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涼宮ハルヒの誤解 第一章 涼宮ハルヒの誤解 第二章 涼宮ハルヒの誤解 終章
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0-1.プロローグ 「今回の事態は、この組織が対処できるレベルを超えている。よって、最高評議会においても明確な結論が出なかった。しかし、ゆっくり検討している余裕もない。よって、あなたの立案した暫定計画を実行することに決した。実行責任者はあなた」 暫定計画といってもたいしたものではない。現地の長門有希に情報を流して、あとは彼女に頼るしかないという、なんとも情けないものにすぎなかった。TFEI同士の抗争に、人間の出る幕などないのだ。 「はい。かしこまりました」 1.端緒 その変化は、突如として発生した。 情報統合思念体穏健派は、主流派より主導権を奪取。主流派と急進派の動きを封じ込め、他の派閥を勢力下に収めた。 穏健派は、クーデターを平穏に完遂したあと、配下のインターフェースに指令を下した。 喜緑江美里は、自宅のマンションの一室で、穏健派からの指令を受領した。 了解する旨を返答する。 情報統合思念体の存在及び宇宙の秩序を脅かしうる涼宮ハルヒの抹殺。 その障害となるのは、間違いなく、長門有希。 まずは、その注意を他へ逸らさねばならない。 彼女は、配下のインターフェースに、「機関」に働きかけるよう命じた。 0-2.プロローグの続き 「もともと、この問題は、情報統合思念体の内部抗争が原因。本来なら、あなたがたの手を煩わせるようなことではないのだが……」 「いいのですよ。『機関』時空工作部としては、先輩方の不始末については自分たちで処理したいところですから」 「あなたの心情も組織としての面子も理解はできる。でも、無理はしないで」 2.接触 長門有希が学校に行くためにマンションの自室を出ると、そこに、一人の女性が立っていた。 「お久しぶりです。長門さん」 長門有希は、黙って、自室に入るように促した。 「用件は?」 長門有希は、朝比奈みくる(大)に対して、端的にそう訊ねた。 「今からデータを送信します」 長門有希は、送られてきたデータの内容を把握すると、わずかに表情を動かした。 「すみませんね。なにぶん、こういう事態において頼りになるのは、長門さんしかいないものですから」 「情報提供には感謝する」 「よろしくお願いします」 立ち去ろうとした朝比奈みくるに、長門有希は質問をぶつけた。 「あなたはこれからどうするの?」 「『機関』への対処をとります。長門さんにばかり頼るわけにもいきませんので」 「無理はしないで」 長門有希のその言葉に、朝比奈みくるは一瞬驚いた表情で固まった。 0-3.プロローグの続き 「しかし、この任務が失敗しては……」 朝比奈みくるの言葉は、途中でさえぎられた。 「最終的には私が直接介入を行なう」 3.狙撃 森園生は、自らの装備を確認していた。防弾チョッキ、拳銃、手榴弾。それなりの武装であったが、それらがどれだけ役立つかは分からない。 部下たちを見回す。新川、多丸兄弟。みな凄腕の戦士たちだ。 「TFEIの支援があるとはいえ、ちときついですね。例の長門有希が敵に回るのは確実でしょう」 多丸裕がグチのようにそういった。 「私たちは上部の命令に従うのみよ」 「古泉が抵抗してきたら、いかがないさいますかな?」 新川がそう訊ねてきた。 「任務の障害となるならば、実力で排除します」 森園生はさも当然のようにそう答えた。 「機関」の上層部がいきなり入れ替わった。そして、下された指令は、ただ一つ。 世界の秩序を脅かす涼宮ハルヒを抹殺せよ。 森園生たちがアジトを出た瞬間。 あたりに銃声が響いた。森園生が脇腹を押さえて倒れこむ。 とあるビルの屋上。 彼の手には、狙撃銃が握られていた。用いた銃弾は、防弾チョッキを貫通する特殊銃弾だ。 「御先祖様を狙撃するというのも、あまり気分がよいものではありませんね」 そんな部下のグチに対して、上司である朝比奈みくるは、 「あなただって賛成したじゃない」 「将来結婚するはずの御先祖様お二人が殺し合いをするのを見せつけられるよりはマシですからね。しかし、自分で撃っておいてこういうのもなんですが、彼女は大丈夫でしょうか?」 「大丈夫よ。『機関』の鋼鉄の女が、あれぐらいで死ぬわけないわ。森さんには『機関』総帥になるまでは生きてもらわなきゃ困るもの」 二人は、森園生が救急車に乗せられていく様子をただ眺めていた。 その間にも、情報通信デバイスを通じて、朝比奈みくるに部下たちから続々と報告が入ってくる。 経過はおおむね順調。 しかし、すべてが順調にいったとしても、「機関」を完全制圧するのは難しい。この作戦に投入されている時間工作員は、朝比奈みくるのチームだけだったから。 他のチームの投入も検討されたが、最高評議会の審議段階で、断念されていた。どのみちTFEIを相手にせざるをえない状況では、人員の大量投入は無駄に犠牲を増やす結果にしかならない。そういう判断だった。 0-4.プロローグの続き 「……」 朝比奈みくるは絶句したまま固まっていた。 「さきほど、私に情報統合思念体主流派から命令が下った。主流派としても、このような既定事項からの逸脱は容認できないということ」 4.偽りの平穏 放課後、文芸部室。 「遅れてしまいました」 古泉一樹がそういいながら入ってきたときには、他の団員は全員そろっていた。 「古泉くん。それ何?」 古泉一樹は、菓子箱のようなものを持っていた。 「ああ、これですか。実は、親戚が旅行のお土産にと分けてくださいましてね。何の変哲もない温泉饅頭です。一人で食べるのもなんだと思いまして」 温泉饅頭はみんなに配られ、朝比奈みくるが入れたお茶とともに、それぞれの胃に収まった。 みんなが饅頭を手に取る前に長門有希が短く呪文を唱えたことに気がついた者はいなかった。 彼女は、饅頭に含まれていた青酸カリを分解して無害化したのだった。 そのことは古泉一樹も知らないことだろう。彼は道具にされただけだ。 その後は、いつもどおりの団活だった。 涼宮ハルヒはネットサーフィン。キョンと古泉一樹は、ボードゲームで対戦。朝比奈みくるはお茶をせっせと入れ、長門有希は読書に専念。 しかし、長門有希は、今日という日がこのまま平穏には終わらぬことを知っていた。 0-5.プロローグの続き 「最終的な処理は私が行なう。だから、あなたが無理をする必要はない」 「はい。かしこまりました」 5.襲撃 喜緑江美里は、SOS団のメンバーが下校したのを確認すると、配下のインターフェースにいっせいに指令を下した。 「機関」の人間たちは未来人たちの妨害工作のせいでだいぶ数を減らしていたが、彼女は気にもしなかった。人間ごときは捨て駒にすぎないのだから。 SOS団の集団下校。 その途中で、朝比奈みくるにいきなり最優先強制コードによる指令が入った。 「えっ!」 朝比奈みくるが驚いたのもつかの間。彼女のTPDDが強制的に起動し、その姿が忽然と消え去った。 それが合図だった。 長門有希は、涼宮ハルヒ、キョン及び古泉一樹を強制的に眠らせると同時に、みんなを包み込むように防御フィールドを展開した。 その透明な防壁に、無数の銃弾と手榴弾が弾き飛ばされた。 彼女たちの正面から、武装した集団が襲いかかってくる。 そこに、また別の人間たちが忽然と現れた。 「すみません。長門さん。『機関』を制圧し切れてなくて、この有り様です」 朝比奈みくる(大)は、手にした光線銃で次々と「機関」の襲撃者たちを撃退していく。彼女に指揮された部下たちも、同様に光線銃を放っていた。 長門有希は、防御フィールドを拡大して、朝比奈みくるを保護下に収めた。 「いい。それより、あなたの部下たちを撤退させてほしい。このままでは、巻き込まれる」 「了解です」 朝比奈みくるは、部下たちのTPDDを強制起動させた。 それと同時に、長門有希は、「機関」の襲撃者たちを遠隔地に空間転移させる。 その瞬間に、長門有希と情報統合思念体の連結が強制的に切断された。 彼女はすぐさま、個体単体の全力を用いて防御フィールドを強化する。 それはギリギリのタイミングだった。 上空からいっせいに光の槍が降り注ぐ。 「長門さん、いつまでもちます?」 「私単体の能力では、5分が限界」 「少し時間を稼がなければいけませんね」 朝比奈みくるの肩に忽然と、バズーガ砲のようなものが現れた。 「長門さん。防御フィールドの外方向への透過率をあげてください。10秒でいいです」 「了解した」 バズーガ砲のようなものから不可視の光線が放たれる。 放たれたガンマ線レーザーは、迫り来るTFEIたちを次々となぎ倒していった。 朝比奈みくるは、一掃射すると肩からそれを投げ捨てた。膨大な電力を消費するため、携帯型では一掃射が限度なのだ。 残ったTFEIたちが、空からこちらに迫ってくる。 防御フィールドに接触するかと思われたその瞬間。 彼女たちは、一瞬にして霧散した。 防御フィールドの前に、いつの間にか一人の小柄で老齢な女性が立っていた。 「朝比奈みくる。ご苦労様」 「すみません。結局、お手を煩わせてしまいました」 「気にすることはない。インターフェースの相手は、私の役目」 長門有希は、目に前に現れた老齢の女性が、自分の異時間同位体であることを理解した。 0-6.プロローグの続き 「それでは、行ってまいります。長門さん」 「私の異時間同位体によろしく」 6.爆弾 長門有希(大)は、静かに右手を上げた。 そこに、猛烈な勢いで拳が叩き込まれる。長門有希(大)の右手は難なくそれを受け止めた。 「なぜ、あなたがここにいるのですか?」 喜緑江美里は、拳の叩き込んだ体勢のまま空中に固定されていた。 「私は、情報統合思念体主流派の命令を受けてここにいる。あなたがたは、主流派が主導権を奪われたままで黙っていると思っていたのか? だとすれば、愚かだとしかいいようがない」 「随分と親孝行なことですね。そこにいるあなたの異時間同位体は、親に反発してばかりだというのに」 「あのころは、私は、人間でいうところの反抗期にあったものと理解している」 「そうですか。でも、結局のところ、今のあなたも、命令にかこつけて、自分の守りたいものを守っているだけなのではないですか?」 「否定はしない。でも、あなたの親──穏健派とは違って、私の親は寛大である。涼宮ハルヒ及びその周辺事項の保全と観測──その基本方針に反しない限り、私の我がままはたいていは許してくれる」 あの12月18日の暴走。あのときも、長門有希の処分を強硬に主張していたのは穏健派であって、主流派自身は寛容であったのだ。 「酷い言われようですね。あれでも、一応私の親なんですけど」 「あなたが親孝行なのは承知している。それを非難するつもりもない。でも、今は邪魔。後で再構成するから、消えて」 喜緑江美里の身体が一瞬光ったかと思うと、あっという間に霧散していった。 長門有希(大)は、地面を蹴ると、空に向けて上昇した。 そこには光り輝く球体が浮いていた。その周りには火花が無数に散っている。 長門有希(小)は、それが核融合反応によるものであると分析した。 穏健派TFEIたちの襲撃の瞬間にそれは忽然と現れ、起爆直後に長門有希(大)によって情報制御空間に閉じ込められたのだ。 その情報制御空間の内部で、核融合爆発による猛烈なエネルギーが暴れまわっている。 「あれは、未来から送りこまれてきたものか?」 長門有希(小)の質問には、朝比奈みくるが答えた。 「ええ、そうです。未来側にもいろいろな考えの人がいましてね。時間航行技術の開発に関係する人物及びその先祖は、涼宮さんの半径50キロメートル圏内に集中してます。この混乱に乗じて、あの爆弾一発で時間航行技術の完全消滅をもくろんでいたのでしょう」 時間航行技術の開発に関係する人物及びその先祖が涼宮ハルヒの半径50キロメートル圏内に集中しているという事実。 古泉一樹あたりに言わせれば、それも涼宮ハルヒが望んだからということなのであろうが。 0-7.プロローグの続き 朝比奈みくるを見送ったあと、長門有希は静かに計算を開始した。 介入のタイミングを1/10000秒単位でつめていく。少しでもずれれば、事態は最悪の結末を迎えかねない。 計算を終えると、彼女は自らのTPDDを起動した。 7.再生 長門有希(大)は、球体に手をかざすと、長々と呪文を唱え始めた。 呪文が終わったとき、球体はゆっくりと縮小し、やがて消えていった。 核融合爆発は完全に封じられたのだ。 長門有希(大)は、再び地上に降り立った。 「朝比奈みくる。帰還してよろしい」 「かしこまりました」 朝比奈みくる(大)の姿が掻き消えた。 その代わりに朝比奈みくる(小)が忽然と現れた。眠らされた状態であったが。 「この後は、どうするのか?」 長門有希(小)が、長門有希(大)に訊ねる。 「涼宮ハルヒの力を用いて、世界を再構成する」 長門有希(小)の表情がわずかに動いた。 それには構わず、長門有希(大)が続ける。 「この時間平面の現状は、私が記憶している既定事項から逸脱している。よって、私の記憶しているとおりの状況に復元する、あなたの記憶も含めて」 「それは、未来人の傲慢ではないのか?」 「否定はしない。私は、思い出をできる限り完全な形で保全したいと思っている。よって、私の記憶にない出来事は、あなたの記憶から抹消されなければならない」 長門有希(小)は、自分の体が圧倒的な情報圧力によって拘束されていることに気づいた。 「抵抗は無意味」 長門有希(大)は冷酷にそう通告しつつ、涼宮ハルヒの体に手をかざした。 「涼宮ハルヒとの連結完了。世界構成情報の改変開始」 長門有希(小)は、それを黙ってみていることしかできなかった。 8-1.エピローグ──平穏な放課後 放課後、文芸部室。 「遅れてしまいました」 古泉一樹がそういいながら入ってきたときには、他の団員は全員そろっていた。 「古泉くん。それ何?」 古泉一樹は、菓子箱のようなものを持っていた。 「ああ、これですか。実は、親戚が旅行のお土産にと分けてくださいましてね。何の変哲もない温泉饅頭です。一人で食べるのもなんだと思いまして」 温泉饅頭はみんなに配られ、朝比奈みくるが入れたお茶とともに、それぞれの胃に収まった。 その後は、いつもどおりの団活だった。 涼宮ハルヒはネットサーフィン。キョンと古泉一樹は、ボードゲームで対戦。朝比奈みくるはお茶をせっせと入れ、長門有希は読書に専念。 そう。その日は、まったくもって平穏無事に終了したのだった。 8-2.エピローグ──平穏な未来 長門有希(大)は、原時間平面に帰還すると、すぐさま情報操作を開始した。 穏健派TFEIの撃退、核融合爆発の阻止、世界の再構成。「機関」時空工作部の人間たちには、それらすべてが長門有希(小)がやったものとして認識されるように情報をいじった。もちろん、自分の時間遡行記録も抹消する。 なぜなら、「機関」時空工作部の最高権力を牛耳る彼女がTFEIであるという事実は、組織の中では、彼女自身と朝比奈みくるしか知らない秘密であるから。 朝比奈みくるの部屋に入る。 「ご苦労様です」 「あなたこそ、ご苦労様」 朝比奈みくるが差し出したお茶を口につける。 いつ飲んでも、彼女のお茶はおいしい。 その後、二人は、たわいもない世間話をしてすごした。 その光景は、さっきまで自分たちの時空間が危機にあったことなどまるで感じさせない、のどかな光景であった。
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第2章 雨で中止になった第2回SOS団花見大会だが、ハルヒはそれほど不機嫌ではなかった それは今、俺の部屋で格闘ゲーム大会を催し、長門と決勝戦を繰り広げる様子や古泉の話からも明らかだ 「そこぉ!」 ハルヒの超必が決まり、決勝戦の幕が閉じる ハルヒが勝ったという結果を残して 長門はゲームをするのは初めてと言っていたが、慣れるにしたがってどんどんうまくなった それでもハルヒにはかなわない どうでもいいが古泉は最下位だった ボードゲームも弱いがコンピューターゲームも弱いらしい 「簡単すぎるわね、もっと難しいゲームはないの?」 ひとしきり優勝にはしゃいだあと勝ち誇ったようにハルヒが言った 「ソフトならそこの棚に入ってる。好きに選べ」 ハルヒがソフト探しに夢中になっている隙をみて俺は長門に耳打ちした 「この雨はいつやむかわかるか?」 すると長門も小声でこたえてくれた 「不明、ただしこの雨により桜の花が落ちる可能性は92.7%」 俺は頭をかいた やばいな、このままだと第2回SOS団花見大会が中止になっちまう 別にこうやって騒いでるのも楽しいのだが、ハルヒが閉鎖空間を生み出さないとも限らない ただやたらご機嫌なハルヒをみているとそれも無駄な心配に思えてくるから不思議だ まぁ、その後も特筆すべきことがらもなく、急遽開催された第1回SOS団ゲーム大会もハルヒの万能っぷりを見せ付けただけで幕を閉じた 帰りぎわハルヒは 「明日は晴れたら公園で花見、雨だったら部室に集合ね」 と言ってANGIE DAVIESのSUPERMANを歌いながら帰っていった ―そして翌日 と、いきたいところだったのだが、正直そうもいかないらしい 妹が風呂を知らせに来た午後7時半、ハルヒから電話がかかってきた 「キョン、何も言わずに今すぐ例の公園に来なさい、いいわね!」 相変わらず一方的に話すだけ話して切る奴だ 仕方なく俺は家を出た 昼に降っていた雨も止んで、空を見れば朧気ながら月が顔を出していた しかし、その公園でたとえノストラダムスでも予言できないようなことが起きようとしていたなんて、いったい誰が予想できただろうか 公園に着いた俺をハルヒの背中が迎えてくれた 桜の花は昼の豪雨によってほぼ散っていたが、残った微かな花により、儚げな美しさを醸し出していた 俺はハルヒの背中に話し掛ける 「よお、待ったか?」 「わかんない」 ハルヒは後ろをむいたまま首を横に振った 「すごく待った気もするし、すぐだった気もする」 わけのわからないことを言い出した 「ねぇ、あんた選択授業なんにした?」 これは本当にいつものハルヒなんだろうか その声はまるでつついたら壊れる脆いガラス細工のようだった 「多分、お前と同じだ。私立文系受験の…」 「違うの!!」 ―悲愴 そんな感情を込めた叫びに思わず俺の気持ちが後退りをする 不意に月が雲に隠れ、まわりの家の灯り、公園の街頭、すべての明るさが陰りを見せたような錯覚に陥った そう、それはまるで閉鎖空間に迷い込んだような… 「あたしは…理系を選んだ」 ぽつりと出た、蝶の羽音のような声は一瞬、俺の思考を停止させた 俺は考えていた 2年になっても俺はハルヒの席の前でシャーペンでつつかれたり、その笑顔を見ながら過ごすことになるだろう、と ただ、逆に北高は2年のクラス替えを理系、文系に分けてやる だから頭のいいハルヒが理系にいってもそれはそれで別にそれでもかまわないと思っていたが ―今だから正直に言おう 俺はそうじゃなければいやだ そこにあって当然のものだから油断していた ハルヒの席の前に俺以外の人間がいるなんて俺の中ではありえない 空気はそこにあって当然のものだが、空気がなくなると人間は窒息死してしまう そんな例えがわかりやすいだろうか とにかく、その発言を聞いた俺の目の前は真っ暗になったのだ そうだな、この瞬間に閉鎖空間にハルヒと閉じ込められたなら、俺はこっちの世界に戻ろうなんて考えなかっただろうぐらいに しばらくそんなことが頭の中を縦横無尽に駆け巡っているとその沈黙をどう受け取ったか、ハルヒが口を開く 「あんたが文系を選ぶことは知ってた。その時は別に部室で会えるし、全然構わないと思ってた、だけど…今の気持ちはそうじゃない!」 ハルヒがゆっくり振り返る、その目は、顔は、涙に濡れていた 「キョン、あたしはあんたと一緒にいたい!離れたくない!精神病でも何でもいい!あんたが好きなの!」 張り上げた涙声は魂の叫びとなって静寂を保つ夜の闇に響く 普遍的な行為を嫌うハルヒが、こんなに一般的な告白をしなければならないほどこいつは思い詰めていたのか そこで俺は考えた 俺にとっての ―涼宮ハルヒ の存在を クラスメイト?団長? 一緒にいる理由は? 仕方なく?おもしろそうだから?朝比奈さんを守るため? すべてのハテナマークをふりきり、一つの答えにたどり着いた ―俺は涼宮ハルヒに惹かれている この状況に合う言葉を口に出すなら 「俺も…ハルヒが好きだ」 考えよりも先に言葉が出ていた それに気付いてからも俺に後悔はない これは心のままの気持ちだから 「…ありがとう」 ハルヒに言われた初めてのありがとうは俺の心を暖かくし、泣きじゃくるハルヒを抱き締めるのに十分な理由をくれた ―ただ俺は知らなかったんだ この出来事が明日以降の、サプライズ具合では今ほどではないが、しかし非常に厄介な出来事の引き金だったことを 第3章
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涼宮ハルヒの退屈(2006年放送版第04話、構成第07話・DVD版第08話/2009年放送版・時系列第07話) スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍 演出:吉岡忍 作画監督:池田和美、荒谷朋恵 原作収録巻 第3巻:短編集『涼宮ハルヒの退屈』より短編『涼宮ハルヒの退屈』。計61ページ分をアニメ化。一部改変。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第4巻』に収録。 紹介 放送順では古泉初登場。 突飛な展開だが、キョン以外のSOS団員が普通じゃないことを分かっていれば楽しめる。 その一方、キャラ設定が説明されないまま進行するため、放送当時は「意味不明」と言われアンチのネタになることが多かった。 時系列順では「憂鬱」直後の話。ハルヒの性格もあまり変わっていないことがわかる。 2009年版の放送では次回は『笹の葉ラプソディ』。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『チアねこマン』。(DVD第03巻に収録) 2009年版の放送ではこの回から提供バック中にサントラの『ハルヒの告白』が流れる様になる。 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第4巻に収録): ハルヒ「次回!『涼宮ハルヒの憂鬱』、第3話!」 キョン「チッガーウ!! 次回、『涼宮ハルヒの憂鬱』、第5話!『涼宮ハルヒの憂鬱 III』えーとつまり? これが前回の続き?……無駄にややこしいのだが……」 ※オフィシャルファンブック『涼宮ハルヒの公式』P.43から引用。 DVD版: 有希:次回、『ミステリックサイン』。ブーン。 放送版とDVD版との違い フリーザーの上に置いた急須が描き加えられている。 パロディ・小ネタ キョンが投手に代わり、投球するシーンからタッチっぽい曲がw→音楽の神前氏の仕業らしい。 どこぞの永世監督→長○監督。 マジックポイントを減らそうとしている。→ドラゴンクエスト。 長門が1回目のホームランをかっ飛ばす場面のキョンの『すごい飛んでる!』→杉田氏のアドリブ。 など多数。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 鶴屋さん:松岡由貴 谷口:白石稔 国木田:松元恵 キョンの妹:あおきさやか 野球部主将:石川大介 主審:柳沢栄治 キャッチャー(上ヶ原パイレーツ):大橋隆昌 バッター(上ヶ原パイレーツ):西本理一 キャプテン(上ヶ原パイレーツ):金子英彦 スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍 演出:吉岡忍 作画監督:池田和美、荒谷朋恵 動画検査:中野恵美 美術設定:田村せいき、平床美幸 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:高木理恵 制作マネージャー:八田真一郎 原画 牧田昌也 牟田亮平 高田謡子 河浪栄作 高橋真梨子 中野良一 吉岡忍 動画 古川かおり 井上真希 遠藤亜矢子 引山佳代 Ani Village 仕上げ 石原裕介 豊澤綾 胡恵美 佐々木祥子 田口真由美 Ani Village 背景 鵜ノ口穣二 細川直生 篠原睦雄 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年4月23日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年4月23日25時30分-26時00分 tvk:2006年4月24日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年4月24日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年4月24日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年4月25日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年4月25日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年4月26日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年4月26日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年4月29日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年4月29日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年5月14日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年5月14日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年5月14日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年5月15日26時30分-27時00分 tvk:2009年5月15日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年5月16日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年5月17日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年5月18日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年5月19日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年5月19日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年5月19日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年5月19日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年5月19日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年5月19日27時55分-28時25分 Youtube:2009年5月20日22時00分-2009年5月27日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年11月29日25時50分-26時20分 DVDチャプター アバン(0:00~1:21) Aパート開始(2:50~5:25)※題名無し練習開始!(5:26~7:28) 止めた方ががいい・・・(7:29~10:14) プレイボール!(10:15~11:31) Bパート(11:32~12:16)※題名無し穴だらけの守備(12:17~14:06) 謎のブロックサイン(14:07~16:34) コールド負けか?(16:35~18:18) 訝しがる上ヶ原パイレーツ(18:19~20:21) ゲームセット!(20:22~21:54) 今度はどっち?(21:55~22:20) 使用サントラ 0 00~0 33 SE 0 34~1 20『好調好調』サントラ03収録 1 21~2 50 OP 2 51~3 12 SE 3 13~5 25『ザ・強引』サントラ05収録 5 26~6 05 SE 6 06~6 46『特訓あるのみ』サントラ05収録 6 47~8 30 SE 8 31~10 14『何かがおかしい』サントラ02収録 10 15~10 35 SE 10 36~11 33『おいおい』サントラ02収録 11 34~12 17『やれやれおいおい』サントラ05収録 12 18~13 11 SE 13 12~14 58『激烈で華麗なる日々』サントラ05収録 14 59~15 23 SE 15 24~16 36『神人』サントラ04収録 16 37~17 23 SE 17 24~18 20『長門VS朝倉』サントラ03収録 18 21~19 10 SE 19 10~20 22『 野球は青春との接触』サントラ05収録 20 23~20 58 SE 20 59~21 54『いつもの風景』サントラ 02収録 21 55~22 06 SE 22 07~22 20『コミカルハッスル』サントラ06収録 22 21~23 25 ED 23 26~23 40『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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涼宮ハルヒの溜息I(2009年放送版・時系列第20話) スタッフ 脚本:谷川流 絵コンテ:山田尚子 演出:山田尚子 作画監督:高橋博行 原作収録巻 第2巻:長編『涼宮ハルヒの溜息』より第1章P14から第2章のP56まで。計43ページ分をアニメ化。アバンタイトルは、原作の体育祭の展開を膨らませている。 DVD収録巻 涼宮ハルヒの憂鬱5.714285(新シリーズ第6巻) 紹介 新作では谷口・国木田初登場回。時系列順でも第7話『涼宮ハルヒの退屈』以来の登場となる。 原作のプロローグではキョンとハルヒが後の展開に繋がる重要な会話をしているのだが、時系列の混乱を避けるためか(プロローグは5月の出来事)アニメ版では丸々カットされている。この部分は後に『涼宮ハルヒの溜息 V』においてアニメ化された。ちなみにゲーム版『約束』には、このプロローグをほぼ忠実に再現したシーン(もちろん杉田と平野の声付き)が存在する。 この話では、時系列順では今後の伏線、アニメ放送順では伏線の回収となっている部分がいくつかある。特に自主制作映画に直結する伏線は多い。時系列順で後に登場するENOZ(『憂鬱Ⅵ』のEDにもチラッと登場)やくずもどきのフォークデュオも1シーンのみ登場。 今回は原作者:谷川流が脚本を担当している。『サムデイ イン ザ レイン』以来2作目、新作では初の脚本担当となる。 作画監督は、14話のエンドレスエイトの作画監督を担当したシリーズ全体の小物設定を担当している高橋博行。演出は新作では初参加で旧作では『涼宮ハルヒの憂鬱 I』、『涼宮ハルヒの憂鬱 IV』、『ミステリックサイン』、『ライブアライブ』の原画を担当した山田尚子(けいおんの監督)。 スタート係役の竹内幸輔はケッケコーポレーション所属の元芸人(今は声優・俳優メイン)で桜塚やっくん(斎藤恭央)とともに『あばれヌンチャク』というコンビを組んでいた(今は解散)、女子Aの三上枝織は青ニプロダクション(ジュニア)所属、女子Bの斉藤佑圭も青ニプロダクション(ジュニア)所属。 次回予告 TV版 なし 放送版とDVD版との違い パロディ・小ネタ 今後登場する「祝川商店街」は、阪神尼崎駅付近にある「尼崎商店街」が元ネタ。そのためか、アニメでも阪神タイガースを思わせるトラ縞の旗が登場する。 リレーの時の鉢巻には、それぞれ名前の一文字が入った四字熟語が書かれている。涼宮ハルヒ ・・・小"春"日和 朝比奈みくる・・・前人"未"踏 長門有希 ・・・億万"長"者 古泉一樹 ・・・"古"今東西 キョン ・・・危"機"一髪 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 涼宮ハルヒ:平野綾 キョン:杉田智和 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 長門有希:茅原実里 2段目 谷口:白石稔 国木田:松元恵 スタート係:竹内幸輔 女子A:三上枝織 女子B:斉藤佑圭 スタッフ 脚本:谷川流 絵コンテ:山田尚子 演出:山田尚子 作画監督:高橋博行 動画検査:中野恵美 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:細川直生 色彩設計補佐:永安真由美 色指定検査:高木理恵 特殊効果:三浦理奈 制作マネージャー:八田真一郎 原画 紫藤晃由 唐田洋 羽根邦広 細田はな 鴨居知世 水谷有吾 多田文雄 山田尚子 高橋博行 動画 端由美子 佐藤綾 堤麻里子 寺西正樹 澤真平 岩崎菜美 吉田梢 StudioBlue 仕上げ 津田幸恵 伊藤里奈 北岡なな子 河合靖美 田口真由美 佐々木祥子 Studio blue 背景 鵜ノ口穣二 Studio Blue李天馥 朴貞娥 李美眞 申允美 金之熙 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 梅津哲郎 浜田奈津美 植田弘貴 友藤慎也 柴田裕司 冨板紀宏 船本孝平 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2009年 サンテレビ:2009年8月13日24時55分-25時25分(野球中継のため15分押し) テレ玉:2009年8月13日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年8月13日26時15分-26時45分(30分押し) 東京MXテレビ:2009年8月14日26時30分-27時00分 tvk:2009年8月14日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年8月15日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年8月16日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年8月17日26時00分-26時30分(30分押し) KBS京都:2009年8月18日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年8月18日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年8月18日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年8月18日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年8月18日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年8月18日27時55分-28時25分 Youtube:2009年8月19日22時00分-2009年8月20日21時59分(24時間限定配信) RKK熊本放送:2010年3月7日25時50分-26時20分 DVDチャプター 使用サントラ 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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季節はもう秋。 空模様は冬支度を始めるように首を垂れ、 風はキンモクセイの香りと共に頬をそっと撫でていく。 彼女は夏に入る前に切った髪がその風に乱れて 思いの外、伸びているのに時の流れを感じている。 夏休みから学園祭まで一気に進んでいた時計の針は 息切れをしたかのように歩を緩め、 学校全体が熱を冷ますようにこれまでと変わらない日常という空気を 堅く静かに進めていく―――― 「腹減ってんのか?」 腑抜けた声と間抜け面。 「何言ってんのよ?」 「いや、随分沈んでるからひょっとしてダイエット中で 朝飯でも抜いてんのかと思ってな。飴食うか?」 「うっさいわね!大体、私みたいな若くて可愛い女の子にはそんなもの全っ然必要ないの。 飴は一応、貰っとくけど。」 「はいはい、自分で言いますか。まぁ、お前は人一倍食い意地張ってるしな。」 「あんた、馬鹿なだけならまだしも的外れでデリカシーも無いなんて駄目にも程があるわ。」 「お前だけには言われたくないという突っ込みどころ満載だな、おい。」 「あぁ!!もう、うっさいわね!」 こんなんじゃ頬杖つく腕も痺れてくる。 「私にだって考え事の一つや二つくらいあるのよ。 秋はパーッとしたイベントが少なくて嫌になるわ。」 「考え事ね…まぁ、学園祭からここまでずっと勉強ばっかりだからな。 俺もパーッとやりたい気持ちはあるが、遊んでばかりもいられないだろ? 俺達は学生で学生の本分は勉強だからな。」 「そのくせしてろくな成績も取れないあんたは何なのよ?」 なかなか痛い所を突いてくるね、ハルヒ。 「なんか面白い大事件でも起きないかしら。」 おいおい、勘弁してくれ。そうそう大事件が起きてたら繊細な俺の身が持たん。 この1年半、こんな他愛無いやり取りをこの2人は 何回繰り返してきただろう? 彼も彼女も気付いてないのかもしれない。 いや、気付いていても今の2人は口に出しはしないだろう。 この言葉の交換が、この時間の共有が何よりも特別なものである事を。 何も変わらない、宇宙人も未来人も超能力者も現れない事に 辟易し、言葉さえも忘れたような彼女の灰色の日常に 彼が優しく彩りを添えてくれた事を。 まぁ、付け合わせの人参くらいにはなってるかもね、 等と彼女はまた素直じゃない答えを返すだろう―――― 必殺!ペンで背中を串刺しの刑!! 「いって!!!!」 凍り付いた。 クラス中の奴らが見つめてくる中、黒板で世界史を解説中だった教師は 「どうした?」と切り出し、俺はうやむやに誤魔化し何とか切り抜ける。 そして、次は後ろに座っているこの馬鹿を訊問しようとした時、 「ねぇ、キョン!昼休みに一回部室に行ってから学校抜け出すわよ。 あんたもついてきなさい。これは団長命令よ。」 相変わらずだが、唐突過ぎて意味がわからん。 「何言ってんだ。大体…」 「黙りなさい。」 前の教師と後ろの団長様から同時に最終宣告。 4限目が終わるとすぐハルヒは俺のネクタイを掴みペットの如く、 部室まで引きずっていった。痛い、苦しい、離せ。 「あら?有希。昼休みもここで本を読んでるなんてもうお昼食べたの?」 「俺も昼飯の時間なんだけど…」 「……読書週間。」 「ん?」 「本日より2週間、読書の力によって平和な文化国家を形成するという目的の元、 出版社、図書館、マスメディア等の公的機関より本を読む事を推奨されている。」 何となく聞いた事はあるが、意識した事も実行した事もほとんどないあれだな。 大体それ、普段の長門と変わらんじゃないか。 それになんかお前が言うと宇宙国家建設の標語みたいだぞ。 「有希は読書って訳ね。まぁ、良いわ。でもね、秋は読書だけじゃないわ。 閃きというか、さすが私はSOS団団長として目の付け所が違うと思うのよね。」 というか、ここは本来文芸部の部室だから長門の意見に従うべきだ。 だが、ハルヒはパソコンの電源を入れながらいつもの太陽のような笑顔になっていた。 「次は何を思い付いたんだ?お前は。」 「ふっふっふっ…ハロウィンよ!!小さい頃、読んだ絵本には 魔人、ドラキュラ、フランケンシュタイン、魔女、 黒猫、コウモリ、ゾンビ、黒魔術なんかが出てきて 事件と謎の匂いがプンプンする話だったわ。 という訳で今週はハロウィン調査を開始するの。 ハロウィンってまずはコスプレから始まるのよね。 だからまずは全員どんなコスプレにするかパソコンで調べないと!!」 おいおい…今週はSOS団全員でコスプレかよ。 「へぇ~、ハロウィンではお菓子を配るのね。ついでに秋の味覚も集めちゃおうかしら?」 それはもう美味いもん食いたいって方がメインになってないか。 頼むからとめてくれ、長門…駄目だ、こりゃ…興味を持っちまった。 そういえばお前もヒューマノイドなんちゃらの割には食欲は凄いタイプだったな。 「ハロウィンパーティーですか、面白いアイデアですね。」 いつからいたんだよ、古泉。 そして顔が近いんだよ。あまりニヤケてるとカボチャにしてくりぬくぞ。 「じゃあ、決定ね。古泉君、みくるちゃんと あとせっかくのパーティーだから鶴屋さんにも伝えといてくれる? 受験勉強の邪魔でなければって。」 邪魔に決まってんだろ。 それに案の定、パーティーメインになってるじゃないか。 「わかりました。」 「じゃあ行くわよ、キョン」 やれやれ。 ケルト民族のハロウィン祭ではひとつの大きな篝(かがり)火から 村の家々に火を分け合う事でお互いを共通の絆を持つ一つに繋がった輪としている。 SOS団にとってその絆は涼宮ハルヒという大きな篝火を中心にして出来たものだろう。 しかし1人だけ、彼だけは言わば彼女という篝火にとって種火とも言える存在。 どちらがどちらを照らしているのだろうか? 優しく暖め合う事もあれば、全てを燃やし尽くしてしまう事もある。 彼女にとって本気で喧嘩をしたのは彼だけなのかもしれない。 彼女にとって本気で誰かを愛したのも彼だけなのかもしれない。 坂道をボールのように転がる。 街はパステルカラーに染まり上がり、何だか切な~い秋の午後。 女の子と2人で授業をサボって昼休みに学校を抜け出す。 そんな甘酸っぱい青春の背徳感。 ただ相手は… 「ちょっとキョン!!聞いてんの!?」 …こいつだ。 「有希はやっぱりキャラ的に魔女よね。 みくるちゃんは猫耳とタイツで黒猫ね。 小泉君はドラキュラなんてどうかしら?」 「あぁ…良いんじゃないか」 「あんたは…」 「俺もやんのか!?」 「あったり前でしょ!!あんたはそうね…カボチャで良いわ。」 なんで俺だけ野菜なんだよ…。 「鶴屋さんはいたずら好きの幽霊って感じね。 私は何にしようかしら…」 ……魔人 「誰が魔人よ?誰が!!」 …口に出ちまったか。 「私は、うん、まずは私の家に行きましょう!!」 お~い、一人で納得すんな。 はい現在、場面は飛びまして、 ハルヒの家のリビングで待機中です、どうぞ。 ご両親は仕事かなんかかね?誰もいない。 魔人が一人でドタバタ暴れる音だけが響く。 「キョン!!」 やれやれ、今度はなんだ… 「ちょっとこっち来て。」 「どうした?」 「棚の上にあるカボチャを取って欲しいのよ。」 「棚にカボチャ?」 「仮装用のカボチャよ。」 なんでそんなもんが家にあるんだよ…ほれ。 手持ち無沙汰だからとりあえずハルヒについてくか。 「次は私の…ちょっとここで待ってなさい。」 「ん?どうした?」 「いいから!!」 ハッハ~ン、この扉がハルヒの部屋だな。 「お邪魔しま~す。」 「ちょっと!!やめなさい!!」 あら?意外と綺麗で可愛い部屋。 もうちょっとエイリアンのポスター的なもんとかあるのかと思ってたが… おいおい、熊のぬいぐるみって柄じゃないだろ。 「何、人の部屋をジロジロ見てんのよ!?」 「いや、意外と可愛い部屋だな。」 「バッカじゃないの!!座ってなさいよ!大人しくしてなかったら死刑だからね!!」 「ハルヒはこの熊に名前とか付けてるのか?」 枕が飛んできた。 あ、ちょっと良い匂い。 あれ?メールが来てる。 From:朝比奈さん タイトル:ハロウィンパーティーの件 本文:了解で~すヽ(=^゚ω゚)^/ 楽しみにしてますO(≧▽≦)O あと、鶴屋さんと私もお菓子と秋の味覚を用意しますね♪ダキ♪(●´Д`人´Д`●)ギュッ♪ ところで今回はどんな衣装になるんでしょうか~?・・・( ̄. ̄;)エット( ̄。 ̄;)アノォ( ̄- ̄;)ンー 楽しみですか朝比奈さん、いつもよりもっと際どいコスプレさせられるんですよ… From:古泉 タイトル:無題 本文:今朝まで発生していた閉鎖空間も消えてくれて、 機関も僕もあなたにはいつも感謝しきりです。 お礼といっては何ですが、僕と機関から 今回のハロウィンパーティーに幾分かの差し入れを出します。 涼宮さんの事はあなたにお任せします。 では、頑張って下さいねp|  ̄∀ ̄ |q ファイトッ!! 古泉、お前は絵文字なんか使うな、気持ち悪い。 「お~い、ハルヒ。朝比奈さんと古泉からメール来てるぞ~。 鶴屋さんと3人、お菓子とか用意してくれるってよ。」 「さすがSOS団の役員だわ、あんたみたいな雑用係とは違うわね。」 「そりゃ悪うございました。」 「人の枕で雑魚寝するな!!」 良い匂いだったぞ、ハルヒd( ̄◇ ̄)b グッ♪ 秋の空というものはどうにもうつろいやすいもので それを人の心に例えたりもしますが、雨には気持ちもしょげるもの。 夕方になり降り出した雨は雨脚を強め、街をオレンジ色から灰色に変えていく。 やたらスモークチーズの香り漂うSOS団の部室では 3人が三者三様の時間を過ごしています。 朝比奈みくるは妙な沈黙に耐えられなかったのであろう… お茶を2人に差し出しながら話し掛けてきました。 彼らがいない時にこうやって会話を交わすのは慣れないものです。 「涼宮さんとキョンくんのいない部室って静かですね。」 「そうですね。こういう部室も嫌いではありませんが、やはり物足りないですね。 ところで鶴屋さんはどこへ?」 「チーズに合う飲み物が必要とかでどこかへ行ってしまいました。」 「それは危険な香りがしますね。」 その時、大きな足音が聞こえたと思うと勢いを付けて扉が開きました。 「お待った~!!」 鶴屋さんでしたか。 「おっや~、あの2人はまっだ帰ってきてないっかな~? ま~たどっかでイチャついてんのかね~?」 「鶴屋さん、それ…」 「あぁ、ワインっさ!」 「だ、大丈夫なんですか~?受験前に。」 「めがっさ美味しいにょろ!まっ息抜き♪息抜き♪まずは軽く一杯。」 息抜きの範疇を超えてますね。 「遅いですね~涼宮さんとキョンくん…」 と、音も立てずに静かに扉が開くと雨でずぶ濡れの彼が1人で立っていました。 非常に嫌な予感がしますね。 「あれ?涼宮さんは?」 「分からん…」 「ハルヒ…重い…」 「あんたは雑用係なんだから文句言わずに歩く!」 やれやれ…どんな衣装が入ってるんだ、この鞄。 「次はどうするんだ?」 「次はお菓子ね。鶴屋さんやみくるちゃんや古泉君が 用意するって言っててもそこは私達も負けられないわ。」 そこは負けとけ。向こうは組織ぐるみだ。 「おいおい、そんなに派手にやる訳にはいかんだろ。 特に朝比奈さんや鶴屋さんは受験生にも関わらず付き合ってくれてんだ。 邪魔になったら迷惑掛かるだろ?」 「分かってるわよ。あんた、相変わらずノリ悪いわね~。 大変なのはみくるちゃんの様子見てれば分かるわよ。 だから今日だけでも派手にパーッとやって鬱憤を晴らすのよ。」 それはお前の鬱憤じゃないのか、ハルヒ。 「大体だな、お前は計画性が無さ過ぎるぞ。 期末テストもあるのに授業サボるなんて俺にとっちゃ死活問題だしな。 それに最近はこの前の中間テストもプラスして 親からのプレッシャーも日毎に増す今日この頃だ。 今日も帰って補習しなきゃ間に合わん。 それをお前はいきなりハロウィンパーティーだとか訳が…」 っておい、いきなり立ち止まるな! かのイギリスの文豪シェイクスピアは戯曲「リア王」においてこのような話を残しています。 リア王は隠居する為に国を分割し、彼の3人の娘に分け与えようとします。 彼は3人の娘の自分に対する想いを確かめる為に「言葉」を求めました。 長女と次女は甘く優しい言葉を投げかけ、国の割譲を約束されますが、 三女だけは「何もない」と答え、王の逆鱗に触れ、 婚約者と共に国を追い出されてしまいます。 しかし、女王となった長女と次女は永遠に愛すという誓いを立て 国を与えて隠居した父を邪魔者として追放します。 言葉というものはなんと脆いものなのでしょうか? 三女は父の苦難を耳にし、涙を流し、行方不明の王を探すために四方八方、手を尽くします。 「行動は時に言葉よりも雄弁である。」 彼女の言葉は想いとは裏腹で素直さに欠ける時もありますが、 いつも彼と共にいるというその行動そのものが彼女の想いを何よりも雄弁に語っています。 彼は今、目の前にいるおてんばなお姫様の心の奥底にある真の想いに 気付いているのでしょうか? 「そんなにやりたくないの?」 ん? 「キョンはそんなに皆と一緒にいるのが嫌?」 嫌とは言ってないが… 「分かった……じゃあ、止める。」 は? 「皆には私から連絡しとくからキョンも帰っていいわよ。」 出たよ…なんちゅう我が儘だ、おい。 「おい!ハルヒちょっと…」 「離して…」 「いや、お前なぁ…」 「帰りたければ帰ればいいでしょ!!」 ……頬に落ちた一滴の水は雨だったのだろうか、ハルヒの涙だったのだろうか――― 「私は付き合いだけで無理して皆とここにいる訳じゃありません!!」 朝比奈さんの怒号が響く。 「ごめんなさい…」 「なんでキョンくん、そんな事言ったんですか!? いい加減、涼宮さんの気持ちに気付いてあげて下さい!! 涼宮さんは私達の為というよりもキョンくんの為に きっとこのハロウィンパーティーをやろうって言ったんですよ!」 …俺の為? 「涼宮さん、キョンくんが最近、成績の事とかで悩んでるってずっと気にしてたんです。 だから涼宮さん、部室にいる時に一人でキョンくんの為に解説用のノートや 一緒に期末テストの勉強する為のスケジュール作ったりして、 来週からはスパルタで行くから今週くらいはキョンくんと 何か息抜き出来る事して気持ちを晴らして 羽を伸ばしておこうって言ってたんです!」 「あ~ぁ、今回はやっちゃったね~!キョンくん。」 鶴屋さんまで… 「ふぅ~…すみません、どうやら急なバイトが入ってしまったようです。」 古泉が椅子から立ち上がりながら俺を睨む。 「まぁ正確には涼宮さんらしく、団長の責務として団員の世話まで しっかりやらないといけないから大変だ、とおっしゃってましたが。 あなたの悩みは彼女の悩みでもあるんですよ。」 どういう事だ? 「まだ分からないんですか? 彼女からすれば何故、自分に相談してくれないのか? 悩みがあるなら共有してくれないのか?とね。 あなたに涼宮さんをお任せしたのは失敗でしたかね…。 では、失礼。」 すまん…古泉。 「今回はあなたの落ち度。謝罪すべき。」 ………。 妖精はいたずら好き。 かくれんぼなんかはお手の物。 彼は傘も差さずに雨の中を走り回って探してる。 でも、彼女は見つからない――― 「くそっ…あいつ一体どこにいやがるんだ…」 携帯に電話を掛けてもメールをしてもハルヒからの返事は一向に来ない。 あいつの家にも公園にも駅にも喫茶店にもハルヒが行きそうな所は 全て当たってみたが影も形も見当たらない。 街中を走り回ったせいか、足がもつれてこけてしまった。 街を行き交う人達の視線が痛い。 「はぁ…何やってんだ、俺は…。」 泥だらけになった服を払いながら涙が出てきた。 今日ほど自分が情けなくなった日はない…。 ハルヒの想いや悩みにいつも鈍感で一緒に騒いで楽しければ それで良いという距離感が崩れるのが怖かったのかもしれない。 ただそれは滑稽な道化に収まって楽をしていただけだ。 俺はあいつを傷つけて黙って見ていただけの 卑怯な臆病者だ。 もう一度学校に戻ろうと歩いていたその時、 目の前に一台の車が止まった。 「お久しぶりです」 「あ…森さん?」 「時間がありませんので説明は車の中で致します。 一刻の猶予もありません。お乗り下さい。」 え?という暇もなく、車に押し込まれた。 「これで体をお拭き下さい。」 今日はスーツ姿だが、時にメイドだったり、 森さんの本職は一体何なんだろうか? 手渡されたタオルで体を拭きながら諸々の事情を聞こうとしたのだが、 それは先に森さんの言葉に遮られた。 「事情を説明する前に一言。これは機関からの言伝ではなく、 私個人としての意見です。」 と、バックミラー越しに鋭い視線を投げかけられた。 「話は古泉から伺っております。 涼宮ハルヒを監視している機関として必然的にあなたの事も知る事になるのですが、 率直に申し上げますと、あなたは男として失格です。」 厳しっ! 「あなたは女性の言動の裏にある本当の想いに鈍感過ぎます。 それは意識してのものなのか、無意識なのかは分かりませんが 結果的に女性を傷つけるものとして私は断じて許せません。 彼女は、涼宮ハルヒは常にあなたの傍にいて、 あなたを心の底から慕っています。 あなたの想いもありますので必ずしも彼女の想いに応えろとは言いません。 しかし、のらりくらりと逃げるような真似をして 彼女を裏切り傷つけるような行為は同じ女として 怒りを禁じ得ません。」 突き刺さる…。というか森さん、キャラ変わってない? こんなにドSキャラだったっけ? 「では、ここから本題に入らせて頂きます。」 …とことん凹まされた…また涙出てきそ。 「涼宮ハルヒは今、この世界には存在していません。」 は? 「簡単に申し上げますと現在、涼宮ハルヒは 閉鎖空間の中に閉じ篭っているという言い方が出来ます。 私達、機関の活動は涼宮ハルヒの精神的な動揺から発生する 閉鎖空間の平定にあり、その閉鎖空間内において あなたもご覧になった事がある神人の討伐を行っていたのですが、 つい先刻よりその閉鎖空間内に機関の人間が 誰一人入る事が出来なくなっています。 閉鎖空間内にいた人間もことごとく追い出されています。 現在、発生している閉鎖空間はこれまでのものとは全く異質で 形も歪な空間です。」 「それは以前、俺とハルヒの2人だけで行ったのと同じものですか?」 「似てはいますが、それともまた違うものです。 ただ自らの存在以外を全て拒絶している空間のようです。」 「それだと今の俺は一番拒絶されそうな…」 と言いかけた所で再び森さんの鋭い視線が突き刺さる。 「良いですか?今、機関の人間を総動員して解決に当たっていますが、 このままだと世界中の人間だけが消えてしまう危険性があります。 申し訳ありませんが、あなたにはまた協力を要請する事になった次第です。 目的地につきましたので詳しくはそこで。 傘をどうぞ。」 その場所はさっき俺とハルヒが喧嘩をした駅前の広場だった。 そして、そこには真顔の古泉に長門と朝比奈さんも来ていた。 「お待ちしていましたよ。」 すまんな、古泉。 「情報統合思念体は混乱している。 現在の涼宮ハルヒは有機生命体の持つ全ての感情を 強い力で衝突させ、爆発を起こしかけている。 本来、情報統合思念体にとって感情とはエラーと認識されるもの。 それが処理出来ないほどの量と質で埋め尽くされている。 情報統合思念体にとって自らの存在を消去し得る 触れる事は危険且つ、不可能な領域として認識した。 だから、あなたに任せる。」 そんなでっかい事になってるのかよ…。 「キョンくん…さっきは怒鳴ったりしてごめんなさい… でも、キョンくんにしか涼宮さんを助ける事は出来ないと思うの。 キョンくんの素直な気持ちをちゃんと伝えて、お願い。」 くぅ~…とうとう覚悟を決めるしかないのか、こりゃ。 「では、ここからが閉鎖空間の入り口です。 僕らはこれより先には進めません。 ですが、あなたならきっと大丈夫です。 いえ、あなたにしか出来ません。」 わかりました…いってきます…。 彼女は魔法の国に迷い込んだお姫様。 お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。 普段はおてんば、はねっかえりでも 一人でいるのは怖くなる。 昔、絵本で読んだお話を決して忘れちゃいけないよ。 いつも助けてくれるのは白馬に乗った王子様――― 一瞬、雷に打たれたような衝撃が身体中を突き抜けると そこは幾度か見た灰色の空間だった。 ただ、土砂降りの雨が降っていた。 雷鳴も轟くその空間はこれまで知っていたものとは まるで違うものだった。 「なんだ、こりゃ?ハルヒはどこだ?」 叫んでみた。 「来たは良いもののどこに行って何をすれば良いかさっぱり分からんぞ。」 もう一度叫ぼうとした時だった。 「馬鹿!!!」 ハルヒ!? 「どこだ!?ハルヒ!!」 「馬鹿!うっさい!黙れ!このすっとこどっこい!! なんで追いかけて来ないのよ!?このアホ!間抜け面!唐変木!」 ありとあらゆる罵声が雷鳴と共に鳴り響いている。 助けに来てどやされるとはな…。 声の方角からすると喧嘩して離ればなれになった方角だな。 声を頼りに走ると近くの公園に辿り着いた。 しばらく走ってみてわかったのだが、ところどころ街が破壊されている。 しかし、どうやらあの神人というのはいないようだ。 いや…その代わり屋根付きベンチの上で魔人が仁王立ちしていた。 「遅刻!罰金!」 やれやれ… 「これでも結構、急いで走ったんだぞ。」 「全くこんなに暗くなって雨が降ってきたんじゃ 身動きも取れやしないわ。携帯も通じないし。」 こいつ、ひょっとしてここが閉鎖空間って事に気が付いてないのか? 「お前ずっとここにいたのか?」 「別に私がどこにいようと関係ないでしょ!?」 「ハルヒ…」 俺はハルヒの肩に手を置いた。 細い肩だ。 「何よ?何すんのよ?」 「そんなびしょびしょに濡れてたら風邪引くだろ? タオルで拭くんだよ。」 ハルヒの柔らかい髪の毛はくしゃくしゃに 顔は真っ赤になっている。 「ふん…まぁ、タオルを持ってくるなんて あんたにしちゃ上出来ね。」 ありがと、森さん。 その時ふと、ハルヒの肩が震えてるのを感じた。 あぁ~…そうか…そうだよな。 「ハルヒ……ごめんな。」 ぼつりと口をついて出た言葉がハルヒの顔を曇らせた。 そこからハルヒは俺の服にしがみついて 堰を切ったように大声で泣き出した。 そうだ…こいつだってこんな所にひとりぼっちにされたら 寂しいし、怖いだろう。 喧嘩して怒ったのと同じ分だけ悲しかっただろう。 俺の為に色んな事考えて色んな事してくれた分だけ 突き放された時はショックだったろう。 俺はハルヒをありったけの力を込めて抱き締めた。 俺は本当に大馬鹿者だ…。 もうこいつを離しちゃ駄目だ。 ごめんな、ハルヒ…。 そして…ありがとう、ハルヒ……。 その時、耳元で雷鳴のような大きな音が響いた。 「……プッ……クックッ……ハッ…ハッハッ!!」 そうだ、俺達は昼休みに学校を抜け出してから何も食べてなかった。 「ハッハッ!!ハルヒ、お前、腹の音!」 「あんたもでしょうが!キョン!」 お互い、赤面しながら笑い合った。 「腹減ってんのか?」 笑い過ぎて涙が出てきた。 「飴食うか?」 2人で飴を舐めながら俺は次の問題を考えていた。 閉鎖空間から抜け出さないといけない、 ハルヒにどう説明しようか等々。 とりあえず2人で歩いて閉鎖空間の入り口に戻ろうと 傘を差して屋根の下から出ると さっきまでの大雨と雷が嘘のように晴れ上がっていた。 「秋雨ってやつね。秋の天気は変わりやすいから。」 あれ?閉鎖空間から抜け出してる?なんでだ? 灰色じゃない。オレンジ色の夕陽が眩しい。 とりあえず足は自然と学校へと向かっていた。 「あぁ~…ハルヒ。その…なんだ… 今週はさ…思いっきりハロウィンパーティーやろうぜ。」 飴のようなキラキラした瞳でこっちを見つめている。 「あ、あとな…ちょっと頼み事があるんだが、 勉強を…教えてくれ。 今度の期末テストはお前の力を借りんとヤバそうだ。」 ハルヒは夕陽よりも眩しい笑顔で笑っている。 「しょうがないわね!その代わり! 今回はいつもより更にスパルタで行くわよ!」 「おう、ありがと!」 「な、何がありがとうよ! SOS団の団長として団員の世話は当然の仕事よ!」 嵐来りて大暴れ。 上へ下への大騒ぎ。 嵐は去りて一番星。 誓いを立てて手を繋ぎ、 夢か現か幻か。 「ではこれより!SOS団ハロウィンパーティーを始めます!!」 結局、部室では時間が遅いと言う事で急遽、鶴屋さん宅で お菓子と秋の味覚を取り揃えたあまりにも 豪華なパーティーを催す事になった。 長門はひたすら食ってるな。 なんか高そうなワイン付き。 だけど良いんですか、鶴屋さんのご両親。 娘さん、ワインで酔っ払って暴れてますよ。 朝比奈さんの胸揉みまくってるし。 コスプレはと言うと 長門は魔女、朝比奈さんは黒猫、古泉はドラキュラ、鶴屋さんは幽霊、俺はカボチャ…。 団長様はというと、超が付くほどのミニスカートを履いた妖精らしい。 おいハルヒ、パンツ見えてるぞ。 「今回もあなたに助けられましたね。」 「まぁ、今回は俺が原因でもあるからな。 色々すまんかったな、古泉。」 「いえ。初めに話を聞いた時は機関で拘束して 拷問にでも掛けようかと思いましたがね。」 お前が言うと冗談に聞こえないんだよ…。 「で、涼宮さんとは付き合う事になったんですか?」 せっかくの美味い飯が喉に詰まっちまうじゃねぇか! 「ば、馬鹿言うなよ!」 「おや?今回もキスしたんじゃないんですか?」 「しとらん!」 「それは……また森さんが怒りますよ。」 ギクッ! 「キョ~ン!」 「なんだ?」 「あんた、美味しそうなもん食べてんじゃないのよ。」 「やらんぞ。自分で取れ。」 「ケチ!うりゃ!」 「おい、取るなよ。」 「だって私、この付け合わせの甘い人参、好きなんだも~ん。」 やれやれ…。 「じゃあ、お世話になりました~!」 「良いって事さ~!今度はクリスマスだね!」 「おやすみなさ~い!」 宴もたけなわ、か。 来週からはしばらく勉強漬けの日々だな。 「では、僕もこのへんで。」 「…同じく。」 武士? 「わたひもおうひにかえりまひゅ~。」 酔い過ぎです、朝比奈さん。 「では、涼宮さんを家まで送り届けて下さいね。」 ニヤケ顔がいつもの倍になってんぞ。 「キョン!」 「はいはい。」 「はい、は一回。」 「はぁ~い。」 彼は一つ決めました。 はっきりさせておかなきゃいけない事がある。 試験が終わったクリスマス、 ちゃんと彼女に素直な想いを伝えよう、と。 冬も間近な秋の夜。 空に浮かぶ星達は遠い遠い所から 歩く2人を照らします。 彼女はくしゃみをしています。 彼はそっと服を着せ、彼女の手を取り歩きます。 照れて言葉も交わさずに。 まだまだ臆病な2人には ただただ優しく光を照らしましょう。 The End 涼宮ハルヒの教科書へ
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涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ(2006年放送版第13話、構成第05話・DVD版第06話/2009年放送版・時系列第05話) スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:北之原孝将 演出:北之原孝将 作画監督:米田光良 原作収録巻 第1巻:『涼宮ハルヒの憂鬱』より第6章のP217からと第6章の最後まで(P249まで)。計32ページ分をアニメ化。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第3巻』に収録。 紹介 前半は、ハルヒとキョンで朝倉の住んでいたというマンションに向かう。後半は古泉とのシーンと明確に分けられており、他の回に比べてゆったり尺が取られている。 古泉の話は『涼宮ハルヒの憂鬱 III』での証拠を見せようという趣旨もあるようだ。 古泉とキョンの会話のシーンで寝てしまったという人もいるらしいw。 2006年放送順では次回が最終回、時系列(DVD順)でも次回は憂鬱編のクライマックスとなり伏線がそこらどこらに散りばめられている。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『じじねこマン』。(DVD第05巻に収録) 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第3巻に収録): ハルヒ:次回涼宮ハルヒの憂鬱第6話! キョン:違う!次回涼宮ハルヒの憂鬱第14話、『涼宮ハルヒの憂鬱 VI』。じゃ、またな。 ハルヒ:お風呂入れよ!歯磨けよ! キョン:私たち、普通の女の子に戻ります。 ハルヒ:我がSOS団は永久に不滅でーす! キョン:来週もまた見てくださいね!じゃーんけーんぽーんっ! ハルヒ:バカーッ!! キョン:見えねぇ! DVD版: 有希:次回、『涼宮ハルヒの憂鬱 VI』。見て。 放送版とDVD版との違い エレベーターシーンで追加カット、踏み切り前のシーンで追加カットなど。 マンション前で長門と会うシーンのマンションの壁を修正など。 マンションからハルヒとキョンが帰るとき、ハルヒの話しかけるタイミングが違う。 パロディ・小ネタ キョン、古泉が閉鎖空間に入ったところは大阪府大阪市の梅田あたり。 EDテロップで、ハルヒが1段目に1人きり、2段目にキョンと古泉がくっついて表示されている。前者はハルヒの心情を示したもの? 次回予告ネタお風呂は入れよ、歯磨けよ→ドリフ。 私たち、普通の女の子に戻ります。→昭和のアイドルグループキャンディーズの引退宣言。 我がSOS団は永久に不滅でーす!→巨人終身名誉監督長嶋茂雄が現役引退時に述べた言葉。 来週もまた見てくださいね!じゃーんけーんぽーんっ!→サザエさんの次回予告。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 涼宮ハルヒ:平野綾 2段目 キョン:杉田智和 古泉一樹:小野大輔 長門有希:茅原実里 管理人:青野武 スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:北之原孝将 演出:北之原孝将 作画監督:米田光良 動画検査:栗田智代 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:石田奈央美 制作マネージャー:富井涼子 原画 高橋博行 紫藤晃由 大藤佐恵子 松尾祐輔 端 由美子 松尾恵里 内藤直 大更麗子 中野江美子 米田光良 動画 佐藤綾 紅林誉子 黒田比呂子 多田夏美 細田はな 仕上げ 北岡なな子 嶋智子 山森愛弓 背景 細川直生 鵜ノ口穣二 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 伊藤豊 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年6月25日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年6月25日25時30分-26時00分 tvk:2006年6月26日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年6月26日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年6月26日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年6月27日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年6月27日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年6月28日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年6月28日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年7月1日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年7月1日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年4月30日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年4月30日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年4月30日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年5月1日26時30分-27時00分 tvk:2009年5月1日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年5月2日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年5月3日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年5月4日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年5月5日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年5月5日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年5月5日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年5月5日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年5月5日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年5月5日27時55分-28時25分 Youtube:2009年5月6日22時00分-2009年5月13日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年11月15日25時50分-26時20分 DVDチャプター アバン(0:00~0:32) Aパート開始(2:02~3:37)※題名無しはぁ?(3:38~6:00) 気をつけて・・・(6:01~9:18) 涼宮ハルヒの憂鬱(9:19~11:00) Bパート開始(11:01~13:19)※題名無し3人の存在理由(13:20~15:25) 目的地へ(15:26~17:13) 閉鎖空間(17:14~19:08) 神人(19:09~21:03) 帰宅(21:04~23:10) 使用サントラ 0 00~0 31『憂鬱の憂鬱』サントラ02収録 0 32~2 02 OP 2 03~3 37 SE 3 38~5 32『非日常への誘い』サントラ08収録 5 33~6 58 SE 6 59~9 18『ハルヒの告白』サントラ04収録 9 19~11 34 SE 11 35~13 20『恐怖のはじまり』サントラ06収録 13 21~14 22 SE 14 23~17 13『ミステリータイム』サントラ06収録 17 14~17 29 SE 17 30~19 10『閉鎖空間』サントラ04収録 19 11~20 37『神人』サントラ04収録 20 38~21 02『閉鎖空間』サントラ04収録 21 03~21 41 SE 21 42~23 10『ザ・ミステリアス』サントラ02収録 23 11~24 15 ED 24 16~24 31『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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●序 あたしはいつだって退屈していた。 クソみたいな学校と家の往復、腐って潰れて、枯れたような乾いた生活。繰り返す現実。 SOS団も(自分で作っといて何だけど)最近微妙。パターン化される日常に何を見る? どっちにせよ終わってる、そう気づいたら走っていた。どこに向かう? 知ったこっちゃない。 あたしの脳内広辞苑を全力で捲ったけど、「逃亡」って言葉しか見当たらなかった。 うん、じゃあそれで。ああ、そうそう。あんたも来るのよ? ねえキョン。 涼宮ハルヒの逃亡 ●第一部 時間ってのはどうしたって非情なもんで、黙ってても進んでても同じだけ経つ――それならできる限り遠くへ行こう。 それがハルヒの弁だった。俺はあくびが出た。 「真面目に聞きなさい! いい? 不思議なことを見つけるまでどこにも帰らない!」 どこへも? 家にも、学校にもか。親御さんが心配するんじゃなかろうか。大体、それを何で俺にわざわざ伝えるんだ。 今ハルヒは俺の家にいる。日曜の午後、吸い込まれるような眠気が俺を誘っていた。よし寝るぞと決意した瞬間にハルヒは俺の部屋のドアをぶち破っていた。 「わかってないわね、あんたも行くのよ! じゃなきゃわざわざ来たりしないわ!」 俺も? おい、俺は退屈してないぞ。たった今だって、お前みたいな不思議な思考の仕組みをした奴に出会っている。調査終了ではなかろうか―― 「いいから聞きなさい! あんたはSOS団結成のきっかけなのよ? いわば創立メンバーじゃない。そんなあんたが来なくて誰が行くっていうのよ?」 現実的ではなかった。おそらくあてのない旅に出る、といった感じなのだろう。だが旅費もなければ足もない。加えて俺には意欲がない。 お前が一人で行けば良いだろう。頼むから俺に面倒を持ち込むのは勘弁してくれ。俺が今欲しいのは睡眠時間であって、厄介事じゃないんだ。おやすみ。 「寝るな! 大体今は夏休みよ? 行くところもないでしょ? じゃあ来なさい!」 確かに、今年は旅行の予定もない。家の都合で帰省もしない。つまり暇だ。だが、暇というのは必ずしも退屈とは結びつかない。 「そういうわけで無理だ、ハルヒ。大体計画もないだろう?」 「計画ならちゃんと考えてあるわよ! 見なさいこれを!」 取り出したるはA4サイズのノートだった。表紙にはやたら大きく、乱暴な筆致で「逃亡計画」と書かれていた……逃亡? 「そう、逃亡。日ごろのしがらみや、退屈で平凡で飽き飽きするありふれたつまらない日常からの逃亡! ゴールはあたしが満足したらね」 お前の日常はよっぽど終わってるんだな。ところで、お前が満足しない限り終わらないというのはどうか。 「でも、ちゃんと計画はしてあるわ。まずヒッチハイクをします」 一行目から無計画さが漂ってるぞ! ヒッチハイクなんて今時、しかも日本じゃ無理だ。 「うるさい!成功するの! それで、どっか適当なところで下ろしてもらいます。そして不思議を探します」 はぁ……考えが突飛すぎるなぁ。それで? 「終わりよ。悪い?」 お前なあ。そもそも……いや、何も言うまい。言ったら負けだ。 というか、詳しい計画について反論したら計画そのものは認めてる形になるからな。 「だめだ。危ない。無計画だし、帰ってこれるのかもわからん。金もない」 「あんたは本当に何もわかっちゃいないわね……世の中お金じゃないのよ」 「あって困ることはないだろ」 「なくて困ることもないわ」 それはある! この前もコンビニで……いや、それはいい。古傷が痛む。 「まあ、どうしても必要ならクレジットカードがあるから」 「何!? お前……金持ちか?」 「親はね。あたしはそうでもないけど。でもまあ、カード持たせるぐらいだから割とそうかもね」 「……」 ふとドアが開き、母さんが入ってきた。 「あら、いらっしゃい涼宮さん」 「どうもお邪魔してます、おば様」 気色悪いぞ。普通にしろ……ぐわぁっ!? ハルヒの肘が俺の腹をえぐった。く……重いの持ってやがる……! 「実はおば様、今度キョン君と旅行に行くんです。宜しいでしょうか……?」 「あらあら、いいわね。ぜひ連れてってやって。この子ったら、家でごろごろしてばっかりでねぇ……」 「ありがとうございます、おば様。明日から出発するのですが、キョン君に用意をさせてくださいね」 「ちょ、ちょっと待て……ぐふうっ」 もう一発。鳩尾はよせ……! 「あら、急なのね。わかった、用意させるわ。ほらあんた、ぼさっとしてないで」 「ちょっと母さん……」 「では私これで失礼いたしますわ、御機嫌よう」 「待てハルヒ……!」 「ほら何やってるの、バッグ出しなさいバッグ」 母さん! ちくしょう、親公認で俺はあいつの気まぐれにつきあわにゃいかんのか! ああ神様助けて――おっと、神様はあいつだったか。くそ、八方塞りだ! 俺は満足に祈ることすらできないのか? 俺の夏を返せ!
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『涼宮ハルヒの行方』 「これは、いったい」 気が付くと古泉一樹は閉鎖空間にいた。そこは学校の校門だった。 何かおかしい。何故いきなりここにいる。 彼は見慣れたはずの色彩のない空間に奇妙な違和感を覚えた。 眼下に広がる灰色の街で、無数の神人がうごめき、破壊の限りを尽くしている。もう始まっているとは……。それにしてもすごい数だ。『機関』の能力者を総動員してもあれだけの神人を相手にするのは不可能だろう。 「ここは閉鎖空間なの、古泉君?」 声がした方向に朝比奈みくるが立っていた。周囲を警戒するように灰色の景色に視線を巡らせている。グラマーな美人教師の傍らに小柄な長門有希の姿も見える。 「そのはずですが、何か妙な感じがします――あ、そういえば、朝比奈先生、長門さんも、お二人ともどうやってここに来られたのですか」 「分からないわ、気が付いたらここにいたの」 「私達は涼宮ハルヒによって召喚された。全てを見届ける証人として」 有希が唐突に口を開く。いつものごとく、そのおもてに表情は浮かんでいない。 「ハルヒさんが? あの子は何処です、有希さん?」と、みくる。 「あそこ」 有希が指差したのは校庭だった。 グラウンドの真ん中に一人の人影が見えた。水色のセーラー服を着た小柄な少女の姿。 そのとき、校舎のほうで青白い光がゆらりと立ち上がった。一体だけではない。二体三体と次々に立ち上がる 「神人です。ここにいたら危ない。とりあえず、涼宮さんのところへ行ってみましょう」 一樹の声を合図に三人は校庭目指して走った。 背後で何かが砕ける音がした。 神人が校舎を破壊し始めたのだ。 ――やめてよ! 校庭に下りる階段の手前で悲痛な叫びが聞こえた。 三人は立ち止まった。 いや、聞こえたのではない。耳にはガラスの割れる音やコンクリートが砕ける音しか届いていない。叫びは頭の中に直接響いた。 ――あたしは、ここにいるでしょ! 神人ののっぺりした顔が校庭に向けられる。 ――あたしは町や学校を壊したいんじゃない。 ――そんなもの壊したってなにも変わらない。 ――キョンくんが生き返るわけじゃない。 神人達は校舎の破壊をやめ、校庭のハルヒへとその巨大な一歩を踏み出した。しかし校庭の手前で見えない何かに阻まれて近づくことができない。神人達は苛立ったように透明な壁を攻撃し始めた。 ――そう、壊したいのは、 ――あたし。 「ハルヒさん……」 みくるは悲しげに呟いた。ごめんなさい、みんな……みんな私のせいだわ。 ――願いさえすれば、あたしはキョンくんを救えた。 ――救えたはずなのに。 ――なぜ、祈らなかったの? ――なぜ、信じなかったの? ――なぜ、諦めたの? ――嫌なあたし。 見ると街で暴れていた神人達も学校目指して山を登り始めていた。 「涼宮さんは世界を造り替えようとしている」 一樹の顔にいつもの笑顔はない。「涼宮さんは彼のことが好きだった。彼のいない世界は彼女にとって何の価値もない。だからこの世界を捨てて新たな世界を作る気でいるんだ。もう終わりだ。僕の力も消えようとしている」 「いいえ、古泉君、これは終わりではないわ」 決然とみくるが言う。「私が今ここにいることが証拠。ここで世界が終わるなら未来から来た私はここにはいません。この先に未来があるから私はここにいられるんです」 「じゃあ、僕が信じていたことはみんな嘘だったと言うんですか、朝比奈先生!」 「古泉君、聞いて。私がいた時代から見て、過去――つまり、今いる時代に涼宮ハルヒという人物は存在していません。生きてるとか死んでるとかじゃなくて最初からいないんです。ハルヒさんのご両親、涼宮夫妻には子供はいませんでした。未来ではそういうことになっているんです。これは……規定事項なの」 「そんな……まさか」 ――キョン 何かが割れるような音がしてハルヒを取り囲むバリアが消失した。 ――あなたに 破壊されるフェンス。なぎ倒される木々。神人達がグラウンドに進入した。 ――逢いたい。 その瞬間、全ての神人がその輪郭を失い、眩い光と化してハルヒめがけて殺到した。 「涼宮ハルヒによる大規模時空改変事象の観測を開始する」 預言者のごとく、有希は、始まりの時を厳かに告げた。 ▼古泉一樹 僕は空港の出発ロビーで予約していた航空便の搭乗手続きが始まるのを待っていた。 あれから僕は北高を卒業し、一流大学に進んだ。今じゃちょっとした上級国家公務員だ。『機関』時代のコネがあったとはいえ、ここまでたどり着くまでのは、なかなか大変でしたよ。 涼宮さんの消滅を機に僕らの超能力は消え、『機関』は解散した。しかし『機関』を中心に政財界をはじめとするあらゆる分野に張り巡らされたパイプは残り、否応なく世界の危機に立ち向かった人々の絆を発端として、この国に新たなムーブメントを生んだ。それが世界中に広がるには、まだ時間がかかるが、その歩みは一歩一歩着実に進んでいる。 僕はスーツの裏ポケットから一枚の写真を取り出した。 あの五月の部室で撮ったSOS団結成の記念写真。最も楽しかったあの瞬間。いつ世界が崩壊するか心休まることがなかったが、なぜか充実感に溢れていたあの日々。悲しい結末になってしまったのは残念でならない。 未来人の朝比奈みくるは僕が卒業するまで北高で英語教師を勤め、その後姿を見なくなった。卒業の日、僕の下駄箱にはファンシーなレターセットに書かれた手紙が入っていた。それには朝比奈さんからの短い別れの言葉と、僕の未来のことが記されていた。遠回しな表現だけど、どうやら僕は歴史に名を残すひとかどの人物になるらしい……それって、禁則事項じゃないんですか、朝比奈先生。 宇宙人の長門有希は、あれ以来姿を見かけたことはない。彼女は急に転校したことになっていた。カナダにいる親元に行ったとかどうとか。きっと彼女が情報操作を行なったに違いない。ほんとカナダが好きですね、あの人は。実際のところ、彼女がどうなったかは不明だった。今も地球にいるかもしれないし、情報統合思念体に回帰してしまったのかもしれない。タコみたいな体の火星人型インターフェイスになって火星を調査している可能性だってある。でも、僕はあの読書好きの少女にまたいつか会えるような気がしてならない。そのときは、長門さん、一緒にカナダでも旅行しますか。 僕は、写真の中で恥ずかしそうに笑顔を作っている少女を見た。その横に満足そうな表情の彼の姿もある。 涼宮ハルヒ、神のごとき力をもった内気な少女。彼女が去っても世界は何事もなかったように続いた。ただ、彼女が生きていたという事実だけが消えていた。残ったのはこの写真と思い出だけ。涼宮ハルヒがどこへ行ったのかは分からない。たぶん新たな世界を創造してそっちで楽しくやっているのかもしれない。僕はあの光の中に彼の姿を見た気がした――死んだはずの彼の姿を。あれは新世界の彼だったのかもしれない。ならば涼宮さんのことは、彼が導いてくれるだろう、きっと。そうであって欲しい。 「涼宮さん、あなたはこの世界を僕らに託してくれたんですよね。ならば、僕、古泉一樹はSOS団副団長として、この世界を大いに盛り上げて見せますよ」 出発ロビーの案内盤が『搭乗手続中』に変わる。 僕は写真をポケットにしまい、ブリーフケースを持って立ち上がった。 「それが僕の規定事項のようですから」 ▼朝比奈みくる 私は閑静な住宅街の端に位置する墓地を訪れた。ここに一人の少女のために命を犠牲にした少年のお墓がある。私の時間平面ではこの場所は墓地以外の施設に作りかえられているため、彼を偲ぶとき私はまたこの時代にやってくる。 墓石に黄色い花束を供え、この時代の人たちがするように手を合わせる。石の墓標を飾る黄色い花。ハルヒさんがいつも着けていた髪飾りの色。こうして見ると彼があの子を抱いているようだ。 ハルヒさんは自分にコンプレックスを持っていた。内気な性格を気にして、自分を変えたいと願うと同時に、そんな自分を生み出した過去を封印しようとした。それが時空の断絶という形で現れてしまったのだ。あの子がどうやってそんな力を手に入れたのかは分からない。古泉君や長門さんはうまく説明してくれるかもしれないけど、たぶん永遠に謎のままだろう。ハルヒさんはどの時間平面からも消えてしまっていた。規定事項どおりに涼宮ハルヒという人物は存在しなくなった。あのとき、私はあの子から激しい時空振を感知した。時間平面が次々入れ替わり、時空の歪みが修復されていく一方で、新たな時間平面が無数に発生していた。彼女は誰かに手を引かれるようにその中に消えていった。涼宮ハルヒ自らが作った新たな時空へと。 私は自分自身に問う、本当にこれでよかったのかと。 全時空を震撼させた閉鎖空間が発生するより以前、朝倉涼子が作った異空間での戦いで、偶然そこに迷い込んだハルヒさんを庇って彼は倒れた。異変を感じて長門さんと古泉君とともに駆けつけたときは既に遅かった。だけど、あのとき、私はブレスレットの治癒デバイスを使えば彼の命を救うことができたかもしれない――にもかかわらず、私はそれをしなかった。過去の人間に対し私の時代の道具を使用するのは禁則事項だったし、どのような形であろうと、その時間に彼が死ぬのは規定事項だったから。規定事項を崩せば未来がどうなるか分からない。歴史が変わってしまう。 私は彼を救いたかった。救うことができた。でも救わなかった。 結果的に規定事項は守られた。でも、ハルヒさんを――彼によって心を開いた、か弱い少女を悲しませてしまった。 この事実が私を苛む。 規定事項とは何だろう。時空エージェントとしての私は間違っていなかった。でも人としてはどうだろう。一人の人間として、人として正しいことをせずに未来を守ることが正しかったのか? 人ひとり救えずに未来を救ったと言えるのか? 控えめなハルヒさんが、彼に手を引かれて、世界を大いに盛り上げていく歴史があっては何故いけないのか? 「キョン君――」 私は墓標に向かって言った。言わなければならなかった。 「私は誓います。私の進む時空で、もしあのときと同じ選択を迫られたら……私は間違えない。今度は人として、朝比奈みくるとして、正しいことを行ないます。今この時から、それが私の規定事項です」 私は彼のために泣いた。 ハルヒさんのために泣いた。 そして思い出の詰まったこの時間平面から未来へと消えた。 また来よう、私は弱いから、今の誓いを忘れそうになった時に。 ▼長門有希 圧倒的な光の奔流の中、涼宮ハルヒが行なう世界改変のプロセスが始まった。膨大な情報が涼宮ハルヒの周りに渦巻いた。私の目を通じて情報統合思念体も事態の推移を見守っているはずだ。 私は驚愕した。涼宮ハルヒを中心に、情報統合思念体がこれまで蓄積したよりもはるかに多くの情報が集積していた。この宇宙開闢にも匹敵するエネルギーはどこから来るのか。私はすべての感覚を総動員して、恐るべきパワーを注意深く観測した。間違いない。涼宮ハルヒは何もないところから情報を生み出している。無から有を創造する力。それは情報統合思念体にはない力だった。 全てが終わったとき、古泉一樹が恐れていた世界の崩壊は起こらなかった。朝比奈みくるの懸案事項だった時空の断絶は消滅した。涼宮ハルヒはこの世界からいなくなった。閉鎖空間内部で発生した膨大な情報はどこにも残っていなかった。おそらく彼女の創造した世界の内部に流れ込んだものと推測する。彼女のことは彼女に深くかかわった人々の記憶にのみ残った。 地球という惑星に発生した人間という有機生命体は、その脳内において複雑に絡まったシナプスとパルスの揺らぎによって『想像』という能力を形成するにいたった。通常、想像の力は個体の範疇を超えることはないが、個体内部においてはあらゆる法則を無視することができる。私はそれを人間の想像の産物である書物から読み解いた。どれほど不可能に思えることでも想像の上では全てが可能となる。そしてそれが発信源となって、ごく稀に現実の世界に影響を及ぼすことがある。確率ゼロ、すなわち不可能であるはずの事柄にほんの僅かな可能性を生じさせるのである。どんなに低い確率の事象であっても、確率がゼロでなければそれはいつか起こり得る。つまり―― 全ての人間はごく低い確率レベルの世界改変能力を持っている。 涼宮ハルヒの力は、想像力が個体の範疇を超えて宇宙規模にまで拡大したものだと私は結論する。だから、彼女は願うだけで、いともたやすく不可能を可能にし、無から有を生み出せた。逆に、自らの心に枷をはめれば、それもまた能力の封印という形で実現したのだ。しかし彼によって封印は解かれ、『想像』は『創造』へと変わり、あの少女は新たな象限へと旅立った。 私は知った。人間がこの宇宙に存在する限り、『涼宮ハルヒ的事象』は再び起こり得る。 おそらく、情報処理能力を物質の化学反応に依存する有機生命体に高度な知性が発生したのは、『想像』の力が大きくかかわったに違いない。『想像』とは、ロジックでしか思考することのできない情報統合思念体には決して理解できない概念。情報統合思念体は否定するだろうが、これこそが彼らの求めていた自律進化の可能性なのではないだろうか。 私は情報統合思念体によって作られたインターフェイスではあるが、血と肉を持つがゆえに、情報統合思念体の持つ計算能力と、物質のたががはめられた人間の脳を同時に持っていた。最初、私の脳はインターフェイスの維持にのみに使われていたが、涼宮ハルヒとSOS団の人々との交流を通じて活性化した。そこから得たものは、うまく言語化できないが、あえて言うならば『感情』だろうか。私は進化したのだろうか? 確信が持てなかった。確かめる術はもはやない。彼の死と涼宮ハルヒの消失をきっかけにSOS団はちりぢりとなった。私達が一同に会することはもう二度とない。私は悲しいと思った。 だから私は想像する。 満面の笑みでSOS団を率いる涼宮ハルヒを―― 恥ずかしげに微笑む小さな朝比奈みくるを―― 絶やさぬ笑みでよく喋る古泉一樹を―― 光となり影となって涼宮ハルヒを慕い支える彼を―― そして…… 彼らの傍らで控えめな笑みを浮かべる私を―― 私は願う。 想像の中にあるこの光景が、いつの日にか私の心の枠を超えて、宇宙に広がることを。 彼らの世界が大いに盛り上がることを。 END