約 905,837 件
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/7290.html
超時空要塞マクロス 河森正治デザイナーズノート 発売日:11月7日 今回の書籍は、既存の設定収録書籍や雑誌などでは省略されるか、 小さく扱われることが多かった無数のラフスケッチを可能な限り収集、 これをできる限りの数、しかも大きく掲載することを目指した。 これまでに見たこともない画稿も相当数にのぼる。 およそ600ページ(予定)にも及ぶ本書は、準備稿のみで構成された書籍としてはおそらく空前のものだ。 ファン必携の永久保存版といえよう。 ここを編集 1994年8月OVA発売開始。超時空要塞マクロスのシリーズ続編、劇場版に~MOVIE EDITIONがある。2016年1月29日、劇場版のBlu-rayが発売。 マクロスシリーズにマクロス7、マクロス ゼロ、マクロスFがある。 総監督 河森正治 監督 渡辺信一郎 原作 河森正治、スタジオぬえ 脚本 信本敬子 オリジナルキャラクターデザイン 摩砂雪 舞台設定・メカニカル設定 宮武一貴、河森正治 設定 田中精美、佐山善則 特技監督 板野一郎 メカデザイン協力 原田則彦、板野一郎、黒沢守、吉野高夫 美術監督 針生勝文 色彩設計 西香代子 撮影監督 高橋明彦(1話)、安津畑隆(2話~) 特殊効果 玉井節子、榊原豊彦 メインタイトル・シャロンシンボル アート・ディレクション 永石勝久 グラフィック・デザイン 上杉季明 ディスプレイデザイン 佐山善則 CGプロデューサー 杉村克之 CGスーパーバイザー 秋山貴彦 CGディレクター 片塰満則 CGデザイナー 十亀茂子 CGテクニカル・スタッフ 大谷謙、名越輝幸 CGプロダクション・マネージャー 阿部慶一 編集 掛須秀一 音響監督 三間雅文 録音 山田富二男 効果 倉橋静男 録音助手 内田誠、高寺雄 音楽 菅野よう子 アニメーション制作 トライアングルスタッフ コンテ 河森正治 渡辺信一郎 樋口真嗣 作画監督 夷倭世 青野厚司 森山雄治 瀬尾康博 後藤雅巳 作画監督補佐 小倉陳利 岸田隆宏 鶴巻和哉 逢坂浩司 コンサートシーンアニメーション 森本晃司 ■関連タイトル Blu-ray マクロスプラス MOVIE EDITION 超時空要塞マクロス 河森正治デザイナーズノート マクロス音楽証言集 1982-2018 マクロスプラス Complete Blu-ray Box マクロスプラス 1/60 完全変形 YF-19 with ファストパック 塗装済み完成品 マクロスプラス MOVIE EDITION マクロスプラス リマスターボックス MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK PLUS - for fans only THIS IS ANIMATION SPECIAL マクロスプラス THIS IS ANIMATION SPECIAL マクロスプラスMOVIE EDITION やまと 1/60 マクロスプラス 完全変形 YF-21 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Blu-ray 魔女見習いをさがして Blu-ray「どうにかなる日々」Blu-ray Happy-Go-Lucky Edition 初回限定生産 Blu-rayDisc付き 『ラブライブ! スーパースター!!』「始まりは君の空」【みんなで叶える物語盤】 BEM~BECOME HUMAN~豪華版Blu-ray Blu-ray 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 10th Anniversary Compact Collection Blu-ray ぐらぶるっ! Blu-ray 映画クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 Blu-ray CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda Millennial Fair FINAL at NAKANO SUNPLAZA 2020 ゴブリンスレイヤー Blu-ray BOX 初回生産限定 グリザイア ファントムトリガー THE ANIMATION 03[Blu-ray] 特装版 ラブライブ! サンシャイン!! Saint Snow 1st GIG 〜Welcome to Dazzling White Town〜 Blu-ray Memorial BOX ゾンビランドサガ Blu-ray BOX 初回生産限定盤 Blu-ray 思い、思われ、ふり、ふられ 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 1st Season 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 2nd Season 完全生産限定版 Blu-ray ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかIII OVA Blu-ray 映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日 BD特装版 Blu-ray アズールレーン 三笠大先輩と学ぶ世界の艦船 ぶるーれい Blu-ray 水瀬いのり Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 22 OVA同梱版 呪術廻戦 公式ファンブック よつばと! 15 監修 庵野秀明・樋口真嗣など 夢のかけら 東宝特撮映画篇 パラレルパラダイス 13 特装版 アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 9 オリジナルCD付き限定版 美樹本晴彦マクロス画集 軌 わだち― 夜ノみつき 10th EUSHULLY WORKS しらこ画集 ILLUSTRATION MAKING VISUAL BOOK カズアキ画集 Kazuaki game artworks ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~ 公式ビジュアルコレクション ぼくたちは勉強ができない 第21巻 音声ドラマ ミニ画集付き同梱版 あいきょう 荻pote作品集 ヒョーゴノスケ流 イラストの描き方 TVアニメ『くまクマ熊ベアー』オフィシャルファンブック 押井守原作・総監督 西村純二監督作品 『ぶらどらぶ』 解体新書公式コンプリートガイド OCTOPATH TRAVELER Design Works THE ART OF OCTOPATH 2016-2020 おそ松さん 3rd season SPECIAL BOOK 描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方 YMO1978-2043 「小冊子・YMO全トラックリスト2021 Amazon限定表紙版」付き To LOVEる -とらぶる- ダークネス FIGURE PHOTOGRAPHY COLLECTION 斉藤朱夏 CALENDAR 2021.4-2022.3 ラブライブ! サンシャイン!! Aqours DOME TOUR COMIC ILLUSTRATION BOOK ラブライブ! サンシャイン!! Aqours COMIC ILLUSTRATION BOOK 2020 Winter イジらないで、長瀞さん 10 特装版 「はたらく細胞」公式アニメ完全ガイド リスアニ! Vol.43.2「アイドルマスター」音楽大全 永久保存版VII アイドルマスター シャイニーカラーズ 3 CD付き特装版 ウルトラマンマックス 15年目の証言録 ウルトラマンZ特写写真集 じじぃ 人生は深いな 冴えない彼女の育てかた 深崎暮人画集 上 Flat. ぷよぷよ アートワークコレクション 古谷静佳1st写真集 re START THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER COLLABORATION! Great Journey ウルトラマンゼロ Blu-ray BOX クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Blu-ray BOX 初回生産限定版 小林さんちのメイドラゴンBlu-ray BOX ゆゆ式Blu-ray BOX スペシャルプライス版 とーとつにエジプト神 Blu-ray 直球表題ロボットアニメ 全話いっき見ブルーレイ 未来ロボ ダルタニアス 一挙見Blu-ray VOL.1 シュヴァルツェスマーケン 全話見Blu-ray ワールドトリガー一挙見Blu‐ray VOL.1 異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 魔王プレイボックス 初回生産限定 トータル・イクリプス 全話見Blu-ray Blu-ray Cutie Honey Universe Complete Edition 夜ノヤッターマン 全話いっき見ブルーレイ こみっくがーるず Blu-ray BOX 初回生産限定 Blu-ray 幼女社長 むじなカンパニーセット 初回生産限定 ログ・ホライズン 円卓崩壊 Blu-ray BOX 七つの大罪 憤怒の審判 Blu-ray BOX I Blu-ray 水樹奈々 NANA ACOUSTIC ONLINE 『Dr.STONE』2nd SEASON Blu-ray BOX【初回生産限定版】 魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編 Blu‐ray BOX 今井麻美 Winter Live「Flow of time」 - 2019.12.26 at EX THEATER ROPPONGI - Blu-ray盤 Blu-ray 仮面ライダーゼロワン ショートアニメ EVERYONE'S DAILY LIFE 仮面ライダー一挙見Blu-ray 1号 2号・V3編 仮面ライダー一挙見Blu-ray X・アマゾン・ストロンガー編 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1975-1981 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1982-1986 半妖の夜叉姫 Blu-ray Disc BOX 1 完全生産限定版 裏世界ピクニック Blu-ray BOX上巻 初回生産限定 Levius レビウス Blu-ray BOX【期間限定版】 スーパー戦隊 学研の図鑑 江口寿史美人画集 彼女 アニメディスクガイド80's レコード針の音が聴こえる necomi画集 PHONOGRAPHIC フルーツバスケット アニメ2nd season 高屋奈月 Illustrations 2 彼女、お借りします TVアニメ第1期 公式設定資料集 ドラゴンボール 超戦士シールウエハースZ 超シールガイド ガンダムアーカイヴス『ガンダムビルドシリーズ』編 Angel Beats! 天使画集 Angel Diary PANZER FRAULEIN 野上武志画集 【陸編】 Angel's cage るび様画集 Sweet Dream はすね画集 画集 制服Girl's▼コレクション もりょ作品集 異世界ファンタジーのキャラクターコレクション 劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」公式ビジュアルBOOK アイドルマスター シャイニーカラーズ イラストレーション ワークス VOL.2 Blu-rayDisc付き 八十亀ちゃんかんさつにっき 10 特装版 あんさんぶるスターズ! Ready For Star 2巻 缶バッジ付 Switch エーペックスレジェンズ チャンピオンエディション New ポケモンスナップ -Switch 【PS4】BIOHAZARD VILLAGE PLAMAX 聖戦士ダンバイン サーバイン ノンスケール PS製 組み立て式プラスチックモデル スーパーミニプラ 無敵ロボ トライダーG7 3個入りBOX 魔道祖師 前塵編 完全生産限定版 HGUC 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Ξガンダム MG 機動戦士ガンダムSEED モビルジン 1/100スケール カンチ 青 ノンスケール ABS&ダイキャスト製 塗装済み完成品 ☆赤ver 魔女の旅々17 ドラマCD付き特装版 クリストファー・ノーランの世界 メイキング・オブ・インターステラー BEYOND TIME AND SPACE 時空を超えて るるぶアズールレーン からかい上手の高木さん15からかいカレンダーカード付き特別版 「武装神姫」原案イラスト集 ALLSTARS 機動戦士ガンダム サンダーボルト 17 キャラクターブック付き限定版 とある科学の超電磁砲T OFFICIAL VISUAL BOOK Aqours 5周年記念アニメーションPV付きシングル「smile smile ship Start!」【BD付】
https://w.atwiki.jp/akisuteno/pages/59.html
マクロスF 早乙女アルト シェリル・ノーム ランカ・リー SP:130 能力 コマンド 消費 SP 121 能力 コマンド 消費 SP 126 能力 コマンド 消費 性格:激情 格闘141 集中 15 性格:強気 格闘126 信頼 20 性格:普通 格闘120 努力 15 射撃148 根性 20 射撃131 努力 20 射撃128 幸運 30 防御 97 幸運 30 防御 96 不屈 15 防御 93 祝福 55 成長:晩年型S 技量175 直感 20 成長:普通型A 技量164 祝福 55 成長:晩年型S+ 技量157 応援 30 回避177 突撃 30 回避168 希望 65 回避164 勇気 75 命中176 魂 50 命中170 愛 65 命中171 愛 65 オズマ・リー SP:137 能力 コマンド 消費 性格:強気 格闘144 集中 15 射撃152 不屈 10 防御101 直感 20 成長:普通型C 技量185 突撃 25 回避175 気合 30 命中177 熱血 35 ミハエル・ブラン クラン・クラン SP 129 能力 コマンド 消費 SP:127 能力 コマンド 消費 性格:冷静 格闘139 直感 20 性格:強気 格闘145 集中 15 射撃154 狙撃 15 射撃149 闘志 30 防御 93 努力 20 防御103 ド根性 30 成長:普通型A 技量178 集中 15 成長 普通型A 技量180 気合 30 回避172 熱血 40 回避174 突撃 35 命中180 友情 40 命中176 愛 65
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3308.html
マクロスなのは 第5話『よみがえる翼』←この前の話 『マクロスなのは』第5話その2 (*) アルトがライブ終了と同時に時計を見るとすでに3時を回っていた。 周囲の研究員達は終了と同時に各自の通常業務に戻っていく。しかしその時誰の顔も、疲れを感じさせないほど生き生きしていた。 「じゃあ私も戻るね」 そう告げたフェイトと別れてすぐ、後ろから呼ばれる。 「待たせたね、アルト君」 さっきの所長・・・・・・のようだった。彼の顔も、20歳は若返ったように見える。 「いやはや、昔を思い出してつい『サタデー・ナイト・フィーバー』してしまったよ。はっはっは・・・・・・」 (今日は木曜のはずだが・・・・・・?) と思ったアルトにはなんの事かわからなかったが、ともかくフィーバーの英単語そのままの意味だと理解する事にした。 「・・・・・・さて、これから検査を始めるがいいかな?皆やる気なのでね」 彼の見た先には、研究員の一団が陽気にランカのポップスを歌っている。 「それじゃあ、お願いします」 そう応えると、田所はすぐに研究員を集めて先ほどの格納庫へと戻った。 (*) そうしてアルトと所員達は指揮所に戻ると、すぐに検査の準備を始めた。 VF-25は荷台に乗せられたまま作業員の運転する牽引車で移動し、先ほどの洗車機の前に駐車された。田所の話によるとあの洗車機はこの格納庫の新設した時導入した最新鋭スキャナーで、一度に様々な検査が出来るそうだ。 スキャナーが動き出し、VF-25の上を一往復すると静かに止まった。 洗車してくれないし外見それだけなのだが、田所の操るデスクトップコンピューターのディスプレイには正確なVF-25の3次元図面が出来上がってゆく。なるほど確かに優れ物らしい。 それは一昔前の医療用CTスキャナーのような断面図もあり、田所と研究員達は分担して次々に解析していった。 その情報は中央に投影された全体図とリンクしており、故障と思われる場所に赤い光が灯る仕組みだ。しかし、場所はエンジンファンやベクタード(可変)ノズルだけに留まらず、次々に赤く灯っていった。 「問題はベクタードノズルとエンジンファンだけじゃなさそうだぞ」 コンソールパネルに灯ったキーボードを叩きながら田所が呟く。 (どうやら本格的なオーバーホールになりそうだ・・・・・・) アルトは魂ごと抜けそうなため息と共に、肩を落とした。 (*) 3時間に渡る解析によって合計256箇所の問題点が挙げられたが、アルトが再確認すると半数以上が仕様だった。しかし、確かに気づかなかったヒビや故障は大量に見つかった。変形機構を動かすリニアアクチュエーターの断線、機体フレームの大きな歪みやヒビなどが見つからなかった典型例だ。もしあの時補修材で妥協していたら危なかっただろう。 「それで、修理にはどれぐらいかかりそうなんだ?」 田所所長は修理リストを斜め読みすると答える。 「ヒビと歪みは物質操作魔法で生成、矯正したりして修理ができそうだね。ベクタードノズルとエンジンファンも部品交換と電子機器の移植で済みそうだし・・・・・・うーん、明日にはなんとかなるだろうと思う」 アルトはそのあまりの短さに驚き入ってしまった。 VF-25の交換パーツの揃っているSMSですらこの損傷では自前の修理を諦めてメーカー(L.A.I)に投げるだろう。そして帰ってくるまで丸4日ほどかかるだろうに。 このスピードを実現させるのに物を言ったのはやはり魔法だった。特にこの世界に来て一番驚いた、この『物質操作魔法』だ。 これは大気中の元素に干渉して材質変換したそれを固定。そうして任意の場所に任意の材質の物体を作ることができた。 これはOT・OTMを解析した第25未確認世界にもない技術だった。 これは扱うには適性が必要だが、デバイスはこの原理が限定的に使われている。 デバイスは普段は携帯時の形態である小さな各種アクセサリーに変型するが、使用する際は杖や銃に変型する。 これは『(デバイス内にある)構成情報を元に、空気中の元素を固定。それを生成する』という物質操作魔法とほぼ同様の手順を踏んでいる。 だがこの構成情報がデバイスの容量を大量に食べるので、なのはのような上級者以外は一段階変型が基本となる。 ちなみになのはは不要な支援プログラム、例えば「リリカル・マジカル」というパスワード認識機能やリンカーコア出力が低い者が使う魔力コンプレッサーなどを削除。プログラム言語も特殊なものを使用して極限までカスタムしてあるため容量が半分近く空く。これによりレイジングハートは多段階変型を実現していた。しかしシャーリーなど一流のデバイスマスターでなければカスタムされた各種プログラムの意味がもはや理解する事ができず、整備士を選ぶのが欠点と言えよう。 このようにデバイスは擬似的な物質操作魔法を使えるが、元素固定は現在ミッドチルダの科学力でも魔法以外には不可能で、機械的なものではデバイスのみ行える。 『なぜデバイスだけか?』と言うと、数は多いがデバイスはすでにロストロギア―――――いや、ロストテクノロジーなのだ。 デバイスの心臓部であるフレーム自体の設計・生産技術は100年前の戦争で焼失しており、今も第1管理世界各地で稼働する自動生産工場に100%依存しているのが現状だった。 自力で作ろうにも第25未確認世界ではフォールドクォーツと呼ばれている物質の生成がまずできないし、リバースエンジニアリング(既に存在する実物からその技術を習得すること)にも限界があり、下手に手を出して壊れてもいけないのでその生産工場に手が出せていなかった。 余談だが、六課メンバーで実戦的な物質操作魔法が使えるのは、ヴィータだけだ。 閑話休題 「それじゃあお願いします」 「承知した。・・・・・・ところで『アドバンスド・エネルギー転換装甲』というのは、検査によるとチタンとカーボンの合金のようだが本当にこれだけか?それと、なぜ動くんだ?」 彼がいぶかしむのも仕方ない事だ。OT・OTMに理論も知らずに触れた人間は最初はこうなる。 「あぁ、それはだな―――――」 アルトは軍事機密という言葉を全て頭から叩き出すと、彼の知りうる全てを公表した。 エネルギー転換装甲とは、反応エンジンで発生する莫大な電力で無理やり分子間の結合力を増やし、分子構造を強化するものであること。 しかし結合力を強くした結果ほとんどの場合で分子構造が激変し、性質が変化(例えば鉄が常温で液体になったりする)してしまうため、いままで発見された合金は少ないことなどを説明する。 「―――――つまりOT・OTMは、機械同士が密接にリンク。例えるなら生命のような美しい相互作用を作ることで初めて機能する。そのためこの技術を学ぶ者は上空から下界を俯瞰する鳥のような気持ちで望むことが、OT・OTM理解の最短ルートだ」 先生のごとく田所達研究員に説明する。実は最後は美星学園の機械工学科教授の受け売りだったが、この場にはぴったりだった。 そこで質問があったのか、1人の研究員が手を挙げる。 「なんだ?」 「VF-0のエネルギー〝変換〟装甲も同じですか?」 「あぁ。まったく同じだ」 統合戦争の初代バルキリー『VF-0』や『SV(スホーイ・ヴァリアブル)シリーズ』に使われた第1世代型『エネルギー〝変換〟装甲』。 無重力空間で合成しなくてもいいため合金自体の製作が容易だが、強度もなく、重く加工しにくいので今ではほとんど使われない。 そして時代は統合戦争が終わり、マクロス(SDF-01)が冥王星へフォールドした時に飛ぶ。 そこでマクロスの乗員達は変換装甲より頑丈で軽い合金、反面合成時に無重力空間で分子構成を均一にしなければならないという技術的な欠点を抱えていた第2世代型『エネルギー〝転換〟装甲(ESA。エネルギー・スイッチ・アーマー)』に手を出した。 資源自体は周囲の小惑星から多量に採取できて、天然の無重力空間のおかげでコストパフォーマンスが極めて優秀だったのだ。 その優秀さゆえ、AVF型(アドバンス・ヴァリアブル・ファイター。VF-19やVF-22など)までこの合金は採用されていた。 そして新開発の試作戦闘機YF-24『エボリューション』(VF-25の原型)で部分的に採用された第3世代型『アドバンスド・エネルギー転換装甲(ASWAG)』。これは第2世代型と比べて軽く、加工しやすく、エネルギー効率が4割も向上して更に強度が上がった驚異の合金だった。 しかし製作コストが2~3倍と高いことが唯一の難点となっていおり、フロンティア船団のVF-25も、バジュラとの抗争時はシールドやアーマードパック、FASTパックの追加装甲のみに使われていた。なお、アルトの3代目VF-25は贅沢にもこの装甲に全換装。おかげで全重量が1割ほど軽く、ファイター形態でも常時転換装甲が起動できるなど防御力もさらに向上している。 そしてアルトは現在この3つを超える強度を示す合金は見つかっていないことなどを含めて説明した。 しかしアルトは説明に夢中で、なぜ研究員が公表していないはずのエネルギー変換装甲や統合戦争。VF-25以外のバルキリーについて知っているのか?という素朴な疑問が浮かばなかった。 (*) その後もいろいろ質問が挙がったが、技術的なことばかりでつまらないだろうから、ここは割愛させていただこう。 (*) 2時間ほどかけてOT・OTMの講義をし終わると、早速修理が始まった。 最初は比較的単純なベクタードノズルづくりだ。ASWAG合金の方は、自前でOT・OTMを解析したシャーリーという先駆者のおかげで、魔法を併用した〝コストのかからない〟簡単な作り方が確立されていた。 「あのお嬢さんは元気にやっとるかね?」 合金の合成中シャーリーの話がでて、田所はそう問うて来た。 彼によればシャーリーことシャリオ・フェニーノは、田所がミッドチルダ防衛アカデミーの臨時教授だった頃の教え子だという。 「まったくいつも『田所教授、田所教授』と研究室に来ては、自分の研究の評価とアドバイスをせがむ忙しいお嬢さんだったよ」 どうやらシャーリーは昔から人に迷惑をかけることもいとわないタイプらしい。アルトも自身のEXギア解体事件などを話す。 「ハッハッハ、そうか。彼女は5年前の事故でリンカーコアが8割も小さくなってなぁ。優秀な子だったから、路頭に迷うのは可哀想だと思って、コネで本局の技術部に放り込んだんだが・・・・・・上手くやってるみたいだな」 彼の口元が微笑む。アルトにはそれが孫を心配する祖父のように見えて微笑ましく思った。 その後出来た合金を型に流し込み、鋳造されたベクタードノズルは特殊な熱処理をされて、続く応力検査や耐熱検査を経てVF-25に取り付けられた。そして接地圧計やカメラなどの電子機器を移植。微調整をしているところでアナウンスが鳴った。 『機動六課からお越しの早乙女アルト准尉。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官がメインゲートでお待ちです。〝至急〟来てください』 なぜ至急と強調したかわからなかったが、時計を見ると既に午後10時を超えていた。 しかしアルトはこの数時間で田所に親近感を抱くに至っていた。彼は自分の身の上話にも真摯に応えてくれ、いまだに勘当中の父親の姿を彼に重ねていた。 「田所所長、今日は泊まり込みでもいいか?」 「ああ、もちろん構わないぞ。この機体を最後に検査するのは操縦者の君だ。それに、君の身の上話も面白い。ぜひゆっくり話したい」 「じゃあ、よろしく頼む」 走り出すが早いかそう言い残すと、エレベーターへと向かう。制御所から下へと続くエレベーターはタイミングよく登ってきていた。 扉が開き、そこにいた研究員と入れ違いにエレベーターへと入る。しかしその研究員は奥に行くでもなく、こちらへ向き直った。 「アルト准尉、ありがとうございます。おかげで予想より早くできました!」 「は?」 何が?と聞く前に、エレベーターの扉が空間を隔てた。 だがアルトはフェイトがどうしたのか気になったし、VF-25の修理関連のことだろうと深く気にも留めなかったため、再び扉が開いたときには水の泡のように疑問はすぐに消えた。 (*) 田所はアルトに礼を言ったその研究員から資料を受け取ると、興奮の様子が見て取れる彼の報告に耳傾けた。 「アルト准尉のおかげで我々も〝彼ら〟を手伝えたのでB棟の試作1号機がようやく完成しました!あと、試作2号機も准尉のおかげでどうしてもできなかった部分の設計の解析が完了。試作を開始しました!」 渡された資料に目を通しながら、エンジンテストや航法システムのテストなど彼に当面の指示を与え、送り出す。 「はぁ・・・・・・」 彼を見送って制御所に1人になった途端、自然にため息が漏れる。 その自分のため息に気づいてすぐに罪悪感がこみ上げてきて、資料を頭にあてがってうつむいた。 「アルト君。君は管理局を信用してOT・OTMを話してくれたのだと思う。しかし・・・・・・私が今やってることを君は支持してくれるだろうか・・・・・・」 彼は資料を机に放り、窓の外の星空を仰ぎ見る。富嶽山付近は地上に光源が少ないせいか、ここの夜空は瞬きに満ちていた。 そして机に放られた資料からは1枚の写真がファイルから飛び出し、顔を覗かせている。そこには不死鳥の名を冠された戦乙女(ワルキューレ)の姿があった。 (*) 次の日 昨日、ゲート前で記念写真とサイン攻めを受けていたフェイトの救出。そしてVF-25の修理。続く田所との談笑などでHP(ヒットポイント)のなくなったアルトが、貸し出された技研の宿舎のベッドで意識を失うのに数秒と掛からなかった。 そんな彼を起こしたのは朝9時に設定されたメサイアのアラームではなく、全域に鳴り響いたけたたましい警報だった。 SMSで早朝、希に行われる『総員起こし』という伝統行事をどんなに疲れていようと日々乗り切っていたアルトは、そのサイレンに瞬時に意識を覚醒させた。 「何事だ!?」 腕時計を見ると、まだ8時を回ったばかりだった。 すぐに六課の部隊ワッペンを付けた管理局のフライトジャケットを羽織ると、田所のいるであろう制御所に向かった。 建物が隣であるため1分もかからない。そこに着くとすぐに田所から状況が説明された。 ここから50キロほど離れた山間部を走っていた輸送用リニアレール(リニアモーターカー)が、40分前突然出現したガジェットに急襲を受けたらしい。 結果、そのリニアレールで輸送中のロストロギアを守っていた陸士部隊一個分隊と交戦。 陸士部隊はロストロギアを守りつつ後退している。しかし列車の運転室を相手に譲る形になってしまい、今もなお高速で走行しているため地上から増援が送れないらしい。 そのため30分前要請を受けた六課のスターズ、ライトニング両分隊を乗せたヘリが急行しており、もう到着するであろうことなどが説明された。 「んだがそんな前ならもっと早く警報鳴らせよ!」 「新設したばかりの警戒システムだからエラーがあったらしい。ここへの襲撃がなかったことを幸運に思おう。・・・・・・リニアレールの陸士部隊との通信はどうなっている?」 「依然不通!おそらく列車の中継アンテナをやられたものと思われます。しかし敵の『ボール型』の解析情報は途絶前に送ったので、役に立っているはずです!」 通信システムを操作する通信士がそう田所に報告した。 技研は装備の開発だけでなく未確認兵器の解析も仕事の内であり、どうやら警報が鳴る前から田所達はその業務を遂行していたらしかった。 そこで傍受していた無線に声が入った。 『スターズ1、』 『ライトニング1、』 『『エンゲージ(交戦)!』』 『こちらヴァイス。スターズ3,4、ライトニング3,4は無事降下。これより本機は戦闘空域を離脱する』 『こちらスターズ4。陸士部隊と合流。これより車内のガジェットの掃討に入ります!』 ヴァイスのヘリを中継して送られる通信が六課の奮闘を克明に伝える。 しかし、ガジェットⅡ型をあらかた掃討したスターズ1とライトニング1―――――なのはとフェイトはこの世ならざる物を目にすることになった。 『ん?こちらスターズ1、敵新型ガジェットとおぼしき黒い機体を確認。数5。画像データ送ります』 六課のロングアーチと、解析のためこの技研に送られた新型ガジェットの画像はⅡ型のエイのような形ではなく、前進翼と1基の三次元推力偏向ノズルを有した小型機(約10メートルほど)だった。 アルトはその画像を見るなり目の前のマイクにかじりついた。 「逃げろ!なのは、フェイト!」 『え?アルト君?』 なのはが応じる。 「いいか、そいつらは―――――」 必死にその恐怖を教えようとしたが、その前に彼女達はそれを実体験することになった。 『え?ちょっ、マイクロミサイル!?』 『迎撃します!』 通信に混じる連続した爆発音。 『ミサイルの魔力爆発を確認!目標を魔導兵器と断定!』 『ディバイン、バスタァーッ! っ!? 当たらない! なんて機動力なの!』 『・・・・・・なのは、援護を。こちらライトニング1。これよりドッグファイトに持ち込む!』 その後2人の通信には要領がなくなった。よほどの混戦なのだろう。 「畜生!田所所長、バルキリーは!?」 「機体の修理は終わった。しかし午後搬入する予定だったガンポッドの弾丸の搭載をしていない。戦闘は完全な魔法だけになるが・・・・・・」 「それだけあればいい。俺は行く!」 アルトはそう宣言し、エレベーターに飛び乗った。下降する間にEXギアとしてのバリアジャケットを身に纏う。 そして扉が開くと同時に飛翔した。果たしてそこには白銀の翼を広げたVF-25の巨体があった。 コックピットに飛び込んでみると既にエンジンは稼動状態にあり、EXギア固定と同時に多目的ディスプレイの全面に〝READY〟の文字が躍る。 どうやらエンジンは田所が遠隔操作で起動していたらしい。エンジンファンが空気を切り裂く〝キーン〟という心地よい音を響かせる。どうやら相棒は全快したようだ。 多目的ディスプレイを擦って 「行くぞ」 と呼びかけた。 制御所では田所をはじめとする研究員達が慣れない敬礼をしていた。それに短く答礼すると、スラストレバーを45度起こしてガウォーク形態に可変する。 目前には大空へと導くように開いた扉へと続く誘導灯。それに従って開いた扉から滑るように外に出た。 「機動六課所属、フロンティア1、出撃します!」 そう通信で言い残し離陸。推進ノズルからアフターバーナーの青白いきらめく粒子を残して先を急いだ。 (*) アルト出撃の1分後。B棟と呼ばれる格納庫から紺碧色に塗装された戦乙女が1機、彼を追うように飛び立ったことをまだアルトは知らなかった。 ―――――――――― 次回予告 戦場と化したリニアレール。 機動六課に新型ガジェットの脅威が迫る! 果たして彼らはロストロギアを守りきり、生き残ることができるのか!? 次回マクロスなのは、第6話『蒼天の魔弾』 VF-25に放たれる青白い砲弾。それは彼らに、何をもたらすのか ―――――――――― シレンヤ氏 第6話へ
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/10184.html
MACROSSPLUS マクロスプラス 機種:AC 作曲者:鈴木健一 開発元:モス 発売元:バンプレスト 発売年:1996年12月 概要 元セイブ開発のスタッフが独立して設立したモスが、1996年に発表した縦スクロールシューティングゲーム。 同社の縦STGとしては『銃弾嵐』に続く作品である。(本作の次では『雷電III』) VF-11(オリジナルパイロット)、YF-19(イサム・ダイソン)、YF-21(ガルド・ゴア・ボーマン)から機体を選択する。 設定や世界観などはそれほど原作に沿ったものではなく、ネームバリューに頼った感は否めない。 作曲は、後に同じくモスが開発を手掛ける『子育てクイズ マイエンジェル2』でも作曲を手掛ける鈴木健一氏が担当。 なおスペシャルサンクスにはT S MUSICの濱田智之氏と思われるクレジット表記もある。 ループはそこまで長くないながらも、良曲が揃っている。 しかし音質がよくないうえ、効果音の音量がかなり大きいため、プレイ中にBGMを聴くのは難しい。 ちなみに、同様の原作を題材とした作品として『マクロスプラス -ゲームエディション-』が存在する。 (アーケード版マクロス作品前作:超時空要塞マクロスII) 収録曲 (仮曲名) 曲名 補足 順位 タイトルデモ プレイヤーセレクト PLAYER SELECT BGM 1 AREA 1 BGM 2 AREA 2 BGM 3 AREA 3, 6エンディング (1周目)スタッフロール~THE END (2周目)ループ位置はおかしい BGM 4 AREA 4 BGM 5 アトラクトデモAREA 5, 7 ボス AREA CLEAR CONTINUE? ループ位置はおかしい GAME OVER
https://w.atwiki.jp/blacklist/pages/353.html
【ソーサラー用胴防具】【ブリンガー用胴防具】へ カルマクロス ソブ Lv30〜 防 18 強化 2 魔力+8 TP+15 耐久+4 [買値]13000 [売値]6500 [合成費用] [入手]初期装備、防具屋 [分解]× [形 色]
https://w.atwiki.jp/macrosscrusade/pages/166.html
項目名不備に伴いこのページの削除をお願いします。
https://w.atwiki.jp/sheryl/pages/251.html
マクロスA (エース) 値段 480円 出版社 角川グループパブリッシング 発行頻度 月刊 2009年 03月号 マクロスA (エース) 2009年 03月号 [雑誌]
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3312.html
マクロスなのは 第5話『よみがえる翼』←この前の話 『マクロスなのは』第6話「蒼天の魔弾」 地球環境の破壊が叫ばれる今日この頃。 その森は広大で、自然保護区にでも指定されているのだろうか? この時代にあって人工物がほとんど見られない。 だが唯一、明らかに人工物とわかる幅5メートルぐらいのコンクリート製の溝が山から山へと渡っていた。 その溝の上に1羽の小鳥が羽根を休めている。しかし何か危険を感じ取ったようだ。それは溝から飛び立つと空中に退避した。直後、小さく〝キーン・・・・・・〟という空気を切り裂く音と共に静かに鉄の箱が通り過ぎていく。 鳥は 「近所迷惑だ!」 とでも言いたげにそれに爆撃すると、豊かな緑に包まれた安住の地へと飛翔していった。 (*) 山間部を時速70キロメートルで走る貨物用リニアレールは戦場と化していた。 ヘリから飛び降りたティアナ達は、上空に展開するガジェットⅡ型を警戒しながら10両目に着地。なのは達の支援砲撃でガジェット達が気を取られている隙に10両目の車両の中に滑り込んだ。 「うわ・・・・・・」 ティアナは床を見て顔をしかめた。 そこには寝かされた陸士達の姿があった。全員出血性の外傷があるところを見ると殺傷設定で戦闘不能にされたらしい。 続いて突入してきたスバル達も血臭ただようこの車内で、真っ赤になってなお血の滴る包帯を顔面蒼白になりながらも必死に抑える者など痛々しい光景に絶句してしまったようだった。 その時まるで工事現場のような轟音を轟かせながら敵を迎撃していた前線から声が聞こえた。 「あぁ、増援か!」 最前線の9両目から1人の陸士が仲間に援護を頼み、敵の怯んだ隙にこちらへ走って来た。 「我々は第256陸士部隊、第5小隊所属、第1分隊だ。増援に感謝する」 どこか・・・・・・いや完璧に非魔法文明の意匠のバリアジャケット。質量兵器を忌み嫌うティアナはあまりいい気はしなかったが、ヘルメットの下に見えた彼の顔からは見捨てられていなかったことへの歓喜の表情がうかがえた。 どうやら猫の手も借りたい状況らしい。待ちに待った増援が子供であったことすら気にしていない様子だ。 「機動六課、スターズ、ライトニング分隊です。現状は?」 簡潔な状況確認要求にすぐ彼は応じ、開いたホロディスプレイを指差しながら説明する。 現在、運転室を含む前方8両は敵に完全制圧されていること。 撤退しながら構築した9両目の臨時トーチカ(防衛陣地)が最前線であること。 9両目で切り離すと電力供給が止まり、電磁気で浮いている車体がレール(溝)に墜落、大破してしまうのでできないこと。 敵はⅠ型だけではなく、新型(仮にボールと呼ばれている)が混じっており、逆侵攻はできないこと。 説明を聞くうちに、ティアナ達は素直に陸士部隊の手際に感心した。 もし、訓練でガジェットとの戦闘に中途半端に慣れた自分たちが守っていたとしたら彼ら陸士部隊のように臨機応変に行動出来ただろうか? 答えは否だ。 おそらく力を過信して突撃、その新型の返り討ちにあっただろう。 特に彼らの造った臨時トーチカの完成度は手放しで賞賛できるものであった。 彼らはリニアレールで唯一大型貨物が集中している9両目に初期の頃から陣地構築を計画。形勢不利とみるとすぐさまトーチカの構築を始め、撤退中に完成させた。 それは狭い入り口から入ってくるガジェット達に対応不能なほどの十字砲火(クロスファイア)を行えるように巧みに計算し、構築されていた。 しかしそれだけでは持ちこたえられなかったろう。〝従来の〟陸士部隊の装備なら。 予算の問題が解決した陸士部隊は、急ピッチで装備の改変が行われている。 デバイスはほぼ全員がアップデートしており、それらは対AMF戦を想定した設計になっている。現在彼らの撃ち出すのは魔力砲撃や魔力弾だけではなく、〝フルメタルジャケットの徹甲弾〟だ。 「それは最早質量兵器ではないか!?」 という反対を押しきって採用されたそれは、バルキリーと同じレールガン型発射方式だ。(この方式は最低のCランク魔導士でも使用でき、うってつけだった) 反動を伴ってしまう物質投射型武器のノウハウのなかった管理局が参考にしたのは、第97管理外世界のJSSDF(ジャパン・サーファス・セルフ・ディフェンス・フォース。日本国陸上自衛隊。)の装備だった。そのため使用時形態のそれはJSSDFの制式装備である『89式小銃』と『MINIMI(ミニミ)軽機関銃』に酷似していて、事実そう呼ばれる。 機能もほぼ同じで、配備数は89式小銃の方が多い。なぜなら分隊支援火器と呼ばれるMINIMIはいわゆるマシンガンで、稼動を始めたばかりの弾丸製造工場への負担が大きいからだ。 ちなみにティアナ達は知らなかったが、バリアジャケットも同様にJSSDFの装備を元にしている。 ともかく、彼ら陸士の善戦は彼ら自身のたゆまぬ努力と新装備によって支えられていた。 「佐藤陸曹、弾を持ってこい!もうすぐ弾切れだ!」 前線からの要請。佐藤と呼ばれたさっきの陸士は、床に転がる弾丸ケースを抱えると敵のレーザーの雨を掻い潜って前線に届けようと走る。 しかし、一瞬停まった所をレーザーが狙い撃ちした。 展開した魔力障壁もAMF下では敵の集中射には耐えられず貫通。胴体はバリアジャケットの分厚い防弾チョッキがそれを受け止めたが、リンカーコア出力が低いと薄さに比例してバリアジャケットも弱くなってしまうため、足に着弾したレーザーが貫通してしまった。 しかし、4人の対応は早かった。 足の速いスバルが倒れる彼を抱き止め、負傷者の待つ後方へ。エリオが彼の仕事を継ぎ、ケースを前線に届ける。キャロは応急の治療魔法にティアナとフリードリヒはその間の援護射撃。 絶妙な連携で敵を退け、友軍である陸士を救う。この勇気ある組織立った行動が陸士達の若すぎる彼らに対して抱いていた評価を変えた。 「痛っつぅ・・・・・・!」 「・・・・・・あの、大丈夫ですか?」 足を抑える佐藤に、治療魔法をかけるキャロが心配そうに呼び掛ける。 「・・・・・・ああ、助かった。ありがとう」 彼は礼を言うと、八角形をした箱を指差す。 「あれが連中の狙っているロストロギアの入った箱だ。なんとか守ってほしい」 そうして佐藤はスバルに止血帯を絞めて止血してもらうと、足を気遣いながらも再び戦線に復帰した。 ティアナは3人に床に積まれた弾丸ケースのピストン輸送と負傷者の治療などの指示を出すと通信を放つ。 「こちらスターズ4。陸士部隊と合流。これより車内のガジェットの掃討に入ります!」 ティアナはクロスミラージュにカートリッジを装弾すると陸士逹の戦列に加わった。 (*) 10分後 防戦が続くが、全く突入のタイミングが計れなかった。そのもっとも大きな理由はボールの存在だ。 そのボールは後に『ガジェットⅢ型』と呼ばれ、強力なAMFと帯のような格闘兵装がある。そのためレーザーを撃つだけのⅠ型と違って数段に戦いにくい相手だった。 おそらくスバルの突貫力でも1体倒したら進撃が止まってしまうだろう。 (でもなんとかリニアレールを停めなきゃ、みんなが・・・・・・) リニアレールを停められれば、地上からの増援も期待でき、負傷者の搬送もできる。 先ほどティアナはなのはに支援砲撃の要請をして、 「わかった」 と返事が得られた。しかし例の新型空戦ガジェットに苦戦しているらしい。5分待ってもなのは達は来なかった。 すでに後ろには防衛していた第1分隊12人のうち7人が寝かされている。時折聞こえるうめき声が彼らの負傷の大きさを物語った。 それに敵のAMFはランカのSAMFと違い魔法の発動ができる。しかしいちいち干渉して体力を削るため、忌々しい限りだった。 「畜生!〝虫〟の次は機械かぁ!どうして俺はいつももこうなるんだぁ!俺らは〝フロンティア〟でも、ミッドでも、ただ平和に暮らしたいだけなのに!」 ティアナの隣の陸士が叫ぶ。彼女には彼の真意は理解できなかったが、極度の緊張で発狂しそうなのだろうと結論づけた。 そしてそれがさらに「時間がない!」と彼女を焦らせた。すでに陸士達の生命線である弾丸ケースも残り少ない。 そうして上を見上げると取っ手があった。それは整備用のハッチで、大柄な陸士と違って小柄な六課の4人なら上にあがれそうだ。 ちなみに入った時のハッチは場所が悪く、降りられても登れなかった。 ティアナは即座に判断すると、陸士部隊の隊長を探す。 「隊長は俺だ」 名乗りをあげたのは、さっき〝虫〟とか〝フロンティア〟とか訳のわからないことを口走っていた人だった。 しかし確かに階級章は部隊で最高位の准陸尉だ。それに思ったよりまともな応対をしていた。 ティアナは意を決し、作戦を話した。 「・・・・・・つまり君らが、上に登って直接運転室を制圧するんだな?」 「はい。それまでここをお願いできますか?」 彼は床の弾丸ケースや自身のマガジンを確認する。 「・・・・・・持って、15分だ。それまでに頼む」 「了解!後方へ行くので3秒間援護願います」 「わかった。・・・・・・お前ら!5秒後に3秒間入り口に向けて全力射撃!給弾忘れるな!」 「「了解!」」 彼はMINIMIを持つ隊員2人に叫ぶように命じると、カウントしつつ彼自身も床に転がっていたMINIMIに箱型弾倉を装着。ジャラジャラうるさいベルトを給弾部に装填した。 自分もいつでも飛び出せるよう身構える。 「―――――2、1、GO!」 途端地獄の釜を開けたような轟音が車内を包んだ。3挺の機関銃のそれぞれから毎分750発にも昇る弾丸が飛び出し、敵の頭を完全に押さえ込んだのだ。 そしてティアナは「GO!」のカウントと同時に迷いなく遮蔽物から走り出し、規定の3秒経つ前に10両目に飛び込んだ。 (*) 「しかし隊長もお人が悪い。この残弾じゃ、あと25分以上は持ちますよ」 先ほど彼女らに助けられた佐藤曹長が発砲音に紛れぬよう、耳元で言う。 スバルという少女が10両目に積載していた弾丸ケースを次々ピストン輸送してくれたおかげで、前線には十分長期戦に耐えうる数がそろっていた。 「まぁ、お手並み拝見ってことだ。15分過ぎてもあの子達が到達できなければ侵攻して援護してやろう」 「了解!」 佐藤は答えると、憎憎しいガジェットⅠ型に89式小銃をぶっ放した。 (*) ティアナは10両目につくと、弾丸ケース運びに勤しむスバル、負傷した陸士達に治療魔法を行使し続けるエリオとキャロに指示を出す。 「スバル、このハッチを吹き飛ばして。エリオとキャロも行ける?」 「「はい!」」 2人の元気のよい返事に、破砕音が混じる。 スバルのリボルバーナックルが、ハッチをロックごと吹き飛ばしたのだ。そこからのぞく南海の海のように透き通った青い空。 ティアナは頭を慎重に出す。ガジェットⅡ型はなのは隊長達によってほとんど掃討されたはずだが、油断はできない。 果たして打ちもらしが1機飛んでいた。 ティアナは素早く照準し、一発ロード。それを対AMF炸裂弾1発で見事撃破した。 「よし!」 自らを勇気付けるようにかけ声を上げると、這いずるように外に躍り出る。暴力的な風が吹き荒れているが前に進めない程ではない。 周囲を警戒するうちにスバルも登って来て、エリオ、キャロもすぐに引っ張り上げられた。 「行くわよ!」 上にいても聞こえる『タタタッ』という三点射のスタッカート。それが聞こえている間は、彼ら陸士達の生存の証だ。 陸戦型ガジェット達も上がって来れないらしく、順調に行軍は続いた。 余談だがこの時キャロが鳥のフンに滑って谷底に落ちそうになるというハプニングがあったが、その他には問題なく、運転室まであと2両に迫っていた。 (このまま行けば・・・・・・!) ティアナの中でフォワードの初陣を白丸で飾れると期待が膨らんだ。 (*) 漆黒の邪悪なる翼はすぐそこまで迫っていた。 しかし、4人にそれに対する効果的な対処法はなかった。 (*) ティアナがジェットエンジンの轟音に気づいて音源を視認した時にはもう目と鼻の先だった。 突然山肌から出てきたのは例の新型空戦ガジェットらしかった。それはアルトがいればすぐに、統合戦争で使われた統合軍無人偵察攻撃機「QF2200 ゴースト」だと看破しただろう。 このゴーストは未確認情報だが、統合戦争末期に当時の先行試作人型可変戦闘機、VF-0『フェニックス』のブースターパックとして無理やり装備されたことがあるという。 しかし装備は当時のものより遥かにグレードアップしている。ミサイル数発、12.7mm機銃1挺だった武装はマイクロミサイルシステムの進歩によって装弾数が数倍にはね上がり、機銃は魔力素粒子ビーム機銃に換装されている。更に機体下部には20mm3連装ガンポッドが追加装備されていた。 また、運用当時以上の高機動で長時間の飛行を維持していることから推進系も通常のジェットエンジンからバルキリーと同種の熱核タービンに換装されているようだった。 無論そんな考察はティアナ達には行えなかったし、ガジェットの5~6倍は大きいその機体に圧倒されて声もあげられなくなっていた。 そのゴーストは、マイクロミサイルを乱射すると即座に退避した。 置き土産たるミサイルは直後到着したなのはの支援砲撃と、ティアナのとっさの迎撃が食い止める。しかし、ワンテンポ遅れてやってきたミサイル1発は運悪く撃墜出来ず、4人の足下に着弾した。 恐らく殺傷設定だったミサイルだが、デバイスが緊急展開したシールド(シールド型PPBと魔力障壁)が破片を防ぐ。しかし、爆発の衝撃までは殺しきれなかった。 結果として着弾地点からリニアレールの前方にティアナ。後方にスバル。そしてエリオとキャロは谷底へ落ちていった。 (*) 頭がクラクラする。意識も混濁し、視界もブラックアウトしたまま回復しない。どうやら頭を打ったらしい。しかし自分がなぜこんなことになっているかがわからなかった。 (あれ・・・・・・なんで・・・・・・) 「ティア!」 「!」 親友の呼び掛けによって前後の記憶が蘇る。 こうしてはいられないと頭を振って視界を回復させると、すぐに立って対応をしようと手を床に付いた。瞬間、自分を優に越える大きさの影が覆った。 例の新型空戦ガジェットだ。おそらくトドメをさしに来たのだろう。しかし迎撃しようにも、気づいたときには手の内にクロスミラージュがなかった。どうやらさっきの衝撃で落としたらしい。 視界の端にスバルの姿が写る。彼女は自分の元に駆けつけようと急いでいるが、穴から出てきた新型、ボールに阻まれ間に合いそうもない。 自分の名を叫ぶスバルの悲痛な声が聞こえる。その間にゴーストのセンサーがこちらをロック。その重たそうな3砲身の銃口が向けられ、回転を始める。 デバイスのない今、兵器レベルの物理投射攻撃を受ければおそらく即死。自らの体はバラバラになり、原型が何かすらわからないだろう。 (・・・・・・痛くなければいいな) 頭も依然として朦朧とするし、助かるはずもない。完全に観念して瞼を閉じた。 しかしそこで彼女はあり得ないものを見た。 大好きだった兄と誰かが肩を取り合って笑っている。あれは――――― (アルト先輩・・・・・・?) 刹那、爆音のような発砲音が耳を塞いだ。 しかし、体を裂くような感覚はやってこなかった。 瞼を開けると、目の前のゴーストが真横からハンマーで殴られたようにひしゃげている。おかげで射軸から逸れたらしい。その打点とおぼしき場所には見覚えある青白い尾を引いていた。 『(無事かティアナ!?)』 同時に念話が届き、ひしゃげてバランスを崩していたゴーストを純白の巨人が殴り飛ばした。 ティアナはしばらく惚けたようにその機体を見つめていると、やっと何が起きたかを理解した。 『(は・・・はい!)』 やっとの思いで返事をすると、VF-25は安心したようにバトロイドからファイター形態に可変。 アルトは 『(あの機体には気をつけろ)』 と言い残し飛び去った。おそらくなのは達の支援に行ったのだろう。 ティアナは救援に来たスバルが彼女の肩に触れるまで、その後ろ姿を見つめていた。 (*) そのガジェットは手強かった。 まず機動が読めない。敵はなんらかの慣性制動装置と多数のスラスターを併用して、無人機最大の強みである機体の耐G性能の限界まで引き出し、大気圏内にもかかわらずほぼ直角の回避運動を行う。 ちなみにこの武装、スラスターを含むオーバーテクノロジー系列の慣性制動システム、そして反応エンジンは元の設計にはなかったものであり、スカリエッティの改良の成果だった。 今回のデバイスの改良で多数のOT・OTMを装備したフェイトは、彼ら相手にほぼ互角の戦いを繰り広げていた。 フェイトが銃撃しながら接近してきたガジェットに攻撃するため逆に肉薄する。 機械の軌道理論と確率論に沿った火線を避けることは、神速を誇る彼女には容易いことだ。しかしそれが2本、3本と増えると事情が変わってくる。 次の瞬間にはフェイトに向かい、違う射角から2本の集中射が襲う。 なのはとしても他の2機の突入を阻止するのが精一杯でそこまで手が回らない。 フェイトは自身の超高速移動魔法によって稲妻のようなハイマニューバでその火線から逃れるが、肉薄していたガジェットがマイクロミサイルを斉射。8発ほどのミサイルが白い尾を引いてフェイトに迫る。 このまま突入するのは危険だ。しかし、いかが彼女の超高速移動魔法でも前進へと向けられた音速レベルの慣性を瞬時に消滅させることはできない。 そこでフェイトは1発ロードしてOT『イナーシャ・ベクトル・キャンセラー』を最大。そして今回の改修で新たに装備されたOT『キメリコラ特殊イナーシャ・ベクトルコントロールシステム』を起動する。 このシステムは第25未確認世界ではクァドランシリーズの慣性制御装置として使われ、安価でVF-25のISC(イナーシャ・ストア・コンバータ)に劣らぬ性能を誇る。しかし、ミッドでは技術的な問題から最大出力での稼働時間が極端に短い。そのためここぞというときに使う装備だ。 起動と同時に2発ロード。その能力を保持するため魔力で形成された黄金色の羽根のようなフィンが足首に展開され、時をおかずに急制動を掛ける。 音速で飛行していたフェイトは1秒でその速度を零に持ってくると、周囲にプラズマランサーのスフィアを生成。それを置き土産に一気に反転して全速で離脱する。 すると彼女を追っていたミサイルはフェイトの狙い通りスフィアの目と鼻の先を通り、直前に射出されたランサーがその全てを見事に叩き落した。 ミサイルを発射してそのまま直進してきたガジェットにもその必殺の矢が4本ほど向かうが、元来直進しかしないそのランサーは容易くかわされてしまった。 フェイトの命令さえあれば再び方向転換して再追尾できるのだが、残念ながらランサーはガジェットが出しうるらしい音速の2~3倍という速度についていけない。これが対魔導士を念頭に置いて開発された現状の魔法の出しうる限界値だった。 こうしたことが続き、敵もこちらの支援砲撃が邪魔で5対1による物量戦術には訴えられず、フェイトもまた敵を捉えられなかった。 しかしガジェットと違い生身であるフェイトの消耗は目に余る。 例え魔法と新装備である各種慣性制動システムを全力で駆使しようと、音速レベルではその慣性を全て吸収してはくれない。 さきほどの緊急制動では単純計算で34G掛かる。各種慣性制動システムを使って軽減しても少なくとも5G、最悪10G近い重力加速度がフェイトの華奢な体にかかっていた。 このような状況では自分が支援砲撃をしなければ彼女は1分ほどしか持たないだろう。 ティアナの砲撃要請を受けていたなのはだったが、そのためこの戦線から抜けられず、どうにもならない気持ちにイライラしていた。 そこに自分達から遥か遠方で現場の指揮を取るロングアーチ分隊から緊急通信が開いた。 『敵の新型空戦ガジェットが1機、リニアレールに接近中!屋根から運転室を奪取しようとしているスターズ、ライトニング両分隊に奇襲をするつもりのようです!』 通信士を務めるルキノがガジェットの機関銃のように報告する。 新型の空戦ガジェットは周囲1キロ近くの全周波を常に撹乱―――――つまりジャミングしているので遠距離にいた自分に通信を送ってきたようだ。 気づけばフェイトと戦闘している敵が4機に減っている。 なのははルキノの滑舌のよさと、一歩下がった位置で戦局を冷静に見てくれている友軍がいることに感謝すると、リニアレールに飛ぶ。 4機ならばフェイトは少なくとも1分は持ち応えられる。しかしあの4人では10秒持つかどうか・・・・・・ ロングアーチの警告通りリニアレールを襲ったガジェットのミサイル迎撃を支援する。 だが、自分にはここまでしかできなかった。 いつの間にかフェイトと交戦していた4機のうち2機が、そして列車を攻撃していた1機が自分を包囲。徐々に範囲を狭めつつあったからだ。 スケジュールの関係でまだ大規模なOT・OTM改装の進んでいないレイジングハートには、フェイトや新型空戦ガジェットのような超高速の戦闘機動を行えなかった。また、能力限定リミッターがかかっていることも彼女の足を引っ張った。 空戦ガジェットから伸びる光の矢。受け止める魔力障壁が不自然に歪んだ。 (これは魔力レーザー? いや、実体弾みたいだね) 正体を見切ったなのははシールド型PPB(ピンポイントバリア)に切り替える。連続的で強力な物理攻撃に対して魔力障壁はあまりに脆かった。 なのははカートリッジを2発ロードするとレイジングハートを胸に抱き、突撃体勢をとる。 「レイジングハート!」 自らの呼びかけに、レイジングハート本体の赤い球がわかったように点滅する。そして時を置かず杖の後方に魔力球が出現。瞬時に自爆して突発的な魔力爆発を起こした。 なのははそれにバインドを掛け、四方に広がろうとする爆圧を後ろに集束させた。それによってレイジングハート・エクセリオンのSランク時のA.C.S(瞬間突撃システム)に匹敵する莫大な推進力を得たなのはは目前のガジェットに突撃する。 これまでの戦い方からこちらが間接攻撃しかできないと認識していたらしいガジェットは、突然の特攻に対応が遅れている。 その隙を突いてバルキリーのPPBパンチの要領でPPBをレイジングハート先端部に集中、泣けなしで相手の発射した機関銃弾数発を弾くと、あやまたずそれは機体本体に直撃する。 結果、AMFもPPBSもないガジェットの外壁をそれはいとも容易く貫いた。 「シュート!!」 宣言と共に放たれたゼロ距離砲撃によって機体のメインフレームを寸断。10メートル近い巨大な黒鳥は空中分解しながら急速に金属部品へと還元していった。 しかし、残り2機が機首に付けられたカナード翼と三次元推力偏向ノズルを上向き最大角にし、ほぼ機首を軸に急旋回。おそらく動きの遅くなったなのはを機銃弾で一気に撃破する腹づもりなのだろう。 なのはは2方向からの同時攻撃には通常バリアでは対応できないと判断。カートリッジのロックをフリーにしてレイジングハートに命令する。 シレンヤ氏 第6話 その2へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3610.html
マクロスなのは 第16話『大宴会 前編』←この前の話 『マクロスなのは』第17話「大宴会 後編」 パンを土産に戻ってから5分ぐらいの時が流れた時だった。 アルトが何気なく舞台を見ると、なんとフラフラのなのはが舞台に立っているではないか。そして彼女は更に恐るべきことを宣言した。 『54ばん、高町なのはぁ!暑いので、脱ぎまぁ~す!』 「「「うぉぉぉぉ!」」」 会場に木霊する男(野獣)どもの歓声。対照的に会場の半数は女性のため一斉に引いた。 そんなことお構いなしにまず茶色を基調とした地上部隊の制服の上着に手を掛けたなのはは、それを脱いでスルリと床に落とす。 酒の力で色気の加わったなのははもうすでにR指定レベルだ。 (あのバカ野郎・・・・・・!) 呆然として動けないリンディなどを尻目に大急ぎでメサイアに換装する。 「メサイア!モード2リリース、EXスーパーパック装備!」 「Yes sir.」 EXギアのエンジンと主翼の付いた機関ブロックが、VF-25のファイター時の胴体そのままの形へと変形。それは1.5メートルほどに拡大される。そして新たにVF-25のFASTパックに酷似したブースターが主翼に生成された。 なのははすでにカッターとタイツのスカートのみだ。首筋のリボンが外され、カッターのボタンが外されていく。 アルトはブースターによって初期加速なしで緊急離陸すると、下界を睥睨(へいげい)する。 すると人混みの中にフェイトとはやてを発見した。2人は乱心した親友を救おうと男達の群れを掻き分け急行していた。 しかしなのはの最終防衛ラインであるボタンは残り少なかった。 (間に合わねぇか!) 決断したアルトはリニアライフルを生成。魔力を集束する。 「許せよなのは!ディバイン・・・・・・バスター!」 なのは直伝の魔力砲撃はあやまたず師匠に殺到した。 非殺傷設定の魔力の奔流は直撃すれば気絶するに足る出力だ。3秒に渡って照射された魔力素粒子ビームは彼女を完全に覆い隠し 「少しは容赦すべきだっただろうか?」 と一瞬頭をよぎるが、それは完全に無駄になった。 眩いばかりの青白い魔力砲撃が過ぎ去った後には、手のひらをこちらに向けたなのはの姿があった。 日頃の修練の賜物だろう。彼女は反射的に魔力障壁を展開。こちらの砲撃を受け流したようだった。 「なんちゅう奴だ!」 しかしそれで時間が稼げたようだ。フェイトとはやてが壇上に乱入して彼女を舞台袖に引きずり降ろしたのだ。 しかし男どもの理不尽な怒りの矛先は邪魔したアルトに向けられた。 「「「このバカ野郎!!」」」 集中するオーバーA~Bランククラスの対空砲撃。 その火線の数は100を超えていたとも言われている。 「おい!待て・・・・・・!」 呼びかけつつ必死に回避する。しかし脱出しようにも天井は不可視のシールドで閉まっているため脱出できない! 逃げあぐねていると、遂に砲撃の1発が左翼のEXスーパーパックのブースターに命中。それを貫いた。 アルトは迷わずブースターを緊急パージし、それに向かってミッドチルダ式の魔力障壁を展開する。 するとそれは時をおかず爆発。直後衝撃が襲うが、なんとか受けきった。 シールドを展開していなければ危なかっただろう。 (貫いたってことはこの砲撃は殺傷設定!?間違いない・・・・・・・アイツらこっちを殺す気だ!) アルトにバジュラ本星突入作戦でも感じなかった死の恐怖が襲う。 ランカの歌も助かるための手の1つだが、今歌えば魔力で飛ぶ自分はまっ逆さまだ。 なぜなら周囲が味方のつもりだったので全員IFF(敵味方識別信号)が味方であり、キャンセル対象なのだ。 そのためSAMFC(スーパー・アンチ・マギリンク・フィールド・キャンセラー)をアルトのみに作用させるのは現行不可能だった。できたとしても設定変更に1分以上はかかるだろう。 アルトが (もはやこれまで・・・・・・) と観念しかけた時、舞台に誰かが上がった。同時に聞こえる金髪の長髪が映える彼女の声。 『55番、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!歌います!』 深呼吸、そして───── 〝遥か空響いてる 祈りは 奇跡に─────!〟 その歌声に弾幕は、止みはしないが1割ほどに弱まる。 アルトはその隙に地上に降下し、着地と同時にランカへとAMFの発生を要請した。 ピタリとやむ砲撃。会場は歌声に包まれた。 舞台に視線を移すと、フェイトがメインボーカルを。ランカが引き立てのコーラスをと、一緒に歌っていた。 (・・・・・・どうやら後で礼を言わなきゃいけなそうだな) 苦笑しながらメサイアを携帯形態であるイヤリングに戻し、手近の椅子に座った。 澄んだ2人の歌声が会場を駆け抜けていく。 フェイトから紡ぎ出されるどこまでも素直な言葉。 そんな力強い歌声にアルトの奥底で眠る衝動が、〝不屈の羽(つばさ)〟を持った彼を動かさんとしていた。 (舞台が・・・・・・俺を呼んでいる・・・・・・!) しかしアルトは必死にその衝動を抑えつける。 (俺は舞台は捨てた!いまさら・・・・・・) だが早乙女〝有人〟という人物に灯っていた永遠の炎は、アルトの深い闇に閉じられた自由の扉を解き放たんと暴れ始めた。 (*) 2人の歌姫の歌によって暴動(?)は終わりを告げ、平和が戻った。しかし、それでアルトの試練が終わったわけではなかった。 (*) 「予定通りだな?」 ミシェルの確認に問われた天城は 「会は順調ッスよ」 と応じる。 「しかし本当にやってくれますかね?」 「大丈夫。あの〝お姫様〟が舞台を前にして黙ってられるもんか。いざとなれば無理やり引きずり出してやる」 ミシェルは眼鏡を外すと、彼の言うお姫様をスナイパーの目で狙った。 (*) 昼頃始まった宴会は佳境に突入している。 舞台上の隠し芸大会も100番を超え、参加者は管理局局員だけでなく、報道関係者やさっきの『古河パン』の店主も出ているほどだった。 特に店主を中心とした商店街プレゼンツの演劇はなかなかうまく、こういうことに関しては辛口なアルトでさえ拍手を送っていた。 「演劇最高ぉぉー!」 司会に 「一言お願いします」 と言われて店主が叫んだセリフがアルトの頭をぐるぐる回る。 最近、自分が有名な歌舞伎の家の跡取りであるということを周囲が知らないため、意識してこなかった命題が再び浮上した。 (やはり俺は、演じることをやめられないのか・・・・・・) アルトの脳裏に1年以上前の記憶が呼び覚まされる。 『あなたは演じることをやめられない。あなたは舞台(イタ)から逃げられない。あなたは生まれながらの役者だ』 『今もあなたは演じ続けている。親に反発して、パイロットを目指す青年という役を!』 これは兄弟子であった早乙女矢三郎が、自分に家に戻るよう言ったときの言葉だ。 そのとき家に戻らなかったことを後悔はしていない。しかしその言葉はアルトの脳裏に焼きついて離れなかった。 目の前の舞台が呼んでいる気がする。それはこの言葉の証明ではないか? また、演じていることを忘れて演技することにその極みがある。だから、自分という観客を自分という役者が騙しているのではないか?と指摘するこの言葉も的を射ているかもしれない。 (俺は本当は、舞台に立ちたいんじゃないか) パイロットという役職に舞台など不要。だから俺はそう演じているのだろうか? その時、先ほど出場を断った時のフェイトの表情が彼の脳裏を過った。 (そうかあの表情、どこかで見たかと思ったら・・・・・・ありゃ俺だったんだ・・・・・・そうだ!俺は舞台が─────!!) その瞬間、肩を叩かれた。 「ん? ・・・・・・天城か。司会はどうした?」 「はい、実はお願いがありまして」 「・・・・・・なんだ?」 「実は―――――」 その申し出は、願ってもないことだった。 ―――――――――― (*) ちょうど150番の人が終わった時だ。 『皆さん、隠し芸大会を楽しんでますか!?』 天城の呼び掛けに賛否両論の応答が飛ぶ。 『そんな隠し芸大会も時間の関係上、次がラストとなります。申し訳ありませんが、ラストを飾る人は実行委員会で決めさせて戴きました。では、よろしくお願いします!』 天城が大きく頭を下げ舞台袖に退く。代わりに出てきたのはフライトジャケットを着たアルトだった。 大ブーイングの中、彼は舞台上で一礼すると舞台袖に合図した。 次の瞬間スポットライトが彼に当たり、その服と顔にホログラムの振り袖と化粧を施した。 彼の頭上にテロップが流れる。そこには『第97管理外世界・狂言 青邸稿花彩画 浜松屋の場』と書かれていた。 「言ってざぁ聞かせやしょう!」 アルトの第一声。 観客はその一言でアルトの世界に引き込まれ、身動き1つ出来なくなった。 「浜の真砂(まさご)と五右衛門(ごえもん)が歌に残せし盗人(ぬすっと)の種は尽きねえ七里ヶ浜(しちりがはま)─────」 アルトの演技、台詞の韻律の美しさ、そして何よりひとつひとつの動作から伝わってくる張り詰めた緊張感と様式美に、 観客は魅了された。 この浜松屋の場は、有名な歌舞伎の演目のひとつだ。 この幕はまず武家の娘が嫁入り支度と言って呉服屋に来るところから始まる。 しかしその娘は「店の物を万引きした!」と店員に誤認され、そろばんで額を叩かれてしまう。 事実確認の結果、誤認と認めた店は、「十両で手を打ってくれないか?」とお願いする。しかし娘の連れの男が納得せず、皆の首を切って自分も切腹すると言い出す。 交渉の末百両で手を打つ事になり、その額を受け取った2人は引き上げようとする。 だがそこで店の奥から侍が出てきて 「その娘は男だ!」 とすっぱ抜いてしまう。 初めはしらをきっていた娘だが、二の腕の刺青が見つかり遂にシッポを出す。 冒頭の台詞は正体のバレた娘が弁天小僧菊之助に変身する際に言う名シーンだ。 しかし、観客にはそんな予備知識はない。それどころか古代日本語は半分も理解できないだろう。だがアルトの演技にはそれでも強く引き付ける力があった。 「─────ここやかしこの寺島(てらしま)で、小耳(こみみ)に聞いた祖父(ジィ)さんの、似ぬ声色(こわいろ)で小強請(こゆすり)騙り(かたり)・・・・・・名(な)せぇ所縁(ゆかり)の!」 振り袖の片袖を脱いで刺青の描かれた右半身を露出させ、高らかに宣言する。 「弁天小僧、菊之助たぁ、俺がぁことだ!!」 彼は全身を使って威圧するように大見得を切った。 鍛え抜かれた彼の肺活量は5000ccをゆうに上回る。そのすべてを吐き出した大声は轟音となってドーム内の観客たちの耳を、腹を直撃した。 次の瞬間、文字通り魔法のように衣服と化粧のホログラムが解除。彼はただの早乙女アルトに戻った。 だが誰一人身じろぎひとつしない。いや、できないのだ。服装などの要素がなくても、アルトはそれほどのオーラを放っていた。 アルトが頭を下げる。 それを合図にようやく魔法が解けたように観客を緊張の糸から解放。観客はランカやフェイトレベルの満場の拍手を彼に送った。 (*) まだ隠し芸大会の余韻から覚めきっていない20分後。 壇上にはレジアス中将の姿があった。 「─────であるからして、これからも管理局のために粉骨砕身、頑張ってもらいたい」 今、ステージ前の机は残さず片付けられ、空戦魔導士部隊やフロンティア基地航空隊などの局員300人が部隊ごとに整列している。 レジアスは各部隊を見渡すと続ける。 「また、1週間後にホテル『アグスタ』にて、ロストロギアも扱う大規模なオークションが行われる。この時、このロストロギアの反応をガジェットどもが探すロストロギア〝レリック〟と誤認して襲撃してくる可能性がある。そこで我が地上部隊は大規模な防衛網を敷く予定だ。その時が初めての魔導士部隊、バルキリー隊の正式な合同作戦になると思うが、心してかかってくれ。以上だ」 レジアスは一斉に敬礼する局員達に返礼すると、舞台から退き、同時に会はお開きとなった。 ちなみにこの時なのははまだ休憩所で酔いつぶれていたという。 (*) 「お前の差し金だったのか?ミシェル?」 各員が散開していくなか、ミシェルに問う。 天城から隠し芸大会への出場要請があったとき、1,2もなく了解してしまっていた。 しかしこの世界で自分が歌舞伎役者であることを知っている者は、ミシェルとランカしかいない。そして自分自身ほとんど話したことはない。となるとミシェル以外考えられなかった。 「さぁな。だとしたらどうする?」 「・・・・・・ありがとうな。おかげでよくわかったよ。俺は舞台が好きなんだって」 ミシェルはこちらの素直な感謝の言葉に面食らったようだ。一瞬彼の本当の笑顔が垣間見えたが、すぐに眼鏡を掛け直すようにして〝仮面〟をかぶり直した。 「・・・・・・そうか。だがこれからも安心して背中を任せられる早乙女アルトであってくれよ。」 ミシェルはそう言うと離れていった。 (*) 「アルトく~ん!」 ミシェル達と共に野外に駐機したバルキリーを取りに行こうとしたアルトに、特別待遇だったランカが手を振りながら近づいて来る。 そんな2人に、周囲の残っていた宴会関係者は 「そうゆう関係なんだ・・・・・・」 という顔をして散開していった。 (おいおい、また勘違いされたじゃないか・・・・・・) アルトはため息をつき、茜色に染まっていく空を見上げた。 そこにはまだ〝こうゆう〟問題を避けて〝空だけ〟を見ていたいと思う青年がいた。 そんな青年に彼の金髪の友人は 「まったく、姫は・・・・・・」 と小さく呟き、深くため息をついたそうな。 ―――――――――― 次回予告 実施される地上部隊初の三位一体の防衛作戦 そこに侵攻してくる敵 対立を眺める2人の存在 果たして彼らの真意とは? 次回マクロスなのは第18話「ホテルアグスタ攻防戦 前編」 「いよっしゃあ!どんどん来い!」 ―――――――――― シレンヤ氏 第18話へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3735.html
マクロスなのは 第28話『撃墜』←この前の話 『マクロスなのは』第29話『アイくん』 ランカが悲しみの歌声を発したのと同時刻 クラナガン上空200キロメートル(衛星軌道上) 「アイくん」は困惑していた。 さっきまであんなに嬉しそうに歌っていた〝愛しい人〟が、今度は心から悲しみに満ちた歌を歌っている。腸内(バジュラ)ネットワークを通して感じる痛みに、アイくんは改めてヒトの心の痛みという物を認識した。 しかしアイくんも約1年前、フロンティア船団で起きたいわゆる『第2形態バジュラ暴徒化事件』のように、悲しみに任せて下界に広がるヒトの町を破壊しないだけの分別はあった。 でも何もしないのは嫌だった。そこで〝愛しい人〟がなぜ悲しんでいるかを思考する。喜びの歌と悲しみの歌との間にあった出来事は、極小の粒を粒子加速して目標を破壊せんとする稚拙な暴力機械である〝筒〟から出た〝線〟が、彼女の友人が乗る〝ひこうき〟に命中したことだ。直後ひこうきからは、大量のフォールド波の奔流が異空間に流れ出たが、それは関係ないだろう。 人間はよく殺し合いをするが、こと味方や友人といった人種がやられることに関して敏感だ。〝自分がいた集団(惑星フロンティア防衛隊)〟でも同僚がやられると、弔い合戦だなんだと勝手に集まってきて不必要なまでの大きな戦力でその敵をねじ伏せる。 バジュラは全体としてその感情について完璧に理解したわけではない。彼らにとっての友軍(バジュラ)がやられたことを人間に当てはめると、腕や足を失くしたという認識に近い。確かにそれなりには怒りや痛みを感じるが、結局代わりの効くものだ。 しかし、アイくんにはわからなくもないものであった。 これもまた〝自分がいた集団〟にいた時の話だ。翻訳機の開発以来、編隊長として見た目にほんの少し差別化を図っていた自分に、いつも声を掛けてきてくれる〝よく一緒に飛んでいた男(バルキリーパイロット)〟がいた。平時の彼の通信からは曰く〝ろっく・みゅーじっく〟なるものが流れており、哨戒任務中いつも 「いい曲だろ」 などど自慢されていた。 しかし彼は〝大きな好戦的人間の集団(はぐれゼントラーディ艦隊)〟との戦闘中に撃墜。亡くなってしまった。それ以来哨戒任務中などにその曲や彼の声が聞こえなくなったことは、自分にとって大きな驚きと喪失感を与えるに至っていた。 だからわかる。人間にとって仲間を失うことは、丸ごとひとつ、世界を失うことに等しいとても悲しいことなのだと。 長くなってしまったが、その友人の乗るひこうきが破壊され、同時に友人を失った事に彼女の悲しみの根源があり、筒を持ったヒトが悪らしい。結論の出たアイくんの行動は決まっていた。 『そのヒトを捕獲または殺傷する』 アイくんは戦闘用の〝特殊な電波〟をピンポイントでその地域に放射すると、赤いフォールド光の光跡を残しながら現場に急降下した。 (*) 早乙女アルト撃墜、死亡の知らせはほとんど伝播されなかった。なぜなら撃墜からすぐ、核兵器クラスの強力な電磁波ショック(EMP)とジャミングが放たれ、一帯ですべての民間の電子機器がオーバーロードし、通信がダウンしたためだ。─────これをアイくんがやったとは誰も認識できなかっただろう─────通信設備から機器まで全て民間のミッドチルダ電信電話株式会社(MTT)に依存していた管理局はひとたまりもなかった。 軍用機である六課の輸送ヘリ(JF-704式)、バルキリー、AWACSはこのような事態に対応するために、基盤レベルで対電子攻撃の対抗と強力な電子攻撃防御手段(ECCM)を行っているため、EMPでオーバーロードしたMTT製の通信機器(ほとんど全て)以外はノイズ程度でなんとかなった。ちなみに、デバイスは元々電子機器でないためまったく関係ない。 通信できないことで周囲が混乱する中、ヘリを狙撃した砲戦魔導士に対する管理局側のファーストストライクは、怒りからMMリアクター(小型魔力炉)の消耗を無視して行われたさくらの大威力砲撃だった。 「破邪剣正(はじゃけんせい)、桜火砲神(おうかほうしん)!」 詠唱破棄した集束砲は非殺傷設定で放たれ、敵へと殺到する。だがそれはミッド、ベルカ両魔法でも、オーバーテクノロジー系列でもない別系統のシールドによって弾かれてしまった。 効果がなかったと見るや、間髪入れずに破壊設定にした第2射の充填に入る。なのはのそれよりも淡い桜色を湛えたドラグノフ・ライフルの銃口。MMリアクターによって強化され、Sランク相当となったこの集束砲は撃てさえすれば、管理局の戦艦を串刺しにできるほどの出力を有していた。だがそれは〝撃てさえすれば〟である。 MMリアクターの異常加熱により、緊急閉鎖を知らせる警告音と表示がさくらの視界を瞬時に覆う。そして引き金を引く間もなく銃口に集束していた魔力球は閉鎖システムに流用され、その輝きを失ってしまった。 「こんなときに!」 敵はこちらのオーバーヒートを察したらしく、構えを解いて逃げていく。こちらが完全に追撃能力を失くしたと判断したのか、屈辱的なことに後姿丸出しで、である。逃走速度は超音速。通常のバルキリーではMMリアクターの閉鎖と修復に時間を取られて、とても追えないことを知っているようだ。だが――――― 「させない!!」 さくらは目前を覆っていたホロディスプレイの群れを腕の一閃で吹き飛ばすと、スラストレバーを目いっぱい押し出して追撃に入った。 元々Aランクのリンカーコアを保有する彼女は、機載のMMリアクターに頼らずとも、ある程度の戦闘が可能なのだ。 「止まりなさい!こちらは時空管理局です!あなた方を、市街地での危険魔法使用と、殺人〝未遂〟の罪で現行犯逮捕します!」 あれが未遂かはわからないが、どうしてもアルトが死んだとは認めたくなかった。しかし今、撃墜現場は残った天城に任せるしかない。 『また今度にしておきま~す!』 そう言いながら逃げる2人組。 焦りと怒りに燃えるさくらの瞳が、謎の赤い飛翔体を認識したのはその時だった。 「あれは・・・・・・?」 敵の召喚士の寄越した増援とも考えられたが、どうも違うようだ。そのバルキリーほどの大きさをもつ飛翔体は2本の腕から連射される青い曳光弾・・・・・・いや、ビームを逃げる2人組に放つ。ビームは少なくとも非殺傷設定ではないらしく、着弾したアスファルトを耕していく。 「ちょ、ちょっと─────!」 考えようによってはあの2人組よりヤバそうな攻撃に声も出ない。ただ1つ救いなのはここは郊外であり、道路には人影がなかった事だった。それに〝それ〟は〝決して〟建物には当てようとしなかった。 そうして目標を決めかねていると、2人組の逃走者は突然姿を消した。 「うそ!?」 通常レーダー、魔力レーダー、ジャミングのせいでノイズは酷いが共に反応なし。フォールド式の方は、ジャミングの影響かなぜか画面の全面がホワイトアウトしている。どちらにせよ行き先がわからない事実には変わりがない。 「そんな・・・・・・!」 思わず苦虫を噛んだように顔になった彼女だったが、赤い飛翔体には違ったようだ。 それは背中に担ぐ甲羅から生えた巨大な針がスパークしたかと思うと、ビームを射出した。ある世界では〝重量子ビーム〟と呼ばれるこの粒子ビームは、空中で弾ける。果たしてそこには例のシールドを展開した2人組がいた。外部マイクが1人の声を拾う。 『私の迷彩が破られるなんて・・・・・・』 実はこの時、アイくんは彼女の固有武装である〝シルバーケープ〟の光学迷彩を破ったわけではない。彼女が併用して発動させた魔力の隠密装置がいけなかったのだ。 この装置は〝フォールド波〟を応用して魔力の探知を不能にする。しかし代わりに大量のフォールド波を放ってしまうのだ。人間の使用するフォールド式レーダーでは相手側の放射量が大き過ぎてオーバーロード。一時的にホワイトアウトするはずだったので問題はなかった。しかしフォールド波を血とし、肉とするバジュラには関係ない。それどころか多すぎる放射は、よりアイくんの照準を確実なものにした。 また、ビーム出力を下げたのはアイくんの判断だ。でなければシールドなど関係なく貫通し、下界の町をも吹き飛ばしていただろう。しかし生身の人間がシールドを張るなど思っておらず、最低出力で撃ったことが仇となった。かといって出力を上げれば周囲への被害は避けられそうにない。 こうして両者が手詰まりになった所に、管理局側のセカンドストライクが入った。ヘリの急を聞いてこちらに向かっていた、なのはとフェイトが間に合ったのだ。 『トライデント、スマッシャァー!』 『ディバイン、バスタァー!』 同一直線上を対になって発砲された桜色と金色の魔力砲撃は誤たず、2人組のいた空間に着弾した。 「やったぁ!」 さくらが声を上げるが、なのはは否定する。 『違う、避けられた!』 続けてフェイトが補足する。 『直前で救援が入った。』 さくらは即座に上空で待機するAWACS『ホークアイ』に、頭部対空レーザー砲を照準。長距離レーザー通信で後を追うよう要請した。自ら探しに行かないのは、更なる懸案事項が隣に鎮座するからであった。 『・・・・・・それで、さくらちゃん。〝これ〟は何・・・・・・かな?』 なのはが油断なくデバイスを飛翔体に突きつけて、その隣を飛ぶ自分に問うた。 (*) 時系列は少し戻って三浦半島上空 そこでは勢いづいたガジェット・ゴースト連合に対してフロンティア基地航空隊の必死の迎撃が続いていた。 EMPで軌道上のAWACS及び、各機を繋ぐ統合戦術情報分配システム(JTIDS)のデータリンクを失い、乱戦になってしまっている。こうなると編隊規模ですら組織立った戦闘行動は行いにくい。参加者の誰もが相手よりよい位置に着こうと無秩序なベクトルで飛び回る空戦なら尚更である。 その乱戦の中をカナード翼も映える1機のVF-11S(指揮官機仕様)が飛翔していく。そこへ上方から飛来したゴーストがガンポッドから20mm弾を放ってくる。 「そんなとこにいやしねぇんだよ!」 ガウォークの足を展開したVF-11Sは急速に進行ベクトルを変えて回避する。未来位置を追いきれなかった敵機の火線が過ぎ去り、ゴースト自身もそのまま擦過していく。それを見届けたVF-11Sのパイロット、スコーピオン小隊隊長アーノルド・ライアン二等空尉は機体の〝足首〟を横に振って機体をハーフループさせる。続いてバトロイドに可変。狙い澄ましたガンポッドの狙撃は吸い込まれるようにゴーストの主機関に飛び込み、それを爆散させた。 バルキリー(人型可変戦闘機)という奇想天外な兵器が誕生したのは、SDF-01(初代マクロス)の本来の持ち主が巨人族である。と知れたことに端を発する。 当時、惑星間航行がやっとだった人類は慌てふためき、あらゆる局面に対応可能な装備の開発に着手した。こうして誕生したのが人型陸戦兵器(デストロイド)とバルキリーだ。デストロイドは大火力・重装甲に代表される『モンスター』やフロンティア船団で主に使われる『シャイアンⅡ』など歩兵や戦車をスケールアップしたようなオーソドックスな設計思想に基づいている。しかしバルキリーは、宇宙・大気圏内両用の軍用戦闘機から機動歩兵に変形することで多目的な任務に対応しようという野心的な兵器だった。 例えば敵陣地を制圧するにあたって、従来の方法だと、まず制空権確保のために航空機部隊が先行。対空火器や敵戦闘機を撃滅し、それから輸送機で陸戦部隊を派遣する。しかし広大な宇宙空間、さらには移動する要塞である敵母艦を制圧するにはこんな時間的余裕はない。 そこで考えた有識者達は 『ならば制空権を確保してヒマになった航空機部隊をそのまま陸戦部隊にすればよいではないか』 という結論に到達したのだ。 まったくもって無理難題に聞こえるこの結論だが、マクロスのもたらしたオーバーテクノロジーはそれをいともたやすく可能にし、開発から5年ほどで実戦に耐えうる人型可変戦闘機、『VF-0 フェニックス』や『SV-51』などを生み出した。だがこうして誕生したバルキリーは技術者や軍部が最初に想定していた以上の働きを見せた。 ライアンは即座にファイターに可変。現域を急速に退避する。すると数機のガジェットがノコノコやってきた。 (やっぱりな) バトロイドなどで減速するとガジェットは即座に集まってくる。おかげでバルキリーとは相性が良い。 彼はしたなめずりすると、鋭くUターン。慌てたガジェットが撃ってくるが、速度のついた回避運動する物体にそう簡単には当たらない。VF-11Sは密集するガジェットの中に突入する寸前にバトロイドに可変。その拳にPPBを纏わせ逃げ遅れたガジェット達を撃破していった。 数ヶ月前の演習ではシグナムとタイマンを張ったライアンにとって、これらの敵はまったく脅威足りえなかった。 そこへ、友軍からデバイスを介した短距離通信が入る。 『メイデイ!メイデイ!こちらイエロー3、ゴースト2機に付かれた!っくそ!誰か追い払ってくれ!』 ライアンの視界の端を1機のVF-1Aとゴースト数機がすり抜けていく。どうやらあれらしい。 「待ってろよイエロー3!」 ライアンは再びファイターに可変。友軍目掛けて邁進するゴーストに追いすがる。 (ったく、もっとガウォークを使えと教えただろうに!) ファイターでエンジン全開、がむしゃらに振り切ろうとする友軍にライアンは舌打ちする。 そう、バルキリーが手に入れた付与機能、それは変形である。空戦において形態を変えることによって得られる恩恵は計り知れない。大気圏内で変形することで急激なエアブレーキをかけることも可能であり、腕や足を大きく振って、その反作用で推進剤をなるべく使わずに旋回できる。また、魔導士のように武装をその腕に保持することで随時広い射角を得、足先の推進器を振り回すことで推進モーメントを変え、あらゆる方向への加速を可能にする。 その最たるものがファイターから腕と足だけを展開したガウォークという形態だ。 開発の過程おいて偶然発見されたこの形態は、一見不恰好にも見えるがその用途は十二分に広い。推進モーメントを下に集中する事によってホバリングしたり、前方に大きく足を振り出して急停止するなどのポピュラーな使い方だけではない。ある程度の速度を保ったままその腕に握る武装で全方位を射軸に収め、足を振ることで、空中においてファイターでもバトロイドでも得られないヘリのような高機動を実現することができる。 VF-0、VF-1と乗り継いだ撃墜王ロイ・フォッカーやマクシミリアン・ジーナスなど黎明期のエース達によってこの形態の運用方法は昇華され、バルキリーの代名詞とも呼ばれるに至っていた。 しかしライアンもアルトから同じような叱責を受けていたことを思い出し、『まぁ、最初はみんなこんなもんか』と経験不足な2期生に視線を送り、ゴーストを流し見た。そして瞬時に未来位置を予想すると、ガウォークでフィギュアスケートのように空を〝滑り〟、まるで魔法のように友軍とゴーストの間に割って入った。 「喰らえ!」 ガンポッドを斉射。2機の内1機の主翼に、赤い曳航を引く30mm弾が吸い込まれるように着弾して、制御不能に陥ってキリモミ落下していった。もう1機のゴーストがライアンを横切る。 「逃がさん!」 ライアンは両翼のMHMM(マイクロ・ハイ・マニューバ・ミサイル)を照準、連続発射する。都合6発ものMHMMが音速の5倍という圧倒的な速度で飛翔し、目標に接敵した。 包む爆煙。 「・・・・・・他愛ない」 彼は撃墜を確信して再び索敵に戻ろうとする。だが次の瞬間には地獄の蓋を開けたような凄まじい音と衝撃が機体を揺らし、次には爆音が轟いた。 「なん、なんだ!?」 機位が乱れてキリモミ落下を始めようとする機体を抑え込み、出力に任せて退避する。 多目的ディスプレイに表示される転換装甲のキャパシティは大幅に削られていた。 「いったい誰が!?」 後ろを振り返った彼の目に映ったのは、先ほど撃墜したと思ったゴーストだった。しかしよく見ると、ゴーストの追加装備であるガンポッドどころか外装されていたミサイルランチャーもなくなっている。どうやらこちらのミサイル回避のために装備を全てパージ。囮としたらしい。 「なんて思い切りのいいヤツなんだ!」 ライアンは思わず感嘆の声を上げた。その間もゴースト内蔵の20mm機関砲(以前は魔力素粒子ビーム機銃だったが、対ESA弾を装備するために換装された)とマイクロミサイルの嵐が彼を襲う。 彼は機体を操作してなんとか振り切るが、そいつは用意周到だった。回避した先にすでにミサイルが撃ち込まれていたのだ。対応する間もなく着弾。機体を再び激震が襲った。 (*) (なんだ。俺もやればできるじゃないか) こちらの攻撃を叩き込まれて満身創痍になった敵エース級バルキリーを眺めてユダ・システムである彼は満足した。 (小細工を使おうとするからいけなかったんだ。俺はユダ・システム、直接戦闘なら人間なんかに劣らん!) 彼は自信を取り戻し、それを見下ろした。 (*) 機体の被弾アラートがコックピットに鳴り響き、何かが焼けたような刺激臭も鼻をつく。目前の多目的ディスプレイなど〝本機は撃墜されました。脱出を推奨します〟と告げる始末だ。 しかしエンジンはなんとか稼働しているし、ライアンもその闘争心を失っていなかった。 彼は機体のシステムを再起動して正確な被害状況を把握し始める。 ガンポッド以外の武装は使用不能。レーダーはブラックアウト。『アクティブ・ステルスシステム』、『アクティブ・空力制御システム』、『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』などは軒並み沈黙していた。 しかし奇跡的にエンジンも変形機構も生きていた。 ライアンは顔を上げると、先ほどのゴーストを探す。それはまるでこちらを見下ろすような格好で無防備な機体の腹を見せていた。 (勝ち誇ってやがる・・・・・・) 本能的に彼はそのゴーストが無人機であるという先入観を捨て去った。無人機はそんな無駄な機動は行わないし、結果的にそれは正しかった。 ライアンは煙幕発生機(スモークディスチャージャー)から黒煙を吹き出させ、スラストレバーを絞って機体をふらふらと降下させた。すると彼の狙い通り故障で動きが遅くなったと見たゴーストは、ミサイルでなく機銃でトドメをさすために悠々と接近してきた。 「(かかった!)全ミサイルセーフティ解除!」 EXギアになったデバイスに命令を発して、ミサイルの信管を活性化させる。そしてゴーストの放った火線を、バトロイドに可変して紙一重で回避。そのままバトロイドの腕でパイロンに装備されていたミサイルランチャーを無理やり外して、ゴーストに投擲した。 「今だ!」 ライアンの指示と同時に遠隔操作によってランチャーに残っていたMHMMの全弾12発、都合大容量カートリッジ弾計96発が強制撃発。強力な魔力爆発が気流をかき乱し、敵ゴーストの機位を失わせた。 「当ったれぇ!」 ガンポッドが必殺の30mm弾をばらまく。照準器がイカれたため狙いはテキトーだ。 だがさっきのライアンのように勝利を確信した〝人〟は、敵の突然の反撃には脆いものだ。ゴーストはまるで人間のように驚いた挙動を見せると、逃げていった。 駆け付けた友軍機がそれを追撃していく。ライアンも追撃しようとスラストレバーを上げるが出力が上がらない。どうやら機体は本当に限界らしかった。彼は機体を降下させると、なけなしのエンジン噴射で三浦半島に着陸した。 「ふぅ・・・・・・」 思わず安堵のため息をつくが、機体の可変機構はバトロイドで固定されて、とても空戦には耐えられそうになかった。 (さてどうするか・・・・・・) そう考えながら後ろを見ると、大規模な黒煙が幾重も空に延びていた。それら黒煙の出どころは・・・・・・民家にしか見えなかった。 (畜生!これだから防衛戦は!) 吐き捨てる間にも彼の近くにゴーストが墜落。紅蓮の炎が無傷だった民家を包んだ。 「なんてこった!」 ある理由のため住民達は、家屋の内部から逃げていない可能性が高い。 そのままバトロイドで接近すると、外部マイクが声を拾った。 『お願い!─────を助けて!』 「何だって?」 ライアンはその民家の2階から、煙を避けるように叫ぶその少年をマニュピレーターで助け、コックピットに入れる。 「何だって?」 繰り返された質問に少年は必死に答えようとするが、泣き声になって聞き取れない。ライアンは彼を安心させるように抱くと、「大丈夫、大丈夫だから」と言い聞かせた。 そうしてようやく得られた情報は、あの民家の二階にいるこの子の母親が、倒れてきた家具に挟まれ脱出できないという事だった。 「わかった。大人しくしてろよ」 ライアンは少年を後部座席に座らせ、バックドラフトが起こらぬよう細心の注意を払いながら民家の壁を破壊する。しかし内部はすでに黒煙にまみれて、バルキリーからではそれより先が見えなかった。 「仕方ないか・・・・・・」 彼はキャノピーを開いてEXギアで内部に飛翔する。バリアジャケットとして機能するこのEXギアは気密が保たれており、この黒煙の中でも酸素マスクなしで入れた。 そして少年の情報を頼りに彼女を探すと、すぐにみつかった。しかしすでに大量の煙を吸い込んで意識不明だった。 「今助けるからな!」 EXギアのサーボモーターは彼の力を数倍にまで増幅し、その家具─────タンスを軽々持ち上げた。 (*) 「ありがとうお兄ちゃん!」 「ああ。次からはお前がお母さんを守ってやれよ」 「うん!」 元気よく頷く少年。その後ろでは担架に寝かされ人工呼吸器を付けられた母親が『ありがとうございます』と小さく頭を下げていた。そしてすぐさま後部ハッチが閉められた救急車は病院へと走っていった。 しかしライアンの活動は終わってなかった。後ろからかけられる声。それを発したのは災害出動していた陸士部隊局員だった。 「あのバルキリーはお前さんのか?」 陸士の指先が道路の真ん中で片膝を着いて沈黙するVF-11Sに向けられる。 「そうだ。すまない、邪魔だったか?」 「いや、重機が入れない場所があって手伝ってもらいたいんだ。大丈夫か?」 「了解した。誘導してくれ」 そう告げるとEXギアを介さない浮遊魔法で離床。続いてEXギアのエンジンで飛翔すると、頭部からコックピットに飛び込む。EXギア固定と同時にエンジンが始動し、ディスプレイとライトに光が灯っていく。 「基地に戻ったらオーバーホールの続きをしてやるから、もう少し頑張れよ」 彼の呼び掛けに応えるように、多目的ディスプレイに〝READY〟の文字が躍った。 (*) アルト撃墜後20分をピークに敵が撤退していく。 ヴァイスからAWACSからのレーザー通信によって戦闘が終わったとの知らせに、歌うのをやめ、ヘリのイスに座り込む。とても撃墜現場を返り見る勇気は出なかった。 コックピットから悲鳴が聞こえたのはその時だった。 「・・・・・・どうしました?」 しかしヴァイスには見たものをどう表現していいかわからないらしく 「すまない、来てくれ」 と返してきた。 (なんだろう・・・・・・) そうお思いつつも、重りでも付けられたのではないか?と思う程重い腰を上げ、キャビンからコックピットに向かった。そこで見たものは、なのはとフェイトによって幾重ものバインドで固められた成虫バジュラの姿だった。 「アイ、くん・・・・・・?」 何故だかわからないが、一瞬でわかった。そうわかるとデバイスを再起動し、マイクでなのは達に呼び掛ける。 「バジュラを、アイくんを放してあげて!」 フォールド波を介した声は即座になのは達の元に届く。なのはは拘束をフェイトに任せると、こちらへ飛翔してきた。 「ヴァイスさん、後ろのハッチを開けてください」 「お、おう」 ヴァイスの操作によって後部ハッチがモーターの軋み音とともに開いていき、吹き込んでくる冷たい強風に交じってなのはが乗りこんでくる。 「アイくんってリスみたいのじゃなかったの?それにバジュラって危ないんじゃ─────」 走り込んできたこちらになのははそう言い訳する。言い分を聞く限り、どうやら情報の伝達に齟齬があったようだ。 「アイくんは・・・・・・ううん、バジュラはね、そういう悪い生き物じゃないの!」 気が付くと必死にバジュラを、そしてアイくんを弁護していた。惑星フロンティア奪取作戦で、そして1年とアイくんと過ごした半年余りで知りえた〝バジュラ〟という生き物を。具体的にはアイくんはバジュラであり、手乗り小動物だったのは1年以上前の話であること。でもバジュラは決して好戦的な悪い生物ではなく、以前人間を襲ったのは誤解であり、自己防衛であったことなどなどだ。 (これ以上なにも失くしたくない!) その思いでいっぱいだった。 時空管理局には極端に保守的なところがある。一度危険と思うと、もうその判断はめったなことでは覆さない。例えば元夜天の書の主、八神はやても実は今でも完全には信用されてなかったりしている。 この世界に来て日も浅く、少しおこがましいと思うが、彼女がいない会議の席で何度か庇ってあちらの無理な命令を撥ねさせたり、こちらの要求を通させたりしていた。はやてもそれを知ってか知らずか、よくしてくれているので、お互い持ちつ持たれつなのだと思ってる。 管理局に青春を捧げる少女ですらそんな扱いなのに、アイくんは管理局にとっては質量兵器にしか映らないだろうし、その行動を理解してくれない可能性が大いにある。なにしろあのOT、OTM(オーバー・テクノロジー、オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)を結集したようなギャラクシー船団を壊滅させた生き物なのだ。その噂は何人か来ているという第25未確認世界の住人から筒抜けだろうし、最悪殺処分、もしくは厳重に封印されてしまう。アイくんにそれに抵抗するななどとはとても言えない。となるとそれまでに管理局側に壊滅的打撃を与えるであろうことは自明なことだった。 アイくんだけでなく六課のみんななど、失いたくないものは無数にこの世界にもできてしまっていた。 真剣に安全を主張するこちらに根負けしたのか、なのはが頷く。 「・・・・・・わかった。でも念のためバインドは外せないよ」 「それは仕方ないかもしれませんね・・・・・・」 そしてなのはとフェイトの監修の元、ヴァイスに頼んでヘリを寄せてもらう。 「アイくん、私だよ!わかる!?」 渾身の声で呼びかけるが、腰に付けた命綱でお腹を押さえられて声はまともに出ないし、ヘリのローター音で自分の耳にすら届かない。しかしフォールド波を通して感じたのか、アイくんは唯一動く首をこちらへと動かして応えた。 直後、腸内(バジュラ)ネットワークを通じてアイくんの感情が流入してくる。それは「会えて嬉しい」という類いのものだった。 (よかった・・・・・・いつものアイくんだ) そんなかつての小動物に愛くるしさが込み上げ、その頭を撫でようと手を置いた。 驚くべき事態はその瞬間訪れた。 光る手首。 そこにつけられたブレスレット型のデバイス『アイモ』が勝手に稼働を始めたのだ。 「・・・・・・え?」 血を抜かれるような肌寒さを伴って魔力が強制的に引き抜かれ、自分の魔力光であるエメラルド色の光がアイくんを包み込んでいく。 「ちょ、ちょっと待って!どういうこと!?」 デバイスに問うが、デバイス側は念話によって『I can t answer.(解答不能)』の音声を繰り返すだけだった。 (*) エメラルド色の眩い光がアイくんを包み、その姿が完全に隠れてしまう。 一同固唾を飲んで見守る中、その光が突然四散した。しかしそこにいるはずのアイくんの姿はなく、金色と桜色のバインドが空中に空しく漂っているだけだった。 (消滅?) 誰もが息を呑んだが、本当は違った。 「・・・・・・ん、あれは─────」 フェイトが何か見つけたのか、超高速移動魔法を起動し急降下。そして「キューッ」と鳴く〝何か〟を、地面に落ちる寸前に抱き止めた。 「・・・・・・あら、あなたがアイくん?」 腕の中で丸くなった緑色した生物は、間違いなく、かつての手乗り小動物の姿だった。 ―――――――――― 次回予告 燃え上がる市街地 出てしまった死傷者 救助活動に参加したスバルは何を思うのか? そして八神はやては、なぜ戦線に参加しなかったのか? 次回マクロスなのは第30話『アースラ』 「本艦をバルキリー隊の移動航空母艦として運用する!」 ―――――――――― シレンヤ氏