約 708,383 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1937.html
「ゆぶべべべっ!?」 「ま゛り゛さ゛あああああああ!?」 「全く、まぁ~た畑荒らしか ほんと嫌になるよ」 男の草鞋がまりさの舌に乗っていた野菜ごとその舌をぐちゃぐちゃに踏み潰した。 砕けた野菜と舌が混じり異様な色彩を産んだ。 「ぢがうのおおおおおお!!まりさはしんせつしんでおちてたおやさいをはたけにもどしてあげようと」 「瓜田に靴を入れず」 男は舌を踏みにじっていた足を引き抜いて振り上げると思い切り蹴りぬいた。 まりさは宙を舞うと柵にぶつかって嫌な音を立てながら餡子を撒き散らした。 そして柵に餡子の跡を残しながらずるずると地面に落ちて 数度痙攣すると衝撃で飛び出していた目玉がずるりと落ちて動かなくなった。 「どぼぢでええええええええええええ!?まりざなんにもわるいごどぢでないのにいいいいい!!」 餡子が混じり黒く滲んだれいむの涙が何筋も頬を伝った。 「死にたくなきゃ最初から畑に近づくなよ、荒らしとそうじゃないのと見分けるの面倒だからさ」 そう言って男はれいむのリボンを摘むと林の方に放り投げた。 そして帰ろうとして手元に指に引っかかって千切れたリボンが 一欠けら残っているのに気付いて鬱陶しそうに手を払った。 それから数日後、幽鬼のように夜の林の中を放浪するリボンのかけたゆっくりれいむの姿を あるありすは偶然友達の巣から巣へ帰る際に見た。 夜はれみりゃの時間だ、都会派として注意してあげようと思ってありすは恐る恐る声をかけた。 そのれいむはゆっくりと振り返ると壮絶な笑みを浮かべながら言った。 「れいむはれみりゃをまってるんだよ」 そしてけたたましく笑い出したれいむの狂気に恐怖を感じて慌ててありすは逃げ出した。 それからさらに数日後の深夜 れいむの前にれみりゃが降り立った。 れみりゃは獲物を見てその子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔で言った。 「うっうー♪よふかしするわるいこはたべちゃうんだどぅ~♪」 「まって、れいむはれみりゃにおねがいがあるよ」 「う~?」 れみりゃは他のゆっくりとは違う落ち着いた態度でれみりゃに話しかけるれいむに少し驚きながられいむを見た。 無視してそのまま食べてしまっても構わなかったが、とても真剣な表情のれいむに気圧されて、渋々話を聞くことにした。 「う~おぜうさまのれみりゃになんのようなんだどぅ~?」 「れいむをおかして!!れいむっとすっきりして!!!」 れいむは瞳をカッと見開きれみりゃに向かって腹のそこから叫んだ。 れみりゃは困惑して額から汗を流した。 そして思った。 このれいむは頭がおかしいのだろうか、と。 れみりゃとれいむがすっきりする例など聞いたことが無い。 当然だ、二者の関係は捕食者と逃げまとう獲物なのだから。 れみりゃ種にもれいむを性の対象として見るような趣味も無い。 れいむ種がれみりゃ種に出逢ったとき、するべき行動は逃走、ただそれだけである。 なのにこのれいむはれみりゃとすっきりしたいと言うのだ。 生きるための口先三寸かと思ったが 体格差から考えてもそんなことをすれば体が保たないだろう。 れみりゃがれいむの正気を疑うのも当然である。 実際、れいむの熱っぽく開かれた赤く血走る瞳を見てもその正気を疑うには充分だった。 そして十秒間、れみりゃにとってかなり長く熟考したのち れみりゃはこうまかんのおぜうさまとして恥じることの無い結論を導き出した。 「うっうー♪そこまでいうならたっぷりかわいがってやるんだどぅ~♪」 腰をフリフリしながられいむににじり寄って行く。 据え膳食わぬはおぜうさまの恥ってさくやが言ってた。 ちゃんとさくやの言ったことを覚えてた自分はとっても偉いとれみりゃは思った。 そして二匹は朝まで激しく交わりあった。 「ゆひっ、ひゅひひひひひいひ…!」 犯すのに飽きて、かといって自分が交わりあった相手を食べるのも憚られたので どこぞへとれみりゃが去っていった後、れいむは壊れたオルゴールみたいにけたたましく笑い出した。 綺麗だった髪は乱れて絡まり、リボンは男に千切られてかけた部分からさらに裂け目を深くした。 頬からはれみりゃの爪が食い込んだのか痛々しい傷跡と、何条もの餡子が流れた後が付いていた。 そしてズタズタに裂けたまむまむから肉汁と、餡子の混じった液体がどろりと流れ出した。 れいむのその機関はほぼ破壊されて、恐らくもう二度と用を成すことは無いだろう。 焦点の合わない瞳から伸びる視線は宙を漂う。 だがれいむの笑いは決して絶望の笑いではなかった。 「これで…これでまりさのかたきが…ひゅひひひひひ!」 雌としての本能があり得ないはずのれみりゃの子種を身篭ったことを確信して れいむは目の焦点も合わないまま口を歪めて笑った。 一週間後、近くのゆっくりの群の外れに一匹のれいむが住み着いた。 そのれいむは酷い傷を負っていて、群のゆっくりは心配して話しかけたが れいむに一睨みされただけで立ち竦み、それ以上話しかけることが出来なかった。 群のみんなはそのれいむを疎ましく思いながらも中々手を出すことができなかった。 そうして、次にそのれいむの巣をみんなが見に行ったのは れいむの巣から恐ろしい産声が聞こえてきた時だった。 「れいむ!あかちゃんがうまれたならみんなにしょうかいしてあげてね! そしていっしょにゆっくりしようね!」 群の長まりさがれいむの巣の入り口のすぐ横の木の部分を叩いた。 これを気に仲良くなっておかないと、群のみんなが怖がると思ったからだ。 それにみんなかわいい赤ちゃんは見たかったのだ。 巣の入り口を覆っていた草がガサゴソと動いて 長まりさは出てきてくれるのかと思って事前に考えておいた懐柔の言葉を言おうとし 帽子がなくなっていることに気が付いた。 「うゅ~♪たーべちゃーうぞー♪」 はっと気付き見上げると、空を飛ぶゆっくりが長まりさの帽子を捕まえていた。 子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔、口元から生えるキバは長まりさの帽子に突き刺さっていた。 本来地面にあわせて平坦であるべき足からは三本の爪の生えた妙な枝が生えていて長まりさの帽子を掴んでいる。 頭はれいむ種と同じ黒い髪に両脇に髪留めをつけていたが、その最大の特徴であるリボンは無く 代りに薄紫色に赤い布をつけた帽子を被っていた。 そして、その両脇からはあの蝙蝠のような恐ろしい悪魔の羽が生えていた。 「「「れみりゃだあああああああああああああああああ!!!!!」」」 集まっていたゆっくり達は一斉に叫んだ。 そして長まりさの周りに身を寄せ合った。 「ち、ちがう…あれはれみりゃじゃない…!」 長まりさは震えながらその化け物を見上げ言った。 「そうだどぅ~♪れみりゃなんかじゃないんだどぅ~♪」 ソレは長まりさの言葉に頷くと、体の前で悪魔の羽をみょんな形であわせながら言った。 「れい☆むりゃ☆う~♪」 そして足に掴んでいた長まりさの帽子をむしゃむしゃと平らげた。 「ま゛り゛さのだいじばぼうじっびゅべばじゃ!?」 「「「だずげでええええええええええええ!!」」」 一斉に逃げ出したゆっくり達にもみくちゃにされて長まりさはぐちゃぐちゃの饅頭になって死んだ。 その様子を見てれいむりゃと名乗ったその化け物は首をかしげながら言った。 「うゅ~?どうしたんだどぅ~♪もっとゆっくりしてくいくんだどぅ~♪」 不思議がるれいむりゃを他所に、巣の中からはれいむのあの壊れたオルゴールのようなけたたましい笑い声が木霊した。 「たくさんたべて、もっとつよくなるんだよ」 口から虫や木の実を吐き出しながられいむはれいむりゃに言った。 嬉しそうに母から餌を貰いながられいむりゃは応えた。 「うゅ~♪いっぱいたべておおきくなってゆっくりするんだどぅ~♪」 そう言うや否や、れいむりゃの見ていた世界の天地は逆転した。 れいむの体当たりでひっくり返ったのだ。 「あまったるいこといわないでね!おまえはたたかうためにれいむがうんでやったんだよ!! ゆっくりしてないでとっととりかいしてね!!」 「ぅ、うゅ~、わかったんだどぅ…」 目を血走らせて鬼の形相で言うれいむに怯えながられいむりゃはれいむが何故そんなことを言うのか理解できないものの とりあえずもう一転がりしてから頷いた。 「ぜんぜんわかってないみたいだね…」 れいむりゃの暢気な表情を見てれいむは嘆息しながら言った。 「おまえはね、やさいをかえしてあげたまりさをころしたあのくずをころすためにうまれてきたんだよ だからゆっくりしてるひまなんてないの、いっこくもはやくあのくずをころすためにつよくならなくちゃいけないんだよ それができないならおまえみたいなばけものいきてるいみがないんだよ!」 確かに意識ははっきりしているのにどこか焦点の合わない瞳でれいむりゃを睨みつけながられいむは言った。 「うゅ~、ゆっくりりかいしたんだどぅ~♪」 「それがわかってないっつってんだよ!!!!!」 れいむの体当たりがまたれいむりゃを転ばした。 「う、うゅ?」 何故体当たりされたのか分からず起き上がろうとするれいむりゃにまたれいむが体当たりを食らわせた。 ゴロゴロと何度も巣を転がって吐きそうになりながられいむりゃはれいむを見た。 「どおぢでおまえはぞうなの!?どおぢで!おばえはもっどづよぐなんなぐぢゃだべなんだよおお!! なのに!れいむにやられてちゃだべでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 れいむは狂ったように、というか狂っているのだろう。 執拗にれいむりゃに体当たりを繰り出す。 何度も転がり何度も壁に叩き付けられながられいむりゃは思った。 何故おかあさんはゆっくりしないのだろうと。 れいむりゃはこんなにもゆっくりしたいというのに。 いくら体当たりをしても気絶しないれいむりゃの耐久力に満足したのか れいむはボロボロのれいむりゃを放ったまま眠りに付いた。 れいむが眠りに付いたのを確認すると、れいむりゃはれいむを起こさないようにそっとその隣ですやすやと眠り始めた。 朝早くれいむに叩き起こされて外に連れ出されたれいむりゃは 生後まもないにも関わらずもはや痛めつけるのが目的としか思えないほど厳しい仕打ちを特訓と称して行った。 石を投げつけられ、木の枝で叩かれ、土に埋められ、川に落とされ、蔦を巻きつけられ引っ張られる様は とても特訓などという上等なものではなく、れいむの持つ恨みをれいむりゃに押し付けているだけだった。 それでもれいむりゃは子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔を崩さなかった。 そんな生活が何ヶ月か続いた。 れいむりゃは飛び回ってれいむの放つ石ころを避け 土に埋められても足の力と羽ばたきで飛び出し 川の中を皮がふやけるまでの間バタ足で泳ぎ 蔦を引きちぎり、逆に蔦を加えてれいむをぶら下げるほどに強くなった。 れいむはそんなれいむりゃを見て満足そうに頷くと またあの壊れたオルゴールみたいなけたたましい笑い声を上げた。 「これで…ひゅひひひ!これで!このばけものをつかえばまりさのかたきがうてるよおひゅひひひひひ!! やざしかったまりさをころしたあのクズひゅひ!ころせる!やっところせる!!」 れいむの口から餡子色のあぶくが吹き出た。 そんな笑顔でもれいむりゃはとても嬉しくて一緒に笑った。 梅雨の季節が来た。 あれかられいむはれいむりゃの特訓の合間にまりさを殺したあの男の動向を探っていた。 男は殆どの日を畑で仕事をしていた。 畑の中はまずいとれいむは考える。 一緒に畑仕事をしている仲間を呼ばれる危険がある。 いくらあの恐ろしいれみりゃの血を引くれいむりゃでも 二対一では分が悪いとれいむは思っている。 かといって家の中も危険だ。 家の中には色々な道具を置いてあるに違いないし間取りにも詳しいだろうから不利だ。 男が外で一人になる瞬間が知りたかった。 そうして調べている内についにれいむは遂に男が一人になる時間を見つけた。 男は一週間に一度、里の方に一人で出て行く。 特にその時に渡る古びた人気の無い橋の上は逃げ場も殆ど無い絶好のポイントだった。 れいむりゃは、れいむが男を見に行っている間、たった一人でとても寂しがった。 梅雨の最中でもはや濁流に近い流れを持つ川のほとりで雨避けの葉っぱを口に咥えながられいむは言った。 「やっと、おまえのやくめがはたせるんだよ うれしいよね、れいむりゃ」 入念な準備を経て、れいむりゃにもしっかりと計画を伝えてれいむはれいむりゃと橋の前に立った。 「れいむりゃ、わかるね ここであのおとこをころすんだよ」 れいむはちらりとれいむりゃの方を見て最終確認をした。 「うっゆー♪わかるんだどぅ~♪ばっちりなんだどぅ~♪」 れいむりゃはれいむが喜びに震えているのを感じ取って自分も嬉しそうに頷いた。 「そいつにれいむりゃがおしおきしておとうさんにひどいことしてごめんなさいっていわせるんだどぅ~☆」 はしゃぎながらそう言ったれいむりゃに唖然としながられいむはぽとりと咥えていた葉っぱを落とした。 ドン、とれいむは体当たりをした。 不意の体当たりにれいむりゃはゴロゴロと水浸しの地面を転がり泥まみれになった。 「う、うゅ~?」 ちゃんと答えられたと思ったのに何故か怒りの形相のれいむを見てれいむりゃははてなと首を傾げた。 「なにをいっでるの!?それじゃだめだんだよ!! ちゃんところして!!いきのねをとめて!! にどとそいつをゆっくりできなくするんだよ!!」 それを聞いて、れいむりゃは固まった。 「う、うゅー?おかあさんがいってるころすってのがよくわからないんだどぅ~♪ それをしたらゆっくりできなくなっちゃうのかどぅ~?」 困惑し額に汗を浮かべながられいむりゃは尋ねた。 ザアザアと雨粒が顔を打ち据えるのを意にも介さずれいむは捲くし立てた。 「あたりまえでしょ!そんなこともわからなかったの?ばかなの!? わかったらとっととあのおとこをころすじゅんびをしてね!!」 「……じ、じゃあいやなんだどぅ~」 れいむりゃは、搾り出すように言った。 か細い声だったにも関わらずその声は何故か雨音にかき消されずにれいむの耳にちゃんと届いた。 「は?いまさらなにをいって」 「いやだどぅ~♪だれだってゆっくりできなくなるなんてだめなんだどぅ~♪ひとのだいじなゆっくりをとったらだめなんだどぅ~♪ こらしめるだけでかんべんしてあげるんだどぅ~♪そしたらみんなゆっくりできるんだどぅ~♪」 「ふっざけるなああああああああ!」 れいむりゃの初めての反抗にれいむは激怒した。 「あのおとこはねぇ!まりさの…まりさのだいじないのちを…ゆっくりをうばったんだよ!! あんなにやさしくて!つよくて!ゆっくりしてたまりさのゆっくりおおおおおおお!! だからあのおとこはゆっくりをとられてとうぜんなんだよ!!なんでそんなこともわからないの!? ばかなの!?しぬの!?だいたいまりさみたいなすてきなゆっくりからおまえみたいなばけものがうまれるか! しね!ゆっくりしね!!」 れいむは激昂して喉が裂けて口から餡子が飛ぶほど叫んだ。 それでもれいむりゃは怯まなかった。 「それでもいやなんだどぅ~♪ それよりそいつもゆっくりさせたらさんにんでおとうさんのぶんもゆっくりできるんだどぅ~♪ おかあさんもこれでゆっくりできるにちがいないんだっどぅ~♪ うゅー、こんなことおもいつくなんてれいむりゃはてんさいだっどぅ~♪」 れいむりゃはれいむを説得しようとかそういうことだけでなく ずっとそうしたいと思っていたことをれいむに告げた。 「ゆぐがぎゃああああああああああああああああ!! ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああ!! れいむのゆっくりはおばえどなんがじゃない!!おばえみだいなバゲモノどじゃなぐで まりさとぉ!れいむとまりさのかわいいあかちゃんのさんにんでするはずのゆっくりなんだよおおおおおお!!! もういいもういいもういい!!ぜんぶれいむがやる!!おまえみたいなばげもののぢがらはがりない!! だがらお゛ばえがらゆっぐぢぢねええええ!!!」 怒りで血が上ったためか、それとも雨の湿気のせいか古傷から餡子を噴出し目から餡涙を流して 歯茎をむき出しになるほど歯を食いしばりながられいむはれいむりゃに襲い掛かった。 「や、やめるんだどぅ~☆れいむりゃにたいあたりしたらおかあさんのほうがいたいんだどぅ~♪」 実際その通りだった。 れいむは頑丈なれいむりゃに体当たりするたびに古傷を開かせ、ボロボロになっていった。 それでもれいむは止まらない。 れいむりゃは逃げればいいのにれいむを止めようと何度も羽でれいむを包みこみ、踏ん張った。 その度にれいむは羽を振り払って体当たりをして傷口を大きくした。 「やめるんだどぅ~やめるんだどぅ~♪」 「だばっ!れええええええ!!!」 二匹はもつれ合いを繰り返していつの間にか橋の上まで来ていた。 れいむりゃの必死の訴えも空しく、れいむは突進した。 雨とれいむに体力を奪われたれいむりゃは、れいむの前に立とうとして足を滑らした。 何も居ない空間にれいむは突っ込み、そして雨に濡れた木の板に足を滑らせて橋から落下した。 「ゆっ」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!!!」 初めてれいむりゃの子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔が歪んで 驚愕の表情へと変わった。 れいむりゃはその悪魔の羽を羽ばたかせて川に落下したれいむを枝のような足でリボンを掴んだ。 普段ならそれだけですぐに引き上げられるだろうが 濁流に近い流れの前では流石のれいむりゃでも引き上げることが出来ずに一緒に引っ張られた。 「お゛っおばえのぜいだ…お゛ばえが…」 「お゛があ゛ざんしんじゃだめだどぅ゛う゛!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!」 呪詛を吐こうとして、れいむは初めて見るれいむりゃの必死の形相に目を留めた。 「も゛うっ、ゆっぐり゛ずる゛もぐぞぼっ!な゛いんだよ…! がぼっがぼっ、れい゛む゛のゆっくりばぼっ、まり゛さ゛と」 ガバガバと水を飲みながられいむはれいむりゃに言った。 それでもれいむりゃは言う。 「ぞんなごどないんだどぅうぅうう!おがあざんはれいむりゃとゆっくりすればいいんだどぅ!!」 初めて泣き喚くれいむりゃの顔を見ながられいむは今にも濁流に流されて死んでしまいそうなのに思わず呆れた。 「もうっ……いいよ…おばえっ、にきたいしがぼがっぼ、れいむが…ばかだったよ…」 「だいじょうぶだどぅうう!れいむりゃは!!おかあさんにいっぱいきたえてもらってじょうぶになったから こんなのへっちゃらなんだっどぅうううううううううう!!」 れいむりゃはそう言うと歯を食いしばり白目を剥いて踏ん張った。 れいむの体が川から少し持ち上がる。 口が自ら出たれいむは疲れ果てた声で言った。 「……れいむとまりさのかわいいあかちゃんがほしかったよ、おまえみた」 その時、ずっと引き裂けそうになっていたれいむのリボンが千切れて ジャボンとれいむは濁流に飲み込まれた。 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!? う゛ゅ゛あ゛ああああああああああ!!!う゛ゅ゛あ゛あ゛あああああああああ!!」 あっと言う間に下流まで流されていったれいむを追ってれいむりゃは涙を流し絶望の表情を浮かべた。 その枝のような足には千切れたれいむのリボンが握られていた。 結局れいむが最後に「おまえみたいなばけものとちがって」と言おうとしたのか それとももしかしたら「おまえみたいなゆっくりした」と言おうとしたのか それとも全く違うことを言おうとしたのかは濁流の中に飲み込まれてわからなくなった。 ある晴れた日のことだった。 男は畑仕事に精を出していたが ゆっくりが畑に近づいているのに気付いて眉を潜めて木の棒を拾い肩にかけて近づいていった。 そして、少々様子がおかしいことに気付き厭そうな顔をした。 「何お前…」 「れい☆むりゃ☆う~♪」 れいむりゃと名乗ったそのゆっくりは ゆっくりれいむなのかれみりゃなのかどっちとも付かない みょんな姿でパタパタと男の前を飛んでいた。 「うゅー♪おまえがゆっくりしてるのかおしえるんだどぅ~♪」 「今さっきからゆっくりできて無いよ」 男は心中でお前の姿見てからな、と続けた。 「うゅー♪ゆっくりできないなんてあわれなやつなんだどぅ~♪ おまえなんかれいむりゃにかかればいちっころなんだっどぅ~♪」 調子に乗り切ったことをほざくゆっくりを見ながら男は心の中でさっさと潰そうと決心して棒を振り上げた。 「うっゆー♪でもれいむりゃはやさしいからそんなことしないんだっどぅ~♪ これをありがたくうけとるんだっどぅ~♪」 そう言ってれいむりゃと言うゆっくりは口からどんぐりをぺっと吐き出した。 「……?何これ」 意図を測りかねて男は棒を振り上げた手を思わず止めた。 「それをうめればどんぐりのきがはえるんだどぅ~♪ どんぐりいっぱいおなかいっぱいでふゆもゆっくりできるんだどぅ~♪ れいむりゃにかんしゃするんだどぅ~♪」 「とりあえずクヌギが生長するのに何年かかるか勉強してから出直せ」 「お゛ぜう゛!?」 面倒くさくなって男は棒を振り下ろした。 吹っ飛んだれいむりゃは木にぶつかって、そのまま落ちるかと思いきやよろよろと飛ぶと ゆっくりと背を向けて言った。 「いつかそれでゆっくりできるときがくるんだどぅ~♪ そのときはかんしゃしつつゆっくりするんだどぅ~♪」 「とりあえず二度と来るな」 男の言葉を聞いているのか聞いていないのか れみりゃの帽子とビリビリに破けたれいむのリボンをつけたみょんなゆっくりは森の中へと消えていった。 「…はぁー、仕事しよ」 何だかしこたまやる気を削がれて男は肩を落としながら仕事に戻った。 「うゅー、ゆっくりさせてあげるのってとってもむずかしいんだっどぅ~」 少々ばかりうまくいかなかったことに少し気落ちしながられいむりゃは溜息をついた。 「…うっゆー♪でもおかあさんのぶんまでみんなをゆっくりさせるまでがんばるんだっどぅ~♪ おかあさんがきたえてくれたからこのくらいぜんぜんへいきへっちゃらなんだどぅ~♪」 子どもの落書きみたいに無邪気な笑みを浮かべて、このみょんなゆっくりはまた誰かをゆっくりさせにパタパタと飛んでいった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1126.html
※れいむを多少愛でますが、それ以上に無意識に虐待します。 ゆっくり童話シリーズ 第一回 「赤い靴」 あるところにれいむという名の若くてかわいいゆっくりがいました。 れいむは、すっきりー!しすぎて腰を痛めたおかあさんありすのためにまいにち食べ物を探しにいきます。 ですが、若いゆっくりに2匹分の食料を集めることは出来ません。 しかたがないので自分の分を巣の外で食べ、残ったほんの少しの食べかすをおかあさんありすに持って帰ります。 おかあさんありすは栄養が足りなくて日に日に弱っていきます。 痛めた腰も直りません。退屈紛れに泥団子で作ったまりさとすっきりーしようとするせいです。 ある日、れいむはおかあさんありすに言いました。 「れいむもおおきくなったから、ごはんがたりなくなってきたよ。 れいむはあたらしいおうちをさがしにいくけど、うごけないおかあさんはここでゆっくりしていってね!」 「どう゛じでぞんなごどい゛う゛の゛おおお!!!!いっじょにすっぎりじょうよおおおおおお!!!!」 おかあさんありすは別れを惜しみますが、れいむの足を止めることはできません。 無理をして飛び跳ねたので、着地したときに腰が破けて中のカスタードクリームが勢いよく飛び出します。 「ゆぎゃああああああああ!!!ずっぎりじずぎだげっががごれだよ!」 その言葉を最後におかあさんありすは動かなくなりました。ですが、れいむはもう巣から出て行った後でした。 巣を出たれいむはもっと食べ物があるという人間の町に行くつもりでした。 それはおとうさんれいむが生きていたころにお話してくれたとてもゆっくりできる場所です。 途中で出会った子まりさや子ありすをおやつにして、れいむはようやく町にたどり着きました。 地面が土から大きめの石になっていましたが、若くてぴちぴちなれいむのお肌はその上でもゆっくりできます。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー♪ゆっ!ゆっくりしてたらまちについたよ!さすがれいむ♪とってもゆっくりしてるね☆」 もう夕暮れ時なので、見える範囲には殆ど人間は居ません。 れいむは町に着いたらおうちと食べ物がすぐ見つかると思っていたので、自然と喜びの声が出てしまいます。 「ゆ~ん、ゆ~ん。かわいいーれいむの、おうちとごはん♪ま~ってーてねー。」 気持ちよく歌いながら歩いていると、近くの窓から頭と骨だけになった生魚が飛んできました。 べちっ「ゆぶふっ!?」 れいむはその勢いで路地へと転がります。ころころ。 「れいむにぶつかったわるいこはおしおきだからね!いますぐあやまってね!」 魚はなにも答えません。死んだ魚の目でれいむをみつめるだけです。 「ゆ!はんせいしないなられいむにもかんがえがあるよ!・・・むーしゃむーしゃ・・・い゛だいいいいいい」 謝らなかった悪い魚はれいむにたべられてしまいました。 ですが、そのするどい骨はれいむの口の中に深く突き刺さってれいむをくるしめます。 舌より奥の餡子に入ればすぐに骨は餡子になるのですが、刺さっているので飲み込むこともできません。 しばらく路地でぎゃあぎゃあと醜い悲鳴を上げていると、れいむに声をかける人間が居ました。 「あらあら、たいへん。あなたどうなさったの?」 それは丸い老眼鏡をかけた白髪のおばあさんでした。 助けが来たとれいむは喜んでおばあさんのほうへ駆け寄ります。 「ゆぎゃあああああああ!!!」 口の中に刺さった骨は飛び跳ねることによってより深く刺さり、れいむの餡子へものすごい痛みを伝えます。 大きく口を開けて叫ぶので、おばあさんも鷹の目(ホーク・アイ)で魚の骨を見つけました。 「すぐにとってあげますからね。ほら、大丈夫ですよー。」 やさしくれいむを抱きかかえるおばあさん。 れいむはようやく痛みから解放されると思って脱力しました。 おばあさんは裁縫が得意なので、刺さった魚の骨を抜かずに押し込んで背中から取り出します。縫い針みたいですね。 全部抜き終わるころにはれいむは静かになっていました。口から泡を吹いて安らかな顔で眠っています。 このままここに置いていくのもかわいそうだと思ったおばあさんは、れいむを家につれて帰ることにしました。 次の日、目を覚ましたれいむはとてもゆっくりしていました。 なぜなら、れいむが寝ていたのはとてもやわらかいクッションで、かわいい人形がいっぱいの部屋だったからです。 部屋の真ん中にはお皿が置いてあり、中にはクッキーが入っていました。 昨日はとても疲れたような気がしたのでれいむはそのクッキーを一息に食べます。 「むーしゃむーしゃ。しあわせー♪あまあま、おいしー☆おとうさんのいったとおり、まちはとってもゆっくりだね。くすくす。」 幸せそうな笑顔を浮かべるれいむを昨日のおばあさんが見つめています。 おばあさんは家族が居なかったので、クッキーをおいしそうに食べてくれるれいむを飼ってもいいな。と思いました。 れいむがおばあさんと暮らし始めて最初の日曜日、おばあさんはれいむに贈り物をしました。 それはとても綺麗な赤い布でできた靴でした。 町は石畳なので、全裸のれいむが飛び跳ねるには少々危険なのです。 靴を装着してもらったれいむは鏡をみて驚きました。 そこにいたのはれいむの赤いリボンとおそろいの模様が付いた靴のとてもかわいいれいむ。 ”とーたるこーでぃねーと”とでも言いましょうか。 ゆっくりの丸い体の下半分を覆うその靴はすぐにれいむの宝物になりました。 「おばあさんありがとう!ちょっとそとのゆっくりにかわいいれいむのくつをじまんしてくるよ!」 言うが早いか、れいむは一人で飛び出します。 おばあさんの家は猫用のドアが扉に付いているのでゆっくりでも自由に出入りができるのです。 でていくれいむをおばあさんはゆっくりと見つめていました。 「あの子、一人で戻ってこれるかしら・・・まあ猫みたいなものだし、大丈夫よね。」 外に出たれいむは改めてみる人間の町の美しさに見とれてしまいます。 硬くてゴツゴツしているけれど跳ねやすい道。おばあさんの赤い靴のおかげで全く痛くありません。 いたるところに植えられた色とりどりの花。れいむのためにおやつとしていっぱい用意してあるのでしょう。 町の中心には大きな噴水がありました。れいむはそこでお水を飲みながら、靴を自慢するため他のゆっくりを探します。 「ゆぅ~ん。れいむのきれーなくつをみせたら、どんなかわいいゆっくりだってれいむにめろめろだよねー。」 一人で身をよじらせてクネクネしている様を人間がくすくすと笑いながら見ていますがれいむは気づきません。 夕方近くになって、ようやく路地裏からみすぼらしい姿のありすが噴水までやってきました。 れいむはおなかもすいてきたのでそろそろ帰ろうと思っていましたが、待ってましたとばかりに言いました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりすっきりしていってね!」 ありすは発情ありすでした。ものすごい勢いで噴水まで駆け寄ると、噴水の淵に乗っていたれいむの所まで一跳びで上りました。 れいむはかわいいだけでなくかしこいれいむなので、ありすはおかあさんありすと同じようにすっきり中毒だと見抜きました。 ですが、ゆっくりそんな分析をしていてはありすからは逃げられません。 「はぅーん、あかいくつをはいたれいむはとてもとかいはだから、きれいなありすのおよめさんにしてあげるねえええ!」 「ゆ゛う゛う゛っ!みにくいありすはかわいいれいむとはつりあわないよ! かってにれいむにさわらないでね!ばかだね!どろにんぎょうとでもすっきりしたらいいよ!」 かしこいれいむもゆっくりなので自分が先程言った言葉も忘れています。 一方、ありすはきれいに着飾ったれいむにめろめろで辛抱たまらん!といった様子で強くれいむを押さえつけます。 ゆっくりが一匹乗るだけの幅しかない噴水の淵ではれいむはありすを振りほどくことができません。 間違って噴水に落ちればゆっくりできなくなってしまうのですから。 れいむはもぞもぞと抵抗にもならない力でありすを押し返しますが、それはありすを興奮させるだけです。 「まぁ!れいむはありすのためにじぶんでうごいてごほうししてくれるのね?いじらしいわああああああ!!!」 ありすは嫌がるれいむをお構い無しに責め立て、すっきりへの快感をむさぼっていきます。 れいむはなすすべも無く蹂躙される屈辱に、涙を流しながら耐えるしかありませんでした。 「んほおおおおおおおおおおお・・・・すっきりー!」 「・・・すっきりー・・・」 激しい野外プレイもようやく終わりを告げ、ありすは去っていきました。 自分さえすっきりできれば別に誰でもよかったようです。 取り残されたれいむは自分がすっきりー!させられたことによって子供ができてしまうことを悲しみました。 まだ若くてかわいいれいむなのに子持ちになったら自由などありません。 それどころか、できる子供の数によっては栄養を吸い尽くされてれいむは干からびてしまうかもしれません。 きれいな噴水に沈んだらゆっくりできるかなーと思って水面を覗き込んだときにれいむは気づきます。 水に映るれいむの頭には蔓は生えていません。おばあさんの赤い靴がありすの邪悪なすっきりー!から身を守ったのです。 むりやりすっきりー!させられた悔しさは残りましたが、れいむはまだゆっくりできるのです。 こんなすばらしい靴をつくってくれたおばあさんに、れいむはごほうびをあげたいと思い、いそいでお家に帰ります。 れいむは最初に町に来た日以来、ずっとおばあさんの家でゆっくりしていたのでどこがおばあさんの家かわかりません。 いつの間にか日が暮れて真っ暗になってしまいました。おばあさんもきっと心配してれいむをさがしているでしょう。 真夜中になってもれいむはおばあさんの家を見つけることができません。おばあさんは探しにも来ません。 人間の家は全部同じに見えるので、体当たりすれば中に入れる不思議なドアだと思って、れいむは何度も硬い扉にぶつかりました。 れいむはその度に、来客を確認しに開かれたドアによって顔面を強打しました。 もはやれいむの顔は凹凸がなく、絶壁といってもいいくらいに平らになりました。 「ゆぐぅ、こんなゆっくりできないおうちにはようはないよ・・・」 おなかもすいて、心身共にボロボロになったれいむは、ふらふらと町をさまよいます。 とりあえずゆっくりできるところを探して、ついにゆっくりできそうな丁度いい大きさの穴が、レンガの家の壁にあいていました。 しかもその穴からはとてもおいしそうな香りが漂ってきています。 その穴の横にはイスとテーブルがあり、それに登れば穴の前の足場までいけそうです。 「・・・あそこなられいむがひとりでゆっくりできるよ。さがしにこない、いじわるばばあもはいってこれないね・・・」 れいむは痛む体を早く休ませたい一心でイスを、テーブルをよじ登り、壁の穴へ飛び移ります。 べちゃん! かわいそうなれいむは足を滑らせ、石畳へ落ちてしまいました。足の皮が破れ、そこから餡子がもれ始めます。 ですが、なんということでしょう!おばあさんの赤い靴は、れいむの足をきれいに包んでいるので餡子は殆ど漏れ出しません。 もはや悲鳴を上げるのも疲れてしまったれいむですが、硬い石の路上で眠れるほど田舎者のゆっくりではありません。 二度、三度と同じことを繰り返して、ようやく壁の穴までたどり着きました。 「もう、つかれたよ。かわいいれいむはこのおうちでゆーっくりしていってね。」 一人でゆっくりしていってねを言うと、れいむはおいしそうな香りの中で深い眠りに落ちていきました。 翌朝目が覚めると、れいむの足の傷はふさがっていました。おばあさんの赤い靴はれいむの命を何度もつなぎました。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ。さっすがー」 喜びの声を上げるれいむ。と、同時におなかがなります。先日の昼食以来、水しか飲んでいません。 れいむは思い出したようにあたりを見回します。おいしそうな香りの出所を探しているのでしょう。 入り口は狭い穴でしたが、中は以外に広々としている一部屋の石造りになっています。 れいむはその穴の片隅に、平べったく焼けた物を見つけました。 「むーしゃ、むーしゃ。うっめ、まじうっめ、これちょwwwぱねぇwww」 はしたない声を上げてれいむはそれを食べます。食べます。食べます。 「ゆふーん。しあわせー!」 平べったいものを全部食べつくしたれいむはそのままとてもゆっくりして、二度寝を始めてしまいました。 余程疲れが溜まっていたのでしょう、その寝顔はだらしなく伸びきって、時々いびきのような音が漏れます。 熱い。れいむは足元から来るあまりの熱さに飛び起きました。 飛び起きたつもりですが、れいむは飛び上がることはできません。 なぜなら、れいむの足は既にこんがりと焼かれ、固まってしまっていたのです。 れいむの周りには、寝る前に食べた丸くて平べったいものが一杯置いてあります。 そう、そこは伝統のピッツァ窯の中。れいむはそんなものは全く知りませんが。 「ゆぎゃあああああ!ゆっくりしないでここをでるよ!!」 跳ねようと足に力を込めるれいむ。足はぴくりとも動きません。 (熱い、痛い、熱い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、いたいいたいいたいいたいいたいいたい・・・・) 深い眠りによって、れいむは起きるのが遅くなってしまいましたが、おばあさんの赤い靴はまだれいむを守ります。 熱く焼かれた石のオーブンの上で、れいむの足の皮が石に張り付いていないのは赤い靴のおかげです。 ただし、動くことができなくなったれいむにとって、それは何もありがたいことではありませんでしたが。 「どぼぢでれ゛い゛む゛のあじうごがな゛い゛のおおおおおおお」 れいむは泣き叫びますが、誰もその声には気付きません。そうしているうちにも、どんどんれいむは焼かれていきます。 足の皮が火ぶくれを起こし、爆ぜ割れました。 そこから、れいむの餡子が飛び出します。 けれど、おばあさんの赤い靴はれいむの命の餡子を外へ逃したりはしません。 ぱちん、ぱちん、ぱちん・・・・・ 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎ・・・・」 餡子が沸騰して、皮が破れ、普通のゆっくりならばとうに原型をとどめていないでしょう。 赤い靴はとてもいい布でできているので、そう簡単には燃えたり、破れたりはしません。 おかげでれいむは全身がぐつぐつと煮えたぎっているにもかかわらず、まだ生きているのです! ついにれいむの頭の皮が破れました。長い苦しみももう終わり。 しかし、赤い靴は形を変えません。熱によって固まった靴は、今や鍋のようです。 口も溶け、目も、髪も、リボンも餡子のスープに沈みました。 ですがれいむの苦しみは続きます。餡子はまだ一滴もこぼれていないのですから。 全身を、生きながらに焼き尽くされても死ねない事に、れいむは恐怖しました。 判るのは、窯の奥で固まっていた物のように、れいむはこれから毎日焼かれ続けるだろうということだけです。 参考文献:世界名作アニメ絵本14 赤いくつ 書いてるのがドン詰まりしたので気分転換です。カーレンタソの可愛さは異常。 シリーズとか書いてますが、続くわけが無いと思っている。 あと、この町はお年寄りばかりなので積極的にゆっくりを虐める人はいません。しかもズボラ。 羊の羽 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3021.html
「ほらっ、もうおうち宣言なんてするなよ」 とある民家からまるでゴミのように丸い物体が三つ投げ捨てられた。 それはゆっくりの一家だった。投げ捨てられたのは成体れいむとまりさの両親と、一匹の子れいむ。 つい数十分前までどこにでも在るありふれた存在であったが、今は違う。 それはゆっくり達の状態。 なんと面妖か。まず親まりさには顔がなかった。当然生まれつきではない。先ほどおうち宣言をした民家の主によって改造されたのだ。 目も口もくりぬかれた上で餡子と小麦粉の皮で補修され、のっぺらぼうのようになってしまったのだ。このまりさはもう何も見ることは出来ぬし、食べることも喋ることも出来ない。 更には底部も火傷を負っていた。二度と動けぬほど炭にはなっていないが、僅かに這うことしか出来ずに自然治癒も不可能なまでには焼かれていた。 そして子れいむもまりさと同じような状態だった 目も口もなくのっぺらぼう、更にはまりさと違って髪もリボンも無い。ただ幸いだったのは底部には何もされておらず自力で動ける点か。 そしてこの中で一番まともな状態だったのは親れいむだった。 民家の主によって全身に打撲を負ってはいるが、それも生きる上には何も支障はなく、ゆっくりの自然治癒能力で治る程度だ。 「ゆぐっ……えぐっ、ばりざぁ……」 れいむは全身を殴られた痛みをこらえながらも、ずりずりとのっぺらぼう状態のまりさにすり寄った。 れいむはまりさがこんな状態にさせられた地獄を目の前で見てしまった。生きたまま目をくりぬかれて、面影もないほど顔を改造されるというこの世のものとは思えぬ光景を見たれいむは激しい恐怖を覚えた。 その上で恐怖だけでなく、れいむを散々痛めつけた人間から少しでも逃げるようにと、れいむはまりさを連れて逃げようとした。 まりさはもう自力では歩けない。だから自分が連れていくしかない。 髪を引っ張ってずーりずーり。まりさも子れいむも音を聞くことは出来る。だかられいむがかけた「ゆっくりかえろう」という声も聞こえていたはずだ。 子れいむはれいむがそう声をかけた瞬間、何かから逃げるように(いや、実際に人間から逃げている)全力で、あさっての方向に跳ねはじめたので、慌ててれいむが捕まえて親まりさの帽子の中に入れた。 しばらくそこでゆっくりしててね、と言ったら傍らに親まりさのぬくもりを感じて安心したのかおとなしくなった。 今やまりさも子れいむも、かつての姿は似ても似つかない。身内以外が、いや身内でも改造される場面を見てなければ個の判別がつかないだろう。 しかし、それでもれいむにとってはかけがえの無い家族なのだ。れいむは自身の体力を振り絞って、今や二度と治らぬケガを負った家族を、かつての巣へと引っ張っていった。 そして、治らぬケガを負っていたのはまりさと子れいむだけでは無かった。れいむもまた、心の傷という治らぬものを負っていた。 翌朝。おうち宣言する前の、子供が生まれて手狭に感じるようになった巣でれいむは目覚めた。 そこは木の根のあたりに出来た、地面の穴だった。れいむはもぞもぞもと起きて、「ゆっくりおきるよ」と小さく呟いた。 そして、家族へと視線を移す。そこにあったモノを見て、昨日のことは夢では無かったのだと今再び再確認し、落ち込んだ。 傍らにいるのは、もはや起きているのか寝ているのかも分からない、表情を浮かべることも、何かを美味しく食べることも、優しい言葉も発することが出来なくなった、最愛の伴侶の最愛の我が子の姿。 れいむは嗚咽をこらえながらも、静かに涙を零した。れいむは、自分一人で家族を支えなければならない。もはや何かを聞くことしか出来ず、何をすることも何かも伝えることも出来なくなった家族を。 こんな存在、当然野生ではお荷物以外の何物でもない。 しかしながら、れいむにとってまりさと子れいむは、お荷物だからといって切り捨てることが出来る存在ではなかった。 「まりさ、おちびちゃん、ゆっくりまっててね」 れいむはそう二匹にそう囁くと、巣を飛び出た。エサを探しに行ったのだ。 れいむが身ごもってからは毎日まりさがやっていた仕事。それを今日からはれいむがしなければならない。 出来る、出来るはずだ。れいむはそう言い聞かせて、森の中を駆けまわって朝食を集めた。 だがれいむは、あまりにも現実感のない事だから忘れていた。 もう、まりさと子れいむに食事は必要無いのだと。 「ゆ゛ぅ……」 れいむは困惑した。嘆いた。再び泣いた。 もう二度と「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~」が出来ぬまりさと子れいむ。そしてその現実を再び目の当たりにしてしまった。 子れいむは動けるはずだが、危ないからとれいむが再三に渡って動かぬように言っておいた。だから、子れいむは動かぬ。自身もまた、何も見えない恐怖に苛まれているのだから。 れいむはのっぺらぼうの伴侶と我が子の前で食事をした。二匹は食事が出来ぬとも、れいむはしなければならないからだ。 れいむは昨日暴行によって負ったケガと、体力を回復させるために、久しぶりに自分が集めた食事を口に運ぶ。余分に集めてしまった、家族の分も。 「む~しゃ、む~しゃ……」 その口から「しあわせ~」が出ることなど、二度とない。 そのまた次の日。れいむの生活サイクルは昨日の時点で確立された。 れいむが巣の外へ出るのは一日三回のエサ集め。それも一匹分のみ。 あとはずっと、巣にこもってまりさと子れいむの相手。まりさも子れいむも、当然ろくな反応も示さない。 だがれいむは、相手に伝わってるはずと思い、す~りす~りをしたり、歌を歌ったりした。 そんなれいむに、子れいむは光がない恐怖から少しだけ小さく跳ねて、まりさはろくに動かせない体を身じろぎさせて反応してくれた。 れいむは、それだけで嬉しかった。 そんな二日目。れいむが昼食を食べ終えた後の、まりさと子れいむへのお歌タイムをしている時だった。 「やぁ、れいむちゃん元気かな?」 この一家を、こんな地獄へと叩き落した張本人が、巣に現れた。 れいむは絶叫した。絶叫し、泣き叫び、狭い巣の奥へと引っ込んだ。 そのれいむの叫び声に混乱し、それまで動かなかった子れいむがにわかに跳ね始めた。顔も髪もなく、ただの饅頭と化したそれは、方向もわからず逃げようとした。 それは偶然出口へと向かっており、人間に巣の中へと殴り返されて、その後ぐったりとして動かなくなった。 その間もずっとれいむは、半狂乱に陥ったまま巣の奥に逃げていた。それ以上奥にはいけないというのに、更に奥に、より遠くへ逃げようと。 「ゆ゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! だずげで、だれがだづげぇぇぇぇぇ!!! ゆっぐりでぎないおにいざんがいるよ゛ぉぉぉぉぉぉ!!! いやだっ、でいぶゆっぐじじだい゛ぃぃぃぃぃぃ!!! だじゅげでぇぇぇぇぇぇ!!! いやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 その叫び声を、まりさも聞いていたはずだった。 だが、まりさにはどうすることも出来ない。れいむを慰めることも、人間に立ち向かうことも、逃げることも涙することも。 ただぷるぷるとわずかに震えるのみの饅頭として、そこにあることしか出来なかった。 しかし、しかしだ。それでもまりさは愛するれいむの泣き声を聞いて、ずりずりとみっともなく這って、人間の声を頼りに立ち向かおうとした。 そんなまりさを、人間は殴り飛ばした。殴って、殴って、殴って、なおもずりずりと這ってくるまりさを喜々として殴り飛ばした。 その後もれいむは、人間が立ち去ってれいむに見つからなず巣を観察出来るポイントに行くまでずっと泣き喚いたままだった。 そして一度泣きやんだ後、巣の中で横田たわるボロボロのまりさと倒れている子れいむを見てまた泣いたのだった。 ある日れいむが巣に帰ると、そこにはボロボロになったまりさと子れいむがいた。 人間によって虐待された傷ではない。明らかにそれ以外の者による傷だった。 のっぺらぼうのただの饅頭が二個、巣の中に転がっていた。至る所ケガだらけ。餡子もわずかに漏れていた。 まりさは自身で起き上がることも出来ない。子れいむは起き上がっていてもただの髪も顔もないので、分からない。 「ばりざぁぁぁぁぁぁ!!! おぢびぢゃぁぁぁぁぁぁん!!! どぼじだのぉぉぉぉぉぉ!!!」 れいむは泣いて二個に駆け寄った。涙をボロボロと流して、すりすりと頬をすり合わせる。 目も見えない二匹でも、これなられいむが傍にいることが分かるだろう。もっとも、二匹がそれを伝える術は殆どないのだが。 かろじて、子れいむが拙い動きですりすりを返したぐらいだった。 それだけだったが、れいむは泣いて喜んだ。光を失ってからピンチの時以外ろくに動こうとしなかった子れいむが、動いてれいむにすりすりを返してくれたのだから。 傷ついた体にも関わらず。それで、嬉しくないはずがない。 ちなみに、二匹をこんな目にあわせたのはとある野良まりさだった。 一人立ちして自分の巣を探していた野良まりさは、ちょうどよくのっぺらぼう饅頭が留守番していた巣を見つけた。 当然そこでおうち宣言をしようとしたが、そこにいたのは気味の悪い饅頭だった。 その饅頭を野良まりさはゆっくり出来ないものとして暴行をくわえた。 散々体当たりをしたり踏みつけたりした挙句、ここはゆっくり出来ないといって巣を立ち去って行ったのだ。 なお、その野良まりさは現在、虐待を行った一家のその後を観察している人間に捕まって玩具兼おやつになっていた。 頭をくりぬかれて中の餡子を攪拌されて、小刻みに痙攣している。 人間は野良まりさの餡子を一割ほど食べたところで、「飽きた」と言って放り捨てた。 命である餡子を削り取られ、頭を切り取られた野良まりさはその場でずっと痙攣したまま動かず、そのままアリのエサとなった。 日に日にまりさと子れいむは衰弱していった。当然だ。何も食べることが出来ないのだから、餓死するしかない。 生命維持のための餡子が消費され、体が小さくなっていく。皮も薄くなって、中の餡子が透けて見える。 一日、一日と、刻一刻と死へと近づいていく日々。かつては少しは跳ねたり身じろぎして反応を返してくれたまりさも子れいむも、やがてはそんな反応も示さなくなった。 そして、ある日を境に二匹は微動だにしなくなった。 顔が無いため一見しては分からなかったが、二匹とも死んだのだった。 れいむは大声をあげて泣いた。涙が枯れるほど泣いた。流した涙で体が溶けて流れるのではないかというほど泣いた。 泣いて、泣いて、悲しんで、ゆっくり出来ていた日々と人間に合された地獄、とそのあとの苦しい生活を思い返した。 そんな、そんな不幸のどん底にいるれいむに、またあの人間が現れた。 人間は狂乱に陥ったれいむを捕まえると、しかと目を見開かせ、その状態でまりさと子れいむの死骸を踏みつぶした。 顔がなくても、まだ原形を、カタチを保っていた家族の体が跡形もなくつぶれる様を見て、れいむの精神は壊れた。 しかし、人間の手によってまた再生された。 れいむが正気を取り戻したのは、人間の家だった。ゆっくりは、精神崩壊を起こしても中の餡子をかき回せば正気を取り戻すのだ。 そしてれいむは、正気を取り戻して、恐怖の記憶を呼び起こして、もはや言葉ですらない声をあげて人間の家の中、人間から逃げ惑った。 しかしそれは徒労に終わり、地獄を見た。 それでもれいむは生還した。 ただし、まりさや子れいむと同じく、のっぺらぼうの状態で。 のっぺらぼうれいむは人間の家の表通りに捨てられた。底部は無事だから、自分で動ける。 しかし、れいむには我が家に帰還する術は残っておらず、助けてくれる者もいなかった。 のっぺらぼうれいむは、その無表情の顔のまま、あさっての方向へと跳ねていった。 その後のっぺらぼうれいむがどうなったのかは、誰も知らない。 END
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/53.html
とある都市の一角にあるペットショップ。 やや古びた建物であるが内装は綺麗で、清潔感がある。ゆっくり専門のお店であるが、 一見するとどこにでもあるごく普通のペットショップだ。にもかかわらず、ペットショップへ入っていく人の数は多い。 そして、入店する人々の身なりもよい。それなりに高価なゆっくりをおいているお店なのだろう。 ショーウィンドウを覘いていた一人の少女が店員に問いかける。 「店員さん。このれいむの値札のところについている、お花のマークは一体何なの?」と。 店員は少女と同じ目線になるようにしゃがんで言う。 「これはね、菊の花なんだよ。この子達が飼い主さんをどれだけゆっくりさせられるのかを表しているんだ。 この子はね、みんなをとってもゆっくりさせられるゆっくりだよ。」 「れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!」 「へぇ~!確かにこのれいむはなかなかかわいいね!」 「ゆっくりありがとう!おねえさんもすてきだよ!ゆっくりー!」 ゆっくりは生き物である。機械のように正確なデータを取れるわけではない。 ましてや感覚的な指標である、【ゆっくりしている】なんてものを計ることは不可能である。 これは実験的に得られたデータではもちろんない。 では、この菊の花は何を示しているのだろうか? ふかふかのベットで横たわっているれいむ。こいつとは6年の付き合いだ。 初任給で買ったはじめてのゆっくり。育て方がよく分からず、たびたび辛い思いをさせた俺に、文句も言わず優しい笑顔見せたれいむ。 その目がもう開くことはない。視覚を維持する力を既に失っているのだ。 俺はれいむの頭を撫でる。俺達とれいむは最期まで繋がっているということをれいむに伝えたいから。 れいむの長女であり、わさわさしたもみ上げが特徴的な通称わされいむが、れいむの頬へしきりにすーりすーりを繰り返している。 どんなゆっくりであっても、すーりすーりをすれば心があったかくなる。 しかし、わされいむの目からは涙が止まらない。これから起こることを考えれば当然だ。 いくら理屈を聞いたって、感情で生きているゆっくりが溢れ出る悲しみを抑えることなんてできないのだ。 「ゆぐっ・・・ゆぐぅ・・・お゛かぁじゃぁぁぁん・・・」 「なかないでね・・・おちびちゃん・・・。れいむはゆっくりしているよ・・・」 「れ゛いむ゛はおぢびちゃんじゃな゛いよ!れいむはおかあさんだよ!ふたりのおちびちゃんもいるよ!!!」 「おかあさんからみるとね・・・おちびちゃんはいつでもおちびちゃんなんだよ・・・。 おちびちゃん・・・。こどもたちをりっぱなかいゆっくりにそだてるんだよ・・・」 「ゆ゛っぐちわがったよ゛!!!」 「それとね・・・おにいさんに・・・ゆっくりしてもらうんだよ・・・」 「も゛ちろんだよ!!!れい゛むはかい゛ゆっぐりだよ!!かいぬ゛しのおに゛い゛さんをゆっぐり゛させるのは、とうっぜんのぎむさんだよ!!!」 「ゆふふ・・・。おにいさん・・・」 「どうした、れいむ。」 「おちびちゃんをよろしくね・・・」 「もちろんだ。安心してくれ。」 「ゆふふふ・・・。おにいさん、ゆっくりありがとう・・・それとね・・・」 「いままでれいむといっしょにいてくれてありがとう・・・。 おにいさんのかいゆっくりで、れいむはとってもしあわせだったよ!・・・」 「俺もれいむみたいなゆっくりと過ごせて本当に良かったと思っているよ」 「ゆっくりうれしいよぉ・・・。こんどうまれるときもおにいさんにゆっくりあえたらいいなぁ」 「会えるさ、俺達なら。そんときもれいむをゆっくりさせてやるよ!」 「ゆっくりきたいしてるよぉ・・・。それじゃあ・・・おにいさん・・・」 「ああ」 「もっと・・・ゆっくり・・・することは・・・ないよ・・・・」 「・・・さようなら、れいむ。」 長い静寂が訪れる。ここにいる者が皆、れいむの死を受け入れようとしている。 「おがぁじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!」 わされいむが泣き叫ぶ。2匹の赤ゆが見ているのもお構いなしだ。れいむと離れるのが嫌で唯一里子に出さなかったれいむの子供だ。 れいむに対する思いは誰よりも強いのだろう。泣きじゃくるわされいむをそっとしておいてやり、俺はある場所に連絡をする。れいむの最期の晴れ舞台のために。 れいむの遺体を頑丈な木箱に安置する。もちろんれいむの遺体が傷まないように綿を敷き詰めて。これはれいむの棺となるものだから。 ―翌日・午後15時ごろ れいむを入れた木箱を家の前に現れた、ゆっくり専用の霊柩車、通称【れいうーしゃ】に載せる。 れいうーしゃの速さは人間がゆっくり走る程度なので、俺はわされいむと赤ゆっくり達を抱えてとある建物へ向かう。 看板には「ゆっくりとむらっていってね」という文字が書かれている。そう、ここは葬儀場だ。それもゆっくり専用の。 建物の中に入ったら、わされいむ達を控え室において、俺は葬儀屋の人と打ち合わせを行う。 今までゆっくりさせてくれたれいむのためにも入念に打ち合わせを行う。そうだ、俺達とれいむの最期の大仕事だ。 ―午後17時ごろ 参列者が集まってくる。里子に出したれいむの子供達とその番、もちろん飼い主の方々もいっしょだ。 つややかな毛並みが印象的なまりさがぽいんぽいんと跳ねてくる。喪服を来た女性がまりさの後を追うように近づいてくる。 「おにいさん!おひさしぶりだぜ!おかあさんがえいえんにゆっくりしちゃってまりさもかなしいけど、 おにいさんとすごせておかあさんはしあわせーっ!だったとおもうから、まりさはなかないんだぜ!!!」 「そうか・・・。相変わらず元気だなぁ、まりさ。お姉さんには迷惑かけてないか?」 「も・・・もちろんだぜ!!!まりさはきんばっじもとれたかいゆっくりなんだぜ!!!おにいさんもしってるはずだぜ!!!ほんとうだぜ!!!」 「まぁ、まりさが根はいいやつだってことは知ってるさ。それより向こうで番と子供達が待ってるぞ。行かなくていいのか?」 「だぜ!?うっかりしてたのぜ!!!ありがとうなのぜ!おにいさん!!!じゃあむこうにいってるのぜ!!!」 「ああ、じゃあちょっとだけ待っててくれよ。」 心配そうに俺達の方を見ていたありすとその子供達。彼女達はまりさの番のありすとその子供達である。 ありすは飼いゆっくりコンテストで優勝したことがあるほどの美ゆっくりで、 まりさとありすが番になることを報告しに来たときのまりさの鼻の下の伸び具合(鼻なんてゆっくりにはないが)がとても印象的だったことを覚えている。 見たところ夫婦円満で、非常にゆっくりしていると傍からみてもよくわかる。彼女達の努力もあるが、今俺の目の前にいる女性の教育が功を奏しているのだろう。 「お久しぶりですね」 「ええ、まりさのけっこんしき以来ですね。」 「まりさ、迷惑かけていませんか?さっきちょっと怪しい素振りを見せたので」 「いいえ、まりさちゃんはいい子ですよ。ただ、昨日れいむちゃんが永遠にゆっくりしたという話をまりさにしたら、ずっとふさぎ込んじゃって・・・。 今は何とか持ち直したのですけど、寝るときにかなしーしーをしたりして・・・」 「ああ、まりさってショックなことがあるといつもそうでしたから。うちにいたときはれいむが慰めて初めてかなしーしーが止まったんですよ。 成体になってからは全然しなくなったって聞いたんですけど、昔のことを思い出したんですかねぇ・・・。」 「かもしれなせんねぇ・・・。れいむちゃん本当にいいゆっくりだったんですね。」 「そう言って頂けるとれいむも天国で喜んでくれると思います。」 「ふふふ・・・。じゃあ、まりさちゃんのところに行ってきますね」 「それでは、また」 れいむの子供は3匹いる。我が家で飼っているわされいむ。今喪服の女性が飼っているまりさ。どちらも 新しい家族を持っている。そして、わされいむの番はちぇんであるが、けっこんっしてもなお、飼い主の人がちぇんを飼いたいと 言うことでわされいむとは別居している。ただし、毎週会っているのでれいむもちぇんも子供達も幸せそうだ。 もう一匹の子供はれいむ種だ。しかし、れいむ種であることは彼女にとって苦痛だった。 彼女は生まれながらにして子を成す能力を持たない。 ぺにぺにを使ってもも、まむまむ使っても、すーりすーりを行っても、何をしたっておちびちゃんは生まれなかった。 れいむ種は子育てを生き甲斐にして日々を過ごす。己のアイデンティティを喪失した日々はどれだけ苦痛なのか? 赤ゆっくりから子ゆっくりになる頃、里子に出す前に連れて行った健康診断で、その事実は判明した。 長女であった心優しい彼女は、その日から妹達に当り散らす乱暴な姉へと豹変した。 乱暴にもみ上げを振り回し、妹達に八つ当たりで何度もぷくーっをしていた。 れいむはもちろん止めた。子ゆっくりごときの力では成体であったれいむには逆らえない。 押さえつけられてもなお彼女は暴れる。「どうしてこんなことするの?」というれいむの問いに対して、彼女―ふくれいむは 「おま゛えがこんにゃふうに゛うんだがらだぁぁぁぁ!!!げずなばばぁはじねぇぇぇ!!!」 と酷く罵った。そのとき偶然帰宅した俺が見た、あのれいむの悲しそうな表情は決して忘れることはないだろう。 何度も癇癪を起こすふくれいむと、れいむは何度も向き合った。どれだけ罵倒されても。どれだけ暴力を受けても。 ふくれいむも結局里子に出したのだが、最後までれいむはふくれいむのことを心配していた。 彼女の飼い主には連絡をした。飼い主の方は行くつもりだが、ふくれいむが葬式に来るかは彼女次第だと、彼は言っていた。 ふくれいむは来てくれるのだろうか? クイクイ ズボンの裾を誰かが引っ張る。若干力加減が分かってないこの引っ張り方は・・・ 「ひさしぶりだよ・・・おかあさんのおにいさん・・・。」 「ふくれいむ・・・。元気だったか?」 「いまのおにいさんはとってもゆっくりしてるから、れいむはとってもゆっくりしてるよ。」 れいむは元気といったが表情は曇っている。そういえばさっきれいむのことを・・・ 「なぁ、ふくれいむ。いまおかあさんっていったよな?」 「ゆっくりいったよ・・・。」 ふくれいむは里子に出す最後の日もれいむのことをばばあと罵っていた。そんなふくれいむが無き母のことを呼んだ。 「・・・・・・母親のこと、もういいのか?」 「・・・いいもなにも・・・。れいむがまちがっていたんだよ・・・。 おにいさんからきいたよ。おちびちゃんをうめないでゆっくりしてないゆっくりだったれいむのことを おにいさんにひきとってもらうために、おかあさんがなんどもなんども、おかあさんのおにいさんとたのみにいったことを。」 「おにいさんからきいたよ。いつだっておかあさんはれいむのことをきにかけてくれていたって・・・。 な゛のに・・・なの゛に゛・・・。れ゛いむ゛は・・・れ゛いむ゛は゛・・・!!!」 下唇を噛み、必死に涙を堪えるふくれいむ。後悔の念がひしひしと伝わってくる。 そうだ、誰だって喧嘩別れはしたくない。 「ふくれいむ」 「・・・ゆ?」 「安心しろ。ふくれいむのかあちゃんはいつだってふくれいむを信じていたよ。 れいむはな、お前をゲスなのかと疑った俺に対してこう言ったんだ。『おちびちゃんにひどいことしないでね! おちびちゃんもすきでああなったわけじゃないからね!!!きっと、ゆっくりできなくてつらくなったんだよ!!!れいむがはげましてあげるから おちびちゃんとれいむのことをしんじてね!!!おねがいします!おにいさん!!!』ってね。 どんなにお前が罵倒しても、れいむにはそれが祈りの声に聞こえた。 どんなに暴力で訴えようとも、れいむはそれがSOSだと感じ取った。いつだってれいむはお前の苦しみを分かろうとしていたよ。」 「そして、今やっと気持ちの整理が付いたわけだ。ゆん生最大といってもいい難題に立ち向かった娘を、れいむはきっとあの世で誇っているだろうな」 「ゆん・・・・。あじがどう・・・おかあじゃんのおに゛いざん・・・」 「どういたしまして」 「じゃあ、れいむはおにいざんのところにいぐね・・・」 れいむはのそのそと這って進む。跳ねるような気分ではないのだろう。 さて、そろそろ始まるな。 ―午後18時頃 ちぇんの飼い主が葬儀の10分前に到着した。忙しい方なので来れたことが奇跡だった。 葬儀は家族葬であり、あまり大きな部屋を使うことはない。人間が4人。ゆっくりが9匹とごく少数で行われるためだ。 祭壇が既に出来上がっている。れいむの遺影の周りには菊の花が添えられている。ゆっくりは花が大好きだ。れいむも喜んでくれるだろう。 れいむが生前好きであったお菓子がいくつも並べられている。俺が御供えしたものの他にもいくつかれいむの大好物がある。 オレンジジュース、コーンフレーク、ショートケーキ、ノースマンなど色々なものがある。 立てられた線香からはいい匂いがする。用いられる線香は一般的に使われる杉線香ではなく、甘い匂いのする匂い線香である。 ゆっくりは一般的に杉線香の匂いを好まないためである。彼らの世界観に合わせてあまあまの香りが充満していた。 葬儀に参った人、ゆっくりは皆着席している。 司会のゆっくりしょうが、厳かな雰囲気の中の開式の辞を始める。 「ただいまより、ゆっくりれいむさんのごそうぎっをはじめさせていただきます!」 「では、どっきょうっ!をはじめたいとおもいますっ!どうし、びゃくれんさまおねがいします!!!」 「なむさん!ではゆっくりどっきょうっ!をはじめます!なむさん!」 ゆっくりとお経を唱えるびゃくれん。お経とは言うものの、びゃくれんの読むお経は人間の葬式で読まれるお経ではない。 漢字だらけの意味のつながりがよく分からない呪文を聞いたところで、ゆっくり達が安心してあの世に行ける訳じゃない。 それぐらいならば、ゆっくりの分かる言葉を、ゆっくりが有難がるびゃくれんにゆっくり出来るように読んでもらったほうがいい。 そういった考えで、ゆっくりのための読経は生まれた。あまあま、ゆっくりぷれいす、けっかいっ、しんっこんっなど ゆっくり達がよく聞く言葉で、そのお経は書き綴られていた。俺には全く意味の分からない言葉だが、れいむがあの世でゆっくりするためのものなので気にしない。 じっと座り、お経を聞いていたわされいむが、ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・と泣き出した。 れいむの遺影を見て、悲しみがこみ上げてきたのだろう。何も言わずハンカチを差し出す。わされいむはハンカチに顔を埋める。 葬儀をちゃんと終わらせるため、この雰囲気を壊さないため、ゆっくりという空気を読めない種族であるにもかかわらず、わされいむは必死に耐えていた。 長い読経が終わる。 お経を読み終えたびゃくれんはこちらを向いて、位牌を持ち、装重な雰囲気を出しながら言う。 「ゆっくりれいむさんのかいっみょう!はたくっさん!ぼせいゆっくりれいむながながです!なむさん!」 かいっみょう。これはいわゆる戒名のことを指す。ゆっくりにも死後の名前をつけようということらしい。 「このたくっさん!というぶぶんは、かいぬしさんをたくっさんゆっくりさせることができたといういみです。なむさん!」 もちろんだ。れいむは俺に多くのことを残してくれた。感謝してもし足りない。 「このぼせいというぶぶんは、おちびちゃんたちのことをだいいちにかんがえた、しんのぼせいをもったゆっくりであるといういみです。なむさん!」 れいむの子供たちが頷く。彼女達皆がれいむの愛に包まれて健やかに育った。 「ゆっくりれいむというぶぶんはれいむさんがゆっくりれいむであったことのしょうめいです。なむさん!」 「そして、ながながというのはれいむさんはながくいき、おおくのものたちとであい、おおくのしあわせーっをもたらしたゆっくりであるといういみです。なむさん!」 ここにいる皆が全て頷く。そうだ、れいむがいなかったら俺達は全くの他人、他ゆんであった。れいむはみんなと繋がっている。 これが最後の作業になる。 れいむとお別れしなければならない。 木箱の棺に入れられたれいむをみんなでのぞき込む。 幸せそうに笑っているれいむはもう二度と動くことはない。受け入れたはずの現実は、俺をしつこく攻め立てる。 動悸が早くなる。焦点が合わなくなる。今になってれいむを失った悲しさがどんどんどんどん溢れ出てくる。 気分が悪くなり、しゃがんだ俺をわされいむが涙を溜めた双眸で、必死に曲線を描いて笑顔を作る。 まりさも俺のことを心配そうに見つめる。ふくれいむはじっと俺のほうを見て、コクリ頷く。 わされいむは言う。 「おにいさん、ゆっくりおかあさんをみおくろう」 れいむの面影がある、れいむの子供達の母への愛と強い意志を目の当たりにして、 「そうだな、ゆっくり・・・そしてしっかりと見送ろう」 この葬式においての遺体の処理方法は食葬である。 れいむの体を毟り、饅頭となったれいむを食す。食したら少しずつ棺の中に清められた餡子を詰めていく。 葬儀に参加したもの全員でれいむを食べ、れいむを思い出し、れいむを忘れないように心に刻む。 「む゛ーちゃ!む゛ーちゃ!」 「むーぢゃ゛!むーぢゃ゛!」 「むーじゃ!!むーじゃ!!」 れいむの餡子を食べる子供達は誰も幸せとは言わない。 母の一部を少しでも感じ取れるように必死で喰らう。最期の繋がりを逃さないように。 俺もれいむを喰らう。一口、二口とれいむを口に含むたび、楽しかった思い出、辛かった思い出、れいむと過ごした日々が浮かび上がる。 飼育ケースから初めて出たれいむに、ボールを与えたときのこと。 何時に無くはしゃぐれいむを見て、つい調子に乗った俺がれいむをボールに乗せて怪我をさせてしまったこと。 生まれて初めての他ゆんに緊張しているれいむをリラックスさせようと、キタキタ踊りを踊ったら場が白けてしまい逆効果だったこと。 でも、その話題のおかげでれいむはけっこんっ!することができたんだ。 我が家で行われたけっこんっしきの事は今でも忘れない。近所の飼いゆっくりを入れるだけ入れて、やったから、足の踏み場もなくなってたな。 れいむと番のまりさにナイフを持たせて、れいむとまりさを持ち上げて巨大ケーキを切ったのもいい思い出だ。 後で、実際には俺が切ったんじゃねえかという近所のぱちゅりーの指摘で、ショックを受けていた2匹の顔は本当に良い表情だった。 れいむ達の子供が生まれるときのことも忘れてないぞ。れいむが必死に息んでいたのに俺とまりさはずっと狼狽していたな。 れいむが赤ちゃんを受け止めてって俺らに言ったとき、テンパった俺達は何をしたんだっけ? 確か、おれはキャッチャーミットを持ってバッチコーイ!とかいった気がする。 まりさの方はゆっくりうけとめるのぜ!!!って言いながらティーカップを持ってきていた気がする。 何もあんな時にボケなくてもいいが、思い返せば本当に笑えるなぁ 子供達が生まれてすぐに、侵入してきた野良ゆっくりと戦って、まりさが永遠にゆっくりしちゃったことがあったな。 三日三晩悩んだれいむが俺に告げた言葉の重さが今になってやっと分かる 『れいむはしんぐるまさーじゃないよ!えいえんにゆっくりするまでまりさのつまだよ!!! それにれいむはおちびちゃんをひとりでそだてないよ!!!おにいさんといっしょにがんばるよ!!!よろしくおねがいします、おにいさん!!!』 母性の塊であるれいむ種が、一緒に育てるという言葉を発するということはどれくらいの重みをもっているのか。 れいむの子供達の生き様を見た今ならわかる。れいむは俺が思っている以上に俺を信頼していた。 俺もれいむが思っている以上にれいむを信じていたつもりだ。 れいむの体がリボンと中枢餡のみとなる。棺の中は餡子で満たされている。 「では、親族のゆっくりの方は前へいらしてください」 係りのゆっくりしょうが、れいむの子供達の前に三分割した中枢餡をおく。 別れの言葉を告げながら、中枢餡を食らっていく。 「おがぁじゃぁぁぁぁぁん!!!れいむ゛がんばるよぉぉぉぉ!!!」 「り゛っぱなおっとになるんだぜぇぇぇ!!!おどうざんみだいになる゛がらきたいじてぼしいんだぜぇぇ!!!」 「おがぁじゃんごべんねぇぇぇ!!!!れい゛む゛ぜっだい゛じあわ゛ぜになるよぉぉぉぉ!!!」 中枢餡を食べ終えた子供達は涙を流し叫び続ける。我慢し続けた思いが全て放たれる。 誰もそれを咎めない、最後はゆっくりなりの弔い方をしても別に構わないだろう。 「おにいさん、棺の中にこの花を」 しょうから渡されたのは紅色の菊、白色の菊の2輪であった。 れいむのリボンを棺のなかで敷き詰められた餡子の上におく。 棺の前に立ち、紅白の菊を棺の餡子に差し込んでいく。これが俺がする、飼いゆっくりとしてのれいむの弔い方だ。 れいうーしゃが現れる。建物に隣接している霊園にれいむの棺を送り届けるためだ。れいうーしゃにれいむの棺を渡す。 れいむだったものはもうリボンしか入っていないが、それでもれいむの棺だ。 俺達はれいうーしゃの後についていく。 れいむの墓に棺を入れる。棺はゆっくりの大きさに合わせたものであるので、お墓にある空洞に棺を入れる。 棺を入れたら空洞に蓋をする。これでれいむは安らかに眠れる。 ふくれいむはつぶやく 「おかあさん、ゆっくりねむってね・・・。」 今まで本当にありがとう。れいむのことは死ぬまで・・・、いや死んでも忘れないよ。 これからはれいむの家族と、俺のことを見守っていてくれ。 さようなら。 <おまけ> 「せんぱーい!知ってるっすか?知ってるっすか?」 「君のテンションが高い理由なら知らないよ。」 「ちがうっす!人気のあのペットショップのことっす。あの菊の花のマークがついてるっていうやつっす。」 「まぁ、一応はね。」 「友達のなかで話題になってるんっすよ!是非知りたいっす!」 「ふーん、あそこねぇ。いいとこだけど学生が行くようなとこじゃないよ。 ゆっくりの品質に関してはかなり上質なものばかり売ってるし。」 「自分は別にゆっくりを飼おうと思っているわけじゃないっす!あのマークがなんなのか知りたいだけっす!」 「はいはい、仕方ないなぁ。あのマークは餡統の良さを表しているんだよ。」 「餡統の良さを表すのに菊のマーク?なんか変っすね?」 「あの菊の花のマークはね、その餡統のゆっくり達に対して行われた葬儀の回数を表しているんだ。 ペットの葬式ってのはお金がかかるだろう?それを敢えてやってもらえるようなゆっくりは、飼い主をゆっくりさせたといっても過言ではない。 そういう判断から葬式の数を餡統の指標として使っているんだ。」 「ふーん・・それって当てになるんだかわかんないっすよね?」 「まあね。普通の餡統表も当てにならないから、人によってはこっちを重視するんだよ。」 「そんなもんっすかねぇ。」 「そんなもんだよ。人は歴史をありがたがるから」 <あとがき> 前回は愛でよりHENTAIが前面に出てしまったので今回はちゃんとした愛で作品です。 にしても真面目な物語を書くのは意外と難しいですね。ところどころボケやギャグを入れたくなる衝動に駆られました。 今作品に関係ない話ですが、 のすたるじあき様、挿絵ありがとうございました。 かわいいみすちーの絵も含めてとてもゆっくりさせていただきました。ありがとうございます! 後書きはこれくらいにして・・・ 以上シリアスを書くと筆が遅くなるドナルドあきでした。 菊の花言葉は・・・? 過去作 anko1066 ゆくドナルド anko1166 ゆくドナルド2 anko1304 れいむと・・・ anko1384 豆れみりゃとこうまかん anko1395 ゆくドナルド3 anko1404 お前のゆん生30点 anko1432 幸福マスベ 挿絵:車田あき
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1241.html
※9割方ゆっくりを愛でてます。 『幻想と現実の境界』 「『やあ、俺は虐待お兄さん』…っと」 ワンルームマンションの一室。 パソコンの前でキーボードを叩く俺は今、ゆっくり虐待のSSを書いていた。 ゆっくりは東方プロジェクトのキャラクターを、憎たらしさと可愛らしさの同居したような顔にデフォルメしたAAだった。 それがいつの間にか色がついて絵となり、さらには設定が継ぎ足され、 今ではオリジナルのキャラとは別の不思議生物としてキャラが独り立ちしている。 俺はネットを徘徊する中でゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が、 「ゆっくりしていってね!!!」 と叫ぶCGを見つけ、何とも言えないモヤモヤした感情を覚えた。 そして、よく見たら可愛いんじゃね? →泣き顔とかそそるなぁ。 →不幸に死んでいくSSがたまらん! とまあ、こんな感じで今日もゆっくり虐待系サイトに入り浸りである。 その中で多く見られるゆっくり虐待SSを読むうちに俺も書きたくなった。 なので今まさにテキストエディタ開き、SSに初挑戦というわけなのだ。 オンラインゲームで鍛えたタイピングで徒然なるままに言葉を綴る。 『俺は今、虐待するためのゆっくりを探しに森に来ている。 虐待お兄さんはゆっくりを虐待していないと寂しくて死んでしまうのだ。 森の中に入ると早速ゆっくりの家族を見つけた。 母親れいむが一匹で、母親まりさが一匹。あとは大小合わせて十匹程度の子供ゆっくりの家族だ。 』 さて、次はどう書こう。 そろそろセリフかな。 まずはお兄さんが「やあ、みんなゆっくりしてるかい?」みたいな事を言って、それに対する答えは… 「ゆっくりしていってね!!!」 そう、それだ。 いや「ゆっくりしてるかい?」の返事にそれはおかしい。 …じゃなくて。 おかしいのはもっと別のことだ。 今さっき背中側から声が聞こえなかったか? 間違えじゃなければ「ゆっくりしていってね!!!」と。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺は二度目のその声に振り向く。 声がした方向はベッドの辺りから。そのベッドの上にはバレーボールほどの丸っこい物体。 もちもちした肌、赤を基調とした白いレース付きのリボン、そのリボンで後ろ髪を束ねている。 そしてどこか誇らしげで、憎たらしさと可愛らしさの同居したような太ましい顔。 どこからどう見ても目の前のこいつはゆっくり霊夢だった。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺と目が合ったれいむは満面の笑みを浮かべて挨拶してきた。 それからこちらの反応を期待して待っている。 「え、あ…どうも」 突然のことでうまい返しが出来るわけもなく、頭が真っ白の俺はそんな挨拶で返した。 そして黙って見つめあう俺とれいむ。 何を思ったのかれいむはポッと頬を染めた。 (…殺虫剤はどこだっけな。 いやいや、ここは透明な箱をだな) 「くらいー、なにもみえないよー。だしてー」 都合よく透明な箱が家に置いてあるわけもなく、 前の引っ越しで残った段ボールをれいむに被せた。 ダンボールに閉じ込められたれいむは何も見えないようでベッドの上をウロキョロしていた。 それを見ながら俺は情報を整理する。 まずは自分の頬を抓る。 痛い。どうも夢じゃないらしい。 変な薬。覚えている限りやってはいない。 うーん、一体どこから出てきたんだこれは。 ネットでのゆっくりはそれなりに会話も可能なはずだから話してみるか。 というわけでれいむを閉じ込める段ボールを取払ってあげた。 「ゆっ! だしてくれてありがとう!!」 段ボールを除けるとそこにはやはりれいむがいた。 そしてまず一番に、閉じ込めた本人である俺にお礼してきた。 悪口を並べてくるのかと思ったが、どうやらSSでよく書かれるようなゲスゆっくりでは無いようだ。 それはそうとベッドの上で弾むれいむに話しかける。 「えーっと、れいむ?」 「ゆー?」 「君はどこから来た?」 「ゆっくりしたところからきたよ!!」 「…いつからここに来た?」 「さっきからだよ!!」 「ていうか本物??」 「れいむはれいむだよ!!」 よく分かった。 質問しても分らないことがよく分かった。 考えてみればこいつがゆっくり霊夢であることが事実ならばそれで十分なのだ。 ゆっくり虐待に目覚めた俺へのプレゼントだと思えばいい。 ならば早速。 「れいむ、遊ぼうか」 「あそんでくれるの!? いっしょにゆっくりあそぼうね!!」 まずは強度を測るために軽く殴ろうと思う。 最初から足を焼いたり目を刳りぬいたりとハードな虐待をやるつもりはない。 というよりもいきなりそんなことする勇気はない。 「なにしてあそぶの? れいむはゆっくりしたあそびがしたいよ!」 「わかった。じゃあそこでじっとしてろよ?」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 ベッドの上でれいむは期待の眼差しを俺に向けている。 何を考えているのかまでは分らないが、俺との遊びを楽しみにしているのは間違いない。 俺は拳を握ってれいむを見据える。 後は殴るだけ。 そう、ただ殴るだけ。 拳を前に突き出すだけなんだけど… 「ゆっくりわくわくしてるよ!!」 できないだろ。普通に考えて。 せめてこいつがいきなりおうち宣言するようなゲスれいむだったなら遠慮なく殴れたと思う。 でも目の前にいるこいつは純粋に俺と遊びたがってるだけ。 それを大した理由もなく殴りつけるなんて俺には出来なかった。 なので俺は手をそっとれいむの頬に添える。 それから親指と人差し指でつまんで抓るだけにした。 「ゆゆ、おにーさんちょっといたいよ? ゆっくりしようよ!」 「おお、柔らけー」 れいむのホッペはもちもちホッペだった。 残る片方の手も使ってれいむの両頬をつつき、つまみ、そしてこねくり回して遊んだ。 五分ぐらいそうして遊んでいるとれいむが涙目になってきたのでそこで止めた。 お詫びに頭を撫でてやると揉み上げ部分のあれを犬の尻尾のようにパタパタさせて喜んでいた。 その時俺は、そんなれいむを不覚にも可愛いと思ってしまった。 同時に決めた。こいつをペットにしようと。 虐待は空想の中だけでいい。 理由はどうあれ実際に現れたれいむは普通に可愛がろう。 …まあ、意地悪程度なら頻繁にするつもりだが。 とにかくそうと決めた以上ゆっくりの飼い方を考えないといけない。 幸いれいむはちゃんとお喋り出来るので分らないことは直接聞けばいい。 「れいむ、お前ってどんな食べ物が好きだ? 何か食べたい物あるか?」 「ゆっ! れいむはあまいのがだいすきだよ!!」 「ふぅん、じゃあ甘いのを用意しておかなきゃだめか。 ちなみに大食いだったりする?」 「ゆー? れいむはたべなくてもゆっくりできるよ!!」 「ふーん、そうなのかー…ってそうなのか?」 畑荒らしたり、飢えた末に共食いしたりと食欲溢れるイメージがあったので驚きだ。 いや、でも食べなくてもって何だ。食事不要ってことか? もう一度確認する。 「本当に、ずっと何も食べないでも生きてられるのか?」 「ゆっくりしていってればもんだいないよ! れいむ、ゆっくりしてるからだいじょうぶ!!」 そういうもんなのか。 でもまあ、食事のときは一緒に何か食べさせてあげるとするかな。 なので今度プチシュークリームでもまとめ買いするとしよう。 次に寝床だ。 同じ布団や床で寝られると間違って潰しかねない。だからちゃんと寝床は作る。 とりあえず段ボールを寝床兼れいむの部屋にしよう。 自由に出入りできるように段ボールの側面のうち、一つの面を切り取る。 で、プチプチの付いたエアクッションを段ボールの内側に敷き詰めて貼り付ければ完成だ。 少し狭いが寝る分には問題あるまい。 「よし、入っていいぞ」 「ゆっゆっゆっ」 完成したのでベッドの下に潜り込んで遊んでいたれいむを呼ぶ。 呼ばれたれいむはダンボールハウスに飛び込んだ。 「ゆゆっ!? ぷにぷにしてすっごくゆっくりできるよ!!」 エアクッションの感触が気に入ってくれたらしい。 いつか使えるかもと取っておいたが、こんなところで役に立つとは。 「お前の部屋はそこな。寝る時はそこで寝るんだぞ?」 「ゆっくりわかったよ! おにーさんありがとう!」 その後れいむは段ボールハウスの中でしばらく転がっていた。 夕食。 俺はレトルトカレー、れいむはワインのつまみとして冷蔵庫に入っていたチーズを食べた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 ちなみにこれは俺がれいむにリクエストしたセリフだ。 食事が要らないゆっくりだからなのだろう。リクエストするまでは行儀よく食べていた。 飲み込んだ後は「とってもゆっくりおいしいよ!!」なんて言っていたが、 せっかくゆっくりが目の前にいる以上は定番のセリフは聞きたい。 夕食後はれいむと適当に遊びつつ、生活について教えてあげていた。 といってもここには入るな、ここには乗るな、とそんな程度のことだ。 後は休日以外、俺が朝と夜しか家にいないことなんかも伝えた。 「ゆぅ、さびしいよ。まいにちおにーさんとゆっくりしたいよ!!」 なんて嬉しいことを言ってくれたが、ペットのために会社を休むわけにもいかない。 だからここはれいむに我慢を覚えてもらうしかない。 胡坐をかいて座る俺の周りを、「いっしょにゆっくりしたい」と跳ね回るれいむを捕まえる。 で、頭を撫でていいこいいこしてあげると機嫌が直ったのか、 「ゆっくりがまんするよ!!」 「よしよし、留守番頼むぞ」 「ゆっくりおるすばんしていくね!!」 夜中、21時。 れいむはウトウトと眠たそうなので段ボールの部屋に帰らせて眠らせてあげる。 …疲れた。 れいむの相手をするのは子供の相手をするのに似ていて、ちょっとした保護者体験だった。 慣れないので対応に困ることもあった。 でも、れいむは構ってやればそれだけで喜んでくれた。 こいつはいいれいむだ。 殴らないで良かった。 寝ているれいむの頭を撫でる。 ―と、ここで思い出す。 虐待スレの更新しないと。 今日はどんな作品が上がってるかな。 チェックチェック。 おお、無垢ゆっくり虐めか。この人の書くゆっくり虐めはたまらん、ハァハァ。 うほぉ、こっちはいい制裁作品。登場するゆっくりの下種っぷりとその崩れていくのがすっきりー!! おっと画像もアップされてるじゃないか。 …んほぉぉぉ!! こいつはいい画像! 右クリック→名前を付けて保存のコンボ確定だな。 そうして俺の夜は更けていった。 俺とれいむの生活は実にゆっくりとしたものだった。 朝はれいむの「ゆっくりしていってね!!!」で起き、 一緒に朝ご飯を食べた後はれいむに見送られて出勤する。 帰りは玄関で待っていたれいむが笑顔になって飛びついてきた。 俺はれいむのためにおもちゃを買ってあげた。 ゴムボールと猫じゃらしだ。 「ゆー? ゆぅー?」 れいむは興味深げに買ってきたおもちゃを見ている。 なので俺はゴムボールを部屋の向こう側に投げてみた。 「ゆっ!」 れいむはボールに向かって駆け出した。 そしてボールを咥えて俺のもとへと持ってきた。まさに犬。 「おにーさん、おとしものだよ!! ゆっくりなくさないでね!!!」 「ははは」 れいむ曰く落し物らしい。 もう一回投げてみる。 「ゆゆっ!?」 れいむは再び駆け出す。 そしてボールを持ち帰る。 「おにーさんおとしものひろってきたよ!! こんどはゆっくりきをつけてね!!」 「おー、よしよし。いい子だ」 「ゆっ、れいむいいこ!!」 褒めてやるとれいむは誇らしげに胸、いや顎を張った。 そんなれいむに今度は猫じゃらしを差し出す。 で、目の前で振る。 「ゆっ? ゆっ? ゆゆゆっ??」 目の前でパタパタと揺れる猫じゃらしに機敏に反応するれいむ。 「お、おにーさん! すっごくゆれてるよ! ゆれてるよ!!」 「二度言わんでいい。ほれ、捕まえてみな」 「ゆっくりやってみるよ!!」 れいむがやる気になったようなので俺は腕を上げる。 猫じゃらしは自然とれいむを見下ろす位置に来て、れいむはジャンプしないと猫じゃらしを捕まえられなくなった。 「ゆっ! ゆっ! …ゆっ!!」 ジャンプしてパクつこうとするれいむを猫じゃらしの先を揺らしながら避ける俺。 れいむは何度も跳ねて猫じゃらしを追う。 「なんでよけるの! ゆっくりつかまえたいよ!!」 「捕まえないとナデナデは無しだぞ」 「ゆゆっ! それはやだよ! なでなでされたいよ!!」 結局そのあとれいむは猫じゃらしを捕まえられず泣き出しそうになったので、わざと捕まえさせてあげた。 その時やたらと勝ち誇った表情をするのでデコピンをプレゼントしてあげた。 そういえば、ゆっくりに対して一度やってみたかった事がある。 サイトで見かけるゆっくりは揺さぶると発情し、「すっきりー!!」の声と共にオーガズムに達する。 それをやってみたかったのでれいむを捕まえる。 「ゆっ、おにーさん たかいたかいしてくれるの??」 「いやこうする」 バレーボールサイズの、中に餡子が詰まってる割には軽いれいむを上下に揺さぶる。 なるべく小刻みに早く揺さぶるのだが、これは案外疲れる。 最後まで持ってくれ俺の腕よ。 「ゆっゆっゆゆゆゆゆゆゆゆ」 揺れに合わせて面白い声を出す。 しばらく揺さぶると瞳がトロンととろけてきた。 「おにーさぁん、なんだか、ゆっくりできるぅよぉ…!」 食事が要らないゆっくりだから性欲もないかもと思ったがそうでもないらしい。 俺の与える揺れに感じ始めたようだった。 おお、これこれ。この顔だよ。 ネットで見た画像で、携帯のバイブ機能で感じてるれいむのあの顔だ。これが見たかったんだよ。 あともう少し揺らせばすっきりするはず。 「ゆ、ゆゆっ! すっきりしそうだよぉ、ゆゅーん!!」 「OKまかせろ!」 ラストスパートだ。激しくれいむをシェイクする。 そして程なくして… 「すっきりー!!!」 れいむはとても爽やかな笑顔ですっきりした。 本当に良かった。 何が良かったって「んほおおおおおお」の方じゃなかったことさ。 これ以降、れいむは毎晩のすっきりを求めるようになった。 何かエロいけどこれはあくまでペットとのコミュニケーションの一つだ。 ペットとのコミュニケーションなんです。 数日経ったある夜。 帰宅して玄関で待っていたれいむを胸に抱えながらリビングに入ると、 何かフローリングの床が綺麗になっていた。 俺はあまり頻繁に掃除する人じゃないので床には埃やら何やらが結構あったはずだ。 「れいむ、もしかして掃除してくれた?」 「ゆっくりそうじしたよ!!」 頼んでもいないのに掃除してくれるとは。嬉しいことだ。 俺のいない部屋で一人掃除するれいむを思い浮かべる。 … …… 「ゆゆっ、おにーさんのためにそうじするよ!!」 遊ぶ相手もなく、ゴムボールだけで遊ぶのにも飽きたれいむは掃除をすることにした。 お兄さんのためもあるし、目線の低いれいむには床の埃が目立つのだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」 床に落ちた埃、髪の毛、食べ物のカスなんかを次々に舐めていくれいむ。 ちゃんと床を舐めて綺麗にするのも忘れない。 「これでゆっくりできるね!!!」 …… … まさかな。 今のは妄想に過ぎない。 いくら何でもゴミを食べるなんて、ないよな。 「ゆっくりおいしかったよ!!」 「何が…って言わないでいい。お願いだから言うな」 「ゆぅ?」 後で分かったことだが、れいむのために置いておいた昼飯のことだったらしい。 ちなみに掃除をどうやったのかは聞かずにおいた。 平和な日々は続く。 今日もゴムボールを投げてれいむに拾ってこさせて遊んでいた。 「ゆっ…ゆっ…」 投げた先でゴムボールに寄りかかって遊んでいる。 ただ拾って持ってくるのに飽きたのかな。 「ゆっー」 しばらくするとれいむはゴムボールに体をぶつけてこちらへ転がしてきた。 サッカーならぬゆッカーか。 ボールを俺の足元まで運んだれいむは「すーり、すーり」と体を擦りつけてきた。 このままゆっくりしてもいいけどもう一回ゆッカーをみたいと思った俺はまたボールを投げる。 「ゆっ、ゆっくりいくよ…」 「ん?」 俺はその時初めてれいむがどこかおかしいことに気付いた。 どうもれいむに元気がない。 そういえば今さっき俺の足に体を擦りつけたとき、甘えてくると言うよりもすがるようでもあった。 もしかしてボールを転がしてきたのも口に咥える力が出なかったからなのか。 「れいむ待て」 「ゆ?」 れいむを持ち上げる。 顔をよく見るとやはり元気が少しないようだった。 「お前もしかして風邪か?」 「れいむはゆっくりだいじょうぶだよ!」 嘘だ。短い付き合いだがそれぐらい分かる。 「体が辛いなら言えよ。な?」 「ゆぅ、ちょっとからだがおもいよ」 「やっぱり。 とにかくれいむはゆっくりしろ」 れいむを寝床に置いてあげる。 「もうちょっとおにーさんとあそびたいよ」 「いいから。明日は俺も休みだ。 元気になったらいっぱい遊んでやるから今日は寝とけ」 「ゆー、ゆっくりわかったよ」 まさかゆっくりが風邪を引くだなんて。 半分妖精みたいに思ってたけど中途半端に生物っぽいやつだな。 しかしどうする。 人間の薬は効くのだろうか。 いや、体が餡子のこいつに効くとはとても思えない。 とりあえず冷えピタでも貼ってやるか。 「れいむ、じっとしてろよ」 「ゆぅ?」 言う事を聞いてじっとするれいむの前髪を上げて冷えピタを貼ってあげる。 自分に貼るならともかく人に貼るのって大変。それも片手で。 少し苦労したけどれいむのおでこに冷えピタを貼った。 「ひんやりー!」 一瞬爽やかな笑顔になったが、すぐに気だるそうな顔に戻った。 この表情は本能的なものらしい。 「とにかく寝て早く元気になろうな」 「ゆっくりー…」 この日は俺も早く寝ることにした。 あ、ゆっくり虐待サイト…今日はいいや。 そんな気分じゃない。 翌朝になってもれいむは元気がなかった。 食事は必要ないと言っていたが、回復するには栄養が必要だろう。 「ほら、口開けろ。オレンジジュースだぞ」 「ゆあーん」 大きく口を上げて見上げるれいむにオレンジジュースを飲ませる。 これでちょっとは元気になってくれるといいのだけれど… 昼間は栄養剤を飲ませた。 「おにーさんみてみて!」 「ん?」 「きのうまでのれいむ!」 れいむはいつもの顔をする。 「きょうからのれいむ!」 顔を上向きにして朗らかな笑みを浮かべた。 あー、そんなネタもあったな。こいつもそれを備えていたのか。 とにかくこれの示すところは元気になったってことだろうか。 栄養剤は効いたのかもしれない。一瓶300円の力は計り知れない。 それかられいむは自分は大丈夫だと言うので、少しの間だけという条件で自由に行動させている。 だがれいむを見てみると、飛び跳ねた時の飛距離も高さも衰えていた。 元気になったと思ったが一時的なものだったようだ。 「おにーさん いっしょにゆっくりしようよぉ! れいむね、ひもをひっぱりっこしたいの!!」 元気に俺を遊びに誘うれいむ。 その小さな体の動きは固く、瞳は微かに震えていた。 どう見ても空元気だった。 「れいむ、遊びはまた今度な」 「ゆぅぅ…れいむげんきだよ! いっぱいあそべるよ!!」 元気を示そうとその場で飛び跳ねるれいむだったが、いつもの半分程度の高さしか飛べていなかった。 れいむ自身も無理している自覚はあるのだろうが、それでも必死に俺と遊ぼうと叫ぶ。 だが俺はれいむを寝床に運んでタオルケットをかける。 「これ以上悪くなったらゆっくり出来ないじゃないか。 だから午後は寝るんだ」 「ゆぅ、でもおにーさんとゆっくりしたいよ…」 「あまり心配掛けさせないでくれ」 「ゆ…」 れいむは俯く。 心配掛けさせないでくれ、なんてずるい言い方だったかな。 でもれいむは休ませないといけないんだ。 とはいえどうしよう。 何をすればれいむは治るんだ? そもそも何の病気なのか、病気であるのかすら分からない。 人間なら病院に連れていける。 でもれいむは一般人から見れば動く生首でしかなく、本質は饅頭だ。 だかられいむは連れていけないし、意味があるとも思えない。 病院に連れて行ってもし治ったとしても今までのように一緒に暮らせなくなる気がする。 「…!」 俺はPCの電源を立ち上げる。 何かよい解決策はないかと俺は久しぶりにゆっくりに関するHPを閲覧するのだ。 結局、ゆっくりの病気について役立ちそうな情報は見つからなかった。 しかしヒントというか試そうと思う方法は浮かんだ。 俺はスーパーで大量の饅頭やモナカを買ってきた。 れいむの中身は餡子、その餡子を食べさせれば治るかもしれない。 いくつかの買ってきたお菓子の中にある餡子を取り出してれいむに差し出す。 「ほら食べろ。れいむの好きなあまあまだぞ」 「ゆっ、たべるよ。おにーさんありがとう」 そう答えるれいむの声は力ない。 時間が経つほど悪化してるようだ。 早く何とかしないと、俺は焦る。 掌に乗っけた餡子をれいむの口の前まで持っていって食べさせる。 「ゆむ、ゆむゆむ…」 れいむ餡子をゆっくりと咀嚼する。 しかし… 「ゆげぇ…」 吐き出してしまった。 「れ、れいむ…」 食事も出来なくなっている。 れいむは真っ青な顔をして吐きだした餡子を見つめたいた。 「ごめ、なさい…おにーさんが、くれた…のに」 れいむは泣き出してしまった。 「悪くない。れいむは悪くない」 れいむの頭に手をポンと乗せる。 餡子を食べることも出来ないなんて…これでは悪くなる一方だ。 どうすればいいんだ。 「おにーさん…れいむ、もうゆっくりできなくなるよ」 れいむは自分の死を悟ったのか、そんな事を言い出した。 「ゆっくりしていってね おにーさん」 「馬鹿! そんな事言うな!」 くそ…絶対にれいむを死なせてたまるか。 何か、何かいい手は無いのか。 俺はゆっくりに関する情報を頭に巡らせ、れいむを救う方法を考える。 餡子を食べれば復活するんじゃないか。 そう思ってたのに食べることが出来なかった。 今日買ってきた新鮮な餡子。 それをどうにかれいむに取り込ませることができれば… ここで俺は一つの案が頭に浮かんだ。 (食べられないなら俺の手で餡子を入れ替えればいいんじゃないか?) 手術のようなものだ。 れいむの体を切り、中の餡子を俺の買ってきた新鮮な餡子に取り換える。 体内の餡子が大量に無くならなければ死なないらしいからちょっとずつ入れ替えれば大丈夫なはず。 普通は考えられない異常な方法。 ゆっくり虐待サイトに入り浸っていたから思い付いたのかもしれない。 確かこれに似た方法で治ったなんて作品もあった気がする。 問題はこの方法はれいむを傷つける必要があること。 れいむを殴ることすらできなかった俺に出来るだろうか。 そして何より、大事なペットの痛み苦しむ姿を見て途中で躊躇しないだろうか。 「おにぃさん、れいむはもうゆっくりするね…」 「!!」 俺は間違ってた。 傷つける? 痛み苦しむ? 馬鹿言え。れいむが死んだらそれまでじゃないか。 俺に考えられる最後の手はこれだけ。 ならば最善を尽くすしかない。 「ゅ? どこにつれていくの…?」 「れいむ、今助けてやるからな…!」 俺はれいむを風呂場へ持っていく。 さらには買ってきたお菓子とスプーン、それとビニール袋。 後は…包丁だ。 切るのはれいむの後頭部。 髪の毛が邪魔だが手術中にれいむの顔を見なくて済むし、後で傷も目立たない。 「動くなよ?」 「なにをするの? ゆっくりできる?」 「ゆっくりするための手術だ。痛いだろうけど我慢してな」 「いたいの、いやだよ…ゆっくりさせて」 「元気にしてやるからな」 俺は包丁を持ってれいむの後頭部に添える。 後はこの刃を刺し込むだけ。 「ゆ"っ!?」 ズブリと生々しい感触が包丁を持つ手にも伝わる。 「い"だい"よ"っ お"に"い"ざんい"だい"い"い"!」 俺は黙ってれいむの後頭部の皮を縦に切る。 「あ"あ"あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"!!!!」 どれほどの痛みなのか。 今までにないほどの大声をあげるれいむは体をくねらせて逃げようとする。 「動くな。危ない」 「い"だい"よ"おぉ! おにーざんやめでぇ!」 「くっ」 俺はひとまず包丁を置くとれいむを持ち上げた。 そして胡坐に似た体勢で泣き叫ぶれいむを太股で挟んで固定する。 それでもまだもがくれいむだが左手で頭を押さえるとほとんど動けなくなったようだ。 再び包丁を手にする。 今度は縦の切り傷の両端から直角に右へと刃を通す。 ちょうど正方形のうち、右の一辺を除いて皮を切らせた状態だ。 それかられいむの皮を扉を開くように剥がして開いた。 剥がした先には真っ黒なれいむの中身、餡子が詰まっているのが見えた。 あとはこの中身を入れ替えるだけ。 スプーンを手に取り、れいむの餡子を掬いとる。 「ゆぎゅぅぅ!! いぢゃいいいい!!! ゆぎぃぅぅぅぅううう!!!」 れいむは聞いてるこっちも痛くなるぐらい苦しそうな声を出し続けている。 心が締め付けられるようだ。 でもここまで来て止めるわけにはいかない。 スプーンで餡子を掬ってビニール袋に入れていく。 何回か掬ったところで買ってきたお菓子の餡子を代わりに入れる。 「ゆぎゅっ、ゆ"ぶっ、ゆ"っ」 「もうちょっとだから。もうちょっと我慢しろよ」 れいむの中身を総入れ替えするつもりはない。 中心には大事な餡子があるというし、目や歯の周りとなると顔の形に関わってくるので下手に手を出せない。 なのでまずは後頭部や口の奥の餡子を入れ替える。 それだけやれば新鮮な餡子を十分取りこめるはずだ。 そうしたらきっと元気になってくれるはずだ。 俺は作業を続けた。 何度も何度もれいむの頭にスプーンを刺し込んで餡子を取り除く。 その代りに餡子を詰め込んでいく。 「ゆっぐりざぜで…もうゆるじで…おにーざん、ゆっぐりじよう、よ"」 痛覚がマヒしたのか、れいむは悲痛な叫びを上げなくなった。 その代りに何度も何度も同じことを繰り返し口に出している。 「ゆっくりしたい」「ゆるして」「ゆっくりしようよ」 ただそれだけを繰り返す。 しばらくするとそれも言わなくなった。 それでも頭にスプーンを刺し込むと小さく「ゅ"っ」と声を出していた。 きっと叫び疲れたのだろう。 「ごめんな。もうすぐ終わるからな」 買ってきたお菓子の餡子はもう無くなった。 後は後頭部に開いた皮を閉じて傷を塞ぐだけだ。 "小麦粉を水で溶いたもの"がいいらしいが用意していなかったので買ってきた饅頭の皮で代用する。 同じ饅頭なら親和性も高いはずだ。 饅頭の皮を水で濡らして伸ばす。 それから後頭部に出来た切れ込みに塗りつけていく。 これで手術完了だ。 「終わったぞれいむ。痛くしてごめんな」 太股の間かられいむを解放して話しかける。だが反応は無い。 怒って無視してる? いや怒ってるなられいむの場合、感情のままに俺に怒りつけるはず。 じゃあ寝てるのかな。 時計を見る限りだと30分近く苦痛を味わったことになるのだ。 それは体力をかなり消耗しただろう。 俺はれいむを持ち上げてこちらに顔を向けさせる。 寝顔のれいむを想像していた俺はれいむの顔を見てゾッとした。 れいむは目を開いていた。しかし瞳に輝きがない。 目の前で手を振るが、その瞳は動かなかった。 「嘘だろ…」 まさか死ん…だ…? いや、そんなはずがあってたまるか。 「れいむ、おいれいむ! 返事しろよ…!」 「………」 反応はない。 れいむは瞬きをしない。 口も一文字に閉じたままだ。 プニプニの頬は弾力を増して少し硬い。 髪はバサバサ。 そして何より、れいむの体は冷たかった。 「違う。 違う違う違う!!!」 れいむは死んじゃいない。 死んでるわけがない。 だってゆっくりがこの程度で死ぬわけないじゃないか。 「…そうだよ違うんだ。 何を早とちりしてるんだ俺は」 れいむはきっと一時的に仮死してるだけなんだ。 新品の餡子を取り込んばかりだからこうなってるだけなんだろう。 目を覚ませばきっと元気になって笑ってくれる。 だからその時まで安静に寝かせてやろう。 俺はれいむを段ボールで作った寝床に運んで寝かせてやる。 「ゆっくりしていってね、れいむ」 れいむが目を覚ましたらまず痛い思いさせたことを謝ろう。 それからたくさんの甘いお菓子をご馳走する。 後はれいむが飽きるまで一緒に遊ぼう。 とにかく今日は疲れた。 まだ日も暮れてないけど寝よう。 俺はれいむとの幸せな日々を思い描いて眠りについた。 それから一年。 朝。 電車の時間が迫ってる。 急いで支度して俺はれいむに呼びかける。 「今日はちょっと遅くなるからな。 だからお昼ごはんの横に夕飯も置いておいたぞ」 れいむはいつもの表情で俺の言葉を聞く。 「じゃ、帰ったら一緒に遊ぼうな。 何して遊ぶか考えておいてくれよ」 れいむは表情を変えない。 冷蔵庫の中のれいむは一年経った今でも同じ表情のままだった。 いや、何度か腐った部分は新品と取り換えているからその度に多少変わっているが。 「それじゃあ、行ってくるな。 良い子に留守番してろよ」 「………」 俺は冷凍庫を閉じると後は無言で家を出る。 あれから結局れいむは動き出すことはなかった。 元々そうであったかのようにピクリとも動かない。 でも俺は毎日声をかけ続ける。 いつかきっと返事をしてくれる。 そう信じて。 れいむは決して目を覚まさない。 ただの饅頭が喋ったり動いたりするはずがないのだ。 これはれいむをペットにした青年にもれいむ自身も分からなかったことだが、 れいむの病気は通常の病気とは違った。 幻想の生物であるれいむは現実の物を取り込み過ぎた。 れいむの食べたお菓子や飲んだジュースはれいむの中で餡子へと変えられる。 それはれいむの元々内包していた幻想の餡子ではなく、現実の餡子。 現実の物を食べれば食べるほど現実の餡子は幻想の餡子と入れ替わった。 徐々に体内に溜まっていく現実という名の毒。 それこそがれいむを衰弱させた原因だった。 れいむは食事が不要なのではなく、食事をしてはいけなかったのだ。 体が現実の饅頭と化していったれいむはまず身体能力が削られた。 そのまま力を失っていったれいむは次に物を食べることが出来なくなった。 青年はそこで何を思ったのか、れいむに現実の餡子を詰め込んだ。 青年はその事実を知らない。知りようもない。 だがれいむを衰弱させたのも、止めを刺したのも間違いなく彼だった。 幻想と現実の境界。 れいむはまさにその境目にいた。 だが現実側に傾いたれいむは現実の法則に従って物言わぬ饅頭となった。 ただそれだけのこと。 「れいむ、今日は猫じゃらしで遊ぼうな。 目の前にあるからすぐに捕まえられるぞ。 捕まえたらナデナデしてやるからな」 「………」 「他の遊びがいいのか。じゃあボールで遊ぶか? なあ、れいむ……」 終 by 赤福 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1742.html
※ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくりの続編です。少しだけふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編)も関係あります。 ※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※ずる賢いゆっくり注意 ※あとがきに新企画があります。 ああれいむ。君はなんて素晴らしいんだ!! 「しんぐるまざー」だの「あまあまよこすんだぜ」だの「とかいは」だのぬかす他のゆっくりとは別次元の存在。 まさにゆっくりのなかのゆっくりだよ。 そんな君だからこそ受け取って欲しい。この「ダイヤモンドバッジ」を。 ゆっくり Change the World(出題編) 作、長月 「ゆぜぇ・・・ゆぜぇ・・・ゆう。」 のーぶるれいむは疲れていた。ゴミ捨て場でもう少しで潰されそうになったのを全力で逃げてきたのだから当然だ。 あのゴミ捨て場で男はレンガを振り下ろそうとした瞬間ぎっくり腰になってしまった。 痛がる男の隙をつきなんとか逃走に成功したれいむ。あの状況で無傷で生還できたのは奇跡に近い。 とはいえこの一件はれいむの心に強い恐怖を残した。 もうあんないつ殺されるかもしれない恐ろしい場所には帰りたくない。 しかし他に帰る場所などありはしないのだ。 くそ。なぜこんなことになった。なぜ。 れいむは憤った。 全ては見る目のないじじいどもと・・・・あのテレビに出ていたくそれいむのせいだ。 あんな無能なやつが卑怯な方法でれいむのいるべきゆっくりプレイスにいるせいでれいむがこんな目にあっているのだ。 実際は100%自業自得でテレビに出演していたれいむは全く関係ないのだが、頭に血の上ったれいむは気づかない。 そう全てはあのクソ無能なれいむがわるいのだ。あいつさえいなければ・・・・・え? れいむは目を疑った。 テレビのれいむが自分の前にいるからだ。こちらに気づいてないらしくピョンピョンと近くの森へ跳ねていく。 見間違いかと思ったがあのりぼん、あのバッジ。どうみてもあのセレブれいむだ。 のーぶるれいむははっと思い出した。今まで夢中で逃げていて気づかなかったがここはあのテレビでやっていたあのお屋敷だ。 見渡す限りの広大な庭にゆっくりできそうなゆっくり用遊具の数々。そしてきれいで大きなお城のようなお屋敷。 くそ!!! 気か付けばれいむは、セレブれいむを追っていた。 れいむのいるべきゆっくりプレイスを奪ったあのクソ饅頭め。ぐちゃぐちゃに踏み潰してくれる!! そう思いながらセレブれいむを尾行する。 隙を突いて一撃で殺してやる。あの研究所で殺したクズどもと同じように。 セレブれいむを追ううち、れいむは人気のない野原へとはいってしまった。 れいむは物陰で様子を伺う。 誰かを待っているらしく野原の真ん中にある木の切り株に腰掛けているセレブれいむ。 殺るなら今だ。 死角に回り込もうとしたとき、向こう側で物音がした。 どうやら待ち合わせの相手が来たらしい。いったん襲撃はやめだ。 しかし待ち合わせ相手は誰なのだろう?飼いゆっくりがこんな森の奥で待ち合わせなんて。 次の瞬間れいむは唖然とした。 草むらから出てきたのはれてぃだった。捕食種のれてぃがなぜれいむと待ち合わせを? 理解不能のれいむを尻目に、れてぃのもとにうれしそうに跳ねていくセレブれいむ。 やさしい飼い主にお屋敷で蝶よ花よと育てられていたので捕食種を、いやこの世に悪意があることを知らなかったのだ。 「ゆっくりしてってね!!」と無邪気にあいさつする。 そんなセレブれいむをれてぃは・・・長い舌で捕らえると一口で食べてしまった。 れてぃはしばらく反芻するようにもごもごと口を動かしたあと 「クズ(通常種)の分際でいい暮らししてるからよ。」 と言い、プッとなにか吐き出し森の奥へと消えていった。 このれてぃは世間知らずの飼いゆっくりを言葉巧みに誘い出し、人目のない場所で襲い捕食するゆっくりだったのだ。 そしてれいむはガタガタと震えてその場を動けずにいた。 数分後、れてぃが戻ってこないのを確認するとれいむは動き出した。 れてぃが吐き出した何かに。 正直あんよの震えはまだ止まっておらず、今すぐでもこの場を逃げ出したかったがそうもいかない。 もしあれが自分の予想したものであれば。草をかき分け「何か」を探すと・・・それはあった。 やはり。れいむはニヤリと笑った。 それはあのセレブれいむのりぼんとバッジ。 これで世界を・・・世界を変えることができる。 この薄汚れた野良の世界から華やかなセレブ飼いゆっくりの世界へ。 このりぼんとバッジさえあれば・・・ そう変えることができるのだ。 こののーぶるれいむ様にふさわしい世界へと。 れいむは自分の猫にボロボロにされたりぼんをもみあげではずすと、セレブれいむのりぼんとバッジをくわえその場を立ち去った。 そして2週間がたった。 セレブれいむの飼われていた屋敷では 「れいむは・・・れいむはまだ見つからないのか・・・」 「れいむ様は全力をもって捜索しております、旦那さま。今しばらくお待ちを。」 「ああ・・・れいむ。生きていておくれ。私の愛しいれいむ・・・」 がっくりと意気消沈する男。この男がセレブれいむの飼い主でこの館の主でもある。 防犯カメラの映像によるとれいむは柵にあいていた小さな穴から外へ抜け出したらしいが、そこから先の足取りがどうしてもつかめないでいた。 探偵を雇いこのあたり一帯を聞き込みを行い、懸賞金付きでポスターも貼ったがまったくれいむに関する情報は出てこなかった。 聞けばセレブのゆっくりが神隠しのように行方不明になる事件が今年になり何件もおこっているらしい。 現場には、りぼんや帽子などゆっくりのお飾りのみ残され未だ戻ってきたゆっくりは居ないという。 もしかしたらうちのれいむもその事件にまきこまれて・・・ 「旦那さまの心中お察しいたします。れいむ様は1000万以上する高価なゆっくりでしたしなあ。」 「ちがうぞ時田。金額の問題ではない。あのれいむこそが私の理想だったのだ。」 時田とよばれた執事も男と共にうなだれる。そんな重苦しい空気が漂う中 「失礼します!」 使用人の一人が音を立てて入ってきた。 「何じゃ騒々しい!!旦那さまに無礼であろう!!」 「申し訳ございません。ですがれいむ様が・・・」 「何!!見つかったのか。れいむが!!」 がばっと使用人にがぶりよる男。 「れいむは・・・れいむは無事なのか!?」 「はいご無事です。ただ衰弱が激しいらしく今は市のゆっくり病院に搬送されています。」 「よしわかった。時田、車を出せ。ゆっくり病院へ大至急だ。」 「かしこまりました。」 男たちは慌ただしく部屋を後にした。 「ゆふふ・・・うまくいったよ。」 ゆっくり用の治療ゲージの中でしてやったりと微笑むのーぶるれいむ。 2週間の間どうすればあの屋敷の飼いゆっくりになれるかずっと考えていた。 このままセレブれいむのりぼんを自分につけて屋敷に行くという手もあったが長い野良生活で汚れきったこの体ではすぐに別ゆっくりだとばれてしまう。 それに自分はお屋敷のことを何も知らないのだ。うっかりボロを出してそのまま潰されかねない。 だからこそれいむはあえて屋敷に行かず、道路で行き倒れたふりをしたのだ。何者かに暴行されたかのように偽装して。 これなら薄汚れた体も暴行されたときについた汚れと思われ不自然でなくなる。 そして行き倒れたふりをしていれば、いずれ誰かが発見し保護してもらえる。 なぜなら町中にれいむを探すポスターが貼ってあるのだから。しかも懸賞金付きで。 人間にはゆっくりの区別などつかないからつけているバッジこそが個体の識別方法となる。 つまりバッジをつけている限りれいむがあのセレブれいむなのだ。 問題はもうひとつの方だが、それにもちゃんと秘策を考えている。大丈夫だ。やれる。 勝利は目の前だ。 れいむが色々考えていると廊下が騒がしくなっていた。 どうやらセレブれいむの飼い主が到着したらしい。れいむに緊張がはしる。 「れいむ。無事だったか!?」 そう言いながら男はれいむのゲージに駆け寄る。さあここからがのーぶるれいむ様の演技力の見せ所だ。 れいむは怯えたように演技しながら 「ゆう・・・おじさんだれ?れいむをしっているひと?」 「れ・・・れいむ!?」 「それともれいむをいじめるひと?やめてね。れいむにひどいことしないでね。」 もみあげのピコピコする部分で顔を覆いイヤイヤと首を振り怖がる演技を続ける。 愕然とする男にゆっくり医師が説明する。 「どうやらお宅のれいむちゃん記憶をなくしてしまわれたみたいなんです。なにを聞いてもわからない、覚えてないというばかりで。 どうやら暴行を受けたショックで記憶喪失になったようですね。」 「そんな、別のゆっくりという可能性は!?」 「残念ながらありえません。もし無理やりバッジやりぼんをとってほかのゆっくりがつけた場合、ダイヤモンドバッジの盗難防止センサーが反応してゆっくりセキュリティやあなたの元へ連絡があるはずです。確認しましたがそのような事実はありませんでした。」 そう。今回れいむが一番幸運だったのはそこだった。実際はれてぃの胃液でセレブれいむが溶かされた為、ダイヤモンドバッジのセンサーが反応しなかったわけだがそのことは男も医師も知ることができない。 「ああ・・・そんな・・・れいむ・・・ああ・・・」 男はショックだったのかその場でひざをつき泣き出してしまった。 その様子を見てれいむは内心ほくそえんだ。 うまくいった、と。 しかしれいむは気づかなかった。 自分が致命的なミスを犯していることを。 (解答編へつづく) 補足説明 ダイヤモンドバッジ セレブのゆっくりのみがつける事が許されるバッジ。プラチナやゴールドと違い試験を受ける必要はない。 ダイヤモンドをはじめ様々な技巧をこらした飾りがついておりそれらだけでも100万以上する。 あとがき 前回はアンケートにご協力いただきまことにありがとうございます。アンケートの結果一番リクエストが多かったのーぶるれいむの話「ゆっくり Change the World」をかかせていただきました。 ところでなぜタイトルに出題編と書いてあるか疑問に思われた方も多いでしょう。 ズバリ出題とは今回のSSの最後に書いてある 「のーぶるれいむの犯した致命的なミスとはなにか?」 を皆さんに当てていただこうというものです。感想と一緒に自分なりの推理をコメント欄に書いていただければ幸いです。 解答のヒントとしては なぜセレブれいむは1000万以上という法外な値段だったのか。(通常のれいむ種は安いので1000~1500円程度) 飼い主の男はなぜそこまでれいむに固執するのか。 またこの話の前作「選ばれしゆっくり」の中にもヒントが隠されています。もう一度読み返して見てください。 見事正解された方の中から1名様に長月のSS内容をリクエストする権利を差し上げます。リクエストのある方は感想・推理と共にコメントに書いてください。正解者でなくても次回以降の参考にさせていただきます。 リクエストの例 余り書かれないゲスさなえのSSを見てみたい。 秋姉妹のゆっくりを書いて欲しい。 「VS最強のゆっくり 史上最低の戦い」のケツ振りれいむのその後が知りたい。 星蓮船種のSSが読みたい など たくさんのコメントお待ちしています。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 ふたば系ゆっくりいじめ 208 ゆっくり見ていってね ふたば系ゆっくりいじめ 218 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 ふたば系ゆっくりいじめ 227 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い ふたば系ゆっくりいじめ 247 夢と現実のはざまで ふたば系ゆっくりいじめ 264 あるまりさの一生 ふたば系ゆっくりいじめ 298 ゆっくりを拾ってきた
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3427.html
書きたかった事 本スレ91の 220さんの書き込み 『ゆっくりが物覚え悪いのは都合の悪い記憶を餡子と一緒に吐くからという設定があったよな。』 からインスパイアされて 若干汚いのが注意点、嘔吐物的な意味で 作者 チェンマガツ 男はその手にゆっくりれいむを抱いている。 成体サイズのそれは近くの森で甘い言葉で誘って着いてきた普通の野良れいむだ。 男の家にはすでにゆっくりまりさが居るのだがそろそろ番となるゆっくりも欲しかろうと思い拾ってきたのだ。 わざわざゆっくり屋で買うのも馬鹿らしい。 気に入らなければ潰して、まりさには別のれいむをあてがえばいいのだ。 そんな男の考えを知らないれいむはといえばご機嫌上々である。 一度だけだが森の中で出会った人間さんから舌がとろけそうなほど美味しい食べ物をもらったことがあった。 その思い出だけで人間への警戒感は全くない。その上かっこいいまりさと会えるというのだ。 これ以上幸せな状況は無い、というわけだ。 「ただいまー」 「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい!!」 帰宅すると玄関まで飼いまりさが跳ねてきてきっちりと挨拶をした。 お兄さんはかなり厳しい性格でこれまた野良であったまりさを一から叩き直して立派な飼いまりさに仕上げていた。 「ゆゆっ、おにいさんそのれいむどうしたんだぜ」 「ああ、お前もそろそろ番になりたいだろうと思って連れてきてやったんだ」 そう言ってまりさの目の前にれいむを降ろしてやる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「まりさはまりさだぜ」 「れいむはれいむだよ!!」 「れいむはゆっくりできるれいむだぜ?」 「とてもゆっくりできるよ!!」 「それならおにいさんのおうちでゆっくりするといいぜ」 「う、うん……。まりさのおうちじゃないの?」 「だめだぜれいむ、ここはおにいさんのおうちだぜ。まりさはここでゆっくりさせてもらってるんだぜ」 「れいむもゆっくりできるの?」 「れいむもちゃんとゆっくりさせてやるさ。その代わりちゃんと言う事聞いて貰うぞ」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいしたよ!! れいむもゆっくりするよ!!」 「よし。まりさ、れいむを部屋に案内してやれ」 「ゆっくりわかったよおにいさん!! れいむこっちにくるんだぜ」 「ゆゆ!!」 玄関先で一通りの自己紹介を済ませたまりさとれいむは部屋の奥へと消えていった。 まりさとの会話からもそれほど性根悪いれいむでなさそうなので男はこのまま様子を見る事にした。 まりさの為に用意された部屋は上下に分かれた押し入れの下段だった。 それでも並のゆっくりには十分すぎるほどのスペースである。 れいむはもちろんそこが押し入れと理解するわけがないのでまりさはとても広い巣を持っているゆっくりだと思った。 巣の広さもゆっくりのステータスの一つであるためれいむがまりさを気に入るのは早かった。 「まりさのすはとってもひろくてゆっくりできるね!!」 「ゆゆ~ん、あんまりほめるんじゃないぜ」 さらに飼いゆっくりであれば当然食事面で野生のゆっくりと差がついている。 まりさ本人もゆっくりからしたら美ゆっくりの部類に入るわけでれいむはその点でもまりさをお気に召したようだ。 逆にまりさの方は正直別のゆっくりならなんでもよかった、今は後悔してない状態である。 程良い関係であるならこれからの生活に支障はない、男はそう思った。 「もうお昼だしご飯にしようか」 「れいむにごはんはやくちょうだいね!!」 「れいむ、ゆっくりまってたらおにいさんはもってきてくれるんだぜ」 「ゆゆっ!! まりさはすごいんだね!!」 「それはちがうぜれいむ……」 まりさの実にまずそうな表情を男は読み取る。 れいむはまりさの言葉をまりさの為に男がご飯を持ってきてくれていると完全に誤解している。 まりさが伝えたかったのはご飯を催促することなく大人しくしていたらようやくご飯をもらえるということだ。 男は所詮野生のゆっくりだと思って甘くみたがまりさからすれば冷や汗ですむ話ではない。 「れいむ、うちでは静かにしている奴にゆっくりできるご飯を持ってくることにしている、わかったか?」 「どうしてそんなこというの? さっさとごはんもってきてね!!」 「まあそのうち分かるよ」 意味深な言葉を残して男は去っていった。れいむはそんなことは一切気にしなかった。 その後男は二匹に同じ量、同じ見た目のご飯を持ってきてまた部屋をあとにした。 二匹がご飯を食べている間にれいむを洗う準備をするためだ。 これから一緒に暮らすためにはあまりに汚らしい肌やリボンでは都合が悪いのだ。 ぬるま湯にボディーソープを入れてよく掻き混ぜると即席泡風呂が完成した。 そのころ押し入れの二匹は仲良くご飯を食べていた。 まりさはゆっくりらしいがつがつ食べるスタイルをとうに捨て去り、器から舌で少しずつ巻き取りながら綺麗に食べている。 一方のれいむは見事にご飯を食べ散らかしていた。 飼い慣らされたまりさから見れば卒倒物である。最近では忘れていた男の怒声が飛んでくるのが目に見えて震え上がった。 「れいむ、ごはんはきれいにたべるんだぜ。すのなかもきれいにしないとだめだぜ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪ なにかいったまりさ?」 「いや、なんでもないぜ……」 まりさは一応忠告はしたとばかりにれいむの食べ様に知らない振りを決め込む。 そして男が戻ってくると案の定れいむに雷が落ちる。 と思われたが男の意外な反応にまりさは驚くこととなる。 「れいむ、ごはんをたべるときはきれいにな。すがきたなくなってるぞ」 「ゆゆっ、れいむのせいじゃないよ!!」 「きれいにしないとゆっくりできなくなるぞ?」 「れいむはしらないっていってるでしょ!?」 「そうかまあいい。れいむおいでお前を綺麗にしてやろう」 「ほんとう!? ゆっくりはやくつれてってね!!」 「はいはい」 まりさの開いた口がふさがらない。何故だ、自分の時はあんなに優しくされた覚えはないのだがといったところだろう。 れいむを担いで男が向かったのはれいむを洗う準備をした風呂場である。 水面を直接見せることなく洗う事の出来る泡風呂はじつに便利だと男は常々思う。 ゆっくりがどうしてこうも水に対して恐怖心を抱いているか男は全く理解していないからだ。 最初にまりさを洗おうとしたときの騒動は今でも忘れられないほどの惨事となった。 「あわあわさんがとてもゆっくりできるね」 「そうだな」 男はれいむとの会話に適当に相槌を打ちながら細部まで綺麗に磨きあげていく。 飾りを外すのは拒まれたのでしかたなく頭に付けたままごしごしと洗う。 れいむの顔はマッサージをするように洗うと、見た目が気持ち悪い気持ちよさそうな表情をした。 風呂上がりにドライヤーも厳禁であることも経験済みだ。最初はあの音がゆっくりできないらしい。まりさは今では逆に病みつきらしいが。 面倒だがタオルできちんとれいむの水分を拭き取ることにした。 風呂場を出た頃にはれいむもそこいらの飼いゆっくりのような綺麗な肌になっていた。 田舎娘でもきちんと化粧とおしゃれな洋服を着せれば都会っ子なのだ。 まりさの待つ押し入れにれいむを戻すとまりさのれいむを見る目が変わった。 れいむがまりさに抱いていた思いに概ね近づいたようだ。つまりは相思相愛だ。 薄汚いれいむに何の感情も抱かなかったまりさもなかなか現金な奴である。 家にれいむが来てまだ一度もしていなかったすーりすーりを急にし始めたところからもわかる。れいむも満更ではないようだ。 「この様子なら心配はないな」 そんなまりさ達の行動におとこは苦笑いをしながら水受けに新しくボトルから水を注ぎ部屋を出て行った。 その日は男は晩ご飯と水の補給をしてあとはゆっくり達に関与しなかった。 今まではまりさの相手をしてやる必要があったがこれからはそれをれいむに任せればいいのだ。 れいむの躾けに関してもまりさの行動を見ているうちにれいむがそれを真似するようになるだろうと考えた。 その考えをしらないまりさは男の怒りがいつれいむに向かうか恐ろしくて仕方がなかった。 これまでの経験からすればもうすでに激しい暴行があってもおかしくないからだ。 今度れいむが粗相を起こせばなんとしてもれいむを庇わなくてはならない。 綺麗になったれいむにまりさの思いはそれほどにまで募っていたのだ。 しかし就寝直前に事件は発生した。 「ばでぃざ……うっぷ、ぎもぢわるぃおろろろろろろろろ」 「ゆぎゃあああああでいぶどうじだのおおおお!!」 れいむが突然餡子を嘔吐したのだ。 れいむは生粋の野生生まれ野生育ちだった。 その為実に人工物に対しての耐性がこれでもかというほどなかったのだ。 男が餌に混ぜていた少量の塩やカルシウムに。体を洗ったときに口に入れたあわあわこと洗剤に。そして水分補給に飲んだ硬水のミネラルウォーターに。 すべてがれいむの体調を崩す元となりついに嘔吐してしまったのだ。 だがまりさはれいむの体調の心配はまったく気にしてなかった。 またれいむが部屋を汚したのだ。 今度こそ男に見つかったられいむは潰されてしまいかねない。こんな美ゆっくりのれいむがいなくなるのはまりさは勘弁ならなかった。 そこでまりさが取った咄嗟の行動はれいむの嘔吐物を食べて証拠隠滅することだった。 基本的にゆっくりの体から出た餡子はそのゆっくりにとって汚いものである。 しかし背に腹は代えられないとばかりにれいむの嘔吐物を一気食いする。 ちびちび食べてはこちらも貰いゲロしてしまいかねないというまりさの判断だ。 「どうしたまりさ。悲鳴したような気がしたが」 なんとかれいむのものを食べ終えた頃男が押し入れの様子を覗きに来た。 「なんでもないよおにいさん!! ゆっくりおやすみなさい!!」 「ああ、おやすみ」 不審そうな表情で男は襖を閉めて、さっさと寝るために自室に戻っていった。 なんとか誤魔化せたまりさは安堵の溜め息をつく。ふとれいむのほうを見ると気を失うように眠りについてしまったようである。 その様子をみてまりさをれいむに頬擦りをして自分も眠りにつくことにした。 れいむがまりさの所にやってきて二日目の朝がやってきた。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 「れいむはおねぼうさんだね!! きのうれいむはまりさのところにおにいさんときたんだぜ」 そんなれいむの姿を見て微笑んでいたまりさの表情が次の瞬間凍り付く。 「まりさはだれなの!? れいむにゆっくりちかよらないでね!! れいむおうちにかえる!!」 「どうしたのれいむ!! まりさはまりさだよ、わすれたの?」 「れいむはまりさのことなんてしらないよ!! ゆえーん、でぐちはどこなのー!!」 一体全体れいむはどうしてしまったのだろう。昨日あんなに仲良くなったのにすーりすーりしたのにそれも忘れてしまったのか。 「おにいさんもわすれたの? ごはんをもってきてくれたにんげんさんだよ?」 するとれいむの目が変わった。まりさはようやく思い出してくれたのだと安心した。 「すごいねまりさ!! まりさはにんげんさんよりえらいんだね!!」 しかしれいむの発した言葉は昨日の焼き直しのようだった。 「ちがうんだぜれいむ……」 昨日晩ご飯のときに説明していたことも忘れたのだろうか。もしかすると理解できてなかったのかもしれないそうまりさは思う事にした。 それからすぐ男が朝ご飯を持ってきて水の補給をして、挨拶をしただけであまり会話もすることなく出て行った。 汚らしくご飯を食べたれいむをまりさは注意して、すーりすーりしたりかけっこしたり男とゆっくりとの関係について話をして昼ご飯がきた。 朝同様男はすぐに出て行った。これからは男とではなくてれいむと仲良くするんだとまりさは言われた。まりさはれいむにこの家でのルールを教えていった。そのうちに晩ご飯がきた。 水の補給も終え部屋を出て行こうとする男にまりさとれいむは仲良くおやすみなさいと言った。 男は満面の笑みでそれに返して部屋を後にした。 そして就寝直前れいむは再び嘔吐をした。 体に合わないサプリメントと硬水中のミネラルの影響によるものである。 まりさも再びそれを何とか口にする。 出来れば食べたくないのだが男に知られるわけにはいかないため、食べる以外に処分方法がないのだ。 そして三日目の朝が来た。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 れいむは昨日と全く同じ台詞を吐いた。 あとがき 記憶継承な話題になってたけど忘れるのも面白そうかなと思ってみた。 嘔吐した餡子を食べると記憶継承するのはあくまでも同種のゆっくりでそれ以外は餡子に消化しちゃうんじゃないかと。 ありすのカスタードをれいむが食べても駄目そうな雰囲気で。 れいむとまりさの餡子も似ているようで少し違うんだよきっと。 というのは勝手な妄想なのでさらっと流してください(・3・)~♪
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2392.html
ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3765.html
「ほらっ、もうおうち宣言なんてするなよ」 とある民家からまるでゴミのように丸い物体が三つ投げ捨てられた。 それはゆっくりの一家だった。投げ捨てられたのは成体れいむとまりさの両親と、一匹の子れいむ。 つい数十分前までどこにでも在るありふれた存在であったが、今は違う。 それはゆっくり達の状態。 なんと面妖か。まず親まりさには顔がなかった。当然生まれつきではない。先ほどおうち宣言をした民家の主によって改造されたのだ。 目も口もくりぬかれた上で餡子と小麦粉の皮で補修され、のっぺらぼうのようになってしまったのだ。このまりさはもう何も見ることは出来ぬし、食べることも喋ることも出来ない。 更には底部も火傷を負っていた。二度と動けぬほど炭にはなっていないが、僅かに這うことしか出来ずに自然治癒も不可能なまでには焼かれていた。 そして子れいむもまりさと同じような状態だった 目も口もなくのっぺらぼう、更にはまりさと違って髪もリボンも無い。ただ幸いだったのは底部には何もされておらず自力で動ける点か。 そしてこの中で一番まともな状態だったのは親れいむだった。 民家の主によって全身に打撲を負ってはいるが、それも生きる上には何も支障はなく、ゆっくりの自然治癒能力で治る程度だ。 「ゆぐっ……えぐっ、ばりざぁ……」 れいむは全身を殴られた痛みをこらえながらも、ずりずりとのっぺらぼう状態のまりさにすり寄った。 れいむはまりさがこんな状態にさせられた地獄を目の前で見てしまった。生きたまま目をくりぬかれて、面影もないほど顔を改造されるというこの世のものとは思えぬ光景を見たれいむは激しい恐怖を覚えた。 その上で恐怖だけでなく、れいむを散々痛めつけた人間から少しでも逃げるようにと、れいむはまりさを連れて逃げようとした。 まりさはもう自力では歩けない。だから自分が連れていくしかない。 髪を引っ張ってずーりずーり。まりさも子れいむも音を聞くことは出来る。だかられいむがかけた「ゆっくりかえろう」という声も聞こえていたはずだ。 子れいむはれいむがそう声をかけた瞬間、何かから逃げるように(いや、実際に人間から逃げている)全力で、あさっての方向に跳ねはじめたので、慌ててれいむが捕まえて親まりさの帽子の中に入れた。 しばらくそこでゆっくりしててね、と言ったら傍らに親まりさのぬくもりを感じて安心したのかおとなしくなった。 今やまりさも子れいむも、かつての姿は似ても似つかない。身内以外が、いや身内でも改造される場面を見てなければ個の判別がつかないだろう。 しかし、それでもれいむにとってはかけがえの無い家族なのだ。れいむは自身の体力を振り絞って、今や二度と治らぬケガを負った家族を、かつての巣へと引っ張っていった。 そして、治らぬケガを負っていたのはまりさと子れいむだけでは無かった。れいむもまた、心の傷という治らぬものを負っていた。 翌朝。おうち宣言する前の、子供が生まれて手狭に感じるようになった巣でれいむは目覚めた。 そこは木の根のあたりに出来た、地面の穴だった。れいむはもぞもぞもと起きて、「ゆっくりおきるよ」と小さく呟いた。 そして、家族へと視線を移す。そこにあったモノを見て、昨日のことは夢では無かったのだと今再び再確認し、落ち込んだ。 傍らにいるのは、もはや起きているのか寝ているのかも分からない、表情を浮かべることも、何かを美味しく食べることも、優しい言葉も発することが出来なくなった、最愛の伴侶の最愛の我が子の姿。 れいむは嗚咽をこらえながらも、静かに涙を零した。れいむは、自分一人で家族を支えなければならない。もはや何かを聞くことしか出来ず、何をすることも何かも伝えることも出来なくなった家族を。 こんな存在、当然野生ではお荷物以外の何物でもない。 しかしながら、れいむにとってまりさと子れいむは、お荷物だからといって切り捨てることが出来る存在ではなかった。 「まりさ、おちびちゃん、ゆっくりまっててね」 れいむはそう二匹にそう囁くと、巣を飛び出た。エサを探しに行ったのだ。 れいむが身ごもってからは毎日まりさがやっていた仕事。それを今日からはれいむがしなければならない。 出来る、出来るはずだ。れいむはそう言い聞かせて、森の中を駆けまわって朝食を集めた。 だがれいむは、あまりにも現実感のない事だから忘れていた。 もう、まりさと子れいむに食事は必要無いのだと。 「ゆ゛ぅ……」 れいむは困惑した。嘆いた。再び泣いた。 もう二度と「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~」が出来ぬまりさと子れいむ。そしてその現実を再び目の当たりにしてしまった。 子れいむは動けるはずだが、危ないからとれいむが再三に渡って動かぬように言っておいた。だから、子れいむは動かぬ。自身もまた、何も見えない恐怖に苛まれているのだから。 れいむはのっぺらぼうの伴侶と我が子の前で食事をした。二匹は食事が出来ぬとも、れいむはしなければならないからだ。 れいむは昨日暴行によって負ったケガと、体力を回復させるために、久しぶりに自分が集めた食事を口に運ぶ。余分に集めてしまった、家族の分も。 「む~しゃ、む~しゃ……」 その口から「しあわせ~」が出ることなど、二度とない。 そのまた次の日。れいむの生活サイクルは昨日の時点で確立された。 れいむが巣の外へ出るのは一日三回のエサ集め。それも一匹分のみ。 あとはずっと、巣にこもってまりさと子れいむの相手。まりさも子れいむも、当然ろくな反応も示さない。 だがれいむは、相手に伝わってるはずと思い、す~りす~りをしたり、歌を歌ったりした。 そんなれいむに、子れいむは光がない恐怖から少しだけ小さく跳ねて、まりさはろくに動かせない体を身じろぎさせて反応してくれた。 れいむは、それだけで嬉しかった。 そんな二日目。れいむが昼食を食べ終えた後の、まりさと子れいむへのお歌タイムをしている時だった。 「やぁ、れいむちゃん元気かな?」 この一家を、こんな地獄へと叩き落した張本人が、巣に現れた。 れいむは絶叫した。絶叫し、泣き叫び、狭い巣の奥へと引っ込んだ。 そのれいむの叫び声に混乱し、それまで動かなかった子れいむがにわかに跳ね始めた。顔も髪もなく、ただの饅頭と化したそれは、方向もわからず逃げようとした。 それは偶然出口へと向かっており、人間に巣の中へと殴り返されて、その後ぐったりとして動かなくなった。 その間もずっとれいむは、半狂乱に陥ったまま巣の奥に逃げていた。それ以上奥にはいけないというのに、更に奥に、より遠くへ逃げようと。 「ゆ゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! だずげで、だれがだづげぇぇぇぇぇ!!! ゆっぐりでぎないおにいざんがいるよ゛ぉぉぉぉぉぉ!!! いやだっ、でいぶゆっぐじじだい゛ぃぃぃぃぃぃ!!! だじゅげでぇぇぇぇぇぇ!!! いやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 その叫び声を、まりさも聞いていたはずだった。 だが、まりさにはどうすることも出来ない。れいむを慰めることも、人間に立ち向かうことも、逃げることも涙することも。 ただぷるぷるとわずかに震えるのみの饅頭として、そこにあることしか出来なかった。 しかし、しかしだ。それでもまりさは愛するれいむの泣き声を聞いて、ずりずりとみっともなく這って、人間の声を頼りに立ち向かおうとした。 そんなまりさを、人間は殴り飛ばした。殴って、殴って、殴って、なおもずりずりと這ってくるまりさを喜々として殴り飛ばした。 その後もれいむは、人間が立ち去ってれいむに見つからなず巣を観察出来るポイントに行くまでずっと泣き喚いたままだった。 そして一度泣きやんだ後、巣の中で横田たわるボロボロのまりさと倒れている子れいむを見てまた泣いたのだった。 ある日れいむが巣に帰ると、そこにはボロボロになったまりさと子れいむがいた。 人間によって虐待された傷ではない。明らかにそれ以外の者による傷だった。 のっぺらぼうのただの饅頭が二個、巣の中に転がっていた。至る所ケガだらけ。餡子もわずかに漏れていた。 まりさは自身で起き上がることも出来ない。子れいむは起き上がっていてもただの髪も顔もないので、分からない。 「ばりざぁぁぁぁぁぁ!!! おぢびぢゃぁぁぁぁぁぁん!!! どぼじだのぉぉぉぉぉぉ!!!」 れいむは泣いて二個に駆け寄った。涙をボロボロと流して、すりすりと頬をすり合わせる。 目も見えない二匹でも、これなられいむが傍にいることが分かるだろう。もっとも、二匹がそれを伝える術は殆どないのだが。 かろじて、子れいむが拙い動きですりすりを返したぐらいだった。 それだけだったが、れいむは泣いて喜んだ。光を失ってからピンチの時以外ろくに動こうとしなかった子れいむが、動いてれいむにすりすりを返してくれたのだから。 傷ついた体にも関わらず。それで、嬉しくないはずがない。 ちなみに、二匹をこんな目にあわせたのはとある野良まりさだった。 一人立ちして自分の巣を探していた野良まりさは、ちょうどよくのっぺらぼう饅頭が留守番していた巣を見つけた。 当然そこでおうち宣言をしようとしたが、そこにいたのは気味の悪い饅頭だった。 その饅頭を野良まりさはゆっくり出来ないものとして暴行をくわえた。 散々体当たりをしたり踏みつけたりした挙句、ここはゆっくり出来ないといって巣を立ち去って行ったのだ。 なお、その野良まりさは現在、虐待を行った一家のその後を観察している人間に捕まって玩具兼おやつになっていた。 頭をくりぬかれて中の餡子を攪拌されて、小刻みに痙攣している。 人間は野良まりさの餡子を一割ほど食べたところで、「飽きた」と言って放り捨てた。 命である餡子を削り取られ、頭を切り取られた野良まりさはその場でずっと痙攣したまま動かず、そのままアリのエサとなった。 日に日にまりさと子れいむは衰弱していった。当然だ。何も食べることが出来ないのだから、餓死するしかない。 生命維持のための餡子が消費され、体が小さくなっていく。皮も薄くなって、中の餡子が透けて見える。 一日、一日と、刻一刻と死へと近づいていく日々。かつては少しは跳ねたり身じろぎして反応を返してくれたまりさも子れいむも、やがてはそんな反応も示さなくなった。 そして、ある日を境に二匹は微動だにしなくなった。 顔が無いため一見しては分からなかったが、二匹とも死んだのだった。 れいむは大声をあげて泣いた。涙が枯れるほど泣いた。流した涙で体が溶けて流れるのではないかというほど泣いた。 泣いて、泣いて、悲しんで、ゆっくり出来ていた日々と人間に合された地獄、とそのあとの苦しい生活を思い返した。 そんな、そんな不幸のどん底にいるれいむに、またあの人間が現れた。 人間は狂乱に陥ったれいむを捕まえると、しかと目を見開かせ、その状態でまりさと子れいむの死骸を踏みつぶした。 顔がなくても、まだ原形を、カタチを保っていた家族の体が跡形もなくつぶれる様を見て、れいむの精神は壊れた。 しかし、人間の手によってまた再生された。 れいむが正気を取り戻したのは、人間の家だった。ゆっくりは、精神崩壊を起こしても中の餡子をかき回せば正気を取り戻すのだ。 そしてれいむは、正気を取り戻して、恐怖の記憶を呼び起こして、もはや言葉ですらない声をあげて人間の家の中、人間から逃げ惑った。 しかしそれは徒労に終わり、地獄を見た。 それでもれいむは生還した。 ただし、まりさや子れいむと同じく、のっぺらぼうの状態で。 のっぺらぼうれいむは人間の家の表通りに捨てられた。底部は無事だから、自分で動ける。 しかし、れいむには我が家に帰還する術は残っておらず、助けてくれる者もいなかった。 のっぺらぼうれいむは、その無表情の顔のまま、あさっての方向へと跳ねていった。 その後のっぺらぼうれいむがどうなったのかは、誰も知らない。 END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/827.html
その畑では、本当に、お野菜さんが、勝手に生えてくるのであった。 理由は判らないが、数日前にゆっくり達が言っていた台詞が真実になってしまったな、と思った。 「だから、ここは、僕のおうちで、これはお兄さんが育てたお野菜なんだよ。」 「おやさいさんはかってにはえてくるんだよ!!」 「おやさいさんをひとりじめするにんげんさんはずるいよ!!ゆっくりしんでね!!」 「「「「「ちんでにぇ!!!!!」」」」」 まりさとれいむと、赤ゆっくりが5匹。初めてゆっくりの被害にあってしまったが、 なんというか、本当にこんな思考をしてるんだなぁ、と驚愕するばかりである。 別に自分は農業で生活を立てている訳ではない。親から受け継いだ畑で、趣味として野菜を育ててるのだ。 新鮮な野菜を食べれるし、国からわずかだが、お金も出る。それだけだ。そんな理由なので荒されても別に心は荒まない。 被害も、きゅうりが4本程度、トマトが5個くらいだろう。どうでも良かった。 だが、自分が畑を荒してる所を止めようとしたら、体当たりしてきたのだった。 ぽこん、ぽこんと足に体当りする様が面白かったので、捕獲しようと思った。 使っていない納屋まで誘導し、扉に鍵を掛ける。 こうして、着いてきた一家丸ごと捕まえる事に成功したのだった。 「ゆっへっへ。もういちどまりささまのたいあたりをくらいたくなかったら、ゆっくりここからだすんだぜ!!」 「そうだよ!!まりさはとってもつよいんだよ!!!はやくあやまったほうがいいよ、おにーさん!!!」 「「「りぇーみゅちゃちに、はやきゅあみゃあみゃをもっちぇきちぇね!!」」」 「「まりしゃちゃちにももっちぇきちぇね!!しょしちゃらゆっきゅりちんぢぇね!!!」」 どうも、先程の体当りで優位に立っていると思っているようだ。捕まえたと言っても閉じ込めている訳ではないし。 まあ、いいか。……と野菜は勝手に生えてこない事を根気よく説明したが、返事は、勝手に生えてくる。という一点張りだ。 これはやり方を変えないと駄目かも。そう思ってると足に音が鳴る。 「ゆっふっふ。おにーさんのざれごとに、つきあっていられないぜ。まりささまのこうげきでしんでもらうぜ。」 またもや、ぽこんぽこんとリズムを奏でる事にしたようだ。 「うっそお?」 さっき何度も繰り返して効かなかった攻撃を繰り返すとは。他に攻撃の手段はないのか、と驚いてしまった。 「まりさ!!ゆっくりきいてるよ!!!」 「「「おちょーしゃん!!ぎゃんばっちぇにぇ!!!しょしちぇあみゃあみゃをとってきちぇね!!!」」」 効いてないし、と突っ込むよりも、子供達の台詞がひたすらに甘い物を求めているだけな事のほうが気になる。 そういえば、ここに缶ドロップがあったことを思いだので、気づかれないように移動、そして腕だけ動かし 缶ドロップを取る事に成功した。そして、まりさの攻撃?に合わせて飴を落とす。 「「「ゆゆ!!?おにーしゃんからにゃにきゃおちちぇきちゃよ!?」」」 親が必死に体当りしてる場所が近いと飴を拾えないだろうから、気づかれないよう移動する。 「「「ちあわしぇ~~♪♪きょれはちょってもあみゃあみゃだにぇ!!!」」」 うお、いきなり口に含むとは・・・。何という警戒心の無さ。 「まりさ!!おにーさんをこうげきしたらあまあまがでてくるよ!!!」 「わかったんだぜ!!もっとこうげきをはげしくしてあまあまをださせるんだぜぇえええ!!!」 「「「おちょーしゃん!!もっちょあみゃあみゃをだしちぇね!!!!」」」 飴が落ちるたびに子供達がきゃいきゃい騒ぎ出した。 ……しかし、何度か続けると、飴が出なくなってしまう。 まあ、缶ドロップの中身などたかが知れている。というか飴を舐めないで食べてるから消費が早いのだ。 「まりさ!なにやってるの!?はやくあまあまをだしてね!!!!」 「「「ひゃやくだしちぇね!!やくたたじゅにゃおちょーしゃんはちんでにぇ!!!」」」 「どぼじでぞんなごどい゛う゛のお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 何故か責められる親まりさ。不憫だ。助け舟を出してやろう。 「まあ聞きなさい。飴さんは勝手に落ちてこないんだよ。限りがあるんだ。お野菜さんだって同じだよ? 勝手に生えてこないんだ、解るかな?」 「ゆゆ!!?まりさのゆっくりぷれいすににんげんさんがいるよ!!?」 「そんなのどぼでぼいいでじょお゛お゛お゛!!はやくあまあまざんをだじででいぶにもっでぎでね!!! でいぶはまだあ゛まあ゛まざんをだべでない゛んだよ!!!」 「「「やくたたじゅのおちょーしゃんはちね!!しょしてあまあましゃんをもっちぇきちぇね!!!」」」 聞いてなかった・・・。というより気づいたのはまりさだけだ。 そのまりさもさっきは出してといっていたのに、今ではここが自分のゆっくりぷれいすだと思っている。 れいむは、子供達を優先したようだが、心の中は飴に夢中だったらしい。涎が物凄い事になっていた。 子供達は甘いものしか見えてないのが哀れだ。これが、ゆとり教育の弊害かもしれない。 「にんげんさんはまりさのゆっくりぷれいすからでていってね!!!そしてあまあまをもってきてね!!!」 「ばりざあ゛あ゛あ゛!!!あまあまざんをだすのをあぎらめない゛でえ゛え゛え゛え゛!!!」 「「「あまあまをもってこないまりしゃおちょーーしゃんはゆっくりちんでにぇ!!!」」」 駄目だ、この一家。家庭崩壊とかいうレベルじゃない。なんだか親まりさが哀れで泣けてくる。 あまりにも(頭が)可愛そうだったので捕まえるのは止めた。納屋から出してやる。 「ゆゆ!!??おやさいさんがいっぱいあるよ!!!ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするよ!!!」 「ゆ!?……やったね!!まりさ!!さすがれいむのおっとだね!!!」 「「「おちょーしゃんしゅぎょーい!!!」」」 目の前に畑があっただけなのだが、それだけで突然一家の中が良くなった。なんだこいつら。 「むーしゃ、むーしゃ!!しあわせーー!!!」 「むっしゃ!むっしゃ!!しあわせーー!!!」 「むーちゃむーちゃ!ち、ちあわちぇええええええ!!!」 一家そろってガツガツと野菜を食べ始めるが、自分はもう止める気はなかった。 どうせ趣味でやってる畑だ、こう幸せに食べてくれるなら、いいじゃないか。自分ではこうも幸せそうに食べられないし。 それに、親まりさには同情している。こんな一家の大黒柱を務めるなど、とても出来ない事だ。 まあ、かといって家に上がられると困るので、家の鍵は厳重に閉めておこう。 毎日自分の畑に来ては、野菜を食い漁っていたまりさ一家だが、その幸せは突然終焉を迎えた。 なんと、畑に野菜が全くなくなってしまったのである。 「どぼじでおやざいざんがないのお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「「「ゆえーーん!!おやしゃいしゃんたべちゃいよおおお!!」 「まりざあ゛!!!まりざがたべだんでじょお゛お゛お゛お゛!!!」 「でいぶだっでだべだでじょお゛お゛お゛!!ぞれに!!おやざいざんは!がっでにはえでぐるんだよお゛お゛お゛!!! なぐなるばげない゛んだよお゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「じゃあ゛なんでないのお゛お゛お゛お゛!!!?まりざのぜい゛でじょお゛お゛お゛お゛お゛!!!!! おやざいをだべだまりざはごみぐずい゛がだよ!!!!」 「「「おやしゃいしゃんをたべちゃ、まりしゃおちょーしゃんは、ゆっくちちね!!!!」」」 「どぼじでばりざのぜい゛にずるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 家の窓から覗いていたら、こんな光景を繰り広げていた。まあ2週間もバクバク食ってたら無くなるよね。 無実(?)の罪で罵られ、妻からは、 「まりさは今日の分の狩りをして帰ってきてね、れいむ達は家に置いてあるお野菜を食べて待ってるね。」 というような事を言われ、置き去りにされているまりさ。 相変わらず不憫だ。と思っていると、畑に向かって土下座し始めた。 「かみさま、おねがいだから、おやさいさんをちゃんとはやしてあげてね!かってにはえてくるのをじゃましないでね!」 という台詞を土下座しながら叫んだまりさは、去っていった。何言ってるんだろう、あのまりさ。 だがまあ、神頼みとはゆっくりにしては、上等な行為をするものだ。宗教の概念も無い物体の癖に……。 まりさのお願いをせめて、山の神様に届けてみるか。そう思い、お賽銭を山の上の神社に投げ入れる事にした。 神社に着くと、参拝客は誰も居なかった。この寂れ具合だと、優先順位は一位だろう。願い事が少しアレだが。 自分は全てのゆっくりの平和を願っておくか。 この願いよりは、まりさの願いの方が若干楽だろうから、自分の願いは後回しなはずだ。 翌日、自分の畑には野菜が全開で生えていた。ありえん。 「ゆゆーーーっ!!まりさのゆっくりぷれいすにおやさいさんがはえてきたよおおおおお!!!」 「まりさのいうとおり、きのうはおやさいさんがゆっくりしてただけだったんだね!!!」 「「「おちょーしゃん、ものちりだにぇ!!!!」」」 「ゆっへん!!みんなでおやさいさんをたべようね!!!!」 ガツガツと食っていくまりさ達。おいおい、一日で出来た野菜とか恐くて食えねーよ・・・。少しは考えようよ。 「「しあわせーーーー!!」」 「「「ちあわちぇええええええ!!!!」」」 食えるのかよ。しかも旨いのか。まあいいよ、自分は食う気にならないし・・・、好きにしてくれ。 まりさの地位も元に戻ったようだし、満足だ。ヒエラルキー最下位はつらいよな。 さらに、次の日、畑の野菜の濃度が上がっていた。個人でやってるような畑ではなく、農業を営めるような畑だった。 神社効果か?神様スゲェ、としか言いようが無い。まあ、隣の家まで2kmある田舎だからそうそう騒ぎにはならないだろう。 「おやさいさん、すっごいゆっくりしてるよぉおおお!!!!」 「こんなにゆっくりとしたおやさいさんは、はじめてだね!!まりさすごいよ!!!」 「「「しゅごいゆっくちだにぇ!!!おちょーしゃんだいしゅきだよ!!!!」」」 「ゆゆ~ん。てれるよぉお!!」 まりさの株もストップ高だ。おめでとう!!まりさ、おめでとう!! 心の中で誉めてやる。 それからは、毎日がゆっくりデイだった。 お野菜は本当に勝手に生えてきたので、まりさはゆっくりしている。 妻のれいむとの仲も良好なようで、常に頬擦りしてるような感じであった。 まりさの子供達も発育が良く、最近では、赤ちゃん言葉が抜けてきたようだ。 試しに家族を尾行して巣を探してみたが、巣の中は人間が入れる程広く、野菜も存分に保管されていた。 というか、巣というのは俺の納屋であった。畑は納屋をも侵食し、今や大農園の様相を呈していたので、気づかなかった。 そろそろお隣さんにバレるかと思ったが、お隣さんはいつの間にか空き家になっていた。 調べてみると半年前かららしい。ビクビクしていたのが馬鹿らしい。 1ヵ月後、最近まりさ達の姿が見えないな、と思い探してみる事にした。 納屋が探せない・・・。なんという野菜王国。自分の家だけを避けるようにびっしりと生えた野菜の楽園。 ここまで来るとさすがに気持ち悪い。もうやめて。と神社にお祈りしにいこうかな。どうせ自分はこの野菜を食べないし。 30分程かけて納屋を見つけた。中に入ると入り口には変な生物が居た。冬虫夏草っぽいゆっくりだ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのあんごがずわ゛れでい゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 れいむらしい。頭からトマト(大)を30個はぶら下げている。というか、そう言っている間にもトマトが生っていく。 養分が吸われるのか、それを補うようにずりずり移動しながら野菜を食べている。気持ち悪い。 キャベツを食いながらトマトを生産するとは・・・。これが連金術か。 無視して中に入っていくと、子ゆっくり達が居た。 「おねーちゃんのとまとおいじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「れいむのきゅうりざん、どっでもあまあまだよお゛お゛お゛お゛お゛お゛」 「まりさおねーちゃんのいちごさん、すごくゆっくりだねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」 「おねーぢゃんのなずざんばすっごぐじんなりじでる゛よお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」 「まりさのとうもろこじはざいごうだよう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 数珠繋ぎだった。野菜が生えてくる瞬間から共に食べあっている。うーん、飽きないのかなあ・・・。 飽きたら順番変えればいいのか?・・・というかトウモロコシだけ凄い食べにくそうだが。まあいい、ほっとこう。 まりさを探す。まりさは何処だ?まりさやーい。 奥の奥、納屋の中でも全く日に当たらない暗闇の中、まりさは居た。懐中電灯を持ってきてようやく見つけたのだった。 見てみると頭から野菜は生えていない。おお、無事だったか。 「ゆ!!?おにーざん!!???」 覚えててくれたとは、おにーさん嬉しいよ。 「おに゛い゛ざあ゛ん!!!ごごは、ぜんぜんゆっぐりでぎない゛よお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 よしよし、何があったか話して見なさい。おにーさんに聞いてみて? 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!!」 早く話してよ・・・。 まりさの説明は要領を得なかった。3時間かかって、ようやく理解した頃には日が暮れていた。 ながったらしい説明である、正直途中で見捨てようかと思ったが、泣いてすがり付いてきたので我慢する事にした。 光っていたお野菜さんの種があったので、家族で食べた。 すると、まりさ達の頭の上に野菜が勝手に生えてくるようになっていた。 最初は喜んでいたが、自分の力が吸われていく、と気づいてパニックになる。 れいむが頭の茎をへし折った所、今度は2本の茎が生えてきた。折るのはまずい、と理解した。 力が抜けていくのを感じたので、急いでお野菜を食べたが、一向に力が戻らない。 それどころか、余計にお野菜さんが力強く生えてくるようであった。 日が沈むと、お野菜さんは生えてこなくなり、この時にお野菜を食べれば力が戻ると解った。 なら、安心だね。と笑いながら眠ったが、それが間違いだった。次の日には益々お野菜さんが生えてきた。 まりさは恐くなって納屋の奥に逃げた。しばらくするとお野菜さんが大人しくなっているが解った。 まっくらな所にいれば、お野菜さんは生えてこない。すごい事に気づいたと思った。 急いで家族に知らせようとしたが、その時はすでに夜であり、何も見えなかったので、次の日に知らせる事にした。 だが、その時には遅かった。れいむは頭から10本のトマトを実らせ、ほとんど動けず。 這いずりながら野菜を食う、生きる屍と化していた。 子供達もほぼ同じ状態。跳ねる事が出来なければ、この暗闇には来れない。 まりさは一人、暗闇に舞い戻るのであった。 ………。光る種を食べたのはまあいい。……だが、ゆっくりしすぎだ。答えを先延ばしにした結果がこれじゃないか!! 「おにい゛ざあ゛ん!!だずげでねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」 やれやれ、解ったよ。同情しちまったなら、最後まで面倒みるのが筋さ。 というか神社にお祈りしたせいなら、半分は俺のせいだし。 そういうわけで、夜なのに神社にやって来た。上等な酒を持ってきたので大丈夫なはず。人間も神様も酒が好きのだ。 おやさいさんが勝手に生えてくる、という願いを取り消してください。お願いします。 シンプルに願って、山を降りた。 自分の家に着くと、そこは普通の畑があるだけだった。野菜都市は崩壊したようだ。 そうだ!!まりさは!?まりさはどうなった!!?? 急いで納屋に駆け込む。 冬虫夏草なれいむと子ゆっくりは死んでいた。恐らく、身体のほとんどを野菜に乗っ取られていたんだろう。 まりさは大丈夫だろうか。侵食の具合が気になる。納屋の奥に行くと、まりさは泣きながら胸に飛び込んできた。 「おにぃーざーーん!ありがとお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!まりざのなががら、おやざいざんがぎえだよお゛お゛!!」 ……、全く、これに懲りたらお野菜が勝手に生えてくる、なんて言っちゃ駄目だよ? 「わがっだよお゛お゛お゛お゛!!!ありがどう゛!!ありがどう゛う゛う゛!!!」 その後、妻と子供の死を知り、また泣いたまりさだったが、家族の分まで生きていくと言っていた。 自分と一緒に暮すか?と聞いたが、これからは、お野菜さんが勝手に生えてこない事を布教して回るという。 ゆっくりまた会おうね。と別れた。 いい奴だったな……。ゆっくりにもいい奴がいる。そんな事を、思った。 しかし、山の上の神社は本物かな?何か間違った方向に叶ってしまう気がするから使う事はないだろうけど……。 自分も何か願ったような……。気のせいかな? ───────────── 前に書いたの まりさとの平日 ぱちゅりーとおにーさん