約 592,801 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/439.html
とある講演会場。 今日は、ある著名なゆっくり研究家が重大発表をするため、会場内は人で溢れかえっている。 その多さは、ここに幻想郷中の全ての人間が集まっているのではないかと錯覚するほどであった。 どんな発表なのか、どんな新しい説が飛び出すのかと推測する者、ただ研究家の説が聞きたい熱心な信者、有名な人だと言う事で見に来ただけの野次馬……。 ――それでは、ゆっくり研究家、○○さんの入場です。 そんな、多種多様な人々でざわめく会場内が、研究家の入場により水を打った様にシンと静まりかえった。 研究家は、一つ咳払いをしてから、ゆっくりと語り始めた。 「ゆっくりできない。それは、ゆっくりにとって最も嫌な事です」 「彼らは、自分がゆっくりするためには同種を殺し、食べます。時には自分の親兄弟ですら」 「彼らにとって、それほどゆっくりする事が重要だという事から、私はある仮説を立てました」 「ゆっくりには、第四の本能ともいえる『ゆっくりしたい欲求』がある。それを満たすためならば、睡眠・食・性の他の三大欲求を犠牲にする事さえ厭わない」 備え付けの水を一口飲み、話を続ける。 「ところで、皆さんはゆっくりはどうすれば死ぬかご存知ですか?」 「基本的に、中身を取り出すとゆっくりは死にます。餓死もありますが、この場合は中身が減った事による死亡なのでしょう」 「眠りもせず食べもせず生殖もせず……一見、すぐに死にそうではありますが、ゆっくりさえさせておけばゆっくりは死にません」 そんな事が可能なのか、あの先生なら出来るんじゃないか……小声でそんな事を話し合い、ざわめく会場。 そんな会場も、研究家が「お静かにお願いします」と言っただけで、一気に静かになった。 「ここからは映像と一緒に説明させていただきます」 皆に見える様に大きく引き伸ばされた映像が、研究家の頭上に現れる。 「映像は、睡眠欲の抑制を試したものです。このゆっくりまりさは――」 発表はまだまだ始まったばかり。人々は、固唾をのんで映像を見つめ、研究家の話に聞き入っていた。 『ゆっくり魔理沙が極限までゆっくりできる話 その1:睡眠欲編』 「ゆっぐりやべろぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆぎゅっ! ……なんでありすのあいをこばむの? まりざぁぁぁぁぁぁ」 ゆっくりまりさが、ゆっくりアリスに体当たりをして吹き飛ばす。 アリスが求愛をし、まりさがそれを拒む……ゆっくりの性質上、求愛を拒む事自体は良くあるのだが、この2匹は様子が違っていた。 ゆっくりまりさは、ゆっくりアリスを本気で殺そうとしているのである。 「ゆっぐりじね! じね! じねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「まりざ、まりざぁぁぁぁぁぁ! ありすのあいをうげいれでぇぇぇぇぇ!!!」 ぼろぼろになったゆっくりアリスが、それでもまりさと生殖行為をしようとにじり寄る。 まりさは、本気で嫌がっているのだろう。目は血走り、よだれを垂れ流し、基本的にのんびりとした性格のゆっくりとは思えないほど険しい表情を満面に浮かべている。 「じねぇぇぇぇぇ!!!」 「まぎゅっぶぁ! ま……ぃ……ぁ」 ついに、ゆっくりアリスはクリームあんをぶちまけて死んだ。 荒い息を整えつつ、ゆっくりまりさは険しい表情を崩さずに呟く。 まりさをゆっくりさせないやつは、みんなしんでね……と。 このゆっくりまりさは、元々は他のゆっくりと同じく充実したゆっくりライフを営んでいた。 エサは毎日腹いっぱい食べてもあまるほどにあるし、雨を恐れる心配もない。 誰もいないのは寂しいけど、ゆっくりれみりゃやフランなどもいないため、心の底からゆっくりする事ができていた。 だが、ここ何日かは寝る間も休む間もなく連続してゆっくりアリスに襲われたために、凶暴化してしまったのである。 最初は、ある程度の攻撃で追い払っていた。 襲ってくるアリスは皆判を押した様にまりさより小さかったから、簡単に撃退できたのである。 だが、追い払ったと思うとすぐにアリスが来る。追い払う、来る、追い払う、来る……10匹も撃退した頃、まりさはゆっくりする邪魔者のアリスを殺す事に、何のためらいもなかった。 ゆっくりまりさは、アリスの死がいを引きちぎる事で完全にアリスが死んだのを確認した後、ようやく元のゆっくりした表情に戻った。 「やっとゆっくりできるよ……」 心の底から安堵した響き。 食事やその他の事は、もう明日で良い。まりさは充血した目を閉じ、そのまま眠りにつこうとした。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆぐっ!?」 まりさが眠ろうとした時、突然声が聞こえてきた。 誰だろう、どこにいるんだろう……まりさは辺りを見回したが、誰もいない。 「だれ? どこにいるの? まりさはおねむだから、ゆっくりねさせてね……」 「だめだ! 眠ったらゆっくりできないだろう!」 「ゆっ!?」 ゆっくりできない。それは絶対に嫌だ。 本能に根付いたゆっくりしたい魂で、まりさは強引に起きようとした。だが、どうにもならない。 数日眠れていない事に加えて、アリスとの攻防でへとへとになっているのだ。 起きよう、起きようと思っても、自然と眠くなっていく。 その後も、まりさが眠ろうとすると「ゆっくりしていってね!」と叫び、決して眠らせない声。 ゆっくりまりさは、段々苛立ってきた。 ゆっくり魂などとっくの昔に消し飛び、ただ眠りたくて眠りたくて仕方がなかった。 「いいかげんにしてよ! おねむなのにねさせてくれなきゃ、ゆっくりできないよ!」 「いーや、寝ていたらゆっくりできないぞ? ほら「まりざぁぁぁぁぁぁ!!!」」 声が終らないうちに、ゆっくりアリスが凄まじい勢いでゆっくりまりさの元へ駆け込んでくる。 まりさは、勢いのままに飛び込んでくるアリスを必死にかわした。 「ゆぎゅっ! ありす! ありすはゆっくりしね!」 「どーじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!!! ありずはまりざをごんなにあいじでるのにぃぃぃぃぃ!!!」 泣きながら飛びかかるアリス。まりさの言う事、自分の愛を受け入れてくれない事が信じられないのだろう。 一方のまりさは、もう何日も寝ていないのである。どうしても眠りたかった。 そのため、このアリスも殺して眠ろうと試みたが、眠ろうとするとまた声が聞こえ、別のアリスが飛び掛ってくる。 掛かってきては殺し、声が聞こえて掛かってきては殺しを繰り返し、5匹目のアリス。 全く同じ軌道で飛び掛ってきたため、振り払おうとすれば出来るのだがあえてそうせず、まりさはされるがままになっていた。 「まっまりざ! ありずはうげいれでぐれるのね! うれじいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「……なんでもいいから、はやくやってはやくおわらせてね……」 飛び掛ったアリスを拒む事なく、そのまま受け入れるまりさ。 「まりさ! まりさまりさまりさまりさまりさ!!!」 「ゆっ……はやくしてね……」 アリスだけが動き、まりさは全く動かずに振動を受け続けている。 アリスを殺す、声、アリスが飛び掛る、殺す、声、飛び掛る……何度も何度も繰り返した結果、まりさはついにある結論に達した。 ――アリスを殺せば声がして眠れない。アリスに好きにさせれば、眠れる。 アリスが好き放題にすれば確実にまりさは死ぬ。それに気付かない、あるいは気付いていてあえて無視していたまりさは、既にどこか狂っていたのだろう。 「まっまりさ! まりまりまりまりまりまりまりまりささささんんんんんんんんほおおおおおおおおおおすっきりー!」 「……ゆっ……ゆ……ゆぅ……ゆぅ……」 絶頂に達するアリス。だが、まりさの方は全くの無反応どころか、穏やかな表情で眠りについていた。 アリスがどれほど激しく動こうと、茎が何本生えようと、茎に養分が奪われ、刻一刻と生命の危機が迫っていようと、全く意に介さずに、まりさは数日ぶりの睡眠をただ貪っていた。 「まりさまりさまりさまりさ! すっきりしてるよ! すっきりできるよ!!! んほおおおおおおおおおおイグイグいぐぅぅぅぅぅぅ!!!」 「……」 「まりさまりさかわいいよかわいいよまりさぁぁぁぁぁ!!! ありすもすっきりまりさもすっきり! たっまんねぇぇぇぇぇ!!!」 「……」 「ままりりささ!? まりざもすっぎりじでるよねぇ!? ごだえでよぉ!!!」 不自然過ぎるほどに何も言わないまりさの様子を、流石に不審に思ったアリスは動きを止めた。 「……まりさ? なんでなにもいわないの?」 もはや茎なのか饅頭なのかの判別すら難しいまりさに、親愛の印であり、求愛のサインでもある頬のすりよせをして、何とか反応を引き出そうとするアリス。 まりさはとっくの昔に死んでいた。死因は妊娠のし過ぎからくる栄養失調である。 だが、茎を除けた中にあるその顔は、やっと眠れたという満足感からか、とても安らかなものだった。 映像は、まりさが死んでいる事にようやくアリスが気付き、白目を剥いて叫び声をあげるところで終った。 「この時は、アリスをけしかけ、ゆっくり出来ない状況を作り出す事で睡眠欲をなくそうと試みました」 「ですが、このまりさはアリスに襲われる事より睡眠欲を優先したのです」 「ちなみにこの後、アリスは私が美味しくいただきましたw」 研究家の下手な洒落に、一部の信者だけがどっと笑った。 あまりウケなかった事が恥かしいのか、研究家は大多数の冷ややかな目から話をそらす様に一つ咳払いをした。 「ごほん……この失敗から、自然のゆっくりは睡眠欲がやや強いと学びました」 「次は成功例を見ていただきましょう。このゆっくりは、先ほどのまりさから取れたものですが――」 気を取り直して、すらすらと説明していく研究家。 今度は、病室の様に真っ白い部屋に、ぽつんとゆっくりまりさが一匹だけ鎮座している映像が映し出された。 会場内の人々は、食い入る様に映像を見つめている。 映像は、ゆっくりと動き出した。 「ゆっくりちていってね!」 生まれたばかりのゆっくりまりさが、家族に挨拶した。 だが、返事はない。ここにいるのは、ゆっくりまりさ一匹だけだからだ。 「ゆ……ゆー? みんなどこにいるのー? かくれんぼなら、まりちゃもまじぇてー」 辺りを見回したが、誰も見当たらなかった。 意地悪されているのかと思い、まだ上手く回らない口で、周囲に声をかけたが返事はない。 「いじわりゅやめてー。みんなでてきてー」 「なんでなにもいわないの? ゆっくりちてよー」 「おかーちゃーん、おねーちゃーん……どご、いっだの?」 「ゆ……ゆ……ゆ……ゆ”わ”あ”ぁぁぁぁぁん! み”ん”な”どごでぃい”る”の”ー!?」 何度呼びかけても返事はない。這いずる様に少しだけ動いても、誰もいない。 部屋の中に、ゆっくりまりさの泣き声が響き渡った。 ひっくひっくとしゃくりあげる声だけが響く部屋。 ゆっくりまりさは、食事も睡眠も取らずにただ泣き続けていた。だが、例え食事が目の前に置かれたとしても、食べるかどうかは分からない。 まりさはまだ生まれたばかりなのだ。食事が必要な事なのかどうか、分かっていない可能性が高い。 「ゆ……ひっく、どご、いっだ、っく、のぉ……」 泣き声が小さくなっていく。泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまいそうだ。 だが、この実験中に眠る事は許されない。 半ば以上意識が闇に溶け込んでいたまりさの耳に、何者かの「声」が飛び込んできた。 「寝たらダメだ!」 「ゆっ!? だりぇ? どこにいるの!? ゆっくりちていってね! ゆっくりちていってね!」 「寝たらダメだ!」 「ゆっ……ふぁい! ゆっくりねまちぇん!」 「絶対に寝るなよ」 「ふぁい! でったいにねまちぇん!」 声を聞いた瞬間、ゆっくりまりさは勢い良く飛び起きる。 初めての声、初めての別の存在が嬉しくてたまらなかった。 相手が自分の言う事に聞く耳を持たなくても、ただ話が出来る事が嬉しかった。 だから、声の言う事を素直に受け入れ、絶対に眠らない事をそのアンコの奥に刻み付けた。 声が聞こえてから数日。 小さなゆっくりまりさは、食事を摂っていた。 普通のゆっくりの様に「むーしゃ、むーしゃ」とも「うめぇ! めっちゃうめぇ!」とも言わない。 言葉を発しながら食べたり、そこら中にカスを飛び散らせながら食べるなどの汚い食事の仕方は後天的なものである。 そもそも、誰とも会った事がなく、声しか聞いた事のないゆっくりまりさには、一々そんな事をする理由もない。 ただ静かに食事をし、満腹になったらゆっくりしているのである。 「ゆー……ゆっくり……」 「寝るなよ!」 「ふぁい! ねてまちぇん! まりちゃねてないよ!」 嬉しそうに飛び跳ねるまりさにとって、食事の後の声は唯一の楽しみだった。 「ネタラダメダ」「ゼッタイニネルナヨ」「ユックリシロ」「メシノジカンダ、クエ」この4つの言葉以外に聞こえるものは何もないが、だからこそ声が大切な存在になっていた。 ――おかーちゃんってこんなかんじなのかな。 眠らせない事だけを求めている声に対し、そこまで思い込む様になっていた。 生まれてから一度も、誰とも会った事のないゆっくりまりさにとっては、それほどに声は重要な存在なのだ。 欲を言えば、動いたりゆっくりしすぎた時以外にも聞きたいという程度か。 だからゆっくりまりさは、たまにわざと動いたりゆっくりし過ぎたりしてみる。 そして、大好きな声に返事をする。 ゆっくりまりさは、端から見ると不幸だが、本人からするとこの上ない幸せなゆっくりライフを営んでいた。 映像は、帽子を被っていない赤ちゃんゆっくりまりさが幸せそうにゆっくりしている場面で停止した。 「――以上の様に、声を聞かせ続ける事で睡眠を取らずにした例です」 「なお、このゆっくりまりさは判別のために帽子をとってあります」 「このゆっくりは現在も生きており、現在は50センチ程度にまで成長しました」 映像が切り替わり、帽子を被っていない成体のゆっくりまりさが映し出される。 「それがこちらのゆっくりまりさです。このゆっくりは、まだ一度も眠ってはおりません」 帽子を被っていない以外は、普通のゆっくりまりさがゆっくりしているだけの画像に切り替わる。 生まれてから一度も眠っていないとは信じられないほどに血色が良いその姿は、普通のゆっくりと比べてもなんの遜色もないものだった。 「それでは、次の映像の準備などのため、これから四半刻の休憩を挟ませていただきます。少々お待ち下さい」 一礼をして、脇に下がる研究家。ほどなく館内放送が響き渡る。 ――これより、四半刻の休憩を挟ませていただきます。 ――休憩中の出入りは自由となっております。厠などを済ませて下さい。 館内放送が流れると同時に、次々に立ち上がり、厠に向かう人々。 次の説明まで四半刻、厠は常に人が満杯になるだろう。 9スレ 382でナメた事ぬかした……もとい、お願いしていたまりさがいたので、極限までゆっくりさせてみました。 限界までゆっくりしていってね! 本来は1つになるはずでしたが、長すぎるため分けました。ゆっくり楽しんでね! by319 続 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/539.html
「よし、無事完成。あとは野に放つだけだ!」 誇らしげな表情の俺の目の前にあるのは直径1.5mくらいの球体。中は空洞で、一応入ることが出来る造りだ。 こいつの名前はゆっくりボール チャリオットバージョン。 その巨躯は今までのゆっくりボールの中でも最高の強度を誇り、下級の妖怪にさえ破壊することは出来ない。 しかも、外側には無数の透明な刃(刃渡り5mm前後)が無数についていて、触れれたものを捕らえて離さない。 ゆっくりを保護するという一点においてこのボールほど強力なものはないだろう。 などとどこかの誰かさんに解説している間にも1匹の母まりさと3日分くらいの食料と水を中にいれて、村の入り口へと解き放った。 「さあ、まりさ。ゆっくり君の里に帰って良いよ」 「ゆ!かえっていいの?!」 このゆっくりまりさは野生種だが、それにしては珍しくかなりの規模の集落に所属しているらしい。 “らしい”というのは餌を取りに出かけていたこいつを保護し、まりさ自身からその話を聞かされただけに過ぎず、実物を見ていないからだ。 「それじゃおじさん、さようなら。ゆっくりしんでね!」 善意の保護を捕獲と勘違いして、俺に敵愾心を抱いているらしい。去り際に酷い捨て台詞を吐かれちゃったぜ! よし、決めた!追いかけていってあいつの仲間も全員保護しちゃうぞ~♪ 「ぎゃお~、たべちゃうど~♪」 というわけで、まりさinゆっくりチャリオットを追いかけること13分と28秒。 絶好のタイミングでゆっくりれみりゃが現れてくれた。しかも母1匹に子ども4匹というゴキゲンな組み合わせだ。 「ゆ・・・ゆぅぅぅぅぅうう・・・」 ゆっくりにはチャリオットの強さなんて簡単には理解できない。まりさは本来なら遭遇しないように立ち回るしかない脅威を前にただひたすら怯えるばかり。 そもそもこのボールシリーズ全部透明だから、馬鹿なゆっくりだと自分がそれに入れられていることさえ忘れるんだよな。 「ぎゃお~♪」 「「「「だべぢゃうど~♪」」」」 と、お約束の聖者は磔にされましたを彷彿とさせなくもないポーズで五方から迫るゆっくりゃ。 格下のゆっくりまりさ相手に5匹で包囲して退路をふさいでから襲い掛かるのか。ゆっくりゃにしては珍しく、なかなか統率の取れた集団のようだ。 「ゆ、ゆっくりあっちいってね!」 そんなまりさの叫びも虚しく、鋭利な爪の生えた腕を振りかざした母ゆっくりゃは獰猛な四足獣の如き勢いでまりさに飛び掛る・・・ッ! もはや命運尽きたといわんばかりの絶望的な表情で全身をこわばらせるまりさ。 「れみりゃがいちばんだくさんたべるど~」「いちばんはいちばんぷりぢーなれみりゃだど~」などなど、好き勝手にはしゃぐ子ゆっくりゃ。 哀れなゆっくりまりさの短い生涯はここで幕を閉じる! 「・・・あぎゃ!?」 と、本来ならなるはずなのだが、透明なチャリオットの存在に気付かなかった母ゆっくりゃは目測を誤り、小さな刃の並ぶチャリオットの壁に激突した。 小さな刃であったため中の具がはみ出ることはなかったが、チャリオットに抱きつくような格好で激突したため、上半身のいたるところに満遍なく刃による刺し傷が残っている。 「・・・う!?」 予想外の事態に困惑する子ゆっくりゃ。 「う゛あ゛ーーーーーー!!!いだい゛ーーーーーー!!!ざぐやーーーーーーーーー!!!!」 獲物に届かない理不尽と驚きと、そして何より痛みのせいで我を忘れ、両腕で自分を抱きかかえるような格好でひっくり返ってのたうち回る母ゆっくりゃ。 「ゆ?・・・ゆ!」 一瞬、状況が飲み込めずゆっくりゃ同様に困惑顔になるも、俺の家にいたときに何度かボールに入った経験のあるまりさはすぐに自分の身の安全を理解する。 「おが~じゃ~ん?」 「だいぢょーぶだどぅ~?」 「「いだいの、いだいのどんでげー、だどぅ~♪」」 そんなまりさにわき目も振らず、負傷した母ゆっくりゃのもとへ駆け寄る子どもたち。 う~ん、やっぱり統率取れてるなぁ~。あれか、これが噂のかりすまって奴なのか。 特に手当てをするわけでもないが、心配そうに親の様子を伺っている。 もちろん、格下で、自分達にとっては餌に過ぎないまりさに背を向けて。 「ゆっくりしね!!!」 瞬間、まりさがゆっくりらしからぬ速度でチャリオットを操り、母を気遣う子どもの一群に突撃した。 叫び声に反応して回避しようとするものもいたが、目に見えないチャリオットをかわしきれず、母同様に全身を小さな刃で傷つけられる。 「いぎゃーーーー!!!」 「いだいどぉ----!!!」 「ざぐやーーーー!!!!」 「だずげでーーー!!!」 ものの見事に一撃で4匹全員戦闘不能。汚らしい絶叫を撒き散らしながら地べたを跳ね回るゆっくりゃたちからは先ほどまでの余裕など微塵も感じられない。 理解不能な状況への困惑と全身の痛みで逃げることすらままならない5匹。 しかし現実は無慈悲にして残酷。これはチャンスとばかりにまりさは拙いなりにもチャリオット駆り、何度も何度も執拗にゆっくりゃたちに襲い掛かる。 二回目の攻撃で1匹の子ゆっくりゃは完全に頭部を粉砕され、中身を撒き散らし、そのまま微動だにしなくなった。 「あ゛ーーーーー!!れびりゃのあがぢゃんーーーー!!!」 運よく攻撃が当たらなかったものの、わが子を殺された母ゆっくりゃは大量のしわを作り、涙で顔をぐしょぐしょに濡らして元々見苦しい膨れっ面を更に気持ち悪いものへと変えてゆく。 「いだい゛!!いだいーーー!!」 「おてでが!!おでてがーーーっ!!!」 「うぅ~~~~☆ にぱぁ~~~~~~♪」 あるものは右腕をすりつぶされ、またあるものは左足をねじ切られ、またあるものは顔の1/3と精神を粉々に砕かれていた。 これが人間だったら目を背けたくなるような阿鼻叫喚の地獄絵図であっただろう。 そして少し間をおいての三回目の攻撃は親の両足を瞬く間にすりつぶした。 「ギャおおおオおぉおぉぉォオオおおお!!!!!!?」 上半身は刺し傷だらけ。下半身はもはやない。全身傷だらけで、具の半分近くを持っていかれた母ゆっくりゃは半ば虫の息だ。 立て続けの四回目の攻撃。幸運なのかそれとも不運なのか、母ゆっくりゃを粉砕しようとしたチャリオットは石に躓き宙を舞う。 結果、母ゆっくりゃは死を免れた。しかし、チャリオットは顔を1/3そぎ落とされた子ゆっくりゃへと落下し、その胴体を粉砕、大量の具を撒き散らした。 「うぎょあ!?!」 悲鳴とも呼べない奇声を発し、顔だけになってしまった子ゆっくりゃは・・・ 「れび☆ぢあ・・・う゛ー」 あまりにも場違いな言葉を口にすると同時に満面の笑みを浮かべた。その表情はゆっくりゃにあるまじき可愛らしさだ。 「ぷでぃ、ぷでぃん、ぷでぃ・・・」 しばらく痙攣しながらも笑顔で意味不明な言葉を発し続け、最期にはやはり笑顔のまま息絶えた。 もはや誰がこの場を掌握しているのかは明白。チャリオットの中のまりさは口の両端を吊り上げ陰惨とした笑みを浮かべている。 「ぅあう・・・」 痛がっている場合じゃない。母ゆっくりゃはまだ生きている子どもたちに目もくれず腕の力だけで這って逃げようとする。 「おが~ぢゃ~ん!?」 「うぎゃ!?れびりゃをだづけどぅーーー!!!」 見捨てられた子ゆっくりゃはこの世の終わりでも到来したかのような表情で母の背中を見つめる。 だが、全てをかなぐり捨てた必死の逃走には何の意味もなかった。 「ゆっくりさせないよ!」 もはやゆっくりとさえ呼べないような速さで這いずるしか出来ない母ゆっくりゃの正面を取ったまりさは潰さないように加減した突撃を当てる。 「うぎゃ・・・!?」 短い悲鳴とともに弾き飛ばされた母ゆっくりゃは新たな刺し傷と失った両足から餡子を垂れ流しながら子どもたちのすぐ傍へと弾き飛ばされた。 「いや゛ぁぁぁぁああああ!!!あ、あああ、あがぢゃん!?あああ、あう!?」 落下の際の衝撃で左腕も使い物にならなくなってしまったらしい。唯一自由に動かせる右腕で先ほど息絶えたの笑顔の子どもの生首を引っつかむとそれをまりさのほうに差し出す。 つまり、子どもはやるから見逃してくれということだろう。かりすまは何処へやら。全く酷い親だ。 「お゛がーぢゃーん!?」 「うあ゛ーーーー!!」 その行動は生き残っている2匹の子どもたちを更なる絶望のどん底へと叩き落した。 それを見た瞬間のまりさの笑顔のエグいことエグいこと。 「こゆっくりゃ!!」 エグい笑みを浮かべつつ、偉そうに子ゆっくりゃを呼びつける。 「は、はい゛ーーーーーー!!」 「あ゛ーーーーーー!!!」 痛みと恐怖と絶望からか、思った以上に従順な態度を示す子どもたち。 「そのゆっくりゃをゆっくりたべてね!」 あ~あ、こりゃ母ゆっくりゃ死んだな。自分が先に子どもを差し出そうとした以上、子どもも待ってはくれないぞ。 で、14分と23秒後。 そこには母ゆっくりゃのおべべだけが残っていた。 「「う゛ー!!ぜんぶだべだどぅーー!!」」 2匹の子ゆっくりゃは場違いなほど嬉しそうな笑みを浮かべながら、そのおべべを指差す。 「ぜんぶだべだから、ぷっでぃ~ん・・・ぷぎゃ!?」 何かを言い切る前にまりさのチャリオットアタックで右腕のもげた子ゆっくりゃが圧殺された。 正中線をなぞるように踏み潰されてぺちゃんこになっており、チャリオットの破壊力を100%受けきったらどうなるのかを見事に体現していた。 きっと「ぜんぶ食べたからプリン頂戴」と言おうとしたんだな。 こーまかんのおぜうさまにとって言うことを聞けば報酬があるのが当然なんだろう。だからあんなに嬉しそうだったのか。でも、こいつら野生種っぽいような? 「・・・う?」 唯一生き残った左足のない子ゆっくりゃもまた言うことを聞けばプリンを貰えるものだと思っていたので、何故か仲間が殺されたその状況と意味が理解できず呆然とする。 「ぷっでぃ~んは?」 と、小首をかしげているところに容赦なく、まりさが襲い掛かってきた。 「ギャおああああああああアああああああ!!!ブッでぃいいいいぃぃっぃgsねwgん、srgbんcぢkwsdcうぇr!!!」 その一撃で体の左半分を粉砕され、大量の具を撒き散らした子ゆっくりゃはもはや何を言っているのか全く聞き取れない絶叫を残して、動かなくなった。 「ゆっくりしていってね!」 まりさはもはや1匹たりとも動くもののいないゆっくりゃの群れに向かって今まで以上にえげつない笑みを浮かべたまま、お決まりの文句をはき捨てると、その場を後にした。 そんなこんなで18時間と26分19秒後。 あるときはゆっくりゃを上回る能力のゆフランをもたやすくなぶり殺した。 またあるときは発情したアリスの群れを全く寄せ付けることなく轢き潰した。 更にまたあるときは3頭の蛇をまるでそんなものいなかったかの如く蹂躙した。 挙句の果てには人間でさえも敵わない野犬12頭の群れをいとも容易く一蹴した。 そうして、ゆっくりまりさはようやくゆっくりできる自分の故郷へとたどり着いたのだ。 「あ、おかーしゃんだ!」 真っ先に母の存在に気付いたのは6匹いる子どもたちの末っ子のゆっくりれいむだった。 「おかーしゃ~ん!!」 「れいむーーー!!」 実に涙ぐましい感動の再開。でも、何か大事なことを忘れちゃいないか? と、俺が思案にふけっていたそのとき・・・。 「ゆぎゃ!?」 という悲鳴とともに幼いれいむが空中で何かに激突し、更にそのまま轢き潰され、中身の餡子を撒き散らした。 あ~、そうかそうかそうか。外敵だけじゃなくて、家族や仲間も粉砕してしまうのか。こりゃうっかりしていたぜ☆ などと、俺が一人納得していると村中のゆっくりがわらわらと集まってきた。 「まりさ・・・こどもをころすなんて・・・しばらくみないあいだにゆっくりできなくなったんだね」 そういってまりさを攻めるのはすでに母にはなっているであろう大きさのゆっくりれいむ。 「ゆ!?ちがうよ、したくてしたんじゃないよ!!」 「むきゅ・・・そんなの、かんけいない。おきてはおきて・・・」 まりさの反論をぼそぼそと却下するのはこれまた成人サイズのゆっくりぱちゅりー。 更にどんどん集まってくるゆっくりたち。最前列に大きなゆっくりが立ち並び、その後ろで子供や赤ちゃんが様子を伺っている。 「おかーしゃんはそんなことしないよ!」 そんなゆっくりの群衆の中をかき分けて飛び出してきたのは5匹の子ゆっくり。2匹がれいむ種で3匹がっまりさ種だった。 まりさの感涙に咽ぶ表情から察するにあのまりさの子供だろう。小さい鳴りに必死で母を守ろうとしている。 「み゛、みんな゛ぁぁぁぁあああああ!!」 あくまで自分を信じようとしてくれる子供たちに頬ずりしようとするまりさ。 あ、そんな事したら・・・ みちっ、ぶちゃ、むりゅ、ぐじょ・・・めりめりめりめり・・・! あ~あ、やっぱり。またやっちゃったよ。散々そのボールに頼ってここまで帰ってきたくせにどうして肝心なときにそれの存在を忘れるかね? 叫ぶ暇すら与えられずに押しつぶされた子どもたち。あたり一面に飛び散る餡子。呆然とする母まりさ。そして・・・ 「ゆっくりできないまりさはゆっくりしね!」 誰かの合図をきっかけに子殺しの罪ゆっくりに制裁を加えるべく飛び掛るゆっくりたち。 もちろん、ボールなんて見えていないし、何故触れてもいないのに子どもたちが潰れたのかなんて考えようともしない。 「やめでええええええええええええ!!!」 しかし、誰も罪ゆっくりの言葉など聞くはずもない。飛び掛ったものはことごとく刃によって傷つけられた。 誰も傷つけまいと必死で逃げるまりさ。だが不運にも逃げている最中にアリス種の赤ちゃんゆっくり3匹を踏み潰してしまった。 「ああ゛ああ゛あああ゛あ゛!!アリズのあがぢゃんがあああああああああああ!!!」 「まりさをころせえええええええええええええええええ!!!」 「ゆっくりしね!!」 「だべええええええええええ!!来たらさざっぢゃうううううう!!!!」 怒声とともに飛び掛るゆっくりたち。しかし、チャリオット相手に敵うはずがない。 「おがーーーーーざあああん!!!いだいよおお!!!!」 ある子どもは親にほめられたいがためにまりさに突撃して、またある子どもは逃げるまりさに轢かれて、またある子どもは大人たちに下敷きにされて潰れる。 「あのれいむも子どもをころしたよ!!!」 とめどなくあふれる罵詈雑言。子を、親を呼ぶ悲鳴。怒りが引き起こす数々の惨劇。 繰り返される惨劇の連鎖はとどまることを知らない。 「ばじゅりぃぃぃいいいいいい!!!しんじゃだべえええええええ!!!」 「ゆ、ゆっゆっゆっゆっゆ・・・・ゆぅ?うっめ!めっちゃうめぇ!!」 その子どもは気が触れてしまったらしい。純真無垢な笑顔で母親の死肉を食い漁っていた。 「ゆゆ!!このこ、ははおやをたべてるよ!!ゆっくりおしおきしなぎゅおああああああああああああああああああああ!!!」 「みんなが!!みんながぁ!!わるいんだぜ・・・!!ゆっくりしてればいいのに!!ゆっくりできないならまりさがゆっくりさせてあげるよ!!」 そして狂気がゆっくりの里を飲み込んでいった・・・。 そんな地獄絵図を背に、俺は人里へと引き返した。 この悲劇はゆっくりだからこそ起きた間抜けな喜劇などではない。 これは教訓なのだ。寓話なのだ。 身を守るための道具であっても使い方を誤れば、その恐ろしさを失念すれば自らを傷つけることになる。 そして時には自分の大事な人々を傷つけることになる。 胸に手を当てて考えてみてほしい。人間だって似たような悲劇を何度も経験しているだろう? などと、一人格好良くナレーションをしながらゆっくり歩を進める俺だったが、ある重要な事実を思い出して駆け足になる。 「そういえば・・・紅魔館から依頼されたゆっくりボール・エレガント・ウォーカー~これで君も社交界の鼻~の納品日って明々後日だったな」 さて、ゆっくり急いで仕上げるか!! -----あとがき?----- 書き込めるってシアワセ・・・。 気がつけばゆっくりボールも4作目。 いつも突貫で仕上げるので誤字脱字が酷いぜ。 珍しく虐待分多め?でも、終盤のゆっくりは最早ゆっくりじゃねえ。 ゆっくりボール1号 理想 押さえつけることで成長抑制。しかもボールの中は安全だよ 現実 安全云々以前にボールの中で終わらない苦痛を味わい続ける ゆっくりボール2号 理想 これでゆっくりも人間と一緒にスポーツが楽しめるよ 現実 ボール代わりにされた挙句、発情してもイけない地獄 ゆっくりボール3号 理想 押さえつけることで子どもがあまり成長させずに小さいサイズで産ませる 現実 押さえつけられた影響で母が多大なストレスを受け、奇形の未熟児になる ゆっくりボール4号 理想 絶対防御。これならどんな外敵も安心だ 現実 無差別虐殺装置。しかも食料も取れない これらを製造しているゆっくり愛好家は間違いなくゆっくり脳。 彼は本当にゆっくり好きなんですが、ゆっくり脳なので作るものが全て裏目に出ているだけ。 しかも、ゆっくり脳で自分の都合の良いように解釈するので全く自重しない。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/136.html
ゆっくりは草食である。 「幻想郷甘味事情の救世主」「ストレス解消の的」などと呼ばれるゆっくりが 農家に害獣扱いされるのはこの時点で決まったようなものだった。 とはいえ実際のところ農民がゆっくりを毛嫌いしていると言う事実は無く、他の人間同様に 甘い物を安価に手に入れられて良かったと思っている者の方が多かった。 畑にわざわざ侵入して野菜を盗み食いするよりは、野原で昆虫をゆっくり追いかけるほうを好む ゆっくりの習性がどちらかというと無害である事をを人々に意識させたのだ。 その筈だった。 外から迷い込んで農業の真似事をしていた筈の私が、今ここでこうして畑を荒らすゆっくりたちの 進入を待ち伏せしているのは、連中が有害という事実を示していた。 事のそもそもの発端は一月前にさかのぼる。 ここへ迷い込んだ後、とにかく食料を得るため借りた貧相な畑でサツマイモがそろそろ収穫という時期だった。 その日の朝、畑へ行った私は、三匹のゆっくりが芋を掘り返してかじっているのを見た。 最初に思い浮かんだのが、手塩にかけて育てた芋を台無しにされた怒りよりも、 生で食べると腹(?)を壊すんじゃないかと言う心配だったのは我ながら間抜けであったと思う。 ともかく現在進行形でかじられてる芋は諦めるとして、これ以上被害を増やさないために私は考えた。 なまじ甘い態度を取るといつまでも居座るとはベテランの農夫の談、直ちに追い出さなければならない。 さらに、頭が妖精よりも弱いと評判のゆっくりは、生半可な恐ろしさで怒鳴って追い出しても 明日には忘れて再び現れるというのが考えられる。 これを満たす手段を考えていた私は、「外」に住んでいたとき農家がカラスの死骸をつるしていたのを思い出した。 (幻想郷では見られなかった。鴉天狗に血祭りにされかねないからだろう。) この手段を採用した私はゆっくりの死体を3つ生産すべくゆっくりと背後に近づき、 奇襲効果を得られるうちに攻撃するためクワを振りかぶった。 「ゆっくり?」 振りかぶった瞬間、ゆっくりが一斉にこちらを向いた。 ゆっくりが太陽とは逆を向いていたのを失念していたのである。 ここで止められる訳が無い、全力でクワを振り下ろした。 「ゆ゛っ!」などと断末魔をあげて真ん中の紅白饅頭が絶命する。 直ちに第二撃を繰り出すため、刺さった歯を抜き構える。 「や゛め゛て!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 もう一匹の紅白饅頭が命乞いのセリフを吐き出した。 黒大福は薄情なことに「ゆっくりしんでね!」などと言って逃走した。ひどい大福だ。 とりあえず死体は一つ手に入ったので、生きている方の紅白饅頭を捕縛して自宅に戻った。 紅白饅頭を押入れの布団の下に放り込んだあと必要な材料を持って畑へ行き、 近くの木の枝に死骸を入れた袋を「私は悪いゆっくりです」と書かれた板と一緒にぶら下げた。 黒大福を逃したのが心残りだったが、私は一仕事終えた充実感を胸に帰宅した。 それから1週間後、どうやったかは知らないが あの逃走した黒大福が仲間を大勢引き連れて(2ダースはいたと思う)畑を荒らしていた。 「おいしいね!」「ゆっくりたべようね!」 早すぎでも収穫すべきだったと後悔しつつ、私は鍬を振り上げ突進した。 「ゆっくりしていってね!!」「さっさとかえってね!」 などと腹の立つ言動をしながら大福と饅頭が向かってくる。 だが所詮ゆっくり、金属製の鍬を受けるとあっさり昏倒、あるいはバラバラになり、それをみた 他のゆっくりは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。 結局、饅頭四個分の餡子と皮を生産し、捕虜(めんどくさいので木に吊るした)を2匹手に入れただけだった。 それからは毎日ゆっくりの襲撃を受けるようになった。 毎回毎回追い回すのも面倒なので、5回目の時点で進入方向を限定するための柵を設置した。 進入経路で待ち伏せて5回目は畑に入ることすら許さなかったが、6回目は大量に引き連れて数で突破された。 (後で適当な大福を尋問したところ、黒大福がこの畑に「メッチャうめえ」物があると吹いているようだった) ゆっくりどもにこちらの恐ろしさを教育してやるため、襲撃後ただちに里へ香霖堂へ装備の調達に走った。 陣地を構成する障害物は鉄条網・トゲつきの柵・斜めにつきたてた槍などがその後の何回かで増えた。 そして現在、21回目の襲撃後の畑は様変わりしすぎて畑と呼ぶことが難しくなりつつある。 時計からそろそろ襲撃時刻(午前6 00ごろに来る)になりつつあることを見た私は、 香霖堂で調達した双眼鏡を森の方へ構える。 木々の緑の中に紅白・黒の丸い物体がポツポツと見え始めた。 「総員戦闘配置!」 10回目頃から事態に気づき、加勢してくれたヒマな農夫や 天然のゆっくりがノコノコやってくるということで協力しに来た加工所職員へ 大声でゆっくりが来たことを伝える。 最近は畑よりも捕虜の救助が目的でゆっくりが襲撃してきているようなので、 紅白饅頭をガラスケースに閉じ込めたものを数個、進入経路に設置してある。 「いまだしてあげるね!」「いっしょにゆっくりしようね!」「がんばってこわすよ!」 案の定、その地点で群れが停止した。 そこまでを確認した私は、地面に斜めに突き立っている筒の所へ行き、その筒へ何物かを入れた。 その物体が筒の一番下まで到達すると、瓶の栓を抜いたような音があたりに響いた。 「5、4、3、2、だんちゃーく、今!」 言い終えると同時にガラスケースの所で爆発が起きる。宙を舞うゆっくりが確認できた。 下ろして欲しいという意図の悲鳴がここまで聞こえてきた。 その意図は直ちにかなえられ、地面にたたきつけられたゆっくりはずっとそこでゆっくりすることになった。 「毎回掛かるのはやはり脳が足りないんですかね?」 加工所職員に話をふると「そもそもあるのかどうか…」と気の抜けた返事が返ってきた、同感だ。 香霖堂で調達した迫撃砲は数に限りがあるので一発で射撃を終了する。 いつものようにゆっくりの群れがこちらに向かってきたが、前面の鉄条網で押しとどめられる。 「い゛た゛い゛!い゛た゛い゛ぃ゛ぃぃ゛!」「ゆ゛っく゛り゛おさ゛な゛いでぇ!」 鉄条網に引っかかった仲間の上を通るという共産軍さながらの方法で、第一線は通られた。 本来ならばさらに第二、第三と鉄条網を張るつもりであったが、流石の香霖堂でも鉄条網が そう簡単には手に入らず、第一線の後は射的タイムである。 おのおの、弓やボウガンや猟銃を構えて号令を待つ。 第一線を乗り越えたゆっくりは150匹であった。 最初の迫のダメージで7匹力尽き、そこへ最初の射撃が到達し12匹が倒れる。 この射撃音で怖気づいた22匹が逃走し、さらに第ニ射で16匹が倒れた。 「もうやだ!おうちかえる!」「おうちかえっぶげぇ!」 地面に刺しておいた槍の障害物で、遮二無二突進した9匹が串刺しになった。 柵と組み合わせたその障害物でまごまごしてるあいだに第三射が全弾命中し18匹が死体となった。 さらに15匹逃走して、残りが何とか射撃線へと到達する。 加工所職員が柵を乗り越え、慣れた手つきでゆっくりを8匹捕縛し、31匹逃走させた。 1ダースとなったあの黒大福を含むゆっくりの精鋭は農夫には目もくれず私のところへ突進してきた。 手近にあった陣地構築用の洋ノコをとっさに構え、まず飛び掛ってきた一匹を切り裂いた。 「ゆ゛っ゛く゛りぶぇ゛!?」 雑な切断面から餡を撒き散らしながら落ちる物体には目もくれず、二匹目を足で蹴り飛ばした。 蹴った瞬間破裂した物体は飛翔しながら餡と皮に分解していった。 さらに突進してきた三匹目は一番悲惨で、フルスイングされたノコの直撃を受けたあと、 バラバラになりつつ飛翔して障害物の槍に刺さった。 残りの9匹のうち4匹が農夫に捕縛され、散り散りになって逃げ出した最後の5匹は背中に射撃を受け 「もうゆるじで!!」「やめて!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 2匹にまで数を減らしつつ逃走に成功した。 この2匹が命からがら森へ入ったのが6 58であった。 以上が22回目の襲撃とそれまでの経過の概要である。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1398.html
「つきましたよ、ここです。じゃあ、さっき言った通りよろしく頼みますよ」 頼んだところで、言った通りにちゃんと動いてくれるとは、美鈴は思っていない。 見た目と仕草が可愛い人語を話す豚──と言うのが、れみりゃに対する彼女の評価だ。 「うー! わかってるどぉ~! れみ☆りゃ☆う~♪」 あまりわかっていない。言うまでもなく、当然だが。 下ぶくれのへちゃむくれな、人によってはブサキモ可愛いと思う顔面に、楽しそうな笑 顔を浮かべご満悦のれみりゃは、この種たちが「れみぃのぷりちーさに、みんなまいっち ゃうどぉー」と思いこんでいる仕草をしてから、ゆっくりと件の八匹が眠る朽木に歩み寄 る。 「ぎゃぁお~! た~べちゃ~うどぉ~! うっうー!」 れみりゃは八匹の不運なゆっくりが眠る巣穴を覗き込みながら、この種たちが「れみぃ のこわさに、みんなおちっこじょーだどぉ~」と思いこんでいる威嚇のポーズをする。 これを見て恐怖を感じる人間や妖怪は皆無と言っても良いが、ゆっくりに対しては非常 に効果的である。 「ゆっ! ゆゆゆぅ!? れ、れみりゃー! た、たいへんだよ~!」 「ゆゆゆゆゆゆっ! た、たすけておかーさぁーん! ごわ゛い゛よ゛ぉぉぉぉ!」 「ゆっ! ゆう゛ぐぐぐっ! ゆう゛っ……ゅ……」 「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむをたべるんだぜっ!」 「ゆゆゆっ! ゆっ! たべていいのはれいむとありすだよ! まりさはみのがしてね!」 「ゆっ! ありす、ぱちゅりー! ゆっくりしてないではやくおとりになって、まりさた ちをにがしてね!」 「い゛や゛ぁぁぁ~! ぜっがぐい゛ぎのびだのにぎぃぃぃぃ! ごごでじぬ゛な゛ん゛ でぇぇぇ~!」 「むきゅっ! れみぃ! ぱちぇがぎせいになるから、れいむとありすはたすけてあげて!」 たちまち巣の中は大混乱。 それぞれの性格がよくわかる悲鳴を、ゆっくりたちは上げている。 れいむ母子は愚鈍で他力本願、まりさ母子は狡猾で薄情──と言う世間の認識通り、さ して新鮮みを感じない反応だ。 しかし、ありすとゆっちゅりーの反応は、型通りのものではなかった。 大多数のありすは、このような危機に直面しても「とかいは」のプライドで無意味に強 がるのだが、この一家のありすは早くも絶望に打ち震え嗚咽している。 ゆっちゅりーもまた、危機に瀕しては、混乱する仲間を落ち着かせるか、一緒に怯えて 混乱しクソの役にも立たないかのどちらかな場合が多いのだが、この巣に住むゆっちゅりー はいきなり自己犠牲である。 「なんなのかしらねぇ……れいむとまりさは普通なのに、ありすとゆっちゅりーは妙ね」 巣穴とは逆側の位置に控え、ゆっくりたちに姿を見せず声を聞いていた美鈴は、連中の 悲鳴を聞いて呟いた。 プランをちょっと変更しようかしら──考えながら、れみりゃが指示に外れた行動をし ないか監視する。 「うっうっー! いただきますだどぉ~!」 二匹いる子れいむのうちの一匹を、れみりゃは無造作に掴んだ。 「ゆぅぅぅぅぅっ! やべでぇぇぇ! たべばびでぇぇぇぇ! お゛があ゛さあ゛ん゛!」 母親にすがったところで、この危機を脱せるわけもないのに、捕らえられたれいむは無 駄な悲鳴を上げた。 「い゛や゛ぁぁぁ! れ゛い゛む゛の゛ごども゛があ゛ぁぁぁ! ゆ゛っ゛ぐり゛や゛べ でぇぇぇ!」 その身体の大きさならば、死も辞さぬの覚悟で体当たりすれば、運が良ければれみりゃ ぐらい撃退出来そうにも関わらず、無力で無能な母れいむはただ悲嘆にくれる。 姉妹が大ピンチで、母親が恐慌状態にある中、もう一匹の子れいむはと言えば、 「……ゆぅ……ゅ……ゅ……」 恐怖のあまり失神し、白目を剥いて少量の餡子汁を漏らし震えていた。 この一家のれいむたちは他力本願、臆病、無能、愚鈍と、仮に救おうとする者が現れた としても、生かす価値を見いだしてはくれそうにない体たらくである。 「お、おがぁざんっ! れいむがたべられてるうちにっ、に、にげようよっ!」 「ゆっ! そ、そうだぜっ! ありすとぱちゅりーにとつげきさせれば、まりさたちはに げれるんだぜっ!」 「はっ、はやくっ! ゆっくりしないではやくっ、にげようよっ!」 本人たちは小声のつもりだが、朽木の向こうにいる美鈴からも丸聞こえ大声で、まりさ 母子は一緒に暮らす家族を犠牲にして、自分たちだけが助かるための家族会議を行ってい る。 「うん、決めた。まりさはなるべくひどく殺そう」 不快感に眉を歪め、厚い朽木の壁の向こうで美鈴は呟いた。 元から彼女は、ゆっくりまりさが大嫌いである。 しょっちゅう強引に門を突破し、メイド長に叱責される原因をこしらえてくれる、あの 白黒の魔法使いと顔が似ているにも関わらず、本物の白黒が持っている美点を何一つ持た ず、悪いところだけをグロテスクに誇張したような存在であるため、美鈴は心の底からゆ っくりまりさを嫌悪していた。 「だべよ゛おあぢゅり゛ー! じびだぐなびげど、あ゛り゛ずがぎぜびに゛なずば! ど、 どう゛ぜ……い゛ぎででも゛づらい゛ごどばっがだじぃぃぃぃ!」 涙と鼻水と涎で声を濁音まみれに詰まらせながら、ありすはゆっちゅりーに言った。 「むきゅ! そんなことないわ! ありすはいきなきゃ! いままでつらいじんせいだった ありすには、しあわせになるけんりがあるの!」 頬を膨らませて、ゆっちゅりーはありすを本気で叱った。 「おあぢゅり゛ー……う゛う゛う゛っ、あ゛、あ゛じがどお゛ぉぉぉぉぉ!」 自らが分泌した液体でべしょぐしょな顔面を、ありすはゆっちゅりーに擦り付けながら 慟哭した。 たいがいのありす種は、このように肌と肌を接触させると、たちまち発情し淫乱ビッチ なセックスアニマルと化す事が多いが、このありすはただ身を震わせて泣くだけである。 そんなありすを優しく、愛おしそうにゆっちゅりーは受け止めて、 「むきゅ! ありすぅなかないでよぉ……げんきださないと、ゆっくりできないわよ」 顔に向かって舌をのばし、すごく汚らしい各種液体を舐め取ってやる。 とても微笑ましいが、見る人の感性によってはちょっとキモいと思う光景である。 「ますます妙ね……変なありすとゆっちゅりー」 気の流れを把握する事で、見なくともどのように動いているかを察知できる美鈴は、テ ンプレに外れた動きをするこの二匹に強い興味を覚えた。 「まぁ、まずは作戦を進めましょう……どうするかは後で考えよう」 この後の二匹の行動次第では、生かしておくもの面白そうだと美鈴は考えた。 「うっうー☆ あ゛ぁ~ん!」 大きく口を開いて、れみりゃは手に持った子れいむを、その中へ放り込もうとしていた。 このサイズのれいむならば、どうにか丸ごとに口に納められるので、全てを口に入れて からゆっくりと時間を掛けて咀嚼するつもりである。 「こらっ! 違うじゃないの」 プラン外の行動をれみりゃが取り始めたのに気付き、死なず肉体が損壊せず程度の威力 に手加減した気弾を二発放った。 「うあっ! あっぶないどぉ~!」 カッ! 「……えぇっ!」 なんと、れみりゃは美鈴の放った気弾をグレイズした……! 「し、信じらんない……なに、このれみりゃ……」 あまりの事に呆然となる美鈴。 本当は、うっかりと自機狙いではなく、対象の左右に広がる2way弾を放ってしまい、 それに対してれみりゃが片方に向かって鈍重に近づいたので、偶然グレイズとなっただけ の事なのだが、美鈴はその事実に気付かなかった。 弾の速度がもっと遅ければ、むしろれみりゃから当たって行くと言う結果になったのだ が、ちょっと弾が速すぎたのも、この希有な偶然の発生を助けたのである。 「う~、いそいでたべて、おうちかえるどぉ~! あむ゛っ!」 「ゆ゛っ!? ゆ゛ぎゃっ!」 れみりゃは手に掴んだ子れいむの頬にかぶりついた。 「むぐむぐ……あっまーいどぉー♪ うまうま♪」」 急いで食べるのならば、丸ごと口に入れるのが最も早いのにも関わらず、れみりゃは愚 かにも普通に一口ずつ食べている。 「ゆ゛ぎゃ! ゆ゛ぎぃぃぃぃ! い゛だい゛ぃっ! お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛ん!」 表皮ごと中の餡子を食いちぎられる激痛に、子れいむはこの世の終わりが来たような悲 痛な叫びを上げた。不運な事に、この程度では致命傷には至らない。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ! べびぶの゛ごどぼがあ゛あ゛あ゛あ! だべな゛びでぇぇ ぇぇぇ! や゛べでぇぇぇぇぇぇっ!」 餡子をわけた子供が食われるという、親としてとても辛い光景を見せつけられ、母れい むは泣き叫び、我が子の助命を嘆願する。 ただ泣き、悲鳴を上げ、お願いするだけで、事態が好転するほど世の中は甘くないのだ が、身体の芯から甘い餡子で満たされている、この愚劣で下等な安息ばかりを求める生命 体は、そんな簡単な事もわからない。 この母子のように、れいむ種が悉く愚鈍で無能な虫けら並の存在と言うわけでもなく、 中にはもうちょっとはマシな個体も存在するのだが、大多数は似たり寄ったりである。 「いい? まりさがあいずしたら、いっせーのせでとびだすんだぜ?」 「ゆっ! わかったよ! あのれみりゃがれいむをたべおわって、おかあさんれいむにお そいかかったら、だね?」 「ありすとぱちゅりーは、ほんとうにやくたたずだね! まりさたちのためにたたかいも しないで……ここでゆっくりしねばいい! ゆっくりくるしんでしねばいいい!」 ゴミクズどもは、外敵がれいむを最初の標的としているのを察して、具体的な逃走プラ ンをほぼ完成させていた。 狡猾で薄情なこいつらは、その愚鈍さにつけ込んで、今まで散々に利用してきたれいむ 母子を生け贄とし、奴隷のようにこき使い罵倒し虐めてきたありすとゆっちゅりーを置き 去りにして、この場から疾く早く逃走する気でいる。 ちなみに、今ちょうどれみりゃに食われている子れいむは、母まりさが母れいむで性処 理した際に出来た子である。 子まりさは、母れいむが母まりさに命じられて、タチ役をやらされた際に出来た子であ るから、れいむ母子とまりさ母子は世間的に考えるならば普通に家族であった。 にもかかわらず、母まりさは妻であり夫である母れいむも、自らのタネ餡子粒によって 生まれた子れいむも、自分と自分が産んだ子のために積極的に犠牲にする気である。 母が母なら子も子で、自分たちを作る元になったタネ餡子粒を提供した母れいむと、母 体違いの姉妹である子れいむを、自らが助かるために容赦なく犠牲とする事に対して、何 の痛痒も感じていない。 「んっ、ぱちゅりー……ありがと……もう、だいじょうぶよ」 ゆっちゅりーの努力によって落ち着きを取り戻したありすは、こんな危機的状況には似 合わない微笑みを浮かべた。 「むきゅーん、ありすぅ……ぱちぇがんばるから、ちゃんとにげていきのびてね」 「ううん、むりしなくていいわ! ぱちゅりーがしんでありすだけいきのこっても、いみ ないよ! いっしょににげるのよ!」 相変わらず自己犠牲に固執しているゆっちゅりーを、今度はありすが叱咤した。 「むきゅきゅぅ~、うれしいけどそれはむりよ……あのまりさたちがいるから、ぱちぇと ありすはすていしにされるうんめいだわ……むきゅ……」 薄汚いゴミクズどもの卑劣な考えを見通しているゆっちゅりーは、ありすの楽観論に対 して否定的見解を述べ、悲しそうに目を伏せ涙をこぼした。 そんなゆっちゅりーを元気づけるように、 「……なかないで、ぱちゅりー……とかいはのありすががんばるから、ね! ぜったいだ いじょうぶよ!」 ありすは精一杯の虚勢を張って励ました。 だが、色々な逆境をこれまで味わい、辛酸舐めさせられてきたありすは、強がってはみ たものの弱気な本音を見せる。 「でも……もしだめだったら、いっしょにしんでくれる?」 「むきゅ? そんなこといわないでよ! しんじゃらめよぅ……でも、でも……しぬとき は、ぱちぇもありすといっしょがいいわ……むきゅぅん」 ありすの本音に触れたゆっちゅりーは、強い調子で叱りながらも彼女の気持ちを受け入 れた。 「ぱちゅりー……ごめんね、ありがとう……だいすき……」 「むきゅぅ~ん、ありす……こっちこそ、ごめんね……ぱちぇもだいすきだよ……」 二匹は今まで秘めてきた想いを告白し、どちらからともなく唇を重ね、お互いを慈しむ ようなキスをした。 こんな事態が訪れなければ、死ぬまで秘めたままであっただろう恋心を吐露した二匹は、 生命の危機が迫る中で得られた束の間の幸せを噛みしめながら、確実視される死への覚悟 をゆっくりと固める。 「うっまいどぉ~♪ あっまいどぉ~♪ おいっしいどぉ~♪」 子れいむの頬を噛みちぎって作った傷口から、でろっと緩慢にこぼれ出す餡子を、れみ りゃはぺちゃべちゃびちゃぐちゃはしたない音を立て舐めていた。 でろんと垂れてくる餡子を舐め取る姿は、まるでチョココロネを細い方から食べて、太 い方から垂れるチョコを舐める、某貧乳がステータスな女子高生を彷彿とさせる。 急いで食べる、と言った事はもう完璧に忘れている。 胴体が無いれいむやまりさたちは「ゆっくり」「ゆっくり」言う割には、こと食事に於 いては物凄く早食いなのだが、胴体と手足が備わっているゆっくりれみりゃは、このよう にゆっくりと食事をするのが大好きなのである。 「ゆ゛ぎぃぃぃぃ! や゛べでぇぇぇぇぇぇっ! べびぶのぉな゛がびぃ、な゛べな゛び でぇぇぇぇぇっ!」 痛い痛い痛い怖い怖い怖い──噛みちぎられた傷口は焼けるようにずきずきと痛み、少 しずつ生命の素が外へ奪われて行く恐怖が、休むことない絶叫を子れいむに強いる。 「お゛ね゛がい゛ぃぃぃぃ! べびぶの゛ごどぼ、ゆ゛っぐじじな゛びでばびゃぐばな゛ じでぇぇぇぇぇ! だぜがだずげでよ゛ぉぉぉぉぉぉぉっ! ばがぁぁぁぁぁ!」 我が子の苦しみを前にして、立ち向かおうともせず、ただ不明瞭な言語で泣き叫び、来 るあてもない助けを呼ぶだけの、愚鈍にして蒙昧な母れいむは、自らの無力を嘆くでもなく、 誰も助けが来ない事への不満を口にしはじめる。 「べびぶの゛っ! べびぶの゛がばびびごどぼがじに゛ぞう゛な゛の゛に゛! どぼぢでだ べぼだずげでぐれ゛な゛びの゛ぉぉぉぉぉぉ!」 「はーい、じゃあ助けてあげるわよ」 れみりゃにグレイズされたショックから立ち直った美鈴が、やっと動いた。 青竜刀を構え、彼女は跳ぶ──。 「うー? うっ……う゛う゛う゛う゛っ!?」 なんでれみぃのからだがみえるの? 地面に転がる生首となったれみりゃは、棒立ちしている自らの身体を見つめていた。 痛みは、全く無かった。 なのに何故か、首と胴が離れている。 「ふぅ……やっぱり弾幕よりも、こっちのが楽ね」 肉汁に汚れた刃を、美鈴はぺろりと舐めた。 一刀のもとにれみりゃの首を斬ったのである。 あまりにも疾い、一瞬の出来事であったため、斬られたれみりゃには何が起こったのか 全くわからなかった。 「い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉぉっ! だずげでよ゛ぉぉぉぉぉっ!」 首を失ったれみりゃの手に掴まれたままの子れいむは、目前の危機からは一応脱した事 に気付かず、相変わらず濁音が鬱陶しい悲鳴を上げていた。 「ゆ゛っ! なに? なにがおきたのっ?」 目の前で我が子をいたぶり食べていたれみりゃが、突然首無しとなったのを見て、母れ いむは驚きに目を見開いた。 「たすけがきたんだぜ! ひごろのおこないがいいまりさたちは、これでたすかるんだぜ!」 「そうだね! おかぁさん! これでゆっくりできるね!」 「でも、すみっこで、へどがでそうなさんもんれんあいげきやってる、やくたたずのあり すとぱちゅりーは、ゆっくりしんでほしいね!」 どう言うわけか普通の人間や妖怪よりも、こう言う時の状況認識だけは素早いゴミクズ 母子は、自分たちは助かったと思いこみ、安堵していた。 「ぱちゅりー……んっ……」 「むきゅぅん……ありすぅ……」 完全に二匹の世界を作っている、ありすとゆっちゅりーには、突然起こった状況の変化 などどうでも良かった。 どうやら救援に類するらしい事が起きた、と言うことはなんとなくわかっていたが、同 時に自分たちの命運はもう尽きているとも悟っていた。 れみりゃが倒されたなら、倒した者はそれより強大な存在である。 ならば、どうあがいたところで生き延びる事は不可能だと、ありすとゆっちゅりーは考 えるまでもなくわかっている。 生きようと苦労しても死ぬ。頑張っても死んでしまう。何をしても殺される。 不可避の死が迫っている以上、あがいて苦労するよりも、愛する存在と、このまま死が 訪れるまでゆっくりしていたいのである。 ──こうして、この二匹は現実からの逃避を選択した。 「う゛っ! う゛っ……う゛ぁぁぁぁっ! れ゛びぃのがら゛だがぁぁぁぁぁっ!」 やっと自分が斬首され、跳ねる事も転がる事も出来ない、無力な生首と成り果てた事に 気付いたれみりゃは、嘆き悲しみ絶叫した。 再生するまでは、ただ叫ぶしか出来ないれみりゃヘッドを、美鈴は無造作に拾い上げると、 「うるさい。黙れ」 と言って、気を送り込み失神させた。 自失の後に、グレイズされたのはきっと偶然だと結論付けたものの、やはりイレギュラー 因子は排除するのが賢明であると、美鈴は判断していた。 気の力で気絶させるよりも、ひと思いに潰して殺した方が早いが、最初かられみりゃは 生け捕りにして持ち帰るつもりでいたので、あえて殺さずに済ませたのである。 もうちょっと利用してから、手足を引きちぎって賞味したり、無理矢理それを食べさせ たり、下半身に性的な虐待を行ったりなどして、死なない程度に痛めつけ、苦しめて楽し む予定だったが、あっさりと美鈴は当初のプランを放棄していた。 「作戦通り状況が動くとは限らない、っと……もう気の向くままに進めましょ」 れみりゃヘッドを適当に投げ置き、まだ棒立ちのままのれみりゃボディに目を向ける。 「ゆ゛ぎぃぃぃぃっ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! お゛があ゛ざあ゛ぁぁん゛!」 「ゆっ! れいむ! ゆっくりがまんしてね! もうれみりゃはしんでるから!」 遅ればせながら、強大な敵が何時の間にか無力化されている事に気付いた母れいむは、 傷の痛みを訴える子れいむを言葉で励ます。 相変わらず具体的に何か行動するでもなく、言葉だけでどうにかしようとしている。 「……口先だけの母性愛、か……」 忌々しげに呟くと、美鈴はゆっくりたちの巣穴に近寄り、 「もう、大丈夫よ! ゆっくりしていってね!」 見る者を温かく落ち着いた気持ちにさせる、とっておきの笑顔を浮かべた。 「ゆっ! おねえさん、ゆっくりできるひと? ゆっくりできるひとなら、まずれいむの こどもをたすけてね!」 母れいむは、れみりゃを倒してくれた礼を言うよりも先に、我が子の救助を要求した。 もっとも、今まで死なずにここまで大きく成長できたのが不思議なほど、すこぶる愚鈍 なこの個体は、れみりゃの首を刎ねたのが美鈴だと言う事には、まだ気付いていなかった。 「ゆゆゆっ! おねえさん、まりさをたすけてくれてありがとうだぜ! おれいにどうか ここでゆっくりしていってくださいだぜ!」 母ゴミクズは、早くも強者に媚びはじめた。 今までこのゴミクズが、どんな事を言っていたのか知らなければ、物の道理がある程度 わかっている「良いゆっくり」だと思えたかも知れない。 これが両棲動物の糞をかき集めて腐らせたような存在だと、美鈴は知っているので、そ の態度にますます嫌悪を強めた。 「ゆっくりしていってね!」 子ゴミクズのうち一匹は、無邪気な子供を装った。 自分の母には及ばないが、そこらの成体れいむよりは奸智に長けているこれは、外部の 存在の前では普通の子供として振る舞う。 もし生き延びられるならば、母を凌駕する天然記念物クラスのゴミクズになれるかも知 れない。 「ありすとぱちゅりーはゆっくりしね!」 美鈴の挨拶を無視して、もう一匹の子ゴミクズは、未だありすとゆっちゅりーの死に 執着していた。 奴隷同士が幸せに浸っているのが、とにかく気にくわないらしい。 いつもならば、こう言う時は母ゴミクズを煽動し、ありすとゆっちゅりーをいじめてゲ ラゲラ笑うのだが、れみりゃの襲撃中はそれが出来なかったため、非常に強い不満を抱え ている。 「ねぇ、ぱちゅりー……もしいきのびられたら、いっしょにくらしてよ……やくそく、し てくれる?」 起こるはずもなく、期待もしていない延命という奇蹟を、ありすは口にした。 叶うはずもない約束だが、こうすることで、死んでもきっと一緒にいられると、ありす は思ったのである。 「むきゅっ……いいの、ありす? ぱちぇはよわいから、あしでまといになるよ」 ありすが何を考えているのか、ほぼ正確に察しているゆっちゅりーは、それにあわせる 事にした。 「そんなことないわ! ぱちゅりーは、わたしなんかよりずっとつよいよ……だって、ぱ ちゅりーがいてくれたから、わたしはいきてこれたんだもんっ!」 「むきゅきゅっ……そんなことないわよ。ありすのおかげで、ぱちぇはいきていられたん だよ……だから、いきのびられたらいっしょにくらそうね。やくそくするよ、ありす」 こうして二匹は、全く期待していない奇蹟でも起きない限りは、絶対に叶わない約束を した。 一般的に死亡フラグとは、生存を前提としていると立つが、このように死を前提として いる場合は、どうなるのか……全ては美鈴が決める事である。 「ゅ……ゅ……ゆゅゅゅぅ……」 れみりゃの出現と同時に、恐怖のあまり失神した子れいむは、母をはじめとする家族全 員ばかりか、美鈴にもその存在を忘れられていた。 失神しているうちに、再び寝入ってしまったようで、今は安らかな寝息を立てている。 「ふふふっ、お姉さんは、すごくゆっくりできる人よ」 「ゆっ! それならよかったよ! さぁ、はやくれいむのこどもをたすけてね! ゆっく りするのはたすけてからだよ!」 ここにいるゆっくりたちの関係や、だいたいの性格など把握済みの美鈴は、まず最初の 標的を、この愚鈍で無能なれいむ母子にしようと決めた。 「あらあら、私はゆっくりできる人なんだから、まずゆっくりしたいのよ。助けるのは、 私がゆっくりしてからね」 まずは軽い言葉のジャブ。 「ゆゆゆっ! だめだよ、おねえさんっ! ゆっくりしたいなら、れいむのいうこときい てね!」 身の程を弁える、などという高等な事は、この愚母れいむには無理な相談だ。 「あら、どうしてあなたの指示に従わないといけないの? ゆっくり教えてね」 心の底からバカにして見下している存在が、多少強気に出たり失礼な事を言ったとして も、心に余裕があれば案外腹は立たないものである。 「ゆっ! おねえさん、あたまわるいねっ! ここはれいむのおうちなんだから、れいむ のめいれいはぜったいなんだよ! はやくりかいしてね!」 ぷくーっと頬を膨らませ、母れいむは美鈴を怒鳴りつけた。 危害を加えて来ない相手に対しては、とことんまで強気に出るのが、このゆっくりとい う生命体の基本である。 「おねえさん! そのれいむはうそつきだぜ! だって、ここはまりさのおうちなんだ ぜ!」 横から茶々を入れる母ゴミクズ。 この巣の主は、この家族のリーダーは、自分だと自負しているゴミクズは、母れいむの 「れいむのおうち」発言を聞き逃さなかった。 普段そんな立場を弁えないような事を母れいむが言った時は、体当たりをして肉体を痛 めつけてから、強引に生殖行為に及んで心を痛めつけ、その後は子ゴミクズとともに三重 奏で悪口雑言を浴びせると言う、厳しい折檻をしているのだが、今はれみりゃを簡単に屠 るような強者がいるので、それを利用する気だ。 「そうだよ、おねえさん! おかあさんのいうとおり、ここはまりさたちのおうちだよ! このれいむたちは、いつもうそつきでこまってるんだよ!」 「うそつきれいむにおしおきしてよ、おねえさん! あと、あっちのありすとぱちゅりー は、わるいゆっくりだから、ゆっくりくるしめてからころしちゃっていいよ!」 母ゴミクズをすかさずサポートする、二匹の子ゴミクズ。 他のゆっくりたちが相手の時、こうやって意見を合わせる事で相手を意のままに動かし て来たゴミクズたちは、今回もそれで行けると確信していた。 狡知に長けているとは言え、所詮ゆっくりはゆっくりである。自分たちの尺度でしか、 相手の事を推し量れないのであった。 「そうなの? それじゃあ、れいむ。あなたの言う事はきけないわね」 本当は今すぐにでも、ゴミクズ母子が汚らしい口を二度開けないように、永久に泣いた り笑ったり出来なくしてやりたいのだが、この先の事を考えて、あえてその口車に乗った ふりをしてみせる。 「ゆっ! なにいってんの! ちがうよ! れいむうそつきじゃないもん! うそつきは まりさだもん!」 心外だと言わんばかりに、強い調子で反論する母れいむ。 「ひどいぜ、れいむ。まりさは、いままでいっしょにくらしてきたかぞくなのに、そんな こというなんて、ひどすぎるぜ……ゆっ、ゆぐぐぐっ…… 母れいむにとっては当然の反論であったが、ゴミクズはさもショックを受けたように悲 痛な声を出し、涙を浮かべ泣き出した。 もちろん、嘘泣きであるが──。 「ゆっ! ひどいよ、おかあさんれいむ! そんなうそつくから、おかあさんないちゃっ たよ! ゆっくりあやまって、じっくりはんせいしてね!」 「かぞくにつみをなすりつけるなんて、さいていだね! おかあさんがかわいそうだよ! ひどいれいむは、ありすとぱちゅりーといっしょに、ゆっくりしね!」 すかさず二匹の子ゴミクズは、自分たちの母が正しく、母れいむは悪であるとアピール する。 ゆっくりでも人でも妖怪でも、人語を解する生き物は、どちらがウソか本当かわからな い事象に直面した際、多くの者が正しいと言った方を真実だと思いこみやすい。いわゆる 多数決の魔力である。 このゴミクズたちは、それを本能で知っていた──みんながいえば、うそもほんとうだ とおもわせられる──と。 「どに゛がぐだずげでよ゛ぉぉぉぉ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! ごばびよ゛ぉぉ ぉぉぉ!」 「ゆっ! れいむはだまってて! おかあさんはいまだいじなはなししてるのっ!」 いつまで経っても助けて貰えず、硬直した首無しれみりゃボディの手に掴まれたままの 子れいむの助けを求める悲痛な叫びは、その母によって即座に却下された。 「あー、もう……そろそろ面倒になってきたわ」 所詮ゆっくりの母性なんかこの程度か──興が削がれた美鈴は、そろそろ直接的なアク ションに移ることにした。 「ゆっ! めんどうじゃないよ! だいじなことだよ!」 美鈴の言葉を聞きとがめ、すかさず母れいむが抗議した。 「何が大事なのよ?」 もう優しいお姉さんを装うのをやめた美鈴は、ぞんざいな調子で聞いた。 「ほんとうにおねえさん、あたまわるいねっ! れいむはうそつきじゃない! うそつき はまりさ! そして、れいむのこどもをはやくたすける! この……ひとつ、ふたつ、え っと……とにかく、それがだいじなことなのっ! りかいしたねっ!?」 数は二までしか数えられない。 「あっそ、じゃ助けるわね。ほいっ、と」 れみりゃボディに向かって両手をのばし、その左右の上腕部を無造作に掴むと、そのま ま腕を引きちぎった。目にもとまらぬ早さで、しかも左右同時にひきちぎったため、腕を 失った首無しれみりゃボディはバランスを崩すことなく、まだ倒れずに立ったままだ。 「ゆっ……ゅ~、ゆぅぐぐ~っ……」 れみりゃハンドに掴まれたままの子れいむは、美鈴が腕を引きちぎった際の衝撃で目を 回し、意識を失った。 「ほら、助けたわよ」 と言って、美鈴は母れいむの眼前に、引きちぎったれみりゃの両腕を手先を向けて突き つけた。 「ゆっ! ありがとう、おねえさん! でもれいむのこどもが、まだつかまれたままだよ! はやくそのきたないてをどかしてあげてね!」 それぐらい、近寄って口と舌を使えば難しい事ではない。 しかし、徹頭徹尾他力本願なこの母れいむは、自分が出来る事も他者任せである。 「うん、そう……だが、断る!」 れみりゃの腕を母れいむの眼に向かって、素早く突き出す。 「れみりゃぱ~んちだどぉ~……なんちゃって!」 ずぬっ! 「ゆ゛っ! ゆ……ゆ゛ぎゃぁぁぁぁっ! べ、べびぶの゛、べ、め゛がぁぁぁぁっ!」 眼窩にれみりゃの腕を突き刺され、両目は完全に潰された。 れみりゃアームは、母れいむの眼を潰しただけではなく、外皮よりも脆弱な目の奥の薄 皮も突き抜けて、中の餡子にまで達するほどに深く突き刺さっている。 「あははっ、目から腕を逆さまに生やしてるよ……はははっ!」 不格好なアンテナを生やしているようにも見える。 「ゆ゛ぎっ! ゆ゛ぐぁぁぁっ! ど、どぶじでぇぇぇぇ! べびぶの゛べぇぇぇぇっ!」 あまりの激痛に母れいむはのたうち回った。 動き回ると巣の壁や巣の中の雑多な物に、突き刺さったれみりゃアームがぶつかり、そ れが傷口を刺激し、さらには中の餡子までもかき乱すため、余計に多くの苦痛を味あわさ れる。 「どう、れいむ? あんたの大好きな子供、助けてあげたよ」 「ゆ゛びゃぁぁぁぁ! ごどぼがな゛ん゛がよ゛じっ、べびぶの゛べぇぇぇぇっ!」 こうなってしまっては、母性愛も何もあった物ではない。 「あらあら、ひどいわね。可愛い子供は、目の中に入れても痛くないはずよ……あははっ」 「う゛ぞぉぉぉ! ぞぶな゛の゛う゛ぞよ゛ぉぉぉぉ! べびい゛べばら゛い゛だい゛ぃ よ゛ぉぉぉぉっ!」 とにかく刺さっている物を抜こうと、母れいむは狂ったように身体を震わせる。 身体を振動させると、れみりゃアームも刺さったまま動くため、新たな痛みが生じるが、 じっとしていても痛い以上、動き回るしか方法が無かった。 「ゆ゛ぎぃぃぃっ! ぐら゛びよ゛ぉぉぉぉぉっ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! ご ご、どごぉぉぉぉぉっ! お゛があ゛ざあ゛ぁぁん゛!」 れみりゃアームを抜こうとする母れいむの努力は、れみりゃハンドに掴まれたまま今ま で失神していた子れいむが目覚めると言う、この母子双方にとって歓迎できない結果とな った。 目が覚めたら、噛まれた傷は痛いし、周りは真っ暗だし、なんかぐらぐら揺れるしで、 れみりゃハンドに捕らわれた子れいむは恐慌状態に陥り、目茶苦茶に動き回り暴れ回った。 その甲斐があって、やっとれみりゃハンドの魔手からは開放されたが、その開放された 場所は──母れいむの餡子の中である。 「ゆ゛っ! だべぇぇぇっ! べびぶの゛な゛がで、あ゛ばべな゛びでぇぇぇっ!」 「な゛に゛ぃぃぃぃ! な゛ん゛な゛の゛ぉぉぉぉ! お゛がぁ゛ざあ゛ぁぁぁぁん゛! だずげでよ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!」 母の声はすれど姿は見えず、周りは何か泥のような物で囲まれていて、真っ暗という状 況で、落ち着いてじっとしていられるわけも無く、子は母の姿を求めて動き回る。 「いいタイミングで起きたみたいね。ふふっ、目の中に入れた子供と、しばらく遊んでな さい」 外部から何か刺激するよりも、この場合は放置しておいた方が、れいむ母子をより長く 苦しめられると判断した美鈴は、次の標的をに照準を向ける事にした。 その次の標的とは、言うまでもなくゴミクズ母子である。 「さ、次はあんたたち……よ……あれ?」 ゴミクズたちが居た方向へ視線を向けた美鈴だったが、そこにはありすとゆっちゅりー が佇んでいる。 この二匹は巣の入り口から見て、もっと奥の方に居たはずなのだが、何故か先ほどまで ゴミクズ母子が居たあたりにまで移動してきていた。 「おねえさん! とかいはのありすが、ここはとうせんぼよっ!」 「むきゅっ! ありすだけじゃないわ、ぱちぇもいるわよ!」 キッと二匹は美鈴を睨む。別に怖くない。 「うん、それで?」 最終的な処遇を決めかねていた、どことなく変わっているこの二匹が、どのように行動 するか、美鈴は出方をうかがう事にした。 「むきゅ……きゅ……むきゅ……」 「……うん……わかった」 なにやら小声で、ゆっちゅりーとありすは相談している。 「…………」 期待を込めたまなざしを向け、美鈴は二匹の次のリアクションを待った。 「……えっと、しょせんちゅうごくははってんとじょうこく! あ……うん……そのちか らはとかいはの、にわりはちぶろくりんにもみたないのよっ!」 詰まった際に、ゆっちゅりーが耳打ちしたとは言え、ありすは長いセリフを最後まで言 えた。 「そこのもんばん! ぱちぇのおうちであばれないで! きょうはぜんそくもちょうしい いから、あんたといい、まりさといいきょうわやくびだわ!」 無理に継ぎ接ぎをして意味不明になっている口上を、ゆっちゅりーは述べた。 「……なるほど……」 予想外というよりも、予想の斜め上な事を喋った二匹に対して、美鈴は感慨深げに重々 しくうなずいた。 「つまり、あんたたちの後ろに、あれは隠れたわけね」 「ちょっと! よそうがいのりあくしょんはやめてよ! とかいはのありすでも、こまっ ちゃうわよ!」 「むきゅ! ありすのいうとおりよ! ここは『ゆっくりはたべてもいいまんじゅうだっ ていいつたえが……』とか、いうべきところよ!」 なんだか妙な雰囲気になってきた。 「そのセリフは負けフラグだからいいたくないのよ……と言うか、あんたら私と戦って勝 てると思ってんの?」 美鈴は右手に持った青竜刀を、ありすの目の前に突きつけた。 返答次第では、このままざっくりと殺さない程度に刺すつもりである。 「そんなさまつなことは、どうでもよかったのであった」 「どうでも良くない」 思い切り手加減して、左手でありすの顔面を殴りつけた。 本気で殴ればそれだけで、ゆっくりなんか砕け散る。 「ゆぐっ! う゛ぅぅぅぅ……ぐっ、ぐずっ!」 ありすは涙目になり、なにかを堪えるように小刻みにぷるぷる震えている。 「ぐっ、ぐじゅっ……い、いたくないわ!」 「うそつけ!」 再び左手で、今度も手加減してありすの顔面を殴りつけた。 次に、どう反応するか、美鈴はすでに予想している。 「ぐべっ! ゆ゛ぐっ……う゛ぅぅぅぅ……ぐじゅっ……か」 「かんじないわ? と言いたいの?」 言うであろうセリフを、先に言った。 「!? ……か……か、か……」 「ふふふっ……ほら、言ってごらんなさいよ?」 美鈴の予想は正しかった。 言おうとした言葉を先に言われて、ありすは言葉に詰まり、横目でゆっちゅりーを見る。 しかし、頼みの綱であるゆっちゅりーは、 「むきゅ……む~、むきゅ~ん……」 悲しそうな面持ちで左右に首──この場合は全身を振った。 「……ま、まいりました……ありすのまけよ……うっ、ひぐっ……う゛ぁぁぉぉぁん゛!」 火がついたような勢いで、ありすは泣いた。 「うん、なかなか面白かったわ……それじゃ茶番は終わりよ!」 恐怖を煽るように、これから何をするのかゆっくりわからせるように、非常に緩慢な速 度でありすに見せつけながら、美鈴は青竜刀を振り上げた。 ■つづく■ あとがき ご笑覧いただきありがとうございます。過日、18禁を投下しやがった者でございます。 またも美鈴です。美鈴大好きです。尻とか太ももとか。 だらだら書いていたら、かなり長くなってしまいましたので、とりあえず前編です…… 虐待がさわりの部分程度で少なく、すみません。 あと、メタ表現が多めで、苦手な方には本当に申し訳ありません。 校正や校閲がまたも手抜きで、みょんな箇所多く申し訳ございません。 先日投下した際に「途中まで400行書いたのがある」的なことを書きましたが、今回の ではなく別のやつです。 いくつか同時進行で、ちょこちょこ別の作業中の合間に書いてます。現在の所、これの 次を含めて6本ほど同時で……なお、全て東方キャラ×ゆっくりです。俺主人公は読むの 大好きですけど、今のところ自分で書くのは……加減を掴みかねてまして。 スレ見るのも作業中にちょい見な感じのため、ご感想いただいたのに反応できず申し訳 ありません。スレの流れが早いと、幽香の移動速度よりも鈍重な私では、流れに乗れない のでございます。 なので、この場にてご感想のお礼をいたします。ありがとうございます。 エロ投下もおkなようでしたら、スレの空気を頑張って読みつつ、大丈夫そうな時にま た18禁も投下させていただきます。 最後に……ゆっくりまりさ、別に嫌いじゃないですよ。むしろ大好きです。可愛い可愛いゴミクズですから大好きです。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1016.html
『ゆゆ~♪おとーさんとおかーさんのほっぺたあったかいよ~♪』 「みんなでくっついてればさむくないね!!!」 「ゆっくりはるをまとうね!!!」 冬、十分な備蓄と準備の下ゆっくり達の冬越えが始まる 家族みんなで身を寄せ合い、溜め込んだ餌を食べ、春に思いを馳せながらゆっくりすごす 冬越え、といっても冬眠ではなく単に巣の中でゆっくり春を待つ 『みんなでゆっくりするのもひさしぶりだね!!!れーむ、しあわせ~♪』 「はるがきてもげんきにがんばろうね!!!」 「れーむははるがきたらどうするの?じぶんのゆっくりぷれいすさがしにいく?」 『ゆゆっ!?じぶんだけのゆっくりぷれいす?』 「おとーさんとおかーさんはここがゆっくりぷれいすだけど、れーむにもじぶんだけのゆっくりぷれいすがあるはずだよ!!!」 『ゆ~、みんなとゆっくりしたいけど・・・じぶんだけのゆっくりぷれいすがほしいよ!!』 「じゃあきまりだね!!ゆっくりぷれいすをみつける”コツ”をおしえるよ!!」 『ゆっくりおぼえるよ!!!』 「ゆっくりれみりゃはだっこしてあそんでくれるけど、ちからがつよいからきをつけてね!!!」 「うーぱっくはいろんなところにつれていってくれるから、すごくゆっくりできるよ!!!」 「ありすははずかしがりやさんですぐほっぺをすりすりしてくるけど、いやがらないであげてね!!!」 そのほかにも、餌場の事、巣を構える場所の条件など親ゆっくりはゆっくり丁寧に教えていった 『ゆ~・・・ゆっくりぷれいすをみつけるのはたいへんそうだね・・・』 「「ゆっくりがんばってね!!!」」 「まりさ!!まどのそとをみてね!!ゆきがやんでるみたいだよ!!!」 「ほんと!?そろそろはるもちかいね!!!ゆきがとけたらいりぐちをあけようね!!!」 『ゆきさん!!はやくとけてね!!!』 春、この家族から一匹のゆっくりが旅立った、自分だけのゆっくりぷれいすを求めて きっとこのゆっくりも家族を作り、子を育て、冬を超え、自分の子を送り出していくのだろう 『おかーさん!!!おとーさん!!!いままでありがとう!!!』 「「ゆっくりがんばってね!!!おとーさんとおかーさんとのやくそくだよ!!!」」 『ゆっくりいってきます!!!』 ~おわり~ 餌ってアンタ・・・・ -- 名無しさん (2012-05-11 00 26 38) ↑な、何かの間違いだよきっと、じ、自分たちの食料を餌だなんて・・・ -- 名無しさん (2012-12-24 17 47 00) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/851.html
畑がうるさいので見に行くと畑に来る小動物用に仕掛けていた罠に子ゆっくりが4匹捕まっていた。 れいむ種とまりさ種だ。この二種類は里に近いところに住んでいるのでよく見かける。 子ゆっくりはどうやら畑の作物を食べようとしていたらしい。 「ゆゆっ!でぐちがどこにもないよ!」 「さっきまではあったのに!」 「ここじゃそのうちゆっくりできなくなるよ!」 「だれかたちゅけちぇね!」 先ほどの騒ぎ声は罠に嵌り出れなくなった子ゆっくりのものだったようだ。 一匹は赤ちゃんか、赤ちゃんに良いとこ見せようとしたんだな。 罠をがたがたと揺らして逃げようとする姿をじっと見るのもいいがそうもいかない。 「ゆゆっ!だれかきちゃよ!」 「おじちゃんたすけてね!」 「れいむちがうよ!けがふさふさだからおにーさんだよ!」 「ゆっ!そうだね!おにーさんたすけてね!」 誰が仕掛けたと思ってるんだ。無視して罠を交換する。 出してもらえると思った子ゆっくりは早く出してねと俺を急かしている。 どうやら運が良かったようだ。 「ゆゆっ?おにーさんどうしたの?はやくしてね!」 「たかいところはこわいよ!はやくおろしてね!」 「入ってるのがゆっくりだけで良かったな。」 前に仕掛けていた罠はゆっくりといのししが一緒に入っていた。 そのため俺が気づいたときにはいのししが食い散らかしていた。 今回は掃除しなくてすみそうである。 「おにーさん早くだしt・・・ゆべべべべ!」 「ゆっぐぢでぎないいいいいいいいい!」 「おね゙ええええぢゃあああああああん!」 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙!」 うるさいので箱を揺する。箱の中で跳ね回る子ゆっくり達。 面白いので縁側まで揺すってしまった。 死んでは無いだろうが餡子を吐かれては困る。 家につく前に飛んでいたうーぱっくを呼び寄せ、この子達の親を呼んできてもらう。 その後、近くに置いていた新聞を手早く広げ、そこにゆっくりを慎重に出していく。 「ゆ~、みんなぐりゅぐりゅ~」 「れいむにげないでね!」 「まりさこそにげないでね!」 「きもちわりゅいいいいい!」 まだ、餡子を吐くほどではなかったか。 それでも目を回した状態のゆっくりは跳ねようとして転がったり見当違いの場所に進んだりしている。 一匹吐きそうだったので口を押さえて背中を撫でてやる。 「口から出さずに飲み込め。」 「ゆぐぐぐggggゴックン」 どうせ餡子を吐くんだから飲んでも問題ないだろうと思ったのだが、苦しいのは苦しいらしい。 飲み込んでる間に立ち直った他のゆっくりが苦しんでる子ゆっくりに近づいてくる。 それを待ってからゆっくりに話しかけた。 「何で捕まってたか分かるか?」 「わからないよ!ゆっくりおしえてね!」 「それは君達が取ろうとしてたのは俺が育ててた野菜だからだ。」 「ゆぅ・・・でもれいむたちおなかすいてたんだよ!」 「ちゃんと柵作ってたんだけど小さいからすり抜けれたんだな。」 「いもーとだっておなかすいてたんだよ!」 「ひとのものをとっちゃだめって言われなかったかい?」 思い当たる節があるのか口を噤むれいむ達。 それでも一匹のれいむは納得できないようで、 「ゆぅうう・・・まりさ!このおにーさんはゆっくりできないよ!」 「でもおかーさんはひとのものとっちゃだめっていってたよ!」 「そんなのわすれちゃったよ!まりさはゆっくりしたくないの!」 「ゆゆっ!ゆっくりしたいよ!」 「じゃあおにーさんをたおせばいいんだよ!」 「そうだね!みんなねきょうりょくすればかてるね!」 ある程度は予想していたがこうも簡単に説得されるとは。 子供だから自分達の力を過信してるんだろうね。 ここで説得できずに反省して変えられても困ったので素直に用意してた小石を手に掴む。 「ゆゆっ!おにーさんまりさたちとやるきだね!」 「けがしてもしらないよ!」 「おねーしゃんがんばっちぇね!」 臨戦態勢に入った子ゆっくりが膨らんで威嚇してくる。 そのまま体当たりをしてくるのを避けて赤ちゃんれいむの頭上に腕を動かす。 「ゆゆ!?あかちゃんはやめてね!」 「かわりにまりさたちとしょうぶしてね!」 「あかちゃんはやくこっちにきてね!」 だがもう遅い。俺は掴んでいた小石を赤ちゃんの上に落とす。 「ゆ゙べべべっ・・・」 悲鳴を言っていた赤ちゃんも小石に埋まって見えなくなってしまった。 「ぎゃあああれいむのいもうとがあああああ!」 「ゆ!まだたすかるよ!ゆっくりこいしをどけてね!」 赤ちゃんゆっくりに落とした小石は頭上すれすれからだったので餡子を出していない。 それに気づいたまりさはれいむ達に声をかけ小石を取り除き始める。 れいむたちも小石を取り除き始めたので静かになった。 俺はと言うと小石を回収している。まだ使うからな。 とうとう赤ちゃんゆっくりの顔が見えた。 光が来たときうれしそうだった顔はたちまち涙を溜め始める。 「ゆうううごわがっだよおおおおおお!」 「もうだいじょうぶだからね!」 「あかちゃんはそこでゆっくりしててね!」 そういって周りの石も取り除き始める子ゆっくり。 それからしばらくして全部の小石を取り去った。 「おにーさんあかちゃんにらんぼうしないでね!」 「そうだよ!あかちゃんがかわいそうだよ!」 「先に仕掛けたのはお前達じゃないか。」 「ゆぅぅぅぅ・・・やるならまりさたちでね!」 「そうだよ!あかちゃんをねらうなんてひきょうだよ!」 「じゃあまりさにやろう。」 「ゆっ?」 そう言って今度は小石をまりさに落とした。 量を増やしたので赤ちゃんのように全部埋まる。 今度はまりさを助ける版だ。文句もそこそこにまりさを掘り出していく。 「おー赤ちゃんもがんばってるね。」 「うるさいよ!おにーさんはやくまりさをたすけてね!」 「君達は俺より強いんだろ?それなのに俺に頼っちゃだめじゃないか。」 「ゆうううう!じゃあ静かにしててね!」 そんなやり取りを繰り返しながらまりさを掘り出す。 まりさを掘り出したら同じようにれいむも埋めてやった。 「ゆぅ・・・おもがっだあああああ!」 「おに゙いさんも゙うやめ゙でえええええ!」 これ以上やると餡子が漏れそうだから止めてやる。 動かない俺を見て、安心したのか赤ちゃんを護るように集まる子ゆっくり。 「おにーさんはそこでゆっくりしていってね!」 小石で汚れた体を新聞に体を擦り付けたり、舐めあったりして汚れを取る。 しかし、全員分やるのを待つと昼になってしまう。 「おい、これで体綺麗にしろよ。」 「ゆゆっ?」 子ゆっくりの前に置いてやったのはお湯の入った皿だ。 ゆっくりは体の性質上、水を嫌うように見えるが汚れを取るためむしろよく水に入る。 泳げないゆっくりは沈んで水を飲みすぎて溶けるが、外皮は水に濡れても大丈夫である。 もちろん子ゆっくりも水浴びは好きなので仲良く一緒に飛び込んだ。 「ゆっくりし・・・あづいいいいいいい!」 「ここじゃゆっくりでぎないいいいい!」 「ゆぅうういちゃいよおおおおお!」 「だいじょうぶだよ!しばらくしたらなおるからね!」 はいってゆっくりするつもりだった子ゆっくりは余りの熱さにゆっくり出来なかったようだ。 赤ちゃんゆっくりはそこが赤くはれて涙目だ。火傷ではないがしばらく痛いだろう。 子まりさがそこを舐めてあやしている。子れいむは痛がりながら皿の水を眺める。 「ゆゆ?どーしいてあついのおおおお!」 「まえはいったときにはつめたかったよ!」 「おしおき中にゆっくりできると思ってたのかい?」 「ゆぅぅ・・・おにーさんのせいだね!」 「その通り。どうだすごいだろう?」 「ゆゆゆゆ・・・」 自分達がよく入る水がゆっくり出来ないものに変えられたのを知った子ゆっくりは眉間を寄せながら俺を睨む。 しかし、どうやって水が熱くなったのか分からない子ゆっくりは俺の力だと思ってさっきまでの用に歯向かう気はないようだ。 なべに入れて火で熱しただけなんだけどね。 怯えを含みだした子ゆっくりにどうしてお仕置きされているのかをもう一度教える。 「どうだ?人のものをとっちゃダメって理解できたか?」 「わかったけどそれじゃゆっくりできないよ!」 「そーだよ!それにうめられてこわかったよ!」 「おみずもあつかったよ!あかちゃんがけがしちゃった!」 「ゆっくちしたいよ!」 どうやら理解はしたが納得できないようだ。 すこしやりすぎたか。まぁもう少しで親が来るだろう。 それまでもう少し遊んでやることにした。 「じゃじゃーん。」 「ゆ?」 取り出したのは孫の手。背中を掻くときに重宝する棒だ。 「へんなかたちー!」 「おにーさんのてみたいだね!」 「そんなのこわくないよ!」 「ゆっゆっ!」 見たこともない棒を持った俺の周りを跳ねて思ったことを口にする子ゆっくりたち。 赤ちゃんゆっくりはまだ底が痛いのかすこし這ったりしている。 まずは赤ちゃんゆっくりからだな。 俺は孫の手を赤ちゃんを潰さないように圧し付けた。 「ゆびゅ!」 「れいむのあかぢゃんがああああああ!」 赤ちゃんの叫び声に気づいたれいむが一番に赤ちゃんに近づく。遅れて他のれいむとまりさもれいむを追う。 「ゆぎゅぅ・・・」 「もうだいじょうぶだよ!すぐにとってあげるからね!」 「ゆぐぐぐ・・・おもいいいい!」 「あかちゃんのためにゆっくりがんばってね!」 赤ちゃんの上から孫の手をどけようと咥えたり押したりとがんばる子ゆっくり。 だが子ゆっくりぐらいの力ならなんとか耐えれる。 孫の手をすこし動かしてやると「ゆぎゅ!」とか「ゆびゅ!」とか音が出るので面白い。 「おにーさんもうやてね!このままじゃあかちゃんがしんじゃうよ!」 「いじわるしないでね!やめてあげてね!」 「じゃあ次はおまえな。」 「でじゃびゅ!」 小石のときのように別のゆっくりも押さえつけていく。 今度はこっちに向かって体当たりしてくるのでデコピンで打ち落とす。 そんなやりとりを繰り返してるとうーぱっくが帰ってきた。 「うー!うー!」 「ありがとう。これはお代だ。」 「うー☆」 連れてきてくれたお礼に野菜をいくつか入れてやる。 飛び立ったうーぱっくのあとに残ったのは親と思われるゆっくりまりさだ。 子ゆっくりに向かう親まりさ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「おどおおおちゃあああん!」 「ゆっぐりでぎながっだよおおおお!」 「ゆぅううううううう!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 いきなり現れた親ゆっくりに向かって跳ねていく子ゆっくり。 さんざん遊んであげたからみんな涙目で喜んでいる。 そして、感動の対面のように親ゆっくりに飛び込む子ゆっくりを親ゆっくりはよけた。 「ゆびゅ!」 親が受け止めてくれると信じてた子ゆっくりはそろって地面に顔を打ち付ける。 「どおしてにんげんのさとにいったの!」 「ゆゆゆ!だっておいしいものが・・・」 「ひとのものをとっちゃだめっていってるでしょ!おぼえてなかったの!」 「ゆゆっ!ちゃんとおぼえてたよ!」 「じゃあやっちゃだめでしょ!あかちゃんがまねしちゃったじゃない!」 「ゆぅ・・・」 おー、怒られてる怒られてる。 説教はしばらく続きそうだな。今のうちに昼ごはんを食べることにするか。 親ゆっくりの後ろで昼用に作ったおにぎりをほおばる。 子ゆっくりも気づいたのか、こちらを見て涎をだしてる。 親ゆっくりの説教もどこ吹く風だ。 「ゆっ!ちゃんときいてるの!」 「ゆゆ!ちゃんときいてるよ!」 親ゆっくりにあわてて反応してるのが面白い。 傍目からも聞いていないのが分かるぐらいにおにぎりを見つめている子ゆっくり達。 遊びつかれてお腹が空いているのだろう。 そんなことは知らない親ゆっくりは怒りゲージが上がりまくりだ。 俺が最後のおにぎりを食べ終わる頃には、 「どお゙じでぎがな゙い゙の゜おおおおおおお!」 「おがあしゃんごめんなさいいいいいい!」 と、泣きながら子ゆっくりに体当たりしだした。 子供よりも大きい親ゆっくりの体当たりは強烈だ。 子供達は吹き飛ばされながら必死に許しを請う。 泣きながら説教を始めた親ゆっくりの話を今度はちゃんと聞いているのだろう。 子ゆっくりは涙を目に浮かべながら顔を俯けていた。 お茶を飲み一服していると説教が親ゆっくりがやってきた。 「おにーさんまりさのこどもがわるさをしました。ごめんなさい!」 「こっちはすっきりできたからもういいよ。」 「ううん。だめだよ!ちゃんととったぶんはたらくよ!」 「そうか、じゃあ一緒に畑仕事をしてもらおうか!」 「ゆっくりがんばるよ!」 昼からはゆっくり家族ともに畑仕事だ。 といってもゆっくりではやることが限られるので、とりあえず雑草を抜いてもらった。 俺の説明を聞いた親ゆっくりの指導のもの雑草を食べていく子ゆっくり達。 さっきまで何も食べていなかったのでむしゃむしゃと雑草を食べていく。 たまに野菜に手を出そうとする子ゆっくりもいたが、すぐに親ゆっくりの体当たりを受けて雑草に戻っていった。 雑草をあらかた取ると次は水遣りだ。 井戸水を俺がくみ上げてやりゆっくりが水を口に含みたぷんたぷんと野菜まで運ぶ。 野菜の根元に水をかけてまた戻ってくるの繰り返し。 途中で子れいむ同士がどれだけ水を含めるか競争しだして片方が崩れかけたので日にたっぷり照らされた石の上に置いて乾かしてやる。 じゅううううとおいしいそうな音を立てながら乾くゆっくりを放置して次の野菜の収穫に向かう。 一通り見回り取れそうな野菜を確認すると鋏を入れていく。 取れた野菜はゆっくりが乗せている箱の中に。 虫食いなどを確認しながら手際よく進める。 しばらくすると、 「おにいさんおも゙ぃ・・・」 「ゆぎゅうう・・・」 箱にいっぱいになる前にゆっくりがつぶれてしまいそうになっていた。 重くなると畑の外にある箱に移すようにと言って作業を続ける。 井戸近くで「あづいいいいいいい!」と言う叫び声が聞こえたが無視だ。 しばらくすると転げまわったのか泥だらけになった子れいむ戻ってきた。 もう動いても大丈夫なようだ。 そんなこんなで畑作業を夕暮れまで続けた。 途中で虫を追いかけた赤ちゃんゆっくりが穴にはまったり、用水路で帽子を洗っていたまりさが帽子を流されたりしたので途中から手伝いとはいえなくなっていたがそれでもいないよりははかどった。 井戸水で体を洗っているゆっくり家族のうち親ゆっくりだけを呼び出す。 「今日は良くがんばったな。」 「ゆっくりがんばったよ!これでまりさのこどもたちゆるしてくれるよね!」 「あぁ。ついでにこれもやろう。」 「ゆゆっ!おにーさんいいの!?」 「あぁお前は何もしてないからな。その分のお礼だ。これで今から餌取りに行かなくていいだろう。」 「おにーさんありがとう!」 俺が渡したのは収穫のときに虫食いがあったりで売れないものだ。 人は食べないだろうがゆっくりなら食べる。 巣にもどってから見せるようにと帽子の中に隠してやる。 洗い終わった子ゆっくりがやってきて、 「おにーさんやさいとってごめんなさい!」 「もうしません!」 「つぎからはきをつけるね!」 「ちがうところでゆっくちするよ!」 そうやって俺に謝って帰っていった。 これでもう野菜はとらないだろう。今回のことは十分記憶に残ったはずだ。 こうやって人里に入った子ゆっくりに人の強さを覚えこませてきた結果ゆっくりは人里で物を取ることはなくなった。 かといってゆっくりが人里に下りてこないわけではなく、先ほどのように人を手伝ったりして食べ物を貰ったりしている。 人とゆっくりは今ではそれなりにゆっくりと生活している。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1341.html
竹林の奥に、ひっそりと佇む、月から幻想郷へと移り住んだ者達が住む永楽亭。 その地下には、和風の屋敷には不釣り合いな内装の研究室がある。その部屋の中で机に座った、看護師のような服を着た銀髪の美し い女性が片肘を突きながらガラスケースに入った何かを見つめていた。 「おねえさん!おめめがいたいよ!おうちかえる!」 大きめのガラスケースに入っているのは、今や幻想郷でお馴染みとなった。ゆっくりれいむだった。 しかし、何やら様子がおかしい。 「なにもみえないよ!」 ゆっくりれいむの両の眼球には、手術用のメスが深々と突き刺さっており。その眼からは、涙と餡子が混ざった液体が流れている。 ガラスケースの中には、その液体が飛び散った跡があり、ゆっくりれいむが痛みで暴れていた痕跡が窺える。 「あらあら、何も見えないのね?それじゃあ、お友達の姿も見えないし、お花見もできないわね?」 微笑みながら、ゆっくりれいむに語りかける銀髪の女性は、“月の頭脳”こと、八意永琳だ。 「ゆっくりできないよ!」 体を左右に揺らしながら訴えるゆっくり霊夢。 「うふふ、私はとってもゆっくりしてるわよ?」 ニコリっとする永琳。その優しい笑顔で何人の男性を虜にしてきたのか。 「ゆっくりさせてよーっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむちゃん、安心して?私はお医者さんなのよ?こっちにいらっしゃい?あなたのお目々を治してあげるわ。」 永琳がそう言うと、少し間をもった後、ゆっくりれいむは声のする前方へ恐る恐る向かう。 ゴツッ 「ゆ゛ぐぅぅぅううぅぅっ!!!」 しかし、ゆっくりれいむの前には当然、ガラスケースの面が立ちはだかっている。両目のメスはより深く突き刺ささる。 実は、こんなやり取りがもう五回程続いている。 激痛に泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「あら、ごめんなさい。ケースの扉を開けるのを忘れていたわ。ほら、もうこっちに来れるわよ。」 もちろん、そんな扉は無い。 「もうやだ!おばさんはうそつきだよ!!!」 さすがに知能の低いゆっくりでも、こう何度も騙されていたら少しは学習するようだ。 しかし、ゆっくりれいむがせめてもの抵抗で発した。その単語がいけなかった。 「お・ば・さ・ん…?」 突如、八意永琳の顔が豹変した。顎を思いっきり横にずらしながら歯ぎしりし、眉毛は釣り上がり、目線は斜め上に向かっている。 顔中にシワが走り、血管が浮き出る。 「だ・れ・が、おばさんじゃこのちくしょうがあああぁあああぁあぁぁぁっ!」 永琳は凄まじい勢いで席を立つと、棚から濃硫酸の入ったビンを取り出し、すぐさま元の席にかけ戻り、ゆっくりれいむの 入ったガラスケースの上部の扉を開け、ドボドボと濃硫酸をそそぎ込んだ。 「ゆぅーーーっ!!!」 どんどん溶けていく、ゆっくりれいむ。 「わしはまだまだティーンエイジャーじゃああああああっ!!!」 発狂しながら濃硫酸を注ぎ続ける永琳。 「[[ゆっくり]]ゆるしてね![[ゆっくり]]ゆるしてね!」 必死に命乞いをするゆっくりれいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ……。」 しかし、ゆっくりれいむはドロドロの液体になり、ガラスケースには饅頭のジュースが出来上がった。 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ……。」 肩で息をしながら、我にかえる八意永琳。 「あらいやだ、もっと時間をかけて楽しむつもりだったのに……。うどんげっ!うどんげっ!!」 「はい!何ですか師匠!!」 八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋へと駆けつける。 「このドロドロの汚いの、皿に分けて隣の部屋のゆっくりどもの餌にしておいてちょうだい。」 「はい!師匠!」 ガラスケースを抱え上げ、部屋を後にするうどんげ。 「…!」 ふと、あることに気づく八意永琳。 「あらあら…私ったら…ウフフ……。」 彼女の股は濡れていたのだ。 狂気を操る自分でさえ、師匠の持つ狂気にはかなわないだろう。 ガラスケースの中の、溶けたゆっくりれいむを見つめながら、うどんげはそんなことを思っていた。 今宵は新月、永楽亭の静かな夜は続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/568.html
どこまでも晴れ渡った青空のもと、広い草原の上。8匹のゆっくり達がゆっくりとした時間を過ごしている。 まだ小さい赤ちゃんゆっくりが6匹、成体の、おそらく赤ちゃんゆっくりの親であろうゆっくりが2匹いる。 赤ん坊は全て霊夢種のゆっくりで、両親の愛情をうけていままでゆっくりと暮らしてきたのだろう。 野生種にしては肌に張りがあり、髪も艶がある。要するにとても健康なのだ。 満面の笑みを浮かべながら、「ゆっ♪ゆっ♪ゆっくり~♪」と跳ねながら歌っている。 子供たちよりも二回り大きい霊夢種と、その霊夢種より少し大きい魔理沙種の両親がそれを見守っている。 見守る親ゆっくりの表情もとてもゆっくりとした良い表情だ。 両親の髪には、昨日我が子が自分達のためにと採ってきてくれたタンポポが刺さっている。 自分の子供たちがゆっくりとしたやさしい子供に育ってくれたことが、彼らにはうれしかった。 「れいむたちのこどもいいこだね!」 目を細めてゆっくり親霊夢が言う。 「まりさたちのこどもゆっくりだね!」 親魔理沙もうれしそうに言う。 両親ともにやはりとても健康だ。 そう、私の娯楽に付き合うのに彼らは完璧だ。 長い間ゆっくりの家族たちを見てきたが、彼らほどお互いのこと思いあっているゆっくりの家族はそういるものではない。 彼らを私の素敵なパーティーに招くためには第一印象が大事だ。 できるだけやさしい声で、彼らに話しかける。 「やあ、ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 種としての本能か、彼らはやはりゆっくりしていってね!!!と返してくる。 この反応で10日前にやった遊びを思い出す。 ふと、どんな状況でも「ゆっくりしていってね! 」と言えば「ゆっくりしていってね! 」と言い返してくれるのか実験してみた。 ゆっくりの足?かどうかはわからないが、底の部分をのこぎりでゆっくり切る。もちろんゆっくりは泣き叫ぶ。 「ゆっくりしていってね!」と言えば、 「つっづゆっづっりじていっべぇねぇ!!!」と、激痛の余りゆがめた口から、泣きながら「ゆっくりしていってね!」らしき言葉を話していた。 そのゆっくり霊夢は元の場所に帰してやったが、おそらくもう死んでいるだろう。 おっと、いかんな。今大事なのは目の前の彼らを私のパーティーに招くことだった。 「おじちゃんゆっくりできるひと?」 「おじさんゆっくりできるひとなの?」 おじさんかぁ…まあいい。私から溢れるダンディーな雰囲気から、お兄さんではいけないと考えたんだろう。 彼らが聞いてくる。驚いたことに、ゆっくりとだが私から距離をとり、まだ小さい子ども達の前に霊夢種と、なんとあの魔理沙種が立っている。 おそらく私が襲いかかってきたときに、子供たちを守り、子供たちを逃がすためだろう。 特に魔理沙種が子供たちを守ろうとする姿勢は私を感動させた。あの親兄弟子供さえ自分のためなら切り捨てる魔理沙種が! 彼らに会えたことを心の底から感謝しなければ!! 「うん、ゆっくりできる人だよ。ところでそこの君達、とてもきれいな髪飾りだね」 「「うんわたしたちのあかちゃんがくれたんだよ!!」」 「「「おかあさんたちにあげたんだよ」」」 親ゆっくりはうれしそうに、子供ゆっくりは誇らしげに私に向かってしゃべる。 髪飾りを褒めただけで警戒を解くところは、やはりゆっくりといったところか…。 「ところで君たち、ご飯を食べないかい? たくさん持っているんだけど一人で食べるには多いからね。一緒に食べよう」 「ゆっ!!ゆっくりちょうだい!」 「ゆっくりまってね!」 子供たちはうれしそうに駆け寄ろうとするが、親ゆっくり達に止められている。 彼らは少し疑わしそうにこちらを見ている。なるほど、毒を警戒しているのか? ゆっくりにしては賢い。相当修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか? 「ははは、毒なんかはいってないから、心配せずに食べてごらん」 ニッコリ笑って風呂敷袋からおにぎりを取り出し咀嚼する、うんおいしい。やはりおにぎりの具は梅干しだ。 「うたがってごめんね!ゆっくりちょうだい!」 信用してくれたようだ、別の風呂敷袋からまた別のおにぎりを取り出す。具は特にない。 そしてなかには無味無臭の睡眠薬が入っている。 それを4個彼らに与える。 「うめぇ!めっちゃうめぇ!」 君達ね、君達の食べているおにぎりを私が食べたわけではないのになぜ毒がないと思うかな? まぁゆっくりだからしかたないか。 彼らが気に入ってくれたようでよかった。 人生最後の食事、いや饅生最後の食事なのだから、ゆっくり味わってほしいのだが、尋常ではないスピード食べている。 君達全然ゆっくりしてない、ちゃんと味わっているのか? すぐに彼らは食事を終えた。 親ゆっくりたちが子供の口に付いたご飯粒を取ってあげている、心温まる光景だ。 「おじちゃん!とってもおいちいよ!ありがとね!」 「おじさん!とってもおいしかったよ!ゆっくりしていってね!」 この家族に私は気に入ってもらったようだ、しばらく彼らと遊んだ。 遊ぶといっても、小さいゆっくりを持ち上げて立ってやるだけなのだが、いつもと違った景色にご満悦のようで、 「ゆっ!とってもたかいよ!」と喜んでくれる。 特におそらく末っ子の一番小さいゆっくりはこの遊びを気に入ったらしく、私の掌でとび跳ねながら 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 と喜んでくれている。 一番ちいさいのでちびゆっくりと呼んでもいいかと聞くと、 「ゆっ♪おじちゃん大好きだからいいよ」 といってくれた。かわいいゆっくりだ。 そうこうしているうちに薬が効いてきたのか、子供ゆっくりが眠そうだ。 「なんだかねむいね…」 それに気づいた親ゆっくり達は、家に帰ることにしたようだ。 「「おじさん!きょうはありがとね!ねむたいしきょうはおうちにかえるね!」」 親ゆっくりも少しは眠そうだ。体が大きい分薬の回りが遅いようだ。 このまま家に返してしまっては彼らをパーティーに呼ぶことができない。 「子供ゆっくりちゃん達も眠そうだし、そのまま帰るのは危ないよ。だからさ、今日は僕の家に来ないかい? 食事もあったかい寝床もあるし、気に入ってもらえるならそのまま君たちの家にしてもらってもいいよ」 「ゆっ!ほんと!」 「おじさんのうちにいくよ!ゆっくりつれてってね!」 すっかり私のことを信用してくれたようだ。 「うん、それじゃあちょっと狭いけどこの籠の中に入ってくれるかな? 家に着いたらたっぷりゆっくりさせてあげるよ」 ゆっくり達は何の疑いも持たずに籠の中に入っていく。 少しの間はゆっくりたちも私に話しかけてきた。 「ゆっくりできるおうちだったら!れいむたちのおうちだね!」 「とくべつにおじちゃんもすんでいいよ!」 しかし数分もすれば全て寝息になっていた。 私は鼻歌を歌いながら自分の家に向かう。 自宅につくと、地下室に用意したパーティー会場。 鉄製の箱で、蓋はしていない。ゆっくりたちが十分ゆっくりできるほどのスペースは無い。 そこに彼らを一匹一匹かごから出して置いていく。 あと数分もすれば目覚めるだろう。 それにしても良い寝顔だ。なんの心配もなくゆっくりとした表情で寝息を立てている。 親ゆっくり達を中心に、子供ゆっくり達が寄り添うようにして眠っている。 彼らは目を覚ませば、またゆっくりできると思っているのだろう。 「ゆっ~ん」 一匹起きたようだ。それにつられてかほかのゆっくりたちも起きてくる。 「ゆっくりねたね!」 「おはようおじちゃん!ゆっくりちていってね!」 「おうちについたね!ゆっくりするね!」 それぞれ思い思いのことを言いながら飛び跳ねている。 その彼らに、一匹一匹ポリタンクの中からうつしたバケツに入った、とある液体を刷毛でゆっくりの髪にぬりつける。 「ゆっゆ!きもちわるいよ!」 「なにこれ!つめたいよ!」 「こんなことしてゆっくりあやまってね!!」 「「はながよごれたよ!ゆっくりあやまってね!!」」 ゆっくりの両親が揃って抗議する。 鼻?普通髪を謎の液体まみれにされたことを怒らないのか?なぜに鼻? 鼻…はな…花…あっ!このゆっくり子供たちにもらった髪飾りが汚されたことを怒っているのか、 ふーん感動的だね。これからどうなるかも知らないで。 「ああ、ごめんね。君達に灯油を塗ったのはゆっくりするには大事なものだからなんだ」 「ゆっくりできるんだね!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 「とうゆでゆっくりできるの?!」 「はやくとうゆでゆっくりしたいよ!」 ゆっくり達にとってゆっくりできると言えば、大抵のことを信じてくれる。便利な言葉だ。 まぁちゃんとした器具を使ってしかるべき使い方をすれば、冬場は家の中でゆっくりできるものだ。私の言ったことはあながち嘘ではない。 さて、準備は整った。それじゃあパーティーの始まりだ。 とりあえずマッチを擦ってみる。シュッ 一度で火がつかない…。 シュッシュッシュボ やっとついた。ニッコリ笑顔で、自分に一番なついてくれたちびゆっくりを呼ぶ。 「いちばんちっちゃいゆっくりからゆっくりさせてあげるよ」 他のゆっくり達からは抗議の声があがったが、順番にゆっくりさせてあげるというと納得した。 飛ぶようにこっちに向かってちびゆっくりが跳ねてくる。 ご飯をくれた、自分と遊んでくれた優しいおじちゃんが、自分を一番にゆっくりさせてくれる。 そう考えたんだろう、満面の笑みで素早く足もとまで来た。 「それじゃあゆっくりさせてね!」 私もニコニコ顔で答える。 「その前に少しの間目を閉じていてね。ほかのゆっくりたちもだよ」 すべてのゆっくりが目を閉じている。どの顔もとてもゆっくりとしていて、これから起こるゆっくりに期待している。 それを確認した私は、ちびゆっくりにマッチの火を素早く近づけようとする。 「ゆっくりはなれろ!!!」 薄目を開けていたらしいゆっくり親魔理沙が、マッチに向ってタックルを仕掛けてくる。 少し驚いたが遅すぎる、止まって見える。マッチの火が素早くちびゆっくりを炙る。 それまで幸せだった人生が変わる瞬間、私はそれがたまらなく好きだ。 火がついた瞬間。 「ゆぎゅぎぃぃいぃ!!」 大声を出して地面を跳ねまわるちびゆっくり。 その絶叫と甘い物が焼ける匂いに、素早くほかのゆっくりたちも目を開け、惨劇に驚愕する。 ちびゆっくりは大声で泣き叫んでいる。無理もない、頭を火ダルマにされているのだ...もっとも顔だけしかないが。 ともかく体に火が付いているのだ、苦しくて当然だ。 ほかのゆっくりたちは、 「れ゛ぇぇむ゛れ゛ぇぇむ」 姉妹の名を叫ぶゆっくり、 「はやくけして!」 私に助けを求めるゆっくり、 「ひぃっ」 あまりの出来事に一瞬息をのみ、 「じぃじぃのぜいでゆっづぐりできないよ!じねぇぇ!」 その後怒りの声をあげるゆっくり。 じじいとは失礼な!!老け顔だが20代だぞ!!! おっと、怒りで我を失ってはいけない。 そうこうしている間に、子供をゆっくりの両親が助けに行ったぞ。 ふふ、あとは椅子に座って見てるだけだ。 「あづぃぃよ゛!!おがぁざぁん!!!!」 熱さにのたうちまわる火ダルマの子ゆっくりを見ても、ゆっくり親霊夢もゆっくり親魔理沙は、まだ助けることができると信じた。 「「すぐたすけるよ!!」」 何とか体当たりでも何でもして火を消すのだ。 二人を突き動かすのは、わが子を助けたいという気持ちだった。 ほかの姉妹たちと違って、生まれてすぐにゆっくりしていってね!を言わなかった我が子。 しばらくして 「ゆっくりしていってね!」 と言ってくれた時はどれだけ安心しただろう。 この娘たちの中で一番小さいゆっくり霊夢は、とても優しくて、ゆっくりとした良い子に育ってくれた。 この二匹の親ゆっくりがつけている髪飾りを取ってこようと最初に提案してくれたのは、今火ダルマで苦しんでいるこの子なのだ。 二人のゆっくりは灯油が塗られた体で火をけすため、飛びつこうとした。その時。 火の粉が舞ったそれは、ちびゆっくりのより近くにいたゆっくり魔理沙の、ちょうどあのタンポポでできた簡素な髪飾りに降り立つ瞬間、燃え始めた。 「ゆ゛っまりさ!かみとぼうしが!!」 ゆっくり魔理沙は驚愕した、なぜ自分はいきなり燃えたんだ、 しかし理由など考えている場合ではない、頭が燃え始めているのだ。 しかも燃えているのは自分の帽子なのだ。 「ゆ゛ッ!!!!」 ゆっくり達にとって、帽子やリボンは仲間の識別に使われる、ある意味命よりも大切なもの。 なければ自分のことを仲間だと認識してもらえず、食われたり、いじめ殺される。 ゆえにその大事なものをとることなどできるはずがない。ちびゆっくりのことも忘れて必死になって火を消そうと地面を転がる。 ゆっくりとは思えないかなりのスピードだ。 しかしその分火の粉が飛んでしまう。 近くにいた二匹の子供にも火の粉があたり、一瞬で火ダルマだ。 「あっづいぃ!!あっっづぃぃぃ!!!」 「ア゛ッつ゛ィぃぃィ゛」 いつもそそっかしいゆっくりが、 世話好きのゆっくりが火ダルマになって飛び跳ねている。 ゆっくり母霊夢の頭にはだんだん事態が飲み込めてきた。 自分たちはこの”とうゆ”という危険な液体をかけられていて、火がついたものの近くにいると発火してしまう。 そしてじぶんの嫁であるゆっくり魔理沙や子供たちは、火の粉をまき散らしながら飛び跳ねている最悪の状態だ。 涙を流しながら叫ぶ。 「ゆっくりはなれて!」 もう火がついた子供を助けることなどできない。 現に最初に燃やされたちびゆっくりはもう動いていない。 火が付いてしまった以上、彼女たちは自分のかわいい子どもから、恐ろしい殺戮者に変貌してしまったのだ。 本格的におもしろいことになってきた。どうやらあの親霊夢は、自分たちが非常に危険な状態にあるということを理解できたようだ。 ゆっくりとは思えないほど賢いな、やはりこの家族を選んで正解だった。 焼酎とつまみを楽しみながらゆっくりをいじめる。 最高の娯楽だ。みんなが火ダルマになってダンスパーティーを楽しんでいる。 数時間前までは、ゆっくりした時間を家族と一緒に過ごしていたのに。 ものの三分で、大事な家族は自分を殺す凶悪な兵器になってしまったんだ。 いま彼らはゆっくりの反対、ものすごくいそいでいるんだろう。 「いそいでにげてね!」 彼らに私なりの声援を送る。 子供の中では一番大きなゆっくり霊夢は、一番臆病なゆっくり霊夢を引きずるようにして、元姉妹から必死に逃げている。 「ゆっくり!いそいでね!」 「ゆゅくり!いぃいそぐよ!」 あまりの恐怖に、顔面蒼白で体中を震わせながら、姉に言葉を返すゆっくり霊夢。 後ろからは姉妹がすさまじい絶叫を上げながら飛び跳ねてくる。 「ア゛ッつ゛ィいダぁイ!!」 声からして、おそらくいつも自分を助けてくれた姉の声だろう。 一度湖に行った時、大きな蛙に食べられそうになったときなど、 カエルに豪快なタックルを決めて追い払ってくれた。 その大好きな姉が、今や火だるまになって追いかけてくる。 少し離れたところでは、完全に体に火が燃え移ったゆっくり魔理沙が絶叫しながら飛び跳ねている。 後ろにはもう姉が来ている。 追いつかれるそう思った瞬間、とっさに体が動いた。 自分をひっぱて逃がそうとしてくれた長女をつかんで、後ろから来る火の玉にぶつけていた。 「ア゛ッつ゛!!」 「ぎゃァぁあいぁ!!」 火の玉は粉々に崩れたが、新しい火の玉が飛び跳ねている。 必死になってにげながら、「ゆっぐりじだぁい!!」 と泣き叫ぶ。しかしできるはずもない、すぐについさっき自分が裏切った姉の火で、自分も火の玉になる。 「ははははは、傑作だねこれは。」 まさに因果応報だ。 悪いことは出来ないものだ、やはり清く正しく生きなければ。 それにしても、思ったよりゆっくりは力があるな。 自分よりだいぶ大きいゆっくりに噛み付いて投げ飛ばすとは。 単に火事場の馬鹿力だったのだろうか。 しかしこれで残りは親霊夢と子霊夢だけだ。 部屋の中心でぶるぶる震える子霊夢を、母霊夢が必死に守っている。 実に感動的だ、髪飾りが落ちているのも満身創痍といった感じで面白い。 まわりでは元家族たちが大きな声で歌いながら、火の衣装を身にまとって踊り狂っている。 この素晴らしいダンスパーティーも終盤だ。 一つ今回の主役達に最後に言ってやろう。 「さいごまでゆっくりこわがってね!!」 元家族たちが、自分達の周りを絶叫しながら飛び回っている。 最後に残った自分の子供が 「みんなでゆっくりしたっかたよ!」 と泣きながら目をつぶって呟いている。 少し前までは、みんなで一緒にゆっくりしていたのに。過去の楽しかった思い出が胸を締め付ける。 涙を流しながら親霊夢も 「みんなとゆっくりできないよ!」 と叫ぶ。めのまえに大きな火の玉が来る。 四方から聞こえる、声にならない声。 火の粉がついに、自分の体につく。すさまじい熱が一瞬で体を包む。すべての思考が切り裂かれ、痛みが体を支配する。 「ゆぎゅぅぅ!!!」 何も考えず飛び跳ねる。否、考えられない。 体を動かさずにはいられない。 あの草原で、子供たちとゆっくりと楽しむため飛び跳ねていたころとは違う、 痛みで飛び跳ねている。何かが体にぶつかって、そこにさらに痛みが走る。また一つ火の玉が増えた。 その五分後、残ったのは八つの炭化した饅頭と、 一輪のたんぽぽだけだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4325.html
多数の設定をお借り 俺設定 すっきり注意 現実世界にてゆっくり ―――――――――――――――――――――――――――――― 『ゆっくりは死んだ』 ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ゆっくりしたい子集まれ~!」 と山で叫んでみた。 目的は『ゆっくり』を見つけるためだ。 ゆっくりは[ゆっくり]というキーワードに弱い。 このように叫べばたいていは来る。 山で叫んだのにもわけがある。 たいていの街のゆっくりは街に毒されてもはや『ゆっくり』とは言えない、 ただの薄汚い饅頭に成り下がっているからである。 そんな奴らにゆっくりさせる趣味はない。 「ゆゆ?おにいさんはゆっくりできるひとなの?」 「れいむゆっくりしたいよ!!」 「ゆっちゅり!ゆっちゅり!」 ほら、もうゆっくりたちが集まってきた。 「あまあまがあればゆっくりできるんだぜ!」 「まりさにきいたよ!にんげんさんはゆっくりのためにあまあまをもってきてくれるって!」 「さあはやくとかいはのありすにあまあまをもってきなさい!」 「「「あーまあま!あーまあま!」」」 あまあまがゆっくりできる存在と知っている。 ということは子供あたりに飯を要求して飴玉でも何かもらったのだろうか。 だがこんな中にも『ゆっくり』はいるはず。 えーと、集まったのは1、2、3、 「おにいさんゆっくりしないではやくあまあまもってきてね!」 「はやくもってこないとたいへんなことになるんだぜ!」 「ありすをまたせるなんてとかいはじゃないわ!」 「あまあまたべちゃいよ!」 「「「あーまあま!あーまあま!」」」 数えている最中にもお構いなしにぬるぬる動くゆっくり達。 そんな時のためにシールを持ってきておいた。 これなら確実に集計できる。 ようやく数え終わった。 成体が・・・れいむ15匹、まりさ26匹、ありす8匹。 幼体が・・・れいむ24匹、まりさ28匹、ありす13匹。 赤ちゃんが・・・れいむ40匹、まりさ43匹、ありす20匹か。 興味深いのはありす種の多さ。 ありすにはレイパーが多いと聞くが。これらは性欲を「とかいは」精神とかで抑えでもいるのか? とにかく、これで材料は揃った。 「ゆっくりしたい子はこの箱の中に入ってくださ~い」 「「「ゆっくりはいるよ!!!」」」 やはりゆっくりできるということには積極的だな。 声をそろえてどんどん箱の中に入っていく。 「さぁ、ゆっくりプレイスにしゅっぱーつ!」 「「「しゅっぱーつ!!!」」」 これだけのゆっくりが入った箱は相当重い。 鍛えててよかった。 「ゆべっ!」 「ゆっくりおさないでよ!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 「あがぢゃんがづぶれぢゃう゛う゛う゛う゛ぅぅぅ!!!」 持っていく最中に声が聞こえるが気にしない。 こうして計217匹のゆっくりが、 お兄さん宅のドームのような形の大きな庭まで連れてこられた。 一面自然の芝で埋めつくされて青臭いにおいをプンプンさせている。 「ゆっくりプレイスに到着だよー」 と箱の口を開けた瞬間 「「「「ゆっくりとうちゃくしたよ!!」」」」 大量のゆっくりがすし詰めの環境から逃れるように、 次々と外へと吐き出されていく。 庭の緑があっという間に肌色に染まっていく。 「ゆっくりできそうなところだね!」 「おもったよりせまいがゆっくりしてやるぜ!」 「ここがゆっくりプレイスね。ちょっといなかくさいけどがまんしてあげる!」 「「「ゆっちゅりー!」」」 箱の底を見てみると赤ちゃんゆっくりがいくらか潰れていた。 髪飾りの数から推定すると、 赤れいむが17匹、赤まりさが23匹、赤ありすが8匹。 ゆっくりは3よりも大きな数を数えられないと聞く。 そういう細かいことを気にしないゆっくりはやはりいい。 私は『ゆっくり』が大好きだ。 だから『ゆっくり』をゆっくりプレイスに連れてきた。 彼らには極限までゆっくりらしくさせてやりたい。 だがそのゆっくりのなかに『ゆっくり』でないゆっくりが混じっている。 私は『ゆっくり』ではないゆっくりは大嫌いだ。 言うなら彼らはゆっくりの皮を被った悪魔だ。 見つけ次第すぐさま駆逐したい。 「ゆっくりのみんな!ここは『ゆっくり』のゆっくりプレイスなんだ! ゆっくりじゃないゆっくりはゆっくりできません!」 「ゆゆ?おにいさんれいむはゆっくりだよ?」 「そんなこともわからないなんておにいさんはばかなんだぜ!」 「これだかいなかものはこまるわ!!」 「「「「ゆっちゅりはゆっちゅりだよ!!」」」」 「じゃあゆっくりならちゃんと出来ることがあるよね?」 「せーの、ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「「「ゆっちゅりしていってね!!」」」 計169匹のゆっくりが声をそろえて叫んだ。 この段階ではまだ誰がゆっくりかそうでないかはわからない。 悪魔はずる賢い。 「ゆっくりしていってね!!」と言っておけば、 『ゆっくり』として認識されると思っている。 「おうたをうたうよ!」 「「「ゆ~ゆゆゆ♪ゆっくり~♪」」」 「「「「ゆっちゅり~ゆゆゆゆっちゅり~♪」」」」 おお、貴重なゆっくりの合唱シーン! この音の外れた感覚がたまらない。 経験ではそろそろバカな悪魔の化けの皮が剥がれる時間である。 ここからが本番だ。 「ゆゆ?れいむおなかがすいてきたよ!はやくあまあまをちょうだいね!」 「まりささまにはやくあまあまをよこすんだぜ!!」 「とかいはのれでぃをまたせるなんていなかもののすることよ! はやくあまあまもってきなさい!」 「「「「はやくちょうらいね!!」」」」 『ゆっくり』の条件その一 「『ゆっくり』はその対極に当たる『はやく』とかは一切口に出したりはしないッ!」 そう叫びながら正体を現した悪魔らを思いっきり潰す。 「ゆがっ!」 「ゆぶっ!」 「ゆべっ!」 『ゆっくり』はゆっくりしているから『ゆっくり』である。 それとは正反対の「はやい」「はやく」などの言葉は真の『ゆっくり』なら使わない。 今踏みつぶされたのは偽の『ゆっくり』、すなわち悪魔。 靴の底には餡子とカスタードクリームが混じったものがこびりついているが。 もちろんこれはゆっくりに似た悪魔の肉片だ、なんと醜い。 最初から「はやく」を使うような悪魔も多いが。 中には元から危険が多い所に住んでいて日常的に「はやく」を使わざるを得なかったゆっくりや、 最近危険なものが多くなってきたので「はやく」と叫んでないとゆっくりできなかったゆっくりもいるだろう。 しかしゆっくりを忘れてしまっていたゆっくりはすでにゆっくりではなく、 悪魔に魂を売ったただの気持ち悪い饅頭である。 「ゆっくり」という神から授かった祝詞を捨てて、 「はやく」とかいう汚れた悪魔の言葉を使うような そんな汚らわしき饅頭は真っ先に潰れるのがお似合いだ。 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「どお゛お゛お゛じでぞんなごどをずるのお゛お゛お゛お゛??」 「あがぢゃんをがえぜえ゛え゛ぇぇ!あがぢゃんをがえぜえ゛え゛ぇぇ!」 「ごんな゛のどがいばじゃないばあ゛わ゛わ゛わ゛わ゛!!!」 「ゆっぐりでぎないおにいざんばゆっぐりじねええ゛え゛え゛!!」 「「「ゆびぇーん!!ゆびぇーん!!」」」 「ここは『ゆっくり』のゆっくりプレイスなんだ。 さっき潰したのはゆっくりじゃないゆっくりだったんだよ」 「うぞをいう゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」 「『はやく』とか言っているのはゆっくりじゃないんだ、ゆっくり理解してね!」 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「もうおうぢがえるう゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」 目の前で同族(に似ているもの)が殺されたのだ、錯乱するのも無理はないだろう。 だが、あれは『ゆっくり』であって『ゆっくり』でない。 きっと本物の『ゆっくり』はゆっくりと気づいてくれているハズだ。 「みんな~!ご飯の時間ですよ~!」 「ゆゆ?ごはん?」 「ごはんだぜ!」 「とかいははゆっくりまってたわよ!」 「「「ごーはーん!ごーはーん!」」」 ご飯と聞いて目の色が変わったゆっくりたち。 残ったゆっくり達にそれぞれの体に応じたゆっくりフード(自然風味)を振舞う。 みんな行儀良く待ってくれている。 先ほどの光景を見てまだ「はやくもってこい」なんて言うのは、 恐ろしく頭の弱い悪魔だ、さすがにそこまでバカじゃない。 「さぁ、みんなでいただきまーす!」 「「「「ゆっくりいただきまーす!!」」」」」 「「「ゆっちゅりいただきまーす!!」」」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー」 「はむっ、まじうめぇ!ぱねぇ!」 「むーちゃ♪むーちゃ♪ちあわちぇ~♪」 ゆっくりは自らの行動を擬音で表現する癖がある。 あぁ、なんてかわいらしい声なんだろう・・・。 「ゆ?おきゃあちゃん!もうごはんなくなっちゃったよ! もっちょちあわちぇーちたい!」 「まりしゃこれだけじゃたりないんだじぇ!」 「ときゃいはのれでぃはこれくりゃいじゃまんぞくしにゃいわ!」 「れいむもまだたべたいよ!」 「もっとまじうめぇ!したいんだぜ!」 「とかいはのありすはまだたべれるわ!」 もちろんお兄さんはご飯の量を減らしたりはしていない。 次のご飯までゆっくり過ごせるだけの量を与えたつもりなのだが。 「おにいさん!もっとごはんをもってきてね!!!」 「だぜ!!」 「のよ!!」 「なんだ、もう無くなっちゃったのか、もうお腹いっぱいだろ?」 「「「どおしてそんなこというのおおおお??」」」 「もっとごはんあるんでしょ?もってきてよ!!」 「いじわるなおにいさんはゆっくりできないんだぜ!!」 「もっともってくるのがとかいはのまなーでしょ!!」 「あとあまあまももってきてね!」 『ゆっくり』の条件その二 「『ゆっくり』はご飯を必要以上に食べない!」 「ゆぼっ!」 「ゆばっ!」 「ゆぎっ!」 今度はご飯を要求するゆっくりとは似て非なるものを片っ端から袋に詰める。 「なにするの?ゆっくりおろしてね!」 「おちょらをとんでりゅみちゃい!」 それをそのまま火にくべる。 「あづいのはゆっぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!」 「ゆやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!あ゛んよが!あ゛んよが!」 「どがいばのべあ゛ーがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」 「「「ゆう゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」」」 『ゆっくり』は今日をゆっくりして『ゆっくり』である。 飯をがっついて明日に備えるような『ゆっくり』は『ゆっくり』でない。 そもそもゆっくりする、そのゆっくりの過程の中で未来などは考えられないはずだ。 考えなしに植物や虫を食い尽して山を禿山にした、明日を考えられない良い例である。 今焼かれているのは今日の先を想像できる『ゆっくり』、すなわち悪魔。 基本生物は大量の食べ物にありつけた時、 「次にいつ食べられるかわからない」と自分の許容量を超えての食事を行う。 しかしゆっくりは違う。 『ゆっくり』は今日をゆっくりするのに精いっぱいだから、 「たくさん食べておけば明日何かあってもゆっくりできる」とは考えられない。 そこまで読める『ゆっくり』は何かしら悪魔と契約しているに違いない。 そんな『ゆっくり』は浄化の炎でケシズミにしてしまうに限る。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 「べべべべべべべ」 「あ゛あ゛」 こんがりを通り越してもはや炭と化した偽ゆっくり。 まだ声が聞こえるが痙攣とかその類だろう。 辺りに焦げくさく甘ったるい匂いが広がる。 「ゆべえ゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇ??!」 「どお゛お゛お゛じでぞんなごどをずるのお゛お゛お゛ぉぉぉ?? ばがなのお゛お゛お゛ぉぉぉ?!じぬのお゛お゛お゛ぉぉぉ?!」 「お゛だがずいでだだげでじょう゛う゛う゛う゛??」 「いながもののぐぜにい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 「ゆっぐりでぎないぐぞじじい゛ばゆっぐり、いまずぐじねええ゛え゛え゛!!」 「「「ゆびゅゅぇーん!!ゆびゅゅぇーん!!」」」 おや?今「『いますぐ』しね」とか聞こえたな。 「お前もゆっくりじゃなかったか」 「じねええ゛え゛え゛ぐぞじじい゛!!いまずぐじねええ゛え゛え゛!!!」 プチッ! 「死ぬのはお前だ!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「さっきも言ったとおりここは『ゆっくり』のゆっくりプレイスなんだ。 さっき燃やされたのはゆっくりじゃないゆっくりだったんだよ」 「うぞづぎい゛い゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!」 「ご飯を食べ過ぎるゆっくりはゆっくりじゃないんだ、ゆっくり理解してね!」 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「おうぢい゛!!おうぢい゛!!ごごい゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!」 「どうした?ゆっくり出来てないぞ? ゆっくりだったらもっとゆっくりしたらどうだ」 「ゆっぐり゛でぎるわげないでじょお゛お゛お゛お゛ぉぉぉ!!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――― 日も落ちてきたのでゆっくりの数を確認。 残ったのは、 成体が・・・れいむ1匹、まりさ2匹、ありす1匹。 幼体が・・・れいむ10匹、まりさ7匹、ありす4匹。 赤ちゃんが・・・れいむ11匹、まりさ9匹、ありす8匹・・・と。 大人の数が一気に減った。やはり成長していくと心のスキマに何か入り込むのだろうか。 少なくなってきたとはいえ、まだ悪魔が潜んでいる可能性は十分ある。 このままずっと観察したいところだ、あいにく仕事が残っているのを思い出した。 確か明日の夜が納期だったか。 最近ゆっくりに気を取られててすっかり忘れていた。 今から本気でとりかかったら明日の夕方までかかりそうだ。 「じゃ、ご飯ここ置いておくからゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 「「ゆっちゅりしていってね!!」」 どんなに辛い時も悲しい時も、 「ゆっくりしていってね」と言われれば「ゆっくりしていってね」と返してくれる。 こんなかわいい生き物のフリをするなんて・・・汚い流石悪魔汚い。 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」 「・・・うめぇ」 あーやっぱりゆっくりの食事風景はいつ見てもいい。 ずっと食事させていたいくらいだが、それではお歌の時間がなくなってしまう。 バランスが大事だと思うんだ。 「じゃ、おやすみ。明日の夕方あたりにでもゆっくりしたお顔を見せて お兄さんをゆっくりさせてね。」 ―――――――――――――――――――――――――――――― お兄さんがおやすみと言った後、「ゆっくり」のゆっくりプレイスと銘打たれたお庭では、 運よく生き残ったゆっくりが、もしかしたら次は自分かもしれない、 と恐怖の涙で芝を濡らしながら夜を過ごしていた。 「う゛っ・・・ぐすん・・・」 「おちびちゃん・・・」 「もっとみんなでゆっくりしたかったよ・・・」 「おうちかえりたい・・・」 どのゆっくりも絶望に暮れている中、一人考え込んでいるまりさがいた。 「ゆ~ん・・・」 ここから脱出するにはどうすれば良いのか。 周りの壁を壊す? 無理だ、相当堅そうでいつものようにはいかない。 では土を掘って外に出る? これも無理、固い土なので時間がかかりすぎる。 ならば入ってきた扉を壊すのはどうだ? 重そうな扉だがよく見ると少しだけスキマが見える。 体当たりしていけばやがて扉が開くのではないだろうか。 これはやるしかない! 「みんな!とびらさんをあけておうちにかえるんだぜ!!」 こんなゆっくりできない所から脱出したい! それは誰もが思っている。 ならば話に乗ってくれる! だが、返ってきたのは予想外の答えだった。 「そんなのはむりだよ・・・」 「どうせあきっこないわ!」 「やるんならまりさだけでやれなんだぜ!」 「どぼじでぞんなごどをいうんだぜえええぇぇぇ??」 意見は速攻で否定された。 このままここにいればあのお兄さんは何かしら因縁をつけて襲ってくる。 まだまりさは死にたくない。 かつて街に降りてその時一目ぼれした美れいむとすっきりするまでは。 「もういいんだぜ!まりささまひとりでこわすんだぜ!!」 近づいてみると扉は予想以上に大きかった。 だが、あの美れいむとすっきりするためにはやるしかない。 「ゆおおおおおおおおおおおおお!」 まりさは思いっきり加速をつけてそびえ立つ扉に体当たり! ゴーン! ポスッ 「いだいんだぜぇぇぇ!」 全身全霊を込めた体当たりは扉を動かすことはできなかった。 しかも鉄の扉にぶち当たったので正面より激しい痛みが走る。 「でもぉ、これくらいでたおれるまりささまじゃないんだぜ!」 再び激しく扉にぶつかる。 ゴーン! ポスッ 「ゆあ゛あ゛あ゛!」 「ふー・・・ふー・・・」 二度目の衝撃を受けて早くも意識が朦朧としているまりさ。 だがあきらめるわけにはいかなかった。 (「まりさかっこいいね!」) あの美れいむの声が聞こえた気がした。 そんな、ここには芋れいむしかいないのに。 「れいむ!どこにいるんだぜ?ゆっくりでてくるんだぜ!!」 (「がんばって、まりさ!」) そうだ、これくらいではへばってはいけない。 だってれいむはまりさのことを待っててくれているのだから。 れいむはまりさとのすっきりを待っているのだから。 (「がんばって、まりさ!」) れいむの声が聞こえてきた。 どこからか見てくれてるの?れいむ、どこにいる? 「れいむのためにぃぃぃ!」 ゴーン! ポスッ 「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」 (「まりさとゆっくりしたいな!」) 「れいむうううぅぅぅぅ!」 ゴーン! ポスッ 「ゆ゛・・・う゛・・・」 (「まりさ、すっきり・・・しよ?」) (「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛すっきりー!」) 「うがあ゛あ゛あ゛!」 ゴーン! ポスッ (「みて、れいむにんっしんしたよ!」) (「ゆっくりしたあかちゃんだよね?だってまりさとのあかちゃんだもの!」) 「れ゛い゛む゛!」 ゴーン! ポスッ (「ゆぎぎぎぎ!あかちゃんがうまれるよ!」) (「ゆっちゅりしていってね!!」「ゆっくりしていってね!!」) 「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 ゴーン! ポスッ (「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー♪」) (「かぞくでたべるごはんはとってもゆっくりできるね!」) 「の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 ゴーン! ポスッ 度重なる体当たりはまりさより意識を奪っていた。 彼を動かすのはどこからか聞こえてくるあのれいむの声。 ゴーン! ポスッ 「でぼっ!」 ゴーン! ポスッ 「でぼねっ!」 ゴーン! ポスッ 「あかちゃんはべつにい゛ら゛な゛い゛よ゛!」 ゴーン! ポスッ 「れいむとはずっぎりしたいだげな゛ん゛だよ゛!!」 ゴーン! ポスッ 彼の幻聴は応援、告白、すっきりと徐々に発展していき、 今では子を育てるところまで成長していた。 しかし彼を動かすのは「れいむとすっきりすること」これのみである。 子供なんてとんでもない、作ってしまえばたくさんすっきりできないではないか。 「ずっ゛ぎり゛り゛り゛り゛り゛り゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 グォォォォーン! ポスッ ポスッ 「ゆ゛げげげげげげっ!」 「えれえれえれ~~」 まりさの体は限界だ。 鉄の扉にぶつかり続けた顔はもみじのように真っ赤に腫れて、 飾りのぼうしもグッドデザイン賞が期待できるほどにひしゃげて、 使い込んだあんよはおろしをかけたように擦り切れていた。 「ねぇ、まりさ」 そんなまりさを見かねてれいむが声をかけてくれた。 たとえあのれいむとは程遠い芋れいむであっても、この満身創痍な体を気遣ってくれた。 まりさはうれしかった。 「ありがとうれいm」 「うるさくてゆっくりねむれないよ!!」 「へ?」 この状況では寝るしかない、どうしても寝たいというときに、 その導入を妨げる騒音と奇声を生産し続けたまりさ。 一体誰が彼に感謝しているというのだろうか。 その一言で皆の恨みつらみの思いが決壊した。 「ありすはねむいの!すいみんぶそくはとかいはのたいてきだわ!!」 「みんなめいわくしてるんだよ!」 「ゆっくりあやまってね!」 「ゆっくりできないまりさはゆっくりしね!!」 「ごみくずまりさはゆっくりしね!!」 「「ゆっちゅりしね!!」」」 「しね!」「しね!」「しね!」「しね!」「しね!」 そんな、がんばったのに。 一生懸命にがんばったのに。 そんな言い方はない、あってはならない、ない、ありえない、ない、ありえない、 「れいむとすっきりしたい」という固き礎により支えられていたまりさの体でも、 多数のゆっくりの非難の声の前には崩れ落ちるしかなかった。 「がんばっだんだぜ!ばりざ、がんばったんだぜえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 こう叫んだ後、まりさは倒れた。 「ようやくごみくずまりさがだまったね!」 「これでゆっくりねむれるよ!」 「ごむくずまりさはそこでゆっくりしね!!」 こうしてゆっくり達は「ゆうゆぅ・・・」とゆっくり眠りに落ちていった。 ただ1匹を除いて。 ―――――――――――――――――――――――――――――― そして、朝がやってきた。 一番鶏の声が聞こえるか聞こえないかくらいに『ゆっくり』は活動し始める。 なぜなら朝からゆっくりするのがゆっくりという生き物であるからだ。 「ゆっくりおきるよ!」 「とかいはのあさははやいのよ!!」 「ゆっくりおはよう!ゆっくりしていってね!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「あかちゃんもおきてね!」 「ゆっちゅりおきるよ!」「ゆっちゅりおはよう!」 「ちゃんとできたね!ごほうびにおかあさんがすーりすーりしてあげるよ!」 「すーり♪すーり♪」 「すーり♪すーり♪しあわせー♪」 「きょうもゆっくりしてるね!!」 『ゆっくり』にとって故ゆっくりを悼む具体的な行動、 それは「そのゆっくりの分までゆっくりしてやる」というもの。 一見無神経のようにもとれるが、ゆっくりするということが上位に来ている『ゆっくり』にとって、 それが最高の供養となるのだ。 「おきゃあさん!れいみゅおうちにかえりたい!!」 「まりしゃも!」「ありしゅも!」 「おかあさんここからでてゆっくりしようよ!」 家に帰りたがる赤ちゃんや子供の横で、 大人のゆっくりはこう思っていた。 お家に帰る必要があるのだろうか? 家のある山には虫や草がたくさんあるが、毎日お腹いっぱいむーしゃむーしゃはできない。 危険もいっぱいある。ゆっくりをいじめるのに夢中な人間の子供に、 夜には捕食種であるれみりゃやふらんもいる。 風が吹けば寒いし、雨が降ってくれば冷たくてゆっくりできない。 ここはどうだろう、ご飯はお兄さんがおいしいものを持ってきてくれる。 また、子供もれみりゃもいない。風は来ないし雨は屋根があるので降ってこない。 ここはどう考えても今までいた山よりずっと安全だ。 ならばやることは一つしかない。 「じゃあきょうからここをみんなのおうちにしよう!」 「それはゆっくりしたかんがえだね!さんせいだよ!」 「さんせーい!!」「さんちぇーい!!」 「せーの」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 『ゆっくり』の代表的な特徴と言えるお家宣言。 ゆっくりできそうな所で「ゆっくりしていってね」と叫ぶ。 その時点で反対がなければ、 そこは自動的に「ゆっくりプレイス」すなわちお家として正式に認められる、というものである。 もちろん人間にとっては迷惑な話だ。 なにせちょっと家を空けていただけで、そこが「ゆっくりプレイス」となってしまうのだから。 ゆっくりはそのルールが人間にも適用されると思っている。 なので、勝手に家に上がりこんだ人間に制裁の意味合いでご飯を要求するのだ。 これが原因で各地のゆっくり反対派の数はうなぎのぼりであった。 今回の場合、お兄さんは別室で仕事中なのでそれに異論を唱えることはできない。 「・・・かえってこないね」 「やった!!」 「「「「ここはみんなのゆっくりプレイスにするよ!!」」」」 「よろこびのおうたをうたうよ!!」 「「「「ゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆっくり~♪」」」」」 かくしてお兄さんのお庭はゆっくりたちの「ゆっくりプレイス」となった。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 昼ごろ、お兄さんは仕事をしながら悩んでいた。 仕事を片付けている最中でもゆっくりのことが忘れられない、 純粋なゆっくりの中に悪魔が潜んでいるなんて一時も気が休まらない、 あの庭が今も悪魔に蹂躙されているなんて腸が煮えくりかえる思いだ。 ああ、様子を見に行きたい、でも仕事が・・・。 そういえばゆっくりたちにご飯をあげるのを忘れていたような・・・? まずい、仕事してる場合じゃない! ようやく様子を見に行くための口実ができたお兄さんは庭に走った。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ガラガラガラ! 「やぁ!みんなご飯の時間だ・・・よ」 庭についたお兄さんはそこまで言って固まった。 理由は、庭で繰り広げられている光景、 「すーり♪すーり♪」 「ちあわちぇー♪」 「みんなとってもゆっくりしてるね!」 れいむ種は赤ちゃんとの愛情を確かめるかのようなすりすりを、 「たかいたかいだぜ!」 「おちょらをとんじぇるみちゃーい!」 「つぎはまりさのばんだじぇ!」 まりさ種は大人が赤ちゃんを帽子のへりに乗せてたかいたかいを、 「とかいはのごくいをおしえてあげるわ!」 「「ゆっちゅりー!」」 「これがとかいはのはねかたよ!」 ありす種は赤ちゃんに「とかいは」についての授業をして、 「まてまてー!」 「おそいんだぜー!」 「とかいはのおいあげをみなさい!」 その近くで子れいむ、子まりさ、子ありすらが追いかけっこを楽しんでいた。 「ゆー♪ゆー♪」 「ゆっくりしてるね!」 その光景は周りをもゆっくりさせる。 この光景を私は待っていた! これこそが『ゆっくり』!真実の姿!! ごめんなゆっくりたち。 こんなにいいゆっくりに悪魔なんているわけがない。 もう悪魔は全部排除してたんだな、疑ってしまってすまなかった。 お詫びと言っちゃなんだけど、ご飯をゆっくり食べてくれよ。 「やぁ!みん・」 「ゆゆ?ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!」 「ばかなにんげんはまりさたちにごはんをおいてゆっくりでていくんだぜ!」 「ここにいなかもののいばしょはないわ!!」 「ゆっちゅりでちぇいけー!」 一瞬理解できなかった。 「え?何を言ってるんだい?」 「ゆっくりプレイスにばかなにんげんははいってこないでね!」 「いっかいでりかいできないの?ばかなの?しぬの?」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!!」 「まりささまはかんだいだからあまあまでゆるしてやるぜ!」 「おお、いなかものくさいいなかものくさい」 「いにゃかものはでちぇいきぇー!」 頬をつねる、痛い。 先ほどのゆっくりした光景はどうしたんだ。 「何を・・・」 「なんでごはんをもってこないの?ぐずなの?のろまなの?」 「このままじゃゆっくりできないよ!!」 「まりささまのいかりはうちょうてんだぜ! あまあまをたくさんもってこないといたいめにあうぜ?」 「いなかものにもわかるようにとかいはのありすがゆっくりおしえてあげる! ばかなにんげんはゆっくりたちをゆっくりさせる『ぎむ』があるの!」 「ゆっくりさせてくれればありすのどれいにしてあげるわ!ゆっくりかんしゃしなさい!!」 罵倒の中さりげなく聞き捨てならない発言があった。 ゆっくりさせる「義務」だと・・・? 「おい、ありす今なんて言った?」 「もう!いなかものっておろかね! ばかなにんげんはゆっくりにゆっくりさせる『ぎむ』があるの!!」 聞き間違えではなかった。 ならばこれだけは聞いておかなければならない。 「一つだけ質問いいか?」 「あまあまついかだぜ!」 「お前たちは『ゆっくりすること』と『ゆっくりさせること』どっちが大切に思う?」 「なにあたりまえなこときいてるの?れいむが『ゆっくりすること』にきまってるでしょ!!」 「じょうだんはかおだけにするんだぜ!ゆきゃきゃきゃ!!」 「そのはっそうじたいがいなかものだわ!『ゆっくりすること』こそとかいはよ!!」 先ほどの光景のように、他のゆっくりを『ゆっくりさせる』ことを目標とした場合、 これによって、自身も『ゆっくりする』ことができれば、 どちらもゆっくりを享受できる素敵な関係を作ることが可能である。 しかし、自分を『ゆっくりする』ことを強調した場合。 これは最終的に自身が『ゆっくりすれ』ばよいということであり、 その過程で他のゆっくりを奪うことに繋がる可能性を持っている。 真のゆっくりだったら最大多数の最大幸福を得られる前者を選ぶだろう。 そして自分さえよければいいという後者を選ぶのは・・・悪魔だ。 『ゆっくり』の条件その三 「『ゆっくり』は他者のゆっくりを何よりも尊重するッ!」 「そんなことはいいからごはんをもってふげばあ゛!!!」 ようやく正体を現した悪魔めに手近にあった人間ほどの大きさの木の杭で刺し潰す。 一撃だった。悪魔に杭は効果的という話は本当のようだ。 「おがあざんになんでごどずるの゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」 「みゃみゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「もうかんだいなまりささまでもゆるさないんだぜ! れいむをころしたことをあのよでゆっくりこうかいするんだぜ!!」 とまりさが飛びかかって来た。だがゆっくりの皮をかぶった悪魔の攻撃は蚊に刺されるくらい痛くない。 むしろ蚊の方が後でかゆみが襲ってくるのでそちらの方が厄介である。 ドスッ! 「ゆべっ!!」 「なかなかやるんだぜぇ・・・」 「だがつぎでおわらしてやるんだぜ!!」 自分で攻撃しておいて勝手に傷つくなんて、おろかおろか。 再び向かってくるまりさの進路に護身用に持ち歩いている銀製のナイフを出した。 「これでおわりなんだzゆげごばっ゛!」 またもや勝手に突撃してダメージを受けるまりさ。 だが今回は少しばかり手助けをしてやった。 「いだいんだぜえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 「おとーざんじっがりじでえ゛え゛!!」 痛みから逃げるかのように辺りを転がりまりさを捕まえて、 今度は思いっきりナイフの洗礼を与える。 グサッ! 「ばりざのあんよ゛が!!」 グサッ! 「ばえがびえないんだぜえ゛え゛!!」 グサッ! 「むーっ!むーっ!」 グサグサグサグサグサ 「む゛む゛む゛む゛む゛」 次に頭部の皮だけを剥いて餡子を露出、 「む゛ーむ゛ー!!」 それに銀のナイフを突き刺しこねくり回す。 「む゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 ふぅ、浄化完了。 じゃあ次はお前だ、偽ありす。 「よよよよらないでよ!いなかもの!!」 やっぱり最後は火あぶりの刑だな。 庭に置いてあった木の棒を二つ手に取りそれらを交差させて十字架を作り、偽ありすをロープで固定する。 「ほどきなさい!いますぐほどきなさいいいぃぃぃ!!」 藁の束を置いている所に十字架を立てて火を放つ。 「やべでえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 藁から立ち上る炎はゆっくりとありすを焼いていく。 「あづい゛い゛い゛い゛い゛!!」 「どがいはのがみざんがあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!」 ゆっくりと焼いていく。 「ゆぼぼぼぼぼぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛」 悪魔の子は悪魔というのが通例なので赤ちゃんと子供も処理しなければならない。 よく考えれば不幸なものだ、子は親を選ぶことができない。 残った赤ちゃんと子供を用意した水槽に入れていく。 「おそらをとんでるみたいー!」 「つぎはまりしゃのばんね!」 そのまま水槽に聖水の代わりのエタノールを流し込む。 「ゆ?みずしゃん!ゆっちゅりしていってね!!」 「おにいさんこれくさいよ!ゆっくりここからだしてね!!」 せめて、現世で体を清めて次はちゃんとした『ゆっくり』に生まれますように。 「(げぼっ!)ごご(げぼっ!)ゆっぐりでぎない゛い゛い゛!!」 「みずじゃんゆっぢゅりじでよぉぉ!」 「ぎぼぢばるい゛い゛い゛!!!」 聖水が口のところまで迫ってきた。 「んゆ~ れいみゅなんだきゃぽきゃぽきゃつるよ~」 「まりしゃ~きみょちいいぃぃ~」 「ありしゅ~ときゃいは~」 「ん~ほ~」 「さいこ~だぜ~」 「みょ~ふ~」 「すーりすーりしよ~」 「とけちぇくみちゃい~」 「ゆほ~」 聖水が徐々に体に染み込むにつれ精神が壊れていく。 これからしばらくすると、溶け出して餡子がぬけてしまうか、手にすっきりをし出して自滅する。 結果がわかっている以上もう見る必要はない。 水槽にゆっくり蓋をした。 「じゃあ残っているみんなはゆっくりできるよね!」 返事はなかった。 全部殺してしまったからだ。 つまり公園で捕まえたゆっくり全部が悪魔だった。 あれだけいれば一匹くらい『ゆっくり』がいると思ったのに。 『ゆっくり』、他人をゆっくりさせて自分がゆっくりし、それ以上は望まない。 10年くらい前の本にそう書いてあった。 自分は、今日も『ゆっくり』は『ゆっくり』なのか確かめたくて捕獲し、審判した。 結果次世代の彼らは、原始に持っていたハズの、ゆっくりさせることでゆっくりする過程を取り除いて、 単純に自分がゆっくりすることを重点に置いていることがわかった。 これは『ゆっくり』が進化したことに他ならない。 『ゆっくり』はすでに完成していて、これ以上何もいじるところはない素晴らしい生き物だ。 少なくとも私はそう思っている。 だから自分は進化を否定したかった。 だから原始の倫理を捨て去った『ゆっくり』を悪魔として処刑し続けた。 餡子とクリームが飛び散っている庭を眺める、これで5回目になる。 これだけ実験を繰り返しても気高き精神を今なお保持している新世代のゆっくりはいなかった。 今までは中に真ゆっくりがいると思っていたので、 むしゃむしゃもすりすりもおうたもゆっくりのする行動すべてが心をゆっくりさせてくれた。 だがそれらの中に真はいないと分かった今、 悪魔の行動を逐一観察しなければならない実験は自分にとって苦痛に他ならない。 この実験ももう終わりにしよう。 そう思った時だ。 「ゆ゛・・・」 ゆっくりの声が聞こえた。 おかしい、全員処刑してしまったのになぜゆっくりの声が聞こえる。 悪魔を取り逃してしまったのか、それとも? 「ゆ゛・・・う゛・・・」 声の方向を見ると顔面が真っ赤に腫れてゆうゆう呻いているまりさがいた。 悪魔は確実に消した。まだ生きているということは神に救われたのか? それを確認すべく声をかけてみた。 「まりさ、おまえは『ゆっくり』か?」 「ゆ・・・ゆ・・・」 「まりさ、お前は『ゆっくりすること』と『ゆっくりさせること』どっちが大事だ?」 「・・・む・・・・・・り・・・」 「いっしょに・・・・っ・り・・・たい」 「れいむ・・・ゆっ・り・・・して・・・」 まりさはれいむにゆっくりしてほしい、そして自分もゆっくりしたい。 これだけ聞き出せれば十分判断できる。 「そうか、お前は『ゆっくり』だったか」 この傷はきっと悪魔どもに負わされた傷だろう。 このまま放っておけば死んでしまう。 オレンジジュースを持ってきてまりさにかけた。 餡子という甘味でできている体にとってオレンジジュースとは万能薬に等しい。 たちまち傷が塞がっていった。 意識が戻らないのはまだ芯まで染み込んでないからか。 このまりさをどうしようか。 未だに昔の心を持っている『ゆっくり』は是非とも手元に置いておきたい。 だが、それをしてしまうと『ゆっくり』が1匹減ってしまうことになる。 このまま逃がしてやろうか。素晴らしい思想は自然と広まるものだ。 心を悪魔に懐柔されてしまったゆっくりを救うことができるのでは? 確実に1匹を残すか、未来に2匹以上になるのを期待するか。 「『ゆっくり』はゆっくりさせてゆっくりを得る」 大切なことを忘れていた、ならば選択の余地はない。 私はまりさを山に戻しに行った。 いつかこの地に昔の『ゆっくり』があふれますようにの願いを込めて。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 次の日の朝 「ゆぴーすっきり・・・」 まりさは夢を見ていた。 あの美れいむとすっきりをし続ける夢。 肌をこすりつけるたびにしっとりとした餅肌がまりさの心を虜にする。 すっきり汁も他のゆっくりと違いまるでハチミツのようで、 絶頂の瞬間なんて体の中がヴォルケイノ!その気持ちよさは格別だった。 ずっとこのままでいいや・・・。 しかし止まない雨がないように覚めない夢もない。 「ん・・・」 目を開けると木や花があった、つくりものでない自然の環境があった。 見覚えのある風景はまりさにここは連れてこられる前の山であることを伝えていた。 自分は脱出できたのだ!あの人間に勝ったのだ! 「にんげんなんてちょろいもんだぜ!」 勝利の雄叫びをあげた所で、 「れいむ!すっきりのつづきをやるんだぜ!とっととまりささまにごほうしするんだぜ!!」 返事はない。夢の相手とは現実ですっきりはできない。 「もっとすっきりしたかったんだぜ・・・」 不意にまりさに電撃が走った。 終わってしまったなら続ければいい。 現実にもあのれいむはいるのだから。 「そうだぜ!いまからあのれいむにあいにいってつづきをたのしむんだぜ!!ゆっへっへっへ」 まりさは急いで山を降りて、以前あの美れいむを見た路地に向かった。 (「れいむ、まりささまをもっともっとすっきりさせるんだぜ!」) そしてすぐ来た、あのれいむだ。 自分を一目ぼれさせて、自分を応援してくれて、自分の夢で何回もすっきりしてくれたれいむが目の前にいる! 「れいむ!まりささまとすっきりのつづきをやるんだぜ!!」 「ゆ?おにいさん!きたないまりさがこっちにくるよ!!」 「あのまりさ『すっきのつづじをするんだぜ!』とか言ってるけどお前あいつに覚えあるか? 「ぜんぜんないよ!おにいさんのおててですっきりしちゃったから、 ほかのゆっくりとすっきりなんてきもちわるくてできないよ!」 「そうか、なら潰しちゃっていいか?目障りだし」 「れいむもこれいじょうみたくないからはやくつぶしてね!!」 「すっきりするんだzぶげぼばっ!」 れいむの前に飛び出した瞬間、 まりさはれいむの飼い主によって踏みつぶされて、中身も飛び出した。 (「もっと・・・すっきりしたかったんだぜ・・・」) まりさの意識も飛び出した。 「全く気持ち悪いまりさだったな」 「そうだね!きたないまりさはえいえんにゆっくりしててね!」 終 ―――――――――――――――――――――――――――――― 補足 すっきりまりさがお兄さんトラップに引っ掛からなかったのは、 ずっと美れいむの妄想をしていたから。 意識がない状態で「ゆっくり」といっていたのはお兄さんの聞き違いで 実際は「すっきり」って言っている。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/495.html
昨今の幻想郷では、ゆっくりが餡子の材料、ペット、ストレス解消など様々な利用方法をされている。 そして大工の場でもゆっくりが使われていた。 家を建てる際に草木を撤去し、凸凹とした土地を平らに均す必要がある。 その時にゆっくりを使うわけだ。 まず平らにしたい土地を柵で囲っい、れみりゃ除けに網をかけてその中にゆっくりを何匹か放り込む。 逃げられないようにするためと、無必要な部分まで整地されないようにするためである。 ちなみに中にいれるのはゆっくり霊夢、それも母ゆっくりだけだ。 まりさ種を入れると何かと理由をつけてさぼったり、それが原因でゆっくり同士喧嘩しだすのでNG。 ありす種を入れると他種のゆっくりが犯されて殺されるのでNG。 ちぇん種は仕事に対して集中できないうえ目を離すと遊びだすのでNG。 みょん種などは話が通じるか分かり辛いのでNG。 そんなわけで割と素直で真面目なれいむ種が使用されるわけである。 今日もまた新たなれいむ家族が箱に詰められて現場へと連れてこられた。 箱の中からはゆっくり家族達の声が聞こえる。 「ゆっくり出してね!」 「おかーしゃん、ゆっくりできないよ!」「くらいよ!」「せまいよ!」「こわいよー!」 「うるさいなぁ。ほら着いたぞ」 大工の一人が箱を開けて中を確認する。 母ゆっくり一匹。子ゆっくり二匹に赤ちゃんゆっくり二匹。 その中から母ゆっくりだけを取り出して柵の中へと置いた。 「ゆ! ひろいよ!」 柵の中は今まで閉じ込められていた箱に比べればずっと広い。 母ゆっくりは清々しい表情をする。 「わたちたちもゆっくりだちてね!」「だしてだして!!」 子供たちの声を聞いて子供たちを思い出したのか、母ゆっくりは大工へ向かって抗議する。 「れいむのこどもたちもゆっくり出してあげてね!!」 「だめだ。お前が仕事を終わるまでこいつらは預かっておく」 「ゆ"!? なんでそんなこというの!? ゆっくりだしてね!!」 「聞けよ。仕事が終わったら放してやるって言ってんだろ」 「おじさん、なにいってるの? なかなの?? はやくこどもをだしてね!!!」 「あー、めんどうな奴らだな」 こんなやり取りを今までに何度もしてきたので大工はうんざりだという顔をする。 「仕事の説明はあそこにいる他のやつらに聞け。仕事が全部終わったら子供に会わせてやる」 同じ柵の中、向こう側で寝ているゆっくりの群れを指で示してそれだけ言うと大工は背を向けて去って行った。 「ゆっくりまってね!! こどもたちをかえしてね!!」 しかし大工は聞かず、そのまま自分の小屋へと帰った。 今晩の食事はちょうど手に入った4つの饅頭だ。 そうして残された母ゆっくりはしばらくの間、すでにいない大工や子供たちに話しかけたり、 柵に向かって体当たりしていたがどれも適わなかった。 その音に目を覚ました他の母ゆっくり達四匹が集まってきた。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「ゆ? ゆっくりしていってね!」 他の母ゆっくり達の挨拶に母ゆっくりも挨拶を返す。 「れいむもこどもたちをもってかれたの?」 「ゆ! そうだよ! ゆっくりしないでたすけなきゃ!!」 母ゆっくりは再び柵に向かって体当たりしようとする。 「ゆっくりもんだいないよ!」 「しごとがんばればかえしてもらえるよ!!」 と、他の母ゆっくり達は言う。 「それが本当かどうかわからないよ!!」 「だいじょうぶだよ! さいしょにいたゆっくりはこどもたちかえしてもらってたよ!!」 「ゅ! しあわせそうにおそとへいってたよ!!」 それは他のゆっくりに、がんばれば子供を返してもらえると示すための大工によるヤラセのようなものだ。 ちなみにその子供を返してもらったゆっくりは他の現場へと連れていかれたが、残るゆっくり達は知る由もない。 ただ、仕事を頑張れば子供と一緒にゆっくり出来ると信じていた。 「じゃあだいじょうぶだね! しごとってなにをするの!?」 他の母ゆっくり達の言葉に安心した母ゆっくりはようやく仕事する気になったようだ。 「ゆっくりせつめいするね!!」 「しごとはここのじめんをぺったんこにするだけだよ!! たべものはここにあるくさだよ!!」 「でもくさをいっぱいたべないでね! これいがいはないからね!!」 「ゆっくりわかったよ! みんなでゆっくりがんばろうね!!」 さすがは母ゆっくり、今の説明で理解できたようだ。 母ゆっくりの群れなので食事の量の管理も問題ないだろう。 それから母ゆっくり5匹のお仕事が始まった。 昼間は小石を柵の隅へと退かしたり、口や大きな体を使って地面を平らにしていく。 また、食事と整地も兼ねて草を食べていく。 疲れたらそれぞれ自由に休んでいた。 暗くなるとゆっくりタイムだ。 といってもこの辺りは明かりになる物もないのでみんなで擦り寄って眠るだけだが。 子供たちのことが心配ではあったが、仕事が終わればまた家族でゆっくり出来る。 それに共にがんばった他のゆっくり達の家族とも一緒に遊ぼう。 最初ここに連れてこられた時は不安でしょうがなかったが、甘い未来を想像するとゆっくり出来た。 それから一週間経ったころ、大工は様子を見にきた。 最初は凸凹で草木もたくさん生えていたこの土地はしっかり整地されていた。 草一本生えず平らになっていた。 「いい感じだな。よくやったなお前たち」 「ゆっくりがんばったよ!!」 「ゆうしゅうでごめんねー」 「ゆー♪ゆー♪」 自分たちのがんばった仕事を褒められてゆっくり達は嬉しそうだ。 仕事の最後の方は食べるものも少なくなって辛かったが、労いの言葉にゆっくり達の言葉は満たされた。 「がんばったのだからご褒美をあげないとな」 「ゆ! おぼえてるよ!! はやくこどもにあわせてね!!」 「あとおなかへったからごはんもってきてね!!」 「こどもたちはゆっくりしてる? ゆっくりあいたいよ!!」 「ごほうびごほうび!! こどもとたべものちょーだいね!!!」 「こどもたちといっぱいたべたいよ!!」 ご褒美と聞くと5匹の母ゆっくり達は口を揃えて望みを言う。 「じゃあ、そこまで連れていくからこの箱に入れ」 大工はそう言うと、持ってきた5つの木箱をゆっくり達のいる地面へ置く。 「はこ? はこはいやだよ!」 「せまいからゆっくりできないよ!!」 「お前たち疲れてるじゃないか。だから箱に入れて運んでやるんだよ」 「じゃあもっと広いはこにしてよね!!」 「まっててあげるからゆっくりよういしてね!!!」 「嫌だよ阿呆饅頭。とにかく箱に入らないなら食事無しで子供にも会わせないからな」 図々しいゆっくり達もさすがに食事と子供を盾にされると贅沢言わなくなり、自分から箱へと収まった。 「ゆっくりはこんでいってね!!!」 リヤカーにゆっくりの入った木箱を5つ積むと、大工はリヤカーを引いていく。 何も見えずにただ揺らされるゆっくり達は不平不満を垂らす。 「ゆっくりできないよ! いつつくの!?」 「おそとがみたいよ!」 「ゆれがはげしいよ! ゆっくりはこんでね!!」 しかし大工にとってそれは雑音にすぎない。 無視してリヤカーを引いていく。 そして数時間後、ゆっくり達入った木箱の蓋が外されて地面へと降ろされる。 「ゆっくりできるよ!」 「ひろいよ! くさがいっぱいあるよ!!」 「ゆ? こどもたちは? どこにいるの!?」 「ゆっくりしないで会わせてね!!」 「今度はここで仕事だ。前と同じだからがんばれよ」 「ゆ”! どういうこと!! やくそくがちがうよ!!」 「ゆっくり達のしごとはもうおわったんだよ!!」 「仕事はあそこだけなんて言ってないだろう?」 「い、いやだよ!! もうしごとしないよ!!」 「そうだよ!! はやくしょくじとこどもをもってきてね!!」 「そしたらしごとすることかんがえてもいいよ!!」 「食事ならそこにいっぱい生えてるじゃないか」 大工の指差した先には確かに草木が茂っていた。前の土地よりも多いかも知れない。 「あまいのがいいよ!」 「おかしもってきてね!」 「あとこどももね!!」 「こどもは仕事が全部終わったらって約束だろ? じゃあ後はがんばれよ」 ゆっくりとの無駄な問答に付き合ってられないと大工は去って行った。 「ゆ"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! まっでえぇぇぇぇぇ!!!」 「せめて! ひとめだけでもみせてね!!」 「ゆっくりまたないとおしごとしないからね!!!」 最後のゆっくりの言葉に反応して大工は振り返る。 「一か月後に仕事ができなかったら子供は食べるからな? しっかり仕事しとけよ?」 今度こそ大工は去っていった。 後に残されたのは柵に囲まれた広大な土地と5匹のゆっくり達だけだった。 今度の仕事場は大豪邸でも建てるのか前に比べてずっと広い。 5匹のゆっくり達は誰も何も言わず呆然と佇んでいた。 一ヶ月後に見事に仕事をやり遂げた5匹のゆっくり達はご褒美をもらえた。 苦しむことの無いよう鉈で一刀両断。これがご褒美だ。 きっと子供たちに会えるはずだ。仕事を始めた日には死んでいた子供に。 きっとあの世でね。 終 by ゆっくりしたい人 主にゆっくりれいむ家族を虐めたいだけ。虐待というか人質とって強制労働というべきか。 ある種グッドエンドっぽいけどあの世で子供に会えるか決めるのはえーき様。 このSSに感想を付ける