約 3,176,178 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/623.html
涼宮ハルヒの出会い 『アイツノソンザイ』 「おまたせー!皆朗報よ!聞いてちょうだい!」 またか…何度も何度も自分に言い聞かせるようだがいつ聞いてもいやだな… いつからだろうな…朗報という言葉に嫌気を感じるようになったのは… 「今度はなんだ?」 「あっキョンいたの?聞いてちょうだい!」 いたの?じゃないだろ!俺がいるから言ってきたんじゃないのか? 今日は俺だけの参加のはずだぞ? 「お前な…朝比奈さんたちは今日は不参加って聞いてなかったのか?つまりだな…」 「分かってるわよ!もうちょっとした冗談じゃない!いちいちつっこまない!」 俺がつっこまないなら誰がつっこむんだ… なんて事は言わない方がいいよな、まぁなんだ話だけは聞いてやるか 「で何だ?」 「あっそうよ!聞いて頂戴!本当は皆がそろってるときがいいんだけど今日は仕方ないわ」 「我がSOS団が結成されてからどれくらいたったか覚えてるかしら?」 そういやこんなふざけた団体はまだこうして活動しているんだよな となると半年くらいか、ずいぶん長い間無茶もしたもんだ 「で、それが朗報と何が関係あるんだ?」 「もう、ここまで言って気がつかないなんて本当に使えないわね!」 「記念パーティーよ!パーティー、もう半年になるのよ!?めでたいと思いなさい!」 おめでたいと思うのはお前の頭の中身だよハルヒ…とまぁなんにせよパーティーだと? どこでするつもりやら…どうかまともな場所でありますように… 「それで場所なんだけどね、やっぱりSOS団の記念ってことだし部室でっていうのはどうかしら?」 …我が家じゃなかったことには感謝しよう、だが部室? そりゃ問題ありまくりだろ…とまぁつっこんでもしかたないがいちを言っておくか 「学校は流石にまずいだろ?もっと他の場所しないか?」 「じゃあどこがいいのよ?」 そうなりますよね…とまぁ一通り考えたが誰かの家くらいしか思い浮かばないな… うーむ、まぁ今回はまともな朗報だったことだし少しくらい無茶に付き合ってやるか 「そうだな、誰かの家だとその人の家に迷惑もかかるかもしれないし今回は学校でもいいかもな」 おい、意外そうな顔をするな、そんなに俺がお前の意見に同意したのが気に食わないのか? といいたくなるくらいの驚きの表情を見せたハルヒなんだが… 「以外ね、熱でもあるんじゃないのかしら?」 「まっいいわ、じゃあ決定ね!明日みんなに話しましょう!もちろん放課後まで皆には内緒よ!」 といってハルヒは部室から出て行った つーこは解散か?まぁ帰るとしますか てなわけで今日は珍しく早く帰れることになった、まぁ明日のことを考えると… えぇい!やめやめ、今日はゆっくり休むことにしよう…考えるだけで疲れる あいつ喜んでくれたかな?いっつも無茶につき合わせてたからたまにはこういうのもいいわよね うん、きっと楽しんでくれるわよ! 明日は皆にも伝えて準備もしないとだから忙しいわ!今日はやめに寝ときましょう ………………ジリリリリリ バンッ 「うぉっ!」 「おっはよーキョン君!」 妹よ…おはようという表現はいささか間違いかもな… 下手したらおやすみだぞ… 「なぁ?何度言えば分かってくれるんだ?せめてもう少し優しく起こしてくれてもいいだろ?」 「えへへ、でもこうしないとキョン君おきてくれないよ?」 反論できないな…うーん自分の目覚めの悪さを恨むぞ と悠長なことはいってられないな、さっさと朝飯を食って準備した俺はいつもの ハイキングコースにいくことにした、この坂はどうにかならないかね… もう秋かと思わせる足はやな紅葉 これが唯一の救いだな とかとか考えているうちに学校だ、さーて今日の団長さんは何を考えてることやら… とまぁ教室にはいったら人目もくれずに 「キョン!今日は放課後付き合いなさい!いいわね!」 それはどっちの意味ですか? 「何がよ?」 いやデートか果し合いなのか 「バカ、昨日のこと忘れたの?」 覚えてますよ、分かった、だからそうふてくされるな 「悪い悪い、冗談だよ、で今日必要なものでも買いにいくのか?」 「もう、いっつもそうなんだから、そうよ!善は急げって言うでしょ?」 「そりゃそうだが昨日の今日ってちょっと急ぎすぎじゃないか?」 「いいの!あんたは黙ってついてきなさい!」 はぁ…まぁ分かりきっている答えなんだがこうなんでいつもなれないものか… 俺の免疫組織はきちんと働いてるのかね?ご主人様のピンチなんだぞー とバカなことを考えているうちにチャイムがなった 急いで席にすわってからは後ろの団長様はさぞ満足したかのように大人しかった 「…珍しいな」 「ん?何かいったかしら?」 「いやなんでもないぞ」 「そう」 今日はちょっと眠いわね…昨日夜中まで起きてたのがまずかったかしら… まぁキョンに用件は伝えたしちょっと寝ようかしら 「……ぉぃ、ハルヒ!ぉぃ…」 ん?キョン? 「あっおはよう、どうしたの?」 「どうしたのじゃないだろ、もうとっくに授業は終わったぞ」 えっ!1時間も寝ちゃったの?まずいなーまぁいいわ 「そう、でどうしたのかしら?」 「ん?自分で言ったことも忘れたのか、何か俺に用事があるんだろ?」 え?まさか!? 「はぁ…お前あれからいくら起こしても目をさまさないから大変だったぞ、今は放課後だ」 「だー今日は仕方ないわ!たまにはそういうこともあるのよ!」 「そうかい…」 笑うなバカ!でもそんなに私寝てたんだ…あぁキョンに寝顔みられたかな? ちょっと恥ずかしいな、変な顔してなければいいんだけど 「じゃ、早速だけどいくわよ!」 「おいおい、いくって何処にだ?場所は決まってるのか?」 「えぇ、材料は当日買うとして今日は小物買いにいくから街までいこうって思ってたの」 「そうか、じゃあ早速いくか」 キョンは準備が終わってるみたい、私も急がないと! そんなこんなで電車にのって街まできたのはいいけどこれってデートなのかな? ちょっと恥ずかしいな、制服っていうのがな~雰囲気でないけどまぁいっか! キョンも意識してるのかしら?ちょっと恥ずかしそうね 「ねぇあそこのお店どうかしら?」 「いいんじゃねーか?」 「もう気の抜けた返事ね、まぁいいわ、いくわよ」 中はいい感じに古ぼけたお店だった、どうやら個人店らしく仲がよさそうな老夫婦が経営してるらしい 物は良心的な値段でどれもいいもの安くって感じね 「これなんてどう?これもいいわね!あっキョンアレとって頂戴!」 「もう少し落ち着けよ…で、これか?」 なんだかこんなの始めて、すごく楽しい! 色々買えたし満足だな~ちょっと買いすぎちゃったかな? 「ありがとうございました、荷物多いようだけど大丈夫かい?」 「あっ大丈夫ですよ!こいつにもたせますから!」 「そう、彼氏さんも大変そうだね、今荷物をまとめてあげるからちょっとまってね」 えっ!カップルに見えたのかな?否定し…とかないであげるわ キョンもちょっと気まずそうにしてるし、今日は特別なんだからね! そんなこと考えてるうちに荷物がまとまとまったみたい 「「ありがとうございます」」 お礼をしてお店をでた、うまくおじいさん達が荷物をまとめてくれたから キョンも持ちやすそうね、あんた感謝しなさないよ?なんて思ってたらキョンから話かけてきた 「なぁ、さっきのおじいさん達いい人達だったな」 以外、カップルに間違われたことを言われるかと思ったけどそうじゃなかったみたいね 「そうね、これだけ買ったのに3000円ですんだのもびっくりよね、サービスしてくれたのかしら?」 「はは、だといいな、なぁハルヒ…そのあれだ、また一緒にこような?」 えっ?以外だった、キョンからそんなこと言われると思ってもなかったし それよりキョンにまたデートしようって言われたのがうれしかった いや、デートなのかな?これは…でも二人でまた一緒に遊べるならいいかな 「そうね!まぁどうしてもっていうなら付き合ってあげるわよ!」 「はは、じゃあどうしてもって事にしておいてくれ」 はぁ…私って素直じゃないな、でもキョンにはこれくらいで丁度いいかな? あっもう駅か、しかたない電車賃くらい出してあげるわ! 荷物持ちのお礼って事にしておいてあげる 「まってなさい、いま切符買ってくるから」 「えっいや「いいの!そこでまってなさい!」 「じゃあお言葉に甘えとくよ」 急いで切符を買ってキョンに渡したあと電車は以外とすぐにきた なんだろう、電車の中では会話できなかった… 最寄り駅が近いのもあるかもしれないけど あっおりないと! 「おりるわよ!ほら、もうあぶなっかしいわね!」 「悪い悪い、っとよし行くか」 「あぁハルヒ!そういえば荷物どうするよ」 あちゃー考えてなかった…今から学校に行くわけにもいかないしな…どうしよう… 「しゃーない、家で預かっておくよ」 「あっあんたにしちゃー気がきくわね、じゃあお願い」 「おう、あっ日程はもうきまってるのか?」 「うん、明後日にするわ、次の日が土曜日だから遅くまでなっても平気でしょ?」 「うーむ、あんまり関心しないがまぁそうだな、わかった、じゃあまた明日な」 「あっ…うん、ちょっとまって!」 あっ…勢いで呼び止めちゃった…どうしよう… 「ん?どうした?」 ほら…もう、いくっきゃないわね 「荷物重そうだし…途中まで手伝ってあげるわ!感謝しなさいよね!」 あっなによ!以外って顔すんな!バカ 「うーん今日はやけに優しいな?どうした?」 「ばか、いつも優しいわよ!」 「そうでした、じゃあよろしく頼む」 「うん」 軽い荷物を受け取って私が持つことにした、そういえばキョンの家と私の家って 少し遠いのよね、帰りどうしようかしら… まっ今日はいいわよね、少しでも長く一緒にいたいし 「おい~ここまででいいぞ~」 えっ?あっぼーっとしてた、もうついちゃったのか… 「うん…」 何か話せばよかったな… 「んーアレだ、今日はなんか俺ばっかり優しくされて不公平だな、家くるか?お茶くらいはだすぞ」 えっ?キョンの家?行きたいけど…どうしよう… 「いく!」 あっバカ!何素直にいちゃってるのよ 「おう、んじゃここからすぐだから、荷物はもういいぞ、助かった」 「うん」 それから少し歩いてすぐに家についた、結構いい家にすんでるのね 「ただいま~、おいハルヒ部屋はこっちだ」 「あっ、おじゃまします」 「今日は誰もいねーぞ、なんか母親は妹つれて友達と遊びにいったしな」 「あっあんたまさか!」 「ばっばか言うな!7時には帰ってくるとか言ってたし何もしせんわ!」 まぁキョンが相手なら…って何私考えてるんだろ! 「ちょっとからかってみただけよ、あんたにそんな勇気あるはずないしね!」 「後が怖いからな、っとお茶入れてくる、適当に座ってていいぞ~」 そういわれてリビングに通された 「ねぇ、キョンの部屋どこ?」 何言ってるんだろ私 「ん?部屋?なんでだ?」 「キョンの部屋がいい」 ほらまた… 「んー変なもの探すなよ?こっちだ」 「ばか!探さないわよ!それとも何かあるのかしらね?」 やった!キョンの部屋にはいれる! 「アホ、ないわ、ここだ~今お茶もってくるからまってろ」 そういってキョンは下にいった 「これがキョンの部屋か~以外ね、綺麗じゃない」 あっベットだ………… バフッ、キョンの匂い…いいにおいだなー…ガチャ 「おーいお茶もってきたぞ、っておい」 あっしまった! 「あっちょっと疲れたから横になりたかったの!」 うぅーしまった、見られた… 「ん、まあ飲め、冷めるぞ」 「うん」 うー気まずいな、早く飲んじゃえ 「あつっ!」 「おい!大丈夫か!みせてみろ」 うぅーばかした、舌やけどしてないかな… 「ほれ、はやくベロだせ」 「うん」 「大丈夫そうだな、あんま無理すんな」 「うん」 うん、としかいえないよ…きまずい… 「ばか…あんまり人のベロじろじろ見るな」 「あっ悪い悪い、っともう40分か」 「うん…」 どうしちゃったんだろう今日の私…なんか素直になれないな… 「送ってくよ」 「えっ?」 今送っていくって言ってくれたの? 「もう外も暗いしな、ほれいくぞ」 「あっ、うん」 今日はやけにキョンも優しいわね、どうしたのかしら? まさかキョンも…?だといいな…エヘヘ 準備も終わって家をでた 「おじゃましました」 もう秋だな~って思うくらい外は暗くて涼しかった ちょっと寒かったかな そうおもってたらキョンが 「今日はちょっと寒いな、上着きてくりゃよかったな」 「バカ…じゃあ手繋ごうよ…」 何言ってんだろう…カップルじゃないんだよ? これで断られたらきまずいよ…いつも見たく勝手に繋げばよかったのに… 「んーそうだな、でもいいのか?」 あっキョンもまんざらじゃなかったのね?よかった! 「今日は特別って言ったじゃない!明日からは無しよ!」 「へいへい、じゃあ今日だけ甘えておきますよ」 どっちからとも言わずに私達は手を繋いだ… お互いちょっと無言だったのはお互い気まずいからかな? とか考えてたらもうすぐ家だ 「キョン、ここまででいいわよ」 「ん?家まで送ってくぞ」 「大丈夫、もうそこの角まがったらすぐだし、親も心配してるからさ」 「んーそうだな、こんな時間に俺がいったら親もいらぬ心配するしな」 「ばーか、まっそういうことよ、今日はご苦労様」 「おう、んじゃまた明日な」 「うん」 少し名残惜しかったけど手を離した… キョンを見送って背中が見えなくなった… なぁハルヒ?今日のお前はどうしちまったんだ? そりゃ俺としてはだな、まぁうれしくないって言ったらウソになるが あいつもずいぶん丸くなったな、にしても俺はなさけないな… 普通男からすることをほとんどあいつからか… もう少し古泉を見習うか にしても俺ってやっぱりアイツのこと意識してるのか? 今日はやけに緊張したな、そりゃ普通にまともなデートとかは初めてだが 俺もしかしてあいつのこと… キョンに対しての気持ちっていつからだったんだろ… もしかしたら始めから?でも気持ちが確かなものだって分かったのは 今日改めてかな…たぶん好きになったのは夢の後あたりからかな… ねぇキョン… 「キョンにとっての私は?…」 「ハルヒにとっての俺は?…」 「俺にとって」 「私にとって」 「「アイツノソンザイって…」」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3008.html
三章 学校に行くのが憂鬱だ。体中がとてつもなくだるい。 昨日、あれから一晩中泣き明かしたからだろうか。ほっぺただけじゃなくて、 目も相当腫れているんだろうな。 ――返せ!俺の時間を返せ―― 昨日は結局、キョンは部室に帰ってくることはなかった。仮に帰って来たら、 今度はあたしが逃げ出していたんだろうけど… キョンの言葉が耳にこだまする。あたしは、あいつを………その………好いていた。 あたしがどんな無理なことを言っても、最終的にはそれに賛成し、協力してくれる。 そんなあいつに、あたしは心の底から信頼していた。 だけど…今はあいつが……とてつもなく怖い…… 所詮はご機嫌とり。能力のないあたしなんてもう関係ないってこと? 昨日のあれは三年間のあたしへの、鬱憤だったのかも… 楽しいと思ってたのはあたしだけ? 後ろ向きな考えばかりが浮かぶ。 そんな考えを払拭するために、あたしは早朝から、坂を上っている。 昨夜キョンからメールが来た。 『話したいことがある、明日、朝、 六時半に教室に来てくれ』 もしかしたら、また罵倒されて終わりかもしれない。 だけど、あたしはあいつを信じたい。 「ごめんね、古泉くん。 こんな朝早く付き合わせちゃって」 やはりまた殴られるのは怖い。昨日のうちに古泉くんに、 一緒に学校に来てくれるよう頼んでおいた。 「謝るなんてあなたらしくない。 昨日のあれは完全に彼の過失です。 あなたは毅然とした態度でいるべきですよ。 団長を守るのは副団長の務めです。」 古泉くんはいつも通りの笑顔であたしに優しくそういった。 「もっとも、本当は彼が、いの一番にあなたを 守らなければならないのに…それなのに………!!」 古泉くんはボソっと怒りを押し殺した声でそう言った。 学校についた。教室まで、もう少しだ。段々とあたしの鼓動が速くなっていくのがわかる。 それと同時に昨日の、キョンの血走った目。 殴られて倒れたあたしに伸びてくる紫色の拳が脳裏に蘇る。 切れた口の中がまた痛みだした。 教室の前まで来た。あとはドアを開けるだけ…だけど体がそれを拒む。 ドクン!ドクン! 取っ手を掴んだまま動かせないでいるあたしの手を、古泉くんはそっと握ってくれた。 ガラガラっと音を立ててドアが開く。キョンは……いた。 「古泉も来てたのか」 そういうとキョンは自分の机からゆっくり立ち上がり、近付いてくる。 昨日の血走った目のキョンと今のキョンが重なりあう。 逃げたい!今すぐ!ここから逃げ出したい! あたしが今にも動きだそうとしている体を必死で押さえ付けていると… がばっという音がした。思わずビクッと目を瞑ってしまったが拳は飛んでこない。 恐る恐る目を開けると、 キョンがあたしの目の前で、手と顔を床につけてうずくまっている。 「ど…げ…ざ…?」 あたしが思わず、呆然と呟くと…… 「昨日は本当にすまなかった!お前の気持ちも考えず… 自分のことしか考えていなかった!! 許してほしいだなんて思っちゃいない! だけど!お前をずっと傷付けたままにすることは出来ない!!」 ああ…いつものキョンだ…優しい目であたしを見てくれる、いつものキョンだ… あたしは思わず彼に抱き付いていた。 「こ…の!えぐっ…!バカ!!昨日はあれだけヒドいことしておいて…! あたしがどんな気持ちで学校に来たと思ってるのよ!」 「ああ、昨日は本当にどうかしていた… だけど今の俺はとても清々しい気分なんだ」 「え?」 そう古泉くんの言葉が聞こえた気がしたけど、今は関係ない。 「な…何よ!ヒック…!許してもらおうだなんて思ってないですって? バカ言ってんじゃないわよ!ヒック…許すに…決まってるじゃない!」 「じゃ、じゃあ…また勉強に付き合ってくれるのか? まだ東大を目指していいのか?!」 キョンの目が涙でいっぱいになっている。まったく!泣き虫ね! って思った瞬間、あたしの声に嗚咽が混じっており、 キョン以上に目に涙を蓄えていたことに気がついた。 あたしは最後の力で首を振り、肯定の意を表すと、いよいよもって、 大声で泣き出した。魂の慟哭だ。 「うわあああ!キョン!キョン!」 10分はたっただろうか? 昨日に引き続き泣いているので、あたしの喉はもうガラガラだ。 あたしが落ち着き、ひとまずキョンから離れると、古泉くんが近付いてきた。 古泉くんはキョンの胸倉を掴み、無理矢理起立させた。 「もし、この場に涼宮さんがいなければ、 僕はあなたを殴り倒してる所だ! あなたはさっき涼宮さんを傷付けたままには出来ないと言いましたが まさかこれで彼女の傷が癒えただなんて思ってないでしょうね!? これからあなたは、一生を懸けて涼宮さんの傷を、 癒していかなければならないんだ! もしまた彼女を裏切るような真似をしたら、オレはお前を許さない! わかったか!!!!?」 古泉くんが焦ったように早口で言う。 どうしたの?古泉くん?口調までかえて…古泉くんらしくない… 「分かっている。古泉…俺はもうハルヒを傷つけたりしない。 この罪は一生懸けて償っていくつもりだ。 それに俺は前からハルヒのことが好きだった。」 え?それって…もしかして… 「え~と、つまりだな、ハルヒ…俺はお前を好きなわけだ。 そうなると当然、お前と付き合いたいと思うわけで… そこに一生懸けて罪を償うという要素を取り入れるとだな… それはつまり…その…『結婚を前提としたお付き合いをお願いします』 ということになってしまうわけで…… それで、つまり……そういうことだ」 え?これってもしかしてプロポーズ?こんなグダグダなのが? だけどなんだろう…この胸から沸き上がってくる感情は? 随分長い間忘れていた気がするそれは…そうだ…喜びだ!! あたしはまたキョンに抱き付き大声で泣いた。 「お、おい!まだ俺は返事を聞いちゃいねぇぞ?」 「やれやれ…どうやら僕の思い違いだったようですね。」 安心した顔で、そういうと古泉くんは教室を出ていった。 その日、六限目は体育館で薬物防止の講習会が行われていた。 まったく、こんなのに手を出す奴の気が知れないわ!気持ちいいんだか知らないけど、 それで人生を棒にふるなんてバカのすることよ! あたしほどになると風邪にだって薬なんか必要ないんだから! それから薬物を使うとどんな症状にみまわれるのか、細かい話を延々と聞かされた。 あ~あ、早く終わんないかしら?今すぐ部室でキョンと一緒に勉強したい。 教室に帰るとキョンが話しかけて来た。 「あ、あのさ…ハルヒ…実は…」 キョンが蒼白した顔で話しかけてくる。 「何よ?」 わざと不機嫌そうに答えるとキョンは 「い、いや!何でもない!今日も部室で頼むぜ?!」 と言うと、今度はあたしの二つ隣りにいる春日さんの所に行き、 一緒に教室を出て行ってしまった。 ふん!何よ!朝はあたしにプロポーズまでしたくせに!大体何よ!春日って!! 名前があたしと被るのよ! 全く!作者は何を考えてるのかしら! オレは今体育館で薬物防止の講習を受けてる。 こういう話を聞いてるとどうしてもあいつを思い出してしまう。とても涼宮さんには言えない話… オレ達が所属していた機関は、涼宮ハルヒの発生させた閉鎖空間を取り除くことが、 主な仕事だった。しかしそれは多大なストレスを伴う。 そういう中で活動しているとたまにいるんだ。ストレスに押しつぶされてしまう人間が。 オレの親友だった。ドラッグに溺れたそいつは自殺の間際にオレにこう言った。 ――今の俺はとても清々しい気分なんだ―― それは普通に聞けば何の変哲もない、むしろ喜ばしい言葉だ。 だけど、オレにとってはトラウマ以外の何者でもない。 なんてったってオレはそいつの変化を少しも気付いてやることが、 出来なかったんだから…悔やんでも悔やみきれない…… 今朝の彼の言葉があいつの言葉を思い起こさせた。言い知れぬ不安に駆られた。 もっとも、それがいらぬ心配だったということは、その後の言葉で確信した。 「あなたの言葉…僕は信じていますよ」 オレは心の中で、そう呟いた。ふう、やけに疲れたな今日は。 たまには部室に寄らず帰ろうか。 う~ん、疲れたわね!有希の本を閉じる音と同時にあたしは背伸びをした。 「あら、キョン?」 キョンがスライムみたいになっていた。溶けた、緑色のブクブクいってる方ね。 「お、お前…いくらなんでもハイペースすぎやしないか?」 「ふん!あたしの未来の旦那さんが何弱音吐いてるのよ! このくらいやらなきゃ東大なんて夢のまた夢よ! はい!これ!今日の課題よ!明日までにやっておきなさい!」 キョンはやれやれといいながら背伸びをした。 「腕のそれ、ケガ?」 有希が短くそれだけいった。 あたしがキョンの腕を取ると、赤い点が一つだけあった。 よくこんなの気付いたわね。有希。 「あ、ああ!これか?いや、昨日近所で献血をやってたんだよ! 昨日の俺は頭に血が上り過ぎてたからな! 抜き取って頭を冷やしたというわけだ。 ほんと、単純だな!俺って。」 献血?そんなのはもっと人込みのある、主要道でやるもんじゃないの? 何で周りに家しかない、人通りの少ない道でやるのかしら? そうは思ったがそれ以上は聞かないことにした。 それ以上聞くとまた関係が崩れていってしまう気がしたから。 有希が黒い瞳でキョンをじっと見ている。 そういえば今日は古泉くん来なかったわね。 まあ有希もそうだけど、推薦で進路は決まってるみたいだし、家で休みたいのかもね。。 そしてあたし達は家路についた。 四章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5595.html
「何が起こってるんだ」 俺はもう何度となく口にしたセリフを飽きもせず漏らした。 長門だけがいない。そのうえハルヒやその他の連中に長門の記憶はない。古泉は欠席中。それが今の俺の置かれた状況である。長門だけがいない? 何故だ。 はっきり言って、俺一人では見当もつかん。 考えようたって俺の頭は絶賛混乱中につきまともに回転してくれないのだ。そうだろう。一般人だったら俺みたいな感じになるに違いない。 まあ、俺一人ではどうしようもできないというのは俺がこの上なく一般人だからという理由をつけて、朝比奈さんぐらいの相手なら口論で言い負かす自信はあるがな。だがしかし朝比奈さんを言い負かしたところで何の利益も生まれず、そして今はそれどころではない。 いや、待てよ……。 朝比奈さんだ。 というわけで、そう気づいたのは右耳から入ってくる情報を左耳に受け流しているような一、二時限目の授業が終わったときだった。 授業中、俺のシャーペンはいつもに増して動作停止の割合が高かったがせめて今日ぐらいは大目に見て欲しい。そして俺の願いが通じたのか、運のいいことに教室内を無駄に徘徊しまくる教師に咎められることはなかった。なぜだろう。 だからそんなことを疑っている場合ではない。 今は朝比奈さんだ。 SOS団で残った可能性といえば彼女くらいなものである。ハルヒは記憶がおかしいし、長門と古泉は学校にはいない。長門にいたってはこの世界にすらいないのかもしれん。 俺は確認の意味もこめて後ろを振り返った。 「おいハルヒ」 俺の後ろにはやはりハルヒがおり、終わったばかりの英語の授業道具をせっせと片づけていた。 「何? 知り合いの女の子の自慢話ならお断りよ」 「そうじゃなくてだな、お前朝比奈さんを知ってるか?」 ハルヒは呆れたような顔になった。 「あんたまたそんなこと言ってるの? 何それ、最近流行りのゲームか何か?」 「そんなわけないだろ」 「まあいいわ。言っとくけどね、あたしはあたしの団の団員を忘れるようなことは絶対にしないから。あんたは微妙だけど、古泉くんとみくるちゃんなら一生忘れない自信があるわよ」 心強い返答だ。口に出して言えるわけはないが、どうせなら長門のことも覚えててくれればよかったのにな。 「それで、みくるちゃんがどうかしたの?」 「いや、何も」 「何よそれ、気になるじゃないの。訊いたなら訊いただけのことはしなさいよね」 「本当に大した理由なんかない。俺がちょっと血迷っただけだ」 ハルヒには悪いが、今は三年の教室へと急がねばならん。ハルヒの「あんた今日血迷いすぎよ」とかいう言葉を背に、俺は席を立って廊下へと繰り出した。 ハルヒが朝比奈さんのことを知っているということは、朝比奈さんがここにいる可能性は高い。古泉のことも知っているらしいから、古泉も学校じゃないにしろどこかにいるのだろう。 何しろハルヒはこの世界の神様的存在である。古泉の考えを立てるのなら、ハルヒの記憶には朝比奈さんがいるのに実際はいないとか、あるいはその逆とか、ハルヒが本質的な矛盾を感じるようにはなっていないはずなのでである。それは同時に長門が存在しないことの証明でもあるわけだがな。 俺はちらりと時計を見た。三限の開始にはあと五分ほどの余裕がある。五分もあれば三年の全教室を見て回ることもできるだろうか。少し足りないかもしれない。 しかしそれは杞憂に終わったようだった。 それもそのはず、俺が三年の教室につながっている階段の踊り場に立ったとき、上の階から階段を降りてくるお方が俺の目に入ったからだ。 深くうつむいて唇を引き締め、可愛らしくも今はどんよりと暗い精神状態を前面に出している少女。 それが誰か、言わなくても解るだろ? SOS団専属のお茶汲み兼マスコット兼メイド兼書記。そして俺の精神安定剤女神様が、まさに目の前にいた。 「朝比奈さん!」 俺の声にハッと顔を上げた朝比奈さんは、しばらくクリスマスにサンタクロースを見つけてしまった純真な子供のような目で俺を見ていたが、やがて不格好なフォームで階段を駆け降りてきた。 「キョンくん――」 語尾を消滅させるような発音をして、再度そこにいるのが俺であるのを確かめるように俺の顔をのぞき込んだ。不安げな表情がやや明るくなっているように見えなくもない。 朝比奈さんは何か言いたそうにしていたがどうも言葉がうまく出てこないようで、やはり俺から何か言わねばならない。 瞬時に思いついた言葉の中でどれにしようかなを行っていると、次の瞬間、朝比奈さんの顔が急に歪んだ。 同時に、うっという短い嗚咽が聞こえた。しゃくり上げるその声はまさに俺の腰あたりからしており、なぜかというとそれは朝比奈さんが俺に抱きついているからである。何度となく感じたあの暖かくて柔らかいものがまた俺に押し当てられた。 「ちょ、あ、朝比奈さん?」 抱きついて顔をうずめているので朝比奈さんがどんな表情をしているか解らん。時々する嗚咽のような声から想像はできるが。そのたびに朝比奈さんの肩がひくひくと上下した。ワイシャツに涙の浸みていくのが伝わる。 俺はただただ動揺と困惑の最中を駆け回っていた。何だなんだ? 俺の右手及び左手は無意味に空をかいていた。しかし他にどうしようがあるってんだ。この場で黙って朝比奈さんを抱きしめられるほど俺はクールではない。朝比奈さんはひたすら泣き続けており、俺が先に声を発しなければならんのは承知しているのだが。 俺は、こんなところをハルヒに目撃されたりしたら一巻の終わりだなとか我ながら意味不明のことを思いながら、 「朝比奈さん……どうしたんですか?」 面白くも何ともない言葉を吐き出した。 「どうしたもこうしたもありません……ひくっ。……未来がごちゃごちゃになってて、時間平面がおかしくてTPDDがダメで……うぅ、あたしどうしたら……」 朝比奈さん、申し訳ありませんが意味不明です。とりあえず落ち着くことから始めてみたらどうでしょう。俺ならそんなに強く抱きつかなくても逃げたり消えたりしませんよ。 「ごめんなさい……その通りですね」 朝比奈さんはしゃくり上げながら、 「あたしがしっかりしなきゃいけないのに……。ごめんなさい」 いやあ、全然構わないっすよ。 朝比奈さんに泣きすがられるなんてのは全人類の約半分の夢だからな。しっかりするべきは俺なのだ。無論すべてがそんな下心で構成されているわけではないと釈明しておくが。朝比奈さんじゃなくたって――長門だってハルヒだとしても――泣きすがられればそれ相応の対応はしてやるべきだ。と言っても前者は涙腺があるかどうか怪しく、後者の場合は小型隕石がピンポイントで俺の家に衝突する確率よりもはるかに低いだろうと断言できるので実際そんなことがあるのは朝比奈さんだけなのさ。さて俺は何を言いたいのだろう。 「朝比奈さん、いったい何が起こってるか解ってるんですよね。ハルヒが長門を知らなかったり古泉が学校にいなかったり、って。すみません、俺もよく解ってないんですけど、朝比奈さんは何か知ってるんですか? 知ってたら説明してくれませんか」 「うん。……あたしもよく解らないからうまく説明できる自信はないんだけど」 朝比奈さんは表情をやや曇らせて、 「未来との交信がまったくできなくなってるんです。通信経路が途絶えました。未来からの指示や反応はないし、こちらからコンタクトを取ろうとしても未来に通じないんです。TPDDを使って未来に時間移動しようとしても、許可が下りてないから認証コードが解らないし、だから未来にも帰れないの……。朝に気づきました」 どういうことだろう。なぜ未来と通信できなくなってるんだ。 「伝わる経路がごちゃごちゃになってて信号が届かないって言ったほうがいいかもしれません。ごちゃごちゃになってるっていうのは現在から先の未来が大量に発生してるから。数え切れないほど、それもまったく種類の異なる未来が大量に発生しているんです」 朝比奈さんのその声には、もはや諦めにも近い感がにじみ出ていた。 ううむ、未来との交信ができなくなったというと朝比奈さんにとっては青木ヶ原樹海で道しるべを見失ったようなもんか。なかなか致命的ではあるが、いまいち実感が持てないのは俺が過去人たるゆえんである。 しかし俺が怪しく思ったのはそこではない。未来が大量にできているという点だ。 「どういうことなんですか? これから後の未来がいろいろに分岐してるってことですか?」 「そうです。大量分岐している上に、しかも分岐点がこの時間帯に集中してるんです。どの道を選ぶかでどの未来に着くかも決定されると思うんだけど」 「分岐を間違えると、まったく種類の違う未来に着く可能性もあるわけですか?」 「はい」 恐ろしい話である。 朝比奈さんの言うまったく種類の違う未来というのが何を指しているのか、何となく解った。 おそらく、長門がいる未来と長門がいない未来である。 当然俺は長門のいる未来に行きたいが、その分岐はいつどこでやってくるか予測不能だし、長門のいる未来に行ける確率も解らん。間違いないのは長門のいる未来かいない未来かという分岐がこの時間帯にあるということで、そして俺は何があってもその選択を誤ってはならないということだ。動きに細心の注意を払わねばならんだろう。今ちょっと楽をしたために一生後悔するようなことはあってはならん。 「これからどうすればいいとか解らないんですか? こうすればハッピーエンドになるとか」 「解りません。どの道を通るかで結果も変わってくるということしか」 「言えないんじゃないんですか? あの、禁則事項ってやつで」 「違うんです。禁則事項も強制暗示も全面解除されてます。その代わり未来からの干渉もないんだけど」 まあ、過去の人間にお前の未来は分岐してるぞなんて禁則事項が解除でもされてなければ言えるわけがないか。朝比奈さん(大)くらいの権力を持つ人だって答えを教えてくれたのはすべてが終わってからだったしな。八日後の朝比奈さんと俺がやったのは分岐を選択するためのことだった、と。 「あ、でも」 朝比奈さんは何か希望を見いだしたのかパッと表情を明るくした。 「長門さんなら何か解るかも……。未来が分岐してるってことも、ひょっとしたらこれからどうなるのかも教えてくれるかもしれません。ね、キョンくん?」 さて、それができたらどんなに楽をできるでしょう。たぶん、この状況下で長門を利用できたらそれは裏技でも反則の部類に入るものだと思いますがね。 俺はぽかんとして何も知らなかったらしい朝比奈さんにありのままを語ってやった。無理もない。彼女は未来のことだけで頭が一杯だったんだろうから。 今日になって突然、ハルヒやその他の連中が長門のことを知らないと言いだしやがったこと。長門のクラスに行ってみたが本当におらず、長門の席すらなくなっていたこと。ついでに古泉が学校を休んでいること。 朝比奈さんは俺の話を魂を抜かれたような感じで聞いていたが、途中から顔色をどんどんブルー方向に変えていき、俺が話し終わる頃には青を通り越して白くなりかけていた。 「そんな……未来だけじゃなくてそんなことも起こってたなんて……」 ハルヒがいないと知らされたときの俺を鏡で見ているような感じである。仕方ない。朝比奈さんはもともと突拍子もない事象に対する耐性がいまだにゼロに等しい上に、誰かが消えていたりするようなことを経験するのは初めてなのだ。そんな経験ほど慣れたいものも少ないが、俺のほうが朝比奈さんよりも経験を積んでいるのは事実である。 そんなことを考えているととある提案を思いついたので、ちょっと口にしてみた。 「朝比奈さん、今日学校を早退できますかね? あいや、朝比奈さんは早退しなくてもいいんですけど俺にいくつか心当たりがあるんで、できればそれを確認したいんです」 「心当たり……?」 「ええ。長門のことを知ってたりこの事態に気づいていそうな人間、まあ人間ですね。そんな奴らを少しばかり知ってるんで。もしかしたら助けてくれるかもしれません」 俺は即座に『機関』のメンバー、朝比奈さん(大)、喜緑さんの顔を思い浮かべた。 まずは『機関』である。古泉にもし電話が繋がれば、そこから『機関』にも繋がるはずだ。もちろん古泉に電話が繋がらなかったとしたら話は別だけどな。 次に朝比奈さん(大)と言ったが、未来がこじれているようでは彼女を全面的に頼ることはできん。長門がいない未来の朝比奈さん(大)が現れてその指示通りに動いてしまったら、それは間違いなくバッドエンドである。それでもやっぱり靴箱に手紙か何か入っていてくれれば安心できるわけだが。 喜緑さんに関しては難しい。長門と一緒に消えている可能性もあるし、いたとしても長門ほど頼り切れはしない。穏便派らしいが何を考えているのかいまいち理解できないからな。 と、ここまで来れば十二月十八日にはできなかったこともいくつかできる。一つぐらいヒットがあってもよさそうなものだ。 「朝比奈さんも、この時間帯に一緒にいる未来人の知り合いとかいないんですか?」 「知り合い、未来人のですか? いません、いえ、いるにはいるんですけど、そのぅ、ちょっとそれは……」 朝比奈さんは後込みしている様子だったが、その理由はすぐに解った。ヤツは俺の知り合いでもあるからな。 そいつはきっと男なんでしょう。そんでもって、ふてぶてしいを擬人化したような性格の持ち主で、こともあろうか朝比奈さんの誘拐騒動に一枚噛んでる野郎なんじゃないですか。あいつならお断りします。あんなのは知り合いの中にいれちゃいけません。 「仕方ありませんよ。未来人の知り合いならちゃんとした未来にいてくれればいいんです。朝比奈さんが気に病むようなことじゃありません」 「そう、ですか?」 「そうです。悪いとしたら朝比奈さんの上司――いえ、その話はよしときましょう。大切なのは今ですからね。現状把握が第一です。っても俺が思いつくところを徘徊するだけなんですけど、朝比奈さん、一緒に来ますか?」 「もちろん行きます」 朝比奈さんは重大プロジェクトを自らの双肩に背負わされた新米プロデューサーのような顔になって、 「キョンくんと一緒にいたほうが心強いですから」 * 起立礼の号令が上の階で響きわたった頃、俺と朝比奈さんは弁当を食い終わったら校門前で落ち合いましょうと約束してそれぞれのクラスに戻った。弁当を食い終わったらと指定したのは俺に少し時間が欲しかったからだ。この学校で喜緑さんを確認しておかないといけないし、あと一つ二つ確認すべきことがあったからな。 その次の休み時間、たかってくる谷口と国木田を軽くスルーして俺は廊下へ出た。部室棟へと向かいながら上着ポケットから携帯電話を取り出し、古泉にかけてみる。 呼び出し音が繰り返されていたが、俺がいい加減イライラしてくる頃になってようやく、電源が切っておられるか電波の届かないところにおられるか、とオペレーターの声がした。 「ちっ」 舌打ちしてみるがそんなに悲観すべきことではない。むしろ確信を得られたと喜ぶべきことである。 冬に変わった世界でハルヒに電話してみたときは『この電話番号は現在使われておりません』となっていたが今は違う。単純に古泉が電話に出られない状況にあるだけだ。電波の届かないところってのは何だ、閉鎖空間のことだろうか。 ところで閉鎖空間内にいるときは圏外になるのだろうかと素晴らしくどうでもいいことを考えながら、俺は役立たずの携帯電話をポケットにしまった。黙々と旧館部室棟へと足を運ぶ。 頭の中はすでに白くなりかけている。早くも考えつかれたが、それでもSOS団部室には気がついたら到着しているのだからこれはもう慣れ以外の何者でもないだろうね。 かつての文芸部室、今はSOS団の管理下にある部屋。 ここに以前のように長門がいないのは解っているが俺には希望を捨てることはできん。長門がそこにちょこんと座っているのならばそれほど嬉しいこともないだろうが、そうでなくても手がかりがあるやもしれない。大量に蓄積された本のどれかに栞が挟まっていて、裏に明朝体で文字が記されているかもしれないだろ? 俺はひとたび呼吸を整え、あえて何も考えないようにしてドアノブに手をかけ、扉を開いた――。 目を閉じて扉を開き、二秒くらい経ってから目を開けるなんてもっともらしいことをするつもりはない。したがって俺はすぐさまその光景を凝視した。 「こりゃあ――」 人の姿はなかった。 隅々まで見ても、掃除ロッカーに隠れていたりしない限りこの部室には俺しかいない。長門はいなかった。 その代わり、見慣れた光景がそこにあった。 七夕の竹、朝比奈さんのコスプレセットがかかったハンガーラック、ボードゲーム各種、パソコン。中央の最新機種の隣には「団長」と書かれた三角錐。その他主にハルヒが持ち込んだ雑多な物品が狭い部室を飾っていた。 これだけは間違いない。ここは零細文芸部ではなくSOS団である。そうでなけりゃ、どこの文芸部員がこんなもんを持ち込むのだ。 ならば昨日見たままの光景か……、と一瞬思いそうになったが。 「いや」 喜ぶのはまだ早かった。何の疑いもなく喜ぶと違ったときの落差のせいで余計にショックを受けるものだから俺はまだ喜ばなかった。それに、ここは何となく違った雰囲気がしていた。 違うのだ。この違和感。あるはずのものがないという、この違和感。 俺は再度目を走らせた。この部室に入っているものを答えろといわれたら、俺はカンペなしでも物理の試験以上の得点を取る自信がある。さあ、この違和感の正体は何なんだ。 朝比奈さんのコスプレ、古泉のボードゲーム、ハルヒの団長机。そして長門の……。 部屋の隅に設置されている本棚に歩み寄ると答えが解った。 本が圧倒的に少なかった。 本棚に収まりきらないほどあった長門のハードカバーが半分以下しかない。本棚はガラ空き状態である。おそらく最初から文芸部に備え付けられていたものしかないのだろう。俺だってそのくらいの推理はできる。ここでハードカバーを読むような人間は、ここには存在していなかったらしい。 脱力した。いろいろあるように見えて決定的に大事なものはない。 どこかに腰を降ろそうと見回すと、窓辺のパイプ椅子もないことに気づいた。長門の特等席であったはずの椅子もなくなっていた。あるのは長門以外の団員の所有物だけ。 いや、まだ何か残っているはずだ。昨日、まだ長門がいた部室で俺たちは何をやった。 二週間前倒しの七夕である。 俺はとっさに振り向いて竹を確認した。鶴屋さん印の竹には、いまだに団員分の願い事が吊してある。長門も昨日、このどこかに願い事を吊していたはずだ。 ――が。 「……タチの悪い冗談だ」 俺はさらにうなだれた。 ハルヒ、朝比奈さん、俺、古泉の願い事は脳天気にも昨日吊した場所で夏の風にそよそよと揺られている。当然である。昨日あったんだから、よほど物好きな泥棒が盗まない限り今日もここにあるはずだ。 それなのに、長門の短冊だけが忽然と姿を消していた。 はっきり言って気味が悪い。 物好き泥棒説なら即座に放棄できる。そんなヤツはいない。谷口だってそんなマニアックな趣味はない。 それは、長門がSOS団で活動していなかった証拠だった。 * はたして、情報収集の結果はまったく芳しくないものであった。 休み時間終了間際になってようやく動く気力を得た俺は、とりあえず本棚に収まっていた本を片っ端からめくってみた。時々栞がはさまっている本があったものの栞をひっくり返してもはたいても透かしても文字などは一切見えてこず、いたずらにストレスを蓄積するだけの時間であった。 もちろんパソコンの電源も入れた。どのパソコンもごく普通に起動してくれ、いつぞやの閉鎖空間みたいな長門からの直接メッセージはなし。MIKURUフォルダやネット上を探せばSOS団サイトは存在していたもののディスプレイは画面を淡々と表示するだけで、ようするにあったから何だという話である。 そんなこんなで俺が二年五組の教室に駆け込んだのは教師が入室するのとほぼ同時であり、何も収穫がなかった割に肉体的精神的疲労だけがむやみに溜まったのだった。 午前の部の授業は俺が何かを考えていたり何も考えていなかったりするうちに終了した。 無論考えていたのは授業の内容ではない。高校生としてそれを無論と言っていいものなのかと思うが、俺に付属する修飾語に「一般」というこの上なく貴重な二文字が失われかかっているのだから、社会に出てから役に立つとも思えない微分積分の授業を聞いたかどうかなんてのはノミとダニの区別がつくかつかないかくらいに些末でおよそどうでもいい問題に過ぎないのだ。 時は順当に過ぎ、昼休みが巡ってきた。 「おいキョン、どうしたんだそんな能面みたいなツラしやがってよ。暗いぞ」 谷口と国木田と席を寄せ合ってはいるが、それはまさしく形だけであって俺は一人猛スピードで弁当を胃の中に突っ込んでいた。 「うん。僕も谷口に同感だよ。能面、ってのが暗いって意味で使われてるとしたらね。キョン、どうかしたのかい」 「いや、さっきからどうも頭痛がひどくてな。ついでに喉が痛くて腹も痛くて吐き気もするし目眩もする。これはちっとまずいかもしれん」 「ふうん。症状がそんなにたくさん現れるのは珍しいね。それに、吐き気がするのにそんなに早く弁当を食べられるのもすごい」 国木田が豆を一粒ずつ口に運びながら言った。 「おう、どうも変な症状でな。今までにないパターンの風邪だな」 早退をクラスメイトにほのめかしておくのはそれなりに重要な作業だと思っているが、こんな演技で騙されてくれるとも思ってないしそもそもこの二人にほのめかしたところで効果があるとも思えん。 どうでもいいやとっととフケよう。 そう考え直してタイミングを見計らっていると谷口がバカにしたような表情で、 「ああそうだな。てめーの病気の症状は涼宮にも聞かされたぜ。それはお前、風邪じゃなくて精神病なんじゃねえのか。涼宮もそう言ってやがった」 ハルヒが? 何で? 「ああっと、いつだっけな。たぶん二時限目が終わったあたりの休み時間だと思ったがな。とにかく、お前が教室にいなかったときに涼宮がいきなり俺のところに来てよ、長門有希って誰だって訊いてきやがったんだ。訳わかんねーよな」 「あ、それ僕も同じことを訊かれたよ。長門有希って女子に心当たりはないかって」 「何て答えたんだ。というか、お前らは長門有希を知ってるのか?」 朝比奈さんが正常の記憶を持っていたのだからと多少の期待をしていたものの、谷口と国木田の表情を見る限りでは期待したほうがバカだったと思わざるを得ない。 案の定、我が同窓生二人は俺の顔をまじまじ見ると同時に、 「知らねー」 「知らない」 「そう言ったら涼宮が俺に向かってグチをたれてきたがったんだ。独り言のつもりだったのかもしれんが、俺にはちゃんと聞こえてたんだからグチでいいはずだよな」 俺は心の中で舌打ちを連続させながら谷口のセリフを聞いた。 「すんげー不機嫌な顔して、彼女の自慢話かしらとか言ってやがったぜ。あるいは精神病だとも言ってた。俺は精神病の可能性を取るね。哀れにも涼宮と愉快な仲間たちの一員になっちまったお前が、今まで正気でいられたほうがおかしいくらいだぜ」 それは朝比奈さんがSOS団にいてくださったからという理由に尽きる。そうでなかったら去年の今頃、俺は投身自殺でも図っていたに違いないだろう。 まあ今は違うけどな。そんなのは考えてるヒマもないし、そうするには俺はちょっと深入りしすぎてしまったらしい。だったらすべてのオチがつくその日まで付き合ってやるよと俺が思うようになっているのは開き直りの一種なのかね。 俺は悟りの境地に達した仙人の思考をトレースしながら弁当箱を片手に立ち上がった。 「突然だが谷口と国木田。俺は今日は早退させてもらいたいと思う。どうも調子がよくなくてな。この暑さでアフリカから遠征してきたハマダラ蚊に刺されでもしたのかもしれん。岡部にはどうにか弁解しておいてくれ」 「うん。でもねえキョン、何の理由があるか知らないけど、サボるつもりならもう少ししっかりした嘘をついたほうが僕はいいと思うな」 うるせえ。気づくのは勝手だが口に出すのはやめてくれ。 「それとハルヒにも伝言を頼みたいんだ。すべてお前の誤解だって伝えてくれ。あれは彼女なんかじゃないとな。そのほうが何かと後のためになるような気がする。ついでに、今日の部活は休ませて欲しいと言っといてくれ」 「ああ?」 谷口のフヌケた声をバックに聞きながら俺は鞄をつかむと弁当箱とその他を押し込み、そそくさと教室外に逃亡した。 誤解は恐ろしいものさ。この意味不明な状態に加えてハルヒによる世界改変でも行われたらたまったもんじゃない。俺はあまり肯定したくはないが、俺たちの間にはそういう暗黙の認識らしきものがあるみたいだからな。それが何かってのは訊くなよ。ルール違反だ。 * 最初に向かったのは生徒会室である。ただし朝比奈さんと一緒ではなく、俺一人で。喜緑さんの正体を知らないだろう朝比奈さんと一緒に行っては何か不都合がありそうな気がするのでね。もっとも長門レベルのパワーを持っているのならそのくらいはどうにでもしてくれそうなものだが。 職員室の隣にある生徒会室には何のトラブルもなくすんなり到着した。 思い返してみると、ここに足を踏み入れるのは実はまだ二回目である。古泉の学園内陰謀モドキで文芸部冊子の作成を言い渡されたときが一回目であり、あの時は喜緑さんが生徒会室で議事録を広げていた。 無論、今回もまたいてくれるとは限らん。彼女が長門と一緒にどこかに行っちまってる可能性を否定することはできない。 しかし試すだけの価値はある、と俺は思っている。どうせ俺がアテにできる存在など数えるほどしかないのだ。シラミ潰しに回ったってそんなに時間もかからんし、それなのにわざわざ喜緑さんを避ける必要なんざどこにもないからな。 古泉によると喜緑さんは長門の目付役であり、宇宙意識の中では穏便派でSOS団の味方らしい。長門はいなかったが、彼女はいたり、あるいはいなくても何らかのメッセージを残してくれていることも考えられる。 俺は生徒会室の扉をノックし、入りたまえという声がするのを聞いてからドアノブに手をかけた。 「む、何だキミか」 俺の耳は部屋に入るなり一番に白々しい声を察知し、俺の目は眼鏡をかけた男の姿を捉えた。 いたのは生徒会長だった。 「と、振る舞う必要もねえな。どうも最近、猫を被っていると本当に猫になっちまいそうで困った。普段、この口調で喋ってもいい奴が少ないからな」 会長はダテ眼鏡をはずすと足をテーブルの上に投げ出した。俺は不良会長を無視して喜緑さんの姿を探すが、見あたらない。ただ、議事録だけが脇のテーブルに無造作に置かれていた。 「お前、何の用で来たんだ? 用もないのにこんなところには来ないだろう。またあの騒がしい女のパシリか?」 「あーいえ、用があるにはあるんですが、その前に一つお訊きしてもいいですかね」 会長は無言で促した。 俺は喜緑さんのつけていたはずの生徒会議事録を手にとってパラパラとめくりながら、 「この生徒会の書記の人の名前って解りますか?」 訊くと、会長は露骨に面倒くさそうな顔をしていたが、一応といった感じで俺の訊いたことのない名前を言った。喜緑さんではなかった。 「そいつがどうかしたのか? 何かお前の団で企んでるつもりならこっちにも詳細説明をくれよ。そうでなきゃ三文芝居にもなりゃしねえ。敵に回すのはお前んとこの団長とやらだけで充分だ。部室の永久管理を認めてくれとか、そういうのか?」 「別に何も企んでませんよ。文芸部室なら間借りで充分です」 しかし会長はまだ言い足りないといったふうに指でテーブルをコツコツ叩くと、 「あんな部室はな、本当なら面倒だからとっとと引き渡してやりたいくらいなんだ。そもそも文芸部員なんか最初っからいなかったんだから被害者もいねえじゃねえか。それを何で俺が引っかき回すようなことをしなけりゃならねえんだ」 被害者なら長門こそが最初にして最大の被害者だが、この学校には長門がいなかったことになっているのだ。どうやらハルヒは一年の春に無人の文芸部室を乗っ取ったことになっているらしい。 「それなら古泉によく伝えておきますよ。で、申し訳ないんですがもう一個質問をさせてもらえますかね」 「何だ」 「喜緑江美里という女子を知ってますか? たぶん三年にいると思うんですが」 「知らん」 会長はあっさりと答えた。 ダメだったか。 俺は再び深い谷底に落ちていくような感覚に襲われた。 長門と一緒に喜緑さんも消えている。そんな確信を持った。 会長が嘘をついているとか、単に同学年にいるけど喜緑さんを知らないだけとかいう可能性はかなり低い。だったらなぜ喜緑さんが生徒会にいないのか説明できないからな。全校生徒に長門や喜緑さんを知っているかと調査したところでおそらく誰もが首を横に振ることだろう。 俺は不審者を見るような会長の視線を受けながら焦燥と共に議事録のページを繰る。ここにヒントメッセージか何かがなければ、俺や朝比奈さんだけでできることなんざ相当限られてくる。 議事録を埋めているのはいずれも乱雑な筆致の文字ばかりだった。まれに読めないものもある。喜緑さんがどんな字を書くのかは知らないが、さすがに彼女のものとは思えないような雑字だった。 「これ書いたの、全部書記の人ですよね」 「そうだな。そりゃいいが、お前ここに何しに来たのかとっとと答えやがれ。場合によっては叩き出すぞ」 別に俺は構わん。こんなタバコの煙が充満したような部屋にいたがために将来ガンにかかって死んだなんてことにはなりたくないのでね。せっかくだから議事録と一緒に叩き出してくれ。 「議事録に目的があるのか? 変な野郎だ。言っとくけどよ、中身を見てもてんで真面目なことしか書いてないと思うぜ。そんなもんいくらでもコピーを撮ってやるから早いとこ出てけ。こちとら気分よくフカせねえだろ」 会長はタバコを片手に俺の肩越しに議事録をのぞき込んだ。挑発するようにタバコの煙を吹きかけてくる。 しかし本当に何にも面白くないことしか書かれていない議事録だ。議題なんて大仰に書いてあるが、本当に議論したかどうかも怪しいね。 そうこうしているうちに議事録の残りページは減っていった。 「さあ、もういいだろう。昼休み中こんなことして過ごすつもりか?」 「いえ、こっちにも約束があるので昼休み中ずっとというわけにはいきませんよ。なんなら、本当にコピーでも撮らせてもらいます」 会長はふんと鼻を鳴らして馬鹿らしいと言い、椅子に腰を降ろして二本目のタバコに火をつけた。 「どうでもいいが、あのバカ女だけは呼び寄せるなよ。タバコなんかやってるところを見られでもしたら古泉の取りはからいも一切なくなっちまう」 ならやめればいいのだ。タバコは身体に毒ですよってよく言うじゃな――。 俺は息をのんだ。議事録を持っている手ががくがくと震えだし、眼球が釘付けになった。 筆跡が急にきれいになっているページ、いや、一文を見つけたのだ。議事録の最後のページ。そこだけがしっかりと読める文字だった。 「どうした?」 俺は驚愕を隠せていなかったのだろう、会長が怪訝そうに訊いてくるが今は無視だ。脳の全勢力を文字の解読に傾ける。 きれいな文字――喜緑さんであろう筆跡のそのページには、たった一文こう書かれていた。 『password・すべての始まりを記せ』 一字一字丁寧に書かれていた。愛の告白でもするかのような、優しくて柔らかい字で。 パスワード。 間違いない。イタズラ書きでも何でもなく、これは俺にあてたメッセージだ。おそらく喜緑さんが書き留めてくれたのだろう。そのはずだ。こんなのは議事録に記すような内容ではない。 パスワード、すべての始まりを記せ。 しかし、波が退いていくように俺の頭から興奮の感情が収まっていくと、そこにはさながら波が運んできたクラゲの死体のように、ただもやもやとした疑念が残った。 長門だけの特徴かと思っていたら、何だろう、宇宙人にはメッセージを短くする趣味でもあるのだろうか。はっきり言ってこれだけでは解らん。 何だってんだ。 パスワード。すべての始まり。記せ。 パスワードってのは何だ。どこのロックを解除するためのパスワードなんだ。 それにすべての始まりとは何なんだ。何の始まりなんだ。 記せ? どこに記せばいい。この議事録か、それともどこか別の場所か。 それに期限はないのか? 冬のときのように二日後までにしなければならないとかいう制約が。 全然ダメだ。文の量の少なさを呪うわけではないが、ロックをはずすための情報が不足しているのは事実である。これでは何一つとして解らない。 「会長さん、これちょっとお借りしますよ」 とりあえず、俺はうわずった声で会長に告げて議事録を閉じた。マジでコピーを撮っておく必要がある。 「ああ? 何だ、本当に面白いモンでも見つけたのか?」 ええ、見つけてしまいましたよ。あいにくあなたには何の面白みもないでしょうが。 すっかりシラけきったような顔をして俺を見る会長の視線を背中に感じながら、俺は議事録を手に生徒会室を出た。 どこのパスワードなのかはさっぱり解らんし、これといって見当がついているわけでもない。 しかしこれは大きな一歩に違いないのだ。 これがどんな意味を持っているにしろ、これを辿っていけば何か確かな手応えに突き当たるはずである。冬のときは鍵で、今回はパスワードか。 いるんだよな長門、このメッセージの先には、宇宙人の力を持つお前が。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/839.html
その1(古泉戦争with代名詞編) ハルヒ「ちょっとキョン!アレとって!」 キョン「アレって何だ?」 ハルヒ「だからアレはアレよ!!」 キョン「落ちつけ、それだけじゃわからん」 ハルヒ「指差してるでしょ!?」 キョン「指差されてもわからんから言ってるんじゃないか」 ハルヒ「もーこのバカキョン!!」 古泉「あなたも鈍いですね。涼宮さんは机の上にあるリボンをとってほしいのですよ」 キョン「ああ、そうだったのか。このへん散らばってるからどれを指してたのかわからんかった 古泉礼を言う。全く些細なことで閉鎖空間を広げてしまうところだった(小声で)」 古泉「いえいえ、礼には及びませんよ(これで好感度アップですね♪)」 ハルヒ「古泉君全然違う!」 古泉「何ですって!?(好感度アップにはつながりませんでしたか…)」 ハルヒ「もー何で誰もわからないのかしら!?そこに団長の腕章があるでしょ!? とってほしいのはそれよ!!」 キョン「まぎらわしい。最初からそう言ってくれてれば手間をかけることもなかったのに」 古泉「(小声で)キョン君、そうぶっきらぼうに言ってはいけません」 キョン「(小声で)おいおい、たったこれくらいのことでお前はいちいちハルヒの味方をするのか?」 古泉「(小声で)よく聞いてください、ズバリあなたは涼宮さんに信頼されてるんですよ 彼女はあなたがアレという代名詞だけでそれが何かわかってくれると信じてるんです 意志疎通ってやつですね。うらやましい限りです(是非、キョン君ともそういう仲になりたいものです)」 キョン「はあ…」 古泉「(小声で)ですから、そんな彼女の気持ちに応えてあげるように…」 キョン「お前の言いたいことはわかったよ」 ハルヒ「ちょっと二人とも!いつまでひそひそしゃべってんの!?もう、キョンしっかりしてよ」 気付くとハルヒはすでに自分の腕章をとっていた キョン「すまんハルヒ、今度からはお前のいうアレとは一体何なのかすぐ把握できるように努める」 ハルヒ「わかればよし!そうと決まれば今日は解散よ!!」 キョン「お前の解散基準がさっぱりわからん」 ハルヒ「じゃあキョン!今からあそこに行きましょ!」 キョン「あそこ?…(また代名詞か、もう勘弁してくれ、ってかさっきからワザとだろ絶対)ええっと、それはだな」 古泉「おそらく彼女の家のことでしょう」 キョン「なんだ、あそこってのはハルヒの家のことだったのか。…っておい!?」 ハルヒ「きょ、キョンあんた何言ってんの!?この前、あんた遅刻した罰金まだ払ってなかったから 喫茶店で今からおごってもらおうと思ってたんだけど…私の家って…一体どういうつもり? 何か変なこと考えてんじゃないでしょうね?!」 キョン「いや、違うんだハルヒ、これは不可抗力というやつでな」 ハルヒ「うるさいうるさいうるさい!」 古泉「(ふふ、さっき僕はキョン君の好感度を上げようとして彼に提言した。しかしそれは失敗してしまった。 そのとき僕は悟った、自分の推理力を過信してはダメだと。そこで発想の転換です。 つまり僕とキョン君との好感度をアップさせるのではなく、彼と涼宮さんとのそれをダウンさせればいい。 涼宮さんが望んでいない答えに彼を誘導することで、相対的にキョン君の意識は涼宮さんから僕へと移り変わる。我ながら素晴らしい作戦です)」 キョン「く…(古泉め、後で覚えてろ。まあヤツにつられる俺も俺だが)」 古泉「(ふふふ…キョン君、あきらめなさい!)」 ハルヒ「……まああんたがどうしても来たいってならしょうがないけど…」 古泉「(NO-!事態は思わぬ方向に!!)」 キョン「!?…行っていいのか?」 ハルヒ「言っとくけど感謝しなさいよ!?私が男という生き物を家に招くということはめったにないんだからね!!」 みくる「つまりそれってキョン君が涼宮さんにとって特別だってことですよね♪」 ハルヒ「み、みくるちゃん、一体何言って…」 キョン「なあ、特別って何だ?」 ハルヒ「そ、そういうことよ!!!」 キョン「(ホント、よく代名詞を使うヤツだなこいつは)じゃあ、そういうことって何だ?」 長門「…(鈍い人)」 ハルヒ「…もうッ!このバカキョン!!いいからあんたは黙って私の家に来ればいいのよ!!!」 キョン「おいおい、俺はまだ行くとは一言もいってないぞ」 ハルヒ「え、何?来ないの…?」 キョン「あ、いや、まあ別に用事ないし…」 ハルヒ「じゃあ決まりね!!時間もないしとっとと行くわよキョン!」 キョン「だー待て、せっかくだし、みんなも誘ったらどうだ?」 みくる「あ、ご、ごめんなさい、私今日用事あるんですう~♪」 長門「…私も今日はちょっといけない」 古泉「僕も実は今日バイトがあるんで!(本当は僕一人でも逆らいたいところですが… この空気には逆らえそうにありません(泣)長門さんに何かされても困りますしね… 僕の完全敗北です)」 キョン「(みんなそんなに俺とハルヒを二人にしたいか)」 ハルヒ「あら、そう?じゃあついてきなさいキョン!」 キョン「お、おう(ま、悪くはないかな…だが一体行って何をするのだろうか? まあそのへんはハルヒが考えてるだろうがな)」 その2(休戦withハルヒ宅編) そして俺達はハルヒ宅へと着いた。 キョン「おじゃましまーっす」 ハルヒの母「いらっしゃい。あら、もしかしてあなたがキョン君?」 すげー美人が目の前にいた。 キョン「ええ、そうですけど」 ハルヒ母「あら、そう♪ウチの娘がいつもお世話になってます♪」 キョン「いえいえ、そんな」 ハルヒ「母さんはもういいから、あっち行っててよ!!」 ハルヒ母「ひどい娘ねえ、まあいいわ、どうぞ二人で楽しんでらっしゃい!ふふ」 ハルヒ「だからそんなんじゃないってば!」 キョン「(そんなんの意味を尋ねようと思ったが、今はやめておこう)」 で、今から何すんだ?」 ハルヒ「さあね」 キョン「決めてなかったのかよ」 ハルヒ「とりあえず私今から部屋で着替えるから、だからあんたはそれまで待ってて」 キョン「そうかい」 ハルヒ「覗いたらぶっ殺すわよ」 キョン「へいへい」 言われた通り、ハルヒが着替えるのを待って俺は部屋に入った。 うーむ、ハルヒといえども女の子の部屋に入るというのは緊張するな。あ、決して変なことは考えてないからな。 ハルヒ「何か変なこと考えてたんじゃないでしょうね?」 思ってた矢先にこうだ。ちょっとムカっときたので、少しハルヒにイタズラをすることにした。 キョン「なあハルヒ、その変なことって何だ?」 ハルヒ「へ?」 キョン「その変なことっていうのをどういうことかを俺に詳しく説明してくれ。」 ハルヒ「わ、わかってるくせに…あんた、女の子の口から言わせるつもり??」 キョン「いや、全然わからないねー」 ハルヒ「このバカキョン!エロキョン!」 うお、バカとエロの二重コンボか。 その3(闘争withポーカー編) その後、特にすることもない俺達はトランプをすることにした。なぜかって?なぜと言われても返答に困るが、 一番無難だからとでも答えておこう。ハルヒはトランプをするのは久々のようで結構はりきっていた。 ハルヒ「まずはコテ調べにポーカーね!」 キョン「な、いきなり賭け事かよ!(まあ、こいつらしいといえばこいつらしい)」 ハルヒ「別に、誰も賭けるとは言ってないでしょ!」 キョン「そうか、それはすまなかった(珍しいこともあるもんだな、ひょっとして機嫌でもいいのか?)」 そういうわけで、ポーカー開始だ。俺が繰った後、5枚のカードをそれぞれ自分とハルヒに渡す。先攻は俺のようだ。 キョン「…(俺の手札数字がバラバラだ。これじゃペアは狙えそうにねえぞ)」と悲嘆に暮れていた俺であったが その代わり、5枚のうち4枚がダイヤだったので、ここは思い切ってフラッシュを狙うことにした。 キョン「じゃあ俺は1枚捨てて1枚ひくぜ」 そう言って俺は運命のカードをひいた。が、人生というのは上手くいかないな、俺がひいたのはスペードだった。 フラッシュをあきらめ、元からある4枚の数字と一つでも同じでないか、そうワンペアを狙ったのだが その思いも1秒足らずで風化した。運が悪すぎだな、これは世に言うブタというやつである。 ハルヒさん、どうやらあなたの勝ちのようですよ。 キョン「ハルヒ、お前の番だぞ」 ハルヒ「わかってる」 よく見ると、ハルヒは深く悩んでいるようだった。そう深く考えなくてもお前は高確率で俺に勝てると思うけどな。 ハルヒ「こうなったら5枚全部捨てるわ!」 …!こいつ全部入れ替えやがった!ということはこいつも俺同様、手札が悲惨だったのか。 ハルヒ「むー…」 ハルヒ、お前全部表情に表れてるぞ。そんなにいいカードがなかったのか。 キョン「よし、じゃあ勝負だ!俺はブタだ」 ハルヒ「!なんだ、あんたもなの。安心したわ、私もブタ!」 なんと、こいつもブタだったのか。この場合、互いの持ってる5枚のうち、最も大きい数字で勝負することになる。 ん?なんかハルヒの目が輝いてるぞ? ハルヒ「キョン!私の勝ちよ!見なさい、このキングの13を!まさに私にふさわしいカードだわ!」 お前の場合、女だからクイーンじゃないのか。まあ、そんなどうでもいい突っ込みはいい。 だがハルヒさん、ゲームで古泉に連勝する俺の実力、そして運をなめちゃいけないぜ。 …比較相手が古泉なので説得力がないのが悲しいが。 キョン「1だ、俺の勝ちだなハルヒ」 当然だが、ポーカーにおいては1が13よりも強い。他のトランプゲームでも大抵そうだけどな。 ……しっかしなんて低レベルな試合だ。 ハルヒ「く…!キョンのくせに私に勝つなんて生意気よ!!!」 キョンのくせにか、ひどい言われようだな。 ハルヒ「まあでも1ってのはあんたらしいけどね」 おい その4(闘争with大富豪編) なんだかんだいってトランプごときでここまで熱くなるとわな。相手がハルヒっていうのも原因の一つかもしれない。 その後、ポーカーを2、3回したがなんと全部俺の勝ちだった。ハルヒに勝てるのはトランプの世界だけかもしれないな。 機嫌が悪くなったのか、今度はハルヒは大富豪をしようと言い出した。なるほど、ハルヒが好みそうなゲームだ、 受けて立つぜ。…といったものの、二人で大富豪となると一人の手札が総数の半分の26枚になってしまう。 あまりに多いので、さすがに手札の数を減らした。最終的には15枚でハルヒの合意を得た。 ハルヒ「じゃあスペードの3、私がもってるから先攻は私ね」 キョン「そうか」 ハルヒ「3のダブルよ!」 キョン「お前、いきなり2枚勝負かよ」 まったく、ハルヒらしいぜ。俺も対抗してカードを置いていくが、ラストは俺のジョーカー&2のカードで締めた。 ちなみに2は大富豪においてはジョーカーについで2番目に強い。 (なんかトランプ講座みたいになってきたのでここで説明終了) ハルヒ「対抗できるカードなんてあるわけないじゃない!キョン、あんたの番よ」 俺は残り11枚、ハルヒも11枚…ここで俺は4枚ともクローバーの10、9、8、7を使わせてもらった。そう、革命である。 ハルヒ「な…!!!」 ハルヒの驚いた表情と後悔の念が伺える。そりゃそうだ、さっきこいつは3のダブル(2枚)を使ってしまったんだからな。 というか、これくらい予測しとけよハルヒ… キョン「そして俺は1のダブルだ、ハルヒ助かったな」 ハルヒ「バカいわないで!革命中だから1を捨てるのは当然のことじゃない。 っていうかあんた、そんな強いカードもってて革命とかバカなんじゃない?」 言われてみればそうかもしれない。だが、革命をしたときのハルヒの顔色が見たくてな、察してくれ。 ゲームってのは楽しまなきゃ意味ないぜ。 ハルヒ「じゃあ私はキングの13のダブルを出すわ」 つくづくキングに縁があるやつだなお前は キョン「俺は10のダブルを」 ハルヒ「9のダブル」 な…こいつ意外にダブルもってんのな。じゃあこいつはどうだ? キョン「5のダブルだ」 ハルヒ「ふふッ…キョン、何あんた勝ち誇った顔してんのよ?」 なんだって?俺がそんな表情をか。俺もお前のこと言えねーのかもしれねえな。 ハルヒ「じゃあ私はそれに4のダブルをぶつけるわ!!」 キョン「強いなハルヒ。俺はパスだからお前の番だ」 みなさんお気づきだろうか?俺は残り1枚、ハルヒは6枚である。 ハルヒ「ふふふ、1枚になったことを後悔させてあげるわ♪」 何をいきなりおっしゃるハルヒさん ハルヒ「2のダブルをだすわ」 キョン「…お前革命なかったらどんだけ強いんだよ!?」 ハルヒ「そうよ!あんたが革命起こしたせいなんだからね!!」 俺は1枚だけだから出せるわけもなく…ん?もしかして俺はやばいのか? ハルヒ「畳み掛けるわよ!!ハートの10と11とジョーカーで攻撃!!」 キョン「階段!?マジかよ!?」 最後の最後でジョーカーとは…なんだかんだいってお前策士だな。それとも俺は油断してたのか…? ハルヒ「最後に1を出してっと♪はい、私の勝ちね♪♪」 ハルヒの手札がなくなっちまいやがった。畜生、俺の手札の1枚は、革命下で最強のはずの3だったのに… 早々に手札が1枚だけになったのが最大の敗因か…不覚だ。 キョン「強いじゃねーか、ハルヒ。やりがいがあるってもんだ」 ハルヒ「ふん!キョンのくせに生意気な口たたいちゃって!いいわ、これから私の強さを見せつけてあげる!!」 うむ、見事に見せつけられた。この後、俺達は7時まで大富豪をしてたのだが、なんと今度は俺の全敗だった。 神様ってのは運を人間に平等に与えるのなとつくづく思った。 ハルヒ「あ、キョン、もしかして運が悪かったって思ってる?それは自惚れね!あんたには実力がないのよ!」 痛いとこつかれたな。ま、決して弱いほうではないと思うけどな。ふ、聞かなかったことにしよう、それが俺である。 その5(平和with両思い編) ハルヒ「あーとっても楽しかったわ♪」 キョン「そうだな、トランプごときでここまで熱くなるとはな、俺も十分楽しかったぜハルヒ!」 ハルヒ「私からみても楽しそうなのがわかる♪キョンが楽しんでくれてよかったわ」 キョン「(めちゃくちゃ機嫌いいな)お前もみてて楽しそうだったぜ。子供のようだったよ」 ハルヒ「あら、あんただって子供みたいだったけどね!!」 俺達は笑った。うむ、互いに負けず嫌いってとこは認めなければならないだろう。 その後しばらく談笑してたが、7時半を過ぎてるのをみて、さすがにもう家に帰る頃…ってか帰らないとやばいな、 妹たちに俺一人のために夕食を待たしちまうと思い、ハルヒの家を出ることにした。 楽しかったから俺としてはまだずっとハルヒと一緒にいたかったけどな。 ハルヒ母「あら、もう帰っちゃうの?夕食くらい食べていけばいいのに」 優しい母親である キョン「大変ありがたいですが、お気持ちだけ受け取っておきます。家族を待たせるわけにはいかないので」 ハルヒ母「あら、そう…ねえキョン君」 キョン「はい?」 ハルヒ母「(小声で)娘とはどこまでいってるの?」 いきなりで驚いたね。ちょっとは考える時間をくださいハルヒ母さん。 キョン「(小声で)え、ええっと…大丈夫です、決して変なことはしてませんから!」 こんな変な返答する俺も俺だな。考える時間がなかったからということにしておいてくれ。 ハルヒ母「(小声で)ふふ、本当キョン君って純粋ね。これからも娘をよろしく頼むわ。 あの娘、なんだかんだいってかなり無茶しちゃう娘だから…」 キョン「任せてください、ハルヒを…悲しませるような目には絶対あわせませんから!!」 ハルヒ「きょ…キョン??」 しまった、つい感情こもって大きな声だしちまった!ん?感情?もしかして俺、ハルヒのこと… ハルヒ母「こんな素敵な男の子がいてハルヒは幸せね♪」 ハルヒ「もう!お母さんがいると話がややこしくなるからあっち行ってよ!!」 ハルヒ母「はいはい、じゃあねキョン君」 キョン「はい、おじゃましましたー」 と言って外に出ると、ハルヒもついてきた。見送りにきてくれたらしい。 ハルヒ「な、何よ!?団長が団員を気遣って見送るのは当然のことでしょう!?」 最後の最後までハルヒらしいな。 キョン「今日はいろいろとありがとなハルヒ…」 ハルヒ「え?」 キョン「楽しかった、ありがとな!!」 ハルヒ「こ、こっちも楽しかったわよ!!あんただけにありがとうと言われる筋合いはないわ!! こっちもどうもありがとね!!!」 そう思いっきり言われると照れる。…今のこいつ、本当に幸せそうな顔してるな。 ってかいつまでもそんな顔されたらー 気が付くと俺はハルヒを抱きしめていた。 ハルヒ「きょ…キョン!?」 ハルヒは驚いてる、だけど俺はこの手を放したくなかったんだ。するとハルヒも抱きついてきてくれた。 ハルヒ「キョン…温かい」 キョン「…お前もな」 しばらく沈黙が流れる キョン「ハルヒ…やっぱ俺、お前のことが好きみたいなんだ…もう隠しようもないぜ」 ハルヒ「!!…やっと…やっとキョンと思いが通じ合った…」 俺たちはよりいっそう強く互いを抱きしめる。そして静かに口付けを交わした。 .………何分経ったのだろうか、とりあえず俺達は手を解いた。 キョン「…これからもよろしくな…ハルヒ」 ハルヒ「望むところよ!キョン!!」 こういう状況でも、すぐさま人一倍元気になれるハルヒはやはりハルヒらしい。見てるこっちも元気が出てくるってもんだ! キョン「今度はみんなも一緒にトランプしような」 ハルヒ「ええ、もっと楽しくなりそうね…♪」 Fin
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/607.html
「今日は、みなさんと一緒に、枕カバーを、縫っていこうと思います」 満面の笑みで手芸部の部長さんがそう言う。 今日、枕カバーを縫うということは、部員募集のポスターにも書いてあったから、予定通り。 何で、枕カバーなのかは分からないけど、もともと手芸部に入ろうとしていたわたしからしてみれば、なんでもいい。 にしても、満面の笑みの部長さんとは対象的に、あたしの隣に座っている子は初めて顔を見たときから、ずっと無愛想。 涼宮ハルヒ この子ほど衝撃的な自己紹介をあたしは今まで見たことがない。 今となっては、あれがウケ狙いだったのか、マジメに言ったのか分からないけど。 多分、あの口調ぶりからしてマジメだったのだろうと思う。 ところで、涼宮さんが座っているのはあたしの右隣。 あたしの左隣には剣持さん、その隣には瀬能さんが座っている。 あたし達3人は昔からの仲良し3人組。 なんだけど、高校に入って、あたしは大変な懸案事項を抱えることになった。 多分、二人はお互い知らないんだろうけど。 なんと二人とも、うちのクラスの榊君が好きというのだ。 こないだ二人ともに相談された。内容から考えて多分、あたしだけに。 うーん・・・本当にどうするべきだろう? 「イタッ!」 ちょっと、よそ見をしてたり、違うことを考えてたから針が指に刺さった。いてて。 「大丈夫?西嶋さん」 「うん、大丈夫。血も出てないし」 剣持さんと西嶋さんが本気で心配そうな顔でのぞきこんできた。 あたしとしては、あなた達が、今後、ずっと仲良くしていられるかが不安。 ちなみに、一瞬だけだけど、涼宮さんがこちらを振り返ったのをあたしは見逃さなかった。 ただたんに、反射的に振り向いたのか。心配してくれたのは分からないけど、 多分、前者だろう。 あたしの涼宮さんに対する印象ははっきり言って悪い。 挨拶しても返ってこないし、何か話そうとしたら反抗的に「うるさい!」と言ってくる。 そのせいで、なんだかあたしがおせっかいキャラみたいになってしまった。 でも、朝倉さんはまだクラスになじめない涼宮さんを気遣っているよう。 まあ、あたしもクラスになじめたほうがいいとは思うんだけどね。 「はーい、みなさんできましたかー?できたら、隣の人と交換して、感想を述べてあげてくださーい!」 先ほどと変わらず満面の笑みの部長さんは、オペラでも歌いそうな言い方でそう言ってきた。 さて、ここで一つ言いたいことがある。 わたしの右隣が涼宮さんということは先ほども言ったとおり。 では、その右隣は? ・・・・・ 実は言うと、誰もいない。 ということは、必然的にあたしが縫った枕カバーの交換相手は涼宮さんになってしまうわけだ。 涼宮さんもすこしだけ、あたしを凝視して、何も言わずに渡してきた。 それから少し遅れてあたしも差し出す。 で、涼宮さんが縫った枕カバーを見てたんだけど・・・ これが、意外って言ったら失礼だけど、かなりキレイに縫ってある。 とりあえず、ここは褒めておくべきかな? 「すごい、丁寧だね。あたしなんて、まだまだ下手だけど」 「・・・本当にそうだね」 ・・・うーん。やっぱり、なんか感じ悪いなー。 ふと、剣持さんと瀬能さんを見てみる。 こちらは、仲良く相手の枕カバーを褒めあっている様子。 少しうらやましい。 あたしは二人のこれからの仲を心配しているというのに。 「にしても、何で枕カバーなの?どうせなら、もっと実用的な物作らせなさいよ」 気もちは分かるけど、声に出しちゃダメだよ。 普段、無口なんだから、そういうことだけ言わなくても。 「はい、返す。あんたはその枕カバーどうするか考えてんの?」 いや、別に考えて縫ってたわけじゃ・・・ それにしても、この子も自分自身から話しかけることがあるんだ。 せっかくだから、もうちょっと話してみよ。 「涼宮さんは?」 「別に。糸外して再利用でもしてみようかしら」 ある意味かしこい考えだけど、せっかく作ったのに・・・ 「じゃあ、あげようか?」 自分のがあるし・・・ 「好きな人にでもあげたらどう?」 「そんな人いるわけないじゃない。恋愛感情なんて一時の気の迷い、精神病の一種なのよ」 その言い方はちょっと・・・ 別に、あたしに今好きな人がいるわけじゃないけど。 「だいたい、そんな人がいても、こんなのあげるわけないでしょ。枕カバーよ、枕カバー」 ああ、確かに・・・ 「でも、中にはいそうね。この無地の枕カバーの左側にYesって書いて、右側にNoって書いて渡すバカ」 なんか、言ってる意味がよく分からないけど、とりあえずうなずいておこう。 でも、何か書くっていうのはいいかもね。 「そんなわずらわしいことするんだったら、とっとと言っちゃいなさいよ」 そう言ってるこの子のほうが、好きな人できでもなかなか告白できないと思うんだけどな~。 「告白して、その場で振られたら、そんな人間を好きになったほうも問題ありよ。付き合わないほうがマシ」 そういえば、前に教室で誰か男子が、この子は告白されても断ることをしないとか言ってたかな? 最短5分で振ったとも言ってたような気がするけど。 とか思いだしながら、もう一度、二人のほうを見てみた。 どうやら、二人とも、まだ何か話しているみたい。 そこで思う。何でさっきまであたしは悩んでいたんだろう?って。 この二人なら、ちょっとやそっとなことじゃ、仲が悪くなることもないのに。 「ありがとう涼宮さん」 「はっ?」 涼宮さんはわけ分かんないって感じの顔をしている。 まあ、あたし自身も何でありがとうって言ったのかわかんないんだけどね。 その後、三人で帰ってる最中に、剣持さんと瀬能さんがどちらも榊君が好きなことを、二人の前で話した。 思ったとおり、二人の仲はそんなことでつぶれることはなかった。 「わたし、一人じゃ榊君に近づく勇気でなかったんだけど」 「わたしも。でも、三人なら、できるかもね」 なぜか、あたしも巻き込まれてるけど、まあいいや。 「この枕カバープレゼントしてみる?YesとNoを書いて」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5179.html
「キョン! 何か出た!」 何もかもが灰色になった妙な部室で呆然としていたら、あいつが眼を輝かせて入ってきた。 確かに出ていた。股間からスカートを突き上げるように。 「なにコレ? やたらでかいけど、怪物? 蜃気楼じゃないわよね」 股間から棒状の突起がそそり立ってスカートが持ち上がりチラリと純白の下着すら見えている。 輪郭がはっきりと見えるからそりゃ蜃気楼じゃないだろうなというか俺よりでかいじゃないか怪物と言って差し支えはないだろうよ畜生。 「宇宙人かも、それか古代人類が開発した超兵器が現代に蘇ったとか!」 宇宙人……長門ならこんなこともできるかもな。んでもって、ある意味では超兵器だ、ソレ。 「これさ、襲ってくると思う? あたしには邪悪なもんだとは思えないんだけど。そんな気がするのね」 「わからん」 襲うかどうかや邪悪か否かは持ち主次第というかお前のそういった欲求の対象はどっちなんだ。ホモかヘテロか。どっちにしても俺は願い下げだ。 「何なんだろ、ホント。この変な世界もこの巨根も」 お前なら作り出せるかも知れんが、いったい何考えてるんだ。 と、そんなとき。 「キョンちゃん起きろー!」 などと言って妹はわたしをふとん越しにぼすぼす叩きベッドに飛び乗ってとび跳ね怪力で引きずり出した。 しばし呆然とした後、頭を抱えた。 なんて夢を見たのだろう。 見知った、いや、見覚えがない女の子と二人だけの世界に紛れ込んだ上に、その女の子の股間に男のアレが生えてるわそれが怪物並みの代物だわソレをわたしは冷静に見つめてるわ、しかも夢の中でわたしの一人称は俺になっていた。 つまりわたしは男になっていたということだ。 フロイト先生が引きつった笑みを浮かべそうな、そんな変態的な夢をわたしは見ていたのか。 頭が痛くなってきた。 わたしの深層意識はいったい何を考えてるのだろう? 妹とともに洗面所で歯を磨くと、鏡に映るは無造作に縛られたポニーテールにクラスの男子谷口くんが言うところのAランクである割と整った顔。 Aランクの女子はフルネームで覚えたとか言ってたが、彼もわたしをキョンとしか呼んでくれないのはなぜだろう? 「朝起きたら女の子になっていました」 などと、なに訳のわからないことを呟いたんだろうねわたしは。なっていたもなにも、わたしは元から女だ。 ちなみにキョンというのはわたしのことだ。 最初に言い出したのは叔母さんの一人だったように記憶している。 何年か前に久しぶりに会った時、「まあキョンちゃん綺麗になって」と勝手にわたしの名をもじって呼び、それを聞いた妹がすっかり面白がって「キョンちゃん」と言うようになり、家に遊びに来た友達がそれを聞きつけ、その日からめでたくわたしのあだ名はキョンになった。 全く、それまでわたしを「お姉ちゃん」と呼んでいてくれてたのに。妹よ。 その後、何食わぬ顔で身支度をし、登校する。 「よっ、キョン。今日はな……」 わたしの真後ろの席に陣取った男子の奇妙奇天烈な思いつきに振り回される非日常的な日々があいも変わらず展開される。 何かおかしい。 なんだろう、この夢の続きみたいな変な感覚は。 SOS団なる団体を結成してわたしを巻き込み、合宿やら推理劇やら映画撮影やらでわたし達を振り回した団長、涼宮ハルキは、今日も今日とて栗拾いがしたいなどと言い出し、都合よく鶴屋先輩が所有する山林に栗林があるとかでそこに向かった。 そしてイガがついたままの栗でキャッチボールをおっぱじめる始末。 「ただトゲトゲ生やすだけじゃ能がない、触れたら周囲にトゲを飛ばすようなアグレッシブな進化をしてもいいだろうホウセンカを見習え」 などと物騒なことを言い出した。栗は対人地雷じゃないしホウセンカが種飛ばすのは獲物を仕留めるためではなく子孫を広範囲に広める戦略だ。 まあ、カニは人間が食べやすいよう進化すればいいのになどと以前にのたまっていた記憶があるから、それよりはマシかもしれない。 喰われやすくなるためではなく、喰われまいとするのが生き物の進化だと、生き物それぞれの都合があるのだと理解しただけマシだと。 ウシ、ブタなどの生き物は神様が人間の食べものにするために作ったなどという傲慢な教義を信奉する某一神教の連中ほどには自己中心的ではなくなったようだ。 朝比奈さんが悲鳴を上げてうずくまり長門さんが淡々と受け止める異様なキャッチボールを遠巻きに眺めながら、古泉くんと共にハルキの困った世界改編能力について話す。 バカハルキはロクな思いつきをしないが、それでも楽しそうに笑っている今は充分に平和だという。この世を揺るがすことはしないとのこと。 だといいんだけど。 古泉くんはわたしがわざとらしく溜息をついたのをどう取ったか、軽く鼻を鳴らすように笑い……。 その時、彼は奇妙な表情をみせた。 見慣れない表情、つまり薄ら笑い以外の顔つきになった。眉を寄せるような仕草。 わたしの「どうしたの」という問いに珍しく言い淀んでいたが、すぐに微笑をとりもどした。 脳の情報伝達に小難しいプロセスの齟齬があったのかも。 そんな涼宮ハルキは今、わたしの愛車に跨り栗林からの帰り道をチェーンも切れそうな脚力で漕いでいる。 「ほらほらキョン、もっと力込めてしがみつけ、振り落とされるぞ」 振り落とさんばかりに激しく動くアンタに言われたくはない。 と言うかさ、健康な男子なんだから背中に伝わるわたしの胸の感触に戸惑ったりしないのかね? 朝比奈さんほどじゃないがわたしにもあるんだぞ、それなりに。 って、なにを腹立ててるんだろうねわたしは。 さてはて、今ハルキに漕がれているわたしの愛車は悲鳴を上げてるのか本来のスペックを出せると歓喜の声を上げているのかどっちだろう。 もっとゆっくり走ってというわたしの要望は、「古泉に抜かれてる。負けてたまるか」とあえなく却下された。 なんとか無事に行きつけの喫茶店へと辿り着き、反省会の後に解散。そしてしばらくしてハルキ抜きで再集合した。 困惑しきりの朝比奈さんは古泉くんに促され、おずおずと話し始める。 「未来に情報送るための『禁則事項』で涼宮さんに初めて部室に連れてこられたときの記憶を映像化していたら、身に覚えのない光景がいくつか出てきて」 ひょっとしてその禁則事項ってのは放送禁止用語か何かなのかしら。 「でも『禁則事項』で検証してみたらまぎれもない現実で、その映像の中では団長である涼宮さんが女性で、あたしの胸を『禁則事項』……はううう言えません~!」 顔を赤くして連発されるとますます放送禁止用語に思えてくる。 前にもTPDDとかいうタイムマシンのようなものがなくなったと言ってたことがある。 今回はそういった器具が不調をきたしたんだろうか。パソコンで例えるなら、インストールされたソフトの設定を間違えて自分の経験を溜め込むフォルダと映画かなんかの情報を溜め込むフォルダを入れ替えてしまったような。 「いえ、どうも涼宮さんは自分の性別を変えてしまってるようです」 今、なんと言いましたか古泉くん? 「かつての涼宮さんは、自分を取り巻く退屈な状況は自分が女であるためだという発想に至ったようです」 だから性別変えたって? いつから? あいつは出会ったときからずっと男だったはずだ。 「前にも言ったでしょう? 涼宮さんは言動こそエキセントリックですが、ああ見えて常識というものをよく理解してると。だから、男になれればなあと考える一方で、簡単かつ完全に性別が変わるなんてありえないと考える常識も持っている。それらがぶつかりあった結果、はじめから自分が男として生まれたものとして世界を作り変えてしまったようです。もちろん、自分自身の体と記憶も含めて」 長門さんが引き継いだ。 「わたしの観測対象である涼宮ハルヒが自らを過去情報に至るまで全て改変し再構築した異性同位体、それが涼宮ハルキ。該当する個体が受精した瞬間にまでさかのぼり、本人だけでなく周辺情報も全て、自分が男性として生まれたという前提で世界を再構成している」 まさかそこまでデタラメだとは。 だが、言われてみれば時折抱く違和感は全て性別に基づくものだった。 その違和感があった情況を掘り下げて考えると、あるはずのない情景が自らの経験という形で浮上する。 わたしの脳をパソコンのハードディスクに例えるなら、『ハルキという男子』と名づけられたフォルダに、なぜかハルヒという女子に関する記憶が大量に格納されていた。 ハルヒという女子が、まだ教室に男子が残ってるうちに無造作に着替えを始め、同性であるはずのわたしが慌てて教室を飛び出す光景。 他にも、長門さんに呼び出され自分やハルキ……いや、ハルヒ? の正体について説明するため呼び出されたとき、女同士のはずなのに色々と戸惑った記憶もある。 そもそも、ハルキの思いつきや発見の中でも最もロクでもないもの、SOS団の結成を授業中に思い付いたとき、真後ろにいたあいつはわたしの襟首を掴んで引っ張り、机の角に後頭部がぶつかって刻の涙を見た記憶がある。 ポニーテールが邪魔になって掴みづらいはずだし、多少はその房がショックを軽減してくれそうなものなのに。第一、男子が女子にあんなことしたら流石にクラスにあいつの居場所などなくなるはずだ。 他にもおぼろげながら色々な記憶が浮上してきた。 その女子は、わたしが知るハルキという男子よりずっと奔放に過ごしていたようだ。 とくに朝比奈さんへの行為はものすごく、自分の手で朝比奈さんの制服を剥いて着替えさせたり胸揉んだり写真撮ったりする光景が蘇った。そりゃ禁則事項にもしたくなるか。 そのハルヒってのは女同士なら許されるじゃれあいと認識してるんだろうか。いや、女同士でもどうかと思うけど。 同じ女として同情を禁じえない。 泣き崩れる朝比奈さんを抱きしめ頭を撫でてやる。この人のほうが先輩なのにな。 古泉くんは肩をすくめる。 「どうやら、今の涼宮さんは男としては許されないとわきまえ、自重しているようですね」 あれでも自重してるの? だったら男としてやりたかった事をさっさとやって満足して、元に戻ればよさそうなものなのに。 「そうもいかないのですよ、そもそも、その願望は女性として生まれ育った故に抱いたもののようです。だから、男として生まれ育ったことになっている今の涼宮さんはその願望を抱きようがない。したがって、仮に実行していても満足することはない。試しに、この前の不思議探索パトロールで彼と二人組になったとき連れション……おっと失礼、とにかく男性でないとできないことをやってみたわけですが、現状はこの通り。もちろん、女性としての涼宮さんがやってみたいと思ったことがアレとは限りませんが」 わたしと朝比奈さんが赤面する一方で、長門さんが口を開いた。 「そういう方向でのアプローチは無意味となる可能性が高い。女性である涼宮ハルヒも、幼少期に野外で遊んでいた際は男子に混じって堂々と排尿を行っていた。彼女にとって女性であることが制限となる要素はあまりない」 この年齢になっても平然と男子の前で着替えていたとしたらソレもあり得る……のかな? わたしと朝比奈さんをよそに、長門さんは淡々と、更にものすごいことを言い放つ。 「女性には生物学的に不可能な方向で考える必要がある。その一つが射精」 ちょっと待てちょっと待て待ちなさい宇宙人に作られたインターフェースだか人造人間だか知らないけど年頃の乙女なんだから少しは恥じらいを持ちなさい。 「しかし既に、睡眠時の淫夢で数回。更に各種情報媒体や自分の記憶を用いたイマジネーションの喚起によって自発的かつ定期的に行われているため、その線の可能性も低い。あるいは、ただの射精ではなくパートナーを伴う……」 とうとう耐え切れず、わたしと朝比奈さんとで口を塞ぐ。様々な意味で、その先の発言は聞きたくないし考えたくなかった。 苦笑した古泉くんが肩をすくめる。 「……まあ、こうして日々を過ごしているうちに、また似たような願望を抱くようになります。今の退屈な状況は男として生まれ育ったためだとね。このようにして性別の変更をかれこれ10回は行っているようです。本人も、周囲も気付かないまま」 いつだったか夏休みの後半を何度もループしてたことがあったが、あの時と同様に何度も記憶を消されるというか書き換えられているうちに耐性のようなものがついて、その結果書き換えられずに残ってしまった記憶を朝比奈さんがほじくり出してしまったらしい。 実害はあまりない。それどころか男として自重してる分、まだハルヒよりはハルキのほうがマシみたい。朝比奈さんの平穏のためにも、今のままのほうがいいか。 「あなたがそれで構わないんでしたら」 わたしが? 古泉くん、どういうこと? 「違和感がある記憶を照らし合わせて気付きませんでしたか?」 そんな返事に困惑するわたしを長門さんが見つめて冷徹に言った。 「過去情報だけではなく肉体も改変された異性同位体はもうひとり存在する。それが、あなた」 いやその、薄々とは感づいてたんだけどさ。 そんな衝撃の事実を告げられた数日後。 「妹汁って、知ってます?」 普段接してる朝比奈さんよりもっと未来から来た、綺麗な大人になった朝比奈さんに会った時、赤面しながらこう聞かれた。 そしてわたしは、知ってしまっていた。 ハルキがコンピ研から強奪したパソコンのハードディスクを何気なく漁っていたとき、様々なアプリが格納されたフォルダの中にやけに容量を喰っているフォルダを見つけた。 女のカンなのか、本来の性別である男としての経験によるものなのか、そこを探っているうちにインストールされていたゲームに辿り着いてしまった。 元々そういう仕様なのか、コンピ研のメンバーがインストールの仕方を工夫していたのかはわからないけどゲームのディスク無しでも起動したソレは、って、なぜ本来はディスクなしでは起動できないって知ってるんだろうね。やっぱりわたしは本来男だったようだ。 とにかくそれは、Hな画像とストーリーで構成されたいわゆるエロゲーであり、その中の一つが「妹汁」だった。 困った状態になったときその言葉を思い出して欲しいとか何とか言ってたけど、困った状態なら今も継続してるんだけど。 大人バージョン朝比奈さんによれば、詳しく言えないがそのとき傍にあいつが傍にいるとの事。これ以上困ることがあるんだろうか。あるんだろうな。 相変わらず違和感を感じる日常が続く。今のわたしは女である。ということは相変わらず改変されたままなのか、それともあいつは一旦は元に戻ってまた女としての生活に飽きたのか。 知覚はできていないがどうにもこういうループってのは気分が悪い。どっちかにしてほしい。 って、わたしは本来の男に戻りたいと思ってるんだよね? でもまあ、朝比奈さんがハルキの無理難題で困り果てたときわたしに抱きついてくるときの柔らかい感じ、特に互いのほっぺや胸が当たるふにふにとした感触が結構気に入ってるわけで。 他にも女としての楽しい思いをしているわけで、こうして女として固定されて生きていくのも悪くはないなとか考ることが多くなった。 他の仲間も変ではあるけど面白い人達で、そこそこ非日常な感じがして楽しい。 こんな時間がずっと続けばいいと思っていた。そう思うでしょ? 普通。 でも、思わなかった人がいた。 決まっている。涼宮ハルキだ。 夕食や入浴、明日に備えた予習を終え、長門さんから借りた本をある程度読み進めて眠りに落ち……。 ブレザーの制服姿のハルキに叩き起こされた。わたしはわたしで寝巻きがわりのスウェットではなく、セーラー服がわたしの身体をまとっていた。 おまけに、ここは学校だった、見覚えのある静寂と薄闇に支配された状態。ああ勘弁して欲しい、閉鎖空間だった。 ハルキは男として女であるわたしを支えなくてはと思ってるのか、勤めて冷静に振舞っている。 でもベースがあのハルヒなせいなのか、この状況ではかなり弱気になっている。そう、改変される前の本来の世界の記憶が蘇りつつあった。 行く当てがないので部室に向かった。そこで一休みしたあと、ハルキは探検してくるとかいって立ち上がる。 「お前はここにいろ。すぐ戻るから」 言い残してさっさと出て行った。そういうところはハルキもといハルヒらしいなと思っていたらやっと彼が現れた。 赤玉モードの古泉……君。むぅ、君をつけるのも呼び捨てにするのも違和感が出てきた。 などという戸惑いをよそに、この状況について話し合う。 ハルキもといハルヒは現実世界に愛想を尽かし新しい世界を創造することにしたらしい。 男として自重する生活が想像以上にストレスだったみたい。 「それでわたしがここにいるのはどういうわけ? そもそもどうしてわたしとあいつだけが性別を改変されてるの?」 「本当にお解りでないんですか? あなたは涼宮さんに選ばれたんですよ。こちらの世界から唯一、涼宮さんが共にいたいと思ったのがあなたです。そして、あなたは涼宮さんにとって異性でなくてはならないのですよ」 わたしはこめかみを押さえるべきかどうか迷ってから、やっぱり押さえることにした。 世の中にはああいった感情を同性に抱いたり男女の区別なしに抱く人もいるようだが、あいつはその点でも普通の思考もとい嗜好だったようだ。 その結果がコレか。 考え込んでいるうちに赤玉の古泉……君の光度は落ちていた。 「こんな灰色の世界で、わたしはハルキと二人で暮らさないとならないの?」 「アダムとイヴですよ。産めや増やせばいいじゃないですか」 「……殴るぞ、お前」 ああ、この言い方、しっくりくるようで違和感が根強く残ってる。 世界と性別、どちらもハルキが元に戻ることを望めば何とかなるとか古泉くんは言うが、さてどうしたものか。 そうこうしているうちに、古泉くんは朝比奈さんの謝罪と長門さんからの『パソコンの電源を入れるように』という伝言を残して消えてしまった。 よくわからないが伝言に従いスイッチを押したが、いつまでたってもOSは起動せずモニタは真っ黒のまま、カーソルだけが点滅していた。 OSが壊れたかと冷や汗掻いたとき、カーソルが動き出し文字を紡ぎ出した。 YUKI.N みえてる。 しばしほうけた後、わたしはキーボードを引き寄せた。指を滑らせる。 『うん』 YUKI.N あなたの下着、水色のストライプ。 噛み合わない返答にしばし困惑し、お尻に伝わる冷気で我に返った。慌てて立ち上がりスカートの裾を直す。 無造作に座った際に椅子のひじ掛けに裾が引っかかり捲れあがっていたようだ。 そして案の上と言うかなんと言うか、定位置のパイプ椅子に長門さんはいなかった。 YUKI.N あなたの女性としての記憶や経験は数度に及ぶ改変で劣化し、本来の男性としてのソレに侵食されつつある。時折抱く違和感や今のような失敗もそのため。 『何とかならないの? 時折どころか、今ではずっとそう。このままってのは色々な意味で辛いよ』 TVなどに出てくる性同一性障害の人みたいな悲壮感はないが、正直言ってしんどい、この状況。 こうしてデタラメなこの世界や現状についてのややこしいチャットが続いたが、最終的に長門さんとしても親玉の情報統合思念体としても戻ってきて欲しいだのわたしに賭けるだのと言い出した。 モニタの文字が薄れてきて、カーソルはやけにゆっくりと文字を生む。 YUKI.N Xchange そこで普通に見慣れたOSのデスクトップが出た。 「どうしろってのよ。長門さん、古泉君」 そこで、何気なく見上げた窓の枠内を青い光が埋め尽くしていた。 呆然としていたらハルキが飛び込んできた。 「キョン! なんか出た!」 興奮した口調であれこれまくし立てる。先ほどの悄然とした様子が嘘のよう。不安など感じていないように目を輝かせている。 古泉君の話では、あの巨大な人型の青い光はハルキもといハルヒのイライラが具現したものであり、周りを破壊することでストレスを発散させているとのこと。 つまり……!! 咄嗟にハルキの手を取り部屋から飛び出す、と同時に轟音。 攻撃の対象となった部室棟から脱出し、その際わたしが負った擦り傷の手当てをすべく保健室へ向かった。 横目でうかがったハルキの顔は嬉しがってるように見える。とんでもない事態だというのに、それを無自覚とはいえ引き起こした張本人なのに。 「何なんだろ、ホント、この変な世界もあの巨人も」 アンタが生み出したものらしいわ、ここも、あいつもね。それよりわたしが聞きたいのは、なぜわたしを巻き込んだかということ。アダムとイブ? バカみたい。そんなベタな展開をわたしは認めない。認めてたまるもんですか。 ハルキに元の世界に戻るよう諭すも、聴く耳をもたない。 つまらん世界にうんざりしてなかったか? もっと面白い事が起きて欲しいと思わなかったかと問うてきた。確かにそう思ってはいた。 だが、実際に世界は面白い方向に向かっていた。アンタが知らないだけで、ね。 そのことを理解させるにはどうしたらいいか? そしてこの、自分の性別に違和感がある厄介な状況に終止符を打つにはどうしたらいいか? 長門さんは言った、「進化の可能性」と。朝比奈さんによると「時間の歪み」で古泉くんに至っては「神」扱い。ではわたしにとってはどうなのか。涼宮ハルヒ、その異性同位体である涼宮ハルキの存在を、わたしはどう認識しているのか? 小難しい理屈でごまかすつもりはない。 わたしにとって、ハルキはただのクラスメイトじゃない。もちろん「進化の可能性」でも「時間の歪み」でもましてや「神様」でもない。あるはずがない。 思い出して。朝比奈さんはなんと言ったか、その予言を。 それから長門さんが最後にわたしに伝えたメッセージ。 妹汁、Xchange。両者に共通することと言えば何? わたし達が今置かれている状況と合わせて考えてみたら答えは簡単だ。 強奪したパソコンにインストールされていたあのゲームは、どちらもいくつかのエンディングや要所要所の直前のセーブデータが保存されており、何となくいじっているうちにいくつかの展開を見てしまった。 複数ある結末の一つとして、または冒頭からという違いこそあるものの、どちらも主人公の男が女になり、Hして悶えて男より女の方が気持ちいいと感じる場面があった。 そしてハルヒもといハルキには願望を現実化するデタラメな能力がある。 なんてベタなの、ベタすぎるわ、朝比奈さん、そして長門さん。それ何てエロゲってな展開をわたしは認めたくはない。絶対にない。 わたしの理性がそう主張する。しかし人間は理性のみによって生きる存在にあらず。 わたしはハルキの手を振り解いて、ブレザーの肩をつかんで振り向かせた。 「なんだよ……」 「わたし、実はポニーテール萌えなんだ」 「なに?」 「いつだったかのアンタのポニーテールはそりゃもう反則なまでに似合ってたわ」 男としてのわたしの本来の記憶が蘇りつつある。 あいつの奇矯な振る舞いの片鱗、その一つだった。アレはどこから見ても非の打ち所がなかった。 「バカじゃねーの? ポニーテールにしてるのは今のお前じゃ……!?」 怪訝な顔をした。こいつもまた、男としての記憶や経験は数度に及ぶ改変で劣化し、本来の女としてのソレに侵食されつつあるのだろう。 その隙にわたしは強引に唇を重ね、さらにベッドへと押し倒した。 こういう時は男にリードさせるのが作法なのでわたしはそれに則った。ゆえに、ハルキもといハルヒだったらどういうやり方を望むかは知らない。 本能に従い身体を開いているのか、今のわたしのように相手に合わせリードさせているのか、今にもぶん殴ろうと手を振りかざしているのか、わたしに知るすべはない。 だがわたしは殴られてもいいような気分だった。賭けてもいい。誰がハルキにこうしたって、今のわたしのような気持ちになる。わたしはハルキの肩にかけた手に力をこめる。しばらく離したくない。 遠くでまた轟音が響き、巨人がまた校舎に殴る蹴るをしているんだろ、とか思った瞬間、わたしは初めてのはずなのに不意に無重力のようなふわふわとした心地になり、身体は反転し、左半身を嫌と言うほどの衝撃が襲って、いくら何でもコトを終えたら後戯どころかベッドから放り出すことはないだろうと思いながら上体を起こして目を開き、見慣れた天井を目にして固まった。 そこは部屋、俺の部屋。床に直接寝転がっており、着衣は当然スウェットの上下、下着は当然ながら男物のトランクス。そして、畜生、中身である男のシンボルはこれでもかと言わんばかりに元気になってやがる。 夢か? 夢なのか? 見知った女と俺、双方の性別が逆転している状態で生活して、二人だけの世界に紛れ込んだあげくにSEXまでしてしまうという、フロイト先生が引きつった笑みを浮かべそうな、そんな変態的な夢を俺は見ていたのか。 ぐあ、今すぐ首吊りてぇ! よりにもよってハルヒとは、おまけに性別が変わってるとは、俺の深層意識はいったい何を考えてるんだ? ぐったりとベッドに着席し頭を抱えた。夢だったとすると、俺はいまだかつてないリアルなもんを見たことになる。 汗ばんだ右手、それに唇と股間に残る温かくて湿った感触。 とどめに、下腹部には自分にはあるはずのない器官の疼きと、ある意味では慣れ親しんだ熱く硬い物体がソコにねじ込まれ出し入れされ熱い何かを注ぎ込まれる快感の余韻まで残ってやがった。 いったいどうなっているのか? ここは既にもとの世界でないとか。ハルヒによって創造された新世界なのか。 だったとして、俺にそんなことを確かめるすべはあるのか。 結局、そんなことを考えて一睡もできなかった。 這うようにして今日も不元気に登校。校舎は何もかもがそのまま正常だった。 教室では窓際、一番後ろの席に、ハルヒはすでに座っていた。 そう、男のハルキじゃない。女のハルヒ。そして俺は……自分を俺と呼称して違和感を抱かない俺はちゃんと男だ。 ハルヒは俺を見て、視線を下に移し、なにやら未練がましい目で俺の股間を見つめ、あわててそっぽを向いた。 後ろでくくった黒髪がちょんまげみたいに突き出していた。ポニーテールには無理がある。 元気かとか話しかけりゃ悪夢を見たとの返答、そりゃ奇遇だ。まさに悪夢、さっさと忘れたい。 表情が解りにくい。顔だけは上機嫌ではなさそうだ。 「ハルヒ」 「なに」 「似合ってるぞ」 エピローグ 古泉とは休み時間に廊下で出会った。 「世界は何も変わらず、涼宮さんは女性として、あなたは男性としてここにいる。いやいや、本当にあなたはよくやってくれましたよ。シモネタじゃありませんよ? まあ、この世界が昨日の晩に出来たばかりという可能性も否定できないわけですが。とにかく、あなたと涼宮さんにまた会えて、光栄です」 長い付き合いになるかもしれませんね、と言いつつ、古泉は俺に手を振った。 古泉を違和感なく呼び捨て出来ることに俺は安堵していた。 昼休みに顔を出した文芸部部室では、長門がいつもの情景で本を読んでいた。 「あなたと涼宮ハルヒもといハルキは三時間、この世界から消えていた」 第一声がそれである。そしてそれだけだった。 色々戸惑って、説得試みて、行為に移って……妥当な時間か。生々しー。 放課後の部室にいた朝比奈さんはセーラー服姿で、俺を目にするや全身でぶつかってきた。 「よかった、また会えて……」 互いのほっぺたが擦れ合うことなく俺の胸に顔が埋まる。 身長が違ってしまっているんだな、もう。 朝比奈さんは涙声で、もう二度とこっちに戻ってこないと思ったとしゃくりあげる。 その後のかけあいの最中に、あいつが来た。 「なにやってんの、あんたら?」 戸口のハルヒが呆れたように言った。 提げていた紙袋を持ち上げ、着替えの時間だと宣告し朝比奈さんを取り押さえ、制服を脱がせにかかった。 ものすごく見物していたかったが、今の俺は正真正銘の男なので失礼して部室を辞し、扉を閉めて合掌した。 朝比奈さんには悪いが、女性ということで遠慮がなくなったハルキもといハルヒの暴挙に振り回される日常の復活が嬉しかった。 ただ、あのおかしくなった世界を元に戻したことに後悔はない。だが、少しは未練も残ってるんだ。 朝比奈さんに抱きつかれたとき、身長が同じくらいになってて、互いに胸やほっぺたを押し付け合いふにゅふにゅしあう感触が、さ。 完
https://w.atwiki.jp/negipedia/pages/58.html
涼宮ハルヒ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/22.html
『情緒クラッシャー』 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 「食ってねぇ」 「言い逃れなんてしても無駄よ!机の上に空の容器が…」 蹴り飛ばされる机。身をすくませるハルヒ。 「食ってねぇ」 「…わかった。食べてないのね」 「あぁ。食ってない」 「…そう」 「謝れよ」 「え…」 「謝るんだよ。俺に。当然のことだろう?勝手な憶測で人を疑ったんだから」 「………」 床に手を付き頭を下げるハルヒ。 「…疑ってごめんなさい」 「…それから?」 「え?」 「さっきのは疑ったことについての謝罪だろ?二度も同じことを言わせたことについての謝罪がないじゃないか」 「…二度も同じことを言わせてごめんなさい」 「いいよ。気にしてないから。俺そういう細かいことを引きずる方じゃないんだ。ただ次からは注意してくれよな。俺はお前のことが大好きだからさ。 もう殴ったりしたくないんだよ。顔面がかぼちゃみたいになってたり、足引きずったりしてるハルヒを見るのはホント辛いんだよ。 なぁ?分かるよなハルヒ?」 「…うん」 「『うん』?」 「は、はい!」 「いい返事だ、ハルヒ。 分かったらさっさとパンツを下ろせよ。あと今週の分な」 「ひぃふぅみぃ…足りてないぞ」 「あの…そのことなんだけど…もうこれ以上…家からお金持ってくるのは…」 ゴッ 「俺は足りてないって言ったんだよ」 「………」 「当たり前だろ。家の金を取るなんて親御さんに悪いじゃないか。だからそれ以外の方法を取ってるんだろ」 「…キョン…お願い…私…限界なの…」 「あ?」 「もうキョン以外とするのイヤ…イヤなの…お願い…もう…」 「…そうか。お前は死ねって言うんだな、俺に。借金があって大変な俺に。そりゃそうだよな。好きでもない男とするのなんて誰だってイヤだよな。 俺だってイヤだよ、大好きなお前を他の奴に抱かせるのなんて。愛してるからな。ハルヒのこと。分かった。死ぬよ、死ねばいいんだろ。死ねばお前も満ぞ…」 「嘘!嘘だから!もっと…もっと私稼ぐから…我慢して…もっといっぱい…!!だからお願い…冗談でも死ぬとかそんな…!」 「そう言ってくれると信じてたよハルヒ。次の分は今日の足りてない分とペナルティー合わせて…4万追加でいいや。お前も少しは寝ないと体もたないだろ?」 「…ありがとう」 「いいって。さ。尻上げろよ。今日はあんまり時間が無いんだ。帰りに長門の家に寄らないといけないんだ。あんまり待たせると可愛そうだからな。あれでアイツさびしがりなところあるんだぜ。あー…きもちぃー♪」 「キョン…私、キョンの彼女なのよね?あ…ん…私達…付き合ってるの…よね?」 「当たり前だろ。あ、今日安全日だっけ?違った?まぁいいか。とにかく出すからなー。 あ、後、次からは焼きプリンで頼むな。今日のはあんまり好きじゃないんだわ」 「う…うぅ…」 「愛してるぜーハルヒー」 ガチャ… ハ「いやっほ~キョ…」 キ「ハルヒ、うるさいぞ、長門は今読書中なんだ、静かにしてあげなさい」 ハ「ごめんなさい…キョン、有希…今日はもう帰るね」 キ「………」 長「………」 バタン 長「………(ハルヒの奴、キョンに注意されて帰ってやんのwwwwwざまぁwwwwww)」 『右から左へ』 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「次の休みどこ行きます?」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン!?」 みくる「そうですねぇ。あ。そろそろ紅葉がキレイな季節じゃないですか?」 ハルヒ「あたしのプリン食べたでしょ!?」 古泉「なるほど。紅葉狩りというわけですね。確かに今が一番いい時期かもしれません」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?キョン!?」 長門「こうよう…」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「お。長門、紅葉を知らないのか」 ハルヒ「ちょっと!ちょっと!キョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 長門「………」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの、あたしのプリン食べたでしょ!?」 みくる「えっとぉ…冬が近付くと一部の植物がぁ…」 ハルヒ「ちょっと!あたしのプリン食べたでしょ!?」 古泉「朝比奈さん、百聞は一見に如かず。理屈よりも、連れて行って差し上げれば一目瞭然ですよ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン、プリン食べたでしょ!?」 キョン「決まりだな。正直ボーリングだ、カラオケだって金も続かなくなってたとこだし、ちょうどいいぜ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?食べたでしょ!?」 みくる「私、お弁当作りますねぇ」 ハルヒ「ちょっとキョン!キョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「ありがたいなぁ!さ。今日はそろそろ帰りましょうか」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン!あたしのプリン食べたで…」 バタン ハルヒ「ちょっとキョン! 咽喉が渇いたから『ドンッ!』っ!?」 キョン「何だって?」 ハルヒ「な、何するのよ! 吃驚するじゃ『ドンッ!』ひっ!?」 キョン「だから何だって?」 ハルヒ「や、やめて『ドォンッ!』よぉっ!?」 キョン「聞こえねーよ。何が言いたいんだよ、ったく」 ハルヒ「つ、机『ドン!』っひ、ぃ、『ドン!』蹴らない『ドォン!』で、よぉ……」 キョン「あー? 聞こえねーっつーの」 ハルヒ「……うぅ」 ナッパ「白菜うめぇwwww」 あたしは今いじめにあっている。 でも、そんなの中学からのことだった。 みんな馬鹿だからそうなんだって思ってた。 でも、高校に来ていじめはエスカレートしていった。 移動教室から帰ってくると机には「気違い死ね」の文字が書かれていた。 それだけじゃなくて、鞄にも「キモイ死ね」の文字。 ご丁寧にも油性のマジックで書くものだから落ちない。 水で洗っても洗っても落ちない。 部室に行く時は手で隠しながら入った。 ばれたら嫌だったから。 汚れた机を雑巾で拭くと、周りでクスクスと蔑む声が響いた。 でも、あたしのが頭もいいし、顔だっていい。 運動神経だっていいし、こんなやつら一撃で倒せる自信がある。 でも、それはできなかった。 過去に余りに腹を立てて男子を殴ってしまったことがあった。 もちろんあたしは勝った。 でも、次の日集団で来てあたしをリンチした。 ブラジャーを取られて排水溝へと投げ捨てられた。 それがどんどんエスカレートしていった。 止まる事はない延々と続けられる嫌がらせ。 耐えられなくなってあたしはキョンに相談した。 キョンは親身になって聞いてくれた。 あまりの嬉しさに、今までの孤立感、屈辱、羞恥、全てが涙に変わっていた。 その時、あたしはキョンに身体を許してしまった。 次の日、キョンは殺人的な言葉を口にしていた。 「あいつ抱いてやったよ。くせぇしきたねぇし、顔だけだな。ヤリマンだなありゃ」 取り巻きは爆笑。 あたしは人間不信に陥っていった。 誰に相談すればいいんだろう? 悪いのはあたし? あたしは一度だけ自殺を試みました。 紐で首を縛って、力いっぱい引っ張りました。 でも、死ねませんでした。 生きていることに気付いた時、あたしの目からとめどなく涙が溢れました。 今でもあたしは馬鹿な人の卑劣ないじめに耐えています。 悪いのはあたし? 馬鹿キョン馬鹿キョン! と。何度も俺の頭を叩くハルヒの手首を握って制止し、 「止めろ!」ドスの聞いた声と共に、と睨みつけた。 「いい加減にしろ! ったく、毎度毎度。俺はお前の奴隷じゃないんだぞ!」 「何よ! 何か文句あるっていうの。キョンの癖に!」 怖じもへったくれもなく睨み返してきやがる。 その目が、口の聞き方が、傲慢な態度が、全部が癪に触る。 「あんたは黙って私のいう事を聞いていれば良いの!」 「だから! 俺はお前の奴隷じゃないっつーの!」 「はん! 何よ! 文句あるの! 無いわよね! あんたは奴隷よ、奴隷!」 「――っ!」 目の前が真っ赤になった。血が上るどころか、瞬間沸騰した。 何度かこういう事はあったが、桁が違う。止める奴も居ない。 衝動は思考を陵駕する。本気で握りしめた拳は、力の限り振り切られた。 「っ!?」 イスを巻き込み、机にぶつかり、吹き飛ぶハルヒの体。 顎を殴られたうえに、頭を机にでもぶつけたのだろう。 「う、あ、あぁ……っ」 顔を両手で覆い、気持悪い呻き声を上げながら、ジタバタと床の上で跳ねる。 「……もう一回言ってみろ」 髪の毛をつかみ引き摺って、無理矢理に身体を起こす。 痛い痛い痛い……! と喚き散らす。唾を飛ばし、口の端から血を垂らし、喚く。 「な、に……」 すんのよ、とでも言いたかったのだろうか。 言葉が続く前に、顔面を机に思い切り打ちつけてやった。 「おい、聞こえないぞ。しゃきっとしろよ」 髪の毛を引っ張って顔を起こし、耳元で呟いた。 ハルヒはぼろぼろと涙をこぼしながら、鼻血を垂らしている。 俺の顔を見て「ひっ」と顔を痙攣させた。あぁ、どうやら俺が恐いらしい。 「ほらほら。もう一回言ってみろよ? 俺はお前の何だって?」 恐がらせないように、とびきりの笑顔でワンモアトライ。 「ごめ……ん、なさ……い」 ガン! 「……ご、め……な、」 ガン! 「や……め、」 ガンガンガン!!! 「……」 パクパクと口を引き攣らせている。 どうやら「ゆるして」と言っているらしい。 俺はずい分可愛くなってしまったハルヒの顔に唾を吐き、部室を出た。 ハルヒ「みんな聞いて、大ニュースよ大ニュース!!」 !...あれ?あんただれ?」 美代子「引っ越し・引っ越し・ さっさと引っ越し、シバくぞ!」 鶴屋さん「繰ーりー出せー鉄拳~♪」 みくる「ふぇ~」 長門「無理です…」 ハルヒ「ハブられた…」 キョン「あははー」 ハ「やっほーみんな」 キ「お前誰だ?」 ハ「はぁ?何言ってんのアンタ?私はハルヒよ!」 キ「お前こそ頭大丈夫か?はるひはそこに居るだろう」 は「え?呼びましたか?」 ハ「え?」 ハ「……」 ハ「ちょっちょっちょっちょっと!まってアンタ私の派生キャラじゃない!なに私の団長椅子に座ってんのよ!」 は「え?えぇ?あ、あのー」 み「どこの誰か知りませんがはるひちゃんをいじめないでくれませんか?」 キ「つーか派生キャラ?何を言っているんだこいつ?そうかキチガイだ……よし古泉コイツを職員室に連れてくぞ」 古「わかりました」 ハ「ちょっと!話なさいあんた達私が」バタン み「……よしハルヒちゃん今日はめいどさんの服着てみようか?」 は「え?またですか?」 長「…スク水巫女服もある」 は「あ、じゃあめいどさんの服をください」 み「はーいじゃあそっちでお着替えしてくださいね~」 長「スク水巫女服……」 ハルヒ「すごいことを発見したわ!」 キョン「なんだイキナリ」 ハルヒ「谷口のWAWAWAについてよ!」 キョン「ああ、アレについてね。何だ言ってみ、聞くだけ聞いてやる」 ハルヒ「いい?谷口のWAWAWA…パソコンで入力してみてよ、キーボードに注意して!」 キョン「なんでだよ」 ハルヒ「いいから!」 キョン「まったく…、w・a・w・a・w・aっと…ん?…こ、これは!?」 ハルヒ「そう!つまり谷口は突 徒 子 公 太 郎 だ っ た の よ !」 キョン「なんだそんなことかよ…」 ハルヒ「(´・ω・`)」 キョン「…ヌプ」 古泉「ひゃっ!?キョ、キョンたんのえっちぃ!」 キョン「…ドピュ」 古泉「いや~///」 長門「ヴァギナー!!!」 キョン「ちょ、直球だな小娘…」 古泉「…わ?」 長門「ノン ノン ノン 『ヴァ』」 キョン「クチュ…」 長門「ヴァギナー!!!」 古泉「ゃぁ~///」 ハルヒ「ちょっとぉ、ちょっとちょっと!なんで有希は良くて私は無視するのよぉ!?」 キョン「………」 古泉「………」 ハルヒ「なんとかいいなs 長門「ヴァギナー!!!」 ハルヒ「ちょ/// 有希うるさっ 指指すなぁ!///」 古泉「か~え~る~の~う~た~が~」 キョン「か~え~る~の~う~た~が~」 長門「き~こ~え~て~く~る~よ~」 ハルヒ「き~こ~え~て~く~る~よ~」 古泉「………」 キョン「………」 長門「………」 ハルヒ「な、なんなのよあんた達最近!!も、もう知らないんだからっ! ウワァァン。゚(つд`゚)゚。」 バタン 古泉「………」 キョン「………」 長門「……グワッ」 古泉「グワッ」 キョン「ゲロゲロゲロゲロッ」 長門「グワッ」 古泉「グワッ」 キョン「グワッ」 ハルヒ(なんなのよちくしょー!) ハルヒ「あれ?…そういえば最近みくるちゃん見ないわね…」 古泉「………プッ」 長門「………プリッ」 キョン「ひゃ~いw」 ハルヒ「な、何よ、あんた達何か知ってるの?」 古泉「or2=3 プッw」 ハルヒ「腐っ! なによ!い、言いたいことがあるならっ、て本当に臭い!!」 長門「ケアル」 キョン「長門はケアルを唱えた。でもみくるんはアンデッドだった…」 ハルヒ「な……そ、それどういう意味?」 古泉「裏切りに」 キョン「死を」 長門「巨乳に」 キョン「制裁を」 ハルヒ「ちょっと、ちょっとちょっと!あんた達みくるちゃんに何をしたのよ!?」 みくる「あの…私ならずっとここにいるんでしゅけど…」 ハルヒ「答えなさいよキョン!」 みくる「またでしゅか?また無視でしゅか?いい加減にしないと泣きましゅよ?」 ハルヒ「なんで無視するのよ!!」 みくる「せ~の、」 ハルヒ・みくる「ウワァァン。゚(つд`゚)゚。」 キョン「あ~る~日♪」 古泉「あ~る~日♪」 キョン「森の中♪」 古泉「も、もも森さんの膣内…ハァハァ」 キョン「ハルヒに♪」 古泉「電波を」 キョン「出会った♪」 古泉「受信した♪」 キョン「はぁ…」 長門「まぁそうクヨクヨすんなよ。そのうち良いことあるって、なっ?」 キョン「長門…ありがとう…俺頑張るよ!」 古泉「しょ、しょんなことより僕の替え歌どうでしゅたか?」 キョン「イェーイ!イツキたんサイコーwww」 長門「なんか涙出てきた…GJ!」 ハルヒ「………」 シンジ「泣いてるの?」 ハルヒ「な、泣いてなんかないわよ!」 キョン「わいわい」 古泉「がやがや」 長門「きゃっきゃっ」 ハルヒ「ねぇ!みんな今度の連休ぅ……」 キョン「………」 古泉「………」 長門「………」 ハルヒ「あ…ううん、なんでもない…」 キョン「わいわい」 古泉「がやがや」 長門「ざわざわ…」 ハルヒ「………グス」 獅子丸「ハルヒちゃん泣いてるの?」 ハルヒ「な、泣いてなんかっ、て誰よあんた!?」 長門「部室の蛍光灯を白熱灯にしてみた」 キョン「いいんじゃないか。部屋の雰囲気が落ち着いた気がするよ」 古泉「なんか…眠いよ…(つω-`)ゴシゴシ」 キョン「ハハハwまったく、イツキは子供だなぁw」 長門「子守り歌歌ってあげるね」 古泉「う…ん……zzZ」 長門「あら…必要なかったみたい」 キョン「そうみたいだn ハルヒ「歌なら私に任せて!!!」 キョン「!」 長門「!」 古泉「うわっ!なになに!?」 キョン「……チッ」 長門「……ちっ」 ハルヒ(あぁ…伝わる、ただの舌打ちなのに色んな感情が伝わってくるわっ! 主に『空気読めよ電波』みたいな刺々しい負の感情が……!!嬉しい、キョンが今だけは私を無視しないでいてくれてる!) 長門「涼宮アヒルの憂鬱」 ハルヒ「ガアガア、って誰がアヒルじゃい!」ビシィ キョン「おーッと、団長様のノリツッコミだッーーー!サイコーだぜウチの団長はよォッーーー!」 古泉「団長!団長!」 みくる「団長!団長!」 鶴屋さん「団長!団長!」 コンピ研部長「団長!団長!」 コンピ研ズ「団長!団長!」 長門「団長!団長!団長!!団長!!」 一同「団長!!!団長!!!たすけて団長ォーーー!!!!」 ♪~~♪~~♪~~♪~~←あの曲 ハルヒ「わ私が悪かったです!謝りますからどうか、テンションをお鎮め下さいィ~~」バッサバッサ 不思議探索当日。 ハルヒ「キョン遅いわよ罰金ね!」 ハルヒ「じゃあいくわよ、古泉君、有希!」 ハルヒ「午前は大した成果が無かったわね…午後こそ何か見つけること!」 ハルヒ「…今日も何も収穫無し、ね。じゃあ解散、また学校でね」 ハルヒ「………全員にボイコットされたからって一人芝居は寂しかったかな………」 「ハルヒ、好きだ。付き合ってくれ」 「ええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」 「なんだその驚きようは、失礼な」 「何言ってんのよ、あのね、あたしはね、あの、その、そう! つまり団内恋愛は禁止なのよ! わかった? わからなくてもだめー」 「ふふふ、そう言ってくれると思ったぜハルヒよ」 「? ?? ??? なに? なんなの??」 「というわけだ、谷口。俺の勝ちだな」 「ちぃっ、俺の告白も断らなかった涼宮がよりによってキョンの告白を断るとはな……しかたない、麻雀のツケはチャラにしてやる」 「古泉ばっかり相手にしてるとゲームの腕が落ちるんだよなー、ハルヒ、こんどはゲーム付き合ってくれよ」 「まさか、あんたたちあたしがキョンの告白を受け入れるかどうかで賭けしてたんじゃないでしょうね」 「おいキョン、ちょっとヤバイ雰囲気じゃねーか?」 「そうだな、逃げるぞ!」 「待ちなさいこのアホバカども~!!」 「あたしはただ、キョンに告白されたいなって思ってただけだったのにぃ……ぐすん」 長門「SOS団の団長は私。文句ある人は?」 ハルヒ「(´∀`)∩はいぃ~~」 キョン達「異議無し」 ハルヒ「(;´∀`)何でぇ~~?」 長門「新団長をよろしく」 キョン達「団長!団長!よろしく団長!」 ハルヒ「(;´∀`)さみしぃ~~」 キョン「あああああああ!!クッソ涼宮がっ!!ウッゼェェエエエんだよヴォケナスがあぁぁぁあ!!!!」 キョン「死ねっ!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇええ!!!」 ハルヒ「(ヒッ!やだ、また犯されちゃう……でも、)」ビクビクッ ハルヒ「ちょっと…みんな、私を無視しないでよ……」 ハルヒ「……無視っていうか全員にボイコットされたんだけどね……部活……」 ハルヒ「ちょっと…キョン、私を無視しないでよ……」 キョン「………( ゚ ж ゚;)プルプルプル」 ハルヒ「キョン……どうして私を無視するのよぉ!」 キョン「………(((((; ゚ ж ゚ )))))ガタガタガタブガクルブルブル」 授業中にクラス一のブスの顔に髭が生えてるのを発見した時の俺のリアクション。 はるひ「みんな~次は何して遊ぶ?」 キョン「じゃあおままごとなんかどうだ?」 はるひ「いいよ~じゃあキョンくんが旦那さんで私が奥さん、いつきくんが子供でみくるちゃんはペットのポチ、有希ちゃんはタマだよ~」 古泉「なるほど、父との禁断の関係に溺れる息子の役ですね」 みくる「私はご主人様の忠実なメス犬です♪」 長門「了解、アパートの隣に済む旦那を狙う泥棒猫の役と認識」 幼子の前で何を言い出すんだこいつら はるひ「ちがうよ~へんな設定を付け足さないでよぉ」 ほら見たことか、わけが分からず泣いちゃったじゃないか 古泉「すみません軽いジョークですよ」 みくる「ごめんねはるひちゃん」 長門「謝罪する」 キョン「どうするはるひ?」 はるひ「えへへへじゃあ良いよ!みんなであそぼ」 古泉「(やはりこちらのはるひさんに着いて正解ですね)」 長門「(能力が同じならば観察しやすい方をとる)」 みくる「(しかしあちらのハルヒさんはどうします?)」 古泉「(最近能力自体が弱まっているのが観測されてるので、消滅は近いでしょう)」 長門「(ほっておくのが得策)」 みくる「(ですね)」 ハルヒ「何のつもりよ!!!早くここから出しなさいよ!!」 キョン「フン」 10日後 ハルヒ「いやぁぁぁ・・・・・はやくお家へ返してよぉぉぉ」 キョン「フヒヒヒヒ」 古泉「おい 俺にもやらせろよ」 みくる「あ、ずるい あたしが先!」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4204.html
物語とは突然にして唐突に始まる。というのはみなわかりきったことだと思う。しかし当事者となった場合わかりきっていたとしても、それは大変迷惑な事だ。 何が言いたいかって?そうだな。現在俺がどんな状況かを説明すれば俺が何を言いたいかわかるだろう…… 俺は今雪山をあいつとともに、明らかに雪山に相応しくない恰好で登っている。 あいつ、というのは俺の混沌なる日常の原因、その元凶たる涼宮ハルヒその人だ。 相応しくない格好、というのはこの頃支給されはじめた学生服装備というやつだ。ホットドリンクがなきゃ凍死してるぜ。そりゃあコック姿やメイド服姿で行くやつもいるって話しだが そんなことを考えている間に吹雪は激しさを増し視界は白一色。こんな時ギアノスに襲われたらたまったもんじゃない。 「あ~あこんなに吹雪がすごいなんて思ってなかったわ。これじゃあラージャンを見つけられないじゃない!」 「おいハルヒ。俺達はまだイャンクックも倒してないんだぞ!?いきなりそんな化け物相手に出来るか!」 まったくいつもながら俺の予想より数段上のことをしようとするやつだ。 この前なんて一人でレウス狩りに行ったし、さらに前には無理矢理俺を連れてフルフルに行ったし。まあ初めての狩りでグラビに特攻したやつだからなぁ。 村長には迷惑をかけた。 「ラージャンどころか。ドドブランゴも出ないなんてどうゆうことよ!」 「俺はそんなものには出てほしくない。大体俺達はポッケ村に移動してるだけだ」 「ついでにでかいの仕留めておきたいのよ。私達の名前を轟かせるためにね」 これ以上涼宮ハルヒの名前を轟かせる必要もなかろう。目を輝かせても出ないものは出ない。諦めてくれ。 そんなハルヒの期待を俺が受け流すのもいつも通りのこと。しかしこのやり取りはたまに思わぬハプニングを引き起こす。 今回がそのたまにだったようだ。聞きたくもない咆哮が雪山に響いた。 「キョン何今の?ドドブランゴ?ラージャン?それともクシャルダオラ?」 「ちっ。残念ながらすべてハズレ。…あの咆哮は…」 厄介だ。ラージャンやクシャルダオラよりはまだマシだが まだクックも倒してない俺達に倒せる訳無いだろ。 「何言ってんのよ。私はやるわよ。相手にとって不足なしだわ」 死にたいのか?まだあっちはこっちに気付いてないはずだ。今ならまだ逃げられる。 だが神はそんな俺を馬鹿にするのが好きなようだ。地震かと思うほどの衝撃とともにやつが現れた。神が本当にいたら一発ぶん殴りたいね。 橙色と青色の、虎のような縞模様が特徴の飛竜…ティガレックス…。 「どうするんだハルヒ!?」 「どうする?もちろん倒すのよ!私に続きなさいキョン」 背中の大剣を両手でしっかり持ち、ハルヒは構えた。ちなみにハルヒの装備は大剣、俺の装備は片剣だ。普通は逆とか言うなよ。あんな重いもの俺は振り回せない。 ハルヒは特別なんだ。ってそんな説明するより早く俺も構えねば 「行くわよキョン」 「ええぃ、こうなったら自棄だ」 こちらに気付いたティガは咆哮をあげ、戦闘体制に入る。そんなことせずにどっか行ってくれれば良いのに…。 ティガはいきなり突進してきやがった。はっきり言ってあんなものに当たったら死ぬ。冗談抜きで。 「避けるわよキョン」 「くっ言われなくても」 やつの突進は広範囲とはいえ避けられないわけじゃない。動きをよく見て横に跳ぶ。 しかしそれがだめだったんだろうな。俺達には経験というものが決定的に欠けている。突進後の回転。当然ながら跳んだ後さらに跳ぶなんて芸当俺には出来ない。 ハルヒも大剣でのガードが辛うじて間に合った程度。後ろは崖。吹っ飛ぶのは目に見えてる。ならせめて 「ハルヒーー!」 結局俺達はやつに一撃も与えられず崖から落とされてしまった。突進のガードはハルヒがした、なら落下の衝撃は俺が…… 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1817.html
例年に比べて少しくらい気温が高かったらしい夏も終わり 通学路の坂、キョンに言わせるとハイキングコースにも涼しさが到来してきた。 季節は秋。 キョンの奴は「うだるような夏がようやく終わってくれた…」なんて呟いてたけど 私に言わせれば夏の方がよっぽど面白い気がする。イベントが多いからね。 まぁ、秋は秋でイベントがあるからいいんだけど。 今日は古泉くんとみくるちゃんは実家の用事、有希は遠い両親に会いにいくらしく休み。 キョンは馬鹿だから先生に呼び出されてるらしい。 つまり私は今一人。理由も言わずに部室の鍵を閉めて帰ったら キョンが混乱するだろうし仕方がないから残ってあげてるって訳。 「あぁつまんない…何で団長のアタシが待たされなきゃいけない訳? 全部キョンのせいなんだから…来たらどう罰を科してやろうかしら? …そうだ、あの馬鹿面見るために隠れていきなり驚かしましょう!!」 そんな事を考えて私は部屋を見渡した後、みくるちゃんのコスプレ衣装の裏に隠れた。 衣装ならたくさんあるし、黙っていればバレないからね。覚悟しなさいよキョン!! その後10分くらいしてようやくキョンが部室に来た。 本当はすぐ出て行こうと思ってたけどキョンが一人の時は何をしているのか気になったし 少し隠れてキョンの観察をすることにした。変態なことしてたら許さないんだから!! 「ん?何だ、今日は皆来てないのか…俺が一番最後かと思ってたんだが…」 なんて阿呆みたいに呟いた後、何とあろうことか団長席に座ったの。信じられない。 後でとっちめてやろうなんて考えてるアタシの耳にその後とんでもない言葉が飛んできたわ。 「ハルヒまで来てないとはな…最近気になって仕方ないし話せなくなるからな。助かった…」 気になる?私を?どんな風に? 「アイツ可愛いよな…」 な……嘘…キョンが私を? 「抱きしめたくなるの何度我慢した事か…偉いぞ俺…」 信じられなかった。いつも振り回しているのに。 そう思ったら嬉しくなったと同時に身体が熱くなった。そう、今まで感じた事の無いような熱さ。 いや、正確に言えばキョンが気になり始めた時に感じた時の熱さと似ている。 でも今度の熱さは私にもしっかり分かった。 性欲。 キョンは私を異性として見てくれている。 恋愛なんて一種の気の迷い、精神病なんて思ってたけど違うのかもしれない。 アタシもキョンを抱きしめたい…それ以上も… そう考えた私は動きが早かった。いい?感謝しなさいキョン。 今からアンタは妄想の中でだけでもアタシに抱かれるの。 アタシはスカートの下から手を入れパンツ越しに秘部を撫でた。 ぐっちょり濡れているのが分かる。これが愛液…キョンを思って出た愛液… アタシの初オナニーの相手はキョンになった…嬉しくてたまらない… 気持ちよくてたまらない…秘部が熱い…ウズウズする… どこかで聞いた覚えのあるオナニーの仕方を思い出しながら必死に指で秘部を刺激する。 そしてもう一方の手で胸を触る…乳首が起っていてまるで自分の身体ではないような感じだった。 しかしアタシはうかつだった。初オナニーだったからかもしれない。 興奮していつしかキョンのいる部室だってことを忘れて一心不乱にしていたせいで 声が漏れて… 「ハルヒ?」 手を元に戻して「隠れてたのよ!!顔が熱いのは熱かったから!!」って言えばいいのに… でも狂ったアタシは止められなかった。 キョンの前で、キョンの顔を見ながら必死に秘部を刺激していた。 よりよい快感。キョンはアタシの前で顔を赤らめて顔を背けている。 止めないと。分かってるのに。アタシの理性じゃ快感には勝てない。 「キョン…キョン…キョン~…もっと…んぁ…」 衣類は乱れ、目の前で愛する人に見られ、二人きりの部室。 そんな状態の中で喘ぎ声なんか止められなかった…ただもう感じるしかなかった… 嫌われたくない…でも…止められない… そしてアタシはとうとう最大まで火照った体をさらけ出しながらキョンにこう言った。 「いい?アタシはね、アンタが好きなの!! アンタを考えながら今生まれて初めての自慰をしてしまったの!! だから…責任を取りなさい!!アタシが好きならだけど… もし好きならだけど…今回だけはアンタの好きにさせてあげるから…」 「本気か?」 え? 「本気でハルヒは俺のことを思って?」 そうよ… 「…嬉しいよハルヒ…俺もお前が好きだ!!だから…好きにしていいか?」 うん… 「初めてだから下手だけど勘弁してくれよ?」 「大丈夫よ…アタシはアンタってだけで大満足なんだから…ん…胸…そんなに強く…」 キョンはアタシを抱きしめると床に寝かせ、キスを一通りした後アタシの両胸を揉んでいた。 「んぁ…いい…キョン…ん…あぁ…」 乳首を指で弾かれる。それだけの行為でアタシの欲求は高まる。 胸を舐められる。それだけの行為でアタシの全てをキョンに委ねたくなる。 「キョン…下も…」 アタシがそう言うとキョンはアタシのパンツに手をかけそっと脱がした。 「凄ぇ…めちゃくちゃ濡れてる…俺が…」 「濡れてるとか言わないでよ…ねぇ…早く…」 分かったよ、と呟くとキョンはアタシのアソコを指で刺激した。 「んん…ぁあ…ヒィ…」 指入れるぞ、そう言うとゆっくりアタシのアソコに指をくねらせていった。 「ぃ…あぁ…ぁん…指…アタシの中に…」 キョンはアタシの一通りの喘ぎ声を聞き終えると自分のモノを出し 「なぁ、入れて…いいか?」 「ん…いいわよ…今日安全日だから……生でも…でも赤ちゃん生まれたら責任取りなさいよね…」 「責任って…」 そう言いながらもキョンはアタシのアソコに軽くモノを触れさせると少しずつ入れていった…」 「ん…痛ッ…や…駄目…ん…血…痛いよ…」 「わ、悪いハルヒ!!大丈夫か?今日はやめ…「やめないで…ちょっと待ってて…」 「分かった…」 その後数十分の間動かさず硬直状態だったけどアタシの「そろそろ…大丈夫そう…」って声で キョンは少しずつ腰を動かした。少し痛かったけどそれ以上にキョンのモノがあるってだけで。 それだけでアタシは満足できた。 「ハルヒ…しまりが…凄い……」 「馬鹿ッ…何言ってんのよ…んぁ…駄目……もうイキそう…」 「俺もだ…抜いた方がいいか?」 「駄目…アタシの中で…中で出して!!」 その声を合図に二人とも同時にイッた。 「キョンの…こぼれたのおいしい…」 「おいハルヒ、床舐めることないだろ…」 「いいじゃない…おいしいんだし…」 こうしてアタシたちの初体験は終わった。 いまでもたまにアタシたちは部室・教室で、普段はキョンの家でしている。 最初夏の方が好きって言ったっけ?あれ、撤回ね。 キョンさえ居ればどの季節だって最高なんだから!!