約 396,665 件
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/185.html
『ディアスポラ』著:グレッグ・イーガン 訳:山岸真 2006/1/13(Fri) 探検隊 【まえがき】 【作者について】 【登場人物】 【本編のあらすじ】[第一部] [第二部] [第三部] [第四部] [第五部] [第六部] [第七部] [第八部] 【まとめ】 【資料】 【まえがき】 「わからないところはばんばん飛ばす」のが一番の攻略法だ、というのは大森望の言ですが、わざわざ読書会をやるのですし、可能な範囲で全員の理解を深めた上で意見を、という流れを今回はとってみます。とはいっても、物理と数学はどんどん飛ばします。その手の解説としては、板倉充洋さんのサイト を参照のこと。 【作者について】 まずは、作者の人となりについてです。断片的な情報をまとめてみました。引用元は参考文献に入れてあります。当然ながら、文責は私にあります。 1961年、オーストラリア西海岸の大都市パース(『宇宙消失』の冒頭の舞台、その他の作品でも登場)生まれ。西オーストラリア大学で数学の理学士号を取得した。この間に自主映画制作に手を染め、その後シドニーで専門学校にはいるが、四週間で退学。同市の病院付属の研究施設でコンピュータ・プログラマとして勤務後、パースに戻って同様の職に就く。この職場での体験は、作品に直接活かされているほか、専門知識集めにも大いに役立っているもよう。 SFはこどもの頃から読んでいて、すでに十台前半で、1950年代の黄金時代の作家から、1960年代のニューウェーブ作家までが守備範囲だった。十五歳当時、特に入れあげていたのは、ラリー・ニーヴンとカート・ヴォネガット。十代後半からは主流文学に興味が移るが、ふたたびSFに惹かれたきっかけは、1985年に発表されたグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』らしい。 デビューは1983年。オーストラリアのファン出版社から、シュールレアルな要素を含む処女長編『An Unusual Angle』(未訳)が発表されるが、これは実際には十六歳のときの作品である。同年から短編も発表、最初はホラーを書く一方で、出版社に「ハードSF」を送って没になったりしていた。しかし、イギリスの<インターゾーン>誌編集長デイヴィッド・プリングルが『キューティー』を読み、全面的にSFに路線変更するよう助言した。(よくやった!)そうして1980年代末から本格的に作家活動を開始して今にいたる。 ここ数年来、大学時代に専攻した数学への情熱が高まっているらしく、2002年以来新作は発表されていなかったが、新作ノヴェラが2006年初頭刊行のアンソロジーに発表されることが決まった。(もしかしてヤチマ化か、と英米ファンならやきもきしていたかもしれないが、日本では、まだまだ年一回の単行本を楽しむペースは守られそうである。山岸真さん頑張ってください。) 公式の場には一切出ない覆面作家としても知られている。最近のインタビューもネットを介してのものなのだとか。サイトをたまに覗いてみると、政治的な発言をアクティヴに行っているようである。 ちなみに元々キリスト教徒であり、その価値観に少なからず影響されていることをインタビューで証言しているらしい。 ■長編小説 An Unusual Angle (1983年) 『宇宙消失』 Quarantine (1992年, 創元SF文庫→1999年) 『順列都市』 Permutation City (1994年, ハヤカワ文庫SF→1999年) 『万物理論』 Distress (1995年, 創元SF文庫→2004年) 『ディアスポラ』 Diaspora (1997年, ハヤカワ文庫SF→2005年) Teranesia (1999年,東京創元社刊行予定) Schild's Ladder (2002年) ■短編集 Axiomatic (1995年) Our Lady of Chernobyl (1995年) Luminous (1998年) 『祈りの海』 Oceanic and Other Stories (2000年, ハヤカワ文庫SF):日本オリジナル(山岸真編) 『しあわせの理由』 Reasons to be Cheerful and Other Stories (2003年, ハヤカワ文庫SF):日本オリジナル(山岸真編) 『TAP』(河出書房新社刊行予定) 日本オリジナル ■邦訳短編・インタビュー 『エキストラ』 The Extra (エイドロン 2 1990, IASFM1993/1) S-Fマガジン 1998/4 No.502 1994 Locus Award Short Story Nominee 『真心』 Fidelity (IASFM 1991/9) S-Fマガジン 1995/7 No.468 『チャルマーの岩』 Reification Highway (Interzone 1992/10) S-Fマガジン 1993/9 No.445 『ワンの絨毯』 Wang's Carpet (1995) S-Fマガジン 1998/1 No.499 1996 Locus Award Novelette Nominee 『ルミナス』 Luminous (IASFM 1995/9, 『90年代SF傑作選』 ハヤカワ文庫) 1996 Locus Award Novelette Nominee 『決断者』 Mister Volition S-Fマガジン 2003/8 No.568 『行動原理』 Axiomatic S-Fマガジン 2004/4 No.576 『ひとりっ子」 Singleton S-Fマガジン )2005/4 No.588 『無限大から逆に数えて [インタビュー]」Counting Backwards from Infinity SFマガジン 1999年11月号 『つかぬことをうかがいますが・・・』ハヤカワ文庫NF パース在住のグレッグ・イーガンさんが答えているらしい ■本人のサイト http //gregegan.customer.netspace.net.au/ ※移行者注:現在はこちら http //www.gregegan.net/ http //www.gregegan.net/BIBLIOGRAPHY/Bibliography.html を見ると分かるのですが、未単行本化短編は全部ただで読むことが出来ます。勿論すべて英語ですが。 ■学術論文 "Asymptotics of 10j symbols" http //arXiv.org/abs/gr-qc/0208010 "An efficient algorithm for the Riemannian 10j symbols" http //arXiv.org/abs/gr-qc/0110045 ■ネットニュースへの投稿一覧 http //groups.google.com/groups?q=author gregegan@netspace.zebra.net.au start=0 scoring=d 【登場人物】 ヤチマ:主人公。長身のアフリカ人のアイコン。 イノシロウ:金属質で白めの灰色で、手のひらから花がはえているアイコン。本田猪四郎(いしろう)からとられているのでは、という説あり。 ガブリエル:金茶色の短い柔毛で有性のアイコン。《C-Z》住人。 ブランカ:黒い影絵のアイコン。《コニシ》住人だが、 ディアスポラ には《C-Z》住人として参加。発展版コズチ・モデルを構築。 ラディヤ:ヤチマの先生。 ハシム:芸術家。イノシロウの友人。 オーランド・ヴェネティ:肉体人(男性、架橋者)トカゲ座の災害時に《移入》させられる。 リアナ:肉体人(架橋者、女性)オーランドの妻。 パオロ・ヴェネティ:伝統型完全人態のアイコンをとることが多い。オーランドの「息子」 カーパル:トカゲ座の異変に気づいたグレイズナー。その後《C-Z》へと移住。記憶の消去と人格書き換えを何十回も行った。 フランチェスカ・カネッティ:肉体人(架橋者) エニフ:男性で真空適応型肉体人のアイコン。 四つ足の星子犬、オスヴァルなどと呼ばれる。 アルナス:オスヴァル。 メラク:オスヴァル。 レナタ・コズチ:理論物理学者。 エレナ:パオロの恋人。 ハーマン:体節のある虫から膝のついた六本の脚が生え、その先に肉体人の足があるというアイコン。 リーズル:様式化された人間の顔が、羽のそれぞれに金色の反転のように入った緑と紺青の蝶のアイコン。 マイクル・シンクレア:コズチの生徒。 【本編のあらすじ】 それでは年表(資料1)を片手にヤチマくんの半生を辿ってみましょう。*は注です。 [第一部] 挿入されているのは旅の果てにヤチマとパウロが振り返っている所。 1 孤児発生 ヤチマ生まれる。 いかにして、仮想現実世界の市民(以下「コピー」で統一)は生まれるのかを描いています。本編でも屈指の難解さですし、ここで投げ出してしまう人も多いのではないでしょうか。 要は『攻殻機動隊』のオープニングなのだ、と解釈すれば分かりやすくなるかな?(資料2)こんな世界で物語は進行しますよ、と説明している訳です。 創出 による、個体発生→情報処理教育(ライオン!)→市民に、といった流れで話は進みます。 さて、ヤチマが自分を命名するシーンですが、彼/彼女のアイコンは可愛い子ライオンに影響されているのだ、と誤読しておくと、後の理解がかなり容易になるかもしれません。『萌え単』理論!(資料3) また、ここで無限遠にある星へと向かう志が刷り込まれていることにも注目したいです。 無秩序な混沌(パンデモニアム):pandemonium 『決断者』(SFマガジン 2003/8)にも「百鬼夜行(パンデモニアム)認識モデル」というものが出てきます。そこでの作者註によると、デネットの『解明される意識』およびミンスキーの『心の社会』を参照すると良いらしいです。心理学上の認知に関するモデルなのだとか。ヒトが並列処理をどう行っているのかに関連しているらしいです。本書でも二冊が参考文献として挙がっていることから、「孤児発生」での発達段階に関する記述もこの辺りの議論を元にしているのでしょう。 観境:市民のいる空間、環境。scape。三次元とは限らないのが次でのミソ。 アイコン:アバターですね。 飛びまわる豚? 2 真理採掘 ヤチマ、イノシロウとの同居を始める。 いきなり幾何学の話。2つの命題について議論されていますが、この辺を「とばせ」ってことなのでしょうね。一応、本人のサイトを見れば、模式図と説明がありますので、興味があれば。ただ、ここで出てくる次元の違いについての議論が、後のポワンカレに関係してくるのはおさえておくと良いかと。 この世界での「芸術」の一例も出てきますが、なかなか素敵です。 真理鉱山 :数学者は誰もがこの山を掘っていることになっています。また、真理への到達には地道な努力をする必要がある、というイーガンの考えもうかがえます。 価値ソフト:イーガン読者ならおなじみのものですね。何を快と感じ、何を不快と感じるのかを決めてしまえる、つまりは「しあわせの理由」となるソフトです。 界面ソフト:巻末を参照 3 架橋者たち ヤチマ大地に立つ。 グレイズナーが登場します。これは《移入》してデジタル化されたいけど、肉体は捨てたくはない、と願った人たちの乗り物、またはその人格のこと。彼らは宇宙へ行き、SETIなどをやっています。 この章では、ヤチマ達がグレイズナーに乗り込む?ことで肉体人との交流を持ちます。遺伝子改変をやりすぎて深刻なディスコミュニケーションに陥った肉体人たち。それを繋ぎなおそうとする架橋者たち。この分散状況と現在とを繋ぐのが『万物理論』でしょうか。 「人格」を分けるかどうかで逡巡するのも、<ディアスポラ>への布石になっています。同様のモチーフとして、『宇宙消失』において、平行宇宙にいる無数の自分を消失させるのに悩む主人公が描かれています。更に、無限の命を持つことについても触れられていますが、これは『順列都市』で出てきた話ですね。といった辺りで、結構おなじみの命題でした。 タグ:巻末に注もありますが、私なりに解釈すると、タグはあくまでデジタルな情報であって、「感覚」とはクオリアのことなのでしょう。経験が神秘的なものになる、ともいわれていますし。 リヴィングストン:ヨーロッパ人で初めてアフリカを横断した人。 ジェロニモ:アパッチ族の戦士 居留地から何度も脱走し、アメリカ軍と戦いぬいた。 ハックルベリー:『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』 マーク・トゥエイン (*1) ドロシー:『オズの魔法使い』 ライマン・F・ボーム 肉体人:不変主義者、水陸両生肉体人、夢猿人、架橋者などなどいろんな派閥がある。 [第二部] 4 トカゲの心臓 カーパル、トカゲ座の異変に気づく。 一ヶ月も月面で寝そべっていられるグレイズナーのまったり具合がなんともいえません。 5 ガンマ線バースト 再びアトランタへ。そしてカタストロフ。 ナノウェアを用いて、肉体人をポリスへ連れて行こうとする二人ですが、それを肉体人自身の許可なしに実行することはできません。なぜならそれは、自由を侵害することだから。他人の権利を侵害する権利は存在しないってことでしょうね。私は、他人をポアする権利はないってことでとらえてみました。後は法学部の人に任せます。 ポリス人は英語をしゃべっていて、肉体人はラテン語です。あと、この章では生態系の改変についての描写がありますが、もともと数学の博士号の人が物理にも生物にも強いのですね。専門化の進んだ現代科学において、これだけ学際的であることは、ホントに凄い。 メガタウ ギガタウ: 80メガタウは1日。半ギガタウは6.5日。 伝染性の強いパレスチナの有神論複製子群:上でも書きましたが、イーガンはもともとキリスト教徒です。 『時計仕掛けのオレンジ』の錯誤:暴力を行い得ないのは徳ではない、ということですね。 ブラフマー、シヴァ:ここではヒンドゥー神話の方。『暗黒神話』ではないです。ブラフマー(創造者)、ヴィシュヌ(保持者)と、シヴァ(破壊者)で三位一体となります。 6 分岐(ダイヴァージェンス) ヤチマ《C-Z》へ 5章での体験により、自身の弱さを認めるようなことをしなくなる複製子を走らせてしまったイノシロウ。「認めたくないものだな(ry 対比として、それでも前に進み続けるヤチマは 創出 にとって不要と判断されます。 そういえば確か、昔の会誌の名前が『divergence』でしたね。 [第三部] パオロとヤチマの会話は続く。 <長炉>について。ブランカとガブリエルとコズチの三角関係! 7 コズチの遺産 ガブリエル、ワームホールについて調べる。 さて、また難関がやって参りました。ここは話の根幹に関わるコズチ理論についてです。一応ディアスポラ数理研から孫引きしてみます。 {引用開始} 重力=空間の歪み、なので、重力の理論は空間を扱う話になります。この理論のなかでいろいろな素粒子も一緒に扱おうとすれば、空間と様々な素粒子がどのように影響を及ぼし合うかを考えないといけなくて大変です。しかし「実は素粒子ってのは空間に空いた穴で、様々な素粒子の種類は穴の空き方の違いで説明できる」ってことになれば、空間だけを扱えばよくなってすごく楽です。できるかどうか知りませんが。そのようなアイディアは物理業界で "matter without matter" とか呼ばれてるようです。架空のコズチ理論ではこれができるようです。 巻末の参考文献にある、 『ゲージ場・結び目・重力』 (Gauge Fields, Knots, and Gravity) by John C. Baez and Javier P. Muniain から訳して引用。 ワームホールとモノポールは理論物理において思弁の極北に位置し、SFと紙一重である。 ..中略.. 相対論研究者のジョン・A・ホイーラーは、ワームホールの「口」が電荷を持った粒子として振舞うという興味深いアイディアを提唱した。電気力線が一方の口に流れ込み、もう一方から流れ出すことで一方の口が負の電荷、もう一方が正の電荷を持つ粒子のように見え、その電荷は符号が反対で絶対値が等しい。もしワームホールの計量と、ワームホールを流れる電場(あるいはゲージ場)の相互作用を記述する理論ができれば、このようなワームホールが様々な安定状態をとり、それらが異なる世代の粒子に対応することを示せるかもしれない。さらに質量を計算することさえ出来るかもしれない。残念ながら、これらは現在のところ夢にすぎない。なぜなら..以下略 (コズチ理論とは)この夢が実現したという設定です。 {引用終了} 粒子を空間として扱う、というアイディアみたいですね。では、次行ってみましょう。 8 近道(ショート・カット) 長炉 によるコズチ-ホイーラー・ワームホールの実現化。 7章の850年後になってついに、ワームホールが実現化します。しかし、端と端を「光より速く」つなぐ筈のワームホールからはシグナルが出てきません。実験は失敗。しかもその失敗はコズチ理論の改良を要求するようなものでした。水素原子のスペクトルの観察などから、古典力学が見直されたのと同様のことが行われている訳です。 また《コニシ》と《C-Z》の差異が「コピー」の身体感覚という軸で語られます。それに伴い、「コピー」にとっての「愛撫」も出てきます。 「コピー」達の時間が均一ではないことも明らかになります。でも、それが何の影響ももたらさない、という議論は『順列都市』ですね。 高速化:処理速度を落として、待ち時間の短縮をすること 長炉 :線形粒子加速器 1400億km(冥王星の軌道の十倍以上) ユニット一つの質量は1g以下。 9 自由度 ディアスポラ 始まる。 ワームホールによる「ワープ」が不可能であることが分かったとき、《C-Z》ポリスの「コピー」達は、自分らのコピーを宇宙に向けて播種します。そして、舞台はフォーマルハウト行きの船。 価値ソフトの違いはいかんともし難いのですが、果たしてオスヴァル達を馬鹿にすることが賢明な判断なのかは疑問です。 さてついに、ブランカはコズチのアバターとの対話によって、 距離問題 を解決し発展版コズチ・モデルの構築に成功しました。 が、私は完全においてきぼりを食いました。ワームホールは距離を他の空間から奪ってくるから距離は短くなり得ない、だからショート・カットとしての役割を果たさないのだ、という最後のまとめを押さえとけばいいのでしょうか? 星虹(スターボウ):亜光速で宇宙を航行するときに見えるだろう、とされている虹のこと。 カール・フリードリヒ・ガウス:天才 アバター:「コピー」ではなく、生前の資料を元に構築された仮想人格。 [第四部] 10 ディアスポラ 出発前のパオロの観境で。 11 ワンの絨毯 地球外生命体は千次元の世界にいた。 この章はヴェガ星系行きの船の中でのできごと。エレナとパオロアイコンは、肉体人のものですから、ブランカとガブリエルの接触とは異なります。 ここでメインとなるアイディアは、ワンのタイル=チューリングマシンというもの。(資料4)その上に、ヒトには認識できない千次元周波数空間の十六次元の切片などという概念が出てきます。これは、後のトランスミューターの「像」へと結実します。 9章に出てきたフォーマルハウト行きの船は木っ端微塵!などの事実も明らかにしつつ、ようやくポリスごとの立ち位置の違いが見えてきます。「現実」にどれだけの価値を見出すのか、ということですね。中でも現実重視で、他のポリスを「ひきこもり」よばわりしていた《C-Z》が惑星オルフェウスの「生命」を見つけてしまうという皮肉。イーガン節です。 ここで各コミュニティーの違いについて、少し整理してみます。「現実」へのこだわりで並べてみるとこんな感じでしょうか。 肉体人 グレイズナー 市民(シェイパー、「コピー」) 《カーター-ツィマーマン》ポリス 肉体人を市民にしようと、ネットワーク攻撃をしたりしている。「宇宙を理解し、尊敬せよ」が憲章。物質宇宙に一番こだわっている。 ディアスポラ を実行する。 《コニシ》ポリス シベリアのツンドラの地下二百メートルに埋められている。外の現実への関心が薄い。 《アシュトン-ラバル》ポリス 爬虫類を「創造」したりするような仮想現実派の最右翼。 境界ポリス その他大勢の意? 蛇足的なおまけなのですが、なんと小倉百人一首もワンのタイルなのですね。(資料5) ダイソン球:恒星を卵の殻の様に覆ってしまう仮想上の人工構造物。 カウフマン・ネットワーク:ライフゲームみたいなもの。 フーリエ変換:そういう計算があるのです。 レグルス:しし座の一等星 さて、10・11章をあわせると元々の『ワンの絨毯』になります。違いはポリスの説明が多少入っていることと、それに伴い「人間宇宙論」というものが語られている点。最後にパオロの心情吐露が入っている点です。 「人間宇宙論」というのは、もし物質宇宙が人間の思考によって創造されたのであれば、それを仮想現実より上に位置づける特別な理由はない、という《アシュトン-ラバル》の考え方。 パオロの述懐は「自殺」してしまう発想の元ともなっていて興味深いので、引用します。()は引用者。 「この不思議な、偶然の産物である美しさの何もかもが、人類と位相人類(「コピー」)が宇宙に向かって問いかけてきたあらゆる疑問に対するあらゆる答えの――問われることによって生み出される答えの――集合でしかない、ということがありうるだろうか?ありえない、とパウロはいまも信じていた――だが、その問いにはまだ、答えが出ていない。いまのところは」 [第五部] 12 重い同位体 惑星スウィフトの謎とは。 ここからはヴォルテール星系行きの船のお話。 オーランドという人は元肉体人なだけあって、「肉体」に対するこだわりが強いです。また、パオロを生んだのも元々の架橋者としての使命感からだ、ということが分かります。 ヴォルテール:本名フランソワ・マリー・アルエ 「私はあなたの意見に何一つ賛成できないが、あなたがそれを言う権利は命がけで守るつもりだ」という言葉はあまりに有名。 スウィフト:ジョナサン・スウィフト 『ガリバー旅行記』 リサージュ図形:これを描けるものさしを皆さんは、見たことがあるのではないでしょうか?歯車をぐるぐるまわすやつ。 13 スウィフト トランスミューターはいずこ? ようやく、第一部の冒頭の会話に出てきたトランスミューターが出てきます。普通忘れていますよね。文明はあるのに見つからない。《移入》したのか、 ディアスポラ したのか。実は別の「宇宙」へ出かけていたのです。そして、その鍵がスウィフトに大量に存在する中性子でした。 細かいことですが、車から車へとテレポートするのを「コニシ式」と呼んでいるのはいいですね。 トランスミューター:transmute 変質、変化させる。 transmutation 錬金術で卑金属を貴金属に変化させる、あるいは核反応によって元素を別の元素(あるいは同位体)に変化させる。 14 埋めこまれたもの 中性子に埋め込まれたデータは? 解読過程で、トカゲ座なんて目じゃないニュートリノ・バースト(コア・バースト)がやってくることが分かります。どうやらトランスミューターはそれから逃げ出したらしい。その方法として更に解読されるのが、ワームホールの形を制御すること。実は「長い中性子」はマクロ球の中で触媒として働いていたらしいです。ここは作品の肝で避けては通れない議論のような気もしますが、スルーします。 そして、上位宇宙へ! 陰極線管ディスプレイ:ブラウン管 [第六部] 15 5+1 マクロ球もしくはU*は5次元の世界だった。+1は時間のこと。 「コピー」の走っているポリスの外側が3次元の「現実」ではなくなってしまったら、そのときオーランドが寄って立てるものは?という問いが出てきます。 エキゾチックな現実:兎にも角にも、エキゾチック物質というのがワームホールには必須なのです。 16 双対性 @惑星ポワンカレ 時間表記がはずれます。五次元空間の描写は圧巻ですね。全くビジュアルはわかないけど、これぞ活字SFでしか表現できないイメージです。 さて、肉体人から始めて我々読者と作品世界とを架橋しているのがオーランドなのですが、ついにファーストコンタクトを行います。このヤドカリとの下りは、モンティパイソン的笑いなのではないか、という話題をみかけたのですが、私は悲しき性のように感じてしまいました。 ポワンカレ:アンリ・ポワンカレ(数学者) [第七部] 17 1の分割 つまりは、ここで分割された存在をもう一度戻そうとせざるをえないオーランドの強迫観念は悲劇的だ、と思うのです。 18 創造の中心 トランスミューター以外の知的生命体の存在も描かれつつ、宇宙についての語り。 [第八部] そして問い。パオロの行動原理とは何だったのか。 19 追跡 <ディアスポラ>によっていくつかの「宇宙人」とのコンタクトをとげた時代。 パオロとエレナの「分岐」この宇宙の探求と違う「宇宙」の探求。 20 不変性 そして、旅をしても変わらなかったもの。 ヤチマは精神発生のときに、ここまで来ることを宿命づけられていました。たどりついた二百六十七兆九千四十一億七千六百三十八万三千五十四レベル(偶数なので三次元)で気づくトランスミューターの「像」と「旅」の終わり。パオロとヤチマの「分岐」すなわち、自分の外にある可能性の追求の終了。 パオロとヤチマが「分岐」してしまうのは、自分の内にある可能性(数学)に没入できるかどうかの違いですね。本来「架橋者」であったパオロにはそれができなかった。 ヤン-ミルズ:C.N.ヤンとリチャード・ミルズ。量子色力学の人たち。 ワイル:ヘルマン・ワイル 【まとめ】 1.Philosophy Fiction(by坂村健、竹田Pじゃないよ)として 「意識と現実をとり去ったら、あとにはなにも残らない」という言葉からも伺えるように、イーガンはその二つの関係の話ばかりしています。これには「主観的宇宙論」そして「シミュレーション」という二つの軸がある、と思います。坂村健は「記述」への欲望を書いていますけど、私はそれを行おうとする主観の方を問題にしたいです。 「主観的宇宙論」とは、究極の唯我論ともいえましょうが、要は個人の「観測」が世界を変える力となってしまうような宇宙論/観のこと。もともとの『ワンの絨毯』にあった「人間宇宙論」の前提となっています。この点については本作には出てこないので、割愛します。三部作の中では、一番読みやすい「宇宙消失」から入ってみるのがオススメです。 シミュレーションに関しては、ヒトにまつわる問いとして、いくつかに分けられます。 1)ヒトが「コピー」へと《移入》するかどうか 2)《移入》した後での身体と「コピー」の差異 3)シミュレーション上でのアイデンティティの問題 4)シミュレーションで価値基準を自由に調節できる人格は、永遠の命を手に入れたとき何をするのか、という問い 4’)それをそのまま現実世界に持ってくるのが「しあわせの理由」へと繋がる「理由」への問い。これは同時に、《移入》の可否へとも繋がるような円環構造を描き出している、と思います。 さて、他のイーガンの作品を読んだことがある人ならお分かりの通り、これらの問いは彼の作品の中で何度も反復されています。おそらく、その度に進化/深化しているように思うのですが、それに対する考察は、今の私には手に余ります。揺さぶられることについての指摘は多くても、それを比較・検討するような評論は、寡聞にして読んだことがないです。 ちょっとわき道へ4)は輪廻と解脱の問題へとも繋ぐことが可能かもしれません。パウロが最後に行った選択は何であったか?実はゲーテルのお陰で、ヤチマには無限の可能性が残されていたりするんですけどね。あと、脳のチューニングという話は鶴見済との共通点もあるように思います。 2.SFとして 上述の問いを必然的に孕んでしまうような状況設定の上手さ。「天才詐欺師」(by大森望)という称号はまさに彼にふさわしいものでしょう。先にも触れましたが、科学知識に関する造詣の深さは、当代随一です。 そして、時には嫌悪感しか覚えない/生理的にうけつけない、といわれてしまう一つの状況を徹底的につきつめる辺りも流石です。 3.読みにくさ 最近おもしろいエントリーを見つけました。(資料6, 7) 結局、SFの部分は多少分からないところもあるけれど、PFのところは万人に開かれているのだ、ということなのでしょう。問題はSFの部分をどこまで理解するかということと、PFを理解するために必要となる想像力です。ここが、SFという言葉を知らない人にアピールできるかどうかなのですが、難しいですね。この点で皆さんの読後感はどうでした? 4.作品全体を通じて この作品はつぎはぎのパッチワークとしてある側面は否めませんが、だからといって通低するものがないわけではありません。私は「行動原理」の違いから「分岐」してしまう人達というディスコミュニケーションの物語として読みました。確かバクスターの『タイム・シップ』にも出てきていたことですが、リソースがほぼ無尽蔵にあるなら、それをめぐっての衝突は基本的に起きないのですよね。だから、繋ごうとする架橋者たちは失敗する。(焼豚くんから指摘がありましたが、『順列都市』では計算リソースをめぐって衝突が起きていましたね) ただ注意しておきたいのは、この主張をそのまま現実へ持っていくことはできません。前提となるリソースの問題があるから。でも、これを「宇宙」規模のひきこもり物語として読んでしまいたい欲望もあったりなかったり……。 【資料】 1.http //d.hatena.ne.jp/ita/00020131/p1 2. イノセンスの情景 3. 京大SF研究会 「workbook 79」 4. http //en.wikipedia.org/wiki/Wang_tile 5. http //www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/hyakunin02.html 6.http //bm.que.ne.jp/log/20051223.html#c01 7. http //d.hatena.ne.jp/kaien/20051228 【参考文献】 既刊邦訳すべて(含S-Fマガジン) mixiのイーガンコミュ ディアスポラ数理研 めちゃくちゃお世話になりました。 著作リスト Wikkipedia はてなキーワード 2019.01.02 Yahoo!ジオシティーズより移行 http //www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/diaspora.html なお、内容は執筆当時を反映し古い情報に基づいていることがあります by ちゃあしう
https://w.atwiki.jp/kanmysren_ob_og_kai/pages/13.html
【総会概要】 関西ミステリ連合は、参加している大学が持ち回りでホストを務め、現役会員らが運営の中心となって総会を開催しています。 総会は年2回、夏(通常6~7月)と冬(通常11~12月)に開かれます。 持ち回りの順番は「同志社→大谷→大阪→立命館」です。 【総会情報】 2010年12月1日現在で判っている、最新の情報をお届けします。更新が滞っており、申し訳ございません。 ①主催:立命館大学ミステリ研究会 ②日時:12月4日(土) ③会場:立命館大学衣笠キャンパス 明学館91号(B1F) ④入場料:1,000円 ⑤ゲスト:佐藤友哉先生 ⑥サイン会等の企画:サイン会あり 立命館大学ミステリ研究会公式サイト http //www9.atwiki.jp/madofuki/ 冬の総会は立命館大学ミステリ研究会主催です。詳細情報は公式サイトで確認して下さい。 {総会は、ミステリ研関係者のみならず、広く一般の方の参加も自由です。是非、お越し下さい。
https://w.atwiki.jp/asoudetekoiq/pages/660.html
社会哲学研究会(早稲田大学) 声明に賛同します。
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/234.html
2007.11.9 SF研読書会 『Self-Reference ENGINE』 (円城塔) by銀月 1 著者&作品について 著者について:円城塔 1972年生まれ。北海道札幌市出身。東北大学理学部物理学科卒。東京大学院総合文化研究科博士課程修了。ウェブ・エンジニア(有限会社シングラム)。云わずと知れた、東北大学SF研究会のOBである。 『Self-Reference ENGINE』が第7回小松左京賞(2006年)の最終選考に残るが受賞ならず。翌2007年「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」で第50回群像新人文学賞第二次予選通過。4月、短編『オブ・ザ・ベースボール』で第104回文學界新人賞を受賞。 ペンネームは金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で (小学館文庫)』収録の短編「小説・進物史観―進化する物語群の歴史を観て」に登場する自動物語システムが名乗る筆名のひとつ円城塔李久に由来する。 主な著作 つぎの著者につづく 文学界 2007年 11月号 [雑誌]掲載 Your Heads Only S-Fマガジン 2007年 11月号 [雑誌]掲載 Boy’s Surface? S-Fマガジン 2007年 09月号 [雑誌]掲載 オブ・ザ・ベースボール 文学界 2007年 06月号 [雑誌]掲載 Self-Reference ENGINE ISBN 9784152088215 (2007年5月25日初版発行) 参考 はてなキーワード Wikipedia 2 各話紹介 プロローグ Writing 著者から見た場合のみプロローグ。実際SREという小説の中では『まえがき』に相当する部分。 『僕たちは溺れているか、溺れかけているか、既に溺れてしまっているか、まだ溺れていないかのどれかの状態にある。』 この文章が一番SRE全体を象徴している文章ではないだろうか。つまり、認識する意識と時点の問題。 それを婉曲に表現したのがこの文章で、全体に通じる発想の根幹。 それと、いまだに著者の中では女の子は時を駆けるものらしい。最近またはやったしね。 第一部:Nearside こちらがわ。なんとなく人間視点での短編を集めたもの、というイメージが沸くが、実際にはそういう 意味ではないらしい。 01 Bullet SREという小説の中では、プロローグ。 ジェイムスとリタ、そして僕の物語。イベントの発生した瞬間の出来事の一つを描く。タイムパラドクスに際して発生する矛盾について、当事者と第三者のそれぞれの視点から見た物語。当然、登場人物と読者の関係に対比するわけで、あくまで『僕』は蚊帳の外に過ぎない。 ここから展開する話の群れは18Return において収束する。 02 Box 世界に見立てた箱の話。箱がパズルであることは、宇宙が終わるまでかかるパズルとの相似であると同時に、どこぞのアホが本来解けないはずのパズルを解いてしまったがゆえに『イベント』が起こってしまった、という話を意味している。だからこそ、開けてしまった箱は閉じなければいけない、という話はそのままSREのラストで『イベント』が修復されることを暗示している・・・、はずなんだけどなぁ。 03 A to Z Theory 二項定理が指し示す真理のお話。ある日、26人の科学者が同時に世界の真理を表しうる理論を思いついた。が、3週間後には真理のほうが変わってしまいましたとさ。 SFとミステリの本質に迫ることが主題(嘘)。ミステリは馬鹿馬鹿しくもどこか面白いが、SFはただのキ○ガイ扱い。著者による自虐ネタ。 シンクロニシティやらメタやら42やら、SFネタを多くつぎ込んでいるが、言っているのは科学理論から検証した場合による『イベント』後の世界観。その世界では、真理は常に発見され、また否定される。 04 Ground 256 にょきにょき生える世界の話。一般人から見た場合の『イベント』後の世界と、『イベント』そのものに対する認識。科学理論は変わっていくが、日常生活は変わらない。今日も再びトメさんを救出する。 他の話との兼ね合いも考えると、実際には『イベント』で無限に発生した世界同士が争い、負けたほうが勝ったほうの世界に重ねあわされている、という話ではないかと。ほんとうにナノマシンで世界を何個も生み出すには質量保存の法則が邪魔。まぁ、そんな理論は既に否定されました、といわれたらそれまでなのだが。 悪の巨大知性体による世界征服宣言が『お前たちの消費税を二十パーセントに引き上げようと思うがどうか』という地味に強力なものだったことは、世界征服宣言集に加えておくべきかと。 ちなみに、Ground 256という数字に意味があるのかは不明。 05 Event そよ風になった機械の話。第一部では珍しく、巨大知性体視点。 扱っている内容はメタ。人に造られた存在でありながら自然現象そのものと一体化し、人からは神にも見えるような存在になった巨大知性たちは、自分が存在する世界を書き換えるほどの能力を持つに至ったが、それは同時に他の巨大知性体が自分を書き換えることが可能だ、ということも意味している。世界という物語の登場人物でありながら、同時に作者でもある。そんな矛盾を多くの巨大知性が同じ世界に対して持ってしまったために世界が混乱したのが『イベント』である、という考え方はありらしい。 最後に、巨大知性を超える存在について軽く匂わせ、第二部への伏線としている。 06 Tome 鯰文書を盗み続ける、律儀な怪盗のお話。えらく気の長い自演劇。 主題としては、自己消失。無限の世界とゼロになるトメさん、という対比だと思うが、別に自分の首を剣でおとす話ではないらしい。存在しているのに自分はもう居ないのだ、という在り方の話は 16Disappear に続くことになる。 07 Traveling 男の浪漫、戦闘機を駆って自分探しに出かける話。撃って死なない俺は過去の俺だ、撃って死ぬ俺は未来の俺だ。とりあえず、全部殺せばハッピーエンドだ、という微妙な内容。 実際には平行宇宙論の話、・・・にみせかけて自分たちは人間に造られたという気に食わない過去を消去すべく、人間に自分殺しを強制させる巨大知性の話、ではないと思う。巨大知性に言わせれば、巨大知性体同士の争いの複雑さと進化の風景は似たような構造を持つらしい。個人的には進化を表すのに二百億次元もの要素が絡んでいるのかは怪しいものだと思うが、どちらも同じ世界の出来事なのでそんなこともありえるのかもしれない。 あと、『攻撃の目標である宇宙規模のワールドプロセッサには、自分にはボールは当たりませんでしたと宣言してごり押しするという、聞き分けのない小学生のような機能が搭載されている』という表現はかなりツボだった。 08 Freud 庭先に転がる仕込み杖を抜いた老婆の死体。その謎を解くべく集まる親戚一堂。そして、家の床下から新たに見つかる20の死体。しかもその死体は何故か全てフロイトのもの。何故どいつもこいつもフロイトの顔を知っているのか。何故こいつらにはクローンという発想がないのか。それ以前に何故警察を呼ばないのか。謎が謎を呼ぶ展開の中で、父の決意が『僕』に事件を収束へ向かわせる。犯人はこのな(ry つまるところ、『イベント』を心理学方面から考えてみました、という話。フロイトについてはまったく詳しくないので物語の解釈は他者に譲ることにする。 09 Daemon ラプラス選手が長い間独走状態であったが、ついに巨大知性体選手たちが彼に追いつくべくペースを上げた。これまで後続を引くために敢えてゆっくり走っていたラプラス選手も、負けてやるつもりはないとばかりにペースを上げる。だが、困ったことに実は正しいコースを知っていたのがラプラス選手のみであったという有り得ない事態が発覚する。こうして、後続の選手たちは皆ばらばらな方向に走り出している、というのが今の宇宙の現状らしい。だからこそ、人間は巨大知性体に問いかける。なんでマラソンの途中に殴り合いをやる必要があるんだ、と。競技が違うじゃないかという人の問いかけに対する巨大知性体の答えは簡単だ。いわく、私にも分からない。そんな話。 ラプラスの悪魔と巨大知性体の比較。巨大知性体と人間の比較。神の如く振舞える巨大知性体でさえ、さらに一つ上の階梯にすむ存在にとっては人間と同じ程度の存在でしかない、という話。結局のところ、巨大知性体でさえ『イベント』についてはよくわからない、というのが結論らしい。 第二部 Farside むこうがわ。たぶん、巨大知性体よりもさらに向こう側に存在する奴等についての話、ということ。こちらの巨大知性体はとても仲がいい。というか、戦争をしている気配が無いのは・・・。 10 Contact 宇宙のご隠居、アルファ・ケンタウリ星人とのファースト・コンタクト。ただし、知性階梯に差がありすぎるため一方向限定。初めての相手はソラリスよりもさらに理解不能だった、というお話。 この話あたりから、巨大知性体がえらく人間染みてくる。人間くさくなったというのに、相手からは知性体扱いされないというこの矛盾。これでは八つ当たりも仕方ないが、下っ端はどこも大変だなぁ つまり彼らは道路を作るからどいてくれ、でもそれも無理そうだから死んでくれ、といわれた可哀そうなニンゲンの役割を仰せつかったのだった。うむ、ご苦労。 11 Bomb ある宇宙には巨大知性体でも驚くほどの石頭の人間が存在する。その頭の固さに感心した巨大知性体は彼を標本よろしく収集していたのだが、その石頭を見かけたジェイムス君が「そんなに固い頭なら、それで他の巨大知性体の野郎を殴ってやればケッコウ面白くね?」と、迂闊な発言をしてしまったために、世にも珍しい人間爆弾が造られることになった、というお話。 かの有名な、一つ目人を捕まえに行く奴隷商人のお話、そのSF版。この話の秀逸なところは、医者が言っていることは一部の隙もなく正しい、という点。本当に、私たち読者の常識に照らし合わせれば、なるほど彼は医者であると思わず納得しそうなほど完璧。それなのに、この話の中においては現実を認識しない唯の石頭にしか見えず、その言動が滑稽に見えてしまう。こんなありきたりなネタを、これだけ巧く書ける点だけでも、この作者はもっと評価されるべき。 12 Japanese いや、まぁ日本語は難しい、という話。使う人が居なくなり、文献だけから日本語を理解しようとするのならば、神の如き閃きがなければ巨大知性体でも無理でしたとさ。 とくにコメントすることが無い作品なのだが、たまには自分たちの身の回りのものも振り返ってみませんか、何かおかしな物があるかもしれませんよ、と。このネタ、日本語に対する考察を全部一人でやったのなら畏怖をもって崇拝するが、実際にはなにか参考にしたんだろうなぁ。それでもすごい作品ではあるけど・・・。 13 Yedo 時代は江戸末期。黒船の来航に驚いた幕府の老中の一人は力で適わないのならば『お笑い』を持って対抗すべきだとトチ狂ったことを叫び、それを聞いた他の老中がそれくらいならいっそ愛想笑いで下手に出るべきでないかと主張。こうして、どうしようもない論議を喧々諤々と行った結果、なぜかどちらも同時にやってみようというイカレタ結論に達してしまい、そのしわ寄せは下っ端の十手持ち、八丁堀に丸投げされるという形で落ち着いた。そんな八丁堀の不幸な話。 個人的には一番好み。全体に漂う馬鹿馬鹿しさが堪らない。どう考えても八丁堀以外は思考ルーチンに重大な欠陥を抱えているとしか思えない。そんな中でとりあえず頑張っている八丁堀がいい感じ。 話のテーマは何だろう? 一般人から見れば、天才と馬鹿は紙一重、というやつだろうか・・・。 14 Sacra Sacrumの複数形。仙骨。 人間の免疫系について調べていた巨大知性体が神秘的な自己消失の過程をたどった、という話。 これは不死についての話ではないだろうか。巨大知性体によって人は不死を得ることができたが、それでも人は死への因子を内包しており、それは巨大知性体にでさえ感染するほど強力なものである、という話なのかと思うのだが、宗教かぶれの巨大知性体が魂の四則演算について考えていたり、体の各部が独立性を主張する病など、いまいち話の流れが読めなかった。皆さんの意見を聞いてみたいものである。 15 Infinity 放浪癖のあった変わり者の祖父と、その孫である変わり者の娘、リタのお話。一週間に一度しかあえない祖父との時間を有意義に使うため、祖父からの問題を毎週一問ずつ解いていくリタ。今回の問題は、「この平面宇宙に、お前と限りなく似た女の子がそんざいするかどうか」であった。 この宇宙は平面であることが発覚した。自分はこれを聞いて、2次元なのかと驚いたのだが、別にそういうわけではないらしい。それはともかく、主題はそのまま無限。まぁ、半径30光年の平面に人間を詰め込んだら、それは無限といってもいいくらいの数ではあるのだろう。平面に換算した場合、半径1光秒もない私たちの世界とは考えられないほどの開きがある。ちなみに、話の流れ的に平行宇宙については考えてはいけない様子。今回の主題は、あくまで無限。 16 Disappear 少女曰く「お前はもう死んでいる・・・」 巨大知性体、答えて曰く「わたしはもう死んでいる・・・」 そんなお話。 頭がよすぎたために悪魔の証明を成し遂げてしまった巨大知性体たちの話。自己は消失したはずなのに、自己から派生する現象が存在し続けるというそのあり方がトメさんに近いのではないかと。 最後の4行の文句が心の琴線に触れて仕方の無い今日この頃。 17 Echo 巨大知性体より頭のよかった女性の話。彼女は、頭がよすぎたため自分の部屋どころか箱の中に引きこもってしまった変わり者でしたとさ。 その知性ゆえに自らの消失を予期した彼女は、人間との関わりを断つことによって存続を図っていましたが、長く箱にこもってる間に人間が恋しくなりましたさ。だって、それって死んでるのと大差ないよね? ちなみに、エコーという名前からブギーポップを思い出したのはここだけの秘密。 18 Return 年老いたジェイムスが若いジェイムスをぶん殴りに故郷へ帰ってくる話。この爺さん曰く、世界がこんなにも駄目になったのはすべてジェイムスとリタのせいであるらしい。そんな訳で、『僕』ことリチャードはジェイムスを連れてリタを追いかけるたびに出るのであった。 ちなみに、リチャード・ロウとは身元不明の被疑者や死体を指し、匿名希望的な意味合いがある名前だったりする。つまり、なんかいろいろと知っているらしいリチャード君のことは、読者、または著者の代弁者と考えてよいかと。 物語が進み、いろいろと後悔したジェイムス君が何故か失われた恋心を思い出し、若いころの自分に渇を入れに戻ってくる、という話。テーマとしては………き、帰納法? まぁ、全体のまとめにして始まり、といったところかな。ところで、この爺さんは「箱を開けろ」といっているんだが、箱って『イベント』で開いたから、これから閉めに行くんじゃないのか、というのがこの話にたいする疑問のすべてだったり。 エピローグ Self-Reference ENGINE ある意味、後書き。 別に巨大知性体が自己の消失を証明したのは、鬱病だったから、という理由ではなかったらしい。まぁ、そんなことはどうでもよく、ジェイムスとリタのこれからの話もハッピーエンドになるらしいこともどうでよく、私は唯ただ巨大知性体郡の期待を一身に背負って出発する巨大亭八丁堀の勇士が聞きたくて仕方ないのだった。 3 書評 われ等のOBであることによる贔屓目を考慮に入れても、SREは間違いなく傑作。各所でも絶賛、とまでは言えないもののかなりの好評を博しているのは確かである。 さて、それらの他所の書評を読むと、いまいちわからなかったが面白かった、という感想が多数目に付く。部会にでてきた人たちの中にもそう感じた人がいると思うのだが、私の感じではおそらくその感想が一番正しい。著者が理学部物理学科を卒業しているものだからハードSFに違いないと構えてしまう人が多いかもしれないが、実際はかなり読みやすい作品だ。この作品の主眼は、難解な科学という概念を突拍子もないアイデアを用いてユーモラスに表現することであって、別に小難しい理論をこねくり回したいわけではないのだろう。その証拠に、作中で科学的な、もしくは理解しづらいなんらかの理論を述べたとき、その多くには後ろに例え話が挙げられている。そして、この例え話にこそ思わず笑ってしまうような表現が用いられている。理解が届かない難解な話を、誰もが笑ってしまうようなお話に落としてしまうこの手腕こそ、円城塔の人気の秘密であり、面白さの本質ではないだろうか。つまり何が言いたいかというと、細かいことは気にせず楽しんで読みなさい、と。 部会メモ 拡大表示 2019.03.24 Yahoo!ジオシティーズより移行 http //www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/SRE.html なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
https://w.atwiki.jp/anison-research/pages/281.html
興味深いサイト https //lateral-act.hatenablog.jp/entry/2016/12/05/121303 同志社大学VOCALOID研究会 Arpeggio http //arpeggiod.blog90.fc2.com/ 群馬大学GA研究会 http //apg.blog3.fc2.com/ https //www.wizard-notes.com/entry/music-analysis/spleeter-numpy-chroma AllMusic https //www.allmusic.com/ 吉田音楽製作所 https //kitchon.net/link/ 楽曲制作会社のHP 略 音楽系・声優系の専門学校のHP 略
https://w.atwiki.jp/mrstudy/pages/58.html
概略 MR研究会3期生 文学部日文所属の女子 就職活動で途中棄権したみっこに代わりFree&Easyに突然放り込まれた K曰く「勉強家」 M曰く「正しい方向の努力をする努力家」 MR研究会の中では、主にアナウンスを中心に担当。 担当番組
https://w.atwiki.jp/tachibanafolksong/pages/17.html
◆京都フォークソング連盟 ◆同志社大学 FAC ◆京都府立医科大学 軽音楽部ROCKPUM ◆立命館大学 フォークソング同好会キークス ◆京都女子大学 ◆京都産業大学 フォークトレイン ◆京都工芸繊維大学 アメリカ民謡研究会B Bo ◆龍谷大学 フォークソング認定同好会黄色いトマト
https://w.atwiki.jp/koishiken/pages/4.html
2006年10月3日の古石研究会 やった内容 鈴木孝夫『ことばと文化』第一章(小田部担当)・第二章(内田担当)
https://w.atwiki.jp/rakutetsuob/
洛星鉄道研究会OB会のwiki---- ここは洛星鉄道研究会OB会の会員などが、好き勝手に作りあげるページです。どんなページが更新されたのかは左横の更新履歴をご覧下さい。 洛星鉄道研究会OB会@wiki内に掲載されている画像・文書の一切の転載を禁止します。但し、洛星中学・高等学校鉄道研究会(以下、鉄研)の現役会員が鉄研の活動に使用する場合に限り使用を許可します。なお、投稿者会員番号の右横に「×」が付いている画像については、鉄研の現役会員であっても使用することはできません。 コンテンツ 1 鉄道写真集 日本を走る、鉄道車両と沿線の写真 2 ミニコーナー 会員による企画特集 3 My撮影記録 会員による写真撮影情報 コンテンツfor会員 会員専用コンテンツを見るにはIDとパスワードが必要です。IDとパスワードは洛星鉄道研究会とOB会の会員限定ページに記載する予定です。また、メーリングリストのトップページにも記載してあります。 会員専用コンテンツ OB会員の方専用です.編集方法などもこちらから. 製作・著作 洛星鉄道研究会OB会
https://w.atwiki.jp/trimaniax/pages/110.html
早稲田大学宇宙航空研究会WASA 2010.6.5 早稲田大学宇宙航空研究会WASAがテストフライトを実施しました.重心位置を毎回イジっているようです.