約 699,939 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4730.html
ゆっくり駆除 俺はゆっくりベッドから身を起こした。 いい朝だ。それに今日は俺にパートナーがつく日だ。 俺が「ゆっくり保護機関」の実働部遊撃隊に入ってまだ日が浅いのにパートナーが付くのは異例だと言う・・・。何か裏でもあるのか?まぁいい 俺は時計を見てパートナーを起こしに行こうと床に下りた。 「ゆっくりねていてね!!」 床に赤いリボンをした異質なほどディフォルメされた顔面がいた。 しまった!武器を持っていない! ばしゅん カタカナではなくひらがなでこんな音がしてゆっくりがその場に白い泡とともに固まった 「大丈夫ですか?」 ふぅどうやらパートナーを迎えるのはしなくてもよさそうだ。 俺はとりあえずそのゆっくりのリボンをほどきポケットに入れた その間もゆっくりはうるさく 「ゆ・ゆ・ゆ」 とうめいていた。どうやら泡が口の中にはいったらしいが俺の食事のほうが先だ。 こいつらは頭に何かしらのものをつけている。それは外されると動けなくなるらしい。 便利なやつだ 俺はそう思いながら、廊下を歩いていった。 まぁ俺の生きている世界では「ゆっくり」って言う化け物みたいなのがいる。 ほのかに人語を理解し使用する変わった生き物だ。まぁ犬猫みたいな感じで生きている が俺は見ているだけで非常にいらいらする。それに時々畑や牧場を集団で襲うなどの行為をしてくれる。いい迷惑だが何しなく只ゆっくり生きてくれると俺が「ゆっくり虐待」で捕まってしまう。それに奴等は非常に増えるのが早い。だからこっそり駆除される。まぁこっそりと言っても免許があればばれでもできることだがな。その理由は「苦しまずゆっくりを殺せるから」らしいがどうだろう? そんなところだ。まぁ俺の仕事は農夫として潜入して畑を荒らそうとするゆっくりの「適切で素早い処理」だ。が実際どうなのか?俺は知らない。処理の仕方は自由だしな・・・。 んぁ?さっきのゆっくりか?うむ家の中に侵入してるしな。あとで適切な処理をするよ。 まずは俺の空腹感の処置だな ・・・・・・・・・・・ まぁまぁの食事をパートナーは作ってくれた。 良い奴だな。 さてさてあのゆっくりの処置だ。朝食のあとの仕事としては簡単で楽しい仕事だった。 食器洗いをしているパートナー・・・ 「名前は?よしリクか・・・。いい物をみしてやる。」 俺はそう言いながらある物を取り俺の部屋に二人で向かった。 そこにはまだ言葉どおり「ゆっくり」しているゆっくりがいた。 俺達が近づいて行くと 「ゆ・ゆ・ゆ」 と言葉にならない声をあげている。 これでは楽しくない。 俺は泡を剥がしてやった。リクは不思議そうな目で俺を見ている。 「おじさんありがとうね!!これでゆっくりできるね!!リボンを返してね!!」 相変わらずこいつ等の言葉はイライラしてたまらない。だから俺はこの仕事をしている。 「なぁ」 俺は聞きたいことがあった。 「貴方、どこから入ってきたの?」 「リボンを返してね!!そうじゃないとおじさん達がゆっくり出来なくなるよ!!」 出来るだけ優しく言った為か俺の台詞は無視された。 俺はベストのポッケから違うリボンを取り出しもう一度同じ事を聞いた・ 「どこから入ってきた?」 「りぼんをかえしてね!!かえしてね!!ゆっくりできないよ!!」 話をこいつ等は聞かないのだろうか? 俺はリボンに取り出したマジックペンを塗りつけようとした。するとこいつは喋り始めた。 「窓を破って入ったんだよ!!だからリボ・・・・・」 俺はペンを仕舞いこみリボンを返した。 「だからゆっくりしていってね!!」 俺はリボンをつかむと台所から取ってきたおろしきの上に置いた リクは驚いたような顔をしている。まぁ驚くのはまだ早いな。 そして騒がしいゆっくりをがりがりと少しだけ削った。 あ・・これは他のゆっくり確保のための必要なことですよ。 「びぃぃぃぃやぁ!!おじさんなにするのぉぉぉ!!」 「うむ俺はまだ24だ。若いはずだな」 そしてあっけにとられるリクを尻目にゆっくりを割れている窓から外に放り出した。 「これで終わりだ。あとは装備の点検をしよう。」 と俺は言った。 リクは力強く頷いた。 「うむいい傾向だ、あんまり気を張るなよ?」 数分後・・・俺達はあのゆっくりの・・人にしたら血痕だろうが餡痕を追っていた。 服は迷彩の戦闘服に帽子を目深く被っていてぱっとみ人でもそこに誰かいるか分からないだろう。 しかしゆっくりは俺達に尾行されているとも知らず力なく餡を撒き散らしながらひょこひょこ跳ねていく。 再び数分後・・・。餡をほとんど撒き散らしてゆっくりは自分の住処にたどり着いた・・。 さぁ状況開始だ。 木に隠れこっそり見ていると木の中からゆっくりがわらわら出てきた。その数5匹。 「よし。あいつらが仲間の裏が取れたら・・・うーむ3匹確保な。」 「了解です。」 ゆっくり共は家族らしく皆、れいむであり色々な大きさだった。 「どうしたの!!ゆっくりしてれないの!!」 「どうちたの!!」 「ゆーゆー!!」 「ゆ・・・・?」 五月蝿い事限りなし・・・。だが仲間のようだな。俺はリクに指で指示を出した。 俺達実働部隊は武器の規定が無い。そのためゆっくり処理に何を使ってもいいわけだ。 リクにはニードルガンをもたせた。これはまるでゆっくりを痛め殺すための武器かとはじめ思ったが、これは特殊潜入部隊の水中の装備品らしい。が使い勝手はよくいいかんじだ。 音も殆どせずしかも針が細く長くはゆっくり飛ぶためゆっくりを串刺しにして尋問できるといったところだ。それに音がしないので(バネで飛ばすらしい)ゆっくり一体ずつ処理できるといった短所なしの装備なのだ。 3 2 1 Go!! まず2番目に大きいゆっくりをリクは狙い撃った。五寸釘サイズのニードルはゆっくりの顔面に2、3発刺さり餡をすこし滲ませた。 ゆっくりは気が付いていない。ただ動けないことを不審に思っているようで 「ゆっくりできないよ!!できないよ!!」 と叫んでいるが他のゆっくりも皆針に撃ち付けられていった。 「よし。じょうできだ!」 他の小さいゆっくりをケースに入れ俺はそう狙撃手にそういいながら針の刺さったゆっくりの前に削ったゆっくりにナイフを投げつけた。 どしゅ あんまり餡が残っていなかったのかゆっくりはナイフの勢いでその場に叩き付けられた。 たのゆっくり達が何か言おうとしたがケースは防音、他の二匹のゆっくりは唖然としている。 さて尋問開始だ。 まず残っているゆっくりの内大きいほうに近づいていった。 そして 「おじさんいたいよ・・ゆっくりたちは・・げぼぉ、ゆっくりしたいだけなのに・・・」 「ん 聞きたいことがあるから答えてよ?」 餡を吐きながら喋るゆっくりはグロイ。まぁこいつの餡も絶対に必要だ。があまり捕獲したゆっくりに「親を殺した。」と悟られるのは得策ではないと考え 「リク!」 近づいてくるパートナーに 俺はケースを渡し先に家に帰りゲージの中に入れろと指示を出した。 たたったたた 走っていった・・・・。 さて尋問・・・もとい拷問の再開だ。 俺は大きいゆっくりに小麦粉をかけた。なぜかは知らんがこうすると案の流出を止めることが出来る。これでゆっくり拷問できるな。俺は達成感を感じつつもそれを見せなかった。 「ねぇゆっくりをたすけてありGふぁとうね!!」 逃げようとしつつ礼をいうゆっくり親。馬鹿だろ。足で踏みつける、俺。さて 「あのゆっくりも助けてほしい?」 「たすけてね!!じゃないとゆっくりしね!!」 まったく・・さっきまでの態度はどうした?と言いたくなるが出来るだけ下手に出る。 協力が必要なのだ。 「じゃぁさ、助けてあげるから他のゆっくりがどこに住んでるか教えてね?」 「わかったよ!!あの木とあそこの川の向こうにいるね!!だからゆっくりの子をたすけて!!」 あっさり教えやがった・・・ 「ゆっくりしていってね!!」 リクが走ってきた、と言ってもここから家までたいしたことは無い。 「よし。他のゆっくりも近くにいるようだ。探すぞ。」 「了解!」 っとその前に 「どうしたの!!たすけてね!!じゃあいと・・・」 俺は 「リク好きにしろ。」 と言った。 リクはいつのまにか持っていた手榴弾のピンを抜き口の中に押し込んだ。 「ゆっくり、しっかりおさえるんだよ。」 と言った。 なかなか恐ろしい奴だな。まぁいい感じで虐めてるな。 そして暴れる親ゆっくりをしっかり確保しながら手榴弾のレバーが外れないようにがんばるゆっくりをみていたがついに ばふん と言う音と餡を撒き散らしてゆっくりは死んだ。 それを確認した上で俺達は家に帰った。 昼飯を食い終わり俺は食卓の上に親ゆっくりを出してきた。ゆっくりは力なくそこにいるのでケース内に入れるときよりも力は要らなかった。そして長いチューブにつないだ注射器をブスリとさした。 「ゆ、・・!!」 そして餡を全て抜き出してボウルの上に置いた。それを使って今日は俺も慣れない料理をするのだ。 数時間後・・・。結局、饅頭を作ってゆっくりの所に行った。 一匹ずつ饅頭を食わせるため別のケースに移す。 「ゆっくちーおうちにかえちてー」 「ゆーゆーゆー」 「おうちにかえさないとしね!!」 まず一番大きいゆっくりを取り出して饅頭をいれてやった。 一番口が悪い奴である。 「お家に帰さないのね!!かぁがおじさんたちをゆっくりころしに・・・」 饅頭の匂いにきずき食べようとする。 食べ終わってすこし静かになったかと思うとまた五月蝿くなった。 「むーちゃ、むーちゃ。」 「おいしかったかい?」 「おじさん!!ゆっくりさしてよ!!もっと饅頭、頂戴!!」 「ほれ」 「しあわせー」」 そこでさっきの親ゆっくりの皮を見せながらこういった。 びろーん 「これで作ったんだがなぁ」 「ゆ・ゆ・ゆ―――――ゆげぇ」 いきなり口から餡子を吐きながらゆっくりはあえなく昇天した。 汚いがいい気味だ・・・。ざまぁ。全く。 リクもニヤニヤしている。いい気分転換だ。 さて今日はもう遅いのだが親ゆっくりからしいれた情報を確認のため暗視スコープを着けてさっきのゆっくりの死骸があるところまで行った。あとナイフ回収。 が結局ゆっくりの家族は見つからず小さく震えていたれいむゆっくりを数匹発見しただけだった。同じケースに放り込もうと思ったが・・・ 「ゆーゆーゆーゆーーY-うーY――うY―――」 ポケットのなかで騒ぎ立てて、耳障りだ。他のゆっくりに発見されると厄介だ。 「リク!大丈夫と思うが射撃練習だ!行くぞ!」 といい空にゆっくりを投げた。 俺とリクは銃を抜いた。 ぱすぱすぱすぱす 気の抜けたくもぐった音と餡が空に全部舞ったのを確認して俺達は帰宅した。 ケースの中には二匹いたゆっくりはおとなしく寝ていた。 「そういえばさっきのゆっくりの中にこんな奴がいました」 と羽が生えたゆっくりをみせた たしかこいつはゆっくりを食べるタイプか・・・いい考えが浮かんだ。 べつにたいしたことではないが・・・・と言いつつ俺は心ゆれていた。 外にケースを出した。すこし寒そうだがゆっくり共には取り立ての暖かいものをプレゼントしておいた。 見ていると羽の生えたタイプが飛んできてケースの中に入った。 すぐ食われる?そんなことは無い。羽と二匹とも同じ匂いの餡の中にいるんだ。 今日はよく働いたな・・・明日もがんばろう・・とおもった俺であった。 餡の中に羽ゆっくりが入っていってすこししてからこの世のものとは思いたくない絶叫と餡の匂いが辺りを二回包んだ・・・・。(終) このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/264.html
実に投棄場行き 虐待成分薄めどこか0 ――――――― ゆっくりを虐めたい、そう思い立ち山を歩くこと数分、ゆっくりまりさを見つけた。 草を千切り、口に詰め込んでいるが食べている様子はない。 巣に持って帰るのだろうと思い、ゆっくりまりさの後をつける、 しばらくするとゆっくりまりさの巣であろう小さなほら穴に到着した。 「ゆっくりもどったよ!」 「おかえり、まりさ」 家族がいるようだ、後をつけてよかったと口をゆがめる。 そっと中を覗き込むとにんっしんしているのであろうゆっくりれいむが一個、 幸せでないと胎生の出産はしないと聞くが、心なしかそのゆっくりれいむは悲しそうに見える。 「ここをあかちゃんのねるばしょにしようね!」 ゆっくりまりさは運んできた草をゆっくりれいむの前に広げた なんという幸運、ゆっくりの出産まで見ることができそうだ、 饅頭の事情なんぞ知ったことではない、子ゆっくり共々どうやって虐めてやろうかと思いを馳せる。 「…まりさ、あっちにいってもいっしょにゆっくりしようね」 「ずっといっしょだよ!やくそくするよ!」 あっちに行く?逝く?、出産で死ぬということなのだろうか、どちらにしても意味がわからない。 「ゆげっ…げぷぅ…ぇ゙っ…お゙げぇ゙ぇ゙゙ぇ゙」 エレエレエレエレ 突然ゆっくりれいむが"何か"を吐き出しはじめた、 カエルの卵のような"何か"を。 出産が始まるとばかり思っていたのだがそれよりおぞましい光景に目が釘付けになる。 数分後、いや数秒のことだっただろう、残ったのは白目をむき、苦悶の表情のままピクリとも動かないゆっくりれいむ、 カエルの卵のような"何か"、そしてゆっくりまりさ。 「れいむ、いっしょにゆっくりしようね…ゆぶぅっ…げべぇ…ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙」 エレエレエレエレ 一言放ちゆっくりまりさは白くてどろどろした"何か"を、カエルの卵のような"何か"に吐きかける。 やせ細り、この世の終わりのような表情を浮かべ、ゆっくりまりさも動かなくなった。 後に残されたモノは気持ち悪い"何か"、動かなくなった二つの饅頭、静寂。 「うわああああああああああ!」 何故だかとても恐ろしくなった俺は大声を上げ、その場から逃げ出した。 逃げながら心のどこかで思った、俺は虐待お兄さんにはなれない、と。 ――――――― 最後まで読んでくれた人ありがとう!そしてごめんなさい。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5398.html
お兄さんに引き渡された子供は怯えていたただ2匹はまだ余裕かましていた「さて、では殺すね」 「ゆ?劣った種族の人間が何言ってるの?ばかなの?死ぬの?」 「そうだぜクソ人間なんてったって魔理沙には最終兵器があるんだよ?このエクスカリバーが」そう言ってそんなに尖っていない鉛筆を取り出してきた「うわー強そうだなーわかった奴隷になるよ(棒)」「ゆっへっへそうしないとこれでクソ人間ぐらいひと刺しだぜ」すっかり罰を受けにきたのを忘れたらしいまあ好都合だが俺はそうやって油断させておいたそしてすぐさま奪ったついでに帽子も「ゆゆっ?クソ人間何するんだぜ!早くお帽子さんとエクスカリバーを返すんだぜ!そうしないと殺すよ?」返事は帰って来ない そしてお兄さんは帽子びりびりに破いた「ゆわぁぁぁぁぁ!!まりしゃのお帽子さんがぁぁぁぁぁ!!」「·····」霊夢は黙って見ていた「おい!!クソ人間!!!!もう殺してやるぅぅぅぅぅ!!!!!」そう言って突進していったもちろん全然効かない「ゆゆっ何でぇぇぇぇぇ!?ゆわぁぁぁぁぁ!!なんでだぜ!?なんでだぜ!?」「黙れ」パーン!!お兄さんのビンタが炸裂した「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!いぢゃいいぢゃいいぢゃいよぉぉぉぉぉぉ!!霊夢!助けてくれだぜ!」魔理沙は霊夢と一緒に戦えばこんな人間すぐやっつけられ、群れに報復できて里を乗っ取れると思っていた だが霊夢は予想を裏切った ドーン!ポスっポスっポン「ゆ?霊夢?なんでだぜなんでだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」「1人で勝てないゲスはしねえぇぇぇぇぇ!!」 「ふーん なら霊夢は勝てるかな?」「ゆ?当たり前でしょ?霊夢は最っ強なんだよばかなの?死ぬの?」また同じように突進してきたもちろん全然効かない「ゆぅぅぅ!!こんのっ!こんのっ!!こんのぉぉぉぉぉぉっ!!!」「ん?それで本気なの?俺に1人で勝てないならここの全員敵に回すことになるよ?」「ゆ?ゆ?ゆ!?ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?」「ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりぃぃぃぃぃぃ!!」どうやらプライドが崩れたのと全く効かないので狂ったらしいただ 数分後には息を切らしながら戻っていたそして数分後には死ぬだろうと言うものを食らわしてやった『ゆ?ゆ?何で?何で最強の霊夢が負けたの?何でこうなったの?そうだすべての原因は魔理沙だ魔理沙が勝てないから霊夢はやられたんだくそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!魔理沙めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』「魔理沙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」霊夢は最後に魔理沙を恨みながら死んでいったさて次は子供だだけど子供は雑に潰していった3分後···さてこいつで最後か「ま 待ってだぜぇぇぇぇぇ魔理沙を殺すとおとーさんとおかーさんに殺されるよぉぉぉぉぉぉだからやめてねぇぇぇぇぇ!!」「おかーさんは死んでるけどね」「何でなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぶっ!?」さて後は魔理沙だけか ん,そうだこいつは山に捨てよう!「魔理沙安心しろお前だけは怪我させずに山に戻してあげる!」「ゆ?本当かぜ?」「ああ」魔理沙はその瞬間最高の喜びを感じた シュルッ 気づくとリボンがほどけていたこれで手として使うこともできない「ゆ?何でなのぉぉぉぉぉぉ!!お兄さん約束が違うんだぜなんでリボンさんほどくのぉ!」「約束は守ってるよだってまだ怪我はさせてないだろ?」その瞬間魔理沙は直感したどういう目的かをだが時既に遅しもう山の方に飛んでいた「お空をとんでるみたべっ! ゆ?ここはおやまさん!ついに生きて戻ってきたのぜ!また群れに入るのぜ!」まだ魔理沙は気づいていない帽子がないことに「ゆ?あそこに群れだぜ!おーい」パ「ん魔理沙?」ア「都会はな魔理沙の声だわぁぁぁぁぁん!!」「魔理沙どこなの?」「魔理沙どこぉぉ」「魔理沙ー」「ゆ?ここにお帽子のないゆっくりがいるよ?」「ほんとだわ帽子のないゆっくりだわ」「ゆ?」「魔理沙ーすっきりしましょうねぇぇぇぇぇ!!」「嫌だあぁぁぁぁぁすっきりーすっきりーすっきりー」数分後あとには茎のはえた黒ずんだだけだった 完
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2735.html
博麗神社の裏で子鬼が寝ていた。 小さな百鬼夜行 伊吹萃香だ。 昨夜も宴会で朝まで飲んでいたようですでに日は真上に昇っている。 「ん~?」 まだまだ寝ていたいのだが騒がしい声に目を覚ます萃香。 見ると目の前には最近幻想郷で大量発生しているゆっくりがたくさんいた。 ゆっくり霊夢に、魔理沙、ちぇぇぇんにみょんの四種類だ。 宴会のために天界から持ち出した桃の余りをそいつらは食していた。 籠に入れておいたのだがこいつらが籠を倒したようで、桃はそこらに散乱してる。 見る限り無傷なものは一つもない。 「あーっ!後で霊夢と一緒に食べようと思ってたのに!」 思わず叫んでしまう。 その声にゆっくりたちが反応する。 「ゆっ、おねえさんゆっくり寝てたね!」「ゆっくりしていってね!!」 「このくだものおいしーよ!!」「おねえさんもゆっくりたべる??」 「ちーんぽっ!」「まだあるよー、わかるよー」 30匹はいるだろうか。それだけの数のゆっくりが一度に話しかけてくるのでうるさいし聞き取れない。 「うるさいねぇ。ま、好きに食べていいよ。どうせすぐに取ってこれるし」 天界には山ほどの桃の木があるのだ。それはもう飽きるほどに。 寝てる間に食べられたのはちょっと癪だけど、わざわざ怒ることもない。 しかしすぐに取ってこれると言う言葉にゆっくりたちは目敏く反応する。 「ゆっくり取ってきてね!!」「むきゅ、ゆっくりまってるね!」 「ゆっくりはやくもってきてね!!」「やさしいおねえさんはゆっくりできるね!」 やはりうるさかった。相手をするのも面倒なので「あー、はいはい」とあしらうとその場を立ち去ろうとした。 その時いつも持ってる瓢箪、酒が無限に湧く瓢箪が手元に無いことに気がついた。 「あれ? どこかにやったかな」 見回すが見つからない。 くるりと回って後ろも見る。あった。 ただし瓢箪の周りにもたくさんのゆっくりが群がっていて 「次はれいむの番だよ!!」「ちがうよ!まりさの番だよ!!」 瓢箪の口から湧く酒を奪い合っていた。中にはすっかり出来上がったものもいて、地面にぺにょーんとだらけたゆっくりもいた。 「そんなとこにあったのか。ほら、返してもらうよ」 萃香は特に気にする様子もないし、特に怒りもしないで瓢箪をゆっくりの群れから取り上げる。 「ゆっ!! つぎはまりさの番だよ! 取らないでね!!」 「ゆっくり返してね!!」「それはゆっくりたちがみつけたものだよ!!」 生意気な事を言ってるけど萃香は無視した。こいつらと問答しても聞かないだろうから。 しかしゆっくり達は続ける。 「ゆっくりできないならそれを置いてでてってね!!」 「ちちちーんぽっ!」「むきゅむきゅむっきゅ~ん!!」 「どろぼうはでてってね!!」 萃香を罵倒しながら体当たりしてくる。ゆっくり達は酔っていて普段よりぷにぷにボディなので衝撃はほぼ0だ。 ここまでされると流石の萃香もいらついた。 なんでただの饅頭如きにこの鬼である私が攻撃を受けてやらないといけないのか。 「いい加減やめなさい。お前たち達が私に敵うわけないよ」 萃香は妖気を発しながら威圧するように話しかける。普通はこれで大抵の妖怪や妖精は震えて逃げ出す。 しかしゆっくりは萃香の想像より遥かに下回る鈍感さをもっていた。 「みんなでかかれば倒せるよ!!」 「ゆっくりしんでね!!」「ゆっくりたおれてね!!」 体当たりしてくるゆっくりが増えてきた。ここら一帯に集まっていたゆっくりが萃香を取り囲んで攻撃する。 反撃しない萃香をみて体当たりが効いてるとでも思っているのだろうか。 舐められたものだ。 そう言えば霊夢も神社の食料を求めて集まるこいつらの相手にはうんざりのようだった。 そしてここは神社の裏、霊夢のためにも灸を据えてやることにした。 「身の程を教えてあげた方がいいようだねぇ。この鬼の力、特別に見せてあげるよ」 萃香はスペルカードを発動する。 萃符「戸隠山投げ」 萃香の能力で周囲の石や岩を萃(あつ)めて敵へぶん投げる豪快な技だ。 ただし今回萃めるのはゆっくり達だ。 3mほど宙を浮かんだ萃香の右手に妖力が集中する。そしてその右手に向って辺りの空気が吸い込まれていく。 「ゆゆーっ!?」「すいこまれるよー、わからないよー」 「ゆっくりできないよ!やめてね!!」「むぎゅぅぅ」 事態を把握できないゆっくり達が萃香の右手の先に為すすべなく萃められていく。 全部で50近くいたそれはものの数秒で直径2mぐらいの饅頭の塊になった。 恐らく中央付近のゆっくりはすでに潰れて餡子と皮だけの存在になっているだろう。 「そらっ、技はまだこれからだよ!」 萃香は腕をぐるぐる回す。これからゆっくり達の塊を投げるための勢いづけだ。 「ゆ”ーー!!」「ゆ”っぐりでぎない”~!!」 「まわずのゆ”っぐりじでぇぇ!!」 塊の外側にいるゆっくりはまだ話せるようで悲鳴を上げる。 「ゆっくりしたい? ならゆっくりさせてあげるよ」 この時萃香は自分が楽しんでいることを感じた。 こいつらの悲鳴を聞いてると何とも言えない気持ちになるのだ。 このまま地面に勢いよく叩きつけたらどんな反応を示すだろう。 それを早く見たくなった萃香はいつもより本気でゆっくり達の塊を地面に向けて投げ付けた。 ゆっくり達が投げられたことを認識するよりも前にゆっくりの塊が地面に激突する。 「ゆ”べっ!!」「ぅ”あ”!!」 途端に弾ける大量の餡子。そして断末魔。 ゆっくり達の塊のうち、4/5は一瞬にして餡子と化した。 なんとか形を保っているのは地面に激突したのと逆側にいた残り1/5のゆっくりだった。 それでも激突した衝撃が伝わって驚愕の表情のまま絶命しているものがほとんどだった。 「ちょっとやりすぎたみたいだねぇ」 そう言う萃香だったがその顔は綻んでいた。 「ゆっ、ゆ”」「あ”あ”あ”」 苦しそうな声を出すゆっくり達。だがその数はたったの四匹。ゆっくり霊夢一匹とゆっくり魔理沙の二匹、ゆっくり橙が一匹だ。 しかし焦点が合わないもの、皮が破れて餡子が他の死んだゆっくりたちの餡子の湖に流れ出ているもの、 舌が取れてしゃべれないもの、嘔吐しているものと無傷のものなど一匹もいない。 萃香はそのうち二匹を天界へ持っていくことにした。他の二匹はおそらくこのまま死ぬだろうからほうっておく。 天界の一角に萃香は現在住んでいた。天人の娘と闘って得た場所だ。 一面に花が咲き誇り、天敵となるものもいない。楽園と呼ぶにふさわしい場所だったが萃香にとっては少し退屈だった。 そこで今回生き残った二匹のゆっくり、れいむとまりさを飼って退屈を紛らわせる道具にしようと考えていた。 死にかけのゆっくりに桃をしぼって与えると少し元気を取り戻したようだ。 目立った外傷もないようだし後は放っておけば治るだろう。 「さて、今度こそ神社に遊びに行くかねぇ」 萃香はいくつかの桃をゆっくり達の周りに置くと、桃をもって再び神社へと遊びに行った。 翌朝 萃香は天界へ再び戻ってきた。 ゆっくり達は治ったかなと思いながら見に行くと、それはもう元気に跳ねまわっていた。 ゆっくり達は萃香を見ると元気に挨拶する。 「「ゆっくりしていってね!!」 萃香は少し驚いた。自分に何の恐れも抱いてないとは。 まあゆっくりは記憶容量が小さいのだ。きっと昨日のは忘れたのだろう。 「おねえさんれいむたちのおうちに何の用?」 「いっしょにゆっくり出来る??」 さらに萃香の場所を自分の場所だと主張する。 困ったものだ。これはお仕置きしないといけないな。 萃香に芽生えたSな感情がふつふつと湧き上がる。 「何か勘違いしてるみたいだねぇ。ここはお前たちのおうちじゃないよ」 「ちがうよ!! れいむとまりさのおうちだよ!!」 「ゆっくりできない人はゆっくりでていってね!!」 「そうかい。口で言って分からないなら体で覚えてもらうしかないねぇ」 昨日と同じようにゆっくり達を自らの腕へと萃める。 「ゆっ!?」 この吸い込まれる感覚は味わったことがある。なんだっけ? 確か昨日こんなことがあったような。 「!! や、やめてね!!」 「あ”あ”あ”!! ゆっぐりざせでぇ!!」 ゆっくり達は思い出す。この吸い込まれる感覚。その後起きた惨劇。 「さて、この後はどうなると思う」 萃香は今にでも投げるぞと示すように腕をくるくる回す。 「やめてえぇぇ!! まわざないでぇ!!」 「ごめんなざいぃぃ!!!」 命乞いの声に何かが満たされるのを感じた萃香はさらに続ける。 「何がごめんなさいなのか言ってごらん?」 「わだじだちがわるがったよ”おぉぉぉ!!」「ゆるじでぇぇぇ!!」 「じゃあここは誰のおうちだい?」 「れ”いむだちのおうぢぃぃ!!」 「まだ分からないのか。じゃあ投げるよ!!」 「「お”、お”ねえざんのおうぢでずうぅぅ!!」」 「分かったなら降ろしてあげる」 ぽとりと地面にゆっくりを落とす。目が回ったのかフラフラしている。 さてここで終えるのも勿体ない。もっとゆっくり達が自分を恐れる声を聞きたかった。 攻撃をすると簡単に潰れるからできない。楽しめないから。 どうしたものかと考えた結果、瓢箪から出る酒を使うことにした。 「ほら、元気が出る飲み物をあげるよ。口を開けな」 「ゆっ!飲み物! 欲しいよ!!」 「ゆっくり飲ませてね!!」 目が回ってフラフラしていたのはどこへやら。一瞬で元気になりぴょんぴょん跳ねておねだりを始める。 「じゃあ口を開けて並びな」 二匹は言葉に従って並ぶと、口を大きく開けてこっちを見上げてくる。 「ゆっくりはやく飲ませてね!!」 「はいはい、すぐ飲ませるよ」 昨日のは甘い桃の酒。 しかし今回は酒豪の萃香も満足できるほどの強い酒だ。こいつらには刺激が強いだろう。 瓢箪からゆっくりの口へと酒が流し込まれる。次の瞬間ゆっくりの顔が固まる。 急いでもう一方のゆっくりにも飲ませる。 「ゆ”ばばばびぃ!!」「がふっがふっ」 今までにない反応だ。これは楽しい。 ゆっくり達は口の中の燃えるような感覚に転げまわった。 「大袈裟だねぇ。でもおいしいだろ?」 「お”いじっ、ぐない”ぃ!!」 「がら”っ、い”の、い”や”、だよ”おぉ!!」 涙を流しながら萃香を睨めつける。 「ゆっぐりあやまってね!!」「ひどいおねえさんとはゆっくりできないよ!!」 「なに、これからゆっくり出来るよ。体がポカポカしてきたろ?」 「ゆ?」 言われてみると確かに体がポカポカしてきていた。それになんだかゆっくりした気分になってくる。 そう言えば昨日も甘い味のする水を飲んだときも同じようにゆっくりした気分になった。 もちろんこれはお酒を飲んだからなのだが、ゆっくり達には不思議だった。 「おねえさん、ゆっくりできるよ!!」「ぽかぽかー!!」 「それはよかった。ならもっと飲むかい?」 笑顔でゆっくり達に酒を勧める萃香だったが、その眼は観察をする眼だった。 ゆっくり達は隠された悪意に気付かない。今はとにかく不思議な水をもっと飲みたかった。 「ゆっくりのませてね!!!」「でもからくないのにしてね!!!」 「ふふっ、いいよ。辛くない酒だね」 今度は瓢箪から甘いお酒を出す。しかしアルコール度数は高い。 萃香はゆっくり達を限界まで酔わせてみようとしていた。 「「ごーく、ごーく、しあわせー!!」」 それから十分近くゆっくり達にお酒を飲ませ続けていた。 明らかに体積より多く飲ませているが、まだ飲んでいた。 「さて、そろそろいいかな」 ゆっくりの様子を見て萃香は二匹に酒を与えるのを止める。 「ゆ~? もっろのませれよぉ」 「まだのめるよ! もっとのませてね!!」 ゆっくり魔理沙はべろべろに酔っ払って舌が回らないうえ、見るからにふらふらで右へふらふら左へふらふら揺れていた。 それに対してゆっくり霊夢は比較的まともだ。 しかしこれはお酒の強さとは関係がない。 萃香はゆっくり魔理沙に与える酒だけ強いお酒、ゆっくり霊夢には1%程度のお酒とも言えない程度のお酒を飲ませ続けていたのだ。 「な~にひてんのぉ!! まりふぁはもっろのめるぉ!!」 「その前にいいことしてあげるよ」 萃香はゆっくり魔理沙を後ろから両手で抱えるとゆっくりと揺さぶる。 以前、人形遣いがゆっくりにやっていたことの真似ごとだ。 ゆっくり達はこうやって揺さぶってやると発情するらしい。普段なら。 しかし泥酔状態の今ならどうか。 萃香自身は酒で潰れないので体感的には分からない。 だが前に神社で宴会をしたときに見たからどうなるか大体知っている。 珍しく酔っ払った霊夢を悪ふざけで揺さぶったら…いや、言うまい。 あの後しばらく霊夢は口を利いてくれなかった。 ともかくだ。酔っぱらった状態で頭を揺さぶるとひどいことになる。 ゆっくり魔理沙も揺さぶられて、性と酔いの二重の快感に酔いしれていた。 しかし少しずつ、いや急激にそれは込み上げてくる。 口をだらしなく開けていたゆっくり魔理沙が「うぐっ」と言ううめき声とともに口を必死に閉じる。 絶えず襲ってくる吐き気。 「んぐっ、むぐっ」 頬を中心にゆっくり魔理沙が膨らんでくる。吐いてしまうのを必死で耐える。 とても苦しいのだろう。涙が滝のように流れている。 「ゆっくりできるでしょ。ほらほら、もっと揺さぶってあげるよ」 「んむぐぅぅぅ!!」 ゆっくり魔理沙は「ゆっくりできないよ! すぐにやめてね!!」と言いたいがそれはできない。 口を開けたら途端に中身を吐き出してしまうだろうから。 しかしいくら吐き気を我慢しても萃香は揺さぶる手を止めない。 我慢の限界ももうすぐそこだ。 その時ゆっくり霊夢はと言うと呑気に 「まりさばかりゆっくりさせてもらってずるいよ!! れいむもゆっくりさせてね!!」 ゆっくり魔理沙が苦しんでいるというのに酔ったゆっくり霊夢はそれに気付かない。 ゆっくり霊夢は早くゆっくり魔理沙と代わって欲しくて萃香の周りをぐるぐると飛び回る。 萃香はゆっくり魔理沙に耳打ちする。もちろんゆっくり霊夢に聞こえぬように。 「お前のお友達はひどいね。苦しんでるお前を助けようともしない」 「んぐ~~!!」 お前が苦しめてるんだ。と萃香に避難の目を向けるゆっくり魔理沙だったが、 確かにゆっくり霊夢は自分を助けようとしない。それどころかぴょんぴょん跳ねてゆっくりしている。 ゆっくり魔理沙は絶望してしまった。そして絶望が諦めを誘発した。 「ぅごぇえぇぇぇぇぇぇ!!! お”べええええええ!!!」」 逆流する餡子に耐えきれず、ゆっくり魔理沙は餡子を吐いてしまう。 それは半端な勢いじゃない。明らかに生きるのに必要な分の餡子まで出してしまうほどだ。 美しい天界の花畑を汚らしい餡子がびちゃびちゃと汚していく。 汚したのはそれだけではない。 萃香の周りを跳ねまわっていた霊夢にもそれはかかってしまう。 「あ”あ”あ”! なにこれぇぇ!!?」 「ははは! 友達の餡子だよ。ほら、すごい勢いだよ?」 ゆっくり魔理沙から吐き出される餡子をさらもゆっくり霊夢へと浴びせる。 「や”、や”めで~~! ま”り”ざがしんじゃうよおお!!」 「そうだねぇ。このままだと死ぬかもねぇ」 そう言って未だ吐き続けるゆっくり魔理沙を地面へと置く。 「ほら、餡子を戻してやらないと死ぬよ?」 「がほっ、げぼっ、じに、だぐな”い、おげっ」 吐きながらも死にたくないと訴える友達をゆっくり霊夢は放っておけるわけがない。 ゆっくり霊夢は餡子まみれになりながらも、吐き出された餡子を自らの口に含んでゆっくり魔理沙に 口移ししようとする。 しかし、口移ししたそばからそれ以上の量の餡子が吐き出されるのだから意味がない。 「まりざぁ、あんこを飲んでよぉぉ!! しんだらゆっくりできない”よぉ!!」 だがゆっくり魔理沙は答えない。答えられない。 すでに瞳に光はなく、口から出るのは餡子だけだ。 「まりさぁぁぁ!! あんこをのんでぇぇぇぇぇ!!」 ゆっくり霊夢はバカの一つ覚えのように餡子をゆっくり魔理沙の口へと運び続けていた。 何度かそれを続けるとようやくゆっくり魔理沙が餡子を飲み込んだ。 「ゆっ!」 ゆっくり霊夢はこれでまりさが回復すると希望を持てたのだろう。 「もっとのんでね!! あんこいっぱい戻したらまた一緒にゆっくりしようね!!」 次々と餡子をゆっくり魔理沙の口へと運び続ける。その動きはさっきよりずっと生き生きしていた。 萃香はその様子をずっと見続ける。その顔には満足が浮かんでいた。 (これは確かに面白いねぇ。あの人形遣いや氷の妖精なんかが熱心になる理由がよく分かる) ゆっくり魔理沙はとっくに死んでいた。餡子を体に詰めなおしたところで生き返りっこない。 萃香はそれも分からずに回復するかもと、希望にすがるゆっくり霊夢をニヤニヤ眺めていた。 ゆっくり霊夢が二度とまりさが動かないと理解したのは、半日も経ってからだった。 ゆっくり霊夢はぴくりとも動かなかった。 まりさが死んだことを理解したくないのに死んだことを理解してしまったゆっくり霊夢は、何も考えたくないと現実から逃避してしまっていた。 「あーあ、こんなになっちゃったらもうつまらないや」 反応がないと虐めがいがない。萃香はゆっくり霊夢を掴むと神社へ遊びに行くことにした。 (このゆっくりは霊夢と一緒に食べるとしよう) そして帰りにゆっくり達を調達しよう。 次は何してみようか、何をさせたら面白ういだろう。 この先のことを考えると楽しくて仕方がない萃香であった。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2906.html
※普通のゆっくりでないゆっくりが出てきます ※普通のゆっくりがいじめられます ※お兄さん分や人間分はありません ※おうち宣言があります ゆっくり勝負 「「ゆっくりしていってね!」」 とある巣穴の前。一組のゆっくりが穴に向かって声を上げる。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさだ。 「「ゆゆ、ゆっくりしていってね!」」 中からも声がして、こちらもまた一組のゆっくりが出てくる。 外から来たゆっくりと同じれいむとまりさだ。 「「きょうからここはれいむとまりさのおうちにするよ!」」 定番のおうち宣言をする外のゆっくり。 「「なにいってるの?ここはれいむとまりさのおうちだよ!」」 それに反論する巣のゆっくり。 お互いに自分の主張を繰り返すが中々勝負が付かない。 「そうだ!ゆっくりしょうぶでどっちのすかきめるよ!」 ふと、外のれいむが提案した。 「ゆっくりしょうぶ?」 「どっちがゆっくりしてるかくらべるんだよ」 「どうやるの?」 「まりさとまりさ、れいむとれいむがおたがいにゆっくりしているかみるんだよ」 互いに向かい合った状態になり、どれだけ長くゆっくりしていられるか競うという事らしい。 ゆっくりできないと言う=ギブアップらしい。 「ゆゆーん、それなららくしょうだよ、まりさとれいむいじょうにゆっくりしたゆっくりはいないんだよ!」 「このしょうぶ、れいむたちのかちだね!」 余裕綽々な顔をする内ゆっくり。 元からそんな顔をしているという突っ込みは敢えてスルーしておく。 そんなこんなでゆっくり勝負がスタートした。 以下、巣のゆっくりを内れいむ・内まりさと 外から来たゆっくりを外れいむ・外まりさと呼ぶことにする。 開始10分 「ゆっくりしてるね!」 「まりさもゆっくりしてるね!」 思う存分ゆっくりする内まりさと内れいむ。 「ゆっくりぽかぽかだね!」 「ゆっくりきもちいいね!」 対する外れいむと外まりさも非常にゆっくりしている。 しかしまだ勝負は始まったばかりなのだ。 1時間後 「ゆっくりできてるね!」 「これなられいむたちのかちだね!」 すっかり勝利を確信している内れいむ、内まりさ。 「かぜがきもちいいね!」 「ゆっくりできるね!」 内ゆっくりに負けないくらいゆっくりしている外ゆっくり。 この対決は長期戦になりそうだ。 3時間後 「ゆぅ、おなかすいてきたね」 「ごはんたべたいね」 内ゆっくりはどうやらお腹が空いてきた様だ。 顔が困り気味になってきている。 「ゆ、つらそうだね、ゆっくりできないの?」 「れいむたちはこんなにゆっくりしているのにね」 外ゆっくりは2匹とも表情一つ崩さずゆっくりしている。 「ゆゆ!?ぜんぜんそんなことないよ、れいむたちはゆっくりしてるよ」 「そうだよ!そっちこそそろそろこうさんしないの?」 やせ我慢をしつつ反論する内ゆっくり達。 それでも根を上げないところ、まだまだ勝負が続くようである。 5時間後。 両者とも未だにゆっくりしている、らしい。 というのも内ゆっくりが相当辛そうだからである。 「ゆぅ、ゆぅ…まだまりさたちはゆっくりしてるよ」 「いいかげん、こうさんしてね…」 対する外ゆっくりは顔色一つ変えない。 「どうみてもゆっくりしてないね!」 「あたらしくまりさたちがそのすをつかってあげるからおとなしくゆっくりしてないってみとめてね!」 形勢は外ゆっくりに傾きかけていた。 その時である。 「かわいいまりさぁぁぁぁぁ!!!みつけたわぁぁぁぁぁ!!!」 「「ありすだぁぁぁぁぁ!!!」」 内ゆっくりが悲痛な叫び声を上げる レイパーアリスの乱入である。 「んほぉぉぉぉぉ!!!!」 「やべでぇぇぇ!!!ずっぎりぃぃぃぃ!!!」 「いやぁぁぁぁ!!すっきりぃぃぃぃぃ!!!」 「べとべとする〜」 「きたないよ〜」 あれよあれよという内に4匹のゆっくりに纏わり、ありすは4回すっきりした。 1匹につき1回である。 それに満足したありすは「またあいてしてあげるわね!」と満足そうに去っていった。 この時内ゆっくりに変化が起きた。 頭からにょきにょきと蔓が生えて、小さな丸いものが蔓からでき始めたのである。 本来なら悲しみに暮れる所である…のだが。 「そ、そうだ!あかちゃんはゆっくりできるんだよ!」 「あかちゃんができたれいむたちはゆっくりできてるんだよ!」 「あかちゃんができてないれいむとまりさはゆっくりできてないね!」 ここぞとばかりの反撃である。 赤ちゃんはゆっくりできるという考えから外ゆっくりに対して優位に立ったと思ったのだ。 「それじゃ、そのあかちゃんがゆっくりできてるかゆっくりしながらみるよ!」 「まだまだまりさたちはゆっくりしてるよ!」 勝負がついたと思いきや、まだまだ決着に時間は掛かりそうだ。 8時間後。 辺りはかなり暗くなってきている。 この時間は捕食者の活動時間だ。 「ゆ、ゆぅ、ゆっくりねむくなってきたよ…」 「だめだよれいむ!ねたらまけちゃうよ!」 見るからにやせこけはじめている内ゆっくり。 子供に餡子を吸われているのだろうか、食事も摂っていない事もくわわりかなりゆっくりできていない状態である。 「ゆぅ…ねむいよ…」 「もうすこしゆっくりしたらおうちがてにはいるよ!だからゆっくりしようよ!」 対する外ゆっくりも眠気に追いやられ始めている。 このまま引き分けで終わり、かと思われたその瞬間。 再び状況は変化する。 「うーうー」 「「れみりゃだぁぁぁぁ!!!」」 またも叫び声を上げる内ゆっくり。 それも無理は無い。捕食種のれみりゃが現れたのだから。 「あまあまー」 「やべてぇぇぇぇ」 かぷりと内れいむの蔓に生った赤ん坊を口に含んでいく。 「れいむのあかちゃんがぁぁぁぁ」 「れいむとまりさはさわいでゆっくりできてないね!」 捕食種がいるというのに外ゆっくりは意に介さないでゆっくりしている。 「こっちもあまあま…うー、こっちはふかふかー」 れみりゃは外ゆっくりの感触が気に入ったようで暫く掴んだりはむはむして戯れていた。 「れみりゃはゆっくりしてるね!」 「こんなゆっくりできるれみりゃがゆっくりできないなんていうゆっくりはゆっくりできてないね!」 「ばだだよ、ばだでいぶだぢばゆっぐりでぎでるよ!」 「おぶぢばわだざないがらね!」 自分の家を守ろうとする内れいむと内まりさ。 ここまで来るともう誰が見てもゆっくりできていないと見えるのだろうが、そんな事を考えている余裕も無かった。 それでもギブアップ宣言をしていないのでまだ勝負は続くのだ。 絶対に勝つ、内ゆっくりはその為だけに耐えていた。 空腹にも無理矢理すっきりさせられた事に対しても、れみりゃに赤ちゃんを食べられた事も。 いつしかれみりゃは空の彼方へ飛び去っていった。 それでもまだゆっくり勝負は決着がつかない。 10時間後。 「ゆ、ゆがぁぁぁぁぁ!!!」 「もうゆっくりしょうぶなんていいよ!ゆっくりつぶれてね!」 遂に内ゆっくりがキレた。 内まりさは外まりさを押しつぶそうとし、内れいむは外れいむに体当たりをする。 「ゆ!?ゆっくりできないんだね?こうげきするなんてれいむとまりさはゆっくりできてないんだね!」 突然の体当たりに驚きながら、しかし全然効いていないらしくケロッとした顔で外れいむは問い詰める。 「ゆっくりしてるよ!ゆっくりしながらゆっくりできないれいむとまりさをおいだしてるんだよ!」 もう滅茶苦茶な言い分である。 殆ど体力が無いながらも、しゃにむに内まりさと内れいむは外ゆっくりの2匹に攻撃を仕掛け続けた。 「ゆっくりできてないまりさとれいむはつぶれてね!」 これでゆっくりと巣に帰って食事してぐっすり眠れる。 この2匹はそう考えていた。 そして―決着の時がついにきた。 ポタ。 ポタ。 ポツッポツッ ザーザーザーザー 空から落ちてくる無数の雫。 雨の到来である。 「あめさんがふってきたよ!」 「あめさんはゆっくりできないからゆっくりおうちにかえるよ!」 今まで色々な物に耐え、無茶な事を繰り返してきた内ゆっくりもこれには耐えられない。 何しろ雨に当たり続けていると死んでしまうのである。 レイパーのすっきりも捕食者のむーしゃむーしゃもまだ助かる道はあった。 しかし雨となれば話は別である。 もう勝負は付いた、そう思い込んでいる2匹は攻撃を止めて巣穴に戻ろうとして―外ゆっくりに弾き飛ばされた。 「たいあたりしてくるくせにゆっくりしてるなんてれいむはうそつきだね!」 「あめさんをゆっくりできないなんていうなんてまりさはくずなんだね!」 「どぼじでいぎでるのぉぉぉ!!!」 内ゆっくりは潰したと思った外ゆっくりのピンピンした姿に顎をゆがーんと空けていた。 「たいあたりやのしかかりくらいでれいむたちがしぬとおもったの?ばかなの?」 「それにあめさんがゆっくりできないっていったね?だからこのおうちはまりさたちのものだよ!」 勝負は元々巣に住んでいたゆっくりの負けで幕を閉じた。 この雨の中、散々体力を奪われた2匹は、巣を奪い取った2匹が見守る中どこに行く事も出来ず溶けていった。 「あめにとけるなんてだめなゆっくりなんだね!」 「おうちでおみずさんをぬきだそうね!」 この2匹がゆっくり勝負で勝てた理由。 それはスポンジだからである。 勿論スポンジケーキではない、台所や風呂場で使われているスポンジである。 それでもふてぶてしい顔やふんぞり返るような本能はゆっくりそのままだ。 勿論互いのスポンジをすーりすーりしながら交換する事で赤ちゃんだって作れる。 違いはあるが些細な事ばかり。 食べられる事はない、水に溶けない、ぱちゅりーは赤ちゃん用スポンジだったりする。洗剤で泡立つ。 アストロンで金だわしになる、火にすこぶる弱い、食べ物には困らない、潰しても元に戻る。etc。 そんな、饅頭ではないゆっくり。 あとがき 当時真っ二つにされたら分裂するゆっくりを見て、中身が不思議に思った人はどれだけいるのでしょう。 今でこそ餡子が一般的ですが、その前にこうだったのかな、と思う所を少し入れ込んでみたり。 そこに今のゆっくり分を混ぜ込んでみたらこんなのになりました。 普通のゆっくりではすぐ潰してしまう鬼意山でもきっと全力で虐待できることでしょう。 あ、お風呂場にあるスポンジってすぐカビますよね! 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり ゆっくり畑 益ゆっくりと害ゆっくり ゲスの行き着く先 つかれたまりさ 噂・ゲスの宿命 決断
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/246.html
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 もう日にちをまたぎかけている時間になってようやく自分の家に帰り着いた俺を迎えたのは聞きなれない声だった。 視線を落とすとそこには饅頭にも大福にも見える奇妙な生き物(?)がいた。 知っている…こいつらは最近幻想郷で大量発生し、田畑はおろか、民家に押し入って食料を勝手に食い漁る害悪生物だ。 友人も被害に遭い、散々な目にあったと愚痴っていた。 誰が初めに呼んだかは知らないが、「ゆっくり」という呼称で知られている。 いや、そんなことはいい。 何故俺の家にこいつらがいるのか、それが問題だ。 疑問はすぐに解ける。ベランダの窓が開きっぱなしだ。朝洗濯物を干したとき、うっかり鍵を閉め忘れていたようだ。そこから進入したのであろう。 「ゆ?」「おにいさんだれ?」「ゆっくりしようよ!!」等とゆっくりどもは口々にしゃべり出す。 見たところ親子連れなのか、母親らしき霊夢種が1匹いるほかは、魔理沙種も混じった子供が12匹ほどいた。 魔理沙種が混じっているのはおそらくつがいの魔理沙種がいたのだろう。いない理由はれみりゃ種にでも襲われたと言うところか。 まあいい、とっとと追い出すか、と思った矢先、俺は見てしまった。 俺の机の上には、たくさんの思い出の品があった。亡き母が生前使っていた手鏡、父が買ってくれた玩具、寺子屋の先生がくれたそろばん、 子供の頃、向日葵畑の怖いけど優しかったお姉さんがくれた押し花。 手鏡は投げて遊んだのか、壁に当たって粉々になっていた。 玩具も同様だ。もう原型が残っていないほど滅茶苦茶になっていた。 そろばんは今も子ゆっくり魔理沙たちが振り回している。振り回しすぎて折れたのか、珠がボロボロ落ちている。 押し花は餌になったのだろう、今も子ゆっくりがむしゃむしゃむさぼっている…。 「うっめ!めっちゃうっめ!ハフハフ!!!」 呆然と立ち尽くす俺の前に、母ゆっくりと残りの子ゆっくりが図々しくもやってきてこう言った。 「お兄さん、おなかがすいたよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ここはみんなのいえだよ!ごはんをもってこないお兄さんはでていってね!」 そのとき、俺の中で何かが切れた。 俺は怒りに任せ、母親ゆっくりを思い切り踏みつけてやった。 「ゆ”」短いうめき声が聞こえた。しかし俺は容赦する気はない。 何度も!「ゆ”」何度も!「ゆ”」踏みつけてやる!「ゆ”~~~!!!」 「も”う”や”め”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」母ゆっくりがくぐもった声で悲鳴をあげる。最高の気分だ。 「お”か”あ”さ”ぁ”ぁ”ん”」「と”う”し”て”こ”ん”な”こ”と”す”る”の”ぉ”ぉ”」子ゆっくり共が泣き叫びながら訴える。 しかしそんなことは知ったことではない。思い出を無惨にも壊された俺の怒りはまだ収まらない。 子ゆっくりは母ゆっくりを助けるためのか、懸命に体当たりをしてくる。 「ゆっくりやめていってね!」「おじさんやめて!」「ゆっくりやめて!」 蚊ほども効かないがな。 その後も母ゆっくりを踏みつけたりしたが、そろそろ飽きてくる。それでもまだ収まらない。 その間も子ゆっくり達は母親を救おうと、体当たりを何度もしてきた。しかし魔理沙種はあろうことか、体当たりに飽きたのか 母親の危機なのにふてぶてしくも眠っている。なんてやつだ。 「ゆ、おかあさんたいへんなんだよ!!」「おきてよぉおお!!」と霊夢種が起こそうとしても「しつこいんだぜ!!」と取り合わない。 魔理沙種は生き残るためなら家族、親友でも見捨てるほどとは聞いたが、これは見ていて腹立だしいものだ。 母親を踏みつけたり叩きつけたりするのも飽きたし、俺はこの憎憎しい子ゆっくりの方も責めることにした。 もちろん、さっきから何度も体当たりをしてうっとおしい子ゆっくり霊夢の方も一緒に。 どうやって責めようかと考えたとき、あるものが目に映った。 それは以前、とある河童の発明家が製作して売っていた加熱装置だ。 左右に電熱線があり、中に食べ物を入れるとこんがりと焼いてくれるというものだ。 しかも中にはスライド板がある。これは温度調整のためにあるとか言っていたが、邪魔だったので普段は取り外していた。 しかしそれを見て俺に妙案がひらめく。ゆっくりどもを地獄に叩き落す妙案が…。 まず俺は母親ゆっくりをすぐそばにあったダンボールの中に閉じ込める。 「お兄さん、うごけないよ、ここからだして!!!」という声は無視だ。 さらに子ゆっくりを捕まえ、黒い袋の中に閉じ込める。霊夢種と魔理沙種は分けておく。 「くらいよー」「ゆっくりさせてよぉ!」「うごけないよ、ゆっくりできないよ!!」と騒ぐのも気にしない。 そしてその間に加熱装置のスライド板を取り付けることにする。 思ったより取り付けるのに時間がかかり、取り付けが終わったときにはゆっくりどもの騒ぎ声は聞こえず、寝息が聞こえる。 のんきなものだ…と思いながらも、寝ている今なら手間がかからないので、仕上げにかかる…。 翌朝。 「ゆ…」「ゆ、ゆっくりうごけるよ!」 6匹ゆっくり霊夢たちは目を覚ました。そこは昨日の暗くて狭い空間ではない。 狭いけどそこは立派な空間だ。十分余裕のあるところ。 母親や兄妹であるまりさがいないのはすこし気になったが、所詮は饅頭。今自分達があの恐ろしい人間の手を逃れたのだと思い、 その喜びを分かち合い、そして新しい自分達の家があることが嬉しかった。 「きょうからここがれいむたちのいえだね!」「みんなでゆっくりしよう!」 しかし、4面ある壁の一つ、ガラスの壁を見て、それはすぐに絶望に変わった…。 ガラスの壁の外、そこにはガラスケースに閉じ込められ、苦しそうにしている母ゆっくりの姿があったのだ…。 「お、おかあさーん!」「どうしてーー!!」「そんなんじゃゆっくりできないよーーー!!」 「おお、起きたかクソ饅頭ども」 その声を聞いたゆっくり霊夢たちは恐怖に震える…。そう、昨日母親を恐ろしい目に合わせた、あの人間の声だった。 そしてやっと気づく。この空間には出口がないということに。自分達はこの人間によって閉じ込められたということに。 「た”し”て”! た”し”て”よ”ー!!」「お”う”ち”か”え”る”ー!!」 霊夢たちは必死だった。必死で訴えた。懇願した。 「うるさい!!!」人間が大声で叫び、大きな衝撃を与えてきた。霊夢たちは恐怖で震え、何もいえなくなった…。 と、壁の向こうから何か聞こえてくる… 「ゆ……」「ゆ、ゆっくりうごけるんだぜ!!」 それは兄妹であるまりさの声だ。壁の向こうにいるのか、壁に向かって叫ぶ。 「ま、まりさーー!!」「そこにいるのー!?」 「れ、れーむ!?」「ここはどこ!?」「わたしたちたすかったの!?」「よがっだね! よがっだね!」 間違いない、壁の向こうにはまりさがいる。安堵するゆっくり霊夢。 「まりさも起きたか…ちょうどいい」人間の声がしてビクッ!と反応する。 「お、おかあさーん!」「た”し”て”! た”し”て”よ”ー!!」「お”う”ち”か”え”る”ー!!」 ガラスの外の光景に気づいたのか、まりさ側からも恐慌の声が聞こえてきた。 そしてまた衝撃を与えられ、静かになる。これから何が起こるのか、恐怖が蘇り、震えだす…。 「いいかお前ら、俺は優しいからどちらかだけおうちに帰してやる。」 その声を聴いた瞬間、まりさ側から大きな声が上がる 「ま、まりさだけをたすけてくれだぜ!!」「れいむなんかたすけなくていいよ!!」「まりさだけゆっくりさせてね!!」 信じられないという顔をする霊夢たち、そう、霊夢たちは知らなかったのだ。 まりさは生き残るためなら家族でも見捨てると。 「や”、や”た”ーーーーー!!」「た”し”て”! れ”い”む”た”ち”を”た”し”て”よ”ー!!」 たちまち恐慌に陥る子ゆっくりたち。醜く言い争うその姿は、とても家族には見えなかった…。 と、とたんに部屋が暖かくなってきた。 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」と先ほどの恐慌を忘れてのんきにはしゃぐゆっくりたち、 しかしそれも2分もすると… 「ゆ?あっあついよ!!」「あつい、あついよーーー!!」「あついぜあついぜ、あつくてしぬぜ!!」 部屋の温度が急上昇し、とても耐えられる温度ではなくなったのだ。 逃げ場をなくすゆっくりたちに、外から人間の声が聞こえる。 「いいかゆっくりども、俺は焼き饅頭が食べたいんだ。どっちか片方だけを焼いて食べることにした。 さっきも言ったが片方だけは助けてやる。その壁を押せば相手を焼いて自分は助かるぞ。さあ、頑張ることだな」 その声を聞いたとたん、まりさたちはいっせいに壁を押し始める。 「れいむはゆっくりしね!」「まりさたちはゆっくりさせてもらうんだぜ!!」「ゆっく、さっさとしね!!」 そして壁を押され、熱源に近づいてしまった霊夢たちはその身を焼かれることとなる。 「あ”ち”ゅ”い”よ”お”お”お”お”お”お”お”!!!」「た”す”け”て”え”え”え”え”え”え”!!!」 「や”へ”て”え”え”え”え”え”え”!!!」 まりさはその声を聞いて勝ち誇り、壁から離れる。 すると今度は反撃とばかりに、霊夢たちが壁を押し始める。 「ひっく、まりさはゆっくりしね!!」「まりさなんてゆっくりやかれてね!!」「れいむたちをゆっくりさせてね!!!」 そして今度はまりさたちがその身を焼かれる。 「い”や”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」「た”し”け”て”え”え”え”え”え”!!!!」 霊夢は仕返しが終わったと思い満足し、壁から離れる。 すると今度はまりさのほうが反撃とばかりに壁を押し始めるのだ。 まりさが壁を押して離れ、れいむが壁を押して離れ、そしてまりさが、れいむが…… この争いはいつまで続くのだろう…… 「くくく…うまくいってるな……」 俺は醜い争いを続ける子ゆっくりどもをみて笑う。なんとも楽しい気分だった。 昨日の夜のうちに、俺は加熱装置の中に子ゆっくりどもを閉じ込めた。 もちろん、今起きているように霊夢とまりさは分けて。魔理沙種は生き残るためなら(ryので、この状況のために分ける必要があったのだ。 平然と霊夢を見捨て、壁を押し出すまりさ。それに触発、あるいは必死で生き残ろうと壁を押し返す霊夢。 何もかも完璧だ。家族といいながらもそれを見捨て、醜い争いを演じる饅頭どもを見て俺は気分が晴れていた。 そして俺の傍らには、ガラスケースがある。 そう、中には母親ゆっくりが閉じ込めてある。朝のうちに用意したのだ。 母親ゆっくりは涙を流している。わが子を助けてあげたいのだろう。だが口も昨日の内にホチキスで止めてあり、くぐもった声しか出せず、 俺に助けを請うこともできない。身動きの取れない状態で、わが子が醜くも殺しあう光景を見せ付けられるしかないのだ。 俺はさっき、片方だけ助けるといったがもちろんそんな約束守る気などない。 生き残った方も焼き饅頭にしてやるのだ。それも母親の目の前で。 俺はわずかな希望をも打ち砕かれたとき、母親ゆっくりがどんな顔をするかを想像し、なんともいえない快感を感じた… FIN
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/972.html
※独自設定が沢山あるんだぜ! ※人間さんは最後にちょろっと出て来るだけだぜ! ※虐待?それ何なんだぜ? ※『ちーと』なゆっくりが出てくるんだぜ!苦手な人はごめんだぜ! ※とんでもなく長いんだぜ!これで中編なんだぜ? ※『お尋ねゆっくり』の続きなんだぜ!……遅くなってご免なさぁああいい! 書いた奴:一言あき 雪に閉ざされた森に生える一本の老木、その根元に開いた空洞の中にそれは居た。 食糧を兼ねた干し草を厚く敷き詰めた上に鎮座するのはれいむとまりさの番である。 そしてれいむの額には、八人もの実ゆを鈴生りに生やした茎が伸びていた。 「れいむのあかちゃん、はやくうまれてきてね!いっしょにゆっくりしようね!」 「まりさのあかちゃん、はやくうまれてくるんだぜ!いっしょにゆっくりするんだぜ!」 この番は先程すっきりーっ!したばかりだった。当然、茎だって生えてきたばかりである。 茎で生まれる実ゆのにんっしんっ期間は大体三日程度。それくらいの時間を掛け、文字通りゆっくり生まれて来るものだ。 「……まだうまれないの?ゆっくりしすぎだよ……」 「ほんとなんだぜ!ゆっくりしないでいそいでほしいんだぜ!」 だというのに、この番は赤ゆの誕生を待ち切れないらしい。 次第に呼びかけの内容が変わっていく。否、それはもう口汚い罵声であった。 「はやくうまれてね!!れいむたちをゆっくりさせてね!!」 「これじゃまりさたちがゆっくりできないんだぜ!!さっさとうまれろぉおおっ!!」 最初のゆっくりした呼びかけとは程遠い罵声に急かされたのか、ゆっくりと大きくなっていく筈の実ゆがビデオの早回し映像のように急速に育ち始める。 青いプチトマトのような外見がみるみる大きくなり、皺が寄り始めたかと思うとあっという間に閉じた目と口に変化していく。 へたの部分が上下に分かれ、下の部分が細かく枝分かれしながら伸びていき、髪の毛に変わる。 残った上の部分が黒や赤に染まり、黒いものは円錐状に広がって帽子になり、赤いものは髪の毛に絡まってリボンになる。 そして苦悶の表情を浮かべた実ゆが一斉に身震いを始め、茎の一番先に生っていたまりさが干し草の上に着地した。 「……ゆ、ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 怯えを含んだ初めてのご挨拶。 その舌足らずの拙い言葉を聞いた途端、殺伐とした気持ちが消えていくのをれいむとまりさは感じていた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 先程まで罵声を浴びせていたとは思えない程の変わり身で、生まれ落ちた我が子を祝福する。 「ゆ~♪とってもゆっくりしたおちびちゃんだよ!」 「まりさににてとってもゆっくりしてるんだぜ!!」 そして次々に生まれ落ちてくる赤ゆ達。やはり怯えながらのご挨拶に、両親は心からゆっくりした笑顔で応える。 両親のゆっくりした姿に安心したのか、赤ゆ達もお互い「ゆっくち!ゆっくち!」と姉妹を祝福し始めた。 そして茎の根元で震えていた最後の一人がぽとりと落ちる。両親も姉妹も、末っ子を祝福しようとそちらに目を向けた途端、固まった。 「ゆっちちちちぇいっちぇちぇ!」 妙に甲高い声で舌足らずに過ぎるご挨拶をしてきたのは、恐らくまりさ種なのだろうと思われるゆっくりだった。 頭頂付近に集中した金髪の上にちょこんと載った明らかにサイズの足りていないお帽子。 寸胴の茄子を思わせる体躯を盛んに捻り、唾液を撒き散らしながら「ゆっちちぇ!ゆっちちぇ!」と締まりのない笑顔で舌足らずのご挨拶を繰り返している。 お帽子もある。金髪さんも生えている。愛らしい笑顔も浮かべている。 だが、そこに居たのは姉達とは似ても似つかない化け物だった。 「ゆぎゃぁああああ!!なんなのこれぇええええ!?」 「なんなんだぜ!?これはいったい、なにごとなんだぜ!?」 「「「「りぇいみゅのいもうちょぎゃぁああああ!?!?」」」」「「「まりしゃのいもうちょぎゃぁあああああ!?!?」」」 「……ゆっ?」 一斉に騒ぎ出す両親と姉達を、不自然に大きな目で不思議そうに見る末っ子まりさ。彼女は先天的に足りないゆっくり、『未熟ゆ』であった。 栄養が足りないため、餡子の継承が不十分だったため、単純にゆっくり出来なかったため。『未熟ゆ』が生まれて来る理由は諸説あるが、未だ特定はされていない。 はっきり言えるのは、そうして生まれた未熟ゆは例外無くゆっくり出来ないこと、それだけだ。 奇声を上げて奇行に走る末っ子まりさ、余りにゆっくりしていない姿に親まりさは『間引き』を決意した。 「ゆ、ゆっくりしていないげすなあかちゃんはせいっさいっするんだぜ!!」 「まって!まりさ!!」 だが、一気に踏み潰そうと力を溜める親まりさを親れいむが引き止めた。 「れいむ、どうしてとめるんだぜ!?このままじゃ、あかちゃんもまりさたちもゆっくりできなくなるんだぜ!?」 「……それでも、そのあかちゃんもれいむとまりさのおちびちゃんなんだよ。それに……」 れいむは視線を末っ子まりさに移す。相変わらず「ゆっちちぇ!ゆっちちぇ!」と奇声を上げて跳ね回る姿はゆっくり出来ていない。 「……ねぇ、まりさもれいむも、うまれるまえのあかちゃんになんていったか、おぼえてる?」 「ゆ?…………っ!!まさか、そのせい、なんだぜ?まりさとれいむが、あかちゃんをゆっくりさせなかったから……?」 れいむの言葉からまりさが恐る恐る出した推論に、沈痛な表情で首を縦に振るれいむ。 そう、この八人姉妹のうち、末っ子だけが未熟ゆだった理由は明らかだった。 即ち『早産』と『栄養不足』である。 通常三日かけるにんっしんっを僅か一時間程度に縮めたのだ。むしろ先に生まれた姉達に異常がないのが異常であろう。 本来均等に行き渡る筈だった餡子が姉達に優先された結果、そのツケを末っ子まりさが背負ったのだ。 「……まりさ。このおちびちゃんはすきでゆっくりできないわけじゃないよ。れいむたちと、おちびちゃんたちのせいでこうなっちゃんだよ。 ……だからゆっくりできるよう、りっぱにそだてるのが、れいむたちのばつなんだよ、きっと」 「……わかったんだぜ、れいむ。このおちびちゃんもゆっくりそだてよう。いまはむりでも、いつかいっしょにゆっくりしてくれるかもしれないんだぜ」 「そうだね、そうなるようにゆっくりがんばろうね!」 ゆっくり出来ない子供を育てることを決意したまりさとれいむが、改めて未熟ゆに向き直る。 奇行に走っていた未熟ゆがそれに気付いて、舌足らずな甲高い声で「ゆっちちぇ!」と呼び掛けてくる姿に両親はありったけのゆっくりを込めてご挨拶を返した。 「「まりさ、ゆっくりしていってね!!」」 『お話しゆっくり 中編』 先行する集団を追いかける後続集団の、その最後尾に陣取る化け物まりさは不審に思っていた。 (おかしいのぜ、どすがぜんぜんはんげきしてこないのぜ。 ……それに、なんでいつまでたってもどすにおいつかないのぜ?) ドスの鈍足に誰も追い付かない、そんなことは有り得ない。ならば、なぜ? そこまで考えが及んだ時、化け物まりさの脳裏にある可能性が浮上した。 (……もしかして、おいつかないんじゃなくて、おいつけない、ってことのぜ?) ドスの足が速いのではなく、群れの足が遅いのでもなく、ドスに追い付けない理由があるとするなら……? そんなもの、罠に決まっている! そう考えると、反撃もせずひたすら逃げるだけのドスの行動にも説明が付く。 ほら、畦道の両脇で生い茂る草むらなど、ゆっくりが身を隠すには絶好の場所ではないか! 「ゆげぇっ!?しまったのぜ、これはどすのわななのぜ!!ぜんぐん、とまるのぜぇええええ!!」 慌てて全軍停止を命じる化け物まりさ。しかし先行していた集団には命令が届かす、ドスを追いかけたままどんどん引き離されて行く。 と、不意にドスが振り向き、先頭集団に向けてドススパークを放った。畦道一杯に広がる光芒が、先頭集団を灼き尽くす。 「ゆっ!?あぶなかったのぜ!あれはきっと、にげながらきのこさんをむーしゃむーしゃしていたのぜ!!」 間一髪、ドスの企みを見抜いた化け物まりさの言葉に、周囲のゆっくり達が一斉に安堵の溜め息を吐く。 もしも化け物まりさが居なかったら、今頃自分達もあの光で消し飛ばされていただろう。そう考えると、化け物まりさの聡明さが頼もしく思える。 先頭集団を吹き飛ばしたドスは、逃げもせず同じ場所に突っ立ったままだ。策を見抜かれて呆然としているのだろうか? 今度は慎重にドスに近付いていく化け物まりさの軍勢。落とし穴とその後の混乱で全体の三分の一程を失ったが、まだまだ数の優位は崩れない。 動かないドスを無数のゆっくり達が取り囲む。そして化け物まりさが文字通り化け物じみた、壮絶な笑顔を浮かべてドスの正面に歩み出た。 「……よくもさんざんてこずらせてくれたのぜ。でも、それももうおわりのぜ」 「…………」 化け物まりさの勝利宣言に、ドスは無言を返す。化け物まりさの軍勢は、それを降伏宣言と受け取った。 「ゆあぁああん?なんなんだぜ?いまさらいのちごいなんてきくわけないんだぜ!?」 「よくもれいむをゆっくりさせなかったね!しゃざいとばいしょうをせいきゅうするよ!あまあまをたくさんよういしてからしんでね!!」 「どすったら、ほんとうにいなかものだわ!!こうなったらどすでいちにちじゅうすっきりーっ!をするしかないわね!!」 「…………」 口々に罵声を浴びせる群れにも、冷めた目を向けるだけで反論もしない。 やがて言いたい事を言い尽くしたのか、ある程度群れの狂乱が収まった頃合いを見計らって、化け物まりさが宣言する。 「よーくきくのぜ!!まりささまをゆっくりさせなかったつみ!!まりささまをだまそうとしたつみ!!けらいをころしたつみ!! ゆっくりぷれいすをひとりじめしたつみ!!どれいのくせにどれいをもったつみ!!ぜんぶあわせて、どすをしけいにするのぜ!! ……さいごになにかいいのこすことはあるのぜ?まりささまはやさしいから、まけおしみくらいはきいてやるのぜ」 それを聞いたドスが、始めて口を開く。 「……奴隷?まりさ達には奴隷なんて居ないよ?」 「とぼけるんじゃないのぜ!!にんげんをどれいにしていたのはわかっているのぜ!!」 化け物まりさの言葉に、軽く目を見開いたドスは直後、腹を抱えて笑い出した。 「あっはっは!!人間さんを、奴隷にする、だって!?出来る訳無いでしょう、そんな事!!!」 「なにをわらっているのぜ!?まりささまをばかにするのもいいかげんにするのぜ!?!? ……もういいのぜ!!どうせ、どすはここでしぬのぜ!!」 最初はドスも捕らえて死ぬまで扱き使うつもりだったが、気が変わった。こんな生意気で無礼なドスなんか、生かしておくだけ無駄だ。 死刑を執行するべく、全軍に命令を下そうとする化け物まりさ。 「みんな、しけいしっ…………!!な、なんなのぜこのおと!?」 だが、声を張り上げる寸前に聞こえてきた羽音に、餡子の隅がくすぐられる。餡子の奥底に封じた筈の、ゆっくり出来ない日々の記憶が甦る。 羽音は空から聞こえてきた。即座に空を見上げる化け物まりさと、つられて空を仰ぎ見る群れのゆっくり達の目に、『ソレ』は姿を現した。 「「「「「「「「「「れ、れ、れみりゃだぁああああああ!!!!!」」」」」」」」」」 そこに居たのはゆっくりれみりゃであった。 実はこの群れはれみりゃと戦った事が無い。森の奥に隠れ住んでるらしいれみりゃは数に勝る群れを恐れ、一度も姿を見せた事が無かった。 そう、『数の暴力』こそが化け物まりさの群れの強さ。捕食種にして天敵たるれみりゃすら寄せ付けない、あの森を化け物まりさの天下に染め上げた絶対強者の原理。 だから……、『百匹近いれみりゃの大群』という自分達以上の『数の暴力』に出会ったのは、これが初めてだったのだ。 胴付き、胴無し取り混ぜての混成軍、しかも胴付きはそれぞれ手に鋤や鍬、鎌や熊手、干し草用のフォークなどを持って構えている。 餡子の奥に刻まれた恐怖に怯え、群れの士気はあっさり砕け散った。 「どおしておひさまがでてるのにれみりゃがいるのぜぇ!?!?」 狂乱する群れの中にあって、化け物まりさだけは違う点に着目していた。 確かに、餡子をちりちりと焦がす恐怖はあるものの、れみりゃは一度やっつけた事があるのだ。なら今回だって勝てるに違いない。 しかし、太陽光に弱い筈のれみりゃが日中から活動している事だけは納得できない。 思わず口に出してしまった疑問、その答えは目の前に居るドスからもたらされた。 「……何言ってるの?お日様ならとっくに沈んでるよ?」 「なにいってるのぜ!?こんなにあか……る………い……………?」 ドスの言葉に激昂する化け物まりさが、ある事に気付く。 ここに到着した時、お日様は既に傾いていた。橙色に染まった夕日に照らされるお野菜を、確かに見た。 季節は晩秋、いや既に初冬に入っている。この季節の夕日ならとっくに沈んでいておかしくない。 (なのに……なのに!なんでこんなに、あかるいのぜぇ!?!?) そう、ドスを追いかけている間、畑は常に光に満たされていた。太陽が地平線に沈み、辺りが夕闇に覆われても、畑は煌煌と照らされていたのだ。 広大な畑の中心、収穫を終えて休耕している畑が作る空き地で、スポットライトを浴びるように照らし出される化け物まりさとドス。 そしてドスは、推理を明かす探偵のように、あるいは判決を下す裁判官のように語り始めた。 「人間さんはね、夜でも昼間みたいに明るくする事が出来るんだよ。ゆっくりには絶対に真似できないけどね」 ドスの語りに、化け物まりさは応じない。黙りこくったまま、ひたすらドスを睨み付けるだけだ。 周囲のゆっくり達も雰囲気に呑まれたのか、騒ぎ立てる事無くドスの言葉を聞いている。静まり返った畑に、ドスの声とれみりゃの羽音だけが響き渡る。 「貴女達が来る事はとっくに気付いていたんだよ。でも、まりさ達がお願いして全部任せてもらったんだよ。……その代わり、ちょっとしたお手伝いを頼んだんだ。」 そこで言葉を区切り、ドスは化け物まりさの軍勢を睥睨する。 「人数の多い貴女達を、まりさ達だけじゃ撃退出来ない……、だから援軍をおねがいしたんだよ。人間さんが捕まえていたれみりゃ達に、ね」 その言葉を聞いた途端、一斉にざわめき出す軍勢。化け物まりさも、驚愕を禁じ得なかった。 人間が捕まえていた?これだけの数のれみりゃを!?ならば、人間とはどれ程居るというのか!! 驚愕にざわめく一同を余所に、ドスの語りは続く。 「れみりゃは、お日様に当たると死んじゃうからね。だから、まりさが囮になって逃げ回ってたんだよ。 落とし穴で逃げ道を塞いで、吹き矢で狙撃して逃げられなくして、畑で待ち伏せして。そうやって、時間を稼いだんだよ。 ……お日様が沈んで、れみりゃ達が動けるようになるまで。それが、まりさ達の『作戦』だったんだよ」 そこまで言うと、ドスはまた口を噤む。 静まり返った畑に沈黙が下りる。耳が痛くなる程の静寂を破ったのは、化け物まりさの叫び声だった。 「……う、うるさいのぜぇえええええ!!へりくつこねてないで、さっさとしぬのぜぇええええ!!」 まりさは怒っていた。先程までの怒りが霞んでしまう程激怒していた。 ドスの言葉通りなら、最初から最後まで自分達はドスと人間に弄ばれていた事になる。 ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!!たかがれみりゃ百匹程度で、優位に立ったつもりか!? 「れみりゃなんか、おうさまにかかればひとひねりなのぜ!!なんびきいようが、おうさまにかてるわけないのぜ!!」 その言葉につられたのか、話の内容に着いていけずに呆然としていた群れが再び騒ぎ出した。 「そーだそーだ!!れいむたちはれみりゃなんかより、ずっとずっとつよいんだよ!!わかったらさっさとしんでね!!」 「まりささまのおうごんのあしわざをくらって、いきているゆっくりなんかいないんだぜ!!あとでこうかいしても、おそいんだぜ!!!」 「たまにはれみりゃもいいわぁああああ!!ありすのとかいはなぺにぺにですっきりーっ!しましょうねぇええええええ!!」 姦しく騒ぎ立てるが、誰もそこから動かない。威勢が良いのは口先だけで、内心では皆れみりゃに怯えているのだ。 そんな情けない配下の姿に我慢が出来なくなったのか、ドスに向かって化け物まりさが猛然と襲い掛かる。 「ゆっくりしないでしねぇええええぅぶびゃっ!?!?!?」 だが、その渾身の一撃はドスに届く寸前、横殴りの衝撃に阻まれる。化け物まりさが勢い良く地面に叩き付けられ、餡子を吐きながら無様に転がって行く。 いつの間にか、ドスを守るように一匹のれみりゃが立ちはだかっていた。手に持った鋤を振り抜いた姿のまま、化け物まりさを睨みつけている。 「……ありがとう、れみりゃ。でも、まりさなら平気だったよ?」 化け物まりさの突撃はそれ程速くもなかったし、大きさだって標準的なゆっくりと大差ない。武器を銜えている訳でもないので、ドスの脅威にはならなかっただろう。 ドスの言葉に、れみりゃは頭を振って答える。 「……それはわかってるんだど。それでも、れみぃはあいつをゆるせないんだど」 そう言うれみりゃの視線を追い、ドスは「ああ、そうか」と納得した。 「……そう言う事なられみりゃに任せるよ。でも、とどめは刺さないでね。それで良い?」 「……あたりまえなんだど。まかせるんだどぅ」 ドスの提案に正面を向いたまま頷くれみりゃ。油断無く鋤を構える視線の先で、よろよろと化け物まりさが身を起こす。 「よくもやったのぜ!!もうてかげんはなしなのぜ!!ないてあやまるならいまのうちなのぜ!!!」 「むだぐちたたいてないで、さっさとかかってくればいいんだど。……それとも、くちさきだけなんだど?」 「むきぃいいいいいいっ!!いわせておけば、もうゆるさないのぜぇえええええっ!!」 「ゆるさなければ、どうするんだど?れみぃはいつでもあいてするんだど?」 お互いに挑発し合いながら、化け物まりさは焦っていた。 (なんでなのぜ!?なんで、すきがぜんぜんみえないのぜ!?) ドスならドススパークを撃つ為のキノコの咀嚼、まりさ種やちぇん種なら飛び掛かる寸前の溜め、レイパーありすならぺにぺにを突き入れる為に腰を引く一瞬。 何らかの行動を起こす前に挟まれる予備動作を見逃さず、その後の行動を予測して先手を打つ。人間の武術で言う『後の先』を取る戦い方こそが、化け物まりさの必勝法だ。 先程からの挑発もその為。れみりゃの出方を計り、先に行動させることで『後の先』を取ろうとしたのだが、挑発の最中でさえれみりゃに隙らしい隙が見出せない。 視線は常に化け物まりさに固定され、鋤を構える手はぴくりとも動かず、唯一口と羽根だけが休まず動いている。 (……このままじゃらちがあかないのぜ。ここはひとつ、せんてをうってみるのぜ!) それは今までの定石から外れた行為ではあるが、れみりゃとまりさの実力差は歴然としている。今更遅れをとる筈が無い。 じり、じり、と罵り合いを続けながら間合いを詰めていく。体半分程歩みを進めた辺りで、まりさは鋤を構えるれみりゃの右腕に力が篭るのを感じ取った。 (みぎかひだりか、どっちかからなぐりかかるきなのぜ!?だったらうしろににげるのぜ!!) 咄嗟の判断に従い、まりさは背後へ飛び退く。直後、紙一重でれみりゃの鋤が空振りする、筈だった。 「……ゆっぎゃぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!?!?!?!?!?」 化け物まりさが悲鳴を上げてのたうち回る。転がる度に餡子がどくどくと流れ出るのが見えた。 横薙ぎに払われたれみりゃの鋤がかすり、顔の皮を切り裂いたのだ。傷痕だらけの顔に真新しい傷が刻まれ、そこから餡子が漏れ出ている。 幸い傷は浅く、流れ出る餡子も致命傷には程遠い。だが、餡子が流れるような大怪我から離れて久しかったまりさにとって、それは堪え難い激痛だった。 (み、みえなかったのぜ!?れみりゃにいつなぐられたのか、ぜんぜんわからなかったのぜ!?) しかしそれ以上に、れみりゃの攻撃が見えなかった事が化け物まりさを慄然とさせた。 ドススパークでさえ避けてみせたまりさが見切れない程の高速で振るわれた鋤、そしてそれを為したれみりゃ。 違う。このれみりゃは、何かが違う。まりさの餡子に、未知なる敵への警鐘が五月蝿い位に鳴り響く。 と、再びれみりゃの右腕に力が篭る。それに反応したまりさが飛び退くよりも速く、鋤が再び皮を切り裂いた。 「ゆびゃぁあああああっ!?!?どうしてかわせないのぜ!?つ、つぎはかわすのぜ!!」 餡子を撒き散らし、痛みに泣き叫びながら、化け物まりさはれみりゃに挑み続けた。 一方、れみりゃは何も特別な事はしていなかった。間合いに踏み込んできた化け物まりさを、鋤で小突いているだけである。 尤も、その鋤は人間から見ても驚愕する程の速さと鋭さをもって振るわれていたのだが。 この村では少々変わった研究が行われていた。『ゆっくりの農奴化』である。 ゆっくりは農家にとって害獣だ。とはいえ、ゆっくりには農耕の概念を持つゆうか種がいる。 ゆうか種の胴付きであるのうかりん種に至っては、人間とほぼ変わらない高度な園芸技術を持つものさえいるのだ。決して不可能な事ではない。 しかし、ゆうか種は希少種だ。のうかりんに至っては更に稀少で、通常七桁、個体によっては八桁で取引されている。そんなもの、必要な頭数を揃えるだけで破産が決定してしまう。 そこでこの村が目をつけたのがれみりゃ種であった。 れみりゃ種は捕食種の中で唯一、通常種に区別されるゆっくりだ。胴付きであろうとそれは変わらず、野生では良く見受けられる。 太陽の光に弱いので日中は行動できないが、捕食種に相応しい力と『すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる』と称する道具を使う程度の小器用さを備えているので、農耕の概念さえ植え付ければ良い農奴になるだろう。 そう考えた村の有志達が、野山で採集してきたれみりゃの品種改良に着手したのが五年前。以降、細々と続けられてきた研究の成果こそ、このれみりゃ達であった。 このれみりゃはこの村で生まれた第五世代目のれみりゃである。この世代は寿命こそ三年前後と短いが、知性身体能力共に通常のれみりゃよりかなり高い。 なにより、ゆっくりの中でもれみりゃ種が特に鈍いと言われる反射神経の向上には目を見張るものがあった。 予備行動から行動に移るまで一切無駄無く最速で動く、人間で言う『無拍子』に近いれみりゃの動作が、まりさの『後の先』より速かった。 言葉にすればたったそれだけでしかない。それが、化け物まりさにとって最悪の相性だっただけの事。 何より、このれみりゃには『絶対敵わない理由』がある事を、化け物まりさは知らなかった。 れみりゃの右手に力がこもるのを見て、まりさは必死の勢いで飛び退く。 だが、飛び退く為にあんよに力を込めた時には、既にまりさの左側面にまで鋤が迫る。 さくりと軽い音を立て、鋤の刃が頬を撫でるように浅く斬りつけた。 「ゆびぇええ゛え゛え゛え゛っ゛!?みえないのぜぇっ!?ぜんぜんみえないのぜぇえええええっ!?」 新しく付けられた傷口から餡子が滲み出す。じくじくした痛みに苛まれながらも、化け物まりさは見えない攻撃を見切ろうと躍起になっていた。 自分は『ゆっくりのおうさま』なんだ!だかられみりゃなんかに負ける訳が無い! この根拠の無い自信がまりさの心を奮い立たせる。最早まりさの視界には目前のれみりゃしか映っていない。 だから、背後で配下の軍勢が囁き合う声は一切耳に入らなかった。 「……どういうことなんだぜ?なんで、おうさまがおされているんだぜ?」 「あっちのれみりゃよりよわいよね?おうさまって、あんなによわかったっけ……?」 「……なんだか、おうさまよりあっちのれみりゃのほうがとかいはにみえるわ。どうしてかしら?」 小さな疑問の声は、次第に大きくなっていく。 背後で広がるざわめきにも気付かずに、挑戦を続ける化け物まりさと迎撃するれみりゃ。 そして決定的な瞬間が訪れる。 「……しまったど!!」 鋤を振るうれみりゃの表情が焦りの色に染まる。 それを訝しみながらも必死に飛び退くまりさの横っ面に、鋤の腹がクリーンヒットした。 「ゆ゛ぎゃ゛びぃ゛い゛い゛い゛い゛っ゛!?」 目測を誤り、まりさを真っ二つにしてしまう軌道で振るわれた鋤を、れみりゃが咄嗟に腕を返して腹の部分で殴り飛ばしたのだ。 空気抵抗により勢いを殺された一撃はそれでも充分な威力を持ってまりさを弾き飛ばし、地面に叩き付ける。 その拍子に化け物まりさが被っていた帽子が脱げ、隠れていた頭頂部の禿頭が曝け出された。 「……ゆっ、ばでぃざのおがざりざんが………!!」 ひらひらと空中を舞い、帽子は化け物まりさ達の激闘を遠巻きに見ていた群れの方へ流れていく。 れみりゃとの勝負を一旦置き、まりさは帽子を追いかける。 ゆっくりと流される帽子に向かって大きく跳ね飛び、見事帽子を空中でキャッチしたまりさはそのまま群れの目前に着地した。 「…………ば、ばでぃざのおがざりざん………もうなぐずのばいやなのぜ………………ゆっ?」 ひらひらした帽子は、息を吹き込むなどして一度広げないと被りにくい。 そのセオリーに従って息を吹き込むべく深呼吸をしようとした処で、化け物まりさはようやくその視線に気付く。 まりさが、れいむが、ありすが、群れのゆっくり達全てが、化け物まりさのことを見つめている。 その表情には一律に『信じられないものを見た』という思いが浮かんでいた。 「……なんなのぜ、そのめは?まりささまにさからうつもりのぜ?」 生意気な視線を向けてくる配下のゆっくり達に凄む化け物まりさ。傷だらけの顔面も相まって、気の弱いものなら確実に泣き出す形相である。 にも拘らず、群れのゆっくり達は無言のまま。 いつもなら『ごべんなざい!』だの『ゆるぢでぇ!』だのと泣き叫んでしーしーを漏らしながら従うのに、微動だにしない。 「……な、なんなのぜ!?まりささまは『おうさま』なのぜ!?おうさまのいうことがきけないのぜ!?」 何か、致命的なことが起こりつつある。内心の焦燥を押さえつつ、化け物まりさは虚勢を張った。 ……そんなまりさの虚勢に沈黙を破って応えたのは、軍勢の先頭に立っていたれいむだった。 「……どうして……」 ふるふると震えながら俯いていたれいむが、呟くように漏らす。 その言葉に首を傾げる化け物まりさへ、顔を跳ね上げたれいむが叩き付けるように叫ぶ。 「どおしてまりさがそこにいるのぉおおおお゛お゛お゛お゛っ゛!?」 「ゆ゛ゆ゛っ゛!?!?」 突然叫び出したれいむの勢いに怯むまりさに、それまで黙っていた軍勢が一斉に騒ぎ出した。 「なんでだぜぇえええ!!なんでおうさまがまりさなんだぜぇええええ!?!?」 「ありすたちをだましてたのねぇええええ!?!?このいなかものぉおおお!!」 「おうさまのうそつきぃいいい!!でいぶのおちびちゃんをかえせぇえええ!!」 口々に非難の言葉を投げ掛ける軍勢の面々。だが、化け物まりさには避難される覚えは無い。 「な、なにをいってるのぜ!?まりささまはまりささまにきまってるのぜ!?まりささまがおうさまなのぜ!?」 狼狽えながらも、化け物まりさは軍勢に向かって弁明する。 お飾りが無いので一時的に認識出来なくなっただけだろうと当たりをつけての行動だったが、返って来た答えはまりさの想像を超えていた。 「ちがうんだぜ!!まりさたちのおうさまは『れみりゃ』なのぜぇええええ!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛!?!?!?」 何だそれは!一体いつ、まりさが『れみりゃ』だなんて言ったんだ!? お帽子は確かにれみりゃのものだったが、一人称は『まりさ』だったし、自分の武勇伝も『まりさはれみりゃをたおしたのぜ!!このおぼうしがしょうこなのぜ!!』と語っていたのだ。 自分がれみりゃだ等と名乗った覚えも無いし、第一空を飛べないまりさをどうやってれみりゃだと思えたのだろうか。 化け物まりさの胸中はそんな疑問で溢れていた。 化け物まりさの群れは所謂ゲスで構成されている、群れというより犯罪ゆ集団と呼ぶべきものだ。 ゲスにもピンからキリまで色々あるが、ピンとキリの間には物凄い格差があった。 ピンのゲスは知能ではなく、力で押し切るタイプだ。当然餡子脳の中身も救い様のない馬鹿揃い、そんな奴らにお飾り以外での個体認識が出来る筈が無い。 キリの方は少し複雑だ。お飾りを使った詐欺等の常習犯である彼女達は、化け物まりさが『れみりゃ』では無い事を何となく察している。 だが彼女達はそれに気付きつつも敢えて『自分達の長はれみりゃである』と思い込んでいたのだ。 れみりゃに率いられた自分達はきっと特別なゆっくりに違いない、そう思う事で周囲を見下し、よりゆっくりする為に。 胴無しなのに会話が出来るのは特別なれみりゃだから、お空を飛べないのは他のれみりゃと喧嘩して羽根を無くしたから、自分達を食べないのは自分達が優秀だから。 明らかに無理があるこじつけで、無理矢理自分を騙していたのだ。『まりさ』という一人称を聞かなかったことにしてまで。 しかしそんな自己暗示も、どんな餡子脳であっても否定出来ない証拠を突付けられて尚、自分を騙し続けることなど出来なかった。 化け物まりさの失策は三つある。 れみりゃの帽子を被ったままれみりゃに挑んだこと、お飾りを失った状態で自分がまりさであることを暴露してしまったこと、そしてその状態で高圧的に接したこと。 まりさの『後の先』を成り立たせていたのは帽子のおかげであった。まりさの帽子をみたゆっくりは『れみりゃ』への根源的な恐怖に縛られ、動きが鈍る。 だから、本来の帽子の持ち主であるれみりゃには『後の先』は通用しなかった。それどころか、死臭漂うお帽子を見たれみりゃは、それが殺されたれみりゃのものである事に気付いて激怒した。 一撃では殺さない、じわりじわりと苦しみ抜いて死ね。それがれみりゃ達の総意であった。 帽子が脱げた後、自身を『まりさ』と呼んだのも致命的だった。 自分を『まりさ』と呼んだ瞬間、群れの認識は空の飛べない『れみりゃ』から帽子を失った『まりさ』へと書き換えられた。 そこへいつもの調子で居丈高に命令してしまったことで、群れ全員の餡子脳が『れみりゃ≠おうさま=まりさ』という事実を理解してしまったのだ。 全ては化け物まりさとゲスゆ達との認識のすれ違いが原因だった。 一斉に騒ぎ出したゲスゆ達に、れみりゃは五月蝿そうに顔を顰めてドスに問う。 「……もういいんだど?あいつら、ぜんぶたべちゃうんだど?」 「……もういいよ。でも、あのまりさだけは最後まで残してね」 ドスが頷くのを確認したれみりゃは手にした鋤を振りかざし、経過を空中で見守っていたれみりゃの群れに号令する。 「またせたんだど!!れみぃたちのすーぱー☆でなーたいむのはじまりなんだどぉ!!」 「「「「「「「「「「うっう~!!!!!」」」」」」」」」」 百匹近いれみりゃが鬨の声を挙げる。そして未だ騒ぎ続けるゲスゆ達に向かい、一斉に急降下を始めた。 「うそつきまりさはゆっくりしねぇ!!………ゆ゛わ゛っ゛!?!?」 化け物まりさをなじることに夢中だったゲスゆ達が気付いた時には、既にれみりゃの宴は始まっていた。 急降下してきたれみりゃに気付かずに罵倒していたれいむが、突然の浮遊感に戸惑う間もなく牙を突き立てられる痛みに襲われる。 その痛みに思わず上げた驚愕の叫びは、次の瞬間には餡子を啜られるおぞましい感触に対する絶叫に変わった。 「い゛や゛じゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!でい゛ぶの゛あ゛ん゛ござん゛ずわ゛な゛い゛でぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 「……う~☆あまあまだど~☆おぜうさまのでなーたいむだど~☆」 れいむがどんなに泣き叫ぼうが、れみりゃは餡子を啜るのを止めない。むしろ暴れるれいむを逃がさないように、掴んだ手に力を込める。 万力のような力で挟まれたれいむはどんどん楕円形に変形していく。押し潰されて内圧の高まった餡子が出口を求めてれみりゃの口内へ流れ込む。 「ぢゅ゛ぶれ゛り゛ゅ゛う゛う゛う゛っ゛!!ぼう゛や゛べでぇ゛え゛え゛え゛え゛!!でい゛びゅ゛じに゛ぢゃ゛ぐな゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛い゛ぃ゛い゛!!」 れいむの必死の懇願なぞ耳に入らずに餡子を啜り続けるれみりゃ。やがてれいむが『……ゆ゛っ゛……ゆ゛っ゛』と断末魔の痙攣を始めた頃、れみりゃはようやく牙を抜いた。 「……こいつはもうおわりなんだど~☆ぽーいするんだど~☆」 (……ゆっ?…………で、でいぶ、たすかったの………?) 餡子の殆どを失い、断末魔の痙攣を起こしながらもしぶとく生きていたれいむが一条の望みを見出す。 尤もそれは錯覚に過ぎなかったのだが。 「……でも、ぽーいするまえにとどめさすんだど~☆いかしておいちゃいけないんだど~☆」 (ゆ゛びっ゛!!!!!) 言うが早いか、れみりゃはその手に持った鎌をれいむの脳天に突き刺す。 わずかに残っていた中枢餡を貫き、あにゃるから先端を覗かせた鎌はれいむの命を縋った希望ごと奪い尽くした。 (ど……ぼぢで……でいぶが………ごんなべに…………もっど……………ゆっ………く……………ち……………) かつてとあるまりさを襲い、無理矢理すっきりーっ!させてにんっしんっし、子供を人質に扱き使った挙げ句、生まれてきたまりさ種を悉く潰してれいむ種の赤ゆだけを育てさせたゲスれいむは、 その罪に見合わぬ軽すぎる罰を受けながら、その幸運を最後まで理解しないまま、自分をゆっくりさせなかったこの世を逆恨みしながら果てた。 しかしそれは、他の百人余りのゆっくり達も同様であった。 「ばなぜぇえええええ!!ばでぃざばおうざばになるんだぁああああ!!おうざばに…………おう……………ざ……………ば…………」 化け物まりさを暗殺して次の『おうさま』になろうと目論んでいたまりさは、胴無しれみりゃに集られて餡子はおろか皮まで喰われてこの世から消滅した。 「いやぁあああああああ!!ありずのぺにぺにがぁああああああぁびゅっ!!!!」 赤ゆを専門にレイプしてまわり、その全てを殺してきたありすは鍬でぺにぺにを切り落とされた後、押し潰されて死んだ。 「ごべんなざぁああああいいい!!ぼうじまぜんがらゆるじでぇええええぎゅぼっ!!!」 何が悪いのかすら解らないまま、命乞いの為に謝り続けたれいむはフォークに串刺しになってくたばった。 その罪に反してあっさり訪れた死。尤も、それは決して慈悲などからもたらされたものでは無かった。 「……まだこんなにいるんだど~☆はやくしないとあさになっちゃうんだど~☆」 大きな熊手を振り回してゆっくり相手に無双していたれみりゃが大声で急かす。 そう、彼女達は単に時間を掛けたくなかっただけだった。今だ千人以上を残すゆっくりの大軍勢を始末する為に、最も効率の良い方法を選んだ結果に過ぎなかったのだ。 「い、いやじゃぁあああああっ!ばでぃざじにだぐないぃいいいいいい!!」 「でいぶだけでもだすかるよ!!まりざだぢはゆっくりじね!!」 「ごんなのどがいばじゃないぃいいいいいいっ!!!」 最前列に並ぶゆっくり達の凄惨な死に方を目撃した後続のゆっくり達が、先程の罵倒とは正反対の悲鳴を上げながら四方に逃げ出す。 だが、ゆっくり達の必死の逃避行は、それを先読みしたれみりゃの包囲網に阻まれた。 「どぼじでごごにでびりゃがいるのぉおおおおおっ!!……やじゃぁああ!!でいぶをだべないでごろじゃないでじにだくないじにだっ!!!」 「ま、まりさはおいしくないんだぜ!!だからみのがすんだぜ!!……ばなぜぇえええええ!!ばなじでぇええええぎゃっ!!!」 「ありずのがずだーどじゃんずわないでぇええええっ!!おねがいじまずぅううううう!!おねが………おね………お…………………」 あちらこちらで繰り返される醜い命乞いとそれを無視して振るわれる農具、そしてその度に飛び散る餡子。 休耕地となっていた畑は今、良質の肥料を啜る吸血鬼ならぬ吸餡地と化していた。 「ゆっへっへ、いまのうちなんだぜ!……そろーり……そろーり……」 とはいえ、千を越す大群を僅か百匹足らずのれみりゃで完全に包囲出来るものではない。 れみりゃ達の隙を突き、畑の茂みに身を潜めて生き延びたゆっくりも相当に存在していた。が…… 「こ、ここなられみりゃにみつからないよ!……そろーり……そろーり……ゆびゃっ!!」 ……折角隠れていても、動く度に大声で『そろーりそろーり』等と自分の居場所を教えていては意味が無い。 畑のあちこちで湧き上がる『そろーりそろーり』の大合唱に呆れながらも、れみりゃは駆除を続けていた。 「……まったく、おばかなやつらなんだぜ。『そろーりそろーり』なんて、あかちゃんのやることなんだぜ」 「そうね、しょせんいなかものだわ。とかいはなありすたちのむれにはやくぶそくだったのよ」 そんな間抜けな仲間達が駆除されるのを、畑に身を潜めながら冷たい目で眺めるもの達がいる。 このまりさとありすはどうにか畑に逃げ込むと、見つからないように周囲の葉や土で偽装して身を伏せていた。 「このままあさまでまつんだぜ。あかるくなったら、れみりゃたちもひっこむんだぜ」 「まぬけなどすだけなら、ありすのずのうぷれいでらくしょうだわ。とかいはなけいかくよね」 朝になれば、日光に弱いれみりゃ達は帰るだろう。厄介なれみりゃさえ居なければ、残ったドスなど問題ではない。 咄嗟に考えたにしてはそこそこ上手い策略である。れみりゃが手当り次第に畑を攻撃し始めたらどうするかとか、そもそも誰に翻弄されてこうなったのかを忘れてさえ居なければ。 そして、その程度の思惑はとっくにドス達が見抜いており、既に対策済みであることを除きさえすれば。 息を潜め、見つからないように縮こまっていたまりさとありすの頭上で羽音がする。 思わず声を上げそうになるのを必死に押さえて増々縮こまる二人の目に、空から下りてきた死神の姿がはっきりと映し出された。 「う~☆こんなところにいたんだど~☆」 「「どぼじででびりゃにみづがっでるのぉおおおっ!?!?!?」」 驚愕の叫びを上げる二人の目前で仁王立ちしていたのは、その手に角形ショベルを持った胴付きれみりゃだった。 まりさは混乱する。自分の偽装は完璧だった、バレる筈は無い。自分の所為で居場所がバレたのではない! 自分の所為でないのなら………ありすの所為に決まっている! およそ余人には理解出来ない思考回路に導き出された結論に従い、ありすを罵倒しようとしたまりさの体に鈍い衝撃が走る。 「ゆぎゃあああっ!?なにするんだぜぇ!ありすぅうう!!」 「だまりなさいいなかもの!まりさのせいでみつかったじゃないの!!」 まりさの体にぶつかってきたもの、それは同様の推理でまりさの所為だと結論付けたありすの体当たりだった。 自分の責任を認めないその発言に、まりさは激昂して反撃に出た。 「なにいってるんだぜぇえええ!!わるいのはぜんぶありすのせいなんだぜぇええ!!」 「ぷぎゃっ!?よくもやったわねぇええええ!!!!」 状況を忘れ、まりさとありすは睨み合う。 お互いがお互いを悪いと罵り合う喜劇のような喧嘩は、始まる前に幕を下ろした。 「……やかましいんだど~☆えいっ☆」 「じね『パァン!』え゛びゅ゛っ゛!?」「んほ『パァン!』お゛ぼっ゛!?」 まりさとありすが忘れていた観客、れみりゃが持っていた角形ショベルによって、ゆん生の終幕というおまけを付けて。 ショベルによって叩き潰され、餡子とカスタードを散らして爆ぜると言う派手な最期を遂げた二人に一瞥をくれ、れみりゃは右手の親指を立てたガッツポーズを明後日の方向に向ける。 いや、それはポーズではなく、戦友に向けた敬礼であった。 れみりゃが敬礼を向けた茂みの奥、そのまま飛び去っていく彼女を見送った『彼女』はようやく身を起こした。 「……おれいをいわれるのはすじちがいだよ。れいむは、これくらいしかできなかったんだから」 自嘲気味に呟くのは、先程のまりさ達など比較にならない程精巧な偽装を施されたれいむであった。 体が半分程収まる穴に潜み、迷彩が施された上に草や葉っぱを取り付けて草むらに見せかけた防水布を被る姿は、目を凝らしても周囲と見分けが付かない。 れいむが、否、れいむ『達』が請け負った役割、それは『見張り』である。 れいむ種には特に秀でたものがない。運動能力ではまりさに劣り、知性の面ではぱちゅりーに劣り、瞬発力ではちぇんに劣り、武力においてはみょんに劣る。 正直、戦いの役には立たない。だからといって、座して結果を待つなど考えられなかったれいむ達自身が発案し、『彼ら』の協力を得て完璧な偽装を施した上で作戦に投入されたのだった。 「……ゆっ!またみつけたよ、あんなところにかくれていたんだね」 防水布と塹壕の狭間から目を凝らしていたれいむが、数メートル先で帽子に葉っぱを刺して偽装したまりさを発見した。 即座に口に銜えた手鏡を器用に扱って、上空のれみりゃに合図を送る。合図に気付いたれみりゃを反射光で誘導し、まりさの目前に着地させた。 「ゆびぇえええええっ!?なんでばれたんだぜぇええええっ!?」 弾かれたように踵を返して逃げ出すまりさ。その後頭部に向け、れみりゃは手にした鉈を大きく振りかぶり、勢い良く投げ付けた。 「ゆ゛べっ゛!!!」 鉈は回転しながらまりさに吸い込まれるように命中する。お帽子ごと幹竹割りにされたまりさは左右別々に跳ねるような動きを見せた後、開きになって絶命した。 鉈を回収したれみりゃがれいむに向けて親指を立てる。そして再び空へ舞い上がった。 「……ありがとう、れみりゃ」 れみりゃ達がいちいち親指を立てて感謝を示すのは、れいむ達が『見張り役』に引け目を感じているのを知っているからだ。 れいむが出来る精一杯がこの程度だという現実が、『れいむは無能である』という事実の証明だとれいむ達は考えている。 だから『そんなことはない』、『れいむたちはじゅうぶんやくにたっている』と励ましを込めて、れみりゃ達は親指を立ててくれるのだ。 その心遣いが嬉しい反面、余計な気を使わせてしまう自分の無力が悔しかった。 「もっとつよくなりたいな……、れみりゃみたいにはむりでも、まりさみたいに……」 れいむの心に火が点る。小さく燻っているそれは、れいむが生涯を懸ける目標を得た証拠だった。 しかし今は将来の夢より目の前の現実である。再び見張りに戻ったれいむは、ふと先程潰されたまりさとありすの遺骸に目を向けた。 「……ありす、『やくぶそく』のいみ、まちがってるよ。……どのみちありすも『やくたたず』だったけど。れいむとおなじだね」 冷静にありすの言い間違いを指摘すると、れいむの意識はは未だ流餡の絶えない戦場に向かう。もう、ちらりともそちらを向くことは無かった。 「ゆぷぷっ!みんなばかだね!れいむはおりこうだから、こんなわなにだまされたりしないよ!」 空のれみりゃと畑に潜んだれいむ達による二重の監視網も完全ではない。絶対的な頭数が不足している以上、どうしても取りこぼしは出てきてしまう。 畑の茂みと畦道を縫うようにして上空のれみりゃから身を隠しつつ、畑のれいむ達にも見つからないように逃げるこのれいむも、そんな取りこぼしの一人だった。 「さっきからおかおがぴかぴかしたれみりゃがおりてくるよ!きっとくさむらのなかにみはりがいるんだよ! くさむらのなかにはいったやつらがころされたのもそのせいだよ!……だかられいむはくさむらにはいらないよ!」 驚くべきことに、このれいむは畑の監視網を読み切って対策まで立てていた。 草むらに隠れては上空を窺い、れみりゃの動向に注意しながら長時間同じ所に留まらず、草むらの中に居る見張りに見つからないよう畦道伝いに逃げる。 度胸と細心の注意が要求される高等なスニーキングミッションだったが、れいむは運良くどちらにも見つからずに逃げ延びることが出来た。 畑を照らす光も届かない薄暗がりに辿り着いたれいむはようやく胸を撫で下ろす。ここまでくれば占めたもの、後はあの森まで一目散に逃げるだけだ。 「ゆっくりしないでおうちかえるよ!れいむたちをだましていたおうさまはそこでくるしんでしんでね!」 背後で断末魔の悲鳴を上げる群れにそう言い残し、れいむは一寸先も見えない夜闇へ駆け出す。いや、駆け出そうとした。 「まって!そっちへいっちゃだめよ!!」 「ゆっ!?」 れいむのエクソダスを止めたのは、見覚えの無い一匹のありすだった。カチューシャにれいむ種の物とおぼしきリボンが付いている。 化け物まりさの群れでは獲物から奪ったお飾りを付けて見せびらかし、自分の力を誇示するのが流行っていた。このありすもその内の一人なのだろう。 敵ではないことを確認したれいむは安堵し、次いで怒り出す。 「ゆっ!ありす、おどかさないでね!」 「あら、それはごめんなさいね。……でも、そっちにいったらしんでたわよ、れいむ」 「ゆゆゆっ!?どういうこと!?」 ありすの爆弾発言に、れいむは度肝を抜かれる。目を丸くしたれいむに、ありすは言葉を重ねた。 「くわしいことはあとにしましょう。それより、すぃーをうばってにげましょう」 「ゆっ!?すぃーがあるの!?」 「ええ、それもこわれてないすぃーよ!」 あの森でスィーを持っているゆっくりは一人も居ない。化け物まりさが森の外れに捨てられていたスィーを見つけるまで、現物すら見たことが無かった。 そのスィーとて壊れて動かないので、化け物まりさは奴隷に引かせていたくらいだ。 「すぃーなられみりゃもおいつけないわ。それに、おうさまだってちゃんとしたすぃーはもってなかったんだもの。 すぃーをもってもりにかえれば、れいむとありすがつぎの『おうさま』よ!」 ありすの言葉がれいむの餡子に染み込んでいく。煽て上げに弱いのはゆっくり共通の弱点である。 「……なんで、れいむにそんなことはなすの……?ありすだけですぃーをうばえば、ありすがおうさまだよ……?」 だが、れいむとて地獄の戦場を生き延びたゆっくり。 元々れいむ種にしては聡明な頭脳の持ち主であったが故に、ありすの言葉を無条件で信用するような真似はしない。 スィーは全ゆっくり憧れの乗り物、野生でスィー持ちであることは王侯貴族並みのステータスだ。 れいむならそれを目の前にして、手柄を分けるような真似は間違ってもしないだろう。 「……ありすだけじゃ、ぬすめないのよ。すぃーのところに、みはりがいるの。だから……」 「……れいむをおとりにするつもり?いやだよ、そんなこと」 成る程、れいむを囮にしてその間にスィーを盗み出すつもりだった様だ。 しかしこの場における囮とは即ち捨て駒のこと。もちろんれいむにはそんなつもりは毛頭無い。 「……わかってるわよ。だからおとりはありすがやるわ。そのあいだにすぃーをぬすんでちょうだい。 すぃーにはかぎがついてて、あまりとおくにはいけなくなってるの。ありすならかぎをはずせるから、とちゅうでごうりゅうしましょう」 「ゆふん?……そういうことならひきうけるよ」 なかなか抜け目の無いありすだ。ありすの言う通りなら、森に帰るにはありすの助力が必要になる。 仮にそれが嘘だったとしても、それを証明出来ない限りれいむはありすを無視出来ない。無論この場で証明なんかできない以上、ありすを切り捨てる選択は有り得ない。 あまり見覚えは無いが、このありすは化け物まりさの群れの中でもかなりの切れ者のようだ。 わざわざれいむを指名したのも、ここまで逃げて来れた実力を見込んでのことだろう。ならばその言葉も信用に値する。 「そう、ありがとう。……こっちよ、ついてきて」 そう言うとありすは躊躇無く暗がりに足を向ける。その後をれいむが追う。 周囲を煌々と照らし出す照明が逆に作り出した影を伝い、未だ阿鼻叫喚が続く畑を迂回するようにそろそろと這って行く。 「……ここよ」 不意に、先行するありすの歩みが止まった。その言葉にれいむが覗いて見れば、二匹のゆっくりが大きな段ボ−ル箱を挟むようにして周囲を警戒していた。 二人は素早くお互いの役割を確認する。 「あのはこのなかにすぃーがあるの。ありすがしょうめんからちょうはつして、みはりをひきつけるわ。そうしたら……」 「……れいむがあのはこにしのびこんですぃーをうばうんだね。わかったよ」 「……かぎがかかっていてもあるていどまでならはしれるみたいだけど、どこまでうごけるのかはわからないの。 だから、すぃーをうばったらかのうなかぎりすばやくありすにおいついてちょうだい。かぎをはずしたら、そのままもりまでいっちょくせんよ」 ありすの言葉に頷くれいむ。尤も、彼女はありすを裏切るつもりだった。 とりあえず鍵を外す所までは共闘しているふりを続けよう。鍵を外したらこいつは用済み、もし鍵云々が作り話だったとしてもスィーの現物が手に入るなら幾らでもやりようはある。 (おうさまになるのは……れいむだけでいいんだよ………!!) 逸る内心を押さえ、見事なポーカーフェイスを浮かべるれいむに、緊張しているのか若干息の荒いありすが最後の指示を出す。 「……れいむはこのままあのはこのうしろにまわって。れいむがいちについたら、はじめましょう」 「わかったよ!おとり、がんばってね!」 口先だけの励ましを贈り、れいむは段ボールへ向かうため踵を返す。 ありすの目の前に、無防備なれいむの背中が向けられた。 裏切る気満々ではあっても、れいむはありすを信用していた。 持ち掛けられた話も説得力はあったし、何よりありすの手練手管は信用に値するものだったから。 ……それが、命取りだった事に気付かないまま。 突然、れいむの背中にのしかかってくるありす。れいむのもみあげに、荒い息が吹き掛かる。 「ゆっ!?なにするのありす!!……ありす?」 「ゆふ~っ……ゆふ~っ……」 れいむの背筋に悪寒が走る。化け物まりさの群れで散々見てきた場面、それに符合する行為だったから。 「ゆふ~っ……れぇえええいぶぅううううううっ!!」 「ゆわぁああああああっ!!!れいぱーだぁああああああああ!!」 あまりのおぞましさにここが敵地であることを忘れ、れいむは叫ぶ。 なんてことだ、囮という大仕事への緊張感でありすがレイパー化してしまったらしい。 確かにストレスに弱いゆっくりなら過度の緊張はレイパー発症の引き金に成り得るが、よりにもよってこのタイミングで起こるなんて!! 無我夢中でありすの拘束から逃げ出そうともがくれいむの目に、段ボールを離れてこちらに近付いてくる影が映った。 「ゆ゛っ゛!?ぎづがれぢゃっだよ!!ばやぐどいでねありず!!ごのままじゃでいぶだぢごろざれぢゃうよぉおおおおっ!!」 「こうかいぷれいねぇえええ!!もえるわぁあああああっ!!んほぉおおおおっ!!」 駄目だこいつ早くなんとかしないと。もう四の五の言っていられる状態ではない、この状況を打破出来るなら敵であろうと構わない! れいむは近付いてくるゆっくりに助けを求めた。 「だずげでぇえええええ!!れいばーにごろざれるぅうううううっ!!……ゆ゛びっ゛!?!?」 だが、近付いて来る影が露になるにつれ、れいむの目が驚愕と絶望に染まっていく。 遠目では解らなかった二匹のゆっくり、それは両方ともありすだった。 「ゆふ~っ……こんなところでおさかんねぇええ!!ありすもまぜてほしいわぁあああ!!」 「かわいいれいむねぇええええ!!とかいはにあいしてあげるわぁああああ!!!」 そして二匹とも、あのレイパー特有の嫌らしい目付きをして絡み合うれいむ達に迫って来る。 後門のありす、前門のレイパー。れいむの聡明な餡子脳は最早退路が無いことをはじき出す。 「ごっ゛ぢぐる゛な゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!ゆ゛ん゛や゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛づづづっ゛!!!!!!」 れいむに出来たのは、決して聞き入れられることの無い拒絶の絶叫を上げることだけであった。 三十分程経過した頃、ありす達はようやくれいむを解放した。頭から無数の茎を生やし、すっかり黒ずんだれいむには何の意味も無かったが。 一仕事終えたレイパー達に、また別のありすが近付いてくる。しかしこのありすは少々変わった姿をしていた。 何かが入ったネットを背負い、カチューシャに挟み込むように赤十字が描かれた紙切れを頭に乗せている。それは一昔前のナース帽のようだった。 ナース帽のありすは平然とレイパー達に歩み寄っていく。その姿からはレイパーに対する恐怖は微塵も感じられなかった。 「……おわったみたいね。おつかれさま、ありす」 レイパーに向かって親しげに話し掛けるナースありす。その言葉に対して、レイパーが至極冷静に言葉を返す。 「……ほんとうだわ。けがらわしいれいぱーのまねごとをしなきゃたたかえないなんて、ありすたちもしょせんありすってことかしら」 自嘲気味に零すレイパーに、他の二匹も同意する。その様子を、ナースありすは苦笑いと共に見ていた。 背中のネットを下ろし、中から三つの蜜柑を取り出す。それを差し出しつつ、ナースありすは三人を励ました。 「しかたないわね。ふだんとれいぱーじょうたいではぜんぜんつよさがちがうもの。つかえるなられいぱーでもつかう、それはわかっているでしょ?」 「……それくらい、わかっているわよ。……つぎ、いきましょう。てきはまだまだたくさんいるわ。……ぁむっ」 皮も剥かずに、蜜柑を口に放り込んで咀嚼するありす達。このありす達もまた、ドスが用意した戦力であった。 れいむ達の監視網でカバー出来る範囲はそう広くない。その為、予め畑の外周部に予備戦力を置き、取りこぼしたゆっくり達を迎撃する。 それがドス達の狙いだった。いくら主戦力をれみりゃに譲るとは言っても、ドスの群れは皆かなりの実力者だ。 武器を持ったみょんと吹き矢のまりさ達、そして監視網のれいむ達を除いても結構残る戦力を遊ばせておく理由は何処にも無い。 それぞれチーム分けされて配置された戦力の殆どはまりさとありす。まりさはともかく、まともにぶつかればひとたまりも無いことはありす自身が良く知っていた。 そこでこのチームでは『囮作戦』で釣り上げた獲物を『レイパー化』して倒す作戦を立案、実行していたのだ。 このれいむで三匹目、今の所『チーム・レイパー』の担当エリアから逃げ仰せた敵は居ない。それはありす達が完璧に役目を果たしていることの証明だった。 「それじゃ、ありすもいくわね。……どんなけがでも、しなないかぎりなんとかなるわ。だから、あきらめないでね」 そう激励して『チーム・レイパー』と分かれたナースありすも、ドス達の『作戦』の一環だった。 直接戦闘を可能な限り避け、ゲリラ戦法に徹しているとは言っても完全に無傷ではいられない。 その為、緊急時に備えて蜜柑とオレンジジュースを装備したありすが控えているのだ。 『彼ら』によってナース帽もどきを付けられた彼女達は、重傷者にはオレンジジュースを振り掛け、疲労困憊したゆっくりには蜜柑を振る舞って戦場に送り出す。 随分血腥いナイチンゲールだが、彼女達の存在が前線に立つゆっくり達の支えになっているのは事実だった。 「……まだまだたたかいはつづくわ。ほんとう、ありすたちもしょせんゆっくりなのよね」 溜め息を吐きつつ、巡回を続けるナースありす。その表情には深い諦観が表れていた。 畑のあちこちで谺する断末魔の絶叫は、化け物まりさの耳に入っていなかった。 いや、正しくは聞いてる余裕が無かっただけだが。 「こ……こんどこそ!こんどこそやっつけるのぜぇええええびゃぎゃあっ!!」 「……そろそろあきらめるんだど。なんどやっても、れみぃにかてるわけないんだど」 裏をかくつもりで入れたフェイントをあっさり見破られ、飛んできた鋤の腹に吹き飛ばされる。 地面に叩き付けられ、大きくバウンドしながら転がっていくまりさの姿に、れみりゃは呆れて肩をすくめた。 「う……うるさいのぜ………こんなの………なにかのまちがいなのぜ……………」 大きく息を吐きながら、化け物まりさは身を起こす。 致命傷を避け、薄皮一枚残して付けられた裂傷は、それを付けたれみりゃの技量を物語る。 体中から餡子を滲ませ、全身を満遍なく腫らしたまりさの姿は、彼女の技量がれみりゃのそれに及ばない事実を証明していた。 「ま……まりささまは……おうさまなのぜ………!……れみりゃをたおして………もういちど、しょうめいするのぜ…………!!」 それでも化け物まりさが挑み続ける理由、それは『プライド』の為だった。 家来達の反乱、まりさはその理由が目前のれみりゃにあると考えたのだ。 今まで手足のように従えていた群れが、実は自分ではなく帽子に忠誠を誓っていた。それは即ち、まりさ自身に価値が無いということ。 まりさの歪で根拠の無い自尊心はそれを認めることを拒絶した。 (れみりゃさえ……れみりゃさえたおせれば………!) れみりゃを倒し、まりさの方が強いことを示せばきっと家来達も帰ってくる。再び自分を王様と呼び、ゆっくりさせるなら奴隷に堕とす位で勘弁してやろう。 その為には、このれみりゃを倒さなければ…………! それが化け物まりさの出した結論であり、無謀な挑戦を続ける理由だった。 「いいかげんしつこいど!」 「ゆぎゃぁああああ゛あ゛あ゛っ゛!!」 しかしそんな自分勝手な結論なぞ、れみりゃにとっては文字通り知ったことではない。 無造作に振るわれた鋤の一薙ぎに弾かれて、化け物まりさは再び宙を舞う。 鋤の腹で引っ叩いて弾き飛ばす戦法に変えてから一時間弱、ずっとこの調子である。れみりゃの忍耐もそろそろ限界であった。 「はやくおわるんだど~……」 れみりゃとて最早付き合い切れない。 本音を言えばとっとと潰してしまいたいのだが、ドスから直々に『最後まで残しておいて欲しい』と頼まれた以上、殺してしまう訳にはいかない。 鋤を持つ手を返して刃を突き立ててやりたくなる衝動を必死に抑え、れみりゃはまりさを弾くことに専念する。 更に小一時間が経過し、れみりゃの我慢がいい加減尽きかけた頃、待ち望んでいたものはやって来た。 「おさーっ!ほうこくだよーっ!」 「……ゆ゛っ゛?」 れみりゃと化け物まりさの一方的な戦いを眺めていたドスに、その知らせを持ってきたゆっくりを見るや、化け物まりさの全てが止まった。 それを置き去りにして、ぴょんぴょんと跳ねてきたゆっくりはドスの元に着くと、背筋を伸ばして報告する。 「そこのまりさいがいのもりのむれ、にせんにひゃくじゅういちひき、せんめつかんりょうだよー!」 「……生き残りはいないの?あれだけの群れだし、もし生き残っていたら……」 「そのしんぱいはないんだよー!あかちゃんまでふくめて、ちゃんとちぇんたちがかぞえたとおりだったよー!」 「……こっちの被害は?」 「ししゃはいないんだよー!けがにんがじゅうよにんいるけど、すでにちりょうずみなんだよー!」 「解ったよ、有り難う。そうしたら皆に『集会所』で待機するように言っておいてね」 「わかったんだよー!」 ドスと親しげに言葉を交わしているのはちぇんだった。化け物まりさは、そのちぇんに見覚えがあった。 「……どぼぢで……」 フルフルと震えながら、化け物まりさはちぇんに向かう。近付いてくる化け物まりさに気付いたドスとちぇんが一瞬身構え、すぐに警戒を解いた。 「……なんで……なんで…………!!」 化け物まりさは既に満身創痍だった。 長時間殴られていた為に全身は腫れ上がり、あちこち黒ずんでいる。 古傷だらけの顔に新しく刻まれた傷からは餡子が滲みだしており、片目は完全に潰れていた。 最早跳ねる力さえ残っていないのだろう。力無く這いずる姿からは先程までの威勢の良さが微塵も感じられない。 ぼろぼろの体に覇気の無い隻眼。今の化け物まりさには脅威と呼べる部分が一切見受けられなかった。 「……どぼぢで……どぼぢで!!」 しかし、化け物まりさは自身の体などもうどうでも良かった。ドスとちぇんの会話に出てきた群れの末路さえ、まりさの耳には入らない。 まりさに残されたたった一つの目は、ドスの前に佇むちぇんの姿に釘付けになっていたのだから。 「どぼぢでぢぇんがぞごにいるのぜぇえええ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!!」 そう、ドスを長と呼んだちぇんは、群れに最近やってきたあの奴隷ちぇんだった。 特に聞き分けが良かった為に、まりさの覚えも愛でたかったのだ。見間違える筈も無い。 「ま……まさか……うらぎったのぜ!?まりさが……れみりゃじゃないから……?」 ちぇんが裏切る理由はそれしか考えられない。そこに気付いて一層震えだす化け物まりさに、ちぇんが残酷な一言を掛けた。 「ちぇんはうらぎってないよー?さいしょっからどすのなかまなんだよー!わかってねー!?」 「ゆ゛っ゛!?!?!?」 従順だったちぇんから聞かされた、余りに予想外の言葉にまりさの視界が真っ白に染まる。 言葉を無くした彼女に、追い討ちをかけるようにちぇんが畳み掛ける。 「ちょっとまえに、ちぇんたちのむれにしんいりさんがきたんだねー! そうしたら、さいきんもりのみんながまりさのむれにいじめられてるってきいたんだよー! もしかしたら、このむらにまでおしかけてくるかもしれないっておもったどすとにんげんさんが、ちぇんたちにちょうさをいらいしたんだねー!」 ちぇんの言葉が届いているのかいないのか、化け物まりさは沈黙を守ったままだ。 しかしそれに関係なく、ちぇんの独演会は容赦なく続けられた。 「まりさたちはわからなかったみたいだけど、ちぇんたちはこうたいであのもりをみはっていたんだよー! おかざりをこうかんしながらだったから、ばれなかったんだねー!……おみみのおかざりはそのままだったから、いつばれるかとひやひやだったけどねー!」 ちぇんの告白は終わらない。 外から調べるには限界もあったので、潜入調査に切り替えたこと。 群れにちぇんやみょんが殆どいなかった為に困難だったそれを、勝手に奴隷として引き込んでくれたので助かったこと。 なるべく従順な振りをしながら、群れの現状を把握する為に走り回ったこと。 そして主要な情報をあらかた調べ尽くした頃に、人間さんの村を襲撃する計画が立ち上がったこと。 ちぇん達がそのことをいち早く伝え、ドスと人間さんが迎撃態勢を整えていたこと。 群れのゆん口を把握していた為に、迎撃戦闘に参加せず撃墜数をカウントしていたこと。 そして、二千二百十一匹全ての死亡を確認してドスに報告しにきたこと。 全てを打ち明けたちぇんはやけにすっきりした表情で化け物まりさを見ている。 そこには罠にはめた優越感や、己が砂上の楼閣に君臨していた道化でしかないことを知らなかったまりさへの嘲弄も無い。 ただ、ちぇんの表情には一仕事終えた後の達成感だけが浮かんでいた。 ちぇんにとって、化け物まりさのことなどその程度でしかなかったのだ。 「……どぼぢで……」 長い沈黙の後、化け物まりさが絞り出すようにそれだけ言う。 まりさの栄光はお飾りによる幻想だった。れみりゃより強いと信じた武力は全く通じなかった。己の手足となる筈だった群れは一匹残らず消滅した。 その上、自分達の行動すら最初から最後まで人間とドスの掌の上で踊っていたに過ぎなかった。 自分が信じたものが全て幻だった事を突付けられたまりさの視線が、真直ぐドスを射抜く。 「どぼぢで……ばでぃざが……こんなべにあうのぜ……?にんげんって……なんなのぜ……?ばでぃざど……どずど……なにがぢがうのぜ……?」 まりさは知りたかった。 こんなに強い群れを率いるまりさが、何故人間と共にいるのか?何故あれほどのれみりゃが人間に捕われていたのか? そして自分とドスの、一体何が違うのか?何故まりさがこんな酷い目に遭わなければいけないのか? まりさは、どうしてもそれが知りたかった。 畦道を歩く足音が聞こえる。足音の方向に目を向けた化け物まりさは、そこで初めて『人間』を見た。 「おぉドス、ご苦労さん。悪いゆっくりの奴ら、全滅だって?」 「……うん、ここにいるまりさを除けばだけど」 ドスに話し掛けた人間は小さかった。お飾りも付けていないお顔からあんよに掛けて細く尖っている。 あれでは跳ねることさえ出来ないのではないか?正直、化け物まりさより小さいかも知れない。 ……お顔の下、あんよがある辺りから伸びている胴を無視すれば。 れみりゃ達、胴付きゆっくりのそれよりも細長い胴体はドスの身長より低い。だが、化け物まりさの群れの誰よりも大きかった。 成る程、こんなものが群れをなしているのなら、れみりゃが敵わないのも当然なのかも知れない。 「……ずるいのぜ。こんなやつらがものすごくいっぱいいたら、まりさたちがかなうわけないのぜ」 「はぁ?何言ってんだ、この村でゆっくりに関わってるのは俺たち三人だけだぞ?……この畑の持ち主は除くがな」 悔し紛れの台詞に返された返答に、まりさは一瞬言葉を失った。 「……ゆっ!?だ、だって、あれだけのれみりゃをつかまえてるって……」 「あー、そりゃそうだが……、そもそもあれって俺一人で集めてきたもんだしな」 「ゆ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛っ゛!?」 信じられない。たった一人であれだけのれみりゃを捕まえるなぞ、化け物まりさの想像を超えていた。 それを見ていたドスが口を開き、子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。 「人間さんはね、ずっとずっとずぅううっと昔から、ゆっくりプレイスを作る為に頑張ってきたんだ。それこそ、ゆっくりする事を忘れるくらいに。 何も無かった野原にお家を建てて、硬い地面さんを掘り返して柔らかくしてお野菜を植えて、大きなスィーで遠くまでいけるように広い道を造って。 ……ゆっくりみたいにゆっくりプレイスを使い捨てる事もしないで、少しずつ少しずつ悪い所を治しながら、理想のゆっくりプレイスに変えてきたんだよ」 化け物まりさは驚愕する。この素敵な楽園を作ったのが人間であるという事実に。 ……そして同時に、あることに思い至って戦慄した。 (そ……そんなゆっくりぷれいすなら……いままで、まりさたちが……ここを、しらなかったのって……まさか………!?) 餡の気が引き、蒼白となったまりさの表情を見て、ドスはまりさが正解に辿り着いた事を知った。 「そうだよ。人間さんは自分達のゆっくりプレイスを荒らす奴には容赦しないんだよ。 ゆっくりだけじゃなく、野犬さんや猪さん、熊さんも、人間さんには勝てなかったんだ」 一旦言葉を区切り、ドスは畑の外縁に広がる落とし穴を視線で示す。 「あそこの落とし穴も人間さんが作ったんだよ。人間さんのゆっくりプレイスを荒らす、悪いゆっくりを懲らしめる為に」 そう語るドスの目に一瞬苦いものが浮かび、すぐに消える。尤も、些細な変化に気付けたゆっくりは居なかったが。 「……まりさ達を撃った吹き矢やみょん達の剣、れみりゃ達の『すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる』も、人間さんが作ったんだよ。威力は見ての通り、凄いよね。 ドスなら、素手の人間さんと一対一なら勝てるだろうね。でも、二人いたら絶対に勝てない。人間さんが武器を持っていたら、一人とだって戦えないよ。 ……だからドス達は人間さんと取引したんだ。『人間さんをゆっくりさせる代わりに、ゆっくりプレイスに入れてください』ってね」 まりさの顔色がどんどん髪のように白くなる。天辺禿の金髪すら色素を失っていく。 歯の根が合わない。カチカチと響く音を餡子に響かせながら、まりさは全身を振ってその言葉を聞くまいとした。 だが、ゆっくりの全身感覚はそれを許さない。塞ぐべき耳も手も持たぬまりさには、それを妨げる事は出来ないのだ。 「……まりさは最初から、戦う相手を間違えていたんだよ」 「ゆ゛ん゛や゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!!!!!」 化け物まりさは『ドスが人間を奴隷にしている』と思い込んでいた。しかし、現実は逆だった。 『人間がドス達を奴隷にしていた』のだ。しかも『ドス達の方からお願いして奴隷にしてもらった』と言うおまけ付きで。 そして、この恐るべきドス達を『たった三人』で屈服させた人間の力を、まりさは今初めて理解したのだ。 「……して……」 化け物まりさは目を伏せて呟く。その余りにもか細い声からは、かつての偉容など欠片も感じさせなかった。 「……ころして……まりさを、ころして…………!!」 最早まりさの心は完全に折れている。 信じていたものがまりさを裏切り、よってたかって彼女の心をへし折らんとする状況の全てに、完膚なきまで叩きのめされていたのだ。 そして今、初めて目の当たりにする人間の偉業に、まりさはようやく自身の敗北を受け入れる事が出来た。 完敗、言い訳出来ない程完全無欠の大敗北。 もうまりさには何も残っていない。全てを失い、恐らくはこれから命すら失おうというのに、彼女の心はいっそ穏やかでさえあった。 (もう、いいや……まりさ、つかれちゃったよ……) 自分にとどめを刺すのはドスだろうか?それとも人間さん? どちらでも構わない。死ぬのは痛いかも知れないけれど、きっとこのまま生きるよりはゆっくりできるだろう。 まりさはそっと目を閉じて断罪の時を待つ。悟りの境地にも似た静謐な精神が、瀕死の彼女にその名の通りの『ゆっくり』を与えていた。 「おいおい、何言ってるんだよ。ここまでしといて、そんなに簡単に死ねる訳無いだろうが」 しかし、まりさを捕らえた死神の手は、人間の口を借りてまりさの決心を打ち砕いた。 「…………ゆ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ゛!?!?!?!?どぼぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!?!?」 嫌だ、これでもうゆっくり出来ると思ったのに、これ以上まりさから何を奪おうというのだ!? 一筋の希望すら踏み潰され、先程の静謐が嘘のように彼女の精神を蹂躙する。そしてそれを為した人間はまりさを無造作に掴むと、持っていた籠に押し込んだ。 「まあ、これから長い付き合いになるんだ。よろしくな、まりさ?」 「ごろ゛ぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!ばでぃ゛ざを゛ごろ゛ぢでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!」 決して受け入れられないと解っていながら、化け物まりさは己の死を懇願する。 絶望に満ちた絶叫が次第に遠ざかっていくのを見送りながら、ドスは一言だけ呟いた。 「……ごめんなさい」 ※過去作とかは後編にて
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/973.html
※独自設定がいっぱいだよ! ※人間さんは出てこないよ! ※虐待?それおいしいの? ※『ちーと』なゆっくりが出てくるよ!苦手な人はごめんね! ※とっても長いよ!しかも前編だよ! ※お待たせ!『お尋ねゆっくり』の続きだよ!……遅れてごめんね! 書いた奴:一言あき 夏の日差しが森をまだらに染め上げる中を、一匹のまりさが跳ねもせずにゆっくりと這いずって行く。 「じね゛ぇ゛……じね゛ぇ゛……」 ずーりずーりと亀でさえ追い抜けるであろう速さで少しずつ歩を進めるまりさ。 その背後には引き摺って出来た痕と、何やら黒い染みが残されている。 「じね゛ぇ゛……じね゛ぇ゛……」 まりさの顔にはあのふてぶてしい笑みは無い。 名に反して全くゆっくり出来ない物凄い形相が張り付いており……、 「じね゛ぇ゛……じね゛ぇ゛……」 その片目は抉り取られ、虚ろな眼窩からは絶えず餡子が涙のように流れ落ちていた。 「ばでぃざは……げすじゃない………!あのおばなは……ばでぃざがみづげだんだぜ………!!」 まりさは先程、『れいむが見つけたお花を横取りした』罪で片目を抉られて群れから追放される『おめめえぐりのけい』を受けたばかりだった。 尤もそれが罪になったのは最近の事で、まりさを始めとする群れのゆっくり達はそれの何が悪いのかすら解らなかったのだが。 「でいぶがみつけるまえから……あのおばなはばでぃざのものだったんだぜ……きっとそうなんだぜ……」 まりさは横取りしたつもりは全く無い。 先に見つけたのは確かにれいむだったが、あのお花がまりさに見つけてもらいたそうにしていたので仕方なく摘み取ってあげたのだ。 一体、自分の何処が悪いのか! それなのにあの下種は、よりにもよってまりさの美しいお目目を抉り、折角仲間になってあげた群れから追い出すという暴挙に出た。 『おかのおいしゃさん』が作った群れだからゆっくり出来ると思ったのに、訳の解らない掟でまりさ達をゆっくりさせなかった上にこの仕打ち。 如何に寛大なまりさでも、もう我慢の限界だ。 「ぱちゅでぃは……ゆっぐり………じねぇ………!!」 許さない。許せない。 いつかきっと、あのぱちゅりーを制裁してやる! 怨念と呪詛と餡子を駄々漏れにしながら、まりさは森の奥へ消えて行った。 『お話しゆっくり 前編』 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘。 枯れ草の一片に至るまで喰い尽くされ、すっかり禿げ山へと変貌してしまった丘の天辺で、れみりゃのお帽子を被ったまりさは憤慨していた。 「あのどれいたち、ひどいのぜ!たべものをかくすなんて、やることがきたないのぜ!!」 まりさが間抜けで弱っちいドス達を奴隷にしてこの丘を奪い取ったのが三ヶ月程前の事。 残念ながらドス達は逃げ出してしまったのだが、奴らは逃げ出す前にこの丘の食べ物をどこかに隠してしまったらしい。 でなければ、二千人程度のゆっくり達が思う存分むーしゃむーしゃした程度で食べ物が尽きる筈が無い! まりさは群れの皆に命じて隠された食糧を探させていたが、未だ見つかったと言う報告は無かった。 「まったくむのうなやつらのぜ!さっさとみつけてこいのぜ!」 丘の天辺でふんぞり返り、食糧を探して右往左往する群れを眺めながらまりさが毒づく。 実はまりさ達は狩りが苦手だ。主に他の群れを襲って食べ物を調達していた為、狩りをしなくても済んだからだ。 しかし、今現在この森の中に居るゆっくりは自分達だけしかいない。 きっとあのドス達が他の群れを連れ出したのだろう、まりさはそう考えていた。 これで奴隷の調達が出来なくなってしまった。あのドス達はなんて卑怯者なのか! まりさは煮えくり返る怒りを飲み込み、心を落ち着ける為に食事を摂る事にする。 「むーしゃむーしゃ……げろまずー!!」 普段はとても口にしないような苦い草を、顔を顰めながら頬張る。 この丘にある最後の食糧だ。これを食べてしまえばもう何も残っていない。 それが解っていても、まりさは我慢が出来なかった。 今まで好きなだけむーしゃむーしゃして来たのだ。今更どうして我慢が出来ようか。 「ゆうぅ……、もうこのもりにはどれいがいないのぜ……おうさまもらくじゃないのぜ……」 まりさは選ばれたゆっくりだ。 天敵たるれみりゃを打ち倒し、森のゆっくり達を統率してドスすら奴隷に出来る力を得た。 全てのゆっくりを従える王様に選ばれた、特別なゆっくりである自分をゆっくりさせないものは皆ゲスだ。制裁しなければならない。 だが、この状況を作り出したドス達は行方を晦ませたままだ。 配下のゆっくり達に探させてはいるが、未だに影も形も見つからない。 いや、狩りすらまともに出来ないような無能だから見つけられない、と考えるべきか。 とにかくこのままでは飢死にが待っているだけだ。まずは食糧を集める算段をつけようとまりさが重い腰を上げた時、 「おうさまー!もりのそとにしらないれいむたちがいたって、まりさがいってたよー!」 「ゆっ!?」 最近奴隷にしたちぇんが持って来た報告に再び腰を下ろした。 「そいつらはなんびきいたのぜ?」 「たくさんいるっていってたよ!」 標準的なゆっくりの知能では三以上は『たくさん』になる。 十を超えれば『いっぱい』になり、二十から先は『ものすごくいっぱい』だ。 まりさは奴隷ちぇんの言葉からそう多くはないと当たりをつけた。 「そのれいむは、おちびをつれていたのぜ?」 「いたってっいってるよー!」 ちぇんの返事を聞き、まりさはしばし黙考する。 数瞬の後、まりさはちぇんに新しい命令を下した。 「……まりさたちに、いきたままつかまえるよういうのぜ!そしておうさまのところまでつれてくるのぜ!」 「わかったよー!」 まりさの命令を伝えるべく、その俊足でぽいんぽいんと跳ねて行く奴隷ちぇん。 「よくはたらくやつのぜ。ほかのどれいもみならうのぜ」 みるみる遠くなるちぇんの後ろ姿を見送りながらまりさが一人ごちる。 この群れはまりさ、れいむ、ありすで占められており、ちぇんやみょんは奴隷にしたゆっくりの中に数える程しかいない。 その中にあって一番聞き分けの良いのがこのちぇんだった。案外、自分を奴隷と思っていないのかも知れない。 「それにくらべて、あのどすたちはとんだげすなのぜ!みつけたらゆっくりしないでせいっさいっ!するのぜ!」 まりさの怒りに再び火が付く。心を落ち着けようにも、もう食べ物は無い。 結果、まりさはいーらいーらを募らせた状態で群れの帰還を待つ他無かった。 まりさの目前に突き出されたのは成体のれいむ一匹と生後三ヶ月程度の子れいむ二匹、そして生後間もないであろう赤れいむ三匹だった。 何でも捕らえた時には赤まりさと子まりさが四匹程いたらしいが、見せしめにありすがレイプしたら黒ずんで死んだという。 「ありすのとかいはなあいをうけとめないなんて、とんだいなかものだわ!」 「……わかったから、さっさとうせるのぜ」 憤慨するありすを追いやり、まりさは一歩踏み出す。 「こないでね!かわいいれいむをたべないでね!!」 「「「おきゃあしゃぁあああん!!きょわいようぅううううう!!!」」」 まりさの迫力に恐れを成すれいむ達。子れいむの片割れに至っては無言のまま気絶する体たらく。 そんなれいむ達の狂態を一切無視して、まりさは尋問を開始した。 「……れいむたちは、どこからきたのぜ?」 「ゆっ!?しゃべれるの!?」 まりさが話し掛けた途端に目を丸くして驚愕する親れいむ。 「……しつもんにこたえるのぜ、どこからきたのぜ?」 人の話を聞かないとは、随分と礼儀知らずなれいむだ。相当な田舎から出て来たのだろう。 図らずも先程のありすの言葉通りだった事に失笑しつつも、まりさは質問を重ねる。 子連れのゆっくりが遠出をする事は無い。おそらくこの森のどこかに手付かずの群れが生き残っている筈だ。 だったらその群れの場所を聞き出して、全員奴隷にして食糧を奪ってしまおう。 最初に報告を受けた時、まりさはそう閃いたのである。 だが、れいむから帰って来た答えは予想を遥かに超えていた。 「れいむたちは、あのおやまのむこうからきたんだよ!」 「「「「「「「「「「な、なんだってーっ!?!?!?」」」」」」」」」」 お山の向こうは完全に秘境だ。そこに何が居るのか、何があるのか、どんな所かさえ誰も知らない。 そんな所からやって来たというれいむの言葉に驚愕するまりさ達を尻目に、れいむは聞かれもしないのに勝手に喋り出した。 「れいむたちのもりはごはんがすくなくなっちゃって、このままじゃふゆをこせなさそうだったんだよ。 でも、さいきんとてもゆっくりしているむれのうわさをきいたんだよ。 おやまのこっちがわに、にんげんさんといっしょにゆっくりしているどすのむれがいるって。 れいむたちもそのむれにいれてもらおうとおもって、わざわざおやまのふもとをおおまわりしてこっちにきたんだよ。でも……」 そこまで話した所で、れいむは沈痛な表情になって口籠った。 「……れいむがにんっしんっしたら、みんながおこってれいむをおいだしたんだよ。 おひっこしのさいちゅうにすっきりしたのはまりさなのに、わるいのはれいむだって…… れいむは、まりさがゆっくりしたいっていったから、ゆっくりできるあかちゃんをにんっしんっしただけなのに!」 そこまで言うと、れいむはわっと号泣する。 尤も、話を聞いたまりさの心中は冷ややかなものであった。 (……ぜんぶれいむのじごうじとくのぜ。どうじょうにあたいしないのぜ) 『ゆっくりしたいから赤ちゃんをつくる』という思考は理解できるが、引っ越しの最中にというのはゆっくりの基準からしても理に合わない。 ましてお山の反対側からという大遠征の最中ににんっしんっするとは、群れに制裁されても仕方が無い程の背信行為だ。 父役のまりさもそんなつもりで「ゆっくりしたい」と言った訳ではあるまい。大方、一休みしたいとかそんな所だろう。 乗り気でないゆっくりを発情させてすっきりーっ!させるのはそんなに難しい事ではない。発情するまでひたすらすーりすーりを繰り返すだけだ。 しかし引っ越しの最中に発情させるとは、どれだけしつこくすーりすーりしたのか。 まりさは我が身に置き換えて想像し、余りの気色悪さに怖気を震わせる。 しかし、れいむの話に無視できない内容が含まれていたのをまりさは聞き逃さなかった。 「……れいむ、そのうわさはだれからきいたのぜ?」 「れいむはきめぇまるからきいたんだよ。ごはんとこうかんでおしえてもらったから、まちがいないよ!」 きめぇ丸はゆっくりをゆっくりさせない習性を持つ希少種だが、同時に見たもの聞いたものを誰かに伝えようとする習性も有している。 時々、食べ物や一夜の宿と引き換えに教えてくれるこれらの情報は、生活圏の狭いゆっくりにとって重要な情報源だ。 非常にうさんくさいが、きめぇ丸は勘違いや早とちりはするものの嘘は吐かない。れいむの言う通り嘘ではないだろう。 そしてこの森付近にいるドスなぞ一匹しか居ない。間違いない、まりさの元から逃げ出したあのドスだ! しかもあろう事か食べ物を隠してまりさの群れをゆっくり出来なくしておいて、自分達はお山の向こう側まで噂になる程ゆっくりしているらしい。 許せない、まりさは心からそう思う。 (まりささまをゆっくりさせないどげすは、ゆっくりさせないでせいっさいっするのぜ!!) 心中で、あのドス達に死刑判決を下す。 そうとなったら善は急げだ。とりあえず、有益な情報をもたらしたれいむ親子にそれなりの礼をしよう、とまりさはれいむ達に告げた。 「いいことをおしえてくれたのぜ。おれいに、このむれのどれいにしてあげるのぜ」 「「「「「「ゆっ!?」」」」」」 れいむ親子が固まる。それをまりさ達に仕える喜びにうち震えた為と解釈して、まりさは更に言葉を重ねる。 「そんなによろこばなくてもいいのぜ。とりあえず、むれのみんなのごはんをさがしてくるのぜ。おひさまがしずむまではまっていてあげるのぜ」 まりさがその言葉を言い終わると同時に、固まっていたれいむが再起動する。 暫くプルプル震えていたかと思うと、突然大声を張り上げて抗議を繰り出して来た。 「なにいってるの!れいむはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ! わかったらさっさとれいむたちにごはんをもってきてね!あまあまをたくさんでいいよ!」 母の猛烈な勢いに乗ったのか、子れいむ達も口々に「そーだ!そーだ!」と合わせてくる。 こんな光景は珍しい事ではない。れいむ種の悪癖である『しんぐるまざー』はまりさ達にとっても見慣れたものだ。 だから、その対策もまりさ達は熟知していた。 「……もういいのぜ。どうせこうなるのはわかっていたのぜ」 まりさはそう言うと、大声で一言「みんな!あつまるのぜ!」と叫ぶ。 すると丘のあちこちから大量のゆっくりが湧き出すように出現した。 れいむ、まりさ、ありす。 たちまち丘を埋め尽くした無数のゆっくり達に怯えるれいむ親子に、化け物まりさは残酷な判決を下した。 「このれいむは、どれいのくせにさからうげすなのぜ!げすはせいっさいっするのぜ! ……ついでにみんなのごはんになるのぜ。ひさしぶりのあまあまなのぜ」 「「「「「「ゆ゛っ゛!?!?!?」」」」」」 突然の死刑宣告と、『みんなのごはん』発言に驚愕したれいむ親子が硬直する。だがそんな事には一切構わず、ゆっくり達は目を異様に輝かせて一斉に襲いかかった。 「ひゃっはぁあああああああ!!せいっさいっだぁあああああああ!!!」 「あまあまだぜぇえええええ!!ぜんぶまりさがもらうんだぜぇえええええ!!!」 「んほぉおおおおおお!!ちいさいれいむのばーじんさんはもらったわぁあああああ!!!」 「しんぐるまざーはでいぶだけでいいんだよ!にせもののしんぐるまざーはしねぇええええ!!!」 「あまあまよこちぇぇええ!!」「れいみゅにゆっくりたべられちぇね!」「んほぉおお!ありちゅのあいをうけとめちぇね!!」 「ゆ゛ん゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ごな゛い゛でぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 「や゛べでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!でい゛ぶを゛だべな゛い゛でぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 「でい゛ぶの゛ばー゛じん゛がぁ゛!!でい゛ぶの゛じゅ゛ん゛げづがぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「お゛ぎゃ゛あ゛じゃ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!だぢゅ゛げでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 「おきゃあしゃんたちはころちていいから、きゃわいいれいみゅだきぇはたちゅけてね!…………ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 あっという間にゆっくりの津波に飲み込まれるれいむ親子の姿。 途切れ途切れに聞こえてくる悲鳴を聞きながら、まりさはれいむ達の話を吟味し始めた。 (……どすたちは、にんげんといっしょにいるのぜ?にんげんをどれいにしてるのぜ?) まりさ達は人間の事をよく知らない。 どうも森の外の平原に群れているようで、時々森を訪れる以外は滅多に見掛けないからだ。 まりさ達と同じ言葉を話せる程度の知能は持っている様だが、食べ物の少ない平原を住処にしている辺り相当な阿呆揃いらしい。 あの無能なドス達には相応しい奴隷であろう。しかし、ドス如きが奴隷を持つなど過ぎた行為である。 (ちょうどいいのぜ。あたらしいどれいがてにはいるのぜ) 新しい労働力の調達に加え、それだけゆっくりしているなら食糧不足も補える筈だ。 人間と一緒に暮らしていると言うのなら、きっとあの平原に居るに違いない。 早速、明日にでもドス達の所へ向かおう。まりさはそう結論付けると、手元に残しておいたあまあまに齧り付く。 「ゆ゛ぎぃ゛っ゛!!!!」 家族の末路を見せつけられ、恐怖に立ち竦んでいたあまあまが上げる心地よい断末魔と口内に広がる深い甘みを、まりさはじっくり堪能していった。 太陽もすっかり昇り切り、目前に迫った冬を追い払うかのように照りつける日差しが眩しい正午。 山の裾野に広がる森と、人里を分ける広い平原に、いつかの焼き直しの如く現れた大軍勢。 二年前のそれと違うのは、軍勢に子供や赤ちゃんまで含まれている事と、総勢二千人を超えようかというその数であった。 いざという時の盾にする為に最前衛に配置された奴隷以外はてんでバラバラで、陣形も何もあったものではない。 そしてその中央に、れみりゃのお帽子を被った化け物みたいな顔のまりさが陣取っていた。 壊れて動かないスィーに乗り、奴隷達に引かせる姿は古代の王侯貴族もかくやと言わんばかり。 しかし、その心中は見た目の優雅さとは程遠かった。 「……まだ、みつからないのぜ?」 「ゆっくりのすがたかたちもないっていってるよー!」 伝令役を務める奴隷ちぇんに事態の進捗を問うても、返って来るのは『見つからない』だけ。 広大な平原を行けども行けども、ドスはおろか人間の一匹も見当たらないのだ。 (このはらっぱがこんなにひろいだなんておもわなかったのぜ……) 実際の所、生まれて間もない赤ゆや子ゆ、スィーを引かせる化け物まりさに合わせている為、進軍速度が非常にゆっくりしているだけなのだが。 のろのろと歩む化け物まりさの軍勢。真上にあった太陽が夕日に変わる位の時間を掛けて、彼女達は遂に目的地に辿り着く。 そこは、想像を遥かに超える場所だった。 「こ……これは………なんなのぜ………?」 化け物まりさが呆然と呟く。だがそれは、全てのゆっくりの台詞を代弁していた。 広大な平野に、野菜が列をなして生えているという、信じられない光景。 その奥に見えている、木のうろや洞窟などとは全く違う立派なお家の群れ。 遠くには化け物まりさの壊れたスィーなぞ比較にならない程大きなスィーが行き交う姿が霞んで見える。 眼前の光景に、言葉を無くして立ちつくすゆっくり達。彼女達を正気に戻したのはギリギリという音だった。 化け物まりさが飴細工の歯を砕かんばかりに激しく軋らせていたのである。 「……ゆるさないのぜ……ぜったいに、ゆるさないのぜ……」 地獄から響くような怨嗟の声にしーしーを漏らす程怯える軍勢。 しかし続けて吐き出されたまりさの雄叫びが、全員の脳裏を真っ白に染め上げた。 「こんな……こんなにゆっくりしたゆっくりぷれいすをひとりじめするなんて! どすとにんげんは、ぜっっっっっっったいに!ゆるさないのぜぇええええええええええ!!!」 「「「「「「「「「「ゆ゛っ゛!?」」」」」」」」」」 化け物まりさは激怒していた。温厚な自分がこれほどキレるだなんて、初めてではないだろうか?そう思えるくらいに。 人間が森に住まない理由がよく解った。これほどのゆっくりプレイスを独り占めしているのなら、わざわざ食べ物の少ない森に住もうなどとは思うまい。 しかもあろう事か、ここにはあのドスまでもが住み着いている。まりさ達を飢えさせておいて、自分達はのうのうと楽園で面白おかしく過ごしていたに違いない。 許せない。許せる筈が無い。決して許せるものか!! 化け物まりさの怒りは、たちまち群れ全体に広がっていく。 同属殺しの快感に目覚め、制裁と称してあちこちの群れで殺ゆ事件を起こして来たれいむは考える。 (ゆっくりできないあのどすなら、おもうぞんぶんせいっさいっできるよ!ひゃっはぁああ!!) 際限なく喰らった為に冬籠りに失敗し、弱った自分の家族を貪って以来ゆっくりの味に取り付かれたまりさが思う。 (げすなゆっくりほど、いためつけてころすとじょうとうなあまあまになるんだぜ!たのしみだぜ!!) 手始めに初恋のまりさを犯し殺して以来、千人斬りの達成を悲願に掲げるレイパーありすが理解する。 (つまり、ここはさいこうのすっきりーっ!ぷれいすなのねぇええええ!!んほぉおおおおおおおぉううううう!!!) 満足に狩りも出来なかったくせに、かわいい自分と離婚しようとするまりさを亡き者にして悲劇のしんぐるまざーとなったれいむが誓う。 (あんなにひろくてすてきなおうちは、れいむとおちびちゃんにこそふさわしいんだよ!!にんげんさんはさっさとれいむにおうちをよこしてね!!そしたらしんでね!!) 群れのあちこちから、化け物まりさの怒りに共感する声があがる。 最初はバラバラだったそれは、お互いに呼応し合って纏まって行き、最後には一つのうねりとなって群れ全体を揺るがした。 『げすなにんげんとどすはゆっくりしないでしね!!!』 壮絶なシュプレヒコールが平原に響き渡る。 熱狂が最高潮に達した頃、突如化け物まりさが大声を張り上げて皆を制した。 「しずかにするのぜ!!にんげんやどすにきづかれるのぜ!!」 たちまち静まり返る二千人のゆっくり達。 ……念の為に言っておくが、最初に叫び出したのは化け物まりさだ。 だがそのような些細な事、まりさはおろかこの場にいる全員の脳裏から奇麗さっぱり抜け落ちていた。 あらゆるゆっくりが、群れの皆がまりさの号令を待つ。そして…… 「あのゆっくりぷれいすをまりささまのものにするのぜ!!ぜんいん、とつげきするのぜ!!」 「「「「「「「「「「ゆぉおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」 化け物まりさの宣言に、一斉に鬨の声を挙げて答える群れ。 高まり切った士気に突き動かされ、最前線に並ぶ奴隷達を踏み潰さんばかりの勢いで突進する。 「ゆわぁああ゛あ゛あ゛!!どま゛っ゛でぇ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「いやぁああ゛あ゛あ゛!!ごっ゛ぢぐる゛な゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「ぢぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛ん゛ぼぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 堪らないのは奴隷達の方だった。背後から迫り来るゆっくりの津波から逃れようと全速力で前進する。 それこそ『罠の可能性を全く考えない』で、だ。 「ゆびゃっ!?!?!?」 その内の一匹、奴隷れいむが突然現れた穴に落ちる。 だが、並走していたまりさは足を止めずに駆け抜けて行く。他の奴隷ゆっくり達も決して立ち止まろうとはしなかった。 「まってぇええええ!!れいむをたすけてぇええええ!!」 「……ごめんね、れいむ!まりさ、ふまれてしにたくないよ!!」 「れいむ………ごめんなさい、ごめんなさい………!!」 「たすけてあげられなくてごめんねー!!ゆるしてねー!!」 「………とのがたの……!」 謝罪の言葉を残して走り去る奴隷ゆっくりに続き、群れのゆっくり達が怒号を挙げて押し寄せる。 「あんなところにおっこちたどれいがいるんだぜ!おお、まぬけまぬけ!!」 「むのうなれいむはそこでえいえんにゆっくりしててね!!」 「やっぱりれいむはいなかものね!!れいぽぅするきもおきないわ!!」 穴の底で助けを求めるれいむを嘲笑いながらも、足だけは決して止めない。 奴隷をわざわざ助ける道理はない。故に立ち止まる意味もない。 口々に勝手な事を吐きながら、ひたすらゆっくりプレイスを目指して進軍する群れ。 その姿は正しく全てを貪り喰らう蝗の群生そのものだった。 必死に跳ねる奴隷ゆっくり達。成り行きで畑を目指してはいるが、野菜が目的ではなかった。 彼女達はただ、背後に迫るゆっくりの群れから逃げたかっただけ。 尤も、その逃避行が実を結ぶ事は決してなかったのだが。 「もうすぐおやさいのあるところだよ!!あのなかににげこめばたすか「おやさいはまりさのものだぜぇ!!」り゛ゅ゛ぶっ゛!?!?!?」 「ば、ばり「れいむのおやさいぃいいい!!」じゃ゛ぁ゛あ゛っ゛!?!?」 「いやぁあああ!!れいむぅうう「おやさいはとってもとかいはよぉおおお!!」う゛べっ!?」 畑の野菜が作る、身を隠すのに最適な茂みを目指していた奴隷達が次々と踏み潰される。 背後の集団が突然速度を上げたのだ。 「らんしゃ「むほぉおおおおお!!」ま゛ぎゃ゛っ゛!?」 「ぺにぃいいい「じゃまだよっ!!」ずっ゛!?!?」 末期の声すら挙げる間もなく死んで行く奴隷達だが、誰も気に留めない。踏み潰した事さえ気付いていない。 既に彼女達の目に映っているのはたわわに実ったお野菜達だけ。 余りに旨そうなそれが間近になるにつれ、彼女達の目的が変化したのだ。 『ゆっくりプレイスを奪い取る』から、『おいしいお野菜を腹一杯貪る』へ。 ここの所の食糧不足で満足に食事も摂れず、常に飢えていた群れの前に現れた美味しそうな野菜。 それはゆっくりの餡子脳から目的を忘れさせるには充分過ぎるものだった。 「まつのぜ!!それはまりささまのおやさいなのぜ!!かってにたべるんじゃないのぜ!!」 背後で化け物まりさが喚き散らすが、完全に畑に集中してしまったゆっくりたちの耳には入らない。 そして最前列を走っていた数十人のゆっくり達が、遂に畑へたどり着く。 「ゆぷぷっ!!のろまなおうさまなんかほっとくんだぜ!!このおやさいはぜんぶまりさのものなんだぜ!!」 「ちがうよ!!おやさいはれいむのものなんだよ!!れいむのおやさいをたべるまりさはゆっくりしないでしんでね!!」 「むほぉおおお!!しまりのよさそうなおやさいねぇえええ!!ありすがとかいはにあいしてあげるわぁあああ!!」 口々に野菜の所有権を主張するゆっくり達、最後のは何か違うような気がするが。 そして痺れを切らした先頭集団のまりさが言い争うゆっくり達を出し抜き、大口を開けて野菜に齧り付いた。 「これはまりさのおやさいなんだぜ!!だからまりさがぜんぶたべるんだぜ!!いただきま………」 「………全然違うよ!ドススパーク!!!」 否、齧り付こうと大口を開けた瞬間、彼方から奔る光線がまりさを含む先頭集団を飲み込む。 光が過ぎ去った後に残ったのはまりさの歯、れいむのあんよ、ありすのぺにぺに。 野菜に突き立つ筈だったまりさの歯が、全く野菜に触れる事無く畑に転がった。 「……ゆ!?」 先頭集団のゆっくり達、十数人が体の一部を残して消え去る異常事態。 化け物まりさは、否、群れの全ゆっくり達が思考停止に陥る。 「……新入りさん達の言った通りだったね。あの森の食べ物を全部食べ尽くしたら、あのゲスな群れがここに来るかも知れないって」 茫然自失の化け物まりさに、聞き覚えのある声が掛けられた。 油を注し忘れたブリキ人形のようなぎこちない動きで、ゆっくり声の聞こえた方向に振り向いた化け物まりさの目に、見覚えのある影が映る。 ふさふさの金髪を黒いお帽子に収め、化け物まりさを睨みつける大きな、とても大きなゆっくり。 最後に見たときより更に一回り大きくなっていたが、間違いない。あの時逃げ出したドスまりさだ! 「どすぅうううっ!!よくもけらいをころしたのぜぇええええ!!!どれいのくせになまいきなのぜぇえええ!!!!」 「……まりさはまりさの奴隷になった覚えは無いよ。まりさは只、畑をゲスから守っただけだよ」 「げすはどすのほうなのぜぇえええ!!なまいきなげすはせいっさいっしてやるんだぜぇえええええ!!!」 「……お話しにならないね。むしろ制裁されるのはまりさ達の方だよ」 激昂する化け物まりさと対照的に、冷静沈着な受け答えを崩さないドス。 その余裕綽々な態度に、元々短い化け物まりさの堪忍袋の緒はあっさりと千切れた。 「もうゆるさないのぜ!!みんなでどすをせいっさいっするのぜぇえええ!!」 「……最初から許す気はなかったよね?それより何を許す気だったの?まりさには心当たり無いよ?」 「ゆぎぎ……!!くちばっかたっしゃなのぜ!!………どうしたのぜ!?みんなでいっせいにかかるのぜ!!」 化け物まりさの号令に、配下のゆっくり達が怯えたように竦み上がる。 皆見ていたのだ、先程の光が先頭集団を消し去る瞬間を。 あの光を放ったのがドスならば、自分達に勝ち目などあるものか。一斉に掛かっても、また吹き飛ばされるだけだろう。 誰であろうと命は惜しい。如何に王様の命令であろうとも、犬死になど絶対に嫌だった。 「なんでおうさまのめいれいをきかないのぜ!?………もしかして、どすすぱーくのせいなのかぜ?」 一向に言うことを聞かない群れに苛立ち、癇癪を起こしていた化け物まりさが不意に真実に辿り着く。 その言葉に何匹かが頷くのを確かめた化け物まりさが、一転して不敵な笑みを浮かべながら落ち着いた様子で語り出した。 「ゆっふっふっ………、だいじょうぶなのぜ、おうさまはどすすぱーくのじゃくてんをよーくしってるのぜ……」 どよめくゲスゆっくり二千人。その反応に気を良くしたのか、化け物まりさはふんぞり返って居丈高に叫ぶ。 「どすすぱーくはきのこさんをむーしゃむーしゃしないとうてないのぜ!!! みんなでゆっくりしないでふるぼっこにしてやれば、きのこさんをたべるひまがないからうてないのぜぇ!!!」 「「「「「「「「「「ゆぅ~っ!?!?」」」」」」」」」」 「……うん、そうだね。確かに茸さんをむーしゃむーしゃしないと、ドススパークは撃てないよ」 一斉に驚愕する一同とは裏腹に、冷静さを失わないままドスまりさが自身の弱点を肯定する。 化け物まりさはそれを降伏宣言だと受け取った。 「いまさらあやまってもおそいのぜ!!みんなでかわりばんこにせいっさいっするのぜぇえええええ!!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしないでじねぇぇえええ!!!!!」」」」」」」」」」 化け物まりさの咆哮と共にドスに向かって駆け出す群れ。 地響きを鳴らして近付いてくる大群を前にしても尚冷静なまま、ドスまりさは言葉を続けた。 「……だから、撃てないときの備え位はしてあるよ」 その言葉を言い終わると同時に、群れのゆっくり達がそこに辿り着く。 畑の土や砂とは全く違う何かが敷き詰められた場所に。 「ゆぎっつつ゛つ゛っ゛!?!?な゛に゛ごれ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 「いじゃぁいぃいい゛い゛!!でいぶの、でいぶのゆっくりしたあんよがぁああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「ゆぎゃぁあああ゛あ゛あ゛あ゛!!あ゛り゛ずの゛どぎゃ゛い゛ばな゛びぎゃ゛ぐがぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 ドスの手前に敷き詰められた、大量の瓦礫。角張ったそれを思い切り踏み付け、あんよを傷つけたゆっくり達が絶叫を上げてのたうち回る。 突然立ち止まって身悶える前衛を、後続のゆっくりが踏み潰す姿を尻目に、ドスまりさは猛然と逃げ出した。 「あっ……!!まつのぜ!!にがさないのぜ!!みんなでおいかけるのぜ!!!」 「「「「「「「「「「ゆ……ゆぅ~っ!!」」」」」」」」」」 事態に全く着いて行けず、退却するドスの後ろ姿を呆然と見送っていた化け物まりさが慌てて出した命令に、半ば反射的に従う軍勢。 前衛の尊い犠牲の結果、瓦礫の隙間が餡子で覆われた安全な進路を踏みしめ、やや離れた所を跳ねるドスの背中を追いかける。 否、追いかけようとした彼女達の眼前を塞ぐように一匹のまりさが立ちはだかった。 「……いますぐ、もりにかえるならみのがしてやるんだぜ。さもないと、ゆっくりできなくさせるんだぜ」 二千人もの群れを前に大言壮語を吐く身の程知らずの蛮勇に、化け物まりさは思わず失笑した。 たった一匹で何が出来るというのだ?ドスでさえ成す術無く、姑息な手段を用いて逃げ出したというのに。 「みんな、そのまままりさをふみつぶすのぜ!!おばかなまりさはゆっくりしないでしね!!」 化け物まりさの宣言を背に受け、二千人のゆっくりが怒濤の勢いで襲い掛かる。 しかし、立ち塞がったまりさは目前に迫るそれを全く怖れる様子もなく、溜め息を吐きつつ目を伏せた。 「……けいこくはしたんだぜ」 そう言うとまりさは背後の穴に飛び込む。 『奴隷れいむが落ちた落とし穴』の中に。 「「「「「「「「「「ゆっ?」」」」」」」」」」 突然の浮遊感に『おそらをとんでるみたい!』などと思う間もなく、先頭に立った三百人程のゆっくりが落ちて行く。 そして、 「ゆ゛っ゛!?」「ゆ゛べっ゛!?」「ゆ゛がっ゛!?」「ゆ゛ぐっ゛!?」「ゆ゛ぶっ゛!?」 断末魔の一言さえ残さず、次々と息絶えた。 それはかつて、畑を襲ったとある群れを一網打尽にした恐るべき罠。 最初の落とし穴は囮で、そこに落ちたゆっくりを救い出そうと他のゆっくりが飛び込んだ時、本命が発動する仕掛けだ。 だが化け物まりさの群れにそんな殊勝なゆっくりなぞいない。だから、まりさが自ら飛び込んで発動させたのだ。 広範囲に渡る大掛かりな落とし穴。その昔、二百匹の群れを残らず飲み込んだ深淵は、過日とは違う姿で獲物を出迎える。 かつて、穴の底に敷き詰められていた古釘の代わりに突き立っていたのは、竹槍。 鋭く尖ったそれが落ちてくるゆっくりの中枢餡を貫き、絶命させたのだった。 「ゆびぃいいい゛い゛!?!?なにこれぇえええ゛え゛え゛!?!?」 先程の落とし穴が櫓となり、竹槍の林の中心にそびえ立つ。柵付きの櫓の頂点で、奴隷れいむは突然現れた地獄に怯えた。 「……だいじょうぶなのかだぜ?けがとかしてないんだぜ?」 「ゆんやぁあああ!!こないでぇええええええ!!」 逃げ場の無い櫓の中で、見知らぬまりさから逃げ出したくても逃げられないれいむが涙としーしーを垂れ流しながら懇願する。 一体何故、こんな事に?何処で自分は間違えたのか?れいむの脳裏はそんな疑問で埋め尽くされていた。 このれいむは、れいむ種主体である事意外は特徴の無い群れの生まれだ。 突出した能力の無いれいむ種であるが故に、狩りやお家の造成も不得意な群れではあったが、それを皆で補い合える群れだった。 『あのおかのドスたちみたいに、いっしょうけんめいゆっくりしようね!』 それが口癖だった長。丘の群れと言う理想を、自分の群れで再現したかったんだろう。 幾度となく丘へ出向き、『効果的な狩りの方法』や『冬でも寒くないお家の作り方』を教えてもらっていた長は厳しくもあったが、 群れがゆっくりできるよう常に頑張っていたし、そんな長を嫌うゆっくりはあの群れには居なかった。 有能な長、仲の良い群れ、お腹一杯むーしゃむーしゃ出来なくとも、れいむはこの群れを『ゆっくりプレイス』と胸を張って言えたのに、 『ゆっへっへっ、さあ!おうさまにせんぶみつぐのぜ!!』 突然現れた化け物まりさに、全部壊されてしまった。 強かった父も、優しかった母も、大好きな幼馴染みも、大切な友達も、大事なご近所も、一切合切を理不尽に奪われた。 『あのおかのどすがいれば、こんなことには………!!』 最後まで抵抗していた長が殺された時、生き残っていたのはれいむを含めて僅か三人。 そして待ち構えていたのは、奴隷として生きる屈辱的な日々。 些細な事で嬲られ、戯れに潰され、中には食糧になって殺される仲間達の姿が自分の未来を示すようで、れいむは常に死の恐怖に怯えていた。 『だいじょうぶだよ、いまがまんしていれば、きっとゆっくりできるよ!』 同じ境遇でありながら、そう言って励ましてくれたまりさはあっさりれいむを見殺しにした。他の奴隷仲間達もれいむを助けてはくれなかった。 れいむは思う。一体、自分の何が悪かったのかと。 狩りも下手なりに頑張った。お家を造るお手伝いも、近所の子供達のお世話も一生懸命やっていたし、我侭を言って両親や群れを困らせた事も無い。 (なのに、なんでこうなったの?れいむのなにがわるかったの?だれか、おしえて……!!) 幾ら考えても答えの出ない疑問に、れいむの餡子がフリーズする。 彼女を我に返したのは、眼下の地獄を作り出した見知らぬまりさの一言だった。 「とりあえずここならあんぜんなんだぜ。けがはあとでなおしてあげるから、もうすこしがまんするんだぜ。 ……まりさたちが、あいつらをぜんぶやっつけるまで。」 「……ゆっ?」 何を言われたのか解らない。そんな表情でまりさを見返すれいむ。 だが、それ以上は何も言わず、まりさは櫓から落とし穴の縁で喚き散らす化け物まりさの軍勢を睨み付けた。 「ひきょうものぉおおおおお!!ゆっくりしないでさっさとこっちにこぉおおおいぃいいい!!」 「なんでそんなところにいるんだぜ!!まりさがそんなにこわいのか、なんだぜ!!」 「むっほぉおおおおお!!とかいはにあいしてあげるわぁああ!!ありすをうけいれてねぇえええ!!」 「よくもみんなをぉおおおお!!ぜったいにゆるさないよぉおおおお!!」 「まりさのはにーをよくもころしたなぁあああ!!げすはゆっくりしねぇええええ!!」 先程から間断なく喚き続ける軍勢のゆっくり達。聞くに堪えない罵詈雑言を叩き付けられて居るにも拘らず、櫓のまりさは動じない。 「……げすはそっちなんだぜ。それより、いつまでもそこにいるとあぶないんだぜ?」 不意に呟いたまりさの言葉が終わると同時に、最前列で喚き散らしていたれいむの右目に穴が開いた。 「ゆ?………ゆっぎゃぁあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」 突然見えなくなった右目に、自身に起こった異常を把握するよりも先に、れいむを激痛が襲う。 体の中が電撃に撃たれたかのように痺れ、全身の餡子が掻き回されるような感覚に犯され、れいむの全身から脂汗が滝のように湧き出てくる。 「ゆ゛べがぎゃ゛げごごぐびゃ゛ぼぅ゛!?!?……ゆ゛ばぁ゛っ゛!!!!!」 そして激痛にのたうち回るれいむが不意に動かなくなったかと思うと、口はおろかあにゃるやしーしー穴、まむまむや両の眼窩から大量の餡子を吹き出して息絶えた。 余りの事に騒ぐのを止めるゆっくり達。その中の一人であるまりさの頬に穴が穿たれた。 「ゆぐっ!?………ゆぎゃばばばばばばばべぎょおぉおお゛お゛お゛!?!?!?!?………ぶびゃ゛っ゛!!!!!」 そして今度はまりさがのたうち回り、全身の穴という穴から餡子を吹き出して絶命する。 それを合図にしたかのように、次々と穴を開けては狂ったように暴れて死ぬゆっくり達。 「んぼっ!?……んぼぉおお゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!?!?………ゆ゛ぼっ゛!!!」 「いやぁあああ!!れいむじにだぐな……あ゛ぎゃ゛べら゛ぴぼぉ゛お゛お゛っ゛!!!…………ぶじゃ゛っ゛!!!!」 「なんなんだぜ!?なにごとなんだぜ!?…………いやじゃ゛ぁ゛あ゛ぎゃ゛ぎゅ゛べぼぶら゛びぃ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛!?!?…………ゆ゛でぶっ゛!!!」 唐突に生まれた地獄絵図に、化け物まりさが一瞬怯む。が、すぐに原因の見当が付いたのか、慌ててスィーから飛び降りて奴隷達の陰に隠れた。 「みんな、ものかげにかくれるのぜ!!これはきっと、からだのなかにからいからいさんをうちこまれてるのぜ!!」 化け物まりさの忠告を聞き、あるものは奴隷の死体を、あるものは傍に居た仲間の体を盾にして身を隠す。 だが、盾にしたそれらからはみ出た僅かな部分を狙って穴は穿たれ続け、のたうち回るゆっくりが続出した。 それを櫓から見ていたまりさが、視線を己の後方へ向けて一人ごちる。 「……あいかわらず、いいうでをしてるんだぜ。やっぱり、ぱちゅりーたちにまかせてせいかいなんだぜ」 まりさの、絶大な信頼の篭った独り言を聞いたれいむは『何の事だろう?』と首を捻った。 化け物まりさと落とし穴を挟んで反対方向にある茂みの中で蠢く影。 そこに潜んでいたのは、全身に迷彩を施されたぱちゅりーと、同じ迷彩を施されたまりさであった。 「……もうすこしみぎへ。……いきすぎよ、ちょっとだけひだりにもどって。……いまよ、うて!」 オペラグラスを覗き込んだぱちゅりーの誘導に従い、照準を合わせていたまりさが一瞬だけ膨らみ、銜えた筒へ息を吹き込む。 その勢いに押され、筒の中を猛烈に走り抜けた弾丸が狙い違わずれいむの死体に隠れていたありすの尻に突き刺さる。 「……おみごと。ありすはしんだわ。たまをこめたらたいきしててね。……つぎ、いくわよ」 オペラグラスを通して、ありすが苦しみ抜いてカスタードを吐き出したのを確認したぱちゅりーの指示に従い、後退するまりさと入れ替わるように別のまりさが現れる。 その口に銜えているのは一メートル程度のプラスチック製の筒。その先端を化け物まりさの軍勢に向け、まりさはその場に伏せてぱちゅりーの指示を待つ。 「……つぎはおとしあなのみぎはじにいるまりさをねらいましょう。うっかりまわりこまれたら、『さくせん』がだめになるわ」 ぱちゅりーの目の高さに固定されたオペラグラスに映る獲物に狙いを定め、まりさが筒を動かす。 筒の先に付けられた照準器が、落とし穴の右端で縮こまっていたまりさに向けられた。 「……かぜさんがふいてきたわ。ねらいをひだりにはんぶんうごかして……そうね、せなかをねらいましょう」 ぱちゅりーの指示に無言で従うまりさ。その視線はゆっくりにあるまじき鋭さをたたえている。 ふらふら動いていた筒先が固定されたその瞬間、ぱちゅりーは短く命じた。 「うて!」 筒の中に大量の空気が送り込まれる。その中に詰められていたのは唐辛子の粉末を詰め込んだ特製の弾丸。 一メートル程の筒の中を滑走し、充分な勢いを付けられた弾丸は十メートル程先に居た標的の背中に突き刺さり、体内で弾け跳ぶ。 世界一辛いと言われ、殺ゆ剤にも使用されるジョロキアの粉末が砕け散ってまりさの餡子と混ざり合う。次の瞬間、まりさは自分の餡子が沸騰したかのような衝撃に襲われた。 「ゆっぎゃぁあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!」 痛い、痛い!凄まじい痛みに悶え苦しむまりさだが、激しく動き回る度に餡子と唐辛子が撹拌され、却って激痛が満遍なく全身に行き渡ってしまう。 やがて唐辛子と山葵が中枢餡に達し、まりさの命が劇物に蹂躙された。 「ぴぃっ!?……ゆ゛べじっ゛!!!!」 一瞬の硬直、そして劇物への拒絶反応が過剰に働き、まりさの中身を全て打ち撒けた。 どんどん減って行く餡子に、まりさが霞む意識で懸命に懇願する。 (やべで!!ばでぃざのあんござんででいがないで!!ばでぃざじにたぐない!!じにだぐ……しに………く…………) だが如何に懇願しようとも、まりさには餡子の流出を止められない。 故郷の群れの長を殺してその地位を簒奪したあの日の事や、全滅した群れを捨てて化け物まりさの元で好き放題に暴れた日々の事。 まりさの輝かしい栄光の記憶が、命と共に流れ出して行く。 消えゆく意識の中で、まりさは只『死にたくない』を繰り返すことしか出来なかった。 「……おみごと。いいうでだわ」 標的のまりさが汚い餡子を撒き散らして絶命するのを見届け、ぱちゅりーが狙撃手まりさを褒める。 だが一仕事終えたまりさは何でも無いかのように返した。 「……まりさのうでまえじゃないよ。これのおかげだよ」 そう言って口に銜えた競技用の吹き矢の筒を示すまりさに、ぱちゅりーが苦笑しながら応える。 「……それでも、それをつかっているのはまりさなのよ。もうすこし、じしんをもっていいわ。 ……たまをこめたらたいきして。つぎ、いくわよ。じゅんびしてね」 ぱちゅりーの言葉に黙って頷くと、まりさはもう一人のまりさと交代で積み上げられた包みへ向かう。 ゆっくりでも簡単に開けられるよう細工された包みを解いてその中身、特製の唐辛子弾を触らないように注意しながら吹き矢の筒へ押し込む。 背後で鋭い呼気が聞こえた。続くぱちゅりーの「……おみごと」と言う労いの言葉で、ゲスがまた一匹死んだのだと理解する。 ゲスが死ぬのはすっきりーっ!することだ。自然に気分も高揚してくるのは仕方が無い。 (でも、まりさたちのおしごとは、あいつらをころすことじゃない。あいつらを、にがさないことだよ) まりさは深呼吸して気を落ち着けた。 ぱちゅりーの誘導があるとはいえ、実際に狙撃しているのはまりさ達なのだ。気が高ぶった状態では碌に狙いは定まらない。 『いちいちよろこんだり、おこったり、ないていたり、たのしんでいたりしたら、いしはぜんぜんあたらないんだぜ。 ……いしをあてるときは、あてることだけにしゅうちゅうする。それが、いしをあてるこつなんだぜ』 かつて石の吹き方を伝授してくれた、森の奥で行方不明になったまりさの言葉を思い出す。 当たったからと言っていちいち喜んでいてはいられない。それに自分達が目的を失えば『作戦』は破綻してしまう。 ドスは群れで一、二を争う石吹きの名人である自分達を信頼してこのポジションに付けたのだ。 『彼ら』だってまりさ達にわざわざこんな貴重なものを用意してくれた。その信頼は絶対に裏切れない。 凪いだ湖面のような冷静さを取り戻し、今度は畑に逃げ込もうとするれいむに狙いを付ける。 茂みに引っ掛かって、薄汚い尻をこちらに向けてプルプル振るう滑稽な姿に、まりさは容赦なく唐辛子の弾を撃ち込んだ。 一方、狙撃の雨を喰らい続ける化け物まりさの軍勢は未だに狙撃手の陰すら掴めていなかった。 落とし穴を挟んでいるとはいえたった十メートル先の、あからさまな薮に注目するゆっくりは居ない。 皆、自分だけ助かろうとして大混乱に陥っていたからだ。 「かわいいれいむのためにしんでね!!」 「いやなんだぜ!!むのうなれいむこそしんでね!!」 お互いを盾にするべく背後を取ろうとして、その場でぐるぐる回り続ける番も居れば、 「んほぉおおおおお!!どうせしぬならいますぐすっきりーっ!するわぁああああ!!」 「やべちぇえええええ!!みゃみゃぁああ゛あ゛あ゛あ゛!!……ちゅっきりぃいい゛い゛い゛い゛い゛っ゛!?」 自暴自棄になってレイパーと化し、手近に居た自分の娘ですっきりーっ!を始める親子も居る。 阿鼻叫喚、悲喜交々な群れの中にあって只一人、四方を奴隷で固めた化け物まりさだけは冷静に状況を見極めていた。 「……やっぱり、ここまでからいからいさんはとどかないみたいなのぜ」 余りにゆっくりしていない凄惨な死に方に騙されていたが、撃たれたゆっくりはそう多くない。 恐らく狙撃手の数が少ないのか、あるいは射程が短いのだろうと化け物まりさは見抜き、直ちに号令を出す。 「みんな!そのおおあなのそばによるんじゃないのぜ!!こっちならあんぜんなのぜ!!」 その声に、一斉に穴から遠ざかるゆっくり達。押し合い減し合い、時には邪魔な同属を踏み潰して化け物まりさの元へ向かう。 七孔噴血ならぬ五孔噴血して死ぬのはご免だとばかりに全速力で逃げ出し、ここなら安全だと一息ついたのもつかの間のこと。 「……思った通り、そこに来たね?……ドススパーク!!」 再び飛来した光の束に、十数人のゆっくりが纏めて薙ぎ払われた。 先程の焼き直しのように体の一部を残して消え去るゆっくり達。 「……まさか!?」 弾かれたように身を翻して向けた視線の先に、必死に逃げ出すドスを見つけた化け物まりさの怒りが再び火が着く。 鈍重な巨体で跳ね跳ぶ度、畑の畦道を揺らしながら遠ざかる後ろ姿を激怒を込めて睨み付け、化け物まりさは追撃を命じる。 「……いいかげんにするのぜぇ!!やさしいおうさまでも、もうがまんのげんかいなのぜ!! なにをもたもたしてるのぜ!!みんなでどすをおいかけるのぜ!!」 「「「「「「「「「「ゆ……ゆぅ~っ!!」」」」」」」」」」 化け物まりさの勢いに押され、渋々畦道に繰り出す一同。 始めは恐る恐るであった歩みが進むにつれ、足取りから怯えが消えて次第に軽くなって行く。 ここには痛い石も、落とし穴も、突然穴を開けて死ぬゆっくりもいない。それを確信した途端、群れは暴走を開始した。 「まてぇえええええ!!このどげすぅううううう!!よくもれいむをおどかしたなぁああああ!!」 「まりさをゆっくりさせなかったつみはおもいんだぜ!!だからせいっさいっしてやるんだぜ!!」 「いなかもののどすに、ありすのとかいはなあいをたくさんあげるわぁ!!むほぉおおおおお!!」 口々に勝手な事を喚き散らしながら、畑と畑の合間にある細い畦道をひた走る。 畑の作物が生い茂り、丁度ゆっくりが隠れるには絶好の薮と化した茂みが両脇に並ぶ畦道を、何の警戒も無く爆走する一団。 その後を必死に着いて行くまりさが異常を感じた時には、既に手遅れだった。 「ゆゆっ!?なんだかゆっくりできないけはいがするよぼっ!?!?!?」 「どうしたのまりしゃばっ!?!?!?」 先頭集団の最後尾で、まりさが何となく感じた違和感を漏らす途中でいきなり口を噤む。並走していたれいむが一瞬遅れてその理由を知った。 突然何かに躓くように転んだ二人を、銀色に光る何かが畑に引きずり込む。先を行く集団の誰一人とて、それに気付かなかった。 遠くで跳ねるドスの姿がどんどん近付いてくる。当然だ。 ドスの移動速度はそれ程速くない。その巨体に見合う歩幅を持つものの、巨体故の鈍重さが枷となるからだ。 「のろまのくせに、まりさたちとおいかけっこだなんて、ばかなの?しぬの?」 「で、でいぶの、ばでぃざば、がげっご、どぐい、なんだよ、………ぜひゅー、ぜひゅー」 先頭集団に追い付いたばかりのまりさがせせら笑う。そのすぐ後に続くれいむが、呼吸困難を起こしながらもまりさの言葉に追随した。 「……れいむ、むりしないほうがいいよ?」 「だ、だいじょうぶ、だよ、でいぶ、ばでぃざの、およべざん、なんだよ。 だがら、ばでぃざど、いっじょに、いるん、だよ、………ぜひゃー、ぜひゃー」 数ヶ月前、無性にすっきりーっ!したくなったまりさが行き摺りのれいむを襲って以来、彼女は『まりさのおよめさん』を自称して付き纏ってきた。 いつでも何処でも、気が付けば物陰からじっとこちらを見ている姿に、しーしーを漏らす程怯えた日々が一変したのは化け物まりさの群れに加わってから。 この群れでは、自分専用の奴隷を持つ事がステータスの高いものの証だ。 奴隷ゆっくりは群れの共有財産とされているので、名目上は番という事になる。それを聞いたれいむは奴隷となる事を即座に了承した。 いざ奴隷にしてみれば、れいむは中々に使えた。すっきりーっ!したい時にはいつでも相手してくれるし、赤ちゃんはいらないと言えば自分で茎をへし折ってちゅうっぜつっする。 少々嫉妬深く、まりさの浮気相手を殺してしまう事もあったものの、従順で健気なれいむをまりさも次第に好ましく思うようになり、本気で番に迎えようと考え始めていた。 この遠征が終わったら宝物の奇麗な石を贈ってれいむに『ぷろぽーず』しよう。 そしてあの大きなお家で、れいむと赤ちゃんに囲まれてずっと一緒にゆっくりするんだ。 とてもゆっくりした未来を思い描き、にやにや笑いを浮かべて走るまりさ。 彼女の餡子が幽かな違和感を感じ取ったのはそんな時だった。 (あれ?なんだか、へっているきがするよ……?) 入れ替わり激しい先頭集団、しかも全速力でドスを追いかけている最中だ。 大方、走り疲れて脱落したのだろう……。 (ちょっとまって、おかしいよ?まりさ、だれもおいこさなかったよ?) 先頭集団がそっくり入れ替わる程の脱落者が出たのなら、既に相当数追い抜いている筈だ。だが、まりさにはそんな記憶は無い。 気が付かなかった?いいや、それは無い。いくら何でも、まりさはそんなに大量の脱落者に気付かないようなうっかり者ではない。 (じゃあ、どうしてみんないなくなってるの?みんなどこにいったの?) 小さな違和感は、今や確信に変わりつつあった。 何かゆっくり出来ない事が起こっている。それも誰も気付かないうちに、じわじわと蝕むように。 このままでは自分達も巻き込まれてしまう、その前に逃げないと! 離脱を決意したまりさが、背後を走るれいむにその事を伝えようと振り向き……、銀色に光る何かが視界の端を翳めるのを見た。 「……ふぅっ!?」 なんだかゆっくり出来ない匂いが当たりに立ちこめる。お顔がやけに涼しい。 何故かあんよに力が入らない。折角追い付いた先頭集団がまた遠ざかって行く。 「ふぇっ!?はひは、ろうらってるろぉ!?」 まりさ、どうなってるの?そう言ったつもりだった。だが、口を吐いて出て来たのは不明瞭な発音と、やけに大きな呼吸音。 振り向いた視線の先に、見慣れないものが転がっている。けれど、まりさはそれを良く知っている気がする。 まりさの心中に広がる不安。あそこに転がっているものは何だ、知っているけど知らない、見た事無いけれども見た事がある。 その答えは、まりさのお顔を見るなり盛大に餡の気を引かせたれいむが教えてくれた。 「ゆぎゃぁああああああっ!?!?まりさのゆっくりしたおかおがぁあああ!?まりさのきれいなしもぶくれさんがぁあああああ!?!?」 「……へひふ?はひはふぉおはお、ふぉおひひゃっはふぉおおぅっ!?」 れいむ?まりさのおかお、どうしちゃったの!? れいむの尋常ではない取り乱し様に、ただ事ではないと察して詰め寄るまりさ。その発音の覚束ない口には、あるべきものが無かった。 まりさの唇が、消えていた。飴細工の歯と餡子の歯茎が、むき出しになって外気に晒されている。 左頬には口腔が覗く程深い穴が開き、息をする度にそこからひゅーっ、ひゅーっと空気が漏れていた。 まりさの右頬の半ばから左頬全面にかけて、お顔の皮が剥ぎ取られていた。先程見たもの、それはまりさ自身のお顔の一部だったのである。 「ゆわぁあああああ!!くるなぁああ!!ばけものぉおおおおお!!!」 「へ……へひふ……?」 狂乱するれいむに駆け寄ろうとするまりさに、ゆっくり出来ない罵声が浴びせかけられる。 あんなに従順で健気だったれいむから叩き付けられた拒絶の言葉に、まりさの思考が停止した。 「ゆっくりできないまりさはゆっくりしないでしね!」 その言葉を最後に、まりさに背を向けて走り去るれいむ。 さっきまで、れいむは一生懸命自分について来てくれていた。『まりさのおよめさん』である事を誇りに思ってくれていた。 だから、まりさはしあわせーっ!な将来を夢見ていられたのに! (なんで?どうして?まりさ、なにもわるいことしてないのに!……ぎゃばっ!?) 豹変したれいむの態度に混乱する餡子脳を貫く衝撃。それを最後に、まりさの意識は暗転した。 一方、れいむはここ数ヶ月分の愚痴を垂れ流しながら、畦道を逆走していた。 「まったく、せっかくびけいなまりさをてにいれたとおもったのに!!おかおをなくすなんて、とんだくずだったよ!!」 まりさの名誉の為に言えば、どのようなゲスであろうとも『顔を無くす』芸当をして見せるゆっくりなど、この世に存在しない。 顔を無くす、と言う超常現象自体には興味を示さず、ひたすらまりさを罵倒するれいむ。 「これじゃ、もうおとなりのれいむやありすにじまんできないよ!まりさのせいだね!ぷんぷん!!」 れいむ種において『すてきなだんなさん』を持つ事はかなりのステータスになる。 狩りが上手、かけっこが得意、お帽子でのぷーかぷーかが出来る等、『すてきなだんなさん』の条件は幾つかあるが、最も重要なのは『美形である』ことだ。 数ヶ月前、親をゆっくりさせない赤ゆを捨てて森をうろついていた時に襲って来たれいぱーまりさは、野生では滅多に居ない程の美ゆっくりだった。 丁度『しんぐるまざー』から只のれいむに戻ったばかりだった彼女は様々な策を弄し、まりさを『だんなさん』に据えて化け物まりさの群れに迎えたのだ。 「まいにち、まりさのたんしょうなぺにぺにのあいてまでしてやったのに!れいむのまむまむは、まりさなんかにはもったいなかったよ!」 何故かれいむを見る度にしーしーを漏らす程怯えていたまりさを『だんなさん』にするには相当苦労したものだ。 ご近所を巻き込み、まりさにある事無い事吹き込んで『奴隷にするには番になること』と言う大嘘を信じ込ませ、自慢の色香で誑し込む。 そこまでしてれいむの元に引き止めたのはまりさが美形だったから、それだけだ。 だから、お顔を失った今のまりさは、れいむにとって何の価値もない。惜しいとも思わない。 むしろ、ここまでやった苦労を水の泡にしたまりさへの恨みばかりが募っていくのみ。 「あんなゆっくりできないまりさのあかちゃんなんて、ちゅうっぜつっしといてせいかいだったよ!こんどはもっとびけいなまりさを………、ゆっ!?」 単に『赤ちゃんを育てたくなかった』から実ゆを潰した事を、都合良く正当化していたれいむの足が止まる。 先頭集団から大きく引き離された後続集団が見えてきたからだ。 「ちょうどよかったよ!まりさがしんだっておうさまにほうこくして、あたらしいまりさをもらうよ!!」 「……それはこまるみょん。そのことをしってるゆっくりはいてはいけないみょん」 れいむが自分だけに都合のいい未来を妄想しながら垂れ流した独り言に、聞き覚えの無い声で返事が返された。 突然聞こえてきた言葉に警戒するよりも早く、れいむは鬱蒼とした畑に引きずり込まれる。 後続集団は一連の出来事に気付く事無く、現場を通り過ぎて行った。 「い……いじゃい!いじゃいいいいいいい!!でいぶのぷりちーなおかおがぁあああ!!!」 畑に引きずり込まれたれいむは酷い有様だった。 右頬から後頭部に掛けて一列に並んだ小さな引っ掻き傷が鋭い痛みを、引きずり込まれる際に薮になった作物に打たれたお顔が腫れて鈍い痛みを、それぞれ伝えてくる。 「……べつにそのていどならしんだりしないみょん。さっきのまりさのほうがよっぽどひどかったみょん」 「ゆっ!?だれ!?」 もがき苦しむれいむの背後から、先程と同じ声が掛けられる。 途端に痛みを忘れて振り向くれいむ、そこには一匹のみょんが居た。 「……さっきのまりさはけっこうがんじょうだったみょん。『ろーかんけん』のいちげきでたおしきれなかったのはあのまりさがはじめてだったみょん。 ……できれば、せいせいどうどうたたかいたかったみょん。でも、これがみょんたちの『さくせん』だから、しかたなかったみょん」 「…………!おばえがぁあああああ!!ぎゃわいいでいぶをごんなめにあわぜだのばぁああああああ!!!!」 最愛のまりさを殺し、悲劇のヒロインたる自分に重傷を負わせたのが目の前のみょんだと知り、れいむは激怒した。 許せない、目の前のこいつだけは絶対に許せない!怒りにお目目を充餡させ、般若の形相でみょんに飛び掛かる。 「でいぶをゆっぐりざぜないみょんはゆっぐりじないでじね!!!!」 「……じぶんのことしかあたまにないみょん?まりさもうかばれないみょん」 怒りに任せたれいむの突撃を、みょんは余裕で躱す。 着地に失敗して無様に地面を転がるれいむに侮蔑を込めた視線を送りつつ、みょんは『ろーかんけん』を取り出して構えた。 「よけるなぁああああ!!さっさとれいむにころ……さ…………れ…………?」 起き上がったれいむがみょんの構える『ろーかんけん』を目にした途端、罵声が尻つぼみに小さくなる。 みょんが銜えているもの、それはみょんの胴回りよりも長い片刃の鋸。 一般にレザーソーと呼ばれるそれが、れいむを傷付けた凶器の正体であった。 「……あんまりさわがれて、あいつらにきづかれたらたいへんみょん。だから……」 硬直しているれいむ目掛けて鋸を振りかぶり、 「いちげきで、おわらせるみょん!!」 そのまま横薙ぎに振り払われた剣閃が、れいむを一刀両断にする。 悲鳴を上げる間もなく、真っ二つに引き裂かれたれいむの上半分がずり落ち、中身を曝け出した。 「……にんげんさんがきたえた『ろーかんけん』で、きれないものはあんまりないみょん」 油断無く残心を払いながら、みょんはそう呟く。 この『ろーかんけん』は、いつもの木の枝で戦いに赴こうとしたみょんを気遣った『彼ら』が持たせてくれた武器だ。 木の枝とは比べ物にならない威力の『ろーかんけん』で、みょんは既に二十を超える戦果を得ていた。 (……つぎのばしょにいそぐみょん。ゆっくりしてると、あいつらがきちゃうみょん) 畑の畦道は一本道ではない。畑の合間を碁盤の目の如く網羅しており、ドスはそこを縫うように逃げ惑う。 ドスを追いかける化け物まりさの軍勢は、馬鹿正直に道なりに進んでいる。わざわざ畑の薮に踏み入ろうとはしない。 そしてみょん達は畑に潜み、畑をショートカットする事で常に先回りしてゲリラ戦を仕掛けていたのだ。 先頭集団の最後尾に居るゆっくりに狙いを定め、他のゆっくり達に気付かれないうちに仕留める。 それがみょん達の役目だった。 (みょんのやくめは、あいつらをかのうなかぎりへらすこと。あいつらにきづかれないようにこうどうすること。 ……ひきょうではあっても、にんずうのすくないみょんたちではこのほうほうしかないみょん。) 敵は減らさなくてはいけない。敵に気付かれてはならない。 両方とも実に困難ではあるが、それを為さなければならないのがこの役目の辛い処だ。 (それでも、みょんは『さくせん』をぜったいにせいこうさせるみょん!) 既にみょんの覚悟は出来ている。後はどれだけあの軍勢を減らせるか、それだけだ。 次の待ち伏せ地点に向かうみょんの足が止まる。 驚愕に目を見開いたまま、中枢餡を断たれて絶命しているれいむの屍が目に入ったのだ。 「……『なかにだれもいないみょん』のほうがよかったかも、だみょん」 曝け出された切断面を見て、みょんは新しい決め台詞を推敲していた。 ※過去作とかは後編にて
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/422.html
とある施設の一室でそのゆっくりは目を覚ました。 周囲を見渡すと自分と同じ形のゆっくりと黒い三角帽子をかぶったゆっくりが複数いる。 ほとんどのゆっくり達はまだ眠っているが数匹のゆっくりは目を覚ましていた。 部屋の中心には黒ずんで朽ちたものがあったが何かはわからなかった。 「ゆっくりしていってね!」 一匹のゆっくりが大きな声で叫んだ。それがまるで合図であるかのように寝ていたゆっくり達が目を覚ます。 「ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆ・・・」 次々とゆっくり達は目を覚ましていく。数分のうちに部屋にいるゆっくり達はすべて目を覚ました。 ゆっくり達はここが何処だかわからずキョロキョロと周りを見回している。 その時部屋の隅にある扉が開き一人の年配の男が入ってきた。 ゆっくり達が男に話しかける。 「ゆっ!おじさんだれ?」 「ここはどこなの?」 ゆっくりが達が尋ねると男が説明を始めた。 「こんにちは。ここはゆっくり繁殖場だよ」 「繁殖場?」 「最近天然のゆっくりが乱獲されて数が激減していてね、ここは数が減ったゆっくりを繁殖させて野生に返す施 設なんだよ。君たちのうち赤いリボンをしているのがゆっくり霊夢、黒い三角帽子をしているのがゆっくり魔理 沙と言うんだよ。そして君達はたった今生まれたばかりなんだ。だからここがどこだかわからなかったんだよ。 でも安心してゆっくりすればいいよ。」 まだ何の知識も持っていないゆっくり達は素直に男の言うことを信じ飛び跳ねて喜んでいる。 「そうそう、生まれたばかりでお腹が空いているだろう?食べ物を持ってきたよ。」 男は持ってきた和菓子や洋菓子をゆっくり達の前に置いた。 「おいしい!」 「うっめ!」 「メッチャうっめ!」 ゆっくり達は満足そうに与えられた食べ物をたいらげた。 男は部屋から出て行く際に、 「外は危険だからこの部屋から出てはいけないよ。外から危険なものが入ってこないようにこのドアには鍵をかけ ておくよ。」 ゆっくり達は男の言うことを素直に聞き入れゆっくりしている。そしてお腹がいっぱいになったせいか眠りにつ いた。 次の日、また男が部屋に入ってきた。ゆっくり達は歓迎する、 「おじさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり遊んでいってね!」 ゆっくり達は無邪気に飛び跳ねている。すると男は、 「今日はこの部屋にいる君達の半分を別の部屋へ移動させるよ。これだけの数がいると狭くて住み辛いだろうから ね。」 ゆっくり達は仲間が少なくなるのはいやではあったが、男の言うとおり部屋が狭いと言うことと、信用している おじさんが言うことなので素直に従った。 5分後、部屋にいたゆっくり達の半分は男の入ってきた扉から出て行った。 残ったゆっくり達は寂しそうだったが、部屋が広くなったのですぐに部屋を飛び回り喜んだ。 その後ゆっくり達は毎日やさしいおじさんに食べ物をもらいゆっくりとすごした。 -2週間後- ゆっくり種というのは成長が早いらしく2週間で生まれた時の3倍もの大きさになっていた。以前に比べると広 かった部屋も全員が自由に飛びまわれなくなってしまっていた。 いつものように男が入ってきた、 「おじさん、ゆっくりしていってね!」 まだご飯の時間ではなかったのでゆっくり達は不思議そうにしている。すると男は、 「そろそろ外の世界に慣れさせる頃だね、明日から一匹ずつこの部屋から出てもらうからね。」 「ゆ!!!」 ゆっくり達はびっくりした。2週間優しく世話され満足な生活をしていたため生まれた日に説明されたことをす っかり忘れていた。 「数が減っているゆっくり達の数を増やすために必要なことなんだ。わかってくれるね?」 ゆっくり達は不安そうな顔をしている。 「大丈夫だよ、すぐには野生には返さないから。ゆっくり慣れてもらうつもりだから安心していいよ」 おじさんの優しそうな笑顔を見てゆっくり達はいつもの陽気な顔に戻っていった。 「それじゃ明日から一匹ずつ出てもらうからね。緊張せずにゆっくりしてればいいよ」 そう言って男は出て行った。 そして次の日から一匹ずつゆっくりが外の世界へ旅立っていった。 -数十日後- 部屋にはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の2匹だけになっていた。部屋から出て行ったゆっくり達がこの部屋に 戻ってくることはなかった。2匹は早くみんなのもとへ行きたかった。もうすぐおじさんがやってくる頃である。 扉が開く、 「やぁ、2匹で寂しい思いをさせて御免ね。今日はゆっくり霊夢の番だよ。抱えて部屋からでるから静かにしてい ておくれよ。」 「おじさん、ゆっくりしようね!」 男はゆっくり霊夢を抱え部屋から出て行こうとする。ゆっくり魔理沙は、 「もっとゆっくりしていって!」 と叫ぶが男はそれが聞こえなかったかのように部屋を出て行った。 部屋から出てしばらく歩くと目の前にゆっくり魔理沙を抱えた金髪の女性が立っていた。 「今日もゆっくりしようね!!!」 ゆっくり霊夢は無邪気そうにしている。 その時! 「では始めます」 おじさんがそう言った瞬間ゆっくり霊夢は宙を舞っていた。 「ゆっ、ゆっくり!?」 ゆっくり霊夢は驚愕の表情で何が起こったかわからないままおじさんとの距離がどんどん遠ざかっていく。 その時なにやらやわらかいものにぶつかりぽよんとはねてコロコロと転がる。 ゆっくり霊夢は目の前で巨大なゆっくりがのっそりと動くのを見て、叫ぶように、 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 といって投げられた方向に向かって一目散に飛び跳ねていく。はじめて見るものだが本能が危険だと言っている ようだ。そして扉にたどり着くが開かない。 「早く扉を開けてね!!! 」 ゆっくり霊夢の後ろでは巨大なゆっくりが飛び上がって向かってくる。 「早くして!お願い!おじさん!たずげでぇぇぇぇぇぇ!」 ゆっくり霊夢は顔がくしゃくしゃになるほどに号泣し、おじさんに哀願している。 そんなゆっくり霊夢を尻目に巨大なゆっくりはその巨体に見合うだけの分厚い下のびろーんとのばしゆっくり霊夢 に巻きつける。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 号泣するゆっくり霊夢は悲しげな絶叫を残して巨大なゆっくりの中へ飲み込まれていった。ゆっくり霊夢は見た、 数日前まで自分と一緒の部屋で暮らしていたゆっくり達がそこにいた。ほとんど原型を残さないほどばらばらで 意識がないもの、大部分がくずれているがまだ意識はあるもの、少し皮がなくなり中身の餡子が見えているもの。 意識のあるものはみな号泣していた。そして巨大なゆっくりの口が開いたとき信頼していたおじさんが見えると、 みんな視線をおじさんに向け、 「おじさんだずげでぇぇぇ」 「もっとゆっくりぢたいよー」 「ここからでだいー」 と哀願する。 しかし男はゆっくり達のしっているおじさんではなかった。まったくゆっくり達には興味がなさそうに金髪 の女性と話をしている。 そして無慈悲にも巨大なゆっくりの口が閉じられ中は暗闇で満たされる。 ゆっくり達は、意識がなくなるまでの数日間この絶望的な状況でただひたすら号泣することしかできないのであっ た。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでくださった方々、まずはお礼を申し上げます。 6月頭にある画像掲示板でゆっくりがいじめられている画像を見て。他にないものかと探し、この掲示板までたど り着きました。そして過去スレの“ゆっくり加工場”のtxtを読み衝撃を受けました。 そして誠に勝手ながら加工場の設定をお借りし、素人ながら文章を書かせていただきました。 加工場の文章を考えた方へ このたびあなた様の作成されたゆっくり加工場で巨大ゆっくりレティに食べられる霊夢の生涯を勝手に書かせてい ただきました。もしこのことにお怒りでしたら、この場をかりてお詫び申し上げます。 みなさんが希望するのならば、ゆっくり達が生まれた次の日に部屋から連れて行かれたゆっくり達がどうなったか を書きたいと思います。 あと、ゆっくり達が生まれたときは小さくて2週間で大きくなるというのは物語の都合上私が勝手に考えた設定で すのであしからず。 ゆっくり加工場系15 ゆっくり魔理沙の生涯『加工編』
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/858.html
(ある日差しの穏やかな午後) ゆっくりプレイス。そこはとても広い草原だった。 そこに集まったおよそ100匹のゆっくり達は思い思いにゆっくりしていた。 草を食む者、バッタを追いかけ遊ぶ者、あるいは日向ぼっこを目一杯楽しむ者。 そこに現れた男が二人。背には竹籠、手には鉤付きの棒を持っていた。 ゆっくり達に緊張が走る。しかし誰も逃げ出さない。 あの人間達は自分達を捕まえに来たのかもしれない。 しかし、単に自分達と一緒にゆっくりしようとやって来たのかもしれない。 事実、そんな人間も中にはいるのだ。そして彼らは決まって自分達に甘いお菓子をくれる。 不用意には近づけない。しかしお菓子は欲しい。ゆっくり達は態度を決めかねていた。 「うーん。本当にゆっくりがいなくなってるとはなぁ。 森にもいない。巣にもいない。池や川のほとりにもいない。 いつもならこの草原に沢山居る筈なのにやっぱりいない。 あの先生の言ってた事は本当だったんだなぁ。」 「だから言っただろう。先生に頼めば一発だって。 先生はこの近くに住んでいる人の中で一番頼りになる人なんだよ。美人だし。 不思議な能力を持ってたり、綺麗な弾幕を張ったりだって出来る。それに美人だし。」 「・・・。ま、まぁ確かに美人だな。しかしまさか一晩でゆっくりを消すだなんて。 一応狩りの用意をしてゆっくりを探しに来たがとんだ無駄足だったなぁ。」 「まったくだ。俺達のじいさまの代から駆除しても駆除しても増え続けたゆっくりを たった一晩で全部消してしまうなんて。その上美人だし。」 「(もういいって・・・)」 男達は里に住む農家だった。畑に悪さをするゆっくりに困りはて人外の先生に駆除を依頼したのだ。 先生は里に住む全ての人間を集め『一晩ですべてのゆっくりを消す』と宣言した。 この二人はそれを確かめるためにゆっくりを探していたのだった。 「いやーしかし、今までここにはゆっくり狩りでしか来たこと無かったから気付かなかったが いいところだなぁ。ゆっくりに占領させておくのはもったいない。 日当たりはいいし、風も気持ちいい。奴らがゆっくりしたくなる気持ちもわかるよ。 俺達もすこしゆっくりしていこうか。」 「ははは、馬鹿なこと言ってんじゃねーよ。カミさん達に畑任せっぱなしなんだぞ。 しかしまあ一服くらいしてもバチは当たらんだろ。」 そう言うと男達は笑いながら煙草をくわえ火を付けた。 「ゆー。あのひとたちはどうやらゆっくりできるひとのようね。」 「やっぱりぱちゅりーもそうおもう?あのひとたちなんだかゆっくりしてるみたいだよ。」 「あっなにかたべてるよ。れいむたちももらいにいこう!」 談笑中の男の足下に集まるゆっくり達。 「ゆっくりしていってね!!!」 「いっしょにゆっくりしようね!」 「まりさにもそのたべものをちょうだいね。」 しかし男達は足下のゆっくりに気付かない。無視しているのではなく本当に気付いて無いのだ。 だが無視されたと感じたゆっくり達は体をふくらませ威嚇し始めた。 「どうしてむしするの!ゆっくりできないひとだね!」 「ゆっくりできないひとはでていってね!」 「はやくそのたべものをくれないとほんきでおこるよ!」 ついに男の足めがけて体当たりを始めるまりさ。 「じゃあそろそろ行くか。今度は家のちび共も連れてピクニックにでも来よう。」 「そりゃいいな。たまには仕事ばかりじゃなく子供とも遊んでやらんとな。」 男の一人が咥えていた煙草を足下に落とす。それを見たまりさは大口をあけてとび跳ね そのままぱくんと飲み込んでしまった。 「!!!!!!!あああああぢゅいいぃぃぃぃいぃぃ!!!!」 「おいおい、煙草の火はちゃんと消さないと駄目じゃないか。火事でも起きたらどうする。」 「おっと。あぶねぇあぶねぇw」 「き゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛ま゛り゛さ゛を゛ふ゛ま゛な゛い゛て゛え゛え゛ぇ!!!」 グリグリと頭を踏みつけられたまりさは餡子を吐きながらピクピクを痙攣する。 それを見た仲間たちは男の前にたちはだかり次々に叫びだす。 「まりさになんでごとするのおおおお!!!」 「おじさんはゆっくりあやまってね!」 「こんなことするおじさんとはゆっくりできないよ!」 しかし次の瞬間。 「ぎゃああああああ!!!」 「やめて!なんでこんなkぶびゃああああ!!!」 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっkぐへぁあああああ!!!」 歩きだした男達に踏まれ罵声は悲鳴に変わる。 男達が去った後。そこには餡子を吐き出し苦悶の表情を浮かべ息絶えたゆっくりと その周りでただ泣くことしか出来ないゆっくりが残った。 (数日後 人間の里の畑) 「ふぅ・・・またか・・・」 そこには荒らされた自分の畑を見てため息をつく老いた一人の農夫がいた。 つい先日、先生がすべてのゆっくりを消してくれたおかげでゆっくりが畑を荒らす事はなくなった。 しかし、今度はべつの生物が自分の畑を荒していたのだ。 「今度の奴はいったいなんなんだ。きっと恐ろしく頭のまわる奴だぞ。 罠はすべて起動しているのに死体が一つも残ってないなんて・・・」 農夫が仕掛けた数々の罠。落とし穴や毒入りのエサ、対ゆっくり用の超小型地雷。 そのすべてがまったく機能していない様に見えた。 「こりゃぁ新しい罠を考えなければならんのぉ」 またため息を一つつくと農夫はとぼとぼと家路についた。 一方落とし穴の底では。 「ゆぎゃああああ!!!いだいよおおおぉぉぉおおぉぉ!!!!」 「だれがだずげでええええ!!!このままじゃじんじゃうよおおお!!!」 「のぼれないよ!だれかゆっくりたすけてね!こんなところじゃゆっくりできないよ!」 穴の底に仕掛けてあった杭に串刺しにされたゆっくりや 運よく杭を逃れたものの上に登れず泣き叫ぶゆっくりの姿があった。 「れ゛い゛む゛の゛あ゛か゛ち゛ゃん゛か゛あ゛あ゛あ゛!!と゛う゛し゛て゛な゛の゛お゛お゛お゛!!」 「あ゛ん゛こ゛か゛と゛ま゛ら゛な゛い゛よ゛お゛お゛ぉぉぉぉ!!!」 地上もまた地獄だった。 毒を食らい青黒くなって息絶えた子供たちの前で絶叫する母れいむ。 少し離れたところには地雷を踏み破れた皮から餡子を流し続けるありすがいた。 しかしゆっくりにとっては確かに地獄であったがこれは里の人間にとっては日常だった。 唯一いつもと違う点は人間達にゆっくりの姿が見えず声が聞こえない事だけだった。 (さらに数日後 虐待おにいさんの家) 「どうしても行くのか?」 「ああ、行く。この里のまわりに住むゆっくりはすべていなくなってしまった。 それどころか家で飼っていた虐待中のゆっくりもだ。 ゆっくりを虐められないなんて・・・この状況は僕には耐えられない。 だから僕はゆっくりを求めまだ見ぬ土地へ旅に出る。他の土地ならまだ生きたゆっくりがいるはずだ!」 「そうか・・・決意はかたいんだな。しかしこの部屋の散らかり具合はいったいどうしたっていうんだ?」 おにいさんの友人は部屋中に散らかった虐待グッズを見てあきれ顔で聞いた。 「ははは。いやぁ実はどの虐待グッズを持って行ったら良いか悩んでしまってね。 どれもこれも素晴らしい逸品なんだがすべては持っていけないからねぇ。」 「はぁ・・・」 その時開け放たれていた縁側からゆっくりれいむの一家が部屋に入ってきた。 「ゆ!ここにはおもしろそうなおもちゃがたくさんあるね!」 「みんな!きょうはここでゆっくりしていくよ!」 「「「はぁ~い!」」」 「そういうわけだから、おにいさんたちははやくれいむのうちからでていってね!」 早くも自分の家宣言をするれいむ。 しかしおにいさん達はそれにまったく気付かず持っていく道具の吟味を続けていた。 「これなんてどうだ?透明な箱。やっぱり基本は外せないんじゃないか」 「うーん。僕もはじめはそう考えたんだが・・・これって結構かさばるんだよねぇ。それに・・・」 「それに?」 「基本中の基本だからさ、わざわざ持って行かなくてもゆっくりがいる土地なら必ず店で売ってると思うんだ。」 「なるほど。そうなると持っていくのは小さくて他では手に入らない物か。 そういやこれはなんだ?店では見たこと無い。ひょっとして自作した物?」 「ちょっとおにいさん!れいむのことむししないでね!はやくでていってね!」 「もういいよおかあさん!それよりこのへやにはおもしろそうなものがたくさんあるよ!」 「ああこれね。これは僕が作ったやつ。ゴム製の疑似餌だよ。 ゆっくりが好きな果物だよ。しかも香り付きだからゆっくりはすぐだまされるんだ。」 「ほぅ。」 「例えばこんな風に箱の中に入れてさ。」 おにいさんが近くにある透明な箱の中にゴム製の疑似餌を入れる。 「ゆ!!!おいしそうないちご!!!」 「いただきま~す!!!」 二匹の子れいむがそれにつられて箱の中に入る。 「そしてその中にゆっくりが入ったら蓋を閉じるのさ。」 「ふむ。」 おにいさんが箱の蓋を閉じる。母れいむが大声で抗議するが二人には聞こえない。 子れいむは疑似餌に夢中で気づかない。 「ふたりでゆっくりわけようね!ゆ?」 「どうしたの?」 「ゆうううう!!!なんでええぇぇ!!かみきれないよおおおおお!!!」 「なにいってるの!うそつかないでね!はやくれいむにもわけてね!」 「うそじゃないよおおお!!!たべれないのおぉぉ!!と゛う゛し゛て゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゴム製だしね。当然ゆっくりはこの餌は食べられないよ。 そして『と゛う゛し゛て゛え゛え゛え゛え゛!!!』とか言いながら泣き出すのを見て楽しむのさ。」 「うーん。わからんなぁ。ただ五月蝿いだけなんじゃないの?それって。」 「君にはまだ早いかもね。いずれ解る日が来るよ。」 「(いや、一生わからんと思うが・・・)」 おにいさんはゆっくりが入った箱を本棚の上にしまう。 「まっでっでねえ゛え゛ぇぇ!!!いまだすげるがらあ゛あ゛あ゛!!!」 「な゛に゛し゛て゛る゛の゛お゛ぉぉ!は゛や゛く゛あ゛か゛ち゛ゃん゛を゛お゛ろ゛し゛て゛ね゛ぇぇ!」 母れいむは届くはずのない箱に向かって懸命に飛び続ける。 一方おにいさんは残りの疑似餌を床に無造作に置いてあったトラバサミの上に置く。 「こんな風にもつかえるんだ。」 「なるほど。餌につられたゆっくりがこれを踏むとこれに捕まるわけか。」 「ゆ!みんな!おいしそうなぶどうがあるよ!」 「まって!これはれいむがたべるよ!れいむはむこうのぶどうをたべてね!」 「おいしそ~!いただきま~す!」 「「「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!!!!」」」 一斉に子れいむを捕まえるトラバサミ。挟まれ絶叫する子れいむ。驚くおにいさん達。 「な、なんだぁ!急にトラバサミが!」 「おいおい、大丈夫なのかこれ?なんもしてないのにいきなり挟んだぞ。」 「ゆ゛き゛ゃあ゛あ゛あ゛!!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「お゛か゛あ゛ち゛ゃあ゛あ゛あ゛ん゛!!!た゛す゛け゛て゛え゛え゛ぇぇぇぇ!!!」 「ゆ゛っく゛り゛て゛き゛な゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「おっかしいなあ~。今までこんな事無かったのに・・・」 「不良品なんじゃねーのコレ?」 「えー。お値段以上印のにとり製だぜ。しかも結構高かったのに・・・」 「しかしこんなんじゃ危なくって持って行けないな。」 「うーーーーーん。」 しばしの間考え込む二人。その間にトラバサミに挟まれた子れいむ達はすべて息絶えた。 わずかな間にすべての子を失った絶望により、母れいむはただ虚空を見つめ もの言わぬ人形の様になってしまった。本棚の上で泣き叫ぶ我が子の事も忘れて。 「やっぱり道具なんかに頼っちゃだめだって事なんじゃないか? ゆっくりごとき痛めつけるのに両手両足があれば充分だろ。 それにお前いつか言ってたじゃないか。『僕はなんとかの虐待技を使える』って。」 「ああ。48の虐待技の事?」 「そう。それ。ちょっと見せてよ。あれを使ってさ。」 男が指さす先には呆然とする母れいむの姿が。奇跡が起こったのか。 おにいさんは見えないはずの母れいむに向かって歩き出す。 「え?これ?これはちょっとなぁ・・・高かったんだよこれ・・・」 奇跡・・・では無かった。男が指さしていたのは母れいむのすぐ後ろ。 ゆっくりの皮に綿を詰めたゆっくりクッションだった。 「じゃあ、まぁふりだけでもさ。」 「う、うん。そうかい・・・じゃあふりだけね・・・」 その時本当の奇跡が起こる。ゆっくりを捕まえるふりをしたおにいさんの腕に母れいむが。 「ゆ?なんなの?はやくゆっくりおろしてね!」 突然人間に捕まえられ我に返る母れいむ。だがおにいさんの二の腕からは逃れられない。 「こうやってゆっくりを捕まえてさ。」 「それから?」 「ゆううぅぅぅぅ!!ぐるじいよ!はやくはなじでね!!!」 「ゆっくりぃぃぃぃ!愛してるよぉぉぉ!!ふんぬらばっっっ!!!」 「ゆ゛き゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「なにそれ?ただ絞め殺しただけじゃね?」 「う・・・ま、まぁ素人にはそう見えるかもね・・・」 「(こいつ、今適当に考えてやったな・・・)」 (さらに数日後 里の集会所) 「先生、実は今日お越しいただいたのは畑を荒らす謎の生物の事なんです。 先生のおかげでゆっくりは消えましたが畑の被害はまったく減らない。 しかもこいつがかなり頭の良い奴で。罠を仕掛けてもまったくかからんのです。」 「先生、またお力をお貸し願えないでしょうか。もちろん今回もお礼は致します。」 里の人間達から見つめられた先生と呼ばれる人物は「うっ・・・」と一言呟くと、 後ろにいた兎耳を付けた弟子となにやらボソボソと相談し始めた。 「ど、どうしよう。うどんげ。」 「どうしようじゃありませんよ師匠。だから私は反対だったんです。」 「だって・・・里の人達が困ってる様だったし。お礼くれるって言うし。家の家計は火の車だし。」 「だからって!私の力で知覚不能にするだけなんて、根本的解決になってません!」 「あ、あの、先生?」 「あ、ああ、ご心配なく。未知の生物は私が必ず退治して見せましょう。 そのかわりお代は前回と同じという事で・・・」 「おお!やって下さいますか!ありがとうございます!」 「さすが八意先生だ頼りになるなぁ。」 「師匠!!!!!!」 「しょ、しょうがないでしょうどんげ。こうなったら殺るしかないわよ。」 「まさか・・・」 「では皆さん。私が明日、皆さんを困らせている生物を退治してきます。 皆さんは明日一日家から出ないように。」 「おお!ありがとうございます!」 「・・・・・。どうなっても知りませんよ。」 (翌日 日差しの穏やかな午後) ゆっくりプレイス。そこはとても広い草原だった。 そこに集まったおよそ100匹のゆっくり達は思い思いにゆっくりしていた。 草を食む者、バッタを追いかけ遊ぶ者、あるいは日向ぼっこを目一杯楽しむ者。 そして気づかれないようにゆっくりと進む影が二つ。 背には竹籠。手には鉤付きの棒を持った蓬莱の薬師と弟子の兎が・・・ end このSSに感想を付ける