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counter - today - yesterday - モンスター名 面数 Lv 主な攻撃ワザ 敵に有効なワザ 伝授まだのメンバー名 紅鹿 1 剣攻撃 水龍神馬 20 甲殻兵士 22 龍宮扇姫 24 カタツムリ 26 悪魔修道僧 28 DOTダメージ 空中浮遊のため弓・銃・魔法攻撃 百夜叉 30 剣攻撃 物理耐性(魔法攻撃有効) 青い狼 32 剣攻撃 ナーガの呪術師 34 復活呪文使用 氷の斧、沈黙の呪いで呪文封じ 飢えたサソリ 36 剣攻撃 兵隊アリ 38 槍攻撃 物理耐性(魔法攻撃有効) スズメバチ 40 空中浮遊のため弓・銃・魔法攻撃 地獄蜘蛛 42 砲攻撃、前列に十字範囲の魔法攻撃 ヒョウ 44 剣攻撃、全体攻撃魔法(弱) 白狐 46 剣攻撃 ヒグマ 48 剣攻撃 白虎 50 剣攻撃 悪魔犬 51 地獄犬 52 執事 53 侍従長 54 主席侍従長 55 羊 56 ホワイトグリフォン 57 ウルフキッド 58 ウルフウィザード 59 ウルフチャンプ 60 ミノタウロスキッド 61 ミノタウロスウィザード 62 食肉草 63 名称 名称 名前 コメント
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暗殺の章 トップ > SS置き場 ご注意 この物語は 作中第87話 で登場した月光洞内で発行されている雑誌に掲載されている作品であり、ゲーム世界内におけるフィクションです。 登場する人物・団体・国名などは架空のものであり、キャンペーン内に存在するものとは関係ありません。 主な登場人物 ■遥:大南帝国皇子。自分と向き合う努力をしつつも、本当の気持ちからは知らず知らず目をそらしている。 ■蒼(そう):白(はく)風(ふう)地方の領主夢(む)包(ほう)の息子。幼い頃の空にそっくり。 遥がその少年を見かけたのは、確かに偶然だった。 侍従長のそばに立ち、緊張した面持ちで指示を聞いている少年。黒髪に黒い瞳、黒ずくめの服‥‥もっともこれはじきに使用人のお仕着せに着替えることになるのだろう。 その少年は、幼い頃の空にそっくりだった。 お仕着せを抱えた少年が一礼してその場を離れる。着替えに行くのだろう。 遥は侍従長に声をかけた。 「あの少年は?」 「これは殿下、ご覧になっておられたのですか。あの者は白風地方の領主、夢包の息子で蒼と申します。8歳になりましたので行儀見習いのため皇宮での仕事に参りました」 「ふむ‥‥私付きにすることはできぬか?」 何の気なしに言った言葉だったが、口にしてみると素晴らしい名案のように遥には思えた。 それを知ってか知らずか、侍従長は微笑んでうなずく。 「はい。2週間ばかり見習いをして皇宮に慣れた後、殿下のお傍付きとなることが決まっております。殿下の御年に近うございますから、ちょうどよいかと」 「うむ。では楽しみにしているとしよう」 空に似た少年が自分付きになる。遥はとても楽しみだったが、ふと気づいた。 あの少年が空に似ているから楽しみなのではなかろうか。言い換えれば、あの少年を空と同一視している、いや、空の代わりにしているのではなかろうか。 だとすればそれはなんというエゴか。 あの少年‥‥蒼は蒼であって、空ではない。代わり扱いするのは蒼に対しても空に対しても失礼なことではないのか。 しかし蒼が2週間後に遥付きになることはもう決定している。自分の感情で断ることはできない。それは白風地方に対し、謂れのない不服を突き付けることとなる。 解決策は1つ。 遥がきちんと区別すればよいのだ。蒼は蒼、空は空。似てはいるが別の人間。似ているからと言って特別扱いせず、普通の侍従と同様に扱えばよいのだ。 「簡単なことだ」 口に出して自分に言い聞かせる遥。 「は。殿下、何か仰いましたか?」 「いや、何でもない」 遥の呟きを耳にした侍従が尋ねてくるが、遥は小さく手を振った。 2週間はあっと言う間だった。 見習いの服から正式な侍従の服に着替えた蒼が侍従長に連れられ、遥の部屋へやってくる。 「お初にお目にかかります、殿下。夢包の子、蒼と申します。本日より殿下のお傍付きを仰せつかりました」 「蒼と申したな。私が皇太子、遥だ。励むがよい」 「ありがたき仰せにございます。力の及ぶ限り、お仕えいたします」 「では私はこれで」 蒼を遥に引き合わせて挨拶がすむと、侍従長は去っていった。部屋には遥と蒼が残される。 「蒼と申したな。白風地方とはどのようなところだ?私は幼い頃に一度しか行ったことがないのだ」 「はい、殿下。白風地方は霧深き地でございます。その霧ゆえに、風さえも白い。それで白風と呼ばれていると伝えられます」 「そこの民はどのように暮らしているのだ?」 「はい、主に農業で生計を立てております。霧が深いということは逆に言えば水分が豊かだということです。白風地方には水源がいくつもございますので、他の地より農作物も豊かでございます」 「なるほど、霧だけ見ていては気づかぬ豊かさがあるのだな。霧深き地と聞いて、勝手に貧しい地方だと思い込んでいた。すまぬことをした」 「いえ、とんでもないことでございます」 蒼と話すのは楽しかった。蒼は遥の知らない地方の出身で、そこの産業や風習などに詳しい。初めて聞く話も多く、遥は軽く興奮していた。 しかし。 何かが物足りない。そう、何かが。 この少年が空ではないことは十分わかっていた。蒼は蒼として、一生懸命遥に仕えている。それもよくわかった。 しかし物足りない。もしも蒼が空とは似ても似つかぬ容姿だったならば、このようなことは思わなかっただろう。 遥が抱えるその物足りなさは、蒼に対する引け目に姿を変えた。 遥は何かにつけて蒼を呼びだし、取るに足らない用事であっても命じた。時には「自分と共に勉強せよ」などという侍従に対する命令としては完全に型破りなことを命じたりもした。 それは外から見ると明らかに贔屓であり、眉をひそめる者もいないではなかった。しかし多くは遥が蒼を「弟のように」可愛がっていると好意的に捉えており、いつでも遥の呼び出しに応えられるよう蒼の仕事の分担を減らすことさえしていた。 「蒼よ」 「は、何でございましょう」 「そなたは市井の暮らしを見聞きしたことはあるか?」 「はい。白風は農業の盛んな地ではございますが、物が多いということは商人もまた多いということでございます。私は‥‥」 蒼はそこで少し言葉を切り、やや恥ずかし気に耳のあたりを赤くする。 「私はこっそり館を抜け出し、市場で商人に紛れて動いていたこともございました」 「ほう。では市井の言葉遣いもできるか?」 「多少でございますが」 「では市場で一番面白かった話を、市井の言葉で語ってみるがよい。商人の話を直接聞くことはできぬが、直接聞いている気分になることはできるであろう」 それは考えに考えた、遥が自分自身をごまかすための詭弁だった。 蒼に市井の言葉で話させたい。それは彼をより空の姿に近づけたいというエゴにすぎないのだが、遥はそれが蒼にも空にも失礼なことになるという自覚はしていた。 しかしそれでもなお、蒼と空を重ねたい気持ちは抑えがたかった。蒼を通じて空の姿を見たい。その気持ちは遥自身も気づかないうちに制御できないほど大きくなっていた。 そこで遥は考えた。これは蒼と空を同一視しているのではない。市井の話をより生き生きと聞くためには市井の言葉で語るのがふさわしい。だからこそ、蒼に市井の言葉で語らせるのだ。決して空が語っていたからではない‥‥ しかし心の奥底では遥にもわかっていた。それがあくまでも詭弁に過ぎず、つまりは蒼の姿から空を見ようとしているのだと。 そのため遥の声は上ずり、態度もそわそわとしていた。蒼に見とがめられるほどに。 「殿下、お加減がよろしくないのでございますか?もしそうであれば私はこのまま下がり、侍医をお呼びいたしますが‥‥」 「いや、加減は悪くない。このまま話をしてくれ。臨場感のため、市井の言葉遣いでだぞ」 「‥‥かしこまりました」 慌てる遥に小さくため息をつくと、蒼は語り始めた。 「あれは俺が市場に行くようになって3日めぐらいのころだった。俺はそのとき、1人の爺さんと知り合った‥‥」 「蒼から連絡だ」 「どう?うまく行っている?」 「ああ、予想通り、皇子に気に入られているらしい。ときどき遠慮がちにしているそうだが、おそらく蒼と空を同一視していることに気が咎めているのだろう」 「それも計算通りね」 「そういうことだ。白風まで養子に行かせた甲斐があったな」 「それにしてもよくあそこまでそっくりに育ったものね」 「まったくだ。偶然の産物とは言え、皇子の目ももう曇っていることだろう。そろそろ決行してもいい頃合いだ」 ある日遥は遠乗りに出かけた。 通常であればお傍付きの侍従たちは徒歩で騎乗の遥を追いかける。そのため遥はあまり速度を出すことができず、乗馬の爽快感が得られない。 しかし蒼は地元で鍛えていたため、乗馬もできた。そこで遥はそれまでの慣例を破り、徒歩の者はそのまま、蒼だけに騎乗を許して出かけたのである。 「泊りがけが許されるなら、そなたのいた白風までも行けたのだがな」 「殿下、泊りがけとなっては私だけでは殿下をお守りしきれませぬ」 「心配するな、そなたの責任になるようなことはせぬ」 「ありがたきことにございます」 馬で早駆けしながらの会話。それは遥にとって初めての経験だった。空とはしたことがない、蒼とだけの経験。遥の中で、「蒼」が「空」から少しはみ出した。 「殿下、この先に丘がございます。そこからの景色は格別でございますよ」 「そうなのか。では行くとしよう」 蒼が鞭を持って指し示した丘に登ると、遥と蒼は馬を降りた。中腹に生えていた木に馬をつなぎ、徒歩で頂上へ向かう。 「ほう!確かにこれは見事だ!」 ゆるゆると波打つ草地に白っぽい光が降り注ぎ、ときに青くときに銀色に反射している。青や銀色の反射はざわりざわりと波打ちながら、どこまでも広がっていた。 「反射の色が違うのは、草の色が違うのだろ、ぐっ!」 後ろに控える蒼を振り向こうとした瞬間、脇腹に痛みが走った。 脇腹に突き刺さった短剣を握りしめた蒼が、硬い表情で遥を睨みつけている。 「そぅ‥‥」 「やっとこの時が来たよ、遥皇子。この時のために、俺は白風みたいなど田舎で耐えていたんだ」 「ど‥‥いう‥‥」 「これが俺の仕事だったんだよ。皇子は何も気づいてなかったんだろうがな」 蒼の声は表情と同じく、硬く冷たい。 「‥‥それじゃあばよ。わざわざ逃走用の馬まで準備してくれるとはありがたき幸せだ。この次はあの世で会おうぜ」 そう言い捨てると、蒼は突き刺した短剣をそのままに丘を駆け下りて行った。 遠くなってきた耳に、馬のいななきがかすかに聞こえる。 蒼‥‥蒼はやはり空ではなかった。空なら、たとえSSであろうと、空ならこんなことはしない。空なら堂々と正面から立ち合いを求めてくるはずだ。 そうだ、違う。蒼と空は違う‥‥違うんだ‥‥ 消えかける意識の中で、遥は何度も違う、違うと繰り返していた。
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製作者:金ノ森銭太郎 データ アシュタル=アルバトロン 人間 男 21歳 一人称:俺、私 二人称:貴方、貴殿、卿 アルビノとして生まれついた為、体が弱かった青年。 そんな境遇から自らの人生を憂いていたが、 ある日、占い師として街に現れたギルデリンから祝福を受け、 陰獣神の暗黒騎士として強靭な身体能力を得るに至った。 以後『陰獣神教団・暗黒騎士部隊』に所属し、 騎士見習いとしてサルサロッカの侍従となる。 暗黒騎士部隊の新参である彼は確たる功績もないし、 また、暗黒騎士としての実力もさほど高くはない。 だが、医学を齧っていたからか、薬にもある程度詳しく、 医療方面で仲間の信頼を得ている。 サルサロッカの侍従扱いではあるが、新参者の騎士見習いゆえか、 物資の配達任務や、出張任務まで同行者として彼に任が回ってくる事が多い。 本人は文句も言わず生真面目にこなしていくが、 直接の上司であるサルサロッカはその度に気分を害し、彼に辛くあたる。 笛が得意であり、月夜の晩に森の小妖精相手に演奏するのが趣味らしい。 笛の音を好む妖精の間では、騎士としてではなく楽士として評価されている。
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鳴滝 基礎情報 概要 蒼天宮の別格メイド 国王専属侍女 暇人集団同期4名とは高校時代同級生。新卒採用先が入社日につぶれたりお見合い相手がお見合い当日に結婚したりと地味に幸薄。そのたびに暇人集団がお助けしている。(さらに言えば、よく作者に下の名前を忘れられている。) 本名(連邦戸籍名) 鳴滝 裕美 性別 女性 種族 蒼藍族 一人称 私 身体情報 身長173.67cm 体重49.2kg 血液型秘密 髪型基本的にはお団子 TB-cm/UB-cm W-cm H-cmバランスはいい 性格 手の抜きどころを知っているが、基本的には頑張り屋 能力 相手の希望を先回りして把握できる力にたける。 使用A.I 好物 戸籍情報 出生地 蒼藍星間連邦王国首都州ルネスティアラ項ベイリア県藍蒼市 生年月日 正歴2565万2000年5月8日 現住所 蒼藍星間連邦王国首都州ルネスティアラ項ベイリア県藍蒼市 職 蒼藍星間連邦王国時官庁宮内省家政総局統括侍従長兼当国王専属侍従 最終学歴 蒼藍星間連邦王国立藍蒼学院藍蒼大学社文学群家政学部総合家政学科 遥夢の一言 次のお見合いどうします?
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数日後、ぼくは王宮にいた。マガンダ侍従の発行した許可証の威力は抜群だった。王宮への出入りはほとんどフリーパス状態だ。リナロに忠告されたとおり、 2,3日に1回はこうやって設備の点検に来ている。あの一件以来、設備に何かされるということはなくなった。よほどガスが噴出したのにびびったんだろう。 いや、ぼくでもびびる。 「あ、こんちわ~」 配管を張り巡らせた廊下ですれ違う侍女に軽く挨拶するが、彼女は何か恐ろしいモノでも見るようにぼくから遠ざかっていった。やっぱり、ガスのことを悪魔と契約した暗黒魔法と思いこんでいる人々は一定数いるようだ。 「やれやれ・・・」 ぼくは王宮の中庭でタバコに火をつけて一服した。芝生にしゃがみ込んで煙を吐き出した。ふと、庭に面したろ廊下を歩く黒い鎧を身につけた騎士が目に入った。 「まずいっ」 思わずぼくは柱の影に隠れた。その騎士とは、アルドラ王国神聖騎士団長アストラーダだ。これもやはりリナロの忠告だったが、親衛騎士団には近づくな。今この国はマキシム6世や文官たち改革派と、アストラーダなど武官の保守派で冷戦状態なのだ。 アストラーダは廊下を曲がってマガンダ侍従のいる部屋に入っていった。中立派、というより日和見のマガンダ侍従の部屋にいったい何の用事というのだろう。 ぼくはポケットを探って川村から渡されたレコーダと、シャッター音のしないデジカメを確認した。しぶしぶ引き受けることになった副業とはいえ、やはりこの 展開には好奇心をそそられずにはいられなかった。 ぼくは中庭から廊下に入って、衛兵の詰め所を通り抜け、侍従の部屋の窓にとりついた。窓の下にはちょうど配管が通っている。モンキーレンチを取り出していかにも作業している風に装った。窓の向こうからデブのおっさんと、いかつい騎士の会話が漏れ聞こえてきた。 「いったいどういうことだ?あの邪教徒に王宮の出入りを許す許可証を発行するとは!」 いかつい声。アストラーダだ。外見と同じくやっぱり声もうんざりするほどいかつい。 「まあまあ、騎士団長。これも手の内だ」 「ほお・・・」 マガンダ侍従は得意げに「手の内」とやらを話し始めた。ちょっと待て。リナロの話と食い違うぞ。あのデブのおっさんは日和見派じゃないのか・・・。 「王 があの不気味な空気を珍しがったのは仕方がない。だが、先日騎士の一人があの暗黒魔法の設備を壊したら、邪教徒が慌てて修理にきおった。そこでだ。あの邪 教徒をうろうろさせながらも暗黒魔法が大事故を起こせば・・・。王は邪教徒どもを追放するに違いない。その上、暗黒魔法を王宮に導き入れた王も、改革派の 連中も追い落とすことができる。許可証はそのための撒き餌だ。」 邪教徒というのは日本人。そしてこのおっさんの指すのはどうやらぼくのことのようだ。マガンダの狙いは王宮のガス設備が事故を起こせば、それを認可した王の権威も失墜するということだ。よくもまあ、そんなことを考えつくモノだ。 「ふむ・・・。しかし我らは暗黒魔法の原理もわかってないのだぞ。どうやって都合よく惨事を起こすのだ?」 「それについては問題ない。あの邪教徒。質問されたらなんでもホイホイ答えている。こちらの息のかかった人間をヤツの周辺に送り込んである。」 おいおいおいおいおいおい!!こいつらガス事故の怖さをみじんもわかっていないようだ。ぼくは思わず、窓から身を乗り出してLPガスを使用するにあたって の安全基準や法令を小一時間レクチャーしたくなる衝動に駆られた。ガスのことをわかってない人間が起こす事故は過失とはいえ甚大な被害につながる。まして やそれを、仕組みを理解した上に人為的におこされた日には・・・。 「ミスティ」でぼくは今日のことを川村に報告した。彼はビールをあおりながら聞いていた。 「なるほど・・・。王宮でガス爆発でも起きれば、今進んでるガス事業も電気事業も撤退ってことになるな。その上、うまくいけば改革派の王様も邪教に心奪われ、アルドラ正教の教えを踏みにじった背教者だ。」 まるで他人事のような川村の発言にぼくはビールも手伝って少しいらいらしていた。 「冗談じゃないっすよ。ガス爆発なんて起こされたら。どうしましょう?」 「残念だが、今の段階で政治が介入できる要素はない。引き続き頼むぞ」 それだけ言って川村は勘定を済ませて帰ってしまった。なんて冷たいんだ。まあ、彼も政府の人間だ。他国のこと、しかもまだ起きてもいない国王失脚計画に介 入はできないのだろう。だが、ぼくは違っていた。自分の設置したガス設備で、しかもつまらない抗争のために人が傷つくことは看過できない。ぼくは常々思っ ていたことを実行に移す決心を決めた。 「よーし、政治が介入できないなら民間で介入してやる・・・」 ビールをぐいっと飲み干してぼくは 準備にかかろうと店を出ようとした。が、ふと足が止まった。マガンダ侍従の言葉を思い出したのだ。ぼくの周囲に放った間者。ガスの仕組みを理解し、効果的 に事故を大きくするための卑劣なスパイ。自分と仲良くなった衛兵や侍女を思いだしてみる。リナロも・・・。 「まさか・・・。」 思わず、自分の中に浮かんだイヤな想像を頭を振って打ち消した。 2日後、王宮の大広間には国王はじめ側近、文官、侍女、侍従、衛兵に至るまですべての人が集まった。 騎士もちらほら混じっている。すべて、とは言いつつも当然アストラーダはじめ、親衛騎士団は1人も来ていない。 スーツ姿のぼくを見つけてリナロが笑って手を振った。彼女がガス事故を大きくするためにマガンダから送り込まれたスパイかも知れない。想像したくないが考 えずにはいられない推理が頭をよぎって、彼女には軽く手を挙げて返すことしかできなかった。持ち込んだハンディマイクとスピーカーのスイッチを入れてぼく はみんなの前に立った。 「えー、これよりLPガス安全講習会を始めたいと思います」 苦肉の策だった。親衛騎士団の連中がいつ人為的にガ ス事故を起こすかわからないが、当面は王宮に出入りするのはぼくと大川さんだけだ。24時間つきっきりで警備はできない。だったら、王宮中の人間がガスの 原理とガス設備のことを日本の一般人程度まで理解して、自ら安全管理をやってくれれば話は早い。それに、誰だかわからないが、ぼくに放たれたスパイも目的 を失ってしまう。これは改革派の貴族、スピノーラ公に直談判して実現した。彼は中年の感じのいい貴族でガス事業に関しても好意的だったのが幸いした。 「ではまず、LPガスとはなんであるかということですが・・・」 できるだけかいつまんで、LPガスはプロパンとブタンの混合体でどうのこうのなんてのは極力はしょって講義した。要するに、扱い方と安全管理を意識しても らうことが目的だった。マイコンメーターの原理、調整機の原理、ガス漏れ時の緊急対応などなど、安全面に時間を割き、質疑応答にもたっぷり時間を割いた。 「では、これで終わります。長い時間お疲れさまでした。」 たっぷり半日かけて講義は終了した。終始真剣に聞いていたマキシム6世が立ち上がった。 「タチバナ殿!すばらしい講義だった。おかげで異世界の便利な魔法をこの城の者は安全に使うことができそうだ」 王の言葉を受けて集まった人々から拍手が起こった。顧客の周知を行って拍手をもらうのは初めてだった。照れたぼくはリナロと目があった。彼女も笑顔で拍手している。きっと彼女はスパイなんかじゃない。その笑顔を見てそう信じずにはいられなかった。
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きゃぷしょん 侍従術士ちゃんが分身ちゃんに言葉責めレズエッチされるSSです。 "独自解釈"を多分に含むため、地雷だったらごめんなさいね(ステンノ様) 本文 ――その日は、何かがおかしかった。 だらしなく間延びした声をあげながら、【侍従術士】は寝台へ倒れ込む。 鎖骨のまぶしい寝着に自力で着替えられたのは敢闘賞。 一党で取った四人部屋には主なき白い寝台がほかに三つ並び、 一階の喧騒から遠く離れた、心地のよい寂寞に浸らせてくれる。 なぜだか酒の回りが普段以上に早く。 宴会を辞してギルドの二階に一足早く引っ込んだ彼女は―― 仰向けに瞼を閉じたまま、"もう一つの双眸"で仲間を眺めていた。 当世具足(フリューテッド)に着られることなく泰然とした、 若く精悍な偉丈夫を【放浪牢人】という。 軍人家系の三男として将来を嘱望された、優れた神官戦士でありながらも、 正義の所在を広い世界に求め、みずから風雪に晒される道を選んだ青年。 ――侍従術士は放浪牢人が大好きである! ライクである。リスペクトである。 それを通り越した先の感情もまぁ無いとは言えない。 名声や承認に拘るところなく、身を挺して他者を助ける、愚直で"体当たり(カミカゼ)"な生き方が。 ふと目を離してしまえば巨悪と心中仕(つかまつ)りかねない危うさが。 ときおり垣間見せる知性の輝きが。おっちょこちょいで抜けた一面すらも。 なにもかも愛おしく尊いものとして映る。 年頃のむすめとしての色目を抜きにしても、 生涯をかけて供回りをすべき……ただ一人。 運命の相手であった。 びっこ引く己の左足に、長い脚でゆっくりと歩速を合わせる不器用な笑みが。 侍従術士の世界に色を付けてくれたのだから。 …… 抱く感情の内容はどうあれ、運命を信じてやまなかったのは、 さえずるばかりの少女ゆえの盲目だったのだろう。 運命は一つではない。 彼の鎧を肘でうりうりと小突き、エール片手にくだらない冗句を飛ばす。 とがった耳に紫髪の麗人を見よ。 【槍兵斥候】。 父母の悲恋から混血として産まれ、閉鎖的な里を出てきたという半森人の少女。 ひょんなことから小鬼殺しの冒険を共にし、"三人でひとつ"となった、槍技と火計の達人。 ――侍従術士は槍兵斥候が大好きである! ライクである。リスペクトである。 それを通り越した先の感情もまぁ無いとは言えない。 自らを破綻者と断じながら、見返りなき奉仕で無辜の人々のいとなみを愛し続ける、鉄火の生き方が。 ただ闘うことでしか存在証明を為せぬ悼ましさが。 日常会話に難をかかえた奥手な天気トークが。効率的な殺戮に奔する戦鬼の横顔すらも。 なにもかも気高く美しいものとして映る。 このように頼れる姉貴分が故郷にいてくれたなら、 生活苦への誤った義憤から、反乱分子に加わるようなこともなかったかもしれない。 (……ま。その世界線の場合、ウチ主様とも出会えてへんことになるしな。 結果オーライオーライ) うつぶせになって足をはしたなくパタパタさせながら、 『もう一人の自分』の視界で、想い人二人の酒宴を覗き見る酔っ払い。 人の生活圏をおびやかす大毒蛇は、真言術の出番すらなく阿吽の連携で沈んだ。 それなりの報奨金が入ったとはいえ金欠はいつものこと、と、 牢人と槍兵は安酒と揚げ芋で無限に歓談を楽しめるモードに突入しているらしい。 ――つくづく、それはお似合いの男女の光景だ。 身の丈六尺にも迫る放浪牢人は、どこか年齢に似合わぬ落ち着きと威厳があり。 森人らしく彫刻のように磨き上げられた、槍兵斥候の肢体と美貌になんら位負けするところがない。 酌をつとめるのが小柄な自分ではそうはいかないだろう。 大人と子供。背伸びしようと兄妹くらいが関の山だ。 まあ、酒精にてんで弱く、依頼成功のテンションから"牛乳の炭酸割り"などという、 馬鹿舌の追放悪魔しか飲まないような錬成を始めているサマは。うん。 一党の精神年齢がどっこいどっこいであることを如実に示すのだが…… 炭酸牛乳を口に含んだ仏頂面が、珍妙なカタチにゆがむ。 無魂の鉄槍が、なにを大輪の華のように笑う? 『もう一人の自分』がへらへらと相槌を打つ声が、聴覚に上滑りしていく―― どうしてだろう。 好きな人を見ていれば胸が温かい。これは当たり前のことなのに。 ――"好きな人と好きな人が、好き合っている"のを見るのが、 こんなに切なくて甘くて痛くて苦しいだなんて道理があるか? 少女は四人部屋の寝台に独り。 思わず甘い懊悩の息を漏らす。 いにしえの竜仕込みの卓越した魔術は、 なんらその気持ちをほどく一助にはならなかった。 古来より竜とは恋に敗れるものであるから。 …… ………… 「お姉ちゃん、足の傷診せて? マッサージしたげる」 「おお。おおきになー」 「大事な大事な本体ですから~~」 共感覚で本体の不調を察したか。 『もう一人の自分』は茶々入れを切り上げ、侍従術士の介抱に顔を出してくる。 双子のように瓜二つの容姿。 体毛の色が桃から水色になっているのを除けば、心持ちニヒルで気楽げな表情が特徴だろうか。 【術士分身】と人は呼ぶ。 高位の真言魔法、《 分身 》によってかりそめに生み出すことのできる、第二の仮想肉体。 断じて宴会芸の余興で「幽体離脱~」や「裂ける乾酪(チーズ)」などの双子ネタをやるために使用する呪文ではない。 が。彼女の分身は、他にはない特異性として…… 本体とは微妙に違う個としての人格をもって顕現し、自立行動を取るケがある。 原因不明のある種の誤作動ではあるのだが。 かねてより弟妹の欲しかった術士本人はこれに大喜び。 皿洗いに給仕のバイトに、と、ちょっとした所用でこの"双子の妹"を呼び出すようになった。 ナイトワンピースの裾をはしたなくめくり上げ、一人用の寝台に少女が二人。 奉仕する葵色。奉仕される茜色。 左の上脛に痛々しく刻まれた傷跡を矯めつ眇めつ、分身はいたってけなげに足裏を揉んだ。 「あぁ””~~ 極楽、極楽」 「女の子が出しちゃいけない声になってるなぁ……」 気持ちいいのはわかるけどさ、と苦笑を一つ。葵色の奉仕者が続ける。 「でも驚き桃の木だよねえ。 もうすっかり諦めてたのに。人並みに動くようになっちゃって」 「元気溌剌走り回れるでぇ! ねーさんサマサマやわ、ホンマ」 三人が徒党を組んだ当初。侍従術士は片足を引きずって歩かねばならぬ障害の身であった。 広刃の剣で骨まで達する戦傷は、 もはや機能回復の見込みナシ、と当人たちも諦めていたのだが…… 槍兵斥候のもたらした一日一杯の《 命水 》、そして森人式ストレッチが徐々に実を結び、 傷を負う前とそう遜色ないほどに機能快復を果たしたのだ。 惚れた男の運命の人は己だけではなかったが、その邂逅に主従がどれだけ救われたのか…… 侍従術士にとって、放浪牢人、槍兵斥候は双方が大恩人である。 ――だからこそ。目をそらし続けてこれたのかもしれない。 「……ホントに」 「? なんや?」 「ホントにさ――――"治ってよかった!" と思ってる?」 まったく同じ顔がずいと近づく。 しばし睨み合う。 「……はて。 なんの話やら」 「ごまかさないでよ、お姉ちゃん。 ボクたちは一心同体。二人がひとり。 隠し事なんて成立するワケもないんだから」 分身の主張は、まったくもって事実であった。 ゆえに本体も。彼女が次に口にする言葉が、その本義がわかる。 「――この足さえ治らなければ。 巨大な"負い目"として。このさき永遠に、主様を束縛できたのに。 そう惜しむところが、まったく無いって言い切れる?」 「…………」 そう。幼気な少女を不具とするほどのこの傷。 かつての放浪牢人の手によるものである。 英雄無き戦場に、民兵の鎮圧を主な任務としていたその青年にとって、 それは約束された将来と、富裕な生家を捨てるほどの……生涯無二の痛恨の証。 「何もかも投げ出して、たった二人で正義の在り処をさがす旅路のよすが。 あの長い脚でゆっくり合わせて歩いてくれる。 主様のそんな優しさに、ボクたちは惚れちゃったんだよ」 「わーーとっるわ」 不機嫌な声になるのもやむなしだろう。 とっくのとうに答えは出ている。 「ウチ自身ならわざわざ聞くまでもないやろ? ねーさんとのリハビリが功を奏して。ようやくウチが一人で走れるようなった日。 ――主様がどんな顔で、駆けまわるウチを見てたか」 放浪牢人は感情表現に乏しい男だ。 その時ばかりは無言で中座し、誰もいないところで少し泣いた。 槍兵斥候とその背中を尾けていたのはご愛嬌。 救ったのは彼だというのに――まるで、救われたかのような、落涙を。 「かたわのヒロインは店じまいや。 そんな傷なんてなくとも、主様とはずうっと一緒。 主様はウチを見捨てへんし、仮に嫌と言おうが付きまとったる!!」 斬った男と斬られた女。 二人の心は世の艱難に限界で、互い互いの共依存だったのかもしれない。 三人目がその欠落を補ってくれるいま、もはや必要のないよすがだ。 侍従術士はあえて口にすることなく、そう強く念じてみせた。 目の前の存在にはそれで十分。 「ホントにいいの」 「何が」 「勝ち目……ないよ」 「だからっ、何が!?」 「人の輪(サークル)が三人以上になってしまえば、『いちばん』は一人しか選べないッ!」 念じてみせるだけで十分なはずなのに。 葵の少女は叫ぶ。 [自分はそのために生まれてきたのだ]と。 「大好きな主様とぉ、大好きなねーさんがぁ、 互いに互いを『いちばん』にしてもうたらー。 ウチはおまけになってまう~~!!」 「黙りや」 「本当はこう思ってやまない! 森人の血が濃くて、一緒に老いていくことのできないあんさんは、 つつましく身を引けやぁ~~ん♪」 「黙りや――!」 怒気を発した側の頭が、しかし無慈悲に組み敷かれる。 葵の少女が、茜の少女の両肩を掴んで押し倒していた。 「わかるでしょう!? お姉ちゃんはボクなんだからっ。 [あるいはもう一つ、自分自身の真実]!」 「ウチはそんなこと思っとらん! いっぺんたりとも考えたこともない!! アンタみたいな……"ぱちもん"にくさされるほど、性悪でないわ!!」 「――そう。お姉ちゃんは、またボクを抑圧(ころ)すんだね」 一人用の寝台に、少女が二人。 しばしの沈黙があった。 「……そうやって素直になれないから。人のためを思って優しく譲って生きるから。 『抑圧からの解放』を担当する側面なんてのが、こうして具現化してるのにねえ」 我慢は毒♪ 我慢は毒♪ と歌うその膂力は、不思議と本体よりも強い。 誰も自分自身を振りほどくことなどできはしない。 「今日お酒の回りが早かったのは、 お姉ちゃんが主様にハツジョーしてるから♪」 そういう性欲の波ってありますわよね、とお嬢様のように笑いつつ 夜着の中に顔を豪快に突っ込み、ショーツを引き下ろす。 侍従術士はぴゃあ! と悲鳴を上げたが、すべての抵抗はやはり無為に終わった。 ぐいっ ぐいっ ……意図的に視界を押し付けてくる。 蜜のしたたる己の恥部が、眼前にたいへんよく見えた。 「どぉれ。 ぺろりんちょ」 「――? ――――ッ”!!??」 「うんうん。ちょっとおしっこ臭いのもまた味ですなぁ」 …… 自分自身に性器を嘗められたことのある者など、果たしてこの世に存在するだろうか。 それは自分であるがゆえに正しく性感を突き、 あらゆる秘めた欲望を浮き彫りとしてしまう。 ――曰く。 舐めるなら主様だが、舐めさせるならねーさんも一興。 「あ”…… なぁあ……っ”」 想い人へ奉仕する妄想だけなら耐えられたろう。 同性すらも魅惑する、美しく勇ましい半森人の戦鬼が、小便臭い自分の秘裂を嘗めそぼっているイメージ。 自分自身の舌で慰められながら深層意識から発露したこの不埒な考えは、 およそ言語化不能の莫大な快楽を、侍従術士の脳髄に叩き込んだ。 がくがくと痙攣し、うめき声をあげながら甘く達してしまったのも。 きっと無理ならぬこと。 「ね♪ ――これでわかったでしょ? お姉ちゃんったら、ホントはこんなにエッチなんだって」 くすり 愛の蜜に濡れたくちびるで、左頬にそっと口吻を落とす。 「大恩ある主様とー、あさましくも夫婦になっていちゃいちゃしたいし? それを邪魔するかもしれないねーさんとも…… こうして、舐めて・触って・ギューして、滅茶苦茶してやりたいんだぁ……♪」 「…… 違うッッ!!」 「アンタなんかウチでない!! きえろ ――《 消失 》!!」 分身はあいまいな笑みを浮かべると、煙のように、ポンと消えた。 …… ………… 追憶する枯れた農村の風景は、『抑圧』と『我慢』に満ちている。 一人っ子だったからだろうか? 侍従術士の貧しい暮らしの中には、常に"彼女"の息吹があった。 骨肉を削るような農作業。 雑穀を何倍もの水でかさましした粥。 そういったままならない現実を笑い飛ばす、奔放なムードメーカー。 もう一人の仮想の自分。 左足に深々と契約の傷が刻まれる日まで。 誰が孤独を癒してきたのか。 《 分身 》の術を覚えたるは、具現化させるきっかけに過ぎない。 生まれたときから、ずっとボクは貴女のそばに。 一階の喧騒から遠く離れた寂寞。 茜の少女はこうして独り。 大好きな二人へ、鬱屈した性欲を向けているという事実認識だけが、ただ虚空に残響す。 「…………ふ。 ぐ、うぅう”う”ううううううう――――ッ!!」 少女は哭いた。 ぐしょぐしょになったシーツ。 誤魔化しきれない女のにおい。 二人の腹はそろそろ満ちた頃合いだろう。 ……とある呪文を唱えれば、後始末の手は二人に増える。 断固としてそうすることはなく。 侍従術士は換気窓を開け放ち、涙にえずきながら乾布で裸身を清めはじめた。 [アナザー/トゥルーオウン] 了 余談 本編とは似ても付かないネットリした話なので、 あえて牢人さんと槍兵さんには一切セリフがありません。 「術士ちゃんがこれくらい思い詰めてたらきゃわいいなぁ」、という純然たる私の願望。 槍兵さんのこともきっと心の底から大好きですし、好きだからこそ許せないことってあると思うんです。
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ここは本スレに投下された支援SSを纏めるところです ゴブスレTRPG真言を教えたお礼に真言を教わろうとして教われない話 冒険者になる前の話 & 当SSを書くにあたって参照した元ネタ 異物さんと雇い主のメイドさんとのR-18SS 付き合い立てカップルの痴話喧嘩の話 圃人と只人の距離の話 & 当SSを書くにあたって参照した元ネタ 圃人と足の話 メイン一党の普通ちんこ第一級取り扱い免許講習 ウェイバー×あかりのR-18SS 技術検討会組のギャグ気味のSS 女子会があれば男子会もあるという話(BG組男衆飲み会) 宴会は熱烈歓迎の後で(牢人さんに憧れて冒険者になってみた新人のお話) ノクタ案件 『結月の』という呼び方でふと思いついて、勢いで書いた話 降格審査に出発した後のBG組(嵐・エリちゃん・バカップルメイン) 二流剣士師匠と達人剣士弟子の話 メイン一党エロSS(イチヤタケ) アンジュで脱童貞を目指すだけ目指してみた 漢詩のネタに続けて詩歌のSS(メイン一党) 一夜の夢幻の如き、きりたんの蜂蜜授業 異物さんと雇い主のメイドさんとのR-18SS その2 首無し騎士に関わるとある混沌勢の顛末 おいおいテーブルの下でこっそりとか高度なプレイしてんな エアダーノベライズ ボクと私とお姉ちゃんの話 アナザー/トゥルーオウン(分身ちゃん→術士ちゃん言葉責めレズR-18SS) ゴブスレTRPG 真言を教えたお礼に真言を教わろうとして教われない話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その216【R-18】の7847(前半) dotup.org2050191.txt 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その216【R-18】の8043(完全版) dotup.org2050670.txt +真言を教わる話(完全版に前半部分も含まれていますのでそちらだけ) 真言を教えたお礼に真言を教わろうとして教われない話 注意書き こちらは◆o2mcPg4qxU様の書いた四方世界をさらに二次創作した三次創作です 設定や描写の矛盾があった場合は生暖かい目か優しい気持ちでスルーしてください また当SSの設定や描写は◆o2mcPg4qxU様が拾う場合を除いてスレに持ち出さないようお願いします 本文 夕刻、王国北部辺境のとある街の冒険者ギルドに併設された酒場の一角にて、小さなテーブルを陣取って白磁等級冒険者ウェイバー・ベルベットは悩んでいた。 だが低等級の冒険者は見果てぬ夢を抱えているか現実に即した悩みを抱えているのは常のことで、彼の悩みもまぁそこから外れたものではないありふれたものであった。 「金がないし伝手もない……今のままじゃ、実戦で位階を上げたって手札の増える方向性が偏りっぱなしだ」 魔術師冒険者共通の悩みである新しい術の開拓、それには幾つかの例はあるが、多くは以前から蓄えていた知識が冒険の中で結実して真理に近づき真言を理解すること。つまりすでに覚えていたものを実践投入できるようになることだ。 真言は一朝一夕で身につくものではなく、また新たに術を得るための時間や教師など冒険者をしながら得られることはあまりない。 それでも新しい手札を増やしたいものの多くが行うのが呪文書による自主学習だが、これは非常に貴重であるため学院や市井の魔術師に教えを乞うか、運よく手に入れる機会を待つしかない。 そしてウェイバー・ベルベットは彼本人の適正と学院で学んでいた当時の師匠の方針により、直接的な殺傷力を持つ真言を学ぶ機会に恵まれていなかったのである。 それは冒険者を続ける上では大きなデメリットであるし、彼本人が目指す「軍師にして大魔術師」という目標においても切り札の不足は致命的であった。 唸り声を漏らしながらああでもないこうでもないと悩み続けること小一時間、周囲の人はまばらに入れ替わりかきいれ時に入ったからか吟遊詩人が唄いだす。 それをウェイバーはなんとなしに耳に入れながらああ自分も唄われるような魔術師になりたいと思っていると、唄の一節が真言の魔術師に関わるものとなり身を思わず乗り出す。 「かくして辺境の魔女は槍を携えた勇士と共にあり、彼のために己が知恵と魔力を振るうと決めたのです」 「それに伴い勇士も変わりました、英雄への位階を進めるべく戦働き以外の不得手であった諸々の事を学び始めたのです」 歌の内容は昨今人気の「辺境の三傑」が一人に関わるものだ。 槍を振るえば都の騎士にも劣らぬとされた勇士が無二の相棒である魔女と共に怪物を狩り人々を助ける話であり、今の節はその転換点の一つである勇士が魔術を学んでいく部分である。 「……そっか、冒険者だ。冒険者の魔術師なら僕と同じ悩みを抱えてるやつなんて腐る程いるじゃないか」 思い付きは現状を突破する名案に思えた、ウェイバーは興奮する口を手で抑え唄から意識を外して頭脳を巡らせ始める。草案をまとめ、手早くかつ如才なく事を進めよう。 必要なものは自分の真言を望むか少額の金銭で術を広めるもの、すなわち向上心があるか魔術師として意識が低いかのいずれか。また他人に教えを乞う形になる以上 "プライド" が高くない相手がよい。 いささか私情の混ざった思考ではあるが魔術師同士が真言の論を交わす際の知識の交錯を鑑みれば、まずは生徒に徹することが出来る人格が必要だ。真言を学んでから発展のための意見は交わせばいいのだから。 過労死と揶揄される程度に様々な分野で頭を回し体を張る若者はその日の間に要項をまとめ、酒場の中で意気揚々と酒を飲み口の軽くなった冒険者達に持論を語りかけ始めるのであった。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━ 「うーん、今覚えてる真言を読み解くので手一杯だからパス」 「ごめん、攻撃術は覚えてないんだ。うちの一党では《火与》かけてぶん殴ってもらう戦術主体だから」 「その手合いの真言は別に今は欲しくないなぁ」 結果は惨憺足るものであった。 本当に名案であり万事に通ずることであれば当に流行っていてもおかしくないのだから、ある意味当然の帰結ではある。 ウェイバーは憤りの余り安酒を飲みたくなったが、冒険者魔術師達に話の口火を切りだすため奢っていたのでやめた。夕暮れ前と同じように呻き声を上げながら酒場の一角を陣取る状態に逆戻りだ。 こんな時に限って組んでいる一党の仲間達はやってこず、鬱々と悩む状態のまま今日のところは切り上げようとギルドの出入り口に歩こうとするとバタンと戸が開いて入ってくるものとすれ違いかける。 「っとと、ごめんなー」 長い赤と桃の混ざったような髪を揺らしながら少女魔術師がヒラリと身を躱し受付の方へと向かっていく。このギルドでは色々な意味で有名な名物一党の一員である魔術師「侍従術士」だ。 ウェイバーにとっては一党の仲間が数人世話になっているが、それを遠目に見た時には世話をしているのかされているのかわからない同世代の友人のようだった。 しかし若年に見えて卓越した術遣いであり、等級が上がる前に人喰鬼を一撃で焼き殺したこともあると風の噂で耳にしたこともある。 ダメで元々、信頼はともかく信用はできる、真言術遣いは玉石の交じり合った中から玉を見抜いて拾い上げるもの。 建物から出るのをやめて、そういえば考え事のしすぎで何も食べていなかったため、遅い夕食を注文しながら受付でやりとりをする術士の様子を伺うのであった。 それからほどなく時間が経つと、侍従術士はウェイバーが動き出すより前に席に歩いてきた。 「なんやなんやさっきからチラチラしよって。あれか?ナンパならお断りやでー」 ケラケラと笑いながらテーブルに肘をつき、からかいながら言い出す。 友人の友人であるが知人というには接触のない、その程度の間柄の相手でもおかまいなしに話しかけ、不快にさせずに懐近くに寄るあたり一党の外交担当は伊達ではない。 「まさか、駄目元で少し頼みたいことがあっただけさ」 ウェイバーもウェイバーでそこに関心はないし同じく一党の折衝役だ、軽く受け流しつつ本題にさっさと入ろうとする。 「新しい真言を学びたいんだけど、呪文書の現物もそれを手に入れるあてもない。だから冒険者で真言を明かしてもいいって魔術師を探していてね。もちろんこっちも相応の礼はする」 「相応の礼次第やなぁ」 ずずーっと牛乳の水割りをストローで吸い込みながら侍従術士は答えた。 第一段階、よし。ここで激昂したり食いついてこないようでは交渉のしようもない。ウェイバーは平静を保ったまま次へと繋げる。 「望むものは《火矢》《火球》を始めとした攻撃の術、僕が出せるのはそれ一つにつき《支配》《粘糸》《幻影》のいずれか。教えるのはもちろんこちらから、術が発現するかそっちが納得したら交代だ」 ウェイバーの提案に目をパチクリとさせる侍従術士だが、数瞬の後にはぱぁっと表情を綻ばせて立ち上がった。 「ええやんええやん! でもほんまか? ちょいと条件良すぎるんちゃう?」 「別に。誰彼構わず言ってるわけじゃないし、あんた達のお人よしさはしょっちゅう耳にしてるからね。むしろそこまで食いつきがいいのにビックリだ」 「いやー、ちょうど《幻影》欲しかったんよ。主様とねーさんがよく戦戯盤弄っとるんやけど、そこでちょいちょい実戦の騙しの手妻がもっと欲しいゆーててなぁ。うちが覚えたらもっと二人の役に立てるやろ?」 無邪気に好きな人たちの役に立ちたいという姿は青玉等級にまで上がった冒険者にはとても見えないが、逆にそういうやつこそ大成するのかもしれないとウェイバーはちょっと先の唄を思い出すのであった。 「じゃあ次に時間の空く予定の日を……」 「明日の夜でええな! あ、ウェイバーの方は準備いるん?」 「トントン拍子過ぎる……! ああうん、僕の方の準備出来たら声かけるさ。二日三日でどうにか」 いやー楽しみやわー、術教わるなんて久しぶりやなーなど侍従術士の高音を背景にギルドの一角の夜は更けていくのであった。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━ 約束をしてからきっちり三日目の朝、街外れにある冒険者ギルド管理の訓練場の一角を借りてウェイバーと侍従術士は並んで術の伝授を始めることとした。 この許可を得るために「白磁の子に術教わるんよ! だから訓練所貸してーな」と言われた某お面をつけた男性の胃がキリキリと傷んだが、いつものことなので誰も気にも留めなかった。いいから人喰鬼退治とかしてやれと思った冒険者がいたが口に出さないので彼の胃の安らぎに貢献しない。 「覚えたいのは《幻影》だったな? 僕も使えるようになったのは最近だし、色々確認しながらまず座学だ」 訓練所を借りたのはウェイバーが学びたい術の危険性を考慮してで、全体の大半は座学になることは相互に了承済である。 「りょーかいや。今日中に覚えられそうになかったらまた頼むでー」 「ふん、僕の準備は完璧さ。ささっと覚えて本題に入ってもらうからな」 ウェイバーが三日をかけた準備は実際非常に出来が良かった、学院で教わったものを活かしながら冒険社としての数度の冒険が、実際に真言を使って対応する際に必要な部分の切り出しを促進していたのである。 そして侍従術士もまた良い生徒であったと言えよう、疑問は差し挟まないが理解できないところは質問する。何故それが出来てそれを知らないという独学特有の知識の歪さこそあるが、意欲と素直さと術を使える素養と地力があるというのは魔術師の徒弟の初期段階としては何よりも大事なことだ。 教える喜びに学ぶ喜び、真言の発音で手間取りこそしたが術の伝授は滞りなく進んでいった。 日が中天に差し掛かる頃合いになると侍従術士は杖を掲げ、力強く真言を紡ぐ。 「"ファルサ(偽り)、ウンブラ(影)、オリエンス(発生)"!」 投擲物の練習用に作られた案山子が見る見る内に鎧兜を纏った兵士へと変じていく。 ウェイバーはそれを見て事前に事実を知っているにも関わらず、こんな訓練所に似つかわしくない立派な装備をした兵士だと疑念を浮かべてしまい、さらにそれを補強する論説を自分で考え始めているのをなんとか頭を振って追い出した。 「……やっぱり、術を使うの自体は僕より段違いに上だな。これ以上教える必要はなさそうだ」 少しばかりの憮然さを滲ませながらも、契約の半分が終わったことに安堵する。 そして自分の手で魔術師として、魔術師でなければできないことをした達成感がフツフツと湧き上がってきた。 「やったー! やったで! おおきになぁ!」 幻影を維持したまま、ぶんぶんと手を握って振り回してくる侍従術士にウェイバーはたじろぎながら、照れ隠しと謙遜を混ぜて返した。 「ま、まぁ僕とお前にかかればそんな難しい術じゃなかったってことだろ。使える場面もそこそこ限られているし」 「え? 最高の使い勝手やん! 例えば、ねーさん風に言うと『隔絶した兵に相互の連携を可ならしめん』って奴やな!!」 そう言って得意げに幻影兵士を動かすと、後ろ手に隠し持っていたのか文字の書かれた板を取り出して両手で掲げさせる。 弾種、焼夷、撃て ウェイバーは幻影の文字を読みつつ言われたことを斟酌し、頭を抱えたくなった。この女、精度の高い兵士を出したのはおまけで味方に伝えるための文字が本命だとでも言うのか! つまるところ、幻影によって相手は騙せるかどうかは二の次で術が発現さえすればいいのか! 「おおお、お前なぁ!? この精度で術使えて、相手を騙すために使う気がないっていうのか!?」 大声を出すウェイバーとは対照的に侍従術士は平然と 「必要なら使うけど、味方に伝えるための方が確実やん?」 いやーええもん使えるよーになったなーと額の汗を拭いながら幻影を消し去る彼女を見ながら、ウェイバーは真言を他で代用できることに使うなという理想と、この行為の有用性を理解できる軍師としての智謀の板挟みで頭痛を起こしてしまうのであった。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━ 休憩と昼食を挟んで教師と生徒が交代する。 気を取り直したウェイバーに侍従術士がそこらで拾った木の棒を教鞭のように構えながら問いかける。 「で、何の術がええの? うちが覚えとるんは《火矢》《火球》《力矢》《吹雪》やけど」 「さすが青玉等級、多いな……」 ふーむと顎に手を当て考えるウェイバー、術を構成する三つの真言の内《吹雪》についてはオリエンス(発生)が先ほど教えた《幻影》と同じであるから、新しく使えるようにしなくてはならない真言の数は少なくて済むが、高等な術であり今の自分の手には余る。 そうなると必然残り三つだがどの術も一長一短だ、とすると……。 「……《火球》で。射程が長くて広い範囲を攻撃する手段は貴重だからな」 「お! もうそれに気づいとるんは有望やなぁ。うちもよっく使うんよこれ」 誉める教師にまんざらでもない生徒、しかし和やかなのはここまでであった。独学の知識の歪さに真言の癖の強さ、侍従術士は有能な徒弟であれど有能な教師ではなく、またウェイバーも有能な教師であれど有能な徒弟ではなかった。 「はぁ、はぁ……覚える方はともかく教える方として下手すぎるぞお前……どんな師匠についてたんだ」 怒鳴ったり噛みついたりする事数刻、ウェイバーはあまりにも感覚的な彼女の術の解釈に根を上げていた。 擬音が多い、理屈抜きで口にして慣らせ、曖昧な解釈は真言単音で何か出るまで試行錯誤しろ。 およそ学院で学んだウェイバーと相容れるものではない実学に偏った学習方法、四方の角を目指す学者というよりは術を使って物事を成すためのものではないかと思える程だ。 一方侍従術士の方は表面上はウェイバーと衝突するように口を回していたが途中から内心で冷や汗をかいていた。 こちらは教えてもらったのに向こうには返せないとなれば、真言を繰る魔術師が偽りを述べ、取引を司る交易神の信者としてタダで騙し取った形になってしまい、冒険者の先輩としての面子も丸つぶれである。 何か、何か打開策はないかと脳を全力で回転させながらウェイバーの話題に相槌を打った。 「うちの先生は元冒険者の魔術師でな、そりゃもう良くしてもらったんよ」 悪態を突いたつもりが返ってきた言葉が想定と違いウェイバーは話を聞くつもりになった。 もっとも彼の脳裏にあったのは身の上話への興味ではなく、どういった経緯でこんな術の覚え方や教え方をすることになったか、真言を教えてもらうのを諦めたとしても切っ掛けくらいにはなるのではないかという興味であったが。 すると出るわ出るわと妙な手順が、そもそも子供として引き取った相手が興味を持ったからとはいえ、ヤンチャで体を動かすガキ大将に座学を仕込む努力は並大抵ではない。 歌のように節回しをして真言を舌に馴染ませ、結果が出るのは数年後なぞ学院で教えたら授業料を返還しろと暴動が起こるだろうし、真言を遊具に書き込んで札取りをするなぞ頭痛がぶり返しそうな扱いの軽さである。 「でな、あの頃のうちは覚えた中から形になった真言だけで術として使って一人前やーとか思ってたっちゅー……改めて話すとなんつーかほんに教えるに向いとらんね」 「いや、それ自体はいいんじゃないかな。僕も始めて術が形になった時は舞い上がったもんだし」 何時しか二人は座り込み、見解の相違や同意を述べ合う形となっていた。 凡才であることを痛感することが何度もあった二人には、分かり合える部分と分かり合えない部分が多々あったようである。 ……結論として、侍従術士より欲しい真言の最低限の切っ掛けを学ぶことはできてもウェイバーが新しい攻撃術に目覚める日は遠そうである。 その一方で術を教わったお礼に他の真言に関する何某かを侍従術士が教えることになるのだが、それは後日に語るとしよう。 補足メモ 使える術なんて明かしていいの?→冒険者記録(キャラクターシート)に書いてギルドに提出はしてるし、まぁきり嵐の身内みたいなもんですから 二人はギルド魔術師同士の卓遊戯合戦で知り合ってるのでは?→もうちょい前の時間軸ってことにしといてください 最初の説明で術を簡単に覚えることなんてできないって言ってなかった?→冒険者としての位階のおかげです、身も蓋も無い言い方だとレベルアップ直前 幻影でなんでその文字?→言われる側だから出してみたかった。鉄火場のねーさんかっこええやん 術士ちゃんの過去捏造……→すいません許してください注意書きの通りです!言い訳は下の参照した元ネタで 当SSを書くにあたって参照した元ネタ 魔術師の遺産シナリオより 「読み札の早取りみたいなもんや。 東の国だと“かるた”言うんやったか? 先生にやらされまくったわ。 真言呪文使いにしか出来ない役目がある、 っちゅーてな。 相手の呪文が出た瞬間、割り込みで 叩き返して呪文そのものを消す。 ……使いこなせりゃ、戦局変わるわな。 これ」 妄想着手点 この部分から「術士ちゃんはひたすら反復練習で術を覚えた」「覚えさせられたが実戦で使いこなせるようになるかは別問題」と解釈しました 先生が事実上の親代わりであったことと歌唱が得意(歌を学んだor反復する機会があった)から 歌うように節回しして子供の頃に真言を学んだりもしたかもしれない スギモドキ伐採より 「魔法の時代の魔術師は、強大な魔力や呪文もそうだけど、 同時に互いに手管を駆使して2手3手先を読み合いながらの 呪文の応酬・決闘をやっていた。 今の冒険の時代だって、魔術師は強力な呪文で 戦局を一気に覆すのが花形だ。 でも、《火球》の撃ち込みどころを間違ったら どれだけ威力があっても小鬼の2,3匹殺して 終わりかも知れない」 「強力な呪文、それを扱う知識、 盤面を見る視野、戦術眼。 それらが備わってこそ、 一流の魔術師ということさ」 「聞こえてんだよ!! 僕だって石じゃなくて《火矢》撃ちてぇよ!! 好きな真言だけ選んで覚えられれば! 呪文書手に入れば! 僕もなぁ!!」 「こないだ、《幻影》の呪文をさ。 逆に、他人に上手く教えられたんだよ。 こんな派手さの無い真言だけど、まー 教えられた相手が喜ぶ喜ぶ。 で、なんて言ったと思う?」 「え? 最高の使い勝手やん! 例えば、ねーさん風に言うと――― 『隔絶した兵に相互の連携を 可ならしめん』って奴やな!!」 「……あいつ、《幻影》を相手を騙す呪文じゃなくて、 ただの伝言板にしか見てねぇ……!!」 「失敗して書き直してしながら、 説明や会話で引き伸ばしてたんだよ……! 靴先で真言とか、必要になるとか誰が思うか! 指だろ! そこは! 《幻影》教えた対価が、足で真言を書く技術って なんだよ! 金無いのは知ってるけど!!」 「あいつ以上に人に物を教えるのが下手なやつを知らない。 フィーリングと独学過ぎて説明が滅茶苦茶だ!!」 最後に ドーラ様→ヤシロ先生経由で四方世界真言の元ネタの一つっぽいスカイリムのドラゴンボーンのシャウトの話にも触れたかった…… でも妄想が先立ちすぎるしまとまらなかったので没りました 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その216【R-18】の8375 dotup.org2051064.txt +真言を教わったお返しの話 足で真言を書く練習の話 注意書き こちらは◆o2mcPg4qxU様の書いた四方世界をさらに二次創作した三次創作です。 設定や描写の矛盾があった場合は生暖かい目か優しい気持ちでスルーしてください。 また当SSの設定や描写は◆o2mcPg4qxU様が拾う場合を除いてスレに持ち出さないようお願いします。 本文 月が昇り日が沈む刻限、王国北部辺境のとある街の冒険者ギルド付近の宿屋の一室にて、ウェイバー・ベルベットは四つある寝台の内普段は使われていないものに腰かけていた。 決して上等とは言えない質のものだが、寝台を使うことすら稀な暮らしをしている身としては思わず横たわりたくなるが、招かれた事情を考えると恐るべき睡魔に屈するわけにはいかない。 「で、教えてくれる真言の"コツ"ってなんなんだよ」 この部屋を借りている一党の一員であり、対面の寝所に座りながら得意満面な笑みを浮かべる侍従術士に対し、疑念や不満を覚えた声で問いかける。 彼女は日のある間にウェイバーと真言の相互伝授を行ったものの、余りにも習得方法が感覚派過ぎて伝授失敗に終わるという、冒険者としては落伍者という一党全員の自称に違わぬ失敗をしてしまっていた。 なのでその詫びとして別の真言の"コツ"を教えるとして部屋に招かれたわけだが、どうにも焦らされてる気がして落ち着かない気分で噛みつくようになってしまう。 「まーまー、真言呪文遣いっちゅーのわ三つの真言を組み合わせて術を使うやろ?それは別に言葉である必要はないんやで」 得意満面の表情のまま返すのにウェイバーは僅かに失望を抱いたが、昼の間に感じた才能が溢れていない仲間意識と現時点では大きな差がある相手と、同じ視点で覚えたことが彼女にとっては秘する技術であったことを察し、機嫌を直しながら返事をした。 「ああ、知ってるよ。便利だよな無音詠唱、いつも使うもんじゃあないけど手札の枚数としちゃ悪くない」 詫びにしたいというものを既に覚えてると言われたらどんな顔をするだろうと少し意地の悪い思考が頭をよぎるが、それ以上に知識は秘するものだからこそつまびらかにして相手の関心や賞賛を得る快感があるということを、まだ若いウェイバーでは抑えることが出来ず次々に語り始める。 「冒険中だと特にそうだ。声が出せないけど手が空いてることなんていくらでもあるからね」 得意げな顔をするウェイバーに侍従術士は笑顔を崩さない。 何か想像した展開と違うと訝しむウェイバーに対して、返ってきた言葉は 「まったくその通りや。案外近いんやなぁうちら、でも手も空いてない時も使えるってんはどや?しっとった?」 「はぁ!?寸分違わず真言を表記するんだぞ、指先を使わずできるもんか」 得意満面な笑みを崩さない侍従術士はウェイバーの反論を封殺し、寝台に腰かけたまま冒険用の靴を脱いで靴下越しに足の指先をちょいちょいと曲げて見せた。 健康的な肉付きの脚が持ち上げられたことによって、スカートの裾とその奥にある膝の裏が見えかくれするも、ウェイバーにとってはそれどころではない問題に直面していた。 (指先は指先でも足指? 馬鹿だ、そんなことにどれだけの労力をかければ出来るんだよ。っていうかどんな発想だ) (手荷物、松明、武器、組みつかれたり絡み取られた時の引き剥がし。冒険者にとって口だけでなく手も塞がることだってあり得ないことじゃあない) 本日二度目の魔術師としての固定観念と軍師としての実学の衝突、たびたび起こるこれは冒険者としてみるとおおむね後者が正解になりがちだが、前者の理想や目的意識を失えば向上心と向学心の欠如に直結しかねないウェイバーにとっての死活問題である。 よって偶然振りまかれた色気にも目の前の相手への対抗心も棚上げにして懊悩せざるを得ないのだ。 その僅かでない逡巡に侍従術士が少し不安になり声をかけた。 「あのー、もしー……?要らんか、これ?便利なんやけども」 靴下に包まれた健康的な脚をプラプラを寝台からはみ出させつつ、詫びの講義は別の方がよかっただろうかと確認を取る。 「いや、それでいい」 半ば反射的ではあるがウェイバーは肯定した。 そしてすぐさま後悔をすることになり、さらにその後に喚きながらこの技法の実用性を痛感することになるのであった。 そこは青少年に取っては夢のようで拷問のようでもある空間であった。 黒髪の少年の隣には対人距離(パーソナルスペース)を踏み越えるような近さで青髪の少女が陣取っており、その正面ではスカートの裾を摘まんだ赤毛の少女が靴下を脱いで指先を滑らかに動かしている。 ウェイバーはどうしてこうなったという疑念と共に真言に関わること以外をシャットアウトすることで、現実から逃避しつつただひたすらに床を滑る足指とその軌跡を目で追っていた。 しかし彼の集中を削ぐようにそれを隣に座った薄青の長髪を持った第三者が、足指の動きの説明をし続けてくる。 「さっきも話したけど、手の指は人差し指が一番滑らかに動いて関節が二つあるよね? でも足の指は親指が重要だから関節一つの動きで真言を描くために……」 必要な説明だ、二度も言われてるのは手本を見た後の自分の足の動きがぎこちなかったからだ。 だが安寝台の上で側に美少女が座って声をかけてくる上に、嫌でも女体美を感じる別の美少女の素足の指を眺め続けているのは、まるで妙な催眠か話に聞いた夢魔の引き込む夢の中のような現実感の無さを想起させられてしまう。 別の美少女と記したがそれが、色彩を変えただけのほぼ同一人物となればなおさら不可思議なものだ。実演と教授をそれぞれに集中するために《分身》などという高等呪文を使うあたり、侍従術士は本当に青玉等級止まりの冒険者なのかと疑念を抱かずにはいられない。 「んん……」 分身が身じろぎをすると安石鹸しか使えないような生活をしてると思えない甘やかな香りを感じ、さらにウェイバーは現実逃避のため指先の動きの暗記と真言術への考察へと脳の処理能力を割り振った。 そも《分身》とは高等な真言術でも特に異例のものであり、もう一人の自分とはすなわち自分と=ではなく、容貌や性質の差が表れることがあるらしい。 真言の解釈のずれや本人のもう一人の自分という単語へのイメージの差異の結果、自分の複製であり人形であったり自分の隠された部分の顕現などの比率が変ずるのだとか。 その観点で見れば侍従術士の分身はどうだろう、容貌は色違いの同一人物であり性格はおおむね一致するが本体を姉と呼ぶあたり別人格が強いようにも見える。 詳しい人となりを知らない以上深い考察は出来ないが……。 「ウェイバー、疲れたんなら休憩にするかー? ウチもちょっと足しんどいわー」 「ウェイバー君、身が入ってないねー。お姉ちゃん次は交代しよっか」 どこかうつろになりかかっているウェイバーのトランス状態を見て、二人が提案をする。 それに伴い侍従術士は足指が地面から離れて寝台に畳んで置いてあった靴下を履きなおし、分身は身軽な動きで対面の寝台の侍従術士の隣に並んだ。 何か異空間のようなアウェー感から解放されたウェイバーは、ハッと意識を取り戻して並んだ二人に視線を合わせた。 「……悪い、ちょっと身が入ってなかった」 「ええよええよ、うちも足悪くしたリハビリせんかったらここまでやるようならんかったろーしな。難しいもんやでー、なー?」 「ねー?」 実の姉妹のように唱和をする二人、ウェイバーはそれを見てなんとなしにその差異を見比べてみた。 色、対象、顔、変わりなし、体、ややシルエットに差異あり、分身の方が上半身にボリュームがあり下半身が引き締まってる気がする。 「~~~~///!?!?」 思わず目をそらす、《分身》によって生み出されるもう一人の自分にはそういえばまだありうるパターンとして聞いたことがある。 自分だと認識できる範囲での理想の自分。それはもう年頃の乙女ともあればそういうこともあるだろうが、 気づいてしまったウェイバーにとってはたまったものではない。 「お、なんやなんや? あかんでぇ真言の使い手足るもの平常心や」 顔を背けて抑えるウェイバーに不思議そうに近寄る侍従術士とそれを見て納得と憐みを滲ませた表情で見送る分身 「お姉ちゃんは残酷だなぁ(ボソッ)」 「う、煩い! 別に大丈夫だからちょっと離れろよ! ちょっとしたら再開するからな!」 「なんやもー。ほんじゃそっちが脱いどいてな」 分身に履物を脱ぐように指示をすると、わずかな躊躇と共に分身がその言葉に従った。 ウェイバーが落ち着いてから再開すると、滑らかに動く足指とそれに連なって目に入る脹脛程までの健康的な脚が、先ほどの侍従術士との僅かな差異があるのが嫌でも意識してしまう。 (違うだろ! 僕は魔術師だぞ! そんなことより大事なことがあるだろ!) ほっそりとした傷一つ無い足を目を見開いて確認しながら、鼻腔をくすぐる甘い匂いからは意識を遮断し、耳朶を打つ心地よい声も真言のコツのみを抽出して脳に叩き込む。 およそ女性経験のない青少年とは思えない集中力を持って真言を足で描くコツを学び続けるのであった。 さらに侍従術士と分身が交代をしてから幾ばくかの時間の後のこと 「神殿で説法をするのはやはり難事だった。奇跡の強さと神官としての心得は同じではないが指標ではあったが……」 整っているが武骨な顔に僅かな疲労を滲ませながら現れた長身の男は「放浪牢人」。この部屋を借りている一党の頭領である。 そして彼は侍従術士とは冒険者になる以前からの付き合いであり、いわゆる仲間以上主従以上でギリギリその範疇内という微妙な関係であった。 さてそんな関係の相手が分身を含めて二人がかりで素足を晒しながら自分以外の男と一緒にいる状態を見て平静を保てる男などいるであろうか? 「……どういった事情があるかは私には理解しきれんが必要があったのだろう」 いた。 ウェイバーは生きた心地がしなかったがその言葉によってドッと力が抜けた、 何しろこういった修羅場というのは恐ろしいものだと学院時代の師匠のせいで身に染みていたからだ。思わずいずれかの神に幸運を感謝したくなった。 隣にいる分身は少しの硬直の後、さりげなく寝台から移動して距離を取っていき、向かいにいる侍従術士は分身より長く固まっていた。 それを見て何を得心したのか放浪牢人は一つ頷くと、背負っていた荷物を部屋の片隅に置き、足早に出入口へと戻っていく。 「まだ時間がかかるようだ。下の階で時間を潰して来る、君たちも食事を摂り忘れないように」 ギィバタン、固まった空気を物ともせず立ち去る姿と平常心は、果たして誉めればいいのか呆れればいいのかウェイバーには判断がつかなかった。 「違う! 違うんよ主様~~!」 再起動をした侍従術士が全力疾走をして部屋を飛び出していき、取り残されたウェイバーと分身はなんともなしに顔を見合わせた。 殺傷力のない礫をぶつけられた鳥のような顔をしているウェイバーに、笑みをこぼしながら分身は話しかける。 「じゃあ、今日はこのくらいだね。それとももうコツを掴んだ?」 「……ここから先なら自分で復習してどうにかするさ。お前の本体と違ってそういうの得意なんだよ」 「だよねー。女の子に囲まれちゃ溜まんないよねー」 ぼかした本音を容赦なく鷲掴みにされてウェイバーは寝台に突っ伏しかけた。縁を掴んでギリギリと音が出そうな動きの悪さで身を起こしながら人殺しのような目つきを分身に向ける。 「お・ま・え・な・ぁ~~? わかってたんなら止めろよ馬鹿ぁ!!」 「あはは、ごめんごめん。つい面白くって」 悪びれもせずに分身が言い出すのにウェイバーはなんとか一矢報いることが出来ないかと頭を捻りながら寝台から立ち上がる。 とりあえず主導権さえ握ればなんでもいい、日々を一党の間で蟲毒と称される主導権争いで過ごすウェイバーは、話題の切り返しについては一家言あると自負していた。 「そういえば、お前と本体で《分身》なのに足の傷跡の差異があったな。僕が知ってる限りだと《分身》は本体の負傷や消耗を引き継ぐって話だけど」 共通の話題に出来ることは今日一日以外多くない、ならばその中から少しでも真言の術の実利に関わる話題を。 実利と保身に満ちた話題選びであるが、年頃の女性に傷の話を聞くなどずれているとしか言いようがない、所詮ウェイバー・ベルベットは女性と付き合いのない青二才であった。 「あー、そっか。ボクが素足見せる機会なんてないもんねー。主様に手当してもらったこともなかったし」 あっけらかんと分身は返し、先ほどから浮かべていた笑みをさらに深める。 「んふふ、それはねー。お姉ちゃんの乙女心だよー。毎晩薄れてるの見て悲喜こもごもしてるんだもん」 「はぁ……?」 まるで理解に及ばないウェイバーに対して、分身はそれ以上語ることはないとばかりに立ち上がる。 「また会ったらよろしくね? 日常だとボクの出番は多くはないから」 そう言ってウェイバーを部屋の入口まで押していこうとし、それにウェイバーは流される。 新たな真言を欲することに端を発したお話はこれでひとまずおしまい。 ウェイバー・ベルベットと侍従術士および分身との間に、再び道が交わるかは宿命と偶然の神々も及び知らぬところである。 おまけ ちょっと違う石斧の話 放浪牢人は宿泊している宿屋の廊下にて追い詰められていた。 追い詰めている相手は言わずと知れた侍従術士、想い人に誤解を受けてはたまらないと息を切らして走り込み、抱きつくように放浪牢人を捕まえて離さないでいる。 「その、なんだ。誤解というのはどこが誤解だったのだろう」 放浪牢人はこれまで数々の石斧……俗称であり詳しい意味は定かではないを受けて、実のところ鈍感ではあるが男女の機微が起こっているであろう場面を冷静に俯瞰して見る能力が身につきつつあった。 自惚れでなければ彼女が自分に好意的であろう事も察してはいるし、それに理解を示したつもりであったのだが。 「ホントになんもなかったんや! ただの真言の伝授や! 足書きっちゅーのは割と有用で……!」 一方侍従術士にとってはまるで冷静さを取り戻せない事態、誤解なぞされたら生きていけぬという勢いで身の潔白をまくし立てる。 放浪牢人はされるがままになりながら、やはり特に誤解をしていなかったのではと、疑問符を宙に浮かべながら少しずつ歩いて人目のない場所へと移っていった。 裏口から宿の外に出、侍従術士の言葉がループしていることを確認してから 「よくわかった。誰にでもそんな事をしてはいけない」 彼女が欲してるであろう叱責と執着の言葉を返す。 それを聞いてビクリと一度身を震わせた後、拘束する力は弱まり代わりに体を擦るように寄せてくる。 それを受けて放浪牢人は所在なさげに手を動かした後、そっと両肩を掴んで顔を見つめた。 「主、様?」 涙が端に溜まった状態で侍従術士は困惑した目線を向ける。 「君は、自分の魅力をもっと自覚した方がいい。私が今回のことで言えるのはこれだけだ」 放浪牢人はほんのわずかに頬を染め、体ごと背を向け宿屋に向かおうとする。想像の外からの返事にぽつねんと取り残されかけた侍従術士に、放浪牢人は彼女を一人にしないようにそれとなく宿屋の裏口へとゆっくりと歩みを進める。 数瞬の後、侍従術士は大輪の花のような翳りのない満面の笑みを浮かべ、放浪牢人の横に向かって駆け込み腕を絡める。 「んーふーふ、主様ぁ。それってぇ」 甘えるような声音を受けた牢人はいつも通りの場違い感や焦燥感を覚えながら、無自覚の独占欲が満ちることに安堵をしているのであった。 補足メモ 西洋文化圏では寝る時くらいしか靴脱がないので素足ってすごくエロいらしいですよ?( 《分身》なんて気軽に使っていいの?→寝る前だからへーきへーき ウェイバー、こんなに女性に弱いっけ?→気づかなければ大丈夫だが気づいたらアウトって解釈でどうか。別名、スレでダイス振った時にどっちのパターンも取れるようにふわっとさせる 神殿で説法って?→人格的問題"は"ない、神官技能はごまかしの効かない信仰心が基本的に影響が大きい、じゃあ高い位階の神官がそういう事を頼まれることだってなくはないんじゃないかな 分身ちゃんの足に傷がないってどういうこと!!→術士ちゃんはあの傷を分身にだって渡したくないんだよ!牢人さんとの運命の岐路で槍兵さんとのリハビリの証なんだから!SS書きの捏造妄想だ! 牢術が解釈違いです→(致命傷) 当SSを書くにあたって参照した元ネタ スギモドキ伐採 「失敗して書き直してしながら、 説明や会話で引き伸ばしてたんだよ……! 靴先で真言とか、必要になるとか誰が思うか! 指だろ! そこは! 《幻影》教えた対価が、足で真言を書く技術って なんだよ! 金無いのは知ってるけど!!」 黒曜等級依頼 訓練所の整備 「そう、だな。しかし……傷跡はほぼ消えた、か」 「それに、実家に居た頃に比べれば女性らしい曲線になってきたな」 「……主様もそういう風な見方するんやな」 「ふーん、ほぉー……」 「へぇー……」 「さぁ先を急ぐかいっそ一思いに殺せ……!!」 「主様ー。治療のための事やし、ウチ嫌とは言っとらんからな?」 「治療のため、そして一党の仲間に対してそういう見方・発言を してしまった事に対して私が落ち着かんのだ……!!」 ある冒険者たちの挑戦 ガントレットいちご味 「……つまり、ウチはもう主様の侍従として 振る舞う必要はないと。お役御免だと」 「―――ほんなら! 自由意志でアンタの後ろぉついて行かせて 貰いますわ、このスカタン主様! 助けるだけ助けてポイかい! ザッケんなや!」 「ポイかい! ウチ、もう、要らん子かい……っ! やだぁ……!!」 妄想着手点 物語的な意味での原典。冒険が続くにつれて変わったことはたくさんあるし、もう牢人さん自身が術士ちゃん無しではダメだって自他ともに認めてるけど 術士ちゃんからするとこの時の感覚はきっと正式にお付き合いしてから幸せになるまで大なり小なり残ると思う。 今回はそれに加えてスレではあまり見ない第三者を交えた恋愛的な関係のもつれの超軽いものを入れて、 術士ちゃんに焦ってもらいました。 各々のフィロソフィー 「“託宣”など、今思えば都合のいい理由付けだったのかもしれないな。 私が憧れた冒険者は、必死に冒険に挑んでいた」 「認識票も何も無くても。 目の前の理不尽に必死に挑む“冒険者”に憧れた。 自らを、周囲の誰かを救おうと足掻く姿に憧れた。 それが、私の原風景だ」 「辛い? ―――違う。私はとっくに、その“冒険者”に救われている」 妄想着手点 牢人さんの原典。恋愛的な意味かはさておいて、クソ重感情という意味ではまったく劣らない似た者主従。 生真面目なリミッターを解除したら術士ちゃんが真っ赤になって動けなくなるくらい石斧振り回すバーサーカーになるんじゃないかって思って書いた。 ネタ振り それはそれとして、術士ちゃんの足をじっくりねっとりは羨ましいです(真顔) 牢人さんは不機嫌というより、「誰にでもそんな事をしては」「自分の魅力を自覚したほうが」とかいって、 術士ちゃんがニヤけ始めて、自分で墓穴を深く掘るんじゃろうなぁ……。 それはそれとして、内心の落ち着かなさはありそう。 読者という名の同胞 屋敷にいた時よりは健康的で女性らしい体つきになったが槍兵さんに胸囲が追い付かれた術士ちゃん 健脚に戻った脚と合わせて考えるとつまり彼女は下半身がムッチリし始めているな 分身ちゃんは逆に上半身がふくよからしい? もしそうだとしたら丘だ谷間だと大騒ぎしてた件から ちょっと理想を反映して夢盛り状態という術士ちゃんの乙女心の発露になるのか……w 術士ちゃん、脚のリハビリ兼ねてずっと練習してたんじゃないだろうかという妄想 ただ手札増やしたかっただけなのに、toLoveりたいわけでもない女子の足を凝視させられる過労死よ ホラホラ、ちゃんとバレないようにつまさきだけで真言書くコツじっくりねっとり見て覚えるんだよ だとしても茶々入れか現実引き戻す第三者を入れてバランスとるかなあ? 最後に 石斧を書こうとすると参照できる元ネタが多すぎて返って悩む もはや読者のネタも無節操に取り込んで整合性の取れる範囲でぶち込んで鍋にしてしまえ……! 分身ちゃんが生えたのは間違いなく読者の雑談のせいです、牢人さんぶちこんで1シーン増えたのも 普段のスレにレスする石斧に比べて自分で振るのに重すぎてこれもう非力な人が斧槍抱えてプルプルしてる気分になった 冒険者になる前の話 & 当SSを書くにあたって参照した元ネタ 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その216【R-18】の9485 dotup.org2052350.txt dotup.org2052354.txt 異物さんと雇い主のメイドさんとのR-18SS 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その216【R-18】の9566 dotup.org2052532.txt 付き合い立てカップルの痴話喧嘩の話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その217【R-18】の4947 dotup.org2058812.txt 圃人と只人の距離の話 & 当SSを書くにあたって参照した元ネタ 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その217【R-18】の6441 dotup.org2060355.txt dotup.org2060356.txt 圃人と足の話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その218【R-18】の2645(前半) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その221【R-18】の8738(続き) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その225【R-18】の5491(完全版) dotup.org2169166.txt メイン一党の普通ちんこ第一級取り扱い免許講習 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その218【R-18】の3345(初出) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その220【R-18】の6132(修正版) dotup.org2095202.txt ウェイバー×あかりのR-18SS 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その218【R-18】の6952 dotup.org2070390.txt 技術検討会組のギャグ気味のSS 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その218【R-18】の7484 dotup.org2070753.txt 女子会があれば男子会もあるという話(BG組男衆飲み会) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その219【R-18】の918 dotup.org2075190.txt 宴会は熱烈歓迎の後で(牢人さんに憧れて冒険者になってみた新人のお話) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その219【R-18】の1839 dotup.org2076154.txt ノクタ案件 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その219【R-18】の5743 dotup.org2083060.txt 『結月の』という呼び方でふと思いついて、勢いで書いた話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その219【R-18】の8290 dotup.org2087672.txt 降格審査に出発した後のBG組(嵐・エリちゃん・バカップルメイン) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その220【R-18】の2351 dotup.org2091304.txt 二流剣士師匠と達人剣士弟子の話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その220【R-18】の6687 dotup.org2095698.txt メイン一党エロSS(イチヤタケ) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その221【R-18】の2494 dotup.org2104651.txt アンジュで脱童貞を目指すだけ目指してみた 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その221【R-18】の3241 dotup.org2104999.txt 漢詩のネタに続けて詩歌のSS(メイン一党) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その221【R-18】の3244 dotup.org2105091.txt 一夜の夢幻の如き、きりたんの蜂蜜授業 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その221【R-18】の9353 dotup.org2113408.txt 異物さんと雇い主のメイドさんとのR-18SS その2 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その222【R-18】の8618 dotup.org2127500.txt 首無し騎士に関わるとある混沌勢の顛末 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その224【R-18】の2229 dotup.org2148391.txt おいおいテーブルの下でこっそりとか高度なプレイしてんな 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その225【R-18】の2023 dotup.org2162460.txt エアダーノベライズ 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その225【R-18】の3146(3468) dotup.org2164700.txt 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その225【R-18】の3525(加筆) dotup.org2164998.txt 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その225【R-18】の4029(加筆) dotup.org2166567.txt ボクと私とお姉ちゃんの話 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その226【R-18】の729 dotup.org2178573.txt 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その228【R-18】の7715(続き) dotup.org2215186.txt アナザー/トゥルーオウン(分身ちゃん→術士ちゃん言葉責めレズR-18SS) 【安価】◆o2mcPg4qxUの雑多な投下場 その230【R-18】の3925 dotup.org2242364.txt +... きゃぷしょん 侍従術士ちゃんが分身ちゃんに言葉責めレズエッチされるSSです。 "独自解釈"を多分に含むため、地雷だったらごめんなさいね(ステンノ様) 本文 ――その日は、何かがおかしかった。 だらしなく間延びした声をあげながら、【侍従術士】は寝台へ倒れ込む。 鎖骨のまぶしい寝着に自力で着替えられたのは敢闘賞。 一党で取った四人部屋には主なき白い寝台がほかに三つ並び、 一階の喧騒から遠く離れた、心地のよい寂寞に浸らせてくれる。 なぜだか酒の回りが普段以上に早く。 宴会を辞してギルドの二階に一足早く引っ込んだ彼女は―― 仰向けに瞼を閉じたまま、"もう一つの双眸"で仲間を眺めていた。 当世具足(フリューテッド)に着られることなく泰然とした、 若く精悍な偉丈夫を【放浪牢人】という。 軍人家系の三男として将来を嘱望された、優れた神官戦士でありながらも、 正義の所在を広い世界に求め、みずから風雪に晒される道を選んだ青年。 ――侍従術士は放浪牢人が大好きである! ライクである。リスペクトである。 それを通り越した先の感情もまぁ無いとは言えない。 名声や承認に拘るところなく、身を挺して他者を助ける、愚直で"体当たり(カミカゼ)"な生き方が。 ふと目を離してしまえば巨悪と心中仕(つかまつ)りかねない危うさが。 ときおり垣間見せる知性の輝きが。おっちょこちょいで抜けた一面すらも。 なにもかも愛おしく尊いものとして映る。 年頃のむすめとしての色目を抜きにしても、 生涯をかけて供回りをすべき……ただ一人。 運命の相手であった。 びっこ引く己の左足に、長い脚でゆっくりと歩速を合わせる不器用な笑みが。 侍従術士の世界に色を付けてくれたのだから。 …… 抱く感情の内容はどうあれ、運命を信じてやまなかったのは、 さえずるばかりの少女ゆえの盲目だったのだろう。 運命は一つではない。 彼の鎧を肘でうりうりと小突き、エール片手にくだらない冗句を飛ばす。 とがった耳に紫髪の麗人を見よ。 【槍兵斥候】。 父母の悲恋から混血として産まれ、閉鎖的な里を出てきたという半森人の少女。 ひょんなことから小鬼殺しの冒険を共にし、"三人でひとつ"となった、槍技と火計の達人。 ――侍従術士は槍兵斥候が大好きである! ライクである。リスペクトである。 それを通り越した先の感情もまぁ無いとは言えない。 自らを破綻者と断じながら、見返りなき奉仕で無辜の人々のいとなみを愛し続ける、鉄火の生き方が。 ただ闘うことでしか存在証明を為せぬ悼ましさが。 日常会話に難をかかえた奥手な天気トークが。効率的な殺戮に奔する戦鬼の横顔すらも。 なにもかも気高く美しいものとして映る。 このように頼れる姉貴分が故郷にいてくれたなら、 生活苦への誤った義憤から、反乱分子に加わるようなこともなかったかもしれない。 (……ま。その世界線の場合、ウチ主様とも出会えてへんことになるしな。 結果オーライオーライ) うつぶせになって足をはしたなくパタパタさせながら、 『もう一人の自分』の視界で、想い人二人の酒宴を覗き見る酔っ払い。 人の生活圏をおびやかす大毒蛇は、真言術の出番すらなく阿吽の連携で沈んだ。 それなりの報奨金が入ったとはいえ金欠はいつものこと、と、 牢人と槍兵は安酒と揚げ芋で無限に歓談を楽しめるモードに突入しているらしい。 ――つくづく、それはお似合いの男女の光景だ。 身の丈六尺にも迫る放浪牢人は、どこか年齢に似合わぬ落ち着きと威厳があり。 森人らしく彫刻のように磨き上げられた、槍兵斥候の肢体と美貌になんら位負けするところがない。 酌をつとめるのが小柄な自分ではそうはいかないだろう。 大人と子供。背伸びしようと兄妹くらいが関の山だ。 まあ、酒精にてんで弱く、依頼成功のテンションから"牛乳の炭酸割り"などという、 馬鹿舌の追放悪魔しか飲まないような錬成を始めているサマは。うん。 一党の精神年齢がどっこいどっこいであることを如実に示すのだが…… 炭酸牛乳を口に含んだ仏頂面が、珍妙なカタチにゆがむ。 無魂の鉄槍が、なにを大輪の華のように笑う? 『もう一人の自分』がへらへらと相槌を打つ声が、聴覚に上滑りしていく―― どうしてだろう。 好きな人を見ていれば胸が温かい。これは当たり前のことなのに。 ――"好きな人と好きな人が、好き合っている"のを見るのが、 こんなに切なくて甘くて痛くて苦しいだなんて道理があるか? 少女は四人部屋の寝台に独り。 思わず甘い懊悩の息を漏らす。 いにしえの竜仕込みの卓越した魔術は、 なんらその気持ちをほどく一助にはならなかった。 古来より竜とは恋に敗れるものであるから。 …… ………… 「お姉ちゃん、足の傷診せて? マッサージしたげる」 「おお。おおきになー」 「大事な大事な本体ですから~~」 共感覚で本体の不調を察したか。 『もう一人の自分』は茶々入れを切り上げ、侍従術士の介抱に顔を出してくる。 双子のように瓜二つの容姿。 体毛の色が桃から水色になっているのを除けば、心持ちニヒルで気楽げな表情が特徴だろうか。 【術士分身】と人は呼ぶ。 高位の真言魔法、《 分身 》によってかりそめに生み出すことのできる、第二の仮想肉体。 断じて宴会芸の余興で「幽体離脱~」や「裂ける乾酪(チーズ)」などの双子ネタをやるために使用する呪文ではない。 が。彼女の分身は、他にはない特異性として…… 本体とは微妙に違う個としての人格をもって顕現し、自立行動を取るケがある。 原因不明のある種の誤作動ではあるのだが。 かねてより弟妹の欲しかった術士本人はこれに大喜び。 皿洗いに給仕のバイトに、と、ちょっとした所用でこの"双子の妹"を呼び出すようになった。 ナイトワンピースの裾をはしたなくめくり上げ、一人用の寝台に少女が二人。 奉仕する葵色。奉仕される茜色。 左の上脛に痛々しく刻まれた傷跡を矯めつ眇めつ、分身はいたってけなげに足裏を揉んだ。 「あぁ””~~ 極楽、極楽」 「女の子が出しちゃいけない声になってるなぁ……」 気持ちいいのはわかるけどさ、と苦笑を一つ。葵色の奉仕者が続ける。 「でも驚き桃の木だよねえ。 もうすっかり諦めてたのに。人並みに動くようになっちゃって」 「元気溌剌走り回れるでぇ! ねーさんサマサマやわ、ホンマ」 三人が徒党を組んだ当初。侍従術士は片足を引きずって歩かねばならぬ障害の身であった。 広刃の剣で骨まで達する戦傷は、 もはや機能回復の見込みナシ、と当人たちも諦めていたのだが…… 槍兵斥候のもたらした一日一杯の《 命水 》、そして森人式ストレッチが徐々に実を結び、 傷を負う前とそう遜色ないほどに機能快復を果たしたのだ。 惚れた男の運命の人は己だけではなかったが、その邂逅に主従がどれだけ救われたのか…… 侍従術士にとって、放浪牢人、槍兵斥候は双方が大恩人である。 ――だからこそ。目をそらし続けてこれたのかもしれない。 「……ホントに」 「? なんや?」 「ホントにさ――――"治ってよかった!" と思ってる?」 まったく同じ顔がずいと近づく。 しばし睨み合う。 「……はて。 なんの話やら」 「ごまかさないでよ、お姉ちゃん。 ボクたちは一心同体。二人がひとり。 隠し事なんて成立するワケもないんだから」 分身の主張は、まったくもって事実であった。 ゆえに本体も。彼女が次に口にする言葉が、その本義がわかる。 「――この足さえ治らなければ。 巨大な"負い目"として。このさき永遠に、主様を束縛できたのに。 そう惜しむところが、まったく無いって言い切れる?」 「…………」 そう。幼気な少女を不具とするほどのこの傷。 かつての放浪牢人の手によるものである。 英雄無き戦場に、民兵の鎮圧を主な任務としていたその青年にとって、 それは約束された将来と、富裕な生家を捨てるほどの……生涯無二の痛恨の証。 「何もかも投げ出して、たった二人で正義の在り処をさがす旅路のよすが。 あの長い脚でゆっくり合わせて歩いてくれる。 主様のそんな優しさに、ボクたちは惚れちゃったんだよ」 「わーーとっるわ」 不機嫌な声になるのもやむなしだろう。 とっくのとうに答えは出ている。 「ウチ自身ならわざわざ聞くまでもないやろ? ねーさんとのリハビリが功を奏して。ようやくウチが一人で走れるようなった日。 ――主様がどんな顔で、駆けまわるウチを見てたか」 放浪牢人は感情表現に乏しい男だ。 その時ばかりは無言で中座し、誰もいないところで少し泣いた。 槍兵斥候とその背中を尾けていたのはご愛嬌。 救ったのは彼だというのに――まるで、救われたかのような、落涙を。 「かたわのヒロインは店じまいや。 そんな傷なんてなくとも、主様とはずうっと一緒。 主様はウチを見捨てへんし、仮に嫌と言おうが付きまとったる!!」 斬った男と斬られた女。 二人の心は世の艱難に限界で、互い互いの共依存だったのかもしれない。 三人目がその欠落を補ってくれるいま、もはや必要のないよすがだ。 侍従術士はあえて口にすることなく、そう強く念じてみせた。 目の前の存在にはそれで十分。 「ホントにいいの」 「何が」 「勝ち目……ないよ」 「だからっ、何が!?」 「人の輪(サークル)が三人以上になってしまえば、『いちばん』は一人しか選べないッ!」 念じてみせるだけで十分なはずなのに。 葵の少女は叫ぶ。 [自分はそのために生まれてきたのだ]と。 「大好きな主様とぉ、大好きなねーさんがぁ、 互いに互いを『いちばん』にしてもうたらー。 ウチはおまけになってまう~~!!」 「黙りや」 「本当はこう思ってやまない! 森人の血が濃くて、一緒に老いていくことのできないあんさんは、 つつましく身を引けやぁ~~ん♪」 「黙りや――!」 怒気を発した側の頭が、しかし無慈悲に組み敷かれる。 葵の少女が、茜の少女の両肩を掴んで押し倒していた。 「わかるでしょう!? お姉ちゃんはボクなんだからっ。 [あるいはもう一つ、自分自身の真実]!」 「ウチはそんなこと思っとらん! いっぺんたりとも考えたこともない!! アンタみたいな……"ぱちもん"にくさされるほど、性悪でないわ!!」 「――そう。お姉ちゃんは、またボクを抑圧(ころ)すんだね」 一人用の寝台に、少女が二人。 しばしの沈黙があった。 「……そうやって素直になれないから。人のためを思って優しく譲って生きるから。 『抑圧からの解放』を担当する側面なんてのが、こうして具現化してるのにねえ」 我慢は毒♪ 我慢は毒♪ と歌うその膂力は、不思議と本体よりも強い。 誰も自分自身を振りほどくことなどできはしない。 「今日お酒の回りが早かったのは、 お姉ちゃんが主様にハツジョーしてるから♪」 そういう性欲の波ってありますわよね、とお嬢様のように笑いつつ 夜着の中に顔を豪快に突っ込み、ショーツを引き下ろす。 侍従術士はぴゃあ! と悲鳴を上げたが、すべての抵抗はやはり無為に終わった。 ぐいっ ぐいっ ……意図的に視界を押し付けてくる。 蜜のしたたる己の恥部が、眼前にたいへんよく見えた。 「どぉれ。 ぺろりんちょ」 「――? ――――ッ”!!??」 「うんうん。ちょっとおしっこ臭いのもまた味ですなぁ」 …… 自分自身に性器を嘗められたことのある者など、果たしてこの世に存在するだろうか。 それは自分であるがゆえに正しく性感を突き、 あらゆる秘めた欲望を浮き彫りとしてしまう。 ――曰く。 舐めるなら主様だが、舐めさせるならねーさんも一興。 「あ”…… なぁあ……っ”」 想い人へ奉仕する妄想だけなら耐えられたろう。 同性すらも魅惑する、美しく勇ましい半森人の戦鬼が、小便臭い自分の秘裂を嘗めそぼっているイメージ。 自分自身の舌で慰められながら深層意識から発露したこの不埒な考えは、 およそ言語化不能の莫大な快楽を、侍従術士の脳髄に叩き込んだ。 がくがくと痙攣し、うめき声をあげながら甘く達してしまったのも。 きっと無理ならぬこと。 「ね♪ ――これでわかったでしょ? お姉ちゃんったら、ホントはこんなにエッチなんだって」 くすり 愛の蜜に濡れたくちびるで、左頬にそっと口吻を落とす。 「大恩ある主様とー、あさましくも夫婦になっていちゃいちゃしたいし? それを邪魔するかもしれないねーさんとも…… こうして、舐めて・触って・ギューして、滅茶苦茶してやりたいんだぁ……♪」 「…… 違うッッ!!」 「アンタなんかウチでない!! きえろ ――《 消失 》!!」 分身はあいまいな笑みを浮かべると、煙のように、ポンと消えた。 …… ………… 追憶する枯れた農村の風景は、『抑圧』と『我慢』に満ちている。 一人っ子だったからだろうか? 侍従術士の貧しい暮らしの中には、常に"彼女"の息吹があった。 骨肉を削るような農作業。 雑穀を何倍もの水でかさましした粥。 そういったままならない現実を笑い飛ばす、奔放なムードメーカー。 もう一人の仮想の自分。 左足に深々と契約の傷が刻まれる日まで。 誰が孤独を癒してきたのか。 《 分身 》の術を覚えたるは、具現化させるきっかけに過ぎない。 生まれたときから、ずっとボクは貴女のそばに。 一階の喧騒から遠く離れた寂寞。 茜の少女はこうして独り。 大好きな二人へ、鬱屈した性欲を向けているという事実認識だけが、ただ虚空に残響す。 「…………ふ。 ぐ、うぅう”う”ううううううう――――ッ!!」 少女は哭いた。 ぐしょぐしょになったシーツ。 誤魔化しきれない女のにおい。 二人の腹はそろそろ満ちた頃合いだろう。 ……とある呪文を唱えれば、後始末の手は二人に増える。 断固としてそうすることはなく。 侍従術士は換気窓を開け放ち、涙にえずきながら乾布で裸身を清めはじめた。 [アナザー/トゥルーオウン] 了 余談 本編とは似ても付かないネットリした話なので、 あえて牢人さんと槍兵さんには一切セリフがありません。 「術士ちゃんがこれくらい思い詰めてたらきゃわいいなぁ」、という純然たる私の願望。 槍兵さんのこともきっと心の底から大好きですし、好きだからこそ許せないことってあると思うんです。
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counter - today - yesterday - モンスター名 面数 Lv 主な攻撃ワザ 敵に有効なワザ 伝授まだのメンバー名 紅鹿 1 剣攻撃 幼い黄狐 剣攻撃 天刑戦士 剣攻撃 イノシシ 剣攻撃 水龍神馬 20 甲殻兵士 22 剣攻撃 龍宮扇姫 24 弓攻撃 カタツムリ 26 剣攻撃、毒 悪魔修道僧 28 DOTダメージ 空中浮遊のため弓・銃・魔法攻撃 百夜叉 30 剣攻撃 物理耐性(魔法攻撃有効) 青い狼 32 剣攻撃 ナーガの呪術師 34 復活呪文使用 氷の斧、沈黙の呪いで呪文封じ 飢えたサソリ 36 剣攻撃 兵隊アリ 38 槍攻撃 物理耐性(魔法攻撃有効) スズメバチ 40 空中浮遊のため弓・銃・魔法攻撃 地獄蜘蛛 42 砲攻撃、前列に十字範囲の魔法攻撃 ヒョウ 44 剣攻撃、全体攻撃魔法(弱) 白狐 46 剣攻撃 ヒグマ 48 剣攻撃 白虎 50 剣攻撃 悪魔犬 51 地獄犬 52 執事 53 侍従長 54 主席侍従長 55 羊 56 ホワイトグリフォン 57 ウルフキッド 58 ウルフウィザード 59 ウルフチャンプ 60 ミノタウロスキッド 61 ミノタウロスウィザード 62 食肉草 63 岩石剣兵 64 奴隷剣兵 65 奴隷槍兵 66 奴隷弓兵 67 エンキーの時空術師 68 イシュタルの司祭 69 名称 名称 名前 コメント
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出会いの章 トップ > SS置き場 ご注意 この物語は 作中第87話 で登場した月光洞内で発行されている雑誌に掲載されている作品であり、ゲーム世界内におけるフィクションです。 登場する人物・団体・国名などは架空のものであり、キャンペーン内に存在するものとは関係ありません。 主な登場人物 ■遥:大南帝国の皇子。皇子らしく世間を知らない。 ■空:皇宮の近くに住む少年。詳細はまだわからない。 それが花だと、彼には信じられなかった。 彼にとって花とは切り揃えられ、花瓶に生けられているものだった。 このように地面から生えて、まちまちな方向・まちまちな長さに伸びている花など、彼は見たことがなかった。 「これが、ほんとの花‥‥」 顔を近づけると、強い香りがする。切り花からは決して感じられない、生きた香り。 「殿下!皇子殿下!どこにおられるのです!」 「まずい!」 彼は生垣の下に潜り込んだ。服が泥だらけになり、顔や手にひっかき傷ができるが、彼は気にしなかった。 「殿下!」 侍従の声が遠ざかっていく。どうやら気づかれなかったようだ。 彼はそっと生垣から這い出した。 そのとき。 ぐいっと腕を引っ張られ、彼はよろめいた。 見つかったか! 一瞬体が冷えたが、侍従ならばこんなに乱暴に彼の腕を引っ張るはずがない。 振り返ると、そこには黒ずくめの服を着た7~8歳ぐらい‥‥彼と同じくらいの年頃の少年が立っていた。 「なんだお前は!?」 「お前こそなんだ!」 黒ずくめの少年は彼を睨みつける。負けじと彼も睨み返した。 「ここは私の庭だ。お前などが勝手に立ち入っていい場所ではない!」 「お前の庭だと?ここはずっと前から俺が目をつけていた場所だ!」 2人の少年の間で、視線が火花を散らす。 彼は負けてはならじと眉間にぐっと力を入れた。 「この庭は私が産まれたときから私のものだ。父上がそう決めたのだ」 「はぁ?お前、何者なんだ?」 初めて黒ずくめの少年の視線が揺れた。彼の頭から足まで、じろじろと眺め回す。 「名乗るならお前が先に名乗るがいい」 「まあ、道理だな」 黒ずくめの少年はうなずいた。 「俺は空だ。この近くに住んでいる。お前は?」 「私は大南帝国正統皇位継承者、遥だ」 「けっ、皇子サマかよ」 黒ずくめの少年、空は吐き捨てるように言った。 「男のくせに私は!だとさ」 「それの何が悪い。私には立場と責任があるのだ。それに伴った話し方をするのは当然だろう」 遥は思い出したようにつかまれたままの腕を振り払った。 と、ぴしゃりと顔に跳ねかかるものがあった。 「何だ?」 懐から白い手巾を取り出し、顔を拭う。と、その手巾が赤く染まった。 「血!?」 改めて空という少年を見つめなおす。よく見ると空の黒い服はあちこち破れ、肩から流れた血を吸って重く湿っていた。 「空といったな。こちらへ来い!」 遥は空の負傷していないほうの腕をつかむと、庭の中を走り出した。 「声を出すな。いいな」 空を自分の部屋に連れ込むと、遥は侍従の部屋へと向かった。 「殿下!その傷はいったいどうなさったのです!」 ひっかき傷だらけの遥を見て、侍従は驚いた声を出す。遥は面倒そうに手を振って黙らせた。 「生垣でひっかいただけだ。大したことではない。それよりも傷薬と包帯を出せ」 「包帯を使うほどのお怪我をなさったのですか?では私がお手当てを」 「いらぬ。私が自分でやる」 「ですが、殿下」 言い募ろうとする侍従に、遥は少しむっとして見せた。侍従がついてきては、空のことが知られてしまう。 「私の命令が聞けぬのか?」 「‥‥かしこまりました。傷薬と包帯にございます」 侍従が差し出す薬箱を手に、遥は部屋に戻った。 「薬と包帯を持ってきた。その破れた服を脱げ」 「あ、ああ」 肩の傷を洗って薬を塗り、包帯を巻く。たったそれだけのことだが、遥は非常に手間取った。 「下手だな、お前」 「仕方がないだろう。私はこのようなことをしたことがないのだ」 「貸せよ」 空は遥の手から包帯を取り上げた。しかし自分の肩に包帯を巻くのは難しい。 「お前も下手ではないか」 「仕方ないだろ。片手しか使えないんだから」 「では私が手伝ってやる。どこをどうすればよいのだ?」 2人で協力してやっと巻いた包帯は不格好ではあったが、空の傷を保護するには十分だった。 「傷の手当てとは意外に難しいものだな」 「まったくだ。俺も初めてやった」 ふと顔を見合わせると、2人はどちらからともなく笑い合った。 「そこまで破れては、その服はもう着られないだろう。私の服を出してやるから、着替えて行け」 「いや、この程度なら繕えばまだ着られる。気にするな」 「繕う?それはどういうことだ?」 「お前、繕い物も知らないのか‥‥って、皇子さまが繕い物なんか知るわけがないか。つまり破れたところを縫い合わせてまた着られるようにするってことだ」 「そうなのか、初めて知った」 遥がうなずいたとき、空の腹がぐーっと鳴った。 「何だ、今の音は?」 「うるさいな、腹が減ってるだけだ」 「空腹だとあのような音が鳴るのだな。知らなかった」 「そりゃ皇子さまは腹減らしたことなんかないんだろうからな」 「ふむ」 遥は少し考えると、戸棚を開いた。空が脱ぎ捨てた服を拾って押しつける。 「少しそこに隠れているがいい」 「何をする気だ?」 「いいから隠れておれ」 空を戸棚に押し込み扉を閉めると、遥は机の上に置かれた大ぶりの鈴を鳴らした。 「御用でございますか、殿下」 「菓子と茶を」 「かしこまりました」 「本当にいいのか?これを全部?」 「構わぬ。私はいつでも食べられるからな」 「ありがとよ」 運ばれてきた菓子と茶は当然のことながら1人分だったが、遥はそれをすべて空に譲った。 「皇子さまなんてお高くとまってるだけだと思ってたが、お前意外といい奴みたいだな」 「そうか?そのようなことを言われたのは初めてだが」 「いや、お前はいい奴だ。俺がそう決めた」 そう言うと空は一つ手を叩いた。 「あそこ、お前の庭だって言ったな。俺がときどき遊びに来てやるよ」 「遊びに?」 「ああ。友達になろうぜ」 「友達‥‥か」 それは皇子である遥にとって初めての響きだった。 親の決めた「ご学友」は存在する。しかしそれは常に権力のついて回る、打算を前提とした関係だった。純粋な「友達」など、皇子である遥には望むべくもないものだったのである。 「いいだろう。では私のことは遥と呼ぶがよい」 「え、皇子さまを呼び捨てにしていいのか?」 「友達なのだろう?ならば名を呼ぶのは当然ではないか。私もお前を空と呼ぶ」 「わかった。じゃ、これからよろしくな、遥」 こうして2人の少年は出会った。この先彼らを何が待ち受けているのか、彼らはまだ知らない。