約 592,761 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1099.html
今日は、近くにある神社のお祭りがあるそうだ。夕方ごろに家を出る。 お祭りに付随して、境内から参道へ、そして道端にかけて露店がたくさん出ているそうだ。 現地にたどりつくと、二列に並んだ露店の賑やかな明かりが、人々を照らしている。 たくさんの人が、神社までの道を楽しそうに行き来している。 露店にはたこやき、わたがし、焼きそばなど、様々なお店があるようだ。 自分も周りの賑わいに混じって、いろいろなお店を見てまわることにする。 しばらく楽しんでいると、露店の一番端の、暗く静かな場所にたどり着く。 ところで露店の端って、なんであんなに悲しいと感じるのだろうか。 その悲しさが嫌で、飽きるまで、何度も露店を往復する人もいるようだ。 さて、この先にはお店が一軒も無いようなので、来た道を折り返すことにする。 くるりっと、後ろを振り返ろうとしたそのとき、暗闇の先に何かが動くのを発見する。 少し気になったので、暗い足元に気をつけながらそこに近づいてみる。 30mくらい歩いただろうか。そこには、ダンボール箱がボンと置かれている。 そして、ダンボール箱の上と、その隣に何か動くものが見える。 ますます気になり、持っていた懐中電灯でダンボール箱を照らしてみる。 するとダンボール箱の横には、ボサボサで少しカールのかかった髪のゆっくりれいむが、 ダンボール箱の上には、小汚い顔の子れいむが3匹いた。 4匹ともバッジがついていないので、野良ゆっくりのようだ。 このゆっくりたちは、祭りのにぎわいに乗じて、何か恵んで欲しいと考えているのだろうか、 ダンボール箱の上を見ると、3匹の子ゆっくりといっしょに、ゴミの固まりが置かれている。 ここを通った人が、そのダンボール箱の上にゴミを置いていったのだろうか。 ゴミに目を通してみるが、ゆっくりたちが食べられそうなものはひとつもない。 みじめなこのゆっくりたちに少し同情して、 綿菓子のひとつまみでも、買い与えてやろうかと思った。 ダンボール箱の前まで来ると、ゆっくりれいむがしゃべりだす。 「ゆ!おきゃくさんだよ!おチビちゃんたち、みんなであいさつしてね!!!」 「「「ゆっくちしていっちぇね!!!」」」 子ゆっくりたちは、体全身を使って精一杯、背伸びをしている。 それにしても、このゆっくりは『客』と言ったのか? 客ということは、ここは何かサービスを提供する場所だということになる。 だが、ここには何も品物が置いていないし、ゆっくりが直接、何かサービスしてくれるという感じでもない。 「客というのは俺のことか?」 「そうだよ、おにいさんいがいここににんげんさんはいないでしょ!さあ、なにかかっていってね!!!」 「「「かっていっちぇね!!!」」」 「買うっていっても、肝心の商品がないじゃないか。何もないのに、何も買える訳がないだろ。」 「ゆ!ダンボールさんのうえにある、ゆっくりとしたものがおにいさんにはみえないの?おにいさんはおめめがわるいの?」 「目が悪いのはお前のほうだろ。ここにはゴミと、子ゆっくりしか置いてないじゃないか。 この辺に捨てられたゴミを持ち帰って、処分しろって言いたいのか?それとも子ゆっくりを売るっていうのか? 前者なら悪いが、露店を出してる人に言ってくれ。 後者なら、それはそれでおもしろいんだが・・・」 「なにいってるの!!!おチビちゃんたちはわたさないよ!!!!にんげんさんはばかなの??? それに、これはゴミさんなんかじゃないよ!!とてもゆっくりできるものなんだよ!!! れいむは、これとあまあまさんをこうかんしてあげるっていってるんだよ!!!」 あきれた。こんなガラクタと、甘いものとを交換するというのか。 それができるなら、餓死する野良ゆっくりなんていなくなるよ。 今の時代は逆に、お金を払ってゴミを引き取ってもらう時代だ。 こんなゴミを買い取れ、って言ったところで、 せいぜい、ベロンベロンに酔っ払った、気のいいおじさんくらいしか相手にしてくれないだろう。 それか、俺みたいに物好きな人間か。 「じゃあ聞いてみるが、これはなんだ?」 「ゆう!わざわざれいむがせつめいしてあげないといけないの?おにいさんはつかえないにんげんさんだね!!!」 商品の説明をするのが店員の役目だろ。 それすら怠り、ガラクタと引き替えにあまあまをくれって言うのか? それはまさに「こんなわがままな自分を虐めてくだざい、お願いします!」って言ってるようなもんだぞ。 人間に対してそんな対応をするようでは、命がいくらあっても足りない。 まあ、俺は心が広いから、わざわざ付き合ってやっているが。 「使い方が分からないと買えんだろ。とりあえず・・なんだ・・この、枝に葉っぱが刺さってるのは?」 「ゆう!それはゆっくりのかささんだよ!!これであめさんをさけることができるんだよ!!! これは、みんなにあまあまさんをひとつずつくれたら、こうかんしてあげるよ!!!」 かさだと?こいつは何を言ってるんだ?ただ、葉っぱに小枝を刺してあるだけじゃないか。 こんなもん、葉っぱがあったら1秒で作れるぞ。 それに、葉っぱと小枝の隙間に穴が空いてるから、そのまま使っていれば、隙間から水が垂れてくるのは必至だ。 葉っぱも小枝も見た感じ弱そうだし、こんなものが人間の役に立つ訳がない。 いや、ゆっくりにとっても、全く役にたたないガラクタだ。 まだ、ハツカネズミをハムスターと偽って売るほうが、はるかに良心的だ。 だって、ハツカネズミには価値があるけど、れいむが売ろうとしているものには、一銭の価値も無いんだから。 こんなものを買わされるんなら、このゆっくりをグーで殴っていい、というくらいの特典がついてないとおかしい。 というか、ゆっくりを殴るのが有料で、このガラクタが参加賞、っていう形ならまだ納得できる。 参加賞を帰り道でぶち壊して、余韻に浸る楽しみもできるしな。 いっそのこと、殴られ屋として店を出せば結構いけるんじゃないか? その方が、たくさんあまあまももらえると思うんだが。ただ、命の保証は無いけどな。 「それはいらんよ。てか、ゆっくりの傘っていうくらいなんだから、俺には使えんだろ。 で、それはなんだ?ただの雑草にしか見えないんだが」 その草と同じ雑草が、周りのあぜ道にいっぱい生えている。どうせ、そのあたりからとってきたんだろう。 「ゆ!これはとるのにくろうしたくささんなんだよ!!とるのにてまのかかるくささんは、 きっとえいようまんてんなんだよ!!!これはあまあまさんふたつとこうかんなんだよ!!!」 「そうか。じゃあ、ちょっと食べてみてくれないか?旨いんなら、いくつか買ってやるよ」 「ゆう!おかいあげだよ!!おチビちゃんたち、おかいあげのおうたをうたってあげてね!!!」 「「「ゆう!ゆゆゆおきゃいあげ~~~♪ゆゆゆおきゃいあげ~~~♪」」」 「まだ買うとは言ってないだろ。早くこの草を食べてみろよ。」 「わかったよ!!ゆっくりたべるよ!!むしゃむしゃっ・・・・ ゆ、ゆぎぃいいにがぃいいいい!!!このくささんにがいよぉおおおお~!!!」 そんなに苦い草を、俺に売りつけようとしていたのか。ひどい話だ 「れいむはおこったよ!!!おわびにおにいさんは、れいむにあまあまさんをもってきてね!!!」 お詫び?何のお詫びだ?自分が採ってきた訳の分からない草を食べて、勝手に自滅しただけだろ? そんな失態を見せつけられて、お詫びをしてもらうのはこっちのほうだ。 あいかわらず子ゆっくりたちは、お買い上げの唄とかいうものを歌っている。まだ何も買ってないのになぁ。 「あまあまは、ものを売って手に入れればいいだろ。これはビー玉か?」 「ゆ!それはとてもゆっくりできるいしさんなんだよ!! これをかったにんげんさんは、まいにちれいむたちにあまあまさんをくれないとだめなんだよ!!!」 「「「だみぇなんだよ!!!」」」 ダメなのは、こいつらのあんこの中身だ。完全に腐ってやがる。 「それもいらんなぁ」 「ゆ!おにいさんは、これをかわないとだめなんだよ!かわないおにいさんはゲスなんだよ!!!」 「「「ゲシュだよ!!!」」」 何故これを買わないとだめなのか、何故これを買わないとゲスになるのか、その説明は全く無い。 俺を脅して、無理にでも買わせようとするつもりなのか。新聞の押し売りよりもはるかにひどい。 これは絶対に価値があるんだよ、っていう自信満々な顔をしてるのも、無性に腹が立つ。 「だからいらんって。ところで、この割り箸の片割れはなんだ?ゴミにしか見えないんだが。」 「ゆ!にんげんさんはそれをつかってむしゃむしゃするんだよ!!おにいさんはそんなこともしらないの? そんなおにいさんには、とくべつにあまあまさん2つとこうかんしてあげるんだよ!もってけどろぼうさんなんだよ!!!」 泥棒はお前だ。人間の物を勝手に自分たちの物にしやがって。 それに、ちょっと覚えたから使ってみたよ!賢いでしょ!的な言葉をいちいち使ってくる。 何度も何度もゆっくりを叩き潰したい、という衝動がこみ上げてくる。 置いてある物についても、つっこみどころは多い。 この割り箸を売るにしても、土でドロドロに汚れているし、おまけに片側しかないので箸として使えない。 これをあまあま2つと交換だ、と言うんだから、 その根性というか、図太さだけは、人間をはるかに凌駕していると言える。 さすがに、ゆっくりを相手にするのは疲れてきたので、そろそろ帰ることにする。 ガラクタに並んで、3匹の子ゆっくりたちが、ダンボール箱の上をころころと転がって遊んでいる。 全く、物を売る者の対応ではない。 転がっている子ゆっくりのうち、1匹を手で押さえ、軽くデコピンをする。 ピチン、という良い音がした。続けて、残りの2匹にもデコピンをかます。 ちょっと、ゾクゾクしてきた。 「ゆぎぃいい!!!いちゃいよぉおおおお!!!!」 「やめてね!!!おチビちゃんたちがいたがってるよ!!やめないと、れいむはプクーするよ!!!」 「「「プキューしゅるよ!」」」 だが止めない。子ゆっくりたちの悲鳴を聞き、ますますゾクゾクしてきた。 さらに親れいむにもデコピンをかます。そしてゆっくりたち全員に、繰り返しデコピンをかましていく。 「いちゃいよぉおおおお~~!!!たすけちぇおきゃ~しゃん!!!!!」 「ゆぎぃいいい!!!いだいよぉおおお!!!!!!なんでにんげんさんはやめてくれないの? れいむはもうかんかんだよ!もっとプクーするよ!!!」 「「「プキューしゅるよ!!!」」」 デコピンをする手が緩まないので、ゆっくりたちのプクーにも力が入る。 かまわずデコピンを続けていると、ゆっくりたちの顔がみるみるうちに赤くなっていく。 ちょうど良い色になったところで、一匹の子ゆっくりを持ち上げ、下から一気に割り箸で突き刺す。 見事、赤く艶やかなゆっくりんご飴ができた! 「ゆぎゃぁあああああああ!!!!!!!!いぢゃいいいいいいいいいい!!!!!!!!」 「ゆぁあああああああああああ!!!!れいむのおチビちゃんがぁああああああ!!!!!」 かまわず他の2匹も、その辺に落ちている割り箸に刺していく。 子ゆっくりたちは力いっぱいに悲鳴をあげるが、横の親ゆっくりはただ泣き叫ぶだけだ。 これはヤバイ、癖になりそうだ。体全身がゾクゾクしてくる。 割り箸に突き刺さった子ゆっくりたちは、体をふるふると動かして逃れようとするが、割り箸が抜けそうな気配は全くない。 はたから見ているだけの親ゆっくりは、赤かった顔を真っ青にしている。 「にんげんさん、はやくとってあげてね!!このままじゃおチビちゃんがゆっくりできないよ!!! れいむはどうなってもいいから、おチビちゃんをたすけてあげてね!!!」 そう言われたので、親ゆっくりにも割り箸を突き刺す 「ゆぎゃぁあああ!!!!いじゃいよぉおおおおおおおおお!!!!!!!はや゛ぐどっでよ゛ぉおおおおおお!!!!! お゛ヂビぢゃんはどう゛なっでもい゛いがら゛でい゛む゛をばや゛ぐだずげてね゛!!!」 これで、青ゆっくりんご飴の完成だ! それをガラクタと一緒に、ダンボールの上に突き刺して並べてやる。 この商品だったら、誰か通りかかった人が買ってくれるかもしれないな。 あぁ、いいことをしたら腹が減ってきた。 もう、リンゴ飴は食べる気がしないから、たこ焼きでも食べて帰ろうか。 露店を再びまわってみると、ほかの暗い場所でも、自分の店を出しているゆっくりがたくさんいた。 全員、集めたガラクタを売ろうとしているようだ。 先ほどの場所で、ガサガサとダンボールの揺れる音と、ゆっくりの悲鳴がわずかに聞こえる。 だがその音は、人のにぎわう音によってかき消されていく。 人通りの少ないこの場所で、割り箸に突き刺さっているゆっくりたちに気がつく人は少ないだろう。 ゆっくりんご飴に気がついた人も、フッと鼻で笑ってみんな素通りしていく。 翌日、屋台の片付けをする人が、昨日のゆっくりたちをゴミ袋に詰めていた。 ゴミ袋の中には、同じようなゆっくりんご飴が30個ほど入っていた。 置いてあるものを真似して、誰かが作ったのかもしれない。 露店は、多くの参拝客を寄せ付けるのと同時に、多くのゆっくりたちを寄せ付ける魅力があるようだ。 しかし、その恩恵にあずかることができるゆっくりは、ほとんどいない。 鉄籠あき 過去の作品 anko1922 鉄籠 anko1941 野良まりさたちの行く末 anko1951 ゆっくりの住む牧場 anko1968 正義感 anko1973 あんころ草 anko1993 50% anko2013 カウンセリング anko2024 カレーの作り方
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2771.html
ゆっくりと豆 30匹ほどのゆっくり家族が暮らす、大きめの巣の中。 日の昇る少し前に目覚めた母ゆっくりまりさは、彼女のはじめての娘であった 姉ゆっくりまりさの異変に気が付いた。発情したゆっくりありすが、必死に抵抗 する姉ゆっくりまりさに覆い被さっていた。ゆっくりありすにしては小柄なこと、 そのため声量が小さく、襲われている本人以外誰も気がつかなかったのだろう。 寝静まった夜中だと言うことも災いした。 『まり゛ざあああああ! しゅぎ! だいじゅぎだよぼおおおお!』 と発情するゆっくりありすを、体の大きい家族で踏みつけにすることで、大惨 事は免れることができた。ゆっくりありすが一匹だけであったこと、襲われた時 間が深夜でなかったことが幸いした。いくら小柄なゆっくりありさでも、大群に 襲われれば対処の出来ようはずはなく、また深夜であれば、寝静まった者が気付 くことも少ないからだ。 姉ゆっくりまりさは襲われていた時こそ衰弱してはいたが、日の昇る頃には小 さな枝を二振り授かり、襲われたことも忘れやがて生まれる子供たちの笑顔に思 いを馳せるくらいには回復していた。 母ゆっくりまりさからすれば、不幸な出来事とは言うものの初孫を授かること が嬉しくないわけがなく、かいがいしく娘の世話を焼いてやることにした。 付いた実はそれぞれ、5つと4つで、まりさ種が8、ありす種が1であった。 奇妙なことに、枝ぶりからすると、少しばかり生まれる子が少なく、本来子が宿 る場所には、小さく黒いつぼみがいくつか結ばれていた。 母ゆっくりは、娘に覆い被さった運命がもたらした悲しい出来事の結実である と考え、娘の頬を優しくなぜるのであった。家族の皆が見守る中、生まれてくる ゆっくり達は、未来の幸せを疑うことすらなかった。 ・ ・ ・ 私はゆっくり研究者の一人だ。 ゆっくりまりさと共に食事をとり、ゆっくりれいむと昼寝をし、ゆっくりに囲 まれて研究を行うのが日課だ。 ゆっくりありすに襲われた家族があると他のゆ っくりから聞き、生き残りを保護しにやってきたのだが。 日が沈んだばかりのこの時間帯であったためか、巣穴ではゆっくりな大家族の 幸せそうな生活か営まれていた。それどころか、子ゆっくりありすが家族と同居 しているではないか。興味を引かれた私は、そのゆっくり家族を観察させてもら うことにした。 私はその家族に向けて、ゆっくりしていってね、と優しく挨拶をする。突然の 挨拶に驚いた家族達は、私が優しそうな笑みを浮かべていること、美味しそうな お土産を持っていることを理解したのか、口々にゆっくりしていくことを勧めて 来た。彼女達の住処は小柄な私が入り口から入れるくらいに大きく、洞窟と言っ ても大げさでないほどであった。このような巨大な巣穴を作り上げたゆっくりま りさ達に感動を覚え、ゆっくりさせて貰えるお礼と共にその内心を告げると、親 ゆっくりまりさはとても嬉しそうに、ずっとゆっくりすることを進めてくれた。 その日ゆっくり達から聞いた話をまとめるた私は、少しばかり危機感を抱いた。 子ゆっくりまりさ大のゆっくりありすが、一匹だけ訪れたこと。さらに、ゆっ くりまりさがゆっくりありす種を宿した事。先日、工場近くで化学薬品の流出事 故が発生したばかりだ。近辺のゆっくり達に悪影響を及ぼし、一部のゆっくりに 突然変異を起こすきっかけとなったことは、一般には伏せられている。もしかし たら、その異変ゆっくりありす種がここを訪れたのかもしれない。 お土産をゆっくり達にくばりながら、異変がないかを探る。ゆっくり達の顔を 見回すと、……簡単に見つけられた。 だれもが、額やら頬やら側頭部やらに、黒い点をつけている。よくよく観察し てみるに、それはどうやら小さい穴のようであった。小さい子ゆっくりまりさは 数個、親ゆっくりまりさに至っては28個もの穴が開いていた。症状を聞くと、 毎朝起きると、体中に鈍痛を覚えるが、時間が経つにつれ気にならなくなるらし い。それが毎朝続いているためか、体力も乏しくなってきているようだ。 多分ではあるが、夜中のうちに誰かに穴をあけられ、しだいに回復しているだ けなのであろうと推測できた。 明日は朝早く訪れることに決めた。 ・ ・ ・ 早朝。 巣穴の外から観察していた私は、奇妙なことに気が付いた。ゆっくりの頭から、 小さい枝がいくつも生えているのだ。生殖したのではないだろう、すべてのゆっ くりがその枝を生やしていたのだ。懐中電灯を照らしてもまだ暗いため、よく見 えなかったのだが、枝には小さな豆粒ほどの実が成っているようだった。 これが、変異の影響であろうか。 枝の数をいくつかメモしているうちに、母ゆっくりまりさのそれが28個、つ まり昼間見つけた穴と同数であることに気が付いた。 これはもしや……。 思考しているうち、いくつかの子ゆっくりまりさが小刻みに揺れた。 ゆ゛っ、ゆ゛っ、と声を上げた彼女達の枝は、すぐに枯れはじめた。急いで巣 穴に入り、枝の落ちた子ゆっくりまりさを抱えると、いくつか新しい穴が開いて いるようだ。ピンセットで傷をつけぬよう注意しながら、穴を探る。穴から引き 出された物は――とても小さいゆっくりありすであった。 豆粒ほどの彼女は、抜き出された時こそくーくー寝息を立てていたものの、す ぐに起きて暴れ始めた。ピンセットでは捕まえていることは出来ず、『とかいは のありすは暖かくゆっくりするんだから!』といいながら、子ゆっくりまりさの 皮下に、勢い良く潜り込んだ。 このゆっくりありす――豆ありすとでも言うのか――はどうやら寄生体で、宿 主の体内にもぐりこんで食い荒らし、さらに一日で受精させる新種のようであった。 これはいそいで発表せねばならないと踵を返したとき、足に激痛が走り、倒れ こむ。調べてみると、豆が打ち込まれたような、小さな穴。 まさか……。嫌な汗が体中から吹き出てくる。人間にも、寄生するのだろうか? 一つの枝から5,6個の子が生まれるようで、巣穴はすでに豆ありすに埋め尽 くされていた。腕、足、胸、喉と、饅頭でもないのに容易く皮膚を食い破られ、 激痛に悶える。汚染の影響なのか新種の能力なのかわからないが、手足が痺れ、 筋肉が言うことを聞かない。 巣穴はすでに阿鼻叫喚の渦に巻き込まれていた。 母ゆっくりまりさは、体中を蝕まれ、ゆ゛っ、ゆ゛ぐっと呟くも、動きが取れ ないようだ。生まれたての子ゆっくりまりさは寄生に耐えられず絶命していた。 絶命しては受精できないからだろうか、その子ゆっくりまりさの皮を食い破って 外に出た豆ありすは、新たな獲物――ゆっくりと逃げる美味しい饅頭か、動けな い大きな肉の塊のどちらか――を見つけて、嬉しそうに近づく。 どぼじでゆっぐりぃぃぃ゛と泣き喚く親ゆっくりまりさ。 ゆ゛ぐりじだがっだゆ゛ううう、と食い破られる子ゆっくりまりさ。 そういえば、と視線を彷徨わせる。子ゆっくりありすはどうしたのだろうか。 その疑問はすぐに氷解した。 傷一つない彼女は、他のゆっくりに寄生すればすぐ殺してしまうこと、また自 分が殺されてしまうことを理解していたのだろう。とかいはをえんじょいするに は大きな肉塊が必要なことを呟きながら、嬉しそうに私に近づいてくる。獲物で ある私の顔をがっちりと掴み、『いただきます』と呟いた彼女は、そのまま私の 右目に向かって ・ ・ ・ 私の動きを制限する神経毒は、どうやら痛みも打ち消してくれるようであった。 鈍痛と緩やかな眠気の中で、かろうじて動かせる左手で、土をかき集め、出口 を塞いだ。例え子ゆっくりまりさであったとしても簡単に掘り起こせる程度の薄 い蓋であるが、豆ありすであればどうだろうか。 雨でくずれないよう、外から掘るものがいないよう、奇跡を願いながら、次第 に小さくなってゆくゆっくりまりさ達の断末魔を聞きながら。 私はゆっくりと目を閉じた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2049.html
「二匹のゆっくりを育ててみた。2」 二匹のゆっくりを育ててみた。 ~すっぱゆっくり!~ ※へんなゆっくり注意 http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku3045.txt ※つづきです ※例のごとく痛そうなシーンがあります 粗筋 育てた赤ゆっくりが胴体付きになった しかもきめぇ丸やきもんげと違って裸 お留守番の出迎えのつもりだったらしいけど おうちを散らかされちゃったんで 躾をかねてお仕置きしちゃうぞ! るんるん! 現状 空中に固定された透明の箱に、頭だけ閉じ込められて 底面にあるギリギリ首だけ通る穴から、ちっこい胴体をぷらぷらしている 【1.さあ始まりだ!】 裸(ら)れいむは、恐怖した おにーさんの目が尋常じゃないのだ 愛しさと悲しさと心強さを兼ね備えている 確かにおにーさんの為にご飯を作ろうとしたら、サーロインは生ゴミに成り果ててしまったし お風呂を沸かそうとしたら、お水を止め忘れて2LDKが湿地帯になった しかしそれはおにーさんへの愛の証なのだ あの日おかーさんから生まれ 他のおうちの子達は、いろんなニンゲンに貰われて行ったのに 自分とまりさだけは 残ってしまったのだ そんな売れ残りのれいむを おにーさんは大事に育ててくれたのだ 『いや 今回そういう回想いらないから 早く泣いてね』 ベチン 「ゆっ……………ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!ゆぁぁああああああああ!!!!!!」 12年前、お兄さんの親友を泣かせたという『輪ゴムぱっちん』が すっぱてんこーな裸れいむのおへそに炸裂した さっきお兄さんが試したように 輪ゴムは分厚いジーズンの絹を通り越して、太ももに後悔する痛みをもたらしちゃう威力だ それがぽよぽよな お腹の痛烈にヒットしたのだ それも零距離でだ 正直これは紙も破れる もちろんのれいむのお腹の皮は吹き飛んで、中の茶色い餡子が染み出してきた 知っているだろうか? 硬く鍛え抜かれた筋肉は ハンマーの一撃を受け止め、2t車を腹筋だけで支えてしまう しかしそんな一流拳法家のディフェンスを打ち砕く方法がある 筋肉の硬度と厚みは、無類の天然たんぱく質シールドだ しかしそれを覆っているモノ、すなわち皮膚と神経は鍛えることができない そこを攻撃する方法は…"鞭"だ ひっぱたくという攻撃は重量や衝撃によるダメージを想定していない むしろダメージより痛みを与えるのが目的だ 対象には肉体的損傷を与えずに、ただ苦痛だけを蓄積させていく 文明誕生初期からある、すばらしいお仕置き方法である この攻撃方法の有効な場所とは…………肌、ようするに生物の体全体 裸れいむにとっては、全身余すところなく急所になるのだ ゆっくりそのものが元から弱点の塊だけどね 「ゆぎぃぃいいい! ひゅぎぃぃぃぃいい! ぎぃぃぃいいいいいい! ぎゅぎぃぃぃぃぃぃ!」 うん、ずっと痛いよね パッチンってさ 裸れいむは短い腕で おへその傷をさすりさすりしつつ 少し流れ出てしまった餡子を詰め直していた 『今のは! おにーさんが楽しみにしていた 松坂牛の分だ!』 「ぞんなのぉ れいぞうごにぃい ながっだよぉぉおおおお!」 『知るか! 黙ってお仕置きに耐えなさい!』 お兄さんは中指を折り曲げと親指でロックし 全身全霊を込めたデコピンを、おなかをさすりさすりしていた右腕に射出した バジン! 「いじゃぁああああああああああああ! いじゃああああぁぁぁぁあ! いじゃい いじゃい いじゃい いじゃいぃぃぃぃいい!!!」 裸れいむの芯まで届くような鈍痛は、食らった腕から体全体に警報を鳴らした 情けなく歪んだ顔からはブワァと汗が吹き出て れいむは片腕を45度の往復角度で しゅぴぴぴぴ っと高速に振っている ふふふ、そんな事では痛みは逃げないよ むしろそんな一生懸命に手を振っていると、いつか攣(つ)ってしまって 別の痛みにさい悩まされるぞ? れいむはひりひりする腕に向かって息を吹きかけている しかし透明な箱の中に口は格納されているわけであって ふーふーは自分の顔に戻りかかってくるだけである 『今のは! おにーさんが楽しみにしていた 薔薇風呂の分だ!』 「だがら! ぞんなの おにーざん ぶだん ばいっでないでしょおおお!!!!」 『知らん! 素直にお仕置きに耐えなさい!』 さて、裸れいむの痛みが治まるまで用意するものがある れいむが水浸しにした風呂桶から やかんを汲んでくる もう一つは高枝切りバサミだ ちなみにウチはマンションなので 木なんてない でも買うよね? ね? 普通だよね? ほらこんな時のために便利だしね☆ 「まりじゃぁぁぁ! づらいよぉぉぉ まりじゃああ だずげにぎでよぉお! でいぶは ごごだよぉおおお!!!」 シュールだなぁ、壁から突き出た透明な箱 透明箱には裸れいむの涙で ふやけた顔がギリギリのサイズで格納され やっぱりギリキリの底面の穴から首を通し 裸の宇宙人ボディがぷらぷらしている これを見て 何もしないでいろってのが残酷だ いったいだれがこんなナイスなセッティングをしたんだ 荷重に耐えれる透明箱を壁に固定するだけでいくら掛かったと思ってるんだ さて れいむの腕を握ってみる うーむ直径3cmほどの腕だ 指先がないので腕しかない このシンプルアームで ご飯の器を抱えたりできるのか 『えいっ☆』 ありえない方向に曲げてみた ぐんにょり だいたい肘に当たる部分を逆方向にイってみた 「ゆふっっ! ふこっっっっ! ほごごごごっっっ!」 どうも骨に当たる部位はないようで折れる音はない たぶん中身は運動餡子と神経だけで 餡子のスライムが肌色のタイツを着込んでいるようなものなのだろう 『うんしょ☆』 そのまま曲げきって折りたたんでみた 「ゆっ! ふっ! ゆふぉ!」 痛そうだな…こんな絵図よく転落事故動画とかで見るよね この反応から分析すると ありえない身体異常が起こると 痛いとか言えなくなるなるみたいね んじゃ開放してあげよう おお、元に戻らない 曲がってはイケナイ方向に 30度くらい逆らって肘辺りから腕が変形している 二の腕は正常だが、復元しない第一腕は 折れたところを起点にして ものすごい速度で痙攣している 残像が見えるね 神経が圧縮されて変な信号が暴走中のエマージェンシーなのだろう 可哀想なので声をかけてあげる 『痛いの 痛いの とんでいけー そーりゃ とんでいけー』 ぷるるるるるるるる (可愛い腕) むぅ元に戻らないぞ さすがに無理だったか 致し方ない れいむをこれ以上苦しめたくない 『れ、れいむ 大丈夫だ! 痛くならない方法を思いついたんだ!』 「ゆひっ! な! なんじぇも! いいいぎゃら! はやぐ! ぢで!」 高枝切りバサミで裸れいむのくるぶしあたりから足に相当する部位を切り落とした バジュリ…ぽとん 「ゆぎぃぃぃいいいいい! じぃいいいい! ぢんじゃうぅぅうう! でいぶ じぬぅぅううう!」 『すんごい痛いだろうけど 大丈夫。 そう簡単には死なない。 れいむは死なせないよ!(いい意味で)』 なんだか知らないけど 虚空に向かって短い両手を伸ばしている 「ひぎっ! ゆぐっ ゆふふふ ゆひひひひひひ」 『ほら! あんよが痛すぎて 腕の痛みは無くなっただろう? よかった! はらしょー!』 なんだか れいむが笑い始めているけど まぁいいや 『でさ、れいむ 報告と忠告があるんだけどさ』 「ゆひひひひひひひひ」 『足を切り落としたから』 「ゆふふふふふふふふふふふふふ」 『かなり合理的に そこから餡子が流れ出してるで やんす』 「ゆふぇ!?」 左の足先を切断したのだが そこからペットボトルを逆さまにさせたように じょんぼ じょんぼ じょんぼ と体内の餡子が排出されている 下にシート敷いて置いて良かったぜ じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ 「あああああああああああああ、あんござん どまっでね! あんごさんが いないど でいぶが ぢんじゃうでしょおお!!!!」 『おおー、大漁じゃあー 豊作じゃあー』 なんかもったいないので 下にバケツを設置して溜めてみた 数分もすればニワトリばりに餡抜きが完成するな 餡子が無くなると皮しか残らないので意味がないけども 『れいむ 監督からの助言だ! 足を下げているから 餡子が流れてしまうと思うぞ』 「ゆぅうう!? わがっだよ! でいぶは あじを あげぶよ!!!」 しゅぴ そういうと裸れいむは、左足を90度前に突き出した 振り上げたせいで 餡子がちょっと顔にかかった 『okばっちりだ! 申し分ない! 餡子は止まった!』 「ゆひぃぃぃ ゆひぃぃぃぃぃぃ」 『次は右足逝ってみよう!』 サクリ………ぽて 「いっじゃあああああい!!!!! まだ あんござんが でぢゃぶぅううううう!!!!」 『足を上げるんだ 早く! ゆっくりするな! がんばれ! 負けるな! 自分を信じろ!』 しゅぴぃ 両足を空中電気椅子っぽく 前方へあげるれいむ なんか体操で こんなのあるよね?つり革で体支えてさ 『良かった… 本当に良かった。 れいむが… れいむがしんじゃうかと思った』 「ゆぎぎぎぎぎ」 ■ ┃ ┗━ )) こんな態勢だ 自分だったら5秒も維持できないだろう しかし裸らいむは自分の命が掛かってる ゆっくりするためには ゆっくりしないで根性なのだ 命の執着って見苦しいよね 『命ってすばらしい れいむ… 君は僕に感動を与えてくれた ありがとう』 「おにーじゃん… だ…だずげ…」 サクリンコ…ぽてり シャックリ…ぽてり とりあえず感動のお礼に 右腕と左腕も切り落とした ぴぃやあああああっと 吹き出る餡子 「あんござん どまっでっで いっでるでじぉぉおおおおお!!!!!!」 『な、なんてこった! れいむ 両腕も前に突き出すんだ! 早く!』 四箇所の切断と、無慈悲な餡子の流出で 裸れいむの顔がげっそりとしてしまった ■ ┣━)) ┗━)) 右腕びょーん 左腕びょーん 右足びょーん 左足びょーん 『ふつくしい れいむ… 君は美しいよ…』 「ゆぎっ! ゆぎぎ! も!もぶ! だべぇ!」 とうとう疲れてきた御様子で 腕と足が下がってきた 再び切断面四箇所から餡子が滴りはじめた 『く、くそう このままでは れいむが 皮になってしまう… そうだ! アレだ! アレがあったんだ!』 大急ぎで自分の部屋に戻り アレを取ってきた 羽ペンだ お兄さんはインクをつける部分を固く握り締めると ふぉさふぉさした羽で 裸れいむの脇とか股とか こしょこしょした 「!? ゆっひゃひゃひゃひゃひゃや ゆひゃあああああ!!!!!!!」 そりゃ全身裸なので くすぐったいことこの上ない 今まで守りきっていた『ヒ』の字の姿勢ず崩れ やたらめったら四肢を振り回している あーあ 餡子流れはじめちゃった 『れいむ そんなことしてるとしんじゃうよ』 こしょこしょ 『早く おてて あんよ 上げないと』 こしょこしょ 「ゆひゃらはひゃありゃはひゃああ!」 やめてあげた そろそろ 僕の気持ちも理解してくれただろう 輪ゴムを取り出すとウインナーの要領で 四箇所の切断面を縛ってあげた 「…ゆ………ゅ……………」 『お疲れ様です』 痛みも慣れてしまったのだろうか というか今までがパラダイス過ぎて 切り落とされた痛みなど大した事ないのだろう 顔を閉じ込めた透明箱の上部を空ける 「…おにーじゃん………だじで…ぐ……れ……る……の?……」 やかんの中身を注いだ 「ゆ!?」 じょぼぼぼぼぼぼぼ ちなみにさっきの戯れの間に 沸かして熱湯にしておいた あっという間に箱を満たし、裸れいむの口元まできた 常温にふれた熱湯は湯気を舞い上がらせて むわっとする 「がぼっ! あぢゅいぃいい! あじぃ! がぼぼぼ! あじゅういぃぃぃい!」 とぽぽぽぽぽぽぽぽぽ 熱湯はれいむの額を通り越しす 「…(がぼっ! ごぼぼぼ! ぶっぼり がべでべ! がぶびぼ!)」 やがて箱の分布が9割9分ほど熱湯と顔に占領されると おにーさんはふたを閉じた 台所から椅子を持ってきて ぶら下がってる裸れいむの前に置いて座る 足を組んで、腕を頭の後ろで組んでニコニコする 「…(ぐぼっ! ぼびびがん! がぶべで! ぼぶびば!)」 ものすごい高速に裸れいむの足は空中を泳ぎ どう考えても抜けるはずがないのに 手のない両腕を箱の底面に押しつけて抵抗している やがて反抗は収まり お湯が茶色に染まってきた ぷこぉ 右目が外れた 黒目はお兄さんを見つめ 浮力と対流の関係で 八の字にたゆたっている そのあとリボンやら髪の毛も剥がれ 最後に顔の中身を占めていた餡子は 全部お湯に溶けた 中身のない裸れいむの顔の皮は にごった熱湯―いや、お汁粉によってもう見えない お汁粉に漂う両目は 透明箱のこちら側に ぴったりと貼り付いており 何か訴えているようである 『さようなら れいむ…』 箱の底面へ包丁を持ち出すと れいむの首を薙いだ びしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 首の皮だけで支えていた胴体が床に落ちると共に 箱の中に納まっていた大漁のお汁粉―――れいむが流れ出してきた 黒い命の液体と共に 眼球 リボン 髪留め 頭髪 歯 舌 順番にれいむを構成しいたパーツが床に広がると 甘い餡子の香りが部屋中に漂った ぴちゃぴちゃと音を鳴らし お汁粉にぬかるんだ部屋から隣の部屋に行くと 『おーーーい まりさー 空いたぞーーーー 準備いいかぁーー?』 ありゃりゃ なんにもしてないのに 裸まりさ息絶えちゃったよ なんか怖いものでも見たのかな~? 【2.そいでもって】 『…こんなお仕置きを敢行するからな?』 三度 戸締りした玄関に戻ると、お兄さんは裸れいむ裸まりさに忠告した 『何もするな 何も考えるな 大人しくしていろ』 今度こそとお兄さんは仕事場へ向かう サービス残業を通り越して 日の出と一緒に自宅に帰宅すると あの時の姿勢のままで 放心状態の二匹が立っていた 『おおっ 約束守っているようなだなv これからも 安心してお留守番を任せられるな!』 この日から お留守番という言葉で気絶する二匹 元気を出してもらおうと 人ごみへ連れ出してしまい、新たな事件が起きてしまうのは また別のお話 ★他の作品 一匹のゆっくりを捕まえてきた。 ~ゆっくり解体するよ!~ ※グロ注意 http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku2828.txt http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku2830.txt http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku2832.txt 一匹のゆっくりを捕まえてきた。外伝1 ~がんばれ お父さんまりさ!~ ※後半うんうんちーちー注意 http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku3012.txt 二匹のゆっくりを育ててみた。 ~すっぱゆっくり!~ ※へんなゆっくり注意 http //thewaterducts.sakura.ne.jp/cgi-bin/up/src/fuku3045.txt ★もうすぐ完成するよ 一匹のゆっくりが生き残りたい。 ~捕食種おんぱれーど~ 一匹のゆっくりを捕まえてきた。第弐幕 ~子ゆっくりがさらわれちゃった!~ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2787.html
作者当てシリーズ しーしーが出てきます。しーしーしてるゆっくりは出ません。 某ゆっくりの名称と設定をお借りしました。 そのゆっくりぱちゅりーは、絵を描くのが凄く好きだった。 「むきゅー! ゆっくりーゆくりっ♪」 今も口にどこからか拾ってきたクレヨンを咥え、歌を口ずさみながら、地面に置いた紙に描いている。 その描かれている絵は実に難解な構図で、一見するとミミズのようだが、角度を変えてみると海藻サラダのようにも思えてくる。 言ってしまえばデタラメに描かれた落書きなのだが、何故か近所の子ゆっくり達には好評を得ており、子供達の喜ぶ姿がゆちゅりーのモチベーションとなっていた。 口に咥えたクレヨンを吐き出し、大きく飛び跳ねた。 「できたわーっ!!」 何度も飛び跳ね、喜びを露わにしている。 よく見ると紙は束になっており、ゆちゅりーが今日描いた絵は数十枚になる。 「むきゅーっ! これで子供達も喜んでくれるわ!」 束を口で咥えると、ゆちゅりーはそのまま子供達の待っている広場へとなめくじ歩きで向かっていった。 「そこで ゆうかん に立ち向かうゆっくりがいたの!」 「ゆゆっ!」 「すごいね! かっこいいね!」 「そこで助けに入るなんて、とても とかいは なゆっくりね! ありすのともだちにふさわしいわ!」 「わかる、わかるよー」 「きょこん! きょこん!」 広場に集まった子供達の前で、ゆちゅりーが地面に絵を一枚ずつ置きながら、熱く語っている。集まっていた子供達はれいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種と様々だが、みんながみんな目を輝かせ、集中してゆちゅりーの話を聞いている。 普通の絵でも喜んでくれる子供達だったが、ゆちゅりーはもっと喜んでくれるにはどうしたら良いかと以前から考えていた。 結論として、物語をつければいいと考えたゆちゅりーは、1日かけてお手製の紙芝居を完成させたのだ。 脇に置いていた次の紙を咥え、子供達の前へ置く。 「むきゅっ! 見事そのゆっくりは 人間をたおしたの!」 「ゆゆっ!?」 驚きの声と共に、子供達がゆちゅりーへと問いかけてくる。 「ほんとうに? ほんとうに人間にかったの?」 「むきゅ! そうよ! このゆっくりはつおいんだから!」 「でもにんげんだよ! すごくこわいよ!」 「むきゅきゅっ! でもこのゆっくりにはみんなたじたじなのよ!」 「すごいすごーい!!」 「なんて とかいは なの! すごくゆっくりしているのね!」 それぞれが喜び、楽しみ、感動している。 見かける度に暗い表情の目立っていた子供達も、絵を食い入るように見ている。 その光景に、ゆちゅりーは紙芝居を作って本当によかったと満足していた。 ゆちゅりー達のいるゆっくりの群は、人里の近くにある大きな森で暮らしていた。 その広さから、普通の森よりも狩猟の被害は比較的少なかったのだが、今年の春になって突然、人によるゆっくり狩りが行われ、多くの群のゆっくりが犠牲になった。 その犠牲者の中にはこの子達の親も何匹かいたので元気づけようと、ゆちゅりーは人に勝つゆっくりの話を考えたのだ。 「むきゅっ! それじゃ今日はこれまでにしましょ!」 「ゆゆっ? もう終わりなの?」 「もっとゆっくりしたいよぉ…」 「むきゅっ、だめよ! ゆっくりするにもじかんを守らないと、ゆっくりに叱られるわ!」 強い口調に、子供達は名残惜しそうにゆっくりしながらも立ち去っていく。 ところが少しして、1匹の子まりさが勢いよく戻ってきた。 「むきゅきゅっ!? ど、どうしたの!?」 「あ、あのね! あのね! ……さっきのゆっくりはなんていうゆっくりなの!」 「むきききぅっ!?」 予想外の質問にゆちゅりーは思わず固まってしまった。話は考えたものの、細かな部分まで決める余裕はなく、あやふやなまま絵を描き始めていたのだ。どうして人間に勝てたのかはもちろん名前さえ、一度も気にした事さえなかった。 「ゆゆっ? どうしたの? ゆっくり教えてね!」 「む……むきゅきゅ……」 目を輝かせて答えを待つ子まりさを失望させるわけにはいかない。 視線を逸らしながらあれやこれやと考えていた時、ふと脇に置いておいたゆっくりの絵がゆちゅり ーの目に映った。 丸く塗りつぶされた、真っ黒なゆっくりが。 「……黒ゆっくり」 「ゆっ!」 「むきゅっ! そうよ! あのゆっくりは黒ゆっくりっていうの!」 「ゆゆっ!! 黒ゆっくり!!」 まりさの餡子に、黒ゆっくりという名前が深く刻み込まれていく。 ゆちゅりーにお礼を言い、そのまま大きく飛び跳ねて立ち去っていく。 その餡子の中では、黒ゆっくりの想像がいくつも飛び交っていた。 「おもしろかったね!」 「ちーんぽ! きょこーん!」 「むきゅー」 「黒ゆっくりはゆっくりのなかのゆっくりよ! ぜひいちど とかいは どうしで話をしたいわ!」 「まりさもそう思うよ!」 お手玉のような大きさの体がいくつも飛び跳ねている。 歩いている内に少しずつ別れていった子供の群は、今では5匹ほどの子供達が思い思いに喋っている状態だった。 喋る楽しさに思わず我を忘れていた子まりさだったが、ふと会話に参加していない子ゆっくりの存在に気がついた。 「ゆゆっ? どうしたのれいむ?」 「……」 4匹から少し離れて歩いていたれいむは、頭のリボンがはっきり見えるほど下を向き、沈んだ様子で応えた。 「……黒ゆっくりなら、ふくしゅうできるかなぁ……」 「ゆゆっ!?」 子供達にゆっくりらしからぬ緊張が走る。 れいむが呟いた言葉は、子ゆっくり達が覚えている言葉の中でも、特にゆっくり出来ない部類のものだった。 「だ、だめだよれいむ! ふくしゅうなんてかんがえたら!」 「ぺ、ぺにす! ぺぺぺぺにす!」 「ふくしゅう なんてみんなゆっくりできないっていってたわ! ゆっくりできないのは とかいは じゃないのよ!」 押し止めるような言葉の激流にも、れいむの顔は上がらない。 「……れいむは、おかあさんがいないとゆっくりできないよ……」 「ゆ……」 擦れ気味な声に、逆に子供達みんなが押し止まってしまう。 ここにいる子供達で、れいむの心境が分からないゆっくりはいない。 子まりさの親は健在だが、残りの子供達も皆、春先に親を失っているのだから。 昨年の冬は、ゆっくりからすればすごくゆっくりした冬で過ごしやすく、人からしてみれば比較的暖かい、暖冬な年だった。この時期になればほとんどのゆっくりが雪の中に埋もれて絶命し、冷やし 饅頭となってしまうが、ゆっくりしていた今年は多くのゆっくりが生き残り、皆が皆、笑顔で雪解けを祝っていた。 そんな幸せから一変して多くのゆっくりが狩られた事で、子供達の心に大きな傷が出来ていた。 子れいむは思い出す。 大きかったお母さんの背中を。 目の前で笑顔を浮かべながら、体を大きく膨らませ、助けようとしてくれたお母さんの事を。 2人の人間に掴まれ、そのまま連れ去られていったお母さんの事を。 気づけばれいむの目から雫がこぼれ落ちていた。 「れ、れいむぅ……」 「た、たんしょぅ……」 「な、泣かないでれいむ……涙はゆっくりできないわ。……とかいは は涙もろいのよ」 周りでオロオロしながらも慰めるが、れいむが泣き止む様子はない。 次第に周りの子供達も涙を浮かべ、叫び始める。 「う、うわあああああああああんっ!」 「がまんじるぅうううううううううううっ!」 「うわああああああああああああああっ!!」 悲しい空気を打ち破ったのは、ある一言だった。 「ゆゆっ! わかったよれいむ!」 「……ゆっ?」 体を左右に振ることで涙を飛ばし、前を見ると、そこには子まりさが威嚇するように体を膨らませ、威風堂々とした様子で立っていた。 「れいむのお母さんの敵をゆっくりとるよ!」 「ゆゆっ!?」 まりさの餡子が込められているような、決意に満ちた声だった。 「ほ、ほんきなのまりさ!?」 「ほんきだよ! まりさが敵をとってみせるよ!」 「まじざぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」 今度は滝となって、れいむの瞳から涙が流れ落ちていく。 「むきゅ。でもどうやって敵をとるの? 人間さんはぜんぜんゆっくりしてないのよ?」 「そうよ! 人間はぜんぜん とかいは じゃないんだから! わたしたちもゆっくりできなくなるわ!」 心配そうな声が上がるも、まりさは自信に満ちた様子で言い切った。 「黒ゆっくりだよ!」 「……ゆ?」 「ゆゆっ?」 「まりさが黒ゆっくりになって、人間達をおどかすんだよ!」 「ゆーっ!!」 その手があったかと、全員が思わず声を上げていた。 「さすがまりさね! とかいは な作戦にありすのこころも たかなったわっ!」 「きょこん! きょこん!」 「むきゅー! あれだけつよい黒ゆっくりなら、人間も怖がって逃げていくわ!」 「ゆゆーん!」 顔を大きく上に向け、下脹れな体を大きく膨らませる。鼻が高いと言わんばかりの、実に自慢げな様子だ。 「でも黒ゆっくりは真っ黒よ? どうやって真っ黒になるのまりさ? なにかとかいは な方法があ るの?」 「……ゆ?」 伸びた鼻は一瞬でへし折られた。 子まりさは思い出す。ゆちゅりーの描いていた絵を。 全身真っ黒に塗りつぶされたゆっくり。黒ゆっくりになるなら、自慢の金髪もぷにぷにの白い肌も、大きな瞳も全て隠さないといけない。それはとても苦痛なことだけど、仲良しの子れいむの為となれば躊躇するつもりはない。 けれど、どうやって真っ黒になるのか。 対策なんてまるで浮かばなかった。 「ゆ……ゆゆーゆっ! ゆゆゆゆー!!」 「お、おちついてまりさ! あたまがどんどんふくらんでるわ! とかいは というより きのこ みたいよ!」 迷走するまりさの思考に、助け船が出される。 「むきゅっ! わたしにいい考えがあるわ!」 「ゆゆゆゆゆ……ほんとぱちゅりー!?」 「むきゅきゅっ! まかせておいて! まりさをりっぱな黒ゆっくりにしてみせるわ!」 子まりさの表情に笑顔が戻る。これでもう、問題はなくなった。 「ゆっ! みんな、ちからを合わせてゆっくりしようね!」 「ゆっくりしようね!」 まだ見ぬ敵を思い浮かべ、ここに子供達は一致団結した。 春の風は心地良い。 普段なら朝早く起きても外に出てこない男も、暖かくも爽やかなその風に誘われ、外に出て背伸びをしていた。 「う、ううーん。……ふわーあ……」 「おや、犬神さん。おはよう」 「あ、……ど、ども。おはようございます」 近所の人の声に、恥ずかしいところを見られたと慌ててあくびしていた口を閉じた。 「ずいぶん朝早いね、どうしたんだい?」 「いやぁ……なんだか目が覚めてしまって……せっかくなんで散歩でもしてこようかと」 「そうかいそうかい、健康的でなによりだよ。犬神さんには頑張ってもらわないといけないんだから、体には気をつけてね」 「ははっ、ありがとうございます」 返事の笑顔に満足したのか、近所の人はそのまま立ち去っていった。 犬神は今、この村の中でも特に期待されている若者だ。 村では当時、冬に入る前から暖かい日が続いていた為、今年はかなりの数のゆっくりが生き残るだろうと予測し、作物が荒らされる危険を恐れていた。 そこで一案を講じたのが犬神だった。 「外から人を集めましょう。冬溶けに大規模なゆっくり狩りを企画するんです!」 他の村々に比べ、早急に手を打ち、多くのハンターや虐待愛好家達を呼び込めたのが何より大きかった。 実際、近くに大きな森を要すこの付近には多種多様、多くのゆっくりが住んでおり、集まった人々の期待に応えるには充分だった。 普段なら味の淡泊さから狩られない、しかしゆっくり繁殖の一番の原因である親ゆっくり達も、集まった人の勢いもあって連日の大猟。閑古鳥の鳴いていた宿泊施設も連日満員で大儲けとなり、ゆっくり狩りは大成功を収めた。 以来、犬神の名は村中に知れ渡り、今後を大きく期待されるようになった。 話の中で出た通り、犬神はそのまま表へ出ていき、散歩とばかりに外を歩いていく。 しかし春といえど朝はまだ寒い。元来寒がりなこともあり、早くも家に帰ろうと踵を返す所だった。 「そこのお兄さん!!」 「ん?」 上から聞こえてきた声に男が振り向く。 見ると、太陽の中に三角形の影があった。 「……なんだぁ?」 謎の光景に角度を変えて確認すると。 「この世にゆっくりがたくさんいても」 「むきゅっ! みんながゆっくりしたためしはないわ!」 「だから とかいは のありすが、えれがんとな とかいは にきょういくしてあげるわ!」 「かたきをとるよ!」 「どちょう! いんもーうっ!!」 塀の上にいた4匹のゆっくりが、男を見て声を上げていた。 もしこの光景を絵好きのゆちゅりーが見ていたら、発狂して中身のクリームを吐き出すぐらいの喜びを覚えるだろう。 子ゆっくり達は塀に登る所から台詞まで、ゆちゅりーが書いた話をほぼ完璧に再現してみせたのだから。 男の身長に合わせたのか、あまり幅のない塀の上で器用に立ち、横に並んでいる。少しでも体勢を崩したらそのまま落ちそうだが、復讐に燃える子供達に躊躇はなかった。 しかしその4匹は男からすればどうでもよかった。それよりも── 「なんだありゃ?」 ゆっくり達のすぐ近くにある、ゆっくりまりさの帽子が気になっていた。 大きさからおそらく成体の帽子だが、肝心のまりさがまるで見当たらず、ただ帽子だけがそこに置かれている。 「ゆゆっ! どうやらこわくてゆっくりできないみたいだね!」 「むきゅ! いっしょうけんめい かんがえた おどしもんく がうまくいったわ!」 「まりさ! もっとおどかせてあげましょ!」 「うん! いくよみんな!!」 その言葉に、降りてくるのかなと犬神は待ちかまえる。 しかし、いくら待っても子供達は塀から降りようとしなかった。 「むきゅっ!? ど、どうしたのまりさ! はやくおりましょう!」 「ちーんぽ?」 「……ゆ、ゆゆっ! ま、前がみえないよおおおおおっ!!」 「むきゅーーっ!?」 緊急事態発生。取り乱す4匹。 しかしいくら取り乱しても、事態が変わることはない。 突然慌ただしくなった中で、犬神は先ほどから声だけ聞こえてくるまりさはどこにいるのかをようやく理解した。 あの成体用のゆっくりまりさの帽子、その中にまりさはいるらしい。大きさからして子まりさだろうと見当づける。 子まりさがなぜ成体の帽子を被っているのか? 晴れたと思った疑問は更なる形を変えて犬神の好奇心を刺激した。 「む、むきゅきゅっ! ど、どうにかならないのまりさ!?」 「ゆ、ゆゆっ! むりだよ! 真っ暗で何もわからないよ! ゆっくりできないよ!」 「と、とかいはのありすもまっくらはゆっくりできないわっ!」 「きょこんーっ!!」 「……」 取りあえず事情を聞くために、犬神は手を伸ばし、それぞれ子ゆっくり達を地面へと下ろしてやった。 「ゆっ?」 「ゆゆっ!! お兄さんありがとう!」 「むきゅ! かんしゃするわ!!」 「おもったより とかいは のお兄さんね! 仲良くしてあげてもいいわよ!」 「しゃせーい!」 それそれがお礼の言葉を述べる。 「……」 ただれいむ種だけは、無言のまま男をじっと睨みつけていた。 「で、なんなんだお前達は?」 上を向いていた姿勢から、今度はしゃがみ込むようにして、ゆっくり達に話を聞き始める。 大きな帽子から少し顔を出して、まりさもみんなと一緒に答えていく。 「ゆっ! まりさ達はふくしゅうにきたんだよ!」 「むきゅ! かたきをとるの!」 「敵かぁ……」 身に覚えがないと言えば嘘になるが、ゆっくりなんてそれこそ星の数ほど食べ、駆除して来ている。どのことを言っているのか犬神にはさっぱり分からない。 それに子ゆっくりの言うことだ。適当に言っているかもしれないと、真に受けないよう心がけた。 それより気になるのは子まりさの帽子だ。 「その帽子はなんなんだ?」 「ゆっ! これは黒ゆっくりだよ!」 「……?」 聞き覚えのない名前に首を傾げる。 「むきゅっ! 黒ゆっくりは真っ黒で、人間よりつよいの!」 「そうよ! お兄さんだってぶじじゃいられないんだから! 今なら とかいは のありすはみのがしてあげるわよ!」 「だめだよ! みのがさないよ! ちゃんとかたきはとるよ!!」 「きょこーん!」 いくつか関係ない話も飛び交う中、犬神は考える。 どうやら黒ゆっくりは、真っ黒のゆっくりで人間より強いゆっくりらしい。 「……」 必死に思い出してみるが、犬神の記憶にそんなゆっくりの話は存在しない。人より強いゆっくりとはっきり言えるのはドスぐらいで、後は捕食種の話がせいぜいだ。 危険なゆっくりほど噂になりやすい。 にも関わらず、聞いたことのないゆっくりが人より強いとは考えづらかった。 本当にそんなゆっくりがいるのだろうか? 子ゆっくりの話だけにかなり疑わしい。 「さぁお兄さん! ゆっくりかくごしてね!」 「むきゅ! もうにげられないわよ!」 「ゆっくりしんでね!!」 「……」 物騒なことを言っている子ゆっくり達だったが、犬神は気にせず、まずは話を持ちかけた。 子ゆっくり達に討たれて敵をとらせてやろうとはもちろん考えていない。今の犬神の興味は黒ゆっくりだ。 「まぁ待て。それより腹が減ってないか?」 「ゆ?」 「ゆゆっ?」 言ってすぐ、もぞもぞと全員が動き始める。どうやらちょうどお腹は減っているらしい。好都合だ。 「腹が減っては敵もとりづらいだろう。ここは1つ、腹ごしらえをしてからにしようじゃないか」 「ゆっ?」 思ってもみなかった提案に戸惑う5匹だったが、しばらくして子みょんが、我先にと犬神に飛びついていった。 「ちーんぽ!」 「ゆっ!? みょんだめだよ、ゆっくりしてね! れいむのことも……」 「だめよまりさ!! きょうせいするゆっくりはきらわれるのよ! あわてず とかいは な ふるま い でお兄さんについていきましょう!」 「むきゅっ! 黒ゆっくりのこうかね。人間もしたがうなんてすごいわ! ご本はあるかしら?」 「ゆ、ゆゆ……」 子みょんが飛びついてからは早く、まりさを除いた3匹はもうご飯を貰う気になっている。 ただれいむだけは最初の警戒を解こうとはせず、犬神から距離を取り、ずっと睨み続けていた。 「……」 どうやられいむの恨みはかなり深いらしい。 睨まれるのは気分が悪いものの、ついて来ているので気にしないことにし、犬神は元来た道を戻り始めた。 次 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2783.html
ゆっくりと勇気あるゆっくり 森の奥には、ゆっくりと言えど近づくことはない。 人間が入ってこれなくとも、更なる脅威が待ち受けていることを、ゆっくり達 は理解しているのだ――。 ・ ・ ・ 「みんな、ゆっくり理解したかな!」 「「「ゆー!」」」 ここは、森の中にあるゆっくり教室。 大人のゆっくりが、周辺の子ゆっくりを集めて、生きる術を教えるプレイスだ。 その間親ゆっくりは狩りにいそしむことが出来るため、この一帯に生きるゆっく り達は、他よりも比較的にゆっくり出来ていたのだ。ゆっくり教室を立ち上げた のは、一人のゆっくりれいむであった。回復の早いゆっくりであるに関わらず、 頬や頭に穿たれた古傷は癒えることはなく、子ゆっくり達に威圧感と、それに勝 る信頼感を与えていた。 数年前に行われた、ゆっくりプレイス調査。森の中で、さらにゆっくり出来る プレイスを探し出す、主に子ゆっくり達が大人に隠れて行った大探検だ。探索は 複数回に渡り行われ、その都度新しいゆっくりプレイスを見つけることが出来た。 その歩みを森の奥へと進めるまでは。 彼女はその「生き残り」であった。子供たちが尋ねても、森で何があったのか を詳しくは語らない。だが、森の奥にだけは行かないように、周りのゆっくり達 に話して聞かせるのであった。 「いいかい、草と草がこう絡まっていたら――」 「少し地面の色が違う場所、一部だけ草に覆われたがあったら――」 「敵を攻撃するには必ず集団で、連携をして攻撃――」 「複数の敵に襲われた時に姉妹が怪我をしたら、すぐ逃げるんだよ、それはおび き寄せるために殺していないのだから――」 などと、講義の内容は自然を生き抜くだけでなく、罠の見分け方、殺戮下にお ける生存方法などが主眼となされていた。そのため、大人達は彼女のことを、 「きっと狡賢い人間に酷い目に遭わされたのだろう」と考えていた。また、この 教育を受けた子供たちは、人間の罠に掛かることも、逃げ帰ることも多かったため、 教室が潰されることはなかった。 「あう゛っ! い、いだいよー!」 殺傷能力の少ない罠に掛かった子れいむが、涙ながらに彼女の元へ寄ってくる。 「どれどれ……ああ、これならすぐゆっくり治るよ」 「ほんとう?」 「ゆっくりしていなさいね」 子れいむの傷口に口をあて、モゴモゴと舐める仕草をする教師れいむ。彼女に は不思議な力があり、簡単な怪我であれば治すことが出来た。特殊能力と言うわ けではない。口内の傷口から餡子を出せるようになってしまっただけだ。重傷の ゆっくりを直すには自分の餡子に限りがあるが、軽傷であれば負担にもならない。 多少重い傷のゆっくりに、自分の頬を食べさせたこともあった。 「う゛ー、う゛ー、……う? 痛くない! ゆっくり治ったー!」 「「「せんせいすごおおおおおい!」」」 彼女は騒ぎ立てる子ゆっくり達をまとめながら、新たな罠について説明をする のであった。 「ゆっくり帰ってきたよ!」 一日も終わり、住処へと帰る教師れいむ。 「ゆっくりお疲れさま!」 「「ゆっくりしていってね!」」 つがいのゆっくりまりさが優しく出迎える。教師れいむはこのつがいのことを、 誰よりも深く愛していた。共に野原を駆け回った幼馴染。そして自分のせいで怖 い思いをさせた「生き残り」の一人。彼女はゆっくりまりさの愛らしい顔に刻ま れた、幾筋かの古傷を見るたびに、あの出来事を、考えの至らなかった自分の態 度を、深く憎むのであった。 「学校はゆっくり出来るの、れいむ?」 そんな自分の思いを見透かしたかのように、まっすぐ自分を見つめて話を振る つがいに、照れたように視線をそらすゆっくりれいむ。 「もうすぐみんな、卒業だね。これで皆ゆっくりできるよ!」 自分が教えることはもうあまり残っていない。後は自分達で考え、生き残る努 力をするだけだった。それに秋も深まっており、そろそろ餌集めの手伝いをしな ければいけない時期に差し掛かっていた。そこまで考えた彼女は、自分を見つめ る熱を帯びた視線に気が付いた。 「ま、まりさ……っ」 「れいむっ! わ、私の子をゆっくり生んでねっ! みんなを守れるくらい、勇 気に満ちた、可愛らしいまりさ達の赤ちゃん産んでねっ!!」 当たり前だよ、と、れいむは微笑んだ。だって、自分とまりさの子供なのだから。 優しく口付けをするつがいに、そう心で呟いた。 ・ ・ ・ 襲撃があった。 これから生まれる赤ゆっくりに思いを馳せて、次第に育つ枝ぶりを愛おしく眺 めていた、そんな時に限ってだ。 襲撃者は群れはぐれゆっくりだそうだ。飾りを失い、生き延びて、なお生き残る ために群れ、ゆっくりを襲うはぐれゆっくりだ。襲ったゆっくりから飾りを得る のではなく、命を奪い去るのであるから性質が悪い。飾りを奪い取ったとたん、 他のはぐれから裏切りの烙印を押されるのであるから、彼女らにすればそれは当 然なのだろうが。 きゅ、と唇をかみ締める。「生き残り」であるからには、例えゆっくりだとし ても忘れることの出来ない思い出があるのだ。教師れいむは、つがいのまりさと 共に住処を飛び出した。 ・ ・ ・ 「生き残り」の教育とその場の指示が的確であったためか、騒ぎは次第に沈静 化していった。死傷者は少なからずいたが、被害はそれほど多くは無かったのだ。 生存者を探し、残党を狩りつつ、ゆっくり教室を開いている広場にたどり着い た彼女達が見たものは、複数のはぐれゆっくりと、襲われ嬲られている教師れい むの教え子達であった。 「いっくぞー、ほーれ♪」 「ぎゃはははは! ゆっくりしね~♪」 「ゆ゛っぐぢいいいい」 「きゃっちぼーるはゆっくりできるなあ~♪」 ただ投げあうのではなく、皮を毟るように子ゆっくりをほおり投げるキャッチ ボールなど、存在していいはずがない。 「ほーら、まりさの体はゆっくりしてて美味しいだろ~?」 「あがががが! あがっががが!」 小さい口に無理やり大人の体をねじ込んで、顎を引き裂く真似など許せるはず がない! 「ほーれ、ぷっすぷっす♪」 「いだあああ! ゆっぐぢおうじがえどううううう!」 体を貫く細い枝は迫害された時に埋め込まれたのだろうか、悪意を憎悪として 他者に向けるなど、してはならないのだ!! 教師れいむはその鬼畜どもに体当たりを食らわせた。 「ゆっくりとしんでね!! ゆっくりとしんでいってね!!」 憎い憎い飾り付きをいたぶっていたお楽しみを邪魔されたはぐれゆっくり達は、 いきりたちその牙を彼女へと向けた。注意をこちらに引き付けたところで、死角 に回り込んだつがいまりさが攻撃を仕掛ける。一撃必殺とまでは行かないが、目 の部分に体当たりをすることで大幅に戦闘力を削ぐことは出来る。 一撃ごとに姿をくらまし、教師れいむが挑発し、また一撃を加えるという作戦 は、極めて効果的であった。問題は、駆逐に時間を要したことだ。 「ぜんでぇ……たずげ……」 「ひぃ……ゆっぐりじだ……」 「おがあじゃ……」 最後の一匹を屠るまで、生命力の乏しい子ゆっくりたちは着実に命を散らし始 めていたのだ。教師れいむが子ゆっくり達を助けるために番いの傍を離れた、そ の刹那。息を潜め、死んだふりをしていたはぐれゆっくりが、猛然とつがいまり さに襲い掛かった。 不意を付かれたつがいまりさに為す術はなく、教師れいむが助けに入るその数 瞬きの間に皮膚を割かれ、餡子をすすられてしまった。 ――致命傷。だが、自分の餡子を全て吹き込めば、つがいまりさは息を吹き返 すだろう。だがそれを押し止めたのは、他ならぬつがいまりさであった。 「どーじで! までぃさ死んじゃうよ!?」 「まりざより……あのご達を……お願いじばず」 「でも、でも……!」 「まりざをだすけだら、あのご達は……」 つがいのまりさは助けられるだろう。だが、つがいまりさを助けてしまったら、 今助けを求めている子ゆっくり達は、一体誰がその命を助けると言うのであろう か。教師れいむには、番いの言いたいことは痛いほどよくわかった。 「でもっ!」 「まりざばっ!!」 引きつったように笑みを浮かべて、送り出すように告げるつがいまりさ。 「か弱いゆっぐりを助ける、そんな優しいでいぶが、だいずきでず……っ!!」 「……!! ――ごめん! ごめんでばでぃざ! だずげらでなぐで、ごべんで えええ!」 一生をかけて愛した番いの最後に背を向けて、己の勤めを果たそうとする彼女 に向けられた一言は、彼女の勇気を奮い立たせるに足りるものであった。 ――ありがとう、ゆっくりと愛してくれて―― 「産むからで! でいぶだじのがばいいあがじゃんを、とてもいざまじいあがじ ゃんを! か弱いゆっぐでぃをだずげる、ゆっぐりなあがじゃんを産むがだで! だから、――ゆっぐりじでいっでで!!!!」 返事は聞こえなかったが、彼女の胸の中では、最愛のまりさがゆっくりと微笑み を浮かべていた。 ・ ・ ・ 生き残ったゆっくり達を迎えたのは、惨状であった。教室のあった場所に累々と 積もるはぐれゆっくり達の屍骸。痛ましく寄り添う教師れいむとその番いの屍骸。 そして教師れいむから猛々しく伸びる新たな命と、怪我も癒えた子ゆっくり達の姿 であった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 敵が居ないこと、自分達の子ゆっくりが無事なことを喜び、集落の勇者達が命を 落としたことに絶望し、その勇者達が新しい希望を紡いでいたことを、複雑な心境 ではあるが、喜んだ。 頬の傷を癒してもらおうと教師ゆっくりを探していたゆっくり達は、彼女がも う居ないことを嘆いた。 「先生の顔を食べると、傷が治って、とてもゆっくり出来たんだよ!」 「ゆっ、本当だよ! 他にも直してもらったれいむもたくさんいるよ! 昨日も!」 「先生は食べた時もぜんぜんゆっくりだったよ! だから直してもらいたかったの に……」 なるほどと大人のゆっくり達は思いを馳せる。確かに、幾度か怪我を直してもら った覚えもあった。ある者が呟く。 この赤ちゃん、先生の子供だよね! じゃあきっと、……。 ・ ・ ・ 煌き始める地平線に、輝く未来に向かって伸ばされた枝は、ゆっくりを守り抜き、 ゆっくりと生きるはずの、勇ましく生きるはずのその命は、ただの一度も朝日を拝 むことはなかった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3928.html
『庭のゆっくり』 19KB いじめ 小ネタ 子ゆ 虐待人間 いつもの小ネタです。ちょっと長めです。 私がガラス戸を開けて庭に出ると、一匹のゆっくりが慌てて挨拶をする。 「おはよーございばず、おねーざん!きょうもいぢにぢ、ゆっくりじでいっでぐだざい!」 ガラガラに枯れた声で総挨拶したのは、引きつった笑顔を浮かべたまりさ種のゆっくり。 全身薄汚れていて飼いゆっくりとしてはあまり衛生的ではないが、これでも元金バッジのゆっくりらしい。 私はまりさの目の前に置かれた皿に、乾燥タイプのゆっくりフードを入れてやった。 「ゆぅぅ…これっぼっぢじゃ、だりないんだぜ…」 私に聞えないように小さな声で呟いたつもりらしいが、ガラガラ声なので良く聞える。 まあ、ゆっくりの声は元から大きいので、小声で呟くのはむずかしいのだが。 普段は特に文句も言わないまりさなのだが、今日に限って少し反抗的な態度をとる。 理由は大体解っているが。 「嫌ならいいのよ?すぐ片付けるから」 私はそう言うと、餌の入った皿を持ち上げる。 「ゆぐぅ…まっで、まっでぐだざい!もんぐをいいまぜんがら!だから、ごはんざんをくだざい!おねがいじばず!!」 「餌が欲しければ、ちゃんと頭を下げて御願いしろって言ってるでしょ?覚えなれないなら…」 「ゆぅ!わがっだんだぜ!おねがいじばず!ごべんなざい!もう、もんぐをいいまぜんがらぁぁぁぁ!!」 地面に額を擦り付けて、私に謝るまりさ。 その様子を、庭の隅に置かれた木箱から眺める一匹の子まりさ。 両目をまん丸に見開いて、驚いているようだ。 この二匹は親子で、おそらくこの親まりさは我が子が見ていた為、ワザと強がって見せたに違いない。 だが、だからと言って私に対して文句を言うのは許される事ではない。 「まりさ、久しぶりに『ゴルフ』しようか?」 「ゆへ?………ゆわぁぁ…ぁ…ぁぁ………」 私の言葉を聞いて、慌てて顔を上げる親まりさ。 その顔はたちまち青ざめ、冷や汗をかいてガタガタと震え出す。 「ご、ごめんなざいぃぃぃ!ゆるじでくだざいぃぃぃ!までぃざがわるがっだでずぅぅぅ!ごるぶざんは、ぎらいなんでずぅぅぅ!!」 「あら?だからやるんじゃない。これは躾なのよ?ちゃんと貴方が自分の立場を理解してないのが悪いんでしょ?」 「ぞ、ぞんなぁぁぁぁ?!までぃざ、いっばいあやばっだのにぃぃぃ!ごんなのっでひどずぎるよぉぉぉぉぉ!!」 まるで子ゆっくりの様にポロポロと涙を流して、駄々をこねるかのようにその場で飛び跳ねる親まりさ。 私はそんな親まりさの必死の訴えを無視して、壁に立てかけてあるゴルフクラブを手に取る。 これは私の父が使っていたお古のクラブで、アイアンとか言うらしいが特に興味はない。 何かに使えそうだったから貰ってきたのだが、こんな形で役に立つとは思わなかった。 「ほら、何時もやっている通りにしなさい。解っているでしょ?いやなら、別に顔面でも良いのよ?」 「ゆっひぃ!…ゆぅ…ぅぅぅ…ひっぐ…ゆぐっ………」 私に言われて、慌てて尻を突き出すような姿勢をとる親まりさ。 両目を硬く閉じ、ブルブルと身を震わせて怯えている。 私はその汚い尻を、ゴルフクラブでフルスイングした。 バシッ! 「ゆぎゃぶ!」 鋭い音と共に呻き声を上げて、2mほど吹っ飛ぶ親まりさ。 両目を飛び出さんばかりに見開いて涙を流し、底部から押し上げられた餡子を吐かない様に必死に食いしばる。 私はそんな親まりさをすぐ追いかけ、さらにスイングする。 ビシッ! 「ゆぶもっ?!」 苦痛に顔を歪めて再び吹っ飛ぶ親まりさ。 知りは真っ赤に腫れ上がり、あにゃるからは少しうんうんが漏れ出す。 こんな風に私が親まりさをボールに見立てて、こいつの家である木箱まで運んでいく。 これが親まりさの恐れる『ゴルフ』である。 あえて殺す気で全力で尻を吹っ飛ばす事で、より強い悪意と恐怖をゆっくりに与え人間の恐ろしさを教えてやる。 死んでしまうのではないかと思う人もいるだろうが、尻だけ狙っているのでそれほどゆっくりに対してはダメージが無い。 たまに皮が破れてしまう事もあるが、成体のゆっくりなら放っておいても3~4日で治る怪我だ。 野良ゆっくりなら致命的だろうが、こいつは私の家の庭に住んでいる。 まあこんな事までしないと自分の立場を理解せず、人間に服従しないのは哀れな種かもしれない。 「ゆがびゃ!」 木箱の前まで運ばれた親まりさ。 帽子がずり落ちたと思ったら、すでに白目を剥いて気絶しているようだ。 尻全体が歪に変形して真っ赤に腫れ上がり、あにゃるの周囲にはうんうんが飛び散っている。 口からは少量の餡を吐き出し、何度もしーしーを漏らしたので全体的に湿っている。 「お…おとーしゃ…しっかりしゅるのじぇ!!ゆぅ?…なにこりぇ…」 木箱の中から、子まりさが這い出てくる。 どうやら親まりさの頭を見て驚いているようだ。 親まりさの頭には、2つほど円形のハゲがある。 これは私が髪の毛を毟り取ったからではなく、ストレスでハゲたものだ。 円形ハゲ饅頭症という病気で、過度のストレスを溜め込んだゆっくりがかかる病気だ。 主に成体のゆっくりがかかるもので、野良だけでなくペットのゆっくりもかかる事がある。 自分がハゲている事を知ると、それが更なるストレスになってハゲも広くなったり増えたりするという厄介な代物。 最終的には完全なハゲ饅頭になる事もあるそうだ。 まりさ種のように帽子でハゲを隠せる種族は良い方だが、れいむ種やありす種などがこの病気にかかると目も当てられない。 どうせこの子まりさは、自分の親が最高にかっこ良くてゆっくりしているとでも思っていたのだろう。 飾りや身体の欠陥を必要以上に嫌うゆっくり。 それはたとえ家族であっても、許される物ではない。 今この子まりさは、情けない親の姿を見て何を思うのだろうか。 私はそんな二匹を放置して、仕事に出かける支度をする。 このまりさ親子を飼い始めたのは、今から一ヶ月ほど前の事である。 元々は親まりさと番のれいむが、私の庭にやってきておうち宣言をしたのだ。 私は二匹を捕まえて、ボコボコになるまでゴルフクラブで殴っていると、れいむが泣く泣く私の家にやって来た理由を話し始めた。 「でいぶはどっでも、かばいぞうなゆっくじなんでずぅぅぅ!だがら、ゆっくりできるどおもっで、ごごにきだんでずぅぅぅ!!」 要点がなかなか伝わってこない会話ではあったが、要は捨てられて妊娠したので新しい家と食料を確保したかったらしい。 二匹は必死に頭を下げて命乞いをするが、もとより私はこいつ等を潰して捨てる予定だった。 こいつ等の戯言を聞いてみたのも本の気まぐれだった。 「ま、まっでぐだざいぃぃぃなんだぜぇぇ!!でいぶのおながには、とうとういのちがあるんでずぅぅ!みのがじでくだざいぃぃぃ!!」 「おねがいじばずぅぅぅ!でいぶいおちびちゃんのがおをみるまで、でいぶはじにだぐないんでずぅぅぅぅ!!」 「だから何?言いたい事はそれだけ?じゃあ、もう潰すね」 「ゆっひぃ!まっで!まっでくだざいぃぃ!でいぶはじんでもいいですがら、までぃざとおちびちゃんは、みのがじでくだざいぃぃぃ!!」 「で、でいぶぅぅぅぅ?!なにいってるんでずかぁぁぁ?だぜぇぇ!!」 私が微笑みながら、親れいむを潰そうと足を上げた途端、親れいむが狂ったように揉み上げを振り回して悲願する。 親まりさも両目をまん丸に見開いて固まり、動揺しすぎたせいで口調もおかしくなっていた。 「どう言う事?あんたを潰す代わりに、腹の中の子供とそのゴミゆっくりを見逃せって事?あんたが潰れるのに子供が無事な訳ないでしょ?」 「ゆぅぅぅぅぅ?!だ、だから、それまで、でいぶたちにごはんざんをくだざいぃぃぃ!なんでもたべばずぅぅ!もんぐをいいまぜんがらぁぁぁ!!」 これから潰されると言うのに、どうしてそんな要求が通ると思っているのか解らないが、何やら必死に額を地面にこすりつける親れいむ。 ここで潰すのは簡単な話だが、私も少しこいつ等に興味が出てきた。 しばらくこいつ等を庭に置いておく事で、様子を見てやろうと思い始めた。 「うーん…いいわよ。ただし、私の言うことには絶対服従ね。それが出来ない時はこうなるわよ」 バシッ!! 「ゆっごぉぉぉぉぉぉ?!」 私はワザと考え込むような仕草をしてから、親れいむの要求を飲む事にした。 その代わり私に逆らったらどうなるかを、親まりさの尻をゴルフクラブでスイングして見せた。 これが「ゴルフ」の始まりでもある。 親まりさは勢い良く吹っ飛ぶと、顔を地面に突き刺したかのように着地して気絶した。 「ゆっひぃぃ!あ、ありがどーございまず!れいぶ、なんでもいうことをききまず!!よろじぐおねがいじばず!!」 そんな親まりさを見た親れいむは、ガタガタと震えながらしーしーを漏らして私にお礼を言った。 「うっ、うばれるぅぅぅぅ!おちびちゃんが、ねんがんの、でいぶのおちびちゃんがうばれるよぉぉぉぉ!!」 「で、でいぶぅぅぅ!じっがりずるんだぜぇぇぇぇ!!」 それから数日後の事だった。 まるで悪魔の産声のような汚い声が、庭から聞えてきた。 急いで様子を見に行くと、眉間にしわを寄せた親れいむが全身汗まみれで苦しんでいた。 その目の前には、帽子を構えた親まりさ。 次第に親れいむの口の下辺りから、別の何かが姿を現し始める。 「うばれるぅぅぅ!うばれるぅぅぅぅ!じゅっざん!じゅっざんだよぉぉぉ!ぜいめいのきぜきが!かんどうのじゅんがんが!ゆっぎぃぃぃ!!」 ぽーん! 歯を食いしばり白目を剥いた親れいむから、勢い良く何かが飛び出す。 だがそれは親まりさの帽子に届く前に落下すると、そのまま弾けて中身を流出させる。 「ゆっ!ゆぅぅぅぅ?!なにごれぇぇぇ?!どーじで、おちびちゃんがしんでるんだぜぇぇぇぇ?!」 飛び出してきたそれは既に真っ黒く変色しており、顔のパーツもはっきりと判別出来ないような物だった。 親まりさはその異形な物体に驚きながらも、一応我が子と認識したようで、黒い塊を眺めながら涙をこぼす。 「ゆひ…ゆひ…ゆひ…ゆひ…ゆっぎぃぃぃ!まだだ!まだうばれるぅぅぅぅぅぅ?!」 そんな事とは知らない親れいむは、体全体を震わせながら荒い呼吸をする。 そして再び産気づき、聞くに堪えない醜い悲鳴を上げる。 「ゆぎぃぎぃ!がががぃぃぃ!でんじが!でんじがうばれるよぉぉぉ!ゆっぎぃぃぃぃぃ!!」 ズビュボボボッ! 汚らしい音を立てて出て来たのは水っぽい餡子。 それにまざって目玉や歯のようなものが、ドロドロと親れいむの体から流れ出る。 「ゆっひぃ!どーなってるんだぜぇぇ?!どーしでおちびちゃんが、ちゃんとうまれてこないんだぜぇぇぇ?!」 「ゆっひ…ゆっひ…どーしたの…おちびちゃんは、ちゃんと…ゆっぎぃぃぃ?!なにごれぇぇぇ?!どーじでごんなものがぁぁぁ?!」 親まりさが真っ青な顔で、変死した赤ゆっくりの残骸を見て騒ぐ。 その様子に気が付いた親れいむも、何事かと思い我がこの残骸に目をやるが、あまりの惨状に狂ったように揉み上げを動かして泣き叫ぶ。 まあこれは当然の結果だろう。 私がこいつ等の面倒を見始めて以来、毎日のように躾の為に「ゴルフ」をしなければならなかったのだ。 始めは殴ったり、踏みつけてみたりもしたが、下手に圧力をかけるとこいつ等はすぐに餡子を吐く。 吐かれると後の処理が面倒なので、餡子をあまり吐かない「ゴルフ」ばかりしていたのだ。 底部をゴルフクラブで殴られて、体内の子供が無事で居るはずがない。 その結果、赤ゆっくりは親れいむの体内で成長途中で死に、こういった形で出産になったのだろう。 「ゆぼぉぉぉぉい!どぼじでぇぇぇ!!おちびをぐぞにんげんにみぜれば!あまりのがわいざに、でいぶたちをがってくれるけいがくだったのにぃぃぃ!!」 ショックのあまり親れいむは、自らの無計画な企みを思わず大声で叫ぶ。 だが私の姿が見えない所で、その計画を大声で番に話していたのを私はちゃんと聞いている。 そうとも知らずに、完璧だと思っていた計画が崩れてゆんゆんと泣き叫ぶ二匹。 「ゆごぶぅ?!ゆぐぐぎぎぃぃぃ!おちびちゃんがうばれる!でいぶのざいごのきぼうがぁぁぁぁ!きぼうのひがりがぁぁぁぁ!!」 何と親れいむが三度産気づく。 ミチミチ音を立てて親れいむの体がきしむと、両目をキラキラと輝かせた小さなゆっくりが顔を出した。 「かわいーまりちゃが、かんどーのいっぽをふみだしゅよ!しぇかいが、まりちゃのたんじょーをまっちぇるよ!!」 小さなゆっくりは何かをブツブツと喋ると、得意そうに眉毛を吊り上げる。 そしてその時は訪れる。 「うばれろぉぉぉ!でいぶのきぼうのひがりぃぃぃ!これででいぶは、がいゆっくりにかえりざきだよぉぉぉぉ!!」 ぽーん! 「かわいーまりちゃの、しゅてきなでびゅーだよぉぉぉぉぉ!!」 ポスッ! 下らない事を叫びながら発射される小さなゆっくり。 放物線を描いて、親まりさの構えていた帽子の中に着地してその身を振るわせる。 「かわいーまりちゃが、さいしょのあいしゃつをしゅるよ!ゆっくちしていっちぇね!!」 『ゆっくりして グチャ! ってね!』 帽子から這い出てきた赤まりさが、親まりさの顔を見上げて涙目ながらに挨拶をする。 それに答えるように、親まりさと親れいむも挨拶を返す。 そして親まりさの笑顔が一瞬で引きつる。 私が挨拶してる途中の親れいむを、そのまま踏み潰したのを見てしまったからだ。 「約束どおり、こいつの変わりにあんた達を生かしてあげるわ。感謝しなさい、このゴミにね」 「ゆゆぅ?どーしちゃの、おとーしゃ?まりちゃのたんじょーを、おいわいしちぇね!」 そうとは知らない赤まりさは、無邪気に親まりさに笑いかける。 親まりさは一瞬の出来事を理解し切れなかったのか、しばらく固まって動けないで居た。 それから親まりさは私から餌をもらい、それを赤まりさに狩りでとってきただのと嘘をついて子育てをしていた。 私が家にいる間はなるべく庭に出さないようにして、強い自分を子供に見せていたようだ。 時々それが行き過ぎて私に対しても強気に出てしまい、尻を腫らせては巣に帰る。 そして名誉の負傷と子供に偽り暮らしてきた親まりさ。 だが、その偽りの姿も今日で終わり。 惨めで情けない姿を我が子に見られてしまったのだ。 「ゆぅぅ…おとーしゃ…どーしちぇ…なんなのじぇ?あのにんげんは…?ゆぅぅぅ…!ゆるしぇないのじぇ!!」 ぐったりと横たわる親まりさの尻をぺろぺろと舐めながら、子まりさが呟く。 親から教わっているわずかな情報を元に、今日の出来事を自分達に都合の良いように解釈する。 そしてあの人間が悪者で、許して置けないと言う結論に至る。 結論が出てからの子まりさの行動は早い。 庭に出て手ごろな枯枝を見つけると、満足そうに眉毛を釣り上げてそれを加える。 気分は伝説の剣を手に入れた英雄とでも言ったところか。 そして子まりさは我が親の敵を討つべく、宿敵をじっと待った。 「ゆっびゃぁぁぁぁん!はなしぇ!はなしぇぇぇぇ!まりちゃはつよいのじぇぇぇ!はなしゃないと、いたいめみるのじぇぇぇぇ!!」 私が家に帰ってくると、それを待ち構えていたかのように子まりさが枝を咥えて飛び出してきた。 そして咥えた枝で、私の靴を何度も何度も突いてきたのだ。 どうやら今朝の事で、親の仇を取ろうと思ったらしい。 私は子まりさを摘み上げて枝を取り上げ、そのまま庭に向かった。 するとそこには、すでに異常に気が付いていた親まりさが、私を怯える様な目で見上げていた。 「お、おぢびちゃん?!どぼじで…?」 「あら、お覚め?ちょうど良いわ。今からこいつに、躾をするところなのよ」 そう言うと私は、ブリブリと尻を振って必死に私の手から逃れようとする子まりさを、親まりさに見せてやる。 「ゆゆぅ?!おとーしゃ!みててにぇ!まりちゃ、このわるーいくしょにんげんを、いまからやっつけてやるのじぇ!!」 親まりさの顔を見た途端、子まりさが自信たっぷりに眉毛を釣り上げて得意そうにニヤつく。 この状況でどうしてそんな事が言えるのか解らないが、こいつらの無駄な自信は底なしなのだろう。 私はそんな得意げな子まりさの腹に、思いっきりでこピンをお見舞いする。 バシッ! 「ゆごっぷ?!げぼっ!がほっ!いっちゃぁぁぁぁい!ゆびゃぁぁぁぁん!おちょーしゃぁぁぁぁ!ゆんやぁぁぁぁぁ!」 私の一撃が余程堪えたのか、子まりさは情けない顔でポロポロと涙を流し親まりさに助けを求める。 親まりさは一瞬体を強張らせて固まるが、やはり我が子が可愛いのか私の目の前までノソノソと這いずり頭を下げる。 「もうやべでくだざいぃぃぃ!おねがいじばずぅぅ!おちびちゃんは、なにもわるいごどはじでばぜん!わるいのはばりざでずがらぁぁぁぁ!!」 ガラガラ声を張り上げて、親まりさが必死に私に許しを請う。 子まりさもそんな親まりさの姿を見て、ポロポロと涙を零す。 「なにいっちぇるのじぇー!まりちゃも、おとーしゃんも、なんにもわるくないのじぇー!わるいのはみーんな、このくしょにんげんなのじぇー!!」 子まりさが体をグネグネと動かして、お下げで私の手を叩く。 私はそれが少々鬱陶しかったので、子まりさのお下げを掴んで宙吊りにすると、再び腹にでこピンをお見舞いする。 「ゆぐっぶ?!ゆぐえぇぇぇっぇ!ばびゃ!げぼっ!ゆひっ!いちゃいぃぃ!もうやめちぇよぉぉぉ!」 腹にでこピンを喰らう度に、大きく身を震わせてむせる子まりさ。 それでも何とか逃げようと、宙吊りのまま体をグネグネとよじる。 「ゆっがぁぁぁぁ?!やべろっでいってるんだぜぇぇぇ!!もうゆるざないんだぜぇぇぇ!!せいざいじでやるぅぅぅぅ!!」 苦しそうに顔をしかめて餡を吐く子まりさを見て逆上したのか、親まりさが私の足に体当たりをし始める。 だが傷ついた体でのそれは、じゃれているのか寄り掛かっているのか分からない程気の抜けたものだった。 私はそんな親まりさを放っておくと、子まりさの背の部分を洗濯ハンガーについている洗濯バサミで止めた。 「ゆんびゃぁぁぁぁ!いっちゃいぃぃぃ!おしょらをとんでるけど、いちゃいのじぇぇぇぇぇ!!」 喜んでいるのか悲しんでいるのか分からない顔でゆんゆんと泣く子まりさ。 私はそんな子まりさと足元で騒いでいる親まりさを放って、家に入ると30センチの定規を持って再び庭に現れた。 バシッ! 「ゆびゃび!いだいぃぃぃ!どぼじでぇぇぇぇ?!までぃざのはがぁぁぁぁ!ゆぎぃぃぃぃぃぃぃ!」 とりあえず威力を見るため親まりさの頬を定規で殴ってみた。 どうやら当たり所が悪かったらしく、歯が欠けた情けない顔でポロポロと泣き始める親まりさ。 予想より割りと威力があるようだ。 私は子まりさの口を洗濯バサミで閉じると、今度は子まりさの尻を定規で叩いた。 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ! バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ! 「ぶびゅ!ぶもぶ?!ぶぶぅぅぅ!ぶびぃぃぃ!ぶぅぅぅぅ!!」 子まりさは叩かれる度に両目を見開き、その内しーしーも漏らし始める。 尻は親まりさ同様に真っ赤に腫れ上がり、少し歪に変形している。 「やめでくだざいぃぃぃ!あやばりまずがらぁぁぁぁ!ばりざがあやばりまずがらぁぁぁぁ!!」 「何言ってるの?あんたがこのゴミくずに、ちゃんと躾しないから悪いんでしょ?だから私が代わりにしてあげてるのよ?」 「ごれがら、ごれがらちゃんとおしえばずがらぁぁぁ!だがら、もうやべでくだざいぃぃぃぃ!!」 「あんたの躾の悪さは私の責任よ。だから私が責任持ってこのゴミを躾けるわ。安心しなさい、一応殺さないように加減するから。そういう約束だったでしょ?」 私は親まりさにそう言い聞かせると、子まりさの尻を何度も定規で叩いた。 子まりさは度々気絶したようだが、すぐに痛みで目を覚まし、そして気絶するを繰り返す。 そんな事を数回繰り返していると、子まりさの目の輝きがどんどん鈍くなってきた。 私は子まりさにオレンジジュースを少し垂らすと、再び子まりさの尻を叩き続けた。 「ゆび…ぎ…ぎ…ゆっ…ち…くち…ゆ…く…ち…びび……びび…」 「ふーむ…少しやりすぎたかな?」 子まりさ尻が3倍ほどに腫れ上がってから、私はようやく叩くのを止めて子まりさの口の洗濯バサミを外した。 子まりさの尻はまるで熟しすぎた柿のように赤黒くなり、自重でだらなく垂れ下がっている。 両目も虚ろで、先ほどから小声で何かをブツブツと飛ぶやいている。 私は背中の洗濯バサミも外すと、とりあえず親まりさの目の前に子まりさを放り投げた。 「ゆっびぃぃぃ!おぢびぢゃん!じっがりずるんだぜぇぇ!ゆっくりずるんだぜぇぇぇぇ!!」 親まりさは慌てて子まりさのそばまで這いずって行くと、一心不乱に子まりさの尻を舐め始める。 尻を舐められる度に子まりさは、体を大きく痙攣させて悲鳴を上げる。 親まりさはその様子に気がつく事もなく、傷ついた我が子を癒そうと必死だった。 私はそんな親まりさを足で転がすと、通販で買った「ゆっくり撃退スプレー」を吹きかけた。 「ゆゆぅ?!なにするんだ 『シュー』 ゆぶぶ?!…ゆっぎゃべぇぇぇぇ?!ごばっ!げばっ?!いだだだぁぁぁ?!ゆぎぃ!ねぎぃ!がぎぃ!」 涙目で私を睨んだ親まりさだったが、スプレーを吹きかけた途端、両目を血走らせてゴロゴロと周りを転がり始める。 狂ったように飛び跳ねたり、突然舌を出して苦しがったりと大忙しの親まりさ。 すでに子まりさの事は目に入らなくなったようで、転がりながら子まりさを吹っ飛ばした。 私が使ったこのスプレーは、野良や野生のゆっくりに絡まれた時用のもので、人体には無害。 ゆっくりも6時間ほど苦しがるが、ゆっくりを殺傷する目的で作られた物ではないらしい。 あのドスまりさも簡単に撃退出来るという優れ物だ。 とは言うものの、親まりさの様子を見るとこのまま死ぬのではないかと思うほどの暴れっぷり。 帽子もすでに頭から落ち、ハゲ散らかった頭を隠す事も忘れて汚い悲鳴を上げてのたうち回る。 あまりにも五月蝿いので、友人からもらった防音タイプの透明の箱に親まりさを閉じ込めて蓋をし、もう一度スプレーを吹きかけてみた。 「びゃぼぉぉ?ユベガゴボぉぉぉぉぉぉォォォ!ガビャ!ゆヴぁげのがにオガオダオジオジャジャァァッぁ」 親まりさは全身から変な汁を滲ませ、ゆっくりとは思えないほど体をくねらせてもがき苦しむ。 私は弱っている子まりさを、親まりさの箱が見える位置まで持っていき庭を後にした。 それから庭のゆっくり親子はすっかり大人しくなった。 一度子まりさが何やら不満を子声で漏らした事もあったが、親まりさ同様にスプレーを吹きかけてやった。 子まりさは親同様に両目を飛び出さんばかりに見開いて、狂ったようにのたうち回っていた。 親まりさが必死に宥めようとしたがどうにも出来ず、結局子まりさは苦しみのあまり、自らお下げを食いちぎってしまった。 そして落ち着いた後は子まりさ用お仕置きの、「お空をとんでる」だ。 まあ洗濯ハンガーに吊るして尻を叩くだけの簡単な物なのだが、未だにその傷が癒えないらしく子まりさの尻は醜く腫れ上がっている。 子まりさはそれ以来すっかり自信を無くしたようで、時々悲しそうな顔で空を見上げては涙を浮かべている。 親まりさのハゲも以前より進行し、今は頭に出来た巨大なミステリーサークルを帽子で必死に隠している。 何度か逃げ出そうともしたようだが、度重なる躾のせいで傷ついた体ではろくに動く事も出来ず、大人しく庭で暮らしてる。 私は余ったスプレーが勿体無いと思い、週に1度くらいの割合で野良ゆっくりを捕まえては箱に閉じ込め、スプレーを吹き付けてその様子をまりさ親子と一緒に眺める。 まりさ親子は野良の暴れっぷりを見て、顔を引きつらせてしーしーを漏らし怯える。 野良は落ち着いてからその辺に捨ててくるが、このおかげで恐怖がフラッシュバックするのか、私に対して絶対服従になった。 一応こんな調子でこいつらが死ぬまで庭に置いてやるつもりだ。 こいつらが死んだら、何か新しいゆっくりを庭で面倒見るのも良いかもしれない。 完 徒然あき 挿絵: 挿絵:
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/827.html
※スレの絵とコメントを見て書いてみた 『新ゆっくり製品販売!あらゆる家具がゆっくりに!?』 そんな広告を見た俺は、どんなものか気になったので見に行くことにした。 加工場が経営している販売所へ向かう。あまりに早く着いたおかげで、まだ開店準備の真っ最中だ。 たまたま店の準備をしていた店員に出会うと、少し早めに見物させてもらえると言う。 そんなわけで中に入ってみた。 が、中にあったのは箪笥やちゃぶ台、本棚といった家具。 ……さて、これのどこがゆっくり製品なんだろう? とか思っていた時だった。 「ゆっくりしていってね!」 突然、俺の近くからゆっくりの声がした。 が、声をしたほうを向いてみると、『木れいむサンプル』とかかれた札。 そして、そこらへんに立っているような木にゆっくりの顔を貼り付けた変なもの。 サンプルの立て札に、ちょっとした紹介と特徴も書いてあった。 要約すると、ゆっくりが出産の際蔓を生やすなら、ゆっくりが花を咲かせられるのではないか? と考えた研究者が実験の末に生み出した新種らしい。 結果としては花が咲くことはなかったが、その代わりがこの木れいむだそうな。 たまたまれいむ種で研究していたそうだが、他の種で可能なのかは現在研究中だとか。 いくつか貼ってある写真には、他のゆっくり研究者達。協賛には永遠亭の名前もあった。 特徴として分かっているのは僅かで 一見普通のゆっくりだが、妊娠して蔓を伸ばしだすと母体のゆっくりも木に変異する。 ある程度木として成長すると、普通のゆっくり同様蔓出産をする。 生まれた子ゆっくりは、一定の成長をしないで潰されると親同様の木として成長する。 くらいらしい。 説明をしばらく読んでいると 「でいぶのからだがあ゛あ゛あ゛!?」 なにやら騒がしい。後ろを振り返ってみた。 「もとにもどじでえ゛え゛え゛!!」 「なんでごんな゛ごどにい゛い゛い゛い゛い!!」 ここでやっと俺は理解した。 つまりこいつらは、この木れいむでできた家具というわけか。 今まで静かだったのは、ただ眠っていただけのようだ。 せっかくなので、製品も観察してみる。 最初に目についた箪笥を見てみた。 五段の引き出しがあり、真ん中の三段目にゆっくりの顔がついている。 展示品は汚さなければ少々いじってもいい、とのことだったので、遠慮なくいじってみた。 「おにいさん……れいむをもどして…………」 そんな懇願を気にせず、一発殴ってみる。 「ゆ゛うっ!!いたいよおにいさん、なにするの!!」 変形しても痛覚は残るらしい。なら引き出しを引っ張ったときはどうなるのだろう。 顔の部分の引き出しを引っ張ってみた。 「ゆ!!おそらをとんでるみたい!!」 ……あれ?てっきり痛がると思ったんだが。 そう思いながら木れいむの顔を観察してみた。 顔は飾りではなく、感覚器官として動いていた。触った感じもこのあたりだけ少し柔らかい。 動けるころの名残かゆっくりが食べられるものも一応食べるらしい。 ふと、ある考えが頭をよぎった。 さっそく実験をしながら、しばらくれいむをなでたりして遊ぶ。 しばらくは俺に気を取られていたれいむだったが、少し落ち着かない様子で 「おにいさん!れいむをもとにもどしてね!!こんなかたちはゆっくりできないよ!!」と言ってきた。 さすがに木れいむの状態に戻すことは俺でもできないため、引き出しを押し込めた。 ……さっきからずっと蹴りをいれた箪笥に。 「ゆぐううううううう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?!?」 やっぱりだ。こいつは顔のある部分だけ感覚がある。 つまり、顔と他の木の部分を切り離すと、顔は木に受けたダメージを感じない。 だが顔を木に戻すと感覚が繋がってダメージが顔にも伝わるという訳だ。 「いだいよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 痛いのはこっちだ。感触がまんま木なので蹴ったりすれば俺も痛い。 虐待お兄さんなら話は別かもしれないが。 その日、俺は木れいむ製の小さなテーブルを買うことにした。 ここまでさせておいてもらって何も買わないってのは、ちょっと気が引けたからな。 「むーしゃ、むーしゃ……」 使ってみるとこれがなかなか便利だ。 基本的に放置していても平気だそうだが、テーブルにこぼした水や食べカスなんかは口に持っていけば処分してくれる。 虐待したい時には適当に物をぶつけたりすればいつでもゆっくりの悲鳴が聞ける。餡子の始末が面倒という人には、気軽に虐待ができると評判だ。 廃棄するときには、砕いて薪にでもすればいい。 『ゆっくり家具第二弾!!ご要望の多かった小さな家具も実現!!』 そんなチラシをテーブルに伏せると、俺は出かける準備を始める。 その中身を理解したテーブルれいむは、使われだしてから久しく涙を流した。 終 レスを見てすぐに書き出したのにすでに先を越されてた……ゆっくりしないで書いた結果でもこれかよ! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1332.html
あんまり熱いので川辺で涼しんでいたら、やたら甲高いカエルの声が聞こえてきた。 「ケローっ! ケローっ!」 なんだか泣いているらしい、生えた草を踏みつぶしながらこっちに向かっていく。 よく見ると、その後ろから水色のゆっくりが追いかけていた。 「アタイったらゆっくりね!」 どう見てもゆっくりだね。 どうやらゆっくりカエルはあのゆっくりに追いかけられているらしい。 ゆっくりカエルはぴょんぴょん跳ねて逃げ回るが、水色のゆっくりは上下に動かず、そのまま平行に動いて追いかけてる。どうやって移動してるんだ、こいつ? 「アタイったらゆっくりね!」 「ケローっ!」 突然、水色のゆっくりが一回り大きく膨らむと。 口から冷気を吐いて逃げてたカエルを凍らせてしまった。 ……おぉっ、そんなこと出来るのか。 「やっぱりアタイったらゆっくりね!」 「……あ、あ~う~……」 体が冷凍されてカエルの動きが止まっている。水色のゆっくりはそのままカエルに近づいていって……。 あ、食べた。 「あぁあああぁぁあぁあぁあっ!」 「ガジガジ」 「やめっ……たずっ……」 カエルシャーベットはあっという間に水色のお腹に収まっていった。水色の大きさは大体30センチぐらい、カエルも同じぐらいだったんだが……スゲェ喰うな。 「アタイゆっくりだよっ! ゆっくりしてるよ!」 食べ終わると高らかに周りに宣言し始める水色ゆっくり。周りには誰もいないのに誰に言ってるんだ。 水色の体は宙に浮き、その辺を行ったり来たりしている。 こいつ、飛べるのか。 飛べるゆっくりなんて肉まんかあんまんぐらいかと思ったが、他にもいるんだな。 ……。 暴れ回っている水色を見て思う。 こいつがいたら、部屋も涼しくなるんじゃね? ……。 取りあえず話しかけてみた。 「ゆっくりしていってねっ!」 「ゆっ? アタイゆっくりだよっ!」 ……それが挨拶なのか? 「ああ、見てたよ。見事にゆっくりしていたな」 「そうだよ! アタイったらゆっくりだからねっ!」 おまえの言ってることはよくわからん。 「なるほど。でもやっぱりゆっくりなら、よりゆっくり出来る場所に行きたいものじゃないか?」 「ゆっ? アタイゆっくりしてるよ?」 「ここもゆっくり出来るけど、俺はもっとゆっくり出来る所を知っているんだ。興味ないか?」 俺の言葉に、水色は眉間に皺を寄せて考えている。よくわかってないらしい。 ……ゆっくりは馬鹿だ馬鹿だと思っていたが。 こいつは、輪をかけて馬鹿だな。 あまりに話が通じないので、掴んで持っていくことにした。 「ゆっ! アタイに何するのっ!」 「冷てっ!」 水色に触った瞬間、手に走る冷たさ。手がくっつくかと思った。こいつ氷で出来ているのか? 急に触れて機嫌を損ねたらしい。冷気を出した時のように顔が膨らんでいた。 「おじさんはゆっくりじゃないね! どっか行ってね!」 いつ俺がゆっくりだって言ったんだよっ! ……ちょっと腹立ってきたぞ。 「お前だって、ゆっくりじゃねぇよ」 その言葉は心外だったらしい。凄い形相でこちらを睨みつけてきた。 「アタイはゆっくりだよっ! ゆっくりしているよ!」 「どこがだよ! 全身氷のゆっくりなんて聞いたことねぇよ! あんこ吐けあんこっ!」 「ムッキーっ! ゆっくりったらゆっくりだよ!」 「だったら付いてきて証明してくれよ。お前がゆっくりだって」 「いいよ! ゆっくりしにいくよ!」 売り言葉に買い言葉。 気づいたら、水色が家へ来る流れになっていた。 俺にとっては願ったり叶ったり……なのか? なんだか間違えた気が……。 家に連れてきて3時間もすれば、自分がどれだけ間違えていたかがよくわかった。 畳の上を歩いたら畳が凍りつく、冷気を吐かせて涼しくしようと思ったら「アタイやすうりはしないよっ!」と言われる始末。それじゃ西瓜でも冷やすかと水色の上に置いたら凍りつき、後々「なにするのさっ!」と怒られる始末。 そして何よりも。 「アタイったらゆっくりねっ! アタイったらゆっくりねっ!」 意味もなく騒いでいるのが最高に鬱陶しかった。 こんなに使えないなんて……。 俺は頭を抱える。正直とっとと放り出したいところだが、体が冷たすぎて触れない。それじゃ勝手に帰るのを待とうと思ったら、どうも家が気に入ったらしく、まるで帰る気配がない。 他のゆっくりなら食べれば済む話だが、正直、30センチの氷を食べるなんて考えたくもなかった。 まさか力ずくで相手に出来ないゆっくりがこんなに扱いづらいなんて……どうしたものか。 ……ん? 「アタイったらゆっくりねっ!」 相変わらず叫ぶゆっくりは放っておいて、俺は思考を走らせ始めた。 そういえば……。 立ち上がり、押し入れを漁り始める。ここに確か……お、あった。 俺は鉄のかたまりを持ち上げると、水色の目の前に置いた。 「ゆっ?」 鉄のかたまりを指さして、水色に言う。 「ここに平べったくて乗れそうな所があるだろう」 「アタイゆっくりだよっ!」 ……まぁ理解したってことだろう。 「お前ここに乗れるか? 無理かなぁ、狭いかなぁ?」 「ゆっ! アタイゆっくりだもん! のれるよっ!」 案の定、挑発に乗って移動する水色。普通のゆっくりなら苦戦しそうだが、空を飛べる水色はあっさりと上に乗ってみせた。 「ほらねっ! アタイったらゆっくりでしょっ!」 「はいはい、そうだね」 乗るのはすげぇ速かったけどな。 俺は鉄のかたまりの頭についているレバーを回していく。 ほどなくして、水色が上から押さえつけられた。 「ゆっ!」 さてと。 用意しておいた器を下に置く。 「何するのおじさん、アタイゆっくりだよっ!」 はいはい。 横のレバーを回し、かき氷を作り始めた。 「あ、ああ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁっ!」 水色が回転し、器に削られた氷が乗せられていく。 「あ゛がががががっ!」 シャリシャリと音が鳴りながら、あっという間にかき氷が出来上がった。 「あっ……あっ……」 おおっ、普通に食えそうだな。えーと……。 出来上がったかき氷を手に俺はふと気づく。 そういえばシロップがなかった……。 俺はかき氷を一端置くと、そのまま外へと出る。 どうせその辺に……お、いたっ! 「みんなゆっくりしてねっ!」 「ゆっ!」 「うん、ゆっくりするよっ!」 そこにいたのは、ちょうど手のひらサイズの子供達3匹を遊ばせようとしていたゆっくりれいむの家族だった。 取り合えず親れいむを蹴り飛ばす。 「ゆ゛ぐっ!?」 変な叫び声を上げて飛んでいく親れいむ。こいつらってよく歪むから、あまり遠くまで飛ばないんだよなぁ。 「お、おかあさんっ!?」 「なにするのおじ──」 有無を言わせず、その場にいた子供れいむをかっさらっていく。 「うわあ゛あ゛ぁあ゛ぁぁっ!」 「なにずるのっ! ゆっぐりざぜでっ!」 「おがあざーんっ!」 子供の声に活性化されたのか、いきなり親れいむが起き上がってくた。元気だなこいつ。 「れいむのあがじゃんがえじでぇえぇぇぇっ!」 シュートッ! 「めぎゃっ!?」 ゴーーーールッ! 綺麗な放物線を描いて、親れいむが飛んでいく。……我ながら綺麗に飛んだな、体歪んでるのにぜんぜん減速してねぇや。 あ、誰かの家に飛び込んだ。 「いやぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛っ!」 「おがあ゛ざあぁぁあぁあぁぁんっ!」 邪魔者を排除して、俺は家へと戻ってきた。 「あっ! どこ行ってたの! アタイをむしするなんておじさんゆっくり──」 煩いのでレバーを回す。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」 水色を黙らせて、俺はかき氷を確認する。よかった、まだ溶けてないな。 「おじさん! 早くれいむたちをかえしてね!」 「おじさんとはゆっくりできないよっ!」 「ゆっくりしねっ!」 手に抱えていた子供れいむたちを、そのまま手のひらで丸めていく。 「うぎゃぁあ゛ぁぁあ゛っ!」 「うぷぷぷぴゅっぷぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅっ!」 「やめでうぶあおじあぶげまぜうぎゃっ!!」 しっかり混ざったあんこを、そのままかき氷の上に乗せた。 氷宇治あずきの出来上がりと……。 一口食べてみる。 ……うーん。 普通の氷宇治あずきより喰いづらいが、そのまま氷を食べるよりマシか……なにより甘いしなっ! 「ここか」 「ここだよ! ここに入っていったよ!」 「これで嘘やったらタダじゃすまさへんど」 あん? 玄関の方で声がした瞬間、大きな音を立てて扉が開かれた。 「ゆっくりっ!」 なんだ、さっきの親れいむじゃないか。……あれ? 「ちょっと失礼しますよ」 親れいむの後ろには男が付いてきていた。何だ? 「なんか用ですか?」 「いや、さっきこのゆっくりが窓から飛び込んで来てな。ふざけるなと怒鳴ったら、吹き飛ばしたのは兄ちゃんやって言うんで話聞きにきたんや」 ガラ悪っ! つーかこのゆっくり、あれだけけっ飛ばしたのになんで生きてるんだよ……。 「そう言われても、俺今日ここから出てないですし……」 「なにいってるのさ、さっき──」 レバーを回す。 「あぎゃがぎゃがっ! も、もうやめでよ゛っ!」 余計なことを言うからだ。 「それにゆっくりをけっ飛ばすなんて誰だってやるでしょ、俺だっていう証拠がないじゃないですか」 「まぁそうなんやけどな……」 俺の言葉に面倒くさそうに頭を掻く男。どうも泣きつかせて儲けようという考えだったらしいが、引く様子がないので迷っている。 そもそもガラス代も、この親れいむを加工所に連れていけばちょっとは金になるし、大きな騒ぎにしたくないのが本音だろう。 「ゆっ! そんなことないよっ! れいむを蹴ったのはおじさんだよっ!」 ……煩いのがまだいたか。 「だから証拠がないだろう。何かあるのかよ」 「れいむの子供どこにやったのっ! あの子たちがいる筈だよ!」 「この部屋のどこに子ゆっくりがいるんだ?」 周りを見渡す男と親れいむ。もちろん子ゆっくりなんて影も形も見あたらない。あるのはかき氷に乗ったあんこだけだ。 「ゆっ! そ、そんなはずないよ! どこにいるのぉっ!」 呼び掛ければ返事をしてくれると、親れいむが叫び始める。 その間に、男と目があった。 「……」 手に持っていたかき氷を見せる。 「……」 男は頷くと、そのまま親れいむを片手で鷲づかみにした。どうやら伝わったらしい。 「ゆっ!? な、なにするのお兄さん!!」 「どうやら嘘だったみたいだな……」 その言葉に、親れいむは饅頭肌を青くして震えた。 ……どうやって色変えてるんだ、この不思議生物。 「ち、ちがうよ、れいむうそなんて」 「それじゃ約束通り、加工所いこか」 「いや゛ぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁっ! かごうじょばい゛や゛だぁぁぁあ゛あ゛ぁっ!!」 暴れ回るが、ゆっくりが人の力に逆らえるわけがない。 食い込む親指の感覚に震えながら親れいむは連れて行かれる。 ……。 出て行く瞬間、俺は親れいむが見えるようにかき氷を食べ始めた。 「あ゛あ゛っ!!」 扉が閉められる。 親れいむの暴れている声が聞こえていくが、もう俺には関係ない。 ……やれやれ。 ため息をついてその場に座る。予想してなかった騒ぎに疲れがたまった。 ……。 俺は最後の光景を思い出し、思わず顔がにやけてしまう。 あの絶望で満ちた顔に、俺は溜飲が下がる思いだった。 さて。 業務用かき氷機の方を見る。 「おじさんゆっくりじゃないねっ! 早く外してねっ!」 さっきは喋らなかったので、ちょっとは学習したかと思いきや、時間が経つとまた水色は喚き始めた。 ……やっぱり、馬鹿だから数分で忘れたんだな。 それだけ忘れられたら、人だと幸せに生きられるんだろうが、水色が忘れても鬱陶しいだけだ。 しかし、どうするか。 全部削って食べるのは流石に辛い。 いっそ、削ってそのまま流しに捨てるか。 水色を処分する方法を考えながら、取りあえず腹が減ったので俺は洗い場の方へ向かう。 「ちょっとむししないでよっ! アタイはむしたべるんだからねっ!」 ……。 一瞬、無視なんて知っていたのかと思ったが、やっぱり馬鹿は馬鹿だった。 何かないかと食材を探し始める。 えーと、何か食えるものが……。 ……あ。 「だからむししないでっ! アタイたべちゃうよっ!」 ……うん、面白そうだな。 俺はその場から離れると、今度はかき氷機に近づいていった。 「ゆっ?」 「わかったわかった助けてやるよ」 頭についたレバーをゆるめ、水色を動けるようにする。 途端、水色は俊敏な動きで逃げ出していた。 「ゆっ! ようやくアタイがゆっくりだってわかったみたいね!」 だから、その速さのどこがゆっくりなのかと。 「でもおじさんはゆっくりじゃないねっ! アタイそろそろかえるよっ!」 「ああ、帰るのか?」 「ええ! ゆっくりじゃないおじさんはとっととれいとうはそんされてね!」 破損してどうする。 「残念だな。せっかくエサを用意してたんだが……」 言った瞬間、水色がこっちを見ていた。凄い食いつきだな……。 「エサっ? アタイしたにはうるさいよっ!」 「ああ、ゆっくりには美味しいって絶賛されているものがあってね。それなら満足できると思ったんだ」 ゆっくりに絶賛と聞いて興味が惹かれたらしい、さっきまでとは打って変わって瞳が輝いている。 「いいよっ! ゆっくりたべてあげるねっ!」 「そうかい、それじゃちょっと待ってな」 俺はまた洗い場へ引き返す。 水色に与える食材を手に取り、そのまま引き返してきた。 「それじゃ今から目の前に置くから、ちゃんと凍らせろよ」 「もちろんだよ! アタイに任せておいて!」 顔を張って自信満々に言う。 俺は手を開き、素早く食材を置いた。 水色の顔が膨らみ、瞬間冷凍しようと冷気を吐く。 しかし、食材が凍ることはなかった。 「ゆっ?」 「なんだ、凍らないみたいだな」 食材は水色よりも小さいながら同じゆっくりだ。しかしゆっくりカエルを食べていた水色には特に疑問はないらしい。特に気にせず、どうして凍らなかったのかを考えている。ああ、馬鹿でよかった。 「まぁいいじゃないか。そのまま食べてみたらどうだ?」 「もちろんアタイそのつもりだよっ! おじさんはだまってて!」 はいはい。 言われた通り黙っておくと、水色は躊躇せず大きく口を開けて、そのゆっくりを飲み込んだ。 「もぐもぐ」 「……」 「もぐもぐ……っ!?」 突然、口を開いたまま水色が痙攣し始めた。 「どうした? 美味しくないかっ?」 「ちがうよっ! アタイゆっくりだよっ!」 なんか慣れたな。 「お、おじさんっ!」 「なんだ?」 「あ、熱いよっ! すっごくあつじっ!?」 水色が最後までいい終わらないうちに、食べたゆっくりは水色の頭を通って中からはい出てきた。 「もこーっ!」 それは、ゆっくりもこうだった。 やっぱり、中で燃えると溶けるもんなんだな。 「あ、あああああああああっ!」 水色の痙攣は止まらない。もこうはそのまま水色の頭に乗って燃え続けている。 「もっこもこにしてやるよっ!」 「とける、アタイとけちゃうっ!」 もう頭の上部分は完全に溶けて、俺の家の床を水浸しにしていた。あとで掃除しないとな……。 「おじさんっ! 水っ! 水ちょうだいっ!」 「水ならそこの壺に入ってるぞ」 言い終わった途端、壺に向かって飛んでいく。 しばらくして、水色の大きな声が聞こえてきた。 「なかからっぽだよぉおおぉおおおぉおおぉっ!」 そりゃな。もったいないじゃないか、水が。 俺は両手でしっかり抱え、そのまま壺に向かっていく。 中を覗き込むと、もう半分近く溶けきった水色がそこにいた。 「お……おじさ……アタイ……」 「何だかさっきよりゆっくりしてるなっ!」 「……ち、ちが……」 「そんなお前にプレゼントだ。受け取ってくれっ!」 水色の上へ抱えていたものを落としていく。 抱えていたのは大量のゆっくりもこうだった。 「あ……」 「もこたんいんしたおっ!」 全員が一斉に炎を纏う。 「……あた……」 あっという間に、水色は溶けきって水に変わっていた。放っておけば蒸発し、跡形もなくなくなるだろう。 俺は安心と落胆でため息をついた。 やれやれ、もうちょっと使えると思ったんだがなぁ……。 もこうは一定時間炎を纏う。出せる時間に制限があるものの、物を燃やす時はかなり便利だ。 俺は使えるゆっくりはちゃんと使っていくが、使えないゆっくりほど邪魔なものはない。 いいゆっくりは、使えるゆっくりだけだ。 さて……。 改めて飯を食おうと、洗い場へ近づいていく。 「もこーっ」 そこに残っていたゆっくりもこうが、元気な声を上げていた。 End ゆっくりちるのをゆっくりもこたんで溶かしたかった。 すっきりー。 by 762 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/567.html
森の中に入ると、そこには沢山のゆっくり達が蠢いていた。 「ゆっくり~~♪」 「ゆうゆう~♪」 その数およそ50、アリスやパチュリーも混ざっている。 「ゆ? おにーさんどうしたの?」 「ゆっくりできるの?」 近寄ってきたのは、ゆっくり霊夢・魔理沙・パチュリー・アリスの四匹だった。 「そうだよ。君達は?」 「れいむたちはこの群れのリーダーだよ!!」 「とかいはのありすがきちんとしてるからだよ!!」 「むっきゅ~!!!」 そうか。リーダーが居るのか、予定を少し変更しなきゃな。 「そうか、偉いなー!! 実はねおにーさんは料理人なんだけど、口の肥えているゆっくり達に味見をしてもらいたくて、食べ物を持ってきたんだ」 背中のリュックから沢山のお菓子を取り出す。 最初は四匹に食べさせてみる。 「ゆゆ!!! おいしーよ!!!」 「うっめ!! これめっちゃうっめ!!!」 「うん!! てぃーたいむにはさいこうね!!!」 「むっきゅーーー!!! ごはんごはん!!!」 気に入ってくれたようだ、作戦を進めよう。 「美味しかったかい。それなら、ぜひとも他のゆっくり達の意見も聞いてみたいんだけど……」 「いいよ!! みんなにたべさせるね!!!」 どうやら、群れと言う体系を取ってはいるが、根は純粋な野生ゆっくりの集まりのようだ。 四匹が号令をかけると、他のゆっくりが集まってくる。 「おいしーの?」 「わかるよーー!!!!」 「ちーんぽ!!」 数を調節して残さずに与える。 食う事には長けているゆっくりだ。 直ぐに全員が食べ終えた。 「ゆ!!! うぐぐ!!」 そして全員が苦しみ出す。 「わがらないよーーー!!!!!」 「ちーーーー……」 残ったのはあの四匹だけ。 「ゆゆ!!! みんなどうしたの!!!!」 「おきてね!!! まりさたちのめいれいだよ!!!」 「しえすたにはまだはやいよ!!!」 「むっきゅーーー!!!!」 なにが起きたのか分からないようだ、これが人になれているゆっくりだったら真っ先に疑ってくるものだが。 「もしかしたら、皆寿命だったのかも?」 「ゆ!! そんなことないよ!! まだみんなゆっくりできるよ!!!」 「でも、群れのリーダーのお前達は、曲がりなりにも体が強くできているんだよ。他のゆっくりはそれよりも早く死んじゃうんだよ」 「「「「ゆーーー!!! もっどみんなどゆっぐりしだかっだーー!!!!」」」」 我ながら変てこな説明だが、どうやら信じたらしい。 ここまで来ればあと少し。 「それじゃあ、キチンとゆっくりできるようにお葬式をしないとね」 「ゆ~? お葬式って?」 「死んだ後も、魂がゆっくりできるようにするための儀式さ。これをすれば死んだゆっくり達もゆっくりできるんだよ」 「そうなんだ!! おにーさんれいむたちおそうしきするよ!!!」 「まりさもやるーー!!!」 「どうすればいいの? れくちゃーしてね!!」 「むっきゅーーー!!!」 「いいよ、でもこれは君達がやらないと効果が無いんだ。分かった?」 「「「「ゆっくりりかいしたよ」」」」 そうして、俺は、ゆっくり達に指示を出していった。 最初に、死体を一箇所に集めさせる。 「ゆっゆ!!」 幸い、近くに大きな穴があったので、そこに落とさせた。 次に、四匹に灯油の入った容器を持たせ穴の上からかけさせる。 「ゆゆ? これなーに?」 「良く燃えるようにするのさ、火になってお空に飛ばすんだ」 「ゆゆ!! わかったよ!! みんなにゆっくりかけるね!!!」 最後に、ゆっくり達に蝋燭を咥えさせる。 「良いかい。ゆっくりできますようにってお願いしてから、その蝋燭を下に投げるんだ」 口の使えない四匹は、顔を上下に動かして答える。 そして一瞬の静寂の後。 「「「「……!! ゆっくりしてね!!!!!」」」」 四匹が一斉に蝋燭を投げ捨てた。 同時に、高く高く伸びる炎。 「ゆっくりしてねーーー!!!」 「みんなげんきでねーーー!!!!」 「みんなはありすのおともだちだよーーー!!!」 「むっきゅーーー!!!」 思い思いの言葉を叫び、その炎を見続ける四匹。 作戦は成功、時間もソロソロだ。 「……ゆゆゆ!! あづい!!! あづいーーーーー!!!!!!」 「どうして!!! まりさがもえてるよーーーー!!!!」 「わからないよーーーー!!!!」 「ちーんぽーーーー!!!!」 「「「「!!!!!!!」」」」 突然、炎の中から声が上がる。 ビックリした四匹が凝視すると、中では激しく蠢くゆっくり達。 そう、未だ生きていたのだ。 先程混入した毒は、致死量に達しなければ仮死状態から蘇生する。 数十のゆっくり家族に実験して、致死量を完全に把握した甲斐があった。 そして、穴の下はまさに地獄絵図だ。 「どーしでーーー!! しんだんじゃないのーーー!!!」 四匹も騒然となる、何せ今まで死んでいたのだから。 「ああああーーーー!!!!」 「ぎゃーーーー!!!」 「ぷっでぃ~~~ん!!!!」 「わがらなーーーい!!!」 「ちーーー!!!」 下では、本当にゆっくり達が死んでいく。 「たずけでーーー!!!」 「れーだー!!!」 四匹に助けを求めるように、必死に炎を纏いながら登ってくるゆっくり達。 「あ゛あ゛あ゛!!!」 「ゆゆゆ!!!!」 そのどれもが、途中で力尽きて火柱の薪となる。 上の四匹は、唯呆然と見ている事しかできない。 「……」 「……」 やがて声が聞こえなくなった。 全員がしっかりとやけ饅頭になったのだろう。 うん、満足。 早速帰って新しいメニューを考えよう。 「お前達が皆を殺したんだよ」 「……!! ゆーーーちがうよーーー!!!」 「れーむたじはやっでないーーー!!!」 「たがいはのありずはそんなごとしないよーーーー!!!!」 「むぎゅーーーー!!!!!」 そう言い残して、俺は麓へと降りていった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/853.html
※東方キャラ出現注意 ※性格の悪いゆっくり出現注意 よく晴れたコバルトブルーの空を鴉天狗の少女が忙しそうに飛んでいた。 「号外~号外だよ~幻想郷一早くて正確な『文々。新聞』だよ~」 名前は射命丸文。 彼女は『文々。新聞』という新聞の発行を行っている。 とは言ってもこの新聞の発行は不定期で多くても月五回ほどしかなく、ほとんど趣味のようなものである。 「お~い、文ちゃ~ん」 文を見つけた老人が縁側から手を振る。 それに気付き文はゆっくりと速度を落とし庭先に降りる。 「こんにちわ、田中のお爺さん。はい、『文々。新聞』です」 「いつもすまないねぇ。歳をとると出掛けるのも億劫でな。文ちゃんの持ってきてくれる新聞は数少ない楽しみの一つなんじゃよ」 「あやや、ありがとうございます」 老人の嬉しそうな顔に思わず営業スマイルも崩れ、素の笑みが浮かぶ。 どちらかというと『文々。新聞』は内容を叩かれる事が多い(主に記事にされた人間や妖怪から)。 しかし里の人間には人知を超えた熱く華麗な弾幕ファイト、そして稀に特集される美少女たちを目当てになかなかの人気を博している。 お世辞にも娯楽が盛んだとは言えない幻想郷においてこの老人のように文の発行する新聞を楽しみにする人間は珍しくないのだ。 「おおぅ、そうじゃ。これを持って行きなせぇ。あのわんちゃんと一緒に食べてくれ」 「あややや! これはおいしそうなおはぎですね。ありがとうございます」 「それでは今後とも『文々。新聞』をご贔屓に」 「おう、気ぃつけてなぁ~」 その様子を縁の下から見ていた一匹のゆっくりがいた。 * 所変わって同日の夕方、人間の里付近のゆっくり集落にて。 「ゆゆっ? しんぶんをつくるの?」 「そうだよ! しんぶんをつくってにんげんからたべものをもらうんだよ!」 文の新聞配達を老人宅で見ていたゆっくりまりさは集落に帰るとゆっくり会議でみんなにその出来事を伝えた。 この会議では冬篭りのための食料収集が芳しくない状況をどう打破するかを話し合っていた。 昨年までは人間の家から盗んできた食べ物で賄っていたが人間たちがゆっくり対策を始めたせいで容易には侵入できなくなった。 そして会議と言っても所詮は餡の集合体でしかないのでいつも碌な案が出ずにお開きになっていた。 そんな状況の中、まりさから得られた情報はこの集落のゆっくりたちが春まで生き延びるための最後の望みになった。 だが一匹のゆっくりがまりさに疑問をぶつける。 「でもしんぶんってなにをかけばいいの?」 「ゆっ!? う~ん……」 まりさは新聞というものを人間にあげれば食料を貰えるということを知っているだけで新聞自体がなんであるかは知らなかったのだ。 せっかく見えてきた希望がまた遠ざかろうとしている。 困り果てていたみんなのところへ集落一の知識者であるゆっくりぱちゅりーが現れた。 「むきゅ! ごめんなさい! ばんごはんをゆっくりたべていておそくなったわ!」 「ゆゆっ! ぱちゅりー! ちょうどいいところにきたよ! 」 「ねぇぱちゅりー! しんぶんってなにがかいてあるかしらない?」 「ちんぽー?」 打ってつけのゆっくりの登場にみんながぱちゅりーに質問する。 その辺にいる見せ掛けだけのぱちゅりー種とは違い、まともに知識を持つこのぱちゅりーは冷静に答えを導き出した。 「しんぶんはおこったできごとやいろいろなじょうほうをみんなにつたえるためのものよ! でもそれがどうしたの?」 「ゆゆっ! まりさたちでしんぶんをつくるんだよ!」 「そしてたべものをもらうんだよー! わかるよー!」 取らぬ狸のなんとやらと言う言葉がお似合いのように、ゆっくりたちはまだ見ぬ食べ物を思い浮かべ涎を垂らしている。 新聞を作るという話を聞いたぱちゅりーはみんなとは対照的に浮かない表情をしている。 「むきゅう……でもしんぶんはつくるのがむずかしいわ! そんなことよりじみちにたべものをあつめたほうが……」 「そんなこというならぱちゅりーはひとりでたべものをあつめてね!」 「れいむたちはしんぶんをつくってらくしてたべものをあつめるからね!」 「わけてあげないよー!」 「おお、みじめみじめ」 ぱちゅりーの意見はもう食べ物が手に入った気でいるゆっくりたちの耳には届かなかった。 こうしてぱちゅりーも渋々新聞作りをやらざるを得なくなったのだ。 翌日。 ゆっくりたちは食料集めもせず朝から新聞制作を開始した。 紙はその辺の民家から盗んでいた和紙、筆記具は同じく盗んできたクレヨンと鉛筆だ。 大量に作らないといけないためゆっくりは家族ごとや気の合う仲間に分かれて作業をする。 「ゆゆっ! みんなおえかきしちぇるよ!」 「れいみゅもかかしぇちぇね!」 作業を見た赤ちゃんゆっくりが勝手に新聞に絵を描きだす。 「ゆゆっ! これはあそびじゃ……」 「まってよれいむ! あかちゃんたちのえをみてごらん!」 「ゆゆ?……うわあ! すっごくかわいいね!」 「でしょ? きっとにんげんもこのえをみてゆっくりできるよ!」 「そうだね! れいむたちのあかちゃんはてんさいだね!」 また別の場所では、 「まりさたちでれみりゃをたおしたことをかくんだぜ!」 「ゆゆっ! しんぶんにかいてみんなにつよさをしらしめるんだぜ!」 自身の武勇伝を書くものや、 「とかいはのありすはしんぶんにすっきりすとをかくわ!」 「やっぱりいちばんはまりさね! あのふわふわのかみとすてきなぼうしをみるとおもわずすっきりしたくなっちゃうわ!」 どのゆっくりが一番すっきりできるかを書くものや、 「きのうはばんごはんにおさかなをたべたよー!」 「それをしんぶんにかくんだねー! わかるよー!」 昨日食べた晩御飯を書くものや、 「ちんぽー!」 「ちんぽー!」 ひたすら卑猥な言葉を書くものがいた。 そして丸一日かかって新聞を作り次の日の早朝、ゆっくり新聞の配達の日がきた。 * 「ゆっくりおきてね! ゆっくりしんぶんだよ!」 「ゆっくちちんぶんだよ!」 民家の前で家族揃って大声で叫ぶゆっくり。 程なくして住民が現れた。 「朝っぱらからうっせぇぞ! 饅頭共が何の用事だ!」 非常に機嫌の悪い男が出てきた。 早朝から不快な声で起こされ玄関に並ぶ気味悪い大小の饅頭家族が目に入ったのだ。 これで機嫌を悪くしないほうがどうかしてる。 しかしこのゆっくりの一家は全く空気が読めなかった。 「ゆゆっ! おじさん! まりさたちしんぶんをもってきたよ!」 「だからゆっくりたべものをちょうだいね!」 「ちょうらいね!」 まりさは頭の上に乗せた新聞と思われるものを男の前に差し出す。 子供たちはれいむに輪唱する形で食べ物を要求する。 「次大声出したらぶっ飛ばすぞ!」 男はゆっくりを無視しさっさと玄関を閉めてしまった。 「ゆゆぅ! どおしてうけとってくれないのおぉ!? れいむのあかちゃんもいっしょうけんめいかいたのにぃぃ!」 「きっとまりさたちのげいじゅつがわからなかったんだよ!」 「ゆゆっ! そうだね! おじさんはばかだからわからなかったんだね!」 「つぎのおうちでゆっくりたべものをもらおうね!」 今度はその隣の家の前に整列した。 「ゆっくりおきてね! ゆっくりしんぶんだよ!」 「ゆっくちちんぶんだよ!」 しばらくして中年の男が出てくる。 扉を半開きにしてゆっくりの様子を窺っているようだ。 「ゆっくりしんぶんだよ! ゆっくりよんでね!」 「よんだらたべものをちょうだいね! おかねでもいいよ!」 「おきゃねでもいいよ!」 まりさが玄関の男の前まで行き口で新聞を差し出す。 やっとこのゆっくりたちが何をしているのかを把握した男は無言でまりさを蹴り抜いた。 「ゆぶぅぅ!!」 「ま、まりざあああぁぁぁ!」 「おとおしゃぁぁん!」 まりさは木に強く叩きつけられ持ってた新聞は宙を舞った。 餡子を吐き出しながらビクビク痙攣している。 幸いにも命に別状は無いようだ。 「ゆぐぐうぅぅ! どぼぢでこんなごとずるのおおぉぉ!?」 「ゆっくちおとうしゃんにあやまっちぇね!」 「あやまれー!」 れいむと子供たちが男の入っていった家に抗議の声を上げる。 だがそれがいけなかった。 「うるせえっつたろうがこのクソ饅頭が!」 さっきの家の男である。 隣でも大声を出しているのを聞いてとんできたのだ。 男は手に持っている爆竹の束をゆっくりに投げつけた。 快音を立ててゆっくりの近くで爆竹が破裂する。 「あちゅいよ! ゆっくちやめちぇね!」 「ゆぎいいぃぃ!」 「いだい! ゆっくちできない!」 爆竹は殺傷力の低いものだったが貧弱なゆっくりには大ダメージだった。 「次はねぇぞ! いいな!」 男は爆竹でところどころ焦げたゆっくりを見ると再び家に帰っていった。 新聞は蹴られた時に遠くへ飛んだので幸いにも引火する事だけはなかった。 「ゆゆぅぅ……ここはゆっくりできないよ!」 「ほかのところでゆっくりしんぶんをくばろうね!」 「ゆゆっ! きっとこんどはたべものもらえるよ!」 まりさたちは体に負った火傷も気にせず、食べ物が貰えると信じてまた配達を始めた。 しかしその希望も空しくどこの家でも追い返されてしまった。 このままではいけないと作戦を練ったまりさたちは一旦子供たちだけで新聞を配達させる事にした。 「「「ゆっくちおきちぇね! ゆっくちちんぶんだよ!」」」 「あかちゃんたちだけならきっとうけとってくれるよ!」 「ゆゆっ! れいむのあかちゃんたちかわいいもんね! これならきっとせいこうするよ!」 子供だけならかわいさのあまり受け取ってくれるかもしれない。 自分たちなら絶対引っかかってしまうすばらしい作戦だ。 まりさとれいむは近くの木の陰に隠れて子供たちの様子を見ていた。 玄関では男と子供たちが会話しているようだ。 今まで会話すら出来なかったのだから大きな進歩だ。 やはり作戦に間違いは無かったのだと両親は思った。 「……これは何が書いてあるのかな?」 ゆっくりたちが書き殴った文字のような絵。 当然人間に読めるわけが無い。 新聞を配達し始めて初めて話を聞いてくれる人間の登場に子供たちが饒舌に説明しだす。 「これはにぇ、かっこいいおとおしゃん!」 「こっちはおかあしゃんでふたりはらぶらぶなんだよ!」 「それでにぇ、こっちはかわいいれいみゅたち!」 説明を聞いたが絵はさっぱり分からない。 果たしてこれを新聞と言ってもいいものなのか。 聞いた限りだとこれはただの絵だ。 興味本位で見てみたがどうみてもただの紙ゴミにしか見えない。 断ろうと思っていた男に驚くべき言葉が聞こえてきた。 「よんだらゆっくちたべものをちょうらいね!」 「おきゃねでもいいよ!」 「いちまんえんでもいいよ!」 どうやら新聞と引き換えに食べ物を貰おうという魂胆らしい。 しかも向こうの影でこっちの様子を窺っているゆっくりがいる。あれはこの子の両親だろう。 男はゆっくりが赤ちゃんをだしに食料を集めている事を把握した。 そしてその腐った根性に腹を立てた。 赤ちゃんを隠れる両親にも分かるように高々と摘み上げる。 「ゆゆっ!おしょらをとんでいるみたい♪」 「ああ、今飛ばしてやるよ」 そのままの体勢から赤ちゃんを傍にあった井戸に投げる。 両親が止めに行こう駆け出した時には既に遅く、赤ちゃんが発した着水音だけが響いてた。 「ま゛、まりざのあがぢゃんがあああぁぁ!!」 「れいむ゛のあがぢゃんがえじでええぇぇ!!」 「まりしゃのおねえちゃんがあああぁぁぁ!!」 「あの子みたいになりたくなかったら二度と来るなよ!」 男は音を立てて玄関の扉を閉めた。 まりさとれいむは急いで子供の落ちた井戸に駆け寄る。 井戸の縁に登って中を見ると蟻のように小さい子供が見えた。 「ぶぐぶぐ……しじゅんじゃうよ! ゆっくちたしゅけてね!」 子供は両親を信じて必死に助けを求めていた。 「おとおしゃんたしゅけてね!はやくたしゅけてね!」 しかし人間の作った井戸はゆっくりにとっては深く、降りたら最後だ。 「ごぼっどぼじてえぇぇ! なんでみんなみてるだけなおおぉぉごぼごぼ!」 普段なら助けてあげてと騒ぐゆっくりの姉妹もこの深さに黙り込んでしまった。 「もっどゆっぐぢ……しだがっだよ……」 子供の最後を見届け、れいむとまりさは悲しみに暮れながらその家を後にした。 そして悲しみに暮れたゆっくりは変貌した。 「れいむ! まりさいいことかんがえたよ!」 「どおしたのまりさ?」 「にんげんがしんぶんにきをひかれているうちにやっつければいいんだよ!」 「そうだね! れいむたちのしんぶんをりかいできないにんげんがわるいよね!」 「そーだ! そーだ!」 「まりしゃはちゅよいもんね!」 ただの強盗に成り下がっていた。 だがこのゆっくりたちは非常に運が悪かった。 普通の人間に当たっても結末は変わらないのによりによって一番当たってはいけない人間に当たってしまった。 「ゆっくりしんぶんだよ! ゆっくりよんでね!」 「よんじぇね!」 まりさたちは他の家よりも少し大きくて豪華な屋敷の前にいた。 どうせ狙うのならお金持ちの家がいいと判断した結果だ。 しばらくすると家の中から女の子がでてきた。 頭に飾った綺麗な花と黄緑と黄色と赤のカラフルな着物が印象的なかわいい女の子だ。 (「ゆゆっ! よわそうなにんげんだよ!」) (「これなららくしょうだね!」) まりさとれいむは目を合わせニヤリと笑う。 「まあ、こんな朝早くから何の御用かしら?」 女の子は他の人間とは違い早朝に押しかけたゆっくりに対してとても礼儀正しかった。 まりさは新聞を口で差し出す。 「ゆっくりしんぶんだよ!」 「へぇ! 新聞を書いたんですか? どれどれ……」 そして女の子が新聞を手に取った瞬間、 「ゆっくりしね!」 隣にいたれいむが女の子に襲いかかる……がその言葉がれいむの最後の言葉になってしまった。 襲い掛かったれいむに女の子の手が貫通していた。 れいむは口をぱくぱくさせるがそれはもはや声にならなかった。 想定外の事に残ったゆっくりも悲鳴を上げるだけだった。 「れいむがあああぁぁぁ!!」 「おかあしゃああん!!」 「へんじしてええぇ!!」 騒ぐゆっくりをよそに女の子はれいむから腕を引き抜くと瞬く間に子供たちを捕らえた。 今、彼女の広げられた左右の手の指と指の間には子供たちが全員、合計で八匹挟まれている。 その一連の動きは非常に洗練されていて、とても普通の少女が成せる動きとは思えなかった。 「ゆゆっ! ゆっくちはなしちぇね!」 「くるしいよぉぉ!」 「おとうおしゃぁぁん!」 「ふふっ、早起きは三文の得と言いますけれどもまさか本当に得になるとは……私も驚きです」 女の子は指に挟まれた赤ちゃんゆっくりを観察する。 「あら? よく見たらところどころ焦げてるわね……なかなかのセンスね」 火傷を見て何かを把握したかのように女の子は頷いていた。 まりさはあの手馴れた赤ちゃんゆっくりの捕獲を見て思った。勝てる相手ではないと。 こうなるとその後の行動は早かった。 「ゆゆっ! ずらかるんだぜ!」 「どぼじでみずでるのおおぉぉ!?」 「おとおしゃんだずげでええぇぇ!」 「うらぎりも゛のおおぉぉぉぉぉ!」 まりさは子供たちの助けを無視し逃走してしまった。 「あらら……ここに玄翁があれば始末できたのに残念……まいっか、今日はこの赤ちゃんで楽しみましょう♪」 「ゆゆぅぅぅ! たしゅけてぇぇぇ!」 「いやあぁぁぁ! だれかあぁぁぁ!」 女の子は「稗田」と書かれた表札の付いた屋敷の中へ戻った。 連れて行かれた赤ちゃんゆっくりがどうなったかは誰も知らない。 * その日の夕方。 朝出発してなかなか戻ってこないゆっくりたちに留守番していたぱちゅりーは不安になっていた。 秋の天気は崩れやすく黒い雲が空を覆い、強い風が周りの木をギリギリと軋ませている。 「むっきゅ~ん……みんなどうしたのかしら?」 そこへ瞳を涙でぬらしたありすが帰ってきた。 ただならぬ事態にぱちゅりーが動揺する。 「むきゅう! ありすどうしたの? なんでないてるの?」 「かわいいあかちゃんがみんないけにしずめられちゃったああぁぁ! ありすはとかいはのしんぶんをくばっていただけなのにいいぃぃ!」 ありすを宥めていると続々とぼろぼろになったゆっくりたちが帰ってきた。 それぞれ配達先でひどいことをされたというのが見てわかる。 ぱちゅりーは他のゆっくりたちにも話を聞いた。 そして冬篭りの食料を集めるどころか多くの仲間を失う結果となったことを知った。 子供たちを見捨てたまりさもようやく帰ってきた。 「……た、ただいまなんだぜ」 「まりさ! あなたのかぞくはどうしたの?」 「まりさはすきをついてにげたけどれいむとあかちゃんは……」 「それいじょういわなくてもいいわ! つらかったわね……」 「ううっ、ぱちゅりーはやさしいんだぜ……」 ぱちゅりーに頬を擦り付けられるまりさ。 家族を失った悲しさなどここに帰ってくるまでにどうでもよくなっていたがぱちゅりーの肌が心地よくて悲しんだ振りをしていた。 そしてれいむがいなくなった代わりにぱちゅりーと結婚しようとなどと考えていた。 ぱちゅりーの肌を堪能していたまりさだがその帰宅に気付いたゆっくりたちがぞろぞろと詰め寄ってきた。 「もとはといえばまりさがしんぶんをつくろうっていったのがいけなかったのよ!」 「そうだねー! まりさのせいだよー!」 「おかあさんをかえせ!」 「ちんぽー! ちんぽー!」 ゆっくりたちが怒りの表情でまりさを責める。 まりさ種に優しいありす種でさえ怒っている。 雲行きのよくない状況を見たぱちゅりーが間に割って入る。 「むきゅー! まりさもかぞくをうしなってかなしんでるのよ! せめるなんてひどいわよ!」 「そうだぜ! まりさはひがいしゃなんだぜ! やさしくしてほしいんだぜ!」 まりさもいつも通り自分は悪くないと言い張る。 そんな陳腐な言い訳も今のゆっくりには火に油を注ぐだけだった。 「ぜんぶまりさのせいよ! まりさのせいでありすのかわいいあかちゃんはしんだのよ!」 「ぱちゅりー! どくんだよー! まりさはここにいちゃいけないゆっくりなんだよー!」 「おかあさんのかたきいぃぃ!」 「ちんぽー!」 ぱちゅりーの必死の静止も聞かず大人から赤ちゃんまでみんなでまりさに襲い掛かる。 「やめるんだぜ! いだいんだぜ! はなずんだぜ!」 「ゆっぐりじね! ゆっぐりじね!」 「わかるよー! まりさのようなやつがいるからせんそうがおわらないんだよー!」 「くるしんでしね!」 「ちんぽー!」 運動神経が高いまりさ種だがこの人数差ではなす術もなかった。 自慢の帽子は破れ、頬も食い破られ餡子が漏れ出している。 それでもゆっくりたちはまりさを攻撃するのをやめない。 「だれかああぁ! けんかをとめてぇぇ! まりさがしんじゃうううぅぅ!」 ぱちゅりーの叫びが巣の中を木霊する。 願いが届いたのか一人の少女が巣の前に現れた。 「あやや、やっと見つけましたよ! 貴方たちが新聞を配ってたゆっくりですね? 取材を伺いに来ました射命丸文です。どうぞよろしく」 いつもの営業スマイルをゆっくりにも向ける文。 ゆっくりたちもまりさへの攻撃を止め視線を射命丸へと移す。 ぼろ布になったまりさにもその姿が目に映る。 あの時縁の下で見た光景が、みんなで楽しく新聞を作る光景がまりさの頭の中にフラッシュバックする。 「お……おまえさえいなければ……まりさは……」 まりさがずるずると這いながら文に近づく。 「あやや!? どうしたんですか? このゆっくりボロボロじゃないですか?」 「おまえさえ……いなければっ!」 自分の方を激しい憎悪を込めた瞳で睨むまりさに文は疑問符を浮かべる。 面識の無い他のゆっくりはまりさが何故文を睨んでいるのかがわからない。 「あの……私、何か粗相をしましたでしょうか?」 「まりさはわるくない! おまえのせいでこうなったんだ! ゆっくりしね!」 まりさは質問に答えず文の足首に噛み付いた。しかし相手が人間ならいざ知らず、人間を遥かに越える鴉天狗である。 渾身の力を込めた噛み付きも文の白く細い足に傷一つ負わせる事ができなかった。 「……椛」 「はい、先輩!」 文の合図に草むらに隠れていた椛が写真機のシャッターを切る。 「今の光景を写真に撮りました。今度の新聞にあなた方が非常に危険で排除するべき存在であることを写真付きで掲載させて頂きます。取材ご協力ありがとうございました」 まりさに噛み付かれながらも笑顔を崩すことなくゆっくりにお辞儀をする文。 その笑顔に見る見るうちにゆっくりたちの顔が青ざめていく。 「むきゅううぅぅぅ! それだけはやめてぇぇぇ!」 「やめてよー! ゆっくりできなくなるよー!」 「おねえさんおねがいいぃぃ!」 「私のモットーは『清く、正しく』ですのでありのままをみなさんに伝えるだけです。それでは」 文は飛び立とうとしてまだ足に噛み付いているまりさに気がついた。 「……そしてこれは正当防衛です」 腰に挿していた団扇を一振りすると目の前に巨大な竜巻が現れた。 竜巻はその場にいた全てのゆっくりを巻き込み、巣を削り壊し、草を刈り取り、木をなぎ倒し、岩を跳ね飛ばした。 「せんぱーい、少しやりすぎじゃないですか?」 先を飛ぶ文に山から伸びる一本の竜巻を見ながら椛が問う。 「新聞記者に危害を加えてきたんだから当然です……あ、田中のお爺さんからおはぎを貰ってるんで夕飯後に一緒に頂きましょう♪」 「……はーい♪」 椛はこの人だけは敵にまわさないでおこうと決心するのであった。 * まりさは水滴の滴りで意識を取り戻した。 正確には雨が降り出していた。 ボロボロになった体を起こし周りを見渡す。 そこにはまりさの家も草も木も岩もなく、小石と抉れた大地だけが広がっていた。 「ゆうううぅぅ!? みんなどこ? おうちは? ぱちゅりーは!?」 まりさは体を引きずりながら仲間を探す。 帽子を失い、頭に雨が降ってくるのも構わなかった。 しばらくして折れた木の前に髪飾りが集められている場所を見つけた。 そしてそこにぱちゅりーがいた。 「ゆゆぅ! ぱちゅりー! いきてたんだね!」 「……」 「みんなしんだかとおもったよ! でもよかったよぱちゅりーだけでもいきてて!」 「……」 「ねぇ、ぱちゅりー! いきなりだけどまりさとけっこんしてほしいんだぜ!」 「……」 「みんなしんじゃったけどまりさといっぱいすっきりしてあかちゃんつくってまたたのしくやっていこうだぜ!」 「……」 「ぱちゅりーきいてる?」 呼びかけても反応の無いのでまりさが覗き込もうとした瞬間ぱちゅりーは振り返った。 ぱちゅりーの口には尖った枝が咥えられていた。 とっさの出来事に避ける事ができず腹を貫かれる。 まりさは目の前の現実が信じられないといった顔でぱちゅりーを見た。 「ゆ゛ぐっ……どぼじで……」 「まりさの……まりさのせいでれいむもありすもちぇんもみょんも……みんなしんだのよ! なんでまりさだけいきてるのよ!」 枝が引き抜かれそしてもう一度まりさに刺さる。 「ゆ゛っ……ぱ、ぱちゅり……や゛めで……」 「きやすくなまえをよぶな!しねっ! ゆっくりしねっ! このやくびょうがみ! ごみくず!」 もう一度まりさに刺さる。 「ゆ゛っ……ゆ゛ぶっ……」 もう一度。 「ゆ゛っ……」 ぱちゅりーは自分の体が雨で溶けて動かなくなるまで何度もまりさを刺し続けた。 後日、『文々。新聞』にゆっくりが非常に危険な生物であると書かれ、人々がゆっくりを殲滅していくことになるのだがそれはまた別のお話。 ―ゆっくり新聞―おしまい <あとがき> かぶってしもた上にかなり遅れた/(^o^)\ナンテコッタイ 『文々。新聞』って幻想郷の人里の人間から見ればすごく面白いものだと思うんだけどどうなんだろ? 求聞史紀見てもカフェーで人気程度しか書いてなくてわかんね。 あとこんなかわいい子が配達してくれるなら文自身にもかなりファンが多いと思う。 そんなことを妄想しながら書いた。 (積み重なる黒歴史) ゆっくりフルフォース お兄さんの歪んだ愛 このSSに感想を付ける