約 412,540 件
https://w.atwiki.jp/tsvip/pages/302.html
(ああ、だるい……) 蒲団の中で彼女は身じろぎをする。つい昨日、天気雨に急に打たれ、その時はちゃんと対処したつもりであったが風邪を引いてしまった。 (あいつはどうなってんのかな……) 雨が降っていたとき、彼女と一緒にびしょ濡れになってしまった少年の事を考える。だがすぐに、 (ま、あいつは風邪引かないだろ) と考えを改める。 昨日の雨など、まるで嘘のように晴れ上がった日の、けだるい午後の事である。 「おーうい、真樹―?」 扉の向こうにいるであろう少女に声を掛けてみる。 学校も終わり、今朝見かけなかった少女を心配してやって来れば、どうやら風邪を引いていると言う。 「開けちゃうぞー?」 この武井という少年は、何の返事も無いので勝手に扉を開けた。 かちゃり。 5畳半程度の部屋に蒲団が敷いており、その中に埋もれるように少女が寝ていた。鼾もかかずに、実に静かに眠っている。 「……結構大丈夫そうだな」 急に扉の向こうから馴染みのある声が聞こえて来た。返事をするのも億劫なので無視していたら、そいつは部屋に入ってきた。そして寝ている真樹の顔を覗き込むと、 「……結構大丈夫そうだな」 そう呟いた。 (な、何で勝手に入って来てんだよ) 咄嗟に寝たふりをしたはいいが、そのせいで声を掛けづらい状況になってしまった。今から起きだしても、返事をしなかった事や、寝たふりをした説明をするのも面倒くさい。 (ていうか、なんで寝たふりなんてしちまったんだ……?) 一人で悶々と考え込んでいると、少年が急にこちらに顔を向けじっと見てきた。 少し薄目を開けて少年を観察していた真樹は、あわてて目を瞑った。 視線を感じて、武井は少女の顔をまじまじと覗き込んだ。 だが、別段目を開いている様子はない。 「ま、目を開けて寝る人もいるからな」 少し落ち着いて周囲を観察してみて、改めてここがこの少女の自室なのだと気が付いた。 だが―――、 「男部屋、だなあ……」 まるっきり「女のコの部屋に入っちゃった!」という感じがしない。 勉強机(らしい)の上には雑誌や漫画が大量に置いてあり、床には服やバッグなどが散乱している。 「男部屋、だなあ……」 少年がそう呟いた。 (うるっせえ) 真樹は心の中で毒づく。 「あ、でも――」 (ん?) 一拍おいてから少年は、 「女のコの部屋っぽい、いい匂いはするかも」 (嗅いでんじゃねえええ!!!!) 「女のコの部屋っぽい、いい匂いはするかも」 全くの想像なのだが、女の子の部屋は何やら蜂蜜だかお花だとかの、イイ匂いがするものだと武井は思い込んでいる。 すると、蒲団の中の少女が少し身じろぎした気がした。 「……?起きたのか?」 武井は屈みこんで、少女の顔を見つめた。今までここまで近づいて顔を見たことは無かったな、と武井は思った。 熱がある為だろうか、頬がほんのり赤く染まっており、普段より艶っぽい。 瞼は閉じており、まつ毛が綺麗に上に向かって伸びている。 小さく閉じられた唇も、何故だかいつも以上に潤って見え、触れたら崩れてしまうプリンのように見えた。 小さく、本当に小さく呟いた。 「かわいい………」 小さく、本当に小さくしかなかったので確証は無かったが、真樹にはこう聞こえた。 「かわいい………」 と。 途端に体中の血液が顔に登ってきた気がした。 居ても立ってもいられず、がばりと起き上がってしまう。 「うお!?お前、起きてたの!!??」 少年は目を白黒させる。真樹はこくりと頷いた。 「え?……寝たふり?」 これにも頷く。 「って事は……、今までのも全部見てたり、聞いてたり……?」 頷く。 「……………エッチ」 「こっちのセリフだあああっ!!!!」 適度な運動は風邪に良いんだっけ、家の中から武井を蹴り出してから真樹は思った。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/43001.html
しとれあえ【登録タグ VOCALOID かしこ。 し 初音ミク 曲】 作詞:かしこ。 作曲:かしこ。 編曲:かしこ。 唄:初音ミク 曲紹介 「小さく抵抗をするの」 かしこ。氏のVOCALOID曲20作目。 歌詞 (PIAPROより転載) 外はもう 冷たい空気 缶コーヒーが さめてゆく 手で包んで あたためてみた 元には戻らないのに 開かない踏切の前で 君は不意に線を引いた 柑橘混ざった上空 もう浮かばない 常套句 まぶたの裏が熱い もうgame over it’s over ありふれた事情で sayonara 何かを言いかけた 私の声を 列車が遮った 切れた赤い糸 照らした街灯 あいくるしい日々に揺れて 出来損ないの笑顔を作っては 見えないふりをした お揃いにはなれないと知っていてもなお つま先立ちで 触れてみた くちびるに沁みていく citreae 小さく抵抗をするの 知らないことが増えていって 知らない君が増えて 模倣品のエンドの心象 潜む影の陰の浸透 あの日からハジマッテイタ 違う絵の具が 落ちる映像を となりでずっと見ていた 君の世界の色水のなかで 私が薄まっていく 「君のせいじゃないよ、本当にごめんね」 その言葉が 胸にめぐり 2人の日々の 最後の理由に 私はなれなかった ねぇgame over it’s over? ありふれた日常に sayonara 踏切の向こうに何がありますか? 遮断機が上がってゆく 切れた赤い糸 照らした街灯 あいくるしい機微は遠く 出来損ないの ハート作っては 手を繋いでいた お揃いにはなれないと知っていてもなお アウターの腕に凭れた 鼻先に沁みていく citreae エンドロールの隅っこで 小さく抵抗をするの コメント マジで切ないこの感じが最高です -- カオス (2021-06-20 06 43 21) 『君のせいじゃないよ、本当にごめんね』つらすぎる………刺さる………めちゃくちゃすき -- あらばん。 (2021-10-31 23 19 53) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/akatonbo/pages/1964.html
AzⅡ 作詞/即興魔 僕が居た場所に君が居る いつも君は人に囲まれて微笑んでいる 時々ふと思い出すんだ あの頃の自分を、あの場所に居たはずの僕を ずっと、ずっと…そう、ずっと 僕は一人で「頑張ろう」って言って いつか、きっと…そう、きっと… 僕は一人で笑っていた 振り返れど家路は遥か遠く 後戻り出来ない所まで来た それでも誰も僕に気付かない 部屋の隅で小さく蹲って… 少しずつ小さくなった背中 あまりにも小さすぎる両手 この手で何が出来るだろう? この手で何を救えただろう? 明日、もし…そう、もしもの話 僕は一人で「もう駄目だ」って言って 過去を捨て、未来も捨てたなら、そう 誰か僕の為に頬を濡らすだろうか? 輝いてた時間なんて無くて 誰もが「強い人」だって信じてる でもそんなのは幻で今でも 僕は一人泣いていた。 音源 AzⅡ(歌入り)
https://w.atwiki.jp/kubo-zemi/pages/1268.html
トップページ 新聞論評 新聞論評 20010 新聞論評 20100118 this Page {2010年1月18日 締 切 新聞論評 学籍番号 200814080 氏名 柏成昭} 1.新聞情報 見出し 韓国の仁川空港 世界の127都市と直結 新聞名 日本経済新聞 朝刊 発行日 2010年1月14日 面数 11面 2.要約 アジアの主要空港で、成田や関西など日本の国際空港の存在感は小さくなっている。国際空港評議会(ACI)によると、2008年の年間発着回数は成田の19万4400回に対し、韓国の仁川は21万2600回、中国・上海の浦東は26万5700回。(99文字) 3.論評 日本の成田や関西の両国際空港の存在感はアジアの主要空港では小さくなっている。年間発着数は成田が19万4400回、仁川が21万2600回、浦東が26万5700回と発着回数は成田よりもこの中韓2空港が多かった。旅客数は仁川、浦東よりは上回る3347万人だった。しかし、今後旅客数は仁川、浦東との差が小さくなっていく。また、路線数は仁川が中国国内を除く127都市を結んでいるが、成田は93都市と仁川がかなり多い。そのため、仁川は日本の地方から欧米などへの旅行客の中継拠点の地位を成田から奪っているほどである。また、着陸料も気になるところだ。その気になる着陸料は中型機「ボーイング767-300」が成田の場合、33万2150円。関空の場合、38万380円と直近の為替ルートならば仁川が6分の1で浦東が3分の1といずれも成田や関空より安いのである。空港経営に詳しい平井小百合(大和総研)は「仁川は着陸料を無料化にするなどの大胆なマーケティングで路線便を増やす」というのだ。(400文字) コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/occultfantasy/pages/2198.html
ハンガリー 狐 ローカ(Róka) ハンガリー語で狐のこと。 旅立った二匹の子熊(メドヴェボチ Medvebocs)が母に貰った食糧を食べ尽くして腹を空かしながら深い森で歩いていたらチーズを拾い、そしてどんなことがあっても喧嘩してはいけないと母に言いつけられていたにもかかわらず双方ともに自分がそのチーズを分けると言いだして喧嘩を始めた。そこへ現れた狡賢い狐のおばさんにチーズを二等分にしてもらったら狐はわざと片方を大きく分け、大きさが違うと子熊たちが叫ぶと狐は大きい方の欠片を齧って小さくし、そっちが小さくなったと子熊たちが叫ぶと狐はもう片方を齧った。これを繰り返しているうちにチーズは小さな欠片になり、そして狐は逃げてしまった。 参考文献 内田莉莎子/君島久子/山内清子/鈴木裕子『こども世界の民話(下)』182頁 矢崎源九郎『子どもに聞かせる世界の民話』62頁
https://w.atwiki.jp/gensounokeihu/pages/32.html
その他のアイテム。 基本的に自分に使用するもの。 名称 Lv 威力 命中 必殺 射程 重さ 耐久 特攻 値段 備考 傷薬 - 0 0 0 -- 0 3 300 HPを10回復する。 治療薬 - 0 0 0 -- 0 3 1500 HPを30回復する。 特効薬 - 0 0 0 -- 0 3 3000 HPを全回復する。 毒消し - 0 0 0 -- 0 5 500 毒状態を回復する。 金剛酒 - 0 0 0 -- 0 3 900 守備を上げる。ターン毎に効果は小さくなる。 御神酒 - 0 0 0 -- 0 3 900 魔防を上げる。ターン毎に効果は小さくなる。 たいまつ - 0 0 0 -- 0 5 500 自分の周囲を明るくする。ターン毎に効果は小さくなる。 進化の宝玉 - 0 0 0 -- 0 1 10000 LV10以上のユニットをクラスチェンジさせる。 転生の宝玉 - 0 0 0 -- 0 1 3000 LV30以上のユニットをLv1に戻す。 黒曜石 - -- -1 -- -- -1 ∞ 5000 売却専用アイテム 翡翠 - -- -1 -- -- -1 ∞ 10000 売却専用アイテム 黄金 - -- -1 -- -- -1 ∞ 20000 売却専用アイテム 天女の羽衣 - -- -1 -- -- -1 1 8000 体力+7 太陽の雫 - -- -1 -- -- -1 1 8000 力+2 月光の粉 - -- -1 -- -- -1 1 8000 魔力+2 阿礼の書 - -- -1 -- -- -1 1 8000 技+2 大天狗の羽 - -- -1 -- -- -1 1 8000 速さ+2 龍神の像 - -- -1 -- -- -1 1 8000 幸運+2 天界の桃 - -- -1 -- -- -1 1 8000 守備+2 対魔術印 - -- -1 -- -- -1 1 8000 魔防+2 懐中時計 - -- -1 -- -- -1 1 8000 移動+2 星の帽章 - -- -1 -- -- -1 1 8000 体格+2 グリモア - -- -1 -- -- -1 1 8000 武器の武器LVを全て+1 データはゲーム内での表記をそのまま記載しています
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/44.html
ガード・ガントレット C 水文明 (1) クロスギア ■クロスギア:このカードをバトルゾーンに置く。クリーチャーにクロスするには、このカードのコストをもう一度支払う。そのクリーチャーがバトルゾーンを離れても、このカードはバトルゾーンに残る。 ■自分のコスト1のクリーチャーに、このカードをコストを支払わずにクロスしてもよい。 ■これをクロスしたクリーチャーがブロックする時、カードを1枚引く。 作者:赤烏 「ガード」系クロスギア。 カードイラストには《アクア・ガード》がいるようなイメージでどうぞ。 フレーバーテキスト MG-14 「FLAMMABLE ICE AGE」本当の知者は、小さく小さく海底に潜むものさ。 ---アクア・ガード 収録 MG-14 「FLAMMABLE ICE AGE」21/21 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2341.html
同族殺しが、「13階段」の異空間を脱出した、その瞬間を 「13階段」の契約者たる広瀬 辰也は確かに感じ取り……ぞくり、体を震わせた 辰也は、「13階段」の異空間内で何が起こっているのかを、察知する事ができる 「13階段」内で、引きずり込まれた犠牲者がもがき苦しんでいるのも 憎悪の言葉を吐き出しているのも、必死に助命の言葉を叫んでいるのも 引きずりこもうとする亡者達に、必死に抵抗している様子も ………命の火を消す、その瞬間も 全てを、好む好まざるに関わらず、知る事ができるのだ …そのせいで、かつて「第三帝国」のドクターを引きずり込んだ時、色々と感じ取って悪寒も感じてしまったのはさておき とにかく、あの同族殺しが「13階段」内から脱出した事は事実だ 辰也は、小さく舌打ちする 「……辰也?どうした…?」 「…同族殺しが、「13階段」から出た」 ぴくり 辰也の言葉に、隣を歩いていた恵が小さく体を震わせた 遠目に、ではあるが、恵も同族殺しの強さを見ている 怯えた様子の恵の頭を、辰也はぽふぽふと、優しく撫でてやった 「大丈夫だって…とりあえず、宏也と「第三帝国」の連中に連絡しとくな」 「……くけっ」 こくり、小さく頷いた恵 辰也が携帯電話を弄りだしたのを見て、邪魔してはいけないと思い、静かに見つめる 「……あぁ、宏也か?……---------------」 途中から、辰也が話している言葉が、恵には全く理解できないものに変わった 辰也は、自分が理解できる言語ならば、話し掛けられた言語でそのまま返事を返す癖があるのだ まずは、黒服Hに電話をかけたようだから、案外、「組織」の者にだけ通じる暗号会話なのかもしれない いや、もちろん、ドイツ語やフランス語の可能性も充分になるのだが 話している内容は詳しくはわからないが、辰也の表情や声の調子で、何となくは、わかる 口では色々と言いながらも、辰也にとってあの黒服が、家族同然の存在である事も、伝わってきて それを、羨ましいな、と恵はこっそりと考えるのだ 自分には、家族といえるような存在は、いなかったから …今の、一緒に生活している仲間達が、初めての家族のような存在 他には、そう言う存在はいなくて 皆の、家族や、家族のような存在がいる、いた、と言うのが…少し、羨ましいのだ 黒服Hと、「第三帝国」、二箇所への連絡を終えて はぁ、と辰也が小さく、ため息をつく 「悪い、待たせたな」 「…大丈夫、だ」 行こう、と きゅ、と辰也の手を握った恵 辰也はその手を握り返し、歩き出す 恵にとって、辰也は大切な家族で 大切な家族だから、護りたいと思う、力になりたいと、思う ……だから、同時に その家族の大切な存在をも、護ってやりたいと、助けたいと願うのだ fin 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち
https://w.atwiki.jp/hb_wiki/pages/82.html
失くしてしまった想い出は 胸の奥底に隠してしまった 当てはまることの無い鍵を探してる ありふれた日常はいつも 大切な物を失くしてしまった 見つける事も不可能な幻影を追っている 人は迷いの森に迷い込んだ弱いもの 時には叫べばいい 舞い降りた天使は小さく頷いて ほんの小さな鍵をくれた ほんのりあったかいその鍵は 僕にやさしく刺さってゆく 僕の中に生まれた深いあったかい思いは 心の一番深い所に芽吹いた いつか誰かが教えてくれた「命の尊さ」ってやつを 僕が忘れてた命のあたたかさ 人は過ちを繰り返す 愚かな小さい物 でもあったかくてやさしい 舞い降りた悪魔がささやく時 人は残酷にもやさしさを 忘れる 一番やさしい水をあげよう あなたの心に染みわたってゆく あなたを作る全てのものに あなたの愛する全てのものに あなたを愛する全てのものに 水を上げよう 芽を育てよう 舞い降りた天使は小さく頷いて ほんの小さな芽をくれた 舞い降りた悪魔は去っていった やさしい水を降らせて ゆっくり つぼみを 開いた
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/2639.html
不確定性原理の話 ◯注意事項 今回のお話は、物理の話が多分に出てきます。なので、数式とか難しい話がいやだと言う方は "スルー推奨" です この番外編は内容ゆえに"実験的な側面が強い"です 反応を見てどういう感じになるのかを見ようと考えています 作者は素人です。自分なりの解釈が多かったり、個人の考えを入れてたりするので、かなりの所で間違えている可能性が大です。その時はご了承下さい。間違えてたらご指摘いただけると幸いです (これを全て鵜呑みにしないでくださいってことです) 修正 一部修正しました。アインシュタイン云々の話がディラックの海云々の話に変わりました ニパ「なあ、俺。聞きたいことがあるんだけど…聞いてもいい?」 俺「おう。 それで、質問というのは?」 ニパ「最近聞いたんだけどさ、不確定性原理が破られたっていう話は本当なのか?」 俺「不確定性原理の話ねえ…。そういえばニュースでやってたっけ。 というか急にどうしたんだ?熱でもあるのか?」 ニパ「んー、なんというかさ…周りの皆が凄い騒いでたからさ」 俺「なるほど。 それで、知ってるかもしれない俺に白羽の矢が立ったと?」 ニパ「うん、俺は技術士官だしさ、知ってるかと思って…」 俺「うーん、知ってるには知ってるけど、専門分野が違いすぎるしな。…でも素人レベルでもいいというなら答えるけど」 ニパ「その程度でもいいよ。 それでさ、破られたっていうのは本当なの?」 俺「破られたっていうのはちょっと語弊があるかな。 正確には、不確定性原理の式に項を2つ足してやって位置と運動量の誤差を 0にすることも可能だっていうのが正しい。要は、精度を高めることができますよっていうのを提唱したわけだ」 ニパ「なるほど、よくわからんな…。そもそも不確定性原理って何?」 俺「まずそこからか。 んーっと、簡単に言うと、"位置と速度(運動量)を同時に求めることができない"っていう話だな」 ニパ「まるでイメージが沸かないんだけど…どういう原理でそうなるんだ?」 俺「ひとつ例をあげよう。ある粒子…例えば電子の位置や運動量を同時に測定したい場合、光を当てて観測するわけだが、 その場合色々と面倒事が生じるんだ。 波長の短い光で測定したとすると、位置は正確に計れるが、光子のエネルギーが高いため粒子の速度が変わってしまう。 一方で、波長の長い光で測定すると、エネルギーが低いので正確な速度が求められるが、光の波が電子を通過しやすいため 位置を正確に測ることはできなくなる、ということだ」 ニパ「んー、よくわからないな。 ところで俺はさっき語弊を招きやすいって言ってたけど、どういう意味?」 俺「うーんと、それには数式を使って説明する必要があるかな」 ニパ「うへー、数式かあ…。それはちょっとなあ…」 俺「そこまで難しい計算とかはださないので、安心してくれ。中学か高校レベルの知識があれば大丈夫だ」 ニパ「ほんとかなー」 俺「どうしてもわからなくても、ニュアンスで伝わればいいかなって感じ。やはり不確定性原理の話はややこしいからね。 俺自身、本質的な部分はノータッチだし。 さて、改良前のハイゼンベルグの不確定性原理の式は以下のようになることが知られている」 Δx・Δp≧h/4π(定数) …(1) ここで、 h:プランク定数 Δx:位置の誤差 Δp:運動量(速度)の誤差 ニパ「この式だけ見てもわからんぞ」 俺「当然これだけじゃ、わからないだろう。この式の意味はみたまんま、"位置と運動量の不確定さの積はある定数よりは 小さくならない"という式だ。つまり、"位置と運動量の誤差の積がその定数以下にならないので、これ以上の精度は望めない" ということだ。 まずこの式の意味を知るには、厳密性にはかけるが式を以下のように書き換えるとわかりやすい」 Δx・Δp=定数 …(2) 俺「さて、ここでひとつ一例をあげよう。例えば、位置を測定によってある程度まで求めたとしよう。すると、位置の誤差Δxは 必然的に小さくなるだろう。しかし右辺は定数であるため、式が成り立つためには運動量の誤差Δpは大きくなる必要がある。 そしてもちろん、運動量をある程度まで求めたとするならば、運動量の誤差Δpは小さくなり、位置の誤差Δxは大きくなるとい うことも成り立つ。故に、この式は不確定性をうまく説明しているといえよう」 Δx・Δp=定数 大 小 ←どちらも成り立つ! 小 大 ニパ「なるほどなー。それで、語弊云々の話とどう関係があるんだ?」 俺「うん、それでだね…もし"右辺の定数を小さくした"とすればどうなる?」 ニパ「右辺が小さくなるから左辺も小さくなるね…。そうなると、ΔxとΔpの積も小さくなって…あ、そうか。 ΔxもΔpの値も 小さくなるか。 …ということは、測定の精度をあげるにはその定数を小さくすればいいのか!」 俺「そのとおり。だから、精度をあげるには右辺の定数を小さくすればいいというわけだ。じゃあ、これを踏まえて (1)の式をもう一度眺めてみよう」 Δx・Δp≧h/4π …(1) (再掲) 俺「"位置と運動量の誤差の積が、定数(h/4π)以下にならないので、これ以上の精度は望めない"と先に述べた。じゃあ、 この不等式において右辺を小さくしてしまえば…」 ニパ「確かに右辺の値を小さくすれば、同時に求めようとしている位置と運動量の測定値の精度は高められるな」 俺「そうそう。 これで不確定性原理と精度の関わりについてわかってきたかと思う。ここで、ようやく小澤さんの式が登場する わけだ」 ニパ「お、やっとここで登場か」 俺「さて、彼がやったことというのはハイゼンベルグの式をいじったことによって、従来の測定限界を破ることに成功した、という ことだ。彼は、元の式に2つの項を追加した。すなわち…」 Δx・Δp +σx・Δp + σp・Δx ≧h/4π …(3) ここで、 σx 測定前の位置の量子ゆらぎ σp 測定前の運動量の量子ゆらぎ ニパ「な、なんじゃこりゃ…。 なにがどうなってるんだか…」 俺「んー、なんというかね。 これは俺も説明が難しいね。量子ゆらぎに関しては、もともと物体に備わっている性質という イミフな話らしいので、これは俺自身も確かなことは言えない。だが、少なくともこの項を追加したことによって精度が 高まっているのは確かだ」 ニパ「これでどうやって精度が高まっているって言えるんだろう」 俺「従来の式(1)のままだと、位置と運動量が同時に定まったとき(Δx=0、Δp=0)、式が成り立たなくなってしまうんだ。 ΔxとΔpのどちらも0になると、おかしなことになる。つまり以下のような感じだ」 Δx・Δp≧h/4π …(1) (再掲) もしここで、Δx、Δpを0にすると… 0≧h/4π ←式が成立しない! ∴位置と運動量を同時に求めることができない 俺「さて、これで位置と運動量が同時に求まらないことが数式から改めて分かったが、位置と運動量をなるべく正確に求めたい場合 どうするか。そこで(3)の追加項が鍵となるわけだ。 結論から言うと、(3)ではΔx、Δpを同時に0にすることを可能にしている。 なぜならば、 もし(3)の量子ゆらぎσxやσpが∞(無限大)であったとすれば、ΔpとΔxを同時に0にしても(3)式は成り立ってしまうからだ」 ニパ「あれ? 追加された項は∞・0だから左辺は全部0になるんじゃないの?」 俺「実を言うと、そうはならないんだよね。これは後で説明するけど、∞×0の値は無数にある。だから、∞・0が定数 になる場合ももちろんある。だから、(3)の左辺は0にならずに、式を成り立たせることができる」 ニパ「なるほどなー。 (3)式は項を追加することで位置と運動量の誤差を0にすることも可能にしたということか…」 俺「そのとおり。 そして、さらに(3)式の追加された二項を右辺に移動させて元の式と比較してみると…?」 Δx・Δp ≧h/4π - (σx・Δp + σp・Δx) …(4) Δx・Δp≧h/4π (元の式) ニパ「元の式から(σp・Δx + σx・Δp)が引かれてるから、更に右辺の定数が小さくなってる。ということは、 測定限界を超えることが可能となるわけか!」 俺「そう、だからハイゼンベルグの式と比べて、精度が高められるということになるわけだ」 ニパ「測定誤差が原理的に小さくすることができるというのは理解できたんだけど、もしこれが正しいとして… 不確定性原理は破られたということにはならないんだ?」 俺「小澤さんがやったのは、元の式を改良したということだけだから、根本的な部分ではかわらない。だから、不確定性原理 は破られたということにはならない。もし破ることが出来るのなら、それこそまさに世紀の大発見だろうね」 ニパ「そう簡単には破られないか。ところで、不確定原理はどこかで利用されてたりするのかな」 俺「実は意外なところで不確定性原理が使われてる。今までは位置と運動量の不確定性の話だったけど エネルギーと時間の間でも不確定性が成り立っている」 ΔE・Δt≧h/4π …(5) ここで、 h:プランク定数 ΔE:エネルギーの誤差 Δt:時間の誤差 ニパ「不確定性って他にもあるんだな。 知らなかったよ…」 俺「他にもスピンの成分の間でも不確定性がどうとかいろいろあるから、興味があれば調べてみるといい。 さて、ここからさきは豆知識程度で留めてもいいわけだが、(5)式は宇宙に関しても重大なことを示している。 宇宙は無のゆらぎから生まれたという話は聞いたことあるかな」 ニパ「あーあるね。でも全くどういう意味かさっぱりわからなかったけど」 俺「まー、そこらへんの話も色々と複雑なわけだけど、(5)式を次のような観点から考える。即ち、 もし時間がごくごく短時間であれば、Δtが非常に小さくなり、この式が成り立つにはΔEは非常に大きく ならなければならない。 これは物理的にどういう意味をもたらすのかというと "何もない無の世界でも極短時間であれば、大きくエネルギーがゆらぐ"ということになる」 ニパ「極短時間ではエネルギーが大きくゆらいでいるのはわかったんだけど、それがどう宇宙と関係してるのかな」 俺「そこで、ディラック方程式の登場となる。 この方程式によると、例えば電子は負のエネルギーを持つことを許すという解が得られた。 ディラックはこの解から真空が負のエネルギーを持つ電子で満たされていると考えた。 すなわち、負のエネルギーを持つ電子に大きな正のエネルギーを与えれば、それが正のエネルギーになったときに電子が 真空から現れ出ることが可能となったわけだ。 じゃあ、真空を満たしている負のエネルギーを持つ電子が、極微小な時間で電子の持つエネルギーが大きくゆらいで、 正のエネルギーになるのなら…」 ニパ「あ、なるほど。"極短時間の間に、電子のエネルギーが大きくゆらぐのなら、正のエネルギーになった瞬間に電子が真空中に 出現する"ということになるよね!」 ウルスラ「そういうことです。 極短時間の世界では無から有がうまれ、絶えず物質が生成されては消えているわけです」 ヌッ 俺・ニパ「……」 ウルスラ「…?どうかしましたか?」 俺「いきなり、無から現れでないでくれ。 …心臓が止まるかと思ったじゃないか」 ウルスラ「面白そうな話をしていたので、私も混ざってしまいました。それで、これが宇宙とどう関係するのか、でしたよね? つまり、無の揺らぎから電子が生成されるなどして、真空であっても粒子が発生して、ビッグバンを起こすことが 可能となるのです」 ニパ「なるほど、ウルスラの説明はわかりやすいなー。しかし、ビッグバンにも関わっているなんて知らなかったよ…」 俺「不確定性原理はひょっとしたら、宇宙の起源を示しているのかもしれない。そう考えると、この世界の物理現象は非常に 奇妙であるということになるな」 ウルスラ「…ひょっとしたら突然出てくるネウロイもそういう類なのかも?」 俺「かもなー。とにかく世の中は不思議でいっぱいってことだな」 ニパ(あれ? ウルスラがここにいることにはあえてつっこまないのか…) 俺「ところで、ニパ。 ハンガーの掃除はどうしたんだ?」 ニパ「あー、すっかり忘れてた!! 俺、ウルスラ、今日はありがとね。んじゃ、私急いでいってくる!」 タッタッタ 俺「…曹長も現れたり消えたり、面白いよなあ。 なあ、ウルスラ……っていないし!」 この世界は不可解なことで満ちあふれている…、がしかし、ウルスラもまた不可解な謎に包まれている。 …俺は静かにそう思うのであった。 おわり 補足説明 俺「最後に∞×0は何故0にならないのか。これは後で説明するとしたので補足しよう。∞×0は一般に値が無数にあるので、不定形と 呼ばれる。これが数学上のややこしいところだが、∞はいわゆる数ではない。無限大に増加していくというよという のを表現している。さて、∞×0は値が無数にあるので、どれをとるのかはわからないが、その値が定数になる例をあげよう。 例えば以下の式は定数となる」 xを無限大まで増加させた時、 (1/x)・x=1 0 ・∞ =定数 の形 俺「これで、∞×0は定数になることの例を示すことができた。これで納得行かないという方は、数学の極限で調べる といいだろう。そういうわけで、この話はここまで。また次の機会にてお会いしましょう。 …話はここまで長くなったけど、ご清聴ありがとうございました」