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登録日:2021/02/01 Mon 13 00 00 更新日:2024/03/19 Tue 09 25 14NEW! 所要時間:約 15 分で読めます ▽タグ一覧 STAR_WARS スター・ウォーズ ドロイド司令船 ドーナツ ヌート・ガンレイ バトルドロイド リング ルクレハルク ルクレハルク級母船 分離主義勢力 反乱同盟軍 宇宙戦艦 独立星系連合 球体 空母 輸送船 輸送艦 通商連合 銀河共和国 「通商連合の母船だ! あれをやれ!!」 ルクレハルク級母船(Lucrehulk-class)とは、スターウォーズ・シリーズに登場する宇宙船の一種。 通商連合が保有する自警団の、主力となる大型母船である。のちの分離主義勢力/独立星系連合においても主力の一翼を担った。 本来は貨物輸送船であるが、物資の運搬のみならず、戦闘機を運用する空母的な活用や、砲撃戦への転用まで可能とする。 ところで艦種についてだが、実はレジェンズとカノンに分化した際にやや複雑な様相を呈している。 レジェンズとなったもともとの設定では、ルクレハルクには大きく分けて三タイプが存在した。それが、 基本ベースとなった「ルクレハルク級LH-3210貨物船」 貨物船に武装と強化装甲を施した「ルクレハルク級バトルシップ」 ルクレハルク級バトルシップをベースに通信能力等を強化した「ドロイドコントロール艦」 で、このうちEP1冒頭などで登場したのが「バトルシップ」で、つるりとしたデザインのためこれを「ルクレハルクの基本形」と認識している人も多いと思われる。 ところがカノン設定に更新された際、ここに変更が生じた。 レジェンズの「ルクレハルク級バトルシップ」がカノンでは「ルクレハルク級LH-3210貨物船」となり、「ドロイドコントロール艦」が「ルクレハルク級バトルシップ」に変更されたのだ。 つまり 貨物船ながらも砲撃能力・防御力も戦艦並みの「ルクレハルク級LH-3210貨物船」 3210貨物船をベースに、ドロイドコントロール艦として通信能力等を強化した「ルクレハルク級バトルシップ」 の二種類があり、EP1冒頭でも舞台となった「つるりとしたデザインの基本的なルクレハルク」はバトルシップではなく貨物船タイプというのが現行設定の模様。 というか、「軍事用ルクレハルク」と「民間用ルクレハルク」の区別が実質ない、ということだろうか。 本稿ではルクレハルク全体を解説する都合上、項目名をEP2でのオビ=ワン・ケノービの発言から「ルクレハルク級母船」とまとめている。 【性能諸元】 【開発経緯】 【設計】◇外観 ◇戦闘能力 ◇運用面 ◇総評 【バリエーション】◆ルクレハルク級LH-3210貨物船 ◆ドロイドコントロール型 ◆独立星系連合型 【固有の戦艦】 【性能諸元】 製造 ホーシュ=ケッセル・ドライブ社 全長 3,357 m 全幅 3,009 m 全高 1,028 m 最大加速度 300 G 最高速度(大気中) 500 km/h ハイパードライブ能率 クラス2.0 動力機関 ペンディリ製星間ドライブ・プロトン(メイン) プロトン12式(サブ) 乗員 150~350人(有人25名、ドロイド150体でも運用可能) 武装 四連ターボレーザー砲 単装ターボレーザー砲 迎撃用レーザー砲 各種多数 補助装備 MTT AAT 兵員輸送機 着陸船 ドロイドスターファイター ほか各種多数 【開発経緯】 そもそも通商連合とは、全銀河規模の輸送業者が連合した、巨大な貿易組織である。もちろん、その本業は物資の流通・輸送にこそある。 しかし宇宙は、決して治安が良くない。宇宙空間は宇宙海賊が跋扈し、惑星によってはギャングや犯罪組織が官憲以上の支配者となるところもある。いやそれどころか、役人までもが「官賊」となり、袖の下を強要する場合さえあった。 そんな宇宙を、積み荷を抱えた輸送船団が丸腰でうろつくのは、危険を通り越して無謀である。そして、銀河共和国は軍事力を持たないため、強力な宇宙海賊やギャングを鎮圧することはできなかった。 そんな状況では、通商連合が輸送路と輸送船団の安全を確保するため、軍備を整え自警団を作るのは必然だ。 軍隊は兵士だけではなく、拠点も必要となる。特に通商連合の場合は宇宙の貿易を司るため、「ハイパースペース航法」も「長期間の宇宙滞在」も「大量の貨物運輸」もこなせる拠点=大型母船は必要不可欠だった。 また通商連合は、いつしか主導者となったニモーディアンの嗜好からバトルドロイドを軍事力の基礎に置いており、そのドロイド兵・ドロイド戦闘機の「コントロール船」も欲しい。 そしてニモーディアンのドケチ……もとい会社としての運輸性や利便性や清算性も考えたい。 そのニーズにこたえて通商連合が用意したのが、このルクレハルク級母船であった。 映画本編時点で主流なのは、ルクレハルク級LH-3210貨物船。 もともとは民間の輸送船ではあるものの、積み荷を戦闘機に変え、砲塔を増設することで、武装商船としても活用可能。 【設計】 ◇外観 タイプによって細かい差異はあるが、ルクレハルク・シリーズには一目でわかる特徴的なデザインが共通しており、見間違えることはほとんどない。 中央には巨大な球体がデンと居座り、その球体を太いリング状の船体が囲むようにして接続されているのが外見上の一番の特徴。 この中央の球体は船のコアパーツで、司令室やエネルギー反応炉などの中枢システムが組み込まれている。 かじられたドーナツにも例えられるリング部分は船体で、広大な貨物室が備えられており、内部にはスターファイターや上陸艇、戦車などが格納されるハンガー、はたまた兵士やドロイドの部屋などがある。 もちろん、積み荷を民生品に切り替えれば、そのまま大容量の貨物船として使える。 設計段階からいろいろ転用できるよう考えられていたらしく、このハンガーは最低限の改造で軍用にも民間輸送用にも切り替えられた。 艦砲を搭載するのもこのリング状の船体で、リングの縁に沿ってレーザー砲塔を展開する。なお、この砲塔は収納・展開機能が備わっており、必要ない場合は内側にしまい込める。 実はSW世界でもトップクラスの大型艦船でもある。 そのサイズは、球体ブロックだけで全高約900m・全幅約700m。その球体ブロックを包み込むリング部分に至っては、直径が約3000mにもなる。 もちろん、球体ブロックとリング部分の間は大きな隙間となっているのだが、リング部分も縦幅1000m、横幅はそれ以上ある。 ちなみに、クローン大戦初期の銀河共和国軍主力のアクラメーター級攻撃型強襲揚陸艦が全長750m、中期の主力ヴェネター級スター・デストロイヤーがやっと1150m、独立星系連合の主力戦艦プロヴィデンス級が約1100m。球体ブロックだけでも同レベルの大きさだ。 しかも、これら比較対象は楔型もしくは円筒型で横幅が狭い(*1)ため、完全な球体(リング状)デザインのルクレハルクは直径=全長も3000mと、比較にならないほど大きい。 戦後開発されたインペリアル級スターデストロイヤーでさえ全長1600mなので、ルクレハルクは大きさだけならそれすら凌ぐのだ。 正直、同じ戦場に並ぶとプロヴィデンス級戦艦も駆逐艇に見えかねない。 ◇戦闘能力 いくら視野に入っていたとはいえ、完全なる戦闘用に設計・開発されたわけではないため、本格的な宇宙戦には対応できない……と思いきや、戦陣に配備されたルクレハルク級母船は案外強力だった。 まず、もとが超大型の輸送船であるため、積載量が多かった。バトルドロイドやスターファイター、各種武器や砲塔を大量に運用できる。 また超がつく大型船であるため装甲を分厚くでき、また電力も膨大なため強力なシールドを運用できた。 強大な砲撃力と鉄壁の防御力は十分軍艦として通用するもので、その強さは侮れない。 もちろん完璧とは言えず、輸送船ゆえの欠陥・限界はそれなりにある。 まず、砲塔の配置がリングの縁に集中しているため、射角が限定されたこと。遠距離にいる相手には砲撃を集中できるが、下に潜り込んだり、あるいは頭上を飛び越えられると攻撃できなくなるエリアがある。 また火器の数こそは膨大だが、全周囲360度に振り分ける都合上、火力が散漫になりがちなのも問題。火力の一点集中は難しい作りになっている。 ただし、その防衛線の隙、火力の散漫さを補うために、大量のスターファイターを運用して迎撃が可能。 その運用数だがこれが輸送船の本領というか、バルチャー型ドロイドスターファイターならば一隻で1500機にも達する。 もっとも、バルチャー型スターファイターは30分しか飛べないため、ローテーションを組んで交代しながら出さねばならず一度に出撃できる数は限られたのだが、 もし長期間運用できる戦闘機を満載すれば、制空権は完全に制圧できてしまう。 完全な宇宙用でもあるため、直接星に降下することができないのも問題点。 もっとも、そのために大型の上陸艇も大量に運用できるため、対処は可能。なにせ横幅が370mもあるC-9979上陸艇を50機も乗せられるのだ。 ナブー危機を経た後期型では、コア部分を切り離して降下させることも可能になった。 また一部の後期型では、接続した状態でも星に降下・飛行することもできた。 ただ、速力はあまり出ないのと大きすぎて小回りが利かないことから、やはり軌道上に待機して、コアシップなり搭載した上陸艇・輸送艇を発進させるのが主な運用となる。 そして、ルクレハルクが積載し、上陸艇などで運用できる歩兵用バトルドロイドは、なんと30万以上となる。 たった一隻のルクレハルクでも、30万のバトルドロイドとそれを運ぶだけの上陸艇や戦車、各種武器を運用できるというわけで、まさに戦術をも左右する兵器である。 ◇運用面 武装商船ながら改造された部分は積み荷や搭載火器ぐらい、つまり外装・内装・内部システムはほとんど手が加わっていなかったため、 戦闘に使用しない場合は、積み荷を普通の輸送物資・交易品とすることで、そのまま商船として運用できた。 もちろん逆も可能。 戦闘艦にも民間船にもいとも簡単に切り替えられるのは恐るべき汎用性であった。 もちろん、改造コスト・建造コストは最低限ですみ、懐にも優しい。 オマケに、輸送船と軍用艦とで見た目がほとんど変わらないうえ、ルクレハルク級輸送船自体が銀河のどこでも発見できるほど普及していた(貿易を司る通商連合の輸送船なんだから当たり前だが)ため、 ルクレハルク級を見ても「交易船なのか戦闘艦なのか」がわからず、戦闘時に不意を突かれることも多かった。 ……まあ「宇宙海賊が略奪しようとしたら戦艦並みの反撃を受けた」ならいいのだが、 「平和な星に荷物を運びに来たただの輸送船団だと思っていたら、いきなり軍隊を展開されて、手遅れになってから見果じめ料を恐喝された」なんていう海賊(現代)じみた事例もあって、良くも悪くも奇襲できる……というところだったらしいが。 ◇総評 総合すると、破格の巨体と鉄壁の防御力に、それなりの火力、桁外れの輸送能力・運用力が備わり、おまけにコスト面でも優秀な、究極の武装商船といえる。 その能力は不足はあれど一流の軍艦といっても過言ではなく、宇宙において良くも悪くも存在感を発揮していた。 また武装化といっても「武装強化と積み荷の変更」に留まるため、戦闘艦としての役割も民間輸送船としての役割も、どっちも果たせたというのも特筆すべき点だろう。 実はスターデストロイヤーの仮想敵でもあり、歴代スターデストロイヤーが楔形の二等辺三角形であるのは「ルクレハルクの防御力と迎撃火力を、戦力の一点集中で突き破るためのデザイン」であったという。 【バリエーション】 ◆ルクレハルク級LH-3210貨物船 現行型ルクレハルクの基本形。 貿易船ながらも、上述した通りの強力な装甲・火力・輸送力を備えており、積み荷などを戦闘用に切り替えればそのまま戦艦として通用する。 レジェンズとなった過去設定では冒頭通り、民間用途向けの「貨物船」と、武装を施した「戦艦」を区別していたが、 現在のカノン設定では「運輸に使われるのも戦闘に使われるのも同じ『LH-3210貨物船』」となっている。 レジェンズではこれより古いモデルとして「ルクレハルク級LH-3010貨物船」というのもあるが、見た目も性能もほとんど変わらない模様。 ◆ドロイドコントロール型 通信機能を重点的に強化して、ドロイドのコントロールに特化したタイプ。 中央の球体部分、およびその背後に通信システムを増設し、さらにドロイド用の中央制御コンピューターも強化。 司令船は宇宙に残りつつ、地上に展開した多数のバトルドロイドに指示を出し続け、投入した大軍を有機的にコントロールできる。 ナブー危機においては、たった一隻で惑星全土のドロイドをコントロールし、しかもスターファイター部隊まで指揮する余力さえあった。恐るべき通信管制能力である。 ただ、当時のドロイドはこの司令船からの通信によってのみ起動していたため、この船が轟沈する、あるいは通信不能となれば、その瞬間からドロイドは命令が来なくなり機能停止する危険があった(*2)。 また、大規模かつ細かい通信を可能とするためにはさすがのルクレハルク級も電力が足らず、エネルギーを支えるために反応炉を増設していたのだが、 これがハンガー部分に無造作に設置していたため、あとで大惨事を引き起こした。 もともとは「LH-3210貨物船を軍事用に改修したルクレハルク級戦艦の、さらなるバリエーション型」という設定だったが、 現在ではこのドロイドコントロール艦を称して「ルクレハルク級戦艦」と呼称するという設定に代わっている。 ◆独立星系連合型 分離主義勢力/独立星系連合に提供された時期のルクレハルク級。 この時期のルクレハルクの特徴は、球体部分とリング部分を切り離す機能が備わっていたこと。 球体部分を「コアシップ」として、独自に地上に降下させ、要人や兵士を上陸させたり、暫定的な拠点を作ったりできる。 もともとはEP1の結果、通商連合が軍縮を課せられたのに対し、「ルクレハルクを解体しました」と言い訳をしなければならないゆえの苦肉の措置であったが、 ガンレイ総督らは分離合体機能を組み込み、いざという時はいつでも艦隊を再建できるようにしたうえで、軍縮を果たしたように見せかけたわけである。 ただコアシップ自身には大した武装は無く(自衛レベルのみ)、また本格的なエンジンも積んでいない(リング部分にある)うえ、巨体故に動きも緩慢。 基本はあくまでも地上と宇宙を往復するためのもので、拠点としての活用も暫定措置としてである。 エピソード2クライマックス、クローン大戦の始まりとなったジオノーシスの戦いで、クローントルーパー大部隊の飽和攻撃でいくつも撃ち落とされていたのがこのコアシップ達。 ……そんな能力しかないコアシップで、ジオノーシスの戦場であえて殿(しんがり)にとどまり、グリーヴァス将軍も回収しながら共和国のスターファイターをも迎撃して、見事脱出までしてのけたラシュロス・ドファインというニモーディアンもいるわけだが。 その後「インヴィジブル・ハンド」の艦長にもなるのもグリーヴァスも一目置くのも納得である。 また、この分離合体機能を組み込むにあたり、通商連合系の軍艦にはモジュール機能、すなわち船体の切り離しと接続、が簡単にできる構造が普及した。 それによって船の修理・改造が船体の交換ですむようになり、時間もコストも大幅に節約できた。 実際、クローン大戦に向けて整備・投入されたタイプは、ナブー危機までのタイプに対してレーザー砲塔・ミサイル発射管などが大幅に増設され、火力面で大幅なパワーアップが図られている。 それどころか、その気になれば別の軍艦同士を組み合わせることも出来る。 クローン大戦後の、反乱軍の手による改造では、なんとプロヴィデンス級の船体にルクレハルク級のコアシップを接続した異形の船まで現れている。 【固有の戦艦】 サカック EP1の冒頭、ナブーを封鎖していた艦隊の旗艦。この場面ではほかにも多数のルクレハルク級が確認できる。 クワイ=ガン・ジンたち共和国最高議長の特使を招き入れたが、のちに黒幕からジェダイ暗殺の密命が下り、やむなく特使用クルーザーを破壊。 さらにガンレイ総督の号令下、満載していたドロイド軍を揚陸艇に乗せ、ナブー降下と占領を開始する。 しかしこの際、ドロイディカに追われたジェダイ師弟が揚陸艇に潜んでしまい、逃走された。 中盤では脱出を図るナブーのロイヤルシップに対して集中砲火を浴びせ、シールド発生機にも被弾させて追い詰めるが、R2-D2がシールド発生機を修復したため包囲網の強行突破を許してしまう。 その後、星の封鎖は後述のヴーチュン・パーラだけを残し、サカック以下は撤収した。以後の消息は不明。 ヴーチュン・パーラ ドロイド司令船タイプ。 サカックから指揮権を委譲され、たった一隻でナブーを封鎖していた。 最初は多数のルクレハルクがいたのに、星の制圧後はヴーチュン・パーラ一隻だけとなったのは、ナブーには宇宙港が一つしかなく、星の出入りを臨検するならルクレハルク一隻で十分だったから、ということらしい。 しかし一部の船は港がなくてもそれなりの平地さえあれば降下できたため、ぶっちゃけ慢心である。 その後、ナブー解放軍が立ち上がるとドロイドを無力化するべく、スターファイター部隊の攻略目標となる。 それでも、搭載する無数のドロイドファイターと強力すぎるシールド、増設された火砲でナブー部隊を退け優位に立つが、 アナキン・スカイウォーカーの戦闘機が被弾したはずみでハンガー内部に飛び込んでしまい、しかも彼がぶっ放した魚雷が増設されたエネルギー反応炉に直撃。 この一撃が船のエネルギー系統を完全に破壊し、球体部分のメインリアクターが爆発して司令部と制御コンピューターも消滅、リング部もへし折れ、ヴーチュン・パーラは轟沈、ナブーを制圧していたドロイド部隊も全て機能停止してしまった。 プロキュアラー 「クローンウォーズ」にて登場。ドロイド司令船タイプ。 ニモーディアンでも冷静な分析力を持った名将、マー・トゥーク司令の旗艦で、惑星ライロスを封鎖していた。 トゥーク司令の指揮ぶりもあり、アナキンやウルフ・ユラーレン提督らが指揮する共和国艦隊を一度は撃退、かつスターデストロイヤー一隻を沈めるも、 その後のアナキンの「無人にしたスターデストロイヤー一隻をカミカゼ特攻させる」という奇襲により、プロキュアラーは轟沈した。 ただし、マー・トゥーク司令は直前でアナキンの意図を悟り、脱出に成功している。 アンリミテッドプロジェクション コアシップのみの登場。 EP3にて、惑星ウータパウの崖に埋め込まれており、グリーヴァス将軍の暫定基地、独立星系連合の評議会メンバーの臨時議場となっていた。 またドロイド製造工場としても使用されていたらしい。 壁の一部が開いて思いっきり吹き曝しになっていたが、飛びたてる状態だったのかは不明。 グリーヴァスが四刀流を披露してオビ=ワンに挑んだ。 これら固有の艦艇のほか、EP2にてジオノーシスに多数のコアシップが設置されていた。 最初(映画中盤当たり)はほとんど埋められていて活躍がないと思いきや、ラストシーンにて浮遊したコアシップが懐かしのリングパーツと合体し、EP1の姿を再現。 すぐ近くを移動する、優雅なマストを展開したドゥークーのソーラーセイラーとともに、球体を採用した優美な姿を見せつけ、強敵の再来を演出していた。 実は戦後になっても輸送能力を買われて帝国の輸送部門や民間で利用されていたらしい。 さらに一部は反乱同盟軍も運用しており、完成前のデス・スターにも攻め込んだという。 練習艦として運用された例もあり、「反乱者たち」の主要登場人物ヘラ・シンドゥーラも反乱同盟軍参加初期、ルクレハルク級の練習艦で訓練を積んでいる。 「項目を追記・修正せよ」「イエッサー!」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] あれ船だったのか。ずっとコロニーだと思ってた -- 名無しさん (2021-02-01 14 34 51) 最初は輸送船と司令船がカノン入りして戦艦だけレジェンズだったけど、また変わってるんだな -- 名無しさん (2021-02-01 22 02 05) たしか、レジェンズの小説『デススター』で反乱軍所属の<フォートレッサ>が登場してた。 -- 名無しさん (2021-05-28 23 30 55) フォールンオーダーだと解体場に持ち込まれてたな -- 名無しさん (2022-04-20 13 58 09)
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登録日:2020/06/14 Sun 13 30 00 更新日:2024/01/17 Wed 17 29 01NEW! 所要時間:約 25 分で読めます ▽タグ一覧 STAR_WARS SW ウィークウェイ ウィークェイ ウェポンマスター ジェダイ スター・ウォーズ ソーラ・バルク ダークアコライト ダークジェダイ ドゥークー伯爵 マスター メイス・ウィンドゥ ライトセーバー レジェンズ ヴァーパッド 二刀流 分離主義勢力 四番目の男 独立星系連合 達人 「『討てる』とでも思うのか!! メイス・ウィンドゥすら凌駕するこの俺を!!!」 ソーラ・バルク(Sora Bulq)は、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。 旧共和国末期のジェダイのなかでも、特に剣術の達人として知られた偉大な戦士であったが、クローン大戦中に暗黒面へと落ち、独立星系連合に所属。 ドゥークー伯爵ことシス卿ダース・ティラナスの右腕として、アサージ・ヴェントレスと並んでもっとも有名なダークジェダイとなった。 元はEP2にて、モブキャラとして登場したジェダイであり、 ジオノーシスの戦いでアリーナのドロイド戦が終わった際、包囲されたジェダイ部隊の約20人の生き残りの中に小さく映っている。 映画本編での出番はそれっきりだが、その後スピンオフ作品が続々登場するうちにその存在も大きくなっていった。 活躍は主にレジェンズ分類作品である。 【種族】 【性格】 【能力】 【来歴】◇前歴 ◇ジェダイ時代 ◇ジオノーシスの敗戦 ◇バクラの戦い ◇衛星ルールの決裂 ◇ダークアコライト筆頭 ◇モアグカイの「影の軍団」 ◇ダークジェダイの激闘 ◇最期の戦い ◇死後 【余談】◇無かったことにされた死 ◇正史(カノン)作品での活躍(?) 【種族】 種族は「ウィークウェイ(Weequay)」。「ウィークェイ」ともいわれる。 故郷は惑星スリルーア。この星は砂漠と酸性の海が特徴的な、荒れ果てた惑星である。 またハットの領域に属するため、暗黒街でもあった。 そんなところで生まれ育ったウィークウェイは、全身が岩のようにごわついた堅い皮膚で覆われている。 皮膚の強靭さはブラスターにも耐えるとさえ言われ(*1)、また筋肉も極めて頑健であり、総じて非常に高い戦闘能力を持つ。 頭髪を長く伸ばして編み込み、後ろに垂らす習慣がある。 反面、ウィークウェイの社会は閉鎖的で、独特。 氏族を基準にまとまる習慣があり、氏族が違えば同じウィークウェイでも親しまない。当然、異種族に対しては冷淡。 氏族同士ならばフェロモンによる会話さえ可能だが、たとえ養子であっても血のつながりがなければこの会話はできないらしい。 そのため、ウィークウェイはどちらかというと無口で武骨、閉鎖的な傾向が強いという。 もっとも、彼らも人間である以上、とんでもない例外もいるのだが。 宗教形態は、素朴な自然神信仰(アニミズム)。 月神クェイ、雷神アム=シャクなどを崇め、それら神々の崇拝と取引・制御を象徴する、トーテムや装飾を作り出すという。 また礼拝堂(*2)を中心として街を作るなど、自然神信仰が生活に根付いている。 ただし、そのスリルーアの自然環境が非常に厳しいため、彼らの宗教観も激しいタイプらしいが。具体的には、大型の野獣を狩りで仕留めて奉納するなど。 このようにウィークウェイは、もとから身体能力が高いうえに、同族同士の連帯意識が強く連携能力に長けることから、戦士として雇えば極めて強力な戦力となりうる。 そのためハットなど暗黒街の大物に雇われることが多く、彼らウィークウェイもまたハットのネットワークを利用するため、宇宙海賊としても悪名高い。 【性格】 「心を枉(ま)げた?! 解放したのだ!!」 ソーラ・バルクは、剣術家であるとともに哲学者として知られていた。 深思熟考を重んじ、あらゆる可能性を吟味したうえで行動し、軽はずみな真似はしない。ヨーダも彼の性格について「バランスが取れていた」と称賛している。 剣術は激烈だったが、普段は聡明かつ穏やかな人物として知られており、周囲の人間からは慕われていた。 優しいところもあり、ジェダイ時代には激しい剣術家でありながら、弟子には「そこまでは伸びまい」と悟ってか、無理に鍛えはせずほどほどのレベルで教えた。 また、弟子たちが殺されると本心から苦悩し塞ぎこむなど、弟子に対する情は篤い。 一方、戦闘時になると激しい戦意を爆発させ、すさまじい形相で猛然と襲い掛かる。 専門フォーム・ヴァーパッドの特性もあり、自分自身の殺意・闘争心・攻撃性を燃え上がらせ、のみならず敵が発する敵意・戦場にはびこる殺気まで取り込んで、狂暴なまでの激情を叩きつける。 なお、この凶暴なふるまいは訓練時でも見せる。 実はこうした性格は、ジェダイ時代もダークジェダイ時代からも変わっていない。 ドゥークー配下に転向してからは、こと戦闘時には生粋の闘争心に加えて怒りまで上乗せし、猛獣のごとくに暴れまわったが、 それもあくまで戦闘だけであり、普段はこうした激情を冷静な理性のもとにコントロールしていたのも特徴的。 実際にはジェダイ時代から、ヴァーパッドを通じてフォースの暗黒面を駆使していたのだが、 彼の場合はあくまで冷静に、研究対象・使役対象として見ていたためか、軽はずみに暴発するところはなかった。 必要な時には激情を開放して暗黒面のフォースを爆発させながら、必要ない場面では感情を完全にコントロールできるという性格は、上司となったドゥークーからも評価が高く、大戦中には愛弟子アサージ・ヴェントレスをも差し置いて、ダークジェダイ部隊のまとめ役にまで抜擢された。 実際に抜擢は正しく、逸る部下たちを冷静に制御し、好機が訪れるまで待つことを選択するなど、冷静沈着な態度をよく見せている。 「我らの『時』はいずれ来るのだ、ラッシュ・ケルコ。……待つのだ」 また、ジェダイを落とす策略に自分の元弟子が巻き込まれると慌てて「逃げろ!」と叫ぶ、弟子があえなく落命すると本気で悲しんで落胆する、 評議員の一角である大物ジェダイを討ち取っても「今あなたはフォースと一つになるのだ」とジェダイらしい言い回しで見送るなど、ジェダイ時代の人情味や落ち着きもだいぶ残っていた。 一方では自信家な面もあり、ヴァーパッドに真に通暁したのはメイスではなく自分だと豪語する一面も。 とはいえ、彼の場合それは「自信」であっても「過信」ではない。 実際にもジェダイではメイスに並ぶ達人であることは確かであり、またヴァーパッドは暗黒面に没頭してこそ真価を発揮するため、慢心とみなすことはできないだろう。 また、銀河共和国の深刻な腐敗と衰退、ジェダイ騎士団の硬直化に危機感を抱き、銀河の統治を根本的に変革すべきという意思も抱いていた。 またソーラは、そうした銀河統治の改革にフォース感応者の能力が有効ならば、かまわずフルに使うべきだとも考えている。 「共和国の、世界の真理を把握しうるジェダイ! 我らジェダイこそが、然るべき法秩序を用意せねばならん! ――評議会は永遠に認めまいがな!!」 その意味では、ジェダイを殺すことが目的のグリーヴァス将軍、利権の追求を考えるヌート・ガンレイ、シスの道を学ぶため参加したアサージ・ヴェントレス、暴れることこそが目的のダージといった、 別の目的のために参加している幹部とは異なり、本気で分離主義を信奉していた人物であったといえる。 (ちなみに、他に分離主義のため行動を起こした人物にはテクノユニオン代表ワット・タンバーがいる) 【能力】 「俺はヴァーパッドを完成(●●)させたのだ。持てる全てを注ぎ込んだ」 ジェダイでも最強クラスの剣士。 使用するフォームは、ジュヨーの強化発展型であり最強のフォームと名高い「ヴァーパッド」。 そもそもヴァーパッド自体が、ソーラが盟友メイス・ウィンドゥとともに研究して編み出した剣法である。創始者のひとりなだけあって、習得困難なヴァーパッドを完全に使いこなす。 さらに彼はライトセイバーの二刀流の使い手でもあり、「ジャーカイ」のエッセンスを組み合わせたヴァーパッドの二刀流で猛威を振るった。 もちろん、一刀流で戦っても十分強い。 その剣術の腕前は懸絶しており、ジェダイ時代からヨーダ・ドゥークー・メイスと並び、トップ層を形成していた。 大戦中には、敵対したほとんどのジェダイを圧倒・撃破しており、必要ならば殺さずに戦闘不能にするなど、殺すよりも難しい戦いさえ可能とする。 使用するライトセーバーは通常の円筒型。 ただ、他の二刀流の剣士が、光刃の長さを両方とも同じぐらい長くしているのに対して、 彼は片方は長く、片方は短くするという、現実の二刀流に近い長さに調整していた。 光刃の色は、ジェダイ時代は青が多いが、場面によっては緑。独立星系連合に転じてからは赤い光刃へと改良した。 剣術研究者としての側面もあり、主流の七つのフォームはもとより、各フォームの派生型や、実験レベルの曖昧なフォーム、剣術に限らない体術さえ研究し、体得していた。 彼自身も面倒見がよかったため、「剣術を教えてもらいたい」と願うジェダイには、パダワンでなくとも指導と稽古をつけた。 (これは数年を通して一対一の指導ではなく、大勢をまとめてというもので、そのため彼には何千人もの弟子がいるという) そうした、技量の高さと幅広さ、教える能力の高さから、ソーラはジェダイ時代に「ウェポンマスター」とも呼ばれたという。 また、自身の剣術の実技と講義をホロクロンに記録し、ジェダイのアーカイブに残してもいる。 こうした経歴は「ソードマスター」と呼ばれたシン・ドローリグにも似たところがある。 ただ、得意フォームであるジュヨーおよびヴァーパッドは、闘争心を全開にし、精神を暗黒面に没頭させて、初めて真価を発揮する剣術である。 それを研究し、かつ突き詰めたことで、ソーラは暗黒面の有用性を冷静に分析し、体得し、活用するようになってしまった。 その結果、彼は冷静な精神で暗黒面を使うという、ダークジェダイどころかシスに近い精神を持つに至る。 これについて同じくヴァーパッドの創始者であったメイスは後に、「ソーラがヴァーパッドをマスターした」のではなく、「ヴァーパッドがソーラをマスターした」と称した。 とはいえ上述した通り、冷静なまま暗黒面に転向したため、彼の性格までゆがめるには至っていない。 ドゥークー配下に転向後、彼はジェダイが送り込んだスパイ、クインラン・ヴォスにヴァーパッドを仕込み、暗黒面に導いて二重スパイに仕立て上げた。 これも割とうまく行き、クインランはその腕前をさらに引き上げるとともに、暗黒面の境目を狂奔することになった。 「逃がさんよ」 剣術ばかりで有名だが、フォースの使い手としても一流。 ジェダイ時代からパワーや技巧では並みはずれており、ヨーダも「フォースが強い」と認めている。 基本的な技術は網羅していたが、特に念力に通暁しており、投げたライトセイバーを遠隔操作して逃げる相手に命中させる、ということも可能。 フォースによる衝撃波も強い。 ドゥークー配下に転じてからは、シスの技法を学んだのか、独特な術まで身につけるようになる。 自分の存在を暗黒面に隠してジェダイの警戒網をかいくぐったり、自分の暗黒面の意識を他のジェダイに気取らせなかったり、といった隠密性、 相手の暗黒面の素地を正確に見抜いたり、奇襲を完全に予知したりといった分析能力もさりながら、 白眉は「フォースイリュージョン」と呼ばれる幻覚で、彼はクインラン・ヴォスとの決闘のさなかにこの技を使い、自分の姿を「完全に暗黒面に落ちたクインラン・ヴォス」として、相手に見せることができた。 その状態で自分は剣術を存分に振るうわけだが、戦闘中にフォースで高度な幻術を賭けるというのは、彼の優れた才能を示している。 【来歴】 ◇前歴 ソーラ・バルクは、ウィークウェイの母星スリルーアの衛星「ルール」に入植した、バルク家の出身。 このバルク家は裕福な商人であったらしく、ルールに広大な土地を抱えていたとされる。 もっとも、ソーラは幼少期にフォース感応者の才能を見出されてジェダイになったため、故郷の資産とは縁遠い人生を送った。 成長してから、彼は一時故郷に戻ったことがある。 シャアク・ティやイーヴン・ピールのように、自分の故郷での通過儀礼も進むべきと説得されたようだ。 しかし哲学や瞑想よって知性を磨いたソーラは、母星における宗教を見ても「迷信」としか思えず、ついにウィークウェイとしての通過儀礼を拒絶してしまった。 そうなるとウィークウェイも、ソーラを同族とは扱えない。 結局、両者は袂を分かつこととなり、のちにソーラが偉大なジェダイとなっても、ウィークウェイ社会は冷淡なままであった。 ◇ジェダイ時代 「ああ。カクルークにジェイセル、会えてよかった。食材を見繕ってきたよ」 対して、ジェダイ聖堂におけるソーラは聖堂でも指折りのジェダイとして知られるようになった。 まず彼はウィークウェイらしい武骨さは持ちながらも、深思熟考を好む哲学的な性格になった。 静かに瞑想して物事を見極め、うかつな行動をしない彼は、ヨーダからも「精神のバランスが取れた偉大なジェダイ」と評価されていた。 そうした精神面の深遠な哲学性に対して、剣術の才能は懸絶していた。 厳しい鍛錬と研究により、ジェダイ聖堂最強の剣士であったメイス・ウィンドゥにも匹敵するほどにまで成長。 しかも、ただ既存のフォームに熟達するのみならず、剣術研究家としても新たな境地まで切り開いた。 メイスと共同研究した、ジュヨーの発展型「ヴァーパッド」である。 もっとも攻撃性が高いとされたジュヨーをさらに強化したヴァーパッドは、習得難度もさらに跳ね上がっていたが、その攻撃力は他の追随を許さないものだった。 またソーラは、シン・ドローリグとともにライトセイバーの講師としても活躍した。 通常の一対一の師弟関係ではなく、剣術を磨きたいと願うものがあれば、指導するというものである。多くのジェダイが彼に剣術を教わった。 ある時期には、自分の研究した剣術をホロクロンに記録し、聖堂に永久保存した。これは真に優れたジェダイマスターの証明のようなものである。 優れた精神性と哲学性、懸絶した剣術、他のジェダイを導く指導力など、あらゆる面で優れたジェダイとして活躍したソーラ・バルクは、パダワン・ナイト・マスターと順当に昇進。 評議員にこそならなかったが、偉大なジェダイとして知られていた。 パダワンも多くとっており、ミラ、ガルドス・ストーフなどを育てた。 ただ、直接の弟子たちには剣術を徹底的に仕込むことはしなかったようである。あくまで「剣術を磨きたいと希求する人物」だけに教えたと思われる。 ◇ジオノーシスの敗戦 「ジオノーシスにおけるジェダイの大敗が私を絶望させた。そしてドゥークーは、共和国に変革が必要ならば、我らジェダイこそがそれを為さねばならぬと、私に示したのだ」 オビ=ワン・ケノービの捕縛に端を発する「ジオノーシスの戦い」は、ソーラ・バルクにとって苦い戦いとなった。 彼はメイス・ウィンドゥの攻撃隊に所属して参戦したが、当時のパダワンだったガルドス・ストーフも、そして彼が剣術を教えてきた多くのジェダイもが、ことごとく戦死してしまったのだ。 ソーラ自身、闘技場での激闘(参戦したジェダイの九割はここで戦死)は突破したものの、 その後乗り込んだガンシップが撃墜されたことで、一時はイース・コスとともに戦死したと誤解されたほどだった。 幸いにも彼はイースとともに一命はとりとめたが、剣術を教えた弟子たちが壊滅し、自らも「敗北」したことは、彼の心に深刻な挫折感を刻み込んだ。 ◇バクラの戦い 「我らの組織に加わるべきだと、考えないかね?」 「『加われ』だと!? お前のせいでどれだけ死んだと思うのだ、ドゥークー!! 暗黒面に落ちた男が!!」 「闇と光をことさら分けようとするのは、単に恐れているからだよ、マスター・バルク」 「精神を十分に鍛えていれば、闇を恐れる必要はない。 わかっているはずだ。きみの体得した剣術、ヴァーパッドは本来暗黒面から力を得るのだから。しかし暗黒面に没頭しきらないヴァーパッドでは、本領は発揮しきれまい…… 怒りは有用である。きみ自身が支配されなければね」 その後、本格化した「クローン大戦」の初頭、ソーラ・バルクは旧知のジェダイマスター・ソルメ(*3)とともに、今や独立星系連合の総帥となったシス卿、ドゥークー伯爵を暗殺するべく、惑星バクラへと侵入した。 しかしこの十年、シスとして腕を上げていたドゥークーは、ソーラとソルメが知っていたかつての彼ではなかった。 ドゥークーはより洗練された剣術とフォースライトニングで瞬く間にふたりを撃破し、しかも殺さずに生け捕る余裕さえあった。 ドゥークーはソーラのことがわかっていた。 ジオノーシスの戦いで多くの弟子たちを失ったソーラは、あの無残な戦いの原因が、ジェダイの硬直性と堕落、ひいては銀河共和国の深刻な腐敗と衰退にあると直感していた。そしてそれは事実でもあった。 そうした彼の心の揺らぎと傷が、ドゥークーには手に取るようにわかっていた。ドゥークー自身が、ジェダイの硬直性と共和国の腐敗によって、愛弟子コマリ・ヴォサを失い、深刻な挫折を味わい、ジェダイと共和国を見限ったからである。 またソーラは、真実を悟る能力があるジェダイは、いっそ共和国に代わって銀河を統治したほうが良いとも考えていた。それをするだけの実力があったことも、また確かである。ジェダイ評議会が認めないことも、また。 なおダース・プレイガスも「ジェダイは完全に共和国を支配するか、完全に共和国から離れて哲学に没頭するべきだった」と説いている。 こうしたソーラ・バルクの思想の変遷は、ドゥークーには手に取るようにわかっていた。 ドゥークーは捕えたソーラと深く語り合い、彼の新しい考えを肯定し、彼の怒りの原因を直視させた。 そして「シスが銀河を支配すれば、ジェダイが銀河を導くという彼の思想は、実質的に叶う」と説いた。 「バクラで私を破ったドゥークーは、我が心の傷を暴き、道理をもたらし! 我が怒りの根源を示し! そして力を認めさせたのだ!!」 ここに、ソーラ・バルクはドゥークーの教えを受け入れて暗黒面に転向し、シス卿の指示に従う従者「ダーク・アコライト」となった。 ◇衛星ルールの決裂 「私は長年、闇に魅入られてきた。我々のヴァーパッドの研究は――私の独自の研究は、さらに私を引き込んだのだ」 ドゥークーの部下となったソーラは、まずは「ソルメを救出して捕縛から抜け出した」と称して、一時コルサントに帰還。 しかしソルメを送り届けると、しばらくして姿を消してしまった。 当時、ジェダイのなかには「将軍として戦争に飛び込むのはジェダイの道に反する」として、騎士団を離脱するジェダイが多かった。ソーラもまた、そのうちの一人とみなされた。 三か月後、ソーラは故郷・衛星ルールに出現し、戦争反対派のジェダイを糾合した。 集まったのは、シアン・ジェイゼル、カクルーク、ラド・ターン、そしてブルク自身の元パダワンのミラ。たった四名とはいえ、当時の反戦派の代表である。 彼らの代表となったソーラは、ジェダイとして戦争参加の是非について話し合いたいと、コルサントのメイス・ウィンドゥに訴えた。 ジェダイ評議会は動揺した。確かに、戦争に巻き込まれたこの事態は喜ばしくはない。ソーラの影響力も絶大である。しかも反戦派の会合まで起きた。下手をすれば、騎士団は崩壊しかねない。 ただ、反戦派といってももとは仲間である。話し合えるならむしろよし、ということで、メイスは自ら衛星ルールへと駆け付けた。 最初の討論は長引き、明日再開となった。 しかしこれは、ドゥークー主導の罠であった。 ドゥークーはこの星に、アサージ・ヴェントレスをひそかに派遣していた(*4)。 そのアサージの使命は、反戦派のジェダイを暗殺し、しかもそれがメイス・ウィンドゥの差し金であったと思わせることにあった。 ジェダイ評議会の長であり、軍事参加を主導するメイスが、反戦派を殺すような男だとなれば、ジェダイ評議会の権威は失墜どころではない。 その一手として、まずアサージは夜の散歩中のソーラを襲撃して浅手を負わせた。もちろん八百長である。 ただ、ここで誤算が起きた。その八百長とはいえ殺し合いの場面を目撃したのが、ソーラの元弟子ミラだったのである。 師匠の「苦戦」を目撃した彼女は、とっさにライトセイバーを抜いて加勢するが、「お前がかなう相手ではない! よせ!!」というソーラの制止もむなしく、彼女はアサージに返り討ちにあってしまった。 メイスやカクルークら他のジェダイが駆け付けたのはその直後である。アサージは「ソーラが負傷しミラが死んだ」このタイミングで、メイスに「ご命令通りに」と示して逃亡、その場の空気を凍りつかせた。 それはソーラにとっても予想通りではあった。 ただ、ミラが死んだのは誤算だった。メイスがアサージを追って駆け出すと、傷を心配する他のジェダイに対して、ソーラはただメイスへの加勢だけを頼み、自分はミラの遺体を抱えて去った。 確かに、計画は予定通りであった。しかしソーラは、ミラだけは何とか助けたかったのである。 「私は、ミラを屋敷に連れていく……大丈夫だ、行ってくれ……兄弟のジェダイを、探してくれ……」 「ミラ……こんなはずではなかった……」 メイスはアサージを探すうちに、彼女の船を発見した。 その船を調べるうち、ふとフォースの直感でアサージとソーラが組んでいる可能性に思い至る。 さらに帰還したところ、ミラの死で動揺していたソーラの内心を、メイスは読み取ってしまった。 計画を暴かれたソーラはついに開き直り、ドゥークーの門下に転向したことを表明。 メイスと他のジェダイを皆殺しにして、「メイスを倒し、彼の殺戮を唯一生き残った」というていでジェダイ騎士団に潜り込む、と作戦を変えた。 ソーラとメイスが激しく切り結ぶ一方、アサージ・ヴェントレスは予定通り他の三人のジェダイを襲撃。 そのうちの一人ラド・ターンも、一連の陰謀でジェダイへの不信が極まり、アサージ側に転向。さらにソーラが持ち込んだドロイド軍団まで飛び込み、乱戦になった。 しかしターンがジェイゼルに返り討ちに遭い、メイスはソーラをフォースで瓦礫の山に吹き飛ばすと、戦いを放棄して生き残っていたジェイゼル、カクルークと合流し、ルールを脱出した。 結果として、ジェダイ騎士団の分裂作戦は失敗、二重スパイも挫折。 ソーラ・バルクは晴れて独立星系連合のエージェントという立場を明確にした。 ◇ダークアコライト筆頭 「ソーラ・バルクはわたしの代弁者と思って従ってくれたまえ」 しかしドゥークーは、ルールの失敗後も彼を咎めず、それどころか配下のダークジェダイ「ダークアコライト」のまとめ役、現場における司令官として抜擢した。 ドゥークー直弟子のアサージ・ヴェントレスでさえ、ソーラに取次ぎを頼むこともあった。 独立星系連合の組織幹部としては、あのグリーヴァス将軍と並んで高い地位にあった。 これはおそらく、ソーラがもともと冷静な性格で、大局的な視野も持っていたこと、ドゥークーとは古い付き合いで阿吽の呼吸もあったこと、などが原因だろう。 アサージも強いし、ドゥークーの信頼もあるが、性格が狷介で直情気質であり、指揮官やまとめ役には向いていない。 ドゥークーもそれを期待してか、ソーラが捕縛したジェダイをあえて解放する際、いぶかしむ彼に「独立連合の大義を教え、共和国・騎士団への信頼が揺らいだジェダイを聖堂に戻せば、彼らの言動や存在がいずれジェダイを分断させる」と、組織面における攻略法などを教えている。 「情けを掛けるのですか伯爵? 解き放した連中はいずれまた我らに挑むことになりましょう」 「情も道具となるのだよ、ソーラ・バルク。このことが広まれば、ジェダイのあいだで疑念が生じ……一部は我らの側についてくるかもしれない。捕えたジェダイを皆殺しにするようでは、彼らに死力を尽くさせることになる」 「なるほど。あなたの手にかかれば、慈悲ですら武器となる、か!」 もちろん椅子を尻で磨いていたわけもなく、ドゥークーからシスの技を教わるなどして、実力はさらに上がっていった。 ライトセイバーの光刃を赤色に変えたのもこのころからである。ただ、服装はジェダイ時代のまま変わらなかった。 ジェダイ時代からのヴァーパッドの腕前に、シスの技を加味して磨き上げ、組織の幹部としても成熟したソーラ・バルクは、ダークアコライト筆頭、独立星系連合の猛将としてたちまち頭角を現した。 多くの戦場に姿を現し、稀有な剣術と磨いた謀略、精鋭のダークジェダイ部隊を存分に駆使して、 惑星ティブリンを制圧して元支配者スリブラン・トゥを討ち取る、前任の共和国元老院議長フィニウス・ヴァローラムをコルサントで堂々暗殺する、などの戦果を挙げる。 また、ジェダイが「ダークアコライト」として送り込んだスパイ、クインラン・ヴォスに対しても、彼の正体を知ったうえで、 闇の素質を見抜いてヴァーパッドを教え込み、彼自ら暗黒面に進むよう仕向け、さらに「ソーラにつくことはシディアスの正体を探るために必要な手立て」と彼自身に思わせることで、共和国との二重スパイに活用するなど、 まるでドゥークーを思わせる手際の良さを見せている。 結局、クインランは暗黒面に魅了されて共和国との連携を寸断され、ジェダイ側も彼が本当に寝返ったと判断するに至る。 「ヴァーパッドは見せただろう。使え!」 かくて活躍するソーラ・バルクの雄姿は、共和国サイドにおいては「ジェダイの堕落の象徴」でもあった。 高名なジェダイであったドゥークーとソーラが、ジェダイの絶技を駆使して銀河を荒らし、共和国を攻撃している――という状況は、ジェダイの正統性を著しく傷つけていた。 メイスにとっても、盟友の離反は痛恨事であった。ソーラが暗黒面に落ちた一因に、ヴァーパッドの共同研究があったことは、間違いなかったからである。 ◇モアグカイの「影の軍団」 「船の護衛に残したモアグカイの応答がないな」 戦争後期には惑星サルーカマイに赴任し、かつて絶滅した戦士集団「モアグカイ」(*5)をクローン技術で復活させる任務に就いた。 この「影の軍団」と呼称されるクローン軍団が完成すれば、クローントルーパー以上の戦力が編成されるため、ドゥークーもこれを重視し、ソーラを直々に送り込んだのである。 クローンの遺伝子サンプルは、そのモアグカイの生き残りであるボクという男が抜擢された。彼はクローン大戦の八年前(EP1の二年後)、アイラ・セキュラ(*6)に敗れて死んだといわれたが、生きていたのである。 もちろん自分を殺しかけたジェダイのことは憎んでおり、ソーラには武人肌も共通していたため、モアグカイ復活を快諾。 さらにアンザーティという種族の殺し屋も雇い入れ、彼らの隠密技術をモアグカイの戦闘技術に組み合わせて、独特な「影の軍団」として編成させた。 この計画は極秘に行われ、ソーラの配下だったクインラン・ヴォスも「なにか大きな計画がある」ぐらいしか把握・報告ができなかった(その後、開戦前にクインランは共和国に戻る)。 それでも、放置するととんでもないことになると直感した共和国は、偵察・破壊工作部隊(指揮官:ソルメ(*7))と主力艦隊(指揮官:オポー・ランシセス(*8))を差し向け惑星サルーカマイ攻略を決意。 先行したソルメの破壊工作と、その時間稼ぎで間に合った艦隊による惑星封鎖で「影の軍団」のサルーカマイ出発は妨害されたが、ソーラはソルメを追い払う一方、艦隊攻撃を見越して防衛戦を開始。 やがて到着したランシセス艦隊はソーラ指揮する防衛軍の猛攻によって大苦戦し、またランシセスが強行砲撃で都市と住民を巻き込むことを避けたため、決め手を失ってしまう。 対するソーラも、籠城を選択したことに加えて、隠密に長けるソルメのゲリラ戦に悩まされて打って出られず、戦況は五か月にも及ぶ膠着状態へと陥る。 ◇ダークジェダイの激闘 「雑音は囮だ。今の殺意は囮だったのだよ。私を隠すためのな」 ところで当時クインラン・ヴォスはランシセス艦隊に次席司令官として属していたが、シールドを突破して共和国艦隊揚陸のチャンスを築く一方で、暗黒面を通じてソーラのほうにも繋がっていた。いまだ二重スパイだったのである。 クインラン本人はソーラと繋がることで、ドゥークーの背後の「シディアス卿」を探るつもりだったのだが、彼自身が暗黒面に魅せられているのも事実であった。 ソーラと、ホログラム越しのドゥークーは、そんなクインランの心情をよく知っていた。本人よりも知っていた。 暗黒面を知らないランシセス、暗黒面に翻弄されるクインランに対して、冷静に暗黒面を見つめて所属したソーラとドゥークーは、暗黒面の心理においてはクインラン本人よりもよく理解していた ソーラは極秘にクインランを呼び出し、大胆にも直接面会して、ランシセスの情報を請求。 「ここで話せばより彼らの信頼を得られる」と考えるしかないクインランは、ランシセスの布陣、拠点を教えた。 ランシセスは作戦計画については自らの瞑想によって考え、周囲が知るのは発動する時だけなので、計画内容はクインランも知らない。 だから、自軍の布陣を教えても、ランシセスの作戦が妨害されるわけではないと、だからこの情報提供は問題ないと、クインランは信じていた。 だがソーラは、布陣情報だけで事足りた。居場所がわかるだけでよかったのである。 なぜなら、古い付き合いのあるソーラとドゥークーは、ランシセスは「一人になって作戦を考える」ことを、つまりその時間こそがもっとも無防備であることをよく知っていたからだ。 かくしてクインランからの情報を得たソーラは、モアグカイの顧問として雇ったアンザーティの殺し屋を暗殺部隊へと再編し、ランシセスの元へと送り込んだ。 オポー・ランシセスは、老いたりとはいえ老練のジェダイである。フォースの達人だ。まして瞑想中は、作戦のことを考えていても気が最も鋭敏になる時間である。 ベテランの殺し屋といえども殺気は隠せない。ランシセスは彼らの気配を察してすぐさま反撃し、暗殺部隊を撃退した。 その直後にソーラ・バルクが飛び込んだ。 彼は暗殺部隊そのものを囮として、自ら共和国軍の本陣に乗り込んだのである。 たった一人で瞑想する習慣が今度こそ老ジェダイの命脈を断った。いかに練達のジェダイとはいえ、剣術においてオポー・ランシセスは、ソーラ・バルクの敵ではない。 勝負は一瞬で着いた。ヴァーパッドの一撃が、老ジェダイの胸を貫いたのだ。 「さらばだマスター・ランシセス。今あなたはフォースと一つになる」 斃した偉大な先達を前にして、ソーラ・バルクは腰を下ろし、手向けの言葉を丁重に送った。 ◇最期の戦い 「認めてしまえ。お前やその女を救う唯一の道は、暗黒面に身を委ねることだ。さもなくば、お前らを待つのは死のみ――」 一方、クインラン・ヴォスは二重スパイと明かさないまま共和国陣地に戻り、「ランシセスの命令」と称して軍を動かした。これもソーラの指令である。 クインランは元弟子のアイラ・セキュラとともに、地下道を通じて防衛線のシールドジェネレーター攻略を開始。 しかしもちろんこれも罠で、独立連合の別動隊が彼らを奇襲。 クインランはアイラたちを放棄してソーラの元へと投じ、アイラの前にはモアグカイの遺伝子提供者であるボクが、かつて彼女に腕を切り落とされた恨みを晴らすべく襲い掛かった。 ところが、ソーラとホログラム越しのドゥークーのもとに投じたクインランは、ここでソーラと敵対する。 クインランには以前から、カリーン・ヘンツという盗賊上がりの愛人がいた。彼女もこの戦いに参加していたが、ソーラ配下のダークアコライトの一員トール・スコー(*9)に捕えられ、フォースグリップで絞められていた。 ドゥークーとソーラはクインランの反応から「真に暗黒面に献身するなら、その女を殺せ」と迫った。 その脅迫で、ついにクインランは「俺はジェダイだ!」と叫び、スコーの手からカリーンを奪還、ソーラとトール・スコーらに襲い掛かった。 直後には、死を偽装して身を隠していたソルメも駆け付けクインランに加勢する。 それでも、ソーラ・バルクは余裕があった。そもそもクインランの反応からして、彼が冷静にジェダイに立ち返ったのではなく、以前怒りや闇に呑まれかけた、半ダークジェダイであることは明白だった。 むしろこの一戦を通じて、完全に闇に引き込むことも出来るだろう。 「お前からは怒りを感じるぞ――『善きジェダイ』ならば感じぬものをな……どうだ? そうだな、誘(いざな)う必要はない。お前はとうに暗黒面へと踏み込んでいるのだから……ただ認めていないだけだ……」 クインランがトール・スコーを討ち取るまでの間に、ソーラはまずソルメを打ち負かして戦闘不能に追い込んだうえで、クインランに対して剣術と言葉を使って暗黒面へと誘引する。 さらにドゥークーもホログラム越しに声をかけ、クインランを暗黒面の狭間に引き込んだ。 「そなたの擬態は誰一人欺けてはいないぞ、クインラン・ヴォス。ソーラを殺しても戦争は止まらん。スコーを殺しても意味はない。きみの生は無駄でしかない。 生き残るための唯一の道は、自分の中の怒りに従うことだ。いま否定している暗黒面を認めて、利用するのだ! 与えられた使命を果たせ! ソルメを殺し、カリーンを殺すのだ!」 「真のマスターに従えヴォス!! 暗黒面を引き寄せろ!! さもないとお前も、お前が守ろうとしている者をも全て殺す!!!」 迷いが生じては勝負にならない。それでなくてもソーラ・バルクはトール・スコーなどとは腕が違う。 さらにソーラはフォースを通じてクインランの内心の闇を引き出し、ヴァーパッドで圧倒して恐怖を引き出し、さらにフォースの幻術を用いて「暗黒面に落ちたクインラン」という姿を映し出した。 「完成されたダークジェダイになれ、それはこのような姿だ」と、現地で教え込んだのだ。 ついにクインランの膝が崩れる。背後に回ったソーラが、ライトセイバーの赤い光刃を振りかぶった。 「来いヴォス!! 死ぬ前に真実を認めろ!! 暗黒面を受け入れるのだ!!!」 だが次の瞬間、クインランが振り向きざまに斬りつけた。 その一撃はソーラ・バルクの胸を割り、ドゥークー伯爵の見つめる前で、最強のダークジェダイは地に倒れた。 クインランの師であるソルメ、愛人であり妻になるカリーンの思念と心が、クインランの心の光明面を支えていたのである。 それからほどなくして、アイラ・セキュラはボクを斃してメインシールドも破壊。 それが同時に、地熱発電に利用していたマグマを吹き出すことになり、さらに宇宙からの爆撃も加わってマグマが噴出。 ほどなくして戦場跡地にもマグマが流入し、ソーラ・バルクの遺体もその中に飲み込まれていった。 ◇死後 「もっと完全にフォースに心を開き、その波に乗ればいいんです」 「うむ。マスター・ソーラ・バルクたちは喜んで同意するだろうな。だが、そういう波乗りができるジェダイは少ない。われわれは全員がヨーダやマスター・ウィンドゥのような落ち着きを持っているわけではないんだ」 ソーラ・バルク亡きあとも、彼の名前は「ジェダイへの不信」という形で後世語り継がれた。 ジェダイが否定的に、あるいは疑惑の対象で語られる際に、ソーラ・バルクの名前はよく上がったという。 もっとも戦後になると、すでにジェダイが消滅していたことと、ジェダイ全員が「反逆者」という扱いになったこともあり、彼の悪名も忘れられるようになった。 また、銀河帝国が滅亡してからしばらくのち、というとソーラ・バルクの死から二十年以上の歳月が経ってからだが、 彼が生前に記録していた剣術を記録したホロクロンがルーク・スカイウォーカーに発見され、彼が再建した新ジェダイ騎士団にも引き継がれたという。 サルーカマイ包囲戦はソーラの戦死で共和国の勝利に終わり、消耗した共和国軍もほとんどは惑星を離れ、別戦線へと移動した。 惑星にはジェダイのスタス・アリー(アディ・ガリアの従妹)が指揮する部隊が残敵相当にあたっていた 「オーダー66」が発令されたのはそのさなかで、スタス・アリーはスピーダーバイクで移動中、背後からクローン兵に射撃されて戦死した。 【余談】 ◇無かったことにされた死 実は「ソーラはジオノーシスの戦いで戦死した」という設定が、スピンオフ登場後に設定されたことがある。 彼はアリーナの戦いは生き残った直後、戦場に向かう途中で、乗り込んだガンシップが撃墜され、戦死したことになっていたのだ。だから、その後の戦場にはでてなかったのである。 ちなみに、この時のガンシップにはイース・コスも乗っていたとされる。 しかしこの時点で、もうソーラのスピンオフ作品は存在していた。 そのため整合性が取れなくなり、一時紛糾したという。 なおイース・コスも、その後「死んだことは知っているけど、活躍させたいから出そう」ということになり、クローン・ウォーズなどに登場する運びとなった。 ◇正史(カノン)作品での活躍(?) 2Dアニメ版『クローン大戦』のコルサントの戦いなど、レジェンズ分類となった作品であってもカノンと矛盾しない要素は言及する形で引用されたり似た展開で再構築されたりすることがあるのだが、ソーラ・バルクやヴァーパッド周りの話は設定が盛大にぶつかってしまう(*10)ため、ほとんど再構築されることなく今に至っている。 そのためCGアニメ『クローン・ウォーズ』でも大々的な活躍は無いが、シーズン2にてグリーヴァスに捕まったイース・コスの救出作戦会議や、シーズン5の聖堂爆破事件で犠牲となったジェダイの葬儀のシーン(偶然なのかこのシーンにもイース・コスがいる)などに台詞無しながらも登場している。 「アニヲタwikiの、物事の真理を把握しうるWiki籠もり! 我らWiki籠もりこそが、項目を追記・修正せねばならん! ――リア充どもは永遠に認めまいがな!」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 次回はイース・コスかイーヴン・ピールの予定です。しかしソーラ・バルクはぜひクローン・ウォーズに出てほしいキャラだった…… -- 作成者 (2020-06-14 13 33 59) カノンの分離主義勢力って人材不足過ぎるからこういう人物がいてもよかったな -- 名無しさん (2020-06-14 14 05 15) ↑分離主義で主に活躍してるのがヴェントレス、グリーヴァス、ドゥークーくらいだし確かにね -- 名無しさん (2020-06-14 14 27 29) メイスのアンチテーゼというかライバル的なポジションで出してたら、クローン・ウォーズのメイスの活躍と評価もまた変わった気がする。 -- 名無しさん (2020-06-14 21 13 07) ソーラ・バルクはカノンには出てないのか…メイス絡みだとデパ・ビラバみたいに大幅に設定が変わる可能性もあるし、このまま消え去っちゃうのかな。 -- 名無しさん (2020-06-14 22 15 58) 強さに加えて信念ある分離主義者でもあったようだし、面白い豪傑だ。ヴァーパッドを動画で見たかったな。 -- 名無しさん (2020-06-14 22 20 15) 漠然とした情報でただの闇堕ちマンかと思っていたが、これほど奥の深い人物だったのか。彼も含めてクローン戦争関連のレジェンズは面白いし奥も深いから本当に惜しいなぁ。 -- 名無しさん (2020-07-21 22 16 48) 実はこの人クローンウォーズでもチラッと出てるんだよね -- 名無しさん (2020-12-25 22 11 28) 名前 コメント
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0617 アフガン安定化協力を宣言 上海機構の首脳会議 [朝日] 駐留米軍「撤退期限設定を」 上海協力機構が声明 0617 アフガン安定化協力を宣言 上海機構の首脳会議 [朝日] 2009年6月17日0時55分 【エカテリンブルク(ロシア中部)=副島英樹、西村大輔】ロシアと中国、中央アジアの計6カ国でつくる上海協力機構(SCO)首脳会議は16日、世界の多極化と、公正な国際金融体制を目指すとした「エカテリンブルク宣言」を採択した。北朝鮮の核実験を受けて「朝鮮半島の非核化プロセス再開への支持」や、アフガニスタン安定化への協力も盛り込まれた。 同日夕には、ブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国「BRICs」首脳会議も開催され、世界秩序づくりへの積極関与をうたう共同声明を採択した。 今回のSCO会合は、世界金融危機を受けて国際金融体制が主要テーマの一つとなった。現地通貨による決済の強化や新たな基軸通貨の創設などの意見が相次ぎ、ドルに対する強い懸念が示された。 ロシアのメドベージェフ大統領は「SCO加盟国は現地通貨による決済を増やす可能性を協議したい。国際通貨体制の強化にはドル決済だけでなく、将来的には超国家な通貨と決済システムの創設が必要だ」と主張。カザフスタンのナザルバエフ大統領も「SCOの統一した国際的な決済通貨を創設する作業を始めるべきだ」と応じた。中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席は「金融の対話メカニズムを創設し、通貨政策の協調を強める必要がある」などと述べた。 宣言では、北朝鮮の名指しは避けながらも朝鮮半島の非核化に言及した。ナザルバエフ大統領は会合で「北朝鮮による核実験は、核不拡散に極めて否定的な結果を招き、脅威をもたらしている」と非難。メドベージェフ大統領も記者会見で「北朝鮮が国際社会に与えている脅威は容認できない」と述べた。 今回の会合には、SCOメンバーではないアフガニスタンのカルザイ大統領が招かれ、反政府勢力タリバーンの伸長で不安定化するアフガン情勢も主要議題となった。メドベージェフ大統領は「アフガンの安定化は隣国パキスタンなしには進まない」として、両国とロシアの3カ国での会談の枠を設定。米オバマ政権が優先課題に掲げるアフガン安定化で、米国への協力を強化する意向を示した。 このほか、中国がSCO加盟国に対する100億ドルの財政支援措置を表明。スリランカとベラルーシを「パートナー対話国」と決めた。 URL http //www.asahi.com/international/update/0616/TKY200906160312_01.html 駐留米軍「撤退期限設定を」 上海協力機構が声明 2005年07月06日01時13分 中ロ両国と中央アジア4カ国で作る上海協力機構(SCO)は5日、カザフスタンの首都アスタナで首脳会議を開き、共同声明を発表した。声明では、中央アジアに展開する米軍駐留部隊に撤退期限を設定する必要があるとして、事実上、米軍の撤退を要求。中央アジアでの対米不信の高まりに、米国への一極集中を嫌う中ロの思惑が重なった形だが、米国の反発を招くことは必至だ。 共同声明は「アフガニスタンでの反テロ作戦は活発な局面を終えた。SCO加盟国は、(米国など)反テロ連合国によるSCO加盟国の利用を終える時期を決める必要があると考える」と指摘。また議長国カザフスタンのナザルバエフ大統領は会合で「SCOは地域をテロから守る盾でなくてはならない」と述べ、地域で高まっている「テロ勢力、分離主義勢力、過激勢力」の脅威にSCOの枠組みで対抗していく考えを強調した。 01年の同時多発テロを機に、中央アジアの国々は米軍の基地や部隊を受け入れ、対テロ戦に協力してきた。現在、キルギスとウズベキスタンに米軍基地が置かれ、他の国も空港使用などで便宜をはかってきた。中ロを中心とするSCOの存在感に陰りが生じているとの見方もあった。 しかし、ここに来てSCOは地域での求心力を回復しつつある。中央アジア諸国では、今年3月のキルギス政変、5月のウズベキスタンでの騒乱を経て、「グルジアやウクライナで親欧米政権を生んだ反政府運動を中央アジアに持ち込もうとしている」というブッシュ米政権への不信感が表面化。ウズベキスタンのカリモフ大統領は5日の会議で、中央アジアで相次いだ混乱について「大きな計画の一部が表面化したに過ぎない」として、背後に米国の存在があることをほのめかした。 SCOの準備会合の役目を果たしたのが、1日の中ロ首脳会談だ。胡錦涛(フー・チンタオ)主席とプーチン大統領が「社会発展のモデルの押しつけへの反対」などを盛り込んだ共同声明に署名。ブッシュ政権の「民主主義拡大路線」を否定する姿勢を鮮明にした。両国が声明の中に描いた「21世紀の世界秩序」を受け入れる最初の国際的な枠組みがSCOとなった形だ。 胡主席はSCOを前に、今後の優先分野として安全保障を挙げた。実際、中ロ、ロシアとウズベキスタンは今年、それぞれ史上初となる共同軍事演習を予定。またロシアは、タジキスタン駐留軍を正式な軍事基地に格上げする計画のほか、キルギス南部への新しい軍事基地建設を検討するなど、加盟国間の軍事協力が加速している。 ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンでは旧ソ連末期以来の長期政権が続き、政変直後のキルギスを除いて、反政府勢力への弾圧など、政権の強権的な姿勢が共通している。SCOの米国批判や軍事協力の強化には、加盟国の政権の正当化や延命の狙いが込められていることも否定できない。ロシア紙コメルサントは「中ロが接近すると、アジアに民主主義が育つ余地が小さくなる」と警告した。 また共同声明では、国連安保理改革について、「最大限に幅広い合意が重要で、意見の相違が残っている議案を採決すべきでない」として、日独など4カ国(G4)が提出を予定している「枠組み決議案」採決に慎重な姿勢を示した。さらに今回の会議では、オブザーバーとして、従来のモンゴルに加え、インド、パキスタン、イランを迎えることも決めた。 TITLE asahi.com:駐留米軍「撤退期限設定を」 上海協力機構が声明 - 国際 DATE 2005/07/06 11 21 URL http //www.asahi.com/international/update/0705/010.html
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各無産政党の本質と戦線統一の条件 山崎今朝彌 一、日本労農党方針書 一、序言 日本労農党の結党以来一ケ年の歳月は流れた。極左翼及右翼指導者の分裂主義を排して、階級的統一戦線の確立に向つて勇往邁進した過去一ケ年の苦闘史を願望する時、我等は無量の感慨を覚ゆるものである。この間同志の果敢なる闘争に依つて、我が党の基礎は確立し、今や外部に対して一大躍進をなすべき時機に際会してゐるのである。この際重ねて我が党の立場を宣明し、全無産大衆に対して階級的正道の炬火を揚げるのは我が党の誇りでありまた義務であると信ずる。 二、客観的条件の解剖 我が党は客観的条件の解剖に関して次の如く解する。 イ、世界資本主義の現勢 世界大戦後極度に動揺した欧洲の資本主義は、ブルジヨア階級の必死的努力に依つて辛くも一時の安定を得、その生産に於て、その経済的秩序に於て、稍戦前の状態に復することを得た。この欧洲資本主義の安定に伴つて、世界の資本主義もまた安定したかに見える。然し乍ら一度我等がかかる安定の背後を窺ふならば、それが不安定の安定であり、矛盾の再生産であることを認めざるを得ぬ。それは権力に依る安定であり、労農階級の抑圧と搾取、被圧迫民族の制圧と搾取に基づく所の安定であることを認めざるを得ない。 産業の合理化の名の下に苛虐なる労農階級の搾取と反動政策の上に資本の安定を樹立してゐる中欧諸国及び伊太利、没落して行く悲運を植民地の搾取に依つて繋ぎとめんとして、帝国主義的痙攣を漸く露骨にして来た英国、最も溌剌たる資本主義国家として中には労農階級に欺瞞と懐柔を培ひ、外には強大な資本力を擁して帝国主義的侵略政策に転ぜんとしつつある北米合衆国、帝国主義的侵略政策を資本安定の唯一の槓桿とし、内外政策を専らこの見地から割り出さんとしてゐる日本。これ等の帝国主義的諸国と、帝国主義諸国の制圧及び搾取から脱却せんとしつつある植民地及び半植民地と、社会主義的経済秩序を有する労農ロシアと、この三個の要素に依つて世界経済は織りなされていゐるのである。従つて世界の資本主義が自らの生命を持続せんが為には、 (一)国内に於ける労農階級を欺瞞懐柔するか、或はその反抗を決定的に抑圧することに依つて、言ひ換へれば、労農階級の犠牲に於てその利潤を維持しなければならぬ。 (二)植民地に於ける独立運動を抑圧し、半植民地に於ける民族運動を阻止しなければならぬ。 これが世界資本主義の唯一の安定策である。而して世界の帝国主義諸国の現になしつつあることもこれに外ならず、世界資本主義の過渡的安定は実にかかる条件の上に築かれたものである。 然らば我々が世界資本主義の安定を以て高々一時的の安定であるとし、不安の安定であり矛盾の再生産であると言ふ所以は何故であるか? (一)国内労農階級の犠牲に於ける資本の安定、所謂産業の合理化政策は、失業者の続出に依る人口の相対的過剰をもたらし、永きに渡つて労農階級の反抗を抑止することが出来ぬ。現に労農階級の新なる反抗の声は所在に挙りつつある。 (二)植民地及び半植民地の自覚に依る民族運動は漸く熾烈ならむとし、帝国主義諸国の搾取を排除せむとする機運は連りに動いてゐる。例へば印度の独立運動、支那に於ける打倒帝国主義運動の如きを見よ。而して世界の帝国主義諸国はこれ等植民地及び半植民地の独立運動を抑圧するに共通の利害を有すると共に、夫れ夫れ内部的の矛盾に依つて、これ等植民地及び半植民地の争奪に向つて相角逐せざるを得ない状態におかれてゐる。帝国主義的戦争の危険これである。 (三)労農ロシアに対して経済的政治的の封鎖を敢てしながら、世界経済の一環として労農ロシアを除外することが出来ない。これ英仏等の諸国が労農ロシアに対して国交の断絶を敢てしながら国際経済会議に労農ロシアの代表者を招き、国際軍縮会議に労農ロシアの代表者を加へざるを得ざる所以である。 世界の資本主義は、今かかる矛盾の上に立つた安定と小康とを保つてゐるのである。それがより大なる破壊の前の安定小康であり、矛盾の拡大されたる再生産であることは以上の事実に依つて明かである。かくして世界の資本主義が没落の一路を辿りつつあることは言ふを待たない。然し乍ら、一時的にもせよ資本の安定を見、戦後そのまま没落の急スロープを崩落しつつあるかに見えた資本主義がその陣営を建て直しつつあるの事実を勇敢に認める点に於て我等はかの極左分子と異り、この安定を以て恒久的と見ざるのみか、進んでこれを恒久化せむとする傾向と決定的に戦ひつつある点に於てかの極右と区別するのである。我等は、世界資本主義の安定への必死的努力に当面して、新なる抗争力を対抗すべき新戦術の必要を認むるものである。 ロ、日本資本主義の状勢 世界資本主義連鎖の一環として日本の資本主義も同じ運命を免れるものではない。殊に、貧弱なる自然資源を基礎とし、その誕生の日から帝国主義の揺籃に依つて育まれ、国家の輔導と侵略政策の上に辛うじて繁栄を築き来つた日本の資本主義は、今や、世界的没落の潮流に会して、絶えざる動揺を繰り返してゐる。大正九年の恐慌、大正十二年の震災後に於ける恐慌、昭和二年春に於ける金融恐慌と、それは言はば恐慌と動揺との連続である。これ等の恐慌を通じて資本の集中は急速に行はれ、産業の合理化政策に向つての躍進は目覚しいものがある。殊に過ぐる金融恐慌を機として、急劇に行はれた資本の集中独占は、三井三菱その他二三財閥に依る所謂金融寡頭政治の出現を見、一般無産大衆準無産大衆に対する抑圧と搾取とを露骨にせんとしつつある。 然し乍ら日本の資本主義は、一方に於ては斯くの如く高度に発達した資本の有機的構成を有すると共に、他方に於ては尚封建的の遺制を多分に存する農業国としての面目を保持し、全人口の約五割一分は農業に従事しつつあることを忘れてはならない。資本主義の最も発達した形態と、資本主義前期の形態とを内包し、然かも全体として世界的没落の潮流に合してゐると言ふのがその現勢である。厖大な中小市民階級層の存在とその窮乏化の傾向、農村に於ける人口の相対的過剰と貧窮化の傾向は、日本の資本主義が内包するかかる矛盾の表徴でなければならぬ。 然し乍らかかる矛盾は、金融寡頭支配を妨げるものでなくむしろ益々それを助長するものである。今金融寡頭支配を中心としてあらゆる階級層を見るならば、 一、金融寡頭支配に依る反動政治を支持する階級層 1、資本家階級 2、地主 二、浮動的階級層 1、中小市民階級 2、小地主、自作農 三、金融寡頭支配に依る反動政治に対して反抗する階級層 1、プロレタリア階級 2、小作農民及び農村プロレタリア とすることが出来る。金融寡頭支配にまで進出した日本の資本主義は、かかる背景の上に立つてその反動的産業合理化政策を行はんとしつつあるのである。 かくして日本の資本主義は、 (一)内に対しては益々労農階級の搾取にその基礎を固め反動的傾向を濃厚にせざるを得ない。賃銀の切り下げ、工場の閉鎖、失業の続出、立入禁止、立毛差押へ、あらゆる無産階級運動の制圧はそれが表はれである。今や資本の攻勢は政治的権力と結びついて益々露骨なる搾取を可能ならしめやうとしてゐる。 (二)外に対しては帝国主義的侵略政策の鋒鋩を尖鋭にし、それに依つて資本の安定を策せざるを得ないし、また現に策しつつある。満蒙政策、対支政策は愈々露骨に帝国主義的侵略的色彩を濃厚にして行くであらう。 (三)日本の資本主義はその発達の特殊性から労農無産階級に対してこれを欺瞞懐柔するに好餌を以てする丈けの余裕をすら有たない。唯それが唯一の的ひ所は、発達の特殊性から由来する階級意識不明確な農民層と小市民階級とを有することである。これ等巨大な階級層を反動政策の支柱として動員せんとするのが日本の資本家階級の乾坤一擲の壮挙でなければならぬ。かくして日本の資本主義の運命は、これ等の階級層の争奪を巡つて決定せらるものと言ふことが出来る。 以上の如き事由は自ら無産階級運動の任務を決定する。従来の労働組合農民組合の外に、あらゆる中小市民階級、中小農民層に呼びかけ、これを無産階級の同盟者たらしめる所の組織を有つこと、単なる無産大衆のみならず、これ等の準無産大衆の利害に対しても闘争する所の組織を有つこととかくして無産大衆準無産大衆の打つて一丸した力を以て金融寡頭支配に対抗する事これである。かかる要望の下に生れたのが我が国の無産政党でなければならない。然かもあまたの無産政党の中、我が日本労農党こそ、かかる要望の最も率直なる認識の下に生れた所の政党であると断言して憚らない。日本労農党はその運動方針を次の如く決定せんとするものであるが、要は、外資本の攻勢がもたらす矛盾を如何に誘導し、最も有力なる闘争を如何にして対抗すべきかにかかり、内巨大なる農民層及び小市民階級を獲得し、金融寡頭支配にまで進出したる我が資本主義が、尚発達の特殊性から唯一の支柱と頼むでゐるものを打倒せんとするに外ならない。 三、日本労農党の立場 日本労農党はその立場を要約して『階級的大衆統一党』と宣する。日本労農党は、その出現に当つてかく宣明した許りでなく、その行動に依つてかかる立場を実証しつつある。 (一)何故に階級的にならざるを得ざるか? ブルジヨア階級の必死的資本安定策に抗争し、世界を挙げての反動的潮流と戦ふ為には、労働者と農民を首盟とする階級的政党でなければならない。殊に労働貴族を欺瞞懐柔すべき好餌をすら有ち得ざるほどに急迫せる日本の資本家階級に対しては、階級的政党以外に対抗すべき力がない。自ら階級的平和主義を標榜し、階級協調主義の仮面に隠れて一時的の繁栄を僥倖せんとした社会民衆党すら、その大衆の闘争慾の成長に圧迫されて次第に抗争的ならざるを得ざる実情がこれを雄弁に物語つてゐる。日本の資本主義は、その発達の特殊性に依つて、専制的遺制の排除も、民主主義的勢力の確立も、金融寡頭支配に対する抗争と共に、挙げて無産政党の肩上に投げかけたのである。これ我等が階級的立場を厳守し、階級的立場に立つて抗争せんとする所以である。階級的立場を厳守する点に於て我が日本労農党は社会民衆党と裁然区別せられる。 (二)何故に大衆的ならざるを得ざるか? 所謂大衆的なる言葉の中には二個の意義あることを認める。一つは我が資本主義発達の特殊性より、尚大多数を占むる小売証人、下級官吏、俸給生活者、自作農、自作兼小作農党厖大なる中間階級、準無産階級を我等の伴侶たらしめ、これ等の集中的な力に依つて金融寡頭支配の政治的搾取に対して相抗争するの謂である。言ひ換へれば、無産階級の指導の下に、これ等中間階級分子、準プロレタリア層を動員することを主眼とする謂である。第二の意味は前衛分離主義、分裂主義よりの区別である。現在我が国に於て大衆が公然と要求しつつあるのは前衛政党ではない。また前衛政党ではあり得ない。それは金融寡頭支配に対して、民主主義的勢力の樹立を以て対抗し、この目標の下にプロレタリア準プロレタリア層の大衆を如実に動員することを目的とする政党でなければならぬ。我が日本労農党は、我が国の現状が要求してゐるかかる大衆的政党として、民主主義的勢力確立の為に抗争せんとするものである。それはプロレタリア、準プロレタリアを如実に動員して金融寡頭支配と抗争せんとするものである。この大衆主義と分離分裂主義との区別が我が日本労農党を労働農民党から区別する要点である。労働農民党の指導者は『大衆的』と言ふことを掲げてゐるが事実に於ては前衛分離主義、実践的分裂主義を採つてゐるのである。 (三)何故に統一的ならざるを得ざるか? 現在の資本の攻勢に対抗し、帝国主義的侵略政策を排除し、反動的暴圧に対して断々乎として戦ふ為には戦線の統一を実現しなければならない。これは全無産階級の要望であり、全民衆の切実なる叫びである。これ我等の戦線統一党を標榜する所以である。今や世界を挙げて統一戦線への要求は澎湃として漲りつつある。我等はこの時に当つて、一方に於いては協同戦線の美名の下に戦線の撹乱を企画しつつある労働農民党極左幹部を排除し、他方に於いては大右翼結成の名の下に分裂戦線を組織せんとする社会民衆党幹部を叩き伏せ、以つて統一政党主義の大旗の下に資本に対する単一戦線を樹立せねばならぬ。 (四)日本労農党は以上の立場を具体的に出現する為にまた行動派としての自らの立場を勇敢に宣明する。即ちそれは無産階級準無産階級の現実的利害の為に勇敢に闘争せんとするものである。日本の無産政党の任務が厖大なる中間階級、準無産階級分子の獲得を以てその使命とする以上、我々もまた、これを以て我々の使命とせざるを得ぬからである。而してそれ等の分子は、我々がそれ等の人々の日常的利害の為に勇敢に闘争することに依つてのみ獲得することが出来るからである。日本労農党は行動派でなければならぬ。また現に行動派である。 四、日本労農党の具体的政策 日本労農党の以上の如き立場は必然的にその具体的政策を決定する。日本労農党は具体的には次の如き政策を行はんとするものである。 (一)国内的 国内的には先づ民主主義的勢力の確立に向つて闘争せんとするものである。封建的専制的勢力の懐から政治的勢力をスリとつた日本の資本家階級は、民主々義的勢力の確立を無産政党の任務として課した許りでなく、これを拒否するべく金融寡頭支配を樹立してゐるからである。その意味に於て、我等の闘争もここから出発しなければならぬ。即ち政治的には封建的諸勢力軍国主義的諸施設の改廃を行ひ、団結、罷業、耕作、結社等の自由を獲得し、経済的には生産及び分配の合理化を以て産業の合理化政策と争ひ、社会的には社会的諸施設に対する無産階級の参与権の確立を期しようとするものである。 (イ)民主主義的勢力の確立の為に闘争しなければならぬ。徹底普選獲得の為の闘争、団結権、罷業権、耕作権、の確立に向つての闘争これである。 (ロ)産業の合理化政策に向つて闘争しなければならぬ。金融資本閥唯一の利潤政策である産業合理化政策に対して決定的に抗争しなければならぬ。八時間労働制の確立、失業者救済制度の確立、最低賃銀法の制定、健康保険法の改正、婦人労働者少年労働者の使用制限等に向つての闘争がこれである。 (ハ)金融寡頭支配の政治的搾取に対し断乎として抗争しなければならぬ。生活必需品の消費税及び関税の撤廃、無産階級準無産階級を誅求する租税の撤廃、累進的資本税相続税の設置等に向つての闘争がこれである。 (ニ)金融資本閥の農民懐柔策に抗争し、それがからくりを暴露しなければならぬ。自作農創定案に対する闘争、米価釣上げ政策に対する反対等これである。此等の対策は肥料、種子、農具の公営、耕作権の確立等でなければならぬ。 (ホ)反動的侵略的政策に対して絶えず抗争しなければならぬ。軍備の徹底的縮小軍国主義者的教育の反対、対支干渉の要求等これである。 (ヘ)俸給生活者階級の不平を代弁し、闘争的なインテリゲンチアをかかる分野に於て獲得せんとする。 (二)対植民地 植民地に対しては植民地の自治解放運動を声援し、植民地の差別撤廃に向つて断乎として抗争しなければならない。 (三)国際的 国際的に進出することは此等の運動をして効果あらしめる最緊要事である。然し我等はかのインターナシヨナルの名の下に政府資本家の国際的運動と妥協苟合するが如きは断乎として排斥しなければならぬのみならず我産業現下の、植民地運動の危機に際し、また帝国主義的戦争の危急を前にして、むしろ勇敢に国際的戦線の統一を提唱せんとするものである。これこそ現下の分裂せる戦線を統一し以て無産階級運動を国際的に強力ならしむる所以なりと信ずるからである。 五、結語 日本労農党は以上の如き認識に基き、以上の如き政策の下に、最も勇敢なる闘争を続けつつある唯一の無産政党である。我等はこの趣旨に従つて立党し、この趣旨に従つて進む。我等の指導精神はもとより客観的の状勢に応じて伸縮するものではあるが、一夜にして手を翻すが如き浮動的のものはない。我等はこの指導精神を生かすが為には、一死敢て辞せざるの決意を有するものである。日本の無産階級運動の過去の欠点は、一の指導精神を最後まで、戦ひぬくと云ふ徹底性の欠如でなければならぬ。我等は以上の指導精神を明確に掲げ、あらゆる事象を通じて最後まで戦ひ抜かんとするの決意をここに宣明するものである。 二、全無産政党統一に関する決議案 主文 一般大衆の要望に聞くも、限りなき支配階級の攻勢に見るも、全無産政党統一が我が国無産階級の目下の急務である。 一、階級戦線の分裂を目して、『必要にして正当』なりと公然と云ふものは労働農民党の極左翼幹部なる所謂福本主義者と、社会民衆党及び日本農民党の右翼幹部のみである。よつて全政党統一はこの極左翼及び右翼の分裂主義とその把持者及び追随者とともに一掃することによつてのみ可能となることを確認する。 一、吾党はかかる運動に好適せる地位を利用して、適当なる有ゆる議会に於いて、この大衆の要望と従つてまた吾党の立党精神=階級的大衆統一主義を実現すべく各党に統一を提議し、これを促進すべき階級的使命を有する。 一、全政党の具体的統一を初歩的にも最大限度に可能にする条件は宗派的分裂主義なる福本主義及び同主義者の排除であることを確認する。この統一条件は絶対的であり、また今日に於ける一般大衆の具体的統一条件の常識であると認める。 一、統一促進は、具体的統一の提議のみでなく、協同戦線の有力なる手段であることを認める。協同戦線はその定められたる原則に従ひ統一運動のために有弾力性的に扱はれねばばらぬ。 一、政党統一は四全国政党のみならず、地方無産政党をも含む。 理由 一、吾国階級線に現存する分裂状態は、階級運動本来の意味からしても甚だ悲しむべき現象であつて、これ等は過渡的現象として速かに克服されねばならぬ。過般の府県会選挙戦に於いて各党が組織せる宣伝によつて生長した大衆の政治的自覚と、限りなき支配階級の攻勢は、今や大衆をして熾烈に全政党統一を要求せしめてゐる。かかる大衆の要望を満足せしめずして放置せんか、それは大衆をして反動へ第一歩を始めしむるものであり、且又無政府主義者の政治否定、経済主義者の政治的中立及び政治的無関心へのよき温床を与ふるものである。かかる傾向は地方政党の組織と、既成全国組合に加入せざる独立組合の組織が近来盛んなるにも見ることが出来る。(信州に於いて労働農民党の脱退分子をも結合する信州大衆党の組織、東京市電協同会東京電燈従業員組合等の独立組合)更らに政党間の対立闘争は大衆をして政治中立と独立組合へ走らしめてゐる。(農民党支持の組合を脱せる新潟の農民組合) 一、階級戦線の分裂作為者が何人であるかについて相互に於いて責任を免れんとしてゐるは、尚ほ帝国主義戦争の主動者が何人であるかの論議と同一の観がある。しかし『戦争の目的を知らんとせば、その講和条約を見よ』であつて、今日の分裂状態を『正当にして必要なり』と、恥しらずにも主張するものは、労働農民党の極左幹部なる所謂福本主義者と、社会民衆党及び日本農民党の右翼幹部のみである。『両極相通ず』との古人の言語をあざむかざるに驚く。極左幹部は対立分離主義であり、彼等はその前に不断に自己の対立物を必要とするは、なほ淫婦が若き男を漁ると同様である。しかも対立物が欠除した場合には、自己分離を行つてその対立物を作出する。(婦人同盟の組織途上の如く)しかも厚顔なる彼等は左翼を仮面せんがために、大衆の要望を愚弄し名目的なる協同戦線、共同闘争(吾党への調願同盟の共同戦線を見よ)を云々一度これが形成ならんとするや対立物の消滅乃至は対立縮小の防止のために、これが破壊に専心する。(吾党より申込たる対支干渉運動の破壊を見よ!)故にこそ彼等が長くその背後の力と頼みし第三インターナシヨナルさへも、今や正当にも『実践的分裂主義宗派主義』の極印を彼等の面上に押捺するに到つた。(参考文書、『第三インターナシヨナルの福本派批判』参照)しかもその大衆の攻撃に面するや、これをゴマ化すためには如何なる恥知らずの転換をも行ひ、そこには大衆政党の党規の蹂躙をも物としない。(福本派幹部が労働農民党昨年度大会の決議せる吾党との合同に関する同党の決議を蹂躙して、今や卒然として合同の共同委員会を吾党に申込んで来たるを見よ) 右翼幹部は、左に対して右を結成し、以つて支配階級に分割支配の客観的条件を提供し、以つてその政策をあくまで遂行せしめ、その報酬として、官憲的圧迫の緩和、御用組合組織権を得、労働ブローカー的利権を恒久化せんとする卑劣なる所謂ダラカン根性である。(参考文書日労新聞切抜参照) この両分裂主義の理論としての克服、従つてそれに随伴すべきその把持と追随者との強力的排除が全政党統一の不可避的条件である。吾党は斯る意味に於いては、大衆がこの両者を絶滅するために大衆が組織せる力である。 一、労働農民党福本派幹部は大衆の圧迫とその内部の反対派の圧状のために、同党大会を前にして卒然として政党統一を提唱して来た。しかしこのことは同党の地位、その指導精神福本主義に対する全大衆の批判からしても、如何に彼等が具体的統一に誠意と熱意なきかを物語るものだ。即ち彼等は不成立を予想し、それを希望して提唱したのだ。彼等の慾求するのは、統一そのものでなく、統一の提唱といふ名義である? 全政党の具体的統一を考慮するときに、吾等の諸党間に位する地の利は最もかかる計画の執行者に適してをり、且つ吾等の立党精神-階級的大衆統一主義こそは、一般大衆の要望を具現するものである。見よ! 吾党の旗-階級的大衆統一主義の旗は今や大衆の旗として燦として光り輝いてゐるではないか! 吾党はこの旗の下に大衆を糾合し、その要望を統一しその地の利を利用して全政党統一のための階級的使命を遂行せねばならぬ。 一、全政党統一の具体的条件は、全政党の配列を見るも、合法的単一政党の性質に於いて見るも、かの宗派的分裂主義とその一派の排除である。それは既にして大衆の具体的統一条件の常識である。殊に大衆の今日に於ける彼等に対する熾烈なる反対に於いてをや!(労働農民党内にさへ反対派があり、それは生長しつつある!)社会民衆党及び日本農民党は更らに多くの条件を要求するかもしれぬ。しかし吾党はこれを単一絶対条件として固執せねばならぬ。 福本一派を構成要素から除外することは純一主義と矛盾するといふか? 否さうではない。福本主義は戦術でなく思想である。この思想は且つての大杉派の無政府主義の思想と同一程度に大衆の一部に対し、伝染病的影響を与へた。大衆をして『戦ひとつたる』かかる病的思想を『戦ひ失はしめ』て健康を恢復せしめる最捷径はかかる病原伝播者及び媒介者の一斉没落にその第一歩がある。吾々は看板塗かへによつて彼等を許すことは出来ない。彼等はよしとしても大衆の疾病をどうする。かかる発源集団を将来に持込むことは、今日までの混乱を将来に於いてもまた再生産することである。 社会民衆党、日本農民党の所謂ダラ幹排除を条件づけないのは、彼等に屈服するのか、断じて否? 吾党は何人よりも彼のダラカン的分裂主義をにくむ。しかし右翼団体に統一を要求するに際し、無条件にても拒否し兼ねまじき彼等にいよいよ拒否の口実を与へるものであり、かかる統一を欲せざる福本主義の対立萬能思想に感染せる考へ方である。統一を通じてのみ、しかも彼等の大衆に伍して、吾等の犠牲的行動を通じてのみ、ダラ幹を最後的に克服し得るであらう。この行動を通ずるの一点は吾党の闘争規模を福本主義のそれと区別する差異である。 一、統一獲得の有効なる武器として協同戦線がある。吾々は党の規定せる協同戦線の原則に従ひ、行動を通じて他団体の大衆を統一にまで牽引するであらう。 一、大衆の要望従つてまた吾党の立党精神-階級的大衆統一主義は、吾国支配階級に対する単一階級戦線としての合法的単一政党の結成にある。統一は故に四全国無産政党のみならず、諸地方無産政党をも当然に含まねばならぬ。諸地方無産政党の存在理由は四無産政党統一によつて半ば失はれるであらう。吾党は有ゆる機会に於いて諸地方政党に対し全無産政党統一に誘引せねばならぬ。 (以上は皆十一月二十七、八、九日の日本労農党全国大会に提出可決された中央執行委員会案である-筆者) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放』(解放社)第7巻1号7頁(昭和3年(1928年)1月1日発行)>
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中国共産党による宗教弾圧 【中華人民共和国憲法第三十六条】 中華人民共和国公民は、宗教信仰の自由を有する。 いかなる国家機関、社会団体又は個人も、公民に宗教の信仰又は不信仰を強制してはならず、宗教を信仰する公民と宗教を信仰しない公民を差別してはならない。 国家は正常な宗教活動を保護する。何人も、宗教を利用して、社会秩序を破壊し、公民の身体・健康を損ない、又は国家の教育制度を妨害する活動を行ってはならない。 宗教団体及び宗教事務は、外国勢力の支配を受けない。 宗教への弾圧 以上のように中国は、憲法上では少数民族の権利と信教の自由とを保証している。 更に1984年には「民族区域自治法」を制定し、各民族の平等、各民族の文化言語、文字を使用し発展させる自由、すべての風俗習慣を保持しまた改革する自由、民族区域自治などを保証している。 2004年11月には、信教の自由を保証し、宗教活動を管理するという名目で、新しい「宗教事務条例」を出した。 これら国内で制定されている憲法・法律の他にも、中国は常任理事国を勤めている国際連合憲章にも、中国が締約している国際人権規約、人種差別撤廃条約などにも人権尊重と民族の平等が謳われている。 しかし、中国は自らが掲げる立派な「お題目」や国際的な条約などに対して、実行に際してはことごとく違反している。 東トルキスタンのイスラム教 様々な文物が行き交ったシルクロードの要衝である東トルキスタンでは、時代や地域によって様々な宗教が信仰されていた。元々遊牧民であったウイグル人は伝統的なシャーマニズム信仰を持っていたが、マニ教を国教とし、さらには定住化の後には仏教や景教(キリスト教ネストリウス派)なども受容し、独自の文化を展開するようになった。 その後9世紀ころから庶民の間でイスラム教が信仰されるようになっていったが、支配階級の中で受け入れるようになったのは、920年カラハン朝のサトク・ボグラ・ハンからである。それから40年後にカラハン朝はイスラム教を国教と定めるようになった。テュルク系民族の国で初めてイスラム教を受容したのがカラハン朝であると言われている。 これ以後次第にイスラム教が東トルキスタン全域に浸透していったが、東トルキスタン全土がイスラム化されるのは、16世紀前半にクムル(ハミ)から仏教徒勢力が追い出されたときである。 イスラム教が受容されてから、東トルキスタンのウイグル人たちにとって、イスラム教は生活の重要な位置を占めてきた。しかし中国政府は東トルキスタンのウイグル人を民族浄化政策の一環として、イスラム教の信仰に対しても様々な弾圧を行っている。 中国政府の行うウイグル人のイスラム教信仰への弾圧 中国は共産主義無宗教国家として、それぞれの宗教に対しての抑圧を行っているが、ウイグル人のイスラム教信仰への弾圧は特に厳しいものになっている。 全てのモスクは国家が管理する「中国イスラム協会」に登録されていなければならず、イマム以上の宗教指導者は当局からの許可が必要となっている。宗教指導者は定期的に愛国教育を受けて、免許を更新する必要がある。つまりは、イスラム教の教義に通じた者ではなく、中国政府の意向に沿う者が宗教指導者になっているのである。 また当局によって、どの版のコーランを使用して良いか、催事でどのような内容を話してよいか、などが厳重に監視されている。 更に2007年からは、ムスリムの五行である「メッカ巡礼(ハッジ)」を阻害するために、ウイグル人のパスポートが取り上げられるということも起きている。 モスクには18歳以下の者、公務員、共産党員は入ることが禁止されている。18歳以下の者には自宅で宗教教育を受けることすら禁止されている。 また学校では、宗教の祭日を祝うこと、宗教のテキストを学ぶこと、宗教的な衣装をまとう事などが禁止されている。地域によっては女性のスカーフ、男性のひげなども禁止されている。 学校の寮では教師が、1日5回の祈りや、ラマダンのときの断食(日中は飲み食いをしない)などの、宗教的行為を行っている学生がいないかを見回っている。皮肉なことに、ラマダンの時期だけ、職場や学校では昼の弁当が用意されるという。 文革の時期には多くのモスクが閉鎖され、聖職者も逮捕されるなど、宗教的に最悪の受難の時期であった。文革終了後、徐々に改善されつつあったが、90年代中頃から再び数百のモスクが閉鎖に追い込まれている。もしこれらの中国政府による宗教的取り決めに違反した場合には、職場などから追放、罰金、トウ案(身分調書)への犯罪歴の記録、家族への嫌がらせ、拘留、労働矯正などの行政処分が待っている。 中国政府の目的は、国家の許可なしに宗教団体が宗教活動をすることを困難にさせることと、許可した場合であっても、その宗教団体を自らの監視下に置くことである。 ソ連の崩壊と中央アジアの独立があった1990年代中頃から、イスラム教への弾圧が強められた。中国政府は犯罪撲滅のため「厳打」キャンペーンが度々行われるが、中国全土では通常の犯罪についてを対象にしているのに対し、ここ東トルキスタンに於いては、宗教への弾圧の手段として用いられている。ウイグル人の「宗教活動」=「分離主義運動」であるとみなし、「厳打」の対象であるとされている。 ウイグル人の宗教活動に対しての締め付けは、他の民族に比べて厳しくなっている。これは他の民族、カザフ、タジク、ウズベク、モンゴルなどは既に中国の外に自民族の国家があることから、それほど民族独立主義的な志向がないと見られているためである。 イスラム教は、彼らテュルク系諸民族のアイデンティティのうち、かなり重要な位置を占めている。よって、中国政府からの弾圧は、彼らからしてみれば単なる宗教への弾圧に留まらず、自らの存在を否定されるかのような脅威を抱かせるものになっている。若者への宗教的な教育が行われないこと、それと共に地域社会の連帯が好ましくないとして政府により地域の集まりが制限されていることなどによって、若者の信仰やモラルが低下していると言われる。 さらに様々な抑圧や経済的な差別などから希望を失う者が、ドラッグに溺れてエイズに罹ったりするなど深刻な社会問題を生んでいるのである。 お問合せはこちら
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3 クラナガンは、時空世界を統括するミッドチルダの首都である。 旧暦時代の戦火で廃墟と化した都市を取り壊し、区画整理しながら拡大・発展してきた。 時空世界の中心地として、管理内外の様々な世界の種族が集まるこの超巨大都市には、三つの政府機関がある。 一つ目は、行政機関として総ての時空世界に君臨し、政府の意思決定機関でもある元老院。 二つ目は、立法を司り、唯一の法律制定機関である最高法院。 そして三つ目は、司法・軍事・治安を一手に引き受けている時空管理局。 その中枢である時空管理局本局ビル(旧地上本部)。 1000階建てのセントラルタワーと、その周囲を守護騎士の如く囲む500階建てのサブタワーが周囲を圧倒する この超高層建築物には、JS事件後の組織改革で管理局の全機能が集約される事となった。 しかし、同事件で500階より下のフロアの多くが破壊又は損傷を受け、その修理工事も完了してない現状では、 999階に長官室、998階は統合幕僚会議の議場、それ以外のフロアは、陸上部局と次元部局の臨時オフィスと NMCC(国家軍事指揮センター)の一部が稼動を開始しただけである。 アール・デコ様式の幕僚会議議場控え室は、招集をかけられた管理局幹部及び、上級職員でごった返している。 彼らは、議場が開くまで雑談したり、ホールのあちこちにある空間モニターで、最新のニュースをチェックしたり していた。 モニターには、現在クラナガンで起きている、デモ隊と管理局治安部隊の衝突についてのニュースが流れている。 綺麗にメーキャップされた、青いスーツ姿のアナウンサーが営業スマイルを顔に貼り付けて、原稿を淡々と読み 上げていた。 「本日朝8時より、クラナガン第28区のフューリーダ通りで行われている、分離主義派一般民によるデモは、デモ隊 内部に紛れ込んでいた過激分子によって暴動に発展し、現在、管理局機動一課第6師団の陸士部隊が鎮圧に当たって おります」 画面は緊張した表情で体を屈め、絶えず背後を気にしながら実況をしている、青色の肌に二本の触角状の角を頭に 持つ、水色のYシャツを着たレポーターに切り替わり、画面下部には、地球人類のとは異なる文字のテロップが 表示される。 テロップを日本語訳すれば、KBC(クラナガン放送局)のロゴと生中継の表示、バーズ・ダドゥアという レポーターの名前になる。 「フューリーダ通りのデモ現場です。えー、現在わたくしの背後では…デモ隊と陸士部隊の 激しい衝突が繰り広げられております」 それと同時に、カメラは衝突現場の方へズームする。 画面には、魔方陣を展開して暴徒鎮圧用に設定された魔力弾を発射する陸戦魔導士数名と、 その攻撃から逃げようと必死に走るデモ隊が映し出される。 路上には弾が命中して、うずくまったりのた打ち回ったりするデモ参加者と、投石に使われた 石や逃げる際に捨てられたプラカードが見える。 プラカードの幾つかには「我等に当然の権利を!」「私達は奴隷ではない!」と書かれている のが読み取れた。 「えー、最初はデモ隊が陸士部隊の前でプラカードを掲げ、シュプレヒコールを叫びながら歩いて 回っておりましたが、いつしか自然発生的に石を投げつける者――」 すぐ近くで物が割れる音がして、レポーターの話が途切れる。 「えー、それからプラカードで殴りかかる者や、停まっている車をひっくり返す者が出始めた為、 その鎮圧のために陸士部隊が発砲を―――」 今度はヒュッと何かが目に見えない速さで走る音がして、画面端に映る車のフロントグラスが粉々に 砕け、破片がレポーターや画面に降りかかる。 「伏せろ! 伏せるんだ!!」 レポーターはそう言って地面に倒れこみ、画面も上下左右に揺れる。 再び画が安定した時、視点は地面スレスレにまで下がっていた。 画面には、石や、どこから持ってきたのか8インチのテレビモニターを投げつけるデモの群衆、 そこへデバイスを向ける陸士たちが通りの向こうに映っている。 彼らの発砲で、五~六人が倒れるのが見えた。 それと前後して、複数の人間の怒号が聞こえたかと思うと、画面真正面に路面へ叩きつけられる 人の顔が映る。 苦痛にゆがんだその顔を陸士のブーツが踏みつけるのと同時に、画面はスタジオのキャスターに 切り替わった。 「中継が途切れましたので、スタジオより引き続き…」 「ふん、何が“我らに当然の権利を”だよ」 ブラウンカラーの管理局職員用スーツにミニスカートの、どう控えめに見ても十五歳以上 には見えない少女が、キャスターの解説を聞き流しながら苦々しげに呟いた。 「あたしら管理局が次元世界と主要地上世界の安全を守る為に、どれだけの犠牲を払って きてるか分かって言ってんのか?」 「ヴィータ」 ヴィータという名の少女の横に立つ、ピンク色の長髪をリボンでポニーテールに束ねた、 同じ制服にミディスカートの、二十代前半の女性がヴィータを窘めるように言う。 「でも、そうだろシグナム? 魔術の力も無く、身を守る術のない只の一般民が――」 ヴィータがシグナムと呼んだ女性は、ヴィータの肩に手を置いて厳しい表情で言う。 「ヴィータ、お前は主はやてに同じ事を言えるのか?」 シグナムの言葉に、ヴィータははっとした表情でシグナムを見つめる。 「主はやても、かつては彼らと同じ…いや、それ以上に無力だったのだぞ。それを忘れるな」 「う…うん」 ヴィータが力無く俯いて答えた時、白の教官用制服を着たなのはが二人の所へやって来た。 「お待たせ。ヴィータちゃん、シグナムさん」 「ああ、なのはか」 「なのは…」 弱々しく呟いて顔を伏せているヴィータに、なのはは訝しげな表情で問いかけた。 「ん? どうしたの、ヴィータちゃん?」 「いや、あの…」 言いよどんだヴィータに、なのはは微笑みながら言う。 「何か悩み事があるなら、私でよければ聞いてあげるよ」 俯いていたヴィータは、意を決したように顔を上げてなのはに言った。 「なのは…。あたし、いつの間にか思い上がってみたいだ」 「え!?」 ヴィータが先のことを話そうとした時、二等陸曹の階級章を付けている、蠅の顔をした管理局員 がやって来た。 「高町なのは一等空佐と…シグナム三等空佐にヴィータ一等空尉でございますね?」 三人が頷くと、陸曹は空間モニターを開いて説明を始める。 「皆様がこれから受け取る情報は、機密扱いです。よって議場内でお聞きいただく内容は、親類縁者は もちろん、無関係の局員に対しても全て他言無用です。この会議も機密となり、皆様がここに来た事も 公式の記録には残りません」 三人とも気後れする事無く普通に頷いた。仕事柄、この種の制約に受ける事がザラだからだ。 「では、こちらの機密保持誓約条項に捺印を願います」 三人は陸曹が開いたモニターに、一人ずつ人差し指を押し当てる。 「大変お待たせいたしました、議場へお入りくださいませ」 陸曹はそう言って丁寧に頭を下げると、他の雑談をしている将校グループの方へと歩み去る。 「じゃあ行こうか」 なのはが言うと、シグナムとヴィータの二人は頷き、議場入口へと向かう。 「で、ヴィータちゃん。さっきの話って何だったの?」 なのはに促されて、ヴィータは先程の事を再び話し始めた。 管理局統合幕僚会議々場は、最大一千名を収容できる大規模なホールで、演壇のあるステージを基点に、 扇形に聴衆用の座席が置かれている。 議場全体は音響設計とデザインの両立を目指した幾何学的オブジェで彩られ、暗幕が下げられたステージ の後ろには、管理局のエンブレムが吊り下げられている。 議場中央部の辺りの聴衆席、7~8メートルはあろうかという身長の長い鼻の巨人の隣に、なのはたち三人は、 話をしながら座る。 「そうだったんだ…」 ヴィータの話を聞いたなのはは、難しい表情で言った。 「シグナムに思い上がりを指摘されるまで、すっかり忘れてたんだ。 かつて、はやてと出会うまであたし達がどんなに道具として扱われてきたか、それがどれだけ嫌な事だったかを…」 そう言って落ち込んだヴィータに、なのはは慎重に言葉を選んで答える。 「ヴィータちゃん、人が…危険を承知で一生懸命主張している事に対して、無力だからって見下げるのは確かに 良くない事だよ」 なのはの言葉に、ヴィータは顔を伏せ、両手を強く握ってかすかに頷く。 「でもね、そうやって自分で過ちを認められたんだから、その間違ったと思うところを改めて行けばいいと 思うよ」 なのはは、そう言ってヴィータの頭を優しく撫でる。 「そうか…って、撫でんなぁ!」 なのはに頭を撫でられて微笑んでいたヴィータは、自分が子ども扱いされている事に気付き、頬を赤く染め ながら、頭を振って腕を振り払う。 「あはは。ごめん、ヴィータちゃん」 「ふんっ!」 なのはが頭を掻きながら謝ると、ヴィータは顔を赤くしたまま、腕を組んでなのはから顔をそらした。 「しっ、長官が参られたぞ」 人差し指を口に当てながら言ったシグナムの言葉に、二人は話を中断してステージに視線を向ける。 緑の顔に金色の鶏冠のある蜥蜴人間を先頭に、日系や白人と思われる地球人類系や『エイリアン』を 思わせる、後ろに頭の突き出た亜人種といった男性数人と、二十代後半の冷たい雰囲気を漂わせる 眼鏡をかけた女性一人の、幕僚たち数人が演壇へと歩いていた。 全員、青の上級幹部用スーツと男性陣は白のスラックスを、女性はシグナムと同じミディスカートに ストッキングを履いている。 「オーリス秘書官、私の見たところ、その…ずいぶんと若い者が多いように感じるのだが」 演壇に立った蜥蜴人間が、周囲を見回しながらオーリス・ゲイズという名の女性秘書官に言うと、 オーリス秘書官は淡々と答える。 「ゲラー長官、全員各部門のエキスパートです。 最近、管理局では目ぼしい人材を学卒の段階で確保するようになってきておりますので、必然的に 若者が多くなります」 ここで少し間をおいてから、オーリスは念を押すように言う。 「重要なのは能力であって、年齢ではありません」 初代時空管理局長官ディグ・ムデ・ラ・ゲラーは、それでも不安げに首を振りながら言った。 「それはそうだ。しかし、今回は事の重大さを考えると、多少なりとも成熟した人材の方が望ましい のだが…そう思わんかね? ナカジマ空佐」 話を振られた初老の日系男性、ゲンヤ・ナカジマ一等空佐は苦笑いしながら長官に答えた。 「理想を言えばその通りでしょうが、現実はこの通りですし、若くても成熟した人間は幾らでも居ますから」 ゲラーは、首をすくめて頷くと、もう一度聴衆を見回し後でマイクを口元に寄せた。 「ディグ・ムデ・ラ・ゲラーだ。来たばかりの者は、空いてる席に適当に座ってくれ」 具体的な自己紹介の必要はないという事が分かっているので、ゲラー長官は、早速話を始めた。 「分かっている者も居るとは思うが、まだ、状況を飲み込めていない者も居るだろうから、改めて 説明しよう。 昨日、現地時間十七時三十八分、第1158管理外世界のセギノールという地にある、管理局中央基地が 攻撃を受けた。 当基地には、陸士部隊五百十九人と空戦部隊百四十六人が常駐し、攻撃当時は次元航行艦一隻に ロストロギアの探索任務中だった執務官一名が居たが、不意の攻撃になす術が無かったらしい。 現在のところ、生存者は確認されていない」 ゲラーはここで一旦言葉を切り、聴衆に意味が浸透する時間を置く。 初めて事情を知った者たちからの、不安げなざわめきが議場に満ちる。 ゲラーが話を再び始めると、全員彼の話を一言一句聞き漏らすまいと、息を潜めて聞き入った。 「一般には一時間後に公表するが、諸君らには先に伝えておく。 今のところ、何処の勢力による攻撃かは不明だ。また、分離主義派を含む、反管理局勢力からの 声明もない。 手がかりとなるのは、この信号音だけだ」 ゲラーが振り向いて頷くと、オーリスは空間モニターを開いて何事か言う。 すると、議場全体に設置されたスピーカーから、耳をつんざくような甲高い騒音が響き渡った。 「これは、襲撃者が管理局のネットワークシステムをクラッキングしたときの信号だ。 後の調査で、攻撃の目的は我々のネットワークの最深部に侵入する事だったと推測されている。 幸い、基地職員の賢明かつ勇敢な判断で、クラッキングは途中で阻止する事が出来た。 しかし、どんな楽観的な見通しに立っても、同種の攻撃が再度行われるのは確実であるため、 現在タイコンデロガは信号の解析とクラッキングの対策に取り掛かっている」 ゲラーは身を乗り出して、議場の聴衆一人ひとりを見つめながら、念を押すように言う。 「元老院は、第1158管理外世界に次元航行部隊と地上部隊の大規模派遣を決定した。これに伴い、 管理局もDEFCON3体制へ移行する。 ここに居る者は、戦闘と諜報のエキスパートだけだ、君たちのこれからの働きに期待する」 ゲラーは演壇から去ろうとした時、言い忘れていた事が一つある事を思い出して、マイクに向き 直った。 前へ 目次へ 次へ
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4 第1158管理外世界。 そこは、巨大な砂丘が果てしなく続く死の世界。 強烈な陽射しが砂を焼き、目を灼き尽くさんばかりに照り返してくる。 時々吹く風が砂を巻き上げ、その跡が風紋となって砂上に刻み込まれていく。 突然、砂丘の一角が盛り上がり、砂の中から潜望鏡のように、髑髏を思わせる 金属製の頭部が現れた。 光学映像、赤外線、紫外線。人間よりも遥かに広い視野と高感度の眼が、周囲 を隈なくスキャンする。 数秒後、目指す目標――黒布に包まれた担架を、交代しながら運ぶ十人弱の人間 たち――を発見。より接近しようと、頭部は再び砂の中へ潜り込んだ。 陸・空の魔導師たちは、体内総ての水分を蒸発させるかのような、凄まじい炎熱 と闘いながら、彼らは砂丘の山脈を踏破する。 やがて、砂に埋もれかけた、いつごろ死んだか分からぬ、東洋の竜に似た巨大な 生物の骨が横たわる場所に差し掛かると、魔導師部隊はそこで休憩する事に決めた。 幸い、背骨を頂点に、両側へトンネル状に肋骨が伸びているので、そこへ衣服や ポンチョを掛けると、即席の日除けシェルターを作る事が出来た。 最も日の当たらない場所に担架を運び込み、他の者たちはその周囲で座ったり 寝たりして、昨夜以来ずっと動きっぱなしで疲れた体を休ませた。 「…見た事ない、バカでかい化物(バケモノ)だったな」 仰向けに寝転がりながら、グーダが呟いた。 「ガジェットドローンにしちゃ火力凄過ぎだし…、戦闘機人にしちゃでか過ぎる…」 「分離主義の連中か?」 体育座りをしているロアラルダルが、横向きに寝ているデ・カタに問いかけると、 彼は首を横に振って否定した。 「いや、奴らにあんなの作れないッスよ。それこそ、ジェイル・スカリエッティ みたいな、頭のいいクレイジーな奴でなけりゃ…」 それっきり会話は途切れ、辺りを沈黙が覆う。 エップス陸曹は、意識不明で担架に横たわっているフェイトに付いている、 蛇の顔をした女性衛生兵とデュラハの方を振り向く。 「執務官の様子は?」 ブラックアウトが放ったプラズマ弾の直撃を受けた胸部には、バリアジャケット の上からガーゼが当てられて幾重にも包帯が巻かれ、吹き飛ばされた車両に激突 した時に骨折した両足には、応急の副え木が当てられている。 「出血は、何とか止めることが出来ました。ただ、脚の方はひどい骨折をして まして、早いうちに本格的な治療をしないと…」 「そうか…」 エップスは、次に胡坐を掻いて座っているエグゼンダに尋ねる。 「次元航行部隊がこちらに来ているはずだ。空戦魔導師(そっち)の方で連絡を 取れるか?」 エップスの問いかけに、エグゼンダが自分のサブマシンガン型デバイスに声を かけた。 「シューティングスター、次元航行艦とコンタクトを取れるか」 機関部にある、丸くて青い宝石が二・三度瞬いた後、申し訳なさそうな口調で 答えた。 「申し訳ありませんマスター、現在のところ返答はありません」 エグゼンダは、隣で同じように座っているローレンスの方を振り向くが、 彼もまた首を横に振った。 「おいおい、どう言う事だ!? 日頃から、次元航行艦(ふね)と直接コンタクト を取れるって自慢してたろ!」 メルゲルが、血相を変えてエグゼンダに詰め寄る。 「ああ、そうだ。直接連絡は取れる。ただし、送・受信範囲ってのがあってな、 次元転送可能距離以上では無理なんだよ」 相手の目を見ながら冷静に答えるエグゼンダの姿に、メルゲルは絶句して力無く うな垂れる。 「僕の村はどうかな?」 突然、黙って大人達のやり取りを聞いていたデュラハが、口を開いた。 彼の言葉に、その場に居る者全員がデュラハに注目する。 「大したものはないけど、水の出る井戸はあるし、執務官を休ませる場所ぐらい だったら何とかなるよ」 エップスが、デュラハに尋ねる。 「村までは、どれぐらいかかる?」 「この先の砂丘を越えてすぐ、二時間ぐらいだね」 エップスは、生き残りの魔導師たち一人ひとりを見ると、全員が力強く頷いた。 「よし、行き先は決まったな」 エップスがそう言った時、フェイトが微かなうめき声を上げて、目を開いた。 「陸曹! 執務官が意識を!!」 衛生兵の言葉に、全員がフェイトの回りに集まった。 「執務官」 エップスが声をかけると、フェイトは周囲を弱々しく見回して、小さな声で 言った。 「こ…こは…?」 「砂漠のど真ん中です。基地が壊滅した後、ずっと逃げてきました」 エップスは、ゆっくりはっきりした口調で説明する。 「ああ…あれからずっと…逃げて…きたんですね」 フェイトが弱々しく呟いた後、デュラハが水の入った革袋を出し、ストローを 挿してフェイトに差し出す。 「執務官、水飲んだ方がいいよ」 フェイトは、デュラハが差し出したストローに口をつけ、水を二・三口飲む。 「ありがとう…君…は…?」 「デュラハ」 「ありがとう…デュラハ……」 フェイトは、デュラハに微かに微笑む。 「執務官、我々はこれからデュラハの村へ向かいます。 そこで、可能な限りの治療をしますので、二時間ほど我慢して頂けますか?」 エップスがそう言うと、フェイトは微笑みながら弱々しく頷いて、再び目を 閉じた。 「よし、全員出発の準備をしろ。 今度から、執務官を運ぶ連中を中心に横に広がれ。 何か金属を見つけたら大声を出せ。砂に埋もれかけた缶詰でも何でも構わん、 すぐに知らせろ」 エップスがそう号令をかけると、全員が装備をまとめ始めた。 シェルターから少し離れた砂の小山の陰で、先程のと同じ金属製の頭が魔導師 たちのやり取りを見ていた。 彼らが出発の準備を始めるのと同時に、再び砂漠の中へ潜行する。 蠍型の怪物メガザラックは、彼らの会話から次の目的地を定め、先回りすべく 全速力で砂の中を進み始めた。 前へ 目次へ 次へ
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記述問題のポイント 「設問の要求に答える」という点では、選択問題であれ記述問題であれ作業自体は変わりません。すなわち、 設問の要求を理解し、解答の方向性をイメージしたうえで、 設問設置箇所(傍線部)に戻り、 周辺を精査しポイントを拾う ということになります。ですが、「記述」しなければならない、となるとどうしても「表現力」が問われ、以下のようなポイントも求められます。 過不足のないポイント集め 取捨選択(優先順位を意識し、核となるポイントを絶対に残す) 表現の吟味(特に、具体例や比喩は一般化する) さらなる補充(書かれていないものを自分の言葉で補う) 以上を念頭に置いた上で、 実際に問題に触れ、自力で答案を作成し、第三者に添削してもらう ことが大切で、これに勝る学習法はありません。こうした実践的訓練を繰り返すなかであなたの中に「記述問題の解き方」なるものが確立すればいいのであって、はじめから「どう解けばいいですか?」と人に聞くものではありません。 それでは、以下のスライドにて、早速例題を用いてチャレンジしてみましょう。 いかがでしょうか? 解説を読んで理解できたなら問題ありませんが、定期的に第三者に見てもらい、自分の悪い癖に気付くことも大切です。 特に二次試験では、文章が平易な場合、解答要素を集めるという点に関してはほぼ全員がクリアできるため、表現力の部分で差がつきます。 例えば、述部をどう表現するかによって、設問の要求にダイレクトに答えているものと少し外れているもので分かれます。こういう、ある種些細な部分が点差に反映していくことになりますから、あなた自身が「書けた!」と思っても第三者から見れば「微妙」ということは多々あります。 動画で学びたい人向けに 僕も今まで沢山の記述問題の解説授業をしてきました。その中でも特におすすめなものをピックアップしていきます。 ⭐️国公立大現代文(全5講) ▶︎東大、京大の問題のみに厳選。 河合塾東大即応オープン解説 https //www.youtube.com/watch?v=0y8_59eCCzE ▶︎パワーポイントも使いながら解答プロセスを「これでもか」というくらい分かりやすく解説しています。 全統マーク模試解説 https //www.youtube.com/watch?v=OV3toMAzrhI ▶︎やってることはセンター試験の解説ですが、最後の1時間ぐらいで、「記述問題として解くならこうやってやるよ」という話をしています。 私大国語解説 https //www.youtube.com/watch?v=dWdkODpp6Ns ▶︎私大向けの授業ですが、十分国立でも通用する話をしています。1 13 36から記述の話をしています。 添削希望者用課題 ここからは、20題近くの練習問題を用意しました。添削希望者は、このページの一番下にあるコメント欄に、必ず「第○回」と記入したうえで解答を送信してください。添削させて頂きます。 第1回 記述の基礎1「心情説明」 問1 傍線部のときののび太の心情を説明しなさい。 ジャイアンに殴られて、のび太は①泣いた。そして②ドラえもんのところへ行った。道具を出してもらった。 問2 傍線部の理由を説明しなさい。 僕は居間でテレビを見ていた。そしたらお母さんが、宿題をなかなかやり始めない弟を叱っていた。僕はあわてて自室にもどり勉強をはじめた。 問3 傍線部のときのA君の心情を説明しなさい。 A君は、不登校になりかけの状況である。今日も、朝になると親に「学校行きなさい!」と強く言われた。そして、トイレに駆け込み鍵を閉めた。 第2回 記述の基礎2「内容説明」 問1 傍線部の指示内容を、二〇字で述べなさい。 バンドウイルカのシェイラは、水族館で一番の人気者です。それは、最近はじまったことではありません。 問2 傍線部の指示内容を、十六字で述べなさい。 人間の子どもの成長は、その自然的、社会的な環境に応じて決められる部分が多い。その中でも、特に目立つのが言葉の習得である。子どもは、自分が育っていく社会の言葉をまず覚える。そして、それによって、人間社会の文化や習慣を学んでいくのです。 問3 傍線部とは、どういうことか。説明しなさい。 近年、成人式で暴れる猿がいることが話題となっている。若者は、久々に出会った同級生や幼馴染らとともに、酒を好き放題に飲み、暴れる。場はとめどなく荒れてゆく。もはやそこに秩序はない。成人式が果たしてこのようなものであっていいのだろうか。 第3回 記述の基礎3「理由説明」 このように、いろいろな角度から検討してみると、日本人がこれまで、「森」や「林」ということばがそれぞれ何をさすかという点で微妙な違いを意識してきたことがわかる。と同時に、両者に対してかなり異なったイメージを描いてきたこともわかる。明るく、田園的で牧歌的な「林」に対し、暗く、奥深い自然の「森」に、全貌をとらえきっていない未知なるものへの恐れを抱き、それを神秘的な、あるいは夢幻的なものとして、深く心に刻んできたように思う。「林の精」ではなく、どうしても「森の精」でなければならないのは、そういうイメージの集約があってのことなのだろう。 (中村明「センスある日本語表現のために 語感とは何か」より) 設問 傍線部「『林の精』ではなく、どうしても『森の精』でなければならない」のは、「森」にどのようなイメージがあるからですか。本文中のことばを使って三十五字以内で答えなさい。 解答・解説 (前編) https //www.youtube.com/watch?v=iRBvbt5406o (後編) https //youtu.be/1nbnEORtqck?si=EDF1Z1l8-zXahEBc 設問文より、答え方は「〜(なものであるという)イメージ。」となる。 傍線部直後に「そういうイメージの集約があってのこと」とあるので、指示語の内容を押さえてまとめればよい。 すると、「森」のもつ「イメージ」について述べた箇所が3箇所見つかる。 A:暗くて奥深い自然 B:全貌をとらえきっていない未知なるものへの恐れを抱き C:神秘的な、あるいは夢幻的なもの 35字以内という字数制限で上記のポイントを最大限に詰め込むことを考え、凝縮していくと、 A:暗く、奥深い(自然) ←「暗い」と「奥深い」のどちらか片方を外すことは困難 B:未知なるものへの恐れを抱かせるもの ←「全貌を〜」は修飾語なのでカットできる C:神秘的で夢幻的なもの ←「神秘的」と「夢幻的」のどちらか片方を外すことは困難 この中で優先度の一番低いものを1つ選んで削ることを考えると、「神秘的」が「未知なるもの」と内容的にかぶることが分かるだろう。そして「未知なるもの」という言い方のほうが具体的で分かりやすい。したがって、カットするならC。 解答例①:未知なるものへの恐れを抱かせる、暗くて奥深いものというイメージ。(32字) Aを削った場合の解答例も一応提示しておく。 解答例②:未知なるものへの恐れを抱かせる、神秘的で夢幻的なものというイメージ。(34字) また、A〜Cの全ポイントを詰め込むと以下のようになる。 解答例③:暗くて奥深く、神秘的で夢幻的で恐れを抱かせる未知なものというイメージ。(35字) 注意点としては、 ・「森」という言葉は入れてはらないこと。 ・「未知なるものへの恐れというイメージ」だと日本語的におかしい。(まだ「未知で恐ろしいというイメージ」のほうが日本語としてはいい) 第4回 中学入試1「省略の補充」 ① 『小さい牛追い』(マリー・ハムズン作/石井桃子訳、岩波書店)という本がある。これは美しい本で、ノルウェイの農場に暮らす四人の子供たち――一人が一頭ずつ牛を所有している――の生活が、北欧特有の透明な空気を背景にして、成長物語としてなどでは全然なく、ただ瞬間のつらなりとして、気持ちのいい文章でテンポよく描かれている。 ② 四人の子供たちのうちの一人、オーラ、は、本を読むことが好きだ。けれど彼は、つまらない児童書によくでてくるような、“本ばかり読んんでいる内向的な少年”ではない。“孤独癖”があるわけでもないし、“空想ばかりしている”わけでもなく、“人づきあいが苦手”なわけでも全然ない。山で遊び川で遊び、農場の仕事もたくさん手伝う。他の子供たちと一緒に木の葉の家をつくったり、インディアンごっこをしたりする。知らない大人にも驚せず話しかけるし、自分の持ち物を取引して、おまけをせしめる商売っけさえあるのだ。 ③ 彼が本を読む場面が私は好きだ。こう書かれている。 ④ オーラは、とても本がすきでした。じぶんの手にはいるものなら、なんでもござれ、聖書から、おかあさんのお料理の本まで読みました。オーラは、アメリカ・インディアンの本ニ冊と、ロビンソン・クルーソー一冊という、すばらしい蔵書の持ち主で、このたいせつな宝物が、ぼろぼろになるまで読みました。 ⑤ 何かあたらしい本が手にはいると、いつもこっそりどこかにかくれて、じぶんが、どこにいるのかも忘れて、読みふけります。ほかの子どもたちが、そういう状態にいるオーラを呼ぼうとすれば、それはまるでべつの、遠い世界から、かれをつれもどすようなあんばいでした。不幸なことに、おとなたちもまた、オーラを呼ぶという、ふゆかいなくせをもっていました。オーラ、少し薪をわっておくれ、オーラ、早く、水を一ばいくんできておくれ、などというのです。オーラ、それ、オーラ、あれ、というぐあいで、一日つづきます。 ああ、かわいそうに! あれだのそれだの言われて、どっぷりと本のなかに身を沈められないなんて。と、思うことは思うのだけれど、現地と地続きの場所で読むからこそ、世界が立体的になるのだ、とも言える。 ⑥ 本を読んでいてすっかり没頭し、そこが部屋だろうが駅のベンチだろうが電車のなかだろうが、物音も他人の存在もないもののようになり、というより本を読んでいる自分自身が、そこにいていないものになる、という経験は、おそらく誰にでもあるはずだし、たしかに幸福で、えも言われない。 設問 傍線部「不幸なことに」とありますが、なぜ不幸だというのですか。「没頭」という言葉を使って四十字以内で答えなさい。 解答・解説 解答例 おとなたちが、本の世界に没頭しているオーラを現実世界に引き戻そうとするから。(38字) 「不幸なことに」はその先にかかっているので、「おとなたち」の行動に対して言っている。「ほかの子どもたち」の話はいれない だが、「おとなたちもまた」という表現があることから、おとなたちの「オーラを呼ぶ」という行動は「ほかのこどもたち」の行動と同様の行動。そこで、傍線部より前で述べられていた「ほかの子どもたち」の説明を上手く解答に活かす。 どこに引き戻すのかを明記することを意識する 第5回 中学入試2「指示語①」 ① 世の中にはさまざまな数値が溢(あふ)れている。物価の統計、大銀行の不良債権(さいけん)、世論調査、失業率、年金の予想負担額、降水確率や地震の確率、売上高、等々である。その中で、ウソではないがホントでもない、ということがさまざまな場面で見受けられる。ある面をとってみればウソではない。しかし、別の面をみればホントでもない。そこで、ある者はウソではないことを強調し、また別の者はホントでないことで反論する。それに対してどのような態度をとるべきか、いくつかの例をあげて考えてみよう。 ② ある公共事業を新規に起こそうとするとき、それによってどれだけの人が恩恵(おんけい)に預かるかの予測が行なわれる。高速道路なら走る予定のクルマの数であり、ダムなら利用するであろう水の量である。公共事業を推進しようとする官僚は、この数値に巧妙(こうみょう)な策略を講じる。余りに過大に見積もるとすぐにウソだと見抜かれてしまうし、少なすぎると事業を起こす意味がないと言われるだろう。そこで、公共事業として投資するだけの価値があるとする数値をでっちあげることになる。通常は、過去数年の周辺を通っているクルマの数に適当な増加率を掛けたり、過去数年の農業用水や工業用水や家庭用水の利用量に予想成長率を勘案して、十分な利用があると見せかけるのだ。過去数年の実績に基づいているということを根拠に、数値をホントらしく(ウソではないと)思わせるテクニックである。ところが、社会情勢が変わって低成長になったり、少子化や過疎化の進展で過去の実績に意味がなくなると、その数値はホントではなくなっている。しかし、未来予測は変えようとしない。そのため、過去の実績を基礎にしているという意味ではウソではないが、実際の社会動静(どうせい)から見ればホントでもない、そんな数値がいつまでも通用するのだ。徳山ダムや川辺川ダムの水利用、諫早(いさはや)湾の土地利用、本四(ほんし)架橋(かきょう)のクルマの利用など、どのような未来予測をしてきたか、一覧表を作って点検してみる必要がありそうである。 設問 傍線部「そんな数値」とありますが、これはどのような数値ですか。「ウソ」「ホント」という言葉を使わないで四十字以内で答えなさい。 第6回 中学入試3「指示語②」 ① ここで本当に問題にすべきなのは仮定されている増加率や成長率の教値で、過去数年の実績だけでなく、社会の動向を厳しく吟味(ぎんみ)して未来予測をしなければならない。高度成長時代の実績をそのまま延長していては意味がないし、少子化や過疎(かそ)化の進展を考慮しなければ信用できる数値にはならないからだ。公共事業が完成するのは、高速道路なら五年も先であろうし、ダムなら一〇年以上も時間を要する。ならばいっそう、厳密な未来予測が必要とされるのである。そして、それがウソの数値であるとわかったとき(ホントの数値ではないと判明したとき)には、きっぱりと撤退する勇気を持たねばならない。それまでに投下した資本を惜しむあまり、ウソでもないがホントでもない数値を後生大事に守り続けることは、未来により大きなツケを回すことに他ならないからだ。宍道(しんじ)湖(こ)の干拓事業を中止した英断を、私は高く買っている。 ② 別の例として、ある川の水質調査をするとしてみよう。問題がないと証明したいときには、水が澄んでいてきれいな時期のデータを選んで発表するだろう。ふだんは淀んで汚いことが多く、夜間に汚水(おすい)の不法投棄などで水質が悪いケースがあっても、それは見過ごされてしまうのだ。実際に水質調査をしたという意味ではウソではないが、いつどの場所での調査結果であるかを明示せず、それが川の状態を代表していると言えばホントではない。どのような条件下でのデータであるかが示されないと信用してはいけないという好例である。 ③ 川の水質調査だけでなく、同様な問題がいろいろなコマーシャルに溢れている。クルマの燃費とか、洗剤の洗浄力とか、薬の効能とかで、従来の製品と比べて良くなったと宣伝されているが、どの時点との比較なのか、どのような条件でテストしたのか、客観性はどのように保証されているのか、などが示されないと直ちに信じ込むのは危険である。といって、短いコマーシャルでは、それらを全部書いたりしゃべったりできないから、全部カットされてしまう。おそらくはウソではないのだろう。しかし、ホントであることは何も保証されていない。私たちには確かめようがないのである。では、どのように対応すべきなのだろうか。 ④ やはり、ウソではないだろうがホントでもないとして、信じ込まないことが大事である。そして自分の眼を鍛えていくことだ。どのような製品でも、しっかりと説明書を読んだり成分表を吟味して、何が信用でき何が信用できないかを見分ける眼力を養うことが大事なのである。互いの信用の上に社会が成り立っているはずだから、なんだか寂しい限りだが、自分の身を守るためには仕方がない。といっても、消費期限の張り替えを行ったり、偽造表示がまかり通っていて、それすら信じることができない状態なのだが、とりあえずは表示を信用してコトに当たるしかない。そして、世の中に溢れている数値を一つ一つ、ウソではないがホントでもないかどうかを確かめる癖を身につけることだ。私たちが曖昧で不確定な社会に生きていることを実感することも必要なのだから。 (池内了「科学の落し穴―ウソではないがホントでもない」〈晶文社〉より) 設問 傍線部「同様な問題」とは、どのような問題ですか。文章中の言葉を使って五十字以内で答えなさい。 第7回 高校入試1「詰め込み」 ① 数年前、森林関係の研究所に勤務している研究員のところに、ある村の村長が訪ねてきた。その村の森には、それほど多くはないけれど、いまでは希少価値になった天然のヒノキが大きく育っているのだという。そのヒノキを一番高く売るには、どうするのがよいのかが村長の問いだった。研究員はいろいろ調べたうえで、後日その方法を教えた。それは玄関の表札にして売るのが有利だというものだった。 ② ところがそう話したら、村長はきわめて不愉快そうな顔をした。樹齢二百年を超えた大木が、柱になった後も堂々と建物を支えつづけ、生きつづける姿を思い描いていた村長には、それが細切れにされることなど、容認できることではなかったのである。商品価値を高めることが、木を侮辱することであってはならないと思った。 「それがあのころ一番高く売る方法だったのに」 研究員は私にその話をしてから、「しかし村長の気持ちもわかるし」と言って楽しそうに笑った。自分の提案が拒否されたことは、彼にとっても愉快な出来事だったのである。 ③ 木が本来もっている価値を生かすことと、商品として木を高く売ることは、必ずしも一致しない。いまでは天然のスギの銘木(めいぼく)は、紙のような薄い板にされ合板に張りつけられて、天井板などになることが多い。それが天然スギを一番高く売る方法でもあるし、そのことによって天然スギのもっている木目を比較的安い価格で、だれもが楽しめるようになったと評価する意見もある。しかし、それでもなお私は、山奥の路上で合板にされるために乾かされている天然スギを見かけると私は村長と同じような気持ちをいだくのである。 ④ 今日では山の木が建築物に変わるまでの間には、次元の異なる二つの過程が重なりあっているのであろう。それは使用価値と商品価値の違いによって生ずるズレ、といってもよいのだけれど、木自体がもっている価値を生かすか、商品としての木の価値を優先するかをめぐって、木にたずさわる者たちもまた動揺してきた。そしてそのことは、ときに力強く木の育った美しい森と経営効率を優先させた森の違いとなってあらわれ、製材や建築の過程で職人的な仕事と商品をつくるだけの労働の違いとなってくる。 ⑤ たとえば製材工場を訪ねても、スギやヒノキなどの国産材をひく工場と輸入材をひく工場とでは、雰囲気がずいぶん違う。国産材は、どこにノコギリの刃をあてるかで木目の出方も変わり、木の価値も商品価値も変わってくるから、木目の出具合を読む職人の経験やカン、コツが工場を支えている。ところが輸入材は木目も一定のものが多く、しかも(注)大壁工法などの柱のない家の部材になることが多いから、部品をつくる自動化工場のようである。最近では労働力不足に対応して、コンピュータ製材が関心を高めているけれど、それも職人の腕を必要としなくなった輸入材専門工場での話にすぎない。国産材の工場はいまも職人の世界である。 ⑥ 山の木を単なる商品にしてしまわないためには、職人的な腕が生きていなければいけない。確かに山の木は、林業家から製材業者へ、工務店から消費者へと、商品として流れていく。ところがこの流れのなかに、美しく、大きく森を育てていこうとする村人の腕や、製材職人の腕、木の特性を生かしていこうとする大工の腕などが健在である間は、木と人間は一体化して、木の文化をもつくりつづけることができる。 ⑦ 木の文化は、天然のヒノキが細切れの板にされるのをかわいそうだと感じる、あの村長の気持ちに支えられてきた。そしてその気持ちを仕事のなかで実現させる職人たちの腕とともにあったのである。 (内山節「森にかよう道」より) (注)大壁工法=断熱材等でできている壁板を、柱をおおうように張っていく建築 設問 傍線部「かわいそうだと感じる」とあるが、それはなぜか。(六十字以内) 第8回 高校入試2 都立入試過去問自校作成問題(小説文)を使用 第9回 高校入試3 都立入試過去問自校作成問題(論説文)を使用 第10回 センター試験 次の文章中のある一文に傍線部を設置し、「なぜか」の設問を作りたい。傍線部を設置する場所としてベストと言えるのは、どの文か考え、そこに線を引け。また、その設問に対する解答を40字以内で作成せよ。 変形によって芸術のすべてが説明できる、とは言えなくても、芸術創造が先行するものの変形を重要な要素として含むことは疑いがない。このことから、いくつかのことが帰結する。 芸術の創造が先行するものから出発してそれを変形するのであれば、芸術のスタイルが変化するのは必然的である。この点で芸術は科学と異なっている。 科学の場合でも変化というものはあるし、その変化は、客観的真理への接近といったものではなく、クーンのいうパラダイム・チェンジといった性格をもつものかもしれない。しかし、科学の場合は変化する必然性はないように思われる。もし科学がその目標に到達して、すべてをきれいに説明できるような日がくれば、そこからさらに変化していかなければならないという理由はない。科学の場合、変化は、まだ目標に達していないことのしるしである。しかし芸術の場合、変化は未完成のしるしではないし、いつの日にか変化しないような状態に到達するわけでもない。 もしバッハが偉大で(たしかに偉大である)、完璧な曲を作った(実際、完璧と思わずにはいられない。訂正の余地がないように思えるのだから)のだとすれば、人類はそれ以降の作曲家を必要とせず、バッハも完璧な曲を作った後は作曲をやめたとしてもよさそうなものである。しかし実際には、どの芸術家も作品を作れるかぎり作り続けるのであり、芸術家はつぎからつぎに登場するのである。 これは芸術全般にみられる基本的事実である。どんなに「完璧な作品」を作っても、それで終わりということにはならないのである。 (センター試験2000年(追試験)/土屋賢二『猫とロボットとモーツァルト』) 第11回 私立大1 人間の脳のアーキテクチャーとコンピュータのアーキテクチャーはそもそも成り立ちが違う。コンピュータが、プログラムで指定された処理を正確、高速に繰り返し行うために設計されているのに対して、私たちの脳は、同じ計算を正確、高速に繰り返すのは苦手である。 私たちの脳は、新しいものを生み出す、創造性という素晴らしい能力を持っている。そして、ITが高度に進化しつつある今、人間は単純な知的労働から解放されて、創造性の発揮に専念することができる条件が整いつつある。人間の創造性にとってのルネッサンスの時代が訪れようとしているのである。 一握りの天才だけが創造性を発揮すればよいのではない。どんなに平凡に見える人の中にもある新しいものを生み出す力、その潜在的な力を活かすべき時代が来たのである。 創造性を活かすことは、時代の要請であるばかりでなく、私たち一人ひとりが人間らしく生きるために必要な条件でもある。人は、創造的に生きることで、よりよく生きることができる。よりよく生きることで、より創造的になることができるのである。 (明治大学2006年(商)/茂木健一郎『脳と創造性』による) 設問 傍線部「人間の創造性にとってのルネッサンス」とはどのような意味か。「ルネッサンス」の意味が明確になるように、本文中の 語句を用いて三十五字以内(句読点を含む)で説明せよ。 解答 単純労働から解放され、新しいものを創る力が見直されるようになったこと。(35字) 単純労働から解放され、新しいものを創ることに改めて価値が置かれたこと。(35字) 解説 「時代が訪れ」とあり、変化の文脈になっていることを押さえてください。変化前については明確な記述はないですが、変化後として、「創造性」=「新しいものを生み出す」ことに専念できるようになった、ということは明確に書かれています。もしそれの理由まで答案に入れるのであれば、「ITの進化」による「単純な知的労働」からの「解放」です。 ですが、ここまでの作業は誰でもできるはずで、これだけで答案を作ってしまうともしかしたら0点かもしれません。設問条件として、「ルネッサンス」の意味を明確に、とあります。もちろん、世界史なんかで「ルネッサンス」という言葉は出てきますから、「再生」「復活」といった意味であることは分かるでしょう。(世界史的には、14世紀頃、ギリシア・ローマの文化を復興しようとした運動を指します。)とすれば、「どんなに平凡に見える人」の中にもあり、「私たちの脳」が「潜在的」にもつ「力」である「新しいものを生み出す力」を「発揮」することに改めて「専念」できるようになったとか、そういう力の価値や重要性が見直されるようになった、という形で「復活」のニュアンスを出さなければいけません。 しかも、字数指定があり、その中に「単純労働からの解放」というポイントも詰め込むとなれば、表現の凝縮が求められます。 このように、点差を分けるポイントが複数あることを意識したうえで、正しい日本語で、句点まで含めて「〜こと。」という文末表現で締めくくることを考えると、結構頭を使います。だからこそ問題として成立するわけですね。 第12回 私立大2 門出れば我も往く人秋の暮れ 蕪村 与謝蕪村は、先人松尾芭蕉の旅に憧れ、ひきかえてしがらみに流される我が身のつたなさを嘆いてこの一句を詠んだ。角の煙草屋まで出掛けるほどのこともなく、自家の門からたった一歩だけ往来に足を踏み出すことで、蕪村は旅を経験したのである。死の床の夢にまで枯野をさまよった芭蕉の、徹底した旅のプロフェッショナリズムに対して、どうしようもない自分を抱えてオロオロと自室を旅するしかない蕪村は、全きアマチュアリズムである。ただそれだけに、蕪村は一貫したインナートリッパー(心の旅人)ではなかっただろうか。蕪村の山野を、陋屋で過激にトレースした蕪村は、芭蕉とはちがう意味で、またしたたかな旅の達人だったという気がしているのだ。 僕は蕪村が好きである。また、どちらかといえば蕪村型人間ではないかと思っている。僕は旅が好きで、カメラマンというじっさいもあって、芭蕉ほどではないにしても、これまで数えきれない旅に出ている。ただ僕は、いかなる旅先においても常に心に余裕を持てない性質なので、山野に心を遊ばせるすべを知らない。真に野に遊ぶことが、どれほど苛酷にして充足するものなのか、旅の空の下にいて、追われるように次の旅を思い、後に残してきたさまざまな煩悩の糸を断ち切れずいつも気に病んでばかりで、その一期一会に見るべき掌中の珠(たま)を見逃して過ごす僕の旅は、芭蕉の足許(あしもと)にもおよばないだけではなく、 蕪村のあのすさまじい鬱屈ともほど遠い。 いつどこへ旅しても、僕につきまとういい知れぬ不安。といえば体裁よく思われてしまいそうであるが、本人はほんとうにつらい。むろん現実からぷっつり切れ、自意識を捨て切ることなど生きている以上いかなる事態においてもありえないから、それを旅に望むことは不可能である。むしろ旅とは、そうして丸抱えにしてしまっている自分のぬきさしならなさを、未知の時空に投げ入れることによって、さまざまな擦過の過程のなかから自分のなかにさらに新しい自意識の覚醒をはかることであろう。僕の内にひそむ、 過去の経験による多くの記憶と、未知への予感から生れる記憶との交感によって、かならずしも、自覚的ばかりではない自分を発見し予見する行為のひとつのかたちが、たとえば旅である。旅は、リサイクル(自己再生)でもあり、また未知に向けてのフィードバックでもあると規定するならば、人間は旅人であり、人生は旅なのだというたとえもあるていどは納得できる。 それにしても、与謝蕪村の芭蕉に対するコンプレックス(複合意識)にはすさまじいものがある。破れ畳を草枕に見たて、生活のためには売り絵すら描いたという弱さは、むしろ僕にはしぶとさとして映る。「荒海や佐渡に横たふ天の川」と詠む芭蕉のスペクタクルはないが、「牡丹(ぼたん)切(きり)て気のおとろひし夕(ゆうべ)かな」という蕪村の句境には、芭蕉とそのコントラストにおいて、等質のという以上にむしろ凌駕するリアリティを覚える。 深更の自室で、地図と時刻表をかたわらに、テーブルの上に描く地平線に向けてひとり想像の旅に出ることがある。旅に出たくてもままならず、あれこれしがらむことなどもあってする空想の旅は、たしかに心情のおもむくままにどこへでも行けるのだが、もっとも肝心な出会いがない。ひとりナルシスティックにする旅は、立ち戻ったあとに空しさだけがつのる。心で辿るまぼろしの旅路はちょうど宛名のないラブレターに似ている。 〔立教大学2003年(社会[現代文化]/経済[経営])/森山大道『犬の記憶』による〕 設問 傍線部について。「出会い」のある旅とはどのようなものか。本文中にあるごくを用いて、句読点とも三十字以上四十字以内でしるせ。 第13回 資料活用型1 共通テスト記述式問題 モデル問題例1を使用 第14回 資料活用型2 平成30年度実施 第2回共通テスト試行調査 第一問を使用 第15回 科目横断型 青山学院大学 総合政策学部 サンプル問題を使用 イスラームでは、セム的宗教の大原則に従って政教一元(タウヒード)の政治思想を堅持しており、両者を区別しようとする政教分離思想とは相容れない。このようなイスラーム的政治制度を国教として導入している国は、現在約40カ国ほどあり、国連加盟国中の20パーセントにもなる。 これらの国では、政治と宗教の分離という思想を持たず国家運営を行っているし、かつてのイスラーム文明の繁栄も、その原則の上に花開いていた。特に、イスラームは8世紀から16世紀頃まで、世界の大部分で政治的・文化的ヘゲモニーを握っていたのであり、その存在は無視し得ないものである。 つまり、 【 】。 (保坂俊司『国家と宗教』(2006年、光文社)より) 設問 本文中の空欄【 】には、政教分離についての筆者の考えが入る。次の3つの語句をすべて使い、空欄に入る文を、60字以内で書け。 イスラーム的なタウヒード思想 近代的な政教分離主義 神道的な祭政一致 解答・解説 60字のうち、指定語句だけで32字を占めますから、記述問題とは言え、書けることはかなり限られてきます。つまり答えはしっかりと一つに決まるわけです。そして、この問題の面白いところは、一つ判断を間違えてしまうととんでもない答えが出来上がってしまうということです。ある意味、選抜機能を果たしているという意味で良問です。 まずはこの問題の罠からお話ししましょう。「イスラームでは」という本文の書き出しから、この文章は「イスラーム」の話をしていると思ったそこのあなた。そんなあなたは、おそらく、指定語句の「イスラーム的なタウヒード思想」という語句を主語・主題として用い、以下のような解答を作ったのではないでしょうか? ▶「イスラーム的なタウヒード思想は、近代的な政教分離主義とはほど遠く、神道的な祭政一致に近いものであった。(49字)」××× 残念ながら、この答案だと一点も点数が入りません。 どこかの塾の先生が、模範解答として以下のような内容を提示していました。 ▶「イスラーム的なタウヒード思想においては、近代的な政教分離主義よりも、神道的な祭政一致に近い考え方が取られているのである。」××× このように、イスラームを主語・主題とし、本文の冒頭文のように「イスラームの政教一元的な考え方は、政教分離とは相容れない」という方向で書いた答案には残念ながら1点も点数を入れることができません。 なぜでしょうか?理由は2つあります。 まずそもそも、設問文に「政教分離についての筆者の考え」と書いてあります。つまり、イスラームを主語・主題にしてはいけないということです。 そしてもう1つは、「つまり」という接続語です。これがある以上、直前部の言い換え・要約を持ってこなければいけません。直前で、「イスラームの存在は無視し得ない」、あるいは「政教一致の国家運営をしている国が今も沢山存在する」ということを言っています。そういう文脈が展開している中で、タウヒード思想の説明をしてしまうと前後のイコール関係が残念ながら成立しません。そもそも、タウヒード思想の説明は本文冒頭で説明されており、そのことを前提として筆者は「そういう政教一致の国って意外にも多いんだよ」と話を次に展開しているんです。 とすれば、空欄に入る内容はどんな内容になるでしょうか。設問要求も踏まえるならば、 ▶「政教分離については、必ずしもそうであるべきとは思わない。政教一致の国がこれだけ世界を支配していることを考えるならば。」 という方向の内容を述べるしかないのです。あとは指定語句を見て考えます。3つあるうち、はじめの2つは既に本文中に登場してきたものです。しかし、3つ目の「神道」の話は、この本文には出てきていません。つまり、具体例の一つと考えるしかありません。もちろん、「一致」とあるのですから、政教一致の考えと近いと言えば近いのでしょうが、イスラームと神道は別物なのですから、結局、指定語句は3つとも「別々の思想」と見てやるべきです。とすれば、この3つを並列させて、 ▶【解答例①】イスラーム的なタウヒード思想や近代的な政教分離主義や神道的な祭政一致はいずれも一つの形態に過ぎず、どれかが絶対ではない。(60字) ▶【解答例②】イスラーム的なタウヒード思想、近代的な政教分離主義、神道的な祭政一致のいずれの形態にも価値を置くことが可能である。(57字) ▶【解答例③】イスラーム的なタウヒード思想、近代的な政教分離主義、神道的な祭政一致のいずれかが間違い、ということではないのである。(58字) このような方向で解答を書くしかありません。ですから、採点基準としては、 ①指定語句の3つを並列していること ②政教分離を全面的に肯定しているわけではないという内容になっていること が絶対です。これらの条件さえ満たしていれば、解答に用いる表現はなんでもいいのであって、「この表現を用いなければダメ」というのがあるわけでもありません。 実際の本文を参照 さて、実際に出典である『国家と宗教』(保坂俊司)の中ではどう書いてあるでしょうか。10ページに該当箇所はありました。引用すると、 ▶イスラーム的なタウヒード思想も、近代的な政教分離主義もあるいは、神道的な祭政一致の形態も人類文明の一形態であり、決してどれか一つが普遍的で、絶対的であるということではない、ということである。(本書では、これらを比較し、その歴史背景や長短を明らかにし、日本における政治と宗教を考える上での参考になればと願っている。) このような内容になっていました。そう、実際の本文は60字に収まらないくらいの長さになっているのです。ですが、明確な設問要求と指定語句により、指定字数内で本文とほぼ同内容を再現することは十分に可能なわけで、選抜機能も果たせる非常に良い問題だと思います。 第16回 国公立大1 北海道大学2004年の問題を使用 第17回 国公立大2 余りに単純で身も蓋もない話ですが、過去は知覚的に見ることも、聞くことも、触ることもできず、ただ想起することができるだけです。その体験的過去における「想起」に当たるものが、歴史的過去においては「物語り行為」であるのが僕の主張にほかなりません。つまり、過去は知覚できないがゆえに、その「実在」を確証するためには、想起や物語り行為をもとにした「探究」の手続き、すなわち発掘や史料批判といった作業が不可欠なのです。 そこで、過去と同様に知覚できないにも拘(かかわ)らず、われわれがその「実在」を信じて疑わないものを取り上げましょう。それはミクロ物理学の対象、すなわち素粒子です。電子や陽子や中性子を見たり、触ったりすることは、どんな優秀な物理学者にもできません。素粒子には質量やエネルギーやスピンはありますが、色も形も味も匂いもないからです。われわれが見ることができるのは、霧箱や泡箱によって捉えられた素粒子の飛跡にすぎません。それらは荷電粒子が通過してできた水滴や泡、すなわちミクロな粒子の運動のマクロな「痕跡」です。その痕跡が素粒子の「実在」を示す証拠であることを保証しているのは、量子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません。その意味では、素粒子の「実在」の意味は直接的な観察によってではなく、間接的証拠を支えている物理学理論によって与えられていると言うことができます。逆に、物理学理論の支えと実験的証拠の裏づけなしに物理学者が「雷子」なる新粒子の存在を主張したとしても、それが実在するとは誰も考えませんし、だいいち根拠が明示されなければ検証や反証のしようがありません。ですから、素粒子が「実在」することは背景となる物理学理論のネットワークと不即不離なのであり、それらから独立に存在主張を行うことは意味をなしません。 (2018年 東京大学第1問 野家啓一『歴史を哲学する―七日間の集中講義』) 設問 「その痕跡が素粒子の『実在』を示す証拠であることを保証しているのは、量 子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません」(傍線部)とは、どういうことか、説明せよ。 第18回 長文記述1 文化は英語のculture、ないし独語のKulturの訳語である。独語のKulturには物質文明に対する精神文化という意味合いがある。一方、英語のカルチャーは人々の生活様式(way of life)と定義される。ひらたく言えば暮らしのたて方である。日本語で文化というときには両方の意味が混在しているが、英語圏の文化の定義は文化人類学(民族学)で広範に使用され、国際的な普及度が高い。 近代文明と経済発展とは一体のものとみなされているが、文化と経済とは対立的に考えられがちだ。しかし、その考えは浅薄である。 メセナ活動への理解がすすみ、両者を両立させる動きはあるが、メセナ活動は企業による芸術活動への援助なので、経済は富を生み、文化は富を使うという理解をもっている人がいる。「文化は金食い虫」と言ってはばからない向きもある。また、数式は文化論には適用しにくいが、経済学には活用できるから、文化は非合理的だが、経済は合理的だという人もいる。 ことはそう単純ではない。経済は生産と消費、供給と需要、販売と購入からなる。しかし、いかに生産の合理化を追求し、供給ルートを押さえ、販売に力を入れても、人々が消費せず、需要がなく、購入しなければ、経済活動にならない。消費とは経済活動であり、同時に生きる行為である。消費なくして暮らしはない。 暮らしにはスタイルがある。ライフスタイルである。ライフスタイルは個性であり、人間のアイデンティティにかかわる。どのような物をどのように消費・需要・購入するかは一律ではない。性別、年齢、社会的地位、用途、人格、好みなどさまざまな要因に左右される。これらは量に還元できない。人生の質にかかわる。 海外で物を売るには、その地域の暮らし(文化)に合った物を売らねばならない。それゆえ〔 a 〕が不可欠になる。古い例では、海外向けの輸出者は、イギリス向けは日本と同じハンドル、アメリカ向けは左ハンドルにしたり、地域で仕様を分けた。市場調査とは消費性向、需要動向、購入意欲を調べるものであり、〔 b 〕といってもよい。 生産は消費のためにあり、供給は需要を産むためにあり、販売は購入に支えられる。その点からすれば、生産・供給・販売は消費・需要・購入に従属するとすらいえる。言いかえれば、経済は文化に従属する。あるいは経済は文化にしもべであり、文化の発展に奉仕する活動といってもよいだろう。 文化は衣食住のように目に見えるものと、価値観・制度などのように目に見えないものとからなる。アメリカ文化とはアメリカン・ウェイ・オブ・ライフのことだ。ウェイ・オブ・ライフは前述のように「生活様式」と訳すのが慣例だが、個人レベルに即してもっと単純に訳せば「生き方」である。ライフスタイルと同義である。日本人一人ひとりの生き方(ライフスタイル)の集合が日本文化(ジャパニーズ・ウェイ・オブ・ライフ)である。 日本では、人々の暮らしや一人ひとりの生き方に( ア )芸術・芸能・学問のみを文化あつかいしている。それは誤りではないが、いかにも狭義の文化理解であり、いわば文化の花の部分だけを見ているのである。花を支えている土壌・根・茎・葉にも目配りがいる。 生活文化を視野にいれなければならない。日本人の生活様式ないし暮らしのたて方が日本文化なのだから。 既述のように、文化は生活様式という定義があるが、文明には文明論者の数だけ定義がある。そこで、まずB私なりの文化と文明の区別に触れ、ついで文化・文明の観点から経済文明としての近代社会の成立を略述しておこう。 文化は地球上のどの地域に住む人々ももっている。しかし、文明はそうではない。地球上の一部の地域にしか存在しなかったし、現にそうである。たとえば、エーゲ海にギリシャ文明が栄えたころのローマは文明ではない。やがて一九世紀に世界の七つの海を支配する大英帝国になったとき、英国は近代資本主義の覇者として( イ )文明になった。 英国人が「文明」という言葉を使い始めるのも一九世紀であり、それ以前にはない。日本最初の文明論というべき福沢諭吉の『文明論之概略』で参照された英国人バックルの『英国文明史』が書かれたのは一八五七~六一年、一九世紀中葉に大英帝国が世界に君臨したときだ。英国の衰退とともに、人々は文明としての大英帝国よりも英国文化を語るようになる。文化は遍在するが、文明は偏在する。 このように、ある地域の文化が文明になる。文化は人々の暮らしがあるところに遍在するだけでなく、永続する。一方、文明は興亡する。古い文明は衰亡し、新しい文明が隆盛する。それに応じて文明地域は移動する。文明は長続きするが、永続しない。文明の存在する地域にはかならず、その地域の文化がある。文化が文明の基礎である。それゆえ文明を論じるさいにも、文化を見据えておかねばならない。 それでは、いかなる地域の文化が文明になるのか。文明にはかならず求心力と遠心力がある。何が求心力・遠心力を獲得するのか。 文明の基礎としての文化である。アメリカン・ウェイ・オブ・ライフすなわちアメリカ文化に、戦後の日本人を含め、世界の多くの人々が憧れた。人々がこぞってアメリカに行きたがり、またアメリカ文化を自国に導入しようとする。このことによってアメリカ文化は広まる。広まることによって、二〇世紀後半のアメリカ文化は自他ともに認める文明となったのである。 同じように、古代のローマ文化は他地域から憧れられて、取り入れられ普及してローマ文明になった。古代の中国文化は周辺の他地域から憧れられて受容され、普及して中国文明になった。文化が他地域に普及する遠心力をもったとき、その文化は文明になる。 文化の求心力とは他地域から憧れられること、文化の遠心力とは他地域に影響を与えることである。求心力が働けば中心性を、遠心力が働けば普遍性を獲得する。ある文化が中心性と普遍性を備えると、人々はその文化を「文明」とよぶようになる。それゆえ、「文明とは、他地域から憧れられて、広まっていく文化である」と定義することができるであろう。再言すれば、文明の基礎には文化がある。 近代文明は資本主義として勃興した。つまり経済を軸にした文明である。それゆえ資本主義の勃興については経済的説明がなされることが多い。しかし、C西洋資本主義の出生の秘密をたどれば、アジア地域の文化への憧れがもとになっていることが知られる。すなわち、文明はアジアにあった。 その点に触れる前に、西洋資本主義の勃興が西洋域内の非経済的・非合理的要因の宗教を核とする文化と分かちがたく結びついていたことを、手短かに説明しておこう。 宗教革命で起こったプロテスタンティズムは資本主義と密接な関係がある。魂の救済を求めるプロテスタントたちの宗教心は禁欲的な生活態度を生みだした。その結果、かれらの貯蓄が増えた。貯蓄の増加は、プロテスタントの心情レベルでは神に奉仕する禁欲的生活の証しだが、その証しを強めるために貯蓄はさらに増えた。それは浪費されない。浪費されずに貯蓄を増やすために活用され、貯蓄がさらに増えた。 貯蓄の増加は神への奉仕という目的にとっては手段である。だが、あるとき手段が目的に転じればどうなるか。事実、転じたのだ。それは富の蓄積を目的にする投資行動になった。蓄積のための蓄積、それは資本主義の本質である。マックス・ウェーバーは資本主義の成立に先だつプロテスタントの宗教心の役割を強調した。 一方、人々が貯蓄と投資に励んでも、作った物は売れるとはかぎらない。美しい陶磁器に甘い砂糖をたっぷりいれた異国の飲み物にいれあげ、豪華に飾ったサロンで異性と恋愛を楽しむ贅沢の流行が資本主義の勃興した地域で観察される。ヴェルナー・ゾムバルトはその点を強調し、恋愛と贅沢が資本主義の起源だという大胆な主張をした。 西洋の資本主義の起源について、宗教的禁欲に求めるか、世俗的贅沢に求めるかについては激しい論争があるが、ともに非経済的・文化的要因を強調している点では共通しているのである。 そもそも、大航海時代は、地球が球形だと確信したコロンブスが西回りで「黄金の国」日本に向かったところ、アメリカに到達したことで幕をあけた。中南米に大量の金銀財宝があったことが航海熱をかきたてた。黄金を求めてヨーロッパ人はアメリカ植民に乗り出したが、金銀財宝は物を買う交換手段であって、目的ではないはずである。 アメリカの金銀財宝はヨーロッパ経由、太平洋経由でアジアの海に運ばれた。金銀で買おうとしたもの、それが目的だ。一五〇〇年頃から一八世紀前半にいたる最初の二世紀半における最大の購入品は、胡椒・香辛料であった。その胡椒・香辛料――一八世紀から薬味になるが、それ以前は疫病に効く薬と信じられていた――の獲得が目的であった。 一四世紀半ばから一五〇〇年まで間歇的に襲った黒死病でヨーロッパ総人口の三分の一が失われるという危機があった。胡椒・香辛料は疫病に効能があると信じられ、生命がけで求められ、人々はいかに高価でも買わざるをえなかったのである。ボッカチョは『デカメロン』の冒頭部分に黒死病の恐怖を記し、シェイクスピアは『ヴェニスの商人』で東方の胡椒・香辛料貿易を題材にした。生命の危機感が大航海時代を生み出したのである。決して経済的利益だけで説明しきれないのである。 さて、大航海時代にヨーロッパ人のやってきた東方の中心地域は東南アジアであった。東南アジアには北からは中国人・日本人、西からはインド人・ペルシャ人・ユダヤ人・アラビア人など、さまざまな人々が集まっていた。一六~一七世紀の東南アジアには異なる民族が生活物資を持ち寄り交換していたから、まさに多文化交流の坩堝(るつぼ)であった。文明の交流圏であったといってもよいだろう。 それをアントニー・リードという学者は「商業の時代」とよぶが、経済に偏した野暮な見方だ。確かに商業活動はあったが、中身は文化交流である。アジアの海で、胡椒・香辛料はもとより、木綿・絹・宝石・茶・陶磁器・砂糖など大量の物産が交換された。東方の物産に魅惑されないヨーロッパ人はいなかった。獣皮・毛織物を衣料としていたヨーロッパ人が、色彩豊かに染め上げられ洗濯しても色の落ちない木綿を見たときの感激は、想像して余りある。憧れられたアジアは文明であった。 ヨーロッパ諸国では、人々が木綿欲しさに、輸入量を激増させ、国庫の枯渇を招いた。インド木綿の使用禁止令や輸入禁止令が出たほどである。この危機を乗り切るには、インド木綿を買わないで、みずから作る以外に方法がなかった。後に産業革命の主軸産業になったのが木綿産業であったその背景には東方の木綿に憧れるファッション革命があった。まさに文化革命が主導して産業革命があとを追いかけたのである。 こうした事例は上げればキリがない。要するに、ヨーロッパの生活危機、宗教意識、またアジアの文明への憧れが、ヨーロッパに人類最初の経済文明が出現した背景にあるということである。憧れられたアジアの中東・インド・中国は、古代以来、中世末まで文明であった。憧れられなくなるや、それらの地域は文明でなくなり、やがて第三世界に転落していった。 (同志社大学2004年(法/神)/川勝平太『文明の基礎とは何か』) 設問 筆者は、「経済」と「文化」と「文明」の関係をどのように考えているか、「文化」を主語にして説明せよ(句読点とも四十字以内)。 第19回 長文記述2 ① いわゆる自然派というヨーロッパ近代文学思想の移入(あやまれる)以来、日本文学はわが人生をふりかえって、過去の生活をいつわりなく紙上に再現することを文学と信じ、未来のために、人生を、理想を、つくりだすために意欲する文学の正しい宿命を忘れた。 ② 単にわが人生を複写するのは綴方(つづりかた)の領域にすぎぬ。そして大の男が綴方に没頭し、面白くもない綴方を、面白くない故に純粋だの、深遠だの、神聖だなどと途方もないことを言っていた。 小説というものは、我が理想を紙上にもとめる業くれで、理想とは、現実にみたされざるもの、即ち、未来に、人間をあらゆるその可能性の中に探し求め、つかみだしたいという意欲の果であり、個性的な思想に貫かれ、その思想は、常に書き、書きつづけることによって、上昇しつつあるものなのである。 けれども小説は思想そのものではない。思想家が、その思想の解説の方便に小説の形式を用いるという便宜的なものではない。即ち、芸術というものは、たしかに絶対なもので、小説の形式によってしかわが思想を語り得ないという先天的な資質を必要とする。 ③ 小説は、思想を語るものではあっても、思想そのものではなく、読物だ。即ち、小説というものは、思想する人と、小説の戯作者と二人の合作になるもので、戯作の広さ深さ、戯作性の振幅によって、思想自体が発育伸展する性質のものである。明治末期の自然派の文学以来、戯作性というものが通俗なるもの、純粋ならざるものとして、純文学の埒外(らちがい)へ捨て去られた。それは、実際に於ては、むしろ文学精神の退化であることを、彼らは気付かなかった。 ④ 即ち彼らは、戯作性を否定し、小説の面白さを否定することが、実は彼らの思想性の貧困に由来することを知らなかった。 ⑤ 彼らには思想がなかった。理想がなかった。人生を未来に託して、常により高く生き抜こうとする必死な意欲を知らなかった。「思想性が稀薄であるから、戯作性、面白さと、だき合うことができなくて、戯作性というものによって文学の純粋性が汚されるような被害妄想をいだいたわけだが、本当のところは、戯作性との合作に堪えうるだけの逞しい思想性がなかったからに 外ならぬ。 (坂口安吾「理想の女」より) 設問 傍線部のように言うのはどうしてか、わかりやすく説明せよ。 第20回 要約問題 次の文章の内容を、①八〇字以内、②四〇字以内の二通りに要約せよ。 ①日本語の定型詩が対句を用いるのはきわめて稀である。②詩論、すなわち平安時代以後、殊にその末期に俊成・定家父子を中心として行われた「歌論」が対句に触れることもない。③その理由は比較的簡単で、要するに日本では『古今集』以来極端に短い詩型(いわゆる「和歌」)が圧倒的に普及したからである。④音節数では和歌(三一)は五言絶句(二〇)よりも多いが、語数では和歌の方が少なく、対句を容れることはほとんど物理的に不可能である。⑤しかも後には連歌から「俳句」が独立して和歌(または短歌)に加わる。⑥俳句はおそらく世界中でも最短の詩型の一つであろう。⑦俳句はそれ自身が一句だから、対句は問題にならない。⑧『万葉集』の時代には「長歌」もあったし、『梁塵秘抄』の時代には「今様」もあった。⑨しかしそのどちらにも二行を一組として扱う対句の多用はみられない。⑩『万葉集』の長歌の技法には、相称的な形容句を重ねて用いる修辞法が含まれるが、その場合にも相称的表現が作品全体の構造に決定的な役割を果たしたわけではない。⑪今様は四行の歌詞である。⑫その二行が中国風の対句を作る例は、現存する本文に関するかぎり、ほとんどない。⑬要するに極端な短詩型の支配は、左右相称の言語的表現を排除したと思われる。
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登録日:2020/09/17 Thu 22 00 00 更新日:2023/09/29 Fri 20 23 27NEW! 所要時間:約 15 分で読めます ▽タグ一覧 STAR_WARS SW イース・コス エージェン・コーラー ザブラク ジェダイ スター・ウォーズ ナル・ハッタ ナー・シャダー ハサニ・シャピ マスター ライトセーバー 戦後のジェダイ 暗黒面 父親 評議員 追放 銀河共和国 離脱 「あの怪物を裁きの場に引き出せるなら、命をくれてやってもいい!」 イース・コス(Eeth Koth)は、とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。 銀河共和国末期のジェダイで、最終階級はマスター。クローン大戦末期にはジェダイ最高評議会メンバーにまでなった。 映画本編ではEP1~EP2にかけて登場し、CG版「クローン・ウォーズ」にも途中まで登場。 もともとは、とある事情で別人に入れ替わったという稀有な来歴があり、一部作品では取り換えが発生している。 【人物】 【能力】 【作中の活躍】◆前歴 ◆ナブー危機 ◆クローン大戦 ◆ジェダイからの追放 ◆帝国時代 ◆死後 【エージェン・コーラーとの関係】 【その他の余談】 【人物】 「ふたりとも行け! ひとりで逃げられる……だいじょうぶ」 種族はイリドニア系ザブラク。人間に近い種族だが、頭部に数本の角が生えているのが特徴。 身長171cmと中背(周囲に180台が多いので、比較的小柄)。肌が薄めの茶褐色で、黒髪はストレート気味、顔に白い刺青とひび割れのような模様がある。 パッと見ではわかりにくいが、EP1で登場したシス卿ダース・モールとは同族である。 モールは全身に赤と黒の刺青をびっしり施しているからああいう姿なのだが、イースはそうした刺青を施していないから、デザインが違って見えるのだろう。 ちなみに、肌の茶色が色濃くて、ボサボサ髪で、小さいイボがたくさんあるほうはエージェン・コーラーという別人である。 これ重要(後述)。 ザブラクは激情家気質が強く、また闘争心であれ忠誠心であれ、激情の志向先が決まると一心不乱につき進むという特性がある。 師匠への忠誠心が強いダース・モール、家族を重んじるサヴァージ・オプレス、ぶっきらぼうで攻撃性が強いエージェン・コーラー、いずれもそんな気がある。 イース・コスも種族由来の強情さを持ち合わせており、彼の場合はそれを任務に対する責任感や誠実性に向けている。 一方、言葉にはしなかったものの年齢制限に引っかかるアナキンに内心同情したり、沈む船から部下たちを逃がしたりと、優しいところを垣間見せている。 だが、いったい何があったのかは不明だが、戦争中にジェダイ評議会から除名されたうえに、騎士団から追放されるという憂き目にあった。 どうやらかなり理不尽な扱いを受けたようで、後年にはジェダイの在り方そのものを否定するようになる。 だからといって人間性が悪くなったわけではなく、妻子を大切にしたり、落ち延びた先で冠婚葬祭を取り仕切って人々から慕われたりと、生来の強情さを誠実さに向けているのは変わりがない。 司祭として静かに暮らしたり、妻と幸せをかみしめたり、敵が現れれば激情を爆発させて粉砕したりと、ジェダイとは明らかに違うがシスでもダークジェダイでもない、独自の境地に至っている。 あえてその心境に名前を付けるとするなら、「イース・コス」そのものというべきだろう。 このころにはジェダイの居場所をシスに教えてでも家族と自分を守ろうとしているが、これは彼が外道に落ちたとかではなく、単に彼の誠意を向けるべき対象ではないというだけのことである。 あくまで彼は家族に対して誠実だったのだ。 【能力】 「救命ポッドに急げ! 私が相手をする……!」 ジェダイ時代は、あくまで平均的なジェダイの枠を超えなかった。 もちろん、ジェダイ最高評議会に抜擢され、ジオノーシスの闘技場の死闘を生きて突破する実歴を持つのだから、そこらのジェダイよりははるかに強い。 特に剣術に長けていたらしいが、フォースの衝撃波など、そのほかの法術もまんべんなく使える。 しかしクローン大戦では、四機のBXコマンドードロイドに苦戦して腕に被弾したり、グリーヴァス将軍に余裕綽々で打ち負かされたりと、キ=アディ=ムンディやシャアク・ティと同じく「グリーヴァス以上には勝てない中堅ジェダイ」だったといえる。 使用するライトセーバーは通常型。光刃は緑色。 グリーヴァスに敗れて一度奪われたが、直後の戦いでオビ=ワンがグリーヴァスの手から弾き飛ばしたため、無事回収される運びとなった。 またカートゥーンアニメ『クローン大戦』のワンシーンでは赤い光刃のライトセイバーを使う場面がある。 ……緑や青はともかく、赤って。 (昔の設定では、アディ・ガリアも赤い光刃のセイバーを使っていたらしい。また、アディの弟子シーリー・タチはメイス・ウィンドゥと同じ紫の光刃も使っていた。赤や紫はシスやメイスの専売ではないのかもしれない) 剣術フォームについてははっきりとした記述はないが、八相の構え(顔の横辺りで縦るように構える)を取ることが多く、アタロ使いと推測される。 「恐れ。怒り。恨み。お前の中にそれらを感じる。抑えきれんようだな。それこそがお前に力を与えるのだ。ジェダイとは比べものにならんほどにな」 「私のザブラクの血のせいかもな。あるいは……守る者があるせいかもしれん」 しかしジェダイから離反し、精神的に余裕をもって感情を発揮するようになってからは、かつて以上の実力を得た。 これは、彼がジェダイの忌避する攻撃性や恐怖といった「生(ナマ)の感情」を開放することで、フォースを光明面のみならず暗黒面まで動員したためである。 その実力は、負傷で衰えたとはいえ依然グリーヴァス以上の戦闘力を誇るダース・ヴェイダー相手にまともに拮抗したほど。 さすがに、同じくフォースを光明面・暗黒面含めて行使し、しかもより洗練されたシスの暗黒卿には到底及ばなかったが、ジェダイとしての壁を超えたことは確かであろう。 【作中の活躍】 ◆前歴 出身は、辺境域はハット宙域の中枢ナル・ハッタの衛星、「ナー・シャッダ」。 「リトル・コルサント」「垂直都市」の異名をとる、コルサントと同じく惑星そのものが一つの大都市となっている惑星だが、よりによってハットの故郷にほど近いため、「密輸業者の月」としても悪名高い。 ザブラクは一般に惑星イリドニアの出身なのだが(*1)、イース・コスはイリドニア系ザブラクでありながらなぜかそんなところで生まれた。 辺境域の出身であるため共和国の目が届かず、彼がフォース感応者としてジェダイに見いだされたのは、彼が四歳の時であった。 キ=アディ=ムンディもそうだったが、四歳というのは当時のジェダイとしてはギリギリの年齢である。 それでも彼はザブラク特有の卓越した思考制御能力を発揮した事で自らの価値を示し、更に自分の意思の力で肉体的な苦痛を和らげることもできた事で高い能力を発揮し、いつのころかジェダイマスターまで昇進。ナブー危機のころにはすでにジェダイ最高評議会のメンバーにまでなっていた。 ◆ナブー危機 貿易ルートへの関税に端を発する、通商連合による惑星ナブーへの経済制裁が行われたとき、彼もまた評議会に居座り、クワイ=ガン・ジンからの報告を受けた。 彼の言うシス卿の復活も問題だが、彼が連れてきたアナキン・スカイウォーカーの処遇も問題で、彼が「選ばれしもの」かどうかはともかくとしても優れたフォース感応者の才能があることは確かだった。 しかしすでに九歳のアナキンは年齢制限を超えており、評議会は彼の入門を拒絶、クワイ=ガンとの論争になる。 このときイース・コスは一切発言をしなかったが、自分も比較的遅くに入門したため、内心ではアナキンとクワイ=ガンに同情的だったらしい。 結局、シス卿に敗死したクワイ=ガンの命に免じる形で、最高評議会はアナキンをオビ=ワン・ケノービの弟子と認めることになる。 このシス卿は自分と同族のザブラクだったが、彼は直接かかわりを持っていない。 ◆クローン大戦 「悪名高きグリーヴァス。卑劣な殺人鬼、やっと会えた……!」 ナブーの一件から十年後、銀河共和国は長年の末期症状がさらに深刻化し、分離主義運動まで派生。 その分離主義はドゥークー伯爵という指導者を得てからより先鋭化。ついに分離主義運動から独立星系連合が出現することで、戦争が不可避となる。 その最初の戦闘となった「ジオノーシスの戦い」では、メイス・ウィンドゥが指揮する200人以上のジェダイ部隊が編成されて先発。イース・コスもその部隊に所属していた。 しかし独立星系連合のドロイド軍は圧倒的な戦力を誇り、個々の力量だけで戦うジェダイ部隊は壊滅、九割が戦死する大敗北を喫した。 幸い、全滅寸前にヨーダがクローントルーパーの大軍を率いて駆け付けたため、イース・コスも助かったのだが、今度は彼やソーラ・バルクが乗っていたガンシップが撃墜されてしまう。 横を飛んでいたメイスも死んだと思ったぐらいだったが、間一髪一命はとりとめ、戦闘終了後に帰還できた。 その後は他のジェダイと同じく、将軍としてクローン大戦に参加。 主にヴェネター級スター・デストロイヤー「ステッドファスト」に乗艦した。 アナキン・スカイウォーカーのナイト昇格試験の議論にも参加しているが、彼の精神面を不安視して一時反対(*2)。 最終的にアナキンは満足な結果を出したため、イースもあえて異議は唱えず、彼の昇格儀式に立ち会っている。 しかし独立星系連合は、フォースの使い手こそ少なかったが、ドロイディカやマグナガード、BXコマンドードロイドなど、並みのジェダイ以上の戦力はそれなりにいた。 そしてそんな中でも指折りの強さを誇るのがグリーヴァス将軍で、イースは彼に敗れたことがある。 それがサルーカマイ星系を巡る戦いで、イースの部隊は独立連合との艦隊決戦に敗北。 旗艦に乗り込んだグリーヴァス将軍は直属のドロイド部隊を引き連れてブリッジにまで乗り込み、待ち構えていたイース・コスと激突した。 イースはこの戦いで、先行したBXコマンドードロイドにも苦戦、腕を撃たれてライトセイバーを取り落とした。 続いて入場したグリーヴァスとマグナガード四機には完敗し、グリーヴァスは切り札の四刀流を見せることもなく、手加減をしたままマグナガードに捕えさせるという、余裕たっぷりの勝利を見せつけた。 (一応フォースの衝撃波でグリーヴァスを吹き飛ばす一幕はあったが、実力差は覆せなかった) その後、グリーヴァスは捕虜にしたイースの映像をジェダイ聖堂に送り付けて挑発。 イースは苦しみながらもハンドサインでここがサルーカマイ星系だと教えたが、グリーヴァスはそれも織り込み済みでジェダイを待ち構えていた。 幸いにもというか、救出隊に派遣されたオビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカー、それにアディ・ガリアは見事にイースを救出するが、グリーヴァスも退却に成功。両軍無為に消耗しただけに終わった。 戦争中~後期の「オビ=ワン暗殺偽装事件」「惑星オンダロン支援事件」「サイフォ=ディアス調査事件」「アソーカ・タノ冤罪事件」などにも評議会メンバーとして関与するが、これといって目立った活躍はない。 ◆ジェダイからの追放 「評議会からは追い出された。知っているだろう。ジェダイへの忠誠心はない」 少なくとも戦争二年目、アソーカ裁判事件までは、彼はジェダイ評議会のメンバーだった。 しかし戦争終盤、イース・コスはなぜかジェダイ評議会から除名され、追放されてしまった。 後年このことを語る彼は冷淡な雰囲気を出しており、よほど手ひどい扱いを受けたようである。 なお、後任には同じザブラクのエージェン・コーラーが就任した。 このおかげで、イースは「シスの暗黒卿」の出現と「オーダー66」によるジェダイの敗北から免れることができた。 どんな経緯で彼が追放されたのかは定かではないが、すでにジェダイそのものに幻滅しきっていたイースは、銀河帝国への抵抗運動にも参加せず、シス卿のことすら忘却していった。 ◆帝国時代 「もう昔の私じゃないんだ。こうする必要がどこにある……私は今やガンシック啓蒙教会の一司祭に過ぎん。結婚式や葬式を取り仕切る……人々の平和のために働いているんだ」 詳しい時期は不明ながら、帝国時代の初期には、イース・コスは砂漠の惑星で「ガンシック啓蒙教会」の司祭として生活し、ミラという女性のザブラクとも結婚。冠婚葬祭を司り、市井の人々に慕われながら、平和な生活を送っていた。 しかし妻が娘を出産した直後、ジェダイの残党狩りをしていたダース・ヴェイダーおよび尋問官部隊の襲撃を受けてしまう。 イースは、もうジェダイであるつもりも、ジェダイに関わるつもりもなかった。ただ夫であり、父親であり、男であった。 帝国やシスに対抗するつもりなどない。むしろ、自分たち一家を見逃してくれるならば、ジェダイの秘密連絡用周波数を教えるなど、帝国への協力もしようとまで申し出た。 しかしイースの命こそが目的であるヴェイダーは、彼の願いを冷笑。 戦いが避けられないと悟ったイースは、娘を抱えた妻を逃がすために数年ぶりにライトセイバーを起動する。 「さあ……祈ろうか」 ヴェイダーは過去の経験からイースの実力は知っていた。亡きグリーヴァスにも勝てない程度の男である、と。 しかしイースは、ヴェイダーが思いもよらない攻撃やパワーで自分とまともに切り結ぶ。 あり得ない腕前である。しかしそれは当然でもあった。イース・コスは、ジェダイではなく「父親」である彼は、使える力はなんでも使う「男」になっていたのだ。 憤怒、恐怖、怨恨といった、かつてジェダイであったころは禁じられていた感情を発揮し、暗黒面のフォースを併用していたのである。 むろん、ジェダイの経験から光明面のフォースも使っている。 シスではないにせよ、ジェダイとしては括れないほどの力を、いまのイース・コスは備えていた。 「ジェダイのお手並み拝見だな」 「私はもうジェダイではない。結婚して、今日父親になった。愛する者を守るためお前を……滅ぼす!」 しかしフォースを暗黒面まで含めて使うことに関して、シスはより高度な教義と技術を持っていた。 ヴェイダーのパワーや技術はイースのそれを依然として上回り、イースは右目を負傷するなどして圧倒されていく。 しかもその間に、ヴェイダーは部下の尋問官を派遣して、イースの娘を捕えさせていたのである。 愛娘を奪われ、人質にされたイースは心が折れてしまい、抵抗できなくなったところを、背後から赤い光刃で貫かれた。 娘はそのまま、ヴェイダーたちによってコルサントへと連れ去られてしまった。 ◆死後 「イース・コスの死はお前たちにとって良い教訓だったはずだが、何も学んでいないな」 この一件の直後、イースの娘を捕えた尋問官の男女が、上司であるヴェイダーに殺されるという事件が起きた。 この二人は長い付き合いで愛情を抱いていたのだが、ヴェイダーはイースの一件で「愛情が自分を縛り破滅させる」と判断し、よからぬ感情を持った二人を憎悪し殺したのである。 もちろんこれには、本人のトラウマからくる八つ当たりも入っていた。 報告を受けたシディアスは、イースの抹殺成功は讃え、彼の愛情が目的を達せられないことや、彼が司祭という職を選んだことの「未練」も嘲笑はしたものの、 ヴェイダーの尋問官処刑が完全に私情からくる八つ当たりであることは見抜いており、しかも一連でコルサントで無視できない騒動(*3)を起こしたことも含めて、ヴェイダーを咎めるに至っている。 【エージェン・コーラーとの関係】 EP2から登場するエージェン・コーラーとは姿がよく似ている。 イースは、肌の茶色が浅めで、髪がストレート気味で、顔に白い刺青とひび割れのような模様があるほう。 エージェンは、肌の茶色が色濃くて、ボサボサ髪で、小さいイボがたくさんあるほう。 しかしもとは、どちらも「イース・コス」として撮影されていた。 まずEP1では、ハサニ・シャピという人物が「イース・コス」を演じた。 そして続くEP2でも、ジェダイ聖堂のシーンでは引き続き、「ハサニ・シャピのイース・コス」が使われている。 ところが、ジオノーシスの戦いで問題が起きた。 該当シーンはもっぱらオーストラリアで撮影されていたのだが、その撮影にハサニ・シャピが参加できず、しょうがないから地元の俳優タクス・アキンドイエーニを代役にした。 しかし「ハサニ・シャピのイース・コス」と「タクス・アキンドイエーニのイース・コス」が明らかに別人だったため、後者を「イース・コス」と言い張ることができなかった。 そもそも似せようとしていない節があり、「シャピのイース・コス」に本来あった白い刺青やひび割れのような模様が、「アキンドイエーニのイース・コス」にはないのである。 結局、製作サイドは「アキンドイエーニの色黒ザブラク」を「エージェン・コーラー」という別キャラに設定。 もともとの「イース・コス」は、「ジオノーシスの戦いで乗っていたガンシップが撃墜されて戦死」ということにされた。それで、EP3には出てこなかったのである。 (アディ・ガリアとスタス・アリーも、もともと同一キャラだったのが俳優の違いで別人になったタイプである) ところがカートゥーン版「クローン大戦」では、明らかにイースとしか思えないジェダイが評議会メンバーに居座っていた。顔の白い刺青、ひび割れ模様、明らかにイースである。 しかしエンド・クレジットでは「エージェン・コーラー」となっている。 「エージェン」とするならデザインが間違っているのだが、「イース」とするのならジオノーシスより後なので「撃墜されて戦死」という設定からズレている。製作サイドも理解と整理が追い付いていなかったようだ。 とどめにCG版「クローン・ウォーズ」で思いっきり「ジェダイ評議会のイース・コス」と呼ばれながら登場して、ついに完全復活。 製作サイドとしては「ジオノーシスで撃墜」設定は知っていたのだが、ジョージ・ルーカスにも談判し、生き返ったとのこと。この辺はソーラ・バルクにも同じ話がある。 ちなみに当初はあのエピソードでグリーヴァスに殺される予定だったが、それも惜しまれたため生き延びたそうな。 わりと大変な設定変更を食らい続けたわけだが、最後は寿命が延長されて、彼にしかたどり着けない生き様を描けただけ、カノン設定の分割で大いに得をしたキャラクターだったといえるだろう。 【その他の余談】 EP1初期段階では、イース・コスはジェダイ評議会のリーダーとなる予定だった。 イースというのはザブラクの言語で「大胆不敵」という意味らしい。 時期は不明だが、メイス・ウィンドゥとはお互いのライトセイバーを「信頼の証」として交換したことがあるとか。 また、訓練ではダブル=ブレード・ライトセイバーを使うこともあったという。 「私は今やアニヲタWikiの一ユーザーに過ぎん。項目の追記・修正を取り仕切る……人々の知識のために働いているんだ」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 次はヨーダの同族のレジェンズ・ジェダイ、ミンチの予定です。イースはエージェン・コーラとの設定変遷や戦後の新設定がだいぶ興味深かった。ちなみに設定の変遷は主に某ウーキーの辞書より。 -- 作成者 (2020-09-17 22 11 06) 役者も含めて設定変更を受けすぎて、2で戦死からクローンウォーズのキャラ、いつのまにか今のところ理由は不明だけど評議会を外される設定となかなか波瀾万丈。 -- 名無しさん (2020-09-18 10 03 40) エージェンとサシー・ティンってもう作成した? -- 名無しさん (2020-09-18 21 34 53) 名前 コメント
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STARWARS ANOTHER GALAXY EPISODE1 暗黒の到来 第1章 闇 ナブーの戦いから10年後―――。 腐敗に腐敗が重なりきった銀河共和国は、崩壊の予兆を示していた。 元ジェダイ・マスターのドゥークー伯爵の率いる分離主義者達が、各惑星に共和国からの離脱を呼び掛け、既にかなりの数の惑星が共和国からの脱退を表明しているのだ。 共和国元老院では、分離主義勢力に対抗すべく軍隊を創設するか否かの激しい議論が展開され、混沌は深まるばかり。 人々はもはや、元老院に対して、解決の希望を持っていなかった。 銀河有数の大企業などからなる独立星系連合(CIS)は、保有するドロイド軍の軍備を大幅に拡張するなど水面下で力を強め、銀河はまさに真っ二つに引き裂かれようとしていた。 そんな中、平和の守護者たるジェダイ達は、フォースに翳りを感じ始めるのだった……… 「フォースと一体になれ、セイル。感じるのだ……」 セイルの頭に、師であるレイムスの声が染み込んでくる。 セイルはフォースに手を伸ばし、触れた。 不思議な暖かさのようなものがセイルを包み込み、慈しむかの様に彼の体を撫でる。 「そうだ、セイル。フォースを肌で感じろ」 セイルはさらにフォースに浸りこもうと手を伸ばし、力の泉を求めた。 すると、フォースは彼の手から水のように滑り落ち、どこかへ消えてしまった。 セイルががっかりした声を上げ、目を開ける。 レイムスが、氷さえとけそうな優しい顔で微笑んでいた。 「フォースは本能で感じるのだ、セイル。お前はまだ頭で考えている部分があるぞ」 「はい、マスター。自分の未熟さを感じます」 暖かな光の満ちた瞑想室に彼らはいた。 ここはジェダイ・テンプル。 平和の守護者であるジェダイ達が集い、フォースの知識を分けあう場である。 セイルは17歳のパダワンだ。 彼の顔には無邪気な幼さが残り、見る者を和ませる。 体は訓練によってしっかりと鍛えられ、引き締まっており、刈りこんだ栗色の髪は全く油気が無かった。 しかし、意志がそれほど強く無く、自分よりも他人の意見に従ってしまう弱さもあった。 「いいか、マイ・パダワン。フォースは下僕ではない。パートナーなのだ。操ろうとせず、肩を組むのだ」 レイムスは彼のパダワンに言った。 セイルの師匠であるレイムスは、ジェダイ・マスターである。 厳しくとも優しく、セイルにとっては父に等しい存在だった。 レイムスの威厳を感じさせる顔には皺が所々走り、黒い髪には白いものが交じっているが、彼の体には力がみなぎり、フォースも若い頃より劣るどころか、むしろ鋭くなり、純粋になっていた。 ナブーの戦いにてシス卿に殺された偉大なるジェダイ・マスター、クワイ=ガン・ジンとは親密な友人だったようだ。 「よし、セイル。フォースの訓練は終わりだ。セーバーの訓練をしよう」 レイムスが言うと、セイルは嬉しそうに笑った。 彼はフォースよりライトセーバーの方が好きなのだ。 「ランコムが誘拐された!?」 ジェダイ・ナイトであるリオ・クルティスは驚きの声をあげた。 ヨーダが悲しげに頷く。 ここはジェダイ・カウンシルの間である。 「誰に、誰にですか!?」 「ランコム・フィルマルトは、紛争の調停のため、マステルムに赴いていた」 キ=アディ・ムンディが言う。 マステルムは、6ヶ月前から政府と反抗的武装ゲリラが戦いを繰り広げているミッド・リムの惑星である。 「じゃが、政府はランコムを罠に陥れ、彼を拘束したのじゃ。政府は独立星系連合への加盟の手土産として、ランコムを分離主義者達に引き渡すつもりじゃ」 と、ヨーダ。 「証拠は!?」 「マステルム政府が、声明とホロを我々に寄越している」 息巻くリオに、メイス・ウィンドゥが答える。 リオは歯をくいしばった。 リオ・クルティスは30代程のジェダイ・ナイト。 2本のライトセーバーを操る彼は、なかなか優秀なジェダイとしての名声をはくしている。 短く切り揃えた黒の髪、切れ長の冴えた目、色白の顔、細身の体、優雅な身のこなし。 まさに美男だったが、結婚できないジェダイとしては、宝の持ち腐れである。 「マスター……」 リオの様子を察し、彼の隣に立つ少女が声をかけた。 少女の名はローラナ・レンシア。 年は18歳程。 リオのパダワンである彼女は、短い栗色の髪と、意志の強そうな碧の瞳が特徴的だ。 「そこでじゃな、ナイト・ランコムと親しい間柄であるおぬしらを救出に出すべきだと評議会で決定した」 ヨーダの言葉に、評議会の面々が頷く。 「信頼関係は大事だからな」 「さよう」 メイスの言葉に、ヨーダが頷いた。 「君達の他に、マスター・ソーディンとそのパダワンであるレディアントを手配した。君達は彼らとも親しいだろう?」 メイスの問いかけに、リオとローラナが頷く。 「よし、決まりだ。出発は1時間後。リパブリック・クルーザーを準備させてある。2人共、フォースと共にあらんことを」 「フォースと共にあらんことを」 リオは頭を下げ、評議会の間を後にした。 ローラナも彼に倣い、ついてくる。 「…………ランコム…」 リオはそっと呟いた。 「あれがマステルムか………」 リパブリック・クルーザー<ペリアム>のブリッジのビューポートから見える赤茶けた惑星をみつめ、レイムス・ソーディンはそっと呟いた。 「ランコムが、あそこに」 隣でリオが言う。 プロトコル・ドロイドがコーヒーを持ってきたが、レイムスは片手で追い払った。 今から大切な仲間の救出作戦が始まるのだ。 コーヒーで一服などしていられない。 「通信です」 「繋げろ」 パイロットの言葉に、リオが言った。 小さなスクリーンに、血色の悪い、痩せた人間の男が映った。 くせなのか、まぶたがピクピクと動いている。 『…私はマステルム外務顧問、ブリフィ・ハストーだ。お前達は共和国の使いか?』 「ごきげんよう。外務顧問殿。マステルムへの着陸を許可してもらえるかな?」 ブリフィの問いに答えずにリオが訊く。 『………まあいいだろう。誘導ビーコンを発信する』 男はまぶたをピクピクと動かしながら言った。 <ペリアム>が着陸エリアに着床するやいなや、軽アサルト・タンクや、ラビット・ファイア・マシンガンを搭載したランド・スピーダーがリパブリック・クルーザーを包囲した。 「……大歓迎ですね」 スクリーンに映ったその光景を見たセイルがポツリと呟く。 包囲の輪の中から1人の男が出てきた。 「ブリフィだわ」 と、ローラナ。 「………行こう」 リオはそう言うと、昇降口へと歩いて行った。 「これはこれは、共和国の使者殿」 ブリフィがまぶたを震わせ、してやったりとの顔でジェダイ達に言う。 おそらく、頭の中はこれから貰える褒美の事でいっぱいなのだろう。 「マステルム政府の、最高責任者に、会わせろ」 レイムスがゆっくりと言うと、ブリフィのまぶたの震えが止まった。 「……マステルムの最高責任者に会わせます」 ブリフィは回れ右すると、先に立って歩き出した。 ジェダイ達がついていく。 「ナイスなマインド・トリックだ」 リオがレイムスに耳打ちすると、彼はにやりと笑った。 彼らはゲリラによる襲撃の爪痕の残る街を抜け、議事堂らしき施設にたどり着いた。 警備兵達がブリフィを見て脇に下がる。 黒い制服を来た女性が、木製の大きな扉を開けた。 薄暗くひんやりとした廊下が続いている。 ブリフィは黙々と廊下を歩き、ジェダイ達も静かについていった。 突き当たりを、大きな両開きの扉が廊下をふさいでいる。 ブリフィはそれを押し開けた。 バン!とでもいいそうな程の勢いで扉が開く。 扉の向こうは議場だった。 円形のホールの真ん中に演壇があり、そこに立っている男性が、驚いた顔で彼らを見ている。 演壇から放射状に並んでいる席に座っている議員達も、皆一様に驚愕の表情をうかべていた。 「ファンガス総統」 レイムスが重々しく言う。 「ジェダイを解放してもらいたい。我々はその交渉に来た」 演壇に立つ男―――ファンガスは、すぐに驚きから立ち直り、レイムス達を冷たく睨んだ。 「………ブリフィ」 ファンガスに呼ばれたブリフィが、ぼんやりと彼を見る。 「ブリフィ!!」 ファンガスが怒鳴り、ブリフィがビクッと跳ね上がる。 彼は今まで夢を見ていたかのような顔で、周りをキョロキョロと眺めた。 「我々はジェダイの解放を要請する」 レイムスが繰り返した。 「………残念だが」 ファンガスはニンマリと笑った。 「その要求は聞き入られない」 次の瞬間、ジェダイ達の背中をレーザーの嵐が襲った。 ジェダイ達が振り向きざまにライトセーバーを抜き放ち、レーザーを次々に偏向する。 手に手にブラスターを持った保安ドロイドが押し寄せてきていた。 ファンガスが演壇にでも隠してある非常ボタンを押したのだろう。 ファンガスが笑い、議員達は悲鳴をあげながら、ジェダイ達が入って来たのとは別のドアから逃げて行く。 「セイル!」 レイムスは蒼の光刃でレーザーを跳ね返しながら、セイルを呼んだ。 「演壇のコンソールで、ランコムが捕らえられている場所を捜すんだ!」 「はい、マスター!」 セイルが翠(みどり)の刃を収め、演壇に向けて走っていく。 演壇についたセイルは、コンソールを急いで叩いた。その間も、保安ドロイドの数は増え続けている。 レイムス達が抑え切れなかったレーザーが、セイルの頭を掠めた。 「マスター、セキュリティ・ロックされています!」 「突破できるか?」 「やってみます!」 そう言うと、セイルはローブの内ポケットからデータ・ウェハーを取りだし、コンソールの機器に挿入した。 データ・ウェハーからハッキングのサポートを受け、セイルが次々にセキュリティを突破していく。 「セイルはこんなこと得意なの?」 セーバーを振る手を休めずに、ローラナが言った。 「ああ。セイルは電子機器関連のプロだ」 レイムスが答えた。 「マスター!セキュリティを突破しました!ランコムが捕らえられているのは、ここから北西に3キロ行った所にある拘留所です!拘束機の解除コードは、946N-39…………あ、いえ、たった今コードが解除されました!」 「くそっ!ファンガスだ!ランコムを連れて逃げる気に違いない!」 リオはそう言うと戦線を離れ、議員達が逃げて行った扉から飛び出していった。 「私も………!」 続こうとしたローラナの肩をレイムスが掴み、押し留めた。 「ランコムが連れていかれたのなら、ファンガスと一緒のはずだ。セイル、サーチできるか?」 レイムスは最後の保安ドロイドを叩き斬りながら言った。 「待って下さい。奴らが非常ロックをかけたみたいです。突破には時間がかかりますよ」 「かまわん」 「わかりました、マスター」 セイルはもう1枚データ・ウェハーを取り出すと、機器に挿入し、コンソールをすごい勢いで押し始めた。 レイムスが腰につけたコムリンクを取り、起動する。 「こちらレイムス。<ペリアム>、聞こえるか?」 『………こちら<ペリアム>。聞こえます』 「レーダーで、この惑星から逃げようとしているスター・シップをサーチできないか?」 「わかりま―――」 突然、通信が途絶えた。 「………<ペリアム>?」 通信機からは、雑音が聞こえるだけ。 「……………<ペリアム>!!」 やはり応答は無かった。 レイムスはしばらく呆然としていたが、黙ってコムリンクをベルトに戻した。 「…………<ペリアム>は?」 ローラナが心配げに訊く。 「……おそらく、破壊された」 レイムスは、小さく呟いた。 リオは、街をひたすら走っていた。 フォースがランコムの場所を示すが、いずれも不意に消えてしまう。 まるで、フォースが翳っているようだ。 リオはそう思った。 その時、彼のコムリンクが鳴った。 いったん足を止め、コムリンクのホロ機能を起動するリオ。 レイムスのホロが浮かび上がった。 『リオ!奴らは民間の貸し出しハンガーに向かっている!スター・シップをレンタルする気だろう』 「敵はなぜ政府のスター・シップを使わないんです?」 『我らの追跡を撹乱するために違いない!貸し出しハンガーへのマップを送る!』 リオは、マップを目に焼きつけるように見た。 ここから遠くない。 そう思った瞬間、リオは走り出していた。 リオへの通信を終えたレイムス達は、急いで議事堂を飛び出した。 保安ドロイドが数体、ブラスターを撃ってきたが、偏向されたレーザーが彼らの胸を貫くのに、大した時間はかからなかった。 「セイル、あのランド・スピーダーを接収するんだ!」 レイムスの声にセイルは頷き、若い男の乗っていたランド・スピーダーの前に飛び出した。 「おい、危ないじゃないか!」 男が慌てて車を止め、窓から首を出して叫ぶ。 「まあいい。議事堂が何者かに襲われたらしい。飛び出した事は許してやるから、お前も早く逃げろ!」 男の言葉を無視し、セイルはフォースを放った。 「僕達に、スピーダーを渡せ」 「スピーダーを渡します」 セイルのマインド・トリックにより、男がランド・スピーダーから下りる。 「悪いね。ちゃんと返すよ」 セイルはそう言いながら運転席に滑り込んだ。 レイムスが助手席に座り、ローラナも後部座席に飛び込んだ。 「飛ばしますよ!」 セイルは叫び、アクセルを踏み込んだ。 少し古くさいランド・スピーダーのエンジンが爆音をたて、スピーダーが凄い勢いで発進する。 まだちゃんと座っていなかったローラナが、よろけてどこかで頭を打ち、きゅう、と唸った。 スピーダーが、マステルムの薄汚れた街を疾走していく。 街は議事堂が攻撃を受けたために非常時体制になり、住民は1人として通りを歩いていない。 「マスター、検問です!」 セイルが叫んだ。 通りを防ぐように、検問が設置されている。 「奴らに構っている時間は無い!全速力で突っ込め!」 「は、はい!」 セイルはアクセルを踏んだ。 ランド・スピーダーが、スピードを緩めるどころか加速している事に慌てているのか、警備員が走り回っている。 検問の門が閉じた。 「そのままだ」 思わずスピードを緩めかけたセイルに、有無を言わさぬ口調でレイムスが言う。 セイルは喉まで出かかった悪言を飲み込み、ますますスピードをあげた。 ぐんぐん門が近づいてくる。 最後の瞬間、レイムスはフォースを思い切り放った。 門が吹き飛び、ランド・スピーダーが、なんら遮られる事なく検問を突破する。 セイルとローラナは、大きく息をついた。 『ハンガー・ベイ貸します』という、古びて錆びついた看板が見えた。 リオは、『ハンガー・ベイ、スター・シップ貸します。レンタルのトダルノイ』という、看板の傾いている店を、物陰に隠れて観察していた。 店の扉の両脇に、議事堂にいた警備兵が立っている。 速攻。 リオはそっと呟いた。 ぐずぐずしていては、ランコムがCISに引き渡されてしまう。 リオは物陰から跳躍し、警備兵達の目の前に飛び降りた。 突然舞い降りた男に驚き、警備兵達はブラスターを抜くのも忘れて、呆然と彼を見つめている。 リオは2本のライトセーバーを、2人の胸にそれぞれトンと当てた。 「ジェダイを敵に回すなと教わらなかったのか?」 リオの言葉と共に起動された青と緑の光刃が、警備兵達の胸を貫いた。 彼らは、悲鳴をあげる前に死体となった。 骸を乗り越え、リオが店の中へ乱入する。 暗く狭い店内では、警備兵の服装をした男がリオに背を向け、うずくまっている2人の年老いたサラスタンにブラスターを向けていた。 サラスタン達は、おそらくこの店の所持者だろう。 なるほど。 ファンガスは金も払わずにスター・シップを借りるようだ。 そう思いながら、リオは音もなく警備兵の背後へ忍びより、サラスタンにウインクした。 サラスタンが、驚きと期待に顔を輝かせる。 警備兵がその表情に気づき、サラスタンの視線を追って振り返った。 その瞬間、警備兵のみけんにリオのチョップが命中した。 どさりと倒れる警備兵。 リオは警備兵の落としたブラスターを拾い上げ、サラスタンに渡した。 「見張ってて」 リオの言葉に、ガクガクとサラスタンが頷く。 「ファンガス達は?」 「奴らは第1ハンガーにいる」 サラスタンの1人が、しわがれ声で言いながら狭いドアの1つを指さした。 リオはそのドアにゆっくりと近づき、そっと耳をドアにあてた。 何も聞こえなかった。 不気味な程。 しかし、リオは迷いはしなかった。 ランコムを助けなければ。 まだファンガス達が脱出していなければいいのだが。 リオはそう思いながら、ドアをフォースで吹き飛ばし、ハンガーに踊りこんだ。 怒声、ブラスターの発射音、飛んでくるレーザー…………。 全て無かった。 あったのは、彼の体を麻痺させた猛獣狩り用の罠であるショック・トラップと、ファンガスの高笑いだった。 ショック・トラップは、地面に仕掛けると電磁場を作り出し、電磁場に進入した猛獣の体を麻痺させ、動きを止める罠である。 猛獣用の罠なので、そのあまりの電磁力の強さに、リオは意識が飛びそうになった。 「ハッハッハッ、どうだ、ジェダイを2人。申し分ない成果だと思わんかね?」 高笑いをやめたファンガスが、隣の女性に言った。 「ええ、さすがファンガス様ですわ。連合でも、これだけの成果をあげた者はいないでしょう」 女性がファンガスをべた褒めする。 ファンガスは機嫌よさげに笑った。 「おい、ジェダイ。例のフォースとやらを使ったらどうだ?あ?出来んのか?ふふん、しょせんジェダイなど、おもちゃの剣を振り回していばりちらしている無能だ」 プスン。 突然、ショック・トラップの磁場発生機が音をたて、煙が出てきた。 「な…………っ!?」 言葉を失うファンガス。 「ジェダイを侮るなと教わらなかったのか?」 そう言いながら、レイムスがハンガーに入ってきた。 その後ろには、セイルとローラナが、彼を援護するように立っている。 レイムスは煙を小さく上げているショック・トラップをちらりと一瞥した。 「ショック・トラップか。人に対しての使用は禁止されているはずだぞ。まあ、内部をフォースでいじくれば、簡単に壊れるような安物だがな」 「う、撃て!殺せ!」 ファンガスが叫び、20人程の警備兵が、一斉にブラスターの引き金を引いた。 レイムスが蒼のライトセーバーを起動し、ファンガスに突進する。 セイルとローラナがそれぞれ翠(みどり)の光刃を閃かせ、レイムスを援護した。 レイムスが光刃を突きだし、ファンガスの構えたブラスターを真っ二つにする。 地面に転がり落ちるブラスターの残骸を、呆然と見つめるファンガス。 次の瞬間、彼の腹部にレイムスの拳がめりこみ、ファンガスは地面に崩れ落ちた。 セイルとローラナがフォースを送り、警備兵達の手からブラスターを弾き飛ばす。 戦闘はあっけなく終了した。 レイムスはランコムの救出のため、先程ファンガスをべた褒めしていた女性に先導させて、ハンガーに停泊していたコレリア製の小型貨物船に入っていった。 セイルは捕虜となったファンガスや警備兵達を一ヶ所に集め、見張っている。 ローラナは倒れているリオに駆け寄り助け起こした。 「大丈夫ですか?マスター」 「…………」 まだ麻痺が取れないのか、リオは唇を僅かに動かしただけだった。 「セイル、手伝ってくれ」 レイムスの声がした。 ローラナが見ると、小型貨物船から、レイムスがザブラクの男を助けながら歩いてくるところだった。 セイルが駆け寄り、ザブラクを助けて歩く。 2人はローラナ達の近くにくると、ランコムをおろした。 セイルが無数の傷口を治療し始める。 レイムスは水を飲ませていた。 「う…………、すま…な…い…。任務に………失敗…………」 ランコムが呟いた。 「喋らなくていい。もう大丈夫だ」 レイムスは彼に優しく声をかけ、リラックスできるように自分のローブをランコムの頭の下に敷いた。 「私は……捕らわれの身の間……夢を見た…………」 ランコムが、何かにとり憑かれたかのように喋り続ける。 「ジェダイの…………崩壊………あるのは……闇……」 唐突に、ザブラクは目を閉じた。 ローラナが一瞬悲鳴をあげる。 「大丈夫、寝ただけだ」 セイルが安心させるように言う。 ローラナは、自分の早とちりに思わず赤くなった。 「ジェダイの、崩壊………あるのは、闇……」 レイムスは、小さく呟いた。 .