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「ゆぶべべべっ!?」 「ま゛り゛さ゛あああああああ!?」 「全く、まぁ~た畑荒らしか ほんと嫌になるよ」 男の草鞋がまりさの舌に乗っていた野菜ごとその舌をぐちゃぐちゃに踏み潰した。 砕けた野菜と舌が混じり異様な色彩を産んだ。 「ぢがうのおおおおおお!!まりさはしんせつしんでおちてたおやさいをはたけにもどしてあげようと」 「瓜田に靴を入れず」 男は舌を踏みにじっていた足を引き抜いて振り上げると思い切り蹴りぬいた。 まりさは宙を舞うと柵にぶつかって嫌な音を立てながら餡子を撒き散らした。 そして柵に餡子の跡を残しながらずるずると地面に落ちて 数度痙攣すると衝撃で飛び出していた目玉がずるりと落ちて動かなくなった。 「どぼぢでええええええええええええ!?まりざなんにもわるいごどぢでないのにいいいいい!!」 餡子が混じり黒く滲んだれいむの涙が何筋も頬を伝った。 「死にたくなきゃ最初から畑に近づくなよ、荒らしとそうじゃないのと見分けるの面倒だからさ」 そう言って男はれいむのリボンを摘むと林の方に放り投げた。 そして帰ろうとして手元に指に引っかかって千切れたリボンが 一欠けら残っているのに気付いて鬱陶しそうに手を払った。 それから数日後、幽鬼のように夜の林の中を放浪するリボンのかけたゆっくりれいむの姿を あるありすは偶然友達の巣から巣へ帰る際に見た。 夜はれみりゃの時間だ、都会派として注意してあげようと思ってありすは恐る恐る声をかけた。 そのれいむはゆっくりと振り返ると壮絶な笑みを浮かべながら言った。 「れいむはれみりゃをまってるんだよ」 そしてけたたましく笑い出したれいむの狂気に恐怖を感じて慌ててありすは逃げ出した。 それからさらに数日後の深夜 れいむの前にれみりゃが降り立った。 れみりゃは獲物を見てその子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔で言った。 「うっうー♪よふかしするわるいこはたべちゃうんだどぅ~♪」 「まって、れいむはれみりゃにおねがいがあるよ」 「う~?」 れみりゃは他のゆっくりとは違う落ち着いた態度でれみりゃに話しかけるれいむに少し驚きながられいむを見た。 無視してそのまま食べてしまっても構わなかったが、とても真剣な表情のれいむに気圧されて、渋々話を聞くことにした。 「う~おぜうさまのれみりゃになんのようなんだどぅ~?」 「れいむをおかして!!れいむっとすっきりして!!!」 れいむは瞳をカッと見開きれみりゃに向かって腹のそこから叫んだ。 れみりゃは困惑して額から汗を流した。 そして思った。 このれいむは頭がおかしいのだろうか、と。 れみりゃとれいむがすっきりする例など聞いたことが無い。 当然だ、二者の関係は捕食者と逃げまとう獲物なのだから。 れみりゃ種にもれいむを性の対象として見るような趣味も無い。 れいむ種がれみりゃ種に出逢ったとき、するべき行動は逃走、ただそれだけである。 なのにこのれいむはれみりゃとすっきりしたいと言うのだ。 生きるための口先三寸かと思ったが 体格差から考えてもそんなことをすれば体が保たないだろう。 れみりゃがれいむの正気を疑うのも当然である。 実際、れいむの熱っぽく開かれた赤く血走る瞳を見てもその正気を疑うには充分だった。 そして十秒間、れみりゃにとってかなり長く熟考したのち れみりゃはこうまかんのおぜうさまとして恥じることの無い結論を導き出した。 「うっうー♪そこまでいうならたっぷりかわいがってやるんだどぅ~♪」 腰をフリフリしながられいむににじり寄って行く。 据え膳食わぬはおぜうさまの恥ってさくやが言ってた。 ちゃんとさくやの言ったことを覚えてた自分はとっても偉いとれみりゃは思った。 そして二匹は朝まで激しく交わりあった。 「ゆひっ、ひゅひひひひひいひ…!」 犯すのに飽きて、かといって自分が交わりあった相手を食べるのも憚られたので どこぞへとれみりゃが去っていった後、れいむは壊れたオルゴールみたいにけたたましく笑い出した。 綺麗だった髪は乱れて絡まり、リボンは男に千切られてかけた部分からさらに裂け目を深くした。 頬からはれみりゃの爪が食い込んだのか痛々しい傷跡と、何条もの餡子が流れた後が付いていた。 そしてズタズタに裂けたまむまむから肉汁と、餡子の混じった液体がどろりと流れ出した。 れいむのその機関はほぼ破壊されて、恐らくもう二度と用を成すことは無いだろう。 焦点の合わない瞳から伸びる視線は宙を漂う。 だがれいむの笑いは決して絶望の笑いではなかった。 「これで…これでまりさのかたきが…ひゅひひひひひ!」 雌としての本能があり得ないはずのれみりゃの子種を身篭ったことを確信して れいむは目の焦点も合わないまま口を歪めて笑った。 一週間後、近くのゆっくりの群の外れに一匹のれいむが住み着いた。 そのれいむは酷い傷を負っていて、群のゆっくりは心配して話しかけたが れいむに一睨みされただけで立ち竦み、それ以上話しかけることが出来なかった。 群のみんなはそのれいむを疎ましく思いながらも中々手を出すことができなかった。 そうして、次にそのれいむの巣をみんなが見に行ったのは れいむの巣から恐ろしい産声が聞こえてきた時だった。 「れいむ!あかちゃんがうまれたならみんなにしょうかいしてあげてね! そしていっしょにゆっくりしようね!」 群の長まりさがれいむの巣の入り口のすぐ横の木の部分を叩いた。 これを気に仲良くなっておかないと、群のみんなが怖がると思ったからだ。 それにみんなかわいい赤ちゃんは見たかったのだ。 巣の入り口を覆っていた草がガサゴソと動いて 長まりさは出てきてくれるのかと思って事前に考えておいた懐柔の言葉を言おうとし 帽子がなくなっていることに気が付いた。 「うゅ~♪たーべちゃーうぞー♪」 はっと気付き見上げると、空を飛ぶゆっくりが長まりさの帽子を捕まえていた。 子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔、口元から生えるキバは長まりさの帽子に突き刺さっていた。 本来地面にあわせて平坦であるべき足からは三本の爪の生えた妙な枝が生えていて長まりさの帽子を掴んでいる。 頭はれいむ種と同じ黒い髪に両脇に髪留めをつけていたが、その最大の特徴であるリボンは無く 代りに薄紫色に赤い布をつけた帽子を被っていた。 そして、その両脇からはあの蝙蝠のような恐ろしい悪魔の羽が生えていた。 「「「れみりゃだあああああああああああああああああ!!!!!」」」 集まっていたゆっくり達は一斉に叫んだ。 そして長まりさの周りに身を寄せ合った。 「ち、ちがう…あれはれみりゃじゃない…!」 長まりさは震えながらその化け物を見上げ言った。 「そうだどぅ~♪れみりゃなんかじゃないんだどぅ~♪」 ソレは長まりさの言葉に頷くと、体の前で悪魔の羽をみょんな形であわせながら言った。 「れい☆むりゃ☆う~♪」 そして足に掴んでいた長まりさの帽子をむしゃむしゃと平らげた。 「ま゛り゛さのだいじばぼうじっびゅべばじゃ!?」 「「「だずげでええええええええええええ!!」」」 一斉に逃げ出したゆっくり達にもみくちゃにされて長まりさはぐちゃぐちゃの饅頭になって死んだ。 その様子を見てれいむりゃと名乗ったその化け物は首をかしげながら言った。 「うゅ~?どうしたんだどぅ~♪もっとゆっくりしてくいくんだどぅ~♪」 不思議がるれいむりゃを他所に、巣の中からはれいむのあの壊れたオルゴールのようなけたたましい笑い声が木霊した。 「たくさんたべて、もっとつよくなるんだよ」 口から虫や木の実を吐き出しながられいむはれいむりゃに言った。 嬉しそうに母から餌を貰いながられいむりゃは応えた。 「うゅ~♪いっぱいたべておおきくなってゆっくりするんだどぅ~♪」 そう言うや否や、れいむりゃの見ていた世界の天地は逆転した。 れいむの体当たりでひっくり返ったのだ。 「あまったるいこといわないでね!おまえはたたかうためにれいむがうんでやったんだよ!! ゆっくりしてないでとっととりかいしてね!!」 「ぅ、うゅ~、わかったんだどぅ…」 目を血走らせて鬼の形相で言うれいむに怯えながられいむりゃはれいむが何故そんなことを言うのか理解できないものの とりあえずもう一転がりしてから頷いた。 「ぜんぜんわかってないみたいだね…」 れいむりゃの暢気な表情を見てれいむは嘆息しながら言った。 「おまえはね、やさいをかえしてあげたまりさをころしたあのくずをころすためにうまれてきたんだよ だからゆっくりしてるひまなんてないの、いっこくもはやくあのくずをころすためにつよくならなくちゃいけないんだよ それができないならおまえみたいなばけものいきてるいみがないんだよ!」 確かに意識ははっきりしているのにどこか焦点の合わない瞳でれいむりゃを睨みつけながられいむは言った。 「うゅ~、ゆっくりりかいしたんだどぅ~♪」 「それがわかってないっつってんだよ!!!!!」 れいむの体当たりがまたれいむりゃを転ばした。 「う、うゅ?」 何故体当たりされたのか分からず起き上がろうとするれいむりゃにまたれいむが体当たりを食らわせた。 ゴロゴロと何度も巣を転がって吐きそうになりながられいむりゃはれいむを見た。 「どおぢでおまえはぞうなの!?どおぢで!おばえはもっどづよぐなんなぐぢゃだべなんだよおお!! なのに!れいむにやられてちゃだべでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 れいむは狂ったように、というか狂っているのだろう。 執拗にれいむりゃに体当たりを繰り出す。 何度も転がり何度も壁に叩き付けられながられいむりゃは思った。 何故おかあさんはゆっくりしないのだろうと。 れいむりゃはこんなにもゆっくりしたいというのに。 いくら体当たりをしても気絶しないれいむりゃの耐久力に満足したのか れいむはボロボロのれいむりゃを放ったまま眠りに付いた。 れいむが眠りに付いたのを確認すると、れいむりゃはれいむを起こさないようにそっとその隣ですやすやと眠り始めた。 朝早くれいむに叩き起こされて外に連れ出されたれいむりゃは 生後まもないにも関わらずもはや痛めつけるのが目的としか思えないほど厳しい仕打ちを特訓と称して行った。 石を投げつけられ、木の枝で叩かれ、土に埋められ、川に落とされ、蔦を巻きつけられ引っ張られる様は とても特訓などという上等なものではなく、れいむの持つ恨みをれいむりゃに押し付けているだけだった。 それでもれいむりゃは子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔を崩さなかった。 そんな生活が何ヶ月か続いた。 れいむりゃは飛び回ってれいむの放つ石ころを避け 土に埋められても足の力と羽ばたきで飛び出し 川の中を皮がふやけるまでの間バタ足で泳ぎ 蔦を引きちぎり、逆に蔦を加えてれいむをぶら下げるほどに強くなった。 れいむはそんなれいむりゃを見て満足そうに頷くと またあの壊れたオルゴールみたいなけたたましい笑い声を上げた。 「これで…ひゅひひひ!これで!このばけものをつかえばまりさのかたきがうてるよおひゅひひひひひ!! やざしかったまりさをころしたあのクズひゅひ!ころせる!やっところせる!!」 れいむの口から餡子色のあぶくが吹き出た。 そんな笑顔でもれいむりゃはとても嬉しくて一緒に笑った。 梅雨の季節が来た。 あれかられいむはれいむりゃの特訓の合間にまりさを殺したあの男の動向を探っていた。 男は殆どの日を畑で仕事をしていた。 畑の中はまずいとれいむは考える。 一緒に畑仕事をしている仲間を呼ばれる危険がある。 いくらあの恐ろしいれみりゃの血を引くれいむりゃでも 二対一では分が悪いとれいむは思っている。 かといって家の中も危険だ。 家の中には色々な道具を置いてあるに違いないし間取りにも詳しいだろうから不利だ。 男が外で一人になる瞬間が知りたかった。 そうして調べている内についにれいむは遂に男が一人になる時間を見つけた。 男は一週間に一度、里の方に一人で出て行く。 特にその時に渡る古びた人気の無い橋の上は逃げ場も殆ど無い絶好のポイントだった。 れいむりゃは、れいむが男を見に行っている間、たった一人でとても寂しがった。 梅雨の最中でもはや濁流に近い流れを持つ川のほとりで雨避けの葉っぱを口に咥えながられいむは言った。 「やっと、おまえのやくめがはたせるんだよ うれしいよね、れいむりゃ」 入念な準備を経て、れいむりゃにもしっかりと計画を伝えてれいむはれいむりゃと橋の前に立った。 「れいむりゃ、わかるね ここであのおとこをころすんだよ」 れいむはちらりとれいむりゃの方を見て最終確認をした。 「うっゆー♪わかるんだどぅ~♪ばっちりなんだどぅ~♪」 れいむりゃはれいむが喜びに震えているのを感じ取って自分も嬉しそうに頷いた。 「そいつにれいむりゃがおしおきしておとうさんにひどいことしてごめんなさいっていわせるんだどぅ~☆」 はしゃぎながらそう言ったれいむりゃに唖然としながられいむはぽとりと咥えていた葉っぱを落とした。 ドン、とれいむは体当たりをした。 不意の体当たりにれいむりゃはゴロゴロと水浸しの地面を転がり泥まみれになった。 「う、うゅ~?」 ちゃんと答えられたと思ったのに何故か怒りの形相のれいむを見てれいむりゃははてなと首を傾げた。 「なにをいっでるの!?それじゃだめだんだよ!! ちゃんところして!!いきのねをとめて!! にどとそいつをゆっくりできなくするんだよ!!」 それを聞いて、れいむりゃは固まった。 「う、うゅー?おかあさんがいってるころすってのがよくわからないんだどぅ~♪ それをしたらゆっくりできなくなっちゃうのかどぅ~?」 困惑し額に汗を浮かべながられいむりゃは尋ねた。 ザアザアと雨粒が顔を打ち据えるのを意にも介さずれいむは捲くし立てた。 「あたりまえでしょ!そんなこともわからなかったの?ばかなの!? わかったらとっととあのおとこをころすじゅんびをしてね!!」 「……じ、じゃあいやなんだどぅ~」 れいむりゃは、搾り出すように言った。 か細い声だったにも関わらずその声は何故か雨音にかき消されずにれいむの耳にちゃんと届いた。 「は?いまさらなにをいって」 「いやだどぅ~♪だれだってゆっくりできなくなるなんてだめなんだどぅ~♪ひとのだいじなゆっくりをとったらだめなんだどぅ~♪ こらしめるだけでかんべんしてあげるんだどぅ~♪そしたらみんなゆっくりできるんだどぅ~♪」 「ふっざけるなああああああああ!」 れいむりゃの初めての反抗にれいむは激怒した。 「あのおとこはねぇ!まりさの…まりさのだいじないのちを…ゆっくりをうばったんだよ!! あんなにやさしくて!つよくて!ゆっくりしてたまりさのゆっくりおおおおおおお!! だからあのおとこはゆっくりをとられてとうぜんなんだよ!!なんでそんなこともわからないの!? ばかなの!?しぬの!?だいたいまりさみたいなすてきなゆっくりからおまえみたいなばけものがうまれるか! しね!ゆっくりしね!!」 れいむは激昂して喉が裂けて口から餡子が飛ぶほど叫んだ。 それでもれいむりゃは怯まなかった。 「それでもいやなんだどぅ~♪ それよりそいつもゆっくりさせたらさんにんでおとうさんのぶんもゆっくりできるんだどぅ~♪ おかあさんもこれでゆっくりできるにちがいないんだっどぅ~♪ うゅー、こんなことおもいつくなんてれいむりゃはてんさいだっどぅ~♪」 れいむりゃはれいむを説得しようとかそういうことだけでなく ずっとそうしたいと思っていたことをれいむに告げた。 「ゆぐがぎゃああああああああああああああああ!! ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああ!! れいむのゆっくりはおばえどなんがじゃない!!おばえみだいなバゲモノどじゃなぐで まりさとぉ!れいむとまりさのかわいいあかちゃんのさんにんでするはずのゆっくりなんだよおおおおおお!!! もういいもういいもういい!!ぜんぶれいむがやる!!おまえみたいなばげもののぢがらはがりない!! だがらお゛ばえがらゆっぐぢぢねええええ!!!」 怒りで血が上ったためか、それとも雨の湿気のせいか古傷から餡子を噴出し目から餡涙を流して 歯茎をむき出しになるほど歯を食いしばりながられいむはれいむりゃに襲い掛かった。 「や、やめるんだどぅ~☆れいむりゃにたいあたりしたらおかあさんのほうがいたいんだどぅ~♪」 実際その通りだった。 れいむは頑丈なれいむりゃに体当たりするたびに古傷を開かせ、ボロボロになっていった。 それでもれいむは止まらない。 れいむりゃは逃げればいいのにれいむを止めようと何度も羽でれいむを包みこみ、踏ん張った。 その度にれいむは羽を振り払って体当たりをして傷口を大きくした。 「やめるんだどぅ~やめるんだどぅ~♪」 「だばっ!れええええええ!!!」 二匹はもつれ合いを繰り返していつの間にか橋の上まで来ていた。 れいむりゃの必死の訴えも空しく、れいむは突進した。 雨とれいむに体力を奪われたれいむりゃは、れいむの前に立とうとして足を滑らした。 何も居ない空間にれいむは突っ込み、そして雨に濡れた木の板に足を滑らせて橋から落下した。 「ゆっ」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!!!」 初めてれいむりゃの子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔が歪んで 驚愕の表情へと変わった。 れいむりゃはその悪魔の羽を羽ばたかせて川に落下したれいむを枝のような足でリボンを掴んだ。 普段ならそれだけですぐに引き上げられるだろうが 濁流に近い流れの前では流石のれいむりゃでも引き上げることが出来ずに一緒に引っ張られた。 「お゛っおばえのぜいだ…お゛ばえが…」 「お゛があ゛ざんしんじゃだめだどぅ゛う゛!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!」 呪詛を吐こうとして、れいむは初めて見るれいむりゃの必死の形相に目を留めた。 「も゛うっ、ゆっぐり゛ずる゛もぐぞぼっ!な゛いんだよ…! がぼっがぼっ、れい゛む゛のゆっくりばぼっ、まり゛さ゛と」 ガバガバと水を飲みながられいむはれいむりゃに言った。 それでもれいむりゃは言う。 「ぞんなごどないんだどぅうぅうう!おがあざんはれいむりゃとゆっくりすればいいんだどぅ!!」 初めて泣き喚くれいむりゃの顔を見ながられいむは今にも濁流に流されて死んでしまいそうなのに思わず呆れた。 「もうっ……いいよ…おばえっ、にきたいしがぼがっぼ、れいむが…ばかだったよ…」 「だいじょうぶだどぅうう!れいむりゃは!!おかあさんにいっぱいきたえてもらってじょうぶになったから こんなのへっちゃらなんだっどぅうううううううううう!!」 れいむりゃはそう言うと歯を食いしばり白目を剥いて踏ん張った。 れいむの体が川から少し持ち上がる。 口が自ら出たれいむは疲れ果てた声で言った。 「……れいむとまりさのかわいいあかちゃんがほしかったよ、おまえみた」 その時、ずっと引き裂けそうになっていたれいむのリボンが千切れて ジャボンとれいむは濁流に飲み込まれた。 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!? う゛ゅ゛あ゛ああああああああああ!!!う゛ゅ゛あ゛あ゛あああああああああ!!」 あっと言う間に下流まで流されていったれいむを追ってれいむりゃは涙を流し絶望の表情を浮かべた。 その枝のような足には千切れたれいむのリボンが握られていた。 結局れいむが最後に「おまえみたいなばけものとちがって」と言おうとしたのか それとももしかしたら「おまえみたいなゆっくりした」と言おうとしたのか それとも全く違うことを言おうとしたのかは濁流の中に飲み込まれてわからなくなった。 ある晴れた日のことだった。 男は畑仕事に精を出していたが ゆっくりが畑に近づいているのに気付いて眉を潜めて木の棒を拾い肩にかけて近づいていった。 そして、少々様子がおかしいことに気付き厭そうな顔をした。 「何お前…」 「れい☆むりゃ☆う~♪」 れいむりゃと名乗ったそのゆっくりは ゆっくりれいむなのかれみりゃなのかどっちとも付かない みょんな姿でパタパタと男の前を飛んでいた。 「うゅー♪おまえがゆっくりしてるのかおしえるんだどぅ~♪」 「今さっきからゆっくりできて無いよ」 男は心中でお前の姿見てからな、と続けた。 「うゅー♪ゆっくりできないなんてあわれなやつなんだどぅ~♪ おまえなんかれいむりゃにかかればいちっころなんだっどぅ~♪」 調子に乗り切ったことをほざくゆっくりを見ながら男は心の中でさっさと潰そうと決心して棒を振り上げた。 「うっゆー♪でもれいむりゃはやさしいからそんなことしないんだっどぅ~♪ これをありがたくうけとるんだっどぅ~♪」 そう言ってれいむりゃと言うゆっくりは口からどんぐりをぺっと吐き出した。 「……?何これ」 意図を測りかねて男は棒を振り上げた手を思わず止めた。 「それをうめればどんぐりのきがはえるんだどぅ~♪ どんぐりいっぱいおなかいっぱいでふゆもゆっくりできるんだどぅ~♪ れいむりゃにかんしゃするんだどぅ~♪」 「とりあえずクヌギが生長するのに何年かかるか勉強してから出直せ」 「お゛ぜう゛!?」 面倒くさくなって男は棒を振り下ろした。 吹っ飛んだれいむりゃは木にぶつかって、そのまま落ちるかと思いきやよろよろと飛ぶと ゆっくりと背を向けて言った。 「いつかそれでゆっくりできるときがくるんだどぅ~♪ そのときはかんしゃしつつゆっくりするんだどぅ~♪」 「とりあえず二度と来るな」 男の言葉を聞いているのか聞いていないのか れみりゃの帽子とビリビリに破けたれいむのリボンをつけたみょんなゆっくりは森の中へと消えていった。 「…はぁー、仕事しよ」 何だかしこたまやる気を削がれて男は肩を落としながら仕事に戻った。 「うゅー、ゆっくりさせてあげるのってとってもむずかしいんだっどぅ~」 少々ばかりうまくいかなかったことに少し気落ちしながられいむりゃは溜息をついた。 「…うっゆー♪でもおかあさんのぶんまでみんなをゆっくりさせるまでがんばるんだっどぅ~♪ おかあさんがきたえてくれたからこのくらいぜんぜんへいきへっちゃらなんだどぅ~♪」 子どもの落書きみたいに無邪気な笑みを浮かべて、このみょんなゆっくりはまた誰かをゆっくりさせにパタパタと飛んでいった。 このSSに感想を付ける
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『投稿しよう 起・承』 「~♪」 時刻は夜9時。仕事帰りの1人の青年が改札口を出た。少し早歩きだ。 「ただいまー」 帰宅すると夕食や風呂を済ませスナック菓子を片手にパソコンの前に座った。 「今月号はどうなるのかなぁ……」 彼がカバンから取り出したのはDVDだ。"月刊ゆ虐天"…DVDのタイトルだ。……エロ本じゃないよ。似たような名前だけど。 ゆっくりが出現してから様々な商品が生まれた。その中の1つでゆっくりを虐待する様子を収めた本が創刊された。 購読者は毎月増えていった。ゆっくりを虐待する人が増加したのもあるが怖いもの見たさに買う人もいる。 そのうち写真や文章だけでは満足できないと映像化を望む声が高まりついにDVD化された。毎月発売されている。 「ぉ、始まった始まった」 DVDの内容は相当濃いとの評判だ。しかも時間も結構長い。DVDの値段は2000円。それに見合うだけのボリュームだ。 「おわっ…スゲェ…」 菓子を食いつつ映像に釘付けになった。 「いやぁ…今月号も凄かった」 一気に終わりまで見てしまった。時計の針は午前2時を指していた。 「俺も…投稿しようかな…」 元々"ゆ虐天"は読者からの投稿雑誌だった。現在も投稿作品がDVDに収録されているがメインは変更となった。 メインは超高画質&様々な視点から撮影されたゆっくり虐待だ。視聴者のアイデアから優秀なものを選びそれを映像化するのだ。 費用、舞台、設備、ゆっくり等全て発行元の加工所が用意してくれる。採用されれば賞金も貰えるし撮影に参加も出来るのだ。 元々は一般的な家庭で出来る虐待には限度があるために設けられたコーナーだった。賞金も微々たるものだった。 だが全国の虐待お兄さんのハートに火を点けてしまったようで練りに練った虐待計画が山のように送られてきてしまった。 どれも数時間で完結するような生易しいものではない。何日も苦痛を与える地獄のようなシナリオだった。 いつしかそれがメインとなりそのためDVDの収録時間も伸びた。賞金額も大きくなった。 「さて…どんな内容にするかだな……」 深夜ではあるが日付が変わって今日は土曜日。会社はお休み。心置きなくアイデアを練ることが出来る。 「うーむ……」 実は大方アイデアは出ていた。後は肉付けだ。ゆっくりの反応を予想しそこからどう叩き落してやろうか…。 「うーん……。いや、これじゃ甘いな…」 文章の構成、起承転結。"承""転"はさくさくと進むのだ。だが"結"がどうも弱い。"起"は楽だ。虐待する理由は言うまでもないからだ。 「出ねぇ…。布団に入るか」 布団の中でも少し考える。あるあるネタだが眠りに着く直前にラジオや漫画のネタが思いつくことがよくあるのだ。 「………………」 そのまま眠ってしまった。結局アイデアは浮かばなかった。 次の日も中々アイデアが浮かばなかった。 「とりあえず書けるところまでシナリオ書いてみるか」 書いているうちにふといいアイデアが浮かぶこともある。パソコンを起動させた。 「え~っと……」 ……………… ……… 『ここからだしてね!れいむはおこるとつよいんだよ!!』 『おちびぢゃんをかえじでね!!ありすのとかいはなおちびちゃんをつれてきてね!!』 『やい!くそどれい!!まりささまをおこらせるとこわいんだぜ!!こうさんするならいまのうちなんだぜ!!』 ゆっくりがごちゃごちゃと煩い。 『ままぁ!!ままぁ!!』 『おきゃあしゃあぁぁん!!!!おちょうしゃあぁん!!!どきょにいるのぉ!!?きょわいよぉ!!』 『あっちからおかあさんのこえがするよ!!おかあぁさん!!!れいむはここだよぉ!!!!』 子ゆっくりや赤ゆっくりもピーピー叫んで煩い。 『ゆ!おちびちゃんのこえがしたよ!!』 『ゆあっ!!こっちくるんだぜ!!』 『むきゅ!!ぱちぇのおちびちゃんがあそこにいるわ!!』 『ちびぢゃあぁあん!!!!おかあさんはここだよぉぉ!!』 親ゆっくり達はすぐにでも我が子の所へ行きたかった。だが目の前に透明な壁が立ち塞がっており前に進めなかった。 『おかあさあぁん!!!ゆっくりしないでこっちにきてよぉ!!』 『みゃみゃとしゅりしゅりしちゃいよ!ありちゅのところにきちぇにぇ!!』 子ゆっくりや赤ゆっくり達の目線は斜め上を向いていた。ここで少し今ゆっくり達がいる場所について解説しよう。 ここは野外ではない。四角い大きな部屋の中だ。高さ1m50cm程の透明なアクリル板で部屋は3つに仕切られている。 上から見ると"円"という文字の底部に線がひかれた感じだ。"田"という字の真ん中の縦棒の下半分が無くなったようにも見える。 小さい四角の区画に成体ゆっくりが、その隣の小さい四角の区角には子ゆっくりと赤ゆっくりが入っていた。 成体ゆっくりは15匹程、子ゆっくりと赤ゆっくりは併せて30匹程いる。 もう1つの大きな四角の区画には何も無かった。そして成体ゆっくりがいる区画にだけ50cm程の高さの土が敷かれていた。 このため子ゆっくりや赤ゆっくりは斜め上を向いているのだ。崖の上に親がいるといった感じなのだろう。 逆に親ゆっくり達にとっては崖下に我が子がいるといった感じで見下ろしていた。 『どぼじでおちびぢゃんのどごろにいげないのぉぉぉ!!!』 『まりさにいじわるしないでね!!あっちにいかせてね!!』 親ゆっくり達はアクリル板に体当たりをして隣へ行こうとした。 『この!この!かべさんこわれてね!!』 『ゆっくりできないかべさんなんかこうだ!!』 だがアクリル板はびくともしない。次第に泣き出す子ゆっくりや赤ゆっくりが出てきた。 『ゆえぇえぇえぇん!!!!おがあざんにあいだいよおぉ!!!』 『どぼじでごっぢぎでぐれないのぉぉ!!?』 『みゃみゃぁ!しゃみしぃいよぉ!!!!ゆえぇえぇえぇん!!!』 と、親ゆっくりがいる区画のドアが開いた。ちなみにドアは3つの区画に1つずつ設置されている。 『…………』 やってきたのは1人の男性だった。 『ゆ!?だ…だれ!!?』 『ありすをここにとじこめたのはおじさんね!!ゆっくりしないでここからだしなさい!!』 『やい!!じじい!!まりささまをここからだすんだぜ!!おちびちゃんにもあわせるんだぜえ!!!!』 彼は騒ぎ出すゆっくりを無視し1匹のまりさのもとへ歩いた。この中では一番大きいゆっくりだ。 『ゆ!?な…なんなのぜ!!?まりささまになんのようなんだぜ!!!!?』 まりさは息を吸い込み膨らんで威嚇した。 『りーだー!!ゆっくりできないにんげんさんをやっつけてね!!』 『りーだーだったらいちころなんだぜ!!』 『おとうさん!!やっつけてね!!!』 『おじしゃんだっだりゃらくしょうだよ!!!』 このまりさがこの中で一番強いゆっくりなのだろう。ちなみにこのゆっくり達はとある群れから連れ出したゆっくりだ。 『まりささまはつよいんだぜ!!!こうさんするならいまのうちなんだぜ!!!』 男は膨れるまりさの帽子を取り上げた。 『ゆあああ!!!!なにずるんだぜ!!!それはまりささまのおぼ…ゆびょおぉっ!!!!』 まりさを軽く蹴飛ばした。 『な…なかなかやるん……ゆああああああああ!!!!なにじでるのおおぉ!!!!』 男は帽子をぐぢゃぐぢゃに破いていた。地面に帽子の切れ端がひらひらと落ちていった。 『ばりざのゆっぐりじだおぼうじがあああ!!!よぐぼやっだなああ!!!!』 まりさが泣きながら突進してきた。男はひらりとかわした。まりさは地面に顔からダイブした。 『ゆびぇえぇ!!…っぐ…よげるなあぁ!!!がえぜえええ!!!ぼうじがえぜええ!!!!』 まりさは起き上がると男を睨み付けた。男はまりさの前に立ち塞がっていた。 『じねえええ!!!!じじいはじねええ!!!!ゆっぐりじないでじ……ゅぎゃあああああああああああ!!!!』 男はまりさの口を思いっきり蹴飛ばした。まりさは吹っ飛ばされた。まりさの砕けた歯が辺りに飛び散った。 『…っひゅ…っぎ……っひ…』 さっきまでの威勢の良さは無い。口の一部が抉れ大半の歯が折れていた。男はまりさのもとへ歩き出した。 『ま…まりざああああ!!!!どぼじでまげぢゃうのお!??』 『りーだーがあああ!!!なんでがでないのおお!!!??』 『いやああああ!!!!ごっぢぐるなあああ!!!』 『わがだないよぉぉ!!!!?』 『きょわいよぉ……おきゃあしゃぁぁん…』 周りのゆっくりが悲鳴を上げた。隣の子ゆっくりや赤ゆっくりは構造上まりさがどうなったのか見えなかったが親達の悲鳴に怯えだした。 『うあああああああ!!!!!ひぃぎゃあああああああ!!!!!!』 男はまりさの髪を掴むと思いっきり引っ張った。髪は頭皮ごと抜けた。中の餡子が丸見えだ。 『ぼうやべでえええ!!!ばりざがじんじゃうううう!!』 『ごごがらだじでえええ!!!ゆっぐりざぜでよおお!!!!』 『ぼういやだああ!!!おうぢがえるうう!!!!』 男の腕は止まらない。髪の毛を全て毟り取った。今度は殴る蹴るの暴行を加えた。 『うぼおお!!!!!!!やびぇ…ぎゃあああ!!!じぬううう!!!じぬうう!!!!いじゃいい!!!…ぎゃああ!!!』 殴る度に餡子が飛び出た。口や傷口から餡子が垂れ流しだ。 『……ゅ…っ………ゅ…………』 まりさはぐぢゃぐぢゃに潰されて死んでしまった。男は立ち上がり隅っこで固まってぶるぶる震えているゆっくり達に視線をやった。 『じにだぐない……ゆっぐぢぢだいよぉ…』 『むぎゅ……むぎゅうぅぅ……』 『こんなの…とがいはじゃないわ……ひぃぃ…』 『ごっぢごないでよ……ごないでぇ…』 男はパチンと指を鳴らした。 『うっうー!』 『ゆっくりしね!』 『おぜうさまなんだどぅ~』 今まで誰もいなかった区画のドアが開きれみりゃとふらんが入ってきた。その数合わせて20匹程。これだけの数が1ヵ所にいるのも珍しい。 『れみりゃだああ!!!!』 『どぼじでふらんがいるのおお!!!』 突然の天敵の登場に親ゆっくりも子ゆっくりも赤ゆっくりも慌てふためいた。 『きょわいよおお!!!!』 『だべないでええ!!!』 『ごっぢぐるなあああ!!!!ゆあああああ!!!』 れみりゃとふらんはアクリル板を飛び越え親ゆっくりのいる区画へやってきた。 『さて…今からお前らには働いてもらう』 漸く男が言葉を発した。 『お…おしごと…?』 『ゆっぐぢさせでええ!!!ゆああああ!!!ごっぢぐるなあああ!!!』 『だずげでよおぉ!!!!だずげでえええ!!!』 『れみりゃ、ふらん。落としてやれ』 彼の指図でれみりゃとふらんが地面に何かを落とした。 『な…なに?』 『なにずるのおお!!??ゆっぐぢできないのはいやだよぉ!!!』 『今からお前らには穴を掘ってもらう。それだけだ。大きな穴を掘れ』 『どぼじでぞんなごどじなぐぢゃならないのおお!!!??』 『そうだよぉ!!!!れいむはしんぐるまざーなんだよ!!そんなごどでぎるわけないでじょおぉぉ!!!!』 『へぇ…どこにお前の餓鬼がいるんだ?』 『れいむのぽんぽんさんにゆっくりしたあかちゃんがいるんだよ!!にんぷさんはたいせつにしなくちゃならないんだよ!!』 男はしんぐるまざー(笑)のれいむを持ち上げた。確かに腹の辺りが大きい。 『しんぐるまざーだから働かないんだって?』 『そ…そうだよ!!!しんぐるまざーなんだからたいせつにしなくちゃいけないんだよ!!だからあまあまさんもってきてね!!!』 れいむはどうだとばかり腹を突き出した。 『じゃあしんぐるまざーじゃなければ働くってことだよね』 彼はれいむのまむまむの辺りを鷲掴み思いっきり引き千切った。 『ゆぎゃあああ!!!!でいぶのぽんぽんがああ!!!!いだいいい!!!!なにずるのおお!!!』 皮が破れ餡子が見えるとれいむの腹の中に腕を突っ込んだ。 『ゆぎょおおお!!!!ぐ…ぐるいじいいいい!!!やべでええ!!!!どぼじでぞんなごどずるのおお!!!』 彼の腕がれいむの腹の中で蠢いている。 『ゅっく………ぃ……ぇ…』 『ぁ…ゃ…ゅ…………ょ』 『…ゃ…ゅ…きゃ……ゃ…に………ゃ…ょ…』 腹の中の赤ゆっくりの声が微かに聞こえた。彼の手が柔らかい球体に触れた。 『あがぢゃぁぁん!!!でいぶのゆっぐりじだあがぢゃんがじんじゃううう!!!!ぼうやべでええ!!!!』 彼の手が赤ゆっくりを掴んだ。彼は手に力を込めた。 『ゆぎゃああああ!!!!!!つぶれだあああ!!!!あがぢゃんがあああ!!!!あがぢゃんがああ!!!!!』 れいむが煩くて赤ゆっくりの断末魔が聞こえなかった。だがれいむにはちゃんと聞こえていた。 『よっと』 彼は握り拳のままれいむの腹から腕を引っこ抜いた。餡子がこびり付いた拳をれいむに向けそっと拳を開いた。 『…っ…ゅ…ぎゅ……』 最期の言葉を言うために生まれたようなものだ。飾りから赤れいむだったようだ。ぐちゃぁっと潰れていた。 握り潰された拍子に飛び出たのだろうか目玉が無く餡子色の涙がだらりと流れていた。 『で…でいぶのゆっぐりじだあがぢゃんがあああああ!!!!どぼじでえええ!!!!どぼじでごろじだのおぉ!!!!』 楽しみにしていた我が子との挨拶やゆっくりした生活が一瞬にして崩れた。更に悲劇は続く。 『れみりゃ、こっち来て』 男はれみりゃを呼んだ。 『おにいさん、なんだどぅ~?』 れみりゃが彼の傍まで降りてきた。 『今から美味しい饅頭をご馳走してあげるね』 『うっうー!うれしいんだどぅ~。ありがとうだどぅ~』 『おねえさまだけずる~い!!ふらんにもちょうだい!!』 ふらんも彼の傍まで降りてきた。 『いやあああ!!!!!でみりゃはいやああ!!!!ふだんもいやあああ!!!!!あっぢいっでえええ!!!!』 れいむが叫んだ。 『じゃあ今から何が出てくるか当てた方にあげるね』 彼は再びぽっかりと空いたれいむの腹部の穴に腕を突っ込んだ。 『ゆんぎゃあああ!!!!!ぐるじいい!!!!ぼうやべでええ!!!!あがぢゃんにひどいごどじないでえええ!!!』 彼の手が柔らかい球体に触れた。 『れみりゃ、ふらん。何だと思う?』 『あかいやつだどぅ~』 『くろいの!!くろいの!!』 彼は腕を引っこ抜いた。 『ゆっくちちちぇいっちぇね!!まりちゃはまりちゃだよ!!』 彼の手の上で赤まりさが元気良く挨拶した。 『あ…あがぢゃああああん!!!!にげでええ!!!!にぎぇでえええええ!!!!』 れいむに挨拶を返す余裕は無く必死に叫んだ。 『どびょじでしょんなこちょいうにょおおお!!??まりちゃがきゃわいきゅないにょ!!?』 生まれて最初の挨拶に応えてくれないことに泣き出す赤まりさ。 『ゆえぇえぇぇん!!!!おぎゃあじゃんのばきゃ…ゆ?おしょらをういちぇりゅよ!!』 赤まりさへ手が伸び持ち上げられた。 『正解はふらんだったね。じゃあ食べていいよ』 赤まりさを摘み上げたのはふらんだった。ふらんは赤まりさを銜えた。 『ゆぎゃああああ!!!!いじゃいよおお!!!!かばにゃいでえええ!!!!おがぁ…おがあじゃあああん!!!!』 『ぼうゆるじでえええ!!!!あがぢゃんだずげぢぇあげでよおお!!!!いやあああ!!!!いやああああ!!!!!!』 ふらんは美味しそうに赤まりさの中身を吸い上げていた。 『うー。おいしい!!』 『ゆぴゃああ!!!!ずわりぇりゅうう!!!!いじゃいい!!!いじゃいいい!!!!ゆっくぢさせぢぇえええ!!』 赤まりさはどんどん萎み最後はペラペラの皮だけになってれいむの前に捨てられた。 『あがぢゃぁぁん…ゆっぐ…ゆっぐぢぢだがっだよぉ……すりずり…じだがっだのにぃ……』 持ち主のいない小さな帽子を見ながられいむはすすり泣いていた。 『うー!!ずるいんだどぅ!!!おぜうさまにもあまあま!!!あまあま!!!』 れみりゃが文句を言い出した。 『分かった分かった。まだ残ってたらあげるから』 彼は再度れいむの腹に腕を突っ込んだ。 『ゆぎぇえええ!!!!ぼ…ぼうやべでええええ!!!!!じゅうぶんでじょおおお!!!!あがぢゃんみんなじんじゃっだああ!!!』 彼の手がごそごそと動いていたがついに最後の1匹を探り当てた。 『お!あった!れみりゃ、良かったな』 『うー!!!』 彼の腕が引っこ抜かれた。 『ぼういやだああああ!!!!あがぢゃんみだぐないいいい!!!!!』 れいむは目を瞑った。どうせ食べられるのなら我が子を見たくないのだろう。何故なら愛情が沸いてしまうから。 『ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!!れいみゅはれいみゅだよ!!』 取り出されたのは赤れいむだ。元気良く挨拶したが母親からの返事は無い。 『…おきゃあしゃん?ゆ…ゆっくちちていっちぇね!!ゆっきゅりちえいってにぇ!!!……へんじじでよおお!!!!』 期待していた母親からの挨拶が来ない。赤れいむは泣き出した。 『おきゃあしゃああん!!!!おぎゃあじゃああん!!!!どびょじでなにもはなじぢぇぐれないにょおお!!!??』 『ぅぅ………ゅぐぐ……ぅぅぅぅぅ……』 れいむは涙を流しながら目をぎゅっと瞑り唸っていた。 『もっと挨拶しろよ。そしたら応えてくれるかもしれないぞ』 面白いものが見れそうだと彼は赤れいむに囁いた。れみりゃは早く食べたいようで腕を伸ばしたが彼はそれを制した。 『ゆ…ゆっくちちていっちぇね!!ゆっくちちていっちぇね!!!おきゃあしゃん!!!ゆっくちちようにぇ!!!ゆっくち!ゆっくち!』 しかしれいむは目を瞑ったままだ。彼は少し唸ったが名案を思いついた。 『お母さんのところに行ってすりすりしてきなさい。そしたらきっと…』 赤れいむにそう囁いてれいむの隣にそっと置いた。 『おきゃあしゃん!!!!れいみゅとしゅりしゅりしようにぇ!!しゅりしゅり~しゅりしゅり~』 赤れいむはれいむに頬擦りをした。ゆっくりにとって頬擦りは親愛の証。何よりもゆっくりできるのだ。 『ぅぅ……ぉ…ぉちび…ちゃん…』 ついにれいむの情が動いた。今すぐにでも我が子とゆっくりしたいのだ。 『おきゃあしゃん!!!りぇいみゅだよ!!!りぇいみゅはりぇいみゅだよ!!ゆっくりしちぇいっちぇね!!』 赤れいむが必死に呼びかける。そんな光景をニヤニヤ笑いながら見ていた彼はれみりゃにそっと何かを囁いた。 『おきゃあしゃん!!ゆっくちちたいよ!!!……りぇいみゅのことはきりゃいなの?』 『ゅ…ゅ………ゆあああああ!!!!おちびぢゃああああん!!!!おちびぢゃああああああん!!!!!』 ついにれいむの目が開いた。我が子が嫌いなものか。我が子が嫌いな親がどこにいるのだろうか。 『おちびぢゃあああああん!!!おがあざんだよおおお!!!!れいむが!!!れいむがおが……』 目を開けたれいむが固まった。れいむの目線の先にはれみりゃに摘み上げられる赤れいむ。 『おしょらをういちぇるよ!!おきゃあしゃん!!』 はしゃぐ赤れいむ。そして赤れいむはれみりゃの口元へ。 『ゆぎゃあああああ!!!!だべえええ!!!だべえええ!!だべぢゃだべええええ!!!!がえじでえええ!!!がえじでええ!!!』 れみりゃの鋭い犬歯が赤れいむに突き刺さった。 『ゆぴゃあああ!!!?いじゃいい!!!いじゃいよおお!!!!おぎゃあじゃああん!!!おぎゃあじゃああん!!!』 泣き叫ぶ赤れいむ。れみりゃは笑顔で赤れいむを味わっていた。 『美味いか?れみりゃ』 『うー!!』 赤れいむがどんどん萎んでいく。 『どびょじで!!!どびょじでだずぎぇでぐでにゃいのおお!!!!???ゆっぐぢぢだぎゃっだあ!!!ゆっぐぢぢだがっだあああ!!』 皮だけになった赤れいむが投げ捨てられた。結局挨拶も会話も何も出来なかった。 『ど…どぼじで…どぼじでええ!!!どぼじでごんなごどずるのおおおおお!!!!???』 れいむが叫んだ。 『だってしんぐるまざーなんでしょ。しんぐるまざーじゃ仕事が出来ないからしんぐるまざーじゃなくしたんだよ。良かったね』 周りのゆっくり達はこの光景にぶるぶる震えていた。天敵が頭上を舞っているのも怖かった。 『ひぃぃぃぃ……ゆっぐぢ……ゆっぐぢぃ…』 『ころさないで…じぬはいやだぁ……』 『らんじゃばぁ……わがらないよぉ……』 彼に攻撃的なゆっくりは1匹もいない。 『さ~て、他にしんぐるまざーはいないかな?いたら返事してね』 彼はゆっくりを見回した。 『君かな?』 『ちがいまずううう!!!ありずはおがあざんじゃないでずうぅ!!!!』 『まりさ?』 『ゆああああ!!!!まりざはちがうよおお!!!!まりざはちがううう!!!!!』 彼と目線が合ったゆっくりは泣き叫びながら否定した。 『君はそうでしょ』 『れいぶはしんぐるまざーじゃないよおお!!!!!いやあああ!!!!やべでええええ!!!いだいのはいやあああ!!!!!』 彼はれいむを持ち上げた。 『だって君のお腹すっごい大きいよ。隠さないでよ。ホントはこの中にどっさり入ってるんだろ?』 れいむの腹をぽんぽんと叩いた。 『ちがいまずうう!!!!あがぢゃんなんがいないよおぉ!!!!いないっでばああああ!!!!』 『じゃあ何でこんなに大きいの?この中には何が入ってるの?』 『で…でぶだがらでずう!!!!れいぶはでぶなゆっぐりだがらでず!!!!でぶだがらあああああ!!!!!』 『デブなんだ。だったら丁度いい。お仕事して痩せようね』 彼はれいむを降ろした。 『じゃあもう一度言うよ。今から大きな穴を掘るんだ。さっきれみりゃとふらんが棒を落としただろ。それ使っていいよ』 れみりゃとふらんが落としたのは割り箸だった。ゆっくりが穴を掘るには2つ方法がある。1つはあぐあぐと土を齧って吐き出すのだ。 だがゆっくりの歯は砂糖菓子で出来ているため長時間続けてしまうと歯が折れてしまう。そこで2つ目の方法、棒を使うのだ。 適当な棒を拾い棒を使って土を穿るのだ。こうしてゆっくりは穴を掘り巣を作るのだ。 『分かった?』 『ゆ…ゆ…ゆ……』 『どうじで…ぞんなごど…じなぐぢゃいげないの………』 『ゆっぐぢじだいよぉ……ゆっぐぢさせでぇ…』 『おちびぢゃん……おちびぢゃんにあわぜでぇ…』 ぶつぶつとゆっくりが文句を呟いた。 『分かったなら返事しようね。それともリーダーみたいになりたいのは誰?』 彼は傍にいたまりさの帽子をひょいっと摘み上げた。 『ゆあああああ!!!!やりまずう!!!やりまずがらああ!!!ぼうじがえじでえええ!!!ごろざないでええ!!!やりばずう!!!』 『『『はいい!!!はいいい!!!!』』』 『『『わがりまじだあああ!!!!ほりまずううう!!!!!』』』 ゆっくりは我先にと割り箸を咥え地面を掘り始めた。 『ゆ……っぐ…あがぢゃぁ……あがぢゃぁぁん…』 我が子を食い殺されたしんぐるまざーのれいむだけ散らばった飾りを集めていた。 『うー!!!はたらくんだどぅ!!』 れみりゃはれいむを持ち上げると放り投げた。 『ゆびぇぇ!!!……いだい…いだいよぉ…』 『ああそうだ。怠けたられみりゃとふらんがお仕置きするから。ちゃんと働けよ』 れみりゃとふらんは親ゆっくりがいる区画と子ゆっくり、赤ゆっくりがいる区画を飛び回っていた。 『うー!!ちゃんとはたらくんだどぅ!!!おぜうさまはきびしいんだどぅ!!』 『わがりまじだああ!!!!はだらぎまずがらああ!!!』 『ふらんのめはごまかせないわよ!!なまけるならゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!』 『ごっぢごないでえええ!!!ほっでまずう!!!ほっでまずうう!!!』 れみりゃとふらんのお仕事はゆっくりの監視。といってもゆっくりで遊んでいるといった方が正しい。 『うー!!』 『ゆああああ!!!おぞらどんでるうう!!!!どぼじでえ!!!ぢゃんどはだらいでるのにいい!!!』 手当たり次第ゆっくりを持ち上げては地面に落として遊んでいた。 『くらえ!!!』 『ゆわっ!!!!っぺっぺ!!!!い…いじわるじないでえええ!!!ゆぎゃああ!!!いだいいい!!!!』 土をゆっくりに投げて遊ぶのもいた。 『うっうー!いくんだどぅ~』 子ゆっくりと赤ゆっくりがいる区画にもれみりゃとふらんがいる。こちらは監視ではなく遊びだ。 『おにぇえじゃああん!!!おろちちぇええ!!!!ちんじゃううう!!ちぬはいやあああ!!!!』 れみりゃが赤れいむをふらんに向けて投げた。 『おねえさま!ないすぼーる!!つぎはふらんがなげるばんよ!!』 赤ゆっくりはボールとして遊ばれていた。 『うー!!!ごーるはあっちなんだどぅ~』 『ぱすなんだどぅ~』 子ゆっくりもボールだ。蹴られて遊ばれていた。 『いだいい!!!げらないでええ!!!ゆぎぇえええ!!!ぼ…ぼうやじゃああああ!!!おうぢいい!!!おうぢい!!!!』 『おがああざああん!!!だずげでええええ!!!どぼじでだずげでぐれないのおお!!!』 子ゆっくりや赤ゆっくりの悲鳴を聞きながら親ゆっくり達は涙を流しながら地面を掘っていた。 『おちび…ぢゃん……。っぐ…ごべんね…ごべんねぇ…』 『どぼじでごんなごどにぃ……ごんなの…どがいはじゃないわ……』 『ごろざない…で……でいぶの…おちびぢゃん…ゆっぐぢじだい……』 『うー!!!!くちをうごかすまえにはたらきなさい!!!』 『おぜうさまのめはふしあなじゃないんだどぅ!!!!はたらくんだどぅ!!!!』 親ゆっくり達は我が子の姿を見たいが為に我が子との再会を阻むアクリル板の周りを掘っていた。これでいい。 親ゆっくり達は必死に地面を掘るが人間と違いそんなに早く進まない。まだまだ穴とは言えない。 ……………… ……… 「とりあえず最初はこんなもんかな…」 頭の中で思い浮かべたシーンを元にシナリオを半分書き上げた。 「ゆっくりはどうにでもなるだろう。問題は場所だよなぁ……。加工所の空いてる場所とかどっか適当な場所があればいいけど…」 あまりにも実写化が難しいシナリオは弾かれてしまう。ちゃんとリアリティがなくては採用されない。 「ちゃんとあの辺りを掘ってくれるかな?…まぁ変なところ掘ってたられみりゃにお仕置きさせればいいか」 お茶を注いだ。 「大丈夫…いける」 軽くお茶を飲んでから再びシナリオを書き始めた。 『投稿しよう 転・結』へ続く by エルダーあき
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注・続き物です。 洞窟に侵入してどれ程が経っただろうか。 群れの周辺の地理に詳しいまりさは、勿論の事この洞窟の事も知っており大体の作りも覚えていた。 ゆっくりの脳では普通そこまでの情報を記憶する事など出来ないのだが、 狩りの経験が豊富で群れを率いる責任感が強かったまりさはそういった普通のゆっくりには無いものを兼ね備えていた。 出来るならここをゆっくりの集会場か何かにしようと前々から考えていたのだ。 なので、れいむが居るであろう場所も大体の目星は付いていた。 出来るだけ敵のゆっくりに会わずにまりさはその場所へと向かう。 随分と進むと、最初に出会ったみょんと同じ様にゆっくりの見張りが居る。 れいむ種、しかも群れに昔から居た元同胞だ。 「ゆぅ…ゆぅ……」 どうやらうたた寝でもしているのか。 まりさの元にまで寝息が聞こえてくる。 出来るなら戦いたくなど無い。 まりさはそう考え、うとうとと頭を揺らすれいむに気付かれないように、ゆっくりとその脇を通過しようとする。 「そろーり、そろーり」 優秀なゆっくりであるまりさであるが、生物としての本能にも近い癖は抜け切らないのか。 こんな場面にも拘らず、自らの口で出さなくても言い音を出してすりすりと動き出す。 「そろーり、そろーり」 れいむの横から奥への通路へと差掛かろうとした時、突然れいむの「すや…すや……」という寝息が止まったかと思うと、 「ゆっ、そこにだれかいるの?」 と言う声が聞こえてきた。 まりさは心臓が飛び出すような感覚に陥り、その場で少し跳ね上がったりもしたが、 その洞窟の余りの暗さ故に、れいむはそれが元群れの長であったまりさだと気付いてはいないようだった。 「ゆゆ、じつはまりさは……はくれいむさまにたのまれて、このおくのれいむにようがあるんだよ」 「ゆぅ、そうなの。なんだかわからないけどたいへんね。ゆっくりがんばってね。」 「うん、ゆっくりがんばるよ。れいむもゆっくりしていってね」 「れいむはここでゆっくりするよ…すやすや……」 見張りである筈のれいむであるが、そこまで思考能力も高くないゆっくりな上、 寝起きであった事も合わさり全くまりさを疑う事も無く再び眠りに付く。 まりさの心中にはその場をやり切れた安心感と合わせて、そんな暢気なれいむに対して幾ばくかの怒りを感じていた。 自分があれだけ苦心して群れの皆を守ってきたと思ったのに、反乱を起こした者の部下としてこんなにゆっくりしているなんて。 妻であるれいむは敵に捕らわれ、どれ程酷い目に合わされているか。 そう思うと、眼の前のれいむをゆっくり出来なくさせてやりたい衝動に駆られた。 だが、このれいむにも家族は居るのであろう。 はくれいむの戦力に成す術も無くやられてしまった自分にも落ち度が有ったかも知れない。 まりさはそう思うことにして怒りを抑えて、先へと進む事にした。 更に暫く進むと其処には柵のようなものが掛かっており、まりさは其処にれいむが居ると確信した。 居ても経ってもいられなくなり、すぐさま駆け出す。 幸いな事に見張りなども無く、その柵の前まで辿り着くとまりさは中を覗き込む事が出来た。 人間の使う炎。 それをはくれいむは松明というものに移らせて扱う事が出来るらしい。 丁度、その柵の前にも一つ掲げられていたので、まりさは薄ぼんやりでは有るが中を確認することが出来た。 中にはれいむと思しき丸い球体が一つ存在している。 「ゆっ、そこにいるのはだれなの?まりさのいばしょならきくだけむだだよ、ゆっくりどこかにいってね」 「ちがうよれいむ。まりさだよ、ゆっくりたすけにきたんだよ」 「ゆっ、まり……さ!?」 そんなやり取りを交わした後、れいむはまりさの近くへと跳ね寄る。 まりさはれいむが正面を向かずに少し右斜めを向いて立っているのに若干の違和感を覚えたが、 松明の照らす明かりの中ではっきりとその顔を確認した後、顔に笑顔を浮かばせる。 すると次第に、嬉しい筈にも関わらずその目尻から涙が溢れ出す。 「ま……ま"り"ざぁぁぁぁぁ」 「でい"ぶぅぅぅぅ」 溢れ出る感情のまま大声で喜び合いたい二匹であったが、ここは未だ危険な場所であるのを理解して努めて小声でお互いの名前を呼び合った。 頬をすりすりとしようと更にれいむが近寄るが、二匹を隔てる柵に阻まれてそれは出来ない。 少し悲しそうな顔をしたれいむに、まりさは「だいじょうぶだよ」というと、外側からついたてになっている棒を外し、その柵の扉を開ける。 ゆっくりの作り出す牢屋だけに鍵などは無く、そういった手間が省けたのはこの二匹にとって幸いであろう。 「まりさぁ、まりさだ……たすけにきてくれたんだねぇ」 「あたりまえだよ、れいむ。あいするれいむを、まりさがみすてるはずないんだぜ」 そう言ってれいむがすりすりと頬擦りをし、まりさもそれに応える。 ふと、まりさは不思議な感触に顔をしかめる。 以前のれいむだったらもっともちもちして弾力のある肌をしていた筈なのに、この感触はざらざらとして湿気を感じさせない。 それに先ほどから、れいむの動きもどこかぎこちなかった。 まりさは数秒頬を合わせた後、薄暗い中でそのれいむの姿を眼を凝らして眺めてみる。 「ゆうぅ!!?」 音を立ててはいけないと思いつつも、まりさは思わず短い悲鳴をあげてしまう。 そのれいむの姿――以前は群れ一番と言っても過言でなかった美ゆっくりの姿は其処には無く。 髪は半分焼け縮れてボサボサとなり、頭に付いているリボンとにしても、もうほとんど原型を留めずに申し訳程度に頭の上に乗っているといった具合だ。 全身には暴行の後がはっきりと見て取れたし、今この時も頭の後ろには二、三本が痛々しく突き刺さったままだ。 何よりその顔の所々は焦げというのも遥かに超え、黒々と炭のようになっている部分がある。 特に右頬に至っては大部分が炭化し、れいむの笑顔もぎこちなく引き攣っている。 まりさが最初に顔を見せた時、れいむが正面を向かなかったのはこのせいだろう。 無意識の内に、夫であるまりさにその醜くなった部分を見せまいと振舞っていたのだ。 「ごめんね、まりさ…こんなになっちゃった……」 れいむの眼から、ポロリと大粒の涙が零れる。 「まりさ、れいむのこときらいになっちゃったよね?こんなゆっくりできないすがたになっちゃったんだもの」 そう呟くと、れいむは更に涙を零して眼を伏せる。 まりさが助けに来てくれたのは嬉しいが、もうこんな姿になってしまっては一緒にゆっくり出来ない。 そう考えると、れいむの心は哀しみで一杯になった。 すると、そんなれいむにまりさは静かに歩み寄ると、再びその頬に自らの頬をすり合わせる。 「そんなわけないぜ。まりさはれいむだからすきになったんだ。どんなすがたになってもそれはかわらないよ」 「でも、まりさ。まりさだったら、いくらでもれいむとはべつのゆっくりできることいっしょになれるよ?」 「れいむ……それいじょういったらまりさもおこるんだぜ。」 「ゆぅぅ…ぅ!?」 まりさに怒ると言われて少し怯えた表情をしたれいむは、一転して驚愕の表情に変わる。 自分の唇にまりさが唇を重ねてきたのだ。 れいむは一瞬焦ったが、直ぐにとろんとした顔へとなり、まりさにその身を委ねる。 数秒か数十秒か判らないが、れいむとまりさにとって至福の時間が暫く流れた。 時折、「んふっぅ」や「ゆふぅぁ」などという艶めかしい嬌声が聞こえるのは、お互いの舌を絡め合わせての「でぃぃぷちゅっちゅ」を行い、 すっきりとは別の、だがそれに近い快感を感じているからであろう。 先に後ろに引いたのはまりさの方であった。 二匹の間に唾液で出来た糸が出来る。 れいむは物足りないといった顔でまりさを見詰めたが、此処から脱出しなければいけないという状況を思い出し、それを口にする事は無かった。 「わかっただろ、れいむ。まりさはれいむとだけゆっくりしたいんだよ」 「……うん」 それ以上の言葉など要らなかった。 すぐにまりさは元来た道の説明をすると、身体を痛めているれいむに「だいじょうぶ?」と心配そうな顔をしながら寄り添って進もうとした。 するとれいむはまりさから離れ、 「れいむはだいじょうぶだよ。まりさのあしでまといになりたくないから、じぶんひとりであるくね」 と言い、笑顔を見せて前へと進み始めた。 その後頭部には未だに人間の手首ほどの太さの棒が突き刺さっていたが、それを抜こうとは考えなかった。 それを安易に抜いてしまえば、中の餡子が漏れ出て、直ぐに治療出来ない環境ではれいむが死んでしまうと考えたからだ。 まりさは前を行くれいむのその姿を見て、更にその身体の中から憎しみの炎が燃え上がってくるのを感じた。 脱出するのは想像していた以上に簡単であった。 途中の見張りはあの眠っていたれいむだけであったし、潜入直後に殺したみょんの死体も未だに片付けられていなかった。 あのはくれいむにしては無防備過ぎると感じたが、自分達がそうであるように向こうも完全なゆっくりで無いのだろうと考え先へと進んだ。 そのまままりさが入り込んできた穴まで進むと、二匹はすぐさまそこから脱出しようとした。 しかし―― 「どうしたのれいむ?ここから、ゆっくりでればおそとにでられるんだよ」 まりさに先に穴に入るよう言われたれいむであったが、穴に一度入ろうとして再び戻ってきたのである。 「もういちどがんばってみるね!!」 「からだがいたいだろうけど、ゆっくりいこうね」 そう言って、れいむを励ますまりさ。 それに対して笑顔で応え、再び前に進もうとしたれいむであったが、結果は同じであった。 「ゆあッ!!れいむのあたまのぼうさんがひっかかってまえにすすめないよぉ!!」 れいむが涙声でまりさに訴える。 頭に刺さった棒の一つ、頭から斜め上に生えるように伸びているそれが穴の入り口に引っ掛かって前へと進む事が出来ないのだ。 そんなれいむの状態に、まりさも顔をしかめて状況の打開策を考える。 「ねぇまりさ、まりさがれいむのあたまのぼうさんをぬきとってくれれば……」 「ゆっ!?だめだよれいむ、そんなことしたられいむのなかのあんこがもれてしんじゃうよ」 「ゆぅ、でも……」 脱出まであと少しというこんな所で足止めを喰ってしまうとは。 しかも、まりさの足手まといにならないと言ったにも関わらず、自らのせいで先に進めないという状況に陥り、 れいむの顔に影が差す。 暫く考えた後、まりさが覚悟を決めたように、 「こうなったら、しょうめんのどうくつのでぐちからだっしゅつするよ」 と言い出す。 それにはれいむもすぐに反対した。 この洞窟の奥であったからこそ警備が薄いのである。 正面から出て行っては到底逃げ切れるものではない。 自分だけが危険な目に会うだけならまだしも、助けに来てくれたまりさまで危険な目に会わせる事は出来ない。 「だったらどうすればいいのぉ!?」 「ごめんね、まりさ。せめてまりさだけでもここからおそとにでてね」 「どぼじでぞんなこというにょぉぉ!!れいむだけをおいてなんていけないよぅ!!」 れいむのその言葉に、まりさは顔をくしゃくしゃにして否定する。 互いが互いを気遣う為に、脱出への策は全くの平行線を辿るばかりであった。 そんなやり取りをしながら、時間だけが無情にも流れる。 二匹にも焦りの色は隠せない、そんな中。 「まりさ、おねがいがあるよ!!」 「おねがい?」 意を決したようにれいむがまりさに言う。 「れいむのあたまにあるぼうさんを、まりさがなかにおしこんでね!!」 「おし……こむ…!?」 れいむの思いも寄らぬ発言に、まりさは眼を丸くした。 有ろう事か、れいむの中に木の棒という異物を自分に押し込めというのだ。 それには流石のまりさも頭を左右に振って、「そんなことはできないよ!!」と涙声で拒絶するばかりであった。 「でも、それしかほうほうはないんだよ。ゆっくりりかいしてね!!」 「いやだよ、まりさはれいむにそんなことしたくないよ!!」 「まりさにしかできないんだよ!!」 「まりさはれいむをこれいじょうきずつけたくないよ!!れいむこそゆっくりりかいしてね!!」 「ゆぅ、このわからずや!!」 一向に進まぬ事に業を煮やしてか、れいむはまりさにドスンと体当たりをする。 だが、それは全く威力も無く、まりさはすこしよろけて後ろに下がるだけであった。 それでもまりさは突然のれいむの攻撃に非難の言葉を投げ掛けようと口を開こうとした。 「なにするんだよ、れい……む?」 まりさが正面を向くと、れいむはエグエグと泣き出していた。 「れいむだって……でいむだっていたいのはいやだよ。でも、まりざのあじでまどいになんでなりだぐないから……」 「ぞれにまりざのぞんななざげないずがだなんでみだぐないよ!!まりざはいづだっでがっごうよいまりざでいでほじいよ」 「れ、れいむ……」 れいむの涙ながらの訴えであった。 それに対し、まりさは少し眼を伏た後、キッと眼に力を入れれいむに近付き、 その後ろへと回り込む。 「わかったよ、れいむ。まりさがゆっくりなかへおしこむね!!」 「うん、わかってくれたんだね。ゆっくりおねがいね」 そう言って、れいむは来るであろう激痛を予想しながら、まりさに心配を掛けまいと明るい声で応えた。 まりさは「ゆーふー」と一回だけ深呼吸をすると、 れいむの中へ棒を真っ直ぐ差し込むべく一歩後ろへと下がり、空中へと飛び上がる。 そのまま前方へと飛び上がると、棒の頭をその足の下に捕らえ体重を込めて押し込んだ。 餡子の中に棒を差し入れる鈍い感触がまりさの足元へと伝わり、れいむの中へと少しだけ押し込まれて行く。 「ゆぎぃぃぃ!!!」 出来るだけ平常を保って我慢しようと思っていたれいむであったが、思わず呻き声が漏れる。 その後、棒を押し込み倒れ込むように地面へと落ちたまりさがすぐさまれいむへと駆け寄る。 れいむは激痛に身を悶えながら地面を転がっていた。 「ゆがっ、ゆぐぐぐぐぅ!!」 「ゆあぁぁ!!でいむ、でいぶぅ!!ごめんね、まりさがもっとゆっくりおしこめたらこんなにいたいおもいしなかったのに!!」 「ぎぎぎ、ゆ…ぅ……だいじょう、ぶだよ。でいぶ、ごんなのぜんぜんいだぐなんでないがら」 心配するまりさにれいむは、口から餡子が流れ出るのも構わずに笑顔を見せる。 そんな気丈なれいむの姿に、このれいむは本当に強くてゆっくり出来る最愛のゆっくりだと改めて確信し、 必ず守り抜いていこうと心に誓った。 「ゆ…ぐぅ、ま、まりざ……ここから、ゆっぐりおぞどにでようね」 「うん、ゆっくりでようね!!かぞくのもとにかえろうね!!」 よろよろと横穴に近寄るれいむにまりさは力強く応えた。 その横穴は普通でも大人のゆっくりであれば窮屈で身体を岩肌に擦り付け、 全身に切り傷が出来てしまう程の狭さである。 それを頭の棒を中に押し込んだからといって、相当な深手を負っているれいむには厳しいものがあった。 途中何度も岩肌に肌を擦り付ける痛みに耐えられずれいむの動きが止まり、 酷い時には「ゆぎっ!!ゆぐぅ!!」と呻きながらビクビクと痙攣し出すときもあった。 そんな時何度も、まりさは後ろから「がんばってね!!もうすこしだよ!!」や「うごきをとめないでね、れいむ!!まりさをおいてゆっくりしないでね!!」 と、後ろかられいむを励まし続けた。 まりさが進入した時より遥かに時間が掛かった。 そんな正にゆっくりとした脱出であったが、とうとう眼の前に外の月明かりであろう光が見え始めた。 「れいむ、もうすこしだよ!!もうすこしでおそとでゆっくりできるよ!!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっぐじぃぃぃ!!」 まりさの掛け声と共に、朦朧とした視界の中へと外の光が飛び込んでくる。 「ゆっぐりい”、まりざとゆっぐりずるよぉぉぉ!!」 「そうだよれいむ、まりさとゆっくりしようね!!」 死力を尽くして、れいむは身体を地面へと擦り付けながら前へと進む。 後ろを続くまりさの眼には、地面に広がる餡子の跡が眼に写る。 何処かの傷口が開いたのだろうか? それとも、苦しさの余り餡子を吐き出してしまっているのだろうか? それでも前へと進むれいむの姿に、まりさは流れ出る涙を抑える事が出来なかった。 その後更に10分ほどで、れいむは横穴を抜け外へと這い出る。 遅れてまりさが飛び出した時には、れいむは横穴の傍で身体を萎ませて休んでいた。 「ゆっ……れれ、れいむ、だいじょうぶ!?ゆっくりしてね!?」 眼を瞑って全く動かなくなったれいむの様子に、最悪の結末を浮かべてまりさは急いで駆け寄る。 「れいむ、でいぶぅ!!ゆっくりへんじしてね!!」 「……ゅぅ、だいじょうぶだよ、まりさ」 「ゆあぁ、よかったよれいむ!!おそとにでられたんだよ!!」 「ぅ…ん、ここですこしゆっくりしたら…おちびちゃんたちのところへ……」 「うん、うん!!みんなでゆっくりしようね!!れいむとまりさとおちびちゃんたちでゆっくりしようね!!」 そう呟いてれいむは眼を瞑った。 まりさは慌てて肌を寄せる――大丈夫、息をしている。 全くいびきもしない、まるで子供の様な深い眠りであった。 ここも未だ安全とは言い切れないが、れいむのこの状態では今の隠れ家まで移動するのは無理である。 幸い洞窟の裏手は群れの方角とは反対で、はくれいむの住処から実質山一つ分越えた辺りに位置する。 はくれいむの部下がこちらの方向に探しに来る可能性は限り無く低いだろう。 そう考え、今晩はここでゆっくりと身体を休めようとまりさはれいむにぴったりと身体を寄せた。 そうやってれいむの体温を感じておかないと、今にもれいむがいなくなってしまうような感覚に陥ってしまうからだ。 「れいむぅ……やっぱりれいむはあたたかいよ」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「ゆっくりおやすみ、あしたもゆっくりしようね」 翌朝、眼を覚ますとまりさのその隣にはれいむの姿は無かった。 又もや最悪の状況を想像し、まりさはれいむの名前を叫ぶ。 すると近くの茂みから、 「ゆっくりしていってね!!」 という声と共に、れいむが姿を現した。 「ゆっくりしていってね……じゃないよ!!れいむのすがたがみえないから、まりさはおどろいたんだよ!!」 「ごめんねごめんね。れいむはちかくのおはなさんをゆっくりとつみにいっていたんだよ!!」 そう言ってれいむは頬袋に溜めた色とりどりの花を吐き出す。 ただ量はかなり少なかった。 炭化して硬質化した右頬のせいで多くの量を詰め込む事など出来なかったのだろう。 「すごいよれいむ!!こんなにたくさんのおはなさんをあつめられるなんて、やっぱりれいむはてんさいだね!!」 「ゆっへん、それほどでもないよ!!」 そんな事はまりさは一切気にせず、れいむが精一杯集めてくれた食事を素直に喜んだ。 れいむの状態にしても昨日から比べれば相当良くなっている。 この調子なら今日中に皆の所まで帰る事が出来るだろう。 「じゃあ、れいむ。これをゆっくりたべたらみんなのところにかえろうか」 「うん、ゆっくりたべて、ゆっくりみんなのところにかえろうね」 そう言った後、二匹は食事を始めた。 れいむは捕囚暮らしであった事は元より、愛するゆっくりと共に食事出来る事で代わり映えしない植物でもれいむは何倍にも美味しく感じた。 それはまりさも同様であった。 二匹はその味と幸せを噛み締めながら同時に「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」と高らかな声をあげる。 そして食事後少しゆっくりした後、まりさとれいむは皆の待つ隠れ家へと進む事とした。 時間にして三時間程であろうか。 二匹は時折休憩を挟みながらも、それでもゆっくりしないで道中を急いだ。 「ゆっ、れいむ!!あとすこしだよ!!ゆっくりいこうね!!」 「いやだよ、まりさ!!きょうだけは、れいむはゆっくりしないでいそぐよ!!」 「ゆぅ、だったらまりさもまけてられないね!!」 二匹はそんな会話を楽しみながらピョンピョンと跳ね続ける。 もうここまで来れば追っ手が来る事は無いだろうとは思ったが、家族の事を思えば自然にその足は進むのだろう。 会話の内容にも、幾分か余裕が出てきた。 すると、そんな二匹の進む道の横にある茂みが急にガサガサと揺れ出す。 れいむはそれにビクリと身を怯ませて、すぐさままりさの後ろへと回り込む。 だが、まりさは怯える様子も無くれいむに語り掛けた。 「だいじょうぶだぜ。きっとなかまのみんながむかえにきてくれたんだ」 「ゆっ、そうなの?」 まりさのその言葉に、れいむの顔も安心の色が窺える。 二匹はそのまま、その茂みの方へと向き直ると「ゆっくりしていってね!!」と呼び掛けた。 予想通りにそこからは「ゆっくりしていってね!!」という声が返ってくる。 しかし――そこから現われたゆっくりは予想外の者達であった。 「ゆへへ、ことばどおりにゆっくりしてやるんだぜ!!」 「わかるよー♪みょんのかたきなんだねー♪ゆっくりなぶるよー♪」 この二匹は――。 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」 まりさの後ろでれいむが叫び声をあげる。 突然の事にまりさは驚いて後ろを振り向くと、其処にはこの世のものとは思えない恐怖に引き攣ったれいむの顔があった。 囚われの身になっていた間に受けた拷問の数々を、れいむの餡子にはしっかりと刻まれていたのだろう。 その刻まれた恐怖がフラッシュバックとなって頭を駆け巡る。 「ゆじいぃぃぃ!!いやだ、いやだよぉ!!」 「れいむ、れいむ!!おちついて!!」 それに合わせたように、ぞろぞろと他のゆっくり達も出てくる。 総勢で10は居るだろうか。 どちらにしても、こんな状況のれいむを庇って戦える筈も無い。 まりさの顔にはっきりと見て判る程に焦りの色が浮かぶ。 「こんなやつが、このまりささまよりつよいまりさなんだぜ?とてもそうはみえないんだぜ?」 口元を吊り上げ勝ち誇ったような笑みを浮かべて、はくれいむの部下であるまりさが呟く。 周りの部下達も「そうだねー」などと同意する。 「ゆあぁぁぁ、こわいよぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよ、れいむ!!れいむはまりさがまもるよ!!」 「まりざ、まりざぁ!!」 恐慌状態のれいむの前でまりさがプクーと頬を膨らませて相手を威嚇する。 これには敵のゆっくりも失笑を隠せない。 一対一ならまだしも、10対2。 いや、れいむのあの状態を考えれば10対2どころか10対1――足手まといと考えればそれ以上。 最早大勢は決しているのだ。 何を恐れる必要があるだろうか。 「やめでえぇぇぇぇぇ!!ごっぢごないでぇ!!」 れいむが声をあげるが、相手はそれに応える気配すら無い。 精一杯膨らむまりさを囲むように、はくれいむの部下達はにじり寄ると「ゆっくりしね!!」と叫んで一匹がまりさに飛び掛った。 このSSに感想を付ける
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「ゆゆっ!! ここはどこ?」 一匹のゆっくりれいむは見知らぬ場所で目を覚ました。記憶にはない場所だ。 けっこうな広さを誇ってはいるものの、四方八方は真っ白な壁に囲まれていて、一つだけ部屋と部屋を行き来する扉があるが、ゆっくりに抜け出せる軽い扉ではない。 自分はゆっくりたちが大勢暮らす森の中でゆっくりしていたのに、なぜこんな所に一人でいるのだろう? 自身の大半を占める餡をひねり出して、考えを纏めようとする。 そういえば、微かだが数時間前の記憶が浮かんでくる。 見知らぬ男にお菓子をあげるから家に来ないかと招待され、断ったらかわいそうだからと、れいむは特別に来てあげたのだ。 男の家につくと、その家が気に入ったから、特別にれいむの物にすることにして、召使いとしてれいむの家においてあげることにした男にお菓子を持ってくるよう命令した。 しかし愚図な男はなかなかお菓子を持ってくることはなく、いつの間にか待つことに疲れ、眠ってしまったのだ。 「ゆー!! こんなかわいれいむをまたせるなんて、やっぱりにんげんはばかだね!! さっさとれいむにおかしをもってこなくちゃならないのに!!」 誰ともなしに呟くれいむ。 いつの間にか自身がいた部屋と違う広く何もない場所にいるのだが、お菓子で頭がいっぱいのれいむにそんなことは考えもつかなかった。 自分の境遇を理解することなく、未だお菓子のことを考えている当たり、所詮はゆっくりと言ったところか。 しばらくは大人しく待っていたのだが、男は全く来ることがなく、いい加減れいむは待つのも飽きたと、バカな人間がお菓子を持ってくるまで遊ぶことにした。 しかし、四方八方を壁に囲まれたこの部屋にはなんの家具も道具も置いてなく、窓すらついていない。 「れいむがいるのになんにもあそびどうぐをおいていないなんて、ほんとあたまがわるいね。ぷんぷん!!」 れいむはおかんむりで頬を膨らましていると、部屋のドアが開いて男が入ってきた。 れいむはそれに気付くと、男に寄っていく。 「おじさん、ゆっくりしすぎだよ!! さっさとおかしをちょうだ……」 れいむのことばが途中で途切れる。 男が変なことをしたわけではない。男の後ろから、れいむをここに連れてきた男の他に、たくさんの人間が入ってきたのだ。 別に多くの人間に恐れ、言葉を詰まらせたわけじゃない。 ただ、男一人だけしかいないと思っていたのに、たくさんの人間がいたことに驚いたことと、れいむの家に勝手に入ってきたことに腹が立ったのだ。 れいむを連れてきた男はれいむの召使いなので問題ないが、他の人間を自分の家に招待した覚えはない。 「ここはれいむのおうちだよ!! しらないにんげんはゆっくりでていってね!!」 れいむが人間を威嚇する。 しかし、愚図な人間たちはれいむの言葉を理解できないのか、いっこうに出て行こうとしない。 「ゆー!! 聞こえなかったの? ばかなにんげんはれいむのおうちからゆっくりでていってね!!」 何度言っても出て行く気配のない人間たちは、れいむの言葉を無視するばかりか、れいむを中心に囲んで床の上にどっしりと腰をおろす。 その数、総勢20人。しかし、れいむは3以上の数を数えられないのでたくさんの人間としか感じない。 そんなたくさんの人間に対し、「さっさとお菓子を持ってきたら出て行け」と言おうとしたら、突然男たちは全員奇妙な行動を取り始めた。 「ゆゆっ!?」 れいむは男たちが何をしているのか分からなく、躊躇い声を上げる。 れいむが躊躇ったのも無理はない。 男たちは何故か知らないが、ゆっくりと右手を挙げると、人差し指を立て、れいむを指してきたのだ。 「ゆ!? なんでれいむをゆびさしてるの? そんなことよりさっさとおかしをもってきてね!!」 れいむは初めは戸惑った。 しかし、すぐに男たちが何もしてこないことが分かると、どういう意図でれいむを指さしているかは分からないが、特に危険はないと判断し、男たちに繰り返しお菓子を要求する。 そんなれいむに、男たちはいっこうに口を開くことはなく、ただただれいむを注視し、ひたすら全員でれいむを指さしている。 この部屋に入ってから男たちは一度として口を開いてない。 「ゆー!! きこえなかったの? それともばかだからわからないの? れいむはさっさとおかしをもってきてねっていってるんだよ!!」 今までの最高の声量で叫ぶも何の反応もなく、男たちは何の言葉も返さない。 まるで石像のようだ。 なんどもなんども繰り返し叫ぶれいむ。しかし、いっこうに男たちからの返事は帰ってこない。 いかにゆっくりとはいえ、さすがに男たちの行動が気になりだしたようだ。 何となく指を指されることに嫌気を感じ、男たちが指を指している場所から動く。 すると、つられて男たちの視線と指もれいむを追いかける。 「ゆゆっ!! なんでれいむをおいかけるの? ゆびささないで、さっさとおかしをもってきてね!!」 男たちに叫ぶれいむ。しかし、状況は変わらない。 男たちは表情を変えない。眉一つ動かさない。 例外は、れいむが動いたときに釣られて動く、視線と右腕だけだ。 何かされるわけではないが、なにも喋らず、ひたすられいむを注視し、指を指してくる男たちが、さすがに気持ち悪くなってきたのだろう。 「いいかげんゆびをさすのはやめてね!! あとちゃんとれいむにへんじをしてね!!!」 れいむの口からついにお菓子という言葉が消えた。 それだけれいむは妙な圧迫感を感じていた。 しかし、男たちは変わらない。 れいむはここの男たちは全員馬鹿なのだと考え、一人の男に的を絞って対応することにした。 無論、男とはここにれいむを連れてきた男、れいむの召使いだ。 唯一、この人間たちの中でれいむと会話をしたことがある男。 おかしを上げると言った男。ここをれいむの家にすると言ったら喜んでくれた男。召使いにすると言ったら喜んでなるといった男。 そんな男にれいむは近づいていく。全員の視線と指をお供に。 「おじさん、こんなことさっさとやめてね!! あとほかのおじさんにもやめさせてね!!」 正座した男の膝に乗りかかり、男に文句を言う。 しかし、れいむを連れてきた男はなぜか口を開かない。 無表情でれいむを見つめ、れいむの顔先すぐでれいむを指している。 「おじさん!! なんではなさないの? ばかなの? れいむはやめてっていってるんだよ!! いまならゆるしてあげるよ!! しつこいとおこるよ!!」 しかし、男は(ry 「なんでれいむをむしするの? おじさんがはなせるのしってるんだよ!! ちゃんとへんじしてね!!」 しかし(ry 「もういいよ!! れいむ、もりにかえるよ!! れいむをしかんするおやじたちはゆっくりしね!!」 ついにこの状況に耐えきれなくなったのだろう。 れいむはもうお菓子のことなど忘れ、一刻も早くこの気持ち悪い空間から出ることだけを考えていた。 「おじさん、れいむかえるからゆっくりどいてね!!」 男たちは全員正座し、また体を密着させているのでれいむが出る隙間が全くない。 男たちに命令するが、退けてくれない。 「ゆゆっ!! はやくどかないとおじさんをやっつけるからね!!」 それでも動かない。 痺れを切らしたれいむは、一人の男に向けて体当たりを食らわせる。 しかし、男は揺らぐことすらなく、逆にれいむが男に跳ね返される始末。 なんどもなんども体当たりをするれいむ。その度に男の肉の壁に阻まれて戻される。 この男は頑丈だからと、一番背の小さい男を標的にするが、なぜかその男もれいむの渾身の一撃が通じない。 れいむは再度標的をかえる。しかし、男は動じない。 さらに標的をかえる。しかし(ry 全員に体当たりをしたれいむ、再び男たちの輪の真ん中に跳ね返される。 大きく肩で息をするれいむ。体当たりの連続ですっかり疲れ切っていた。 そういえば、朝から何にも食べていないことを思い出す。 しかし、男たちは依然顔色を変えず、れいむを見つめ、指を指す。 さすがに傲慢で恐れ知らずなれいむもこの異常空間に恐怖を感じ始めていた。 「……おじさん。れいむをささないでね。ゆっくりやめてね……」 れいむが誰にともなく呟く。 今までとは違い、声に張りがない。 れいむは今まで人間に出会ったことがない。そのため、人間の恐ろしさを知らない。 れいむは森の中で狩りの名手として有名だった。 たとえ鋭い鎌を持つカマキリも、羽根に目玉が付いてる怖い蛾も、強靱な角を持つカブトムシもれいむにかかれば、ただの餌だった。 友達たちは、皆れいむを賞賛した。 だから人間の存在は知りつつも、人間ですら自分には叶わないと錯覚していた。 しかし、今まさにその幻想は崩れ去った。 れいむの渾身の一撃を物ともしない人間。それがなんと20人もれいむを囲んでいるのだ。 見つめ、指をさし、何らこちらに対して攻撃してこない男たち。しかし、それが逆にれいむの恐怖心を炎上させる。 これで友達がいればまだましだっただろう。仲間と共にバカなことをしている人間を、「おー、ばかだばかだ!!」と馬鹿にしてやるのだが、あいにくここにはれいむしかいない。 さらにはこの殺風景な部屋もれいむを憔悴させることに一役買っていた。 窓もなく、一面真っ白。時間も分からなく、外の様子も窺い知れない。 男たちとれいむ以外何もないこの部屋は、そんなれいむの恐怖を煽るのにも一役買っていた。 ここにきてようやく、れいむはもしかしたら自分は悪いことをしたのかと考えていた。 かつて、まだ母が健在だったころ、れいむは悪いことをして、しばらくの間、母に口をきいてもらえなくなったことがあった。 それと状況は違うが、もしかしたられいむがちょっとだけ悪いことをしたからこのおじさんたちは怒ってれいむと口をきいてくれないのではないか? そんな考えが頭をよぎる。 れいむは餡を捻りだし、自分の行動を振り返った。 しかし、何にも悪いことをした記憶はない。むしろれいむは男に感謝されてもいいはずだ。 何しろ、れいむの家に男をおいてあげた上に、可愛いれいむの召使いにまでしてあげたのだ。 その時の男の喜びようを、れいむはしっかりと覚えている。 自分が悪いことをした記憶はない。 しかし、ならなぜこんなことをされるのか理解できないれいむは、悪いことはしていないと思いつつも、この状況を終わらせるため、仕方なく男たちに謝罪をする。 「おじさん、れいむがわるいことしたならいってね。とくべつにあやまってあげるよ」 れいむは嫌々といった感じで謝罪する。しかし男たちは動かない。変わらない。れいむを見て、指をさす。 れいむは疲れてきた。 ただでさえ、燃費の悪いゆっくりだ。朝から何も食べてなく、何度も体当たりをしたせいで、体力は相当落ちている。 さらに男たちのせいで相当神経もすり減らしている。寧ろ、肉体的なことより酷い。 正直、眠くて溜まらない。しかし、眠れない。 今は何もしてこないが、もしれいむが寝たら、その指をれいむに突き刺してくるかもしれない。 そう思うと恐怖眠気が吹っ飛んでしまうのだ。 何分経っただろうか。ほんの30分くらいのはずだが、れいむには何時間、何十時間、何日にも感じられた長い間、れいむは幾度となく男たちに呼びかける。 「……おねがいだからしゃべってね」 しかし、相変わらず返事はない。 もしかしたら、もう死んでるのではと思っても、れいむが少し動くと視線と指が追ってくる。 それでもれいむは男たちに呼びかける。 罵られても言い。馬鹿にされても言い。寛大なれいむは何を言われてもすべてを許す。だから、喋ってよ。 れいむがそんなことを考えていると、一向に変化のなかったこの空間にようやくある変化が生じた。 不意に半数の男が一斉に立ち上がる。もう半数は依然座ったままだ。 れいむは嬉しかった。 帰れると思ったからではない。寝られると思ったからではない。お菓子が食べられると思ったからではない。 ただ男たちが違うことをしたことが嬉しかったのだ。 依然、れいむの言葉に返事を返してくれないものの、助かったわけではないものの、そんなことですら助けになるほど、今のれいむの精神は摩耗しきっていた。 しかし、そんなれいむのささやかな安息の時間は、次の男たちの行動で完全に壊された。 なんと座っていた10人の男たちが再び輪を作ろうとしているではないか!! れいむは慌てて男たちの輪の中から逃げようとしたが、それよりはやく10人の男たちはれいむを囲んでぴっちり隙間を埋める。 そしてれいむを見つめ、一斉に指を差し始めた。 輪が縮まったため、男たちの指は先ほどの時よりれいむのすぐそばにあった。 れいむの動ける範囲はさらに狭まった。 追い打ちをかけるように、立って後方に下がった男たちが、座る男たちの輪の後ろで広い円陣を組むと、なんとれいむの上方かられいむに指を指してくるではないか!! れいむは一転どん底に落とされた。 さっきも地獄であったが、これよりはましだ。 10人に減ったことで、座りながら指を指す男たちは、もう少し手を伸ばせば、れいむに触れることが出来るようになっている。 自然とれいむは輪の中央から動けなくなった。 二次元からしか指を指されなかったのに対し、三次元の場所からも視線と指が突き刺さる。 東西南北上、どこを向いてもれいむを指す指と、総数40にもなる無感情な視線。 「ゆ、ゆっくりやめてね……」 懇願するれいむ。 しかし、男たちは答えない。動かない。喋らない。 れいむの恐怖は終わらない。 このSSに感想を付ける
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 ? ? ? 1 日 目 ? ? ? 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 ? ? ? 7 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 ? ? ? 1 0 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 ? ? ? 1 2 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 ? ? ? 1 7 日 目 ? ? ? 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 ? ? ? 2 0 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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《 樽(たる)の中のれいむ 》 大きな赤いリボンをつけた大きな頭が、バラバラに散らばった木の前で途方にくれていました。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 頭だけの生き物、「ゆっくり」でした。彼女の名前は「れいむ」と言います。 「れいむ」の他にも「ゆっくり」はたくさんいましたが、その「れいむ」は特別な「ゆっくり」でした。 これからするのは、そのれいむの話です。 私たちの街に住んでいた、特別なゆっくりの話です。 れいむはいつの間にか私たちの街に来ていたそうです。 親もなく、たった一匹でしたから、いったいどこで生まれたのかわかりませんでした。 ある日、街の人がたずねました。 「お前はどこの生まれなんだ?」 れいむはきょとんとしていましたが、やがて頭をゆらしながら考えはじめました。 そうしてから答えました。 「ゆゆっ、お日さまの下で生まれたよ」 その話を聞いて、ある人はバカにして笑い転げましたし、またある人はなるほどと感心したそうです。 れいむは食べ物をめぐんでもらって生きていました。 ある日、とある金持ちのところに行ってお願いしました。 金持ちはうんざりしていました。 もともと大変けちんぼうだったのですが、そのれいむは何度も何度もやってくるのでした。 そのたび何度も何度も追いはらってきたのですが、今日もまたやってきたのでした。 いいかげん我慢できず、金持ちは家の外に飛び出してどなりつけました。 「いいかげんにしろ! お前にやれるものなんか持ってない!」 れいむはニコニコしながら言いました。 「おじさんのお腹のものを少しわけてくれるだけでいいよ!」 その話を聞いて、ある人は「あつかましく無礼だ」と嫌な顔をしましたし、 またある人は感心して、お金だとか財産だとかについて考えたそうです。 れいむに食べ物をめぐんだ人はたくさんいました。 れいむは食べ物をもらうたびに「ありがとう。ゆっくりしていってね!」と言いましたが、 ある日、こんなことがあったそうです。 子どもが散歩中のれいむに、たまたま自分の持っていたお菓子をあげました。 甘いお菓子で、れいむはおいしそうに食べました。 子どもの母親がそれを見て、「えらいわね」とほめました。 するとれいむはとても嬉しそうな顔をしたのです。お菓子をもらったときより嬉しそうでした。 母親が理由を聞くと、れいむはニコニコして言いました。 「ほめられたから嬉しいんだよ」 「この子が?」 人がほめられると自分のことのように嬉しくなるのか、そう母親は思ったのですが、違いました。 「れいむがほめられて嬉しいんだよ。 お菓子をもらえるれいむをほめてくれてありがとう。ゆっくりしていってね!」 その話を聞いて、ある人は「感謝の気持ちを持たないやつだ」と腹を立てましたし、 ある人は「自分に自信があるからまっすぐでいられるのだ」とうなずいたそうです。 れいむは家がありませんでした。 しかし、やがて捨てられた樽の中に住むようになりました。 れいむはそれを自分の「お家」だと思っていましたが、ある人はやはりただのゴミだと思っていました。 ある日、れいむがもらったダイコンを川で洗っていると、別のゆっくりが通りかかりました。 ペットとして飼われているゆっくりで、飼い主と散歩していました。 飼われているゆっくりはれいむに話しかけました。 「こんにちはー、れいむ」 「ゆっ、ちぇんだね。ゆっくりしていってね!」 「ちぇんはお散歩してるからゆっくりしていられないんだよ、わかってねー」 「ゆゆっ、ゆっくり理解したよ」 「ところでれいむ」 「ゆ?」 ちぇんは銀色のくさりにつながれた赤い耳かざりをゆらしながら聞きました。 「なんでちぇんみたいに人間さんに飼われないの? お家にも食べ物にも困らないよ」 れいむは青い葉っぱのついた白いダイコンを水に浮かべながら答えました。 「れいむはお家も食べ物もあるよ。ところでちぇんはそんなくさりをつけていて動きづらくないの? 好きなときに好きなところに行った方が、お散歩たのしいよ」 その話を聞いて、ある人はれいむがのたれ死ぬことを望みましたし、 またある人はれいむがこのままのびのび生きることを望みました。 れいむは頭だけの生き物でしたから、食べるときは地面に顔をつけるようなかっこうでした。 ある日、通りがかりの人がその様子を見て、「まるで犬だ」とからかいました。 れいむは特に怒ることもなく、こんなことを言ったそうです。 「そっちはまるでカラスだね。でもこれはれいむのだからあげないよ」 その話を聞いて、ある人は「ゴミあさりする鳥といっしょにするな」と怒りましたし、 ある人は「生きるために食べ物に集まるカラスの方が、まだましだろう」と考えました。 ある日、この街をおさめる王様がやってきました。 王様は広い領土を持っていて、今も領土をどんどん広げていました。 街の人たちはみんな王様にあいさつにいきましたが、れいむはあいさつしにいきませんでした。 それで、王様の方がれいむに会いにいきました。 れいむについては、いいうわさも悪いうわさもあちこちに広まっていたので、 王様はれいむに興味があったのです。 王様が大勢の兵士といっしょにれいむの所へいくと、そのゆっくりはひなたぼっこをしていました。 王様はれいむの前に立ってたずねました。 「お前がれいむかね」 「ゆっ、そうだよ、おじさん。ゆっくりしていってね!」 王様はおじさんと呼ばれるのは生まれて初めてでしたが、怒ることなく話を続けました。 「お前は私をこわがらないのかね」 後ろではたくさんの兵士が武器を持っていましたが、れいむはそれがまったく見えないかのように のんびりとしていました。 「おじさんは悪い人?」 「どちらかというと悪い人ではないと思うがな」 「じゃあいい人なんだね。こわくないよ」 王様がれいむの勇気に感心していると、れいむが聞きました。 「おじさんは何をしている人?」 「私かい? 後ろの兵士たちといっしょに領土を広げているんだよ」 「広げてどうするの?」 「世界をおさめるのさ」 「おさめてどうするの?」 「おさめられるかわからないが、もしできたなら、そのときはお前のように休みたいね」 れいむは不思議そうに言いました。 「休みたいなら、今かられいむといっしょに休んだらいいのに。ゆっくりしていってね」 王様はそれを聞いて、しばらくきょとんとしていましたが、 やがてあごをいじりながら考えこんでしまったそうです。 れいむはあいかわらずニコニコとしていました。 しばらくしてから王様は言いました。 「私には無理だ。いや、誰にも無理なことだ。すばらしいな、 お前は何も持っていないが、全てを手に入れているのだな」 けれど、れいむは言いました。 「よくわからないけど、れいむにもほしいものがあるよ」 意外な言葉に「ほう」と王様は驚いて、聞きました。 「それは何だね。この私が何でもあげよう」 「ひなたぼっこのじゃまだから、ゆっくりそこをどいてね」 れいむがお願いしたのはそれだけでした。 王様がそこをどくと、日の光がれいむにあたり、そしてれいむは気持ちよさそうに昼寝をはじめました。 れいむのところを立ち去るときに、王様はこうつぶやいたそうです。 「今度生まれ変わるときには、あのようになりたいものだ」 ある日、れいむが散歩から帰ってくると、住んでいた樽がこわれていました。 信じられないくらいバラバラになっていて、れいむはそれが樽の残がいであることにしばらく気づきませんでした。 少しの風も吹いていない日でしたから、そんなふうになってしまったのは誰か心ない人がこわしてしまったのでしょう。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 大きな赤いリボンをつけた大きな頭は、バラバラに散らばった木の前で途方にくれました。 持ち物と呼べるものは何も持ってないれいむでしたが、それでも雨を避ける場所だけは持たないと いけませんでした。 しかし、そのただ一つの場所はもうありませんでした。 ある人は、れいむがこの街から出て行くことを望みました。 それだけれいむはひどいことをされたのですが、そうはなりませんでした。 自分の家はありませんでしたが、れいむはこの街にいつづけました。 れいむはいろいろな所で過ごすことにしたのでした。 いろいろな人の家、いろいろな店、いろいろなたてもの。その屋根の下にれいむは自分の身をおきました。 追いはらわれることもたくさんありましたが、受け入れられることもたくさんありました。 そうしてれいむは、樽がなくてもずっと幸せに過ごすことができたのです。 さて、れいむは屋根を貸してくれた人に感謝していたかというと、やっぱりこんなことを言っていたそうです。 「れいむのためにこんなところを作ってくれるなんて、とってもうれしいよ。ゆっくりしていくね!」 それからしばらくして、れいむに新しい樽がおくられました。 誰がおくったのかは知りません。 自分の家を持たせてあげたいと思った人がおくったのかもしれませんし、 人の家をかってに借りるれいむを迷惑に感じた人がおくったのかもしれません。 こうしてれいむはまた樽の中でくらしはじめました。 これが私たちの街のれいむの話です。 そのれいむはこの街で一番に嫌われていました。また、一番に愛されてもいました。 「これほどのゆっくりは、そうはいない」 この言葉を口にする人はたくさんいました。その言葉には人それぞれの意味がありました。 しかし、どのような意味であったとしても、れいむは変わらず幸せだったでしょう。 それだけは誰もがそう思っていました。そうしてそれは事実だったにちがいありません。 れいむはとても幸せでした。 「ゆっくりしていってね!」 このSSに感想をつける
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書きたかった事 本スレ91の 220さんの書き込み 『ゆっくりが物覚え悪いのは都合の悪い記憶を餡子と一緒に吐くからという設定があったよな。』 からインスパイアされて 若干汚いのが注意点、嘔吐物的な意味で 作者 チェンマガツ? 男はその手にゆっくりれいむを抱いている。 成体サイズのそれは近くの森で甘い言葉で誘って着いてきた普通の野良れいむだ。 男の家にはすでにゆっくりまりさが居るのだがそろそろ番となるゆっくりも欲しかろうと思い拾ってきたのだ。 わざわざゆっくり屋で買うのも馬鹿らしい。 気に入らなければ潰して、まりさには別のれいむをあてがえばいいのだ。 そんな男の考えを知らないれいむはといえばご機嫌上々である。 一度だけだが森の中で出会った人間さんから舌がとろけそうなほど美味しい食べ物をもらったことがあった。 その思い出だけで人間への警戒感は全くない。その上かっこいいまりさと会えるというのだ。 これ以上幸せな状況は無い、というわけだ。 「ただいまー」 「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい!!」 帰宅すると玄関まで飼いまりさが跳ねてきてきっちりと挨拶をした。 お兄さんはかなり厳しい性格でこれまた野良であったまりさを一から叩き直して立派な飼いまりさに仕上げていた。 「ゆゆっ、おにいさんそのれいむどうしたんだぜ」 「ああ、お前もそろそろ番になりたいだろうと思って連れてきてやったんだ」 そう言ってまりさの目の前にれいむを降ろしてやる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「まりさはまりさだぜ」 「れいむはれいむだよ!!」 「れいむはゆっくりできるれいむだぜ?」 「とてもゆっくりできるよ!!」 「それならおにいさんのおうちでゆっくりするといいぜ」 「う、うん……。まりさのおうちじゃないの?」 「だめだぜれいむ、ここはおにいさんのおうちだぜ。まりさはここでゆっくりさせてもらってるんだぜ」 「れいむもゆっくりできるの?」 「れいむもちゃんとゆっくりさせてやるさ。その代わりちゃんと言う事聞いて貰うぞ」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいしたよ!! れいむもゆっくりするよ!!」 「よし。まりさ、れいむを部屋に案内してやれ」 「ゆっくりわかったよおにいさん!! れいむこっちにくるんだぜ」 「ゆゆ!!」 玄関先で一通りの自己紹介を済ませたまりさとれいむは部屋の奥へと消えていった。 まりさとの会話からもそれほど性根悪いれいむでなさそうなので男はこのまま様子を見る事にした。 まりさの為に用意された部屋は上下に分かれた押し入れの下段だった。 それでも並のゆっくりには十分すぎるほどのスペースである。 れいむはもちろんそこが押し入れと理解するわけがないのでまりさはとても広い巣を持っているゆっくりだと思った。 巣の広さもゆっくりのステータスの一つであるためれいむがまりさを気に入るのは早かった。 「まりさのすはとってもひろくてゆっくりできるね!!」 「ゆゆ~ん、あんまりほめるんじゃないぜ」 さらに飼いゆっくりであれば当然食事面で野生のゆっくりと差がついている。 まりさ本人もゆっくりからしたら美ゆっくりの部類に入るわけでれいむはその点でもまりさをお気に召したようだ。 逆にまりさの方は正直別のゆっくりならなんでもよかった、今は後悔してない状態である。 程良い関係であるならこれからの生活に支障はない、男はそう思った。 「もうお昼だしご飯にしようか」 「れいむにごはんはやくちょうだいね!!」 「れいむ、ゆっくりまってたらおにいさんはもってきてくれるんだぜ」 「ゆゆっ!! まりさはすごいんだね!!」 「それはちがうぜれいむ……」 まりさの実にまずそうな表情を男は読み取る。 れいむはまりさの言葉をまりさの為に男がご飯を持ってきてくれていると完全に誤解している。 まりさが伝えたかったのはご飯を催促することなく大人しくしていたらようやくご飯をもらえるということだ。 男は所詮野生のゆっくりだと思って甘くみたがまりさからすれば冷や汗ですむ話ではない。 「れいむ、うちでは静かにしている奴にゆっくりできるご飯を持ってくることにしている、わかったか?」 「どうしてそんなこというの? さっさとごはんもってきてね!!」 「まあそのうち分かるよ」 意味深な言葉を残して男は去っていった。れいむはそんなことは一切気にしなかった。 その後男は二匹に同じ量、同じ見た目のご飯を持ってきてまた部屋をあとにした。 二匹がご飯を食べている間にれいむを洗う準備をするためだ。 これから一緒に暮らすためにはあまりに汚らしい肌やリボンでは都合が悪いのだ。 ぬるま湯にボディーソープを入れてよく掻き混ぜると即席泡風呂が完成した。 そのころ押し入れの二匹は仲良くご飯を食べていた。 まりさはゆっくりらしいがつがつ食べるスタイルをとうに捨て去り、器から舌で少しずつ巻き取りながら綺麗に食べている。 一方のれいむは見事にご飯を食べ散らかしていた。 飼い慣らされたまりさから見れば卒倒物である。最近では忘れていた男の怒声が飛んでくるのが目に見えて震え上がった。 「れいむ、ごはんはきれいにたべるんだぜ。すのなかもきれいにしないとだめだぜ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪ なにかいったまりさ?」 「いや、なんでもないぜ……」 まりさは一応忠告はしたとばかりにれいむの食べ様に知らない振りを決め込む。 そして男が戻ってくると案の定れいむに雷が落ちる。 と思われたが男の意外な反応にまりさは驚くこととなる。 「れいむ、ごはんをたべるときはきれいにな。すがきたなくなってるぞ」 「ゆゆっ、れいむのせいじゃないよ!!」 「きれいにしないとゆっくりできなくなるぞ?」 「れいむはしらないっていってるでしょ!?」 「そうかまあいい。れいむおいでお前を綺麗にしてやろう」 「ほんとう!? ゆっくりはやくつれてってね!!」 「はいはい」 まりさの開いた口がふさがらない。何故だ、自分の時はあんなに優しくされた覚えはないのだがといったところだろう。 れいむを担いで男が向かったのはれいむを洗う準備をした風呂場である。 水面を直接見せることなく洗う事の出来る泡風呂はじつに便利だと男は常々思う。 ゆっくりがどうしてこうも水に対して恐怖心を抱いているか男は全く理解していないからだ。 最初にまりさを洗おうとしたときの騒動は今でも忘れられないほどの惨事となった。 「あわあわさんがとてもゆっくりできるね」 「そうだな」 男はれいむとの会話に適当に相槌を打ちながら細部まで綺麗に磨きあげていく。 飾りを外すのは拒まれたのでしかたなく頭に付けたままごしごしと洗う。 れいむの顔はマッサージをするように洗うと、見た目が気持ち悪い気持ちよさそうな表情をした。 風呂上がりにドライヤーも厳禁であることも経験済みだ。最初はあの音がゆっくりできないらしい。まりさは今では逆に病みつきらしいが。 面倒だがタオルできちんとれいむの水分を拭き取ることにした。 風呂場を出た頃にはれいむもそこいらの飼いゆっくりのような綺麗な肌になっていた。 田舎娘でもきちんと化粧とおしゃれな洋服を着せれば都会っ子なのだ。 まりさの待つ押し入れにれいむを戻すとまりさのれいむを見る目が変わった。 れいむがまりさに抱いていた思いに概ね近づいたようだ。つまりは相思相愛だ。 薄汚いれいむに何の感情も抱かなかったまりさもなかなか現金な奴である。 家にれいむが来てまだ一度もしていなかったすーりすーりを急にし始めたところからもわかる。れいむも満更ではないようだ。 「この様子なら心配はないな」 そんなまりさ達の行動におとこは苦笑いをしながら水受けに新しくボトルから水を注ぎ部屋を出て行った。 その日は男は晩ご飯と水の補給をしてあとはゆっくり達に関与しなかった。 今まではまりさの相手をしてやる必要があったがこれからはそれをれいむに任せればいいのだ。 れいむの躾けに関してもまりさの行動を見ているうちにれいむがそれを真似するようになるだろうと考えた。 その考えをしらないまりさは男の怒りがいつれいむに向かうか恐ろしくて仕方がなかった。 これまでの経験からすればもうすでに激しい暴行があってもおかしくないからだ。 今度れいむが粗相を起こせばなんとしてもれいむを庇わなくてはならない。 綺麗になったれいむにまりさの思いはそれほどにまで募っていたのだ。 しかし就寝直前に事件は発生した。 「ばでぃざ……うっぷ、ぎもぢわるぃおろろろろろろろろ」 「ゆぎゃあああああでいぶどうじだのおおおお!!」 れいむが突然餡子を嘔吐したのだ。 れいむは生粋の野生生まれ野生育ちだった。 その為実に人工物に対しての耐性がこれでもかというほどなかったのだ。 男が餌に混ぜていた少量の塩やカルシウムに。体を洗ったときに口に入れたあわあわこと洗剤に。そして水分補給に飲んだ硬水のミネラルウォーターに。 すべてがれいむの体調を崩す元となりついに嘔吐してしまったのだ。 だがまりさはれいむの体調の心配はまったく気にしてなかった。 またれいむが部屋を汚したのだ。 今度こそ男に見つかったられいむは潰されてしまいかねない。こんな美ゆっくりのれいむがいなくなるのはまりさは勘弁ならなかった。 そこでまりさが取った咄嗟の行動はれいむの嘔吐物を食べて証拠隠滅することだった。 基本的にゆっくりの体から出た餡子はそのゆっくりにとって汚いものである。 しかし背に腹は代えられないとばかりにれいむの嘔吐物を一気食いする。 ちびちび食べてはこちらも貰いゲロしてしまいかねないというまりさの判断だ。 「どうしたまりさ。悲鳴したような気がしたが」 なんとかれいむのものを食べ終えた頃男が押し入れの様子を覗きに来た。 「なんでもないよおにいさん!! ゆっくりおやすみなさい!!」 「ああ、おやすみ」 不審そうな表情で男は襖を閉めて、さっさと寝るために自室に戻っていった。 なんとか誤魔化せたまりさは安堵の溜め息をつく。ふとれいむのほうを見ると気を失うように眠りについてしまったようである。 その様子をみてまりさをれいむに頬擦りをして自分も眠りにつくことにした。 れいむがまりさの所にやってきて二日目の朝がやってきた。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 「れいむはおねぼうさんだね!! きのうれいむはまりさのところにおにいさんときたんだぜ」 そんなれいむの姿を見て微笑んでいたまりさの表情が次の瞬間凍り付く。 「まりさはだれなの!? れいむにゆっくりちかよらないでね!! れいむおうちにかえる!!」 「どうしたのれいむ!! まりさはまりさだよ、わすれたの?」 「れいむはまりさのことなんてしらないよ!! ゆえーん、でぐちはどこなのー!!」 一体全体れいむはどうしてしまったのだろう。昨日あんなに仲良くなったのにすーりすーりしたのにそれも忘れてしまったのか。 「おにいさんもわすれたの? ごはんをもってきてくれたにんげんさんだよ?」 するとれいむの目が変わった。まりさはようやく思い出してくれたのだと安心した。 「すごいねまりさ!! まりさはにんげんさんよりえらいんだね!!」 しかしれいむの発した言葉は昨日の焼き直しのようだった。 「ちがうんだぜれいむ……」 昨日晩ご飯のときに説明していたことも忘れたのだろうか。もしかすると理解できてなかったのかもしれないそうまりさは思う事にした。 それからすぐ男が朝ご飯を持ってきて水の補給をして、挨拶をしただけであまり会話もすることなく出て行った。 汚らしくご飯を食べたれいむをまりさは注意して、すーりすーりしたりかけっこしたり男とゆっくりとの関係について話をして昼ご飯がきた。 朝同様男はすぐに出て行った。これからは男とではなくてれいむと仲良くするんだとまりさは言われた。まりさはれいむにこの家でのルールを教えていった。そのうちに晩ご飯がきた。 水の補給も終え部屋を出て行こうとする男にまりさとれいむは仲良くおやすみなさいと言った。 男は満面の笑みでそれに返して部屋を後にした。 そして就寝直前れいむは再び嘔吐をした。 体に合わないサプリメントと硬水中のミネラルの影響によるものである。 まりさも再びそれを何とか口にする。 出来れば食べたくないのだが男に知られるわけにはいかないため、食べる以外に処分方法がないのだ。 そして三日目の朝が来た。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 れいむは昨日と全く同じ台詞を吐いた。 あとがき 記憶継承な話題になってたけど忘れるのも面白そうかなと思ってみた。 嘔吐した餡子を食べると記憶継承するのはあくまでも同種のゆっくりでそれ以外は餡子に消化しちゃうんじゃないかと。 ありすのカスタードをれいむが食べても駄目そうな雰囲気で。 れいむとまりさの餡子も似ているようで少し違うんだよきっと。 というのは勝手な妄想なのでさらっと流してください(・3・)~♪
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罪 10KB 罪の自覚 「罪」 ※虐待の描写は殆どありません ※現代設定(?)です ※独自設定があります ※ネタ被りがありましたらご容赦ください ※淡々としています ―ブツン。 頭の中で音がした。 その直後。 瞼を閉じていても痛みを感じるような、強烈な光を顔に当てられてれいむは目を覚ました。 体を動かそうにも、何かで押さえつけられているため叶わない。 あんよに何かが触れている感覚があり、ヒンヤリとした空気が体を包んでいた。 「……ゆ、ゆゆっ? ど、どうなってるの?!」 パニックを起こしかけたとき、光が弱まり、白一色だった世界がぼんやりと輪郭を取り戻した。 れいむは手術室のような部屋にいた。 冷たいマットのストレッチャーに乗せられ、ベルトで縛り付けられている。 無影灯があらゆる角度かられいむを照らす。 それ以外に明かりはない。 れいむは自分を見つめる2人の人間に気付いた。 1人は白衣を着ている。知らないお兄さんだった。 もう1人はお姉さん。 そのお姉さんの姿を見たとき、れいむは叫んだ。 「!! おねえさん?! おねえさんなの?!」 彼女はれいむの飼い主だった。 だが、れいむの呼びかけには身体を震わせるだけで答えてくれない。 部屋の明かりはれいむに集中しているため、表情も良く分からなかった。 代わりに白衣のお兄さんがれいむに言った。 「おはよう、れいむ。気分はどうだい?」 「ゆ?! おにいさんはだれ?! ここはどこ?!」 「落ち着いて。私は医者で、ここは病院だよ。 君は大怪我をして、今まで手術を受けていたんだ。 もう少しで“永遠にゆっくりする”ほどの酷い傷だった。 れいむ、覚えていないのかい? 君はおうちのお庭で倒れていたんだよ」 そう言いながら、れいむを拘束していたベルトを外してくれる。 お兄さんが優しい声をしていたこともあって、れいむは幾分落ち着きを取り戻した。 そして、お兄さんの言葉で自分に何が起こったのかをゆっくりと思い出し、震えだした。 「……ゆ、ゆ……! ……あ、……あぁぁ……!」 れいむの脳裏に、あの恐ろしい出来事が再生され始めた。 * * * * * * * * * れいむはおうちの中にいた。 なんで? だってれいむは飼いゆっくりだから。 ここはお姉さんとれいむのゆっくりプレイスだ。 お姉さんはどこ? 昼間はお仕事があるから、れいむは独りぼっちだ。 もう慣れたでしょ? そう、れいむはとてもゆっくりしたれいむなんだ。 だから寂しくなんかない。 お姉さんが帰ってくるまで、ゆっくり待っていられる。 でもその日はいつもと違った。 前の晩に、れいむはお姉さんと些細なことで喧嘩してしまい、朝の挨拶もしていなかった。 バタン、と玄関のドアが閉まり鍵のかかる音がした。 お姉さんが仕事に行ったのだ。 いつもなら見送りをしていたれいむは、居間のソファーで不貞腐れていた。 「れいむはわるくないもん……」 そう言って、れいむはぷくぅ、と膨れていたが、 時間が経つうちに、自分がしたことを後悔するようになった。 「やっぱりわるいのはれいむだよ……。おねえさんごめんなさい……」 謝りたくても、その相手はいない。 我が儘だった自分に腹が立って、ゆっくりできなくなった。 「おねえさん……」 この世界で一番ゆっくりさせてあげたいお姉さんにひどいことをしてしまった。 その罪悪感が、れいむをますますゆっくりできなくさせる。 「おねえさん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」 涙が溢れそうになるのを必死に堪える。 だって泣いたらゆっくりできないから。 お姉さんも言っていたじゃないか。 「笑顔が一番よ、れいむ。あなたに泣き顔なんて似合わないわよ」 いつのことだったか、微笑みながられいむを慰めてくれたお姉さん。 とっても暖かくていい匂いがした。 ―ああ、そうだ。 ゆっくりした想い出が、れいむの心を癒していく。 うじうじした気持ちを吹き飛ばす。 笑顔。 笑顔が一番だ。 お姉さんが帰ってきたらとびっきりの笑顔で迎えてゆっくりしてもらおう! いつの間にか、おうちの中は夕日で赤く染まっていた。 もうすぐお姉さんが帰ってくる。 ポヨヨンとソファーから飛び降りたとき、お庭に面した窓がガシャンと割れた。 冷たい風がれいむの頬を撫でる。 「ゆぅ?!」 振り返るれいむ。 窓を割って入ってきたのは黒帽子のゆっくりまりさだった。 「なかなかいいおうちなんだぜ! まりささまにふさわしいんだぜ!」 薄汚れた体。 典型的な野良ゆっくり。 そしてお決まりのセリフ。 「だ、だめだよ! ここはおねえさんとれいむのおうちだよ!」 反射的に叫んだれいむ。 まりさはそこで初めてれいむの存在に気が付いたようだった。 「……! ……なんだ、れいむだったのかぜ」 「こ、ここはおねえさんとれいむの……」 「うるさいんだぜ! にんげんなんかにかわれているゆっくりが、まりささまにさしずするんじゃないのぜ」 れいむを無視して、おうちを荒らそうとするまりさ。 手始めに、鉢植えに咲いている花を食べようとした。 「やめてぇっ!!」 鉢植えには赤い花が咲いていた。 れいむがお願いして買ってもらったものだ。 れいむとお姉さんはその花の香りが大好きだった。 思わず体当たりをするれいむ。 予想外の攻撃に、まりさは驚きの表情を浮かべて、そのまま転がった。 ポヨンポヨンと勢い良く、2匹はそのままお庭に飛び出した。 ドテッ、ボヨン、と地面に叩きつけられるれいむとまりさ。 暖かかったおうちの中から一転して、肌を刺すような寒さに襲われた。 「ゆうぅぅ……!」 今まで経験したことのない痛みと恐怖に震えるれいむ。 そんな中で、れいむはまりさがどれだけ辛い環境にいたのかを理解した。 まりさがどうしておうちの中に入ってこようとしたのかを理解した。 「……まりさ……ごめんね……れいむは……」 まりさの方を向いたれいむの目に映ったのは。 まりさはれいむを睨んでいた。 ゆっくりできない顔だった。 ブツブツと何かを呟いていた。 「……むの……」 「……? まりさ……?」 「くずのれいむのぶんざいでぇえええええええええええええっ!!」 跳躍するまりさ。 見上げるれいむ。 落ちてくるまりさ。 動けないれいむ。 ―たすけて、おねえさん。 強い衝撃を感じたのを最後に、れいむの意識は途切れた。 * * * * * * * * * ―ブツン。 「ゆわぁああああああ! あああああああああああ!」 「大丈夫だ。れいむ、落ち着いて。大丈夫だから」 必死になって暴れるれいむを誰かが押さえつける。 誰? この声は……確か……。 れいむが見上げると、そこには白衣を着たお兄さんがいた。 「全て思い出したんだね、れいむ」 「ゆ……? おにいさん……? まりさは……?」 「もう終わったよ。終わったことなんだ」 れいむが大人しくなると、お兄さんは手を離した。 部屋全体を照らす明かりがつく。 お姉さんがれいむを見つめていた。 「ゆうぅ……! おねえさん、れいむ……」 そこから先は言えなかった。 お姉さんは泣いていた。 最初はれいむが助かって、嬉しくて泣いているんだと思った。 でも違う。 お姉さんは、とても悲しそうな顔をしていた。 「……おねえさん……? どうしたの……?」 お姉さんはただ涙を流すだけ。 白衣のお兄さんがお姉さんに向かって言った。 「もう充分でしょう。この『まりさ』はれいむの記憶をほぼ完璧に追体験しました」 ―え? ―まりさ? ―まりさがどこにいるの? 混乱するれいむ。 ―れいむ? ―そうだよ、れいむはれいむなんだぜ。 ―あれ? ―いまれいむはなんて……? ―なんだろう、おかしいよ……おかしいんだぜ……。 ―きもちがわるい……たすけて……おねえさ……。 混濁する意識の中で助けを求める。 「システムとの接続は一時的に切ったから、君の自我の優位が戻ってきているんだ。 でも、れいむの記憶から得た知識で、これが何かは分かるだろう?」 お兄さんが何か言ってる。 ―なにをいってるの……? ―いみがわからないよ……? ―れいむを……まりさを……たすけて……。 お兄さんが目の前に何かを置いた。 ―ああ、これは……。 それは鏡だった。 自分の全身が映し出される。 鏡の中にいたのは。 「……ど……、どうして……まりさが……いるの……?」 そこにいたのは自分を襲ったまりさ。 帽子、髪型、目つき、口元。 忘れるわけがない。 「うそ、なんだぜ……? だって……まりさは……」 そう言った瞬間、全てを思い出した。 人間のおうちに侵入して、れいむに見つかったこと。 れいむと一緒にお庭に転がり落ちたこと。 れいむにやられたことで、激しい怒りを覚えたこと。 そして、れいむをぐちゃぐちゃになるまで踏み潰して、殺したこと。 「ゆわぁあああああああああああああああああああああっ!!」 まりさは絶叫した。 * * * * * * * * * 私はまりさに、自分のことを「医者」だと言ったが、実際は少し違う。 確かにゆっくりを治療したりもするが、本業はゆっくりの研究だ。 ストレッチャーの上のまりさには2本のコードが繋がっている。 ちょうど、こめかみの辺りに突き刺すような感じだ。 そのコードの先には機械と、れいむから摘出した餡子が接続してある。 試作品だが、上手く機能してくれた。 ここに運ばれてきたとき、れいむは既に蘇生が不可能な状態だった。 そしてれいむと共に連れてこられた、野良ゆっくりのまりさ。 辛うじて無事だった僅かな餡子と、健康な体。 れいむの飼い主の希望で、れいむの記憶をまりさに移植することとなった。 この処置の目的はふたつ。 ひとつは、まりさに己の罪を自覚させること。 そしてもうひとつは……。 「ゆぅううう……! ゆぁあああああ……!」 れいむの記憶に悶え苦しむまりさ。 それも間もなく終わる。 「まりさ」 私の呼びかけに、まりさは涙でいっぱいになった瞳を見開く。 「君が殺したれいむがどれだけ愛されていたか理解できたか?」 「……」 「君がどれほど酷いことをしたか理解できたか?」 「……」 「まりさ、この『まりさ』のことをどう思う?」 私は鏡の中のまりさを指し示す。 短い沈黙の後、まりさが呟いた。 「……このまりさは……わるいまりさ……だよ……。……ゆっくりできない……ひどいまりさだよ……。 ……だから……せいさいして……もう……ころして……」 「そうか、分かった。その願いは半分だけ叶えよう」 私はコンソールを操作した。 モニターの波形が大きく揺れ動く。 「ゆぐぇばばばばばばばばば……!!」 まりさはグルンと白目を剥き、痙攣した後、意識を失った。 * * * * * * * * * れいむが意識を取り戻したとき、目の前にお姉さんがいた。 「……おねえさん……? っ! おねえさん! おねえさぁんっ!!」 飛びつくれいむをお姉さんは優しく抱きかかえる。 その顔はいつもと変わらない微笑みを浮かべていた。 「おねえさん……! れいむ、こわいゆめをみたよ……! こわかったよぉ……!」 腕の中で泣きじゃくるれいむに、お姉さんは言った。 「大丈夫よ、れいむ。何もかも夢なんだから。私がいるから安心して……」 「本当にこれで良かったんですね?」 誰かがお姉さんに言った。 「ええ……。私にはこの子しかいないんです。たとえどんな姿でも……。 無理なお願いをして、申し訳ありませんでした。……心から感謝します」 彼女たちはそのまま部屋を後にした。 残されたのは1人の研究者。 「体は『まりさ』で、記憶は『れいむ』か……。 ゆっくりの本質はどっちにあるんだろうな……」 れいむの残骸からサルベージできた記憶は完全なものではない。 『まりさ』の自我は消え去ったが、あれを『れいむ』といって良いのだろうか? また、研究テーマが増えてしまった。 明かりを消し、研究者は部屋を出ていった。 (了) あとがき 最後までお付き合いいただきありがとうございます。 れいむ お願いだから話しておくれ 聞かせて欲しいんだよ れいむの救い方を! ゆっくりにとって従順は美徳だ 最高の美徳だよ だから話しておくれ…… ……話せよ! 話せったら話せ! この饅頭がァ!! どこかの狂王がこんなことを言っていました。 いつかは、ストレートにれいむが幸せになる話に挑戦したいです。 書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 392 お前たちに明日はない ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ! ふたば系ゆっくりいじめ 430 幸せ ふたば系ゆっくりいじめ 463 フォレスト・オブ・マッドネス トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓誰がうまいこと言えと・・・ -- 2011-07-01 03 58 28 ↓↓うんうん が詰まらんのか 良かったな快便なのはいいことだ -- 2011-06-30 00 29 20 いい話じゃないか -- 2010-12-07 14 48 17 うん!つまらん -- 2010-11-15 05 06 05
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もはやワルノリの領域 -- カレー。 (2008-11-29 20 55 19) 誰が干したんだw -- 名無しさん (2008-11-29 20 57 03) そしてそのまま雨が降ってぬれいむに戻るという構図が頭に浮かんだ。 -- 名無しさん (2008-11-29 21 07 18) さぁ、次はたたまれいむだ -- 名無しさん (2008-11-29 21 08 57) ふれいむ→ぬれいむ→ほされいむ→ぬすまれいむ→にげれいむ→かえれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 20 48) くたばれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 24 27) いたわれいむ -- 牛鬼 (2008-11-29 21 27 01) おわれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 42 36) くそったれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 45 00) あばれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 22 44 40) おちつけいむ -- ケージ (2008-11-29 22 49 03) なんぞこのながれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 22 51 30) もうやってられいむ -- 天滅地壊 (2008-11-29 23 13 57) なんというか霊夢への愛が伝わってきますね。あいされいむと言ったところでしょうかw -- 名無しさん (2008-11-30 00 02 01) ふれいむ→ぬれいむ→ほされいむ このループに入る前には(出番を)ほされいむがあることは余り知られていない 全録 巫女の伝統と現実/民明書房 -- 名無しさん (2008-11-30 00 58 27) なんかそのうち、ゆっくりみたいな別の生き物になっていきそうなwww そしてニコニコにはこわれいむというものがあってだな…… -- 名無しさん (2008-11-30 07 14 35) リボンの右にちゃんと燃えた跡があるのがまたwwww -- 名無しさん (2008-11-30 08 43 44) 続編マダー?次は干からびた霊夢? -- 名無しさん (2008-11-30 21 43 52) 名前 コメント
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すらいむ P氏の麻雀メンバーであったが,その後の話の流れで,末広フォルダ道場の「ぷよ&テトリス」に参加し始め,さらにM.P.G.misc.に登場するようになった。 テトリスの腕前は半端ではない。コーディング技術も支配人の数段上を行っていると思われる。 メンバーID名が,本人の申告によるというレアケースである(笑)。 出場種目 ぷよ&ぷよテト M.P.G.Misc. メンバとプロパティ クラスメンバ 種別 解説 値(プロパティ),引数設定・返り値(メソッド) origin プロパティ 名前の由来 本人による。 straight メソッド 直線スペア 7番でも10番でも真っ直ぐの球でスペア。一見の価値有り。