約 258,520 件
https://w.atwiki.jp/orirowa2nd/pages/92.html
刑事(デカ)の靴◆VnfocaQoW2 男の顔には、良く日焼けした者特有の、細い皺が縦横に走っていた。 短い角刈りの頭には白髪も多く、苦労続きの人生が垣間見られた。 前世紀の遺物の如き黒縁の眼鏡は、恐らくは煙草のヤニで黄色く曇り。 その上に乗る太く角張った眉からは、確かな意志の強さが感じられた。 「辛かったなろうぁ…… 苦しかったろうなぁ……」 男は、瞳に涙を滲ませる。 目の前に転がる無残な二つの死体の瞼をそっと閉ざし、合掌する。 そして、黙祷。 たとえ善良な町医者・今野登であろうと、 たとえ悪辣な連続放火魔・日村花音であろうと、 命そのものの価値は、皆等しい。 死なば、皆、仏。 それがこの男、『犯罪の疫病神』――― 柳義春の流儀であった。 「また、一足遅れか……」 瞠目した柳刑事が最初に目を遣ったのは自身の革靴であった。 彼が着る、明らかに縫い目の合わない安価な吊るしの背広とは異なり、 彼が締める、趣味のよろしくない量販店で一束幾らかのネクタイとは異なり、 彼の身につける全ての中で、その革靴だけが唯一、高級品であった。 かといって、それを大切に使っているとは、とうてい見えぬ。 爪先は細かい傷だらけであった。 踵は酷く擦り切れていた。 方々に泥や埃を被っており、今またそこに生々しい血液もが付着した。 これが、これこそが、正しい刑事(デカ)の靴である。 スニーカーなど言うに及ばず。 高級故に物持ちが良い革靴を、使い潰してこそ一人前。 刑事とは、現場百回。 刑事とは、足で稼ぐ商売。 そうした彼の職業哲学を、物言わぬ靴が雄弁に物語っている。 手にする首輪探知機もまた、機動性を重視するその特性にピタリと一致している。 今、彼が遺体の前に立つのも、探知機に導かれた結果であった。 「確か…… 今野医師の細君もリストに載っていたな」 柳は皮の厚い親指をペロリと舐め上げると、 胸ポケットに収納していた手帳を取り出し、捲る。 そこには、このゲームの参加者名簿が書き写されていた。 但し、五十音順に全員が並べられているわけではない。 面識と知識とを基に分類され、記載されている。 【マル救】 【マル協】 【マル警】 【マル保】 以上、四つのカテゴリに。 【マル救】とは、救援対象のことを指す。 ・アリア・C――― 面識なし。TV等で見知っている。児童。 ・加藤清正―――― 面識あり。女子高校生。身元不明。過剰防衛にての補導常連者。 ・今野登――――― 面識あり。町医者。穂乃香の夫。 ・今野穂乃香――― 面識あり。町医者。妊婦。登の嫁。 ・神無月静香――― 面識あり。加藤清正の身元引受人。 ・仁木美香―――― 面識あり。女子中学生。美春の娘。 ・仁木美春―――― 面識あり。町長。ストーカー被害者。解決済み。美香の父? 【マル協】とは、協力要請対象のことを指す。 ・葛西剛――――― 面識あり。探偵。警察協力者。 ・桜井暮葉―――― 面識あり。探偵。警察協力者。 【マル警】とは、警戒対象のことを指す。 ・式町臣人―――― 面識なし。所轄にて伝聞。応任組総長。 ・ヴィスペルV―― 面識なし。情報屋より伝聞。幾つかの破壊事件に関連か? ・上奏院彩華――― 面識なし。所轄にて伝聞。親父狩り容疑者。尻尾掴めず。 ・丹波琉弦―――― 面識なし。情報屋より伝聞。幾つかの破壊事件に関連か? ・日村花音―――― 面識あり。アカネコ。神の目とのつながりは? 【マル保】とは、保留対象のことを指す。面識、伝聞ともに無い者が記載されている。 柳は己の行動を明確にする為、この様に仕分けた。 【マル救】を保護し、 【マル協】と共闘し、 【マル警】の動向に目を光らせ、 【マル保】との知己を得る。 無理矢理であろうとも、ひとまず情報を整理することで、無駄を無くす。 先ずは型を以って処す。 事件捜査のイロハのイである。 ただ一人、それら、どのカテゴリにも属さない男がいた。 瘋癲青年・二見悟である。 「こいつだけはなぁ…… 本当に、こいつだけは……」 知己といえば、彼ほどの知己はいない。 柳が難事件・珍事件に巻き込まれた時、彼は必ずと言ってよいほど、傍に居た。 どこからともなく嗅ぎ付けて、やんややんやと野次を飛ばした。 不謹慎にも事件をTVドラマと同じ感覚で楽しむ青年なのである。 その野次に重要なヒントを得、逮捕に貢献することもある。 その野次に判断を誤らせ、被害を拡大させてしまったこともある。 故に、柳は、扱いに迷う。 【マル救】でもあり、【マル協】でもあり、【マル警】の恐れも否定しきれぬ。 愉快犯的傍観者を、これであると決めきれぬ。 「むむむ。あいつの事を考え出すと、時間を食っていかんな」 首を振り振り、脳裏に絡む二見の歪んだ笑顔を追いやって、 柳は手帳にある、今野登・日村花音の名前に横線を引いた。 その、因縁ある女性の名前を見つめ、柳はしばし回想に耽る。 =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= 連続放火殺人犯・日村花音――― 十一件の放火を起こし、七人もの人命を奪ったこの女を逮捕したのは、 何を隠そう、柳義春、その人であった。 十二件目の放火未遂現場での、現行犯逮捕であった。 『偶然居合わせた刑事が無差別放火魔を御用!』 新聞等に載っている顛末は、そのようになっている。 実際は違った。 事実は伏せられていた。 柳は、現場に張り込んでいたのである。 日村は、無差別放火魔などではなかったのである。 有能な外部情報提供者・桜井暮葉は、 この一見無差別に見える連続放火事件に、関連性を見出していた。 カルト教団・『神の目』――― それまでの十一件の放火における被害者家族の誰かが、 この教団に否定的な言動を取っていたという事実を突きとめていた。 例えば、入信した友人を引き止めたであるとか。 例えば、信者勧誘のポスターに唾を吐きかけたであるとか。 放火の当日に。 駅前で。 それは、その時点では、数ある仮説の一つに過ぎなかった。 故に、桜井は実証した。 駅前にて相棒・葛西剛に、洟をちーんとかませたのである。 『神の目』信者が配布していたリーフレットを用いて。 配布されたその場で。 その晩、柳は葛西が住むボロアパートを張った。 深夜一時、日村は現れた。 固形燃料と、整髪スプレー。 それをゴミ集積所に設置し、チャッカマンにて火を放ったところで、 葛西が日村にタックルを食らわせ、柳が日村を後ろ手に取り押さえ。 連続放火魔はあえなく御用となったのである。 「それをだ。それを……」 回想する柳の胸中に、苦いものが満ちる。 それは敗北の記憶。 公僕としての捜査の限界。 教団『神の目』への追跡捜査を柳は上申したが、それは認められなかった。 一連の事件は日村花音が単独で起こした衝動的な犯罪である。 上司は苦虫を噛み潰したような顔で、それが結論なのだと柳の肩を叩いた。 一方の日村の証言もぶれるところがなかった。 決して『神の目』の名を出すことは無かった。 『むしゃくしゃしてやった。 炎のダンスが見られればどこだってよかった。 今は反省している―――』 顛末の連絡を受けた桜井は、片頬のみを軽く吊り上げて、 ぼやけた眼差しを誰に向けることなく、呟いた。 『ま、そんな世の中なんでしょう』 横で聞いていた葛西は、ひゅう、と口笛を吹いて、言った。 『やるなぁカルト教団! どんなパイプ持ってんだか』 それで、このヤマはお開きとなった。 柳の胸に、しこりとなって、残った。 =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= 柳は主催者からの手紙に目を通した折に、まず、この『神の目』教団を連想した。 文面から臭い立つ歪んだ宗教観と腐ったエゴイズム。 三十九人もを見知らぬ土地へと運び去る手際の良さ。 この二点から、主催は『神の目』教団の可能性高しと、当たりをつけたのである。 (規模も思想も掴みきれていないが、あの教団には得体の知れぬ政治力がある。 県警の上部に働きかけ、捜査の手を止めさせる程の) 『神の目』は、秘匿性の高い教団であった。 宗教法人として登録されている代表者は、あくまで組織運営のトップに過ぎず。 宗教法人として登録されている所在地は、あくまで広報事務所の住所に過ぎず。 実体宗教としての教祖や本拠地など、重要な事項は全て伏されており、 子飼いの情報屋に大枚を弾んでも、喉元に食い込む情報は得られなかったのである。 (そういう目で、再び手紙に目を通すと、だ) 柳は再び件の手紙に目を通し、内容を洗い直す。 もちろん現場主義のこの男は、手紙に記されている世迷言など信じていない。 この「書面」という証拠物件を再度洗い直し。 柳はやはりと、確信する。 「ほぼ、間違いなく――― この狂った妄想を、こいつ自身は信じている。 こいつの世界においての真実が記されている」 記憶を消してゲームに参加するという記述から、 フェアではないとの意思表明から、 柳は真実の臭いを、嗅ぎ取ったのである。 「であれば、だ」 柳は手帳の【マル保】のページに目を落す。 そこには柳の知らぬ二十六人もの名前が記されている。 「この中に、ホンボシが、いる」 その断言に、根拠など無い。 強いて言うならカンである。 警察稼業、二十余年。 履き潰してきた靴の数が育んだ、刑事(デカ)のカンである。 「まあ、桜井君なら鼻で笑う話だろうが、な」 桜井少年は、徹底したリアリストであり物証主義者である。 だが、故にこそ――― その桜井に、推理を補佐する断片を提供できたなら。 その上で、彼一流の冴え渡る頭脳から同じ結論が導き出されたなら。 それはもう、確定事項であるのだと、柳は確信している。 「さて、思案の時はここまでだ」 柳が手帳を閉じ、下ろしていた腰を上げる。 それから、チェーンソーとノコギリを拾い上げると…… 「……ふんっ!」 地面に突きたて、体重を掛け、それらを折り曲げた。 危険な凶器の再利用を防ぐ為である。 「自分にはこれだけで十分だ」 そう一人ごち、柳は砂地に倒してあった己の配布武器を拾い上げる。 刺又である。 江戸の昔から伝わる官憲用の武装である。 罪人を取り押さえるに特化した、ミドルレンジの非殺傷武器である。 それは首輪探知機に同じく、全く柳の為に用意されたかのような武器であった。 「では、歩こう。探そう。どこまでも」 ―――刑事(デカ)の靴で、柳は行く。 ―――刑事(デカ)の道を、柳は行く。 【一日目・深夜/E-5 砂漠 → ?】 【柳 義春】 【状態】健康 【装備】刺又 【所持品】基本支給品×3、首輪探知機、?:日村の配布品、?:今野の配布品 【思考】 1.マル救を保護する 2.マル協にゲーム破壊の共闘を持ちかける 3.マル警の動向に注意する。必要に応じて取り押さえる 4.マル保の人物像を把握する 5.マル保にいるはずの主催者を特定する 6.ゲームを破壊する ※チェーンソーとノコギリは折られました 16 青春ヨーイドン! 時系列順 19 桜井暮葉の憂鬱 17 場違いな女 投下順 19 桜井暮葉の憂鬱 柳 義春 [[]]
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/268.html
宇宙刑事ギャバン 作品情報 2枚 ギャバン01 ギャバン02
https://w.atwiki.jp/butubutuhitori/pages/303.html
仲間とは… 協力し前進する為のネットワークである… このネットワークの維持に必用なもの! 信用と信頼! お金は補足的に機能するに過ぎない! こんな気がする… 信頼は仲間の為に働く事…責任を分かち合うことで… コツコツ貯金…積み上げるもの! 無責任な存在では貯まらない気がする… 事故が起きたならば… 信頼の低下は…まだ少ないし取り戻すのも易しい! 無責任…作為的ならば… 信頼は憎悪に! 取り戻すのも…絶望的に! 保険で金銭的リスクを回避した… 相手に…業者にお金払ったからって… 無責任だと… 出来ることしないで相手に損失を与える… 信頼がなくなり恐ろしい事になる! 信頼無い…憎悪の対象にされる… そんな存在が話すこと…作るもの… 怖くて使えない! 活きられる訳がない! と思う…
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/20975.html
刑事(けいじ) エンザイ C サイコ・パス(ゼロ)文明 (5) クライム・クリーチャー:ジャスティス・ポリス 3000 ■マナゾーンに置く時、このカードは裏向きにして置く。(裏向きの時も表向きの時も、このカードはサイコ・パスとして扱われる) ■S・トリガー ■サイコ・パス武装3:このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のマナゾーンにサイコ・パスが3枚以上あれば、呪文を1枚、自分の墓地から手札に戻してもよい。 (コストを支払ってクライム・クリーチャーを召喚するには、自身のマナゾーンにあるサイコ・パスを1枚以上タップしなければならない) 作者:ザ=ガーン フレーバーテキスト 微粒子化されたサイコ・パスを搭載した高威力爆弾。それが爆発すれば、世界はサイコ・パスに汚染されてしまう…。果たして、ルーキたちは夜が明けるまでに、2つの爆弾を見つけることができるのか⁉︎ DMDC-04「探偵編 最終章 開眼!超探偵!〜ハートに火をつけて!〜」収録のクライム・クリーチャー。とうとう探偵編から登場した種族もクライム化してしまった模様。 トリガー付きの回収クリーチャーと考えるとまずまずのスペック。サイコ・パス武装という条件はあるものの、サイコ・パスデッキの鍵となりそうな1枚です。 ちなみに、新種族がクライム・クリーチャーになると、元になった種族の冠詞の一部が失われます。 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/1802.html
【TOP】【←prev】【FAMILY COMPUTER】【next→】 SD刑事ブレイダー タイトル SD刑事ブレイダー 機種 ファミリーコンピュータ 型番 TFC-SKB-6400 ジャンル RPG 発売元 タイトー 発売日 1991-8-2 価格 6400円(税別) 駿河屋で購入 ファミコン(箱説あり)
https://w.atwiki.jp/motoken_watch/pages/26.html
刑事免責問題 医療者はいわゆる「刑事免責」(定義は人によって異なる)を求めています。それは医療は不確実なもので、刑事事件として扱うにはそぐわないものと考えているからです。 ただし実現性も含めて考えると「刑事免責」実現する方策には色々な考えがあります。 <関連エントリ> 刑事免責主張に関する私なりのまとめ(2008/07/29) 救急医療事故は刑事免責へ向かうか?(2008/07/29) 医療側は刑事免責の主張にこだわるべきか(2008/07/23) 医療側からの刑事免責の主張をどう理解すべきか(2008/07/19) 刑事罰は業界を崩壊させ得る(2008/06/15) 小倉秀夫弁護士の「全国医師連盟」批判について(2008/06/14) 医師の疑問 医師の刑事免責は先進諸国では一般的である。なぜ日本では免責でないのか? (※管理者注:「先進諸国で一般的である」の根拠がみつかりません。ご存知の方は教えていただけるとありがたいです。) コメント ご意見・ご感想・訂正情報などお書きください 名前 コメント すべてのコメントを見る カウンター トータル: - 昨日: - 今日: -
https://w.atwiki.jp/tanaka_mohs/pages/47.html
提出書式 大部品 刑法 RD 48 評価値 9 -部品 刑法(penal code) -大部品 刑法の機能 RD 2 評価値 2 --部品 法益保護 --部品 知類権保障 -大部品 刑法総論 RD 36 評価値 8 --部品 適用範囲 --大部品 刑罰・執行猶予 RD 4 評価値 3 ---部品 刑罰 ---部品 執行猶予 ---大部品 仮釈放・仮出場 RD 2 評価値 2 ----部品 仮釈放 ----部品 仮出場 --大部品 犯罪の成立要件 RD 24 評価値 7 ---大部品 構成要件 RD 12 評価値 6 ----部品 構成要件とは ----大部品 基本的構成要件 RD 4 評価値 3 -----大部品 客観的構成要件要素 RD 3 評価値 3 ------部品 実行行為 ------部品 主体・客体 ------部品 結果・因果関係 -----大部品 主観的構成要件要素 RD 1 評価値 1 ------部品 故意・過失 ----大部品 修正された構成要件 RD 6 評価値 4 -----部品 未遂 -----部品 陰謀・予備 -----大部品 広義の共犯 RD 4 評価値 3 ------部品 共犯現象 ------部品 共同正犯 ------大部品 狭義の共犯 RD 2 評価値 2 -------部品 教唆犯 -------部品 幇助犯 ----大部品 刑法の占有 RD 1 評価値 1 -----部品 財産犯の占有 ---大部品 違法性阻却事由 RD 7 評価値 5 ----部品 違法性阻却事由とは ----部品 結果無価値論・行為無価値論 ----大部品 正当行為 RD 2 評価値 2 -----部品 法令行為・正当業務行為 -----部品 被害者の承諾 ----大部品 緊急行為 RD 3 評価値 3 -----部品 正当防衛 -----部品 緊急避難 -----部品 自救行為 ---大部品 責任阻却事由 RD 4 評価値 3 ----部品 責任無能力者 ----大部品 心神喪失・心神耗弱 RD 2 評価値 2 -----部品 心神喪失・心神耗弱とは -----部品 原因において自由な行為 ----部品 刑事未成年 ---大部品 錯誤 RD 1 評価値 1 ----部品 錯誤とは --大部品 自首 RD 1 評価値 1 ---部品 自首とは --大部品 罪数 RD 6 評価値 4 ---部品 罪数論 ---大部品 成立上一罪 RD 2 評価値 2 ----部品 法条競合 ----部品 包括一罪 ---大部品 数罪 RD 3 評価値 3 ----部品 科刑上一罪 ----部品 併合罪 ----部品 かすがい現象 -大部品 刑法各論 RD 9 評価値 5 --部品 公務執行妨害罪 --部品 逃走罪 --部品 犯人蔵匿罪 --部品 贈・収賄罪 --部品 殺人罪 --部品 暴行罪・傷害罪 --部品 凶器準備集合・結集罪 --部品 逮捕・監禁罪 --部品 脅迫罪 部品 刑法(penal code) 刑法(penal code)とは、「なにをすると犯罪になるのか」「その犯罪に対しどのような刑罰を与えるのか」、犯罪と刑罰についての法令のことである。 刑法は刑法典に記載されている。 基本的に各藩国の刑法典は、天領の模範刑法典を参考に作られている。 また藩国に権限がない事項については、にゃんにゃん共和国や天領の刑法典に定められている。 刑法典以外の法令に犯罪とその刑罰を定めている場合、その刑法は特別刑法と呼ばれる。 刑法典は形式的意味の刑法とも呼ばれる。 また特別刑法を含む犯罪と刑罰の法規全般は、実質的意味の刑法と呼ばれる。 刑法典は総論と各論から構成されている。 刑法総論は犯罪や刑罰に共通する規定や事柄をあつかっている。 つまり、犯罪や刑罰を一般的・抽象的に論じた分野が刑法総論である。 刑法総論は刑法総則、刑法の一般原則とも呼ばれる。 刑法各論はさまざまな犯罪に対し、それぞれどのような刑罰が科されるか規定したものである。 つまり、なにをするとどの犯罪になるのか、個々の犯罪を具体的に論じた分野が刑法各論である。 刑法各論は、特定犯罪の定義とも呼ばれる。 刑法に関する法学は刑法学と呼ばれる。 部品 法益保護 罪も罰も決まっていない場合、知類を殺したり、盗みをはたらいてもよいことになる。 権利や利益などの法益を侵略する行為を犯罪として刑法に定めることで、藩国民の法益を守っている。 このように刑法が法益を守るはたらきを法益保護機能と呼ぶ。 部品 知類権保障 犯罪が知類の法益を侵害するものであるように、刑罰も犯罪者として処罰される知類の生命・自由・財産などの法益を奪うものである。 なにが犯罪か明確に規定されていない場合、いつ処罰されるかわからない。 そのような状況では藩国民が委縮するため、藩国民の自由が不当に制限されることになる。 そのため、刑法によって犯罪と刑罰を明確に規定し、藩国が無辜の知類を不当に処罰することがないよう、権力行使を規制することで、藩国民の知類権を守っている。 このように刑法が知類権を守るはたらきを知類権保障機能と呼ぶ。 自由を守っているため、自由保障機能とも呼ばれる。 /*/ 刑法が知類権保障機能を発揮するためには、犯罪と刑罰は法令によりあらかじめ定められていなければならない。 これを罪刑法定主義と呼ぶ。 刑罰には藩国民の法益に対する重大な脅威である。 そのため、民主主義の藩国では、藩国民自身の意思で犯罪と刑罰を決めるべきである。 ゆえに民主主義の藩国では、藩国民の代表から構成される立法機関が法令という形で犯罪と刑罰を決める必要がある。 立法機関とは、立法権を行使し、法規の制定を担当する組織である。 /*/ 知類権保障機能は法益保護機能と互いに矛盾対立する。 社会の秩序を維持するためには、ふたつの機能を調和させることが重要である。 部品 適用範囲 各藩国の刑法は、原則として藩国内において罪を犯したすべての知類に適用する。 また、各藩国の刑法は、藩国外にある藩国籍の船舶や航空機内において罪を犯した知類にも同様に適用する。 ただし、法令や藩国間の条約に特段の規定がある場合は、適用範囲が変更できる。 部品 刑罰 刑法において刑罰とは、藩国や国家が犯罪者に科す制裁のことである。 刑罰は刑事罰とも呼ばれる。 それぞれの犯罪について刑法の条文に定められている刑罰は法定刑と呼ばれる。 また、法定刑に加重・減軽の修正を施して決められた刑は処断刑と呼ばれる。 /*/ 刑罰の目的は応報と予防が考えられている。 刑法学において応報とは、犯罪という悪いことをしたから、刑罰という悪い報いを受けさせるという考え方である。 刑法学において予防とは、将来、同じような犯罪が繰り返されないようにするため、刑罰を与えるという考え方である。 刑罰の目的としての予防には、一般予防と特別予防が考えられる。 一般予防とは、実際に犯罪をした者を処罰することで、他の知類が犯罪をしないよう警告するという考え方である。 特別予防とは、犯罪をしそうな危険な性格の知類に対し、治療や教育として刑罰を科して性格を矯正し、犯罪を防ぐという考え方である。 特別予防では、実際にはまだ犯罪をしていない者であっても処罰するため、処罰の範囲が広くなりすぎてしまう。 そのため、刑罰の目的は応報や一般予防ととらえるのが刑法学で主流となっている。 /*/ 刑法では、絶対的不定期刑と遡及処罰が禁止されている。 絶対的不定期刑とは、法令で規定していない刑罰のことである。 つまり、絶対的不定期刑の禁止とは、法令で規定していない刑罰を科すことはできないことである。 遡及処罰とは、行為時に適法であるか、違法であるが罰則のない行為だった場合、あとで制定された刑罰法規によってさかのぼって処罰することである。 つまり、遡及処罰の禁止とは、行為時に制定されていない刑罰法規でさかのぼって処罰されないことである。 /*/ 犯罪は、科される刑罰によって、重罪・軽罪・違警罪に大別する場合がある。 重罪とは、死刑や一定期間以上の懲役・禁錮などの重刑が科される犯罪のことである。 死刑とは、受刑者の生命を奪う刑罰である。 死刑の執行方法については、絞首・斬首・銃殺・電気殺・ガス殺など、藩国や犯罪の種類によって異なる。 死刑を宣告された受刑者は、死刑が執行されるまでの間、刑事施設に拘置される。 懲役とは、刑事施設に拘置し、所定の作業を強制的に科す刑罰である。 禁錮とは、刑事施設に拘置する刑罰である。 禁錮は懲役と異なり、作業の強制はない。 懲役と禁錮は、無期と有期があり、無期は終身、有期は期間の上限と下限が定められている。 藩国によって異なるが、たとえば1か月以上20年以下が有期の上限と下限である。 ただし、死刑や無期懲役・無期禁錮を軽減した場合、有期懲役・有期禁錮の上限は30年となる。 また、併合罪や再犯で刑罰を加重する場合も、有期懲役・有期禁錮の上限は30年となる。 なお、短命の種族にとって、長期の有期懲役・有期禁錮は、実質的に無期の懲役・禁錮と同等になる場合がある。 そのため、藩国によっては、種族ごとの寿命を考慮して刑罰を定めている。 軽罪とは、一定期間未満の懲役・禁錮や罰金などの刑罰が科される犯罪である。 罰金とは、犯罪の処罰として制裁金を取り立てる刑罰である。 藩国によって異なるが、罰金で科される制裁金には上限と下限が定められていることが多い。 たとえば制裁金の下限は100にゃんにゃん以上である。 ただし、罰金を軽減した結果、制裁金が100にゃんにゃんの下限を下回る場合もある。 犯罪者の年収や財産を考慮して、制裁金の上限を定める藩国もある。 違警罪とは、拘留や科料などの刑罰が科される犯罪である。 拘留とは、刑事施設に拘置する刑罰である。 拘留は懲役や禁錮と異なり、無期はなく、有期のみである。 拘留期間の上限は禁錮の下限未満である。 科料とは、犯罪の処罰として制裁金を取り立てる刑罰である。 科料で科される制裁金の上限は、罰金の下限未満である。 罰金・科料は財産を奪うため、財産刑とも呼ばれる。 財産刑を完納することができない場合、換刑処分として労役場に留置し、所定の作業をおこなわせる。 財産刑の一部を納付した場合、その金額に応じて労役場に留置する期間が短くなる。 懲役・禁錮・拘留は自由を奪うため、自由刑とも呼ばれる。 自由刑は刑の執行によって、健康を害するおそれや回復不可能な不利益を生じるおそれなどがあるとき、執行停止が認められている。 死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料などは主刑と呼ばれる。 主刑とは、独立して科すことのできる刑罰のことである。 主刑を科された際に付加して科される刑罰は付加刑と呼ばれる。 重罪か軽罪に該当する犯罪は、犯罪で使用された道具や犯罪によって得た盗品や報酬の所有権を奪うことができる。 この刑罰を没収と呼ぶ。 没収は付加刑のため、没収だけを科すことはできず、必ず懲役や罰金などの他の刑罰と同時に科される。 没収によって奪うことができるのは、犯罪者が所有する物か、もしくは犯罪に関する物と知りながら取得した物に限定される。 実務上、没収が科される物は、事前に大法院や捜査機関が押収している場合がほとんどである。 違警罪に該当する犯罪は、特段の規定がない限り、没収を科することができない。 ただし、偽造文書やわいせつ物など、その物の存在が犯罪に必要不可欠なものについては違警罪に該当する場合でも没収を科することができる。 盗んだ物品を紛失・毀損したり、犯罪で得た報酬を使ったりして没収できない場合、代償処分として没収する物の価額の納付を強制するができる。 この刑罰を追徴と呼ぶ。 この他に、物理的な肉体をもたないAI知類など、種族ごとの特徴に応じて、一般予防の観点から妥当な刑罰が刑法で規定されている。 部品 執行猶予 執行猶予とは、有罪判決を受け刑を言い渡された者に対し、刑の執行を一定の期間、猶予する制度である。 執行猶予は、刑の全部の執行猶予と、刑の一部の執行猶予に分類される。 執行猶予の付いていない刑は、俗に実刑と呼ばれる。 たとえば、法の司の裁定で被告人へ懲役3年の実刑が言い渡され、その刑が確定すると、ただちに懲役3年の刑が執行され、刑務所に入る。 刑の全部の執行猶予が付いている場合、懲役3年の裁定が確定しても、ただちに懲役3年の刑が執行されない。 また、刑の一部の執行猶予が付いている場合、言い渡された刑期のうち、執行を猶予された期間を差し引いた期間について、刑務所に入ることになる。 執行猶予は、以前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、禁錮以上の刑を執行された後、一定期間禁錮以上の刑に処せられたことがない者などに限定して付けられる。 執行猶予を付けられる刑罰は、藩国によって異なるが、たとえば3年以下の懲役・禁錮、または5000にゃんにゃん以下の罰金など限定される。 執行を猶予できる期間は、藩国によって異なるが、たとえば1年から5年の範囲である。 刑の執行猶予を言い渡した後に他の罪を犯したり、刑の執行猶予を言い渡す前に他の罪で禁錮以上の刑に処せられたりした場合、執行猶予は取り消されることがある。 猶予の期間中に執行猶予は取り消されなかった場合、その犯罪に対する刑罰を受けることがなくなる。 執行猶予の制度は、比較的軽い罪を犯したような犯罪者が反省し、今後はまじめな生き方をしていきたいと決心している場合、刑罰を科す必要がないため設けられている。 このような犯罪者を刑務所に入れると、世間の偏見などによって自暴自棄となり、立ち直ろうとした決意が崩れて、かえって以前よりも悪くなるといった事態が考えられる。 そのため、執行猶予の制度が考え出された。 刑罰に執行猶予を付す際、同時に保護観察を付すことができる。 部品 仮釈放 仮釈放とは、懲役・禁錮に処せられた者が一定の期間を経過した後、刑事施設から仮に釈放されることである。 一定の期間とは、藩国によって異なるが、たとえば有期刑の受刑者はその刑期の3分の1、無期刑の受刑者は10年である。 仮釈放の対象となる受刑者は、自分の犯した悪事や失敗を反省し、心を改め正したと認められた者に限られる。 仮釈放の対象者は、保護観察に付される。 仮釈放中に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられた場合や、遵守すべき事項を遵守しなかった場合は、仮釈放の処分を取り消すことができる。 仮釈放の処分を取り消したり、仮釈放の処分が効力を失ったりした場合、釈放中の日数は、刑期に数えない。 仮釈放後、所定の期間を遵守条件に従って、無事に経過した場合、その受刑者の懲役・禁錮は刑の執行が終了したものと取り扱われる。 部品 仮出場 仮出場とは、拘留に処せられた者が、情状により、仮に出場を許されることである。 刑法や[[治罪法]]において情状とは、刑事訴追などを行うかどうかの判断や刑の量定をする際、考慮すべき事情のことである。 考慮すべき事情とは、たとえば罪を犯した動機や目的、被疑者・被告人・受刑者の性格・年齢・経歴・境遇などである。 仮出場は、仮釈放と異なり、一定の期間の経過を必要としない。つまり、いつでも仮出場できる。 罰金や科料を完納することができないため留置された者も、情状により、仮出場できる。 部品 構成要件とは 罪刑法定主義において犯罪が成立するためには、構成要件に該当し、違法で有責な行為でなければならない。 /*/ 犯罪の構成要件とは、犯罪について定めた法令の条文に解釈を加えて導き出される犯罪の類型のことである。 この犯罪類型に当てはまることを「構成要件該当性がある」と表現する。 構成要件という概念は、判断の最初の段階で検討すべき犯罪を決める機能がある。 この機能を犯罪個別化機能と呼ぶ。 /*/ 構成要件には、基本的構成要件と修正された構成要件に分けられる。 基本的構成要件は既遂犯や単独犯を主な対象としている。 そこから修正を加えたものが「修正された構成要件」である。 /*/ 構成要件該当性を認めるためには、構成要件を形作る要素がすべてそろっている必要がある。 この要素を構成要件要素を呼ぶ。 構成要件要素は客観的構成要件要素と主観的構成要件要素に大別できる。 客観的構成要件は、犯罪事実とも呼ばれる。 部品 実行行為 行為主義とは、犯罪を処罰するためには、外界に影響を与え、意思で制御できる行為でなければならないとする考え方である。 このように、刑法による処罰を考えなければならないような、現実に法益侵害の危険がある行為を、実行行為と呼ぶ。 心の中でいくら悪いことを考えていても外界には影響を与えないため、処罰の必要はない。 また、反射運動や睡眠中の体の動きなど、意思で制御できないものは、他者の法益を侵害しても非難できない。 実行行為は基本的構成要件の客観的構成要件要素である。 /*/ 構成要件に規定されている行為を構成要件的行為と呼ぶ。 構成要件的行為は犯罪行為とも呼ばれる。 犯罪行為は作為と不作為に分けられる。 作為とは、法益侵害の危険を新たに作り出す行為のことである。 たとえば、凶器で他者に傷つけるような行為は作為である。 不作為とは、すでに存在する法益侵害の危険を消滅させない行為のことである。 たとえば、重病者を放置するような行為は、重病で死ぬというすでに存在する危険を消滅させていないため、不作為である。 不作為によって成立する犯罪を不作為犯と呼ぶ。 不作為犯は法益侵害の危険を消滅させる義務を持つ者に限定される。 このような義務を作為義務と呼ぶ。 たとえば、親やベビーシッターが子供を監護する義務が、作為義務として認められることもある。 どのような場合に作為義務を認めるかは、法令に根拠がある場合、契約や事務管理などの法律行為による場合、慣習や条理による場合などがある。 不作為犯は真正不作為犯と不真正不作為犯に分類できる。 真正不作為犯とは、不退去罪や救護義務違反など、構成要件が不作為を予定している罪のことである。 不真正不作為犯とは、作為犯とされる犯罪を、不作為によって実現することである。 /*/ 直接正犯とは、行為者自ら犯罪を実行する正犯である。 また間接正犯とは、他者を意のままに動かし、他者を介して実行する正犯である。 たとえば「代金を支払わず、店頭にある商品を持ち出してはいけない」ということを知らない幼児に対し、Xが商品を店外に持ち出すように頼み、幼児がそれに従った場合を考える。 この場合、一見、幼児が窃盗の実行行為をしているように見える。 しかし、Xが何も分からない幼児を道具のように操り、自ら窃盗したと考えるほうが実態に即している。 そのため、間接正犯の場合、直接結果をもたらした他者の行為ではなく、その背後で他者を仕向けた行為こそが実行行為であると解釈される。 部品 主体・客体 刑法において、主体とは、行為者のことである。 行為の主体は、原則として知類のことであるが、法人も行為の主体となることができる。 法人を罰する規定は、たとえば両罰規定が該当する。 両罰規定とは、法人が所属する役員や従業員などが、法人の業務に関連して違法な行為をした際、その違法な行為をした役員や従業員だけではなく、所属する法人も併せて罰する規定である。 原則として犯罪行為の主体となる知類に制限はないが、例外として主体に一定の身分が必要となる場合がある。 構成要件として、行為者に一定の身分が必要な犯罪を身分犯と呼ぶ。 身分犯は真正身分犯と不真正身分犯に分類できる。 真正身分犯とは、特定の身分があって初めて成立する犯罪である。 不真正身分犯とは、特定の身分がなくても成立する犯罪である。 /*/ 刑法において、客体とは、行為の対象となる知類や物のことである。 たとえば、窃盗罪や横領罪では他者の財物などが客体となる。 財物を客体とする犯罪を財物罪と呼ぶ。 部品 結果・因果関係 犯罪は結果発生の必要性から、結果犯・挙動犯・結果的加重犯に分類される。 結果犯とは、結果の発生を構成要件としている犯罪のことである。 たとえば、傷害罪・窃盗罪・詐欺罪などが結果犯である。 挙動犯とは、結果の発生を必要としない犯罪のことである。 たとえば、住居侵入罪や偽証罪などが挙動犯である。 結果的加重犯とは、行為者が認識していた犯罪事実よりも重い結果が生じた場合、その結果を処罰する犯罪のことである。 たとえば、傷害致死罪・強盗致死罪・逮捕等致死傷罪などが結果的加重犯である。 /*/ 犯罪は法益侵害の必要性から、実質犯・危険犯・形式犯に分類される。 実質犯とは、傷害罪のような法益侵害の発生を必要とする犯罪のことである。 危険犯とは、法益侵害の危険を生じさせることが構成要件となっている犯罪のことである。 危険犯は具体的危険犯と抽象的危険犯に分類される。 具体的危険犯とは、法益侵害に対する具体的な危険の発生が構成要件となっている犯罪のことである。 たとえば自己所有非現住建造物等放火罪や建造物等以外放火罪は、公共の危険が具体的に発生することを要するため、具体的危険犯である。 抽象的危険犯とは、法益侵害に対する具体的な危険を必要とせず、一般的な危険の発生を構成要件とする犯罪のことである。 たとえば、現住建造物等放火罪や他者所有非現住建造物等放火罪は、抽象的危険犯である。 なぜなら、客体に対する放火行為自体が公共の危険に含まれるため、既遂の要件に 形式犯とは、法益侵害に対する抽象的な危険すら必要としない犯罪のことである。 たとえば、信号無視や免許不携帯などの道路交通法違反は形式犯である。 /*/ 犯罪は法益侵害の様態から即時犯・状態犯・継続犯に分類される。 即時犯とは、結果の発生によって既遂となり、その後、犯罪者の行為に関係なく、法益侵害状態が継続する犯罪のことである。 たとえば、殺害や放火が即時犯である。 状態犯とは、結果の発生によって既遂となるが、その後、犯罪者の行為によって法益侵害状態が継続する犯罪のことである。 たとえば、窃盗罪や詐欺罪などが状態犯である。 継続犯とは、犯罪が既遂となった後も犯罪行為が継続する犯罪のことである。 たとえば、逮捕監禁罪や住居侵入罪が継続犯である。 /*/ ある結果が生じた際、実行行為をした者にその責任を問うためには、実行行為と結果の間に因果関係がなければならなない。 刑法において、因果関係には条件説・相当因果関係説・原因説などの考え方があり、相当因果関係説が主流である。 因果関係は基本的構成要件の客観的構成要件要素である。 /*/ 条件説とは、因果関係を認めるためには、条件関係を認めればよいとする考え方である。 条件関係とは、「その実行行為がなければ、その結果も生じなかっただろう」といえる関係のことである。 条件関係を判断する際は、実際の事件の経過において、その実行行為がその結果を生じさせるために必要であったか検討しなければならない。 たとえばXがYに毒を飲ませ、毒の効果をおよぼす前に、Xと無関係なZによって銃殺された場合、Xの実行行為はZの死亡という結果を発生させるために必要ではない。 そのため、Xの実行行為に対し、Zの死亡という条件関係は否定される。 条件関係を判断する際、実際にはなかった事情を仮定し、判断してはならない。 たとえばXの車がYをはねた結果、Yが死亡した場合、たとえXの車がはねなくてもZの車がはねたため、Yが死亡したと考えると、実際には起きなかったZの車がはねたという仮定によって、Xの実行校とZの死亡の条件関係が否定されてしまう。 そのような否定は不当であるため、実際にはなかった事情を仮定してはならない。 /*/ 相当因果関係説とは、因果関係を認めるためには、条件関係と相当因果関係の両方を認める必要があるとする考え方である。 相当因果関係とは、条件関係が認められることを前提に、その実行行為からその結果を生じることが相当であるといえることである。 ここでいう相当とは「とくに異常ではない」「自然である」くらいの意味合いである。 たとえば「親が犯罪者を生まなければ被害者が死ぬこともなかった」として、親の出産と被害者の死の間に因果関係を検討した場合、親の出産から被害者の死が生じたことは不当であるため、相当因果関係が否定される。 刑法において相当因果関係説は主流の考え方であるため、因果関係を検討する際は、まず条件関係を検討し、条件関係が認められる場合に相当因果関係を検討するという順番で検討する。 /*/ 原因説とは、実行行為の中からとくに重要な条件のみを原因と考え、その原因と結果について因果関係があるか検討する考え方である。 部品 故意・過失 刑法において故意とは、客観的構成要件要素にあたる事実を認識したうえで許容することである。 ここでいう許容とは、それでもかまわないと思っている心理状態のことである。 実行行為によって結果を生じることを認識している際、積極的に望んでいる場合だけでなく、それでもかまわないと消極的に思っている場合でも、故意があると認められる。 このような消極的に思う故意を未必の故意と呼ぶ。 たとえばXのいるところに爆弾をしかけたところ、無関係なYもいることに気づき、罪のないYを巻き込みたくないと思いつつも、Xを殺すために爆弾を作動させ、Yも殺してしまった場合、Yの死を予見し容認して実行したため、Yの殺害について未必の故意が認められる。 故意を要件とする犯罪を故意犯と呼ぶ。 故意を認めるためには、原則として、犯罪事実全体を認識・許容する必要がある。 ただし結果的加重犯については、基本となる犯罪事実について認識・許容があれば、重い結果に対する認識・許容がなくても故意が認められる。 /*/ 通常、故意がなければ処罰されない。 ただし、法律に特段の規定がある場合、過失でも処罰される。 刑法において過失とは、注意義務を怠ること、注意義務違反のことである。 注意義務とは、結果が生じないよう注意する義務のことである。 注意義務は、予見義務と回避義務に分けられる。 予見義務とは、結果の発生を予見する義務のことである。 また、回避義務とは、結果の発生を回避する義務のことである。 たとえば物陰から子どもが飛び出して、車ではねて死なせてしまった場合、物陰から子どもが飛びしたら車ではねて死なせてしまうということを予測する義務が予見義務で、そうならないようにするため減速するなどの措置をとる義務が回避義務である。 予見義務と回避義務が課せられる状況で、その義務を怠った場合、過失が認められる。 過失による行為で犯罪として処罰されるものを過失犯と呼ぶ。 未必の故意と過失犯の区別は、自動車の運転でたとえると次のようになる。 「このまま進行すれば歩行者をひくかもしれない」と結果の発生を認識・許容して交通事故を起こした場合、未必の故意である。 また、「このまま進行しても歩行者をひくことはないだろう」と結果の発生を認識・許容していない状態で交通事故を起こした場合、過失犯である。 居眠りや脇見などで歩行者を認識せず、交通事故を起こした場合も過失犯である。 /*/ 業務上過失とは、危険な仕事をする者が業務上の注意義務に違反し、他者の法益を侵害することである。 業務上過失犯は、特別に高度な注意義務が業務者に課せられているため、通常の過失犯より重い処罰を受ける。 /*/ 重過失とは、業務上の過失以外で、注意義務を怠った程度が著しい場合のことである。 わずかな注意を払うことで、結果の発生を容易に予見・回避できたのに、注意を払わず結果を回避しなかった場合、重過失に該当する。 部品 未遂 未遂犯とは、犯罪の実行に着手したにもかかわらず、これをなしとげなかった場合のことである。 未遂犯は、そもそも結果を生じなかった場合と、結果は発生しているが実行行為と結果の間に因果関係が認められない場合の両方を含む。 刑法では既遂犯の処罰が原則であり、特段の規定がある場合のみ、未遂犯も処罰する。 未遂犯が処罰される理由は、法益を侵害する現実的危険を生じさせるためと考えられている。 例外もあるが、未遂犯は実行行為を開始した時点、つまり犯罪の実行に着手した時点で成立する。 /*/ 未遂犯は、障害未遂と中止未遂に分けられる。 障害未遂とは、なんらかの事情で偶然未遂に終わった場合のことである。 たとえば他者を殺すつもりで銃を構えたが、警察官が来て撃つことをやめた場合が障害未遂に該当する。 中止未遂とは、実行行為を開始した後に、自らの意思で犯罪を中止した場合のことである。 たとえば他者を殺すつもりで銃を構えたが、自らの意思で撃つことをやめた場合が中止未遂に該当する。 障害未遂の場合、任意的減軽、つまり刑を減軽できるが、減軽されないこともある。 中止未遂の場合、必要的減免、つまり必ず刑を減軽または免除を受けられる。 中止未遂が必要的減免である理由は、刑の減軽・免除を約束することで中止を促すため、あるいは障害未遂に比べて違法性や有責性が弱いためとされている。 中止未遂が成立するためには、自らの意思で犯罪を中止し、かつ最終的に既遂にいたらなかったことが必要である。 ここでいう中止とは、実行行為によって危険な状態に陥った法益を救うことである。 たとえば殺すつもりで相手に致命傷を与えた場合、中止未遂が認められるためには、その負傷者を救命する必要がある。 仮に相手が死んでしまった場合、実行行為を中断していても中止未遂は成立しない。 中止未遂は中止犯とも呼ばれる。 /*/ 犯罪をするつもりで行為をおこなったが、その行為がそもそも法益を侵害する危険がないため、未遂犯すら成立しない場合を不能犯と呼ぶ。 たとえば砂糖が致死性の高い毒であると信じ、相手に砂糖を食べさせた場合が不能犯である。 一見すると実行行為がおこなわれているように見えるが、実はなんらかの事情により結果が生じない場合、未遂犯か不能犯かが問題になる。 たとえば警察官から銃を奪い、相手に向けて引き金を引いたが、弾が入っていなかった場合を考えてみる。 この場合、通説とされる具体的危険説では、行為の時点で世間一般が認識できた事情と、行為者がとくに認識していた事情を判断材料として、世間一般が法益を侵害する現実的な危険性を感じるなら未遂犯、感じないなら不能犯と考える。 さきほどの例では、警察官から奪った銃に弾が入っていないという事情は、行為の時点で認識できず、行為者自身も認識していない。 そのため、弾が入っていないという事情は判断から除く。 その前提では、相手に向かって引き金を引くという行為は世間一般では危険と感じるため、未遂犯が成立する。 部品 陰謀・予備 刑法において陰謀とは、犯罪の実行を着手する前に、二名以上の者が犯罪の遂行を謀議し、合意することである。 また刑法において予備とは、実行する予定で犯罪の準備をおこない、まだ実行を着手していないもののことである。 陰謀や予備に対する処罰は、既遂犯の処罰という原則の対極にある。 そのため、大多数の藩国では陰謀や予備を重大な犯罪に限り、例外的に規定している。 部品 共犯現象 ひとつの犯罪の実現に複数名の知類が関与する場合を共犯、あるいは共犯現象と呼ぶ。 刑法で共犯は必要的共犯と任意的共犯に大別されている。 /*/ 必要的共犯とは、二名以上の知類による共同行為を構成要件とする共犯である。 たとえば集団犯や対向犯は構成要件の性質上、二名以上の行為者によっておこなわれるため、必要的共犯に分類される。 集団犯とは、内乱罪や騒乱罪など、二名以上の者が同じ目的に向かって共同して行動しなければ成立しない犯罪のことである。 対向犯とは、重婚罪・収賄罪・贈賄罪・賭博罪など、二名以上の者の対向した行為を要件としている犯罪のことである。 必要的共犯は独立した共犯類型として規定されたものである。 そのため、任意的共犯に関する刑法総論の共犯規定は、必要的共犯には適用されない。 /*/ 任意的共犯とは、通常、単独犯でおこなわれる犯罪を二名以上の知類でおこなう共犯である。 任意的共犯は広義の共犯とも呼ばれる。 広義の共犯とは、共同正犯・教唆犯・幇助犯のことである。 広義の共犯は、単独正犯に対比される用語である。 単独正犯とは、一名が犯罪をおこなう犯罪のことである。 単独正犯は、直接正犯と間接正犯に分類される。 共同正犯と類似する犯罪実現類型に間接正犯がある。 間接正犯は単独正犯に分類されるため、広義の共犯に含まれない。 狭義の共犯とは、教唆犯・幇助犯のことである。 狭義の共犯は、正犯に対比される用語である。 正犯とは、原則として自ら犯罪を実現した者のことであり、犯罪実現の主役である。 正犯は、単独正犯と共同正犯に分類される。 それに対し狭義の共犯は、他者の犯罪に加担した、犯罪実現の脇役である。 /*/ 直接犯罪を実行していない教唆犯や幇助犯をなぜ処罰しなければならないのかという問題を、共犯の処罰根拠論と呼ぶ。 教唆犯や幇助犯は直接、法益を侵害するものではないが、他者の行為を通じ、法益を侵害していると考えられる。 このように、共犯も法益侵害を引き起こしたことを理由に処罰されるという考え方を惹起説と呼ぶ。 部品 共同正犯 二名以上の知類が共同して犯罪を実行した場合、犯罪を実行した知類はすべて正犯とする。 これを共同正犯と呼ぶ。 つまり、共同正犯が認められると、自らは犯罪の一部しか実行していない場合でも、実現した犯罪のすべてについて責任を負うことになる。 たとえばXとYが事前に相談し、それぞれZに対し銃で発砲したところ、Xの発砲した弾丸のみが命中し、Zが死亡した場合を考える。 この場合でも、YはZの死亡について責任を負うべきである。 なぜなら、YはXと相談することでXの行動に影響を与え、Xの行動がZの死を引き起こしたと考えられるからである。 また、YがZに対し銃を発砲したことは殺害行為である。 Yは自ら犯罪を実行したため、正犯である。 ゆえにYは犯罪の一部しか実行していないが、全体としての責任を負うことになる。 これを共同正犯の一部実行全部責任の法理と呼ぶ。 /*/ 共同正犯が成立するためには、原則として共同実行の意思と共同実行の事実が必要となる。 共同実行の意思とは、二名以上の知類が一緒になって犯罪をおこなうことを合意し、お互いにその意思を抱いていることである。 たとえばXとYが事前に相談せず、たまたま同じZに対し、それぞれ銃で一発ずつ発砲したところ、どちらかが発砲した弾丸が命中し、Zが死亡した場合を考える。 このように、共謀せず偶然同じ行動におよび、だれが引き起こした結果か判断できない場合を同時犯と呼ぶ。 「行為者と判明したときのみ責任を問える」と考える責任主義からすると、同時犯はXとYのどちらにもZを殺害した責任を問えない。 「疑わしきは被告人の利益に」という考えから、Xの罪を問う際はYの弾丸が命中したと考え、Yの罪を問う際はXの弾丸が命中したと考えるからである。 そのため、この場合、同時犯のXとYは殺害の既遂ではなく、未遂として処罰される。 /*/ 実行行為をしなくても共同正犯と認められる場合がある。 これを共謀共同正犯と呼ぶ。 たとえば犯罪を実行した知類の背後に、犯罪の計画を練り上げ、凶器を提供した知類がいた場合を考える。 このような犯罪の黒幕は、犯罪を直接実行していなくても犯罪の主役というべきである。 そこで、このような犯罪を実行していない知類であっても共同正犯として処罰する理論を、共謀共同正犯の理論と呼ぶ。 犯罪を実行していない知類をどのような場合に正犯と認めるかについては、学者の間でも意見が分かれている。 判例では、犯罪実現に果たした役割の重要性や犯罪によってどのような利益を得たかなどを考慮して、犯罪実現の主役的存在であったか否かで共謀共同正犯を判断している。 共謀共同正犯は、必ずしも事前に犯行現場の確認や凶器の準備などをおこなわなくても、現場共謀でも認められる。 現場共謀とは、犯行現場でとっさに共謀を形成することである。 たとえば父が子を虐待しているところを母が見て、父と目が合ったとき、母が目をそらし虐待を止めなかった場合、父と母の共謀が認められる。 そのため、虐待を手伝っていない母も共謀共同正犯として処罰される。 /*/ 継承的共同正犯とは、犯罪実現の途中から関与した知類にどのような責任を負わせるかという問題である。 たとえばXをYが殴って気絶させた後、途中からZが関与し金品を強奪した場合、Zは強盗として処罰されるかという問題である。 Zは暴行に関与しておらず、財物を奪うことにしか関与していない。 そのため、Zに強盗は成立せず、窃盗に留めるべきだと考えも強く主張される。 しかし、ZはYがXを気絶させた状況を利用して財物を奪っているため、判例ではZに対しても強盗が認められる。 部品 教唆犯 教唆犯とは、犯罪をするよう他者をそそのかし、犯罪をおこなうことを決意させ、犯罪を実行させることである。 教唆犯をするようそそのかした場合を間接教唆と呼ぶ。 間接教唆も教唆犯に含まれる。 また、間接教唆をするようそそのかす再間接教唆も教唆犯として処罰される。 教唆犯の成立に、そそのかす方法は問わない。 たとえば、犯罪の実行に対し報酬を与える場合や犯罪を実行しなければ解雇するなど不利益を与える場合、利益・不利益を提示せず警備状況の情報を伝え犯行の動機を与える場合などが教唆である。 教唆犯が成立するためには、被教唆者に犯罪実行の決意が生じなければならない。 被教唆者とは、犯罪をするようそそのかされた者のことである。 犯罪をするようそそのかしても、犯罪実行を決意しなければ、教唆犯は成立しない。 また、すでに犯罪実行を決意している相手に、犯罪をするようそそのかしても教唆犯は成立しない。 教唆によって犯罪実行の決意が生じたといえないため、代わりに刑の軽い幇助犯が成立する。 なお被教唆者が教唆された犯罪を実行し、未遂になった場合でも、教唆の故意が認められるため、教唆犯が成立する。 また正犯の処罰が教唆犯の処罰の要件となっていないため、被教唆者が処罰されず、教唆犯のみが処罰される場合もある。 /*/ 実際の事件では、教唆犯が認められることはほとんどない。 なぜなら教唆犯は実行者に犯罪の実現を決意させ、犯罪の実現を主導しているため、犯罪の主役と評価され、共謀共同正犯として処罰される場合がほとんどだからである。 また他者を道具として、間接的に正犯として犯罪をおこなう場合は間接正犯として処罰される。 たとえば親が養子を繰り返し虐待し、養子が親に逆らえない状況であると仮定する。 この状況で親が養子に犯罪を命じ、養子が犯罪を実行した場合、その養子は親の意のままに従わざるを得なかったと判断され、親の間接正犯が成立する。 部品 幇助犯 幇助犯とは、正犯を幇助した者のことである。 幇助犯をするようそそのかした場合も幇助犯として処罰される。 幇助犯を幇助する間接幇助も処罰される。 幇助犯は、従犯とも呼ばれる。 刑法では、幇助犯の処罰について、正犯や教唆犯と異なり、必ず減軽されるものと定めている。 幇助とは、正犯者の犯罪実行を援助し、犯罪実現を促進することである。 幇助は物理的幇助と心理的幇助に分類される。 物理的幇助とは、被害者宅の合鍵や凶器の提供など、物理的に犯罪行為を容易にする行為である。 心理的幇助とは、犯罪についての助言や激励など、正犯者が犯罪を遂行するおそれを高めることである。 幇助犯は正犯者に対し幇助行為をしただけでは成立せず、正犯者が犯罪を実行してはじめて成立する。 幇助犯が成立するためには、幇助行為が犯罪に必要不可欠でなくてもよい。 たとえば、ある家へ強盗に行こうとしているXにYがその家の合鍵を提供したところ、被害者宅が施錠していなかった場合を考える。 この場合、Yが用意した合鍵は使われていないが、合鍵の提供によって安心してXが強盗行為におよんだため、心理的幇助からYの幇助犯が認められる。 もしYが用意した合鍵を回収し、強盗へ行く前に自分が犯罪に加わらないことをXに伝え、了承を得られれば、Yの行動による物理的・心理的な影響は除去されたと考えられる。 そのため、Yを処罰する理由はなくなる。 /*/ ある家へ強盗に行こうとしているXにYが気づき、被害者宅の玄関を開錠した場合を考える。 正犯者Xは共犯がいると思っていないが、Yは共犯のつもりである。 このような片一方の共犯関係を片面的幇助犯、あるいは片面的従犯と呼ばれる。 このような場合、判例では、正犯者Xが犯罪実行を援助したという事実を知らなくても、Yの幇助犯は成立すると考える。 部品 財産犯の占有 刑法において占有とは、財産犯全般に関係する概念である。 財産犯とは、他者の財物や財産などの法益を侵害する犯罪のことである。 財産犯の客体となる財物は、財産的価値が必要だが、金銭的・経済的価値である必要はなく、家族と撮った写真のような主観的価値でもよい。 刑法上の占有は「自己のために占有する意思を必要としない」「相続によって移転しない」など、民法上の占有の概念といくつかの相違点がある。 /*/ 刑法上の占有の概念は、他者の占有する財物について成立する奪取罪と、他者の占有する財物については成立しない横領罪を区別する際、重要である。 奪取罪とは、窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪などの犯罪である。 また、奪取罪の既遂・未遂を判断する際や、被害者を認定する際にも、刑法上の占有の概念が重要である。 /*/ 刑法上の占有の客観的要件は、占有者の「財物に対する事実上の支配関係」が客観的に認められることである。 現実に財物を握り持っている者や、眼前に財物をおいて監視している者は、通常、占有があると認めてよい。 ただし、上位の者の命令や指導によって、下位の者が財物を監視している場合、上位の者が主たる占有者である。 この場合、下位の者は占有の補助者にすぎないため、その財物の占有権はない。 たとえば飲食店に調理担当として雇われた者が調理材料を持ち出した場合、調理材料を占有している者は雇用主や管理者であるため、横領罪ではなく、窃盗罪の構成要件となる。 なお、上位者と下位者の間に高度な信頼関係があり、財物を支配している下位者に財物の処分権がある程度ゆだねられている場合は、下位者に占有が認められる。 たとえば、雇用主の指示で商品を遠方に配達する場合、雇われた者がその商品の占有を有する。 /*/ 刑法上の占有の主観的要件は、財物に対し支配をおこなうようとする意思である。 自己のために占有するという意思までは要件として必要ではない。 たとえば倉庫保管の責任者は、倉庫の中に「どのような物品があるか」「物品はそれぞれいくつあるのか」までは知らなくても、その物品に対し保管の意思があると考えられるため、占有が認められる。 /*/ 住居自体が居住者に排他的に占有されているため、その住居の中にある個々の財物すべてを認識していなくても、住居主の包括的支配意思が認められる。 そのため、住居主が積極的に住居内における占有権を放棄しない限り、個々の財物について占有が認められる。 たとえ住居主が自宅の屋内で財物を見失い、事実上監視できない場合でも占有は認められる。 また、旅行中や外出中などで自宅に不在の間でも、以前から住居にある物や不在中に配達された郵便物などは、住居主の占有権が認められる。 震災・火災・水害などで家財の焼失・流失を防ぐために公道などに財物が置かれた場合、火災や水害が治まればその財物は回収されるべきものであるため、所有者などがその場にいなくても、所有者などに刑法上の占有が認められる。 /*/ 財物を遺失したことで、財物が所有者などの実力的支配から離れてしまった場合、占有離脱物となる。 ただし、第三者が排他的に管理・支配する場所内に財物を置き忘れることによって、置き忘れた者の実力的支配から離れた場合、その財物に対する刑法上の占有は、その場所の管理者に移る。 置き忘れた財物の存在を、置き忘れた場所の管理者が認識していなくても占有は移転する。 たとえば旅館なら旅館主、ゴルフ場ならゴルフ場管理者が置き忘れた財物を占有することになる。 置き忘れた場所の管理者に占有が移った場合、積極的に支配の意思を放棄していないため、その財物を盗み取れば、占有離脱物横領罪ではなく、窃盗罪が成立する。 財物を置き忘れても、置き忘れたことに気づくまでの時間が短く、距離も近い場合、占有が認められる。 判例では、被害者が財物を置き忘れたことに気づくまでの時間が5分以内、距離が20メートル以内の場合、占有が認められた。 所有者が一定の場所に物を置き、その付近にいる場合のように、物に対する支配の意思が強く認められるときは、外見上、財物に対する支配関係が希薄に見えても、占有が認められやすい。 判例では、路上に放置された自転車でも、通行の邪魔にならない場所で置かれており、その場所が隣接する店舗に来る客の事実上の自転車駐輪場となっており、その自転車が新品で所有者の氏名が鮮明に書かれている場合、所有者の占有が認められた。 なお、自転車放置区域内に自転車を放置した場合は、占有の離脱が認められた。 /*/ 事実上の支配をおこなうことができない財物については、刑法上の占有は認められない。 たとえば、漁業協同組合の区画漁場内の水産物は、自然発生的に生ずるものであるため、知類が支配・管理しているとはいえないから、占有が否定される。 ただし、自然物であっても、事実上の支配がおよぶ物については占有が認められる。 たとえば、海中の定置網にかかった魚は、網をかけた者に占有が認められる。 /*/ 複数名が相互平等の関係で財物を占有する場合、共同占有と呼ぶ。 共同占有の場合、各知類に占有が認められるため、そのうちの一名が他の者の占有を侵害すれば、窃盗罪になる。 ただし、共同物であっても、共有者の一名が他の共有者から委託を受けている場合、委託された受託者が単独で占有を有することになる。 この場合、委託された受託者が共同物を処分しても、窃盗罪にはならず、横領罪となる。 /*/ 法令上、物品を管理する職務権限をもつ者は、刑法上、その物品に対する占有を有する。 たとえば麻薬を管理するための免許をもっていない者が所長となっている診療所では、その診療所の麻薬の占有権は、所長ではなく、法令上の免許を受けた麻薬取扱者にある。 /*/ 不動産は、原則として、登記簿上その不動産の所有名義者が刑法上の占有を有する。 ただし、不動産の所有者からその処分を依頼され、所有権移転登記に必要な書類を有する者は、いつでもその書類によってその不動産を処分できるため、その不動産の占有者と認められる。 また、未成年者の親権者は、その未成年者が所有する不動産の占有者と認められる。 部品 違法性阻却事由とは 構成要件に該当しても違法性がない場合は、犯罪にならない。 違法性が認められない事情を違法性阻却事由と呼ぶ。 刑法において違法とは「処罰される必要があること」、阻却とは「否定される」ということである。 つまり、違法性阻却事由とは「処罰の必要性が否定される事情」という意味である。 違法性阻却事由は正当行為と緊急行為に大別できる。 部品 結果無価値論・行為無価値論 違法性の実質については、結果無価値論と行為無価値論のふたつの学説が対立している。 無価値は、無関係という意味ではなく、悪いという意味である。 つまり、結果無価値論は違法性の実質を結果の悪さとする見解である。 結果の悪さとは、法益侵害や法益を侵害する危険のことである。 それに対し、行為無価値論は違法性の実質を行為の悪さとする見解である。 なにが悪い行為かは、「道徳的・倫理的に許されない行為」という理解と、「法益を侵害するおそれが高い危険な行為」という理解がある。 結果無価値論と行為無価値論の大きな違いは、違法性を判断する際、行為者の主観を考慮するか否かである。 結果無価値論は結果の悪さに重視するため、行為者が故意か過失かは違法性に影響しない。 それに対し、行為無価値論は結果を考慮しつつ、行為に重点を置くため、実行者の故意か過失かは違法性に影響する。 行為無価値論は、現在の刑法の通説となっている。 部品 法令行為・正当業務行為 法令行為・正当業務行為とは、正当行為に分類される違法性阻却事由のひとつである。 法令行為とは、法令に従った行為のことで、「法令による行為」とも呼ばれる。 たとえば刑法にもとづいて執行される刑罰は、知類の生命・自由・財産などの法益を奪うものであるが、法令に従った行為であるため、違法性は認められない。 正当業務行為とは、正当な業務による行為のことである。 たとえば、医師が治療の目的で患者を手術する場合、患者の体を切っても違法性は認められない。 部品 被害者の承諾 被害者の承諾とは、正当行為に分類される違法性阻却事由のひとつである。 被害者がその行為を事前に承諾・同意している場合、罪を問われない場合がある。 たとえば、格闘技の試合で相手選手を負傷させた場合、ルール違反や特段の事情がない限り、違法性は認められない。 ただし、被害者の承諾や同意があっても、刑法に特段の記載がある場合は罪を問われる。 たとえば、幼児や児童にわいせつな行為をした場合、被害者の承諾があっても処罰の必要性が否定されない。 被害者の承諾は、被害者の同意とも呼ばれる。 部品 正当防衛 正当防衛とは、急迫不正の侵害に対し、自己や他者の権利を守るため、やむを得ずした行為のことである。 急迫不正の侵害とは、現時点で法益侵害の危険性があるか、または切迫している状態のことである。 たとえば突然、暴漢に刃物で襲われ、すぐに警察へ助けを求められない場合が急迫不正の侵害に該当する。 この場合、自分の身を守るため暴漢に反撃しても、違法性は認められない。 ただし、反撃が防衛の程度を超える場合、やむを得ずした行為に該当しないため、正当防衛にはならない。 このような過剰な反撃による防衛を過剰防衛と呼ぶ。 過剰防衛でも情状により刑の減軽・免除が認められることもある。 正当防衛は緊急行為に分類される違法性阻却事由のひとつである。 /*/ 法益を侵害する行為に対し反撃する場合において、侵害があることを事前に予想し、その機会を利用して相手を攻撃しようという考えを積極的加害意思と呼ぶ。 積極的加害意思を持つ場合、法益侵害が急迫ではないため、正当防衛は成立しない。 部品 緊急避難 緊急避難とは、自己や他者の生命・身体・自由・財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずした行為のことである。 緊急避難の例として「カルネアデスの板」が有名である。 カルネアデスの板とは、海で船が難破し、溺死を防ぐため舟板にしがみついていたところ、別の者が同じ舟板をしがみつこうとしたため、ふたりとも沈まないようにする目的でその者を海に突き飛ばし、溺死させたという寓話である。 カルネアデスの板の状況では、現在の危難を避けたいという避難の意思があり、他に手段がなかったため、違法性は認められない。 ただし、生じた害が避けようとした害の程度を超えた場合は罰せられる。 このように、守ろうとした法益より価値の高い法益を犠牲にする避難を過剰避難と呼ぶ。 過剰避難でも情状により刑の減軽・免除が認められることもある。 正当防衛が「不正対正」の関係に対し、緊急避難は「正対正」の関係となっている。 また、緊急避難は正当防衛と異なり、補充性が求められる。 補充性とは他に手段がないことである。 緊急避難は緊急行為に分類される違法性阻却事由のひとつである。 部品 自救行為 自救行為とは、司法や警察などの公的機関・公的権力による救済を待っていては権利の回復が困難な場合に、自らの実力を行使することで自らの権利を実現することである。 自救行為は刑法や治罪法などの呼び名で、私法では自力救済、国際法では自助と呼ばれる。 たとえば、泥棒に盗まれた物を取り戻す場合が、自救行為や自力救済に該当する。 実力行使をむやみに認めると社会の秩序が維持できないため、公的機関に保護を求めることが原則である。 この原則を私法では、自力救済禁止の原則と呼ぶ。 たとえば、駐輪場に駐輪していた自転車を盗まれ、後日、同じ駐輪場で盗まれた自転車を見つけた場合、持ち帰ることは禁止されている。 なぜなら、必ずしも権利の存在が確実であるとは限らないからである。 もし仮に権利の存在が確実であったとしても、私力による権利の実現を認めてしまうと、状況によっては暴力的に権利が行使されるおそれがある。 そのため、自救行為は原則として禁止である。 ただし、自救行為が緊急行為として例外的に認められる場合もある。 たとえば、自分の目の前で、他者が自分の物を持ち去ろうとしているような場合である。 このように事態の緊急性があり、なおかつ権利を行使する手段が必要な限度を超えない場合、自救行為をおこなっても例外的に許される。 部品 責任無能力者 構成要件に該当し、違法性がある場合でも、行為者自身に責任能力がない場合、その行為者は罰せられない。 責任能力は、弁識能力と制御能力というふたつの能力なる。 弁識能力とは、物事の善悪を判断する能力、自己の行為の是非を弁別する能力のことである。 制御能力とは、弁識能力にしたがって自分の行動を制御する能力のことである。 責任能力がない行為者は、責任無能力者と呼ぶ。 また、責任能力が一般の知類よりも劣る状態の者は、限定責任能力者と呼ぶ。 責任無能力者は刑事責任を負わない。 刑事責任とは、刑罰を受けなければならない刑法上の責任のことである。 行為者に責任能力があることを「有責性を備えている」と表現する。 また、有責性がないことを責任阻却事由と呼ぶ。 刑法において責任とは、適法な行為を選べたにもかかわらず違法な行為をしたことに対する非難である。 つまり、責任阻却事由とは「非難できないような事情」という意味である。 部品 心神喪失・心神耗弱とは 刑法において心神喪失とは、精神の障害によって責任能力がない状態のことである。 また、刑法において心神耗弱とは、精神の障害によって責任能力が著しく減退した状態のことである。 違法な行為をおこなった者が心神喪失の場合、その罪を罰しない。 心神喪失の者は責任無能力者であるため、犯罪が成立しないからである。 また、心神耗弱の場合、責任が小さいため、その罪は減刑される。 なお、心神喪失や心神耗弱とみなされる精神の障害は統合失調症のような精神疾患だけではなく、飲酒や薬物による一時的な状態も含む。 部品 原因において自由な行為 行為者の有責性を判断する際、行為を実行した時点で非難できる状況ではない場合、その行為の責任は認められない。 このように、犯罪の実行行為の時点に責任能力がなければ罪は問われないとする原則を、「実行行為と責任の同時存在の原則」と呼ぶ。 しかし、この原則にしたがうと、飲酒や薬物により自ら心神喪失や心神耗弱になることで、処罰を逃れることができる。 このような場合でも犯罪の成立を認める理論を、原因において自由な行為の理論と総称されている。 心神喪失や心神耗弱に陥る原因となった行為をおこなった時点では、責任能力があり、自由に行為を選べたため処罰するという理論である。 部品 刑事未成年 違法な行為をおこなった時点でその行為者の責任能力が否定される年齢の場合、その罪を罰しない。 刑法において刑事責任が問われる年齢を刑事責任年齢と呼び、単に責任年齢とも呼ばれる。 また、刑事責任が問われない年齢を刑事未成年と呼び、刑事未成年の者を刑事未成年者と呼ぶ。 刑事未成年者に対しては、刑罰を科すという厳しい対応より、更生を目的とした処遇のほうが適切と判断される。 そのため、刑事未成年者であっても矯正院や少年院への収容などの措置がとられる場合もある。 刑事未成年となる年齢は、藩国や種族によって異なるが、たとえば人知類の場合、満年齢で16歳未満・14歳未満・12歳未満などである。 藩国によっては、犯罪の種類や重要性に応じて、刑事未成年となる年齢を個別に定める場合もある。 また刑事責任年齢であっても年齢の若さを理由に刑が減刑される藩国もある。 部品 錯誤とは 刑法において、錯誤には事実の錯誤や法律の錯誤などがある。 /*/ 事実の錯誤とは、客観的な事実や状況が主観的な認識と一致しないことである。 刑法において故意を認めるためには、客観的構成要件要素にあたる事実を認識していなければならないため、錯誤は故意と重要な関係がある。 刑法学において、錯誤の学説は法定符合説が通説だが、反論として具体的符合説という有力説も存在する。 また抽象的符号説という反論も存在する。 通説とは、学会の大多数の者が支持する学説のことである。 また有力説とは、通説となるほどではないが一定以上の支持が集められている学説のことである。 錯誤は「具体的事実の錯誤」と「抽象的事実の錯誤」に分けられる。 /*/ 具体的事実の錯誤とは、同一の構成要件の枠内に収まる場合の錯誤である。 具体的事実の錯誤には、「客体の錯誤」や「方法の錯誤」がある。 客体の錯誤とは、たとえばXをYと誤認し、Yを殺害するつもりでXを殺害した場合である。 この「客体の錯誤」の例では、主観的な認識であるYも客観的事実であるXも知類であり、「知類を殺害するな」という刑法の命令に違反しているため、Xの殺害について故意を認めてよいと考えるのが一般的である。 方法の錯誤とは、たとえばXを死なせることに未必の故意もないという前提で、Yを狙って銃で撃ったところ、誤って近くのXに命中し死亡させた場合である。 この「方法の錯誤」の例では、法定符合説によると、知類を殺すつもりで知類を殺したから、Xの殺害について故意を認めてよいと考える。 それに対し具体的符合説では、知類の生命は個性が強いため、個別に保護されている法益を侵害する場合、構成要件該当性を判断する際は個々の法益ごとにおこなわなければならないと考える。 つまりYの生命を侵害する意思をXの生命を侵害する意思に転用できないと考え、Xの殺害に故意は認められず、過失と判断する。 /*/ 抽象的事実の錯誤とは、異なる構成要件をまたぐ場合の錯誤である。 たとえば、他者が所有する石像を断りなく壊すつもりで鈍器を振り下ろしたところ、誤って知類を殺してしまった場合が抽象的事実の錯誤に該当する。 法定符合説と具体的符合説はどちらも、「物を壊すな」という命令と「知類を殺すな」という命令は別で考え、知類の殺害に故意を認めず、過失と判断する。 それに対し抽象的符号説では、石像を壊すことも知類を殺すことも犯罪であるため、「罪を犯すな」という命令に意図して違反している以上、知類の殺害に故意を認める。 現在は法定符合説が支持されているため「重い罪に該当すべき実行行為をした際、行為の時点で重い罪に該当する事実を知らなかった知類は、その重い罪で処罰してはならない」という旨が刑法の条文にある。 /*/ 法律の錯誤とは、事実自体は正しく認識しているが、その事実が法律上どのようにあつかわれるかについて誤解がある場合のことである。 法律の錯誤は「違法性の錯誤」や「評価の錯誤」などとも呼ばれる。 法律に無関心な者や規範意識の弱い者は法律の錯誤に陥りやすい。 そのような場合に故意を否定することは不当であるため、「法律を知らなかったことから罪の犯す意思がなかったことにはできない」と刑法に定めている。 ただし、天災で新しい法律ができたことを知らなかったり、過去の判例を信頼して行動したところ判例が変わったりといった、違法性の意識が欠けたことに相当な理由がある場合は、その刑を減軽・免除することができる。 部品 自首とは 自首とは、犯罪者自ら進んで自分が犯した罪の事実を申告し、処分を求めることである。 犯罪者が罪を申告する相手は、警察や大法院などの捜査機関、または護民官・護民官補である。 ここでいう処分とは、刑事事件として公訴を提起し、遂行することも含まれる。 /*/ 自首した場合、その犯罪者の刑罰を減軽できる。 ただし、任意的減軽であるため、減軽されない場合もある。 自主の制度が制定された目的は、犯罪捜査を容易にするためと、犯罪者の反省に対し刑罰を減軽するためである。 なお、犯罪事実を自発的に申告しなければ自首にはならないため、犯罪を疑う警察官や法の司から職務質問を受けた際や捜査機関の取り調べを受けている際に犯行を自供しても自首には該当しない。 また、捜査機関に犯罪が発覚する前に犯罪事実を申告しなければ、自首に該当しない。 犯罪が発覚する前であれば、自首に行こうとする途中に職務質問を受け、その警察官に申告した場合は自首に該当する。 すでに捜査機関の誰かがその犯罪を知っている場合、犯罪事実を申告した捜査官がその犯罪を知らなくても、自首は成立しない。 ただし、捜査機関に発覚していなければ、被害者や目撃者に発覚していても自首が成立する。 自首に真摯な反省や悔悟は要しないため、自己の犯罪が発覚したと勘違いし、自らの犯罪事実を告知した場合でも自首が成立する。 交通事故を起こした場合、事故の発生や被害者の状況などを伝えるだけではなく、自身の過失を認め、処分を求めれば、自首が成立する。 /*/ 共犯者がいる事件について、共犯の事実を隠し、単独犯であるかのように犯罪を申告した場合、自首は成立しない。 なぜなら、その申告が犯罪事実の重要な部分を偽っているため、そして犯罪者の隠避の実行行為に該当するためである。 /*/ 口頭による自首は、原則として自首した者と自首を受理する者が相対しておこなうものである。 電話による自首は、連絡後、犯罪者がすぐに身柄の処分を捜査機関に委ねられるような、相対しているときに準ずる状況でなければならない。 部品 罪数論 罪数論とは、犯罪がいくつ成立するのか、複数の犯罪が成立する場合どのようにあつかわれるのかを考えるものである。 罪数論では、まず犯罪がひとつしか成立しないのか、複数成立するのかを考える。 罪数の決定については、構成要件標準説が通説となっている。 構成要件標準説とは、おこなわれた犯罪の構成要件が、一度の評価を受ける場合は一罪、二度の評価を受ける場合は二罪とする説である。 罪数は犯意・行為・法益の侵害状況などを総合的に検討することで決定される。 部品 法条競合 法条競合とは、ひとつの行為が、いくつかの構成要件に該当するように見えるが、そのうちのひとつの構成要件を適用することで、他の構成要件の適用が排除される場合である。 たとえば暴行行為で他者の身体を傷害した場合、傷害罪が成立するため、暴行罪は原則として成立しない。 同様に、財産を奪う目的で他者を暴行し、財産を奪った場合、強盗罪が成立するため、暴行罪や窃盗罪は原則として成立しない。 このように、刑法のある条文が他の条文よりも優先して適用される場合が法条競合である。 法条競合では、優先される条文が規定する一罪のみが成立する。 部品 包括一罪 包括一罪とは、複数の同種の行為があり、それぞれ独立した犯罪事実が実行されているが、一罪として包括的に評価する場合である。 たとえば荷物を盗む目的で誰もいない時間帯に倉庫へ侵入し、少しずつ荷物を運び出した場合、倉庫から財物を運び出せば窃盗罪が成立する。 しかし、ひとつひとつの運び出し行為に窃盗罪の成立を認め、数罪の窃盗罪とはしない。 なぜなら、被害者が同一で、それぞれの犯行が接続しておこなわれている場合、あえて数罪とする必要がないからである。 このように、同一の犯意によって同一の場所から連続しておこなわれた窃盗罪は一罪としてあつかう。 包括一罪の要件は、複数の行為が同一の罪名に触れ、被害法益が単一であり、かつ犯意が単一であることである。 上記の要件を満たした場合、複数回の犯行を包括して一罪とする。 部品 科刑上一罪 一名の行為者が複数の犯罪をおこなうことを、犯罪の競合と呼ぶ。 犯罪の競合が競合する場合、原則として、併合罪となる。 しかし、例外として、科刑上一罪がある。 科刑上一罪とは、複数の犯罪が一罪としてあつかわれることである。 科刑上一罪では、実現されたふたつの犯罪が特別な関係にあるため、単純にふたつの犯罪をおこなった場合よりも処罰が軽くなる。 科刑上一罪には、観念的競合と牽連犯がある。 /*/ 観念的競合とは、ひとつの行為がふたつ以上の犯罪を実現する場合である。 たとえば公務をおこなっている最中の警察官に暴行を加え、公務の執行を妨害し負傷させた場合、公務執行妨害罪と傷害罪が成立する。 また、パトカーに向かって石を投げつけ、パトカーを破損させた場合、公務執行妨害罪と器物損壊罪が成立する。 あるいは、窃盗犯が逮捕を免れるため、警察官に暴行した場合、事後強盗罪と公務執行妨害罪が成立する。 複数名へ同時に窃盗をそそのかし、それぞれ別個に窃盗をおこなった場合、教唆犯の行為は観念的競合となる。 なお、犯罪の実行行為が別個の動機・方法の場合は観念的競合とはならない。 /*/ 牽連犯とは、おこなわれた複数の犯罪が手段と目的の関係にある場合である。 たとえば住居に侵入し、空き巣におよんだ場合、住居侵入罪と窃盗罪が認められる。 この場合、住居侵入が窃盗の手段であり、窃盗が目的である。 「手段と目的の関係にある」とは、犯罪の性質から当然、手段と目的の関係にあると認められる場合に限られる。 そのため、目的を達成する手段として偶然、別の犯罪をおこなった場合は牽連犯にはならない。 たとえば知類を殺す目的で凶器となる刃物を盗み、知類を殺害した場合、牽連犯に該当しない。 /*/ 科刑上一罪は、観念的競合の場合でも牽連犯の場合でも、刑を科するうえで一罪としてあつかわれる。 科刑上一罪では実現された複数の犯罪について法定刑を比較し、刑の上限と下限の双方について、最も重い法定刑を基準とする。 なお、科刑上一罪で最も重い罪が懲役刑のみで、その他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがある場合、最も重い罪の懲役刑にその他の罪の罰金刑を併科することができる。 /*/ 科刑上一罪を構成する行為の一罪について確定判決があった場合、その判決の既判力は他の犯罪にもおよぶ。 たとえば他者の住居に侵入し強制わいせつした場合、住居侵入罪と強制わいせつ罪は牽連犯になる。 被害者がショックで入院しているため、実行犯を強制わいせつ罪で送致する前に、とりあえず住居侵入罪で逮捕・送致し、刑が確定したとする。 この場合、確定判決の既判力が強制わいせつの事実にもおよぶため、強制わいせつ罪では起訴できなくなる。 そのため、重要犯罪が訴追できない事態にならないよう、罪数に関する擬律判断を適正におこなったうえで、慎重に送致の手続きをおこなう必要がある。 部品 併合罪 科刑上一罪に該当せず、確定判決を経ていないふたつ以上の犯罪は、併合罪としてあつかわれる。 たとえば監禁して傷害を負わせた場合、観念的競合や牽連犯に該当しないため、監禁罪と傷害罪の併合罪となる。 あるいは、一度の強盗行為で複数の被害者が負傷した場合、強盗致傷罪は被害者ごとに成立する。 併合罪で実現した犯罪の最も重い法定刑が死刑である場合、死刑となる。 併合罪で死刑となった場合、没収以外の処罰が科されることはない。 併合罪で実現した犯罪の最も重い法定刑が無期懲役か無期禁錮である場合、その刑となる。 併合罪で無期懲役か無期禁錮になった場合、併科できる法定刑は罰金・科料・没収である。 併合罪で実現した犯罪の法定刑が有期懲役か有期禁錮である場合、実現した犯罪のうち最も重い自由刑の上限を1.5倍したものを併合罪の上限と定めている。 ただし、それぞれの自由刑の上限の合計を超えてはならない。 自由刑は期間が長くなるにつれ、受ける苦痛の増加率が増していくと考えられている。 そのため、併合罪で単純に自由刑の期間を合計すると、犯罪に対し受ける苦痛が大きくなりすぎるため、上限を抑えている。 しかし、併合罪の自由刑は上限がおさえられているとはいえ、非常に重い処罰をできる場合が多い。 併合罪で実現した犯罪の法定刑が財産刑の場合、実現した犯罪の財産刑の上限を合計したものを併合罪の上限と定めている。 なお、複数の犯罪が併合罪にも該当しない場合は単純数罪と呼ばれる。 部品 かすがい現象 たとえば他者の住居に侵入し、複数名の住居者を殺害した場合、殺害は被害者ごとに一罪成立するため、併合罪となる。 しかし、被害者ひとりひとりに対し、住居侵入と殺害は牽連犯となる。 そのため併合罪となるべき個々の殺害が、住居侵入のせいで、全体として科刑上一罪となってしまい、刑罰が軽くなってしまう。 このような現象をかすがい現象と呼ぶ。 実務では、かすがいとなる犯罪をあえて起訴しないことで、かすがい現象を生じないようにしている。 上記の例では、住居侵入を起訴しなければ、大法院は住居侵入罪を認定できないため、かすがい現象を生じず、個々の殺害の併合罪として刑罰を科すことができる。 部品 公務執行妨害罪 公務執行妨害罪とは、公務員が職務を執行する際、その公務員に対し暴行や脅迫を加えることで成立する犯罪である。 ここでいう職務とは、警察官の逮捕・捜査や国税長官の税務調査などといった権力的公務から、公営バス・公営鉄道の運営などの非権力的公務まで、さまざまなものがある。 会計書類の点検・決済や報告書類の作成などの事務仕事も公務に含まれる。 /*/ 公務執行妨害罪によって保護される法益は、公務の適正かつ円滑な遂行である。 公務員の心身の安全や意思決定の自由などは、公務執行妨害罪が保護する法益ではない。 つまり公務執行妨害罪は、公務員を保護するための規定ではなく、公務員によって執行される公務を保護するための規定である。 そのため、公務執行妨害罪は客体と保護法益が一致しないという特徴がある。 また、公務執行妨害罪の被害者は国や藩国であるため、示談できないという特徴がある。 /*/ 本来、公務員とは異なるが、法令によって「公務に従事する職員とみなす」と規定された職員は、公務執行妨害罪の客体になる。 なお、にゃんにゃん共和国の刑法において、わんわん帝國の公務員は他国の公務員であるため、公務執行妨害罪の客体にならない。 同様に、各藩国の刑法において、特段の規定がない限り、他藩国の公務員は公務執行妨害罪の客体にならない。 /*/ 公務執行妨害罪で保護の対象となる公務は適法でなければならない。 ここでいう適法とは、公務員の職務執行が法令と完全に一致するという意味ではない。 刑法で保護されるべき公務か否かで適法を判断する。 そのため、公務員の職務執行による国家や藩国の利益と、その職務執行によって生じる権利の侵害を比べ、国家や藩国の利益を優先すべき場合は、職務執行が法令に適合しない場合でも、刑法上は適法と判断される。 たとえば、内勤の巡査が外務の巡査の職務をおこなった場合、刑法上、その公務は適法と判断される。 ただし、法令にまったく適合しない職務執行は、刑法上においても違法な職務執行であるため、そのような職務を執行する公務員に暴行や脅迫を加えても、公務執行妨害罪は成立しない。 たとえば、警察官が税金を取り立てる、市役所職員が通常逮捕するなどの行為は違法である。 そのため、このような違法な職務行為に対し、被告人が公務員に暴行を加えても公務執行妨害罪は成立せず、暴行罪となる。 /*/ 公務執行妨害罪において、公務員が職務を執行する際とは、職務執行中だけでなく、これから職務執行に着手しようとしているときや終了直後も含まれる。 一時的に職務執行が停止しているように見える状況でも、職務を解除されて休憩しているのでなければ、職務執行中である。 たとえば、待機が必要な性質の職務は、待機中も職務執行中に該当する。 また、警邏中の地域警察官がたまたま市民と雑談をしていたとしても、その間、公務から離れていたとは判断されない。 /*/ 公務執行妨害罪においての暴行は、暴行罪の暴行より広く、間接暴力も含まれる。 間接暴力とは、直接知類に加えられたものではない有形力の行使である。 たとえば押収された証拠品を公務員の目前で故意に破壊した場合、間接暴力に該当するため、公務執行妨害罪が成立する。 /*/ 公務執行妨害罪において脅迫とは、恐怖心を起こさせる目的で他者に危害を加える旨を伝えるすべてのことである。 危害の内容や性質、伝える方法は問わない。 また相手が現実に畏怖しなくても、公務執行妨害罪は成立する。 第三者が危害を加えるという告知でも、その第三者の決意に影響を与える地位であると告知した場合、その告知は、公務執行妨害罪における脅迫に該当する。 たとえば、取り調べ中の警察官に対し「部下が『おまえを殺す』と言っている」と言った場合、公務執行妨害罪は成立する。 /*/ 警察官の職務質問に嘘を答えた場合、暴行や脅迫を加えていないため、公務執行妨害罪は成立しない。 また、虚偽の通報でパトカーや消防車を出動させた際に成立する犯罪は、公務執行妨害罪ではなく、偽計業務妨害罪である。 /*/ 公務執行妨害罪の罪数は、公務員の数ではなく、公務の数を基準として決定する。 そのため、公務員ごとにそれぞれ異なる公務がある状況で、公務員に暴行・脅迫を加えれば、公務員の数だけ公務執行妨害罪が成立し、観念的競合となる。 暴行罪や脅迫罪は公務執行妨害罪に吸収されるため、公務執行妨害罪における暴行・脅迫が単なる暴行・脅迫にとどまる場合、独立の別罪を構成しない。 ただし、暴行や脅迫が他の犯罪に該当する場合、その罪と公務執行妨害罪の観念的競合となる。 たとえば、公務の執行を妨害し、公務員を殺害した場合は、殺害と公務執行妨害の観念的競合である。 /*/ 公務執行妨害罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば3年以下の懲役・禁錮、または5000にゃんにゃん以下の罰金である。 なお、公務の執行を暴行・脅迫以外の手段で妨害する犯罪は刑法の条文で別途、その構成要件や刑罰が定められている。 部品 逃走罪 逃走罪は、単純逃走罪・加重逃走罪・被拘禁者奪取罪・逃走援助罪・看守者逃走援助罪に分類できる。 単純逃走罪・加重逃走罪は、拘禁されている者が逃走する行為である。 被拘禁者奪取罪・逃走援助罪・看守者逃走援助罪は、第三者が拘禁されている者を逃走させる行為である。 すべての逃走罪は未遂でも処罰される。 逃走罪が保護する法益は、国・藩国の司法作用のうち、拘禁作用である。 /*/ 単純逃走罪とは、裁定の執行によって拘禁された者が逃走した場合に成立する犯罪である。 単純逃走罪の主体は、裁定の執行によって拘禁された者に限定される。 つまり、単純逃走罪は真正身分犯である。 拘禁とは身体の自由を拘束することである。 裁定の執行によって拘禁された者は、既決・未決を問わない。 裁定の執行によって拘禁された既決の者とは、確定判決により刑の執行として拘禁されているか、または死刑の執行のために拘置されている者のことである。 刑が確定し、執行されて刑事施設に収容された以上、護送中や刑事施設の外で作業中であっても、裁定の執行によって拘禁された既決の者に該当する。 少年院に保護処分として収容されている者は、裁定の執行によって拘禁された既決の者に該当しない。 裁定の執行によって拘禁された未決の者とは、勾留状を執行されて拘禁された被疑者や被告人のことである。 保釈中の者や刑の執行停止中の者、勾引状によって拘禁された者、逮捕状・緊急逮捕・現行犯逮捕などによって逮捕されて拘禁された者は、裁定の執行によって拘禁された未決の者に該当しない。 また、逮捕・拘留されないで鑑定留置により病院などに収容された者は、拘留に準ずる拘禁状態であったとしても、裁定の執行によって拘禁された未決の者に該当しない。 拘留の執行が停止されて鑑定留置により病院などに収容された者は、収容された状態が拘留に拘禁された場合と同等の拘禁状態である場合に限り、裁定の執行によって拘禁された未決の者に該当する。 鑑定留置は長期間かかるため、限られた拘留期間中におこなうと、捜査や審理のための拘留期間がなくなってしまう。 そのような捜査上の弊害をなくすため、拘留期間中に鑑定留置をおこなう場合、いったん拘留の執行を停止し、鑑定留置の終了後、必要に応じて拘留状を執行し、新たに拘留するという手続きとなっている。 ゆえに拘留中の鑑定留置は、実質的に鑑定のための留置と捜査や審理のための身柄拘束が併存して継続していると考えられるため、裁定の執行によって拘禁された未決の者に該当する。 単純逃走罪は状態犯である。 逃走して看守者の支配から脱した段階で単純逃走罪の既遂に達する。 そのため、逃走の既遂後に逃走者を発見しても現行犯逮捕はできない。 逃走したが、看守者がただちに追跡・発見し、身柄を確保した場合は単純逃走罪の未遂として現行犯逮捕できる。 どのような場合、看守者の支配から脱したかについては、具体的な事情に即して社会通念にしたがって決定される。 単純逃走罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば1年以下の懲役である。 /*/ 加重逃走罪とは、裁定の執行によって拘禁された者か、勾引状の執行を受けた者が拘禁場や拘束器具の損壊、暴行・脅迫、または二名以上通謀して逃走した場合に成立する犯罪である。 加重逃走罪の主体は、裁定の執行によって拘禁された者に加え、勾引状の執行を受けた者も含まれる。 勾引状の執行を受けていれば、一定の場所に拘禁されていなくても、加重逃走罪における勾引状の執行を受けた者に該当する。 また、逮捕状の執行を受けた者は、勾引状の執行を受けた者に該当する。 現行犯逮捕や緊急逮捕で逮捕された者が、勾引状の執行を受けた者に該当するかについては、専門家の間でも見解が分かれている。 なお、加重逃走罪の「裁定の執行によって拘禁された者」は、単純逃走罪の「裁定の執行によって拘禁された者」に該当する者が該当する。 加重逃走罪の実行行為は、加重逃走罪の身分にある者が逃走する際に「拘禁場または拘束器具の損壊」「暴行または脅迫」「二名以上の通謀」のうち、ひとつ以上の行為をおこなって逃走することで成立する。 加重逃走罪において拘禁場とは、刑事施設や留置施設など、拘禁のための施設のことである。 加重逃走罪において拘束器具とは、手錠や結束ロープなど、高速のための器具のことである。 加重逃走罪において損壊とは、破壊や切断など物理的な損壊のことである。 単に手錠や結束ロープなどを外しただけの場合、加重逃走罪における損壊には該当しない。 拘禁場または拘束器具の損壊による加重逃走罪の着手時期は、逃走する目的で損壊をおこなったときである。 つまり、逃走する目的で損壊をおこなえば、逃走行為に至らなくても加重逃走罪は既遂となる。 加重逃走罪において暴行または脅迫とは、逃走の手段として看守者に対しておこなうことである。 加重逃走罪における暴行とは、公務執行妨害罪と同様に、広義の暴行である。 加重逃走罪が成立した場合、公務執行妨害罪は加重逃走罪に吸収される。 暴行または脅迫による加重逃走罪の着手時期は、逃走する目的で暴行または脅迫をおこなったときである。 つまり、逃走する目的で暴行または脅迫をおこなえば、逃走行為に至らなくても加重逃走罪は既遂となる。 加重逃走罪において二名以上の通謀とは、二名以上の者が逃走の時期や方法について意思疎通することである。 二名以上の通謀による加重逃走罪の着手時期は、逃走行為を実行したときである。 そのため、二名以上の者が逃走を通謀しただけでは加重逃走罪を着手したとは認定されない。 単純逃走罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば3か月以上5年以下の懲役である。 /*/ 被拘禁者奪取罪とは、法令により拘禁された者を奪取した場合に成立する犯罪である。 被拘禁者奪取罪は不真正身分犯であるため、真正身分犯の単純逃走罪や加重逃走罪と異なり、主体に制限はない。 被拘禁者奪取罪おいて法令により拘禁された者とは、裁定の執行によって拘禁された者、勾引状の執行を受けた者のほか、それ以外の法令によって拘禁された者も含む。 たとえば現行犯逮捕された者、逮捕状を提示されず緊急逮捕された者、少年院や少年鑑別所に収容された者、麻薬取締法で麻薬中毒医療施設に強制入院された者などが、法令により拘禁された者に含まれる。 ここでいう現行犯逮捕は、警察官や刑事施設職員などの司法警察職員ではない、店員や警備員などの一般の知類による現行犯逮捕も含まれる。 児童福祉施設に入所した者や警察に保護された者は、法令により拘禁された者に含まない。 被拘禁者奪取罪における奪取とは、拘禁された者を詐言によって連れ去る行為も含まれる。 被拘禁者奪取罪を実行する際、公務員である警察官や看守者などに暴行・脅迫を加えた場合、公務執行妨害罪も成立する。 この場合、被拘禁者奪取罪と公務執行妨害罪は観念的競合となる。 被拘禁者奪取罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば3か月以上5年以下の懲役である。 /*/ 逃走援助罪とは、法令により拘禁された者を逃走させる目的で、逃走を容易にする行為をおこなった場合に成立する犯罪である。 逃走を容易にする行為とは、逃走の機会や方法を教えたり、手錠や捕縄などの戒具を解除するなどである。 逃走を容易にする行為は、言語であれ行為であれ、その行為をおこなった時点で逃走援助罪の既遂となる。 つまり、法令により拘禁された者が逃走の実行行為に着手しなくても、逃走援助罪は成立する。 逃走援助罪を実行する際、公務員である警察官や看守者などに暴行・脅迫を加えた場合、公務執行妨害罪は逃走援助罪に吸収される。 逃走援助罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば暴行・脅迫がない場合、3年以下の懲役、暴行・脅迫がある場合、3か月以上5年以下の懲役である。 /*/ 看守者逃走援助罪とは、刑務官や留置担当の警察官など、法令により拘禁された者を看守・護送・拘束する担当の公務員が逃走援助罪を犯した場合に成立する犯罪である。 不真正身分犯である逃走援助罪と異なり、看守者逃走援助罪は真正身分犯である。 また看守者逃走援助罪は故意犯である。 逃走しようとする者を放置して逃走させる不作為でも、看守者逃走援助罪は成立する。 逃走を容易にする行為をおこなえば、主体の看守任務が解除された後に逃走しても、看守者逃走援助罪は成立する。 看守者逃走援助罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば10年以上1年以下の懲役である。 部品 犯人蔵匿罪 犯人蔵匿罪とは、犯罪者や逃走者を蔵匿・隠避することで成立する犯罪である。 犯人蔵匿罪が保護する法益は、国・藩国の刑事司法作用である。 犯人蔵匿罪において蔵匿とは、捜査権の行使を侵害し、犯罪者の発見・逮捕を妨害することを認識しながら、犯罪者の発見・逮捕をまぬがれる場所を提供することである。 また犯人蔵匿罪において隠避とは、蔵匿以外の方法で、犯罪者の発見・逮捕を妨害するすべての方法のことである。 具体的には、罪を犯した者を乗り物に乗せて潜伏先まで逃走させることや、逃走資金を提供すること、官憲の捜査の形勢を伝え逃走の便宜を与えることなどが、犯人蔵匿罪における隠避に該当する。 犯人蔵匿罪は、犯人隠避罪とも呼ばれる。 犯人蔵匿罪の主体については、制限はない。 犯人蔵匿罪の客体は、罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、または拘禁中に逃走した者である。 罰金以上の刑に当たる罪とは、法定刑で罰金刑が規定されているか、罰金刑よりも重い刑罰が規定されている犯罪のことである。 犯人蔵匿罪において、罪を犯した者とは、正犯者だけでなく、教唆者・幇助者も含む。 また、予備・陰謀をした者も、その法定刑が罰金以上の刑であるなら犯人蔵匿罪に該当する。 無罪推定の原則より、有罪判決が確定するまでは真犯人であっても無罪として扱われる。 そのため、犯人蔵匿罪の客体となる犯罪者は、現時点で捜査されている者や裁定で有罪判決が確定していない者が含まれる。 たとえば仮に指定手配になった者の無実を信じて蔵匿し、のちに真犯人ではなかったと発覚した場合、結果として無実になったとしても、捜査を妨害したことに変わりないため、犯人蔵匿罪は成立する。 また犯罪者がすでに死亡している場合でも、誰が真犯人か捜査機関がわかっていない段階で、自分がその罪を犯したと虚偽を事実を司法警察職員に述べた場合、犯人隠避罪が成立する。 無罪や免訴の確定判決があった場合は、仮にその者が真犯人であったとしても処罰されることはなく、その者を蔵匿・隠避しても司法作用を侵害するおそれはないため、犯人蔵匿罪の客体には該当しない。 また公訴時効の成立や告訴権の消滅、刑の廃止、恩赦による公訴権の消滅した後の犯罪者については、犯人蔵匿罪の客体に該当しない。 犯人蔵匿罪の拘禁中に逃走した者とは、被拘禁者奪取罪や逃走援助罪の法令により拘禁された者と同じである。 犯人蔵匿罪の故意は、犯人蔵匿罪の客体となる犯罪の嫌疑者や逃走者であると知りながら、その者を蔵匿または隠避した場合に認められる。 犯罪の嫌疑者や逃走者であることを知らなかった場合は、犯人蔵匿罪の故意は阻却される。 なんらかの犯罪の嫌疑者であると知っている場合は、その者の氏名や犯した罪とその刑罰などを知らなくても、犯人蔵匿罪の故意は認められる。 犯罪者や逃走者が官憲の拘束から逃れるため、自分自身を蔵匿・隠避する行為は自然な感情であると解釈できるので、犯人蔵匿罪に該当しない。 このように「犯罪者自身が逃げ隠れしないことを期待できないこと」を期待可能性がないという。 ただし、犯罪者や逃走者が他者を教唆し、自分自身を蔵匿・隠避させた場合は、犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する。 他者に犯人蔵匿罪を犯させてまで逮捕をまぬがれようとすることは、期待可能性がないとはいえないためである。 また、共犯者の発見・逮捕を妨害する目的で、蔵匿・隠避する行為は犯人蔵匿罪に該当する。 犯人蔵匿罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば3年以下の懲役または3000にゃんにゃん以下の罰金である。 /*/ 証拠隠滅罪とは、他者の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造するか、偽造・変造した証拠を使用した場合に成立する犯罪である。 証拠隠滅罪が保護する法益は、犯人蔵匿罪と同じく、国・藩国の刑事司法作用である。 証拠隠滅罪は、公訴事実の判断を妨害するすべての行為を処罰の対象とし、誤った刑罰の認定しない目的で刑法の条文に定められた。 証拠隠滅罪は、他者の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造するか、偽造・変造した証拠を使用する行為があれば成立する。 そのため、現実の捜査や審判に具体的な危険や実害を与えなくても証拠隠滅罪となる。 証拠隠滅罪の主体については、制限はない。 ただし、自分自身の刑事事件に関する行為の場合、証拠隠滅罪の主体にならない。 自分自身の刑事事件の証拠を隠滅しようとすることは、知類の心情から期待可能性がないためである。 なお、犯罪者が他者を教唆し、自分自身の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造などをさせた場合は、証拠隠滅罪の教唆犯が成立する。 他者を教唆してまで自分自身の刑事事件の証拠を隠滅しようとすることは、期待可能性がないとはいえないためである。 また、共犯者の利益のためにおこなった場合は、自分自身の刑事事件に関する行為でも証拠隠滅罪の主体となる。 証拠隠滅罪において客体とは、他者の刑事事件に関する証拠である。 他者とは、自分以外の者のことである。 証拠隠滅罪における刑事事件とは、現時点で大法院が取り扱っている刑事事件だけでなく、将来刑事起訴される可能性がある事件も含まれている。 証拠隠滅罪における証拠とは、刑事手続き上の証拠のことである。 捜査機関や裁定において、刑罰権の有無を判断するために関係があると認められるすべての資料が証拠である。 ここでいう資料とは、物的証拠だけでなく、人的証拠も含まれる。 人的証拠とは、証人や参考人などの知類の供述を証拠とすることである。 慣習から人知類以外の知類の供述でも人的証拠と呼称している。 原則として民事・行政・懲戒などの事件の証拠は証拠隠滅罪の客体にならない。 ただし、直接的には民事・行政・懲戒などの事件の証拠となるものであっても、間接的に刑事事件の証拠となるものは証拠隠滅罪の客体になる。 証拠隠滅罪において隠滅とは、証拠を滅失させる行為だけでなく、証拠の発見を妨害する行為、または証拠の価値を滅失・減少させる行為も意味する。 たとえば、証人や目撃者などの参考人を蔵匿・隠避する行為も証拠隠滅罪に該当する。 ただし、証人自身が虚偽の証言をした場合、証拠隠滅罪ではなく、偽証罪に該当する。 証拠隠滅罪において偽造とは、実在しない証拠を作成することである。 また犯罪事実と関係のない物件を利用し、犯罪事実と関係があるように作為する行為も、証拠隠滅罪における偽造に含まれる。 証拠隠滅罪において変造とは、証拠を加工して効果を変更することである。 変造は、作成権限の有無や内容の真否を問わない。 証拠隠滅罪において使用とは、偽造・変造した証拠を真正の証拠として、捜査機関や大法院に提出することである。 積極的な提供だけでなく、求めに応じ任意提出する行為も証拠隠滅罪における行為に該当する。 証拠隠滅罪の故意は、他者の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造などする認識があれば足りる。 証拠隠滅罪の故意において、他者の利益や不利益を図ることや、国家権力などを妨害する積極的意思はなくてもよい。 証拠隠滅罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば3年以下の懲役または3000にゃんにゃん以下の罰金である。 /*/ 藩国や種族などによるが、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪には、親族による犯罪に関する特例が存在する場合もある。 親族による犯罪に関する特例とは、犯罪者や逃走者の親族が犯罪者や逃走者の利益のために犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪を犯した場合、その刑罰を免除することができるというものである。 親族が犯罪者をかばわないと期待することは難しい、つまり期待可能性が乏しいからである。 親族の範囲は民法にしたがう。 なお、刑罰の免除は任意であるため、免除しなくてもよい。 親族による犯罪に関する特例において利益とは、刑事追訴・有罪判決・刑の執行など、刑事上の責任をまぬがれさせることや、法令による拘禁をまぬがれさせることである。 犯罪者や逃走者の親族が犯罪者や逃走者の不利益のために犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪を犯した場合は、親族による犯罪に関する特例に該当しない。 部品 贈・収賄罪 贈・収賄罪とは、汚職に関する犯罪のことである。 贈・収賄罪の態様は、収賄罪と贈賄罪に分かれる。 収賄罪とは、公務員による犯罪である。 それに対し、贈賄罪とは、公務員に対する犯罪である。 贈・収賄罪の中心をなすのは収賄罪である。 そのため、刑法では収賄罪について行為の態様別に詳細な規定を設けている。 収賄罪は、単純収賄罪を基本とし、刑を加重したものに、受託収賄罪と加重収賄罪がある。 また、成立要件を拡大したものに、事前収賄罪・第三者供賄罪・事後収賄罪・あっせん収賄罪がある。 /*/ 収賄罪は身分犯である。 収賄罪の主体は公務員に限られる。 ただし現在公務員である者、将来公務員に就こうとする者、過去に公務員であった者など、公務員の身分によって成立する犯罪が異なる。 収賄罪の公務員は、公務執行妨害罪と同様に、法令によって「公務に従事する職員とみなす」と規定された職員も含まれる。 贈・収賄罪の客体は賄賂である。 賄賂とは、公務員の職務に関する不正な報酬としての利益のことである。 /*/ 単純収賄罪とは、公務員がその職務に関し、賄賂を収受し、要求・約束した場合に成立する犯罪である。 収賄罪において職務とは、公務員がその地位に伴い、公務として取り扱うすべての執務のことである。 その場合の職務範囲は、原則として法令により定められているものになる。 ただし法令にその根拠があれば足り、訓令・通達・内規などで決められているだけでもよい。 この職務は、現在おこなっている場合でも、将来おこなうものでも、過去に担当したものでもよい。 職務行為は、作為・不作為を問わない。 不作為による職務行為とは、おこなうべき職務行為をしないことである。 たとえば、議員が意図的に欠席し、議事に加わらないことが、不作為による職務行為に該当する。 また、警察官が事件の証拠品をあえて押収しないことも、不作為による職務行為に該当する。 収賄罪において、公務員が職務に関して賄賂の収受などがなされているという、賄賂と職務の関連性がなければならない。 職務行為自体に関する場合以外に、職務と密接な関係を有する行為に関する場合も、収賄罪の職務関連性に含まれる。 職務行為に対する謝礼と、職務外の行為に対する報酬が、不可分的に授与された場合、全体を包括して賄賂性が認められる。 /*/ 賄賂は、その利益と公務員の職務行為の間に対価関係がなければならない。 ただし、この対価関係は、一定の職務行為との間に存在すれば足りる。 そのため、個々の職務行為との間に個別に存在する必要はない。 賄賂は不正な報酬であるが、職務行為が不正なものである必要はない。 正当な職務行為に対する対価として給付されたものであっても賄賂となる。 なお、賄賂が職務上の不正行為の対価である場合、加重収賄罪となり、刑が加重される。 公務員に対するお中元やお歳暮、手土産などが、通常の社交的儀礼の範囲内と認められる場合、賄賂に該当しない。 ただし、公務員の職務に対する対価としての意味をもつ場合、お中元やお歳暮などの名目で授受されても収賄罪が成立する。 /*/ 賄賂の目的物は、有形・無形を問わない。 知類の欲望や需要を満足させるものであれば、すべて賄賂の目的物に含まれる。 賄賂が経済上の価値を有する必要はない。 たとえば、金品や有価証券など以外に、債務の弁済保証、遊興飲食の供応・接待、情交の承諾、就職のあっせん、名誉・地位の供与なども賄賂となる。 /*/ 収賄罪において収受とは、賄賂を取得することである。 賄賂が有形の財物の場合、その財物の占有を取得したときに収受となる。 また、賄賂が無形の財物の場合、その財物の利益を得たときに収受となる。 いったん賄賂を受け取ったが、あとで考え直して賄賂を返還しても収賄罪が成立する。 ただし、後日返還するつもりで一時的に預かったにすぎない場合は、収受とならない。 /*/ 収賄罪が成立するためには、収受・要求・約束の行為の時点で、公務員の身分であることが必要である。 公務員が職務権限の異なる他の職務に転任・転職したあとでも、転任・転職前の職務に関し、賄賂を収受すれば、収賄罪が成立する。 /*/ 受託収賄罪とは、公務員がその職務に関し、請託を受けて賄賂を収受・要求・約束することで成立する犯罪である。 受託収賄罪のおける請託とは、その職務に関し「一定の職務行為をすること」、または「おこなうべき職務行為をしないこと」を依頼することである。 正当な職務行為に対する依頼の場合でも、その請託がなされることにより、職務行為と賄賂の対価関係が明らかとなる。 それにより、職務の公正に対する社会の信頼が強く侵害されることは、不正行為に対する依頼の場合と変わらない。 このように、収賄罪の保護法益を「公務員の職務の公正と、その職務の公正に対する社会一般の信頼」と考える説を、信頼保護説と呼ぶ。 信頼保護説と対立する説に、収賄罪の保護法益を「公務員の職務の公正」とする純粋性説がある。 純粋性説では、正当な職務に対して賄賂が収受された場合でも成立する収賄罪を満足に説明できない。 そのため、信頼保護説が通説となっている。 /*/ 受託収賄罪において請託は、必ずしも賄賂供与前に明示的におこなわれる必要はない。 賄賂を供与することによって、黙示的に依頼の趣旨を表示されても請託と認められる。 請託を受けるとは、依頼を承諾することである。 承諾も明示・黙示を問わない。 ただし、請託を受けたといえるためには、依頼の内容に応ずる意思が公務員にあり、その意思が黙示的でも表示されることが必要である。 請託を拒絶したが、賄賂だけ収受した場合、受託収賄罪ではなく、単純収賄罪が成立する。 請託された公務員と請託した相手とのいずれの側の発意によって合意がおこなわれたかは問題にならない。 依頼と承諾さえ認められれば、請託を受けたと認められる。 請託の対象となる職務行為は、ある程度の具体性を有する必要がある。 ただし、必ずしも公務員に対しておこなうべき行為を具体的に指示する必要はない。 たとえば、寛大な処分や便宜の取り扱いを望むにすぎない依頼でも請託となる。 /*/ 事前収賄罪とは、公務員になろうとする者が担当すべき職務に関し、請託を受けて賄賂を収受・要求・約束をすることによって成立する犯罪である。 事前収賄罪において公務員になろうとする者とは、選挙の立候補者のように、公務員になる可能性が生じた場合など、ある程度の蓋然性がある者のことである。 単に公務員になろうと考えただけでは、事前収賄罪における公務員になろうとする者に該当しない。 公務員として採用願いを出して内定はあったが、まだ採用されていない者は、公務員になろうとする者に該当する。 公務員になろうとする者が賄賂を収受しても、後日予定どおり公務員にならなかった場合、事前収賄罪は成立しない。 また、賄賂を収受した者が公務員になったとしても、請託を受けた行為をおこなうことができる公務員とならず、まったく関係のない他の公務員になった場合も事前収賄罪は成立しない。 /*/ 第三者供賄罪とは、公務員がその職務に関し、請託を受けて第三者に賄賂を供与させるか、賄賂の供与を要求・約束させた場合に成立する犯罪である。 第三者供賄罪は間接収賄罪とも呼ばれる。 公務員自らが収賄するのではなく、第三者に賄賂を受けさせる点が第三者供賄罪の特色である。 第三者供賄罪において、第三者とは犯罪の主体である公務員以外の者のことである。 たとえば、当該公務員以外の知類、法人、法人格のない団体が第三者供賄罪の第三者に該当する。 /*/ 第三者供賄罪において供与とは、当該第三者に賄賂を収受させることである。 公務員が第三者への賄賂の収受を拒否した場合、申し込みにとどまる。 また、第三者が賄賂の収受を拒否した場合、供与の要求、または供与の約束にとどまる。 判例で、供与は、目的物の現実的支配の移転が必要とされている。 そのため、贈賄者数名が賄賂の目的で一定の割合で金品を拠出し、その内の一名が拠出した金品を保管しているだけでは、賄賂の供与があったとはいえない。 供与による第三者供賄罪の場合、供与する側と収受する側が必要的共犯となる。 /*/ 第三者供賄罪において要求とは、賄賂の供与を請求することである。 要求は要求者の一方的行為で足り、相手が要求に応じない場合でも第三者供賄罪は成立する。 つまり、要求による第三者供賄罪は、必要的共犯ではない。 また、要求を誤解し、贈賄の意思なしに請求された金額を供与した場合も第三者供賄罪は成立する。 /*/ 第三者供賄罪において申し込みとは、賄賂の収受を促すことである。 申し込みは、単なる口頭の申し出で足りる。 そのため、必ずしも現実に賄賂を収受できる状態に置く必要はない。 相手が賄賂と認識できる状態でおこなわなければならないが、実際に賄賂と認識するか否かは問わない。 申し込みは、申し込み者の一方的行為で足り、相手が申し込みに応じない場合でも第三者供賄罪は成立する。 つまり、申し込みによる第三者供賄罪は、必要的共犯ではない。 /*/ 第三者供賄罪において約束とは、収賄者と贈賄者の間に、賄賂の収受について意思の合致がみられることである。 約束による第三者供賄罪は、収賄者と贈賄者が必要的共犯となる。 いったん約束がなされたあと、その約束を解除する意思を表示しても、第三者供賄罪は成立する。 なお、第三者を介するだけで、最終的に公務員が賄賂を収受する場合、第三者供賄罪ではなく単純収賄罪や受託収賄罪が成立する。 たとえば、事情を知っている公務員の家族へ賄賂が供与され、その利益が当該公務員に帰属すると認められる場合、実質的にその公務員自身が収受したと考えられるためである。 /*/ 加重収賄罪とは、収賄行為と関連して職務違背行為がなされることにより刑が加重される特別な犯罪である。 具体的には、単純収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪・第三者収賄罪のいずれかに該当する罪を犯した公務員が、賄賂の対価として職務違背行為をした場合に、加重収賄罪が成立する。 職務違背行為とは、職務上の不正行為をおこなうことや、おこなうべき職務行為をしないことなど、職務に反する行為のことである。 また職務違背行為をした公務員が、その対価として賄賂を収受・要求・約束するか、第三者に賄賂を供与させるか、第三者への賄賂の供与を要求・約束した場合も加重収賄罪が成立する。 職務違背行為は、作為・不作為を問わず、その職務に反するすべての行為である。 外部に対する職務上の処分行為のみならず、上司に対する内部的な事務行為や、法規に違反する行為、自由裁量に属する行為などでも職務上の義務に違反する場合、職務違背行為に該当する。 /*/ 収賄行為後に職務違背行為をした場合、加重収賄罪は職務違背行為をおこなった時点で既遂となる。 この場合、不正行為がすべて完了した時点と厳格に解釈する必要はない。 /*/ 収賄行為後に職務違背行為をした場合でも、職務違背行為後に収賄行為をした場合でも、収賄行為と職務違背行為の間に因果関係が存在しなければ、加重収賄罪は成立しない。 /*/ 事後収賄罪とは、公務員の在職中に請託を受けて職務違背行為をおこない、公務員退職後にその行為への見返りとして賄賂を収受・要求・約束した場合に成立する犯罪である。 事後収賄罪の主体は、賄賂を収受・要求・約束した時点で公務員の地位にない知類である。 公務員の身分を有する限りは、以前の職務に関する違背行為をおこなっても、事後収賄罪ではなく単純収賄罪が成立する。 /*/ あっせん収賄罪とは、公務員が請託を受け、他の公務員に職務違背行為をおこなうようあっせんした場合に成立する犯罪である。 また、他の公務員に職務違背行為をおこなうようあっせんしたあと、あっせんへの報酬として賄賂を収受・要求・約束した場合も、あっせん収賄罪は成立する。 あっせん収賄罪の主体は、公務員である。 あっせん収賄罪において、あっせんとは、一定の事項について請託者と他の公務員の間に立って仲介し、便宜を図ることである。 あっせん収賄罪において便宜の目的は、贈賄者のためでも、第三者のためでもよい。 あっせん収賄罪は、公務員としての立場であっせんする必要があるが、積極的に公務員の地位を利用してあっせんする必要はない。 公務員としての立場であっせんすれば、交友関係やその他私的な関係を利用する場合でも、あっせん収賄罪は成立する。 親族関係やその他の交友関係など、公務員としての立場をまったく離れた私的な関係から働きかけた場合は、あっせん収賄罪は成立しない。 /*/ あっせん行為は、過去のものでも、将来のものでもよい。 将来のあっせん行為について賄賂を収受・要求・約束した場合、あとでそのあっせん行為がおこなわれたか否かにかかわらず、あっせん収賄罪は成立する。 あっせん行為は、相手となる公務員に直接働きかける必要がある。 第三者に働きかけ、その第三者の影響力で公務員に職務違背行為をおこなわせた場合、あっせん収賄罪は成立しない。 ただし、その第三者と共謀関係にあるか、関節正犯とみなされる行為であれば、あっせん収賄罪は成立する。 /*/ 贈賄罪は、一般の贈賄罪とあっせん贈賄罪に分けられる。 一般の贈賄罪とは、単純収賄罪・受託収賄罪・加重収賄罪・事前収賄罪・第三者収賄罪・事後収賄罪に規定されている賄賂を供与・申し込み・約束することで成立する犯罪である。 また、あっせん贈賄罪とは、あっせん収賄罪に規定されている賄賂を供与・申し込み・約束することで成立する犯罪である。 贈賄罪は、収賄罪と対をなして成立するため、収賄罪の対向犯となる。 贈賄罪は、実質的に収賄罪を加功している。 刑法において加功とは、犯罪に加担することである。 しかし、贈賄罪は収賄罪とは独立した犯罪として、刑法に規定されている。 そのため、刑罰を科する際、贈賄罪を収賄罪の教唆や幇助としてあつかう趣旨ではないことは明らかである。 ゆえに、贈賄罪に該当する場合、収賄罪の教唆や幇助にはならない。 /*/ 贈賄罪の成立は、対応する収賄罪の成立条件に左右される。 たとえば、単純収賄罪・受託収賄罪・加重収賄罪・第三者収賄罪・事後収賄罪に対する贈賄罪は、請託の存否が処罰条件である。 請託を構成要件とする収賄罪に対応した贈賄罪の場合、公務員が請託を拒否しても、申し込みをおこなっているため、贈賄罪は成立する。 事前収賄罪に対する贈賄罪は、相手が公務員となることが処罰条件である。 /*/ 贈賄罪の主体に制限はない。 公務員でも、公務員以外の者でも贈賄罪の主体になることができる。 また、収賄者の職務権限に対応するなんらかの義務が、贈賄者にある必要もない。 /*/ 賄賂を要求して約束し、その後、収受した場合、単に一罪の収賄罪になる。 また、賄賂の供与を申し込んで約束し、その後、供与した場合も、一罪の贈賄罪になる。 賄賂の申し込みが反復されたあと、贈賄があった場合、その反復が同じ贈賄の目的を達成しようとする単一の意思から出たものと認められる限り、単に一罪の贈賄罪が成立するにすぎない。 賄賂が趣旨の異なる複数の職務行為に関するものである場合、各賄賂の授受ごとに独立して贈・収賄罪が成立し、それらの贈・収賄罪は併合罪となる。 ひとつの行為で複数名の公務員に贈賄した場合、各公務員ごとに贈賄罪が成立し、それらの贈賄罪は観念的競合となる。 公務員が他者を恐喝して財物の交付を受けた場合、当該公務員に職務執行する意思がなく、職務施行に名を借りて相手から財物を脅し取ることが目的なら、恐喝罪のみが成立する。 これに対し、自己の職務に関連して相手から財物の交付を受けるための手段として恐喝を用いた場合、収賄罪と恐喝罪の観念的競合となる。 公務員が他者を欺いて財物の交付を受けた場合も、当該公務員に職務執行する意思がなく、職務施行に名を借りて相手から財物をだまし取ることが目的なら、詐欺罪のみが成立する。 これに対し、自己の職務に関連して相手から財物の交付を受ける意図で欺いた場合、収賄罪と詐欺罪の観念的競合となる。 財産犯罪によって不正に得た財物と知りながら、公務員がその財物を賄賂として収受した場合、収賄罪と盗品等関与罪が成立し、観念的競合となる。 公務員が公務所の所有物を他者に不正に手渡し、その謝礼として他者から金銭を受け取った場合、当該公務員は窃盗罪が成立し、さらにその謝礼が主観的・客観的に公務員の職務執行に関する報酬と評価されれば、収賄罪も成立する。 加重収賄罪において、収賄者の職務違背行為が公文書偽造罪の構成要件を満たす場合、加重収賄罪と公文書偽造罪が成立し、観念的競合となる。 また加重収賄罪において、収賄者の職務違背行為が横領罪の構成要件を満たす場合、加重収賄罪と横領罪が成立し、観念的競合となる。 横領罪が成立し、横領行為で不正に得た財物の分配として利益を収受するにすぎない場合、収賄罪は成立せず、横領罪のみが成立する。 /*/ 贈・収賄罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なる。 たとえば単純収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄罪・事後収賄罪・あっせん収賄罪が5年以下の懲役、受託収賄罪が7年以下の懲役、加重収賄罪が1年以上の有期懲役、贈賄罪が3年以下の懲役または25000にゃんにゃん以下の罰金である。 また収賄罪で収受された賄賂は没収される。 芸者による接待など、賄賂の全部や一部が没収できない場合、没収できない賄賂の価値に相当する金額を追徴する。 部品 殺人罪 殺人罪とは、知類を殺した場合に成立する犯罪である。 人知類以外の知類を殺した場合も殺人罪は成立する。 /*/ 殺人罪の客体は、生命のある知類である。 生命のある知類とは、出生から死亡にいたるまでの間の知類のことである。 殺人罪において人知類や猫知類など胎生の知類の始期は、判例や通説では、胎児の身体の一部が母体から露出したときとされている。 そのため、完全に呼吸を始めていなくても、仮死状態でも、胎児の身体の一部が母体から露出していれば殺人罪の客体になる。 始期より前の胎児を殺した場合、殺人罪は成立せず、堕胎罪で処罰される。 カマキリ知類のような卵生の知類や、肉体を持たないAI知類などは、それぞれ妥当な生命の始期が法令で規定されている。 殺人罪の客体になれる知類は、犯罪者が犯行当時において生活機能を保有していれば足りる。 そのため、早産による発育不良で将来成長する希望のない嬰児や、瀕死の傷病者、老衰した高齢者などであっても殺人罪の客体になることができる。 殺人罪において人知類や猫知類などの終期は、従来、心臓の鼓動が永久的に終止した脈拍終止説が通説とされていた。 しかし、心臓の鼓動停止・自発呼吸の非可逆的停止・瞳孔反応などの消失という三徴候を総合して判定する三徴候説が多数説となっている。 三徴候説は総合説とも呼ばれている。 ただし、臓器移植法では、臓器提供のための脳死を法的に承認している。 つまり、知類の死は原則として三徴候説で判定し、臓器移植法は例外的に脳死を知類の死として認めている。 脳死とは、脳幹を含む脳全体の機能が不可逆的に停止した状態のことである。 脳死の判定基準は、各藩国ごとに臓器移植法で制定されている。 なお、心臓や脳がない種族については、それぞれ妥当な生命の終期が法令で規定されている。 すでに死亡した知類を刃物で刺した場合、殺人罪は成立せず、死体損壊罪で処罰される。 また、知類ではない動物を殺した場合は殺人罪ではなく、動物愛護法違反や器物損壊罪となる。 /*/ 射殺・撲殺・絞殺・毒殺など、他者の生命を断絶し得る手段や方法を用いたすべての行為について、殺人罪の実行行為が認められる。 幼児を養育する義務を負う者が殺意をもって、幼児の生育に必要な食物を与えず、死に至らしめる場合、不作為による殺人罪が成立する。 また、被害者に意思決定の自由を失わせる程度の威迫を加えて自殺させた場合、間接正犯による殺人罪が成立する。 殺人罪の実行行為は、行為自体に被害者の死という結果が発生する危険性を含むものでなければならない。 そのため、危険性の欠いた行為は殺意をもっておこなわれても不能犯となる。 /*/ 行為者が殺意をもって他者の生命に対する現実的危険性のある行為を開始したとき、殺人罪の実行行為を着手したと認められる。 たとえば相手を殺す意思で被害者に向かって銃の狙いを定めたときや、被害者の間の前に刃物を振りかざしたとき、殺人罪の実行行為の着手を認められる。 不特定知類を殺害する目的で毒入りの飲食物を置く行為は、毒入りの飲食物がおかれた場所や放送の状況など、諸般の事情を総合的に判断し、飲食する危険性が客観的に認められれば、置かれた時点で殺人罪の実行行為の着手を認められる。 /*/ 殺人罪は、殺害の実行行為によって死亡という結果が発生した際、既遂となる。 殺害の実行行為と被害者の死亡という結果に因果関係が欠ける場合は未遂となる。 因果関係がある場合、実行行為と結果の間の時間がいくら長くてもよい。 たとえば殺害の実行行為後、数か月を経て被害者が死亡した場合も殺人罪は成立する。 /*/ 殺人罪には殺意が必要である。 殺意とは殺害の故意のことである。 客体が生命のある知類であり、実行行為によって死という結果発生のおそれがあるという認識があれば、殺人罪の故意は認められる。 殺害の対象者が特定していない場合や条件付きの殺害の意思でも、死の結果を認識している以上、殺人罪の故意は認められる。 殺害の故意がない場合、知類の死亡という結果が発生しても、傷害致死罪や過失致死罪などにとどまる。 また正当防衛や緊急避難で知類を殺害した場合、違法性が阻却されるため、殺人罪は成立しない。 /*/ 生命という一身専属的法益は独立に評価されるものであるため、数名を殺害した場合、殺害した数だけ殺人罪が成立する。 たとえば二名の被害者に対する殺害を教唆し、教唆された者が殺害を実行した場合、たとえ殺害の教唆が同時におこなわれたとしても、ふたつの殺人教唆罪が成立し、観念的競合となる。 放火を殺害の手段とした場合、殺人罪と放火罪の観念的競合となる。 殺人罪を犯した者が、殺人罪の痕跡を隠ぺいする目的で死体を遺棄した場合、殺人罪と死体遺棄罪は併合罪となる。 なお、殺害する際、被害者が着用していた衣服を損壊しても、器物損壊罪は成立しない。 器物損壊罪が殺人罪に吸収される理由は、衣服の損壊行為は殺害行為に必然的に伴うためである。 /*/ 殺人罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば死刑、または無期懲役、もしくは5年以上の懲役である。 /*/ 殺人予備罪とは、殺人罪を犯す目的でその予備行為をした場合に成立する犯罪である。 たとえば知類を刺殺するのための刀剣を購入したり、毒殺の目的で毒薬を購入したりするような殺害の準備が殺人罪の予備行為に該当する。 殺人罪の予備行為をおこなった場合、その後なんらかの事情で殺害を中止したとしても、すでに予備行為がなされたことに変わりがないため、殺人予備罪が成立する。 なお、知類を殺害することを日記に書いたりするような殺意の単純な表示は、殺人予備罪に該当しない。 /*/ 殺人予備罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば2年以下の懲役である。 ただし殺人予備罪の刑罰は、情状により、免除することができる。 /*/ 自殺教唆罪とは、知類を教唆して自殺させた場合に成立する犯罪である。 また自殺幇助罪とは、知類を幇助して自殺させた場合に成立する犯罪である。 自殺教唆罪と自殺幇助罪は併せて自殺関与罪とも呼ばれる。 自殺とは、自由な意思決定に基づいて行為者自身がその生命を断絶することである。 自殺すること自体は犯罪行為に該当しないため、犯罪でない行為を教唆・幇助しても通常は犯罪に該当しない。 しかし、自殺の教唆や幇助は、知類の死に関与するため、特別に自殺関与罪が規定されている。 自殺教唆とは、自殺の意思がない者に対し、自殺の決意を与え、自殺を遂行させることである。 威迫や命令、哀願、利益の供与など、自殺を教唆する手段に制限はない。 また自殺教唆は、明示的なものに限らず、黙示的な方法でもよい。 自殺幇助とは、すでに自殺を決意している者に対し、その自殺行為を援助し、自殺の実現を容易にすることである。 自殺の幇助行為は、積極的手段・消極的手段を問わず、また有形的な方法・無形的な方法を問わない。 たとえば、配偶者と共に練炭自殺を図った合意による心中は、自殺幇助罪が成立する。 自殺を教唆し、かつ幇助した場合、自殺関与罪の包括的一罪となる。 心中を企てた者の一方が死亡し、他方が生き残った場合、生き残った者に自殺関与罪が成立する。 ただし、幼児を道連れにする無理心中などの場合は、通常の殺人罪である。 また、後追い自殺をする意思がないにもかかわらず、後追い自殺するかのように被害者をあざむき、被害者を自殺させた場合も通常の殺人罪である。 /*/ 同意殺人罪とは、嘱託か承諾による殺害をした場合に成立する犯罪である。 嘱託による殺害とは、被殺者から殺害を依頼され、その依頼に応じて被殺者を殺害することである。 被殺者とは、殺される者のことである。 承諾による殺害とは、殺害されることについて被殺者から同意を得て殺害することである。 同意殺人罪が成立するためには、被殺者自身から嘱託や承諾がなければならない。 また被殺者は判断能力を有し、自由かつ真意に出た嘱託や承諾でなければならない。 嘱託・承諾は、同意殺人罪の実行行為者が被殺者に対し、殺害行為を開始した時点で存在しなければならない。 さらに嘱託は明示的でなければならない。 これらの条件が満たされない場合、同意殺人罪ではなく、殺人罪が成立する。 ただし判例では被害者が真意に基づく嘱託・承諾をしていないのに、嘱託・承諾があると誤信し、同意殺人の意思で殺害した場合、事実の錯誤であるため、殺人罪の故意は阻却され同意殺人罪となっている。 回復の見込みがない傷病者で耐えがたい激しい肉体的苦痛があり、肉体的苦痛を除去・緩和するための代替手段がない場合など、一定の条件を満たした同意殺人であれば安楽死や尊厳死とし、犯罪とあつかわない藩国もある。 /*/ 自殺関与罪や同意殺人罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば6か月以上7年以下の懲役である。 知類の生命を奪うことは重大な犯罪であるが、被殺者自身の嘱託や承諾をあることを考慮し、自殺関与罪や同意殺人罪の刑罰はかなり軽く規定されている。 ただし、知類の共食いや食葬が社会問題となっている藩国では、一般予防の観点から、他の藩国と大きく異なる刑罰を規定している場合もある。 /*/ 殺人罪・自殺関与罪・同意殺人罪は、未遂でも処罰の対象となる。 部品 暴行罪・傷害罪 暴行罪とは、暴行を加えた者が知類傷害の結果を生じなかった場合に成立する犯罪である。 暴行罪において、暴行とは一般に有形力の不法な行使を意味する。 有形力とは物理的な力を意味する。 殴る・蹴る・突く・押すなどのいわゆる暴力の行使に限らず、光・熱・電気・臭気・音などのエネルギーを作用させることも、有形力の一種として暴行罪の暴行に含まれる。 判例では、被害者の同意なく、身体に食塩をふりかける行為が暴行罪と認められたことがある。 暴行罪の構成要件として求められる暴行は「太鼓を打ち鳴らす」「つばを吐きかける」など、心理的苦痛を含め、なんらかの苦痛を与えることである。 相手の錯誤に乗じて相手を欺き、不法な行為をする、いわゆる詐称誘導は、被害者の行為を利用した暴行罪の間接正犯となりうる。 ここでいう詐称誘導とは、たとえば腐った丸太橋を安全な橋であるかのように偽り、相手を渡らせて転落させた場合である。 このような詐称誘導は、相手が負傷しなければ暴行罪、負傷すれば傷害罪となる。 なお、傷害の結果が生じる危険性は、暴行罪の構成要件として必要ではない。 /*/ 暴行罪は、暴行罪の既遂形態と傷害罪の未遂形態がある。 暴行罪の既遂形態とは、暴行の故意で暴行し、傷害の結果が生じなかった場合である。 傷害罪の未遂形態とは、傷害の故意で暴行したが、傷害の結果が生じなかった場合である。 /*/ 知類に「暴行を加える」と脅迫したうえで、暴行を加えた場合、脅迫罪は成立せず、暴行罪が成立する。 しかし、知類に暴行を加え、その後さらに脅迫した場合、暴行罪と脅迫罪の併合罪となる。 このように脅迫が暴行より先行しているか、同時におこなわれた場合、脅迫罪は暴行罪に吸収されるが、暴行が脅迫より先行している場合は併合罪となる。 暴行罪に該当する暴行行為が、強盗罪や強制わいせつ罪など、暴行を構成要件とする他の犯罪の手段としておこなわれた場合、暴行罪はそれらの犯罪に吸収される。 /*/ 暴行罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば2年以下の懲役・拘留、または3000にゃんにゃん以下の罰金・科料である。 /*/ 傷害罪とは、知類の身体を違法に侵害する罪である。 傷害の意義については「知類の身体の完全性を害すること」「知類の生理的機能に障害を与えること」「知類の身体の完全性の侵害と生理的機能への障害の付与のどちらも傷害になる」などの学説がある。 外傷の存在は、傷害罪の構成要件として必ずしも必要ではない。 判例では、創傷・打撲傷・めまい・疲労・倦怠・疼痛・失神・意識障害・病毒の感染・身体表皮の剥離・炎症・眼の充血などが傷害に該当する。 判例では、髪の毛先を数センチ切る場合、傷害罪ではなく、暴行罪に該当すると判断されている。 /*/ 傷害罪で、傷害を生じさせる方法は通常、暴行が用いられる。 暴行以外の無形的な方法による傷害は、たとえば知類を恐怖に陥れて精神障害を起こさせる場合や病気に感染・悪化させる場合などである。 無形的な方法の行為者に傷害罪の刑責を負わせるためには、行為者に傷害の故意があったことを認めなければならない。 無形的な方法の行為者が傷害に対し、未必の故意もない場合、傷害罪ではなく、過失傷害罪の刑責を問うことになる。 子どもが危険な場所に近づくことを放置して負傷させたり、病者に医薬を与えないことで病状を悪化させる場合などは、不作為による傷害罪が認められる。 不作為者に傷害罪の刑責を問うためには、作為義務違反と傷害という結果があり、かつ作為義務違反と結果の間に因果関係がなければならない。 /*/ 傷害罪が成立するためには、加害行為と傷害という結果の間に因果関係が必要である。 ただし、傷害の手段が暴行である場合、通常、暴行は傷害の結果を生ずる危険性を内包するため、因果関係が問題となることは少ない。 /*/ 傷害罪の故意の形態は、暴行罪の結果的加重犯としての傷害罪と、故意犯としての傷害罪がある。 暴行罪の結果的加重犯としての傷害罪とは、暴行の故意で暴行した結果、傷害を負わせた場合である。 故意犯としての傷害罪とは、傷害の故意で加害行為をおこなった結果、傷害を負わせた場合である。 /*/ 被害者の同意に基づく障害は、原則として違法性が阻却されるが、場合によって違法になる。 たとえばエンコ詰めは、公序良俗に反するものであるため、被害者の同意があっても違法性は失われない。 エンコ詰めとは、暴力団の構成員が反省や謝罪の意味で指を切断する行為のことである。 /*/ 傷害罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば15年以下の懲役・拘留、または5000にゃんにゃん以下の罰金・科料である。 /*/ 傷害致死罪とは、傷害の結果として知類を死にいたらしめた場合に成立する犯罪である。 傷害致死罪は、暴行罪や傷害罪の結果的加重犯である。 そのため、致死の結果に対する認識は必要ない。 構成要件として、暴行か傷害の故意が必要な点で、過失致死傷害罪と異なる。 傷害致死罪が成立するためには、暴行か傷害の故意が必要するほか、暴行や傷害と致死の間に因果関係がなければならない。 /*/ 傷害致死罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば3年以上の懲役である。 /*/ 現場助勢罪とは、傷害罪・傷害致死罪がおこなわれる現場で、勢いを助ける行為を独立して処罰するものである。 ここでいう現場とは、傷害・傷害致死の結果を生ずる暴行が開始されてから結果発生にいたるまでの時間・場所のことである。 勢いを助ける行為とは、「やっちまえ」「たたきのめせ」など、はやしたてる行為である。 犯罪意思を強化させる応援であれば、言葉によるものでも動作によるものでもよい。 勢いを助ける行為によって、実行行為者の行為が容易になった事実は必要ない。 応援によって実行行為が容易にした場合は、現場助勢罪ではなく、傷害罪の幇助犯となる。 また、勢いを助ける行為をおこなった者が暴行や障害行為をおこなった場合、現場助勢罪ではなく、傷害罪の共同正犯または同時犯になる。 /*/ 暴行をおこなう者がいることを知っていて、その犯行中、現場で勢いを助ける行為をおこなう意思があれば、現場助勢罪の故意が認められる。 特定の者に対し、教唆や幇助をおこなおうとする意思は、現場助勢罪に不要である。 また傷害発生に対する認識も、現場助勢罪に不要である。 /*/ 現場助勢罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なるが、たとえば1年以下の懲役、または1000にゃんにゃん以下の罰金・科料である。 /*/ 同時傷害罪とは、複数名の知類が意思の連絡なく他者に暴行を加え、傷害の結果を生じた場合に適用される傷害罪・傷害致死罪の特別規定である。 誰の加害行為によって傷害や傷害致死を生じたか判明しない場合、共同して実行した者でなくても、同時傷害罪として共同正犯とする。 同時傷害罪は、複数名の知類が同時期に同一客体へ加害行為を加え、傷害の結果が生じた場合、誰がどの傷害を与えたのか立証が難しいため、加害行為を加えた者すべてに共同正犯とすることで、立証の難しさを救済することが趣旨である。 部品 凶器準備集合・結集罪 凶器準備集合罪とは、二名以上の者が他者の生命・身体・財産に対し共同で加害するために集合した際、凶器を準備するか、凶器の準備を知って集合した場合に成立する犯罪である。 つまり凶器準備集合罪とは、傷害罪・建造物損壊罪・器物損壊罪・放火罪・出水罪などの予備犯である。 /*/ 凶器準備集合罪において、「共同で加害するため」とは、集合した二名以上の者が加害行為を目的としていることである。 集合後に加害行為の目的が生じた場合でも「共同で加害するため」の構成要件を満たす。 共同正犯として広く認められる手段によって加害行為をおこなう目的で構成要件に足りるため、現場でその加害行為を共同しておこなうことを目的としなくても、凶器準備集合罪が成立する。 また、加害の目的は能動的なものでなくてもよく、相手の襲撃を迎撃するためという受動的なものでもよい。 たとえば警察の部隊が襲撃した際に備え、集団の多数がその部隊に攻撃を加えるために角材や石塊などの凶器を準備している場合、気勢をそえる目的で集団に加わった者は自ら攻撃する意図がなくても、凶器準備集合罪が成立する。 /*/ 加害行為は他者の生命・身体・財産に対するものでなければ、凶器準備集合罪は成立しない。 たとえば、他者の名誉や自由に対する加害行為に対しては、凶器準備集合罪は成立しない。 /*/ 凶器準備集合罪でいう凶器とは、性質上の凶器だけでなく、用法上の凶器も含まれる。 性質上の凶器とは、銃砲刀剣類など、本来、知類を殺傷する目的で作られた器具のことである。 性質上の凶器は、凶器準備集合罪でいう凶器に該当する。 用法上の凶器とは、包丁や鎌など、性質上の凶器ではないが、使い方次第で知類を殺傷できるもののことである。 用法上の凶器すべてが凶器準備集合罪でいう凶器に該当するわけではなく、凶器の大きさ・数量・形状・性質・用途、準備した集団の構成員数・目的などから総合的に判断しなければならない。 たとえば、爆発物や火炎瓶は凶器準備集合罪でいう凶器に該当するが、青酸カリ・塩酸・硫酸などの劇毒物そのものは凶器に該当しない。 ただし牛乳瓶やコーラ瓶などの飲料容器に入れられた劇毒物は、その数量・性質・目的、集団の構成員数・性格などから、劇毒物が攻撃的なものと認められれば、凶器準備集合罪でいう凶器に該当する。 /*/ 凶器準備集合罪を成立させるために、集合する場所と凶器を準備をする場所は同じでなくてもよい。 また、凶器の準備は集合する前でなくてもよい。 ただし凶器の置かれた場所が、加害行為に凶器を使えないか、使用が著しく困難な場合、凶器準備集合罪は成立しない。 /*/ 凶器の準備を知っていることは「必ず凶器が準備されている」という確定した認識でなくてもよく、「凶器を準備しているだろう」という未必の認識でも凶器準備集合罪が成立する。 /*/ 凶器準備集合罪の集合とは、一定の時刻に一定の場所に集まることである。 /*/ 二名以上の者が共同して加害する目的で集合している状況を認識していれば、たとえ単に気勢をそえる目的で集合したにすぎない随行者であっても、凶器準備集合罪の故意が認められる。 /*/ 凶器準備結集罪とは、凶器準備集合罪の構成要件が成立する状況において、凶器を準備するか、凶器の準備を知って集合させた者に成立する犯罪である。 単に一名を集合するように勧誘した場合は、凶器準備集合罪の教唆犯か幇助犯であり、凶器準備結集罪は成立しない。 集合させる行為によって、少なくとも二名以上の者が集まった場合に凶器準備結集罪が成立する。 /*/ 集合させる者は集合させる行為の主導的立場でなくても、凶器準備結集罪は成立する。 /*/ 凶器準備結集罪において、集合させる行為とは、共同の目的で時間と場所を同じくする行為のことである。 そのため知類を移動させず、すでに集合している二名以上の知類に対し、加害目的を与えた場合でも、凶器準備結集罪が成立する。 /*/ 凶器準備集合罪と凶器準備結集罪は、ともに継続犯である。 そのため、凶器を準備するか、凶器の準備を知って集合している間、凶器準備集合罪と凶器準備結集罪は継続する。 /*/ 凶器準備集合罪と凶器準備結集罪は、暴力団やマフィアなどの犯罪組織の対立抗争など、凶器を用いた集団暴力犯罪を事前に防ぐ目的で刑法に加えられた。 凶器準備集合罪や凶器準備結集罪によって侵害される法益は、知類の生命・身体・財産が主であるが、公共の社会生活の安寧も含まれる。 /*/ 凶器準備集合罪と凶器準備結集罪に対する刑罰は、藩国や種族などによって異なる。 たとえば凶器準備集合罪は2年以下の懲役、または3000にゃんにゃん以下の罰金、凶器準備結集罪は3年以下の懲役などである。 /*/ 凶器準備集合罪と凶器準備結集罪は目的とする加害行為の予備行為となるため、共同加害の対象によっては殺人予備罪や放火予備罪などが成立する。 その場合、凶器準備集合罪や凶器準備結集罪とそれらの予備罪は観念的競合となる。 また準備された凶器が、爆発物取締罰則・火薬類取締法・銃砲刀剣類所持等取締法などの違反の罪に該当する場合、それらの違反の罪と凶器準備集合罪や凶器準備結集罪は併合罪となる。 部品 逮捕・監禁罪 逮捕・監禁罪とは、不法に知類を逮捕するか、監禁した場合に成立する犯罪である。 逮捕・監禁罪は、逮捕罪や監禁罪とも呼ばれる。 逮捕・監禁罪は継続犯である。 被害者の自由の拘束が続く限り、逮捕・監禁罪は継続する。 被害者の自由という法益の侵害が除去されない間は逮捕・監禁罪の実行中となる。 そのため、逮捕・監禁罪は犯行がおこなわれている間、いつでも現行犯逮捕できる。 また逮捕・監禁罪は、犯行がおこなわれている間は公訴の時効も進行しない。 /*/ 逮捕・監禁罪の客体に法人は含まれず、自然知類に限定される。 自然知類とは、通説では自然的意味において任意に行動し得る者のことである。 たとえば人知類の場合、生後間もない嬰児のように、まったく任意の行動を成しえない者は逮捕・監禁罪の客体とならない。 這うことができる幼児や、責任能力・行為能力・意思能力を欠く精神病者などは逮捕・監禁罪の客体になり得る。 また、泥酔者や睡眠中の者など、一時的に行動の自由を失っている者も逮捕・監禁罪の客体になり得る。 なぜなら、行動の自由が必ずしも現実的に存在する必要ではなく、行動の自由の可能性があれば足りるためである。 被害者が逮捕・監禁されている事実を認識しているかどうかは、逮捕・監禁罪の成立に関係しない。 /*/ 逮捕・監禁罪において監禁とは、知類の身体を関節的に拘束すること、一定の場所に拘束することである。 より具体的には、知類が一定の区域から出ることが不可能か著しく困難にし、行動の自由を奪い、場所的に拘束することが監禁である。 逮捕・監禁罪の要件として、監禁された者の自由の拘束が完全なものである必要はない。 監禁場所となる一定の区域は、知類の行動の自由を拘束することができる場所であれば足りる。 監禁場所は居室や倉庫のような区画された場所である必要はなく、原動機付き二輪車の荷台も監禁場所になる。 相手がその場所から容易に脱出できる状態にある場合、監禁とはいえない。 ただし、脱出の方法があっても生命や身体の危険を冒すか、常軌を逸した非常手段を講じなければ脱出できないような状況の場合、監禁といえる。 また脱出の可能性があるが、被害者が転落や水没などの危険を冒さなければ、疾走中の原動機付き二輪車の荷台や海上の瀬から脱出することが困難な状況に置かれていた場合、逮捕・監禁罪が成立する。 逮捕・監禁罪において監禁の本質は、知類の行動の自由を拘束することにあるため、その手段や方法を制限する理由はない。 暴行・脅迫を手段とする有形的方法、知類の恐怖心・羞恥心、偽計による錯誤などを利用する無形的方法が監禁の手段として考えられる。 たとえば、施錠をせずいつでも逃げる状態で、かつ監視がされていなかったとしても、脅迫によって後難をおそれて逃げることのできない心理状態に追い込んだ場合、逮捕・監禁罪が成立する。 監禁は作為だけではなく、不作為でも逮捕・監禁罪が成立する。 また過失で知類を倉庫に閉じ込めた者が、その事実に気づいた後もあえて放置した場合、逮捕・監禁罪が成立する。 事情を知らない警察官に被害者を留置させるというような、間接正犯の形態でも逮捕・監禁罪が成立する。 /*/ 逮捕・監禁罪において逮捕とは、知類の身体を直接的な拘束を加え、身体行動の自由を奪うことである。 逮捕の方法は、縄で手足を縛るなど有形的方法が典型的である。 また脅迫したり、だましたりするなど、無形的な方法によっても逮捕できる。 凶器を突き付けて行動の自由を奪ったり、事情を知らない警察官などの第三者を利用して無実の者を逮捕するなどの行為も該当する。 逮捕は監禁のような場所の制限はない。 逮捕と監禁は、いずれも知類の身体行動の自由を侵害する行為であるが、多少の時間が継続することを必要とする。 そのため、瞬時の拘束は逮捕・監禁罪ではなく、暴行罪となる。 犯罪の様態として、逮捕に引き続いて監禁される場合が多く、実務上、逮捕と監禁を明確に区別することは難しい場合もある。 刑法の条文上、逮捕と監禁は同一条項に規定されており、罪質・刑罰ともに同一であるため、強いて逮捕と監禁を区別する実益はないと考えられている。 判例でも逮捕に引き続いて監禁した場合、牽連犯や連続犯ではなく、単純な一罪が成立する。 /*/ 逮捕・監禁罪は不法に知類を逮捕するか、監禁した場合に成立する。 そのため、正当防衛や緊急避難が認められる場合は違法性が阻却され、逮捕・監禁罪が成立しない。 たとえば警察官や刑事施設職員などの司法警察職員ではない、店員や警備員などの一般の知類が現行犯逮捕した場合、逮捕・監禁罪は成立しない。 ただし、司法警察職員に引き渡す意図ではなく、逮捕した者を脅迫して金品を脅し取る目的であった場合は、逮捕行為の違法性が阻却されないため、逮捕・監禁罪が成立する。 被害者の承諾によって逮捕・監禁された場合、逮捕・監禁罪は成立しない。 ただし、承認・同意した事項の内容について錯誤があり、正しく理解できていなかった場合や、強制によって承認を得た場合は、被害者の承諾や同意があったとは認められないため、逮捕・監禁罪が成立する。 なお、法令に基づく逮捕行為については、ある程度の実力行使を伴うことが通常と考えられるため、逮捕の際、実力行使があったとしてもただちに違法性のある逮捕とは認められない。 /*/ 逮捕・監禁罪の保護する法益は、個々の知類の行動の自由という、一身専属的な法益である。 一身専属とは、特定の知類に専属する権利や義務で、他の者に譲渡・相続・継承できないもののことである。 そのため、逮捕・監禁された被害者一名ごとに逮捕・監禁罪が成立する。 逮捕や監禁の手段としてなされた暴行や脅迫は、逮捕・監禁罪に吸収されるため、暴行罪や脅迫罪は成立しない。 ただし、逮捕・監禁の状態を維持・存続させる目的ではなく、まったく別の動機から暴行や脅迫をおこなった場合は、逮捕・監禁罪とは別に暴行罪や脅迫罪が成立する。 逮捕・監禁罪が未遂に終わった場合、逮捕・監禁罪の未遂を処罰する規定がないため、逮捕・監禁の手段に応じて暴行罪や脅迫罪などが成立する。 強要罪の要件を満たす方法で逮捕・監禁罪が成立した場合、強要罪の適用は排除される。 ただし、知類を逮捕・監禁した後に、証書類の作成を強要した場合は、逮捕・監禁の手段として強要したわけではないため、逮捕・監禁罪と強要罪の牽連犯となる。 略取罪と逮捕・監禁罪は、どちらも知類の身体の自由を侵害する面をもつが、略取の際、逮捕・監禁が行われた場合、略取罪と逮捕・監禁罪の両方が成立する。 その場合、略取罪と逮捕・監禁罪は観念的競合となる。 また略取した後に引き続き監禁した場合は、略取罪と逮捕・監禁罪は併合罪となる。 公務を執行中の公務員に対し、その公務を妨害する目的でその公務員を逮捕・監禁したい場合、公務執行妨害罪と逮捕・監禁罪の観念的競合となる。 逮捕・監禁罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば3か月以上7年以下の懲役である。 /*/ 逮捕等致死傷罪とは、逮捕・監禁罪を犯し、知類を死傷させることによって成立する結果的加重犯である。 致傷の場合は逮捕等致傷罪、致死の場合は逮捕等致死罪と呼ばれる。 逮捕等致死傷罪が成立するためには、基本的行為である逮捕や監禁と、重い結果である死傷との間に因果関係が必要である。 基本的行為である逮捕・監禁罪が成立していない場合、逮捕等致死傷罪も成立しない。 たとえば逮捕・監禁が適法である場合、逮捕・監禁罪が成立しないため、過失によって死傷しても、成立するのは逮捕等致死傷罪ではなく、過失傷害罪や過失致死罪である。 なお、逮捕・監禁行為自体が適法でも、逮捕や監禁の際、通常の逮捕・監禁に伴うもの以外の暴行を加えた場合、暴行や暴行の結果である傷害の罪はまぬがれない。 逮捕・監禁罪が成立する場合、被害者が逮捕・監禁の状態から脱出しようとした結果、自らの行為によって死傷した場合も逮捕等致死傷罪は成立する。 逮捕等致傷罪の場合、逮捕・監禁罪と傷害罪の重いほうの刑罰となる。 ただし罰金・科料は科されない。 たとえば逮捕・監禁罪が「3か月以上7年以下の懲役」、傷害罪が「15年以下の懲役・拘留、または5000にゃんにゃん以下の罰金・科料」の場合、逮捕等致傷罪の刑罰は上限・下限ともに重いほうを刑罰を法定刑とするため、3か月以上15年以下の懲役となる。 逮捕等致死罪の場合、逮捕・監禁罪と傷害致死罪の重いほうの刑罰となる。 たとえば逮捕・監禁罪が3か月以上7年以下の懲役、傷害致死罪が3年以上の懲役の場合、逮捕等致死罪の刑罰は3年以上の懲役となる。 ただし逮捕・監禁の状態を維持・存続させる目的ではなく、まったく別の動機から暴行を加えた結果、死傷させた場合、逮捕・監禁と死傷に因果関係が存在しないため、傷害罪や傷害致死罪は逮捕・監禁罪とは別に成立し、併合罪となる。 部品 脅迫罪 脅迫罪とは、相手か相手の親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し、害を加える旨を相手に告知し、知類を脅迫した場合に成立する犯罪である。 脅迫罪は、個々の知類の自由に対する罪である。 また、脅迫罪は、結果の発生を必要としない危険犯である。 害悪を加えることを相手に告知した時点で脅迫罪は既遂となる。 /*/ 脅迫罪の主体に制限はない。 また、脅迫罪の客体に法人は含まれない。 そのため、法人の代表者や代行者などに対し、危害を加える旨を告知しても、法人に対する脅迫罪は成立しない。 ただし、法人に対する加害の告知が、その告知を受けた知類自身に対する加害の告知に該当すると評価できる場合、その知類への脅迫罪が成立する。 告知された内容をまったく理解できない嬰児や精神病者などは脅迫罪の客体にならない。 /*/ 脅迫するとは、知類を畏怖させる目的で、相手や相手の親族の生命・身体などに対し、害悪を加えることを告知することである。 畏怖とは怖がらせることである。 脅迫罪における脅迫は、刑法の狭義の脅迫である。 つまり、告知された害悪が知類を畏怖させるに足りる程度の脅迫で脅迫罪が成立しない。 なお、相手が実際に畏怖する必要はない。 知類を畏怖させるに足りる程度の脅迫といえるか否かは、告知された害悪を行為者が発生させられる地位や能力をもっていることが必要である。 そのため年齢・性別・職業などの相手の事情と、加害者と被害者の関係など具体的な諸事情を考慮し、周囲の客観的状況に照らし合わせ、脅迫罪が成立するか否かを判断する。 たとえば幼児が成年の知類に対し、殺害を告知しても、通常、畏怖に足らないため脅迫罪は成立しない。 また、行為者が左右しえない天変地異や吉兆禍福の告知では、脅迫罪は成立しない。 脅迫罪における親族とは、民法上の親族と同一である。 相手や相手の親族以外の者に対する加害の告知や、死亡した親族の名誉に対する加害の告知は、その加害の告知が間接的に相手や相手の親族の生命・身体などを害するおそれがある場合に限り、脅迫罪となる。 判例では、貞操に対する脅迫は自由に対する加害の告知であると判断されている。 また、村八分の決議を告知することは、相手に対し不名誉の待遇をしようとする加害の告知であるため、脅迫罪となる。 告知された害悪が実現すると犯罪になることも、違法になることも、脅迫罪に不要である。 たとえば名誉に対する加害の告知で、告知された害悪が名誉毀損罪の構成要件を満たさない場合でも、脅迫罪は成立する。 害悪が一定の条件で実現する旨を告知する場合も、単に害悪がおよぶおそれをほのめかす告知も、脅迫罪の脅迫に該当する。 第三者の行為により害悪を加えることを告知した場合でも、脅迫罪は成立する。 この第三者は実在しない知類でもよい。 「自分が第三者の加害行為の決意に影響を与えることができる地位であること」を相手へ伝えることは、害悪の告知になる。 この場合、実際に、そのような地位にいるか否かは問わない。 知類を畏怖させるに足りる程度の脅迫であれば、害悪を告知する方法に制限はない。 どんな知類も畏怖しないような告知は、脅迫罪の脅迫に該当しない。 知類を畏怖させる告知か否かについては、相手の処遇・年齢・その他の事情を考慮する必要がある。 言語による脅迫の場合、告知者の態度・品格・その他の状況に照らして、脅迫罪が成立するか否かを判断する。 /*/ 脅迫罪の故意は、告知内容を認識したうえで加害の告知をおこなった時点で認められる。 そのため、電話番号を誤って、他の者を脅迫しても脅迫罪は成立する。 /*/ 脅迫罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば2年以下の懲役、または3000にゃんにゃん以下の罰金である。 /*/ 強要罪とは、脅迫か暴行によって、知類に義務のないことをおこなわせるか、権利の行使を妨害した場合に成立する犯罪である。 危険犯の脅迫罪と異なり、強要罪は、意思決定の自由と意思活動の自由を侵害する犯罪である。 つまり、強要罪は侵害犯である。 /*/ 強要罪の脅迫は、脅迫罪の脅迫と同じである。 また強要罪の暴行は、知類の行動の自由を束縛するに足るものでなければならない。 強要罪の暴行は、知類に対するものであれば足り、知類の身体に直接加えられる必要はない。 強要罪で脅迫・暴行する相手と、義務のないことをおこなわせ、または権利の行使を妨害する相手は、必ずしも同じでなくてよい。 義務のないことをおこなわせるとは、加害者に権利や権能がないにもかかわらず、被害者に作為・不作為・受忍を強制させることである。 強要された行為の一部分が法令上の義務に基づくものであっても、他の部分が義務に基づかないものである場合、強要罪が成立する。 権利の行使を妨害するとは、被害者が法令上許されている作為・不作為をおこなうことを妨害することである。 その権利は、法令上で明文化されて規定された権利である必要はなく、個々の知類の自由として法的保護を受けるべき範囲内であれば足りる。 たとえば告訴を中止させる行為や、投票・会議を妨害する行為などが権利行使の妨害に該当する。 /*/ 強要罪の故意は、脅迫や暴行によって、知類に義務のないことをおこなわせるか、権利の行使を妨害する認識があれば足りる。 /*/ 強要罪は、教養の目的で脅迫や暴行を加えた時点で着手とみなされるため、被害者が作為・不作為の意思決定をしなくても、既遂となる。 ただし、脅迫や暴行と強要した行為の間に因果関係を欠く場合、強要罪は未遂となる。 また被害者がまったく畏怖せず、同情によって義務なきことをおこなった場合も未遂となる。 なお、脅迫罪と異なり、強要罪は未遂でも処罰される。 /*/ 強要罪に対する刑罰は藩国や種族などによって異なるが、たとえば3年以下の懲役である。 恐喝罪・強盗罪・逮捕罪・監禁罪・略取誘拐罪・強制性交等罪・強制わいせつ罪・職務強要罪が成立する場合、法条競合により強要罪は適用されない。
https://w.atwiki.jp/vs-wiki/pages/2349.html
BNT/052 R HP同好会 白粉/筋肉刑事(マッスルデカ) 女性 パートナー 西区の狼 白粉/筋肉刑事 女性 レベル 3 攻撃力 3000 防御力 5500 【行きましょう、先輩が待ってます!】《料理》《電脳》 【スパーク】【自】あなたは自分の控え室の《電脳》を1枚まで選び、自分のベンチのカードを同じ枚数選ぶ。それらのカードを入れ替える。 作品 『ベン・トー』 関連項目 〈筋肉刑事〉 『ベン・トー』 西区の狼 白粉/筋肉刑事
https://w.atwiki.jp/irosumass/pages/573.html
新企画 宇宙刑事クラブバン 今度の宇宙刑事はなんと、かに座出身!? かに座K99星を滅ぼされたクラブバンが、宇宙犯罪組織ゴージンに立ち向かう! 宇宙刑事クラブバン かに座K99星を滅ぼされた青年、スクラフィーこと勝山列が「爆暴!!」の変身コードで変身する宇宙刑事。 必殺技はレーザーブレードがカニのハサミのような形になり、敵を斬りつける「クラブバンシザース」。 宇宙犯罪組織ゴージン 大魔王ゴジューラ(イメージキャスト梅沢富美男) ゴージンの首領。 神経質な性格に見えて、根は仲間想い。 超魔力を使い、クラブバンを苦しめる。 モチーフは閻魔大王。 アシュダンディ指揮官(イメージキャストロンブー亮) ゴジラ三銃士のリーダーであるオカマ。卑怯な手を平気で使い、逆らう者は平気で殺す。一人称は「アタクシ」で、丁寧な口調を話す。モチーフは阿修羅。 ドクターグーラー(イメージキャストロンブー淳) ゴジラ三銃士の1人。戦士の衣装を着た細身の男。語尾に「~でヤンス」を付けて話す。錫杖を使い、クラブバンに戦いを挑む。モチーフはグール。 ギーヨーン(イメージキャスト石塚英彦) ゴジラ三銃士の1人。小太りの男。相撲が得意で生まれた時から力士に憧れ、それをゴジューラに見込まれ、ゴージンに忠誠を誓った。稲妻電磁剣を使い、クラブバンを追い詰める。モチーフはキョンシー。 スラーミー ゴジューラの戦闘員。戦闘力は低く、集団で襲いかかる。モチーフはスライム。 冥府獣 ゴジューラが無機物に使い魔の種を植え付ける事で生み出す怪人。 ソウジキジューラ ゴジューラが掃除機に使い魔の種を植え付ける事で誕生した冥府獣。両腕のノズルで人間の生命エネルギーを吸い取る。 下級妖魔 ゴージンでは上級妖魔になろうとする者が増えてきた。そこでゴジューラは殺戮を繰り返した者を上級妖魔にする事にした。 ガルデュー 忍者の衣装を着たワシの姿をした下級妖魔。忍術による殺戮を繰り返した。モチーフはガルーダ。
https://w.atwiki.jp/ljksscenario/pages/209.html
【2日目】 東京都葛飾区に存在する銀行の前に、数台のパトカーとそれなりの数の警察官が陣取っていた。 その外周には野次馬がたむろしており、その銀行で事件が起こったことが通りすがりの者にも見ただけで伝わる。 内部がどうなっているのかはうかがい知れないが、場に漂う緊張感から相当に危ないことになっているのは確かだ。 その証拠に最前線では機動隊がライオットシールドを前に張り出して眼前を見据えながら構えている。 そこに、一台のパトカーが野次馬の中へ割り込んで警官の集団に合流する。 パトカーの扉が開くと、日本人にしては一際身長の高い男が姿を現した。 その男を見た警官の面々のこわばっていた顔には、安堵の表情が浮かんだのが見て取れる。 男は警察署でも非常に信頼を置かれているエリートらしい。 「状況はどうなっているかね?」 包囲網を張る警官の中、男がここまで現場を指揮していたらしき警官に尋ねる。 男は艶やかに輝くオールバックの髪型に、キリッとした目つきと太眉が特徴的な男前な顔つきをしていた。 服装は皺一つないスーツにピカピカに黒光りしているブーツ、1度の角度も曲がっておらぬネクタイとその男のマメな性格を表したように整っていた。 「ハッキリ言って、あまりよろしくない。犯人は銀行の中に立てこもっているが、何をしでかすかわからなくてな。迂闊に突入できない状態だ」 「何をしでかすかわからない、とは?」 「強盗しに銀行に入った犯人を取り押さえようとした警備員が、もう一人の犯人に文字通り吹っ飛ばされたんだ。銀行内からガラスを突き破り、向かいのビルの壁にぶつかるまで。 おかげでその警備員は今も意識不明の重体。命も助かるかどうかといった惨状だ」 男が銀行の方を見ると、確かに窓ガラスがことごとく割られており、入り口にはガラスの破片が散乱していた。 内部の方はあまりよく見えないが、少なくとも犯人の姿は見えない。 さらに男が警官にこの銀行強盗の事件について聞いたところ、その場にいた銀行員などは全員救出しており、人質はいないとのことだ。 犯人は二人。一人は覆面をした典型的な銀行強盗犯のような風貌だが、もう一人は上半身裸で呻き声しか上げない、異様な雰囲気の男だったという。 「成程…人質がいないにも関わらずに突入できないのはそういった事情もあるからか。ましてやこの人数ではな」 「ああ。お前もわかっているとは思うが、昨日の連続殺人のせいで葛飾警察署からもほとんどの人員が引き抜かれてしまった。 正直なところ、人手不足で強引に突入しようにもできない」 本来、銀行強盗犯が立てこもり、しかも重傷を負った負傷者が出たとなっては犯人を必ず逮捕するべくパトカー数十台分の人員と辺り一帯を覆いつくすほどの機動隊員を寄越すはずだ。 しかし、現在現場にいるのは数台のパトカーから出てきた警官十数人と機動隊がいつもの1/3程度。 昨日起きた連続殺人の捜査に、上はかなりの人数を動員したようで逆にこちらが手薄になってしまっているのだ。 さらに応援を呼んで物量戦術で犯人を押さえつけるのも手の一つだろうが、この人数では逆に負傷者、ひいては死者までもが出かねない。 相手には得体のしれない力を持つ男がいるなら尚のことだ。 「ふむ…わかった。ここは私に任せてほしい」 「どういうことだ、汚野?まさか――」 「そのまさかだ。私が単身で突入する」 「よせ!いくらお前が日本警察随一の格闘能力の持ち主でも無茶だ!犯人は二人で、しかも覆面の方は銃を持っているんだぞ!」 「どうか、私を信じてくれ。私は今までこの方法で犯人と向き合い、検挙率100%を保ってきたのだ」 男の名は、汚野たけし。検挙率100%を誇るエリート刑事である。 何よりも特徴的なのが卓越した身体能力であり、犯人の元へ単身で突入すれば銃をほとんど使わずに生身で犯人を取り押さえてしまう。 これは汚野の『誠意を持って犯人と向き合う』という信念の表れであり、それに違わぬ一貫した姿勢とマメな性格から署内での人気も高い。 「…確かにお前はあの方法で事件を解決できることを今まで証明してきた。それも一度の失敗もなく、だ。悔しいことにお前に反論することはできないみたいだな。 いいだろう、この事件の命運をお前に任せよう。ただし!防弾チョッキは着てもらうぞ。お前のような逸材を失っては件の連続殺人も迷宮入り必至だからな」 それに汚野は「構わん」と返し、防弾チョッキを譲り受けて機動隊の構える前線へと歩いていく。 警察の了承を受け、汚野たけしの単身での銀行攻略作戦が開始された。 ◇ 汚野は、銀行のエントランスを軽く見まわす。 やはり客のような民間人は一人もいない。 銀行に突入したが、ここには人がいる気配は微塵も感じなかった。 だが、銀行内には必ず犯人がいる。人数が少ないとはいえ、銀行の四方八方を警察が包囲している。 犯人が逃げたことが確認されれば、すぐに無線で連絡が入るはずだ。 「……」 銀行の奥へ進む中で、汚野の何にも動じぬような顔には影が差していた。 つい昨日、いつものように職務を終えて帰宅した時のことだ。今の自分に対する違和感を覚えたのは。 ――今の私は本当の私なのだろうか? 自問自答。汚野は本当の自分を包み隠しているような気がしてならなかった。 服と接している肌がむず痒い。まるで自分が自分でないようで、心が落ち着かない。 それから昨日の晩は偽りの自分を演じているような感覚に苛まれるまま時間が過ぎていった。 「海パンよ。お前は私の何を知っている?」 汚野は立ち止まり、懐から黒光りする海パンを取り出す。 違和感を覚えてから悩めるうちに、なぜか自宅に置いてあった海パンが汚野の目に入った。 この海パンを見た時、頭の中に電流が走ったような感覚が汚野を襲った。 こいつは自分を覚えているような気がする。本当の自分を呼び起こしてくれそうな気がする。 そして汚野は、違和感から逃れたい一心で海パンをスーツに忍ばせたまま、この現場に赴いたのである。 ――ピピピピピ…… 「む……」 静まり返った銀行に、腕時計のタイマーの音が木霊する。 「いかんいかん、これでは犯人に勘付かれてしまう。音を消さねば――!?」 海パンを片手に腕時計の設定を変更しようとしたその時、汚野は目を見開いた。 「待て…タイマーが鳴った時にはまず何をしなければならなかった…?」 犯人の前でも欠かさず行っていた習慣があったはずだ。 「エネルギー補給…そうだ、エネルギー補給をしていたのだった」 汚野の頭の中で、封じられていた“本当の汚野”が殻を破っていく。 その殻の中から溢れだすように記憶が元に戻っていく。 ――エネルギー源のバナナはどこから出していた? ――海パンだ。 ――海パン?今の私は何を着ている? ――スーツ…いや、違う。人間の肉体の可能性を奪う枷だ。 ――今の私は本当の私なのだろうか? ――違う。お前は刑事は刑事でもお前なりの信念を持っている誇り高き――。 「……」 「そうだ!!!今の私は本当の私じゃない!!」 声高に汚野は叫んだ。完全に失われていた記憶が元に戻ったのだ。 そして自分がどうあるべきかを思い出した汚野は、本来の姿へ立ち返る。 防弾チョッキを外す。こんなものは汚野にとっては拘束具でしかない。 続いてスーツを上着から脱ぎ捨てていく。こんなものを着ていると息苦しくて仕方がない。 今度は下着を脱ぐ。己に身に着けてよいのはネクタイ、靴下に靴、そして海パンだけだ。 「 股間のモッコリ伊達じゃない! 陸に事件が起きた時 海パン一つで全て解決! 特殊刑事課三羽烏の一人 『海パン刑事』 大復活!!」 説明しよう!汚野たけしの言う本当の自分とは、常に海パンのみを身に着けた変態、もとい特殊刑事課三羽烏の一人『海パン刑事』なのである!! 「む……こっちか!!」 突如銀行内を強い振動が襲う。ズン、ズンと何かを殴りつけているような音も一緒に聞こえてくる。 ついに記憶を取り戻した海パン刑事は身体中の神経を研ぎ澄まして、その震源を特定する。 必ずそこに犯人がいるという確信のもと、脱ぎ捨てたものを放置して海パン刑事は走り出した。 ◇ 銀行の広い地下通路にて、浅黒い肌のバーサーカーが必死に壁だったものを殴り続ける。 壁に空いた穴からは斜め下に向かって短い空洞が伸びており、それを掘り進めている最中だ。 「おい、早くしろ!ったく、金庫破るのに時間かけやがって。この時間ロスで警察に突入されたらお前のせいだぞ!」 「■■■■■――」 バーサーカーの背中から覆面を被った強盗犯が声を荒げる。 肩には大きなバッグがぶら下がっており、中には札束はもちろん、高価な金銀宝石がぎっしりと詰まっている。 この男は聖杯戦争のマスターとなった男であり、バーサーカーを召喚した。 しかし、自身がマスターであることにも気付かずにバーサーカーを犯罪の道具として使い、今に至る。 この男は元いた世界でも犯罪を繰り返しており、かつて世を騒がせた怪盗のように大きな銀行から金を根こそぎ奪い、一獲千金を夢見ていた。 「ここを掘り進めれば下水道に出るはずだ。急げ!!」 記憶を取り戻しここが元いた場所とは違うと知っても、犯罪をやめようとは思わなかった。 男は住んでいる場所などどうでもよく、大金を手に入れさえして海外へ逃亡すれば一生遊んで暮らせることは変わらないからだ。 突然目の前に現れたバーサーカーが何者かはわからないが、何故か強盗犯の言うことは素直に聞いてくれる。 こいつを使えば綿密な計画を練らずとも楽に銀行から金を奪える。警察も得体の知れない者がいれば迂闊に手を出してこないだろう。 下水道に通じるはずの穴がもうすぐ開こうとした時には、強盗犯は使えるやつを持つことができた自分はラッキーだとほくそ笑んでいた。 聖杯戦争の実態を知らず、強盗犯と同じくサーヴァントを召喚した者も多数いるとは知らずに。 「やはり、地下にいたか」 「ちっ、追いつかれたか――っな!?」 猛スピードで駆けてくる足音とともに、強盗犯の背後からかけられる声。 時間をかけていたからか、警察が突入するまで持たなかったか。 舌打ちと共に振り返った強盗犯の顔が驚愕に塗りつぶされる。 彼の目の前に現れた警官と思しき人物は、赤と黒の縞模様のネクタイ、腕時計、そして局部を隠している海パン以外何も身に付けていなかったのだ。 オイルに濡れているからか、艶やかな肉体を恥じらいもなく晒している。そんな男を見た者は誰もがこう思うであろう。 『変態だ』と。 「何モンだテメーッ!」 強盗犯は海パン刑事に銃を向けて威嚇する。 「安心してくれ。見ての通り、私は丸腰だ。ただ、話をしにきただけだ」 「うるせえ!!金は絶対返さねえぞ!!…おい、ちょっとこっちに来い!」 強盗犯は海パン刑事の説得に応じようとせず、下水道へ続く穴を掘っていたバーサーカーを呼び寄せる。 上半身には何も身に着けていない狂戦士が目の前に現れても、海パン刑事はその鋭い視線を崩すことなく、ただ強盗犯を見据えていた。 「私は争い事が嫌いだ。ここは裸になって話し合おう」 バーサーカーも自身を睨みつけており、二人ともかなり興奮しているのを見た海パン刑事は次の行動に出た。 両手を腰に持っていったかと思うと、指を海パンと肌の間にかける。 そして、摩擦がかかっていないようにスムーズに、あたかもそれが自然なことであるかのように… 躊躇うことなく海パンを脱ぎ去った。 「な、なあああああああああああ!?!?」 「■■■■■――」 海パン刑事はネクタイと靴以外は一糸まとわぬ姿――人間が産まれた時に取っている姿――全裸になった。 もちろん局部は隠さず強盗犯とバーサーカーに見せつけている。 「これで私は正真正銘丸腰だ。さあ、君たちも裸になって話し合おうじゃないか」 「ふ、ふ、ふっざけんじゃねえ!!」 強盗犯は完全に当惑し、銃を使うことを完全に忘れて海パン刑事をただ見ることしかできなくなった。 「ハハハ、恥ずかしがることはない。人間皆産まれた時は素っ裸だったんだ。赤ん坊のようなピュアな心で話し合おうじゃないか」 「よ、寄るな!こっち来んな!!」 強盗犯は銃を片手にへっぴり腰で後ずさりする。 …だが、バーサーカーの方は違った。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「何っ!?」 バーサーカーは狂化しており、理性が失われている。 そう、失われた理性では海パン刑事の裸を見て何も思わないし、そう思うだけの常識や羞恥心というものがなくなっているのだ。 すなわち、バーサーカーの取った行動は全裸の海パン刑事から逃げるのではなく、攻撃。 バーサーカーは海パン刑事の股についている一物にも動じることはなく、痺れを切らして海パン刑事に襲い掛かった。 強盗犯はバーサーカーが海パン刑事を、銀行の警備員のようにコテンパンに痛めつけるだろうことを半ば無意識に確信した。 海パン刑事の顔に初めて焦りの表情が浮かぶ。強盗犯は勝利を確信して笑みを浮かべた。 勝った。 強盗犯も狂化しているはずのバーサーカーも、そう思っていた。 「■■■■■――!?」 「抵抗しない人殴るなんてダメだよ!悪い奴はボクがやっつけちゃうぞ!」 海パン刑事を殴り飛ばすはずだったその手は、片手で止められていた。 その手はバーサーカーのそれよりも二回り以上も大きい。 手首からは茶色い毛むくじゃらの二の腕が続いている。 「ゴ…リラ?」 バーサーカーの前に立っていたのは、正真正銘ゴリラだった。 頭の毛が天井に向かって伸びており、胸には『DK』の文字がプリントされたネクタイをしている。それ以外は海パン刑事と同じで何も着ていない 裸ネクタイの警官にアソコを見せられた矢先に、実際にゴリラが話すところを見た強盗犯はもはや頭がパンクしそうだった。 「ゴリラが喋った!?」 記憶を取り戻し、マスターとなった海パン刑事を救ったのは、ランサーのサーヴァント『ドンキーコング』であった。 「ねえ大丈夫?ケガない?」 ドンキーはバーサーカーの腕を涼しい顔で受け止めながら後ろを振り返り、のほほんとした口調で海パン刑事に問いかける。 「いかんいかん、あの攻撃に反応できないとは、私としたことが…。きっとあの時エネルギー補給をし忘れていたからだろうな」 「あーっ!それバナナ!いいないいな、ねえボクにもちょうだい?お願い」 海パン刑事はというと、脱いだ海パンからバナナを取り出し(なぜ海パンにバナナが収まっていたかは敢えて描写しない)、エネルギー補給をしていた。 それを見たドンキーはバーサーカーを通路の先へ軽々と投げ飛ばし、海パン刑事へバナナをねだる。 ドンキーコングはバナナに目がないのだ。 「ああ、君は。先ほどのお礼を言っていなかったな。助けてくれてありがとう」 「いいよいいよ、どういたしまして。それよりも、バナナ」 「何だ、君も欲しいのか?いいだろう、私のバナナを一つ分けてあげよう」 「わーい!ありがとう!」 海パン刑事からバナナを受け取ったドンキーはペロリとバナナを平らげてしまう。 海パン刑事はドンキーが普通に言葉を話していることに対しては特に疑問を抱いてはいなかった。 何せ特殊刑事課に所属していた彼には鳩ポッポ刑事という鳩の上司がいるし、同僚には知能の高いイルカを従えるドルフィン刑事もいる。 動物が人並みの知能を持っているなど、海パン刑事にとってはむしろ自然なことであった。 時を同じくしてエネルギーを補給し終わった海パン刑事は改めて呆然とこちらを見ていた強盗犯へ向き直る。 「ねえ、ところでおじさん何してるの?」 「悪い奴を捕まえているところだ」 「そうなの?じゃあボク手伝ったげるよ!さっきバナナくれたし!」 状況を把握したドンキーも強盗犯の方へ向く。 その視線の先にはもう泣きそうな目をした強盗犯とこちらに向かってくるバーサーカーがいた。 「君はあっちの裸の男を頼む」 どの口が言っているんだ、と海パン刑事にツッコむ者はこの場にはいない。 ドンキーは「オッケー!」と返事するとバーサーカーの方へ向かっていった。 「バッナ~ナパワー!!」 「■■■■■■■■――!!!」 すれ違いざまにドンキーとバーサーカーの拳がかち合う。 それを確認したドンキーはすぐさま逆の手の張り手でバーサーカーの頬を引っ叩いた。 「■■■■■――!?」 バーサーカーがよろけ、大きく怯んだところをドンキーは見逃さない。 突如、何故かドンキー以外の時の流れが極端に遅くなり、ドンキーだけが速く攻撃できる状況が作られる。 それに乗じて、ドンキーは両手によるパンチを基本に、張り手と蹴りも合わせて20発以上もの連撃をバーサーカーに叩き込んだ。 「■■■――」 巨大なワニの胴体どころか超強化された合金をも貫くドンキーの一撃一撃が、バーサーカーの身体に突き刺されていく。 その刺突はまさに拳という名の槍で敵を穿つランサーのそれであった。 「これでトドメだ!」 ドンキーは最後の締めに腕を大きく振りかぶり、バーサーカーを斜め下から掬い上げるようにパンチで吹っ飛ばした。 「■■■■■■■■■――!!」 その威力たるや凄まじく、バーサーカーの身体は天井を突き破って空の彼方へ飛んでいき、ついには星になった。 重ねて言うが、ここは銀行の地下である。硬いアスファルトや天井の奥にあるコンクリートを貫通した上でバーサーカーは超遠距離に飛ばされたのだ。 それだけでドンキーのパンチがいかに重いかを物語っているといえよう。 『王者怒りの百裂拳』――ドンキーのバナナを奪っていった楽器のような生物や、 ドンキーの住む島を占領した北海のバイキングの幹部をボコボコにして吹っ飛ばした逸話からくる宝具たる奥義が炸裂した瞬間であった。 「ウッホホホ~!」 「あ……あ……あ……」 ドンキーはドラミングをして喜んでいる。 一部始終を見て、恐れをなした強盗犯はその場にへたり込む。 戦意喪失を絵に描いたような様子であった。 「…どうやら私が手を下すまでもないようだな。立てるか?」 「はい。…申し訳ありませんでした」 犯人は盗んだ金の入ったバッグを離し、そのまま手錠をかけられ御用となった。 「今日はあいつに助けられてばかりだったな」 海パン刑事は会心の笑みを浮かべながらドンキーを見た。 ◇ 【聖杯戦争…そんなものに私は巻き込まれていたのか】 【うん。おじさんは『ますたー』でボクは『さーばんと』。せいはいっていう願いを叶えるコップを取り合うんだって。変だよね、どうしてコップなんかのために戦うんだろ】 【まったくだな。その聖杯とやらがただのコップかどうかはさておき、そんなもののために戦わせるなんて断じて認めるわけにはいかん】 意気消沈している強盗犯を連行しながら、海パン刑事は霊体化したドンキーから聖杯戦争について話を聞いていた。 なお、海パンは既に履きなおしている。 ドンキーには間の抜けた面があったため、ところどころ分かりにくかったりドンキーの独自解釈があったりしたが、おおよそのルールは海パン刑事にも把握することができた。 【きっとこんな狂ったことをさせる黒幕がいるはずだ。私はそいつを探しだし、この催しに巻き込まれた者全員を解放するつもりでいる】 【そうなの?でも…それってすっごく難しくない?】 たとえおバカな一面のあるドンキーでもそこを気にするのは必然であろう。 ドンキーは聖杯戦争のルールこそ知っていたが、この聖杯戦争が誰によって開かれたのかはわかっていない。 いるかもわからない相手を探す。まさに雲をつかむような話だ。 聖杯戦争の中で生き残りつつそれをするというのなら尚更だ。 【その心配は無用だ。私は今までどんな苦難にも海パンと裸の心で立ち向かってきたからな。 だが今回の件は協力者…もとい相棒が必要でな。生憎両津はいない。だからその役をランサー、君に頼みたい。無論、エネルギー補給用のバナナは君にも支給するつもりだ】 【ホント!?じゃあボクがんばるね!】 エネルギー補給用のバナナで、海パン刑事はランサーの協力――サーヴァントだから協力するのは当然だが――をあっさりと得ることができた。 この聖杯戦争が一筋縄ではいかないことは海パン刑事にもわかっている。 恐らく海パン刑事も見たことのない者達が跋扈していることだろう。 だが、海パン刑事は信じている。心を裸にすればみんな分かり合える、と。 先ほどのように裸になって誠意を持って相手と接すれば、必ず手を取り合い、黒幕へ立ち向かえるはずだ。 海パン刑事の瞳は、一糸まとわぬ汚れなき希望に満ち溢れていた。 【ところで、バナナはいつくれるの?】 【エネルギー補給は三十分に一度だ】 【えー、そんなー】 なお、銀行の前で待っている者全員が海パン刑事の姿を見て真顔になったことは想像に難くない。 【クラス】 ランサー 【真名】 ドンキーコング@ドンキーコングシリーズ 【パラメータ】 筋力A+ 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具C 【属性】 中立・善 【クラス別スキル】 対魔力:E 魔術に対する守り。 無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。 【保有スキル】 怪力:B 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。 騎乗:C 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが野獣ランクの獣は乗りこなせない。 ランサーの場合、乗るだけでなく他者を自分の背中に乗せることもできる。 ランサーに搭乗した者はある程度不自由なく行動でき、ランサーの戦闘をサポートすることができる。 また、乗せた相手が騎乗スキルを有していた場合、行動がシンクロしやすくなりより強力な連携を行える。 なお、本来は野獣ランクを乗りこなすこともできたが、ランサークラスになった代償としてランクが下がっている。 勇猛:B 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力だが、それは単にバカだからなのかもしれない。 一応、格闘ダメージを向上させる効果もある。 バナナパワー:A ランサーはバナナが大好物で、バナナを食べるとパラメータが向上する。 マスターからは食事の時間ごとにバナナをもらっており、それが従う理由にもなっている。 対巨人:B ランサーのジャングルを襲った数々の事件にて、自分より遥かに大きな敵にも屈せずに倒してきた逸話からくるスキル。 ランサーより大きな体躯を持つ敵に対して有利な判定を得る。 【宝具】 『英雄渾身の一撃(ジャイアント・パンチ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1 腕を振り回してパワーを溜め、極限まで威力を高めたパンチで対象を穿つランサーの必殺技。 ただのパンチと侮るなかれ、その一撃は月を公転軌道からずらして地球に引きずり下ろすほどで、鎧などの装備品による耐久値の上昇値を無視してダメージを計算する。 ただし一撃必殺の威力を誇る分、力を溜めてからそのパンチを当てるまでが遠い。 『王者怒りの百裂拳(ドンキーコング・ラッシュ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1 敵に近づき、一瞬の内に連続でパンチとキックを浴びせた後に吹っ飛ばしてノックアウトするランサーの奥義。 ランサーが強敵に勝利した際、敵を瞬く間にタコ殴りにしてから空の彼方へ自慢のパワーで吹っ飛ばしたという逸話からくる宝具。 この宝具を発動した際、数秒の間のみランサー以外の時の流れが止まったように遅くなり、対象に対して一方的に連続で攻撃を叩きこむことができる。 その間は防御行動を行うことができず、ランサーの威力の高いパンチやキックを連続で受け続けることになる。最後には空高くに吹っ飛ばされ、戦闘から強制的に離脱させられる。 このような特性から、敵を捕獲したり殺害するには不向き。 『大猩々余裕の挑発(アピーリング・ゴリラ)』 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:?? 「バウゥ」と鳴いて少々オーバーなジェスチャーと共に敵を挑発する。 挑発を受けた相手は抵抗判定を行い、失敗するとターゲット指定をランサーから変更できなくなる。 抵抗判定は本人の性格と煽り耐性の高さによって成功率が変動する。 ……実際は単に苛ついているだけであり、本来なら宝具と呼ぶのもおこがましいただの挑発である。 にもかかわらずこれが宝具に昇華されているのは、この挑発がかの世界において見ていて非常にムカつくことであまりにも有名だからである。 かの世界におけるドンキーコングは強いイメージの吹き込まれたフィギュアに過ぎずランサー本人とは別人だが、 かの世界のドンキーコングの挑発に関する逸話が独り歩きしてランサー本人の宝具に昇華されて逆輸入されてしまった。 【weapon】 己の肉体。 【人物背景】 任天堂が製作した『ドンキーコング』シリーズに登場するゴリラのキャラクター。 ドンキーコングとしては2代目で、初代ドンキーコングの孫。 キングクルール率いるバナナ泥棒団クレムリンなどの強敵を相手に、ジャングルのヒーローとして冒険を繰り広げた。 地面に両手を打ち付ける「ハンドスラップ」という技で小規模な地震を起こせる程の力を持ち、 その一方でジャンプ力、素早さもまずまずで、ヒーローとして申し分ない能力を持つキャラクター。 ちなみに、ランサーの他にアーチャー、ライダー、キャスタークラスの適正も持っており、パンチ系宝具の代わりに以下のような特徴を持つ。 アーチャーの場合は武器にココナッツ・キャノンが、宝具に『クリスタル・ココナッツ』が追加される。 ライダーの場合はアニマルフレンドを召喚する宝具にロケットバレルやたるジェットが追加され、飛行が可能になる。 キャスターの場合は宝具に『タルコンガ』が追加され、芸能面での逸話を持つ宝具を目にした場合、低確率で真名を看破するスキルを得る。 【サーヴァントとしての願い】 バナナを食べれるから海パン刑事に従う 【捕捉】 ドンキーの台詞や口調は、アニメ『ドンキーコング』のキャラに準拠しています。 【マスター】 海パン刑事@こちら葛飾区亀有公園前発出所(アニメ) 【マスターとしての願い】 この聖杯戦争とやらを仕組んだ黒幕を探し出し、全参加者を解放する 【weapon】 拳銃 本人は徒手空拳での戦闘を得意としており、あまり銃は使わない。 何でも入る海パン 四次元ポケットのごとく中には名刺、携帯電話、ラーメン、エネルギー補給用のバナナなど様々なものが入っている。 【能力・技能】 卓越した格闘能力 自分の局部を相手の顔部分に当てて相手を押し倒す「ゴールデン・クラッシュ」や、無防備状態で飛び蹴りを食らわす「海パンキック」という必殺技を持つ。 また、身体には汚野家に伝わる秘伝のオイルが塗られており、身体を掴むことができず、その香りには苛立つ者の心を鎮める鎮静効果がある。 全裸になること 海パンを脱いで全裸になる。それは女性の前であっても変わらない。 これで無防備であることを証明し、相手が怯んで隙を見せたところを強襲するという戦法を取っている。 【人物背景】 特殊刑事課会員番号1番。階級は警部補。本名は汚野たけし 。 通称が示すとおり、常に赤のネクタイと黒無地の海パン一丁で行動する。この格好でないと落ち着かないらしい。 検挙率100%を誇るエリート刑事であり、海パンを脱いで無防備な姿になり、犯人の隙をついて逮捕する。 本人曰く「わたしは隠し事が大嫌いな性分だ」とのことで全裸になることは恥ずかしくない。 几帳面なところがあり、食事の時間は厳守している。保護した女性の前では曲がったネクタイを直していた。 そんな彼だが、「ネクタイを取られると途端に恥ずかしがる」、「自分よりも相手の局部の方が大きいと泣いて逃げ出してしまう」という2つの弱点がある。 【方針】 聖杯戦争を打破する。 他の参加者がいたら協力したい。 たとえこの殺し合いに乗っていても裸の心で話し合えば分かり合えるはず。 候補作投下順 Back 無題 Next missing