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京 1 人の肉を喰らったけものは、それからのち、人を恐れず人を喰らう。 人の血には魔力がある。 あるべきでない魔力に触れて、染められてしまうと、もう後戻りできない。 人も同じ。殺めたその手についた血潮を、おとすことはもうできない。それはとてもおそろしいこと。 だからキョウは守りの腕輪を編んだ。湧水と月光で清められたから繊維を取り出して、キョウがその手で編んだものだ。そしてキョウは、ブラフォードに肌身離さず着けるように言った。 見えない血潮に染まった手に、黒い精霊が引き寄せられてくる。ブラフォードの浅黒い肌より、黒くつややかな髪よりもさらに濃いものらが。 精霊は力。力とは物事を変える。どのように変わるかは、人にはわからない。それはこの世のことわりに近い何かが、この世のことわりに沿うよう行う。 精霊に悪事は無い。悪霊と呼ばれるものでもそうだ。ただ悪霊には悪霊の振る舞いがある。悪霊は混沌をさらに混沌にし、生には死を与え、死にはさらに屍解を与える。それはこの世の生の収まるべき行く末を作る大切な働きだ。 けれど、その働きと力が、ひとりの人に働きかけてきたとき、人にとっての苦しみも痛みも生み出されてしまう。 ブラフォードは静かにキョウを見返し、わかったとうなずき、紐の腕輪をつけた。それからブラフォードは少し笑みを浮かべ、ありがとうと言った。ブラフォードにも、きっとわかっている。その手で斬ってきたのだから。 その手は剣を振るい、剣は神敵を斬り伏せる。ブラフォードは、キョウの見てきた誰よりも強い。鉄のつわものに乗れば、誰よりも滑らかに操る。 ブラフォードは己のために剣を振るわない。一度だけ、ブラフォードは言ったことがある。ある夜のことだった。焚火の揺れる明かりを静かに見つめながら、わたしはもう己のためには剣を振るわぬ、と。ゆえに神殿に剣を捧げた、と。 けれど、きっと、それからなのだ。ブラフォードに付きまとう闇は深くなった。キョウにはそう思える。 生と死、屍解と誕生。この世の大きなことわりの中に人の魂はある。すべては流れ去るのみ。魂の救いが失われれば、人は生きる希望を失う。 ゆえに光神は光携え、人へ示した。神殿はそのように教えている。光神らはこの世のことわりの上に、さらに救いのありようを作った。人はそれを奉ずることで、神に身を委ね、魂の救いを得られる。 神殿は言う。神意は遠大なもので、小さな一人の人には読み解くことがむつかしい。ゆえに人は英知を集め、神殿を成し、神意を読み解かんとするのだと。神意を読み解き、人の言葉へ変え、人の守るべき法とするのだと。 神殿の法を守ることはすなわち神意を達することなのだと。そうして作られる神の国こそが、魂に救いを与えるのだと。 だが神殿は言う。この世にはそれを乱す者がある。人は戦わねばならない。光神の法を乱さんとするものと。光神の法と秩序を乱すものと。混沌満ちる世を作りだし、そこに君臨せんとするものらと。それが人がこの世にて果たさねばならぬ役目であり、魂の試練なのだと。 神殿にささげられたブラフォードの剣は、神殿の言うがままに振るわれてきた。 けれど、そのたびに、ブラフォードのまとう影は濃さを増すように思える。ブラフォードのもつ鉄のつわものも。 魔力で動く、大きな大きな鉄の兵。ブラフォードのもつもう一つの剣と言っていい。そして剣より多くの者の命を奪ってきた。それが鉄の兵、機装甲の役目だ。ことを成すのは人だ。だから責めは人が、機装甲の乗り手が負わねばならない。そして乗り手たるブラフォードは神殿の命じるとおり、斬るべきものを斬らねばならない。 魔力は力。その力にて機装甲は動く。魔力には精霊が関わる。キョウにはその精霊の声が聞こえる。人には聞こえぬはずの声だ。キョウには精霊の働き掛けが見える。人には見えぬはずのものだ。キョウには見える。、ブラフォードの機装甲に忍び寄ろうとする黒い精霊たちが。 追い払おうとしても、阻もうとしても、どうすることもできない。この世には死も屍解もあるべきもので、あらゆるものはそこへ導かれてゆく。その働きを強めるものには精霊たちも寄り集まってゆく。それは黒の精霊たちにとってあるべきことだ。そしてその働きをさらに強める。 ブラフォードの行いに、さらに力を与え、ブラフォードにさらによくそれを成す場を与える。精霊にとってあるべきものでも、人の死は、関わる人に苦しみを与える。 どうか、彼に救いあらんことを。彼は、己のために剣を振るいません。神殿の教えを信じ、その示すものに振るってきました。 どうか、その彼の行いに報いありますように。 それでもキョウは知っている。本当の神様は、世の多くのものらの一つ一つの声など聞き分けてくれないことを。力を分け与えてはくれても、それを振るうのは、やはり人であることも。 キョウは精霊に願う。ブラフォードを助けてくれるように。彼の機装甲が良く動き、良く助けるように。そしてブラフォードをキョウのもとへと返してくれるようにと。 キョウは、ブラフォードと静かに過ごす夜が好きだから。その夜に、少しだけ心安らいだとき、見せてくれる笑顔が好きだから。 久々に一本w ブラフォードも早めにアイデアを出して置きたかったんだけど、京の実装にちょっと迷ってた。 精霊医師的なんだろうけど、帝國の精霊医師とはタイプが違う感じで、 同時にあの京的でもあるというのは、けっこう大変w あと名前も。 今はキョウにしちゃったけど、都の直訳とかではあまりピンと来なくて困った。
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武器名 攻撃力 値段 効果 ラーの手鏡 5 ¥2000 模写を使うと敵1体の気力になれる。 +画像 通常 模写 模写は相手の気力になれる技。気合吸収と違い、相手の気力はそのまま。 そのため、相手にたまった気力を2度使える技といえる。 頻繁に気力が上がる、目玉系とサタン系の敵と相性がいいが、さらに積極的に活用したい場合は、リンゴ飴等の、敵の気力を操作できる武器を組み合わせてみよう。 この武器と組ませよう 敵気力操作系統-操作した相手から気力を調達。 入手方法 武器箱 選択肢 投票 とても強い (0) 強い (0) 普通 (1) 弱い (0) とても弱い (0) コメント ラーの鏡?ちょっと待ってそれドラクエネタだよね -- (名無しさん) 2018-03-15 19 36 14 クッキー☆はヤメロォ!(建前)ヤメロォ!(本音) -- (名無しさん) 2018-03-28 16 39 09 UDKで草 ラーの鏡?ちょっとまってそれドラクエネタだよねドラゴンクエストに出てくるんだよラーの鏡っていう、Vくらいかな?あのーじゃあ簡単にせつっ、するとね、ラーの鏡っていうのはねその映した人の真実を映すみたいなやつで、ドラクエでーその偽大臣の正体を暴くために使うグッズ 私は個人的にV大好き -- (名無しさん) 2018-03-30 01 01 21 偽の王様が3で偽太后が5 -- (名無しさん) 2018-05-28 09 00 18 アー生き返るわぁ~ -- (名無しさん) 2018-05-30 00 11 01 名前 コメント すべてのコメントを見る
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◆実生活であなたが使う一人称は?複数ならその対象もどうぞ。 ◆ネット上であなたが使う一人称は? ◆あんまり使いたくない一人称は? ◆他人が使ってるのを聞いて(見て)微妙な一人称は? ◆あこがれてる一人称は? ◆バトンを回す人
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103: 名前:サスライ☆07/11(日) 20 19 54 【三曲目・旅人】 沈む肉。良く解らないが、麗にはこの言葉がピッタリする表現だと思えた。筆者もそう思う。 シェンフォニー襲撃の後、麗達は樹の影に退けられていて、直ぐに目を丸くしてドラゴンの鱗に仕込んだ発信器を確認する。発信器から、山賊団全員が近くに居るらしいと確認して胸を撫でる。 ところが目の前は先程自分達が居た場所で、ソコには黒服の男達が居た。これには実は見覚えがあって、堂島山賊団が『武器商人』と呼ぶ物のボディーガードだ。 しかし、ご機嫌いかが?と軽く挨拶する訳にもいかないのは、付き合いが表面なのも理由にあるが、何よりも小脇に物騒な物を持っている。 「衝撃弾式マシンガンに、P3グレネードショットガン、しかもロボットが3体と…… 役立たずは処分って事でゲスか」 ハンプティとの決戦の際に、武器商人はかなりの安値で武器を提供してくれた。絶対裏があるが、知ってどうすると言う事で放置していたが、どうも麗は此処になって命が惜しくなったらしい。 特殊な信号電波を送り、周りの山賊メンバーに合図を送る。内容は、何時も通り山賊するぞと。 何も知らずに死ぬ訳にはいかない。それもあるが、何よりも今は牢獄の棟梁の居場所を守る為に。 「さて……お手並み拝見」 気配を消して麗の真後ろに居るシェンフォニーが、本人に聞こえない程度に言った。 104: 名前:サスライ☆07/15(木) 21 47 02 衝撃弾式ショットガン三丁、刀五本、拳銃数丁にナイフ数本。麗は自分達の全ての戦力を確認して、それでも相手の性能に劣っている事を思う。 相手は最新式重機2丁に加え、片手がマシンガンになっている戦闘用ロボットを3機も連れているのだから。 しかし、性能の差が戦力の決定的な差にならない事は知っていて、それを実現してみせようと先ずは『刀』を3人動かす。 刀持ちは元堂島ゲリラ部隊の部下が多い為か、千鳥流の使い手に限られ、故に白虎咆哮による速度強化が使える者が居る。 突然森の中から1人目の山賊団員が飛び出した為に、ロボットは反応出来なくて、ボディーガードも一瞬の間を突かれるが、ならばとナイフを取り出してカウンターを狙おうと突きにかかった。 その持ち手に多数の拳銃による銃弾が飛んで来て、狙いが定まらない。ロボットが反応しようとするが、そこへ衝撃弾を撃つ事で暫く動きを止める。 綺麗な上段回し蹴りが顎に入り、ボディーガードは脳を揺さぶられ失神。マシンガンを落とす。もう一人のボディーガードはグレネード(爆弾)を放つタイプの銃の為に近距離だとどうしても拳銃に持ち替えるまでの時間差が出る。 しかし、はじめに飛び出した山賊団員はその為に残り2体のロボットに狙われる事になるが、 それは後から森の奥から飛び出して来た、合計2人の山賊団員による、青龍咆哮で上半身を強化した一閃で間接を叩き斬られて、マシンガンがポトリと落ちた。 つまり、一人目の山賊団員にロックオンしている隙をついたと言う事だ。 106: 名前:サスライ☆07/16(金) 20 55 36 白虎咆哮で一番手に飛び出した団員を、今度は拳銃を構えるボディーガードに向ける。もう片手は重火器を担いでいるので、そう素早い動きは出来ない筈だから、素早さで翻弄してやれば良い。 しかし、その団員は足を撃たれた。何故なら、ボディーガードが予想と反して素早い動きをしてみせたから。更にボディーガードは、キロ単位の重火器を担いだまま上に飛び、グリップで殴りつける。 しかし、注意が反れている間に追加した団員が、衝撃弾式マシンガンを手に取り、放つ。 ショットガンで動きを一旦封じただけの、片手にまだ武器を持つロボットに。 潰れた蜜柑の如く内部が破壊されているのを確認するのも束の間、武器を切り落とされた方のロボットがもう片腕を振り上げて後から来た団員に殴りかかる。 しかし、拳法家と只の力持ちでは勝負になる筈も無かった。 一人は横にスイングされる拳を上に跳ぶ事でかわし、主要な回路が詰まった頭を蹴り潰し、天にでも行くのかと言う程跳ぶ。その先に居るのは、ボディーガード。 一人は直進する拳を合気の原理で上に受け流し、バランスが上に向いた所に大地を踏み締め、一気に蹴り飛ばした。その先に居るのは、ボディーガード。 刀による斬撃、鉄塊の投擲。さて、ボディーガードはどう対応するかと大体読めていたのは3人。 シェンフォニー、麗、そしてボディーガード。 107: 名前:サスライ☆07/17(土) 17 27 02 ボディーガードは、グレネードで鉄塊を爆撃し、叩き落とし、斬撃を空中で身を捻ってかわし、刀を持つ団員の手の甲を蹴ってその更に上に跳ぶ。 ボディーガードが、天高く跳んで、拳銃を構えた時に麗は呟いた。 「チェックメイト」 ボディーガードの頭に衝撃が来る。これは衝撃段による痛みでは無い、只、脳天に鉄塊が激突したのだ。 しかし鉄塊はグレネードで叩き落としたから存在しない筈と、薄れ行く意識の中で見たのはマシンガンで中身が潰れたロボット。 中身が潰れて、それが装甲の粘土の様な変型に繋がっているのも印象的だが、更に印象的なのは、その上半身が無い事だ。 見れば近くに更に見慣れぬ男。刀を持っているから、5人目の刀だが、この男の刀は実は特別製だった。 堂島の大和刀。重くて実戦では堂島程度しか使えないが威力のみは健在で、ロボットを装甲もろとも一閃して2つに斬れる。 その上半身を、青龍咆哮した二人がかりで思い切り投げ飛ばす事で、物凄く高く上に飛ばせる。つまり、刀と鉄塊ははじめから囮だったのだ。 ドスンとロボット上半身の下敷きになって、そのまま地面に寝るボディーガード。 圧倒的な性能差を、麗は知恵で補って見せたのだ。 108: 名前:サスライ☆07/18(日) 22 39 51 監視担当の団員は、ここを観察していたシェンフォニーに特に怪しい動きは無い事を、麗に連絡する。 ところが、みんな終わった途端に麗に向けて、しかしあくまで見物する見下した目線で歩き出したので、情報が送られた麗は油断してるからと、あなどる事無く命令を発信した。 木の影からシェンフォニーに向けてショットガン。ボディーガードがロボットの上半身をかわした時に備えていたモノだ。 四方八方とは言わないが、それでも変な話、一方向から包囲されている様に感じる、散弾による逃げ場の無い弾幕。だが、シェンフォニーは笑っていた。 衝撃弾とは、高威力の代わりに構造上随分とかさ張る。その為、拳銃にしてもロマンチックなビッグサイズになってしまう。ショットガン等ライフル状の銃でも同様の事が騙れる。 造形から、既にシェンフォニーはそれが衝撃弾を吐き出すと推理し、先ずの次に対象になるは自分と推理していた。 だから、赤いスカーフを巧みに動かし、炎の蛇の様に上手く広範囲の射程距離を取る。 弾丸を歴戦の感覚で、総て横から叩き落とせば弾丸の信管刺激による小さな爆発が幾つもおきた。 そのまま身体を回して、義足で後ろ蹴りを放つと、そこには監視の放った拳銃の銃弾。 銃弾は跳ね返り、銃口に入れば変なジャムを起こして暫く使い物に無くなる。 シェンフォニーのそこに硬直が生まれた。今だと忍び寄った麗がナイフを振り下ろすと、シェンフォニーはそれを指二本で止めて見せた。少なくとも、人間の反射神経では無い。 「『龍虎咆哮』。油断の理由も考えておくと良いかもね、まあ……」 このシチュエーションにはハンプティとの会合で慣れている。だから、次の手として、この距離から拳銃を放つ選択を考えておいた。 しかし、訳も解らず空へ放つ終わるのは、空中にスカーフがチラリと見えたので納得する。 詰められた刹那、手首を動かしてスカーフを麗の皮膚の上から筋肉の筋にぶつけて、間接を無理矢理上に動かしたのだ。 「……化け物め」 「人間さ。一人ではたった一つの国も守れない、小さな人間だ」 109: 名前:サスライ☆07/19(月) 20 30 49 朽木の枝がポキリと折れたその奥で、シェンフォニーが重厚な服装とは真逆に、麗に軽く話しかける。 「まあ、君達にパシリを頼みたい訳さ。その為の実力を見ていたんだ」 「銃口ケツにぶっこんで、鉛弾鼻から出すでゲスよ?」 眉をハの字にして両手をオイオイと振るのは、麗の目付きに本物の殺気を感じたからで、この時折れる筈の無い若木の枝がポキリと折れたそうな。 シェンフォニーは、こほん。と、一拍置いて如何にも話題を変えそうだなと言った仕草を見せれば、故にそうなった。 「いや、実は俺は今、とある島で市長を勤めていてね。最近高校生の銃発砲事件が発生したんだ」 人差し指でクルクルとチョビ髭を弄くりながら喋る。きもち風が揺らめく。 「調べてみれば此処に行き着いてね。どうも、ガンマ一家の幹部が武器を横流ししているらしいんだ」 「そうでゲスか……で、私達にソレを聞かせてどうしようと言うでゲス?」 今まで揺らいでいた風が突風になって吹き抜け、シェンフォニーと麗の間を通過した時に、シェンフォニーはニヤリとほくそ笑み口を開く。 「調べて見たんだけど、どうやら君達に武器を供給していたのも、その幹部らしくてね……なんで、そんなに武器を供給するんだろうなぁ」 一拍置いて、麗ら堂島山賊団はシェンフォニーの手駒になる事を選択する。 つまり、自分等は何らかの目論見で利用されて、そして滅ぼされたと言う事なのだから。 故に、彼女等は真実を知りに再び町に戻るのだった。 「あれ、ところでどうやってそんな情報を手に入れたんでゲス?」 「そりゃ、グーグル先生で」 「嘘つけぇ!てか、世界観無視すんなゲス!」 折れそうな老木の枝は未だ折れない。後から聞いた話では、独自の情報網と推理能力だそうな。 110: 名前:サスライ☆07/20(火) 22 46 17 チシャが宿屋でハンプティの寝相に悪戦苦闘している頃、麗は電光石火の勢いでシェンフォニーから与えられた仕事をこなす。 その仕事には手配中の商人を探し出し、彼女が持っている武器を知らせろともあった。 シェンフォニーが彼女が持っている拳銃が衝撃弾を吐き出すのを知っていたのはこの為でもある。 その様に他の団員が黒子となり動く中で、麗はジャヴァとの接触を謀っていた。 眼鏡をかけていて髪をオールバックに纏め上げ、更には見られていないのに正装をしていてとチンピラ集団上がりの自警団の頭とは思えない風貌の男である。 だからこそ、麗は侮らない。その格好は学の香りがする物で、学とはどうやら野生を抑える為の物と言う説がある。 寧ろ一番野生を持っている人物であると考えたからだ。 一見窓際で無用心に仕事をしている様に見える。しかし、恐らくガラスは強化ガラスだろう。 その証拠に狙撃が来た時に狙撃の角度等を図りつつも警報を鳴らす高精度な防犯装置が窓の裏に付いている。 もしも暗殺されそうな時に、普通のガラスと油断させて狙撃させておいて、逆に喰ってやろうと言う野生が表れている。 双眼鏡を覗いて麗は冷や汗を一筋垂らした。 111: 名前:サスライ☆07/21(水) 21 00 23 野性味が服を着た様な人物が考える事を麗は考えた。その試行錯誤の上で得た結論が『コレ』だ。 周りの団員の不安そうな目線を麗は怯まない。只、上の立場より心を込めてやれと告げるのみだ。 因みに、『コレ』=矢文 である。成る程、確かに不安がられるのも意味は無い。しかも御丁寧に矢の尖端は綿で包まれて、これではとても窓は貫けない。 手紙が結ばれた矢は団員の手を離れると、羽による回転運動より風を巻き込んで加速。全てを貫かんとする勢いでポコンと擬音を立ててガラスの縁に滑り落ちる。 ああ、もう駄目だぁお仕舞いだぁ。と、どこぞの野菜王子の雰囲気で頭を抱える狙撃手を尻目に麗は堂々とする。何故なら、警報装置は鳴らなかったから。 麗の目論見は正しかった。野性味があると言う事は警戒心が人一倍強い。特に、内部に対して。 自分が能々と仕事をこなしている間に、内部が腐り、歪んだ情報のみ耳に入る事だってあるのだ。 例えばライオンやオオカミの雄はリーダーは実力でコロコロ変わる。野生を忘れないジャヴァはそれを知っていた。 恐らく、窓を割らない限り警報装置は作動せず、しかし狙撃角度は計算される仕組みで麗達の居場所はジャヴァのみに上手く伝わった筈だ。ジャヴァも矢文を後で縁から回収するだろう。 何処から弓矢が出てきたか。気にしたらお仕舞いだ。 113: 名前:サスライ☆07/23(金) 15 39 03 † 拝啓ジャヴァ・ガンマ様。 今回は貴方の組織に気掛かりを発見しましたので手紙をこの様な形で送ることをお許し下さい。 つきましては、×××まで一人で来て頂けると有り難いのです。貴方の身は私の部下供がひっそりと警護しますので、ご安心下さい。 怪盗バグより † ジャヴァの仕事場の窓は、微弱電流が常に流れているフィルターを強化ガラスでサンドする形になっており、何かが触れると振動から演算機が角度を算出する仕組みになっている。 つまり神経の仕組みであり、何かしらの刺激にとても敏感だと言う事だ。今の手紙を破りそうなジャヴァの様に。 現在、ガンマ一家は戦争の平定による政府の町への介入と言う背景があり、壊滅の危機に追いやられている。町を守る役目を政府に取られていると言うのもあるが、それで部下がアタフタしているのが大きい。 そのストレスは自然の摂理だろうか上に行き、凄く苛立っていて、手紙を読んだ時にコメカミの血管が落雷からの大炎上しかねない勢いだ。 地方新聞が同封されていて、今日の物であるのが解る。見ればガンマ一家が馴染みの商人を武器横流しの罪で指名手配したとの事。 しかし、ジャヴァはこんな広告を出した覚えは無いし、今日の地方新聞は休みと下から聞いている。 しかし、新聞自体偽装とも取れる。 114: 名前:サスライ☆07/25(日) 17 24 49 『怪盗バグ』について、少し説明しよう。怪盗を一々付けるのも歯の隙間に何時までもスルメを入れた雰囲気なので、今後は『バグ』と呼ぶ事にする。 バグとは、ギョロ目のみが付いた白仮面を被っていて、シルクハットに黒マントと言った何ともモノクロな人物だ。 だからなのか、やる事もモノクロ映画の様なモノで、発生場所は神出鬼没。ステッキと軽業を武器にした怪盗との事。 そして何故かハンプティが行方を追っているらしい。序盤に商人に見せた手配書で見つかっていない最後の一人だ。 ジャヴァに送られた手紙はそんな人物の名前が書かれていて、彼の嗅覚は違和感を感じた。 バグとは本当に『怪盗』で、盗みはするが人を殺したりはしないと聞いている。 しかし文章には『私の部下供が警護』とある。 これはいざと言う時は自分を『ひっそりと』、つまり見えない所から暗殺出来ると言うアピールで、バグはワンマンだからと言う理由も重なりやはり妙だ。 つまり、このバグは偽物と言う事だが、ならば何故名乗ると感じる。それは、バグの立場が関係しているのではないか。 バグの立場は『ハンプティに追われる者』。最近でこれと似たのは堂島山賊団が有名だ、しかし堂島山賊団の残党が捕まったと言う報せは無い。 つまり、自分達は堂島山賊団の残党ですよと言いたい訳だ。相手は山賊、ここは行かないべきだろうか。 ジャヴァは尚考える。 115: 名前:サスライ☆07/25(日) 19 08 33 とある喫茶店で、男が頬を掻いてる。後にチシャの心臓部分にナイフを刺す暗殺者だ。 喫茶店の窓からは、ハンプティ達の泊まっている、特に言う特徴も無いのが寧ろ特徴な宿屋があった。 宿屋からチシャが出てくるのが見えた時に、彼は喫茶店の席を立つ。 それを見た団員は、シェンフォニーに信号で報告した。声では無くて信号なのは音で情報を漏らさない為だ。 † 信号を受け取ったシェンフォニーは、それでは暗殺者の後を追おうかと動こうとした時に別の信号が入る。 麗からの信号で、声で話したいから一旦離れてくれとの事。 人が通らない裏路地にて、聞けばジャヴァを呼び寄せる為に手紙を送ったらしい。成る程手紙の内容を知らせるには此方の方が手っ取り早い。 しかし通信はそれだけで終わらなかった。なんでもシェンフォニー本人に動いて欲しいと言う。 「ほう何でだい。戦力補充なら既に十分だろう」 「いや相手も情報源を見て納得したいと思うでゲス。そうでもしなきゃ、来たとしてもその後に彼は動かせない。 それに、別に尾行は貴方が必ずしもやらなきゃいけない訳では無いでゲス」 口の片端を吊り上げて苦笑いをするシェンフォニーに、また一声来た。磨かれて光を放つ金色の声だ。 「まあ、本音はアンタが上から目線だから顎で使ってやりたいからなんでゲス」 118: 名前:サスライ☆07/26(月) 20 21 46 ジャヴァは麗の指定に従う事にした。大量のピストルの弾をポケットに、人骨程度なら砕けそうな鉄の指輪を両手の全ての指に。 上に厚手の手袋をする事でそれは見えなくなった。 堂島山賊団ら山賊は、ジャヴァの部下で少し臭う奴と繋がっていたと噂で聞く。ならば、ジャヴァを呼び出してやる事は、暗殺。 勿論、噂を鵜呑みにする訳にはいかない。しかし火の無い所に煙は出ない。何よりも彼は自分の嗅覚を信じた、行き先に何か『ヤバい』存在が待ち受けていると。 だが、これが上手くいけば部下の怪しいのは一掃出来るし、ジャヴァを大きく見せる事で部下の不安も取り除ける。彼は自信を背負って歩いていた。 † 着けば人通りの少ない裏路地だ、やれパイプやら、やれドラム缶やらがエントロピーに従って散らばっている。居心地の良い空間では無いが、多人数相手なら有難い。 目の前に現れるのは軍服を羽織った女性。前髪を伸ばしすぎて顔が見えないが、美人の枠に入るのではと思う。 彼女は、想像を絶する語尾で言った。 「おはようございますでゲス、ジャヴァ・ガンマ様。堂島山賊団団長代理、麗でゲス。 苗字はゲスりません」 取り敢えず、ゲスりませんって何だろうと思った。 119: 名前:サスライ☆07/28(水) 17 35 19 麗は順を振り返る為に己の肘を人差し指でトントンと叩いて、腕を組む。 「いや、しかしソチラが来てくれて光栄でゲス。それで、少し向かって貰いたい場所があるのでゲスが……」 ジャヴァは、麗の折れた棒の様に精気の無い言葉を遮って、ザワザワとした雰囲気の声を出す。 「その事なんですが、聞きたい事があります。私共の組織の穴があると仰いましたが、その情報源が見えないのですよ」 ジャヴァの考えで、特定の場所に向かわせるのに、この様に中間するのは解答が出ていた。一端、『当事者』を見せておいて安心させる為だ。 しかし、向かった先に実はガンマ一家の臭い奴が待ち受けていましたと言ったパターンを予測した。 「と、言うよりも本筋が見えません。いえ、見えない様にしている。 だから言いましょう、貴女方はどの様な目的に向かっているので?」 麗も実は知らされていない。只、シェンフォニーに『決まった時間にジャヴァを指定する廃倉庫に連れてきてくれ』と、聞かされただけだ。それに、本当の事を言った所で信じるだろうか、いや、無い。 だから、こう答える。 「それに関しては私の口からは言える所に無いでゲス。ゲスから、こう言うのはどうでゲス?」 軍服の中からチョロリと腕を出して人差し指を立て、そして僅かに覗く目元でウインク一つ。 「強い方が、言う事を聞く。タイマンでゲス」 「……面白ぇじゃねえか」 ジャヴァは服の下の凶器の下の殺気を思う存分目から噴出して、静かな狂喜を浮かべた。 120: 名前:サスライ☆07/28(水) 21 58 14 ジャヴァは、グローブの下で拳を握り締めると拳が熱くなるのを感じた。 麗の方から代表として出て来たのは燕尾服で義足の男。マトモを気取っているが、絶対に隠せてない。 凶器を持っていない事のアピールなのか、余裕の表れなのか、目を瞑り肩の力を抜いて腕を広げた。 「やれやれ、俺も忙しいんだけどなぁ。あ、私はシェンフォニーと言います。ジャヴァ・ガンマさん、どうぞ宜し……」 挨拶代わりに一発拳を放つ。 目を瞑っていると言うのに、絶妙なタイミングで開いて広げた腕に付いた拳を固めて裏拳で手の甲を弾いて受け流す動き。 しかし、シェンフォニーに攻撃は当たった。受け流をした筈のシェンフォニーの手の甲には血がベットリと付いている。 「紙ヤスリか、俺も鈍ったもんだねぃ」 ジャヴァの嵌めている厚手の手袋は、実はヤスリの様に面が粗い。 だから受け流す事も出来ないし、受け止めると手袋の下の指輪に骨を砕かれる。 拳は当たらなかったから、シェンフォニーは致命傷を免れたが拳を弾く受け流しを何度も出来ないし、拳へ警戒が強まった。 その警戒の隙を突いて、ジャヴァはポケットに手を入れると大量の銃弾をシェンフォニーにぶつけて目潰しに使う。 視界が奪われたから、拳は避けられない。 銃弾の上から一撃を見舞わせば、潰れた銃弾とヤスリの様な手袋の火花が爆発を起こし、他の銃弾と連鎖反応を起こす。 しかし、特注の手袋は爆発を通さない。これが、ジャヴァの鉄板的な攻撃だ。 だから、拳を放った。 121: 名前:サスライ☆07/29(木) 14 56 34 シェンフォニーは拳を弾いた時、筋繊維を伝わる重さの違和感から察していた。ああ、コイツは手袋の下に重い物を付けているなと。 位置からしてメリケンサック辺りだろう、それと銃弾の目潰しと合わせて考えられるのは雷官の刺激による爆発の連鎖反応。 だから『シェンフォニーは』、拳を放った。ジャヴァの拳を完璧にかわして。 受け流しに使っていない方の拳が頬にめり込んで、ジャヴァは仰向けに倒れる。 口元の赤い血を拭いながら、青筋を浮かべなが立ち上がり、ドス黒い声を上げた。 「てめぇ、何で俺の拳の場所が解った。見えない筈だろうが!」 「モミクチャの状態で腕が片方怪我していたらもう片方を振り回そうするよね。 そのメリケンサックだか何だか知らないけど、それと撃ち合いになったら、間違いなくそっちが勝つ。 んで、オマケに銃弾の連鎖反応でこっちは大火傷だ。怪我してない腕をそこまで怪我させれば、心を砕く手段には十分だ。 だから、こっちの怪我している腕を狙わなかったんだろ?」 ヒラヒラと血が付いた腕を見せる。シェンフォニーは飛び散る血を見て、あ。と声を上げて包帯代わりにスカーフを巻き付けた。 ニヤリとジャヴァは一呼吸。肩の力を抜いてシェンフォニーを指差す。 「おいおい、勝ちに行くんだったら俺が顔面狙うのもあり得るだろうが」 「君は、元喧嘩屋だ。殺すんじゃ無くて、屈服させる戦法を取ると思ってね。 顔面が砕けたら殺してしまう。それじゃ自分が強い事を示せても示す相手が居ないじゃないか。 ……だから、つまらない小細工無しで、『コレ』で来い!」 シェンフォニーが握り締めた二つの拳。それは、ジャヴァに向けられて、何故か武装してる筈のジャヴァの腕が蟻の細腕に見える。 歯を見せて、笑い、ジャヴァは凶器を取り、その中の凶器を取り、そして凶器の入った上着を脱いで拳を構えた。 122: 名前:サスライ☆07/29(木) 18 39 52 【チシャちゃんの解説コーナー】 久し振りの解説コーナー。と、言うより出番すら久し振りな気がしマスよ、私ハ。 まあ、良いでショウ。今回の解説は、ジャヴァの銃弾について。 ジャヴァが拳を振ったのに、何故銃弾の誘爆が起きなかったかと言う後付けデスね。 銃弾を潰すには、拳と何か『壁』をサンドしてはじめて銃弾を潰せる訳デス。そして、飛び出した火薬と手袋の摩擦で起こす火花で爆発と言う事デスネ。 この場合、ジャヴァはシェンフォニーの腕を壁にして破裂させようとしたんデスね。 え?銃弾はそんな簡単に誘爆しない? ……申し訳ありマセン。勢いで作った戦法デシタので気付きマセンでしタ。 まあ、誘爆し易い様に改造された銃弾に似た何かだと……うわっ、コスト高っ! それでは、また。て、言うかシェンフォニーでしゃばり過ぎデスヨ、絶対! 123: 名前:サスライ☆07/30(金) 18 15 35 拳は様々な想いが乗っている程、重くなる。いや、駄洒落でなくて。 案外物事は気合で何とかなるものだ。才能だ何だ言っても結局は努力だし、やる気が無ければ行動もしない。やれないのでは無くて、やらない場合が多いのである。 嗚呼、全力で殴ったのはどれ位ぶりだろうとジャヴァは想うところがある。 初めは只、素手で喧嘩してた。だが、様々な負担が付き纏う内に負けられなくなり、何時の間にか武器に頼っていた。 そんな自分への悔しさも拳に乗せた想いの一つ。 他にも、情熱やプライド等様々な物が乗った拳だ。だから、とても重く、とても速い。 それは空間を突き破り次元の壁を超えるのかと言った勢いで、シェンフォニーの頬に確かにめり込んだ。 麗達全員を相手にしても、プロの殺し屋を相手にしてもかすり傷一つ負わせられなかった彼にコレは大きい。 「……痛い、なぁ」 シェンフォニーの呟きと同時にジャヴァは、白目を向いて膝から崩れ堕ちる。 シェンフォニーの拳は中段突きの型を取っており、つまり顔にめり込んだ直後に、腹に拳を放ったのだ。 「形意拳(拳法の一種)の崩拳だ。喧嘩に使う様な物じゃないのは解ってるんだけど…… 喧嘩じゃ、勝てない気がしてね。すまない、俺の敗けで良いよ」 腹に来たのか、ジャヴァは嘔吐物を服に引っ掻けていた、白目を向いて、つまり意識を失いながら。 それでも、膝で立っていて、彼は倒れる事を否定していた。 124: 名前:サスライ☆07/30(金) 20 25 57 政府の、とある課で、ある知らせが入る。 電話を受け取った管理職は『英雄』に憧れていた。現代兵器を無視して、暴れた『千鳥 笑』や国を導き羨望の眼差しの基に喪した『紅の英雄』の事だ。 そして管理職は、何時も彼等を後ろから追いかけて、しかし追い付けずに戦争が終わったが英雄を補佐した戦歴を讃えられ今の地位に居る。 知らせの内容は『×××の時間に、ジャヴァ・ガンマが廃倉庫に来るから一緒に叩こう』との事。 戦後の影響もあってか暴力団等の鎮圧を任された機関があり、今回の物語の舞台を管轄に任されているのが、その管理職だ。 つまり、彼はガンマ一家の敵と言う事になる。 コーヒーを一口啜った。実はポーカーフェイスを気取っているもの戸惑いを隠せない。 知らせが来たのは、ガンマ一家の幹部から。それは良い、元々裏で自分と繋がっていた人間だから。 しかし、指定の位置の廃倉庫と言うのが困る。その位置には情報部隊が知らせてくれた指名手配の商人が隠れている場所だから。 管理職は英雄に憧れていた。故に、超えたいとも思っていた。 現在、裏の情報網で英雄に最も近い男、ハンプティ・ダンプティ。それを自分の作った兵器で倒してみたいと前々から感じていたのだ。 これはある意味英雄であるロボット発明の天才に対する挑戦でもある。 その為に武器の横流しをガンマ一家を通して行いテストしたり、ハンプティが通るルートで現在指名手配の商人を襲うようにした。 堂島山賊団は前から消す様に上から言われていたし、その周囲の山賊とも、適当な武器を与える事を条件にすれば連携するだろう。 指名手配はこちらの指示だ、そうする事で商人は消去法でハンプティに助けを求める。そこで、『一騎討ち』をしたかった。 ハンプティを倒した後は、ガンマ一家はまな板の上の鯉になる。 再び、管理職……いや、【武器商人】はコーヒーを一口啜った。 旅人の詩 続き5
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おでんの人の山田無双四部作 山田を使った無双2関連、以下の動画を纏めてこう呼ぶ。 合肥新城包囲戦 虎牢関の戦い 貂蝉千里行 張遼、第五武器への旅 ⇒おでんの人の真・山田無双
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メイリンの手紙 114 :メイリンの手紙 [sage] :2005/12/22(木) 13 56 04 ID ??? Bさんへ この頃ボケの大増殖でツッコミの供給が間に合いません。 正直私一人じゃとても辛いです。 あの濃いキャラ達にツッコめるのはあなたしかいません。 暇な時でいいんで応援に来てください。 お願いします。 思いつきで書いた、今は反省している。 http //anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1134955306/114
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荒野、一人で1 荒野、一人で2 荒野、一人で3 荒野、一人で4
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猫の手(貸す程のもじゃないですが) 猫さんがどんな奴なのか知りたければこちらw ------->My Space エキスパート レベル 名前 職種 コメント ベテラン レベル 名前 職種 コメント Lv100 野良 スカウト まぁ、俺を信じてくれ cha_3_m.gif Lv100 迷い グレイス アレスモレンディー cha_6.gif Lv100 化け ウォーロック 準備は出来てます cha_5_f.gif Lv100 招き ファイター 私の出番だ cha_1_m.gif 育成中 レベル 名前 職種 コメント Lv95 牝♀ ソソ アチョー cha_54.gif Lv59 ドラ ホセ キャノン砲装填完了 cha_18.gif Lv55 子 ビキ ・・・ cha_47.gif 放置中 レベル 名前 職種 コメント Lv57 三毛 ラミロ マジ? cha_11.gif Lv57 海 アデリーナ(海賊型) 何かようかい? cha_39.gif Lv55 山 アデリーナ ふっふっふっふっふふ cha_19.gif Lv55 拾い ソホ cha_21.gif Lv44 捨て ウンボマ 置物化 cha_20.gif Lv40 雄♂ グラシエルロ 置物化 cha_30.gif 日々の出来事? 2007/12/13 来ちゃった!!トレジャーインパクト!!w 運営からの嫌がらせ?はたまたX`massプレゼントか!? - -
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01-165 :名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 15 04 54 ID VHv2gzJA 差し出されたその手には… 私だって、何も最初から捻くれていたワケじゃない。 小さい頃は疑う事を知らなかったし、誰にでも心から優しく出来ていた。 皆が幸せなら、それだけで良かったと思っていた。 だけど、私はもう今の私になってしまったのだから仕様が無い。 気が付いたらこうなってしまっていた、今の私。 でも、別に不満は無いから困っているワケでもない。 原因を何となく過去に察する事は可能なのだけれど、それに気付くのも、対処するのも既に手遅れなのだから今の私なんだろう。 ゴメンよ、昔の私。救ってあげられなくて…。 でも、今の私もそれなりに人生を楽しんでいるから許してくれるよね? 昔の私は良い子だったから。 01-166 :名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 15 08 33 ID VHv2gzJA 「あ…!!神楽さん、ちょっと良いかな?」 名前を呼ばれて振り返ると、そこには良く知るクラスメイトの女子が私を指差して立っていた。 ショートカットの良く似合う、快活な女の子。 「あら、何かしら?榊さん」 私の言葉に、榊さんが愛想を浮かべて揉み手をしながら擦り寄って来た。 「えっと~…。実は、来月の学園祭の事なんだけど~、実行委員が決まってないのウチだけなんだ~」 申し訳無さそうな表情を浮かべてはいるものの、その瞳には獲物を狙う鋭さが漂っている。 その言わんとする所に、私は内心で溜息を吐いた。 「つまり、私に実行委員になって欲しい、と言うワケですね?」 「ゴメンよ~。ウチのクラスってバイトしてる人がやたら多くってさ~、皆時間取れないって言うんだもん」 「お願いだよ~」と懇願してくる彼女を、私は疲れた目で見た。 確かに、私はアルバイトをしているワケじゃないけど、アルバイトをしている人たちは自分の時間をアルバイトに使っているのだ。 他の人は自分の時間を謳歌しているのに、何故私が他人の為に時間を割かねばならぬのか。 そもそも、私だって自分の時間はちゃんと予定で埋められている。 成績上位は一日にして成らず、なのだ。 先の榊さんの言葉通り、学園祭は一ヵ月後。 二週間前から午前中授業に切り替わり、クラスに拠るが二、三日前には担任が監督して泊り込んで準備すると言う徹底ぶり。 毎年、OBや周辺住民を巻き込んで三日は騒ぎ続ける一大イベントなのだ。 実は売り上げは結構な額になっていて、そこから学生の学費補助などに当てられているらしい。 お陰でこの学園は私立であるにも関わらず、公立とそう変わらない学費で通えると有名なのだ。 『学校法人私立榊学園』。 目の前の御仁は、当学園の理事長の孫娘である。 「そうですね~。他ならぬ榊さんの頼みですし…」 「面倒臭い」の言葉を飲み込んで、私は了承の言葉を吐き出した。 学園祭の委員ともなれば評定も良くなるだろうし、何より地元の名家でもある彼女の心象を良くしておいて損は無い。 決して大きな街では無いけれど、私の街で榊の息の掛かっていない地域は殆ど無い。 財界政界にもコネがある榊家は、その権力で古くから周辺地域を守り、そして統治してきたのだ。 只、最低二週間。もしかすれば、一ヶ月は放課後を丸々準備に費やさねばならない事が私にとては結構なストレスになるかもしれないが…。 「ホントッ!?やった~、これで三人揃ったよ~っ!!」 榊さんが、握り拳を両手に作ってそう叫んだ。 「え?三人ですか?」 私の言葉に、榊さんが首肯する。 「実行委員は各クラス三人だよ?」 そう言えばそうだった。 何せ、規模が大きい私たちの学園祭では兎に角人数が必要なのだ。 まぁ、人数が増えればその分個々の負担が減るので寧ろ歓迎するべき事には違い無かった。 「えぇっと、それでもう一人の実行委員は誰なのですか?」 「宮路君だよ?」 その名前に、「あぁ…」と私は納得した。 彼なら、委員と言わずに頼まれれば何だってしてしまうだろう。 と、言うか。彼が誰かの頼みを断っているのを見た事が無かった。 一家に一台。クラスに一人。 そんな単語が良く似合う、私のクラスのお助け人なのだ。 「ちょっと待っててね?」 そう言うと、榊さんは携帯電話を取り出して早速連絡を取り始めた。 聞こえてくる数度のコール音がして、程無くその相手の声が漏れてくる。 「え~っと、宮路君?三人目が揃ったから、今から教室に来てくれる?顔合わせしたいんだけど?え?誰かって?ふっふっふ~。それは来てからのお楽しみ」 何だろう。私は何かの楽しみにされるのだろうか。 悪戯っぽく笑いながら話をする榊さんを眺めて、私の中では早くも己の警鐘が鳴り始めていた。 01-167 :名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 15 13 56 ID VHv2gzJA 「へぇ…。三人目って神楽さんだったんだ。宜しくね」 案外近くに居たのか、宮路君は直ぐに現れた。 同じクラスのメンバーなのだけれど、こうやって改めて顔を合わせるのは初めてかもしれない。 年下の様な幼い顔立ちに加えて、無垢な表情が更に輪を掛けてそう見せていた。それに、男子にしては小柄で身長も私より少し高いくらいだろう。 相変わらずの、人畜無害な雰囲気が漂っている。 「クラスメイトに今更宜しくも無いけどね~。まっ、こう言うのは気持ちの問題だし。やっぱり宜しくは言っておこうか?宜しくっ」 「よ、宜しく…」 カラカラと笑う榊さんに倣い、私も挨拶を済ませた。 「それじゃ、早速本題に移ろうか?言っとくケド、ウチが一番遅れてるンだからそこンとこ宜しくね」 榊さんの机に椅子を寄せて、三人での会議が始まった。 二人とも有能で、滞り無く話が進む事は私にとって有り難い。 丸投げにしているクラスメイトたちは、無理な内容でなければ実行委員の決定に従うと事前のホームルームで捺印させられている。 よって、私たちの裁量でクラスの出し物は喫茶店となった。 メニューに始まり、食材の買出しや火の管理。内装や制服、予算の積み立てが次々と組み立てられていく。 「よ~っし、じゃあ後の細かい微調整は明日話し合おう。今日はここ迄で解散。二人とも、お疲れ様でした~」 一時間と経たない内に企画書の骨子が完成し、榊さんの満足そうな表情で今日の会議はお開きとなった。 「お疲れ様でした…」 私も別れの挨拶を済ませ、順調に進んだ仕事の充実感を味わいながら帰り支度を始めようとした時、ふと私の目の前に手が差し出された。 「はい、神楽さん。今日はご苦労様」 そう言って差し出された宮路君の手には、飴玉が一つコロンと載せられていた。 「頑張った神楽さんに、ご褒美」 「え?あ?有難う…」 おずおずと、私が飴玉を受け取ると、宮路君が満足そうに微笑んだ。 「おぅっと?宮路君?アタイには何も無ぇのかい?欲しいな~、私も飴玉欲しいな~」 人差し指を指に咥えてねだる榊さんに、苦笑した宮路君が別の飴玉を取り出した。 「はいはい、じゃ榊さんには懐かしの小児科の味を…」 「って、オレンジかい!?風邪薬や水薬の味付けを髣髴させる、なんて渋いチョイス…。まぁ、地域で味も違うンだけどね…」 ブツクサ呟く榊さんだが、貰った飴玉を口に放り込んでコロコロと転がし始めると、ほんわかと頬を緩ませた。 「うんうん、やっぱ労働に対価は必要だね~…。アタシャこのひと時の為に今日を働いてんだよ…」 その表情があまりにも幸せそうに見えたからか。 気が付くと、私も自然な動作で宮路君の飴玉を口に入れていた。 「あ、美味しい…」 柑橘系の甘酸っぱい味が、不思議な懐かしさと一緒に広がっていった。 味覚が感じるその甘さに、意外にも私が疲れていたのだと知らされる。 いや、これはきっと身体の疲れだけじゃないのかもしれない。 乾いた土に、水が染み込む様な。そんな気分にさせられる。 「じゃあ、僕はこれで失礼するね」 「あ…」 「有難う」と言う前に、宮路君は教室を出ていった。 コロコロ、コロコロ…。 いつか昔の子供の様に、私は久し振りに宮路君の飴玉を溶ける迄嘗めていた。 01-170 :差し出されたその手には…:2008/08/07(木) 22 16 47 ID VHv2gzJA 差し出されたその手には…(2) 優秀な二人のお陰もあってか、企画書の手直しはどんどん進み、週末に差し掛かる頃には何と私たちのクラスは既に学園祭の準備に取り掛かれる程になっていた。 そして、アルバイトで時間が取れない生徒が多い私たちのクラスでは、遅く迄学園に残らない代わりに来週から準備を始める事となった。 なのだけれど…。 「あ、そろそろ俺バイトだわ。悪い、今日はここで抜けるわ」 「私もバイト行くね~」 一人の生徒を皮切りに、ぞろぞろと芋蔓式に抜けていく生徒たち。 本当に、何で私たちのクラスにはこんなにアルバイトをしている生徒が多いのか。 この時期は学園祭があると解っているのだから、正直アルバイトを自粛して欲しい気がする。 そんな私の考えなどつゆ知らず、隣で企画書と作業進行をチェックしていた宮路君は去り行く彼らに律儀に別れの挨拶を掛けていた。 「お疲れ様~」 「あいよ~」 「まったね~」 そして時計の針が六時を回る頃には、教室には私たち実行委員の三人だけが残って作業を進めていると言う始末。 何だか、割に合わない気がしないでもない。 まぁ、評定やら何やらでその分は返ってくるのだと私は自分に言い聞かせた。 と、 「この儘いけば、喫茶店は充分間に合いそうだね~」 喫茶店の女子の制服をミシンでカタカタ縫いながら、榊さんが楽しそうに呟いた。 「結構皆もギリギリ迄残ってくれてるし、やっぱりクラスの出し物は皆で楽しみたいモンね~」 とは言っても、放課後一時間で殆どがアルバイトに行ってしまっているのだが…。 「よし、一丁上がりっ。次、いきましょうか~」と、内心でボヤく私の前で次々に制服を量産していく榊さん。 正直、この手際の良さは本職ではなかろうかと私は思う。 「こっちも一丁上がり」 と、気付けば宮路君も男子の制服をどんどん仕立て上げていた。 何だろう。この異常にスペックの高い二人は…。 一緒に仕事をする様になって気付いたのだけれど、この二人は一人で優に数人分の仕事を平然と熟していた。 正直、勉強しか取り柄の無い私が二人の作業についていけるワケがない。 更に付け加えるならば、二人とも学業成績は優秀で、辛うじて私が頭一つ勝っていると言うくらい。 まぁ、他人は他人。私は私。 二人の美点は認めるし、美点が無いからと言って私の欠点が増えるワケでもない。 無理して何か出来る様になっても、結局は何処かで綻びが出てきてしまうのだ。 無理はしない。それが私の主義なのだ。 「ん~…。今日はこれくらいにしとこうか?そろそろ八時回るし」 三人の仕事が一段落着いた所で、榊さんが今日の仕事の終了を宣言した。 「そうだね」 「お疲れ様…」 私の台詞に続いて、榊さんと宮路君が互いに労う言葉を述べ合った。 「と言うワケで。はい、二人とも」 と、宮路君が私たちに恒例となった飴玉を差し出した。 01-171 :差し出されたその手には…:2008/08/07(木) 22 18 41 ID VHv2gzJA 「ひゃっほい!!愛してるぜ、宮路~」 「あ、有難う…」 飴玉を受け取る私の隣で、何処と無く男前な台詞で飴玉を受け取る榊さん。 毎回思うのだけれど、榊さんって一応お嬢様の筈よね? 「って、またオレンジかいっ!?」 渋い表情でコロコロ飴玉を転がす榊さんに、名家のご令嬢など言う雰囲気は微塵も感じられない。 澄ましていれば間違い無く美人だと思うのに、今の目の前の榊さんは普通の女の子以外の何者でもなかった。 「ところでさ~、宮路君。何で飴チャンとか配ってるの?」 帰り支度をしながら、榊さんが宮路君に訊ねた。 「そうだね~。僕が飴持ってたからかな?まぁ、他のお菓子があったらそれあげちゃうかもね」 「いや、そうじゃなくて。お菓子を持っていたら、何で他の人にあげちゃうワケ?」 「う~ん…。多分、喜んで貰えるからかな?ホラ、お菓子貰ったら何となく嬉しい気持ちにならない?」 まぁ、悪い気分にはならないとは思うケド。知らない人からだと不信感バリバリな気がするのは私だけ? 「なるっ!!そして、ホイホイ付いて行っちゃうかも…!!」 アレ?お嬢様、何を仰られているのデスカ? 私の視線を感じ取ったのか、榊さんがこっちを向いて両手でガッツポーズをした。 「大丈夫、神楽さんの分も包んで貰うからね?」 大丈夫なのはそこじゃねぇです…。 息を巻いて目を輝かせる榊さんに、私は肩を落とした。 「じゃ、私はここで~っ!!」 「気を付けてね、榊さん」 「さようなら…」 元気良く手を振る榊さんと別れると、私と宮路君は途中まで一緒の通学路を歩き始めた。 コツコツと、二人の足音だけが月明かりの中で聞こえてくる。 「今日は、結構進んだね」 「えぇ、そうね…」 何処か弾んでいる宮路君の声に釣られて、私もつい嬉しそうに返した。 物臭な性分がある私だけれど、やると決めた事は必ずやるのが私の信条だ。 と、今日の充足感に浸っている私の隣で、宮路君が盛大な溜息を吐いた。 「実は、今日で飴玉のストックが切れたんだ。明日から何を持って行こう…」 「………」 そんな理由で、私の隣で陰鬱そうな溜息を吐かないで欲しい…。 「別に、又飴玉でも良いんじゃないかしら?」 「でも、同じのだと飽きられない?」 「まぁ、何だかんだで榊さんは気に入っているみたいだし、私は構わないと思うわ」 「そうかな?だと良いケド…」 何処かほっとした宮路君の言葉に、少し、胸に爪で擦ったような感覚が広がった。 多分、こんなどうでも良い事に悩んでいた宮路君に呆れてしまったのだろう。 きっとそうだと、私は思った。 続く? 01-173 :差し出されたその手には…:2008/08/09(土) 02 15 08 ID KY5Vor/B 差し出されたその手には…(3) 「今度の休みに、三人で買い物に行かない?喫茶店で使う道具とか材料とか調達したいものとか割とあるんだ~」 ここ一週間ですっかりお馴染みになってしまった三人だけの準備作業で、榊さんがそう切り出した。 「そうなんだ?」 「だけど、何を買いに行くの?制服は今ある生地で全員分仕立てられるし、紙食器も十分に用意してますし…」 私の言葉に、榊さんが「ふふふ~」と得意そうな笑みを浮かべる。 「実は、喫茶店で使う材料なんだけど。その材料の買い付けにね~」 「へぇ~。榊さん、そう言うのに詳しいんだ?」 素直に感心の声を上げる宮路君。 だけど、私は少し気になる事があった。 「そう言うのって、原価はどれくらいなんですか?あまり高価だと、予算が不足してしまう様な…」 「大丈夫、大丈夫~。そんなに高価なモンじゃないから。『値段の割に質が良い』くらいの買い物の予定なの」 そう言って、榊さんは改めて私たちに視線を送ってきた。 「まぁ、それなら…」 本当は貴重な休日は一人で過ごしたかったのだけれど、私は榊さんの買い物に付き合う事に決めた。 それに、最近は私も街に出ていなかったし、ついでに羽を伸ばしたかったのだ。 いくら順調な仕事とは言え、週五日の放課後をずっと準備作業に追われていたのだから気分転換の一つもしたくなってくると言うものだ。 「そうだね、荷物持ちとか男手も要るみたいだし」 この時点で既に荷物持ちの自覚ありとは、流石はお助け人の宮路君。 と言いますか、彼のこの出所不明の積極性は一体何なのだろう。 奉仕の心なんてずっと昔に擦り切れてしまった私には、ちょっと理解出来ない。 「よし。それじゃ、土曜の10時に平坂公園の噴水前で良いかな?」 「うん、良いよ」 「分かったわ…」 かくして、私たち三人での買い物が決まったのだった。 01-174 :差し出されたその手には…:2008/08/09(土) 02 20 32 ID KY5Vor/B 「あ、神楽さん」 集合時間の十五分前、指定された平坂公園の噴水前にはバスケットを提げた宮路君が立っていた。 「えっと、宮路君。今日は…」 挨拶をする私だが、如何せん彼の持つバスケットについ目が向けられてしまう。 そんな私の視線に気が付いた宮路君が、都合(ばつ)悪そうに頭を掻く。 「一応、皆のお弁当作ったんだけど…。張り切り過ぎかな?」 間違い無く、張り切り過ぎです。 そう思う一方で、私は男の子の、宮路君の作ったと言うお弁当が少し気になった。 昼食を摂りながら三人で話し合いをする事もあったけど、そう言えば宮路君はいつもお弁当だった気がする。 「宮路君が作ったの?」 「うん。朝ご飯作るついでにね…」 「あ、でも朝ご飯と同じご飯じゃないよ?」と付け加える宮路君だったが、それよりも私は休日の朝から自炊していた宮路君に少し感心してしまった。 一体、宮路君はいつ休んでいるのだろうか。 「お、皆早いね~」 と、そこに元気な声が響いた。 「あ、榊さん」 宮路君の視線を追うと、手をヒラヒラと振りながら歩いてくる榊さんがいた。 「ややっ!?宮路君、夢の詰まっていそうなその手のアイテムは一体何ぞや!?」 親指と人差し指で架空の眼鏡のフレームを揺らしながら、榊さんが目を輝かせた。 正直、少しウザい…。 「えっと、皆の分のお弁当を作ってきたんだ」 「うんうん。そんな気配りが出来る宮路君は、きっと良いお嫁さんになれるよ」 「ははははは…」 満足そうな表情を浮かべる榊さんに、流石の宮路君も乾いた笑いを漏らした。 「さぁ、やる気も出てきた事だし。早速買い付けに行こうじゃないか」 「うん、そうだね」 「え、えぇ…」 やたらとテンションの高い榊さんを先頭に、私たち三人の買出しが始まった。 01-179 :差し出されたその手には…:2008/08/10(日) 17 43 30 ID ikAAy9M8 差し出されたその手には…(4) 榊さんに連れられ、訪れたお店は直売所みたいな専門店。 国内国外を問わず、その豊富な品揃えに私たちは思わず呆気に取られてしまった。 値札を見れば驚く様な高価な商品もいっぱいで、味も知らない商品ばかりでどれを選べば良いのか見当も付かなかった。 だけど、榊さんは店の中を見渡すと喫茶店で使うメニューの材料と見比べながら手頃な値段の商品を次々と買い込んでいった。 こうして、一通りの材料を買い揃えた私たちは榊さんの主導の下、早々とその目的を終わらせてしまったのだった。 「さて、お昼も回ったし、そろそろお待ちかねのお弁当タイムと行こうじゃないかっ!!」 集合場所の平坂公園の原っぱで、そう口にするのはバスケットを手にする榊さん。 因みに宮路君はと言うと、両肘に茶葉そして胸には珈琲豆と、沢山の紙袋を抱えている状態。 まぁ、本人曰く「お茶っ葉は乾燥してるから全然重くないし、珈琲豆もそんなに大した事無いよ?」らしい。 それはさて置き、お腹が減ってきたのは私も同じなので昼食を摂りたいのは確かな事。 宮路君に目を遣ると、お腹が空いてしまった、と同意の表情。 満場一致で、私たちはお弁当を広げる適当な木陰を探し始めた。 「それじゃあ、宮路君のお弁当のお披露目をしよう」 と、草叢に腰を下ろす榊さん。 私もそれに続き、荷物を置いて宮路君も座った。 「おぉっ!?これはまた王道な…!!」 バスケットを開けて中を覗き見るや、榊さんが感嘆の吐息を漏らした。 興味をそそられてつい首を伸ばして確認すると、私も思わずその出来に驚いた。 「凄いですね…」 陳腐な言葉だが、それ以上の言葉は思い付かなかった。 サンドイッチや御握りとかは予想していたけど、唐揚げやサラダ、玉子焼きやフライものなんかの惣菜が結構揃えられていた。 「まぁ、ちょっと作り過ぎたかな?」 作り過ぎです。 でも、仕出し弁当なんかより手作り感が出ていて、これは確かに美味しそうだった。 バスケットから紙皿やお箸、お手拭を取り出して配り終えると、お弁当箱が広げられたシーツの上に乗せられた。 「アレ?紙コップはあるのに、飲み物が無いとはこれ如何に?」 「あぁ、こっちに入れておいたんだ」 と、宮路君が今まで持っていた買い物袋から魔法瓶の水筒を取り出した。 「結構、重いからね」 そう言うと、宮路君が私たちのコップにお茶を注いでいく。 「良し、ンじゃ、頂きま~すっ!!」 榊さんが高らかに宣言するのに合わせて、私たち三人は手を合わせた。 「頂きます」 「頂きます…」 取り敢えず、私は一番近かった惣菜の中から一口サイズのコロッケを選び、それを口の中へと運んだ。 「美味しいっ!!」 榊さんが声を上げた。 いや、確かに美味しいけどそこまで声を出さなくても良いんじゃないかしら。 「シェフを呼べ!!」 目の前に居ますから。 何でこんなに一挙一動が大きいのだろう。 少し恥ずかしい。 01-180 :差し出されたその手には…:2008/08/10(日) 17 44 44 ID ikAAy9M8 と、 「でも、今日は驚いたよ。榊さんがお嬢様って呼ばれてるんだもん」 宮路君が感心した表情で切り出した。 そう、今日の買い物で一番驚いたのは何よりもその事だろう。 『これは、悠輝お嬢様。ようこそいらっしゃいました』 専門店で、榊さんを見た店員が咄嗟にそう挨拶したのだ。 流石に私たちの前でそう呼ばれるのは抵抗があったのか、『あちゃ~』と榊さんは少し困った表情で笑っていた。 「あははは…。まぁ、何だ…。そう言う面も含めて私なんだってば…」 その時の事を思い出したのか、榊さんが頭を掻いた。 「だけど、やっぱり榊さんてお嬢様って思う時はあるよ?」 「へぇ?どんな?」 宮路君の言葉に、榊さんが興味を覚えたらしい。 尤も、私も宮路君の言う榊さんの『お嬢様』がかなり気になった。 「ホラ、お箸の持ち方とか食べ方とか凄く綺麗だし。街を歩く時も背筋が伸びてたしね。何て言うのかな?品、が漂っているのかな?」 「はっはっは~。それはもう昔っから躾けられてきたからね~。今更抜けないンだよ」 ケラケラと笑い、榊さんが別のおかずを口に運んだ。 確かに、よくよく見れば榊さんの仕草は洗練されたもので、見惚れてしまう程に様(さま)になっていた。 「およ?神楽さんも私のが気になる?」 「え、そ、その…」 榊さんの指摘に、私は言葉が吃った。 「そうだね~」 そんな私を見て何を思ったのか、「コホン」と榊さんが上品に咳払いをした。 「この様に振舞えば、神楽様も私(わたくし)が由緒ある榊の者として相応しいのでしょうか?」 「――っ!?」 そして、崩した脚を優雅に組み、銀の鈴の様な凛と響く声で榊さんが私に嫋やかに微笑んできた。 「そんな驚かれた表情をしないで下さいまし…。榊がこの平坂を代表する顔たれば、この様な振る舞いも必要となりましょう?」 しんなりと、白く細い首を傾げる榊さん。 肩に揺れる髪が、サラリと零れた。 「わぁ、本当にお嬢様みたいだ」 「って、本物だって言ってるでしょうがぁ!!」 凍りついていた私の目の前で、見事に榊さんの仮面を粉砕する宮路君。 同性の私でさえ思わずドキリとした榊さんの仕草は宮路君には全く効果は無いらしい。 「でも、口調が変わっただけだしね?」 「お?バレた?」 何ですと。 目を丸くした私を見て、榊さんが「へっへっへ~」と笑った。 「流石は宮路君。私が普段から結構気を使っているのに気が付いてたか…」 「気が付くも何も、最初からそんな感じじゃなかったっけ?」 当たり前の様に語る宮路君。 「うん、そうだね…」 榊さんも、何故か素直に頷いた。 「全然気が付きませんでした…」 いつも能天気そうな榊さんの言動ばかりに気を取られて、同じクラスになっても今まで全く気が付かなかった。 「結構他人を見てる宮路君のそう言う所、私は買ってるンだよね~」 榊さんがニヤニヤと見るからに邪悪そうな笑みを宮路君に向ける。 「まぁ、勝手に目に付くンだけどね…」 その視線から逃げる様に、目を背ける宮路君。 そして、宮路君のお弁当が無くなるまで私たちは他愛無い会話を続けたのだった。 続く?