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前ページ次ページサイヤの使い魔 「宝物庫の中に、入った事はありまして?」 「ありますとも」 「では、『破壊の杖』をご存知?」 「ええ。まあ、実物は見ておりませんが」 「と、いいますと?」 「箱に入っておりまして、それにはロックがかけられているのですよ。流石にアンロックで中を見るという訳にもいきませんのでね」 「まあ」 トリステイン魔法学院の宝物庫の前で、コルベールとロングビルが親しげに話していた。 少なくともコルベールはそう思っていた。 虚無の曜日とはいえ、学院内の巡回は怠ってはならない。むしろ、そんな日にこそ変事は起こるものだ。 そんな仕事熱心な職員が自分以外にもいた、しかもそれがよりによって、男性職員なら一度は恋心を抱く美貌のミス・ロングビルであったとなれば、嫌が応にも浮ついた気分になってしまうというものだ。 「ところでミスタ・コルベール。もっと宝物庫の事を教えて下さらない? 私、魔法の品々にとても興味がありますの」 「では、ちょっとご披露致しましょう。大した話ではないのですが……」 「是非とも、伺いたいわ」 「宝物庫は確かに魔法に関しては無敵ですが、一つだけ弱点があると思うのですよ」 「はあ、興味深いお話ですわ」 「それは……。物理的な力です」 「物理的な力?」 「そうですとも! 例えば、まあ、そんな事は有り得ないのですが、巨大なゴーレムが……」 「巨大なゴーレムが…」 その時、コルベールが注意深くミス・ロングビルの目を見ていれば、一瞬その目が怪しい輝きを放った事に気付いたかもしれない。 しかし彼は、自説を得意げに語るのに夢中であった。 「大変興味深いお話でたわ、ミスタ・コルベール」 ルイズは飛んでいた。 地面に向かって。悲鳴を上げながら。 これで二回目だ。 最初は、加速に耐えられなかったロープが切れた事によって。 二回目は、慌てて引き返してきた悟空によってサルベージされ、気を取りなおして再出発しようとしたら、追いついたキュルケのファイヤーボールによって再びロープを焼き切られた事によって。 そうして、キュルケとタバサは遥か先まで飛んでいってしまった。 「ひーあーあーあー!!!」 悲鳴が風切り音に吸い込まれる。 マットが下になっているおかげで空気抵抗が発生し、落下しているというよりも押し上げられている感覚なのが唯一の救いだ。 と、ルイズの身体にかかる負荷が消えた。 「大丈夫か? ケガしてねぇか?」 悟空が、捲きつけられたロープを掴んでルイズの顔を覗き込んでいた。 悟空の気に守られる事も無く、二度も高所から落下した事によって、ルイズの顔からは血の気が失われていた。 「な…な、い……」 「良かった。それにしてもあいつ、ひでぇことしやがんなあ」 風圧によりひび割れた唇でようやく言葉を紡いだルイズを見て、悟空のキュルケに対する株がまた下がった。 「ロープも随分短くなっちまったし、もう引っ張ってくのは無理だな」 そう言うと、悟空はルイズをロープごと抱きかかえた。 ルイズの身体とマットの間に手を差し入れられて、自由落下のショックからようやく立ち直りかけたルイズが我に返る。 「ちょ、ちょっとちょっと! なな何のつもりよ!?」 「仕方ねえだろ、こうでもしねえとまた落っこっちまうんだからよ。行くぞ!」 悟空に正面から抱きかかえられる形になったルイズの抗議を軽くいなし、再び悟空が飛ぶ。 (抱かれてる! わたし今抱かれてる! ワルドにも抱かれた事ないのに!) 父親以外の男性に抱かれたルイズの鼻腔が悟空の匂いを嗅ぎ取ると、意に反して鼓動が高まり、顔が火照るのを感じる。 (し…縛られた状態で殿方に抱かれるのって、な、何か不思議な感じ……! どうして…?) 思考回路がショート寸前なルイズの問いに答えられるのは、果たして誰か。 「はあ…それにしてもいい天気ねえ……」 シルフィードの背で、キュルケが吐息をついた。 空には太陽が輝き、ぽつぽつと青空に浮かぶ雲を白く照らしている。 陽射しは少し強いものの、肌に当たる風がそれを心地よく冷やしていく。 と、それまで黙々と本を読んでいたタバサが顔を上げた。 「来た」 「え?」 タバサが後ろを振り向いてキュルケに告げる。つられてキュルケもその方角を見た。 ひときわ大きい雲が浮かんでいる。その白く光る雲を突き抜けFly Awayしてくる物体が一つ。 悟空だ。あの白い炎に身を包み、彼我の距離をグングン縮めている。 「嘘? いくら何でも速過ぎるわ! タバサ、もっと飛ばして!!」 「それ無理」 「どうして?」 「もうやってる」 タバサはキュルケがファイヤーボールでルイズを落とした頃から、ずっとシルフィードを最高速で飛ばしていた。 流石にそれだけの速度で飛ぶと人間の身体では耐えきれないので、タバサが風の魔法の応用で風防を作っていたため、上空で速度の比較対象となるものが無いキュルケはそれに気付いていなかった。 タバサが最高速で飛ばしていたのは、ひとえに悟空に怒られるのが嫌だったからだ。 可燃性の物質であるロープに縛り付けられたルイズに、切断のためとはいえファイヤーボールをブチかましたのだ、悟空はそれを見て無情な行為だと思っただろう。 とても悟空に謝るどころの話では無い。むしろ、それを止めなかった自分にも非はある。状況を少しでもプラスに働きかけるためには、まずこの勝負に勝つことが先決だった。 そんなタバサの努力も空しく、とうとう悟空が隣に並んだ。 「あ、あらぁ……。ず、ずいぶん早く追いついたのね」 「おめえ、綺麗な顔してっけど、やることがえげつねえな」 「え」 「学院に戻ったら覚えてろよ」 「い、いやねえ…たかがあれくら……!」 悟空の怒気を孕んだ声と視線に、キュルケの弁解が途中で止まる。 仕方なくルイズに仲介してもらおうと思ったが、何故かルイズは顔を真っ赤にして悟空の胸に顔を埋めていた。 悟空の身体を纏う炎がひときわ大きくなったと思うと、更に速度を上げてタバサのシルフィードを後方に残し、轟音を上げながら芥子粒の如き大きさになり、ついには視界から消えた。 「嘘……」キュルケが呟く。キュルケは気付かなかったが、シルフィードも同じ呟きを漏らしていた。 「とんだとばっちり」タバサが溜息をついた。 5分後、トリステイン魔法学院に到着した悟空は、少々飛ばし過ぎたかと頭を掻いた。 マットが風圧で変形し、ボンレスハムのようになっていた。大きさもだいぶ縮んでしまっている。 そしてそれに縛り付けられていたルイズは、顔を真っ赤にして何故か幸せそうな顔で気絶していた。 起こそうかと思ったものの、このまま部屋まで運んだ方が早いと考え直し、マットを抱えてルイズの部屋の前へと飛んで行き、窓を開けて――鍵がかかっていたのをキュルケが開けていたのだ――中に運び入れた。 ロープを解き、ぐったりしているルイズと剣をベッドの上に横たえると、悟空は再びマットを持って外に出た。 それを通りがかったギーシュが発見する。 「ゴクウじゃないか。そんなもの持ってどうしたんだい?」 「おう、ギーシュ。ちょうどいいや。ちょっと力貸してくれ」 「ああ、いいとも。実を言うと僕も君を探していたんだ」 「おめえが? 何だ?」 「いや、君の用が済んでからでいいよ」 「そうか。じゃ、早速だけどよ、こういう奴を作ってくれ」 悟空が地面に足で図を描く。棒の先にハートマークがついたようなそれを見て、ギーシュが悟空に尋ねる。 「何だい、これは?」 「こいつでこのフトンをぶっ叩いて、形を整えるんだ」 「なるほど…。そうだ。その役、僕に任せてはくれないか?」 「別に構わねえけど…、何でだ?」 「ワルキューレにやらたいんだ。僕の特訓にも繋がるし」 「そうか。じゃ、頼むぜ」 ギーシュが3体のワルキューレを錬金する。その形状を見て、悟空が違和感を覚えた。 「あれ、ちょっと形変わったか?」 「少し実戦向きにアレンジしてみたんだ。実は僕の用事というのはそれでね。ちょっとこいつと手合わせしてみて欲しいんだ」 「ああ、そういう事か」 器用に2体のワルキューレがマットの両端を掴んで立ち、残りの1体が即席の布団叩きでバシバシと形を整える。 悟空はそれを見て感心した。 「へえ、力加減が随分上手くなったじゃねえか」 「わかるかい?」ギーシュが笑みを浮かべる。 「前はちょっとぎこちない動きだったけどよ、正直今度のは見違えたぞ」 「負荷の掛かる所と掛からない所とで、青銅の密度を変えてみたんだ。そうしたら強度だけでなく機動性も増してね。前より滑らかに動けるようになったんだ」 暫く叩き続け、マットの形が購入時の長方形を取り戻すと、悟空はその上に寝転んで感触を確認した。 「おー。こりゃ気持ちいいや。今夜からぐっすり寝られそうだ」 「このくらいでいいかい?」 「ああ、助かったぜ。じゃ、これちょっくら戻してくっからよ、そこで待っててくれ」 悟空がマットを担いでルイズの部屋に飛んでいった。 ギーシュが悟空との試合のために残りのワルキューレを練成していると、そこにシルフィードに乗ったタバサとキュルケがやってきた。 「おや、君達。虚無の曜日に揃って外出かい」 「ゴクウは? 彼を見なかった?」 「彼ならもうすぐここに来ると思うけど…そういえば遅いな」 悟空が行ってから、もう15分は経っている。 「君達は悟空に用があるのかい?」 「まあ…ね」 「うん?」 珍しくキュルケが言葉を濁す。 そこに、悟空とルイズが歩いてやってきた。 部屋に戻った時、ルイズが起きていたので、ついでにと連れて来たのだ。 「おめえら、戻ったのか。……ちょうどいいや、キュルケ」 「な、にかしら」 「おめえ、ルイズに謝れ」 「え?」 「ゴクウ!?」 ルイズが驚いて悟空を見上げる。悟空の表情は真剣だった。 「ルイズは身動きできねえ状態だったんだ。もし火がルイズに燃え移っちまったらどうすんだ」 「何よ。火のメイジである私が、ファイヤーボール如きでそんなヘマやらかすワケ無いじゃない」 「…………」 「……わ、わかったわよ。悪かったわね、ルイズ」 有無を言わさぬゴクウの気迫に気圧されたのか、はたまたこれ以上好感度を下げるのは得策ではないと感じたのか。 不満げな顔をしながらも、意外なほど素直に、キュルケがぺこりとルイズに頭を下げる。 使い魔は主人を守る。それを忠実に守った上での苦言を呈しただけであったが、ちい姉さま以外に、ここまで自分の身を気にかけてくれる人がいるという事に、ルイズは深く感動していた。 「ゴクウ……」 「さてと、ギーシュ。待たせちまったな」 「あ、ああ。…いったい何が何やら……」 中庭に、悟空とワルキューレが対峙した。 その数7体。 円陣を組んで悟空を取り囲んでいる。 「さっきとはまた形が変わってんな」 「今は速度重視さ。一撃の重さは足りないが、どうせ君に傷を負わせる事は不可能みたいだからね」 「それならよ、オラに一撃でも当てられたらおめえの勝ち。ってことでどうだ?」 「いいのかい? その言葉、後悔するなよ!」 「あ、じゃあ、ギーシュが勝ったらダーリンは私のものって事で」 「勝手に決めんじゃないわよ色ボケ!! しかもなに人の使い魔をダーリン呼ばわりしてるのよ!」 ワルキューレが地を蹴る。 言うだけあって、その速度は前回とは大違いだった。 一瞬で間を詰め、7対の腕が凄まじい速度で突きを繰り出す。 だが―― 「くっ、これでもまだ足りないというのか!」 その突きは空しく空を切るだけだった。 ワルキューレの突きは確実に相手の死角を突いている筈だった。だが、悟空には掠りもしない。 避ける速度が凄まじく、瞬きをすると一瞬悟空が何体にも分裂したようにすら見える。 その速度は、既に人間の知覚の限界に達していた。 「いいぞいいぞ、思ったよりずっと速えじゃねえか!」 しかも、その口調には余裕が感じられる。 ギーシュの集中力は決闘の時と比べて随分上がっていたが、一度に7体のゴーレムを激しく動かしていては、流石にそれも途切れがちになる。 ワルキューレの速度が鈍ったのを感じた悟空は、反撃に転じた。 「んじゃ、そろそろ反撃すっぞ!」 「え?」 「だりゃあ!」 悟空の蹴りが、1体のワルキューレを水平に飛ばす。 破片を捲き散らしながらも、上手い事外壁の門を通り抜けたそれは、そのままの勢いで文字通り地平の彼方へと消えていった。 遅れて、ワルキューレの後を追うように突風が吹き、冷や汗をかいたギーシュの顔に金髪を貼りつけた。 次いでもう1体、打撃音と共に空高く飛んで行き、ついに落ちてこなかった。 更に悟空はワルキューレの腕を掴み、ジャイアントスイングの要領で回し始めた。 同質量の塊に打ち砕かれ、青銅の破片がそこらじゅうに飛び散る。 残りのワルキューレを全て片付けると、悟空は最後の仕上げとばかりに手に持ったワルキューレ――既に上半身だけになっている――を豪快にブン投げた。 「うおりゃあ―――っ!!!」 ここで誤算が起きた。 悟空の手を離れたそれは、狙いすましたかのように本塔へと飛んで行き、派手な衝突音を立ててその外壁にヒビを入れた。 思いがけない失態に、悟空が固まる。 「あ…やっちまった……」 「隙あり!」 いつの間に練成したのか、8体目のワルキューレが悟空の背後に迫っていた。 「へ?」 ――ゴン! 振り下ろされたワルキューレの腕が、悟空の脳天を捉えた。 「あが!」 「や…やった! 一撃入ったぞ!!」 「嘘……悟空が負けるなんて…」 ルイズが驚きの声をあげる。 「ははっ、一本取られちまったな…。でもどうやったんだ?」 「言っただろ、実戦向きにアレンジしたって。突き詰めた結果、もう1体くらいは練成できるようになったんだ」 「流石だなおめえ。それをたった2日でここまでモノにしちまうなんてよ」 「ありがとう。君のおかげだよ」 実際、ある意味ではその通りだった。 決闘での敗北と修行の助力により、ギーシュの錬金からは精神的にも物質的にも無駄が殺ぎ落とされ、より高度なものができるようになったのである。 「あらま。ダーリン負けちゃったわね」 「彼の成長は驚異」 「んふふふふ、でもこれでダーリンは私のものって訳よねぇ、ルイズぅ?」 使い魔の敗北がよほど衝撃だったのか、ルイズはしょぼんとして座り込み、地面の草をむしり始めた。 「……と言いたいところだけど、やっぱいいわ。ツェルプストーの女が男を手に入れるのに助力を乞うなんて、末代までの恥だものね」 そのやり取りを中庭の植え込みから見守っている人物がいた。 『土くれ』の二つ名で呼ばれ、トリステイン中の貴族を恐怖に陥れているメイジの盗賊、フーケである。 フーケは夜になったら、下見のため密かに学院本塔の外壁の厚さを調べるつもりでいた。 だが、どうもその必要は無さそうだ。 あれだけのヒビが入っているのだ、ゴーレムで穴を開けるなど造作も無いだろう。 フーケは呪文を詠唱し始めた。長い詠唱だった。 詠唱が完成すると、地面に向けて杖を振る。 フーケは薄く笑った。 音を立て、地面が盛り上がる。 土くれのフーケが、その本領を発揮したのだ。 何者かの気が急速に上がるのを感じて、悟空は振り返った。 我が目を疑う。 「何だありゃ!?」 それは全長30メイルはありそうな、巨大なゴーレムだった。 眼下の人間などものともせず、こちらに歩いてくる。 キュルケが悲鳴を上げ、一目散に駆け出した。タバサもシルフィードに乗って空高く舞い上がる。 悟空は両脇にルイズとギーシュを抱え、タバサの後を追った。 「一体何なんだ、あれ」 ひとまずシルフィードの上にルイズとギーシュを乗せた悟空が誰にとも無く尋ねた。 「わかんないけど……巨大な土ゴーレムね」 「あんなでっけえのも作れんのか」 「恐らく、トライアングルクラスのメイジ」タバサが補足する。 「一体、何をするつもりなんだ……」 そう呟いてゴーレムの進路を目で追ったギーシュが、ある事に気付いた。 「おい、もしかしてあのゴーレム、宝物庫を目指してるんじゃないか?」 「何だって?」 悟空達がギーシュの声につられて宝物庫のある本塔に目を向ける。 さっき悟空が投げ飛ばしたワルキューレが衝突した事により発生したヒビは、丁度宝物庫のある階を中心に走っていた。 フーケは、巨大なゴーレムの肩の上で、薄い笑いを浮かべていた。 少々予定が早まったが、善は急げだ。逃げ惑う赤毛の女や、上空を舞うウインドドラゴンの姿が見えたが気にしない。フーケは頭からすっぽりと黒いローブに身を包んでいる。その下の自分の顔さえ見られなければ、問題は無い。 ヒビが入った壁に向かって、土ゴーレムの拳が打ち下ろされる。フーケはインパクトの瞬間、ゴーレムの拳を鉄に変えた。 壁に拳がめり込み、鈍い音がして崩れる。黒いローブの下でフーケは微笑んだ。 ゴーレムの腕伝いに、壁に開いた穴から宝物庫の中に入り込んだ。 中には様々な宝物があった。しかし、フーケの狙いはただ一つ『破壊の杖』だけである。 様々な杖が壁にかかった一画に行くと、その中に、鍵のかかった黒い箱に収められたものがあった。銘板には「破壊の杖:持ち出し不可」と書かれている。 間違い無い。これだ。 フーケの笑みがますます深くなった。箱を手に取りアンロックを唱えると、意外にもあっさり鍵が外れる。 蓋を開けたフーケの笑みが引きつった。 「え…? ま、まさか……、これが『破壊の杖』…?」 しかし、今は考えている暇は無い。蓋を閉じ、急いでゴーレムの肩に戻った。 去り際に杖を振る。すると、壁に文字が刻まれた。 『破壊の杖、確かに領収致しました。土くれのフーケ』 再び黒ローブのメイジを肩に乗せ、ゴーレムは歩き出した。魔法学院の城壁を一跨ぎで乗り越え、ズシンズシンと地響きを立てて草原を歩いて行く。 そのゴーレムの上空をシルフィードが旋回する。 悟空は巨大なゴーレムを見つめながら、タバサに尋ねた。 「あいつ、壁ブッ壊してたけど、何してたんだ?」 「宝物庫」 「あの黒ローブのメイジ、壁の穴から出てきた時に、何かを握っていたわ」ルイズが言った。 「泥棒か…。しかし、随分派手に盗んだもんだな」 その時、草原の真ん中を歩いていた巨大なゴーレムが、突然グシャッと崩れ落ち、土の塊と化した。 4人は地面に降りた。肩に乗っていたはずの黒ローブのメイジが見当たらない事に気付いた悟空が素早く気を探る。 「ゴクウ、追いかけられる?」 「…駄目だ、完全に気を消してやがる……」 あのメイジの気は、既に消え失せていた。 前ページ次ページサイヤの使い魔
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初心者向け講座/モンスター種族別対処法 [#qda2e378] 初心者向け講座/モンスター種族別対処法 [#qda2e378]各種族への基本対処法 [#r52738c0]ちょっと賢い対処方法 [#u52fe8ef] 属性攻撃について [#c810b5f3] レジェンドモンスターに出会ったら? [#c261283b] スーパーモンスター [#j14f97e5] 各モンスターの傾向と、それへの対処法を初心者さん向けにまとめてみました。 モンスターの並び順は、エピック進行に依存する登場順。 クエストのみで登場する種族は、下の方になります。 なおボスモンスターについては、ご自身の目でお確かめになってください。 各種族への基本対処法 [#r52738c0] スライム族基本的には最初に目にする種族。特に言うこともなく、速攻でやっておしまい。 なかには、レッドスライムのようにスペルを吐いてくるものもありますが、着弾地点から離れて始末。 (「!」マークが出てから移動しても回避できます) ブルーナイト族ゼオバルガの方は、最初に目にする種族。素早く攻撃を仕掛けて始末。 ナイト族の中ではもっとも下位で、攻撃を受けてもさほど痛くはないので、 『敵の背後に回って攻撃』『敵の攻撃を空振りさせて反撃』といった、対ナイト族との闘い方を憶えるのにちょうどいいでしょう。 上位のブルーナイト族は盾で防御しながら近づいて来ます。 エースになると、生意気にこちらの攻撃のリーチ外で停止しやがります。 パワーソードや追尾orリーチの無いフォースで迎撃する時は注意。 ブラックナイト族第一章の中では強敵かもしれません。突進攻撃を受けるとダウンさせられます。 直進する槍突進をかわして、ブラックナイト族の後ろから攻撃を仕掛けると安全に対処可能。 攻撃前の予備動作が他の敵よりも分かりやすい(槍を前に向けて構えます)ので、 それが見えたらその場から横方向に移動すれば大丈夫。 但し、ギルガメスとゼオバルガは、突進の終着地まで追い掛けないといけません。無視できるなら無視、倒さないといけない場合は、壁際等に誘導して突進距離を短くする等の工夫をしましょう。 ギルガメスは盾で防御すると自分の目の前に止められるのでオススメ。 初心者向けではないかも知れませんが、ワルキューレのパワーソードやゼオバルガの溜めパンチを タイミングよく当てるとヒットしたポイントで止まりますので、攻撃を受けずに済みます。 ワルキューレのスラッシュ移動(パタパタ)で追いかけつつ回避することもできます。 ハイパーナイト族HPが一定量減らされるまでその場を動かず(旋回はします)、接近した者を武器で殴りつけます。 武器を振りかぶった後を狙って後ろから攻撃すると楽勝。なお正面から攻撃すると、盾で防御することもあります。 ワルキューレやヤング カイの通常攻撃で距離を取って攻撃していると防御されっぱなしでダメージが通らなくなります(距離によってはゼオバルガも)。横や後ろに回りこんで攻撃するか、フォースを使いましょう。 ただしワルキューレのハリケーンショットは最初の数発がガードされてしまうのであまりダメージは与えられません。 上位になるにつれ旋回速度と耐久力が上がり、攻撃の予備動作が素早くなります。 ハイパーナイト族はスタン・スリープといった状態異常で無力化することができません。 物理攻撃に強い分、魔法攻撃(特に雷)には比較的弱いです。 完全に密着すれば攻撃を喰らわずに一方的に攻撃を加える事ができたりします。少しでも離れると駄目なので間合いには注意。 スカウト族とにかく逃げ足が速い!ワルキューレ以外だとその逃げ足に苦戦を強いられるかも。 ただ、打たれ弱いモンスター。遠距離から攻撃したり、機動力のある攻撃手段を取れば良い。 攻撃されるとキャラと距離を取ろうとするので、壁際に追い詰めて行けば効率的に倒せます。 ローパー族触るとダメージを受け、触られ続けると知らない間にHPが減らされる。HPドレインをしてくる事も! フォースで始末するか、間合いを取りながら戦うのが一番。ヤング カイのプロテクションを一瞬ではぎ取ります。 ちなみに、ギルガメスなら盾防御でAPをもりもり回復出来ます。脱出はアースクラッシュで気絶させましょう。(ボタン押した状態で選択で可) また、ゼオバルガも溜め攻撃を当てるだけでAP回復できるので、有効活用しましょう。 接触ダメージの範囲は意外に狭いので、リーチが判ればダメージを受けずに戦えます。 立ち止まって体を傾け、体当たりしてくる攻撃がダメージが高いので注意。 ローパーが動きを止めた所を確認してから反対側に回れば回避出来ます。 アサシン族マップを素早くちょこまかと歩き、遠方からナイフや爆弾を投げて攻撃してきます。 防御は低いので接近戦を仕掛けたいところ。ギルガメスはダッシュアタック、ゼオバルガはアームオフの出番。スカウト族と同じく、壁際に追い詰めると良いでしょう。 マジシャン族ワープを繰り返し、自分やターゲットに向かって魔法を放ってきます。(魔法攻撃扱い) やはり防御は低いため、魔法の着弾点と、モンスター出現地点を見極めて攻めに出れば大丈夫です。 アーチン族ウニのようなモンスターで、ローパー同様触るとダメージを受けてしまいます。 アーチンに接近したり、触られないようにすれば何とかなる。ヤング カイのプロテクションを一瞬ではぎ取るため注意。 ローパー族と同じく、ギルの盾防御やゼオの溜め攻撃でAP回復を狙えますが、アーチン族は接触ダメージが大きい為、注意が必要です。 リザードマン族武器を大きく振りかぶって攻撃。当てられるとスタン(気絶)状態になります。この攻撃の当たり判定はかなり広いので、少し余裕を持って避けましょう。 振りかぶりが終わったあとを狙って攻撃しに行くと、大きなダメージを受けずに済みます。普通に武器を正面に振るう攻撃もします。 魔法防御は低いので、ヤング カイの通常攻撃や属性(特に炎)を持った攻撃が良く効きます。 ボーン族通常攻撃で普通にやっつけると、その場に倒れ、しばらくしてから復活して再び襲ってくる。もう一度倒せば消える。 フォースで倒せば復活せずに消滅。ワルキューレのヒールレイン、ヤング カイのヒールでもダメージが入ります。 倒れた状態にフォースでとどめを刺すときに限り、ワルキューレのスリープショットなどのダメージが出ない攻撃でも倒せます。 ウーズ族バブルスラ(ry のような生物で、移動中はこちらの攻撃を一切受けません。つまりウーズ族が立ち止まった所を狙うしかない。 (フォースであれば、移動中でも攻撃が当たるようです) マップによっては壁の陰に隠れていて見落としがちなので、ターゲットボタンをよく注意しておきましょう。 ワルキューレなら距離をおいて矢をヒットさせたらパワーソードを溜め、近寄って来たところを斬りましょう。 ミラーナイト族キャラクターを見つけると、足早(*1)に接近し、素早く武器を振りかぶります。 足の速いブルーナイト族と思えば、それでオーケーです。なおミラーナイト族はよく「マジックミラー」を落としますよ。 レッドナイト族ナイト族の中では比較的上位。素早い攻撃と、やや固めの守りを備えています。「ブルーストーン」をドロップすることも。 剣で突いてくるため、ブルーナイトやミラーナイトよりも攻撃のリーチが長いので、ワルキューレの場合は正面からの斬り合いは注意。距離によっては一方的に攻撃を喰らってしまいます。 これも、上位のものは盾を構えながら接近してきます。 攻撃しようとしている相手が背を向けていると攻撃しないで固まるので、その間に他のプレイヤーに攻撃してもらったり ホーリーレインやアイスストーム、オービタルリフレクターなどの自分の向きを変えないフォースで攻撃することもできます。 (ターゲットしてホーリーレインを撃つとその後矢を射るために向き直してしまい、攻撃を受ける可能性があります。自分をターゲットして使うのも手です) ゴースト族死したマジシャンの怨霊。ワープ移動をしっかりと受け継いでいます。 ダメージを受けることよりも、現れては消え・・・というのが非常にウザイかもしれません。キャンドルで見破ることが可能。 ヤング カイのヒール、ワルキューレのヒールレインでダメージを与えられます。 ゴーストの攻撃を受けると毒状態(緑色のもやがかかった状態)になり、一定時間HPが減少し続けます。カイのアドベンチャーグローブ、ギルのヒーローズバンテージを落す事も。 スピリット族いくら攻撃力が高くとも、物理攻撃がほとんど効かないのが特徴。回復魔法で近くにいる敵や自分自身を回復させることも。 素早く倒したいなら、フォースかヤング カイの通常攻撃で。 ミミック族始めは宝箱に擬態しています(ミニマップにも宝箱として映ります)が、近寄るとモンスターになって現れます。 移動速度は遅いですが、割と攻撃力が高いので注意。落ち着いて背後を取って攻撃。倒すと爆弾を残すので、すぐその場から離れましょう。 特に、「試練の旅」第二マップでミミック族がいるようなら、すべての宝箱を確認することです。意外と見落としがち。 ウィスプ族触ると固定ダメージ200を受けてウィスプは消滅します。普通は逃げるしかありません。 カイのプロテクションやクリスタルボディといったアーツの効果を無視してダメージを受けます。 200ダメージ受けても生き残れる時は体当たりして消してもいいですが、すぐに回復しないと危険です。 ゼオバルガのみ、反撃ダメージを与えられる装備・状態でトランスフォーメーションし 体当たりすることで無傷で消火することが可能。(脚部ユニットが無限軌道タイプ以外) 天界の戦士(ワルキューレ1-1等)、古代の戦士(ゼオバルガ3-2)は、各ナイト族と同じパターン。 ちょっと賢い対処方法 [#u52fe8ef] 上記のモンスター対処法は基本として知って貰うこととして・・・アーツの活用 アーツにはモンスターの状態を変化させるものがいくつか存在します。気絶させたり、魅了したりするのも立派な戦術。 また自身の能力を強化して臨んでも良いでしょう。結果的に被ダメージ量が減ります。 フォースの活用 大勢の敵を相手にしたり、固い敵を相手にするならばフォースでドカン。なかには状態変化させるフォースも存在。 ヤング カイの「コールギル」、ゼオバルガの「ウェポンバリア」のように、ちょっと特殊なフォースもあります。 特殊攻撃等の活用 ギルガメスならガード、それ以外のキャラは溜め攻撃を行うことで戦局を有利に進められます。使うタイミングが肝心。 アイテムの活用 魔法のスクロールや、スリップダメージを与えるアイテムを使うのもひとつの手段・・・かも? そして最後は color(red){逃げること};です。その場では何とか倒せても、その大幅なタイムロスのせいでボス戦などで color(red){タイムアップして衰弱死してしまっては元も子もありません。}; color(red){容易に勝てる相手だけを倒し、時間を節約するために逃げる。これも立派な戦術です。};ただし敵を全滅させないといけないイベントは頑張って倒すしかありません。 属性攻撃について [#c810b5f3] モンスターの中には、属性攻撃が有効なものもなかには存在するようです。逆に言えば、属性攻撃が効果的ではなく、少ししかダメージを与えられないことも。 炎属性 ヒットすると燃えるエフェクトと共に、炎が燃える音がします。植物や液体系に効きそうかも? 主な武器:ボルテックグラーゼ、ヌーカー、ファイアアロー 等 風属性 ヒットするとつむじ風のエフェクトと共に、「ドゥーン」と音がします。ドゥーンドゥーンと連続して鳴らす事に意義がある(笑) 主な武器:シロッコ、フェアリーアロー、エアロキネシスPGS 等 雷属性 ヒットすると青い稲妻が走り、ピシャーンとしびれる音がします。修羅の剣がメジャーですが、それ以外はたまにしか使われない傾向があるかも・・・ 主な武器:神木の矢、修羅の剣、超電磁ドリルグラーゼ 氷結属性(とここでは呼ぶことにする) ワルキューレには「氷結の術」がありますが、最初から氷結属性を持っている武器もあります。武器をヒットさせると一定確率で敵の足下が凍り付き、移動速度を低下させます。 主な武器:アイスアロー、ゼファー、サイコロキネシスPGS 聖属性(とここでは呼ぶことにする) 不死系モンスター(ボーンソルジャー・ゴースト族)に対して大きなダメージを与えられます。ワルキューレの「ホーリーレイン」はこの属性を持っています。 主な武器:ホーリーアロー、破魔矢、ホーリーエンブレム レジェンドモンスターに出会ったら? [#c261283b] レジェンドモンスターって? レジェンドモンスター(レアモンスターとも)とは、 color(red){大幅に能力が強化されたモンスターであり、体力や攻撃力は各種族の基本モンスターよりも遥かに高く、十分な装備を持った上級者のキャラクターでさえ倒されることがあります。}; クエストメモの各クエストのページに、そこに出現する可能性があるレジェンドの名前(場合によっては写真も)が載っています。 《とらわれの英雄たち》ブルーゴーレムや、《聖地奪還》ハイパーローパーなどに遭遇したら? color(red){勝てないと思えば諦めて逃げましょう。裏クエストに初心者さんが来ることが推奨されない理由は、この強力なモンスターとの連戦があるためです。}; ※《とらわれの英雄たち》ならブルーゴーレムが現れる部屋には回復ポイントがあるのでダメージを受けてもすぐ全快できます(*2)し、《聖地奪還》は遭遇しさえすれば赤箱条件達成ですから無理に倒す必要はありません。 ランクが上がり、フォースやアーツ、能力が身に付けば、どのキャラでも一人でレジェンドモンスターと渡り合えるようになります。 またレジェンドモンスターには、気絶や眠りなどの状態変化が効くものもあります(ギルガメスのバッシュ、ワルキューレのスリープショット等)。 スーパーモンスター [#j14f97e5] 「虚ろなる魔塔」「魔塔(まとう)」「女神の凱旋」「女神(めがみ)」限定で登場する、でっかい(HP 防御力が高い)だけのモンスター。 ・・・それだけです。レジェンドモンスターほど、高い攻撃力はありませんがダウン効果のある攻撃をしてくるのもいます。ただ大きさがあるだけですから。ですが、HPはかなりあります。弱い武器では時間が掛かるでしょう。 フォース連携で、力を合わせてやっつけましょう!レアアイテム獲得のチャンス。 物理防御が異常に高かったり(例:スーパーハイパーナイト)、 魔法防御が異常に高かったり(例:スーパーアキンドナイト)するものもいます。 ギルガメスは盾ガード、パリングが出来ない事に注意、 例外的にスーパーゴーストとスーパーグリーンスライムにはパリング出来ます。装備によっては4桁ものダメージを与えられるので非常に有効です。
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メニュー トップページ メニュー メニュー2 スパⅣいぶきメモ帳 体力表 起き上がり ゼロから始めるいぶき 必殺技 飛び込み 防御 対空 いぶき立ち回り いぶき起き攻め 起き上がりフレーム ターゲットコンボ考察 クナイコンボ 破心衝コンボ 破心衝コンボ2 霞朱雀 確定反撃 セービング確定反撃 ウルコン使い分け ウルコン使い分け2 リュウ対策 リュウ対策2 ケン対策 ガイル対策 春麗対策 ザンギエフ対策 ダルシム対策 本田対策 ブランカ対策 フェイロン対策 キャミィ対策 DJ対策 T・ホーク対策 バイソン対策 バルログ対策 サガット対策 ベガ対策 ベガ対策2 アベル対策 C.ヴァイパー対策 ルーファス対策 フォルテ対策 セス対策 豪鬼対策 剛拳対策 ローズ対策 ガイ対策 ダン対策 さくら対策 アドン対策 元対策 コーディ対策 まこと対策 ダッドリー対策 ジュリ対策 ハカン対策 いぶき対策 他キャラの対いぶきガー不 簡易入力 いぶきネタ いぶきネタ2 いぶきネタ3 トレモ いぶきネタ動画 いぶき攻略動画 いぶき対戦動画 攻略リンク AA チラ裏 成長記録 ニコ動マイリスト ジャンル別 +ACT 悪魔城ドラキュラ イー・アル・カンフー カラテカ キン肉マンマッスルタッグマッチ ショックトルーパーズ ショックトルーパーズセカンドスカッド 心霊呪殺師太郎丸 スーパーマリオブラザーズ スーパーマリオワールド スパルタンX 大乱闘スマッシュブラザーズX ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ チャレンジャー ドルアーガの塔 パックランド バーチャロンオラトリオタングラム バブルメモリーズ 炎の料理人 クッキングファイター好 メタルギアソリッド総合 メタルギアソリッド3 妖怪道中記 ロックマン2 ロックマン3 ワルキューレの伝説 +対戦格闘 新・豪血寺一族 サイキックフォース2012 ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産 スーパーストリートファイター2X(+ハイパー他) スーパーストリートファイター2 ターボ HD Remix ストリートファイター3 バーチャファイター5 風雲黙示録 北斗の拳 MUGEN 龍虎の拳 龍虎の拳外伝 +STG 斑鳩 イメージファイト エースコンバット ガンバード2 グラディウス2 グラディウス3 グラディウス5 Call of duty4 コズモギャング・ザ・ビデオ サンダーフォース5 ゼビウス 達人王 ティンクルスタースプライツ デススマイルズ 東方project総合 東方紅魔郷 東方風神録 爆裂無敵バンガイオー バルクスラッシュ HALO3 虫姫さまふたり むちむちポーク ライデンファイターズJET +RPG RPGツクール グランディア セガガガ ドラゴンクエスト2 ドラゴンクエスト3 ファイナルファンタジー4 ファイナルファンタジー5 ポケットモンスター ポケモンバトルレボリューション ロマンシングサガ ワルキューレの冒険 +SLG SDガンダム ガチャポン戦士2 カプセル戦記 +SRPG サクラ大戦 Namco X Capcom ファイアーエムブレム 紋章の謎 ファイアーエムブレム トラキア776 +PZL 進め!対戦ぱずるだま テトリス ザ・グランドマスター3 対戦とっかえだま ときめきメモリアル対戦とっかえだま ときめきメモリアル対戦ぱずるだま +TBL オセロ カルドセプト2EX カルドセプトサーガ 五目並べ 将棋 +SPT キャプテン翼3 キャプテン翼5 キャプテン翼(PS2) セガサッカースラム 東方サッカー ハイパーオリンピック イン アトランタ マッハブレイカーズ +RAC ForzaMotorSport2 +ADV AIR CLANNAD 四八(仮) スクールデイズ ひぐらしの鳴く頃に プリズムアーク ブルークリスタルロッド +音ゲー アイドルマスター くまうた 大合奏!バンドブラザーズ +脳トレ系 そろばんDS +ETC Click&Create あいうえお順 +あ行 RPGツクール アイドルマスター 悪魔城ドラキュラ イー・アル・カンフー 斑鳩 イメージファイト AIR エースコンバット SDガンダム ガチャポン戦士2 カプセル戦記 オセロ +か行 カラテカ カルドセプト2EX カルドセプトサーガ ガンバード2 キャプテン翼3 キャプテン翼5 キャプテン翼(PS2) キン肉マンマッスルタッグマッチ くまうた グラディウス2 グラディウス3 グラディウス5 CLANNAD グランディア Click&Create Call of duty4 コズモギャング・ザ・ビデオ 五目並べ +さ行 サイキックフォース2012 サクラ大戦 サンダーフォース5 四八(仮) 将棋 ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産 ショックトルーパーズ ショックトルーパーズセカンドスカッド 新・豪血寺一族 心霊呪殺師太郎丸 スーパーストリートファイター2X(+ハイパー他) スーパーストリートファイター2 ターボ HD Remix ストリートファイター3 スーパーマリオブラザーズ スーパーマリオワールド スクールデイズ 進め!対戦ぱずるだま スパルタンX セガガガ セガサッカースラム ゼビウス そろばんDS +た行 大合奏!バンドブラザーズ 対戦とっかえだま 大乱闘スマッシュブラザーズX 達人王 ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ チャレンジャー ティンクルスタースプライツ デススマイルズ テトリス ザ・グランドマスター3 東方project総合 東方紅魔郷 東方風神録 東方サッカー ときめきメモリアル対戦とっかえだま ときめきメモリアル対戦ぱずるだま ドラゴンクエスト2 ドラゴンクエスト3 ドルアーガの塔 +は行 バーチャファイター5 バーチャロンオラトリオタングラム ハイパーオリンピック イン アトランタ 爆裂無敵バンガイオー パックランド バブルメモリーズ バルクスラッシュ ひぐらしの鳴く頃に ファイアーエムブレム 紋章の謎 ファイアーエムブレム トラキア776 ファイナルファンタジー4 ファイナルファンタジー5 風雲黙示録 ForzaMotorSport2 プリズムアーク ブルークリスタルロッド HALO3 北斗の拳 ポケットモンスター ポケモンバトルレボリューション 炎の料理人 クッキングファイター好 +な行 Namco X Capcom +ま行 マッハブレイカーズ MUGEN 虫姫さまふたり むちむちポーク メタルギアソリッド総合 メタルギアソリッド3 +や行 妖怪道中記 +ら行 ライデンファイターズJET 龍虎の拳 龍虎の拳外伝 ロックマン2 ロックマン3 ロマンシングサガ +わ行 ワルキューレの冒険 ワルキューレの伝説 その他 +総合 ウメハラ office CM 東京ゲームショー ハード・業界 ここを編集
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決闘騒ぎから少し時間をさかのぼり、ここは本塔の最上階にある学院長室。 学院長であるオールド・オスマンの部屋である。 長い白髪と美髯をたくわえた、絵本に出てきそうな『魔法使い』のイメージそのままの老人である。 年齢は百歳とも、もっと生きているとも噂されている。本人も知らないかもしれない。 さて、そのオスマン老は昼下がりのこの時間、何をしているのだろう? 「―――――オールド・オスマン。暇だからといって、私のお尻を揉むのは止めてください」 「減るものではないし、良いではないか」 自分の秘書へのセクハラに精を出していた。とんでもないじじいである。 「減ります。私の中の何かが。アッ・・・」 「かかか、そんなことを言いつつも本音は違うんじゃないかの、ミス・ロングビル。 遠慮はいらんぞ」 答えつつも理知的な顔立ちが凛々しい秘書―――――ミス・ロングビルへとセクハラを続けるオスマン。 指をたわわな尻肉に喰いこませ、揉む。揉みしだく。 執拗な動きに、ロングビルの口から微かな吐息が漏れる。 「のう、ミス・ロングビル。真実とはどこにあるのじゃろう? 決して忘れてはならない物は、果たして人の手に掴める物なのか? ―――――いや、弱気になってはいかん。わしは必ず掴んでみせる!」 唐突に、力強く宣言するオスマン。 ここだけ聞けば、世の深淵を探求せんとする崇高なメイジに見えなくもない。 (うむむ、この感触・・・下着を着けていないっ!? いやいや落ち着けワシ、それぐらい布面積の小さい下着ということかっ・・・。 い、いけない秘書じゃミス・ロングビル・・・こんなモノでワシをまた挑発して・・・1 本当は襲われ願望があるんじゃないのかっ・・・!) まぁ、彼の今の脳内と行動を見れば、正体は明らかであるが。 と、ロングビルは息を一つ吐き、 「ふんっ!」 ドゴォッ 「げふっ」 次の瞬間、見事な回し蹴りがオスマンにヒットした。 倒れ付したオスマンの腰の辺りへと、さらに追撃の蹴りを見舞うロングビル。 「腰の調子が悪いと先日おっしゃっていましたねオールド・オスマン?」 ゲシゲシッ 「マッサージをしてあげましょう」 ドスッドスッ 「自己流でよろしければ、ですが」 ガンッ!ガンッ! 蹴りは、だんだんと強くなっていく。 「ふぐぉぉぉおおお、おふぅっ!はっ!ごっ!むっ! や、止め・・・・いや、やっぱりもうちょっと・・・・!」 息を荒くしながら制裁を続けるロングビルとそれを抵抗もせずに受け続けるオスマン。 2人とも新しい世界を垣間見始めていた。この世の真実などではなく、一言で言うとSとMの世界を。 何なのだろう、この学院長室は。 そのとき、扉の外からバタバタとせわしない足音が近づいてきた。ハッとする室内の2人。 直後、ガタンと扉を開けて室内に飛び込んできたのは教師のコルベール。 『炎蛇』の2つ名を持つ炎系統のメイジである。昨日の使い魔召喚の儀式を監督していた教師でもある。 「オールド・オスマン!」 「何じゃね、ノックも無しで。騒々しいぞミスタ・ヘルモーズ。 頭からレギオン・イレイザーでも撃てるようになったのか?」 「あ、これは失礼・・・ってコルベールです!何をわけの分からない事を!」 応じたオスマンは、一瞬前までの嬌態がまるで幻だったかのごとく、 重厚なセコイアのテーブルに座って腕を組んでいた。ロングビルも同様である。 早業・・・いや、神業であった。 「それよりも、大変なことが分かったんです!これを見てください!」 「大変な事など、あるものか。全ては小事じゃ・・・これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。 こんな古い文献がどうしたというんじゃ?」 「私は、ちょっと失礼いたしますわ・・・」 詳しい話が始まる前に、ロングビルは自分から退室していった。 なにやら込み入った話らしい、と感じ取ったのもあるし、オスマンの執拗なセクハラでズレた 下着の位置を直したくもあったのである。 ロングビルが退室して十数分後。 一通りの話を聞いたオスマンの顔は、幾分緊張に引き締まっていた。 「―――――つまり、噂の『人間の使い魔』に刻まれたルーンが気になったので 一晩かけて調べてみた結果・・・・始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』に行き着いたと」 オスマンは、コルベールが書いたルーンのスケッチと、文献とを交互に見比べる。 「そうです!あの男性の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものと全く同じ・・・。 つまりあの男性は、『ガンダールヴ』だということですよ!これが大事でなくて何なんですかオールド・オスマン!」 「そう興奮するんじゃないわい、さっきから唾が飛んできてかなわん。 ふむ・・・・確かに同じルーンじゃが、それだけで決め付ける訳にもいくまい。 元々が伝説や御伽噺に等しい大昔の話じゃ。ここに書かれとるルーンが本当に正しいのかも確認はできんし、 単に『ルーンの空似』という事も考えられるじゃろう」 「それは確かにそうですが―――――」 その時、扉が控えめにノックされた。 「誰じゃ?」と問うオスマンに答えたのはロングビルであった。 ヴェストリの広場で生徒が決闘騒ぎを起こしているのを聞きつけ、急ぎ報告に来たのである。 オスマンはあまり気のない様子で報告を聞いていたが、決闘をしている一人が まさに今話題にしていた『人間の使い魔』だと聞いて、コルベールと顔を見合わせた。 「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが」 「アホか、たかが子供の喧嘩を止めるのに秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 わかりました、と答えロングビルは立ち去っていった。 ―――――コルベールは唾を飲み込むと、オスマンを促す。 「オールド・オスマン・・・」 「うむ」 オスマンは頷き、杖を振って壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子を映し出した。 ちょうど、南雲が6体のワルキューレを前にナイフを引き抜いた所であった。 ヴェストリの広場―――――戦闘中の南雲に、『奇妙』な事態が起こっていた。 ナイフを手にした瞬間、南雲の脳裏にいくつもの映像が浮かび上がったのである。 ―――――ナイフを使った、ありとあらゆる戦闘法が。 無数の斬撃と、刺突と―――――それらのモーションが、まるで数多の戦場から 場面を切り取って繋ぎ合わせたかのように再生されている。 (これは・・・何だ?) 無論こんな事は南雲にとっても初めての経験である。 かといって『これ』が南雲にとって邪魔なものかと言えば、そんな事も無い。 戦闘の思考を妨げることもなく、全てを違和感無く理解できる。 把握しつくしたはずの動きの一つ一つが、今一度脳裏に刻み込まれ――――― 手に馴染んだ刃物の感覚が、より鋭敏になったような気がした。 ワルキューレを見やる。 遅い―――――南雲の目には、敵の動きが非常にスローモーに見えていた。 神経も、筋肉も、骨格も・・・・その身を支える全てが、常人とは根本的に異なるのである。 そして、ワルキューレ達の向こうに立つギーシュ・ド・グラモンを視界へ入れた瞬間。 南雲の脳は、奇妙なこの事態への思考を中断させた。 そうだ―――――『これ』の事は、後で考えても良い。 今は・・・・『敵』を倒せ。 南雲は走った。 ―――――いや、後に薄く残像を生じて走るそれを『走る』とだけ表現してよいものか。 黒髪と、黒で揃えた衣服のせいもあろうか・・・彼の移動は、黒い光の一閃であった。 一体目のワルキューレ。反応し構える事すら出来なかったそれの首―――――最も細くなっている部分に刃を差し込む。 何の抵抗も無くそれは切り裂かれた。 首が宙を舞う。 二体目。斜め下から刃を切り上げる、さっきと同じく首へ―――――。 結果は同じく。首が宙を舞う。 三体目・・・四・・・五・・・・六体目。 詳細を書くまでも無い、その全ては・・・・同じく首を断たれたのだから。 南雲が動きを止めた直後。 ガンガンガンッ、と重いものが地面に落ちる音が、連続して響く。 最初のワルキューレが首を断たれ、それが地面に落ちるまでの時間。 南雲が、残る全てのワルキューレを屠るまでに要した時間であった。 ゴーレムであるワルキューレ達の顔が、苦痛に歪む事など無い。転がる頭の表情は、どれも変わることなく穏やかであった。 ―――――これが人間だったらどうか? 喜び、悲しみ、怒り・・・・それらの表情を留めたままの頭が、同じように転がるのではないか? ―――――首を断たれたと感じるよりも早く、苦痛無きまま死ぬが故に。 南雲は、頭部を失い崩れ落ちるワルキューレ達の方を見ようともしない。 驚愕を通り越して、呆けたような顔を連ねる周囲の生徒達の方を見るのでもない。 見据えるのは、ただ一人―――――ギーシュ・ド・グラモン。 ギーシュは顔が蒼白となり、過呼吸だというのに息ができないような錯覚を感じていた。 「あっ、ああっ・・・・ひぃっ・・・はっ・・・あ、あ・・・」 ありえない。こんな事。 これは、夢か?悪い夢なのか? だってあの男は、ただの平民。自分はメイジだ。 いや、違う・・・・・『現実』だ。 この平民の男が、ワルキューレ達を倒したのも。 その男・・・南雲が、再び動き出し―――――自分の目の前までやってきているのも。 ギーシュは混乱の最中にありながらも、自分が口にすべき言葉を正しく選択し、口にしようとした。 すなわち『参った』と。そうすればこの戦いは終わる―――――終わってくれる。 しかし―――――その喉に南雲の手が伸び、ギーシュは喉に、刺すような鋭い痛みを感じた。 思わず喉を押さえ、そして愕然とする。 (こ、声がっ・・・・!?) 声が―――――出ない。宣言が、出来ない。 それはすなわち『続きがある』事を意味した。 この戦いが―――――もはや戦いにもならぬ戦いが。 次の瞬間。 ギーシュは己の体が宙にある事を理解した。あたかも先程のワルキューレの首の運命をなぞるがごとく。 南雲がギーシュの上着を掴み、片手のみで上へと投げ上げ、そして――――― ズダンッ! 「・・・・・・っ!!!」 地面へと、叩きつけられた。土埃が舞い、上等な衣服が汚れ・・・・どこかの骨が、折れた。 そのギーシュの脇に、彼の薔薇の造花が落ち―――――南雲に、いとも容易く踏み潰された。
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前ページ次ページゼロのアトリエ 心配そうに二人を見守るヴェルダンデ。 そこから正三角形を描くように対峙するギーシュと、ヴィオラート。 ルイズがヴェルダンデの鳴き声に気付いた時には、既に周りを生徒達が取り囲んでいた。 「ヴィオラート!」 ルイズの声に反応し、人垣が通路を作る。 「何で、あんた決闘なんか…ギーシュも、女の子と決闘なんて何考えてんの!?」 「ミス・ヴァリエール。男には絶対に引けない時ってものがあるのさ。」 「ルイズちゃん…ごめんね。あたし、努力しないで後悔するのは嫌だから。」 二人はそれだけ答えると、ルイズの到着を合図にしていたかのように動き始める。 「ああもう! 使い魔のくせに、ちっとも私の思うとおりに動かないんだから!」 ルイズは、諦めの言葉を吐いた。 ヴィオラートなら何とかするだろう、そう思ったから。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師7~ 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 創り出した『ワルキューレ』の後方で、自信満々に宣言するギーシュ。 だが、ヴィオラートの反応はギーシュの、いや集まったギャラリー全員にとって予想外のものだった。 「かわいいゴーレムだね。」 「なっ…!! このうえ、僕のワルキューレを愚弄するか!」 かわいいゴーレムと言い放ったヴィオラートの言葉に、周囲の空気が変わる。 数々の石人ゴーレムや、鉄人ゴーレム…金剛ゴーレムまで屠ってきたヴィオラートにしてみれば、実に自然な、むしろ好意的な評価であったのだが…ギーシュ達が、その事実を知るよしもない。 「かわいそうだが、痛い目にあわないと理解できない性分のようだね。」 ヴィオラートに向けてそう言い放つと、ギーシュはワルキューレを突進させる。 「あたしは、錬金術師だから。」 ヴィオラートはバッグからトゲだらけの何かを取り出し、ワルキューレに狙いを定める。 「錬金術師の戦いを、見せてあげるね。」 ヴィオラートの額のルーンが、輝きを放ち始めていた。 所変わって、ここは学院長室。コルベールの長い長い説明が、ようやく山場を迎えたようだ。 「つまり、あの使い魔は、始祖ブリミルの…何じゃったかな?」 「『ミョズニトニルン』です! このルーンはミョズニトニルンの証に他なりません!」 コルベールは、禿頭に光る汗を拭きながらまくし立てた。 「ふむ、確かにルーンは同じじゃ。しかし、それだけで決め付けるのも早計かもしれん。」 「それは…そうですが。」 コルベールもようやくオスマンとの温度差を感じたのか、学院長室に微妙な空気が流れる。 ちょうどその時、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン。」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「ヴェストリの広場で、決闘している生徒がいるようです。」 「全く、暇な貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。で、誰が暴れておるんだね。」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あのバカ息子か。親に似て女好きな奴じゃ、どうせ女の取り合いじゃろ。相手は誰じゃ?」 「それが、メイジではなく…ミス・ヴァリエールの使い魔だという話で…」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師達は、決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可を求めています。」 オスマン氏の目が、鷹の様に鋭く光った。 「ふん、子供のけんかじゃ。放っておけと伝えよ。」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 「オールド・オスマン。」 「うむ。」 オスマン氏が杖を振ると、壁の鏡にヴェストリ広場の様子が映し出された。 ヴィオラートは驚いていた。ウニを持った瞬間、ウニの成分・能力・産地までもが手に取るように判った。 そしてまるで、ウニが体の一部、手の延長にでもなったかのような一体感。 「うにー!!」 ヴィオラートの叫びが、ヴェストリの広場に響き渡った。 (栗だ) (栗だよな) (くり。) (それは栗だ) (どう見ても栗だ) (どちらかといえば栗だな) その瞬間、ギャラリーの心が一つになる。 ウニと名づけられた何かが、迫るワルキューレに接触したその瞬間――― ウニは、ワルキューレを巻き込んで大爆発し、ワルキューレごと粉みじんになった。 (ウニって、こんなに強かったっけ…) ヴィオラートは、額のルーンに関係あるのかな? と、ほんの少し考えを巡らせた。 「ば、爆弾!? どこからそんなものを手に入れ…いや、決闘に爆弾を使うなど、卑怯…」 ギーシュの発言は、そこで止まった。ヴィオラートがほんの少し、真剣な顔に変わったから。 「言ったでしょ?あたしは錬金術師。これはあたしが自分のために、自分の力で用意したんだよ?」 ヴィオラートが一歩前に出る。ギーシュが一歩下がる。 「ギーシュくんも、冷静になって、ちゃんとお話できれば、誤解だってわかると思うんだけどなあ。」 ヴィオラートは歩を止め、あくまでも穏やかな笑顔でギーシュに語りかける。努力のあとは認められるが、意識して穏やかな笑顔を作っているというのがまるわかりな、威圧感たっぷりの笑顔で。 「ね? お話を聞いて?」 「く、来るな!」 ギーシュは慌てて薔薇を振る。花びらが舞い、新たなゴーレムが六体あらわれる。 「どうして、わかってくれないのかな…」 ヴィオラートは哀しげにそう呟き、バッグの中から渦巻状のハーモニカを取り出す。 「あんまりはりきりすぎると、こうなるんだよ…ギーシュくん。」 額のルーンが輝きを増し、渦巻状のハーモニカが不思議な旋律を奏でる。 「あ…れ…? こんな、ちかりゃが、はいらにゃ…」 まるで心そのものを削られたかのように、ギーシュは脱力し、地面に倒れ伏す。 広場に、歓声が轟いた。 オスマン氏とコルベールは、遠見の鏡で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 「オールド・オスマン。」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが。」 「うむ」 「見ましたよね!? 不思議な道具を使いこなす、これぞミョズニトニルンの証ではありませんか!」 「うむむ…」 「オールド・オスマン! 早速王室に報告して、指示を仰がないことには…」 「それには及ばん」 オスマン氏は、重々しく頷いた。白いひげが、厳しく揺れた。 「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ? 現代に蘇ったミョズニトニルン!」 「ミスタ・コルベール。大発見だからこそ、慎重にならねばならん。」 「はあ」 「王室のボンクラどもに過分の力を与えて、どうしようというのだね? 戦争でもしようと言うのか?」 「そ、それは…」 「そしてまあ、間違いの可能性もまだ無いとはいえん。報告するにしても、拙速に過ぎる。」 「ははあ。学院長の深謀遠慮には恐れ入ります。」 「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ。」 「は、はい! かしこまりました!」 オスマン氏は杖を握ると窓際へと向かった。歴史の彼方へと、思いを馳せる。 「伝説の使い魔『ミョズニトニルン』か。どんな姿をしておったのかのう…」 夢見るように、そう呟いた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
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Top 登場人物 エルキュール・バートン エルキュール・バートン 声 佐々木未来 プロフィール 年齢 身長 体重 誕生日 血液型 好きなもの 嫌いなもの 16歳 156cm 46kg 10月21日 AB型 小説 人前でトイズを使うこと ミルキィホームズの一員。16歳。緑。愛称は「エリー」。 心優しく人見知りで内気な少女。 肌を露出させることを嫌い、いつも長袖の服を着ている。 強力なトイズを備えているが、過去にトイズのせいで他人を傷つけた事がトラウマになっている。 人見知りな性格と過去の思い出からか、他人と向き合うだけで何も言えなくなり、 その場からすぐに逃げ出してしまい、満足に人と話すことさえ難しかった。 ホームズ探偵学院でコーデリアと出会ってからは徐々に改善されているようだ。 アニメでは街の人に聞き込みを行うなど、かなりの成長が見られる。 真面目だが押しに弱く、悪い誘いに嫌と言えない。 アニメ10話でただ一人勉強をするべきだと主張していた時も、結局他の三人に押し切られてしまった。 小説でもコーデリアとネロの喧嘩を止められず、悩みを抱え込んでいる。 読書が趣味のためか、学院を退学になった際は「私の志集」を売ろうとしていた。 キノコの判別ができたのも、読書で得た知識のお陰だと思われる。 純文学には外す事の出来ない官能表現も熟知しているので、 5話でメアリーのトイズに、6話でシャロのお姫様ごっこに常識的な反応を示した。 トイズは「怪力・重量増加・硬化(トライアセンド)」。 強大な力を発揮し、同時に重量と硬度も増加させる能力。 思い通りに制御するのが難しい反面、出力は非常に強く、 振り下ろされた刀を素手で弾き返したり、増加した自身の重量だけで巨大観覧車を回転させてしまう程。 純粋な接近戦での戦闘能力は作品中最強と言われている。 一定以上のパワーからは加減が利かなくなるが、 小説版においては猫に巻きつけられた針金を指で千切るなどかなり細かい事をしているので、 どの程度まで思い通りに調整できるのかは分からない。 名前の由来はアガサ・クリスティの「エルキュール・ポアロ」及び エルキュール・ポアロの短編集『ヘラクレスの冒険』において、 ポアロの友人であり助手を務める「バートン博士」と思われる。 エルキュール(Hercule)は、ヘラクレス(Hercules)に当てるフランス語であり、 彼女のトイズも剛勇無双の英雄で知られるヘラクレスにちなんでいると思われる。 ファンの間での扱い 恥ずかしがり屋、本好き、真面目なキャラには珍しく(特にアニメで)とてもエロい。 セリフが少なくとも圧倒的な存在感を誇り、姿が見えるだけでもエロいと専らの評判である。 愛好家はエリーの一挙手一投足が全てエロく見えるので、妄想には事欠かない。 エルキュール・ポアロの「灰色の脳細胞」と掛けて「桃色の脳細胞」と呼ばれることも。 エリーのポエム 「月の光のように、強く、儚い、その人の名は、アンリエット・ミステール。 嗚呼月よ、どうかもう一度、闇を照らして」(11話) 「トイズ、それは天より授かりし力。 トイズよ、トイズよ、感謝します。 天よ、天よ、わたしたちを見守っていてください。 空よ、空よ、大きく羽ばたく私たちを包んでください。」(11話予告)
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歌う竪琴の乙女(うたうたてごとのおとめ) 歌う竪琴の乙女 ユニット-ワルキューレ 使用コスト:白1無5 移動コスト:白1無2 パワー:5000 スマッシュ:2 クイック 支援 - 隣接するスクエア+1000(このカードと隣接するスクエアにあるすべてのあなたのユニットのパワーを+1000する。) 戦場に散った味方の戦士を天国にいざなうのもワルキューレの大切な仕事である。 白の中量級ユニット。 支援を持つが効果は微々たるもので、高い使用コストがコンバット・トリック然とした支援能力を殺してしまっている。2点あるスマッシュもこのユニットのコストを重くするだけの足枷にしかならず、デザイン上致命的な構造矛盾を抱えたカードである。 このカードを入れるよりは、聖騎士ホーリー・グレイブなどもっと優秀な6コスト域のカードを採用したい。 この効果はこのユニット自身を+1000しない。 収録セット ファースト・センチュリー ベーシックパック(141/200 コモン) ファースト・センチュリー スターティング・ストラクチャーデッキB 美女と野獣 イラストレーター コガラツ
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何故、こんな事になったのだろう? 周囲を取り囲む生徒たちの歓声にキザったらしくポーズを決めて応えながらも、ギーシュはその実困惑していた。 確かに、女の子にフラれた腹いせで、きっかけを作ったメイドを叱りつけたのは自分が悪い。 それは自覚している。 しかし、だからってアレはマズいだろう。 そう思いつつ見やる先には、虚空より現れる騎影が一騎。 スラリと高い長身、鍛え上げられた体躯。 その総身を覆う青色の軽鎧には、所々にアクセントのように銀色の装身具がちりばめられている。 戦支度にも関わらずの軽装は、まず間違いなくメイジのソレ。 その出現に、ギャラリーとして詰めかけていた観客がどよめく。 「アレと決闘するなんて見直したぜギーシュ!」等と無責任な声援を送ってくる同級生(♂)がいるが、冗談ではない。 (なんでボクがあんなのと決闘しなきゃならないんだ~~~~~!) そう思いながらも、「命を惜しむな、名を惜しめ」が家訓のグラモン家の男子としては、 手をあげられた上、向うから挑まれた決闘を辞することなど論外だ。 論外、なのだが、 (アレは、不味いよなぁ) その決闘相手はと言うと、観客も、これから戦う自分すらも無視して、切なげな溜め息など漏らしている。 (ナメられてる、のかな......) そうして、ギーシュが途方に暮れている時、その決闘をけしかけた張本人であるルイズは、 「はぁ~~~~~......」 これから決闘する二人を取り巻く生徒たちから少し離れた所で、盛大なため息をついていた。 「随分面白そうなコトしてるみたいじゃない、ヴァリエールのくせに」 そんな人混みから離れたルイズに、キュルケが声をかけてくる。 考えてみれば、派手好きなアイツがこんな騒ぎを逃すハズが無い。 「何よ、文句あるの?」 「全然、むしろ逆よ。さっきも言ったでしょ、面白そうだって。 でもこんな面白そうなイベント、アンタが始めるなんて意外ね」 実に楽しそうに話しかけてくるキュルケ。 それとは対照的にルイズの機嫌は悪くなっていく。 「......別にアナタを面白がらせるためにやってるんじゃないわよ」 そう、キュルケの言うとおり、決闘をふっかけるなんて私がするコトではない。 それでも、あの場を収めるには、当事者どうしで決着をつけさせるのが最善策だっただろう。 あのままでは、周囲の貴族たちとまで揉め事を起こしかねなかった。 アイツは売られた喧嘩は間違いなく買う。 そうなれば数十人単位でケガ人が、下手をすれば死人だって出ていただろう。 だからこその決闘だ。 相手を当事者であるギーシュひとりに限定できる上、場所を変えて仕切り直させることでアイツに言い含める時間も得られた。 それに、アイツのデタラメぶりを見れば、他の子たちも今後アイツと揉め事を起こそうだどとは思うまい。 我ながら咄嗟に考え出したとは思えない妙手。 さすが私、こうしてダメな使い魔を御せてこそのマスターよね。 「ウフフフフ......」 知らず、喜悦が声になって漏れる。 「いやね、何笑ってるのかしらこの子」 「――――」 「フフフフフフ」 ソレをキュルケ(とくっついて来たタバサ)が呆れているのにも気付かず、ルイズは得意絶頂で笑い声を漏らし続ける。 「はぁ~~~~~......」 そうして、主が己の機転に酔っている頃、その使い魔は退屈の極みにあった。 この『決闘』に臨むにあたって、主からはイロイロと説明された。 ココでの『決闘』とは、どちらかが負けを認めた時点で終わりという、実際には命のやり取りをすることは無いモノらしい。 だから、オレも相手を殺さず、適当な所で終わらせろ、と。まぁ、そういうコトらしい。 「くだらねえ......」 そんなモノ、決闘でも何でもない。ただのお遊戯だ。 そのような児戯に付き合わされるために召喚された訳ではない。 だが、それも主命とあらば辞することなど論外だ。 論外、なのだが、 (正直、気が乗らねえわな......) その決闘相手は、薔薇の造花を手に、魔術回路を励起させている。 あの細工物が魔術礼装ということらしい。 その花弁が一枚、地面へ舞い落ちる。 『決闘』と言いつつ不意打ちか?と、僅か体を緊張させる。 この魔術回路の状態は、先程の授業での女性教師のソレとほぼ同一。 とすれば―――― 「『錬金』か」 予想に過たず、花弁の落ちた地面が隆起したかと思うと、その土はヒトガタを取る。 やがて、ランサーよりやや小さいくらいの大きさになる。と、次の瞬間、全体が銀色の輝鋼に包まれる。 瞬く間に、土塊だったモノは、甲冑も、ソレを纏うヒトガタも、全てが白銀に輝く金属で作られたゴーレムとなった。 白銀の表面には、木目が波打つような独特の紋様が浮かんでいて、一種芸術品のような美しささえ感じられる。 その変化に、周囲のギャラリーが小さく歓声をあげる。 「ほぉ......」 その魔術行使に、ランサーも感嘆の声を漏らす。 「ボクの二つ名は『青銅』。『青銅』のギーシュだ。 従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するが、構わないね?」 『決闘』相手の坊主が声をかけてくる。 構わないか、だと? 「いいや、むしろ有り難ェ」 「は?」 元より、魔術師相手にマトモな太刀打ちなど期待してはいなかった。 加えて、『決闘』とは名ばかりの、単なるお遊戯とあっては尚更だった。 だが、これほどの人形使いというならば話は別だ。 「思ったより、楽しめそうじゃねえか――――!」 応えて、己も愛槍を手に執る。 その喜悦と戦意に応えるように、左手のルーンが輝きを放つ。 「不味い......」 さっきまでの得意満面は何処へやら、渋面をつくるルイズ。 ソレを見て、キュルケがちょっかいをかけてくる。 「マズいって、何が?ギーシュのワルキューレを見て、今さら決闘なんか吹っかけたのを後悔してるの?」 「まさか。あんな青銅細工相手にアイツが遅れをとるワケないじゃない」 「あら。今朝といい、随分と使い魔のカレの強さに自信があるみたいね。 それはそうと、アレって青銅?『青』銅って言うぐらいだから、あの微妙なカンジの青っぽい色じゃないの?」 「アナタ、本当にモノを知らないわね。もう少し土系統の勉強もしたら?」 そんなキュルケの頓狂な問いに、ルイズは渋面をさらに険しくする。 「あら、まともに魔法を使えなくって頭でっかちの人よりはマシよ」 「......何ですって」 「何よ」 何時の間にやら口喧嘩を始めてしまう二人。 すると、黙々と手にした本を読んでいたタバサが、突如として顔を上げて喋り始める。 「一般に『青銅色』と呼ばれるのは、緑青と呼ばれる青銅に発生した錆の色を指す。 青銅とは銅とスズの混合物で、錆びる前の色は一般に黄金色。含有するスズの量が一定以上になると、白銀色になる。 現在のような鏡ができる以前は、そのような白銀色の青銅を研磨して鏡として使用していたといわれている」 突然の長広舌に、ケンカしていた二人も、唖然としてその矛を収める。 「アナタって本当に物知りねタバサ。じゃあ、あの青銅はスズをたくさん含んでいるってワケ?」 そんなキュルケの問いに、思案顔でルイズが答える。 「多分、ソレは無いわね」 「何よルイズ、この子の言う事にケチつけるの?」 「違うわよ。スズの含有量が多い青銅は強度が下がるの。そんなモノ、わざわざ戦闘用のゴーレムに使わないでしょ」 「ふ~ん。ならやっぱりアレって青銅じゃないんじゃない?」 キュルケの言葉に、今度はタバサが答える。 「――――恐らく、銅とスズ以外の金属も含んでいる。亜鉛やニッケルを含んだ銅はあのような色になる」 だが、とタバサは思う。単に含有する金属の種類を増やしただけとは思われない。 あの紋様、単なる装飾とも考えられるが、わざわざ戦闘で使いつぶすゴーレムにあんな複雑な装飾を施すとは考えにくい。 (何か、まだ秘密がある) タバサが考え込む間に、その解説を聞いたルイズがまたも口を開く 「そう言えば、聞いたことがあるわ。 グラモンの直系のメイジは、鋼鉄よりも丈夫で、より少ない魔力で『錬金』できる金属を使うって。 何代か前の当主がソレの製法を発明して、それからグラモン家は武門として有名になったとか......」 「へぇ~。だったらアナタの使い魔やっぱりマズいんじゃないの? いくらギーシュがドットとはいえ、少ない魔力でも『錬金』できるってコトは、あのゴーレム相当強いんじゃないの?」 キュルケの再びの指摘も、しかしルイズは否定する。 「だから、それが不味いんだってば。 キリのいい所で終わらせろって言っていたけど、あのバカ、ちょっと本気になっちゃってるじゃないの」 むしろ相手のギーシュを案じるような態度をみせるルイズ。 その様子からは、真実あの使い魔の勝利を、カケラも疑っていないのが解る。 そこで始めて、キュルケはルイズの使い魔に興味を向ける。 よくよく見れば、随分とイイ男ではないか。 「へえ......それで?あのカレってどのくらい強いの?」 「そうね、大体――――アレと同じ位ね。素手で」 「アレ?」 ルイズの視線の先を追うと、青色の鱗もまぶしい若いドラゴンが一頭、こちらを窺っている。 「あら、アレってアナタの使い魔じゃない?」 そう言ってタバサを振り返る。 何時の間にやら読書を再開していた友人は、それでも私の声を聞いて顔を上げると、自分の使い魔へと視線を送る。 すると、使い魔である風竜は、きゅいきゅいと鳴き声をあげつつ、 その成竜とそう変わらない大きな体を揺らしながら、ドスドスと足音を響かせながら近寄って来た。 「あれ?やっぱりこのドラゴン、アナタの使い魔だったの?」 急に、ルイズがタバサに声をかける。 突然、大して親しくもないルイズに声をかけられて、それでもタバサは首肯を返す。 「さっきはゴメンなさい、アナタの使い魔に......」 「いい」 (珍しいわね、この子が......) 普段のタバサなら、他人に話しかけられても黙殺することがしばしばである。 それが、ルイズとの間にコミュニケーションが成立している。 「アナタたちって知り合いだったの?」 疑問をそのまま口にする。すると、 「え~と、それは、その――――」 明らかに狼狽した様子を見せるルイズ。 相変わらず、面白い位に態度に出る子だ。 「さっき、私の使い魔が『お世話』になった」 まともに意味の通る答えを返さないルイズに代わってタバサが答える。 他のコなら聞き逃す様な微妙なイントネーションの違いだが、 親友を自負する私や、当事者であるルイズには『お世話』が字義通りの意味でない事が判った。 「へ~え、『お世話』ねぇ......」 「な、何よ!ちゃんと彼女にはあやまったじゃない! そうだ、アナタもゴメンなさいね、イルククゥ」 私のイジワルに強がりを返して、ルイズはタバサの風竜に声をかける。 どうやら『お世話』について謝っているらしい。でも―――― 「いるくくぅ?そのコの名前はシルフィードよ」 「え?でも、だって――――んむむっ!」 続けて何事か喋ろうとしていたルイズだったが、急に口を塞がれる。 ルイズの傍らに立って口を塞いでいるのは、 短く切りそろえられた青い髪、 身長を大きく上回る杖、 他のコには何を考えているか解らない瞳。 間違いなく、タバサである。 何時の間に立ち上がって移動したのか、まったく気付かなかった。 「こっち」 「む~!」 その友人は、広場から校舎の方へ向ってルイズを引きずっていく。 無論、口はふさいだまま。 あの体勢はつらそうである。 「ま、大丈夫でしょ」 別に、タバサは怒っていた訳でもさなそうだし。連れてったからってどうというコトもあるまい。 一方、引きずられていったルイズは、広場から会話が聞かれないくらい遠く離れて、ようやく解放される。 「ーーーーっ、ぷはぁ! な、何なのよアナタ、イキナリ―――」 「あのコの名前はシルフィード」 ワタシの扱いに対して文句を言おうとしたのを遮って、キュルケの友達はそう口にする。 「え?でも、だって」 「あのコの名前はシルフィード」 「いや、だから」 「あのコの名前はシルフィード」 「その」 「あのコの名前はシルフィード」 「―――」 「―――」 全く私の話は聞いて貰えない。 ただただ、全く同じ抑揚で同じセリフを繰り返す相手に、私が口を噤むと、彼女も口を閉じる。 「ええっと、あのコの名前は―――」 「シルフィード」 「わ、解ったわ。シルフィードね」 そう私が口にすると、先程と同様にただ一度、コクンとうなずく。 何だかよく解らないが、深く追求すべきではないだろう。 誰しも人に訊かれたくないコトの一つや二つあるものだ。 トリステイン貴族はそんなコトをいちいち根掘り葉掘り訊かないものである。 そう考えて、うんうんと私が納得していると、タバサの方から私に声をかけてくる。 「どうして」 「え?」 「名前」 「ああ、何で名前を間違えたのかって?」 また、首肯をひとつ返してくる。 どうやら、もともとこういう会話の仕方をする娘であるらしい。 「ああ、それは――――」 と、私が答えようとした時だった。 頭上で、ズガァン!と、何か硬いモノ同士がもの凄い勢いでぶつかったような爆音が響く。 「な、何なの?!」 咄嗟に音のした上方を振り仰ごうとした私の体が、横に引っ張られる。 位置から考えて、すぐ側に居たあのタバサという娘だろう。 何を、と文句を言おうとしたワタシの、すでに上へ向けてかけていた視界が、人間大の何かが落っこちて来るのを捉える。 「っひゃあ!」 引っ張られるがままに体を動かして回避すると、さっきまで私たちがいた場所にソレは落下した。 ズゥン、と重々しい音と振動とともに落着したソレは、原型が何であったのか判らないくらいに、酷くひしゃげていた それでも、その銀色の表面に浮かんだ波打つ様な独特な紋様は、見間違えようもない―――― 「ギーシュの『ワルキューレ』?」 しかし、アレは私のバカ使い魔と戦っていたハズだ。 それが、何で私たちの頭上から降ってくるのだろう? 視線を広場へ転ずると、私たちの方へ注目しながら呆然とする観客たちと、 腰を抜かして地面にお尻からへたりこんでいるギーシュと、 「やっちまった」という顔でコッチを見ている、バカ使い魔の姿があった。 話はほんの少し前へ遡る。 ルイズたちがタバサの使い魔の話をしている頃、ギーシュは目前の『敵』を注視したまま、視線を動かせなくなっていた。 ゴクリ、と口に溜まった唾を嚥下する。 先程、かの騎士が槍とおぼしきモノを中空より取り出してから、ギーシュは極度の緊張を強いられていた。 この緊張感には覚えがある。 まだ自分が今よりもっともっと未熟だった頃、 父や歳の離れた兄に魔法を使った戦い方を教えられていた時だ。 グラモンの家は、その、アレな風聞のせいでユルく見られているようだが、 武門の名に恥じず、魔法の訓練、とりわけ戦闘におけるソレは他家より格段に厳しい。 ギーシュも物心ついた頃には、父や年長の兄たちからビシビシとしごかれていた。 その時の、自分が何をしても通用しない者に挑んでいる時と同じ感覚を、今ギーシュは味わっていた。 コレは、本物だ。 ウワサだけではない。彼の口先だけでもない。 この相手は、強い。 今の自分では、手も足も出ないくらいに。 その直感を裏付けるように、先程から瞬きもせず注視しているというのに、 (打ち込む隙が、見当たらない......!) 相手の騎士はというと、ギーシュと同じく、瞬きもせず、その視線は目前に立つ自分のワルキューレに注がれている。 槍の穂先を僅か下げた構えのまま、微動だにしない。 このまま、ただ闇雲に打ち込んでも、通じるとは到底思えない。 (だけど) 意を決して、ギーシュは手にした杖を握りしめる。 このまま睨み合っても、先に集中が切れるのは自分だろう。 ならば、玉砕覚悟。 自分が作れるワルキューレは、7体が限度。 1体やられただけで、戦力は大きく削がれる それでも、たとえ1体ムダにしたとしても、相手の対応を見る。 その上で、残り6体でどうにかする作戦を練る。 一斉に攻撃させるか、それとも一体ずつ繰り出しての持久戦か―――― その判断のためにも、まずは相手の対応傾向が知りたい。 その為なら、1体を使いつぶすのも止む無しだ。 (よし!) ワルキューレを、じりじりと槍の間合いギリギリまで近づける。 「――――行くぞ!」 一声、気合いとともにワルキューレを突進させる。 突きが来るなら、ワザと喰らって、槍の動きを止める。 薙ぎ払われたら、体で受け止めて武器を掴み取る。 狙いは、あの槍。 ワザと武器の直撃を喰らって、相手の武器を奪い取る。 痛みを感じないワルキューレだから可能となる戦法である。 平民の兵隊を相手にすることを前提とした運用だが、決闘においては有効な戦法だ。 このような決闘の場合、相手の杖を落とさせれば勝利である。 あの槍が杖を兼ねたモノであるのは間違いあるまい。 ならば、ソレを奪った時点で自分の勝ちだ。 もっとも、そんなに上手くいくとはギーシュも思っていない。 相手も自分の獲物を奪われる事は、当然警戒しているハズである。 だからこそ、その防御法を見させてもらう。そのための一撃目。 (さあ、どう出る!) しかし、騎士は間合いに入られても、依然微動だにしない。 予想外の事態に一瞬、躊躇を覚えるギーシュ。 もしや、何らかの罠?既に何か魔法を唱えていたのか? (ままよ―――!) だが、それならそれで、対応を見せて貰う。 そのままワルキューレを突進させて、硬い金属の拳で殴りかかる。 それを、騎士は成す術無く受け入れた――――様に、見えた。 ズシン、と重い音がする。 周囲の女生徒から、小さい悲鳴が上がる。 ワルキューレの拳が直撃したものと思ったらしい。 ――――だが、 「中々やるじゃねえか、坊主」 余裕たっぷりの、飄々とした男の声が聞こえてくる。 「速さもそこそこ、力もなかなかにあるじゃねえか」 言って、ニヤリと微笑む男は、ワルキューレの拳を、掌で受け止めていた。 人間に倍する重量を持つゴーレムの、金属の拳を。 片手で、完全に。 そんな常識の埒外にある真似をやっておきながら、騎士はあくまで涼しげに答える。 「方法としても間違っちゃいねえ。 放出系の魔術じゃあ、オレにはトライアングル以下は無効化されちまう。 かといって、オレは霊体だからな。何の魔力も籠ってない武器は通じねえ。 だから、魔力の通ったゴーレムでの直接戦闘って選択は剴切だ。だがな......」 喋りながらも、騎士はワルキューレの拳を掴んで、その金属の腕をひねり上げる。 普通の人間では到底敵わない程にパワーのあるハズのワルキューレが、なす術無く騎士の力に屈してその体勢を崩される。 そこへ―――― 「オレの相手をするにゃあ、力不足だぜ――――!」 セリフとともに、騎士はワルキューレの横腹めがけて、あろうことか『蹴り』を叩き込んだ。 一説によれば。 かの英雄を象徴する宝具『ゲイ・ボルク』とは、槍の名前ではなく、その投擲法の名であるという。 それは、槍を足によって投擲するという、特殊な投擲法であった、と。 無論、ランサーは宝具『突き穿つ死翔の槍《ゲイ・ボルク》』の運用にあたっては、手による投擲を行う。 しかし、人々の祈り、尊崇の念によってその存在を編まれる英霊である以上、ランサーにもそのような『要素』は含まれる。 自然、その足が尋常のモノである筈が無い。 さらに、今は契約のルーンによってその力は倍加されている。 その蹴りは、一撃で青銅の木偶人形を叩き折る、ハズ、だった。 ――――先程、ルイズはグラモン家の『錬金』についての風聞を口にした。 『グラモンの直系のメイジは、鋼鉄よりも丈夫で、より少ない魔力で『錬金』できる金属を使うって。 何代か前の当主がソレの製法を発明して、それからグラモン家は武門として有名になったとか......』 この内容は、大筋で間違っていない。 実際、グラモンの貴族は、その特殊な金属により作り出されたゴレームを使って威名を轟かせた。 その金属の製法について訊けば、ルイズの説明と同じ内容の返事が返ってくることだろう。 しかし、ソレは外部の貴族に向けた説明であり、事実は多少異なっている。 何代か前、その『錬金』法を発明したとされる当主は、その実自分で件の金属を発明したのではない。 彼は、召喚術に失敗した結果、偶然に一振りの刀剣を召喚したのだ。 その刀は、縞模様の波打つ様な不思議な紋様で、錆びず、折れず、どんなモノでも切り裂くことができた。 それでいて刃こぼれ一つせず、柳の枝の様にしなる柔軟性をも備えていた。 その特性に着目した当時のグラモンの当主は、その金属を『錬金』により再現しようと試みた。 その刀剣に使われた素材は、こちら側ではダマスカス鋼と呼ばれている。 現代科学においても完全再現が不可能な、まさしく『場違いな工芸品《オーパーツ》』。 もっとも、現在ではかなり本物に近い合金の再現がなされている。 つい最近まで、その製法はもはやロスト・テクノロジーでは無いとされていた。 しかし、近年、本物のダマスカス鋼には、ある特殊な素材が使用されている事が判明する。 その素材の名は、カーボンナノチューブ。 鋼の20倍の強度を持ちながら、それでいて弾力性を持ち、非常な軽量であるという、未だ実用段階にない最先端素材。 ソレを鍛造過程で生成するなど、現代の技術ではおよそ不可能である。 だが、『錬金』という魔法はソレを可能にした。 元となる物質が現存しさえすれば、詳細な構成や含有される元素の種類など知らずとも再現できてしまう。 まさしく、『魔法』と呼ぶに足るデタラメである。 そうして、グラモンのメイジは、ソレが実際に何であるのか解らないままに、その製法を得た。 『錬金』の容易な卑金属を複数組み合わせることで機械的強度を倍加させる組成変化の方法。 そして、その中にカーボンナノチューブを内包する方法をも。 結果、彼らの『錬金』する合金は、ハルケギニアの技術水準を遥かに上回る硬度・靭性を得るに至った。 ランサーの蹴りを受けたのは、そんな金属で作られたワルキューレであった。 衝突によるダメージとは、衝突する物体の質量と速度が大きければ大きいほど、衝突した時間が小さければ小さいほど大きくなる。 そして、金属は変形することによって、衝撃を受けても構造材自体の破壊を免れる。 その高い靭性ゆえに、ワルキューレはランサーの蹴りを受けながらも、全体の破壊だけは免れた。 しかし、そのロスト・テクノロジーをもってしても、その衝撃は強大に過ぎた。 弾性限界を超えた衝撃に、ワルキューレの体が大きくひしゃげる。 それが、この場合災いする。 変形によって衝突時間が長くなれば、確かに破壊へと作用するエネルギーは小さくなる。 しかし、衝突時間が長くなるということは、衝突された物体自体に大きなエネルギーが伝わることを意味している。 つまり、ランサーの蹴りを辛うじて原型を保ったまま受けきったワルキューレは、 通常の物質ならば四分五裂してしかるべき膨大な衝撃力を、運動エネルギーとして受け取った。 結果、 「あ」 蹴りの感触から、0、1秒後の未来を予測したランサーだったが、今更振り抜いた足を止められるハズもなく。 金属の体が持つ重量をも遥かに凌駕する運動エネルギーを加えられたワルキューレは、 轟音をその場に置き去りにして、遥か遠くの、学院の塔の一つに激突した。 ブ厚い石壁、しかも『固定化』の魔法がかけられたソレに衝突した衝撃で、今度こそワルキューレは原型を留めず折れ曲がる。 そして、その下にはタバサに口止めされているルイズがいた、と。 前ページ次ページZero/stay night
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▽タグ一覧 ウルトラウーマン オリトラウーマン レッド族 ワルキューレ護衛隊 女 / / / } i ヽ 丶ヽ .′ ′, / , } ∧ ヽ'. ′ i. / ′ / ∧. ∧ .i i . |/ / , / /} / ハヽ. . i i} | ′ ! /ィ/.′ /斗 --- ミi . | | l i | 斗ァ 了ミ i .. /// |`ト! } i | '´| / /斗- | ../ . //フ孑テ云ミ、}バ| | . | | ァヂ¨ミト.{イ/ /′ノ' {う h}ヾ. { |. V| | 〃{う h} ′ V^¨ ソ ノ’ .} ! ゙ i {八 ゙ぐ_.ン `¨´ , | } i. |、 ム} .′ '. {∧ ' ル'} // ∧{、 ' 込. __, イ/|/}/ {ヘ. ト、 {\ `´ . イ} / }//′ ヽ{ \ > . イ ′ /;} ≧ー ´ {ミy ..イ 〈 廴_ _ノヽノ\ ,. ≦ \ /了爪 /' \ _ィ´ ヽj } / \ rti てノ_.》 / く ヽ 〉 、 バ斗≦ ∧ /イi 小 /ミ.ー’Yi- 、 ノ } } ∧ / / | ! !∧ / ` ー{ ハ 種族 レッド族 AA エーリカ・ハルトマン(ストライクウィッチーズ) 【概要】 宇宙警備隊隊員。昼寝好きのぐうたら。 ワルキューレ護衛隊に推薦されている。 ゾフィー「じ、実力はあるからいいんだよ!」
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第5話:「ワイルドワイルド・マジックスクール」 ヴェストリの広場。極めて限定的に定義するならば、ささやかな決闘場。 人だかりが遠巻きに囲む円の中心に、少女と少年が立っていた。少女の背には巨大なゴーレムとひとりのメイドが存在していた。少女が守るべきものが存在していた。 少女、ルイズは動かなかった。風に折れぬ旗基のように、すらりと伸ばした背中からは何かが立ち昇っているようでもあった。すくなくともこの年頃の少女が纏ってよい志思ではない。 彼女の引き結んだ唇が時折ぴくりと震え、笑みを形作ろうとする。寸での所まで出掛かったそれを飲み込んで、彼女は杖を構えた。 ルイズはこの瞬間を与えてくれた全てに感謝していた。シエスタに感謝した。アースガルズに感謝した。もしかするとギーシュにすら感謝していたのかもしれない。 示せているのだ。己の存在を。自分自身で自覚したばかりのそれを。 魔法の使えない、失敗ばかりのゼロのルイズ。役立たずのメイジ。学院きっての劣等性。名ばかりの貴族。 だが、今だけは。今だけは今だけは今だけは、今だけは、それでいい。ゼロでいい。 無能のゼロではなく、無に帰すゼロとして、彼女はこの場に立っていた。 足を踏み出し、腰を落とす。獲物に飛び掛る寸前の猫科の猛獣を思わせた。闘うための機能美を天から与えられているのではないかと誰もが思う仕草だった。 抑えることのできなくなった笑みが、その愛らしいとすら形容でき得る相貌にひどく不釣り合いな表情を滲まぜた。 にい、と邪悪に笑う。見られるのって快感だわ。 「それで、ギーシュ。何をしてくれるのかしら」 「やることは変わらない。僕のワルキューレで君を叩く」 「ふん、それじゃあ結果も変わらないわね。片ッ端から砕いてあげる」 「ほう、それは――――」 ギーシュは薔薇を一振りした。花弁が舞い散る。 それは地に着く寸前に、青銅の戦乙女となった。今までルイズに差し向けたゴーレムと何ら変わるところはなかった。 ただし。 「ワルキューレが、七体でもかい?」 十四の無機質な眼差しがルイズを捉えた。七体のゴーレムであった。 運動の余熱の燻りだけではない、冷たい汗がルイズの頬に滴った。 七体。一体だけであっても未だにそれを越えてギーシュに肉薄できてはいないというのに、それが七体。 呼吸を整える。乾いた唇を舐める。足でリズムを取る。腕の震えを隠す。思考を加速させる。 ルイズは言った。己の声質が強張っていないことに安堵した。勇気を司るジャスティーンが己の内に存在することを彼女は確信した。 ルイズは言った。しなやかな決意と共にギーシュに応えた。孤影のまま荒野を渡る鳥を思わせた。 「ええ。ワルキューレが、七体でも」 ああ、言っちゃった。どうしよう、わたしって莫迦かも。言ったからには勝たなくちゃいけないのに。 ささやかな後悔が心の淵を這いずった。それをジャスティーンの刃で八つ裂きにして、彼女は更に一歩を踏み出す。 ギーシュはルイズの意思と意志を受けると、感に堪えぬように一瞬だけ眼を閉ざした。見開いた瞳に浮かぶものに、敵手に向けるべき色は欠片さえ残っていなかった。 幼い少年が高潔な騎士と出会ったような眼差しであった。 あるいは、万引きの常習者が連続強盗殺人犯を仰ぎ見るような眼差しであったかもしれない。 精神の奥底から衝き上げてきたものの正体も解らぬままに、ギーシュは眼光鋭くルイズを捉えた。 杖を振りぬいた。突撃を命じた。そして宣言した。薔薇散る杖。 「ならば僕に見せ付けてみせろヴァリエールッ! 七対一で尚、それを覆す理不尽を――――――――ッ!!」 ルイズは拡大を続ける己が精神の全てを、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという小さな少女の肉体に凝縮した。 杖を振り抜いた。疾走をはじめた。そして宣言した。翻る外套。 「だったら見せてやろうじゃないのギーシュ・ド・グラモンッ! 一対一を、七戦七勝するゼロのルイズを――――――――ッ!!」 踊るようなステップを刻みながら、ルイズは悔しげに笑った。『かも』じゃないわね。大莫迦だわ、わたし。 もう退けない。わたしは莫迦でいい。でも、恥知らずにはなりたくない。 使い魔と自分を信じてくれた平民の目の前で、敵に背を向けるメイジにだけはなりたくない。 最速の詠唱。そして最も手近なワルキューレに狙いを定める。 爆発。まずは一体。 ルイズは何故自分がここまで意固地になっているのだろうかと一瞬だけ思い、すぐに答えを得た。 それは考えるまでもなかった。 だって、わたしの信じる貴族はそういうものだもの。 ■□■□■□ 学院長室の二人の教師は、身じろぎひとつせずにその光景を見つめていた。無言であった。 嫌な感触の脂汗を憶えながら、オスマンはぼそりと呟いた。 「コルベール君、きみは火系統のメイジだったね?」 「はい」 「その……あれほどの爆発を、魔法を『完成』させずに放つことは可能かの?」 問われたコルベールもまた額を拭い、緩やかに首を振った。口を開いての返答は避けた。無理もなかった。 ただの失敗であそこまでの爆発をこなせてしまうようでは炎系統のメイジの立場はない。 オスマンはそれを咎めず軽く頷いた。腕を組み、口を開く。この老人にしては珍しく何かを言いよどむような仕草であった。 「火ではない。そして水も風も土も使えない…………となると」 その言葉の意味を数秒遅れて理解したコルベールは眼を見開き、オスマンへと顔を向けた。 理解することを恐れるような声音で質問を放つ。 「まさか、学院長。第五の…………いえ。《ゼロ》だとでもおっしゃるつもりですか?」 「消去法じゃよ、単純な。そして、そうすれば色々と辻褄が合う」 指を振りながらオスマンは肩を竦めた。それだけでコルベールは答えを悟ったらしかった。 そう、確かに辻褄は合う。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールには四つの系統の魔法が扱えなかった。何故か? 彼女が第零の系統であれば説明がつく。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが喚び寄せた使い魔には伝説のルーンが刻まれた。何故か? 彼女が伝説の使い手であれば説明がつく。 なんと厄介な。それが二人の率直な感想であった。伝説とは高いところにあるべきもので、軽々しく降りては悪戯に混乱するばかりなのであった。 教師二人が重苦しい表情を突き合わせていた室内が閃光に照らされた。 姿見に映し出されていた広場では、ルイズが二体目のワルキューレを粉砕すると共に、それを囮としていた残りのワルキューレに完全に包囲されてしまっている。 その光景に色を失った様子でコルベールはオスマンへと振り向く。 「学院長! 眠りの鐘はまだなのですか!?」 「――――ミス・ロングビル」 オスマンの呼びかけと共に、広場の光景を映し出していた姿見の一部がぼやけ、ロングビルを映し出した。彼女の近くの姿見に映像を繋いだのだった。 突然の呼びかけに驚いたように振り返ったロングビルだが、取り乱しもせずに応答したあたりは流石学院長の秘書と言うべきであった。 「学院長、今そちらに伺おうと思っていたところですわ」 「どういうことじゃ。眠りの鐘はまだ起動できんのか?」 「いいえ……もう、何度も起動しております」 「なに?」 「正常に作動しているはずなのですが。ヴェストリの広場においてのみ、何の反応もないのです」 オスマンは眉を顰めた。それなりに強力なマジックアイテムであるはずの眠りの鐘が、あの場の誰一人として意識を奪えないというのは奇妙が過ぎた。 大規模な結界でも張らねば対処は不可能な筈である。 二人のやり取りに聞き入っていたコルベールは顎を指で触れて何か考え込むと、オスマンに呼びかけた。 「学院長、この姿見から魔力分布は見れますかな」 「魔力分布――――広場のかの?」 ふむ、と僅かに思案したのち、さっと頷いたオスマンは再び杖を振るった。 姿見の中の光景が揺らめき、視覚化された魔力がヴェストリの広場に重ねられるように映し出された。 「これは……」 半球状の魔力が広場全体を覆うように形成されていた。まさに彼らが懸念した結界であった。 揺らめくこともなく強固に定着したそれは、眠りの鐘どころか多少の攻撃魔法ならば完璧に防ぎきれるだろう。 オスマンはメイジとしての圧倒的な経験から即座にそれを読み取ると、無言のまま目を細めた。 視覚に繋げられた遠見の魔法は彼の注視に従い、膝を突き蹲る巨大なゴーレムを拡大する。彼には確認せねばならないことがあった。 微動だにせず主人の闘いを見下ろすゴーレムの左腕部は、仄かに輝いていた。赤く焼け付いたルーンだけが鼓動のように強弱を付けて鈍く燈っていた。 アースガルズがゆっくりと回頭する。鏡を隔てた広場と室内で、彼らの視線は確かにぶつかり合った。 はっきりとオスマンとコルベールは悟った。何の理屈もいらなかった。邪魔をするなと、鬼火の燈るその双眼が語っていた。 彼らの疑念はもはや確信になりかけていた。それだけの力がそのゴーレムの視線にはあった。 あらゆるメイジに打ち勝ち、あらゆる武具を扱い、主を守護することだけに特化した伝説の使い魔。 「――――神の盾」 ガンダールヴ。 ■□■□■□ まいったわね。というのが今のルイズの率直な心境であった。 ギーシュの『本気』、最大数のワルキューレの一斉突撃。逐次投入の愚を悟ってからの思考の切り替えはいっそ鮮やかとすら言えた。 ルイズは杖を握り締めながら周囲に眼を巡らせた。 距離を詰められる前の一体と、囮として突出した一体。それを破壊し、そして気付いた時には完全に包囲されてしまっていたのだった。 この布陣では、一体を破壊したところで残りの突撃には抗えない。 焦げ付くような苛立ちが精神を掻き乱す。癇癪でも起こして泣き出したかったが、彼女はそれを自身に許さなかった。 「ギーシュ、ちょっと大人気ないと思わない?」 「獅子は兎を狩るときでも――なんて喩えを持ち出す気はないよ。断言しよう、君はドラゴンだ」 「褒めたって負けてやらないんだからね」 ルイズは笑った。汗を滲ませながら、こいつ実は良い奴かもなどと思っている。単純であった。 ギーシュも笑った。圧倒的な優位に立っている筈の彼もまた、複数体のゴーレムの制御は荷が勝つのか汗を滴らせている。 優勢なのはギーシュだったが、今の状況は一種の膠着状態であった。 ルイズは既に呪文の詠唱をほぼ終わらせていた。ばちりと帯電しながらおぼろ燈る杖の先端に込められた魔力はけして侮れるものではない。最後の結宣さえ紡げば直ぐにでもその奔流が迸るだろう。 ギーシュの五体のゴーレムはルイズを完璧に取り囲んでいた。一気呵成に突撃を命じれば簡単に揉み潰すことができるだろう。 だが、やはり複数体の同時使役はどうしても制御が甘くなる。機動は単純なものにならざるをえない。 そして万が一ルイズそこを掻い潜ることができれば、彼の守りはなくなるのだった。 同時に、ルイズが五体のゴーレムの中心で逃げる様子もないことも気がかりだった。おそらく狙いは引き寄せて複数を纏めて撃破。 それでは背後からの攻撃に無防備になる、が。 ギーシュは前言の通り、ルイズを侮ることはしなかった。己よりも格上の難敵を相手取るような心構えですらあった。ヴァリエールには何か考えがある。 あると考えねばならない。 ならば一、二体を先行でぶつけ、その後に残りを一斉に――――莫迦か僕は。逃げ道になる穴を開けてどうする。 そこまでのギーシュの思考は、ちらりと苦笑をひらめかせたルイズの声に切断された。彼女のそれは莫迦莫迦しい何かを決意した者の色をしていた。 「ところでギーシュ。このワルキューレって完全にあんたが制御してるの?」 「……いや、ある程度の自立思考はあるさ。もっとも僕のような未熟者では簡単な命令しかこなせないがね」 「そりゃそうか、単純な突撃ばっかりだったものね。あんたの命令に沿うように行動はできるけど、自分で判断することはできないってことか。 ――――うん、賭けてみる価値はありそうだわ」 「ははは、少しばかり僕に求めすぎだよヴァリエール。完全自立のゴーレムなんてトライアングルかスクウェア級でもなければ造れないさ。……で、何が言いたいんだい?」 「えっとね――――」 にっこりと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは微笑んだ。花咲くような笑みだった。 「あんたに勝とうと思うわ」 言葉と同時に杖を振り下ろす。放たれた彼女の魔法は狙い違わず、ギーシュの正面のワルキューレを吹き飛ばした。 足元を狙った一撃だったのか、爆炎と砂埃が濛々と立ち昇った。 ギーシュとしてもこれは好奇である。ルイズの再詠唱(リロード)がいかに速くとも、残りのワルキューレによる突撃には対応しきれる訳がない。 別方向から同時に襲い掛かるゴーレム。また一体を撃破せしめたとしてもそこで『詰み』だ。その時には残りの三体が喉元に迫っている。 杖を振るい、ギーシュはワルキューレに突撃を命じた。そこには勝利への歓喜が隠しようもなく滲んでいた。 だが。 「ワルキュー……ちぃッ!!」 歯噛みと共に舌を打つ。 ルイズにより魔法の一撃によってその場にばら撒かれた砂塵は、今やあまりにも効果的な煙幕として機能していた。 視界が利かない。これではワルキューレに突撃点を指定できない。 ルイズの狙いはまさにそこにあった。一時的に術者であるギーシュの視界を奪い、ワルキューレの制御をなくす。 その後は――――その後は。 「ギーーーーーーーシュッ!!」 突撃、である。 己の作り出した砂塵を切り払うようにルイズの姿が躍り出た。風に靡く彼女のピーチブロンドは、ドラゴンの鬣を思わせた。 素晴らしい、とギーシュは思った。そう思わずにはいられなかった。 そして、だからこそ、このまま負けるわけにはいかなかった。 「まだだヴァリエールッ! 獅子の牙は折れないッッ!!」 薄まりつつある砂塵の彼方、もはや様を為さなくなった彼のワルキューレが崩れ落ちる。 そして振るわれた彼の杖から踊り滑るように地に落ちた薔薇の花弁は、瞬く間に一体のワルキューレとなった。限界数を超えたゴーレムの再構成。 魔力とは精神力である。そして精神とは感情に他ならない。今の彼を衝き動かしていたものは、彼自身ですらその大きさを測れぬ感情であった。 勝利を。ただひたすらに勝利を。 そしてそれはルイズとて同じである。 眼前に迫るワルキューレの拳が、まるで水中であるかのように緩慢に見えた。 「わたしの……ッ!」 速度は落とさない。身を捻らせ、螺子のように回転させる。 「『フライ』は……ッ!」 拳が掠めた。おそらく肘が砕けた。痛みはない。そんなもの、今は背負う価値などない。 「荒っぽいわよ――――ッ!!」 ワルキューレの腹に突き刺さるような勢いでルイズの杖が伸ばされた。彼女は昂ぶる全てをそこに込めた。雷鳴を司るヌア・シャックスすら凌駕する速度であった。 ――――爆発。 ルイズの出来損ないの『フライ』はワルキューレの重量を完璧に無視し、人垣すら越えてその青銅の体を地に叩き付けた。 彼女はそれを最後まで顧みなかった。立ち尽くすギーシュへと杖を突きつける。 「どう…かしら、ギーシュ。降参……する?」 体の内に滾る熱を吐き出すように喘ぎながら、ルイズはにっと笑った。左腕はだらりと下げられ、あちこちに傷を作り、髪は乱れ放題で全身は埃にまみれている。 ギーシュはゆっくりと己の頬を撫でた。そこに刻まれた一筋の傷だけが彼の決闘の証であった。 それが損な事のように思えたことが彼は不思議だった。傷だらけのルイズを彼は羨ましいと思った。 「ヴァリエール」 ギーシュは両腕を挙げた。周囲の学生達がざわめいた。まさか。勝ったのか、『あの』ゼロのルイズが。 そのざわめきも二人には遠い。世界から隔絶されたような錯覚を両者は覚えていた。 ギーシュが重々しく口を開く。気取らずにさっさと言え、とルイズは思うが黙っていた。 「まだだよ、ヴァリエール」 「――――え?」 ギーシュの口から零れたものは、敗北を認めるものではなかった。その口調から未だ闘志は消え去っていなかった。 「火事場の莫迦力というやつかな。自分でも驚いた。もしかすると僕は実戦型なのかもしれない。武門の出としては喜ばしいけれど」 「何を」 「牙というものは、二本あるものさ」 「何を言って」 「さてヴァリエール。君が今、踏みつけているものは……何だろうな?」 「――――――――ッッッ!!!?」 弾かれたよう勢いでルイズの顔が真下を向いた。そして見た。 己の靴の端から覗く、赤い薔薇の花を――――! 「しま……ッッ!」 しまった、と最後まで言う余裕すらなかった。 ルイズの体が浮く。彼女の足首を掴んで、最後のワルキューレが立ち上がった。 逆さ吊りにされたルイズはそれでも尚、ギーシュに向かって杖を突きつけた。魔法の詠唱を始める。 無論、それを許すほどギーシュは甘くない。 「ワルキューレッ!」 命を受けたゴーレムがルイズを掴んだまま腕を振り回した。そして遠心力と仮初めの膂力を乗せて、彼女を放り投げる。 平民の子供が遊ぶ弾き玉のような勢いでルイズは跳ね飛ばされた。地面に叩きつけられる。先程のワルキューレが受けた光景の焼き直しのようだった。 勢いは収まらず、ルイズは地面を転がった。それでも杖を放さぬことは賞賛に値した。 そして停止したのは、奇しくも彼女の使い魔の目の前であった。 「ミス・ヴァリエールッ!」 シエスタの悲鳴に近い呼びかけに、ルイズは薄っすらと眼を開いた。世界が回っている。 それでも、視界の全てに影を落としているのが己のゴーレムであることは、何故だかはっきりと認識できた。 「…………平気よシエスタ。そこにいなさい」 そう言おうと思ったのに、出てきたのは不明瞭なくぐもった呻きだけだった。 あ。だめかも。 自分の体じゃないみたい。 さっきまでは羽根みたいに軽くて、別の意味で自分の体じゃないみたいだったけど。 …………ちょっと、悔しい、かな。 ごめんねシエスタ。もうちょっとだったんだけど。油断してたわ。 でも、ここまで、やったなら、誰か褒めてくれるかな。わたしに「よくやった」って言ってくれるかな。 ごめんねアースガルズ。あんたみたいにやってみようと思ったんだけど。 あんたみたいに、何かを、守ってみたかったんだけど。 ごめんね、アースガルズ。 ダメな、ご主人様で―――― そこまで心中で呟いて、ルイズは意識を閉じた。 ■□■□■□ 割れる空。覗く魔星。 瓦礫の荒野。空を覆う幾千の赤い影。 その中心に立つものは、ルイズの使い魔であった。ここが彼の世界であった。 ルイズの意識は周囲を見渡して、あら、と思った。体があれば首を傾げていたかもしれない。 使い魔との精神的な繋がりは、シエスタ曰くの『夢見』で何度もあるが、これほどまでに明確な意識で臨んだことは一度もない。 今ならはっきりとアースガルズの姿を見ることができた。朽ち果てる前の彼の姿であった。 黒鉄の色に輝く、魔銀とドラゴンフォシルの複合装甲。太く、無骨なライン。 胸の中央と両腕に備え付けられた、霊脈血晶による対消滅絶対攻性防御障壁展開ユニット。彼の唯一にして無敵の武装。 それらすべては極限にまで突き詰められた一つのものを現していた。 ――――強い。 ただその一言のみを、無言のまま周囲に吼える。 ルイズはくすり微笑んだ。自分の使い魔がどんなに強くて格好いいか誰かに教えたくてたまらなかった。 「――――――――」 アースガルズはゆっくりと下を向くと、ルイズの意識と視線を重ねた。 彼の意思がルイズに流れ込む。 「――――――――」 ばか、とルイズはその声に応えた。 あんた、戦うのは好きじゃないんでしょう? いいのよ、わたしは。仕方ないでしょ、全力で掛かって負けたんだもの。 「――――――――」 そりゃ、悔しいわよ。ほんとに悔しいわよ。 でもね、あれはわたしの決闘なの。あんたには分けてあげないわ。 「――――――――」 使い魔の役目? ご主人様の目となり、耳となり、望むものを見つけ―――― 「――――――――」 …………主を、守る。 「――――――――」 もうっ。あんた、ほんとに莫迦ね! ある意味わたしと似合いだわッ! 「――――――――」 喜ぶんじゃないの! わたしは今から、ぼろぼろのあんたを駆り出すんだからね! 後悔は今のうちに済ませときなさいよ。この物好き! ありがとう大好き!! 「――――――――」 笑うんじゃないわよ――――ッ! ■□■□■□ かっと、ルイズは眼を見開いた。おそらく意識を失っていたのは数秒。ベッドの上でもなければ誰かに抱えられているわけでもない。 つまり、まだ決闘は終わっていない。 お逃げください、とシエスタの声が聞こえた。 ああ、つまりギーシュがワルキューレにとどめ――って言っても杖を奪うくらいだろうけど――を命じたのかしら。 それにしても三日は寝たみたいな気分。寝覚めもいいし。 今なら何にでも勝てそう。 悪いわねギーシュ。 わたし、ズルするわ。 仰向けの大の字に転がったまま、ルイズは大きく息を吸い込んだ。 見下ろすアースガルズと目が合い、彼女は満面の笑みを浮かべた。 そして、吼えた。 「AaaaaaaaaaaaaaaaaaSGARDs!!!」 「――――――――――――――――ッッ!!!」 アースガルズは唸る起動音で応えた。 彼の内蔵するフルカネルリ式永久機関が、現状で許される限界にまで出力を解放した。 軋みは装甲に亀裂を呼び、砕けた装甲の欠片は雨のようにルイズに降り注いだ。その中で彼女は立ち上がった。 こちらに突撃するワルキューレが見えた。唖然とするギーシュが見えた。悲鳴を上げる野次馬が見えた。たまらなく愉快だった。 杖を頭上に掲げる。アースガルズが追随するように、重たげな音を鳴らしながら立ち上がった。 今この時、彼女の杖は万軍を統べる将錫にすら等しかった。彼女の使い魔にはそれだけの価値があった。 ルイズは杖を振り下ろし、使い魔に命じた。 使い魔は豪腕を振り抜き、主に応じた。 「アースガルズッ! 海老反り大回転分身パンチ――――――――ッ!!!」 「――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」 彼女の使い魔は優秀であった。 「できるか」とも「まず薬を混ぜろ」とも言わず、そのまま素直にパンチしたのだった。海老反りでも大回転でも分身でもなかったが、とりあえずパンチではあった。 青銅のワルキューレがその拳に激突するや、紙人形のように粉々になった。 鋼の拳の勢いは止まらない。そのまま壁にぶち当たった。 アースガルズが普段は身を寄せている学院の宝物庫の壁に巨大な亀裂が走り、空気を揺さぶる轟音がヴェストリの広場に撒き散らされた。 その振動が収まった時、身じろぎする者も声を発する者も、誰も居なかった。 唯一、差し伸べられた巨大な腕を駆け上がり、ルイズが突き出た胸部の上に降り立った。 振り返り、ギーシュに向かって何かを言おうと口を開いたが、彼女は複雑な表情で押し黙った。 この状況で降参を要求するのは何故か躊躇われたのだった。彼女自身の力だけで手に入れた勝利ではないのだ。 えっと、と言葉を濁してから、彼女は笑った。仕方ないな、とでも言いたげな微笑だった。彼女は自分自身の矜持に少しだけ呆れていた。 貴族って偉いはずなのに、貴族らしく生きようとすると不自由なのね。 鼻血を土に汚れた袖でぐいと拭うと、ルイズはさして豊かでもない胸を偉そうに反らして言った。 「今日のところはこれくらいで勘弁してやるわ」 完璧に悪役の台詞であった。 アースガルズがゆっくりと踵を返し、ルイズを乗せたまま校舎の影に消えるまで。誰も彼もが身動きひとつしなかった。 ■□■□■□ 「――――はは」 最初に声を洩らしたのは誰あろう、ギーシュであった。額に掌を当てて天を仰ぐ。愉快でたまらなかった。 「シエスタ君」 「え!? は、はいッ!」 ぽかんと突っ立っていたシエスタに呼びかける。 ギーシュはくるくると薔薇を指先で回転させながら、彼女に向かって実に色気のある眼差しを向けて苦笑した。 「ヴァリエールを追いかけてあげたまえ」 ぱちくりと瞬きをしたあと、シエスタはようやくその言葉の意味を理解したのか何度もこくこくと頷いて駆け出した。 その背中に、ギーシュは静かに呼びかける。 「それから――――君にも、謝罪を」 それが彼に許された謝罪の方法であった。 彼は面と向かって平民に頭を下げることが許される存在ではなかった。元帥号を持つ名門の貴族であるのだった。 あまりにも潔い態度では、かえってシエスタに無用の咎を与えることにもなりかねない。 シエスタが背中を向いていれば、彼女に向けたものではない、という言い方も出来る。 まあいいさ。ギーシュは笑う。そのくらい小ずるいほうが僕の役どころらしい。 それを受けたシエスタは駆け出した足を止めた。 振り返りはしない。 「ミスタ・グラモン、私には何のことか解りませんが――――」 「ああ」 「ミス・ヴァリエールの、あんなに溌剌としたお顔は初めて拝見しました」 「ああ」 「…………ありがとうございます」 それだけを言って、シエスタは再び駆け出した。 ギーシュはやれやれと肩を竦めた。自分の妹と遊んでくれた子供に語りかけるような口調だったな、となんとなく思った。 「おい、ギーシュ」 そんな彼に声を掛けたのは、彼の取り巻きの一人だった。 面倒くさそうに振り返るギーシュに問いかける。その問いはこの場の全員の思いを代弁していた。 「結局、どういうことなんだ。ルイズは最後の最後で自分のゴーレムに加勢させたけど……」 「ん……使い魔はメイジと一心同体だ。彼の力は彼女の力だろうさ。 更に言えば今の僕にはもう魔力の欠片も残っていない。今ならヴァリエールすら凌駕する完膚なきまでの《ゼロ》だね。」 取り巻きは眼を剥いた。 その言葉は、意味の捉えようによっては途轍もなく重くなるからである。 「お……おいおい、ギーシュ。いったい、何が言いたいんだよ」 「ああ、つまり」 ギーシュは香りを楽しむように顔の前で回していた薔薇を芝生の上に放り投げた。気軽とすら言える仕草であった。 杖を放棄するということはつまり。 「つまり、僕の負けさ」 そう、敗北の宣言であった。 ■□■□■□ 「この莫迦! お莫迦ッ! 加減ってモノを知りなさいこのトンデモポンコツッ! でもよくやったッ!! ああもう指がひしゃげちゃって――――きゃあッ! シエスタ、痛い痛い痛い痛たたたたたたた!!」 「ミス・ヴァリエール、怒るか喜ぶか心配顔をするか痛がるか一つにしてくださいませ」 「じゃあ痛がる! うう、今になって痛いわよ。泣きそうよ……」 「どうぞ、ご存分にお泣きになってください」 「ふ、ふん。貴族が平民に弱みを見せられるわけないじゃない」 「少しくらいは弱くてもよろしいと思いますよ――――あ。これ、沁みますよ」 「――――――――ッ!」 「ああ、無言のまま涙をぼろぼろと零されましても」 「し、シエスタ……あとで憶えておきなさいよ……」 「はい。憶えておきます」 「え?」 「一生、憶えておきます」 「……………………」 「……………………」 「…………シエスタ」 「…………何でしょうか、ミス・ヴァリエール」 「めっちゃくちゃ、怖かった。怖かったわよ…………」 「はい」 「今、わ、わたしが、弱いのは、あんたのせいなんだからね。 あんたが、弱くていいって、言ったせいなんだからね 泣いてるのは、傷が、痛いせい、だからね」 「はい。そのとおりでしょうとも」 「…………ば、ばかね。あんたまで、泣くこと、ないじゃない」 次へ進む 一つ前に戻る 目次に戻る