約 115,752 件
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/82.html
824 :祝☆ラブミー部、卒業? 1:2005/06/26(日) 17 16 46 ID ??? 「京子様、ようこそいらっしゃいました」 LME社長秘書―――アラビアンな風貌をした男の人が私を出迎えてくれた。 今日はマリアちゃんに誘われて宝田家に遊びに来たのだ。 あれ、そういえばマリアちゃんはどうしたんだろう? 私を中へと案内してくれているこの人・・・話掛けたら答えてくれるかしら? 私は白装束の側近さんをチラリと見た。 「あ・あの~マリアちゃんはどうしてるんですか・・・?」 「マリアお嬢様は只今習い事の最中でございます。」 「そ、そうですか・・・。」マリアちゃんの都合の良い時間を聞いてから来るべきだったわね。 「お嬢様が戻られるまでのお時間、京子様のお相手はローリィ様がなさいますので・・・」 ・・・・え?社長が私の相手・・・?なんだかとても遠慮したい気分だわ。 一体どんな衣装で現れるのかしら?まぁ、その事もすごく気になるけど・・・。 ・・・ちらっ。 この人、こんな衣装で暑くないのかしら?今は夏よ?顔くらい出した方が良いんじゃないかしら。 少しは涼しくなって良いと思うんだけど・・・。 それにしても・・・この人一体どういう経緯でこの仕事に就いたのかしらね?気になるわ・・・。 とりあえず普通一般の神経の持ち主じゃない事は確かね。 だってこの衣装が制服なのに平然としていられるのよ?でもまぁ、『あの』社長のお気に入りの 側近さんなんだから『愛』に満ち溢れた人には違いないわね・・・多分。 私は側近さんに案内され、ある部屋へと通された。 ・・さすが社長のお宅ね。敦賀さんの家にも驚いたけれど・・それ以上だわ。 部屋の中央には一際目立つ巨大スクリーン。 うわぁ~、大きいぃ~。ここで映画鑑賞なんかしたりするのかしら? この時のキョーコは、この巨大スクリーンが『自分に不幸をもたらす』ものである事に気付かなかった。 「お~。最上君か、よく来た。待っていたよ!」 は?約束していたのはマリアちゃんであって社長じゃないんですけど・・・と心の内では思ったけれど 「あ、お・お邪魔してます。社長・・・」一社会人として大切である挨拶を怠る事はなかった。 社長、やっぱり今日の衣装も気合が入っているわね。『王家の紋章』を意識したのかしら・・・? キョーコは社さんに文庫本を借りて読んでいた。(何気にお友達状態w) 「ふふふ・・・。最上君。ラブミー部員としての仕事は順調なようだね♪」 はぁ?・・・何の事を言ってるのかしら? 「あの~社長?ここ最近、ラブミー部員としての活動はほとんどしてないんですけれど・・・」 こう反論してみたけれど社長は何故だかニコニコ笑っている。 「最上君。君のラブミー部員としての活動記録映像があるのだよ。見てみるかね?」 活動記録『映像』・・・って何?物凄く不安を感じるわ。 「え・遠慮し・・・」社長は私の言葉を遮り 「そうか、そうか~。最上君も見てみたいかぁ~♪」と勝手に話を進めている。 あの~ソレ何となく見たくないんですケド・・・とは思ったけれど口に出すのは止めておいた。 だって社長、ノリノリよ?見せたくて仕方がない!って感じ・・・。私に拒否権は無さそう・・・(汗) 私はスクリーンの前にあるソファーに座り、映像が映し出されるのを待った。 「あれ?私と敦賀さんが映ってる。って・・・えぇぇぇぇえ?まさか!まさかこの映像・・・!!」 あの日、あの時、あの場所(ラブミー部室)で敦賀さんとキスしちゃった時のもの!? 敦賀さんは優しい眼差しを向けながらも右手は私の腰に、もう片方の手は私の顎に。 ・・・という映像が巨大スクリーンに映し出されている。 「・・・・☆#&※♂∽△~~~~」 何これ?ナニ・コレ?なによ!これはーーーー!!?? 一体どうやって撮影したのよーーー!イヤぁぁぁ!!ちょっと、止めてぇーーー!!! 「ふっ。これは最上君の愛の軌跡を辿ったものだよ♪」 「そんな事はどうでも良いですから、この映像を止めてくださいぃぃ~~~!!!」 「止めちゃうの?勿体無い・・・・」 「!!!」 敦賀さんの声!?私はおもいっきり後ろを振り返ってみた。 「ど・どうして敦賀さんが此処に居るんですかぁ~~?」 「ん?どうしてって俺もマリアちゃんに招待されたからだよ」 と、そんなやりとりをしながらも映像はまだ流れ続けている。 しかも濃厚なキスシーンが巨大スクリーンで・・・。 「早く止めてぇ。あの映像~!って誰が何処で撮影してたんですかーーー!?(怒)」 「ふーむ。隠し撮りの割りには良いアングルで撮れているじゃないか。なぁ?」 社長の視線の先。そして話しかけている相手――――――それは、なんとあの側近さんじゃないの! 涼しい顔して(格好は物凄く暑そうだけど)こんな犯罪まがいの事するなんて やっぱり普通の神経の持ち主じゃなかったわーーー!!! 「ちょっと、そこの側近さん!この映像、一体どうやって撮影したものなんですかっ!?(怒)」 「・・・これは天井裏から撮影したものでございます」 側近さんは気まずそうに、そう答えた。 「・・・・て・天井裏?」 私は思ってもみなかった場所を告げられて唖然としたけれど、敦賀さんはどうやら 笑いをこらえている様子。 社長はというと、相変わらずニコニコ嬉しそうな顔をして 「最上君も『愛』というものを理解してくれたようだし、そろそろラブミー部を卒業しても良い頃だな!」 と勝手に話を進めている。・・・ラブミー部の卒業。以前の私だったら大喜びしていたでしょうよ。 でもね、今はそんな事より!あの社長の側近の方が重要課題よーーー!! 私は側近さんに対し怒りを押え切れず、キッと睨みつけてやった。 覚えてらっしゃい!社長の側近~~!! いつかその白装束をひん剥いて顔を拝んでやるんだからぁーーー!!! とりあえず・・・・ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ラブミー部員 第一号 ―――――― 最上キョーコ ラブミー部、卒業決定! ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「今日のお姉さま、ひどく機嫌が悪そう・・・。何かあったのかしら?」 「マリアちゃんが気にする程の事じゃないよ。」 キョーコが機嫌が悪いのに対し、敦賀氏はなんだか楽しそうであった。 終わりです。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/28.html
204 :1/7:2005/05/25(水) 17 44 17 ID ??? 「ああ、いたいた。琴南さーん」 ピンクのツナギを来た長い黒髪の後ろ姿を見つけて、声をかける。 「はい…えーと確か敦賀さんの…」 「社です。マネージャーの」 覚えててくれたんだ、良かった。 「えっとですね、実は琴南さんにお願いがあって」 「はあ。何か?」 「えー、非常に言いにくいんだけど」 周りを気にして、ちょっと声を潜めて言う。 「携帯番号、教えてもらえないかな?」 「…はあ?」 ☆☆☆ それは、数日前の夜のこと。 「あれ、キョーコちゃん携帯なってるよ」 ドラマ撮影の休憩時間。 熱心に台本のチェックをするキョーコちゃんの隣りに置いたバッグが震えている。 「あ、すみません社さん」 熱中してて気が付かなかったらしく、わたわたと携帯を取り出すキョーコちゃん。 彼女のこーゆー動きって、コミカルってゆーか、見てて飽きないんだよねぇ。 「こんな時間に…事務所からかな」 あわてて開いた画面。 見るともなしに、着信名が見えてしまった。 『バカ』 見るなり、一瞬ものすごく不機嫌な顔をすると、そのまま携帯を閉じた。 「あれ、出なくていいの?」 「いいんです」 笑顔、というより苦笑を浮かべながら答えるキョーコちゃん。 「…『バカ』って、もしかしてあの『バカ』?」 ちょうど後ろに立っていて、同じく着信名を見たらしい蓮が ささやくように言う。 ヤバイ、心なしか気温が下がってきたような気が…。 「…あの『バカ』です」 ため息をつきながらキョーコちゃんが答える。 「この前、麻生さんから電話があって。 私の携帯番号バレちゃったみたいだっておっしゃって、もしかしたら 掛かるかもしれないからって、あの『バカ』の番号教えてくれたんです」 あの『バカ』って…例の不破ってヤツのことだよね。 麻生さんって、親切だなあ。 「それで登録しといて、掛かってきたら無視しろと」 「それが…」 …? 「登録しなかったの?」 「ハイ」 なんでまた…。 「だって、モー子さんの携帯の番号も、敦賀さんのも社さんのも 入ってるんですよ? そんな大事な携帯にあの『バカ』の番号入れるの、イヤだったんです。 それに、麻生さんはああ言ったけど まさかあの『バカ』が私に電話掛けてくるとも思えなかったし」 蓮が、無言で微妙な表情をしている。 あいかわらずの彼女の警戒心のなさに気温さげつつも、あまりにも 彼女らしいその理由がかわいくて怒れない、て感じだな。 それとも「大事な」アドレスの中にちゃんと自分の名前が含まれてるのが ちょっと嬉しかったんだろーか?(クス …いや、問題はそこじゃなく。 「でも掛かって来た、と」 「ハイ」 「まさか、出ちゃったの?」 「ハイ」 あちゃー。 「だめだよー、キョーコちゃん、若い女のコが知らない番号に出たりしちゃ」 「だって、事務所の誰かからの緊急連絡かもしれないじゃないですかー。 …そしたらあの『バカ』の声で。すぐブチ切って、速攻登録しました」 なるほどねー。 「…声聞いただけで、すぐ解った?」 蓮が訊ねる。 「忘れもしません。あんな『バカ』な声っ」 蓮の様子に気が付かないのか、プリプリと答えるキョーコちゃん。 あ、や、ヤバイよその返答は…。 案の定、また気温がじわっと冷えてきた。まままマズイ。 「きょ、キョーコちゃん、そーゆー時はね」 あわててキョーコちゃんの携帯を手に取る。 「着信拒否機能ってゆーのがあってね、電話帳でー」 ポチポチと電話帳から『バカ』の項目を呼び出し、着信拒否の設定をしてやる。 「あ、すみませ…」 「…や、社さん、手袋っっ」 一緒に携帯を覗き込んだキョーコちゃんの声にかぶって、 蓮のあわてた声がする…え…あああ!? …パチン。 突然、携帯の画面がブラックアウトした…。 ☆☆☆ 「…というわけで」 説明を終え、事務所から預かった新しい携帯を琴南さんに差し出す。 もちろん手袋してますよ。ハイ、2度と失敗出来ません。あーあ。 「手袋をするの忘れて、携帯をクラッシュさせ キョーコちゃんを泣かせてしまった責任を取って、 彼女の「大事な」アドレスを集めてまわっている訳です」 「…はあ…災難でしたね…」 最初カナリ怪訝な顔をしていた琴南さんも、どうやら解ってくれたらしい。 あー良かった。 「でもさすがに仕事関係の番号だけしか無理なんだよねー。 個人的な友達とか、さすがに知らないし…」 「あ、大丈夫ですよ」 ため息をつく俺に携帯を返しながら、彼女が微笑んだ。 210 :7/7:2005/05/25(水) 17 53 09 ID ??? 「あの子、携帯と別にちゃんとアドレス帳持ち歩いてるから」 「アドレス帳?」 「ええ、ピンクの可愛いやつ。夢だったんですって」 えええー。 「てことは俺…ムダ骨?」 がっくりと肩を落とす。 「いや、ムダってことはないですよ。むしろあの子感激すると思うわ、たぶん」 「…ホントに?」 「ええ。他人に親切にしてもらうの、ものすっごく嬉しいみたいだから」 くすくすと笑いながら、琴南さん。 「…自分はかなりのお節介やきのクセして、ね」 そっかー。そうかもなー。なんとなく納得。 「それより、」 何か思い付いたらしく、悪戯っぽい笑顔を浮かべて、彼女が言った。 「ツータッチダイヤル登録しといてあげたほうがいいんじゃないですか? …敦賀さんの番号」
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/48.html
424 :勝ってみせるんだから 1:2005/06/07(火) 22 44 57 ID ??? 「今日こそは絶対に勝ってみせるわ!」 キョーコは蓮の姿をした呪い人形に宣戦布告をしてLME事務所へと向かった。 実は先日、呪い人形を蓮に見られるという失態を犯してしまったキョーコ。 そのうえ蓮を突き飛ばしてその場を逃げ出してしまった為 (先日の出来事=敦賀蓮に負けた)という図式が成立してしまった。 勝負をして負けたという訳ではないのだが勝手にそう思い込んでしまっているのだ。 「敦賀さんがあんな破廉恥な行為をする人だったなんて・・・・・/////」 蓮に抱きしめられた事をじゅうぶん気にしているキョーコ。 しかし、恋愛感覚が斜めに歪んでいる為 「からかうんだったら他の人にしてほしいものだわ」などと蓮が聞いたら がっかりしてしまいそうな事を考えていた。 さて、どうやって敦賀さんに「ぎゃふん」と言わせてやろうかしら・・・・。 実際に蓮が”ぎゃふん”という言葉を使うとはこれっぽっちも思っていなかったのだが 自分が先日動揺してしまった程度には”驚き悔しがらせたい”という気持ちでいた。 蓮が事務所に立ち寄る時間は調査済みであった為、余裕で目的地に 到着したのだが標的である人物から先に声をかけられてしまう。 「・・・あれ、最上さんも事務所に用事?」 キョーコは固まった。まだ何も作戦を考えていなかったからだ。 えぇぇぇえ?何でこんなに早くから居るのよ、反則だわ! 反則・反則!レッドカードものよーー!!一応、心の声として叫んでいたのだが 思いっきり顔に出ていたらしく「何かな、その表情は?」と言われてしまった。 ふ・・・ふふふふふ。落ち着くのよ、キョーコ。敦賀さんに先手を取られたからって動揺しちゃ駄目! 精神統一、精神統一。(←心の声) 「そういえば、先日のあの人形・・・」 げぇっ!?あの人形の話題はやめて~~!!(←あくまでもキョーコの心の声) 「最上さんの姿をした人形も作ってもらわないとね・・・」 「・・・は?」何の為にデスカ・・・? まさか・・・私を呪う気じゃないでしょうねぇぇ、敦賀さん! 「受付に人形を飾る日が来るのが待ち遠しいよ。ね?最上さん」 「どういう意味ですか・・・?」 「結婚式の受付に新郎新婦の人形を飾るんだよ?」 「誰と誰が・・?新郎新婦・・・ですか・・?」 「ん?俺と最上さんに決まってるじゃないか」敦賀さんはクスクス笑っている。 「えーっと・・・」落ち着け!落ち着くのよ、キョーコ。悪い冗談に決まってるんだから! 「人形に念じると願い事が叶うんだろう?」 「あれは・・・」その場の思いつきで言っちゃっただけで・・・。 「俺は最上さんと一緒に暮らしたいんだけどな・・。その為に君に合鍵を渡しておいたんだしね?」 敦賀さんの好きな人が16歳の高校生だって事は知っていたけれど・・・。 「・・・敦賀さんの好きな人って・・・まさか・・・私?」 「あれ、今頃気が付いたの?」敦賀さんは、まだクスクス笑っている。 私、大先輩である敦賀さんを呪おうとしたから罰が当たったのかしら? はっ!?まさか人形による呪い返しじゃないでしょうねぇ? なんだか敦賀さんにまた負けてしまったような気分になった。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/61.html
558 :君に好きと言ってから 1:2005/06/13(月) 19 30 26 ID ??? 『最上さん、真面目に聞いてくれる?』 事務所で偶然、一緒になった彼女を車で送り、彼女の家の前についてから俺は切り出した シートベルトをはずしながら、『ハイ?』と彼女がこちらに向きなおす。 これから言う言葉はきっと、彼女を驚かせるだろう でも、もうこれ以上、黙っていることができない 俺の中で、少し焦りが出たのだ きっかけは、彼女の言葉。 先日、好きな人はいるのかとの俺の問いに、彼女は 「いません。・・・・というか、作りません。・・・・今は・・・・」 と答えた。俺は、その答えに満足していた ・聞いた直後は。 しかし、よくよく考えれば その言葉の意味は 今は特定の人間がいないということ。 ということは、彼女の中で、俺は その特定の人間の中に入れてもらえてないと言うことだ・・ いつだか、社さんが言ったように、 「どこかの馬の骨にもっていかれる」 そんなこと、許せるはずがない 『君、この間 今は好きな人を作らないと言ってたよね?』 『はい・・』 『俺も、今は大切な存在(人)を作る時期じゃないと思ってた・・・・んだけどね』 まっすぐに俺の目を見ている彼女を抱き寄せる 彼女はといえば、突然俺に抱き寄せられて驚いているのか固まって反応がない 一体どれくらいの時間が経っただろう 彼女を抱き寄せたまま、二人何も言葉を発しないまま 時間だけが過ぎていく 俺は意を決して、彼女の顔を覗き込んだ 『・・・・・・・・・・君が、好きなんだ・・・』 その言葉を口にした瞬間、彼女の目から涙がこぼれる やはり、今 言うべきではなかったのだろうか・・・ 彼女の涙をぬぐいながら、謝ろうとした瞬間、いままで動かなかった彼女の口が動いた 『そんな・・・信じられません・・・・・・・敦賀さんが私をなんて・・・』 『嘘じゃないよ、俺は君の事・・・』 もう一度、信じてもらえるように好きだと言おうとする俺を遮り、 『でも!わ、私・・・いまは・・・・・・・・・・・』 今は好きな人を作らない・・わかってる だけど、俺は言わずにはいれなかった 彼女に出会うまで、付き合った女性が数人いた 自分では、それが恋愛なのだと思っていた でも、それは恋とか愛ではなかった それを気づかせてくれたのは、彼女。 無意識に、付き合ってきた女性を傷つけていた酷い男だった俺を、変えてくれたのも彼女。 君を失いたくない だから、いわなければならないと思った。 『わかってる。今はダメってこと。君も俺も。ただ、知っていて欲しかった。俺が君を好きだって事を。』 彼女は黙って頷く 『君が、恋ができるようになるまで、俺は待つし、君も俺が胸を張って君を迎えにいける日まで待ってて欲しい。』 そういうと、今まで泣きながら黙っていた彼女がクスリと笑った 『敦賀さん・・・勘違いしてませんか?』 勘違い・・? 『・・・・私、ラブミー部に入ってから変わったって言いましたけど 正確には、敦賀さんと出会ってから変わったんです・・。 今まで、他人に依存して生きていた自分を変えたのは、 あなたの演技に触れたからなんです。 演じることで、新しい自分を創ることができて、 そこから変わっていく自分がいました。 敦賀さんは私の目標なんです・・・だから・・・ きっと、そこまで追いかけます。 あなたにふさわしい女優になるまで。 それまでは、あなたへの気持ちを抑えようと思ってたんです』 頭の中が真っ白になった 瞬間、俺は無意識に彼女に口付けていた 仕事も含め、今まで覚えきれないほどのキスをしてきた だけど、初めてだ・・・こんなに震えたのは。 唇を離すと、彼女がこうつぶやいた 『待ってます』 俺も待ってる。 止まっていた二人の時間がやっと重なり、動き出した
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/50.html
光 446995
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/75.html
716 :おやじを怒らすな:2005/06/21(火) 20 25 52 ID ??? 思い付いたので書きます。 ほぼ会話のみですので、いやな方はスルーしてください。 「着いたよ」 「送っていただいてありがとうございます」 「いやこちらこそ、嘉月の役作りを手伝ってもらったうえに、 怪我させてしまってごめん」 「私、敦賀さんのお役に立てるならなんでもします。 それに、怪我は自業自得ですから、気にしないでください。 あっ大将」 二人は車から降り、のれんを片付けていただるまやの大将 にあいさつし、蓮は自己紹介をすませた。 大将は品定するように蓮を見ている。 キョーコの怪我に気付き 「その足どうした?」 「あっこれは芝居の練習で…」 「いや、俺が怪我させてしまって」 「何!!嫁入りまえの娘に怪我させるとは何ごとだ!! 責任もって一緒になれ!!結婚しろ!!」 「えぇぇぇぇぇぇ」 蓮とキョーコの絶叫がこだまする。 だるまや大将、公認。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/41.html
323 :冷やしてポッキー 1/6:2005/05/30(月) 05 37 41 ID ??? 社は事務所内の自分のデスクでスケジュール調整に追われていた。 というのも、本日予定していた蓮とキョーコが共演するCMの打ち合わせが、 先方の都合で時間がずれ込んでいるのである。 先方から遅れの連絡は早い段階で事務所の方にあったものの、 事務所から社への連絡に不手際があり、社が事後処理に動いているのである。 とりあえず、先方への確認が取れた為、 応接室で待ちわびているであろう蓮に内線で連絡を取った。 「開始できるのは早くても1時間後の8時頃になりそうだよ。 どうする、蓮。軽く食事にでも行くか?」 『…いえ。食事をするにも中途半端な時間なので… それよりも、どうせならCMの内容を軽く確認しておきたいので、 このまま、応接を使わせてもらっていいですか?』 「それは勿論かまわないけど…。俺、調整作業ですぐにはそっちに戻れないぞ。 お前、いくらなんでもそこで襲うなよ?」 『…何、言ってるんですか。じゃあ、何かあったら携帯へメールください』 …なんだ、ああは言っても、やっぱり邪魔はされたくないんじゃないか。 社は受話器を置いた後、ほくそ笑んだ。 社内の応接室なのだから、何かあったら今のように内線電話を使えばいい筈である。 それをわざわざ『何かあったら携帯へメール』と指定するという事は、 『内線でも携帯でも、電話によって邪魔されたくない』という事だろう。 「…あいつ、無意識にそういう風にしてるのかなぁ。意外とムッツリか?」 でもまぁ、2人きりになれる機会も最近は中々ないから仕方がないか」 社は独り言つと、再び蓮のスケジュール調整に取り掛かった。 「…というわけだから。しばらく時間があるみたいなんだ。 せっかくの空き時間に悪いんだけど、練習に付き合ってくれないかな?」 「練習…ですか?」 キョーコが何のことだろうというように首をかしげる。 「うん。恥ずかしながら、俺はポッキーゲームなんてやった事が無くてね。 企画書を見る限りは、結構タイミングが難しそうだから。 途中でポッキーを折ったり、落としたりしたら駄目なわけだし。 撮影は始まるまでには、まだ時間があるけど、 2人同時に自由な時間が取れるのもいつにあるか解らないからね」 「…そうですね。確かに、タイミングが難しそうですね。 現場で何度もNG出すのもなんですし。 ぜひ、お付き合いさせてください」 「ん。じゃあ、始めようか」 言いながら、蓮は打ち合わせ用に事前に用意されていたポッキーを一箱開けると、 中から一本だけ取り出して咥え、隣に座っているキョーコに顔を近づけた。 キョーコは蓮の顔の近さに急に驚いたのか、顔を赤らめながら、 おずおずともう一方の端を口に咥えた。 ふっと上目使いに蓮を見遣るキョーコと目が合い、 蓮は柔らかな微笑みで、軽くうなずく。 それを合図のように、二人はポッキーを食べ始めた。 ―――…やだ、これって思ったより…敦賀さんの顔が近い… そう意識した瞬間、キョーコは急に恥ずかしくなった。 そして、思わず目を瞑ると同時に下を向いてしまう。 勢いで、口元のポッキーが折れてしまった。 「きゃっ! ご、ごめんなさい!!」 自分で自分の行動に驚いたのか、キョーコは小さな悲鳴を上げながら、 すぐに視線を蓮に戻す。 蓮はいささか驚いたようだが、すぐに先ほどと同じ、柔らかい笑みを浮かべていた。 「大丈夫だよ。でも、このタイミングはちょっと早すぎるね」 君こそ、大丈夫だった? そう言ってキョーコを気遣うようにお茶をすすめてくれた。 キョーコは頬を赤らめながらも小さな声で「大丈夫です…」と答える。 ―――…やだ、私。これは演技の練習なんだから。きちんとやらなくちゃ… ぬるくなったお茶が、少しだけキョーコの熱を冷ましてくれるような気がしていた。 「…じゃあ、もう一度やってみようか?」 「はい。すみませんでした。もう一度、お願いします」 そういって向かい合った顔は、既に女優としての“京子”になっていた。 蓮はキョーコの女優としての心の切り替えに感心しながら、再度、ポッキーを口にすると、 先ほどと同じようにキョーコの方へ顔を寄せる。 互いにポッキーの端と端を咥えながら、ゆっくりと顔を近づけていく。 蓮がキョーコの肩に手を置くと、それに応えるように、キョーコが腕がゆっくりと蓮の腕にすがってきた。 瞬間、蓮の鼓動が早くなる。 互いに薄く開いた唇。 なんとなく誘われているようで… 二人の顔が接近していく… もう少し、もう少し――――… キョーコの肩に置く蓮の手に少しばかり力がこもったその瞬間。 けたたましい振動音が、二人の身をすくませた。 マナーモードにした携帯が、テーブルの上で音を立てて震えていたのだ。 蓮はふっと微笑むと、咥えたポッキーに手を伸ばした。 蓮とキョーコの顔の距離は、蓮の大きく長い指がやっと一本入るくらいにまで近づいていた。 ポッキーを折るために少し力を入れた蓮の指が、キョーコの唇に少しだけ触れる。 あっ…、とキョーコが声を上げたような気がしたが、 蓮はそのままキョーコから身体を離して、携帯に手を伸ばした。 演技だというのに、動揺してみっともないところを見せてしまった。恥ずかしかった。 だから、蓮に『もう一度やってみよう』と言われた時は嬉しかった。 呆れられていなかったと安堵すると、今度こそしっかりやろうと演技に集中した。 けれど。 蓮の手が肩に置かれた瞬間に。 胸の鼓動が跳ね上がった。 ソファに座っているのに、力が入らない気がして、思わず、蓮の腕にすがってしまった。 『…何してるの、私…』 あのまま携帯が鳴らなければ、自分はどうしていたんだろう。 途中で止めることが出来ただろうか。演技が出来ただろうか。 ふと唇に指を当てる。 ついさっき、蓮の指がかすかに触れた唇。 『もしかしたら…』 心にある、くすぐったい気持ち。 『この感じって…』 “ささいな事に『幸せ』が伴えば…” いつか自分が蓮に言った言葉を思い出していた。 受信メールを確認すると、社からのものだった。【お邪魔するよ】という件名に苦笑する。 【先方から連絡あり。あと15分ほどで到着との事。仕度しておいてね。 社】 現在の時刻を確認すると、時計の針は7時40分を差していた。 『ここまで…か』 【了解です 蓮】すぐに返事を打つと、携帯を閉じ、キョーコに向き直る。 「残念。練習はここまでだね。先方が間もなく見えるそうだよ。8時には着くって」 「あっ…、あの、じゃあ、私ちょっとお化粧を…」 顔を真っ赤にして立ち上がると、キョーコは逃げ出すように応接室を出て行った。 蓮は髪をかきあげながら、ゆっくりとソファにもたれる。 『最後はちょっとやられたなぁ…』 蓮は携帯を開きながら、自嘲的な笑いを浮かべた。 練習しようと言い出しのは自分。 半分は本気だった。やった事のないポッキーゲームなるものの、感覚を得る為に。 半分は冗談だった。あきらかにキスシーンもどきのシチュエーションで、キョーコの反応を見たかったのだ。 だが。―――予想外に、扇情的なシチュエーションだった。 キスを寸前で止めることなど、何も初めての経験ではなかったのに。 もどかしさ。焦り。薄く開かれた唇。そして。すがりつく腕。 『煽られた―かな』 ふと、最後に唇に指が触れた事を思い出す。その指を愛おしそうにもう一方の手で包むと、 蓮は胸の奥から温かいものがこみ上げて来るの感じて、ひとり静かに微笑んだ。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/17.html
49 :序 松キョ注意:2005/05/14(土) 19 18 56 ID ??? なんだか暗め。なおかつ松→キョものですが、置いてってもいいですか? 苦手な方は華麗なるスルーをお願いします。 不破 尚 余裕のキスシーン一発OK 歌手・不破尚(18)のオリジナルDVD映像作品「 remorse 」(10月8日発売)の プレミア試写会が17日、都内で行われ、不破らが舞台あいさつを行った。 作品は音楽を題材にした青春群像劇。主演の不破は、夢を求めて京都から上京し、 バイトをしながらバンドのボーカリストとして活躍する男性の役を演じた。 今回が初挑戦のキスシーンも、NGなしの1度で成功。 相手役は人気急上昇中の女優・京子(18)。 キスシーンを突っ込まれると「不破尚でなく、物語の役がやったので……」とクールな反応。 作品には「ジャンルは違えど、見た後に“良かった”と思ってもらえれば」と話していた。 「もうっ、さっさと離れなさいよっ」 カットの声と同時に、突き飛ばすようにしてアイツは俺の腕の中から出ていった…――。 総合プロデューサーのミルキちゃんから、今回の話が出たのは4ヶ月ほど前のこと。 「キスシーン?!なんだよそれ、そこまでやる必要あんの?」 ここ数年、音楽業界の流通形態もめまぐるしく変わり、音だけでなく、 それ以外のプラスアルファ。たとえばDVDによる映像特典、なども重要視されるようになった。 プロモーションビデオ撮影といえども、年々大規模になっていっている。 そんな流れの中で、次回作はCDではなくDVD作品として発表してみようという話に なったのだが……。その中のワンシーンに、なんとキスシーンがあるという。 「なかなか面白い企画だと思わない?熱心なファンはショック受けちゃうかもしれないけど、 インパクトもあるし、新しい層のファンも開拓できるんじゃないかと見込んでるんだけど」 そう言ってテーブル越しに微笑むミルキちゃん。 今日もミニスカートからのぞく足が綺麗だ…じゃなくて。 「だから、俺みてーな演技素人が、んな(こっぱずかしい)ことできねぇよ」 他に変えてくんない?ソファーの背もたれによりかかりながら、思わず天井を見上げる。 正直に言えば、楽曲製作以外の活動比率が増えるのは、あまり嬉しくは無い。 ただプロとして活動する以上は、より多くの人に聞いてもらう、知ってもらうための 努力も必要になってくるわけで。やり手プロデューサーのミルキちゃんにはいつも感謝してるけど。 しかしなぁ、なんちゅう企画もってくんだよ……。 「それで、相手役なんだけど、京子ちゃんに頼もうと思ってるの」 「はぁぁぁあ?!!」 あまりの驚きに、思わずソファーから飛び上がる。 「ふふっ、予想通りの反応ね。きっと京子ちゃんも同じ反応なんでしょうけど」 余裕の微笑みを浮かべたミルキちゃん。心の底から楽しんでます、って顔してるぜ…。 そうだよ、あったりめーじゃん。俺とあのキョーコだぜ?! つーか、アイツが受けるわけねぇだろ。こんな仕事。 「もう先方にはOKもらってるから。あとはあなた次第。どうする尚?」 そうだよな、俺さえ受けなければ……って、ちょっと待った。 今何か聞こえたような―――。 「先方って……。嘘だろ?!京子は受けたのかよ??」 動揺を隠せない俺に、ミルキちゃんはより深く微笑んでこう言った。 「ええ。LMEサイドとはもう話がまとまりかかってるの。個人的にも楽しみだわ。 京子ちゃんが、今度はどんな姿を見せてくれるのか」 キョーコが受けた……。何を考えてる? 撮影当日。 俺の役は、田舎から東京に出てきて、バイトをしつつミュージシャンの夢に向かって活動する青年。 まぁ、言っちまえばありがちな設定だが、今まではきらびやかに飾り立てた悪魔だとかシースルーだとかの ビジュアル路線で通してきたから、逆に不破尚としては新鮮じゃないか、とのミルキちゃん見解らしい。 京都にいた時からそれなりの人気はあったし、上京してからも、すぐに事務所の社長に 引き立ててもらえてる俺の経験はあまり役に立ちそうにはないけどな(バイトの経験もねぇし) そして……その青年の恋人役、京香がキョーコの役どころ。 昨年出演した、ドラマDARK MOONがヒットし(主演俳優が気にくわねーから見てねぇけど) そこそこ重要ポジションにいた京子にも、注目が集まった。 ――前作でも十分インパクトある役だったから、それを越えるなんてとうてい無理だと思っていたけど、 新しく生まれ変わった月篭りの象徴って感じで、すごいのよあの子。 そんなスタッフの評を楽屋で耳にしたこともある。 あのキョーコが?いつもふわふわ笑っていて、ショーちゃんショーちゃんって、うるさいくらいに まとわりついてきて、地味で、普通で。それでいて俺のことしか見えてなかった、あのキョーコが? 芸能界にいるという事実にすら、今でも実感がわかないのに、女優、京子として、その確実な一歩を 踏み出したアイツ。誰よりも俺のことを知っていて、それでいて誰よりも俺がアイツのことを 知っているはずだった。それが……。なぁ、お前は今、なにを思ってる――…。 「尚、ちょっとこっちにきて。打合せするから」 思わずスタジオの隅で考え事にふけってしまった俺を、ミルキちゃんが呼び戻した。 モニターと長机、椅子が数脚。数人のスタッフの中に…アイツも、いた。 目線があわさる。一時期は短くし茶色く染めていた髪の毛も、ドラマを機に黒く染め直したらしく、 今は肩のあたりまで伸びている。以前の、のばしっ放しのひっつめ髪とはまた印象が違うが、 それでも、やはり思い出させる。一緒にいた頃のアイツを……。 「京子です。よろしくお願いします」 まわりのスタッフはおろか、俺にまで礼儀正しく挨拶するアイツは、やっぱり俺の知らないアイツで。 前回Prisonerのプロモで共演したときは、もうちょっと分かりやすい態度だったくせに、 今回はまさに鉄壁。仕事以外はかかわるな!ってオーラしてやがるぜ。キョーコのくせに。 「おい」 やっぱり本人に確かめないわけにはいかなくて、少し気合を要しながらも、声をかける。 俺の声にぴくっと反応を見せるものの、思いっきり無視してきやがるし。 「おい!なんでここにいるんだよ。お前は」 まわりくどく言う必要もないし、そんな時間もないから思ったことをそのまま聞く。 そんな俺の言葉を無視して、アイツは新しく入ってきた監督やスタッフににこやかに挨拶を続けていた。 予想できた反応だが、ここまで露骨に無視されるのは癪に障る。 肩に手を置き、無理にこちら側を向かせると、バシッととたんにすごい勢いで払われる。 「触らないでよっ!言っとくけど、あんたのプロモだからこの仕事請けたんじゃないわよ。 麻生さんや、黒崎監督に頼まれた仕事だから受けたんだから」 「へぇ、仕事に私情は持ち込まないってか?さすが、新鋭の演技派女優さんは違うんだな」 はんっ、と鼻で笑いながら仕掛けてみると、案の定肩をプルプル震わせながら、いつぞやのような どす黒い気をあたりに撒き散らし始めるキョーコ。こうこねぇとな。 が、しかし、そんなこともつかの間で。あっさり怒りを静めると、すたすたと監督やミルキちゃんの ところに行ってしまった。あれ…? 今回の撮影監督は黒崎潮。主にCM業界で名をはせているらしく、 チンピラみてぇな外見とは裏腹に、なかなかの実力者らしい。 すでにもう何日か一緒に撮影をしているが、やたら命令口調なのが気にいらねぇ。 ミルキちゃんはその映像手腕にも満足してるみたいで、すっかり信望者になっちまってるし。 確か、キョーコのCMデビューはこの監督のだよな……。 世話になった監督と、プロデューサーのWプッシュで断りきれず、か。 けっ、相変わらず甘えーんだよ、おめぇは。情に流されてると、今に足元すくわれるぞ。 恋人同士役とはいえ、回想シーンが主になるため、一緒に映るシーンは少ない。 だから、俺達のシーンは今日一日のまとめ撮りで済ます予定になっている。 夢を追い、上京して、忙しさの中で変わっていく二人の関係。ちょっとしたすれ違いで、 想いが伝えられずに、離れそうになって、それでも離れられなくて…――。 なぁ、やっぱりどうして受けたんだ?思い出したくもないんじゃねぇのかよ。 あの頃のことなんて。さんざん利用して、ぼろ雑巾みたいにして捨てた俺のこと、恨んでるんだろ? その後も、打合せ、撮影と穏やかに(信じられねーくらいに)事が運び、 あとは問題のあのシーンを残すのみとなった…――。 二人の暮らすせまいアパートの一室。スタジオにセッティングされた、 そんな風景をみながら、あの部屋はもう少し広かったな、と柄にも無くノスタルジックな気持ちになる。 隣にいるキョーコはぎゅっと奥歯をかみ締めたような表情で。 思うところはいろいろあるんだろうが、それを表には出す気配はまったくない。 「つーわけで、立ち位置と台詞さえ合わせてくれたら、 あとは自然の流れでやってくれていいからよ。 本気でやるか、ふりだけにするか。 まぁ、おめぇらで決めてくれ や。何とでも料理してやるからよ」 無責任とも信頼しているとも取れる言葉を残し、 チンピラ監督はひらひらと後ろ向きで手を振りながら、モニター前の監督席に戻っていった。 おめぇらで決めろって…だから俺は演技素人だっつーの! イライラしながら、横のキョーコに目をやると……。違う、こいつはキョーコじゃない。 そこには、京子でもなく、ましてやキョーコでもない別の女、京香がいた。 「スタート!」 監督の声が響くと同時に、スタジオに緊張感がみなぎる。 俺の役、ショウはその名のとおり、俺自身にあわせて設定してあるため、 演技力うんぬんは問われない。そのままやってくれればいい、と製作サイドからは言われている。 が、なんだ。この空気は。目の前にいる女、コレは誰だ――? 「もう……無理だよ。待てない。いつ帰ってきてくれるかもわからない。 どんなに頑張っても頑張っても、どんどん遠くなっていって。眩しくなって。 ……別れよ。ショウちゃんのこと、思い続ける自信なくなっちゃった…」 涙をぽろぽろとこぼしながら、肩を震わせる。 その存在が、たまらなく儚く、そして愛おしく思えて――…。 無言で目の前の彼女を抱き寄せる。台本にはそんな指定はない。 「お前がいるから…。俺はお前がいるから、頑張れるんだ。どんなに忙しくても、 どんなにまわりに流されそうになっても。お前が待っててくれるから、 帰れる場所があるから…はじめることが出来る。お前がいなくなったら俺は……」 演技ではなかった。心の底から出てくる声をそのまま音にして伝える。 俺を見上げてくる潤んだ瞳を見つめ、ほほに流れる涙をぬぐうと、俺はその唇にやさしく触れた。 今までにした、どんなキスよりも思いを込めて。 「カット!」 夢から急に覚めるように、意識をもとに戻すと、 腕の中のアイツはすでに俺から離れていた。 振り返ることもせず、モニター席に向かうあいつの後姿を見ながら、あの頃のことを考える。 傷つけたい訳じゃなかった。お前がそこにいて当たり前だった。 当たり前すぎて、気が付かなかっただけなんだ。 なぁ、お前の中に俺はまだいるか?恨みでも呪いでも、なんでもいい。 俺に対する想いが、お前の中で消えずに残ればいい。 それが消えないうちは、お前は俺のものだから。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/66.html
610 :甘くて残酷な言葉:2005/06/15(水) 22 30 34 ID ??? 君が養成所から出された課題の台詞あわせの 相手になって欲しいというのでOKした。 「よかった!私、敦賀さんしか頼める人がいないんです」 うれしそうに笑う君。 渡された台本に目を通すと、どきりとする台詞が。 「最上さん、これを俺と?」 「はい!お願いします!普段は練習生の女の子同士で やるんですけど、今回は実際と同じようにしたほうが いいと言われたので敦賀さんにお願いしたんですが、 やっぱり迷惑ですか?」 「いや、そうじゃないけど」 「よかった!」 君は残酷な子だね。これを俺にやれという。 俺の気持ちを知らないから仕方ないけど。 まぁ、いいさ。あの言葉を言えるなら。 場所を誰も来ない事務所の会議室に移し、 台詞あわせは順調に進んでいく。 君があの台詞を言う時が来た。 全身真っ赤になりながら 「あなたが好きです」 「俺もずっと前から君が好きだったんだ」 「うれしい」 台本どうりに抱き締める。君のむくもりが体を侵食していく。 ふいに君が泣きだした。どうしたのか?と訊いてもあやまるばかり。 俺はただ抱き締めることしか出来なかった。 君が俺の腕から離れていく時、悲しそうだったのは気のせいだろうか? 「ご迷惑おかけしてすみません。私、自分の芝居の下手さかげんに嫌気がさして。 そうしたら、涙が止まらなくて。すみません」 頭を下げる。 「下手じゃなかったよ。本当だ。君は自信をもっていい」 君はさびしそうに微笑んだ。 自分の家にもどり、今日のことを振り返った。 『ずっと、あなたが好きでした』 甘くて残酷な言葉。 君の本心じゃない。台詞だとわかっている。わかっているけど。 『俺もずっと前から君が好きだったんだ』 ずっと言えなかった言葉、“君が好き”。台詞なら言える。台詞なら。 演技だけれど、君に言えてよかった。 「ありがとう」 敦賀さんに下宿先まで送ってもらった。 私はもう一度、今日のことを詫びた。 敦賀さんは気にしてないと言ってくれたけど、 どこか、つらそうな顔をしていた。 やっぱり私のこと嫌いなんだ。胸が痛い。 私は嘘をついた。養成所の課題というのは嘘。 台本は練習生が遊びで作ったもの。 私はただ、あなたの口から『君が好き』という言葉を聞きたかった。 あなたに『好き』と言いたかった。だから利用した。 私の言葉は本心。あなたの言葉は、ただの台詞。 こんなにもつらくなるなら、しなければよかった。 私の自己満足のために、巻き込んでしまった。 「ごめんなさい」
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/87.html
995 :マロン名無しさん:2005/06/30(木) 22 24 33 ID ??? TBMでのきまぐれロックの収録後、スタジオを出て歩いていると、 敦賀さんとキョーコちゃんが廊下の隅のほうで立ち話をしているのが見えた。 正確には…キョーコちゃんは「坊」の着ぐるみを着ていたけれど。 いろいろ考えたんだけど…キョーコちゃんはともかく… 敦賀さんのほうは…キョーコちゃんのこと好きなんだろうな。 心当たりがありすぎる…。 俺が話をしているところへ通りがかって 剣呑な目つきでドラマの打ち合わせだといって彼女をさらっていったり…。 何より、ああやって着ぐるみのキョーコちゃんとでさえものすごく楽しそうに話してる。愛だな…愛。 俺も最初はキョーコちゃんのこといいなあ…って思ったもんだけど ああやっていろんなところで見せ付けられると 逆にちょっと応援したくなってくる。キョーコちゃんじゃなくて…敦賀さんのほうを。 キョーコちゃんはそういうふうには全然意識してないみたいだから。 苦労するね…敦賀さん。 俺が柱の影から盗み見をしている間に、2人は会話が済んだらしく別れて別々のほうに歩き出した。 キョーコちゃんがこっちに向かってきたので、あいさつをする。 「や、キョーコちゃん、お疲れさま、着ぐるみでも仲良いんだ?敦賀さんと」 だけど、そう言った俺に対して、彼女は頭をがばっと外すと なんとも形容しがたい顔でこう切り返す。 「光さん…、今のこと、誰にも言わないで下さい、お願いします…!」 「へ?何で?別に隠すことないじゃない、同じ事務所なんだし」 「いいえっ…あの人は…私がこの中に入ってること知らないんです…」 え?そうなんだ。じゃあ一体どういう会話してたわけ?敦賀蓮と着ぐるみの坊は。 「じゃあ、口止め料に、俺達とご飯行かない?」 我ながら姑息だとは思ったけど、1回くらい、そういうのがあってもいいよね?メンバーも一緒だし。