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エリザベートアンジェリクドヴィエンヌ(エリザベート・アンジェリク・ド・ヴィエンヌ) フランスのソワソン伯の系譜に登場する人物。 関連: フランソワドモンモランシーブットヴィル (フランソワ・ド・モンモランシー=ブットヴィル、夫) フランソワアンリドモンモランシーブットヴィル (フランソワ・アンリ・ド・モンモランシー=ブットヴィル、息子)
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ブシャールゴセイ(ブシャール5世) フランス王の系譜に登場する人物。 関連: マチューイッセイドモンモランシー (マチュー1世・ド・モンモランシー、父) アリスフィッツロイ (アリス・フィッツロイ、母) ローレット (妻) マチューニセイ (マチュー2世、息子) 別名: ブシャールゴセイドモンモランシー (ブシャール5世・ド・モンモランシー)
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「なんという事だ…」 目の前が真っ暗になったモット伯がうめく。 「約束を…守ってくれますね?」 自分を打ち破った平民を忌々しげに見る。 一瞬衛兵達を呼び、目撃者共々消すと言う選択肢が頭に浮かぶが、すぐにメイジが一人もいない衛兵達では、逆に返り討ちにあうだけだと思い直した。 こうなったら、せめて潔い態度を見せ、少しでも貴族の矜持を見せようと観念する。 「わかった…約束どおり私のコレクションの一冊を君に」 「え?僕はシエスタさんを」 「も、モット伯!ちょっと、ちょっとこちらへ!」 二人の間に割り込んできたミス・ロングビルが、モット伯を部屋の隅に連れて行く。 「み、ミス・ロングビル?先程あの平民が、何か気になる事を」 「いいですかモット伯!このままではモット伯の立場が非常に悪くなります! 王宮勅使にまで抜擢される貴族が平民に敗れるなんて…と!」 「ま、まぁ確かに…」 ミス・ロングビルの勢いに気圧されてしまい、ついつい頷いてしまう。 「そこで、今回の事は貴方が勝利したという事にすると説得してみます」 「ほ、本当かね!?」 思わずその提案に飛びついてしまい、先程生まれた疑問も、頭の片隅に追いやってしまうモット伯であった。 そのころ育郎の主人であるルイズは。 「あらルイズ、イクローはどうしたのよ?」 一人で食事をとっていた所を、キュルケに話しかけられていた。 ちなみに育郎がいないにもかかわらず、ルイズの回りには誰もいない。 遠巻きに眺める生徒達は各々 「奴がいない!魔界に帰ったのか!?」 「馬鹿!見えないといって、いないとは限らないぞ!」 「感じる…ルイズの隣に誰かいるのを!間違いない、俺霊感強いんだよ」 等と相変わらず好き勝手に騒いでいた。 「…出かけてるのよ」 「何処に?」 キュルケの後ろにいたタバサがルイズに問いかける。 「何よ、貴方まで…ミス・ロングビルが出かけるから護衛を頼まれたのよ」 「学院長の秘書の?なんで?」 「いつもお世話になってるからって…あいつ、あの人に文字を教えてもらってるの」 「なーんか怪しくない?ねぇ、タバサ。貴方はどう思う?」 「別に」 いつも通り感情の無い声で答え、タバサは手に持った本を読みだした。 「もう、素直じゃないんだから…」 「なにが怪しいのよ…言っとくけどね、ミス・ロングビルはモット伯に招待」 「おや?イクローはどうしたんだいルイズ?」 言い返そうとするルイズに、今度はギーシュが話しかけてきた。勿論その横には、何時ものようにモンモランシーが控えている。 「なによあんたまで…っていうか、前から気になったてたんだけど、なんで貴方なにかとイクローを気にしてるの?」 「そう言えばそうね。貴方が女の子以外を気にするなんて珍しいじゃない。 もしかして…モンモランシーがいつも引っ付くようになったから、今度は男にでも鞍替えを…イクロー結構いい男だし」 「へ、へんなこと言わないでよツェルプストー!そんな…ち、違うわよね?」 「そんなわけないじゃないかモンモランシー!ぼ、僕が愛するのは世の美しい女性全てであって、間違っても男なんて」 「美しい女性………全て?」 底冷えするモンモランシーの声に、みるみるうちにギーシュの顔が青くなる。 「い、いや違うんだモンモランシー…その、美しい花は誰にでも感動を与えるだろ? 僕にとって女性はそういう存在であって、でも君だけはほかと比べようのない、 この世で一番の」 「で、貴方は2番以降の花をどうするつもりなの?」 「えーと…」 二人のやり取りを見ながら、キュルケが溜息をつく。 「嫌ね、自分に自信のない女って…」 小さな声で言ったのだが、モンモランシーはその言葉を聞き逃さなかった。 「…貴方、今なんて言ったの?」 ひぃ、とあまりの迫力にギーシュが悲鳴をあげるが、当のキュルケは涼しい顔でその視線を受け止めている。 「あら、聞こえちゃった?そうね、男をつなぎ止める自信がないってのは、自分に魅力がないって言ってるのと同じじゃなくて?」 「なんですってええええ!」 「モンモランシー落ち着いて!キュルケ、もうちょっとこういい方ってものが…」 必死になってモンモランシーをなだめようとするギーシュだが、一方のキュルケはからかう気満々でニヤニヤして、モンモランシーの怒りを煽っている。 「違うの?じゃあなんで貴方決闘の時から、四六時中ギーシュと一緒なのよ?」 「へ?」 その言葉に途端に真っ赤になって、モジモジしだすモンモランシー。 「えーと、そ、それは…」 「ど、どうしたんだいモンモランシー?」 「あら?そんな反応されると気になるじゃない」 「え?何々?」 「………」 ルイズはおろか、タバサまでも本から視線を外し、モンモンランシーを見る。 「そ、そんなことより、なんでギーシュがあいつを気にしてるのかって事でしょ!」 「えー、別に良いじゃない?」 「ほら、ギーシュ!さっさと言いなさい!」 「わ、わかったよモンモランシー」 ギーシュも気にならないではなかったが、愛しいモンモランシーの頼みなので、素直に話し出す。 「その…まあなんだ、経過はどうあれ、僕は彼に助けられたじゃないか?」 「それに恩を感じたの?」 ルイズがいまいち納得の行かない顔をして、疑問の声をあげる。 「うーん、そこら辺はいまいちはっきりしないと言うか…いや、そうかな?」 「何よそれ?」 今度はモンモランシーが呆れた声をあげる。 「とにかくそれもあるんだけど…なんというか、僕は衝撃を受けたんだよ」 うんうんと頷いてギーシュが続ける。 「その…僕はこれまで、極端な話、凄いメイジになれば、立派な貴族になれると思ってたんだ」 「なんというか…本当に極論ね」 キュルケの言葉に相槌を打ちながら続ける。 「うん、けどやっぱり優秀な魔法使いにならないと出世とかは… グラモン家の名を汚さないためにも、ちゃんとした役職につかないと」 ルイズが頷く。彼女自身誰よりも立派な貴族足らんとして、日夜魔法を使えるように努力をしているのだ。ギーシュの考えはよくわかる。 「でも貴方元帥の息子なんでしょ?口を利いてもらえれば、それなりの役職に つけそうなものだけど?」 その言葉にキョトンとなるギーシュ。 「そんなの、僕の力じゃないじゃないか?それじゃ立派な貴族なんて言えないよ。 それに…そんな情けない貴族じゃ、モンモランシーも嫌だろ?」 「ギーシュ…私の為に…」 「当たり前じゃないか、モンモランシー…」 「…それはいいから話を続けなさいよ」 いまにも抱き合いそうな二人に、ルイズがうんざりした顔を向ける。 「あ、うん…えっと、つまりだ、とにかく強い力を持てば、それだけ国にも奉仕できるし、上を目指す事も出来る。けど、彼はあれだけの力をもってるのに平民を助けようとするし、決闘を挑んだ僕の命まで救った… そりゃ、死にそうになったのは彼にやられたからだけど、それ以前に僕は彼に 手加減無しの攻撃をしてるし…とにかく、それだけ凄いのに威張りもしなければ、力をひけらかそうともしないじゃないか? それでだ、僕はその…彼に感銘を受けたと言うか、好意を感じたというか…」 ルイズとモンモランシーが、いまいち要領を得ないと言う顔をしている中、半ば呆れた顔でキュルケが口を開いた。 「つまり…貴方イクローと友達になりたいんでしょ?」 「「へ?」」 ルイズとモンモランシーの声がハモった。 「う、うん。まあ友達と言うか、仲良くしたいと言うか… でも、決闘の事を思い出すと、どことなく気まずいし。だからちょっとずつって」 「女の子には積極的なのにねぇ…にしても、以外に真面目だったり、貴方アタシが思ってたより面白い男だったのね」 珍しくキュルケが感心した声を出す。 「な、なによ面白い男って…」 「良い男って意味よ。よかったわね、モンモランシー」 「はっはっはっ、そんな事言われると照れるじゃないか。ね、モンモランシー?」 「もう、すぐに調子に乗るんだから…」 「さて、それは良いとして… 次はモンモランシーがギーシュといつも一緒にいる理由を聞かないとね」 先程からかおうとした時と同じように、ニヤニヤ笑ってモンモランシーの方を向く。 「な、なんでそうなるのよ!?」 「そうね、是非聞かせてもらわなきゃ」 「る、ルイズ?べ、別に良いじゃない!」 「興味深い」 「タバサ、貴方まで!?」 「でも、僕も話したんだから、君も話してくれると嬉しいなぁ」 四人の視線に、さすがのモンモランシーも観念した。 「…ああもう, 分かったわよ!話せばいいんでしょ!」 半分ヤケクソ気味にそう叫ぶが、いざその時になると、途端にモンモランシーは顔を真っ赤にして、小さな声になる。 「えっと…あの決闘の時、ギーシュがあんな目にあってから、また何かあったらって考えるようになったのよ………そしたら、一緒にいないと不安になって… そりゃ、私の水魔法じゃまだまだだけど、あれからもっとちゃんと勉強もして、 水の秘薬もなるべく持ち歩くようにしてるし…と、とにかくそういう事なの!」 「ああ、モンモランシー!そこまで僕のことを想ってくれたなんて!」 感激に震えるギーシュに、さらに顔を赤くして慌てるモンモランシー。 「か、勘違いしないでよ!ああなったのは、私がギーシュをけしかけたからだし…」 「モンモランシー…愛しい君の優しさに触れられる、それだけで僕は幸せなんだ」 「ギーシュ…」 互いに見つめあい、完全に二人だけの世界に入ってるギーシュとモンモランシー。 「まあ、今日は食べ終わった後だからまだ良かったわ…」 「ほらタバサ、よく見て勉強しておきなさいよ?」 「必要ない」 マリコルヌが、ギーシュとモンモランシーのあまりのストロべリっぷりに、思わず殺意の波動に目覚めそうになっている頃、 「モット伯…やはりトライアングルメイジを打ち破ったと言う事実は、彼にとって かなり価値があるようなので、もう少し出していただかないと…」 「う、うむ…しかしちゃんと黙っていてくれるんだろうな?」 「それはもう、モット伯と全面的に敵対するよりかは、お金で解決する方が特だと私からもよく言っておきますから」 「では頼みますぞ、ミス・ロングビル」 「どうですか、ロングビルさん?」 「もう少し待っていてください…下手に話をつけると、後で気が変わって、シエスタさんやイクロー君に危害を加えようとするかも知れませんし」 「本当にすいません、ロングビルさん…」 「いいんですよ。無事だったとはいえ、イクロー君を危ない目にあわせたんですし」 「そんな、お礼を言うのは僕のほうですよ!貴方がいなければ、シエスタさんを助ける事が出来たかどうか…デルフもそう思うだろ?」 「ウン、ソウダネ」 「………シエスタさん…ね」 「え?何か言いましたか?」 「い、いえ…それではもう一度交渉してきますので」 ミス・ロングビルは、モット伯と育郎の間をいったり来たりしながら、更なる戦利品の確保に全力を傾けていた。
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性能 艦船名 コモラント 派閥 テラ 装甲 200 タレット 1 貨物艙 350 操作性 45 メイン 0 装備枠 8 サブ 4 追加アドオン 価格 $168,900 価格(Android) $135,120 アップグレード アップグレード 増加量 価格(VIPカード保有) 価格(VIPカード無) 装甲 200→240 33,780 67,560 貨物艙 350→380 50,670 101,340 装備 8→9 67,560 135,120 操作 45→65 33780 67,560 ゲーム内説明 コモラントはとても特別な艦だ。最も大きな積み荷スペースをもち、装甲も非常に強い。主要武器は備えられていないが、タレットがあるので十分な防御力を備えている。 特徴 説明の通り、追加アドオンで追加される艦船を除くと最も多くの貨物艙を持つ大型輸送船。 良くも悪くも尖りに尖った性能をしており、貨物艙はライノに次ぐ350、装甲は割と上位のレベルにある200。とにかく輸送で資金を稼ぐ方にピッタリな艦船。前述のライノは追加アドオンスーパーノヴァのみの登場で、貨物艙が多い他の船は軒並み高価格のため、テラ艦船で輸送産業をするなら間違いなくこのコモラントがおすすめだ。 ただ忘れてはいけないことは、メイン枠がまさかの 0 である。メイン枠が0枠の艦船はやはりライノとこの艦船の2つのみ。タレットもあるが例に倣って大した火力は期待できない。それに操作性も格別に悪いため、敵を避けて行動することが大切となる。 (詳しくは輸送ページまで)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1234.html
前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 「悪いシエスタ……誰かが犠牲にならないとダメなんだよ」 当麻は一人、見捨てたシエスタに対して謝った。彼女がここにいたならば、おそらく拳一つは飛んできそうだ。 「さて、どーするかな」 魔法薬であるならば、当麻の幻想殺しで打ち消せる。おそらくあれは、洗脳的な要素があるので、頭を触れば効果は消えるであろう。 しかし、消したくない当麻もいる。 健全なる男子高校生は、そういうのには疎い。ぶっちゃけ、女の子同士……のは少し興味がそそる。 (つか二人で何してんだろうなぁ……) 少年は少しの間、現実から離れ、夢物語に没頭した。果たしてどこまでやったのだろうか? 思えば思う程膨らむ好奇心。しかし、突如シエスタが涙目となって訴える姿が頭にはいる。 シエスタもルイズも、本来求めてはいない姿なのだ。このままでは、やはりよくない。 連絡をすると、自分が言ったのだからなんとかする必要性がある。それにあんな風にさせた人の反省の意も含めて裏技(幻想殺し)を使うのはよくない。 実をいうと、もうちょい見てみたいと思う当麻がいたからなのだが、勝手に違う言い訳を作り、自分を納得させた。 好奇心は最後の最後まで、当麻の中でしつこく粘るのであった。 (とりあえず、怪しいといえばあれだよな……) 昨日ルイズの態度が一変したのは、ギーシュ達がいる部屋に入ってからだ。 そして、さらに詳しい部分を言うならば、あのワイン。 魔法薬といえばたいてい飲み物に入れる、というのは当麻の中での常識である。となると、ますます怪しくなっていくのが彼ら。 当麻は真相を確かめるベく、ギーシュとその女の子を捜す事にした。 時刻は昼間、まだ食堂にいるだろうと踏み、そこへと向かった。 当麻の予測は当たり、ギーシュ達がちょうど食堂から出たところを彼は発見した。 慌てて逃がすまいと思った手は、女の子の腕を握る。 ぶっきらぼうに掴んだので、女の子はキャッと小さい悲鳴をあげた。 「おい! モンモランシーになにか用なのか!?」 当麻の存在に気付いたギーシュは、女の子の身を案じて声を少し大きくする。 当麻はそんなギーシュに、ああ、モンモランシーと言うのねと納得した様子で返事をした。 「何を言っているんだ君は! 早くモンモランシーの手を離すんだ!」 「わーったよ」 目的を果たしたその手は、モンモランシーの腕から離れる。 しかし、モンモランシーは顔を蒼白して黙り込んでいる。まるで、指名手配犯が警察に職務質問された時のような顔だ。 「で、だ。ルイズが昨日の一件で豹変しちまったんだが、なんかしらねえか?」 「ルイズが? 一体どうしたんだ?」 「まあ簡単に言えばシエスタのことを好きになっちまったんだ。ちょっとおかしいだろ?」 「あのメイドかい? 確かにそれはルイズではないような……」 ふむ、とギーシュは考え込む。 「そうなんです、そうなんだよ。……モンモランシーだっけか? あんたはなにか知ってるか?」 今までの会話に参加していないのに不思議に思い、当麻は声をかけてみた。モンモランシーは突然話を振られた為か、肩をびくっと震わせた。 「えっと……、その……」 「あんたの部屋に置いてあったワインを飲んでからおかしくなったんだが……」 「あれはぼくが持ってきたワインだ! 怪しいものはなんにも入ってないぞ!」 モンモランシーに疑いをかけているのに気付いたのか、ギーシュが間に割って入る。当麻は、彼の言葉は真実であると確信を得た。 しかし、確信を得たからといって、モンモランシーの疑いが晴れるという事はない。 「いやさ、ギーシュが持ってきたワインに細工することはできるだろ? 例えば魔法の薬とかで」 「何を言ってるんだい! モンモランシーがそんなことをするわけがなかろう!」 なあ! と威勢よくモンモランシーに同意の言葉を求めた。 しかし、モンモランシーは唇を噛み、居心地が悪いかのように冷や汗を、額から垂らしている。 「モ、モンモランシー……。まさか……?」 「わ、わたしは関係ないわ! あの子が勝手に飲んだのよ!」 二人の視線に耐え切れず、モンモランシーは声を荒げた。 「だいったいあんたが悪いのよ!」 そう言いギーシュを指差す。ただ差すだけでは物足りないのか、彼の頬をぐいぐいと押し付ける。 一言でいうなら、それは逆ギレ。当麻は呆然と二人のやりとりを見つめた。 「あんたがいっつも浮気するからしょーがないでしょー!」 「何を言ってるんだいモンモランシー、僕はきみ以外の女性には目に入らないよ!」 「あら? 裸のお姫さまが飛んでいる」 「え? どこ! どこどこ! ……ハッ、これはまさか」 「昨日と同じっ! 何度言えばわかるのよぉぉおおお!」 こめかみに血管を浮かばせて、ギーシュの首を力強く絞める。 ぐ、死ぬ……と、ホントにあの世へ逝きそうになるので、当麻はそこでようやくモンモランシーを止めた。 「落ち着けって、つか話を戻さしてくれ」 なによ! といいたげな表情でキッと睨みつける。なんだかこちらが悪いように感じてしまい、困ったように頭をかいた。 「いやまあ、ギーシュが悪いのはわかったから何をワインに入れたんだ?」 ここまでくれば、並大抵の人間なら何を入れたかはわかるだろう。魔法漫画なら必ずといっていい程出てくるキーアイテム。 モンモランシーはちらっとギーシュの方を見ると頬を赤く染める。どうやら彼の前で言うべきなのかどうか悩んでいる様子だ。 そんな複雑な乙女心など全く理解していないギーシュと当麻は、ただただ見つめている。 二人の視線に再び耐えきれず、モンモランシーは顔を少しだけ伏せて小さく答えた。 「……惚れ薬よ」 やっぱり、と思う当麻をよそに、ギーシュは驚きの声で復唱した。 「惚れ薬ぃ!?」 「シッ、声が大きいわ!」 慌ててギーシュの口を塞ぎ、周りをキョロキョロと見渡す。幸いな事に、誰もいない。 ほっ、と安堵の息を吐き出すと手をギーシュの口から離した。 「一応禁則の品なんだから……」 三人はモンモランシーの部屋へと場所を移した。 事情を知ったギーシュは、惚れ薬まで使おうとしたモンモランシーに感激を覚えた。 「モンモランシー……、まさかきみがそんなにぼくのことを……」 そう言い、両手を握る。 「ふんっ! べつにあなたじゃなくってもかまわないのよ? おつきあいなんて暇つぶしじゃない。ただ浮気されるのがイヤなだけ!」 全国のカップルに敵対するような発言をして、ぷいっと視線を横に向ける。 見事なまでのツン――もとい傲慢な態度をとるが、ギーシュは全く気にしない。 「ぼくが浮気なんかするわけないじゃないか! 永久の奉仕者なんだから!」 こちらもまた浮気する男の典型的な言い訳をとりながら、モンモランシーを抱いた。さらにはキスをしようとする。 ギーシュの勢いに負けたのか、モンモランシーもその気になり、目をつむる。 「あー、ギーシュ×モンモランシーエンドはまだ発生しなくていいから。つかさりげ二人の世界に入ろうとしてんじゃねえよ!」 突っ込みながら、二人を現実へと連れ戻す為引き離す。 「やぼ天だなきみは!」 「こちらとらギーシュのモンモランシー好感度アップイベントに参加する気はねえよ! 反省の意をこめてなんとかしなさーい!」 そう、モンモランシーは何にも感じていないのだ。悪いことをしたら謝る。それすらもやらない。 もっとも、それが当麻のいた世界とは違うからと言われても微妙である。 「そのうち治るわよ」 「大体どれくらいだ?」 そうねぇ、とモンモランシーは首を傾げる。 「個人差があるから、そうね一ヶ月後か、それとも一年後か……」 「長い! 俺何回魔術師と戦う羽目になるんですか!」 「というかきみはそんなシロモノを飲ませようとしたのか……」 さすがのギーシュもこれには青くなってしまう。 「わ、わかったわよ……解除薬を調合するから待っててよ」 「始めからそう言っちゃって下さい」 「でも解除薬を作るにはとある高価な秘薬が必要なんだけど、惚れ薬を作るときに全部つかっちゃったの。買うにしてもお金ないし。さあどうしましょう」 「どうしましょうって……ギーシュは持ってないのか?」 「ああ、一銭もないね」 「な、なんでここでイベントクリアのハードルが上がるのですか……」 当麻はガクッと肩を落とす。 「こればっかりかは仕方ないね。世の中にはお金に縁のない貴族と、お金と仲良しの貴族がいるのさ」 それで僕たちはお金がない貴族なのさ、と付け加える。 仕方ない、そう思うと当麻は、ポケットから金貨を取り出した。 特に使い道がないためか、半分だけ保険用に手持ちとして運んでいたのである。なぜ自分が出さなければいけないのか……と不思議がりながらも、尋ねる。 「これで大丈夫か?」 当麻の世界での値段に換算したら、彼の生活は百八十度回転してしまう額をばらまく。 「なんでこんなにお金を持っているんだ!?」 「すごい……。五百エキューはあるじゃないの」 どうやら足りるようだな、と当麻は確認を求めると、モンモランシーはしぶしぶ頷いた。 当麻は、シエスタに伝えようと彼女の部屋に赴いた。 「おーい、シエスタいるか~?」 ドアのノブを回す。どうやら鍵はかかっていないようだ。 ギィ~、とゆっくり押す。当麻の視界に部屋の中が入り込んでくる。そこには、 ルイズとシエスタがいた。 さらに詳しく言うと、ルイズがシエスタを押し倒していた。 シエスタの大きな胸が、ルイズの小さな胸にぶつかっている。しかし、そんな障害をもろともせずに、ルイズはシエスタとキスを交わしている。 熱い吐息が二人の唇から漏れ続けている。第三者であるはずの当麻の顔が真っ赤に染まっていく。 (な、ななななななななななななななななななにが起きているんですかッ!?) そのあまりにも予想外の光景に、当麻は言葉を失う。 さらに、追い討ちをかけるかのように、ルイズはスカートを脱いでいた。皮膚を隠す重要な部分がさらけ出ている。 シエスタもまた、普段着である草色のシャツにブラウンのスカート姿であった。 しかし、そのロングスカートは激しい動きがあったのかめくれあがっており、ぎりぎりの位置でなんとか耐えている(もっとも、シエスタはあれをはいていないのだが、当麻は知らない)。 また、汗なのだろうか、二人のシャツも少し湿っていた。 ともかく、 これ以上詳しく文章で表現してはいけない態勢で二人はキスをしているのだ。 と、そこでようやく二人が当麻の存在に気付く。 シエスタの目が見開かれ、顔が赤くなっていく上に、涙が浮かんできた。 おそらく、一番見てほしくない少年に見られてしまった恥ずかしさと悲しさが、どっと押し寄せて来たのだろう。 一方のルイズはただ睨んでいる。この領域に入ってくるなと目が訴えていた。 いるにいられない当麻は無言で廊下にでると立ち去った。 ただドアを開けただけなのに罪悪感が完全に支配してしまっている。 どうやらルイズはこちらを敵と見なしているようだ。迂闊に近づいてしまったら大方ボコボコにされてしまう。 そんな中、当麻は右手をルイズの頭に触る事ができるだろうか? おそらくできる。しかし、傷つかない方法があるのならばそっちを選ぶ。 当麻は、幻想殺しで打ち消す考えを完全に捨て、モンモランシーの解除薬に期待をかける。さらにいうと少し見たかったと思う好奇心は消え去っていた。 本当にシエスタの為になんとかせねばと思う当麻であった。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主
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鋼の使い魔 ギュスターヴとギーシュがヴェストリ広場で繰り広げた決闘から数刻。太陽は斜陽を向かえ、双月が虚空に姿を現し始めた逢魔が時。 決闘の敗者、ギーシュ・ド・グラモンは医療室で切断された小指を繋ぎ、学生寮女子棟に続く螺旋階段を上っていた。 学院内での怪我や病気に関する治療行為に掛かる費用は学生と学院で折半される。貴族の子女の教育を謳う学院としては、 学生達の自立性の尊重という名の元に経費の削減を行っていた。 繋がれた小指の感触を確かめながら、ギーシュは一段一段と上り、モンモランシーの部屋を目指していた。指の付け根には うっすらと繋いだ傷が見える。切断面が鋭利だったこともあって治療自体は短時間に、かつお手軽な値段で済んだのだが、実家が決して 裕福とはいえないギーシュのポケットマネーは治療に使った秘薬の代金で綺麗さっぱり消し飛んだ。予備の杖は勿論用意してあったが、 切られた造花の杖の修理にかかる費用を考えると、ギーシュは気が滅入り始めていた。 (…いけない!頭を切り替えろギーシュ。モンモランシーに自分の不徳を謝りに行くんじゃないか。杖の代金は後で考えよう) そう。少なくとも決闘騒ぎに絡まる三人の少女、ケティ・モンモランシー・シエスタの三人に頭を下げてから他の事はじっくり考えればいい。 これを反故にすることは出来ない。 1つに、ルイズと貴族の誓約として約束してしまったからであり、1つにそれを大勢の生徒達の前でしてしまったこと。そしてもう一つ。 (約束を守らなかったとすれば、もしかすればまた彼の怒りを呼び覚ますかもしれない……それはご免だ!) ギーシュは決闘の結果、ギュスターヴに対し骨の髄まで恐怖した。序盤からの立ち回り、追い込まれてもうろたえぬ精神、 そして最後に見せた剣技と覇気は、ギーシュの延びきった鼻面を粉微塵にした。軍人の家系であるグラモンの末席として、 ドットメイジとはいえそれなりの自信があった。しかしそれは所詮井の中の蛙もいいところで、現実には屈強な平民に安々と破壊される脆弱さ、 それはすなわち自分の弱さ……。 ぐるぐると脳内を巡る自己否定的なスパイラルが続く中、ギーシュの足は一つのドアの前で止まった。既に何度も訪れた事のある、 女子寮の一室。 無意識に切られた指とは反対の手でドアを叩く。三回。緊張のためか間隔がやけに狭く聞こえる。数拍置いて遠くから声が聞こえた。 「どちらの方?」 枯れそうな声をギーシュはひりだした。 「モンモランシー。僕だ。ギーシュだ。昼間のことで許してくれないかもしれないが、どうか僕を中に入れてくれないだろうか」 もしここで返事がなければギーシュは朝までここで立っている気でいた。約束の手前もあるが、事実ギーシュは 『本命』のモンモランシーに申し開きをしないではいられない気持ちだったから。 再び流れる無言の時間。一秒が十秒に、三十秒が十分に思えてくる。 「入って」 耳に聞こえたモンモランシーの声、わずかに軋みをあげてドアが細く開かれた。 モンモランシーの部屋は、実はルイズの部屋と間取り自体は殆ど変わらない(寮であるのだから当然なのだが)。 しかし実家の経済力の差が、部屋を飾る文物の質に反映されている。 特に机の隣に置かれた棚には硝子で作られたさまざまな形の瓶や管が並び、それらのいくつかには 人工的に作られたに相違ない色の液体が注がれている。 ギーシュを招き入れたモンモランシーは、ギーシュを部屋に立たせたまま、自信は備え置きの椅子に座ってギーシュを見た。 その瞳は鋭くギーシュを刺す。 「何の御用かしら?ギーシュ。まさか逢い引きに来たなんて言うほど愚鈍でもないでしょう」 「昼間のケティとの関係の事について話にきたんだよ」 ギーシュの声は硬い。浮気な男というのはこういう時どこまでも無防備である。対して裁判官となる女はまさに神の掌を眺めるように 冷ややかだ。もっともハルケギニア風に言えば『始祖の掌』というべきか。 「あら、ケティならここに居るわよ」 「え?」 モンモランシーの予想外の言葉にギーシュは間抜けな声を上げる。 こっちにいらっしゃい、とモンモランシーが部屋の影に言う。陽が落ちかけて部屋全体が見通せないのだ。特に窓から遠く 物の影になるような所は。 ケティはそんな、光の届かぬ部屋影からすぅっと姿を現し、モンモランシーの隣に立った。まだ稚さが残る顔容のケティはしかし、 昼間食堂を飛び出していった時のように泣き崩れていたわけでも、モンモランシーのような冷たい目線も秘めていない。 目は開けているのに、どこかまどろんでいるような気がする。 「や、やぁケティ。ちょうどよかった。君にも話さなくちゃいけないんだ」 「はい……」 状況に対応できずどこか軽い口調になってしまったギーシュとは対照的に、ケティは纏う雰囲気に合わせたような緩やかな返事をした。 「そういえば、平民と決闘騒ぎになって負けたと聞いたわ。本当?ギーシュ」 一旦静かだったモンモランシーから降りかかった言葉に、ギーシュは一二もなく答える。 「ああ、負けたよ。貴族としての僕の面子は粉々さ」 無様な僕を笑ってくれ、と断ち切られた指の傷を見せた。モンモランシーは秘薬作りに長けたメイジだ。傷口を見ればそれが 秘薬で繋ぎ直したものだとすぐに分かるだろう。それは詰まる所、彼女に対して自分の屈辱の証を捧げた様なもの。 モンモランシーとギーシュ。二人の間に沈黙が横たわる。それを言葉なく見守るケティ。 ふ、と声が漏れたモンモランシーをギーシュは見た。先ほどまでの冷たい目線は消え、穏やかな微笑みを浮かべていた。 「しょうがないわね。そこまでしたのなら私も怒る道理が無いわ」 「そ、そうかな?」 「ええ。浮気ごとはいつもの事とは思っても、今回は許さないつもりだったけど、いいわ。 なかったことにしてあげる」 暖かに笑いかけるモンモランシーに、ギーシュは慈愛の余りに涙が出そうだった。 感謝します始祖ブリミル!かのごとき試練の果てに彼女への愛をお認めになられたのですね! 沸き立つ身体を押さえて始祖へ精神の限りの感謝を捧げて、今度はその浮き立つ心身をぐっと引き締めた。 モンモランシーは納得してくれた。ではケティは一体どうだろう?このやりとりを全て見ていたはずのケティが、僕への恋情を 諦めてくれるのだろうか。 「……ケティ。見ていてくれただろう。僕との事は悪い夢だったと思って、忘れて欲しい。君を玩んだことは僕の不徳の極みだ。償えるものじゃないかも、しれないけど……」 ケティの心に届いて欲しい。そして納得して欲しい。そうでなければ僕はどうなってしまうかまるで想像もできない。 ギーシュの心配をまるで意に介していなかったかのように、一年生の少女は年相応な可憐さを振りまく眉をわずかにひそめ、首をかしげた。 「……あの、私は、別にいいんです」 「…いい、って?」 イエスともノーとも受け取れる曖昧な返事を返すケティにギーシュが言葉を促す。 「ギーシュ様がミス・モンモランシをお慕いなされるのも、その証に私をお捨てになることもかまいません」 自分の発言が『捨てる』と露骨な言葉になってギーシュに跳ね返ってくる。 「ミス・モンモランシとあれからずっとお話をしていたんです。ギーシュ様のこと」 「そ、そうだったのかい」 なんと、どうやら自分がくるまでもなく、二人の間では話し合いの結果でケティが身を引くことが了解されたらしい。 と、ギーシュは壮絶な勘違いをしていたことをそのすぐの後に二人によって突きつけられた。 汗交じりになって言葉を紡いでは自分やケティに一喜一憂するギーシュに、モンモランシーは耐え切れなくなって噴出してしまった。 「クスクスクス……ギーシュ。あのね。貴方があのばかげた決闘騒ぎを起こしている間に、たっぷりとケティを話す事ができたわ。私はね、 順序が大事だと思ってるの」 「順序?」 そうよ、とモンモランシーがケティを手招き、後からケティの肩に手を置く。 「つまりこうよ。私が一番、ケティが二番。私がギーシュにとって一番であることは、貴方自信認めてくれるわね?」 「勿論だよ。始祖と杖に誓う」 「嬉しいわ。でね?ケティには私からたくさん言い聞かせて自分が一番じゃないことを理解してもらったわ。でもケティはね、 別に一番でもかまわないって言うのよ」 「それってどういう……?」 「そうね、つまり……」 ケティの肩にかけられたモンモランシーの手が、ケティの襟を開いて首元をギーシュに晒す。年若い女性独特の肌理細やかな素肌が露になる。 そしてそのケティの首には、細いなめし革で出来ているベルトのようなものが巻かれている。装飾らしいものはほとんどなく、ベルトを締める金具に小さな鈴らしきものがついているだけ。 「私もケティが2番ならいいかな、って思って。似合うでしょ、これ」 「モ、モンモランシー……君は一体何を」 「なんでもないわよ。ねぇ、ケティ」 「はい、ミス・モンモランシ。いえ……お姉様」 ギーシュとモンモランシー、二者の視線に焼かれるように仄かに朱がさすケティ。 「そういうわけだから、ギーシュ。貴方は果報者よ。一度に二人に愛されるんだから」 ギーシュはこの部屋に来るときに想定していたものとは全く、180度考えていなかった別種の不安と恐怖を目の前の少女に感じ始めた。 二人がじわり、じわりと足を進めて棒立ちだった自分に近づいてくる。 ガタン、と後の音に振り向くとドアが『ロック』で閉められた。すぐさまギーシュが『アンロック』をかけるが、慣れない予備の杖であるせいか 開くことが出来ない。 「どこに行くつもりかしらギーシュ。話は終わったけど、今度は三人でお話しましょう?」 シャ、と今度は部屋のカーテンが閉められ、部屋に置かれた燭台のローソクに火が点く。 香水と同じ紫色の光がぼやりと部屋を包む。 「大丈夫。悪いようにはしないわ。私達の愛を受けなさい……」 「受け取ってください……」 その声はどこまでも優しい二人に、ギーシュは抗いがたい意思を感じる。徐々に部屋に置かれたベッドに追い込まれる。 「い、や、その、ちょっと待って。その手のものは……ひっ!ちょ…あ゛ぁぁぁ~~~……」 サイレントで消された悲鳴が何を意味するのか。それは誰にも伺い知ることは出来なかったが、その日から色素の薄くなったギーシュと、肌つやのよくなったケティとモンモランシーが数日ごとに見かけられるようになったという。 鋼の使い魔
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「うちのぶどうは最高なんですっ!」 だん、とシエスタがテーブルを叩く。いつもならそういう態度を真っ先になじるルイズも、酔ったシエスタに文句を言うほど馬鹿ではない。ルイズとサイトは顔を見合わせて溜息をついた。 今日は新物ワイン解禁の日で、シエスタの村はこの日、新ワインをブリミルに捧げて皆で飲むワイン祭が毎年開かれる。そんなわけでシエスタに誘われたサイト達が村にやってきたのだが、ほんの1時間も経たないうちにシエスタがいつものように悪酔いし始めたというわけだ。 「赤は飽きたんらろ?ならー、白飲もー」 シエスタは広場の真ん中に山と積まれたワインの瓶にふらふらと寄っていき、一本の瓶を引っこ抜く。酔っているくせに器用にコルクを抜くと三人のグラスになみなみと注いだ。 「ミースー・ヴァリエール!勝負れす!」 ルイズは眉をひそめて流そうとする。だがシエスタの言った内容は放置できるものではなかった。 「ワインのー飲みっ比べでー、勝った方はー、明日サイトさんを独占でー」 「私もやる」 明後日の方向から冷静な声がした。タバサだ。 「ちょっと!勝手に決めないでよ!」 「挑まれて逃げる貴族は不戦敗」 「ふーせんぱーい!」 タバサとシエスタの言葉にルイズも冷静さを失った。 「ななななによ!お子様と酔っ払いに負けるほどラ・ヴァリエール家は弱くないわ!」 叫んで。賞品の意思を無視した女三人の戦いが始まった。 「お互い苦労するわね」 酔い潰れたギーシュの頭を撫でながら、モンモランシーはサイトに声を掛けた。サイトの周りには引き分けた三人の女たちが倒れており、時折「水……」と呻いている。モンモランシーは水差しをサイトに渡して言った。 「水魔法の使い手として、こんな子たちには水なんてやりたくないけど」 言いつつも水差しに数滴、二日酔いを楽にする薬をおとしてくれる。 「で、誰が本命なの?」 「本命って……」 モンモランシーも酔っているのか、悪戯っぽく笑って三人を指差した。 「だらしないのよ、あんた。しゃきっと決めないからややこやしくなるの」 「んなこと言ったって」 「言い訳無用。ほんとのことなんだから」 サイトは苦笑して椅子にもたれかかる。と、モンモランシーはテーブルに載せられたフルーツの山を指差した。それは様々な果物を美しい銀の皿に飾り盛ったものだった。 「何か一つ選んで」 サイトは迷った末、桃をつかんだ。モンモランシーはその桃を受け取ると皮を剥き、コップの中で潰した。次いで飲み残した白ワインを加えて掻き混ぜる。よく混ざったのを確認すると一口飲んで味を確認して、サイトの目の前に置いた。 「飲んでみて」 言われるままに一口含む。桃の甘味と白ワインの酸味が混ざって心地よい。 「その色と味はだれ?」 言われてサイトはぼんやりとルイズに目を向ける。くすっ、とモンモランシーが笑ったのに気付き、サイトは慌ててルイズから目を逸らした。だがモンモランシーは満足そうに言う。 「桃髪のルイズが一番好き、なのね」 「いや一番とか何とかは……」 誰も訊いてないのに、とまたモンモランシーは笑う。サイトは溜息をつくと、モンモランシーに諦めの表情で頷いた。モンモランシーは頷き返す。 「あんただけ恥ずかしいのは卑怯よね。だから」 言ってモンモランシーはギーシュの髪をかきあげ、そっと額に口付ける。 「秘密ね、お互い」 「だな」 桃入りの白ワインのグラスと、ほんのわずかに赤ワインの入ったグラスを二人はかちり、と鳴らしあった。
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左はトリステイン魔法学院へ、右は城下町へと通ずる分かれ道。 手綱を預かるジェシカは迷わず右の道へと馬車を進め、そっとモンモランシーを覗き見る。 「ん?なに」 「い、いえ!何でもないです!」 「そう」 馬車に乗り込んでからずっと、モンモランシーは眉間に皺を寄せてブツブツと何かを呟いていた。 ジェシカはそれが気になって仕方が無いのだが、あからさまに不機嫌なモンモランシーに 声を掛けて良いものかと思案する。 「あなた歳は幾つ?」 「え?あっあたし、えとえと、じゅ、16です!」 突然話しかけられて言葉を詰まらせながらも、何とかジェシカは答える。 「そう、私と同い年ね。…おかしいわ、絶対」 モンモランシーはポツリと呟き、眉根を寄せて目を瞑る。 「あはは…はは…は…」 ジェシカはその態度に何かマズイ事でもしたのかと、ここまでの道のりを思い返す。 背中合わせに縛った男達とカエルを馬車の屋根に乗せる。 馬車を走らせながら、改めて感謝を述べる。彼女が笑ってそれを返す。 暫く無言。その後、彼女が呟き始める。 これと言った失敗はしていない。強いて言うなら何も喋らなかったのが気に障ったのだろうか? ジェシカは場を和まそうと、得意の『夜空の妖精』を歌おうと口を開きかけたその時、 前方に月明かりに照らされる街道警備隊の詰め所が見えた。 ほんの一日足らずの出来事ではあったが、詰め所の窓から漏れる暖かなランプの明かりに ジェシカは長い旅から帰ってきた様な感慨を覚え、自然と流れ出す涙を抑えながら馬車を走らせた モンモランシーは自分とロビンの視覚を同調させ、男達がまだ気絶しているのを確認すると 屋根の上からジェシカを見下ろす。 ジェシカは馬車の振動で胸をプルンプルンと揺らしながら涙を堪えている。 モンモランシーは視覚を戻して手綱を握るジェシカを見詰める。 「もうすぐ…家に帰れます…」 「そうね」 涙ぐみながらジェシカは馬車を走らせる。やっぱり胸がプルンプルンと揺れている。 モンモランシーはジェシカの胸を見た時、自分の目の錯覚だと思った。 学院随一の超人胸度94を誇るキュルケと互角のおっぱいを平民が持っている。 オマケにその持ち主が自分と同い年などと信じられる筈が無い。 しかし、現実に目の前でおっぱいがプルンプルンと揺れている。 これは『本物』なのか『贋物』なのか?その答えは決まっている。 間違いなく『贋物』だ!これが『本物』の訳が無い! 仮に『本物』だとしても!その存在を認める訳にはいかないッ!! 確認してやるッ!今ッ!ここでッ!!その正体を見極めてやるッ!!! 「モンモランシーさん…きゃうっ!」 モンモランシーはおもむろにジェシカの胸を鷲掴みにし、その豊かな胸を揉みしだく。 「……あれ?」 「ななな、なにをっ!?はぅん!」 モンモランシーはジェシカの抗議を無視して、押す、引く、握る、摘むなどの考えられる ありとあらゆる方法でジェシカの胸を確認するが、幻覚でも詰め物をしている訳でもない 『本物』だけが持つ『凄み』が手から伝わり、モンモランシーは狼狽して頭が真っ白になる。 「嘘だ!!」 「何が!ひゃぁ…あふぅぅぅん…あぁ」 このおっぱいは『本物』。その事実に心が崩壊しそうになるモンモランシーは自分を守る為に 尚も激しくジェシカの胸を揉みしだく! そして、モンモランシーの心にある変化が訪れた。 心の奥底から沸き起こる感情、それは『恐怖』! おっぱいの圧倒的な存在感に心が埋め尽くされ、畏怖の対象であったおっぱいの感触が 次第に『快感』に変わっていく。 おっぱいを揉む動きを止めようとしても止まらない。心と身体が拒否しているのだ! 『あ~お嬢さん?そろそろ止めた方が良いと思うんだが』 頭に響くロビンの声に漸くモンモランシーは我に返ると、押し倒されて身体をグッタリと横たえ 荒い息を吐くジェシカの姿があった。 (あ…ありのまま今起こった事を話すわ! 『私はジェシカの胸を本物か確かめていたらいつの間にか止まらなくなっていた』 な…何を言ってるのか理解できないと思うけど私も何をしたのか判らなかった… 頭がどうにかなりそうだった…レベル5だとかおっぱい祭りだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ…) 『まあ…私は楽しめたから良いんだが。ちゃんと理由を言わないと変態扱いされるぞ』 顔を紅潮させて潤んだ瞳で自分を見るジェシカに謝り、モンモランシーが理由を説明すると 胸元を直しながらジェシカが腹を抱えて笑い出した。 「なによ、笑わなくても良いじゃない」 「だってー、いきなり胸を揉んでくるからソッチの趣味の人かと思ってさ」 『間違ってはいないな』 屋根に乗ったロビンを掴み上げて道に放り投げると、モンモランシーは憮然とした表情を浮かべ、 大笑いするジェシカから顔を背ける。 その仕草にクスクスと笑いながら、ジェシカは詰め所の前に馬車を止めた。 まだ笑っているジェシカに馬車から少女達を外に出すように頼んで、モンモランシーは こじんまりとした造りの詰め所の扉を叩く。 「誰かいないのー!」 呼べど叩けど一向に返事は返ってこないのに苛立ち、モンモランシーは扉を開けようとするが 扉には鍵が掛かっていて中に入る事は出来ない。 アンロックで鍵を開けようかと思ったが、魔法の使いすぎで精神力は残り少ない。 ラインが一回、ドットなら二回唱えられるだけの僅かな精神力しか残っていなかった。 モンモランシーは中に入ることを諦め、裏手にある厩舎へと足を伸ばす。 「馬はちゃんといるわね」 3頭の馬が繋がれて厩舎が全て塞がっているのを見て、中に警備兵がいる事を確信する。 暇なので眠りこけているのだろう。 扉を開けて叩き起こしてやろうと思い、踵を返し扉に向かう途中に奇妙なものを発見した。 草の生えた地面の一箇所だけ地肌が剥き出しになり、そこには赤い筋の幾つも入った歪な木の根が 天を掴むように逆さまに生えていた。 詰め所の陰に隠れて正面からは見えなかったのだ。 それを不審に思ったモンモランシーは、良く見ようと近づいてその場で凍りついた。 それは木の根などでは無い。 地面から生えているのは、殺され埋められた人間の手だった。 「むね~につけ~てるマークはようせ~い」 父や酒場の仲間の下へと帰れる喜びからか、ジェシカは歌を歌いながら馬車の扉に手を掛ける。 「みんなもう大丈夫よ!」 「何が大丈夫なんだぁ~?」 突然の声にジェシカは思わず振り向くと、下卑た笑いを浮かべた男に突き飛ばされて倒れ込む。 ジェシカは立ち上がろうとするが、脇腹が熱くて身体に力が入らない。 脇腹を触ってみると赤い液体がベットリと手に付いた。 「惜しかったな~もうちょっとだったのによぉ~」 「くぁ…」 血に塗れたナイフを向けながら、男はジェシカの髪を掴んで身体を持ち上げる。 「静かにしろよ~苦しみたくねぇ~だろぉ~が」 ジェシカは残された力を振り絞り、男を突き飛ばすと覚束ない足取りで厩舎へと向かう。 男は立ち上がってジェシカを追わずに、馬車の中の少女達を脅すと屋根に向かって声を掛ける。 「アニキ~オットーのアニキ~」 「良くやったぞハンザ」 弟分のハンザを労い、オットーが屋根から飛び降りて姿を現す。 「アニキ、言いつけ通りしやしたぜ」 「うむ」 オットーはハンザを労い、これから行う制裁を思い浮かべて顔を笑みで歪ませながら 静かに厩舎へと歩み寄って行った。
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前ページ次ページ鋼の使い魔 「こいつは参ったな……」 駅場に到着して周囲の風景を見渡し、ここにいないルイズの使い魔ギュスターヴの口から出たのはその一言だった。 ギュスターヴ、モンモランシー、ギーシュの三人がたたずんでいるのは、厩と馬車を引き込むひさしが付随した駅場の建物だ。石畳の街道に面しているのだが、石畳が先5リーグくらいから地面に沈み込んでいるのが見える。街道を挟んでいる耕地も畦が崩れて泥濘に塗れていた。 「ラグドリアン湖が広がって周囲を浸食し始めているという噂は事実だったみたいね」 陥没を免れている石畳の上もじっとりと濡れ、嫌そうに投げ出した鞄に腰掛けたモンモランシーが言った。 「手はずではモンモランシーの血を与えたロビンを湖に放って、水の精霊を呼び寄せるってことだったけど、岸辺が殆ど湿地なんじゃなぁ……」 そういうギーシュは大きな鞄を用意したモンモランシーとは対照的に、袋一つの荷物を身体に縛り付けていた。 「嫌よ私、泥濘を歩いていくなんて」 「も、モンモランシー。わがまま言える立場じゃないんだよ?僕達」 「いや、足を取られるような場所を歩いていくのは危険だろう。そうだな……」 と、思案に耽ろうとしたギュスターヴの視界に、駅場の端で青果を広げている露天商が見えた。 ふむ、とギュスターヴの目に不敵な光が宿る。 「なんか思いついたみてーだね、相棒は」 忘れず持参したデルフがギュスターヴの腰元で嬉しそうな声を上げた。 「ちょっと待っててくれ」 「どうかしたかね?」 「買い物に行ってくる」 「ハァ?道草食ってる暇なんてないのよ」 呆れ返るモンモランシーの声を無視して、ギュスターヴはうなだれる露天商に向かい合った。 「景気はどうだい?」 「さっぱりでさ。村が湖に沈む前は結構儲かってましたがね。近頃はとんと」 話す露天商は疲れた目でギュスターヴを見上げる。ギュスターヴは、なんて事の無い客のように並べられている青果をためつすがめつしながら、懐をまさぐって一枚の銅貨を取り出して露天商に渡し、林檎を一個受け取った。 「この辺で湖に面した岸辺がありそうなところってあるかな」 「この辺で……ていいますと、トリステイン側でですかい?」 「んん?」 少し要領を得ない返事をしながら、ギュスターヴは林檎にかぶりつく。しなびた皮が切れ、口の中に呆けた味が広がった。 「トリステイン側はごらんのとおりの有様ですがね、ガリア側に行けばまだマシな岸辺や村があるみたいですよ」 「越境はしないのかい?こんなところで商品を広げるよりも旨みがあるだろう」 「ほっといてくだせぇ。関所を通るには身分証明がなきゃあ時間が掛かるんですよ。それこそ貴族の方じゃなきゃすぐには通れませんぜ」 「ふぅん。そうか……」 林檎を平らげてから、ギュスターヴは再び懐をまさぐる。そして一枚の金貨と厚紙の紙片を取り出し、露天商に投げて寄越した。 「ちょ、ちょっと!こんなにもらえませんよ」 「いいからとっておけ。それと、王都に出て仕事をする気があるんなら、そこに書いてある所に行ってみるといい。ここで呆けてるよりは身の立ち様があるだろう」 「あ……ありがとうございます……」 いきなりの事態に身を固めて動転する露天商に手を振ってギュスターヴは離れた。 二人のところへ戻ってみると、モンモランシーに睨まれ、ギーシュからは苦い笑いを返された。 「あんた本当に私らに解除薬作らせる気あるの?やけにのんびりしているような気がするんだけど」 「考えるより動いてた方がマシな口でね。……さて、問題はタバサとキュルケの居所だが……」 「そのことなんだけど、ギーシュ。ヴェルダンテ呼べる?」 突然の問いにギーシュは一瞬、首を傾げたが、次には未舗装の地面に降りて杖先で地面を軽く突いた。 すると瞬く間に地面が盛り上がり、その下から動物の黒い鼻が突き出てきた。 ぐもぐも。 「おお、ちゃんとついて来てくれたねヴェルダンテ」 ぐもぐもも。 ギーシュの声に応えるようにヴェルダンテは穴から這い出る。大型犬ほどに大きな土竜である。 「で、僕のヴェルダンテに何をさせるつもりなんだい?」 「ちょっと待って……あった。この匂いを探させて。ヴェルダンテに手紙を持たせてね」 モンモランシーは小瓶を取り出し、ハンカチにしみこませてギーシュに手渡す。 「『ブルー&ルージュのマジックキングダム』は特徴的なフレーバーだからすぐに分かると思うわ」 「ブルー&……なんだって?」 「キュルケのつけてる香水よ。私も興味が有ったから少し持ってるわ」 よくわからないな、とギュスターヴは頭を掻いていた。そうしている間にもギーシュはヴェルダンテに紐で手紙を括りつけ、ひくつく鼻先に香水を嗅がせていた。 「いいかいヴェルダンテ。この匂いのする人を探すんだ。その人に手紙を渡すんだよ」 ぐもも。 応えたヴェルダンテは出てきた穴を戻って地面の中へ消えていった。 「さて、これで多分彼女らが迎えに来てくれるだろうね」 「多分ね」 提案しながらモンモランシーは不安気に言う。 「あとは水精霊に会う方法だが、水に侵されてない岸辺がいるんだろう?」 「そうよ。水精霊と交渉するには彼らをこっちに呼び寄せなきゃいけないんだけど、その時彼らに触れないようにしなければいけないわ。湿地に踏み込んで会おうものなら一瞬で精神を取り込まれるわね」 「け、結構危ないんだね水精霊って……」 青い顔でギーシュは遠くに見える湿地帯を見る。 「ま、礼を尽くせば大概怒ったりしないわよ」 「そうか。しかし……どこにいるんだろうな、タバサとキュルケ」 しっとりと温む風の吹く景色を一望してギュスターヴは言った。 「参ったな……」 『巨湖の主、ここに』 「で、あなた達も『水精霊の涙』欲しいから来たってわけね」 シルフィードから降り立ったキュルケはモンモランシーとギーシュを一瞥してそう言った。 「必要なんだからしょうがないでしょう」 「私とタバサが取って来てあげるから高く買ってくれる?」 タバサに荷物運びを頼んでいたギュスターヴはそれを聞き、渋い顔をしてキュルケを見た。 「冗談ですわ。……人手は多い方がいいわね。ラグドリアン湖は今こんな有様だし」 陽が昇り切った頃合で、日照が水気を曇らせ蒸し暑さを感じる。ラグドリアン湖周囲の湿地帯が現状、如何に人の住みづらい場所か、そのようなことをギュスターヴも考えていた。 「あんた達、水精霊の涙を取ろうとしてここに居るんなら、今まで何やってたのよ」 いかにもキュルケたちの手を借りるのが不満気というモンモランシーだった。 「それはまぁ、ね。タバサに水中歩行【ウォーターウォーキング】をかけてもらって湖の中に入ってみたりしたけど。それらしい影も見当たらなかったわ」 「当然よ。人に見える形で漂ってたりなんかしないわ」 ふふん、とモンモランシーが小鼻で笑うと、キュルケは髪をかきあげて視線をそらした。 どこか剣呑な空気が漂いそうになったところで、ギュスターヴが切り出す。 「トリステイン側には湖に接する適当な陸地がなさそうでな。出来ればガリア側に渡りたいんだが」 そういうと、キュルケはさりげなくタバサの顔を窺った。いつもの無表情が少し落ち着かない様子なのが気に掛かった。 「タバサ、どうするの?」 「……頑張る?」 疑問符がつく返事をしたのは、タバサが使い魔の風竜に聞いたからだった。シルフィードは鱗の煌く首を縦に振って、細く鳴いた。 きゅい、きゅるるる。 「重たいけど頑張るって」 「だそうよ。よかったわねー、モンモランシー」 「どういう意味よ?」 「さぁ?」 険悪な雰囲気を作る二人の間に立っていたギーシュは言葉も出せずに苦しそうに喘いでいる。 「キュルケ……」 「冗談ですわ」 ラグドリアン湖上空を突っ切り、一同が降りたのはトリステイン側の岸辺にあった村の廃墟から、ちょうど向かい側と思われる岸の一角だった。石や岩が多く、波止場や船着場に適さないために放置されているような場所である。 「ここでいいだろう。あとはモンモランシーが水精霊を呼び寄せるそうだ」 「あら、そんなことが出来たのね。期待してるわ」 シルフィードの背から荷を降ろしていたキュルケの声に、モンモランシーの背中がピクリと震えた。 (……気にしちゃ駄目。いちいち反応してたらきりが無いわ) 息を大きく吐いて深呼吸し、モンモランシーは気持ちを切り替えた。水精霊は人とはまるで違った存在で、気を抜くとなにが起こるかわからない。 「さ、出番よロビン」 モンモランシーの一声で、荷物の中から黄色と黒の斑模様の蛙が飛び出す。べたり、と湿った音を立ててロビン……モンモランシーの使い魔の蛙は主の足元に擦り寄った。 「ふふ、いい子ね。いい?ロビン。貴方達の支配者、旧ぶるしき一族と、私は対話を希望するわ」 そういって、モンモランシーはいつも提げている道具袋から片手に乗る程度の小さなナイフを取り出した。鞘に収まったそれはとても古そうで、抜き身にすると刀身の輝きは、長く見ている者におぞましい恐怖に駆られて発狂させるのではないかと思うほど、複雑な反射をしていた。 皆が見守る中で、モンモランシーはロビンの上でナイフの切っ先を手のひらに当て、一息で切り裂いた。 「モンモランシー?!」 「黙っててギーシュ。……っ……ロビン、私の名代。かの旧ぶるしき者達に、交渉者の一族の到着を告げなさい。名の記されぬ昔よりの契約に従い、私達の前に現れてくれるように伝えなさい」 ロビンに血を降りかけながら、モンモランシーは時折、記すに難しい発音の古い言葉を何度か唱え、最後にロビンの背中にルーンを一文字指で書いた。 ロビンは主人の要望を心得たと見て、湖に飛び込んでいった。それを認めてモンモランシーは血の止まらない手のひらにハンカチを当てた。 「ふぅ。これであとはロビンが水精霊をつれてきてくれるはずよ。それまでは待機ね」 静かな湖畔を眺めながら一同は何もない岸辺に屯する事になった。キュルケは『水精霊の涙』を受け取る為の鍋を抱えており、タバサはシルフィードの横腹に寄りかかって本を開いていた。モンモランシーは湖が気になるらしくじっと湖を見ていた。ギーシュとギュスターヴは、荷物の中から干し肉と保存食用のワインを取り出して軽い食事を取っていた。 「んーっ、この旅行用のワインは何度飲んでもきついね。喉が焼けそうだ」 唾液を欲してそう言いながらギーシュは干し肉をがしがしと齧りはじめる。旅人が携帯する場合、ワインには度数の高い蒸留酒の一種が混ぜられるのだ。 一方ギュスターヴは短剣で干し肉を丁寧に削いで、腰掛けた場所から全員の様子を観察していた。モンモランシーから、キュルケに対する漠然とした警戒感が漂っているように、ギュスターヴは感じた。 「なぁギーシュ」 「ん?なんふぁい?」 干し肉についていたオリーブに手をつけながらギーシュは振り返る。 「モンモランシーはお前にとっての何だ?」 「ぶふっ?!」 いきなり噴出したギーシュに女性陣の視線が一瞬集まる。 「ゆっくり食えよ。……あまり大きな声でしゃべるなよ」 「げぇっほ、げっほ……な、なんだい藪から棒に」 「ことの発端は、モンモランシーがお前に幻覚剤を使ってでも同衾を願ったことだ。そうだな」 「ん……まぁ、そういう、こと、だね」 口重そうにギーシュは応える。 「照れるなよ、いい男が。……で、だ。前々からそういう関係を強固に願われていたわけだな?お前は」 「う、うむ……」 ギーシュとモンモランシーとケティがちょっと昼間には明言できない爛れた関係『らしい』、と学院で噂されていることくらいギュスターヴも知っている。 「そこで、老婆心ながら思うのだが、お前は一体モンモランシーをどう捉えたいのかと俺は気になるのさ」 「む、……そ、そうだね……」 口重く、ワインに口をつけながらギーシュはぶつぶつと呟く。 「も、勿論、僕はモンモランシーを愛している。そこに揺るぎはないけどさぁ、もっとこう、さぁ……」 「だらしのない。男なら受ける愛情くらい受け止めたらどうなんだ?半端に袖にしてるからこういうことになったんだろうが」 「うぅ……」 ぐうの音もでないギーシュは口寂しいのかかっぱかっぱとワインを飲んでいくが、最後の一瓶をギュスターヴはギーシュの手元から掏り取った。 「あ……」 「お前は女性は受身で待っているものだと決めて掛かってないか?女性は強い。男はそれを受け止めるものだ」 ぐっと一気にワインを飲み干し、ギュスターヴは立ち上がってモンモランシーのところへを歩いていった。 「……はぁ」 水精霊に会う前に、なんだかすっかり疲れてしまうギーシュだった。 じっと湖を見ているモンモランシーの隣にギュスターヴが立つと、アルコールの香りがモンモランシーの鼻に臭った。 「臭いわね」 「それは失礼。……ところで聞きたいんだが、そもそも『水精霊の涙』というのはどういうものなんだ?まさか本当に涙なんてことはないだろうしな」 「当たり前でしょ。……水のメイジが使う図録や調合書などでは“水精霊の体の一部”とされているわね。入手には私みたいに交渉を行える資質があるか、或いは能力の高いメイジが水精霊と交渉して手に入れるか、水精霊から直接切り取ってみるしかないわ。もっとも、水精霊と戦うなんて、無謀と勇気を履き違えているとしか思えないけど」 「そんなに強いのか、水精霊というのは」 「そうね……水精霊に触れると、人はその精神を冒されて廃人になるとされるわ。それに普段は水に同化しているからどこにいるのかわからないし、火か風の魔法でもないと大した攻撃は出来ないはずよ。ま、大丈夫よ。敵対者でなければ攻撃しては来ないし、貴方達は待っていれば良いわ」 そう話している間に、ギュスターヴはふと湖の気配が微妙に変わったことに気付いた。潮騒が引いて自然音がしなくなっているのだ。風が木々を揺らす音も消えていた。 岸辺から10メイルほど先の水面が黒く濁っている。かと思えばぼこぼこと沸き立ち、水面が盛り上がり始めた。液体のはずの湖面がジェリーのような実体感を伴い、高さにして5メイルほどまで立ち上がった水の塊は、その奥に不気味な光を孕んで岸辺を覗いているようにも見えた。 視線が上を向いていたその時、不愉快な破裂音のような鳴き声が足元より聞こえる。ロビンがモンモランシーの元へ戻ってきていた。 「おかえりロビン。いい子ね。……古ぶるしき一族の者よ。血と契約を覚えていて感謝するわ。願わくば私達に理解できる姿と声でもって言葉を返してもらいたいわ」 モンモランシーの声に応じて盛り上がった水塊……水精霊は、日光を乱反射しながら変形を始めた。それはまるで透明な泥団子を捏ね回しているようであり、その形を引き伸ばすたびに布を引き裂くような悲鳴の如き音を立てた。耳を貫くようなその音は、脳裏をたやすくかき乱すに足るもので、平然と立つモンモランシーを除いた全員が強烈な不快感に襲われていた。ギーシュにいたっては酒と干し肉を詰め込んだ胃がひっくり返ったようで顔を真っ青にしてうずくまっていた。 水精霊の変形は音をたてつつも徐々に収まっていき、最終的にその形は、全長5メイルになる漠然とした人型になって納まった。中に湛えた光を頭にして、幼児が殴り書いたような、辛うじて人の形を模しているのだろうと判断できる姿であった。 「覚えているぞ、外つ者。貴様と最後に会ってから、月の光は五十と二、交わった」 粘着質の泡を吐き出すような音を混じらせながら水精霊は応えた。 「応えてくれて感謝するわ。早速で悪いのだけど、貴方にお願いがあるの。貴方のからだの一部を分けてくれないかしら」 モンモランシーの言葉を受けて、水精霊はまた変化を始める。今度は形を変えず、体の表面を細かく波打たせていた。その振動が空気を伝えるようで、低く呻くような音が広がっていた。 「ほんの少しでいいの!お願いだから分けてくれないかしら……?」 低い音が聞こえる中でモンモランシーは懸命な呼びかけをした。ここで断られたら立つ瀬がないではないか。キュルケの嘲笑、ギーシュの失望、そして学院に禁薬作成を知られて家名を汚したとして多くのものから屈辱を浴びねばならなくなる。 「お願い!お願いだから……」 だが、水精霊は感情なき声で応えた。 「ならぬ。外つ者」 「どうして?!」 「我は今、我が領域を広げることに身を砕かねばならない。“契約にて縛られぬ”今、我はそれこそが全てである」 「ちょっと待って!……契約に、縛られないって……?」 「契約は月が三十ばかりまじわる昔、『アンドバリ』を外つ者の一人が外したゆえ、すでに解かれている。我は今、血に応じて貴様に見えたまで。『血』のみで我を御することならず」 ウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ 聞こえる低重音がその音量をどんどんと上げ始めていた。見下ろす水の人型がまるでモンモランシーを睨みつけるように、中に孕んだ光を強くしていた。 「契約なき未熟な外つ者よ。我を斯くの如きことで呼び出したなるは、報いを受け取りてその身を果てよ」 「はっ?!」 モンモランシーが確とした敵意を認識した時、既に水精霊は行動を済ませていた。巨大な水塊が伸びてモンモランシーの頭上を迫っていたのだ。 そして“一人を除いた”その場の全員が呆然と水精霊とモンモランシーのやり取りを見つめ、モンモランシーが水塊に叩き潰されてしまうのを見届けてしまった……はずだった。 砂砂利の岸辺をすり抜ける、不均等な人影がギーシュの視線の脇によぎる。 「自分の大事な人くらい、いの一番に守れるようになれよ、少年」 はっとして振り返ったギーシュのすぐ横に、モンモランシーを抱えて空いた手にデルフリンガーを握るギュスターヴが立っていた。 「よっと……」 「あうっ」 モンモランシーを無造作に降ろすと、腰の抜けたらしいモンモランシーから頓狂な声が上がった。 「さて……」 一旦デルフを鞘に戻し、ギュスターヴは湖に振り返る。人型成す水精霊は全身を激しく震わせて空を割るような咆哮さえ上げて明らかな敵意をこちらに向けていた。 「ミスタ。どうなさるつもり?」 「交渉は失敗した。だが俺達は水精霊の涙が欲しい。となれば方法は一つしかないな」 「あ、あんたたち。戦うっていうの?!す、水精霊と」 腰立たないままモンモランシーはキュルケとギュスターヴを交互に仰ぎ見て言った。 「モンモランシー、あんたはそこで見てていいわよ。戦いになったら邪魔だから」 「な?!」 空の鍋をほっぽり出して身体を解し始めるキュルケは杖を抜いてゆるりと構える。それに呼応するようにタバサも杖を握り、シルフィードの横腹を叩く。シルフィードは主の意図を察したかのようにばさりと空に上がっていった。 「ぎ、ギーシュ、あんたはこんな馬鹿な真似に加わったりしないわよね?!」 そう言われて、とっさに杖を抜こうとしていたギーシュが応える前に状況は更なる変化を起こし始めた。 「来るぞ!」 ギーシュとモンモランシーがギュスターヴの声に反応した時、水精霊の人型が巨大な波となって岸辺へと押し寄せてきていたのだった。 前ページ次ページ鋼の使い魔
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429 名前:1/4[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 16 26 41 ID 3kP3mLCP 緊迫した空気の中、マリコルヌとギーシュは無言で睨みあっていた。 「ギーシュ、引いてくれ……頼む」 「いいや、マリコルヌ。そんな事は出来ない」 何度か繰り返された決して交わることの無い議論。 「ならば……決闘だ」 「ああ……そうだね」 元よりそのつもりだった二人は、手早く杖を懐から取り出すと詠唱を始める。 「『ワルキューレ』!」 ギーシュのゴーレムがマリコルヌに迫るが、マリコルヌは動じる様子も無く詠唱を続けた。 「ゴーレムは確かに優秀だね、ギーシュ……だけど、メイジの相手にはっ」 勝利を確信していたギーシュの姿が霞み、一瞬の後に宿の壁に勢いよく叩きつけられていた。 一切ワルキューレを相手にせず、ギーシュのみを狙った一撃だった。 ギーシュと共に動きの止まったワルキューレの間を抜け、マリコルヌがギーシュを見下ろしながら杖を振り上げた。 「ギーシュ……僕の勝ちだ」 勝利を確信していたマリコルヌが、何かに気付き慌てて詠唱を始める。 「遅いよ、マリコルヌ」 ギーシュが目を開くと、ワルキューレ達が一斉に動き出した。 対するマリコルヌも、普段の数倍のスピードで魔法を織り上げていた。 「「これでっ……終わりだぁぁ」」 後に残ったのは、気絶したドットメイジ二人だった。 430 名前:2/4[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 16 27 14 ID 3kP3mLCP 「……なんでこーなるのよ?」 モンモランシーは呆然と倒れた二人を見つめていた。 「ちょっと……頼み事しただけなのに」 注意深く耳を傾ければ、気絶したままのギーシュとマリコルヌが、 「「手取り、足取り、腰取り……」」 と、壊れたように呟いているのが分かった。 「なにこれ?」 物音を聞きつけて、ルイズが宿屋から飛び出してきた。 「何で二人が倒れてるの? 何か有ったのモンモランシー?」 とても言いづらくは有ったが、モンモランシーが重い口を開いた。 「折角の宿だから……タバサのお母さんをお風呂に入れてあげようと思ったんだけど…… 持ち上げたりするの大変だから、男の子の手を借りようと思ったのよ」 そう、ギーシュとマリコルヌはどちらが手伝うか? その座を賭けて戦っていたのだ。 色々早熟なオルレアン公の妻は、十六歳のタバサが居るのに未だ二十台だった。 「水着だって着せるのに、何でここまで熾烈に戦ったのかしら?」 既婚とはいえ年上のおねえさんとのお風呂! を逃す気の無いマリコルヌと、 おまけ付きとはいえモンモランシーとお風呂! を譲れないギーシュ。 モンモランシーには理解できなかったが、必死になるには十分な理由。 「……馬鹿よね?」 ばっさりと切り捨てるルイズと、 「馬鹿ねー」 躊躇無く納得するモンモランシー 哀れな二人の上を、冷たい風が通り過ぎた。 「あんな、おばさんのっ……」 ガスッ! そこまで言ったルイズの後頭部を、大きな杖が直撃する。 タバサだった。 「母さまの悪口?」 「……確認する前に殴ってたじゃない」 「きゅう」 妙な声を出して、ルイズはその場で気絶していた。 431 名前:3/4[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 16 27 46 ID 3kP3mLCP 「あーもうっ、どんどん人手が減っていくわねー、タバサあんた手伝いなさいよ」 もう誰でもいい、そう思ったモンモランシーがタバサの手を掴むが、 「無理……、母さまに近寄れない」 実の娘を見ると取り乱すため、側に居るのにタバサはまったく近寄れなかった。 「あ……、ごめん」 「いい」 寂しそうに笑うタバサが、事あるごとに母親の居る部屋を見つめていることを知っているモンモランシーは、 自分の迂闊な一言が気になって、何も言えなくなった。 しばらくの間、気まずい沈黙が辺りを満たす。 宿の中から聞こえる足音を、飼い猫のように敏感に察したタバサが、 慌ててモンモランシーの陰に隠れた。 小柄なタバサなら、すっかり隠れることも出来そうだが、微妙な位置で自分がそこに居ることを主張していた。 「あれ? 何事?」 いつまでも戻ってこないルイズを気にして表に出てきたサイトは、 点々と転がる友人達を不思議そうに眺めている。 そんなサイトを見てモンモランシーが気付いた。 「あんたで良いわ」 「は?」 ルイズが聞くとうるさいと思って声を掛けなかったが、ルイズが気絶している今気にする必要も無い。 「ちょ〜っと、手を借りたいんだけど?」 自分の母親の話にモジモジするタバサと背中に感じながら、モンモランシーはサイトに説明を済ませた。 「で、どう?」 「んー、いいよ」 簡単な返事が返ってきた時、モンモランシーの服の裾が、タバサによって握りしめられる。 「おねがい」 おずおずとサイトの前に立ったタバサが、ペコリと頭を下げた。 その場に居る誰も気が付かなかったが、伏せられた顔は赤く染まっていた。 「ちょっとは興味有るし、いいよ」 「……あんたまでか?」 苦りきったモンモランシーに、サイトが補足した。 「未来予想図に、ちょっと興味有るし」 サイトの視線が注がれていたのは、タバサの胸元。 「っっ……ん……」 視線に気付いたタバサが、自分より大きい杖を振り上げて……当たると痛そうな杖を捨てる。 モンモランシーとサイトが見つめる中、タバサは緩く握ったコブシで、ポカポカとサイトを叩き始めた。 「ちょっ……タバサっ、ごめんっ、ごめんって」 「……っ…………」 可愛らしい……だが男の子には回避不能の攻撃は、サイトが逃げ出しても止まる事は無かった。 432 名前:4/4[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 16 28 31 ID 3kP3mLCP 「……どーすんのよ?」 一人乗り残されたモンモランシーは途方に暮れていた。 「きゅい?」 「あーもう、あんたでいいわ、手伝いなさい」 たまたま通りかかったシルフィードに説明して、引っ張っていこうとするが、 「魔法使っちゃだめなの、だめなの? きゅいきゅい」 「あ」 倒れている三人をこそこそと手当てしたモンモランシーが逃げるように立ち去った。