺者などと生温い、キルバーンの剣技は一流の領域に手をかけている! 「舐めてもらっちゃ困る。暗殺だけがボクの得意技じゃないんだ。 武器を使っても、まあこれくらいのものさ……!」 お喋りの間も振るわれる鎌は留まることを知らず、縦横無尽に空間を薙ぐ。 様々な方向から、時に呼吸をずらして。空を裂き奏でられる笛の音はさながら死の舞踏でもあるかのように。 的確にライダーを追い詰める。一人でに舞う光剣、その動きが徐々に追いつけなくなる。 「口ほどにもない……これでトドメだ!」 踊りかかる光剣を弾き飛ばして、振り返り様の一撃だった。横薙ぎに振るわれた鎌が、一直線にライダーの胴を狙う。 獲った―――! と、確かにそう思わせる見事なタイミングであったが。 「小癪」 漆黒の空に重い音が響き渡る。 鮮血の代わりに、音が。 堅い感触が死神の腕に伝わったであろう。肩関節がみしりと音立てる。 刃は止まっていた。 機械籠手に覆われた、左の掌で―――! 「何……!?」 「暗殺だけが能ではないと貴様は言ったが。私も言わせてもらおう。 我が力は剣のみに非ず。そう、私にはバリツがある」 掴む鎌を受け流し、返す刃で眼前の胸に紫電の掌底。 打ち込まれる電流を震と散らしながら、死神は叩き込まれるがままに後方へと吹き飛ばされた。 「無刀術か……嫌だねぇ、奴のことを思い出す」 与えられたダメージに蹲りながら、しかしキルバーンは不適に笑みを絶やさない。 何故なら、そう。ここまで打ち合ったというのなら、そろそろ兆候が出始めるからだ。 死神の鎌、振るうごとに掻き鳴らされる特有の音色。 敵手を自覚なき間に貶め、そして幻惑の淵へと誘う死神の吹く笛が、確かにライダーを侵食している! 「けど、それも終わりだ。そろそろ黄泉路へ堕ちてもらおうか……!」 乾坤一擲、これまでに倍する文字通り全力の一撃をキルバーンは放つ。 止められない―――死の音色を聞いた者は皆須らく五感を奪われるべし。正常な認識を失ったライダーはこの一刀にて打ち倒されるのだ! そう、そのはずであったが。 「黙れ。 たかが、揺らめく影ひとつ―――!」 言葉を残して、ライダーの姿が掻き消える。 否、実際に消えているわけではない。驚異的な速度で移動する様が、まるで消えているかのように錯覚させるだけなのだ。 それは、最初にキルバーンの鎌を止めた時のように。 気配察知圏外から、一瞬で間合いを詰めた時のように。 何処へ行ったと、死神は当惑して振り返る。左右、どちらにも彼はいない。 ならばまさかと見上げれば、そこには月光を背に跳躍する男の姿。 中空にて猛々しく、その足を振り上げて――― 「バリツ式―――」 空間が裂ける! 高々と振り上げられた白い彼の踵が、落下しながら死神の鎌を縦に断つ! 紫電を纏った彼の靴。 光剣を伴った彼の体。 それが、鋼を切り裂いていた。 暗い空を一条の雷が落ちゆくように。 砂鉄の絨毯に磁石を滑らせるように。 熱したナイフでバターを切るように。 石畳ごと地面を砕いて、彼はすくと立ち上がる。 勢いのままに地面に突き刺さった光の剣も、ひとりでに。くるりと彼の周囲に集う。 「……バリツ式、雷電踵落とし」 「馬鹿な……」 呆然と呟く声が、漆黒の闇に消えて行った。 「接触したはず、確かに耳にしたはずだ! 精神に、五感に影響を受けるはずでは……」 「我が電磁力を以てすれば、無形の音を斬ることも容易い。 そして」 その言葉に繋げるかのように、ライダーの背後に幾本もの稲妻が地に落ちる! 雷雲、発生源もなしに、しかし蒼白の電光が瞬き、衝撃に地を抉った。 同時、ガラスのような何かが砕ける音が、いくつも。 「貴様が仕掛けた見えざる刃、我が雷電にて打ち砕かせてもらったぞ。 最早打つ手はあるまい」 「こ、こいつ……!」 雷電纏わせる機械掌。己に向けられるそれを前に。 追い詰められたキルバーンは、しかし素顔見せぬ仮面の下で、ニヤリと勝利を確信した笑みを浮かべたのだった。 「ライダー……」 視界の先で行われる戦闘を垣間見て、南条光は心配そうな声をあげた。 ライダーと死神のアサシンとの間でどのような戦闘が行われているのか、分からない。あまりにも速すぎて。 人間である光の目では、その影すら捉えられない。辛うじて、そこで戦闘が起こっているということだけが、激突する大気の振動で理解できたけど。 「……つ、うぅ……」 「あ、お姉さん、気が付いた!?」 その腕の中、抱きかかえられるように瞼閉じるゆりが、苦痛に喘ぐようにうめき声をあげた。 光の声に反応するように、ゆりはその瞼を開けた。憔悴した瞳が、街灯の灯りを反射して鈍く煌めいた。 「あなた……あたしたちを、助け……」 「あ、ああ! アタシたちはお姉さんを助けに来たんだ! アタシ……は、何もできないけど、でもライダーがいるからもう大丈夫!」 朦朧としたゆりを励ますように、光はできるだけ頼もしく映るようにと声をかけた。大丈夫、と断言できるだけの根拠なんてないし、光とて心配なのは同じだけど、でも傷つけられ憔悴した誰かを元気づけられないのに何がアイドルか。 だから光は断言する。自分はあなたを助けに来た、来たからにはもう大丈夫なのだと。 「そう……ありがとう、ね……」 「ううん、礼なんていらないよ。それよりお姉さん、もう喋らないほうが……」 「いえ……あたしにも、まだやれることが、あるから……」 そう言うと、ゆりはだらりと下げられた右手を無理やりに持ち上げる。苦痛に顔が歪むけど、そんなの振り払って宿る令呪を掲げる。 「令呪を以て、命令するわ……セイバー、あたしたちの……」 それは起死回生の一手、この場に己が侍従たるサーヴァントを呼び出す虎の子の最終手段。あの死神を確実に打倒するための切り札。 今それを使う。あの対敵を潰すために、ゆりは魔力込めた命令をここに下そうと――― 「そんなもの使わせるわけないだろバァ~~~カッ!」 「ッ!?」 場違いなまでに響く軽薄な口調に、光とゆりは驚愕と共に振り返る。 そこには、杖の先端をこちらに向け、嘲笑を浮かべた一つ目の使い魔の姿―――! 嗤っていた、ピロロは。キルバーンは。こうなることを予測して、あらかじめ布石を打って。サーヴァントではなくマスターを殺すこの時のために! キルバーンは暗殺者である。武器を使わせても一流の腕を持つ彼は、しかしそのクラスが示すように生粋の暗殺者。詭弁詭道に闇討ち詐術、暗殺こそが生業なのだ。 そも、最初に言った通り、彼はハナからサーヴァント相手にまともにやり合う気など毛頭ないのだ。如何に強いサーヴァントであれ、マスターなしでは生き残ること叶わぬならば、急所たるそいつだけを狙えばいい話である。 ピロロは嗤った。高らかに。己の勝利を確信して、不覚をとったライダーを嘲笑って。 その瞬間、光とゆりは自分たちに打てる手が何もないということを、走馬灯のようにスローとなった視界の中で悟った。 令呪を使ってセイバーを呼び戻す―――間に合わない。 ライダーに命じてこの場に急行してもらう―――間に合わない。 ならば、自分たちが攻撃を躱す―――間に合わない。 間に合わない、間に合わない、間に合わない……何もかもが手遅れで、挽回の機会は永遠に失われた。 死んでしまう、ここで。使い魔の放つ魔術で、自分たちは。 そう確信してしまい、二人はぎゅっと目を閉じた。耐えるように、忍ぶかのように。来たる衝撃に身を備えて。 そして、ピロロの「ヒャダルコ」という詠唱が、二人に向かって放たれた。 ………。 ……。 …。 ――――――――――――――――――。 「が、はぁ!?」 鮮血が舞った。一閃の斬撃音と共に。 空を斬る、次いで何かが倒れる音が一つ。それだけが鳴り響き、辺りは再び静寂を取り戻した。 「……え?」 目を開ける。それは、二人にも予想できていなかった展開故に。 瞼を開いた視界の先、そこにあったのは胸を裂かれて血を流し倒れるピロロの姿と。 一人でに浮かぶ、一本の光剣だった。 「馬鹿な!?」 確信した勝利を外されて、キルバーンは驚愕の色でそう叫ぶ。 それを見て、ライダーはただ睥睨したまま言った。 「……貴様が如き影の性根、見破れんとでも思っていたか。 どのような戦況に陥ろうとも、貴様がまともにやり合わんというのは目に見えていた。故に、備えた」 ライダーはこの場へ急行する直前、お守りだと言って光にあるものを手渡していた。光の目には、それが小さなチェスの駒に見えただろう。 黒磁の素材で構築された小さなチェスの駒。 それこそは深淵の鍵。ニコラ・テスラが有する電界の剣を成す柄にして、神々の残骸。五本あるうちの最後の一つ―――ペルクナスである。 「さて、もう一度言おう。貴様に最早打つ手はない。潔く往生際を知るがいい」 「ふ、ふざけるな! 恐怖の死神と呼ばれたボクを、こけにしやがって……!」 声に混ざる焦燥。 呆然。状況、多分理解できていない。 死神の表情が変わっていた。他者を害する愉悦、見下して止まない自尊、敵へと向ける殺意、それらを塗りつぶすのは混乱と。未知への戸惑いと。 きっと恐怖も。そんな顔をしている。 「恐怖に怯える者が、恐怖を僭称するなど」 その瞬間。 「言語道断!」 彼の全身が輝く! 翠色の雷を激しく纏う! 「……また侮辱したな、ボクを!」 憤怒の気色が、キルバーンを覆う。 「侮辱することは許さない……! ボクは、あらゆる恐怖を我が物とし、全ての人間の生を統括する死の神! キミら如きが及ぶ存在じゃないんだよォ!」 地を蹴り全力で後退すると同時、キルバーンは手刀にて己が左腕を斬り落とした。 それは自暴自棄の表れであるとか、窮状にて狂ったとか、そういうわけではない。それは、彼が有する最大最強の攻撃、そのための準備なのだ。 切り離して左腕を、キルバーンは天高く放り上げる。頭上にて固定された腕は急速に回転を速め、いつしかその総身を巨大な火球へと変じていた。 キルバーンの体に流れる血液は魔界のマグマと同じ成分でできている。オリハルコンをも腐食させる強酸、常軌を逸した超高温。 それに点火すればこのように、万象焼き尽くす神火となって具現するのだ。 仮に、これを名づけるとするならば。 「決めたよ、キミらはここで完全に殺す……! バーニング・クリメイション……魔界の業火に灼かれて消えろォ―――!」 掲げられた右腕を振りおろし、連動して大火球もテスラの元へと投げうたれた。 超スピードで躱されることは考えない。何故ならその背後にはマスターの少女たちがいる。テスラはこれを受け止めるしかないのだ。 それを悟ってか、テスラもまた自分から火球へと突貫した。燃え盛る炎が唸りを上げ、テスラの体の全てを呑みこむ。 「ら、ライダー!」 「馬鹿め、自分から死にに行ったか!」 炎に呑まれた自分のサーヴァントを見て、南条光は絶叫した。それを遠目に見て、キルバーンは思わず愉悦にほくそ笑む。 これだ、この表情だ。 いつもそうだ、人間というものは。死に瀕すれば絶望に堕ち、仲間だ絆だと言う奴ほどそれを失うことを恐れる。寿命が短いから魔族などよりも深刻に考える、人間だけの特徴だ。 キルバーンはそういった人間の表情が大好きだった。 目の前で仲間が、頼れる誰かが燃え尽きていくのに手も足も出せない……! そんな時に彼らが浮かべる、絶望と! 苦悩と! 悲しみに満ちた表情が! 「火葬か。なるほど、皮肉な名だ」 けれど。 炎の中から。声、響いて。 「しかし生憎だが、私の死に場所は既に決まっている」 にわかに、雷が迸って。 「な、何故……」 内側から掻き消すように炎を散らして、テスラが静謐の面持ちで歩む。 全身からは膨大な雷電の放出、その全てが炎を砕いて止まらない。 「如何なる熱量も、 如何なる質量も、 我が雷電を打ち砕くこと能わず」 輝く双眸が、キルバーンを見据えた。 「こんなバカなァッ!?」 絶叫して、キルバーンを腰の剣を抜き放った。 何処からともかく現れた雷がそれを砕いた。 「くそ、くそッ!」 縦に裂かれながらも蠢いて、怒涛の勢いで吹き付ける炎熱の風を、テスラは砕く。 前に歩みながら体でぶつかるだけで砕く。 苦し紛れに再配置されたファントムレイザーを機械籠手が砕く。 再び、槍と化す炎を全身が砕く。 悉く、砕いて。砕いて。 砕きつくしてしまって。 それから――― 「―――!」 瞬間、彼の姿が消えていた。 どこへ消えた、と。相対していたキルバーンも、マスターたる光さえも視線を彷徨わせる間。既に。 「もういい、十分だ」 既に彼は死神の背後へと立っていた。 その両手、輝かせて―――! 「電刃―――」 「《電位雷帝の剣先(Vajra Needle)》」 細い細い、閃光が――― 誰しもの瞳を、白く白く染め上げて――― 轟音が、響き渡った。 ▼ ▼ ▼ 「……相討ちだろうと、俺は構わなかった」 静かな、静かな声があった。 無音の静寂の中、ただその声だけが、漆黒の中に澄み渡った。 「それでも良かった。相討ち(それ)が俺達の、果たせなかった決着の形だというなら。 この命くれてやろうと、俺は腹を据えていた」 睥睨して語る声は、どこまでも静かだった。 「だから貴様が何をしようと構わなかった。 貴様が動いた時、喉笛を射抜いてやることだけを考えていた」 睥睨して放たれる声は、しかし実のところ相手に語りかける類のものではなかった。 それは己に言い聞かせるように、独り言のように、滔々と呟かれた。 「だが貴様は違った。この世に未練を残し、過ぎ去った過去に悔いを残し、故に最期に"勝ち"を狙った。 無用の欲をかき、小細工を弄し、そうまでして死地(ここ)を生き抜きたいと願った」 口元の煙草を摘み取り、深く息を吐く。紫煙が一筋の糸のように流れた。 「故に、斯様な無様を晒すことになった。 ―――なあ、抜刀斎」 「づ、あ……」 そこにあったのは、全てが終わった戦場跡だった。 縦横無尽に切り裂かれたアスファルト、大小様々な無数の斬痕を残すコンクリ壁、まき散らされた鮮血。そして、勝者と敗者。 ―――倒れ伏す緋村抜刀斎と、それを見下ろす斎藤一の姿だった。 最期の一瞬、龍鳴閃が放たれたあの瞬間において、抜刀斎の予想とは裏腹に斎藤は一切の動きを止めることがなかった。 一瞬止まったかのように見えたのは、あくまで技を繰り出すための予備動作だったのだ。それを、抜刀斎は見抜くことができなかった。 牙突・零式。 それは間合いのない密着状態より、上体の発条のみで放たれる最強最後の牙突。 いずれ抜刀斎との決着のためにと考案し、しかし終ぞ使われることのなかった斎藤の奥の手だ。 あの一瞬、斎藤はただこの技を放つことのみを考え、しかし抜刀斎は龍鳴閃と次なる一手という"二手"を要した。 ならば先手を取れるのがどちらかなど論ずるに値せず。 順当に、ここに結果をもたらしたのだ。 「そうまでして聖杯が欲しいか。貴様が信じる新時代とやらが、それほどまでに愛おしいか」 「何、を……言って……」 しかしそれでも、抜刀斎は死んでいなかった。 牙突が放たれたその瞬間、死地にて開眼せし剣士の閃きか、積み上げた修練による結果か。いずれによせ彼は神懸かり的な反応を示し、その直撃を避けていた。 無論、それが無傷という結果に繋がるわけではないのは一目瞭然だ。 常人であった生前ですら、ティンベーと呼ばれる堅固な盾ごと人体を真っ二つにする威力を誇る零式だ。サーヴァントとなり、宝具として昇華された現在において、それは対人宝具として遜色ない比類なき威力を誇る。 事実、抜刀斎は虫の息だ。口からは赤色の濁流が止め処なく垂れ流され、周囲は血の海に沈んでいる。未だ人の形を保っているというそれ自体は奇跡的な事態ではあったが、それだけである。 勝敗は決した。 人斬り抜刀斎と呼ばれた剣客は、ここに敗北を喫したのだ。 「だがな、よく見ろ。この世界を。この街並みを。 戦もなく、疫病もなく、飢餓もない世の在り方を」 哀れむでもなく、斎藤はただ言った。 倒れる抜刀斎の頭を掴み、高く掲げて。 「無論世に悲劇の種は尽きんだろうがな。しかし、貴様が目指した新時代とやらは、既に実現してるんだよ。 貴様や俺達のような過去を生きた人間、そして今を生きる人間によってな」 「あ……」 見せつける。目を逸らせないよう、徹底的に。 かつて維新の志士たちが、幕府を守ろうとした剣士たちが。共に夢見、築き上げようとした未来の形を。 「時代は変えるものじゃない、変わっていくものだ。 そして時代を作り上げるのは、その世を生きる全ての人間だ。死者(おれたち)じゃない」 それは、あるいは手向けであったのかもしれない。 その身を貫く剣の一撃ではなく、あえて言葉によって、斎藤はこの"歪められてしまった"宿敵に最後の慈悲を与えた。 ひとりの人間として新時代を生きた、心優しき不殺の剣士を知る者として。 「まだ、だ……俺は、生きて……」 顔を掴まれ、その半ば以上を影に落とす抜刀斎が虚ろに言葉を漏らす。それは生きるという渇望か、願いを諦めきれないという悔恨か。 しかし、斎藤はそれを聞き届けることはなかった。龍鳴閃によって破壊された聴覚は未だ治癒していないのだ。 斎藤が手を離す。支えを失った抜刀斎の体が崩れ落ち、血の雫が飛び散った。 倒れ伏した抜刀斎を見下ろし、斎藤は今一度、腰の刀を抜き放つ。 一切の欠けがない白刃が、月光を反射して妖しく煌めいた。 振り上げられた切っ先が天頂を向く。物打ちが狙い定めるのは、首級。 風切る音と共に、刃が今、振り下ろされた。 ▼ ▼ ▼ 「ちぃ、どこまで行きゃいいんだよ」 夜の街に聳えるビルを、風のように飛び交う影がひとつ。 月の光を反射して、きらりと光る長い髪は、白銀。 恵まれた体躯をした、男の影だ。夜街を駆ける、加藤鳴海だ。 「あ、あの……」 「? おう」 「なんか、すみません。うちのルーザーが色々と失礼なことをして……」 「……いや、いいさ。アンタは多分悪くないだろ」 男の背から、ひょっこりと顔を出すみく。それに、鳴海は多少無愛想に対応した。 別に嫌いであるとか、敵意があるわけではない。ただ単に、距離感が分からないだけだ。 「っと、こんなところでいいか」 手近なビルの屋上へと着地し、鳴海は言う。背負ったみくを降ろし、腕に抱いていた未央―――未だ失神している―――を優しげな手つきでみくに渡した。 「……未央ちゃん、生きてる。本当に、生きてた……」 「ああ……そういやアンタ、俺のマスターの友達なんだってな」 眠る未央を掻き抱き、みくはここに来てようやく、彼女が生きていたのだという実感が湧いたのか、言葉を震わせて涙ぐんでいた。 それを見下ろす鳴海は、何とも言えない、けれどその奥に優しさを秘めたような目つきをしていた。 「……ありがとな。俺のマスターを気遣ってくれて」 「ううん、私なんて何も……あなたこそ、今まで未央ちゃんのこと助けようとしてくださって、ありがとうございます」 何ともぎこちない、不器用な会話であった。 それもそうだろう。何せ二人は、つい先ほどまで敵と言っていい関係だったのだから。 その垣根を壊したのは、みくのサーヴァントたるルーザーだった。 ―――単刀直入に言おう。僕は今からこいつを殺す。とはいえだ、実はちょーっと厄介な問題があってね。 ―――まあ具体的には僕にも分かってないんだけどさ。でも一つ言えるのは、こいつを殺す現場に僕やきみのマスターを近づけちゃ駄目ってことだ。 ―――そういうわけで、きみには今から二人を連れて遠くまで逃げてもらうよ。なに、きみのマスターを助けたことを思えば軽いもんだろ? ―――まさかとは思うけど、本田ちゃんの親友なうちのマスターを殺したりはしねえよな? 思い出すのは、病院にて交わされたルーザーとの会話だ。いや、会話というよりは一方的な講義であったが。 それが終わった瞬間、鳴海に打ち込まれた螺子は綺麗さっぱり消えて無くなり、鳴海は正気を取り戻した。そして彼の言うままに、二人を連れて逃避行と相成っていた。 鳴海としては、最初からみくを殺すつもりなどなかった。未央の親友云々もそうだが、マスターの、それも子供を殺すなんて真似を、彼がするはずもない。 けれど。 (……今からどうすりゃいいんだ、これ) 鳴海はサーヴァントを打倒することによる聖杯の獲得を狙っていた。サーヴァントを失ったマスターはこの世界の消失と共に消えてなくなることを、それが問題を先延ばしにするだけの逃避であることを承知の上で。 けれど、こうして未央の親友である前川みくがマスターとして現れた。現れてしまった。 死なせるわけにはいかなかった。本田未央の笑顔を取り戻すという、かつて誓った想いに懸けて。 ならば、自分はどうすべきなのだろうか。 泣きじゃくるみくを見下ろす鳴海は、未だ纏まらない思考で呟いた。 自分はどうするべきなのか、と。 『C-9/ビル屋上/二日目・深夜』 【本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】 [状態]失血(中)、魔力消費(小)、失神 [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [金銭状況]着の身着のままで病院に搬送されたので0 [思考・状況] 基本行動方針:疲れたし、もう笑えない。けれど、アイドルはやめたくない。 1.いつか、心の底から笑えるようになりたい。 2.加藤鳴海に対して僅かながらの信頼。 [備考] 前川みくと同じクラスです。 前川みくと同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。 気絶していたのでアサシン(あやめ)を認識してません。なので『感染』もしていません。 自室が割と酷いことになってます。 C-8に存在する総合病院に担ぎ込まれました。現在は脱走中の身です。 家族が全滅したことをまだ知りません。 【しろがね(加藤鳴海)@からくりサーカス】 [状態]精神疲労(中) [装備]拳法着 [道具]なし。 [思考・状況] 基本行動方針:本田未央の笑顔を取り戻す。 0.これからどうするべきか。 1.全てのサーヴァントを打倒する。しかしマスターは決して殺さない。 2.この聖杯戦争の裏側を突き止める。 3.本田未央の傍にいる。 4.学生服のサーヴァントは絶対に倒す……? [備考] ネギ・スプリングフィールド及びそのサーヴァント(金木研)を確認しました。ネギのことを初等部の生徒だと思っています。 前川みくをマスターと認識しました。 アサシン(あやめ)をぎりぎり見てません。 【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】 [状態]魔力消費(中)、決意 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]学生服、ネコミミ(しまってある) [金銭状況]普通。 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を取るのかどうか、分からない。けれど、何も知らないまま動くのはもうやめる。 1.人を殺すからには、ちゃんと相手のことを知らなくちゃいけない。無知のままではいない。 2.音無結弦に会う。未央は生きていたが、それとこれとは話が別。 [備考] 本田未央と同じクラスです。学級委員長です。 本田未央と同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。 事務所の女子寮に住んでいます。他のアイドルもいますが、詳細は後続の書き手に任せます。 本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。 アサシン(あやめ)を認識しました。 ▼ ▼ ▼ それは、全ての因縁が終末へと差し掛かった時のこと。 歪められた人斬りの鬼へと、人を嘲笑う道化人形へと、その刃が振り下ろされようとした時のこと。 『さて』 『ここが終だよ、カワイコちゃん』 周囲に誰もいない、街の中。 ただ一人立つ球磨川は、常と全く変わらない面持ちでそう言った。 『僕は今からきみを殺す。いや、サーヴァントどころか怪異でしかないきみに、この形容は不適切かな』 『ともあれだ、僕はきみをここで終わらせる。僕だけならともかく、みくにゃちゃんまで巻き込むのは本意じゃないからね』 『仕方ない、ああ仕方ないとも。そういうわけでだ』 語る球磨川の腕には、一人の少女が掴まれていた。 透き通るかのような長い黒髪、臙脂の服。奇妙なまでに古風な、それでいて神秘的な。そんな少女が、掲げられていた。 『ベタな台詞だけどね、一応言っておかなきゃいけない。 最期に言い残すことはあるかい?』 「わた、しは……」 微かに唇開く。鼻先より上は影になって、球磨川からはよく見えない。 「……ますたーに」 『うん?』 「わたしのますたーに会うことがあれば、一つだけ」 『……いいよ、聞こう』 彼にしては、珍しく。 心持ち穏やかな声で。 ただ、その言葉を聞いた。 「……たった数日でしたけど、わたしはとても楽しかったです、とだけ。お願いします」 語る少女の頬には。 つぅと一筋、伝って落ちるものがあった。 『……OK、会うことがあれば伝えよう』 そのまま、逆の腕に持つ螺子を構え。 少女の胸に、突き刺した。 ――――――世界がはじけ飛んだ。 ▼ ▼ ▼ 例えるなら、風船がぱちんと割れるように。 空間が弾けた。世界が弾けた。あまりにも呆気なく、簡単に。普通の世界は【なかった】ことになった。 より正確に形容するなら、あやめとは風船に描かれた人物画だったのだ。世界は風景画であり、風船に描かれた背景。あやめはその一部。そこに螺子を突き刺して、割れた。 世界と異世界を隔てる壁は、かくして脆くも崩れ去った。 風船が弾けるように空間がめくれて、その向こうにある"本物"の風景が露出した。 一瞬で世界は塗り潰された。 ……………。 影絵のビルが、摩天楼のように突き立っていた。 無機的な光を放つ街灯が、等間隔で真っ直ぐ並んでいた。まるで葬列のように、ずらりと、遠くまで。 街の中心。 誰もが、空を見上げていた。 夜空は、真っ赤だった。 絵具をぶちまけたように、そこは一色の赤だった。赤い空に、月が、まるで巨大な眼球のように"ぬらり"とした光沢で浮かんでいた。ぽっかりと浮かぶグロテスクな月が、ビルや街灯の影を地に落としていた。 影は、赤い。 赤く、長く、それを映す街路樹は、元の青々とした色を失っているのだった。 葉も、幹も、枝も。白く色褪せ、瑞々しいまでの枯草色と化していた。 赤い闇に、失われた命の色。それが、この世界を構築する全てだった。 耳鳴りが酷い。 気圧が違うのだろうか。だが、大気そのものが違うのだろう。この異界に堕とされた者は、誰もがそれを感覚的に捉えていた。 空気の香りが違うのだ。 やけに乾燥した、その"猛烈な枯草の匂いに微かに鉄錆を混ぜたような"奇妙な香りのする空気は、今まで誰もが呼吸したことのない種類のものだった。 弾けるように世界が切り替わった瞬間、濃密に周囲の空間に満ちた空気だった。 狂った世界の空気だった。 そこにいた全員が、異なる世界に呑まれていた。 下手人たる球磨川禊も。 いざ決着を付けんとする二人の剣客も。 外敵を退け歓喜する少女たちも。 敗れ去った道化師も。 ただ逃避する少年も。 全てが、ここでは平等だった。 その日、世界は本物の"異界"となった。 ………。 ……。 …。 ―――――――――――――――――。 ▼ ▼ ▼ 『大嘘吐き(オールフィクション)』 『僕への干渉を【なかった】ことにした』 こつん、と。 道路に降り立つ者がいた。それは、夜よりも尚暗い学生服を着て。 けれども常に浮かべている薄気味悪い笑みは、鳴りを潜め。 混沌よりも這い寄る過負荷、球磨川禊は現実世界への帰還を果たしていた。 余人には分かるまい、直前まで彼が一体どこにいたのかを。 何も変わらぬように見える街並み。彼が踏みしめる地点より、あと一歩でも後ろに下がればどうなるか。 何もないように見えるその境界を踏み越えれば、途端に世界が様変わりするのだということに。 気付く者は、いない。 『薄々感づいちゃいたけど、こりゃ正直予想以上だ。斜め上というか、急降下爆撃というか。 まあ僕の予想が当たったことなんてまるで覚えがないんだけどさ』 してやられた、というよりは。 幾度も味わい、けれど決して慣れることのないある感覚に襲われて。 球磨川は、その表情を渋いものとしていた。 『やられたよ。まんまとしてやられた。こんな状況に追い込まれた時点で、僕は負けたも同然だったんだ』 例えみくを守るためだとしても。 例え惚れた相手を助けるためだとしても。 無抵抗な女の子を一方的に傷つけてしまうなんて。 『また、勝てなかった』 そんなもの、徹頭徹尾どうしようもなく【敗北】でしかないだろう。 『C-8/街中/二日目・深夜』 【ルーザー(球磨川禊)@めだかボックス】 [状態]『……僕だってセンチな気分になることはあるよ』 [装備]『いつもの学生服だよ、新品だからピカピカさ』 [道具]『螺子がたくさんあるよ、お望みとあらば裸エプロンも取り出せるよ!』 [思考・状況] 基本行動方針:『聖杯、ゲットだぜ!』 0.『また、勝てなかった』 1.『みくにゃちゃんに惚れちまったぜ、いやぁ見事にやられちゃったよ』 2.『裸エプロンとか言ってられる状況でも無くなってきたみたいだ。でも僕は自分を曲げないよ!』 3.『道化師(ジョーカー)はみんな僕の友達―――だと思ってたんだけどね』 4.『ぬるい友情を深めようぜ、サーヴァントもマスターも関係なくさ。その為にも色々とちょっかいをかけないとね』 5.『本田ちゃん、生きてたねえ』『みくにゃちゃんはこれからどうするのかな?』 [備考] 瑞鶴、鈴音、クレア、テスラへとチャットルームの誘いをかけました。 帝人と加蓮が使っていた場所です。 本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。 アサシン(あやめ)を認識しました。彼女の消滅により感染は解除されました。 ※音無主従、南条主従、未央主従、超、クレア、瑞鶴を把握。 ▼ ▼ ▼ 「また、面倒なことを」 中空に、迸る一条の閃光。 瞬いた瞬間には、既に人の形を取っていた。 「現象数式領域か、あるいは《結社》の心理強制空間か。 どちらでもないのだろうな。酷似こそしてはいるが、あれは異界法則そのものだ」 両の手には、それぞれ気絶した少女を一人ずつ抱えている。必要だったから、咄嗟に彼がそうした。 あれは人の認識に訴えるものだ。経験上それが分かっていたから、即座に気を失わさせた。見ないものは無いも同然、その理屈である。 「あれを見ては、私の《恐怖麻痺》も通じまい。願わくば、あれに巻き込まれた者が少ないことを祈るしかないが……」 そう言って、テスラは傍らの少女に目線をやる。 「まずはこの少女の治療が先だな。早急な対応が必要になる」 そうして、彼はどこか遠い場所を見つめるように。 瞼を細めた。あるいは、何かを考えているのか。 「……道化人形は逃がしてしまったか。しかし、あれも長くはあるまい。 影潜む者は同じく影潜む者に討たれる。それが関の山であろうよ」 それだけを残すと、テスラは夜の中へと消えて行った。 雷電魔人、未だ倒れることはなく。 【C-8/無人の街中/二日目・深夜】 【仲村ゆり@Angel Beats!】 [状態]不調、全身にダメージ、気絶 [令呪]残り三画 [装備]私服姿、リボン付カチューシャ [道具]お出掛けバック [金銭状況]普通の学生よりは多い [思考・状況] 基本行動方針:ふざけた神様をぶっ殺す、聖杯もぶっ壊す。 0.…… 1.とりあえず、音無と行動。 2.赤毛の男(サーシェス)を警戒する。 死神(キルバーン)、金髪(ボッシュ)、化物(ブレードトゥース)は必ず殺す。 [備考] 学園を大絶賛サポタージュ中。 家出もしています。寝床に関しては後続の書き手にお任せします。 赤毛の男(サーシェス)の名前は知りません。 ケイジと共闘戦線を結びました。 音無結弦と同盟を結びました。 音無が対聖杯方針であると誤認しています。 異界を認識しなかったことにより、その精神にも影響は出ていません。 【南条光@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]健康、気絶 [令呪]残り三画 [装備]深淵の鍵"ペルクナス" [道具] [金銭状況]それなり(光が所持していた金銭に加え、ライダーが稼いできた日銭が含まれている) [思考・状況] 基本行動方針:打倒聖杯! 0.…… 1.聖杯戦争を止めるために動く。しかし、その為に動いた結果、何かを失うことへの恐れ。 2.無関係な人を巻き込みたくない、特にミサカ。 [備考] C-9にある邸宅に一人暮らし。 異界を認識しなかったことにより、その精神にも影響は出ていません。 学校鞄(中身は勉強道具一式)、思い出のプリクラは家に置いてます。 【ライダー(ニコラ・テスラ)@黄雷のガクトゥーン ~What a shining braves~】 [状態]魔力消費(小・急速回復中)、南条光と仲村ゆりを抱えている。 [装備]なし [道具]メモ帳、ペン、スマートフォン 、ルーザーから渡されたチャットのアドレス [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を破壊し、マスター(南条光)を元いた世界に帰す。 0.さて…… 1.マスターを守護する。 2.負のサーヴァント(球磨川禊)に微かな期待と程々の警戒。 3.負のサーヴァント(球磨川禊)のチャットルームに顔を出してみる。 [備考] 一日目深夜にC-9全域を索敵していました。少なくとも一日目深夜の間にC-9にサーヴァントの気配を持った者はいませんでした。 主従同士で会う約束をライダー(ガン・フォール)と交わしました。連絡先を渡しました。 個人でスマホを持ってます。機関技術のスキルにより礼装化してあります。 キルバーンに付着していた金属片に気付きました。 ▼ ▼ ▼ それは、発生した異界が収縮するように消え去った後のこと。 「くそ……ボクを馬鹿にしやがって……」 這いずるように遠ざかっていく。 それは人型をしながら、しかし人よりも遥かに小さい影。子供よりも尚小さい。 負った傷を自前で癒しながら、けれども完治には程遠く。痛みをおして遠ざかり行く。 現状、彼を蝕んでいるのは肉体的な損傷の他に、精神的なそれも含まれていた。 かの赤い空を見た瞬間、ピロロはあらゆる思考と感情が消し飛んで脳内が漂白される感触を経験した。それは画布に塗られた少量の絵具が、大津波で諸共に押し流されるように。彼の感性は一時的な喪失状態となっていた。 元が魔界の存在である彼は、それでも辛うじて異界の消滅まで耐えきることができたが。 精神に刻まれた傷は、癒されることなく彼の心象に深く根付いた。 「いや……いや、まだだ……まだ誰もボクをサーヴァントだとは気付いてない。ならまだチャンスはある……!」 ピロロの持つスキルに、正体秘匿というものがある。 生前においてその正体を誰にも知られることなく、最終目的を完遂する直前まで行ったという逸話が昇華したこのスキルは、文字通りピロロの正体を絶対的に隠匿するというものだ。 契約を結んだマスターであろうとも、ピロロをサーヴァントとして認識することは誰にもできない。ピロロは単なる使い魔としてしか表示されず、アサシンのサーヴァントとして認識されるのはあくまでキルバーン。彼を身代わりに、ピロロは如何なる危難であろうとも逃れ得る。 例えばつい先ほどのように。 「魔力なんてそこらの連中を殺せばどうとでもなる……キルバーンさえあればボクがやられることなんてないんだ……! そうさ、誰もボクの正体を知ることなんてないんだから……!」 故に、ピロロは下卑た笑みを絶やすことなく、次なる行動へと移るのだ。 どんな状況に追い込まれても、自分には再起の芽が存在する。 何故なら誰も、例え裁定者であろうとも、自身の正体を知ることはありえないのだから! ――――――――――――――――――。 『こんにちは、ピロロ』 ――――――――――――――――――。 正体を知られることは、ありえない。 その、はずだ。 【C-8/無人の街中/二日目・深夜】 【アサシン(キルバーン)@DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 】 [状態]全壊、死神の笛全壊、ファントムレイザー喪失 [装備]いつも通り [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。 1. …… [備考] 身体の何処かにT-1000の液体金属が付着しています。 【アサシン(ピロロ)@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】 [状態]魔力消費(中)、ダメージ(大・ホイミにより回復中)、精神疲労(極大)、ストック0 [装備]いつも通り [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。 0.今は逃げる。 1.とにかくキルバーンを復活させられるだけの魔力を補充する。手段は問わない。 [備考] 緊急事態であったため、まだT-1000の液体金属には気付いていません。 しかしじっくり観察すれば気付く事ができます。 異界を認識したことにより一時的発狂状態に陥りました。もう回復しました。 ▼ ▼ ▼ 「俺は……生き残ったのか」 壁に寄り掛かるようにして辛うじて立つ人影が一つ。 夥しい量の血液を流し、無残に切り裂かれた装いで、しかし手に持つ剣だけは決して手放すことなく、緋村抜刀斎は這いずるように歩を進めていた。 「どうなったんだ……俺は、あの時……斎藤は……」 斎藤に敗れ倒れた後、次に目を開いた時には全てが終わっていた。枯草と、僅かな鉄錆が混じったような香りが鼻腔に広がったかと思えば。 凪いでいた。半刻前のように、元治元年の冬のように。 あらゆる物が、消え失せていた。 宿敵たる、斎藤一でさえも。 「どこだ……」 ……流血は既に止まっている。損傷は全快には程遠いが、致命傷に成り得ないだけの浅さまで無理やりに補填が完了している。 身に宿す魔力を用いれば、この程度は魔術の素養のない抜刀斎であろうとも、サーヴァントに備わった治癒能力として再生が可能であった。無論、元々の貯蔵量の少なさと魔力ステータスの低さ、そして負った傷の深さからか、瀕死の重傷であることに変わりはないが。 失血により思考が鈍麻していた。視界が白み、朦朧として考えが纏まらない。しかし、抜刀斎はただ"生きる"のだという根源的な指針に基づいて、生存へと向けて体を動かしていた。 そこが、彼と斎藤の命運を分けた差であった。 斎藤一は一切の未練も願いも持ち合わせてはいなかった。この聖杯戦争に喚ばれたのはあくまで座の気まぐれと語り、当初より悪辣な輩の討伐のみを方針に掲げ、聖杯を破壊するというマスターの意向に否を示さなかった。 それは人生を全うした者としての潔さの表れであったが、同時に死者の生に縋らないという、生の欲求の薄さの裏返しでもあった。 だからこそ斎藤は、土壇場で相討ち必至の剣戟を演じることができたし、その果てに一時の勝利を得ることもできた。 だが、それだけだ。 彼は決して捨て鉢ではなかったのだろう。命ある限り剣を振るい、できるだけ長く生存し悪・即・斬の志を貫こうともしたのだろう。だがそれは、決して生きたいと願っていたわけではないのだ。 抜刀斎は違った。 彼はあの瞬間、誰よりも切実に"生きたい"と願った。生きて聖杯を掴み、焦がれてやまない願いを叶えるのだと、そのために生きるのだと願った。 例えそれが後世の逸話により捻じ曲げられたものであったとしても、それは彼の真であり、生への欲求であった。 生きたいと願った者。偽りの生を唾棄すべきと否定した者。 どちらが生き残るかなど、論ずるまでもないことであった。 異界の残り香は消え果てた。 枯草と鉄錆の匂いはもうしない。 芳るは、ほのかに――― 【C-8/無人の街中/2日目・深夜】 【アサシン(緋村剣心)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】 [状態]ダメージ(大)、疲労(大)、失血、魔力消費(大) [装備] [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針: 平和な時代を築く為にも聖杯を取る。 1. どこへ行った、斎藤…… [備考] サーシェスが根城にしているホテルを把握しました。 C-8で発生した戦闘を一部目撃しました。ボッシュ及びブレードトゥースとガン・フォールの戦闘を垣間見ました。仲村ゆり、斉藤一、キリヤ・ケイジ、キルバーンの姿は見ていません。 マスターである神条紫杏と情報を共有しました。 仲村ゆり、音無結弦、加藤鳴海を認識しました。 斎藤一が死んだことに気付いていません。 ▼ ▼ ▼ この物語は、ここでお終いである。 主を守護せんとするしろがねは、二人の少女と共に舞台に関わることはなく。 雷電王はただ己が主命を果たすだけで。 南条光と仲村ゆりは、ただ一時その身を安寧に委ね。 緋村剣心と斎藤一はかつての決着をつけ。 死神はただ逃避し。 負の王たる球磨川禊は全てを台無しにして。 ならば、最後の一人。 死神と雷電王の対峙から逃げ出し、そのまま消え去った少年は一体どうしたというのか。 それは――― ………。 ……。 …。 ―――――――――――――。 赤色の空で。 月が、ひとりでに嗤っていた。 異界の夜。 空には"ぬらり"と光沢を放つ月が瞬いて。 空には月があった。 空には星があった。 しかし、どちらも寓話的に歪んで。 惑星、恒星、衛星の輝きではない。 もっともっと禍々しいものだ。 異界にて孤高なる月。 異界にて異形なる月。 それはまるで眼球のように。 それはまるで相貌のように。 まるで、地上の人々を嘲笑うかのような。 たったひとりで空に浮かび、孤独もなく。寂寥もなく。 あらゆるものを嗤うのか。 あらゆるものに慈悲の瞳を投げかけて。 あらゆるものに侮蔑の瞳を見せつけて。 月が嗤う。 月が嗤う。 虚空に浮かびて嘲笑う、黄金の月が――― 「あやめ……あやめッ!」 その中を、音無結弦はただ懸命に駆けていた。 失ったものを取り戻すように、これ以上失わせないように。 「あやめ、どこだ……くそっ」 ―――異界が発生した瞬間、音無には何故か"それがあやめに起因するもの"であるということが分かった。 状況は分からない。しかし、彼女の身に何かがあったことだけは、分かった。 だから駆けていた。彼女を失うわけにはいかないから、失いたくなかったから。 音無は駆け出し、赤い影に覆われた細い路地を曲がる。更に細い路地の向こうで、誰かの影が見えた。小柄な影、臙脂の色が見えたようにも思う。 病院は近い。音無は更に細い路地へと入る。大通りは駄目だった。直感ではあるが、あそこに行ってはいけないような気がするのだ。"大勢の誰かの気配がある"大通りには。 「待て、待ってくれ……俺は……!」 影は路地の向こうで角へと消える。音無は追い、更に奥へと分け入る。影は更にその向こうの角へ、音無は追い縋り、更に昏い路地へ――― 「!?」 急な暗転に、音無は動転した。 闇が、辺りを包んでいた。今までのような夜の闇ではない。向こう側まで見通せるような、日毎現れるそれではない。 音無を包んでいるのは、一片の光もない、闇。 それでいて地平線の彼方までをも見渡せる、矛盾した闇だった。 闇。 静寂。 ただ、自分の荒い呼吸の音だけが、むなしく宙へと拡散した。 沈黙。 静寂。 …………。 ……………………。 ふと、気付いた。 人の姿に、音無は気付いた。 見ると、遠い向こうに、白い人型が立っている。 音無は、思わず声をあげた。 「あやめ……」 果たして、本当にそうなのか。遠すぎてよく見えない。 白い人型は背を向け、歩み去っていた。 遠くへ、遠くへ。 闇から、闇へ。 徐々に離れていくその姿は、何故だか今にも消えていってしまいそうなほどに希薄だった。 今にも溶けて、消えてしまいそうだった。 酷く、胸騒ぎがした。 「……あやめ!」 呼ぼうとしたが、声が掠れて言葉にならなかった。異常に喉が渇き、喉の奥が張り付いて言葉が出ない。喉は、ただ空気を嚥下して喘ぐことしかできない。 そうするうち、白い誰かは闇に呑まれ、消えてしまった。 その姿に酷い不安を感じ、一歩を踏み出した。 その時だった。 『こんにちは、ユヅル』 闇が、嗤った。 「ッ!?」 囁く声に音無は振り返る。 声はすぐ近くから聞こえた。まるで自分の背中から、耳元で囁かれたように。 音無は、驚愕と共に振り返って。 その向こうにあるものを、見て。 ―――あやめが、いた。 ―――瞼閉じる彼女は、もう二度と動くことはなく。 ―――黒い道化師に、その体を抱かれていた。 音無は見た。瞼の先にあるもの。 一寸の先をも見通せぬ闇の中にあって、しかし地平の彼方まで見通せる矛盾を孕んだ視界の先を。 決して幻ではない。それは、確かに崩壊の中の現実だった。 ―――ああ。 ―――視界の中央で道化師が踊っている。 音無は現実の何たるかを知っていた。そして、視覚がもたらす情報を正確に認識していたはずだった。 しかし、それを音無は疑う。 それはありえない。 闇の中で踊る影。 それはサーヴァントでも、まして人でもなかった。 黒色の道化師。囁きかける何者か。 それは、この街において音無の視界の端にいた。 それは、決して現実ではない幻影のはずだった。 諦めの証。 偽りの街にあって自分が諦めかけているのだと、音無自身に自覚させていた、狂った道化師。 それが、こうして視界の真ん中にいて。 あやめを掴んで離さない。 「お、まえ……は……」 彼は踊っていた。 片腕の中に、瞼閉じるあやめの体を抱いて。 ひときわ高い高い場所にある尖塔の先に立って、道化師は少女を捕え、小さな顎を掴み、滑らかに体を踊らせる。 ―――異界による世界の崩壊と侵食で満たされた中で。 ―――道化師だけが、その影響を受けずに。 「お前は……なんだ……?」 知らず、声が漏れ出た。 無意識の声だった。それは、音無自身も自覚しないままに。 「馬鹿な……そんなことあってたまるか。お前は、俺の……」 呆然と呟く。震える声で、今や消えゆく彼は、静かに呟いた。 「俺の、幻……幻のはずだ……」 『そうだね。でも、そうじゃない』 それは言葉。 耳へと届く声ではない。 崩壊と侵食がもたらす無音の世界に在って、道化師の言葉は確かに音無の耳に届いた。 嘲笑する声。"お前も諦めたのか"という声。 『こんにちは、ユヅル』 『既に天使は失われた』 『だから、共に眠るといい』 『―――諦めるときだ』 瞬間。 視界が再び暗転した。 世界が切り替わった。道化踊る赤色の闇から、元の書割じみた街の情景へ。 踊る道化師の姿は消え失せていた。 代わりに目の前にいたのは、白い人型。 ああ、その姿は、まるで。 「かな、で……?」 それは、音無が求めてやまない姿だった。 もう一度見たいと思った顔だった。 もう一度聞きたいと思った声だった。 もう一度会いたいと思った人だった。 けれど、今はこうして異界の中で。 何か得体の知れない別のものとしか、認識できなくて仕方がない。 『どうして』 問いかける声が、音無に届く。 表情は見えない。俯いたその顔は、暗くて表情が伺えない。 『どうして』 声が届く。 答えられない。彼女は、何を、言っているのか。 音無は答えない。答えられず、ただ、その手を伸ばして――― ばしゃり。 と、水音だけを残して、天使の姿は溶けてなくなった。 水が弾けて崩れるように、白い人型はその姿を散らせていた。 「あ、あ……」 音無は、ただそれを見つめていた。 今まで天使がいた空間を、見つめていた。 口から漏れ出るのは悲鳴だ。それは喪失から来る悲嘆か。 いいや違う、音無は歪んだ表情をして、そこに込められた感情は、恐怖。 「あ、ああ、あ――――ああああああああああああああああぁぁぁぁああああぁぁぁああぁぁああぁぁッ!?」 音無は空間の一点を見つめ、ただただ悲鳴を上げていた。 今まで天使がいた空間。今は誰もいない。水音と共に、弾けて消えた。 しかし何が見えるのか。音無はそこに視点を固定したまま、叫んだ。 音無の顔は、歪んでいた。 今まで天使がいた、今は何もない空間の地面から、まるで今そこに天使が立っているかのように人の形をした影が伸びていた。 赤い、赤い影。 そこに何がいるのか。 音無は何を観たのか。 次の瞬間、吹き抜ける風と共に空間が鳴動し、赤に染まった異界の風景は一瞬にして"元の世界"へと戻っていた。 月が、空が、影が、草木が、瞬く間に元の色を取り戻した。風に持ち去られるように、異界の空気が失われた。 元の姿へ戻った世界は、何もなかったかのように、ただ無機質な静けさのみを湛えていた。 異界があったという痕跡は。音無結弦という少年がいたという証は。 最早どこにも残されていなかった。 【あやめ@missing 消滅】 【斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 消滅】 【音無結弦@Angel Beats! 消滅】 ※C-8の特定箇所を中心に同エリア内の一定範囲に異界が発生し、範囲内のNPCが全滅しました。現在は終息しています。 BACK NEXT 052 そしてあなたの果てるまで(前編) 投下順 053 願い、今は届かなくても 052 そしてあなたの果てるまで(前編) 時系列順 053 願い、今は届かなくても BACK 登場キャラ NEXT 052 そしてあなたの果てるまで(前編) 仲村ゆり セイバー(斎藤一) GAME OVER 音無結弦 アサシン(あやめ) 本田未央 055 そして、彼らは手を取った しろがね(加藤鳴海) アサシン(緋村剣心) 前川みく 055 そして、彼らは手を取った ルーザー(球磨川禊) 南条光 060 その願いは冒涜 ライダー(ニコラ・テスラ) アサシン(キルバーン・ピロロ) 057 戦の真は千の信に顕現する 042 生贄の逆さ磔 天使 053 願い、今は届かなくても
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ゼノブレイド2 機種:NS 作曲者:光田康典、ACE(工藤ともり、CHiCO)、平松建治、清田愛未、Mariam Abounnasr(編曲) 開発元:モノリスソフト 発売元:任天堂 発売年:2017年 概要 雲の海に漂う巨神獣(アルス)の上に人々が住んでいるアルストという世界を舞台にしたRPG。 作曲は『ゼノブレイド』から下村陽子氏以外の5人が引き続き担当。 無印とは別の次元なので世界観・ストーリーの関連性はあまりないが、「グーラ領」と「ガウル平原」、「Counterattack」と「敵との対峙」など、無印のBGMを意識している曲がいくつかあるので、無印のユーザーはより楽しめるだろう。 サウンドトラックは2018年5月23日に『通常盤』『USB豪華盤』『CD豪華盤』の3形態で発売。 通常盤には本編の楽曲105曲が収録され、それに加えて豪華盤2種にはジングル16曲・Ivan Linnによるアレンジ 演奏の5曲が追加された計126曲が収録される。 2018年9月14日にエキスパンション・パス最終弾として追加シナリオ『黄金の国イーラ』が配信。 500年前のアルストを舞台とした完全新規のストーリーであり、新規に11曲が書き下ろされている。 作曲陣は本編の5人が引き続き担当しているが、アコースティック編成によるジャジーでグルーヴィーな楽曲が特徴。 サウンドトラックは2018年12月14日に各種音楽配信サイトから通常音源・ハイレゾ音源が配信された。 収録曲 曲名 作曲者 編曲者 補足 順位 Disc 1 Xenoblade II - Where It All Began - 光田康典 オープニングムービー Elysium, in the Blue Sky レックスのモノローグシーン アヴァリティア商会 ACE アヴァリティア商会/夜 バーンのテーマ 平松建治 嵐の船上 ACE 古代船 清田愛未 Exploration ACE 通常戦闘(古代船、廃棄された工場、エルピス霊洞) 第12回308位 蠢くモノ 平松建治 シンに胸を刺し貫かれるレックス 夢の中の楽園 光田康典 記憶の世界でのレックスとホムラの会話シーン 目覚め 平松建治 第一話:レックス復活シーン最終話:ラスボスにトドメを刺すシーン 交わる剣 第一話:メツとの剣戟シーン他 Incoming! ACE 第一話・第三話・第七話:メツ戦(三話はヨシツネとタッグ)他 第12回86位第13回173位第14回323位第15回381位第16回179位2017年19位第3回任天堂296位 グーラ領/森林 清田愛未 グーラ領(下層) グーラ領 ACE グーラ領(下層以外) 第12回140位第14回818位2017年99位 グーラ領/夜 グーラ領(下層以外・夜) 戦闘!! 平松建治 通常戦闘(グーラ~ルクスリア) 第12回115位第13回164位第14回250位第15回580位2017年33位第3回任天堂129位通常戦闘曲15位 トリゴの街 ACE トリゴの街/夜 人相書きとニア 第二話:人相書きのシーン他 生命の予兆 平松建治 ブレイド同調画面 ブレイド誕生 レアブレイド誕生 ノポンの少年 ACE トラ登場シーン他 Tiger! Tiger! 清田愛未 タイトル~ステージ(行き)~ステージ(帰り)~リザルトのメドレー ミニゲーム92位 立ちこめる暗雲 平松建治 第五話:ローデリッヒが巨神獣兵器を視察するシーン他 Disc 2 巨神獣戦艦 ACE 巨神獣戦艦、第六話の牢屋脱出後のテオスカルディア Monster Surprised You 平松建治 ボス戦全般(第一話:メガロエッジ・ ディブロ戦、第二話:モーフ戦他) ボス戦273位 焦燥 清田愛未 第六話:ゼーリッヒが手紙を破り捨てるシーン他 在りし日のふたり 光田康典 タイトル第五話:レックスとホムラが墓参りするシーン他 第12回475位第2回オープニング128位 触れあい 平松建治 第二話:メレフ戦後の傷の治療をするレックスとホムラのシーン他 そびえ立つ世界樹 平松建治光田康典 平松建治 第二話:グーラ下層を抜けた直後のイベントシーン第三話:船で世界樹に近付こうとするシーン第六話:ルクスリアの巨神獣登場シーン サーペント ACE 第三話・第七話:サーペント襲来シーン第四話:廃棄された工場(脱出)第八話:デビルキング・グルドゥ戦 インヴィディア/腹の中 清田愛未 アギドの漂流地 フレースヴェルグ傭兵団 平松建治 第12回773位 フレースヴェルグ傭兵団/夜 死闘イーラ ACE 第三話:ヨシツネ戦他 ボス戦202位 インヴィディア烈王国 平松建治 第12回201位第15回890位第16回975位2017年146位第3回任天堂206位 インヴィディア烈王国/夜 行く手を阻む者たち ACE ユニークモンスター戦(グーラ、インヴィディア)クエストボス戦(トライ・マーリン戦他)サントラではミックスし直されており、ゲーム内の音源とは異なる 第12回156位第14回755位2017年114位 首都フォンス・マイム 平松建治 首都フォンス・マイム/夜 英雄の生涯 清田愛未 フォンス・マイムでの演劇シーン 闇の始動 ACE 第七話:ホムラの下へ急ぐレックス達の前にメツが立ちはだかるシーン他 Drifting Soul 第三話:メツ&ヨシツネ戦挿入ムービー最終話:ラストバトル挿入ムービー歌:Jen Bird 第12回57位第13回227位第14回92位第15回924位第16回249位2017年50位泣き曲44位第3回ゲームソング16位第3回任天堂155位 Disc 3 Counterattack 平松建治 イベントムービー時 第12回3位第13回5位第14回9位第15回18位第16回29位2017年3位第3回任天堂27位 さらに名を冠する者たち 第三話:メツ&ヨシツネ戦(ヒカリ覚醒後)ユニークモンスター戦(スペルビア以降) 第12回42位第13回99位第14回234位第15回103位第16回275位2017年32位第3回任天堂186位ボス戦30位 哀惜 ACE 第三話:メツ&ヨシツネ戦後のレックスが泣き崩れるシーン他 悔恨 第七話:サイカ・ニアの回想シーン他 ブリーフィング 清田愛未 傭兵団任務選択時 ドライバー VS ACE 敵ドライバーとの通常戦闘アルタル・ドライバー戦や憂国のガルロ戦 第12回492位2017年184位 帝都アルバ・マーゲン 帝都アルバ・マーゲン/夜 疾走 キク追跡イベント スペルビア帝国 ~赤土を駆け抜けて~ 平松建治 スペルビア帝国(昼) 第12回8位第13回23位第14回58位第15回84位第16回140位2017年11位第3回任天堂54位 スペルビア帝国/夜 覇王の心眼 ACE ジーク登場シーン他 雷轟!アルティメット 第三話・第四話:ジーク戦 第12回964位ボス戦247位 最強サクラの歌 平松建治 第四話:サクラ戦、第六話:Gサクラ戦、大首領のドーン戦 第12回525位第13回947位2017年221位ボス戦157位 朝陽に跳ぶ クエスト解決後のシーン他 第12回918位第3回任天堂265位 リベラリタス島嶼群 ACE 第12回488位2017年138位 リベラリタス島嶼群/夜 2017年194位 故郷 イヤサキ村 故郷/夜 イヤサキ村(夜) 日だまりの中で 清田愛未 第三話:ヴァンダムがドライバーの役目について語るシーン他 Disc 4 Our Eternal Land 光田康典 アーケディア法王庁歌:ANÚNA We Are the Chosen Ones 光田康典 Mariam Abounnasr アーケディア法王庁(夜)歌:ANÚNA 疑念 清田愛未 第三話:コールの下にメツとヨシツネが現れるシーン他 迫りくる危機 ACE 第五話:巨神獣兵器アエーシュマ襲来シーン テンペランティア 罪深き懇望の果てに 光田康典 Mariam Abounnasr 第五話:インヴィディア襲来シーン ルクスリア王国 ACE 第12回513位 ルクスリア王国/夜 Ever Come to an End 光田康典 王都テオスアウレ歌:ANÚNA Shadow of the Lowlands 光田康典 Mariam Abounnasr 王都テオスアウレ(夜)歌:ANÚNA 暴かれる過去 ACE 第八話:メツがマルベーニの下を去った時のシーン他 意志 光田康典 第五話・第六話:シン戦闘後最終話:オープニングムービー 寂寞 平松建治 第七話:自暴自棄に陥ったレックスを奮起させるシーン エルピス霊洞 清田愛未 エルピス霊洞、第一話のウズシオ、第五話のアーケディア巨神獣船 張り詰めた糸 第六話:アーケディアでの会談シーン他 Drifting Soul (Violin Version) ACE 第七話:ニアが吹っ切れるシーン 微かな希望 光田康典 第七話:レックスが楽園でアデルと会話するシーン他 モルスの断崖 平松建治 モルスの断崖、廃棄された工場 それでも、前へ進め! 通常戦闘(モルスの断崖、モルスの地、世界樹) 第12回43位第13回95位第14回93位第15回101位第16回247位2017年20位第3回任天堂205位通常戦闘曲50位 モルスの地 ACE Disc 5 ユグドラシル 光田康典 Mariam Abounnasr 世界樹 第12回910位2017年134位 遠く、遙かな過去 光田康典 マルベーニの回想 人と闇と ACE光田康典 ACE 第七話:ゼーリッヒがルクスリア建国の歴史を語るシーン他 シンの力 光田康典 第六話・第七話・第九話:シン戦(七話はメツとタッグ) マルベーニ ~神の代行者~ 光田康典 Mariam Abounnasr 第九話:マルベーニ戦 君と歩く道 ACE 第七話:シン&メツ戦前ムービー第九話:マルベーニ戦後ムービーエンディング:ホムラ/ヒカリ、ハナ、セイリュウの会話(前半のみ) 第12回323位 オービタルリング 光田康典 清田愛未 第一低軌道ステーション上層 廃墟 清田愛未 第一低軌道ステーション上層(楽園) 彷徨う心 第三話:インヴィディアの巨神獣に飲み込まれた直後のシーン他 フラッシュバック ACE 最終話:味方の幻影戦 静かなる雲海 第五話:巨神獣船でのヒカリとファンの会話第八話:ヒカリとハナの約束を結ぶシーン 消えゆく世界 第一低軌道ステーション下層(タイタン格納庫) Battle in the Skies Above 通常戦闘(第一低軌道ステーション)ブレイドクエストボス戦 絶望と希望…そして 平松建治 最終話:ラスボス戦 第12回385位第2回ラストバトル161位 二人の望み 光田康典 Mariam Abounnasr エンディング:ホムラ/ヒカリとの会話 決別 エンディング:ハナとの会話 君との未来 光田康典Mariam Abounnasr 第七話:シン&メツ戦挿入ムービーエンディング:ホムラ/ヒカリの独白 第12回153位第13回521位第14回702位第15回265位第16回490位2017年179位第2回エンディング256位第3回任天堂156位 脱出 ~雲を抜けて~ 光田康典 エンディング:セイリュウとの会話 楽園 光田康典 Mariam Abounnasr エンディング:巨神獣登場シーン White All Around Us スタッフロール前半 One Last You 光田康典 スタッフロール後半歌:Jen Bird 第12回99位第13回614位第14回126位第15回471位第16回886位2017年78位第3回ゲームソング34位第2回エンディング15位第3回任天堂202位 Disc 6(豪華版限定収録) 新エリア発見 光田康典 チュートリアル クエスト受注 平松建治 ランドマーク 光田康典 秘境発見 安らう心 レベルアップ ブレイドゲット 平松建治 レアブレイドゲット ブレイド確定 ACE バトルリザルト 平松建治 サルベージリザルト キズナリングコンプリート ACE 討伐成功 スキル発動 光田康典 クエスト達成 ACE グーラ領 (Piano Arrange) ACE Ivan Linn ゲーム内未使用 戦闘!! (Piano Arrange) 平松建治 古代船 (Piano Arrange) 清田愛未 Counterattack (Piano Arrange) 平松建治 One Last You (Piano Arrange) 光田康典 「黄金の国イーラ」追加楽曲 二人の時間の始まり 光田康典 Mariam Abounnasr タイトル画面「A Moment of Eternity」のアレンジ リサリア原生林 清田愛未 リサリア地方 戦闘!!/イーラ 平松建治 通常戦闘(黄金の国イーラ) 第13回2位第14回6位第15回10位第16回7位2018年2位スマブラ164位第3回任天堂2位通常戦闘曲3位 四足のアルス/グーラ ACE 「グーラ領」のアレンジ 第14回574位2018年13位 イーラ王国 アレッタ地方・ダナ砂漠地帯 イーラ王国/夜 アレッタ地方・ダナ砂漠地帯(夜) 王都アウルリウム 清田愛未 2018年115位 王都アウルリウム/夜 落胆と憎悪の果てに 光田康典 Mariam Abounnasr メツ戦「マルベーニ ~神の代行者~」のアレンジ 2018年209位 交わる事のない道 エピローグ戦「シンの力」のアレンジ 2018年126位 A Moment of Eternity 光田康典 スタッフロール歌:Jen Bird 2018年126位第3回ゲームソング109位第2回エンディング162位 サントラ未収録(DLC「チャレンジバトル」関連) 名を冠する者たち ACE+ ユニークモンスター戦(ゲーム設定「スペシャルBGM切替」を有効にし、シュルクまたはフィオルンがパーティにいる時のみ) Uncontrollable 澤野弘之 ユニークモンスター戦(ゲーム設定「スペシャルBGM切替」を有効にし、エルマがパーティにいる時のみ) Wir fliegen オーバークロックギア発動時 サウンドトラック ゼノブレイド2 オリジナル・サウンドトラック ゼノブレイド2 黄金の国イーラ オリジナル・サウンドトラック Xenoblade2 Sound Selection 限定版に付属 紹介映像 黄金の国イーラ 紹介映像
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カードリスト 能力 https //login.alteil.jp/lhCardDB/detail.php?id=378 解説 ハンデスに特化したユニットカード。 アタック発動によるランダムハンデスと共に、相手の手札が1枚以下であれば即死効果が追加で発動する。 アタック発動はハンデスのほうが先に行われるため実質相手の手札2枚以下の時に即死にすることができる。 また手札にローティアのカードが3枚以上あれば、敗北エリア発動にて相手の手札を覗き見カード1枚を指定ハンデス可能。 情報アドバンテージの確保により、以後の対戦をより有利に進める事が可能となる。 その余りにも強力なスキルの為か、LV4ユニットでありながらステータスはLV3基準ステータスへと抑えられている。 最悪の二つ名に相応しい凶悪なカードである。 コンボor必殺コンボ 星の怒り 即死効果に期待して直接サポートに配置して良し。 手札リセット後の追撃に期待して良しと、コンボのみならずシナジーも優れる。 運命の一撃 墓地にローティアのカードが4枚以上と条件はやや厳しいが、即死・ハンデス・SPロックと多彩な効果を発揮するLV1サポートグリモア。 オープンタイミングでのハンデス・アタック発動の即死・手札ローティア依存敗北エリアスキルの発動条件につながる墓地ローティア依存スキル(黒単推奨)と、コンボのみならずシナジーも優れる。 黒竜の騎士『ミリア』 ハンデスとは噛み合わないが、竜皇帝『ジュッズヴァー』の踏み倒し型【竜族】であれば手札にローティアのカードが欲しい為採用は検討に入る。 覗き見効果を能動的に活用できるだけでも、非常に強力。 カード背景 混沌の美女『アンナローゼ』の子飼であり、殺人兵器『ラ・ボォ』の兄貴分。 愛剣である絶命剣を用い、最悪をもたらす。 関連ファイル 【ハンデス】 【星の怒り】 関連カード 絶命剣 殺人兵器『ラ・ボォ』 混沌の美女『アンナローゼ』 関連用語 覗き見 収録 第5弾『戦いの果てに』
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No.001「世界の果てへ俺、参上!!フォウスティル編」 第一回となる今回はルーセントハートの2009年6月20日時点での南東の果てであるイカロスの谷の奥地へ行く事としました。 今回の経路はこんな感じです。 では、2009年6月20日23時頃出発。 ラクシュミィ、マスさん、スルさん&私のサブ三人を引き連れてアンティカから花の森へ飛び、徒歩で沈黙の井戸へ移動。いろんな意味での冒険が始まる。 喉切り海岸から闇市へと移動。そこで、一息入れながら軽く観光。 妙に可愛い闇市の魔法商人スヴェーターさんとパン商人ノスペードさん。この二人のアバとかかなり良くないですか?ロングのヘアースタイルとかほしくなりませんか?というか、そこらのアバより断然いい感じなNPCって何さっ!! 闇市の中央には地図にも載っていない巨大な何かがありました。 近づいてみましょう。 巨大ドリル発見。どうやら、何かを採掘しているようです。近くで動いているのを見ると迫力満点ですが間違っても虫歯の治療中に思い出したくはない光景ですね・・・。 観光も終えて、すぐさまイカロスの谷へMAP移動。 入ってすぐの深渓橋にて滝を発見。 静止画だと、何がなにやらですが、実際行って見るとなかなか感動するかもすれません。マイナスイオン効果で癒されます~。 ネズミ目ビーバー型の彷徨う工匠とオッサン目覆面オッサン型のオーレリモンスター。 見づらいですが、ビーバー可愛いですね。オッサンはオーレリーさんとは無関係・・・のはずw その後、徳之助さんとトッシーさんも合流し、滝をくぐって切断工房を経由してルーセントハート的南東の果て、奇想ホールへ。 この辺はさすがに敵が強くなりまして、徳之助さんがいてもSSを取る心の余裕がなかったです。すみません。 そして、念願の世界の南東の果てへ!! そして、ゴール!!当初は雪花嵐舞開設時の無謀全滅ラビを再現なるか?と思われましたが、ヒーラーと途中参加の徳之助さんという新たな力によって割りとすんなり完了できました。 あまりにすんなり出来たので、イカロスの谷を一周りしようと粉砕工房を目指します。 だが、しかし。 ご覧の有様だよっ!! 迂闊にも敵を避ける事なく敵陣ど真ん中を突っ切る私に敵が反応。皆さんも駆けつけてくださいましたが、敵も次から次へと集結し、最終的には20体近くに囲まれたのではないかと思います。星鎧を使っても全滅。徳さん以外全滅でした。とまあ、いきなりですがここで終わりです。 今回の総評としましては、参加者の方から概ね良い言葉をいただいて幸いでした。今回のようなイベントなら、レベル差も関係なく行けるますので、次回以降に違う目的地へ行ってみたいと思います。 開催から一週間経過しましたが、でっち上げました。 -- ラクシュミィ (2009-06-27 20 27 19) 徳さんの字が微妙に違う… -- 神騎 (2009-06-27 20 51 19) ・・・仕様です。 -- ラクシュミィ (2009-06-27 21 19 30) 嘘こけ -- 神騎 (2009-06-28 00 26 12) すごく面白かった…www ラクさんの記事は読んでて楽しいですww -- Estia (2009-06-28 03 19 38) 意外と苦労して作りましたよ。SSも一部簡単ながら合成しましたし。でも、イカロスの谷とかで新種のモンスターのSSをあんまり撮ってなかったのは大誤算でしたw -- ラクシュミィ (2009-06-28 10 16 40) 改めて見ると楽しいイベントですねw 今ならイデア地方 デスティ山脈か、スティリア地方 死の沼にでも…。 -- Estia (2010-01-12 23 30 03) 逝ってらっさい -- 神騎 (2010-01-13 00 13 00) 名前 コメント
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いつか、道の果て 5 5-177様 互いが、ただ、目的を達する為だけの道具となる道程。 (同じ道を歩んであげる。だけど、わたしは絶対に許さない) 協力者、あるいは、共犯者。その立場があれば、近付きすぎることはないと思っていた。 (ひとは、弱いから) かの青年は『精製』と、相応の訓練とを受けている。多少の怪我ならば直ぐに癒えるし、常人ならば命を落とすような傷を負っても、命に関わりはない。けれど、それでも。 それは、時計の巻きを早めているだけで、異種の頑健さとは別物だ。 だから、刃と銃弾を受ける役割は、自分のものだと思っていたのに。 (……また) 根の世界。血の国。極大集合。 異種たちは、その世界をさまざまな言葉で語る。 深い深い血の色は、あつまれば、漆黒にも、群青にも似て。 (―――わたしが、義母さんに、外の世界を教えてもらうより、前は) 未だ、自分が研究素体として、番号で呼ばれていたころは、この世界が全てだった。この世界しか、知らなかった。 ほかにはなにも、この目には映らなかった。 ほかにはなにも、きこえなかった。 匂いもなく、熱もなく。 全てを飲み込む、虚無の世界。 何もかもがあるのに、何もないところ。 全てが還る場所。どれほど叫んでも、どれほど足掻いても。 全てを飲み込む虚無の空。 異種の王、その娘。根の世界に、もっとも愛された者。 (……嫌い) 夢を見る。 (嫌い。) 特に、血を呑んだ、力を得た、その直後は。 「……と、逆か」 言葉の、途中。 ぽつりと枕元で囁く声を聞いた。続けて、何故、と囁く声も。 すこしだけ安心する。彼が、未だに近くあることに。 「『お迎え』を、ここの連中が追い返すまで、三時間ってとこか―――」 独白が止まる。あるいは突破された、その先のことに考えを巡らせているのだと、つと気付いた。その可能性はけっして高くはないと理解していても、そこまで想定せざるを得ない。こういった一つ一つの経過が、ふたりの二年間の道程を可能にした。細い細い糸の上を歴るように、そうでなければとっくに終わっている。 異種と人間たちの世界を牛耳る、巨大な悪意を向こうに回した、二人きりの、たたかいは。今は、そうでないかもしれなくとも。 同時に、自分が意識を手放してからそれほど時は過ぎていないのだと、知った。 「……アラム」 もう目を覚ましたのか、と、彼が名を呼ぶ。 そこに含まれる驚きも、不安も、マリィは聞き取っている。 気付いていることに、気付かないふりをする。 ここまでの二年間と同じように。感謝してもしきれないことは知っていた。 けれど、手を伸ばしたら、きっと損なわれてしまうから。 呟く。 「アラム」 名前だけを呼ぶ声は、あからさまに、みっともないほどに心細げだった。 「わたしの、やりたいこと、は」 ……何を、話しているんだろう。 心と躯が離れてしまったように、言葉が零れ落ちる。 「かあさんのやろうとしてたこと、あの、塔を」 ああ、と首肯の気配。すこし安心した。 「こわすことで。それだけで。貴方のやりたかったことは、然るべきタイミングで、 わたしを、『彼』に引き渡すこと、で。そう、だよね……?」 確かめる間でもないこと、その筈だった。 それが、たったひとつの契約。 そうだね、と、もうひとつ頷く気配に、安堵する。こころの底から。 「そうだね。然るべきタイミングで君を引き渡して、ホルボーンと取引。 アリス・ハドスンの身柄を取り戻すことが僕の目的だった」 アラム・ヴォフクは、淡々と認める。 けれど、そこに続くのは逆接の言葉。でも、と言ってアラムは笑う。 「―――僕は一度、彼らを裏切った」 「いまからでも、わたしを連れて行けばいい。結果が全て。そうでしょ?」 「無駄なことはしない主義だ、知ってるだろう?」 事実だけを並べる調子で、彼。 「ここで君がのこのこ出て 行っても、恐らく先手を打たれる。何の意味もない」 「………」 尤も、だった。返す言葉もない。 ここまで事態が動いてから首を差し出しても、後手に回った行動にしかならない。 「それに」 階下の喧騒。他人事ではない。他人事ではありえない。 それなのに。 「今更。もう、決めたからね」 ―――思わず、顔を背ける。 彼が何を伝えようとしているのか。本当は気付いている。 不意に、視界が揺れた、気付けば、覆いかぶさるようにアラムの影。 生きた人間の、体温。彼女のそれとはまるで違う。今も、じわじわと、死の世界に惹かれて、熱を失って行くこの身体とは。 やむを得ず、目線を合わせた。 (だめ) 声に出さず、語りかける。まだ自らの出自も立場も何も知らなかった頃、ほんの少しだけ思いを寄せていた相手に語りかけるように。 (貴方は、ここにこないで) 胸中では狂おしいほどにこの人を求めていても。 辛うじて囁く。 「……近すぎるよ、アラム」 「距離は先刻とそんなに変わらないと思うけど」 「屁理屈だわ、それ」 こつん。 「………っ」 額が合わさっている。風邪を引いた子供と、その親のように。 そのまま、一拍。 (あ、かあさんが、前に) すこしだけ気が緩むその間隙を撞いて、 「ん………っ、ん」 触れる。 はじめに、短く切りそろえた前髪のすこしだけ固い感触、つぎに、生暖かく乾いた、温もりが触れる。同じ場所に。額と同じ場所に。止める暇もなかった。 唇をあっさりと割り開いて、潜り込んでくる。彼の、舌先が。 接吻はごく短く。 「―――!」 児戯のようにあっさりと離れた。架け橋ひとつ。 「斬り殺されたいの。さっきの連中みたいに」 「殺していなかったと見えたけど」 「……黙って」 ひとつ、息を吸う。努めて、浅くならないように意識しながら。 「子供に興味はないって」 「ん」 「手を出すほど女には困っていないって」 「ああ」 「言っていたのは、誰?」 「さあ、誰だろう」 「ふざけないで」 青年が一度、上体を持ち上げる。き、と硬材が軋む音。当然だ。決して柔らかくはないけれど、そもそもこれは、二人分の体重を支えるためには作られた寝台ではない。おそらくは。 「……僕の、これも」 もう一度、視界が翳った。 「市警の連中の前に両手を差し出すのと同じ程度には馬鹿な行動、かな」 半分笑いながら、青年が言う。 「抵抗する?」 「さっき言ったけど。斬り殺されたいの」 「君が、それを出来るなら悪くない提案だ」 手を、絡め取られる。 彼は捉えた少女の指先を、自らの喉元にあてた。 ―――息を呑む。 「悪く、ない」 振り払おうにも、腕力の差は歴然。青年は、目を逸らさない。 口元に、嗜虐的でありながら、どこか自嘲じみた笑み。 (このひとは、嘘をつく) 信じる根拠なんて何も―――何も? この期に及んで、それを問えるのか。 彼女の抵抗を肩先で押さえ込んでそのまま、男はゆるく笑っている。 身を切られるように、心が痛んだ。 背に腕が回り、身体が、もう一度傾ぐ。 彼が何を意図しているのかは悟っていた。けれど。 「どうして」 「嫌なら、力を込めればいい」 簡単だろう? そう告げる口調は軽い。言葉を失って、見上げる。 「や、だ」 ひどく優しく。壊れそうなものを扱うように。背に、そっと腕が回る。 湧き上がる感情は怒りと恐れと、そして困惑。それと、悲しみ。それと、 (―――どうして) どうして。 彼は、少女が手を下さないことを、回答と受け取ったようだった。 「なら、君が、後悔するだけだ」 ぎしりともう一度、2人分の体重に、寝台が軋む音が響く。 ←・→ タグ …
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たった一つの命を捨てて 生まれ変わった不死身の身体 鉄の悪魔を叩いて砕く キャシャーンがやらねば、誰がやる + 担当声優 西川幾雄 『新造人間キャシャーン』、『タツノコファイト』 草尾毅 『キャシャーン』 古谷徹 『キャシャーンSins』 小野大輔 『タツノコ VS. CAPCOM』 斉藤壮馬 『Infini-T Force』、『劇場版Infini-T Force ガッチャマンさらば友よ』 タツノコプロ制作のアニメ『新造人間キャシャーン』の主人公。本名は東鉄也。 勘違いされ易いが「人造人間」ではなく「新造人間」である。 2004年公開の実写映画版では伊勢谷友介氏が演じた。 ちなみに小野氏と伊勢谷氏は後にそれぞれTVアニメ版・実写版『ジョジョの奇妙な冒険』で空条承太郎役を演じている。 設定 ロボット学者だった東博士の開発した公害処理用ロボットBK-1が落雷の影響で暴走。 公害を撒き散らす人類を駆除し、地球を守るため、ブライキング・ボスを名乗って人類に叛旗を翻した。 ブライキング率いるアンドロ軍団を前にして、為す術もなく追い詰められていく人類……。 遂に博士の息子である鉄也は、人間としての命を捨てて、ブライキングとの対決を決意する。 壮絶な運命へと身を投じた鉄也は、ロボット犬フレンダー、かつての恋人ルナと共に、アンドロ軍団へと闘いを挑む。 人間を融合させる事で完成し、驚異的な力を発揮する事のできる「新造人間」キャシャーンとなって……! (つまり本作で「人造人間」と言ったらアンドロ軍団の事を指す) 『科学忍者隊ガッチャマン』に続くタツノコSFヒーローとして生み出されたキャシャーンであったが、 人間である事を辞めてまで人間のために戦う彼の運命は、子供向けアニメとは思えぬ程にハードであった。 優しい両親、愛しい恋人、幸福な人間としての生活を捨てて新造人間となった東鉄也は、どんなに望んでも決して人間には戻れないのだ。 そして更にキャシャーンは物語の後半、アンドロ軍団の手により「機械の身体」である事を暴露されてしまう。 人類の敵であるアンドロ軍団と同じ存在──キャシャーンは、ヒーローでありながら人々から排斥されるようになってしまう。 それでもなお、孤独に戦い続けるヒーロー像は、子供にこそ受け入れ辛かったものの、今日に至るまで多大な影響を及ぼした。 なお、キャシャーンという名前には「未来への財宝(キャッシュ)を捜す者」という意味があるのだが、 同時に「ガラスが割れる音」でもあり、割れたガラスが直らないように、彼もまた人間には戻れないという事を示している。 断じて華奢だからというわけでない。『タツカプ』で蒼鬼に勘違いされてるけど スポンサーの倒産という番組とは全く関係の無い事情で急遽短縮が決定してしまい、ラストは突然開発された新兵器でアンドロ軍団が全滅、 という唐突なものになってしまったが、こういう場合にありがちな初期設定を投げ捨てるという事は皆無であり、 最終回に至るまでキャシャーンの「人間に戻れない」「たとえアンドロ軍団を倒しても、もう人間達の間には戻れない」という悲哀は徹底されていた。 また、2004年公開の実写映画版『CASSHERN』においては、原作とはベクトルは違うものの、戦争によって引き起こされる悲劇、 残された者の憎悪や救われないキャシャーンの境遇など、こちらでも徹底した悲哀が描かれている。 加えて本来は実に4時間をも超える内容が当初は予定されていたものの、上映の尺関係か、 編集での短縮シーンが非常に多い事や初見で理解し難い唐突なラストなど、ある種の共通する部分があったりする。 + 実写版『CASSHERN』解説 本作の舞台設定はアジアに誕生した超大国が全世界を支配しているが、各地でテロが頻発し、軍部は若者を戦地へ送り込んでいるというもの。 その中で軍部の依頼により「新造細胞」の研究に没頭する父・東博士に反発した鉄也は、婚約者・ルナに別れを告げ、志願兵としてテロ鎮圧に赴く。 しかしそこで少数民族の虐殺を命じられ、自分の行いに呆然としながらも生き残った赤ん坊を助けた所、仕掛けられたブービートラップで戦死してしまう。 時を同じくして新造細胞培養層に落雷が直撃、生まれたブライ達新造人間によって妻・ミドリを誘拐された東博士は、 親友でもあるルナの父親、上月博士の反対を押し切って鉄也の遺体を新造細胞の培養槽に浸し、彼を新造人間として蘇生させる。 望まずして蘇った鉄也は、周囲の惨状、父の所業に絶望し、母を連れ去ったブライを憎悪しながらも、上月博士の言葉を胸に足掻き続ける。 「君が背負うべき運命はあまりに残酷だ。だが、これにも必ず意味はあるはずだ」 やがてアンドロ軍団との戦いで傷付いた鉄也は、ルナと共にかつて自分が虐殺を行った少数民族の居住区に辿り着く。 そこで過去の行いを懺悔した鉄也は、今度こそ争いを止める事を決意する。少数民族に言い伝えられる守り神──キャシャーンとして。 本作は単純な反戦というよりも、「憎悪の連鎖による戦いをどうすれば止められるのか」というテーマが、強く打ち出されている。 妻ミドリの病を治療するため新造細胞の研究に没頭する東博士、その東博士に反発して戦地に赴いた結果として虐殺を働き死を迎える鉄也、 その鉄也の虐殺の犠牲者達によって生み出された新造人間達、新造人間に妻ミドリを攫われた東博士と、蘇生させられた鉄也……。 そうした延々と続く憎悪の果てに、争いを止める事を決意する鉄也なのだが、そんな鉄也を前にして狂気にかられた東博士は、 鉄也の目の前でルナを殺し「お前だって愛する者を蘇らせたいだろう」と彼に新造細胞の存在を認めるよう迫るまでに至ってしまう。 ついに鉄也は父を手に掛け、そしてブライの遺体に懺悔し、ルナの遺体を前に慟哭する。 だが、そんな鉄也を救ったのは、宿敵であるブライだった。 誘拐したミドリの温もり、そして自身の仲間の死を看取ってくれたルナの優しさに触れていたブライの遺体から流れた血は、 ルナの亡骸に再び命を与え、彼女を蘇生させたのだ。 愛する人と再会した鉄也は、ルナと抱き合いながら、憎悪の連鎖と戦いを終わらせる方法にようやく気が付く。 「僕らはまず、許し合うべきだったんだ」 真の意味で「キャシャーン」の化身となった鉄也は、ルナと共にその身を稲妻に変え、人々の魂を導いて平和な世界へと旅立つのであった。 ……という内容なのだが、前述の通り尺の関係上カットされた部分や、幻想的な演出などで、正直難解な映画となっている。 また公開当時は『デビルマン』の負の影響もあって、原作と大きく改変された事で酷評に晒されてしまった。 一方でその映像美やアクション、音楽、独特の世界観、俳優陣の熱演などは評価される声も高く、興行的成功を記録している。 そのため決して駄作の類ではなく、「賛否の分かれるヒット作」と評するのが適切な所だと思われる。 興味のある方は是非一度見て頂きたい。 2008~2009年に放映された『キャシャーンSins』におけるキャシャーンは他とは異なり、 ブライキンボスの部下として造られたロボット(=人造人間)である。故にこの作品での「キャシャーン」は本名。 ブライキンボスの命令により本編開始前に救世主ルナの暗殺に成功するも、 ルナの力の影響で文字通り不死身の体となってしまう(原典の方はあくまでも比喩表現)。 地球全土が荒廃してロボットでさえ滅び(全身が朽ちて(錆びて?)くる)が避けられないこの世界では、 人間からは恐れられ、ロボットからは不死身の力を狙われる孤独な存在である。 ただ、ラストでは世界も彼も救われる事を予感させる描写が成されており、歴代キャシャーンの中ではハッピーエンドな方である。 なお「Sin」とは「原罪」という意味。つまりこいつと同じ。 その他、タツノコプロのタイムボカンシリーズOVA『タイムボカン王道復古』へゲスト出演した事もある。 ちなみに相棒の犬ロボットのフレンダーは、カー・ジェット・マリンなど様々な形態へと変形し、キャシャーンをサポートするのだが、 このギミックは子供達に喝采を持って迎え入れられた。*1 これを受けてか『破裏拳ポリマー』では主人公(強化服を着た人間)自身が変形する様に。 一方でSins版のフレンダーに変形能力は無い (そもそも原典のフレンダーはキャシャーンのサポートの為に造られたのに対し、Sins版のフレンダーは貰い物である)。 格闘ゲームにおける性能 格闘ゲームには『タツノコファイト』と『タツノコ VS. CAPCOM』に登場。 『タツノコファイト』では、ガードさせても五分な多段ヒット技「電光パンチ」をひたすら振ってるだけで割と戦えるキャラ。 それ以外やる事が無いという噂もあるが、これでゲージを溜めれば飛び道具超必殺技「超破壊光線」も撃てるのでまずはとにかく電光パンチ。 なお相棒(愛犬?)のフレンダーは戦闘前デモや超必殺技などで出てきてくれるものの、主に別キャラであるルナのストライカー、 ていうかパピーとして活躍。喰らい判定すらルナではなくフレンダーにあるという、もうキャラ名「フレンダー」でいいだろといった有様であった。 『タツノコ VS. CAPCOM』では、「破壊の電光」なるキャッチコピーで登場。 フレンダーを呼び出す必殺技はノーコストの割に拘束時間が長めな上、呼び出し時の隙も少ないという高性能。 その一方で本体性能は大人しめであり、コンビネーションの精度が強さに直結するキャラと言えるだろう。 …と、まぁ普通のゲームならそんな評価だったかもしれない。だがこのゲームは『タツカプ』である。 キャシャーンは通常技が短く重く、機動力も高くはないため、逃げを追う性能、攻めの持続性に欠ける。 「触られないように触る」が殊更重要な『タツカプ』ではかなり厳しい性能と言えるだろう。 しかし一方でキャシャーンは「一度触られたら本当に危ない」と恐れられる超一発屋でもある。 主な原因は空中から急降下する「流星キック」の存在。これにはダウン追い打ち属性が備わっており、これを当てるとダウンしている相手を起こす事ができる。 その上でパートナーやヴァイタルソースを消費して技をキャンセルする「バロックコンボ」を活用する事で、 ダウンしている相手に再びコンボを繋ぐ事が可能になるのだ。 これらによって、連続技をカットして相手をダウンさせるシステム「メガクラッシュ」から即死級のコンボ、または(パートナー次第で)永パに移行可能。 ゲージ回収力も凄まじく、大幅に有利な状況を作りながら相手を殺す事ができる。 更にキャシャーンが相手を倒した場合、交代動作にフレンダー重ね>タメ電光パンチのガード不能連携が可能。 前述のゲージ回収力も相まって、一瞬で2キャラ倒し切る爆発力のあるキャラである。 …とは言うものの、初期は上位陣の立ち回りが鉄板すぎてワンチャンが果てしなく遠く、 パートナーありきの爆発力のためランク的には中堅とされていた。 ただし研究が進んだ現在では、追撃可能で浮かせる上レバー操作で上中段と下段ガードポイントを切り替えられる中段技「カタパルトニー」の存在により、 正面から殴りに行くと逆にコンボを受ける事となり、また何とかエリアルに持ち込んでもメガクラッシュからコンボが入るため死角が無くなり、 評価は最高ランクに達している。 え?パートナーありきの弱さはどうしたかって?わざと殴られればヴァイタルソースできるんでバロックを使えばよし。 あとメガクラッシュは体力の一部をヴァイタルソースにするからどんな状況でもコンボを繋げない状態が無いので問題無し。これは酷い。 某店の上級プレイヤー曰く「キャシャーンは色々な技がズルい」との事。 だがしかし、そんなやりたい放題やっていたのを開発部は重く見たのか、 『タツカプUAS』では流星キックで相手を起こす事ができなくなってしまい、コンボが伸びなくなってしまった。 他にもカタパルトニーのガードポイントが下段を守れなくなったり、タメ電光パンチのタメ時間が長くなり、 アシストを併用しないと交代動作に重ねられなくなったなど、様々な点で弱体化を施された結果、今現在ではランクが大きく下がっている様子。 あまりの下がりように「キャシャーンでやる事が無くなってしまった」と憤慨する人もいたり。 余談だが、『バトルクロード』において大山正道が、 サイボーグ(D-9F型、T-8P型)に対する勝利メッセージでキャシャーンの名前をそのまま引用している。 また、格ゲーファンには二階堂紅丸の「フライングドリル」「雷靭拳」「雷光拳」の元ネタの人、と言った方が通じるかも知れない。 ニコニコ動画におけるキャシャーン 「キシャ――ンッ! カシャ――ンッ! ク―シャ――ンッ!!」 や~まだッパ~~ン! 他には「ジャガーマンシリーズ」の派生作品「仲良し三人組(けものフレンズ)」の一人として登場。 主な内容はデビルマンとタイガーマスク(のマスク)とチームを組み、セルリアンと戦ったりタイガーマスクの口でピーマンを製造するなど、 ジャパリパークを舞台にどっかんばったん大騒ぎする日常系アニメのような何かである。 本来のセリフを編集して喋らせるロイド系と呼ばれる動画の一つなのだが、 他のロイド系とは異なりこのシリーズはオープニングテーマの歌詞を編集して喋らせているのが特徴。 そのため、視聴者からは主題歌のフレンズと称されている (ちなみに歌っているのはキャシャーンの声優である西川氏本人ではなく、ささきいさお氏)。 キャシャーンの主題歌は終始激しい曲調のため、行動的でテンションが高く沸点の低いキャラ付けになっている。 「観るかー!」 MUGENにおけるキャシャーン Rikard氏により『タツノコファイト』のドットを使用した「KYASHAN」が存在していた。 現在は氏のサイトが消滅しており、残念ながら正規入手不可。最終的な完成度は70%。 「パルサーキック」やオリジナル技の強「エルボークラッシュ」で浮かせた後に弱「電光パンチ」で追撃し、 さらに超必殺技「ムーンビーム」で拾うといった連続技が狙えるが、コンボ補正以前に素の火力が良心的すぎてちっとも減らないのが悲しい所。 単体キャラ以外では、ムシム氏製作の千賀式ジャガーのとある特殊ヤラレで上記の仲良し三人組が登場。 タイガーマスクを身代わりにしたと思いきや…。 出場大会 ゲージMAXトーナメント【ゲジマユ】 ゲージMAXタッグトーナメント【ゲジマユ2】 ゲージMAXシングルトーナメント【Finalゲジマユ】 ステータス付きMUGENランセレバトル オールスターゲージ増々トーナメント 強肉弱食 味方殺しランダムタッグバトル あまり見ない作品別チームリーグ【やや珍しめ】 ガイアが ヴぁーん にもっと輝けと囁いている ゲージ増々タッグトーナメント 男女タッグでチーム対抗星取り合戦 MUGEN祭 大盛りシングルトーナメント オリジナル意気合い愛カップ *1 『ロックマン2』にも同名の犬型ロボットが登場する。 見た目も本家のフレンダーをデフォルメ+巨大化したような姿をしているが、ロックマンめがけて火を吐くだけで変形はおろか移動すらしない。 だが、後の『ロックマン3』以降に登場する愛犬ロボのラッシュには飛行型のラッシュジェット、水中用のラッシュマリンへの変形機能が付いており、 『MVC』ではドリル戦車にも変形、遂には合体するまでに至った。
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発売日 2017年6月30日 ブランド AXL タグ 2017年6月ゲーム 2017年ゲーム AXL キャスト 小倉結衣(アイ),桃山いおん(七海ナタネ),青山ゆかり(真備シオン),春乃いろは(東森サンゴ),静陵聖(善福ナオトラ),手塚りょうこ(真備リオン),事務台車(静馬カトリ) その他:桃井いちご,ASUMI,卯月ここ,君鳥ふう,明羽杏子,南里一花,姫原ゆう スタッフ プロデューサー・ディレクター:GOU アシスタントディレクター:磯野かつお 原画・キャラクターデザイン:瀬之本久史 シナリオ:北側寒囲 プログラム:合資会社ワムソフト 音響制作:AZ-FIX 音響監督:嶋香る 収録スタジオ:AZスタジオ CGチーフ:TETU CG:TETU,藤宮裕 背景:間宮流 音楽・効果音制作:株式会社SoundCocktail オープニングムービー制作:yokota エンディングムービー・ロゴデザイン:間宮流 フレームデザイン:藤宮裕 スクリプト:GOU,磯野かつお デバッグ:AXL All Staff 演出:GOU DTPデザイン:磯野かつお,藤宮裕 HP作成:GOU,桐嶋博彰,藤宮裕 スペシャルサンクス:株式会社GUN-ZO オープニングテーマ 「sing a song!」 作詞:天ヶ咲麗 作編曲:iyuna 歌唱:solfa feat.茶太 挿入歌 「夢色growin hearts」 作詞:天ヶ咲麗 作編曲:橋咲透 歌唱:アイ(CV.小倉結衣)、七海ナタネ(CV.桃山いおん)、真備シオン(CV.青山ゆかり)、東森サンゴ(CV.春乃いろは) エンディングテーマ 「melody star」 作詞:天ヶ咲麗 作編曲:hash 歌唱:solfa feat.iyuna
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小見出し 敬称略 No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 No.051 It s just like OVER HEAVEN アーチャー(DIO)鳴上悠&ランサー 新都・冬木ハイアットホテル新都・地下街 早朝 ◆wYNGIse9i6 No.052 策士策に溺れる 間桐慎二&ライダー羽瀬川小鳩&キャスターバーサーカー(ランスロット) 深山町・間桐邸 早朝 ◆HBgEtKlD2g No.053 Assault of Dreadnoughts(前編)Assault of Dreadnoughts(中編)Assault of Dreadnoughts(後編) アシュヒト=リヒター&セイバー園崎詩音&バーサーカー近藤剣司&セイバー金城優&セイバーゼフィール&ライダー 新都・ショッピングモール 黎明 ◆3vWdxvBXv No.054 教会組・行動開始! 花村陽介&ランサー名無鉄之介&キャスター 新都・冬木教会 早朝 ◆2shK8TpqBI No.055 絶望への反抗!柳洞寺に集う超頭脳派たち 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー金田一一&ライダーキャスター(蘇妲己) 深山町・柳洞寺 午前 ◆3gGiI31R5A No.056 BROKEN BLADE 鳴上悠&ランサーアーチャー(DIO) 新都・商店街 早朝 ◆oGrFx9n0uA No.057 動き出す絆 花村陽介&ランサー名無鉄之介&キャスターゼフィール&ライダーアサシン(平行世界のファニー・ヴァレンタイン) 田園地帯 早朝 ◆WMyP5RHbA6 No.058 猶予期間(モラトリアム) 衛宮切嗣&ライダー 深山町 朝 ◆wYNGIse9i6 No.059 逃げ道なんて、あるわけない アーチャー(DIO)園崎詩音&バーサーカー 新都・蝉名マンション 朝 ◆QSGotWUk26 No.060 ヒトクイフラグメント 匂宮出夢&アサシン枢木スザク 深山町・民家 早朝 ◆.aJ8cOqWj. No.061 さよなら、魔術師 天海陸&セイバー泉こなた&ライダー 深山町・商店街 早朝 ◆ThDqKkEfC6 No.062 DECIDE THE FATE(前編)DECIDE THE FATE(後編) 間桐慎二&ライダー間桐雁夜&アサシン羽瀬川小鳩&キャスターバーサーカー(ランスロット) 深山町・間桐邸 朝 ◆FTrPA9Zlak No.063 絆物語(前編)絆物語(後編) 花村陽介&ランサー名無鉄之介&キャスター鳴上悠&ランサー 冬木大橋住宅街 朝 ◆2shK8TpqBI No.064 嘘つきたちの狂宴 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアセイバー(アルトリア・ペンドラゴン)天海陸&セイバー泉こなた&ライダー 深山町 午前 ◆wYNGIse9i6 No.065 一寸先は闇だけど 鹿目まどか 新都・ハイアットホテル 朝 ◆2shK8TpqBI No.066 下準備 花村陽介&ランサー名無鉄之介&キャスターアサシン(ファニー・ヴァレンタイン) 深山町・月海原学園 午前 ◆2shK8TpqBI No.067 消えない想いーLuminis 鹿目まどか&アーチャー園崎詩音&バーサーカー 新都・蝉名マンション 朝 ◆FTrPA9Zlak No.068 割れる円卓 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー金田一一&ライダー天海陸&セイバー泉こなた&ライダー衛宮切嗣&ライダーキャスター(蘇妲己)アサシン(佐々木小次郎) 深山町・柳洞寺深山町・柳洞寺周辺深山町・月海原学園周辺深山町 昼 ◆QSGotWUk26 No.069 忘我郷-さまよえる心 鳴上悠&ランサーアサシン(ファニー・ヴァレンタイン) 新都・住宅街 昼 ◆n4C8df9rq6 No.070 ジョン・バックスの憂鬱 ジョン・バックス&アサシン 新都・冬木センタービル内冬木市庁舎市長室(最上階) 昼 ◆2shK8TpqBI No.071 真実と憎悪の果てに 天海陸&セイバー泉こなた&ライダー衛宮士郎&セイバーキャスター(蘇妲己)アサシン(佐々木小次郎) 深山町・月海原学園深山町・柳洞寺 昼 ◆XL.nOGsA4g No.072 フェスティバル 間桐慎二&ライダー羽瀬川小鳩&キャスター匂宮出夢&アサシン枢木スザク&バーサーカー 深山町・衛宮邸深山町・民家 午前 ◆2shK8TpqBI No.073 正義の味方、サクラノミカタ 衛宮士郎&セイバー衛宮切嗣&ライダー 深山町・柳洞寺深山町・安ホテル 午後 ◆cp3jCCSc7M No.074 願いと絆とここにある想い 泉こなた&ライダー 深山町・月海原学園 昼 ◆FTrPA9Zlak No.075 go to the next victim ゼフィール&ライダー 新都 昼 ◆QSGotWUk26 No.076 DecisionHeight 衛宮切嗣&ライダー羽瀬川小鳩&キャスター匂宮出夢&アサシン枢木スザク&バーサーカー 深山町・民家新都 夕方 ◆wYNGIse9i6 No.077 sunlightheart 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー 深山町・月海原学園校門前深山町・柳洞寺 午後 ◆2shK8TpqBI No.078 Hard luck dance 鹿目まどか&アーチャー鳴上悠&ランサーゼフィール&ライダージョン・バックス&アサシン 新都・住宅街新都・冬木センタービル内冬木市庁舎市長室(最上階) 日中 ◆l3N27G/bJU No.079 情報交換をしよう ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之介&キャスター 深山町・遠坂邸 夕方 ◆cp3jCCSc7M 以下、完結編 No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 No.080 The Zero 魔王ゼロ&ギルガメッシュトワイス・H・ピースマン 月の裏 不明 ◆QSGotWUk26 No.081 Power Age ジョン・バックス&アサシン 新都・冬木センタービル内冬木市庁舎市長室(最上階) 午後 ◆Mti19lYchg No.082 Memento mori(前編)Memento mori(後編) 泉こなた&ライダー衛宮切嗣&ライダー衛宮士郎&セイバー枢木スザク&バーサーカー名無鉄之助&キャスター匂宮出夢&アサシン羽瀬川小鳩&キャスター花村陽介&ランサールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー 新都深山町・住宅街深山町・遠坂邸深山町・民家 夜 ◆XL.nOGsA4g No.083 猛毒刀与 衛宮士郎&セイバー 深山町・遠坂邸 夜 ◆wYNGIse9i6 No.084 始動する吸血鬼 鹿目まどか&アーチャー 新都・住宅街 夜 ◆2shK8TpqBI No.085 去り行く者と残された絆(前編)去り行く者と残された絆(後編) 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスター 深山町・遠坂邸 夜中 ◆2shK8TpqBI No.086 夢見るように眠りたい 枢木スザク&バーサーカー羽瀬川小鳩&キャスター 深山町・民家 夜中 ◆l3N27G/bJU No.087 白と黒の世界 ジョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&ライダー鹿目まどか&アーチャー 新都・ハイアットホテル深山町・遠坂邸付近新都・双子館新都 夜中 ◆wYNGIse9i6 No.088 作戦会議をしよう 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスター 深山町・遠坂邸地下室 深夜2巡目 ◆cp3jCCSc7M No.089 茶会~マッド・ティー・パーティ~ ジョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&ライダー鹿目まどか&アーチャー 新都・ハイアットホテル深山町・遠坂邸付近新都・双子館新都 夜中 ◆l3N27G/bJU No.090 Last Phantasm 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスター 深山町・遠坂邸地下室 未明2巡目 ◆XL.nOGsA4g No.091 Stardust Conquistas ジョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&ライダー鹿目まどか&アーチャー 新都新都・双子館深山町・遠坂邸付近 深夜2巡目 ◆QSGotWUk26 No.092 最終確認をしよう 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスター 深山町・遠坂邸地下室 未明2巡目 ◆2shK8TpqBI No.093 The Patriot ジョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&ライダー鹿目まどか&アーチャー 新都新都・双子館深山町・遠坂邸付近 未明2巡目 ◆wYNGIse9i6 No.094 開幕、聖杯大戦 衛宮士郎&セイバールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスタージョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&ライダー鹿目まどか&アーチャー 深山町・遠坂邸地下室深山町新都・双子館 黎明2巡目 ◆QSGotWUk26 No.095 零れ落ちる砂のように誰も時間止められない ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介&ランサー名無鉄之助&キャスタージョン・バックス&アサシン枢木スザク&バーサーカーキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)衛宮切嗣&アーチャー 深山町深山町・柳洞寺新都・双子館 黎明2巡目 ◆l3N27G/bJU No.096 友と絆と這いよる絶望(前編)友と絆と這いよる絶望(後編) 泉こなた&ライダー花村陽介&ランサージョン・バックス&アサシンアサシン(平行世界のファニー・ヴァレンタイン達)衛宮切嗣&アーチャー魔王ゼロ&ギルガメッシュ言峰綺礼 深山町・柳洞寺深山町深山町・柳洞寺山中新都・双子館月の裏 早朝2巡目 ◆2shK8TpqBI No.097 暁の空に勝利を刻む ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー枢木スザク&バーサーカーアサシン(6人目のファニー・ヴァレンタイン)キャスター(ゾルフ・J・キンブリー) 深山町 早朝2巡目 ◆wYNGIse9i6 No.098 境界線上のバビロンズ・ゲート 泉こなた&ライダー花村陽介&ランサールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバージョン・バックス&アサシンキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)言峰綺礼&ギルガメッシュ魔王ゼロ 深山町・月海原学園新都・双子館新都・冬木教会地下 朝2巡目 ◆l3N27G/bJU No.099 Trinity soul 泉こなた&ライダー花村陽介&ランサールルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバージョン・バックス&アサシンキャスター(ゾルフ・J・キンブリー)言峰綺礼&ギルガメッシュ魔王ゼロ 深山町・月海原学園新都・ハイアットホテル前新都・冬木教会地下 午前2巡目 ◆QSGotWUk26 No.100 抗え、最期まで ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー泉こなた&ライダー花村陽介言峰綺礼&ギルガメッシュ 深山町・柳洞寺新都・冬木教会地下 日中2巡目 ◆cp3jCCSc7M OP~50話まで 101~最終話まで
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この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(上) ◆JvezCBil8U 《 Ayumu Narumi -神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの- 》 何もかもを冷たい白に染める冬の足音が、確かに近づいてきている。 一足早くに同色に染まる吐く息は、掌に当ててみれば確かな温かさをそこに感じる。 ――俺がまだ生きてここにいる証。 けれど数秒も待てば熱は霧散し、ただ刺すような大気が身に凍みた。 この手を取るものは誰もいない。 俺は、一人でここに立っている。 高みを仰げば白亜の建物の頂きに、鷹のような男が鎮座している。 鋭い眼光はまるで獲物を狙うかのように俺を射抜いていた。 用意万端、これでこちらの準備は整った。 ポケットを叩き、そこにあるモノを確かめて、一息。 視線を更に上げ――、暗雲渦巻き始めた曇天を見据えた。 紫色にも似た、何とも言えない不吉な空だった。 「……寒いな」 利用し、利用されるだけの関係。 結局のところ俺はそんな関係の中にしか落ち着くところが無いらしい。 いや、分かっていて自らその中に飛び込んでいく。 ……それさえも違うか。 俺は、自分が利用されるに足る価値を、何もないところから生み出すために立ち続けている。 誰かを利用するための通貨を、錬金術の様に捻り出す。 俺が一人で笑う限り、俺の論理は証明され続けるのだから。 だから俺は、誰からの手も振り払おう。 支えるものもなく、この先に続く足場が今すぐにでも、ふっ、と消えてしまいそうでも――、 それでも運命が変えられるのだと、足掻く事で示すんだ。 「くそ……」 だけどそれは、利害の一致のみの繋がりよりなお苦しい事だ。 使い道という言葉は、遍く人に逃げ道を残す。 依りかかるべき柱があれば、何もかもの重さをそこに押し付ける事が出来る。 左肩が軋んだ。 ここに来る前、グリフィスと名乗った男の言葉が伸しかかる。 前を見据えれば、未だ顔も知らない天野雪輝と我妻由乃の影に呑み込まれそうになる。 ずきずきと痛み続ける傷に手をやれば、ぐちゅりという湿った音とともに赤い汁がこびりついた。 脆いな、と声に出さずに口の動きだけで呟く。 そう、人は簡単に死ぬ。 俺も兄貴も義姉さんも、結崎ひよのも誰も彼もが終わりは避けえない。 そしてその訪れはいつも突然だ。 ミズシロ・ヤイバが兄貴に殺された時も、彼は己の死を全く信じられなかったらしい。 今すぐにでも自分は消えてもおかしくない。 そんな、吐きそうになるほどの緊張感は、たとえどれだけ場数を踏もうと絶対に消える事はない。 ……怖い。 そう、俺は死が怖いんだろう。 俺は決して超人なんかじゃない。 たまたま奇矯な構図に配置されただけの、何一つ持たない人間だ。 論理を頼りに蜘蛛の糸に飛び付いているだけの、どこにでもいる存在だ。 今までの事件と比べてもとびきりに異常なこの状況で、おかしくならないのが信じられないくらいなんだから。 生まれた世界の常識や物理法則の通じないこの異界は、論理に縋るしかない俺にはあまりに心細い。 死者の蘇生に、未来予知、バラバラの実。摩擦係数0の肌に、ひとりでに飛ぶ矢。 住み慣れた故郷ではありえない現象――未知という名の恐怖。 殺し殺され、奪い奪われ、犯し犯され。 交わす言葉は常に相手を出し抜こうとする謀りで、全てが生き延びるというお題目のもとに正当化されてしまう。 委ねられるのなら、狂ってしまった方が楽だと心から思う。 自分を取り囲む風景が、今にもおぞましい殺戮と肉欲の狂宴に変わってしまいそうな錯覚を抱く。 それこそ、取り乱して泣き喚いてしまいそうになるほどだ。 思えば、安藤と出会った事は不幸中の幸いだったのだろう。 誰かが俺に望む姿があるならば、俺は平然とした顔でやせ我慢する事が出来る。 だからこそ俺は、ここまで進むことが出来たんだ。 それでもそろそろ、泣き言が漏れてしまう頃合いかもしれない。 土屋キリエは死んだ。 竹内理緒も死んだ公算が高い。 彼女たちと共に過ごす時間が二度と戻らないという喪失感。 もう怒った顔も、悲しそうな顔も、笑った顔も、まだ見た事のない表情も闇に葬られた。 他愛ない会話さえ、新たに交わすことは出来はしない。 彼女たちが剥落した後に残る空洞は、他の何で埋めることも不可能だ。 それが――死。 己の死は自らに永劫の無をもたらし、他者の死は周りの人から故人との未来を奪っていく。 それは人が毎日を一生懸命に生きる理由でありながら、後悔と悲しみ、そして孤独を運命づける。 遺されたものは、想い出だけで自分を慰める事しか許されない。 できるなら俺は、今すぐにでも短くも濃密だった彼女たちとの時間を振り返りたかった。 なにより――、ミズシロ・火澄の死。 あれは、ことのほか俺の精神を軋ませていたらしい。 何故なら俺は、確かにあいつに共感を――それ以上の繋がりを感じていたんだから。 臭い言葉で言うならば、多分それは友情というものだったんだろう。 加えて、どうやら俺は馬鹿げたファンタジーを少なからず頼りにしていたようだ。 自分と火澄は誰にも殺されないという幻想を砕かれた時の動揺は、正直言語化するのは難しいだろう。 あまりにあっけない火澄の死は、数えるのも嫌なほどに脳内で繰り返されている。 いつしかそれは、登場人物が俺に挿げ替えられた映像になっていた。 具体的すぎるにも程がある俺の死が、そこにあった。 ……もちろん俺は、自分が絶対に死なないなんて慢心は一度も抱えていたつもりはない。 自分がファンタジーのごとき構図の下に配置されていると知らされる前、俺は常に自分の命を張ってブレード・チルドレンと相対していたんだから。 けれど世界という概念が土台から崩れた今、俺はそんな構図に縋ってすらしまいそうになっている。 まったく、無様で笑える話だ。 ……また怯えで体が震える。 まだまだ俺は甘い。 この場所では、構図というルールすらも本来は疑わなきゃならない。 なのに今そこに固執するのは、ただの現実逃避だ。 分かっていても、分かっているからこそ、ひたすらに心細い。 一人の少女の姿を思い浮かべる。 俺は、無性にあいつに――、 パン、と頬を打つ。 俺は元々、あいつを手放した上で独り生き続けなければいけないんだ。 頼りにならない幻に今から寄り掛かっても、示せるものは何もない。 策はいくつかあるし、実際に手も打った。 この取引だって、横槍でも入らない限りはまず無事に終えられるはずだ。 天野たちからは少し気になる情報が入ったが、あれから連絡がない事を見ると恐らく問題はクリアできたのだろう。 連中が何か企んでいる可能性もあるが、それらについても秋瀬との検討の上で対応済みだ。 ここを乗り切ればひと段落といったところだろう。 ……だから、かもしれない。 「この一件が終わったら、あいつに連絡でもしてみるか……」 これは先を見据えた連絡網の強化の為。 確かなメリットを不自然なほどに意識しても、心の奥底に押し込めきれないものがあった。 少しでも俺なりのいつも通りを取り戻そうと、抱いてはならないはずの甘えを自覚する。 らしくない。 鳴海さんは私がいなければ何も出来ないんですね、と、そんな声を聞きたいなんて、実に不覚だ。 まったく、頭が痛いにも程がある。 ……そして、そんな頭の痛さに少しだけ落ち着きを取り戻している自分が、余計に悔しい。 「あまり放置プレイが過ぎればうるさいだろうしな。放送が終わった後にでも……、な」 たとえ死が二人を別とうと、誰にも奪われないものはある。 けれど、それは別として――、 ……あいつが死んでなければいい。そんな事を想った。 そして俺は、足を踏み出す。 学校という名の狩り場へと。 * 《 Yukiteru Amano -Novus Deus Pater- 》 僕の背後から飛んできた声は、頼もしいながらも正直あまり心臓によくないものだった。 「そこで止まれ。ユッキーに近づく前に、一つしてもらわなきゃいけない事があるわ」 雲行きが怪しくなり始めた空の下、だだっ広い校庭のど真ん中。 そこに立つ僕を挟んで、背中には由乃、視線の先には茶色い髪の少年が立っている。 校門で立ち止まった僕より少し年上の彼が、きっと鳴海歩さんだろう。 彼は僕に目を向けてから、すまんな、と口にして視線を僕の更に後ろに向けた。 「……その物騒なものはしまってほしいんだけどな。 まあ、言っても聞きそうにないか」 ……由乃がどんな顔で彼を迎えているか想像がつくだけに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 僕としても頼りになる人がもっと欲しいのに、どうして由乃は、ほんとにもう……。 「ご、ごめんなさい……」 「ユッキーは謝らなくていいよ。だって、これは当然の自衛なんだから。 銃じゃなくて剣を持ってるのが最大の譲歩。 銃に怯えたあんたに無差別日記を持ち逃げされても困るしね」 由乃の言っている剣とは、僕が自分の支給品から渡したものだ。 由乃は銃より刀剣の方が使い慣れているし、あんな物騒なものを由乃に持たせたら交渉が成り立たなそうだったんだ。 いざという時の為に銃は僕が預かったけど、剣を僕からの贈り物だって喜んでくれた由乃にはちょっとだけ複雑。 ……今度何か贈り物をするときは、もっといいものをプレゼントしたい。 「……OK、とりあえず話してみてくれ。 それと順番が逆になったな。あらためて自己紹介をしておくよ。 鳴海歩だ、よろしくな」 鳴海さんは頭を掻きながら礼儀正しく名乗ってくれる。 由乃に睨まれてるのに実に堂々としていてすごいと思う。 こう言うのもなんだけど、流石由乃が警戒するだけはある。 こんな人が力になってくれたら確かに心強いはずだ。 だから僕もどうにか笑みを作って、頭を下げた。上手く笑えてるといいんだけど……。 「え、えっと……天野雪輝です。よろしく……」 「よろしくする必要なんてない。 でしょ、カノン・ヒルベルト?」 いちいち言動が挑発的な由乃に胃がキリキリする。顔も引き攣ってるかもしれない。 ……さっきの取引時間の変更といい、由乃は何を考えているんだろう。 最終的には殺し合いになるにしても、協力関係を築いている間はメリットの方が大きいって来須さんや9thの事で知っているはずなのに。 もちろん裏切られた時はツラいけど、その時に由乃を信用できるからこそ僕は仲間を求めてるんだ。 ……そう、僕は由乃を信じると決めた。背中を任せたんだ。 だったら今は、目の前の事に集中しよう。 「まったく……、意地が悪いな。 素直に身元は明かしたんだし、容赦してほしいよ。 俺だって想定外だったんだ、死んだはずのカノンがここにいるなんてな」 はあ……、と、心なしに付いた溜息が思ったより大きくて自分でも驚く。 鳴海さんが大人で助かった、っていうのもある。 だけどそれ以上に、きっと彼の語った内容に安心したんだ。 ムルムル達から話には聞いていたけど――、 「誰かを生き返らせる事は、やっぱり可能なんだ……」 ――さっきまで寝ていた時、僕は夢を見ていた。 由乃にも話していないけど、多分その夢はきっといいものじゃなかったんだと思う。 思いだそうとすると良く分からない恐怖が湧き起こる。 その度に記憶の詮索をやめてしまう、あのイメージは何なんだろう。 崩れ落ちるタワーと、シーツの掛けられた担架。 ぽつんと乗せられた、母さんの眼鏡。 ズキン、と脳の奥の奥が痛んだ。 そして――神社。神社だ。 そこで僕は穴を掘って、望遠鏡を、包丁、質屋、柄杓の水、約束……。 駄目だ、と無理に蓋をする。 正確に思い出してしまっては――いけない。 神社に行ってはいけない。 行ってしまったら僕はきっと、今の僕じゃなくなってしまう。 「耳を貸したら駄目ユッキー、情報提供する事でユッキーを取り込もうとしているよそいつ。 ……そんな無駄話はどうでもいいの。さっさと無差別日記を置いてこの場を退きなさい。 その為にも――、」 ……きびきびとした声なのに、由乃の声はとてもあったかく僕の心に沁み入っていく。 だから僕はすぐに、ここに立ち戻ることが出来るんだ。 眼を見開けば、遠くの鳴海さんが肩をすくめて由乃の話を聞いている。 「あんたの持ってるもう一台の携帯電話。 それを、校門の上に置きなさい。私たちに見えるようにね」 ……ここまでは、予定通り。 由乃と僕がもう一台の携帯電話の存在を聞いて真っ先に警戒したのは、ある可能性についてだった。 つまり、その携帯電話が新たな未来日記の可能性がある――ということ。 疑いすぎかもしれないとは思う。僕だって、仲間になってくれるかもしれない人にこんなことはしたくない。 けれど、それが未知の未来日記だとしたら、能力が分かるまでは放置しておく訳にもいかなかっだ。 そもそも携帯電話があるというだけで危険だって由乃は主張する。 今の携帯電話はボタン一つで連絡を取れるから、土壇場で仲間を呼ばれても厄介だって。 もちろん三台目の携帯電話を所有している可能性もあるけど、それは大した問題じゃないという。 肝心なのは、相手がそれを手放すかどうかを見極めること――こちらの意思をどれだけ飲み込むのか、という話らしかった。 「了解だ。これでいいか?」 その言葉が来てすぐに、鳴海さんはポケットから見覚えのない携帯電話を取り出す。 ……まるでこの展開をあらかじめ知っていたみたいだ。 彼は内心、どう思っているんだろう。 顔には何も出てなくても、もしかしたらすごく焦ってるのかもしれない。 だってどう考えても携帯電話の存在は知られない方がいいんだから。 どちらにせよ、動揺のあまりに由乃を暴走させかねない言動が飛び出ない事を祈る。 「時間がないわ。さっさと交換を終わらせましょう。 その為に時間を早めたんだしね」 わざわざこっちの指示にしたがってくれたのに、一向に険の取れない由乃の声が耳に痛い。 淡々と作業をするかのような口調は、僕でさえ何を考えているのか読み取ることが出来なかった。 ――さっきみたいに。 ここに至る前、電話で最後の交渉を行った時の事を思い出す。 あの時はこちらから連絡を取ったんだけど、それは雪輝日記にこんな予知が表示されていたからだった――。 【 11 50 校庭でユッキーと鳴海が出会った瞬間に変な男が乱入してきたよ。 いきなりユッキーたちが動けなくなって、無差別日記が変な男の手に渡っちゃったよ。 どうしようユッキー。 12 00 ゆ、ユッキーが突然消えちゃった……。 ウソでしょ、ユッキー。日記があんなのに破壊されちゃうなんて。 ねえ、出てきてよ、ユッキー。 笑ってよ、ユッキー。 ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、 ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、 ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー……。 】 由乃がじっと文面を眺めていたのが、やけに強く印象に残っている。 何を考えているんだろう――。 自分の死の表示に取り乱すこともなくそんな事を考えられるくらいには、僕も場数を踏んでいた。 けれど、いきなり由乃がすごい勢いでどこかに電話をかけた挙句、 『取引場所への第三者の襲撃のせいで、“12 00”にユッキーが死んじゃうって予知が出ているの。 だから取引開始時刻を10分早めたいんだけど。 あんたの言った放送に近い時間ってメリットも多少は享受できるし、問題はないでしょ』 コール音が終わった直後に一気にそんな事をまくしたてた。 早口で一気に用件を伝えていたのは、多分相手にペースを握らせないためだったんだろう。 それに気づいて僕が電話相手を把握した直後、その予想を裏付ける声が受話器から漏れてきた。 『……やれやれ、いきなり無遠慮だな。 第三者の介入の有無が分かるなら、もっと早い時間でもいいんじゃないか?』 鳴海さんは絶対に呆れてたけど、その言葉は即座に交渉モードに切り替わっていた。 内容も的確で、僕も疑問に思っていた事だ。 『下手に予知を書き変えるより、できる限り既定の未来に沿った方が安全なの。 あんたはどうなの? 同意する?』 『……了解だ。その案に乗るよ』 成程、と僕も納得。 と、同時。 ジジッと恒例のノイズ音がして未来が書き変わった。 スムーズに交渉も終わり、僕もほっと一息ついた所で――、 『何を企んでいる? 取引を10分前にする事でのあんたの利点は?』 由乃はむしろ、鳴海さんの素直さを疑っていた。 どうしてこうなんだろう、本当に。 僕たちは由乃に振り回されてばかりだ。 『そっちから話題を振ってきたってのに、疑り深いんだな。 もっと余裕を持たせても大して変わらないだろ? むしろ、あんまり早くにされても備えを膨らませる事ができなくなるしな』 眉を詰めて渋い表情をする由乃だけど、上手い反論が思い付かなかったらしい。 それから二言三言交わして電話を切ると、再度二人で雪輝日記を覗き込んだ。 書き変わった未来は、確かに僕の生存を証明していた。 けれど、もうひとつ大事な――、 『私を信じて、ユッキー』 より一層浮き彫りになった不安を拭うように、僕の手を握った由乃。 『ユッキーの無事は保証されてる。だから大丈夫、ユッキーは生き延びるよ。 でも、ごめんね。ほんとうにごめんね。 ユッキーには苦しい思いをさせちゃうかもしれない……』 言葉も僕を安心させるようなもので、傍から見れば勇気づけられているのは僕にしか見えないはずだ。 けれどあの由乃が、いつも我が道を行く由乃が、珍しく頼りなげな顔を見せていた。 ……多分それは、書き変わった予知内容が原因だったんだろう。 僕は、こんな由乃の表情を見ていたくなかった。 だから僕の手でそれを消し去ってあげたくて、思うままに言葉を紡いたんだ。 『……なにか考えがあって、こうしたんだよね?』 『うん……』 『だったらいいよ。うん、平気だ。僕は、由乃を信じてるから』 にこりと微笑むと、由乃の頬が可愛らしいピンク色に染まった。 『ユッキー……』 えへへ、とはにかむように微笑み返すと、由乃は確かにこう言ってくれた。 『ありがとうユッキー、絶対に……ユッキーは“私が”守るからね』 ……この笑顔の為なら、ちょっとくらいの痛みは我慢できる。 今思い出してみても、そう思う。 「そうだな。襲撃が分かっている以上、こんな所から早く撤退したいのはこっちも同じだ。 ま、それなら場所を変えても良かったとは思うけどな」 「下調べした地の利を手放すほど愚かじゃないの。 それに、あんたこそそれを思いついたなら無差別日記をどこか別の場所に置いて、私を取りに行かせるとかも出来たはずでしょ。 そっちの方がずっと安全なのに、どうしてそうしなかったの」 ――気がつくと、僕を放置したまま由乃と鳴海さんの舌戦はどんどんエキサイトしていた。 「それは思い付かなかったな。あんたのその発想力、是非仲間に引き入れたいよ」 鳴海さんが気を使って少しでも場の雰囲気を良くしようとしているのに、 「ふざけないで。あんたがそれを思いつかないはずがない。 時間のことといい、交換手段といい。 ……いちいちユッキーに媚びる意思が見えて反吐が出るわ」 由乃は全く聞く耳を持ってくれない。 打算に満ちたギスギスした雰囲気が、辺りを包む。 「正解だけど、酷い言い様だな……。 余計な事をさせて心証を悪くしたところで、協力関係を築く障害になるだけだろ? 別に一緒に行動しろとは言わないさ、時折電話で情報交換をする程度の繋がりでいい。 それに、だ」 こほん、と鳴海さんが言葉を仕切り直す。 「あんたを単独行動させるよりは天野の近くにいてもらった方がいい。 それがあんたの望みだろうし、天野の望みでもあるだろうしな。 ついでに言うなら、場所を言った時点で撃たれるのだって御免なんだ」 ……多分恋人として、という意味じゃなく、ストッパーとして、という意味なんだろう。 確かに由乃なら無差別日記を回収した後、鳴海さんの背中を撃ちかねない。 けれどそれでも、由乃の口撃をひとまず収めることには成功したみたいだ。 「……ふん」 由乃が口を噤んだのを肌で感じ取って、長く静かな溜息をもらす。 目を開けてみれば、鳴海さんが大変だなとでも言わんばかりに苦笑していた。 愛想笑いを返しつつ、頭を下げる。 ……何故か知らないけど、この人にはとても親近感を感じる。 由乃の扱いといい、もしかしたら女性関係で相当苦労してるのかもしれない。 だからきっと、仲良くなれると思う。 そして僕は、交換に臨む。 願わくば、無事に終わりますように。 雪輝日記を鳴海さんに渡す直前、念のために僕は歩きながら最後の確認をしておくことにした。 もちろんそれは、予知の内容についてだ。雪輝日記にはこう記されている。 【 11 40 予定より早く来た鳴海とユッキーが日記の交換をしてるよ。 あんなヤツにもしっかりと立ち向かうユッキーに見惚れちゃった。 雪輝日記を渡したことで申し訳なさそうな表情を私に向けてくれたけど、そんな顔しないでユッキー。 すぐにこの手で取り返してみせるからね。ユッキーの動向は誰にも監視させないんだから! 11 50 乱入してきた二人の男がユッキーを狙ってる! 一人はユッキーたちの動きを糸みたいなもので操ってる。 ユッキーが無理矢理筋肉を動かされて凄く痛そうな顔してるよ。 ……こうなるのは分かっていたけど、あの男だけは許せない。 もう一人はそんなユッキーを助けに来たみたい。 見事にユッキーを抱き抱えて糸男の射程距離から逃れたよ。 無事でよかったユッキー。 12 00 件の男がユッキーにやけに馴れ馴れしく近づいて放送を聞いてる。 ユッキー、こいつを仲間にしたいって、どうして? 乗せられちゃ駄目、ユッキーの側にいるのは私だけでいいんだから。 】 * 時系列順で読む Back まっすぐに立っているか Next この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中) 投下順で読む Back まっすぐに立っているか Next この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中) 113 未来視たちのアンガージュマン(状態表) 天野雪輝 122 この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中) 113 未来視たちのアンガージュマン(状態表) 我妻由乃 122 この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中) 113 未来視たちのアンガージュマン(状態表) グリフィス 122 この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中) 113 未来視たちのアンガージュマン(状態表) 鳴海歩 122 この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(中)