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此処はゆりかご内の施設、大きなモニターの前にレザードとスカリエッティは席を置きチェスを嗜んでいた。 彼等の後ろではウーノとクアットロがガジェットに情報を送っており、 大きなモニターにはリニアレールが映し出されていた。 その中でスカリエッティはポーンを動かしレザードに問いかける。 「どうだろ今回の作戦は……うまく行くと思うかね?」 「……まぁ無理でしょう、十中八九あの六課が動くのは間違いないでしょうし」 顎に手を当てながら即答するレザード、六課の事はドゥーエから聞いており、その戦力は常軌を逸しているという。 今度はレザードがポーンを動かし問いかける。 「もっとも…それを見抗して、あのようなメッセージを刻んだのでしょ?」 「フッ…まぁね」 スカリエッティは笑みを浮かべ今度はナイトを動かし答えた。 「今回は宣戦布告の意味も込めているからね、レザード…君もそうなんだろ?」 「まぁ、否定はしませんよ」 眼鏡に手を当て不敵な笑みで答えるとポーンを動かすレザードであった。 リリカルプロファイル 第十二話 布告 現在、なのはと新人達はヴァイス陸曹がパイロットを務めるヘリで事件現場へと向かっていた。 今回の事件の発端はロストロギアであるレリックを運搬していたリニアレールが、 ガジェットに襲われていると報告を受けた為、六課は速やかに現場へと向かう事となったのだ。 ヘリの中では、なのはを筆頭にモニターを使った作戦会議が行われていた。 映像の上空にはガジェットⅡ型が犇めき合い、車両にはガジェットⅠ型が取り付いていた。 ガジェットドローンⅡ型、前翼機の姿をした空戦型のガジェットで、一般の空戦魔導師と変わらない航行速度を持つガジェットである。 話は戻りガジェットⅡ型は、なのは及び現場で合流予定のフェイトによって応戦、 残りの新人達はリニアレールに取り付いたガジェットを撃破しつつ、レリックを回収するという作戦を立てた。 各々が作戦を確認する中、キャロ一人だけが不安を抱いていた。 それは自分の内に存在する能力の事である。 キャロの能力は竜使役と呼ばれる、その名の通り竜を使役する能力で、 わずか六歳で白銀の飛竜を従わせる程の実力を持っていた。 だがキャロの力は周りの人を傷つけるだけだと部族の仲間から言われ続け、部族から追われる形で追放されたのだ。 その後管理局に保護されるのだが、強力な竜の力を制御できないキャロに、管理局も手を拱いていた。 管理局は殲滅戦による投下以外に役に立たないとキャロにレッテルを張ると、 フェイトが保護責任者として名乗り出てキャロを引き取ったのであった。 部族からの追放以降、キャロは自分の力で仲間を傷つけ、全てを殲滅させるのではないかと、恐れを抱き自分の力に目を背けていた。 そんなキャロの不安さを感じ取ったなのはは、そっとキャロの肩に触れ激励を込める。 「キャロの魔法はみんなを守ってあげられる、優しくて強い力なんだから」 その暖かい言葉にキャロは励まされ、みんなの役に立つ為に自分の力と向き合おうと決心するキャロであった。 その間にヘリは現場に到着、ヘリの後方が開くとそれぞれ降下し、作戦は開始した。 暫く経ち、現場から数キロ離れた森の上空、ここでルーテシアは一人モニターを見つめていた。 モニターにはガジェットが次々と落とされている様子が映し出されていた。 その中でモニターの右上にレザードの顔が映し出される。 「首尾はどうです?ルーテシア」 「博士……見ての通り悪い…」 レザードは眼鏡に手を当て当然か…といった表情を醸し出していた。 そしてレザードは第二陣としてルーテシアに不死者召喚を指示すると、ルーテシアは頷き準備を始めた。 ルーテシアは目をつぶり右手を下にかざし五亡星の陣を張ると詠唱を始めた。 「我は悠久の刻の渦中に身を委ねし者…其は我が名を知るがよい…知らぬ者は己が痴れた者と知るべし…… そして刻め…我が名はルーテシア・アルピーノ…其の名は冥王の烙印と化して其に裁可を下すだろう…… 魂の救い与え賜う事を乞うならば…今一度此方へと集うべし……」 長い詠唱の後、森の中に五亡星の陣が現れ陣からは猿の不死者ギボンが十体、 更にルーテシアの左右に五亡星の陣が現れ陣から魚の不死者カーレントフィッシュと、 鳥の不死者バーミンをそれぞれ十体、合計三十体の不死者を召喚させた。 「上出来です、ルーテシア」 「でも博士……下級クラスの不死者でいいの?」 「えぇ充分でしょう」 相手の戦力を、力量を、そして相手に対し宣戦布告を促すには充分だとレザードは内心で呟いた。 そしてルーテシアは不死者達にレリックの回収を命令すると、 カーレントフィッシュは泳ぐように向かい、 バーミンはギボンに向かって急降下すると、ギボンはバーミンの足をつかみ そのままバーミンはギボンを持ち上げ現場へと飛んでいった。 場所は変わり此処は六課の司令部通称ロングアーチ。 中には大きなモニターが幾つかあり、モニターには各前線メンバーがガジェットを叩き落としている映像が映っていた。 はやてはその光景を見ながら、新人達の訓練の成果は充分に出ていると考えていた。 車両に乗り込んだスバル・ティアナは次々にガジェットを撃破しレリックまで後僅かであるし 車両の屋根に残ったキャロは自分の力と向き合い、竜魂召喚を行ってフリードリヒを本来の姿に戻し、更にその力を操っていた。 エリオはキャロの支援魔法を受け大型のガジェットIII型を撃破など数々の戦績を残していた。 なのは、フェイトの両名も次々にガジェットを撃破し、 作戦もそろそろ終わりに差し掛かった頃、急にオペレーターが慌ただしく状況の変化を説明をする。 「レーダーに反応!これは………アンノウン!?数は三十!!」 「なんやて!?何処に向かっとるか分かるか?」 「待って下さい、この方向は……リニアレールの方向です!」 となると十中八九レリックを狙っているガジェットだと考えるが、アンノウンだと言う事は 新たなガジェットの投下という可能性があるとはやては示唆し、早急に前線チームに情報を送るよう指示をした。 一方前線チームはガジェットを全撃破し、レリックの回収も終了していた。 なのはとフェイトは新人達に激励を送っているとロングアーチから連絡が入り、なのはは新人達に連絡を伝えた。 「スターズ1から各隊員へ、今から此処にアンノウンが来るよ、その数は三十、みんな気を引き締めて!」 ロングアーチの話だと新たなガジェットの可能性があると、 そして今此方に来ているアンノウンはレリックを狙っていると説明する。 するとティアナはスバルに注意を促した、今レリックはスバルが持っているからだ。 キャロもエリオもその場で待機し、なのはとフェイトも上空で待機していると、 遠くに影のような物が近づいてくるのが分かった。 各隊員は気を引き締めていると影は大きくなりサーチポイントまで近づくと唖然とした。 その頃ロングアーチにいたはやて部隊長は、アンノウンの映像を見るや否や思わず叫んだ。 「何やねん!何で魚が飛んどんねん!つか、なんで猿が鳥にぶら下がってん!サーカスかぁ!!」 立場を忘れ思わずツッコむはやて、ハッと我に返り一つ咳をすると、はやては分析班にアンノウンの分析を指示した。 一方現場ではメンバーが呆気にとられている内に、魚がリニアレールの窓めがけて突進、窓を突き破り進入した。 それを皮切りに猿が反動を付けて車両の屋根に飛び移り、猿を運んだ鳥はなのは達に向かい襲いかかっていった。 「各隊員!見た目はあれだけど、レリックを狙っているのは間違いないから!各個撃破を!」 なのはの指令に気を取り直し攻撃を仕掛けるメンバーであった。 リニアレール内ではスバルがマッハキャリバーで加速し拳に魔力を乗せ、力一杯魚を殴った。 ナックルダスターと呼ばれる打撃魔法である。 魚はなす統べなく連結扉に叩き付けられ地面に落ちる、しかしすぐに起きあがると、スバルに襲いかかった。 「そんなっ!!」 スバルは困惑していた。何故ならば今の一撃は並の魔導師ならば一撃で気絶する代物、しかも手応えもあったのだ。 それなのに平然と起き上がり何事も無かったかのように襲い掛かる、そんな異様な状況にスバルは畏怖を感じていた。 一方ティアナは障害物を盾に必死に魚と応戦をしていた。 その中、魚は口から泡を六弾ずつ吐き出してくる、ティアナはクロスミラージュで一つずつ丁寧に撃ち落とし、魚本体にも気絶する数の魔力弾を撃ち込んだ。 魔力弾を撃ち込まれた魚は床に落ちるが、すぐさま起き上がり攻撃を仕掛けてくる。 「どうなってるの!?手応えはあったのに!」 クロスミラージュも本来なら気絶する魔力弾を撃ち込んでいると説明するが、現状は全く打破されていなかった。 その中一つの泡が隣の木箱に触れると炸裂し木箱は中身ごと吹き飛んだ。 ティアナは絶句した、こんな物が直撃すれば、いくらバリアジャケットを装着してあったとしても怪我だけでは済まされない。 ティアナは舌打ちをしながら飛んでくる泡を迎撃しながら次の車両へと移動した。 「エリオ君!」 「キャロはフリードと一緒にいて!」 一方、車両の屋根ではエリオが猿と対峙していた。 猿の動きは思いの外鈍く、ソニックムーブを使うほどではなかった。 だが腕力は高く屋根をへこませる程であった。 しかし今のエリオにはとるに足らない相手ではあった。 「ストラーダ!カートリッジロード!」 槍型アームドデバイス、ストラーダがカートリッジを一つ使用すると、エリオの足元に三角の魔法陣が現れる。 エリオは矛先を猿に向けると矛の端から魔力を噴射しロケット弾の如き加速で突撃、 矛先が猿の横隔膜辺りに突き刺さるとそのまま持ち上げ、他の猿の仲間に投げつけた。 エリオの魔法スピーアアングリフは確実に猿を気絶に追い込む一撃を与えていた、だが猿はすぐに起きあがり、エリオに襲いかかる。 「くっそ~またか!もしかして不死身なんじゃないか…」 鼬ごっことも言える攻防戦にエリオは疲れを見せ始めていた。 そんなエリオの上空ではキャロがエリオの身を案じていた。 それと同時に猿を観察していると、何か違和感を感じていた。 その中フリードがキャロに悲しみと恐怖が入り混じった様子で話しかけて来た。 「えっ彼らは死んでるって!?」 フリードによれば猿は生気もなく意識も無い、つまり死体だと説明する。 ならば死体を操ってレリックを回収しようとしている者がいるとキャロは考えた。 だが、そんな人物は本当に存在するだろうか?寧ろこの情報をフェイト達に教えても理解してくれるだろうか。 だが、今の状況ではこれしか判断できないと考えたキャロはフェイトに念話を送った。 一方上空でも、なのはとフェイトは戸惑っていた。 なのははアクセルシューターで、フェイトはハーケンスラッシュで次々と鳥を撃破するが、 地面スレスレで意識を取り戻し、すぐさまなのは達に攻撃を仕掛けてくるのだ。 これでは埒があかないとなのはは愚痴をこぼしている時、フェイトはキャロからの念話を受信する。 (…どうしたの?キャロ) (…フェイトさんにどうしても伝えたいことがあって……) キャロの話に思わず動きを止めるフェイト、その隙をついて鳥は攻撃を仕掛けようとするが、なのはのフォローにより難を逃れた。 「どうしたのフェイトちゃん!動きを止めて!」 「ゴメンなのは、ちょっと動揺して…」 フェイトは気を取り直し、キャロにその内容をロングアーチに伝えるように指示した。 一方ロングアーチではキャロの話に衝撃を受けていた。 「んで何か?アレはゾンビっちゅう訳か?んなホラーじみた話――」 「あながち否定出来ないと思われます」 はやての否定に間髪入れず分析班が割り込んで答えた。 分析班の映像による分析では、アンノウンの肉体は呼吸などの生命活動を行ってない、つまりは死体当然だと説明する。 そしてその肉体をリンカーコアによって維持している可能性があるらしいのだが、 そのリンカーコアは暴走状態になっており、暴走状態によって作成した魔力で肉体の強化をも行っていると語る。 現場の状況、キャロの話、分析班の説明それらは、はやてを納得させるには充分な情報であった。 確かに死んだ肉体では非殺傷設定の攻撃は効くはずがない… 何故ならば魔力に幾らダメージを与え気絶させようとしても死体に意識など元から無いのだからだ。 更にリンカーコアの暴走によって魔力はすぐに回復する為、すぐに行動を開始する事ができる。 ならばアンノウンを撃破するには一つしかない、だが今の新人達に出来るだろうか… はやては不安を持ちつつ前線メンバーに指示を促した。 「えっ!非殺傷設定解除による攻撃!?」 「せや、今んとこあのアンノウンを撃退するにはそれしかあらへん」 はやての指示に新人達は戸惑いを見せていた。 その様子を見たなのはは新人達にこう命令した。 「よし!みんなは前線から離れて、後は私とフェイトちゃんがやるから!」 いくら命令とは言え、いくら相手が死体当然とは言え、 命を奪うような行為はさせたくないとなのはは考え命令を下したが、スバルはその命令に反発する。 「私達なら大丈夫です!」 「でもスバル…」 「確かに本音は嫌です…でも!だからと言って なのはさん達ばかりに重荷を背負って貰う訳にはいきませんから!!」 スバルの言葉に皆が頷く、その光景を見たなのはとフェイトは思わず笑みを浮かべた。 スバル達はきちんと強くなっている、技術面だけじゃない精神面も… そして一番新人達を信じていなかったのは自分じゃないか… そう思うと自分の頭を叩きフェイトと目を合わせ頷くと命令した。 「分かった…スターズ1から各隊員へ!アンノウンを撃破!」 『了解!!!』 なのはの命令に力強く答え、アンノウンとの戦闘を開始した。 リニアレール内、スバルは魚に向かってナックルダスターを放つ。 ナックルダスターは魚の胴体を捉え、 口から血を吐き出し窓に叩きつけた。 辺りにグシャッと肉が潰れる音が響き渡るが、スバルは気にも止めずリボルバーナックルから一つカートリッジを消費すると、 スピナーが回転し拳に衝撃波が集まると振り返り撃ち抜く。 「リボルバーァァァァシュュュュュトォ!!!」 拳が乗った衝撃波は真っ直ぐ突き進み、魚を三匹巻き込んで窓を突き破った。 三匹の内二匹は衝撃波に巻き込まれバラバラとなり、残り一匹は下半身のみを巻き込んで倒れた。 上半身を残した魚は、光の粒子に変わり消滅、窓に叩きつけた魚も同様に消滅した。 スバルは残り一匹に目を向け、拳を握った。 一方ティアナはスバルがナックルダスターで魚を撃破していた頃、魚を一匹撃破していた。 撃破後、魚は警戒した為か一斉に泡を吹きだし、ティアナはダブルモードで迎撃を行っていた。 すると魔力弾が空になりカートリッジもゼロになると、 カートリッジバレルを排出し障害物に身を潜めバレルを交換する。 そしてカートリッジをロードすると足下に円陣が現れ更にティアナの周りにオレンジ色の魔力弾を構築させる。 「クロスファイア……シュートォ!!」 次の瞬間、クロスファイアが魚に襲いかかり頭を吹き飛ばす。 魚は泡で迎撃を行ってみるも、難なく避けられ次々に魚を光の粒子に変えていったのであった。 一方リニアレールの屋根の上では、キャロが猿に対しアルケミックチェーンで動きを止め、フリードに命令する。 「フリード!ブラストレイ!!」 その命令にフリードは雄叫びをあげると、口から紅蓮の炎を放射 炎は猿に直撃すると消し炭になるまで猿の肉体を焼いた。 消し炭となった肉体は光の粒子となって消滅、辺りには肉を焼いた匂いだけが残っていた。 一方エリオはスピーアアングリフでフリードリヒに乗るキャロの所まで跳ぶと、 キャロに先ほど行ったツインブーストをもう一度かけて欲しいと頼むとキャロは快く応じる。 ツインブーストを受けたエリオはカートリッジを消費し、魔力刃で構成された矛先を猿に向けると気合いを込めて叫んだ。 「スタールメッサー!」 エリオは矢の如き加速で突撃し猿の頭を捉えると魔力刃を縦に切り替え腹部まで切り裂き、更に右に振り抜いた。 振り抜いた先には猿が両手を組み振り下ろそうとしているが、 エリオはストラーダの魔力刃で両腕を切り落とし、更に頭を切り落とした。 更にエリオに迫ってくる猿に対し、右払いで攻撃、猿の肉体は上半身と下半身に分かれた。 すると切り裂いた猿から大量の血が吹きだし、それは血の雨となってエリオの頭上に降り注ぐ。 だが猿の肉体が粒子化すると同時に、血も光の粒子に変化し消滅した。 「……ゴメン」 小さく呟くように猿達に謝ると次の標的に目を向けた。 リニアレールの上空、なのはとフェイトはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで撃破していた。 その中ロングアーチから連絡があり、アンノウンを二~三羽捕縛して欲しいと指示を受けた。 どうやら今後の対処のためのサンプルとしてのようだ。 なのは達は了解すると残り四体の内、二体をなのはがレストリクトロックで縛り上げ、 残りの二羽をフェイトがハーケンスラッシュで撃破した。 「…不死者、二体捕縛されたの以外全滅……」 「そうですか…ではルーテシアはもう戻ってきていいですよ」 「いいの?」 これ以上の戦力の投下は無駄だとレザードは判断し、ルーテシアはそれに従いその場を転移した。 レザードはルーテシアとの連絡を切るとチェスに目を向け顎をなでる。 するとスカリエッティが問いかけてきた。 「不死者…捕縛されたみたいだね」 「えぇ…ですが問題ありませんよ、想定の範疇でしすし、所詮はただの捨て駒です」 「…成る程、つまりあれがレザードの宣戦布告と言うわけだね」 「えぇそうです……これでチェックメイトです」 「なにっ!?」 眼鏡に手を当て笑みを浮かべ宣言するレザード。 スカリエッティはチェスの盤をじっくり眺め、挽回出来ないかと探してみるものの結局見つけられず、 お手上げの表情で敗北を認めたスカリエッティであった。 リニアレール事件から一夜開け、今回回収したガジェットの分析待ちをしているフェイトは、 シャーリーと共に先日の戦闘データを纏めていた。 その中で一つ気になる映像を発見した、それはエリオがガジェットIII型を撃破している映像で ガジェットの内部を拡大し解像度を上げると、内部に組み込まれた青い結晶を発見する。 「これは?」 「…間違いない……ジュエルシード」 かつてなのはと対峙し、自分にもっとも関係しているロストロギア。 すると分析班から報告書が届き目を通す。 ガジェットは市販されたパーツを改造したものが殆どであるが、 その中にJ.Sと刻まれたプレートが存在していたという。 フェイトは納得した表情を見せるとシャーリーから端末を借り映像を映し出す。 モニターには白衣を着た紫の髪の男性が映り出していた。 ジェイル・スカリエッティ…生命操作や生命改造、精密機械などを手掛ける科学者で 広域指名手配を受けている次元犯罪者でありフェイトが追っている犯罪者でもあった。 「ガジェット、ロストロギア、J.Sと刻まれたプレート、間違いなくこれは………」 モニターを睨みつける様に見つめフェイトはこう言い放った。 ―――これはスカリエッティの宣戦布告であると――― 前へ 目次へ 次へ
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■Nintendo DS Top | 目錄 | あ行 | か行 | さ行 | た行 | な行 | は行 | ま行 | や行 | ら行 | わ行 ■ヴァルキリープロファイル ―咎を背負う者 VALKYRIE PROFILE 背負罪咎的人 ■「攻略・參考」資料 □DS版 ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者 攻略wiki ■「裏技・攻略」情報 ●爆機特典 遊戲 特典 本篇 ‧繼承遊戲武器、防具、道具、所學SKILL、CP、遊玩時間;‧但不包括金錢、所學魔法。‧追加一行BATTLE SKILL 格(最多5格)。 到達全部3個結局後,追加隱藏關卡Seraphic Gate Seraphic Gate 完成十次寢可得武器「咎人の剣“神を斬獲せし者”」 Top | 目錄 | あ行 | か行 | さ行 | た行 | な行 | は行 | ま行 | や行 | ら行 | わ行 ■Nintendo DS
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【ゲーム】ヴァルキリープロファイル(PS) 【作者名】芋子 【完成度】更新中(08/09/05~) 【動画数】 【part1へのリンク】 【マイリストへのリンク】http //www.nicovideo.jp/mylist/8249172 【備考】 名前 コメント
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■渡邉文男氏(BOSS)のプロフィール(噂の真相より) 1959 福岡県田川市に生まれる 1978 愛知県豊明市 星城高校普通科卒業 1978 中京コカ・コーラボトリング(株)入社 1981 父 一真氏死亡 1982 23歳でT子さん(24歳)と結婚 1983 中京コカ・コーラボトリング(株)退職 1984 1月売春防止法違反で逮捕(愛知中村警察署) 同年2月 名古屋から上京 新宿歌舞伎町で便利屋を始める 同年10月 武蔵野市にあった(株)フジテクノを(株)日本ファーストリサーチに商号変更し六本木に移転(取締役となる) 1985 3月取締役だった渡邉氏が代表取締役に就任 同年6月 T子さんと離婚 同年2~10月 風俗情報誌・タウンページに(株)日本ファー~名で「親子2代の探偵社」「調査員は守秘義務者(国家資格)」といった虚偽広告を掲載 1986 3月H子さん(18歳)と結婚 同年8月 H子さんと協議離婚 1987 5月恐喝未遂罪で逮捕(東京野方警察署)一部新聞・フライデーで報じられる 1988 6月(株)日本ファー~の商号を(株)オークラプロテックと変更 1989 フライデー誌にオークラ調査事務所が始めた探偵学校の記事が掲載(ガルエージェンシーの営業案内にはこの年探偵術の奥義を究めるために渡米とある) 1990 4月逮捕監禁・恐喝罪で逮捕(東京渋谷警察署) 1992 8月R子さん(20歳)と結婚 同年10月 探偵学校ガル・ディテクティブ・スクール開校 1993 5月R子さんと協議離婚 1994 7月大徳直美さん(24歳)と結婚(現 ガル代表) 同年6月 6月(株)オークラ~をセブンギアーズ(株)に商標変更 1995 6月セブン~を現在のガルエージェンシーに商号変更 同年2月 全国規模の支局開設事業に着手
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…今回ミッドチルダに起きた未曽有の災厄、それは二人の天才の手によって齎された事件であった。 …世界は崩壊し全てが次元振に飲み込まれて消え去る、人々は恐怖し絶望していた。 …だが此処に世界を救わんと立ち向かう一人の女性がいた。 ―――その女性の名は…高町なのは、管理局が誇るエースオブエースである――― リリカルプロファイル 最終話 後継 今回の事件、後に人々は二人の首謀者の頭文字をとりJ・L事件、または神々の黄昏ラグナロク大戦と呼び、 ミッドチルダの歴史に深く刻まれ未来永劫、忘れ去られる事の無い事件となった。 また首謀者の一人と対峙し、文字通り命を懸けて戦ったなのはも、英雄として崇められその名を歴史に刻まれる事になった。 …時はラグナロク大戦が終わって間もない頃、本局は避難した住民をミッドチルダに解放、 また同時にミッドチルダの復興を宣言するが人々からはあまり賞賛される事は無かった。 何故ならば大戦中の本局の対応が余りにも保守的であり、また住民への対策・対応も杜撰であった為だ。 其処で本局は失った信用を取り戻す為、更には本局への憂いを払拭する為に今回の事件の功労者を表彰する事を決定、 そして地上本部所属機動六課部隊長八神はやて二佐、本局所属クロノ・ハラオウン提督の両名を呼び出し はやては二階級特進の少将、クロノは今まで不在であった大将を与え大いに賞賛した、しかし二人の表情からは喜びの色を読みとる事は出来なかった。 更に本局は今回の実績を踏まえ、はやてを本局に戻すという試みを行ってみたのだが、 はやてはミッド復興並びに地上本部の立て直しを優先と考え受け入れを拒否、引き続き地上本部に残る事を選んだ。 一方でクロノは新たに得た地位を利用してある法案を提出する、その名も魔導師及び魔法技術独占禁止法である。 今回の事件で魔導師という存在を改めて考えさせられる事となり、また魔法技術の独占が世界を崩壊する引き金になるきっかけの一つと判断、 魔導師と魔法技術更にロストロギアの集約を防ぐ一つの抑止力として、この法案が考え出されたのだ。 その内容とはAAランク以上の魔導師に対して能力リミッターを義務つけ、更に能力リミッター前つまりは元々のランクを基準とした規定数以上魔導師の保有の禁止、 またアルカンシェルや収束技術などの一部の魔法技術を禁止すると言うものであった。 結果、この法案は受理され管理局並びに聖王教会はこの法により幾つかに分断、管理機構または準ずる会社などが設立する事になった。 だが、そうなると管理局を含め魔導師や魔法技術などの管理状態を調査する組織が必要となり、 クロノは魔導師や魔法技術並びにロストロギアに関する調査機関を設立、 メンバーには聖王教会からアリューゼを管理局からはヴェロッサを抜擢し、二人を中心として シグナム、シャッハ、ヴァイス、アルト、ルキノなどを組み込み更に民間からの人材も採用した。 一方で今回の法案によって設立した機構や会社または調査機関なども含め、 上層部の殆どが管理局並びに聖王教会で構成されている為に、一部マスコミメディアから天下り先との痛烈批判を受けるが、 調査機関は後の功績や対応などにより批判を払拭、寧ろ周囲から高評価を受ける事となっていった。 一方機動六課はミッドチルダ復興並びに新たな法案などによって解散、それぞれの別の道を歩む事となり スバルは本人の夢であった特別救助隊に配属、ミッドチルダ復興に一躍を担っていた。 ティアナはフェイトの抜擢を受け執務官補佐として部下になり、自分の夢を叶える為に管理局本局に滞在する事となった。 一方でキャロは元にいた自然保護隊に戻りエリオもまた同じ自然保護隊へと希望配属、キャロと共に竜騎士となって密猟者の摘発や自然保護業務に勤めた。 ヴィータは現役を引退、そして元々から持つ戦技教官の資格により、管理局を退社後教官として民間の訓練学校に就職する事となる。 …だが彼女の訓練は熾烈を極め“赤鬼の教官”と呼ばれる事になるが、 同時に彼女に指導された者は例外無く優秀である為、“エースを育てる者”と言う二つの名で呼ばれる事になる。 続いてシャマルであるが大戦後すぐ管理局を退社、聖王教会がかつて保有していた聖王医療院に再就職し カウンセラーとして大戦中に受けた住民や局員などのトラウマのケアを承る事となり、 ザフィーラは聖王教会に戻りカリムの思いを受け止め、今日も小犬となって膝の上で過ごしていた。 一方でフェイトは大戦後のショックにより仕事に手が付かず暫く籠もる毎日が続いていたが、 …このままではいけない、こんな姿を見せれば怒られてしまうだろう…そう考えを改める事で 踏ん切りが付いたのか現役に復帰、早速ティアナを抜擢して執務官としての仕事を黙々とこなす日々を送っていた。 続いて今回の事件に関わった者達の処分である、今回逮捕されたナンバーズの内、トーレとセッテのみ更正プログラムを拒否、 更に捜査協力による刑期短縮も拒否した。 理由として共に「敗者には敗者なりの矜持がある」と言うものであった。 しかもトーレにおいては戦闘で失った両腕の治療すら頑として拒否しており、 結果的に妹であるセッテに自分の身の回りの世話をして貰う事となった。 だがセッテもまたトーレの身の回りの世話を率先して行っていた、理由として今まで姉であるトーレに目をかけてくれた為、 今度は自分が恩返しと言う意味で世話をするとの事であった。 一方で他のナンバーズは姉であるセインとディエチがまとめ役となって更正プログラムを承諾、 かつての“姉”であったギンガがナンバーズの指導員を買って出た。 その後、ギンガが指導員を請け負った為か更正プログラムを無事に完了、ナンバーズはそれぞれの道を歩む事となる。 セインは一度聖王教会に配属したが、後の妹達の行動を再確認して充分に世間に馴染みまた、自立したと思えるようになり 踏ん切りが付いたのか聖王教会を離脱、今は一人の“人間”として生活を送っている。 …とは言え数年後、彼女に身に途轍もない大きな転機が起きると言うのはまた別の話である… 次にオットーとディードは更正後同じく聖王教会に配属、カリムが保護責任者として名乗りを上げ、聖王教会で幾度かの事件仕事をこなしていく事となる。 続いてウェンディであるが、更正後は一度聖王教会に配属するが保護責任者で父でもあるゲンヤのアドバイスもあって地上本部に移籍、 スバルと同じ特別救助隊に配属が決まり暫く滞在していたが、またもや異動、本局の執務官しかもフェイトの部下として世界を飛び回る事となった。 そしてウェンディは相棒にティアナを希望、二人の相性はよい為かそれからは長年のパートナーとして様々な事件を解決する事となる。 …その事に対して姉であるスバルは複雑な心境を浮かべていたようであるが…… さて…そして残りのナンバーズのノーヴェ、ディエチ……そしてチンクのその後であるが、 彼女チンクは運ばれてすぐに様態を調べられ、結果スバルの振動エネルギーを含んだ攻撃をその身に浴びた為か リンカーコアとレリックが破壊されていたがそれ以外は異常が無いと、この時点では判断された。 そして治療後眠りについたままのチンクを暫くナンバーズのノーヴェが付き添っていたのだがその後に目を覚まし、 この時丁度よく周囲には見舞いに来たナンバーズがおり、安堵の表情を浮かべるがすぐに豹変する、 何故ならばチンクは自分の名前以外は一切記憶を持ち合わせていなかったからだ、恐らくはスバルの攻撃による後遺症であろう。 一方でこの結果を耳にしたゲンヤは、自分の娘によって起こされた悲劇を償うかのようにチンクの保護責任者を買って出るがノーヴェが拒否、 寧ろノーヴェがチンクを自分の“妹”として面倒見ると宣言した、今までチンクから受けた恩を返す為のようである。 だが記憶を無くしてもチンクの罪は当然消えることは無い、するとノーヴェはチンクの分まで任務を全うとすると宣言しディエチもまた賛同、 二人でチンクの分まで刑期短縮を行い、数年後三人は“姉妹”として一緒に暮らす事となったのだった。 一方ルーテシアであるが、年齢・経歴を考慮して死罪は免れたが大量に人々を殺害した事実は揺るが無い為、当然の如く禁固数百年の刑を処される事となった。 だがクロノ大将が管理局に協力すれば刑を減らす事が出来る制度を持ち掛け暫く考えた後に了承、 それ以降管理局に身を捧げる事となった、だが本局には母であるメガーヌ、無限書庫では義理の姉メルティーナも会える為余り苦では無さそうであった。 …今回の法案の成立によって管理局、特に本局の体制も変わり特に変わったところと言えば無限書庫が独立の機関となった事である。 無限書庫の司書長を勤めるユーノはこの法案をきっかけに、以前から暖めていた独立機関案を成立させたのだ。 その為、民間企業となった無限書庫の情報を提供してもらう際にはそれ相応の金額が必要となり、また危険な情報や魔法技術を封印するという役職も担っていた。 …数年後、無限書庫の存在は世に知れ渡りその後超法規的処置を受け、唯一魔法技術の集約を許された機関となる。 だが無論、世論は目を光らせており、調査機構にもまた目を付けられている為複雑な心境のようであるが… ……大戦から十三年後の春、此処は第97管理外世界に存在する海鳴町、中心部はビルが建ち並ぶが周辺は海や山に囲まれ自然が多く残されていた町である。 そんな町の高台には霊園があり、周囲は桜が咲き乱れ目の前には海を覗かせており、大小様々な墓石が連なるその場所で一つの墓石に目が向けられる。 墓石には高町家と名が刻まれており、側面には葬られた人の名と日が刻まれてあり、桜を模した花と線香が手向けられていた。 その墓石の前に一人の女性が祈りを捧げていた、服装は桜色のシャツに白を基調としたパーカーを羽織り 首元には赤く丸い水晶が付いたネックレス、下は黒いジーパンで髪の両端を紺のリボンで結われていた。 女性はゆっくりと瞳を開くと翡翠と紅玉のオッドアイが特徴的で、見る者を惹き付ける印象が見受けられた。 彼女の名は高町ヴィヴィオ一等空尉、此処に眠る高町なのはの娘で管理局が誇るエースオブエースである。 「今年も来たよ…母さん」 墓を見つめながらそう呟くヴィヴィオ、毎年この時期になると必ず休暇を取り墓参りをしている、何故なら今日はなのはの命日、奇しくも地球では桜が満開に咲く時期である。 今ヴィヴィオの年齢は母と同じ十九歳、管理局の地位も同じ位置まで上り詰めている、母と少し違うとするならば教官資格を持っていない程度であろう。 何故教官資格を手にしていないというと、母が護ったミッドチルダを自分の手で護りたいという強い意志があるからだ。 今から十三年前…母なのはは眠るようにして息を引き取った、現場にいた誰しもがミッドチルダを救った偉大な英雄の死を悔やんでいた。 その後、葬儀は身内のみで行い告別式会場はかつての機動六課隊舎にて執り行われミッドチルダ全土は悲しみに包まれた。 葬儀の翌日…外は雨で空も悲しみに暮れていた、葬儀の場にはユーノそしてヴィヴィオが参列しており、家族はなのはの早すぎる死に涙を流していた。 そしてユーノは父士郎の前に赴き一つの許しを乞う、それはヴィヴィオに高町の姓を名乗らせるというものだ。 …なのはの死後、ヴィヴィオの引き取り手の話になりフェイトが名乗り出ようとしたが、先にユーノが名乗りを上げた。 「自分が愛した女性が大切にしている存在〈ひと〉を守りたいんだ…」 その言葉は同情でも傲慢でも無い、ユーノ自身の本心でありヴィヴィオに目を向けるとヴィヴィオはじっとユーノの瞳を見つめる。 すると何故だかなのはの優しい微笑みがヴィヴィオの脳裏に映り、ユーノもまたなのはの強い意志をヴィヴィオの瞳から感じ取っていた。 「いいかな?ヴィヴィオ」 「うん……ユーノパパ」 自然に発したヴィヴィオの何気ない一言にユーノは大粒の涙を流しながらヴィヴィオを抱き抱え、ヴィヴィオもまたユーノに抱き抱えられながら大粒の涙をこぼしていた。 そしてヴィヴィオの影になのはの姿を見たユーノは、高町の姓を名乗らせる事を心に決め今に至るのである。 …ユーノの話に父士郎はヴィヴィオの瞳を見つめる、確かに其処には父が知るなのはの凛とした強い意志が滲んでいた。 「なのはの意志を引き継ぐ子か……」 士郎は微笑みを浮かべ優しくヴィヴィオの頭を撫でてやるとユーノの願いを了承、ヴィヴィオは高町の姓を引き継ぐ事となった。 それから暫くは無限書庫にてユーノと勉強をしていたのだが、ある時ヴィヴィオ自身が学校へ行く事を望み ヴィヴィオの望みを聞き届けたユーノは手続きを済ませ聖王系列の学校ザンクト・ヒルデ魔法学校に進学、 中等部まで進み首席で卒業すると父であるユーノに相談を持ち掛ける。 それは母と同じ道を歩むと言うもので、最初はユーノは反対していた、何故なら母と同じ道と歩くと言う事は 結末も同じなのではないかという憂いがあったからだ。 だがヴィヴィオは母と同じく強い意志の塊、一度決めた事は頑として動かない為、結果的にユーノが折れる形で認め そのままヴィータが所属する民間の訓練学校に入学、僅か三ヶ月で卒業を果たし管理局に入局、陸戦魔導師となった。 この時周囲はヴィヴィオの事を“英雄の遺児”と持ち上げていたが、当の本人はそんな言葉に耳を貸す事は一切なかった。 それからは空戦魔導師となって航空武装隊に異動、1039航空隊またの名をミッドチルダ首都航空隊に所属してからは 目まぐるしい戦果を挙げ一等空尉にまで上り詰め現在に至る。 「母さん、今日もミッドチルダは平和だよ」 母が護ったミッドチルダを今度は自分が護る、幼い頃そう心に決めた時には既に自分の道は開かれていた。 だが此処からは自分の足で歩まなければならない、だが覚悟はある…自分には母と同じ“不屈の心”があるのだから… ヴィヴィオはなのはの墓の前で決意を改めていると、二つの気配に気が付く。 「あれ?ヴィヴィオちゃんやないか」 「あっ八神少将…それにフェイト執務官も」 其処に現れたのはひしゃくが入った手桶を携えた八神はやて少将と花束を携えたフェイト・T・ハラオウン執務官である。 彼女達もこの時期になると必ずお参りをしていた、かつての仲間として友人として…… ヴィヴィオは二人に向かって敬礼をすると、はやては休ませ二人は墓に近づき両手を合わせた。 「そう言えば…ユーノはいないの?」 「父は一仕事を終えたらすぐさま向かうと連絡がありました、それよりも二人はいいんですか?」 ヴィヴィオの心配をよそに二人は目を合わせると縦に首を振る。 あれからミッドチルダははやての監修の下、目まぐるしく復興が進み重要な箇所は既に完了したと、だがそれでも傷跡は深く残っているようではあるが… 一方多忙のフェイトであるが、かつての優秀な執務官補佐だった彼女が見事に自分の夢を実現させ、 今は彼女とその相棒と一緒に共同捜査を行っている為、暫くの間は彼女達に任せてあると答える。 「あれ?二人とも、久し振りだね」 「父さん?」 ヴィヴィオは振り返ると其処にはスーツ姿のユーノの姿があった、一仕事を終え息つく暇もなく此処に来た様子が垣間見えていた。 二人も軽く挨拶を交わすと親しげにユーノとの会話を楽しむ、毎年此処には来てはいるが三人が一挙に集うのは稀である為だ。 「それじゃ父さん、私先に行くね」 「ん?もういいのかい?」 「うん、私はもう済んだから…後は“四人”で楽しんでね」 そう言うと一礼して後にするヴィヴィオ、するとその場に優しい風が吹き桜の花びらが舞い散る、 まるでそれはヴィヴィオに「また逢おうね」っと手を振って送っているような――そんな印象を三人は受けていた。 場所は変わり此処はミッドチルダに存在する各世界と繋ぐ橋ターミナルの一角、地球から戻ってきたヴィヴィオは道なりを歩き進んでいた。 街並みはすっかり立ち直りむしろ復興前より賑やかとすら感じるほどである。 それもこれもミッドチルダの住人が復興に意欲を注ぎ込んだ結果なのかもしれない。 そんな事を考えながら歩いていると一枚の映画のポスターが目に入る、その映画は今から十年前に始まり今年で十周年になる作品である。 映画の名は006と言うスパイ映画で、主人公である006はある特殊能力で建物に侵入、情報活動を行い時にはターゲットを始末するといった内容である。 主演はあのセイン、彼女は今から約十年前に街でスカウトされエキストラで出演したのがきっかけで映画業界に入り 第三作品目にこの006の主役を勤め上げ数々の賞を受賞、現在はコメディからシリアスまで何でもこなせる実力派女優として名を馳せていた。 「まさかあのセインが…ね……」 今では誰もが知っていると言っても過言では無い程の女優に成長したセイン、人生何がきっかけ二なるか分からない… そんな事を考えながらヴィヴィオは歩いているといつの間にやら、かつて存在していた地上本部に辿り着く。 今此処は平和公園として立て直され、公園中心には天に向かってレイジングハートを向けて構える巨大ななのはの像が佇んでおり、 待ち合わせなどに有効活用されていた。 今像の前には献花台が設けられており、台は一面花に覆われ英雄の人気を伺えた。 そんな光景を横目にやりつつ先に進み、噴水広場に辿り着くと設けられているベンチに座り天を仰ぐ。 今日は晴天、日差しも暖かく木々の葉が眩しく光を反射させヴィヴィオの目に突き刺さる。 ヴィヴィオは右手で光を遮り改めて平和である事を実感する、あれから小さな事件が幾つか起きてはいるが、 世界が滅亡する程の大きな事件は起きてはいなかった、皆あの大戦に生き残り二度と起こさないようそれぞれが努力した結果なのかもしれない。 「次は何処に行こうかな?」 特に予定は無かった、休暇の目的は既に済んでいる、取り敢えずヴィヴィオはその場から移動しようと立ち上がり一歩前に歩き出した瞬間、 左から小さな衝撃を受け目を向けると、其処には白を基調とした胸元にある赤いリボンが特徴的な服に白いスカート、 そして栗色の髪を左右の白いリボンで結っている十歳程の少女がしりもちを付いていた。 「大丈夫?」 「これくらい平気なの」 少女は差し伸べられたヴィヴィオの手には触れずに一人で立ち上がりスカートに付いた土を払いのける。 そんな少女の姿にヴィヴィオは目線を逢わせるようにしてしゃがみ込み頭を撫でた。 「強いのね…」 「そうなの!だってこんなことで泣いたら笑われちゃうの!!」 「お母さんに?」 「ううん、えいゆうになの!」 少女はそう言うとなのはの像を指差す、英雄なのはは転んだ程度では泣かない…どんなに辛くてもそれを見せないのが英雄なのはであると、 そして自分も英雄の名を貰った以上、転んでも泣かないと胸を張って少女は答えた。 「じゃあアナタの名前って…」 「なのはなの!」 そう自慢げに答えるなのは、その姿にヴィヴィオは微笑みを浮かべ、再度頭を撫でてやると照れ臭かったのかなのはは頬を染めながら走り出し、 ヴィヴィオと距離をあけると振り向いて手を振り、ヴィヴィオもまた手を振って答えるとなのはは笑みをこぼして走り去っていった。 あの大戦から先、自分の子になのはの名をつける事は珍しくは無い、管理局にも何人かなのははいる。 恐らくあの子も英雄なのはのような“不屈の心”を持って生きて欲しいという両親の願いが込められているのだろう。 ヴィヴィオは含み笑いを浮かべ公園を後に先に進む、次に向かった場所は元機動六課が存在していた土地、今は臨海公園として立て直されていた。 そしてそのまま海岸線まで足を運び海と分かつ柵に手を伸ばす、潮風が心地良く髪を揺らし風景を演出していると、ふと海に浮かぶ建物に目を向ける。 はやてが考案した新たな地上本部、管理局ミッドチルダ臨海本部である、大戦前地上本部が崩壊した際周辺住民や街中も被害を被った、 威厳を保つ…それだけの為に区画の中心に建設するのであれば周辺の安全を考慮した方がよいと臨海に建設する事となった。 だがその代わりに交通機関が今までと異なる為に迅速な対応が難しくなったが、暫くして交通機関においても新たな滑走や線路などを設け迅速な対応が可能となった。 しかし一番こだわり、また力を注いだのは臨海本部に設けられた食堂のメニューである。 和洋折衷は勿論の事ミッド・ベルカ、更には他の次元世界の料理すら取り込み、まるでバイキングを思わせる程の品揃えとなった。 そんなはやて自慢の臨海本部を背にして海岸線を歩くヴィヴィオ、設けられたベンチでは若い二人組が愛を語っている姿を横目にしながら臨海公園を後にする。 続いて向かった先は快速レールウェイで北に一時間ほどで辿り着く郊外、様々な家が建て並ぶこの地にはかつてヴィヴィオが通っていた学校 ザンクト・ヒルデ魔法学校があり、卒業して久しく、せっかくの休暇なので母校でも見に来たのである。 今現在学校は春休み中のようで、人気は無く静かな雰囲気を醸し出していた。 ヴィヴィオは学校の校門前にある許可申請所に赴き、見学の許可を貰いにいくと快く承諾、学校内を見学する事が出来るようになった。 「懐かしい…」 一通り校内を歩き巡り図書室に入ると昔より本が増えた印象を受けるヴィヴィオ。 昔はよく図書室で暇を潰していた、今でも本を読む事は日課となっており、彼女の部屋は本が溢れていた。 ヴィヴィオは一つの本に手を取り暫く本を読みふけっていた、暫くして読み終えると本を戻す。 すると――― 「失礼ですが…高町ヴィヴィオさんでいらっしゃいますか?」 「ハイ?」 振り返ると其処にはザンクト・ヒルデの制服を羽織り制服の胸元から白のシャツを覗かせ、青を基調としたズボンを履いたメガネの少年がいた。 ヴィヴィオは少年の問い掛けに頷いて答えると、少年は左手に持つ本の中表紙を見せる。 「管理局のエースオブエースに会えるとは光栄です、サイン貰ってもよろしいでしょうか?」 少年は年相応とは言えない程大人びた口調で話し懐からペンを取り出して頼み込むと、 ヴィヴィオは快く応じて本に自分のサインを書き、その本を渡すと小脇に抱えメガネに手を当て笑みを浮かべて感謝する少年。 「ありがとうございます、これは励みになる…」 「励み?」 「えぇ、そうです」 少年はメガネに手を当てたまま言葉を口にし始める、彼の夢は無限書庫の司書長になる事、 その為に知識を高め、またその為ならば努力を怠らない、しかも目標である司書長の娘でエースオブエースのサインを手に入れた。 これ以上の励みなど存在しない、そう少年は答え本を大事そうに左手で抱えていた。 「じゃあその為に学校へ休みなのに?」 「えぇ、近くに図書館や静かに勉強出来る場所が無いので…」 少年は肩を竦め両の手の平を返し首を傾げて答え、蛍光灯の光がメガネのレンズに反射し胡散臭さを演出していた。 一方でヴィヴィオは少年の話を聞き…自分もこれくらいの時に自分の道を決めたな…っと感傷に浸っていた。 そんなヴィヴィオの呆けた表情を目の当たりにした少年は、首を傾げ不思議そうに見上げていると、その目線に気が付き我を取り戻したヴィヴィオは少年に言葉をかける。 「そうなの…それじゃあ君が無限書庫の司書長になるのを応援しているよ」 「ありがとうございます、無限書庫に就職出来たらその時はよろしくお願いします」 少年は礼儀正しく挨拶を交わすと意気揚々にその場を立ち去る、一方で少年の後ろ姿を見たヴィヴィオもまた図書室を抜け学校を後にした。 …暫く道なりを進みレールウェイ近くの人通りの少ない路地を歩いていると背後に二つの気配を感じたヴィヴィオ。 しかしヴィヴィオはその場で振り返る事無く、は背後に感じる二つの気配に声をかけた。 「オットーとディードね…」 「休暇中に申し訳ありません…陛下」 其処には部下であるオットーとディードがいた、二人は聖王教会に配属しているのだが、 ヴィヴィオが管理局に入る事が決定すると、二人は管理局に出向という形でヴィヴィオの下につき今も働いている。 二人はヴィヴィオの事を陛下と呼び最初の頃は嫌がっていたが、その内に慣れ始め今では自然に反応するまでに至った。 「…任務ね」 「ハイ」 ディードは返事すると内容の説明を始める、今から数十分前、此処から更に北に位置するベルカ領との中継地点を担う街、 其処にあるビルで火災が発生、すぐさまスバル率いる特別救助隊が対応し周囲の人々の避難を済ませたのだが、未だ火の勢いは止まらず燃え続けており、 現在懸命に消火作業に当たっているが人手が足りないのだという、其処で比較的現場に近いヴィヴィオに白羽の矢が立ったのだ。 「分かった、それじゃあ行こうか」 『了解です』 オットーとディードの合わさった返事を期にヴィヴィオは左ポケットから小さい水晶型のデバイスを取り出す。 セイクリッド・ハート通称クリスと呼ばれるシャーリーの手によって作られたデバイスである。 このデバイスはなのはの愛用のデバイスであるレイジングハートを模しており、 レイジングハート自体は機能不全により役を終えたが、情報のみが辛うじて残っていた為、 セイクリッド・ハートに情報を継がせる事により遠距離に対してはミッド式、接近戦に対してはベルカ式を使用するハイブリッドなデバイスとなったのだ。 因みにヴィヴィオの魔法適正はベルカ式で接近戦タイプではなく純粋魔力射出・放出タイプである。 それはさておきヴィヴィオはセイクリッド・ハートを起動させて上に羽織るコートは白く他は黒いバリアジャケットを纏い、 そして臨海本部に飛行の許可を貰うと、部下を引き連れ現場へと急行した。 ―――今日もヴィヴィオは空を駆る、母が護ったミッドチルダの空を――― ―――母から受け継がれた意志“不屈の心”と共に……――― リリカルプロファイル ―完― 目次へ
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実川 多門 ■キャラクター名:実川 多門 ■読み方:みのりかわ・たもん ■性別:女性 特殊能力『クイーンズ・ミリオネア』 知覚・天啓系魔人能力。 自分の作成した問題に対し、4つの選択肢が脳裏に浮かぶ。 その選択肢のうち1つは正解、3つはフェイクの選択肢である。 多門が幼いころに夢中になったクイズ番組に起因する能力であり、その番組のルールに準じた、次のような制約と権能が付与されている。 □正解を選び続ける限り、一日に10回まで使用可能。 □一日に一回ずつ、三種類のライフライン(ヒント)を使用可能。 ライフライン1『50 50』:選択肢を2つまで絞る。 ライフライン2『テレフォン』:任意の相手と30秒間音声通話ができる。 ライフライン3『オーディエンス』:自分のことを観測している人間に四択のいずれかに投票させ、結果を知ることができる。 設定 魔人ライター。元新聞記者であったが、紆余曲折あって現在はフリー。 スーパーカブ90で颯爽と現れて真紅のトレンチコートをはためかせ、一眼レフを構える姿はできる女性記者そのもの。 だが、その実情はダメフリーライターで、取材能力は高いのだが、致命的に執筆センスがない。 それでもライターとしての矜持は捨てきれず、魔人犯罪をテーマに危険な現場に首を突っ込んでは、警察や犯人に迷惑がられつつも生還するトラブルメーカーである。 記事は全く採用されず、どちらかというと、副業である情報屋の方が収入源。 ライターとしては失敗続きだが、根拠のない自信と無駄に前向きな思考が取り柄で、「メンタルおきあがりこぼし」「アンブレイカブル馬鹿」などと取引先の編集者からも評判である。 目標は、ペンで一攫千金。 プロローグ 「お願いします! お兄ちゃ……兄を助けてください!!」 「あーん? 聞こえないなあ? 誰か何か言ってるかなあ?」 「もう、貴女しか、頼れる人がいないんです!」 ワンルームマンションの一室を借り切った事務所で、まだ幼さの残る顔立ちの少女が深々と頭を下げた。 小さなつむじと、揺れる三つ編みを眺めながら、フリーライターである実川 多門はわざとらしく溜息をついた。 「あのねえ、お嬢ちゃん。私は警察でもボディーガードでも探偵でもないの。フリーライター。ペンは剣より強いかもだけど、物理で殴るのにペンは細すぎるの。わかる? そういう職業じゃないのよ、お姉さんは」 「……っ」 少女が言葉を詰まらせる。 彼女の兄は新聞記者。 とある犯罪組織の悪事を追っていたのだが、下手を打って拘束されてしまったらしい。 「そもそも、なんで私なのさ」 「その……、兄の職場の上司が、実川さんなら頼りになると……頭山さんっていうんですけど……」 「カッシーか……まったく」 頭山は、実川が新聞記者時代に取材のイロハを叩き込まれた恩人だ。 フリーライターになってからも、何度も世話になっている。 「第1問」 「……ぇ?」 「お姉さんの職業は、なんでしょう。A:警察、B:探偵、C:ボディーガード、D:フリーライター」 「……フリーライターって、さっき……」 「ファイナルアンサー?」 「……ぇ? ええ?」 「答えはそれで確定? ファイナルアンサー?」 「ふぁ、ファイナルアンサー」 「正解ー! それじゃあ、第2問。フリーライターは何をする職業でしょう。A:悪党退治、B:人質奪還、C:賞金稼ぎ、D:取材と執筆」 「……D」 「ファイナルアンサー?」 「……ファイナルアンサー」 「正解ー!!」 唐突なクイズに、それでも律儀に答える少女。 育ちがいいのだろうな、と実川は思った。 「それじゃ、最後の問題です」 実川の声色が少しだけ変わったことに気付いたのだろう。 少女の表情が、引き締められた。 「取材と執筆を行うフリーライターであるお姉さんに、お嬢さんはなんと依頼をするべきでしょうか? ――選択肢、必要?」 少女は、ゆっくりと首を横に振ると、真っすぐに実川を見上げた。 「実川 多門さん。取材の依頼です。犯罪組織『KOK』の人身売買、拉致監禁に関する疑惑を、兄は追いかけていました。その仕事を、引き継いでください」 「――ファイナルアンサー?」 「ファイナルアンサー」 賢い娘だ。実川は満足気にうなずくと、少女が差し出したノートを受け取った。 「正解。任せといて、お嬢ちゃん。億万長者(ミリオネア)に頼ったと思って安心しなさいな」 世間がどう言おうとも、実川 多門はフリーライターだ。 ならば、建前であっても、受ける依頼は取材・執筆のものでなければならない。 そうでなければ、実川は、命を賭ける最終判断(ファイナルアンサー)を、下せないのだから。 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 港湾地帯の廃倉庫に銃声が響く。 飛び交う炎と、それを伝う放電。 実川は打ち捨てられたコンテナの陰に隠れ、周囲の様子を伺った。 ここで、『KOK』の取引が行われるという情報を入手し、その証拠写真を撮影したところまではうまくいった。 しかし、周囲は何らかの魔人能力か、通信不能状態。 どういう理屈でか実川の存在を看破した『KOK』の戦闘員が襲い掛かってきて現在に至るというわけだ。 どうにかしてこの場を切り抜け、証拠写真を然るべき手段で公開せねばならない。 銃声からして、追手は相当な数だ。魔人能力者も複数人いる。 まずは索敵。 そこから事態の打開策を考える。 魔人能力――『クイーンズ・ミリオネア』発動。 (第一問 今日、犯罪組織『KOK』の取引を邪魔しにきた女の職業はなんでしょう) 実川は、自らの認識の歪み――中二力によって、世界の理を捻じ曲げる異能者、魔人である。 その異能は、四択クイズを媒介にした未来予知、あるいは、真相看破。 脳内の問いに対し、真実を含む四つの選択肢を展開することができるものである。 また、その四択クイズに挑むにあたり、実川は、一日3つまで、正解をするためのライフライン――ヒント機能を使うことができる。 ライフライン1『50 50』:選択肢を2つまで絞る。 ライフライン2『テレフォン』:任意の相手と30秒間音声通話ができる。 ライフライン3『オーディエンス』:自分のことを観測している人間に四択のいずれかに 投票させ、結果を知ることができる。 実川が幼いころに大好きだったクイズ番組に由来する能力だった。 提示した問題に対し、脳内に選択肢が展開される。 A.警察官 B.取引相手組織が支払いを踏み倒すために雇ったヒットマン C.フリーライター D.「商品」の家族に雇われたトラブルシューター (ライフライン、使用。『オーディエンス』) その宣言に呼応し、『オーディエンス』が発動。 実川 多門のことを観測している全員の思考に接続、上記の四択に対する回答・投票を強制する。 A.警察官/8名 B.取引相手組織が支払いを踏み倒すために雇ったヒットマン/2名 C.フリーライター/1名 D.「商品」の家族に雇われたトラブルシューター/5名 (回答、C、フリーライター。ファイナルアンサー) ――正解です。魔人能力『クイーンズ・ミリオネア』第2問への挑戦権を獲得しました。 実川は、能力によって得た情報を分析する。 遠隔監視者も含め、今、実川に襲い掛かってきているのは16名。 うち選択肢Bを選んだ2人は、相手の裏を読む事に慣れた裏社会の手練れ。 選択肢A、Dを選んだ13人は比較的シンプルな思考の持ち主か、突然の襲撃に、頭に血が上っている。 そして、本来ならば正解などするできるはずもない、選択肢Cを選んだ人間は、一人。 おそらくはこの一人が、取引の責任者。 さらに言えば、『KOK』の中でも、相当に上の立場にある人間だろう。 実川が組織のことを嗅ぎまわっていることを知るだけの情報網を持ちながら、それを仲間と共有しない程度には猜疑心と警戒心が強い。 人身売買組織『KOK』の頭目、裸王元 貫太郎のプロファイルと一致する。 この集団は彼のワンマンであることは把握済み。十中八九、この結論に間違いはない。 ボスを潰せば、シンプルな13人の戦闘員は有象無象と化す。 選択肢Bを選んだ2人もまた、頭を押さえれば、合理的な交渉は可能だろう。 いずれにせよ、この人数差を覆すには、真っすぐにチェックメイトをかける必要がある。 だが、ボスはどこだ? 裸王元の性質からして、部下に敵は排除させつつも、自分もまた状況を監視できる場所にいると予測するのが妥当だろう。 2人の手練れ――戦闘型魔人の傍にいる? いや、敢えてその定石の逆をついて、全く無関係なところに潜んでいる可能性もある。 魔人能力――『クイーンズ・ミリオネア』発動。 (第二問 犯罪組織『KOK』が行っている、湊戸川埠頭での取引。その、『KOK』側の責任者は、今どこにいるでしょうか) A.廃倉庫の隠し地下室 B.廃倉庫屋上 C.湊戸川埠頭沖灯台 D.『KOK』縦川本部応接 脳内の選択肢を確認したところで、実川はコンテナの陰から飛び出した。 遮蔽物から飛び出した愚か者を目掛けて、四方八方から銃撃が襲う。 弾丸が掠めたのか、左の耳が聴覚を失う。 それでも、実川は不規則な軌道の走行を止めない。止めれば狙い撃ち。 別の遮蔽の陰に隠れるか? 否。それだけは、できない。それでは、意味がない(・・・・・)。 (ライフライン、使用。『テレフォン』。対象は――『KOK』ヘッド、裸王元・貫太郎) その宣言に呼応し、『テレフォン』が発動。 実川と、『KOK』の代表、ヘッドである、裸王元の間に、超常の音声通信が接続される。 「ハロー、ミスタ・裸王元」 「っ!? き、貴様! 魔人か!!」 「裸王さ――」 「馬鹿野郎」 第三者の声は、裸王元の声によって制された。 悪くない対応だ。放置していれば、向こうの混乱具合によって、近くで警備している人間の人数まで絞れたところだったのだが。 会話で緩んだ足の動きを狙ったかのように、炎弾が実川の背後に着弾、爆破する。 爆風に宙を舞う実川の体。だが、そこで、彼女は確かに聞いた。 『テレフォン』越しに、ほぼ同時に響く爆音を。 つまり、『KOK』のボス、裸王元は、廃倉庫の隠し地下室か、屋上にいる。 そして、その傍には、決して練度の高くない部下が張り付いているだけ。 警戒心の強い手練れは2人共が前線の指揮を取り、ボスは後ろで高みの見物というところだろう。 これが、実川の目論見。自分を敵の攻撃に晒し、裸王元の居場所からその音がどう聞こえるかによって、大まかな場所を看破することが、遮蔽物の利を捨てた理由だった。 四択は二択まで絞れた。即ち、地下か。上か。 迷っている暇はない。虱潰しに動く余裕もない。 こちらがボスの居場所を絞れていると知れば、『SOS』の部下たちはすぐにボスを守りやすい位置取りを取るだろう。 絶対に外せない、二択。 だからこそ、実川 多門は回答を躊躇わなかった。 (回答、A、廃倉庫の隠し地下室。ファイナルアンサー) ――不正解です。 ――ペナルティ発動。24時間後まで『クイーンズ・ミリオネア』は使用できません。 不正解。 そして、『クイーンズ・ミリオネア』の四択には、必ず正解が含まれている。 つまり、「B.廃倉庫屋上」こそが、裸王元の居場所であることがここに確定した。 爆炎の射出方向。銃声の方向から、階段は手薄。 やはり、想像通りの捻くれ者だ。定石を敢えて外し、こちらを嘲笑う腹積もりだろう。 背中が熱い。アドレナリンで痛覚が麻痺しているが、爆炎で炙られたそこがどうなっているかは確かめる気もおきなかった。 銃弾が掠めた腕、雷撃による痺れが脚を鈍らせる。 行けるか? ボスの居場所がわかったとして、むしろそこから遠ざかるように逃げるのが得策ではないのか? 至極合理的な選択肢が浮かぶ。 (第三問 実川 多門は行くべきか? 逃げるべきか?) もう、『クイーンズ・ミリオネア』は発動しない。 誤答のペナルティによる再使用規制時間は24時間。 だから、この問いは、ただ、彼女が自らの覚悟を問うだけの自問自答だった。 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 幼いころ、正解に憧れた。 大好きなクイズ番組に登場する大人たちが、その知能と機転を駆使して、真実に辿り着く様が、どうようもなく恰好よく見えた。 そして、真実を追いかける職業として、新聞記者を選んだ。 世界に正解なんてない。 そう気付くまで、そう時間はかからなかった。 あるのは、よりよい選択肢を選ぼうとする意思。 そして、その選択を、取り返しのつかない最終判断(ファイナルアンサー)であると、覚悟を決めることだけだと、実川 多門は認識した。 そんな当たり前の覚悟を祝福するように、魔人能力『一攫千金の女王(クイーンズ・ミリオネア)』は彼女の前に舞い降りたのだ。 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ならば、どうする。 愛すべき『一攫千金の女王(クイーンズ・ミリオネア)』に恥じぬように、実川 多門は、どちらの選択肢を掴むべきか。 二者択一(フィフティ・フィフティ)の結論まで、時間はかからなかった。 痺れた脚を踏み出し、焼ける背中を押し、血のしぶく腕を振るう。 ――裸王元の隠れる、屋上へ向かう階段へと。 進行方向を塞ぐように弾幕が展開される。 本能が、動きを止めろと足をすくませる。 背後から迫る炎。 弾丸か。炎か。 (――前へ! 前へ!! 最終判断(ファイナルアンサー)!!!) だが、実川は本能の警告を無視し、さらに加速、左右に方向転換しながら階段を駆け上がる。 バチイッ!! 背後で耳障りな雷撃音が響いた。 階下にいる魔人能力者は、発火能力者と発電能力者。 そして、炎は通電性物質だ。単に雷撃を命中させるよりも、爆炎で包んだ状態で直撃させた方が効果的に無力化できる。 つまり、相手の本命は銃殺ではなく、爆炎雷撃による捕縛。 こちらの背後に組織がないか尋問するには、それが一番だからだ。 さらに、階下からの銃撃は爆炎と雷撃で視界が塞がれ、精度が下がる。 少し軌道をずらせば、致命傷だけは避けられるというのが、実川の賭けの根拠だった。 かくて、実川は、その二択に勝利した。 「――ハロー、ミスタ・裸王元」 満身創痍で、実川は、屋上へと辿り着いた。 そこには、スーツの大男と、数名の護衛。 仕込みは整った。 あとは、実川 多門という魔人が、どこまで悔いなき選択のために己を鍛えてきたか。 ただの売れないフリーライターを、どこまで裸王元という男が侮ったか。 そんな、たった二つの勝機をつかみとれるかの、勝負。 だが、『クイーンズ・ミリオネア』に結果を問うまでもない。 ファイナルアンサーを躊躇う理由もなければ、結果を語るまでもない。 実川 多門はフリーライターである。 その記事は人々の記憶に残ることもないが。 同時に、彼女が取材から生還しなかったことも、一度としてないのだから。 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 「知ってます? 拳はペンより強いんですよ?」 「――わかった! その、例のブン屋は解放する!」 がすっ。 「ファイナルアンサー?」 「クソ! まだ足りねえのか! わかった! 『商品』も手離す! だから! どうか! もう――」 ごすっ。 「ファイナルアンサー?」 「クソ! クソ! クソ!!! これ以上、何が望みだ!!」 「私は、フリーライターですからね。もっと、お話をお聞きしたいんですよ。おつきの魔人2人のいないところで、ゆうっくりとね」 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 実川 多門は、駅で買った朝刊を仏頂面で開いた。 そこには、犯罪組織『KOK』の悪事の証拠が警察に提供されたこと、それがきっかけで組織は摘発され、壊滅状態に陥ったことが書かれている。 実川が書いて、頭山に送り付けたのとは似ても似つかない名文だった。 おそらくは、助け出された新聞記者……依頼人である少女の兄が書いたのだろう。 「……納得いかない。あんなにがんばったのに。フリーライター実川 多門ちゃんは今回も没の憂き目にあうのでした。かなしいなあ」 誰に言うとでもない独り言。 それでも、実川の表情はどこか誇らしげでもあった。 一攫千金の機会を逃がそうと。 自分が身を立てたいと願うライターの芽が出なくとも。 それでも、彼女は、今回の騒動に関わった選択を、悔やむことはない。 それが、実川 多門――『一攫千金の女王(クイーンズ・ミリオネア)』に愛された女の、揺らぐことない最終判断(ファイナルアンサー)なのだから。
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時間は遡り、なのはとレザードの戦いは端から見れば拮抗していると思われる程の戦いぶりを見せていた。 だがレザードの表情には未だ余裕があり、全力を出してはいないであろうと感じるなのは。 一方でなのはは既にブラスター3を発動している状態、このまま拮抗が続けばいずれなのはが敗北するのは必死である。 しかしなのはの顔には焦りを感じている表情は無く、寧ろそれに不気味さを感じるレザードであった。 リリカルプロファイル 第三十八話 覚悟 そんな戦況の中でなのははレザードにレイジングハートを向けてディバインバスターを発射、 しかしレザードは旋回しながらこれを回避し、左人差し指を向けてライトニングボルトを放つ。 するとなのははラウンドシールドを張りこれを防ぎ、続いてアクセルシューターを撃ち放つが、 レザードはアイシクルエッジにて相殺、拮抗が徐々に破られつつあった。 すると其処に一つの影が姿を現す、その正体はフェイトであった。 フェイトはなのはが戦っているこの広場へと足早に向かっていたのだ。 「なのは!助けに来たよ!!」 「フェイトちゃん!スカリエッティは逮捕出来たの?」 なのはの質問にフェイトは口を噤み下を向いて影を潜む表情を醸し出し、その表情に困惑するなのは。 すると対峙していたレザードがその理由を語り出す、スカリエッティはもし自分が管理局に捕らわれる事になったら、 自らの意志で自らの命を絶つ覚悟を持っていたという、つまりはスカリエッティは自害したのだろうとフェイトに代わって答えた。 「そんな………何故!?」 「…それ程までに管理局が気に入らなかったのでしょう……」 肩を竦め小馬鹿にした表情を浮かべながら語るレザード、だが理由はそれだけではなかった。 逮捕されれば懲役を受ける事は明白である、だが管理局には協力を約束する変わりに懲役を減らす制度がある。 管理局は十中八九その制度を用いて交渉をしてくるだろう、スカリエッティは管理局からの脱却が目的である、 それ故に管理局に尻尾を振るぐらいならいっそ自分の手で幕を閉じると言う覚悟があったのだ。 しかしこの事を二人に話したところで理解は出来ないだろう、 レザードはスカリエッティの覚悟を胸の内にしまうと、改めて二人と対峙する。 「まぁ、いいでしょうそんな事は…今重要なのは私の邪魔をする者が増えた…という事実ですから」 「……ずいぶんと余裕ですね」 「それはそうでしょう」 女小娘が二人になったからと言って自分の方が優勢である事は変わりはしない、左手を眼鏡に当て不敵な笑みを浮かべるレザード。 その表情に不快感を現す二人であったが、寧ろ余裕のあるレザードの度肝を抜こうと考え、 フェイトはライオットザンバー・スティンガーを水平に構え、なのはもまたレイジングハートを向けて対峙する。 先ずはフェイトが先行しレザードの懐に入ると左の刀身を振り下ろすのだが、 レザードは右手に持つグングニルで受け止め、フェイトは続けて右の刀身を水平に構え突く。 だがレザードは滑るようにして後方へと回避、更に左手を向けてクロスエアレイドを放つ、 しかしクロスエアレイドはなのはのアクセルシューターによって撃ち落とされ更にレザードに向けてショートバスターを放つ。 するとレザードは急降下してショートバスターを回避し床すれすれを滑走、なのはに向けて衝撃波を放つ。 だがフェイトが間に割り込みスティンガーにて衝撃波を切り裂き、後方ではなのはがアクセルシューターを撃ち放った。 しかしレザードはリフレクトソーサリーを張りアクセルシューターを跳ね返したのだが、間髪入れずにフェイトが接近 左の刀身を左へ薙払うようにして振り抜くがレザードはグングニルにて左の刀身を受け止める。 するとフェイトは右の刀身を左の刀身に合わせ一つにし、ライオットザンバー・カラミティに変えて一気に振り切り レザードはその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされるがすぐさま着地、するといつの間にか上空に移動していたなのはが、 レイジングハートをレザードに向けており、ディバインバスターを撃ち鳴らした。 一方レザードは依然として冷静で左手に青白い魔力をたぎらせると、直射砲のようなライトニングボルトを撃ち放ちディバインバスターと激突、 そして見る見るうちに押していく中、なのははカートリッジを一発使用、出力を上げ ライトニングボルトを押し返し始め、最終的に相殺という形で終えた。 一方でフェイトはレザードからかなり離れた後方に移動しカラミティをスティンガーに変えソニックムーブを発動、 金色の一筋と化してレザードに迫るがレザードは全方向型のバリアを張り攻撃を防ぐ。 ところがフェイトはお構いなく何度も切りかかり、まるで無限の剣閃ともいえる程の動きをしていた。 そんなフェイトの攻撃によりバリアに亀裂が走りそれを見たフェイトは更に速度を上げて攻撃、右の振り下ろしが決め手となりバリアを破壊、 するとフェイトはスティンガーをカラミティに変えてとどめとばかりに下から上へすくい上げるかのように振り上げた。 だがレザードはフェイトの攻撃のタイミングに合わせてシールドを張り攻撃を受け止め更に前宙のような動きでフェイトの頭上を舞い床に着地、 攻撃から難を逃れたかに見えたが、レザードの左上空にはなのはが陣取っており、 レイジングハートのカートリッジを三発使用、先端から環状の魔法陣が張られていた。 「ディバイン…バスタァァァ!!」 撃ち放たれたディバインバスターがレザードに迫る中、左手で大型のシールドを張り攻撃を受け止めると、 なのははカートリッジを一発使用、ディバインバスターを強化させ、更に威力が増すとシールドに亀裂が生じ始める。 その後暫くしてシールドが砕け散りレザードはディバインバスターに飲まれていった。 ところがレザードは上空へと移動しており、足下には五亡星の魔法陣が張られていた。 レザードは常に準備してある移送方陣を発動させてディバインバスターの驚異から逃れたのである。 なのはは悔しそうにレザードを睨みつけている中、レザードは驚いた様子で左手の感触を確かめていた。 先程張ったバリアに加えシールドすら破壊された…三賢人の時のように相手を油断させる為にわざと強度の低いシールドやバリアを張った訳ではない。 十分な強度で張っていたのだが彼女達は実力でバリアやシールドを破壊した、それ程までに彼女達の攻撃には威力がある… つまり彼女達は既に三賢人以上の能力を持っている事を指し示しているのであった。 「ふむ…その杖の影響とはいえ、これ程の力をつけていたとは……」 レザードは素直に二人の実力を賞賛する中、なのはの下にシャマルからの連絡が届く。 それは今し方はやてがベリオン及び動力炉を破壊したというものであった。 しかし動力炉を破壊したというのにゆりかごは依然として動いたままである、 それはゆりかごに存在する自己防衛モードによるもので、本体自体に残されている魔力によって飛行を維持されているのであった。 しかしベリオンの破壊…その内容にフェイトはスカリエッティと対峙した時の事を思い出す。 彼はベリオンとゆりかごを使ってミッドチルダを破壊するという計画があった、 だがベリオンは破壊されゆりかごも既に機能としては不完全と化している、 つまりこれはスカリエッティの計画は失敗に終わったという事を指し示しているのであった。 一方でなのは達の報告を小耳に挟んだレザードは眼鏡に手を当てていると、 不敵な笑みを浮かべたなのはがレザードを指差し声を上げた。 「ゆりかごもベリオンも無くなった!これで貴方達の計画は失敗に終わったの!!」 「失敗?まさか…確かにゆりかごは使い物にならなくなりましたが、計画そのものは支障ありませんよ……」 「どうゆう事?!」 レザードは肩を竦め小馬鹿にした表情でなのはの問いに答え始めた。 世界を崩壊などレザードが本気を出せば簡単に導く事も可能である、だがレザードはそれをしなかった。 理由はスカリエッティにあった、スカリエッティは自分の手で枷を外そうとしていた、 その気持ちをくんで敢えてレザードは前に躍り出て行動をせず、知識を与え準備を手伝うまでで止まったと、 結果スカリエッティはゆりかごを復活させ更にレザードから得た魔法技術によってユグドラシルと呼ばれる魔法陣まで造り上げたという。 「何故そこまでスカリエッティの計画に荷担するの!!」 「そうですね……興味があったから…ですかね」 そう言ってレザードは眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべる、もとより深い理由など無かった、 最初に出会ったのがスカリエッティであっただけ、そして彼の計画に興味がわいた…それだけであると、 尤も今はレザード自身にも目的が生まれ、それを実行に移すには管理局という存在は邪魔であると語った。 「貴方の目的って何ですか!!」 「シンプルなものですよ…誰しもが望む事……」 しかし自分の目的は他の者達と違って管理局を敵に回す為に対峙する事となった…それだけであるという、 そしてレザードはゆっくり深呼吸をして一度上を向くと瞳を閉じて黙り、なのは達は固唾をのんでいると暫くして瞳を開き なのは達に目を向け目的を口にする。 「“愛しき者”と一緒になる…それだけですよ」 「…………………えっ?!」 レザードの目的を聞いた二人は暫く固まっていると、レザードが意気揚々に語り出す。 スカリエッティの技術とレザードが御守りとして大事にしていた神の毛によって生まれた存在チンク。 彼女は戦闘機人にしてレザードが愛する神のクローン、彼女と添い遂げる事が目的であり、 それを実行するには規制を促している管理局が邪魔な存在となる、結果スカリエッティと利害が一致した為に協力したのだと語る。 …そんなレザードの身勝手過ぎる理由に二人は睨みを利かせ激怒した。 「狂ってる……そんな理由で世界を破壊しようとしているんですか!!!」 「そうですか?私にとっては意味のある理由なのですがね……」 “愛しき者”と一緒になりたいと言う気持ちは誰しもが持っている感情、だがそれを許さずまた反対する者を裁けるだけの力があれば 誰もがそれを行うであろう…そうレザードは言葉を口にするが、なのははレザードの意見に真っ向から反対する。 なのはにも“愛しき者”がいる、だがもし彼の生まれが特殊であったとして、 自分に反対する者を裁けるだけの力を持っていたとしても行使する事は無いと語る。 「偽善…ですね……」 「そう捉えられるかもしれないけど、少なくとも貴方の意見には賛同出来無い!!」 「それは残念だ……ならば此処等で御退席して貰いましょうか」 するとレザードの足下から青白く光る五亡陣が現れ、青白く光るレザードの魔力が白く輝く魔力に変わり、 レザードの全身は光の粒子に包み込まれ、次に右手に持っていたグングニルがネクロノミコンに戻りレザードの目の前で浮かび光を放つと、 一枚一枚ページが外れ白く輝く魔力に覆われレザードの周りを交差しながら飛び回り、 そしてレザードのマントは浮遊感があるようにふわふわと漂い、レザードの体も同様に漂うと足下の魔法陣が消え去った。 モードIIIカタストロフィ、大きな破滅または悲劇的な結末と言う意味を持つこのモードは レザードが自ら掛けたリミッター全てを外し愚神の力を解放した状態である。 「まさか…ここまで魔力を強化出来るなんて……」 「……何か勘違いしているようですが…これが本来の私の力です」 レザードの放った言葉は二人を動揺させるには充分過ぎる言葉であった、今目の前で放たれている魔力は二人のようにデバイスをリミットブレイクさせた もしくは自己ブーストしたものであると思っていた、だが実際は何て事無い能力リミッターを解放させただけに過ぎないと言うのだ。 しかもレザードの話ではこの力は神から手に入れたのだという。 「そんな……貴方も神の力を手にしているなんて…」 「貴方達のような微力な力と一緒にして欲しくはありませんが……」 「なっ何ですって!!」 「何なら試してみてはどうです?」 そう言ってレザードは二人を挑発すると、二人はその挑発に乗りデバイスをレザードに向けて構え始め、 先ずはなのはがアクセルシューターを八発撃ち出し攻撃を仕掛ける、しかしレザードは舞うようにしてこれを回避、 一方でフェイトはソニックムーブを用いてレザードに接近、依然として回避しているレザードの背後を取り 手に握られたスティンガーをカラミティに変えて絶好のタイミングで振り下ろす、 だが魔力刃はレザードの体をすり抜け、すり抜けた所は光の粒子を化しており暫くして肉体に戻っていった。 「どっどうなっているの?」 「ふっ…貴方達ではこのアストラライズされた肉体を傷付ける事など出来はしないという事ですよ」 そしてレザードは右人差し指をフェイトに向けるとレザードを覆う光の粒子の一部がグングニルに変わり発射、 フェイトはカラミティの魔力刃を盾にしてグングニルを防ごうとしたが、呆気なく刃は砕け散り腹部を貫き通した。 一方でなのははレザードに向けてエクセリオンバスターを発射、放物線を描くようにしてレザードに迫っていくが、 レザードは肉体を光の粒子に変えてこれを回避、更になのはの足下を光の粒子による爆発を起こし、しかも離れた距離に移動していた。 一方で床に伏せ腹部を貫かれたフェイトは痛みに耐えていると、光の粒子の爆発に巻き込まれ高々と舞い上がるなのはを目撃、 すぐさま近づき安否を心配するとなのははゆっくりと立ち上がり、遠くでほくそ笑んでいるレザードを睨みつけた、どうやら命に別状はないようである。 「くぅ………此処まで…差があるなんて…」 「ふっ…やっと理解出来ましたか」 ほんの少し戦闘を行っただけではあるのに、レザードとの圧倒的な差を痛感する二人。 此方の攻撃は一切通用しない、魔力も身体能力も遥かに向こうが上回っている、どうあがいても“二人”では勝ち目がなかった。 ならば最後の手段を執るしかない、なのはとフェイトはお互いに見つめ合うと小さく頷き腰に添えてあった杖に手を伸ばす。 「ほぅ…まだ何かする気なのですか?」 「…私達は…諦めが悪いんだよ!」 なのはは一言口にして右手に持つ杖に魔力を、フェイトは左手に持つ杖に魔力を込める。 するとなのはの足下に赤い三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣が、フェイトの足下にも同じ模様の青い魔法陣が張られ、 杖が力強く輝き出すとまるで祈るようにして瞳を閉じ二人同時に杖を魔法陣に突き刺す。 すると魔法陣は更に強く輝き出し光の柱となって辺りを照らし始めると、二人の頭上から 黒いローブを纏い背中にそれぞれ赤と青の計六枚を翼を生やし、頭には天使の輪がついた 流浪の双神を呼び出し光が落ち着いていくと、突き刺した杖がまるで灰のようにして跡形もなく消えていった。 一方でレザードは二人が呼び出した者が分かったらしく流石に驚きの様子を隠せずにいた。 「まさか…神を召喚するとはな……」 「ほぅ…成る程、我々の力を借りたいと言うのがよく分かる」 イセリアクイーンはレザードの肉体に宿る力を感じ、なのは達が協力を仰ぐ理由を理解する、 それほどまでにレザードの能力は常軌を逸していたのだ、そして流浪の双神は右手に杖を携えレザードに向ける。 「貴方には悪いが、これも契約なのでね…」 「神が二体…少々楽しめそうだ……」 流浪の双神を目の前にしても未だ余裕のある様子を浮かべるレザード、その反応になのはとフェイトは不安感を覚える中、 戦闘が開始され先ずはレザードが牽制としてアイシクルエッジを二人目掛けて撃ち出すが、 二人は手に持つ杖でいとも簡単に防ぎ、次にガブリエセレスタが杖を振り下ろす。 ところがレザードはグングニルを形成しガブリエの攻撃を受け止める、するとイセリアが時間差でレザードに攻撃を仕掛け 貫くようにしてレザードの腹部を狙い撃ち直撃、勢いよく吹き飛ばされるレザードであるが、 右手を向けてクールダンセルを放ち氷人形が二人の前で襲いかかる、だが二人は冷静に対処に当たり杖で氷人形を打ち砕いた。 「流石に神の前ではアストラライズは意味をなさないか……」 「当然だ、肉体を幽体にする事など造作もない」 レザードを一目見た瞬間から幽体化している事を見抜いた流浪の双神は、同じく肉体を幽体に変えて対処に当たったようであり、 これはレザードのアストラライズを無効化された事になる、だがレザードの表情には焦りの様子が無く その表情を遠くで見上げているなのは達には不安を募らせていた。 一方場所は変わり此処スバル達とチンクが戦闘を繰り広げている広場では、 スバルのナックルダスターをマテリアライズで形成した左の盾で防ぐチンクの姿があった。 「くぅ!やっぱ堅い!!」 スバルはカートリッジを一発使用してナックルダスターの威力を高めるが、一向に砕け散る様子がない盾。 一方でエリオは距離を離しストラーダを向けてカートリッジを二発使用、先端部分から魔力刃が形成されると一気に突撃、 まるで弾丸を思わせるような速度でチンクに迫っていく、一方でエリオの存在に気が付いたチンクは スバルの攻撃を流すようにして盾を傾け見事に受け流すと、その場で一回転しエリオに目を向け、 右手に携えた刀身を振り上げ魔力刃ごとエリオを高々と吹き飛ばした。 だが上空にはキャロが待機しており、フリードリヒに指示を促しエリオを回収、更にブラストレイをチンクに放つ、 ところがチンクはブラストレイを既に読んでおり既に移動して回避、カートリッジを一発使用すると脇差しのような小型の刀を二本生成、 勢い良くキャロに向かって投げつけるが、脇差しはティアナのクロスファイアによって撃ち落とされた。 するとチンクを囲うようにしてクロスファイアが六発向かってきており、チンクは盾を使って弾こうとしたところ盾は光の粒子となって消滅、 一つ舌打ちを鳴らし悔しそうな表情を浮かべるも、クロスファイアを右往左往しながら回避し更に右手に持つ刀身にて三発打ち落とした。 ところがクロスファイアは更に五発追加されて迫ってきており、チンクはまたもや一つ舌打ちを鳴らすと、 左手で床の一部を掴み取り、原子配列変換能力を用いて長刀の刀を形成し、右の刀身と左の刀によって次々にクロスファイアを撃ち落としていく。 その時である、チンクの後方からスバルが勢い良く右拳を振り上げており、拳には衝撃波が纏っていた。 「リボルバァァ!キャノン!!」 だがスバルの気配に気が付いたチンクは左の刀を盾代わりにして攻撃を受け止めると、 今度はスバルの拳のカートリッジを一発使用してスピナーを高速に回転させて衝撃波を撃ち出すリボルバーシュートを撃ち抜き、 左の刀は二つに折れ衝撃波はチンクの胸元に突き刺さり吹き飛ばされていく。 だがチンクは吹き飛ばされながらも自身のISであるランブルデトネイターを用いて刀を爆破、 スバルは爆発に巻き込まれ周囲は土煙が舞い散り、暫くして落ち着いていくと 其処には全方向型のプロテクションを張り爆発から逃れたスバルの姿があった。 「やはり…間に合っていたか」 チンクは一つ舌打ちを鳴らしスバルと対峙している中、攻撃後オプティックハイドを発動させて 姿を隠しているティアナが今までのチンクの戦闘を基に分析を行っていた。 先ずスバルから予め聞いていたチンクの能力であるが、マテリアライズは魔力を原料として生成、非破壊効果を持つが三分程度で消滅する、 一方で原子配列変換能力は物質などの媒介を魔力によって変換させる為に消滅する事は無いが非破壊効果を持たない、 しかしあの爆発能力であるランブルデトネイターにより爆弾に変える事が出来るようなのだが、 確かな威力を誇るには三分以上時間を要するようで、マテリアライズで生成した武具では時間的にも非破壊効果的にも不可能である可能性が分かった。 そしてチンクは動きを先読みすることが出来るようで、此方の攻撃や行動の先の動きを行っていた。 しかし先読み出来るのはチンクが見た対象のみ目線から離れた若しくはティアナのように隠れた対象の動きは先読み出来無いようである。 つまり背後もしくは目の届かない場所からの攻撃が有効なのであるが、 チンク自身も危機察知能力が高い為か、中々思うようにいかないのが現状である。 「でも今はこれしか打開策が無いか……」 結局のところこれ以上の有効な対策が無い為に引き続き指示を送るティアナであった。 一方でスバルと対峙しているチンクは先手を取りスバルに攻撃を仕掛ける、 だがスバルは依然として全方向型のプロテクションを張り巡らせたままでチンクの攻撃を受け続けていた。 「成る程…考えたな」 どうやらスバルに攻撃の目を向けさせる事により、他のメンバーの行動を先読みさせないよにする作戦のようである。 一方でエリオはフリードリヒの背中にてキャロからフィジカルヒールを貰い体力を回復させると、 フリードリヒから飛び降り床に着地、ストラーダをチンクに向けてカートリッジを三発使用、 メッサーアングリフを放ち見る見るうちにチンクに迫る。 「甘いな、その程度の動き先読みしなくても分かるわぁ!!」 チンクはエリオの攻撃を半歩体をずらして容易くかわし不敵な笑みを浮かべるが、 エリオは急速停止し左足を滑らすようにして反転、左の裏拳による紫電一閃を打ち抜こうとした。 ところがチンクは腰を素早く下ろし裏拳を回避、更にスライディングキックにてエリオを迎撃、 するとエリオの攻撃に続けとばかりにスバルが飛び出し、右手にはスピナーの回転により螺旋状と化した振動エネルギーを纏っていた。 振動拳と呼ばれるスバルのISである振動破砕を用い、持てる技術を尽くし完成させた必殺の一撃である。 一方でスバルの拳を目撃したチンクは危機感を感じマテリアライズにて大型の盾を生成し備えた。 そして激突、辺りには振動拳の衝撃が伝わり床を削るようにして破壊、チンクもまた盾とともに床を削りながら吹き飛んでいく。 だが盾を破壊する事は出来ず盾が消滅すると無傷のチンクが顔を覗かせていた。 「これでも…駄目なのか……」 スバルは絶望の淵に追いやられたかのような表情を浮かべている中でチンクに異変が訪れる。 それはチンクの表情が痛みに耐えているような顔つきで更に左膝をついたのだ。 今までとは異なる反応にティアナは一つ確信する、マテリアライズされた武具は破壊する事は出来ない、 だが武具に受けた衝撃全てを受け止められる訳ではない、本来であれば破壊される程の衝撃を受ければ その衝撃は武具を通し本人に伝わり、そのままダメージを負うという事であると。 つまりは強烈な攻撃であればたとえマテリアライズされた武具でもダメージを与える事が出来る訳である。 そしてチンクを撃破するに当たって一番要なのが一撃の威力に定評があるスバルであった。 一方でチンクは自分が受けたダメージが思っていた以上である事に驚きを感じ、またスバルに警戒を浮かべていた。 これ以上攻撃を受ければ敗北するのは必死、憂いは経たなければならない…そう考えたチンクは真っ先にスバルを始末する事に決めた。 「貴様から先に叩いてくれる!!」 「そうはさせない!!!」 するとエクストラモードを起動させたエリオが割って入り、左拳に雷を纏わせ自身最速のソニックムーブにてチンクの懐に入る。 一方でチンクはエリオの行動を先読みし、攻撃を避けられないと悟るや否やマテリアライズにて大型の盾を形成した。 しかしエリオはお構いなく盾の上から何度も紫電一閃を連打しチンクを釘付けにする、 そして更にカートリッジを全て使用して右手に持つ小型化したストラーダに魔力を込め何度も盾を突き刺した。 「奥義エターナル!!レイド!!!」 最後に魔力と雷を込めた突きが盾に響き、その衝撃により盾ごと吹き飛ばされるチンク しかしエリオの攻撃を防ぎきったチンクは反撃を行おうと睨みつけるとエリオが声を荒らげた。 「今です!ティアナさん!キャロ!!」 チンクは辺りを見渡すと右上空にはエクストラモードを起動させ、フリードリヒの胸元に存在する竜紅玉に魔力を溜め込みいつでも撃てる用意があるキャロと、 少し離れた左側にエクストラモードを起動させクロスミラージュを水平に構え、その中心を軸に巨大なエーテルの球を作り出し、いつでも放てる用意があるティアナがそこにいた。 どうやら二人はエリオの攻撃の最中に準備を始め、エリオの攻撃が終わる頃を見計らって攻撃出来るように準備を整えたようである。 『奥義!!』 「ドラゴンドレッド!!」 「エーテルストラァァァイク!!」 エリオの合図の下、間髪入れず撃ち放たれた二つの強力な一撃がチンクに迫る中で、 もう一度マテリアライズを行い、同じ大きさの盾を用意して防御に当たるチンク。 そして激突と同時に大爆発を起こし、辺りには衝撃波が走り巨大な土煙がチンクを覆い隠す中 土煙が落ち着き始めると其処には巨大な盾に身を守られていたチンクの姿があった。 「そんな…効いてないの?」 「………いや!効いてる!!」 盾が光の粒子となって消滅した瞬間、チンクは左膝をつき表情に曇りの色を見せ、ティアナは最後であるスバルに目を向け指示を送る。 だがその一方でチンクの足下には多角形の魔法陣を幾重にも張り巡らせており、何処からともなく声が聞こえ始めた。 「汝…其の諷意なる封印の中で安息を得るだろう…永遠に儚く……」 「いけない!広域攻撃――」 「セレスティアル!スタァァァ!!」 チンクを中心に輝く羽が舞う複数の光の柱が立ち上り、更に広がっていくとティアナ・エリオ・キャロそしてスバルを飲み込んでいく。 そして辺りは光に包まれ暫くして光が落ち着いていくと其処には床に這い蹲ったエリオ・キャロ・ティアナの姿があった。 だがその中で全方向型のプロテクションを張っていたスバルだけがチンクの攻撃耐え抜いた姿があり、 スバルの姿を見たチンクはカートリッジを全て使用、足下に白い五亡星の魔法陣を張り 全身を白く輝くまるで白金を思わせる魔力で包み込むと、半身を開き構え素早くスバルの懐に入る。 そして矢のようなスライディングで足下を攻撃し後ろを取った瞬間に振り下ろし、間髪入れず振り上げスバルの体を浮かせる。 更に右からの袈裟切り、左からの払い、そして下から切り上げ更にスバルの体を宙に浮かせると、 巨大な槍が三本スバルの左右の脇腹から肩にかけて、脊髄から腹部にかけて突き刺す。 そして剣を納めスバルの頭上まで飛び上がると背中から光の翼を生やし、翼が光の粒子となって右手に集うと巨大な槍に変化した。 「これで終わりだ!奥義!!ニーベルンヴァレスティ!!!」 そう叫ぶと槍は白く輝く鳥に変わりスバルを貫く、そして白色の閃光は大きな粒上に変化 スバルを中心に集い圧縮され暫くして大爆発、辺りには爆音と共に衝撃波が響き渡り土煙が覆われていた。 「す………スバルゥゥゥゥゥゥ!!!」 ティアナの悲痛な叫びが辺りに響き渡る中でチンクは静かに着地、だが連続のマテリアライズに広域攻撃魔法、 更にはカートリッジ全てを使用したニーベルンヴァレスティと魔力を大量に消費した為、 かなりの負荷が体にのしかかったらしく左膝をついて肩で息をしていた、だが憂いでもあったスバルは倒れ他の仲間も床に伏している、 チンクは勝利を確信した表情で顔を上げると、土煙の中から腕をクロスに構え、チンクの攻撃に耐え抜いたスバルの姿があった。 「ばっバカな!!私の最大の奥義を耐え抜いたというのか!?」 「次は……コッチの番だぁぁぁ!!!」 スバルは両拳を握り締め足を肩幅まで開き構えると両腕のカートリッジを全て使用、大量の赤い魔力が炎のように溢れ出し 両拳には螺旋状と化した振動エネルギーを纏い、両足には赤い翼のA.C.Sドライバーが起動していた。 そして一気に加速し一瞬にしてチンクの懐に入るや否や、右のナックルダスターがチンクの胸元に突き刺さり、 続いて両拳からの上下のコンビネーションであるストームトゥースにマッハキャリバーとの息のあった拳と蹴りのコンビネーション、キャリバーショット そして左のナックルバンカーがチンクの顎を捉え跳ね上げると、右のリボルバーキャノンが腹部に突き刺さってめり込み 更にスピナーの衝撃を放つリボルバーシュートにてチンクを高々と舞い上がらせる。 すると今度はウィングロードを伸ばして滑走、チンクに追い付くと環状の魔法陣が二つ張られ 加速された赤い魔力球が握られた右拳をチンク目掛けて振り下ろした。 「奥義!ブラッディィ!カリスッ!!!」 振り下ろされた右拳はチンクの腹部に突き刺さり九の字に曲げると、そのまま垂直落下とも言える角度のウィングロードを滑走、 床に大激突し辺りに激しい衝撃が走る中でその中央ではスバルの拳をきっかけに、赤い魔力と混ざった振動エネルギーが波のように溢れ出しチンクの身を何度も叩きつけ 甲冑や兜は砕け散りスカートはボロボロ、そして左耳に取り付けてあったデバイスは砕け散ったのであった。 母のシューティングアーツに機動六課での特訓、リボルバーナックルの性能にエクストラモードの能力、 更にはスバルの今までの戦闘経験やセンス最後にISによって完成されたブラッディカリスはまさに一撃必倒と呼べる威力を誇っていた。 そして放たれた赤い魔力が落ち着くと其処には眼帯を失い、至る所が切れてボロボロの戦闘スーツ姿に戻ったチンクが仰向けの状態で倒れており、 チンクの姿を見たスバルは勝利を確信したと同時に両膝を付き肩で息をしていた。 するとスバルの勝利を祝ってかティアナ達が集まり激励を送るのであった。 時はチンクが撃破される前まで遡り、イセリアは女王乱舞にてレザードを攻撃、 だがレザードはシールドを張って攻撃を全て防ぎその中で詠唱を始め、ファイナルチェリオをイセリアに向けて反撃した。 だが一方でガブリエが接近し右手に持つ杖を振り下ろすがレザードはグングニルで防ぎ難を逃れる、 その間に攻撃に耐えたイセリアが背後を取り杖を振り抜きレザードを吹き飛ばすが、 レザードは右手を向けて直射型のライトニングボルトを放ち、イセリアはシールドを張ってこれに対抗した。 一方なのは達はレザードと流浪の双神の熾烈な戦いに唖然とした表情を浮かべていた。 するとなのはの下へティアナからの連絡が届く、それは今し方スバルがチンクを倒したという内容であった。 一方なのはの報告に小耳に挟んだレザードは動きを止め驚愕な表情を浮かべすぐさまモニターを開くと、 其処には仰向けで倒れているチンクの姿が映し出されていた。 「バカな…私の“レナス”が………」 レザードは頭を押さえ、まるでこのような結末を望んでいなかったと思わす表情を浮かべ、うなだれていた、 一方でなのは達は勝利を確信した表情を浮かべていた、戦況はこちらが優勢 しかもフェイトから聞いていた計画の要でもあったチンクは此方の手中にある、そして他のメンバーも此方に集うであろう。 そして流浪の双神も存在する、もはやレザードは袋の鼠状態、これ以上の抵抗は無意味であるとなのはが伝える中、 微動だにせず依然として俯き頭を手で押さえ、うなだれてるレザードの姿にフェイトが声を荒らげる。 「何か言ったらどうです!!」 「…………………」 しかしレザードは答えず長い沈黙が続き動きが一切無い中、レザードの体から金色の砂のような物が次々に垂れ出し、 それは床に落ちて徐々に広がり部屋全体を覆い輝かせる。 「なにこれ?!」 「術式………かな?」 それはよく見ると文字のようで部屋全体に書かれたのだろうと言うのがフェイトの見解である、 すると今まで沈黙していたレザードが静かに言葉を口にし始める。 「…たかが一介の魔導師が私の計画を潰し、あまつさえ我が“愛しき者”を傷付けるとは……」 次の瞬間なのは達の体に異変が起きる、それは今までとは異なり体に負荷がのしかかり、 それはまるで能力リミッターを掛けられた時と同じような感覚を覚えていた。 なのは達は自分の体の異変に戸惑っていると、レザードが振り返り押さえていた手を降ろしその表情は怒りに満ち鬼の形相と化していた。 「――許せん!!!」 自らのお気に入りであり“愛しき者”であるチンクを傷付けた罪は重い、そう口にすると左手を掲げるレザード そして――― 「跪け!!」 左手を振り下ろした瞬間、何かがのし掛かったかのように全身が重くなりなのは達は床に伏し、その光景はまさに跪いているかのようであった。 その中でイセリアがゆっくりと立ち上がりレザードに向けて杖を振り払い衝撃波を生み出す。 だがレザードは迫ってくる衝撃波をまるで埃でも払うかのようにして右手を払いかき消した。 「どっどうなってるの?!」 「なる程な……」 なのはは戸惑う中イセリアが説明を始める、レザードの体から放たれたこの術式により 肉体・魔力更には攻撃の威力まで十分の一以下にまで押さえつけられているのであろうと語る。 一方でレザードは再び左手を掲げなのは達を浮かばせると左右の壁、上下の床や天井に次々にぶつけ更に叩き落ととすようにして床に激突させた。 「殺しはしない!死んで楽になどさせるものか!!」 すると今度は大量のイグニートジャベリンを用意して一斉に発射、なのは達の身を次々と貫いていく、 だがレザードの攻撃は終わらず続いてダークセイヴァー、アイシクルエッジ、プリズミックミサイルなどを次々撃ち抜き 必死の形相で回避またはバリアやシールドなどで防ごうとした、しかしレザードの放った魔法の威力はそれらを簡単に打ち砕きその身に浴び次々に倒れていくなのは達。 そして最後にレザードは詠唱を破棄してファイナルチェリオを撃ち放ち、その衝撃により床壁などを吹き飛ばした。 「どうしましたぁ!?この程度で終わりですかぁ!?」 レザードは尚も挑発を促しなのは達を立たせていく中、なのは達の表情は絶望に支配されていた。 此方に攻撃を仕掛ける暇も与えず、もし攻撃出来たとしても大したダメージを与える事が出来無い、 更には流浪の双神すら手玉に取られている状況、正に今のレザードは“破壊を求める者”といっても過言ではなかった。 そんな状況になのはとフェイトは塞ぎ込んでいると二人の下へ流浪の双神が駆け寄り二人に話しかけた。 「一つだけ…奴に対抗出来る手段がある……」 「えっ?それは一体?!」 「私達との融合…ユニゾンと置き換えてもいい」 二人のどちらが流浪の双神と融合する事により一時的にレザードと対等の力を得ることが出来るという、 だが神とのユニゾンは大きなリスクを伴い、下手をすれば器となった存在の魂が消滅する可能性を秘めていた。 つまりレザードとの実力差を埋めるにはそれ程までのリスクを背負わなければならないと言う事である。 すると神の話を聞いたなのはが覚悟を秘めた表情を浮かべ言葉を口にし始める。 「だったら私が―――」 「私を器にして下さい!!」 「―――フェイトちゃん?!」 なのはの決意を遮るかのようにフェイトは言葉を口にし困惑するなのは。 するとフェイトが説明を始める、なのはにはユーノやヴィヴィオなど大切な人がいる、その人達を泣かせる訳にはいかない、 だからなのはの代わりに自分が器になると告げるとなのはは反発した。 「何言ってるの!フェイトちゃんにもエリオやキャロが―――」 「二人なら私がいなくても大丈夫だから」 先だってのスカリエッティとの戦いで見せた二人の決意、それを耳にしたフェイトは二人が自分の下を巣立ったのだと確信した それになのはは自分の命を救ってくれた、その恩を返す為にも今ここで自分が器になる、そう覚悟を決めたのだという。 「なのは……みんなの事をお願―――」 次の瞬間なのははフェイトに当て身し気絶させると、悲しい表情でフェイトを見つめるなのは。 いくらフェイトの願いであってもそれを受け取ることは出来なかった、何故ならレザードとは自分の手で決着をつけたかったからだ。 ホテル・アグスタを始め地上本部での二度の敗北、そしてヴィヴィオを誘拐され絶望の淵に追いやられた。 それらを払拭する為にも自分の手で行わなければならないと覚悟を決めていたのだ。 「……良いのだな?」 「覚悟はもう…決まってるの!」 なのはの決意ある瞳を見た流浪の双神は小さく頷き、気絶するフェイトから離れ三人はレザードに近づくと、今度は流浪の双神がなのはとある程度距離を置く、 そして足下に巨大な三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣を張り巡らせると、今まで沈黙を守っていたレザードが見下ろす形で言葉を口にする。 「まだ悪足掻きをするつもりですか?」 「言ったの…私は諦めが悪いって!!」 するとなのは足下に流浪の双神と同じ桜色の魔法陣が張られ輝き始めると、それに呼応するように流浪の双神の魔法陣も力強く輝き出す、 そしてその輝きは一種の壁となり三人は声を合わせて言葉を口にした。 『ユニゾンイン!!』 「何ぃ?!」 流石のレザードも驚きの表情を浮かべていると、流浪の双神はそれぞれ赤と青のエネルギー体になり更に球体に変化、 魔法陣ごとなのはに近付き胸元に吸い込まれていくようにして収まると、次の瞬間大量の桜色の魔力が天井を突き破るかのようにして溢れ出し魔力がゆっくり収まっていく。 其処には背中に桜色の六枚の翼を生やし胸元の黒い部分は透けて谷間が強調されたロングスカート型のバリアジャケット 足下は金で装飾された金属製のハイヒール型の具足に変わり外側の両足首部分からは桜色の翼が生え、 結っていたリボンが無くなり髪型はストレートヘアー、更に桜色の天使の輪が浮かんでいた。 そしてレイジングハートは力強くまるで冷え切っていない溶岩のように赤いクリスタルが輝き、 ストライクフレームから現れる魔力刃は鋭く分厚く左右からは四枚の小さな翼が生えていた。 なのはの変貌にレザードは依然として唖然した表情を隠せないでいると、 今まで瞳を閉じていたなのはの瞳が開き、金色に輝くその瞳でレザードを突き刺すように睨みつけた。 「覚悟っ!!」 「一介の小娘が神とユニゾンだと……いいだろう相手をしてやろう!!」 するとレザードは、まるで北極星を思わせるようにして力強く輝き白金のような色と化した魔力を高めていき、 一方でなのはは自分の体を確かめるかのようにして体を動かし、レイジングハートの先端をレザードに向けて対峙する。 いよいよ戦況は最終局面を迎えるのであった……… 前へ 目次へ 次へ
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臨海第八空港火災から一夜開け、此処ミッドチルダ北部に存在する宿泊施設に、三人の若き女性魔導師が宿泊していた。 彼女達は本局直属の魔導師で、要とも称されるほどの実力者であり、今回の空港火災の協力者でもあった。 三人は一つのベッドに並んで寝ていたのだが、茶色の短髪の女性が目を覚まし起き上がると 他の女性達も釣られるように起き始める。 「あっ二人共起こしてもうた?」 「ううん、今起きようと思ったところだよ、ねっなのは」 「うんフェイトちゃん、でもどうしたの?なんだかあんまり寝てない感じがするけど…」 「…流石になのはちゃんにはバレてもうたかぁ~」 はやてと呼ばれた女性は頬を掻きながら照れ隠しに笑みを浮かべるや、直ぐ様真剣な顔へと変わる。 彼女は空港火災時の管理局の――いや本局の対応に対して疑問を感じたと語り始めた…… リリカルプロファイル 第九話 騎士 空港火災の一報が入った時、はやてはゲンヤの部隊で研修を受けていた。 そして一報を受けたゲンヤは早急に現場への準備を進め、はやてもまたゲンヤと共に現場に向かうつもりであった。 だが本局の上層部ははやての同行を却下、むしろ現状で待機を命じられ、 命令に納得いかないはやては、これを無視してゲンヤと共に現場に向かい、 道中で偶然にも現場近くにいたなのは・フェイトの両名に声を掛け、協力体制をとり、 その結果、火災は速やかに鎮火、逃げ遅れていた民間人も無事救出し事なきを得た。 すると本局は手の平を返して、三人の判断と功績を讃えたという。 今回の本局の対応は地上本部との溝を更に深める内容であり、 このまま両者の溝が更に広がれば、解決出来るハズの事件も解決出来なくなる可能性があると、はやては示唆する。 「ただでさえ今の管理局は大きくなりすぎて迅速な行動が取れんっちゅうのにな… そこでな、私が今まで暖めとった計画を実行しようと思うんよ」 「計画?」 「せや、少数精鋭によるスペシャルチーム、調べとったら過去に実例があるんよ」 そう言うとベッドから降り、カバンから端末を取り出しなのは達に見せる。 其処に載っていたものは、三年前まで存在していた機動隊の情報であった。 はやてはこの機動隊の流れを汲む、新たな部署を設立したいと告げる。 「出来れば二人にも協力して欲しいんよ……あっ!でも今すぐっちゅう訳やないんよ、いつ実現するのかも分からんし… それに二人の将来の事とかもあるんのは分かってるし……」 「はやてちゃん…何を水くさい!」 「そうだよ!小学校以来の親友じゃないか」 二人ははやての願いを快く承諾、むしろそんな面白そうな事に関われない方が嫌だと付け足し、 はやては二人の気持ちに感謝し礼を述べ、早速三人は夢の実現の為に様々なアイデアを出し合い始めた。 場所は変わり、ゆりかご内のラボではレザードが戦闘機人のデータを纏め上げ、 その傍らにはクアットロが補助に徹し、順調に処理を続けていると、スカリエッティが挨拶にやって来た。 「元気かいレザード、彼女達の様子はどうだい?」 「ドクターですか、えぇ順調ですよ」 ノーヴェ、ディエチ共に順調に学習しているが、セインはあの性格のせいか勉強が得意では無い様子。 だがチンクの指導もあり渋々と、でも着々と学習していた。 チンクも妹が出来てから、姉としての自覚が出来た様子で、妹達も慕っているのだが、 特にノーヴェはチンクにべったりらしく、姉妹以上の関係を思わせる程の仲であるとの事。 「ドクターの方こそ、“鍵”やレリックウェポンの方はどうなのです?」 「“鍵”の方はドゥーエに任せてあるしレリックの方も順調だよ。ただデータ取りがゼストのみというのがね…」 「あの女を使えば良いのではないですか?」 「…そう巧くはいかないのだよ」 スカリエッティの話では、レリックとリンカーコアを融合させるには、相性の問題が発生するらしく、 それぞれレリックには刻印ナンバーが刻まれていて、リンカーコアとの相性はその番号で決まる。 ゆりかご内のデータバンクには、No.20までのレリックのデータが記録されていて、メガーヌはNo.11との相性が良く現在捜索中、 因みにゼストの場合は、損傷した肉体の改良中にリンカーコアをレリックと融合出来るよう修繕した。 「だがあの女の肉体は無傷な為、ゼストのようにはいかないのだよ」 「……ではどうするのです?」 すると、スカリエッティはレザードの端末を借り映像を出す。画面には紫の髪の少女が映り出ていた。 彼女の名はルーテシアと言い、メガーヌの子だという。 「この子に使ってみようと思っているんだ」 「ほぅ…そんなに素晴らしい素体なので?」 レザードの問いに頷くスカリエッティ、彼女はまだ四歳ではあるが魔力レベルは現在Sランク 生まれながらにしてエースとしての資質を持つ存在だという。 「末恐ろしいですね…」 「まったくだよ、ドゥーエの話では、最近は姉や施設などで魔法の勉強をしているらしいからね」 「ほぅ、姉…ですか」 「あぁ、名は確か――メルティーナとか」 「メルティーナ…ですと?!」 流石のレザードも驚きの表情を隠せないでいた。 まさかこんな所でその名を聞くとは思っても見なかったからだ。 腐れ縁とは次元すら越えてついて回るモノなのか…そう考えるとレザードは手のひらを返し肩をすくめ苦笑した。 「ん?知り合いだったのかね?」 「いえ……“他人の空似”でしょう…それより、その子は誰が連れくるのですか?」 「ゼストに頼んだよ。彼は忠実な“騎士”だからね」 死してその身を実験体として使われ、レリックの強奪や関係者の暗殺に関与し、更に誘拐までこなす“騎士” 今の彼にこれほどの屈辱な言葉はないだろう…レザードは眼鏡に手を当て笑みを浮かべていた。 処変わって、此処は聖王教会の構外にある聖王騎士団特殊訓練所、ここで二人の魔導師が模擬戦を行っていた。 一人はアリューゼ、もう一人はポニーテールの髪型でピンク色の髪の女性“烈火の将”シグナムである。 二人は、訓練所にある広場の中心で剣と剣を交え鍔迫り合っていた。 その均衡を破ったのはアリューゼであった。アリューゼは力押しでシグナムの刀身を弾き、 シグナムのバランスを崩すや、その隙を突いて大剣を振り降ろす。 だが、シグナムは直ぐに体勢を立て直し、アリューゼの振り降ろしに合わせて体を右に回転、 その勢いのまま振り払うがアリューゼの左の小手で止められる。 左の小手は薄い光に覆われており、パンツァーガイストと呼ばれる防御魔法を発動させていた。 だがパンツァーガイストはその高い防御機能の為に、発動中は身動きがとれない。 其処でアリューゼはパンツァーガイストを解除、続いてシグナムの足下めがけて突き刺すが、 シグナムは間一髪上空へと逃げ、剣から薬莢が一つ飛び出し刀身は姿を変える。 シュランゲフォルムと呼ばれる鞭のような姿となり、地面をえぐるようにアリューゼに迫り、 アリューゼは左に回避するが、シグナムは直ぐ様追撃、 其処でアリューゼはシュランゲフォルムの追撃に対し、バハムートティアを盾代わりにして攻撃を受け流し、 シグナムはシュランゲフォルムを手元に戻して、刀身を元の姿に戻す。 だが、その僅かな間を縫いアリューゼは上空にいるシグナムに向かい追撃、 レイチングスイングを放つが、パンツァーガイストを纏った刀身で防がれる。 「このっ!吹き飛びやがれぇ!!!」 アリューゼの気合いに合わせるように、バハムートティアの刀身は黄色い魔力に覆われ、 シグナムを刀身ごと地面へと吹き飛ばす。 アリューゼは魔力を消費する代わりに通常の一撃の威力を1.5倍高める、チャージと呼ばれる魔法を使用したのだ。 その威力はパンツァーガイストを発動させているにも関わらず、強引に吹き飛ばせる程。 尤も一撃一撃に相当な威力を誇るアリューゼの攻撃故に、可能なのだろう。 だが、シグナムは地面ギリギリで体勢を立て直し着地、そのまま刀身を斜に構え、 その構えを見たアリューゼもまた地面に着地、バハムートティアを肩に構える。 「バハムートティア!」 「レヴァンティン!」 『カートリッジロード!』 両者が叫びに合わせる様に、機械音と共に互いの得物から薬莢が二つずつ飛び出し、 バハムートティアの刀身は熱せられた金属のように赤く染まり、 レヴァンティンの刀身は紅蓮の炎に包まれた。 『奥義!!』 「ファイナリティブラスト!!」 「紫電一閃!!」 奥義と共に激突する両者、二人を中心に辺りは熱波を帯びた爆風が広がり木々を薙ぎ倒していき、 暫くの膠着を終えたあと、互いに構えていた位置とは反対の位置に移動、 その手には今まで握られていたハズの得物が無くなっていた。 一方両者の上空では、風を切る音を奏でながら落下していく得物と得物、 そして地面に突き刺さると互いの得物でクロスを描いていた。 「相打ちか……」 「……みてぇだな」 互いの力量を計った両者は、自分のデバイスを引き抜き待機モードに変える。 「しかし…大したものだ、僅か三年で私と対等なまでの強さを得るとはな。仲間から天才と称される訳だ」 「よせよ、俺はそんなんじゃねぇ」 アリューゼが聖王騎士団に入団してから三年。アリューゼはシグナム達との実戦さながらの模擬戦により、 入団当初はAAランクだった魔力が今はS-ランクまで成長していた。 だが本人は満足しておらず、さらなる成長を望んでいた。 「謙遜するな、今のお前なら“騎士”と名乗っても恥ずかしくないぞ」 その言葉に影を潜めるアリューゼ。少し間を置いて、アリューゼは答えた。 「……俺は“騎士”とは名乗れねぇよ」 その言葉に息を詰まらすシグナム、シグナムはアリューゼが聖王教会に来た理由を断片的ではあるが知っていた。 …自分に道を与えてくれた人の死、だがその人の死によって、新たな道が出来た。 そして…その道は強くなければ進めない茨の道である…と。 機動隊壊滅事件、この事件はアリューゼに大きな傷と決意を与えていたのだ。 辺りは静まり重い空気が犇めく中、シグナムは場の空気を変えようと話題を変える。 「そう言えば…この近くでいい店を見つけたのだが、模擬戦も終わったことだ……一緒に行かないか?」 心なしか顔が赤くなっているシグナム、しかしアリューゼはシグナムの誘いに首を振る。 「わりぃな、この後ヴェロッサと用事があるんでな」 「……そうか、それは――残念だ……」 今度は落ち込む様子を見せるシグナム、アリューゼはシグナムに背を向け手を振り挨拶を交わし、 シグナムもまた手を挙げ挨拶を交わすと、アリューゼはその場を後にする。 アリューゼの姿が完全に消えると深いため息を吐くシグナム、 そして、その場を後にしようと歩き始めたその時、一筋の影が姿を現す。 「アリューゼ!模擬戦一緒にやりましょう!!……ってあれシグナムだけ?アリューゼは?」 「シャッハか、脅かすな…アリューゼは用事があると言って去っていったぞ」 シャッハはため息混じりでその場に座り込む。 どうやら巡業中のカリムの護衛の任が終わり、直ぐ様ここへ来た様子だった。 「なぁんだ残念…折角いい店を見つけたから、模擬戦の後に食事でも誘おうと思っていたのに……」 「ほぅ…それはどういう事だ?」 笑顔で聞いてくるシグナム、深い意味はないと答えるシャッハ。 重い空気が包む中お互いは笑い合ってはいたが、その目は笑っていなかった。 場所は変わりここは聖王教会の一室、懺悔の部屋と呼ばれる部屋の前にアリューゼが立っていた。 部屋の入ると内部は木の椅子と仕切りに隔てられた机が置いてあり、 アリューゼは椅子に腰をかけ、暫くして壁の向こうから若い男性の声で話しかけられる。 「さぁ…懺悔なさい」 「……くだらねぇ事してんじゃねぇ、ヴェロッサ」 相変わらず冗談が通じないと壁の向こうで溜め息混じりで話す青年。 彼の名はヴェロッサ・アコース、本局の査察官で聖王教会の主カリムの義弟である。 「んで、何か出たのか?」 「まぁね、でもまずは君がくれた情報の結果からだ」 アリューゼはヴェロッサにクイントが集めた情報を提供、それを基に本局の情報を洗って貰っていたのだ。 まず提供された情報のついて、結果を述べればその全てが消去されていた為 ヴェロッサは提供された情報を元に現場を査察、だが有力な情報は得られなかった。 「少なく見積もっても五年以上前のデータじゃね、もう少し新鮮な情報だったら良かったんだけど」 「そうか………それで“レザード”の方は?」 “レザード”…アリューゼが関わっていた機動隊壊滅事件の際、屈辱に耐えながら気絶を装っている時、 眼鏡を掛けた青年がモニター越しの男に“レザード”と呼ばれていた。 “レザード”とは青年の名では無いかとアリューゼは踏んでいたのだ。 「“レザード”と言う名前自体の情報は出なかったけど、気になる情報はあったよ」 先日起きた魔導師集団によるリンチ事件。変死事件を追っていた魔導師が、張り込み中に集団暴行を受け死亡したこの事件に、 ヴェロッサは記録員として関わっており、その中でいくつか不信な部分があるという。 まずは被害者の遺体について。被害者の体は複数の魔法による攻撃で激しく損傷していた。 其処でまず遺体の傷口に付着していた魔力の残滓を採取し分析、 次に他の箇所も同様に採取・分析した結果、各傷部分の残滓は同一の物であると特定した。 魔力の残滓とは、魔法内に含まれている魔力素と結びつかなかった魔力の事を指し示し、 魔法とは、大気中の魔力素を魔力で結びつけ操作、起動トリガーによって発動させた現象の事を呼ぶ。 そして魔力の生成には内的方法と、外的方法と二通り存在し、 内的方法の全ては大気中の魔力素をリンカーコアで取り込み変換させる事で、魔力を生成する事が出来る。 次に外的方法の多くはカートリッジシステムによる物が多い。 カートリッジシステムとは、薬莢に含まれた大量の魔力を自分の魔力と混合、 その後自分の魔力に変換する事により、一時的に膨大な魔力を保有する事が出来るシステムである。 話を戻し、生成した魔力は遺伝子のように一人一人違っており、 それは内的方法で生成した魔力でも、外的方法で生成した魔力でも変わらないと語る。 次に犯人に対しても不信な点がある。犯人はカルト集団ゴーラ教信者と報道されているが、 そもそもゴーラ教と呼ばれる宗教など存在しておらず、犯人は結局自首後まもなく自殺を遂げていた。 「犯人が生きている内に思考捜査しとけば良かったんだけどね」 思考捜査、ヴェロッサのレアスキルの一つで相手の記憶を読みとる事が出来る。 だが遺体の記憶は読みとれない為、今回は不発に終わった。 「つまり今回の事件は複数の魔導師によるリンチではなく、一人の魔導師が複数の魔法で惨殺したと言える状況なんだ。 それはつまり君から聞いた情報と一致する。恐らくこの事件にはレザードが関わっていたと思う」 アリューゼから貰った情報の中にレザードは複数の魔力変換能力を持つという。 ヴェロッサはそんな存在は旧知の仲のはやてぐらいと考えていたが、 アリューゼの話が真実なら、複数の魔力変換能力を持つレザードならば、この様な事件を起こせると考えていた。 だが管理局は、マスコミ陣に集団リンチとして会見を開いた。 「恐らく裏で大きな組織が動いたと思うんだ」 「やはりそれは………」 「うん、最高評議会だと思う」 だが例えそうだったとしても、自分達の予測に過ぎず、証拠となる物は無い。 その為今回の事件は集団リンチ事件として片付けられたままである。 「それでどうするの?」 「引き続き頼む」 「はぁ…やっぱりね……」 アリューゼはそのまま部屋を出ると、ヴェロッサは大きくため息を吐き部屋を後にした。 懺悔の部屋から出た二人、暫く他愛のない会話をしながら通路を歩いていると、 一人の司祭と青い長髪の女性と出会い、ヴェロッサは女性の美しさに思わず挨拶を交わす。 「司祭様、そちらの方は?」 「あぁ入教志望者だ、今教会内を案内しているのだよ」 「それはそれは…しかし司祭様は多忙のハズ、どうでしょう?ここは一つ私めがご案内を受け賜りましょうか?」 「いえ…お気持ちだけで十分ですわ」 「そうですか…それではまたの機会に」 「ハハハッ相変わらず、めげないな」 それが自分の持ち味ですからと司祭と笑い合うヴェロッサ。 二人の後ろでは青髪の女性を見つめているアリューゼの姿があった。 「あの?なにか?」 「…いや、何でもない」 アリューゼと一言交わすと司祭達はその場を後にする。 それを横目で見つめるアリューゼ、その反応にヴェロッサの口元がゆるむ。 「なんだい?アリューゼは、ああいう女性が好みなのかい?」 「そんなんじゃねぇよ、ただ…気になってな」 かつて対峙した銀髪の戦闘機人、先程の女性から同じ印象を感じていたアリューゼであった。 此処は時空管理局本局・無限書庫…かつては管理している世界の情報が乱雑に積まれた場所であったが、 司書長であるユーノ・スクライアが指揮を執り、情報を整理する様になってから、五年前よりも詮索し易くなっていた。 それでもまだ整理されてない場所も多く、整理班、詮索班など役割を付け交代制で勤めていた。 メルティーナもまたその一人で、今も最高評議会についての情報を詮索中、とその彼女の下にユーノが現れ話しかけてくる。 「探し物は見つかったかい?」 「司書長?いえ、私が欲しい情報はまだね」 「そうか…でも焦らないで、そうすれば必ず見つかるから」 此処無限書庫は言うなれば百億ページ以上の辞書のようなもの。 焦って全てを全てと示そうとしてもそれは偽りしか有り得ない、とユーノは付け加える。 「そんなのは解ってるわ。でも…じらされるのは嫌いなのよね」 「やれやれだね……」 両手を開き肩をすくめ呆れるユーノ。それはさておき、そろそろ交代時間が迫ってるとメルティーナに伝えるや、 急いで帰り支度を始めるメルティーナ、その姿を見たユーノは笑みを浮かべていた。 無限書庫の出入口にはルーテシアがメルティーナの帰りを待っていた。 その光景を見たメルティーナは足早にルーテシアの下へ急ぐ。 「ごめんルールー!遅くなった?」 「ううんメル姉、お仕事忙しかったの?」 「そうじゃないけど…まぁいいか。帰ろう」 ルーテシアは頷きメルティーナの手を握り帰路に立ち、 自分達のアパートに帰る途中、メルティーナはルーテシアに今日の夕飯の注文を聞くと、 ルーテシアはシチューと答え、メルティーナはとっさに冷蔵庫の中身を思い返す。 (うん…作れないわね) 本局は街一つ呑み込んだ船ではあるが、その殆どが宿泊施設か外食産業でしかなかった。 仕方なくルーテシアと共にグラナガンで買い物をする事を決めた。 買い物も終わり、メルティーナはルーテシアと共に並木道を歩いていた。 左手にはシチューの材料が入った買い物袋を、右手はルーテシアの手を繋いて。 ルーテシアは今日一日の出来事をメルティーナに報告 特に念話を覚えた事を伝えると、二人は念話でやり取りを始め、盛り上がっていた。 暫く歩いていると辺りが暗くなり始め、空は重い雲が出始めており雨が降るかもしれないと考えた。 「ルールー急ごう!」 「うんっ!!」 メルティーナ達は駆け足で帰ろうと思ってた矢先、目の前にフードを被った大柄の人物が立ち塞がり、 その人物から放たれる威圧感に懐かしさを覚えつつも警戒、 ルーテシアに荷物を持たせて後ろに下がらせる。 そしてデバイスを起動、その姿は先端の青い丸い宝石を中心に銀のフレームで覆われ最先端は角のように一本延びていた。 杖型インテリジェントデバイス・ユニコーンズホーンと呼ばれるメルティーナの相棒である。 メルティーナはデバイスを相手に向けて構え、対峙する。 「アンタ…何者!」 そう言うと人物はフード脱ぎ、その姿を目の当たりにしたメルティーナは驚愕を隠せなかった。 何故なら其処にいた人物の正体とは、アリューゼに死んだと聞かされていたゼスト隊長であったからだ。 「ゼスト隊長!アンタ…生きてたの!!」 喜びの表情を見せるメルティーナであったが、ゼストの言葉に表情が固まる。 「誰だ貴様は?…まぁいい、私の目的はそこにいる娘ルーテシアだ。大人しく引き渡して貰おう」 メルティーナは困惑していた。ゼスト隊長はいきなり、何を言いだしているのか理解できなかったからだ。 そんなメルティーナを後目に、ゼストはデバイスを起動、 ルーテシアに近づこうとしたところ、メルティーナがその道を塞ぐ。 「どういう事なのか解らないけど今のアンタにはルールーは渡せない!!」 ゼストの実力を知るメルティーナにとって、この男に戦いを挑むのは無謀そのもの、 だが、何があってもルーテシアは守る、この子を引き取る時に自分に誓った決意。 今この場で試されているのだろう…メルティーナは覚悟を決め足下にミッド式の魔法陣を張ると、 自身の周りに光弾を現れ合図と共に発射、ゼストに襲いかかる。 スティンガーレイと呼ばれる魔法で、誘導性は無いが回避されにくい高速型の魔法である。 だがゼスト程の実力ではその効果は薄く案の定難なく弾き返され、一瞬にして懐に入られるや 左拳で鳩尾辺りを強打、メルティーナはその場でうずくまり、その姿を一切見ずルーテシアに近づく。 だがメルティーナはゆっくりと立ち上がり先程と同様の光弾を準備、今度は螺旋を描きながら撃ち放ちゼストを襲う。 スティンガースナイプと呼ばれる誘導弾に変更したのだ。 しかしゼストには通用せず次々に撃ち落とされていく。 だがメルティーナも負けじとスティンガースナイプを打ち続け、 この埒があかない状況に、ゼストはメルティーナをしっかりと見据え、 先程以上のスピードでメルティーナに接近、肝臓辺りを槍の柄で突き刺す。 「カハッッ!!」 メルティーナの体に激痛と衝撃が走り、その勢いは身を吹き飛ばし次々と並木を薙ぎ倒す程。 その光景を目の当たりにしてしまったルーテシアは、 恐怖からか体が震え、止まる事も無く目の前にいるゼスト姿にヘたりと座り込む。 とゼストはルーテシアと同じ目線まで膝を曲げ、こう告げた。 「母親に逢いたくはないか?」 「お…母……さん?」 ルーテシアの返事に頷くゼスト、一方吹き飛ばされたメルティーナは腹部を押さえながらもルーテシアの元まで戻ろうとしていた。 だがその足取りは重く思うように歩けず、体に鞭を打って必死に歩き、ようやく辿り着くとゼストと何か話している様子。 するとゼストは立ち上がりルーテシアの手を取るや、この場を後にしようとする。 その状況に叫び声を上げて止めようとするメルティーナ。 「ルールー!!ダメェェェェェェ!!」 その悲痛な叫びに振り向くルーテシア、そしてメルティーナに覚えたての念話で話しかけてきた。 (大丈夫…ちょっとお母さんに会ってくる……) そう告げるとゼストと共に転送、この場を後にした。 ――丁度辺りは暗くなり、大粒の雨が降り出した頃、 メルティーナはその場にうずくまり、泣きながら叫んだ…ルーテシアの名を何度も…何度も―― 場所は変わり、ゆりかご内に建造されたレリックウェポン製造施設。 この施設内に設けられている生命ポットの中に、一人の女性が眠っている。 その姿を一人の少女、ルーテシアが見つめていた。 「君がルーテシアだね」 不意に声をかけられるルーテシア。振り向くとそこには白衣の男と眼鏡の男がいた。 「私の名前はジェイル・スカリエッティ、皆からはドクターと呼ばれている。 そして彼は私の同志のレザード・ヴァレス。彼は博士と皆から言われている」 「ふ~ん…それで、なんでお母さんはこんなところで寝ているの?」 「それはだね、君のお母さんは“病気”にかかっているからだよ」 スカリエッティはそう告げ話を続ける。メガーヌは重い病気を患っており、今は生命ポットで命を繋いでいる。 彼女の病気を治すにはとある力が必要、と懐から赤い宝石を取り出す。 名をレリックと呼び、この中に刻まれている刻印ナンバーの11が彼女の治療に必要だと説明を終える。 「どうだろ?協力してくれたらこのレリックをキミに与え―――」 「餌で釣るような真似はしなくていい……私はアナタに協力する」 母親を助けるその為なら何でも協力すると誓うルーテシア。 そんなルーテシアの決意とは裏腹に、スカリエッティの後ろでは表情には出さないが、 必死に笑いを堪えているレザードの姿があった。 口八丁もここまでくればたいしたものだと、皮肉を交えた感想を考えていたのだ。 一方了解を得て意気揚々のスカリエッティは、ルーテシアの護衛として“騎士”ゼストを付け、 更に彼女の母と同じデバイス、アスクレピオスを渡し感謝の言葉を綴り最後にこう締めた。 「これからよろしく頼むよ……可愛い可愛いルーテシア」 「…………ドクターってもしかしてロリコン?」 一瞬にしてこの場を凍り付かせたこの言葉、特に浴びせられたスカリエッティの顔はひきつり声が出ない様子。 だがなんとか自我を保ち、声を振り絞ってルーテシアに質問を投げ返す。 「なっ…何故…そんな事を?」 「メル姉が言ってた。私みたいな少女に可愛いとか言って寄ってくるのは、ロリコンって言う変態なんだって」 この答えに流石にスカリエッティも、乾いた笑いで答える事しか出来ない様子。 一方レザードは、彼等の後ろで笑い声を必死に押さえていた。 …そして“他人の空似”のメルティーナに対し心の中でこう呟いた。 ―――全く…貴女らしい教育の仕方ですよ――― 前へ 目次へ 次へ
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《ミッドチルダに住む人々よ!今この地は未曾有の危機に直面しておる!!》 《先日起きた地下水路崩壊も然り!そして諸君らの記憶にも新しいアグスタ襲撃も然りじゃ!!》 《これらはガジェット及び不死者と、それらを造った者達の手によって引き起こされた事なのである!!》 《そしてアグスタ襲撃事件の際、我々管理局は最大の策を投じたにも関わらず敗れた!!》 《即ち!このままでは我々の滅亡は必死であろう!ならば我々はこの滅亡の危機を運命として受け入れなくてはならぬのか?》 《否!断じて否!!我々管理局はこの未曾有の危機に対し、新たな策を投じた!それが彼らエインフェリアである!!》 《彼らエインフェリアは人型のデバイスである!その姿形に人型兵器と思う者達も多いであろう……》 《しかし!!彼等はこのミッドチルダの魔導技術の粋を集め造られた存在!決して質量兵器などではない!!!》 《その証拠に見よ!彼らの勇姿を!!この映像は先日起きた地下水路崩壊の際に撮られた物である!》 《彼等は魔法を用いて!たった二体の手により、この複数存在するガジェット及び不死者の群れの悉くを殲滅させたのである!!》 《即ち彼等こそが、未曽有の危機に対する対抗手段なのじゃ!!》 《そして我々管理局はこのエインフェリアを量産する用意がある!その名も…アインヘリアル計画である!!》 《この計画が実行に移れば、もうこのような幼い子供にデバイスを持たせる必要は無くなるのだ!!》 《聞け諸君よ!彼等エインフェリアは弱き者を守る盾であり、強き者を挫く剣なのである!!》 《今!我々に必要な物は未曾有の危機を脱する力なのだ!その力は今まさに此処に存在しておるのじゃ!!!》 リリカルプロファイル 第二十話 陳述会 ガノッサ提督による演説は二時間にも及び、モニターにはエインフェリアの姿が映し出され、その中にはクロノ提督の姿も存在していた。 そして…その演説を冷ややかな目線を送り見つめるレジアス。 「いよいよ始めたか…ワシも急がねばならんな……」 そう一言呟くとモニターを切り、一人黙々と何かを打ち込む作業を始めるレジアスであった。 …一方此処は機動六課に存在する会議室、この部屋は防音機能が完備されており、外部に情報が漏れない造りになっている。 その部屋に、はやてとゲンヤそしてギンガの姿があった、目的は先日行われた共同戦線の情報交換を行う為である。 それぞれ情報を交換する中、はやては写真が貼られた資料をゲンヤに渡すと、黙って受け取り目を通す。 写真には後ろ髪を結った茶髪の少女の顔とその少女が持っていた無反動砲が写っており、資料の内容は少女が持っていた銃についてであった。 銃の名は表面上に書かれており、イノーメスカノンという。 解析の結果、命中精度・威力などが非常に高く多種多様な弾丸を撃ち出すことが出来ると、 だがその重さは尋常ではなく、とてもではないが写真に写る少女が持ち運び出来る代物ではないと綴られていた。 その内容に沈黙するゲンヤ、その表情に既に確信にも似た表情で話しかけるはやて。 「やっぱり…彼女達は……」 「あぁ、戦闘機人だ……」 ゲンヤの言葉に俯くギンガ、そしてはやては自分の考え出した答えが正しかったといった表情を見せる。 するとはやては失礼ながらゲンヤの妻、つまりギンガの母の事を調べたと話し始める。 …ゲンヤの妻、クイントは戦闘機人に関する調査を行い、その後原因不明の事故により死亡した。 そしてクイントの意志を引き継いだゲンヤが戦闘機人に関する情報を集めている事を掴んだと話す。 しかし当のゲンヤは自らの仕事が忙しく、中々情報を集められてはいない状況であった。 そこで今回の事件を機に、はやてが代わりに戦闘機人の情報を集めると提案、その為今まで得た情報を引き渡して欲しいと頼み込む。 するとゲンヤは目を閉じ腕を組み考え込む、その後暫くして目を開き、口がゆっくりと動き出す。 「…悪いがそれは出来ねぇな、事は戦闘機人だけの問題じゃあ無いんでな」 ゲンヤの答えに困惑するはやて、事は戦闘機人だけでは無い? …それはどういう事か再度聞いてみるがゲンヤは一切答える事は無かった。 暫く静寂が部屋を包むと呆れた様子でため息を吐くはやて、その顔は諦めに似た様子を表していた。 「…分かりました、戦闘機人の件は諦めます、そん代わり……」 「あぁ、連絡役も兼ねてギンガの機動六課への出向を許可しよう」 機動六課が掴んだ戦闘機人の情報をギンガというパイプラインによってゲンヤに伝える、 その為の出向でもある今回の申し出に応えたゲンヤは、ギンガと共に席を立ち会議室を後にする。 一人会議室に残されたはやては大きくため息を吐くと、流石自分の師匠なだけあって一度決めた事に対してガンとして動かないな…と思うであった。 一方ゲンヤと共に機動六課の通路を歩いていると突然ギンガが質問を投げかける。 「何故はやて二佐の申し出を断ったんです?」 「…クイントと同じ轍を踏ませない為に……だな」 その意味深な言葉に首を傾げるギンガだが、ゲンヤの目は遠く何かを見つめているようであった。 その頃なのははシグナムが運転するワゴン車に同乗していた、その理由は先日保護した少女が眠る聖王医療院に向かう為だ。 そしてシグナムもまた聖王教会に用があるらしく、次いでに乗せて貰っているのだ。 そしてなのはは、ワゴン車をマジマジと観察していると、ふと質問をかける。 「このワゴン車…シグナムさんの車なんですか?」 「あぁ、渋いだろう?」 シグナムの含み笑いにになのはは頬を掻く、話によると聖王教会にいた頃、 食事の配給などの仕事が多くあった為、沢山の荷物を運べるという理由で購入したと話す。 そんなシグナムの話を聞いているうちに聖王医療院に着くと、なのははシグナムと別れの挨拶を交わし医療院へと足を運ぶ。 医療院内ではシャッハが出迎えており、なのはは保護した少女の詳細を聞くとシャッハは快く応える。 保護した少女は人工生命体でフェイトやエリオと同じ境遇であると。 故に現場に残されていた生体ポットの中身の可能性がかなり高く、周りのガジェットが破壊されていた事から危険性があると指摘されていると。 そんな内容を通路を歩きながら聞きつつシャッハと共に少女が眠る部屋へ赴くと、其処はものけの殻であった。 シャッハは驚き開いている窓を覗くと、対象の少女が外へ出ようと走っており、 シャッハは窓から飛び降りるとデバイスを起動させ少女の前を塞ぎヴィンデルシャフトを構える。 少女は目の前に現れたシャッハに驚き、しりもちをつくと――― 「ふ………ふえええぇぇぇぇぇぇん!!!!」 「えっ?…………えぇ!?」 少女の泣き声に思わず戸惑うシャッハ、すると入り口からシャッハを追っていたなのはが姿を現し、少女を慰める。 そして病室を抜け出した理由を聞くと母親を探す為に抜け出したと、ぐずりながら話す少女。 少女は人工生命体である、母親など存在するハズがない、その記憶は元の遺伝子が持っていた記憶なのかもしれない。 しかしそんな素振りを一切見せず、なのはは少女の目線に合わせ見つめる。 「お名前いえるかな?」 「ヴィヴィオ……」 ヴィヴィオはそう名乗ると、なのははヴィヴィオの母親が見つかるまで自分が母親代わりになると約束を交わす。 するとヴィヴィオは、「なのは…ママ?」と恐る恐る口にすると笑みを浮かべ答えるなのは、 そのやりとりが何度も続くとヴィヴィオはすっかり泣き止み、その光景を見て唖然としているシャッハ。 するとシャッハの後ろで聞き慣れた声が響き、振り返ると其処にはアリューゼの姿があった。 「あっアリューゼ!?いつからそこに!?」 「…デバイスを起動させて、そのガキに向けているところからだな」 つまり一部始終見られていた事であり、顔を真っ赤に染めるシャッハに対し呆れた様子を見せるアリューゼであった。 それから数日後、ヴィヴィオはすっかりなのはに懐き、そのまま機動六課で面倒を見る事となった。 だがその代わり定期的に聖王医療院にて検査を行うという条件付きであるが。 そして今日はなのは、フェイト、はやての三人で聖王教会に赴いていた、その理由とはなのはとフェイトに機動六課の真の目的を伝えられる為だ。 三人は教会内に存在する会議室に赴くと三人は敬礼を行う、会議室にはカリムを中心に右の席にクロノが座っており はやてはクロノの隣の席、なのはとフェイトは左の席を順に座ると、クロノは早速説明を始める。 機動六課…いやかつての六課はカリムのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンによってもたらされた預言に描かれた、 ミッド滅亡を阻止する為に組織された部隊で、それは今も変わっていないと話す。 そして預言の内容を二人に告げると沈黙し、沈痛な面持ちを醸し出していた。 「取り敢えず今後は、中つ大地の奉の剣であるエインフェリアと、法の塔である地上本部を壊滅させない事だな」 今回の件でクロノは奉の剣をアインヘリアル計画の事と判断していると、するとはやてが質問を投げ掛けてきた。 「でも…あのエインフェリアって何なん?ただもんとちゃうのは分かるんやけども…」 「ガノッサ提督が説明していただろう、あれは人型デバイスだ」 命令を絶対に従う忠実なる存在、その姿はまさに奉公の剣であると。 そのエインフェリアの量産計画、アインへリアル計画の是非を問う公開意見陳述会が近く執り行われるという。 つまり、事を起こすとすればこの日が絶好ともいえる。 無論、事を起こそうとしている存在とはスカリエッティとレザードであるのは間違いない。 つまりその日こそが世界の命運を分ける日とカリムは考えており、皆もそれに賛同していると。 そして機動六課の真の目的の為に尽力して欲しいと綴ると三人は一斉に敬礼し、会議は終了となった。 それぞれが自分の部隊もしくは仕事場に戻る中、カリムは自分の予言に目を通していた。 一行目に書かれている“歪みの神”もしこれがレザードの事を指すのであれば我々は神と対峙しなければならないのか? だが我々の信仰に神は存在しない、それにあのような傍若無人な存在が神であるハズがない。 そう自分を言い聞かせ不安をぬぐい去ろうとするが、それでも不安は募るばかりのカリムであった。 場所は変わり此処はゆりかご内に存在する生体ポットが並ぶ部屋、その中でルーテシアは一つの生体ポットを見つめる。 生体ポットにはNo.XIと書かれたプレートが掲げられており、ポットの中には紫の長髪の女性が眠っていた。 「お母さん……」 そう一言呟くルーテシア、自分の目的は母親の病気を治し一緒に暮らす事、その為にはNo.XIと刻まれたレリックが必要なのである。 そして母親を助ける為に自分は修羅にも夜叉にもなる、その決意を胸にルーテシアは一つお辞儀をするとその場を後にした。 その頃スカリエッティは管理局に潜伏しているドゥーエと連絡を取っていた。 その理由は地上本部壊滅のタイミングを計る為である。 「つまり公開意見陳述会、この時が最も適しているというのだね」 「はい、ドクター」 モニターに映るドゥーエは頷くとスカリエッティに地上本部のセキュリティ情報を渡す。 確かにドゥーエの言う通りこの機を逃す手はない、それにゆりかごの方もほぼ修復を終えている。 つまりこの日こそ決起する時!…そう考え狂気を含む笑みを浮かべるスカリエッティであった。 一方、自室にてレザードは陳述会の内容に顎に手を当て考え込み、先日の戦闘で現れたエインフェリアの姿と見比べる。 今回の陳述会に出されるエインフェリアは巨大で標準的な魔力を生む動力炉に遠距離砲が配備され、まるで戦車のような姿をしており、まさに質量兵器その物であった。 その量産機とは到底思えない姿に不敵な笑みを浮かべるレザード。 「滑稽な…質量兵器を禁じている管理局が、このような形を取るとは……」 その性能も自分達が造り出したナンバーズとは程遠い存在、寧ろレザードは人型のエインフェリアに興味を持っていた。 彼らの材質は恐らくベリオンの内部に使われている物と同じダマスクス、アーティファクトの一つであるダマスクス製法書によって作成したのだろう。 そしてこの異常なまでの戦闘力、それはまさしく管理局側の戦闘機人と呼ぶに相応しいと言っても過言ではなかった。 スカリエッティは今回の陳述会を機に本格的に計画を始める様子、そして陳述会には必ず機動六課及びエインフェリアを出してくるだろう。 つまりは総力戦、そして自分もまた出ざるは終えないだろう…眼鏡に手を当て真剣な面持ちを浮かべるレザードであった。 その頃セイン・ノーヴェ・ウィンディの三人は今回の計画の際に進むであろう道を知る為、町に繰り出していた。 …尤もそれは名目で本当はある目的のため、町を練り歩いているのである。 三人はスーツに備え付けられている私服モードを利用し、ノーヴェは紺のGパンに白い半袖のシャツ、ウィンディは膝ほどの深緑の半ズボンに赤いTシャツ、 そしてセインは黒いダボッとした長ズボンに白いパーカー、更に黒いキャップとサングラスを掛けていた。 セインは先日の戦闘にて顔が割れている可能性がある為の処置である。 それでも街に繰り出したい理由は、町の中に点在する公園で売られているアイスを手に入れる為、それだけの為である。 そして三人は公園に存在するアイス屋へ赴くと、ウィンディはストロベリー、ノーヴェはオレンジとバニラのダブル、 セインに至ってはチョコミントにチョコチップ、更にマーブルにトッピングチョコをまぶした物を注文する。 「…セイン、そんなに頼んで大丈夫なのかよ?」 「知らないのノーヴェ?こう言うのは別腹って言うのよ」 「なるほど…セイン姉は腹が二つ有る訳か」 「……そんな訳無いじゃないッスか」 ノーヴェの天然さに呆れるウィンディ、恐らく基礎となる遺伝子がそれをさせるのだろう。 そんな事を考えるも三人はそれぞれのアイスを手にし、ベンチに座ると食べ始める、 セインに至っては、がっついて食べており、その光景に頬を掻く二人。 そしてアイスを食べ終えるとベンチから立ち公園を離れ、当初の目的を遂行する為、行動を始める。 そして最短ルートを調べ、そのルートを進みセインの目標の地である地上本部へ辿り着く。 そして見上げる三人、この地を今度の戦闘で壊滅させてみせる、そう意気込む三人であった。 それから数日後、此処地上本部の近くに存在するホテル内では、翌日に行われる公開意見陳述会の準備に追われていた。 そして表の中庭にはアインへリアル計画によって創り出されたエインフェリアが三体並んでおり、 その大きさは十メートル以上にも及ぶ、どうやら動力炉の大きさに合わせて造られているらしい。 そして警備には本局の局員数十名、会場内は機動六課のなのはとフェイト、そして地上本部の局員の手によって行われ 残りの機動六課はホテル周辺を警備する事が決定していた。 そしてなのはとフェイトは一足早く会場入りする為、フェイトは車の用意をしており、 隊舎入口にはフォワード陣とヴィヴィオが見送る為に並んでいる、するとなのは達はスバルとエリオを呼び寄せる。 「スバル……レイジングハートの事お願いしていい?」 「私も…エリオ、バルディッシュの事お願いね」 会場ではデバイスを持って入ることは出来ない、その為最も信頼できる人物、スバル達に持ってて欲しいと頼むと快く応じる。 そしてなのははヴィヴィオに目線を合わせ、優しく話しかける。 「それじゃあ明日までには帰ってくるから、ちゃんと病院に行くんだよ?」 「ぜったいに?……やくそくだよ、なのはママ」 ヴィヴィオの問い掛けに力強く頷くと指切りをするなのは、そしてその光景に自分の過去が重なり暗い顔を見せるティアナ、 …かつて自分の兄は指切りした後、二度と戻ってくる事は無かった…… …だがなのはさんに限ってそんな事が起きるハズが無い!そう自分の考えを自重するように拳を握るティアナ。 その後なのは達を見送ったヴィヴィオは定期検査の為、ヴァイスが操縦するヘリで一路聖王医療院に向かうのであった。 翌日、他のメンバーもまたホテルへと赴き厳重な警備の中、公開意見陳述会は開始される。 陳述会ではガノッサがアインへリアル計画の必要性を熱く語っており、状況は賛成の方に傾きつつある中、レジアスの姿は見受けられなかった。 そして、陳述会会場から数十キロ離れた先にナンバーズとルーテシアにゼスト、 そしてベリオンがそれぞれの役割を果たす為の配置についており、それを確認したクアットロはスカリエッティと連絡を取る。 「ドクター、此方は配置は完了しましたぁ」 「ご苦労様…では始めるとしようか……」 スカリエッティの合図の下、今此処に“ラグナログ”計画は発動したのである…… 前へ 目次へ 次へ オマケへ
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