約 34,439 件
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1008.html
「そう言えば、いつだったかキョンに僕の恋愛に対する認識について話したことがあったね。もう一年以上も前だと言うのに、まるで昨日の事のようだよ。人の時間経過に対する感覚ほど当てにならない物はない。 卒業してからの一年間がそれだけ空隙に満ちたものであったのか、それとも君と過ごしたほんの僅かな時間が僕にとって何物にも代え難い有意義かつ満ち足りたものだったのか・・・どちらだろうね?」 胡乱な言い回しも、訥々と語る穏やかな口調も、俺がよく知る佐々木のものだ。一年前と何ら変わらない。 「自分で言ったことだというのに、僕は本当の意味でその事を理解していなかったらしい。いや、甘く見ていた、と言ったほうが良いのかな?これはまさしく精神病だよ。 あらゆる価値観が崩壊し、理性も論理も狂ってしまう。一度煩ってしまえば最後、もう治らない。ううん、治そうという気にすらなれない」 だというのに、凄まじいまでの違和感を感じる。佐々木の何かが違う。決定的に違ってしまっている。ずっと佐々木が自らを押し込んでいた枠が取り払われたかのような、そんな錯覚を覚える。 「これは君のせいでもあるんだよ、キョン?君にとっては心外なことかも知れないけどね。君に必要以上に近づけば、こうなってしまう事は解っていた。 自分を見失って恋する乙女になってしまうくらいなら、僕は自分を偽っても理性の化け物でいたかった、本当だよ?」 言いながら佐々木は本当に言葉とは裏腹に、本当に嬉しそうに微笑んだ。まるで全てから解き放たれたような佐々木の笑顔は本当に魅力的で―――こんな状況でなければ、俺はアホのように見惚れてしまっただろう。 俺はここに至って、ようやく佐々木がどれほどの自制と自戒、虚勢と欺瞞を重ねていたのかを知るに至った。 「ただ、本当に―――本当に残念なんだけどね、キョン?もう、止まれないんだ。こうなってしまった以上ね。無理だとは思うけど、出来れば君に止めて欲しかったな。 人の身で世界を望むがままに作り替えようだなんて、傲慢にも程があると思わないかい?僕は神になんてなりたくはなかった、平々凡々な一般人でいたかった―――ううん、これは少し嘘かな。この力で君が手にはいるのなら―――どうしても、そう思ってしまうんだよ」 佐々木は少しだけ自嘲するような笑みを浮かべ――――刹那、世界が灰色に『塗りつぶされた』。 「だから・・・だから、“私”は世界を作り替える。こんな世界、要らない―――」 ・・・閉鎖空間。そして、灰褐色の世界の中、なお黒々とした巨大な影が俺たちに影を落とした。それが歩を進める度に地面が揺れ、風が舞い上がる。佐々木の肩口まで伸びた髪が揺れた。 「―――愛してるよ、キョン」
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1155.html
古泉属する機関とやらがどれだけのコネと力を持っているかは 知らないし知りたくも無いが、それでも信じていいことが一つだけある訳で、 それはSOS団創設後に行われたであろう俺の身辺調査の結果である。 これ以上ないというほどに平凡な中流家庭で、 これ以上ないというほどに平凡な人生を(あくまで高校生になるまではだが) 送ってきた俺は間違いなく普通の人間だということだ。 普通。 今となってはどれだけ懐かしく、 郷愁を覚えずにはいられない響きだろう。 灰色空間やらタイムトラベルやら様々な経験を積んだ俺には 最早遠いところにある言葉であり、 しかしこうして見ると自分の経験値もどうってことなかったのだと 自責の念に駆られることも無いわけではない。 いやいや、よく考えてみろ俺。 俺の経験値において大半を占めているのはあくまで 非日常的冒険活劇チープ版であり、 鶴屋さんの別荘にしても夏の孤島にしても豪華ではあっても それが威圧感となることはなかった。 だからこれは初体験となる。 山奥に佇み、奥ゆかしさと風流さすら威圧感へと変えるほどに一般人とは縁の 無い高級旅館に泊まるというのは。 「という割にはいつもの君と変わりが無いように思えるよ、キョン」 どうやら俺のような一般人には近づくことさえ憚られるようなこの 高級旅館も、佐々木と俺の顔には何ら影響を及ぼさないらしい。 ちなみにこの旅館、本館に部屋がない。 風呂もない。 どうしてかと言えば、本館を囲むように存在する部屋という名の 簡素ながらもしっかりとした家屋に必要なものが全て揃っているからだ。 いや、どう考えても金と土地の無駄遣いである。 俺には到底理解できないというかしたくない。 分不相応もいいところだぜこれは。 「妙な経験だけなら随分と積んだんでな。その賜物だろう。」 「君がそういうのならそうなのだろう。 とはいえ、君の気持ちも理解できなくはない。 実際ここは著名人や政治家もお忍びで利用するほどの隠れ宿というやつで、 言い換えれば変なところで我侭だったり意地を張ったりする人間が 来るのであれば必然、無駄なところに贅を尽くすようになるというものだよ。 それでもキョン、この渡り廊下からの景色は中々のものだと思うけれどね。 来訪者の傾向故に案内人である女中さんがいなくてよかったと思わないか? 深緑を味わいながらゆっくりと部屋に向かおうじゃないか。」 たしかに、しっかりと手入れされた日本庭園が視界に広がっている。 審美眼じみたものがないことは重々承知だが、それでもこれがどれだけすごいか多少は 解るというものだ。 「不均一的、あるいは非左右対称的な美というのかな。 そもそも花道や枯山水、陶芸にも見られるように日本の伝統では微妙な歪みと それに伴う不完全性をこそ愛でる訳だが、 人間の顔だって左右対称とはいかないことを考えればそれこそ自然なのだろうね。 西洋的な左右対称は人為的で僕は好かない。 ありのままを受け入れるというのは日本の美徳の中でも最上のものに違いない。」 「枯山水ってのはアレか。京都の寺やらにあるようなのだろう。」 「そうだね。 まぁ、これは学者、あるいは識者閣員によって意見が分かれるものだと思うけれど、 基本日常に関連するカタチで美を表す傾向にある日本においてあれだけ緊張感のある 芸術というのも珍しいだろう。 ………うーん、やっぱり芸術に関しては僕は口を閉じている方がいいのかもしれないな。 いつもの調子で口が回らない。」 「そんなに気にする必要はないだろう。 こういうのはきっと、評したりするもんじゃなくて体で感じ取るもんなんだろうさ。」 口にしてからちょっとしまったと思った。 語りモードに入った佐々木に対する言葉としてはあまりに直情的で観念的だ。 きっと手痛いしっぺ返しが帰ってくるんだろうと身構えていたが、 どうしたことだろうね。 佐々木はぽかんとした無防備な顔で俺を見ていた。 あ、笑い出した。 「くっくっくっくっく……いや、その通りだよ。 確かに、言葉が不粋となる時もある。 言語だけで全ての情報が遣り取りできるとか限らないのだからね…… だめだ、お腹いたい…くっくっく……やはり君は最高だよ、キョン」 そうかい。お褒めいただい光栄さ。 「いや、すまない。嘲っているつもりなどまったくないよ。 むしろ今までで一番高い評価を下している最中だよ。」 「ま、何だって構わんさ。さて、お部屋についたぜお姫様。」 扉を開け、去年の夏の出来事から反省を学んだ俺は佐々木をしっかりエスコートする。 畳の香りがほどよく嗅覚を刺激し、俺と佐々木は部屋の趣味の良さと 窓からの景色に圧巻されているうちにちょっと回想モードに入ろうじゃないか。 「キョン、折角の休みだ。ここは一つ、長旅と洒落込むのはいかがかな?」 事の発端は佐々木のその一言に由来する。 まぁ、俺たちも高校二年になる訳で、 前には絶海の無人島に行ったりもしたから 今更長旅に怖気づくなんてこともなく俺は佐々木の誘いにあっさりと乗った。 「そうかい、それはありがたい。ところで、君は行きたいところがあるのかな? もし構わないなら、僕に決めさせてもらいたい。」 全然構わない。 佐々木なら絶海の孤島やら吹雪の雪山に行ったりはしないだろうという確信があるからな。 あんな心身共に疲れる旅行は年に一回か二回で十分であり、 それも古泉プロデュースの茶番劇があること前提の時だけだ。 「ちなみにキョン、君は行き先不明のサプライズ旅行と予定が100%判明している 観光旅行のどちらがお好みかな。」 言うまでも無いことだろうに。 旅行ってのはゆっくり楽しむためにあるというのが凡人たる俺の信念である。 「くっくっくっ、確かにその通りだ。ではキョン、楽しみにしているよ。」 さて、皆さんなら気付いていただけるものと思うが一応言っておこう。 俺はこのとき、旅行に参加する人数を聞いていなかった。どうせ佐々木団の面子 の、そうだな、橘あたりも参加するだろうと思っていたのだ。 これもSOS団雑用係にして連絡が来るのは一番最後という俺の立場に由来する に違いない。本当、習慣というのは恐ろしいものだね。 メールで送られてきた旅行の予定は佐々木らしく綿密なのに無理がないものとなっており、 こいつ将来旅行代理店にでも就職すれば高給取りになれるだろうという幻想が浮かばない こともないほどのものであった。 何ていっても、こちらの起床時間まで指定してきてるんだからな。 どうやら中学三年における一年の付き合いは俺の生活リズムが把握できるほど のものだったらしく、しかし俺が佐々木の生活リズムを把握できていないのは さて、何でだろうね。 「キョン、それは僕の生活リズムを知りたいということかい? 無論、君になら教えるのもやぶさかではないが、他人に伝えることは社会的タブーに相当する 旨は言っておこうじゃないか。 それとも、君は知り合いの行動は悉く把握していないと心配になるのかな。 僕の記憶が正しいと仮定した上ではそのような奇矯な趣味を君が持ち合わせていた 覚えはないのだがね」 「どんな趣味だそれは。というか、他の連中は来てないのか?」 「ああ、言い忘れていたよ。僕と君以外に参加者は無し。所謂二人旅というやつだ。」 そうかい、そりゃびっくりだ。どれくらいびっくりかというと、 コペルニクス的なんたらってぐらいびっくりだぜ。 表情が変わらないのは高校になってから積んだ非常識経験値の賜物だ、というか 「集合地点をここにした時点でそれに気付くべきだった…とでも考えているのだろう。」 俺の脳内をスキミングのごとく読み取らないでいただきたい。 そりゃあ、集合地点が俺達が通っていた塾に近い懐かしい公園であったのに そこまで考えが及ばなかった俺の脳なら、簡単な機器で内容を読み取れそうだが。 「まぁ、いいか…というか、さっさと行こうぜ。 時間ギリギリになって走るなんて御免だからな。」 お互い荷物は小さめのトランクと肩掛けバック。 三泊四日の旅行な訳で、さて、せいぜい楽しもうじゃないか。 はい、回想終了。 ってうお、佐々木と二人旅って気付いた時点で色々ピンチなことに 考えが及ばない俺をどうしたらいいのだろうか。 いやいや待て待て。 佐々木の指定してきた起床時間は俺にしてみればあり得ない早起きは三文の得 的日の出タイムであり、新幹線と電車を乗り継いでこの隠れ宿に一番近い 駅に着くまで頭の中に眠気が沈殿していたのだから早朝の俺に冷静 かつ正常な判断を下す力などあろうはずもなく、つまりこれは不可抗力で あって誰に文句を言われる筋合いもないのだ。 あとは、健全なままこの旅行を終えれば万々歳である。 うん、すばらしいじゃないか俺。自分に対する言い訳は完璧だ。 「絶景と評していいのではないかな、これは。キョン、どう思う?」 「いいんじゃないか。 俺はこんな景色を見るの初めてみたいなもんだからどう言ったらいいか考えてたところだ。」 部屋の中がどうなっているのかちと調べ、荷物もおいて一休みする午後五時。 簡単な台所もついていることに驚愕したり座布団を出したりと色々したが、 今は佐々木が淹れてくれたお茶で二人揃ってのんびりしている。 …本当に今更だが、こんなとこに一介の高校生が来て、しかも自分は宿泊費を一銭も 払っていないことに我ながらどっきりだ。 佐々木曰く、母親の親戚に作家筋で著名な方がいるらしく、 ここに二人分予約を入れたはいいが締め切りの関係でいきなり来られなくなったらしい。 キャンセルするのも面倒なので、誰か行かないかと話を回したところ、 新幹線でもかなり時間のかかるここまで来たがる人間はいなかったらしく、佐々木にまで お鉢が回ってきたらしい。 加えて佐々木の両親は仕事で忙しいらしく、お友達と行って来なさいの一言だったとのこと。 いいんだろうか、そんなことで。 俺がそんな招待される側としてはいささか不謹慎な思考に埋没していたので、 佐々木がいつ動き始めたのに気付かなかった。 荷物をごそごそとしては、押入れから何か取り出している。 ためつがめつして俺をチラッと見ては、また荷物をごそごそ。 「………どうしたんだ、佐々木。というか、何をしている?」 ギクっというような擬音を伴うような動作で佐々木が止まった。 こいつに限ってないと思うが、何かやましいことでもあるのだろうか。 「いやいやいやいや、気にしないでくれ。というか、電車での長旅で 疲れも溜まっているだろう? 六時には夕食が運ばれてくるはずだから、君から先にお風呂に入ってはいかがかな。」 招待された側としてそれはちょっといただけないな。 一番風呂は佐々木に譲るぜ。 「な、何を言っているんだ君は。誘ったのは僕で、むしろ君が僕の我侭に付き合って くれているのだから君から入ってくれ。」 風呂が二つあればよかったのだが、どうやらそこまで無意味に豪華という訳ではなく、 それでも露天風呂つきなのだが、残念ながら体を洗うスペースが一つしかない以上 どちらかが先に入るしかない。 まぁ、よくよく考えてみれば佐々木も女だし、自分が入ったあとの風呂に 男が入るのは嫌なのかもしれない。 では男が入った後の風呂はいいのかという疑問もあるが、 それはきっと優先順位の問題なのだろう。 じゃ、すまんが先に風呂いただくぜ。 「ああ、ゆっくりと寛いできてくれたまえ、キョン」 色々あったが、計画通り。 今キョンはお風呂で体を洗っているところだろうから、今のうちに必要な準備を 全て済ます必要がある。 まずはお布団。 これも自分で引かねばならないというのはつらいが、この宿の特性を鑑みれば 仕方の無いことだろう。 食事を持ってくることと、午前中の掃除の時間以外はほとんどノータッチであり、 だからこそここを選んだのだから。 …話が逸れた。とにかく、先ずはお布団だ。 一組では、彼のことだ、俺は居間で寝るからなどと言いかねないので、二組敷く。 ぴったりとくっつけた状態にして。 次、財布や携帯電話を入れているハンドバックを枕の近くにおいておく。 一応中を見て、禁則事項がしっかり入っているか確認する。 うん、完璧。 あと最後に一つ。備え付けの今時貴重な黒電話で本館に連絡。 ……彼には内緒だが、宿泊者名簿の私と彼の年齢は実年齢+三となっている。 頼みごとは二つ。どちらも言うまでも無いことだが、用心に越したことはない。 くっくっく、これで外堀は埋めたも同然。 あとは……最終段階。 高鳴る心臓に落ち着くよう指令を下し、私は必要なものを持って立ち上がった。 「キョン、失礼するよ」 いたって呑気に人生初の檜風呂を楽しもうと体の汚れを洗い落としていた俺を 停止させるに十分なことをしてくれました、佐々木さんは。 カラカラと扉が動き、温まった体には寒く感じる空気と一緒に佐々木が入ってきたのだ。 丁度背中を洗おうとしていた手はもちろん停止し、 強靭だと思われた我が理性はあっけなく混戦状態に陥った。 「さ、佐々木!ちょっと待ておま」 「背中はまだ洗ってないようだね、キョン。それでは僕が洗ってあげよう。」 いや、一応バスタオルを身に着けてはいるんだけどね。 むしろなんか色々とそのお姿は危険過ぎですよ佐々木サン。 「そうかな?隠すべきところを隠しているのだから構わないと思うが。」 そんな問題ではなくてだな、何というか、その、 嫁入り前の娘さんが男が入ってる風呂にくるなんてそりゃよろしくない訳で ええい、これ以上は禁則事項だ。何があったかは各自の妄想力にお任せしようじゃないか。 という訳で、テレビの不味いシーンが生放送中にあった時のように 「しばらくお待ちください」をテロップとして流しながらお花畑で夕食まで時間を飛ばさせていただく。6-860「湯煙@佐々木」7-883「湯煙@佐々木vol.2」8-621「湯煙@佐々木(翌日)」
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/103.html
佐々木「僕は考えたのだがね、キョンが佐々木団に振り向かないのはキャラが弱いからだと思うんだ。」 まぁ、僕は『僕っ娘』だとしてもいかんせん他のキャラが弱い。橘さんは没個性だし、九曜さんは 怖いだけ。藤原にいたっては名前ですでに負けている。だから改革を敢行した。見たまえ、これが 新・佐々木団だ!」 橘「なによ、なんかおかしい?べ、別にあんたの為にやってるわけじゃないんだからね!佐々木さんがやれって 言うからやってるだけなんだから、か、勘違いしないでよね!!」 九曜「―――お兄ちゃん―――」 藤原「俺はもう藤原ではない。これからの俺の名前は・・・」 トゥルルルル・・・ キョン「もしもし、すいません救急車、えーと・・・ひぃふぅ・・・4台。はい、至急お願いします。」
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/729.html
キョン「もしもし佐々木か?」 佐々木「キョンかい?君の方から電話してくるなんて珍しいじゃないか」 キョン「実はな、頼みたいことがあってな」 佐々木「頼みって?」 キョン「実はまた勉強を見てほしいんだ。今度の試験がやばくてな」 佐々木「またなのかい?まぁほかでもない君の頼みならやってあげるよ。教科はなんだい?君はたしか理系がにがてだったよね?」 キョン「いや、今回は国語の漢文のほうが「キョンくーん!勉強おしえてー」こら!今電話中だから後にしなさい!「今すぐじゃないとだめなのー」 佐々木「妹さんかい?」 キョン「ああ、スマンがちょっと待っててくれ―――― 「まったく。で、どこが分からないんだ?」 「ここー!」 「どれどれ?なんだまた積分かよ。前におしえただろ?ここはこうしてだな」 「あーわかった!」 「な?あとは一人でできるだろ」 「うん!ありがとキョンくん!」 「兄と呼べ!」 やれやれ。あスマン、何の話だっけ?」 佐々木「……教科の話だよキョン」 キョン「ああ、そうだった。今回は漢文が出そうなんだ。そこらへんよろしく頼む」 佐々木「わかったよ。ついでだからほかの教科も見てあげるよ」 キョン「本当か?それは助かる。持つべきものは友だな」 佐々木「ふふ、そう言ってくれるとうれしいよ、キョン。なんだったらいつでも勉強を見てあげてもいい」 キョン「そうか、まぁ週末は不思議探索もあるから暇があまりないかもしれないけど、機会があったら頼むとするよ」 佐々木「わかったよ、それじゃ」 キョン「ああ、じゃあな」 佐々木「いい感じに育ってるね。この調子ならキョンと一緒に楽しいキョンパスライフも…」 佐々木さんはおやじギャグが趣味のようです
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/96.html
「暑い・・・」 そうまるで地獄の業火に焼かれる罪人のようにつぶやくと、ちっさなタオルで首筋の汗をぬぐった。 まだ6月の半ばだというのに、なんだっていうんだこの暑さは。 これからますます暑くなっていくかと思うと、余計鬱になる。 地球温暖化反対―。 「自分勝手なエコロジーだね。」 俺のボヤキを聞いた一歩後ろを歩くクラスメイトがそう言って、笑った。 「必要は発明の母っていうだろ?この苦しみが俺をエコロジストへと駆り立てるのさ。」 「君の場合、喉もと過ぎれば熱さ忘れるとも言えるね、キョン。」 こいつは大げさに、まるでアメリカの通販番組のように両手を挙げてみせる。 その喉もとでは熱さではなく、くっくっという独特の笑い声が鳴っていた。 「暑さが忘れられるようなら地球温暖化問題は解決だ。」 「その地球温暖化問題だが、知られてはいないが、実は多くの科学者は二酸化炭素が原因であるという現在の常識に対しては、懐疑的な意見を出しているんだよ。」 こいつの知識量にはいつも驚かされる。 いったいどこでそんなことを調べているんだか。 「ではなぜ、そんな説が堂々とまかり通っているかというとだね―」 と、一瞬うしろを歩くあいつの影が不自然に揺らいだ。 思わず後ろを振り返る。 「おいっ―」 「いや、大丈夫。少し立ちくらみがしただけ―」 と言いながら、額を押さえてあいつは崩れるように、その場に座り込んだ。 「おい、大丈夫か、佐々木!?」 倒れそうな佐々木の肩を支えてやる。 額に汗を浮かべながら、目を閉じてつらそうな表情をしている。 呼びかけには反応しない。 気を失っているようだ。 暑さにやられたか― とりあえず、ここではまずい。 日陰を探して休ませないと。 あとは水分か。 近くにあった自動販売機でスポーツドリンクのペットボトルを買って、佐々木を抱きかかえた。 早く日陰の涼しいところへ連れて行ってやらないと。 苦しそうな額につめたいペットボトルを当ててやる。 ペットボトルで冷やしてやったのが効いたのか、佐々木はゆっくりと目を開けた。 そして― 「きゃっ」 え、なっ? 佐々木も驚いただろうが、俺も驚いた。 なにせ目の前の佐々木はただでさえ大きな瞳を大きく開けて、今まで聞いたことの無いような声を出したからだ。 「お、おい?大丈夫か、佐々木?」 え、あ、うん、と声にならない返事をしながら、佐々木の顔が見る見る赤くなって行く。 こりゃ結構重症じゃねえのか。 「いや、あの、キョン。大丈夫、大丈夫だよ。だからその―」 真っ赤な顔で支離滅裂。 こりゃ結構高熱とか出てるんじゃないか。 「お前、顔真っ赤だぞ。熱が出てるんじゃないか?」 そして、額に手を当てようとすると 「だ、大丈夫。少し恥ず、じゃなくて直射日光にやられただけだから!」 そうなのか? 耳まで真っ赤だぞ。 「そ、それよりも早く降ろしてくれないかな。一人で歩けるから―」 と、言うが早いか、俺の手を強引に振りほどこうともがいて、佐々木は地面に派手にしりもちをついた。 「おい、お前本当に大丈夫か?」 声をかけると、いたた、と尻をさすっていた佐々木はさっと立ち上がり、あさっての方向を向いて上気した頬を両手で押さえている。 「どうした?風邪か!?」 「え、えーと、うん、そうかな。ちょっと今日は朝から熱っぽい感じはしていたから―」 「そうか、やっぱり風邪か。」 そう俺が納得すると佐々木は小さな声で、たぶん、とつぶやいた。 「じゃあ、今日は予備校は休んだほうがいいな。」 「あぁ、そうさせていただくよ。」 言葉遣いはいつもどおりだが、口調は少し挙動不審だ。 「じゃあ、佐々木、俺んちで少し気分がよくなるまで休んでいけよ。」 ふぇ?、と声にならない声を佐々木はあげた。 「いや、お前まだ体調悪いみたいだし、気分がよくなるまで涼しいとこで少し寝ていくといい。」 ますます顔が赤くなっていく。 こりゃ結構重症かな。 「あー、大丈夫。少し寝て気分がよくなったら、俺がお前の家か、病院へ自転車で送ってやるよ。」 「ち、ちょっと待ってくれたまえ。それって、キミも予備校を休むということかい?」 目の前の佐々木は頬を押さえながら挙動不審な動きをしている。 「仕方ないだろ。お前を放っておくわけにはいかないし。」 な、いや、でも、とぶつぶつ呟いている。 「やっぱりお前今日は変だ。自分では気づいていないかもしれないが。」 「いや、確かにそうかもしれないけど・・・」 「今日は妹は友達のところへ遊びに行っているはずだし、親もデパートへ買い物に出かけて夕方まで帰ってこないから、誰に気兼ねする必要も無い。」 余計問題だー、と佐々木が言ったような言わないような。 「安心しろ。一応日本の中産階級らしくちゃんとエアコンはあるから。」 そういう問題じゃない、と佐々木が言ったような言わないような。 「お前、顔が本当に真っ赤だぞ。かなり重症じゃないか?」 そして、重症なのはキミのほうだよ、と佐々木がぼそっと呟いたのがはっきりと聞こえた。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1290.html
佐々木とキョンの驚愕プロローグ 佐々木とキョンの驚愕第1章-1 佐々木とキョンの驚愕第1章-2 佐々木とキョンの驚愕第1章-3 佐々木とキョンの驚愕第2章-1
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1444.html
「あぁ…すまない、キョン。今週は駄目なんだ」 佐々木は思いの外、意外と低い、しかしどこか凛とした輝きのある声で 断りの言葉を俺の耳に届けてきた。 申し訳なさげな表情の中に嬉しさと残念がる気持ちが見え隠れしている、 というのは俺と佐々木のやり取りを電柱の陰からそっと覗いていた妹の言葉だ。 俺が佐々木と話をしている時は毛ほどもそんな事に気付くことはなかった。 しかし、誰だ?うちの妹に探偵か忍者のようなスパイ活動のスキルを教え込んだのは? 末恐ろしい我が妹も小学生ながら女特有の勘とでも言うべきか、 女同士だけにしか分からない、感じ取れない共通した何かがあるのだろうか? ふと俺は佐々木が以前、俺に言った台詞を思い出していた。 「これでも僕も生物学的にはメスだからね。女として振る舞う事もあるのさ」 正直、俺は佐々木と会話を交わしている時にあまりそう感じる事はない。 佐々木自身がそう女を意識して接して欲しくないという態度で男と相対するという理由もあるが、 佐々木はあまり他人に気を遣われたくないのであろう。 だから男にも過度の緊張や遠慮を抱かせないよう振舞っている。 しかも「恋愛はただの精神病の一種」なんて冷めた台詞を 年頃の女にも関わらずサラッと吐けるようなドライな精神の持ち主だ。 「それは違うよ、キョン君。佐々木さんはね、人一倍臆病なだけなの」 我が妹ながら小学生の意見ってのは視点が違うからまるで意味が分からない。 しかし、今のままでは困る、非常に困る。 俺の今週末の予定がまるで地面にブラックホールが出来てしまったかのように すっぽりと空いてしまった。 そう、佐々木に2週間後に控えた定期テストの要点だけでも 図書館あたりでみっちり叩き込まれ、教えてもらわないと 俺はそれこそ人生そのものがブラックホールへと落ち込んでいってしまいかねない。 「そうか…今週は佐々木にずっと一緒にいて欲しかったんだが…」 「えっ!?」 「ん?どうした?」 「いや、何でもない。こちらの勘違いだ。気にしないでくれたまえ」 佐々木はそう言うと俺から目を逸らし、顔を背け、黙り込んでしまった。 何故か佐々木の背中を見つめていると声を掛けづらい、なんとなく 掛けてはいけないような気になって珍しくお互い沈黙の静かな帰路になった。 「キョン君。佐々木のお姉ちゃん、お顔が赤くなってたね」 家に帰った後、妹にそう聞かされるまで俺はまるで気が付かなかった。 なるほど、今なら分かる。 よく周りから愚痴っぽい小言のように聞かされる言葉の意味がよく分かる。 俺はなんて鈍い、鈍感な男なんだろうかと。 こういうのを男として失格というのか?いや、人として失格なのかもしれない。 こんな簡単な、単純な事にさえ妹に言われるまで気が付かなかったのだから。 それまで全くとして自覚はなかったがふとした瞬間に目が覚めたような気持ちになる。 これが人間の成長、思春期の芽生え、青春の煌きというものなのだろうか? こうやって人は一歩ずつ確実に大人になっていくのだろう。 そう、佐々木はきっと風邪を引いていて体調が悪かったんだ。 だから珍しく口数も少なく、顔も真っ赤になっていたのだろう。 佐々木もきっと今週末は家でゆっくり身体を休めたいのだろう。 やれやれ…俺って奴は全く…気の利かない鈍感な男だね。 家に帰ってベッドの上で寝転がっている俺のもとへ天使の顔をした悪魔の使い、 我が妹がデリカシーの欠片もなく飛び込んできた。 お兄様の部屋にノックも無しに飛び込んでくるとは いつか兄妹二人に大きな禍根とトラウマを残す事になっちまうかもしれんぞ。 気を付けなさい! 「キョン君も罪な男だね」 したり顔の小学生とはこんなにも生意気に見えるものなのだろうか? 何が罪な男だ、からかうんじゃありません! お兄様はこれからお勉強タイムなんだ! 「どうせすぐ寝ちゃうくせに…」 妹もとうとう反抗期か…生意気な…しかし、お陰で大切な事を思い出した。 今週末、佐々木に会えないのなら佐々木特製のテスト対策ノートを コピーさせてもらえば良いじゃないか。 「はい、もしもし、佐々木です」 「おぅ、佐々木か?」 電話越しに聞く佐々木の女らしい、よそいきの声に 不覚ながらもドキッとしてしまった。 聞き慣れていないからだろう。 「やぁ、キョン。どうしたんだい? こんな夜遅くに女の子の家に電話を掛けてくるなんて 君もなかなかに度胸があるね、くっくっくっ」 「あぁ、夜分遅くにすまんな、寝てたか?」 「いや、起きていたよ」 「明日なんだが今度の定期テストの為のノートを借りに行っても良いか? コピーして対策だけでもしようかと思ってな」 「おや?キョンの割には随分と殊勝な心掛けではないかい?」 「大きなお世話だ」 「だが、すまない。明日は朝早くから出掛ける予定なんだ」 出掛ける?あぁ、そうか。 風邪を引いてるから病院に行くんだな。 さて、どうしようか…? 「今から取りに来るというのはどうだろう? いや、もしキョンさえ良ければの提案なのだが…」 「別にそれは構わんが」 「あと、わざわざコピーを取らなくても僕のノートを貸してあげよう」 「良いのか?」 「僕はもう予習も復習も終わらせてしまっている。今更ノートは必要ないのさ」 自転車をこぐスピードが上がる。 今日の夜空は澄み渡っていて星が粉々が砕け散った宝石のように煌めいている。 こんな星空を見上げながら自転車をこいでいるとふと思う。 地球にだって人間がいるんだから現実としてどっかの星の一つや二つくらいに 宇宙人でもいたっておかしくないのかもしれない、そんな他愛のない空想を。 こんな星空を見上げながら自転車をこいでいるとふと思う。 ちゃんと前を見てないから電柱にぶつかったりするのだと。 佐々木の家に着くと何故かは分からないが妙にくすぐったい、 そして落ち着かない気分が駆け巡った。 夜の空気に無機質なインターフォンの音が鳴り響く。 「おや?キョン、なんだか随分と服が汚れているようだが…」 「あぁ、ここに来るのに少し急ぎ過ぎた。しかし佐々木、その格好は…」 俺は玄関のドアから出てきた佐々木の姿に驚きと戸惑いを禁じ得なかった。 何故、着物? 「ん?僕に和装は似合っていないかな…」 「いや、悪くはないが、なんでまた着物を?」 「あぁ、寸法を合わせていたのさ。僕も育ち盛りだからね。 ところではい、これ。君が所望していた僕のノートだ。 有効的に活用してくれたまえ」 「あぁ、サンキュー。風邪が治ったらまた一回ちゃんと講座を開いてくれ」 「風邪?」 佐々木は小動物が不思議なものを見つめている時のように クリクリっと瞳を動かしていたかと思うと、急に噴き出した。 「くっくっくっ、僕は風邪なんて一切引いてはいないが 一体どこのどなたから仕入れた情報なのかな?」 「明日、病院に行くんじゃないのか?」 「くっくっくっ、訳が分からないよ、キョン。ちゃんと話を整理してくれたまえ」 「いや、だってうちの妹がな…」 佐々木は俺の話に頷きながら黙って聞いていたかと思うと 急に慌てふためきながら 『も、もうそれ以上は頼むから続けないでくれたまえ!!』と、 俺の話を遮ってきた。 「キョン、どうやら君の妹さんは油断ならない相手のようだ」 佐々木は真剣な顔で小さく呟いた。 うちの妹が?無邪気で悪戯好きのただの小学生だぞ。 「いや、その話はまぁ、どうでも良しとしようではないか? キョン、僕が明日から出掛ける場所は病院ではないよ、神社さ」 神社?何故? 「明日は家族で滋賀県に出向く事になっているんだ」 滋賀県?突然出てきた思い掛けないキーワードに俺の頭はショートを起こしたようだ。 家族旅行か?なんでわざわざ期末テストの2週間前に? 「あぁ、どうやら言葉が足りなかったようだね。僕の説明不足だ。 えぇ~っと…どこから説明すれば良いのだろうか?」 佐々木は着物の襟をそっと直しながら首を捻って考え込んでいる。 和装に合うよう髪を上げている為、佐々木の白いうなじが妙に艶っぽい。 「まず佐々木という姓の由来なのだが…」 そこから俺は佐々木に実際の時間では約30分くらいだったのだろうか、 俺にとっては永遠に続くのではないかと思える時間ほど、 佐々木という姓の由来について 源頼朝がどうこう、佐々木源氏がうんたら、鎌倉幕府であれこれ、 という話を延々聞かされた。 「と、まぁ、佐々木という姓はこのような経緯で生まれたという説が有力なんだ」 へぇ… 「そして、少彦名命を主祭神として計四座五柱の神々を祀り、 『佐佐木大明神』と総称する。佐佐木源氏の氏神であり、 佐々木姓発祥地に鎮座するのが、近江の国、 つまり今の滋賀県にある『沙沙貴神社』なんだ」 はぁ… 「沙沙貴神社には年に一回、この時期に全国から佐々木さんが集まってくるんだ。 これは毎年恒例で我が家では欠かす事の出来ない行事なのさ。 だからすまない、今週末は君のテスト勉強に付き合う事は出来ないのさ。 実に残念だけどね」 いや、頑張って佐々木さん達と盛り上がってきてくれ。 「でも、帰って来たらまた一緒に図書館へ行かないかい? ちゃんとマンツーマンでみっちり指導するよ」 「それは助かる。是非頼む。礼はする」 「くっくっくっ、礼なんて要らないさ。かくいう君の頼みだ」 「サンキュー」 帰り道、ゆっくりと自転車をこぎながら少しばかり物思いに更けていた。 佐々木にそんな妙な家族イベントがあったとは、あいつの趣味はよう分からん。 あれ?佐々木は風邪でもなければ寝込んでる訳でもない。 元気そのものだった。独特ながらも妙にハイテンションだったし。 じゃあ、なんで佐々木の顔は真っ赤になってたんだ? そんなに毎年恒例の神社参りが楽しみなのかね?
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/410.html
今日はそりゃあもうとんでもない台風が来ていて、更に質の悪いことに、 塾の行きの時には雨風は止んでいたが、帰りには凄まじいほどの雨風が俺と佐々木の二人を 非情に打ち付けていた。 「・・・こんなんじゃあ自転車使えないよな?」 「やめておいたほうが良いね」 佐々木はやや憮然とした面持ちで即答。 「僕はこのような非常事態を見越して、折りたたみ傘を持ってきたのだが」 と佐々木は紺色の折りたたみ傘を出す。用意の良い奴だ。 「キョン、君は甘いのさ。いくら一時的に雨風が止んだからといってそれは台風が過ぎたという証拠にはならないのだよ」 薄々感付いてはいたがな。 生憎折りたたみ傘は我が愚妹がミヨキチの家に行くといって持っているのだ。 ノーマル傘ならあったのだが、自転車に乗ることを考えて面倒になり、結局は手ぶらで出てきたのである。 「さてどうする?傘が一つだけあるから、自転車はひとまずここに置いといてバス停まで向かうという策が最善だと 僕は思うんだが」 幸い、自転車は塾専用の屋内駐輪場に置いてあるために撤去されたり錆びたりというような心配も無い。 帰りに本屋に寄ろうと思って千円ほど持っているしな。 「いや、君は良いのかい?」 何の話だ。 「傘が一つしかないのだが」 あぁ、バス停くらいまでの距離なら別に濡れても平気だぜ。 走ればなんとかなる。 「・・・いや、あまり雨を浴び続けるのは健康面から見て良くないだろう」 何が言いたいんだ佐々木よ。まぁよくわからないのはいつもの事なんだがな。 「・・・この場合は二人で傘に入るのが最も得策かと思うんだが・・・」 と、そこまで小声で言って佐々木はうつむいた。 「嫌なら構わない」 いや、別にいいけどよ。 幸いというべきかこの塾に来ている同学年の連中は佐々木のみだ。 お調子者の男子に見られて翌日妙な噂が立つこともないだろう。 「良いんだね?」 はやし立てるような口調の佐々木。珍しいな。 「あぁ、別に良いぜ。というか折りたたみ式に俺たち二人が入れるほどのキャパシティがあるのかどうかが心配だ」 「大丈夫だよ」 と佐々木は言い、紺の折りたたみを広げ始めた。 なんかずいぶん複雑な手順を踏んでいるな? 「さぁ、行こうか」 折りたたみとは思えないほど巨大な傘が完成した。 よく考えてあるな佐々木。さすがと言うべきか。 「失礼」 俺は佐々木の隣に立ち、傘に入る。 傘を握っているのは佐々木で、くっついた肩の体温がやけに生々しい。 「・・・」 佐々木がやや赤面している。どうした?寒さで逆に熱でも出たのか? 「いや、何でもないよ」 傘をリズミカルに叩く雨粒の音は、俺たちを包み込むかのように傘の下だけに響いていた。 しばらくそうして歩いたか。バス停が見えてきた。 「やっと着いたな」 傘を差していても横風が凄まじいので服が濡れるのなんの。 佐々木の服も、素肌にピッタリとまとわりついていて・・・なんというか。 情熱を持て余した、とだけ言っておこう。 「バスはまだ来ていないようだね」 バス停は屋根に覆われているとはいえ、横風と共に雨が入ってくる。 しつこい野郎だ。どっか行け。 「次のバスは―」 佐々木がそう行って時刻表を見に行った時だった。 「きゃっ!?」 突然の暴風に、佐々木のスカートが捲り上げられ、白い素肌と・・・ ・・・まぁ、あれだ。あっちの方も白だった、と言っておこう。 「・・・見たな」 見ませんでした、とは言ったが本心が顔ともう一箇所に出ちゃっていたようで。 佐々木は赤面しつつ俺の顔と脚の付け根に一瞥をくれると、腕を組んで目を逸らした。 「ま、まったく。只の布じゃあないか、下らない」 バスが来るまで、佐々木はずっとそんな調子で俺に説教をくれていた。 雨粒を弾きながらバスがやってきた時は、何故か俺は台風に感謝していた。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/398.html
水泳の授業中、自由時間になったので、佐々木と並んで座ってだべっていた。 「くっくっ、今年のプールの授業もこれで終わりだね」 そう言いながら佐々木は立ち上がると、名残惜しそうにプールを眺めながら、 自分の尻に食い込んだ水着の端をクイッと直した。 俺は、今目の前にある佐々木の尻が、無性に隙だらけに感じた。 「とりゃ!」 次の瞬間には、佐々木の尻に俺のワンフィンガーがキマッていた。 驚いて跳び上がるのを期待したのだが、佐々木は「くっ……」と微かに呻いたきり、動かなくなった。 どうやら、あまりの突然の出来事に、思考が停止したようだ。 ひょっとしたら、穴に直撃したのかも知れない。 「は~~~あ……」 俺の指を水着ごと尻に食い込ませたまま、佐々木が溜息をついた。 「キョン……まさか君がこんな幼稚なことをしてくるとは思わなかった」 そういわれると、幼稚以外の何物でもないかも知れないが、何か悔しい。 「ふん、佐々木が隙だらけだからだ!」 うむ、言ってみて思ったが、言い訳するほど幼稚に思えてくる。 「なるほど、キョンがそれほど僕を好きだったとは……」 おいおい、いきなり何言ってんだ? 隙だらけだったって言ってんだぞ。 「はいはい。で、結婚式はいつにしようか?」 聞けよ! 「ん?だから、キョンは僕のことが好きだらけなんだろ?」 何だよ佐々木……ひょっとして怒ってるのか?
https://w.atwiki.jp/kokodakeuccharmatome/pages/37.html
【名前】佐々木<ささき> 【性別】女 【年齢】16 【容姿】「十人中八人が一目して目を惹かれる」美少女。 【性格】性格は控えめ。男相手だと男言葉で、女相手だと女言葉で話す。 【能力】頭脳明晰、才色兼備。だが自己評価は「平均以下の凡人」と低め。 【プロフィール】その名の通り、「涼宮ハルヒ」シリーズに登場する佐々木その人。 元本筋レギュラーの一人。紳士の嫁になった事と、人数調整の関係で現在は非レギュラー扱い。 一応学校には通っているが、COFの活動には携わっていない。 【補足情報】 先述の通り、「涼宮ハルヒ」シリーズの佐々木その物。ただし中の人が「驚愕」を読んでおらず、「分裂」を読んだのも随分前の事であるため、人格においては完全にトレースしきれているとは言い難い。 現在はMSには搭乗していないが、当初は量産型MSに搭乗する事が多かった。プロフィールにあるように、自己評価は低いが能力自体は高かったため、スタークジェガンやバリエントなど、量産機の中でも上位機種を多く利用していた。