約 1,416,778 件
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/54.html
堀瀬 大我 プロローグ 街の中で怪獣が暴れていた。 高さ5mを優に超えているだろうその怪獣は、電柱を薙ぎ倒し、自動車を踏み潰しながら進んでいく。 ぬいぐるみを抱えて逃げる少女が転んでしまう。迫りくる怪獣。絶体絶命だ。 その時、怪獣の頭に榴弾が炸裂した。現れたのは、軍の戦車だ。 その数四台。戦車隊は怪獣に向けての一斉砲撃を開始。怪獣は爆炎に包まれる。 「夢を見たんです」 「へえ?」 昼休み、希望崎学園部室棟の一室。 大我は部長にしばらく部活に来れないかもしれないことを伝えたのだが、理由を聞かれ、ごまかしてもしつこく聞かれ、最終的に脅しや揺さ振りを掛けられ、渋々ながらこう切り出した。 「白とも透明ともつかないような空間で、これから戦いがあることを知らされるんです。信じてもらえないと思いますが…」 「知ってるよ無色の夢でしょ?勝ったら好きな夢見れて負けたら悪夢っていう」 信じるどころか知っていた。 「部長も見たことがあるんですか?」 夢の戦いについての情報が得られることを期待したのだが、そううまくはいかなかった。 「いや、俺は見てない。親父のとこのスタッフが何人か見たっていうのを聞いただけ」 「そうですか…」 「その戦いって、武器とか持ち込めるの?何か用意する?」 「持ち込めるみたいですが…大丈夫です。『いつもの』があれば事足ります」 余計な武器を持ち込んでは、敵に利用される可能性が高まる。 同意を得た人物に添い寝でもしてもらえば、連れてくることは可能だろうが、彼には他人を巻き込むつもりはなかった。 「そう?…それにしても、好きな夢ねえ…俺には現実の肉体を長時間無防備にしてまで見たい夢はないかなあ…。大我、お前はどんな夢が見たい?」 「俺は…」 予鈴が鳴った。理由をごまかすのに大分時間を使ったらしい。こうもあっさり受け入れられるなら、もっと早く話していればよかったかと、大我は思った。 「まあいいや。明日…じゃねえか?また今度、実際に見た夢をゆっくり語ってもらおう」 そういって、部長は席を立ち、部室のドアに手をかける。そして、去り際にこう言い残した。 「間違っても、周りに気を遣って早起きしました、なんて言うんじゃないぞ?」 彼はその映画が好きだった。 特に、途中の10分程のシーンに、彼は心奪われた。 安っぽい模型に着ぐるみ、素人が作ったようなCGだったが、それでも少年だった彼の心を掴んで離さなかった。 あの映画の世界に入りたいと、彼は願った。 そして彼は、それを叶えるチャンスを得た。 己の夢のために、彼は戦う。
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/1814.html
エピローグ……! 571 :淫獣さん恋をする:2011/07/02(土) 02 16 52.56 ID VqKfAAkN0 エピローグ ―1942年 スオムス ヘルシンキ マンネルハイム「スオムスへようこそ、俺少佐。」 俺「いやぁ…マンネルハイム将軍直々にお出迎えしていただけるとは、感激の極みであります。」 マンネルハイム「何をおっしゃるのですか。我が国の英雄をお迎えするのです。私でも役者不足ですよ。」 俺「英雄……ですか……。それは些か大げさだと思いますが……。私は大した功績を立てていませんし…。」 マンネルハイム「あなたは我が祖国のために命をかけて戦ってくださったのです。それを英雄と言わなくて、何と言いますか。」 俺「…………ありがとうございます。」 マンネルハイム「それで…今回はどういったご用件でスオムスへ?」 俺「まぁ、休暇でちょっと久しぶりに恋人に会い来まして…。」 マンネルハイム「ほほぅ…彼女に会いに来たのですか。」 俺「はい。会うのはだいたい3年ぶりくらいですね。アイツ、元気でやってますか?」 マンネルハイム「元気ですよ。ここ、ヘルシンキにも様々な逸話が伝わって来ているくらいです。」 俺「ハァ……まだ直ってねぇんだなぁ…あのクセ。」 572 :淫獣さん恋をする:2011/07/02(土) 02 17 40.72 ID VqKfAAkN0 マンネルハイム「………。」ニコニコ 俺「すいません、マンネルハイム将軍。そろそろ失礼します。 とっととアイツの所に行かないといけないんで。」 マンネルハイム「そうですね。早く恋人に会いたいですよね。 彼女に会ったら、まず何と言うおつもりですか?」 俺「そうですねぇ…」 『会いたかったぞ、マイリトルスウィートエンジェル…ハルカ!!!!』 俺「ですかね。」 お わ り
https://w.atwiki.jp/spellborn-wiki/pages/79.html
デスハンド に戻る 画像 スキル名 スキル詳細 説明 効果 コンボタイプ 属性 アタックタイプ マジックタイプ ク|ルダウン
https://w.atwiki.jp/spellborn-wiki/pages/80.html
デスハンド に戻る 画像 スキル名 スキル詳細 説明 効果 コンボタイプ 属性 アタックタイプ マジックタイプ ク|ルダウン
https://w.atwiki.jp/battleroyale/pages/102.html
番外編! あの世だよ! 全員集合っ! ♂ハンターは一人呟く。 「……俺にもっと注意力があれば……俺も力になれたのに……」 一次職にも関わらず精一杯自分の役割を果たそうとする♂アーチャーを見て、自らの不甲斐なさを恥じる♂ハンター。 そこに三人が総つっこみ。 「おーまえにそんな事言う資格は無いっ! 俺なんか悪党扱いでいきなり爆死だぞ!」 「おーれなんて、あぶら自爆死だぜべいべー!」 「僕なんてそこらのザコMOB扱いだったよ!(いってやった、いってやった)」 自らのセリフに絶望したのか、泣きながら跪く♂商人、♂セージ、禿ちゃん。 「あ~、君達は頑張ったよ、うん。良くやったさ」 何故かフォロー役の♂ハンター。 そんな彼の肩を叩く♀マジが叩く。 「あの~、あちらで『♀商人被害者友の会』が結成されてますので、あちらに行かれてはいかがですか?」 ♀マジが指さす先で、♀シーフと♀アーチャーが肩を組んで声を上げている。 『♀商人の横暴断固許すまーじ!』 ときらぐ主人公が、大声張り上げる♀シーフに言う。 「もう、終わった事なんだからそんないつまでも……」 最後まで言わせずに♀シーフと♀アーチャーが同時に抗議する。 『終わったって何よ! 私達がどんな目に遭わされたと思ってるの!?』 余りの息の合いっぷりにときらぐ主人公が呟く。 「……君達、キャラ被りすぎ」 ぴしっ ♀アーチャーが頬をひくつらせながら言う。 「そ、そんな事無いわよ。だって私は後半まできちーっと戦ってたし。そんな中盤であっさり消えるような子と一緒にされてもね~」 ぴしっ ♀シーフも同じような顔になる。 「な、何言ってるのよ。序盤は『恐いよー助けてー』とか逃げ回ってる腰抜けキャラだったのが、ちょーっとまともになった程度で私と似てるとか言われてもね~」 ぴししっ 「あー、二人共~。その……仲良くね……」 『あんたは黙ってなさい!』 二人はときらぐ主人公を一喝すると、もぬすごい女の戦いが始まった。 ♂ハンターは首を横に振る。 「は、はははっ。俺は遠慮しとく。君は♀ローグ被害者友の会とか入らないのかい?」 ♀マジは顔を引きつらせて言う。 「だって♀ローグさん……あれですから」 ♀マジが指さした先に、♀ローグが居た。 「ちょ、ちょっと待って下さい! どうしてここでまで、そんなにやる気なんですか!」 悪魔プリが悲鳴をあげながら逃げ回る。 その後ろを全速力でおっかける♀ローグ。 「決まってるじゃない! あんたとの勝負が面白かったからよ!」 「迷惑です!」 「それを私が気にするとでも思ったかーーー!!」 ♂マジは座りながら嘆息する。 「あの子もエライのに気に入られたものよね~」 隣でロープに縛られた♂剣士が答える。 「僕のセリフだよそれ……いい加減これ解いてくれよー」 「ヤ」 「…………」 そんな二人を物陰から見ている影。 「ねー、あれ無理矢理奪ったらダメかな~」 隣にいるエクスキューショナーに訊ねる月夜花。 「ダメだろ。お前さんは魔物なんだから、諦めて俺と一緒になれ」 「ごめん。君、形状的に論外だよ」 「なんだと! この俺のそそりたち黒光りする刀身に不満でも……」 そこでいきなり現われるは♂モンク。 「あしゅらはおーけーん!」 ぼかーんと吹っ飛ぶエクスキューショナー。その飛んだ先には、剣を構えた♂クルセが居た。 「あの世の風紀を乱す者! 我らあの世風紀委員の罰を受けよっ!」 かきーんと打ち込んだ先は、川の中。 「ば! ばかやろう! 俺は水だけはダメなんだ錆びちま(略)」 ♂クルセと♂モンクはがっしと握手をかわす。 「そういえば、隊員三号♀モンクはどうしたんだ♂モンク?」 「ああ、彼女は『ごめんね行脚』に行ってくると言っていたが……ややっ! あそこにもあの世の風紀を乱す者達が!」 あ~い~♪ それは~あーまーくー♪ 「やっと二人っきりになれたねダンサー」 あ~い~♪ それは~せつなくー♪ 「ええ、バード。私達は永遠に一緒よ……あ、そこは……」 「ぴぴー! 危険度赤! 限界水域を越えました!」 「あ、いや、それはそれとして、少し様子を見るというのはどうだ♂クルセ?」 「うむむむ、確かに慎重に事を運ばなければいけないからな……どれどれ」 やはり頭痛の止まらない♀剣士。 「♂ウィズ……頼む」 「メテオ」 四人まとめて吹っ飛ばした所で、冷静に言う。 「あれが処罰の対象なのは良くわかる。だが、私としては、それ以上に許せない事があるのだが」 「なんだ?」 「あの無様な連中は一体なんだ? 放置するには余りに不愉快なんだが……」 「あはははー! バドスケさーんこっちこっちー!」 「待てよアラームー!」 何故かこの場にある砂浜を駆けるアラームとバドスケの二人。 ガイコツ剥き出しのバドスケが、少女であるアラームを追いかける様はまるで、出来の悪いホラー映画のようだ。 「あははははー! ♂プリこっちよー!」 「待て待てー! お兄さん♀アサの事捕まえちゃうぞー! ……ってなんだって俺がこんな事しなきゃなんねーんだよ」 同じく砂浜を駆ける♀アサと♂プリ。 いい年の大人が、バックに花とか飛ばしながら砂浜を駆ける様は、無様を通り越して最早滑稽の域である。 返答に窮する♀剣士に♂ウィズは続ける。 「アラームは辛うじて許す。だが、残りの三人は万死に値すると思うのだが……」 「そ、そう言うな。そうだ、向こうにDOP達が居たはずだ。あそこならお前とも話が合うと思うぞ」 そう言う♀剣士の薦めに従って、大きな岩の向こうに居るDOP達の元に向かう♂ウィズ。 「だーから! そのハアハアを止めろと何度言わせる気だ貴様は!」 「ムキになる騎士子タン(*´Д`)ハァハァ」 「……で、こいつがお前が言っていた会わせたい奴とやらか?」 「ち! 違う! 全然全く別人だー! ええいまとわりつくな! 離れんかバカモンがーーーー!!」 「(*´Д`)ハァハァ (*´Д`)ハァハァ (*´Д`)ハァハァ 」 「……ふむ、その表現手法はさておき、並々ならぬ想いを寄せているのは理解出来たぞ。後は腕さえあればゲフェンに招くのも悪くは無いか……」 「あっさりと理解を示すなどっぺるげんがーーーーーーーー!!」 ♀剣士は顔中を引きつらせながら謝る。 「……すまん、私が悪かった」 「もういい。所詮私は一人が似合う身だ……ハイド」 ひゅんとその場に消える♂ウィズ。 「ここまでハイドクリップ持ってきてたのかお前は……もしかして ハイドが気に入ったのか?」 「ほっとけ」 ぼそっと呟く♀剣士と即答する♂ウィズ。 「……図星か」 「だからほうっておけと言っている!」 その返答の速さに確信を得た♀剣士。 深淵の騎士子の泣き声が響く。 「びえーーーーーーーーーーん!!」 その周りで♂アコと♂ケミが困った顔をしている。 「ねえ、もう泣きやんでよ」 「うはwwwwwもう一時間以上経つwwwwwアリエナサスwwwww」 二人が頭を撫でてやると、少しづつ落ち着いてくる深淵の騎士子。 「ひぐっ……ぐしっ……うっく…………」 そんな深淵の騎士子を見て、にぱーっと笑う♂アコと♂ケミ。 そして、その笑みが深淵の騎士子には眩しすぎて、嬉しくて、申し訳なくて、また胸がいっぱいになっていく。 「うぅ……ぐすすっ……うぅっ……うわーーーーん!!」 顔を見合わせて苦笑する♂ケミと♂アコ。 「ま、いっか。気が済むまで泣かせてあげよっか」 「おけwwwwついでにwwww砂漠の岩場でwwww深淵さんにwwwww何してたか吐けwwwうぇ」 「い、いや別にやましい事なんて何も……ああ、深淵さんって見た目よりずーっと柔らかくって良い香りがしたな~」 「…………極殺wwwww」 「ぬおっ! やる気かアコ! 国のお父さんお母さん妹その他に賭けて今日こそたたきのめーす!」 崖の上から暢気に眼下のアホ騒ぎを見つめる視線が二つ。 「なんかこー……私混ざりにくいんだけど、本気で」 「混ざりたいの?」 そう訊ねる♀ウィズに、首を横に振る♀ハンター。 「もうちょっとこー私好みの大騒ぎとかあれば、無理にでも混ざるんだけどね~」 「私も、♀セージが行方不明なもんで、なんかこー手持ちぶさたというかなんというか……」 そこに♀アーチャーが駆けてくる。 「あ、居た居た。♀ウィズさんも行かない? すんごいおもしろいもの見れますよー」 「おもしろいもの? ……それより♀アーチャー、あなたその顔中のひっかき傷は一体何?」 「戦いの勲章。さー行きましょー。そこの♀ハンターさんも行く?」 「何があるの?」 「女の戦い。修羅場。女系家族」 「行くっ! そーいうの待ってたのよ!」 「……なんでそれに私も巻き込もうとするのよ……」 なんやかやと引きずられてきた♀ウィズ。 辿り着いた先に居た人物を見て、苦々しい顔になる。 「♀セージ……あなた一体そこで何をしてるのよ」 「ジャッジを頼まれた。ああ、そこ、商品が動くんじゃない」 ♀セージに注意された♂ローグは仏頂面で怒鳴り返す。 「動きたくてもこれじゃ動けねーだろうが!」 無駄に飾ったイスに縛り付けられている♂ローグ。 そんな♂ローグを更に大声で怒鳴る♀アルケミ。 「ええい男がぐちゃぐちゃと鬱陶しい! ええから商品はそこで静かにしとき!」 そんな♀アルケミの後ろで、♀クルセと♀プリの二人が困った顔で立ち尽くしている。 「あの……私はその……」 「わ、わたしもそんな大騒ぎにするつもりは無かった……」 そして顔を見合わせる二人。 「えっと、私は、その少し♂ローグさんとお話がしたかったもので……」 「あ、ああそうか。わ、わたしも……その……や、やくそくが……その」 もごもごと口ごもる♀クルセだったが、その言葉に♀プリの心臓が跳ね上がりそうになる。 「や! やくそく……ですか?」 「ええ! あ! いやその……その……約束はどうなったのかなと……♂ローグに……その」 突然♀セージが口を挟む。 「ふむ、ではその約束とやらを♂ローグに説明させよう。それ次第では、先に出会った権を行使出来る♀プリの優位性が崩れるやもしれぬ」 頬をびみょーに赤らめながら♂ローグが喚く。 「知るか! なんだって俺がここでんな事言わなきゃなんねーんだよ! てーかいい加減これほどけてめーら!」 速攻で♂ローグの口にさるぐつわを噛ませる♀ハンター。 その早業の妙に大きく頷く♀セージ。 「♂ローグは証言を拒否。となると約束とやらの信憑性を証明する物が無くなってしまったという事か……」 おっそろしく衝撃を受けた顔をする♀クルセ。 「では弁護人♀アーチャー、他に♀クルセ優位を訴える材料はあるか?」 「もっちろん! ♀クルセさんの女性的魅力たるや! あのもんのすごいスタイル見ればどんな男も……」 「わーーー! わーーーー! なんて事言い出すのだ♀アーチャー!!」 慌てて♀アーチャーの口を塞ぐ♀クルセ。 それに感心したように肯く♀セージ。 「ほほう、外見以上に体型に自信があると? では確認の為にここで脱いで……」 「出来るかーーーー!」 「そうか、ではそれもまた証明出来ずと。では♀プリ側の弁護人……」 そこまで言って辺りを見渡すが、♀剣士の姿が見えない。 代りにその気配に気付いた♀ハンターが思いっきり自分を指さしてアピールしている。 「いいだろう。弁護人♀ハンター口述を始めてくれ」 きらーんと♀ハンターの目が輝く。 「OKじゃあね……上から85-59-83って所かしら?」 あまりの正確さに目を見張る♀プリ。 「ふふふん、そしてあなた……その年でこれって結構希少価値よ……あなたは処女ね。間違い無いわっ!」 顔中真っ赤にしてあたふたしだす♀プリ。 「絶妙ともいうべきスリーサイズ、聖職者という肩書き、発言の少ない控えめな性格、身持ちも堅く恋愛経験に疎い、それでいてその全身から漂う守ってオーラ!」 「ちょ、ちょっと……その……」 「無敵よ彼女は。これだけの逸材、物件はそうそう無いわね」 自信満々でそう言い放つ♀ハンターに、♀セージは隣の♀ウィズに訊ねる。 「そうなのか?」 「そうなのか? って……まあ確かに魅力的よね、それも相当高いレベルでバランスが取れてる子よ」 「そうか、では…………というか♀プリ、♀クルセよ。一つ聞いて良いか?」 「……なんだ?」 「はははははい、なんでしょう?」 「一体私はお前達の何をどうジャッジすれば良いのだ?」 『それも知らないでやってたんかい!』 速攻で♀アルケミ、♀ハンター、♀アーチャーがつっこむ。 ちょっと痛かったなーとか思いつつ、さりげなく拳でツッコミ入れてきた♀アーチャーに非難の目線を向けながら言い返す♀セージ。 「そうは言うが、何故この二人が争っているのかもわからないのに、どうやってそれを判定しろというのだ」 ♀ハンターが毅然として言い放つ。 「決まってるじゃない! 男を奪い合う女同士、血で血を洗う大抗争よ!」 ♀アーチャーもくわっと睨み付けながら言う。 「そうよ! 例え破れても草場の影からお百度参りじゃ済みませんバトル! これこそ女の生きる道!」 全然意味のわからない二人をほおっておいて、♀アルケミが前向きに話を進めてみる。 「あ~、とりあえずやな。この♂ローグの良い所をそれぞれで挙げてみ? まずは♀プリからや」 先ほどの♀ハンターのトークから赤面しっぱなしの♀プリは、相変わらずもじもじとしながら言う。 「え、……えっと……その、♂ローグさんはとても優しい人です」 「ほうほう、んでも優しいだけやったらそこら中にいくらでもおるやろ?」 「そんな事ありません。♂ローグさんは、弱い相手に決してその力を振るったりせず、その上で、きちっと誠意には誠意で応えてくれる方なんです」 「ふ~む、わかりずらいな~。こんの悪党面が何をどーしたら誠意なんて話になるんや?」 「悪党面なんかじゃありません! ♂ローグさんはとっても優しそうな顔してるじゃないですか!」 ♀ハンターと♀アーチャーが揃って『1』と書かれた札を上げる。 「おーけい、♀プリーストはん二ポイントげっとや。うんうん、恋は盲目言うしな~」 すんごい色々言いたそうな♂ローグを放置で♀クルセへと質問は移る。 「では、♀クルセはん。♂ローグの良い所って何処や?」 「あ、ああ……そうだな。♂ローグは仲間想いで、女子供を決して見捨てない、男の中の男だ」 「ほうほう、それはなんや、えろうかっこええ奴やな。んでもそれ下心でもあったんちゃうん?」 「そんな事は無い! ♂ローグは私の想いを知った時も、きちっと自分の気持ちを言って、私を都合良く使うなぞという真似はしなかった!」 沈黙が場を支配する。 「……えっと、♀クルセはん、もしかして♂ローグに告ったん?」 「へ?」 そこで始めて自分が言った言葉の意味に気付く。 「わーーーー!! わーーーー!! い、今のは無しだ! 待て! 私は何も知らないぞ!」 しゅざっと♀アーチャーが『2』のポイントを、♀ハンターが『-1』のポイントを上げる。 「ちょっとちょっと♀ハンターさん。なんでマイナスポイントなのよ」 「それはこっちのセリフよ。あそこまで言っておきながら当人前にして否定するなんてどうかしら?」 ♀ハンターのセリフに♀クルセが更に慌て出す。 「え? ええ!? こ! これは違うのだ♂ローグ! これはだな! ええと……あ~う~」 進退窮まる♀クルセに♀ハンターが追い打ちをかける。 「恋する乙女の鉄則よ。男の前で晒す醜態は常に計算づくであれ。醜態すら利用する心意気の無いあなたに恋をする資格は無いわっ!」 がーーーーーーーん とショックを受けてしまった♀クルセを置いておいて、♀セージがぼそっと呟く。 「そうか、やっと理解したぞ」 ♀ウィズがバカバカしそうに♀セージを見る。 「何をよ」 うんうんと肯きながら♀セージは言った。 「つまりはだ、♀プリも♀クルセも、♂ローグと生殖行為に及びたいという事だな」 『途中経過をすっとばすなーーーーーーーーー!!』 ♀ウィズ、♀アルケミ、♀ハンター、♀アーチャーの四人総ツッコミを受けて派手に後ろに吹っ飛ぶ♀セージ。 微妙に鼻血を出しながら、倒れた隣にぽつんと立っていた子バフォに聞く。 「……何か間違ったか?」 「何故我に聞く?」 「解決策として、♂ローグが二人を交互に相手取るという手も考えたのだが。物理的には可能だろう?」 「お主は人間社会の常識から学び直すべきであろう。それだけは我にもわかった」 小さく縮こまってしまっている♀クルセを見て、流石にやりすぎたと思ったのか、♀ハンターが新たな申し出をした。 「そうね、こうなったらあの手しかないわ」 「あの手ってなんや?」 「もちろん、二人を♂ローグが『試して』みて『良い』方を選ぶというストレート一直線な手。とりあえずそこの林の奥でも使って……」 ♀ハンターの背後に迫る怨念に満ちた黒い影。 「何を言ってるのあなたはーーーーーーーー!!」 ♀騎士の鉄拳が♀ハンターの後頭部を捉え、♀ハンターはあっさりと昏倒した。 「ようやく見つけたと思えばあなたは……ごめんなさい、このバカが色々と迷惑をかけたでしょ?」 つい肯いてしまう♀クルセと♀プリの二人。 「ごめんなさいね。この悪党には私がきつーーーーーーーーくお仕置きしておくから」 そう言った際の♀騎士の表情がシャレになってなかったので、誰も反論はしなかった。 「そうね、深淵の騎士子も誘ってあげようかしら……良くもいろいろいろいろいろいろやりたい放題やってくれたわね……」 ♂ローグは、一人あの世の不条理についてぶつぶつと口の中だけで文句を言っていた。 『なんだって俺は、ここに来てまでこんな目に……大体だな、俺も好き放題暴れてりゃこんな扱い受ける事も……』 思考が陰に篭っていく。 『くっそ、やっぱり俺もローグ姐さんに付き合って無法の限りを尽くしておけば……』 不意に、♂ローグの視界にとても珍しい物が入る。 『腹? それもこりゃ……女の腹か? なんだってこんなもんが俺の目の前に……』 ごすっっっっっ!! そりゃもう鈍すぎる音がそこら中に響く。 いつのまにか駆け寄っていた♀ローグが、思いっきり高く飛び上がり、両肘を、♂ローグの頭の上に叩き落とした模様。 あまりの衝撃に猿ぐつわは外れてくれたが、びしーっと縛ったロープは全く外れる気配すら無い。 相手が♂ローグという事で、念入りにとの♀セージの指示であった。適切な処置である。 「あら? 何よそれ。油断させて反撃する手じゃないの?」 「……その前に、いきなり肘打ち喰らわす理由を説明……しやがれ」 「あんたも結構ヤルし。楽しそうだからケンカ売ってみたのよん♪」 すぐさま周囲を女達に囲まれる♀ローグ。 「貴様っ! よりにもよって♂ローグに手を出すとは……許せん!」 「なんて事を……♂ローグさん! しっかりしてください!」 「このお人ってどないな人なん?」 「♂ローグの話では、悪党の中の悪党という事らしいが……」 「不意打ちで全体重乗せた肘打ち喰らわす辺り、その評価は正しいようにも思えるわね」 五人に囲まれ、しかし不敵に笑う♀ローグ。 肘を曲げ、脇を締め、両腕を前に出しながら、片膝を心持ち上げ、体を揺すり出す♀ローグ。 ♀セージがその構えを見て警戒を強める。 「むう、その構えは……」 「知ってるんか♀セージ!?」 「ああ、これぞまさしく霧獲蛇射(ムエタイ)の構え。まさかこの技の継承者が残っていようとは……」 『霧獲蛇射』(むえたい) かつて隆盛を誇ったグラストヘイム城から数千キロ離れた大地 そこにある侘唖吐瑠=亞維嵐怒(たあとる=あいらんど)と呼ばれる島に伝わる一子相伝の必殺拳法 それを真似て喪賂九の商人が見よう見まねで作り上げ 街の道場で売り出したのがそもそもの起源と言われている ちなみにかの商人は詐欺の容疑で既に所轄署に書類送検されている 当人はコメントで 「これは健康に良いのです。老いも病も無い国に行きたければ頑張る事です」 と残していたという 民萌書房刊 『喪賂九烈士伝 第856980章』より抜粋 ♀ウィズがすんごい真顔で言う。 「バカにしてんの?」 「私は今までお前をバカにした事なぞ一度も無いぞ」 「わかった。じゃああなたがとんでもないバカなのね」 「私はお前をバカ扱いした事は無いというのに、お前は私をそう扱うのか。ひどい奴だな」 「……だーれーかー、私をこの空間から救い出してー」 ♀ローグは、懐から鉢巻きを取り出し頭にはめる。戦闘準備完了だ。 バックに巨大な文字が浮き出てくる。 一つ、武器防具を使いません! 二つ、死んでも、回復アイテムは使いません! 絶対に! 三つ、主役は私、パーティーは組みません! 四つ、狂気ポーションも使いません! 五つ、最強の、ローグスキルを使います! 『 ローグ!!!!!!!! 』 ♀ローグの余りの気迫に全員言葉も無い。 しかし、ひっくり返った♂ローグは一人、ぼそっと呟いた。 「……それだと、俺まで含まれちまうからヤメレ」 まずは第一撃、足下に転がる♂ローグに踵の一撃を振り下ろして黙らせると、激怒した♀クルセが襲いかかってくる。 ♀アルケミも同時に踏み込み、その後ろで♀セージが詠唱を始める。 ♀ローグはそれを見るなり、♂ローグが張り付いたままのイスを蹴り上げてその場に立てる。 ちなみに♂ローグは白目剥いた状態で、なすがままである。 そうして立ち上がったイスの上に♀ローグは飛び上がり、それを蹴って、踏み込んでくる♀クルセの肩の上に飛び乗る。 「なっ!?」 ♀クルセが反応するより早く、今度は♀アルケミの肩に飛び乗り、更に奥へと飛び込んだ。 空中から片肘を振り上げて迫るは♀セージ。 「くっ!」 辛うじてのけぞってその肘をかわしたが、すぐさま放たれた♀ローグの後ろ回し蹴りをまともに喰らう。 鳩尾にまともに入ったそれに、苦悶の表情を浮かべる♀セージ。 「何をしている♀ウィズ!」 一人、端っこで座り込んでる♀ウィズ。 「……私は花よ。野に咲く名もない花。だから話しかけても返事なんてしないわよ」 「何?」 「そーんな世界に巻き込まれるのはまっぴらって言ってるのよーーーーーっ!!」 半泣きになりながらそう叫ぶ♀ウィズの肩を、♀プリーストが肯きながら叩いたりしている。 しかたが無いので、自分でなんとかするべく考える♀セージ。 その間に♀ローグは、♀アルケミと♀クルセの二人相手に死闘を演じていたりする。 「往生せーや!! 事後回収用紐付きメマーナイトーーー!!」 「正義剣! ジャスティス乱れ打ち!」 「なんの! アルティメット極殺技! 爆裂究極すくりゅーあっぱーーーーー!!」 ふと思いつく♀セージ。 「そういえば、♀ローグはアンデッド歴があるんだったな……ならば」 地味ーに、ぽっとファイアーウィールを出してみる♀セージ。 「あっつーーーーーーーー!!」 殊の外効果的であったようで、♀ローグは凄まじい勢いでその場を走り去っていった。 「あらら、なんやエラク火の付きええなあの人。両足ばりばり燃えてるでアレ」 そう言う♀アルケミだったが、返事は無い。 ふと見ると、♀クルセと♀プリーストは二人揃って♂ローグの介抱をしていた。 「ひーる! け、怪我は大丈夫ですか?」 「ああ、怪我はな……」 「そうか、何か欲しい物とかあるか? 食事でもなんでも用意するぞ?」 「いや食事はいい……だがな、お前等。一つ言わせてくれ」 「はい?」 「なんだ?」 「この期に及んで! なんでまだ俺の縄解かねーんだよ!」 「いや、その……それ外しますと♂ローグさんはきっと……」 「そ、そうだな……多分逃げてしまうような気が……その……」 「……変な所で、勘良すぎだお前等……」 「弱ったな~。♀アコさん何処にも居ないよ……」 ♀モンクは一人、途方に暮れていた。 ごめんなさい優先度ダントツトップの彼女に謝らずして、ごめんなさい行脚は始まらない。 とりあえずそこらに居る人に聞いてみる事にした。 「あの~。♀アコさん見なかった?」 その声に振り返った彼女は、メイド服に身を包んだアリスだった。 「はい? ええ、見ましたよ」 「ほんと!? 何処に居るかな?」 「ええっと、先ほど♂シーフさんとあの川を渡って行かれました。お二人ともとても楽しそうでした……まるで金の野原を駆けているように……」 らん♪ らんらららんらんらん♪ らん♪ らんららら~ん♪ 「わあ、♀アコさん、川が金色に光ってるよ~」 「すごい……これがあるぎおぺの……ステキね、♂シーフさん」 「さあ、あっちまで一緒に走ろう♪」 「ええ♪」 らん♪ らんらららんらんらん♪ らららんらんらんらん♪ ジト目の♀モンク。 「二人の服、めっちゃ青そー」 その光景を思い出したのか、何やら夢見るよーなアリス。 敢えてツッコまずにいると、奥から人が会話する声が聞こえてくる。 「……ほら、早く行かないとアリスさん待ってるよ」 「うっさいわね~。大体私の方が荷物多いって何かおかしくない?」 何やら聞き覚えのある声だと♀モンクが思っていると、すぐに会話している二人が姿を現した。 その姿を見た♀モンクが硬直する。 「何言ってるんだい。秋菜でもなきゃそんな大荷物持てる訳ないじゃないか」 「そりゃそうだけど……何かこー不条理よ、この荷物配分」 ぶちぶち言いながらアリスの前に山ほどの食べ物を置く秋菜。 「まあまあ、そう言わないで……あれ? そちらは♀モンクさん? 良かったら一緒に食べない?」 ♀モンクはバカみたいな口をぱくぱくさせるだけだ。 秋菜はそんな♀モンクを見て、足下に置いた食べ物から、アンパンを一個取り出す。 「ほい」 「むぐ? ……むぐむぐむぐ……ごっくん。ってちがーーーーーう!」 「何よ騒々しいわね~。心配しなくても牛乳もあるから一緒に飲めば」 妙に食い合わせに詳しい秋菜に驚きつつも、♀モンクは後ろに飛び下がって構える。 「なんであんたがココに居るのよ!」 そう言われた瞬間秋菜のこめかみに青筋が浮き出る。 「……うっさいわね。ヤられたのよ。ああーーーーー!! ありえない! なんだって私があいつらなんかに! うがーーーーー!!」 大声あげる秋菜の口に、今度は♂GMがアンパンを差し込む。 「あーーーもがっ……んぐんぐ……ごっくん」 一息に食べると、牛乳を取って腰に手を当てる。 「ごきゅ……ごきゅ……ごきゅ……ぷはー!」 満足したのか、満面の笑みを見せる秋菜。 ♀モンクは見たままの感想を述べる。 「おっさんくさっ」 「何よーーーー!!」 ムキになる秋菜を♂GMがなだめてる間に、いつのまにかアリスがビニールシートを広げて、その上に食事を広げている。 「さ、準備出来ましたよ。みなさんいただきましょう……早々につまみ食いしてる悪い子も、今日だけは見逃してあげますから」 なし崩しに山と積まれた食料を囲んで四人が座る。 「では、いただきます」 アリスの号令に、♂GM、秋菜、♀モンクが続く。 『いただきます』 そう言うなりアリス、♂GM、秋菜の三人は揃って好きな物を手にとって口にする。 好きな物ばかり食べているのだから、自然三人の顔は笑顔になった。 そんな三人を横目に見ながら、♀モンクはおずおずと、中のチーズトーストを取る。 腕が震えるのが自分でもわかった。 それを横目で見ていた秋菜の目が光る。 「隙ありー!」 ♀モンクの手からひょいっとチーズトーストをひったくると、即座に自分の口に入れる秋菜。 「あーー! 何するのよ!」 「ひゅひあるほーがわるひー」 「口の中の物食べてからしゃべりなさいよ!」 ぶちぶちと文句言いながら♀モンクは、メロンパンを手に取る。 「全くもう、油断も隙もあったもんじゃない……」 今度はすぐに口に入れた。 メロンパンの甘い味と、ほんのり香るメロンの風味。 ついつい、顔に出てしまったのか、それを見たアリスが嬉しそうに聞いた。 「おいしいですか♪」 ♀モンクは、すぐに肯定しようとして口を開きかけるが、うまくそれが出来なかった。 ぼろぼろと涙がこぼれるのを止める事が出来なかった。 心配そうに、みんながこちらを見ている。 だから、♀モンクは涙を一生懸命堪えながら言った。 「ぐすっ……おいしいよ。これ、すっごくおいしい。ありがとう」 ♀ウィズは、一人さっさとあの忌まわしい場所を離れて放浪を始めた。 そしてすぐに声をかけられる。 「災難だったな」 無駄にさわやかスマイルなのは、♀剣士だ。 「……あなた、わかってて逃げたわね」 「はっはっはっはっは」 「笑って誤魔化さないの。どうして一声かけてくれなかったのよ……」 「そう恨みがましい目で見るな、私だって苦手な事ぐらいある」 「脳味噌沸騰するかと思ったわよ……しばらく会わない間に♀セージの天然にも磨きがかかってるし」 「ああいう、大騒ぎは苦手か?」 「勘弁してちょうだい、私ああいうの本気でダメなのよ」 心底嫌そうな顔をする♀ウィズを見て、流石に可哀想に思えてきた♀剣士。 その目が、ある人物を見つけると自然鋭くなる。 ♀剣士の気配を感じ取った♀ウィズも、緊張した顔で、♀剣士の視線の先を見ると、そこには♂アサシンが居た。 二人の気配に気付くと、♂アサシンは振り向いた。 「あんたか……色々迷惑かけたな」 まともな言葉が返ってきた事に驚く♀剣士。 そんな♀剣士の様子に気付かないのか、♂アサシンは歩み寄りながら言う。 「だが、誰よりもヘコんでいるのは俺自身だ……察してくれ」 「まさか、元に戻ったのか?」 「ああ……正直、泣きたい気分だ」 理由はわからない、だがまともに戻ったというのは本当らしい。 「だとしても、私も恨み言の一つも言いたい気分だ。散々手こずらせてくれたからな、お前は」 苦々しい顔で♀剣士を見る♂アサシン。 「覚えている。よりにもよって……狩り専とはいえ、アサシンの俺が剣士に……ぐあー、俺のプライドを返せー」 「当人を前にしてそういう事を言うな」 とか言いながらも、♂アサシンの身の上には同情を禁じ得ない♀剣士。 ♀ウィズは、これを黙って聞いていては不毛な会話にしかならないとふんで、不意に話題を変えてみる。 「へ~。狩り専なんだ。いつもは何処で狩りしてるの?」 「ん? 俺は……そうだな、最近は時計上4とかか。亀地上は……まあ、色々あってな」 それを聞いた♀剣士が大きく目を見開く。 「上4? 鍵が必要なあそこを狩り場にしているのか?」 「ああ、どうせ重量過多になるまで篭るしな。その間に鍵の一本や二本ぐらいは出るさ」 「いや、それ以前にどうやってあんなキツイ狩り場に……」 「そうか? 太陽剣とQマシリャスカッターがあれば、永遠に篭ってられるぞ?」 その言葉に♀剣士は吹き出す。 「太陽剣!? そんなものまで持ってるのかお前は?」 興を引かれたのか、♀ウィズが訊ねる。 「ねえ、他の装備は?」 「ああ、時計上4行く時なら、TBrグラ、QBfマイン、DADBfマイン、HyDtiジュルに、鎧各種って所か」 「へ~。結構揃ってるじゃない。もしかしてかなりブルジョア?」 「時計行く前は、死ぬほどコンロン通ってたからな。あんたは何処で狩りを?」 「私? 私は……最近は監獄が多いかな?」 再度吹き出す♀剣士。 「こ、こら♀ウィズ。監獄ってお前あんな沸きの良い所でどうやって……」 「ん? 立ち回りうまくやればなんとかなるわよ」 そして♂アサシンと♀ウィズの二人で上級狩り場ソロ狩り談義で盛り上がる。 もちろん、どちらの狩り場も即死の危険が目一杯なので、♀剣士は絶対に近づいたりしない場所だ。 何かこー突然二人が別世界の生き物に見えてきて、それを確認すべく♀剣士は一つの質問をした。 「なあ、二人は防具精錬どこまで進んでいるんだ?」 「オール+7だな」 「オール+8ね」 くらっと目眩に襲われる♀剣士を余所に、二人は更に盛り上がる。 「ほ~。オール+8とはなかなかやるじゃないか」 「あなたと違って武器はいらないからね。そもそもウィズが被弾前提で戦う訳にもいかないんだけど、ほら、一応安心したいじゃない」 「そうだな、カリッツ盾やらティアラやらは揃えたのか?」 「一応ね。もうちょっと良い防具使えれば楽なんだけどね~。そういう所はあなたが羨ましいわよ」 「そうか? 確かに防御力はあるが、マントの+7とかは他に類を見ない程金かかるぞ。俺はお前の金かけなくても得られる無法な殲滅力が羨ましくてしかたがないぞ」 最早異次元の会話と化した二人を見て♀剣士は思った。 『……こいつら、装備ありでこのゲームやってたら一体どうなっていたのだろうな……』 聞いてるだけで、とんでもなく空しくなってきた♀剣士は、足早にその場を去ろうとしたが、突然二人の声が大きくなった事に気付き、その足を止める。 「待て。それは誤解だ。お前はアサシンという職業を甚だしく誤解している」 「そうかしら? 殺しを生業にしてる職なんでしょ? だったら対人戦なんてお手の物じゃない」 「ふざけるな! 俺達アサシンはな、モンスター相手にしてる時が一番輝くんだよ! それもPTなんか組まないで一人でやってる時にな!」 何やら鬱屈しているものがあるのか、声を荒げる♂アサシン。 「くそう、そんな俺に殺し合いなんてさせやがって……俺なんてな、ヤワだし、バッシュよけられないし、スタンしたらいつまでもぴよりっぱなしだし、範囲攻撃無いし、囲まれるとボコスカ殴られるし、どんなに早く動いても禿にゃーずばーっとぶった斬られるし、武器には金かかるし、かといって防具疎かにすると5%の壁に泣く事になるし……よっぽどローグの方が人殺しには向いてるんだよ!」 「……まあ、確かにローグは男も女も終盤まで元気だったけどね」 「黒蛇王なんて大っ嫌いだ! MVPボスなんざ狩りの障害以外の何者でもねーやばっきゃろー!!」 隣の芝は青く見える。そんな事を考えながら♀剣士はさっさとその場を離れた。 『これ以上あの場に居たら、あの二人殴りたくなってくるからな……』 最早同情する気すら起きなくなった♀剣士はそんなことを考えていた。 ドッペルゲンガーは、彼方で何やら揉めている三人を見つけ、ふと興が乗ったのかそちらに行ってみる事にした。 ♀騎士♂騎士の二人が、♀ハンターへの仕置きタイムでドッペルゲンガーに全く構ってくれないのは、全然関係無いが。 「一体何を揉めておるのだ?」 ドッペルゲンガーを見た月夜花は嬉しそうに飛び上がる。 「ドッペルゲンガー! ねえ聞いてよ! この子が♂剣士君を独り占めするんだよ!」 「何よ! ♂剣士は私のなの! それを横からしゃしゃり出てえらそうに言わないでよね!」 何よりもまず、♂マジの女言葉に面食らったドッペルゲンガーだが、おくびにも出さずに答える。 「ふむ、二人で仲良く分ければ良いのではないのか?」 悲鳴を上げる♂剣士。 「さらっと無茶な事言わないでくれー!」 無理との事なので、更に考え込むドッペルゲンガー。そして、ふと妙案を思いつき手を叩く。 「では、こういうのはどうだ? 外見も一緒であるし、私が代りにどちらかの相手をしよう」 『ヤだ』 月夜花と♂マジの二人に速攻で拒否された。 「ふむ……そうか」 他に案も思いつかず、またまた考え込むドッペルゲンガー。 「もーいいもん! こーなったら力ずくだー!」 そう叫ぶやいなや月夜花は♂剣士を抱えて、猛ダッシュで逃げ出した。 「こらー! 待ちなさい! 絶対許さないわよ!」 凄い勢いで追いかける♂マジ。 「……せめて人間扱いをぷりーず……」 ♂剣士の主張は綺麗に二人に無視されたようだ。 一人、取り残されたドッペルゲンガーは再度呟く。 「そうか、私ではダメか……そうか」 またとぼとぼと歩き出すドッペルゲンガー。 ふと河原の側に、ペコペコ管理兵の二人を見つけた。 二人は、何やら川に向けて石を投げて居た。 「くそっ! どーしてもあたらねー!」 「今度は俺が! ……ってあんな遠くの狙おうなんて言ったの誰だよ。当たる訳ねーじゃん」 ドッペルゲンガーは声をかけてみる事にした。 「どうした?」 「おうドッペルゲンガーの旦那。実はな、ペコがさっさと川渡っちまったんで、俺達する事無くてさ」 「悔しいから、川の中州にある変な形した石目がけて石投げたんだけど、当たらねんだこれが」 「当たらないってなると絶対当てたくなるのが人間ってもんでな」 「さっきからずーーーーーーーっと狙ってるんだが、一回も当たらねんだ」 妙にテンポと歯切れの良い二人の会話にやっぱりドッペルゲンガーは驚いたが、顔には出さなかった。 「ふむ……では私がやってみよう。当たれば良いのだな?」 『おう!』 ここまで息の合った話し方をされると、何やら小気味よい。 そんな事を考えながら、ドッペルゲンガーは石を拾って狙いを定め、投げた。 「すっげーーーー!! 一発命中!」 「さっすが旦那! よっ! ゲフェンの魔王!」 「ふむ。別に特別な事でも無いと思うが……」 無表情のままで、もう一個石を拾うドッペルゲンガー。 今度はアンダースローの要領でそれを投げる。 投げ込まれた石は、水面を跳ねながら目指す石へと向かって行き、見事命中。 「おおおっ! 今度は大技混じり!」 「はらしょーどっぺる! 神業? 魔技? かっこいー!」 「ふむ。では次は……」 その表情からは全く察する事が出来ないが、ドッペルゲンガーは、何やら嬉しい様子であった。 「さーんばーにあわっせて♪ おっどりだすぅー♪」 BGMに合わせて見つめ合う♂BSと♀BS。 「ああ……俺さ、その……なんて言っていいか……」 そこまで言った♂BSの唇に♀BSは自分の指先で触れる。 「こうして、二人で居られるんだからいいの。私には……それで充分」 「そか……ありがとう」 「きゃんゆーせれぶれーいと♪ きゃんゆーきすみーとぅなーい♪ うぃーうぃるろーんぐ♪」 突然むすっとした顔になる♂BS。 「空気読んでくれよ、ここはBGMいらない所だろ」 ♀BSも口をへの字に曲げる。 「そうよ。気を効かせてこの場を離れるぐらいして欲しいわね~」 文句を言われた♀商人は目の幅涙を流しながら言った。 「うぅ~。私だって好きでやってるんじゃないんですぅ~」 ♂♀BSは揃ってジト目だ。 「じゃあ、また♀シーフさん達の所で折檻される? 商売柄、声出すのは得意だからって言ったの君だよ?」 「そうよそうよ、それが嫌だからってBGM役引き受けたんじゃない。文句なんて言ったらバチ当たるわよ」 「うぇーん、わかりましたぁー。歌いますよー。次の曲は……えっと……のーばでぃのーず?」 ♀BSが嬉しそうに言う。 「それ私大好きなの! ほわっとごーいんおん! 気付いたのさ♪ 越えよう!」 「いや……ちょっとこれ一人じゃ無理が……」 「じゃあ、次の俺のリクエストよろしくっ」 「はーい。次は何かな~」 そうして手元のリストを見た♀商人の表情が変わる。 「……せっくすましんがんずって本気ですかぁ?」 「おっけーい! 俺の心の糧、1stアルバム全曲一気でごー!」 「……死にます。絶対確実に。吠えきれません、私じゃ」
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/1180.html
プロローグ……? 俺「ストライクウィッチーズだっぺ」 795-796 作者 ID B73e14d20 総レス数 2 このページでのレス数 2 795 :アナルワイプさん恋をする[]:2011/02/23(水) 22 49 18.74 ID B73e14d20 ~プロローグ~ 智子「ああっ!! ん…あぁんっ! あっ、あっ、あっ!」ビクンッビクンッ ジュゼッピーナ「ハァハァ…フゥ…ハァハァ…。」ゼェゼェ ハルカ「ジュゼッピーナ准尉、頑張ってくださいっ! もうちょっとで今日10回目の撃墜になります! 今までで最高数ですよっ!!」 ジュゼッピーナ「ハァハァ…ええ…そうね…。」ゼェゼェ ハルカ「これでとどめですっ! ウォォォォォォォッ!!!」ウォォォォォォォッ 智子「んっやっあっあああああああああぁぁぁぁ………。」ビクンッビクンッビクンッ... ハルカ「フゥゥゥ…いい汗かきました。」ツヤツヤ ジュゼッピーナ「ハァハァ…そう…ね…。こんなに…ハッスルした夜は初めてね…。」ゼェゼェ 智子ハァハァ ハルカ「………………。」 ジュゼッピーナ「…どうしたの、ハルカ…?」ゼェゼェ 796 :アナルワイプさん恋をする[]:2011/02/23(水) 22 51 15.59 ID B73e14d20 智子ハァハァ ハルカ「…智子中尉の吐息聞いてたらまたムラムラしてきましたっ!!」ダッ ジュゼッピーナ「えっ!? 今日はもう…」 <ウヒョーットモコチュウイィィィィ <ハルカ キョウハモウム…アンッアッアッ ジュゼッピーナ「………………………。」 <ココカー!?ココガイイノンカーッ!? <アッ…ンッヤッ…アアンッ ビューリング「うるさくて眠れん…。」 キャサリン「もういいかげん寝不足ねー。」 エルマ「誰かなんとかしてください~…。」ブルブル <チュウイィィィィトモコチュウイィィィィィィィィッ <アンッ…ヤッアアアアアアアアアァァァァ… 第1話へ続く
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/1291.html
エピローグ……! 571 :淫獣さん恋をする:2011/07/02(土) 02 16 52.56 ID VqKfAAkN0 エピローグ ―1942年 スオムス ヘルシンキ マンネルハイム「スオムスへようこそ、俺少佐。」 俺「いやぁ…マンネルハイム将軍直々にお出迎えしていただけるとは、感激の極みであります。」 マンネルハイム「何をおっしゃるのですか。我が国の英雄をお迎えするのです。私でも役者不足ですよ。」 俺「英雄……ですか……。それは些か大げさだと思いますが……。私は大した功績を立てていませんし…。」 マンネルハイム「あなたは我が祖国のために命をかけて戦ってくださったのです。それを英雄と言わなくて、何と言いますか。」 俺「…………ありがとうございます。」 マンネルハイム「それで…今回はどういったご用件でスオムスへ?」 俺「まぁ、休暇でちょっと久しぶりに恋人に会い来まして…。」 マンネルハイム「ほほぅ…彼女に会いに来たのですか。」 俺「はい。会うのはだいたい3年ぶりくらいですね。アイツ、元気でやってますか?」 マンネルハイム「元気ですよ。ここ、ヘルシンキにも様々な逸話が伝わって来ているくらいです。」 俺「ハァ……まだ直ってねぇんだなぁ…あのクセ。」 572 :淫獣さん恋をする:2011/07/02(土) 02 17 40.72 ID VqKfAAkN0 マンネルハイム「………。」ニコニコ 俺「すいません、マンネルハイム将軍。そろそろ失礼します。 とっととアイツの所に行かないといけないんで。」 マンネルハイム「そうですね。早く恋人に会いたいですよね。 彼女に会ったら、まず何と言うおつもりですか?」 俺「そうですねぇ…」 『会いたかったぞ、マイリトルスウィートエンジェル…ハルカ!!!!』 俺「ですかね。」 お わ り
https://w.atwiki.jp/kaeuta-matome/pages/1498.html
元ネタ:終章(エピローグ)(CHAGE&ASKA) 作:ヤジメタル 最後の仕事をこなしていたのは先月 私は震える心押さえて営業電話繰り返す いつもと同じね無愛想な社長の声は 空っぽの私の予定の中にとどめ差してきます ありきたりの仕事はしたくなかったの 2日で幕を降ろすような 精一杯の金額で請求書書くけど 更に値切られ終章(エピローグ) 検索タグ J-POP その他ネタ 1コーラス以上 ヤジメタル メニュー 作者別リスト 元ネタ別リスト 内容別リスト フレーズ長別リスト
https://w.atwiki.jp/spellborn-wiki/pages/81.html
デスハンド に戻る 画像 スキル名 スキル詳細 説明 効果 コンボタイプ 属性 アタックタイプ マジックタイプ ク|ルダウン
https://w.atwiki.jp/cold_blood/pages/23.html
作戦の準備は整った。 解放軍は首都へ向かって進軍を開始し、 女王ルージュ奪還のための作戦を開始する。 スカーレットと砂塵の鎖は少し遅れて合流したが、 解放軍は新たな困難に直面することとなる。 この困難を打開すべく三度砂塵の鎖は戦うこととなる。 「開戦、5人の突入作戦」 「参りましょう。アリエスとアポロは首都近辺に結集しているはずです。」 準備の出来た砂塵の鎖を伴って、転送石を用いてスカーレットは出陣した。 出迎えたのは、アリエスと似たヴァーナ猫族の男性で、クロスボウを携えている。 男の名はアポロ。解放軍の将の一人で、アリエスの兄である。 「砂塵の鎖の諸君もよくやってくれた。この戦いに勝てばローグを無力化し、 ホロコースト打破に注力できることだろう。」 アポロは続けて、ウィリーに手紙を預かっている、と手紙を渡した。 手紙には、悪い報せとして「シビリアンの同志の何名かが怪人にさせられてしまった」とあった。 怪人にさせられた同志は全員介錯したが、こうなってしまっては冷血党に所属すること自体に命の危険を伴ってしまう。 シビリアンの生き残っている同志たちを集めて接触してきた解放軍と連携し、怪人対策のチームを結成した。 目下、ウィリー程ではないが腕の立つものが政治的立場を超えて怪人との戦いにあたっている。 我々のことは心配せず自分が信じた道を進んで欲しい。 また、新種の怪人が目撃されている。人語を話し、本能だけで襲いかかってきた怪人たちが連携の採れた動きを取ってくるので十分注意して欲しい。 手紙を強く握り締めたウィリーをアリシアは気遣うが、 ウィリーはその手紙を見て「やはり、自分には許してはならない相手が居る。」と、決意を新たにしていた。 アリシアはそんなウィリーに「気負いすぎては上手くいくこともうまくいかない。今は、目の前のことに集中するべきだ」と忠告する。 例え友を手にかけることになっても、やらなければならないことはある事を、ウィリーは実感していた。 スカーレットは出陣にさきがけて集会を行うべく解放軍の兵士を集め、 アポロから、「これより我ら解放軍はローグとの戦いのため、首都へと進軍を開始する。 それに先がけて、我らが王女スカーレット様よりお言葉を頂戴する。」 と声がかかる。 壇上に上がるスカーレットは自らの傷だらけの身体を隠すことはなかった。 スカーレットの姿を久しく見ていなかった解放軍の義勇兵達は今の姿に驚きを隠せない。 スカーレットは彼らの反応にも動じることはなく演説を始めた。 「解放軍に志を持って参加してくれたことに、まずは感謝します。 私の今の姿を見て驚いた方も少なくないことでしょう。 ですが、冷血党……いえ、ローグの行っている非人道的行為は、 私の体以上にに深刻な事態をこの国にもたらすこととなるでしょう。 それを止めるために私は皆さんに協力をお願いしました。」 「ですが、戦いで命を落としては元も子もありません。 戦う前に一つだけ……身の危険を感じたら、恥じることはありません。躊躇わずに逃げてください。 生きてさえいれば、必ずやり直せます。」 「そしてその上でお願いします。私たちに……いえ、この国のためにみなさんの力を、どうかお貸しください。」 演説を終えたスカーレットは深々と頭を下げた。 アリシア達は黙って胸に手を当て、演説を聴いていた。 彼女がどれほどの覚悟を持っているはわかっているが故に、多くを語る必要はなかった。 その覚悟を義勇兵たちも感じ取ったのだろう。拍手と歓声が上がった。 「出陣だ!首都へ向け、進軍せよ!」 アポロから号令がかかり、解放軍は進軍を開始する。 その進軍の途中、アポロはスカーレットへと声をかけた。 「スカーレット様」 「はい?」 「まさか、私達にまで逃げろとは申しますまいな。」 「アポロ……」 何かを言おうとしたスカーレットを静止し、アポロは続ける。 「あなた様もご存知のはずです。私達兄弟が子供の頃、 両親を殺された上に、兄弟3人バラバラにされる寸前、女王陛下に助けられたことを。 そして、女王陛下に育てられたことを。」 「女王陛下は私達を救ってくれただけでなく、母としての温もりも与えてくださった。 あなた様だけではない。私たちにとっても母と呼ぶべきお方なのです。」 「これは、私達兄弟の総意です。義母(はは)上をお救いするまでは、逃げるつもりはありません。義姉(あね)上」 アポロはあえてそう呼んだ。幼少から女王に育てられた彼ら兄弟にとってスカーレットは義理とはいえ姉と呼ぶべき人物だった。 そして同じように、自分たちを育ててくれたルージュを義母(はは)と呼ぶのも、 彼らの不退転の決意の表れだった。 先行していたアリエス達に合流したスカーレット達。 首都がすぐ見える場所で、王城が高くそびえ立つ。 「兄さん」 そうアリエスが声をかけてきた。 「アリエス、状況は?」 「奴ら、とんでもない事をしでかした。説明するから天幕の中へ。 砂塵の鎖の諸君もだ。君たちの力が必ず必要になる。」 スカーレットも一緒に天幕へ入ろうとするが、 アリエスはそれを止めた。 「スカーレット様。後で作戦を説明しますので、 先遣隊への激励をお願いします。」 解放軍の最高責任者として「何故、私が?」と思わないわけはないが、 アリエスに何らかの考えがあるのだろうと判断し、 スカーレットは先遣隊への激励へと向かった。 天幕の中では肉が焼けたような匂いが漂う。 布が何かの塊にかけられ、ロウソクが点っている。 「なんだ、これは・・・・・」 そう考えるのも無理はない。 「あまり、何度も見たくはないものなのだがな…… これを見せないことには、何も説明ができん……」 アリエスが十字を切って布をとると、そこには焼け焦げた肉の塊があった。 「ローグは、近隣の村から子供をひとり残らずさらって人質作戦を取っている。 これは、その犠牲者の遺体だ。1時間前の事だが・・・・・・ 流石に、これをスカーレット様に見せる気にはなれないよ。」 と、アリエスはローグのとった作戦の説明を始める。 ローグは城の入口周辺の守りを固めて陣取り、人質も一点に集中させている。 突入出来そうなポイント全てに子供を配置していた。 「お前たちが一歩でも動いたら、ここにいる子供たちを殺してやる。」 ムカデのような姿をした怪人がこう宣言した。 人語を話す怪人はこれまで目撃されていなかったはず…… 解放軍は自らの認識を超えた存在を前に戸惑いを隠せない。 たまらず解放軍の兵士の一人が 「子供を人質に取るとは、恥を知れ!」と、人質の解放を要求する。 もうひとり、ムカデ怪人の傍らに立っていた水牛の姿をした巨漢が前に出て、 「我々にも我々の作戦がある……おい」 と、ローグの兵士一人に子供を連れてくるように促した。 子供を掴むと、水牛怪人は「ただの人質作戦じゃない。警告はした」と、 泣き叫ぶ子供を上に向かって放り投げ、 それに呼応してムカデ怪人が「恨むなら解放軍を恨むんだな!死ね!」と、 そのいくつもの手に持った銃を宙にいる子供に向かって一斉に発砲した。 子供の泣き叫ぶ声はすぐに止み、そのまま地面に落ちた子供に容赦なく火炎を浴びせる。 ローグの兵はまるで宴会芸でも見ているかのようにムカデ怪人に喝采を送った。 そして、水牛怪人がその子供の遺体を解放軍に向けて放り投げて、 「デモンストレーションはここまでだ。 子供たちをこのように惨たらしく殺されたくなければ、おとなしくしているのだな。」 そう告げて、ムカデ怪人共々城門の奥へと入っていった。 「ローグめ、卑劣な作戦を……!」と、アポロは憤る。 「子供たちの精神的疲労は限界が近いはずだ。あんなものを目の前で魅せられてはな。」 「砂塵の鎖の諸君にはすまないがまず偵察隊のサポートをしてやってほしい。」 アリシアたちはその後偵察隊へと合流し、現在状況を確認する。 ローグの現在の動きについて 陣頭指揮はオルガではなく、ローグの幹部格が取っている。 恐らくはムカデ怪人と水牛怪人がとっているのだろうと推測される。 「そういえば落ち着いて振り返ってみたら、 何故、怪人が喋っていたのだろう。喋る怪人はいなかったはずなのに。」 と、上官に確認を取った。 子供たちの様子 目の前で一人惨殺されたこともあって、疲れている様子。 ローグ兵達もしびれを切らして、子供たちを血祭りにあげてしまおう等と相談し始めており、 時間的猶予はあまりないことが伺える。 首都に突入する方法 アリシアがふと思った事を解放軍の兵士へと告げる。 「スカーレットとともに首都を脱出したとき、どうやって脱出したの?」 その言葉を聞いて解放軍の兵士たちは何かを思い出したかのように、はっとする。 「そうだ、抜け穴があるんだった。」 首都の警備兵の詰所へと直通の地下通路があり、 そこからなら首都に入り込むことも不可能ではない。 問題は、ローグ達がこの抜け道に気がついているかどうかだが…… しかし、子供たちの疲労は限界に達している。 ローグ兵士達も退屈し始めて、いつ子供たちに魔の手が及ぶかわからない…… 作戦は、決まった。 天幕へ戻った砂塵の鎖に、アリエスはこの地下通路を通って首都へと突入し、 背後からローグへの奇襲を仕掛けることを指示する。 ローグの兵士がひるんだ隙に子供たちを救出、 砂塵の鎖はそのまま首都へと突入してルージュを奪還する。 そこにスカーレットがやってきて、 彼らだけに任せてはいけない、と自らも砂塵の鎖と共に往く事を進言した。 アリエスもアポロも、「そう言うのはわかっていた」という顔で、 「止めても、行かれるのでしょう?」と聞く。 スカーレットが黙って頷くと、「その代わりに、これを。」と、 スカーレットにハンドグレネードを一発、手渡した。 「これは信号弾です。殺傷能力はありません。 撤退の合図として、お使いください。」 母であるルージュを救うという目的を、自らが先頭に経たずに何とするものか、 というのがスカーレットの思うところであり、 軍を率いるものの行動としては、軽率で独善的ではある。 しかし、それでもなおアポロたちが止めないのは、 その傷だらけの身体を以て人々のために力を尽くすと、 そう心に誓ったスカーレットの不退転の決意を知っているからに他ならない。 スカーレットも自ら戦う準備を整える。 ブラックハウンドを率いて戦う彼女は軍師としての才覚を持っていた。 「では、行きましょう。」 抜け穴へと突入する砂塵の鎖とスカーレット。 その背後で、アポロたちから解放軍の兵士へと激が飛ぶ。 「これより、砂塵の鎖とスカーレット様が首都へ潜入する。 彼らなら必ずローグに隙を作り出してくれることだろう! その隙を決して逃すことなく子供たちの救出にあたれ! 義勇兵の諸君には私から合図を送る!全力でローグに打って出てくれ!」 一斉に声が上がる。 抜け穴から潜入した砂塵の鎖は素早くローグの背後へと周った。 見張りの兵士への奇襲に成功し、侵入者がやってきたと連絡をさせることもなく、 手早くこれを撃退することに成功した。 そして、離れたところから攻撃できるアリシアの火炎とウィリーの使い魔たちのコンビネーションがローグ兵士を襲う。 アリシアの炎が、ウィリーの使い魔が、ローグの兵士を吹っ飛ばした様子は城門側からも確認できた。 何が起きたのかとローグの兵士たちが一斉に後ろを振り向いたその隙を、解放軍は逃すことはなかった。 「子供の周りにいるローグを排除しろ!」 アポロは矢をつがえてそう叫び、解放軍の射撃兵達は射撃によって子供の周りのローグを倒し、 これに合わせて正規兵たちが突撃し、子供たちの奪還に成功する。 それを確認したアポロは、義勇兵たちへ向けた合図として青い信号弾を射出し、 合図を確認した義勇兵達が鬨の声とともに一斉になだれ込み、解放軍とローグの戦いが始まった。 アポロの青い信号弾は砂塵の鎖からも見えた。 アリシアはそれを見て両手の炎を払い、「あっちも、うまくいったようね。」と、 解放軍が子供達を救出した事を確信する。 「作戦の第一弾会は成功だが、これで僕たちの戦いは終わりではない。」と、 ウィリーは次なる戦いへ向けて気持ちを引き締める。 インバースも、タージュも、心は同じだった。 「その通りです。私たちは次の作戦へ……お母様を、助けに行きましょう。」 そう言ってスカーレットはまっすぐ王城を指し示した。 「今、私達は王城の入口にいます。真っ直ぐ、王城に向かいましょう。」 住民たちがいるあいだは商店街として機能していたであろう、商店の立ち並ぶ地域を進む。 インフラ整備はあまりなされておらず、砂漠の道といった風情であり、 平時であれば商人たちの活気ある声が聞こえるであろう場所。 砂塵の鎖の行く手を阻んだのは、地中から現れたモグラのような姿をした怪人だった。 そこにローグの兵士達も合流し「ここから先へは行かせん!」と、 砂塵の鎖へと襲いかかったが、アリシアがこれらの敵の攻撃を素早く分析し、 インバース、ウィリーの攻撃はローグの兵もろとも彼らをなぎ払った。 先を進むと、次なる障害が待ち構えていた。 解放軍の襲撃を予期してなのか、バリケードが三層になって作り上げられていた。 スカーレットによれば、王城への最短ルートはこのバリケードを突破する事だが、 迂回する事で少々時間がかかるがバリケードを回避することも可能だという。 時間をかければ障害を避けて通ることも出来るだろうが、 解放軍の戦士たちは今こうしている間も必死に闘っている。 アリシアたちを王城へと向かわせ、ルージュを救出するという目的のために。 アリシア達は躊躇することなく、バリケードを破壊する事を選んだ。 バリケードを次々と破壊していくアリシアたちを発見したのか、 空からコウモリ型の怪人が飛来してきた。 これも先ほどのモグラ怪人と同じく足止めのために砂塵の鎖へと襲いかかってきた。 魔力を纏うコウモリ怪人の攻撃にさしものタージュの防御も本来の力を発揮しきれず、 思わぬ苦戦を強いられることとなる。 バリケードの破壊を一旦後回しにして、コウモリ怪人の撃退を優先し、 コウモリ怪人を倒した後、バリケードを破壊して次なる道を切り開いた。 ムカデ、水牛の怪人だけでなく、人語を話す怪人が明らかに増えている…… ローグの、オルガの怪人作成の技術の向上だろうか。 しかし、それは新たな悲劇しか生み出さない代物だ。 ローグの蛮行を止めるためにも決意を新たにする5人。 「城に突入する前に皆さんに行っておかなければなりません。」 「先ほどのアポロの信号弾と同じような赤い光を、撤退の合図を見たら、そのときは私に構わずに逃げてください。」 思わぬ言葉に驚きを隠せない4人。 「いかに姫とは言え、そのような命令は……」 「あなたたちには大きな負担をかけてしまいますが、私の事よりも義勇兵を、 人々を守ることを優先して欲しいのです。 そしてもし、この先で私が倒れるようなことがあればあなた達には人々の希望として戦ってもらいたいのです。これは、王女としての命令ではなく人々の希望を背負って戦ってきた者としての願いです。」 スカーレットの死さえ覚悟を目の当たりにした4人はスカーレットに、 簡単に命を諦めるような事はしてくれるなと。 もちろん、スカーレットも命を諦める気は毛頭ない。 しかし、軍を束ねる者として後を託せるものとして砂塵の鎖を見出した。 あくまでも自らに万一の事が起きた時、軍が瓦解する事を懸念しての話であった。 5人は、王城へと歩みを進めた。 戦いをここで終わらせ、ホロコーストを破壊するために。 一方同じ頃、解放軍とローグは今もなお互角の戦いを繰り広げていた。 しかし、突如として地中からモグラ怪人が現れて、戦線を崩されてしまう。 アポロはこの状況を見て、「これでは王女様達も思うように進めないだろう」と、 主君と砂塵の鎖を援護するべく城へ向かって駆け出した。 王城はかつて国王が重税を課して建造させたのだろうか。 砂漠にある城に似つかわしくない外観をしているが、 その一方その佇まいは決して悪趣味ではない。 ウィリーはその城を複雑な心境で見つめていた。 民衆を苦しめてまで、このような豪勢な城を作ることに意味があったのか。 王城へ侵入した5人はスカーレットの案内で、 最短のルートを通ってルージュの私室へと歩みを進めていた。 「この先に私達の私室があります。皆さん、後一歩です。」 しかし、その後一歩にはまだ届かない。 廊下で最後の門番、水牛怪人とムカデ怪人が立ちはだかった。 水牛怪人は待っていたと言わんばかりに 「オルガ様の言ったとおりに来るとはな。外の者たちを全て退けたということ。見事だ。」 と、ここまでやって来た砂塵の鎖の武勇を称える。 「まあ、さっきのガキみたいにしてやれば、良い見せしめになるだろうよ。 ……久しぶりだな、どっちつかずの恥知らずめ。」 ムカデ怪人はウィリーに向かってそう言い放った。 ウィリーは自分に向かって久しぶりだというこの怪人の言葉遣いに心当たりがあった。 オルガとグレンに面会を求めたとき、ウィリーに向かって発砲した兵士と、 ハルバードを携えた巨漢の二人組だった。 「まさか……」とウィリーはムカデ怪人のキャリバーに目をやって、あの時のふたりだと確信を得た。 「裏切り者」という言葉には流石にウィリーも黙ってはいられず、 裏切りだというのならそれは良いだろう。 国を変える組織が冷血党と、そしてグレンだと信念を持っていたはずが、 今となっては国を混乱に陥れる原因となってしまっている。 目指したものを失ったのなら、それを糺すのが人としての筋だと。 ムカデ怪人が更に返そうとするのを静止して、 水牛怪人は 「お前が冷血党の姿を見て何を思ったのかはわからない。 だが、どういう理由であれお前が冷血等を抜けた事実だけは変わらない。 そして、王女をこの先にいる女王に会わせるなという命令だ。悪く思うな。」 そう告げて、ふたり揃って戦う構えを見せる。 「グレンやオルガに従って、人としての姿を捨ててまで戦う理由はあるのか」とウィリーは問うが、 その問いに対してムカデ怪人はより強い力を求めた結果だと答えた。 彼らを倒さなければ先へは進めない。 戦いは始まった。 水牛怪人は角から電撃を放ち、アリシアを狙うが、 そうはさせまいと庇ったタージュの防御をすり抜けてタージュ本体に襲いかかった。 想像を遥かに超える大きなダメージを受けることを予感したタージュは、この攻撃を障壁で無効化する。 モグラやコウモリの怪人とは一線を画す高い攻撃力を誇るムカデ怪人と水牛怪人。 彼らを倒さなければ、ルージュ奪還はかなわない…… そう思いつつも、各個撃破するべくムカデ怪人に集中攻撃を浴びせる砂塵の鎖。 やがて、ムカデ怪人が片膝を着いたところでオルガが奥から現れた。 私服と思しき白衣ではなく、青い戦闘用スーツを装備している。 「オルガ!僕がどれだけお前に会いたかったかわかるか!」とウィリーはオルガに問いかける。 「どこかで見た顔だと思ったらあなた達が王女の護衛をしていたのね。 ということは、あの時作り上げた怪人は倒されたという事かしら。 でも、私を相手取るにはまだ早い・・・・・!」と、スカーレットに向かって来た。 当然、タージュはそうはさせまいと庇いにかかるが、 オルガはそれを見越していたかのように標的をタージュに変えた。 装備した鎧を含め、かなりの重さがあるタージュを女と思えない腕力で、 まるでボールでも扱うかのように片手で持ち上げて、そのまま城の外へと放り投げた。 衝撃で倒れ伏すタージュを見て、オルガは「他愛ない。次」と、残るメンバーへ振り向いた。 ウィリーはその様子を見てオルガに「どこでその力を手に入れた?」と問いかけるが、 「あなたにそれを教える必要はない。」とウィリーもタージュと同じポイントへと投げ飛ばす。 防御役を失ったスカーレットを護ろうとするインバースと彼の騎乗する竜を見て、 オルガは竜ごと蹴り飛ばした。 「バカな、インバースの竜までも…」と、タージュもウィリーも驚きを隠せない。 アリシアは自らとスカーレットの身を隠そうと闇を作り出すが、 その闇をものともせずにアリシアも3人と同じ場所へ叩き落とした。 叩き落とされた現場にちょうどアポロが現れる。 「大丈夫か!?」 アポロは4人の無事を確認すると、「スカーレット様はどうした?」と問うが、 オルガが現れたポイントを振り向くと、赤い光がその地点から放たれた。 「……アポロさん、すみません。スカーレット様を……守れなかった。」 タージュは苦虫を噛み潰すような苦悶の表情を浮かべる。 「悔やむことなら後でもできる。今は撤退しろ、急げ!」とアポロは4人に撤退を促した。 スカーレットの残した言葉もあり、4人は断腸の思いでその場を後にするのであった。 アリシアが吹っ飛ばされた後、オルガによってスカーレットは抑えらていた。 そこへ、緑の長髪のエルダナーンの男性が姿を現した。 「ご機嫌麗しゅう、姫君。」 彼こそがグレン、冷血党の首魁である。 「グレン様、仰せのとおりスカーレット王女は確保しましたわ。」 「ありがとう、オルガ。」 スカーレットの瞳はまだ諦めていない。 「私を捕えてどうするのですか?見せしめのために処刑でもするおつもりで?」 オルガはグレンに言葉を投げかけるスカーレットの腕を締め上げた。 「口を慎みなさい、スカーレット王女。今あなたは捕縛されている身。 私たちの判断一つでその首と胴体は今生の別れを告げることになるでしょうね。」 「よせ、オルガ。 スカーレット王女、恐らくは撤退指示のための信号弾か何かを持ち込んでいることだろう。 それを解放軍に向けてお使いなさい。我々の目的はもう果たした。 これ以上兵力を消耗することはお互いにとって良いことではないと思うが?」 「グレン、貴方の行動は不明瞭です。意図が全く見えてこない。 私を捕まえるためだけに、ここまで誘い込むために多数の犠牲を出したというのですか?」 「それに、答える必要はない。これ以上、無駄な血を流したくないと思うのならば、 私の言うとおりにしていただきたい。」 そう答えたグレンに対してスカーレットは 「分かりました……両手を使えるようにしてください。」 そして、両手が自由になったことで赤い信号弾を……解放軍に、撤退せよと号令した。 「賢明な判断に感謝する。オルガ、後のことは任せたよ。」 そう言ってグレンはスカーレットを地下へと連れて行った。 送り出したオルガは、撤退する解放軍の様子を城から確認し、 「……殺れ。」 ふたりの怪人に向かってそう命じた。 待ってましたと言わんばかりにムカデ怪人は飛び出していった。 その様子を呆れつつ、水牛怪人も敵に追撃を仕掛けるべく突撃していった。 ローグの追撃隊はどこに隠れていたのか、先程まで戦っていたローグたちと同等の規模の部隊が追撃を仕掛けてきた。 城門から撤退し、軽傷なものを中心に後ろからローグの部隊を迎撃する。 アポロとアリエスは先導して、魔女の谷へと撤退する。 「だめだ、振り切れない!」 「万事休すか!」 そういった声が上がる中、アポロたちがいる前方から黒い衣装の集団が近づいてくるのが見えた。 アリシアはその黒い衣装が「かつて、身なりの良い男とともに自分とともに住んでいた夫婦を襲撃してきた者達だ」と思い出して確信し、最大級の警戒をするが、 どういうわけか、黒衣装は稲妻の如き速さでローグ側へと攻撃を仕掛ける。 「彼らは一体敵なの、味方なの……?」 アリシアの様子を砂塵の鎖も見て、一体何が起きているのか判断をしかねている状態だ。 一人だけ、赤い衣装を着た者がアリシアたちに近づいてきた。 「思ったよりも早い再会だったな、諸君。」 そう声をかけてきたのは、遺跡の最奥部、コロシアムで八機将の封印を解いた、 あのピエロの仮面の人物だった。 「再会を喜ぶほど面識があるとも思えないが」というウィリーのツッコミを意に介さず、 「ローグの兵士たちは我々ブラックハウンドが相手をしよう。君たちは、中央からくるあの怪物の迎撃を頼む。」 そう言って指し示した先からは、ムカデ怪人と水牛怪人がブラックハウンドの兵士たちを押しのけて、 真っ直ぐ砂塵の鎖を目指して突進してきた。 「皆、各者各様の思いはあるでしょう。 でも、今やらなければならないことははっきりしているわ。 あいつらを、この場で止める。行きましょう。」 アリシアは砂塵の鎖のリーダーとして決断を下した。 ムカデ怪人と水牛怪人をこの場で倒す。 ローグ兵士の何名かは援護射撃をするべく怪人二人に追従する。 アリシア達は襲い来るローグ立ちを前に、本気で戦うべく準備を始めた。 アリシアは火炎を拡散してまずはローグの兵士たちに向けて放った。 炎はローグ兵士を次々と薙ぎ払い、倒していく。 先ほど受けた攻撃から、水牛怪人の雷を最大限警戒する砂塵の鎖。 キャリバーを扱うムカデ怪人が血気に逸ったか、 攻撃の命中精度がそれほど優れているわけでもないことに気がついた一行は、 速さで劣らないインバースがムカデ怪人を抑えて、 その間にキャリバーの射程外で水牛怪人へと一気に攻撃を仕掛けていく。 この作戦は功を奏したか、まずは水牛怪人が倒れた。 片膝を付いて、砂塵の鎖の強さを称える水牛怪人。 ウィリーが声を掛けようとするが、その姿は黒い泡となって消えていった。 今までの怪人とは違う死に方もそうだが、一体これはどういうことか。 今は考える暇はない。 残ったムカデ怪人が倒されるまでにそれほど時間はかからなかった。 ムカデ怪人も、水牛怪人と同じく倒れたところで黒い泡となって消えてしまった。 怪人作成の技術が進歩したことによるものなのだろうか。 ともかく、怪人は倒れた。 ローグはブラックハウンドによって蹴散らされて、 解放軍の安全は確保されたと見て間違いないだろう。 「よし、倒したな。我々も撤収だ。」 そう言って、赤ピエロは転送石を用いて砂塵の鎖共々帰還した。 地下牢にて、オルガは 「ルージュ女王を助ける作戦は見事に失敗したわね、王女様。」 「解放軍には追撃を向かわせたけど、しぶとく生き延びたようだわ。」 と、忌々しそうに結果を教えた。 「でも、もうそれも終わり。解放軍には戦う気力は残っていない。 あなたと言う大黒柱がいないのだから。」と、心底スカーレットに侮蔑するかのようなまなざしを向けるオルガ。 しかし、スカーレットは諦めていない、という顔で 「人々の希望を背負って立つ者が、必ず現れます。 かつてのマゼンタ様のように」と返した。 「そして、今のあなたのように、かしら。 グレン様があなたにこだわる理由はわからないけど……ホロコーストは絶対に止められない。 そこで顛末をゆっくり見ていることね。」 そう言い残してその場を去ったオルガ。 スカーレットは早速行動を開始した。手近なところで脱出する術を求めて…… 砂塵の鎖は転送石で北方の独立地区、ブラックハウンドの本拠地へと転送されていた。 「まずは、ご苦労だった」とアポロから声がかかった。 「状況の整理と、それからブラックハウンドの隊長を紹介したい。私と一緒に来てくれ。」 道中で、アリエスは魔女の谷へと逃げ切った事を聞いた4人。 「だが、良い事ばかりではない。何よりもスカーレット様が捕まってしまったことに加えて、 女王陛下を助け出すという当初の目的は果たすことができなかった。 兵たちも皆疲れてしまっている。」 沈痛な面持ちでオルガから守れなかった事を悔やむ砂塵の鎖に対して、 「スカーレット様を守れなかったことは今は忘れるんだ。 常に、その覚悟をしておられた。こんな事は一度や二度ではなかったよ。」 「『最初に立ち上がるのは人々の希望を背負える者。 そうした人物がひとりでもいる限り、人々は何度でも立ち上がれる。』」 「……私達兄弟には、生みの親の他にもう一人、母と呼ぶべき人物が居る。 その人がよく口にしていた言葉だ。」 アポロから贈られた言葉には、横暴の限りを尽くす夫に、 正面から異を唱えた義母ルージュの魂が込められていた。 「城に突入する前、スカーレット王女に覚悟を決めておられても決して最後まで諦めないで欲しいと言ったのは、ほかならぬ私です。 人にそう言った以上、私が諦めるわけにはいきません。」 アリシアはアポロにそう告げた。 タージュも、インバースも、ウィリーもそれに同調した。 何より、スカーレットが諦めていないことは誰よりも4人がよく知っていた。 そして、今のままではオルガに勝つことは出来ないことも…… ブラックハウンド隊長の執務室へとたどり着いた。 アポロがドアをノックすると、「入りたまえ。」と声がする。 「戦いの直後に呼びつけてすまないな。どうしても君たちと、少し話がしたかった。」 そう言って、ピエロ仮面はその仮面を外した。 「ようこそ、砂塵の鎖……いや、八機将を倒したつわものたち。 私はカーマイン。ブラックハウンドの隊長…… いや、この国の民には『レッドウルフ』のメンバーの一人だと言えば、わかりやすいかな。」 ピエロ仮面の正体に驚きを隠せない4人。 「スカーレットが拿捕されたことは残念だが、あの子はそれを覚悟の上で戦っていた。 誰かの責任を問うためにここに呼んだわけではない。 スカーレットを助け出す前に、やってもらわなければならないことがある。」 「何か、この状況を打破する手があるということですか?」 と言う、インバースの問いかけに対して、カーマインは明確な回答はしなかった。 「その答えの前に、私がどこまで知っているのかを教えておこう。 冷血党が結成された本当の理由、ホロコーストの危険性……それから、 アリシアと言ったな。君の出自について。正確に言えば君が何者なのか、だ。」 「では、やってもらわなければならないことの前に一つ君たちに質問させてもらう。」 スカーレットが捕まるという、最悪の形でカーマインの予想は的中した。 勢いづくローグを止められる者はいないのか。 ホロコーストを破壊する手立ては見つからず、解放軍の中には絶望が芽吹いていた。 「君たちに、人々の希望を背負って立つ覚悟はあるか?」 カーマインの問いに対する、砂塵の鎖の答えや如何に……