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とある2人の春休み 2 春休み3日目。 上条はここ2日間役目を果たさなかった目覚ましの健闘ぶりに目を覚まし、体を起こす。 と言っても左半身の機能が骨折により動かないので、右足からベットの下に下ろし、そこから右腕を使って起き上がる。 昨日は美琴が起きる前に既にいて起きるのを手伝ってくれたので、骨折翌日同様につらい目覚めとまった。「…はぁ、美琴様様じゃねぇかよ」 上条はトイレを済ませ、冷蔵庫を開く。そこには綺麗にラップしてある昨日の夕食の残りがあった。 確か美琴が朝の為にって残ってるのをラップしていたような。 ガス台を見ると鍋があり、その中には白菜の味噌汁が入っていた。 これも美琴が昨日のうちに用意してくれたものだろう。 上条はこんな美琴が天使に思えた。もう色々感謝感激で言葉にならなかった。『こいつは彼氏じゃなくて、私の旦那様なの♪』 昨日美琴が言っていた言葉を思い出す。昨夜も色々と美琴に迷惑をかけてしまったが、美琴は小言一つ言わず『旦那の世話をするのは妻として当たり前なの。だから気にしないで』 とか言ってたのも思い出す。 上条は深く溜息をした。美琴の抑えの効かない行動になどではなく、自分に向けて。「俺あいつになにもしてやれてねぇじゃん…。この辺で何かお礼しないとな、でも何したらいいのか分からない…」 上条はうーんと唸りながら味噌汁やおかずを温め、朝食を取った。 そしてその時上条は閃いた。今日も夕方には美琴がここに来る。ならば今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。 もちろんベット+ティシュ+シャワー的な事は出来ないが(理性があるうちは)それ以外なら望む事をしてあげたい。 こんなにも自分を想ってくれているのだ。ならばこちらもそれ相応の事を返してあげなければいけない。 そんな事を考えて、上条は車椅子を組み立て部屋を後にした。 この時上条は気付いていなかったが、この2日間で上条にとって美琴はいなくてはならない存在になりつつあった。 怪我をしているから助けてほしいとか、そんな考えでは無く。女性として美琴を心から愛し始めたのだと。「すみませんね、土御門さん。上条さんの為に車椅子押していただいて」「うんにゃ気にするな、カミやん。困った時はお互い様なんだぜい」 学校の補習が終わると、上条はデルタフォースと共に帰り、青ピと別れると寮まで土御門が車椅子を押してくれていた。 小萌先生にやらた心配され、家事が大変ならインデックスを帰そうかと言われたが、上条は断固拒否した。 この状態で飯を強請られると色々ダメになりそうだ。 それに部屋には美琴がいるしと思って小萌の申し出を断った。「それにしてもカミやん。そんな状態でよく今まで生活できたにゃ。一人で大変だったろ? あのシスターがいないんじゃにゃー」「そ、そうか? べ、べべべ別に普通に生きて来れましたよ?」 上条は土御門の当たり前の言葉に動揺を隠せなかった。 もちろん美琴が毎日来てくれてるので全然生活には困らなかったが、それを知られたらもう数箇所骨折する可能性がある。 土御門はそんな上条の挙動不審に疑問を持ち、車椅子を押す手を止めた。「…? つち、みかど……?」「まさかとは思うがカミやん。いるのか? お前の部屋に?」「な、なななななんのことでせう」「とぼけるな! 舞夏がカミやんの世話してるのかと聞いてるんだぜぃ!」「―――――――――は、い? ………舞、夏…さん?」「なんだ違うのか。だったら何でもいいぜい。舞夏に手を出してなけりゃにゃー」「し、親友の土御門さんが愛する舞夏様に手を出すなど…お、おお恐れ多くてとてもとても!」「そうだぜカミやん。もし手を出そうものなら」「……ものなら?」「御使堕としで使った風水魔力を使いカミやんの部屋もろともカミやんを消すぜぃ。幻想殺しだけを残して」「…」「実は既に四方に配置されて…」「…」「俺の魔法名はFallere825。その意味は背中刺す刃で…」「わかった! もういいから! 冗談でも冗談に聞こえないから!」「はは。カミやんは面白いな。冗談なんかじゃないぜぃ」「……」「それにしてもカミやん。そんなんじゃ色々と不便だろ? 彼女の一人でも作ってそいつに色々やって貰った方がいいんじゃねぇのかにゃ?」「……ま、まぁ…そうだな。で、でも彼女なんか…いない、し」「カミやんが頼めば誰でもお世話してくれると思うぜよ。でもそんなカミやんみたら、ぶん殴ってクラス中に言いふらし、集団リンチかけるけどにゃ」「…」「そういうわけでカミやん。これから抜き打ちお部屋チェックぜよ」「は、はいぃぃぃぃぃ!? な、なななななんで!?」「もちろん女を部屋に連れ込んでないか検査するのにゃ」「ぶぅぅ!! そ、そんな事しなくても誰もいないですって! (…多分)」「じゃあいいじゃないかにゃ。今日は舞夏が遅くなるっていうから暇だったんだぜぃ。久しぶりに笑いのトークでもしようぜぃ」「そ、そう…ですネ」 そう言って上条は速攻で美琴にメールを送った。 自分の生活を守る為に。自分の命を永らえる為に。Time 10/03/25 16 22To 御坂美琴Sub―――――――――――――――――突然ですが、今どちらにいらっしゃいます? メールはすぐに帰ってきた。Time 10/03/25 16 24From 御坂美琴Sub Re ―――――――――――――――――今はまだ初春さん達と一緒よ。なーに?会いたくなっちゃったの?もうしょうがないなー。ちゃっちゃと買い物して帰るからもう少し我慢しててね♪ そんな美琴に上条もすぐ返す。Time 10/03/25 16 27To 御坂美琴Sub Re2 ―――――――――――――――――いやいやいや!そんな悪いですよ!久しぶりに友達と遊んでるんだから、もう少しゆっくりしてろって。俺も少し遅くなるからさ。 上条はそれだけ送ると「完璧だ…」と小声で言う。土御門には聞こえていない。 その後寮に着くまでに携帯がメールを受信したが上条は見なかった。 上条は部屋まで行くと土御門に支えられ部屋に入る。 上条は気付いていないが、皆さんなら既にお分かりだろう。 まず上条当麻が不幸だと言う事。 そして先程のメールの内容からして今美琴はどこにいるのかと言う事。 さらにはピンクのフリルエプロンの事。 その現実を目の前に上条当麻と土御門元春は言葉を失った。 そこには、上条当麻の部屋には、ピンクの可愛らしいエプロンだけを着ている御坂美琴が玄関に立っており上条を(正確には2人を、だが)迎えていた。「おかえり! ご飯にする? お風呂にする? そ、それとも…わ・た・し?」「……………」「……………」「あ」「……………カミジョウトウマクン?」「……………ナ、ナンデセウカ。ツチミカドモトハルクン」「キミハイッタヨネ? カノジョナンカヘヤニイナイ。フツウニイキテイケテルッテ」「イ、イイマシタ…ガ、コ、コココレニハフカイワケガゴザイマシテ」「ちょっと! そこの金髪! 人を勝手に彼女にすんな!」「―――へ? 何だ違うのかにゃ。そんな格好してるからてっきりカミやんの彼女かと思ったぜぃ。いやぁ、久しぶりにビビったにゃー」 上条も安堵の息を漏らす。…が、その後思い出した。昨日の事。昨日美琴が同じような事を聞かれた反応を。「ま、待て! み―――」「私は彼女じゃなくて、そいつの妻なの! だからこれから先は私がお世話するわ! ここまで旦那を連れてきてくれてありがとう」「―――こと」「つ…ま? カミやん? 嘘だろ? お前はフラグを立てるのが仕事で回収なんかしない奴だよな? そうだよな?」「…」「嘘なんかじゃないわよ! ほら。いいから渡して! これから愛を育むんだから!」「か、カミ…やん――――」「つ、土御門…」「土御門? あぁ。ひょっとして舞夏のお兄さん? はじめまして、御坂美琴です」「御坂…美琴だと? 常盤台の超電磁砲か。カミやん…おまえ……」「ま、待ってくれ土御門! お、俺を! 今俺を1人にしないでくれ!!」「はぁ!? なに言ってくれちゃってるのよアンタは! 2人きりじゃないと恥ずかしいじゃない!」「そ、そんな格好のおまえがそんな台詞吐くか!!」「もう……エプロンの下を見せるのは、アンタだけがいいって言ってるの。気付いてよ、バカ…」「ぶっはぁぁぁ!! みみみみみ美琴ぉぉぉぉっ、そ、そそそそそそんな事ををををををを」「…離せや、カミやん」「え?」「だ、大丈夫だぜぃ? こ、この事は絶対誰にも言わないからにゃぁ…」「う、嘘つけ! おまえがどもる時はロクな事を考えてねぇ! な? お、俺達は…デルタフォースは固い結束で結ばれているんだよな?」「……今日限りでデルタフォースは解散だぜぇ、カミや…上条くん」「な、なにを? 君が何を言ってるのか分からないよ…元春くん」「自分の胸に聞くんだにゃーーーーーっ!!」「ぶっはぁぁ!?」「ちょっ! あ、アンタねぇ! 人の旦那なんだと思ってるの! 怪我人なんだから優しく扱って!! 私を愛してくれないじゃない!」「……うぅ…うわあああああああああん!!! ま、舞夏ーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」「つ、土御門ッ! 待ってくれ!!」「うるせぇにゃーーっ! 精々残り少ない余生をいちゃつく事にゃーーーっ!!!」「ふ、不幸だ…」 上条はその後改めて美琴を見た。マジでエプロン以外何もつけてねぇ…と思ったが、短パンだけは穿いているらしい。 上条は安堵する。まだ彼女が恥じらいを持っていてくれた事に。 そして美琴に支えらながらベットに腰かける。 もうそれだけで美琴の柔らかさを感じ、口から心臓がこんちにはしそうになった。 美琴は上条の隣に座ろうとしたが、上条はそれを許さない。精一杯の理性を駆使し、美琴を目の前に正座させた。 美琴は頬を膨らませながらも上条の言う通りに目の前に正座した。 上条当麻の理性説教vs御坂美琴の愛の9裸エプロンの戦いの火蓋はこのようにして切って落とされたのだ。 ちなみに上条当麻の理性の壁は、現在94%崩壊している。「おい、御坂美琴」「なによ」「君は何故そんな格好をしてこの部屋にいるのかな? お友達と遊んでたはずだよね?」「アンタが帰ってきて欲しそうだったから…急いで帰ってきたんじゃない」「まぁ、そっちの話はいいんだよ? 問題はその格好」「これがどうかしたの?」「なんで裸エプロンという格好なんでせう? 仮にも嫁入り前ですよね? 土御門にもその格好を見られましたよ?」「だって舞夏が男を落とすならコレ! って言うから…それにエプロン大きいの買ったから前からじゃ全然見えないし」「舞夏…だと?」 そんな話をしていると隣の部屋から「ま、舞夏ぁぁぁぁぁぁ! そ、その格好は何だにゃあああああああ!!!」と聞こえてきた。 土御門にとってその出来事は、記憶を上書きする程の事であり、後日も土御門は上条に対して普通だった。「…」「あ、舞夏もお兄さんにやってるみたいね」「…あのですね。美琴さん」「ん?」「おまえはまだ中学生じゃないか。そんな格好しなくてもおまえはおまえのいい部分があるんだから、そんなに急ぐこ――」「………う、うぅ…」「え? お、おい…みこ――」「せ、せっかく…折角アンタが喜ぶと思って買ってきたのに…恥を忍んで着たっていうのにぃ…う、うぅ……」「あ、あぁ…あ、す、すまん美琴。お、おまえがそこまで考えてるとは思ってなくて…てっきりまたふざけてるんだと…」「ふざけてこんな格好するわけないでしょぉ…うぅ、こんな格好見てもアンタは文句ばっかりで何にも言ってくれないし…」「あ…」 上条は朝の事を思い出す。自分の決めた事を。 今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。 だって美琴はやり方はぶっ飛んでいるが、中身は可愛い恋する乙女なのだ。好きな人に喜んでもらいたいと思うのは当たり前だろう。 上条も朝それで悩んでいたのだから。「ご、ごめんな。俺…ちょっとキツくいい過ぎたよ。お、お詫びに今日は美琴の好きなようにしていいから」「………なんでも?」「まぁ…一線越えないくらいなら」「…知ってるよ。前夜まで取っておくんでしょ?」「ま、まぁ…そ、それ以外なら何でもいいからさ!」「じゃ、じゃあ私が何を言ってもその通りにしてくれる…?」「そ、そんな風に言われるとイエスと言いづらくなるんですが…」「…う、うぅ…やっぱりダメだよね…こんなぺったんこな体で迫られてもアンタは全然うれしくないもんね…」「い、いや…美琴さんの体は十分魅力だと思いますよ? た、ただ恥ずかしすぎて……」「うぅ…」「だああああ! もう分かったよ! 何でも聞いてやるから何でも言えや、もう!」「…本当に? 後でやっぱ無しとか言わない?」「男上条舐めんな! どんな事を要求されようと即座に実施してやっけんのぉぉおおおお!!!」「あ、そう? はー、やっとその台詞聞けたわ。つっかれたー泣きまねすんの。アンタ早く折れなさいよね、全く…」「―――――――なん、…だと?」「さてと。じゃあまずは何をして貰おうかしらねぇ…あ、もちろん今日は泊まるからね? これ絶対。拒否不可」「み、みこ…と?」 さっきまでの泣き顔はどこへやら。美琴はゲコ太の台詞の様にケロッと表情を変え、上条へ何をしてもらうか考える乙女の顔になった。 上条は本気で泣いてるんだと思ったから、無理な要求でも呑んで美琴を泣き止ませようとしたのだが、美琴はその上条を狙い打った。 ここは美琴の勝ちだろう。彼女は上条の事を詳しくしっていたし、上条は彼女の事を知らなすぎた。「じゃあまず抱っこ。抱っこして?」「えっと…美琴さん? 上条さんは見ての通り骨折してるんですが、その痛みに耐えて抱っこしろと?」「アンタはそのままベットに腰掛けてればいいわ。私が勝手に乗っかるから」「なんですと? って、うぉ――」「えへへー」 美琴は上条の上に跨ってきた。2人の顔は急接近し、唇が時々当たるくらい近かった。 そんな状態の上条は顔を真っ赤にし、少し背を仰け反った。しかし美琴はそれを許さない。 上条の首に腕を絡めて、顔をまた自分の目の前に持ってきてホールドする。 美琴は上半身はエプロンだけだったので肌を直接触る事になる上条の右手は、行き場を無くしバタバタしていた。「手は肩に」「は、はいぃぃぃ!? そ、それはさすがに…」「即実施」「そ、そうでしたネ」「…んっ」「へ、変な声出すなよ…」「だっ、だって…そんな優しく触るからぁ…」「……ぁ、は」 上条は、上条は、上条は、もうどうしたのか? どうしたものか? ちなみに言っておくと理性の壁はとっくの大昔に全壊され、本能と書かれた覆面部隊が脳内の操縦室に攻め込んできている。 壁をなくした理性部隊は迎撃するが、数が圧倒的で間違いなく占拠されるのは時間の問題だった。 上条はそんな自分から湧き出る欲望に耐えてるのか、上を向いてぷるぷると震えていた。 しかし――「…ん。…っちゅ、れろ…」「…!? お、おまえ…なにをっ……んっ」 美琴は上条の首筋にキスをすると優しく舐めた。 上条はその行為に大変驚き美琴に目を向ける。しかしそこには唇が待ち構えており、上条はそれを奪われた。 その瞬間、本能の覆面兵士が、冠を被った理性覆面の偉そうな奴をぶっ飛ばして、 「上条」と表札が掛けられていた脳のドアを蹴破り、上条当麻コントロールルームに入っていった。「…はぁ、えへ……ん?」「コォォォォォォォォォォォォ……」「ど、どう…したの?」「み、みことォォォ……」「な、なに…?」「責任は、取らせていただきます」「はぇ?――――」 上条当麻の理性の壁、3日目の夜に完全崩壊。 夕方に部屋に戻った上条だが、その日の夕食を取る事は無かった。 あ。いや、まぁその…夕食は取った。 春休み5日目。 上条当麻は目を覚ました。目覚まし時計の音で。 何故なら今日は補習がある。とても面倒臭いが春休みに2日だけの補習で済んだ上条だったので、今日行けばもう終わりだ。 上条は頑張って体を起こし朝食を取って部屋を後にした。 ちなみに朝美琴は部屋にいない。 今日は3日目の夜無断外泊したので、ルームメイトの白井黒子のご機嫌取りをしないといけないらしく、夕方にならないと来れないらしい。 学校では土御門、青ピと共に補習を受けたが、いつもと変わらない光景に上条は安堵した。 そんなこんなで上条は土御門に連れられ部屋に帰ってきた。まだ美琴は来ていないようだ。 上条は玄関まででいいと土御門を帰すと松葉杖を使ってベットまで行くとそのまま倒れ込んだ。 学校で補習があったからか、または普段の疲れが溜まっていたのか、上条はそのまま寝入ってしまった。 そして暫くすると玄関のドアが開く音が聞こえて上条は目を覚ます。 部屋に入ってきたのはスーパーの袋を持った御坂美琴だった。「たっだいまー」「……ん? おぉ、美琴…おかえり……」「あれ、寝てたの? そのまま寝ててよかったのに。寝顔拝見したかったし」「あー、うん。でも悪いし…米くらい洗うよ」「だめよ。立ってるのもつらいんだから。そのまま寝てて」「……お世話かけます。美琴さん」 上条のその言葉を聞くと、美琴は上条の前に歩み寄って来て、顔をまじまじと見た。 突然の事で上条は少し驚いたが、何か言う前に美琴が笑って上条の頬に手を置いた。「うん、もう大丈夫みたいね」「なにが…」「なにって…昨日アンタやばかったわよ? さすがにあの状態のアンタは手を焼いたわ」「う…そ、それはもう忘れてください……マジで黒歴史なので」「あはは。まぁそれだけ私と離れたく無かったって事だしね」「うぅ…」 昨日というのは4日目。つまりは上条当麻の理性が崩壊した翌日にあたる日なのだが。 4日目の朝、上条はいい匂いで目を覚ます。 隣を見ると誰もいないが、台所で美琴が料理をしているようだ。 可愛いエプロンをつけて鼻歌を奏でて。「ん…おはよう、美琴ぉ…今日は早いんだな」 上条の声に美琴はビクッとして上条を見る。 その顔は瞬く間に真っ赤になり、小さくおはようと言うと俯いてしまう。 上条はそんな美琴を見て首を傾げたが、特に気にする事もなくベットから出ようとした。 右足、右手を駆使し起き上がる…が、そこで何やら違和感を覚える。「…あれ? 俺何も着てない……?」 上条は裸だった。何やらおかしい。足にはギブスを包帯で巻かれているので、簡単には脱げないはずだ。 では何故裸か? 答えは簡単で、自分が気付かないうちに自分が脱いだのだろう。 この部屋には帰って来たら鍵を掛けたし、中には自分と美琴しかいないはずだ。 さすがに美琴が自分に気付かれずに全てを脱がすのは不可能だろう。 では何故脱いだか? 着替える途中で力尽きたとか? うーん… そんな事を考えていると、上条は部屋の異変に気付く。 やたらと丸めてあるティッシュが散乱している。上条や美琴だけでこんなに鼻をかんだのか? 上条はちゃんとゴミ箱に捨てろよと思っていると、ベランダに何かが干されているのでそれに目をやった。「短…パン? こんなの俺持ってない…し、誰の……短パン…短、パン?」 上条は床に置いてあったトランクスを穿くと、シャツも拾って着た。 そこに美琴がご飯を持ってきてくれて、上条はテーブルにつく。 美琴の格好は昨日と同じエプロン姿だが、他に着ているようには見えなかった。 上条はまだその格好してるのかよと溜息を吐いたが、美琴が台所に戻る後ろ姿を見ると昨日とは何かが違った。「………ない」 美琴は正に純正裸エプロン姿だった。ベランダのアレは美琴ののようだ。 上条はその後ろ姿に呆気に取られていると、昨日の事を思い出すように頭に手を置いた。 そして、全てをフラッシュバックさせる。 フラッシュバックと言っても記憶が無いので、昨日の最後の記憶なのだが。 その記憶とは、確か自分の手で…美琴の着ていたエプロンを、引き剥がし―――「だああああああああああああああああああああっ!!!!!」 上条は吼えた。もう大声で。近所の迷惑など考えずに。 その咆哮に美琴は驚愕し、上条の前に走って来た。「ちょ、ちょっと! ど、どうしたのよアンタ!? 何があったの!?」「み、美琴…」「ど、どうしたの…?」「み…美琴、正直に答えてくれ。嘘なんかいらない。回りくどい言い方もいらない」「う、うん…」 上条は美琴の両肩に手を置き、真剣に向き合った。左腕の痛みなど忘れて。 そして上条は深呼吸を一回大きくすると美琴に言い放った。「俺、美琴に手を出したのか?」 その言葉に美琴は頭から湯気を出すほど赤くなって俯いてしまったが、小さく「うん…」と言って頷いた。「そ、その…どこまで手を出した? 俺の記憶が正しければ、おまえのその可愛いエプロンを引ん剥いたところまでなんですが…」「……どこまでって…、その、さ……最後、まで…」「……………最後、だと」 上条は美琴の肩に置いてあった手を下ろした。 美琴は真っ赤になって俯きながらも、上条の方を上目使いでチラチラと見ながら更なる事を言い出した。「わ、私はちゃんと止めたんだよ? 前夜まで取っておくんじゃないの、って。で、でもアンタは『もう我慢できません』だとか」「…」「『美琴ちゃんは俺の事嫌いなの?』とか」「…」「『おまえの全てが欲しい』…と、とか言うから……」「…あは、」 上条はもう笑うしかなかった。そしてとりあえず美琴に服を着せると彼女の前で土下座した。 足なんか、骨折なんか痛くなかった。「本当に申し訳ありませんでした」「い、いいわよ。…そ、その…嬉しかったし……えへへ」「こうなった以上は、この上条当麻、一生を掛けて御坂美琴さんを守り抜いて行くと誓―――」「そんなんじゃ、嫌」「は、はい? い、嫌…とは?」「そ、その……し、しちゃったから一緒にいるとか、そんなのじゃ嫌」「そ、そんな軽い気持ちではないです! 上条さんは美琴さんをこれ以上ないくらいに!」「じゃあ…ちゃんとプロポーズしてよ」「わ、わかった…」 そして上条は今自分が考えられる精一杯の好意を持って、美琴にプロポーズした。 美琴は上条のプロポーズに満面の笑みを浮かべ、泣きながら誓いのキスをした。 その後美琴は上条に泣き止むまで胸を借りていたが、やがて笑いながら言った。「恋人の告白の前に結婚のプロポーズだなんて、アンタほんとにバカなんだから」 そんな事があって取った朝食。 美琴はいつものように上条の右手を取って自分で食べさせているが、今日は上条の方が違った。 今朝は上条から美琴の手を握り、食べさせてほしいを言い出したので。 美琴は上条の変わり様に少し戸惑ったが、嬉しい事だったので否定しなかった。 しかし、今日この後の上条を考えると、ここで少し間を取った方がよかったのかもしれない。 それは何故か。つまり上条は完全なる美琴の虜になり一生を誓ったために、離れたくない精神が特化されすぎたのだ。「み、美琴? ど、どこ行くんだ?」「どこって…醤油切れたから新しいの入れてくるだけよ」「ま、待って! お、俺も一緒に…」「はぁ!? あ、アンタね! すぐそこの台所だっつの! そんなんでいちいち動かなくていいわよ!」「そ、そんな…俺を…俺を置いて醤油の所に行くってのか! 俺より醤油が大切なのか!」「な、なななななに言ってるのよ!? あ、アンタ大丈夫? ホントにすぐ帰ってくるからここにいなさいよ」「ほ、ほんとすぐだぞ! 待ってるからな!」「はいはい、ったく…」 というやり取りを事あるごとに繰り返し、美琴の春休み4日目は相当に疲れた。 だから夜、今日は帰らなくちゃと言った途端に上条が泣いて引き止めた時には溜息まで吐いた。 でもさすがに2日連続無断外泊はまずいと言ったが上条は引き下がらない。 そんな上条に明日から来れなくなっちゃうかもと言ったら、上条は泣きやんで帰してくれたのだ。 そんな4日目の出来事を美琴は上条に話していた。「も、もうその辺りで勘弁してください。昨日は周りが見えてなかったというか、何というか…」「離したくないっていうのは嬉しいけど、正直アレは勘弁してほしいわね。もっと普通にお願い」「か、かしこまりました」「じゃあ責任取るって言ったんだから、ちゃんと言えるわよね? …はい」「…? カエルの携帯、これ…おまえのじゃないか。どうするんだよ、これ」「画面見てみて」「?」 そう言われて上条は美琴の携帯の待ち受けを見る。 …とそこには「Phone Call」と書かれており、その下に「父」と名前が出ていた。「ぶぅぅぅぅ!! み、美琴さんんんんん!!???? こ、これはいきなりハードル高すぎやしませんかね!? ま、まずは美鈴さん辺りが妥当と言うか!」「いつかは言うんだからいいじゃない♪ ちゃんと言ってよね♪」「は、初めて会話する上に娘さんを下さいなんて…と、とても上条さんのガラスの心では言え――」『―――ブッ、…もしもし? 美琴か? 珍しいな、何かあったのか?』「あ…」 上条当麻と御坂美琴の春休み。5日目終了。上条はこの日だけで一生分の大半を占める冷や汗をかいたそうだ。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ 番外編「本日のスープ」 「ねぇ、当麻。今度の日曜日、デパートに買い物に行きましょうよ」 そろそろ本格的な寒さが来ようかという冬の午後、自室で課題に取り組んでいる上条当麻は、自身の彼女、御坂美琴にそう言って誘われた。 無事にロシアから帰ったものの、欠席中の課題が、小萌先生からたっぷりと渡された。 上条ちゃんはこれを全てやらないと進級させません、などと言われたら、とにかくやるしかないのだ。 そして上条の横で課題を手伝っている美琴は、もはや押しかけ女房同然に、他もいろいろ彼の面倒を見ている。 「そうだな、美琴のおかげでこの課題も片付きそうだしな」 「実はね、この間、当麻にお似合いの可愛いセーター見つけたの」 「上条さんにはそんなお金、ありませんよ」 「いいのよ。ちょっと早いけど、当麻へのクリスマスプレゼントにするから。サイズも見たかったし」 なにより、とちょっとお世話焼きモードな美琴。 「学生服の下に着るセーターが必要な季節でしょ。コートとかはあるの?」 「ん、確かトレンチがあったはず」 「じゃ、とりあえず中に着る分があればいいわね」 「ありがとうよ。しかし男に可愛いセーターって」 「なによ!彼女の見立てに不満があるの?」 「いえ、何もありません」 「それとね、ランチにいいお店があるの。お昼はそこでどうかな」 「そうだな。しばらく課題漬けで、お前にも迷惑かけたしな」 「そんなのはいいのよ。私は……、当麻と一緒に居られたら、それだけで幸せなんだからぁ」 ちょっと甘えたような口ぶりで、モジモジと上目遣いをする美琴の顔がほんのり赤い。 それを見た上条は、――まったくコイツは、と呟きながら、美琴の肩を引き寄せ、そっとキスをした。 素直に応じた美琴は、そのまま上条の肩にもたれた。 上条が学園都市に帰った夜、壮絶なカタルシスの後、2人は恋人として結ばれた。 ただ、通常のお付き合いをすっ飛ばした、最終段階から始まった関係が、甘ったれた照れやうわつきを見せない。 あれから何度か肌を重ねるたび、素直にお互いをさらけ出せるようになってきたからだろう。 彼らにとって男女の交わりとは、それぞれの心を見せ合う行為に他ならないからだ。 「ならランチ代ぐらいは、この上条さんが出しましょうとも」 「じゃ、決まりね」 ――だったら、と言いかけた美琴を、上条が遮る。 「土曜日のお泊りはだめだ」 不満そうな顔をする美琴に上条が諭すように言う。 「そうそう外泊もしてられないだろう。これでも俺たちは高校生と中学生だぜ。もう少し節度ッつうものをだな……」 「その中学生と淫らなことをしている高校生はどうなのよ?」 「いや、ま、それはその、だな……」 今度は上条の顔が赤くなる番だ。 「中学生に手を出したすごい人って言われるんでしょ?」 美琴がニヤリとしてからかう。 「学園都市第三位の超能力者が、無能力者の男子高校生と爛れた関係にって、噂になるんだぜ」 ムッとした上条が、負けじと言い返す。 だが腹を括った女ほど手強い者はいない。 「平気だもん」 ――それに、と言いながら、上条の手を自分の胸の前で抱きしめる。 「私は地獄だろうとどこだろうと、当麻と一緒なら怖くないわ」 日曜日、クリスマスセール真っ最中のデパートは混んでいた。 美琴は前日土曜日に、門限通り寮へ帰らされたためか、その日はいつもより積極的だった。 人目をさほど気にすることも無く、べたべたと上条にまとわり付く。 とはいえ、気恥ずかしさを紙一重のところで回避しているのは、外にいるという意識があるからだろう。 その姿は初々しさの残る学生カップルのそれではなく、より大人びた雰囲気を醸し出していた。 だからなのか、今の美琴に、漏電や失神といったことはほとんど無い。 もはや新たな『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を確立しつつあるようだ。 その中に『上条当麻』という存在が組み込まれているのは間違いないのだろう。 久しぶりのデートにはしゃぎ、美琴は満面の笑顔で上条の手を引いていく。 お目当てのセーターを買い、更にデパートの中をあちこち巡り歩いたのち、美琴が上条に提案した。 「お腹空いちゃった。そろそろお昼にしない?」 「そうだな。よし行くか」 デパートを出て、通りを2人して歩いていった。 冬の空はどんよりして、寒風強く、一段と冷たく感じる。 たとえ数ブロック先へ行くのでも、その真冬のような冷たさに震えが来そうだった。 美琴はいつもの常盤台中の制服の上に、ダッフルコートにマフラー、手袋と完全装備でいる。 一方で上条は、トレンチコートの下に、ウールのシャツとデニムのパンツと少し肌寒そうだ。 その店に着いたときには、上条の体はすっかり冷えていた。 入口を入ってからの暖かさが、こわばった体をほぐしてくれる。 と同時に、心まで解されていくのは、向かいに座った彼女の微笑の所為でもあるのだろう。 「何にしよっか?」 メニューを見ながら、美琴が上条へ問いかけた。 「そうだな、この『本日のスープ・デザート付カップルランチセット』なんてどうだ?」 「あ、私もそう思った」 ――それじゃ、と言って上条がオーダーを入れる。 窓から見える空は、暗くくすんだ灰色で、今にも何か降りそうな様相だ。 そんな景色をぼんやり眺めている美琴を、上条はただじっと眺めていた。 何もしなくても、何も言わなくても、ただそこに居てくれるだけで満たされる。 そんな彼女の姿を、テーブルに頬杖ついて、じっと眺めていた。 先程のデパートでの笑顔の美琴と、今のぼんやり景色を眺める美琴。 昨夜、常盤台の寮の前で別れたときの少し悲しそうな顔の美琴。 どの美琴も切なくて、ますますいとおしく感じてしまう。 美琴は、これまで周りの人にどんな顔を見せてきたんだろうと上条は思った。 今まで2人が別々の道を、違う速さで歩いてきたことが残念で仕方がなかった。 ――お待たせしました。こちら本日のスープは、オニオングラタンスープです。 ウェイトレスの言葉に2人の意識が戻ってきた。 出されたオニオングラタンスープは、大振りのカップにたっぷりのグリュイエールとエメンタールチーズがかけられ、フツフツと煮立っていた。 焼けたチーズの香ばしい香りと、たっぷりのブイヨンに、炒めたたまねぎの甘い香りが食欲を刺激する。 2人とも目の前のご馳走に、思わず我を忘れるほど、空腹だった。 「「いただきます」」 そう言って、カップにスプーンを突き立てた。 「熱ーい。やけどしそう。でもおいしい」 「うん、うまいな。猫舌の人はかわいそうだな」 カップから立ち上る湯気に、美琴の笑顔が溶ける。 ――ああ、こうして美琴の笑顔を見ていたい。 ――いつのまにか、もっと好きになったな。 ――お前は今、何を思うのだろう? 「ねぇ。この後、どうする?」 美琴が、スプーンを口に運びながら聞いてきた。 「そうだな。天気も崩れそうだし、寒いから、ちょっと早いけど一旦帰ろうか」 「そうね。買ったセーター、着てみて欲しいし」 「じゃ、帰ったら、時間までまったりしようか」 ――昨夜の分もね、と呟いた美琴の言葉は聞かなかったことにした。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ
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ひらりと桜が舞う頃に 3月上旬学園都市にも桜が咲いた。早咲きというものだ。桜を見にたくさんの人が集まっている。上条とインデックス、美琴の3人も桜を見に来ていた。「きれいな桜だね!」「ええ、本当に綺麗ね」「桜ってほんとにきれいなんだな」川沿いの一面、向こう岸にも桜が咲いていた。「ね、ね、はやくはやくー!」「久しぶりだね、上条当麻」上条に話かけてきたのは赤髪の神父、ステイル=マグヌスだ。「あ、ステイル!」インデックスはステイルと会えて嬉しそうだが、「久しぶりだな。また何か事件でもあるのか?」上条は嬉しくなさそうだ。無理もない。上条がステイルと会う時は、いつも事件が付き物なんだから。「いや、今日はただの観光だよ」上条が安心する。楽しいこの時間を邪魔されずにすんだのだから。「インデックス、近くに団子を売っていたのだが、一緒に行かないかい?」「え?お団子!?行きたいんだよ!」「じゃあ、行こうか。彼女は責任をもって預かるよ」「じゃあ行ってくるんだよ、2人とも」「いってらっしゃい」「また後でな。あ、そうだステイル」上条がステイルに近寄ると小声で話しかける。「(インデックスのやつ、すぐどっか行くからな。しっかり手、繋いでおけよ?)」「な、何を言っているんだ君は!ほ、ほら行くよインデックス」ステイルは顔を真っ赤にしながら歩き出す。「あ、まってよー」インデックスもステイルについていく。「じゃあ、俺たちも行くか」「うん」上条と美琴も歩き出す。「イ、インデックス。迷子になるといけないから手、繋ごうか」なにやらステイルの声が聞こえたが2人は聞かなかったことにした。 上条と美琴が歩いていると、反対側から白い髪に杖をついた男、一方通行が歩いてきた。その左右には打ち止めと番外固体もいる。「久しぶりね打ち止め、それに番外固体も」「お姉さま久しぶりーって、ミサカはミサカは挨拶していたり」「やっほうおねえたま、久しぶり」「そういやァ、あの白いシスターはいねェのか?」「ああ、さっき友達と団子食べにいったんだよ」「ふーん、じゃあおねえたま、今日は2人っきりでデートなんだ」番外固体がからかう様に美琴に話しかける。「えっ、そんなデートだなんて、いや、でもその通りだし・・・・・・」「み、美琴さーん、落ち着きましょうねー。上条さん恥ずかしいですよ」「そ、そうよね。ごめんね当麻」「い、いいんだよ」照れる2人を見て、番外固体は悪魔の笑みを浮かべる。「もぉ、そんな2人ともそんなにいちゃいちゃしちゃってさー。 ミサカ達の愛をもっと見せつけなくちゃね。ねっ?あーくん?」そういうと、番外固体は一方通行に抱きついた。「あー番外個体ずるーい、ミサカもー!」反対側の打ち止めも一方通行に抱きつく。「だァー!鬱陶しィ!抱きつくなァ!つゥかあーくンってなんだァ!! ほら行くぞお前らァ!」打ち止めと番外固体に抱きつかれたまま一方通行は歩き出す。「あいつ、幸せそうだったな」「ええ・・・・・・」美琴のどこか悲しそうな顔をしている。「なあ、美琴。たしかにあいつは10000人の殺しちまったけど、 自分の罪を自覚して、反省して、残りの10000人のために必死で戦ったんだよ。 それに俺はあいつが打ち止めのために命を懸けて戦ったのを知っている。 許してやってくれなんて言わない。だけど、恨まないでやってほしい」「わかってるわよ。そんなこと」「そうか、じゃあ、行くか。美琴」「うん!」2人は笑顔で再び歩き始めた。 結構歩いただろうか、桜の道も途切れていた。「結構歩いたな。そろそろ休憩するか」2人は土手に腰をかける。少ししてから上条が美琴に話しかける。「なあ美琴、俺は今幸せだ」「え?」「インデックスにステイル、神裂や一方通行、御坂妹や打ち止めに番外個体に浜面に滝壺。 それに何より美琴、お前がいる。こうしてお前と一緒に桜を見られるだけで俺は幸せなんだ。 命を懸けて戦って、皆が笑っていられる。それだけで俺は幸せなんだ」上条当麻はその拳でたくさんの人を救ってきた。「まったく、探しましたよステイル。財布を忘れるなど貴方らしくもない」「あ、ああ。すまない」「あ、かおり!かおりも一緒にお団子食べようよ」ある者はは失ってしまった時間を取り戻してた。「あ、お団子だ!ねえあなた買ってよーって、ミサカはミサカはおねだりしてみる」「あーはいはい、買ってやるよォ」「にしても司令塔には甘いよね、親御さん」「誰が親御さんだァ!つーかいつまで抱きついてやがる、さっさと離れろォ!」ある者は犯した罪を自覚しながれも、掴み取った幸せを噛み締めていた。「超遅いですよ2人とも」「悪い悪い」「ごめんね、きぬはた、むぎの」「何してんだか、今日はフレンダの墓にも行くんだから。ほら行くよ」またある者は手に入れた日常を楽しんでいた。皆が笑っていられる。そのために上条当麻は戦い、平和を手に入れた。そして自身の幸せも掴み取った。「ねえ当麻」「ん?なんだよ。っ!」美琴が上条にキスをしたのだ。「えへへ、ファーストキス、あげちゃった」「最初は上条さんからしようと思っていたのに・・・・・・」「だったら、次はあんたからできるようにしなさい」「へいへい」「あーあ、疲れちゃった」そう言うと、美琴は上条に肩を寄せる。「おやすみー・・・・・・」「あーもう。しょうがない、その寝顔に免じて許してやるか」美琴はスースーと寝息を立てている。「あー俺も眠く・・・・・・なって・・・・・・」上条も眠りにつく。「とうま、みこと、起きるんだよ。まったく2人してこんなところで寝ちゃって」上条が目を覚ましたらインデックスの姿があった。辺りも少し暗くなり始めてる。「ああ、すまん。ほら、美琴起きろ」「うにゅ?とうま?」「何寝ぼけてんだよ、ほら帰るぞ」「ふぁーい」「上条当麻、僕たちも帰るよ」上条に声をかけたのはステイルだ。「またね、ステイル、かおり」「またね、か。ああ、またね、インデックス」「では、また会いましょう」ステイルと神裂は帰っていく。「じゃ、俺たちも帰るか」「うん」「はーい」3人も帰るために歩き始める。「帰りにスーパー寄っていかなきゃね」「今日の夕飯は何なんだ?」「うーん、今日は唐揚げにしようかしら」「お、美味そうだな」「やったー!」笑顔の3人に桜の花びらがひらりと舞い降りる。
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小ネタ 上条美琴のバカップル子供のあやし方 赤ちゃん「ふえーん、ふえーん」上条「美琴、赤ちゃんが泣いているな」美琴「私達があやしてあげようよ、当麻」上条「よし!あれをやるぞ美琴」美琴「わかったわ!」上条、赤ちゃんの前に立つ。上条「ほーら、いないいない・・・」美琴「砂鉄の剣!」ザシュ!上条「ぐあああ!」上条「うううう・・・」上条「ばあ!」ずるん!竜王の顎バーーーン!赤ちゃん「キャッキャキャッキャ♪」上条「笑った笑った!」美琴「よかったね、当麻」ピーポーピーポー美琴「死なないで~~~当麻~~~」救急隊員「学習しろよお前ら・・・・・」END(ひでぶ!)
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小ネタ 上条、○度目の入院後。 美琴「あ、アンタがまた入院したって聞いたから笑いに来てやったわよ!手ぶらじゃ何だから、ほら、お見舞いにクッキー持ってきたわよ」上条「……御坂たん。いったいそれは何の意地悪でせうか?上条さんはほれ、この通り利き手が使えないのですよ。ぐるぐる巻きに包帯が巻かれておりまして」美琴「へ、へぇ。それはお気の毒。せっかく今回は手作りにしたんだけどなぁ。あと御坂たん言うな」上条「手作り?お前、前回のあれ覚えてたのか」美琴「べ、別にそんなことどうだっていいじゃない。こ、こんなの朝飯前よ、ふん」上条「普通人を笑いにくるのに、手作りクッキーは持ってこないだろうけどな」美琴「い、いいじゃない別に。ほら、食べさせてあげるから口開けなさいよ!」上条「朝飯前とか言う割には、そのクッキー、形がいろいろこってるんだな。カエルに星にハートに……」美琴「か、形はどうだっていいでしょ!いちいちチェックしないでよ!いいからさっさと口開けなさい」上条「そんなおしつけんなって(ぱく)」美琴「!(ゆ、ゆび!ちょっと指がこいつの唇に……!クッキーと一緒にあたしの指がー)」上条「もぐもぐもぐ。おお、うまいじゃないか。次食わせてくれ次……あれ?御坂、何真っ赤になったまま固まってるんだよ。まだ一杯あるみたいだから次を食わせてくれよ」美琴「…………」上条「おーい?美琴さん?」美琴「ふ、ふ、ふ、」上条「お?」美琴「ふにゃー!」上条「うわぁ!病室で電撃はやめろー!」
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小ネタ 猫の日 上条「おい御坂。今日は2月22日で猫の日らしいぞ。」美琴「ふーん。で?それがどうかしたの?」上条「よくぞ聞いてくれました!実はこの日のために、用意したものがあるんだよ。」美琴「へ、へぇ…(ま、まさか私にプレゼント?)」上条「ほら御坂、これをお前にやろう。」美琴「あ、ありがとう…(まさかホントにプレゼントくれるなんて…)」ガサガサ美琴「…なに、これ。」上条「なにって…見てのとおり、猫耳カチューシャだろ。」美琴「…これを私につけろと?」上条「はい。」美琴「…」ビリビリ上条「うわ、そんな怒るなって!」美琴「そりゃ怒るわよ!なんで私がこんなものつけなきゃいけないのよ!」上条「ま、まて、落ち着け御坂!よく聞いて欲しい。このスレはなぁ、皆さんの俺とお前に対する『愛』でできているんだ。 その愛への感謝の気持ちとして、皆さんに御坂のカワイイ猫耳姿を見てもらおうという、 上条さんなりのすばらしいアイディアなんだよ!」美琴「…感謝の気持ち、ねぇ…(か、カワイイって…)」上条「な、頼む!このとーり!」美琴「…わかったわよ。今日だけだからね?」上条「ありがとうございます!(ホントは俺が見たいだけ、なんて言えねーよなぁ…)」ゴソゴソ…美琴「こ、これでいいの?」上条「ぶはっ!(な、なんという破壊力…これは危ない!)」美琴(な、なんて顔してこっち見てんのよー!そしてその反応は一体!?…試してみるか…)美琴「ど、どうしたんだにゃー?(勢いで言ってみたものの、やっぱりはずかしい!)」上条「がはっ!?(ぐぬおおお…土御門と同じ語尾なのに、この差はなんだ!?くっ、これ以上やられたら…!)」美琴(うわ、コイツの反応おもしろいなー。もっとやっちゃえ!)美琴「ねぇ、これから私と一緒に遊んで欲しいにゃん。」上条「っ!?だ、だめだ!もういいぞ御坂、もうやんなくていい!(じゃないと理性が、理性がああああああ!?)」美琴「…だめ、かにゃ?」(うるうる上目遣い)上条「!!!!!」ズキューン!美琴「…ちょ、ちょっとアンタ!ゾンビみたいにこっちこないでよ!」上条「…ふふふ、もう…これ以上はムリだああああぁ!!」美琴「ッ!?いやああああ!!!」ガスッ!美琴の華麗なる上段回し蹴りで上条は倒れ、彼はこの日の記憶を失った。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/バイト生活 御坂美琴は寮のベッドでゴロゴロしていた。 それは、昨日の遊園地のせいである。 (け、結局仲が進展したのかはわかんないし、あれから黒子はしつこいし、変態ぶりに磨きがかかったような気もするし、なんというか、結局何しに遊園地に行ったんだろ………) なんだか、今日は上条の所に行く気になれなかった。 白井が警戒心をバリバリに出しているというのも理由の一つだ。 とりあえず今日は黒子をどうにかしよう。 美琴は大雑把な今日の目的を決めて、動きはじめた。 上条はバイトをしていた。 出入口の方を時折気にしながらも、なんとか仕事を続けていく。 インデックスと小萌先生と姫神と、白井とは違うツインテールの少女が入ってきたりもしたが、インデックスに適当に食べ物(えさ)を与えることでいろいろな危機を回避する。 ツインテールの少女はインデックスの食べっぷりに驚いていたが、こっちとしては日常茶飯事なので放置しておく。 むしろ小萌先生の財布が心配だ。 「いらっしゃいませー」 しばらくして、初春と佐天が入ってきた。 2人は少し店内を見回すと、上条に尋ねてきた。 「御坂さんはいないんですか?」 「ん? ああ。今日は来てないぞ」 「そうですかー」 初春達はそれだけ聞くと席の方へと向かっていった。 ちなみに初春達は後日遊園地に行くらしい。 どうやら昨日の分は取れなかったようだ。 初春達は美琴に昨日のことを聞こうと思っていたのか、いないことがわかって少し落ち込んでいた。 上条はオーダーでも持って初春達のもとへ行こうと思ったら、ファミレスの外から声が聞こえてきた。 「お姉様、お姉様が最近このファミレスに通っていることはわたくし既に知っておりますのよ。ここにあの類人猿がいるということもっ!! 今日という今日こそはあの類人猿をさらし首にしあいだだだっ!!!!」 「やめなさいっ!! っていうか一体どうやってそんな情報を仕入れてくるのよアンタはっ!!」 なんだろう、客がくるのは嬉しいはずなのに、不穏で不幸な予感がしすぎて全然嬉しくない。 美琴としても、今日は来る気はなかったのに白井が上条を血祭りにあげようとするのでそれを止める必要が出てきてしまい結局来ることになったので、不幸といえば不幸かもしれない。 だから、2人は諦めた。 「いらっしゃいませー」 「死ねぇぇぇぇぇぁいだぁっ!!」 「やめなさいっつってんでしょうが!!」 「……御坂、席はあの人達と一緒でいい?」 「へ? あぁ、初春さんに佐天さんね。いいわよ」 美琴と白井は多少格闘戦を繰り広げつつ、初春と佐天のいる場所へと向かっていく。それを見た初春と佐天の眼はなんだか輝いていた。美琴は嫌な予感がしつつも、席につく。 美琴も白井も、席の位置関係からか、インデックス達の存在には気づかなかった。 美琴が席につくと同時に、初春達の質問が始まった。既に初春達は黒子の存在が見えていない。 「御坂さんっ! どうだったんですかっ!?」 「どどどどうって、べ、別に何もないわよ」 「じゃあっ、何をやったんです?」 「な、何をって………ぇと、その」 「お姉様、わたくしも気になりますわね。あの殿方と遊園地に何をしに行ってたのか」 「あれ? 白井さんいたんですか?」 初春は今白井の存在に気がついたらしい。さすがにそれよりも前に気づいていた佐天の頬がわずかに引き攣っている。当然、白井は額に青筋を浮かべて手をわきわきさせながら。 「初春。あなたの衣服を今ここでテレポートしてさしあげましょうか~?」 「わあっ、ごめんなさいごめんなさい」 「というか白井さん、遊園地にいたんですか?」 「ええ。ジャッジメントの巡回で。そしたらお姉様とあの類人猿が一緒に歩いているのを見かけてああ思い出しただけでムカムカしてきますわーっ!!」 なんだか白井はハンカチを噛みちぎりはじめそうな勢いだ。 と、そんな時、オーダーを持った上条が現れた。 「ご注文はお決まりになりま」 「ここで会ったが百年目ェ!! 死にさらせええええええいだぁ!!!!」 「やめんかって言ってんでしょうが!!」 いきなり白井に命をとられそうになり、上条は来るんじゃなかったと後悔した。 なんとか全員の注文を聞いて戻ろうとしたとき、また初春に呼び止められた。 「上条さん………昨日はお楽しみでしたね」 『ぶぅっ!!??』 その場にいた全員が一斉に噴いた。 その後の反応はそれぞれで、佐天は初春に詳しく聞こうとして、白井は「あの類人猿めあの類人猿め」と呪いの言葉のように呟きはじめた。美琴と上条は顔を真っ赤にして否定。 「お、おおおお楽しみって何よ!? わっ、私はこの馬鹿とそんなことしてないわよ!?」 「ってかなんだその不穏な言葉はーっ!! そんな言葉を使うといろいろと周りに誤解が出るでしょうが!!」 「………単純に遊園地のことを言ったつもりなんですけど。お2人は一体何を想像したんですかねー?」 初春の言葉で2人は言葉に詰まる。あっさりと掌の上で転がされている2人だった。 なんだか初春が怖くなった上条は、 「さ、さーてバイトバイトっと」 逃げることを選択した。 美琴は唯一の味方(?)が消え去り、後々くるであろう質問責めに恐怖した。 上条は逃げるようにレジの方にいくと、インデックス達が帰るところだった。インデックスは上条を見つけると、 「とうまはやっぱりとうまで、いつも通りとうまはとうまなんだね」 「いきなり何言ってるかさっぱりわかんねーよ!?」 「後で覚えておくといいかもっ」 歯をギラリと光らせて、ファミレスを出て行った。それを見て上条は理解した。 (ああ……死んだな、俺。始業式の前の日くらいに『頭を砕かれた変死体発見!』みたいな見出しの新聞でも配られるんだろうな……) 無能力者なのになんだか未来が見えた気がして、上条は落ち込む。その場には怯えて震える哀れな子羊の上条が立っているだけだった。 だが、絶望に浸っていた上条に容赦ない追い討ちがやってくる。 「上条」 「は、はい」 「運んでこい」 そういって渡されたのは、美琴たちが頼んだもの。あまりの早さに驚いたが、顔にだすと死ぬ気がしたのでそそくさと持って行く。 美琴たちのいる席に着く前に、4人が見えてくる。その内の一人、美琴をみて上条は戦慄する。 (美琴に生気がないっ!? い、一体何をされたんだーっ!!??) 美琴は力無く机に突っ伏していた。気のせいか真っ白な気がする。 凄まじく行きたくなくなったが、行かなくてはならない。 (インデックスに殺られる前に、こっちに殺られるっ!!??) なんだか、未来(さき)は短そうな気がして、さらに行きたくなくなる。だが、それでも行かねばならない。 神風特攻隊って、こんな気持ちだったんだろうかなどと現実逃避しながら、美琴たちの席に到着した。 「ご、ご注文の品をお持ちしましたー」 「あ、あんなことやそんなことを……!?」 何だか佐天が驚いた顔で止まっている。初春が頼んだ料理を受け取っているが、その顔はにやけていた。白井は相変わらず呪詛を呟いていた。怖い。 矛先は来なさそうなので一安心してこのまま立ち去ろうと一歩下がった時、初春にまたまた呼び止められた。 「上条さん。また聞きますが、御坂さんのことどう思ってるんですか?」 その言葉で美琴以外の全員の時が止まった。 美琴はその言葉を聞いた瞬間ガバッと上体を起こし、そんなことに興味なんてありませんよというような態度を装っている。上条以外にはバレバレだったが。 佐天と初春にさらには白井の視線が上条に突き刺さる。なんだろう、返答次第では白井に殺されるような気がする。 「ぇ、ぇっと………」 どう答えればいいんだろう? 白井がどうとかではなく、ただ自分の意思を正直に言えばいいのだが。 少し迷った後、やはり前と同じ友達と答えるのが適当か。と思って。 「とも……………ノ、ノーコメントでっ!!」 上条はそう言うと走って逃げ出した。 何故かはわからないが言えなかった。いや、言いたくなかったのかもしれない。 ただ、次の瞬間そんなことなど考えていられなくなったが。 「上条」 「はっ、はいぃ!!」 「店内で走るとは何事だ」 「なっ、なんでもありませんっ!!」 「そうか。ちょっとついて来い」 「………はい」 上条は店長の後を囚人のごとくついていく。既に気分は処刑台に上る死刑囚だった。 (グッバイ。俺の人生………) その後、上条はボロボロの状態でバイトを頑張ることになる。 上条の言葉を聞いた初春達は白井と美琴以外大喜びしていた。 初春と佐天はハイタッチをするぐらいにテンションが上がっている。白井は特に動じずに、再び呪詛を唱え始めていた。やっぱり怖い。 美琴はというと、「とも」と聞こえた瞬間に両耳を手で塞いでしまったため聞こえていなかった。さらに興味ないフリをしていて上条の方を向いてなかったので、上条が走って逃げたことも知らない。 だから、美琴には何故初春と佐天が喜んでいるのかわからない。 「よかったですね御坂さんっ!!」 「可能性が上がりましたよっ!!」 「ぇ? ど、どういうこと………??」 「え? 聞いてなかったんですか?」 初春と佐天はお互いの顔を見合わせてから言う。 「『ノーコメント』って言ったんですよ!」 「これだけじゃあわからないかもですけど、『友達』とは言わずに『ノーコメント』になったんですよ!! 可能性があがったと見るべきじゃないですか!!」 「あ、アイツそんなこと言ったの? へ、へ~」 美琴は可能性が上がったかもしれないという事実を知って、内心はすごく喜んでいた。思わず走ったりしたいくらいには。 だけど、表情に出すのはなんだか恥ずかしいので、そこまで興味を引かれなかったことにした。 ………つもりだった。 「お姉様、顔がにやけてますわよ」 「ぅぇ!!?? に、にやけてなんかないわよ! にやけてなんか!!」 「ふふふ。あの若造がお姉様を好きだと仮定するならわたくしも本気でいかなくてはいかないようですわね。ふふふふふ。」 「し、白井さん? 怖いですよ」 佐天は白井の様子を見て怯えている。 白井からなにやらドス黒いオーラが出ているのが見える気がした。 「で、でもノーコメントでしょ? それならマイナスかもしれないじゃない」 美琴は思い付いた可能性をあげてみる。この可能性が本当であったなら最悪なのだが、その不安を払拭するためでもある。 それに反論したのは初春だった。 「いやいや。上条さんは『ノーコメント』って言ったあと走って逃げ出したんですよ? これはもう、恥ずかしかったとしか思えないですよー」 「そうですよ。『友達』といいかけたのをやめたくらいですから、マイナスとは思えませんって」 「やはりあの若造はお姉様を………? わたくしの敵確定ですわね。うふふふふ、ふふふふふ」 「そ、そっか………」 美琴は悪い可能性が低いことにとても安堵した。 だけど、上条が自分に好意を持っている可能性を、いまいち信じることが出来ない。 今まで散々スルーされてきたからだろうか?自分に好意を持った上条をいまいち想像することができなかった。妄想や夢ならばあるのだが。 その様子を不思議に思った初春は、励ますことにした。 ちなみに白井のことは見なかったことにされている。 「御坂さん、自信を持っても大丈夫ですよっ」 「そうですっ! もう一押しだと思いますよっ」 「あのヤロウを金属矢で串刺しにしてそれから………」 佐天も初春にならって美琴を励ます。 白井は恐ろしいことをブツブツと呟いていた。恐らく脳内では百回以上上条は殺されていることだろう。 3人は見なかったことにした。 「そう……かな」 いつになく自信のない美琴をみて、初春と佐天は少し驚いた。今までこれほど自信のない美琴は見たことがなかったからだ。 友人の新しい一面を見れて初春達は少しよかったと思うものの、やはり自信は取り戻して欲しいとも思う。 佐天は何かを思い付いたのか初春に小声で喋りはじめる。 「(初春! またチケットとかないの!?)」 「(ないに決まってるじゃないですか! また同じとこ行っても意味はないでしょうし)」 「(……初春の役立たず)」 「(さ、佐天さん酷すぎますっ! それに今日は昨日のことを聞くつもりでしかなかったので本当に何もないんですってば!!)」 「(……やっぱり役立たず)」 「(う~っ!! な、なら佐天さんが考えてくださいよ!!)」 「(え? わ、わたし!? ………あ、あはは~。さっきはゴメンね初春~)」 「(変わり身が早すぎですっ!!)」 元々人の良い初春は完全に怒ることもできずにそのまま会話を終わらせる。 結局、美琴の自信を復活させられるような策など思い浮かばなかった。 「うっだー。や、やっと開放されたー」 上条は心底疲れた様子でファミレスから出る。その時間はいつもよりも遅めだ。 ファミレスから出てすぐに目が喫茶店の方へと向く。しかしそこに御坂美琴の姿はなかった。 (いねえ、のか。そりゃそうか。何も言われてないしな) 残念だと思う気持ちに疑問も抱かず、表情に出ているのを隠しもせずに、上条は寮がある方へと足を向ける。 何故そこまで御坂のことが気になるのか。そんな疑問を抱くが、考えないことにした。 自分の中にもやもやとした、不定形でしっかりとした形を持たない何かがあるのはわかっている。それは日を追うごとに、尚且つ特定の人物に会えば会うほど膨らんでいくことも。それがなんなのか、そこまではわからない。わからないから、考えないでおくことにした。いずれわかるだろうと思うことにして。 「で、なんで俺はここに来たんだ?」 答える者がいないことはわかっているが、聞かずにはいられなかった。 その場所は、美琴に記憶喪失のことで問い詰められた河原だった。 寮に向かっていたはずなのにここに来ていた自分に驚きを隠せない。なんだか、頭と体が分離しているような気分だった。 (……少しだけのんびりしてくか) そう思って、土手の中腹で座る。 もしかしたら、何かあるかもしれない。なんて幻想を抱いて。 5分程座って川を見ていたら、不意に寂しいと思った。隣に人がいないことが。 ほぼ毎日のように顔を会わせていたからか、それとも別の理由からか。上条にはわからなかった。 その代わりに、一つの事実に気づく。 「そっか、いつの間にか当たり前になってたんだな……。隣に御坂がいることが」 心の中で思うだけにしておけばいいのに、上条は呟いていた。寂しさを紛らわすためかもしれない。 不意に、花飾りの少女の声が頭の中でリピートされる。 『御坂さんのことどう思ってるんですか?』 「……俺にとって御坂って、なんなんだろう?」 そんなこと、考えたこともなかった。 初めて会った時なんて、適当に返したらいきなり電撃を放ってきたくらいだった。そしたら、白井や御坂妹が出てきて、実験のことを知って、寮に入ってレポートを見つけた。鉄橋では腐るほど雷撃の槍を浴びせられた。それでも、あの時見た、絶望に染まった顔だけは二度とさせないと思った。見たくないと思った。笑ってほしいと思った。 その後は、いきなりタックルされて、恋人役をやらされた。『御坂美琴とその周りの世界を守る』という約束もした。 大覇星祭後の罰ゲームではツーショットを撮った。そういえば、あの後もなんだかんだで怒っていた気がする。 第22学区では記憶喪失のことで問い詰められた。そういえばその時他にも何か言っていたような気がするが、思い出せない。 その後は、一端覧祭、クリスマスなどなど。結構な回数で遭遇していて、必ずしも電撃を浴びせられたというわけでもなかった、気がする。 休みに入ってバイトをしてからは、初日にやってきてからはほぼ毎日顔を出している。来ない日の方が珍しいほどだ。 そういえば、ここで記憶喪失のことでまた問い詰められたっけ。その後はゲーセンに行って、負けて、UFOキャッチャーをやって、ストラップを買ってもらった。 なんとなくポケットから携帯を取り出して件のストラップをみる。同時に、美琴が抱いていたぬいぐるみの方も思い出して、少し顔が赤くなる。 顔をブンブンと横に振って一度落ち着かせて、そういえばその後は遊園地に行ったんだったなと思い出す。 そこまで思い出してみるが、答えなんて出てこなかった。だけど、自分の中にあるもやもやとした『ソレ』がまた大きくなっただけだった。 「あー! こんな時まで頭使うもんじゃねえな!」 頭をわしゃわしゃーっ!と掻きまくって、上条は立ち上がる。 考えてもわからないことをいつまでも考えているのは性に合わない。 一度頬を勢いよく叩くと、上条は歩き始める。行き先は、決めていない。 「なんでまたここに来たんだか」 上条は自販機前にきていた。そこは、初めて美琴に会った場所で、お金を呑み込まれた場所。 本当に初めて会ったのはどこだったのだろう? ふと、そんな疑問が沸きあがった。 無性に、知りたいと感じた。何故だか、腹が立った。美琴との思い出を忘れている自分に。思い出せない自分に。 同時に、さらに疑問が沸きあがる。何故、腹が立つのだろう? 答えは、出ない。いや、もしかしたら考えたくないのかもしれない。それが何故なのかはわからないが。 (……わからないことだらけだな) 上条は自分にため息をついて、自販機を蹴ってみた。 ズドォン!という音とともに、自販機が僅かに揺れる。 (あ、ヤバ……警報鳴るか!?) 上条は今更後悔が沸き起こるが、警報は運良く鳴らなかった。上条は不幸な人間なのに、珍しい。 ゴトンッという音とともにジュースが出てくる。『ガラナ青汁』だった。 どうやら不幸の矛先が僅かに違っただけらしい。 「……不幸だ」 いつもの口癖を呟いて、上条は一応取り出しておく。だけど、言った後でどこか寂しさが沸いた。 飲もうかどうか迷ったが、さすがにやめて捨てておくことにした。放っておけばいずれ清掃ロボが回収するだろう。 「……帰るか」 上条はどこか寂しいと思いながら帰路についた。 美琴はあれから初春達と一緒に行動していた。 理由は白井の存在である。「上条さんを待ったらどうですか?」と初春や佐天が言ったが、白井がそこで「そんなこと許しませんわ!」と、今すぐにでも上条に向かっていきそうな形相でいうので諦めたのだ。 そこで佐天が「うーん。それなら今日は4人で遊んじゃいましょうよ!」と言ったので、3人は了承してゲーセンやセブンスミストに行ったのだった。 今は初春と佐天と別れて、白井と一緒に帰っている道中である。 白井はおふざけではない真剣な表情で、突然切り出してきた。 「お姉様。お姉様はあの殿方のどこが気に入ったんですの?」 「え? な、何でいきなりそんなこと聞くのよ?」 「い・い・か・ら。答えてくださいまし」 白井に強く言われて、美琴は一度考えてみる。 アイツのいいところ、気に入ったところ、好きなところ。 何故だか思い浮かばなかった。 「…………わかんない」 「嘘ですわね」 「ほ、ホントよ! ホントのホントに思い浮かばなかったんだから!!」 即返されて少しだけうろたえながらも美琴は反論する。 ただ、白井はその反応を見て肩を落とした。心底がっくりしている様子だった。 「…………はあ。そこまでとは思いもしませんでしたわ」 「どっ、どういう意味よ!?」 馬鹿にされたと思って美琴はくってかかる。 だが、白井の反応は予想の斜め上だった。 「お姉様がそこまであの殿方を好きでいらっしゃるなんて。黒子の勝ち目は薄そうですわね」 「…………え? ど、どういう意味?」 言っている意味がわからない美琴はキョトンとした顔になって訊ねる。 白井はその様子に可愛らしいですわお姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!と心の中で叫びつつ、わざとらしく大きなため息を吐いて応えた。 「……ご自分で考えたらどうですの?」 「お、教えなさいよ! 気になるじゃない!!」 「いーやでーすわー」 白井はそう言うと前方20m程先にテレポートした。 「あっ! 待ちなさいよ!!」 美琴はそういうと走って白井を追いかけた。 白井は10mくらいまで2人差が縮まると美琴に背を向けて走り出す。美琴には決して見えないように、大きな大きなため息を吐いて。 (お姉様はあの殿方のことが全て好きなんですのね。はあー、お姉様を奪い取るのは難しそうですわー) 珍しい組み合わせの追いかけっこが始まって、それは寮に着くまで行われた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/バイト生活
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オレンジデー 2 若干不機嫌そうなお姫様を少し後ろにし、上条は水族館へと足を踏み入れた。 中は学園都市には少ない家族連れもここでは多く見られる。あとはグループで来てたり、カップルで来てたりで溢れ返っていた。 俺たちはどんな風に見られてんのかな。そんな事を思いながら上条は入り口で貰ったパンフに目を通す。「おっ。なぁなぁ、御坂。2時半と3時半にアシカショーとイルカショーがあるみたいだぜ」「ふーん」 話しかけるとそっけない声が聞こえた。 と言っても、不機嫌と言う訳ではないようだ。だって、落ち着きなく周りをキョロキョロと見ている。 なんというか、ワクワクを抑えきれない子供のようだ。 それを見ているとなんだかこっちも笑顔になる。「しゃあねぇなぁ」と上条は美琴の後ろに回り彼女の背を押す。「わっ!?」「早く見に行こうぜ。俺って、水族館初めてだから結構ワクワクしてんだよな」「そ、そう! ならしょうがないわね! 水族館マスターの美琴さんが案内してあげるわよ!」「よろしくお願いします」 上条の言葉を聞いた途端、なんか美琴の顔が輝いた。と、すぐにルートの入り口にまで走っていった。 上条が付いてこないのに気付いたのか、美琴は振り向き「早く来なさいよー!」と手を振っていた。「ほんと、こうやって見るとただの子供だよなぁ」 それもいいけどな。呟いて美琴の元へ駆け寄った。「もう! 遅いわよ!」「悪い悪い。さ、行こうぜ」 二人は並んで水族館の中へと消えていった。 その姿はどこまで行っても普通の物で、全く目立つ事はなかった。 と言うのは入り口に入るところまで。「あー……」 入口入ってすぐの水槽へ向かった美琴だが、水槽の中を自由に泳いでいる魚の悉くが美琴を避けるように泳いでいる。まるで、ガラスの向こうに半球でもあるかのように綺麗に寄らなかった。 おかげで、美琴は通路の端っこに寄り「いいもんいいもん……」と壁に文字らしきものを書いていた。(そういや『電撃使い』は動物が近寄ってこないらしいけど、魚も同じなのか?) きっとそうなんだろう。さっきのを見る限り明らかに美琴を避けていた。 頭をかきながら「どーすっかなー」と悩む上条に一つの嬉し恥ずかし解決策が見つかる。 徐に美琴へ近付き右手を伸ばす。「ふぇ?」 訳のわからない、ちょっと間抜けな顔で、美琴は掴まれた自分の左手を見る。 そしてちょっと考える。 えーと、隣にはコイツがいて、なんだか恥ずかしそうな顔をしていて、私は左手を掴まれていて、そんでもってコイツは右手で私の左手を掴んでて……、「にょわぁ!?」「おぉ!?」 突然奇声を上げる美琴に、上条がびっくりして半歩下がる。そのせいで美琴の体が僅かに引っ張られる。 それでまた周りから奇異の視線を集めるのだが、色々とテンパっている二人は気付いていない。「なななななななにしてんのよ!?」 顔を真っ赤にして抗議を上げる。 いつもなら電撃をまき散らしているのだが、上条の右手で掴まれていて静電気一つ起こせない。 抗議を受けた上条は照れて頬をかいていた。「あ、いや、こうすれば魚も逃げないんじゃないかなぁと……」 ついに恥ずかしくなって上条は美琴から顔をそむけ「ああ、あの魚って美味いのかな!?」などと水族館にあるまじき感想を言っていた。 かくいう美琴は初めて見る上条のその態度に「あ、あれ? もしかしてコイツ、結構可愛い?」と、男が言われても余り嬉しくない評価を彼に付けていた。 知らない一面を知れた事がなんだか嬉しくて、思わず笑った。「な、なんだよ……。そんなに変な事言ったか……?」「ううん、そうじゃないわよ。あ、でも、変な感想は言ったかな?」「言ってたかなぁ……」 自分から手を繋いできておいてまだ恥ずかしいのか、上条はまだ美琴の顔を直視しない。 でも、それは自分も同じなので何も言わない。「……ちょっとずつ慣れていけばいいよね?……」「ん? なんか言ったか?」「なーんでーもないっ! さぁ楽しむわよー!」 上条の手を握り、美琴は彼はあっちへこっちへ連れ回した。 途中、サメを集めた水槽では目の前までサメが口を開けて迫って来たり、水中トンネルを通ってペンギンの泳いでいる姿を見たり、クリオネの食事シーンを見て二人でショックを受けたり。 手を握ると握り返してくれたり。「なぁー、御坂ー。上条さんお腹空きましたー……」「あ、もう2時過ぎてるのね。そりゃお腹も減るわよね」 上条の右手ごと持ち上げて左手で時計を確認する。 上条はそれを気にした素振りを一切見せず、「どっか食うとこねぇかなぁ」と辺りを見回していた。 二人が今いるのはルートの丁度中間の場所だった。そこは2階の空中通路なのだが結構通路が大きく、道の終わりには売店があった。 売店の近くには階段もあり、そこから1階に下りられるようだ。「おっ、なぁなぁ御坂。あそこ座れそうだぞ。近くに売店もあるし、なんか食えんじゃないか?」「きゃっ!? もぅ! 急に引っ張らないでよ!」 文句を言いながら美琴はされるがまま上条に引っ張られる。 上条が言っていた場所に来てみると、テーブル席がたくさんあり、また同時に人もたくさん座っていた。弁当などを食べている人が多かったので、どうやらここがお食事処なんだろう。「うぇ~、人いっぱいだなぁ……」「あっ、あそこ空いてる」「でかした御坂!」「だから! 急に引っ張らないでって言ってるでしょ!」 美琴をひっぱり席を確保した上条は持っていたお茶を置いてすぐに立ち上がる。 美琴が不思議そうな視線を返すと、上条は売店を指さした。中は食堂にもなっているようで、中から何人か食事を持ってきてこっちに座って食べていた。「なんか買ってくるよ。御坂は何食う?」「あ、えっと……」 問われて美琴はなんかバックを抱え、中の何かを掴みながらモジモジとしていた。 それを見て「パンフレットって食堂のメニューも書いてあんのか?」と思い、自分もパンフを取り出して見てみる。 しかしパンフの何処にもそんな事を書いてなかった。じゃあ何でモジモジしてるんだろうともう一度美琴を見る。「そ、その……」「ん? どした?」「……お、おべんと、作ってきたから、その……」「…………………へ?」 上条は思わず自分の耳を疑った。 今、美琴の口からハッピーイベントな言葉を聞いた気がする。 これはアレだ。うん。男が夢に見る女の子の手作り弁当フラグだ。「おべんと、食べる……?」「もちろんっ!!」 もの凄く恥ずかしそうに弁当箱を取り出した美琴の手を、さらに上条の手が掴む。 上条の顔がよっぽど嬉しそうだったのか、美琴は「えへへ」と笑いながら大きめの弁当箱を取り出す。 蓋を開けると、鶏肉の唐揚げや卵焼きといったお弁当の代表的メニューが並んでいた。その段の下には色とりどりのおにぎり。 なぜだろう。上条さん、涙が出てくるよ。「ちょ、ちょっと!? 何で泣いてるのよ!?」「桃源郷ってここにあったんだなぁって……」「なによそれ……」「それでですね、これ食べてもいいんですよね……!?」「もちろん。残したら超電磁砲お見舞いしちゃうわよ?」「残す訳無いじゃないですか! いただきます!」「召し上がれ」 男の子って皆こんな感じなのかな。笑いながらそう思う。 右手でおかずを持った箸を次々口に持って行って、左手ではすごい勢いでおにぎりを飲み込んでいく。 喉が詰まったら持っていたウーロン茶で流し込んで、そしてまたすごい勢いで平らげていく。 なんというか、こうまで夢中に食べてくれるとすっごいうれしい。 見てるだけで満たされていく。『ワーーーーーーーーー!!』「な、なんだぁ?」「……もしかして」 いきなりそんな歓声が下から聞こえてきて、上条もその手を一旦止める。 一方美琴は何か思い当たるのがあったのか、バックからパンフを取り出す。「あ、やっぱり」「なんだ?」「下でアシカショーやってるみたい。丁度始まったところかな?」 パンフを上条に渡し、腕時計を見せながら説明をする。 受け取り見ると、2時半にアシカショーと書いてあった。 そういえば、水族館に入ってすぐ自分で言っていた気がする。今までが楽しくてすっかり忘れていた。「これを見る限り一日一回だけみたいね」「そうみたいだなー。でもま、いいんじゃね? 次見に来ればさ」「へ?」 言うだけ言って上条は再び弁当へ戦を仕掛ける。 言われた方は呆気に取られ、ただ上条を見ていた。(い、今、さりげなく誘われた……? そ、それって『また二人で来ようぜ!』って事でいいのかしら……?) きっと上条の事だから大して考えないで言ったんだろう。大して考えていないという事は、自然と出てきた言葉だという事。 それがもし、自分が思った通りの意味だったとしたら、「……ふにゃぁ」 顔を赤くして「ほぅ」と両手で頬を挟み込む。 上条は上条でまた気絶するのかと焦ったが、それも杞憂に終わりまた弁当を平らげていく。 そういえば初めてかもしれない。「ふにゃぁ」状態で気絶しなかったのは。「食った食ったぁ! ごちそうさまでした!」 行儀は悪いが腹を叩いて満腹を体全体で表す上条。 結局、勢いのまま食べていたら9割ほど食ったかもしれない。 や、だってすっごい美味いし、なんたってコイツの手作りだし……、等と誰も聞いてないのに上条は自分へといい訳を始めた。 上条の声で美琴も現実に戻ってきて、すっかり空っぽになった弁当箱を見て破顔した。「お粗末さまでした。あのさ、いまさら何だけど、……美味しかった?」「すっげぇ美味かったぞ! 毎日食いたいくらいだ」「ま、まい……!?」 それはもしかしてそういう意味!? どういう意味かは知らないが、どうにも今日の美琴さんはトリップしやすいようです。 上条も少し遅れて、自分が言った言葉がどんな意味か気付き、こちらも照れた表情で頭をかいた。「あー! それより!」 この空気に耐えられなくなり、空気を変えようと上条が大きな声を出した。 周りに居た人達の視線が少し集まるが、上条はもちろんのこと美琴も気付いていない。 空いた弁当箱を片付ける美琴に、これからの予定を尋ねる。「この後どうする? イルカショー見てくか?」「んー、ちょっと見てみたいかも……」「じゃさ、ちょっとそこの露天見てこうぜ。そこから下りれるみたいだしさ」 近くの売店と階段を見ながら言う。 確かに、今からルート後半を見ていたら間に合わなさそうだ。「うん、私はいいわよ」「おし、じゃあれっつごー」 手を繋ぎながら売店の中へ入ると、中からはわからなかったが結構な数のグッズが売られていた。 美琴が真っ先に向かったのはぬいぐるみコーナー。イルカやペンギンなど水族館の人気者の勢ぞろいだ。 その傍には海のパズルや、ここの水族館の人気者を集めたパズルがあった。「あ、これかわいい!」 美琴が手に取ったのはペンギンの被り物。帽子の生地ではなく、ぬいぐるみと同じのようだ。それを見て、あったかそうだなと上条は適当に感想を抱いていた。 そこで視線を別の物へ向けた上条は美琴が怪しく笑ったのには気付かなかった。 美琴の隣でお菓子コーナーを物色していた上条は小萌先生たちに感謝もこめてお土産を買おうとしたのだが、これが高い。「意外と高いな……」 お土産品は往々にして高いという知識はあるが、いざ目の前にすると購買意欲が減退していく。 水族館にいる魚たちを模しただけのクッキーなのに妙に高い。見た目は形が違うだけの普通のクッキーなのに。 背後から忍び寄る影に気付かず、上条は買うかどうか迷っていた。「(うーん……、1番安いので850円。でもこれじゃ数が足りなさそうだ)」「えいっ!」「おぉ!?」「あ、意外と可愛いかも……」 背後から忍び寄った美琴が上条に被せた物はマンボウの帽子。 マンボウは何となく鈍いイメージがあるからピッタリだと思ったのだが、これが思った以上によく似合う。 マンボウの下には「なんだこりゃ……」みたいな顔があった。「アンタの頭がジョブチェンジしたわよ」「ウニから、とか言ったら上条さんも怒るからな?」「じゃあ…………、ハリセンボン?」「言うと思ったよチクショウ!!」 ブツブツ言いながらハリセンボンはマンボウを元の場所へ戻す。 戻して気が付いたのだが、ここの水族館は中々にユニークな物を作るようだ。普通、この手の物は誰からも人気がある物を作ると思うのだが、まさかコレがあるとは。 口を押さえ、体を揺らして笑っている美琴に気付かれないようにひっそりと取る。「あ、次はコレ被ってみてわっ!?」「御坂にはコレが似合うんじゃないか?」 今度はひっそりと近寄られた美琴が何かを被せられる。 しかも何かを確かめる間に目の前では上条が携帯で写真を撮っていた。笑いを必死に堪えているのが凄く気になった。 近くに鏡があったのでそれを見ると、美琴の理性が少し飛んだ。「やっぱ電気ウナギがよく似合うよ、うん。同じ電気だしな」 引くつく頬を必死に抑え、笑いを頑張って堪えながら神妙に頷く上条に美琴は静かに向き直った。 大して上条は安心しきっていた。今は右手で美琴の左手を掴んでいるし、電撃は絶対来ない。 だから、美琴が足を振りかぶっているのにも気付かない。 青天の如く爽やかな笑みを浮かべたまま、美琴は一蹴した。そのまんま文字通り。「セイッ!」「ッ!?」 美琴のつま先が上条の弁慶さんをジャストミート。「~~~~~~~~~~~~~~~!!!???」 蹴られるとただでさえ痛い脛に、不意打ちと自販機で鍛えられた美琴の蹴りが入った。 想像を絶する痛みに上条は壁に突っ伏し、涙目でプルプルと言葉なく震えていた。 声は聞こえないが口元は動いていた。声が出ていれば「こっ、これ、はっ……! 余りにご無、体ッ……!!」っていう涙交じりの声が聞こえたはず。「ふんっ!」 ご立腹のお嬢様は悶え苦しんでいる上条を引きずって、商品物色を続けた。 それからしばらく経ち、上条の脛の痛みも引き、売店から出る頃には丁度いい時間になっていた。 心なしか、足がまだ痛い気がする。「お、ここいいんじゃないか?」 イルカショーのステージの観客席は徐々に埋まり始めていた。 上条が取った席は丁度ど真ん中だ。一番の前の席でステージの真正面。空中にいるイルカはもちろん、水中にいるイルカも堪能できそうだ。「ねぇねぇ、あそこでコート配ってるみたい」「じゃあちょっと貰ってるから待っててくれ」「うん」 水しぶき対策だろう。それに、何故かはわからないけど上条には必須な気が美琴にはしていた。もちろん上条自身も。 二人分のコートを手に持って上条は席に戻ってきた。始まるまで時間が少しあるのでまだ着なくてもいいだろう。「俺、イルカって初めて見るんだよなーっ」「そうなの? って、そう言えばアンタって記憶喪失だったわね」「でも知識はあるっていう、何とも不思議な状態だから余計に楽しみなんだよ」 美琴は上条の記憶喪失をどうにかしたいと思っているが、その当人が表面上だけかもしれないが、あまり気にした素振りを見せないので、周りがとやかく言う事ではないんだろうと。何か言ってきたら動けばいいだろうと思っていた。「あれ? って事は、今までのも全部初めて?」「おうっ」「なんだ、じゃあもうちょっとちゃんと説明しながら見ればよかったわね」「今日は楽しむ事第一! それはまた今度教えてくれよ、美琴センセー」「任せなさい! ……って、今美こ」「おっ、始まるみたいだぞ!」「……むぅ……」 なんだか邪魔された気がする。 ちょっとだけ不機嫌になりながらコートを身に着ける。 現れた3匹のイルカは、一緒に出てきたトレーナーの人の合図で空高く飛んだり、口先にボールを乗せながら泳いだり、高い位置のわっかを潜ったり、トレーナーが足裏をイルカに押してもらって一緒にジャンプと、多種多様な芸を披露していった。 その芸の一つ一つに上条は子供っぽく歓声を上げる。その顔と声に美琴はイルカよりもこっちが気になった。「やっぱり、コイツって結構可愛い」そう認識を改めで確認しながら。『じゃあ観客の皆さんにサヨナラのご挨拶ー!』 とトレーナーの人が言うと、3匹のイルカは尻尾で水面を叩いたり飛び跳ねたりとこちらに水しぶきを放ってきた。 もちろん、間には高いガラスの壁があるのだが、それでもやっぱり迫力はある。観客がキャーキャーと騒ぐ中、上条もそれに乗っかる。のもすぐに終わった。「…………お?」 1匹のイルカが放った特大の水しぶき、その一部がガラスの壁を越えた。 なんだかその水がスローモーションに見えて、上条はやけに冷静に着弾地点を予測した。 その結果、バシャァ! と上条はぬれ鼠になった。ピンポイントで。左右前後は軽く濡れただけだった。 コートがあったのは不幸中の幸いだった。のだが、なんだか自分一人だけと言うのが釈然としない。「不幸だ…………」「あはは……。ド、ドンマイ……?」―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 水族館を十分に堪能し、帰途につきちょっと休憩にと公園に立ち寄った頃には、時間はもう6時付近になり夜と夕方のその中間点のような空をしていた。 初夏とは言え、日が沈み風が出てくると少し肌寒く感じる。 普段は多大に迷惑を被っている学園都市の自販機も、こう言う時は少しだけ嬉しくなる。こんな初夏でも暖かい飲み物もしっかり売っているのだから。「なんか買ってくるからちょっと待っててくれ。なに飲みたい?」「うーんと、ココアが飲みたいな。無かったら、なんでもいいや」「おっけー」 飲み物を買いに行った上条の背中を見ながらベンチに座り美琴は一つ悩む。 バックの中にもう一つ食べ物が入っているのだが、いつ出そう。昼食の時はタイミングを逃してしまったし、いきなり「甘いもの食べたくない?」と言うのもなんかおかしい気がする。「どうしよう……」 折角今日の為に作ってきたのに。今日食べてもらわないと意味がないのに。 バックを抱え濃紺になった空を仰ぐ。 空は雲ひとつなかった。だからだろう。濃紺一色しかない空が寂しく感じられた。星も何も見えないただの空。 首を上げているのも疲れたので下へ戻すとウニヘッドが丁度戻ってきた。「お待たせー! ほい、ココア」「ありがと」 ペットボトルのふたを開け、一口飲む。ココアの香りと暖かさが体に沁み渡っていく。 隣に腰を降ろした上条は見た事のない缶コーヒーを開け、勢いよく飲んでいた。缶の色が真っ黒だからきっとブラックだろう。 ただ、でっかい文字で特濃と書かれていたのが気になった。「にっがー!?」 叫んだ上条の口からコーヒーが少し噴き出た。 ちょっとびっくりした美琴の視線の先で上条はせき込んでいた。よっぽど苦かったらしく、なんか唸ってる。 美琴は閃いた。これはラッキーだ。「あ、甘いものあるけど、食べる?」「食う食う! いくらでも食う!」「ちょっと待ってね」「早くー! にっがー!!」 ゴソゴソとバックの中ら取り出すのは掌よりも一回り大きいサイズの、底が少し深い箱だった。 上条に手渡すと、少し乱暴な手つきで蓋を開け中に入っている物を無造作に放り込んでいく。 落ち着いた上条は、何でか縁側でお茶を飲んでいるお婆ちゃんみたいな表情で箱の中の物をゆっくり味わう様に食べていた。「なんというか、こう、沁みてくなぁ、これ……。ああ、甘うめぇ……」その甘うまい物を一つを手に持ち、口に運びながら上条は美琴に聞いた。「ところで、コレって何? すっげぇ美味いんだけど」「オレンジピールってやつにチョコを塗ったの」「へー」 オレンジなどの柑橘系の皮を使い作る、ちょっと苦みのある大人のお菓子だ。 今回はそれを甘めに作ったが今の上条には見事にジャストなようで、食べるその手はノンストップだ。次々と胃に収めていく。 それ見ながら美琴はホッとした。もし口に合わなかったらどうしようかと心配だったのだ。あと、全部食べてもらわないと困ったりする。「なぁなぁ、これ全部食べていいのか?」「い、いいわよ!」「お前、なんか顔赤いぞ?」「な、なんでもないから!」 ちょっと気になるが本人がこう言っているんだから、言い過ぎるとかえって機嫌を悪くさせると思って上条はオレンジピール退治に集中した。 これは一度食べると止まらない。さっきとんでもなく苦い物を食べたからか、すっごく甘く感じる。 あっという間に箱の中身を空っぽにする。「ん? なんだ、これ」「っ!?」 空っぽの箱の底にカードを発見する。 ドッキーン! と反応する美琴の横で上条はカードを開くと、可愛らしい女の子の字でこう書かれていた。『話しがあるので私の目を見ててください』 ここに書かれている『私』は隣にいる美琴の事でいいんだろうか。いや、絶対そうだろう。美琴が取り出した箱、その底に入っていたのだから。 でも、話ってなんだろう。こう改まって手紙で言われると変に緊張する。 書かれている通り美琴の方へ振り向くと、顔を真っ赤にした彼女が一直線にこちらを見つめていた、というよりも力が入り過ぎていて泣き出しそうにも睨んでいるようにも見える。(な、なんだぁ?) いきなりそんな顔を見たもんだから上条もびっくりする。 夕闇から闇へと変わっていく中に見える、美琴の真っ赤な顔。スカートをくしゃにくしゃに握っている両の手。緊張で固まっている彼女の体。一言がなかなか言えず、何度も開く小さい口。 今日一日美琴と一緒に居た上条は一つ思う。(……俺、勘違いしてもいいのか……?) 自分が鈍いという自覚はある。 その鈍い自分がそう思うほど、美琴からは一つの感情がむき出しだった。 どのくらい見つめ合っていただろうか。 周りはすっかり暗くなり、公園の外からは車の音が絶え間なく聞こえる。 外は暗い。でも相手の姿だけははっきり見える。空気は冷えてきた。でも心には心地よい暖かさ。(いっ、言わなきゃ……!) 何度も思うが美琴は言えずにいた。やっぱり怖いと思う。 もし。万が一。やっぱり言うのをやめた方がいいんじゃないか。言わなければこの楽しい距離は続く。ダメだったら、きっと自分は二度と笑えない。 それでも同時に『でも』という希望を抱いていた。 折角持った勇気をダメにしちゃいけない。 美琴は口を開いた。「ね、ねぇ!」「ストップ!」「え……?」 手を出され止められる。 それだけで美琴の顔から表情が消える。 けれど目は開かれ、眦には涙がたまる。「お、おい!? 違う違う! お前が泣く事無いんだって!」 雫となって落ちる前に上条が慌ててそう言った。 不慣れな手で美琴の涙をぬぐい、優しい右手で彼女の頭を撫でる。 もう何がなんだかわからない美琴は、キョトンと上条の顔を見つめていた。 見つめられたからか、もしくは別の理由があるのか、恥ずかしそうな照れたような表情で頬をかいていた。「こ、こういうのってさ、俺から言うもん……だろ?」「え……?」 小さく息を吐いてから、上条はたった一言だけ言った。 結局、上条は目の前の女の子を泣かせてしまった。 暗い帰り道、一人思い出すのはあの日の夜の事。 右手一本で最強に挑んで入院した日。 ベッドで眠る少年は包帯ばかりでとっても痛々しかった。見ていられなかった。凄く、悲しかった。 でも、笑顔で寝言で自分の名前を呼ばれた時。笑ってと言ってくれた時。 目の前で寝ている少年がたまらなく欲しいと思った。 あの時はこの感情を知らなかったから、そんな恥ずかしい事を思ったんだと思う。 今ならその気持ちははっきり言える。「今のこの気持ちの事、なんだよね。……ね、当麻」 あの時と同じ。でもまだ暖かい感触を唇に感じながら一人真っ暗な空に呟く。 不思議と、空は寂しく見えなかった。
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タグ 作曲か 作曲 曲名 作品名 ジャンル 恋は∞まじっく! スズノネセブン! -SweetLovers Concerto- 明るい Dear My Love スズノネセブン! -SweetLovers Concerto- 明るい ひかり、みずおと スズノネセブン! -SweetLovers Concerto- おっとり
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i\ i レ / ! \! へ∧ / ___\ ! レイ_ \  ̄ / ! \ / > / i \ < ∠、 i /| ! ! i , \ \ > / i i ! / .i /i ∧ ト i , --ゝ < ∠ / | !| /ヽ |/ .| ハ | ハ iヽN ,__\ ⌒> / イ /ィ==ミミ、ミ| /´,.リ,ィ===ミ |\i  ̄´ ∠__ イ /⌒ i 八 ノ彡汽|_i._... .》∧i―-\ / _{ ( Ⅵ|=´三彡 ´!⌒ `ヾミ彡|i ハ `´  ̄ `i\ イ ! ! _______ ! !i' \i ! i /ヾ―-------ヽ ! __∧卅/i ゝ /r -- 、_ |i/ 从 i \|/ 〉Yニ≡== -⌒ ヽ__jj〃i从ヘノ 弋 卅 (`(¨´ ̄ゝ二 イ¨)¨) ∥ / i \\ // `i 从 ! / \\ ン / } i ⅱ Ⅳ | i/ \` ̄_// \ | / I | / /  ̄ / \ | / | 8スレ目にて初登場 その際やる夫を幻魔と間違えて殴りかかりいきなりボコられる その経緯からアンデルセンよりやる夫に鍛えてもらうように言われ里の住人となった 主に無手術を得意としていたため博霊や真といった優秀ながらもスパルタな教師陣にしごかれ何度か死に掛けたり やる夫にハメられBL小説の挿絵のモデルになったりと不幸な目に遭うのは原作どうりの様だ 里に来たばかりの頃はまだ能力に目覚めておらず焦っていた時期もあったが後にめでたく「幻想殺し」に覚醒した