約 3,071,503 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1006.html
プロローグ 天高く馬肥ゆる秋。俺はこれほど自分の無能さを嘆きたいと思ったことはないね。 なんせSOS団結成の一年生の五月より二年生も折り返しを過ぎた十月まで一年 五ヶ月もの間ハルヒに連れ回されているおかげで環境に対する適応力とかいうや つはそんじょそこらの人よりは身についているはずである。閉鎖空間、雪山、過去、 一種の電脳世界のようなところで巨大カマドウマとも戦った。そんな俺が自分はま だまだ世界を知らないとか言ったら谷口あたりは呆れ返るだろうね、うん。 そういうわけでちょっとやそっとの事態じゃ動揺しない精神を手に得れた俺である がまさかこんな欠点があったとはな。 今俺はハルヒとともに街をさまよっている。ハルヒは不機嫌モード全開で騒いでい る。 「ちょっと!キョン!ここどこなのよ!」 わかるならとっくにホテルに着いているんだがな。悪いが今の俺にはここがどこな のか聞くことも見ることもままならない。 なぜならここは日本じゃないからだ。―――― ―――― 一週間前 「キョン!遅い!こんな大事な会議に遅れるなんて。アンタ団員の自覚あるの?」 今日もわれらが団長涼宮ハルヒは絶好調のようだ。 「わりぃ、わりぃ。掃除当番だったんだよ。」 他の団員は全員そろっている。古泉はいつものニヤケ顔で俺のほうを眺めている し、長門はいつものように本を読む置き物と化している。朝比奈さんはもはや制服と なりつつあるメイド服を完璧にまといつつあっつあつの朝比奈印のお茶を淹れてくれ た。 「ふん。まぁいいわ。今日は一週間後に迫った修学旅行について話し合いましょう。 まず、目標。これはSOS団支部をつくることね。」 これを話し合いと言うのだろうか?一方的な演説みたいなもんじゃないか。これが 話し合いになるのは北の某国くらいじゃないのか?あいもかわらず反論する団員は いないので反論する役割は自動的に俺に回ってくる。 「待て。俺たちの修学旅行の行き先を知っていてそれを言っているのか?」 「当然よ。台湾でしょう?ついにSOS団も世界進出ね。」 「それはそれは。われらがSOS団がワールドワイドな組織になるのに微力でも貢献 できればいいのですが。」 古泉は部下の理想的な返事を返しているし長門はだんまりを続けている。 「えぇぇぇ~。今年の修学旅行は台湾なんですかぁ?去年は北海道だったのにぃ~。」 よく考えたら朝比奈さんは先輩だった。ということは朝比奈さんはこのSOS団台湾進 出計画に参加できないわけか。 「みくるちゃん、心配しなくてもいいわよ。お土産はちゃんと買ってきてあげるから。そう ね~。チャイナドレスなんていいかもしれないわね。」 おいおい。マジか。それには賛成せざるを得まい。メイド服の似合いっぷりも完璧なの だからチャイナドレスも似合うに決まっている。セクシーな朝比奈さんというのもいいか もしれない。新境地だな。 「キョン!何ニヤついてるのよ。どうせまたみくるちゃんで妄想してるんでしょ?このエロ キョン!」 う、図星だ。最近思うんだがハルヒには読心術があるんじゃないか?なぁ古泉。ってい っても古泉も古泉で俺の心を読んでいるような気がするんだがな。って古泉よ、こっちみ んな。ニヤつくな。 「自由行動はこの四人で行動しましょう。不思議探索IN台湾よ。世界は広いわよ。そこら じゅうに不思議が落ちてるかもしれないわね。」 ハルヒは輝くような笑顔で待ちどおしそうに話している。願わくばこのままなにごともなく すんでくれればいいんだがな。 ――――プロローグ Fin 一日目
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/890.html
第二章 cruel girl’s beauty ――age 16 俺を待っていたであろう日常は、四月の第三月曜日をもって、妙な角度から崩れ始めた。 その日は、憂鬱な日だった。 朝目覚めると、すでに予定の時刻を過ぎ、遅刻は確定していたので、わざとゆっくりと学校へ向かうことにした。週明けの倦怠感がそうさせたのかもしれない。風は吹いていないものの、強い雨の降る日だった。ビニール傘をさし、粒の大きい雨を遮った。昨晩からの雨なのか、地面はすでに薄暗いトーンを保っており、小さな水溜りからはねる水が俺のズボンの裾を濡らした。急な上り坂は水を下にある街へと流し、留まるのを拒んだ。 学校に着いたのは一時間目が終わった休憩時間だった。雨で蒸しかえる教室はクラスメイトで満たされ、久しぶりの雨音は教室を静穏で覆った。俺の席――窓際の後ろから一つ前だ――の後ろを見た。ハルヒは窓ガラスの外側を眺め、左手をぴたりとガラスにくっつけていた。進級したことで、階が一つ下がり、窓からの景色は変わった。外ではグラウンドが水浸しになり、小さな川を作っていた。 一年前のあの日。 俺がハルヒと会ってそう経っていなかった頃、ハルヒの表情は怒りで満たされていた。無矛盾な世界への怒りなのか、自分自身への怒りなのかは分からない。だが、SOS団の活動を通して、ハルヒは少しずつ感情を取り戻していった。取り戻すというのは、ハルヒが持っていたであろう――抑えていたであろう――感情を開放していったというのが正しいだろう。 俺がハルヒと会ってからずっと引っかかっていたのは、ハルヒがなぜ普通の人間を嫌うのだろう、ということだ。一般人を代表したような俺は谷口や国木田とそう変わるところはあるまい。国木田より頭は悪いし、谷口みたいにバカ丸出しでもない。健全な高校生を演じていた俺になぜあいつは目をつけたのか。確かに俺は七夕に一度会っている。だが、俺の名前は知らないし、他人の空似程度にしか思っていないだろうよ。ではなぜ? おそらくそれはハルヒにしか知りえないことであった。しかし、一つの推測を述べたい。ハルヒは普通の人間を嫌っているのではなく、人と仲良くなることを避けているように見えるということだ。 今、ハルヒは陰鬱な表情であやふやな視線を泳がせていた。 椅子に座ると、ハルヒに倣い、窓の外を眺めることにした。雨は激しさを増し、窓ガラスに伝わる水滴が水へと変わった。特別変わったことはない。世界の普通さに慣れ、そしてSOS団にも慣れた。日常と非日常を繰り返す毎日が日常になってしまった。かつて望んでいた非日常が日常へと変わってしまっていた。あまりにも奇妙なことがありすぎてそれに慣れてしまったわけだ。 そんな憂鬱な世界とハルヒ、そして俺を崩していったのは谷口の一言だった。 そうそれは、本当に妙な角度からの一撃だった。 谷口は近づいてくるなり、いつものデカイ声を倍にして唾を飛ばしながらこう言った。 「おい、長門有希が転校したってよ」 「へ?」 俺は間抜けな声を漏らした。 「本当だよ。さっき六組のやつが言ってたぞ」 谷口は語気を強めていった。 ガタンという音ともに後ろに座っていたハルヒが立ち上がった。 「谷口! 本当なのそれ? 嘘だったらただじゃおかないわよ!」 ハルヒは谷口のネクタイをもの凄い勢いで引っ張りながた怒鳴った。 「そんなに怒るなって。言ったことは本当だよ」 「ちょっと、キョン!」 なんだ。 「隣のクラスに確認に行くわよ!」 ハルヒはネクタイが引きちぎれそうな勢いで俺を連行した。 長門が転校したって? どうして? 俺にはそんな事一つも言ってなかったぞ。ハルヒもこの様子じゃ何も知らされてないみたいだな。 ハルヒは隣のクラスに入るやいなや壇上に上がり、 「有希が転校したって本当なの?」 ハルヒはクラス全員に向かって大声で尋ねた。 「本当ですよ。朝、ホームルームで先生が言ってましたし」 近くにいた大人しそうな女生徒がおずおずと言った。 「そう」 ハルヒは礼も言わず教室を飛び出した。ネクタイを引っ張られたまま俺も飛び出した。こりゃ傍から見たら犬と飼い主だろうな。かっこ悪いぞ俺。 教室から出るなり、俺と向かい合うと、 「職員室に行くわよ!」 「とりあえずネクタイから手を離してくれ。大丈夫逃げたりしないから。長門のことだしな」 ハルヒはネクタイを思い切り下に引っ張って、手を離した。そして、職員室のあるほうへ一人で走っていった。締まる簡素なネクタイに苦しめられながら、俺は必死にハルヒを追いかけた。 俺とハルヒは教室に戻り、ドカッと自席に座った。 結果は同じだった。俺が遅れて職員室に入ると、ハルヒは教師を馬鹿でかい声で問い詰めていた。教師は住宅街を歩いていたら突然犬に吠えられたような驚きと疑問を顔に浮かべながら、ハルヒをいなそうと必死だった。ハルヒハ教師が長門の転校の理由が分からないと見るや、「役に立たないわね! 無駄に年食ってるんじゃないわよ!」それを捨て台詞に職員室を出て行った。職員室の入り口から事の成り行きを見守っていた俺を無視してハルヒは階段を登っていくので、俺は仕方なくハルヒを追いかけることにした。 俺はおそらく長門がどこに行ったかなんて分からないだろうと踏んでいた。しかし朝倉の時とは違い、行き先も不明だった。確かに行き先を教えたらハルヒはそこまで会いに行くだろうからこれでいいんだろうな。俺だってカナダにいると分かれば、泳いででも行くつもりだったさ。 打つ手はない。おそらく長門のことだろうから、情報操作をしているはずだ。しかし、なぜ? 「なあ、ハルヒ。なんで長門は転校したんだと思う?」 俺が振り返り尋ねてみるとと、ハルヒはバンっと机を叩き、 「分かるわけないでしょ! なんで有希は言わないのよ!あたしたちってその程度の仲だったの?」 「そんなことはないだろ。何かしらの理由があるんだろ」「キョンもよく落ち着いてられるわね! 何かしらの理由って何よ!」 ハルヒはヒステリックな声を張り上げた。 「それは俺にも分からん。放課後、朝比奈さんや古泉にも聞いてみよう。なにか分かるかもしれない」 ハルヒは何も答えなかった。そのまま崩れるように椅子に座り込んだ。そして、聞き取れないほど小さな声で「もう失うのはいやなの」と呟いた。そしてハルヒは机に突っ伏したまま放課後まで起きることはなかった。 授業はいつにもまして、手がつかなかった。もんもんと長門のことを考え、窓の外を見ていた。上の空というのをこれほど実感したことはない。昼食を一人で済ませ、あてもなく学校をうろついた。そうでもしないと落ち着いていられなかったし、どこかに長門が隠れているかもしれなかった。無意識に歩いたのに、行き着く場所は一つだった。 部室棟、通称旧館の文芸部部室。 ドアをそっと開け、部室を眺めた。パイプ椅子に腰掛け、分厚いハードカバーをめくり、陶器のように佇む長門有希を期待したが、いるはずがなかった。パーツを失った部室は空回りをしているように見えた。これ以上見ていることはできず、教室へと逃げ帰った。 放課後、部室には長門を除く全員が揃っていた。 今日の古泉は笑ってはいなかった。沈痛な面持ちで、心ここにあらずといった様子だ。なぜこんなありきたりの表現かといえば、意識的な表情に感じられたからだ。葬式の時に笑って手を合わせてはいけないのと同じだ。ハルヒは団長椅子に浅く座り、教室の時と同じように机に突っ伏していた。朝比奈さんは健気にもメイド服に着替え、お茶の準備をしていた。しかし部室内に流れる異様な空気に気づいたのか、朝比奈さんは困惑しているようだ。 「あのぉ、キョン君。みなさんどうなされたんですかぁ?」 朝比奈さんは耐え切れずに俺に小声で尋ねてきた。 古泉は『機関』とやらから情報が流れているだろうが、朝比奈さんは上級生であり、なにも聞かされていないのは明らかだ。俺は静まりかえった部室で、朝比奈さんの質問に答えることにした。 「長門が転校したんですよ。理由もいわずにね」 「ひぇ?」 朝比奈さんは驚きとも悲鳴とも取れない声をあげた。 「な、長門さんがですか?いっ、いったいどうして?」 「それは分かりません」 俺はいい加減に答えた。もう、朝比奈さんのかわいらしさを堪能している余裕はなかった。メイド服を着た朝比奈さんでも無理なら、何がこの動揺を抑えることができるか。俺はひどく追い詰められていた。すぐにでも自分の部屋のベッドに身をうずめ、長門のことを考えたかった。 それからどれだけ時間が経ったのだろうか、突然ハルヒは立ち上がり、俺達を見つめた。 「じっとしてても何も始まらないわ。明日は学校を休んで、有希を探すわよ。まだ、何か手がかりがあるかもしれない。時間はいつもと同じ九時だから」 いつものような勢いは感じられない、淡々とした語り口だった。 「そうだな。マンションとかに行ってみるのもいいかもしれない」 ハルヒはそれだけを言うと、部室から早足で出て行ってしまった。 「古泉」 「なんでしょう」 「お前はなにも知らないんだな?」 「もちろんです。前に約束したように、長門さんには危害を加えることはありません。というより、不可能でしょう」 古泉はいつものハンサムスマイルを見せた。 「じゃあどうして長門は転校、いや長門のことだからおそらくこの世界から消えてしまっているんだろうな。理由は分かるか?」 「分かりません。ただ、長門さんの転校は上が決定したことでしょう。それに長門さんは従った、推測ですが、おそらく正しいでしょう」 「それは分かってる。あいつが命令を聞くのは情報なんとかだけだろうさ。問題はハルヒっていう観察対象がいるのになんで消えちまったかってことだ」 「すいません。分かりません」 古泉は困ったような顔をして、肩をすくめた。 やれやれ、古泉が駄目なら誰に聞けばいい。俺は、なぜ長門が消えなくてはならなかったのか、その理由を知りたかった。理由があっても納得できるかは分からないが、正当な理由以外はハルヒと結託して、この世界を変えたっていい。 「あの、キョン君」 朝比奈さんがおずおずと話しかけてきた。 「ひぇ! そんなに嫌そうな顔しないでくださいぃー」 そんな顔をしてたのか。 「すみません。ちょっと考え事をしてたもんですから」 「いえ、いいんですけど……」 「で、なんですか?」 明らかに俺は苛立っていた。 「いえ、その……」 「何も無いなら帰りますよ?」 「だから、その……」 「帰ります」 「あ、キョン君」 朝比奈さんが呼び止める。だが、俺は朝比奈さんにかまってる余裕は無かった。古泉ともこれ以上話しても無駄だろう。俺は朝比奈さんを無視して帰るという、男としてあるまじきことをした。鞄を肩にかけ、部室を後にした。 帰りには雨はやんでいた。それにかわって、蒸発した水によって街は蒸しかえっていた。 家に着くと、妹がキャンディーを口にくわえながら出迎えてくれたが、無視して階段を上がった。一刻も早くベッドに身をうずめたかった。 部屋に入ると、鞄を投げ、ベッドに飛び込んだ。そして身体を丸め、もがいた。 「どうして長門は消えちまったんだ? せめて俺に一言ぐらい前もって言ってくれたっていいじゃないか」 そう自分に問いかけても虚しくなるだけだったし、俺は長門がなぜ転校したのか、考えることは断念した。しかし何も考えないでいると、長門との思い出がフラッシュバックしてきて、それを断ち切ろうと、また頭を抱えてもがいた。まだ、長門は消えたとは決まってはいない。明日には見つかるかもしれない。ひょっこりと現れたりするかもな。 長門だって風邪を引くんだぜ。長門達と敵対する存在にまた妨害されているだけかもしれない。長門だって週明けの倦怠感がいやになることだってあるだろうさ。そう、俺だって月曜日の朝は憂鬱になるさ。長門だって落ち込んで、ブルーな日だってある。 その日、俺はそのまま、満たされない気分のまま眠りについた。 次の日。 予定より一時間も早く起きると、昨晩から部屋にひきこもりっきりで何も食べていないことを、軽くなりすぎた胃の不快感が告げていた。リビングに行くと妹がすでにソファーでテレビを見ていて、いつもこんなに早く起きているんだなと感心した。 「あ、キョン君おはよぉー。今日は早いんだねぇ」 「まあな。ちょっと用事があって」 母親がトーストと目玉焼きという朝食の定番を持ってきたところで俺は今日学校を休んで出かけることを告げた。男には一生に一度やらなければならない時が来るとどこかで聞くありふれた理由を切々と説明すると、案外素直に了承してくれた。 「ふふっ。そういうことにしておくわ」 どこか含みを持たせた笑みで俺を見る。 「それなら早くご飯食べちゃいなさい」 「ああ」 言われなくても食べるさ。俺は昨日から何も食べてないんだからな。 俺は疑惑の判定で世界チャンピオンになったボクサーよりあっけなく食事を済ませ、自室に行って手早く服を着替えた。ちょうどリビングから出てきた妹と鉢合わせになり、妹は不思議そうな顔で 「いってらっしゃーい」 と言って、俺を見送った。俺は妹の頭を撫でてから玄関を出た。ママチャリをとばし、集合場所の駅前へ向かった。予定より一時間も早かった。 駅前に到着すると、SOS団の面々は揃っていた。 ハルヒの「遅い!罰金!」の定型句はなかった。遅刻はしてないしな。というか、お前ら何時間前に来てんだ。俺はこれでも一時間も早いんだぞ。 「今日はお早いんですね」 いやみか。 「いえ、そういうわけではありませんよ。あなたのことだから長門さんのことを考えていて眠れなくなり、睡眠不足で来るだろうなと思っていただけです」 てことは、それを見越して早く来たってわけか。 「それもありますね。それはそうと涼宮さんを見てください。彼女の精神はとても不安定です」 そんなの見なくても分かるし、あいつはいつも精神不安定だろうよ。 「そして、彼女は今日一番早くこの場所に来ていました。僕が来たのが今から十分前ですから、それより前に来ていたことになりますね。僕の言いたいことがわかりますか?」 分からん。でも、俺は古泉が何を言いたいのか分かっていた。古泉は俺を非難している。 「長門さんがいなくなって悲しいのはあなただけじゃないってことです。昨日あなたは朝比奈さんを無視して帰りましたね? 彼女、あの後一人で泣いていたんですよ? 『わたしキョン君をおこらせちゃったかなぁ? ごめんなさい』って」 「……」 「涼宮さんはきっとあなたと同じで夜も眠れずにここに誰よりも早く来たのでしょう。でも、僕がここに来たとき彼女は不安な顔一つ見せずに『遅いわよ、古泉君』って笑顔で言いました。さすがの僕でも胸が苦しくなりましたね」 「……」 「僕も同じです。僕だってSOS団のメンバーと色々と時間を共有してきましたし、突然長門さんがいなくなるのは悲しいんですよ」 「……」 俺は何も言えずに、ただ呆然と古泉の顔を見つめていた。「キョン達何してんの? ほら喫茶店行くわよ! 班決めしないと」 タイミングよくハルヒが俺達の間に割り込んでくれた。「ああ、行くよ」 俺達はいつもの喫茶店に行った。俺はコーヒーを、ハルヒはアイスティーを頼んだ。 「じゃあ、班分けしちゃいましょうか」 ハルヒは爪楊枝を取り出し、俺達に差し出す。 「んー、キョンとか面白くなさそう」 班分けは俺とハルヒの組、そして古泉と朝比奈さんの組に決まった。アイスティーを飲むハルヒの顔はいつになく真剣だ。古泉が言っていた通り、ハルヒは俺達の中で一番真剣なのかもな。もちろん俺だって真剣さ。あれだけ俺を助けてくれて、信頼までしてくれていた長門を見捨てるわけにはいかないからな。 「じゃあ、行きましょ。時間もないし。それとキョン! 今日遅れたでしょ?」 ハルヒは俺をじとっと睨みつけると、 「罰金。分かってるんでしょうね?」 言わないと思ったら今頃かよ。しかも今日は遅刻してねえよ。と思いながら、呆れながら、不承不承ながらもきっちりと払う俺を褒め称えてくれるやつはおらのんか。神様が見てる? そんなの嘘っぱちだ。 一度駅前に戻り、俺達は二手に別れた。今回は範囲の指定はなかった。別れ際にハルヒは、 「真剣に探すのよ! でないと全裸で市中引き回しの刑だから!」 朝比奈さんに向かって言った。それから俺のほうを向き、 「さあ、いくわよ。キョン。絶対見つけてやるんだから!」 ハルヒはいつになく真面目な顔で言った。 「分かってるよ。今回は俺も本気だ」 俺はハルヒの真面目な様子を見て、若干気にかかることがあった。それは、長門がいなくなることをハルヒは望んでいたのかということだ。そうじゃないのに長門が消えたとなれば、神様であるハルヒはいったい? 俺達はまず、長門の住むマンションに向かうことにした。ハルヒは怒っているのか不安なのか、初めてみる表情でややうつむきながら大股で歩いた。俺も自然と早歩きになっていた。一秒でも早くマンションに着いて、何か手がかりを得たかったからな。 「ねえ、キョン?」 「なんだ、突然」 「あたしあの後、有希がどうして転校しちゃったのか考えてみたのよ」 「何か分かったのか?」 ハルヒに分かるはずはないだろうが、一応聞いてみる。 「まずね、教師も行き先を知らないような転校なんてあると思う?」 「普通に考えてないだろうな」 「そうなのよ。それに有希は転校するなんて素振りを一度も見せたことはないし」 「そうだな」 「続きは後で。有希の家に行ったら何か分かるかもしれないしね」 ハルヒ、すまんがおそらく長門のことだから何も分かんないだろうよ。まあ、俺はそれでも行ってみる価値はあると思うぞ。 長門のマンションは駅から近く、気まずくなる前に到着した。中から出てくる住民を待ち、閉じかけの自動ドアを通り抜け、長門の住む階へ向かった。もちろん、ドアは開かず、鍵がかかっており、仕方が無いので管理室へ向かった。管理人のおっちゃんによると、まだ708号室からの届出は出ておらず、未だに長門名義の家になっているとのことだった。おっちゃんとの会話を終了させ、708号室の鍵を借り、また七階へと向かった。部屋に入ると、そこは変わらずに無機質なものだったが、本やら缶詰カレーやら、その他いろいろなものが残されており、本当に長門は消えたのかと感じさせた。結局何の手がかりも見つからず、その場を後にし、マンションから出た。その間、終始ハルヒは俺に対して無言を通し、俺も同様だった。 俺達はこれ以上に行くあてもなく、意味も無く歩き続けた。ハルヒの大股歩きについていくのは堪えたが、それ以上に立ち止まっているのは苦痛だった。歩いていると長門のことを考えないで済むからな。住宅地をぐるぐると徘徊していると、 「駅前の公園に行きましょ」 ハルヒがそう言ったので、それに従うことにした。 光陽園駅前公園のことだ。延々と長門の電波話を聞かされたあの日の集合場所である。 公園に着くと、誰もいない公園でベンチに並んで座った。 俺の左側にハルヒが座った。なにか思い詰めた表情で、斜め下を見つめていた。覇気のないハルヒはあまりにも不自然だった。 「やっぱりおかしいわ」 ハルヒは話を切り出した。 「何がだ。昨日考えてたってことか?」 「それもある。でも、有希が転校したって何か辻褄が合わないのよね」 「それは、お前の中でのことだろう」 「そうだけど。キョンは有希が転校した理由は分かるの?」 「いや、さっぱりだ。長門はこういう時、探しても見つからない気がする」 「なんなのよ! あんた有希のこと大事にしてたんじゃないの?」 「急に怒鳴るな。確かに長門は大事だが、それは団員いうか一人の友達としてだ。ハルヒが思ってるほど大事に思ってねーよ」 「そう、なの? あんたもっと有希のこと好きなのかと思ってた」 「そういうことにしといてくれ。それより、お前の辻褄が合わないってやつを教えてくれないか?」 「そうね」 ハルヒは少し間を空けてから話し出す。 「まず、さっき有希の部屋に行った時なんであんなに物が残ってるのか不思議に思ったの。普通、転校っていったらも家を移動することでしょ? なのにあの部屋はまだ全てが残ったまま。それに管理人に鍵を預けているわけでもない。こう考えると有希って本当に転校したのか怪しくなってくるわよね」 「確かにそうだな」 「でね、思ったの有希は何か事件に巻き込まれたんじゃないかって」 「巻き込まれたとしても転校はできないんじゃないか?」 「うーん、そうなんだけど。有希って一人暮らしなのよ。それに親もどこにいるか分からない。誰でも偽装できると思うけど。あたしは団員のプライベートについては聞かないほうがいいと思って今まで聞いてこなかったから、有希については詳しくは知らないけど」 「長門については俺も詳しくは知らないな」 もちろん、それは嘘だ。 「事件に巻き込まれてないといいんだけど」 「そうだな」 俺は素直に頷いた。 そのまま俺達は三十分ほどそのまま座り続けた。隣に座るハルヒは甘美な匂いがした。横から眺める真っすぐとした黒髪と、整った目鼻立ちは見慣れているはずの俺を緊張させた。 誰もいない公園は、自らの存在価値を失い、泣いているようにも見えた。俺達がいることで存在の瀬戸際を保っていた。そして、俺達がいなくなることでまた価値を失うのだ。そんななんの変哲も無い哲学を考えていると、ハルヒはまた話しかけてきた。 「ねえ、キョン」 「なんだ」 「あたし、一つ謝らなくちゃいけないことがあるのよ」 「誰にだ」 「あたし自身に、それに探してくれてるSOS団のみんなにも」 「そうか。お前が謝るなんて珍しいな」 「珍しくなんかないわよ! あたしだって悪い時はあやまるわ。ただあたしはあんまり後ろを見ないだけよ。あたし過去って嫌いなの。過去っていいところだけを鮮明に覚えてるから、見てるとずっと過去に浸っていたくなるでしょ。そんなのあたしの性格に合わないわ。だって、未来にはもっと楽しいものがあるかもしれないじゃない」 そうだ。俺はこんなハルヒの未来志向が好きだった。そして、憧れていた。ハルヒは俺には無いものを持っている。が、話がずれてるだろ。話はハルヒが謝ることじゃないのか? 「で、お前の主張は分かったが謝らなければならないこととは何なんだ?」 「うん。あたしね、有希が転校したって聞いたとき、それは驚いたわ。なんで?ってね。でも、一瞬あたしは楽になった気がしたの。そして、そう感じた自分に失望した」 「なんで楽になったんだ?」 「それは言えない。あたしにも分からないの」 俺とハルヒは公園を後にして、駅前に戻った。 すでに、朝比奈さんと古泉はいて、二人でなにかを話し合っていた。 「こちらは何も収穫なしです」 古泉は残念そうに言った。 「そう。あたしとキョンは有希の家に行ってみたんだけど、 誰もいなくて、手がかりなしね。ホント、どこいっちゃったのかしら」 「残念です。それとすみませんが、バイトが入ってしまったので 午後からの捜索には参加できそうにありません」 ハルヒは少し考えた後、 「それじゃあ、仕方ないわね。 どうせもう探すところなんてないから、これで解散でいいわね?」 俺と朝比奈さんにむかって言った。 「しょうがないよな。一度帰って、各自で探す方法を考えてみるか」 「そうですね。わたしもそれがいいと思います」 朝比奈さんは頷いた。 「それじゃあ、解散ね。明日の放課後話し合いましょう」 ハルヒはそれだけ言うと、駅に向かって歩き出した。 「それでは僕はこのあとバイトがあるので」 「バイトって、閉鎖空間か?」 「そうです。この件で涼宮さんの精神状態は悪化していますからね」 「そうか」 俺は朝比奈さんが手を振って帰るのを見送ると、 「頑張れよ」と古泉に言って、帰宅した。 家に着くと、すぐにベッドに横になり、また長門のことを考えた。 なにか手がかりはないのか、必死に求めた。 今まで、長門はどんな時でもヒントを出してくれていた。 根拠は無かったが、今回もあるはずだということを確信していた。 そして、俺は今までの長門との思い出をめくった。 そして気づく。 ははっ、なんだ簡単じゃないか。 昨日は気が動転していて気づかなかった。 俺と長門をつなぐもの。 そう、あの本だ。そしてそれは栞という形をとって俺に伝える。 そう思う前に、俺は駆け出していた。 学校をサボったことを忘れ自転車で、全速力で学校に向かった。 息が切れた。 全速力といっても自転車の最高速度はせいぜい四十キロ。 速く、もっと速く。 ペダルは空転し、それ以上を拒んだ。 学校に着くやいなや、部室棟に向かった。 階段を駆け上がり、勢いよく部室のドアを開けた。 すぐに『あの本』を探した。 ――――あった。 素早くページをめくり、栞を探した。 はらりと足元に落ちた、長方形の紙。 それを慌てて拾い上げ、読んだ。 『午後七時。光陽園駅前公園にて待つ』 あの時と同じ、ワープロで印字されたような綺麗な手書きの文字が書いてあった。 俺は栞をポケットに入れると部室を後にした。 そしてそのまま、今日ハルヒと座った、あのベンチへと向かった。 長門を待たせたくなかったからだ。 公園につくと、俺はベンチに座り、辺りを見回した。 公園の時計は三時をさしていたが、それでも遅すぎる気がした。 そのあと俺はじっと長門が来るのを待った。 夜風が肌に凍みた。 こういうときの時間は永遠にすら感じるものだ。 長門はどうしてるのだろうか。 昨日の衝撃が、肉体と精神を限界へと向かわせていた。 長門にもう一度会いたい。 せめて、さよならぐらい。 そして、また会おうなって言ってやりたいんだ。 「来たか」 日が沈み、辺りが暗くなった頃、制服姿で長門は現れた。 時計を見ると、七時一分をさしていた。 無機質な表情のまま、俺の前で立ち尽くしていた。 そして一言だけ。 「こっち」 長門は無言のまま歩き出し、マンションに向かっているようだ。 足音のしない、忍者のような歩き方は変わっていない。 歩き出した長門の横を歩いた。 夜風に揺れるショートカットが鮮明に映った。 マンションに着くと、手押ししていた自転車を適当に止め、 今日三度目のガラス戸を抜け、エレベーターに乗り込んだ。 エレベーターの中で俺は長門を見つめていたが、 無表情のまま立っている以外のことを発見することできなかった。 708号室のドアを開けると、 「入って」 長門は俺をじっと見つめ、言った。 「ああ」 玄関で靴を脱ぎ、リビングへと歩いた。 年中置いてあるこたつを指差すと、 「待ってて」 「いや、お茶ならいいぞ。話を聞かせてもらおうか」 「そう」 長門がこたつの前に座ると、俺も向かい合って座った。 「それじゃあ、聞かせてもらおうか。なぜ転校することになったのかをな」 長門は俺を真っすぐに見つめた。 「情報統合思念体はわたしの処分を決定した」 「そうか。思ったとおりだ」 「ただし、今回の決定は私自身の過失に起因するものではない。 涼宮ハルヒの情報を生成する能力が収束に向かっていることが主な原因。 現在の涼宮ハルヒの能力は、 かつて弓状列島の一地域から噴出した情報爆発の十分の一にも満たない。 大規模な情報改竄は不可能になり、情報統合思念体の無時間での自律進化の可能性は失われた」 ハルヒの能力が収束? 「これからのことは最近になって明らかにされたこと。 わたしのような端末には与えられていなかった情報」 長門は一呼吸おいて続けた。 「わたしはわたしの存在理由を涼宮ハルヒを観察して、 入手した情報を情報統合思念体に送ることだと考えていた。 しかし、それだけではなかった。 そもそもそれだけでは矛盾が生じるのは明らかだった。 情報生命体である彼らは宇宙中の情報を無時間で入手することができるからだ」 長門はまた間を空けた。 「彼らは情報生命体である以上、時間という概念を持つことはない。 それゆえに、人間でいう死の概念、そして記憶というものを持たない。 わたしが十二月に異常動作を起こしたのもこれに起因する。 記憶は彼らの中に本来的に存在しないため、 情報として置き換えるのには曖昧さが残った。そのため、バグが溜まっていった。 十二月に実行された世界改変は、 インターフェースのなかでわたしが最も長い時間を生きているために発生した事故」 「それゆえに、わたしの処分は決定的なものとなった」 「で、結局なんで処分は決定されたんだ?」 「涼宮ハルヒの能力の収束に伴い、地球上で活動する、 インターフェースの絶対数を減らす必要がある。 それに加え、記憶によるバグは危険を伴う。 だから、最も時間を経たわたしから順に処分を開始する。当然の処置」 「だとして、いなくなることはないじゃないか」 「……仕方がない」 「仕方がなくなんかない!」 俺は憤慨していた。すでにこの二日で限界を迎えていた。 「長門、お前はどう思ってるんだ?」 「わたしはこの世界に残りたいと感じている」 「なら!」 「わたしには決定権がない」 「なんでお前の意思は尊重されないんだ!」 「……仕方がない」 「ハルヒに俺が『俺はジョン・スミスだ』だということを明かすと 情報なんたらやに伝えてくれ!」 「涼宮ハルヒにはもう時間を改変するほど力は残されていない」 「くそっ。どうすればお前を助けられる? 俺にできることはないのか?」 「ない」 「……仕方がない」と長門は呟いた。 「……どうすればいいんだ」 「……仕方がない」 俺は立ち上がると、長門に近づき、抱きしめてしまった。 それがいいことなのかは分からない。 ただ、強く抱きしめた。 細い身体は今にもサラサラと砂になりそうだった。 長門は抱きしめ返すことはなかった。 ただ、正座したまま動かなかった。 無機質な有機アンドロイド、長門有希。 寡黙な文学少女、長門有希。 そして俺たちはそのまま。 しばらくすると長門は俺の胸を押し、離れようとした。 「あ、すまん。つい勢いで」 俺は長門から離れ、謝った。 「帰って」 「へ?」 俺は間抜けな声を出した。 「帰って。もう時間」 長門は俺を強く見つめた。これ以上はできないぐらいに。 「帰らないと言ったら?」 「あなたのわたしに関する記憶を消すことになる」 「そうか」 俺はしぶしぶ同意し、リビングを出ることにした。 それ以外ないだろ。長門の記憶が消えてもいいのか? 去り際、長門は言った。 「あなたがわたしのことで本気になってくれたことを嬉しく思っている」 「でも、もう時間がない」 そして最後に、 「ありがとう」 長門ははっきりと言った。 俺は何も言わず、玄関を飛び出た。 エレベーターを待てず、階段で降りた。 マンションの前に放置してあった自転車に乗り、走り出した。 輝かない空を見上げ、自転車を全速力でとばした。 「くそっ。どうして俺は何もしてやれないんだ」 そして俺は逃げ出したのだ。仕方がなかったでは済まされない。 だが、自分を責めることはできず、長門を責められるわけでもなかった。 俺は圧倒的な暴力の瀬戸際に立たされていた。 忘れていたのだ、自分が何もできない普通の人間だということを。 揺らぐ意識の中で、長門のことを思った。 せめて、 長門がバグだというその記憶が、 幸せで満たされていることを、ただ、祈った。 chapter.2 おわり。 chapter.3
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5119.html
文字サイズ小でうまく表示されると思います 涼宮ハルヒの誰時 「ご、ごめんね?」 手を振り払ったのは俺なのに、何故か慌てて謝ったのは朝倉の方だった。 「こんな大変な時なのに、変な事言ってごめんなさい」 そう言って立ち上がった朝倉は、そのまま逃げるように隣の部屋へいってしまった。 見間違いでなければ、朝倉の顔は真っ赤だった様な気がするんだが……まあ気のせいだろう。なんだか一気に疲れた気がする、というよりも疲れてるのに 無理やり動いてただけなんだろうな、実際。このままここに居たら、本当に泊めてもらう事になりかねん。 朝倉。 呼びかけてみるが返事はない、だがそんなに広い部屋でもないんだから聞こえていないって事はないはずだ。 今日は帰る、また話を聞かせてくれ。 俺はしばらく待ったが朝倉からの返事はなかった。 なんなんだろうな? これは。 でもまあ朝倉は聞いているんだろうなと思い、俺はそのまま部屋を出て行った。 朝帰り、ではないが深夜の帰宅に何故か起きていた母親にきっちりと叱られ、翌日起きたのは頑張ればぎりぎり間に合いそうもない……まあどう考えても 遅刻する時間だったのはこの際どうでもいいね。 家を出て早々に1時間目を諦めた俺は、休み時間に学校に着くようにわざと遠回りをして歩いていた。これで2時間目にも間に合わなかったら洒落にも ならないのだが、ぶっちゃけどうでもいい。なんて、言えればいいのにな。 ハルヒが居なくても、SOS団が存在しなくても現実って奴は知ったこっちゃないらしく、時計の針は一定の間隔でしか進まないし明けない夜も無いらしい。 過ぎていく時間が憎いのに、それに対抗する手段なんぞ持ち合わせちゃいない俺は……そうだな、どうすればいいのか知ってる奴が居たら教えてくれ。 遠回りするはずだった足はいつの間にか見慣れた坂道に進んでいるし、だからといって俺も方向転換する事も無い。遠くに見えていた学校は少しずつだが 大きくなっていって、俺は小さくため息をついた。 正直に言おう、大きく息を吸うだけの元気もなかったのさ。 ふと振り向いた先には誰の姿も無く、俺は諦めたように校舎の中へ入っていった。 「おいキョン! 今日ばかりはお前の不運を嘆いてやるぜ」 図書室で時間を潰した俺が休み時間を狙って教室に入った所を、無駄にテンションが高い谷口が迫ってきた。ああ、テンションが高いのはいつもだったっけな。 ええい、暑っ苦しい。と突っぱねるだけの元気も出てこない。 ああ、そうかい。お気づかいありがとうよ。 そう言って俺は自分の席へと向かうのだが、どうあっても谷口は俺にかまいたいらしい。俺の進む道をわざわざ両手を広げて遮ってやがる。 「おいおい、ちょっと待てって? お前どこに座るつもりだ?」 自分の席だ。 それ以外にどこがあるってんだ?床か? 「お前の席はそこじゃないだろ。間違って座るとクラスの男子、全員から袋にされるだろうから親切で言ってやってるんだぜ?」 お前は何を言ってるんだ?俺の席は窓際の列で一番後ろだろう。 俺の返答に谷口はにやにやと笑いながら指を振っている。 いったい何が言いたいんだお前は? 「キョーン、そこはもうお前の席じゃないんだ。よく見ろ?お前の席はその一つ前だぞ」 なんだって? 確かに言われてみれば、一番後ろの席は俺の記憶の中の机より若干新しい様な気がする。 違う、そうじゃない。俺の席の後ろにあったはずの空間に、机が一つ増えてるんだ。 「いいかよーく聞け。今朝このクラスに転校生がきたんだよ。しかもだ、驚くなよ~?そいつはな、お前も知って 朝倉だろ。 長くなりそうだったので途中で割り込んでやった。 「はぁ?なんだよ、知ってたのか」 急に白けた顔で谷口が軽く両手をあげてみせる。 ここまでくれば分からないはずもないさ、昨日転校してくるって聞かされたばかりだしな。 「あ、おはようキョン君」 背後から聞こえた声に、俺はのんびりと振り向いた。 ああ、やっぱり朝倉なのか。 隠すまでもない小さなため息がこぼれる。実は少しだけ転校してきたのはハルヒじゃないのかと俺は期待していた、でもハルヒならこんなに谷口が騒ぐ事も ないんだとわかってもいた。 人当たりのいい笑顔を浮かべた朝倉は、まっすぐに俺の元へと歩いてくる。 ってそうか、俺が居たら席に座れないんだな。 谷口を押しのけて自分の席についた俺だが、何故か俺の視界には朝倉が入ったままだった。 「今朝は心配しちゃった。もしかして、学校に来てくれないのかと思っちゃったじゃない」 俺の机の横にしゃがんだ朝倉は、俺のネクタイ辺りを見つめている。 どうしてそう思うんだ? 「そりゃあ昨日は肉体労働させちゃったし、もしかしたら私と顔を合わせずらいのかなって思って」 「おいキョン! お前いったい朝倉さんに何をしたんだ?」 テンションの上下が激しい奴だな、血管に負担がかかるぞ。 昨日、朝倉の引越しの手伝いを頼まれたんだよ。ただそれだけだ。 ある意味間違っていないな、昨日は朝倉の荷物運びで殆ど終ってハルヒ達の手がかりは結局見つからなかったんだから。 「なんだよキョン、そーゆー時は俺を呼んでくれって! 朝倉さん、今後何か御用があれば是非俺に任せてください!」 次からはそうさせてもらう。 正直、こっちは馴れない力仕事に体中筋肉痛なんだ。 「ありがとう。よろしくね」 その言葉だけで満足だったのだろう、谷口はふわふわとした足取りで去って行った。 「あまり話した事はなかったんだけど、谷口君って面白い人ね」 そういえば、朝倉がクラスの男子に話しかけているのは見たことがなかったな。 あーゆーのが好みなのか。 「私の好みが気になるの?」 いや、聞いてみただけだ。 でもまあ、朝倉だったら谷口を大人しくさせる事もできるのかもしれない。 「私のタイプは落ち着いてて優しい人よ。谷口君はいい人だと思うけどちょっと違うかな」 俺の視線の先で、国木田相手に騒いでいる谷口に哀悼の意を表してやろう。残念だったな谷口、朝倉はお前とはかなり違うタイプをお好みだそうだ。 どちらかと言えば国木田みたいな奴がいいらしいぞ。 「ねえ、やっぱり私は貴方の事キョン君って呼んじゃだめかな」 さっきも呼んでなかったか?と、言いかけて俺は口を閉ざす。 何故なら朝倉はいつもの笑顔で頼みこむ様な雰囲気ではなく、真剣な顔で俺を見ていたからだ。 いやに呼び方にこだわるんだな。 とも言いにくい雰囲気の中、授業を始めるチャイムが鳴りだす。その音に救われる様に俺は席を正して教科書を取り出したのだが、朝倉はどうやら返事を 聞くまで動かないつもりの様で席に戻ろうとしない。 チャイムが終わりそうになった所で俺は負けた。 好きにしろよ。 笑顔になってようやく自分の席に戻る朝倉。 そして授業が始まり、遅刻してきた俺は教師の教科書を頭部で受け止める事となった。 すんません。 さて、学校はこれでもかと言うほどに何事もなく至って平和そのものだった。 そりゃあそうだ、人間台風とでも評すればいいようなあのハルヒが居ないんだからな。 長門の世界の時と違って、古泉のクラスは残っていたがあの営業スマイルは見つけられない。 一応クラスの名簿も見せてもらったのだが、やはりというかそこにあいつの名前は見つけられない。鶴屋さんはただの上級生という事になっているのか、 廊下ですれ違った時もなんの反応もなかった。あいかわらず妙に元気な人だったのが、救いだった気がする。 もしかして、クラスが違っているだけで実は学校のどこかに居るのでは? そう考えた俺は、部活の関係で生徒名簿が見たいという俺の適当な言い訳で岡部を説得してみた所、びっくりするほどあっさり閲覧を許可された。いいのか? 俺が知っている名前がないか調べている最中、何か後ろで「お前もいよいよハンドボール」とか言ってた気がするが、まあ気のせいだろう。朝比奈さんも 長門も古泉もこの学校には存在しない、それが確認できた時にはすでに夕方になっていた。 さて、今日はどうしようか? ここ最近まともに寝てないんだし、今日くらいはこのまま家に帰るのもいいかもしれん。 「あ、こんな所に居た」 職員室から出てきた所で、朝倉がやってきた。 もう放課後と言うのもどうかと思う時間だぞ?何してるんだ。 すでに日は落ちていて、安普請な廊下は冷え切っている。朝倉は学校指定のカーディガンを羽織っているが、それでも寒そうだった。つまり俺も寒い。 「キョン君には言われたくないな」 不機嫌そうな朝倉の意見は最もだ。 で、なんでお前は学校に残ってたんだ? これだけ暗くなっているのに一人帰すのもどうかと思って――というか朝倉ははじめからそうするつもりだったらしく――俺達は一緒に下校している。 「キョン君を部室で待ってたの。で、あまりにも遅いからもう帰ろうと思ったら靴箱にまだ靴があったから探してたのよ」 それは、なんていうかすまん。 俺が文芸部に行かなかったのは、無人の部室を見るだけの気力がなかったからだった。正直、しばらくは行ける気がしないぜ。 「ねえ。調子悪そうに見えるけど大丈夫?」 左後ろから覗き込んでくる朝倉の顔は本当に心配そうで、俺は適当な言い訳も思いつかなかったのもあって大人しく頷いた。 ここ何日かハードだったからな、今日はもう早く寝る事にするよ。 「無理しないでね?私に出来ることがあったら手伝うから」 それはハルヒ関係の事を言ってるんだろう、しかし今の朝倉に手伝ってもらいたい事か。 俺が想像する手助けってのは、いわゆる超常的な力でみんなを取り戻すって事だったんだが、ただの人間になった朝倉にはそんな事を頼める訳もない。でも、 だからと言って今回の事に朝倉に責任がない事くらいわかってる。なんせ日本にすら居なかったんだもんな。だから俺は何も言わないままでいた。 「ごめんね」 え? いつの間にか止まっていたのだろう、朝倉の声はやけに後ろから聞こえてきた。振り向いてみれば、少し後ろで辛そうな顔で立っている朝倉が見える。 「私がもっと早く帰ってきてたら、もしかしたら事態は変わってたかもしれないのに。手助けするなんて言っても、ただの人間じゃ力になんてなれないよね」 何言ってるんだか――一度は長門に消されてしまったお前が、自分の危険も顧みずわざわざここまで来てくれただけで感謝してるよ――溜息一つついてから、 俺は坂道を戻って行った。 目の前に来ても、朝倉は動かないでいる。俺は俯いたまま固まっている朝倉の頭に手を乗せ、そっと撫でてやった。 朝倉、お前には助けられてるよ。事情を知ってる人が誰一人居なくて相談もできない状況に、正直ギブアップ寸前だったんだ。 「キョン君」 でも、ハルヒに関わる事で相談されるのが迷惑なら言ってくれ、お前にまで迷惑をかけられないからな。 お前にとっては、忘れたい事なのかもしれないし。 「迷惑だなんて思わないで。それに、私だって自分の事を知ってる人が残っててくれて……嬉しかったんだよ?」 潤んだ目で見つめる、掛け値なしの笑顔がそこにあった。 その時、俺が感じたのは仲間ができたという安心感だったのか、それ以外の感情だったのか。 自分ではわからなかった。 「ここがそうなのね」 ああ。 次の休日、俺と朝倉はあの市立図書館へ来ていた。 学校の中は平日の間に殆ど調べて終えてしまっている、いよいよもって手詰まり感は否めない。だが長門と一緒に来たこの図書館なら、もしかして何か 手掛かりが残っているのではないか? そう考えたのだが、静かなはずの図書館は人気は少ないものの何故か騒がしかった。 「ごめん、もっと地味な格好がよかったね」 気にするなって。図書館だって言わなかった俺が悪いんだ。 朝倉には先日、次の休みに市立図書館に行くんだが一緒にくるか?と聞いたのだが、どうやら朝倉はそれをデートだととったらしい。今日の朝倉は 図書館には不釣り合いな派手目の服装で――それは似合っていると俺は思うんだが――やはり人目を引いてしまっていた。そそくさと建物の奥へと進み、 長門が足に根が生えるほど読書に勤しんでいた本棚の付近へと移動する。 流石長門だな、目的の場所の周りにはまるで人気がない。 並べられた本のどれもが数回、下手をすれば一度も開かれていないのではないかと思うような場所で……。 「どこから探そうか?」 そうだな、どうしような。 ある意味まっ平らな壁を相手にしているような気分だ、どこから手をつければいいのか全くわからない。 それでもせっかく来たのだからと、俺達は手当たり次第に分厚い本を机に移動しては中身をさっと確認するという作業に取りかかった。 運ぶのは俺で、調べるのは朝倉。適材適所って奴だよな。 「これだけあると全部は調べられないから、今回はキョン君の感で選んでみて」 なるほど、確かにその方がまだ可能性がある気がする。 俺はさっそく、目の前にあった分厚く引き抜くのも苦労する様な本を一冊取り出した。確かこれは長門が読んでいた本だと思ったんだが……おい、 2キロはあるだろこれ。しかも12巻まであるのかい、そうかい。 そうして数時間が過ぎても、俺の手が挙がるのを拒否しだした以外にはやはりというかなんの進展もなかった。 朝倉も時々目元を押さえたりしている、休憩しながらだがお互い限界みたいだな。長門がこの図書館に来たのはずいぶん前の事だろうし、その時すでに ヒントや仕込みを終えているってのも無理があったと今更ながら思う。気づくのが遅すぎたとも思う。 こんな所で悪いな。 「え、何が?」 休日にこれだけ付き合わせておいて、ファミレスじゃ合わないだろ。 とは言っても俺の小遣いじゃここが限度だったりもするんだけどな。図書館での探索を諦めた俺達は、SOS団で集まる時に使っていたファミレスへきていた。 すでに夕方を過ぎていて、店内は大勢の客で賑わっている。 「気にしないでよ。それに、ここは割り勘でいいよ」 それは助かるが、そうもいかないさ。 いくら俺でもあの重労働に対価無しってのはあんまりだと思うぜ。 「どうして? レディーファーストとかかな?」 そんな概念は、古泉でもなければ似合わない。 俺が言っても寒がられるだけだ。 「私は好きでキョン君に付き合ってきたんだから、そんなに気を使わないでいいよ」 言いきる口調からして、どうやら朝倉は譲る気はないようだ。 ハルヒによる罰金刑対策で財布の中身に多少は余裕があったんだが、ここは大人しく好意に甘えておくとしよう。 翌週、今更なのだがテストが返ってきた。 そういえばそんな事もあったんだな、っていうかそれも無かった事になってればいいのによ。などと脳内で不満を言っている間にも、教室の中は少しの歓声と 明らかにそれよりも多くの悲鳴で溢れかえっていった。 さて、俺の結果なのだが。 予想よりは高いようで平均には到底及ばないこの成績に対し、俺は我ながらどう取ればいいのかわからない溜息をついた。 「キョンはどうだった?」 さっそく戻ってきた答案を片手に国木田がやってきた、後ろを見れば谷口も居るがどうやら今回は深刻に酷い内容だったらしく燃え尽きた顔をしている。 どうもこうもない。 隠しても仕方ないので俺は国木田に答案を渡してやった。 「う~ん。キョンは文系は多少いいけど、全体的にかなり弱いみたいだね」 完璧な戦力外通知をありがとうよ。 とはいえ、勉強も本気でなんとかしないとまずいって事だけはわかってるんだがな。お前はどうだったんだ?なんて聞くまでもない。国木田は俺や 谷口なんかと付き合ってはいるが、明らかに進学組だったりするんだ。 「私も見ていいかな?」 聞きながら早くも、国木田から答案用紙を受け取った朝倉がこちらを見ている。国木田も俺が答える前に渡すなよ。 好きにしてくれ。 俺の返事を聞いて、さっそく答案に目を落とした朝倉の顔から一瞬笑顔が消えたのを、俺は見逃せなかった。 こんちくしょー。 「ねえ、今日は一緒に文芸部の部室でお昼食べない?」 昼休みを間近に控えた授業中、後ろから朝倉のそんな声が聞こえてきた。 別に断る理由もない。 俺は前を見たまま肯いておいた。 都合よくチャイムが鳴り、購買へ向かう生徒や弁当を広げたりと一気に騒がしくなる教室を朝倉は一人通り抜けて行く。このままここに居ると谷口あたりに 捕まりそうだな。普段ならそれもいいが、まさか朝倉と先約があるとは言えないし他に誘いを断る理由が見つかりそうもない。俺は弁当を取り出すと、教室を 出てのんびりと部室棟へ足を向けた。 が。 「キョン?」 口にコロッケバーガーを入れたまま、器用に谷口が俺の名前を呼んでみせる。谷口だけではない。意外な事に、文芸部に居たのは朝倉と谷口と国木田の三人 だった。驚いた二人の顔と、俺にしか見えないように小さく舌を出して謝る朝倉の顔。 おいおい、どうなってるんだ? 「で、何でお前がここに来たんだ?」 弁当を広げた俺に対して、谷口は穏やかな表情の下に確かな敵意をもって問い詰めてくる。 国木田はそもそもどうでもいいらしく、もそもそとサラダを口に運んでいるし、朝倉も何食わぬ顔で弁当の中身をちまちまと食べていた。 まあ、そのなんだ。 何故この辺鄙な文芸部で、しかも朝倉と、さらに隠れるようにして弁当を食べようとしていたのか。正直俺にもよくわかってないんだが、どうやらここで 朝倉に振るという選択肢は無いらしい。 「俺達は中庭で弁当広げてた時に偶然朝倉さんが通りかかったから、せっかくだからとご一緒してる所だ。言っておくがキョン、返答しだいではクラスの男子 全員を敵に回す事になるからな?」 安心しろ、それはない。 適当な言い訳を考えてみた所、今日はちょうどいいネタがあった事を思い出した。やっぱりちゃんと睡眠は取るべきだな。 俺は弁当の包みを開きながら、かなり本気で睨んでいる谷口に言い訳を披露した。 今朝のテストの結果が悪かったから、朝倉に勉強を教えてもらう事になってたんだよ。で、だ。俺のレベルを周りの奴らに知られると 恥ずかしいだろうからって朝倉がここならどうかって提案してくれたのさ。 「お前が勉強だと?勉強道具も持たないでか?」 ええい、いい所を突くじゃないか。 ヒアリングが全滅だったから英語の勉強だったんだよ。昼休みに教科書なんて読んでたら気が滅入るだろ?それに朝倉は外国暮らしの経験があるから 下手な教師より勉強になると思ってな。 む、これはちょっと苦しかったかもしれない。 嘘つけ。と言われそうな気もしたんだが、どうやら今回のテストに関しては流石の谷口も思い当たる所があったんだろう。 めずらしく真面目な顔になって、口を閉ざしちまいやがった。 「私に教えられる事はそんなに無いと思うけど、どうせなら二人で勉強した方がいいかなって思って」 朝倉の助け舟で一応は納得したのか、谷口は大人しくコロッケバーガーの処理に戻っていく。やれやれだ。 「朝倉さんは今回の結果良かったの?」 「私は転入が間に合わなかったから、今回のテストは受けてないの」 「あ、そうだったね。今回の問題は殆ど期末の範囲とだぶってたんだけど、少し変わった所からの出題があってさ……」 とはいえ元々成績上位の朝倉だけあって、国木田とのテストの難問についての会話に俺は参加資格すら無い事だけはわかった。 谷口も同じらしい、もそもそとつまらなそうな顔で二つ目のパンに手を出している。 やれやれ、俺は何しにここへ来たんだろうな? 優等生同士の会話を綺麗に聞き流しながら、弁当を胃に押し込む作業は緩慢と進んで昼休みももう残り少なくなった頃。 「ねえキョン。そうしなよ」 突然国木田に名前を呼ばれた時、俺が見たのは朝倉と国木田の妙な笑顔だった。 「無理にとは言わないけど、手助けくらいならしてあげられると思うの」 まて、聞いてなかった。何の話なんだ? 手伝いって何の事だ? 「だからさ、朝倉さんが勉強を見てくれるって言うなら今日だけじゃなく、何日か続けて教えて貰った方がキョンの為になると思うんだ」 なるほど、勘弁してくれ。 しかし、国木田の口調からして善意から言ってくれてるらしく断りにくい空気だ。 朝倉の笑顔にも「どうしよっか?」と聞きたげな感じが混ざっている。まあいい、今だけうんと言っておけばいい話だろ?二人で勉強するだけなら、朝倉が 口裏合わせさえしてくれれば問題ないだろうし。 わかったよ。朝倉、すまないがよろしく頼む。 俺は多少芝居がかって軽く頭を下げて見せた。 「任せて?じゃあ谷口君も早速今日の放課後からでいい?」 「はい!」 え、なんだって?なんでここで谷口が返事してるんだ? よく見ればレベルの違いに落ち込んでいたはずの谷口も、いつのまにか無駄に――本当に無駄だ――スマイル全開になってやがる。 「頑張ろうね。キョンはやればできるようになると思うんだ」 おい国木田、なんでそんなに自信ありげに頷いてるんだよ。しかもお前まで来るのか? えー、俺の知らない所でどうやら何かが決まったようだ。 元気になっている谷口、終始笑顔の国木田。そして僅かに困り顔の朝倉と……俺はどんな顔をしてたんだろうな。 つまりは、これからしばらくの間4人であの部室に集まって勉強会をする事になったってことか。 「うん。……どうしようね?」 結局、言い訳に使った英語の勉強などする時間もなく昼休みは終わり、俺達は教室に戻って来ていた。 国木田の事だ、面倒くさがりの俺は明日からにすしたら来ないってわかってて今日からにしたんだろう。今更断るのもどうかと思うし、仕方ない。腹を くくろう。 今日はとりあえず俺も顔を出すけど、何日かしたら俺は抜ける事にするさ。 正直、今は勉強するって感じじゃない。 何故だろう、俺の返事を聞いた朝倉はどこか寂しそうな顔をしている。 「……私は、どうしたらいいかな」 どうしたらって、そりゃあ。 返事に迷った俺を救うかのようにチャイムが鳴り、俺は仕方なさそうに前を向いた。視界の中で、最後まで寂しそうな顔をしていた朝倉の事が気になって というかまあいつも通りに、教師の言葉はまるで頭に入ってくることはなかったよ。 「今日はとりあえず二人の現状を確認しようと思うんだ。はい、これ」 不思議なほど笑顔の国木田に渡されたのは、ノート一面に手書きで書かれたテスト用紙だった。ちなみに1枚じゃないぞ? A4のノート両面の問題が なんと3枚もだ。 おい国木田、こんなもんいつの間に準備したんだ? 「5時間目の授業中に書いてさっきコピーしてきたんだよ。内容は北高校の受験内容と同じレベルだから安心して」 さらりと言い切る国木田はどうやら本気らしい。ちなみに隣に座る谷口は「こんなに難しかったか?」と呟きながら早くも苦い顔になっている。 「じゃあ時間は30分、終わったらすぐに採点するから帰らないでね。はじめ!」 不平不満が出る前にさっさと開始する訳か、岡部なんかよりよっぽど手馴れたもんだ。国木田、お前教師になったらいいと思うぞ。 という訳で、俺は今答案用紙相手に久しぶりに本気で取り組んでいる。流石に受験レベルとなれば、そこそこの点数が取れないと学校に来ている意味が 問われるもんな。 朝倉と国木田は、必死な俺と谷口の様子を真面目な顔で見ている。 何見てるんだ、なんて言うだけの余裕もないまま時間は過ぎていき――。 「はい終わり、すぐに採点するから待ってて」 答案用紙は国木田の手に渡って行った。 やれやれ、こんなに真面目にテストに取り組んだのはいつ以来だろうな? 「キョン、お前どうだった」 力無い口調で谷口が聞いてくる、聞くまでもないだろう。良い訳がない。 なんせSOS団に入ってからというもの、家でまともに勉強した事なんてなかった俺だ。結果が良かったらむしろおかしい。しかし谷口は俺以上に答案を 埋められなかったのか――唸り声ばっかりで殆ど書いてる音がしてなかったもんな――すでに燃え尽きた表情をしていた。 「ここはおしかったよね」 「うん。基本はできてるんだから応用部分さえ押さえればすぐに理解できるはずね」 「数学は思ってたより厳しい結果だけど、これはどうしようか」 「そうね……。この公式の段階で間違ってるんだから、そこから覚えなおすとしたらちょっと大変かも」 どっちのテストについて話してるんだ?と聞くのは正直怖かった。 学年や、クラスの中で自分の順位が良いとか悪いなんて事は正直どうでもいいが、同じレベルだと思ってた谷口と比べられると正直きついぞ。 嫌に長く感じられた採点時間だったが、時計を見てみればまだ10分も経っていない。 「じゃあ答案を返すね、間違ってた所は解説を入れておいたから必ずやり直してみて。わからなかったら僕か朝倉さんに聞いていいから」 俺の元に帰って来た答案は……やれやれ、想像以上だ。 もちろん、悪い方にな。 「明日までに二人の苦手分野の問題集をまた作ってくるよ。二人ともちゃんと来てね?」 「なあキョン。お前、朝倉さんとどうなんだよ」 帰り道、優等生二人の後ろを歩いていた俺に谷口は疲れた顔で聞いてきたんだが。 どうって、何がだ。 今のところ、生命の危機には瀕してないぞ。 「そりゃあ……まあキョンだし、気にしなくてもいいか。俺的美的ランキングAAランク+の朝倉さんが、お前でなんとかなる訳がないもんな」 そうかい。 しかしまあ、美的ランキングなんてずいぶん懐かしい事を言うじゃないか――思わず色々思い出しちまったよ。 的外れな事を言ってる谷口はいいとして、朝倉はと言えば国木田と何やら難しそうな話題で盛り上がっているみたいだ。 「ここだけの話国木田の奴はさ、なんだか知らねえけどお前の成績の事結構気にしてたんだぜ?」 国木田が?なんで? 教師どころか本人も気にしてなかったってのに。親は気にしていたが。 「知るかよそんな事。ともかく俺はこの機会に一気に成績上位を目指させてもらうぜ?もちろんそれ以上の事も狙ってる。何せあの朝倉さんと 二人っきりで勉強できるチャンスなんてこの先二度とないだろうからな」 どうでもいいが、お前の視界には俺と国木田入ってないようだな。 まあいいか。何はともあれお互い赤点ぎりぎりの生活にはそろそろ終止符を打つべきなんだろうし、この機会を逃せばそれこそ卒業も危うい気がする。 出来るなら可能な限り先延ばしにしたい事だけど、学生ならいつかはこうなる運命だもんな。 先の事を考えるにはまだ早い気もするが、少しは真面目に取り組んでみようじゃないか。 「おはよう」 翌朝、何故か寂しそうな顔で朝倉が登校してきたのは珍しい事にHRぎりぎりの時間だった。声に力がないし何か顔色も良くない気がする。もしかして、 何かあったんだろうか? お前がこんな遅刻寸前だなんて珍しいじゃないか。何かあったのか? 「あ、ちょっとその寝坊しちゃって……ねえキョン君」 ん? 「その、今日の勉強会の事なんだけど。キョン君は……もう」 ああ、そうだった。朝倉。 俺は机の中にしまっておいた昨日の答案用紙を取り出した。こいつのおかげで昨日は貴重な睡眠時間がごっそり削られちまったよ。 家に帰ってやり直してみたんだが、どうしても問3がわからないんだけど教えてくれないか? 「え! あ、うん。まかせて!」 と、急に元気になった朝倉だったのだが。教師が入ってきてHRが始まった事により朝倉の講義は一時中断となった。しかしさっきまで元気がないみたい だったのに、女ってのは急に変わるもんだな。まるで谷口みたいだぜ。 「朝倉さん、ちょっとこれ見てみてくれるかな。キョンと谷口に作ってきた問題集なんだけど」 昼休み、部室に集まった俺達の話題はやはり勉強会についてだった。俺にとってはなんとも消化に悪い話なんだが、好意でやってくれている事に 文句を付けるわけにもいかず黙々とおかずを口に運んで行く。 「凄いね。こんな事言ったら怒られるかもしれないけど、北高の先生が作ってる問題よりよくできてると思うよ?」 国木田作の問題集を片手に驚く朝倉だが、よくできてるってのは簡単って事かい? そんな訳ないだろうけどな。 「ちょっと問題数が少ない気もするけど、とりあえずは基礎的な所で苦手意識を持たないようにするにはこの方がいいと思って。朝倉さんはどう思う?」 「私も楽しく勉強するにはその方がいいと思う。あと、国木田君って字が綺麗よね」 「そうかな?」 おやおや、意外な所でいい感じに見えるんだが? 面倒だから隣の谷口が妙に震えてるのは放っておいてもいいよな。 「じゃあとりあえず僕はキョンを担当するね、朝倉さんは谷口をお願いしていいかな」 「うん。谷口君、一緒に頑張ろうね」 「はい! よろしくお願いします!」 さっきまで唸ってたと思えば急にこれか。まったく、切り替えが早すぎてついていけねえよ。 そして放課後、無人の文芸部において二度目の勉強会が開催された。 朝倉の指導もあってか今日の谷口はいつもよりは真面目に見えるし、俺は俺で国木田の解説を聞いている間に意味不明でしかなかった問題集が、なんとなく 理解できるような気がしなくもない程度には上達してきた気がしなくもないね。 静かな部室の中で、筆記具による音だけが絶え間なく続く。国木田の教え方がいいのか、こんなに勉強に集中できた事はないって程に俺は問題集に取り組んでいた。 ようやく問題集の終りが見えてきた頃、俺はふと顔をあげて入口のドアへ視線を向ける。 放課後なのにこの部室には今日も誰もやって来る気配がない。長門が居なくなってしまった事で、本当に廃部になってしまったのかも知れないな。 「キョン、どうかしたの?わからなくなっちゃった?」 ん、ああ。今更だけどこの部室を勝手に使っててよかったのかって思ってな。 「そういえばそうだね。文芸部って廃部になってるのかな?」 俺達は勝手に使っているこの部屋だが、本来で言えば部室棟の部屋は鍵がかかっているはずだった。 しかし何も資材らしきものすらないせいか、この部屋は一度も鍵がかかっていた事がない。 「なんだったら、隣の部室の人に聞いてみればいいんじゃない?」 「あ、君は!」 どうも。 コンピ研の部室に入った途端、部員達の視線が一斉に集まってきたのを俺はむず痒く感じていた。背後から感じる3人の視線も、今は何故か居心地が悪い。 「ジョ……っと、今日は一人じゃないみたいだね。何か用なのかい?」 部長氏は思ったより常識がある人の様だな。いきなりジョン・スミスとか呼ばれたらどうしようかと思ったぜ。 えっと、隣の部室について何か知ってませんか? 俺が指さす壁の方を見て、部長氏は頷く。 「ああ文芸部か。去年までは少しは交流もあったんだが、今年は入部者0だったせいで残念だけど廃部になったと聞いてるよ」 長門は居なかった事になってるんだもんな。 となれば、とりあえずはあの部室を占領していても問題はない訳だ。 「もし部活を探しているのなら是非、我がコンピ研に来てくれ。君なら歓迎させてもらうよ。ああ、なんならお友達も一緒に来ればいい」 そう言って、廊下から入ってこようとしない残りの3人に部長氏は視線を向けた。 考えてみます。 我ながら適当な返答を残して俺はコンピ研を後にし、廊下からの三者三様の視線を全て無視しつつ文芸部へと急いだ。 「キョン。お前パソコン詳しかったのか?俺んちのノーパソ最近なんか動作が重い気がするんだけど見てくれよ」 知らん。頼られる程俺は詳しくないから、店に持ち込むか買い替えろ。 それにあえてここでは言わないでおいてやるが、おそらく原因は人に見せられないデータが多すぎるせいだ。断言してもいい。 「何言ってんだ?そんな金があったらお前に頼まないって」 そりゃあそうだろうな。 「コンピ研の部長さんにあそこまで勧誘されるなんて凄いと思うよ。キョンはそっち方向の大学に進むつもりなの?」 さあどうだろうな、ただの買被りだと思うぜ。 ちょうど区切りまで問題集は終わっていた事もあり、今日は解散となった。 その日の夜、夕食を食べて自分の部屋に戻ろうとしていた時に俺は何か視線の様なものを感じて振り向いた。 しかし、そこには誰も居ない――今のはなんだったんだ? 薄気味悪いとかそんな感じじゃない、何か懐かしいとうか不思議な感覚だった気がする。 それがきっかけになったのだろうか?部屋に戻った俺は思いついた事があって、急いで朝倉にメールを入れた。 もしかしたら、ハルヒ達を取り戻せるかもしれない。 久しぶりに鼓動が速くなるのを感じながら、俺は朝倉の返事を待たずに家を飛び出していた。 「ごめん、待たせちゃったね」 いや、こっちこそこんな時間に急に呼び出して悪かった。何か食べたかったら頼んでくるぞ。 「ううん大丈夫。それで、思いついた事ってなあに?」 メールをして30分後、俺と朝倉は駅前のファストフードで落ち合っていた。明日は平日だ、あまり遅くまで付き合わせる訳にはいかない。 ここじゃ試せないんだ。すぐ近くだからついてきてくれ。 そう言って俺が向かったのは、漫画喫茶だった。 「ふ~ん、はじめて来たけど思ったより綺麗な所なんだね」 楽しそうな顔で、朝倉は店内を見回している。受付を済ませた俺はさっそく指定された個室の中へと向かう、狭い室内には目的の物。パソコンがあった。 頼むぞ、これが何かの手がかりになってくれ? 俺はかなりの期待をもって、あのページを検索していった。そして数分後、目的のサイトへと辿り着く。 朝倉、こいつを見てくれないか? 「これって」 朝倉の顔に驚きが浮かぶ。 モニターにはあのSOS団の公式サイトが表示されていた。画面中央やや上に堂々と浮かぶハルヒ作、長門改編によるZOZ団のロゴと無駄に進んだ アクセスカウンター、後はメールアドレスがついているだけの我ながら完璧なまでに読者無視を貫いたサイトさ。 俺にとって、ハルヒが居たって物理的な痕跡と言えばこれ以外に思いつかない。一人でハルヒを探していた時に見つけた時は何も起こらなかったが、 朝倉だったら何か違った答えを出してくれる事を、俺は期待していた。 これは俺がハルヒに作らされたものなんだが、何かハルヒ達を取り戻す手がかりにならないか? 俺の言葉も耳に入らないほど真剣な顔で、朝倉はモニターを見つめている。 ペアシートの奥に座っている俺は結果的に朝倉に押し倒されているような形になって苦しかった――だけでなく、なんというか色々当たってた――のだが、 抗議するタイミングをどうにも掴めないまま時間は過ぎていった。 数分後、小さくため息をついて朝倉はモニターから離れていった。 その表情からだいたい想像はできたが、聞かない訳にはいかないよな。 手がかりはない、か。 むしろ俺より気落ちした顔で、朝倉は首を振った。 「ごめんなさい。今の私にはここから何かを見つける事はできないみたい」 所詮俺の思いつきさ、いきなり何か進展があるとか期待してたわけじゃないんだから気にしないでくれ。とまあ、自分に嘘をつきながら俺達は早々と 漫画喫茶を後にした。 結局、最後まで申し訳なさそうな顔をしていた朝倉には悪い事しちまったな。 ハルヒの手がかりを得られなかった事よりも、むしろそっちを気にしながら俺は自宅へと自転車を走らせた。 それからというもの、俺は朝倉にハルヒに関する話題をあまり振らなくなり、するのは専ら勉強会の話題ばかりになっていた。 驚く事に、勢いで始まってしまった勉強会はあれから数週間を過ぎた今も毎日続いている。その結果俺と谷口の学力はどんな魔法でも使ったのか?という 程に向上し、一時的な事かもしれないがクラスの平均近くまで上昇していたりする。 間違いなく教える奴が優秀だったからなんだが、多少は自分を褒めてやってもいいだろうね。 なんとなく理解できるようになると退屈でしかなかった授業もそれなりに面白いものとなり、朝倉が言う教師のレベルとして国木田の方が高いってのが 実感できるようになってきたくらいさ。 小テストもむしろ腕試しとばかりに挑戦できるようになった頃には、驚くなよ?問題集の復習以外にも自宅でたまに教科書を開くようになっていた。 そんな俺を見て妹は面白そうに邪魔しにくるのだが、それを適当にあしらうだけの余裕が今の俺にはある。解ける問題を解くってのは気分がいいせいかもしれないな。 ……いや、そうじゃないんだ。 結局、俺はハルヒ達を取り戻せないまま時間はどんどん過ぎてしまっていて止める事もできないでいる。 仲間を助ける事もできないでいる不甲斐ない自分を認めるのが嫌で、何かの形で自分の価値を作りたくて焦ってたんだと今は思う。勉強だったら一定の 物差しで数字として結果がでるから、自尊心を満たしてやるにはちょうどよかったんだ。 そんな時間を過ごしている間に、俺はいつからかハルヒ達の事を考えるのを止めてしまった。 ふいに思い出す事はあっても、いつかどうにかなるなんて安易な期待と……もうどうにもならないんだという諦め。 ただ目の前にある生活の中で、俺は自然と後者を選んでしまっていた。もう、自分の中で理性を相手に戦う感情は見つからない。探そうともしない。 そんな俺の思いを知っているのか、朝倉もハルヒの事は話題にしなくなっていた。 「それでね?何か目標があった方が頑張れるだろうし、今度の学力テストの結果が良かったら年末に皆でどこか温泉にでも行かない?」 年末も近づいた勉強会の合間、休憩時間に朝倉はそんな事を言い出した。 一応国木田の家に余っていたという電気ストーブはあるのだが、冷え込むって事に関しては他の追従を許さない文芸部の部室だ。暖かい場所に行きたく なるってのは、無理も無い発想だと思う。 温泉ねえ。 と、適当に返事しつつもすら上げずにノートを読んでいた俺とは好対照に、 「賛成です! 是非行きましょう!」 と早くも気合十分な谷口。急に立つな、机が揺れるんだよ。 「2年になれば忙しくなるだろうし、いいかもしれないね」 ん、国木田も乗り気みたいだな。 そして訪れる沈黙。なんだ、何かあったのか? 驚いて顔を上げる俺に谷口の指が伸びている。 「おいキョン。まさかお前行かない、なんて言わないよな?」 まあまて谷口、行かないとは言ってない。お前顔は笑ってるが声が笑ってないぞ。 「じゃあ行くんだな?」 ええい、そんな必死な目で見つめてくるな。ところで朝倉、どこか当てはあるのか? その言葉を待っていたのか、朝倉は鞄から何やら旅行雑誌を取り出した。よっぽど前から調べていたんだろう、注意して見るまでもなくその本には 大量の付箋紙やら書き込みで溢れている。 「うん。ここなんてどうかな?そんなに高い所じゃないから、少しバイトすれば行けると思うんだけど」 そういえば朝倉は、以前話した出所不明の宇宙人の生活費ってのは最低限しか使わなくなっているらしい。 本人曰く、いずれは完全に自立したいとかなんとか言っていた。朝倉らしいといえばそうだよな。 また沈黙。あ、返事を待ってたんだな。ここで、3人で行ってくればいいなんて言うほど俺も孤独が好きな訳じゃないさ――色々思い出してしまいそうだが―― 久しぶりに集団行動ってのも悪くない。 わかった、俺も賛成だ。で、目標点数はどのくらいにするんだ? その後、朝倉の指定した学年平均よりも上を目指すという無難な目標に向けて俺たちの勉強会は続いていった。この目標が無難だと思えるってのは 大した進歩だよな、数ヶ月前では考えられやしないぜ。ちなみに俺と谷口の目標が平均以上なだけであって、国木田と朝倉は上位20位に入る事らしい。 超えられない壁ってのはあるのさ。 冬休みを間近に控えた週末、俺は街に買出しに来ていた。 学力テストも全員が無事に目標達成する事ができ、冬休み中盤に設定された二泊三日の温泉旅行の準備の為さ。街は慌しく歩く人で溢れかえっており、 今が年末なのだとしみじみと感じる。今年は人生で一番色々あった年になるのは間違いない、そしてそれは恐らく一生更新される事のない記録になるんだ という事もな。 ふと視界に入った電気屋の軒先に、特売と書かれたストーブがあるのに気づいた。 型落ちなのか、箱を見る限り新しそうだが手ごろな値段だ。国木田のストーブだけで冬を越すのも大変だろうしみんなに相談してみるかな。店員にできれば 数日取り置いてもらおうと顔を上げた時、俺はこの店が例の映画のスポンサーになってくれた大森電気店だという事に気づいた。 って事はもしかして? やぶれてしまわないようにそっとストーブの入った箱を開けてみると――やっぱりだ――そこにはあの日文芸部から消えてしまったあのストーブがあった。 「何かお探しですか?」 人当たりのいい眼鏡をかけた店員さんが声をかけてきた。ああ、なんだあの時の店長さんじゃないか。 しかしながら向こうは俺のことを覚えてはいないようで、俺に向けられる視線は突然商品の箱を開きだした不審な学生に向けるそれでしかない。 これって、どうしてこんな値段なんですか? なんだ?俺の言葉に店長さんの顔が急に不思議そうな表情に変わる。 「実は在庫整理をしていた時に偶然見つかったもので、帳簿では処分済みになっていたんですよ。何かの手違いだとは思うんですが、これから入荷も多いので こんな値段で売りに出している訳です。ですが点検も済んでますし、故障品だとか中古だとかそういった理由で安いんじゃないんですよ」 なるほどね。ハルヒが俺に言ったでまかせの理由が、まさかこんな形で本当になってるとはな。 俺は少し迷った後、財布を取り出して中身を確認した。 寒々とした冬空の下、誰も居ない坂道をのんびりと登っていく。 手に持ったストーブの箱といいこの状況といい、まるであの日みたいだな。ああ、あの日はさらに雨も降ってたんだっけ?思い出されるのはつい先月の事の はずなんだが、俺にはそれがずっと昔の事だった気がしていた。 休日の校舎は部活の関係で開放されていたが、肝心の部活をする生徒の姿は殆ど見えない。 まあ、こんな冬空の下で外に出たがる奴なんて北高には……もう谷口ぐらいしか居ないよな。 ストーブを床に置き、ドアノブに手をかけると無人の文芸部は今日も鍵が開いたままだった。扉を少しだけ開けると、無人の部室の中から冷えた空気が漏れ 出してくる。 そのまま扉をあけた先に、当たり前だが長門の姿はなかった。 ――もう、ため息も出なくなっちまったんだな。 今頃あいつらはどこに居るんだろうな。それとも、本当にもうどこにも居ないのかだろうか。どちらにしろ今の俺にできる事ってのは思いつきそうに無い。 そんな現状にせめても抵抗をしてやろうって訳じゃないが、俺はあの時と同じ場所にストーブを置いた。そして電源を入れて、あの時と同じ場所に座る。 窓際には長門の姿は無い、朝比奈さんの衣装も、古泉のゲームも、ハルヒの姿も何もかもがもうここには無い。結果はなんてわかってる、試すまでもない 事だろうよ。 それでも俺はストーブの電源を入れ、静かにパイプ椅子に座って机に突っ伏した。やがて、静かに温まってきた部室の中で目を閉じる。 目が覚めたら全ては俺の夢で、実は何も変わっていなかったってのはどうだい? 静かな部室の中で意識は緩やかに薄くなっていき、俺は抵抗する事無く睡魔に身を任せていった。 目が覚めればきっと、隣にはハルヒが居て俺の背中には二人分のカーディガンがかけられている。下校時間はとっくに過ぎちまってて、おまけに外は雨降り。 ハルヒがどこからか勝手に持ってきた学校の傘を差して二人で下校する。 そう、きっとそうなんだ。 なあ、古泉。もしも俺に願望を実現する力って奴があるならこの願いは叶うかい?俺は叶う方にかける、だからお前は叶わない方にかけろ。俺が負けたら、 また部室でのゲームに付き合ってやるよ。 朝比奈さんと未来の朝比奈さん、貴女達の秘密はまだ全部教えてもらってませんよ?ここで終わりなんていくらなんでも中途半端すぎます。せめて年齢だけでも 教えに来てくれませんか?そのまま居座ってもいいですよ、歓迎します。 長門、お前は今どうしてるんだ?一人は静かでいいとか言うなよ?少しは寂しいとか感じてくれてるよな。お前が居なくて、俺は寂しいんだからさ。 ……ハルヒ、まだお前は俺と会いたくないのか?だから俺達は会えないってのか?まったく、最後まで一方的ってのはいくらなんでもやりすぎだと思うぜ。こっちの気持ちも考え てくれよ――まだ、伝えてない事だらけなんだぜ。 その時俺は、不思議な夢を見た気がした。 季節は冬で場所は駅前、どうやら俺達はまだSOS団として活動しているらしい。 何故かその中には朝倉も居て、もちろん俺も居た。 やれやれ、どうやら夢の中でまで俺はみんなに奢る事になるらしい、苦い顔をして会計をする俺の横をご機嫌で通り過ぎていくハルヒ。 そうさ、みんなが居るこれが俺の日常だったんだ。 だった……んだよな。 いつの間にか目は覚めていて、部室の中は薄暗くなっていた。 目が覚めたってのに何でこんなに視界がぼやけてるんだ?まったく、古いだけあってこの部室は雨漏りでもしてるのかね。 ストーブのおかげで体は暖かいが、背中には何もかかってはおらずハルヒの姿も無い。 俺はストーブの電源を切って、逃げるように部室を出て行った。 「キョン、ずいぶん早いじゃない」 雑誌に夢中になっていた俺の横に、いつのまにか国木田の姿があった。 手には大げさな鞄が二つ、そんなに何を持ってきてるんだ?俺は自分の小さな鞄と見比べて、何か忘れ物がなかったか不安になったが……まあいいか、 足りない物は借りればいい。そろそろ皆来る頃だな、俺は雑誌を棚に戻して自分の荷物を持ち上げた。 さて、じっと待っていた国木田に、早く来ていた理由を教えてやろう。 罰金は嫌だからな。 「え、罰金?そんな約束してたっけ」 いや、こっちの話だ。気にしないでくれ。国木田、重ければ一つ持ってやろうか? 「ありがとう、これ見た目ほど重くないから大丈夫だよ」 そうかい。 温泉旅行当日、駅前のコンビニに俺は最初についていた。 俺が着いたのは集合時間の20分前、これでもあの頃はたまに奢らされてたってんだから理不尽だよな。 「さっき調べてみたら向こうの天気も良いらしいよ。露天風呂からは雪山が見えるんだって、キョンは露天風呂って入った事ある?」 温泉とは名ばかりの公衆浴場になら行った事があるぞ。 ちなみに温泉の元が入ってるだけとしか思えない風呂だった。 「僕もそんな感じ、どんな所なんだろう?楽しみだなー」 お前みたいに何でも素直に喜ぶのが、人生を楽しく生きるコツかもしれないな。 「キョンは楽しみじゃないの?温泉」 国木田は不思議そうな顔で俺を見ている。 ……そうだな、楽しみだ。 ハルヒ達が居なくなってからというもの、俺は自分の楽しみを求める事に罪悪感みたいな物を感じていた。 せめて心苦しくでも思わなければ、助けることもできないでいる自分を許せそうになかったのさ。 それがなんの意味の無い、ただの自己弁護だともわかってる。 「お待たせ、私が最後かな?」 集合時間5分前、白い息を吐きながら朝倉がやってきた。 いや、谷口がまだ来てない。 それにしても遅いな、あいつなら俺より早く来ててもおかしくないんだが……。まさか現地に先に行ってるなんてないだろうな。 「えっ嘘でしょ?だって予防接種……うん」 国木田が携帯に向かって素で突っ込んでいる。相手は谷口のはずだが何かあったんだろうか? 「うわ、それは……うん仕方ないよね。じゃあみんなには伝えておくよ、うん。わかってる、本当に大丈夫?じゃあ、お大事にね」 複雑そうな顔で国木田は携帯を切った。 谷口がどうかしたのか? 「うん。谷口、インフルエンザにかかったみたい。しかも予防接種を受けに行ったのが原因みたいだって」 「え、そんな事ってあるの?」 普通はないだろうな。 何の為の予防接種だってんだ。 「この間、体調悪いけど旅行に行けなくなったら嫌だからって言って、病院に行ったのは知ってたけどびっくりだよね」 石橋を叩いて渡るつもりが壊しちまったって訳か、谷口相手でも流石に同情するな。 「でも旅行はどうする?今ならまだキャンセルできなくもないと思うけど」 確かに冬休みはまだあるし、谷口が回復してから行ってもいいか。 「谷口は俺の事は気にしないでみんなで行ってきてって言ってたよ。お土産もお見舞いもいらない、温泉饅頭とか買ってこなくていいってさ」 何だその露骨な注文は。 でもまあそれくらいは買ってやってもいいかもしれん、一緒に試験を乗り切った戦友だしな。 とまあそんな理由により、人数は一人減ったものの俺達の温泉旅行は始まった。 と、思ったんだが……。 「国木田君、遅いね」 その違和感に最初に気づいたのは朝倉だった。 電車に乗ってすぐ、座席にも座らないまま国木田はトイレに行ったのだが、すでにいくつか駅を通り過ぎたのにまだ戻って来る気配がない。 混んでるにしても遅すぎるな。 俺は携帯の電源を入れて電話してみようとした、が向こうは電車の中だから電源を切っているのか繋がらない。 ちょっと見に行ってくる。 そう言って立ち上がった時、俺の携帯がメールの着信を伝えてきた――相手は……国木田だと? 『谷口が気になるから、僕はやっぱり行かない事にするよ。旅館に人数の変更は伝えておいたから安心して。朝倉さんの事をよろしく。PS 中学の時と 同じ事にならないようにね』っておい、これはマジなのかよ? 「どうしたの?」 立ち上がったまま携帯を見て固まっていた俺は、朝倉にどう説明していいのかわからなかったのでそのまま携帯を渡した。 中学の時と同じ事……何の事だ? やれやれ旅行初日、行動開始1時間にして4人旅だったはずの温泉旅行は知らない間に2人旅になっていたらしいぞ。 「キョン君、これってどんな意味なの?」 そりゃ気になるだろうな、しかし俺に聞かれても困るだけだ。 俺は朝倉から携帯を受け取り、国木田宛てに『日本語で頼む』とだけのメールを送って電源を切った。 とりあえず問題は残された俺達なんだが。 朝倉、どうする? 「え?」 え、じゃなくてさ。俺と二人っきりになっちまったから。 「なったから?」 わざと言ってるって感じじゃないか。 俺達は高校生で、俺は男でお前は女なんだ。それが二人っきりで旅行ってのはちょっと問題あるだろ。 「私は気にしないよ?でもキョン君、私の事女の子扱いしてくれてるんだ。ちょっと嬉しいかも」 気にしないって……。まあ朝倉がそう言うんだからいいか。どうせ部屋は二部屋取ってあるんだし、俺が気にし過ぎてるだけなのかもしれない。 俺は楽しそうに喋る朝倉のバイトでの話なんかを適当に頷きながら聞きつつ、のんびりと列車の旅を満喫していた。朝倉によると、すでにいくつかの バイト先から卒業後に来て欲しいと誘われているらしい。俺が将来、就職できてなかったら是非拾ってくれ。 「キョン君は進学するの?それとも就職?」 流れからして出ると思ったよ、その質問。 わからん。 我ながらこれ以上ない程に完璧な回答だ。自分でもこれからどうなるのか、どうにもならないのかもわからない。 「私もね、本当はわからないんだ。学校や職場では目的とかやるべき事は理解できるんだけど、いずれ実際に自分が社会に出たらどうすればいいのか、なんて 想像もできない。大学に行くにしても目標がないしね。このままずっと高校生で居られたらいいのに、なんて。そんな事思ったりしない?」 ……それもいいかもな。 「でしょう?でも、そうもいかないんだけどね」 同意する俺に笑顔を向ける朝倉。でもな、俺とお前では学生で居たい理由が違うと思うぜ。 お前は将来への不安からそう思う事もあるんだろうが、俺はただ学校というハルヒ達との接点を失うのが怖いだけなんだ。ここで言う事じゃないから 言わないけどな。 ……国木田、わざとなのか? 旅行客で溢れかえる温泉宿のロビーで、俺は真面目に長年の友の笑顔の下に何が隠されていたのか考えてみた。 って、そんな事してる状況じゃない。 受付へチェックインをしに来た俺に渡されたのは、一本の部屋の鍵。一本だ、二本でも三本でもない。 当初の予定では部屋は二部屋。男3人で一部屋で、朝倉がもう一部屋の予定だったはずだぞ。 「朝方、ご予約の国木田様からのお電話で、都合により人数は二人、部屋は一部屋に変更して欲しいと承っていたのですが……」 ちょうどチェックインの時間なのか、対応に追われる受付のおばさんは俺達だけに時間を取られる訳にはいかないらしく困った顔をしている。 その、空いてる部屋は無いんですか? 「申し訳ありません」 間髪入れずに即答ですか。 「キョン君、私は別に一緒でいいよ?」 後ろで待っていた朝倉はそう言ってくれているが、どうしたもんだ。こっちとしては当日の人数変更が下手すりゃ二回、しかも部屋数変更とまで 無理を言ってるのにこれ以上迷惑をかけるのは流石に抵抗がある……。 わかりました。もし、キャンセルか何かで部屋が空いたら教えてもらえませんか? 麓の駅まで3時間、さらに駅からバスでここまで1時間かかってるんだ。いくらなんでもこのまま来て帰るなんて選択肢は流石に選べやしないぜ。 とにかく部屋で一息つきたかったのもあり、俺はサインを済ませた。 どうやらキャンセルされたのは朝倉の部屋だったらしく、案内された部屋は3人用のそれなりに大きな部屋だった。 窓の外は大雪、なのに純和風の部屋の中は暖房のおかげで快適な温度だったりする。 浴衣でも普通に過ごせそうな感じだな。 気を利かせてくれたのか仕様なのか知らないが、部屋には衝立がちゃんと準備されていた。もしも空室が出なかったらこれで仕切ればいいかな? 「何か御用があれば、インターホンでお知らせください」 愛想のいい仲居さんの案内も終わり、二人っきりになった部屋は暖房の噴き出す音だけが静かに響いている。 「お昼までまだ少し時間があるけど、さっそく露天風呂に行ってみる?」 そうだな、それもいいかもしれない。 あ、そうか。部屋の鍵が一本しかないからどちらかは部屋に居たほうがいいのか。携帯を風呂に持っていくのも何だし、待ち合わせなんてしてたら のんびりできないもんな。旅行先に来た時くらい、誰だってのんびりしたいに決まってる。 俺はしばらくここで雪でも見てるよ、先に入りたいなら行ってきていいぜ。 「そう?じゃあお言葉に甘えて」 準備を終えて朝倉が出て行った後、俺は窓辺に置かれた椅子に座ってのんびりと風景を楽しむ事にした。せっかくの機会だ、今はちょうど朝倉も居ないし 多少寒くなっても構いやしない。 俺は少しだけ窓を開けてみた。 雪って無音じゃないんだな、初めて知ったよ。 窓を開けると、外の冷気と一緒に雪の音も入り込んできたんだ。 しんしんと積もるって表現があるのも無理はない、降り注ぐ大きな雪の結晶はさらさらと小さな音を絶え間なくたてている。まるで全てを包むかのような その光景に、俺は何も考えないままじっと目を奪われていた。 「綺麗ね」 いつのまに帰ってきたんだろう。その声が聞こえるまで、対面に置かれた椅子に朝倉が座っている事に俺は気づかなかった。 あれ、風呂に行ったんじゃなかったのか? 朝倉は着替えを持って行ったと思ったが、何故かここへ来た時と同じ服を今も着ていた。 「団体さんが先に入ってて、脱衣所の所で引き返してきたの」 まだ昼間なのに意外だな。 到着早々、他にする事もあるだろうに。人の事は言えないが。 「さっきフロントを通った時に聞こえて来たんだけど、近くの道路が雪崩で通行止めになっちゃったみたい。だからスキーに行く予定だった人も 足止めされちゃってて、他にする事が無いのかもしれないわね」 地元の人間じゃないと詳しい事はわからないが、殆ど雪が降らない所に住んでる俺から見たらこの雪は10年に一度降るかどうかの大雪に見える。このまま 雪が降り続けたりでもしたら、道路が全部通れなくなっても不思議には思わないな。 っていうか、古泉の孤島の時といい俺が行く場所はなんで天候が荒れるんだ?雨男だったのか、俺。 「どうかしたの?」 ん、ああ。 無言で居る俺を、朝倉は気にしているようだ。 特に何も意味のある事は考えてなかったんだが、強いて言えばそうだな。 このまま雪が降り積もって、帰れなくなったらどうしようかって思ってさ。 言いながら自分でも考えてみたが、のんびり温泉にでもつかりながら春を待つのも悪くないかもしれない。 朝倉は少し考えた後、 「そうね。もし、そうなったらのんびりここで温泉にでも入って過ごして春を待つのはどう?」 まさか朝倉からそんな言葉が出てくるとはね。 その時、まるで会話の途切れるのを待っていたんじゃないのか?というタイミングでドアはノックされ、昼食が運ばれてきた。 運ばれてきた料理は素人の俺が見る限り純和食で、ボリューム的にはどうなのか?と思ってしまったのだが、想像は良い方に裏切られた。 一品の量は少ないのだが、品数は多く味もいい。あの料金でここまで手が込んでたら経営が成り立つのか?なんて無駄な心配をしてしまうくらいだぜ。 「川魚って泥臭いイメージがあったけど、上品な味で美味しいのね」 ここが山奥で、水源に近い所だからかもな。 海にしろ山にしろ人間から遠ざかれば遠ざかるほど、魚は美味しいっては俺の持論だ。 「キョン君って魚釣りとかするの?」 それなりにな。ああ朝倉、その魚の骨は少しあぶってから食べると癖になる味だったりするぞ。 むしろそこがメインだ。 「……わ、本当だ。なんだか、キョン君の意外な一面を見ちゃったかも」 むしろ今まで俺をどんな風に見てたのか、それが聞きたい。 結局、手の込んだ料理の数々に一つとして不満は出ず、俺はこの時点で今回の旅行は大成功だったと確信していた。 谷口と国木田には悪いが、楽しいものを楽しまないってのはもっと罪だよな。 「もう一度温泉を見てくる」そう言い残して朝倉は部屋を出て行き、満腹になった俺は早くも楽な格好で横になる事にした。 雪が降るのを暖かい部屋で見ながらのんびり昼寝、これ以上の贅沢って奴は俺には思いつかないね。 布団を出すのもなんなので、座布団を並べた上に寝転ぶ。 あー別世界だな、これはもう。 理想的な状況にいつの間にか寝てしまったらしい。ぼんやりと目を覚ました時、俺は仰向けに寝ていて視界には天井が広がっていた。 何かが動く気配に視線だけ向けると、長い髪の女が今まさに浴衣に着替えている所……ってえ! 慌てて目を閉じた――が、色々と何かが見えてしまった気がする。 いや、気のせいだ。もしくは夢だ。 つい目に焼き付けてしまったこの映像に関しては、言及を避けさせて頂く。 「あ、起しちゃった?」 高い位置から朝倉の小さな声が聞こえる、ここはどうする?寝たふりか?いや違う、本当に寝てるんだ俺は。 俺は全身に脱力しろと指示を出す、自慢じゃないが脱力には自信があるぞ? 本当に自慢にならんが。 「……キョン君、起きてるでしょ」 今度はさっきより少し楽しそうな声が聞こえてくる。しかもどうやら近寄ってきているらしい。 何故だ、完璧な寝たふりのはずだぞ? 疑われる要因なんて無いはずなのに。 「早く起きないといたずらしちゃうよ?」 顔の横に朝倉が座る気配がする、ここは……そうだな。鼻をつままれたりでもしたら目を覚ますってのはどうだ? 動きそうになる顔の表情筋の緊張と闘っていると、顔の上に何かが近づいてくる気配と、冷たく柔らかい何かが唇に触れて……。 目を見開いた俺が見たのは、目の前で楽しそうに微笑む朝倉の顔と俺の唇に触れる朝倉の細い指だった。 「ほら、やっぱり起きてるじゃない」 今ので起きたんだ、なんて言い訳をしても仕方ないよな。 頭をかきながら体を起こす、なんとなく外を見てみるとまだ明るかった。 あれ、風呂に行ったんじゃなかったのか? 「うん、行ったけどまだ入れそうになかったから戻ってきたの」 言いながら朝倉は、着替えの入った袋から小さな木の板を取り出した。 そこには数字と、達筆過ぎて読めない漢字で何とかの湯と書かれている。 「それでね?予約制の家族風呂ってお風呂があるみたいで、さっき予約してきたの。私の時間までは後20分くらいかな」 なるほどね。 何度も通って温泉が空くのを待つより建設的だな。 「2時間まで使っていいって話だから1時間交代で入ろっか?」 ああ。 普段なら10分で終わる俺の風呂だが、温泉となれば話は別だ。 時間が来て朝倉が部屋を出て行った後、俺は自分の携帯を取り出した。電源を入れ忘れてたってのもあるが、それ以上に事情を説明して欲しい事が ある。もちろん聞きたい相手は、出発早々に姿を消したあいつだ。 「無事に着いたかな?」 ああ、何とかな。 電話越しに聞こえる国木田の声は、あまりにもいつも通りだった。 「そりゃあよかった。朝倉さんもそこにいるの?」 いや、今は風呂に行ってるよ。 「そっか。ねえキョン、僕に電話してきたって事は聞きたい事があるんだよね」 よくわかってるじゃないか。結論から聞こう、朝いきなり帰っちまったのも、部屋の数を勝手に減らしたのもわざとなんだな? 「うーん、わざとって言われると答えに困るんだけど。でもまあいいか。キョン、怒らないで聞いてね?」 返答による。内容によっては、土産が温泉饅頭から温泉卵一つまで格下げだ。 「僕を怒るのは別に構わないよ、それと温泉饅頭よりも温泉卵の方が僕は好きだな。まあとにかく最後まで聞いてよ」 そう前置きしてから、国木田は事の顛末とやらをのんびりと話し始めた。最初の内は何を言ってるんだ? くらいに思う内容だったが、後半までくると もう何がなんだかさっぱりわからなくなっていた。 「これで全部だよ。ねえキョン、メールの最後に書いた中学の時の事って所覚えてる?」 ああ、あれは何の事なんだ? 「それって本気で言ってるの?」 本気も何も、意味がわからない。 「……まあ、僕が言っても仕方ないよね。まあゆっくり考えてみてよ、朝倉さんによろしく」 そう言って、国木田は携帯を切ってしまった。それにしても中学の時って言えば3年もあるんだぞ? 何かを伝えたいにしてももうちょっと範囲を絞って くれてもいいと思うんだが。 物言わぬ携帯を見ながらしばらく考えてみたが、それらしい事はやはり思い浮かばなかった。 そんな事をしていると部屋の入口の方から鍵を開ける音が聞こえてくる、どうやら朝倉が戻ってきたみたいだな。 「ただいま。凄くいいお風呂だったよ、景色もお湯も最高」 そうかい。 湯上りの朝倉は上機嫌で、薄赤く火照った顔はいつもと違った感じだ。 さて、ここで国木田から聞いた事を朝倉に問い詰めてもいいんだが、せっかく楽しそうにしているのに水を差すのもどうだろう。それに、これが全部朝倉が 何かを考えてやってる事なら、俺は知らない振りをしていたほうがいいのかもしれないよな。 「はい、これ。あんまり遅いようなら呼びにいくけど、のぼせたりしないでね」 夕飯までには戻るよ。そう言い残し、俺はとりあえず国木田の事も朝倉の企みの事も考えるのを止めて温泉へと向かった。 顔に感じる冷えた空気と、体を包み込む体温より遥かに高い温度のお湯。日が落ちかけた空がゆっくりと闇に染まっていく――俺は湯気に包まれながらそんな 絶景を眺めていた。 来てよかった、なんて凡庸な言葉じゃ表現しきれないね。ああ、でもそれでいいのか。これは言葉で伝えていい物じゃない。 入口に書いてあった説明によると、ここの温泉はかけ流しって方式だそうだ。意味はよくわからないが、湯量が豊富とかでお湯の再利用とかする必要がないから どんどんお湯が湧いてきていて、そのまま止まる事なく川に行くらしいぞ。 家族風呂は貸切りだけあってそんなに広くはないが、二三人なら入れそうな広さがある。それを一人で使ってるっていうんだから贅沢だよな。 とまあ、俺はひたすらに現在の状況を楽しみながら温泉を満喫する事ができた。 温泉の効能なのかどうかは知らないが、利用時間ぎりぎりで風呂を上がった時には肌は妙につるつるで、ついでに国木田との電話の事は綺麗に忘れてしまって いたりしたくらいだ。出口にあった昔懐かしい60円の瓶に入ったフルーツ牛乳にはかなり心惹かれたのだが、夕食が近い事もあって次回への楽しみにと我慢する のには苦労したぜ。 そして夕食、部屋に戻った俺が見たのは昼以上の品数の料理がぎっしりと並べられたテーブルだった。 「おかえりさない。凄いでしょ、これ」 ああ、なんていうか絶対に食べ切れないな。 谷口が居ればどうにかなったかも知れないが、俺と朝倉ではどう考えても食べきれない量だ。その時は確かにそう思った。 しかし、旅先ってやつは不思議な力でもあるのかもしれない。なんだかんだで俺は自分の分を食べきってしまい、朝倉が残した分も含めて殆ど平らげてしまったり した。こんなに大食いだったか?俺。 「こんなに食べたのはじめてかも?」 朝倉も自分の食欲に驚いているみたいだな、夕飯が終わったらもう一度温泉に行くつもりだったんだがしばらくは行けそうにない。帰りにしてきた家族風呂の 予約は取り消した方が無難だな。 朝倉、風呂の予約なんだけど取り消してきていいか? 「うん、お願い。今日はもう行けそうにないかも」 嬉しそうな顔で朝倉は苦笑いしている、俺もそんな感じだ。 このままでは寝てしまいようだし、面倒な事は先に済ませよう。俺は休憩しろと訴えている体をなんとか動かし、ロビーへと向かった。 「わかりました、お布団の方はもう敷きに伺ってもよろしかったですか?」 木札を受け取りながら宿の人は笑顔で聞いてくる、そうだなまだ8時にもなってないが今日は移動で疲れてるしその方がいいかもしれない。 お願いします、そう言い残して俺はふらふらと部屋へ戻った。 どんな連絡方法を使っているのか知らないが、俺が部屋に戻った時はすでにテーブルは空になっていて部屋の隅に移動してあり、代わりに部屋の中央には 布団が2組並べられていた。 「おかえりなさい」 窓際に座った浴衣姿の朝倉が微笑んでいる。風呂上がりのせいなのかほんのりと赤い頬……っておい、ちょっと待て。 朝倉、手に持ってるそれは何だ。白い陶器でできたそれの事だ。 「これ? 部屋の冷蔵庫にあったの。キョン君も飲む?」 朝倉が持っているのはどうみてもアルコール、ジャンルで言えば日本酒だった。おいおい、高校生が泊まる部屋にそんな物置いておくなよ? ご機嫌な朝倉は 何かのメロディーを口ずさみながら、窓の外を眺めている。まあ、こんな時くらいはいいかな。 俺は朝倉の向かいに座って、空になっていたお猪口についでやる。 嬉しそうに朝倉はそれを受け取り、一気に飲み干してしまった。 おいおい、そんな無茶な飲み方をするとだな。 俺の話が聞こえていないのか聞いていないのか聞く気がないのか、まあとにかく朝倉はいつになくマイペースでお猪口の淵ををっと指でふき取ると 俺に向かって差し出してきた。えっと、つまり俺にも飲めって事なのか? 何か言うのではないかと待ってみたが、無言のまま朝倉はお猪口を差し出してきている。 一杯だけだからな。 そう念を押してから俺はお猪口を受け取った。 それが間違いだった。 朝倉はハイぺースで酒を飲み干していき、俺が止めようとすると泣きそうな顔で抵抗してきた。しかも無言のまま。いったいなんなんだろうな? これは。仕方なく朝倉の飲む量 を減らそうと俺も飲んでしまった結果、酔っ払いが二人できあがった訳だ。いかん、もう世界が揺れている。神人でも出たのか?古泉出番だそ。 「……ね~キョン君」 窓によりかかった朝倉が久しぶりに喋った気がする。 なんだ、酒ならもう冷蔵庫の中にあったのは全部飲んじまったから無いぞ。 多分別料金なんだろうけど、帰りの支払いは大丈夫かね? なんて、どこか冷静さを残している自分が嫌だな。こんな状況ならむしろ何もかも忘れちまって た方が正しいと思う。 「ごめんね? 謝っても許してなんてもらえないんだけど、どうしても言いたかったの」 ふらついていた朝倉の視点が、なんとか俺の顔をとらえていた。謝るって何の事だろう。再び朝倉の視点は何もないテーブル辺りに流れていき、このまま寝て しまうんじゃないだろな? と俺が心配し始めた頃、朝倉はのんびりとした口調で話しはじめた。 「私ね? 統合情報思念体の庇護があった頃の自分を思い出すと嫌になるの。自分なら簡単にできる事や、すでに知ってるどうでもいい知識を、何年もかけて 必死に勉強してる人の中で、本当の自分をずっと隠したまま過ごしてるのは苦痛だった。長門さんのあの性格も、今考えればそれが適正だったのかも。 変わらない毎日といつまで経っても終わらない観察。今日も何事もありませんでしたって、何年も何年も報告し続けてた。だからって、貴方にした事は許される わけがないただの私のエゴ。許してなんてもらえないって、わかってる」 そこまで喋った所で、朝倉は急に黙ってしまった。 俺に何か言って欲しいって感じじゃない。ただ、言いたかったんだろうな。 今更だが、終わらない夏休みを結局最後まで誰に相談する事もなく乗り切っちまった長門が凄い事がよくわかる。俺にはむしろ、朝倉の気持ちは理解できる 範囲の物さ。まあ、刺されるのはもう御免こうむりたいが。 朝倉。 「……うん」 少し眠くなっているんだろうか、朝倉の返事は小さかった。 明日まで覚えてられないかもしれないが、あの時の事はもう気にしなくていいぞ。 「……うん」 その返事を最後に朝倉は熟睡してしまい、俺は揺さぶったり濡れタオルを顔に当てるなど頑張ったものの全て効果なし。仕方なく布団まで朝倉を運んで 旅行1日目は終わった。 翌朝。訂正、翌昼とでも言うべきだろう。俺が起きたのはすでに正午を回った時間だった。 目が覚めて最初に感じたのは胃の不快感、次に感じたのは頭痛。言い訳しようもないくらいに二日酔いって奴だな。 「おはよう? 顔色良くないよ、大丈夫?」 ……お前は元気そうだな。 朝倉はといえば俺よりも飲んでいたはずなのに元気な顔で、湯上がりなのか髪を拭いている所だった。 「起きられそう? 朝ご飯のお味噌汁を残してあるんだけど飲めそうかな」 ああ、頼む。 何とか体を起こしてはみたが、今日はもうこのまま寝ていたい気分だ。甲斐甲斐しく動いてくれている朝倉の姿を目で追うのも億劫で、俺はぼんやりと 布団を眺めていたりした。やがて鼻をくすぐる味噌の匂いが漂ってくる。するとまるでスイッチが入ったみたいに何も食べられそうにないと思っていた胃が 突然空腹を訴えてきやがった。 「はい、温め直したばかりだから火傷しないでね」 そう言ってお盆ごと渡された味噌汁は、茸が一杯入れられた軽食になってしまうようなボリュームで早々と俺の胃は満足してしまった。我ながら忙しい奴だぜ。 ありがとう。 空になった食器は朝倉がテーブルまで持って行ってくれた。さて、今日はどうしようか。本当にこのまま寝ているってのも悪くないと思うが、せっかくここまで 来たんだしな。 「ねえ、昨日の事って覚えてる?」 雪ダルマでも作ろうか? と考えていた俺に朝倉は少し恥ずかしそうに聞いてきた。 昨日の事、ああ。あれか。 その続きが聞きたいのか、朝倉は俺の顔をじっと見て黙っている。 あんまり飲み過ぎるのはどうかと思うぞ。まあ、俺と違って翌日に残らない様に飲めるのは大したもんだけどな。 「あ、そうだよね。恥ずかしい所みせちゃったな」 俺の言葉に照れながら笑う朝倉。その笑顔はいつもクラスで見せている整い過ぎた笑顔ではなくて、今は何か楽になったような感じだった。朝倉、長門じゃない けどな、お前も少しは人を頼る事を覚えた方がいいぜ。あんな酩酊しないと本音を言えないようじゃ、生きていくのが辛すぎるぞ? 何て言われた所で生き方を 変えるような奴には見えないんだけどな。――そうだ、朝倉に俺が言ってやれる事が一つあるじゃないか。もしかしたら、朝倉が聞いた昨日の事ってのはこの事 なのかもしれない。 朝倉、本当にもう気にしなくていいからな。 「え?」 俺の言葉に朝倉はしばらくじっと俺の顔を見つめていたが、やがて小さく「うん」と言って頷いた。 ――その日、結局俺は日中の殆どを寝て過ごしてしまった。 せっかくの旅行なのに何をやってるんだ? と自分でも思ったのだが、布団の心地よさの前にあっさりと屈伏してしまったのさ。その間、朝倉は温泉巡りに 勤しんでいたらしい。一緒に来てるのに一人にしてしまって悪かったな、と言おうと思ったが朝倉は楽しそうに入った温泉の違いなんかを話しかけてきたので 言わないでおく事にした。おかげで退屈する事もなく時間は過ぎていってしまい、気づけばもう夕食の時間だ。明日の朝には帰るんだよな? なんか現実感が ないぜ。まだ初日の夜なんじゃないかって気がするくらいだ。 初日同様、大量に並べられた夕食の前に朝食と昼食を食べ損ねた俺は気合いを入れて臨もうとしたが、 「あんまり食べると温泉にいけなくなるよ? もう入らないのならいいんだけど」 寝ている間に予約しておいてくれたらしい、朝倉の手にはあの木札があった。 危なかった、昨日と同じ展開になるところだったぜ。 朝倉の忠告があったおかげでそこそこの量で夕食を終え、俺達は予約の時間までのんびりと待つ事にした。あの料理が美味しかったとか、休憩室の 足裏マッサージが気持ちいいとかそんな話題が続いていた時の事だ。会話の合間で不意に訪れた沈黙、こんな時いつもなら朝倉が何か話しかけてきそうな ものなんだが、その時は何故か俺が話かけていた。しかも、言うつもりのない話題を。 朝倉、国木田から全部聞いたぞ。 それまで笑顔でいた朝倉の顔に驚きと、戸惑い。その他色んな感情が混ざったような複雑な表情が浮かんだ。言うべきじゃなかったな、やっぱり。でもまあ 言いかけた以上は最後まで言うしかないだろう。俺は腹をくくってその先を続けた。 教えてくれ、何で俺と二人で旅行に来たかったんだ? 国木田から聞いた話によれば、だ。 今回の旅行は最初は確かに4人で行くはずだったらしい、ところが出発前日になって国木田に谷口から電話があったそうだ。内容は「俺は行けなくなった3人で 楽しんできてくれ」だとよ。しかも行けない理由ってのはインフルエンザではないらしい。 それから、国木田はまず朝倉と連絡を取ったそうだ。予約の関係を全部やってくれたのは朝倉だったからな。国木田は朝倉と話をして、何故か国木田も不参加を 決めたそうだ。1週間近く前から計画していた旅行を前日に行くのを辞める理由ってのはなんなのか、しかも集合には顔を出しておいて途中で居なくなるなんて 事をやった理由は?わからない事だらけだが、何故朝倉は全部知っていて俺には何も言わなかったんだ? 聞きたい事は他にもあるが、朝倉ならいちいち言わなくても全部話してくれるだろう。 しかし、よほど言いづらい事なんだろうか? 朝倉は困った顔で視線を彷徨わせていた。 そしてようやく口を開いた第一声が、 「あのね。旅行の前日に、その。谷口君に……告白されたの」 これだった。 あいつ、本気だったのか。冗談だとしか思ってなかったんだが……でもこの旅行に来なかったって事は結果は多分駄目だったって事なんだよな。 聞いておいてなんだけど、個人的な事だったら無理に言わなくてもいいぞ。 「うん……でも今言わないと言えなくなりそう。谷口君には、他に好きな人が居るからごめんなさいって言ったの。それから国木田君から谷口から話は聞いたよって 電話があったの。国木田君は、好きな人が居るならその人と二人で旅行に行った方がいいんじゃない? って言ってくれて。その人は恋愛感情に疎いから、 僕も協力するよって……その」 ここまでくれば、流石に俺でも気づく。 国木田は、俺が朝倉と二人だけだと知ってたら旅行を止めてしまいそうだから一芝居打ったって事か。 肯く朝倉。つまり、その恋愛感情に疎いらしい朝倉が好きな人ってのは、だ。 「私が、キョン君と一緒にここへ来たかったのは……。私がキョン君の事を、好きだから」 あの、いつでも冷静で人当たりのいい笑顔を絶やさない朝倉が、今は真っ赤な顔で俺を見ている。 夢か? 夢なのかこれは? それともそこの襖の向こうで谷口が待機でもしてるのか? しかし、どれだけ待ってもプラカードをもった谷口は現れなかった。 「やっぱり。迷惑かな」 俺が無言でいるのを、朝倉は否定と取ったのだろうか。今ならはっきりわかるぜ、クラスで見せていた無理に作った笑顔って奴を浮かべて俺を見ている。きっと朝倉は、 自分の感情を隠す時はこの笑顔で自分を覆っていたんだろうな。誰にも本当の事を伝えられない時間の辛さって奴を、俺は少しは知っているつもりだ。 勉強会で朝倉がたまに俺へと向けていた笑顔は、ここに来て俺に見せてくれていた素の朝倉と同じだって事も今ならわかる。 朝倉。 「……うん」 何も躊躇う事はない、自分の気持ちを伝えてやればいいだけだ。それだけの事のはずが、喉はやけに渇いてくるし手の平は汗ばんでいた。悪いな、こんなに 緊張する事をお前に先に言わせるなんてずるいよな。 朝倉の目は震えている。そうだな、いつからそうだっかなんて覚えてない。けど間違いなく――。 俺も、お前の事が好きだぜ。 そう言い切った途端、朝倉の体が小さく震えだしそのまま泣きはじめてしまった。 「本当に重くない? 大丈夫」 平気だ、っていうか軽すぎると思うぞ。 壁際に座った俺に遠慮しながらもたれてくる朝倉は、冗談ではなく本当に軽かった。ようやく泣き止んだ朝倉は、泣きすぎて変な顔になってるから見ないで、と 顔を隠してしまった。でもそれじゃ話もしにくいだろうって事で、俺が背もたれになったって訳さ。決して下心があった訳じゃないぞ。 朝倉、なんのシャンプー使ってるんだ? 「え、変な匂いだった?」 驚いて振り向く朝倉の目は、本当に真っ赤になっていた。これはこれで可愛いと思うんだがな。 いや、いい匂いだぞ。俺は好きだ。 「……よかった。シャンプーは石鹸シャンプーを使ってるんだけど、リンスにお酢とアロマエキスを自分で混ぜたのを使ってるの」 随分と手が込んでいるだけあって、朝倉の長い髪は俺とは構成材料が違うんじゃないかってくらいに綺麗だ。 なんとなく髪を撫でている時に思いついた。 朝倉、ポニーテールってできるか? 「え、できるよ。ちょっとまってね」 髪ゴムを取って戻ってきた朝倉は、目の前でポニーテールを結んで見せてくれた。サイドの髪は残したままのスタイルか、実にいいね。 似合ってるぞ、それ。 「本当?」 ああ。 「じゃあ、これからずっとこうしていよっと」 尻尾を揺らしながら朝倉はまた俺にもたれてきた。浴衣越しに感じる朝倉の鼓動が自分の鼓動に重なる。俺だって健全な男子高校生であり、こんな状況で あれば眠れない夜なんかについ耽ってしまう妄想を現実にしてしまってもいいんじゃないのか? なんて事を考えるのも無理は無いだろう。しかし、だ。実際に 背中からとはいえこうして抱きかかえてみると、朝倉の体は力を入れてたら壊れちまうんじゃないか?――まあ、壊れまではしないんだろうが――と思うほどに 華奢で、産まれたての子猫を不器用に両手で支えるような慎重さで俺は朝倉の体を包むのが精一杯だった。 あ、しまったな。 別に悪い事じゃないんだろうけど、俺はさっき朝倉に言った言葉が以前ハルヒ相手に言った言葉と同じだった事に気づいた。自分のボキャブラリーが少ない せいなんだが、なんとなく不誠実というか申し訳ない気分になる。でも、これって朝倉にわざわざ言う事じゃないよな。 「どうかしたの?」 俺の罪悪感でも感じ取ってしまったんだろうか、朝倉は俺の顔を横目で見ている。 なあ朝倉。秘密って無い方がいいと思うか? 「どうしたの急に」 いや、深い意味は無いんだ。 「そうね。……無いほうが良いとは思うんだけど、私はキョン君に言えない事もあるから、二人の間に秘密があってはいけないって言われると苦しいな」 そうなのか。 「こんな事言ったら余計に聞きたくなるよね。でも、言うと嫌われそうな事だから、できれば聞かないで欲しい」 じゃあ聞かないさ、変な事を聞いて悪かったよ。 お互いにそこそこの時間を生きてきてるんだ、言うまでも無い事や言えない事の一つや二つあるのが普通だと思う。 「……ねえ。一つお願いがあるんだけど、いいかな。」 言ってみな。 「あのね、その。急にこんな事言われて困ると思うんだけど、今じゃなきゃ言えない事だって思って、その」 さて、どんなお願いなんだろうね? とのんびり待っていた俺に、朝倉が言ったお願いとは… 「一緒に……温泉に入らない?」 結論から言おう、いいお湯だった。以上。 あ、他に何か言うことがあるだろうって? そんな物はない……ああ、朝倉はポニーテールが濡れない様にまとめてお団子にしていたぞ。あと、ちゃんと バスタオルも巻いてた。これで十分だよな? 温泉から上がった後は二人でフルーツ牛乳を飲んで、湯冷めする前に眠ったよ。布団? ……一組しか使ってない、それだけだ。 細かい経緯や心情描写は脳内で補完して貰えれば幸いだ、俺が恥をかくぶんにはどうでもいいが朝倉の名誉だけは断固守らせてもらう。しかしまあ、 ここまで読んでもらって何も伝えないのもどうかと思うから一つだけ言おうか。 朝、目が覚めた時。朝倉はまだ俺の隣で眠っていた。携帯で見た時計はまだ5時で、俺は二度寝しようと再び目を閉じた。しかし何故だか眠気は戻って こなかったので、俺はせっかくだからと朝倉の寝顔をじっと見ていた。ほんの2時間程の事さ。 「……おはよう」 ようやく目を覚ました朝倉が微笑む。なんていうのかね、これが幸せって奴なんじゃないだろうか? 以上、惚気はここまでだ。満足したかい? 朝食後、のんびりと帰り支度を済ませた俺達は少し早めに宿を出た。 夢のような、というか本当に現実なのかも怪しい程にサプライズ満点だった温泉旅行は無事に終了し、久しぶりに戻ってきた駅には何故か国木田と……。 「……お、お幸せにー!」 俺と腕を組んで改札を出てきた朝倉を見て、何か叫びながら走り去る谷口の後姿があった。 おい谷口! 土産……あいつ、何しにここまで来たんだ? 「どうしても自分の目で見ないと納得しないって谷口が言いはってさ。まあ気にしないでよ。それより温泉は楽しかった?」 何事も無かったかのように国木田はさらりと言いきった。 ああ、何か気を使わせちまったみたいだな。これは土産だ、谷口の分も入ってるが好きに分けてくれ。 「こんなにいいの? あ、温泉卵もある。ありがとう」 「国木田君本当にありがとう。せっかくの旅行だったのにごめんね?」 「気にしないでいいよ。谷口は自爆で、僕は勝手にやった事なんだから」 お前、本当にいい奴だったんだな。 「気づくのがいつも遅いんだよ、キョンは」 何故か寂しそうな顔で国木田は笑った。 谷口の予言によれば俺はすぐに飽きられて振られるそうなんだが、冬が過ぎ春が来た今も俺は朝倉との付き合いは続いている。 二人の間であった事といえば、そうだな。俺が朝倉に涼子と呼んで欲しいと懇願されてるのにをまだ朝倉と呼んでいる事と、一人暮らしで身寄りが無い事を 理由に朝倉のマンションで同棲生活をはじめた事くらいだろうか。詳しくは聞くな、惚気にしかならない。 元々放任主義だった親にこの時ばかりは感謝したね。というか、何度か遊びにくる内に朝倉が自分で生活費をしっかり稼いでくる優等生だと知った親がむしろ 俺を教育してもらうつもりで許可したのかもしれないが。 テーブルの向こうで恋人兼先生である朝倉が何かを期待した目で俺を見ている。もう少し待ってろ、最後の問題ももうすぐ終わるからな。 今日はこの問題が終われば勉強はおしまい、後は二人の時間って奴だ。 さて、長かった俺の話もいよいよこれで終わりだ。 これから俺達がどうなったって? そんな事は誰にもわからない事さ。でもまあ、俺の隣にはいつも朝倉が居る。 それだけは間違いないね。 朝倉涼子の誰時 季節は春、高校2年になった俺はまた朝倉と同じクラスだった事を喜び、ついでに国木田と谷口まで同じクラスだった事も建前上喜んでおいた。 勉強会は結局旅行後はなくなってしまった。まあ、仕方ないよな。それでも国木田が勉強を教え続けているせいなのか、谷口のテストの点は 上がったままだ。 しかもどうやら俺にテストで勝つのが今の目標らしく、毎回の様に結果表を見ては悔しがっている。悪いな、こっちの先生は特別なんだよ。 そんなどこまでも平和で、何一つ不思議な事等起こる気配も感じない生活を続けていた俺達だった――んだ、その時までは。 だから俺はあの感情を感じさせない同級生の顔を久しぶりに見たとき本気で驚いた、冗談抜きで錯覚だと思ったさ。 いつものように他愛も無い話をしながら学校から帰った俺達を待っていたのは、間違えるはずも無いマンションの入り口で一人立つ長門だった。 長門! 思わず俺は走り出していた、迫ってくる俺に対して長門は何の反応も無い。 お前、怪我は無いか? 今までどこに居たんだ? みんなは? 俺の顔をじっと見つめるだけで、長門はどの質問にも答えはしなかった。しかも何故か着ているのは冬制服だったりする。 「……」 長門? 久しぶりに聞いた同級生の第一声は、やはり感情の感じられない声で 「朝倉涼子と話をさせて欲しい」 だった。 そりゃあ構わないが…長門、 「……貴方の質問に今は答える事ができない。でも後で必ず話す。約束する」 まさか、朝倉をまた消してしまうとかそんなんじゃ? 聞いてくれ、今の朝倉はもう普通の人間で危険なんか何も 「大丈夫よ、そんなに心配しないで?」 長門を説得しようとした俺を止めたのは、朝倉だった。本当に大丈夫なんだな? そう視線に込めてみると、朝倉はその意味がわかったようで ゆっくりと肯く。 わかったよ。俺は家に帰ってればいいか? 「うん、ごめんね?」 まあ、何かあるにしても俺に相談も無く長門は無茶なことをしないだろうしな。 俺はそれ以上深く考えず、持っていた朝倉の鞄を渡した。 じゃあまたな。 「じゃあね」 いつもの朝倉なら、絶対に「また明日ね」とか、「また来週ね」と言っていた事に俺は結局気づかなかった。 「お久しぶり、こうやって長門さんと話すのはあの教室以来になるのかしら」 505号室。殺風景だった朝倉の部屋は今では二人の私物でそれなりに手狭に感じる。 「……」 長門は入り口でじっと立ち尽くしている。 「立ち話もなんだしどうぞ座って? すぐに紅茶を入れるから」 キッチンから聞こえる朝倉の声に従い、長門は迷う事無くソファーに向かう。 しばらくして、紅茶の香りと一緒に朝倉がティーセットを持って戻ってきた。 「お待たせ。……それで、どんなお話なのかな。情報の共有で伝えられる事ならそうしてもらってもいいんだけど」 朝倉の言葉に長門は首を小さく振る。 「できない」 「え」 「今の貴女では情報の共有には耐えられない。貴女が思う以上に、残された時間は少ない」 「残された時間って」 「貴女には、もうその有機情報を維持するだけの力は残されていない。十数分後には限界を向かえ、情報連結の解除が始まる」 長門の言葉は、何故か苦しそうだった。 暫くの沈黙の後、 「そっか、そうだったんだ。ねえ、私へのメッセンジャーとしてわざわざここに来た訳じゃないんでしょ?本当の要件を教えてよ」 「……涼宮ハルヒは、現在も異世界に自分を閉じ込めている。本来であれば、貴方は彼に協力して涼宮ハルヒを救い出すはずだった。何度か歴史を修正する チャンスはあったが、そうはならなかった。貴女は彼と生きる道を選び、また彼もそれに同意した。結果、涼宮ハルヒはこの世界に戻る事もなく、自立進化の 可能性が見出せないとして統合情報思念体は地球というこの星に興味を無くした。しかし宇宙のどこを探しても涼宮ハルヒの様な存在は見つけられないでいる」 「そっか、そんなシナリオだったの」 長門の顔が、見るからに苦しそうに歪んだ。 「貴女の消滅に合わせて、情報統合思念体により世界が涼宮ハルヒが消える前の状態に再構成される」 「それって、私はまた一人ぼっちになるって事なの?」 「……違う。本来あるべき時間の流れが変えられてしまった事で、情報統合思念体は貴女の存在を危険視している。再構成された世界に貴女は居ない」 「なんで、長門さんが泣いてるのよ」 長門は声も無く、ただ涙を流していた。 「よく、わからない」 「今、貴女の目から流れてるのは涙って言うの。人間は悲しい時にそれを流すのよ」 「よく、わからない。……情報統合思念体には、貴女の存在が消えるまでは涼宮ハルヒが二人によって救出される可能性があると報告してきた。でも、 貴女の消滅が迫った事でそれももう不可能になった。私にはもう、どうする事もできない」 二人の間に痛いほどの沈黙が流れる。 その沈黙を破ったのは朝倉の明るい声だった。 「あ~あ、残念。せっかく彼とうまくいってたのにな……でも、どうせ私が消えて彼だけが残されるくらいなら、私の居ない時間まで戻った方が彼も幸せよね そんなに泣かないでよ。最後くらい、私も笑っていたいんだから」 そう言って笑顔を浮かべる朝倉。 やがて迷うように長門は口を開いた。 「貴女が望むのならば私の中に貴女の情報の一部を残す事は可能、現在の記憶の保存と視覚や聴覚といった感覚は私と同期する事ができる。ただし、推奨はしない」 「どうして?」 暫くの沈黙の後。 「万一、私の機能が停止した時は貴女の中に私のデータを保存する為のバックアップが生まれる。その状態では有機生命体として活動する事はできない、 情報統合思念体の保護を待つ間の待機状態。保護されるまでの間は、情報収集の為に貴女と常に同期した状態になっている。今回も、そうだった」 「あ……ごめんね。ごめんね? 私、長門さんが彼の事好きだって知ってて」 遮る様に首を振る長門。 「彼には。貴女が必要だった」 「……ねえ。後、どれくらい時間はあるの?」 「殆ど残っていない」 「ありがとう、ぎりぎりまで彼と一緒にいさせてくれたんだね。ねえ、泣かないで? 悪いのは私、彼が欲しくて涼宮さん達を取り戻せるチャンスがあっても 無理だって嘘をついて来たんだもん。自業自得よ」 朝倉は本当の笑顔を浮かべて、長門の手を取った。 「ねえ、長門さんとの同期。お願いしてもいい?」 「……何も言えず、触れる事もできない時間は辛い」 「それでもいいの」 「……了解した」 朝倉の最後の言葉を待っていたかのように情報連結の解除がはじまった――光の粒になって朝倉の体が消えていく……。 最後の瞬間まで、朝倉は微笑んで長門を見つめていた。 ありがとう。 「じゃあね、彼とお幸せに」 その言葉を最後に、朝倉涼子の存在は――消えた。 ――お父様は自立進化する事の大切さを私に教えてくれた、それを正しいと私も思うし理解もできる。 でも、自分の力だけではなく、互いに助け合って生きる事の素晴らしさを彼は教えてくれた。だからこそ、自分の残された時間が長くないってわかってても私は それを彼にも伝えず、平凡な毎日に無理な変化も求めなかった。定められた寿命に気づく事無く、それを全うして生きる。 結果として何も残らなくても、その時間は無駄なんかじゃない。決して、無駄ではない。 何故なら、私はそんな時間を彼と過ごせた事を誇りに思ってるもの。 お父様も、いつか答えは一つじゃないって事にきっと気がつくはず。 もしも願いが叶うなら――また彼と。 後日談 12月24日。 終業式も無事に終わり、俺はハルヒ特製鍋を食べに行こうとついさっきまで確かに思っていた。しかし何故だろう、今はこうして教室に居て、しかもだ。 谷口、ちょっといいか。 何故か谷口に話しかけている。どうしちまったんだ?俺は。 「ん」 帰り支度も終わっていざ教室を出ようとした谷口は、呼び止めた俺に不審な顔を向けている。 さて、俺は何でお前を呼び止めたんだったかな。と、考える前に何故か口は動いていた。まるで、いつもそうしていたかのように。 なんだか知らないがお前と勉強する気になったんだが。 「はあ?何言ってんだ?」 谷口も国木田も目を丸くしている。そうだよな、終業式も済んだ今日ほど勉強とは縁遠い日はないよな。そう俺も思うさ、でもな?何故か 今日はそんな気分なんだよ。 自分でもよくわからんが、まあたまにはいいだろ。俺だけ勉強して赤点仲間を失って一人になるのは辛いと思うぞ? 「脅かすなよ……まあいいか、よくわからんが俺も今日は勉強してもいい気がしてるしな」 意外な事にこの誘いに谷口も乗ってきた、これは大雪でも降りだしそうな気がしてきたぜ。ああ、そうだ。何故か国木田も誘わなきゃいけない気がしてきた。 国木田、悪いけど俺と谷口の勉強を見てくれないか? 「え?うんいいよ。どこで勉強するつもりなの、ここでやる?」 鍋の事なんか完全に忘れていた、本当だぜ?俺は思いついたままに口を開いていたのさ。 そうだな、文芸部の部室はどうだ? 朝倉涼子の誰時 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/121.html
涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート新宿バルト9(2010年02月06日 9 20の回上映終了後) シネマサンシャイン池袋(2010年02月06日 11 25の回上映終了後) 京都シネマ(2010年02月20日 11 05の回終了後と、同14 30の回上映前) 京成ローザ10(2010年03月06日 11 50の回終了後、16 00の回上映前) サンフランシスコ Viz Cinema(2010年05月21日 19 00の回上映前)※現地時間 シネマート新宿(2010年12月04日 13 00) 涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート 新宿バルト9(2010年02月06日 9 20の回上映終了後) 登壇者:平野綾・杉田智和・茅原実里・後藤邑子・小野大輔・桑谷夏子・松岡由貴・あおきさやか・武本康弘監督・石原立也総監督・白石稔(司会)・松元恵(司会) 涼宮ハルヒの消失 特設ファンサイト 涼宮ハルヒの消失初日舞台挨拶レポート! http //www.haruhi.tv/fanclub/syoshitsu_special_report.html シネマサンシャイン池袋(2010年02月06日 11 25の回上映終了後) 登壇者:平野綾・杉田智和・茅原実里・後藤邑子・小野大輔・桑谷夏子・松岡由貴・あおきさやか・武本康弘監督・石原立也総監督・白石稔(司会)・松元恵(司会) 電撃オンライン SOS団と愉快な仲間たちが池袋に登場! 映画『ハルヒ』舞台あいさつレポ http //news.dengeki.com/elem/000/000/234/234758/ 京都シネマ(2010年02月20日 11 05の回終了後と、同14 30の回上映前) 登壇者:白石稔(司会)・池田晶子・西屋太志・伊藤敦 京都シネマ イベントリポート http //www.kyotocinema.jp/report/re2010/re_2010_03.html 速記:アニメ映画板本スレPart46 458,487 458 名前:見ろ!名無しがゴミのようだ![sage] 投稿日:2010/02/20(土) 17 05 51 ID ix1vCjPn おまたせ、とりあえず前半な どこか記憶違いとか俺の主観が入ってるかも知らんが たぶんだいたいあってるはず 京都舞台挨拶レポ(1回目の方)① まず白石が出てきて池田、西屋、伊藤Pの順に登場 各々軽い挨拶のあとにまずそれぞれのお気に入りシーンについての話 池田: 絵コンテが上がってきた段階で「おっ!」と思ったのが屋上のシーン ただ「キョン、そこまでやっていいのか?w」と思ったらしい。 おそらく男が女にあんなことするのって、普通アレだよね的な意味で 西屋: 今回はアクションシーンはほとんど無いがその分キャラの表情、心情といった部分を 強く打ち出せた、そんな中でお気に入りなのはキョンが栞を見つけるとこと谷口と口論するとこ。 うまく描けてたらいいなーって言ってた そこで白石が一生懸命演じましたアピール→会場笑→なんで笑うの!?→拍手といった流れになる 伊藤P: とにかく朝倉のおでんのシーンがお気に入り、特に帰りの鍋つかみをしたままのエレベーターシーン そしてその後の鍋つかみをしたまま手を振ったところ、ここが一番怖くて綺麗だと言ってた。 なんでも鍋つかみが萌えポイント、あれをつけてないとだめだとか。 製作時からずっと言ってるらしい それで朝倉おでんの開発を提案したのも伊藤Pらしい、もう少しで劇場にも並ぶと言っていたが 既にグッズのとこで一緒に売ってたやつのことを言っているのかは不明 白石: ハルヒが寝袋から出てきた直後の手ぐしで髪を直してるシーン ここには西屋も同意してた 487 名前:見ろ!名無しがゴミのようだ![sage] 投稿日:2010/02/20(土) 17 51 37 ID ix1vCjPn 続き。 京都舞台挨拶レポ(1回目の方)② 製作時における印象に残った出来事について 池田: 夏にキャラ設定を作っていたが屋上のシーンのキョンの格好をどうするか、 暖かい格好にするべきなどと話し合っているとき 武本「半纏に病室スリッパがイイ!!(・∀・)」 他スタッフ一同「えっ」 みたいなことになっていたらしい、結局はパジャマの上にコート、ちゃんとした靴に落ち着いたが。 西屋: ない…w、必死すぎて、とのこと。コンテが多く2000カットくらいあったとか 怒涛のように早く過ぎ去ったと言ってた。 伊藤P: まずキョンのコートについて。もしやと思い武本に確認してみたら 案の定、踊る大捜査線の青島刑事のコートをモチーフにしてるのだと。 もうひとつ、みのりん、白石、伊藤Pとその他スタッフの8人ほどで 長門と朝倉のマンションに現地取材に行った際の話。 マンションを見ていたら中からリアル管理人さんが出てきて、てっきり怒られるのかと思ったら 「谷川先生のファンの方ですか?」と、あろうことかみのりんに問いかけたらしい みのりんも「はい、ファンですー」みたいな感じで答えたとか。 それでスタッフであることは打ち明けられなかったそうだ。 一応取材なので早々に退却というわけにはいかなかったのだが 「いつまでいられますか?」と管理人に邪魔者扱いっぽく言われたため しかたなく後ろ髪惹かれる思いで帰ったらしい。 白石: 優しい忘却のPV撮影に立ち会ったらしいが、 みのりんファンの学生が見に来てて、なぜかその子たちをずっと 白石が対応していたらしいが一切自分が誰か気付いてもらえなかったらしい。 みのりんファンの文芸部の子がみのりんに挨拶に行ったが白石の前は素通りだったとも言ってた。 また、東京での舞台挨拶後の話で、メインキャストは出待ちされてるから メインキャストの面々が出て行って出待ちのほとんどがいなくなってから出ていったが その際、残ってた出待ちの人たちが白石よりも一緒にいたランティスの斎藤Pの名前を呼んでて 白石は通り過ぎた後に「あれ、白石じゃね?」とか言われてたそうだ。 話は大体こんなもん、声優陣の舞台挨拶とはまた違った話が聞けただろうと思う。 京成ローザ10(2010年03月06日 11 50の回終了後、16 00の回上映前) 登壇者:茅原実里・後藤邑子・桑谷夏子・松岡由貴・松元恵(司会)・西山洋介(司会) 涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート(京成1回目) 涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート(京成2回目) (長文のためページ分割しました) サンフランシスコ Viz Cinema(2010年05月21日 19 00の回上映前)※現地時間 登壇者:Christina Vee(ASOS Brigade団長) 涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート(サンフランシスコ) 喜緑さんの保管庫 そうだサンフランシスコへ行こう サンフランシスコから還つつある男 サンフランシスコから還ってきた男 今日もやられやく 映画『涼宮ハルヒの消失』 サンフランシスコまで見に行った人のレポ Youtube 動画(1) 動画(2) 動画(3) ASOS Brigade! Episode 8 - The Disappearance of Haruhi Suzumiya U.S. Premiere Highlights (ASOS団公式。日本語インタビューあり) シネマート新宿(2010年12月04日 13 00) 登壇者:茅原実里・松岡由貴・西山洋介(司会) 速記:アニメ映画板本スレPart143 356 356 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 00 40 25 ID CksTCQ8G 「あーあー、えー皆さん、本日はですね、劇場版涼宮ハルヒの消失、えー、BD、DVD発売記念限定上映&舞台挨拶にお越し頂きまして誠にありがとうございます。」 \パチパチ/ \ワーワー/ \うおぉぉん/ 「ありがとうございます。私今回、司会の方つとめさせていただきます角川書店の西山と申します、よろしくお願いします。」 \パチパチ/ \ヒュー/ 「ありがとうございます。えーとお約束ですけれども、先にちょっと諸ちゅっ諸注意の方させてください。えーと携帯電話の方、電源切るなり、音のでないようにするなりしといてください、ご協力よろしくお願いします。」 「撮影録音は勿論禁止とさせて戴いております。こちらもご協力お願いいたします。もし発覚しちゃった場合最悪、舞台挨拶の方中止となっちゃうかもしれないので、ご協力の方よろしくお願いします。」 (※速記に関しては言及無し(重要)) 「えー後はですね、他のお客様のご迷惑になるようなことをしないでいただければ全然問題ないかと思いますので、短い時間ではございますが、舞台挨拶の方お楽しみいただければと思います。」 「では早速ですね、ゲストのお二人をお呼びしたいと思いますので、皆さん、あのー、拍手の準備は大丈夫ですかね?」 \パチパチパチ/ 「大丈夫ですね!ありがとうございます。ではですね、お呼びしたいので盛大な拍手でお出迎えください、えー長門有希役、茅原実里さん、そして鶴屋さん役、松岡由貴さんでーす」 (二人が右翼より入場、登壇) \パチパチパチ/ \みのりーん/ \あ゛あぁぁぁあっ!/ 366 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 00 56 44 ID CksTCQ8G \みのりん愛してる!/ 西山「ははっ、サイリウム振ってますねw落ちついてぇっw」 「えー早速ですね、お二人から簡単に自己紹介の方お願いいたします。では、茅原さんからお願いします。」 茅原「はいっ、みなさん、こんにちはー」 \こーんにーちわぁぁぁぁぁ!/ 「んー、凄いですねw沢山皆さん来て戴いて嬉しいです!長門有希役の茅原実里です!よろしくおねがいしまーす」 \パチパチパチ/ \ヒューゥッ/ 松岡「みなさーん!めがっさげんきにょろー?」 \うおおぉぉぉぉぉ!/ 「鶴屋さん役の松岡由貴でーす!こんにちはー!」 \……こんにちはー/ 「……はいっ。」 \ドッw/ 「みなさん、ね、あのー、みのりんみのりーんって、みのりんみのりーん・・・・・・」 \まつおかさーん!/ \ゆきちゃーん!/ 「あ、やった、よかったそういう黄色い声援がね、私も、欲しいなーって思ってw」 西山「黄色いのかなw」 松岡「野太い声援がねwよかったよかった、元気が出ましたwありがとうございます、よろしくお願いしまーす!」 西山「はい、ありがとうございまーす」 \パチパチパチ/ 368 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 01 13 16 ID CksTCQ8G 西山「では、えー、限られた時間ではございますが、ゲストのお二人にですね、この涼宮ハルヒの消失という作品についていくつかお伺いしたいなと思っております。」 「まずですね、当然作品の始まる前に涼宮ハルヒの消失という作品の脚本を渡されてご覧頂いたかと思うんですけど、まずその時のご感想をお聞きしたいなーと思うんですが、茅原さんいかがでしたか?」(松岡さんを見て問いかける) 茅原「はいっ!?えーっとォ、」 \ドッw/ 松岡「ずっと私のこと見てましたよ今w」 茅原「鏡やハルヒの消失は小説、まぁ読んでいたので改めて台本いただいて、中をこう読んで、先ず一番最初にびっくりしたのは、台本の厚さ?大きさ?重さ?私、劇場版が初めてだったので涼宮ハルヒの消失が、なので台本の厚さに驚いて、その後はキョンの台詞の量に驚いて」 \ワハハハハ/ 「そして、その後は小説の中にはないオリジナルのシーンとかが詰め込まれているのにちょっと感動して、いろいろびっくりしました。」 西山「そうですね、まず分厚いって部分から言えば、」 茅原「すごいですよねー!」 西山「アニメ映画の中でもかなりの長編なので、本当に尺が長いのと、」 松岡「何分有るんでしたっけ?」 西山「えーと2時間…あー、2時間43分くらいですね」 松岡「そんな長いんだー!」 西山「あとは今出てきたキョンの台詞、」 松岡「ねー、ほとんどキョンでしたもん」 西山「杉田さんへろへろになってましたよねwまーでもね、あのー、杉田さんの渾身の演技が当然この後スクリーンで見れる訳なんでね、杉田君頑張ったなーと思って皆さん見て戴けると、ね、思います。」 372 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 01 27 43 ID CksTCQ8G 西山「松岡さんはどうでしたか?」 松岡「全く同じ意見です」 西山「全く同じ?w」 松岡「2番目はそうだなーっておもってきいてましたwあのね、2版に別れてるの、あまりの多さにw劇場版って、厚くても一冊で、重たいなーって思いながらやったりするんだけど、 今回の消失のは、その劇場の重たいなーって思うのが2冊有るの。上・下みたいな。で私収録の時どっち持ってけばいいんだろーとか思いながら確かに半端無い、 初めて劇場やるんだったら、他の劇場そんな、タウンページみたいになってないw」 茅原「ほんとにタウンページみたいだったねw」 西山「松岡さんは他の作品で、劇場アニメってのは、既にもう」 松岡「そうですね、今公開になってるモノも、あってたりするん・・・・・・」 西山「まぁまぁ、その辺の話はね、後でこう、後ほど後ほど」 松岡「そうなんですけれども、えーと、いくつか作品をやりましたけれども、確かにあの二冊は凄いなと思ったのと、どこまで行ってもキョンなのよwあたしどこにでてんのとw」 「そうねー、あぶり出しかと思いましたよwよくよく探せばありましたよw」 西岡「いやー、この場に杉田さんがいないのが悔やまれますけどねwあのー、」 377 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 01 41 13 ID CksTCQ8G 西岡ってだれだ 西山「いやー、この場に杉田さんがいないのが悔やまれますけどねwあのー、次の質問がですね、 実はご自身のキャラクター以外で特に消失という作品の中で気になったキャラクターはいますか?っていう質問なんですけど、 まぁ、キョン、キョンはどうしても気になっちゃうとは思うんですけれども、あえてキョンを外してみると他に気に入ったキャラクター、気になったキャラクターって」 茅原「んーーーー、キョンを外すのかー、わたしねー、キョンのことそんなに意識してなかったですよ」 \おーーーっ?!/ 松岡「うーん、あたしはー、その前に舞台挨拶って前も見た人いるー?」 \はーいっ/ (かなりの人数が手を挙げる) 西山「ああ、それね、僕も聞きたかった。池袋でもやったし、千葉の方でもやりましたよね。千葉きた人?」 (かなりの人数挙手) 「おー、すごーい!」 「池袋きた人?」 (かなりの人数が挙手) 「おー!」 「バルト9来た人」 (かなりのn(ry) 西山「気のせいか同じ人が3回挙げてるような気がするんですけどもwありがたい話ですけどねw」 松岡「四回来てる人」 西岡「いますねーwありがとうございます」 茅原「ありがとうございます」 \京都は!京都は!/ 西山「あっ京都ね!京都行った人」 384 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 01 58 29 ID CksTCQ8G 西山「あっ京都ね!京都行った人」 (やっぱりいる) 西山「おおー」 松岡「すげー」 西山「京都はね、あのー、スタッフの方が行って、」 松岡「ねー、白石が行ったと噂で聞きましたけど。」 西山「私も出張で行けるかなーと思ったんですが行けなかったですねw」 松岡「千葉行ったときにさー、白石のファンが2人くらい居たのw」 西山「すみません、すみませんそのとき私が白石ですって行ったとき思いっきり滑ってこの後の流れどうしようかなーって思って、本当にスイマセンでしたw」 松岡「そんなことで私が話してたのが、桑谷夏子の殺戮シーンが一番好きです。『ゆきさん、それは、私じゃない。』ってwあそこのシーンあの作品の私は一番の目玉だと思っているんですよねー」 西山「あー、あっ!先に聞いとけばよかったんですけど、まだ見てない方、消失を」 (いくらか手が上がる) 「えぇっうそーぉ!」 「あ゛ーっ耳ふさいで!もう遅いけど!」 「あぁー」 \あーっ/ 松岡「これから私たちに与えられてる質問て、見てることを前提になってるんだよねw」 西山「ひどい仕掛けですねーwいや、あのー、フォローさせて戴きますけど、消失の小説読んでれば勿論顛末はわかっちゃう訳じゃないですか。 それでも絶対楽しめます。それはもう保証付きなんでそこはご安心ください。ネタバレしやがってって思ってるかもしれないですけれども、それ以上の、 やっぱりね、映像とか音とかのクオリティがあるので、ご安心ください。絶対大丈夫です。」 松岡「大丈夫だよ、だって桑谷夏子の殺戮シーンないもん。」 387 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/05(日) 02 14 15 ID CksTCQ8G 松岡「なっちゃんは別に殺してないからねw」 西山「そうですねw」 松岡「なっちゃん役だって話ですからねw」 西山「ま、今その話出てきましたけども、茅原さんはどうですか?一押しのシーン。」 茅原「一押しのシーンですか、そうですねー、たくさんありますねー。なやむなー」 松岡「小声(かんがえとけよ!)」 茅原「そうですね、いくつもあるんです、入部届のところもそうですし、あっキョン」 松岡「キョンを外してしまうと悩むんだよね」 西山「この、お気に入りのシーンはキョン入っていてもいいですよ、キョンのシーンでもいいです」 茅原「病院でキョンが目を覚まして、あ言っていいのかなー」 西山「またやばい人耳ふさいでくださいw」 茅原「うん、キョンがー、顔を触るシーンがあって、そこがすごいきゅんとするところで、そこで初めてキョンも男の子なんだなっていうのを凄く感じて、唇も触るんですよ」 松岡「キョンっていう」 茅原「うん、なんかすごい気持ちが伝わってくるって感じで」 松岡「どうなっていくんだろうねー、あの二人ねー、」 茅原「ねー」 西山「まぁ本当になんだろう、見てない人がいる前でしゃべっちゃいけない部分、以降の見せ場が凄いですからね。ほんとに。今しゃべってるのだってほんの一部ですからね。もうフォローに必死ですけどもw」 476 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 00 40 35 ID OR+KteV3 西山「まぁ本当になんだろう、見てない人がいる前でしゃべっちゃいけない部分、以降の見せ場が凄いですからね。ほんとに。今しゃべってるのだってほんの一部ですからね。もうフォローに必死ですけどもw」 西山「ああ、あとこれはね、是非聞いてみたかったんですけど、今回消失ってああいうストーリーじゃないですか、ある日突然お二人がですね、消失のキョンと同じ立場に立たされたらどうします?」 松岡「どうする?」 茅原「どうしよーかなー」 松岡「考えとけよーw」 \ドッ/ 松岡「まぁ私はねー、私のことを知ってる人を必死で探すと思う。で、なんか、探し倒して、たった一人でもいたらほんとうわ゛あ゛ぁーー(抱きつく仕草)ってなる」 茅原「www」 松岡「確かに、こんな妄想してましたが、数秒の間に思いついた?」 茅原「思いついた、うん、私キョンと一緒だと思います。」 西山「あー、その、元に戻そうと?」 茅原「元に戻そうって言うかあの人ただハルヒに逢いたかっただけ」 \ドッ/ 茅原「多分なんか、・・・・・・あの人とか言っちゃったw」 松岡「同じ感覚?杉田君とw」 478 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 00 45 38 ID OR+KteV3 西山「なるほど、んー、わかりました、ありがとうございます。で、ここから先、矛先が変わってと言うですかね、会場にいる皆様にですねお知らせがございます」 松岡(わざとらしく)「うぇー!?」 \オオォォォ!/ 西山「けっこうね、時間がわりと早く進んでるんですよ」 松岡「もうちょっと広めてもいいよw」 西山「もうちょっと広めてもいい?w(袖のスタッフに尋ねる)」 「ああ、今ね、オッケーサインが出ました。もうちょっと広げさせて戴きたいと思いますハイ。」 松岡「わかりましたwちょっとハッピーターン食べ過ぎてw 茅原「ハピっwすごかったねーw」 松岡「楽屋でさ、『ハッピーターンがー』とか言いながら、気がついたら山ができてるんだよ、包み紙の。」 茅原「おいしかったーw」 西山「もの凄い勢いで食べられてましたよねw」 松岡「全部あけたんじゃないの?w」 茅原「ヒトフクロアケテナイデスヨーソンナンw二個ぐらいしか残ってなかったけどw」 西山「松岡さんもものすごい勢いでポテトチップス食ってましたよね」 松岡「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」 西山「これちょーおいしーとかいいながらw」 松岡「そう、ウチのマネージャーが買ってくれたのかわからないんだけど、カライーっていう激辛のポテトチップスがあって、凄く美味しかったよねw」 茅原「おいしかったよねー」 松岡「誰か止めてあたしを羽交い締めにしてーってw」 西山「延々食べてましたもんねw舞台挨拶前に大丈夫かなーって思ったけど」 481 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 00 51 16 ID OR+KteV3 西山「延々食べてましたもんねw舞台挨拶前に大丈夫かなーって思ったけど」 松岡「ちょっとあたしも躊躇いながらw楽しい楽屋トークを繰り広げつつ」 西山「そろそろお知らせもどっていいっスか?」 \ドッ/ 松岡「じゃあお知らせ」 西山「ええ、そうですね、まあお知らせもあるんですけども、ご自身のキャラクターとキョン以外で気になったキャラクターを未だ聞けてなかったかなーと思って。」 松岡「あたしはほら、朝倉の話をさっきして。」 西山「茅原さんからまだ聞けてなかったかなーと思って。このキャラは・・・・・・」 茅原「そうですねー。そうですねー・・・・・・」 西山「どうしてもね、消失ってお話はキョンと長門の話になってきちゃうので二人を取り除かれるとけっこう厳しいと思うんですけど、あえて。」 松岡「白石か。白石か!白石なのか」 西山「誤解されるので言っておきますけど白石さんはあくまで中の人ですからねwあの白石ってキャラは居ませんからw」 \ドッ/(居なくても笑いをとる白石) 茅原「最近白石さんに会いましたよ。久々に。」 西山「会いましたかw」 茅原「2日前くらいに。」 松岡「どうだった?」 茅原「・・・・・・元気でした。」 \ドッ/ 西山「私も会ったんですけど肉付きよくなってましたね」 松岡「なんか、ぽにょの歌歌いながらおなかつまんでるよねあの人」 茅原「うん、なんか、落ち着いた感じがしました。」 西山「いいフォローだと思いますw」 茅原「はい。」 482 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 00 56 41 ID OR+KteV3 西山「はい、というわけで気になったキャラクターは?w」 茅原「そうですね、キョン君以外って難しいなー、難しいなぁ。なんて言ったら面白いんでしょうね?」 松岡「あたしかなー?w」 \シャミセン!/ 茅原「シャミかーwうーん、でもあたし、普通にハルヒが好きだったりします。」 西山「おー、それはあの、消失の改変された世界のハルヒ、を好き?」 茅原「はい、はい。クールでね、カッコイイデス。」 西山「カッコイイデスねーw あのね、その、外見的に・・・・・・なんで笑ってるんですかw」 茅原「わかる?」 松岡「わかるーw」 西山「いつものなじみのある制服じゃなくて、よりカチッとしてなんか、よりシャンとした感じはしますよね」 松岡「ハルヒの髪長い姿が凄くびっくりしたというか印象的だったというか」 茅原「そうですよねー、存在感がなんかもう圧倒的」 484 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 04 00 ID OR+KteV3 西山「より長い髪のせいで、よりクールな感じがしましたよね。だけどいざこう進んでくといつものハルヒの・・・・・・」 松岡「みくるの大人にちょっと萌えた人」 \はい/ \ハイ/ (ちらほら手が上がる) 松岡「やっぱみんな巨乳が好きなのかw」 西山「しょうがないでしょうw」 茅原「しょうがないw」 松岡「おっぱい大好きなんだろ!w」 \大好きです!/ 松岡「はいっw」 西山「好きです!・・・・・・はい、ということでおっぱいの話はしまったところで、ここでそろそろ告知のコーナーに移りたいなと思ってます。あのー、楽屋で戦々恐々としてましたけど、ちゃんと言えますでしょうか?」 二人「言えます!」 西山「いえます!じゃあまず茅原さんの方からですね、情報の方、お願いします。」 茅原「はい!」 西山「はい。」 485 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 10 22 ID OR+KteV3 茅原「劇場版涼宮ハルヒの消失がDVDとブルーレイになって、12月18日に発売になります!・・・・・・そして、・・・」 西山「そして、?」 茅原「こちらは、限定版と、通常版、の、2種類有るので、パッケージが・・・・・・4パターン!・・・・・・」 (時間差で)\おぉ~/ 茅原「ホームページ等々で見れるんですよね?」 西山「そうですね、ホームページで絵柄確認できます、はい」 茅原「そして、」 西山「はい」 茅原「なんと」 西山「はい」 茅原「ブルーレイの、限定版、には、・・・・・・ふぅ~」 \ワハハハハ/ \ガンバレ!/ \がんばれ~/ 西山「パッケージイラストがね、BD限定版は違うじゃないですか」 茅原「いとうのいぢ先生の、書き下ろしの!」 西山「唯一いとうのいぢ先生の書き下ろしは、ブルーレイの限定版だけですね」 茅原「そうなんです!」 西山「そして!」 茅原「まだまだ終わらない、ブルーレイ限定版の方には。。。涼宮ハルヒの消失の脚本集が付きます!わ~」 \パチパチパチ/ 茅原「12月18日発売になりますので、よろしくお願いします!」 西山「はい、きちんと言えましたwありがとうございます。」 \パチパチパチ/ 488 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 19 57 ID OR+KteV3 西山「では続いて、松岡さんの方、お願いします」 松岡「はい、えー、こちらの新宿シネマートさんでですね、また2週間の公開があります。消失の。12月17日までの公開になるので是非皆さん来て下さい。あとですね、スタンディポップってあるじゃない、大っきい」 西山「キャラクターの画が描いてある看板みたいなモノですね、はい」 松岡「見かけたでしょ?アレも抽選でプレゼントされたりするそうなので、お見逃し無くと言うことで。」 西山「はい、そうですね、ロビーとかにも飾ってあると思うので、是非ご覧下さい。で、ロビーと言えば、ハルヒグッズが今ですね、ひしめき合ってます。新宿の劇場とは思えない、今、ハルヒグッズが一角を占めてますので是非皆さんお時間有ればね、お買い上げいただいてと、思っております、ハイ。」 茅原「はい。」 西山「はい。というわけで、以上告知コーナーでございました。」 \パチパチパチ/ 西山「台本持ってくるか持ってこないかって話をずっと控え室でしてて、」 茅原「そうなんです」 松岡「で、『無理~』っいうから大丈夫だよ~って、そしたらあーあーなんだっけなんだっけーって」 西山「でも結果的にはね、ばしっと決めていただいてよかったと。ということでですね、早いものです。もうなんとね、時間が迫って参りました。」 \えぇ~/ 489 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 25 50 ID OR+KteV3 \えぇ~/ 西山「ねぇ~、残酷ですねーwまぁでも劇場ってしょうがないんですよ。時間区切って端端とやっていかなきゃいけないので、ここで残念ですが最後にお二人からですね、今後のご活動、この際だから他社の作品でもいいです、今後のご活動展開等含めてお客様にですね、お別れのご挨拶の方お願いしたいと思います、はい。」 茅原「はい」 西山「それでは先ず茅原さんの方からお願いしたいと思います。」 茅原「はい!えー、今日は短い時間でしたが、お会いできてとっても嬉しかったです。えーと、えーと、涼宮ハルヒシリーズいろいろ展開していけてるのは、応援して下さってるお客様のおかげだと思います。改めて本当にどうもありがとうございます。」 \パチパチパチ/ 茅原「涼宮ハルヒの消失、とっても素敵な作品なので、ぜひ今日も楽しんでみていっていただきたいですし、18日、DVDブルーレイとして発売されますので、そちらの方も是非手に入れていただいて、お打ちの方でも楽しんでいただけたらと思います。今日はどうもありがとうございましたー!」 \パチパチパチ/ 490 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 35 42 ID OR+KteV3 西山「はい、ありがとうございました。では続いて松岡さんの方からもお願いします。」 松岡「はい、えーと、今日はほんとに沢山来ていただいて、なんか、入ってくるときにもうチケット売り切れましたって書いてて、流石だなーと皆熱い思いが伝わってくるなーと思いながら、わくわくしながら皆さんと会えるのを楽しみにしてきました。凄い短い時間でしたけどもね、とても楽しんで舞台挨拶ができて凄く嬉しかったです。えーそしてお知らせですが、えーとーえーとー、ブリーチ劇場版がですね、」 \ワハハハハ/ 西山「ブリーチ!?」 松岡「はい、ただいま公開中です、井上織姫出ております、是非ご覧になっていただきたいと思います。えー、年明けからですね、ドラゴンクライシスという作品に出ることになっております、是非そちらの方もご覧になっていただきたいと思います。」 「というわけで、ハルヒの方もね、又なんかね、皆さんに会えるタイミングがあるといいなと」 茅原「ねー」 松岡「ねー、思いながら頑張っていますので、これからも是非是非涼宮ハルヒの憂鬱シリーズを愛していただけたらな、嬉しいなと思ってます。今日は本当にありがとうございました!」 \パチパチパチ/ 494 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/12/07(火) 01 47 17 ID OR+KteV3 西山「はい、それではありがとうございました、ご来場の皆様、最後にゲストのお二人に盛大な拍手をお送り下さい!茅原さん松岡さん、今日は本当にありがとうございましたー」 二人「ありかとうございましたー」 (二人退場)\ みのりーん!/ \ みのりーん!/ \愛してる!/ 西山「コレより劇場版涼宮ハルヒの消失本編の上映となります、最後までSOS団の一員として作品に参加していただけたらと思います。本日はどうもありがとうございました!」 \西ー/ 西山「あ、ありがと」 \西山ー!/ \ パチパチパチパチ/ \ピィー!(指笛)/ 西山氏、盛大に見送られながら退場 そして本編へ ロビーのポスターへのサイン 所狭しと並ぶハルヒグッズ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/16.html
ハルヒ「ちょっと・・・みんな、私を無視しないでよ・・・・・・・」 キョン「うるさいんだよ、お前は毎日毎日、人使い荒くて 何なんだよお前は、何様だってんだ!」 ハルヒ「・・・!!」 キョン「朝比奈さんも古泉も長門も何も言わないけど きっと俺と同じでお前の事うっとおしく思ってるはずだぜ。 くだらないことしてないで、いい加減大人になれよお前。 じゃあな」 ハルヒ「ちょっとキョン待ちなさい・・・!!キョン・・・。 私を一人にしないでよ・・・。もう一人はイヤなの・・・」 ハルヒ「ねぇ!?なんで昨日部室に来なかったのよ!? 今日もサボったら死刑だからね!」 キョン「うるさいから話しかけるな(ボソ」 ハルヒ「え・・・。」 部室 ハルヒ「ね、ねぇ、み、みくるちゃん・・・」 みくる「・・・なんですか・・・」 ハルヒ「み・・・みくるちゃんは!わたしの事無視したりしないわよね・・・」 みくる「・・・・・・・・・」 スタスタスタスタスタ・・・ ハルヒ「み、みくるちゃん・・・」 ハルヒ「!・・・そ、そうだ、ユキ!・・・え・・・?」 古泉「みなさんもう多分ここには来ませんよ。」 ハルヒ「そ、そんな・・・」 古泉「では、私も出て行かせてもらいます」 スタスタスタスタ・・・ ハルヒ「そんな、なんでみんな・・・」 ハルヒ「なんでなの、みんな。・・・私が駄目なの?どこが駄目だったの?ねぇ、誰か・・・」 自分しかいない部室で、ハルヒは独り泣いていた 翌日 教室 ハルヒ「お・・・おはよう!みんなゲンキーッ!」 ハルヒ「・・・・・」 誰も返事を返してくれない。 そのままハルヒは黙りこんで自分の席についた。 休み時間 ハルヒ「・・・」 ヒソヒソ 女子A「聞いた?あの娘唯一の友達だったSOS団とかいうグループの人たちからも 無視されてるらしいわよ。」 女子B「え~可愛そう(笑)。でもあの娘っていつも変なこと言ったりやったりしてるから 自業自得だよね~。」 女子A B「クスクス、クスクス」 ハルヒ「・・・・・・・」 鶴屋さんの反応 ハルヒ「あっ!鶴屋さんおはよう!」 鶴屋「何?みくるやみんなにさんざん迷惑かけて何しらばっくれてんの?みんなもう疲れてるんだよ。!あっ!みくるーッ!おはよう!今日もかわいいねぇ!」 ハルヒ「・・・・・」 コンピ研部長の反応 ハルヒ「あっ!・・・えーっと、誰だか忘れたけどおはよう!」 コンピ「あぁ、もうなんだよ。君にはさんざんやりたい放題されてこりごりなんだ。もう近寄らないでくれよ。」ハルヒ「えっ、なんで・・・」 キョンの妹の反応 ハルヒ「!あっ!キョンの妹!こんにちは!」 妹「ねぇ、なんでおねえちゃんはみんなにひどい事するの?人をいじめちゃいけないって学校の先生言ってたよ?」 ハルヒ「そんな、わたしそんなつもりじゃ・・・」 妹「あっ、あんまりおねえちゃんと話しちゃだめってキョン君言ってたから、じゃあね!」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「みんな無視する…まぁW杯でも見てその話すれば大丈夫よ」 ポチッとな 「……何、この黒い奴。一人で突っ込んで周り見てないじゃない」 「あっもしかして私、この黒いのと同じ…かも」 ハルヒ「わたし、サッカー好きなのよ~!」 キョン「サッカーはお前のことが嫌いだがなっ」 ハルヒ「・・・小笠原が特に好k」 キョン「小笠原はお前のことが大っ嫌いだけどなっ」 ついに登校拒否になってしまったハルヒさん。 おや、なにやら窓の外から聞き慣れた声がします。 ふと見てみると、いつものメンバーが笑いながらあるいています。 ハルヒさんの家の前なのに誰も気にしてないようです。 (私の居場所は本当になくなっちゃったんだな・・・) 暗い部屋の中で体育座りをしているハルヒさん。 こうしてれば自分を傷つける人はどこにもいない。 嗚呼、可哀想 「うう、うっ、わぁ、うわぁぁん。」 怖い夢をみてしまったハルヒさん もう落ち着ける場所はどこにもない。 嗚呼、可哀想 もう誰も信じられなくなったハルヒちゃん (もう虐められるのはイヤ) そう思いながらコツコツ貯めていたお金で遠くへ逃げます そこへキョンが訪れてきました。 キョン「なぁハルヒ、少し金貸してくれよ」 ハルヒ「え、あ、今は・・・」 キョン「ん?なんだこれは・・・ お、金じゃん!しかもスゲー金額!」 ハルヒ「あ、それは!」 キョン「別にいいじゃん。俺ら、友達だろ?」 そう言われ、お金を持っていかれたハルヒちゃん 人生お先真っ暗 嗚呼、可哀相 ハルヒ「えー!なにこれー!もう最悪ぅー!」 キョン「お前の性格がなっ」 ハルヒ「・・・直すように努力するわ」 キョン「努力では掴みとれねー物もあるんだよ、いい加減オトナになれヴァーカっ」 警察「すみません 涼宮ハルヒさんですね?」 ハルヒ「・・・?はい、そうですが」 警察「実は貴方が朝比奈みくるさんの卑猥な画像を インターネット上に公開したとの通報がありまして ちょっと署までご同行願えますか」 ハルヒ「ちょ、あの、それは」 キョン「朝比奈さんの気の弱さにつけこんで 散々酷いことをした罰だ 少し頭を冷やしてこい」 ハルヒ「・・・・」 キョン:それじゃあ、明日は2000年前に行ってピクニックをしよう! ──────────────────────────────── みくる:賛成! ──────────────────────────────── 長門:それはいいわね! ──────────────────────────────── 古泉:じゃあ僕は外国から取り寄せた高級お菓子を持ってくるよ! ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が入室しました ──────────────────────────────── 『キョン』が退室しました ──────────────────────────────── 『みくる』が退室しました ──────────────────────────────── 『長門』が退室しました ──────────────────────────────── 『古泉』が退室しました ──────────────────────────────── ハルヒ:・・・・・・ ──────────────────────────────── 長門:しかし最近の若手芸人のつまらなさには腹が立つよね ──────────────────────────────── みくる:そうよね。それを雇うテレビもテレビだわ ──────────────────────────────── 古泉:昔の番組は凄く面白かったよね ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が入室しました ──────────────────────────────── キョン:つまらないから早く消えてしまえばいいのにな ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が退室しました ハルヒ「(今まで何やってたんだろ私)」 ハルヒは学校の屋上に来ていた ハルヒ「あっちの世界に逝けば 宇宙人や未来人よりも面白いことがあるのかな・・・」 そう呟くと なるべく何も考えないようにして 屋上から身を投げた たまたま教室から外を眺めていたキョンの目に 落ちてゆくハルヒの姿が映ったが キョンは眉一つ動かさず そのまま外を眺めていた 数分後 学校のグラウンドにサイレンの音が鳴り響いた 長門「…」 ハルヒ「あ!ユキ…っ」 長門「これ…」 ハルヒ「え?本?」 長門「読んで…」 ハルヒ「あ…お勧めの本なの?そ、そうね。本はあんまり興味ないけど どうしてもっていうなら読んであげてもいいわよ」 ハルヒ「えっとなになに…完全自殺マニュアル………?」 みんな「王様だ~れだっ?」 キョン「あ、オレだ。じゃあ二番のヤツ、振り返りながら「大好き」ってやってくれ」 長門「・・・私」 長門「・・・大好き」 キョン「なんかそうじゃないんだよな~、もう一回!」 長門「・・・大好き」 キョン「ハルヒ、お前やれ」 ハルヒ「なんで私g」 キョン「やれ。」 ハルヒ「・・・やるわよ、やればいいんd」 キョン「早くやれ、ブス」 ハルヒ「・・・d」 キョン「やっぱりいい。きめえから」 みんな「ぎゃははははははははははははははははは」 キョン「悪いな、今日4月1日だったから調子に乗りすぎた」 ハルヒ「何考えてんのよバカ・・・」 キョン「おま・・・うっ(泣き顔モエスwww)」 ハルヒ「何よ・・・」 キョン「いや、その顔もかわいいなと・・・」 ハルヒ「・・・信じらんない///」 キョン「・・・と言うとでも思ったのか? だいたいちょっと優しくされただけですぐ顔を赤らめるな気持ち悪い。 じゃあ俺は帰るからな。」 バタン ハルヒ「・・・・・・・」 ハルヒ「あ、あのさ、今度のSOS団の活動なんだけど」 長門「…………フッ」(嘲笑) 古泉「あのう、誰に話しかけているんでしょうかね、彼女は?」 みくる「さあ、独り言じゃないですか?」 キョン「SOS? まだ言ってたのかよwww寒っwww」 ハルヒ「あ・・・上靴が。。。」 ~朝会~ 担任「え~涼宮さんの上履が無くなってしまったそうです。 見かけた人がいたら涼宮さんの所に届けてあげください。」 クラス一同「クスクス」 朝比奈「そうですね、許してもらいたかったら以前あなたが 私にしたこと全てをあなた自身も体験して下さい。 まずはコンピ研からですね」 ハルヒ「……え?」 キョン「っくははははは! そりゃいいや、行って来いハルヒ」 古泉「コンピ研で何があったんですか?」 長門「セクハラ」 一同「誕生日おめでとー」 キョン「・・・何て言うと思ったか?」 朝比奈「わーすごーい。勘違いして生きていけるって幸せですよねーww」 小泉「一度入院されたほうがいいのでは?」 長門「死ね。氏ねじゃなくて死ね。」 ハルヒ「・・・・・・・・・・・・」 ハルヒ、クラスメイトからの疎遠増幅 不注意からみくるを大怪我させSOS団からも疎外 映画部、PC部にかけた損害が生徒会に周りSOS団強制解体 それでもどうにかSOSのメンツを集めようとするが誰一人集まらず そしてハルヒは「毎週土日になると街をさまよう電波女」として都市伝説になった キョン「おーい サッカーしようぜ」 古泉「いいですね 実は最近、新しいボールを買ったんですよ その名も・・・涼宮ボール!」 そこにはロープで雁字搦めにされたハルヒの姿 口を糸で縫い付けられているので 喋ることができないようだ 古泉「このボールをよく飛ばすにはちょっとしたコツがありまして」 キョン「ほう どうするんだ?」 古泉「この部分を力いっぱい・・・蹴る!」 そう言うと古泉はハルヒのみぞおちを思いっきり蹴り飛ばした ハルヒ「・・・・!!」 口の隙間から液体が溢れ 糸が赤く染まる 古泉「あらら・・・ボールが裂けてしまったようですね」 キョン「ははは 水風船みたいだな」 キョン「ハルヒ誕生日おめでとう、意地悪して悪かったな」 ハルヒ「そんなのいいのよ~!ありがと!キョン、みんな!」 古泉「さあ、ロウソクの火を消してください、涼宮さん。」 ハルヒ「そうするわ、(フゥー)」 キョン妹「消えた消えたー♪」 キョン「ハルヒの生命もこの火の様に早く燃え尽きてほしいよな」 みんな「ぎゃははははははははははははははははは」 長門「ww」 ハルヒ「なにこれ・・・まさかドッk」 みくる「ドッキリなんかじゃないですよ、現実なんだよぉっ!!」 古泉「あぁ…いけない。 ちょっと忘れ物をしてしまいました。 取ってくるから待っていて下さい。」 ハルヒ「分かったわ。」 ――――――――――――5分―――――――――――――10分――――――――――――――――20分―――――――――――――――30分――――――――40分――――50分―――――――― ハルヒ「遅いなぁ…」 キョン「お前黒いな…」 古泉「クスッ…それはお互い様でしょう…。 さぁ早く行きましょう。遅れますよ。」 ――――――――― ハルヒ「……おそい…なぁ…」 古泉「ちょっとシャーペンお借りしますよ。」 ハルヒ「え?あ…うん」 キョン「俺も借りるぜ。」 長門「借りるよ。」 みくる「私にも貸してね。」 ハルヒ「ぇ?ぇ?…… …私の分が…無くなっちゃう…」 古泉「ぇ? あなたには別に必要ないでしょう。クスクス…」 キョン「激しく同意。」 ハルヒ「…………」 ハルヒ「キョン、ちょっときなさい!」 キョン「は? なんで俺がお前の言うこときかにゃならんのだ」 ハルヒ「うるさいわねぇ! いいからついてきなs」 キョン「うるさいのはお前だ。きゃんきゃんきゃんきゃん喚きやがって」 ハルヒ「な、なによ! アンタなんかが私に……」 キョン「鬱陶しいんだよ、マジで。もううんざりだ、お前に付き合うのは」 ハルヒ「わ、私だって……う、うんざりよ! アンタなんかとは、もう口きかないんだからね!」 キョン「ああ、そうしてくれ。というか、そのつもりだ。わかったら俺に近寄るな」 ハルヒ「あ、アンタがどっか行きなさいよ!」 キョン「へいへい。じゃあな、馬鹿ハルヒ」 ハルヒ「…………っ……なによ、馬鹿……」 涼宮ハルヒの構造 キョン「なあ、古泉、何でハルヒは憂鬱の後、あんまり活躍出来ないんだ? 古泉 「おや、あなたは、またあの灰色の空間に閉じこめられることをお望みですか?」 キョン「いや、もう二度とゴメンだ・・・」 古泉 「要するにこの物語における涼宮さんの役割は終わってしまったのですよ。 彼女は平凡な高校生であるあなたをキテレツな言動と行動で振り回し、 あげくの果てに暴走し異世界へ拉致監禁までしようとした。 そこで、窮地に陥ったあなたが王子様のキスをして彼女の目を覚ましてあげたのです」 美しい話じゃないですか。 つまるところ、彼女があなたに与えられるお話など もう、じれったいラブコメくらいしか残っていないのですよ」 キョン(ハルヒ、えらく、ひどいこと言われてるぞ・・・) ハルヒ「ちょっと来なさい!」 キョン「何か言ったかトラブルメーカーさんよ。」 ハルヒ「はぁ!?あたしが・・・」 古泉「キョン君もあなたのわがままにつきあわされるのがいやだと言ってるんです。 わかりませんか?(ニコニコ)」 ハルヒ「そ・・・そん」 キョン「そういうことだ。古泉、帰るぞー」 古泉「わかりました。」 キョン「二度と関わるなよ、トラブルメーカーさん。じゃあな。」 ハルヒ「あたしが・・・トラ・・・いやぁぁぁああああ」 今日もSOS団から無視をされたハルヒ。 自宅の部屋のベッドで泣きながらうなだれていると、机の上に置いた ハルヒの携帯のランプ部分が点滅しているのに気づいた。 人から電話やメールなどは滅多にこないので、いつもマナーモードになって いるため、偶然机に目がいっていなかったらきっと朝まで気づかなかった だろう。 ハルヒ「このメール・・・キョン・・・バカ・・でもありがと・・」 メールの送り主はキョンからのもので、メールにはこう文面がつづられていた。 Title:ハルヒへ さいきん冷たくしてごめんな。 っていっても、あれは本当はみんなの演技なんだ。 さいきんハルヒがみんなにわがままばかり言うから、ちょっ とお前をからかってやろうと思ってたんだ(笑) しつれいなことをしたと今は思ってる、本当にごめんな。今日はもう ねるよ、また明日学校で。SOS団の活動もがんばろうぜ。俺も ボーっとしてないで、ちゃんと活動に参加するからさ。 ケッセキなんてするなよ、お前がいないとつまらないからさ(^▽^) キョンより。 キョンに勇気付けられたハルヒは、明日からは心を入れ替えて頑張ろう、と 心から思ったのだった。 ――――― まとめてる人「ヒント:縦」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2692.html
山にこもって半年が過ぎた。なにも考える必要のない生活というのは大層ヒマでつまらないものだったけど、それにももう慣れたし、これはこれでいいものだと思えるようになってきた。 今日も朝起きて歯を磨き、朝食を食べて山に入り、チェーンソーに混合ガソリンをさして仕事に取り掛かった。 いつも通りの、平穏で静かな時間がながれる。 杉にチェーンソーの刃を食い込ませてしまい抜こうと躍起になっていると、遠くから人の藪をかきわける足音が聞こえてきた。隣の炭焼きの谷口さんだろうか。今日こっちへ来るって言ってたから、たぶん間違いないだろう。 あの人は年季がはいってるから、上手に刃を抜いてくれるかもしれない。 ハルヒ「谷口さん」 キョン「ハルヒ、こんなところにいたのかよ。探したぜ」 ハルヒ「キョン!? あなた、なんでここに?」 キョン「お前を連れ戻しにきたに決まってるだろ」 ハルヒ「……なんでよ。放っておいてよ」 キョン「2年前、お前がどうして蒸発したのか、その理由がわからない。会って1年ちょいの付き合いだったけどさ、事情くらい教えてくれてもいいんじゃないのか? それが知りたくて、追ってきたんだ」 ハルヒ「ば、ばかじゃないの? それだけのためにこんな山奥まできたって言うの?」 キョン「そうだ。俺はバカだからさ。どうしても諦められないんだ」 ハルヒ「もう放っておいてよ! 私が出てった理由なんてどうでもいいじゃない」 キョン「どうでもよくない。それに、理由を知りたいのは俺だけじゃない。みんなそうだ。古泉も朝比奈さんも長門も、この2年間どんな思いでお前を探してきたか分かってるのか?」 ハルヒ「知らないわよ! そんな勝手な、あんた達の理屈を私におしつけないでよ!」 キョン「放ったらかしかよ!? 俺たちのこと。俺のこと。俺はな、お前がいなくなってからようやく悟ったよ。俺、お前の言うとおり馬鹿だからさ。気づかなかったんだ。ただ漠然と感じてはいたんだけど、俺」 キョン「俺、お前のこと、好きなんだ」 私はまた逃げ出した。アイドリングするチェーンソーをその場に残し、山道を駆け上っていった。 好き? キョンが、私のことを? そんなことあるはずない。 ハルヒ「いい加減なこと言わないでよ! あんたが好きなのはみくるちゃんなんでしょ? 適当なこと言って私を騙そうったってそうはいかないわよ。もう騙されないんだから。私は」 キョン「騙してなんかいない! 確かに朝比奈さんのことは好きだけど、それはなんていうか、恋愛感情というよりも憧れというか、父性本能というか……よく分からんが、純然たる恋愛感情でないことだけは確かだ! 誓っていい!」 ハルヒ「………」 キョン「なあ、分かってくれよ」 ハルヒ「本当に、私のことが好きなの? 嘘じゃないの?」 キョン「ああ。嘘じゃない。もし嘘だったら、お前の商売道具で切り刻まれたっていい。本当だ」 ハルヒ「そう……なんだ」 ハルヒ「……本当いうとね、私も好きだったのよ。あんたのこと」 キョン「………ハルヒ…」 ハルヒ「でもね、見ちゃったのよ。あの日。2年前のいつだったか。校舎裏でたまたま、あんたとみくるちゃんが抱き合ってたの」 キョン「あれは……その、違うんだ。朝比奈さんが元の時代に帰るからってお別れに……いや、なんでもない。ともかく、あれは違うんだ。恋愛感情からの行動じゃない」 ハルヒ「ほんと?」 キョン「本当だ。俺が好きなのは、お前だけだ」 ハルヒ「嬉しいわ。あはは。私たち、実は両思いだったんだ…」 キョン「ハルヒ。……積もる話もいろいろあるだろうしさ。とりあえず帰ろうぜ。こんな山の中じゃ、ゆっくり話をする喫茶店もないしさ」 ハルヒ「……でも、ダメよ。帰って。もう二度と私の前に姿を現さないで。あなたが本当に私のことを愛してるんだったら」 キョン「何故だ!? お前は俺が朝比奈さんと抱き合ってるのを見て勘違いして、あ、いや、あれは俺が悪いんだが、とにかく誤解は解けたんだ。もう厭世する理由もないだろ?」 ハルヒ「……重いのよ。私には。2年前の私なら十分あなたの気持ちに応えられただろうけど、今の私には、そういう感情は重荷にしかならないの。苦しいのよ」 キョン「ハルヒ……」 山の中を逃げ回る私。それを追ってくるキョン。変な状況よね。心底そう思うわ。これがお花畑か麦畑ならロマンチックだったんだろうけど。 私はもう誰の期待にも応えたくない。辛いから。 追ってこないでよ。そうやって私に気をもたせて。どれだけ私が苦しんでるか分かってるの? あなたの期待に応えたいという自分と、あなたにもしも裏切られたらと無意識的に思ってしまう私の、狂おしいほどの葛藤がどれだけ辛いことか。 こんな苦しくて、胸が張り裂けそうなほどに悲しい思いをするくらいなら、いっそ…… ハルヒ「来ないで!」 キョン「待て、どうするつもりだ!?」 ハルヒ「どうするって、どうするかなんて見れば分かるでしょ。それ以上近づいたら、私はここから飛び降りるわ」 ああ、私ったら。まだこんなに。こんなに苦しむほど、 この人のことが好きだったんだな。 キョン「どうしろって言うんだよ!? もう、俺はお前と離れ離れになるなんてイヤだぜ」 ハルヒ「近くにいるよりも、互いに離れたまま良い思い出として胸にしまっておいた方がいいことも、あると思わない?」 キョン「お前にとっては迷惑でうっとうしい俺のわがままかしれないが、俺はそうは思わないな。勝手な言い草だとは分かっているが、今は言わせてくれ。俺、お前と一緒でないとつまらないんだ! この世のすべてが!」 そうか。 なんだ。どうして今まで気づかなかったんだろう。バカは私だ。 私と同じで、この人も苦しんでたんだ。私とは、まったく正反対の理由で。 もっと早く、気づいてあげたかったな。そうすれば、この人も私も、今頃は…… ハルヒ「ありがとう。キョン。泣けるほどうれしいよ」 キョン「ハルヒ……。俺も、お前の気持ちを考えずにここまで追いかけちまって、悪かった」 ハルヒ「いいよ。別に」 ハルヒ「そういえば昔は、SOS団やってた頃はさ、よくあんたに無理難題ふっかけてたわよね。私」 キョン「まあな。何で俺が、っていつも思ってたけど、今思えば楽しい毎日だったよ」 ハルヒ「無理難題のなつかしい思い出ついでに、最後にひとつ、わがまま言ってもいい?」 キョン「いいぜ。この際だ。最後にひとつと言わず、これからもずっと聞き続けてやるよ」 ハルヒ「ううん。ひとつでいいよ」 ハルヒ「ごめん。私のことは、忘れて。さようなら」 それだけ言って、私は崖の上から跳んだ。 風が耳元でうなり声をあげている。宙で体がのけぞった時に一瞬、キョンが何か叫んでいるのが目に入った。 なにも聞こえなかったけどね。でも、よかった。きこえなくて。 小学生時代から平凡な人生に辟易してきた私は、ずっと不思議でおもしろくて、楽しいことを探してきた。とうとう見つけられなかったけどね。 けど、なんか今、ちょっと楽しいな。浮遊感ってなんか不思議な感じ。 風にさらされて、私の体が半回転した。その時、私の耳に耳障りな風の音以外の声が聞こえた。 キョン「ハルヒッ!!」 ハルヒ「キョン!? 私を追って…? どうして、あんた……!」 キョン「気づいてやれなくて、すまなかった! 一言だけ、俺も言わせてもらおうと思って追ってきた!」 キョン「お前、さびしかったんだな」 伸ばした手を、キョンがつかんだ。 キョン「聞こえたか? 聞こえなかったかもしれないから、もう一回言うぜ。最後まで気づいてやれなくて、ごめん。やっぱお前の言うとおりだったわ。馬鹿だな、俺」 ハルヒ「死んじゃうわよ、あんた! なんで飛び降りたのよ! 飛び降りてまで言うセリフじゃないでしょ!?」 キョン「舌かみそうだぜ……。なんでって、そういう気分だったからさ。お前を放っといて、のうのうと帰れるかよ。お前の尻拭いをするのは、雑用係の俺の役目だろ? いつだって」 ハルヒ「キョン……」 キョンが私の肩を強く抱いた。 暖かい。 いやだ。絶対に。 この人を死なせたくない! 神様! 本当に神様がいるんだったら信じてもいい、お賽銭だっていくらでもあげるわ! だからこの人を助けてあげて! お願い! 一瞬なにが起こったのかわからなかった。木の葉のように錐揉みする私とキョンの体が突然、手を離した風船のように宙に浮き上がった。 ジェットコースターで急降下する時、体が風で上に持ち上げられるでしょ。あんな感じ。 キョン「上昇気流か!?」 ハルヒ「じょうしょう……きりゅう?」 呆然とする頭では理解できなかったけれど、下から猛烈な勢いで押し上げてくる空気の塊に流され、私とキョンはその上昇気流に空高く持ち上げられた。 もうどこが上でどの方向が下なのかも分からないくらい、私たちは風にもまれて奔流していた。 そして気づくと、2人して元いた崖の渕に転がっていた。 キョン「……くそ、痛ぇな。アザになってるぜ。助けてくれるんなら、もうちょっとソフトにお願いするよ、神様」 ハルヒ「………私たち……たすかったの?」 キョン「ああ、そうらしい。ここがあの世じゃなければな。まあ、お前と一緒なら俺はこの世でもあの世でも、どこでもいいけどな」 ハルヒ「そっか……」 頭の中が真っ白になって何も考えられなかった。キョンの言っている言葉も理解できていなかった。 でも、ただ一つだけ強く感じられたことがある。 空中でキョンに抱かれた時。あったかかったな。 ハルヒ「人間ってさ。死ぬ瞬間に、今までの人生を走馬灯のように見るっていうでしょ。あんた、見えた?」 キョン「ああ。見えたさ。はっきりな」 ハルヒ「どんなの?」 キョン「朝比奈さんがお茶ついでくれて、長門が本読んでて、古泉がトランプで一人負けしてる走馬灯」 ハルヒ「ふうん」 ハルヒ「ねえ」 キョン「ん?」 ハルヒ「帰ろうか」 古泉「それで帰ってきたんですか。いやはや。一大スペクタクルでしたね」 キョン「ああ。是非お前にも体験していただきたい貴重な出来事だったな。一度どうだ? 人生かわるぜ」 古泉「遠慮しておきましょう。僕は今の人生に満足している方なので。無理して変えようとは思いませんね」 キョン「残念だな。お前にもあの走馬灯を見てもらいたかったんだが」 古泉「昔の映像は自主制作映画だけで十分ですよ。それより、涼宮さんは?」 キョン「店にいる」 ハルヒ「いらっしゃいませ……なんだ、あんたか。よそ行きの声だして損したわ」 キョン「減るもんじゃないだろ」 長門「………いらっしゃい。水」 ハルヒ「で、どうしたの? まだ仕事終わるまで時間あるわよ。まさかカレー1杯で1時間もねばる気?」 キョン「いいじゃないか。1時間くらい。その間、デートコースを考えてるよ」 ハルヒ「分かったわよ。待ってなさい。あんたのために私がインド仕込みのスペシャルメニューを用意してきてあげるから」 キョン「それは楽しみだな。甘めに頼むよ」 ハルヒ「なに言ってるの。カレーは辛くてナンボよ。いい感じに辛くしてあげるから。覚悟しておきなさい!」 キョン「やれやれ……。って、このセリフ言うのも久しぶりだな」 ハルヒ「残さず食べなさいよ。残したら、死刑だから!」 ~完~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/366.html
『涼宮ハルヒのコミケ』 「へぇーこれがコミケかぁ、すごい人ね」 だからハルヒ、こっちでやってるのはコミケとはいわんぞ 「うるさいわね、あたしがコミケといったらコミケなのよ!」 というわけで我々SOS団はハルヒがいうところのコミケ正式名称スーパーコミッケシティK-saiの会場を訪れている 団長様いわく「オタクパワーの不思議を探訪する」のだそうな SOS団は二手にわかれて俺はハルヒと場内を探訪中である、ハルヒが俺を引っ張りまわしているだけともいうがな 「こっちよキョン!」 こら強く引っ張るな腕がいたいぞハルヒ、それより一体どこにいきたいんだ? 「うるさいわね、平団員の雑用係は黙って団長についてくればいいのよ」 はいはいおっしゃるでございます団長様 「ここよ、ここにきたかったのよね」 どうやら目当てのサークルについたようだ、よく見るとギコやモナーの縫いぐるみなどが飾ってあるが・・・ あ~ハルヒさん?ここっていわゆる2ちゃんグッズ屋さんですよね?お前ひょっとしてネラーなのか? 「すいませんサイタマはなにがありますか?」 おい俺の質問を無視すんな、てっいきなりサイタマかよ! 「えーとサイタマはこのバスタオルとハンカチだけですね、マグカップとかもあったんだけど完売しちゃって」 とサークルの人がすまなそうにいう、さすがは2ちゃんジャンルだサークル主も金髪の姐御風な人だった 「じゃぁそのバスタオル一枚ください」 「はいありがとうございますサイタマバスタオル一枚、サイタマー!」 おいおいちょっとまてハルヒ、そんなバスタオルを使う気なのか? 「もちろんあたしがつかうのよ、あっ今あたしのお風呂上りのバスタオル姿を想像したでしょ、まったくエロキョンなんだから」 とんでもない、おれはこのバスタオルを洗濯するお前の母親の気持ちをだな とはいえハルヒの風呂上りか・・・ちょっとみて見たい気も「ちょっとぉ何にやけてるのよホントにエロイわねぇ」 ハルヒよお前は超能力者か?俺の心を読むな 「そうそうこの冷茶グラスはどうかしら、部室でおそろいのグラスで麦茶を飲むなんていいんじゃない?」 あ~ハルヒさん・・・ニラ茶器って書いてあるんですがこれ、朝比奈さんにニラ茶を作ってもらうのか? というかニラ茶って実在するのか、ニラを煮出すのか? 「すいませんこのグラス・・二つください」 おいハルヒ、SOS団は五人なんだから部室でお揃いならグラスは五個だぞ すいませんグラス三個追加の五個でお願いします 仲間はずれはよくないだろ、SOS団五人みんなでおそろいじゃないとな んっハルヒよ一体何を震えてるんだ?冷房が強すぎて寒気でもしたか? 「まぁいいわキョンもなにか買いなさいよ、妹ちゃんにこれなんかどう?」 これって真ん中でサイタマしてるハンカチのことか?妹が「サイタマ!」しだしたら困る 大体ハルヒも埼玉県なんかいったことない筈なのに、サイタマのなにがいいんだ? 「じゃぁ縫いぐるみは?モナーとか妹ちゃんもよろこぶんじゃないの」 あいかわらず俺の質問はスルーかよ、でもぬいぐるみはいいかもなシャミセンも遊ぶかもしれんし でもモナーよりここはギコだろ「いえモナーに決まってるわ!」 ハルヒ!お前はギコの良さがわかってないだろ、そもそもギコは「2ちゃんグッズとの出会いは一期一会、迷ったら両方買いだね」と姐御が割り込む 「はい二つで二千円、買ってよし!」 はぁどうもすいません、いただきます。押しに弱いのが俺の欠点だな・・orz ハルヒもういいだろ他も見にいこう、あっお姐さんどうもありがとうございました 「あぁお兄さんありがとう、それと男女の出逢いも一期一会、かわいい彼女を大事にしなよ」 いやお姐さんそれ違います、誤解です、曰く「団長様と雑用係」ですから 「ほらバカキョン!次へ行くわよ!」 おい引っ張るな、なんだ鼻歌なんか歌ってやけに上機嫌だな そんなに2ちゃんグッズが買えたのがうれしかったのか? ハルヒの考えることはさっぱりわからん やれやれだ - なんとなく終わり - <おまけ-その日の朝、駅前> 「遅い!みんなとっくにきてるのに雑用係としての自覚が足りないわよ!」 すまんすまんなどという俺の目にメイド姿の朝比奈さんが飛び込んできた あーハルヒ今日のイベントはコスプレ禁止のはずなんだが朝比奈さんがメイド服なのはなせ? 「みくるちゃんの格好はコスプレじゃないわよ、普段着よ普段着!」 おいおいどこの世界にこんな普段着があるんだいい加減にしろ、どうせお前が無理やり着せたんだろ? 「普段着は普段着るから普段着よね?」 まぁそうだな 「みくるちゃんは毎日このメイド服を着てるんだからこのメイド服だって十分普段着よ!文句ある?」 ( ゚д゚)ポカーン <その他> 出てくるグッズはイベントで見かけたサークルさんのを参考しますた
https://w.atwiki.jp/watchwkcgeonet/pages/65.html
アバター名 涼宮ハルヒ ID kazukiogawa 罪状 切断厨・地雷 殿堂入り 即抜け推奨 191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23 00 33.81 ID YYuXeEGS0 【名前】涼宮ハルヒ 【ID】kazukiogawa 【所属ギルド】オートマ 【罪状】切断厨 マール2でホスト 雑魚無視で先行して蜘蛛と谷虫に1人で特攻するが肉断狙ってたのか一瞬死亡、復活させるが無言 次の蜘蛛谷虫も同様に死亡、復活すると花を回収しあきれるポーズ×3後無言リタイヤ。 こいつ通報してもいいよな 他にも平原フリークエストで、首への道中に大型をPTが処理してるなか 賞金首に一人特攻し蒸発したあげく、復活させるやいなや、「おせーよばか」と暴言 あきれるポーズ連発し回線抜き 現在も冥府Ⅱなどで絶賛寄生中
https://w.atwiki.jp/sosclannad9676/pages/15.html
涼宮ハルヒの憂鬱とは著者「谷川 流」による非日常学園コエディという認識が一般的である。 角川スニーカー文庫より、2003年6月から刊行された。イラスト担当はいとうのいぢ。 涼宮ハルヒが設立した学校非公式クラブSOS団のメンバーを中心に展開する、「ビミョーに非日常系学園ストーリー」であり、物語は、主人公である男子高校生キョンの視点から一人称形式で進行。 『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞を受賞している。その後、一部加筆訂正され、書店に並んだ。 2005年9月にはツガノガクによる漫画版が『月刊少年エース』にて連載開始。2006年4月よりテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が独立UHF局をはじめとする各局で放送された。2009年4月よりテレビアニメが2006年版の回に新作を加えて放送された。劇場版アニメーション映画『涼宮ハルヒの消失』は2010年2月6日より公開された。 全9巻におよび、刊行されており、憂鬱、溜息、退屈、消失、暴走、動揺、陰謀、憤慨、分裂、驚愕(前)(後)の順でタイトルが微妙に異なる。 長らく、発売延期(未定)となっていた驚愕は、2011年5月25日に2冊同時発売される。・・・予定である。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/571.html
ねぇ、キョン。 ねぇ、キョン、返事をして? ねぇ、キョン・・・。 聞いて、あたしの話を聞いて。 キョン! ねぇ、キョン。 あなたはあたしを裏切らないよね? ハルヒの声がした。 ハルヒが俺の名前を呼んでいる。 どうしたんだハルヒ? 目を開けて起き上がると、そこは色も音も無いただ真っ黒な空間に俺は居た。 見渡すほどの広さも感じられない。ただ黒一色の空間。 足元もフワフワとして、まるで星一つ無い宇宙空間に放り出されたようだ。 俺は確かベッドで眠っていたはずだ。それがどうしてこんな場所に居るんだ? まさか例の閉鎖空間とやらに呼ばれてしまったのだろうか。 なら、ハルヒもこの場所に居るはずだ。どこにいるんだ、ハルヒ。 「ハルヒ!」 ハルヒの名前を呼ぶ。だが返事は無い。 ハルヒの声がして、この妙な空間・・・閉鎖空間だと思ったが違うのか? なら、例の急進派か? 「ハルヒ!おい、返事をしてくれ!ハルヒ!」 もう一度ハルヒを呼ぶ。・・・やはり、返事は無い。 キョン! キョン! キョン! どうして返事をしてくれないの? ・・・・。 ・・・・。 ・・・。 キ ョ ン ! ! 『・・・ョ・・・ン・・・・・キョ・・・・!・・・・ョ・・・』 微かに、だが確かにハルヒの声が聞こえた。やっぱりハルヒはここにいるのか? 「ハルヒーーーっ!!ハルヒ!!どこだ、おーい!!」 大声を出してハルヒの名前を呼ぶ。だが一向に返事は無い。 ・・・どうなっているんだ?ハルヒじゃないなら長門、古泉の誰でも良い。返事をしてくれ。 『 キ ョ ン ! ! 』 突然、この空間全体が揺れるほど大きい声で俺の名前が叫ばれた。 実際、 ず ず ず ず ず ず どっ どっ どっ と辺りが激しくゆれ出した。 ゆれ出した空間の一部が、ぐにゃりと歪む。 それはだんだんと色が付き、ますます歪みを増してゆく。 ぐにゃ その歪みは、だんだんと、ある人間の顔を模してゆく。 「・・・ハルヒ・・・・・・・!?」 空間に浮かんだ歪みは、ハルヒの顔になった。 その顔は笑って、俺を見下ろしている。 呆然とそれを見上げていると、また空間の一部から腕が二本飛び出して俺の体を無理矢理掴んだ。 つ か ま え た ぁ ! 大 好 き よ 、 キ ョ ン ! おわり