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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 四三二 体力点一を失う。 黄金石は持っているか? なければこの術は使えない。 三一五へ戻って選びなおせ。 持っているなら、石を手にしてこの少女に術をかけよ。 少女の表情が緩み、君のことを信頼の眼差しで見つめるようになる。 「本当はすごく恥ずかしいけど……あなたみたいに頼もしそうな人なら、相談しても大丈夫よね」と、 もはや警戒せずにしゃべりだす。 「あなたたちとの旅から帰ってきて以来、ギーシュの様子が変なのよ。ええ、あいつの言動や趣味が変なのはいつものことだけど、そういうのじゃなくって。 ギーシュったら朝から晩まで、まるで夢の中に居るみたいぼんやりとして、わたしがなにを言っても生返事ばかり。あれは絶対、誰か他の女の子のことを考えているのよ! そうに違いないわ」と。 どうやら、三日が経ってもあいかわらず、ギーシュの頭の中はアンリエッタ王女のことでいっぱいのようだ。 少女はギーシュのことを好悪入り混じった口調で語る。 「旅に出る前はわたしのことを麗しき薔薇だ、天上に輝く星だ、と褒めちぎっていたくせに、帰ってきてからはさっぱり。どこの誰のことを考えているのかしら、あの軽薄な浮気者は! どうせ、向こうには相手にもされていないでしょうに」と吐き捨てるように言う。 「別にわたしはあんなやつとの付き合い、いつだって終わりにしてやっていいのよ? でも、あの馬鹿ギーシュのことだもの、私に捨てられたと知ったらやけになって、どんな無茶をしでかすか…… そう考えたらほうっておけないじゃない、そう思うでしょ、あなたも? なんだかんだでギーシュとは古いつきあいだし」 おおよその事情を理解した君は、術の効き目が薄れる前にその場を離れようとするが、少女は休みなく語り続け、話を切り上げる隙を与えてはくれない。 よほどギーシュに対する鬱憤を、腹に溜め込んでいたのだろう。 君という腹蔵なく語れる聞き手を得たためか、彼女の言葉は止むことがない。 「それで、明日はギーシュとふたりで北の山へ秘薬の原料を採集しに行こうと思うんだけど……」 そこまで語ったところで、少女ははっと眼を見開き、両手で口を覆う。 「わ、わ、わたし、なんであんたみたいな平民にこんなことを……? う、嘘!?」 彼女の顔が、茹で上がったかのように真っ赤に染まる。 術の効果が切れたのだ! 君は相手に別れを告げ、そそくさとその場を離れようとするが、少女は 「待ちなさい!」と一喝すると、 細身の女のものとは思えぬ力で背嚢を引っ張るため、その場に留まらざるをえなくなる。 少女は肩を震わせ、巻き毛を揺らして、笑っているようにも泣いているようにも聞こえる声で言う。 「ふ、ふふ、ふふふふ。あなた、この≪香水のモンモランシー≫から秘密を聞き出しておいて、ただで帰れるとは思っていないわよね……。あなたは知りすぎてしまったのよ……」と。 君は慌てて、このことは何者にも口外せぬと誓うが、モンモランシーと名乗る少女は君を解放しようとはしてくれない。 彼女はしばらく君の顔をじっとにらんでいたが、やがて意を決したように 「こうなったら、恥のかきついでよ。あなた、明日のわたしたちの遠乗りに同行しなさい。そこで、わたしとギーシュのために働いてもらうわ、荷物持ち兼護衛としてね。 そもそも、あなたがギーシュを旅に連れていったりしなければ、こんなことにはならなかったんだから!」と告げる。 羞恥と困惑で混乱しているとはいえ、モンモランシーの振りかざす論理は無茶苦茶だ。 ギーシュが君たちの旅に同行したのは、彼が自ら志願したことなのだから! それに加えて、≪虚無の曜日≫である明日はタバサとの先約がある――彼女はいまだ学院に戻ってきてはいないのだが。 君はモンモランシーの同行せよとの命令に従うか(二ニ七へ)、それともタバサとの約束を優先して断るか(八へ)? 八 あいにくだが明日は先約があるし、主人でもないお前たちのために働く義理はないと言うと、モンモランシーは苦い顔をするが、すぐに薄笑いを浮かべる。 「その約束というのは、タバサとの逢引かしら?」とモンモランシーは囁くような声で言う。 君がぎょっとした表情を浮かべるのを見て、彼女は意地の悪そうな笑みを浮かべる。 「あら、当てずっぽうだったけど正解みたいね。あなたたちが学院に戻ってきたあの日、タバサとふたりっきりでなにやら話し込んでいたんでしょう? 覗くつもりはなかったんだけど、ふたりで部屋に入るところを偶然見かけて。あのガーゴイルみたいな子が、キュルケ以外の人間を部屋に入れるなんてわたしの知る限り初めてだから、気になったのよ」 タバサと石の肉体をもつ悪魔めいた姿の怪物は、似ても似つかぬだろうと不思議に思いながら、君はモンモランシーに言い返す。 確かに自分はタバサと≪虚無の曜日≫に出かける約束をした、どのような用件かは明かせぬが、と。 「ええ、そうでしょう、そうでしょうねえ」 いまや自分が優位に立っていることを確信したモンモランシーは、いくらか嗜虐的な口調で続ける。 「ところでルイズは、あなたのご主人様はそのことをご存知なのかしら?」 その言葉を耳にした君の背中を冷や汗が伝う。 ルイズはこの数日、君に対して妙によそよそしい態度をとっていたため、タバサの家族を治療しに行くということを話しそびれていたのだ。 モンモランシーは君の内心の動揺を、敏感に察する。 「知らないようなら、わたしから伝えてあげましょうか? タバサとのあいだに、やましいことはなにひとつないんでしょう?使い魔を信頼しきっていて、 少しも嫉妬深くなんかないルイズのことだもの、きっと気にもかけないわよね」 この言葉はあからさまな皮肉だ。 実際にルイズが、君とタバサがふたりきりで話し込んでいたことを知ればどうなるか、想像もしたくない! タバサとの約束を破ることになるのは心苦しいが、急を要することでもなさそうなので、彼女の家族を診てやるのは次の機会に延期してもよいだろう。 そう考えた君は、モンモランシーとギーシュの遠乗りに同行することを渋々と認める。 そのかわり、自分を利用するのはこれが最初で最後だと誓ってくれと言う――タバサとの件でそう何度も脅迫されては、たまったものではない! モンモランシーはおごそかな表情でうなずき、 「ええ、始祖ブリミルに誓うわ。わたしだって誇り高きモンモランシ家の人間よ、本当はこんなゆすり屋みたいなことはしたくなかったんだから。 明日、きちんと務めを果たしてくれれば、わたしもすべてを忘れてあげる」と言う。 ほどなくして朝食の時間は終わり、君はいくらか気落ちした表情でルイズが戻ってくるのを待つ。一七七へ。 一七七 その日の放課後、寄宿舎の部屋に戻った君はルイズに頭を下げて頼み込む。 明日まる一日、≪使い魔≫としての義務から解放してはくれぬかと。 それを聞いたルイズは怪訝そうな表情を浮かべて、≪始祖の祈祷書≫から顔を上げ、 「それはまあ、明日は≪虚無の曜日≫でとくに予定はないから構わないけど……どこかへ出かけるの? わたしに見られるとまずいことでも、するつもり?」と尋ねる。 君は、明日はギーシュと『北の山』へ向かうと約束したのだと言う――モンモランシーの存在を伏せているが、少なくとも嘘はついていない! 「あんたたち、いつのまにそんなに仲良くなったの? アルビオンではそこまで親しげには見えなかったけど。それにしても、あのギーシュが休日を男同士で過ごそうとするなんて意外ね。 モンモランシーと別れたのなら、さっそく他の子を誘いそうなもんだけど。……あ、わかった。ギーシュの奴、あんたに修行をつけてくれって頼んだんでしょ? 休憩時間に『祖国のため、麗しの姫殿下のため、軍に志願しよう!』とか言ってたわよね、そういえば。戦に備えて、闘いに慣れてるあんたに鍛えてもらおうって魂胆かしら」 君の返事を待たず一方的に納得したルイズは、そう言ったのち溜息をつく。 「志願が認められたところで、どうせ後方勤務なんでしょうけど……それでも偶然の流れ弾で死んじゃうかもしれないのに。どうしてこう、男ってみんな戦好きの馬鹿ばっかりなのかしら」 数日前にその眼で見たアルビオンの惨状を思い出したのか、ルイズは沈痛な表情を浮かべる。 迷惑のかけついでに君は、もしも明日タバサが戻ってきて自分のことを尋ねたときは、次の機会には必ず約束を果たすので許してくれ、と伝えてくれるようルイズに頼む。 「あんた、タバサともなにか約束してたの? 戻ってきたと思ったらすぐまた出ていったって、キュルケが心配してたけど」 立て続けに明らかになる君の意外な交友関係に、ルイズは驚きを隠せない。 タバサに病気の家族が居るということは、あまり軽々しく口にすべきではないだろうと考えた君は、彼女に故郷の伝説や歴史を語ってやると興味深そうにしていたので、 ≪虚無の曜日≫にふたたび話を聞かせるつもりだったのだ、と言ってごまかす。 「ああ、あの子っていつも本を読んでいるもんね。聞いたこともないような遠くの国の物語でも、夢中になっちゃうんでしょうね……」 そこでルイズは言葉をとぎらせ、君を見る。 あいかわらずなんの文字も現れぬという≪始祖の祈祷書≫を閉じると、 「ねえ、わたしにも聞かせて。あんたの国のお話……いや、それよりも、あんたが今までどんな冒険をしてきたかを」と言う。 君は驚く。 召喚されてから一月近くが経ったが、ルイズが君に話をせがむなど初めてのことだ。 「わたし、あんたのことをなにも知らないんだもん。しゅ、主人としては、使い魔がどこでなにをしてきたのか知る必要があるでしょ?」 ルイズの頼みを聞き入れ、君は国境の門をくぐり≪諸王の冠≫の奪還を目的とした旅を始めたところから、話すことにする。 厄介者の豆人との出会い、凶暴なマンティコアとの対決、魔の罠の都カレーへの潜入、カレーの北門を開くための四行の呪文。 これらの話を熱心に聞き入っていたルイズだが、バドゥ・バク平原の隠者シャドラクとの遭遇のくだりのあたりで眠気に耐え切れず、机に突っ伏してしまう。 そっとルイズを抱きかかえ寝台に運びながら君は首を傾げる――どうしたわけか、自分でも意外なほど話の細部を忘れてしまっている、と。八八へ。 八八 翌朝、充分に睡眠をとった(体力点三を加えよ)君は早起きし、ルイズを起こさぬよう静かに荷物をまとめデルフリンガーをつかむと、寄宿舎を出る。 厨房に頼んで昼食のためのワインやパンを用意してもらい、採取した秘薬の材料を入れる合財袋やガラス瓶を準備し、厩舎にも行かねばならない。 今日一日、君はモンモランシーとギーシュの従者なのだ。 厩舎から三頭の馬を借り受けて待っていた君を見て、ギーシュは眼を丸くする。 「モンモランシーから聞いてはいたが、まさか本当に来てくれるとは。きみの友情と奉仕の精神に感謝するよ。しかし、よくルイズが許してくれたね」 そう言って、君から手綱を預かる。 モンモランシーは勝ち誇った表情で君を見ると、 「よろしく、お優しい使い魔さん」とわざとらしく微笑み、 手馴れた動きで馬に跨る。 君は彼らに聞こえぬ小さな声でやれやれとつぶやくと馬の背によじ登り、『北の山』へと向かう。九三へ。 九三 『北の山』は、魔法学院から三時間ほど馬を駆った場所にある岩だらけの高地だ。 ギーシュが得意げに語ったところによると、まばらな草地からは薬効をもつ珍しい植物が、ぎざぎざの岩肌からは貴重な鉱石が見つかるため、学院創立以来、 幾多の若き魔法使いたちがここを訪れ、秘薬の原料を採取してきたのだという。 道は、山裾を登っていくにつれ、次第に険しくなる。 荒涼とした岩地に棲む存在は少ないらしく、生き物といえば空に鷹や鴉を何羽か見かけるだけだ。 君は途中で何度か馬から降り、ギーシュとモンモランシーの指示に従って薬草を引き抜き、奇妙な色に輝く岩を削り取る。 君が小さな鶴嘴(つるはし)や鋏を振るうのをよそに、ギーシュとモンモランシーは親しげに言葉を交わしている。 正確には、そっぽを向くモンモランシーを相手に、ギーシュが彼女を褒め称える美辞麗句を並べ立てているのだが。 さすがのギーシュも、見慣れた学院とはまったく異なった光景が周囲に拡がるこの地に居ては、王女のことを考えて惚けたりはできず、目の前の金髪の少女だけに集中している。 一方のモンモランシーは数々の褒め言葉を前にしても物憂げな態度を崩さぬが、よくよく見ればまんざらでもなさそうな様子だ。 ≪竜硫黄≫、≪氷水晶≫、≪呻き草≫などと呼ばれる、魔法使いである君でさえ見たこともないような奇妙なものを合財袋に詰めていくが、早くも昼前には袋がいっぱいになる。 小さな鞍袋に収まりきる量ではない――モンモランシーが君を連れて行くことにこだわったわけだ! 正午を過ぎたころ、モンモランシーは昼食にしようと言う。 君は素早く馬から降りると、手近の潅木に手綱をつなぐ。 パンやワインを鞍袋から取り出し、折りたたみ式の椅子と小さな卓(こんな物まで馬に載せていたのだ)を準備するのも君の仕事だ。 君が食事の用意を終えるのを待つギーシュは、なにげなく足元の握り拳大の石を蹴飛ばし、坂から転げ落とす。 石は途中まで落ちたところで唐突に止まり、驚いたことに逆走しだす! あっけにとられて見ていたギーシュのところにまで戻ってきて、勢いよく足首にぶつかる。 「痛っ!? な、なんだこれは……」 苦痛の声を漏らしたギーシュは足首をさすろうと身をかがめ、モンモランシーは気遣わしげな表情をし、 「どうしたの?」と言って彼に近づくが、 次の瞬間、ふたりそろって言葉を失う。 凄まじい地鳴りがして大地が揺れ、君たち三人をよろめかせたからだ。 つながれた三頭の馬が狂ったようにいななき、自由になろうと激しくもがく。 さらに、君たちから二十ヤードほど離れた岩山の頂が吹き飛び、そこらじゅうに岩をばらまく! 「な、なに? なんなのよ!?」 「逃げろ、モンモランシー!」 ふたりが悲鳴を上げるなか、君はかつて、これによく似た事態に出くわしたことを思い出す。 君は降りそそぐ岩を避けて逃げるか(一二四へ)、この奇怪な現象の原因を探すか(二〇三へ)、それとも術を使うか(三一へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ次ページ虚無の王 日差しの暖かな時間になると、トリステイン魔法学院学院長オスマンは、少しばかり早く、ほんの少しだけ長い午睡に身を委ねる。 そんな時、秘書のロングビルは主人を起こしてしまわない様、そっとサイレントの呪文を唱えて、席を外す。 毎日の様に繰り返される光景。ロングビルは毎日の様に、一つ下の階に降りる。重厚堅牢な鉄扉の前で足を止める。 宝物庫だ。ここには、学院設立以来の秘宝が収められている。 小さな杖を取り出し、ロングビルは魔法を唱える。 アンロック。効果無し。練金で扉の破壊を試みるも同様――――。 思わず、溜息が漏れた。 魔法学院はメイジの巣だ。守りの堅固にかけては、並の城塞など及びもつかない。 だが、それ故に管理側の注意にも綻びが見える。 齡100とも300とも囁かれる老オスマンにしても、どれ程、油断ならない男かと思いきや、単なるセクハラ爺。時折、こうして抜け出しても、全く気付いた様子が無い。 宝物庫の秘宝――――特に名高い、学院長秘蔵の“圓月杯”を奪って見せれば、富と名とが一度に手に入る。 そう踏んで、この学院に秘書の身分で潜り込んだのは、一体、いつの事だっだろう。ロングビルはもう一度、溜息をつく。 宝物庫には容易く近寄れるものの、その先は手も足も出ない。 ロングビルは焦っていた。 もうすぐ、夏季休暇だ。人が減れば仕事はし易い。しかし、それでは“数多の貴族を出し抜いた”事にはならなくなる。 何とか、この一週間で片を付けなければならないのだが……。 「ったく……」 ロングビルは歯噛みする。まさか、オスマンに直接探りは入れられない。 かと言って、この手の話に詳しそうなコルベールは、偶に姿を見かけても、大抵、あの空とか言う平民に付きっきりと来ている。 「おぞましいホモじゃないのかね。あいつは」 空――――思い出すと、本気で腹が立った。誰が年増だ。誰が。 秘宝を頂いた暁には、あの男も潰して行こう。ロングビルは心に誓う。さもないと、腹の虫が治まらない。 と、足音が響いた。ロングビルは何事も無かったかの様に杖を隠す。 「いや。今日も暑いですなっ」 現れたのは、ミスタ・ギトーだ。杖を翳して、自身の周りに微風を起こしている。 「風はこの通り、暑さ寒さからも術者を守ってくれる。やはり風の系統最強っ!……気の毒な土メイジの貴女にも、風の恵みをお裾分け」 「こ、これはどうも……」 頬を撫でる風に、ロングビルは内心で歯軋りする。 いけ好かない貴族の中でも、一際気に喰わない男だった。 「所でミセス」 「わ、私は 独 身 です」 「そうですか。いやいやいや、実に意外だ。意外。その年まで独身ですか。やはり土系統はよろしくない」 「私はまだ、20代ですっ」 「おや、そう言う事にしておいででしたか。しかし、一年は13ヶ月、384日間ですぞ、ミセス。時に、宝物庫で何をしておられるのかな?」 「ほほ、宝物庫の目録を作っていまして……」 さて、どうしてくれよう――――もとい、どうする。声を震わせ、米神に拍動を覚えながらも、ロングビルは迷う。 宝物庫の防備について、ギトーは何かを知っているだろうか。だが、聞き出そうにも、趣味と言うか、性癖がアレだ。 極限まで言葉を選んで“年下好み”。率直に言えば変態性欲者。その上、性格はこの通り。 下手に話を振っても、心のデスノートに記された死因が、むごたらしさを増すだけではなかろうか。 「ほほう。所で、宝物庫と言えば、御存知ですかな?ミセス」 と、頼んでもいないのに、ギトーは唐突に語り出した。 トリステイン人と言う奴は揃っておかしな使命感に燃えている。 ことごとに忠告し、知識を伝授して、人の誤りを糺し、迷いの道から救い出してやらなければ気が済まない。 おまけに、事実に惑わされるを潔しとしない人種と来ているからタチが悪い。 宝物庫の防備の堅牢無比なる事、その一方で弱点も有る事について、ギトーは延々長広舌を振るう。 ロングビルは内心でほくそ笑みつつも、同時にうんざりとした。 全く、風メイジと言う奴はろくな物じゃない。取り分けトリステイン人は。 ルイズは不機嫌だった。 それ自体は別段、珍しくも何とも無い。何しろ、箸が転んでも腹の立つ年頃だ。 そんな乙女にとって問題なのは、自分が何故、腹を立てているのかが、判らない事だった。 同じ年頃のボーイフレンドを作った方がいい―――― 何故だろう。空にそう勧められた時、無性に腹が立った。 その晩、帰って来なかった事にも気分を害した。 「なによ。お付き合いなんて、所詮、お遊びじゃない……」 ルイズは唇を尖らせる。 今は大事な時期。それ所では無いのだ。 三年間の学院生活で、きちんと魔法を、諸々の教養を身につけ、一人前の貴族にならなければならないのだ。 来る夏季休暇には、今季の成果を両親に披露し、ヴァリエール公爵家の一員として、恥ずかしくない人間に育ちつつある事を示さなければならないのだ。 「なのに、あいつったら……あ、あんな事勧めて……あ、あんな――――不真面目な事……」 そうだ。だから、自分は腹を立てたのだ。 ルイズはそう言う事に決めた。 決めたのだが、どうにも釈然としない。 机上の手鏡に、ふと目が止まる。そこでは、桃色の髪をした少女が頬を膨らませている。 可愛くない女の子だ――――我ながら、そう思った。作りは悪く無いとは思う。内面が可愛くない。 自覚はしているのだ。現実にそれを突きつけられる度に、ルイズはへこむ。 身内を除いて、こんな自分を可愛い、と言ってくれる人が居るのだろうか。 脳裏に二人の姿が浮かんだ。 僕の可愛いルイズ―――― いつもそう呼びかけてくれたワルドは、半ば遠い記憶の中に霞んでいる。 空は聞いてて気恥ずかしくなるほど、可愛いを連発してくれる。 一体、自分は何が不満なのだろう。何を怒っているのだろう。思考が狭いループにはまる。 と―――― ドアが控え目に叩かれた。 ルイズは椅子を蹴って小走りに駆け寄り――――誰に対するでも無く、小さく咳を払った。 机に引き返して、 「誰?」 「ワイ」 「――――開いてるわよ」 空は小さくドアを開くと、顔を覗かせた。 「未だ、怒っとる?」 「別にっ。最初から怒ってなんかいないわよ」 「そら良かった。実は助けて欲しい事が有るんやけど」 「……何?」 一瞬、振り向きかけて、ルイズは前に向き直った。 「実はな、今からラグドリアン湖ちゅう所、行かなアカンのやけど……知っとる?」 「我が国最大の湖よ。それが、どうかしたの?」 「ちょいとした手違いでな。ボーズがマルガリの作りよった薬飲んでもうて、おかしくなってもうたんや」 肝心の部分を、空は暈かす。 ルイズは決して口が軽くは無い。だが、隠し事は決定的に苦手だ。 迂闊な事は教えない方がいい。 「そんで、解毒剤作るんに、水精霊の涙言うたかな?そんな名前の原料が必要なんや」 「お店で買えばいいじゃない」 「それが品切れで、次の入荷も絶望的なんやと。なんや、よう判らへんけど、その水の精霊ちゅうのと連絡が取れへんとかでなあ」 それで、ラグドリアン湖に直接飛んで、水精霊の涙を手に入れて来よう、と。そう言う事か。 「あの娘の風竜で飛んで行けば、すぐなんじゃないの?」 「それがな。雪ん子の奴、朝から見当たらへんねん。コッパゲに聞いたら、なんや、帰省しよった言う話でな」 「帰省?」 奇妙な話だった。 来週からはもう夏季休暇。この時期に帰省? 何事だろう。おまけに、キュルケが付き添った、と言う。 全く、訳が判らない。 「そんな訳でな。馬車で行かなアカンのやけど……」 「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ」 ラグドリアン湖まで馬車。片道三日はかかる行程だ。 目的の物が滞り無く手に入ったとしても、四泊五日。一週間の授業を殆ど休む羽目になってしまう。 無理に決まっている。本来なら、一言の下に断る所だ。 しかし、ギーシュがおかしくなっていると言う。どんな風に? 「女に興味が無うなった」 あのギーシュが?一体、何を飲ませた? 「それだけ?」 「……男に興味を持つ様になりよった」 ちなみに、目下のターゲットはワイ――――そこまで聞いて、ルイズは頭が痛くなった。 「惚れ薬なんて作ったの!?」 「あ、ばれてもうた?」 「それだけ言われたら、判るわよ。もう、何考えているのよ、あの娘!」 惚れ薬に限らない。人間の精神を操作、変容させる薬は制作も使用も厳禁だ。 禁制品に、没落貴族ならともかく、モラモランシ家の令嬢が手を出した。全く、冗談では無い。 効果が切れるまで、放っておく訳にはいかないのか――――そこまで考えて、ルイズはカレンダーを思い出す。 なるほど、おかしくなったままのギーシュを実家へ帰す訳にはいかない。モンモランシーの犯罪は間違いなく露見する。 「それで、今すぐにでも出発しないといけないわけね」 「使い魔の菊座を守るんは、御主人様の義務違うんか?」 「黙れ。菊座言うな」 第一、立場が逆だろう。 「それで、助けて欲しい、て……私は何をすればいいのよ?」 「水精霊の涙を手に入れる事自体は、マルガリがやる言うてる。と、言うかあいつにしか出来へん事らしい。とにかく、火力が欲しいんや」 「火力?」 「ほら。なんや、最近よう判らへんけど、あちこちで暴動起きとる言う話やんか」 その噂なら、ルイズも聞いた事が有る。 平民が暴力的な手段で貴族に圧力をかける事は、それ程珍しくない。 例えば、ギーシュの実家グラモン家が領民の家屋に屋根を葺いてやる事にしたのも、さもなくば暴動を起こす、と脅迫された為だ。 だが、基本的に平民が本当に暴動を起こす事は少ない。貴族と本気でぶつかり合えば、勝ち目が無い。 貴族が平民を暴動止む無しの状態に追い込む事も、また極めて稀な事だ。統治能力に疑問符が付けば、地位が危うくなる。 平民は貴族に背いてはならない。 貴族は実行不可能な命令を下してはならない。 貴族と平民は、時として嫌悪や憎悪を交えながらも、結局の所、予定調和の中、互恵関係を保って来た。 何故だろう。最近、その約束事が崩れ始めている。 平民から箍が外れ始めている。 貴族からは、不安を囁く声も聞こえて来る。 暴動が散発。周辺地域では治安が悪化し、盗賊が横行している。 「原料はマルガリやないと手に入れられへんし、あいつやられたらアウトやろ。ワイ一人やと、もし大勢さんで来られたら、どうにもならへん」 その点、ルイズの爆発は広域を火制出来るし、大抵の相手は肝を潰して逃げ出すだろう。 「要は道中の安全確保の為、人数が欲しい、と……」 なるほど、事情はよく判った。 ルイズは内心で溜息をつく。これは、手を貸さない訳にはいかない様だ。 モンモランシーは裁きを受けるべきとしても、ギーシュを見捨てておけない。 「そう言う話なら、仕方が無いわね。行っていいけど……」 事情を理解しつつも、素直に承諾するのは、何だか癪だった。 「でも、ギーシュを連れて行けばいいんじゃない?ワルキューレなら、一体一体、平民の兵士よりずっと強いし、数も頼めるわ。それに、あんたが行けば、絶対に着いて来るでしょ?」 「おいおい、勘弁して欲しいわ。ワイ、あいつに後狙われとんのやで。そないなんと一緒に、旅出来る訳あらへんやろ」 「だったら、モンモランシーと、ギーシュと二人で行かせたら?」 「自分がおかしゅうなっとる自覚のあらへん奴が、治る努力する訳無いやろ」 いや。寧ろ、自分をおかしくしようとしている、と捉えて妨害しかねない。 「な、頼むわ、ルイズ」 「でも、五日間は長いし、やっぱり授業はサボれないし……」 ルイズは初めて、空に振り向いた。見ると、両手を併せて、こちらを拝んでいた。 思わず、口元に笑みが漏れる。なんだか、不機嫌で居るのが馬鹿馬鹿しくなった。 「他の材料は揃ってるの?」 「水精霊の涙でコケて、帰って来た言うとったからな。多分、足りとらん物、帰りがけに街で買う事になるやろ」 「ねえ、空。私、お芝居が見たいわ」 「おう。帰りな」 「クックベリーパイ食べたい」 「評判の店知っとる」 好物と知って、調べておいた。その一言に、ルイズは頬を弛める。 「折角や。服も買うてこ。工房覗くついでに、着替えてけばええ」 それが決定打となった。元より、断る理由も無かったのだ。 ルイズは勢い良く立ち上がった。杖を腰に提げると、勢い良くドアを開く。 「さ、急ぐんでしょう。行きましょっ」 「準備とかええんか?」 「馬鹿ね」 ルイズは笑った。 「本物の貴族はね。いついかなる時でも王命に応じられる様、常に旅立ちの準備が出来ているものなのよ」 * * * トリステインとガリアの国境に、広大な湖が横たわっている。 ラグドリアン湖。緑深い山林と、青空とを鏡の様に映し出す高地の湖は、ハルケギニア随一の名勝として知られている。 この湖には、一つの伝説が有る。 凡そ600万平方メイルにも及ぶ巨大な湖は、水の精霊の楽園であると言う。 水底に巨大な城と街を、独自の文明を築き、その歴史は人類のそれよりも尚深い物である、と言う。 水の精霊は喩えようも無い程、美しい。 その姿には、どんな悪人と雖も改心する。 その御許において交わされた誓いは、決して破られる事が無い――――伝説に長々と尾ひれが付くのは世の常だ。 益して、水の精霊は人前に全く姿を現さない。 数十年に一度、トリステイン王家と盟約の更新を行う時が、唯一の例外だ。 「で、その際の交渉役を、“水”のモンモランシ家は何代も務めて来た訳だけど……」 モンモランシー、そして空とルイズがラグドリアン湖畔に辿り着いたのは、出発から二日後の昼過ぎだった。 少なくとも、往路の道中は平穏その物で、同時に退屈でもあった。 「相変わらず、綺麗ねー」 湖面に浮かぶ山にも、森にも、歪みは見られない。ラグドリアンの湖面は、時を止めたかの様に静かだ。 丘から見下ろす眺望に、ルイズはうっとりと息を漏らす。 「ルイズ、来た事有るんか?」 「ええ。三年前、太后陛下御誕生祝賀の園遊会でね。思い出すわ。あの時は、姫殿下の身代わりになって――――て、キャメラなんて持って来たの?」 「コッパゲに頼まれとるんや。とにかく使うて、気付いた事が有れば教えろ、て」 「どうせ撮るんなら、出来るだけ綺麗な所にしなさいよ」 「ええ所、知っとる?せやったら、そこで一旦馬車停めて――――」 「ちょっと、あんた達!」 御者台からの鋭い声が、二人の歓談を遮った。 「人の話聞いてるの?遊びに来たんじゃないのよ!」 手綱を握るのは、モラモランシーだ。 予算は節約したいし、余計な人間を増やしたくも無い。そして、彼女は一番立場が弱い。 「とにかく、早く済ませて帰りましょっ」 道中、とにかくモンモランシーは急いでいた。 恋人を早く元に戻してやりたいの一心だけでは無い。 放っておくと、何をしでかすか判らないので、ギーシュは部屋に縛り付けて来た。 世話はシエスタに任せてある。さすがに、あの油断ならないメイドとて、この状況で無理矢理既成事実を作ろうとまではしないだろう。 それよりも、空から借りた材料費、十一の利子が何よりの問題だ。 「で、あれがさっきのジイさんが言うとった村か」 空は湖面に顔を覗かせる藁葺き屋根を、目線で嘗めた。 湖畔に差し掛かった時だ。一人の老農夫が声を掛けて来た。 なんでも二年前から水位が上がり、村は完全に飲み込まれてしまったと言う。 「水精霊が悪さしよったんですわ」 貴族が水精霊と交渉に来た。てっきり、そう思いこんでいた農夫は、それが誤解と知ると、すっかり落胆した。 領主は宮廷での社交ばかり考えて、領地の経営を省みない―――― 一頻り愚痴を零して立ち去る。 その話に、空は革命前のフランスを思い出した。 貴族制度は兵権を分散させると共に、地方自治を担保する。もともと、地方の殿様と領民と言うのは、それなりに巧くやっている物だ。 所が、極度に王権が強大化すると、それが崩れる。地道な領地経営で地盤を築くよりも、中央でおべっかを使う方が富と地位への近道となれば、地方は忽ち荒廃する。 フランス革命は異常思想に取り憑かれた一部の主義者と、王政の絶頂期であるルイ14世以来の歪な中央集権体制による社会不安とが化学反応を起こして生まれた社会の破裂だ。 まあ、マルティニーやタルブは平穏その物だった。 ルイズやギーシュを見る限り、この国はまだまだ当分、大丈夫だろう。 「何事も無ければ、やけどな……」 一同は馬車を降りた。 モンモランーは湖畔に寄ると、水面に手を翳した。 「やっぱり。水の精霊は怒ってるみたいね」 困惑した様に首を振る。 「わあ、冷たーい」 「ホンマ、ええ所やわ。一日くらい、ゆっくり……」 「あんた達っ!」 静謐な水面に両手を沈めてはしゃぐルイズと、両腕を伸ばして深呼吸する空を、モンモランシーは再び叱り付けた。 「水の精霊はプライドが高いんだからっ。機嫌を損ねたら大変なのよっ。大人しくしててっ」 モンモランシーは馬車からリュックを降ろす。蓋を開け、顔を出したのは一匹の蛙だ。 のそりと地面に降り立つや、主人に向けて敬礼する。 「カエル!」 その姿に、ルイズは砂煙を上げてバックステップ。5メイルばかりも後に退いた。 「なんや、ルイズは蛙怖いんか。可愛ええとこ有るやん」 「失礼ね。私の大事な使い魔よ」 モンモランシーは取り出した針で指を突くと、蛙に一滴、血を垂らす。 「いいこと、ロビン。あなたたちの旧い友達と連絡がとりたいの。水の精霊を見付けて、旧い盟約の持ち主が話をしたい、と伝えてちょうだい」 ロビンと呼ばれた蛙は、了解でありますっ、と言わんはがりの敬礼を一つ残し、湖に消えた。 「これで、ロビンが水の精霊を連れて来てくれる筈よ」 「その辺は任せといて、大丈夫なんやろ」 「いーけど。絶対、水の精霊の機嫌を損ねる様な事しないで。と、言うか、あんたは傍に居るだけで不安だわ。あっちに行ってて。あっち」 「そない、邪険にするなや」 「水の精霊、てそんなに怒りっぽいの?」 まるであんたじゃない――――ルイズは余計な一言を付け加えた。 「あんたに言われたくないわよっ。もう静かにしててっ。前は大変だったのっ。父上ったら、『床が濡れる。歩くな』なんて言うもんだから……」 モンモランシーは領地の干拓が失敗した事について、ぶつぶつ漏らし始めた。 余程、恨みが深いのだろう。十年も前の出来事が祟って、モンモランシ家は未だに貧乏なのだ。 そんな様子を見ていると、ルイズは少し不安になった。空はハルケギニアの常識にいまいち欠ける。 「おいおい……」 「モンモランシーに任せるんでしょ。離れて見てればいいわ」 ルイズは有無を言わさず、車椅子を押して森陰に身を潜めた。 湖面が輝いた。岸辺から、凡そ30メイルの場所だ。水が意志を持つ者の様に蠢き、渦を巻く。 その光景を、モンモランシーは微動だにもせず眺めている。 水が盛り上がった。 何かが現れたのでは無い。水、それ自体が盛り上がった。 無色透明の水塊が蠢く様は、水飴を思わせた。 「綺麗……」 モンモランシーは水飴と何やら話している。 と、水飴は様々にうねり、歪み、そして目の前の水メイジそっくりの姿を形取る。 「……でもない」 途端、ルイズは前言を翻す。 「お前ら仲悪いなあ」 尤も、空も同意見だった。出来の悪いCGを見せられている気分だ。 正直、あまり綺麗だとは思えない。 「ま、写真撮っとくか」 「止めなさいよ。気付かれたら、きっと怒るわ」 そんな事よりも――――少し距離を置き過ぎた。一人と一体の声が、さっぱりと聞こえない。 一体、何を話しているのだろう? 「あんたはどう?何話してるか聞こえる?」 「んー……」 空は耳を澄ませる。何を話しているのかは聞こえるが、それが何を意味するかは判然としない所も多い。 メイジでもなければ、ハルケギニア人ですら無い身としては、致し方無い所だ。 「あ……」 「どうしたの?」 「いや、ちょい待ち」 モンモランシーが両手を大きく振り回して、必死に交渉……と言うよりも懇願している。 ロマリア人は両手が無しには喋れないが、トリステインにも時折、この手合いが居る。 程なくして、モンモランシーの等身大アクリルフィギュアは湖面に溶けて消えた。 「不首尾だったの?」 「いや。条件付けられよったわ」 「条件?」 湖畔に戻る。 モンモランシーは、青ざめた顔で立ち尽くしていた。 ラグドリアン湖は美しい湖だ。 ルイズは靴を、ニーソックスを脱いで波と戯れている。 細く白い脚が湖水を蹴立て、無邪気な笑顔に併せて飛沫が踊る。 その様を、湖畔の空は目を細めて眺めている。 手にはカメラが在る。さすがに、動く人間を撮れる代物では無い。ルイズが遊び飽きたら、どこを撮影するか相談しよう。 そんな二人の様子を、モンモランシーは苦虫を噛み潰す様に睨め付ける。 「どしたんや、マルガリ。滅多に来れへん所やで。お前も楽しんだらどや?」 「あんた達、どうしてそんなに暢気なのよ。もう……」 「相手が来るのは夜やろ」 「それはそうなんだけど……」 モンモランシーは溜息をつく。 水の精霊は襲撃者に悩まされている、と言う。 相手は夜になると、ガリア側の岸辺へ現れる。そして、自分の体を削って行くのだ、と―――― 自分は水位を上げる事に手一杯で、襲撃者への対処には手が回らない。 代わって退治する事が、水の精霊の涙――――その実態は水精霊の一部――――を譲る条件だった。 「密猟者、て所かい」 「相手は二人だそうよ。多分、風と火のメイジ」 湖に侵入する為、風のメイジが空気の球を作る。 火のメイジが水精霊の体の一部を蒸発させる。 水精霊は巨大な一個の生命であり、分断されても意識の連絡は続くが、一度気体となった部分とは、繋がる事が出来なくなる。 「ちゅうと、湖の底に有るっちゅう城とか、街とかは?」 「迷信よ。御伽噺」 夢の無い話だった。 「全く、私は平和主義者なのよ……」 モンモランシーは肩を震わせた。 一対一では最強の系統とされる風。乱戦では無類の強さを発揮する火。 どちらも、戦闘に特化した系統だ。水メイジが相手取るには荷が重い。 「ワイとルイズが居るやろ。元王さまと、“王”候補やで。そう、心配すな」 「呆れた……“破烈の王”とか、まだ言ってたの?」 「まあ、見とき。ルイズは誰もが認めるメイジになる」 「“ゼロ”のルイズが?」 そう言いかけて、モンモランシーは口を閉ざした。戻って来るルイズに気を使った事もあるが、何より、空の前でこの一言は禁句だった。 湖畔の空気は割合、涼しかった。 ルイズは馬車の荷台に濡れた脚を伸ばす。 夏の厳しい日差しも、今ばかりは心地よい。 「とりあえず、あっちに移動しない?馬車を停めておく場所も、探さないといけないし」 「せやな。行こか、マルガリ」 「はいはい」 促されて、モンモランシーは御者台に登る。 全く、どうして貴族である自分が、平民に言われて手綱を取らねばならないのか。金が無いのは、首が無いのと同じとは良く言った物だ。 おまけに今回は弱みまで握られている、と来ている。 湖に沿って、馬車はゆっくりと進む。 ルイズは脚を揺らしながら、湖をじっと眺めている。 空は指で作った枠を覗き込み、撮影箇所を探している。 「ここなんか、ええかもな」 「綺麗ねえ」 「おーい、マルガリ。停めやあ」 「いい加減にしてよっ!」 モンモランシーは軽くキレた。 水精霊が指定した地点に到着。停車する場所を探す。 どの道、今夜はここで一泊するしかない。あまり目立たず、キャンプも張れて、湖にも近い方がいい。 場所は案外簡単に見つかった。時間は未だたっぷり有る。 三人は偵察がてらに、散歩と洒落込む事にした。とは言っても、モンモランシーは終始硬い面持ちだ。 日が傾き始めた。 食事は保存食で早目に済ませる。味気ないが、こればかりは仕方が無い。 食事を終えると、ルイズの表情にも緊張が浮かび始めた。 決闘禁止令にも関わらず、学院では時折決闘騒ぎが起こる。魔法の撃ち合いなら、パーツ・ウォウで経験している。とは言え、所詮は子供の喧嘩、ゲームの延長だ。 しかし、今夜経験するのは実戦。その上、密猟に手を染めるメイジが相手とあっては、名誉ある戦いは期待出来ない。 「作戦やけど……」 「私は平和主義者ですからね。平和的に解決するわ」 モンモランシーが高らかに宣言した。 「平和的、ちゅうとなんや。話し合いでもするつもりかい」 「ええ。平和的な話し合いで解決するわ」 ルイズは目を丸くした。おかしな物を見る目だ。 密猟者と平和的な話し合いとやらが通じるなどと、この頭が平和な水メイジは、本気で考えているのだろうか。 「通じますとも!まず、私の平和的な水の魔法が有るわ。それに、ルイズのとても平和的な爆発があって、あんたの剣なんて、会話出来るんだから、もう平和的もいい所ね。これだけ平和的な手段が揃っているのに、平和的に解決出来ない理由なんてあるのかしらっ?」 「……マルガリ。お前、なんでも平和的、て付ければ通ると思ってへんか?」 「平和は何より尊い物なんですよ、ええっ。平和的に解決する為にはまず、相手に平和の尊さを身をもって知って貰う必要が有るわっ。これは当然の理屈ではなくってっ?」 「ボーズも苦労しそうやなあ……」 さて、作戦。 相手が二人揃っている所を、爆発で吹き飛ばしてしまえれば楽でいい。 「問題は夜、と言う事かしら」 爆発の利点は空間に直接作用する事。従って、回避手段が存在しない事。 対し、欠点は爆心点の設定が難しい事だ。距離感の掴み辛い夜間、確実に相手の行動力を奪えるかどうか。 魔法は詠唱に時間がかかる。メイジ同士の戦いは、初手の成否が決着まで影響する。 「近付けば、大丈夫だと思うけど……」 「あちらさん、人間様が傭兵になっとるなんて、考えてへんやろ。待ち伏せ出来るさかい、距離詰めるんは、難しくないんと違うか?」 飛翔の行程が無い爆発は、仮に外したとしても、術者の位置が特定される危険は少ない。 相手がまるで無傷は考え難いから、残る二人が仕留めればいい。 「相手が場所変えよったら、話も変わるけどな」 「じゃあ、その場合、まず私が比較的平和な手段で接触をするから――――」 反撃はルイズが“爆発の盾”で阻止。二人を囮として、空が樹々を足場に頭上から襲いかかれば片が付くだろう。 作戦が決まると、配置につく。 地形は昼間の偵察で頭に叩き込んである。 「それにしても、マルガリ、思うとったより過激やなあ」 「私は平和主義者よっ。平和的でない人達が我慢ならないのっ」 空は肩を竦めた。全く、平和を声高に叫ぶ連中ほど、攻撃的かつ排他的なのは何故だろう。 三人は息を潜める。 待ち伏せは根気が大事だが、ルイズと言い、モンモランシーと言い、至って短気だ。 空は少し心配になったが、まあ失敗したら失敗したで、やり様も有る。 一時間ばかり時を置いて、湖畔に人影が現れた。 嫌に体格差の有る二人組は、漆黒のローブを頭からすっぽりと被っている。 水辺に進むと、杖を掲げて何やら呪文を詠唱する。 モンモランシーは杖を構える。 相手は火と風のメイジだ。恐ろしい戦闘メイジだ。何故、平和主義者の自分が、こんな物騒な連中と戦わねばならない。 原因を作った少年への、理不尽な怒りが胸を焦がす。 「青銅をも砕く乙女の激流!受けてみなさい!」 詠唱が完成する。比較的平和な呪文アクア・ストリーム。 湖面が爆ぜる。数百㎏の水塊が一尾の竜に化ける。岩をも打ち砕く圧力をもって、目標に襲いかかる。 長身のメイジは、一瞬、身を強張らせながらも、杖を突き出す。先端に生まれる小さな小さな火の球が、激流に飲み込まれる。 刹那だ。 水の竜が内から弾けた。小さな火の球が、忽ち巨大な火柱に成長。数トンの打撃を蒸気に変える。 同時に、小さな影が身を捻る。杖を向ける先は、モンモランシーでは無く―――― 「アカン!」 空は飛び出す。 杖の先にはルイズが居る。モンモランシーが先走った御陰で、伏兵の位置が特定された。 二つの空気が膨張した。一箇所は襲撃者が突き出す杖の先で。もう一箇所はローブとローブの間で。 閑静な夜の森に、爆音が響いた。 前ページ次ページ虚無の王
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ トリステインとガリアの国境をなす、ハルケギニア随一の名勝《ラグドリアン湖》。 王都トリスタニアから馬車で二日あまり、面積はおよそ600平方リーグ(㎞)。 琵琶湖(670平方㎞)や東京23区(622平方㎞)よりやや小さいが、淡路島(592平方㎞)がほぼ入る広さだ。 青く澄んだその水は、巨大な『水の精霊』そのものだと伝えられ、この湖を支配する生きた神とも言える。 それは死の概念も老いるという事も知らず、永久に存在するため、永遠の誓いを護る『誓約の精霊』とも呼ばれるのだ。 そして、万物の母なる《水》は生物の肉体と精神を司る。かの精霊の体は、それ自体が秘薬と言ってよい。 それこそが『水の精霊の涙』なのだ。その高級な秘薬を手に入れるため、ルイズと松下はここへやって来たのだが……。 「ああ、ようやくラグドリアン湖だわ! そろそろ日が暮れるじゃない」 「どこかで宿をとろう。流石に『魔女のホウキ』でも、結構かかるな」 『二人と四匹』が湖畔に着いたのは、出発が遅めだったので、もう夕方。しかし、急がねばならない。 「ああ、待ってモンモランシー!! まだ泳いじゃダメよ! そんなに遠くへ行かないの! ギーシュ!! 土の中から出てきなさい! 彼女を呼び戻して!」 怪奇『蛙女』と化したモンモランシーが湖に跳び込み、使い魔の蛙・ロビンを連れてすいすいと泳ぐ。 『モグラ男』ギーシュはヴェルダンデと一緒にまた土の中だ。もぞもぞと何か貪っている。 「まだこいつらがホウキに乗れてよかった。『ヴィンダールヴ』で操れるのはいいが、もう人間の言葉も忘れたかな……。 あと三日もすれば魂を乗っ取られ、完全変態を遂げてしまうところだった。危ない危ない」 「……始祖ブリミルよ、私をお許し下さい……罰を受けるべきなのは、マツシタだけですので」 ルイズが涙ながらに祈りを捧げる。さして仲良しではなかったが、友人の変わり果てた姿を見ると精神的に危険だ。 ぐわぐわぐわ、ゲゲゲゲゲ、とモンモランシーが双月を見上げて、楽しげに鳴いている。 それに唱和して、ロビン、ギーシュ、ヴェルダンデ、湖の周りの蟲たちも歌い始める。それが湖面に木霊する。 「おお、なんという見事な交響楽だろう。立派な芸術の域にまで高められている!」 ルイズのしくしくしくしく、という泣き声もそれに和した。 ばちゃり、と湖面で何かが跳ねた。それは人間ほどの大きさがあり、手足もあった。 人影はすいすいと水中を泳ぎ、モンモランシーのところまで寄ってきた。 「うむ? なんだ、あれは?」 「え? …………ああ、あれは『ヴォジャノーイ』という亜人の一種ね。水の精霊に仕えていて、 小柄だけど怪力で人間を引きずり込んだりするそうよ。彼女を仲間だとでも思ったのかしら……」 ヴォジャノーイ……確か、ロシアなどの水辺に棲む妖怪だったな。 いや、というか、あれはどう見ても……《河童》じゃあないか? 「おおい、モンモランシー! ロビンとそいつを連れて、戻って来い! 聞きたい事がある!」 松下が『右手』を挙げて叫ぶと、三匹はすいすいと岸辺に泳ぎ着いた。 なるほど、河童だ。全身は青緑色でぬるぬるしており、オカッパ頭には皿が、背中には甲羅がある。 口の突き出した猿のような顔で、指の間には水掻きがある。下品なガリア語で話しかけてきた。 「なあ人間、こいつ歌が上手で別嬪さんだなあ! あんたの使い魔か? 俺の嫁にくれよ!」 「残念だが、そういうわけにも行かない。彼女を人間に戻しに来たんだ。もう一人いるが」 「そうよ、貴方は水の精霊に仕えているのでしょう? お願いよ、案内して!」 それを聞いたヴォジャノーイは、吃驚して遠ざかる。 「精霊は今、お怒りだ! この湖は増水して、周りの人間どもの集落を呑み込んでんのさ! それもこれも、皆てめえら人間のせいだ! 恨むんじゃねえぞ!!」 彼はばしゃんと水音を立てて、湖の奥深くへ潜って行った……。 「増水ですって? そう言えばなんだか、以前より水位が上がっている気もするわね……」 「あれを見ろ。なるほど、水底に村々が沈んでいるぞ……」 注意して水面を見ると、黒々と藁葺き屋根が見える。精霊の怒りを買うような事を、彼らがしたのか? 「ともあれ、明日調査してみよう。そのあたりの大きな家を捜して、一泊だ」 二人(松下とルイズ)と四匹(モンモン・ギーシュと使い魔たち)は、村長らしき家に泊まらせてもらう事にした。 貴族の子弟『二人』とその使い魔と聞いて、小さな村では歓迎のため大騒ぎになる。 「貴族のお嬢様に御曹子さま、『水の精霊』との交渉に参られたそうで! いやはや、助かりました! 女王陛下も領主さまも、わしら辺境の村々をお忘れではなかったんですなあ!」 「どうか、よろしくお願いいたします! 船着場どころかお寺も田畑も持ち家までも沈んじまって、 わしらの暮らしが立ち行かなくなってるんです! ヴォジャノーイどもは大喜びだし……忌々しい!」 下にも置かない丁重なもてなしだ。不器量な村娘や老婆までも歓迎の踊りを始める。 「そ、そうよ! この私が、女王陛下の内密の詔勅をいただき、直々に来てあげたんだからね! 感謝しなさい! この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール公爵令嬢がねっ!!」 「この度、前線基地の建設監督官に任命されたイチロウ・マツシタ・ド・タルブ伯爵だ。 事情により、こちらの調査にも来ている。協力してくれ」 へへ――――――っ、と村人全員が土下座する。まだ子供だが、公爵令嬢と伯爵さま(?)のご来訪だ。 「へえ、じりじりと水嵩が増えだしたのは、そう二年半ばかりも前になりますかねえ。 誰が何をしでかしたのか、メイジでもなく精霊と話せぬわしらには、分かりかねます」 「前の領主のド・モンモランシさまも、数年前の領地の干拓の時にアレの機嫌を損ねて、だいぶ領地を失われました。 代々交渉役を務めて来られた名家だったんですが、それ以来借金して没落しまして、今は別の貴族が領主さまです。 お家は存続しておられるらしいんですがねえ……」 「新しい領主さまは、宮中でのお付き合いに忙しくって、めったにこちらには来られません。 そのくせ、税金は前どおり取っていかれますよ。まあ、アルビオンとの戦争もありますし……」 「ふうーん、モンモランシーの実家のド・モンモランシ家が、前の領主だったのね。 二つ名はやっぱり『香水』じゃあなくって、『洪水』じゃないの!」 いろいろと情報は入るが、やはり『水の精霊』に会わない事にはどうしようもない。 「『水の精霊の涙』かあ……確か、ご禁制の『惚れ薬』の材料にもなるのよね。相当高いんでしょ?」 「ぼくのポケットマネーでも、なんとか出せる程度にはな」 『水の精霊の涙』、小瓶にほんの少量。それだけで末端流通価格が700エキューは下らない。 年収120エキュー(月収10エキュー)の平民が一人慎ましやかに暮らして、5~6年は生活できる計算だ。 およそ現代日本での円に換算して、仮に1エキューが2万円とすれば年収240万円で、涙が1400万円。 1エキューを1.5万円としても、平民の年収180万円で、涙が1050万円。 間を取って1エキュー1.75万円とすれば、年収210万円のところ涙が1225万円。 庶民の涙がちょちょぎれたって、そうそう出せる金額ではない。 それはさておき、翌朝早く。二人と四匹は、再びラグドリアン湖岸へ向かう。 「ぼくの『ヴィンダールヴ』があれば、河童もといヴォジャノーイぐらいなら操れるだろう。 亜人にも効くのかどうかは分からないが……さもなければ、実力行使かな」 「『水の精霊』は強いわよ。風で凍らせたり、火で蒸発させたりすればダメージは行くでしょうけど、 規模の桁が違いすぎるもの。あの湖全体が、一つの生き物と考えていいわ」 「ほう、博識だなルイズ」 「まあね。アレは『全にして個』なるモノで、私たち人類とは根本的に違う存在なの。 争いを好まないから神代以来あそこにじっとしているけど、怒らせたら怖いわよ。 少しでも水に触れたら一瞬で精神を支配され、永久にアレの下僕よ。ヴォジャノーイもきっとそうなのかも……」 ふうむ、と松下は思案する。モンモランシーの実家が前の交渉役だと言うなら、彼女を利用すればいいのでは? 「よし、『第三使徒・モンモランシー』よ。きみを『ヴィンダールヴ』の力で操り、交渉役とする。 ロビンの方は残しておいて、連絡係だ。手に負えないようなら水面まで呼び寄せるのだ」 「グワッグワッグワッ、ゲロゲロゲロ」 モンモランシーから『蛙女』になりかかっているソレは、肯いてちゃぽんと水中に跳び込む。 ルイズとギーシュが心配そうに水面を覗き込む。 やがて、ロビンがクワックワッと鳴きだした。 「おお、ようやく連絡がとれたか。よし、『水の精霊』が出てくるぞ」 ルイズが緊張する。あのタルブでの『虚無』の覚醒から、簡単なコモンマジックは使えるようになったが、 いまだに系統魔法では爆発しか起こせない。強敵には敵わないのだ。 やがて、岸辺から30メイル沖の水面が、虹色に輝いてぐねぐねと動き始める。 それはざばりと持ち上がって蠢き、色と形を変えながら様子を伺っている。 「我、汝を求め、会う事を得ん! 『水の精霊』よ、汝がここに来たれるは嬉し!!」 松下が両手を掲げ、言霊で歓迎する。 「我らに似たる姿を取りて、我が要求に答えよ!」 『水の精霊』はそれに応え、粘土細工のように自ら姿を変化させ、『蛙女』の形となる。 モンモランシーは役目を果たし、岸辺に戻ってきた。 《……我を呼び出したのは貴様か、単なる者よ。この『蛙女』の体を流れる液体を、我は覚えている。 月が52回交差するほど以前、この女は我と接触した。そして今、我の『欠片』も混ざり合っている……》 「ようこそ、『水の精霊』よ。その女と、ここにいる『モグラ男』の心身を元の人間に戻すため、 新たな《涙》が欲しいのだ。きみがその女から『欠片』だけを分離できれば、やってみせてくれ」 精霊の表面に、ざざざざざと細波が立つ。 《我にはできぬ。この者の心身と、異様な媒体によって結び付けられ、溶け合っている。 我の『欠片』を再び与えれば、確かにこの者は元に戻るであろう……》 「では、頼む。できる範囲でのお礼はするつもりだ」 《条件がある。我は今、水を増やす事に力を注いでいるが、そのゆえにか襲撃されている。 対岸、貴様たちがガリアと呼ぶ地の岸から、ここ数日、毎晩メイジが水底まで来て襲ってくるのだ。 手下のヴォジャノーイも数体殺された。奴らを撃退すれば、『欠片』を与えよう》 「メイジが襲撃ですって? あ、あの、なぜ貴女は水嵩を増やしているの? そうしなければ、襲われないですむわ」 《汝ら単なる者には、我の価値判断が理解できまい。条件をのめば教える》 ルイズはむっとするが、敵に回せば恐ろしい相手だ。うかつに攻撃は出来ない。 「分かった、『水の精霊』よ。我々がその者たちを捕らえ、二度と害をなさないようにすれば、《涙》をくれるのだな。 そして、それを実行するに当たって、もう一つ。我々が撃退に成功した場合、水嵩を元に戻してくれ。 周辺住民に被害が出ており、いずれはきみをまた騒がせる事になるからね」 《よかろう。まずは、奴らを追い払うのだ。この我が、己の誓約を破る事はない》 かくして、二人と四匹はガリア側の岸辺へ向かう事になった……。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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「わあ…綺麗ですね、キラキラしてる」 シエスタがラグドリアン湖を見下ろして呟いた。 丘の上から見たラグドリアン湖は、陽光を反射し、ガラス粉をまいたようにきらりきらりと輝いている。 以前シルフィードの背から見た時よりも、ずっと綺麗な気がした。 シエスタ達は竜車を使ってラグドリアン湖にまでやってきた。 竜の力は凄まじい物で、今までシエスタが操った馬とは比べものにならないパワーとスピードを出して、籠を引いていた。 それなのに、道中は音も振動もあまり気にならない、よほど質の高い籠なのだろう。 モンモランシーとシエスタは、つくづくラ・ヴァリエール家の力を思い知らされた気分だった。 水辺に近づくと、竜車はゆっくりと動きを止めた。 少し間をおいて御者が扉をノックし、静かに車の扉を開かれた。 カリーヌが「行きましょう」と呟いて馬車を降り、モンモランシーが降り、シエスタが最後に降りた。 ちらりと御者の顔を覗くと、なるほどゴーレムというのも納得がいく、近くでみるとその顔は「肌色」ではなく「陶器に塗りつけたような肌色」をしているのだ。 ゴーレムはシエスタが降りたのを確認すると、扉を閉めて御者の席に戻る。 シエスタは「へー」と呟いて一人感心していた。 「間近で見ると、本当に綺麗な湖ですね……青く、深く澄んでいる湖なんて、見るのは初めてです」 シエスタが湖面に手を当てて、水を手ですくい取る。 手に絡みつく水の感触は、何か神秘的な力が籠もっているように思えた。 「この湖に来るのは何年ぶりかしら、園遊会以来だから…三年前…ですわね」 カリーヌは湖面を見つめ、懐かしそうに目を細める。 三年前、ラグドリアン湖で園遊会が開かれた、それは太后マリアンヌの誕生日を祝うためのもので、各国の重鎮、高名な貴族達が招かれた盛大なものだった。 噂では、女王アンリエッタとウェールズ皇太子が出会ったのも、その園遊会だったと囁かれている。 あの時、ルイズが何をしていたのか、カリーヌはよく覚えていた。 園遊会の夜アンリエッタに呼ばれ、遊び相手を務めていたルイズ。 実際にはアンリエッタが羽を伸ばすため、影武者として呼ばれていたのだと何となく気づいていた。 魔法が使えないと言われていたルイズが、唯一心を開いていた遊び相手、それが当時のアンリエッタだった。 以前、太后マリアンヌはカリーヌ・デジレに、個人的に礼を言われたことがある。 ルイズは、王女として生まれ、「お飾り」と「カリスマ」の板挟みにあっていたアンリエッタの心の支えになってくれたと。 あの園遊会の日、何年ぶりかで再開したルイズとアンリエッタの、子供の頃と変わらぬ微笑みが思い浮かぶ。 カリーヌは過去に思いを馳せ、静かに湖面を見つめていた。 無言で湖面を見つめているカリーヌの隣で、モンモランシーもまた、じっと湖面を見つめていた。 だが、なにか気になることがあるのか、首をひねって「うーん…」と小さく唸る。 「どうしたんですか?」 シエスタが訪ねると、モンモランシーは湖面を見つめたまま答える。 「ヘンね…。 ラグドリアン湖の水位があがってるわ。岸辺はもっと、ずっと向こうだったはずよ」 「ほんとですか?」 「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」 モンモランシーが指差す先には、藁葺きの屋根が見えた。 シエスタが湖の中をまじまじと見つめる、すると澄んだ水面の下に家らしき建物が沈んでいることに気づいた。 モンモランシーは波打ち際に近づき、指先で水面に触れた。 目を閉じてしばらくしすると、不意に立ち上がり、困ったように首をかしげた。 「あの噂通りよ、水の精霊はずいぶん怒っているみたい」 「今のは?」 シエスタが問うと、モンモランシーは右手の人差し指をピンと立ててシエスタに見せつけた。 「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。前にも言ったとおり、古い盟約で結ばれているトリステイン王家と水の精霊……その交渉役をモンモランシ家が代々努めてたの。水に触れれば感情が流れ込んでくるわ」 「へえー…」 シエスタが身をかがめて、水面に手を触れる。 「あ、波紋は止めておいた方がいいわ、水の精霊にどんな影響があるかわからないもの」 「あっ。そうですね。すみません…」 シエスタが慌てて手を引っ込めて謝る、モンモランシーはシエスタの仕草にくすりと笑って、再度湖面を見つめた。 不意に、湖面を見つめていたカリーヌが後ろを振り向く。 木の陰から三人を見つめている者が、カリーヌの視線に射竦められびくりと体を震わせた。 だが、カリーヌも殺気を感じたわけではないので、興味なさそうに湖面へと視線を戻した。 それに安堵したのか、木の陰にいた初老の農夫は、意を決して三人に声をかけた。 「もし、貴族のご婦人様方でございますか」 シエスタとモンモランシーが振り向くと、初老の農夫は、困ったような顔で一行を見つめていた。 「そうだけど…何かしら?」 モンモランシーが尋ねると、農夫は地面に膝を突いて、手に持った帽子を足下に置いた。 「水の精霊との交渉に参られたかたがたで? でしたら、はやいとこ、この水をなんとかして欲しいもんで…」 一行が顔を見合わせる。 困ったような口ぶりからすると、この農夫は湖に沈んでしまった村の住人だと想像できる。 「わたしたちは、その……」 この大変な時期に、秘薬の元となる、水の精霊の涙を取りに来たとは言いづらい。 モンモランシーが口ごもりそうになったところで、カリーヌがすっと前に出た。 「残念ながら王宮からの命を受けた者ではありません。水の精霊を怒らせた者がいると聞きましたが、知っていることを離して頂けますか」 カリーヌの言葉は丁寧さの中にも、威圧感を感じる。 農夫はカクカクと首を縦に振り、ラグドリアン湖で起こったことを話した。 農夫の話では、ラグドリアン湖の増水が始まったのは二年前だという。 船着き場が沈んでから、湖面に近かった寺院、畑、住居が沈むのはすぐだったと言う。 「領主はこのことを知ってるの?」 モンモランシーが聞くと、涙ながらに農夫が答える。 「領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争にかかりっきりでごぜえます。こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。畑を取られたわしらが、どんなに苦しいのか想像もつかんのでしょうな……」 よよよと農夫が泣き崩れたが、涙を流しているようには見えない。 どちらかというと愚痴をこぼすようなしゃべり方で、今度は水の精霊への恨み言を言い始めた。 「水の精霊が人間に悪さをしてるんですわ。湖の底に沈んでおればいいものを……。どうして今になって陸に興味を示すのか聞いてみたいもんでさ!水辺からこっちは人間さまの土地だって…の…に………」 農夫の声が切れ切れになる。 シエスタとモンモランシーは、頭に?を浮かべた。 農夫の顔から血の気が引いていき、手がプルプルと震え出す。 「言いたいことはそれだけですか」 カリーヌが静かに呟いた。 カリーヌの刺すような視線に射竦められた農夫は、「へへぇ」と平伏すると、まるで逃げるように立ち去っていった。 モンモランシーは、改めてカリーヌの恐ろしさを知った気がした。 懇願ならともかく、愚痴を聞かされて気分の良い物ではないが、愚痴を言っただけでカリーヌの鋭い視線に晒されると思うと、冷や汗が吹き出そうになる。 シエスタはカリーヌを怖いと思わなかったが、とっつきにくそうな人だなと、改めて感じた。 モンモランシーが気を取り直し、腰にさげた袋からなにかを取り出した。 「…カエル、ですか?」 手のひらをのぞき込んだシエスタが呟く。 シエスタの見たとおり、モンモランシーの左手に乗っているのは一匹の小さなカエル。 鮮やかな黄色に、黒い斑点がいくつも散っている。 「ロビンって言うの、私の大事な使い魔よ」 ロビンと呼ばれたカエルは、モンモランシーの手のひらの上で、まっすぐにモンモランシーを見つめていた。 モンモランシーは右手の人差し指を立てて、ロビンに命令する。 「いいこと? ロビン。あなたたちの古いおともだちと、連絡が取りたいの」 モンモランシーはポケットから針を取り出し、片手で器用に指の先を突く。 指先に赤い血の玉が膨れ上がると、その血を一滴ロビンに垂らした。 小声でルーンを唱え指先の傷を治すと、残った血をぺろっと舐めて、再びカエルに顔を近づけた。 「私の臭いを覚えていれば、これで解ると思うわ。ロビン、偉い精霊、旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだいね。わかった?」 ロビンはぴょこんと頷くような仕草をすると、ぴょんと大きく飛び跳ねて、水の中へと消えていった。 モンモランシーがシエスタとカリーヌの方に向き直り、口を開く。 「今、ロビンが水の精霊を呼びに行ったわ。見つかったら、連れてきてくれるでしょう」 シエスタがモンモランシーの隣に立ち、湖面を見つめる。 「この中に水の精霊がいるんですよね…どんな姿をしてるのか、ちょっとドキドキしますね」 「水の精霊は人間よりもずっと、ずーっと長く生きている存在よ。六千年前に始祖ブリミルがハルケギニアに光臨した際には、すでに存在していたというわ。その体は、まるで水のように自在にかたちを変えて、陽光を受けるとキラキラと七色に輝き…」 と、そこまで口にした瞬間、30メイルほど離れた水面がぼんやりと光り輝き始めた。 岸辺からそれを見つめていると、輝きはどんどんと増していき、まばゆい光が水面から放たれる。 水面はまるで意志を持ったかのように蠢き、巨大な水滴が空に向かって落ちるような、幻想的な光景となっていった。 シエスタはあっけにとられ、口を半開きにしたままその様子を見つめていた。 盛り上がった水は、うねうねと様々な形に変わっていく、巨大な粘菌とでも呼ぶべきだろうか、陽光を取り込み七色に光るその姿は確かに綺麗だが、形そのものは怖い気もした。 湖面から顔を出したロビンが、ぴょんぴょんと跳ねてモンモランシーの元に戻る。 しゃがんで手をかざしロビンを迎え、指で頭を撫でてやると、ロビンは嬉しそうにゲコッと鳴いた。 「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」 モンモランシーは立ち上がり、水の精霊に向けて両手を広げ、声をかけた。 「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系。 カエルにつけた血に覚えはおありかしら。覚えていたら、わたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」 水の固まりのような、水の精霊がぐねぐねと蠢き、人間のような形を取り始める。 その動きをじっと見ていたシエスタは、驚きのあまり目を丸くした。 水の塊は、モンモランシーにそっくりな姿を取ったのだ。 モンモランシーそっくりな水の固まりは、表情をころころと変えていく。 笑顔、怒り、泣き顔……それはまるで表情を試すような動きだった。 表情が一巡すると、水の固まりは無表情になって、体全体を奮わせて声を出した。 「覚えている。単なる者よ。覚えている。太陽よ。貴様の体を流れる液体を、貴様の体を流れる太陽の波を、我は覚えている……」 「太陽? と、とにかく、私のことは覚えていてくれたのよね?」 モンモランシーが内心の焦りを隠しきれず、ついつい強い調子で質問してしまう。 だが水の精霊は無表情のまま「覚えている。単なる者よ」と繰り返しただけだった。 「……コホン。…水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部をわけて欲しいの」 水の精霊は、表情を変えずに声を出した。 「断る、単なる者よ」 「そんな!」 モンモランシーが思わず声を上げた、心なしかカリーヌの眉がぴくりと動いた気もする。 シエスタはモンモランシーの隣に並んで、胸の前で両手を合わせて握りしめ、水の精霊に向かって叫んだ。 「お願いです… ある人を助けるために必要なんです!」 「ちょっ…!やめなさいよ! 怒らせたらまずいわよ!」 モンモランシーはシエスタを後ろに下がらせようとしたが、シエスタはひるまず真っ直ぐに水の精霊を見つめている。 「お願いします!何でも言うことを聞きます。だから『水の精霊の涙』をわけて頂けませんか? どうか、どうかお願いします……」 モンモランシーの姿をした水の精霊は、なにも返事をしなかった。 シエスタは膝をつくと、地面に頭をこすりつけるほど下げて、まるで土下座のような格好で水の精霊に言った。 「お願いです…! 私は恩人に報いたいんです! ルイズ様にとって大切な人は、私にとっても大事な人なんです…、『水の精霊の涙』がどうしても必要なんです! だから…」 シエスタの必死の懇願を見て、モンモランシーはシエスタを制止しようとしていた手を止めた。 シエスタにとって、ルイズはそんなに大事な人だったのか? モンモランシーにも、ルイズをバカにしている気持ちはあった、だがフーケを追って死んだ級友は、ある意味で誇り高いとも言える。 だが、ルイズを茶化す気持ちは、ゼロのルイズをバカにする気持ちは、心の何処かに残っていた。 シエスタは、ルイズを恩人だと言っていたが、これ程までにルイズに心酔しているとは思わなかった。 カトレアを治すために土下座までするとは思っても居なかった。 もしかしたら、ラ・ヴァリエールからの援助を受けるため、オールド・オスマンが指示した行動かも知れない。 シエスタの行動は芝居かも知れない…… けれども、今この場で、水の精霊を恐れず懇願するシエスタの姿に、少なからず衝撃を受けた。 モンモランシーは水の精霊に向き直り、自分からももう一度頼んでみようと意を決した。 だが水の精霊は、突然ふるふると震えだし、姿かたちを何度も変えた。 うねうねと形を変え、モンモランシーの姿から、見たこともない女性の姿に変わった。 それはとても美しく、凛々しい女性の姿であったが、シエスタにとっては何処か懐かしい女性のような気がしてならなかった。 「よかろう……しかし、条件がある。世の理を知らぬ単なる者よ。何でもすると申したな?」 「はい、いいました」 いつの間にか顔を上げていたシエスタが、水の精霊を見上げて返事をする。 「ならば条件を出そう。我に仇なす貴様らの同胞を退治してみせよ。」 シエスタとモンモランシーは顔を見合わせ、呟いた。 「「退治?」」 「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ…。そのもの共を退治すれば、望みどおり我の一部を渡そう」 要は、水の精霊を相手にするようなメイジと戦って、勝てと言っているのだ。 モンモランシーの額に冷や汗が浮かんだ。 「…………やるしかない、わよね」 「そうです、ね」 二人は顔を見合わせて、苦笑した。 水の精霊が住む場所は、はるか湖底の奥深くだと言われている。 襲撃者は夜になるとやって来て、魔法を使い水の中に侵入、水の精霊を襲撃する。 水の精霊によれば、襲撃者が来るのはガリア側の岸辺だという。 シエスタとモンモランシーの二人はガリア側の岸辺に隠れて、襲撃者を待つはずだった。 だが二人は、トリステイン側の岸辺に停められた竜車の中で、寂しく夕食を取っていた。 カリーヌは客人を危険な目に遭わせられないと言って、単独でガリア側の岸辺に向かったのだ。 どこからか調達したバスケット一杯のサンドイッチを渡されたが、食欲が湧かないのか中身はほとんど減っていない。 この竜車は、緊急時の外泊を考えられており、椅子を引き出すとシエスタとモンモランシーが寝るには十分な広さのベッドになる。 貴族の馬車という寄り、軍人の馬車と言うべき設備だった。 「…大丈夫なんでしょうか」 「あんなに強く『一人で行きます』なんて言われたら断れないわよ」 シエスタは、一人でガリア側の岸部に向かったカリーヌを案じて、車の窓から外を見渡した。 ルイズが魔法で爆発を起こし、土くれのフーケごと木っ端微塵に吹き飛んだと言われているあの日も、こんな夜だったかもしれない… シエスタの胸に、ルイズへの憧れと、石仮面への恐れが去来した。 カリーヌ・デジレは、持参した軍服に着替え、木の上に座り瞑想していた。 マンティコア隊の服ではなく、それよりもっと昔、まだ魔法衛士隊に入隊する前の服だった。 ルイズと同じぐらいの年代、16の頃だっただろうか、その頃から魔法衛士への憧れがあった。 カリーヌは静かに過去を思い出し、静かに微笑んだ。 それから一時間ほど経った頃だろうか、岸辺に近づく人の気配に気づき、薄目を空けてそれを視認した。 人数は二人、漆黒のローブを身にまとい深くフードをかぶっている。 男か女かもわからないが、その二人は水辺に立つと杖を抜きルーンを唱えていたので、襲撃者には間違いなさそうだった。 カリーヌは小声でレビテーションを唱え、ゆっくり着地する。 ローブを身に纏った二人組は、硬直したように動きを止めた。 「!」 襲撃者の一人が杖を掲げる、と同時に空中に作られた炎がカリーヌを襲う。 同時に、もう一人の襲撃者が距離を取りつつルーンを詠唱し、地面に『エア・ハンマー』が打ち込まれた。 土が跳ね上がり、カリーヌの視界が塞がれる。 無数の炎の玉が作り出され、雨のようにカリーヌの頭上を覆う。 氷の刃が竜巻のようにカリーヌを包み、その肉を引きちぎり骨を砕く。 ……はずだった。 ギュン!と音がして周囲の空気が圧縮され、土煙と氷と炎は一つの固まりとなった。 無数の魔法に晒されたはずのカリーヌはまったくの無傷であり、土埃の汚れ一つとして無い。 カリーヌは直立不動のまま、右手に持った杖に力を込め、ルーンを詠唱する。 ただ「風を起こせ」という意味のルーンであり、風系統ではもっとも初歩のもの。 それはまるで、鉄砲水のような粘りを持った風となり、遠く上空で待機していた風竜を巻き込んで、襲撃者二人の体を巻き上げた。 空中で竜巻に飲まれた二人の手から、杖が離れる。 150サントはありそうな大きな杖と、20サント程度の小さな杖が風に乗ってカリーヌの手元に届けられた。 カリーヌは、腰から下げたロープを空中に放り投げると、風に乗せて宙に舞わせた。 ロープは風に乗って襲撃者の両手両足に絡みつき、その動きを封じる。 そして襲撃者の二人はゆっくりと地面に降ろされ、風竜は目を回して地面に倒れ込んだ。 『烈風』の異名を持つ彼女は、感情の読めぬ冷たい瞳で、襲撃者を見下ろしていた… To Be Continued→ 戻る 目次へ
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前ページ次ページゼロと電流 「第十一話」 港町ラ・ロシェール。 アルビオンとトリステインを結ぶ港である。街そのものの規模は小さいが、そこはアルビオンとの往来の要衝ということもあり、人の出入りは非常に盛んで、住人の十倍以上の人間が常にたむろしている。 治安を預かる者にとっては頭の痛いことだろうが、商売をする者にとってはこれほど嬉しい街もないだろう。ただし平和ならば、という注釈がつくが。 今の港町は、アルビオンの争乱を反映してか物騒な雰囲気の男たち……傭兵をはじめとする流れ者、脛に傷持つ者……であふれかえっている状態だ。 そのため、街の者にとっても多少の妙な風体はすでに見慣れていると言っていいだろう。『桟橋』の切符売りもその例外ではない。 だとしても、その夜やってきた男はその中でも飛び抜けて奇妙だった。 「アルビオン行きの船はいつ出る?」 「客かい?」 品定めするように男を見る。 見るからに訳ありの格好。 頭の先から足の先までをマントとフードで隠し、声までが何処かおかしい。確かに聞こえてはいるのだが、何となく声の出所が奇妙なのだ。 まるで、男の口元ではなく胸元から聞こえてくるように。 「金は?」 そう尋ねたのも仕方がないだろう。 男は、無言で厚手の手袋に包まれた掌を開いてみせる。そこには、金貨が数枚。 「二人分だ」 「悪いが、船は出ないよ」 「足りんか?」 「いや、ま、あんたが風石も全部出すってんなら別だろうが」 時期が悪い。数日後にはアルビオンが最も近づくのだ。その日ならば風石の消費も格段に抑えられるというのに、ノコノコとこの時期に船を出す馬鹿はいない。 「わかった。また来る」 「宿の当てはあんのかい?」 それには応えず、男は振り向くと歩いていく。 全身鎧を着込んでいるようなぎこちない歩き方に、切符売りは首を傾げた。 騎士か? それにしては従者も連れていないが。 いや、全身鎧を着た騎士が一人でこんな所を彷徨いているなどと不自然以外の何者でもない。 そもそも、鎧を着ているのならどうしてその上からマントとフードで隠しているのか。鎧姿よりも目立つではないか。 肩を竦めるとそれ以上の詮索は止め、切符売りは再び自分の仕事に戻ることにした。男にそれ以上構う義理も理由もない。 男は『桟橋』を出ると、そのまま町中へと歩いていく。そして、街一番の宿屋『女神の杵』亭へと。 一見してわかる、貴族や金のある平民相手の酒場兼宿屋である。 その一階の酒場で食事をしていた少女が男の帰りを認めて手をあげる。 「お帰り」 それはルイズだった。真っ赤なヘルメットを被った姿は、酒場の中で妙に目立っている。 「どうだった?」 「船は出ねえってよ」 「出ないって……あ、そうか」 「なんでぇ、知ってたのかよ」 「忘れていたのよ。月で決まるのよね、確か」 「ああ、『桟橋』の兄ちゃんもそう言ってたわ」 「ご苦労様、デルフ、ザボーガー」 「じゃあ」 「ちょっと待って。それを脱ぐのは部屋に戻ってからよ。どちらにしても、私が脱がせるんだし」 「早くしてくれ、嬢ちゃん。どうもこういうのは好きじゃねえ」 「考えてみれば、貴方、普段は服なんて着ていないものね」 「裸だな。ま、相棒だってそこは同じだと思うぜ。さ、部屋だ部屋」 「ご飯は?」 「いらね。わかってて言ってるだろ、嬢ちゃん」 食事の間預けていた鍵を受け取ると、ルイズは男の手を引くように階上の部屋へと向かった。 怪しい風体で喋りが粗野な男と、育ちの良さそうな美少女。 さらには脱ぐだの脱がせるだの裸だの。 周りの客の目が微妙に妖しいものになっていたのだが、勿論ルイズは気付いていない。 「美女と野獣に違いない」 「羨ましい」 「いや、でもあの子、飯食いながらなんか兜に手かけてぶつぶつ呟いてたけど」 「うわ」 「ちょっと、可哀想な子?」 「それであの男が騙して連れ回してる?」 「なんと羨ま……いや、けしからん」 「つか、変な者同士のお似合いじゃね?」 それらの視線や呟きを一切無視して部屋に入る二人。 ルイズは目立つのを避けるために行動しているつもりだったが、はっきり言って裏目である。 「脱がしてくんね?」 「ええ」 男のフードやマントを脱がせる、というより剥がすルイズ。 その下から現れたのはザボーガーである。そして、ザボーガーの胸元にくくりつけられているデルフリンガー。 よく見ると、ザボーガーの頭が少し開いていて、そこからヘリキャットが機体の鼻面を覗かせている。 ヘリキャットの集音マイクや小型カメラと視覚聴覚を繋いだルイズが、ザボーガーに命令して身体を動かしていたのだ。勿論、ザボーガーの口代わりになっていたのはデルフリンガーである。 「しかしなぁ、嬢ちゃん。俺っちは剣なんだが。あんまりこういうのは柄じゃねえ」 「今は剣の出番じゃないもの」 「ま、嬢ちゃんのためって事なんで、相棒も嫌がってなかったけどよ」 「どうでも良いけどさっきから、相棒って誰の事よ」 「ザボーガーに決まってるだろ」 「ザボーガーの気持ちがわかるの?」 ゴーレムの癖に気持ちなんてあるのか、とはルイズも言わない。 なんと言っても、ザボーガーは使い魔である。使い魔なのだから、どんな形にせよ心はある。ルイズはそう信じている。 「なんとなくわかる。多分嬢ちゃんがザボーガーの主人で俺の使い手だから、どっかで繋がってんだろ」 「それも、ルーンの力なの?」 「さあ、どうだろねぇ。主がそのまま使い手になってるなんて、初めてだからねぇ」 「じゃあ、他の人はどうだったのよ」 「忘れた」 「あのねぇ……」 「それで、どーすんだ? 船が出るまでは足止めだぞ」 「ザボーガー、さすがに飛べないわよね」 「そりゃあ、無理だろ」 「いいわ、待ちましょう。色々やってみたいこともあるし」 この機会に、ザボーガーの性能をもう一度検証してみよう、とルイズは決める。 そのときルイズは気付いていなかった。一階の客の中に、自分と旧知の者がいたことを。 これは一体? タバサは首を捻った。 どうして自分は学院長に呼ばれているのだろうか? 横を見るとキュルケ。 「知らないわよ?」 反対側にはギーシュとモンモランシー。 「僕も知らない」 「私も知らない」 知らないのについてきているのはどういう事か。 タバサについていくわけではない、と三人は言う。 「私たちも呼ばれたのよ」 「僕もだ」 「私も」 タバサは一同を見渡して気付いた。 「ルイズ?」 頷くキュルケ。 「そうね、どう考えても、この四人の共通点って、ルイズよね」 「いや、僕たちはそれぞれ魔法属性のトップクラスじゃないか。いわば魔法学園の四天王」 「ギーシュはドット」 「う」 トライアングルのキュルケとタバサは良いとして、ギーシュとモンモランシーはドットである。 とは言っても、それぞれゴーレム操作と秘薬造りに特化している状態なので、総合的に考えると並みのドットは遙かに超えているのだが。 「やっぱりルイズ絡みかしら」 「今更、あの決闘のことだろうか」 「闘ったのはギーシュ」 「そうね、ギーシュね」 「だからどーして君たちはいつも、僕にばっかり面倒を押しつけるんだね!」 「頑張ってね、ギーシュ」 それでもモンモランシーに言われると頑張ってしまう自分が、ギーシュは少し恨めしかったりする。 ギーシュのどことなく嬉しそうでもある溜息を聞きつつ、先頭になっているタバサは学院長室のドアをノックする。 「ミス・タバサとミス・ツェルプストー、ミス・モンモランシじゃな? 入りたまえ」 ノックだけでわかったのか、それとも予想していたのか。 しかし、ギーシュは慌てている。 「あの、学院長、僕は」 「男を部屋に誘い入れる趣味など持っておらんわい」 「え」 「早く入ってきなさい。お客様もお待ちかねじゃ」 お客様? と訝しげな顔になりつつも、四人はドアを開けて中へはいる。 途端に、直立不動となるギーシュとモンモランシー。 オスマンの隣で微笑んでいる客の姿に気付き、優雅に礼をするタバサ。一瞬遅れて、キュルケも。 「ここでの私はオールド・オスマンの客人に過ぎません。皆、楽にしなさい。」 四人が想像もしていなかった第三者アンリエッタはそう言うが、ギーシュとモンモランシーはそうはいかない。二人とも、学院内では変わり者に分類されてはいるが、曲がりなりにも、いや、誇り高き生粋のトリステイン貴族なのだ。突然王族を目の前にして、普通でいろと言う方が無茶である。 それに引き替えキュルケはゲルマニア貴族、タバサはガリア……隠してはいるが王族……貴族である。アンリエッタに対する敬意はあっても畏怖はない。 「これこれ、ミス・モンモランシ、楽にしなさい。そこまで緊張しては却って失礼じゃよ?」 そしてこの期に及んで勘定に入ってないギーシュ。 「お前さんがたに聞きたいことがあってな」 「姫殿下が、私たちに、ですか?」 「いやいや、儂も聞きたいことがある」 モンモランシーは少し考え、ある事実を思い出す。 『ルイズは、姫殿下の幼馴染みかもしれない』 忘れていた。というか、普段考えることなど無かった。 しかし、トリステインでも屈指の名門ヴァリエール家の娘である。さらに年齢もちょうど良い。幼い頃の遊び相手とされていても何の不思議もない。 そして膨らむモンモランシーの想像。 『ルイズが、姫殿下にあることないことチクった』 いや、さすがにそれはない。それはないとモンモランシーは自分に言い聞かせる。 しかし、だ。 ただでさえモンモランシ家は、現当主であるモンモランシーの父親が代々続いた水精霊との交渉で大ポカをやらかし、睨まれているのだ。ここで自分が姫殿下に嫌われようものならば…… さらに膨らむモンモン想像。 『私のお友達に何をしてくれたのかしら?』 何もしてません。私は見てただけです。やったのはギーシュ。唆したのはキュルケです。 いや、駄目だ。それは駄目。ギーシュが罪に問われてしまう。それは嫌。ギーシュは大切なお友達。 キュルケはいい。いや、良くはないけれど。最悪、ゲルマニアの貴族なんだからトリステインの王族に嫌われるのは諦めてもらおう。 うん、それがいい。キュルケに全ての罪を…… モンモン想像は広がる。 『なんですって、ゲルマニアの成り上がり貴族の分際で。戦争よ、戦争』 駄目ーーーー。駄目、姫殿下、落ち着いてください。 戦争はいけません、駄目です。個人的には水の秘薬の価値が上がるので嬉しいですけれど、実家の財産を殖やす機会ですけれど、でも、それはそれとしてやっぱり戦は駄目です。 お願いですから落ち着いてください。 この場合、落ち着くべきはモンモランシーである。 それでも、モンモン想像は続く。 『止めなかった貴方達も同罪よ。そっちのチビッ子、貴方は誰? ガリア? ガリアなの!? わかったわ、戦争よ、戦争よぉぉぉ!!』 大変なことになってしまった。2カ国相手の大戦争が始まってしまう。 モンモランシーは心から後悔していた。 こんなことになるなんて……どうして、こんなことに…… どうして…… どうして? …………? よく考えると、まだ何も起きてない。 顔を上げると、全員が自分を不思議そうに眺めている。 「どうしたんだい、モンモランシー。顔色が悪いようだが」 ギーシュが心配そうな顔で尋ねていた。 「あ、えっと……」 「良いかね? 三人とも」 オスマンが一同に尋ねた。相変わらずギーシュは員数外である。 「ミス・ヴァリエールのことなんじゃが」 はうっ。 その言葉で、モンモン魂は再び想像へと飛んだ。 ワルドはルイズを“見て”いた。 妙な男と一緒にいるが、あれが例の使い魔たるゴーレムだろうか。 フーケのゴーレムを手もなく打ち砕いたゴーレムである。警戒が必要だろうが、ワルドとて油断はしていない。 マザリーニの密命によりアルビオン探索を請け負ったのは、自分からそのように仕向けようとしていたとはいえ、やはり幸運だった。命じられることがなければ、立案し志願するか、あるいはトリステインとの縁切りを予定より早めなければならなかっただろう。 本当に自分は運が良い。これも、自ら選んだ正しき行いへの祝福か。 ルイズの存在はそこに付け加えられたさらなる幸運、ちょっとしたボーナスのようなものだ。 使い魔などは二の次でいい。 どれほど強力な使い魔だろうが、ルイズの真の力が目覚めればそれどころの騒ぎではないのだから。 そして、その力は自分が使う。ルイズには、いや、トリステインの貴族の娘には勿体ない力だ。 ルイズならば、自分の言うことを聞くだろう。それが叶わないとしても、聞かせることはできるだろう。 なに、最悪の場合は身動きできない状態にしてしまえばいい。 足を失えば勝手に身動きはできまい。 手を失えば抵抗はできまい。 呪文の詠唱さえできればいい。杖はどうにでもなる。喉と舌さえあればいい。 自由意思など、時間と手間さえかければいくらでも変えられる。 ワルドの目に映っているのは、ルイズという名の少女ではなかった。 ワルドの目に映っているのは、ルイズと呼ばれる魔法装置に過ぎない。 前ページ次ページゼロと電流
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登録日:2012/05/05(土) 14 31 47 更新日:2024/04/28 Sun 23 54 01NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 うきょー つの丸 めらめら ギャグ ジャンプ ネタバレ禁止 ファミレスのOPとは関係ない モンモンモン 名作 最終回はシリアス 漫画 週刊少年ジャンプ 金返せー! 集英社 「モンモンモン」とは、「みどりのマキバオー」で知られる「つの丸」のデビュー作である漫画。 週刊少年ジャンプで1992年~1993年まで掲載された。 単行本は全8巻。 一応、ギャグ漫画に分類されるが、衝撃的なラストは多くの読者を感動させた。 ラスト以降の設定は「みどりのマキバオー」にも引き継がれており、一部のキャラがゲストとして登場している。 【キャラクター】 モンモン(悶悶) この漫画の主人公。 原崎山の3代目総長の息子の為、4代目総長候補。いつも鼻をほじりながら屁をしている。 盗みを繰り返した為「おさる刑務所」に入れられるが、何だかんだで(本人も知らないうちに)刑務所のボスになった。 その後、生き別れの母親を捜す為に刑務所から出る。 頭が悪く短気だが面倒見は良く、多くの子分達に慕われている。 おさる刑務所4組のさる達を一人でビッグ・ジョン以外全員倒すほど腕っぷしも強く、モンタナにボコボコにされるまでは負け知らずだった。 後半は掃除に目覚め「そうじ大臣」に就任する。 モンチャック(悶着) モンモンの弟。いつもポチョムキン人形を抱えている。 常識人(さる)であり、暴走しがちなモンモンの抑え役。 腕力が弱い為にモンモンに守られているが、作中でも屈指の知恵者であり、所々でその頭脳を役立たせる。 サルコップの大ファン。 ミノ・モンタナ モンモン達の父で、原崎山3代目総長。 地面を叩くだけで地割れが起きる、パンチ一発でダンプをぶっ飛ばすなど戦闘力が滅茶苦茶高く、 モンモンに生まれて初めての敗北を与えた最強キャラ。 生き別れの妻を捜して旅をしている。 正義感は強いがわがままな所があり、自分の意見は押し通す。 他人へ説教した事を(言った直後に)自分がやってしまうのがお約束。 酒好きであり、大好物の「くそ正宗」に目がない。(*1) 趣味は庭の木の手入れだが、実際には笑いながら枝切りばさみを振り回すだけで庭を滅茶苦茶にしている。 エリザベス・モンロー(鶴子) モンモン達の母であり、モンタナの妻。 動物園に捕らえられていたがモンモン達によって救出された。 モンタナ家の中でもモンチャックと並ぶ常識人であり、モンタナが唯一勝てない相手。 とは言っても喧嘩が強いわけではなく、「母親として強い」といった感じである。 モンタナとは違う意味での大黒柱であり、モンローが用事で外出した際には、家事の出来ないモンモンとモンタナが色々と目茶苦茶にしてしまった。 くまチョン(熊野ちん平) モンモンの同級生でライバル。関西弁でしゃべる。 家族も居ない一匹狼だが、何故か飛行船やモーターボートを持っている。 登場して、奸計でモンモンを罠に嵌めて完勝して以来、モンモンと対立する。 ジャンプ漫画のライバルとしては珍しく、最初から最後まで嫌な性格は変わらなかったが、 モンモン達が世間知らずな為、旅の仲間としては色々と頼りになったりする。 チャラ子 モンモンの同級生で好奇心旺盛な女の子(猿)。 学級新聞を作っている為、スクープに目がなく、常にカメラを持ち歩いている。 尚、親父も新聞記者である。 何気に喧嘩も強く、切れた時にはギャングすらも一撃で倒す鉄拳を持っている。 ビッグ・ジョン 身体のデカい猿で、モンモン最初の仲間。 観光地で木刀を売っていた土産物屋を荒らしたことで捕まって収容された過去を持つ。 おさる刑務所4組のボスだったが、モンモンに敗北して(*2)仲間になった。 モンモンが刑務所を出た後は、新しいリーダーとして刑務所をまとめている。 ウォッティ 刑務所3組のリーダーで自転車を乗り回す暴走族。 革ジャンにモヒカンがトレードマークで「トロージャンの狼」の異名を持つ。 チキンレースでモンモンに敗北し(*3)、仲間になる。 尚、読み切り作品にも同じ名前のキャラが登場し、作者曰く「モンモンとは前世からの付き合い」との事。 ゴライアス 刑務所2組のボスで、迷彩服を着た傭兵猿。 竹刀を使った戦闘が得意で、心理的な隙を突く技「図流伊代(ずるいよ)」を極めている。 モンモンに敗北(*4)して以後は、噛ませ犬として活躍した。 野球も得意としている。 味兵衛 刑務所1組のリーダーで、刑務所最年長。料理が得意。 脳筋ばかりの他の囚人達とは違って頭脳派であり、圧倒的多勢であったモンモンの仲間達を給食に毒を入れる事により戦闘不能にした。 薬草と称して解毒効果のない野菜を渡すなど性格も悪かったが、モンモンとモンチャックの兄弟愛を見て改心し、仲間になった。 仲間になってからは、年長者という事もあって解説役として活躍する。 キャル 筋骨隆々とした野球猿。 凶悪犯であり、死刑囚として死刑を待っていたが、刑務所の中で勢力を拡大するモンモンに対抗する為、後藤から取引を持ち掛けられた。 モンモン達とは野球で対決し、モンモンに命を助けられてから(*5)改心して仲間になった。 仲間になってからは何故か弱体化し、ゴライアスと並ぶ噛ませ犬として活躍した。 後藤(人間) おさる刑務所所長。他人に厳しく失敗も言い訳もやり直しも一切認めない。 でも自分は失敗も言い訳もやり直しも平然とする 囚人(猿)達を使ってモンモンを屈服させようとするが、ことごとく失敗。 それどころか囚人(猿)達はモンモンの仲間になり、「おさる刑務所」は猿達にとって住み心地の良い場所となってしまった。 刑務所所長としてそれが許せず、色々な手段に出るもののどれも失敗。 最終的にはモンタナに乗っていたダンプごとぶっ飛ばされた。 タクシーのおっちゃん(人間) タクシーの運転手。猿に対して理解があるのかとても親切で協力的。 偶然鉢合わせする形で何度か登場し、その度にモンモンたちを的確にサポートしてくれる。 ジェロJr. 「原崎山お猿連合」に匹敵する集団である「伊達山お猿連合」の2代目総長。 あらゆる格闘技の有段者であり、最強キャラ候補でもある。 父親同士の因縁もあり、モンモンを狙って格闘大会に出場する。 ボスとしての風格があり、部下の使い方も上手く、モンモンとは別の意味で良いリーダーである。 が、作中での扱いは…… モンモンには最初名前を「アッチー」だと勘違いされていた。 ハカセ ジェロJr.の部下で、作中でも屈指のインテリ猿。 クイズでモンモンと対決するが、インテリとしての自信が裏目に出て敗北。 負けず嫌いで負けを認めたがらなかったが、ジェロに諭されて素直に認めた。 八郎 恐山で有名な「イタコ」の猿。 ビッグ・ジョンを超えるガタイを誇るパワーキャラだが、戦い方は意外にも心霊術を使った戦法を得意とする。 精神を悪霊に乗っ取られており、その悪霊がモンモンによって消された為に改心し、負けを認めた。 【ストーリー】 おさる刑務所編 モンモンが捕まり、刑務所で生活しながらボスとして囚人(猿)達をまとめていく話。 ※この編は、漫画家の宮下あきら氏の著作「激!極虎一家」の影響を少なからず受けており、後にモンモンが「激!極虎一家」の単行本を読んでたりするなど、作者の「宮下あきら」のリスペクトぶりがうかがえる。 格闘大会編 刑務所所長が居なくなったことで、刑務所に食料の配給が無くなり食糧不足に陥ってしまう。 そこで大会優勝商品である猿の主食「豆」を狙い、モンモン達は最強猿決定戦に出場する。 母捜し編 生き別れの母・モンローが動物園に捕まっている事をテレビで知ったモンモンは、弟のモンチャックを連れて、母を捜して旅に出る。同じころ、モンタナもテレビでモンローの姿を見て、動物園に向かう。 原崎山編 両親と再会したモンモンは、故郷である「原崎山」に帰り、新しい生活を始める。 ノリオ島編 刑務所の仲間達から、テーマパーク「ノリオ島」への招待状が来た。 モンモン達は軽い気持ちで出掛けるが、そのノリオ島は、モンタナ曰く「禁断の土地」と言われていた… 地球一周編 学校で「本当に地球が丸いかどうか」が議論になり、唯一「地球が丸い」を肯定したモンモンはクラス中から批判され、それに怒ったモンモンは地球が丸い事を証明する為に、地球を一周する旅に出る。 追記・修正はおさる刑務所を束ねてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] まさかの主人公死亡・・・。 -- 名無しさん (2014-04-01 13 33 52) ↑Wikipediaには最終回がシリアスな事しか書かれてなかったが、後にその事実が書かれてたね。一部しかコマを見てないけど、モンモンが非常に弟思いなのがよく分かった -- 名無しさん (2024-01-16 19 28 55) 名前 コメント
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もしかしなくても→ゼファー・コールレイン 不道徳なさま。背徳的なさまのこと。 エロゲ界隈では主に近親相姦のことを指す。 『シルヴァリオ ヴェンデッタ』の主人公であるゼファー・コールレイン。 彼は、幼少期実姉であるマイナ・コールレインに逆レイプされており、 さらにその後マイナの転生体ともいえる少女ヴェンデッタとS○Xしたことによって、 お馬鹿さんコンビによる創世の男祭りを未然に防ぎ、図らずも宇宙崩壊の危機を救ってしまった。 また、場合によっては義妹(※18歳未満)に手を出すということも行っており、 それらの事情から、インモラルがゼファーさんの代名詞となりつつある。 なおCS版では、マイナは実姉から義姉に変更されていて近親相姦でなくなっているが、傍から見るとあんまし変わらないのであった。 また近親相姦以外にも、ロリコンなども「不道徳」に含まれ得るとして、 自分と大きく年齢の離れた少女たちに手を出した彼らについてもインモラルと呼ばれる資格を有するのではないか、という意見もある。 「小賢しいわッ。姉妹愛(インモラル)はねえ、宇宙だって救えるのよ!」 ⇒誠実さの塊の好青年もかわゆい義妹もハーレム上等従者もセクシー聖騎士も選り取り見取りになった妹っぽい声してそうなバイのお義姉ちゃんの発言 凌駕さんは基本的におっぱい好きだから…… -- 名無しさん (2017-03-29 14 34 32) 人狼ルートでも嫁とアレな性癖に目覚めて二人揃ってドスケベしまくってるゼファーさんは確かにインモラルの鏡(アペンド並感)。でもそこがいい(人狼ルート中毒並感) -- 名無しさん (2017-03-29 14 51 50) しかし野獣のごとき蹂躙()とか議事堂ックスとかもある種インモラルな気がするんだが -- 名無しさん (2017-03-29 14 52 36) ゼファーさんヘタレのくせに意外とスケベする時はサドい気がするの俺だけか -- 名無しさん (2017-03-29 14 57 41) ↑ それは思った……サドというよりは純粋に貪欲なのかもだけど。独白の言い回しもわりとお洒落スケベだしさー、「殺し合う程に愛し合い、そして生きようとしている」とかもう胸キュンですよこの野郎 -- 名無しさん (2017-03-29 15 03 59) Sっ気のあるロリコンってドMのロリコンとどっちがマシなんだろうな -- 名無しさん (2017-03-29 15 09 59) 相手を傷付けないだけマゾヒストの方がマシと言えばマシ(混ぜ物でカサ増ししたコカインより種から育てたコカから作ったコカインの方がマシぐらいのもんだけど) -- 名無しさん (2017-03-29 15 13 52) 姉からして温エロ求めてたし、コールレインの業よ -- 名無しさん (2017-03-29 15 14 43) Notインモラルなのって零示だけじゃね? -- 名無しさん (2017-03-29 15 31 43) 幼馴染ガチ勢のアッシュは... -- 名無しさん (2017-03-29 15 44 27) ヒント 国会議事堂 -- 名無しさん (2017-03-29 15 49 21) 大好きなヘリオスと身も心も一つになって微笑んだりしてるアッシュ君はインモラル -- 名無しさん (2017-03-29 15 54 06) 大好きな相手と一つになって嬉しくなければそっちの方がおかしい(断言) -- 名無しさん (2017-03-29 16 10 00) ここで零示さんのまともさが証明されるとは……まあ破滅型ロリ風ビッチには手をだしてるけどね! -- 名無しさん (2017-03-29 16 18 18) ↑中の妖精さんの魔力ェ…… -- 名無しさん (2017-03-29 16 19 55) 姉とセックスして聖戦の発動を防ぎ、姉の生まれ変わりとセックスして冥王になるゼファーさんはインモラルが活躍の必須条件になってるインモラルの化身 -- 名無しさん (2017-03-29 16 44 16) (コソコソ……ゴソゴソ……ひょっとして、僕は許された!?) -- 名無しの伝令神 (2017-03-29 16 46 30) ↑外観だけでいえばお前はインモラル夫妻より罪深いよ -- 名無しさん (2017-03-29 16 54 04) まあインモラルでも行為に及べなかったお前よりは実際にロリとヤったゼファーさんの方がインモラルかなって -- 名無しさん (2017-03-29 16 55 33) (≖‿ゝ○) ……… -- ??? (2017-03-29 16 57 15) ↑変質者はおかえりください -- 名無しさん (2017-03-29 17 56 55) インモラル度はゼファーさん 凌駕 トシローさん その他くらいの印象 -- 名無しさん (2017-03-29 17 58 00) すんごいインモラルな事を考えてしまったんだけけれど。もし何らかの理由でヴ本編後のヴェンデッダの容姿がマイナ姉ちゃんに変化・固定してしまった場合、姉の記憶をもち姉と同じ感情を共有した姉の身体を持った嫁と性生活することになるんだよな -- 名無しさん (2017-03-29 20 59 37) 容姿以外は既に………世間体は改善しても内実はよりインモラルに… -- 名無しさん (2017-03-29 21 03 02) キングゥみたいだな -- 名無しさん (2017-03-29 21 04 26) ↑2いやそれアンタの嫁は、ほぼ100パーセントただの近親の実姉じゃろ、て事になりかねんな。 -- 名無しさん (2017-03-29 21 09 16) ゼファー「い、いやいやいやいやっ。でも数パーセントは他人ですしー?セーフっすよ、セーフ(汗ダラ)」 -- 名無しさん (2017-03-29 21 10 55) 姉と子供のジョグレス進化の究極体を前にして、そんな言い訳が通じるとでも? -- 名無しさん (2017-03-29 21 13 14) どっぷりコールレインの血しかないですしね -- 名無しさん (2017-03-29 21 14 25) ↑3 つうかその他人にしても「他人の助けになりたいから」というだけの理由で平然と股開いたり、「お前の身体に汚い部位は無い」とかサラっと言ってケツ穴しゃぶったりするインモラルな方々ばっかじゃないっすかゼファーさん…… -- 名無しさん (2017-03-29 21 15 10) ↑4血の繋がった実の姉と性交渉99%以外の残り数パーセント・・・血の繋がった実の娘と性交渉・屍カン・機械カン インモラル要素しかねえ・・・何このゼファーさんの詰みっぷり -- 名無しさん (2017-03-29 21 16 42) ケツ穴って出した直後くらいしか汚くないんでしょ?ならだいじょうぶっ -- 名無しさん (2017-03-29 21 17 33) ゼファーさんのインモラル度がぶっちぎり過ぎて、出るゲームのジャンル間違えてね? -- 名無しさん (2017-03-29 21 18 38) ↑2 よっぽど徹底して洗浄してないと(洗浄してても)有害なもん残ってんだよなぁ(生物学)…… ↑それもこれも全部高濱亮って奴の仕業なんだ -- 名無しさん (2017-03-29 21 21 34) ↑2 そもそもプレイヤー自体がインモラル好きだから無問題 -- 名無しさん (2017-03-29 21 23 06) ↑2 作者さんの性癖にインモラルが追加されそう… -- 名無しさん (2017-03-29 21 24 41) ↑2 俺はguilty Xの調教モノが好きなだけで、インモラルじゃねえ!! -- 名無しさん (2017-03-29 22 27 35) ↑3 私だってねぇ、そりゃMinDead BloodだのMaggot Baitsだのとやっちゃいるがそれはあくまでバトルとシナリオに注目してるからであって、アペンドに興奮したのもあの二人だからこそというか、兎に角インモラルなどとは程遠いスタンダード側の人間であって…… -- 名無しさん (2017-03-29 22 29 26) ↑4 シャイニングガチペドロリコン(マスター・オブ・ネクロロリコン)…… -- 名無しさん (2017-03-29 22 30 12) ↑5 hibiki worksのラブリケーション2で主人公の呼び名を「ご主人様」や「お父様」や「お兄様」にしてるけど、俺は至ってノーマルだっ!! -- 名無しさん (2017-03-29 22 36 04) お前の身体に汚い部位はないってアッシュだっけ? -- 名無しさん (2017-03-29 23 33 30) ↑私の想定じゃチトセさんの台詞なのよねん。エロゲ誌付録のアペンドシナリオで言ってたのよ。厳密には「ゼファーの身体で汚いと思う場所など一切ない」だけども(尚流れ的にコメントが中々的外れなものだったことに投稿してから気付いた) -- 名無しさん (2017-03-30 00 04 16) ↑2 うーん、有ったっけ?強いて言うならナギサの過去ログで回ってた娼婦パロでアッシュがナギサに対してその台詞を言ってたが。 -- 名無しさん (2017-03-30 00 15 28) トシローさんが地味にロリコン扱いされとる…いや、まあヒロインとの年の差で見るとlight作品全体でも一番離れてる部類だけども。比肩するのは練炭とマリィあたりか? -- 名無しさん (2017-03-30 00 20 57) ↑その言い方だとマリィは極度のショタコンということになるんだがそれは -- 名無しさん (2017-03-30 00 25 43) マリィの場合精神年齢が幼いからセーフ。 -- 名無しさん (2017-03-30 00 29 32) 冥王「インモラル、インモラルって、なんだ……(発狂」 -- 名無しさん (2017-03-30 00 30 10) ↑ゼファーのことさ! -- 名無しさん (2017-03-30 00 35 58) むしろエロゲとかインモラル上等な世界で幼馴染相手に健全なエロだらけなアッシュがおかしいのでは? -- 名無しさん (2017-03-30 00 36 59) ルシード「そうか、インモラルでなくするには、こうすればよかったんだ……」-- 名無しさん (2017-03-30 00 48 31) 鬼畜錬金術師(ドMロリコンかつ、サディストホモ)「・・・フフッ、なかなかいい眺めだねぇ、ゼファー?(靴で背中を踏みつけながら」ヘタレ総受狼「ッッッッ…畜生ォ……こうしていれば妹(※ロリロリ天使)には手を…出さないんだろうな…御曹司サマよぉ……!!」 -- 名無しさん (2017-03-30 01 07 28) 鬼畜錬金術師「おやおや~~? いいのかなぁ? そんな口をきいて……忘れないでくれたまえよ、貧乏無職クン? 君の態度次第では、君の大切で愛しい天使の運命は真っ逆さまに落っこちてしまうかもしれないんだよぉ? だ・か・ら……ねぇ、分かるだろう?」ヘタレ狼「……ッッッッ!!(奥歯を噛み締め)…分かり、ました。ルシード様。俺は、もう貴方の忠実な奴隷です……どうぞ好きに…玩んでください…(全身を震わせつつ」鬼畜錬金術師「まぁ、最初はこんなものかな。けど、君の賢明な判断と妹君のための献身に免じて、“今日”は“軽いしつけ”くらいで済ましてあげようか(まあ、いずれは彼の女神の前で公開羞恥プレイといこうかねぇ、ククククク……)じゃあ、後ろを向きたまえ。大丈夫、もう戻れない神秘の世界へ、君を誘ってあげるよ……」総受狼「項垂れながら)すまない、ミリィ・・・俺は本当に駄目な兄貴だ…」~自宅~ ミリィ(ロリ)「おそいなぁ…にいさん、もうごはんもできてるのになぁ……」 -- 名無しさん (2017-03-30 01 07 47) 今日も頭が米騒動……!? -- 名無しさん (2017-03-30 01 12 52) インモラルセックスしないと世界を救えないんだからゼファーさんのインモラルは良いインモラルなんだよ(棒 -- 名無しさん (2017-03-30 01 25 32) 確か2011年くらいに、スカイダイビングは気持ちいいから、その最中に性行為すればもっと気持ちいいんじゃね的な理由で見事成功した二人組いたやん? なんかゼファーとミリィ見るとそれを思い出す。 -- 名無しさん (2017-03-30 01 56 08) ↑本気(ゴクッ) ↑5「私も仲間に入れてくれよ〜」 -- 名無しさん (2017-03-30 09 32 14) ↑申し訳ないが、この高尚な遊戯はロリショタを愛でることもできる者が条件だ。そうだな……狼クンは僕のモノだし、別の相方を探すといい……(金銭を握らせて -- ロリショタを愛する錬金術師 (2017-03-30 09 34 52) ↑ 共有しようじゃないか……なあ、共有しよう? 人間は群れる動物であり分かち合う動物だ。"いいもの"は分かち合わねば……そうだろう? -- 隻眼の女神 (2017-03-30 10 50 34) ↑ へぇ……(グシャッ)やるかい……隊長さん…?(→そこに●ムチャポーズで倒れるゼファー -- いつになく本気顔の伝令神 (2017-03-30 10 53 04) ↑ あ、とばっちりで糞眼鏡が圧殺された。やったぜ!! -- 名無しさん (2017-03-30 10 56 01) ↑2 おいおいそう身構えるなよ……私は「寄越せ」なんて言ってないぞ? ただ「共有しよう」と提案しただけだ…… -- 特異点の自分をも取り込んだ女神 (2017-03-30 10 59 09) ↑ フフフ……今までの僕なら頷いていたかもね……。けれど、もうホントの本音を隠せないんだ、他の誰にも何にも渡さないーーーーーインモラルの闇から彼のすべてを僕が奪うッ!! -- (まるで総統戦時のような)伝令神 (2017-03-30 11 05 51) インモラルというより何かの汚泥が氾濫している… -- 名無しさん (2017-03-30 12 06 17) ゼファー「みんな、俺のことをインモラルと言うがよく考えてくれ!そもそも俺は姉ちゃんに襲われた被害者の方だったはず。インモラルなのは俺じゃない、姉ちゃんだよッ!」ヴェティ「それじゃあ、本編でミリィや私を抱いたことについてはどう説明するのかしらね?教えてゼファー、姉と子供の融合体と言うべき女を愛して男女の関係になった貴方の何がインモラルじゃないと?」冥王は泣きそうな顔で逃げた!だが勝利からは逃げられない!逃げた先には女神と娼婦が待ち構えていた!狂い哭け、お前の末路は腹上死だ -- 名無しさん (2017-03-30 13 05 23) 女の人怖い、女の人怖い……そうだ、女人との接触を断って美少年に癒やしてもらおう…… -- 名無しの吟遊詩人 (2017-03-30 13 12 22) ウイルス進化って知ってる? 簡単に言うと殺人ウイルスの猛威に立ち向かった結果新しい形質を獲得しそれが進化に繋がるって言う学説なんだけど……それと同じで、恐怖を乗り越え生き抜いて、寧ろ美女を御し快楽に付け込む魔王と化すってのが一番手っ取り早いんじゃないかなぁゼファーさん。あんた逃げてもどうせ追いつかれるし -- 名無しさん (2017-03-30 13 19 34) 男は慟哭した………「ごめんなさい、ごめんなさい、許してくださいお願いします…」と… -- 名無しさん (2017-03-30 13 21 13) ホモニティとこの項目見てると、ここの住人業深いなってなる -- 名無しさん (2017-03-30 13 51 48) ↑2 誰も咎めちゃいないさ。ただ肩の力抜いて、休み休みでいいから頑張ろうってのよ。負けず投げ出さず逃げ出さず信じ抜く……まあ力入れすぎると体壊すからほどほどがいいけどね、みんな何もあんたを痛め付けて苦しめようって訳じゃないんだから(多分) ↑エロゲーマー、オタク、もっと言えば何かに深く取り組む人間なんて大体業深いよ -- 名無しさん (2017-03-30 13 55 41) 凌駕さんはロリに手を出したけれど妹に手は出さなかった。ゼファーさんはロリ(姉)に手を出し妹にも手を出した。やっぱりゼファーさんがナンバーワン! -- 名無しさん (2017-03-30 13 59 38) ↑4「受け入れろよ兄弟。俺の様に前向きに捉えれる様になったら楽しいぜ?」 -- マーズ (2017-03-30 14 16 31) こりゃぁ…ゼファーさんの魔名は決定のようですね…… -- 名無しさん (2017-03-30 14 17 55) インモラルじゃあんまりだ、インキュバス・リュカオン辺りでどうよ -- 名無しさん (2017-03-30 14 24 04) 光に追放された冥王星ってそういう意味? -- 名無しさん (2017-03-30 18 35 44) ↑4確かにあなたも元貴族のインモラルでしたね -- 名無しさん (2017-03-30 21 43 03) 「そうだよゼファー。自分のサガを受け入れるんだ」 -- マーキュリー (2017-03-31 09 51 27) インモラル度で言えばミステルさんも高いと思うんだがな -- 名無しさん (2017-03-31 13 42 52) 聖職者のくせしてあんな色気ムンムンな体してる時点で背徳的であるな。性質と運命(というか不可避の絡み合い) -- 名無しさん (2017-03-31 13 51 23) マレーネは「二次性徴が始まって一年ちょい」とか言われてた気がするんで◯学一年かそこらか?年の差は4-5歳くらいだから、10年も経てば問題ないな凌駕さん! -- 名無しさん (2017-04-01 08 53 43) ↑2 ??「さあ、あらゆるヒロインは道を譲れ! 彼女こそ国会議事堂でセッ○スをした女! 聖地で己が体液を堂々とまき散らせる勇気を持つ金髪巨乳女騎士、ミステル・バレンタインその人である!」……うーん、この創造主… -- 名無しさん (2017-04-01 09 05 17) ナギサちゃん以外のヒロイン2人へのコメントが色々ひでえw -- 名無しさん (2017-04-01 09 08 18) ↑2アッシュ「あれ、ミステル。武装なんかどうしたんだ。俺、任務なんて聞いてないけど」ミステル「御免なさい、個人的な急用が出来たの。ちょっと出かけて来るわね(ニッコリ」 -- 名無しさん (2017-04-01 11 45 16) HAHAHA、ミリィ嬢が18歳未満だなんてまっさかー(このげーむにとうじょうするじんぶつは、みんな18さいいじょうだよ -- 名無しさん (2017-04-02 21 43 49) ↑ ロリナギサとかのチビッコはどーなんですかー? -- 名無しさん (2017-04-02 21 53 42) ↑2そんなあなたにコンシューマー。計算するとどう考えても18歳行ってないはずなんだ -- 名無しさん (2017-04-02 21 57 21) そういやナギサちゃん達も割と年齢ギリギリな気が... -- 名無しさん (2017-04-03 00 53 19) トシローさんはアンヌに限らずヒロイン全員ロリだよ…むしろ異種姦になるであろうアリヤさんのがインモラル感ある -- 名無しさん (2017-04-03 01 43 14) これでゼファーさんがやらかしていた事で三作目主人公まで救ってたらもう笑うしかないなw -- 名無しさん (2017-04-09 20 29 53) ↑既に世界ごと救済済みです。サスコル! -- 名無しさん (2017-04-09 20 35 52) ミリィの逆で、ゼファーさんが嫌々やった暗殺で命を救われた人は絶対いるだろうしな -- 名無しさん (2017-04-09 20 37 56) やはり、ロリコンが世界を救うのか?それとも、ロリコンにならないと救えないのか? -- 名無しさん (2017-04-09 21 20 07) ゼファーさんのネガ一言のおかげで生き残れた主人公の様に、ゼファーさんの暗殺の結果で救われたとかありそう。なんか何が原因でってのあるね -- 名無しさん (2017-04-09 21 28 57) 実際ブランシェ夫婦の様な本人達には問題は無いけれど立場的に殺さざるを得ないみたいな例の方が珍しいだろうしね -- 名無しさん (2017-04-10 00 42 48) ゼファーさんが愚痴る→結果師匠がアッシュとナギサちゃんを見逃す→二人が糞眼鏡の実験台になる→もし二人が実験台にならずに実験が進んだ場合明らかに世界がヤバイor極楽浄土に...やっぱりゼファーさん、運命に射止められてんなって... -- 名無しさん (2017-04-10 00 46 24) ペタン好きは世界を救う -- 名無しさん (2017-04-24 21 22 25) せやな(冥王と超人と刹那を見つつ) -- 名無しさん (2017-05-02 22 59 13) せやろか(♂と眼鏡と海洋王を見つつ) -- 名無しさん (2017-05-02 23 00 06) ↑ 今思ったが、ペタン好きは交友関係が狭くて、逆は広い気がする -- 名無しさん (2017-05-03 01 20 32) お隣のラインのルネ山さん「グダグダくっちゃべってんじゃねえぞ、この変態マザコン野郎がぁぁぁ!」ゼファーさん「ぐわぁぁぁぁ!?」 -- 名無しさん (2017-05-09 18 46 40) ↑ ゼファー「俺は変態マザコンじゃねぇ!本気で真性のシスコンなんだよォ!!」遊佐「なにィ、俺の太極が敗れただとォ!?(バリンッ」ゼファー「たとえ間違っていようがそんなのは関係ねェ!正誤の天秤なんてとっくの昔に超えてんだよ、テメエこそくだらないことペラペラ喋ってねェで俺の本気を喰らいやがれェ!!」 -- 名無しさん (2017-05-09 20 19 43) ↑ 邪竜「ガタッ」 -- 名無しさん (2017-05-09 20 28 36) ↑ 邪竜おじさんは凍っててどうぞ -- 名無しさん (2017-05-09 20 36 21) 素晴らしい。+100点 -- 審判者 (2017-05-09 21 48 30) ↑4 イン(モラル)狼とイン(ポテンツ)狼の戦い…… -- 名無しさん (2017-05-10 09 38 47) こっちの狼はあっちの狼とは性質真逆だな。あっちは平穏より刺激を、こっちは毎日ぐうたら暮らせればパラダイスだし -- 名無しさん (2017-05-26 22 42 29) もしゼファーさんが神座世界で随神相出したら、シュライバーみたいな狼かねぇ? -- 名無しさん (2017-05-26 22 46 47) ナラカ(なんだこの男は…) -- 名無しさん (2017-05-26 22 58 30) ↑×2まんま銀色の機械じみたケルベロスじゃないかな? -- 名無しさん (2017-05-30 10 12 19) 随神相ってゼファーさんが天魔化でもするのか? -- 名無しさん (2017-07-16 12 47 54) ↑夜刀の軍勢変生の影響だからするんじゃね? -- 名無しさん (2017-07-16 13 05 13) 天魔化したゼファーさんって、ゼファーさんとヴェンデッタの魂が融合した存在になるのかな。 -- 名無しさん (2017-07-16 13 30 03) 覇吐と一緒に遊郭で遊び惚けてるよ。で嫁と龍明にシバかれるワンセット -- 名無しさん (2017-07-17 08 53 28) ゼファーさん、グレイ、覇吐、栄光は仲良くなれそうだなっていつも思うわ -- 名無しさん (2017-07-17 09 05 57) まあ4人とも三枚目キャラだからね。その分、ここぞというときかっこいいから好き。 -- 名無しさん (2017-07-17 10 37 47) 天魔冥狼?「(あー酒飲んでオッパイ揉んでゴロゴロして〜…ウチの女共は一名のぞいて◼️だし、その一名も何か重そうで勃たねえし……)」 -- 名無しさん (2017-07-17 14 31 25) ↑3野枝さんとイチャつく栄光を尻目に嫁に引きずられドナドナされていく残り3人を幻視した -- 名無しさん (2017-12-20 21 15 58) こうしてみると本当にアッシュは健全だなぁ... -- 名無しさん (2018-03-01 18 43 46) なお国会議事堂ックス -- 名無しさん (2018-03-23 20 43 18) わりと健全じゃないか(白目)さて次回のホモとインモラルはなにかな? -- 名無しさん (2018-03-23 21 37 17) 閣下に対するおじさんみたいな、主人公に片ホモいする敵キャラホモとか・・・いやだなあ -- 名無しさん (2018-03-24 00 37 37) ↑さらに眼鏡をかけさせれば、あら不思議!そこには本気おじさん並みの熱量を持って主人公をサポートする参謀親友キャラの姿が!!(なおホモくないとは言ってない) -- 名無しさん (2018-03-24 00 59 53) そろそろガチのホモかバイが出てもいい気がする -- 名無し (2018-03-24 08 13 14) ↑見たくねぇ…… -- 名無しさん (2018-03-24 10 21 56) 久しぶりに味方なホモキャラを見てみたい気もする・・・・・・。 -- 名無しさん (2018-03-24 12 19 02) ペドの親友、スケベな親友、なら三部作目はやっぱりホモい親友だよな!トシロー系主人公らしいし、アイザック系親友でもおかしくない -- 名無しさん (2018-03-24 20 57 49) このラインではホモが産まれるのは必然なのか……。 -- 名無しさん (2018-03-24 20 58 50) まあシルヴァリオは敵が基本ホモだし今回も味方はそこまででもなさそう。あとラスボスもバグらなかった存在らしいし、トリニティ同様中ボスがハッスルしてそう -- 名無しさん (2018-03-24 21 01 38) ↑主人公を見てバグったりして。まさにトシローを見たアイザック、総統を見たギルベルト、ファヴニルのように。 -- 名無しさん (2018-03-24 23 11 09) 全年齢版で近親はあかんからとりあえず義姉にした体なのね -- 名無しさん (2018-04-19 09 56 11) ぶっちゃけホモ(っぽい男の友情)やホモ(っぽい妄執)がウケてるわけだから、マジモノのホモセクシャル出されても困る -- 名無しさん (2018-04-19 11 35 10) そこまで行ったらインモラルじゃなくてアブノーマルでは…… -- 名無しさん (2018-04-19 20 41 39) 精神がヤバイ奴らで出来ているバトル物だからしゃーないねぇ -- 名無しさん (2018-04-20 16 41 20) ちょと待って!アイザックは男相手に勃起してきたみたいな事言ってたやん!! -- 名無しさん (2018-04-20 16 47 38) 止「この程度でインモラルとは片腹痛い」 -- 名無しさん (2018-04-20 19 00 46) ↑あ、蝿声が大喜びするレベルの真性下劣畜生だ。既に通報しといたがな<ライブラだ! -- 名無しさん (2018-04-20 19 23 49) プラトニックインモラルは無いのか -- 名無しさん (2018-11-03 23 20 01) ↑8 現実の法律でも義理の兄妹・姉弟は結婚できるしね。 -- 名無しさん (2019-04-18 21 16 06) 向こうではインポでこっちではインモでlightでのルネ山の下事情やべーな -- 名無しさん (2019-04-18 22 20 33) とうとう公式が認めたインモラル世界救済説 -- 名無しさん (2019-04-19 15 08 15) 祝え、インモラルの王の誕生を…… -- 名無しさん (2019-05-13 17 42 16) ルプスレクス(リュカオーン)狼の王か…畜生狼のコールレイン少佐に相応しい -- 名無しさん (2019-05-13 19 35 12) ロリコンやシスコンはお腹いっぱいだから今度はショタ好きを主人公にしてくれ -- 名無しさん (2019-11-29 00 58 25) 半ズボンスメラギたんハァハァ -- 名無しさん (2019-12-11 22 18 40) コールレイン姉弟のトラウマを刺激しそうな終わり方の体験版でした……逃げろリチャード!! -- 名無しさん (2020-02-15 20 37 52) (関係ないけれど)ういん、どみるさんでアリス義姉さんとよく似た声したヴェティさんみたいな背景のヒロイン(実母)がおって…(※FDで)義母と実母をまとめて(性的に)喰ってたとこは流石に違うな、と思いました() -- 名無しさん (2020-02-21 17 50 09) ラグナロクメロン特典を見て…『姉』という『都合のいい記憶を植えつける』…ヤメロォ!ありがちだけどその二つの要素はシルヴァリオでは厄ネタなんだぞォ! -- 名無しさん (2020-03-06 21 04 14) ~姉や義妹とおセッせする無職とハーレム青年と少年漫画の主役(※多数)が現れるクソゲーみたいな島で神(わたし)はいったいどうすりゃいいですか2~(礼先輩も付けるぞ!) -- 名無しさん (2020-04-11 02 34 10) インモラルすら超えたエロゲ神が現れるとは… -- 名無しさん (2020-04-26 09 51 30) コールレイン姉弟のインモラルに始まり九条兄妹のインモラルに終わった…のか……? -- 名無しさん (2020-04-26 10 05 45) ↑間違っていないのが何ともはや…… -- 名無しさん (2020-04-26 10 24 06) こうなると身の回りにインモラルが無いアッシュ君の方が主人公としては異端なのでは…? -- 名無しさん (2020-04-26 10 26 48) ↑2 毎度思うが、コールレインの旦那が見たら泣くなこりゃ -- 限界突破 (2020-05-06 01 19 06) インモラルもなく正統派にカッコよくヒロイン助けて正統派にラスボスを口説き落とすアッシュ君の異常さが際立つとは思わなんだ -- 名無しさん (2020-05-06 02 16 51) ↑国会議事堂ックス -- 名無しさん (2020-05-06 02 20 21) ↑カンタベリー的にはむしろノーマルプレイの一種だからな…国会議事堂でふたなり逆アナルサンドイッチならともかく -- 名無しさん (2020-05-06 02 26 17) 恐らく国会議事堂で致したとか耳にしたらエロゲ神感心すると思うわ(その発想はあったがまさかやる奴がいるとは――!) それはそれとしてカンタベリーでもそれをノーマルプレイに出来るのはエロゲ神だけだから。原初のアマツだけだから -- 名無しさん (2020-05-06 02 30 17) ↑エロゲ神の想像を絶するプレイってなんだろうな…全血縁関係とのセックス経験してるとなるともはや生物学上のインモラルは探求の余地もない気が -- 名無しさん (2020-05-06 02 33 00) 1000年を見果てぬエロに捧げた神の思考にたかだか数十年しか生きていない俺達が追い付けるわけがない…… -- 名無しさん (2020-05-06 02 36 22) ↑とはいえ新西暦の世界じゃ結局は挿れるか挿れられるかしか出来ないし…最低でも対魔忍クラスのプレイをバーチャルで体験してきたであろうエロゲ神にとってはほぼ全てのプレイはノーマルでしかないのだろうな -- 名無しさん (2020-05-06 02 42 02) (アブ)ノーマル……? -- 名無しさん (2020-05-06 02 43 29) エロゲ神なら、ラグナロク本編が無ければそのうち旦那と義弟の兄弟丼も美味しく頂くであろう確信があるw(むしろ今までやってなかったのは旦那が必死に止めてたのかなって気がする) -- 名無しさん (2020-05-08 12 40 16) ザ・シルヴァリオ~暗黒インポと光の童貞~ -- 名無しさん (2020-05-22 02 01 34) ↑2 兄上…(快楽に流された姿を見ながら -- 名無しさん (2020-05-23 08 19 00) つまりルーファスが生きてようが死んでようがリチャード君は嘆き悲しむ事になるのか… -- 名無しさん (2020-05-23 08 22 13) 男性陣は巻き込まれる側ばかりなのは何故なのか -- 名無しさん (2020-05-23 18 02 42) ドMで受け身なサディズム大邪神の願望…? -- 名無しさん (2020-05-23 18 30 23) 隣に同志ができたよ!やったねゼファーさん! -- 名無しさん (2020-07-10 20 09 23) ゼファーさんは姉とやって世界を変えた、カイホスルーは姉とやるために世界を変える。そこに違いなんてありゃしねえだろ!! -- 名無しさん (2020-07-10 20 20 17) 渚さんにもインモラル母さんに堕ちてもらおう(唐突 -- 名無しさん (2020-08-05 20 07 38) ヘリオスのパパとママであるアッシュがヘリオスと合体してんだからトリニティはインモラル十分あるよ -- 名無しさん (2020-08-05 20 56 24) インホモォラル -- 名無しさん (2020-08-05 20 58 44) しかも尊敬すべき相棒、奴となら答えを見つけられるって実質息子からプロポーズ貰ってるしな -- 名無しさん (2020-08-05 21 05 56) この世界はインモラルじゃないとダメなのか... -- 名無しさん (2020-08-05 21 13 53) 生まれたばかりの純粋無垢なヘリオスさんをインモラル扱いするのはやめてさしあげろ -- 名無しさん (2020-08-05 22 48 08) ↑つまり赤ちゃんプレイってこと? -- 名無しさん (2020-08-05 22 55 55) 糞眼鏡「ばぶう」 -- 名無しさん (2020-08-05 22 56 45) ↑無言のガンマレイ -- 名無しさん (2020-08-05 22 59 27) ガンマレイは糞眼鏡にとっておしゃぶりみたいな物だから滅奏の方が良い -- 名無しさん (2020-08-05 23 01 26) ヘリオス(3)「せかいごとりょうだんすれば、まかりとおるだけだろう!」 -- 名無しさん (2020-08-06 01 09 08) ヘリオス「やはりなにかもんだいあるでちゅか?」 -- 名無しさん (2020-08-06 01 14 14) ぎるべると「あなたのようなひかりにこそ、むくわれてほしいのだから」 -- 名無しさん (2020-08-06 01 22 38) ↑13 おっ暗黒星人さんが狂い哭くのかな……? -- 名無しさん (2020-08-06 23 27 47) もしもマイナが男でショタゼファーをアッー!してインホモォラルになってたら本編はどうなってたことやら -- 名無しさん (2020-08-08 13 20 54) マイナが閣下にNTRる。そして聖戦へ -- 名無しさん (2020-08-08 13 23 58) ゼファーさんのトラウマがエライことになりそう -- 名無しさん (2020-08-08 13 24 52) 受精卵ないから普通に目覚めて聖戦挙行 -- 名無しさん (2020-08-08 13 35 45) ↑性戦挙行? -- 名無しさん (2020-08-14 01 19 34) メスラギ -- 名無しさん (2020-08-29 22 36 09) やがて 腰を 振る -- 名無しさん (2020-09-07 01 01 16) これもちょっとしたインモラルの応用だ……(冥王 -- 名無しさん (2020-09-25 02 46 11) インポラル -- 名無しさん (2020-09-25 02 46 53) ↑4 スメラギィ……ほんと可愛いなァ……げふっ -- 名無しさん (2020-10-14 00 19 19) なおお隣はおねショタで世界が滅びかけている模様 -- 名無しさん (2020-10-18 23 02 50) 糞な世界を滅ぼして皆を救うんやぞ -- 名無しさん (2020-10-18 23 07 49) おにショタ・・・ -- 名無しさん (2020-10-18 23 32 34) インモラルは世界を救う。古事記にも書いてある。 -- 名無しさん (2020-11-03 09 34 31) 古事記はともかく、銀の運命では3回中2回がインモラルで世界を救ってるから何も言えねえ… -- 名無しさん (2020-11-03 12 00 46) インモラルは新西暦を救うが神座世界は滅ぼす -- 名無しさん (2020-11-15 11 58 44) ???『聞こえますか 毎日毎晩弟くんの事を考えて お姉ちゃん力(ぢから)を高めるのです……』 -- 名無しさん (2021-11-09 17 15 37) 名前 コメント
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前ページ次ページThe Legendary Dark Zero 「スパーダはあたしのものなの! おばさんはもう近づかないでって言ったじゃない!」 「朝っぱらからうるさいわねぇ。静かにできない小娘がスパーダに近づく権利なんてないよ」 翌日の早朝、誰よりも早く起きたはずのスパーダであったが、ルイズとロングビルはスパーダの起床に合わせて起きだしたのだった。 そして、再び始まる口論と喧嘩。スパーダは頭を抱えたくなった。 (まだネヴァンの方がマシだ) そう心の底で呟くと、自分から離れない二人を引き連れてまずは女子寮のモンモランシーを起こしに行く。 「スパーダ! モンモランシーなんかに何の用があるの!? あたしだけを見てって言ったじゃない!」 ノックをしてモンモランシーが出てくるなり喚きだすルイズ。ロングビルは無言でモンモランシーを睨みつけ、威嚇していた。 「……相変わらず苦労しているのね」 「すぐに用意しろ。出発する」 他人事のように呟くモンモランシーであるが、スパーダは用件だけを伝えて促す。 「それと、眠りのポーションか何かはあるか」 嫌々そうに制服に着替えたモンモランシーに、さらにスパーダは要求した。 「一応あるけど、どうしてよ? ……まさか、二人とも着いてくるって言うんじゃ」 「あたしはスパーダから離れないわ! ずっと一緒にいるの!」 「こら! 離れなさい! 小娘め! 傍にいていいのは私だけだよ!」 がしりと抱きつくルイズをロングビルが引き剥がそうとする。 それを見たモンモランシーは納得したようにうな垂れると、自室の棚の中から不眠解消用に作っておいた眠りのポーションの瓶をポケットに押し込んでいた。 「一応、持っていくか……」 スパーダはついでにルイズの部屋へ戻ると、愛剣リベリオンと共に破壊の箱こと――災厄兵器パンドラも持っていくことにする。 次にギーシュを起こしに本塔の男子寮へ向かう……ことはなかった。 ドッペルゲンガーをスパーダの体から分離させて眠っているギーシュを正門前に連れ出すように命じており、既にその命令は果たされていた。 そして、ひっそりとスパーダの元へ戻っていったのである。 「ちょっと、ギーシュ。何でこんな所に寝ているのよ?」 「う~ん……むにゃむにゃ。モンモランシー……だめだよ。……こんな所で」 一体、どんな夢を見ているのか。寝言を口にするギーシュに顔を羞恥に紅潮させたモンモランシーはギーシュの体を蹴りつけた。 「ぐはっ! な、な、な、何だい!?」 「さっさと起きなさいよ!」 寝ぼけ眼で飛び起きたギーシュに、モンモランシーが話しかける。 「あ、あれ? どうしてこんな所に……」 状況が理解できないギーシュはきょろきょろと辺りを見回すが、大柄なトランクを担ぐ師匠のスパーダとそして惚れ薬を飲んでしまった二人の女性の姿を目にすることでようやく覚醒した。 もっとも、ルイズとロングビルはつい先ほどモンモランシーの眠りのポーション……正確にはお香のようなものだが、それを使うことで眠らせており、草地の上で再び熟睡していた。 「起きたな。では、出発する」 「出発って……馬はどうするのよ? ここから歩いてなんて何日もかかっちゃうわよ。馬でさえ半日はかかるのに」 ギーシュを一瞥したスパーダが言うと、モンモランシーは彼に食ってかかる。 だが、スパーダは右手を前に突き出すと掌から現れた蒼ざめた光球を浮かべだした。 その光球はゆっくりとスパーダ達の目の前で浮遊している。まるでおとぎ話にでも出てきそうな精霊のように幻想的な姿に思わず、モンモランシーとギーシュは溜め息を吐く。 だが、次に二人は腰を抜かすことになる。 ――ヒヒィーーーンッ! 「うひゃあっ!」 「きゃあっ! 何ぃーーー!?」 ゆらゆらと浮かんでいた光球がたちまち大きくなり、やがて巨大な蒼ざめた馬へと変わってしまったのだ。 二人は先日、ゲリュオンが暴れる所を目撃していなかったため、初めて目にする威圧感溢れる巨体の幻獣の姿に唖然とした。 「モ、モンモランシー! 僕の後ろに下がるんだ!」 即座に立ち上がったギーシュは蹄を鳴らしているゲリュオンの前に立つと、造花の杖を振り上げた。 「あだっ!」 「落ち着け。害はない」 スパーダの閻魔刀の鞘がギーシュの頭を小突く。 既にスパーダを主としているゲリュオンは、自らの意思で暴れるようなことはない。 ゲリュオンの足はそこらの馬よりも速いので、より早くラグドリアン湖に到着するはずだ。 スパーダはゲリュオンが引いている馬車に飛び乗ると、パンドラを置いて腰を下ろした。 「お前達も早く乗れ。二人も一緒にな」 「……い、一体何なのよ。あなたの師匠は……」 「はは……か、彼はとても偉大な男なのさ」 乾いた笑みでモンモランシーの言葉を受け流すギーシュ。スパーダが悪魔であると、正直にいうわけにもいくまい。 二人は眠っているルイズとロングビルをレビテーションで馬車の上に乗せ、自分達も同じように乗り込んでいた。 ――ヒヒィーーーンッ! 高く嘶いたゲリュオンは、一行を乗せた馬車を引いて駆け出した。 「きゃああっ!」 「うわっはぁ! すごいな! これは!」 朝の草原を力強く駆ける〝妖蒼馬〟ゲリュオンの上でギーシュとモンモランシーは歓声を上げた。 こんな大きな馬車を引きずっているというのに、その速さは馬などとは比べ物にならない。それどころか魔法衛士隊が乗っている幻獣さえも凌ぐ。 あまりの爽快さに思わず二人は楽しくなってしまっていた。 馬で約半日という距離を、ゲリュオンはその約3/4の時間で到着することに成功した。 ただ速いだけでなく、ゲリュオンの空間干渉能力によって本来ならば自由に走れないはずの鬱蒼と茂った森の中であろうと、存在次元がずらされている一行は何の苦もなく走り続けたのだ。 トリステインの南方、大国ガリアとで挟まれている場所に位置するラグドリアン湖は600万平方キロメイルにもなる巨大な湖である。 比較的高地に位置するこの場所は周囲が緑豊かな森に囲まれ、さらに澄んだ湖水が織り成すコントラストによってまるで絵画のように美しい光景であった。 昼過ぎの陽光を受け、宝石のように輝く湖の少し手前の丘の上で一行を乗せたゲリュオンは停止していた。 何故なら、既に目の前は湖の岸辺であったからである。 ゲリュオンの馬車から降りたモンモランシーは怪訝な表情でじっと湖面を見つめていた。 スパーダはゲリュオンを魂に変えて体内に戻すと、周囲を注視するように見回している。 「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ!」 一人、旅行気分のギーシュは初めて目にするラグドリアン湖を前に浮かれ、はしゃぎ回っていた。 「変ね……水位が上がっているわ。ラグドリアン湖の岸辺はもっと向こうのはずなのに……」 「村も水没しているらしいな」 スパーダが顎で指した先、湖面にはここら一帯の村のものであろう藁葺きの屋根が見えた。 立ち上がったモンモランシーは困ったように首を傾げる。 「どうやら水の精霊はお怒りのご様子ね」 「そうか。君は水のメイジだったな」 「そ、我がモンモランシ家は代々トリステイン王家とここに住む水の精霊とを旧い盟約で結びつける交渉役を務めていたんだから」 腰に両手を当て、どこか得意げに語るモンモランシー。そこにスパーダから厳しい一言が突き刺さる。 「だが、今は他の貴族がその任を預かっているらしいな」 その言葉にがっくりと力なくうな垂れるモンモランシー。 「……そ、あたしが小さい頃、父上が領地の干拓を行なう時にここの精霊に協力を仰いでもらったわ。 でも、父上ったら失礼な態度を取ってしまって、精霊を怒らせてしまったのよ。 おかげで我が家は干拓事業に失敗して、今じゃ領地の経営が苦しいのよ。……だから水の精霊は怒らせるとただじゃすまないわ」 「それで交渉はできるのか」 「うん。ちょっと待って、って……何をやっているのギーシュは」 見ると、はしゃいでいるうちに足を滑らせ湖の中に落ちて溺れかけているギーシュの姿がそこにあった。 「た、助けて! 僕は泳げないんだよ! モンモランシー! スパーダ君! 助けて!」 ばしゃばしゃともがきながら必死に助けを求めていた。 その情けない様を目にし、モンモランシーは頭を抱えた。 「……付き合いを変えた方がいいかしら」 「君の自由だ」 湖から何とか這い上がってきたギーシュを無視し、モンモランシーは腰に下げていた袋から何かを取り出す。 それは鮮やかな黄色い体に黒い斑点がいくつも散っている一匹の小さなカエルであった。 モンモランシーが従える忠実な使い魔、ロビンである。 「いいこと、ロビン? あなた達の旧いお友達と連絡がとりたいの」 掌の上に乗るロビンにそう命じ、モンモランシーはポケットから針を取り出すとそれで自らの指先を突いた。 赤い血の玉が膨れ上がり、その血をロビンの体に一滴垂らす。 「血による契約か。中々高等なものを使うのだな」 「そ、これで相手はあたしのことが分かるはずだわ。覚えてればだけど」 指先の傷を魔法で治療し、モンモランシーはロビンに再び顔を近づけた。 「それじゃあロビン、お願いね。この湖に住まう旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい」 ロビンは小さく頷き、ぴょんと跳ねて水の中へと消えていく。 「でも、そう簡単に水の精霊が交渉に応じてくれるかしら」 「それは君次第だ。クビになったとはいえ代々、水の精霊との交渉役を務めていた一族だ。しっかりやれ」 モンモランシーの肩をポン、と叩くスパーダの注意は湖などではなく、周囲へと向けられていた。 この場に僅かに残されている魔力の残滓……そして、異様な禍々しい気配。 どうやら、これから一悶着がありそうだ。 「あーっ!」 突然、後ろの方から叫び声が響いた。 眠り薬の効き目が切れたルイズがめを覚ましたのだった。 そして、スパーダとその傍にいるモンモランシーを指差すなり、ずんずんと近づいてくる。 「他の女の子と一緒になっちゃだめって言ったじゃない! 離れてよ! モンモランシー!」 「え? ちょっと! きゃあ!」 ドン、とモンモランシーはルイズに突き飛ばされて湖の中に落とされてしまった。 「ああっ! モンモランシー!」 ずぶ濡れになった服とマントの水を搾り出していたギーシュが再び飛び込み、モンモランシーを救おうとするが……。 「うがばぁ! 助けてぇ! ガボガボ……」 「泳げないくせして何やってるのよ!」 逆に水泳が得意なモンモランシーに助けられ、岸に上がった二人はびしょ濡れになってしまった服の水を搾り出していた。 そんな二人を尻目にルイズはスパーダに縋るように抱きつき顔を見上げていた。 「ねぇ、スパーダ。あたしとこのラグドリアン湖とどっちが綺麗?」 「分からん」 少なくとも、今の状態のルイズとを比べた所で何の意味もないのだ。 にべもない返答にルイズは拗ねたようにむくれる。 「はっきり言ってよ。……じゃあ、あたしとそこのおばさんと、どっちが好き?」 「どちらでもない」 まだ眠りについているロングビルを指差し尋ねるが、スパーダは冷たい反応しか返してこなかった。 「うぅ~っ……やっぱり、あたしのこと嫌いなの? だからそんな風に冷たくするの?」 「当たり前じゃない。誰があんたみたいな小娘なんか綺麗って言うのさ」 と、密かに起きていたのかロングビルまでもが目を覚まし、ルイズを冷笑しだした。 「少なくとも、あんたは私以下でしょうよ」 「むぅ~っ! そんなことないもん! おばさんなんて、せいぜいラグドリアン湖と比べたらミジンコと白鳥、ヤモリとサラマンダーよ!」 「モンモランシー」 またしても不毛な争いを始めようとしたため、スパーダはルイズ達を顎でしゃくった。 「まったくもう……貴重な秘薬をこんなことに使う破目になるだなんて」 嫌々とモンモランシーはポケットから取り出した眠り薬の瓶を開け、その口を二人の鼻先に突きつけた。 「ふにゃ……」 「ん……」 地面の上に崩れ落ち、ルイズとロングビルは再びまどろみの中へと落ちていく。 そして、ここにいては邪魔になるのでパンドラを置いたスパーダは二人を少し離れた林の中の木陰へと運んでいった。 と、その直後に岸辺より30メイルほど離れた水面の下から眩い光が溢れ始めていた。 「あっ、来たわ!」 モンモランシーが声を上げる。 水面がごぼごぼと音を立てながら蠢き、徐々に膨れ上がるようにして盛り上がると、巨大な水柱が飛沫を上げながら立ち上った。 そして、ぐねぐねとまるで意思を持つスライムのように形を変え始めた。 湖からモンモランシーの使い魔のロビンが上がってきて、ぴょこぴょこと跳ねながら主人の元に戻ってくる。 「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」 屈みこんだモンモランシーは己の使い魔を迎えると、指でその小さな頭を撫でると立ち上がり、水の精霊に語りかけた。 「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系よ。カエルにつけた血に覚えはおありかしら。 覚えていたら、わたしたちに分かるやり方と言葉で返事をしてちょうだい」 その言葉に反応し、水の精霊らしき水の塊は大きく蠢き、形を変え始める。やがて、その水の塊は不定形なものから人間……モンモランシーを模した姿へと変わっていた。 (ちょっと恥ずかしいわね……) モンモランシーは自分より一回りほど大きい、透明な裸の己の姿にちょっと恥ずかしくなった。 ギーシュも初めて目にする精霊の姿に呆気に取られているみたいだ。 水の精霊はさらに蠢き、笑顔、怒り、泣き顔と様々な表情に変わっていく。 『覚えている。単なる者よ。貴様の身体を流れる液体を、我は覚えている。貴様に最後に会ってから、月が五十二回交差した』 どこから喋っているのかは全く分からないが、水の精霊は透き通った女の声で言葉を発する。 「良かった。水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部を分けて欲しいの」 モンモランシーからの願いに対して水の精霊は沈黙する。 これですんなり交渉が成立すれば良いのだが。 しばしの沈黙、未だ答えが返ってこない中、スパーダが林から戻ってきた。 (ほう。これが水の精霊か) 初めて目にする精霊とやらの姿にスパーダは感嘆と頷く。メイジ達とは全く性質の異なる強い魔力をありありと感じ取っていた。 その時、水の精霊の身に異変が起きた。 『――――――――――!!』 「えっ! ちょっと、何よ!」 言葉にならない高い悲鳴を上げだす水の精霊はモンモランシーを模した姿から一変、全方位に弾けるような不定形の塊と化していた。 「ど、どうしたんだね? 一体」 「あ、あたしに聞かないでよ!」 予想しなかった事態にギーシュとモンモランシーは困惑する。 『――――――――――!!』 未だ悲鳴を上げ続け、その水の塊をあらゆる方向に向かって弾けさせている水の精霊であったが、再びモンモランシーの姿に戻ると突然体の一部を伸ばし、その先を鋭利な槍のような形に変えていく。 そして、その先端をモンモランシー目掛けて突き出してきた。 「危ない! モンモランシー!」 即座にギーシュがモンモランシーに飛びつき、伏せさせると水の精霊の攻撃が頭上をかすめていた。 外れた攻撃は地面に突き刺さるが、やがてするすると収縮して戻っていく。 「な、何をするのよ!」 ギーシュと共に起き上がったモンモランシーが突然の攻撃に文句を言った。 もしかして、怒らせてしまったのか? やっぱり、自分の体を分けてなどと言ったからだろうか? 『断る。単なる者よ』 ようやく先ほどの願いの答えが返されてきた。 やっぱり、そうらしい。これで明確に怒りを表していなければ諦めて大人しく立ち去る所だったが、あまりの恐ろしさに動けないでいた。 こんなことなら、やっぱりついてくるんじゃなかった……。 だが、次に精霊が発した言葉にモンモランシーは不審を抱くことになる。 『貴様は忌まわしき魔の眷族と共に我が前に現れた。我は魔の眷族と契約する者を許すわけにはいかぬ』 「ま、魔の眷族ってどういうことよ?」 いきなりそんなことを言われたって何のことだか分からない。 困惑するモンモランシーとは逆にギーシュはちらりと、平然と水の精霊を見上げているスパーダを見やった。 (ま、まさかスパーダが悪魔だって分かるのか?) (ほう。私が分かるのか) スパーダは顎に手をやり、水の精霊を睨みつけた。 『貴様もこの地を脅かす奴らと同じ魔の眷族。我が守りし秘宝を盗みし、忌まわしき者。これ以上、この地を汚させるわけにはいかん』 「性急なことだ」 ふむと唸ると水の精霊は問答無用と言わんばかりに無数の触手を槍のように伸ばしてきた。 だが、そこには既にスパーダの姿はなく、空しくも大地に突き刺さるのみである。 連続で空間転移を行い、モンモランシーとギーシュを岸から離れた場所に運んでいた。 「お前達はここにいろ。決して動くな」 そう告げ、パンドラを預けるとスパーダは再び空間転移で水の精霊の前に立つ。 「If you were boring, I ll let s give you play.(退屈なら少し遊んでやろう)」 水の精霊は沈黙したままさらに己の体から次々と鋭い触手を伸ばし、スパーダに突き出していった。 背中のリベリオンを抜いたスパーダは軽々と両手で力強く振り回し、水の精霊の攻撃を捌いていく。 騎兵槍のごとき太い槍のように突き出された攻撃を身を翻してかわすと、そのままリベリオンを大上段から振り下ろして水の精霊の触手を叩き斬っていた。 だが、水の精霊に単純な物理的攻撃を加えようと、元々形を持たぬ水であるためすぐに再生してしまう。 変幻自在な水は時にあらゆる攻撃を防ぎきる無敵の盾となり、あらゆる鎧をも貫く強靭な矛となるのである。 スパーダは容赦なく繰り出される水の精霊の攻撃をかわし、リベリオンでいなし続けていた。 「もう! 何でこんなことになるのよぉ!」 離れた位置からスパーダと水の精霊の戦いを見届ける二人であったが、モンモランシーが癇癪を上げていた。 いきなり訳の分からない因縁をつけられて攻撃をされてしまうだなんて、実に不愉快である。 「しかし、スパーダ君も怖いもの知らずだなぁ。……水の精霊に正面から戦いを挑むなんて」 乾いた笑みを浮かべる顔を引き攣らせ、ギーシュは師匠の勇ましい戦い振りに息を呑んだ。 もっとも、彼が悪魔である以上、人間とは思考が違うのかもしれないが。 水の精霊は自らの体を槍だけでなく、無数の水の鞭として振るって四方八方から攻撃を仕掛けている。 手練れのメイジでさえ決して対処できないであろう手数でありながら、それらの攻撃をスパーダは難なくあしらい続けていた。 水の精霊はそうした直接攻撃だけでなく、大気中の水蒸気を一瞬にして大量の水の塊にして集めると何筋もの高圧の水流として撃ち出したり、スパーダの頭上から巨大な滝を降らせるなどしていた。 それさえもスパーダはよけるなり、頭上でリベリオンを回転させるなりして防ぎきっている。 「どっちも化け物ね……」 思わずモンモランシーが呟く。強力な水の先住魔法を操る水の精霊を相手に魔法もなしにああまで互角に戦うことができるだなんて、もはや人間の常識を超えている。 「あれがスパーダ君の力なのさ。……僕はそれに惚れこんでしまったんだ」 伝説の悪魔である彼なら、このまま水の精霊を倒してしまいそうでギーシュは思わず武者震いをしてしまった。 突如、水の精霊の攻撃がぴたりと止んだ。一方的な攻撃を全て捌ききったスパーダはリベリオンを肩に乗せたまま静かに佇む。自ら攻撃を仕掛けようとはしない。 どうしたのだろうとギーシュ達は目を見張っていた。 すると、水の精霊が浮かんでいる穏やかな水面の手前に変化が現れる。 水面には徐々に小さな渦が出来上がっていき、みるみるうちにその勢いと大きさが増していく。 そして、ついにはその渦が巨大な水柱となって噴き上がった。 高さはゆうに20メイルに昇り、しかも竜巻のような渦は未だ巻いたまま、勢いは止まるどころかさらに激しさを増すばかり。 まるで巨大な大津波が押し寄せてくるかのような威圧感であった。 「ちょっ、ちょっと! 何をする気!?」 モンモランシーは水の精霊がとんでもない攻撃を仕掛けようとしているのを目にして肝をつぶしていた。 あんなものが直撃すれば、人間はおろかちょっとした城さえひとたまりもないだろう。 「に、逃げましょうよ! ギーシュ!」 「いや! 僕はスパーダ君を信じる!」 モンモランシーが叫ぶが、ギーシュは決してこの場から動きはしない。 自分の師、スパーダはあんな恐ろしい攻撃を前にしながらも、堂々と佇んだまま微動だにしない。 伝説の魔剣士である彼なら、あの巨大な水の竜巻さえもきっと打ち砕いてくれるに違いない。 彼の弟子である以上、その戦いの場から逃げることは、決して許されないのだ! (そこまで、彼を信じているんだ) モンモランシーはギーシュの真剣な顔を目にして、ここまで彼から人望と信頼を得ているスパーダが羨ましかった。 いつものギーシュであれば、恐れをなして逃げ出してしまうというのに、今の彼は違う。尊敬する師匠がこうして目の前で戦っているからこそ、安心できるのだ。 ……それに勝る安心を、自分は彼に与えられるのだろうか。 (相当気が立っているな……) スパーダは先ほどから肩に乗せているリベリオンに己の魔力を注ぎ込んでいた。 さすがに彼とて、これほどの一撃を食らえばただではすまない。悪魔とて、決して不死身というわけではないのだから。 だからといって、このまま自分を飲み込もうと押し寄せてくるであろうこの竜巻を正面から受け止める気はこれっぽちもない。 不可能ではないが、今のスパーダはそんなつまらないことをしている暇などないのだ。 リベリオンの刀身には徐々に赤いオーラが纏わりつき、さらに濃くなっていき、やがて刀身を完全に包み込む。 その間、バチバチという魔力が弾け散る音と共に、魔力が唸りを響かせていた。 溜めた魔力を全て一度に開放して放ち、竜巻を打ち消すこともできただろうが、今回はそんなことはしない。 スパーダは膨大な魔力を内包させたリベリオンを、激しく荒れ狂い、渦巻く竜巻に目掛けて投げ放つ。 竜巻とは逆の向きに激しく回転するリベリオンは空を切り裂く音を響かせながら飛んでいき、竜巻の中へと潜り込んだ。 その直後、より巨大となった竜巻は動き出し、スパーダ目掛けて殺到してくる。 「「危ない!」」 後方で見守ることしかできなかった二人は一斉に声を上げる。 だが、それでもスパーダは臆することなく水の竜巻を睨んだまま腕を組み、動かない。 そして、スパーダを飲み込んでしまうと思われた竜巻は急激にその激しさと勢い、回転力が衰えていき、 最後にはただの水の塊と化し、滝のようにばしゃんと湖と陸の間で崩れ落ちた。 未だ全く衰えない激しい回転を続けながら留まっていたリベリオンは、役目を終えたと言わんばかりに主の手元へと戻っていく。 スパーダは掴み取ったリベリオンを、静かに背中へ戻すと、再び目の前に現れた水の精霊を見上げていた。 水の精霊は攻撃をすることもなく沈黙している。先ほどまでの殺気は感じられない。 「ほら、僕の言った通りだろう」 「……もう常識外ね。あなたの師匠は」 師を信じた甲斐があったと言わんばかりの笑みを浮かべるギーシュはモンモランシーを連れ、スパーダのパンドラを運びながら傍へと近づいた。 とんでもない光景を見せられて、モンモランシーは唖然とするしかなかった。 『……貴様、あの魔の眷族の者共とは違うのか』 ようやく水の精霊が発した言葉は、困惑と驚愕であった。 『貴様の体、そして貴様の振るいし剣からは邪まな気配が、我への敵意は感じられぬ。何者だ』 「さてな。どう思うかはお前次第だ」 腕を組むスパーダは冷徹にその問いを一蹴する。 『……何にせよ、貴様達が忌まわしき魔の者達と関わりがないことは明らかだ。我が非礼をここに詫びよう』 と、精霊の姿が再びモンモランシーを模したものへと変化していった。 態度を一変させた精霊にモンモランシーはほっと安心すると同時に、怒らせた精霊をここまで静めてしまったスパーダに驚くばかりだった。 『旧き盟約の一族たる、単なる者よ。貴様は先ほど、我の一部を欲すると言ったな』 「え!? ……え、ええ。そうよ」 いきなり自分に話を振られてしまい、モンモランシーは焦る。 『ならば、貴様と共にする高潔なる魔の眷族の力を見込み、我は願う。我に仇なす貴様達の同胞を、退治してみせよ』 「た、退治?」 突然の精霊からの願いにギーシュが声を上げた。 「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ。その者どもを退治すれば、望み通り我が一部を進呈しよう」 そのくせに、自分達にはあんなに積極的に攻撃してきたくせに。 モンモランシーとギーシュは目を細めて水の精霊を見つめていた。 「良いだろう」 スパーダが精霊からの願いを聞き入れ、首肯していた。 「ちょっと! 言っておきますけど、あたしはケンカなんて嫌ですからね!」 「大丈夫だよ、モンモランシー。彼の弟子の、僕がいるからにはね」 抗議するモンモランシーの肩に手を回したギーシュはバラの造花を手にし、得意げに笑っていた。 前ページ次ページThe Legendary Dark Zero
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シンモラ 北欧神話に登場するやせた女巨人。 魔剣レーヴァテインを守護する。 関連: スルト (夫) 別名: シンマラ
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前ページ次ページ虚無の王 * * * 鋭い声に、空は振り向く。 金髪の少女が居る。 見事な巻髪は、高校生の身でありながら、部員達に“婦人”と呼ばれてフケ顔を論われていたテニスプレーヤーを連想させる。 また、一人増えた。千客万来だ。 「ギーシュっ!動かないで!そこに居なさい!」 お蝶婦人擬きは怒りの形相で歩み寄る。 「ボーズ。知り合いか?」 「ああ。彼女はモンモランシ家のモンモランシー」 「ギーシュ!平民なんかと話してないでっ。こっちを向いて」 モンモランシーはギーシュを無理矢理振り向かせた。 「どうしたって言うんだい?モンモランシー」 ギーシュは戸惑った。 葡萄酒の瓶で頭をカチ割られて以来、モンモランシーとは会っていない。 それが、いきなり、こんな所にまで訪ねた来た。 一体、どうなっている? 「ねえ、ギーシュ。貴方、こんな所で何をしているの?」 「決闘だっ。先の汚名を雪ぐ為、ミスタ・空に戦いを挑むのだ」 「何、言ってるのよ、馬鹿っ!」 モンモランシーは大声で怒鳴り付けた。 「あんた、今、自分がなんて噂されてるか、知っているの?ギーシュ・ド・グラモンは平民に負けて、平民に成り下がった、よっ!」 「その不名誉を返上する為にも、僕は勝たなければいけないのだ」 「何言ってるのよっ!貴族と平民で決闘が成り立つ訳が無いじゃないっ!放っとけば、皆忘れるのよっ!そんな風に言われるのも、平民なんかを追い回してるからだわっ!」 「モンモランシー!ああ、判ってくれ、モンモランシー!僕は貴族だ!決して後を見せない者だ!決闘における不名誉は、決闘で雪ぐ事しか出来ないのだ!どうして、噂が過ぎ去るのを、背を丸めて待つ事が出来るだろう!」 「それだけじゃないでしょっ!私、知ってるのよ!」 その一言を聞くと、未だ何も言われていないのに、ギーシュは息を飲んだ。恋多き男の、悲しい性だ。 私、知っているのよ―――― 一体、何度同じ言葉を聞いた事か。 「あんた、毎日の様に、あのへんてこな靴履いたメイドの所に通っているじゃない!どう言うつもりなのよ!」 「み、ミスタ・空に勝つ為にも、彼女の助力が必要なのだっ!」 ギーシュは叫んだ。 そう。 その為だけですよ。 決して他意は無いのですよ? 「ああ!ギーシュ、私見ていられないのよ!貴方がそんな風にして、不名誉にまみれて零落して行くのを見るのは耐えられないの!」 「モンモランシーっ?」 おや――――これはひょっとして!?……ギーシュの胸に、淡い期待が湧く。 「ねえ、お願いよ、ギーシュっ!約束してっ!もう、平民を追い回す様な事しないってっ!」 モンモランシーが戻って来てくれるなら、それでも――――そんな風に考えて、空に振り向く。 車椅子の男はにやにやと成り行きを見守っている。 その横に鎮座するワルキューレ。青銅の車輪が光沢を放つ。 「……すまない、モンモランシー」 「ギーシュっ?」 「それは出来ない」 ギーシュは言った。苦渋の表情だった。 モンモランシーが戻って来てくれれば、確かに嬉しい。 だが、今までして来た事はどうなる? このワルキューレは、彼女が言う様に、平民を追い回したからこそ生まれた物なのだ。 「ギーシュっ!どうしてよ!どうしてっ!?」 「許してくれ、僕の愛しいモンモランシー。これは僕の名誉の問題だ。誇りの問題だ。悲しいかな、男には、例え行く手に何が待ち受けていようとも、成し遂げなければならない事が有るのだ」 「ギーシュ……」 何時にない真剣な眼差しに、モンモランシーは言葉を失った。 「そうね……私が間違っていたわね」 「モンモランシーっ!」 ギーシュは喜びの声を上げる。 良かった。彼女も許してくれた。判って――――刹那、モンモランシーの形相が鬼女のそれに変わる。 「あんたが話せば分かるお利口さんだなんて一瞬でも考えた、私が間違っていたわね~~っっ!」 「ひっ!――――」 マズイ! マズイマズイマズイ! 本気で怒らせてしまった! 「も、モンも……」 怯むギーシュに、モンモランシーは叫ぶ。 「決闘よっっ!」 「あら、そっちも決闘なの?」 キュルケは言った。 呆れているのか、面白がっているのか、どちらともつかない口調だった。 「モンモランシー!そ、そんなっ……!」 「私が勝ったら、馬鹿な事は金輪際、止めて貰うわよっ。さあ、勝負の方法を決めて。私は平和主義者だから、平和的な方法がいいわ」 ギーシュは説得の不可能を悟った。元より、貴族が発言を取り消せる訳も無い。 平和的な決闘……どんな決闘だ? 「なんや。そっち、先に済ませた方が良さそうやな」 「ミスタ……」 その声に、ギーシュは振り向く。 そうだ。ダッシュは攻撃が許されているとは言え、双方無傷の決着もあり得る勝負。 ここ数日、その為だけに魔法を磨いて来た自分がそれを言い出すのはアンフェアかも知れない。 だが、空ならモンモランシーが要求する、平和的な決闘を他にも提案出来るのではないか。 「なんや、こっちもワイが仕切ってええのか?せやな……Dランク行こ。“キューヴ”や」 どうやら、パーツ・ウォウとやらは難易度別に別れているらしい。少なくとも、ダッシュよりは複雑な競技だろう。 5m四方の空間を岩山に掘れ――――空の要求は、ヴェルダンデがこなした。 内部の補強。これから決闘に臨むギーシュがやる訳にはいかない。 そこでマリコルヌが担当する。土メイジならぬ肥満児でも、簡単な作業なら出来る。 「ほな、二人とも入り。決着まで、外出るの禁止な」 ギーシュはワルキューレ共々飛び降りる。 新型は構造が複雑だ。2体は楽勝だが、3体は厳しいかも知れない。無駄には出来ない。 モンモランシーも黙って続く。 「勝負の方法は?」 「何でもアリ。死んだら負け」 「えっ?」 ギーシュは凍り付いた。 「み、ミスタっっっ……――――!」 これで面倒が一つ片づいた。 そう言わんばかりに、空は悲痛な叫びを無視して振り向いた。 「あーあ」 「なんや、キュルケ?」 「少し、彼に同情するわ」 「あの、オンモランシーたら言う娘、強いんか?」 「水メイジよ」 「そう言えば、水、てあんまり聞かへんな。珍しいわ」 「水はえげつないわよ。彼女の得意はブラッディ・クェイク。相手の体液を震動させて、内部から殺傷するの」 「まるで、王蟲の“泡爆滅殺〈バブルガム・クライシス〉”やな……」 平和主義者と違ったんかい――――空は態とらしく震えて見せる。 「口先だけよ。当たり前でしょう」 ルイズが呆れた口調で振り向いた。 「卑劣な平和主義者がトリステイン貴族に居る訳が無いわ」 「卑劣かい」 「平和主義者が平和を謳えるのは、彼らの代わりに誰かが戦い、血を流しているからだわ。そんな人達を、被害者の様な顔で野蛮と罵るのが、彼らのやり方。卑劣その物じゃない」 「やっぱ、ルイズは頭ええわ」 「もうっ……また、そうやってバカにして……」 ルイズは拗ねた様に、唇を尖らせる。 「褒めてるんやで?」 「もう、いいわ。それより、こっちも始めましょう」 ルイズとタバサ。二人の視線が交錯する。 合図の帽子が舞った。 * * * ルイズの事は、直接知っている訳では無い。だが、その話は友人であるキュルケから聞いている。 彼女は魔法についても、“ゼロ”であるらしい。 タバサは呪文の詠唱を始める。フライだ。 魔法成功率ゼロ。それなら、一息に目標まで飛ぶだけで片がつく。 問題はあの爆発だ。 魔法の失敗で爆発が生じる話を、タバサは一例しか知らない。仮に意図した場合、どの程度コントロール出来る物なのだろう? 飛翔――――。 目の前に“置く”様にして爆発が生じたのは、その時だ。空気が弾け、突風が頬を叩く。 タバサは着地した。 ルイズを見据えつつ、ゆっくりと歩を進める。 相手がどこまで正確に爆心点を設定出来るのか判らない。爆発の範囲が広ければ、狙いの甘さは帳消しになる。 なにより恐るべきは、爆発が直接空間に作用する事だ。ファイアボールの様に、杖から飛来すると言ったプロセスが無い。 これでは、外させる事は出来ても、回避は不可能。 想像以上に、厄介な相手だ。 ルイズも前進する。小さな杖を突き出し、タバサの一挙一投足に注意を払いながら、ゆっくりと、ゆっくりと。 「?……何故、飛ばないの?」 「後から撃たれるやろ」 疑問を呈するキュルケに、空は説明する。 「余程、スピードに自信が無い限り、前は取らない。“ダッシュ”の鉄則や」 本来、飛び道具の無いストームライダーでさえそうだ。メイジ同士ともなれば、尚更だった。 停止中に攻撃禁止のルールが無ければ、間違いなく、単純な火力の応酬になる。 「そうなれば、ヴァリエールに勝ち目は無い……少し身贔屓が過ぎるルールじゃなくて?」 「今回はな。“ハードル”や“エア”やったら、圧倒的に不利になるやろ」 「まるで、次回が有るみたいな言い方よ?」 「実戦の機会が欲しい。どっちにとっても、悪い話や無いと思うで」 戦況に変化が生じた。 タバサの杖が回る。身長よりも長い、節くれ立った杖の回りに、氷の矢が生まれる。一本、二本、三――――五――――八本。 ルイズがコモンルーンと共に、短い杖を振り下ろす。 ルイズは走った。相手を睨み据えつつ、全力で走る。 タバサ得意のウィンディ・アイシクル。氷の刃が次々加速。空気を切り裂き、地面に爆ぜ、岩を断ち、マントを貫き、ピンクの髪を斬り飛ばす。痛みに似た冷感が背筋に走る。 タバサは飛んだ。宙に浮いた。 後背の空気が膨張、破裂。音速を超える衝撃が、小さな小さな背中を突き飛ばす。筋骨の至る所に激痛。 タバサは着地。細い脚が岩盤を蹴る。 杖が旋回。ウインド・ブレイク。エア・ハンマー。魔法を連発。 巻き起こる風の余波を捉えて、マントがはためく。しなやかな体が、羽と化してリズミカルに舞う。空中を一転――――。 ルイズはひた走る。目標へ近付かなければならないし、的を外さなければならない。タバサの様な、移動と攻撃を両立する技も無い。 不可視の打撃が肩を掠める。視界がグルリと回る。マズイ――――慌てて眼前に爆風の壁を張る。氷と風の刃が纏めて弾け飛ぶ。 「凄いっ」 「ああ、チビッ子やるわ。風を巧く掴んどる」 自分や弟の宙、そして現風の王であるイツキ以外にも、同じ能力を持つ人間が居る事に、空は素直に驚く。 まさか、風のメイジは全員こうなのか? 「ヴァリエールもよっ。あんな至近で爆発起こして、自分は無傷じゃないっ」 「指向性爆発――――言うても未だ甘い。チビッ子優勢やな」 タバサが速い。まるで鳥だ。弾む様に移動。魔法を連発。 ルイズは的を絞れない。自然、魔法は迎撃に費やされる。 そして、杖の回りに生まれる氷の矢―――― 一発が風を断つ。 あれは貰ってはいけない。ルイズは互いの間に爆発。コモンでも発動する爆発は、極めて詠唱時間が短い。 タバサの前方へ、更にもう一発。これで脚を止める。そこに三発目を叩き込む。 と、足下がズルリと剥がれた。 ルイズはトドメの三発目を放てなかった。あっと思う間も無く、肩から岩場に叩き付けられた。割れる様な痛みが胸にまで走り、息が止まる。 タバサが攻撃に使った氷の矢は一発だけ。 二発目、三発目は前方の地面。 自らの爆発に視界を奪われたルイズには、それが見えなかった。凍り付いた岩に足を取られて転倒。 タバサの足を止められたのは、一瞬だけだ。そして、氷の矢は未だ五発残っていた。 タン―――― タン―――― タン―――― 間を置いて発射。 一つの爆発では防げない。勿論、転倒しているルイズには、相手を攻撃、妨害する事は許されない。 ルイズは勢いよく杖を振るう。空気が小さく弾ける。一、二、三、四――――立て続けに矢を逸らす。 キュルケは声を失う。 ルイズは確かに、複数の魔法を連発した。どうなっている。何故、あんな真似が出来る。 「ああ――――ルイズは最後まで呪文唱えんでも爆発起こせる。威力低いけど、単音でもいける」 キュルケは今度こそ驚死する。ルイズの爆発は、系統魔法としてあまりに規格外だ。 と、ルイズが苦悶の声を漏らす。 逸らし切れなかった最後の一発が、打ち付けた肩を捉えた。 目標は目前。タバサは一発だけエア・ハンマー。フライ。 ルイズは必死で踏み出す。攻撃可能なのは移動中だけだ。 一歩――――肩にズキンと響く――――痛くないっ――――やせ我慢と共に二歩、三歩。 背後にエア・ハンマーが着弾。 タバサがエンブレムへと飛ぶのが見える。 フラつく足取りで爆発―――― 「あっ……――――」 声を出したのは、誰だっただろう。 エンブレムが、貼られた岩ごと、木っ端微塵に吹き飛んだ。 * * * 「えーと……この場合、引き分け?」 キュルケの問いに、空は頭を振った。 そんな訳が無い。詰み寸前で、将棋盤をひっくり返した様な物だ。 「と、なるとやっぱり……」 「ウェルダン」 「仕方無いわね~。私、本当はこんな事したくは無いんだけどね~」 喜々と呟きながら、キュルケは呪文の詠唱を始める。 タバサが近付いて来る。無表情だが、上機嫌で無い事だけは、誰にでも判る。 ルイズは、真っ青な顔で肩を落としている。 「……ちゃうねん」 力の無い声が漏れた。 「何が違う?」 「あのね、私はあの子を狙ったの。断じて、ズルをしようとした訳では無いの。ホントよ」 「なら、チビッ子に言う事あるやろ」 ルイズは唸ったが、仕方が無い。不可抗力とは言え、自分が目標物を破壊してしまったのは事実なのだ。 「ゴメンナサイ」 消え入る様な声で、頭を下げた。 「もう一つ」 タバサが無表情に要求する。 言わんとする所を察して、ルイズはまた唸る。 「……ま、参りました~っ――――」 心底、悔しそうな声だった。 キュルケは残念そうに杖を収めた。 まあ、ルイズがこれだけ小さくなっている姿を見る事が出来たのだ。良しとしよう。 「ヴァリエールも想った以上に頑張ったけど、順当な結果ね」 タバサは胸を張る。小さな胸を張る。無い胸を張る。 ルイズは顔を引きつらせる。 なによっ!私より小さい癖に!小さい癖に!色々小さい癖に! ルイズも胸を張る。 二つの鳩胸が重なり合い、視線が交錯する。 「はいはい。小さい物……じゃなくて事で張り合わない」 キュルケに言われては、仕方が無い。 タバサは何も言わず、ルイズは歯噛みしながら引き下がる。 「くやしいーっ!」 ルイズは叫んだ。何だか、色々と悔しかった。 「大丈夫」 タバサはそんなルイズの肩を、慰める様に叩く。 「私もついこの前」 「何の話よっ!」 一方、ギーシュとモンモランシーの決闘も決着していた。 立会人のマリコルヌはふて腐れて、岩を蹴っている。 理由はすぐに判った。二人は互い無傷で、おまけに小指を繋いでいたりした。 「なんだか、平和的に解決したよ」 ギーシュは照れ笑いを浮かべる。 狭い場所でじっくり話し合った事で、ヨリを戻す事になったらしい。 「さすが、ミスタっ!こうなる事を予想していたのだね。貴方は僕らの恩人だっ!」 別にそんなつもりは無かったが、空はそう言う事にしておいた。 日が傾こうとしていた。そろそろ、学院に戻った方が良い。 それを引き留めたのが、タバサだった。 「そろそろ、約束を果たして欲しい」 「約束?」 「ここは何も無い」 「ああ。あれか。“風を掴む”方法やろ。チビッ子は才能有るかも知れへんしな」 「“風を掴む”?」 ルイズが声を上げる。 「あれでしょ。ギーシュのワルキューレを弾き飛ばした」 「ああ、あれね」 「あれは素手では無かったのか?」 一同は口々に言った。風と聞いて、マリコルヌまで興味を示す。 「せやな――――このままでもいけるけど、真っ平らな方がやり易いし、説明もし易い」 その要請に従って、ギーシュは岩盤を平面に変える。 空は飛んだ。 空中で一転。車椅子ごと逆立ち状態になる。この時点で、歓声が上がる。 「ここからが本番――――」 空は指を放す。そして、体を脚側へと伸ばす。 一同は声を失う。 腕立ての姿勢で、脚を浮かせている様な体制。しかも、車椅子を乗せたまま。 超人的な膂力は勿論だが、掌を地面に固定でもしない限り、こんな事は出来る筈が無い。 物理に反している。 「アカン、年や。もうもたん」 空が潰れた時、一斉に驚きの声が挙がった。 「な、何だ今のは?」 「どうやってやったの?」 「まさか、先住っ?」 「おでれーた」 空は上体を起こすと、説明する。 真空溶接と言う技術が有る。平面同士を重ね、間の空気を完全に抜くと、両者は溶接された様に離れなくなる。 「今のは、その応用。大切なのは“面”で風を捉える事や。“空”は柔らかい。ほんのちょっとした条件で流れを変えよる。こうして、風と風の隙間、密度の境界に掌を添えてやると――――」 刹那、悲鳴が上がった。 不意に突風が巻き起こり、魔法学院の制服、学院長の趣味を丸出しにした、短いスカートが纏めて捲れ上がった。 「こんな事も出来る」 どや、凄いやろ――――その声に答えたのは、当のタバサでは無かった。 「ワンダフルッッ!!」 マリコルヌが叫ぶ。 「やはり“風”の系統こそ最強!この風上のマリコルヌ、今日ほど始祖に感謝した日は無い!」 「悔しいが、確かに認めなくてはいけないっ。」 ギーシュは声の通りに悔しそうだ。 タバサは例によって反応無し。見たければ言ってくれれば良いのに――――キュルケは身をくねらせる。 と、 「そ~っら~っ――――!」 地の底から響く様な声。ルイズだ。 モンモランシーも身を震わせている。 「あー、あんな。今のは、風の悪戯やで。事故や事故」 「相棒、その言い訳は苦しいと思うね」 デルフが言うまでも無い。 「この犬~っ!」 地べたの空を、ルイズは蹴る。蹴る、蹴る、蹴る。 「や、やめっ!――――」 空は悲鳴を上げる。 ルイズは更に蹴る、蹴る、蹴る。 「全く!なんのつもり!」 そこにモンモランシーも参加する。と、 「ちょっと!待ちなさいよ!」 その前に、ルイズが立ちはだかった。 「どきなさいよ、ヴァリエール!」 「何、言ってるのよ!私の使い魔よ!勝手な真似はよして!」 「侮辱されたのよ!」 「躾は私がするわ!」 「どっちが蹴った、て同じでしょう!」 「なら、引っ込んでなさいよ!洪水のモンモランシー!」 「私の二つ名は“香水”よ!」 いきなり始まった二人の言い争いに、男子生徒コンビはこそこそと逃げ出した。 空もそうしたかったが、ルイズの回し蹴りが逃走を阻む。 「いい!とにかく、私の使い魔には、絶対に手を出さないで!」 「彼を蹴っていいのは、自分だけだ、て事?」 「当然でしょっ!」 あっ―――― ルイズは口元を被った。 キュルケがにやにやと笑っている。不意の声に、注意が働かなかった。 モンモランシーも生温かい笑みを浮かべている。 「あら、そーう。そう言う事。いいんじゃなくて。お似合いだわ」 「なな、なによ。か、勝手に勘違いしてればいいんだわっ」 「ダーリンも大変ねえ。主人がおかしな性癖持ってて」 「うるさいわねっ!ツェルプストー!」 「ルイズはたまに激し過ぎて、叶わんわ」 空がぼやく。ルイズの顔が真っ赤に染まる。 「うるさいうるさいうるさい――――っっ!」 悲鳴にも似た声が、高らかに響き渡った。 ――――To be continued 前ページ次ページ虚無の王