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あるところにゆっくりれいむとゆっくりまりさがおりました。二匹はとても仲良しでした。 ある日れいむとまりさはいつものように野原で追いかけっこをして遊んでいました。 「ゆっくりにげるよ!」 「ゆっくりおいかけるよ!」 まりさは追いかけ、れいむは逃げます。二匹はそうして小さな丘を登って行きました。 その丘は、ごくごくなだらかなものでしたが、それでもゆっくりにとってはたいへん高く感じられます。 れいむはだんだん疲れてしまい、てっぺんまで登ったところで、とうとうまりさに捕まってしまいました。 「ゆっくりつかまえたよ!」 まりさはれいむにむかって、ぽよんと飛び跳ねます。 「ゆっくりつかま……ゆー!?」 ちょうど丘のてっぺんにいたれいむは、まりさに押されて、ころころ坂道を転がってしまいました。 「ゆゆゆゆゆ!」 「れいむー!?れいむー!!」 まりさはあわてて転がるれいむの後を追いかけて行きます。しかしゆっくりのスピードではとても追いつけません。 れいむは坂を転がります。その先には大きな湖がありました。 「ゆゆゆゆゆ……ゆっくりー!?」 れいむはドボンと湖に落ちてしまいました。 大分時間が経ってから、ようやく息を切らしたまりさが辿り着きました。しかし泳げないまりさにはどうする事も出来ません。 「れいむが死んじゃったよ……」 まりさはゆぐゆぐと泣いています。 するとどうでしょう。湖面が波立ち、中から女神様が現れました。その右手にはれいむが、左手には何かの袋が掲げられています。 まりさはびっくりしましたが、れいむの無事な姿を見て嬉しそうに声を上げます。 「ゆっくりしていってね!」 女神様の手の上でれいむも声を上げます。 「ゆっくりしていってね!」 女神様は言いました。 「お前が落としたのはこの土饅頭ケロ?それともこの最高級和菓子ケロ?」 「れいむだよ!」 即答です。 「お前はとても正直者だケロ。ご褒美にこの最高級和菓子を上げるケロ。」 「ありがとうね!」 親友が助かった上にお菓子まで貰えるとあって、まりさは大喜びです。 「じゃあこれからも正直に生きるんだケロ。さようならだケロ。」 女神様はゆっくりと湖に沈んでゆきます。 まりさは満足げな顔をしていましたが、そのうち大事な事に気付きました。 「ゆー?早くれいむを下ろして欲しいよ!いっしょにお菓子を食べるよ!」 「二つは欲張りだケロ。一つで我慢するんだケロ。」 「どおいうことおおおおお!?」 女神様はどんどん沈んで行きます。 「れいむを返してね!れいむを返してね!」 「最高級和菓子のほうがいいケロ。お得だケロ。」 「おねえさん!れいむは帰りたいよ!」 女神様はどんどん沈んで行きます。 「ちょっとおおおおお!最高級和菓子ってこれ人形焼きでしょおおおおお!?」 「れいむは人形焼き以下なのおおおおお!?」 「それに袋が開いてるううううう!」 「れいむは開封済みの人形焼き以下なのおおおおお!?」 「馬鹿二人が少し食べたケロ。でも大丈夫だケロ。私は食べてないケロ。」 「そういう問題じゃないでしょおおおおお!?」 女神様はどんどん沈んで行きます。れいむはもう半分近く沈んでいます。 「ぷぁ…おうぢがえるううううう!ぅぶぁ!……!……!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!れいむー!れいむー!」 女神様もれいむも、とうとう沈んでしまいました。 まりさは長い事泣き叫んでいましたが、そのうち叫び疲れてきました。 「れいむが人形焼きになっちゃったよ……」 あれほど仲の良かったれいむはもう戻ってきません。 まりさは力なく人形焼きを見つめました。 なんと賞味期限が六ヶ月も過ぎているではありませんか。 まりさは涙が止まりませんでした。 このSSに感想を付ける
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※ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくりの続編です。少しだけふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編)も関係あります。 ※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※ずる賢いゆっくり注意 ※あとがきに新企画があります。 ああれいむ。君はなんて素晴らしいんだ!! 「しんぐるまざー」だの「あまあまよこすんだぜ」だの「とかいは」だのぬかす他のゆっくりとは別次元の存在。 まさにゆっくりのなかのゆっくりだよ。 そんな君だからこそ受け取って欲しい。この「ダイヤモンドバッジ」を。 ゆっくり Change the World(出題編) 作、長月 「ゆぜぇ・・・ゆぜぇ・・・ゆう。」 のーぶるれいむは疲れていた。ゴミ捨て場でもう少しで潰されそうになったのを全力で逃げてきたのだから当然だ。 あのゴミ捨て場で男はレンガを振り下ろそうとした瞬間ぎっくり腰になってしまった。 痛がる男の隙をつきなんとか逃走に成功したれいむ。あの状況で無傷で生還できたのは奇跡に近い。 とはいえこの一件はれいむの心に強い恐怖を残した。 もうあんないつ殺されるかもしれない恐ろしい場所には帰りたくない。 しかし他に帰る場所などありはしないのだ。 くそ。なぜこんなことになった。なぜ。 れいむは憤った。 全ては見る目のないじじいどもと・・・・あのテレビに出ていたくそれいむのせいだ。 あんな無能なやつが卑怯な方法でれいむのいるべきゆっくりプレイスにいるせいでれいむがこんな目にあっているのだ。 実際は100%自業自得でテレビに出演していたれいむは全く関係ないのだが、頭に血の上ったれいむは気づかない。 そう全てはあのクソ無能なれいむがわるいのだ。あいつさえいなければ・・・・・え? れいむは目を疑った。 テレビのれいむが自分の前にいるからだ。こちらに気づいてないらしくピョンピョンと近くの森へ跳ねていく。 見間違いかと思ったがあのりぼん、あのバッジ。どうみてもあのセレブれいむだ。 のーぶるれいむははっと思い出した。今まで夢中で逃げていて気づかなかったがここはあのテレビでやっていたあのお屋敷だ。 見渡す限りの広大な庭にゆっくりできそうなゆっくり用遊具の数々。そしてきれいで大きなお城のようなお屋敷。 くそ!!! 気か付けばれいむは、セレブれいむを追っていた。 れいむのいるべきゆっくりプレイスを奪ったあのクソ饅頭め。ぐちゃぐちゃに踏み潰してくれる!! そう思いながらセレブれいむを尾行する。 隙を突いて一撃で殺してやる。あの研究所で殺したクズどもと同じように。 セレブれいむを追ううち、れいむは人気のない野原へとはいってしまった。 れいむは物陰で様子を伺う。 誰かを待っているらしく野原の真ん中にある木の切り株に腰掛けているセレブれいむ。 殺るなら今だ。 死角に回り込もうとしたとき、向こう側で物音がした。 どうやら待ち合わせの相手が来たらしい。いったん襲撃はやめだ。 しかし待ち合わせ相手は誰なのだろう?飼いゆっくりがこんな森の奥で待ち合わせなんて。 次の瞬間れいむは唖然とした。 草むらから出てきたのはれてぃだった。捕食種のれてぃがなぜれいむと待ち合わせを? 理解不能のれいむを尻目に、れてぃのもとにうれしそうに跳ねていくセレブれいむ。 やさしい飼い主にお屋敷で蝶よ花よと育てられていたので捕食種を、いやこの世に悪意があることを知らなかったのだ。 「ゆっくりしてってね!!」と無邪気にあいさつする。 そんなセレブれいむをれてぃは・・・長い舌で捕らえると一口で食べてしまった。 れてぃはしばらく反芻するようにもごもごと口を動かしたあと 「クズ(通常種)の分際でいい暮らししてるからよ。」 と言い、プッとなにか吐き出し森の奥へと消えていった。 このれてぃは世間知らずの飼いゆっくりを言葉巧みに誘い出し、人目のない場所で襲い捕食するゆっくりだったのだ。 そしてれいむはガタガタと震えてその場を動けずにいた。 数分後、れてぃが戻ってこないのを確認するとれいむは動き出した。 れてぃが吐き出した何かに。 正直あんよの震えはまだ止まっておらず、今すぐでもこの場を逃げ出したかったがそうもいかない。 もしあれが自分の予想したものであれば。草をかき分け「何か」を探すと・・・それはあった。 やはり。れいむはニヤリと笑った。 それはあのセレブれいむのりぼんとバッジ。 これで世界を・・・世界を変えることができる。 この薄汚れた野良の世界から華やかなセレブ飼いゆっくりの世界へ。 このりぼんとバッジさえあれば・・・ そう変えることができるのだ。 こののーぶるれいむ様にふさわしい世界へと。 れいむは自分の猫にボロボロにされたりぼんをもみあげではずすと、セレブれいむのりぼんとバッジをくわえその場を立ち去った。 そして2週間がたった。 セレブれいむの飼われていた屋敷では 「れいむは・・・れいむはまだ見つからないのか・・・」 「れいむ様は全力をもって捜索しております、旦那さま。今しばらくお待ちを。」 「ああ・・・れいむ。生きていておくれ。私の愛しいれいむ・・・」 がっくりと意気消沈する男。この男がセレブれいむの飼い主でこの館の主でもある。 防犯カメラの映像によるとれいむは柵にあいていた小さな穴から外へ抜け出したらしいが、そこから先の足取りがどうしてもつかめないでいた。 探偵を雇いこのあたり一帯を聞き込みを行い、懸賞金付きでポスターも貼ったがまったくれいむに関する情報は出てこなかった。 聞けばセレブのゆっくりが神隠しのように行方不明になる事件が今年になり何件もおこっているらしい。 現場には、りぼんや帽子などゆっくりのお飾りのみ残され未だ戻ってきたゆっくりは居ないという。 もしかしたらうちのれいむもその事件にまきこまれて・・・ 「旦那さまの心中お察しいたします。れいむ様は1000万以上する高価なゆっくりでしたしなあ。」 「ちがうぞ時田。金額の問題ではない。あのれいむこそが私の理想だったのだ。」 時田とよばれた執事も男と共にうなだれる。そんな重苦しい空気が漂う中 「失礼します!」 使用人の一人が音を立てて入ってきた。 「何じゃ騒々しい!!旦那さまに無礼であろう!!」 「申し訳ございません。ですがれいむ様が・・・」 「何!!見つかったのか。れいむが!!」 がばっと使用人にがぶりよる男。 「れいむは・・・れいむは無事なのか!?」 「はいご無事です。ただ衰弱が激しいらしく今は市のゆっくり病院に搬送されています。」 「よしわかった。時田、車を出せ。ゆっくり病院へ大至急だ。」 「かしこまりました。」 男たちは慌ただしく部屋を後にした。 「ゆふふ・・・うまくいったよ。」 ゆっくり用の治療ゲージの中でしてやったりと微笑むのーぶるれいむ。 2週間の間どうすればあの屋敷の飼いゆっくりになれるかずっと考えていた。 このままセレブれいむのりぼんを自分につけて屋敷に行くという手もあったが長い野良生活で汚れきったこの体ではすぐに別ゆっくりだとばれてしまう。 それに自分はお屋敷のことを何も知らないのだ。うっかりボロを出してそのまま潰されかねない。 だからこそれいむはあえて屋敷に行かず、道路で行き倒れたふりをしたのだ。何者かに暴行されたかのように偽装して。 これなら薄汚れた体も暴行されたときについた汚れと思われ不自然でなくなる。 そして行き倒れたふりをしていれば、いずれ誰かが発見し保護してもらえる。 なぜなら町中にれいむを探すポスターが貼ってあるのだから。しかも懸賞金付きで。 人間にはゆっくりの区別などつかないからつけているバッジこそが個体の識別方法となる。 つまりバッジをつけている限りれいむがあのセレブれいむなのだ。 問題はもうひとつの方だが、それにもちゃんと秘策を考えている。大丈夫だ。やれる。 勝利は目の前だ。 れいむが色々考えていると廊下が騒がしくなっていた。 どうやらセレブれいむの飼い主が到着したらしい。れいむに緊張がはしる。 「れいむ。無事だったか!?」 そう言いながら男はれいむのゲージに駆け寄る。さあここからがのーぶるれいむ様の演技力の見せ所だ。 れいむは怯えたように演技しながら 「ゆう・・・おじさんだれ?れいむをしっているひと?」 「れ・・・れいむ!?」 「それともれいむをいじめるひと?やめてね。れいむにひどいことしないでね。」 もみあげのピコピコする部分で顔を覆いイヤイヤと首を振り怖がる演技を続ける。 愕然とする男にゆっくり医師が説明する。 「どうやらお宅のれいむちゃん記憶をなくしてしまわれたみたいなんです。なにを聞いてもわからない、覚えてないというばかりで。 どうやら暴行を受けたショックで記憶喪失になったようですね。」 「そんな、別のゆっくりという可能性は!?」 「残念ながらありえません。もし無理やりバッジやりぼんをとってほかのゆっくりがつけた場合、ダイヤモンドバッジの盗難防止センサーが反応してゆっくりセキュリティやあなたの元へ連絡があるはずです。確認しましたがそのような事実はありませんでした。」 そう。今回れいむが一番幸運だったのはそこだった。実際はれてぃの胃液でセレブれいむが溶かされた為、ダイヤモンドバッジのセンサーが反応しなかったわけだがそのことは男も医師も知ることができない。 「ああ・・・そんな・・・れいむ・・・ああ・・・」 男はショックだったのかその場でひざをつき泣き出してしまった。 その様子を見てれいむは内心ほくそえんだ。 うまくいった、と。 しかしれいむは気づかなかった。 自分が致命的なミスを犯していることを。 (解答編へつづく) 補足説明 ダイヤモンドバッジ セレブのゆっくりのみがつける事が許されるバッジ。プラチナやゴールドと違い試験を受ける必要はない。 ダイヤモンドをはじめ様々な技巧をこらした飾りがついておりそれらだけでも100万以上する。 あとがき 前回はアンケートにご協力いただきまことにありがとうございます。アンケートの結果一番リクエストが多かったのーぶるれいむの話「ゆっくり Change the World」をかかせていただきました。 ところでなぜタイトルに出題編と書いてあるか疑問に思われた方も多いでしょう。 ズバリ出題とは今回のSSの最後に書いてある 「のーぶるれいむの犯した致命的なミスとはなにか?」 を皆さんに当てていただこうというものです。感想と一緒に自分なりの推理をコメント欄に書いていただければ幸いです。 解答のヒントとしては なぜセレブれいむは1000万以上という法外な値段だったのか。(通常のれいむ種は安いので1000~1500円程度) 飼い主の男はなぜそこまでれいむに固執するのか。 またこの話の前作「選ばれしゆっくり」の中にもヒントが隠されています。もう一度読み返して見てください。 見事正解された方の中から1名様に長月のSS内容をリクエストする権利を差し上げます。リクエストのある方は感想・推理と共にコメントに書いてください。正解者でなくても次回以降の参考にさせていただきます。 リクエストの例 余り書かれないゲスさなえのSSを見てみたい。 秋姉妹のゆっくりを書いて欲しい。 「VS最強のゆっくり 史上最低の戦い」のケツ振りれいむのその後が知りたい。 星蓮船種のSSが読みたい など たくさんのコメントお待ちしています。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 ふたば系ゆっくりいじめ 208 ゆっくり見ていってね ふたば系ゆっくりいじめ 218 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 ふたば系ゆっくりいじめ 227 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い ふたば系ゆっくりいじめ 247 夢と現実のはざまで ふたば系ゆっくりいじめ 264 あるまりさの一生 ふたば系ゆっくりいじめ 298 ゆっくりを拾ってきた
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ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く?
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「ゆぶべべべっ!?」 「ま゛り゛さ゛あああああああ!?」 「全く、まぁ~た畑荒らしか ほんと嫌になるよ」 男の草鞋がまりさの舌に乗っていた野菜ごとその舌をぐちゃぐちゃに踏み潰した。 砕けた野菜と舌が混じり異様な色彩を産んだ。 「ぢがうのおおおおおお!!まりさはしんせつしんでおちてたおやさいをはたけにもどしてあげようと」 「瓜田に靴を入れず」 男は舌を踏みにじっていた足を引き抜いて振り上げると思い切り蹴りぬいた。 まりさは宙を舞うと柵にぶつかって嫌な音を立てながら餡子を撒き散らした。 そして柵に餡子の跡を残しながらずるずると地面に落ちて 数度痙攣すると衝撃で飛び出していた目玉がずるりと落ちて動かなくなった。 「どぼぢでええええええええええええ!?まりざなんにもわるいごどぢでないのにいいいいい!!」 餡子が混じり黒く滲んだれいむの涙が何筋も頬を伝った。 「死にたくなきゃ最初から畑に近づくなよ、荒らしとそうじゃないのと見分けるの面倒だからさ」 そう言って男はれいむのリボンを摘むと林の方に放り投げた。 そして帰ろうとして手元に指に引っかかって千切れたリボンが 一欠けら残っているのに気付いて鬱陶しそうに手を払った。 それから数日後、幽鬼のように夜の林の中を放浪するリボンのかけたゆっくりれいむの姿を あるありすは偶然友達の巣から巣へ帰る際に見た。 夜はれみりゃの時間だ、都会派として注意してあげようと思ってありすは恐る恐る声をかけた。 そのれいむはゆっくりと振り返ると壮絶な笑みを浮かべながら言った。 「れいむはれみりゃをまってるんだよ」 そしてけたたましく笑い出したれいむの狂気に恐怖を感じて慌ててありすは逃げ出した。 それからさらに数日後の深夜 れいむの前にれみりゃが降り立った。 れみりゃは獲物を見てその子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔で言った。 「うっうー♪よふかしするわるいこはたべちゃうんだどぅ~♪」 「まって、れいむはれみりゃにおねがいがあるよ」 「う~?」 れみりゃは他のゆっくりとは違う落ち着いた態度でれみりゃに話しかけるれいむに少し驚きながられいむを見た。 無視してそのまま食べてしまっても構わなかったが、とても真剣な表情のれいむに気圧されて、渋々話を聞くことにした。 「う~おぜうさまのれみりゃになんのようなんだどぅ~?」 「れいむをおかして!!れいむっとすっきりして!!!」 れいむは瞳をカッと見開きれみりゃに向かって腹のそこから叫んだ。 れみりゃは困惑して額から汗を流した。 そして思った。 このれいむは頭がおかしいのだろうか、と。 れみりゃとれいむがすっきりする例など聞いたことが無い。 当然だ、二者の関係は捕食者と逃げまとう獲物なのだから。 れみりゃ種にもれいむを性の対象として見るような趣味も無い。 れいむ種がれみりゃ種に出逢ったとき、するべき行動は逃走、ただそれだけである。 なのにこのれいむはれみりゃとすっきりしたいと言うのだ。 生きるための口先三寸かと思ったが 体格差から考えてもそんなことをすれば体が保たないだろう。 れみりゃがれいむの正気を疑うのも当然である。 実際、れいむの熱っぽく開かれた赤く血走る瞳を見てもその正気を疑うには充分だった。 そして十秒間、れみりゃにとってかなり長く熟考したのち れみりゃはこうまかんのおぜうさまとして恥じることの無い結論を導き出した。 「うっうー♪そこまでいうならたっぷりかわいがってやるんだどぅ~♪」 腰をフリフリしながられいむににじり寄って行く。 据え膳食わぬはおぜうさまの恥ってさくやが言ってた。 ちゃんとさくやの言ったことを覚えてた自分はとっても偉いとれみりゃは思った。 そして二匹は朝まで激しく交わりあった。 「ゆひっ、ひゅひひひひひいひ…!」 犯すのに飽きて、かといって自分が交わりあった相手を食べるのも憚られたので どこぞへとれみりゃが去っていった後、れいむは壊れたオルゴールみたいにけたたましく笑い出した。 綺麗だった髪は乱れて絡まり、リボンは男に千切られてかけた部分からさらに裂け目を深くした。 頬からはれみりゃの爪が食い込んだのか痛々しい傷跡と、何条もの餡子が流れた後が付いていた。 そしてズタズタに裂けたまむまむから肉汁と、餡子の混じった液体がどろりと流れ出した。 れいむのその機関はほぼ破壊されて、恐らくもう二度と用を成すことは無いだろう。 焦点の合わない瞳から伸びる視線は宙を漂う。 だがれいむの笑いは決して絶望の笑いではなかった。 「これで…これでまりさのかたきが…ひゅひひひひひ!」 雌としての本能があり得ないはずのれみりゃの子種を身篭ったことを確信して れいむは目の焦点も合わないまま口を歪めて笑った。 一週間後、近くのゆっくりの群の外れに一匹のれいむが住み着いた。 そのれいむは酷い傷を負っていて、群のゆっくりは心配して話しかけたが れいむに一睨みされただけで立ち竦み、それ以上話しかけることが出来なかった。 群のみんなはそのれいむを疎ましく思いながらも中々手を出すことができなかった。 そうして、次にそのれいむの巣をみんなが見に行ったのは れいむの巣から恐ろしい産声が聞こえてきた時だった。 「れいむ!あかちゃんがうまれたならみんなにしょうかいしてあげてね! そしていっしょにゆっくりしようね!」 群の長まりさがれいむの巣の入り口のすぐ横の木の部分を叩いた。 これを気に仲良くなっておかないと、群のみんなが怖がると思ったからだ。 それにみんなかわいい赤ちゃんは見たかったのだ。 巣の入り口を覆っていた草がガサゴソと動いて 長まりさは出てきてくれるのかと思って事前に考えておいた懐柔の言葉を言おうとし 帽子がなくなっていることに気が付いた。 「うゅ~♪たーべちゃーうぞー♪」 はっと気付き見上げると、空を飛ぶゆっくりが長まりさの帽子を捕まえていた。 子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔、口元から生えるキバは長まりさの帽子に突き刺さっていた。 本来地面にあわせて平坦であるべき足からは三本の爪の生えた妙な枝が生えていて長まりさの帽子を掴んでいる。 頭はれいむ種と同じ黒い髪に両脇に髪留めをつけていたが、その最大の特徴であるリボンは無く 代りに薄紫色に赤い布をつけた帽子を被っていた。 そして、その両脇からはあの蝙蝠のような恐ろしい悪魔の羽が生えていた。 「「「れみりゃだあああああああああああああああああ!!!!!」」」 集まっていたゆっくり達は一斉に叫んだ。 そして長まりさの周りに身を寄せ合った。 「ち、ちがう…あれはれみりゃじゃない…!」 長まりさは震えながらその化け物を見上げ言った。 「そうだどぅ~♪れみりゃなんかじゃないんだどぅ~♪」 ソレは長まりさの言葉に頷くと、体の前で悪魔の羽をみょんな形であわせながら言った。 「れい☆むりゃ☆う~♪」 そして足に掴んでいた長まりさの帽子をむしゃむしゃと平らげた。 「ま゛り゛さのだいじばぼうじっびゅべばじゃ!?」 「「「だずげでええええええええええええ!!」」」 一斉に逃げ出したゆっくり達にもみくちゃにされて長まりさはぐちゃぐちゃの饅頭になって死んだ。 その様子を見てれいむりゃと名乗ったその化け物は首をかしげながら言った。 「うゅ~?どうしたんだどぅ~♪もっとゆっくりしてくいくんだどぅ~♪」 不思議がるれいむりゃを他所に、巣の中からはれいむのあの壊れたオルゴールのようなけたたましい笑い声が木霊した。 「たくさんたべて、もっとつよくなるんだよ」 口から虫や木の実を吐き出しながられいむはれいむりゃに言った。 嬉しそうに母から餌を貰いながられいむりゃは応えた。 「うゅ~♪いっぱいたべておおきくなってゆっくりするんだどぅ~♪」 そう言うや否や、れいむりゃの見ていた世界の天地は逆転した。 れいむの体当たりでひっくり返ったのだ。 「あまったるいこといわないでね!おまえはたたかうためにれいむがうんでやったんだよ!! ゆっくりしてないでとっととりかいしてね!!」 「ぅ、うゅ~、わかったんだどぅ…」 目を血走らせて鬼の形相で言うれいむに怯えながられいむりゃはれいむが何故そんなことを言うのか理解できないものの とりあえずもう一転がりしてから頷いた。 「ぜんぜんわかってないみたいだね…」 れいむりゃの暢気な表情を見てれいむは嘆息しながら言った。 「おまえはね、やさいをかえしてあげたまりさをころしたあのくずをころすためにうまれてきたんだよ だからゆっくりしてるひまなんてないの、いっこくもはやくあのくずをころすためにつよくならなくちゃいけないんだよ それができないならおまえみたいなばけものいきてるいみがないんだよ!」 確かに意識ははっきりしているのにどこか焦点の合わない瞳でれいむりゃを睨みつけながられいむは言った。 「うゅ~、ゆっくりりかいしたんだどぅ~♪」 「それがわかってないっつってんだよ!!!!!」 れいむの体当たりがまたれいむりゃを転ばした。 「う、うゅ?」 何故体当たりされたのか分からず起き上がろうとするれいむりゃにまたれいむが体当たりを食らわせた。 ゴロゴロと何度も巣を転がって吐きそうになりながられいむりゃはれいむを見た。 「どおぢでおまえはぞうなの!?どおぢで!おばえはもっどづよぐなんなぐぢゃだべなんだよおお!! なのに!れいむにやられてちゃだべでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 れいむは狂ったように、というか狂っているのだろう。 執拗にれいむりゃに体当たりを繰り出す。 何度も転がり何度も壁に叩き付けられながられいむりゃは思った。 何故おかあさんはゆっくりしないのだろうと。 れいむりゃはこんなにもゆっくりしたいというのに。 いくら体当たりをしても気絶しないれいむりゃの耐久力に満足したのか れいむはボロボロのれいむりゃを放ったまま眠りに付いた。 れいむが眠りに付いたのを確認すると、れいむりゃはれいむを起こさないようにそっとその隣ですやすやと眠り始めた。 朝早くれいむに叩き起こされて外に連れ出されたれいむりゃは 生後まもないにも関わらずもはや痛めつけるのが目的としか思えないほど厳しい仕打ちを特訓と称して行った。 石を投げつけられ、木の枝で叩かれ、土に埋められ、川に落とされ、蔦を巻きつけられ引っ張られる様は とても特訓などという上等なものではなく、れいむの持つ恨みをれいむりゃに押し付けているだけだった。 それでもれいむりゃは子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔を崩さなかった。 そんな生活が何ヶ月か続いた。 れいむりゃは飛び回ってれいむの放つ石ころを避け 土に埋められても足の力と羽ばたきで飛び出し 川の中を皮がふやけるまでの間バタ足で泳ぎ 蔦を引きちぎり、逆に蔦を加えてれいむをぶら下げるほどに強くなった。 れいむはそんなれいむりゃを見て満足そうに頷くと またあの壊れたオルゴールみたいなけたたましい笑い声を上げた。 「これで…ひゅひひひ!これで!このばけものをつかえばまりさのかたきがうてるよおひゅひひひひひ!! やざしかったまりさをころしたあのクズひゅひ!ころせる!やっところせる!!」 れいむの口から餡子色のあぶくが吹き出た。 そんな笑顔でもれいむりゃはとても嬉しくて一緒に笑った。 梅雨の季節が来た。 あれかられいむはれいむりゃの特訓の合間にまりさを殺したあの男の動向を探っていた。 男は殆どの日を畑で仕事をしていた。 畑の中はまずいとれいむは考える。 一緒に畑仕事をしている仲間を呼ばれる危険がある。 いくらあの恐ろしいれみりゃの血を引くれいむりゃでも 二対一では分が悪いとれいむは思っている。 かといって家の中も危険だ。 家の中には色々な道具を置いてあるに違いないし間取りにも詳しいだろうから不利だ。 男が外で一人になる瞬間が知りたかった。 そうして調べている内についにれいむは遂に男が一人になる時間を見つけた。 男は一週間に一度、里の方に一人で出て行く。 特にその時に渡る古びた人気の無い橋の上は逃げ場も殆ど無い絶好のポイントだった。 れいむりゃは、れいむが男を見に行っている間、たった一人でとても寂しがった。 梅雨の最中でもはや濁流に近い流れを持つ川のほとりで雨避けの葉っぱを口に咥えながられいむは言った。 「やっと、おまえのやくめがはたせるんだよ うれしいよね、れいむりゃ」 入念な準備を経て、れいむりゃにもしっかりと計画を伝えてれいむはれいむりゃと橋の前に立った。 「れいむりゃ、わかるね ここであのおとこをころすんだよ」 れいむはちらりとれいむりゃの方を見て最終確認をした。 「うっゆー♪わかるんだどぅ~♪ばっちりなんだどぅ~♪」 れいむりゃはれいむが喜びに震えているのを感じ取って自分も嬉しそうに頷いた。 「そいつにれいむりゃがおしおきしておとうさんにひどいことしてごめんなさいっていわせるんだどぅ~☆」 はしゃぎながらそう言ったれいむりゃに唖然としながられいむはぽとりと咥えていた葉っぱを落とした。 ドン、とれいむは体当たりをした。 不意の体当たりにれいむりゃはゴロゴロと水浸しの地面を転がり泥まみれになった。 「う、うゅ~?」 ちゃんと答えられたと思ったのに何故か怒りの形相のれいむを見てれいむりゃははてなと首を傾げた。 「なにをいっでるの!?それじゃだめだんだよ!! ちゃんところして!!いきのねをとめて!! にどとそいつをゆっくりできなくするんだよ!!」 それを聞いて、れいむりゃは固まった。 「う、うゅー?おかあさんがいってるころすってのがよくわからないんだどぅ~♪ それをしたらゆっくりできなくなっちゃうのかどぅ~?」 困惑し額に汗を浮かべながられいむりゃは尋ねた。 ザアザアと雨粒が顔を打ち据えるのを意にも介さずれいむは捲くし立てた。 「あたりまえでしょ!そんなこともわからなかったの?ばかなの!? わかったらとっととあのおとこをころすじゅんびをしてね!!」 「……じ、じゃあいやなんだどぅ~」 れいむりゃは、搾り出すように言った。 か細い声だったにも関わらずその声は何故か雨音にかき消されずにれいむの耳にちゃんと届いた。 「は?いまさらなにをいって」 「いやだどぅ~♪だれだってゆっくりできなくなるなんてだめなんだどぅ~♪ひとのだいじなゆっくりをとったらだめなんだどぅ~♪ こらしめるだけでかんべんしてあげるんだどぅ~♪そしたらみんなゆっくりできるんだどぅ~♪」 「ふっざけるなああああああああ!」 れいむりゃの初めての反抗にれいむは激怒した。 「あのおとこはねぇ!まりさの…まりさのだいじないのちを…ゆっくりをうばったんだよ!! あんなにやさしくて!つよくて!ゆっくりしてたまりさのゆっくりおおおおおおお!! だからあのおとこはゆっくりをとられてとうぜんなんだよ!!なんでそんなこともわからないの!? ばかなの!?しぬの!?だいたいまりさみたいなすてきなゆっくりからおまえみたいなばけものがうまれるか! しね!ゆっくりしね!!」 れいむは激昂して喉が裂けて口から餡子が飛ぶほど叫んだ。 それでもれいむりゃは怯まなかった。 「それでもいやなんだどぅ~♪ それよりそいつもゆっくりさせたらさんにんでおとうさんのぶんもゆっくりできるんだどぅ~♪ おかあさんもこれでゆっくりできるにちがいないんだっどぅ~♪ うゅー、こんなことおもいつくなんてれいむりゃはてんさいだっどぅ~♪」 れいむりゃはれいむを説得しようとかそういうことだけでなく ずっとそうしたいと思っていたことをれいむに告げた。 「ゆぐがぎゃああああああああああああああああ!! ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああ!! れいむのゆっくりはおばえどなんがじゃない!!おばえみだいなバゲモノどじゃなぐで まりさとぉ!れいむとまりさのかわいいあかちゃんのさんにんでするはずのゆっくりなんだよおおおおおお!!! もういいもういいもういい!!ぜんぶれいむがやる!!おまえみたいなばげもののぢがらはがりない!! だがらお゛ばえがらゆっぐぢぢねええええ!!!」 怒りで血が上ったためか、それとも雨の湿気のせいか古傷から餡子を噴出し目から餡涙を流して 歯茎をむき出しになるほど歯を食いしばりながられいむはれいむりゃに襲い掛かった。 「や、やめるんだどぅ~☆れいむりゃにたいあたりしたらおかあさんのほうがいたいんだどぅ~♪」 実際その通りだった。 れいむは頑丈なれいむりゃに体当たりするたびに古傷を開かせ、ボロボロになっていった。 それでもれいむは止まらない。 れいむりゃは逃げればいいのにれいむを止めようと何度も羽でれいむを包みこみ、踏ん張った。 その度にれいむは羽を振り払って体当たりをして傷口を大きくした。 「やめるんだどぅ~やめるんだどぅ~♪」 「だばっ!れええええええ!!!」 二匹はもつれ合いを繰り返していつの間にか橋の上まで来ていた。 れいむりゃの必死の訴えも空しく、れいむは突進した。 雨とれいむに体力を奪われたれいむりゃは、れいむの前に立とうとして足を滑らした。 何も居ない空間にれいむは突っ込み、そして雨に濡れた木の板に足を滑らせて橋から落下した。 「ゆっ」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!!!」 初めてれいむりゃの子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔が歪んで 驚愕の表情へと変わった。 れいむりゃはその悪魔の羽を羽ばたかせて川に落下したれいむを枝のような足でリボンを掴んだ。 普段ならそれだけですぐに引き上げられるだろうが 濁流に近い流れの前では流石のれいむりゃでも引き上げることが出来ずに一緒に引っ張られた。 「お゛っおばえのぜいだ…お゛ばえが…」 「お゛があ゛ざんしんじゃだめだどぅ゛う゛!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!」 呪詛を吐こうとして、れいむは初めて見るれいむりゃの必死の形相に目を留めた。 「も゛うっ、ゆっぐり゛ずる゛もぐぞぼっ!な゛いんだよ…! がぼっがぼっ、れい゛む゛のゆっくりばぼっ、まり゛さ゛と」 ガバガバと水を飲みながられいむはれいむりゃに言った。 それでもれいむりゃは言う。 「ぞんなごどないんだどぅうぅうう!おがあざんはれいむりゃとゆっくりすればいいんだどぅ!!」 初めて泣き喚くれいむりゃの顔を見ながられいむは今にも濁流に流されて死んでしまいそうなのに思わず呆れた。 「もうっ……いいよ…おばえっ、にきたいしがぼがっぼ、れいむが…ばかだったよ…」 「だいじょうぶだどぅうう!れいむりゃは!!おかあさんにいっぱいきたえてもらってじょうぶになったから こんなのへっちゃらなんだっどぅうううううううううう!!」 れいむりゃはそう言うと歯を食いしばり白目を剥いて踏ん張った。 れいむの体が川から少し持ち上がる。 口が自ら出たれいむは疲れ果てた声で言った。 「……れいむとまりさのかわいいあかちゃんがほしかったよ、おまえみた」 その時、ずっと引き裂けそうになっていたれいむのリボンが千切れて ジャボンとれいむは濁流に飲み込まれた。 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!? う゛ゅ゛あ゛ああああああああああ!!!う゛ゅ゛あ゛あ゛あああああああああ!!」 あっと言う間に下流まで流されていったれいむを追ってれいむりゃは涙を流し絶望の表情を浮かべた。 その枝のような足には千切れたれいむのリボンが握られていた。 結局れいむが最後に「おまえみたいなばけものとちがって」と言おうとしたのか それとももしかしたら「おまえみたいなゆっくりした」と言おうとしたのか それとも全く違うことを言おうとしたのかは濁流の中に飲み込まれてわからなくなった。 ある晴れた日のことだった。 男は畑仕事に精を出していたが ゆっくりが畑に近づいているのに気付いて眉を潜めて木の棒を拾い肩にかけて近づいていった。 そして、少々様子がおかしいことに気付き厭そうな顔をした。 「何お前…」 「れい☆むりゃ☆う~♪」 れいむりゃと名乗ったそのゆっくりは ゆっくりれいむなのかれみりゃなのかどっちとも付かない みょんな姿でパタパタと男の前を飛んでいた。 「うゅー♪おまえがゆっくりしてるのかおしえるんだどぅ~♪」 「今さっきからゆっくりできて無いよ」 男は心中でお前の姿見てからな、と続けた。 「うゅー♪ゆっくりできないなんてあわれなやつなんだどぅ~♪ おまえなんかれいむりゃにかかればいちっころなんだっどぅ~♪」 調子に乗り切ったことをほざくゆっくりを見ながら男は心の中でさっさと潰そうと決心して棒を振り上げた。 「うっゆー♪でもれいむりゃはやさしいからそんなことしないんだっどぅ~♪ これをありがたくうけとるんだっどぅ~♪」 そう言ってれいむりゃと言うゆっくりは口からどんぐりをぺっと吐き出した。 「……?何これ」 意図を測りかねて男は棒を振り上げた手を思わず止めた。 「それをうめればどんぐりのきがはえるんだどぅ~♪ どんぐりいっぱいおなかいっぱいでふゆもゆっくりできるんだどぅ~♪ れいむりゃにかんしゃするんだどぅ~♪」 「とりあえずクヌギが生長するのに何年かかるか勉強してから出直せ」 「お゛ぜう゛!?」 面倒くさくなって男は棒を振り下ろした。 吹っ飛んだれいむりゃは木にぶつかって、そのまま落ちるかと思いきやよろよろと飛ぶと ゆっくりと背を向けて言った。 「いつかそれでゆっくりできるときがくるんだどぅ~♪ そのときはかんしゃしつつゆっくりするんだどぅ~♪」 「とりあえず二度と来るな」 男の言葉を聞いているのか聞いていないのか れみりゃの帽子とビリビリに破けたれいむのリボンをつけたみょんなゆっくりは森の中へと消えていった。 「…はぁー、仕事しよ」 何だかしこたまやる気を削がれて男は肩を落としながら仕事に戻った。 「うゅー、ゆっくりさせてあげるのってとってもむずかしいんだっどぅ~」 少々ばかりうまくいかなかったことに少し気落ちしながられいむりゃは溜息をついた。 「…うっゆー♪でもおかあさんのぶんまでみんなをゆっくりさせるまでがんばるんだっどぅ~♪ おかあさんがきたえてくれたからこのくらいぜんぜんへいきへっちゃらなんだどぅ~♪」 子どもの落書きみたいに無邪気な笑みを浮かべて、このみょんなゆっくりはまた誰かをゆっくりさせにパタパタと飛んでいった。 このSSに感想を付ける
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『平日のおやつ』 9KB 愛で 虐待 平日だっておやつを食べる *ゆっくりは死にません、歯切れが悪くってごめんなさい *三作品目です、前回の続きみたいな感じです~、それでもよければどうぞ *でも別に前作を読まなくっても問題ないです 『れいむ。あなた可愛いわね~』 このれいむは、お姉さんに買われて一週間目の飼いゆっくりだ ペットショップで銅バッジ、しかも成体のれいむはなかなか買い手がつかず、 先日の半額セールでやっと飼いゆっくりになることができたばかりだった 「ゆっ、ありがとうおねえさん!れいむはかわいいよ!」 銀バッジが取れるほどの知能はないが、元気がありゲス化もしていない普通のれいむだった だが、 『本当にかわいいわ、食べちゃいたいぐらい』 「ゆゆっ?おねえさん、なんだかおめめがこわいよ!」 (はしたないとは思うんだけど、そろそろ限界ね。よし、私は十分我慢したわ!) そう、お姉さんがれいむを買ったのは、決して愛でるためではなかったのだった 平日のおやつ まずは下ごしらえをする お姉さんは手慣れた様子でれいむの体より少し小さめの箱にぎゅうぎゅうと押し込んで動きを止める 『あのね、れいむ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら?』 「やめてね、おねえさんなにするの!?これじゃれいむうごけないよ!?やめてね!」 『あー、叫ばないで壁薄いんだから!ちょっと静かにしてよ』 お姉さんはれいむの口をガムテープでふさいでしまう れいむはまだもごもごと何か叫ぼうとしているが、それを無視してお姉さんは深呼吸をしている 『一度言ってみたかったのよね~、えっと、ゴホン れいむ、おねえさんにあまあまちょうだいね!』 満面の笑みでお決まりのセリフを口にした後、お姉さんは顔を真っ赤にしながら後悔した 『……やばい、恥ずかしい。』 「んんんん?(おねえさんなにいってるの?)」 『ちょ、れいむ止めて、そんな目で見ないでぇ!』 れいむの視線を遮るように手で顔を隠して身悶えるお姉さんが落ち着いたのは、それから約3分後のことだった 一人暮らしで彼氏もいない、ストレスの多い生活を送っているおねえさんをれいむは憐れんだが、今はとりあえず助けてほしかった 閑話休題 『というわけで、、言ってなかったけど私ゆっくりを食べるのが大好きなの!』 もがいても疲れるだけだと悟ったれいむは、目に恐怖をにじませながらおねえさんを見つめ返す お姉さんは今までに飼ったゆっくり達と、その思い出を楽しそうに説明してくれた お姉さんにとっては美味しかったスイーツの話なのかもしれなかったが、れいむにとっては恐ろしい拷問のような時間だった なんとか恐ろしーしーだけは我慢していたれいむだったが、もうその目からはとめどなく涙があふれていた 『はぁ、私なにゆっくりに説明してるんだろう。まあいいわ~とりあえず、れいむには私に食べられてもらうわよ?』 「んんんん!んんん!んんんんー!」 『あら嫌?でもごめんねー、私がれいむを買ったのはそのためなの。付き合ってくれないのなら捨てちゃうしかないんだけどなー』 目を潤ませていやいやと首を振っていたれいむだが、うつむいて何かを考え始める (のらはゆっくりできないよ、でも、むーしゃむーしゃされるのはもっとゆっくりできない……) 「んんーんーんんー!」 『ああごめんね、このままじゃ喋れないよね?』 べりべりとガムテープをはがされて、ヒリヒリする口の痛みを我慢しながられいむは訴えた 「ねえ、おねえさん、おねえさんはあまあまさんがほしいんだよね たしかちかくにこんびにさんがあるから、そこであまあまさんをかってきてれいむといっしょにたべるっていうのは?」 『嫌よ、わたしはゆっくりが食べたいの☆』 あっさりと笑顔で却下される 「ゆゆゆぅ、ゆぅぐぅうううう、ゆわぁーん!れいむ、しにたくないよぉ!でものらもゆっくりできないぃぃ! れいむあまあまじゃないよぉ!むーしゃむーしゃしないでよぉ!どおすればいいのぉ!?」 とうとう泣き出してしまうれいむ そんなれいむに優しく微笑みかけ頭をなでながら、お姉さんは言った 『大丈夫よ、もしもれいむが美味しかったら、絶対に死なせたりしないから』 れいむが泣き止むのを待ってから、お姉さんはれいむにルールを説明した 一つ、傷は必ず治療する 一つ、お飾りには手を出さない 一つ、オレンジジュースを使わなければいけないような致命傷は与えない 一つ、おやつの時間以外は今まで通り普通にペットとして飼う 『あと、できれば暴れたり泣き叫んだりしないでほしいけど、さすがにそこまでは要求しないわ』 むしろ全力でもがいてね☆その方が私がゆっくりできるから そういって笑うお姉さんの顔は言葉の意味はともかくとっても優しそうで、れいむはとうとう首を縦に振ってしまった れいむの合意が得られるや否や、お姉さんは嬉しそうに台所から箸を持ってきた 準備は万端である 『えへへ、いままで全部手づかみだったから、こうやってお箸を使うと緊張するなぁ、えいっ!』 お姉さんはれいむの右頬に箸を突き刺し、ぐりぐりと一口分切り取った ペットショップ育ちのれいむは特に餡子が出てしまうほどの喧嘩をしたこともなく、生まれて初めての激痛に目を向いて耐えるしかなかった ガムテープでふさがれた口の中で、砂糖菓子の歯が欠けてしまうほどに歯を食いしばっている その様子を見ながら一口目をゆっくりと味わっていたお姉さんの顔に、綺麗な笑顔が咲いた 『れいむ、あなた、合格!』 もう一度右頬に箸を伸ばすお姉さんの手を、れいむは絶望的な気持ちで見つめている ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ 自分の中の餡子が空気に触れる痛み、傷口を箸に抉られる痛み、皮が少しずつ千切られる痛み もう耐えられない!見開いた目玉がグリンと裏返り、とうとうれいむが気絶してから、 様子を観察しながらパクパクとれいむを食べていたお姉さんの箸が止まる 『お箸じゃ10口が限界かー、でもこれならダイエットにはちょうどいいかもね。』 食べたりない気持ちを堪えつつ、お姉さんはれいむの頬に水に溶いた小麦粉を塗りたくっていった 『れいむ、おはよう!そろそろ起きてね~』 次の日の朝、れいむは昨夜の悪夢なんてなかったかのようなお姉さんの優しい声に起こされた 『ご飯はいつものところにあるからね、ラジオのスイッチは修理しておいたから、ボールはまた今度ね』 お姉さんは早口でいつものようにれいむに注意を与えると 『じゃあいってきますー』と、 れいむの「行ってらっしゃい」を聞く間もなく慌ただしく仕事へ出かけて行った あまりにもいつも通りの朝だったため、れいむは昨日の夜の出来事は夢だったのだと思おうとした しかし、柔らかいタオルの寝床から動こうとすると、右頬が引きつるように痛んだ その事実に泣きそうになりながら、れいむは空腹を訴える体の為に今日のご飯を食べることにした 『いっただっきま~す』 昨日抉られたばかりの右頬を、畳にこすり付けられるように固定されて、れいむはすでに涙目になってしまっている 今日のお姉さんは、横倒しにしたれいむを太ももに挟んで固定しながら、手に持ったスプーンをれいむの左頬につきたてた 『うーん、意外と弾力があるのねぇ』 しかしスプーンではなかなか饅頭の皮が破れず、れいむは体中の餡子を捏ねくりかき回されるような圧力を感じて吐きそうになっていた お姉さんはれいむを挟んだ足を動かすのがめんどくさいらしく、刺さらないスプーンで何度も頬を抉ろうとしている れいむの頬の皮がゆるゆるになってとうとう破れ目ができた頃には、 中枢餡を揺さぶられ続けたれいむは口の中に湧き上がってくる餡子を飲み込むことに必死になっていた スプーンにすくって一口、昨日よりも少しだけ美味しくなった餡子に満足しつつ、お姉さんは足の間のれいむを楽しむ 昨日と違い一口分の餡子が多いためか、5口程度でお姉さんは満足して今日のおやつの時間は終了した ごく稀に、お姉さんはれいむを朝の散歩に連れて行ってくれたりする 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっくりはねるよ!」 『れいむったら、そんなに走ると転んじゃうわよ?』 普段は部屋から出られないので、れいむは散歩の時間が大好きだった お姉さんの朝ごはんを買いにスーパーへ行くだけの短い道のりだが、途中には小さな公園がある 「ゆぷぷぷぷっ、なんなのぜ?あのゆっくり」 「ほんと、れいむのほうがだんっ!ぜんっ!びゆっくりだよぉ~?」 「かいゆっくりのくせに、いなかものなすがたね?」 「……ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 『もうれいむ、待ってってば~』 リードはつけられていなかったが、れいむは「のらはゆっくりできない」と教育されていたため逃げ出そうとしたことはなかった だから今日も、お姉さんはれいむの後ろを歩いて付いてくる 頑張って跳ねたが、お姉さんは歩いて後ろからついてくる スーパーについたお姉さんはニコニコしながられいむの為にクッキーとオレンジジュースを買ってくれた 頬が再生していないれいむは、怯えたような目でお姉さんの手に持ったストローを見つめている お姉さんも少し不安げな様子で、れいむの目にゆっくりとストローを近づけていく 『やたっ!刺さった!』 目の中に刺さったストローがぐりぐりと動かされ、れいむは自分の目がドロドロぐちゃぐちゃと形を失っていくのを感じていた 溢れてくる涙さえ目玉を崩す速度を速めるばかりだった 夢中になってストローを動かしていたお姉さんだが、れいむの涙が枯れかけた頃にようやくその手を止めた 『いただきます』 ずずずずずずずずずずずずっ まるでシェイクを飲んでいるような音を立てながら、ストローがれいむのおめめを吸い上げていく 瞼を閉じられないように張り付けられたセロテープを憎みながら、れいむは残った目からお姉さんの顔を見つめていた その後、寒天を流し込まれて瞼をセロテープで閉じられたれいむは、眼窩の異物感になかなか寝つけなかった お姉さんは時々とても早く仕事から帰ってくることがある そんな時はとてもれいむに優しくしてくれて、一緒にボールで遊んでくれたり本を読んでくれたりする 今日も早めに帰ってきたお姉さんは、れいむにお土産をくれた 『はいこれ、治りが遅いみたいだからね~』 それは、コンビニで買ってきたのであろうまだ温かいあんまんだった 自分の為にお茶を入れたお姉さんはれいむを膝に乗せて、優しくなでながら自分の分のあんまんを食べ始める れいむも夢中になってあんまんを貪った 『ほら、口のまわり汚れちゃってるわよ?そんなに焦って食べなくっても取ったりしないって』 お姉さんは優しくれいむの口の周りを拭ってくれる れいむは何も言わずに、あんまんを食べていた ガラスの冷たい感触に震えながら、れいむは窓に押しつけられていた 夜だったため、鏡のように少しだけ後ろのお姉さんの姿が見えた お姉さんは、その手にフォークを持っていた れいむはギュッと目を強くつぶると、もう何も感じまいとした しかし、ぷすっと体に冷たい金属が刺さり自分の背中の皮と餡子をごっそりと持って行かれる感覚に、体を震わせて涙を流さずにはいられなかった 歪な凸凹の再生しかかった頬の上を涙が流れて畳の上に小さなシミを作っていく 『………』 お姉さんの顔は、真剣そのもので冷たく、とても怖かった 「ねぇ、おねえさん」 『なあに、れいむったら真剣な顔しちゃって。わたしもう会社いかなきゃいけないから夜にしてねー?』 ばたん 今日もお姉さんはれいむに朝ごはんをくれて、慌ただしく出かけて行ってしまう れいむは閉まったドアを見つめながら、今日も口の中で「おたべなさい」と呟いてみる しばらくして、れいむはくるりと振り返って部屋の中に戻っていく だんだんと豪華になっていく朝ご飯を食べるために そしていつか、お姉さんに食べきってもらうために 過去作 anko4450 『大好き実ゆ』 anko4159 『深夜のおやつ』
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※9割方ゆっくりを愛でてます。 『幻想と現実の境界』 「『やあ、俺は虐待お兄さん』…っと」 ワンルームマンションの一室。 パソコンの前でキーボードを叩く俺は今、ゆっくり虐待のSSを書いていた。 ゆっくりは東方プロジェクトのキャラクターを、憎たらしさと可愛らしさの同居したような顔にデフォルメしたAAだった。 それがいつの間にか色がついて絵となり、さらには設定が継ぎ足され、 今ではオリジナルのキャラとは別の不思議生物としてキャラが独り立ちしている。 俺はネットを徘徊する中でゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が、 「ゆっくりしていってね!!!」 と叫ぶCGを見つけ、何とも言えないモヤモヤした感情を覚えた。 そして、よく見たら可愛いんじゃね? →泣き顔とかそそるなぁ。 →不幸に死んでいくSSがたまらん! とまあ、こんな感じで今日もゆっくり虐待系サイトに入り浸りである。 その中で多く見られるゆっくり虐待SSを読むうちに俺も書きたくなった。 なので今まさにテキストエディタ開き、SSに初挑戦というわけなのだ。 オンラインゲームで鍛えたタイピングで徒然なるままに言葉を綴る。 『俺は今、虐待するためのゆっくりを探しに森に来ている。 虐待お兄さんはゆっくりを虐待していないと寂しくて死んでしまうのだ。 森の中に入ると早速ゆっくりの家族を見つけた。 母親れいむが一匹で、母親まりさが一匹。あとは大小合わせて十匹程度の子供ゆっくりの家族だ。 』 さて、次はどう書こう。 そろそろセリフかな。 まずはお兄さんが「やあ、みんなゆっくりしてるかい?」みたいな事を言って、それに対する答えは… 「ゆっくりしていってね!!!」 そう、それだ。 いや「ゆっくりしてるかい?」の返事にそれはおかしい。 …じゃなくて。 おかしいのはもっと別のことだ。 今さっき背中側から声が聞こえなかったか? 間違えじゃなければ「ゆっくりしていってね!!!」と。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺は二度目のその声に振り向く。 声がした方向はベッドの辺りから。そのベッドの上にはバレーボールほどの丸っこい物体。 もちもちした肌、赤を基調とした白いレース付きのリボン、そのリボンで後ろ髪を束ねている。 そしてどこか誇らしげで、憎たらしさと可愛らしさの同居したような太ましい顔。 どこからどう見ても目の前のこいつはゆっくり霊夢だった。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺と目が合ったれいむは満面の笑みを浮かべて挨拶してきた。 それからこちらの反応を期待して待っている。 「え、あ…どうも」 突然のことでうまい返しが出来るわけもなく、頭が真っ白の俺はそんな挨拶で返した。 そして黙って見つめあう俺とれいむ。 何を思ったのかれいむはポッと頬を染めた。 (…殺虫剤はどこだっけな。 いやいや、ここは透明な箱をだな) 「くらいー、なにもみえないよー。だしてー」 都合よく透明な箱が家に置いてあるわけもなく、 前の引っ越しで残った段ボールをれいむに被せた。 ダンボールに閉じ込められたれいむは何も見えないようでベッドの上をウロキョロしていた。 それを見ながら俺は情報を整理する。 まずは自分の頬を抓る。 痛い。どうも夢じゃないらしい。 変な薬。覚えている限りやってはいない。 うーん、一体どこから出てきたんだこれは。 ネットでのゆっくりはそれなりに会話も可能なはずだから話してみるか。 というわけでれいむを閉じ込める段ボールを取払ってあげた。 「ゆっ! だしてくれてありがとう!!」 段ボールを除けるとそこにはやはりれいむがいた。 そしてまず一番に、閉じ込めた本人である俺にお礼してきた。 悪口を並べてくるのかと思ったが、どうやらSSでよく書かれるようなゲスゆっくりでは無いようだ。 それはそうとベッドの上で弾むれいむに話しかける。 「えーっと、れいむ?」 「ゆー?」 「君はどこから来た?」 「ゆっくりしたところからきたよ!!」 「…いつからここに来た?」 「さっきからだよ!!」 「ていうか本物??」 「れいむはれいむだよ!!」 よく分かった。 質問しても分らないことがよく分かった。 考えてみればこいつがゆっくり霊夢であることが事実ならばそれで十分なのだ。 ゆっくり虐待に目覚めた俺へのプレゼントだと思えばいい。 ならば早速。 「れいむ、遊ぼうか」 「あそんでくれるの!? いっしょにゆっくりあそぼうね!!」 まずは強度を測るために軽く殴ろうと思う。 最初から足を焼いたり目を刳りぬいたりとハードな虐待をやるつもりはない。 というよりもいきなりそんなことする勇気はない。 「なにしてあそぶの? れいむはゆっくりしたあそびがしたいよ!」 「わかった。じゃあそこでじっとしてろよ?」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 ベッドの上でれいむは期待の眼差しを俺に向けている。 何を考えているのかまでは分らないが、俺との遊びを楽しみにしているのは間違いない。 俺は拳を握ってれいむを見据える。 後は殴るだけ。 そう、ただ殴るだけ。 拳を前に突き出すだけなんだけど… 「ゆっくりわくわくしてるよ!!」 できないだろ。普通に考えて。 せめてこいつがいきなりおうち宣言するようなゲスれいむだったなら遠慮なく殴れたと思う。 でも目の前にいるこいつは純粋に俺と遊びたがってるだけ。 それを大した理由もなく殴りつけるなんて俺には出来なかった。 なので俺は手をそっとれいむの頬に添える。 それから親指と人差し指でつまんで抓るだけにした。 「ゆゆ、おにーさんちょっといたいよ? ゆっくりしようよ!」 「おお、柔らけー」 れいむのホッペはもちもちホッペだった。 残る片方の手も使ってれいむの両頬をつつき、つまみ、そしてこねくり回して遊んだ。 五分ぐらいそうして遊んでいるとれいむが涙目になってきたのでそこで止めた。 お詫びに頭を撫でてやると揉み上げ部分のあれを犬の尻尾のようにパタパタさせて喜んでいた。 その時俺は、そんなれいむを不覚にも可愛いと思ってしまった。 同時に決めた。こいつをペットにしようと。 虐待は空想の中だけでいい。 理由はどうあれ実際に現れたれいむは普通に可愛がろう。 …まあ、意地悪程度なら頻繁にするつもりだが。 とにかくそうと決めた以上ゆっくりの飼い方を考えないといけない。 幸いれいむはちゃんとお喋り出来るので分らないことは直接聞けばいい。 「れいむ、お前ってどんな食べ物が好きだ? 何か食べたい物あるか?」 「ゆっ! れいむはあまいのがだいすきだよ!!」 「ふぅん、じゃあ甘いのを用意しておかなきゃだめか。 ちなみに大食いだったりする?」 「ゆー? れいむはたべなくてもゆっくりできるよ!!」 「ふーん、そうなのかー…ってそうなのか?」 畑荒らしたり、飢えた末に共食いしたりと食欲溢れるイメージがあったので驚きだ。 いや、でも食べなくてもって何だ。食事不要ってことか? もう一度確認する。 「本当に、ずっと何も食べないでも生きてられるのか?」 「ゆっくりしていってればもんだいないよ! れいむ、ゆっくりしてるからだいじょうぶ!!」 そういうもんなのか。 でもまあ、食事のときは一緒に何か食べさせてあげるとするかな。 なので今度プチシュークリームでもまとめ買いするとしよう。 次に寝床だ。 同じ布団や床で寝られると間違って潰しかねない。だからちゃんと寝床は作る。 とりあえず段ボールを寝床兼れいむの部屋にしよう。 自由に出入りできるように段ボールの側面のうち、一つの面を切り取る。 で、プチプチの付いたエアクッションを段ボールの内側に敷き詰めて貼り付ければ完成だ。 少し狭いが寝る分には問題あるまい。 「よし、入っていいぞ」 「ゆっゆっゆっ」 完成したのでベッドの下に潜り込んで遊んでいたれいむを呼ぶ。 呼ばれたれいむはダンボールハウスに飛び込んだ。 「ゆゆっ!? ぷにぷにしてすっごくゆっくりできるよ!!」 エアクッションの感触が気に入ってくれたらしい。 いつか使えるかもと取っておいたが、こんなところで役に立つとは。 「お前の部屋はそこな。寝る時はそこで寝るんだぞ?」 「ゆっくりわかったよ! おにーさんありがとう!」 その後れいむは段ボールハウスの中でしばらく転がっていた。 夕食。 俺はレトルトカレー、れいむはワインのつまみとして冷蔵庫に入っていたチーズを食べた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 ちなみにこれは俺がれいむにリクエストしたセリフだ。 食事が要らないゆっくりだからなのだろう。リクエストするまでは行儀よく食べていた。 飲み込んだ後は「とってもゆっくりおいしいよ!!」なんて言っていたが、 せっかくゆっくりが目の前にいる以上は定番のセリフは聞きたい。 夕食後はれいむと適当に遊びつつ、生活について教えてあげていた。 といってもここには入るな、ここには乗るな、とそんな程度のことだ。 後は休日以外、俺が朝と夜しか家にいないことなんかも伝えた。 「ゆぅ、さびしいよ。まいにちおにーさんとゆっくりしたいよ!!」 なんて嬉しいことを言ってくれたが、ペットのために会社を休むわけにもいかない。 だからここはれいむに我慢を覚えてもらうしかない。 胡坐をかいて座る俺の周りを、「いっしょにゆっくりしたい」と跳ね回るれいむを捕まえる。 で、頭を撫でていいこいいこしてあげると機嫌が直ったのか、 「ゆっくりがまんするよ!!」 「よしよし、留守番頼むぞ」 「ゆっくりおるすばんしていくね!!」 夜中、21時。 れいむはウトウトと眠たそうなので段ボールの部屋に帰らせて眠らせてあげる。 …疲れた。 れいむの相手をするのは子供の相手をするのに似ていて、ちょっとした保護者体験だった。 慣れないので対応に困ることもあった。 でも、れいむは構ってやればそれだけで喜んでくれた。 こいつはいいれいむだ。 殴らないで良かった。 寝ているれいむの頭を撫でる。 ―と、ここで思い出す。 虐待スレの更新しないと。 今日はどんな作品が上がってるかな。 チェックチェック。 おお、無垢ゆっくり虐めか。この人の書くゆっくり虐めはたまらん、ハァハァ。 うほぉ、こっちはいい制裁作品。登場するゆっくりの下種っぷりとその崩れていくのがすっきりー!! おっと画像もアップされてるじゃないか。 …んほぉぉぉ!! こいつはいい画像! 右クリック→名前を付けて保存のコンボ確定だな。 そうして俺の夜は更けていった。 俺とれいむの生活は実にゆっくりとしたものだった。 朝はれいむの「ゆっくりしていってね!!!」で起き、 一緒に朝ご飯を食べた後はれいむに見送られて出勤する。 帰りは玄関で待っていたれいむが笑顔になって飛びついてきた。 俺はれいむのためにおもちゃを買ってあげた。 ゴムボールと猫じゃらしだ。 「ゆー? ゆぅー?」 れいむは興味深げに買ってきたおもちゃを見ている。 なので俺はゴムボールを部屋の向こう側に投げてみた。 「ゆっ!」 れいむはボールに向かって駆け出した。 そしてボールを咥えて俺のもとへと持ってきた。まさに犬。 「おにーさん、おとしものだよ!! ゆっくりなくさないでね!!!」 「ははは」 れいむ曰く落し物らしい。 もう一回投げてみる。 「ゆゆっ!?」 れいむは再び駆け出す。 そしてボールを持ち帰る。 「おにーさんおとしものひろってきたよ!! こんどはゆっくりきをつけてね!!」 「おー、よしよし。いい子だ」 「ゆっ、れいむいいこ!!」 褒めてやるとれいむは誇らしげに胸、いや顎を張った。 そんなれいむに今度は猫じゃらしを差し出す。 で、目の前で振る。 「ゆっ? ゆっ? ゆゆゆっ??」 目の前でパタパタと揺れる猫じゃらしに機敏に反応するれいむ。 「お、おにーさん! すっごくゆれてるよ! ゆれてるよ!!」 「二度言わんでいい。ほれ、捕まえてみな」 「ゆっくりやってみるよ!!」 れいむがやる気になったようなので俺は腕を上げる。 猫じゃらしは自然とれいむを見下ろす位置に来て、れいむはジャンプしないと猫じゃらしを捕まえられなくなった。 「ゆっ! ゆっ! …ゆっ!!」 ジャンプしてパクつこうとするれいむを猫じゃらしの先を揺らしながら避ける俺。 れいむは何度も跳ねて猫じゃらしを追う。 「なんでよけるの! ゆっくりつかまえたいよ!!」 「捕まえないとナデナデは無しだぞ」 「ゆゆっ! それはやだよ! なでなでされたいよ!!」 結局そのあとれいむは猫じゃらしを捕まえられず泣き出しそうになったので、わざと捕まえさせてあげた。 その時やたらと勝ち誇った表情をするのでデコピンをプレゼントしてあげた。 そういえば、ゆっくりに対して一度やってみたかった事がある。 サイトで見かけるゆっくりは揺さぶると発情し、「すっきりー!!」の声と共にオーガズムに達する。 それをやってみたかったのでれいむを捕まえる。 「ゆっ、おにーさん たかいたかいしてくれるの??」 「いやこうする」 バレーボールサイズの、中に餡子が詰まってる割には軽いれいむを上下に揺さぶる。 なるべく小刻みに早く揺さぶるのだが、これは案外疲れる。 最後まで持ってくれ俺の腕よ。 「ゆっゆっゆゆゆゆゆゆゆゆ」 揺れに合わせて面白い声を出す。 しばらく揺さぶると瞳がトロンととろけてきた。 「おにーさぁん、なんだか、ゆっくりできるぅよぉ…!」 食事が要らないゆっくりだから性欲もないかもと思ったがそうでもないらしい。 俺の与える揺れに感じ始めたようだった。 おお、これこれ。この顔だよ。 ネットで見た画像で、携帯のバイブ機能で感じてるれいむのあの顔だ。これが見たかったんだよ。 あともう少し揺らせばすっきりするはず。 「ゆ、ゆゆっ! すっきりしそうだよぉ、ゆゅーん!!」 「OKまかせろ!」 ラストスパートだ。激しくれいむをシェイクする。 そして程なくして… 「すっきりー!!!」 れいむはとても爽やかな笑顔ですっきりした。 本当に良かった。 何が良かったって「んほおおおおおお」の方じゃなかったことさ。 これ以降、れいむは毎晩のすっきりを求めるようになった。 何かエロいけどこれはあくまでペットとのコミュニケーションの一つだ。 ペットとのコミュニケーションなんです。 数日経ったある夜。 帰宅して玄関で待っていたれいむを胸に抱えながらリビングに入ると、 何かフローリングの床が綺麗になっていた。 俺はあまり頻繁に掃除する人じゃないので床には埃やら何やらが結構あったはずだ。 「れいむ、もしかして掃除してくれた?」 「ゆっくりそうじしたよ!!」 頼んでもいないのに掃除してくれるとは。嬉しいことだ。 俺のいない部屋で一人掃除するれいむを思い浮かべる。 … …… 「ゆゆっ、おにーさんのためにそうじするよ!!」 遊ぶ相手もなく、ゴムボールだけで遊ぶのにも飽きたれいむは掃除をすることにした。 お兄さんのためもあるし、目線の低いれいむには床の埃が目立つのだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」 床に落ちた埃、髪の毛、食べ物のカスなんかを次々に舐めていくれいむ。 ちゃんと床を舐めて綺麗にするのも忘れない。 「これでゆっくりできるね!!!」 …… … まさかな。 今のは妄想に過ぎない。 いくら何でもゴミを食べるなんて、ないよな。 「ゆっくりおいしかったよ!!」 「何が…って言わないでいい。お願いだから言うな」 「ゆぅ?」 後で分かったことだが、れいむのために置いておいた昼飯のことだったらしい。 ちなみに掃除をどうやったのかは聞かずにおいた。 平和な日々は続く。 今日もゴムボールを投げてれいむに拾ってこさせて遊んでいた。 「ゆっ…ゆっ…」 投げた先でゴムボールに寄りかかって遊んでいる。 ただ拾って持ってくるのに飽きたのかな。 「ゆっー」 しばらくするとれいむはゴムボールに体をぶつけてこちらへ転がしてきた。 サッカーならぬゆッカーか。 ボールを俺の足元まで運んだれいむは「すーり、すーり」と体を擦りつけてきた。 このままゆっくりしてもいいけどもう一回ゆッカーをみたいと思った俺はまたボールを投げる。 「ゆっ、ゆっくりいくよ…」 「ん?」 俺はその時初めてれいむがどこかおかしいことに気付いた。 どうもれいむに元気がない。 そういえば今さっき俺の足に体を擦りつけたとき、甘えてくると言うよりもすがるようでもあった。 もしかしてボールを転がしてきたのも口に咥える力が出なかったからなのか。 「れいむ待て」 「ゆ?」 れいむを持ち上げる。 顔をよく見るとやはり元気が少しないようだった。 「お前もしかして風邪か?」 「れいむはゆっくりだいじょうぶだよ!」 嘘だ。短い付き合いだがそれぐらい分かる。 「体が辛いなら言えよ。な?」 「ゆぅ、ちょっとからだがおもいよ」 「やっぱり。 とにかくれいむはゆっくりしろ」 れいむを寝床に置いてあげる。 「もうちょっとおにーさんとあそびたいよ」 「いいから。明日は俺も休みだ。 元気になったらいっぱい遊んでやるから今日は寝とけ」 「ゆー、ゆっくりわかったよ」 まさかゆっくりが風邪を引くだなんて。 半分妖精みたいに思ってたけど中途半端に生物っぽいやつだな。 しかしどうする。 人間の薬は効くのだろうか。 いや、体が餡子のこいつに効くとはとても思えない。 とりあえず冷えピタでも貼ってやるか。 「れいむ、じっとしてろよ」 「ゆぅ?」 言う事を聞いてじっとするれいむの前髪を上げて冷えピタを貼ってあげる。 自分に貼るならともかく人に貼るのって大変。それも片手で。 少し苦労したけどれいむのおでこに冷えピタを貼った。 「ひんやりー!」 一瞬爽やかな笑顔になったが、すぐに気だるそうな顔に戻った。 この表情は本能的なものらしい。 「とにかく寝て早く元気になろうな」 「ゆっくりー…」 この日は俺も早く寝ることにした。 あ、ゆっくり虐待サイト…今日はいいや。 そんな気分じゃない。 翌朝になってもれいむは元気がなかった。 食事は必要ないと言っていたが、回復するには栄養が必要だろう。 「ほら、口開けろ。オレンジジュースだぞ」 「ゆあーん」 大きく口を上げて見上げるれいむにオレンジジュースを飲ませる。 これでちょっとは元気になってくれるといいのだけれど… 昼間は栄養剤を飲ませた。 「おにーさんみてみて!」 「ん?」 「きのうまでのれいむ!」 れいむはいつもの顔をする。 「きょうからのれいむ!」 顔を上向きにして朗らかな笑みを浮かべた。 あー、そんなネタもあったな。こいつもそれを備えていたのか。 とにかくこれの示すところは元気になったってことだろうか。 栄養剤は効いたのかもしれない。一瓶300円の力は計り知れない。 それかられいむは自分は大丈夫だと言うので、少しの間だけという条件で自由に行動させている。 だがれいむを見てみると、飛び跳ねた時の飛距離も高さも衰えていた。 元気になったと思ったが一時的なものだったようだ。 「おにーさん いっしょにゆっくりしようよぉ! れいむね、ひもをひっぱりっこしたいの!!」 元気に俺を遊びに誘うれいむ。 その小さな体の動きは固く、瞳は微かに震えていた。 どう見ても空元気だった。 「れいむ、遊びはまた今度な」 「ゆぅぅ…れいむげんきだよ! いっぱいあそべるよ!!」 元気を示そうとその場で飛び跳ねるれいむだったが、いつもの半分程度の高さしか飛べていなかった。 れいむ自身も無理している自覚はあるのだろうが、それでも必死に俺と遊ぼうと叫ぶ。 だが俺はれいむを寝床に運んでタオルケットをかける。 「これ以上悪くなったらゆっくり出来ないじゃないか。 だから午後は寝るんだ」 「ゆぅ、でもおにーさんとゆっくりしたいよ…」 「あまり心配掛けさせないでくれ」 「ゆ…」 れいむは俯く。 心配掛けさせないでくれ、なんてずるい言い方だったかな。 でもれいむは休ませないといけないんだ。 とはいえどうしよう。 何をすればれいむは治るんだ? そもそも何の病気なのか、病気であるのかすら分からない。 人間なら病院に連れていける。 でもれいむは一般人から見れば動く生首でしかなく、本質は饅頭だ。 だかられいむは連れていけないし、意味があるとも思えない。 病院に連れて行ってもし治ったとしても今までのように一緒に暮らせなくなる気がする。 「…!」 俺はPCの電源を立ち上げる。 何かよい解決策はないかと俺は久しぶりにゆっくりに関するHPを閲覧するのだ。 結局、ゆっくりの病気について役立ちそうな情報は見つからなかった。 しかしヒントというか試そうと思う方法は浮かんだ。 俺はスーパーで大量の饅頭やモナカを買ってきた。 れいむの中身は餡子、その餡子を食べさせれば治るかもしれない。 いくつかの買ってきたお菓子の中にある餡子を取り出してれいむに差し出す。 「ほら食べろ。れいむの好きなあまあまだぞ」 「ゆっ、たべるよ。おにーさんありがとう」 そう答えるれいむの声は力ない。 時間が経つほど悪化してるようだ。 早く何とかしないと、俺は焦る。 掌に乗っけた餡子をれいむの口の前まで持っていって食べさせる。 「ゆむ、ゆむゆむ…」 れいむ餡子をゆっくりと咀嚼する。 しかし… 「ゆげぇ…」 吐き出してしまった。 「れ、れいむ…」 食事も出来なくなっている。 れいむは真っ青な顔をして吐きだした餡子を見つめたいた。 「ごめ、なさい…おにーさんが、くれた…のに」 れいむは泣き出してしまった。 「悪くない。れいむは悪くない」 れいむの頭に手をポンと乗せる。 餡子を食べることも出来ないなんて…これでは悪くなる一方だ。 どうすればいいんだ。 「おにーさん…れいむ、もうゆっくりできなくなるよ」 れいむは自分の死を悟ったのか、そんな事を言い出した。 「ゆっくりしていってね おにーさん」 「馬鹿! そんな事言うな!」 くそ…絶対にれいむを死なせてたまるか。 何か、何かいい手は無いのか。 俺はゆっくりに関する情報を頭に巡らせ、れいむを救う方法を考える。 餡子を食べれば復活するんじゃないか。 そう思ってたのに食べることが出来なかった。 今日買ってきた新鮮な餡子。 それをどうにかれいむに取り込ませることができれば… ここで俺は一つの案が頭に浮かんだ。 (食べられないなら俺の手で餡子を入れ替えればいいんじゃないか?) 手術のようなものだ。 れいむの体を切り、中の餡子を俺の買ってきた新鮮な餡子に取り換える。 体内の餡子が大量に無くならなければ死なないらしいからちょっとずつ入れ替えれば大丈夫なはず。 普通は考えられない異常な方法。 ゆっくり虐待サイトに入り浸っていたから思い付いたのかもしれない。 確かこれに似た方法で治ったなんて作品もあった気がする。 問題はこの方法はれいむを傷つける必要があること。 れいむを殴ることすらできなかった俺に出来るだろうか。 そして何より、大事なペットの痛み苦しむ姿を見て途中で躊躇しないだろうか。 「おにぃさん、れいむはもうゆっくりするね…」 「!!」 俺は間違ってた。 傷つける? 痛み苦しむ? 馬鹿言え。れいむが死んだらそれまでじゃないか。 俺に考えられる最後の手はこれだけ。 ならば最善を尽くすしかない。 「ゅ? どこにつれていくの…?」 「れいむ、今助けてやるからな…!」 俺はれいむを風呂場へ持っていく。 さらには買ってきたお菓子とスプーン、それとビニール袋。 後は…包丁だ。 切るのはれいむの後頭部。 髪の毛が邪魔だが手術中にれいむの顔を見なくて済むし、後で傷も目立たない。 「動くなよ?」 「なにをするの? ゆっくりできる?」 「ゆっくりするための手術だ。痛いだろうけど我慢してな」 「いたいの、いやだよ…ゆっくりさせて」 「元気にしてやるからな」 俺は包丁を持ってれいむの後頭部に添える。 後はこの刃を刺し込むだけ。 「ゆ"っ!?」 ズブリと生々しい感触が包丁を持つ手にも伝わる。 「い"だい"よ"っ お"に"い"ざんい"だい"い"い"!」 俺は黙ってれいむの後頭部の皮を縦に切る。 「あ"あ"あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"!!!!」 どれほどの痛みなのか。 今までにないほどの大声をあげるれいむは体をくねらせて逃げようとする。 「動くな。危ない」 「い"だい"よ"おぉ! おにーざんやめでぇ!」 「くっ」 俺はひとまず包丁を置くとれいむを持ち上げた。 そして胡坐に似た体勢で泣き叫ぶれいむを太股で挟んで固定する。 それでもまだもがくれいむだが左手で頭を押さえるとほとんど動けなくなったようだ。 再び包丁を手にする。 今度は縦の切り傷の両端から直角に右へと刃を通す。 ちょうど正方形のうち、右の一辺を除いて皮を切らせた状態だ。 それかられいむの皮を扉を開くように剥がして開いた。 剥がした先には真っ黒なれいむの中身、餡子が詰まっているのが見えた。 あとはこの中身を入れ替えるだけ。 スプーンを手に取り、れいむの餡子を掬いとる。 「ゆぎゅぅぅ!! いぢゃいいいい!!! ゆぎぃぅぅぅぅううう!!!」 れいむは聞いてるこっちも痛くなるぐらい苦しそうな声を出し続けている。 心が締め付けられるようだ。 でもここまで来て止めるわけにはいかない。 スプーンで餡子を掬ってビニール袋に入れていく。 何回か掬ったところで買ってきたお菓子の餡子を代わりに入れる。 「ゆぎゅっ、ゆ"ぶっ、ゆ"っ」 「もうちょっとだから。もうちょっと我慢しろよ」 れいむの中身を総入れ替えするつもりはない。 中心には大事な餡子があるというし、目や歯の周りとなると顔の形に関わってくるので下手に手を出せない。 なのでまずは後頭部や口の奥の餡子を入れ替える。 それだけやれば新鮮な餡子を十分取りこめるはずだ。 そうしたらきっと元気になってくれるはずだ。 俺は作業を続けた。 何度も何度もれいむの頭にスプーンを刺し込んで餡子を取り除く。 その代りに餡子を詰め込んでいく。 「ゆっぐりざぜで…もうゆるじで…おにーざん、ゆっぐりじよう、よ"」 痛覚がマヒしたのか、れいむは悲痛な叫びを上げなくなった。 その代りに何度も何度も同じことを繰り返し口に出している。 「ゆっくりしたい」「ゆるして」「ゆっくりしようよ」 ただそれだけを繰り返す。 しばらくするとそれも言わなくなった。 それでも頭にスプーンを刺し込むと小さく「ゅ"っ」と声を出していた。 きっと叫び疲れたのだろう。 「ごめんな。もうすぐ終わるからな」 買ってきたお菓子の餡子はもう無くなった。 後は後頭部に開いた皮を閉じて傷を塞ぐだけだ。 "小麦粉を水で溶いたもの"がいいらしいが用意していなかったので買ってきた饅頭の皮で代用する。 同じ饅頭なら親和性も高いはずだ。 饅頭の皮を水で濡らして伸ばす。 それから後頭部に出来た切れ込みに塗りつけていく。 これで手術完了だ。 「終わったぞれいむ。痛くしてごめんな」 太股の間かられいむを解放して話しかける。だが反応は無い。 怒って無視してる? いや怒ってるなられいむの場合、感情のままに俺に怒りつけるはず。 じゃあ寝てるのかな。 時計を見る限りだと30分近く苦痛を味わったことになるのだ。 それは体力をかなり消耗しただろう。 俺はれいむを持ち上げてこちらに顔を向けさせる。 寝顔のれいむを想像していた俺はれいむの顔を見てゾッとした。 れいむは目を開いていた。しかし瞳に輝きがない。 目の前で手を振るが、その瞳は動かなかった。 「嘘だろ…」 まさか死ん…だ…? いや、そんなはずがあってたまるか。 「れいむ、おいれいむ! 返事しろよ…!」 「………」 反応はない。 れいむは瞬きをしない。 口も一文字に閉じたままだ。 プニプニの頬は弾力を増して少し硬い。 髪はバサバサ。 そして何より、れいむの体は冷たかった。 「違う。 違う違う違う!!!」 れいむは死んじゃいない。 死んでるわけがない。 だってゆっくりがこの程度で死ぬわけないじゃないか。 「…そうだよ違うんだ。 何を早とちりしてるんだ俺は」 れいむはきっと一時的に仮死してるだけなんだ。 新品の餡子を取り込んばかりだからこうなってるだけなんだろう。 目を覚ませばきっと元気になって笑ってくれる。 だからその時まで安静に寝かせてやろう。 俺はれいむを段ボールで作った寝床に運んで寝かせてやる。 「ゆっくりしていってね、れいむ」 れいむが目を覚ましたらまず痛い思いさせたことを謝ろう。 それからたくさんの甘いお菓子をご馳走する。 後はれいむが飽きるまで一緒に遊ぼう。 とにかく今日は疲れた。 まだ日も暮れてないけど寝よう。 俺はれいむとの幸せな日々を思い描いて眠りについた。 それから一年。 朝。 電車の時間が迫ってる。 急いで支度して俺はれいむに呼びかける。 「今日はちょっと遅くなるからな。 だからお昼ごはんの横に夕飯も置いておいたぞ」 れいむはいつもの表情で俺の言葉を聞く。 「じゃ、帰ったら一緒に遊ぼうな。 何して遊ぶか考えておいてくれよ」 れいむは表情を変えない。 冷蔵庫の中のれいむは一年経った今でも同じ表情のままだった。 いや、何度か腐った部分は新品と取り換えているからその度に多少変わっているが。 「それじゃあ、行ってくるな。 良い子に留守番してろよ」 「………」 俺は冷凍庫を閉じると後は無言で家を出る。 あれから結局れいむは動き出すことはなかった。 元々そうであったかのようにピクリとも動かない。 でも俺は毎日声をかけ続ける。 いつかきっと返事をしてくれる。 そう信じて。 れいむは決して目を覚まさない。 ただの饅頭が喋ったり動いたりするはずがないのだ。 これはれいむをペットにした青年にもれいむ自身も分からなかったことだが、 れいむの病気は通常の病気とは違った。 幻想の生物であるれいむは現実の物を取り込み過ぎた。 れいむの食べたお菓子や飲んだジュースはれいむの中で餡子へと変えられる。 それはれいむの元々内包していた幻想の餡子ではなく、現実の餡子。 現実の物を食べれば食べるほど現実の餡子は幻想の餡子と入れ替わった。 徐々に体内に溜まっていく現実という名の毒。 それこそがれいむを衰弱させた原因だった。 れいむは食事が不要なのではなく、食事をしてはいけなかったのだ。 体が現実の饅頭と化していったれいむはまず身体能力が削られた。 そのまま力を失っていったれいむは次に物を食べることが出来なくなった。 青年はそこで何を思ったのか、れいむに現実の餡子を詰め込んだ。 青年はその事実を知らない。知りようもない。 だがれいむを衰弱させたのも、止めを刺したのも間違いなく彼だった。 幻想と現実の境界。 れいむはまさにその境目にいた。 だが現実側に傾いたれいむは現実の法則に従って物言わぬ饅頭となった。 ただそれだけのこと。 「れいむ、今日は猫じゃらしで遊ぼうな。 目の前にあるからすぐに捕まえられるぞ。 捕まえたらナデナデしてやるからな」 「………」 「他の遊びがいいのか。じゃあボールで遊ぶか? なあ、れいむ……」 終 by 赤福 このSSに感想を付ける
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『可哀想なゆっくり』 34KB 制裁 自業自得 飼いゆ 野良ゆ ゲス 希少種 現代 17作品目。少し真面目になって書いてみました。 注意書きです。 1 希少種が出ます。 2 酷い目にあうゆっくりと、そうでないゆっくりがいます。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?やめてえぇぇぇぇっ!!」 ……そこは、とある街中の、とある一軒家。 その一軒家のリビングの中に、甲高い悲鳴が響き渡った。 「やめてえぇぇぇぇっ!!なんでこんなことをするのおぉぉぉぉっ!?」 「うるせぇ……!」 そのリビングでは、一人の青年が、一匹のソフトボールサイズのゆっくりれいむを踏み付けていた。 そのれいむは、顔面のあちこちが腫れ上がっていて、歯もボロボロに折れていた。 「……もう一度聞くぞ。あれは、お前がやったんだろ?」 青年は、床の一ヶ所を指差した。 ……そこには、饅頭の餡子や皮が散乱しており、その傍にズタズタに踏まれて潰された、赤ゆっくりの帽子が転がっていた。 その帽子には、飼いゆっくりの証である、銀バッジが付いていた。 「ちがうよおぉぉぉぉっ!!れいむはなんにもわるくないんだよおぉぉぉぉっ!!ほんとうだよおぉぉぉぉっ!!しんじてよおぉぉぉぉっ!!」 「黙れ、この糞饅頭が……!」 れいむは青年に必死にそう訴えたが、青年は全く信用していないようだった。 「なんでぇ……?なんで、れいむばっかり、こんなめにあうのぉ……?」 れいむは、青年に全く信じてもらえない事が、とても悔しかった。 今思えば、自分はとても不遇な立場にあった。 自分は何も悪くないのに、いつも自分が悪者扱いで、蔑みの眼差しで見られていた。 どうして、こうなってしまったのか。 れいむは涙をボロボロと流しながら、自分の不幸で短いゆん生を思い返していた。 ~回想開始~ (ゆぅ……、ゆぅ……) れいむは今、これからの幸せなゆん生を夢見ていた。 「ゆっ……!もうすぐうまれそうだよ!」 自分の下の方から、母親の声が聞こえていた。 れいむは今、母親のゆっくりの頭から生えている茎に実っていた。 (ゆ……、ゆっくちうまれりゅよ……) れいむがそう思ったのと同時に、れいむの体がプルプルと震え、やがてポトリと地面に落ちた。 「ゆ……」 れいむが目を開けると、目の前に、自分と同じれいむ種の、母れいむがいた。 「ゆぅ……!おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 母れいむはれいむの誕生に嬉し涙を流しながら、れいむにそう言った。 (ゆっ……!おきゃーしゃんに、とっちぇもゆっくちした、あいしゃつをしゅるよ……!) れいむは母れいむに対し、生まれて初めての挨拶をしようと、口を開き、大きく息を吸い、そして……。 「ゆゆ~ん!きゃわいくっちぇ、ごみぇんにぇ~!!」 自信に満ち溢れたドヤ顔で、そう挨拶した。 決まった。 とてもゆっくりした挨拶が出来たと確信したれいむは、そう思っていた。 ……が。 「ゆぅ……?おちびちゃん、なんか、おちびちゃんのあいさつは、すこしへんだよ?」 母れいむの対応は、れいむが予想していたものと全く真逆のものだった。 「ゆっ……?」 「おちびちゃん、あいさつはこうするんだよ。……ゆっくりしていってね!……ほら、やってみて」 「ゆ……?にゃんで……?にゃんで、れいみゅのこと、へんっていうにょ……?」 自分の挨拶で、歓喜の涙を流してすりすりしてくれると思っていたれいむは、母れいむにそう聞いた。 「れいみゅ、とっちぇもきゃわいいでしょ……?にゃんで……?」 「おちびちゃんはとってもかわいいよ!でもね、そのあいさつはゆっくりできないんだよ。ゆっくりりかいしてね?」 「ゆ……、ゆっくち、りかいしちゃよ……」 れいむは、母れいむのその返答に釈然としないものの、可愛いという事は認めてもらったので半ば良しとした。 「ほら、おねーちゃん!おねーちゃんも、かわいいいもうとにあいさつしてね!」 母れいむは、れいむの後ろを見ながらそう言った。 「ゆ……?おねーちゃん……?」 一体誰の事を言っているのか分からなかったれいむは、後ろを振り向いた。 ……そこには。 「ゆぴー!」 元気に跳ねている、一匹の、赤まりちゃがいた。 ……が、れいむはその赤まりちゃを見て、こう言った。 「ゆっ……!?にゃんにゃの、こいちゅ……!?じぇんじぇん、ゆっくちしちぇにゃいよ!?」 その赤まりちゃは、髪の毛やお下げがかなり短く、帽子も小さく、口元から涎を垂らしており、目も焦点が合っておらず、何よりバカの顔付きをしていた。 「おちびちゃん!じぶんのいもうとに、そんなことをいっちゃだめだよ!」 「ゆっ……!?れいみゅのいもうちょ……!?」 れいむは母れいむのその言葉が信じられなかった。 ……こいつが、自分の妹? れいむから見て、全くゆっくりしていない赤まりちゃが、自分の妹だという事実が信じられなかった。 「このおちびちゃんはね、ちょっとだけふじゆうなんだよ。だから、へんだとか、そういうことをいっちゃだめだよ?」 「ぴー!」 ……そう、この赤まりちゃは、いわゆる『足りないゆっくり』であった。 体格は普通の赤まりちゃと大差無いものの、中枢餡に異常をきたしており、言語障害や運動障害が現れていた。 そして、この赤まりちゃは、本当はれいむより先に産まれたのだが、母れいむの判断で、姉と妹の立場を交換したのだ。 足りないゆっくりの赤まりちゃを、姉として扱うには無理があると思っての判断だった。 「ゆうぅぅぅぅ……!」 その事を知ってか知らずか、れいむは納得出来ずにいた。 「ほら、おねーちゃん、いもうとにあいさつしてね?」 「ゆ……、よ、よろちくにぇ、まりちゃ」 「ゆぴゃー!」 母れいむに促される形で、れいむは妹まりちゃに渋々と挨拶した。 ……そしてこの日から、れいむのゆっくり出来ないゆん生が始まった。 ……食事の時。 「はい、おちびちゃん、ごはんだよ!」 「むーしゃ……、むーしゃ……」 「むく、むく……」 れいむは母れいむが食べやすいように一度噛み砕いた食べ物を咀嚼していた。 そして、妹まりちゃは、母れいむから口移しで食べ物を食べていた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅにもあーんしちぇにぇ!」 「ごめんね、いまおちびちゃんにたべさせているとちゅうなんだよ。おねえちゃんは、おちびちゃんがたべおわるまでまっててね」 「むく、むく、ゆぴゃぴゃー」 「ゆぅ……!」 ……しーしーの時。 「おちびちゃん、しーしーしようね!」 「ぴゃー、ちー、ちー」 「ゆぅ……!」 赤ゆっくりは自分でうんうんやしーしーを排泄する事が難しいので、親にまむまむなどを舐めてもらって手伝って貰って、排泄を行っていた。 れいむは今、とてもしーしーがしたかったが、母れいむが妹まりちゃのしーしーの介助に時間がかかって、なかなか出来なかった。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!はやきゅれいみゅもちーちーしちゃいよ!」 「ごめんね、おかあさん、おちびちゃんのしーしーのてつだいをしているんだよ。だから、おねえちゃんはもうすこしまっててね」 「ぴー」 「ゆうぅ……!」 ……就寝の時。 「ゆー、ゆーゆー」 「ゆーぴゃーぴゃー」 「しゅーや、しゅーや……、ゆぅ……!」 夜寝る頃になると、母れいむは子守唄のようなものを妹まりちゃに聞かせて、寝付かせていた。 れいむはさっさと寝たかったが、その歌のせいでなかなか寝れずにいた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅははやきゅねちゃいんだよ!しょのへんにゃうたをやめちぇにぇ!!」 「ごめんね、おちびちゃんはこもりうたをうたわないとなかなかねれないんだよ。だから、ねむるまでまっててね」 「ぴゃぴゃー」 「ゆうぅぅぅぅっ……!」 ……れいむは全くゆっくり出来ない日々を送っていた。 母れいむはいつも妹まりちゃに付きっきりで、『お姉ちゃんだから、後でね』と言われてきた。 『我慢してね』とは言われていないものの、何であんなゆっくり出来ない奴なんかを優先するのか、分からなかった。 れいむにとって、妹まりちゃは『妹』では無く、ただ単純に『目障りな奴』としか見えていなかった。 そして何より、自分の暮らしている家から、自由に外へ出る事が出来なかった。 れいむ達はどこかの空き地の段ボールハウスで暮らしていたが、れいむは外の世界を知らなかった。 れいむは母れいむに外へ出かけたいと何度もせがんだが、母れいむは『そとはとてもきけんだから、おおきくなるまででちゃだめ』と言って、れいむが外へ出る事を許さなかった。 遊びたいざかりの年頃のれいむにとって、薄暗くて狭い段ボールハウスで、しかも目障りな妹まりちゃと一緒に一日を過ごす事は、れいむにとってかなりのストレスとなっていた。 ……そして、二週間後。 「ゆっ、それじゃ、おちびちゃんたち!おかあさんはたべものをさがしてくるからね!」 「ゆっ、いってらっしゃい、おかあさん!」 「ぴぴゃー!」 母れいむはれいむと妹まりちゃにそう言うと、食べ物を探しに外へ出かけた。 そして、段ボールハウスに残されたのは、れいむと妹まりちゃだけとなった。 「ぴゃぱぱー!」 「……」 妹まりちゃは、相変わらず奇声を発しながら体を震わせており、その様子をれいむは黙って見ていた。 ……そして、れいむはいきなり、妹まりちゃを揉み上げでバシリと叩いた。 「ぴいぃっ!?」 「いつもいつも、ぴーぴーうるさいよっ!!」 妹まりちゃは何故叩かれているのか分からず泣き出したが、それでもれいむは妹まりちゃを叩くのを止めなかった。 「おまえなんか、れいむのいもうとじゃないよ!おまえがいるから、れいむはちっともゆっくりできないよ!」 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆっくりできないゆっくりのくせに!なんでいきてるの!?ばかなの!?しぬの!?おまえはばかなんだから、さっさとしんでね!」 「ぴゃあぁぁぁぁっ!!」 ……この二週間の間で、れいむは一つのストレス解消法を見つけた。 それは、母れいむがいない間に、妹まりちゃを虐める事だった。 全くゆっくり出来ない、役立たずで目障りな存在の妹まりちゃを虐める事に、れいむは全く罪悪感などは感じていなかった。 むしろ、それが当たり前とさえ考えていた。 「れいむはおおきくなったのに、おまえはぜんぜんおおきくならないね!やっぱりばかはせいちょうしないね!」 「ぴゃぱあぁぁぁぁっ!!」 れいむは子ゆっくりサイズまで成長していたが、妹まりちゃは産まれた時と、大きさが殆ど変っていなかった。 妹まりちゃは発育にも異常をきたしていたが、れいむはその事実を知らず、たとえ知っていたとしても、態度は変わらなかっただろう。 れいむにとって、妹まりちゃの価値観は、『目障りな奴』から『ストレス解消道具』に変わっていたのだった。 「しね!しね!やくたたずのぐずは……、ゆっ、もどってきたよ……」 れいむがチラリと外の様子を見ると、母れいむが口の中に食べ物を入れて帰って来たので、れいむは妹まりちゃを叩くのを止めた。 「ぴゅうぅぅぅぅっ!!ぴゅいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃんたち、ただい……、ゆっ!?どうしたの!?おちびちゃん!?」 「お、おかーさん、またまりちゃがぐずりだしちゃったよ……、れいむ、なきやまそうとしたんだけど……」 「ゆっ、おちびちゃん、いいこいいこ、なかないでね……」 「ゆぴゅいぃぃぃぃ……」 母れいむは、泣き続ける妹まりちゃを必死にあやしていた。 (ゆふふっ!とりあえず、すっきりー!したよ!) れいむは妹まりちゃが喋れない事を良い事に、母れいむにデタラメを言っていた。 そして、妹まりちゃの体に叩いた跡が残らないように、毎回力加減をして妹まりちゃを叩いていたので、母れいむに虐めの事を気付かれずに済んでいたのだ。 「ぴいぃ……、ぴいぃ……」 妹まりちゃは、涙を溜めた目でれいむを見ていたが、れいむの心は全く痛まなかった。 それどころか、かえって怒りが込み上げてきた。 (……おまえがわるいくせに、なんでれいむをわるもののようなめでみるの!?わるいやつはせいっさいっしてとうぜんでしょ!?ばかなの!?しぬの!?) 自分は可哀想で全然ゆっくり出来ていないというのに、何故そんな目で自分を見るのか。 れいむには、それが分からなかった。 ……そして、己のゆん生を大きく変える出来事が起きようとしている事もまた、れいむには分かっていなかった。 ……ある日の事。 「ぴゃややあぁぁぁぁっ!!」 「ゆふふっ!ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっするのは、とってもたのしいね!」 れいむはいつものように、母がいない間に、妹まりちゃを虐めて楽しんでいた。 ……が、その日はいつもと違っていた。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆぅっ!?」 いつもはただ叩かれて泣き叫んでいるだけだった妹まりちゃが、急にその場で何度も跳ね、お下げを振り回し始めた。 耐え重なる暴力への訴えか、それとも防衛本能からの行動か、理由は分からなかったが、妹まりちゃはいつもとは違っていた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!じぶんがわるいくせに、ぎゃくぎれするなんて、とんでもないげすだよっ!!」 妹まりちゃの行動に腹を立てたれいむは、さらに揉み上げで妹まりちゃを叩こうとした……、が。 「ぴゃいやあぁぁぁぁっ!!」 ベチッ! 「ぴゃあっ!?」 妹まりちゃのお下げが、れいむの顔に当たってしまった。 「ゆ……、ゆ……」 今まで感じた事の無い、痛み。 それがゆっくり出来ない奴によって引き起こされた、痛み。 「ゆ……、ゆがあぁぁぁぁっ!!このくそまりさがあぁぁぁぁっ!!おねえちゃんにぼうりょくをふるいやがってえぇぇぇぇっ!!」 それにより、れいむの逆上は有頂天へと達した。 「このげすがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは怒りに身を任せ、赤まりちゃに体当たりをした。 「びゅぽおぉっ!?」 自分より一回りも二回りも大きいれいむの体当たりを受けた妹まりちゃは弾き飛ばされ、段ボールの壁にぶつかった。 「せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむはその場で飛び跳ね、妹まりちゃを押し潰そうとした、その時。 「なにしてるのぉっ!!」 「ゆんやぁっ!?」 後ろから何者かに髪の毛を噛まれ、後ろへと引きずられた。 「おねえちゃん!?いもうとにいったいなにをしているの!?」 「ゆっ!?」 ……そこにいたのは、食べ物探しから帰って来た、母れいむだった。 「ゆ……、こ、これは……」 「おかあさんはみていたよ!おねえちゃんがいもうとにたいあたりをしていたところを!……なんでこんなことをしたの!?」 「ゆ……、ゆぅ!れ、れいむは、なんにもわるくないよ!?こいつが、れいむにいたいおもいをさせるから……!」 バシッ! 母れいむに問い詰められ、そう言い訳をしたれいむの頬を、母れいむが揉み上げで叩いた。 「ゆびゃあぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!!」 「……おねえちゃん。きょうは、ばんごはんはぬきだよ。じぶんがなにをしたのか、ちゃんとはんせいしてね」 母れいむはそう言うと、妹まりちゃの体を舐め始めた。 「おちびちゃん……、いたいのいたいの、とんでいってね……」 「ぴゃあぁ……、ぴゃあぁ……」 「お、おかあさん!れいむのほっぺもいたいよ!れいむにも、ぺーろぺーろしてね!」 れいむは母れいむにそう言ったが、母れいむはその言葉を無視した。 それかられいむは母れいむに再度ぺーろぺーろするよう言ったり、泣き喚いたり、癇癪を上げたりしたが、母れいむは無視する事に徹底していた。 (ゆうぅぅぅぅっ……!?なんでぇ……!?なんでれいむが、こんなめにあうのぉ……!?なんでれいむがおこられなきゃいけないのぉ……!?) れいむには、その原因が全く分かっていなかった。 (ゆぅ……!れいむは、とってもかわいそうだよ……!ぜんぜんゆっくりできないよ……!ゆうぅ……) そしてれいむは、暴れたり、泣いたりした事により疲れ果て、やがて眠ってしまった。 ……夜。 「ゆ……」 れいむが目を覚ますと、昼間でさえ薄暗い段ボールハウスの中がさらに暗くなっていた。 「ゆぅ……、ゆぅ……」 「ぴぴゃー……、ぴゅぴー……」 そして、少し離れた場所で、母れいむと妹まりちゃが身を寄せ合って寝ていた。 「ゆ……!」 その光景を見て、れいむの心に再び憎悪の炎が燃え上がった。 その憎悪の対象は、やはり妹まりちゃだった。 (こいつのせいで……、れいむは、おかあさんにおこられたんだよ……) れいむはじりじりと這いながら、寝息を立てている妹まりちゃに近付いた。 (こいつさえいなければ……!こいつさえいなければ……!) れいむは妹まりちゃを睨みつけながら、少しずつ距離を縮めていった。 (こいつは……、とんでもないげすだよ……!れいむがかわいそうなのは、ぜんぶ、こいつのせいなんだよ……!) ……そして、とうとうれいむは妹まりちゃのすぐ傍まで到達した。 (れいむをいじめる、こんなげすは……!) そして、れいむは大きく口を開け……。 (れいむが、ころしてやるよぉっ!!) 妹まりちゃの頬を、食い千切った。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?」 「ゆっ!?」 妹まりちゃは突然の鋭い痛みに悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いて母れいむが目覚めた。 「お、おちびちゃん!?いったいどうし……、な、なんでおちびちゃんのほっぺがちぎれてるのぉっ!?」 「ぴゅぴゃあぁぁぁぁっ!!ぴゅぴいぃぃぃぃっ!!」 母れいむは何故妹まりちゃがこんな惨たらしい姿になっているのか訳が分からず、何か傷口を塞ぐものが無いかと周りを見回し、そして、見てしまった。 「うっめ!こいつ、めっちゃうめぇ!まじぱねぇ!」 れいむが何かを美味しそうに咀嚼している姿を。 ……そして、れいむの頬に付いていた、餡子も同時に。 「ゆっ!おかあさん!おかあさんもいっしょにこいつをころ」 「……でていけ」 「……ゆ?」 れいむのその言葉の先を、母れいむの静かで、ドスの効いた声が遮った。 「お、おかあさん?いったいなにを」 「いもうとをころそうとするげすなんて、おかあさんのこどもじゃないよ」 「な、なんで!?なんでそんなことを」 「でていけえぇぇぇぇっ!!このげすがあぁぁぁぁっ!!」 「!?」 母れいむの怒りの形相を目の当たりにしたれいむは、確信した。 ……本気で、殺されると。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!?」 目の前の死への恐怖から逃れる為に、れいむは必死に跳ねて段ボールハウスから逃げ出した。 目から涙を、体中からは汗を、まむまむからはしーしーを、色々と水分を垂れ流しながら、必死に逃げ出した。 「なんでえぇぇぇぇっ!?れいむはなんにもわるくないのにいぃぃぃぃっ!!」 れいむは叫びながら、一度も振り返る事無く、夜の世界へと逃げ出した。 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃん……!しなないでね……!」 ……段ボールハウスに残されたのは、傷の痛みに泣き叫んでいる妹まりちゃと、妹まりちゃの傷口を備蓄の葉っぱなどで必死に塞ごうとしている母れいむの二匹だけとなった。 ……十分後。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ゆうぅぅぅぅっ!!」 あれかられいむは、母れいむから少しでも遠ざかろうと、必死に跳ねていた。 涙も、汗も、しーしーも、全て出しきったが、それでもれいむは必死に跳ねていた。 「ゆ……、ゆうぅ……」 ……が、やがて体力の限界が来て、れいむは跳ねるのを止め、ずりずりと這っての移動に切り替えた。 「こ、ここはどこなのぉ……?」 れいむは這いながら、キョロキョロと周りを見回した。 コンクリートの壁。 アスファルト。 街灯。 時折れいむの横を通る、乗用車。 それら全てが、れいむが初めてみる物だった。 ……そして、すぐ近くにある雑木林を見つけた。 「ゆっ……!あ、あそこにかくれるよ……!」 れいむはその雑木林の中へ入っていった。 前へ進むたびに、葉っぱや木の枝がチクチクと体のあちこちに刺さるが、そんな事を気にしている場合では無かった。 そして、比較的周りに葉っぱや木の枝が無いスペースを見つけると、そこで体を休ませた。 「ゆうぅ……。れいむは、ゆっくりできないやつを、えいえんにゆっくりさせなくしようとしただけなのに……。いったい、なにがわるいの……?」 れいむはホロリと涙を流しながら、ボソリと呟いた。 「ゆっ……!そうだよ!れいむはなんっにもわるくないんだよ!!わるいのはぜんぶ、あのまりさなんだよ!」 そしてれいむは何度目になるか分からない責任転換をし始めた。 「そうだよ!おかあさんだって、れいむをころそうとした、とんでもないげすだよ!あんなくそばばあ、れいむのおかあさんなんかじゃないよ!」 とうとうれいむは母れいむまで罵倒し始めた。 「まりさも、くそばばあも、どうしてみんな、れいむをわるものあつかいするの!?ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっすることは、ただしいことなのに!!」 一度湧きあがった怒りや不満感はなかなか収まらず、れいむはしばらくの間、妹まりちゃや母れいむの悪口を言っていた。 ……が、跳ねて移動した疲れが徐々に出てきて、れいむは再び睡魔に襲われた。 「ゆぅ……。とりあえず、れいむはす~やす~やたいむにはいるよ……。ねるすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 そしてれいむは、比較的安全な場所に隠れたと判断し、眠りにつくのだった。 ……数時間後。 「……ゆ、ゆゆ~ん……、よくねたよぉ……。ねおきすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 あれから数時間程寝ていたれいむは、雑木林の隙間から差し込んでくる太陽の光の眩しさで目が覚めた。 どうやら、昼過ぎまで寝ていたようである。 そして、目が覚めるのと同時に、空腹感がれいむを襲った。 「ゆぅ……。おなかがへったよ……」 昨日から何も食べていなかったので、当然と言えば当然である。 「とりあえず、ここからでるよ……」 いつまでもここにいても意味が無いと思ったれいむは、その雑木林を抜ける事にした。 そのまま来た方向へと戻っては、母れいむに見つかると思ったので、反対側へ進む事にした。 ……れいむが雑木林を抜けると、目の前には大きな建物があった。 それは、どこにでもあるような、ありふれた一軒家であった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!とってもおおきなおうちだよぉっ!!」 れいむは産まれて初めて見る、とても大きな家に感動して、しーしーを漏らした。 「ゆっ!そうだ!ここをれいむのおうちにするよっ!!れいむはかわいそうなんだから、こういうおうちにすむくらい、とうぜんだよね!」 自分は今まで不遇な立場にあったのだから、これ位は良い思いをしても当然だ。 そう考え、れいむはその家の方へと跳ねていった。 れいむがベランダの方まで来ると、目の前にガラスが立ちはだかっていた。 「ゆうぅっ!!とうめいなかべさん!れいむをいれてね!ぐずはきらいだよ!……どぼぢでいれてくれないのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは窓ガラスに自分を中に入れるよう命令したが、そんな事で窓ガラスが開く訳が無かった。 「いれろおぉぉぉぉっ!!かわいそうなれいむをいれ……、ゆっ!?」 痺れを切らして、窓ガラスに体当たりをしようとしたれいむは、家の中のあるものを見て、固まってしまった。 「こぼにぇー……」 家の中のリビングで、一匹の赤ゆっくりがスヤスヤと寝ていた。 ……その赤ゆっくりは、ゆっくりゆゆこだった。 そして、その帽子には、銀色に光るバッジが付いていた。 (な、なんなの?あのゆっくりは……。なんで、れいむのおうちのなかにいるの……!?) れいむの頭の中では、この家は既に自分の家という事になっており、赤ゆゆこはすっかり侵入者扱いされていた。 (ゆぎいぃぃぃぃっ!!れいむのおうちにかってにはいりやがってえぇぇぇぇっ!!そっこくおいだしてやるうぅぅぅぅっ!!) れいむは何とか家の中に入ろうとしたが、窓ガラスは体当たりでは壊れそうになかったので、どうすれば良いものかと餡子脳を悩ませた。 ……すると、ある事に気付いた。 「ゆっ!こんなところに、すきまがあるよ!」 見ると、窓ガラスは僅か数センチ程開いており、鍵はかかっていなかった。 れいむは窓ガラスの隙間に、頭を突っ込ませ、何度も頭を振りながら、無理矢理隙間から侵入しようと試みた。 れいむの体は、段々と隙間の中に入っていき、そして……。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ここはれいむのおうちだよおぉぉぉぉっ!!」 リビングへと侵入したれいむは、赤ゆゆこに対し大声を上げた。 「こ……、こぼにぇ!?」 れいむの大声で目覚めた赤ゆゆこは、突然の侵入者に対し、驚きを隠せなかった。 赤ゆゆこが驚き、竦みあがってる内に、れいむは赤ゆゆこの方へと跳ね、どんどん距離を縮めた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!おうちせんげんするまえに、せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは目を血走らせ、赤ゆゆこに体当たりをかました。 「こぼにえぇぇぇぇっ!?」 赤ゆゆこは弾き飛ばされ、コロコロと向こうへ転がっていった。 ……その際に、赤ゆゆこの帽子が落ちてしまった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!げすのぼうしなんか、めざわりだから、こうしてやるよっ!!」 れいむはそう言うと、赤ゆゆこの帽子の上に乗っかり、その場で何度も跳ねた。 それにより、赤ゆゆこの帽子は徐々に潰され、あちこちが破けていった。 「こぼにえぇぇぇぇっ……!」 赤ゆゆこは涙を流して泣き叫んだが、れいむの頭の中は『ゲス』の帽子を踏み潰す事で夢中だった。 「ゆふぅ~!いいことしたあとにかくひとあせって、いいものだねぇ!」 ……そして、ゆゆこの帽子は完全にひしゃげてしまった。 れいむの心の中は、正義感と達成感で満たされていた。 「こ……、こぼにえぇぇぇぇ……」 赤ゆゆこは、以前は自分の大切な帽子だった布切れを見て、再び泣き声を上げた。 ……赤ゆゆこのその姿を見たれいむは、苛立ちがピークに達した。 「なんでないてるのおぉぉぉぉっ!?なきたいのはこっちなんだよおぉぉぉぉっ!?れいむのすてきなおうちにふほうしんにゅうしたくせにいぃぃぃぃっ!!」 赤ゆゆこの泣き叫ぶその姿が、妹まりちゃと重なったからだ。 「どいつもこいつもおぉぉぉぉっ!!れいむのことをいじめやがってえぇぇぇぇっ!!」 れいむの頭の中は、赤ゆゆこに対する怒りで一杯だった。 そしてれいむは赤ゆゆこを噛み殺そうと、大口を開けて跳躍しようとした、その時。 「ゆっ!?」 れいむはあるものを見つけ、飛び跳ねようとしたのを止めた。 ……自分から少し離れた場所に、小皿に盛られた、美味しそうな饅頭があったのだ。 それは、赤ゆゆこの為に用意されたおやつだった。 「ゆ……、そういえば、おなかがすいていたね!さきにはらごしらえをするよ!」 昨日から何も食べていなかったれいむは、一旦赤ゆゆこに対する怒りを忘れ、饅頭を食べる事にした。 「ゆふふっ!れいむはこれから、すーぱーむ~しゃむ~しゃたいむにはいるよ!それがおわったら、おまえのばんだからね!」 「こぼにぇ……」 れいむは赤ゆゆこにそう言うと、饅頭の近くまで跳ね、大口を開けて、その饅頭に喰らい付いた。 「む~しゃむ~しゃ!うめぇ!これめっちゃうめぇ!まじぱねぇ!あのくそまりさより、てらうめぇ!」 れいむは饅頭の餡子やら皮やら、あちこちに飛ばしながら、口汚くその饅頭を食べていた。 ……数分後。 「げっぷぅ~!たべるすがたもかわいくてごめんねぇ~!」 饅頭を食べ終えたれいむは、心身共に満足した。 「ゆっふっふ!はらごしらえもおわったことだし、こんどはせいっさいったいむにはいるよぉ!」 食後の軽い運動とばかりに、赤ゆゆこを制裁しようと、赤ゆゆこのいた方を見た、……が。 「ゆうぅぅぅぅっ!?どぼぢでいないのおぉぉぉぉっ!?」 そこに赤ゆゆこの姿はなかった。 れいむはリビングの周りをあちこち見まわしたが、赤ゆゆこはどこにもいなかった。 「にげたなあぁぁぁぁっ!!なんてひきょうなげすなんだあぁぁぁぁっ!!」 しばらくあちこちを探して、ようやく逃げたと気付いたれいむは、怒りと悔しさから叫び声を上げた。 「ころしてやるうぅぅぅぅっ!!みつけたら、そっこくころしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは赤ゆゆこに対する殺意を剥き出しにし、赤ゆゆこを探すべく、他の場所へ移動しようとした。 「寝惚けた事言ってんじゃねぇぞゴラァッ!!」 ……が、その第一歩を踏み出す前に、何者かに背中を思い切り蹴り飛ばされた。 「ゆびゃあぁぁぁぁっ!?おそらをとんでべびゃあっ!?」 れいむは顔面から壁に激突した。 「チッ……、窓ガラスが開いてたのか……」 「びいぃぃぃぃっ!?でいぶのうづぐじいかおがあぁぁぁぁっ!!でいぶのまっじろなはがあぁぁぁぁっ!!」 壁に当たった際に、顔面を強打し、歯も何本か折れてしまった。 「だれだあぁぁぁぁっ!!でいぶにごんなごどをするげすはあぁぁぁぁっ!!」 れいむは転げ回りながら、そう叫んだ。 「べっ!?」 「俺か?俺はなぁ……」 その何者かは、転げ回るれいむの体を、足で踏み付け、そして、こう言った。 「この家の主人なんだけどさぁ……?」 ~回想終了~ 「二階で昼寝してたらさぁ、何か下の方が騒がしいと思って降りてみたら、廊下でゆゆこが泣いてたのさ。……お前、ゆゆこに何した?」 「れ……れいむは、おうちせんげんしようとしたげすを」 「お家宣言してんのは手前ェだろうが糞饅頭が!ここは俺とゆゆこの家なんだよ!!」 青年はそう言うと、れいむを持ち上げ、床に叩き付けた。 「ばびゃあぁぁぁぁっ!?」 「何も悪くないだぁ?勝手に人様の家に入って、ゆゆこを酷い目に合わせて、何が自分は悪くないだゴラァッ!!」 「れ……、れいむはとってもかわいそうなゆっくりなんだよおぉぉぉぉっ!?だから」 「可哀想だから何だ!?不法侵入や殺しが許されんのか!?他の奴を酷い目に合わせる事が、許されるって事なのか!?」 「あたりまえでしょおぉぉぉぉっ!?かわいそうなゆっくりは、しあわせにならなきゃいけないんだよおぉぉぉぉっ!?なんでそれがわからないのおぉぉぉぉっ!?」 「……」 れいむのその言葉に、何故か青年は黙り込んでしまった。 「かわいそうなゆっくりをひどいめにあわせるげすは、せいっさいっされなきゃ」 「あぁ、そうかいそうかい。分かったよ、お前の言いたい事は。可哀想な奴は、幸せにならなきゃいけない。……そういう事だろ?」 「ゆっ!そ、そうだよ!だかられいむのやったことは、ただしいんだよ!」 「……そうかい。だったら、俺も正しい事をやらせてもらうよ」 青年はそう言うと、れいむの揉み上げを掴み、持ち上げた。 「い、いだいぃぃぃぃっ!!はなぜえぇぇぇぇっ!!でいぶのきゅーてぃくるなもみあげさんが、ちぎれるだろうがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは必死に抗議したが、青年はそれを無視し、台所へと言った。 「今、『代わり』を用意するからな、待ってろよ、ゆゆこ」 「こ~ぼにぇ~」 テーブルの上には、先程の赤ゆゆこがいた。 そしてテーブルには、一枚の皿が置かれていた。 「はなじでえぇぇぇぇっ!!」 「もうすぐ離してやるから、待ってろよ糞饅頭」 青年はそう言うと、流し台まで行き、れいむを水で洗い、まな板の上に置いた。 「ゆっ!?な、なにする」 そして暴れようとするれいむを押さえ付け、れいむの髪の毛をリボンごと掴み、思い切り引き抜いた。 「はぎゃあぁぁぁぁっ!?でいぶのさらさらへあーがあぁぁぁぁっ!!げいじゅつてきなおかざりがあぁぁぁぁっ!?」 青年はれいむの叫び声を無視し、再び残っている髪の毛を毟る作業へ戻った。 「はぎっ!?いぎっ!?ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?」 何度も髪の毛を毟られる度に、れいむは悲鳴を上げた。 ……そして、れいむの髪の毛は一本も無くなり、れいむはハゲ饅頭と化した。 「ゆぐぎいぃぃぃぃっ……」 「まだ終わりじゃねぇぞ?」 青年はそう言うと、今度はガスコンロの上に大き目のフライパンを乗せ、火を付けた。 「なっ、なにする」 「これしかねぇだろうがよ!」 青年はれいむを持ち上げると、れいむをそのままフライパンの上に乗せた。 「あぎゃあぁぁぁぁっ!?あづいぃぃぃぃっ!?でいぶのかもしかのようなあんよがあぁぁぁぁっ!?」 れいむは必死にウネウネと体を動かしたが、青年に頭部を押さえつけられていたので、ほとんど効果が無かった。 ……そして、れいむの底部は完全に焼け焦げた。 「あづいよおぉぉぉぉっ!!どぼぢでごんなごどするのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは青年が何故こんな事をするのか分からなかった。 「……なぁ、れいむよぉ。……ゆゆこを見て、どう思うよ?」 「ゆうぅぅぅぅっ!?」 急に青年はれいむにそんな事を尋ねた。 「ぼうしがない、みじめなくそゆっくりにきまってるでしょおぉぉぉぉっ!?」 「……そうだよなぁ。大切な帽子が無いなんて、可哀想だよなぁ。……その帽子を潰したのは、お前だよな?」 「たしかにれいむはぼうしをふみつぶしたけど、それがなんだって」 「まだ分からないか?俺が言いたい事が」 「なんだっていうんだあぁぁぁぁっ!?」 「じゃあ分かるように言ってやる。ゆゆこは大切な帽子を失くした『可哀想』なゆっくり、お前はその帽子を潰した『悪い』ゆっくりなんだよ」 「ゆっ!?」 「『可哀想』なゆっくりは幸せになって、『悪い』ゆっくりは制裁されなくちゃいけない。……お前が言った事だろ?」 「あ……、あぁぁぁぁっ……!?」 「お前は、お前が駄目にしちまった饅頭の『代わり』になってもらって、ゆゆこに食べられるんだよ」 「や……、やべでえぇぇぇぇっ!?そんなのゆっぐりできないぃぃぃぃっ!!ゆるじでえぇぇぇぇっ!!」 ここに来て、青年が何をやりたいのかようやく理解したれいむは必死に泣き叫び、命乞いを始めた。 「お前はゆゆこに食われて制裁されて、ゆゆこは腹一杯になって幸せになれる。丸く収まるって訳だ」 「やだあぁぁぁぁっ!!やだやだやだあぁぁぁぁっ!!れいむ、かわいそうなのにいぃぃぃぃっ!!なんでこんなめにあうのおぉぉぉぉっ!?」 「そりゃ、悪い事をしたからさ」 そう言って青年はれいむを持ち上げると、今度は顔面をフライパンに押しつけた。 「ぎゅぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!?」 れいむの口や飴細工で出来た歯が、熱によって焼かれ、溶け、あっと言う間にれいむの口は焼き潰された。 「……!!……!?……!……!!」 青年はフライパンを持ち上げると、テーブルの皿の上に、あちこちを焼かれたれいむを乗せた。 「ほらゆゆこ。腹一杯食べろよ?」 「こ~ぼにぇ~!」 赤ゆゆこは目を輝かせ、待ってましたとばかりにれいむの背中に噛み付いた。 「!!?!?!!!」 「はふっ!はふっ!こぼにぇ~!」 れいむは赤ゆゆこに背中を何度も噛まれ、その度に激痛に襲われ、涙を流した。 青年が口を潰したのは、いちいち叫び声を上げられてはうるさいと思ったからだ。 そんなれいむとは対照的に、赤ゆゆこは幸せそうな笑顔で、美味しそうにホクホクの餡子を食べていた。 「美味いか?ゆゆこ。次は赤ありす達を用意しておくからな。お前はカスタードが大好きだからなぁ」 「こぼにぇ~」 「……!!……!!」 れいむが必死に痛みに耐えている横で、青年と赤ゆゆこは楽しそうに笑っていた。 ……十数分後。 「すぅ……。すぅ……」 「……!!」 「……」 赤ゆゆこが、子ゆっくりサイズのれいむを全て食べきれる訳もなく、赤ゆゆこはれいむを食べ残したまま、スヤスヤと眠っていた。 それとは対照的に、れいむは背中の大部分を食いつくされ、中から飛び出た餡子が空気に触れ、それによる激痛で涙を流していた。 そして、青年はそんなれいむを静かに、黙って見ていた。 「……何かさぁ」 「……」 「今のお前を見ていると、確かに可哀想だなって思ってきたわ」 「!」 青年のその言葉に、れいむの表情が変わった。 「ゆゆこも十分満足しただろうし、もう良いや。この家から出してやるよ、お前」 「ゆぴ……、ゆぴ……」 「ゆぅ……、あんこさんがでなくなったよ……。よかったよ、おちびちゃん……」 そこは、とある空き地の、とある段ボールハウスの中。 その中には、あの母れいむと妹まりちゃがいた。 あれから母れいむは、妹まりちゃの手当てを寝ずに行い、その結果、餡子の流出を食い止める事が出来た。 幸い餡子自体はそれほど失わずに済んだので、安静にさえしていれば命の危険は無かった。 「ゆ……、ゆぴ……」 しかしそれでも、傷口を葉っぱで塞いでいるその姿は、やはり痛々しいものであった。 「……おちびちゃん……。……まりさ……。ごめんね……」 母れいむは目の前の妹まりちゃと、今はもういない、自分の番のまりさに向かって謝った。 母れいむにはかつて、同じ野良であるまりさに一目惚れし、一緒にゆっくりしようと誓い、番同士になった。 母れいむの頭の上に、新しい命が宿った時には、共に涙し、喜んだ。 まりさは母れいむと子供の為に、必死になって食べ物探しに勤しんだ。 ……が、ある日突然、まりさは帰らぬ身となった。 ゴミ袋から得た生ゴミや食べ残しを持ち帰る際に、車に轢かれてしまったのだ。 母れいむはその事故に立ち会った訳でもなく、そのまりさの死体を見た訳でもないが、いつまでもまりさが帰ってこない事で、悟ったのだった。 これで自分はしんぐるまざーになってしまった訳だが、母れいむはその事を言い訳にする気は無かった。 まりさの分まで、自分が頑張る。 そう心に決め、今日まで頑張って来た……、つもりだった。 ……あの時、何故、『あの子』に『自分で考えろ』と言ってしまったのか。 何故、それが悪い事なのか、一から聞かせるべきだった。 そうすれば、こんな事にはならなかった筈だ。 「……おちびちゃん……」 母れいむの頭の中で、様々な思いが渦巻き、次第に目元に涙が溜まり……。 「……ゆー、おきゃーしゃん、なかにゃいで」 その涙がこぼれ落ちる事は、無かった。 「お……、おちびちゃん……?」 「ゆ、ゆー」 「しゃ……、しゃべれるの……?おちびちゃん……?」 「ゆー、ゆぴー、お、おきゃーしゃん」 妹まりちゃは、たどたどしいながらも、必死に自分の口で、初めて母れいむを『お母さん』と呼んだのだ。 れいむに頬を噛まれた際の痛みが、ショック療法となったのかもしれない。 それとも、時間が経てば少しずつ改善出来る状態だったのかもしれない。 あるいは、ただ単に成長が遅かっただけなのかもしれない。 その理由は分からなかったが、母れいむにとって、そんな事はどうでも良かった。 「ゆ……!な、ないてないよ!おかあさん、ないてないからね!」 「ゆー、よかったー」 「お、おちびちゃん、おなかすいたでしょ?お、おかあさん、たべものをさがしてくるから、まっててね!」 母れいむはそう言って、段ボールハウスを飛び出した。 「ゆー、いってらっしゃい」 妹まりちゃの言葉を背に受けながら。 そして、折れかけていた決意が再び蘇り、そして、新しい誓いを立てた。 あの子の一生を、不幸なまま、終わらせない。 それがどれだけ大変な事であるか、それを理解したうえでの誓いだった。 (まりさ……、おちびちゃん……、れいむ、がんばるよ!がんばるからね!) そう思いながら、母れいむはいつもの狩り場である、ゴミ捨て場へと向かったのだった。 ……同時刻。 あれから青年はれいむの食いかけの部分を再び焼き潰し、袋に入れてどこかへ出かけた。 ……そして、青年が辿り着いたのは、青年がよく利用しているゴミ捨て場だった。 「なぁれいむ。俺は外に出すとは言ったけど、自由にするとは言ってないからな?」 青年は袋の中のれいむに話しかけた。 「……!!」 れいむは、青年の言葉に対し、怨みが込められた眼で青年を睨みつけた。 「もしかしたら、他の気の良いゆっくりが、お前を拾って何とかしてくれるかもな。……そうだな、ゆっくりショップで、ゆゆこの帽子を買ってから帰るか」 青年はれいむの入った袋を、ゴミ袋の山へと投げ捨て……。 「じゃあな、『頭』が可哀想なれいむちゃん」 そう言い残し、ゴミ捨て場を後にした。 「……!!」 袋の中のれいむは、青年の後ろ姿を、ただじっと睨みつけていた。 (……れいむは……。れいむは、かわいそうなんだよ……!だれか……!れいむをたすけてね……!) れいむはこの状況になっても、まだ何とかなると思い、諦めていなかった。 (くそまりさ……!くそばばあ……!はやくかわいそうなれいむをたすけろぉ……!!) そして、かつては殺そうとし、そして見捨てられた家族に助けを求めた。 (だれでもいいから……!かわいそうなれいむをここからだせえぇぇぇぇっ!!) どう考えても、れいむのゆん生はとっくに詰んだも同然なのだ。 それはれいむにも分かっていたはずだが、れいむはその事を理解したくはなかった。 自分の一生が、不幸なままでは終われない。 その気持ちが、れいむのゆん生への執着心への原動力となっていた。 ……そして、その気持ちが天へと通じたのか、外側から、何者かが袋を噛み千切ろうとしていた。 (やった!やったよ!れいむはたすかるよ!やっぱり、かわいそうなれいむはさいごにはしあわせになれるんだね!かちぐみでごめんねぇ!) ……そして、袋が完全に破れ……。 「ゆっ!?やったよ!きょうはおまんじゅうさんがあったよ!!」 END あとがき 私がSSを書く際に気を付けている事は、出来るだけシンプルな内容にまとめようとする事です。 今のところ、シンプルにまとまった事が一度もありません。 来週からテストがラッシュでストレスがマッハでヒャアってなりそうなので、もしかしたらしばらくはSSの投下は無理っぽさそうです。 出来れば、小ネタか何か書きたいなーと思っています。 ご意見、御感想、お待ちしています。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~
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注・続き物です。 洞窟に侵入してどれ程が経っただろうか。 群れの周辺の地理に詳しいまりさは、勿論の事この洞窟の事も知っており大体の作りも覚えていた。 ゆっくりの脳では普通そこまでの情報を記憶する事など出来ないのだが、 狩りの経験が豊富で群れを率いる責任感が強かったまりさはそういった普通のゆっくりには無いものを兼ね備えていた。 出来るならここをゆっくりの集会場か何かにしようと前々から考えていたのだ。 なので、れいむが居るであろう場所も大体の目星は付いていた。 出来るだけ敵のゆっくりに会わずにまりさはその場所へと向かう。 随分と進むと、最初に出会ったみょんと同じ様にゆっくりの見張りが居る。 れいむ種、しかも群れに昔から居た元同胞だ。 「ゆぅ…ゆぅ……」 どうやらうたた寝でもしているのか。 まりさの元にまで寝息が聞こえてくる。 出来るなら戦いたくなど無い。 まりさはそう考え、うとうとと頭を揺らすれいむに気付かれないように、ゆっくりとその脇を通過しようとする。 「そろーり、そろーり」 優秀なゆっくりであるまりさであるが、生物としての本能にも近い癖は抜け切らないのか。 こんな場面にも拘らず、自らの口で出さなくても言い音を出してすりすりと動き出す。 「そろーり、そろーり」 れいむの横から奥への通路へと差掛かろうとした時、突然れいむの「すや…すや……」という寝息が止まったかと思うと、 「ゆっ、そこにだれかいるの?」 と言う声が聞こえてきた。 まりさは心臓が飛び出すような感覚に陥り、その場で少し跳ね上がったりもしたが、 その洞窟の余りの暗さ故に、れいむはそれが元群れの長であったまりさだと気付いてはいないようだった。 「ゆゆ、じつはまりさは……はくれいむさまにたのまれて、このおくのれいむにようがあるんだよ」 「ゆぅ、そうなの。なんだかわからないけどたいへんね。ゆっくりがんばってね。」 「うん、ゆっくりがんばるよ。れいむもゆっくりしていってね」 「れいむはここでゆっくりするよ…すやすや……」 見張りである筈のれいむであるが、そこまで思考能力も高くないゆっくりな上、 寝起きであった事も合わさり全くまりさを疑う事も無く再び眠りに付く。 まりさの心中にはその場をやり切れた安心感と合わせて、そんな暢気なれいむに対して幾ばくかの怒りを感じていた。 自分があれだけ苦心して群れの皆を守ってきたと思ったのに、反乱を起こした者の部下としてこんなにゆっくりしているなんて。 妻であるれいむは敵に捕らわれ、どれ程酷い目に合わされているか。 そう思うと、眼の前のれいむをゆっくり出来なくさせてやりたい衝動に駆られた。 だが、このれいむにも家族は居るのであろう。 はくれいむの戦力に成す術も無くやられてしまった自分にも落ち度が有ったかも知れない。 まりさはそう思うことにして怒りを抑えて、先へと進む事にした。 更に暫く進むと其処には柵のようなものが掛かっており、まりさは其処にれいむが居ると確信した。 居ても経ってもいられなくなり、すぐさま駆け出す。 幸いな事に見張りなども無く、その柵の前まで辿り着くとまりさは中を覗き込む事が出来た。 人間の使う炎。 それをはくれいむは松明というものに移らせて扱う事が出来るらしい。 丁度、その柵の前にも一つ掲げられていたので、まりさは薄ぼんやりでは有るが中を確認することが出来た。 中にはれいむと思しき丸い球体が一つ存在している。 「ゆっ、そこにいるのはだれなの?まりさのいばしょならきくだけむだだよ、ゆっくりどこかにいってね」 「ちがうよれいむ。まりさだよ、ゆっくりたすけにきたんだよ」 「ゆっ、まり……さ!?」 そんなやり取りを交わした後、れいむはまりさの近くへと跳ね寄る。 まりさはれいむが正面を向かずに少し右斜めを向いて立っているのに若干の違和感を覚えたが、 松明の照らす明かりの中ではっきりとその顔を確認した後、顔に笑顔を浮かばせる。 すると次第に、嬉しい筈にも関わらずその目尻から涙が溢れ出す。 「ま……ま"り"ざぁぁぁぁぁ」 「でい"ぶぅぅぅぅ」 溢れ出る感情のまま大声で喜び合いたい二匹であったが、ここは未だ危険な場所であるのを理解して努めて小声でお互いの名前を呼び合った。 頬をすりすりとしようと更にれいむが近寄るが、二匹を隔てる柵に阻まれてそれは出来ない。 少し悲しそうな顔をしたれいむに、まりさは「だいじょうぶだよ」というと、外側からついたてになっている棒を外し、その柵の扉を開ける。 ゆっくりの作り出す牢屋だけに鍵などは無く、そういった手間が省けたのはこの二匹にとって幸いであろう。 「まりさぁ、まりさだ……たすけにきてくれたんだねぇ」 「あたりまえだよ、れいむ。あいするれいむを、まりさがみすてるはずないんだぜ」 そう言ってれいむがすりすりと頬擦りをし、まりさもそれに応える。 ふと、まりさは不思議な感触に顔をしかめる。 以前のれいむだったらもっともちもちして弾力のある肌をしていた筈なのに、この感触はざらざらとして湿気を感じさせない。 それに先ほどから、れいむの動きもどこかぎこちなかった。 まりさは数秒頬を合わせた後、薄暗い中でそのれいむの姿を眼を凝らして眺めてみる。 「ゆうぅ!!?」 音を立ててはいけないと思いつつも、まりさは思わず短い悲鳴をあげてしまう。 そのれいむの姿――以前は群れ一番と言っても過言でなかった美ゆっくりの姿は其処には無く。 髪は半分焼け縮れてボサボサとなり、頭に付いているリボンとにしても、もうほとんど原型を留めずに申し訳程度に頭の上に乗っているといった具合だ。 全身には暴行の後がはっきりと見て取れたし、今この時も頭の後ろには二、三本が痛々しく突き刺さったままだ。 何よりその顔の所々は焦げというのも遥かに超え、黒々と炭のようになっている部分がある。 特に右頬に至っては大部分が炭化し、れいむの笑顔もぎこちなく引き攣っている。 まりさが最初に顔を見せた時、れいむが正面を向かなかったのはこのせいだろう。 無意識の内に、夫であるまりさにその醜くなった部分を見せまいと振舞っていたのだ。 「ごめんね、まりさ…こんなになっちゃった……」 れいむの眼から、ポロリと大粒の涙が零れる。 「まりさ、れいむのこときらいになっちゃったよね?こんなゆっくりできないすがたになっちゃったんだもの」 そう呟くと、れいむは更に涙を零して眼を伏せる。 まりさが助けに来てくれたのは嬉しいが、もうこんな姿になってしまっては一緒にゆっくり出来ない。 そう考えると、れいむの心は哀しみで一杯になった。 すると、そんなれいむにまりさは静かに歩み寄ると、再びその頬に自らの頬をすり合わせる。 「そんなわけないぜ。まりさはれいむだからすきになったんだ。どんなすがたになってもそれはかわらないよ」 「でも、まりさ。まりさだったら、いくらでもれいむとはべつのゆっくりできることいっしょになれるよ?」 「れいむ……それいじょういったらまりさもおこるんだぜ。」 「ゆぅぅ…ぅ!?」 まりさに怒ると言われて少し怯えた表情をしたれいむは、一転して驚愕の表情に変わる。 自分の唇にまりさが唇を重ねてきたのだ。 れいむは一瞬焦ったが、直ぐにとろんとした顔へとなり、まりさにその身を委ねる。 数秒か数十秒か判らないが、れいむとまりさにとって至福の時間が暫く流れた。 時折、「んふっぅ」や「ゆふぅぁ」などという艶めかしい嬌声が聞こえるのは、お互いの舌を絡め合わせての「でぃぃぷちゅっちゅ」を行い、 すっきりとは別の、だがそれに近い快感を感じているからであろう。 先に後ろに引いたのはまりさの方であった。 二匹の間に唾液で出来た糸が出来る。 れいむは物足りないといった顔でまりさを見詰めたが、此処から脱出しなければいけないという状況を思い出し、それを口にする事は無かった。 「わかっただろ、れいむ。まりさはれいむとだけゆっくりしたいんだよ」 「……うん」 それ以上の言葉など要らなかった。 すぐにまりさは元来た道の説明をすると、身体を痛めているれいむに「だいじょうぶ?」と心配そうな顔をしながら寄り添って進もうとした。 するとれいむはまりさから離れ、 「れいむはだいじょうぶだよ。まりさのあしでまといになりたくないから、じぶんひとりであるくね」 と言い、笑顔を見せて前へと進み始めた。 その後頭部には未だに人間の手首ほどの太さの棒が突き刺さっていたが、それを抜こうとは考えなかった。 それを安易に抜いてしまえば、中の餡子が漏れ出て、直ぐに治療出来ない環境ではれいむが死んでしまうと考えたからだ。 まりさは前を行くれいむのその姿を見て、更にその身体の中から憎しみの炎が燃え上がってくるのを感じた。 脱出するのは想像していた以上に簡単であった。 途中の見張りはあの眠っていたれいむだけであったし、潜入直後に殺したみょんの死体も未だに片付けられていなかった。 あのはくれいむにしては無防備過ぎると感じたが、自分達がそうであるように向こうも完全なゆっくりで無いのだろうと考え先へと進んだ。 そのまままりさが入り込んできた穴まで進むと、二匹はすぐさまそこから脱出しようとした。 しかし―― 「どうしたのれいむ?ここから、ゆっくりでればおそとにでられるんだよ」 まりさに先に穴に入るよう言われたれいむであったが、穴に一度入ろうとして再び戻ってきたのである。 「もういちどがんばってみるね!!」 「からだがいたいだろうけど、ゆっくりいこうね」 そう言って、れいむを励ますまりさ。 それに対して笑顔で応え、再び前に進もうとしたれいむであったが、結果は同じであった。 「ゆあッ!!れいむのあたまのぼうさんがひっかかってまえにすすめないよぉ!!」 れいむが涙声でまりさに訴える。 頭に刺さった棒の一つ、頭から斜め上に生えるように伸びているそれが穴の入り口に引っ掛かって前へと進む事が出来ないのだ。 そんなれいむの状態に、まりさも顔をしかめて状況の打開策を考える。 「ねぇまりさ、まりさがれいむのあたまのぼうさんをぬきとってくれれば……」 「ゆっ!?だめだよれいむ、そんなことしたられいむのなかのあんこがもれてしんじゃうよ」 「ゆぅ、でも……」 脱出まであと少しというこんな所で足止めを喰ってしまうとは。 しかも、まりさの足手まといにならないと言ったにも関わらず、自らのせいで先に進めないという状況に陥り、 れいむの顔に影が差す。 暫く考えた後、まりさが覚悟を決めたように、 「こうなったら、しょうめんのどうくつのでぐちからだっしゅつするよ」 と言い出す。 それにはれいむもすぐに反対した。 この洞窟の奥であったからこそ警備が薄いのである。 正面から出て行っては到底逃げ切れるものではない。 自分だけが危険な目に会うだけならまだしも、助けに来てくれたまりさまで危険な目に会わせる事は出来ない。 「だったらどうすればいいのぉ!?」 「ごめんね、まりさ。せめてまりさだけでもここからおそとにでてね」 「どぼじでぞんなこというにょぉぉ!!れいむだけをおいてなんていけないよぅ!!」 れいむのその言葉に、まりさは顔をくしゃくしゃにして否定する。 互いが互いを気遣う為に、脱出への策は全くの平行線を辿るばかりであった。 そんなやり取りをしながら、時間だけが無情にも流れる。 二匹にも焦りの色は隠せない、そんな中。 「まりさ、おねがいがあるよ!!」 「おねがい?」 意を決したようにれいむがまりさに言う。 「れいむのあたまにあるぼうさんを、まりさがなかにおしこんでね!!」 「おし……こむ…!?」 れいむの思いも寄らぬ発言に、まりさは眼を丸くした。 有ろう事か、れいむの中に木の棒という異物を自分に押し込めというのだ。 それには流石のまりさも頭を左右に振って、「そんなことはできないよ!!」と涙声で拒絶するばかりであった。 「でも、それしかほうほうはないんだよ。ゆっくりりかいしてね!!」 「いやだよ、まりさはれいむにそんなことしたくないよ!!」 「まりさにしかできないんだよ!!」 「まりさはれいむをこれいじょうきずつけたくないよ!!れいむこそゆっくりりかいしてね!!」 「ゆぅ、このわからずや!!」 一向に進まぬ事に業を煮やしてか、れいむはまりさにドスンと体当たりをする。 だが、それは全く威力も無く、まりさはすこしよろけて後ろに下がるだけであった。 それでもまりさは突然のれいむの攻撃に非難の言葉を投げ掛けようと口を開こうとした。 「なにするんだよ、れい……む?」 まりさが正面を向くと、れいむはエグエグと泣き出していた。 「れいむだって……でいむだっていたいのはいやだよ。でも、まりざのあじでまどいになんでなりだぐないから……」 「ぞれにまりざのぞんななざげないずがだなんでみだぐないよ!!まりざはいづだっでがっごうよいまりざでいでほじいよ」 「れ、れいむ……」 れいむの涙ながらの訴えであった。 それに対し、まりさは少し眼を伏た後、キッと眼に力を入れれいむに近付き、 その後ろへと回り込む。 「わかったよ、れいむ。まりさがゆっくりなかへおしこむね!!」 「うん、わかってくれたんだね。ゆっくりおねがいね」 そう言って、れいむは来るであろう激痛を予想しながら、まりさに心配を掛けまいと明るい声で応えた。 まりさは「ゆーふー」と一回だけ深呼吸をすると、 れいむの中へ棒を真っ直ぐ差し込むべく一歩後ろへと下がり、空中へと飛び上がる。 そのまま前方へと飛び上がると、棒の頭をその足の下に捕らえ体重を込めて押し込んだ。 餡子の中に棒を差し入れる鈍い感触がまりさの足元へと伝わり、れいむの中へと少しだけ押し込まれて行く。 「ゆぎぃぃぃ!!!」 出来るだけ平常を保って我慢しようと思っていたれいむであったが、思わず呻き声が漏れる。 その後、棒を押し込み倒れ込むように地面へと落ちたまりさがすぐさまれいむへと駆け寄る。 れいむは激痛に身を悶えながら地面を転がっていた。 「ゆがっ、ゆぐぐぐぐぅ!!」 「ゆあぁぁ!!でいむ、でいぶぅ!!ごめんね、まりさがもっとゆっくりおしこめたらこんなにいたいおもいしなかったのに!!」 「ぎぎぎ、ゆ…ぅ……だいじょう、ぶだよ。でいぶ、ごんなのぜんぜんいだぐなんでないがら」 心配するまりさにれいむは、口から餡子が流れ出るのも構わずに笑顔を見せる。 そんな気丈なれいむの姿に、このれいむは本当に強くてゆっくり出来る最愛のゆっくりだと改めて確信し、 必ず守り抜いていこうと心に誓った。 「ゆ…ぐぅ、ま、まりざ……ここから、ゆっぐりおぞどにでようね」 「うん、ゆっくりでようね!!かぞくのもとにかえろうね!!」 よろよろと横穴に近寄るれいむにまりさは力強く応えた。 その横穴は普通でも大人のゆっくりであれば窮屈で身体を岩肌に擦り付け、 全身に切り傷が出来てしまう程の狭さである。 それを頭の棒を中に押し込んだからといって、相当な深手を負っているれいむには厳しいものがあった。 途中何度も岩肌に肌を擦り付ける痛みに耐えられずれいむの動きが止まり、 酷い時には「ゆぎっ!!ゆぐぅ!!」と呻きながらビクビクと痙攣し出すときもあった。 そんな時何度も、まりさは後ろから「がんばってね!!もうすこしだよ!!」や「うごきをとめないでね、れいむ!!まりさをおいてゆっくりしないでね!!」 と、後ろかられいむを励まし続けた。 まりさが進入した時より遥かに時間が掛かった。 そんな正にゆっくりとした脱出であったが、とうとう眼の前に外の月明かりであろう光が見え始めた。 「れいむ、もうすこしだよ!!もうすこしでおそとでゆっくりできるよ!!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっぐじぃぃぃ!!」 まりさの掛け声と共に、朦朧とした視界の中へと外の光が飛び込んでくる。 「ゆっぐりい”、まりざとゆっぐりずるよぉぉぉ!!」 「そうだよれいむ、まりさとゆっくりしようね!!」 死力を尽くして、れいむは身体を地面へと擦り付けながら前へと進む。 後ろを続くまりさの眼には、地面に広がる餡子の跡が眼に写る。 何処かの傷口が開いたのだろうか? それとも、苦しさの余り餡子を吐き出してしまっているのだろうか? それでも前へと進むれいむの姿に、まりさは流れ出る涙を抑える事が出来なかった。 その後更に10分ほどで、れいむは横穴を抜け外へと這い出る。 遅れてまりさが飛び出した時には、れいむは横穴の傍で身体を萎ませて休んでいた。 「ゆっ……れれ、れいむ、だいじょうぶ!?ゆっくりしてね!?」 眼を瞑って全く動かなくなったれいむの様子に、最悪の結末を浮かべてまりさは急いで駆け寄る。 「れいむ、でいぶぅ!!ゆっくりへんじしてね!!」 「……ゅぅ、だいじょうぶだよ、まりさ」 「ゆあぁ、よかったよれいむ!!おそとにでられたんだよ!!」 「ぅ…ん、ここですこしゆっくりしたら…おちびちゃんたちのところへ……」 「うん、うん!!みんなでゆっくりしようね!!れいむとまりさとおちびちゃんたちでゆっくりしようね!!」 そう呟いてれいむは眼を瞑った。 まりさは慌てて肌を寄せる――大丈夫、息をしている。 全くいびきもしない、まるで子供の様な深い眠りであった。 ここも未だ安全とは言い切れないが、れいむのこの状態では今の隠れ家まで移動するのは無理である。 幸い洞窟の裏手は群れの方角とは反対で、はくれいむの住処から実質山一つ分越えた辺りに位置する。 はくれいむの部下がこちらの方向に探しに来る可能性は限り無く低いだろう。 そう考え、今晩はここでゆっくりと身体を休めようとまりさはれいむにぴったりと身体を寄せた。 そうやってれいむの体温を感じておかないと、今にもれいむがいなくなってしまうような感覚に陥ってしまうからだ。 「れいむぅ……やっぱりれいむはあたたかいよ」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「ゆっくりおやすみ、あしたもゆっくりしようね」 翌朝、眼を覚ますとまりさのその隣にはれいむの姿は無かった。 又もや最悪の状況を想像し、まりさはれいむの名前を叫ぶ。 すると近くの茂みから、 「ゆっくりしていってね!!」 という声と共に、れいむが姿を現した。 「ゆっくりしていってね……じゃないよ!!れいむのすがたがみえないから、まりさはおどろいたんだよ!!」 「ごめんねごめんね。れいむはちかくのおはなさんをゆっくりとつみにいっていたんだよ!!」 そう言ってれいむは頬袋に溜めた色とりどりの花を吐き出す。 ただ量はかなり少なかった。 炭化して硬質化した右頬のせいで多くの量を詰め込む事など出来なかったのだろう。 「すごいよれいむ!!こんなにたくさんのおはなさんをあつめられるなんて、やっぱりれいむはてんさいだね!!」 「ゆっへん、それほどでもないよ!!」 そんな事はまりさは一切気にせず、れいむが精一杯集めてくれた食事を素直に喜んだ。 れいむの状態にしても昨日から比べれば相当良くなっている。 この調子なら今日中に皆の所まで帰る事が出来るだろう。 「じゃあ、れいむ。これをゆっくりたべたらみんなのところにかえろうか」 「うん、ゆっくりたべて、ゆっくりみんなのところにかえろうね」 そう言った後、二匹は食事を始めた。 れいむは捕囚暮らしであった事は元より、愛するゆっくりと共に食事出来る事で代わり映えしない植物でもれいむは何倍にも美味しく感じた。 それはまりさも同様であった。 二匹はその味と幸せを噛み締めながら同時に「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」と高らかな声をあげる。 そして食事後少しゆっくりした後、まりさとれいむは皆の待つ隠れ家へと進む事とした。 時間にして三時間程であろうか。 二匹は時折休憩を挟みながらも、それでもゆっくりしないで道中を急いだ。 「ゆっ、れいむ!!あとすこしだよ!!ゆっくりいこうね!!」 「いやだよ、まりさ!!きょうだけは、れいむはゆっくりしないでいそぐよ!!」 「ゆぅ、だったらまりさもまけてられないね!!」 二匹はそんな会話を楽しみながらピョンピョンと跳ね続ける。 もうここまで来れば追っ手が来る事は無いだろうとは思ったが、家族の事を思えば自然にその足は進むのだろう。 会話の内容にも、幾分か余裕が出てきた。 すると、そんな二匹の進む道の横にある茂みが急にガサガサと揺れ出す。 れいむはそれにビクリと身を怯ませて、すぐさままりさの後ろへと回り込む。 だが、まりさは怯える様子も無くれいむに語り掛けた。 「だいじょうぶだぜ。きっとなかまのみんながむかえにきてくれたんだ」 「ゆっ、そうなの?」 まりさのその言葉に、れいむの顔も安心の色が窺える。 二匹はそのまま、その茂みの方へと向き直ると「ゆっくりしていってね!!」と呼び掛けた。 予想通りにそこからは「ゆっくりしていってね!!」という声が返ってくる。 しかし――そこから現われたゆっくりは予想外の者達であった。 「ゆへへ、ことばどおりにゆっくりしてやるんだぜ!!」 「わかるよー♪みょんのかたきなんだねー♪ゆっくりなぶるよー♪」 この二匹は――。 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」 まりさの後ろでれいむが叫び声をあげる。 突然の事にまりさは驚いて後ろを振り向くと、其処にはこの世のものとは思えない恐怖に引き攣ったれいむの顔があった。 囚われの身になっていた間に受けた拷問の数々を、れいむの餡子にはしっかりと刻まれていたのだろう。 その刻まれた恐怖がフラッシュバックとなって頭を駆け巡る。 「ゆじいぃぃぃ!!いやだ、いやだよぉ!!」 「れいむ、れいむ!!おちついて!!」 それに合わせたように、ぞろぞろと他のゆっくり達も出てくる。 総勢で10は居るだろうか。 どちらにしても、こんな状況のれいむを庇って戦える筈も無い。 まりさの顔にはっきりと見て判る程に焦りの色が浮かぶ。 「こんなやつが、このまりささまよりつよいまりさなんだぜ?とてもそうはみえないんだぜ?」 口元を吊り上げ勝ち誇ったような笑みを浮かべて、はくれいむの部下であるまりさが呟く。 周りの部下達も「そうだねー」などと同意する。 「ゆあぁぁぁ、こわいよぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよ、れいむ!!れいむはまりさがまもるよ!!」 「まりざ、まりざぁ!!」 恐慌状態のれいむの前でまりさがプクーと頬を膨らませて相手を威嚇する。 これには敵のゆっくりも失笑を隠せない。 一対一ならまだしも、10対2。 いや、れいむのあの状態を考えれば10対2どころか10対1――足手まといと考えればそれ以上。 最早大勢は決しているのだ。 何を恐れる必要があるだろうか。 「やめでえぇぇぇぇぇ!!ごっぢごないでぇ!!」 れいむが声をあげるが、相手はそれに応える気配すら無い。 精一杯膨らむまりさを囲むように、はくれいむの部下達はにじり寄ると「ゆっくりしね!!」と叫んで一匹がまりさに飛び掛った。 このSSに感想を付ける
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 − − − 1 日 目 − − − 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 − − − 7 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 − − − 1 0 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 − − − 1 2 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 − − − 1 7 日 目 − − − 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 − − − 2 0 日 目 − − − 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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おまけ 前 れいむの元から逃げ去った2匹の子れいむは、親れいむから逃げるために、方々に散って行った。 1匹は内風呂の中へ、もう1匹は最初に来た植え込みの中に飛び込んだ。 内風呂に入っていった子れいむは、運よく開いていたドアが目に止まり、その小さな部屋の中に飛び込んだ。 しかし、そのドアにはロープが掛けてあり、使用禁止と書かれてあったのだが、子れいむに文字が読める筈もない。 小部屋の隅でしばらく身を隠していると、親れいむの声が内風呂の中に響き渡った。 自分を追って来たと思った子れいむはガタガタ震えたが、どうやら親れいむは子れいむのほうに来る気はないらしく、向こうで壁に体当たりしている音が聞こえてきた。 その後、ドアの開く音と共に、れいむの悲鳴が子れいむの元まで届いてくる。 何をされているのかは知らないが、今まで聞いたこともないような親の絶叫に、子れいむはチビりながら、その声が止むのを待ち続けた。 やがて親れいむの悲鳴も止み、人間の足音が遠さかって行ったが、子れいむは恐怖に足がすくみ、その場から動くことが出来なかった。 そして、神経を減らし続けた結果、余りの疲れにいつの間にか子れいむはその場所で眠ってしまった。 「まったく!! 今日はゆっくりが多くて、散々だよ」 清掃のおばさんが、まりさ親子を崖下に捨て、露天風呂の掃除を終えて戻ってくると、子れいむの入った部屋の入口に掛けられたロープを取って、ドアを閉めた。 閉められたドアには、こう書かれたプレートが填められていた。 “サウナ室” 「ゆっ?」 子れいむは目を覚ました。 一瞬、自分がどこにいるのか分からなかったが、周りを見渡し、すぐに自分がここにいる理由を思い出した。 どのくらいたったのかは知らないが、小さな部屋の窓からのぞく空は、少し夕日掛かっている。 子れいむはまだ親れいむが怒っているのでは震えた。 悲鳴は聞いていたものの、現場を見たわけではないので、まさか親れいむが死んでいるとは夢にも思わなかった。 どうやって帰ろうか? 謝れば許してくれるだろうか? いろいろ考えたが、結局名案が浮かばなかった。 そんな折、子れいむは空腹感に襲われた。 まりさ達と違って、子れいむはお菓子を食べていないのだ。一度感じると、立ってもいられないくらいお腹が空いてくる。 もう帰ろう。お母さんもきっともう怒っていないだろう。 子れいむの餡子脳は、空腹に負けて、面倒事を考えるのを停止させた。 子れいむは、小さな部屋から出ようとした。 しかし、さっき入ってきた入口は、大きな木の板で塞がれていた。 子れいむは、自分が出口を間違えたのかなと、小部屋の中を行ったり来たりしたが、どこにも出られるような場所は無かった。 「ゆうう―――!!! なんで、でられないのおおぉぉぉ――――!!!」 部屋から出られなくて、泣き出す子れいむ。 しかし、ここで泣くことは、ある意味自殺行為に等しいことを、子れいむはまだ知らなかった。 一通り泣き叫んで、子れいむは誰か助けが来るのを待っていた。 窓から見える空は、もうすっかり真っ暗であり、この時期は夜になると、めっきり寒くなってくるのだ。 ゆっくりは寒いのが大の苦手である。 子れいむも、「寒いのはいやだよおおぉぉぉ―――!!!」とまた半ベソをかくも、そこで子れいむは異変に気がついた。 なぜか部屋が暖かいのである。 本来ならもう寒い時間だと言うのに、この暖かさときたらどうだ。まるで春の陽気のそれではないか!! 「ゆゆっ!! あったかくなってきたよ!!」 暖かくなってきて、喜ぶ子れいむ。 空腹なことも部屋から出られないことも一時忘れ、嬉しくなって部屋中を飛び跳ねている。 しかし、次第に状況が一変し出した。 熱さが下がらないのだ。 春の陽気は次第に夏の昼下がりになり、夏の次に秋が来ることはなく、その後もグングン気温が上昇していく。 「たいようさ―――ん!! もうやめでええぇぇぇぇ――――!!!」 子れいむは、余りの暑さに意識がもうろうとしだしてきた。 すでに沈んでいる太陽に文句を言い放つ。 しかし、太陽(笑)は、子れいむの言うことを無視して、どんどん気温を上昇させていく。 室温70度くらいの頃だろうか? 子れいむの座っている木の板が高温になり、同じ場所にじっとしていられなくなった。 「あじゅいおおおおぉぉぉぉ―――――!!! やめでえええぇぇぇぇぇぇ――――――!!!!」 あまりの熱さに、子れいむは飛び跳ね続けるしかなかった。 その間も、子れいむの体からどんどん水分が奪われていく。 泣いたり、チビったりしなければ、もう少しは水分ももったかもしれないが、既に子れいむの体の水分は限界まで搾り取られていた。 遂には、跳ねる力さえ出てこなくなった。 「なんで……れいむがこんな……めにあわ…なく……ちゃなら………ない…の?」 カサカサになった唇は最後にそう呟くと、子れいむは先に行った姉妹たちの元に旅立って行った。 2時間後、水分の無くなったカラカラの焼き饅頭が、温泉客に見つけられた。 植え込みの中に逃げ込んだ子れいむは、適当な方向に逃げて行った。 とにかく親れいむに捕まるまいと、場所も考えることなく精一杯逃げていく。 やがて、子れいむの体力が付き、これ以上歩けないというところで、子れいむは足を止めた。 「ゆひーゆひーゆひー……」 大きく肩で息を付く子れいむ。 後ろを振り返ると、親れいむの姿は見えないし、声も聞こえない。 逃げ切ったのだと、ようやく子れいむは、一息つくことにした。 子れいむはその場でしばらくジッとしていれば、その内親れいむの怒りも収まるだろうと考え、安全そうな草むらに身を隠して、疲れをいやすべく眠りについた。 子れいむが起きたのは、サウナに入った子れいむと、ちょうど同じくらいの時間だった。 すでに空は真っ暗で、うっすら寒い。 もう親れいむの怒りも静まった頃だろうと、子れいむは巣に帰ろうとした。 しかし、その時になって、ここがどこか全く分からないことに気がついた。 「ゆううぅぅ―――!! ここはどこおおおぉぉぉぉ―――――!!!?」 大声で叫んでも反応してくれるものは誰も居なく、子れいむは仕方なく、運良く来た道に戻れることを祈り、適当に歩き始めた。 しかし、そんなことで無事にたどり着けるほど、世の中は甘くない。 元々体力が少ない子ゆっくりで、しかも飯抜き山中歩行をしたおかげで、せっかく体を休めたというのに、すぐに子れいむの体力は限界に達した。 「……もう……あるけないよ……」 子れいむはその場にうずくまった。 すると、目の前の草影がカサカサと動き出した。 初め、親れいむが迎えに来てくれたのかと思ったが、出てきたのはカルガモの親子だった。 子れいむは落胆したが、すぐにあることが閃いた。 このカルガモ達なら、あの温泉の行き先を知っているに違いない!! あそこまで連れて行ってもらえば、後は巣の帰り方は分かっている。 「とりさん!! れいむをゆっくりおゆのところにつれていってね!!」 カルガモに向かって、跳ねて行くれいむ。 本当に危機意識の薄い饅頭である。 人間ならともかく、野生生物の前に饅頭が行くなど、空腹のライオンの前に自分から進んでいく草食動物に等しい。 結果は言うまでもないだろう。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁ―――――!!! なにずるのおおおぉぉぉ―――――!!! れいむはたべものじゃないよおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!」 親カルガモはれいむを咥えると、子カルガモの前にれいむを差し出した。 「やめでえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――!!!! いだいよおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!!」 子カルガモに、チクチクと啄ばまれ暴れ狂う子れいむ。 しかし、親カルガモの体長は60㎝近くもあり、子れいむとの力の差は歴然で、逃げだせるはずがない。 子カルガモは、子れいむをボロボロ溢しながら食べていくも、しっかり下に落ちた皮や餡子も、残さず食べていく。 食べ物を粗末にしないその精神は、飽食になれた外界の人間や、どこぞの饅頭一家にも見習わせたいくらいである。 やがて、子カルガモ達がもう食べられなくなると、半分ほど残った子れいむは、親カルガモに美味しく食べられた。 ここで、一家全員が死亡したこととなった。 結局、この一家の不幸はカルガモに始まって、カルガモに終わることとなったのである。 ~本当にfin~ カルガモの親子って可愛いよね!! なのに、ゆっくりが同じことやっても腹が立つだけなのはなぜだろうww ちなみに帽子の設定は、家族は帽子を被ってもなくても個体認識が出来るということで。 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ カルガモとゆっくり 前編 カルガモとゆっくり 後編 カルガモとゆっくり おまけ このSSに感想を付ける