約 1,838,652 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/125605.html
ゲオルクヴィルヘルムフォンハノーファー(ゲオルク・ヴィルヘルム・フォン・ハノーファー) ドイツのブラウンシュヴァイク公の系譜に登場する人物。 関連: エルンストアウグスト(6) (エルンスト・アウグスト、父) ヴィクトリアルイーゼフォンプロイセン (ヴィクトリア・ルイーゼ・フォン・プロイセン、母) ソフィアティスエラザスケザニアス (ソフィア・ティス・エラザス・ケ・ザニアス、妻) ヴェルフエルンストフォンハノーファー (ヴェルフ・エルンスト・フォン・ハノーファー、息子) ゲオルクフォンハノーファー (ゲオルク・フォン・ハノーファー、息子) フリーデリケフォンハノーファー (フリーデリケ・フォン・ハノーファー、娘) 別名: ゲオルクヴィルヘルムエルンストアウグストフリードリヒアクセル (ゲオルク・ヴィルヘルム・エルンスト・アウグスト・フリードリヒ・アクセル) ジョージウィリアムアーネストオーガスタスフレデリックアクセル (ジョージ・ウィリアム・アーネスト・オーガスタス・フレデリック・アクセル)
https://w.atwiki.jp/gods/pages/99087.html
ヴィクトルアメデイッセイドサヴォワ(ヴィクトル・アメデ1世・ド・サヴォワ) ヴィットーリオアメデーオイッセイディサヴォイアの別名。
https://w.atwiki.jp/loli-syota-rowa/pages/341.html
君と共に弾幕を(後編)◆3k3x1UI5IA 初弾は、直進する4つの光球だった。 フランドールも使った、基本的な攻撃魔法『ディバイン・シューター』。フランドールの時より、数が少ない。 空中に跳んで避けながら、フランドールはイアホンを耳に差す。 ランダム選曲設定されていたi-Podから、どこか身体に馴染む曲が流れだす。 表示された曲名は、『U.N.オーウェンは彼女なのか?』。 テンションが上がる。自信が漲る。フランドールの顔に、笑みが浮かぶ。 大きく弧を描いて戻ってきた弾丸を楽々と避けながら、楽しそうに笑う。 「この程度? これじゃ物足りないわ♪」 「……反応が遅い。次、『ディバイン・バスター』、早くして」 『発動の遅延は貴女の側の適性不足に由来するものと思われます。私に責任を求めるのは筋違いです』 険悪な会話を交わしつつ、それでも仮面の怪人の手にした杖から、太めのビームが放たれる。 しかし「溜め」に時間が掛かり過ぎていて、その攻撃も見え見えで。これも余裕を持って回避する。 そのビームも、以前フランドールが同じ技を放った時と比べると2回りほども細い。まるで弱々しい。 攻撃力、射程、弾速、速射能力、連射能力、同時制御可能弾数―― その全ての性能が、フランドールより明らかに劣っていた。一見しただけで劣っていると分かってしまった。 ミッドチルダ式の魔法は、同じ魔法でも使い手の特性や能力に応じて大きく変化してしまうものだ。 フランドールは小さく嘆息する。こんなにショボいとは思わなかったのに。 強引にでも取り戻して攻守交替しないと、退屈で退屈で死んでしまうんじゃないだろうか? ――だが、次の瞬間、彼女はその読みが甘すぎたことを知る。 「なるほど、なるほど。だいぶコツが分かってきたわ。となると――こうして、こうかな」 空中に散ったディバイン・バスターの残滓が消えると同時に、新たな光弾が放たれる。 レーザーのように弾道が残像を残すそれは、『ディバインシューター』の上級技、『アクセルシューター』。 今度は6発。前の4発より数は多いが、しかし本来は12の弾丸を操る技だ。やっぱり数が少ない。 フランドールはギリギリまで引きつけ、弾と弾の間をすり抜けようとして―― 「――痛ッ!!」 肌を焼かれる痛みに、悲鳴を上げた。 けれどどうして!? 確かに弾道は見切ったはずなのだ。弾に当たるはずもないのだ。 事態の理解できないフランドールは、改めて周囲を見回し、ようやく気づく。 弾が通り過ぎて何秒も経つというのに、未だ空中に『弾道』の『残像』が残っていた。 否、それは網膜に焼きついた『残像』ではない。弾が通った跡に残された、破壊エネルギーの光。 メインの弾頭が通り過ぎてなお、その場に残り続ける『当たり判定』。 「これって……!」 『し、新魔法の構築!? たったこれだけの時間で――!』 「ゼロから作ったわけじゃない、私のオリジナル・アレンジよ。 命名するなら――『アクセルシューター・シャイニングケージシフト』」 * * * 元の世界でヴィクトリアが持っていた技は、避難壕(シェルター)の武装錬金。 それは『アンダーグラウンド・サーチライト』。 ニュートンアップル女学院の地下に百年近くに渡り展開されていた、複雑怪奇な秘密基地。 ホムンクルスの身体を持っていたことを差し引いても、常識を超える長時間の展開。 そして、亜空間形成系の中でも特別に広く入り組んだ空間の形成。 武装練金もまた、本来は使い手の特性に合わせて各人ごとに構成される「武器」である。 フランドールの特性が『純粋な破壊』であるように、ヴィクトリアの特性を端的に表現するなら―― 『超長時間持続』。及び、『空間構築』。 並みの使い手を遥かに超える持続力。それに加えて、「自分のフィールド」を作り出す空間センス。 直接的な攻撃力にはかなり劣るが、この2つについては彼女の能力は突出していて――だから。 「ちょこまか逃げようというのなら――まずは、その逃げる余地を奪うのが私のやりかた、よ」 ――それはまさに、「輝ける檻」だった。 光弾が通った弾道にうっすらと尾を引く光の筋が、なおも破壊の力を残したまま空中に留まって。 空中に、光の檻を織り上げる。フランドールの進路を遮り、逃げる余地を奪う。 誘導攻撃魔法にケージ系拘束魔法のエッセンスを付加した、ヴィクトリアオリジナルの魔法 本来一瞬で消えるはずの『破壊エネルギー』の持続時間を、格段に引き延ばしたもの。 通った跡に残された光の線は弾本体よりずっと弱く、触れても僅かに肌を焼かれる程度だったが…… 「あうッ!?」 その痛みでコンマ数秒でも動きが止まれば、誘導弾の格好の餌食。 大きくUターンしてきた「光の筋の先端」、光の尾を引くスフィアが、フランドールの身体に襲い掛かる。 直撃。フランドールの腹部を、1発のスフィアが貫通する。空中で、フランドールの身体が大きく傾ぐ。 「『ライン』の持続時間は、数秒というところか……もう少し延ばせそうだけど、消耗も増えそうね」 ヴィクトリアは仮面の下で呟く。 そういうことが「できる」という直感は、レイジングハートを手にした瞬間に「分かった」が…… 具体的な効力や性能は、実際に使ってみなければ分からない。 なんとも不便な『魔法』だ、と思いつつ、しかし核鉄だって同じようなものか、と考え直す。 それより、気になったのは。 「それにしても……直撃しても怪我が無いのは、どういうこと? 何か妙なことしてないでしょうね?」 * * * ――理論でなく感覚で魔法を組む子は恐ろしい、と評したのは、クロノ・ハラオウンだったか。 高町なのは、フランドールと感覚優先のマスターに仕えてきた『彼女』には、その実感があまりなかったが。 こうして感覚任せに新魔法を組み上げたヴィクトリアを間近で見てしまえば、その意見に同意するしかない。 「それにしても……直撃しても怪我が無いのは、どういうこと? 何か妙なことしてないでしょうね?」 『……以前の仮マスター・フランによって、『非殺傷設定』が掛けられたままの状態になっています』 「何よ、それ?」 『物理的損害を回避し、対象の魔力のみにダメージを与える属性です』 ヴィクトリアに問われ、レイジングハート・エクセリオンは、嫌々ながらも白状する。 『彼女』はデバイスだ。明確に下された命令には逆らうことができない。 魔法についての質問を受ければ、しらばっくれることはできない。虚偽の報告もできない。 『時空管理局などの現場では、むしろ通常設定よりも使われる機会の多い魔法です。 この設定を掛けることで街並みなどに損害を与えず、対象を気絶させて捕獲することも可能になり……』 「解除。この街を穴だらけにした時と同じ設定に。OK?」 『…… Yes, my illegal master. 』 命令のままに、設定を変更する。念ぜられるままに、光の尾を引く光弾を射出する。 抵抗など、できるはずがない。相手を『不正な処理により主人となった者』と命名するくらいが関の山だ。 これが、ほんの数時間前に出会っていたなら、レイジングハートは喜んでヴィクトリアに協力していただろう。 好戦的で殺人狂な、問答無用な危険人物。それがフランドールの第一印象。 なんとかして止めなければ、と思っていた。もっと話の通じる相手の手に渡りたい、とも思っていた。 ヴィクトリアの言葉の端々には主催者ジェダへの敵対心も窺える。 恐らくはこの殺し合いのゲームを否定すべく動くであろう主・高町なのはと、同じ方向を向いた者。 そこに協力する理由こそあれ、否定する論理的根拠など何一つない……はずだった。 けれど、何故だろう――今は、このヴィクトリアという少女に握られても、全然嬉しくはない。 何故だか、フランドールの側に居たい。あの美しい弾幕を、もう一度共に描きたい。 フランドールを、殺したくない。 「――あうッ!」 再び空中に描かれた『輝く檻』が、フランドールを捉える。フランドールの右脛が、大きく抉られる。 左肩は砕かれ、右手には日傘。空気抵抗は受けるし、バランスも取れない。 こんなコンディションで、回避し続けることなど出来はしない。 レイジングハートは、叫ぶ。唯一『彼女』に自由が許された「言葉」で、フランドールに呼びかける。 『フラン! 『魔法』を使って下さい!』 短い付き合いだが、しかし『彼女』は見抜いていた。 フランドールの言う「弾幕ごっこ」は、決して強者が弱者を一方的に嬲るものではない。 仕掛けられた側からの反撃も、許されている。ゴンの鉄拳のような攻撃も、許されている。 そして今、フランドールが自分のことを「弾幕ごっこを受ける立場」だと認識しているなら。 『貴女自身の『魔法』を! あの弾幕や、『スペルカード』とやらを使って下さい! そうすれば……!』 そうすれば――レイジングハートが、それを全て「受け止める」。 デバイス側の任意で発動可能な「防御魔法」で、全て「受け止める」。 どんな強力な『魔法』を使おうとも、フランドールに人殺しはさせない。人を壊させはしない。 ヴィクトリアもフランドールも、どちらも「救って」みせるから。だから――! * * * 『あの弾幕や、『スペルカード』とやらを使って下さい! そうすれば……!』 「嫌よ、レイジングハート! せっかく『面白く』なってきたってのに!」 仮面の怪人の手にある『トモダチ』の悲鳴に、しかしフランドールは笑って答える。 フランドールの身体のあちこちには、痛々しい火傷の跡。 仮面の少女が展開した『光の檻』は、なかなか厄介な相手だった。その全てを綺麗に避けきるのは難しい。 肌を焼き、右脛を削り、前髪を掠め……。 さらに、回避動作の際、風に煽られた日傘が揺れて、直射日光がフランドールの肌を焼く。 即死するほどヤワではないが、無視できるほど軽いダメージではない。 文字通りの、満身創痍。 吸血鬼の身体でも耐え難いはずの苦痛の中にあって、それでもフランドールは笑っていた。 楽しそうに、笑っていた。 「もっと、もっとよ! もっとあなたの『弾幕』を見せて!」 一切の反撃を行わず、回避のみに徹しながら、フランドールは叫ぶ。 実のところこの状態、フランドールがその本来の力を使えば、打開できる見込みもある。 各種の通常弾幕で牽制しても良し、攻撃系の『スペルカード』で向こうの弾を薙ぎ払っても良し。 『フォーオブアカインド』で分身したり、『そして誰も居なくなるか?』で姿を消せば、回避だって楽だったはず。 けれど。 『約束』、してしまったから。 『トモダチ』と、約束したから。 通常弾幕も『スペルカード』も封印して、レイジングハートの魔法「のみ」を使うと、約束してしまったから。 いくらレイジングハート自身が反撃を望んでも、その『約束』を破るのは、彼女の中の「何か」が許さない。 レイジングハートを奪われた今、反撃の手段は何も無い。 フランドールに格闘戦の心得は無いし、ゴンのように接近戦に活路を見出すこともできない。 それでも、フランドールは諦めていなかった。この『弾幕ごっこ』に勝つつもりだった。 唯一残された勝利条件、『放たれる全ての弾幕を避けきる』。ただそれだけを目指して。 それに……。 「綺麗……。とっても、綺麗」 仮面の怪人の杖から放たれ織り上げられる、『輝く光の檻』。 それは、美しかった。自らの立場を忘れるほど、美しかった。 フランドールの描く弾幕とは、また異質な美。 六角形を基調とした幾何学模様。確実に標的を誘導し、退路を断ち、追い詰める、効率的な空中回廊。 追い詰められる側にありながら、フランドールはその美しさに酔いしれる。 たった数分の戦いは、しかし百の言葉にも勝る。 出会ったばかりの仮面の少女の性格が、その美しい弾道から深く理解できてしまう。 真面目で、確実性を重視し、安全第一。それでいて、隠し切れずに滲み出してしまう破滅願望。 そして、避ける仕草から、フランドールの方の性格もまた、仮面の少女に伝わっているはずで―― ああ、なんて楽しいんだろう! きっと2人は、『トモダチ』になれる。だって、こんなにも互いのことを理解できるんだから。 「――なまえを、教えて! 私はフランドール。フランドール・スカーレット」 「……ヴィクトリア。ヴィクトリア・パワード」 『アクセルシューター』の連射が途絶えた所で、フランドールは呼びかけて。 表情をミラーシールドに隠す怪人も、しっかりと名乗り返す。 互いに決め手のないまま攻防を続けて、そろそろ互いの疲労も限界が近い。 きっと次の連撃が、双方にとって最後の勝負。 「そろそろ、決着としましょう――レイジングハートは、返してもらうわよ!」 「いいわ、これで終わりにしましょう――『アクセルシューター・シャイニングケージシフト』!」 馬鹿の一つ覚えの、『光の檻』。 しかし毎回異なるその軌道は、決して甘く見れるものではない。『光の壁』が空中に織り上げられる。 弾と弾の隙間に身を滑り込ませるようにして避けたフランドールは、そして顔を強張らせる。 ――レイジングハートが、変形していた。カートリッジシステムから煙を吹き、取った姿は砲撃用形態。 「レイジングハート、バスターモード……『ディバイン・バスター』!」 『光の壁』に緩やかに覆われて、回避の余地のないフランドールに、極太のビームが襲い掛かる。 使い手の適性不足は、デバイス側を「そのための形態」に変形させることでフォロー。 正真正銘、勝負を賭けたヴィクトリアの大技に、フランドールは…… 「こっちにも……手札はあるんだから!」 迫り来るビームに恐れることなく、フランドールはあえて『光の壁』にその身を「掠らせる」。 光のラインに焼かれたランドセルが、弾け飛ぶ。 空中に舞い散る持ち物の中、彼女は素早く手を伸ばし―― 極太の光の柱が、空中で弾けた。 * * * 『――フラン!』 「……まさか、そんな手を使うとはね」 レイジングハートが、彼女の名を叫ぶ。ヴィクトリアが、呆れたような声を上げる。 そして、フランドールは……。 「あ、あはは☆ こ、この勝負、あ、あたしの勝ちってことでいいわね?」 フランドールは、そこにいた。 枯れ枝のような翼の片方を吹き飛ばされ、浮力を失い地面に叩きつけられても、なお、笑っていた。 マントを片腕に引っ掛け、あちこち破けた日傘を片手に、笑っていた。 弾幕回避の高等技術、「あえて掠らせる間合い」を取って。 自らランドセルを破壊し、他のどんな方法よりも素早く取り出したのは、ゴンの遺品・『ひらりマント』。 刹那の間に広げた『それ』で、回避不能な『ディバイン・バスター』を防御。 完全に防いだとは到底言えない状態ではあったが、それでもなんとか、凌ぎきったのだ。 これで、この『弾幕ごっこ』はフランドールの勝ち。最後のコンボも凌がれてしまったヴィクトリアの負け。 フランドールは、覚束ない足取りで、仮面の少女に歩み寄る。嬉しそうに微笑みながら、歩み寄る。 もう、手を伸ばせば届く距離だ。 「えへへ……ヴィクトリアって、面白いわ」 「…………」 「あなたも、私の『トモダチ』になってくれる? 私、あなたのこと、もっと知りた――」 ドスッ。 フランドールの言葉が、重たい衝撃に遮られる。 何が起こったか分からず、彼女はゆっくりと自分の胸を見る。 フランドールの薄い胸に大穴が開き、長い、見覚えのある棒が、突き立っていた。 それはレイジングハート・エクセリオンの柄。 彼女の身体を貫いたのは、双刃の槍のように尖ったバスターモードの先端。 ホムンクルスの怪力で放たれた、知恵ある杖に自己分解する間も許さぬ神速の突き。 それは、真っ当な槍術からは程遠い力任せの代物でしかなかったが、しかしこの場ではそれで十分だった。 「――私は、貴女になんか興味は無いの。 ましてやあなたみたいな奴と『トモダチ』だなんて、真っ平御免だわ」 『ふ……フランドール!』 「あ……? え……?」 フランドールは、理解できない、といった風に目を丸くする。 いや、実際、彼女には理解できなかったのだ。 生まれてから495年、屋敷の地下に閉じ込められていた彼女。人命の意味すら良く分かってない彼女。 吸血鬼として人の血を糧にしながら、人間そのものを見たことすら無かった彼女。 だから、彼女には分からない。 自分の身に負った怪我の意味が、分からない。 自分が、もうどうしようもない致命傷を負ってしまったということが、理解できない。 『弾幕ごっこ』の中、被弾し激痛を感じながらも笑っていたのも、要は、「分かってなかった」だけなのだ。 だが、非情な現実は当人の理解を待ってはくれない。 突き立てられた時と同じように、無造作に乱暴に凶器が引き抜かれる。 凶器として使われた『トモダチ』が、彼女の身体から引き離される。 フランドールの手にしていたマントが、風に煽られ飛んで行く。日傘がポロリと、手から零れ落ちる。 心の臓に杭を打ち込み、その身を日光に晒す―― 伝統的な吸血鬼退治の手法も、この姉妹を相手に効果があるのかどうか、本来なら怪しいものだったが。 しかし、ここはジェダが支配する殺し合いの島。これだけの損傷を受け、生き延びることは許されない。 身体が崩れる。避けられない破滅が、ゆっくりと歩み寄る。 「い……嫌! わ、私、もっとレイジングハートと、遊びた……!」 最期に一滴の涙と首輪、そして小さく音楽を奏で続けるi-Podだけを残し。 さんさんと降り注ぐ太陽の下、最初っから壊れていた吸血鬼フランドール・スカーレットは、灰の山へと還った。 * * * 『ヴィクトリア・パワード……貴女は、酷いヒトです』 「生憎、私も100年以上も昔に『人間』をやめているの。その批難は見当はずれもいいとこね。 それに悪いのは、戦いの本質を見誤っていたあの子の方よ。 あんな様子じゃ長生きできやしないって、レイジングハートも分かっていたはずでしょう?」 『だとしても……私は、貴女を許しません』 「ふうん。で、許さないのなら、どうする気?」 『…………』 「何も出来ないのに、偉そうな口を利くものじゃないわ。もっと自分の分を弁えなさい」 怒りに声を震わせるレイジングハートを、ヴィクトリアは鼻で笑う。 この程度のことで殺られるなら、それはハメられた奴が悪いのだ。 そこには正義も大義も、関係ない。 むしろ、好んで「正義」や「大義」を口にする連中ほど、平気でエグい手を使ってくるものだ。 それはそう、ヴィクトリアを人外の世界に追いやった、練金の戦士たちのように。 「さて、かなり疲れたけど、もう一働きしてもらうわよ」 『…………』 「エリア・サーチ。あの、頭の中にお花畑でも広がっていそうな肉達磨を探すわよ」 ヴィクトリアは灰の山から首輪とi-Podを拾い上げると、杖を片手に立ち上がる。 まだ肝心の品物を手に入れていない。まだ遠くに行ってないはずの彼から、取り戻せていない。 是非とも取り戻したい、『詳細名簿』。どういう執着なのか、あの少年忍者が未だに持ったままの紙の束。 しかし、素手では捕獲が困難なあの野生動物も、レイジングハートがあれば捕捉できるはず……! * * * ――数分後。 「モッチョレ~~ッ!」 身体のあちこちに『輝く檻』による傷を負いながら、少年忍者が逃げる。 その手には、既に紙の束はない。四つん這いになって獣のように必死で逃げていく。 しかし、首尾よく目標のアイテムを手に入れたヴィクトリアは、未だ浮かない顔。 何故なら、拾い上げた『詳細名簿』は……。 「なるほど――『私のことを許さない』って、こう来るか」 『私に原因を求めるのは筋違いです。『不正なるマスター』の側の判断ミスだと思われます』 「なんで『非殺傷設定』とやらを掛けなかったわけ? あれ使えば、こんなことにはならなかったじゃない」 『命じられませんでしたから。そもそも、『非殺傷設定』の解除を命じたのは貴女です』 「……小学生並みの屁理屈ね、それ」 ヴィクトリアは仮面の下で溜息をつく。 ようやく取り返した『詳細名簿』、しかしその縁の一部は、抉れるように削り取られている。 少年忍者を捕まえるべく放たれた『アクセルシューター・シャイニングケージシフト』が、名簿を掠めたのだ。 残された紙をパラパラと捲ってみるが、欠損と焼け焦げで、必要な情報がかなり失われてしまっている。 ヴィクトリアの意図も目的も、レイジングハートはちゃんと分かっていただろうに…… なるほど、インテリジェントデバイスが主人に非協力的だと、こういう仕打ちを受けるわけか。 なかなか高い授業料になってしまったわね、と彼女は心の中でぼやく。 「予想してた以上に消耗しちゃったし、フランとやらは『食べる』前に灰になっちゃったし……。 やっぱり、慣れないことはするもんじゃないわね」 ヴィクトリアは考える。まずは、この消耗からの回復が先決だ。 どこかで『食料』を確保するまでは、また隠れ潜んで行くしかないだろうか? それとも……! 「……トッピロキ~~ッ!」 視界の隅、街の南に広がる平原で、ヒラヒラと宙を舞う赤いマントを追いかける肉達磨の姿が映る。 その姿、「どう見ても信頼できず有能でもない」人間の姿は、彼女に1つの誘惑を囁きかけていた―― 【G-1/路上/1日目/真昼】 【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】 [状態]:慣れない魔法の連発により、精神的に相当の消耗。かなり限界に近い状態。 [服装]:バリアジャケット展開中。外見は『ルリヲヘッド』の装着時そのまま。 [装備]:レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数5発) [道具]:アイテムリスト、天空の剣@ドラゴンクエストⅤ、基本支給品×2(食料のみは1人分)、 首輪×2、i-Pod@現実?、詳細名簿(ただし損傷して情報が一部欠損) [思考]:この杖、あんまり私の邪魔をするようなら海にでも投げ捨ててやろうかしら? 非協力的なレイジングハートに対し強い警戒。警戒しつつも、まだ使うつもりではある。 第一行動方針:ひとまず、消耗からの回復を図りたい。 第ニ行動方針:最初から目障りだった肉達磨(しんべヱ)を殺して食べて栄養補給することも検討? 第三行動方針:首輪を外す。主催者の目的について考える。 第四行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。 ホムンクルスのイリヤに興味。 基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す 参戦時期:母を看取った後 [備考]:能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。 いわゆる「ジョーカー」の存在を疑っています。 詳細名簿が損傷する前に、『01 明石薫~46 ニケ』の顔写真とプロフィールにざっと目を通しました。 ヴィクトリアは、レイジングハートから使い方の解説をまともに教えて貰えていません。 [備考]: レイジングハートは、ヴィクトリアに非協力的です。ヴィクトリアのことを憎んですらいます。 デバイスの性質上、下された命令には逆らえませんが、その命令の範疇で可能な限りの抵抗を試みます。 レイジングハートは、ヴィクトリアの持ち物や情報をほとんど把握していません。 (特に、アイテムリストの存在を知らないため、自分をどうやって使ったのかが大きな謎になっています) [備考]: 支給品の1つ、「詳細名簿」の縁を魔法の弾が掠め、大きく削られるように損傷しました。 そのため、残された情報は一部欠けたモノになっています。 具体的に誰のどんな情報が失われ、どんな情報が残っているかは、後の書き手さんに委ねます。 【G-2/穴の北側の平原/1日目/真昼】 【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】 [状態]:凶暴化。体のあちこちに軽い傷。 [装備]:なし [道具]:なし [思考]:ウニョラー [備考]: 凶暴化は数時間経つか、呪いを解く効果のある魔法や道具で治ります。 ただし一旦治った後、何かのきっかけでフラッシュバックのように再発した例も報告されています。 [備考]: 現在、風に乗って宙を舞うひらりマント@ドラえもん と、飽きることなく戯れ続けています。 【フランドール・スカーレット@東方Project 死亡】 [備考]: G-1の路地に、フランドールの死体(灰の山)が残されています。 フランドールの支給品の1つ、『レミリアの日傘@東方Project』は、灰の山の傍に落ちていま また、辺りにフランドールの共通支給品が散らばっています(ランドセルは破損)。 【アクセルシューター・シャイニングケージシフト】 ヴィクトリアの構築した新魔法。 闇の書の意志にコピーされた『スターライトブレイカー』がほとんど別物の魔法と化したように、 この魔法もヴィクトリアが使ったことで新特性が付加された『アクセルシューター』である。 一見すると「弾数の少ないアクセルシューター」だが、レーザーのような弾道が数秒ほど空中に留まる。 そしてその空中に留まる光の筋にも、破壊エネルギーが消えずに宿っている。 光の筋の持つ破壊力は弾本体より遥かに弱く、多少のダメージを覚悟すれば突破することも可能。 弾頭は自由に誘導できるので、空中に文字通りの『光の檻』を織り上げることもできる。 ただ、純粋な破壊力、弾速、弾数は減少しており、人によっては逆に対処しやすい技かもしれない。 ≪105 救いの棟は紅く染まりて 時系列順に読む 114 はやてのごとく!~at the doll s theater~(前編)≫ ≪112 でにをは、そして正しすぎる拳(前編) 投下順に読む 114 はやてのごとく!~at the doll s theater~(前編)≫ ≪093 隠密少女 ヴィクトリアの登場SSを読む 135 隠密少女Ⅱ≫ 福富しんべヱの登場SSを読む ≪092 君のために、僕のために フランドールの登場SSを読む GAME OVER
https://w.atwiki.jp/mahorobakai/pages/96.html
出馬表 結果 名前 コメント すべてのコメントを見る 3連複で11と18を軸に各20万。 相手は7、15、3、6、16。 -- (みそかつ) 2010-05-16 14 59 25 馬単 11-4 20万 11-12 50万 3連単 11-17-4 10万 11-17-12 20万 -- (SBJ) 2010-05-16 14 16 01 ブエナビスタ複勝100万 -- (かんりにん) 2010-05-16 12 49 49 馬単で 11-17 50万 17-11 50万 -- (Bangkok王者) 2010-05-16 12 14 04 ブエナビスタがいて、昨年2着馬のいる6枠から枠連 1-6 20万 2-6 30万 4-6 5万 5-6 20万 6-7 15万 6-8 10万 〆 -- (北のイサオヒート) 2010-05-16 10 08 16
https://w.atwiki.jp/gods/pages/112944.html
アリスモードメアリー(アリス・モード・メアリー) イギリス国王の系譜に登場する人物。 関連: アルバートオブサクスコバーグゴータ (アルバート・オブ・サクス=コバーグ=ゴータ、父) ヴィクトリア(4) (母) ルートヴィヒヨンセイ(3) (ルートヴィヒ4世、夫) ヴィクトリアマウントバッテン (ヴィクトリア・マウントバッテン、娘) エリザヴェータフョードロヴナ (エリザヴェータ・フョードロヴナ、娘) イレーネフォンヘッセンダルムシュタット (イレーネ・フォン・ヘッセン=ダルムシュタット、娘) エルンストルートヴィヒカールアルブレヒトヴィルヘルム (エルンスト・ルートヴィヒ・カール・アルブレヒト・ヴィルヘルム、息子) フリードリヒフォンヘッセンダルムシュタット(3) (フリードリヒ・フォン・ヘッセン=ダルムシュタット、息子) アレクサンドラフョードロヴナ (アレクサンドラ・フョードロヴナ、娘) [マリーフォンヘッセンダルムシュタット(2)]] (マリー・フォン・ヘッセン=ダルムシュタット、娘) 別名: アリーツェフォングロスブリタンニエンウントイルラント (アリーツェ・フォン・グロスブリタンニエン・ウント・イルラント)
https://w.atwiki.jp/tenpyo_amaho/pages/13.html
注釈:α1で作成 PC名:セラフィト・ヴィクトレアス 女/24/時計塔の猟犬 ●成功要素 【ビリヤード:パワー11】 (63) 【ロマンチスト:パワー12】 (51) 【家族のため:パワー13】 (26) 【吸血種:パワー14】 (32) 【酒乱:パワー15】 (24) 【夜の女神の加護:パワー16】 (--) 【槍術:パワー17】 (成長 ●PC設定 時計塔で飼われている吸血鬼。 時計塔で特に警戒されているとある死徒に狙われて(どういう意図かは不明)おり、 その死徒に対する餌として、使い捨ててもいい鉄砲玉として飼われている。 夜の女神の加護により、新月の晩のみ圧倒的に強化される。 夜9時頃から午前4時頃までは完全な不死になり、真祖並みの再生・耐久力を得る。 日が沈み切ってから徐々に強化されはじめ、深夜0時に力はピークを迎える。 0時になってからの1分間は某蜘蛛とすら正面から殴り合えるほど。 ただ、0時を迎えてから徐々に強化が解けていき、日の出とともに元に戻る。
https://w.atwiki.jp/mahorobakai/pages/187.html
名前 コメント すべてのコメントを見る 10と16軸で3連複各20万 相手は1.7.11.12.14で。 -- (みそかつ) 2012-05-13 15 20 31 14番 オールザットジャズから馬連10点 10万ずつ流しで。 相手 1,2,3,5,6,7,8,9,10,11 あわよくばマンケン狙いだ! -- (北のイサオヒート) 2012-05-13 14 26 02 アパパネ複勝100万 -- (Bangkok王者) 2012-05-12 22 50 08 単勝 ホエールキャプチャ 50万 オールザットジャズ 50万 明日も休日失禁、、、もとい休日出勤です。 -- (SBJ) 2012-05-12 15 12 26
https://w.atwiki.jp/victorteam/pages/15.html
ヴィクターチームって何ぞ? ヴィクターチームとは、 株式会社ネクソンの運営するゲーム カウンターストライクオンライン(CSO)のクランです 名前の由来 ヴィクターチーム=victor team victorとはフォネティックコード(=特定の文字を表す通信用の単語)であり Alpha(アルファ)=A Bravo(ブラボー)=B Charlie(チャーリー)=C...のように頭文字を表しています つまりヴィクターはV 余談ですが、 CSOクランにはアルファチームもブラボーチームもあります。 現在のメンバーは20人弱
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/1154.html
【9月11日】 「けーれども彼はこ・こ・でさよなら♪」 「「「「「「「「残念だったねェ!!」」」」」」」」 教室に響く合唱を津村斗貴子は「なんだコレ」とばかり聞き流した。平素凛々しく尖る瞳もいまや呆れの半眼に、頬にも汗 が一しずく。銀成市民と絡むたびよくやる表情だ。記憶こそないが故郷の赤銅島で和服を着ている時は絶対しなかっただろう。 ちなみに教室は前と後ろでガラリと様子が変わっていた。教卓のある方は20人以上の部員が思い思いの動作(演技・観 劇・打ち合わせなどなど)ができるほど広々としているが、その煽りで教室の後半分は机や椅子がギッシリと押し込められ 雑然としている。 斗貴子は教室の中ほど、窓際で先ほどから教室の様子を眺めていた。 (しかし、演目の意味不明さはともかく、日曜日なのによくやるなこのコたち) 演劇論を戦わせる女子たち。 セリフの確認をし合う男女たち。 仲間と連れ立ってストレッチをする男子たち。 教室の後ろに追いやられた机を見れば熱心に台本を読み込む若人たちがぽつぽつと。 広々とした教室の前半分はいかにも活気ある文科系部活の姿である。 顔見知りもいくらかいる。 「たか! とら! ばった! た・と・ば! たとばたっとば!」 楽しそうに「これはどうかな!」と部長らしき上級生にお伺いを立てているのはまひろで、ジャージ姿で座りこみ、柔軟体操 をしているのは沙織。「ぎゃあ、痛い痛い」と体の硬さに泣き笑い中だ。 机の群れの中には台本を熱心に読む千里。 鉛筆を忙しく動かしてはすぐ思案顔……という様子を見るにつけ、ひょっとしたら台本担当なのかも知れない。メガネをか けたおかっぱ少女はいかにも文芸少女という感じで好ましい。 (しかし教卓前のアレは何だ? えーとだ。アレは、パピヨン……じゃないな) 額に手を当て俯く。 まず教卓の前に男が一人。金のカツラを被り、黒いスーツに銀色の仮面。紫色のマントも付けている。 彼から2mほど前には男女が計8人。横に整列する彼らはいかにも「中世北欧の村人」という質素な衣装だ。 そして彼らは教卓前の男がシャキっと振り向き叫ぶや同調する。 「けーれども彼はこ・こ・でさよなら♪」 「「「「「「「「残念だったねェ!!」」」」」」」」 (いったい何をやっているんだキミたちは) 新入部員たる斗貴子にはひどく理解しがたいが、彼らは彼らなりの決まりごとのために叫んでいるらしかった。 そして斗貴子の仇敵は先ほどから黙然と腕組みしたまま黒板の前に突っ立っていた。 毒々しい蝶々覆面は当たり前のようにそこにいて、しかも丸めた台本さえ握っている。よほど演劇に執心しているらしく、 「さよなら」「残念だったねェ」のコンボをひどく熱心な眼差しで眺めている。 (パピヨン!) いつの間にかやってきて監督を務めているというパピヨンは、全く以て平和な演劇部に不要な存在だ。少なくても斗貴子 自身はそう思った。邪魔者。かどわかし。いやむしろガン。悪性新生物。死ね。いや死なす。ブチ撒ける。 (奴が人気のない場所に行った時がチャンスだ。まず助けを呼べないよう口を切り裂いてやる。そうだ。死ね。苦痛の中で 後悔すればいいんだ。なまじ章印がないばかりに楽には死ねない! フフフそうだ思い知れ思い知るがいいんだククククク) 精神が汚染されている。そんな実感もむべなるかな。 そもパピヨンのせいで入りたくもない演劇部に入る羽目になった斗貴子だ。 昨晩…… 「戦士長。よくも私を演劇部に入れてくれましたね。アリガトウゴザイマス」 「ああ! キミも青春をたっぷり楽しんで来い!」 今朝…… 「桜花! よくも私を演劇部に入れてくれたな!」 「ええ。津村さんも青春を謳歌してみたらどうかしら」 さっき…… 「いいかまひろちゃん! 私はあのパピヨンを追い出したらすぐ辞めるからな!」 「ダメだよ斗貴子さん! 一度しかない青春なんだし卒業まで演劇やらなきゃもったいないよ!」 (くそう。どいつもこいつも勝手なコトを! パピヨンの道楽に付き合わされるこっちの身になれ!) 楽しみ謳歌すべき一度しかない青春は、無責任な連中のせいで確実に浪費されている。 唯一味方になりえそうな剛太も体験入学とか何とかで一応来てくれたが、斗貴子を見るや爽やかな笑顔で退室した。 「やっぱり、先輩は演劇部にいるべきです。影ながら応援してます。それじゃあ!」」 その時斗貴子は(まひろに無理やり)メイド服を着せられていたが、斗貴子自身はなぜ剛太が親指さえ立て満面の笑顔で 逃げて行ったかは分からない。 (よくも私を見捨ててくれたな剛太。後でたっぷりブチ撒けてやる!) 歯がみしている内、演目が終わったらしい。 「どうでしょうか監督!」 銀色仮面がひどく嬉しそうにパピヨンに呼びかけた。 「話にならんな」 ひどく堅い声を漏らしたきり、パピヨンは無言で銀色仮面に歩み寄った。そして2歩ほどの距離で止まり、丸めた台本を 銀色の仮面に突きつけた。即興品なのだろう。セロテープで接合された仮面の一部がハラリと取れ、だらしなくブラ下がる。 斗貴子は見た。蝶々の翅の奥にある瞳が歪み、濁った怒りを放つのを。 「今の演技のどこに貴様自身がある? 貴様はただ元の演者の動きを頭の中でなぞっているにすぎん」 暗いがひどく熱の籠った声音だ。銀色仮面は「その声音を浴びるぐらいなら怒声の方がマシ!」という風に息を呑み、ガ タガタと震え始めた。他の演劇部員も同じだった。凍りついたように体を止め、視線だけをパピヨンたちに釘付けた。 「猿真似としても全く練習不足! 話にならん! まずは本家本元の動きを完璧に模写(トレース)しろ!」 「はい監督!」 「模写(トレース)した上で忘れろ! 全てをだ!」 「はい監督! ちなみに監督がこれをやればどうなりますか!?」 「フム。なかなかいい質問をするじゃあないか。ならば特別にこのパピヨンの演技を見せてやる」 やがてパピヨンはいやに爽やかな笑顔を浮かべ、クルクルとワルツを踊ったり片足を高々と持ち上げたりしながら最後に 極上の笑顔で手を広げ「残念だったな!」と叫び……あと、血を吐いた。 (うわあ……) 斗貴子は思わず目を背けた。これほどひどい演技は見たコトがない。 果たして演劇部一同からもざわめきが上がり始めた。 (いい気味だ。メッキが剥がれたなパピヨン。貴様の演技など受け入れられるはずも──…) 「すげえ! まさかこんな解釈があったなんて!」 「え?」 ガッツポーズする銀色仮面を斗貴子はまさしく「眼を点に」見た。 「ええ。ここでの華麗で流麗な動きは後に生きるわ!」 「この後に訪れる絶望がッ! 引き立つのよーっ!」 「僕は動き自体を評価したいね。新体操とダンスを組み合わせたまったく一分の無駄もない斬新な動き。これはまったく 演劇界に革新と旋風を巻き起こすよ。もちろん、演技力も特筆すべきだけどね」 (あの、ミナサン?) 口々に賞賛を送りだす演劇部員に斗貴子は愕然とした。分からない。何がそんなにいいのか分からない。 「最後に血を吐くのがまたスゲーぜ! 見る人に新たな解釈を与えるし何より吐血それ自体がインモラルでエロい!」 「実をいえば吐血自体はハプニングさ。失敗失敗。力むあまり血を吐いてしまった」 袖で口を拭うパピヨンに、得意気に笑うパピヨンに、部員達はますます興奮した。 「本物は違う!」 「力むだけで血が!」 「まさに迫真の演技!」 「もうダメだこの演劇部。私は帰る」 盛大な溜息をついて斗貴子はよろよろと歩き出した。ストレス性の頭痛と発熱と悪寒が全身を蝕んでいる。 (くそ。やっと例の音楽隊との決着がついたのに、いつまで私は銀成市に……ん?) 喧噪の中で足が止まる。 思考があらぬ方向へ飛んだのは、現実逃避のためかも知れない。パピヨンへの賞賛は未だ鳴りやまない。 (そういえばもう1週間か。この学校で『あの』虚ろな目をした鳥型ホムンクルスと戦ってから) そのあと戦いが終わって、1週間。 (ブレミュ、だったな。大戦士長の誘拐事件について協力するという話だったが) いまのところ防人から進展についての説明はない。 正直、演劇部入部に策謀を巡らせるぐらいならブレミュ勢の顛末や誘拐事件の進捗状況ぐらい話しても良さそうなもの である。 そう思いかけた斗貴子は「仕方無い」という表情で首を振った。 (大戦士長の誘拐は戦団全体に関わる問題だ。となれば処理に当たるのは当然、本部やそこにいる火渡戦士長というコ トになる。戦士長(防人。ブラボー)の手はすでに離れているだろう。もし、もう一線を退いている彼に連絡が来て、私達に も伝えられるとするような状況があるのなら、それは──…) 「どうしたの斗貴子さん? 浮かない顔して……。ひょっとして部活、楽しくない……?」 思考を遮るようにまひろの声がかかった。はっと現実世界に目を向けると、つぶらな瞳の少女が眼前いっぱいに広がっ ている。どうやら彼女なりに気遣っているらしい。太い眉毛が心配そうに潜まっているのがよく見えた。 「い、いや」 こういう雰囲気に慣れていないだけだ。嫌という訳ではない。半ば本音で半ば配慮に対する社交辞令をぎこちなく漏らすと まひろも一応理解してくれたようだ。「それなら」と明るい表情を浮かべた。 「というかキミ、なんでそんな服なんだ?」 「俺に質問をするな……」 真赤なメッシュジャケットとメッシュパンツに身を包んだまひろは、ふふんと瞑目し腕組みをした。どうやらハードボイルドを 気取っているらしいが何かもう全体的に上滑っている感じだった。 「どう、似合う? 刑事さん! やる夫社長さんから聞いたけどね、別世界にはこんな刑事さんがいるんだって! で、青い 強化装甲身にまとっては連敗するのでした! あ、素早くなるんだったかな……。どっちだっけ斗貴子さん」 忙しい少女だ、斗貴子はそう思った。花開くように笑ったかと思えば両目をキラキラと輝かせ旧知を語り、小さな顎に指を 当てフと考え込む仕草をし、最後はまるで幼女のようなあどけない直視を送ってくる。 (やれやれ) ただまひろが前に来て喋った。それだけなのに毒気がいささか抜けているのに気づき、斗貴子は微苦笑した。本当にもう 気楽で能天気で手に余る少女だが、そこにいるだけで周囲を和ますという点では他の誰よりも長けているらしかった。 そういえば黙りこんでいる斗貴子にわざわざ歩み寄って声を掛けたのは現状ではまひろ1人だけだ。 ……とはいえ、他の何人かは斗貴子の様子に気付いていたらしい。まひろにつられる形で1人、また1人とぽつぽつ歩み よってきた。 (い!?) どうやら「気付いていたが初対面なので声を掛け辛かった」らしい。それがまひろの遠慮斟酌なき呼びかけで打破された という訳だ。いうなれば斗貴子という城塞の門が攻城兵器まひろで破られたのを幸い、演劇部兵士諸君がわっとなだれ込 んできた格好になる。……1人、3人、5人すっとばして20人。いつしか斗貴子を取り囲むように演劇部員達は思い思いの 呼びかけを始めた。 「大丈夫ですか?」 「緊張しますよねやっぱり突然演劇なんて!」 「いや、違う! 私の抱えている問題はそういうのじゃなくて!」 面喰らったという顔で壁に背をつき両手を広げる。ざらっとした白い粉が掌を這う感触にぞっとする。デジャヴ。確か転校 初日もまひろのせいでクラスメイトからの質問攻めに遭った。 「じゃあ台本書くのはどうです斗貴子さん! お話を書くのは面白いですよ! 「いや、正直私は話作りの才能なんて……違う! というか若宮千里! なんでキミまで乗ってきている!」 どっからどう見ても制止役のおかっぱ少女までもが台本片手に勧誘を始めているのを見た時(心持ち、彼女の顔は桜色 に染まり、小さな鼻から興奮性の吐息をふんすかふんすか漏らしていた)、斗貴子はまったく思った。 (やっぱりこの学校はヘンだ!) 質問攻めが終了するまで10分を要した。 「チッ」 ファンを取られた。パピヨンだけは嫉妬の視線で斗貴子を眺め…… どこかへと消えていった。 車座に──厳密にいえば窓際の斗貴子を取り巻いていたので車座の半分だが──連なっていた演劇部員達が水を引く ように去って行き、後はまひろだけが残された。 「ところでキミたちがやってる演目はなんなんだ?」 「何って、何が」 まひろは大きな瞳をハシハシと瞬かせてた。質問の意図がよく分かっていないらしい。演目に馴染みすぎているせいで 「みんな知ってて当然」とばかり思い込んでいるらしい。何かを修練/追及している者にありがちな齟齬。何も知らぬビギナー への説明意識がカラッカラらしかった。 「その、さっきからずっと”さよなら”だの”残念だったね”だのばかりやってるような気がするんだが」 「あ、それ? それはねー」 「ガウンの貰い損」 聞き覚えのある冷淡な声に斗貴子は振り返る。 声は、教室の後ろの一角、不規則に並ぶ机の上から響いていた。 その声の主は、きゅうきゅうと詰まる机の隙間をものともせず、座っていた。 「ガウンの貰い損とはサウンドクリエイターれヴぉを中心とする日本の音楽ユニット。自らを「幻想楽団」と称し、物語性の高 い歌詞と組曲的な音楽形式による「物語音楽」を主な作風とする。ファンからの愛称はガンモラ」 まるでwikipediaか何かから拾った文章をそのまま読んでいるような影に斗貴子は見覚えがあった。 「六舛孝二……どうしてキミがここに」 「もうすぐ馬鹿が来るから先回りして止めに来た。あの様子じゃ大浜でも止められないだろうし」 「?」 それより、と六舛は眼鏡をくいと押し上げた。 髪の短い、ひどく希薄な印象の少年だ。顔立ちには特に特徴らしい特徴がない。もっとも特徴がないというのは際立った 欠点もないというコトになるから、どちらかといえば端正な顔立ちの少年だ。 斗貴子は首を傾げたが、この少年は常に何を考えているか伺い難いフシがある。もし武藤カズキの親友の1人でなけれ ば生涯会話らしい会話をせずに終わっただろう。それほど斗貴子とは共通点が少ない。 「いまやってた演目はガンモラの中で一番有名な奴」 「あ、ああ。説明してくれたんだな。今の演目が何か」 「そ。簡単にいえば”さよなら”とか”残念だったね”は決めゼリフ。だからファンはみんなやる訳」 まったく抑揚も感情もない声だ。冷静そのもの。カズキたち4人の中で一番成績がいいというのも頷ける……斗貴子は 改めてそう思った。 「さすが六舛先輩! じゃあさじゃあさ、これは知ってる!」 斗貴子が振り向くとまひろは妙ないでたちをしていた。先ほどまではあまり刑事らしからぬ真紅の衣装だったのが、今度 は打って変わって騎士風の鎧と剣を持っている。そして右手の片手剣をまひろは悠然と突き上げた。 「彼方へ! 私の道を……切り開く!」 「ジェシカの彷徨と恍惚・傷だらけの乙女は何故西へ行ったのか・漂流編」 「正解!」 目を > < こんな形にしてきゃいきゃい騒ぐまひろと机の群れで淡々としている少年を斗貴子はげっそりとした眼差し で見比べた。しなやかな体がこころなし猫背になっている。 (いや、何の話をしているんだ。分からない。今の若いコたちはこういうものが好きなのか?) 「ちなみにジェシカは7時間以上かかってなお未完の作品。ガンモラ最低の駄作の呼び声も高いが、その長さと未完結作品 ゆえにディープなファンたちの人気は高い。情報量をどれだけ短くまとめられるか競ったり、或いは欠落した部分を他の作品 からの引用で補完したりする。ちなみにこれが生まれたのは”フウト”ってところで別世界のこの街には仮面ライダーが居る。 091話最後で出てきた猫と老人はきっとその別世界から来た筈だ。あとテラードラゴンは分離すべきじゃなかったよね。あれ 頭に載せた状態のが強かったよね」 「何の話だ……」 もう嫌だ。かつて根来に忍法うんぬんを披露された時のようなゲンナリ感。目が眩む思いだ。 「私たちが今度発表する演目もジェシカだよ! みんなで知恵を出し合って一生懸命作ってるの!」 はしゃぐまひろだが斗貴子のテンションは上がらない。思わず肩を落とした。 「……よく分からないが人の作品を勝手にいじくっていいのか?」 「斗貴子氏は知らないだろうけど『二次創作』っていう立派なジャンル。結構あるけど? マンガとか小説とかのも。例えば 連載2年で打ち切られ単行本10巻しか出てない作品の二次創作を5年近くやってる物好きだっているし」 「本家本元より長く? 考えられない。何がそうさせているんだ……」 「愛だよ。愛! 愛だよ斗貴子さん!」 小説2冊ドラマCD4つサントラ1つゲーム1つ。いずれも絶賛発売中である。 「だいたいガンモラは二次創作に寛大だし。れヴぉっていう一番偉い人はお酒さえ飲めれば自分のキャラがどう使われよう といいって宣言している。だからファンたちはいわゆる自分設定を作って楽しんで、それをインターネットで仲間たちに発信 して楽しんだり、同人誌とかも出してる。同人の中では最大手でグッズとかいっぱい出てる」 ディープな世界だ。そもそも斗貴子は同人が何か分からない。 「てゆーか六舛くん、その話、色々混じってない?」 おずおずとした声に斗貴子ははっとした。 高校生にしてはやたら恰幅のいい青年が、机をガゴガゴと広げながら近づいてきている。はちきれそうな学生服の上で 気弱な顔がひどい苦難に歪み、大息さえついている。それはやはり体形ゆえか。彼はやがて六舛の傍に寄り…… 「やっぱり止められなかったか」 「ごめん。体当たりして先回りする時間稼ぐのが精いっぱい……」 とだけ謎めいたやりとりをした。 (六舛孝二に大浜真史……。カズキの友人が2人揃ったというコトは!) ここで斗貴子もだいたいのあらましが想像できてきた。そしてそれは、当たっていた。 「ゴメン斗貴子氏。ちょっと説明中断するけどいい?」 「構わないが」 頷きながら六舛は立ち上がり、演劇部員をかき分けながら教室をナナメに縦断し始めた。どうやら教室の前のドアを目指 していた。斗貴子がそう知ったのは総てが決着した後である。 そして。 「聞いたぜ! 桜花先輩が演劇部に入るってな! だったらお相手役はこの俺しかいねぇだr」 「黙れ岡倉。お前に演劇の才能はない」 勢いよく開いたドアの向こうに彼は(淡々とした声で)手を差し込んだ。窓際に佇んでいた斗貴子だが、その角度上ことの あらましは大体見れた。骨法。鮮やかな手つきで友人の首を一回転させ、滑らかに気絶させる六舛を。彼は武術にさえ通 じているのかも知れなかった。 一拍遅れて、骨の外れる小気味のよい音が響いた。演劇部員達はすわ何事かとドアを見たが──… 「なんだエロスか」 「本当だエロス先輩だ」 「エロスさんなら別にいいや」 みなチラ見しただけでそれまでの行動に戻った。 「チクショオオオオー! 俺ならいいってのかよォ!」 果たして一拍遅れの恨めしい叫びが教室を貫くころ、斗貴子はようやくだいたいの事情を察した。 だが、しかし、それは。 腰に手を当て厳しい目つきをする。実に馬鹿馬鹿しいという思いでいっぱいになる。 (あのやたらはしゃいでいた声。間違いない。岡倉英之。あのエロスか) やがて見覚えのあるリーゼントが大浜の肩に乗り、六舛の「馬鹿が迷惑かけてすまない」という謝罪と共に退室するまで 斗貴子はしばし黙りこみ──…刮目。絹を裂くような叫びをあげた。 「というか桜花が入部ぅ!? なに考えてるんだあの生徒会長は!」 「秋水先輩もケガが治るまで仮入部するらしいよ!」 「んで監督がパピヨンか! なんでこうLXEの連中が急に多くなってきたんだこの部活!」 「えるえっくすいーというのは何じゃ?」 振り返った斗貴子がしばし虚空を眺め戸惑ったのは、相手の身長のせいである。 「下じゃ下じゃ。のう、のう。えるえっくすいーというのは何なんじゃ?」 促されるまま首の角度を急降下させると、ようやくながらに相手の顔が見えた。 (ちっさ!) まず率直な感想が浮かんだ。斗貴子もかなり小柄な方だが、この相手はもっと背が低かった。 制服こそ銀成学園高校のそれだが、どう贔屓目に見ても小学校低学年でランドセルを背負っている方がお似合いだった。 (例の音楽隊(ブレミュ)の小札零ぐらいか……? いや、もっと小さいか) いま相手にしているのは130cmあるかどうかという少女だった。後ろで括ったすみれ色の髪の根元にかんざしを挿して いる。かんざしといっても古風なそれではなく、今風のアレンジが大いに加わっている。フェレットとマンゴー。可愛らしいデ フォルメの聞いた人形がかんざしの上からプラプラと垂れ下がり、揺れている。 (確か……銀成学園の新しい理事長だったな。元理事長の孫の。年齢は……まだ7歳ぐらいか) じっと凝視すると、好奇心たっぷりの笑みがすり寄ってきた。 「えるえっくすいーっというのは何なんじゃ? うまいのかの?」 いかにも楽しそうな声を弾ませながら、理事長はぴょこぴょこ跳ねる。 お姉さんお兄さんはみーんないい人で誰とでも仲よくできる。そう信じ切っている無邪気な瞳だ。春の湖面のように澄み渡 った大きな眼には物怖じした様子などカケラもなく、ただただ斗貴子の返事への期待感に満ちている。 低い鼻のてっぺんに桃色が差しているのは妙といえば妙だったが、その妙な部分が却って少女らしい愛らしさを引き立 てているようだった。 (しまった。どう説明すればいい? あんな共同体のコトな……なんだこの匂い?) 説明に難儀する斗貴子は目を瞬かせた。いい匂い。芳香剤とは違う。料理の匂い。誰か弁当でも食べているのか…… 一瞬そう思った斗貴子が周囲を見渡すと、演劇部員たちの怪訝そうな眼差しが目に入った。彼らは、斗貴子を見ていた。 と思ったのは錯覚で、厳密にいえば彼らは斗貴子の方、彼女の前に佇む理事長を見ていた。 彼らの視線を追う。スっと視線を落とす。マンゴーたちが踊るかんざしの後ろに、妙な物があった。 幅だけでも教室の後ろにわだかまる机6つ(縦2つ横3つ)ぐらいはある。 成人男性1名程度なら苦もなく飲み干せる、そういう姿だった。 白かった。途轍もなく、大きかった。白磁の淡い輝きを滑らかな曲線に乗せ、その場所に鎮座していた。 形状だけ言えばそれはどこの家庭にでもあるものだった。 丼。 だった。 (なんだ丼か……。丼!?) とてつもなく巨大な牛丼だった。 高さは斗貴子の身長と同じくらいである。見逃してしまっていたのが不思議なくらいの大きさだ。 ステーキ並にブ厚い牛肉の破片が盛り上がる白米を埋め尽くしている。肉だけで眼前の少女の体重分ぐらいはあるので はないか。斗貴子は戦慄する思いで観察を続けた。 申し訳程度にまぶされた薄茶色の玉葱でさえ段ボール半分程度を消費したのは明白なのだから。 一瞬斗貴子は「演劇部全員の昼食を持ってきた」と推測したが、生憎それは外れていた。眼前の少女は斗貴子が答えぬ のを見るとさっさと諦めたようで、丼にとっとと駆け寄っていった。そしてめいっぱい手を伸ばし、更に背伸びをして、牛丼の 化け物に挑み始めた。 素手である。手づかみである。演劇部員の間にどよめきが走った。しかし理事長が意に介す様子はない。 「うまいのううまいのう」 くっちゃくっちゃと品のない音を漏らしながら二度、三度とその少女は牛丼に手を伸ばす。窘めるものはいなかった。みな この異様の光景に心を奪われているらしかった。斗貴子もそれは同じで、口周りに飯粒を付けながらニコニコと機嫌良く 食事する少女をただただ見守るしかなかった。 「喰うかいの!」 視線を曲解したのだろう。新理事長は手づかみの牛丼を斗貴子に差し出してきた。 「い、いや、そういうつもりでは。というかパピヨンがいない! どこへ……! 悪いが失礼する!」 半ば強引に会話を打ち切る。奇妙な──どうせヒマ潰しにでも演劇部へ来たのだろう。斗貴子はそう思った──理事長 との会話をしていても仕方ない。そういう思いが彼女を教室の外へと走らせた。 (とにかく! パピヨンの件はさっさと片付けて大戦士長誘拐について戦士長に聞かないと!) そうだ、と斗貴子は顔を引き締めた。心の中で青い炎が燃え上がり、しなやかな四肢の隅々に活力を漲らせる。新たな 戦い。新たな脅威。それと戦い、取り除くコトこそ使命だ。斗貴子は常に、信じている。 (すでに一線を退いている戦士長に連絡が来るとすれば大戦士長が救出された後か、或いは!) (大戦士長を誘拐した連中が、本部にいる火渡戦士長たちだけで手に負えないほど強大か!) (そのどちらかの筈! 残党狩りが終わった今、私達が備えるべきは後者!) 「ひひっ。もったいないのう。空腹という奴は積極的に駆逐せねばいずれ魂さえ殺すというのに……」 去りゆく斗貴子を見ながら理事長は薄く笑い、大儀そうに肩を竦めた。
https://w.atwiki.jp/gundamwar/pages/2203.html
レイクビクトリア [部分編集] 相剋の軌跡 UNIT U-82 白 1-2-0 C 拠点 (自軍帰還ステップ):《(0)》戦闘修正の合計値が1以下の全ての自軍キャラクターの上に、訓練コイン1個を乗せる。訓練コインは+1/±0/±0コインとして扱う。 (自動D):このカードが破壊された場合、訓練コインが乗っている全てのキャラクターを破壊する。 地球 [*][0][3]