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208年 建安十三年(漢) 皇帝 劉協(漢献帝) 皇后 伏寿(琅邪郡東武県・父の伏完は不其侯、桓帝の娘陽安公主を娶る) 三公(漢) 太傅:(空席) 丞相:曹操(前司空) 御史大夫:郗慮(前光禄勳) 太尉:(空席)→(廃止) 司徒:趙温(前衛尉・194~208) 司空:曹操→(廃止) その他の要職(漢) 太常: 光禄勳:郗慮→ 衛尉:→ 太僕: 廷尉:→ 大鴻臚:→ 宗正:→ 大司農:→ 少府:→ 大司馬:空席 大将軍:韓暹 驃騎将軍:張済 車騎将軍:楊奉 行車騎将軍:曹操 衛将軍: 地方官 冀州牧:曹操 荊州牧:劉表(192~208) 主な事件 建安十三年春正月、司徒の趙温を免じる。《後漢書孝献帝紀》 夏六月、三公の官を罷め、丞相、御史大夫を置く。癸巳、曹操は自ら丞相と為す。《後漢書孝献帝紀》 秋七月、曹操は劉表を南征する。《後漢書孝献帝紀》 八月丁未、光禄勳の郗慮を御史大夫と為す。《後漢書孝献帝紀》 八月壬子、曹操は太中大夫の孔融を殺し、その族を皆殺す。《後漢書孝献帝紀》 八月、劉表が卒す。劉琮が立つ。劉琮は荊州を以って曹操に降る。《後漢書孝献帝紀》 冬十月癸未朔、日食あり。《後漢書孝献帝紀》 曹操は船戦で孫権を討つ。孫権の将周瑜は烏林、赤壁に於いて之を破る。《後漢書孝献帝紀》 誕生者 死没者
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お仕事レシピブック仕様ver.2 名称 「レシピ」は残して再検討。 コンセプト 「職についている人に、自分のことを書いてもらう」ことが目標 ポータルにはしない(CMSは使わない) 自分レシピの作成と公開に特化する Twitterなどで個々のレシピを拡散させてアクセスを集める ロードマップ 開発量は少なめにして、二ヶ月以内ぐらいで公開したい(七月末か八月頭公開) 一年で1000件のレシピ投稿を目標にする 一年以内にレシピが集まれば、今後職に就く人向けのサイトに構成しなおす ページ内容・機能 共通 ログインフォーム?(ユーザ管理必要?OpenIDやOAuthは使う?)ログインなしで気軽に投稿してもらう方法を考えたい(編集専用URLを振り出して、ブックマークさせるだけ等) トップページ 最近作られたレシピ 人気のレシピ(閲覧回数の多いもの?) レシピ閲覧画面 コメントフォーム? 似た傾向の人をリスト表示 レシピ作成画面 ログインせずに投稿した場合、編集用のパスワード設定上記ログインの方針と関連して、専用URL振出しと、ユーザーによる任意パスワードの設定ならどちらが抵抗感が少ないか? 写真アップロード Twitterへの投稿機能? レシピ画面操作マニュアルドラフト 最初にプロフィールを入力します職業、性別、年齢(任意) レシピ画面が表示されますジャンルを選択します - アイコンが表示されます アイコンを選択します アイコンの名称を編集し、時間を入力します 写真をアップロードしたり、コメントを入力します(オプション) 以上を繰り返します
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鄭叔則 ?-? 唐代の官人。河南尹、太常卿。京兆尹。検校秘書少監であったが、建中二年(781)五月、御史中丞、東都畿観察使に任じられた。河南尹となり、建中四年(783)に李希烈の軍が洛陽に迫ったため、西苑に立て籠もったが、李希烈はそれ以上進まなかった。顔真卿が盧𣏌に貶められて李希烈の説諭使となった時、李希烈が叛いたことは明白であるとして、顔真卿に行くことを止めさせようとしたが、かなわなかった。太常卿となるも、貞元二年(786)昭徳皇后の崩御にともなう服喪規定の論争に敗れて太常卿を罷免された。京兆尹となり、宰相李泌の信任を受けたが、裴延齢と論争した際に、李泌を憎む竇参が裴延齢を支援し、結果貞元五年(789)二月に左遷されて永州長史となった。その後信州刺史となり、貞元七年(791)福建観察使に任じられた。 列伝・史料 『新唐書』巻一百五十三 列伝第七十八 顔真卿 『新唐書』巻二百 列伝第一百二十五 儒学下 暢当 『新唐書』巻二百二十五中 列伝第一百五十中 逆臣中 李希烈 『旧唐書』巻十二 本紀第十二 徳宗上 建中二年五月丙寅 『旧唐書』巻十三 本紀第十三 徳宗下 貞元五年二月己丑条、貞元七年七月庚午条 『旧唐書』巻一百三十五 列伝第八十五 裴延齢
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おうじさまをさがして【登録タグ XODUS お 初音ミク 曲】 作詞:XODUS 作曲:XODUS 編曲:XODUS 唄:初音ミク 歌詞 ひとりきりで泣いていたの 私は捨てられた哀れな子 ひとりは嫌 ひとりは嫌 誰でもいいからそばにいてよ キラッキラの瞳をした あなたと目が合った瞬間に ジメッジメの日常から救われたの ありがとう ひとりぼっちでは寂しいの 孤独噛み締めて切ないの だからあなたは此処にいて 離れないで あなたがいて わたしがいて ふたりをひとつになりたいのよ 始めましょう 解体ショー ドロドロドロドロに溶けましょう ラテックスのスーツを着て ボックスの中の斧を持って リラックスで切断して 私の中に移植しよう あなたの綺麗な瞳は 私だけに向ければいいの だからあなたは其処にいて 私を見て 眠りに堕ちたら 楽になるでしょう 忘れないように 録画しておかなきゃ 何度も見返す あなたの痴態 となりに転がる あなたの肢体 七月終わりの暑い日 ふたりでひとつになれました 嬉しいけれど あなたにはもう さわれない 気付けばまたひとりきり 孤独噛み締めて切ないの だから探そう 白馬に乗った王子様… コメント ページ作成ありがとう! -- 名無しさん (2011-07-28 22 44 35) ヤ、、、ヤンデレ……だと? -- 名無しさん (2011-07-30 16 54 35) 中毒になるw -- 名無しさん (2011-08-02 18 14 01) かこいい曲ですね。なんと言えない、↑の人に同感です。 -- 名無しさん (2016-10-23 23 39 36) 名前 コメント
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チツトにタント、テロリとケロリ 其後の近況と法律萬能主義 病気は全快した。僕は六月初めから肺炎をやつた。しかし、抑々の初まりは去年頃から続きの風邪の続きらしい。達者の間は工合も随分悪く、熱も可なり高かつたが、愈々たまらなくなつて寝てからは却て頗る楽になつた。 当時僕の懲戒は忌避申請の却下中で、色々の都合上五六日病気にならなくてはならなかつた。ソコでその旨を早速裁判所へ届けると、すると今度は突然ホントの病気になり、自分ながら心外の至りで、到底事実とは思へなかつた。ソレにも拘はらず病気は用捨なく全快せず、全治には到底三四ケ月を要すと医者は鑑定した。総てを計算に加へ、二十九日大審院の懲戒控訴を取下げ、七月十一日に相州茅ケ崎へ転地した。茅ケ崎へきてからも二三週間は薬を呑んでみたが、何時とはなしに忘れた。七月一杯は運動が過ぎたり、勉強が過ぎたりすると、胸の辺が病人らしかつたが、八月何時頃からか、病気も遂に忘れて仕舞ふた。其後アラシのあと、冷へたり下したり神経痛が起つたりし、今後も又ドウなるか判らぬが、これは別問題で、病気は全く快くなつた。 僕の懲戒問題、これは世間の新聞雑誌がバカに詳しく報導してくれ、又近々に、「懲戒になるまで」と「低能になるまで」との二著を一つにして、「偉大なる低能児」といふ小説を出版する筈だから、茲には省く。この小説は、僕なり人間なり、判事なり検事なりの気持なり心理なりを、詳しく書いてあるといふ事よりは、型が従来にない破天荒のもので、キツト世間がアツと驚く類の小説だといふを期待に、是非諸君に読んで戴きたい。申込があれば誰にでもすぐ送る。読んで、期待に背くと背かぬとは敢て僕の関する処にあらず。 病気中は寝ていて優に二人分の仕事をした。日に四五十人位の客に接すると、熱は二三度位上つたが、翌朝はケロリと元の通りになつた。コレではたまらないからと、転地させられてからも、金曜日母には帰宅して、一週間の事務を奇麗に片附けた。書きもの。調べものは平常より余程はかどつた。 妻子合計二人が九月四日帰宅してからは、僕はたつた一人で、漸く小説に手を着けた。九月一杯に、「偉大なる低能児」「侵すべからざる偽善」「戦慄したるテロリスト」外二篇を書上げて、十月からは久し振りで二週間計り日本国中を世界漫遊する。 茅ケ崎は涼しかつた。僕の居た家は風が強く通し過ぎるので、日中でも戸を開け放す事が出来ないほどだつた。近年にない暑気だといふのに、僕は又近来にない寒い夏だつた。イクラ友人を誘つても、水瓜サツマ芋位では、汽車賃を損しては誰も来なかつた。水瓜はツイ最後迄、直接百姓から、取りたてを買ふ事を知らなかつたため余り甘いのに当らなかつたが、サツマ芋と来ては実に天下一品甘かつた。ソレに新しいせいだったのか、生れて初めて魚も甘いと思ふた。 海へは毎日行かなかつたが、それでも隔日位には小供に連れられた。徳利のように水へも二三度、は入つたが、二三分で疲れてグツタリした。家を外に、仕事を人にしては心配で、到底休養などではあるまいと、人も許し自分も信じたが、二三週間中には馴れて平気になつた。最初は場所のせいか身体のせいか、寝ても寝ても、眠くてねむくてたまらず、朝から晩まで眠り通していた。ソレでも新聞といへばパツと目が覚めた。何と云つても茅ケ崎中は、事務所から毎日送つてくれる、読み殻しの古い新聞が唯一の楽しみであつた。僕はどうせ仙人にはなりきれない。 喧嘩相手と遊び仲間が二人共帰宅してからは、北原龍雄君の家へ通ふて食事をした。恰度其頃から北原君が家に居着いて居たので、一人が余り寂しくもなかつた。ソレに南湖院から支那人朝鮮人が時々やつて来た。 事務所は藤原君細迫君の両弁護士、ソレに事務員の百瀬勝郎君とで、結構やつてくれて、心配した程の事もなかつた。事件は例年の暑中より不思議に多かつた。尤もこれは懲戒事件で広告がよく利いた計りでなく、幾分僕の智慧も手伝つてゐたようだつた。 家の留守番は岩佐作太郎君夫人が、事務所の番は細迫弁護士がしてくれた。細迫君は何処で何と虚言をついたか、尻へ腫物が出て、殆んど僕の妻と入れ替りに自宅で転居療養したが、間もなく全快した。岩佐夫人は岩佐君が九月二十七日に四ケ月の別荘から帰ると同時に家へ戻つた。 事務所は僕の留守中何時の間にか、細迫君等が肝煎している、対露非干渉同志会の事務所にもなつていた。藤原君は既に詳しく紹介した。五月から新たに入所した、細迫兼光君は、東京帝大法科を優等で出た法学士で新人会系の雄弁家である。 僕の懲戒は六月二十九日に取下と同時に検事の控訴期間十四日も満了して、停職四ケ月に確定した。が僕の道楽には変りがなかつた。しかし道楽は、差支のなくなる迄内証にするのが、道楽の道楽たる所以であるから、多くは雄弁に沈黙する。 待兼ねた七月に入ると、僕はすぐ左の端書を方々へ配つた。 私は大審院で『全国の司法官は偉大なる低能児の化石なり』と喝破した為め第一、二審共重罪に処せられた被告を無罪とし、其効能を以て休暇四ケ月の恩命を蒙りました。が、病気も殆んど全快の域に達した人物払底の今日、悠々閑々休養之れ事とするは却て恩旨にも背く事と思ひ、其間社会奉仕的道楽の意味を以て平民大学総長法律博士米国伯爵の資格で、誓て、熱心激烈に、取り敢へず 一、不当の値上明渡の要求に苦しむ借家人の為めに悪家主悪差配の征伐 二、不当の解雇首切り轢き逃げ殺傷人権蹂躙等で損害を受けた貧乏人の為めに悪富豪悪会社悪官吏の問責 三、天下の悪法違警罪即決例及び行政執行法即時廃止の期成 の実行に従事し及相談に応ずる事に極めました。 就ては平素私を せらるる貴下は何卒、筆に口に、別に費用のかからぬ方法を以て、之れを一人も多く世間の人に吹聴宣伝し、遂に私を忙殺するか若くは降参閉口せしむるよう御尽力あらんことを、暑中伺に代へて御願致します。 大正十一年七月 東京市芝区桜田町十九(電話銀座二〇七七) 弁護士 山崎今朝彌 追て『弁護士大安売』は又々新版発行、評論小説『懲戒になる迄』は十月頃発売、定価各々二円に有之候。 尚不当の要求に応ずる事、正当の主張を控へる事は、他人に迷惑をかけるから、悪事であります。 此端書は又新聞雑誌で大に受けて、全部又は一部を、其儘又は色々の形ちで「吹聴宣伝」してくれた。そのため僕は一時「遂に忙殺されるか若くは降参閉口しさう」であつたが、事務所は其コボレで時ならぬ潤ひがあつた。 入獄で赤化した自分の経験を以て、僕を頻りに赤化しようと企んだ者があつた。同時に殆んど全部の赤色新聞雑誌に左の広告が載つた。 今般所長の懲戒休暇を利用し一般法律事務特に社会、労働、思想問題に関係ある事件を専門に取扱ふ。 東京市芝区新桜田町十九番地(電話銀座二〇七七番) 平民法律所 弁護士法律博士 山崎今朝彌 弁護士ドクトル 徳田球一 弁護士辯理士 藤田繁夫 弁護士法学士 細迫兼光 この悪戯者は、これを以て尚飽き足れりとせず、百尺竿頭一歩を進んで、此広告を切り抜いたり、いろんな事を書いたりして裁判所へ送り、以て検事局を挑発したらしい。しかし、コンナ事で僕がマサカ入獄したり再び懲戒になつたりする訳もなく、ただ原稿まで役得できるような面白い事件が矢鱈にふへ、事務所が独り丸儲けする計りであつた。 転んでも只起きないが僕の主義である。病気中は、甘い物を沢山食べて太つてやらうと心配した。休暇中は、色を黒くして目方を増し本を一冊拵へようと考へた。これは孰れも成功したのみならず、元気が出、勉強がで来、身体が達者になり、頭脳がハツキリし、仕事も増へた。特に目方の如きは約二貫目もふへた気持がする。しかし、惜しい事に子供はどうしても駄目だつた、尤もこれはトウの昔に諦めては居つた。 兎に角来年からはキツト二月計り宛避暑休暇をし、寝たり起きたり、食つたり働いたり、そして其間に一年中に書いたものを纏め、尚残りがあれば其処等辺をウロツイてみるといふことに決心した。 僕は去る六月号で、徳田君と入れ替りに一年間、外国へ遊びに行く積りの広告をしたが、其後政府がどうしても旅行免状をくれぬから、あの広告は止むを得ず取消しにする。すると、高利貸か、金庫の番人か、土方の親分か、国粋会の役員か、の外何も出来さうにもない、しかし、これとても、到底すぐには出来さうもない僕としては、二重生活上止むを得ず矢張り熱心に真面目に、弁護士を通す外はない、蓋し之れが一番楽に喰へる道で又一番適した法らしい。そして僕は矢張り民刑上告事件と無料道楽事件とを専門に担任し、一般訴訟事件の組立、調査、監督、作戦等を兼任する。 僕が病気にならなかつたとする、マサカ停職を口実に避暑でもあるまいから、あの弱つてる処へ、あのゴタゴタした処へ、今年の暑さでは、今頃は大病人にでもなつていたかも知れない。僕が停職にならなかつたとする、マサカ病気を口実に転地療養でもあるまいから、あの病気にこの暑さ、この忙しさでは、今頃は死んで了つていたかもしれない。今更敢て神の摂理を信ずる訳でもないが、思へば思へば神様のする仕事には無駄がない。 それにしても、人間のする仕事にはなぜかう無駄許りあるだらう。規則を造る者があれば之をモグル者が出来る。掴へれば逃げる。押へれば弾ねる。殺せば祟たる。損をさせて懲らさうとすれば得をして懲りさうにもしない。僕は事の根本を究むる事を知らずして単に法律や刑罰、監獄や裁判所のみを以て、世道人心を嚮き又は之を経世済民、治国平天下の具に供せんとする、所謂法律萬能主義なるものの跋扈を悪まずには居れない、悲しまずに居れない、笑はずには居れない。彼等は馬鹿でなければキツト泥棒である。 <山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
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四月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 五月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 六月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 七月 日 月 火 水 木 金 土 1234567 891011121314 15161718192021 22232425262728 293031 八月 日月火水木金土 1234 567891011 12131415161718 19202122232425 262728293031 九月 日月火水木金土 1 2345678 9101112131415 16171819202122 23242526272829 30 十月 日月火水木金土 123456 78910111213 14151617181920 21222324252627 28293031 十一月 日月火水木金土 123 45678910 11121314151617 18192021222324 252627282930 十二月 日月火水木金土 1 2345678 9101112131415 16171819202122 23242526272829 3031 一月 日月火水木金土 123456 78910111213 14151617181920 21222324252627 28293031 二月 日月火水木金土 123 45678910 11121314151617 18192021222324 25262728 三月 日月火水木金土 123 45678910 11121314151617 18192021222324 25262728293031
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《えー……お次は週間予報です。暫くは大体全国各地晴れ模様ですが、一週間後の七日の夜からまた雨脚が強まる可能性が――……》 平成五年(一九九三年)七月一日。梅雨も終わりに近づき、最近は真夏日を越える日も普通にある。 山沿いの田舎の古びた町に建つ一軒家。そこにある白黒の旧式テレビから、天気予報が聞こえてくる。 その家の縁側で、一人の少女が扇風機の風に直接当たりながら聞いていた。 (……七日の日……雨降るんだ……それも夜……) そう思い、「あー」とだらしない声をあげて、グタッと床にへばり付いた。 その少女の名前は柏原純子。通称純。 純の住む、山沿いの田舎の村の名前は「雪ノ崎村」。インターネットは愚か、カラーテレビすら未だまともに普及していない、昭和にタイムスリップしたような、そんな村だ。 人口も極めて少なく、二十人。その内の、高校生以下の住人は僅か六人しか居ない。十八~六十歳の住人は八人、残りは全て六十五歳を越える老人のみである。そしてそれも、急激に少子高齢化が進み、来年には、少なくとも十人までに減ってしまうことが決まっている。 東京の大学へ行くとか、就職先を探すとか、まあ理由は様々であって。五年前までは人口も未だ五十人以上いたのだが、その殆どは九十歳を越える老人だったので、一気にこの様な有様となった訳だ。今は殆ど亡くなっている。 その上、高校生以下の六人中三人は高三。後半年くらいで卒業してしまう。卒業して、三人とも上京してしまうので、最後に残っているのは中一の純と、もう一人の中一の幼馴染み・榎本郁也。その郁也の一歳年下の弟・榎本涼也のたった三人になってしまう。 しかし、その郁也も東京の全寮制の中学に転校することに決まったのだ。七月七日に。 唯一人の同い年の友人を失うことは、純自信も相当ショックを受けていた。 その上、純は郁也の事を幼い頃から片思いしていたから、尚更だ。 (七月七日…いつもなら郁也と涼也と私で短冊にお願い事書いて笹の葉に飾って……そんで星を眺めたりしていたのにな……毎年そんな楽しみがあった日が、別れの日になっちゃうなんて……) はあ…と純は床にへたばりながら深い溜息をついた。 そして、今までの郁也との思い出を思い出していた。 (もう生まれた時から同い年なのは郁也しか居なかったからな……。最強の喧嘩友達で、最強の取っ組み合いの相手で、最強の理解者だったな……。もう他には涼也と6歳年上の人達と大人しか居なかったから……。もうその最強の幼馴染みが居なくなっちゃうなんて……。実感沸かないや……) そしてまた、深い溜息をついた。 「純、そんなダラダラしている位なら、新聞配達の手伝いしておいで! 富樫さんが、夕刊の手伝いしてくれる人を探していたよ」 扇風機の前で寝転がっていた純を見かねた、純の祖母・夏江が、純に言った。 「えー……めんどい」 だらしない声で返事をした。富樫さんとは、村でたった一つしかない新聞屋を経営している人だ。 「そう、郁也君はしっかりやっていたのにね」 夏江が軽く溜息をつきながら言った。 それに即座に反応して、 「え!? 郁也!? やる!」 と、元気に返事をして起き上がった。 純はダッシュで新聞屋に走った。 そして勢いよく新聞屋の引き戸を開けた。ガラガラガラッ! と大きな音を立てて。 「富樫さん! 夕刊手伝いに来たよ!」 ハアハアと息を荒くしながらも、元気なやる気に満ち溢れた声で、やる気満々な瞳で言った。 そしてその富樫さん……富樫瞬太郎は暢気に煙草を吸いながら 「あー、手伝い? ありがとうね。でもさっき、郁也君が全部配っておくとか言って、もう配達にいっちゃったよ」 と言った。 「え……」 (郁也に先回りされた!) 「んー……多分郁也君、東京行っちゃうから、最後にせめてものお礼とか思って居るんだろうね。郁也君の性格から考えると、まずこんな仕事、やろうなんて思わないでしょ?」 (……確かに) 瞬太郎の考えに、純も納得していた。それと同時に、 (本当に、郁也この村から居なくなっちゃうんだ) という実感と哀しみが心の奥底で感じていた。 「富樫さん有難う! じゃ!」 そう言って、新聞屋の引き戸を勢いよく閉め、純は走った。 「ハア……ハア……」 息が荒くなる。 (郁也……今何所に居るんだ?) そう思って居たら、目の前に新聞の束を抱えた少年が見えた。 百六十二センチという小柄な、太っていない体型。髪の色は茶色に近い独特の色合い。 (郁也だ) 「郁也ーッ!」 郁也の所まで、手を振りながら走っていった。 「あ、純、どうしたん?」 郁也が訊く。 「いやー、暇だったからさ、あんたの新聞配達、手伝ってあげようと思ってさ」 あはは、と笑いながら答えた。確かに暇だったと言うのは本当だが、それは夏江に言われたからだからだ。郁也はそれさえも瞬時に見抜いてた。 「……お前の婆ちゃんに言われたからだろ? どうせ」 「流石は幼馴染み……驚くべき洞察力……」 「お前の性格を考えると、こんな仕事しようと思わないだろ?」 (郁也だってそうだろうが!) 純は心の底からそう思った。 「……じゃあさ、何で郁也は新聞配達なんかしてんのさ?」 純は郁也に訊いてみた。 (どう言うかは解ってるけどね) そう思いつつ、純は返事を待った。 「そりゃ、亜米利加行くし、今までお世話になってきたから俺なりのお礼」 (……亜米利加?) 東京の中学に行くと純は認識していたので、軽く混乱した。 「え……? 亜米利加て……え……?」 「……亜米利加だけど?」 「いや……わたし東京の全寮制の中学入るって聞いてたんだけど……あ……亜米利加……?」 オドオドしている純をみて、 (アホだ-、俺の話の何割理解して聞いてたんだ此奴……) と思いながら 「いやいや……ほら、亜米利加の学校って、九月から新学期始まるだろ? だから、八月一杯まで東京の分校に行って、そして九月になったら亜米利加の本校に行くんだよ」 と純に説明した。 純はそれを聞き終わったら、さらに質問をした。 「……それ以前に郁也……何で態々亜米利加まで行くの? 特に凄い成績がいい訳じゃ無いじゃん」 「お前よりは良いけどな」 郁也は鼻で笑った。 (ムカッ……) 純は内心結構苛ついていた。 「あは、ゴメンゴメン、でもそれは事実だろ?」 (ムカムカムカッ……!) さらに苛ついた。 (本当は今すぐグーで殴りたいけど……別れる前に喧嘩するのもどうかと思うし……我慢我慢!) そう自分に言い聞かせ、堪えた。 「成績とかの問題じゃ無くって……ほら、一月に俺が大会に応募しただろ?」 (あー……そういえば) 純はそんな事すっかり忘れていた。 「そして、それが見事入賞したっていう連絡がこの間来た」 それには純も、相当驚いて 「ええ!? 馬路!? 馬路ですか郁也さん! 凄! 凄すぎ!」 と興奮して大きな声を出した。 「はは、それでさ、亜米利加の本校に行って、もっと力を伸ばして見ませんか、っていう誘いも来た」 (ああ……それで……) 「今逃したら次は無い、って思ってさ、思い切って行くことにした」 「ふうん……」 純は素っ気ない返事をした。 「あのさ……」 「ん?」 「休みの時とか……またこっちに帰ってくるよね?」 (御願い……帰ってくるって言って……) 何となく、心の底でそんな事を祈りながら純は訊いた。 「……いや、一度亜米利加の方へ飛んだら帰ってくるのは難しいと思う。結構レベル高くて、休み殆ど無いし、あってもその時練習しないと追いつけないらしいし……(口コミ情報)でもその分高い実績を誇っている……って純!?」 郁也が気が付いた頃には、目の前に純の姿は無かった。 『 一度亜米利加の方へ飛んだら帰ってくるのは難しいと思う 』 純の頭の中では、その言葉が唯ひたすらリピート再生されていた。 そしていつの間にか自分の布団に潜り込んでいた。 (あっちの方へ行っちゃったらもう郁也とは会えない!? 嘘だ……嘘だ……どうせ郁也の事だもん……きっと冗談だよ……でも……でも……もしも、本当だったら? もしも、2度と会えないとしたら?) そんな言葉しか、今の純には考えられなかった。 一方、郁也は、その後さっさと配達を追え、純の家に向かっていた。 (どうしたんだろう……? 純の奴……何か傷つけること……変な事言ったかな? 俺……大体、純の所言って何をする気だ? 何を言う気だ? 自分でも解らない……でも……何か言うべき事がある筈……) そう思いながら。そして、純の家の引き戸を開けた。 ガラララ……。 「こんばんはー……」 家の中に入りながら挨拶をした。そしたら家の奥から、純の母・薫が出てきた。 「ハーイ、ってあれー!? 郁也君!? どうしたのー? とりあえず、暑かったでしょう、上がって上がって」 元気よく郁也を迎え入れた。 「あ……どうも……お邪魔します……」 郁也は、薫とは反面的に、元気のなさそげな声で靴を脱いで上がった。 「でー? どうしたの?純に用事があるのなら呼んでくるけど」 郁也は縁側の隣にある和室に通され、麦茶を入れてもらっている。この部屋は風通しも良く、風鈴の音も聞こえて、とても居心地が良い。 「あ……じゃあ御願いします」 「分かったわ」 薫はそう言うと、近くの階段の側に行って、 「純ーッ、郁也君が来てるわよーッ」 と叫んだ。 (……郁也? 何でまた……) 布団越しに聞こえた声に、少し純は疑問に思った。 「純ー、早く降りてきなさーい」 薫の声がまた聞こえてくる。 「……」 「……御免ね郁也君、あの子何があったのか知らないけど、何か引きこもっちゃって……」 薫は少し呆れながら、郁也に謝った。 「あ……良いです、俺から行きますから」 そう言って郁也は、自ら階段を上っていった。一段一段上がるごとに、古びた階段から軋む音がする。 キィ……キィ…… キィ……キィ…… (この音……誰かがこっちに来ている……!?) 布団越しに軋む音が聞こえてくる。そしてその足音は自分の目の前に近づいてくる。 「……誰?」 少し不安そうに聞く。 「……俺、郁也」 ドックン……心臓の音が大きくなる。 「……郁也……!?」 「あのさ……さっき何で急に「来るな!」 郁也が話しているのを遮るかのように叫んだ。 「……え……」 「今アンタとは話したくない! 帰って!」 布団にくるまりながら叫ぶ。 「……解った」 郁也はそう一言言って、階段を下りていった。 ミシッ……ミシッ…… 上がるときとはまた違う軋む音がする。そしてその音はどんどん小さくなっていく。 (……今会いたくないってのは本当……でも……別れる前に喧嘩はしたくなかったのに……) 純の心の中には、罪悪感が残っていた。 「あ……郁也君……」 郁也が階段を降りた所に、薫が心配そうに声を掛けてきた。 「何でもありませんので、じゃ」 郁也は素っ気なく返事をして、そのまま帰って行った。 『 今アンタとは話したくない! 帰って! 』 この言葉が、ずっと郁也の頭の中で、リピート再生されていた。 (そこまで嫌われるような事……無意識の内に言ってしまったんだろうか……?) そしてお互い、気持ちは晴れないまま、平成五年(一九九三年)七月二日。 (ああもう、何さ! 郁也の馬鹿! もう帰って来られないって何よ! 自分の夢を早急に叶える事を優先しやがって、私の気持ちは丸無視かよ! もう! もう! 学校行ったらあからさまに無視してやる! 喧嘩はしたくなかったけど、でももうあんな事言っちゃったし、今更謝る気にもなれないし!) 純はそんな事を考えながら登校していた。 そして郁也は…… (よく解らないけど、とりあえず謝っておいた方がいいな、よし) と、純とは真逆な事考えながら登校していた。 ガラガラガラ! 純は勢いよく教室の扉を開けた。そこにはもう既に郁也の姿があった。 「おはよ……」 純はそこまで言いかけて、はっとした。 (いけないけない、郁也の事は無視するんだった。つい何時もの癖で言っちゃったけど、もう言わない!) そう自分に言い聞かせて、そっぽを向いて席に座った。 その時だ。 「御免! 純!」 郁也は、純に向かって謝った。 「……は?」 そっぽを向いていた純も、郁也の方に顔を向けた。 「い……いやー、昨日何かやばいこと言っちゃったかなって」 「ーーッ……!」 (やばいこと言っちゃったかなって……人の気も知らずに真顔で『帰ってくるのは難しいと思う』とか言っといて……えーえー、貴方はやばくて酷くて残酷な事を平気でいいましたよー!) 心から純はそう思った。それが顔に出てしまったのが、長い付き合いの郁也には一目で解った。 (うおお……長い沈黙に険しい顔……これは相当怒ってる……只じゃ済まないな……こりゃ……) そう思った郁也は、必死になって謝る。 「御免! 本当に御免! 何でもするから機嫌直して!」 (何でもする?) 純の中ではこの言葉が引っ掛かる。 「本当に……?」 「本当に!」 純が聞き返すのに、郁也は必死になって答える。 純は自分が思うより前にもう口から答えが出ていた。 「なら……東京に……アメリカなんかにいかないで……ずっと此の村に……わたしの傍に居て……」 ミーンミンミー…ン――……蝉の鳴き声が五月蠅くたった二人だけの教室に鳴り響く。 何時もは気になって仕方がないその蝉の鳴き声も聞こえず、只シンとしていた。 「え……」 郁也の唖然とした声がやっと聞こえた。 「おいじゅ…」 そこまで郁也が言いかけたところで、教室の引き戸がガラガラと勢いよく開いた。担任の富樫慶太朗だ。通称慶ちゃん。彼はあの新聞屋の富樫瞬太郎の息子だ。だから教師とはいえ、純達とは幼馴染みのお兄ちゃんみたいな存在だ。 「純ー、郁やんー、席着けー」 彼は何故か郁也の事を郁やんと呼ぶ。 その後、中々気まずくて、全然口を聞かないまま放課後になった。純はまた昨日の様に縁側でゴロゴロしていた。 (うわー……あれじゃあまるで告ったも同然じゃん! 恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい! 恥ずいよーー! 自分の馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! 確かに喧嘩しないとは決めたけど……こんな事になるくらいなら、喧嘩になった方がよっぽどマシだよー!) 軽く半泣き状態である。 『 さーさーのーはーさーらさらー 』 『 ハッピバースデーツゥーユー 』 今から七年前、昭和六十一年(一九八六年)七月七日。 郁也と純まだ六歳の二人の幼い声が響く。 『 兄ちゃん、純姉、祝ってくれる気持ちは嬉しいけど、どちらかの歌にちゃんと決めて歌ってよー 』 幼い涼也が笑い呆れた声で言う。 『 え-、だって時は金なりだよ? 』 『 うんうん。二つともいちいち歌ってる時間が勿体ない! さあ、続き続き! 』 そう立ち直ると、二人はまた『 のーきーばーにーゆーれーるー 』『 ハッピバースデーツゥーユー 』と歌い出す。 (何なんだよ……訳分かんない) 涼也は六歳の彼等を満五歳の目線から見て、そう思った。 『 おーほしさーまーきーらきらー 』 『 ハッピバースデーぴありょーうやー 』 でも、そんな訳分かんない彼等をみていて、そんな細かいことは正直どうでもよくなってきた。 『 きーんぎーんすーなーごー 』 『 ハッピバースデーツゥーユー! 』 二人同時に歌い終わる。 『『 おめでとー! 』』 ザアッ――…… 風が強く吹いた。 「純姉!」 (涼也の声……) 「って涼也!?」 風の音と涼也の声で純は目を覚ました。 「あ、起きた? よくこんな炎天下の縁側で寝れるよね、純姉も」 (あ……わたし寝てたんだ……) ふと気が付く。 「ってかさ、なんで普通に家の中にいるのさ。母さんも婆ちゃんも居ないのに……それ以前に鍵も掛かってる筈だし……不法侵入じゃないの? 思いっ切り」 ちょっぴり人間性を疑いながら、少し嫌味っぽく純は聞いてみた。 「うん、だからあの塀乗り越えてきた。楽勝だよ?」 縁側の目の前にある、一メートル前後だと思われる塀を指さしながら、まるで“何か悪い事でもしたの?”みたいな顔で答えた。これには純も流石に少し呆れる。 (思いっ切り不法侵入じゃん。っていうか此処がアホみたいに田舎だから未だギャグで流せるからいいけど、此処が都会の街とかだったら、確実に警察に通報されてたか、若しくは信用百パーセント失ってた所だったぞ……) 冷静にそう思った。 「純姉、夢とか見てた?」 涼也が聞く。 「え……何でまた」 「んー…何となく」 「まあ…確かに随分懐かしい夢を見たような気がする」 「え!? 何!? 教えて!」 涼也が目をキラキラさせながら頼んだ。 「んー…涼也の5歳の誕生日の時の夢かな。ほら、郁也と私が同時に違う歌を歌った…」 「あー! そんな事あったあった! なっつかしー」 「だよねー。でも何で急にそんな夢見たんだろう……?」 純が疑問に思って居るところに、涼也が意見を出した。 「俺の誕生日って……七月七日だよね」 それを聞いて、純ははっとした。 「あ……」 (確かに……確かにそうだった……。最近郁也の事で胸がいっぱいだったから、-すっごい失礼だけど-涼也の事忘れてた……) こんな事、本人(涼也)には、口が裂けても言えない。 「懐かしいよなー。そっかー、俺が5歳の時の夢かー。もう七年も前の話なんだよなー」 あはは、と笑いながら言う。 (七月七日……涼也の誕生日が郁也との――……好きな人との別れの日――……) 「……そだね」 涼也とは反面的に元気のない声で返事をする。 (……) 涼也は、それすらも見抜いた。兄と違って、涼也はこの辺(恋愛関連)は鋭い。 「今年ってさ、催涙雨、降るらしいよな」 夕焼け色に輝き始めた空を眺めながら話しかける。 「……サイルイウ?」 聞き慣れない言葉に、純は訊き返す。 「催涙雨。七月七日に降る雨の事」 「ふうん……でも何で涙?」 「織姫と彦星が流す涙、って事」 (涙……) 会えないから泣いたのか。 会ってから大喧嘩して泣いたのか。 会うまえに気まずいことがあって、結局会わずに後悔して泣いたのか。 理由は解らないけど、でも、後悔して泣いたのは余りに残酷だ。 「なあ純姉、何か今日元気無さ過ぎないか? 純姉らしくないぞ?」 少し不安そうに訊く。 (そりゃ、あんな事- 24参照-あってテンション高い奴がいるかボケ!) 心の中ではそう叫んでいた。 「気のせいでしょ、はは」 必死に心の中を隠す。 涼也はしっかり見抜いていた。 「……兄ちゃんと喧嘩したところで―…仲良くベタベタしたところで結局別れる日は変わらないんだぞ」 ザアッ――…… また、風が吹き抜ける。 (涼也―…) そう言った涼也は、夢に出てきた…今まで自分が思ってきた涼也とは違う、とても大人びた表情をしていた。 「そもそも…涙無しの恋なんて無いんだから、それ位覚悟で恋したら? それに、別れるときにしろ、別れた後にしろ、涙は溢れ出るだろうけど、後悔はしない筈なんじゃないの?」 その言葉は、純が今まで十三年間生きてきて、最も説得力のある発言だった。 「うん……そうだね!」 そう言うと、純は目の前の塀を乗り越えて、走り出した。 (そうだよ! そうだよ! あの発言が何さ! どうせ郁也はニブチンだから何とも思ってないだろうし、どうせ七日には東京だ亜米利加だか行っちゃうんだ!勝手に1人でショボけてた自分がアホみたい!) ザアッ――…… 夏の風が吹く。 同じ風でも、今の風はとても心地よくて爽やかだ。 ガラララ! 郁也の家の玄関の引き戸を勢いよく開ける。 「郁也ァーー!!」 彼女のテンションも百パーセント復活している。 奥から郁也が出てくる。 「おい何だよ!? 急に!?」 「勉強会始めるぞ」 真顔で、そして低い声で言う。 「は?」 郁也には全く理解不能だ。 「始めるぞっていったら始めるの! ほら! 教科書出す!」 「は…はあ…」 言われるままに教科書を準備する。 「でも何で急に勉強始めるんだ?」 教科書を棚から出しながら訊く。 「んー? 東京だか亜米利加だか知らないけど、やっぱりこれまで習ってきたものの復習はした方がいいじゃん。それにあんた、五教科の合計の成績の合計が三百九十八点でしょ? 流石にやっておかないとヤバイって」 郁也の部屋の中心に置いてある円卓で、麦茶を飲みながら答える。 「……」 「何? 不満?」 「いや、五教科の合計の成績が二百十点の人に言われたくないなって……」 少し呆れた口調で言った。この台詞には純も軽くプチっときた。 「何よー! わたしはね! これでも二位なのよ! 全体で二位!」 「大体二人しかいないじゃん、中一は。一位か二位しかないんだよ。二位イコール最下位なんだよ。自慢にも何にもなんねーし」 郁也が「ハン」と鼻で笑う。 (と・こ・と・ん! ムカつくなーッ) 心の底ではそう思いつつ、 「じゃあ、始めようか」 と笑顔で応えた。 (やっぱり昔から変わらないなー。相変わらず鈍感だし。あの事-今朝の教室での一件-も全然気にしてないみたいだし) ―――――――――――――……… 「で、この頃雪舟が墨絵を描く、そんでピカソにパクられる!」 自信満々に純が言い張る。 「アホか、雪舟は江戸時代の人じゃねえし、ピカソパクってねえし」 郁也が冷静に突っ込む。 「…えッ!? でも…!」 “絶対そんな筈は無い”と思って居るのがバレバレの焦った顔をして、教科書を確認する。 「……」 教科書の江戸時代のページには、確かにそんな事は書いてなかった。その代わり、《歌川広重が描いた東海道五十三次を、ゴッホが真似て描いた》と、書かれていた。 「……この教科書、多分印刷ミスか、作った人が勉強不足だったんだよッ」 笑顔で郁也に同意を求める。 郁也は「馬鹿じゃねーの」と笑った。 「なー! 誰が馬鹿かー!」 「だって馬鹿だろー。こんなの小学生レベルの問題じゃねーかよ。そんなのも分かんない奴に勉強教わるとか馬路ウケる」 (くっそー、郁也の奴百パーセント馬鹿にしやがってやがる……) 内心、相当悔しかった。 今の事は勿論、自分より先に憧れていた東京に先に置いて行かれてしまうのも、自分より先にパスポートを発行してもらったことも、自分より先に夢に向かって旅立っていってしまう事も。 七月七日までの四日間は音よりも速く、宇宙の広がる速さよりも速く過ぎていった。それも、あまりにもいつも通りに。お別れ会とか、お祝いとか、そんな事は一切しなかった。 そんな事したらもう、二度と本気で会えなくなっちゃうんじゃないかって思うから。 今思えば、それ位したって良かったかなー、とも思うけど、別に激しく後悔している訳じゃないから、まあいっか。 純はそう思っていた。 * 平成五年(一九九三年)七月七日。 (今日が……私が毎年楽しみにしていた筈の日であって、涼也が十二になった日であって、郁也が夢の第一歩を踏む日であって―…私の好きな人の、見納めになるかもしれない―…いや、なる日だ) 純はそう分かっていた。 夕暮れ。 村の住民全員、総勢二十人が、村の中にある唯一のバス停の前に集まっている。全員、顔馴染みだ。郁也の最後の見送りに来ている。 「体に気を付けろよ」 「慣れない所だろうけれど、頑張ってね」 村の人達が郁也にそう声を掛ける。 郁也はそれに笑顔で応対する。 『 最後くらい泣いたって罰は当たらなんじゃない? 』 涼也がそんな事を言っていた気がする。 『 涙無しの恋なんて無いんだから、それ位覚悟で恋したら? 』 涼也の言葉が蘇る。 いつの間にか夜になっている。 星が瞬いている。 しかしそれもつかの間、雲が繁って、雨が降る前の独特のあの薫りが漂う。 催涙雨。 織姫と彦星が流す涙の雨。 会えないから泣いたのか。 会ってから大喧嘩して泣いたのか。 会うまえに気まずいことがあって、結局会わずに後悔して泣いたのか。 答は二人だけが知って居る。 でも解ってしまった。 会っても会った後の別れが辛いからだ。 『 今アンタとは話したくない! 帰って! 』 『 ずっと此の村に……わたしの傍に居て…… 』 『 別れるときにしろ、別れた後にしろ、涙は溢れ出るだろうけど、後悔はしない筈なんじゃないの? 』 ポツ…ポツ… 催涙雨が降る。それと同時に、県最大の駅に向かうバスが来る。 「郁也!」 純が郁也の元に駆け寄る。 その声に郁也は振り返る。 「純…」 「あのね…わたしね…わたしね……」 そこまで言いかけたところで 「待って」 と、郁也が遮った。 「先ず俺から言わせて」 そう言って話し始めた。 「ありがとう」 「…え?」 「『亜米利加なんかに行かないで』って言ってくれてありがとう」 「な…何で…?」 (むしろ迷惑だったんじゃ…) 「だって、何かみんながみんなアホみたいに俺が此の村から出て行くのを歓迎しているじゃん? 嬉しい反面、ちょっと凹んだ」 「え…」 「正直、亜米利加に行く不安もあったのに、誰もそれに気が付いてくれなかったから」 (あ…) 「だから、有難う」 いつの間にか、純の頰には涙の線が一本あった。 「あのね…わたし、正直郁也の夢、素直に喜べないの」 「え…」 「寧ろ反対していたりするんだ」 ザア――――…… 雨はどんどん酷くなっていく。 「だから……本気で夢追いかけなきゃ、五寸釘と藁人形で呪ってやるから!」 郁也はクスッと笑った。 「最後の最後まで滅茶苦茶な事言ってんじゃねーよ」 いつもの少し意地悪な郁也だった。 「じゃあ……そろそろ行くね」 郁也はそう言ってバスに乗り込んだ。 乗り込んだと同時に、旧式の古ぼけたバスはキィ―…と大きな音を立てて閉まる。 ザザザザ――…… 催涙雨は激しさを増す。 純の涙は抑えきれなくなってきている。 バスがどんどん見えなくなってきている。 催涙雨 七夕の夜に降る哀しい涙の雨――……
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2021 十六夜日記 夏のほどは、あやしきまでおとづれ絶えて〜音こそ泣かるれ/と書きつく。 2020 落窪物語 女君は、わりなう苦しと〜はかなくうつることぞかなしき 2019 2018 2017 増鏡 文永三年七月八日、〜かくおはしますを、思し嘆きたまふなるにこそ。 2016 平中物語 また、このおなじ男、聞きならして、まだものはいひふれぬありけり。〜いらへもせずなりにければ、いはでやみにけり。 2015 源氏物語・花散里 2014 更級日記 星の光だに見えず暗きに〜さは春の夜をかたみと思はむ。 2013 土佐日記 一月七日 七日になりぬ。同じ湊にあり。〜うつくしければにやあらむ、いと思はずなり。 2012 我が身にたどる姫君 月はふけゆくままに 2011 石野広通「大崎のつつじ」 さるがうなどのたまふほどに日もたけぬ 2010 落窪物語 右大臣にておはしける人の 2009 平中物語 また、この男、市といふところにいでて〜いとまがまがしくなむ。 2008 和歌威徳物語 後醍醐院、武家を滅ぼさんと 2007 夏目金之助「山路観楓」 定めなき秋の空とて 2006 蜻蛉日記 さて思ふに、かくだに思ひ出づるもむつかしく 2005 一茶「永代橋の墜落」 月見る月十九日といふ日は 2004 藤原隆信家集・哀傷 母に侍りし人〜君を問ふべき言の葉もなし 2003 いほぬし 2002 只野真葛「絶えぬかづら」 2001 四条宮下野集 1990 松永貞徳「戴恩記」 ある時、霊山の襃貶の会に、〜殊勝の会席なるべけれ。
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http //www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200812100381.html 制服組優位に疑問符 田母神論文で文民統制揺らぎ 08/12/10 【解説】制服組の権限強化を打ち出した防衛省改革の「基本的考え方」(基本方針)は、首相官邸に設置された防衛省改革有識者会議の七月の報告書に基づいて作成された。だが報告書はシビリアンコントロール(文民統制)が機能しているとの前提に立っており、田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題で文民統制の揺らぎが指摘される中、制服組優位の改革案の妥当性には疑問符を付けざるを得ない。 基本方針によると、防衛省設置法と防衛省組織令が規定する「自衛隊の行動の基本に関する」事項を運用企画局から統合幕僚監部に移す。これにより武器使用基準など自衛隊行動の立案や、ほかの府省や与野党幹部との調整、米国や国連との協議で、制服組が主導権を握ることが予想される。 「業務の重複を合理化するため運用企画局は廃止」とした有識者会議の報告書は「防衛省・自衛隊は文民統制を重視している」「自衛隊は文民統制を内面化した」と、文民統制の定着を評価する内容となっている。 田母神問題が起きて以降、防衛省内局では「前提そのものが誤っていたのに、このまま組織再編が国会の理解を得られるのか」「唯一の武力組織である自衛隊の運用を制服組に任せていいのか」(背広組幹部)との声も上がったが、流れを変えるに至っていない。関連法案が二〇一〇年の通常国会に提出された場合、慎重な審議が不可欠だ。 「偉そうな軍人さんは嘘をつく」庫
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三英雄の一人。百年戦争末期、魔法の発展に大きく貢献した英雄。その出自、来歴はほとんど謎に包まれており、『狐と人の間に生まれた』『死者をも生き返らせられる』などという俗説が世に広まっている。 百年戦争後期、大量発生した魔物の被害に国が手を焼いていた頃、ミョウジョウの王朝に突如現れ、「万物流動の真理を知りえた。ミョウジョウを王道へと導きたいのなら、私にミョウジョウの魔法研究を一任しろ」と宣言し、反感を覚えた名魔術師たちと幾度の呪術合戦の末、その実力を認められ、明王より呪術をすべる魔王の名『泰山府君』の勲章を授与する。 驚くべきことに彼が実際に魔術研究のトップとなってから、ミョウジョウの魔法技術はその後40年にわたり急速に発展する。 その後、「悪路王」「土蜘蛛」「穏神形部」「肉芝仙人」の四人の高名な魔術師、呪術師と共に国内及び国外の魔物達を成敗、封印し、その逸話を各地に多く残し、後に『反魔の象徴』として祭り上げられることとなった。 しかし終戦の兆しが見えてきたころ、英雄は戦争を放り出し魔法の研究に取り付かれ、神族の正体を明かそうとした。その執念たるや、逸話では十日間断食・断飲・不臥・不休でのただただ机上で魔術を練っていたと語られるほどであったという。 そして七月七日丑三つの晩、「神族のいた世界にへゆく」と言い残し、強力な魔力によってこじ開けた異次元の扉へと消える。 その後、同じく四人の魔術師達のうち三人も魔法に囚われ『あやかし』となり、最後まで人間であったのは『穏神形部』のみであった。