約 454,572 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/518.html
なのはの目の前に、捕われたフェイト・ハウライオン、八神はやての無残な姿が。 なのは「あぁっ……フェイトちゃん! はやてちゃん!」 フェイト「な……なのは・・・きてくれたんだね……」 はやて「ふ……ふふっ、遅かったやないか……」 なのは「まってて、今助ける!」 2人の戒めを、なのはがアクセルシューターで打ち抜く。 なのは「よし、一旦ここから出よう」 はやて「すまんなぁ……」 脱出しようとしたとき、異質な魔法がが響くと共にユーノ・スクライアが現れる。 ユーノ「フフフ……この僕から逃げられるとでも思ってるのか」 なのは「二人とも早く外へ!」 ユーノ「逃がさん!」 なのはがフェイトとはやてを逃がし、ただ1人ユーノ・スクライアに立ち向かう。 必殺の一撃ディバインバスターがユーノを包み込む。だがユーノはそれを意にも介さず、 突進し、なのはを蹴り飛ばす。なのはの攻撃を受けた傷ががみるみる塞がる。 ユーノ「馬鹿め……このロストロギアが発するフィールド内での僕は、不死身なのだ……」 リンディ「グレアム、穴が閉じられる!」 グレアム「よし、発射準備完了! 行けぇぃ!」 ロストロギア・フィールド目掛け、アルカンシェルが放たれる。 フィールド内。外を目指していたフェイトとはやてが、そのビームを浴びる。 弱りきっていた二人の体に、次第に力が甦る。 フェイト「あ……?」 はやて「こ……これは?力が戻って。」 クロノ「あぁっ、フェイト! はやて! 無事だったんだね!」 ユーノがなのはを翻弄する。なのはが起死回生で放ったエクセリオンバスターACSドライブを ユーノが白羽取りで掴み、レイジングハートを握りつぶし、そしてユーノの手から巨大な剣が伸び、なのはの腹を貫く。 なのは「きゃぁぁぁぁぁっ!!」 ユーノ「冥土の土産になのはに僕の本当の力を見せてやろう。絶対淫獣神となったこの僕の力を!」 なのは「あぁぁぁぁ──っ!!」 スクライアの塔から、マイナスロストロギアエネルギーがミッドチルダに向けて放たれる。 ミッドチルダの空が、次第に暗黒に染まってゆく。 グレアム「い、いかん……このままではミッドチルダは……」 フェイトとはやてが、アルカンシェル砲を抱え上げる。 グレアム「何じゃ? アルカンシェル砲をどうするつもりじゃ!」 フェイト「こいつを使って、私たちの全エネルギーをユーノにうち込んできます!」 グレアム「……馬鹿な! そんなことをしたら……」 フェイト「行こうはやて!今度こそなのはを助けよう。」 はやて「ええ!うちもなのはに一度救われた、そしたら今度はうちらが助ける番や。」 グレアムの制止も聞かず、二人が飛び立つ。 ユーノの放つマイナスロストロギアエネルギーがなのはを襲う。 なのはのバリアジャケットがみるみる溶けてゆく。 なのは「うぐぁっ!!」 ユーノ「フフフ……そろそろ別れの時がきたようだ・・・一撃で楽に葬ってやる。」 そのとき。アルカンシェルがユーノに注がれる。 ユーノ「お、おぉっ!?」 アルカンシェル砲を抱えたフェイトとはやてが飛来。 はやて「ユーノ! 私たちの命の力や、受け取りやっ!!」 フェイト「なのは、今度こそ助けるんだ!」 ユーノ「うぅ……おのれっ、ザコどもがぁっ!!」 光の刃を放つユーノ。アルカンシェル砲が真っ二つになる。 そして……フェイト・ハウライオン、八神はやての胴体も真っ二つに斬り裂かれる。 なのは「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 大爆発── なのは「フェイトちゃん……はやてちゃん……」 爆風の中から、二筋の光線が閃き、砕けたはずのレイジングハートに吸い込まれる。 ユーノ「ザコどもめ! 手間をかけさて!」 なのは「ユーノ・スクライア! 許さない!! 貴方だけは、絶対に……許さなぁぁ──いっ!!」 ユーノ目掛けてなのはが突進する。ユーノの魔法が響き、なのはのバリアジャケットが次々にちぎれとぶ。 しかし、それでもなおなのはは突進し続ける。 ユーノ「な、なぜ……!? なのはは倒れないのだ……!?」 なのは「私はすばるたちや、このミッドチルダに住むすべての生命に約束した。 たとえこの身は滅びても、ユーノ・スクライア、貴方を倒すと!!」 ユーノ「ほざくなぁ──っ!!」 直撃を受けてなのはの髪留めが砕け、ロングヘアーになる。 なのは「行くわ! ユーノ・スクライア!!」 なのはの全身からまばゆいばかりの魔力が迸り、その姿が巨大な火の鳥と化す。 ユーノ「何ぃっ!?」 火の鳥にフェイトの姿が、はやての姿が浮かび上がる。 彼らがユーノに倒された時、その命がなのはに託されていたのだ。 フェイト「ユーノ・スクライア!!」 はやて「受けるがええ!!」 なのは「これが私たちの、最後の力だあぁぁ──っっ!!」 3体の命が火の鳥と化し、ユーノの体を貫く。 ユーノ「僕は敗れぬ……敗れるわけがない……僕は淫獣皇帝……ユーノ……スクライア……なのだああぁぁ──っ!!」 ユーノ・スクライアの肉体は──粉々に砕け散る。 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/26.html
策士だった司書長 ユーノは仕事が一区切りついたので司書長室に戻ってみると、そこには不機嫌そうな顔をしたヴィータがいた。 「あれ、ヴィータ?来てたんだ?」 「うるせーです。資料の請求に来ただけです。」 「そんなに睨まないでよ。」 「睨んでねーです!もともとこんな顔なんです!」 前回、ユーノによってセクハラされてしまったヴィータ(詳しくはユーノスレまとめWikiの『策士な司書長』を参照)はユーノを思いっきり警戒していた。 ユーノが近づくたびにバックステップで間合いを取るあたり、さすがは紅の鉄騎と言える。 「そんなに警戒しなくてもいいのに・・・」 「どの口がそんなこと言うんだよ!」 「苛めているときはあんなに可愛いのに・・・」 「ぶっ殺す!!」 反省していないユーノにプッツンしてしまったヴィータはおもむろにグラーフアイゼンをセットアップすると、容赦なくユーノに向かって振り下ろす。 しかし、ユーノはそれを読んでいたかのようにラウンドシールドで受け止めた。 これもユーノの策の一つである。 わざとヴィータを怒らせて、自分から間合いに入ってくるように仕向けたのだ。 一度間合いに入らせてしまえばこっちのものである。 ユーノが余裕な表情をしていることに腹を立てたヴィータは、ギガントハンマーで潰そうとデバイスのフォルムチェンジをしようとするが・・・ 「ねぇヴィータ。」 「んだよ!今日こそはお前をギッタギッタのボッコボコのミックミクにしてやんよ!!」 「そこにあったプリン食べたでしょ?」 「え・・・?」 突然の話題にヴィータの手は止まってしまった。 予想通りのヴィータの反応にユーノはにやりと笑うと、隙をついて足払いをかけてヴィータを仮眠ベッドに押し倒す。 「何すんだよ!」 「プリンを盗み食いしたヴィータにお仕置き。」 「た、食べてねぇよ!」 「本当に?」 「う、嘘じゃねーです・・・。」 しかし、ヴィータの目は泳いでいるし声は上ずっているため、説得力は欠片も無かった。 しかし、ヴィータの往生際は悪い。 「しょ、証拠でもあんのかよ!無かったら冤罪で訴えるぞ!」 「証拠ならあるよ。」 「何処にそんなの・・・」 ヴィータが言い終わる前にユーノが口を塞いでいた。 勿論口で。 「ん、んんぅ!?」 驚いているヴィータを押さえつけて、ユーノはヴィータの口の中に舌を滑り込ませると、 逃げようとするヴィータの舌を絡めていいように弄び、吸い上げ、唾液を流し込む。 「んぁ、あむ、ちゅ・・・らめぇ、ンく、こくん・・・」 流し込まれた唾液を飲みこむ度に体が熱くなってしまうことにヴィータは途惑いながらもなんとかユーノから逃れようと抵抗するが、 だんだんと酸欠によって力が抜けていってしまい結局形だけの抵抗になってしまう。 そして口がやっと離れると、ヴィータは涙目になりながらもユーノを睨みつける。 しかし、ユーノはいたって余裕だった。 「プリンの味がした。やっぱり食べたでしょ?」 「こんな取調べの仕方があってたまるかーー!!」 ヴィータは耳まで真っ赤になりながら怒鳴るが、ユーノはいけしゃあしゃあとしながらヴィータを押し倒したままの状態でお仕置きを開始する。 「それじゃ、プリンを食べたヴィータにお仕置きだね♪」 「や、やめろ、この変態!」 「ほら、僕って巷では淫獣って呼ばれてるし?」 「このロリコン!」 「生きた年月ではヴィータの方が上じゃない?ということはヴィータって合法ロリ?」 「ふざけんな、ってやぁん!?」 口論している間にユーノはヴィータの太ももを撫でていた。 内股から感じるくすぐったいような感覚に思わずヴィータは悲鳴をあげてしまう。 その反応に気を良くしたのか、ユーノはさらにヴィータの体を撫で回していく。 「ヴィータは耳が弱いんだったよね♪」 「ひゃあ!?耳を舐めんな・・・うぁ、だめぇ!」 ユーノはヴィータの耳をハミハミしながらもヴィータの服の隙間から手を差し込み、お腹や胸などを優しく愛撫していく。 さらにはスパッツの中に手を入れて直にお尻を触ってくる。 敏感な所を同時に複数箇所攻められて、さすがのヴィータも可愛い声で鳴いてしまう。 「この野郎・・・いつか絶対殺してや、ひゃあ!?お尻を揉むなぁ!!」 「ヴィータって感度良いよね♪」 「やだぁ!この変態!んな所触んな、ふぁ、んぁ・・・やぁああアあん!?」 抗議の声を上げようとしたヴィータだったが、途中でユーノに胸の突起を優しく摘まれてしまい、思わず甘い声を上げてしまった。 その声に気を良くしたユーノはさらにヴィータを攻め立てていく。 ユーノに悪戯されながらもヴィータは心の片隅で考えていた。 確かにユーノは変態で意地悪だ。 しかし、自分はそれを受け入れてしまっている。 そうでなければ今ごろユーノをグラーフアイゼンの頑固な汚れに変えているし、無限書庫に自分から行ったりなんてしない。 いつからこんな関係になったのだろうか? 確かなのはが堕ちたときからだろうか? 塞ぎこんでいた自分を元気付けるために世話を焼いてくれたこの男と馬鹿をやっているうちに気付いてしまった。 自分がこの意地悪な男に惹かれているんだと。 だから、口では抵抗していてもユーノのことを受け入れてしまう。 しかし、いつも好きなようにされるのは癪である。 だから今日は少しばかり反撃することにしよう。 「なぁ、ユーノ・・・」 「ん?どうしたのヴィータ?」 急にヴィータが大人しくなったに疑問を持ったユーノは手を止めると、ヴィータはゆっくりと上半身を起き上がらせてユーノに抱きついてきた。 ヴィータの予期せぬ行動にユーノはうろたえてしまう。 「ど、どうしたのさヴィータ?」 「ユーノ、一回しか言わないからな・・・」 「な、何?」 真剣な眼差しのヴィータに、ユーノは少し緊張してしまった。 そしてヴィータは深呼吸すると、ユーノの耳元に顔を寄せて呟いた。 「お前なんか・・・大好きだ。」 「!!!???」 突然のヴィータの告白にユーノは思いっきり動揺してしまう。 さらにヴィータは追い討ちをかけるようにユーノの頬にキスをした。 「なっ!?ヴィ、ヴィータ!?」 「ふん・・・」 頬に柔らかい感触がしたことに慌てているユーノをよそにして、ヴィータは頬を赤くしながらも司書長室を出ようとしていた。 そして帰り際に、ヴィータは勝ち誇ったかの笑顔でユーノに向かって言った。 「今日はあたしの勝ちだな。」 「なっ!?」 そうして、呆気に取られたユーノを見たヴィータは機嫌が良さそうに司書長室を出て行った。 残されたユーノはさきほどヴィータにされたことを思い出して、口元を手で押さえながら顔を赤らめていた。 いつもは自分がヴィータをいいようにする筈だったのに、今日は自分がいいようにされてしまった。 「やられた・・・」 そんなことを呟いたユーノの顔はどこか悔しそうだった・・・。 60スレ SS ユーノxヴィータ ヴィータ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/65.html
「クリスマスはすずかさんのターン?」 作者:15-515 珍しく――というか奇跡的といっていいほどに無限書庫への依頼が少なく、午前中で全て終わらせてしまったユーノは、久しぶりに海鳴にやってきていた。 久しぶりに来た街の雰囲気は、何やらよそよそしいというか、浮かれている感じがした。 「ユーノくん?」 そんな中、後ろから声を掛けられ、ユーノは振り向いた。 「やぱりユーノくんだ。久しぶりだね」 「久しぶり、すずか。それより、どうしてここに? ていうか、街の雰囲気がなんかいつもと違うような…」 「えっ、やだなユーノくん。今日はクリスマス・イブじゃない」 「クリスマス?……あ、あ~あれか。もうそんな時期なんだ」 すずかにそう答えられたユーノは、少しばかり考え込んだ後、手を叩きながらそう言った。 「…ユーノくん、もしかして、今日がクリスマスだっていうの忘れてたの?」 「あ…あはは、無限書庫の中だと日付とかあまり関係ないし、それに、クリスマスとかやったのもう何年も前のことだったし」 すずかにジト目でみられ、ユーノは頭をかきながらそう答える。毎年、なのは達から誘いを受けるが、いつも忙しくて参加する事が出来なかったのだ。 「ふ~ん。じゃあユーノくん、今日はヒマなの?」 「そうだね。珍しく仕事が少なくて全部終わらせてきたし、急な依頼がなければヒマだね」 「よかった。じゃあ私に付き合ってよ♪」 そう言って微笑んだすずかは、ユーノの腕に自分の腕を絡ませる。そこから伝わる女性特有の柔らかさと暖かさに、ユーノは顔を赤らめた。 「えっ、ちょ、すずか!?」 「せっかくのクリスマスイブなんだし、今日は私の恋人になってほしいな。…ダメ?」 「だ、ダメ…じゃない…けど」 すぐ近くで自分を上目遣いで見つめるすずかに、ユーノの心臓は鼓動を高めた。 「えへへ♪ ありがとうユーノくん。あ、今日はアリサちゃんたちと一緒にクリスマスパーティーする予定なんだけど、ユーノくんも来るよね?」 「そうだね。アリサとも久しぶりに会いたいし、むしろ来なかったら怒られそうだ」 「くすくす。アリサちゃんも、ユーノくんのこと気にしてたから。あ、ユーノくん、まずはデパート行って、今日のパーティーのプレゼントを買いに行こう」 「了解、お姫さま」 そんな事を話しながら、二人はゆっくりと歩き出す。 身を切るような寒さの中、触れ合っている腕から伝わるお互いの体温がとても暖かく、なんとなく、ユーノは幸せを感じた。 15スレ SS すずか ユノすず ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/169.html
男の喧嘩は単純? 「川口浩探検隊シリーズ」を巡るユーノとクロノの喧嘩話を書いてみました。 ユーノ×フェイトとクロノ×エイミィ JS事件から2年後。ユーノとフェイトが付き合い出して1年 ユーノとなのはの関係は兄妹の様な関係 しかもなのはは登場しません。名前だけ出ます。 喧嘩話の筈なのにユノフェメイン? 「えっ?ユーノとお兄ちゃんが大喧嘩?」 エイミィからもたらされた一報にフェイトは驚く。 ユーノとクロノは普段は啀み合っているように見える(というかほぼ啀み合っている)が、内心では双方とも全幅日か信頼を置く仲だ。 決して表に出さないが、お互いの事を非常に高く評価している。 実際に大喧嘩したなどということは聞いたことが無いのだ。 が、しかし――― 「それがねーホントなのよ」 エイミィは実際に目撃していたのだ。 クロノとエイミィ、カレルにリエラとハラオウン家で無限書庫司書長室にお邪魔した時の事。 迎え入れたユーノはクロノといつも通りのやり取りをした後、エイミィ達を暖かく迎え入れた。 ユーノはクロノと見る物があったらしく司書長室に残り、エイミィ達は秘書の案内で無限書庫の見学に出掛けた。 無限書庫の様々な書籍、システム、読書・検索魔法を見学、実体験をし大満足のもと戻ってきたのが案内開始から4時間程経った後の事。 司書長室に戻りドアを開けようとした直後――― 「もう、お前の言い分は聞き飽きた!」 「こっちだって同じだ!早く帰ってくれ!!」 密閉空間かつ防音結界が張ってある筈の司書長室から聞こえたのはユーノとクロノの口論だった。 ドアをバンと開け、回し蹴りで閉めるその様は普段のクロノからは全く想像ができず、エイミィも思わず黙り込んでしまった。 そしてエイミィ達を発見したクロノは 「エイミィ、カレル、リエラ帰るぞ!!」 怒気を含んだクロノの言葉にただ頷くエイミィ、怯え震える子供二人。 クロノは秘書や司書達に丁重に先ほどの件を謝罪し、無限書庫を後にした。 「という事があったのよ・・・はぁ~」 「そんな・・・」 事の顛末を一通り話終えた後、溜息をはくエイミィ。 最愛の恋人と大切な兄の行動に驚きを隠せないフェイト。 ユーノと恋人になった時でさえ、ユーノに最初はあれこれ言ってたが最後にはフェイトを託し、フェイトにもユーノなら大丈夫だと太鼓判を押したあの兄が一体何故。 「原因は分からないの?」 「それが分かれば苦労しないんだけどねぇ」 またも溜息をはくエイミィ。 こんなエイミィは十年以上の付き合いで初めて見る。 一体何が原因なのだろう。 フェイトは考えを巡らせる。 ユーノの好きな食べ物をうっかり食べた? 否、いくらユーノに対して気の置けない付き合いでも、いい年した大人なんだからそこまではしないだろう。 仕事量を巡っての喧嘩? 否、仕事量を多くし過ぎたせいで、逆に彼のワーカーホリックを心配して依頼量は減らした筈だ。 それとも休暇に関する喧嘩? これも否。仕事量を減らすと同時に最低でも週一回は休めるようにしてくれたのは他でもないお兄ちゃんだ。 私達のデートの為と時々年休扱いでユーノを休ませてくれている。 初めて家に来た時、お兄ちゃんが騙して飲ませた母さん のお茶の事を恨んでるとか? これもたぶん・・・違うだろう。 いつまでも十年以上前の事を引きずる程、双方とも子供ではない。 ヴィヴィオの事を未だに私とユーノの子と勘違いしている? これは最初の頃は非常に苦労した。 何せ、まだ私がヴィヴィオから「ママ」と言われてた頃にタイミング悪くユーノとヴィヴィオ3人でいる姿を目撃した時、デュランダルとS2Uを手に構えユーノに突進して来たのだ。 さすがに半日にわたり、頭をライチューしたらようやく納得したのだ。 今更そのことを持ち出さないだろう。 もしかして私の事? これこそ絶対に違う。お兄ちゃんは確かにユーノに私のことを託したのだ。今更返せなどとは口が裂けても言わないだろう。 「本当に何なんだろうね」 「わからないよ・・・」 結局考えを巡らせても答えは出ない。 二人にとって双方とも非常に大事な人だ。 早く仲直りしてもらいたいのだが、原因が分からないとどうしようもない。 二人は揃って深く溜息をはいた。 ユーノとクロノの大喧嘩から数日後。 ユーノの公休の日。 ユーノはフェイトに誘われて久しぶりに海鳴の街を歩いていた。いわゆるデートだ。 当然のことながら二人は恋人繋ぎで歩いていた。 二人とも容姿端麗であるが故、周囲の注目は浴びまくっていたが。 ショッピングや映画を一通り楽しみ、翠屋で休憩することにした。 二人で楽しく談笑していた時、ユーノの携帯電話が鳴り、ユーノは一度席を外した。 「ほぅ、ユーノ君とクロノ君が・・・」 「えぇ、そうなんです」 「原因は分からないの?」 「はい・・・」 丁度このタイミングで、アイドルタイム(和訳:暇な時間帯)に入っており、高町士郎・桃子夫妻もフェイトの所に来てくれた。 二人ともユーノがなのはと付き合わなかったのは残念がった。 しかし兄妹のような間柄で接していたのを見て来たこともあり二人の関係は兄妹関係の方がしっくりくるなと理解したのだ。 今はこうしてユーノとフェイトの関係を祝福しており恋愛相談からエリオやキャロの事までいろいろと相談に乗ってもらっていた。 「そうねぇ・・・まっ、待つことね」 「待つですか?」 桃子の答えに若干の戸惑いを含んで尋ね返すフェイト。 「そうよ。男ってね、以外とどうでもいいことで喧嘩してひょんなことで仲直りするものなのよ。ね、士郎さん♪」 「まぁな」 桃子からのフリに苦笑気味に答える士郎。 そしてフェイトにアドバイスを送る。 「フェイトちゃん、男っていうのは根っこは子供じみた部分が結構有るもんだ。 だから喧嘩の理由なんて本当にくだらないモノだったりもする。 そんな時はちょっと待てば結構仲直りできるモノだよ。だからそんなに悩まないで少し待ちなさい。 そうしないと、理由が分かった時に反動で相当怒ることになる。」 「そういうモノですか」 「あぁ、だから待つこと。それでもどうしようもなければまた相談に来るんだ。その時は俺と桃子とリンディさんの3人で仲裁に入ろう。」 「・・・はい、わかりました。」 士郎からのアドバイスは的確だったらしく、フェイトは素直に納得することにした。 「あれ、士郎さんに桃子さんも来て悩み相談ですか?」 用件を済ませ戻って来たたユーノがきょとんとした表情で尋ねる。 「ん、若いって良いことねって」 「あぁ」 「そういうことだよ」 三人は揃って返答する。 こうしてある程度ふっ切れたフェイトと共にユーノは翠屋を出た。 海鳴臨海公園――― 夜になると格好のデートスポットになるこの場所に二人は来ていた。 ここはフェイトがなのはと友達になった場所であり、ユーノに告白された場所でもある。 「ねぇユーノ、覚えてる?」 「どうしたの?」 「ユーノがここで告白してくれた時のこと」 「うん、覚えてるよ・・・」 今から丁度1年前、JS事件から1年後、フェイトはユーノと会う機会があり、たまには海鳴で話をしないかというユーノの提案を受け、こうして海鳴のいろいろな所を遊び歩いた。 そして夜、ユーノはフェイトに想いを告白したのだ。 『フェイト・T・ハラオウンさん、僕は君の事がずっと好きでした。僕の傍らで僕の事を支えてくれませんか』 フェイトは驚いた。まさか自分の事を想い続けてくれたなんて。 フェイトはユーノの事をずっと想っていた。 PT事件で弁護側として私の事をずっと護り続けてくれた。 執務官試験の時は自分の時間を可能な限り割いて、私の試験勉強をサポートしてくれた。 執務官就任後は自分の事件関係の資料集めをやり、時として「ハラオウン執務官」の使いっ走りなどと揶揄されながらもずっと協力し続けてくれた。 そうしているうちに、フェイトはふと考えた。 いつもユーノは私を支えてくれているのに自分はユーノに何かしてあげれているのかと。 お礼ひとつで済ませていないか、それだけでいいと思い込んでいないかと、ユーノの優しさに甘えていないかと。 そう思うようになった時、自分もユーノに心からのお礼をしたいと思った。 思えばユーノは無限書庫内で同年代の友達もなく一人で頑張り続けた。 みんなユーノなら大丈夫などと思ってなかったか。 それは違う。 フェイトは無限書庫へ直に訪れる機会が幾度となくあったからほんの少しながら事情が理解出来た。 仮にあそこで自分が働けば、一週間としないうちに自我崩壊をしてしまうだろう。 その時分かってしまったのだ。 ユーノは相当心に無理をかけてると。 だから、ユーノの心を支えたいと。 それこそが恋心いや、それ以上の感情だった。 こうして、フェイトは次元航行艦隊での勤務が休暇になる数日の間はユーノのサポートに自ら入ることにした。 司書長秘書代行だけでなく、暇さえあれば勉強した栄養管理やリラックス方法をユーノと実践しあらゆる面でサポートした。 最初の頃は仕事に差し支えが出ると鬱陶しがってたユーノもフェイトの情熱に負けて、素直にサポートを受けるようになっていた。 (実はそれで、司書内で話題になっていた司書長の恋人トトカルチョの本命がなのはからフェイトに移行したりもした。) こうして1年が経過したある日、海鳴でのデートみたいな一日が経過した1年前の今日、フェイトは告白されたのだ。 『ユーノはいいの?ユーノはなのはの事が好きなんじゃないの?』 フェイトは嬉しかったのだが、一つ気掛かりだったのが親友のなのはだった。 ユーノは本当はなのはが好きなのでは。 色々と面倒を見てくれている自分に気を使ってしまっているのではと思った。それは自分に対する同情に近い感情なのでは、そう思った。 しかし――― 『ちがうよ。僕となのははあくまでも兄妹の関係だよ。 向こうだってそう思ってる。どんな風にしても兄妹、親友の関係から先は無いよ。僕が好きなのはフェイト、君だけだ。 君にこれからも僕を支え続けてほしい、そう心から願ってる』 半ばというか殆どプロポーズに近いユーノの告白にフェイトは喜びの涙を流し――― 『はい、私にユーノ・スクライアさんの事を支え続けてさせて下さい。そして、私の事を支えて下さい』 と、告白を受け止め恋人(婚約関係)になったのだ。 一年前の今日の大切な出来事を思い出し、感慨に浸るユーノとフェイト。 そして今日は大切な記念日。 「今日を休みに出来る様にしてくれたお兄ちゃんにお礼を言わなくっちゃ」 「・・・・・・」 フェイトが何げなく言った『クロノ』の一言に沈黙するユーノ。 フェイトはしまったと思った。 喧嘩中の二人にとって、喧嘩相手の名前を挙げてしまった事を失敗したと思ったのだ。 「・・・そうだね。アイツにもお礼は言わなくっちゃいけないのは分かってるんだけど・・・」 ユーノの答えは意外なモノだった。 「喧嘩したんだよね・・・」 「やっぱり知ってたようだね」 「うん・・・」 フェイトの頷きにユーノは苦笑する。 「何が原因なの?」 「女性には分からない子供じみたことだよ」 ユーノの返答にフェイトは戸惑いつつも、士郎が言った言葉に納得する。 「私には相談出来ない?」 「がっかりすると思うからね・・・」 フェイトが推測するに本当にくだらない事での喧嘩の様だ。 それでも力になれないことに少しガッカリするが――― 「もう少しだけ待ってよ、そうすればいつも通りになると思うからさ」 「うん・・・」 ユーノの言葉に納得することにした。 その時――― 「こんな所で何をしているフェレットもどき」 「こ、こらっクロノ君!」 そこにいたのはユーノの喧嘩相手とその奥さん。 ユーノの表情が途端に怒り色に変わり、フェイトも慌てる。 「随分な言い方だね。このドス黒提督さん!」 「ユ、ユーノ!」 ユーノとクロノの双方の睨み合いがしばらく続く。 フェイトもさすがのエイミィもおろおろするばかりだ。 そしてようやく二人が口を開く。 「まだ分からないのか、ユーノ!あれは『やらせ』なんだよ」 「いい加減にしてくれ!あれは『リアル』なんだ!」 唐突に『やらせ』や『リアル』などの言葉の飛び交いにフェイトもエイミィも『へっ?』という表情になる。 「君に証拠のワイドショーを見せただろう!まだ納得出来ないのか!皮肉った替え歌だってあるんだ!」 「そんなの認めない!僕の好きな『川口浩探検隊シリーズ』は『リアル』だ!」 唐突に出てきた番組の名前にずっこける女性二人。 川口浩探検隊シリーズ。 それは地球で言う1970年代後半から1980年代前半に毎週水曜日に放送された「冒険ドキュメント」番組である。 世界各地の秘境に赴きそこに存在する旧来の文化や恐怖の動物あるいは超常現象をドキュメンタリー形式で放送する人気番組だったが、隊長本人の病気により番組は終演してしまったのだ。 ユーノはたまたま海鳴に来ていた時、このDVD5本を何の気無しに購入。 しかし、一度見て以来すっかりハマってしまったのだ。 無限書庫の英知を使い、他のシリーズの映像も入手。 暇さえ有れば見ていたのだ。 結局、クロノとの喧嘩の原因はこの手の番組に付き物の『やらせ』を巡る口論だったのだ。 クロノは証拠も揃えて『やらせ』で有る事を伝えたのだが、ユーノも頑固な性格の為、『やらせ』は無いと主張。それを言い合う内に大喧嘩になったのだ。 「ん?どうしたのフェイト?」 「何をずっこけてるんだエイミィ」 女性二人のリアクションを見るが、次の瞬間男二人は恐怖に戦くことになる。 まず、フェイトゆらゆらと立ち上がる。 黒いオーラを撒き散らしながらゆっくりと口を開け――― 「ユーノ、お兄ちゃん・・・頭ライチy」 しかし次の瞬間、フェイトさえも閉口する。 エイミィが放ったオーラはドス黒いを超越したオーラだった。 かつて無い恐怖に震えるユーノとクロノ。 「くろのく~ん、ゆ~のく~ん・・・お姉さんと『話し合い』しようかぁ」 そして一時間が経過――― エイミィからたっぷりと『話し合い』されたユーノとクロノ。 二人は正座していた。 ユーノは涙目で震え、クロノは数カ所に紅葉とアザがあった。 その光景を目撃したフェイトはこの時、何があってもエイミィだけは怒らすまいと心に誓ったという。 「すると二人の喧嘩の原因はその『川口浩探検隊シリーズ』がやらせかそうじゃないかって事なんだね」 「「はい・・・」」 鬼のような形相でユーノとクロノを見るエイミィに二人は頷くしかなかった。 本当にくだらない事が原因だった。 フェイトは士郎が言ってた事に納得しつつも呆れ果てていた。 「なんでユーノくんは証拠のTV映像もあるのに、リアルなんて言い張るのかなぁ?」 「あれは僕の好きなシリーズで・・・」 「んん?」 「い、いえ!すいませんでした!」 ユーノの言い分を凄んで黙らせるエイミィ。 ユーノはただ謝罪する。 「クロノく~ん、もう少しユーノくんにオブラードに包む様な言い方は出来なかったのかなぁ?」 「いや、そもそもこいつが・・・」 「んん?」 「はい、もっとオブラードに包んで言うべきでした。本当に申し訳ございませんでした」 こちらもクロノを黙らせるエイミィ。 この場の支配者は間違いなくエイミィだった。 エイミィは溜息をはくと、いつものお姉さん顔に戻る。 「ユーノくんも証拠が多々有る以上、素直に悪い部分は悪い部分として受け入れること。その番組を冒険ドキュメントじゃなくて、冒険エンターテイメントとして見ること。いちいち感情移入しないの!」 「はい・・・」 「クロノくんは刺々しく言ってユーノくんを挑発しない。分かった?」 「はい・・・・・・」 「分かったならよろしい。さ、二人とも仲直り!」 エイミィ立ち会いのもと、押される形で握手するユーノとクロノ その後はエイミィがリードする形でカラオケに行く事になった。 最初こそ気まずい雰囲気だったユーノとクロノも途中からはすっかり元の鞘に収まり、最後は二人肩を組んで「Stab Me In The Buck」や「オルガズム」をノリノリで歌っていた。 フェイトはユーノの意外なまでのロック好きに驚きながらも最後はみんなノリノリだった。 こうして二組のカップルは気分よくデートを終えた。 「ごめんね、フェイト。みっともないところを見せちゃって・・・」 ユーノは恥ずかしそうに右手人差し指でポリポリと頬をかく。 「あんまり心配かけないでよね」 「うん。これからはあの番組はエンターテイメント番組の一つとして見るよ」 ユーノは素直にエイミィの忠告に従うことにした。 フェイトは少し膨れっ面だった。でも直ぐに微笑んだ顔になる。 「でも今日はユーノの意外な面を見れてよかったよ」 「え?」 「ちょっとしたことで怒る子供っぽい所とか、ロックが好きな所とかね」 「恥ずかしいなぁ・・・」 フェイトが今まで見てきたユーノは大人び過ぎていた。 だけど、そんなユーノにも子供っぽい一面があるのを知る事が出来てすごく嬉しかった。 そして、そんな一面さえも愛しく思える自分がそこにはいた。 そう思うと、フェイトはユーノに対して母性が出て来る。 フェイトはユーノを抱き寄せた。 「あの、フェイトさん?」 ユーノはフェイトの思わぬ行動に耳まで赤くなる。 しかしそれはフェイトも同じだった。 「今日はユーノの知らないところをいっぱい知れて嬉しかったよ。それでね、そんなところも含めてますます好きになっちゃった」 「・・・フェイト・・・」 二人はお互いの『温もり』に暫し浸る。 そして20分ぐらいして離れる。 重なり合う目線そして唇。 「これからも私の知らないユーノの事・・・良い部分も悪い部分も含めて全部教えてね♪全部好きになるから♪」 「もちろんだよ、フェイト」 色々と有ったけど二人の楽しい一日はこうして終わった。 「さぁ、帰ろう。エリオとキャロも待ってるからね」 「うん♪」 二人は最愛の我が子達が待つミッドの自宅へ戻った。 これからもお互いの良いところも悪いところももっと好きになることを誓って…… 以上です。 長くなり過ぎました…。 規制をくらう始末orz 何か書いてる内に次から次へとネタが浮かびこんな長文になってしまいました。 スレ汚しで失礼しました。 なお、カラオケネタに関しては私自身、最近のアニソンを殆ど知らない輩なので、あえてロック曲にしました。 最後に前スレのユノ天のお題に解答して下さいました司書の皆様、模範解答を出して下さった61スレ987さんに多大な感謝をし、失礼します。 アクセス数: counter; 62スレ フェイト ユーノ ユーノxフェイト
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/71.html
タイトル「ユーノくんとバニーガールすずかさん」 :にっぷし 氏 作者:にっぷし 氏 本文 ほにゃらば行きます。そして、えーっと、なんかちょっと気を使うべき流れなのかもしれませんが、 以前絵師様によって投下されたバニーガールすずかさんを元ネタにしたSSなのでございます。 たまには月村家総出演にしてみましたが、アニメしか知らないので描写が甘くても許してください。 アンチじゃないよ。ユーすずラブだよ。ホントだよ? では、19歳頃のお話ですよということを踏まえた上で、テイク・オフ。 「いらっしゃいませ、ユーノ様」 中学生の頃にユーノ・スクライアが月村すずかと交際するようになってから、はや数年。 通い慣れた月村邸を訪れたユーノを待っていたのは、Yシャツに黒いスーツパンツとベストを着こなしたノエルだった。 怜悧な面立ちに似合い過ぎているその姿は、バーテンダーかソムリエか、はたまたディーラーといった感じだ。 背筋を伸ばしたノエルは片腕を胸の前で折り、恭しくお辞儀をする。 「ユーノ様、今日は趣向を変えたゲームを御用意しました」 「ゲーム……?」 「ええ。こちらへどうぞ」 初めて見る装いに驚きに目を丸くするばかりのユーノに、身体を起こしたノエルは静かにそう告げた。 言外に決定事項だという重みを加えたその言葉に、ユーノは少し戸惑いながらも大人しく従う。 袖口にカフス、衣装用めいた薄いタイをカッチリと決めたノエルにユーノが誘われたのは月村邸の地下。 ユーノの記憶では確かホームバーだったはずのその場所は、照明が落とされて真っ暗になっていた。 シンと静まり返った部屋に、カツッと革靴の底を鳴らしたノエルが声を通す。 「お連れしました」 その声の残響が消えると共に、広大な部屋の正面の一角にバンと照明が焚かれた。 眩しさに腕で目元を隠すユーノだったが、漂白された視界が徐々に色を取り戻していく。 そして―― 「な……」 思わずユーノが呟く。 慣れてなおまばゆい照明の下には、カジノにあるようなポーカーテーブル。 そして、いかにもマフィア風の仕立ての良いスーツを着た月村忍と、彼女に付き従う二人のバニーガール。 可愛らしさと妖艶さを兼ね備えた月村すずかと、可愛らしいファリン・K・エーアリヒカイトの姿があった。 露出度の高い衣装を従えるように着こなすすずかと、耳まで赤くしておろおろとしているファリン。 それぞれ魅力的な好対照の二人の美女を両脇に飾り、葉巻を咥えた忍がニヤリと笑う。 「ようこそ、ユーノ・スクライア。当カジノはキミを歓迎するよ」 両手を鷹揚に広げ、腹から声を出して厚みのある声で宣言する忍。 傾けた帽子で片目を隠すマフィア風の美女は、全力でこの『遊び』を楽しむ気満々だった。 「ふむ、その顔はこう問いたげだね。『僕の恋人がなぜそこにいる』と。くくく、彼女の家は事業に失敗してね。 融資の代償として私が頂いたのだよ。――だが、なかなか心を開いてくれなくてね。こう見えて私も紳士だ。 彼女の心を開くまでは手を出すことはできない。私は彼女に尋ね――そうして、彼女は答えたのだ――」 朗々と、バリトン歌手が歌い上げるように演技過剰に説明をする忍。 その横ではすずかが心苦しげにバニースーツに包まれた豊満な胸元に手を当て、顔を俯けている。 どうやら彼女もノリノリらしい。そんなことをユーノが頭の片隅で思っていると忍はさらに言葉を続けた。 「『私には将来を誓った恋人がいる』と! 彼と勝負し、勝利したのなら私はこの身を貴方に捧げましょう。 しかし、もし私の恋人が勝利したのなら、私を彼の元に返して欲しいと!!」 設定を語り終えた忍は満足げに瞼を閉じて余韻に浸ると、巻かずに流した長マフラーをスーツと共に翻す。 ファリンは慌ててその後をとてとてと追い、すずかは祈るような瞳をユーノに向けてから後に続く。 「さあ、勝負だ! 彼女を真に愛しているというのなら、私に勝利してみせるがいい!!」 ドカリと椅子に腰を降ろす忍が、二人のバニーガールの細腰を掴みながら対戦相手を振り返る。 演技とはいえ恋人を奪われたユーノは、やや力強い足取りで離れた椅子に腰掛け、忍に鋭い視線を向けた。 「ディーラー!」 フン、と鼻を鳴らした忍がテーブルをノックして短く告げると、ノエルが真新しいトランプの封を切った。 ポーカーテーブルは半月状。弧を描く部分に忍とユーノが座り、平面部分にディーラーのノエルが立っている。 ノエルはジョーカーを抜いたトランプを、カードが揃っていることを示すために広げて対決する二人に示す。 畳み、整えた山を二つに分け、それぞれ片手で反らして持ち、テーブルの上でパタパタと交互に重ねあわせた。 そのリッフルシャッフルを二回、カード数枚を上から下へ運ぶオーソドックスなミックスを十数回行う。 鮮やかな照明に隠され、五人がいるポーカーテーブル以外は闇に覆われている。 その中でノエルの手によって鮮やかに行われたシャッフルは、ここが本物のカジノのように思わせた。 静かな空間にカードを切る音が鋭く響き、雰囲気にあてられたファリンが息を飲む音が聞こえてくる。 カードが配られはじめると、すずかが忍の腕をするりとほどき、ユーノの側に立った。 柔らかく波打つ高貴な紫色の髪が、頬を寄せる仕草にあわせてユーノの頬と肩口を撫でる。 十日ぶりに逢った恋人とのはじめての接触に、ユーノはそれだけで身体に熱が灯る感覚を覚えた。 髪と露出した肌からふわりと甘い香りが漂って、優しい世界に誘うように鼻腔をくすぐる。 そっと肩と手の上に白魚のような手を添えたすずかは、ユーノの耳元で祈るように囁いた。 「頑張って、ユーノくん。お願い……私を助けて……」 恋人に切実な声で願われて、奮い立たない男はいない。 それはたとえ仕組まれた遊びの上だとしても変わらなかった。 配られた五枚のカードを開く頃にはユーノの瞳に光が宿り、それを見た忍はニヤリと笑った。 ☆ 勝負は一進一退、しかし常に忍がリードする形で続いていた。 さらに忍はときおりバニーガール姿に恥らうファリンの身体を撫で回し、ユーノを挑発した。 『私が勝てば、すずかもこんな目に……いや、もっと淫靡ではしたない目にあうぞ――』 そんな挑発を受け、すずかの祈りを一身に受け、しかし敗北が近づいていたその時、奇跡が起きた。 ロイヤル・ストレート・フラッシュ―― 出来すぎた展開に、ユーノはこれが遊びだということを思い出し、ディーラーの技量を内心で褒め讃える。 まあ、それでも。仕組まれたものでも勝利は勝利。ユーノは高らかにカードをオープンして逆転劇を演じた。 「ロイヤル・ストレート・フラッシュ……僕の勝ちです」 パタタっとカードを片手で滑らかに広げて力強く宣言する。ここまでつき合わされたのだ。 ユーノとしても、多少の演技くらいは許して欲しいところだった。 『バカな……!』と目を見開いて葉巻をポロリと落とし、迫真の演技で悔しがる忍。 『OH……!!』とアメリカナイズな身振りで肩を竦めて首を横に振り、降参を示すノエル。 『わーっ! すごいです!』と仕組まれたものと気付かないで我がことのように大喜びするファリン。 そして―― 「ありがとう……ユーノくん……っ」 バニーガール姿のすずかにぎゅうっと愛情たっぷりに抱きしめられ、ユーノは戦いに勝利で幕を閉じる。 半ば露出した豊満な胸の谷間に顔を挟まれたユーノが耳まで赤くなったことは言うまでも無いことだった。 抱擁を終えると、ユーノが席を立ち、すずかと改めて向かい合う。 奇跡の大逆転で売られた恋人を取り返した青年が、ラストシーンにすることは唯一つ。 「すずか……」 「ユーノくん……」 高貴な紫色の髪を撫で、露出した肩から腕へすべり、くびれた腰に腕を回す。 取り戻した恋人の美しさを確かめるようにして抱き寄せると、ユーノはすずかに唇を重ねた。 情熱的な口付けは、ラストシーンに相応しく、甘く果てなく続いていった――。 ☆ 「はい、そこまでー。それ以上続けると、ファリンが卒倒しちゃうからねーっ」 パンパン、という拍手と、朗らかな忍の言葉によって口付けが中断させられる。 照明が通常の強さに落とされ、地下室全体が明るく照らされる。 照明の影に隠れていたホームバーが姿を現すと、今までの舞台めいた空気はなくなっていた。 「ん……あ……」 「はふ……」 ちゅっと音を立ててキスを終えると、ユーノとすずかは額をくっつけながら唾液にぬらつく自分の唇を舐めた。 久しぶりのキスを堪能した二人は、心の底から満足したような恍惚としたため息をついてから、そっと離れていく。 そんな二人を、忍は笑顔で、ノエルは微笑みながら、ファリンは真っ赤になって俯きながらチラチラと見ていた。 「どうだった? ユーノくん。私がプロデュースしたこのゲームは」 「……面白かったですよ。本当に。楽しませて頂きました」 本当に没頭していたため、ユーノが降参したような苦笑をしてから笑顔を浮かべる。 すずかはそんなユーノの腕を両手で大切に絡めて寄り添っていた。 「すずかも楽しめたみたいね。どお? ユーノくんに惚れ直した?」 「うんっ! 私のために頑張ってるユーノくん、本当にかっこよかったよー!!」 すずかは明るく言いながら、斜め後ろからユーノの背中と肩に身体をすり寄せて甘えている。 本当に惚れ直したようで、頬はうっすらとピンク色に染まり、どこまでも嬉しげだった。 「やっぱ男の子なら、一度くらいは恋人を賭けて戦って勝っておかないとね。んー、ゴホンッ! 『それじゃあ、約束通りその娘は開放する。晴れて自由の身だ。言っただろう? 私は紳士だとな』」 帽子を人差し指でついっと持ち上げ、忍がフッと微笑んでウィンクを決める。 んーーっと伸びをすると、ノエルとファリンを連れて満足げにカジノを後にした。 ユーノとすずかは、静かになった広いホームバーに二人、ぽつんと取り残される。 「ふふ、お姉ちゃんったら。……私たちもいこう?」 くすくすと笑うすずかに甘えるように促されると、ユーノも地下室を後にした。 ☆ そうして。 すずかの部屋に連れられたユーノは、ベッドに押し倒されるなり口を開いた。 「えっと、それですずかは、なんでまだバニーガールの姿をしてるの?」 「だって、私はこの姿のまま開放されたんだよ? この服しか持ってないのは当たり前だよ」 ギャンブルの設定を引きずるすずかに、ユーノが苦笑する。 ベッドに四つん這いになったすずかは、ユーノを見つめながら、胸元に指を入れてくっと開いた。 ただでさえ露出していた胸元がさらに強調される。こぼれそうな柔肉にユーノの目はすっかり釘付けだった。 頭を飾っているウサ耳は可愛らしく、ストッキングに包まれた美脚が白い胸元とコントラストを描いている。 魅了の魔法で作られたようなすずかの姿に、ユーノは言葉を失ってしまった。 「さっきのユーノくん、かっこよかったよ……。ねぇ、私はいま、ウサギさんなんだよ? かよわいウサギさん。 いつもは私が噛んじゃってるけど……今日はね? ユーノくんに噛んで欲しいな……襲って欲しいの……」 恋人を助けた青年はエンドクレジットの後の官能的な展開に、息を飲み、ごくっと咽喉を鳴らしてしまう。 スラックスの下では、彼の分身であるフェレット状のモノが硬く身体を起こして熱く疼いていた。 「ね、ユーノくん……今日はオオカミさんになって? そうして、私を美味しく食べて欲しいな……♪」 最後に耳元で囁かれ、ユーノの理性が勢い良く限界を突破する。 ぐるんと身体の位置を入れ替えて押し倒されたウサギさんは、オオカミさんに食べられてしまいましたとさ。おしまい。 以上です。詳細なギャンブル描写とか無理でした。 ごめんなさい。そしてありがとうございました。ノシ すずか ユーノ ユーノxすずか
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/323.html
海といったらお約束(仮) 作者:tIUyekPm 唐突にSS投下 照りつける太陽。 頬を撫でる潮風。 打ち寄せる波の音。 季節は真夏。 そう、海である。 「うわ~、海がキレー!」 「海なんて、久しぶりだわ」 「潮風が気持ちいいね」 「うん、そうだね」 「気に入ってもらえて、よかったよ」 突然だが、ユーノは現在、機動六課フォワード陣4人を連れて、海に来ていた。 事の発端は、ユーノが学会で知り合った人に、海辺のホテルの宿泊券を貰ったことだった。 ユーノは、丁度週末に休暇をとっていたため、行ってみようと思い立った。 ここで問題となったのが、誰と行くかである。 といっても、ユーノが旅行に誘えるような知り合いなど高が知れている。 ユーノは迷うことなく、機動六課に足を向けた。 「ほえ?海?」 機動六課に辿り着いたユーノは、丁度食事中のなのはたち、機動六課フォワード陣+部隊長に声をかけた。 ちなみに、ユーノは機動六課に顔パスで入れたりする。 「うぅ~、週末は絶対に外せない会議があるよ~」 「私も、執務官の仕事が入ってる………」 「あたしはだいじょ………書類が溜まってる? そんなん、あとでええやん……って、ちょ!?放して~なぁ!ユーノくぅ~ん!」 隊長陣は全滅であった。 そこで白羽の矢が立ったのが、新人4人である。 「あたしたちですか!?」 「週末は休日になってますけど………」 「でも………」 「いいんですか?」 もちろん、OK。 「じゃあ」 「「「「おねがいします」」」」 こうして、このメンバーで海に行くこととなった。 それを眺める隊長陣の眼は、嫉妬で濁っていたとか。 「ティア~、早く行こ~!」 海に向かって、まっしぐらに駆けていく、満面の笑みを浮かべたスバル。 ちなみに彼女の水着は、紺色の地に、白いラインが入ったビキニタイプである。 「ちょ、こら!待ちなさい、スバル!」 それを追うティアナもまた笑顔である。 彼女の水着は、白地に、黄色とオレンジで柄が描かれているビキニである。 「エリオ君、フリード、私たちも行こう!」 「うん!」 「きゅく~」 キャロとエリオも、手を繋いで海へと駆け出す。 フリードが、その後を飛んで着いて行く。 キャロの水着は、ピンクの地に、白と薄い桜色で花びらが描かれた、セパレートタイプである。 エリオの水着は、真っ赤なトランクスタイプで、裾に「HI-SPEED」と書かれていた。 フリードはいつもと変わらずである。 「元気だな~」 微妙に年寄りくさいことを言いながら、ユーノは、浜辺に設置したパラソルの下に腰を下ろし、 横になりながら、海辺で遊ぶ彼女たちを眺めていた。 ユーノの水着は、無地の若草色のトランクスタイプであった。 誰かが自分の身体を揺すっている。 それに、耳元で何か言っているようだ。 「……せ………んせ……せんせ~…………せんせ~!」 「うわっと!………スバルか………どうしたの?」 目を開いて、最初に見えたのは、どアップのスバルの顔だった。 「どうしたの?じゃありませんよ!せんせー着いてすぐ眠っちゃうんですもん」 「え?あぁ、あのまま寝ちゃったのか」 どうやらユーノは、彼女たちを眺めながら、そのまま寝てしまったらしい。 日ごろの睡眠不足が祟ったのかもしれない。 というか、睡眠不足になるほど仕事している彼は、 悪友のことをワーカホリックなどと言える立場ではないと思う。 「もう、せんせーってば!」 「あはは、ごめんごめん」 苦笑しながら謝るユーノ。彼はどうにも、この年下の少女には弱いところがあった。 それは、スバルが自分に防御魔法を習うようになってからのことだった。 ちなみに、スバルがユーノのことを先生と呼ぶのはこのため。 スバルが防御魔法を習いに無限書庫に通うようになってから、ユーノの生活は改善されていった。 それでも、今までよりはマシといったレベルであったが。 その理由は、スバルが、ユーノのことをやたらと構うからである。 睡眠時間が短ければ、ちゃんと寝るようにと、無理やり寝かしつけたり。 食生活が乱れていれば、態々弁当を作ってきたり。 服装がだらしなければ、一緒に買い物にいって、コーディネートしたり。 そんな姿を見た司書たちからは、「司書長の妹兼嫁」などと呼ばれている。 その呼び名に、満更でもないような態度のスバルであったが、当然の如く、我らが鈍感司書長は気付かない。 まぁ、そんなこんながあって、いつも世話になっているスバルに、ユーノは頭が上がらないのである。 「せっかく海に来たんだから、せんせーも一緒に遊びましょうよ~」 ユーノの腕を掴んで、スバルは訴えかける。 「わかったよ。あれ、そういえば、ティアナたちはどうしたんだい?」 周りを見回しても、姿が見えない。 「ティアたちなら、いまレース中ですよ」 「レース?」 スバルの話をまとめるとこうだ。 最初は四人で泳いだりしていて、途中、ジェットスキーの貸し出しを見つけたので、 やってみようという話になった。 そうしたら突然、ティアナが、 「何人たりとも、私の前を走ることは許されない!」 と、暴走し。 それを見たエリオが、 「この僕が遅い?この僕がスロゥリィ!?」 と、対抗心を燃やして追っていったのだ。 ちなみにキャロは、竜魂召喚で巨大化したフリードに乗って追いかけていった。 あまりに突然のことに、呆然としていたスバルが気を取り戻したときには既に、彼らの姿はなかったという。 「あ、あはは………元気だねぇ」 話を聞いたユーノが、苦笑と共に呟いた。 「それでしかたなく戻ってきたら、せんせーは寝てるし………」 ジト目で睨むスバルに、ユーノは乾いた笑いで返すしかなかった。 「そういうわけで、せんせー、遊びましょっ!」 満面の笑みを浮かべて、スバルが腕を引っ張る。 「わかった、わかったから。そんなに引っ張らないでよ」 楽しそうなスバルの様子に、ユーノも腰を上げる。 「じゃあさっそく、泳ぎに行きましょう」 「それよりも、ビーチバレーでもしない?」 海に向かって走ろうとするスバルを、引き止めるユーノ。 「え?二人だけでですか?」 さすがに、それは虚しいだろう。 「そうか、じゃあ、ご飯でも食べに行こうか?」 スバルに諭されたユーノが、すぐさま別の案を出す。 「でも、まだそんな時間じゃないですよ?」 昼飯は来る途中で食べたし、夕飯には早すぎる。 「そ、そうか。じゃあ………」 「………せんせー?」 さすがのスバルも、ユーノのおかしな態度に気付いた。 「せんせー、もしかして。………………泳げないんですか?」 「え!?い、いやだなぁ!そんなわけないじゃないか!?」 完全に目が泳いでいた。 「せ・ん・せぇ~?」 「……………………はい、泳げません」 スバルの、真っ直ぐな視線に敗北したユーノであった。 「くすっ。そんな必死になって隠すことでもないでしょう?」 いつもの落ち着いたものとは違う、子どもっぽい態度のユーノに、微笑がこぼれたスバル。 「結構恥ずかしいものだよ?この年になって泳げないなんて………」 笑い出したスバルに、拗ねたように言うユーノ。 その態度が可愛らしく、スバルの笑いが、さらに深くなる。 「そんなに気にしてるなら、練習すればいいじゃないですか」 「そうはいってもねぇ………」 渋るユーノ。 「大丈夫ですよ。ここ穴場だからそんなに人いないし、あたしが教えてあげますから」 そういって迫るスバルに、ユーノは、諦めたようにため息を吐いた。 「それじゃあ、よろしくお願いします。スバル先生?」 「はい!お願いされちゃいます!」 二人は一緒になって笑い出した。 「はい、バタ足!顔を水につけて!」 言われたとおりにバタ足を始めるユーノ。 その手はスバルがしっかりと掴んでいる。 練習を始めて1時間弱。 最初は、浜辺に近いところで練習していたスバルたちであるが、 いつのまにか、かなり沖のほうまで移動していた。 しかし、この海岸は遠浅なので、かなり沖のほうに出ても、大人の腰の辺りまでの深さしかない。 「そこで息継ぎ!」 スバルは意外とスパルタであった。もしかしたら、彼女の師の影響かもしれないが。 なんせこの1時間、休憩などほとんどとっていないのだから。 それについていっているユーノの体力も、文官とは思えないほどだ。 (そろそろ、手離しても大丈夫かな?) 始めた頃に比べて、随分としっかりしたフォームでバタ足するユーノをみて、そう考えるスバル。 大丈夫だと判断したスバルは、徐にユーノの手を放した。 「えっ!?ちょ!スバル!?」 手を離した途端、ユーノは、スバルの予想を裏切り、溺れだした。 「せんせー!?」 スバルはすぐさまユーノに近寄り、助け起こそうとしたが、 もがき暴れるユーノに巻き込まれて、足を滑らせてしまう。 「げほっ!ごほっ!し、死ぬかと思った」 なんとか体勢を立て直したユーノは、思いっきり咳き込んだ。 「あれ?スバル?」 ユーノは辺りを見回すが、スバルの姿は見当たらなかった。 「ん?あれ?」 そこでユーノは、自分が何かを握っていることに気がついた。 それは、なんだか見覚えのある、紺地に白のラインが入った布切れであった。 ユーノがその布切れがなんだったか、思い出そうとした瞬間、目の前海から何かが立ち上がった。 「ごほっ!えほっ!ハァハァ、せんせ~、ひどいですよ~!」 立ち上がった人物はスバルであった。 「あぁ、ごめんね、スバ――――――」 咄嗟に謝ろうとしたユーノは、スバルを見て固まった。 正確にはスバルの格好を見て。 ユーノの視界に飛び込んできたのは、まずスバルの顔、 そして、同じ年頃の女性よりも、大分豊満と言えるサイズの双丘、 さらに、その先端の綺麗な桜色の――――――――― 「――――――っ!!」 ユーノは、首の骨が折れそうな勢いで顔を逸らした。 スバルはそのユーノの態度に首を傾げ、そして視線を下げ、自分の格好を認識し、 「きゃあっ!!」 悲鳴を上げて胸を隠した。 ユーノの手にあったのは、スバルのビキニだった。 「ごごごごご、ごめん!!態とじゃないんだ!!」 ユーノは後ろを向きながら、スバルに水着を返した。 (何をやっているんだ、僕はっ! いくら事故とはいえ、年頃の女の子の水着を、無理やり剥ぎ取るだなんて!!) ユーノは、スバルへの申し訳なさと、淫獣呼ばわりされた過去のトラウマで、パニくっていた。 「もう、こっち向いていいですよ」 ユーノが向き直ると、そこには、水着を着け、顔を真っ赤にしたスバルがいた。 「ごめんっ!!本っ当にごめん!!」 ユーノが頭を下げる。もしここが海の中でなかったら、土下座しそうなほどの勢いだった。 いや、もう少し放っておけば、本当にするかもしれない。 「だ、大丈夫ですよ!事故ですし!気にしてませんから!それに………」 スバルは、ユーノを上目遣いで見上げる。 「先生になら、………………」 「えっ!?」 そのスバルの呟きに、またしてもユーノは固まった。 その後、海のど真ん中で、真っ赤になりながら見詰め合う二人が、ティアナによって見つかった。 57スレ SS エリオ キャロ・ル・ルシエ スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター ユノスバ ユースバ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/142.html
タイトル 作者:ID lcGBeKR6 ある日、無限書庫に呼び出されたはのは・フェイト・はやて。 一体何事かと尋ねると、なんとユーノが書庫の危険な書物を封印している最中、誤って書物の一つに取り込まれてしまったのだという。 ユーノを救う為には、ユーノの精神に進入した書のプログラムを消去しなければならない。 精神世界に入る為に書を媒体にするのだが、精神世界に入るためには対象と近しい人物……つまり心を許している相手が理想的であるとのこと。 3人は、さっそくユーノの精神に入ろうと試みるが何故か上手くいかない。 書の設定が間違っているのかとシャーリー達が首を傾げ、色々と弄くって3人が書に取り込まれかねない程に同調率を高めてようやく成功した。 ユーノの精神に踏み込んだ3人。 そこには、彼女たちに出会う前の記憶や出会った後の記憶がたゆたう世界であった。 大切な思い出達に懐かしい気持ちに捕らわれかけるが、一刻も早くプログラムを除去しなければならないと気を取り直し奥へと進む。 そうして、ユーノの深淵へ向かうのだが段々と様子がおかしくなってゆく。 顔の無いなのは、フェイト、はやて。どこからとも無く聞こえてくる嘲りを含んだ笑い。 周りに揺らめく白い影しか居ない記憶。 文字と紙で出来たユーノ。 どこまでも昏く、歪になってゆく思い出。 その光景に戸惑いながらも、ついにプログラムの基へと辿り着く。 そこに居たのは痩せ細り光のない目で自分達を見るユーノだった。 ユーノが無限書庫に勤め始めた最初の理由。 それは、なのは達と一緒に居たいから。少しでもなのは達の力に成りたかったから。 年頃の少年の、当たり前で些細な望み。 だけれども、それが全くの無意味である事も知っていた。 なのは達は自分を必要となどしていない、無限書庫からサポートしている等戯れ言にしか過ぎない。 ならば何故、自分はここにいる? そして何故、今でも続けている。 答えは簡単だった。なのは達がユーノを必要としていないように、ユーノもなのは達を必要とはしていない。 それが堪らなく寂しかった。悔しかった。悲しかった。 ユーノは何かを呪うように呟く 「……なのはになんか、逢わなければよかった」 そのつぶやき共に現れた一本の樹。 ユーノを覆い尽くし、締め上げ、そしてあらゆるモノから護るように彼の心を飲み込んでゆく。 吐き気を催す程にねじ曲がり、一枚の葉も付けぬ枯れ木。 それは、自らの中から生じた痛みや苦しみを自らの中に帰結させる事しか出来なかったユーノが生み出し育んだイドの怪物。 書の防衛プログラムが作動し、イドの怪物はなのは達を排除しようと動き出す。 あまりの事に、動けない三人。何かに引きずられるような感覚に気づき目を覚ますと、そこは現実世界であった。 現実からなのは達の状態をモニタリングしていたシャーリーが、異変に気づいて彼女たちを強制に引き戻したのだ。 助かった事よりも、最初に何故ユーノの精神に入れなかったのかその答えを知ったフェイトとはやては項垂れる。 自分達は、ユーノに近しい人間などでは無かった。 ユーノは、自分達に心を許して等いなかったのだ。 10年間変わらずに接してきたユーノの心にあった憎悪……否、憎悪にすら成り切れなかった痛みと苦しみ。 それは、誰も気付くことのなかった鋼鉄の処女。 ただ一人、なのはだけが再びユーノの心に潜る事を決意する。 周囲の反対を押し切り、書に接続するなのは。 最初よりも安全な設定での潜入に驚くシャーリー。 それは、一本の糸口だった。 たった一言、ユーノが漏らした憎しみ。それが、なのはにとっての唯一の突破口。 深淵にて、再びイドの怪物と相対するなのは。 イドの怪物が吐き出す、痛みと悲しみ。 なのははそれを…… 乗り越え、プログラムを破壊する→BADEND 全て受け止める→GOODEND BADEND イドの怪物が吐き出す熾烈な攻撃をくぐり抜け、イドの怪物の中に居たプログラムを見つけるなのは。 「ユーノ君、今助けるから!」 全力全開のバスターを放ち、プログラムを破壊する。 悲鳴と絶叫を上げ崩れ落ちるイドの怪物。 書は力を失い、完全に閉じこめられる前になのはは脱出する。 数日後、そこには回復して皆の前に姿を現すユーノが居た。 「心配かけてごめんね」といつものように話すユーノ。検査の結果、何の後遺症も無いとされ皆は安心する。 なのは、フェイト、はやては少しほんの少しだけ罪悪感と違和感を感じるが……それもまた、今までと同じ日常に埋もれて消えていった。 きっと誰も気がつかないだろう。 今のユーノ・スクライアはユーノ・スクライアという人間が築いた人格と行動パターンをトレースしているだけの只の肉塊にしか過ぎないという事を。 高町なのはは、プログラムと共にプログラムが寄生していたユーノの心の根幹をも破壊していたのだ。 その笑顔に、感情が宿ってないなどという事を誰が分かる。 10年間、誰も知らなかったのだ。 そう、これからも誰も知らぬまま過ごすのだろう。 一人の青年の死を、誰も知らないままに。 GOODEND イドの怪物が吐き出す10年間の苦悩をなのはは避けることも防ぐこともしなかった。 何故なら、それも全てユーノの心だ。それらを無視してユーノを救えるはずがない。 本当に、人間一人が持ちえるモノなのかという程の痛み。 これほどまでの孤独を、自分は気付なかったのだろうか? 自分だって、寂しさがどんなにツライ事か知っていたはずなのに。 なのはは思わずユーノの名前を叫ぶ、叫ばずにはいられなかった。 すると、なのはを取り巻いていた黒いモノが消え失せ視界が広がる。 なのはの眼前には、力尽きたように倒れるユーノ、そして触手のように絡みつく書のプログラム。 ふと、プログラムがユーノをなのはに差し出す。 枯れ木のような躯のユーノを抱きしめ、なのはは一筋の涙を流した。 数日後、病院のベッドの上で眠っていたユーノを見舞うなのは。 気まずい空気が流れる中、ユーノがゆっくりと口を開く。 そこから語られる苦悩と、ようやく形となった憎しみ。 10年間の間に蓄積されたそれを、しかしてユーノは全て吐き出しきれなかった。 なのはは一番大切にしたいと願った少女なのだ。 それに、自分の暗闇をぶつけられるほどにユーノは強くない。 なのはは、そんなユーノの手を取る。 今までとは違う。これからはずっと一緒だから、二人でもっと強くなろう? その言葉を聞いて、ユーノは静かに頬を濡らすのだった…… 14スレ SS なのは ユノなの ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/33.html
15の時、意を決してなのはに告白するユーノ、しかし… なのは『ごめんなさい、私、ユーノくんとは付き合えないの』 ユーノ『…そっか…ごめん、勝手に僕の気持ち押し付けて』 なのは『ううん、違うの!ユーノくんは大好きなの!好きって言ってくれて本当に嬉しかったの』 ユーノ『…付き合えない理由、聞いてもいいかな…?』 なのは『だって…だって私…』 ユーノ『…?…』 なのは『ユーノくんの子供、産めないの!』 ユーノ(…まさか…撃墜された時に…?!) 自分がなのはを巻き込んでしまったから!と超絶自己嫌悪に陥りつつも全力で抱き締めるユーノくん 今朝、以上の電波を私の夢の中に飛ばした人、先生怒らないから名乗り出なさい 61スレ なのは 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/284.html
記念日 作者:◆kd.2f.1cKc 「うーん、どうも桃子さんのに比べると、僕のはいまいちな気がするんだよな……」 「そうかな? 評判は良いし、悪くないと思うけど……」 海鳴市・商店街にある喫茶「翠屋」。地元では知れたスポットである。 特にケーキの味は近所の主婦層や女子学生、また小学校以下の子供を中心に人気が高い。 そんな「翠屋」、以前は高町士郎・桃子夫妻が経営の中心だったが、最近になって代替わりした。 士郎の後継として、店長代行兼バリスタ(コーヒーの専門家)を務めるのは、 直接には士郎の姪で、養子とされ恭也・なのは兄妹と共に、実子当然に育てられた高町美由希。 そして、ローカルでの活躍が惜しまれたほどのパティシェ・桃子夫人の跡を継いだのは、 その夫、ユーノ・S・高町だった。 まぁ、男性パティシェは珍しくない(と言うか、業界全体では恐らく男性の比率のほうが多い)し、 夫人のほうが店長と言うのも、実質的にユーノが婿養子という事を考えればまぁ納得できないでもない。 ただ、問題は──── 「いや。今度の新商品は、記念商品にしたいから、妥協したくないし、 お義母さんの力も借りたくないんだ……」 2年前。 ユーノ・スクライアは、海鳴の高町家を訪れていた。 目的はと言えば、「娘さんを僕に下さい」と言う、きわめて日本的な儀式である。 11年前。ジュエルシードにまつわる事件をきっかけに出会いを果たし、幼馴染として、 あるいは協力者として、関係を深めてきた相手、高町なのは。 時空管理局・武装教導隊空技戦闘教導官の高町なのはと、 同無限書庫司書長ユーノ・スクライアが恋仲であると言う噂は、管理局の中では公然と流れている情報だった。 ユーノは多忙な身でありながら、 たまの休日には、なのはの養子である高町ヴィヴィオの世話を焼きにわざわざミッドチルダまで行っていたし、ヴィヴィオもユーノに良く懐いていた。 ここまでくれば、結婚は時間の問題だろう、周囲の誰もがそう思っていた。 もちろん、ユーノ自身もそう考えていた。 なのはもそれを望むだろう、とも。 だから、2人が共に20歳を迎えたとき、ユーノはなのはにこう伝えた。 「ご両親に、士郎さんと桃子さんに、きちんと挨拶しておきたいんだけど、いいかな?」 ユーノのこの言葉に対して、なのはは、 「うん、良いと思うよ。お父さんとお母さんも、喜ぶと思う」 なんとなく台詞回しに引っかかるものがあったが、まぁOKと言う事なのだろう。 正式に婚約指輪などは交わしていないが、実質的なプロポーズは、11年前に済ませている。 士郎・桃子夫妻の同意が得られれば、その場で指輪を渡すつもりだった。 なのはの方は、地上勤務明けになるので、翠屋で待ち合わせることにしていた。 緊張からか、待ち合わせは午後だと言うのに、ユーノは昼前には翠屋についてしまっていた。 高町夫妻は、すぐに、ユーノの存在に気がついた。 簡単に、挨拶は交わしたが、そわそわと落ち着かない様子のユーノや、 そのユーノがたまに出し入れする指輪のケースから、この後何があるのか高町夫妻もすぐに想像がついた。 桃子は心から歓迎していた。士郎は内心手放しでは喜べなかったが、 2人とも20歳、過度に干渉する事もないと思っていた。もちろん、ユーノの人となりを知っての上でである。 だが…… 約束していたはずの13時が過ぎ……15時になってもなのはは現われず……17時………… 18時になって、ようやくなのははアクションを見せた。しかしそれは、念話越しのものだった。 『ごめん、ユーノ君!』 真っ先に来たのは、謝罪の言葉。まぁそれは、妥当だろう。 だが、そこから先が、問題だった。 『急なお仕事が入っちゃって……行けそうになくなっちゃったの、連絡遅れてごめんね』 『仕事!? 何か事件でもあったの!?』 ユーノは戦慄する。 なのはが突然、行動の自由を奪われるとなれば、かなりの大事件が起こったのかもしれない。 次元犯罪か、あるいはロストロギアの暴走か。 『あ、ううん。大事件ってわけじゃないんだけど、職場の子が、食あたりで休んじゃって。 後詰めお願いされちゃったんだよ』 『…………』 なのはの口調には、困惑と、申し訳なさそうな色が含まれてはいた。 だが。 これから結婚する相手が、自分の両親の下に挨拶に来ると言うのに、 それと引き換えにするほど重いものだろうか? なのはの責任感が強いのは解る。 だがたった1人の欠員も許されないほど、空戦部隊は人員が薄いわけでもない。 むしろ、“優秀な陸士はすぐに空・海に引き抜かれてしまう”と、 かつて地上本部最高責任者として殉じたレジアス・ゲイズ陸幕長(死後、2階級特進)に言わせしめたほど、 優遇されている。さりとて、“海”と通称される次元航行部隊のように、 無限にも等しい広範に人員を割かなければならないわけでもない。 つまり、なのはは、ユーノよりも、仕事を優先させたのだ。 しかも、その為の連絡が5時間も遅れてしまうほどに。 『ユーノ君、どうしたの?』 『なんでもない、つまらない心配かけてごめんね、なのは』 『うん、本当にごめんね』 なのはとの通話が途切れると、ユーノ先程までの緊張はどこへやら、妙にサバサバした 態度と気分で、翠屋の席を立ち上がった。 「すみません、お勘定、お願いします」 レジカウンターに、伝票を差し出す。すると、桃子がすっ飛んできた。 困惑気な表情をしている。 「えっと、なのははどうしたのかしら?」 桃子は、重い口取りで、ユーノに訊ねる。 「職場で急に欠員が出来てしまって、その穴埋めだそうです。 だから、今日は来られないって」 ユーノは、いつものように優しげに微笑み、桃子にそう返事をした。 「そう……」 申し訳なさそうに、桃子は言う。 「桃子さん、気にしないで下さい。 なのはも僕も、そう言う仕事ですから。 なのは、責任感、強いですし」 ユーノは言う。 だが。 自分でも奇妙に思うくらいだった。 桃子さんに対しては理解者を取り繕えるのに、心の内側ではギリギリと軋みを上げている。 「でも、こんな時ぐらい、他の人に頼めば良いのに……」 桃子の言葉に、その通りだ、と言いたくなってしまう。 いや、そもそもなのはは、今日、僕が正式に結婚を決めるという事を理解していてくれたのだろうか? なのはの中では、僕は今でも友達の1人、あるいは、ペットのフェレット、 頼めば資料が出てくる便利な部署の長、ヴィヴィオの子守ぐらいにしか使えなくなったサポート役、 そんな風に思っているのではないだろうか? ユーノの胸の内で、そんな疑念が渦巻いてしまう。 もちろん、顔には出さないように最大限の努力を払う。 「あの……ごめんなさい、本当に」 桃子は、申し訳なさそうに言う。 「いいんですよ、気にしないで下さい」 ユーノは、苦笑気味の笑顔で、あくまで笑顔で、そう言った。 「お詫びといってはなんだけど……家に、寄ってってくれないかしら? 夕食後馳走するわ」 「えっ!?」 苦笑しながら言う桃子の提案に、ユーノは驚いて、眼を白黒させた。 「い、いやいいですよ、そんな……悪いですし」 「遠慮しないで。1人暮らしなんでしょう? それに、2人が泊まっていくと思って、夕食用意しちゃってるから……3人だと、多分、余るわ」 もともと、意志は強いが我は強くないユーノ、ここまで言われては、断れない。 なのはのいない中、居心地を悪そうにしつつ、高町家で夕食を同席する事になったのだった。 「あっはっは、ユーノ君、振られちゃったってわけだー」 既に食前にビールが入っていた高町家長女、美由希は、ケラケラと笑いながらそう言った。 「おいおい、その言い方はないだろう、美由希」 士郎が、呆れたように、美由希を嗜める。 「ユーノ君、ごめんなさいね、本当に、飛び出したらそれっきりの娘で……」 桃子は、申し訳なさそうに言う。 「まぁでも、これからは別に、こっちのうちのことは気にしなくていいからな。 後は、自分たちで決めなさい」 士郎は、どちらかというと細面で端麗な美形とは裏腹に、豪胆な態度で、そう言った。 「は、はぁ……」 しかし、ユーノの顔色は、冴えない。 「んー」 ほんのり酔った美由希は、隣の席からユーノの顔を覗き込み、にまーっと笑う。 「な、なんですか?」 ユーノは、少し焦りつつ、問いかける。 「ユーノ君が今考えている事、当ててあげよっか?」 「え……」 ドキリ、ユーノの心臓が跳ねた。 「『なのはは、本当に僕と結婚したいと思っているのかな……?』」 美由希は、ユーノの表情をまねるようにして、言う。 「!」 「それから、『僕自身も、今まで通りなのはを愛せるか解らない……』でしょ?」 ギシリ…… ユーノの奥で、心が軋むのが解った。 「ユーノ君……そうなのか?」 士郎が聞いてくる。しかし、その態度はユーノに対し怒っているのではない。むしろ、 その逆。困惑と、同情の、入り混じった色。 「……無理、ないわね」 同じ表情で、桃子は言う。 「男の子が相手の両親に挨拶するなんて、結婚前の一番のイベントですものね…… それを相手の女の子の方にすっぽかされたんですもの……」 「い、いやでも、しょうがないですよ……なのはは、忙しいですから」 フォローするものの、急に態度を取り繕うのが辛くなってきた。 そう、美由希に、心の内を読まれてしまったから。 「ユーノ君、無理は良くないよぉー。なのはが悪いんだし」 苦笑しながら、美由希は言う。 そして、次の瞬間。 それは、最初の炸裂をした。 「いっそ、かわりにあたしが結婚してあげようか?」 ブッ 思わずユーノは盛大に吹き出していた。 幸い、口の中の食べ物は飲み込んだ直後だったので、惨事にはならずに済んだ。 「おいおい、そりゃ確かに行かず後家になりそうな美由希を貰ってくれる人がいるなら、とーさん嬉しいが」 ちなみに言っておくと、少量の酒で早々酔っ払う士郎ではないが、 一応、この時点で350ccのチューハイとビールが1本ずつ入っている。 「あっ、お父さん、その言い草、ひどーい」 美由希はむー、と、頬を膨らませる。 「もう、2人とも冗談が過ぎるわよ!」 桃子は憤りの様子を見せた。 「ごめんなさいユーノ君、2人とも、変な事言っちゃって」 桃子は申し訳なさそうに、そう言った。 「んー、あたしとしては、まるっきり冗談でもないんだけどなぁ」 美由希は、視線を上に泳がせつつ、そう言った。 「ユーノ君、いい男だし。それに、付き合いだって全くないわけじゃないよ? そりゃほとんどは、フェレットモードのときだけどさ」 美由希は、そう言いながら、箸で、口に運ぶでもなく、サラダを弄繰り回す。 「ああそう言えば、お風呂に一緒に入ったこともあっとよねぇ」 ギクッ 急に、背筋が伸びてしまうユーノ。 「よく洗ってあげたよね」 「い、いいいやまぁ、そんなことも、ありましたね」 微笑みながら言う美由希に、ユーノは顔を真っ赤にしながら、どもる口調で言う。 「こらこら、美由希」 即座に、両親からツッコミが入る。 「それってまだユーノ君が小さい頃の話だし、それにフェレットとしてでしょう?」 「うん、思えばあの時、ユーノ君がホントは人間の男の子だと解ってればツバつけとくんだった」 妙に真剣な表情で、美由希は腕を組み、うんうんと頷く。 「それに、歳の差もおっきいかー。 お父さんとお母さんみたいに、逆ならいいけど、あたしもう2年で30だしねー。オバサンだわ」 ぶっちゃけ顔だけなら未だに高校生に勘違いされるというのは士郎と桃子が知っているネタである。 つまり翠屋で「あのだれだっけ、メガネかけた高校生のバイトの子」というわけである。 「い、いや別に、美由希さんはまだ……そんなんじゃ、ないと思い、ます」 「あはは、ありがと」 赤い顔で緊張しきったユーノが言うと、美由希は苦笑した。 「ところでユーノ君、今日は泊まって行ってくれるんでしょう?」 桃子が、そう切り出した。 「ええ!? いや、そこまでしてもらっちゃ」 ユーノは困惑の声を上げる。 正直、娘婿になろうという人間がその娘の実家に娘不在で泊まらされるというのは、 拷問に等しい行為である。 もちろん、高町夫妻が善意の人であることはユーノも良く知ってはいたが、 それとこれとは、また別問題なのだ。 「いや、是非そうしなさい。どうせ、帰っても1人なんだろう?」 士郎も、桃子に同意する。こうなってはしかし、断るにも断れない。 「は、はい……それじゃあ、お言葉に甘えて」 ユーノは、困惑気な態度のまま、そう言った。 「じゃあ、一番風呂はユーノ君だな」 士郎が言った。 「ユーノ君、久しぶりに一緒にお風呂、入ろっか?」 ブッ ケラケラと笑いながら言う美由希の言葉に、ユーノは再び盛大に吹いた。 「美由希、いい加減にしなさい!」 さすがに、桃子の声も荒くなるのであった。 入浴後。 ユーノはこの家の、なのはの部屋を訪れていた。 調度品のほとんどと、私物のいくらかは残っているが、生活臭は既に残っていない。 ベッドの脇のタンスを見る。この上に、かつてバスケットが載っていた。 高町家に滞在していた頃、ユーノのベッドだったそれである。 そう言えば僕となのはって、その後は離れる一方だったんだよな。 何年も使われた形跡のないベッドに腰かけ、ユーノは、1人ごちた。 ヴォルケンリッター戦ではほとんど戦力になれず、そして無限書庫入り。 なのはは嘱託を経て、武装隊入り。 距離は近付いたようで、見返してみれば、ほとんどすれ違っていた。 それでも、心は通じ合っていたと、思っていた。思いたかった。 だからこそ、無限書庫での激務にも、耐えられた。 しかし、いざとなってみれば、なのはにとっては今や、ユーノ本人より仕事の方が大切なものになっていた。 もちろん、あくまで相対的な意味で、ユーノが大切ではない、という意味では、ないのだろうが。 ただ、なのはには、彼女にとって大切なものが、周囲に多すぎる。 フェイト、はやて、ヴォルケンリッター、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、6課時代の仲間達。 その中で、必ずしもユーノを最優先できないなら、 距離の開いているユーノは、やがてその範疇から、零れてしまう対象なのではないだろうか? 入り込めなくなってしまうのではないだろうか? それに、最優先されなかったユーノ自信が、今度はなのはを最優先に出来るだろうか? 「さすがに、凹んだよ、なのは」 ポケットから指輪のケースを取り出し、ユーノは呟いた。 コン、コン。 突然のノックに、ユーノはびくん、と、背筋を跳ねさせた。 カチャリ、と、ドアが開く。 「ああ……やっぱり、ここにいたんだ、ユーノ君」 「美由希……さん?」 明かりもついていない部屋に、パジャマ姿の美由希が入ってくる。 「やっぱり、未練はあるんだね」 美由希は、苦笑しながらそう言った。 だが、ユーノの表情は晴れない。 「ごめんなさい……解らない……んです。 そうなのかもしれないし……あるいは、吹っ切ろうとしてここに来たのかもしれない」 ユーノは俯きがちな姿勢で、美由希に顔は向けずそう言った。 「吹っ切れそう?」 「…………無理、ですね」 美由希の言葉に、ユーノはか細い声で、そう答えた。 「吹っ切りたいなら、吹っ切らせてあげるよ?」 美由希はそう言って、ユーノの隣に、寄り添うように腰を下ろした。 その言葉を聞いて、ユーノは目を円くして美由希を凝視する。 「美由希さん、その、本気なんですか?」 「うん」 美由希はニコニコと笑って、即答した。 「すぐに吹っ切れなくてもいい、なのはに未練があってもいい。 時間がどれだけかかっても、あたしの事を見てくれるように、させてあげる。 ユーノ君が、辛くない方法でね」 「美由希さん、でも……」 「さっきも言ったじゃない、知らない仲じゃないって。私は、そう思ってる」 困惑気なユーノに、美由希は優しげな笑顔でそう言った。 「あ、まぁ、ユーノ君が、30間近のオバサン予備軍でよかったらってのもあるけど……」 そう言って、美由希はあはは、と苦笑した。 「美由希さん」 ユーノは、そんな美由希を真剣な、しかし、まだどこか哀しそうな顔で、見据えた。 「お願い、してもいいですか?」 「わかった」 言うと、美由希は微笑みながら、メガネを外す。 そっとユーノを引き寄せ、キスをした。 「娘さんを、僕にください」 翌日。 高町夫妻に「大事な話がある」と言い、 時間を割いてもらったユーノは、その2人の前で土下座しつつ、そう言った。 「ユーノ君、それはもう良いって言ったじゃないか」 士郎は慌ててユーノの顔を上げさせようとする。 「違うんです! なのはじゃなくて……美由希さんを、僕のお嫁さんにさせてください」 「えぇ?」 怪訝そうに眉をひそめた士郎は、困惑気な桃子と顔を見合わせてから、ユーノに向き直る。 「ユーノ君、自分が何言ってるか、解ってるのか?」 「はい、大変失礼な事だと、承知しています」 士郎の厳しい口調に、ユーノはただ頭を下げたままそう答えた。 「本気なんだな?」 「はい!」 それだけは、即答する。 「なのはとは、11年越しの付き合いだろう、美由希とは、せいぜい全部あわせて1年分くらいだ。 それで真剣に、美由希を選べるのか?」 士郎の言葉に、しかし、ユーノははっきりと答える。 「これは僕の落ち度でもあるので、反省しなければならないのですが、 なのはとは11年もかかってしまったから、お互い、心がすれ違ってしまいました。 だから美由希さんとは、心が通い合っているうちに約束したいんです」 僅かに、沈黙。 押しつぶされそうなプレッシャーに、ユーノは耐える。 妹がダメだったから姉と交際したい、などということは失礼極まりない。 ユーノもそれぐらいは心得ている。 それでも、また後悔は繰り返したくなかった。 「わかった……」 士郎は、重々しくそう言った。 「顔、上げてくれ、ユーノ君……なのはの非礼の責任は、育てた自分達にもある。 いや、そうじゃないな。俺の怪我のせいで、なのはをきちんと育ててやれなかったというのが、正しいな。 だから、自分の周囲に閉じこもりやすい性格になってしまった。友達も、限られているようだし」 「…………」 なのはのフォローをしたいが、美由希をくれといっている以上、それは耐えなければならない。 「気には病まないでくれ」 士郎に言われ、ようやくユーノは顔を上げる。 「ただし……」 急に士郎の表情が険しくなった。ユーノは、失敗したか、と、一瞬、思う。 「美由希を幸せに出来なかったら、その時はまた話が変わるぞ」 「は、はいっ!」 ユーノが力強く返事をすると、士郎は悪戯っぽくウィンクをした。 それから桃子と顔をあわせて、微笑みあった。 ────夜、既に閉店した後の翠屋、厨房。 「いや。今度の新商品は記念商品にしたいから、妥協したくないし、 お義母さんの力も借りたくないんだ……」 ユーノの言葉に、はて、と、美由希は小首を傾げる。 「記念商品? 何か、記念になるようなことあったっけ?」 「ん、まぁ、正式な記念日ってわけじゃないんだけどさ」 ユーノはそう言って、口元で微笑んだ。 「2年前、僕と美由希さんが、将来を約束した日だよ」 ユーノは言いながら、美由希の肩を抱き寄せる。 「…………もう!」 オマケ 余談。 「司書長! また依頼です! グリフィス執務官から!」 「こちらはハラオウン提督からです、期限は3日」 「3日!? 冗談だろう、これは、5日はかかるぞ!?」 部下が上げてきた依頼票に、彼は素っ頓狂な声を上げた。 「お言葉ですが、司書長が提督をなさっていた時はこの程度、当日か、翌日を要求されておりましたが」 「うっ……」 部下の司書にそう言われては、返す言葉もない。 ユーノ・スクライア前司書長は、結婚に伴って、婦人の実家を継ぐため逆寿退職。 その後任として、ユーノは、武官ながら実務能力の高い人物、と、彼を推薦した。 結局、他に能力のある文系魔導師の誰もが現職の多忙を理由に固辞したため、 彼が正式に移動させられたのである。 「くっ……あいつは、これ以上の事をこなしてたってことか…… いや、へこたれるな僕……これぐらい、こなして見せなくてどうする……」 ゼリー食と栄養ドリンクと大量の胃薬とを同時に口に流し込み、 激務に耐えるクロノ・ハラオウン新司書長でありましたとさ。 26スレ NTR? SS クロノ・ハラオウン ユーノ×美由希 ユーノ・スクライア 高町士郎 高町桃子 高町美由希
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/192.html
ベッドに横たわったユーノの目に最初に入ってきたのは、暖かな光に照らされた天井だった。 「……どこ?」 「お前の部屋だろうが」 ユーノの疑問に、機嫌の悪そうな声が答えた。その声の主の名前は。 「クロノ……これどういう状況?」 「その、だな」 先ほどの声色とは打って変わって、クロノの声も表情も罰の悪いものだった。 「君はな、過労で倒れたんだよ」 「……そっか」 漸く全てを理解したユーノは、しかし随分と落ち着いていた。 たまたま無限書庫に赴いた際に、事件に遭遇したクロノだったが、 今のユーノをみると、取り乱した己が滑稽に思えて仕方ない。 ――自分は道化以下だというのに。 「……すまない、ユーノ」 「いいよ、好きでやってる。生きがい、みたいなものだよ。今の仕事は」 謝る理由、謝られる理由――つまり、それがユーノが倒れた原因だった。 資料の請求、魔導研究の為の魔術書探索、別の次元世界の知識。 時空管理局は常に無限書庫にそれらを求めた。 簡単なことではない。有り得ないのだ、そんなことは。 無限書庫の蔵書の質量、空間の縦横はまさに、迷宮の如き有様、名実共に無限大なのだ。 なのに。 「だが、管理局は……いや、僕は、君に対して」 一体どれほど報いたのか。あの知恵の迷宮から、こちらの求めるものを発掘し続けてくれる司書達に。 情けない。ユーノは、自分にとって――。 「言わないでよ」 ユーノは苦笑いを浮かべる。でも、少し楽しげだった。 「僕はさ、この仕事でクロノやなのは達と一緒に戦っているんだから」 ユーノは元々戦闘に不向きだった。だからこそ自分の才能を発揮できる無限書庫で 仲間達のために働ける事が本当に――。 「嬉しいんだよね、やっぱり。皆の役に立てるのは」 「……そうか」 それから、とりあえずユーノは今日から5日は休暇を取れた事、とにかく静養することをクロノは告げた。 「手続きは済ませた。とにかく休め」 「それって提督命令?」 冗談めかしたユーノの口調が――。 「友人としてだ」 「うん、ありがとう。とりあえず寝るよ」 言うが早いか、ユーノは懇々と眠りについた。 クロノは思う。 なぜこうなってしまったのか。今、目の前で眠るユーノへの想い。 いつか消えると思ったのに。 今日の件で理解してしまった。 彼は――限度を知らない。だから、誰かが傍に居なくては。 そんな最もらしい理由は、結局は屁理屈に過ぎない。 だから。 眠るユーノに。自分を信頼しきって眠るユーノに。 クロノは――。 おかしいんだ、ミサトさん。ユノシグの次はクロユーなんだ。 ちょっとシャマルさんのサークルに履歴書だすわ。 16スレ SS クロノ ユーノ・スクライア