約 592,729 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2012.html
ゆっくりの掃き溜め。 そこは奇形ゆっくりや人間に虐待され五体(?)満足でなくなったゆっくり達が唯一生きられる場所。 もともとはとあるゆっくりの群れが住んでいたのだが餌となるものを採り尽くしてしまったため群れが別の場所に移ったのだ。 ろくな食料も無く近場に水場も無い。 しかもここは外敵となる獣や大型の鳥が多く生息する。 そんな場所のため普通のゆっくりは近づこうともしない。 迫害されたゆっくり達が暮らしていける場所はそんな所しかなかったのだ。 幸い巣穴は元の持ち主であったゆっくりの群れたちが大量に掘っていたため多数存在した。 自らの巣穴を掘る力すらない彼女達が何とか生きて…そして数日、数十日のうちに死んでいく環境が存在していた。 「ゆぅ!ゆぅ!」 いつものように複数人分の餌を採りに行っていき集落へ帰って来たれいむ。 彼女はただ飾りを失っただけというこの集落ではもっともましな状態だった。 しかし彼女は食事すらできず苦しむ仲間の姿を我慢できなかったのだ。 気づけば動けぬ仲間達のために餌を採ってきていた。 だが自分に可能な限界の量の食料を採ってなお足りなかった。 朝、日が昇ってすぐに餌を採りに行き、日が暮れてようやく巣に帰り着く。 そんな生活が一月ほど続いていた。 しかしもともと餌は少なく外敵も多い場所。 ゆっくりには採れない大型の果実が多くありそれを餌とする獣が多くいる場所なのだ。 獣に襲われ逃げ帰ることもしばしばだった。 実際同じ志を持った仲間達はその多くが命を落とし、多くが罪悪感を持ちながらも諦め自分の分の餌だけを探していった。 (こんなところではおわれないよ…!しんでいったみんなのぶんまでがんばるよ!) そんな決意を持ってこのれいむは今日も狩を続けていた。 「む、こんなところにゆっくりが?」 そこに突然現れたのは全身を白い服に包んだ人間の青年だった。 「ゆ?おじいさんだあれ?」 れいむのいうとおり青年と言うにはその人間はあまりにも疲弊していた。 頬は痩せこけ髪は白くその表情からはあまりにも生気が無い。 まさしくその外見は老人のそれに近かった。 「私は旅の者だよ。ここは君達の集落かい?見たところ皆あまりゆっくりしていないようだが…」 「ゆぅ…みんなびょうきやけがをおってるの」 れいむはこの青年にこの集落の事情を話した。 どの群れも自分たちを受け入れてくれないこと。 ここがそんなゆっくり達が集まった場所であること。 採れる食料が限界に来ていること。 青年は黙ってそれを聞いていたがやがて口を開いた。 「よし、私に任せなさい。」 そして奇跡が始まった。 青年が足の焼けて動けないゆっくりに触れればそのゆっくりは元気に跳ね回り始めた。 生まれつき目が見えないゆっくりに触れればその目が開いた。 また、青年は時折集落を離れるとゆっくり達が取れない果物を大量に採ってきた。 まさに奇跡がそこにあった。 いつしかこの集落は「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれゆっくり達に広まった。 そのうわさを聞きつけ多くの迫害されていたゆっくり達が集まった。 集落を襲おうとするゲスなゆっくり達もいたが人間でもとりわけ体の強い青年の力には到底及ばず撃退された。 迫害されていたゆっくり達の奇跡がそこにあった。 彼女たちの本物のゆっくりプレイスが確かにそこにあったのだ。 ある、暑い日。 いつものようにその集落のうわさを聞きつけたとあるゆっくりまりさが青年の前に寝かされていた。 「ゆ!まりさはあしがわるいんだよ!さっさとなおしてね!びょうにんはいたわるものだよ!」 「ふむふむ、そうか」 青年はゆっくりのふざけた態度にまったく不快感を示さずにその言葉を受け入れた。 目の前のゆっくりは確かに足が悪いが少しすりむいた程度のものだ。 正直青年が手を出すまでも無い。しかし、 「わかった、俺が直してやろう!」 「ゆ!ものわかりがいいじじはゆっくりしていいよ!ゆっくりしないでさっさとなおしてね!」 「まあそう焦るな、この足を直すゆっくり秘孔は確かここだ!」 ドス! 「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!いだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!!!!!!!」 「ん?間違ったかな?」 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っあ゛っあ゛ゆ゛びでば!!!!!!」 ボン!!! 盛大な音を立ててまりさは爆発した。 「ふむ、ここも違ったか。だがここはここで面白い。」 そうメモを取りながら青年はつぶやいたのだ。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!ゆ゛っぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 「や゛べでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「ゆ゛べがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぶびら゛!!!」 ゆっくり達の地獄がそこにあった。 青年が一度ゆっくりに触れればそのゆっくりは苦しみながら死んでいった。 あるものは一日中死ぬような痛みに泣き続け干からびた。 あるものは餡子を自分の意思とは関係なく死ぬまではき続けた。 あるものは交尾もしていないのににんっしんっし無数の茎を生やし絶命した。 あるものは全身から液状化した餡子を激痛と共に噴出し続け死んだ。 「おにいさん!これはどういうことなの!?」 青年が集落に来て最初に会ったれいむが彼に詰め寄った。 今の集落の異変は間違いなく彼によるものだ。 いつの間にかおじいさんからおにいさん呼び名を変えた彼に事情を話してもらわなくてはならない。 彼女の集落内の饅頭にしては賢い頭は誰から見ても明らかな犯人をゆっくりでは唯一突き止めていた。 「おお!お前か!探していたんだぞ!」 そんなれいむの疑問を一切無視し青年はれいむを抱きかかえた。 「飾りこそ無いが肉体はゆっくり一倍健康かつ強靭!お前は最高の木偶になる!」 「な、なにいってるのおにいさん!ゆっくりしないでせつめいしてね!」 そんなれいむの叫びを一切無視し彼女を診察台の上におくと、彼はいきなり指を突き入れた。 ドス! 「ゆぎっ゛!!!」 いきなりの激痛に短く声が漏れる。 れいむは抗議の声を上げようと再び口を開いた、しかし 「っ!!!!!!っ!!!!!」 口から声が出なかったのだ。 それを見た青年は満足げに言った。 「やはり今のゆっくり秘孔は声を上げられなくなる秘孔だったのか!感謝するぞ! お前のおかげで俺様の研究はまた一歩完成に近づいた!」 れいむには分からない。 なぜ自分がしゃべれないのか、この青年が自分に何をしたのか、なぜやさしいこの青年が集落をあんなことにしたのか。 ゆっくりの頭ではとても理解できない。 「さて、お前はもう用済みだな。この前発見した花火のように全身の餡子が爆発するゆっくり秘孔で葬ってやろう。 なあに、怖がることは無い。痛みを感じる暇すら無く一瞬で死ねる。」 ドス! 「!!!!!!」 診察室という名の研究室に爆音が響いた。 健康的な黒い髪を持つ青年の手の中でれいむはその派手にその生涯を閉じた。 かつて「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれた集落はもうそこには無い。 そこにあるのはただ大量の、本当に大量のゆっくりの死骸のみ。 「ふう、時間はかかったが有意義な実験ができた。」 そう満足そうな顔でつぶやくのはこの集落に奇跡と地獄をもたらしたあの青年だ。 彼は元は加工所の研究者だった。 しかしゆっくり秘孔、ゆっくりの体に無数に存在する特殊な現象を引き起こす箇所の存在を発見し彼は変わった。 ゆっくり秘孔の実験と開発を繰り返すうちにそれに見入られ次々と、研究体以外の商品となるようなゆっくりをも殺した。 それが原因で彼は加工所をおわれたのだ。 職を失い研究環境を失った彼は浮浪者のように行く当ても無く森の中を彷徨った。 研究できないストレスで髪は白くなり栄養失中で頬がやせた。 そんな時発見したのがあのゆっくりの集落だった。 最初は治療の研究だけにしておこうと思っていた。 しかし彼のあふれる研究心は耐えられなかった、耐える気も無かった。 そうして生み出されたのが目の前の光景だ。 大量の餡子を前に、彼らに送る最後の言葉を彼はつぶやいた。 「俺の求めるゆっくり神拳はまだ遠い。」 彼は今日もどこかで自らが求める研究と拳法の完成めざしゆっくり達を付き続けている、かもしれない。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2894.html
その7より 虐待部屋を出た男と、抱えられたれいむ。 「ゆっくりどこにいくの?」 「隣の部屋さ」 「ゆっ?」 隣の部屋? 一体、隣の部屋に何があるのだろう? 男は隣の部屋の扉の前に行くと、徐に扉を開けて、中に入った。 一緒に隣の部屋に入ったれいむは、その部屋を見て、呆気に取られた。 「ゆゆゆゆゆっ!?」 そこはれいむが虐待以外の時間を過ごしていた、あの二畳半の部屋であった。 床にはブルーシートが敷かれ、部屋の隅にはドッグフードと水の張った桶が置いてある。 そして、部屋の中心には、さっきまでれいむが包まって毛布が無造作に投げ捨てられている。 「れいむ。この部屋は誰の部屋だ?」 男がれいむに問いかける。 「ゆっ……ゆっ……」 れいむには答えられなかった。 間違いなく自分がいた部屋である。しかし、部屋なわけがなかった。 れいむの隣にある虐待部屋、そこにはありすが住んでいたはずなのである。 「れいむ、不思議だろう? なんでありすがいるはずの部屋が、虐待部屋になっているんだと思う? 一体、ありすはどこで生活していたんだろうな?」 「ゆっ……」 「まあ、答える前に次に行くか」 男はそう言うと、れいむの部屋を出て、もう一つの隣部屋に入っていった。 れいむは、その部屋にも見覚えがあった。 「ゆゆっ!! ここは!!」 「覚えているか、感心感心。その通り、この部屋はお前たちが初日に箱の中で眠っていた部屋だ」 2か月半もたってはいるが、れいむは未だこの部屋を覚えていた。 何しろこの部屋は、れいむが初めて過ごした人間の家の部屋であり、恐怖を感じた未知の空間だったからだ。 忘れたくても忘れられなかった。 しかし、やはりおかしい。 ここは本当なら、まりさが住んでいたはずである。 それなのに、机や椅子が置いてあり、棚の中には本が置かれている。 それと引き換え、ドッグフードや水の桶は置いていなかった。 まりさは以前、部屋には何もないと言っていた。 それなのにこの空間といったら、物で溢れているではないか!! 「な、なんで……!?」 ポツリと言葉が出ているれいむ。 もう訳が分からなかった。 まりさとありすはゲスでレイパーだった? でも、れいむの知っているまりさは、ゲスではなかった? 親友のありすは、とても優しかった? れいむの隣の部屋には、まりさとありすが住んでいた? 隣の部屋は、虐待部屋? 隣は、最初にれいむが来た部屋? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? どうなっている? 一体どうなっている? 男は放心しているれいむを抱えて、再び虐待部屋に戻ってきた。 れいむを床に置いて、こっちを見ろと、命令してくる。 虚ろな表情で、男を見るれいむ。 男は、ポケットに手を突っ込むと、ゴソゴソと何かを取り出してきた。 男は取り出してきたそれを、れいむの目の前に掲げた。 「ちょうちょさん?」 れいむは、初めそれが蝶々のように見えた。 しかし、目を凝らして見てみると、無機質なそれは、決して蝶々でないことが理解できた。 蝶々のような何かを見せて、いったいどうするつもりなのだろう? れいむが考えを余所に、男は真っ赤な蝶々を自分の口元に持ってくる。 そして、口を開いた。 『ゆゆっ!! まりさのおよめさんのれいむ!! なんでそんなかおしてるの?』 「!!!」 れいむは、目を見開いた。 突然、どこからか、まりさの声が聞こえてきた。 その声色は、あの優しかったまりさの声その物であった。 れいむは部屋の中を見渡した。 透明な箱の中には、ボコボコにされたゲスまりさが、弱弱しく蹲っている。 こいつが話した訳ではないだろう。 なら、いったいどこから聞こえてきたというのだ? れいむが、忙しなく体を動かしていると、再びまりさの声が聞こえてきた。 『れいむ!! まりさはここだよ!! ゆっくりりかいしてね!!』 声の聞こえる方に目を向ける。 そこにあるのは、真っ赤な蝶々に口を当てた男の姿だった。 まさか、この男が言ったのだろうか? いや、そんなはずはない!! 今のは、明らかに男の声では無かった。 れいむの愛するまりさの声だった。 だったのだが…… 『ゆゆっ!! ゆっくりまりさのことが、わかったみたいだね!! うれしいよ、れいむ!!』 確実だった。 声は男の口元からしっかり聞こえてくる。 れいむは、益々理解が出来ない。 男はその後、蝶々を口元から離すと、手の中で蝶々に何かを施した。 そして、再び口元に持ってくる。 『ありすとれいむは、いつまでもしんゆうよ!!』 「!!!」 次に男の口から飛び出してきたのは、れいむの親友のありすの声。 もう何が何だか分からない。 れいむの餡子脳は、明らかに処理能力の限界を超えていた。 「わからないよ……」 ゆっくりちぇんの様な事を呟くれいむ。 目は虚ろで、焦点が全くあっていない。 男はれいむの態度を見て、ニンマリ微笑むと、口元から蝶々を離し、れいむに顔を近づけた。 「れいむ、一体何が分からないんだ?」 「……」 「まりさとありすが、ゲスのレイパーだった事か? それとも、隣の部屋が、虐待部屋だった事か? もしくは、俺の口から、まりさとありすの声が聞こえたことか?」 「……」 「まあ全部だろうな。今から順に説明していやるよ」 「……」 「まず、お前が初めてここに来た時、出会ったまりさとありすはこの二匹だ」 男はそう言って、透明な箱をバンバン叩く。 その度に、二匹は恐怖に歪んだ表情を見せてくれる。 「さっきのこいつ等の態度と映像で気づいているだろうが、こいつ等はゲスでレイパーだ。あの日、お前が見た二匹は、全部こいつ等の演技だったんだよ。 俺はこいつ等と契約してな。報酬を与える代わりに、俺のやることに付き合えって言ったんだよ。まりさの報酬は、美ゆっくり100匹。ありすは美ゆっくりに整形してやることだ。 ま、契約といっても、守る気なんてサラサラ無かったがね。こいつ等を釣るために口から言った出まかせだ。 ちなみに、整形ってのは、言ってみれば無理やり人工的に綺麗にするような事だ。お前が見たまりさ、美ゆっくりだっただろ? あれは、俺がしてやったんだ。 まあ、俺がしたというより、金を出して専門家にしてもらったというほうが正確なのだがね。元々は十把一絡げのどこにでもいる汚いゲスまりさだったんだぜ。 全く技術の進歩ってのはすごいよな。それとも、体の構造が単純だから、そんなことも出来るのかねえ?」 「……」 「まあ、そんな訳で、こいつ等は手伝ってくれることになったんだ。田舎者のれいむを思いっきり馬鹿にしてやるって言ったら、二匹ともノリノリだったな。 心底ゲスな奴らだね。まあ、俺も他人のことは言えないんだが、ハハハ」 「……」 「で、映像で見た通り、その日こいつ等は虐待をされなかった。虐待されていたのは、お前一匹だけだったんだ。でもお前は全員虐待されたと思っただろ? なぜだ?」 「……」 「なぜなら隣の部屋にいたまりさとありすも、同じく虐待を受けたってお前に言ったもんな。だから、お前は自分だけでなく、二匹も虐待されていると思い込んだ」 「……」 「もう気づいているんじゃないか、れいむ? あの声の正体に?」 「……」 「言ってほしいか、本当の声の主を?」 「……」 「それでは言ってやろう。あの壁越しに聞こえたまりさとありすの声の正体、それはなんと……」 「俺でした〜〜〜!!!!」 「…………」 「あり? 反応が薄いな。もっと愕然とした表情を見せてくれるかと思ったんだが……まあ、良いや、続けよう。お前が壁越しに話していた二匹は、俺がこいつを使ってしていたことだ」 男はそう言って、真っ赤な蝶々をれいむの目の前に掲げてくる。 「これはな、以前香霖堂という店で手に入れた物だ。このようにダイヤルを合わせると、好きな声を出すことが出来るんだ。 『まりさのおよめさんのれいむ!! そんなかなしそうなかおをしないでね!!』 『しんゆうのれいむ!! ありすがすりすりしてあげるわ!! ゆっくりなかないでね!!』とまあ、こんな風にな」 「……」 「何でも外の世界から流れてきた本を参考に、かっぱが制作した物らしい。それを香霖堂の店主が、ツケの代わりに貰ったそうだ。 高かったんだぜ。それ以上に非売品でな。店主もこれは商品じゃないと、中々売ってくれなったんだ。しかし、俺の努力の甲斐あってな。ようやく売ってくれたんだ。 一週間毎日のように通い詰めたもんだから、向こうもいい加減嫌気がさしたんだろうな。悪いことしたよ」 「……」 「で、これを使って、二匹のふりをしていたという訳だ。両方の違う壁から声が聞こえてきただろ。それには、このスピーカーを使ったんだ」 男はポケットに手を突っ込むと、丸い物を二つ取り出し、れいむの前に置いてやった。 『ああ、ああ、聞こえますか? 聞こえますか?』 『とかいはのありすよ!! ゆっくりへんじしてね!!』 男が出した丸い物体から、声が飛び出してくる。 最初のセリフは右側の丸から、後のセリフは左側の丸から聞こえたものだ。 「これをありすのいた部屋というか、この虐待部屋の壁に貼り付けていたんだ。で、もう一つの方は、本当はまりさがいるはずだった部屋に貼り付けた。 まりさの声を出す時はこっちのスピーカーから、ありすの声を出す時は、もう一つのスピーカーから声を出していたという訳だ。 だから、お前には両壁から、声が聞こえてきたという訳だ。だいたい分かってきたろ」 「……」 「つまりだ。お前が二か月半もの間、毎日のように話をしてきた相手は、なんとこの俺だったというわけだ」 「……」 「虐待部屋とお前の部屋を往復する時、木箱にお前を詰めただろ。それはな、これを知られないためだったんだよ。隣が虐待部屋だって気付かれたら、計画がすべておジャンだからな。 最初からお前だけが、虐待されていたんだよ。架空のまりさとありすは、どこにもいなかったという訳だ」 「………………」 れいむはようやく理解できた。何もかも理解出来てしまった。 れいむは、ひたすら男の掌の中で踊っていたということが。 「ここに来てまりさに出会い、一目で惚れたよな。横から見ても、アリアリと分かったよ。でどうだ、今の気分は? 実際のまりさはゲスで、美しさも作られた物だと知ってしまった気分は? そんなゲスまりさと婚約した気分は? 悔しいかい? 悲しいかい? どうなんだい?」 「……」 「それからありすもね、本当の姿はレイパーだったんだよ。あ、ちなみにこいつの親がレイパーだってのは本当の話だぞ。 ただ、嘘だったのは、こいつがレイパーを憎んでいるって話な。こいつ自身、生粋のレイパーだから。むしろ、親以上だろって言いたくなるほどのな。 どうだい。そんなありすと親友になれて? 君たち、確か親友だよね? これからも親友でいようって約束したよね? レイパーと親友になった気持ちは? 教えてくれよ!!」 男はニヤケ顔を止めず、れいむに言ってくる。 何を馬鹿な事を言っている。 自分が大好きだったのは、あの勇敢で凛々しいまりさだ!! 自分の親友は、優しく本当の都会派であったありすだ!! 決して、この透明な箱の中で醜い姿を曝している二匹ではありはしない!! 「れいむがおよめさんになったのは、このげすまりさじゃないよ!!!! れいむのしんゆうは、こんなれいぱーありすじゃないよ!!!!」 れいむは今までも鬱憤を晴らすかのように、盛大に叫んだ。 しかし、男は一向にニヤケ面を改めようとしない。 寧ろ、男にとっては、その言葉を待っていた節すらあった。 「そうか、こいつ等は婚約者でも親友でもないか。それなら、お前の本当の婚約者と親友は、一体どこにいるんだ?」 「ゆっ!?」 「ああ、そうか。お前の本当の婚約者は俺か!! 本当の親友は俺なんだな!!」 「ち、ちがうよ!! ゆっくりごかいしないでね!!」 「誤解も何もそう言うことだろ? お前が2か月半も一緒に生活してきたまりさとありすは、全部俺の演技だったんだから」 「ぢがうよおおおおぉぉぉ――――――――!!!」 「本当にいろいろな事を話したよな。一緒に俺の悪口を言ったり、作戦会議をしたり、ここから出られたらどうするか話し合ったり」 「やめでええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――!!!!」 「途中、お前の居場所が無くなってきただろ。あれはな、俺がそうなるように仕向けたんだよ。まりさとありすを演じて、お前が一匹除け者にされるようにな。お前の焦りっぷりったら、止められなかったぜ」 「いうなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――!!!!!」 「そう言えば、ありすというか、ありすを演じた俺の告白はどうだったよ? 迫真の演技だっただろ? あれでお前はまりさに告白する決意を固めたんだもんな」 「やめでええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――――――――!!!!」 「しかもその後自分から虐待まで受けるとは。プププ、そんなにまりさと対等になりたかったのかい? その為に、怖い怖い虐待を進んで受けたのかい? 俺が相手だとも知らずに、プププ。おお、愚か愚か」 「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――――――!!!!!!」 「ありすを出し抜いた気分はどうだい? 優越感に浸れただろ? でも、今思えばとても恥ずかしいよね? 何しろ、俺に告白して、俺に優越感を感じているんだから」 「ゆぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!!!!!」 「そもそもさ、おかしいと思わないのかねえ。自分から進んで虐待を受けたがる奴なんて、いるはずがないじゃん。 家族の為ならまだしも、他ゆっくりの為に自分から進んで痛い目に会うって、いったいどんなマゾよ。 それにさ、ありすにしても変だろ。 お前のしたことって完全に裏切りじゃん。それなのに許すばかりか、いつまでも親友でいようねなんて、いったいどこの聖人君子よ。 真に都会派のありすなんて者がいたら、一遍お目にかかってみたいわ。まあ、そんなもん、いないだろうけどな」 「……もう、やめでよ」 「れいむ、お前は最高のゆっくりだったよ。お前を選んで本当に良かった。 森の中で伸び伸びと暮らし、呑気で疑うということを知らない無垢なゆっくりが、少しずつ負の感情に染まっていき、狡猾で計算高くなっていく様をしっかりと見させてもらったよ。 俺としては、お前の性格の変化によっていくつかの結末を考えていたんだが、その中でも最高に近いエンディングを見せてもらったよ。本当にお前は名タレントだった。 俺の掌の中で遊ばれているとも知らず、自分の作戦が順調に進んでいると思っている姿を見たら、途中で何度本当のことを言い出してしまいそうになったことか。 いやはや、危なかったよ。しかし、我慢したおかげで、こんなに素晴らしい喜劇を制作することが出来た。ありがとう、れいむ!!」 「……やめてよ」 「ただ、一つ失敗したのは、あのゲスとレイパーをボコボコにしてしまったことだな。本当なら、万全な姿でお前に会って欲しかったんだが。 その方が、お前にとってこみ上げるものがあるだろ。何しろ、虐待をされてるのは、正真正銘お前だけなんだから。 同じ虐待をされる仲間がいるからこそ、今まで耐えられてきたのに、実は自分だけが虐待されていると分かったら。 良ゆっくりであるお前だけが虐待されて、ゲスとレイパーはそれを見て笑ってるんだから。どうだ、想像しただけで、来るものがあるだろ?」 「……」 「しかし、こいつ等はあまりにもゲス過ぎた。俺の神経を逆なでしすぎたんだな。映像を見ればわかるだろ。じじいとか言ってくんだぞ、こいつ。 いやはや、すっかり我慢できずに、こんな姿にしちまったよ。ゲスの虐待なんて、やりすぎてもう飽き飽きなんだがね。はあ、惜しいことをした……」 「……」 「れいむ、また口が止まったぞ。会話はキャッチボールだ。お前も何か言えよ」 「……」 「おい、何か言えって」 「……ゆっくりここからだしてね」 「はあ?」 「……ゆっくり、このおうちからだしてくれるっていってたよ……ゆっくりまもってね……」 れいむはもうすべてどうでもよかった。 男の話は、しっかり理解した。自分がピエロだったことは、十分理解出来た。 もうどうでもいい。 まりさがゲスだったことも、ありすがレイパーだったことも、男がずっと自分を騙していたことも、どうでもよかった。 ただただ今はこの家を出たい。 外の空気を思いっきり吸い込みたい。 すべてを忘れたい。 れいむは、何度も「ここからだしてね」と繰り返した。 「……タレントなら、最後までしっかりと責任を持ってほしいものだがな。まあいいだろう。お前の消沈ぶりを見せられれば十分だ。家から出してやるよ」 男は虐待部屋の扉を開けると、「ついてこい」と、れいむに顎をしゃくる。 れいむは、虚ろな目をしながら、ただただ男の後に続いて行った。 男は玄関前にやってくると、ドアノブにてを掛けた。 しかし、そこでピタリと手を止めてしまう。 「れいむ、本当に帰るんだな?」 「……ゆっくりはやく、ここからだしてね」 男は「確認したぞ」と言いながら、玄関のドアを開けた。 これで帰れる。 これでこの辛い暮らしともオサラバ出来る。 森に帰ったら、すべてを忘れよう。なかったことにしよう。 そうだ、お母さんの所に帰ろう!! きっとこの悪夢は、お母さんの言葉を聞かなかった自分に天罰が下ったのだ。 これからは、お母さんの傍で、ずっとゆっくりしよう。 友達といっぱい遊ぼう。 無限の可能性を秘めた玄関のドアが開けられた。 れいむは、勢いよくそこに飛び込んでいく……が、 「ゆっ……ゆゆ………ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!!!!」 れいむの目に真っ先に飛び込んできたのは、白だった。 見る物触る物すべて白一色に染まっていた。 それは、ゆっくりを決してゆっくりさせてくれない大自然の猛威。 一面の銀世界に、れいむは言葉を紡げなかった。 「ああ、一つ言い忘れてた。実は昨日、この冬一番の寒波が来てな。雪が積もりに積もったんだわ」 「ゆっ……」 2か月半。 れいむが男に虐待されている間に、季節はすっかり移り変わり、本格的な冬が到来した。 れいむは気付きもしなかった。 そもそも、れいむのいた部屋には窓がないし、その日を生き抜くのに精いっぱいで、そんなことに頭を回している余裕もありはしなかった。 男が巧みな話術で、それを思い出さないように仕向けていたこともある。 また、ゆっくりの巣と違い、人間の家は防寒に優れており、毛布も与えられていたため、気温の変化も気付きにくかったのだ。 「こりゃあ、雪かきが大変だな。全く嫌になるよ。森の方もさぞかしすごいことになってるだろうな。一面雪が積もって、巣の場所なんて分からないだろうね。 それに、餌はあるのかなあ? 動物も昆虫も冬眠してるだろうし、草も花も木の実だってもうあるわけないよねえ」 「ゆ……ゆ………」 「たいへんだな、れいむ。これからこんなところで生きていかなきゃならないなんて。でも、俺は応援しているよ。 ゆっくりお家を作って、ゆっくり餌を集めて、ゆっくり冬眠していってね!!」 何を馬鹿な事を言っているのだ!! こんなところで暮らせるはずがないだろう。 男の言葉通り、森は雪で埋まり、どこに巣があるかも分からない状態だろう。 今から巣を作るなんて言語道断だし、餌なんてあるはずがない。 その以前に、こんな雪の中を歩いて森に帰れるはずがない。 道中、空腹で死ぬか、寒さで凍え死ぬかが落ちだろう。 れいむは男の顔を覗き込んだ。 男はそんなれいむを見て、ニヤニヤとうすら笑いを浮かべている。 知っていたのだ。 れいむがここから出られないことを。 ここから出ても、待っているのは死だけであると。 れいむが助かる方法はただ一つ。男に助けてもらう以外、方法がないのだと。 悔しかった。 ようやく抜け出せると思っていたのに、結局最後の最後まで、男の手の上で踊っていただけの自分が。 あれほどの仕打ちをしてきた男に助けてもらえなければ、生きていくことも出来ない脆弱な自分が。 れいむは悔しかった。 それでも、れいむは死にたくなかった。 死ぬことが怖かった。 「……おにいさん。ゆっくりれりむをおうちにいれてね」 「なんだ、森に帰りたいんだろう? 遠慮するな、れいむ」 「……ゆっぐりおねがいじまず。れいむをおうぢにいれでぐだざい」 「ふーむ……ま、良いだろう。何しろ俺のお嫁さんだしな。どうだ、前に言ったろ。“まりさ”の家は、人間の家と同じくらいデカイって。 ははは、当り前だよな、俺は人間だもん。大きなお家で暮らせて嬉しいだろ。これからも精々可愛がってやるよ。なあ、れいむ」 「……ありがとう……おにいさん」 おまけ 男は里の道を歩いていた。 生活用品の買い出しと、香霖堂への贈り物を買うためである。 今回の虐待は、香霖堂の店主があれを譲ってくれなければ完成しなかった。 半ば無理やり譲ってもらったような品だ。あの店主は人が出来ているので受け取ってくれないかもしれないが、贈り物でもしないとこちらの気が済まない。 あれだけ壮大な虐待が出来たのも、すべて店主のおかげだ。受け取ってくれなければ、無理にでも置いてくるつもりだった。 男は、幼馴染がやっている和菓子屋に入っていく。 「いらっしゃい……って、なんだお前!! その格好は!!」 馴染みの店員が、男の恰好を見て唖然とする。 「ん、なんかおかしいところでもあるのか?」 「お、おかしいって、お前、寒くないのか?」 男が来ていた服。 白いシャツに、青いジャケット。水色の短パンに、極めつけは赤い蝶ネクタイ。 七五三で男の子が着るような恰好である。 格好のみならず、脛毛がとても痛々しい。 「ああ、寒い」 「寒いって……分かってて、何でそんな恰好してんだよ!? 変態か? 変態なのか? だいたいその眼鏡はなんだ、視力2.0!!」 「誰が変態だ!! 最近、ちょっとしたことにハマってたんだが、この格好のほうがやる気が出てくんだよ。 変態じゃねえよ!! 仮に変態だとしても、変態という名の探偵だ!! ちなみに眼鏡は伊達な」 「探偵って……ああ、もういいわ。お前が変人なのは、昔からだもんな」 「なんだと、この野郎!!」 「まあ、それはさて置き、いいところに来たよ。近々、お前の家に行こうと思ってたんだよ」 「用事でもあったのか?」 「この前みんなで集まってな。今度の春に合わせて、演劇でもしようと決まったんだ」 「へえ」 「でだ、お前も当然参加するだろ?」 「ああ、させてもらうよ」 男は里の劇団員の一人である。 劇団といっても本業でしているわけではなく、趣味の合う者が集まって作られたサークルである。 「ところで、どんな演目をするんだ?」 「まだ決まってないよ」 「ならゆっくりの役を取り入れたらどうだ?」 「ゆっくり? ゆっくりって、饅頭のゆっくりのことか?」 「ああ。自慢じゃないが、俺はゆっくりを演じさせたら、幻想郷一という自信があるぜ」 「……本当に自慢じゃないな」 店員は呆れているようだ。 男はとりあえず、店主への贈り物を選び包んでもらう。 「ところで練習場所はいつものところだな?」 「ああ、そうだ」 「いつから始めるんだ?」 「遅くとも来週には取りかかりたいな」 「分かった。予定をあけとくよ」 男は用事も終わったので、店を後にしようとした。 「おい」 「まだ何か用事があるのか?」 「どうでもいいが、そんな恰好で練習場所にくるなよ。みんな引いちまうぞ」 「うっせえ、俺の勝手だろ」 「バーロー」 〜fin〜 久しぶりだね、兄弟(・∀・)ノ 何が書きたかったかというと、最後のセリフを書きたかっただけである 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ ゆっくりいじめ系936 カルガモとゆっくり 前編 ゆっくりいじめ系937 カルガモとゆっくり 後編 ゆっくりいじめ系938 カルガモとゆっくり おまけ ゆっくりいじめ系960 ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3694.html
『真冬のゆっくり対策 5』 「「「「ゆゆゆゆゆ!!!!!!!」」」」 「「「「「ゆううううう!!!!!」」」」」 「な…どうしたの皆?」 (あーあ。やっちゃった) 「ど…どぼじでえええ!!!!」 「どすが…どすが…」 「どすがいなぐなじゃっだよおおおお!!!!」 「「どぼじでにんげんがごごにいるのおおおお!!!!!」」 「「にんげんがぜめでぎだよおおおお!!!!だずげでええ!!!!」」 「ええ!何で!!どうして!?…あ、しまった!」 「ちょっと来い!!!!」 虐待お兄ちゃんは彼女を連れて洞窟の外へ出て行った。 「ぶかぶかだったからな。避けた拍子に帽子が取れたんだ」 「ど…どうしよう…これじゃもう…」 飛び掛ってきたまりさを避けた拍子に彼女が被っていた帽子が外れてしまい彼女の正体がばれてしまったのだ。 「ん!…何か来る!隠れて」 彼らは木々の陰に隠れた。 「ゆううう!!!!!……ゆぴいいいいい!!!さぶいよおおお!!!!」 1匹のまりさが洞穴から飛び出したがあまりの寒さに洞窟に戻っていった。 「何をしてたんだ?」 「どうしよう…どさくさに紛れて村に移動したら…」 「この寒さにしかも雪じゃ村まで移動できないだろう。…と言ってられないかもな。俺貯めてあった食糧に悪戯しちゃったし」 「逃げられたら駆除ができなくなっちゃう…」 「もう火攻めでいいんじゃないですか?」 「駄目よ!!私の村で狼藉を働いておきながら軽く殺してすませるわけにはいかないわ。それに…」 「それに?」 「うぅ…」 「と…とりあえず奴らの様子を見ないと…あ、その帽子俺に貸してくれません?俺だったらまだ騙せるかもしれないです」 「わかったわ。私はここで待ってるから」 彼は帽子を被ると洞窟の中へ向かった。 数分後 「駄目だ駄目だ。あいつら警戒してやがるわ」 彼は手でバッテンマークを作りながら洞窟から出てきた。 「やっぱり駄目だったのね」 「でもほっとけない事言ってたぜ」 「何…?」 「人間に復讐したいだとよ」 「じゃあ村に…」 「多分そうしたいんだろうな。だけどこの雪と寒さじゃ無理ですよ」 「でも…」 「ヤケおこして…なんてこともあるね。それにどこか別の場所に逃げられても面白くないな」 「どうしよう…もう暗くなってきちゃった」 「あと1時間ほどが限界ですね。…何か案とか?」 「無いわ…道具も何もないし」 「とりあえず…あの穴を埋めときますか?」 「洞穴の?」 「ええ。粗くていいです。埋めるというよりは大きな雪山でも作っておきましょう。そうすればゆっくりは洞窟から出られないですよ」 「そ…そうね、何もしないよりはマシだわ」 彼らは洞窟の前に移動すると雪をひたすら洞窟の前に集めだした。 「ゆううううう!!!!!!」 「よぐぼありずを!!!!ばりざを!!!!」 途中勇敢にも巣から飛び出して襲い掛かってくるゆっくりがいたが全てシャベルで殴り殺されたり刺されたりして散っていった。 1時間後洞窟の前に大人の身長ほどの雪山が出来上がった。 「多分これで閉じ込められるでしょう」 「この山を崩すかも…」 「相当根性のあるゆっくりじゃないと無理ですよ。多分これなら…」 「私達も戻りましょう。ここは暗くなると危ないわ」 「ええ。帰って明日のこと考えましょう」 彼らは山を降りて行った。 -巣の中では- 「い…いっだいなんだったのおお!!」 「わ…わがらないよおお!!!」 彼らが外に飛び出した後洞窟の中はざわざわしていた。 「…むきゅ…みんなよくきいて…ぱちゅりーたちは…にんげんにだまされていたのよ…」 「「ゆゆ!!!」」 「どすがいたのに…なんで…」 「あれはどすじゃないわ…にんげんがへんそうしてたのよ…」 「じゃ…じゃああかちゃんがしんじゃったのも…」 「にんげんのせいよ…」 「みんながしんじゃったのも…」 「にんげんの…せいよ」 「「そ…そんなああ!!!」」 「「ゆええぇえぇん!!!!」」 「「ごべんねええ!!!!ばがなおやでごべんねえええ!!!あがじゃんゆるじでええ!!!!」」 「「ばりざぁ…ばりざあ…なにもじであげられなくでごべんねええ!!!!!」」 「「ぐ…ぐやじいよおお…」」 泣き喚くゆっくりの中で1匹のまりさが叫んだ。 「ゆるさないよ!!!いまからふくしゅうしにいくよ!!!!」 「ま…まって!!!おそとはさむくて…」 「そんなことしってるよ!!!でも…でぼごれじゃあ…あがじゃんが!!!でいぶがあ!!!」 まりさは外に飛び出した。 「ゆううう!!!!!……ゆぴいいいいい!!!さぶいよおおお!!!!」 だがすぐに引き返してしまった。 「こ…これからどうすればいいのぉ…」 「わ…わからないよ…」 「くやじいよぉ…」 ゆっくりは何か話し込んでいた。 「ゆ!だれかがくるよ!!」 「「「ゆ…ゆっくりしていってね!」」」 やってきたのは帽子を被った虐待お兄ちゃんだった。 「ゆっくりしていってね!どうしたんだい?騒がしいけど」 「すっごいおおきなまりさだよ!」 「もしかして…どすなの?」 「…ああ、私はドスだよ。ドス。昔ね、ここの辺りに住んでいたんだけど今は違うところにいてね。冬の間にみんながゆっくりできている かどうか調べて周っているんだよ」 「「「ゆぅ…??」」」 「「「ほんとうに…どすなのかな?」」」 「そういえばみんな、アレが来なかった?」 「あれって?」 「なんのこと?」 「最近人間さんがドスの帽子を被って巣の中を荒らしているって噂を聞いたんだ。ここの巣には人間さん来なかった?」 「「ゆ!!」」 「「ど…どすぅ…」」 「……はい?」 「「「「ゆえぇえん!!!!ぐやじいよおお!!!」」」」 「「「「あがじゃんがじんじゃっだよお!!!」」」」 「「「「おどもだぢがじんじゃっだよおお!!!!!」」」」 「そうかいそうかい、ちょっと遅かったね。ごめんねみんな」 どうやら彼をドスと勘違いしてくれているようだ。 「むきゅ!おもいだしたわ!!こまったことがあったらどすにたすけてもらえって。おひさまがしずむところにどすがいるってありすがいってたわ!」 このぱちゅりーはリーダーありすの妹だった。そのリーダーありすは先ほどの殺し合いで潰されて死んでしまった。 「きっとそのどすだよ!!」 「どすうう!!!!!きてくれてうれしいよお!!!!」 「どす!!まりさたちを…たすけてほしいんだぜ!!!」 「どうしたいんだい?助けるっていっても…」 「にんげんにふくしゅうしたいんだぜ!!!」 「はたけさんからおやさいさんをたくさんもっていってこのこたちをゆっくりさせてあげて!」 「れいぶはあがじゃんもまりざもなくしじゃっだんだよ!!!ぐやじいよお!!!」 「「ちょっとまって!!!!」」 先ほどのぱちゅりーとまりさが彼の目の前に現れた。ちなみにこのまりさはぱちゅりーの番である。 「どす…ほんとうにどすなの?」 「何を言ってるんだ?」 「ど…どす…おこらないできいてほしいんだぜ…」 「おぼうしさん…とってくれる?」 「「「ゆゆゆ!!!!」」」 「どうして!!!どすはどすだよお!!!!」 「そうだよ!!こんどこそほんもののどすだよお!!!!」 「わかってるんだぜ!だから…だからぼうしをとってほしいんだぜ…」 「ぼうしをとってにんげんじゃなかったら……きっとどすよ…」 「…………」 「おねがい…ぼうしさんを…」 「ふふふふ…ははは……」 「ど…どす!」 「それっ!」 彼は隠し持っていた霧吹きの中身を全てまりさにぶちまけた。 「ゆうううう!!!!なんなんだぜ!!ぺっぺっ!!!このおみずさんはなんなんだぜ!!!!!」 「むぎゅうううう!!!!」 「ぱ…ぱちゅりいいい!!!!」 霧吹きを投げ捨てるとぱちゅりーを掴み挙げた。 「な…なにするの!!」 「いやあ…君には参ったよ!!まさかばれちゃうなんてね!」 そう言うと彼は帽子を取った。 「「ゆぎゃああ!!!!にんげんだああ!!!!」」 「「こ…こわいよおおおお!!!」」 「こ…このいなかもの!いますぐぱちゅりーをはなしなさい!!!」 「ぱちぇをはなすんだぜ!!!」 「じねえ!!!じじいはゆっくりしないでじねええ!!!!」 何匹かのゆっくりが彼に体当たりを喰らわせるが彼には痛くも痒くもない。 「ははは、全然痛くないぞ」 「うるざい!!!!」 「がまんなんがずるなああ!!!じねえええ!!!!」 「ほれ!」 「ゆぎゃん!!!!」 「ゆべじ!!!」 「じゃあぱちゅりーは特別に俺がゆっくりさせてあげよう」 「む…む…ぎゅううううう…」 「それそれ!!」 彼はぱちゅりーを壁に押し当てると大根おろしを作る要領でぱちゅりーを擦り始めた。 「むぎゃああ!!!!いぎぃいいいい!!!!やべ…むぎゅううう!!!!」 「ぱ…ぱじゅりいいいい!!!!」 「いやあああ!!!!!だれがああ!!!だれがだずげであげでえええ!!!」 「ほらほら、早くしないと死んじゃうぞぉ」 「や…やべでね!!!ばじゅをはなじでねええ!!!!」 「ごの…いながもの!!!いながぼのおおお!!!!」 「じじいはゆっくりしないでじんでじまえええ!!!!」 「もうちょっと本気だしなよ……。黙ってないでぱちゅりーも少しは……あ……口が無くなっちゃってる」 ぱちゅりーは体の半分ほどを摩り下ろされ目から下が無くなっていた。 「よっと」 「ば…ばりざのおぼうじがあああ!!!」 彼はまりさの帽子を取り上げ代わりに半分だけになったぱちゅりーを被せた。 「よく似合ってるじゃん。ぱちゅまりさ…でいいかな、この帽子はいらないね。ビリビリっと」 「ゆぎゃあああ!!!!は…はなれてね!!!ぱじゅりいはまりさからはなれてええ!!!!」 ぱちゅまりさは飛び跳ねるがぱちゅりーの死骸は離れてくれなかった。壁に頭を打ちつけ何とか取り外すことができたが頭はぱちゅりーの 中身である紫餡まみれになってしまった。 「ゆああああああ…………」 ぱちゅまりさはショックで口を開けたまま動かなくなってしまった。 「よ…よぐぼばりざを!!!!!」 「ぱじゅりいとばりざのがたぎだああ!!!!じねえええ!!!」 「ははは。威勢がいいね。でもそんなことしてていいのかな?さっきのまりさはどうなってるんだろうね?」 「「ゆ?」」 「ほれ、そこで黒くなってるぞ」 「…ゆぎゃあああああ!!!!」 「どぼじで…どぼじでばりざが…あ…あ…」 「ばりざあああ!!!!いづずっぎりいじじゃっだのおおお!!!!」 「ばりざああ!!!!じんじゃだべだよおお!!!ゆっくりじでよおおお!!!!」 番まりさは体中から茎を生やして黒くなっていた。実は数十個生えているものの黒い塊で赤ゆっくりサイズには程遠い大きさだ。体中から 餡子を抜かれ既に息絶えていた。 「そ…そんなあ…」 「じっがりじでよおおお!!!ばりざああ!!!」 「どぼじでえ…どぼじでごんなごどずるのお…」 「でいぶだぢはここでゆっぐりじでだだげなのにい…」 「こんなの…とかいはじゃ…ないわ…ゆえぇえん…」 「言うだけ無駄だ。言ったところでてめえらが反省するわけないし」 彼は洞窟から出て行ってしまった。 「だめだよ…あんなにつよいんだよぉ…」 「ゆえぇえん…」 「な…なにかあるはずよ!!なにか…なにかがぁ…ゆ…ぐ…ずっ…」 ゆっくりは泣きながらこれからのことを話し合っていた。 「ゆ!!いりぐちからおとがするよ!!」 「たいへんなんだぜ!!さっきのじじいとばばあが…いりぐちをふさいじゃっでるよおお!!」 「にんげんがそこにいるんだね!!」 「あがじゃんのがだぎだあ!!!」 「ごろじでやるううう!!!!」 数匹のゆっくりが入り口に走っていった。しかし入り口から聞こえてくるのはゆっくりの悲鳴だけだった。 「ゆううううううう…」 「だべだよお…がでないよお…」 巣に残っているゆっくりは仲間の悲鳴を聞きながらただ震えることしかできなかった。 「いりぐち…ふさがれちゃったよ…」 「どうじだら…いいの」 「ゆうううう…」 -村- 「今日はこのあたりでいいだろ」 「そうだな。結構はかどったよ」 「今夜は鍋ですよ。みなさん食べていってください」 「待ってました!!」 「姉ちゃん、酒はあるかい?」 「ええ。たくさん飲んでいってください」 「いいねえ」 「そろそろ山に行った奴らも帰ってくるだろうよ。成果聞かないとな」 つづく by 虐待おにいちゃん
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1666.html
森のゆっくり 気楽 ・家のゆっくり 家のゆっくり 気楽 現 人 家のゆっくり2 気楽 家のゆっくり3 気楽 今日は土用丑の日 気楽
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/812.html
前 この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(後) ドスが負けた。 その事実は、群れにかつてない混乱をもたらした。 負けた? ドスが? あの強いドスが? 群れにおいて、ドスは絶対の存在だった。誰よりも大きく、誰よりも強く、誰よりも優しい。 だがその『絶対』は、たった今、崩壊したのだ。 ただ一匹の、倒れ伏したドスの前に佇む、あのまりさの手によって。 戦いの前、まりさが皆に告げたことが思い出されていく。ドスが勝っていたのであれば、考える必要もなかったはずのことだ。 ドスは本当に──ドスだったのか? 武器を使ったとはいえ、必殺のドスパークまで破られたドスは、本当に信頼に値するドスだったのか? あのまりさの言うことは、紛れもない事実だったのではないか? 『絶対』であったものが否定されたとき、その『絶対』を寄り代にしていた全ては脆く崩れていくものだ。 ドスの強さが否定された今、ドスが行っていた食料集めや教育の是非を、ゆっくり達は再び考え出した。 「ゆー! みんなー!」 そこに、ドスの家に向かっていたゆっくり達が戻ってきた。 「まりさのいっていたことはほんとうだったよ! どすはいえのおくにたくさんのごはんをためていたよ!」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 まりさの言っていたことが証明された。 ゆっくり達は迷った。ドスは、まりさの言うとおりゆっくりできないゆっくりだったのかもしれないし、本当に予備の食料を溜めていただけかもしれない。 ゆっくり達はまさかドスが負けるとは思わなかったので、決闘のあとまりさの発言の真意を問い質せばよいと思っていたが、今、そのドスは動かない。 ゆっくり達は、今後のこと、何よりもまりさの扱いに悩んだ。 何故ならば、あのまりさを一度はこの群れから追い出してしまっている。 まりさの言うことが全て正しかったとして、今更どんな顔をして付き合っていけば良いというのだろう。 皆が対応に苦慮する中、何匹かの小さなゆっくり達が群れから飛び出し、結界の中に入っていった。 「ゆー! まりさはすごいんだぜ! あのどすにかったんだぜ!」 飛び出していったのは、主に群れの中でも幼いゆっくり達だった。 日ごろからドスの厳しい方針に不満を持っていたそのゆっくり達にとって、まりさは圧政からの解放をもたらした英雄のように思えたのだ。 「まりさ、れいみゅたちをたちゅけてくれちぇありがちょー!」 「まりさはすっごくつよいわ。おおきくなったら、わた、わたしをおよめさんに……!」 「まりさがいればもうこわいものなんてないんだぜ! どすよりよっぽどたよりになるんだぜ!」 口々に子ゆっくり達はまりさを囃し立てる。当のまりさはまだじっとドスのほうを見ていたが、子供達は気にしていないようだった。 一頻り騒いだ子供達が、さっと皆のほうを振り返って、言った。 「なにしてるのおかーさん! まりさはどすをやっつけたんだよ! まりさのいってることがただしいって、もうわかってるでしょ! だいじょうぶだよ! まりさがあたらしいりーだーになってくれれば、どすのときよりもっとむれはよくなるよ!」 「「「「ゆっ……」」」」 その考えは、あっという間に群れ全体に広がっていった。 そうだ。確かにまりさの言うとおり、ドスは内緒で食料を溜め込んでいた。それは皆の信頼を裏切る行為ではないのか? 悪いドスは、しかしまりさによって斃された。それは自分達にとって喜ばしい事態ではないのか? よしんばドスが悪くなかったとしても、まりさはドスに勝利を収めたゆっくりなのだ。 ならば、あのまりささえいてくれれば群れは安泰になる。逆に言えば、ドスより強いまりさに逆らうこともできやしない。 一度、ひどい勘違いから追い出してしまったが、そこは誠心誠意謝るしかない。 まりさは今も怒っているかもしれないが、群れのリーダーという立場を得られるなら、きっと許してくれるはずだ。 「「「「ゆー♪ まりさー!!!!」」」」 ゆっくり達は、まりさを讃えるべく一斉に広場の中心に殺到した。 群れのゆっくり全てが結界の中に押し込められたので、流石に手狭だったが、そんなことは誰も気にしなかった。 今はただ、群れをドスから解放してくれた英雄、まりさのことが大事だった。 皆が口々にまりさを褒め称える中、一匹の大きなまりさがまりさの前に進み出た。まりさの父だ。 「ゆ! まりさはおまえのことをごかいしていたよ! おまえはむれをどすのあっせいからときはなってくれたんだね! まりさはおまえのようなよいこどもをもってはながたかいよ! ありがとう!」 それでもまりさは父のほうを向かず、ただ潰れたドスを見ていた。 「よくもだましてくれたな!」 「おまえなんかどすじゃないよ! ほんとのことをいえば、ぜんぜんゆっくりできてなかったよ!」 「そのままゆっくりくさっちゃえ!」 複数のゆっくりがドスを取り囲んで、暴力を振るっている。内心、溜め込んでいたものがあったのだろう。 そんなまりさとドスの様子を、男は終始無言で眺めていた。 広場中からまりさコールが響く中、先程ドスの家に行っていたもの達がまりさの前に出てきた。 「まりさ! まりさのいうとおり、たくさんのごはんがあったよ! それとどすにきょうはんしゃがいたよ! さいごまでごはんをわたそうとしなかったからころしちゃった! これがそのしょうこだよ!」 そう言ってパチュリーのものと思しき髪飾りを差し出した。 他のゆっくり達はその行為を責めるどころか、むしろ褒め称えた。ゆっくり達の中では、既にドスとそれに与するものは完全に悪だった。 まりさの父が、また口を開く。 「まりさ! どすをたおしたおまえが、いまからこのむれのりーだーだよ! まりさがいてくれれば、もうこのむれにこわいものなんてないよ! どうかむれのみんなをささえてあげてね!」 強く育った息子を前にして、父は満面の笑みでそう言った。 かつてのリーダーの発言の影響は大きい。ここに正式に、まりさが群れのリーダーとなることが決定したのだ。 まりさはそこでようやく顔を上げ、 「うるさい」 父親の顔面を、丸ごと齧り取った。 ドスを倒したとき、まりさにはなんの感慨も湧かなかった。 あれほど強く、猛々しく燃え盛っていた復讐の炎は、勝利を得ると同時にまるで嘘のように消え去ってしまった。 ドスは、強かった。攻撃を受けたのは一度だけだったが、それだけで理解した。 男の教えがなければ、あっさりやられていただろうことは、まりさにも分かる。 だが倒れ伏すドスからは、あの強さは微塵も感じられない。ただの敗者でしかなかった。 こんなものを──本当に自分は望んでいたのだろうか。 ドスに復讐する、という途方もない目的を達成したというのに、嬉しくもなんともない。 ああ、そう言えば。復讐という目的はあっても、その後に何をしたいのか──全く考えていなかった。 群れを助けたいという願いはあっても、その群れに戻ろうという考えは、どうしてだか一切思いつかなかったのだ。 まりさは途方に暮れた。 まりさは、目的を喪ったのだ。 そんなとき、群れの子ゆっくり達が駆け寄ってきて、次々にまりさを褒め称えた。 やがては大人達も、口々にまりさの偉業を褒め称える。 その様子に、まりさは静かな気持ちのまま、気の狂いそうな違和感を覚えていた。 なんだ、これは。 こんなものが、勝利の末に得るものだと言うのか。 皆は、あのドスを慕っていたんじゃないのか? 騙されていたとはいえ、さっきまでリーダーと崇めていたんじゃないのか? まりさはドスを倒したあと、自分が恨まれるのではないか、と考えたことがあった。 そして、それでも良いと思ったのだ。あの悪いドスがいなくなれば、きっとまた皆、自分の力でゆっくりできるはずだと。 だが、どうだ。群れはまりさを恨むどころか、新しいリーダーとして群れに再び迎え入れようとしている。 一度は話も聞かず、強制的に群れから追い出した自分を。 父親は心底嬉しそうに、息子である自分に微笑んでいる。二ヶ月前、中心となってまりさを追い出しておきながら。 そんなことまるでなかったかのように。 一匹のゆっくりが、何か言いながらまりさのところまで駆け寄ってきた。 その口に咥えていたのは、ぱちゅりーのリボン。 見間違えるはずもない、まりさの友人で、ドスの元に通っていた、あのぱちゅりーのもの。 なんで、そんなものがここにある? 自分は何のために戦ってきたのか。群れをドスから解放するためだ。ぱちゅりーやれいむを助け出すためだ。 なら──どうしてここに、ぱちゅりーのリボンがある。 どうして、ぱちゅりーは殺されてしまった。 そしてまりさはとうとう、一つのことを確信した。 (ああ、そうか) このゆっくり達は、数日前自分が虐殺した、百二十一匹のあの群れと同じものだと。 自分にとって有益なものは全力で迎え入れ、有害なものは全力で排除しようとする。 今こうしてまりさを迎え入れようとするのは、単に自分達にとってそれが最も有益であるからに他ならない。 もしここで、まりさより強いゆっくりが現れたら、群れはわずかな時間で手の平を返すことだろう。 負けたドスにもう誰も見向きもしないように。 それは、なんという醜い生き様なのだろうか。 同じだ。 同じなのだ。 全て同じクズなのだ。 そんなもののために、自分は今まで戦ってきたのだ。 ほんの少し、皆の顔を見渡せば分かる。へつらうようにへらへらと笑うもの。畏敬するもの。純粋にまりさを讃えるもの。 それらが根ざす場所は、全て同じなのだと、まりさは理解した。 「まりさ! どすをたおしたおまえが、いまからこのむれのりーだーだよ! まりさがいてくれれば、もうこのむれにこわいものなんてないよ! どうかむれのみんなをささえてあげてね!」 父の声がする。 それを支持する皆の声がする。 その全てが、たまらなくわずらわしかった。 だから、 「うるさい」 まりさは、この醜い生き物達を皆殺しにすることに決めた。 阿鼻叫喚、とはまさにこのようなことを言うのだろう。 男の目の前で、数多のゆっくり達が泣き叫び、仲間をひき潰しながら逃げ惑っている。 それを追いかけるのは、ノミを咥えた一匹のまりさ。 まりさがノミを一振りするたびに、新しいゆっくりの屍骸がこしらえられていく。 果敢にもまりさに立ち向かおうとするゆっくりもいるにはいたが、それらは例外なく殺された。 当然だ。 ドスを倒すための武器は全て使い切ったとはいえ、二ヶ月の地獄の特訓を耐え抜いたまりさに、そこらのゆっくりなど歯が立つはずもない。 まりさは、さきほど一番に自分にすりよってきた子まりさを殺したところだった。 子まりさが仲間を囮にして逃げようとしたところ、まりさは置いていかれたほうを無視し、先に子まりさを仕留めた。 それも男が教えた戦い方だ。 置いていかれたほうは茫然自失となって隙だらけだし、置いていったほうも油断が生まれる。なら、逃げるほうを先に殺せば、より効率的だ。 早いか遅いかの違いだけで、どちらも死ぬことには変わりはないのだから。 恐らく、それほど長い時間をかけず、この群れは全滅することだろう。男はそう判断した。 「おに゛いざああああああああああああんん!!!」 「だずげでえええええええええええええ!!! ごごがらだじでええええええええええええ!!!」 ふと足元を見ると、数匹のゆっくりが涙ながらに男に助けを求めてきた。男が結界を張ったことを思い出したのだろう。 「駄目だ」 男はすげなく答えた。 「どぼじでええええええええええええええええ!!!」 「まだまりさの復讐は、終わっていない」 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。 殺す。殺してやる。ゴミクズどもめ。 お前達は一体なんだ。ドスを慕っていたんじゃないのか、仲間とゆっくりしたいんじゃないのか。 かつてのリーダーの屍体を辱め、かつての仲間を殺し、それがゆっくりするということなのか。 それを『ゆっくり』などと言うつもりなのか! まりさの心は、ドスに対するものよりも、遥かに激しい怒りに彩られていた。 或いはドスの姿に、自分がそうなったときの光景を思い浮かべたのかもしれない。 結局のところ群れるゆっくりにとって、リーダーとは都合の良い保護者であり、責任の押し付け先であるのだ。 父はそれに気づかず、群れのリーダーであることを至上の誇りとしていた。 馬鹿馬鹿しい。なんという愚かさだ。 男の手によって、高度な知能を得たからこそ、理解した。 ゆっくりは、利のみによって行動する薄汚い腐った生き物だ。少なくともまりさの中では、そう定義された。 そして何より怖ろしいことに、自分もかつてはその生き物であったのだ! 利己的なゆっくりに対する怒りが、そしてそのことに気づかなかった幼なかった自分への憤りが、まりさを凶行に走らせる。 殺してやる。殺してやる。殺してやる! お前ら全員、殺してやる! そうして一匹の子ありすに向かって振り上げたノミは、 「やべでええええええええええええええええええええええ!!!」 それとは違う、見覚えのある影によって遮られた。 「ゆっ」 短い悲鳴と重たい手ごたえ。 「れい……む?」 ノミは、まりさが最も愛したれいむの中心を、綺麗に貫いていた。 「れ、れいむっ!? れいむ、れいむ、れいむぅぅぅ!!! どぉしてえええええええ!!??」 自分のしでかしたことの恐ろしさに、まりさは慄いた。 ああ、いや、違う、違うんだ。こんなことがしたかったわけじゃない。 れいむを殺したかったわけじゃないんだ。ただ、皆が許せなかっただけで、れいむまで憎いわけじゃないんだ── 「ま……り……さ……」 「れいむぅぅぅ!!! どうじでっ、どうじで出でぎだのおぉぉぉ!!?? ああっ、餡子がっ、餡子が出ちゃううううう!!! れいぶが死んじゃうよぉぉぉぉ!!!」 どうにか餡子の流出を食い止めようとするが、しかしまりさのノミは、普通のゆっくりであったれいむを完全に貫通していた。 もう助からないことは、誰の目にも明らかだった。 「まり、さ……どう、して……」 「れいむ! しゃべらないでね! ゆっくりしてね!」 「どうして……どすを……ころし、たの……」 そんなこと、決まってるじゃないか。ドスは悪いゆっくりだった。れいむやぱちゅりーを苦しめていた。 まりさは、だから、ドスから皆を助けたかっただけなのに。 なのに、どうしてこんなことになっているんだろう。 「どすは、なにも……わるいことは、してなかったよ……。 ためこん、だ、ごはんのつかいみちは……おしえてくれなかったけど……どすは、みんなのことを、いつもしんぱいして、いたよ。 おいだされた、まりさのことだって……しんぱいしていた、んだよ」 息も絶え絶えに、それでも何か伝えなければならないと、れいむは必死に喋った。 他のゆっくり達は、二匹の様子を恐々と伺っていて、ある一定の距離から近寄る様子はなかった。 「れいむは……れいむはね。どすに、いろんなことをおしえてもらったよ……。 れいむは、ただ……まりさといっしょに、ゆっくり、したかったから……。 いろんなことを、おしえてもらって……まりさとけっこんしたとき……やくにたてたかったから。 まりさにあえなかったのは、つらかったけど……みんなで……いっしょにゆっくりしたかった、から……」 「あ、ああ、あああああああああ」 まりさの心の中を、訳の分からない嵐が吹き荒れた。 なんで、なんで、なんでこんなことになってしまった? 自分はどこかで間違ってしまったのか? れいむの願いは、かつてのまりさの願いそのものだったのに。 「もっと……ゆっくりしたかった」 そう言って、れいむは事切れた。 「れい、む……」 もう動かなくなった最愛のゆっくりを前に、まりさは項垂れてぶるぶると震えだした。 一向に動こうとしないまりさに、一匹のみょんが背後からにじり寄っていく。 そして全身全霊を込めて跳びかかり── 「ぢんっ!?」 足元から跳ね上がったノミが、顔面を真っ二つに切り裂いた。 着地と同時にみょんは絶命した。 「死ね」 まりさは言った。 「おまえら、ぜんいん、ここで死ィィィィィィィィィィィィィィねェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」 三十分後。 結界内に動くものは、もう誰もいなかった。 「…………」 男が結界を解くと、夕暮れ時の風が、甘く爛れた匂いを運んでいく。 いつの間にか空は真っ黒な雲に覆われていて、ぽつりぽつりと、雨の雫が落ち始めてきた。 男は傘を差し、餡子の海の中心で、空を見上げて動かないまりさに近づいていく。 それは二ヶ月前の森の中、一人と一匹が出会ったときとよく似ていた。 違うのは、もはやまりさが雨によって溶けることがないということだろうか。 男の手によって手を加えられ続けた結果、もはやまりさは、楽に死ねる身体ですらなくなっている。 「生きたいか?」 あのときと同じ問いを男は発した。 「死にたいよ」 まりさは答えた。 「もうまりさには、生きるりゆうがないよ。ドスは倒したけど、ぱちゅりーもしんで、れいむもころして、むれのみんなもころしてしまったよ。 もうまりさには、いくところなんてどこにもないよ」 「…………」 男は黙ってそれを聞いた。 「……知らなかったんだ」 まりさは誰に聞かせるでもなく、呟く。 「まりさたちは、あんなに汚いいきものだったんだね。あんなにみにくいいきものだったんだね。 ドスをたおせば、みんな幸せになれるって、ずっとおもってたのに。でも、そうじゃなかったよ。 今ならね、ドスのきもちがわかるよ。ドスもたぶん、たいへんだったんだ。あんないきもののあいてをして」 「…………」 「ねぇお兄さん、まりさはまちがっていたのかな。本とうは、ドスのほうが正しかったのかな」 まりさは答えがほしかった。そうだ、とも、違う、ともどちらでもいいから言ってほしかった。 だが男は言った。 「そんなこと、俺は知らない」 突き放すような冷たさだったが、むしろそれを『らしい』とまりさは思った。 男は、まりさに対して優しさを向けたことなど一度もない。逆に厳しくすることもなかった。 ただまりさの『強くなりたい』という願いを叶えるだけの存在に徹してきた。 だから今も、まりさの行動の是非に答えることはない。 だが男は、「ただ」と言葉を続ける。 「本当に、ゆっくりは醜いだけの生き物なのか?」 「ゆっ……?」 まりさはそこで初めて、男を見た。 男は言う。 「中には、お前の愛したれいむのように、本当に皆のことを考えているゆっくりもいるかもしれない。 心から群れのことを護りたいと思っているドスもいるかもしれない。 そういうやつらがいるかもしれないって、思うことくらいは、いいんじゃないか」 男なりに励まそうとしているのだろうか、とまりさは思った。 ああ、確かに、れいむは本当に美しいゆっくりだった。外見だけでなく、その心根まで。 れいむは自分が殺してしまったけれど、もし他の場所で、れいむのような良いゆっくりが困っているとしたら? 今の自分には、力がある。多くの武器を喪った今、ドス級に勝てるかは分からないが、普通のゆっくりに負ける要素などどこにもない。 普通のゆっくりの中では最強とも言えるその力を、このまま腐らせてしまっていいのだろうか。 「……お兄さん、まりさは行くよ」 「そうか」 「れいむのような良いゆっくりを、まりさはたすけるよ。そのためにたびをするよ」 「そうか」 「お兄さん。今までありがとう。そして、めいわくをかけてごめんなさい」 「お前が気にすることじゃない。俺が勝手にやったまでだ。行くというなら、それを止めもしない。 だが選別くらいはくれてやる。それにしては粗末なものだが……」 男は懐から手の平サイズの球体を取り出すと、花火を喪い、ぽっかりと空いていたまりさの左目の代わりに入れた。 そしてその上から新しい眼帯をかけ、固定してやる。 最後に、餡子に塗れたノミを綺麗に拭き取ってやる。 「ただの詰め物だから武器としては使えないが、それがないと餡子が飛び出してしまうからな。 気をつけて行けよ、まりさ」 「うん、ありがとうお兄さん。さよなら」 「ああ」 そう言って、まりさは雨の中旅立っていった。 男はその後姿が見えなくなるまで見送ると、やがて反対方向に歩き出した。 男が向かったのは、ドスの家だという洞窟だった。 あの巨体が自由に動けるだけあって相当大きい。人間が住むのにも困らないだろう。 洞窟内は土をくりぬいて幾つもの部屋に分けられていた。 それらの部屋には、おそらくドスが書いたのだろう、下手な平仮名で名前がつけられていた。 枯れ葉のベッドが並ぶ『たくじしつ』。机と椅子が拵えてある『べんきょうべや』。 更に奥に行くと、葉っぱの一枚すら落ちていないわびしい部屋がある。そこには『どすのへや』とあった。 そこを通り過ぎると、一面に柔らかな草が敷き詰められた『かいごしつ』があった。恐らく怪我をしたゆっくりを収容する場所だろう。 ある通路の奥は、掘っている途中で落盤があったのか、埋まったままだった。 もっと奥に進むと、男は巣に入って初めてゆっくり達の屍体を見つけた。 潰れたぱちゅりーや、その他数匹分の屍体のある部屋には、『とうみんようしょくりょうこ』と名前がつけられている。 部屋の中は、確かに大量の食料で溢れかえっていた。それも木の実や柔らかい木の根など、保存の効くものばかり。 「…………」 男はそこまで確認すると巣を出た。 そして巣の入り口まで差し掛かったところで、足を止めた。 「やっと来たか」 男は言う。視線の先には、潰れた身体を引きずってここまで辿り着いた、ドスまりさの姿があった。生きていたのだ。 ドスは力のない視線で男を見て、言った。 「お兄さん……どうしてまりさを、あんな子にしてしまったの……?」 「まりさがそれを望んだからだ」 「わたしは、群れの皆をゆっくりさせたかっただけなのに……」 放っておけば今にも死んでしまいそうな声で、ドスまりさは言う。だが、 「そうだろうさ」 男の答えに、ドスは劇的に反応した。 「どう、して? 知っていたの? ならどうしてあの子におしえてくれなかったの!?」 「知ったこっちゃなかったからな」 激昂するドスに対し、男はあくまで冷淡だった。 「まりさの話を聞いて、ある程度の目星はついていた。だがそんなこと、俺にはどうでも良かったんだ。 ここに来たのだって、一応それを確認するためだが、だからって何かするというわけでもない。 教えなかったことを何故と言うなら、それがまりさに対する俺の距離だったからだ」 ドスは黙って男の言葉を聞いていた。そこに、決して揺らがない何かを感じたからだ。 「言ったよな。俺はお前達の敵でも味方でもないし、まりさの敵でも味方でもないと。 俺がまりさに力を与えたのは、まりさがそれを望み、そのために努力したからだ。その努力に報いたからだ。 だが、もしまりさがなんらかの勘違いの上に動いていたとしても、それを止めるようなことはしないと決めていた。 何故ならそれは、お前自身が出した錆びだからだ。俺が関与するようなことじゃあない。──そうだろう?」 「ゆぐっ」 ドスは息を詰まらせた。思い当たるところがあったのだろう。 「あのまりさの追放がお前の意志の届かぬところで行われたのは、話を聞いていれば大体分かったよ。 まりさの話に賛同しかねた他のゆっくりが、その場でまりさを追い出したというところだろう。 それにお前、まりさを前にして少し申し訳なさそうな顔をしていたしな。 ──だが、なら何故お前はそのあとすぐ、まりさを追いかけなかった? 俺が見つけた時点で、まりさは相当衰弱していた。三日は逃げ続けていただろう。 お前がちゃんと使いを出していれば、俺に見つかる前に連れ戻すこともできただろうに」 その話は、ドスにとって完全に図星だった。 沈黙してしまったドスに、男はさらに言う。 「大方、群れの和を乱すものがいなくなるならそれでもいいと思ったんだろうがな。 ……いや、それだけじゃないか。 ドス、お前もあのれいむのこと、好きだったんじゃないか?」 ドスはびくりと身を竦ませた。それが何よりも根の深い問題だったからだろう。 男がそれを見破ったのは、先程のまりさによる群れへの虐殺の最中だった。 れいむの叫びを聞きつけたとき、ドスが僅かに身体を動かしたのに気づいたのだ。 「群れの敵で、ついでに恋敵だったから、逃がした……だがれいむの恋の相手をみすみす殺してしまうのも、後味が悪かった。 もしそうだとしたら、それが最大の間違いだったと、俺は判断する。 私情にかまける者が群れのリーダーなど務まるわけがない。連れ戻すなり確実に殺すなりするべきだった。 この結果の引き金を作ったのは他ならぬ俺自身だが、原因を作ったのはお前だよ、ドスまりさ」 「ゆ、ぅ……」 「そもそも、だ。群れの皆に巣の中で何をしていたのかも、集めた食料をどう使うか教えなかったのも、混乱を助長した要因だろう。 守秘義務とか盗難帽子とかそういう目的があったのかもしれないが、お前はまず広く情報を開示すべきだった。 最初からまりさや群れの皆にちゃんと話していれば、こんなことにはならなかったろうにな。 ちゃんと話していれば、皆お前に理解を示し、協力してくれたやつもいたかもしれないのに」 男の容赦ない言葉を受け、ドスは完全に意気消沈してしまった。 だがやがて、重たい身体をずるずると引きずって、巣の奥へと向かう。 「これからどうするんだ」 「みんなのためにのこしておいたごはんを、全部たべるよ。もうひつようのないものだから……」 「その後は?」 「…………。まりさを止めにいくよ。こうなってしまったのはわたしのせいだし、そのせきにんをとるよ。 それに何より、わたしはれいむやみんなをころしたまりさが、どうしてもゆるせないよ」 「そうか」 頷くと、男は懐から数本の薬瓶を取り出し、地面に置いた。 「それは……?」 「ゆっくり用の回復薬、みたいなものだ。あのまりさが負けたら飲ませるつもりだった。 お前の体格じゃあまり効果はないかもしれんが、餞別だと思え」 「ゆ、ありがとう。あとでのむよ……さようなら、お兄さん」 「気にするな。別に俺は、お前達に感謝されたくてやってるわけじゃない」 そしてドスまりさの姿が巣の奥に消え、見えなくなったところでぽつりと呟いた。 今まで、まりさにも一切見せなかった、微笑みを浮かべながら。 「──そうさ、俺は別にお前達に感謝されたいわけじゃない。 ただお前達が、他の何もかもをかなぐり捨てて復讐に向かう、その姿を見たいだけだから」 そして男は、新たな復讐鬼の生まれた洞窟を後にした。 「こうしてまりさは見事復讐を果たし、今も森の中を彷徨っていると、そういう話でした。めでたしめでたし」 「……お前さぁ、いつも思うけど、性格悪いよな」 夜雀の屋台で二人の男が語り合っている。 呆れた顔をしているのは虐待お兄さん。語り手となっているのは、あの男だった。 そこに、まりさやドスまりさを相手にしていたときのような冷淡さはない。 どこにでもいる普通の男の表情だった。 男はむっとした顔で虐待お兄さんに反論する。 「何を言いますか。確かに趣味ですが、社会的貢献にもなっているんですよ。 あのまりさは強さは相当ですからね。森の中のゆっくり、特に悪辣な連中ほど、あのまりさの餌食になることでしょうよ。 村を襲うような連中から真っ先に死んでいって、残るのはあのまりさが『善良』と判断したゆっくりだけです。 ほら、ちゃんと役に立ってる」 「俺が虐める分まで殺されちゃうと困るんですけど……」 得意げな男と裏腹に、虐待お兄さんははた迷惑そうだった。 「というかさ、そんなになったのは、お前がまりさを煽ったからだろ。如何にもやる気出しそうな言葉を並べ立てて。 ただ鍛えるだけだったら、途中で諦めてるぞ、普通」 「そりゃそうでしょうよ。ゆっくりは基本的に根気のない生き物ですから。 あなたほどではありませんが、ブリーダーとしてその程度のことは分かっているつもりです」 「手間隙かけすぎだろう……もう普通に虐待しろよ」 「そんなグロいこと言わないでくださいよ」 「グロいとか! どの口が! そんなことを言うのカー!」 「あひゃやめふぇくだひゃいいひゃいいひゃい」 「お客さーん、喧嘩ならよそでやってねー。鳥目にして崖から突き落とすよー」 「「スンマセン」」 店主の夜雀を前に、男二人は素直に謝った。 「しかし、そこまで復讐ってやつが好きなの?」 「ええ、とても」 虐待お兄さんの問いに、男は朗らかに答えた。 「復讐とは麻薬のようなもの、炎のようなものです。 それがある間はひたすらに強くあれますが、力の行く先をなくしてしまえば、あとはただしぼみ、抜け殻となるばかり。 俺はね、あの生きることが精一杯なゆっくり達が、身に余る憎悪を抱き、復讐の炎に身を焦がす姿を見るのが、何よりも好きなんですよ。 俺はそこに、命の輝きを見出すんです。弱い生き物が必死になる姿っていうのは、いつ見ても美しいものですよ」 「まぁそこには同意するけど……やっぱりお前、性格悪いよ」 「あなたに言われたくはないなぁ」 男二人は笑い、酒を酌み交わしていく。 虐待お兄さんの尻に敷かれたゆっくりれいむが、哀しそうに鳴き声を上げた。 あとがき 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さんを作ろうとした結果がこれだよ! 『復讐お兄さん』というフレーズが思いついたので、それを軸に話を作っていたら何故かこんなことに……。 どう考えても汎用性のない存在です。 しかしこの話は本当になんだろう……制裁でも虐待でもないような……。 最後まで手の平で踊らされていたことに気づかなかったまりさに対する、まりさ自身は自覚できない虐待……なんでしょうか。 ともあれ、ここまで付き合ってくださった方は本当にありがとうございました。 ちなみに復讐お兄さんの設定は以下のような感じ。 種族:人間 職業:ブリーダー(本業) 村に侵入したゆっくりの駆除(副業) 性格:ド外道 趣味:ゆっくりいじり 傷ついたゆっくりを拾ってきては治療し、その復讐を手伝います。主に肉体的な強化を手段とします。 今回はドスが相手ということで、精神・肉体・武装の全ての面からまりさを強化したようです。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 復讐のゆっくりまりさ(中) by 土下座衛門 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1584.html
初投稿です。 ジャンルは 虐待 制裁 料理 だと思います。 ネタ被りがあったらすいません。あと長いかも。 ゲスではない、一般的なゆっくりです。あと希少種が名前だけでます。たくさんでます。 あとこのおにいさんは一部のゆっくりを愛でます。 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~!」」 「「「ちあわちぇ~!!」」」 「「「ちょのおひゃなしゃんはしゅっごくゆっきゅりできりゅね!!」」」 「…うぇ」 今月に入って六回目だ。戸締りが悪いのだろうか? 家に帰って愛しのあの子と……ンフフ。なんて頭の中お花畑で家に帰宅したらこのざまだ。 庭に植えてあった花達はゆっくり達に食い荒らされている。 荒らしているのはれいむとまりさ。赤れいむが二匹。赤まりさが一匹。 すごく幸せそうでふてぶてしくてムカつく表情をしている。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺が後ろから声をかけると、まりさ一家は俺の方を向かずに 「「「「「ゆっくりしていってね!!!/ゆっきゅりしていってね!!!」」」」」 と返してきた。 「なぁ」 「ゆゆ!!うるさいよ!れいむたちはごはんたべてるんだからじゃましないでね!!」 「「「でね!!!」」」 「おい」 「うるさいっていってるでしょ!!!ゆっくりしてないゆっくりだね!!!ばかなの?しぬの?」 「「「ちぬの?」」」 赤ゆがウゼぇ。 俺の方を見ずにひたすら花を食い散らかしている。 ああ…俺の大事な花が……。 このままでは俺のストレスがさらにマッハで溜まっていくのでれいむとまりさを上からわしづかんでこちらを向かせた。 「ゆゆっ!!!なんでにんげんさんがここにいるのぉぉぉおおお!!!」 「なんでって、ここが俺の家だから。」 「ちがうよ!!!ここはまりさたちがさきにみつけたんだよ!!! だからここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!!! そんなこともりかいできないばかなにんげんはゆっくりせずにでっていってね!!!」 「「「てね!!!」」」 俺はまりさを地面に叩きつけた。そしたら「ゆべぇ!!!」とか言って口から餡子を吐いた。 吐き出した餡子を必死に口の中に戻すまりさ。 「ばりざにいぎなりなにずるのぉぉおおおおおおお!!!」 「「「おちょーしゃんにひどいことするくじゅはちねぇ!!!」」」 俺に向かって体当たりをしはじめる赤ゆとれいむ。 全然痛くもなんともない。 毎度思うがなんでゆっくりどもは…いや、ほとんどのゆっくりは人間に勝負を仕掛けるんだ? 勝目なんて無いだろうに。ドスでもないんだから。まぁどうでもいいか。 体当たりしてくるれいむも掴んでまりさと同じように地面に叩きつけた。 「うぶっ」 「うぶじゃねーし」 「「「ゆんやぁぁぁ!おきーしゃんがぁ!!!」」」 もう一度まりさを掴んで持ち上げる。 「ばりざにびどいごどずるじじぃばゆっぐりじねぇ…」 「んー、聞こえないなぁ。もっかい言ってよ」 まりさの口に手を突っ込んで歯を折って舌を抜く。 れいむもうるさいので潰れない程度に踏みつけておく。これでまりさが何をされているか見えていないだろう。 「ほら、もっかい言ってよ。」 「う゛あ゛あ゛…」 まりさの髪をどんどんちぎっていく。その度にまりさは呻くが気にしなーい。 帽子は外さずに周りだけちぎったから帽子を取ればスイッチみたいになってるだろう。 自分のプリティ(笑)な髪を毟られて痛みと悲しみで放心状態のまりさと泥まみれのれいむを掴んで俺は家に入った。 まずはれいむとまりさを虐待鬼意山御用達の透明な箱に入れる。次に赤ゆを回収する。これで完璧。 これが終わったら俺、赤ゆをフランちゃんにあげるんだ………。 「ぐずなにんげんははやくここかられいむをだしてね!」 などと喚いているれいむの入った箱をハエたたきで叩いた。 ピシン、といった音が響いてれいむが怯える。いい表情だね。 「よし、こいつは赤ゆ生産ゆっくりにしよう。それがいいね!」 「なにいってるのぉおおお!?れいむはまりさがいるんだよぉおおお!?」 「そっちこそなにいってるのぉぉおおおおお!?まりさはもういないんだよぉおおおお!!!(嘘)」 「うそつかないでねぇえええ!!」 やっぱり先ほどの光景は見えていなかったらしい。よかったよかった。 「れいむのまりさをかえしてね!!!」 赤ゆはまりさがどうなっているか知っているので防音の箱に入れている。 「なら取引しようか!」 「ゆ?どういうこと?」 箱をどかしてれいむを取り出す。 「こういうこと!」 れいむの右目をえぐりだす。白玉だからおいしいんだよね。 「うぎゃあああああああああああああ!!!!でいぶのがわいいおめめがあぁああああああああ!!!」 あとで洗って食べよう。これにシロップをつけて食べると最高なんだよね!おすすめだよ! 「ぐぞじじぃいいいい!!よぐもでいぶのがわい゛い゛おめ゛め゛にい゛い゛いい!!」 「まだ24だよ!そんなひどいこというれいむはゆっくりくるしんでね!」 れいむの左目もえぐりだす。コポォってあっさり取れた。24はじじいじゃないはずだ。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!おめ゛めがぁあああ!!!」 赤ゆの方を見たらしーしーとうんうんを漏らして泣き叫んでいる。声は聞こえないけど。 うんうんとしーしーはあいつらで片付けさせよう。 それでこのれいむは後でありすの所に持っていこう。やったね、赤ゆが増えるよ! まりさはれいむの目玉と一緒にして食べよう。綺麗に洗わないとね! 「でいぶのおめ゛め゛…」 なんて言ってるれいむを赤ゆ達と同じ箱に入れる。料理の邪魔になるもんね! 「さっとりんりん、さとりんりん。さっとりんりん、さとりんりん」 今作った歌(嘘)を歌いながら手際よくまりさを洗っていく。 舌も抜いてあるし、歯も折れてるから手際よく洗えるね!これっていいことだよ! まりさを綺麗に洗ったら目を取り除く。これもきれいに洗う。 そして次に胡麻を磨り潰すあの長い棒でまりさを潰していく。飾りはあの赤ゆにあげよう。 最期の言葉もまともに喋れないなんてかわいそうだね!きっとすごいストレスだよ!甘くなるね!しあわせ~だね! 餡子になったら保存してあるゆっくりの目玉をトッピングする。あとれいむの目玉もね。 潰したまりさは結構大きかったためゆっくり10匹分ぐらいのものになった。 ボウルに盛って、俺の愛しのゆっくりたちとこれを食べる。至福の時だ。 さとりにこいし。ふらんにさくや、そしてゆうか。それにえーりん、もこう、けいねにてゐ。みんな胴付きだ。 ふらんはしつけに時間がかかったし、見つけるのも難しかった。だが価値があるし可愛い。何よりも胴付きだ。 このゆっくり達を見つけるのは本当に大変だった。 ゲスは可愛くないし、虐めることにしか価値はないけど、本当にゆっくりしているゆっくりはかわいいね! ゆっくりしているゆっくりを見るのは楽しいし、可愛いからついいじめちゃうよ! 皆も人それぞれのゆっくり虐待ライフを満喫してね!
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/108.html
魔法の森に夕暮れが迫っていた。 アリスがその生き物と出会ったのは、自宅へ戻る途中。 里の子供たちを人形劇で楽しませて、のんびりと魔法の森を歩いていたところだった。 「ゆっくりしていってね!」 飛び跳ねるふくよかな生首。 アリスはあっけにとられていた。 幻想郷に様々な妖怪がいることは知っていたが、これほど珍妙な存在は初めて見た。 その生き物はそんなアリスの様子に構わず、陽気な声をあげながらアリスの周囲をぴょんぴょん跳ね回っている。 未知の生き物の行動にアリスは目が離せないが、敵対的な素振りを見せないので自分からは何も仕掛けない。 アリスはそっけない物腰ながら、実は親切で優しい魔法使い。 今も人里の子供たちのために、人形劇を演じて家に帰宅する途中だった。目障りだからといって無碍に排除はできない。よく見れば、ぷるぷると可愛い動きをしていることだし。 とりあえず、言葉を話すなら意思の疎通ができるかもしれない。 アリスはその生き物の目線に合わせて、精一杯屈みこむ。 「あなたは、なに?」 「ゆ? ゆっくりまりさだよ!」 元気な返事は大変よろしい。 だが、それはかえってアリスの困惑を深めていた。 なぜなら、この生き物が口にした名前は知人の名前。 霧雨魔理沙。 アリスと同じく魔法の森に住む人間の魔法使い。昔からの腐れ縁だった。トレードマークは魔女でございとでもいいたげな黒い帽子で、なるほど、この生き物も同じような帽子を被っている。さらさらの金髪もまったく同じ。 ただ、それ以外が違いすぎる。 もちろん見た目もそうだが、内面もまったく違うようだ。ゆっくりまりさは純真な人懐っこい眼差しでアリスを見つめている。 それに対し霧雨魔理沙は傍若無人で奔放だが気のいい性格で、アリスにとっては騒がしい隣人といったところ。ただ、悪癖がいくつかあるのが悩みの種。一つは窃盗癖、もう一つは…… 「ええと、まりさ。変なきのこでも食べたの?」 得体の知れない魔法の森のきのこを収集し、とりあえず食べてみることだった。 「ちがうよ、まりさは食べられるきのこ知っているよ!」 「そうよね、もしそうだったらどうしようと思っていたところだけど……あなたのこと、教えてもらってもいいかしら? 妖怪なの?」 相手の得体の知れなさに、アリスの相貌に警戒の色が宿る。 この生き物の愛玩用のぬいぐるみに似た、抜けた表情にすっかり気が緩んでいた。ぷううと、不満げに膨らむ風船のような顔を見ていると、張り詰めかけた警戒も霧散霧消してしまうのだが。 「ゆっくりまりさは、ゆっくりまりさだよ! 今度はおねえさんのこと教えてね、おねえさんはゆっくりできる人?」 答えにならない答えを返された上に逆質問。 とはいえ、それはゆっくりまりさには大切なことなのだろう。アリスをうかがうゆっくりまりさの目は真剣そのもの。 「変なことが起こらない限り、ゆっくりできるわよ」 例えば変な生き物が目の前にあらわれたりしなければ。そんな台詞を飲み込むアリス。 すると、ゆっくりまりさに花が咲き誇るような笑顔。 ぴょんぴょんとうれしげに体を揺らして、その微笑ましさに思わずアリスも笑顔。 「よかった! あのね、おねえさん、ゆっくり教えてね! まりさみたいなゆっくり、他に見なかった?」 「あなたが初遭遇よ。というか、他にもいるの?」 「うん、ゆっくりれいむとか!」 ゆっくり、れいむ。 霊夢? アリスの脳裏に浮かぶのは、あまりにさばけた性格の巫女の姿。魔理沙の親友。 もしかして、れいむといのは、あのれいむだろうか。 「れいむって、どんな子なの?」 「ええとね、頭に真っ赤なりぼんをつけて、かみが黒い子なの!」 間違いない。 あらあらご愁傷様とアリスの唇にもれる微笑。 このまりさも魔理沙本人がみれば、恐らく「私はこんな顔してないぜ!」と膨れるだろう。霊夢だって、いつもの悠々とした表情を崩して頭を抱えるかもしれない。見てみたいものねと、悪戯っぽい笑みだった。 そこで、ようやく期待をこめたまりさの瞳に気がつく。 「ごめんなさいね、やっぱり私は見てないわ」 「ゆっくりいいい、ざんねんだよー」 みるみるうちに、期待に膨らんでいたまりさの体がしゅるると萎み、ぺたりと平べったくなる。 そのユーモラスな動きに若干の申し訳なさを感じながらも、ついついアリスの頬は緩んでしまう。 まりさは気をとりなおしたのか、再びその体を引きこして、ぺっこり頭を下がるようなしぐさ。 「呼び止めてごめんなさい、おねえさん。ゆっくりしていってね」 「待って」 そのあまりの殊勝さに、アリスは思わず助け舟を出してしまっていた。 身を翻そうとしていたゆっくりまりさが、呼びかけられた驚いたように振り向く。 「力になれるかもしれないわ。どうしてはぐれたか、教えてもらえるかしら?」 「あのね……ゆっくりしすぎて、はぐれちゃったの。まりさが川でぷかぷか遊んでいたら、いつのまにか見えなくなっていたのおお……」 アリスの問いかけに律儀に答えるまりさ。ただ、その顔は今にも泣き出しそう。不安なのか寂しいのか。涙を堪える眉の歪みに、アリスの保護欲がかきたてられる。 どうしたものか、アリスは手近な岩に腰掛け、ゆっくりまりさに近い目線で話しかける。 「集まる場所とか、決めてないの?」 首を振るゆっくりまりさ。 その能天気な言動から、その答えをなんとく予想をしていたアリス。 用意していた次の質問に移る。 「どういうふうに探していたの?」 「あちこちいって、ゆっくりできる人がいたら聞いて回っていたの!」 まあ、確かにそれ以外に手はあるまいとは思うが、こんな鬱蒼とした森の奥では、いかにも迂遠に感じるアリス。 それに、第一、危険だ。 こんな無警戒で小さな生き物が、獣や知性の低い変化したばかりの妖怪が跋扈する森の奥底で、よくもまあ無事にいたものだ。 「あまり誰彼構わず声をかけてはだめよ。この森にはあなたぐらいの生き物なら、ぺろりと食べちゃうのがいるんだから」 「そうだね! ついさっきも『ゆっくりできるのかー』っていう妖怪さんに食べられちゃったよ!」 「ルーミアはどこでもうろうろしているのね。って、食べられたっ!?」 思わず腰を浮かしかけるアリス。 どういうことだと視線で問うと、ゆっくりまりさの瞳に浮かぶのも困惑の色彩。 アリスは一つ深呼吸をして、なるべくゆっくりまりさにあわせた言葉で問い直す。 「食べられたら、死ぬでしょう?」 「ゆ? なにいっているの? しんじゃっても、目がさめれば『おうち』に戻っているよね!」 同意を求められても困る。 蓬莱人でもあるまいし、死んだらおしまい。 この生き物は、そんな通常の生物の枠にあてはまらない生き物なのだろうか。 困惑に一時捕らわれたアリスだが、本来聡明なアリスの頭脳。こんな生き死にを繰り返す種族について、一例を思い出していた。 妖精。 この子たちはその亜種なのだろうかと、自分を納得させるしかないアリスだった。 とはいえ、死んでもすぐ復活するお気楽な身の上とはいえ、それゆえか、ゆっくりまりさの言動は幼い。 知らず、かきたてられるアリスの庇護欲。 夕暮れが近い。もう少し日が高く、日差しが届く野原ならゆっくりの気が向くまま、探しているのもいいだろう。だが、森の日暮れは一足飛び。 まっくらな中を、ともだちを求めて寂しげに探し回るゆっくりまりさを想像すると、どうしても心がきゅっと締め付けられてしまうのだ。 今日はゆっくりまりさに付き合ってあげよう。どうぜ、帰っても今日は人形の繕いだけ。 「ええと、まりさ。おねえさんでよければ、手を貸してあげるわね」 「ゆ、いいの! 寂しかったから、まりさうれしいよ!」 内心、拒絶されるかもと考えていただけにゆっくりまりさの反応は喜ばしいものだった。 実際の魔理沙もこれぐらい素直ならまだ可愛げがあるのだが、人の好意につけこむようなところがあって、アリスにはそこが少しだけ疎ましい。 そんな愚にもつかないことを考えていると、ゆっくりまりさがくるりと森の奥へと体を向けていた。 「じゃあ、ゆっくりさがそうね!」 「わざわざ、歩き回らなくてもいいわ」 アリスはその言葉とともに後ろから手を回し、ゆっくりまりさの小さな体を抱き上げる。 「ゆ!? おねーさん、どうしたの! まりさはひとりで歩けるよ!」 戸惑ったようなゆっくりまりさの言葉を聞き流して、魔法を唱える。 ふわりと、重力を無視して浮きあがるからだ。 地面がどんどん遠ざかっていく。 気がつけば、森の節くれだった木々を抜けて上空へ。 「すごい! まるで、そらをとんでるみたい!!!」 すさまじい順応の早さではしゃぐゆっくりまりさ。 アリスはそんなまりさが腕からこぼれないよう、胸の前でしっかりと抱きかかえていた。 「さて、あなたはどこあたりで仲間とはぐれたの?」 言いながら小川の流れる方向へまりさの顔を向けさせる。 きょろきょろと、その瞳を動かすまりさ。やがて叫んだ。 「向こうのだよ! あそこでゆっくりれいむと、ゆっくりありすとはぐれたの!」 「へー。って、え? 私もいるの!?」 つい先ほどまでは、ゆっくりれいむがいて、巫女もかわいそうと笑っていたアリス。 それがそのまま跳ね返ってきて、ありすは渋い顔だった。 そうして、改めて思う。 なんで、自分たちに似た格好をしているのだろう。 その謎の答えは、どうしても思い浮かばなかった。 うっかり、そのまま考えこんでしまうアリス。そのせいで、近づいてきたその影にアリスはまったく気がつかなかった。 「なに不景気な顔しているんだ、アリス?」 声の方向に慌てて向き直る。 そこには日が落ちかけた薄暗がりを背景に、箒にまたがって空に浮く魔女が一人。 霧雨魔理沙だった。 「何でもないわよ。それより、何? 私は今忙しいんだけど」 応じるアリスの声は不機嫌そのもの。 本当はいらだちよりも、呆けているところを見られた気恥ずかしさの方が強いのだが、微妙なライバル意識というものがつっけんどんな態度をとらせてしまう。 が、取り澄ましたアリスの態度は、騒ぎ出した手元のまりさによって無理やり中断される。 「みんなだ! みんな、ゆっくりしているのおおおお!」 歓喜の叫び。 夕闇に目を凝らしてみれば、魔理沙の箒の前後に二つの膨らみ。黒髪りぼんが目をひくゆっくりと、金髪へあばんどが目についてしまうゆっくりの姿。 あれが、私かと、一瞬遠い目をしてしまうアリス。 その二匹を拾ってきた魔理沙も、ゆっくりを前にして同じ心境だったのだろう。二人、しばらく沈黙する。 静まり返った二人の間を、夕暮れの烏の声と、お互いに気づいたゆっくりたちの呼び声が響いていた。 「まりさあああああ、さがしたんだよおおおおお!!!」 よほどうれしいのだろう。叫ぶだけでは満足できないというように、箒の上でぴょんぴょんと飛び跳ねる、ゆっくりれいむとありす。 あんな細い上でよく飛び跳ねられるものだと、そのバランス感覚に感心するアリス。 「ゆうっ!?」 と、思っていたられいむが落ちた。 「ゆっくうううううううううう……」 声が遠ざかっていく。 ついで、ぺきぺきと木の枝のしなり折れる音。 「あちゃー」 あまりに緊迫感のない魔理沙の声。 お前、何してんだよと、茫然自失から回復したアリスの胸に宿る怒り。 「あ、あんたね……」 このバカと怒鳴りつけたい思いを抑えてアリスは落下地点へ急ぐのだった。 杞憂。 アリスは、地面でぽよんぽよんとはねているゆっくりれいむを見て、その言葉を強くかみしめていた。 「ゆっくりえきさいてぃんぐ!」 「いいな、まりさもしたいよ!」 まん丸に空気を入れて膨らんだゆっくりれいむが弾んでいた。 あれだけの高度から落ちたというのに、外傷がまったくないのは一目瞭然。 「な、大丈夫だろ? こいつら、ゴムマリみたいに頑丈なんだよ」 のんびりとアリスに続いて降りてきた魔理沙のニヤニヤ笑いに、アリスはむっと顔を背ける。 そうして、こっそり手元のまりさのほっぺをぷにぷにと突くが、なるほど指先に十分な弾力が返ってくる。これでは、獣の牙ぐらいでは突き通すこともできないだろうし、叩きつけたところでその勢いのまま、投擲者に跳ね返ってくるだけだろう。 それを示すように、まりさの箒から趙著無く飛び降りるゆっくりありす。 そのまま、バウンドを繰り返すゆっくりれいむと、羨ましそうに眺めるまりさの間に入る。 「ようやく、みんな揃ったね!」 「うん!」 「おねえさんたちにお礼いわないといけないね!」 「うん!」 まとめ役なのか、お姉さんなのか、ゆっくりありすの殊勝な言葉に頷く素直なゆっくりたち。 三匹、先を争うようにアリスと魔理沙の前に転がり込んで、きれいに整列。 「おねえさん、ありがとう!」 「たいせつなともだちにまたあえたのは、おねえさんたちのおかげだよ!」 「たすけてくれたおねえさんも、もうともだちだよ!」 「だから、ゆっくりしていってね!!!」 最後の言葉は三匹同時だった。 その愛らしさに、正直アリスの目じりは下がりっぱなし。 魔理沙に気取られないよう気合をこめて、結果、出遅れた。 「ああ、ゆっくりするぜ。お前らもゆっくり帰りな」 「うん、ありがとう、箒のおねえさん!」 言いながら、何度も振り向いて森の奥へと消えていく、仲睦まじいゆっくりたち。 そっと言いそびれた同様の台詞を飲み込んで、アリスは膨れたように魔理沙をにらむ。 「なんだ、ゆっくりみたいな膨れっ面して」 だが、いけしゃあしゃあとした魔理沙の言葉に思わず微笑んでしまう。 笑ってしまったら、アリスの負けだ。 常にはない和んだ空気が二人の間に眺める。 「だめね、あのゆっくりに関わったら、なんだか気持ちまでゆっくりしちゃった」 「私もだぜ」 二人、頭をかきながら笑顔を向け合う。 いつもの言葉を弄する意味ありげなやりとりとは違う、素顔のままの二人。 二人を包んでいたのは、ゆっくりたちの残した爽やかな幸福感だった。 これは、ゆっくりたちが人間と幸福な共存を始める、そのほんの少し前のエピソード。 by小山田 プニプニ感が再現されていて面白かったです。 -- 通りすがり (2008-08-03 22 43 02) 続きが早く見たい・・・ -- 名無しさん (2008-08-04 01 21 24) だれかと思えば加工所の人かwあなたが書くSSはどっちも最高です -- 名無しさん (2008-08-09 17 31 17) ああ、こんだけ頑丈ならしっかり生きていけるよね。うまいわー。 -- 名無しさん (2008-09-10 13 51 50) いいね -- 名無しさん (2010-11-28 11 23 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1291.html
博麗神社にお参りに行った帰り、林道を歩いていると妙な祠を発見した。 太い木の枝や葉っぱを組み合わせて作った小屋に、ゆっくりれいむが一匹収まっている。 そしてその前には、格子状の蓋のついた木箱。 ゆっくりに複雑な工作など出来るわけないから、人間の作り損じでも拾ってきたのだろうか。 手前には枝を組んで作られた小さな鳥居?があり、ゆっくりがくぐれる程度の大きさだ。 祠に収まっているれいむと目が合うと、得意げな笑みを浮かべながら話しかけてきた。 「おにいさん!!とってもありがたいゆっくりじんじゃだよ!! ゆっくりしていってね!!おさいせんをゆっくりちょうだいね!!」 こんなことを言い出す。神社の巫女さんを模したゆっくりであることは解っていたが、 本物の真似事まで始めるとは。しかしゆっくりを崇めてもありがたいどころか、運気を吸われそうな気がするぞ。 でもまあ、ゆっくりがこんなことをしているのは何だか珍しかったので、 少しぐらいお賽銭をやっても良いだろう。人間に奪われそうな気もするが。 狭い鳥居をくぐろうとすると体がぶつかり、固定の甘かった鳥居はあっさり崩れてしまった。 れいむは「なにするの!!」と言って少し悲しそうな顔をしたが、それほど怒った様子も無いので気にしないでおいた。 そしてお賽銭箱に面白半分に木箱に小銭を入れてやる。さっき本物の博麗神社に投じた額の1/10ほどだが。 「ゆゆ~!!おにいさんありがとう!!おねがいごとをしてね!!」 うるさい巫女だな……いや、神主なのか? よく解らない。でもお参りは静かにさせてほしい。 作法に則り、手を叩いて願い事を念じる。それが済んで立ち去ろうとすると、 れいむは膨れっ面でこっちをにらんでいた。 「おにいさん!!おねがいごとをゆっくりいってね!!だまってちゃわからないよ!!」 え~……そういうもんなの? というか、お前が願い事を知ったところでどうする。 まあもう少し付き合ってやるか。 「今度資格試験を受けるんだよね。それで仕事がもらえるかどうか決まる大事なやつでさ。 もちろん勉強も頑張ってるけど、一応ゲンかつぎに神頼みもしとこうかな~ってことで。 勉強がうまくいって、試験に合格できますよーに!」 もう一度手を合わせて祈る格好をする。ゆっくりに祈るのも何かムカつくけど、まあごっこ遊びだし。 「ゆっ!ゆっくりききとどけたよ!!おにいさんはきっとごうかくできるよ!!」 お前が聞き届けるのかよ。こいつは神主兼巫女兼神様なのか? しかしたとえゆっくり相手と言えど、励ましの言葉をもらえるのは悪いものではない。 俺は少しだけ機嫌を良くすると、れいむに手を振って帰路についた。 その夜。寝る前に机に向かって勉強をしていると、窓をドンドンと叩くものがあった。 何だろうと思って開けてみると、そこには一匹のゆっくりぱちゅりーが。 「むきゅ~!!おにいさんがべんきょうのことでこまっていそうなけはいがしたから、おしえにきてあげたわ」 ……何だこいつ。あ、もしかしてゆっくり神社の差し金か? 学問成就を願った俺のところにゆっくりの中では頭の良いぱちゅりーを派遣し、勉強を手伝わせる。 それによって願いを叶えさせ、ご利益の評判を高めてお賽銭をもっと集める……と。 「お前、ゆっくり神社から来たのか?」 「むきゅ!?な、なんのことかしら?ぱちゅりーはそんなれいむ、ぜんぜんしらないわね!」 れいむなんて一言も言ってないのに……まあこれで間違い無さそうだ。 しかし人を助けて対価を貰おうというのは、ゆっくりにしてはなんとも殊勝な考えだ。 「むきゅ!とってもかしこいぱちゅりーがばかなおにいさんをかしこくしてあげるわ!ゆっくりなんでもきいてね!」 しかしもうちょっと口の悪くない奴を派遣出来なかったものか…… ぱちゅりーは文房具に混じって、机の上に鎮座している。気が散って邪魔だ。 ぱちゅりーの頭が実のところそんなに良くないことは知っているので、追い返しても良い。 しかし受験勉強でストレスの溜まっていた俺は、ちょっとだけ悪戯をしてみた。 「ふーん、じゃあここの問題がちょっと解らないんだけど。答え教えてくれないかな?」 「むきゅ!ぱちゅにおまかせよ!」 俺は使っていた問題集の中で一番簡単な問題をぱちゅりーに見せてみた。 五秒後 「むっきゅー!!むじゅむじゅーー!!」 何か変な声を出し始めた。それでも問題集にかじりつくように向き合うぱちゅりー。 しかし人間様の問題をゆっくりに解けというのは難儀な話だ。 「むっきゅーー!!むじゅむじゅーーー!!」 ぱちゅりーはそのまま溶けていった。知恵熱でも起こしたんだろうか。 机の一角に広がったぱちゅりー液を指ですくって舐める。甘い。 これは勉強で疲れた頭を癒すには良いかも知れない。少しは役に立ったな。 ◇ 後日、試験に無事合格した俺は、息抜きに林道を散歩していた。 博麗神社に学問成就のお礼をしにいったのだが、ゆっくりの方にもついでに寄ってやることにする。 ゆっくり神社にさしかかると、おばあさんがお賽銭を入れていた。遠くから様子を見てみる。 「おばあさん!!おねがいごとをいってね!!」 「そうねぇ……うちの畑が今年も豊作で、おいしい野菜が沢山売れますように」 「ゆっくりききとどけたよ!!おばあさんはおいしいおやさいをいっぱいとれるよ!!」 「あらあら、嬉しいねぇ」 おばあさんは朗らかに微笑みながら、れいむに手を振ってゆっくり神社を後にする。 ゆっくりは子供っぽいところがあるから、ああいうのは年寄りに受けが良いのかもな。 おばあさんの姿が見えなくなると、れいむの仲間らしきゆっくりが数匹周りから飛び出て来た。 「みんなおばあさんのおねがいきいた?」 「はたけをてつだうんだねー!!わかるよー!!」 「きっとちからしごとだからまりさがてきにんね!」 「ゆっ!ゆっくりまかせるんだぜ!!」 「ちーんぽ!!」 この件を一任されたまりさは、おばあさんの帰っていった方角に向けて走っていった。 ああやって参拝者の住居を特定してるんだな。 その仕事ぶりを見るため、俺はまりさに二重尾行を仕掛ける。 やがて林を抜け、まりさはおばあさんの家に着いた。おじいさんと二人暮らしをしているらしい。 二人とも家の中にいるのを確認すると、まりさはさっそく畑に侵入する。青々と茂った根菜はもう収穫寸前らしい。 しばらくゆーゆー言いながら物色するまりさ。農作業のやり方なんて知ってるのだろうか。 そう思ってみていると、突然大根を掘り返して食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 何してんだ、あいつは……初めからこれが目的だったのか? いや、おそらく神社のれいむの目的は、こらしめられるリスクを負わずに人間の食べ物を手に入れること。 お賽銭を使って経済に参加することで、人間に疎外されない社会性を獲得しようとしたのだ。 まあ、現実的に可能かどうかは別として。 しかしアホのまりさには、そんな(ゆっくり的に)遠大な計画は理解出来ないし、面倒臭い。 それより目の前に広がるごちそうの山を目の前にして、今すぐしあわせになることを選んだのだろう。 「ゆっゆっ!これめっちゃうめ!さいしょからこうすればてっとりばやいんだぜ!!れいむはばかだぜ!!」 バカがどちらかは一目瞭然だが。 俺は畑の被害が大きくならない内に現場に踏み込み、まりさを取り押さえた。 「ゆっ!?おにいさんなんなんだぜ!?ゆっくりはなすんだぜ!!」 「人の野菜を食う悪いゆっくりを見過ごすわけにはいかないな」 「ゆべえぇっ!しらないんだぜ!ここはまりさがみつけたからおやさいはまりさのなんだぜ!!」 ぎゅうぎゅうと両手で地面に押さえつける。 跳ねようとするまりさの力が伝わって来るが、人間の腕力からすれば大したものではない。 餡子を口からぶりぶりと吐き出し、悲鳴を上げながらしなびていく。 あんまりまりさがうるさかったからか、住居からおじいさんが出てきた。 「コラーッ、わしの畑で何の騒ぎだ!?」 「あ、すいません。害獣が畑を荒らしていたものですから、咄嗟に……」 「ああ、ゆっくりか。すまんね兄ちゃん、うちも畑の周りに柵を作らないといかんのぉ。 そのゆっくりはうちが引き取るから置いていってくれ。良い肥料になるんじゃよ」 ほう、それは知らなかった。最近の農家はゆっくりを肥料にしているのか。 潰れて動けなくなったまりさをおじいさんに引渡し、俺は林道へと引き返す。 まりさの餡子によって畑の土壌は更に充実し、立派な野菜が収穫されることだろう。 ◇ 引き返した俺は、再びゆっくり神社へと赴く。 れいむが「ゆっくりしていってね!!」と言うので、「はいはいゆっくりゆっくり」と返す。 「ゆっ!!このあいだのおにいさん!!」 「やあ。おかげさまで試験にも合格出来たよ」 「よかったね!おともだちにもゆっくりじんじゃをしょうかいしていいよ!! ところでおにいさん、とってもかしこいぱちゅりーをみかけなかった?」 「ん? いや、見てないな。見てたとしても、見ただけじゃ賢いかどうかなんて解らないよ」 「ゆー、そうなの・・・」 まさかぱちゅりーは家で死にましたとも言えまい。余計な誤解と揉め事が起きそうだ。 しかしれいむもこっそりと仲間を派遣している手前、大っぴらに「お前の家に行ったはず」などとは聞けないらしい。 ご利益要員が欠けたのは痛いだろうが、またどっかから補充すれば良いだろう。ゆっくりなんて幾らでも沸いて出る。 「おにいさんきょうもおさいせんちょうだいね!!」 「いや、今日は良いよ。特に願い事も無いし」 「そんなことないでしょ!!なにかあるはずだよ!!おさいせんいれてね!!」 「醜い神社だなぁ……ん?」 傷付いた顔の子供がとぼとぼと歩いてきた。俺は道を開けてやる。 れいむが子供に「ゆっくりじんじゃだよ!!ゆっくりしていってね!!」と声をかける。 子供は賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を叩いて願い事を言った。 「村のいじめっこがぶっ倒れますよーに!!」 どうやら虐められて怪我をしてるらしい。身体も大きくないし喧嘩では勝てないんだろう。 賽銭入れて祈るなら博麗神社の方が……と思ったが、確かに博麗神社までの道のりは少し険しくて子供の足では辛い。 とはいえゆっくりにも縋る気持ちなのだろうか。 「ゆっくりききとどけたよ!!あくはせいぎにやっつけられるうんめいなんだよ!!」 「うん……ありがとう……」 れいむの言葉を気休めと受け取って力なく笑うと、少年はトボトボと村に帰っていった。 助けてやりたい気もするが、子供の喧嘩に大人が出て行くってのもね。 周囲の茂みがガサガサと揺れた。仲間ゆっくり登場かと思ったが、出てこない。俺がいるからか。 「おにいさん!!ようがないならさっさとどっかいってね!!」 れいむが体を膨らませて怒鳴ってくる。俺ははいはいと答えてれいむの視界から消え、近くの茂みに隠れて様子を見る。 俺の姿が見えなくなったのを確認すると、何匹かのゆっくりが茂みから出てきた。 「こんかいはわるものたいじだよ!!」 「わかるよー!みょんとちぇんがいくんだねー!」 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「ふたりにかかればにんげんなんていちころね!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 子供の帰っていった方に走っていくみょんとちぇん。 俺も気付かれないようにその後ろをこっそりついていく。暇な奴だな、俺も。 結構歩いて村に辿り着く。こそこそと住人の様子を見て回っているゆっくり二匹。 やがて、いかにもいじめっ子ですといった風貌の、体格の大きな子供を見つける。 「あいつなんだねー!わかるよー!」 「ちーんぽ!」 「ちぇんがうしろからきしゅうするから、みょんがとどめだよ!」 「でかまら!」 気合の掛け声だろうか。 打ち合わせをするやいなや、ボサっと道を歩いていたいじめっ子の後頭部に向けてちぇんが苛烈な体当たり。 「いだっ」と呻いたいじめっ子は軽い脳震盪でも起こしたのか、その場に手をついてしまう。 そしてみょんが追撃。背中の上でぼふぼふ跳ね始める。 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「痛いっ、痛い! な、何なんだお前ら!?」 「ゆっくりしぬんだねー!わかるよー!!」 ゆっくり達の猛攻は続く……が、最初の一撃以外はあんまり効いてるとは思えない。 肩甲骨の間あたりで飛び跳ね攻撃を繰り返していたちぇんが、しっぽを掴まれて地面に叩きつけられる。 「ゆべっ!!なにずるのー!!ゆっくりやめてよー!!」 「はぁ? お前らが先に喧嘩売ってきたんだろうが。何やったってセイトーボーエイだぜ」 「ち、ちーんぽ!?」 みょんを払いのけ、立ち上がる少年。その瞳には苛立ちと、面白いおもちゃを手に入れたという好奇の光が輝いている。 ちぇんはしっぽを掴まれたまま、「ぎにゃあああああああ!!」と叫びながら振り回されている。 目からあふれ出る涙が周囲に飛散する。隠れているこっちにも飛んで来たので、顔についたのを指で取って舐める。甘い。 その勢いでびたーんびたーんと地面に叩きつけられるちぇん。その度に餡子を吐き出し、地面に放射状の餡痕が残る。 少年は鞭のようにちぇんを振ると、近くでおろおろしていたみょんを横に薙ぎ払った。 「ぺにずっ!?」 「ぎゃはははは! 弱っちいゆっくりごときがおれさまに勝とうなんて、百年早いんだよ!」 「やめでねー!!たずげでねー!!わからないよーー!!!」 吹っ飛ばされたみょんが、俺の隠れている近くの茂みに突っ込む。ギクッとしたが、何とかばれなかったようだ。 ちぇんは餡子を吐き出して少し軽くなり、速度を増して引き続きひゅんひゅんと振り回されている。 「やめてねええええーーー!!わからないよぉぉぉぉーーー!!!」 「あははは、これ面白いな。そうだ、お前うちの飼い猫の遊び相手にしてやろうか。 何か見た目も猫っぽいことだし、あいつもきっと喜ぶぞ。楽しみだな!」 「ゆぅぅぅうーーー!ちぇんおうちかえりたいよーーー!!!」 言葉とは裏腹に残酷そうに笑う少年の顔を見て、飼い猫もきっと彼に似て大きくて乱暴なんだろうなと思った。 その時、茂みに埋まっていたみょんが颯爽と飛び出す。その口には折れた枝がくわえられている。 ちぇんを振り回して遊ぶ少年の足元に、あっという間に駆けていき……そのまま枝の尖った折れ口で、少年の足を突き刺した。 「ちぃーーーーんぽ!!」 「い゛っ……痛っでえぇぇぇぇぇーー!!」 「みょーん!たすけてくれたんだね!!わかるよーー!!」 「ちんぽちんぽちーんぽ!」 足の痛みに、思わずちぇんを離してしまう少年。地面に落ちたちぇんは、嬉しそうにみょんの元に擦り寄る。 少年の足を見てみると、結構傷が深いみたいで血がどくどく溢れ出ている。あれは跡が残りそうだな。 ……っていうか、ちょっと洒落にならなくなってないか? 見てていいんだろうか? 血まみれの枝をくわえてなおも戦闘態勢のみょんを、泣きそうな顔で見ている少年。 やがて足を引きずりつつも、全速力で泣きながら逃げていく。 「いでぇ、いでぇよぉぉぉぉーーー!! お父ちゃーーーん!!」 「やったねーー!!ちぇんたちがかったんだよ!!わかるよーーー!!」 「ちーんぽ!!」 手負いの二匹はぴょんぴょん跳ねて勝ち鬨を上げている。 確かにあの怪我では、いじめっ子もしばらくは他の子供達に乱暴など出来ないだろう。 だがしばらくもしない内に、先ほどのいじめっ子など比べるべくもない屈強な男が現れる。 「てめえらか、うちの坊主に怪我させたゆっくりは!!」 「ちんぽ?」 「またわるものとうじょうなんだねー!わかるよー!でもちぇんとみょんならまけないんだよーー!!」 いじめっ子を撃退して自信をつけたのか、勢いよく突進していく二匹。 しかし大人の男に勝てるはずもなく、木の枝を突き刺す前に順々に蹴り飛ばされてしまう。 「ぢんっ!?」 「ゆびゅっ!なんでえええーーー!わからないよぉーーー!!」 「饅頭ふぜいが、人間様を傷付けやがって……あの世で後悔しやがれ!!」 男は少年のように甚振ることなどなく、躊躇せず二匹のゆっくりを確実に踏み潰していく。 始末を終えた男は、村の広場に大人たちを集め、何やら話し合いをしていた。 「ゆっくりが人間を襲っただって? 信じられないなあ」 「しかし現に、うちの坊主が木の枝で足を刺されてるんだ。あれじゃ当分は田んぼにも入れねえ」 「うーん、確かに子供や年寄りなら怪我をさせられることもあるかもな」 「どうする? 人間に勝てると思い込んだゆっくりが人を襲い始めたら……」 「そんな危険な饅頭がいたんじゃ、弱い者はおちおち村を出歩けもしない!」 「仕方ない、このあたりのゆっくり一斉駆除しよう。決行は明日の午後、子供や老人には外出を控えさせよう」 さあ、大事になってまいりました。まあ当然の成り行きですけどね。 ゆっくり神社のおかげで大量のゆっくりが死ぬことになってしまった。 まあ神社自体はこの村から離れた所にあるから、そこまで駆除の手が及ぶことはないだろうが。 しかし酷い話だ。俺は家に帰った。 ◇ 数日後。ゆっくり神社は人員の欠損と補充を繰り返しながら、 俺のような珍しいもの好きの人間相手にそこそこ繁盛してるみたいだった。 何度か様子を伺ってみたが、神社の運営を担当するれいむに、周囲の仲間がごはんを運んでくるらしい。 その見返りに、お賽銭が溜まった暁にはれいむがおいしいお菓子を振る舞うという筋書きだろう。 そしてついに、充分なお賽銭が溜まったとれいむが判断したらしい。 れいむは達成感に満ちた笑顔で、お堂から出てきて賽銭箱にすりすりしている。 「おかしをかいにいくよ!!ゆっくりはこをあけるよ!!」 ゆっゆっと言いながら、箱の周りを何週かするれいむ。何をやっているのか。 「どうやっであげるのおぉぉぉおおおぉぉぉぉ!?」 考えてなかったんかい。神社の巫女さんがやってるんだから何とかなるだろうぐらいの気持ちだったんだろうな。 引っ繰り返そうと体当たりをするが、元々が高さがなく横に広い形状であった上、 皮肉にも小銭が溜まって重量を増した箱はそう簡単に倒れない。 ゆぐゆぐと泣いているれいむ。開けてやろうかしらと思い始めた頃、性悪そうな一人の青年が参拝にやってきた。 れいむを無視して賽銭箱に小銭を投げ入れると、ぱんぱんと手を叩く。 「もっといっぱい虐待できますよーに!!」 「ゆ!?おにいざん!このはこをあげでね!!!」 巫女としての務めも忘れ、泣き声で参拝客に懇願するれいむ。 青年はにっこりとれいむに微笑みかける。 「いいよ、お安い御用さ。でもタダでは引き受けられないなあ」 「ゆ゛!?」 「お願い事をする時は何が必要なんだっけ?」 「ゆ・・・おさいせん・・・でもおさいせんはそのなかだよ」 「じゃあ僕が箱を開けたら、僕にお賽銭をくれるのかい?」 「いいよ゛!!はやぐゆっぐりあげでねぇ!!!」 箱を開けることしか考えていないれいむ。青年は手に力を込め、固く閉められていた箱の蓋を外す。 れいむは感激の涙を流す。 「ゆぅ~~!!おにいさんありがとう!!」 「じゃあ約束どおり、お賽銭はもらっていくね」 「ゆ?」 持参した袋に箱の中身の小銭をじゃらじゃら流し込んでいく青年。 感激の表情のまま、呆然と眺めているれいむ。 「じゃあね!」 「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅ!!おにいざんなにずるの゛おおぉぉぉぉぉ!!! れいぶのあづめだおざいぜんがああぁぁぁぁぁ!!」 「大丈夫、これはちゃんと里の自然保護基金に寄付しておくよ。 買い物しようなんてらしくないこと考えず、森の中でゆっくりしていってね!」 疾風のように去っていく青年を、れいむは追いかけることも出来ない。 俺が捕まえるべき? いや、別にれいむの肩持つ気無いし。 それにあの青年は、本当に森のためにお金を使うことだろう。私利私欲のためではなく、 ただゆっくりを絶望に突き落とすことだけを目的に行動する人種のようだから。 まあ自然保護活動にとっちゃ、微々たるものだろうけどね。あんなはした金。 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・なんでぇ・・・れいぶのおさいせん・・・」 ゆっくり神社の境内でれいむが泣いていると、周囲から仲間のゆっくりが怒った表情で飛び出して来た。 れいむだけのお賽銭じゃないんだよね。 「ちょっと!どういうことなのれいむ!!」 「はこをあけるためにおさいせんをあげちゃうなんてばかなの?しぬの?」 「ゆ゛っ!?ちがうよ、れいむは・・・」 「ちがわないんだねー!わかるよー!」 「にんげんのたべものをいっぱいくれるってやくそくはうそだったんだね!!」 「いままでまりさたちをだましてごはんをはこばせてたんだぜ!!ゆるせないんだぜ!!」 「にんげんのおねがいにつきあわされてゆっくりできなかったわ!」 「れいむはぜんぜんゆっくりできないゆっくりだね!!」 「このうすぎたないばかゆっくり!!いきてるかちないよ!!」 「「「「「「ゆっくりしね!!!」」」」」 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」 何匹ものゆっくりから袋叩きに遭うれいむ。 参拝客に気に入ってもらうために綺麗にしていた髪や肌もボロボロになっていく。 暴行に参加していないゆっくりは、れいむの収まっていた手作り小屋に体当たりして破壊し、 屋根に使われていた葉っぱや草をむーしゃむーしゃとやっている。 やめでぇぇぇというれいむの声も、罵声と悲鳴の中に掻き消える。 十数分に渡る暴行が続いた後、完全に神社を破壊しつくしたゆっくり達は、それぞれ周囲に散っていった。 残ったのはゆっくり神社本堂のわずかな建材(食べられない部分)と空っぽの賽銭箱、 ボロ雑巾のようになった虫の息のれいむだけだった。 リボンも解けていてかわいそうだったので、俺は出て行って結んでやった。めんどくさいから固結びだけど。 「ゆ・・・・おにいさん・・・・・・」 「やあれいむ。お賽銭いるかい?」 「いらないよ・・・・・もうおかねはいやだよ・・・・・」 「あ、そう」 清貧ってやつかな。本物の方の巫女にも見せてやりたいぜ。 俺はれいむの前に立って、手をパンパンと叩く。 「早いとこ給料上がりますよーに!」 そして一礼すると、ゆっくり神社跡に背を向け、家に帰る。 饅頭には神も仏もいないよね。 おしまい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4575.html
多数の設定お借りさせていただいています セリフすっきり 出産要素 家族 ・赤ちゃん ***************************************************************** 赤ちゃんのゆっくり返し ***************************************************************** れいむは今までのゆん生を振りかえっていた。 やさしいおかあさんとたくましいおとうさん、 たくさんのおねえちゃんたくさんのいもうとに囲まれてゆっくりした日々。 おさんぽ途中に出会いひとめぼれしたまりさ。 思い切って告白したらまりさも好きと言ってくれた感動。 大好きなまりさと一緒にいれる毎日。 なら次にすることは…。 「ねぇ、まりさ」 「なに?れいむ」 「れいむたちゆっくりしてるけどさ」 「うん」 「あかちゃんがいればもっとゆっくりできない?」 「そうだね!あかちゃんがいればとってもゆっくりできるね!」 「じゃあ…しよ?きて…まりさ…」 「うんいまいくよ…」 「「んほおおおおぉぉぉぉぉ!!すっきりいいいぃぃぃぃぃ!!!」」 真夜中の山に響くゆっくりのクライマックスな叫び声。 行為が終わった後自分のお腹がふっくらと膨らんでいくのが目に見えた。 「ゆゆ?れいむにんっしんっしたよ!」 「やったねれいむ!かぞくがふえるよ!」 赤ちゃんが生まれたらどんなことをしようか。 一緒にいっぱいゆっくりできるご飯をむしゃむしゃしよう、 一緒にいっぱいおひさまに当たってぽかぽかしよう、 一緒にいっぱいおうたをうたおう、 一緒にいっぱいすりすりしよう、 一緒に…。 れいむが未来に見えるすばらしいゆっくりエブリディを想像している横で、 まりさはすっきり疲れか早々に寝込んでいた。 にんしんっしたその日かられいむは無性にお腹が減るのを感じた。 きっと赤ちゃんに栄養を欲しがっているんだ。 まりさにゆっくりできるご飯をたくさん取ってきてもらおう。 「あかちゃんのためにおいしいごはんをたくさんとってきてね!!」 「まりさがんばるね!」 まりさが外で頑張っている間は何をしようか。 そうだ、赤ちゃんがゆっくりできるようにおうたを歌ってあげよう。 「ゆっくりそだってね!あかちゃん!」 「ゆ~♪ゆゆゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪」 おうたを歌い疲れて眠ってしまっていたところにまりさが帰ってきた。 帽子にたくさんのご飯が詰まっている。むしゃむしゃして赤ちゃんをゆっくり育てよう。 「ただいまれいむ!あかちゃんのためにたくさんむしゃむしゃしてね!」 「これであかちゃんがゆっくりできるよ!」 「じゃあいただきますを「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「もうぽんぽんいっぱいだよ!あかちゃんゆっくりそだってね!」 たくさんご飯を食べたらもうお空が真っ暗。 早く寝ないと赤ちゃんゆっくりできないよね。 「おやすみ!まりさ!あしたもゆっくりしていってね!」 赤ちゃんのため食っては歌い食っては眠りの生活が始まってからしばらくしたら、 お腹がにんっしんっする前の自分が入ってしまいそうなくらい膨らんだ。 たまに自分の意思に反してお腹がピクピクと動くことも増えてきた。 もうすぐ赤ちゃんに会える、とってもゆっくりした赤ちゃんに…。 そのためにはたくさんゆっくりしてあげないと! 「まりさ!きょうもよろしくね!」 「…うん!まりさがんばるよ!!」 ***** ところ変わってれいむのお腹の中。 すでに形の整った5匹の赤ちゃんが相談していた。 「おきゃーしゃんとっちぇもゆっくちしてるね!」 「ゆっくり♪ゆっくり♪」 「そのゆっくちにまりしゃはどうやっておかえちしようか」 「ゆゆーん♪そんにゃのかわいいれいみゅをみればいちころだよ!」 「まりしゃそれだけじゃたりないようなきがするよ!」 「「「「ゆゆ??」」」」 一番の親孝行はゆっくりしている自分を見せることだ。 それだけではいけないのか?他の赤ちゃんが驚いた。 「きょれだけおきゃーしゃんがゆっくちちてくれてるんだもん! まりしゃたちをみるだけじゃおかえちにならにゃいかも」 「「「「ゆー……」」」」 とってもゆっくりしているお母さん。 そんなお母さんをゆっくりさせるには自分を見せる以外のワンポイントゆっくりが必要。 そう感じて赤ゆっくりたちは考え込んだ。 「れいみゅゆっくちおもいついちゃよ!」 「どんにゃことしゅるの?」 「れいみゅきゃわいいことびゃをつかっちぇゆっくちしゃせてあげりゅよ!」 「どんにゃの?ゆっくちおしえちぇね!」 「こうやりゅんだりょ!」 「ゆっきゅちちちぇいっっちぇにぇ!!」 「ゆゆーん♪しゅっごくゆっくちちてるね!」 赤れいむは舌っ足らずなしゃべりを磨きにかけることで、 母性本能ならぬゆっくり本能を刺激しようと考えた。 「まりしゃはわいるどにいくよ!」 「ゆっくちきににゃる!」 「『ゆっくちちていってね!』いがいのあいさつをしゅるよ!」 「かっきょいいね!」 赤まりさは『ゆっくちちていってね!』と言わずに、 自分オリジナルの挨拶を実行することで、 今までの赤ちゃんとは何かが違う感を出すことにした。 「れいみゅはへんかきゅうだよ!」 「へんきゃきゅう?」 「うちろからうまれりゅよ!」 「おきゃーしゃんもびっくちだね!」 普通ゆっくりの胎生型出産の場合、赤ちゃんは顔から出てくる。 赤れいむはその法則を覆すことによって、 お母さんに新鮮な驚きを与えようと考えた。 「まりしゃはかきぇにでるよ!」 「どんなかきぇかおちえてね!」 「おきゃざりをもっちぇいかないよ!!」 「ゆゆ!それはゆっくちできないよ!」 「ふっふっふ…まりしゃはちゃんとかんがえちぇるよ!」 飾りのないゆっくりは他のゆっくりにゆっくりできないゆっくりと言われる。 赤まりさはあえて飾りを捨てることにより、 この子はお母さんがゆっくりさせてあげなきゃだめだ、 と使命感を煽るように演出しようとした。 「れいみゅはなにかおもいついた?」 「れいみゅは…ひみちゅだよ!」 「もったいぶりゃないでゆっくちおちえてね!!」 「あとのおたのちみだよ!」 ***** 「むーしゃ!むーしゃ!しあわうっ!!」 まりさの持ってきたご飯を食べた直後、 お腹に今までに感じたことのない強い痛みが走った。 「いだ゛い゛い゛い゛!!れいむのぼんぼんさけちゃう゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 「れいむ!あかちゃんがうまれるよ!がんばって!!」 れいむの顎のあたりにぽっかり穴が空き、そこから赤ちゃんが見える。 しかしその穴は狭い、そこへその穴の2倍以上の大きさの赤ちゃんが通ろうとしている。 皮が引っ張られ今にもちぎれそう、痛みがゆっくりとゆっくりとれいむを蝕んでいく。 「うぐぐぐぐぐぐ!!」 「れいむ!あかちゃんだよ!あかちゃんのかおがみえたよ!!」 痛みで意識を失いそうな中、赤ちゃんという単語だけがれいむの精神をつないでいた。 早く赤ちゃんに会いたい!この思いがれいむの体を無意識に動かしていた。 「ゆーゆっゆー!ゆーゆっゆー!」 「れいむ!もうすぐだよ!あかちゃんでてくるよ!」 ポンッ! その音と共にれいむを蝕んでいた痛みが急速に引いていった。 ようやく辺りを見回す余裕を得られたれいむが見たものは…。 つぶらなおめめ、かわいいお口、しっとりと黒い髪に、 蝶のような大きなリボンを結んでいる。 まるで自分を見ているように思えるほどれいむに似た赤ちゃんだ。 赤ちゃんを産んだらまず何をするか、挨拶だ。 「ゆっくりしていってね!」とお互いに言いあうことではじめて、 お互いにゆっくりできる存在と認識することができる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっきゅちちちぇいっっちぇにぇ!!」 どうもおかしい。 うまくしゃべれない赤ちゃんでも「ゆっくちちていってね」くらいは言えるはずだ。 なのにこの赤ちゃんはそれすら言えてない。 これは聞き違いなんだ、もう一度やり直して…。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっきゅちちちぇいっっちぇにぇ!! ゆゆ?おきゃあしゃんっはちょおうっちぇもぅゆっきゅちちちぇりゅにぇえ!! きゃひゃいひれいみゅをみちぇみょうぅちょゆっきゅちちちぇいっっち」 「うまくしゃべれないあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「ゆべっ!」 なかなな挨拶ができない赤れいむにしびれを切らしたまりさは、 赤ゆっくりにあんよの一撃をくらわせる。 「みゃぢゃ…ゆっきゅち…ちちぇにゃいにょに…」 「ゆっくりしね!」 ギリギリ息があった赤れいむにとどめの一撃が炸裂。 あまりにも展開が早すぎてれいむの餡子は付いていけない。 そして、まりさの下につぶれている赤れいむを見つけた。 なんで?なんで?なんで?なんで? (「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」) 「ど…」 (「すーりすーり!おかあさんのほっぺとってもぽかぽかさんだよ!」) 「どぼじで…」 (「おかーさんのことだーいすきだよ!」) 「どぼじでぞんなごどずるのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 「ちゃんとしゃべれないあかちゃんはゆっくりできないからだよ!」 ちゃんとしゃべれなくってこれから練習していけばいいじゃない。 ゆっくり見守っていけばいいじゃない。 それなのに…それなのに…それなのに…。 「れいむ!またあかちゃんがうまれてくるよ!!」 「ゆゆ!?ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!」 初回に穴がある程度広がったおかげか、 二回目の出産はそれほど痛みを感じなかったが、やはり慣れるものではない。 「ゆーゆっゆー!ゆーゆっゆー!!」 ポンッ! 次に産まれてきたのは、 りりしい瞳、輝く金髪の上に形の良い山高帽をちょこんと乗っけた、 愛するまりさそっくりの赤ちゃん。 まりさに似てるんだ、だから挨拶もきちんとできるはず。 「ゆっくりしていってね!!」 「おーっちゅ!」 え…? なんで挨拶出来ないのだろう。 もしかしてれいむのことを弄んでいるのだろうか。 「ゆっくりしていってね!!」 「おーっちゅっちゅ!!」 「あいさつをきちんとできないあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「おーっちぶじ!」 キチンと挨拶が出来ないとまりさに判断された赤まりさは早々に潰されてしまった。 愛するまりさに似た赤ちゃんがあっという間に餡子の塊へと姿を変える。 「どぼじでぞんなごどずるのお゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 「あいさつできないあかちゃんはゆっくりできないからだよ!」 挨拶なんて所詮形式的な儀式のようなもの。 それができないがためにいきなり殺されるなんてあまりにも不条理だ。 ゆっくり挨拶を教えることもできたのに…できたのに…できたのに…。 「れいむ!またまたあかちゃんがうまれてくるよ!!」 「ゆゆ??」ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!! 二回目の出産があれほど楽だったのだから、三回目はもっと楽だろう。 そうたかをくくっていたのだが。 「ゆーゆっゆー!ゆーゆっゆー!!ゆーゆっゆー!!!」 「どぼじでうばれでぐれないのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 いくら力んでも赤ちゃんが出てくる気配がない。 まるで赤ちゃんが自発的に出る気がないように。 「れいむ!このあかちゃんおかおがないよ!」 「ぞんなわげないでしょお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛?! いだい゛い゛い゛ぼんぼんいだい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」 「ゆ゛ーゆ゛っゆ゛ー!ゆ゛ーゆ゛っゆ゛ー!!」 実に最初の出産の数倍の時間をかけてようやくポンッ!と赤ちゃんが産まれてきた。 その時出産の衝撃で一時的に空を飛ぶ赤ちゃんと一瞬目があったような気が…気のせいだ。。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくちちていってね!!」 ちゃんと挨拶をしてくれた! 今まで挨拶が出来ないからってまりさが赤ちゃんをゆっくりさせちゃったけど、 ちゃんと挨拶できたからもうまりさは怒らないはず。 赤ちゃん、これからもずーっとゆっくりしていってね。 「ところであかちゃん」 「あかちゃんじゃないよ!れいみゅはれいみゅだよ!」 「どうしてうしろからうまれたの?れいむすごくくるしそうだったよ」 「あれはれいみゅがきゃわいくうまれてくるためにしちゃんだよ! とっちぇもゆっくちできちゃでしょ!」 「れいむをくるしめるあかちゃんはゆっくりしね!」 「きゃわいくってごべっ!」 まりさのあんよに潰されて物言わぬ饅頭となる赤れいむ。 何で?今度はちゃんと挨拶してくれたのに何が気に入らなかった? 「どぼじでぞんなごどずるのお゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 「おやをくるしめてはんせいしないあかちゃんはしょうらいゲスかくていだからだよ!」 ゲスになるかなんてこれからの教育次第でゆっくり決まるものじゃないか。 それなのに一回間違ったことをしただけでゲス確定なんて。 その理論ならなら自分はとんでもなくゲスな奴だ。 きっとまりさは焦っているんだ。なだめなきゃ、なだめなきゃ。 「まりざあ゛あ゛あ゛もっどゆっぐりじでよお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」 「そんなことよりまたまたまたあかちゃんがうまれてくるよ!」 「ゆゆ?ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 四回目の出産で、さらに先ほど無駄に力んだためか穴はもうガバガバ。 すんなりと産まれてきてくれた。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくちちていってね!!」 良かった。この子もきちんと挨拶できる。 ちゃんと苦しめずに産まれてくれたから、 きっとまりさも赤ちゃんのことを褒めてくれるはず。 このまりさに似たりりしい瞳に輝く金髪にその上にちょこんと乗った山高帽が………ない!? 「かざりがないあかちゃんはゆっくりしね!!」 「ゆべっ!」 「どぼじでぞんなごどずるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 「かざりがないゆっくりはゆっくりできないでしょお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??! ゆっくりかいのじょうしきでしょお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!?」 確かに飾りのないゆっくりはゆっくりできない。誰が誰かわからないからだ。 でもこの赤ちゃんは飾りがなくても確かに自分たちの赤ちゃんということがわかる。 それならば飾りなんて本来の意味での飾りだ。 「さっきからゆっくりできないあかちゃんばかりうんでるね!ばかなの?しぬの?」 「でもまだあとひとりあかちゃんがのこってるよ!」 「ほんとう?だったらゆっくりみせてね!!」 お腹の中にはあと赤ちゃんが一人残っている感覚がある。 最後までゆっくりした赤ちゃんだもの、見ればきっとまりさもゆっくりしてくれる。 そしたら三人で末永くゆっくりしよう。 「あかちゃん!ゆっくりうまれてきてね!!」 ***** 一方れいむのお腹の中では赤れいむがゆっくりしていた。 「あなさんがひらいちゃけどれいみゅはうまれにゃいよ!」 「みんにゃはうまれちゃったけれでも、れいみゅもうまれちゃったら おきゃーしゃんのぽんぽんがさみちくなるからうまれないよ!」 「おきゃーしゃんのなかにずっといる。れいみゅのことがみりぇなくても、 れいみゅがぽんぽんにいるだきぇでおかーしゃんはゆっくちできるんだよ!」 「れいみゅおきゃーしゃんにあえないからさみちいけれども、 おきゃーしゃんをゆっくちできるならがまんしゅるよ!」 「おきゃーしゃんゆっくちしていってね!」 ***** 「あかちゃんはまだ?ゆっくりしすぎだよ?」 「どぼじであがぢゃんうばれでぐれないのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??」 なぜこんな時に赤ちゃんが産まれてくれないのか、れいむは考えた。 もう赤ちゃんはすでに死んでいる。これはない、確かに赤ちゃんの感覚があった。 赤ちゃんは弱すぎて出ることができない。これもない。手助けすれば絶対出れる。 こうなれば自発的に産まれるのを拒否しているようにしか思えない。 つまり、 「まりさ!あかちゃんはれいむのなかでゆっくりしたりないんだよ! だからあかちゃんのためにたくさんごはんをとってきてね!! 「だまれ…」 「あかちゃんはえいようがたりないとしんじゃうだよお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??! そんなこともわからないなんてばかなの?しぬの?」 「だまれえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 まりさは何てわがままを言っているんだ。 赤ちゃんはれいむたちをもっとゆっくりさせてくれる存在で、 そのゆっくりのために働くのは至極当然のことであって… 「おばえは!あかちゃんがでぎでがら!ずーっとばりざをえざをどってぐるどうぐみたいにじで! だまにのぞいだらおうだをうだっだりひるねじだりとおばえばっかりゆっぐりじでるじゃないか!!」 「でもれいむがゆっくりしないとあかちゃんは」 「ぞれはおおめにみるどじで!づがれでがえっでぎだばりざに! おばえはいだわりのごどばをがげだごどがあるか?!」 「あがぢゃんがでぎでがらおばえはいづもいづも「これであかちゃんがゆっくりできるよ」 とあがぢゃんのごどばがり!ばりざのごどなんでなーんもみでぐれない!」 「でもあかちゃんはだいじだよ?」 「ほらまだあがぢゃんのごど!!ばりざはおばえのどれいじゃない゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛!! じがもぜっがくのあがぢゃんはびんなゆっぐりできないやづら!! ごんなごどになるんだっだらおばえなんがどずっぎりじなげればよがっだ!!!」 「ど、どぼじでぞんなごどいう゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛??!」 「どうもごうもあるが!!おばえのがおなんでにどどびだぐない゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」 そう言うとまりさは外に出て行ってしまった。 赤ちゃんのことを大切に思えないなんて恐ろしいほどのゲスだ。 でも今はそんなことより今は赤ちゃんの方が大事だ、早く赤ちゃんのためにむしゃむしゃしないと。 確か貯蔵庫に…。 「どぼじでごはんざんがないのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!??」 きっとまりさがこっそり全部食べてしまったんだ。なんてゲス。 仕方ない、ならば自分で動いてご飯を取りに行くしか…。 ん?体が重くて動かない…。 「どぼじでれいぶあるげないのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?? これじゃあごはんとりにいげない゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 ご飯をどうしようと考えていたら急に力が抜けてきた。 大きくなった赤ちゃんが今まで以上にれいむの栄養を吸収し始めたのだ。 「あがぢゃんんんんん!ずわないでえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!! おかあざんじんじゃう゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」 あ…目がかすんできた…。 れいむはもうだめなんだ。 赤ちゃん、一緒にすりすりしたかったなー。 「もっどゆっぐりじだがっだ…」 こうしてれいむは赤ちゃんの望み通り、 とーーーーーってもゆっくりすることができたとさ。 終 ***************************************************************** 自分のゆっくりできることを他人にしなさい。 聖ゆっくりの教えを産まれる前から実践できるってすごい。 今まで書いた作品 初めての制裁 僕のうさばらし ゆっくりは死んだ 見せあいっこ ゆっくりの伝道師 妄想お兄さん このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3685.html
『真冬のゆっくり対策 4』 「そんなに高く積み上げることはないわ。そう…それくらいの高さで充分でしょ」 「レンガの壁ですか…ちょっと見た目は悪いですけどゆっくりが入ってくるよりはマシですね」 「遠くからだと畑が見えるが近くに来ると畑に入れない…いいですね」 「1ヶ所だけ小さな穴開けてもいいですか?」 「ええ?どうしてですか?」 「いやぁ…ゆっくりを罠にはめたくてねえ…ちょっと俺もあっちなもんでね」 「いいですけどあちこちに作らないでくださいね。あと罠に嵌らないでくださいね」 「自分で作った罠に嵌るなんてまるで餡子脳じゃないですか」 「終わった人こっち手伝ってくださあい」 「今行きま~す!」 「どうですか」 「こっちは順調よ。そっちはうまくいった?」 「今頃茎を生やしていると思いますよ」 「じゃあそっち行きましょう」 彼らが戻ってみるとゆっくりはみな茎を生やして大騒ぎだった。彼らは陰から隠れて覗いてみた。 「どぼじででいぶのあだまにあがじゃんがでぎでるのおおおおお!!!!」 「なんでばりざのあだまにありずがいるんだぜえええ!!!!ばりざのおくざんはでいぶなのにいいい!!!」 「ぢぇんはずっぎりいいいじでないよおおおお!!!!わがならないよおおお!!!!!」 「ばりざのうわぎものおおおお!!!!!どぼじでぱじぇのあがじゃんがいるのおおお!!!!!」 「でいぶだっでどぼじでありずのあがじゃんがいるのおおおお!!!!!」 「なんでええええ!!!!!すっきりしちゃだめだっでどすとやくぞくじだでしょおおおおお!!!!!」 「(凄いわね)」 「(まだまだ。これからですよ)」 「どうじでみんなずっぎりいじじゃっだのおお!!!!!????」 元リーダーのありすが泣きながらやってきた。 「でいぶはずりずりじでないよおおお!!!!!」 「ぱじぇもしてないわよおおお!!!!」 「あ…あじず!!!!あじずだっで!!あじずだっでえええええ!!!!」 「な…なによ…わたしがなんだって?……すっきりしてないわよ!」 「じゃあどぼじであでぃずのあだまにあがじゃんがいるのおおおお!!!!!!」 「そんな!……ゆげええええ!!!!どぼじでえ!!!どぼじであがじゃんがいるのおおおおお!!!!!???」 「ゆ!まりさのあたまがへんなんだぜ!!…ゆがああああああ!!!!なんであがじゃんがいるのおお!!!!????」 「れ…れいむ!!おちびちゃんのあたまからなにか…ど…どぼじでえええ!!!!」 「なんだがへんだよおおお!!!!!ゆっぐりできないよおおお!!!!」 「おちびじゃんいづずっぎりいじじゃっだのおお!!ゆっぐりできないでじょおおお!!!」 「で…でいぶのあだまにあがじゃんができでるよおお!!ばりざすっぎりじでないよおお!!!!」 彼が霧吹きを噴いた辺り一面にいたゆっくりと騒ぎを聞きつけてやってきたゆっくりはみな頭から茎を生やしていた。 さらに 「もっど…ゆっぐりじだがっだ…」 「もうだめよ…むぎゅうううう」 「でいぶううう!!!!ばじゅりいいい!!!!!じっがりじd…ゆう"う"う"う…」 元々この辺りにいたゆっくりは更に茎を生やし黒い塊と化してしまった。このゆっくり達は彼が直接薬を噴きかけたゆっくりである。 「(す…凄いわ。ここまで効果があるなんて)」 「(半分くらいばら撒いたからな。精子餡をここまで濃縮するのが大変だったよ。結構コストがかかるんです)」 「(あの空間にいるゆっくりは皆妊娠してしまうの?)」 「(100%ではないです。直接噴きかけられたゆっくりは100%妊娠しますけどね)」 「(凄いものを作りましたね。そろそろ行きますか)」 「(見る限りそろそろ薬が切れますね。じゃあ俺が先行きます。呼んだら来て下さい)」 彼は陰から飛び出した。 「ん~うわっ!!!何だこれ!」 「で…でいぶううう!!!ち…ちがうのよ!!!これは!!!!」 「どうしてすっきりしちゃったんだよ!駄目じゃないか」 「しんじでええ!!!!でいぶはすりすりなんかじでないよおお!!!」 「まりさもだよお!!ありすもぱちぇもだれもすりすりじてないよおお!!」 「おい、ドス!早く来てくれ!!大変なことになったぞ!!」 「何よ…さっきから騒がしいわね……。な…何よこれ!!!!?」 「どす!!ちがうわ!!!ありすはすっきりーなんてしてないわ!ほんとよ!!しんじてえ!!!」 「しんじでぐだざいい!!!このごはすっぎりいなんてじてません!!」 「ここにきたらあかちゃんだはえでぎだんですうう!!!!」 「貴方達一体何を言っているの?」 「「「「ゆ!」」」」 「すっきりしてないのに妊娠したですって?ここに来たら赤ちゃんができたですって?」 「ほ…ほんとうだよぉ…」 「れいむうそついてないよぉ…」 「そんなわけないでしょ!!じゃあなんでドスには赤ちゃんができてないの?」 「「「「ゆゆ!!!!」」」」 「大きいれいむだって赤ちゃんいないでしょ!!!!」 「ほれ、何も生えてないだろ」 「「「ゆう…」」」 「なんでぇ…なんでれいむたちだけなの…」 「わからないよぉ…」 「ちょっと待ってろ」 彼は奥の方で震えながらこっちをみていたれいむを持ってきた。 「いやだああ!!れいむはあがじゃんほじぐないよおお!!」 れいむが地面に置かれた。 「………。ほれ見てみろ。この子は赤ちゃんを生やしていないぞ」 「ほ…ほんとうだあ…よかったあ…ゆっくりできるよぉ」 「れいむ、ありがとう。あっちでゆっくりしてていいよ」 「これで分かったわね」 「ゆう"う"うう…」 「れいむたち…どうなっちゃうのお…」 「そこのまりさ!」 「は…はい!!!」 「私との約束は何だっけ?」 「す…すっきりーしちゃだめだって…」 「そうだよねえ。さっき約束したもんね。じゃあ約束破ったらどうなるんだっけ?」 「ゆ…ゆ…」 「忘れたの?忘れたんだったら…」 「ゆ!…いいばず!いいばずがらあ!!…やくそくやぶったら…しけいかここからでていくんだよね…」 「そうね。だったら貴方達、分かるわよね」 「そ…ぞんなあ…」 「ぼっど…ゆっぐりじだいよおお…」 「あがじゃんじんじゃっだのにぃ…でいぶまでじんじゃうのいやだよぉ…」 「どがいはじゃなぐでいいでずがらぁ…ゆるじでえ…」 「ずっぎりいじでないよお…じんじでよお…」 「どす…おねがい…しんじでぐだざい…ありずだちはぁ…ずっぎりいなんでじでn…」 「黙りなさい!!!!」 「「ゆぅぅぅぅ!!!!」」 「「「ゆぴいいい!!!!」」」 「さっきレイプした赤ちゃんだって死刑にされたのよ!!そうだわ、温情で目を潰したら許してあげたんだけど…」 「おめめを!…おめめをつぶじぢゃっだらあ!!!!」 「だ…だべだよおお!!!おべべをつぶじじゃっだらゆっぐりでぎなくなっじゃうよおお!!!!」 「いいじゃない。目が見えなくなったらすっきりなんてしなくなるでしょ。その場から動かないでゆっくりすればいいじゃない」 「ひ…ひどいよおおおお!!!!」 「おがじいよ!!!!どずは…どずはぞんなごどいわないよおお!!!!」 「あら?ドスの言うことがきけないって言うの?ふぅん…だったら…この巣ごと火の海にしちゃおうかしら」 「だ…だべだよ!!どずは…どずだよぉ…」 「ご…ごべんなざあい!!!ゆるじでえ…」 「どず!!れ…でいぶをゆるじでぐだざい!!どすはどすです!!!だがら…だがらああ…」 「時間を無駄にしたくないわ」 彼女はれいむを持ち上げた。 「ゆ…ゆるじでええ!!!!ごべんなざい!!!ごべんなざい!!どすはどずでずうう!!!でいぶがばぢがっでまじだああ!!!」 「特別に貴方は生かしてあげるわ。ただし…」 「ゆっくりさせてください!!ゆっぐりいいいい!!!」 「貴方の目は頂くわよ」 彼女は木の枝でれいむの目を突き刺した。 「ゆぎゃああああ!!!!ゆぎぇええええ!!!!!」 「じっとしてなさい」 「いやじゃああ!!!いやじゃあああああああ!!!!いじゃいいいいい!!!!!おべべがああ!!!!おべべがああああ!!!」 「や…やべでぐだざいいいい!!!!ばりざのだいぜつなでいぶなんでずうううう!!!!」 「あら?代わりに貴方が目をくれるの?」 「ゆ!!…で…でいぶうううう…ごべんねえ…なにもでぎなぐでごべんねええ…」 「ですって。れいむ、我慢なさい。もう片方やったらお仕舞いよ」 「ゆ…ゆるじでえええええ!!!!!ゆびぇええええ!!!!おべべえええ!!!ぐらいよおおおお!!!!いじゃいよおおお!!!」 「はいっ。お仕舞いよ。よく我慢したわね」 彼女はれいむを地面に置いた。 「で…でいぶううう!!!じっがりずるんだぜえ!!!!ごれで…ごれでゆっぐりできるよ!!!ばりざが…ばりざが…」 「ゆぅ~っくりぃ~ゆぅ~っくりぃ…ゆっくりちていちぇねえ~ゆゆゆゆ~ん」 「でいぶう!!でいぶううう!!!じっがりじでえええ!!!!ばりざがゆっぐりさせてあげるがらああ!!ぼどにぼどっでよおお!!」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ…ゆっへへへへへへえええええええ」 「ゆぎゃああああ!!!!でいぶがああ!!!でいぶううううう!!!」 「あら壊れちゃったみたいね。…さあみんなどうするの?」 「こ…こわいよおおお…」 「ずっぎりいじでない…じでないよ…」 「じにだぐない…ゆっぐりじだいよぉ…」 「じゃあ仕方ないわね」 「「「ゆ!」」」 「おっと、許さないわよ。そうだわ、今から貴方達殺し合いをしなさい」 「「「ゆううう!!!!!」」」 「「でぎないよおお!!!ぞんなごど」 「最後に残った子は何もしないで生かせてあげるわ。赤ちゃんも産ませてあげるよ」 「そ…そんな…できないよ…そんなこと…」 「れ…れいむ…いやだよぉ…」 誰も他のゆっくりを殺そうとはしなかった。今日までずっと仲良くやってきた仲間達…殺すことなんてできなかった。 「ゆ…ゆっくりじないでじねえええ!!!!」 「ゆべ!!!なにずるのおおお!!!!ばりざあああ!!!」 「ばりざは!!!ばりざのでいぶはあがじゃんをうんでじんだんだよ!!!あがじゃんもれいぷされでじんじゃっだよ!!!」 「やべでえ!!!!いだいいい!!!!!」 「だがら!!!ばりざは!!!ばりざはゆっくりずるんだよ!!!みんなのぶんまで!!!だがらじね!!!じねええ!!!」 まりさが狂ったように隣にいたれいむを潰し始めた。そこから地獄が始まった。 「れ…れいむはゆっくりするんだよ!!!あかちゃんもいっしょに!!!!だから…ぱちぇはゆっくりしないでじねえ!!」 「とかいは…とかいはあああ!!!!!」 「むぎゅうむぎゅうう!!!!!じねえええ!!じねええええ!!!」 「やべでえええ!!!!びんなぼどにぼどっでよおおおお!!!!!」 「ざっぎまであんなにゆっぐりじでだのにいいい!!!!」 「じね!じね!じねえ!!!!」 「(すごいですね…)」 「(あんなに仲良かったのにね)」 「(いえ、貴方のことなんですが…)」 「(貴方だって同じ穴のムジナよ。見てて楽しいでしょ)」 「(虐待お姉さんをはじめて見ましたよ)」 「(あら…2匹だけ残ったわ。もうお仕舞いね)」 「ば…ばりざあああ!!!!よぐもありずをおお!!!!おばえなんがじんでじばえええ!!!!」 「うるさい!!!!まりさはいぎのごっでゆっぐりするんだ!!!!おばえごぞじんでじまえええ!!!」 残ったのはまりさが2匹。仲良しだった2匹は般若の如き顔をして対峙している。頭の上の赤ゆっくりも怒った顔をしているように見える。 「「じねえええええ!!!!」」 2匹は体をぶつけ合った。相手を罵りながらぶつかり合う。 「じねえええ!!!!さっざとじねえええ!!!」 「おばえごぞおおお!!!!ありずのがだぎいいい!!!!」 ありすの番であろうまりさが相手まりさの底を食い千切った。 「ゆぎゃああああ!!!!ばりざのあんよがあああ!!!!よぐぼお…よぐぼやっだなあああ!!!!!」 相手まりさは目を噛み付き返した。 「ぎゃああああ!!!!おべべがあ!!!!」 必死に相手まりさを振り払おうとするが底から餡子がどんどん漏れていくのもお構いなく噛み付いたまま離れなかった。 「はなれろおおおお!!!!!ばりざがらはなれでろおおおお!!!!!」 「ゆう"う"ううううう!!!!!!ぎぎぎぎぎいいいいいい!!!!」 やがて相手まりさは動かなくなってしまった。ゆっくりは餡子を半分以上外に出してしまうと死んでしまう。まりさもそうだったのだろう。 「なんでええ!!!なんではなれないのおおお!!!!!はなれろおおおお!!!!ばりざがらはなれでえええええ!!!!」 狂ったように生き残ったまりさが暴れるが死んだまりさは離れてくれない。そして 「ぼっど……ゆ…っぐ…り……」 最後の1匹だったまりさも死んでしまった。そのデスマスクはこの世のものとは思えないほど酷かった。 「(あら、全滅してくれたわね)」 「(でもいいもの見せてもらいましたよ)」 「さ~て…みんな、出てきてちょうだい!」 「ゆ…ゆう…」 「こ…こわい…よお…」 「心配しないで、掟を破ってすっきりーしちゃった悪いゆっくりはみんないなくなったよ。これでみんなゆっくりできるね!」 その時だった。 「…ゆ…ゆ…ゆっくりできないどすは…しねえ!!!!」 まりさが彼女に飛び掛った。 「あら……。うふふ。何してるの?当たらないわよ」 彼女は軽く避けてみせた。 「「「ゆゆゆゆゆゆゆゆ!!!!」」」 「「「「「ゆううううううう!!!!!!」」」」 つづく by 虐待おにいちゃん