約 615,197 件
https://w.atwiki.jp/moematome/pages/126.html
「中に、誰もいませんよ……?」 キャラクター形容に使われる言葉。 「病み」と「デレ」の合成語で、 精神的に病んだ状態にありつつ、他のキャラクター(主に主人公)に愛情を表現する様子 好意を持った(デレ状態の)キャラクターが精神的に病んでいくこと 心を病んだヒロインに対する萌え属性 などなど、現在でも定義が定まり切っていない。 恋愛対象に依存しすぎるあまり、 恋敵の物理的な排除、他人に取られるくらいならと恋人を殺害、叶わないなら自殺するなど、異常な行動をとる。 過度なツンデレや、主人公が非常に鈍感・もしくはヘタレである場合など、 気づかない・気付かれないため、ヤンデレになることが多い。 例:圭一が詩音をL5にする。誠が言葉にやったこと。 代表的なキャラクター 桂言葉(かつら ことのは):アダルトゲーム『School days』のキャラクター。 竜宮レナ(りゅうぐう レナ):『ひぐらしのなく頃に』登場人物(*1)。 園崎詩音(そのざき しおん):『ひぐらしのなく頃に』登場人物。 性格変更パッチではやんちゃから変化したもの。 本家の性格は能力補正を示す指標でしかないので、ヤンデレ行動をゲーム中でとるようなことはない。 萌えもん動画では浮気するトレーナーに対して技で制裁する形が多い。 百合姫様:百合姫のパートナー・えながヤンデレ気味。 ダンナの人:クマきちの萌えもんもヤンデレ傾向が強い。だが殺人行為はしない(らしい)(*2)。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1823.html
434 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 16 42 ID E//dvSBC 拝啓 御神千里様ゴールデンウィークを終え、学園自慢の大桜も花もひとつ残らず散ってしまいましたね。 花の命もはかないものと言いますが、こうして散っていく様を見ますと少し寂しくも感じますね。 毎日お昼休みになると大桜の下で一時の休息をされる御神くんも同じ思いだと存じております。 毎日拝見させていただく御神くんの安らかな寝顔は、呆気なく散っていく大桜の花などよりも麗しく、私の卑しい心が癒されております。 ただ、大桜の木を物憂げに見つめる貴方を見る度、視線を向けられる大桜に悔しさを覚えることもあります。 ああ、大桜!大桜!大桜!大桜!大桜!樹木の分際で御神くんに見られ観られ魅られる栄誉を得ている大桜を、何度燃やしてしまおうかと思ったことでしょう。 あるいは、私以外のものに向く御神くんの視線を、眼球をえぐり取ってでも独占してしまいたいと何度思ったことでしょう。 ご挨拶はこれくらいにして、今回こうして突然のお手紙をお送りしたことをまずはお詫び申し上げます。 ですが、貴方様にどうしても、この命に代えても叶えていただきたいお願いがあってお手紙を送らせていただいた次第なのです。 聡明な御神くんならもうお気づきのことでしょう。そう、大桜。 435 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 20 55 ID E//dvSBC 四月には見事な花を咲かせていた大桜。その下で愛を誓い合った男女は必ず結ばれ、その愛は永遠となるという伝説のある大桜。 憎々しくも忌々しくも私達にとって最後の希望である大桜。その大桜の木の下にいらしていただきたいのです。理由は言うまでもないものと思います。 私はあなたを愛しているから。私は御神くんを愛しています。好きです。好きです。大好きです。超愛しています。いえ、超なんて言葉では足りません。 大愛しています。その十倍愛しています。百愛しています。千愛しています。万愛しています。億愛しています。極愛しています。極大愛しています。 とにかく愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛し愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛してます。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 愛しています。愛しています。愛しいます。ています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。 436 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 23 38 ID E//dvSBC 愛さずには居られません。あなたをずっとずっとずっと1年365日見続けて愛せない女がいるでしょうか。 もしそんな女がいるのなら、それは女ではありません。人間ではありません。動物ではありません。 生物ですらありません。むしろ生きる価値がありません。あ、でも、私と御神くんの仲を引き裂こうとするモノも生きる価値とかありません。 そう思うだけでも罪です。存在するだけでも罪です。 判決で言えば死刑です。いえ死刑でさえ生ぬるいですよね。愛を邪魔するモノは存在するだけで罪なのです。周囲に毒を振りまいているようなものです。 存在自体が毒です。そんなモノが今この瞬間存在して酸素を消費していると考えるだけでも怖気がしてきませんか?してきますよね。私は毎日怖気を感じています。 怖くて夜も眠れないです。あ、そう言う話じゃありませんでしたね。とにかく、大桜の木の下にいらしてください。私の愛を受け取るために。愛の為に。 もし万に一つ、いえ億に一ついらっしゃらない場合は、当方どんな手段を用いてでも来ていただく覚悟があるのでご了承ください。 それでは、また会える時を一秒千秋の思いでお待ち申し上げております。 あなたの緋月三日より 437 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 25 54 ID E//dvSBC 「字大杉」 あ、上手いこと言えなかった。 もとい、俺こと御神千里(みかみせんり)は下駄箱の前で、そう突っ込まずにはいられなかった。 下駄箱の中に入れられていた、「御神千里さまへ」と書かれた手紙。 内容は「恋がかなう伝説の大桜の下に来てください」 今時ベタを通り越して古風でさえある手法。 こうした類の物を受け取った際はドキドキしたり舞い上がったりするのが礼儀なのであろう。 それに対して、我ながら無粋な感想を言ってしまったものである。 大体、送り主がこの場にいるわけでもないので、口に出して言っても仕方ない。 「うーい、みかみんどーした。ってなんっじゃこりゃあああああ!」 後ろからクラスメートAがどっかのドラマみたいな声を出した。 「誰がクラスメートAだ…じゃなくてこのヤンデレた手紙だよ!」 クラスメートAこと親友(悪友?)の葉山正樹が強烈なツッコミを入れてくる。 「んーこれー?入ってた」 自分の下駄箱を指さし、俺は笑顔で答えた。いやまぁ、普段から糸目だからあんま変わらないけど。 「あー、ウチの学園って扉付きの下駄箱だかんなー。そういうのも出来るんだよなじゃなくて手紙の内容だよ!笑えねーよ!不幸の手紙かよ!『愛してます』とか上から下までみっちり書いてあるし!」 「字、綺麗だよねー」 「確かにキレーだがよ!内容がこえーよ!むしろ見た目からこえーよ!誰だよこんなの書いたの!」 矢継ぎ早に突っ込んでくる。 一言で通常の三倍くらいになって返ってくる男だ。 「名前はあるけど、コレ、何て読むと思う?」 最後の行(て言うか便箋の一番下)を指さす俺。 そこには『緋月三日』と書いてある。 「ええっと、どれどれ…ひ、づ、き…ひづきみかァ!!!」 あ、エクスクラメーションマークが増えた。 って言うかそれくらい驚いた。 「よく分かったねー。ソレ、『みっか』って読むのかと思った」 「…え、アレ、知らないの?って言うか気付いてないの?」 まるですごい意外なことのように、問いかける葉山。 438 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 26 32 ID E//dvSBC 「もしかして、俺知ってる?そのコ?」 あんま人間関係にはコダワリ無いからなぁ、俺。 「いや何ってありゃお前のストー…ヒイイイ!」 何かを言いかけて、まるで幽霊に会ったような叫び声を上げる葉山。 「どしたの?」 「ああ、い、いや、何か背後から怖気が…。いやまぁ、マジメな話、同じ名前のヤツ、ウチのクラスにいるぜ?」 そーなの? 「よく覚えてるよねー。4月に同じクラスになったばっかりなのに」 「いや、近くの列のヤツ位覚えとけよ」 「近くの人はお前しか覚えて無いからなー。」 「そりゃ、オレは隣の席だからな!」 そんなトークをしながら、ちょっと自分頭の中を検索する。 確か、後ろの方の席の… 「あー、あの?」 やっと思い出した。 「そうそう、あの地味ーで暗ー…ヒイイイイイイイイイイ!!」 葉山はまた怖気を感じたらしい。 風邪かな? 「地味ってか、髪長い子だよね。すごいキレーな」 「キレー?お前あんな感じの顔が好みなん?」 「髪の話ー。ぶっちゃけ、顔はまだ覚えきれてない」 僕は答えた。 教室の中に時々、何やら触りたくなるほどサラサラヘアーの女子がいるとは思っていたのだ。 「…ちょっと行ってみたいかも、大桜の下」 「ええー!」 僕の呟きに、大げさに驚く葉山。 「なぜそんな驚くかな」 「だって、緋月って地味だし友達もあんまいない感じだしヒイイイ!」 また叫びだす葉山。 そろそろ本気でコイツの体調が心配になってくる。 「葉山、はやまん、風邪っぽいならとりあえず保健室行っとく?あと、風邪に効く料理のレシピとかも書くわ」 「お前って意外と甲斐甲斐しいよな…」 大丈夫、と手をひらひらさせつつ、葉山は言葉を続ける。 「と、とりあえずその手紙はイタズラなんじゃね?多分」 「イタズラ?」 「木の下に来てくださいってハナシでここまでみっちり書く奴はいないぜ、フツー?」 葉山の言葉には納得しかねるモノがあるが、この手紙の内容には微妙に足りない部分がある。 それが無い以上、リアクションの取り様が無い。 ――ってコトはイタズラの手紙ってことになるのだろうか。 「まー、確かにイタズラっぽいけどねー」 「だろ?だろ?んじゃ、この話はコレでおしまいだよな!」 どこか強引にそう言いながら、話を打ち切る葉山。 そして、別の話題を葉山とダベりながら教室に向かう。 「でもなー」 葉山のバカ話を聞きながら、俺は呟く。 「イタズラでここまで丁寧にやる奴もいなくね?」 439 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 26 52 ID E//dvSBC 御神千里は気がつかなかったが、そのやり取りの一部始終を物陰から見ていた者がいた。 そして、その人物は今も千里の後ろ姿を見つめている。 「…イタズラ、なんてウソですよね。御神くん」 その人物はささやくように言った。 「…私、本当にどんな手段を使ってでもあなたを手に入れますよ…?」 そして、ぐっと両手を胸の前で握りしめる。 「…私、頑張ります」 440 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 27 57 ID E//dvSBC 緋月三日。 今年から俺と同じクラスになった少女。 内気そうな印象の少女。 友達は多くは無く、しかし居ないわけではなく。 成績は悪くはないらしい。 ただし、体育の方はどうも壊滅的のようだ。 体育の授業中に女子の方を見ると、何やらすっころんでいたり、いかにもどんくさいのが居たが、どうもそれが緋月らしい。 体型も触れれば折れてしまいそうな細身で、ぶっちゃけ運動には向いていない。 華奢と言えば聞こえは良いが、その分胸囲とかは察してくださいとしか言いようがない。 そして何より髪が綺麗。 今時珍しく腰まで伸ばした長い髪は柔らかそうな髪質のサラサラしたストレート。 色白細身な体系もあって、いかにも和風美人(?)といった感じである。 まぁ、不細工と言うほどの顔立ちではないが、誰もが振りむく美人というのとも違う。 そんな癖のある顔立ちでも無く、肌がきれいなのも相まって、良く見れば結構可愛いじゃん、といったカンジ。 メイクさんやってるウチの親なら磨けば光る素材、と評するだろう。 以上が、葉山から聞いた情報と自分の乏しい記憶を統合しての、緋月三日のプロフィールだった。 「…って、何でそんなにアイツのこと気にするかな、みかみん」 「髪綺麗な女は気になんの」 「髪フェチ!?」 「それに、あの手紙のこともあるし」 「……」 今は昼食の時間。 隣の席の葉山とゆるゆる喋りながら弁当(自作)を食べていた。 「…忘れろよ、あんなんただのイタズラだって」 本気で不愉快そうな顔をしてそう言う葉山。 「でもさー」 俺はそう言って胸の内ポケットから今朝の手紙@緋月(仮)を取りだす。 「こんなキレーな字書く女子、イタズラでも会ってみたくね?」 「…ゴメン、お前のツボは分からん」 葉山が言う。 「ってか、最後まで、字キレーなんだよね」 文面を見ながら、俺は言った。 糸目をちょっとだけ見開き、改めて読み流す。 便箋の上から下まで文字で埋め尽くした上に、いずれの文字も丁寧なのだ。 これは、単に字が綺麗だからというのではない。 一文字一文字にしっかり気を使っているからだろう。 並の労力ではないし、時間もかなりかかっただろう。 それを考えると、この手紙は芸術的でさえある。 …まあ、一カ所だけ書き損じがあるが。 それを差し引いても、ただのイタズラにしては手がこみすぎている。 頑張りすぎているのだ。 ただのイタズラや嫌がらせならもっと手を抜いている。 手を抜いて良いところだ。 「字キレーで、頑張りやさん、か」 そう呟き、何の気なしに教室の後ろの方に目を向ける。 緋月の席は教室の奥の方、窓側の後ろの方にある。 ふと、緋月と目があった気がして思わず互いにそらしてしまう。 そうこうしているウチに弁当は食べ終わり、昼休み開始のチャイムが鳴る。 「ご飯の後ってやっぱ眠くなるよなー」 ふわ、とあくびをしながら俺は言った。 「まぁなー。…ってまさか」 葉山がシブい顔になる。 「昼寝ー。いつもみたく大桜の下で」 「行くのかよ!」 ガタンと立ち上がる葉山。 441 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 28 18 ID E//dvSBC 「落ちつきなよー。あの手紙はイタズラなんだろ?」 「そりゃそーだけどよ…」 食い下がる葉山。 「もし本気だったとしても、ぶっちゃけ送り主はいないと思うしなー。だから、手紙とは関係ナシ」 んじゃなーと言って、俺はいつものように向かう。 その下で愛を誓い合った男女は必ず結ばれ、その愛は永遠となるという伝説の大桜へ。 尤も、そんなのに関心の無い俺にとっては絶好の昼寝スペース以外の何物でも無いのだが。 「みかみん、お前マジ緋月のヤバさ知らなさすぎ。って言うか、何で気付かないんだよ」 葉山が後ろで何か呟いているようだが、よく聞こえない。 「アイツ、去年の間お前をずっとつけまわしてたストーカーなんだぜ…?」 442 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 28 49 ID E//dvSBC 私立夜照学園(ヨルテルガクエン)名物大桜。 元々は随分昔に偉い人が寄贈だか何だかしたものだそうで、学園設立当時くらいからあるらしい。 そんな由緒正しい代物だけに、学生の噂話の常連でもある。 ある時は学園七不思議のネタにされ、ある時は様々なジンクスの元となった。 現在伝わっていないモノもあるんじゃないかな? そんな噂の中でもっとも有名なのは、「大桜の木の下で告白し、愛を誓った男女の愛は永遠の物となる」というもの。 一体いつのゲームの設定かと思わなくもないが、ともあれ夜照学園の生徒にとってこの大桜の木の下で告白するのは鉄板となっている。 で、いつの時代も恋する乙女の注目を集めるそんな大桜は、校庭とかの辺りとは少し離れた位置にある。 だから、それこそ愛の告白をしたい人間くらいしか、ココに訪れることはない。 だから、静かに昼寝をするには絶好の場所だったりする。(罰あたり) そして、今日もいつものように木の下に訪れる。 「やっぱり、来てくれたんですね…」 その声は、後ろから聞こえた。 聞き覚えのある声だと思った時には、俺の首筋に電流が走っていた。 443 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 29 41 ID E//dvSBC 「コレをこうして…、ここをこうやって…」 次に気がついた時、俺は大桜の下で仰向けになっていた。 ウン、いつも通り。 違うのは、聞き覚えのある声=緋月のささやくような声が聞こえること、頭の下に柔らかいものがあたっていること(膝枕?)、手足が動かないこと、ぶっちゃけ手足が縛られていること。 …明らかに、いつも通りでない所の方が多い。 間違い探しが楽と言うレベルではない。 「最後に、ハンカチで口をふさいで…」 そー、っと真っ白なハンカチが見覚えのある顔と一緒に近付いてくる。 「いやいや顔が近いから」 びくぅ、とハンカチと顔を離す緋月。 「ってか、緋月?緋月三日?」 「はい!」 「取りあえず、確認したいことがあるんだけど、聞いて良い?」 俺の言葉にブンブンと首を縦に振る緋月。 いー感じに緊張しているっぽい。 視界的には緋月が上なのだが、無駄に身長の高い俺と話すのは怖いのかもしれない。 「質問その1。口をふさいでどうするよ」 取りあえず、分かる所からツッコミを入れよう。俺は葉山じゃないんだし。 「…イニシアチブを取る、ためです」 相変わらずささやくような声で言う緋月。 それにしても良い声だな。よく声優になれって言われません? 「イニシアチブ?」 いや何の。 「意中の異性を手に入れるためには、肉体的、心理的に優位に立つことが必要不可欠。その為に、まずは相手の動きを封じることが大切、とこのマニュアルに書いてあります」 見れば、緋月の手にはいかにもお手製な小冊子が握られている。 444 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 30 15 ID E//dvSBC 「何のマニュアルだよ、それ…」 俺はうめいた。 何か、表紙が黒いし、明らかに諸悪の根源っぽい臭いがする。 まぁ、そこは今あまり重要でも無く。 「ま、いいや。質問その2。もしかして、今朝の手紙は君が書いたの?」 「はい!頑張りました!」 全力で答える緋月。 頑張ってたよな、確かに。頑張りどころを間違えている気がしたが。 「マジメな話、やっぱ本気で俺にここに来てほしかったって訳?イタズラとかじゃなく?」 俺の言葉に、緋月の瞳からハイライト(生気)が消える。 「…御神くん、まさかあのクラスメートAの言葉を真に受けて無いですよね…?私の愛の限りをこめた手紙をイタズラだなんて本気で思っているはず無いですよね…?」 「うん、自然な動作で首に手をかけるのは止めようなー」 何かすごいことしようとしてるので、ツッコミをいれておこう。 桜の下で本当に死体になりたくは無い。 しかし、緋月はその白く細い指で俺の首を包みこんだ。 包みこんだだけだが。 「…痛くないんですか?」 「別にー?」 首のあたりに多少圧迫感があるかないか、というところだ。 俺のリアクションに、一生懸命首をしめようと試みている(らしい)緋月。 ただ、彼女は「首の締め方」的な物をどうにも心得ていないらしく、一向に痛くならない。 何しろ首の横から力入れてんだもんなー。 真上から体重をかけられたらさすがにちょっとは痛いだろうけど、単純に筋力(しかも非力)で何とかしようとしてるから、全く効果が無い。 うんうん言いながら頑張る緋月の姿は結構ほほえましいものがある。 …目的は俺の首を絞めることだが。 「話を戻すけどー」 何やら頑張ってる緋月の顔をアップで見ながら俺は言った。 「俺がココに来る時間って、今で良かったわけ?」 「時間?」 僕の言葉に動きを止め、きょとん、とした顔をする緋月。 内気そうに見えて、中々表情豊かだ。 癒されるものがあるねー、こんな状況でなかったら。 「大桜の下に来てほしい、とは書いてあったけど、『いつ』来てほしいとは書いてなかったじゃん?だから、どうしたものかなって思ってたわけ」 445 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 30 55 ID E//dvSBC 『昼休み』に来てください、なのか、『放課後』来てください、なのか、明日かもしれないし、一週間後かもしれない、そう取れる内容だったと言える。 俺の言葉に緋月は目を白黒させる。 「う…そ…」 おお、パニくっとるパニくっとる。 「うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう」 字面だけ見れば死ぬほどヤンデレらしいが、実際は涙目で困惑してるだけである。 あんまり表情が変わるような印象の無い娘なので、涙目はかなり新鮮―――というよりぶっちゃけ可愛い。 「ほんとだぞー」 ひょい、と例の手紙を手渡す俺。 それを受け取り、上から下まで読み返す緋月。 「そんな…。がんばったのに…頑張って、勇気を出して書いたのに…」 事実に愕然とし、顔を手で覆いさめざめと涙を流す緋月。 「泣くな泣くな。お前が頑張ったのはこの手紙を読んだ俺も良く知ってる。」 ぽんぽん、と柔らかく緋月の背中をたたく俺。 「…分かって、くださるんですか?」 「ああ、もちろん。それに、結局俺はお前がいる時間にココに来たんだから、結果オーライじゃないの」 昼寝のためだった、とは言えんがな。 「…私の頑張りは、無駄じゃ無かったんですね…?」 「さぁそれはどうだろうなんてことは無かったぜ。バッチリ報われてるぜ」 俺の言葉の途中で緋月がまた泣き顔になったので慌ててフォロー。 決してまた首に手をかけられたからではない。 「んじゃ、そろそろ質問その3。お前の望みを言え」 「どんな望みも叶えてくれる!?」 泣き腫らした目のまま打てば響くようなリアクションを返す緋月。 内気に見えて、中々リアクションの才能があるっぽい。 「や、そこまでは言ってないし。 まぁ、何の代償も要求しないけど」 ネタが分かる人っぽいのでそこはフォロー。 俺の言葉に居住まいを正し、深呼吸をする緋月。 「あなたに、私への愛を誓っていただきたいのです」 泣き腫らした眼で俺の眼をまっすぐ見つめ、そう宣言する彼女は、思いのほか魅力的だった。 不覚にも見惚れてしまうほどに。 しかし… 「うん、何か色々すっ飛ばしてるよな」 446 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 31 44 ID E//dvSBC 俺の言葉は、半分は照れ隠しだが、残りは明らかな本音である。 …つーか、俺らの人間関係始まってもいない気がする。 そこで愛を誓えってのは第一話に最終回やれってくらい無茶ぶりだろ。 とはいえ、また涙目になる(&首に手をかける)緋月がいたたまれないので一応フォローしよう。 「そもそも、何で俺なのかって理由を聞きたい。ウチの学園には俺よかイケメンの奴とかたくさんいるし」 これがギャルゲーなら主人公だから、で納得するんだけど、別にそんな設定は無いからなー。 いや、桜の下でいきなり縛られるゲームがあったら嫌すぎるけど。 「…御神くん以外の男子なんてゴミみたいな人です。むしろ、御神くん以外の人がゴミのようです」 「それ、某ラ○ュタネタだよな。分かりづらいだけで。そうでなかったら、そんな酷い表現使っちゃいけませんと親御さんの代わりにお説教をしてるところだぞ」 だとしても、某宮崎監督が泣きそうな使い方だ。 「みんながゴミなら俺はクズとか?」 伝説の大桜の下で昼寝しようって言う、空気の読めない罰あたりだもんな。 「違います!御神くんは優しい人です!!私がそれを一番よく知っています!!!」 今度は悪鬼のごとき表情で怒りだす緋月。 俺の為に怒ってくれんのは嬉しいが、その顔芸は止めような。 他人に見せられん顔になってるもの。 「…覚えていますか?去年の今日、まだこの学校に不慣れで迷子になっていた私を、御神くんが教室まで案内してくれたことを」 「いや、全然」 「お、ぼ、え、て、い、ま、す、か?」 一生懸命首絞めをしながら聞きなおす緋月。 本人的には精いっぱい威圧的に言っているのだろうが、涙目なので迫力に欠ける。 白い指がひんやりして心地良い…じゃなくて、乏しい記憶力をフル回転する。 以下回想 ―――どしたの、君?小動物見たく辺りを挙動不審に警戒して――― ―――…あ、あの…きょ、教室が分からなくて…――― ―――あーこの学園、無駄広いからなー。中等部からいる俺でも把握しきれないし。君、何年何組?――― ――――…い、一年十三組です…高等部の…――― ―――何だ、隣のクラスじゃん。一緒に行く?――― ―――…い、良いんですか…?――― 回想終了 「ああ、あのおかっぱ!」 「そ、そうです!おかっぱでした!」 全力でうなずく緋月。 447 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 32 09 ID E//dvSBC 首を動かす度に長い髪が乱れて、何かエロい。(変態) あったあったそんなこと。 あの後、後ろにその女の子を伴って教室に戻ったんだっけか。 ただ、その女の子は黒髪おかっぱの髪型だったので、今の緋月(ストレートロング)と結びつけるには少し時間がかかった。 ホント、女の子って髪型変わるだけで印象変わるや。 「一年で随分髪伸びたよなー」 「…あの日から、気がついたらあなたの姿を目で追うようになっていました。」 「無視かい」 恍惚とした表情で語りだす緋月。 「…気がついたら、あなたの姿を見つめるのが日課になっていました」 「そりゃ初耳」 「…気がついたら、四六時中あなたの姿を追うようになっていました」 「…四六時中?」 「…気がついたら、あなたのいる所にはどこでもついていくようになっていました」 「気がつけよ!」 いや、緋月もそうだが俺も気がつけ。 何でこんなキレーな髪の女子が近くに居るのに気がつかんのだ。(論点が違う気もするが) 「…そうしているうちに、いろんなことを知りました。あなたについて」 「ほうほう」 「…他人に無関心に見えて誰に対しても優しい所とか。時々見せる笑顔が素敵な所とか。意外と家庭的だったりとか。早起きさんなところとか。自慰行為は一日何回やっているかとか」 「最後に下ネタ!?って言うか男の前で自慰行為とか言うなよ!嫁入り前のコが!」 って言うかプライバシーの侵害にもほどがある。 「…大丈夫です、これからは私が満足させます」 「あんの!?ソッチの経験!?」 「………が、頑張ります」 「あー、無いのね。別に無くて良いけど」 内心、なんかホッとしてる自分がいる。 「ってか、それも段階飛ばしすぎだろ。手つなぎイベントとか、初キスとか、その前に色々あるっしょ。ラブコメ的に」 「…どんな要求にも応えます。御神くんが私の要求に応じてくれるように」 「…びみょーな表現使うなぁ」 苦笑を浮かべる俺。 何か、本気でどんな要求にもこたえそうだわ。 死ねと言われたら死にかねない。 …逆に、俺も死ねと言われたら死ななきゃならないらしいけど。 「まぁ、何となく事情はわかった」 コイツの人となりもね。 ぶっちゃけ、かなりとんでもないことをしてる娘ではあるが、それ以上に頑張り屋なのだろう。 頑張りどころをかなり間違えている感もあるが―――まぁ、そこはおいおい治していく感じで。 ゆるゆる生きてる俺にとって、何かのために頑張れる人間ってのは、かなり眩しく見えるモノで。 それが自分の為だってのは中々に感動的な物がある。 ま、髪もキレーだしね。 ロングなのもポイント高い。 …おや、付き合わない理由が無いな。 その上であえて言おう。 「だが断る」 448 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 33 30 ID E//dvSBC ばしゃん! そう答えた瞬間、緋月の手にはたくさんの凶器が握られていた。 ハサミ、カッターナイフ、十得ナイフ、ダガーナイフ、伸縮式警棒、ワイヤー、アイスピック、妙なスプレー、スプーン、包丁、お玉(注:調理用具はもっと丁寧に扱いなさい)その他諸々 …あ、スタンガンもある。アレで俺を気絶させたのな。 「愛を誓ってくれなければ、私を殺してあなたも死にます」 「逆逆」 いや、あんまり変わんないけどね。 「つまりね、別に愛を誓おうが恋を誓おうが良いんだけど、こっちにも条件があるってコト、みたいな?」 凶器の山に臆することなく、俺は言った。 使い手が無害なことが分かってるからね。いや、だから逆に危ない気もするけど。 「…え?」 俺の発言に、緋月の手から凶器の数々ががしゃがしゃと落ちる。 「愛を誓うならまず君から誓え」 「命令形!?」 緋月は驚くが、一応手足を縛られているこの状況である。 いい加減俺が優位に立ってもバチは当たんないと思う。 「…うう、最初から羞恥プレイを命じられるとは思いませんでした…」 「何が羞恥プレイだ。見た目的には俺の方が恥ずかしいわ」 縛られてるしね。 「あうう…」 顔を真っ赤にしながらうつむく緋月。 「…愛しています」 「聞こえなーい」 「愛してます!頭のてっぺんから足の先まで魂の奥底まで愛しています!他の女には渡しません!他の女になびいたらショックで死にます!あなたを殺してから!だから私だけの御神くんになってください!」 「良いよー」 俺はさくっと返した。 「「軽!」」 ツッコミは緋月からだけでなく、意外なところからもやってきた。 449 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 34 21 ID E//dvSBC 葉山だ。 何か木陰からでてきた。 「おお、はやまんじゃん。どしたの?」 「心配になって来てみたら。お前ナニイテンダ!」 葉山の言葉が興奮で喝舌がすさまじいことになってる。 「お前この女にずーっとつけ回されてたんだぜ!ストーカーだぜ!何っでそんなのと付き合うんだよ!考え直せ考え直せ考え直せ。付き合ってロクなことになるわけがない」 必死で俺の説得にかかる葉山。 そうは言うが、コイツずっと見てたのか、今のやり取り。それこそストーカーみたく。 「いやまぁ、頑張る所を間違えてるよなとは思うけど、見られてただけで実害があったわけじゃないし」 むしろ、近くに置いといた方が面倒が無い気もする。 「見られすぎだろ!」 「見るのだって楽じゃないっしょ」 「のっけから恋人とか超展開すぎだろ!」 「とりあえず、世間のお見合い結婚カップルに謝ろーな」 「怒られてる!?」 「それに、ぶっちゃけ遠くから見られるよか近くに置いておいた方が面倒が無…もとい面白いし」 「「それ言い直す必要無いよな(ですよね)!?」」 葉山と緋月の声を背景に、俺は立ち上がる。 そろそろ予鈴だ。 「んじゃ、そろそろ戻るか」 言って、緋月に手を伸ばす。 「はい!・・・って」 しっかり手を取り、フリーズする緋月。 「私、御神くんの手足を縛ってましたよね!?」 「…そんな設定あったっけ?」 「ありました!」 「…うん、ゴメン。結構ゆるゆるだったってか、すごいあっさりほどけてたわ」 「いつから!?」 「結構最初から」 「そんな!?」 がびーん、とか言いそうなくらいショックを受ける緋月。 「まー、努力は報われたんだからそんなショックを受けなさんな、マイラヴァー」 「は、はい!」 歩き出す俺にとことことついてくる緋月。 カルガモの子供みたいで中々可愛らしい。 そして、三人でダベりつつ教室に戻る。 「ホントに良いのか、みかみん。クーリングオフとか効かないぞ、コレ」 「良いんじゃない?何かイロイロツボったし」 「…良いのか、それで」 「…葉山くん、どうしてそんなこと言うんですか?…もしかして、あなたも御神くんを…」 「「無い無い」」 「…息がぴったりです」 「付き合い長いからねーって愛情的な意味じゃないからなー。あ、そうだ緋月。お昼とかいつもどうしてる?」 「…こ、購買でパン買ってます」 「それじゃ足りないっしょ。育ち盛りなんだし。明日から俺弁当作ってくるわ、恋人っぽく」 「い、良いんですか!」 「何か逆だぞそれ!本当に甲斐甲斐しい男だな、みかみん!」 「うるさいよ」 と、まあ、こうして俺の楽しくも不穏当な青春は過ぎてゆく。 450 :ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03 35 03 ID E//dvSBC おまけ 「そう言えばひづきん、その凶器やら黒い表紙のマニュアルやら、どっから調達してきたん?」 「…あ、コレは母が珍しく用意してくれたんです(いきなりあだ名付けてくれた…)」 「親御さんが?」 「…何でも、母はこういった物を使って父を手に入れたのだそうです」 「…」 「…この『恋人絶対拉致入門』以外にも、『泥棒猫の■し方』とか『素敵な監禁生活AtoZ』とかも用意して下さったんですよ。御神くんも読みますか?」 「…いや、いいわ」 お母さん、俺の彼女の母親はヤンデレのようです。 つまり、俺の彼女はヤンデレの娘さん。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2722.html
910 名前:ヤンデレ彼女とお電話 ◆7GucI4/V8s[] 投稿日:2015/04/26(日) 18 50 37 ID N/cza4BY [3/3] ねぇ……今どこにいるの……? えっ、お姉さんと一緒……? おかしいよね? 彼女、私だよね? どうして、私をほっぽって、お姉さんと一緒にいるの? いい。分かった。あなたは分かってないの。 あなたには私しかいないんだって。あなたは私がいればいいんだって。 くす。なんでもない。ねぇ……今日、会いたいな。私の家、来ない? そう、良かった。 そうね。1時間後、来てね。絶対。 安心していいよ。とっても楽しませてあげるからね。 お姉さんの事なんて……ううん、何でもない。大好きだよ。また、ね。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2537.html
842 名前:ヤンデレ☆レモン[] 投稿日:2012/08/30(木) 17 16 47 ID .qf.IqEE [1/2] 一話 俺には一人の幼馴染がいる。 その名前は「舟山 御崎」(ふなやま みさき) そして俺の名前は(木葉 樹理)「このは じゅり」 御崎「樹理くーん!おっはよ~☆」 樹理「朝から元気だなぁお前は・・・・」 いつもいつも元気な御崎にはかわいいところがいくつもあって それは恋心というのか? 学校にて 美鈴「おそいぞ~お話しすることがいっぱいあるっていうのに・・・」 樹理「ごめん、ごめん・・・」 彼女の名は「槐羅 美鈴」(えんじゅら みすず) このクラスの学級委員長ですごく真面目 遅刻しそうになると軽くしかるけど 遅刻した時だったら本気で起こる しかも上級生にも目を付けていて 校則違反のものを持ってきていたらすぐ叱る だからそんなに友達のいないさびしい女だった でもみんな逆らえない だってこいつはこの学園の理事長の娘 つまりは金持ち 金さえあれば何でもできるやつだから 逆らえば終わりってところだ。 親いなけりゃ逆らっても意味なしなんだがな 泰知「うざいよ~真面目ちゃん #9825;」 こいつは槐羅をよくからかう俺の友達の泰知 でもこいつは槐羅が好きらしい うざいとかいうと可哀想じゃねえか 御崎「美鈴ちゃんなんかほっといて早く席に着こう 樹理君 #9825;」 やっぱりこのクラスで一番可愛いのは御崎だわ ある日の事だった 俺は告白された 同じクラスの結構モテモテの女の子に・・・ 放課後… 御崎「樹理君に告白した子ってチヤホヤ知れて調子乗ってる しかも男子の前では鼻声の矢部愛華ちゃんだよね?」 樹理「あぁ、、見てたのか・・・」 御崎「うん、迎えに来たら告白されてたから。あの子と付き合うの?」 いやいや、俺はお前が今好き?だし 御崎は無言で帰って行った いや、先に帰られた さっさと歩いてしまったので・・・ 翌日・・・・ 何と矢部は死んだんだ 何か知らないが指にくぎがいっぱい刺さってて ナイフでいっぱい刺されてたらしい 御崎「へぇ、死んだんだ…」 続く
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1987.html
39 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 16 35 ID TyGkuzAn [2/20] 「ひづきんが風邪をひきました」 期末テストも近いある日の朝休みこと、俺は目の前の友人たちに向ってそう言った。 「ナルホド、あの黒くてちっこいのが見当たンねぇと思ったらそういうことか」 そう返すのは友人の一人、久々登場の葉山正樹(ハヤママサキ)。 白い半袖ワイシャツ(袖と胸ポケットに星座と月を象った、ウチの校章が入っているのがポイント)のボタンを上二つまで開け、すっかり夏モードだ。 「でも意外ね。みっきーのことだから風邪をひこうが足の骨が折れようが鮮血の結末しようが彼氏クンのところに来るものだと思ってたのに」 そういうのはもう一人の友人、というよりみっきーこと緋月三日の親友、明石朱里(アカシアカリ)。 こちらは半袖の白いブラウスに黒いベストを羽織っている。 胸元に校章の入った赤いリボンをつけていたり、スカートがチェック柄だったり、ウチの制服は男子より女子の方がオシャレ度が高いっぽい。 「本人はそのつもりだったらしいんだけどねー」 そこで、俺は微妙に声音を変える。 「『あまりに聞きわけがないので、力ずくでベッドに放り込んでおきました…』って連絡をくれた三日のお姉さんが」 「おー、意外に似てる」 俺の声真似に、なおざりに拍手する明石。 「あ、明石はお姉さんのコト知ってるんだっけ?」 「そりゃ、親友のお姉さんだし。ってか、去年の生徒会長だし」 明石が当然のように答えた。 そう言えば、三日のお姉さん、緋月二日(ヒヅキニカ)さんはこの夜照学園高等部のOG。 現在は同大学部1年生の19歳だ。 確かに、明石が知っていることに何ら不自然なことはない。 俺は当時、生徒会のことにさほど関心が無かったので、知ったのは割と最近だったが。 「生徒会長にして剣道部の鬼部長ってことで、知ってる人は知ってるわよ」 「鬼部長てどんだけ…」 明石の解説に、葉山が苦い顔をする。 三日への印象が悪いだけに、すさまじいものを想像しているのだろう。 それが間違っていると言えないのが、二日さんのすごいというか恐ろしいところだが。 ちなみに、そのお兄さんの一日さんは演劇部だった。 文化祭で女吸血鬼の役を演じ、男性ながら「血も凍るような美しさ」と評判だったとか。 40 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 17 09 ID TyGkuzAn [3/20] 「それで、今日の放課後お見舞いに行こうと思って。ユカリ先生からプリント類を渡すように頼まれてるし」 ちなみに、ユカリ先生はウチの担任。 長い髪を後ろで束ねた快活な女の先生だ。 担当は現代国語で陸上部顧問。 旦那さまと万年新婚の甘甘ラブラブ、とは本人の弁。 誰もその姿を見たことが無いので真実は不明。 「あ、そうなんだ。じゃあ、お大事にってみっきーに伝えておいてくれる?」 あっさりとした口調で明石は言った。 「何だ、明石は行かないの、お見舞い?」 「そうしたいのは山々なんだけど…ほんとーに山々なんだけど、私とみっきーは『友情<<<<<<(越えられない壁)<<<<<<恋愛』っていう共通の価値基準でつながってるから。アンタらを邪魔するようなヤボな真似はできないのよ」 肩をすくめて明石は言った。 少し名残惜しそうに言うあたり、本音なのだろう。 「ン?朱里、お前好きなヤツとか居ンのか」 明石の言葉に、葉山が怪訝そうに言った。 念のために補足すると、明石朱里はクラスメートにして幼馴染であるところの葉山正樹に好意を抱いているというお約束な状態にある。 肝心の葉山がそれに気づいていないのもお約束。 「そ、そう、だけど……!?」 目を白黒させたり顔を赤くしたり青くしたりしながら明石はわたわたする。 青春してるなぁ、コイツら。 「や、やっぱ正樹的には、知りたい?」 おお。 ドギマギしつつも顔を赤らめて上目づかいで葉山を見る明石の表情は、三日の居る俺でも感嘆するほどにかわいらしかった。 恋愛漫画ならクライマックスに丸1ページ使うレベルのかわいらしさだった。 「いや、別に」 もっとも、そのかわいらしさは葉山にはろくすっぽ分からなかったようだが。 「正樹のバカー!」 ばしぃ、と教室中に音が鳴りそうなほどの勢いで葉山が平手打ちをかまし、明石が立ち上がる。 「なんで気になんないのよ!せっかくアドリブでかわいいカオも作ったのにっていうかそっちから話振ってきたくせにー!」 そう叫んで泣きながら教室を走り去る明石。 「ちょ、おま!?もう授業始るぞ!?」 「正樹なんて知るかー!」 そんな明石を茫然と見つめる俺たち二人。 「……何だってンだよ」 「……青春ってコトじゃない?」 はたかれた頬を押さえてブゼンとした顔をする葉山に、俺は言った。 41 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 18 04 ID TyGkuzAn [4/20] さて、時間は飛んで放課後。 「部活もないからすぐに来ようと思ったら、ズイブン時間食っちゃったなあ」 『緋月』という表札のかかった、それなりに立派な作りの一軒家を目の前に、俺はつぶやいた。 ちなみに、今日何をしていたのかダイジェストで振りかえると… 休み時間 「正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ……正樹なんてもう知らない……でも大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き……」 「はいはい。とりあえず、アイツには明石を怒らせたことだけは納得させたから、もうこんな時間だし、戻ろう?」 放課後 その1 「はい、これが緋月ちゃんに渡す分のプリント。しっかりきっちりよろしくね」 「分かりました、ユカリ先生。……って、もしかして、ネイル変えました?」 「そうなのよ!よく気づいてくれたね。これはアキ……じゃなくて旦那様がネットで選んでくれた色でねー(以下延々と語りだす)」 (わざわざ突っ込まなきゃ良かったかなー) 放課後 その2 「と、そろそろ三日のところへ…ってアレは、ウチのクラスのトショイイン(仮)じゃん」 「あ、御神くん。この本を全部図書室に運ばなきゃいけないんだけど、私ひとりじゃ持ちきれなくて……」 「分かった、俺も手伝うよ」 「ありがと。御神くんってちょっといい人よね」 「よく言われる」 「いい人すぎて恋愛対象としては見れないタイプ」 「よく言われる。って、見られても困るケド」 放課後 その3 「さあて、もういい加減三日のところへ……」 「あれ、木偶の棒が置いてあるかと思ったら御神ちゃんじゃない?」 「ああ、路傍の石だと思ったら一原先輩じゃないですか」 「ちょーどよかった。チョット手が入り用だから生徒会室に来なさいな」 「や、俺そんな暇でもないんですけど。どうしたんですか?」 「いやー、ちょっと痴情のもつれでもみあってたら、倒れてきた本棚の中に妹が生き埋めになっちゃってねー」 「どういう状況ですか…ってか一大事じゃないですか!?」 放課後 その4 「御神先輩、今日は緋月先輩がいないんですってね。どうですかどうですかこの河合直子とひと夏のアバンチュー「ごめんなさい」 「言い終わる前にフラれたー!」 42 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 18 25 ID TyGkuzAn [5/20] と、放課後はこんな風に八割方(例外あり)人助け的な何かだった。 「性分なんかねぇ……」 我がことながら苦笑しながら、俺はインターホンのスイッチを押そうとした。 『想定通りの…ジカン…に来たね』 スイッチを押す前に、インターホンから声が聞こえた。 『…ハジメマシテ…、私は緋月月日(ヒヅキツキヒ)。緋月三日の…チチオヤ…だ。少々軟禁状態の身の上だから外のお客さんと会うのは久しぶりでね、…ココロヨリ…歓迎するよ』 思いのほかよく通る、落ち着いた声音。 それが緋月月日さんと俺の初対面だった。 43 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 19 35 ID TyGkuzAn [6/20] 緋月月日(ヒヅキツキヒ)。 43歳。 和装の男。 緋月零日(ヒヅキレイカ)の夫。 そして、緋月一日、二日、三日の3兄妹の父。 職業は株式運用とIT関係のコンサルタント。 知的で落ち着いた、しかしどこか本心を読ませない美声。 病的なまでに白い肌。 180cmは余裕である高身長。 やせ形で、スラリとした体格。 と、言っても痩せぎすではなく、今時あまり見ない作務衣を見事に着こなす、同性の俺でも惚れ惚れとする均整の取れたスタイルの持ち主。 一挙一動がどこか優雅で、若い頃はとてつもなくモテたのだろうというのが顔を見るまでもなく推察できる。 と、言うよりそもそもその顔は見えない。 顔には全体を覆う鉄仮面。 その上首には鎖の付いたゴツい首輪。 その長い鎖がどこから伸びているのか、考えたくはない。 和装にして異装。 嫌でも警戒心を煽られる様相。 それに、忘れてはいけない。 この人は、とんでもない男なのだ。 妻である緋月零日(ヒヅキレイカ、どんな人なのかはまだ知らない)さんだけでなく、実の娘である二日さんにも手を出しているらしいのである。 44 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 20 59 ID TyGkuzAn [7/20] 「そんなに…カタク…ならないでくれよ」 俺を招き入れた月日さんは飄々とした口調で言った。 「この…カメン…は妻の意向でね。彼女に言わせれば、私の素顔は…ハンサム…過ぎて浮気を誘発するそうだ」 独特の溜めを作る話し方で、月日さんは続ける。 「居間に…アンナイ…しよう。何か用意をするよ」 「いえ、お構いなく。プリントとかを渡しに来ただけですしー」 月日さんの言葉に、やんわりと俺は言った。 「…エンリョ…はいらないよ。正直、私は君に興味を持っている。以前、二日からもらった情報だけではやはり不十分だからね。1つ、このおじさんにつきあってくれたまえ」 正直、俺的にはすぐ三日に会うつもりだったのだが、月日さんに促されるままにリビングに向かってしまう。 意外と強引だ。 清潔感のあるリビングに通され、ソファに座る。 しかし、思ったよりもお金持ちの家だ。 調度品にも嫌味にならない程度にお金がかかっているのが分かる。 上流とはいかないまでも、中の上くらい? このソファもわりかしフカフカしてるし。 「私と妻はいわゆる…トモバタラキ…という奴でね。双方ともにそれなり以上の稼ぎはあるんだ」 自慢する風でもなく、菓子の用意をしながら月日さんは言う。 「もっとも、数年前までは…ミカ…も病気がちだったから、金銭的な余裕ができたのはあの娘が中学に進級した頃からだけどね」 そう言いながら、市販のジュースとクッキーを添えて出してくれた。 小学生か、と思わなくもないが、折角出されたものを食べないのもよろしくない。 「いただきます」 俺はクッキーに手を伸ばして言った。 「高校生の若者としては、恋人の家族というモノは…タイクツ…かな?」 クッキーをほおばる俺に、月日さんは穏やかな声で言った。 に、しても『恋人』か。 改めて言われると、くすぐったいフレーズだなぁ。 「そんなことは無いですよー。アイツの……三日さんのお兄さんやお父さんとは以前からお会いしたいとは思っていましたし」 過保護、だとは思うが。 いや、どうなのだろう。 他所の家庭のことはよくわからない。 「…ナルホド…。分析するにどちらかと言えば…カズヒ…の方に会いたかった、というのが本音のようだね」 ドキリ、とすることを言ってくれる。 月日さんの言うように、むしろ一日お兄さんの方が気になっていたところはあった。 だって、お兄さんを語る三日ってどこかキラキラしてるんだもの。 隠してるつもりらしいけど、明らかにブラコンだもの。 ヤンデレって設定が崩れかかるレベルで。 もし、三日の攻略にライバルがいるとしたら明らかに一日さんだろう。 「悪いね。…カズヒ…の奴が行方不明で」 「行方不明!?」 月日さんが、何でもないことのようにすごいことを言った。 溜めを作る場所を明らかに間違ってないですか。 「まぁ、行方不明と言っても心配はいらない。元々、時折…フラリ…といなくなる性質だったからね」 月日さんは何でもないように言うが、それはそれでどうなのだろう 「どこかで野垂れ死んでなければ、今頃…イギリス…かどこかの屋敷を乗っ取って、芝居がかった口調の胡散臭い家主をやってる頃じゃないかな?」 胡散臭いとかあんたが言うな。 「何で、そんな両極端且つ具体的な推測なんですか?」 「…ハッハッハッ…」 俺がそう言うと、笑って誤魔化された。 いや、仮面姿だから本当に笑ってるのかは分からないけど。 全く持って本心を、正体を読ませない人だ。 赤黒く光るその鉄仮面の下にどんな素顔が隠されていても驚かないかもしれない。 本当に、やり辛い相手だ。 45 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 22 05 ID TyGkuzAn [8/20] その時、ふと目の前のテーブルの上の雑誌が目に入った。 『TVプラス』、『特撮NEW-LIFE』、『特撮宇宙』、『スーパーヒロインタイム』などなど、テレビ番組や特撮番組関係の雑誌が置かれていて、いずれも1人の女の人が表紙を飾っているのが共通していた。 華奢で小柄な女性である。 年齢は十代前半、小学校高学年か中学生くらいに見える。 ツインテールにした長い黒髪。 雪のような白い肌。 身につけている衣装は、体系を隠すほどにフリルを多用した、黒を基調とした毒々しいゴシックな服。 所々に髑髏の異称が入っており、ゴスロリとゴスパンクを足して2で割ったようなデザインだ。 そんな衣装とは対照的に、くりくりとした大きな眼をしていて、桜色の唇には無邪気な笑顔を浮かべている。 『そっち』の趣味が無い人でも、思わず頭を撫でたり愛でたりしたくなるかわいらしさをもった女性だ。 雑誌には、彼女の笑みに不釣り合いなおどろおどろしい字体で『悪のヒロイン特集』、『超人戦線ヤンデレンジャー・零咲えくり(魔女大帝役)独占インタビュー』といった文字が躍っている。 ヤンデレンジャー、というのは休日朝に放映されているヒーロー番組で、魔女大帝というのはその悪役、狂愛帝国のボスだ。 俺の父もメイクとして撮影に携わっている番組で、そのよしみで俺もしばしば視聴している。 そう言えば、前に三日も「家族で特撮番組を観てる」とか言ってたっけ。 それにしても、視聴者の女児とロリコンオタクに大人気の魔女大帝が表紙の雑誌ばかり買い集めることもないだろうに。 何も知らない訪問者が、家族に女児かロリコンオタクのド変態がいるものかと誤解してしまうではないか。 「・・・ロリ・・・は良い。ヒトのつくりし文化の極みだよ」 月日さんが、しみじみとした口調で言った。 ってオイ。 「いや、間違えた。・・・ゴスロリ・・・は良い、だった。・・・ロリ・・・では事実に反しているからね」 「・・・・・・」 月日さんが言い直すのを、俺は渋い顔をしながら聞いていた。 本当に言い間違いだったのだろうか。 46 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 22 44 ID TyGkuzAn [9/20] 「それで、千里くん。…ミカ…とはヤッたのかい?」 「ぶほぁ!」 ジュース吹いた! 不意打ち気味の月日さんの言葉に、俺は咽ながらもハンカチでテーブルを拭く。 「良い・・・リアクション・・・くれるね、君」 咽る俺を見ながら、月日さんが飄々として言った。 「ゲホ、ゴホ…ず、随分とストレートにお聞きになるんですね」 ストレートどころじゃねぇ! 娘のヤッたヤらないなんて話を普通にする父親がいるか!? さっきのセリフといい、変態か、変態仮面なのか、この野郎!? 「その様子だと…マダ…のようだね」 「人間嘘発見器ですか……?」 そう言えば、この人はあの二日さんのお父さんなのである。 いくら首から下はマトモっぽくても、二日さんに匹敵する発言をかましてきても不思議では無かった。 ……って言うか、二日さんのエロトークはお父さん譲りか。 あの人のエロの師匠はアンタか、月日さん。 「つまり、まだ…アトモドリ…が効く段階というわけか。道理で三日が日々気に病むわけだ」 「や、俺ら割と世間でらぶらぶ(笑)だと評判ですよ?」 特に、エロ大王の生徒会長からとか。 美少女に目が無い会長閣下は、やはりというか何というか、一時期三日に目をつけていたことがあったらしい。(性的な意味で) それもあって、しばしば冷やかし半分にはやしたてられるのだ。 あの人も大人げないというか何というか。 その代り、いろいろ助けてくれているのであまり悪くばかりも言えないのだけれど。 「私が君くらいの歳の頃は…ヤリマクリ…だったものだがね」 「それはそれでダメだろがこの変態仮面!」 しまった、つい本音が。 「あ、スイマセン」 「いや、…カマワナイ…。自分がどう見られているのかくらいは検索済みさ」 本当に気にしていない様子で彼は言った。 「ただ、三日の若々しく瑞々しい肢体は親からみても…ミリョクテキ…だからねぇ。知ってるかい、あれでも脱げば意外と…」 「脱がしたんじゃねーだろなテメェ!」 緋月月日、娘の二日さんに手を出している容疑のある42歳である。 「失礼な。私は家族を…タベチャイタイ…くらい愛している美形中年だよ」 「性的な意味で!?」 「まったくもってその通り」 「肯定したー!」 引いた。 さすがに引いた。 具体的には5キロくらい。 「ハハハ。そんなに引かなくても大丈夫さ。…タベタ…とは言ってないだろう?」 「そ、それもそうですね。すいません・・・・・・」 「三日に…ダケ…は手を出して無いさ」 「今『だけ』って言ったー!」 「…ハッハッハッ…」 笑ってごまかすな。 「こんなもの…ジョウダン…だよ、冗談」 「じょ、冗談ですか……」 「…ザレゴト…でも良いがね」 笑いながら言う月日さんに、ホッと胸をなでおろす。 そうだよなー、妻と娘とで二股、とかエロゲーみたいな展開はそうそうないよなー。 「……と、言うことに…シテオコウ…」 「今小声で何て言いました!?」 「…ジョウダン…だよ」 心臓に悪い冗談は止めてほしい。 「と、言うか千里くん。私の言うことを…ホンキ…にしているときりが無いよ」 どこか、シニカルな声音で、月日さんは言う。 その表情の読めない仮面の下で、彼がどんな顔をしているのか、俺には想像もつかない。 「私は、…ウソツキ…だからねぇ」 47 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 23 20 ID TyGkuzAn [10/20] 「…カイダン…を上って一番奥が三日の部屋だよ。これは…ホントウ…」 月日さんからそんな説明を受けて、俺は緋月家の階段を上っていた。 月日さんは案内と称して俺に付いてくる気満々だったが、いきなりかかってきた一本の電話によって阻止された。 今も階下から「ウワキじゃないウワキじゃない。誰ともリビングでフタリッキリになんてなっていない。ウン、なってないから。それよりレイちゃんこれから撮影だろ。いやいやゴマカシテ無いって」という月日さんの声が聞こえる。 ちなみに、レイちゃんこと零日さんとは月日さんの妻、つまり三日のお母さんだ。 「あんな捉えどころの無い人が旦那さんだと、零日さんたちも大変だ」 俺は1人ごちた。 いや、今しがた俺が一番大変だった気がするが。 見事なまでに、月日さんに遊ばれていた。 とはいえ、月日さんは仮面野郎な上にかなり胡散臭い人だったが、同時に家族に対する愛情は深い人のように感じた。 彼自身、家族に対する愛情は『タベチャイタイ』くらいなんて言っていたし。 軟禁状態、なんて嘯いていたけれど、家から出ようともしない(仕事は専らネットを通して行っているそうな)のは、家族といる時間を増やすためなんじゃないかな、なんて思う。 楽観的で非現実的な邪推なんだろうけど。 「ウチの家族とは、全然違うなぁ」 良くも、悪くも。 ウチは親一人子一人というたった二人の家族で、親は家を空けている時間が圧倒的に長い。 と、言うより、俺達2人が会ったり話したりする時間が圧倒的に少ない。 甘えたい盛りの時にはそれがひどく寂しくて、駄々をこねて親を困らせたこともあった。(だからなのか、しばしばささやかなことで嫉妬心を抱く三日の気持ちは何となく分かる気がする) その事実は、ささやかな傷跡ではあるけれど、それでも、俺に対しては十二分の教育費と愛情を注いでくれていると思うし、今更それに不平不満を言うつもりはない。 けれど、誰かが待ってくれてる家というのも、誰かを待てる家というのも… 「羨ましく思わなくもない、かな」 そこで、階段を登りきる。 奥から三番目の部屋に、『☆三日チャンの部屋☆』というえらいファンシーなプレートがかかっている。(誰が作ったんだろう?) 「……一番奥じゃないじゃないか」 ちなみに、その隣は『二日乃部屋』と筆で達筆に書かれた飾り気のないプレートがかかっている。 廊下のゴミ箱に三日のと同じような、ファンシーな奴のが捨ててある気がするが気のせいだろうか? そのまた隣、一番奥の部屋には『KAZUHI S ROOM』と流麗な筆記体で書かれたプレートがかかっている。 そのプレートやドアノブにはやや埃がかぶっており、持ち主が短くない期間戻っていないことを伺わせた。 「月日さんも、全部が全部嘘を言ってたわけでも無いみたいだな」 とりあえずそれだけを小さく呟いた。 ともあれ、今は三日だ。 俺は彼女の部屋を軽くノックして声をかける。 48 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 24 03 ID TyGkuzAn [11/20] 「三日、俺、御神。風邪ひいたって聞いて、お見舞いにきたんだけど、入っていいかな?」 お見舞いなんて初めてだから、なんとなく妙な台詞になってしまう。 「…はい、大丈夫ですよ。朝からずっと」 すると、扉の向こうから聞きなれた儚げな声が聞こえてきた。 心なしか、いつもより弱々しく、低い声に聞こえる。 風邪のせいだろうか。 「じゃあ、入るね」 そう言ってドアノブをひねろうとして、俺はふと思う。 思えば、三日の部屋にくるのなんて初めてである。 と、言うより女の子の部屋に入ること自体初めてなんじゃなかろうか? このドアの向こうには、どんな光景が広がっているのだろう。 ぬいぐるみとかが置かれたかわいらしい、女子然とした部屋だろうか?(イメージ貧困) それとも、ヤンデレなお母さんの教育の行き届いたおどろおどろしい部屋だろうか? その上、三日の部屋着(パジャマだろうか)が見れたりするわけで… 「・・・・・」 自分の顔が熱を帯びるのを感じる。 三日の部屋なのに!たかだか三日の部屋なのに!(だからこそだバカ) とはいえ、扉の前で固まっていても仕方ない。 鬼が出るか蛇が出るか? 天国か地獄か? いざ行かん、本作メインヒロインのプライベートルームへ! 「……ってあれ?」 そこは、見慣れた光景だった。 使い古された小ぶりなクローゼット。 机上に、昨日宿題をした時のままシャーペンや消しゴムが無造作に置かれた勉強机。 その隅に置かれた、使い古しのシルバーのノートPC。 三段の本棚は、一番上が文庫や新書、二番目がマンガ、三番目が料理の本や雑誌がギッシリ詰まっていて、この月曜に買ったばかりのマンガ雑誌も収まっている。 その上には春休みにバイトした金で音楽プレイヤー用スピーカー(一応特撮グッズで、所々にヒーローのシンボルマークが刻まれている)が置いてある。 その向かいには白い蒲団が敷かれたベッドがある。 明らかに男子の部屋だった。 って言うか俺の部屋だった。 さすがに、窓の形や部屋の広さは微妙に違ったが、それ以外のレイアウトは気味が悪いほどに、同一だった。 ペアルックならぬ、ペア部屋ってヤツ? 好きなアイドルと同じグッズを身につけるファン、というのは聞いたことはあるが、それにしたって部屋まで一緒にするなんて話は聞いたことも無い。 「ただい……ま?」 思わずそう言った。 「…おかえりなさい、千里くん」 三日が、それにナチュラルに答えた。 49 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 25 34 ID TyGkuzAn [12/20] しかし。 しかしである。 そんな描写はこの際どうでもいい。 それを遥かに上回るような桃源郷がそこにあった。 と、言うかいた。 三日である。 三日は洋装のパジャマを着ていなかった。 代わりに、浴衣を着ていた。 浴衣姿の三日である。 浴衣女子の三日である! この衝撃がお分かりいただけるだろうか。 三日は何度となく純和風の容貌と言われ続け、和服が似合うであろうことは想像に難くなかった。 (実際、以前はよく身に着けていたらしい。俺は見たことが無いが) それが今目の前にいる。 浴衣のデザイン自体は、黒字に鮮やかな彼岸花をあしらった、地獄少女も真っ青な重苦しい柄である。(あの変態仮面か二日さんのチョイスだろうか。あの人たちとは色々な意味で話し合う必要がありそうだ) しかし、黒いだけに所々にのぞくまっ白い肌が際立つというコントラスト。 その上、三日のカラスの濡場色の見事な長い髪が浴衣の上にかかることで得も言われぬ美しさを醸し出している。 その黒髪が、少し首を動かすだけで、はらりと胸元に移動する。 やや乱れ、ゆるやかなカーブを描く胸の谷間が露になった純白の胸元に。 その上、風邪をひいている為か頬は朱に染まり、いつになく艶っぽい雰囲気をかもしだしている。 その光景に、俺は思わず生唾を飲み込んだ。 女の子って、服装ひとつでこんなに雰囲気が変わるんだ・・・・・・。 「・・・お待ちしておりました、千里くん」 その場に立ち尽くしている俺に、彼女が言った。 桜色の唇が動くのが、やけに色っぽい。 「あ、ああ・・・・・・」 いつまでも硬直してもいられない。 俺は無理やりにも我に返る。 「これ、先生から預かったプリント。机の上に置いておいて良いかな?」 鞄の中からファイルを取り出して、俺は言った。 「・・・そんなことよりも、こちらに来ていただけませんか?適当に、このベッドにでも座って」 風邪のせいか、いつも以上にどんよりと濁った黒い瞳をこちらに向けて三日は言った。 「んじゃぁ、この机の所にでも……」 「このベッドに座って」 机の上にファイルを置き、椅子に座ろうとする俺に三日は先ほどの言葉を繰り返す。 ってあれ、なんか変わってない? 「いや、そこには座れないっしょ。俺なんかが来たら一気に狭「座、って」 三日の台詞が一言だけになった。 俺はその言葉に従い(断じて三日の色香に圧倒されたわけではない)、彼女の眠るベッドに座る。 ベッドを揺らしたり三日の足をつぶさない様にしながら。 50 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 26 36 ID TyGkuzAn [13/20] 「・・・千里くん」 俺が座り終えるか終えないかくらいのタイミングで、三日がガバッと抱きついてきた。 首筋に飛びつくように、腕を絡め、体重をこちらに預けてくる。 上半身が密着状態になる。 「!?!?」 密着状態になったことで俺の顔に三日の絹糸のように柔らかな髪があたるとか、あたってるのはむしろ柔らかな胸だとかって何で俺こんなことでパニクってるのかな!? 「・・・ん、はむ・・・、ぅん、ぴちゃ・・・」 「ゥン!?」 やおら、首に柔らかな感触が連続して触れる。 これは、もしかして舐められてるのか? 首を? 三日に? うわぁ。 何だ、この言い知れぬ背徳感は。 法的に何ら問題ないことをしてるはずなのに。 「・・・れろ、はむ・・・、うん・・・」 「ん、くぅ・・・・・・。み、か・・・・・・」 三日が、俺よりも年下にも見えるような小柄な少女が、体を密着させて俺の首に舌を這わせている。 その動作のたびに、長い髪が蛇のようにうねる。 一頻り舐め倒すと、三日は俺の体から離れた。 何だか知らんが、キスよかエロかった。 もう数秒続いてたら理性がトんでたかもしれない。 と、そんな色惚けな頭をすっ飛ばす台詞がこちら。 「・・・他の女の匂いがします」 「いや、今舐めてたよね!?」 ああ、良かった。 ようやくいつものノリに戻った。 これ以上エロい空気が蔓延していたらどうなっていたことか。 まぁ色々間違ってる気はするが。 「・・・4人、いえ5人くらいですか?」 「いやいや、どこまでカウントしてるのさ」 たしかに、今日俺は4人の女性と話した記憶はあるが、だからといってやましい事は一切無い。 「・・・5人、殺さなくっちゃ」 黒曜石のような瞳に空ろな笑みを浮かべて三日が言った。 この上なく禍々しく、それ以上に危うい笑みを浮かべて。 って言うか普通に危なっかしい。 「実行不可能なことを言うな」 「ふみゅ!?」 俺は、半ば無理やりに三日の上半身をベッドに押し戻した。 「って言うか、今は体を休めることだけ考えなよ。あと、俺はそのヒトたちとは何も無かったから」 「・・・それでも」 三日が食い下がる。 「・・・私と千里くんの会う時間を奪った相手なんですよ?妨害したんですよ?邪魔者なんですよ?殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと。お姉様、朱里ちゃん、ユカリ先生、トショイインさん、会長さん、河合さん、みんなみんな殺ざ・・・ゲホゲホ」 言い終わる前に咳き込む三日。 風邪をひいていると言うのに、長台詞なんか喋るからだ。 51 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 27 43 ID TyGkuzAn [14/20] 俺は、半ば無理やりに三日の上半身をベッドに押し戻した。 「って言うか、今は体を休めることだけ考えなよ。あと、俺はそのヒトたちとは何も無かったから」 「・・・それでも」 三日が食い下がる。 「・・・私と千里くんの会う時間を奪った相手なんですよ?妨害したんですよ?邪魔者なんですよ?殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと。お姉様、朱里ちゃん、ユカリ先生、トショイインさん、会長さん、河合さん、みんなみんな殺ざ・・・ゲホゲホ」 言い終わる前に咳き込む三日。 風邪をひいていると言うのに、長台詞なんか喋るからだ。 「誰も俺らを妨害しようなんて思っちゃいないでしょ。むしろ、明石なんてお見舞い来たがってたし。あと、さり気なく二日さんを加えない。明らかにお前を心配してるし」 カバンから出したのど飴を三日にほうりつつ、俺は言った。 二日さんは『力ずくで』なんて言ってたけど、要は三日に安静にして欲しかったわけだし。 あの人は妹に対してツンデレ過ぎると思う。 「・・・・・・・・・」 のど飴を受け取ると、三日は布団をかぶり、恨めしげな目だけを俺のほうに向けてきた。 「今日は、やけに病みモードじゃないか、風邪だけに」 「・・・今日はずっと、待ってました。誰もいないこの部屋で」 とうとうと語りだす三日。 「家にはご家族がいたでしょ」 それに対して俺は本心からツッコミを入れた。 つい先ほど、俺は家族のいる家庭の良さをかみ締めたところである。 「二日お姉様は大学の授業で朝からいませんし、お母さんは今日お仕事で帰りません。お父さんは・・・」 「2人っきりか!それは大変だ!っていうか危険だ!」 畜生、よりにもよってあんな変態仮面とうら若き乙女を2人きりにするなんてどういう了見だ! 「・・・なんだか、うちの父親がとんでもない変質者の類として千里くんの脳に登録された気がします」 「違うの?」 「・・・・・・・・・そういう話ではなくてですね」 三日が、目をそらした。 話もそらした。 「・・・私はずっと待っていたんです。ただ、待っていたんです」 「何を?」 「・・・何もできずに、何も飲まずに、何も食べずに」 「食べれ!しっかりきっちりご飯食べて栄養とらないと治るもんも治らないって!」 「・・・薬だけを呑んで」 「薬じゃ足りないって!ちょっと待っててよ・・・」 とりあえず、月日さんにお願いして台所を借りよう。 他所の台所を借りるのは気が引けるが、何か作って食べさせないと・・・・・・ しかし、 「・・・駄目」 立ち上がった俺の手をしっかりと掴み、三日は言った。 「遠くに行くなんて駄目。離れるなんて駄目。駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄けほ駄目駄目駄目けほけほ駄目駄目駄目駄目駄目駄ゲ駄目駄目駄目駄目駄目駄目ゲホゴフぇえ」 咳き込んでも言葉を続けようとしたため、三日はよりひどい咳をすることになった。 「ゲホ、ゴホ、ガフォア!」 「ちょ、大丈夫!?」 「ゴホガホゲホガホゲボドホバドー!」 「咳どころじゃねぇ!」 いつのまにか、俺はまた座って三日の背中をさすっていた。 三日は激しくせき込みながらも、掴んだ手を放そうとしなかった。 その小さな手は、なんとなく、どこかさみしげに見えた。 「もしかして、今日ずっと会えなくて寂しかった……とか?」 「…ゲホ…ガハ……コクン」 俺の言葉に、三日は咳き込みながも頷いた。 「…ずっとずっと来てくれないから、気が狂うかと思いました」 きゅっ、と俺の手を握りながら三日は言った。 その手を、俺は優しく握り返した。 「俺も、お前と会えなくて、何か、ヤな感じだった」 「…ヤな感じ?」 「具体的には、弁当を作る気が失せるくらい」 「それは相当です!」 三日が驚愕の表情で言った。 俺って、そんなに料理キャラかしら。 52 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 28 47 ID TyGkuzAn [15/20] 「それこそ相当……、でもないか、普通だ」 「…むしろ、それ以外では動きません」 「それは重症だ!」 まさかとは思うが、本当にそういう設定じゃあるまいな。 そのちんまいボディーはその伏線とか? 「…あ、いえ。これは、多分昔身体が弱かったかららしいです」 少し恥ずかしそうに、三日が言った。 そう言えば、月日さんがそんなことを言っていた気がする。 「…お腹とかに、昔の手術跡が残ってたりしてちょっとニガテなんですけれど…。そういうの見たい、ですか?」 「いやいやいやいやいや」 浴衣姿でお腹を見せようとすると、ほとんど半裸になるじゃないの。 この辺、どこまで計算なのか天然なのか分からないから困る。 「そうじゃなく―――って、何の話をしていたんだっけ?」 何やら流れがグダグダになってきたので、軌道修正軌道修正。 「…私が寂しかったという話?」 「浴衣の三日がエロいって話?」 同時に言って、同時に赤面。 「…恥ずかし……。恥ずかしすぎる……。素直に『寂しい』とか恥ずかしすぎ……」 真っ赤な顔を隠すように、三日が被った布団の中からそんな呟きが聞こえてくる。 かく言う俺も、悶絶していた。 いや、だってありえないだろう。 女の子を目の前に『エロい』とかセクハラだろう。 自分で自分の首を絞めるにも程がある。 「や、違くて、ただ、すごく可愛いって―――可愛い?ってか綺麗ってかなんと言うか」 俺の言い訳にもならない言い訳に、ベッドの中で悶絶していた三日の動きがピタリと止まる。 「・・・・・・・・・褒められた」 ぎゅう、と三日が体を丸めるのが分かる。 「・・・・・・・・・褒められちゃった」 そう呟く三日の声は、本当に幸せそうで、思わずこっちまで幸せな気分になるようで。 「・・・あの、千里くん」 布団の中から、三日が囁く様な声で言った。 「・・・私、綺麗ですか?」 「どこぞの都市伝説みたいな聞き方すな」 マスクをはずしたらすごいことになったりしないよな。 「・・・綺麗、ですか?」 三日が再度言った。 ギャグで誤魔化されてくれなかった。 「まぁ・・・綺麗だけど。浴衣との相乗効果で」 隠す理由もないので、俺は意味なく目を逸らしながら言った。 浴衣云々はほとんど照れ隠しだけど。 って言うか、三日にここまで萌えさせられるなんて思わなかったのですよ。 そうか、三日って萌えキャラだったのか・・・・・・。 初めて知った。 「・・・浴衣が無いと、駄目ですか・・・・・・」 シュンとした声で三日が言うので、フォローする。 「いやいやいや。ンな意味じゃないって。確かに浴衣は偉大だけど、あくまで服で添え物、おまけみたいなモンでさー・・・・・・」 いつものペースを取り戻しつつ、俺は言葉を続ける。 「これは親が良く言ってたんだけど、服とか化粧ってのは元来身に着けてるヤツの良い所を120パー引き出すのが理想だとかで、今の三日がその状態?みたいな?」 なぜ疑問系だ、俺。 「・・・浴衣が無くても綺麗ですか?」 布団の中から、目元だけを覗かせて、三日が言った。 「YES!YES!YES!YES!YES!」 なぜジョジョだ、俺。 「・・・なら」 言って、三日は布団の中から上体を起こす。 そして、既に緩くはだけられた浴衣の襟に手をかける。 「・・・これでも、綺麗だって言ってくれますか?」 53 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 29 26 ID TyGkuzAn [16/20] 微かな衣擦れの音を立てて、三日の体から浴衣が落ちる。 「え、ちょ・・・まっ!?」 俺の心の準備など待つはずも無く、三日の裸体が露になる。 染みひとつ無い、真っ白な肌。 小さな肩。 折れそうな程に細い、けれど伸びやかな腕。 緩やかなカーブを描く胸には桜色の乳首。 やや痩せ過ぎなきらいはあるが、細い腰。 そして、胸元から腰にかけてまで、痛々しい傷痕。 手術痕。 決して、目立つようなものではない。 けれど、無垢な真っ白な肌にあるからこそ、その傷跡は目立つ。 真っ白な紙の上の、たった一点の染みが目立つように。 しかし、 「・・・・・・綺麗だ」 俺は、その傷痕を観て心からそう答えた。 「・・・本当に?」 「もちろん」 おずおずと聞く三日に、俺は即答した。 「・・・気持ち悪くないですか?」 胸の傷をなぞるようにして、三日が問いかける。 「何で?」 割と素で、俺はそう答えた。 確かに、その傷跡は目立つ。 目立つけど・・・・・・ 「何ていうか、男の勲章、みたいなものでしょ?」 「・・・私、女ですよ?」 もっともなツッコミだった。 うーみゅ。 言語化しづらいニュアンスをうまく伝えるのは難しい。 「俺は経験無いから分からないけど、そういう手術ってやっぱ受ける方も大変らしいじゃない。だから、その傷跡は―――」 傷跡、を直接触るとセクハラなので、それをなぞっていた三日の手を握る。 「三日が頑張った記録じゃないか」 「・・・千里・・・・・・くん」 その手をぎゅっと握り返す三日。 「・・・ありがとうございます、千里くん。・・・この傷跡は、裏設定的にちょっとコンプレックスみたいなものだったので。・・・お医者様からは、その内目立たなくなる、とは言われているのですが」 確かに、ビキニの水着とか着れないだろうからなぁ。 まぁ、体型的に着ても似合わなそうだけど。 「そっか。ちなみに、俺の裏設定的なコンプレックスは身長だったり」 「ええ!」 俺の発言に驚いた顔をする三日。 「・・・すごいかっこいい長身なのに」 「だからだよ。『御神くんおっきくて怖い』なんてガキの頃何回も言われてさー。ほら、背が高いとどうしても見下ろす感じになるでしょ?それがどうにも相手をビビらせちゃって」 今思えば、昔の俺に愛想が無かったからでもあるんだろうけど。 「・・・私はちっちゃいから、大きいのは怖いというより憧れますけど」 「ああ、二日さんとか」 「・・・あとは、女装したお兄ちゃんとか」 すさまじい美少女らしいからな、女吸血鬼一日さん。 2人して人間的なスペックも高いし。 美形で身体能力も高いらしいんだものなー。 一日さんは更に成績優秀、の文字が追加されるが。(ちなみに、二日さんの学校の成績は人並み程度。必要なこと以外には本気出してなかった可能性も高いけど) 少女漫画の主人公かよって感じである。 そんな相手に囲まれていたら、確かに長身に対する憧れは助長されるか。 っと、それはともかく。 54 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 29 49 ID TyGkuzAn [17/20] 「ええっと、三日サマ」 「・・・何でしょう、千里様」 「体も冷えますし、そろそろ服を着て下さいませんでしょうか」 今更のように目を逸らしつつ、俺は言った。 特に描写はしてなかったけど、今までずっと俺の顔真っ赤だったんだろうなー。 「そんな!」 驚いたように三日は言った。 その対応は不条理だと思う。 「・・・綺麗って言ってくれたから、私を押し倒してきてくれるかとばかり思っていたのに!」 「押し倒すか!」 何を血迷ったことを言ってるんだこの病人は。 やっぱりアレか? 月日さんのせいか? あの変態仮面、娘の教育に悪影響しか与えて無いんじゃないのか? 「ンなことしたら風邪が治らないでしょうが」 「・・・治らないんですか?」 「具体的な原因を皆まで言わせないでー!」 とにかく、さっさと着せないと三日の健康にも、ビジュアル的にもよろしくない。(2m近い男と半裸の小柄な女の子―――犯罪の臭いしかしねぇ) 俺は、三日のはだけた浴衣を手に取り――― 「時を越えて、私、参上・・・」 背後のドアが音も無く開かれ、1人の女性が現れた。 黒髪ロング、長身の美女。 「・・・・・・コンニチハ、ニカサマ」 「ええ、御機嫌よう・・・。義弟くん・・・」 俺が何とか答えた相手、三日の姉二日さんはうっすらと笑った。 半裸の妹さんと、彼女の服を掴んでいる男。 それを二日さんがどう解釈するかは明白な訳で・・・・・・ 「・・・こ、これは違わないけど違うんですよ、お姉様」 「良いんですよ、別に・・・」 要領を得ない三日の言葉に、やはりうっすらと笑いながら二日さんは言った。 ただし、笑っているのは口だけで、目は全く笑っていない。 「私は別に妹が心配で早く戻って来たわけでもありませんし、妹が義弟くんに抱かれようが肉奴隷にされようが一向に気にしませんわ・・・。ただ・・・」 二日さんの光を反射しない瞳が、こちらを射抜くように見つめている。 「最近私はお父様とご無沙汰だったというのに、それを差し置いてまだ明るい時間から乳繰り会っている様子を目の当たりにしていると湧き上がるこの気持ちは、何なんでしょうね・・・?」 「・・・愛情?」 三日の言った空気の読めない一言に、二日さんの堪忍袋の尾が切れた音が聞こえた気がした。 「ありがたく思いなさい、2人とも・・・。お仕置きタイムです・・・」 「「ぎゃー!」」 それこそ吸血鬼を通り越して鬼のような顔になった二日さんを前に、俺たちは仲良く悲鳴を上げた。 その後の地獄絵図に関しては・・・・・・思い出させないでくださいすいません。 55 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 30 30 ID TyGkuzAn [18/20] おまけ 数日後 「ンで、しばらく2人して休んでたワケだけど、そんなことが会ったのねぇ」 体中にたくさんのガーゼや絆創膏を貼り付けて学校に来た俺達2人を見て、明石が言った。 「別に、二日のせいばかりじゃないけどねー」 俺は方をすくめて言った。 「・・・千里くんは、ずっとずっとずーっと、私につきっきりで看病してくれたんです」 ぎゅ、っと俺に腕を絡ませて三日は言った。 柔らかな胸の感触が、あの時を思い出させるんですが。 「俺はてっきり、みかみんが監禁陵辱されてんじゃねーかと心配してたンだぜ」 葉山が言った。 「かんきんりょーじょくって・・・・・・まぁ、ある意味それに匹敵するほどすさまじいことがあった気はするけど」 仮面のおっさんに、お仕置きタイム、それに・・・その・・・三日のもにょもにょ・・・ 人生で最高に『濃い』数日間だった。 「ああ、やっぱり手遅れだったか、みかみん」 何を思ったか俺のほうを真顔で見る葉山。 「まぁ、その何だ。まだ野良犬にでも噛まれたものだとおもえばな、ウン」 「いや、たぶんそれ違う・・・・・・」 妙な勘違いをしたっぽい葉山に、俺は渋い顔で言った。 「いやぁ、愛する人にされるならアレでしょ?『我々の業界ではご褒美です』ってヤツ」 まるで当然のように明石はそう言って、それから自分の言葉に落雷を落とされたような顔をする。 「その発想なら・・・・・・私が正樹に何をしてもご褒美!?」 そう言って、明石は葉山の肩をがっしり掴んだ。 「正樹、ご褒美欲しいでしょ?」 「何だか知らんがそんなご褒美はいらねー!」 相変わらずフラグを叩き折るはやまん。 「欲しいでしょ?」 「いらねぇ!」 「欲しいよね?」 「だからいらんて!」 「欲しいはず」 「いらねぇっての!」 「欲しい」 「いらん!」 「欲しれ」 「何だその欲しいの命令形みたいなの」 「欲しがりなさいよ!」 「だからいらねぇって!」 そんなやり取りが、教室にユカリ先生が来るまで続いたのは、また別の話。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/332.html
885 :ヤンデレ妻と初詣 [sage] :2008/06/12(木) 12 08 11 ID qqyAx98Q 埋め代わりにヤン妻小ネタを投下だよ エロ?無いよ 1月某日 晴れ 「あなた、そろそろでかけないと…せっかくの初詣なのに、人混みでおまいりできなくなっちゃいますよ」 もたもたと出かける準備をしていると、むくれた様子の妻に抱きつかれた。 あまり初詣に気が乗らない俺とは違い、妻はいつの間にか着物まで着て準備万端なようだ。 そういえば、妻の着物姿を見るのは結婚式の白無垢以来か。 今しがたのんびりするなと怒られたばかりだというのに、普段とは違う雰囲気の妻に思わず見とれてしまう。 …それにしても珍しい色の晴れ着だ。緋色…血色? 俺が不思議そうに晴れ着を見ているのに気付いたのか、 「これ、おかあさまからおくられてきたんです。いい染料がてにはいったからって」とはにかみながら答えてくれた。 よりによって俺の実家から…着物のことは詳しくないからよくわからないが、 染料というのは一般家庭でも簡単に入手可能なのだろうか。 「そうですね…素材ならそこらじゅうにいるんですけれど、やっぱり連続で狩るとさわぎになってしまいますから… けつえk…染料を一滴のこさずしぼりとるのもたいへんですし。 おかあさま、必要なだけあつめるのに何ヵ月もかかったらしいですよ」 松茸並に貴重な染料だ。 「あ、でも後始末はすっごくたのしかったっておっしゃってました!」 わたしもおてつだいしたかったです、と何故か目をきらきらさせている妻に、 それならそのうち休みをとって一緒に里帰りしようかと提案する。 「えっ!ほんとうですか?」 この上なく嬉しそうな笑顔。言ってみて良かった。 そうこうしているうちに妻に手早くコートを着せられ、ぐいぐいと外に連れ出される。寒い… 神社に到着するまでの間、妻はずっと「トランクをひっぱりださなくちゃ」だの、 「お着物のつくりかた、おしえてくださるかしら」だのとはしゃいでいた。 早速里帰りする気満々になっている妻には悪いが、 正月明けでまとまった休みをくれるほどうちの部長は甘くない、と言い訳しておく。 「とれますよ、おやすみ」にこにこと微笑む妻。 「部長さんも……きっと、あなたにおやすみあげなきゃって、おもってますよ、うふふ」 もうすぐ仕事に追われる予定の俺を慰めてくれるのだろうか。 妻の優しさに感謝しながら、それなら神様には「休みが欲しい」と頼もうかなどと軽口を言い合う。 程なく神社に到着。 早めに来たせいか思ったよりも混んではいない。少し並べば境内まで辿り着けそうだった。 妻と参拝客の列に並びながら、今年の願いは何にしようかと思案する。 「休みが欲しい」も叶えてほしくはあるが、やはり新年最初の願い事なのだから もっと優先度の高いものにすべきだろう。 あれこれと考えていると、突然「あなたあぁ」と助けを求める妻の声に我に還った。 何事かと妻の方を見ると、妻は何故か帰りの参拝客の列に巻き込まれそうになっていた。 慌てて妻を引っ張り出す。どうやら俺と同じように考え事をしているうちに列に紛れ込んでしまったらしい。 ……正月早々うっかりしているものだが、おかげで今年の願い事を決めることが出来た。 『妻とずっと一緒にいられますように』…恋愛ドラマのようで照れ臭いが、これが一番の願いなのだからしょうがない。 たぶん、妻も同じことを願ってくれるだろう……もうはぐれないようにと差し出した手を、 恥じらいながらもしっかりと握り返してくれる妻を見る限り、 それは自惚れではないと期待しても良いのかもしれない。 おわり
https://w.atwiki.jp/norioyamamoto/pages/26.html
#ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 補欠選手のヤンデレウインディ。 元々はディグダのあなで捕まえたディグダ(ほけっちー)であった。ほけっちーの由来は「補欠」。 一度はバグの犠牲となり、おれこに全てを搾り取られて死亡した。だがその後も魂は残り、後に魂の抜け殻となったピカチュンと融合してガーディへと変貌した。その後も自我を保っていたため、ボックスに預けられはしたが埋葬は免れた。 しかしPart10にていきなりボックスの中でヤンデレという名のガーディとして発見された。 だがやまもと曰く、「どうでもいい」とのこと。 得意技は「あなをほる」である。ディグダ時代の努力の賜物と言えよう。 ヤンデレとなった当時は単なるネタとして受け流されていたが、 いつの間にかウインディに進化してカツラ戦で大活躍した。 18のレベル差をものともせず、リフレクターを駆使しながらディグダ時代に習得していた 「あなをほる」でカツラのポケモンを掘りまくった。 HPが満タンのポケモンに回復アイテムを使うなど、 カツラがバカだったこともあって無事にカツラ戦に勝利した(おれこの「うたう」でねむり状態にしていたことは内緒である) ヤンデレ 丿i ,,,ノi ... ..ノ; ;;´´ ( _ 、,、 ノ( i ;; i iノ⌒> ヽ ー´ ゝ ;;; i´ ノ _ノ´ ...,,,, 丶、,,,.. i ノ ´ ヽ;;;;;;;;ヽ⌒´´.. ヽ _/´ )\ ;;; ( ノ ̄ ヽ;;;;;;;;ヽ< ヽ( / ,,,,,ノ ヽ i i ´\ ヽ /⌒  ̄ /V V ;;; i /丶 ,,l´ i´ ;; ;; ノ 丿 l l i i ;;;  ̄丶 ヽ l/ ̄ ̄ヽ丶 ; ノ; i ノ `l \i ,,...,,,,,,,...,,,ヽ _ ノ ;; 丿 ー \ヘ_ ) ヽ ヽ \i´ ;;;丿i  ̄ノ ノ `i ` i ;;; i て´フ i l ;; /i i´ , iノ ;; ノiノ i/)ノ i´ `i ノ i /ー/ i´ i ;; ヽ /´  ̄i i i~ノ ノ i ,i、 ヽ;;;;/ √ノ i i ⌒´ノヽ i // i ;;;/) ヽ `i´ フ丶 i i i / ;; ヽ i ノ `ヽ ; / i /´ ヽ;;ノ ;; ;i i⌒´ヽ i ー ー ゝ i´ / / l ( ⌒ `i i i i´ ( ;;; / ⌒ V i `i ) \_,,,_/ ̄´ ヽ ,,,,,,,,/ `( ̄ ´;;;;;; (.... )  ̄ ` ̄´  ̄
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/848.html
4 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 40 13 ID Sf6DhUew 「9/16 日曜日」 こんなに愛しているのに、どうして。 こんなに近くにいるのに、どうして。 こんなに想っているのに、どうして。 どうして。 あなたは気付いてくれないのだろう。 いつでもあなたのことを考えているのに。 そう。毎晩あなたの写真とお話して、気がついたら朝が来てしまうくらいに。 好き。世界で一番好き。 こんなに好きなんだから、わたしの気持ちが叶わないはずないのに。 どうして。 5 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 40 48 ID Sf6DhUew ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ 「ん…」 …朝だ。 いつもの規則的な電子音で目が覚める。 毎朝のことだが、早朝の寝ぼけた頭にこの大きな音は辛い。 布団から腕を出してゆっくりとその音源に手を伸ばすが、どうやらわずかに届かない。 そうして俺の手が空を掴んでいると、ふいにアラーム音が止まった。 「んー…?」 なんだか分からないが小うるさい音が止んだようだ。 ここはひとつ、もう少しの間惰眠を貪ろう。そう思ったときだった。 「こらっ!」 「んあっ!?」 突然の怒鳴り声に驚き、微妙に情けない声を出しながら起き上がる。 すると、そこにいたのは由香里だった。 「お兄ちゃん。起きて」 「んー…」 目をこすりながら、否定とも肯定ともとれない声を出す。まだ頭が働かないのだ。 「んー、じゃないでしょ。ほら早く」 そう言う由香里の片手には、目覚まし時計があった。 なるほど、アラームを止めたのは由香里か。 「…分かったよ」 ようやく目が覚めてきたので、俺はベッドから這い上がった。 大きなあくびをしながら首や肩を回すと、ボキボキっと鈍い音が鳴った。 「うわ…、ちょっとおじさんくさいよ」 「うるさい」 由香里の冷ややかな指摘を無視し、俺は重い足取りで部屋を出た。 「行ってくるよ」 男の支度なんて、本当に手早いものだ。 15分程度の間に身支度を整えて朝食も済ませた俺は、それだけ母に告げて家を出た。 「ちょっと、待ってよー」 そう言われ振り向くと、由香里が少し慌てた様子で追いかけてきた。 「人に起こしてもらっといて、なんで先に行っちゃうかなぁ」 「なんで、って言われてもなぁ」 俺は少し困って頬をかく。 「ていうかさ、なんで俺より早く起きてるのに俺より支度が遅いの?」 素朴な疑問だ。由香里の支度はいつも長く、正直いちいち待っていられない。 すると、由香里は少し怒ったような顔をして言った。 「女の子は支度に時間がかかるものなの!」 「そんなもんかね」 「そんなもんなの」 それだけ言うと、由香里は俺の隣に並んで歩きだした。 俺はふと、そんな妹の横顔を覗く。 由香里の顔立ちは俺と違って、完全に母親譲りだ。 もともと浅黒い俺とは違う白い肌が、いつの間にか覚えた化粧でほんのりと染められている。 茶色がかった髪は、地毛だろうか。思えば妹の髪など気にしたことがないので、ちょっと判別がつかない。 とにかく、そんな妹の髪はツインテールにまとめられて歩く度に揺れている。 確かに、こいつもいつの間にか年頃の女の子になっていた。 そりゃ身支度に時間がかかるはずだ。 そんなことを考えていると、いつの間にか由香里もこちらを見ていた。 「どうしたの?」 「ん? ちょっとね」 「なに?」 由香里は訝しげに首を傾ける。 「まあ…。お前も大きくなったな、と思って」 「なにそれ」 由香里は不思議そうな顔で、もう一度首を傾けた。 6 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 41 51 ID Sf6DhUew 俺と由香里が通う高校は、自宅から歩いて10分程度の距離にある。 今朝も由香里と他愛のない話をしている間に、学校へ辿り着いていた。 「おはよう。笹田くん」 ちょうど校門を抜けたところで、聞き慣れた声に呼ばれた。 「ああ、委員長。おはよう」 挨拶を返すと、委員長は長い髪を左手で耳にかけながら微笑んだ。最近知ったのだが、どうもこれは彼女の癖らしい。 他の女子ならちょっと気取った感じに見えるだろうが、委員長がやると清楚な感じに見えるから不思議だ。 「今日も妹さんと一緒なのね」 委員長は笑みを崩さずに言った。 「ああ」 俺がそう言うと、隣で由香里が頭を下げた。 「おはようございます。先輩」 「おはよう」 委員長も律儀に頭を下げて挨拶を返した。 「…じゃあ、わたし行くね」 そう言うと、由香里は一年生用の玄関へ向かって行った。 「可愛い妹さんね」 委員長が由香里の後姿を見つめながら、つぶやくように言った。 「そうかな」 「笹田くんはそう思わない?」 「よく分からないよ。兄妹だからね」 由香里を見送った俺は、今度は委員長と並んで歩き出す。 横で歩く彼女を見て、俺はあることに気付いた。 「委員長さ、最近ずっとメガネじゃない? コンタクトやめたの?」 俺がそう言うと、委員長は一瞬顔を赤くした。 「え、ええ」 「どうしたの? なんか心境の変化とか?」 「う、ううん。何でもないの。ちょっと、何となくっていうか…」 委員長はなぜかしどろもどろになる。あまり聞かれたくない話なのだろうか。 そんな間に、俺たちの教室の前まで来ていた。 すると、クラスメイトの一人が俺を見つけた。 「おーい、笹田。お前が聞きたいって言ってたCD持ってきたぞー」 「お、マジで?」 急いで友人のところへ行こうとして、委員長の存在に気付く。 「俺、行くね」と言おうとしたが、それより先に委員長が口を開いた。 「どうぞ。気にしないで」 委員長がいつもの笑顔でそう言ったので、俺は軽く頷いてからCDの、もとい友人のもとへ駆け出した。 「…笹田くんが、似合うって言ってくれたんだけどな」 委員長が小さな声で何かを言った気がしたが、よく聞き取れなかった。 7 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 43 42 ID Sf6DhUew 昼休み、俺は机に突っ伏して仮眠を取っていた。 こうして午後の授業のために体力を温存しておくのは、学生にとって重要な一日のプロセスなのだ。 しばらくの間そうしていると、あろうことか俺の安眠を妨害する不届き者が現われた。 誰かが俺の肩を叩いているのだ。 「………」 無論、シカトだ。 俺の大事な時間をそうそう他人に奪われてやるわけにはいかない。 しかし、どうしたことか。この不逞の輩は、俺の肩を叩き続ける。 トントン、トントン、と小刻みに俺の肩でリズムをとる。いい加減に鬱陶しくなった俺は、勢いよく起き上がった。 「なんだよ!」 そう言った瞬間、何か硬いものの角で頭を叩かれた。 「痛っ!!」 「全く。授業中だけじゃ寝足りないのか、お前は」 確実にコブが出来たであろう頭頂部を押さえながら見上げると、そこには担任の若槻先生がいた。 手に持っているの数学講師用の三角定規だ。…あれで殴られたのか、俺。 「いてて…。な、なんですか先生」 「今日の昼休みは、何か予定がなかったか?」 「予定…?」 そう言われて思い巡らすが、何も浮かんでこない。そんな俺を見て若槻先生は大きなため息をついた。 「…完全に忘れてるな。まったく、今日の昼休みは部活のミーティングだろう」 「…あ!」 思い出した。今日は美術部のミーティングがあったのだ。 美術部では選考会が近づくと必ずミーティングを開くことになっている。半分幽霊部員の俺でも、これは参加しなくてはまずい。 「まだ始まったばかりだろう。今からでも行ってこい。きっと芳野が怒ってるぞ」 腕時計を見ながら先生が言った。若槻先生は美術部の顧問でもあるのだ。 「は、はい! 行ってきます」 慌てて教室を出て行く。廊下は走るな、なんていってる場合じゃない。 「はぁ。だよなぁ、絶対芳野先輩怒ってるだろうなぁ…」 美術室へと向かって走りながら呟く。 我らが美術部の部長である芳野先輩は、俺にとっては頭の上がらない相手だ。 俺にとっては、というのは間違いか。おそらく彼女の周囲のほとんどの人間にとってはそうかもしれない。 先輩は容姿端麗、学業優秀、運動センスはおろか芸術センスも抜群、とまさに完全無欠のスーパーマン、いやスーパーウーマンだ。 おまけにちょっとした完璧主義者であり、自分に厳しいが人にも厳しい。 俺も一年の入部以来、何度芳野先輩に説教されたか分からないくらいだ。 とにかく急げなければ。俺は光のような速さで駆け行き、ものの1分程で美術室まで到着した。 「でも…。入るの怖いなぁ」 中へ入るのを躊躇う俺。しかしずっとこうしている訳にもいかず、俺は意を決した。 「…はぁ。素直に謝ろう」 ひとつため息をつくと、美術室の扉を開けた。 「すいません。遅れました」 そう言って中へ入ると、会議中の部員たちの目線が俺に集まった。…勿論先輩の目線も。 ミーティングの進行をしていた女子生徒がちらっと芳野先輩の方を見ると、先輩は顔色を変えずに「続けて」とだけ言った。 俺を無視したまま進行され始める会議。俺は非常に気まずい空気の中、昼休みの終わりを待った。 しばらく経って、先輩の締めの言葉でミーティングは終了した。 ぞろぞろと部屋を後にする部員たち。俺もさりげなくその列に加わる。 「笹田。あんたはまだよ」 「ですよね」 逃亡はあっけなく未遂に終わった。 8 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 44 58 ID Sf6DhUew 二人だけとなった部室で、先輩が口を開く。 「まったく。幽霊部員のあんたでも、会議くらい顔を出すものと思ってたけどね」 「いや、でも一応顔は出して…」 「コンパじゃないんだから、途中から少しやってきて『顔を出しました』なんて通用しないわよ」 まるでグサっという擬音が聞こえてきそうなほどの物言いに、思わずたじろぐ。 「す、すいません」 「だいたいもうちょっと部活出なさいよ。何のために部活入ってるの?」 「すいません」 「そんなダラダラ過ごしてたらね、高校生活なんてすぐに終わっちゃうわよ」 「すいません」 「すいませんすいませんってあんた本当に分かってんの!? ちょっとそこに座りなさい」 しまった、話してるうちに先輩を興奮させてしまった。一番悪いパターンだ。 「いや、でも先輩。もうすぐ授業…」 「なに?」 「なんでもないです…」 次の授業は遅刻だろうな…。 そう思いながら俺は、先輩に聞こえないように小さくため息をついた。 「以上だ」 午後4時半。若槻先生がホームルームの終わりを告げると、教室はすぐに騒がしくなった。 大急ぎで部活へ出る者、浮かない顔で補習に向かう者、特に予定もないので友人とだべりだす者。 生徒も先生もまだ残っていて、いろんな声が教室中を行き巡る。いつもの放課後の光景だ。 「さて、どうしようかな」 特に放課後の予定を決めていない俺は、一人呟く。 すると、近くの席の委員長が近寄ってきた。 「笹田くん」 委員長は俺のそばに来て軽く微笑む。 「笹田くん、今日は何か予定あるの?」 「ん、特にないけど」 俺がそう言うと、彼女は長い横髪を耳にかけてまた笑った。 「じゃあ、ちょとわたしに付き合ってくれない?」 「えっと、どうかしたの?」 「それがね、今日は図書館の当番なんだけど、もう一人の当番の子がお休みで…」 委員長は少し目を伏せた。 そういえば、委員長は図書館の司書係だった。 何度か仕事中の姿を見たことがあるが、本当に彼女のイメージにぴったりだった。 決して「地味だから」ではなくて、委員長の持つ、なんとなく知性的な雰囲気がそう思わせたのだと思う。 9 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 45 37 ID Sf6DhUew 「ちょっとわたし一人じゃ作業が大変で、よかったら手伝ってもらえないかなって」 委員長が申し訳なさそうに言った。 まあ、たまにはそうやって静かに放課後を過ごすのも良いかもしれない。人助けにもなるし。 そう考えた俺は「いいよ」と言おうとした。 しかしその声は、教室のドアを開ける音ともに突然入ってきた威勢のいい声にかき消された。 「笹田、いる?」 そう言いながら、ずかずかと下級生の教室に入ってきたのはもちろん芳野先輩だ。 先輩は教室の中から俺を見つけると、いつものキツめの口調で言った。 「今日は部活出るんでしょうね? 選考会も近いんだし、当然出るのよね?」 ずいっと俺に顔を近づけてくる先輩。至近距離で睨んでくるその目は、きっと「YES」の答えしか許さない。 「ああ、えっと…」 なんてタイミングが悪いことだ。俺は困ってしまい、横目で委員長を見る。 するとやはり、委員長も困ったような表情で下を向いている。 そんな様子に何か感じたのだろうか、先輩がじろじろと俺たちを見た。 「…もしかして、何か予定でもあったの?」 「あ、いや…」 口ごもる俺。 どうしたものか、実に困ってしまったこの状況。 しかしこの直後、さらに困ってしまうことが訪れた。 「お兄ちゃん。ちょっと帰り買い物付き合ってよ。荷物一人じゃ持ちきれなくて…」 そう言いながら、由香里が元気よく登場した。 まさしく、二度あることは三度あったのだ。 由香里は、俺のそばに立っている二人の上級生に気づく。 「あ、えっと。…他の予定あった?」 由香里はばつが悪そうにそう尋ねた。 「いや、その…」 本当に、どうしたものか。 自分でも情けないと思うのだが、俺が何も言えないでいると、委員長が控えめな声で口を開いた。 「わ、わたしはいいよ。元々自分の仕事だし…」 委員長は少し早口で続ける。 「やっぱり人に頼ってちゃダメだよね。…ごめんね、笹田くんの予定も考えないで勝手なこと頼んじゃって」 そう言うと、最後に「また明日ね」とだけ残して委員長は歩いていった。 なにか悪いことをしてしまったような気がして、俺は「うん」などと気弱な返事しか出来なかった。 すると、その様子を見ていた芳野先輩が口を開いた。 「…まあ今日は好きにしなさい。でも、せめて次の選考会にはちゃんと作品出しなさいよ」 釘を刺すようにそう言うと、先輩も教室を後にしていく。 「………」 「………」 残された俺と由香里。 「あー。買い物だっけ? 今から行く?」 「…んー、今日はもういいや。予定があったならそっち優先しなよ」 そんなことを言い残すと、由香里もそさくさと帰ってしまった。 一人残される俺。 「………」 「………」 「………」 「…帰ろ」 なんだかよく分からない状況に気疲れしてしまった俺は、一人帰宅することにした。 10 :ヤンデレは誰だ [sage] :2007/09/17(月) 03 46 58 ID Sf6DhUew 「9/17 月曜日」 あの人とわたしの距離は、近いようで遠い。 もう少し勇気をだせば、もっと一緒にいられるかもしれない。 でも、それが出来ずにいつも遠くから見ている。 今日の放課後は、結局誰と一緒に過ごしたのだろう。 あの人の近くには、いつも他の女の子がいる。 わたしのほうが、好きなのに。 絶対わたしのほうが、あの人のことを好きなのに。 どうして。
https://w.atwiki.jp/signalpanda/pages/44.html
病んでるデレ、略して「ヤンデレ」 決してヤンキー・デレではない、ツンデレの最上級でもない。 2.5ではなぜかちやほやされる属性、 たぶん硯のお気に入り、たぶんではない。 身内にはこの属性がなぜか多い。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1899.html
335 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 34 19 ID wqwK8cNq ねぇ、君は可愛いものが好きかな? もっと言うと女の子が好きかな? あーんど、その女の子は少ないより多い方が良いよね? …オーケー。 そこまで分かってくれる君なら、私が可愛い女の子をたくさん集めてウッハウハになりたいって気持ちも分かるよね? わたしは一原百合子! この夜照学園高等部2010年度生徒会会長!! 夢はでっかく、世界一のハーレムを作ること! …なんだけどね 336 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 37 10 ID wqwK8cNq 「ふぅ…」 昼休みの生徒会室でわたしはため息をついた。 ポニーテールにした茶色がかった髪にハッキリとした目鼻立ち。 自分で言うのもナンだけど、控え目に言って少女漫画のヒロイン位はやれる容姿だと思う。 明朗快活な正統派って感じで。 「上手くいかないものね、わたしのハーレム拡大計画は」 パサリ、と手に持った書類を長机の上に投げ出す。 その書類は生徒会活動に関するもの―――ではなく、学園内の美少女リストである。 ほとんどの少女の名前にバッテンがついている。 いずれも、わたしのハーレム加入要請をやんわりと断ったか、他に思い人が居るかのどちらかである。 「某生徒会の○存シリーズに例を取るまでも無く」 両手を後ろ手に組んで無感動な口調で語るのは、夜照学園高等部3年で生徒会副会長の氷室雨氷ちゃんである。 若干17歳にして、大人びた容貌の眼鏡ッコだ。 「自分からハーレムハーレム言っている人間は、周囲からドン引きされてしまうものです」 眉ひとつ動かさずに、聞きたくない所をズバーっと言ってくれる雨氷ちゃん(以下うーちゃん) ちなみに、かく言う うーちゃんも私のハーレムメンバーの1人だったりする。(いやホント) 「私は好きだけどね、あの主人公。生徒会に入って第一声がメンバーへの告白なんて、男ながらアッパレよ。女の子にもマメだし」 はしたなく椅子の上に胡坐をかきながら、わたしは言った。 ちなみにこの姿勢、下手をしたらパンツが見えるのだが、今この生徒会室に居るのは私とうーちゃんだけなので何ら気兼ねする必要は無い。 むしろ、見せているのである。 誘い受けである。 「そもそも、私には会長のハーレム拡大計画にどんな意味があるのか分かりかねます」 「ハーレムは女の浪漫よ、うーちゃん!?」 うーちゃんの言葉に思わず立ち上がって反論するわたし。 「そもそも…」 感情を感じさせない声で言葉を紡ぎながら、後ろ手に組んでいた手をほどくうーちゃん。 その手をピタリとわたしの喉元にあてる。 あ、ゴメン、言い間違えた。 正確には「その手に『持った大ぶりのナイフ』をピタリとわたしの喉元にあてる。」だった。 いやー、思わず意識的に言い間違えちゃった。 ……現実逃避したくて。 「私があなたのことを100人分は愛しているのに、どうしてそれ以上を求める必要があるのですか?私の愛情に何の不満があるというのですか!? うーはとてもとてもとてもとてもとてもゆーちゃんのことを愛しているのですよ!?ゆーちゃんがいなければ生きていけないカラダなのですよ!?なのにどうしてどうしてどうしてどうして…」 ああ、私への呼び名が「会長」から「ゆーちゃん」に! いつもはベッドの上でしか言ってくれないのに!! これがデレか… うわ、デレたのにナイフ突き付けられてるから全然嬉しくない!!! 「まぁまぁ落ち着いてうーちゃん」 「うーは落ち着いています!!」 一人称うーでも敬語は変わらないのね。 「確かに、うーちゃんがわたしのことを愛してくれてるのは知ってるわ!おはようからおやすみまでわたしのことを見守ってくれてるし、わたしの分のお弁当は拙いながらも作ってくれてるし、メールは1日100件以上だし。 正直ウザいとか思わないでもないけど、そのウザさが興味深い位ゾクゾクするくらい愛しいわね!でもね、人間とは欲深なものなのよ!!たった1人の重い位の愛だけじゃ満足できないの!!たった1人より大勢の娘の愛が欲しいのよ!!」 「何と言う最低理論!?けれど、それも含めてあなたなのですね!!」 「ああ、最低な恋人(わたし)に苦悩するうーちゃん萌え!!」 「だから、わたしを殺してあなたも死にます!!」 「逆!?」 わたしが死亡フラグを立てまくっていたその時、生徒会室の扉が勢いよく開け放たれた。 「ちょっと待ったぁ!!」 337 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 37 32 ID wqwK8cNq そう言って生徒会室に入ってきたのは高等部一年の一原愛華。 生徒会での役職は庶務。 その名の通りわたしの実の妹である。 身長も胸もわたしやうーちゃんには及ばないが、無いは無いなりに良いものだということに気づけたのは、愛華=あっちゃんのお陰である。 「お姉はアタシと添い遂げるんだからね!副会長さんは離れて!」 ああ、ツンデレになろうとしてもなりきれない妹萌え!(ただ今ナイフを向けられ中) 「黙りなさい、庶務!実の姉に欲情する変態が何を言っているのですか!!」 「うるさい!!そんなこと言ったら女に欲情するアタシら全員変態じゃない!!」 ああ、あっちゃん。 わたしのために頑張ってくれるのは良いんだけど、辛い現実を突き付けないで。 「だとしても、ゆーちゃんは私のことを愛しいと言ってくださいました!イコール添い遂げるべきは私!」 うーちゃん、うーちゃん、興奮のあまり論理展開が破綻してるわ。 開始数分でクールキャラを脱ぎ捨てないで。 ギャップ萌えの甲斐が無いわ。 「アタシなんてあの伝説の大桜の下でお姉に『大好き』って言ってもらったんだから!」 「そんな設定があったのですか!?」 うーちゃんが驚き、わたしの方を見る。 「しょーがないじゃない!桜の花の下で『お姉、だいすき!』なんて言われて抱きつかれたら『わたしも大好きだよー』って言うしかないじゃない!可愛すぎてエッチシーンに突入するしかないじゃない!」 「アタシはお姉のそう言うサイアクな所もだいすきだよ!」 わたしの開き直りに、あっちゃんがこれまたズバッとツッコンでくれる。 あっちゃん、たくましい子……! 「…どうやら、あなたは排除する他無いようですね」 「奇遇だね!アタシも副会長さんは地獄に行ってもらわないとって思った所だったんだ」 ナイフを向けるうーちゃんに、どっからともなくバットを取り出して、あっちゃんが応じる。 …そう言えば、あっちゃんは女子野球部だっけ。 こりゃまたトンデモバトルが見れそうだわ。 見るつもりもないけど。 二人の意識がわたしから逸れた隙に、ソロソロと逃げ出すことにしよう。 ぶっちゃけこの場に居たら身がもちそうにない。 「ハッ!ゆーちゃんが居ません!」 「アハ!お姉はアタシのなんだからねー!」 私が生徒会室から離れると、2人の殺気だった声が聞こえる。 「「待てええええええええええ!!」」 「アハハハ、追いついてごらんって言うか追いつかないでー!」 338 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 38 51 ID wqwK8cNq うーちゃんとあっちゃんから全力疾走で疾走で逃げていると、出会いがしらにとある巨乳と正面からぶつかりそうになる。 「OH!マイハニーユリコ。どうシたのデスか?」 「あ、エリちゃん先生!」 この金髪美人は英語教師のエリス・リーランド先生。イギリス人で通称エリちゃん先生。 「エリちゃん先生、ウチのハーレムが暴走してるんです!何とかなりませんか!?」 エリちゃん先生の後ろに隠れながら、わたしは言った。 「ソういうコトなら、ワタシの家に避難しましょウ。ジャパニーズスタイルのアパートでスが、ユリコ好みのカワイイコーディネイトなノで、一生出たク無くなりマス」 「エリちゃん先生ルートは監禁ルート!?」 リアクションを取るわたしの肩を掴み、どこかへと引きずろうとするエリちゃん先生。 「…先生、力強いですね」 「ムカシ、キックボクシングで体力を付けまシたから」 「その体力をこんなトコで使ってほしく無いかもです」 「ダイジョウブです。痛いのハ最初だけでスから」 「いや、最初も何もわたしと先生は何度となくキャッキャウフフしていたような…」 「さァ、let goです。二人だけのElysionへ!」 「明らかに人生の奈落へと堕ちるルート!?」 と、その時、エリちゃん先生が眠るように倒れこむ。 先生の首筋には眠り薬が塗られた手裏剣が。 339 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 39 30 ID wqwK8cNq 「無事でござったか、百合子殿」 「しぃちゃん!!」 川のせせらぎのように清楚可憐な声を古風すぎて最早ギャグな口調で台無しにしているのは、高等部二年で生徒会書記の李忍(り・しのぶ)。 通称しぃちゃんだ。 中国人と日本人のハーフで、中国人のお父さんがなぜか(微妙に間違った)日本マニアの忍者マニアなので、可憐な雰囲気の彼女もその影響を大いに受けているカオス萌えな娘なのよ。 書道をしているお陰で字が上手いのは大助かりだけれど。 「時に百合子殿、我が家は対犯罪者用に八百万の罠を備えた忍者屋敷。よろしければ今すぐこちらに避難を。もちろん、そのまま一生出なければ最大限の安心安全が保障されるでござるが……」 「要は監禁されろと!?」 くぅ、この娘、妙な萌えを見出してハーレムに引き込まなきゃ良かったかも…!(でもかわいい) 「さぁ、百合子殿、今すぐ我が忍者屋敷に我が家の婿として…!」 「本音が駄々漏れよー!」 そんなことを言ってると、いきなりわたしの体が廊下に押し倒される。 「アハハハ、李も他のヤツらも馬鹿だなぁ。そんなに百合子が欲しいなら、問答無用で押し倒しちゃえば良いのにさァ!」 「りょうちゃんったら、何てワビもサビも無い事を!?」 わたしに馬乗りになってそう叫ぶのは、高等部二年で生徒会会計の霧崎涼子。 なぜか自分が男の子であるかのようにふるまい、ショートカットの髪型に男子制服に身を包んでいるが、女性らしい体つきを全く隠せていない。(特に胸とか) 「アハ、ゾクゾクするなぁ!ねぇ、分かる!?今からぼくの(自主規制)が百合子の(自主規制)を(自主規制)するんだよ!」 りょうちゃん、放送禁止用語連発中。 コレでも、普段はわたしに対して子犬のようになついてくれてるって裏設定があるのよ? 「りょうちゃん、りょうちゃん。りょうちゃんから乱暴に(自主規制)されるのもスリリングではあるんだけど、しぃちゃんもいるし、他のコ達もそろそろ追いついてくるから、また今度にしよ、ね…?」 「アハ、百合子は何を言ってるのさ。ぼくは男だよ!?あんなヒョロいばかりの女の子たちに負けるはずが無いじゃないか」 大きな胸を揺らしながらヒドいことを言うりょうちゃん。 ……この子、本気でアレな子じゃないかしら。最近心配になってきた。 と、狂ったように笑っていたりょうちゃんが乱暴に蹴っ飛ばされてブッ飛ばされる。 「リョウコ、アナタのような生徒にはお仕置きにspankingが必要なようデスね。さぁ、アナタのassを数えなさイ!!」 見ると復活したエリちゃん先生が見事な蹴りを決めていた。 「言ってくれるね!たかだか女教師がさぁ!!」 屈辱に顔をゆがませ、懐から伸縮式警棒を取りだすりょうちゃん。 様子を見ていた しぃちゃんも背中から日本刀を引き抜く…ってソレ明らかに銃刀法違反よ!? 「それではわたしはこの辺で~」 ソロソロとその場を抜け出そうとするわたし。 「待って下サい、ユリコ!」 「お待ちなされ、百合子殿!」 「アハ、逃がさないよ百合子!」 もちろん、3人が見逃す筈も無く、すぐに追いかけてくる。 「待ってよよ、お姉ー!」 「私はゆーちゃんのもの!イコールゆーちゃんは私のもの!」 後ろを振り返ると、あっちゃんにうーちゃんも追いかけていた。 「たーすけてーい!」 叫びながら校舎内を全力疾走するわたし。 ふと、その光景を見ている一般生徒の会話が耳に入る。 340 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 40 37 ID wqwK8cNq 「あー、またやってるなー、あの人たち」 「…確か、生徒会の人たちですよね?」 「そだよー、お前は生徒会長には近付いちゃいけないよー」 「…生徒会長さん、ですか?追いかけているいかにもアブない感じの皆さんでなく?」 「そうそう。理由はまー色々あるけれど……」 「…あるけれど?」 「あんなアブない人たちに『笑顔で』追いかけられている人が控え目に言ってマトモなわけなくない?」 「…なるほど」 341 :ヤンデレの生徒会長さん [sage] :2010/09/21(火) 20 41 17 ID wqwK8cNq わたしは一原百合子! この夜照学園高等部2010度生徒会会長!! 夢はでっかく、世界一のハーレムを作ること! ……なんだけど、それは当分上手くいきそうにない。 嫉妬深くも愛おしい、このハーレムメンバーが居る限り。 って言うかわたし、明日の命も知れぬ身なんじゃない!? お願いだから誰か助けてー!