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出典の記載は編集者の義務ではなく、利用者がその情報を信頼する指標であるとお考えください。 信頼度は「販売済み>公式・雑誌情報>掲示板情報>未記載」です。 スタイルチェンジ(左手) 名称 最短入手 時期 出典 フレイム DXウィザードライバー 発売中 ウォーター DXウィザードライバー 発売中 ハリケーン DXウィザーソードガン 発売中 ランド DXウィザーソードガン 発売中 フレイムドラゴン DXフレイムドラゴンウィザードリングセット 10月下旬 2ch ハリケーンドラゴン DXハリケーンドラゴンウィザードリングセット 11月下旬 2ch ウォータードラゴン DXウォータードラゴンウィザードリングセット 12月中旬 2ch 魔法(右手) 名称 最短入手 時期 出典 ビッグ バンダイ アストロスイッチEXフュージョンスイッチスペシャルセット 発売中 キックストライク DXウィザードライバー 発売中 ドライバーオン DXウィザードリングホルダー 10月中旬 2ch コネクト DXウィザードリングセット01 10月下旬 2ch スリープ DXウィザードリングセット01 10月下旬 2ch コピー DXウィザードリングセット02 11月中旬 2ch スメル DXウィザードリングセット02 11月中旬 2ch エクステンド DXウィザードリングセット03 12月下旬 2ch リキッド DXウィザードリングセット03 12月下旬 2ch ガルーダ プラモンスターシリーズ01レッドガルーダ 発売中 ユニコーン プラモンスターシリーズ02ブルーユニコーン 10月中旬 2ch クラーケン プラモンスターシリーズ03イエロークラーケン 11月中旬 2ch ドラゴライズ DXウィザードラゴン マシンウィンガー 11月下旬 2ch スペシャル DXフレイムドラゴンウィザードリングセット 10月下旬 2ch サンダー DXハリケーンドラゴンウィザードリングセット 11月下旬 2ch ブリザード DXウォータードラゴンウィザードリングセット 12月中旬 2ch ディフェンド ガシャポン第2弾(400円) 2ch エンゲージ ガシャポン第2弾(400円) 2ch バインド ガシャポン第3弾 2ch ライト スモール レジェンドライダーリング(右手?) 1号 ガシャポン第2弾(400円) 2ch 2号 食頑2 2ch ブラック ガシャポン第2弾(300円) 2ch クウガ マイティフォーム ガシャポン第3弾 2ch モモタロス ガシャポン第3弾 2ch W サイクロンジョーカー ガシャポン第3弾 2ch W ヒートメタル ガシャポン第3弾 2ch W ルナトリガー ガシャポン第3弾 2ch オーズ タトバコンボ 食頑1 発売中 フォーゼ ベースステイツ ガシャポン第1弾(300円) 2ch フォーゼ エレキステイツ ガンバライド シャバドゥビマスターBOX 11月 2ch フォーゼ ファイヤーステイツ ガンバライド オフィシャル1ポケットファイル 12月 2ch フォーゼ コズミックステイツ 食玩1 発売中 フォーゼ メテオフュージョンステイツ ガシャポン第2弾(300円) 2ch
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キョウジ!!新手だヨ!! あぁ!最新のセキュリティソフトをインストールしてやがるな!! 『ブラックウィザード』の本拠地内のネットワークに侵入した初瀬と電脳歌姫は、あるサブコンピュータ内でウィルス除去プログラムと戦闘していた。 それは、初瀬も知っている最新のセキュリティソフトで休みの日に買いに行こうと思っていたプログラムソフトであった。 良い機会だ!!無料体験版の時とどう変化したのか俺の『阻害情報』で見極めてやる!! ヒュ~ヒュ~♪カッコイイキョウジは珍しいから見て損は無いナ。ガンバレ~ ガクッ!! 歌姫の褒めているのか貶しているのかよくわからない応援に項垂れながらも、初瀬は自分達をコンピュータウィルスと判断したセキュリティソフトのプログラムの改竄に着手する。 2人が侵入した場所は“手駒達”を操作しているメインコンピュータ・・・では無く、施設内に存在するサブコンピュータの1つであった。 初瀬は、そのコンピュータを足掛かりにメインコンピュータとの回線を捕捉、遮断されないための改竄を最優先に行い、常時回線を繋げている状態とした。 また、他のサブコンピュータを経由して電子攻撃を受けないようにそれ等からのアクセスを遮断した。 初瀬の『阻害情報』は、情報そのものをダイレクトに操作するタイプの能力である。但し、意識をネットワークに介在する弊害なのか初瀬という『カタチ』が電脳世界に発生してしまう。 初瀬という人間が発現した超能力なので、他の情報制御能力者が彼と同じとは限らない。唯、彼の場合は『カタチ』がプログラムの一種として電脳世界に顕現する。 『カタチ』のプログラム情報の改竄は幾らでも可能なのでアシが着いたことは無いのだが、仮にセキュリティソフト等で『カタチ』が駆除されれば情報へのアクセスは不可となる。 そのため、電脳世界特有の防壁をすり抜けて欲しい情報を獲得・改竄することができる一方で、『カタチ』を駆除するためのセキュリティソフトへの対処も同時にこなす必要がある。 特に、傍らには歌姫のアバターも居るので初瀬は慎重に動いている。歌姫の同行理由は、現実世界から初瀬への情報伝達を『ハックコード』内に居る歌姫(本体)が行う関係上、 派遣したアバターを目印として速やかな情報伝達を実現するという理由があるからである。 もし、大変だったら私も手伝ってあげないことも無いヨ~ うるせぇ!俺1人で十分だっつーの!! また、『移動先のコンピュータの性能を使って従来の性能を発揮する』歌姫は、初瀬と共に過ごして行くに当たって彼が所持するセキュリティソフトを『ハックコード』を通じて学習した。 『ハックコード』でインターネットに自主的にアクセスを行い、セキュリティソフト関連の情報を集め、解析を行い、独自のブロッキング ハッキングプログラムまで構築してしまった。 『プログラム自身が学び、同時に成長する』という“自立成長型プログラム”の本領発揮―製作者達が秘かに恐れていた―である。 このアバター自身が、一種のブロッキング ハッキングプログラムなのである。今の彼女は、セキュリティソフトの妨害すら可能となっている。 よしっ!改竄成功! ちぇッ!な~んだ・・・つまんなイ そして、『カタチ』も一種のハッキングプログラムになっていた。レベル3の初瀬は、複数の情報の抜き取り・改竄等を実施中に『カタチ』への攻撃に対する情報改竄は不可である。 故に、その場合は抜き取り・改竄等が終わるまで『カタチ』に組み込まれているハッキングプログラムでもってセキュリティソフトに対抗しなければならない。 今の攻防においては別に情報を抜き取ったりしている最中では無かったので、改竄能力を用いて比較的楽に片付けることができたが。 はいはい。にしても、メインコンピュータとの回線を速攻で捕捉できたのは幸運だったぜ。おかげで、機先を制することができた。離脱するアシも一応確保できたし そうだネ。ネットワークの遮断・隔離の心配も無くなったシ。これで、“手駒達”を操作しているメインコンピュータに一っ飛びできたらどんなに楽だったことカ。しくしク ・・・同類も居るみてぇだしな。そう簡単に事は運ばないって証明だな。セキュリティレベルから見ても、常日頃から外部のハッキングに対策を講じている証拠だろうな。 そもそも、人間を操作するプログラムを作り出した事実から見ても、奴等を管理・操作する人間はこの手に関しての凄腕だ。『阻害情報』があるからって油断は絶対にできないな 今の戦い 情報解析を最後に、侵入したサブコンピュータの掌握は完了する。これからは、メインコンピュータに舞台を移して電子戦を行うことになる。 メインコンピュータには、ここ以上のセキュリティが掛けられているに違いない。そして、サブコンピュータ内で目の当たりにした同類の存在も大きな脅威として立ち塞がるだろう。 だが、決して諦めるわけにはいかない。必ず成功させなければならない。それだけ重要度の高い任務を初瀬は任されているのだから。 そんじゃ、姫。俺が解析し終わるまで警戒頼むぜ おゥ!任せとキ!! ・・・何処の言葉だよ 歌姫の調子の良い返事に、初瀬は溜息を吐きながらもサブコンピュータにおける最後の作業に取り掛かる。実は、歌姫(アバター)にも『阻害情報』による情報制御を行っている。 彼女がセキュリティソフト等による駆除で消滅した場合、電脳世界における初瀬の位置が本体にわからなくなるからだ。意思疎通という意味でも、『阻害情報』は必須だ。 そのために、『阻害情報』に弱点(複数の~)が顕現しているとも言える。通常は、『カタチ』と取得or改竄したい情報に『阻害情報』を掛けることで作業を滞り無く実施している。 しかし、初瀬は現状に対して不平不満を漏らしたりはしない。電脳歌姫を守るのは自分の役目。そう捉えているからだ。 キョウジ・・・頑張ろうネ ・・・おぅ! 今度は正真正銘の励まし。歌姫の言葉を力に初瀬は己に課せられた使命に没頭する。そして・・・そのやり取り―情報の抜き出し―を現実世界で観察しているガキが1人。 「へぇ・・・。やるね、初瀬。情報そのものを直接操作する『阻害情報』・・・中々に厄介だ」 『ブラックウィザード』の幹部であり、“手駒達”を取り仕切るガキ・・・蜘蛛井糸寂。彼の周囲は彼自身が選抜した屈強な“手駒達”が控えていた。 「こりゃ、片手間というわけにはいかなそうだ・・・」 自分が築いて来た防壁をすり抜けるのは、さすがは学園都市の超能力と言った所か。通常の手段では不可能なハッキングを可能にする異能の力。無能力者の蜘蛛井には無い力。 「でもね・・・情報をダイレクトに操作できるのがお前だけだと思うなよ?とは言っても、もう気付いているだろうけど」 残虐な笑みを浮かべながら、蜘蛛井は控えている“手駒達”の1人に命令を下す。その“手駒達”もまた・・・情報を直接制御する能力の持ち主。『阻害情報』を持つ初瀬の同類。 無能力者であっても、能力者に必ず負けるとは限らない。やり様によっては・・・手段を問わなければ幾らでも対抗手段は生まれる。 「ボクお手製のコンピュータウィルスソフトもあるし・・・まだまだ手札は残っているよ、初瀬?フフッ」 電脳世界における攻防は始まったばかり。この勝敗もまた、戦場の流れを左右するどちらにとっても譲れない戦いである。 初瀬恭治 電脳歌姫VS蜘蛛井糸寂 Ready? 施設内南西部では、駆動鎧で固められた南部侵攻部隊が新“手駒達”と遂に交戦を開始した。但し、交戦とは言っても目的自体は救助なのだが。 「今だ!!」 部隊長の指示が部下に飛ぶ。指示に応えるように、数機の駆動鎧が一斉に缶ジュースのような容器の蓋を開けた直後、その容器を新“手駒達”へ投擲する。 「うっ!!?」 「ゲホッ、ゲホッ!!?」 白色のスモークが新“手駒達”を襲う。そのスモークが瞬く間に半径何十mにも渡って拡大する。 これは暴徒鎮圧用に用いられるモノで、人体における顔面部位の粘膜を刺激することで五感を乱し、更には呼吸困難に陥らせる作用がある。 また、特定の紫外線以外の光線や音波を遮断する効果もあるので、対界刺得世という意味でも絶大な効果を挙げると目されている。 しかし、このスモークは設計段階から人間が扱うモノとして想定されている。可視光や赤外線等を遮断してしまうこのスモーク内で活動する場合は、 専用のセンサーを内蔵したマスクを人間が身に付けなければならない。生憎駆動鎧用のマスクは開発されていないし、複数のセンサーを持つ駆動鎧が煙の中で活動することは想定外である。 「捕縛弾発射!!」 「「「はい!!!」」」 そのために、駆動鎧はスモークの範囲外にすぐさま脱出した後に左腕へ追加装備されている対能力者仕様の捕縛弾を撃ち放つ。 合成樹脂でできた弾が破裂し、中から非金属物質で製造された耐火耐熱防弾絶縁仕様の網が放たれる。人間の力では到底引き千切ることなどできはしない強度も持つ網の中で、 それでも新“手駒達”は苦しさもあって暴れようとするが暴れれば暴れる程絡み付く極悪仕様となっている。 本来であれば、痛覚が存在する構成員等に使用する目的で持ち込んだこれ等の武器は、痛覚が存在すると判明した新“手駒達”への対策にも応用できている。 ブオッ!!! スモークに巻き込まれなかった新“手駒達”の中に居る『風力使い』が、スモークを吹き飛ばすために強烈な旋風を解き放つ。 一掃されて行くスモークが、今度は駆動鎧部隊目掛けて殺到する。 「空砲発射!!!」 「「了解!!!」」 もちろん、それを予期していた警備員側も対隔壁用ショットガンを空砲モードに切り替えて躊躇せずに撃つ。 新“手駒達”に直撃しないように放たれた空砲でスモークはあらぬ方向へ散乱して行く。煙が晴れて行った場所では、10名程度の新“手駒達”が体中に走る刺激にのた打ち回っている姿があった。 「念動力で網を外される前に確保しろ!!」 空砲で牽制しつつ網に捕らわれている新“手駒達”の回収に走る駆動鎧部隊。直接的な攻撃を控えなければならない条件下で、それでも彼等は捕獲に成功した。 「隊長!!捕獲完了しました!!」 「よしっ!!お前達はすぐに離脱しろ!!施設外に居る搬送用車両に預け次第、ここへ戻れ!!まだ、最初の釣りが成功しただけだ!!」 「わかりました!!」 駆動鎧の手では、新“手駒達”の頭部にめり込んでいるチップを外すのは困難だ。故に、スモークの影響が続いている間に迅速に離脱、 搬送用車両が待機している施設外にて駆動鎧を纏っていない警備員に預け、彼等にチップの排除を任せた後に戦場へ戻って来る・・・という作戦だ。 この作戦通り部下が捕獲した新“手駒達”を運んで行く部下の姿を確認した直後、新たな通信が2つ入る。 「隊長!!西部侵攻部隊が到着しました!!」 「あぁ!!それは、こちらのモニターでも確認した!!彼等には、界刺得世と殺人鬼への対策に当たって貰うことになっている!! 危険度が最も高い任務に就く彼等のためにも、俺達が下手を打つわけにはいかないぞ!!」 「隊長!!新“手駒達”の一集団が、別方面からあのドームに接近しています!!」 「何!?センサーには・・・光学能力と電気能力の併用か!!」 「だと思われます!!電波によるセンサーでは未だに表示されませんが、先程暗視による確認が取れました!!」 「暗視・・・?新“手駒達”にとって襲撃直前に光学能力を解除する特段の理由は無い筈・・・まさか、あのドーム外でも界刺得世の能力が働いているのか!!?」 部隊長は、光学能力を解除『させられた』と判断した新“手駒達”の動きから、界刺の能力範囲が想像以上に広いことに感付く。 「西部侵攻部隊から伝達!!『ドームに近付く新たな新“手駒達”を確認!!これより、彼等の確保と界刺得世の鎮圧及び殺人鬼の排除を念頭に置いた行動を開始する』。以上です!!」 「・・・わかった!!俺達は、目の前の新“手駒達”を捕獲することに全力を挙げる!!いくぞ!!」 「「「はい!!!」」」 命令が下った。先程の被害―ドーム内から奔った糸の奔流とその結果―と南部侵攻部隊隊長の進言から、あのドームを形成する界刺得世の鎮圧を橙山が遂に決断したのだ。 その重い決断を理解した部隊長は、自分達の役目を遂行するべく奮励を部下に―そして自分に―与える。 1つの間違いが命取りになる。今までに何度も経験して来たこの感覚は・・・やはり何時までも慣れることは無い。 戦闘音が響くドームに新“手駒達”が向かう姿を確認した西部侵攻部隊の部隊長は、部隊を2つに分けた。 1つは、南部侵攻部隊のようにこちらへ接近中の新“手駒達”を捕獲するための部隊。もう1つは、界刺得世の鎮圧及び殺人鬼の排除を目的とした部隊である。 南部侵攻部隊の部隊長と同じく、ドーム外でも界刺の能力が働いていることを看破した西部侵攻部隊の長は作戦を妨害する最大の危険の速やかな排除に着手した。 「投擲!!!」 「「「了解!!!」」」 電波レーダーによってドーム内に居る2人―界刺と殺人鬼―の位置を確認した直後、可視光や赤外線を遮断する容器を数十投げ付ける。 駆動鎧によって常人の何倍もの身体能力を発揮する警備員の投擲は、電波照準も相俟って正確に2人に直撃するような軌道を描く。 「ハハハッッ!!おいでなすったか!!!」 しかし・・・ 「“障害物”風情が・・・」 当然の如く予期していた―容器の中身を既に知っていること含め―“英雄”と“怪物”が、予期への対策を抜かることなど有り得ない。 パッ!!! 「「「「「!!!??」」」」」 消滅した。ドーム・・・【閃苛絢爛の鏡界】が忽然と消えた。もちろん、これはスモークの効果では無い。 「(まさか・・・『知られている』!!?)」 西部侵攻部隊の部隊長は眼前の光景が示す意味を数瞬考え、界刺に可視光・赤外線を遮断するスモークの存在を知られている可能性に気付く。 「(・・・もし、南部侵攻部隊の活動領域までが界刺の能力行使範囲に入っているなら、スモークの効果を知られてもおかしくは無いが・・・)」 界刺の『光学装飾』の詳細なデータが不明なために、判断材料がどうしても不測する。可能性を1つに絞れない。 「(だが、あれだけのスモークだ。念動力を操る殺人鬼はともかく、光学能力だけの界刺が逃げ切れるわけが・・・)」 それは、妥当な思考。妥当な判断。界刺の『光学装飾』は、可視光線と赤外線を操作する能力である。言い換えれば、それ以外の異能の力を振るうことはできない。 残るは純粋な身体能力のみだが、それを用いたとして一気に広がるスモークから逃れられるわけが無い。 そう判断した部隊長が、電波センサーに映る2人の位置を確認しようと目を向ける。 「なっ!!?」 一瞬、瞳に映った映像が信じられなかった。それは、スモークの範囲外に脱出している2人を表示していたからだ。すぐに暗視装置も用いて確認した結果、 殺人鬼と思われる糸に覆われた“何か”は煙の届かぬ上空へ避難し、界刺はドームの端に飲み込まれていた5階建ての建物の一角に避難していた。 「どうやって・・・!!?」 部隊長が驚いた界刺の逃亡劇。これは、 ダークナイト の機能の1つである『樹脂爪』が鍵となっている。 『樹脂爪』を地面に向けて発射すると、瞬間的に己の体を上方へ浮かせることが可能である。ワイヤーの強靭性を活かしたこの機能で、界刺は自身を十数mも上方に浮遊させた。 しかし、煙の広がりはすぐにでも空中に移動した界刺を覆ってしまう。界刺自身も、浮遊した後は地面へ急降下である。下手をしなくても死ぬ危険性がある。 そこで、上空に移動中に連結状態を解除した ダークナイト のもう1本にも備わっている『樹脂爪』を発動、少し離れた位置にある5階建ての建物の外壁に鉤爪を食い込ませ、 ワイヤーを巻き取ることで難を逃れた。実は、西部侵攻部隊が到着する前に界刺は戦闘場所―ひいては【閃苛絢爛の鏡界】―を5階建ての建物寄りに移動させていた。 無論、これはスモーク対策である。周囲を取り囲むように投擲されれば先程採った行動でも防ぎ切れなかっただろうが、一方向からの投擲ならば逃げ切れる。 西部侵攻部隊や南部侵攻部隊の動きを予測・観察した上での位置取りは、『俺って光を操る関係上、周囲の位置取りとかって気にするんだよねぇ』と漏らす界刺らしい行動とも言える。 「界刺さん!!」 「涙簾ちゃん!!」 その界刺の傍に、避難先の建物屋上から移動して来た水楯が声を掛ける。彼女の瞳は、警備員達の行動に対する怒りに満ち溢れていた。 「私も界刺さんと戦います!!新“手駒達”や警備員も乱入して来ました!!ここからは乱戦になります!!」 界刺の背中を任された水楯は、愛しき少年と共に襲い来る脅威と戦うことを表明する。 「・・・駄目だ」 「界刺さん!!!」 しかし、愛しき少年は少女の参戦を拒否する。その理由を・・・『光学装飾』で捉えた。 「・・・“彼女”が来た」 「ッッッ!!!」 「涙簾ちゃん・・・俺の“頼み”を忘れちゃったの?“彼女”が来た以上、君には俺が頼んだことを遂行して貰わないといけないよ」 “頼み”。それは“彼女”のこと。その存在の接近を界刺が気付いた事実に、“頼み”を遂行することと引き換えにここに居ることを許された水楯は歯噛みする。 「こんな時に・・・!!!」 「今度は俺の言うことを聞かないなんて真似は許さない。俺が君を許さないんだ・・・涙簾ちゃん。君は・・・俺の想いを裏切っちゃうの?」 「界刺さん・・・!!」 「・・・んふっ。だから、早く行って。“頼み”をキッチリ遂行したら戻って来てよ。それまでは・・・いや、それからも俺は生きているから。・・・頼む」 「・・・・・・・・・わかりました」 痛いくらいに歯を噛み締めながら、それでも水楯は界刺の“頼み”を遂行することを承諾する。 界刺から“彼女”の居る場所や方角を教えられた碧髪の少女は、去り際に一言だけ呟いた。この場には相応しく無いのかもしれない。でも、漏れ出る言葉を止められなかった。 「愛していますよ・・・界刺さん」 「・・・・・・わかっているさ」 碧髪の男の返事を胸に、少女は愛しき少年の“頼み”を遂行するためにこの場を離れた。一方、見送る少年は感慨に耽る間も無く戦場を見渡す。 建物や地面が死闘によって崩れ、窪み、悉く破壊されている惨状が誰にでも見えるようになっている。界刺が居るこの建物とて、あちらこちらに損傷を抱えている。 「・・・戻るか!!」 自分達が生み出した破壊の痕跡の上で・・・“障害物”の排除を行っている“怪物”の暴虐が新“手駒達”にまで降り掛かろうとしている。 それが齎す最悪の結果を防ぐために、“閃光の英雄”は ダークナイト を携えながら戦渦の中へ再び身を投じて行った。 「皆!!もうすぐ現場に着くけど、絶対に気を抜いちゃ駄目だよ!!」 「「「「(コクッ)」」」」 加賀美の再確認の言葉に部下が頷く。176支部は、現在施設内南部から南西部へ移動している。 『ブラックウィザード』の妨害は無い。戦力をこちらに差し向ける余裕が無いのか、逃走準備に突入しているのか定かでは無い。 しかし、176支部にとっては妨害が無いのは好都合である。今は、一刻も早く南西部に辿り着かなければならない。 新“手駒達”を界刺と殺人鬼から守るために。そして、新“手駒達”を無事確保するために。 「(破輩先輩や勇路先輩の情報を総合して考えるに、界刺さんの傍に居る『シンボル』のメンバーは・・・)」 加賀美は、ドームがあった場所にいよいよ近付いたこともあり破輩と勇路の情報から界刺の傍に居る可能性が高いと判断される水流操作系能力者に警戒を高める。 加賀美の水流操作系能力『水使い』は、半径150m内の液体を操作する。その特性を活かして、周囲に存在する液体に他の水流操作系能力者の力が掛かっていないか確認する。 「(きっとあの花盛学園の・・・ッッッ!!!)」 その確認作業中に加賀美の感覚が“捉えた”。自分とは違う水流操作系能力者の息が掛かった液体が、猛スピードで接近していることに。 しかも、それは地上だけでは無い。何時の間にか、地下を走る水道管に流れている水さえも彼女の支配下に置かれており、今にも地面から噴出しようと荒れ狂っていた。 「皆!!水楯さんが来るよ!!」 「「「「ッッッ!!!」」」 加賀美が仲間に警鐘を鳴らす。『シンボル』のメンバーの名前に神谷達が反応した直後・・・彼女は姿を現した。 ボハアッッ!!! 水道管とその上にある地層やコンクリートを突き破って大量の水が地面から噴出する。それ等噴水が同時に押し寄せた地面上の水と混ざり合い、濁流となり、激流となる。 その頂の上にあるコンテナの上に乗る少女・・・“激涙の女王”水楯涙簾が176支部の面々を見下ろしていた。 「(何て統御力・・・!!私の『水使い』でも抑えるだけで精一杯だわ!!)」 本当なら神谷達が立つ場所の地下からも噴出する筈だったが、それを『水使い』でもって加賀美が抑えている。 「そこをどいて頂けますか、水楯先輩!!?」 「私達は、新“手駒達”を助けなきゃいけないのよ!!」 斑と鏡星が水楯へ譲れぬ思いを込めた言葉を放つ。176支部には、新“手駒達”の救助という使命が課せられている。 その使命を邪魔する者は、たとえ自分達のために色々動いてくれた『シンボル』の一員でも排除するという覚悟を各々は固めていた。 「・・・・・・行きたければ行けばいい」 「えっ・・・行かせてくれるの?」 「えぇ。但し・・・加賀美雅以外は」 「「「「「!!!??」」」」」 水楯の口から出た『加賀美雅以外はここを通ってもいい』という主旨の発言に、176支部のメンバーは困惑の色を隠せない。 何故、彼女だけがここに残らなければならないのか?その理由がさっぱりわからない神谷は、声を荒げながら水楯に問いを発する。 「どういうこった!?何で加賀美先輩だけが通れないんだよ!!?」 「通れないじゃ無い。加賀美雅は・・・今から私と戦うの」 「何っ!!?テメェ・・・」 「待って、稜!!」 水楯の勝手な物言いに憤怒の色を隠せない神谷。そんな彼をリーダー足る加賀美が抑える。 向かい合う加賀美と水楯。視線が交錯する中、口を開いたのは・・・加賀美。 「水楯さん・・・。何で私『だけ』があなたと戦わなければならないの?」 「・・・・・・」 「それは・・・・・・界刺さんの指示?」 「・・・・・・えぇ、そうよ。そのために・・・私はあの人の傍から離れることになった・・・!!!」 水楯の声が低くなる。抑えられない激情を表すかのうように、渦潮と化した激流が益々荒れ狂う。 界刺の“頼み”を簡潔に言えば・・・こうだ。『戦いに介入しようとする176支部リーダー加賀美雅と全力で戦え』。 「・・・!!!」 「加賀美雅。私は、さっさとあの人の下へ戻りたいの。だから・・・」 頂に居る水楯の周囲に激流から伸びた水塊が幾つも浮かび、彼女を中心に異常な速度で周回する。後は行動を開始するのみ。そして、“激涙の女王”は躊躇しない。 「去ね!!!」 ボバッ!!ボバッ!!ボバッ!! 「くぅっ!!!」 バスケットボール大の水塊の大群が加賀美に向けて放たれる。逆に、他の176支部の面々には1つたりとも放たれていない。 どうやら彼女の言葉は正しいようだ。水楯涙簾が阻むのは加賀美雅のみ。『水使い』でそれ等を逸らし続ける加賀美は、信頼の置けるエースに命令を下す。 「稜!!皆を連れて、早く行って!!」 「加賀美先輩!!」 「水楯さんの狙いは私!!稜達は眼中に無い!!だったら、ここは私に任せて先に行って頂戴!!」 同じレベル4。同じ水流操作系能力者。文字通りのガチンコ勝負に、176支部リーダーは受けて立つ。 それに、彼女を自分が引き留めておくことが神谷達の利に働くかもしれない。どうせ、界刺に危害を加える者は誰だろうと許さないのが水楯だ。 新“手駒達”相手でも、一切躊躇しないだろう。そんな危険な能力者は、結局は誰かが抑えなくてはいけない。その『誰か』が自分だった、それだけのことである。 「言っとくけど、界刺さんや殺人鬼にビビったからじゃ無いからね!?勘違いしないでよ、皆!?」 「・・・フッ。わかっていますよ。私がそんな誤解をするわけ無いじゃないですか?」 「私も加賀美先輩の思いを履き違えたりはしませんって!!」 「・・・・・・当然」 冗談めかしたリーダーの“気遣い”に斑・鏡星・姫空は各々なりの返事をする。リーダーの想いを勘違いする人間はここには存在しない。 「加賀美先輩・・・!!」 「稜!!私もなるべく早くそっちに向かうから、それまでは皆をお願い。必ず新“手駒達”を救助しなさい。そして・・・それを邪魔するのならたとえ界刺さん相手でも戦いなさい」 「・・・!!!」 「私達は風紀委員よ。私達が譲れないモノは確かにある。それは譲っちゃ駄目。必ず貫くの。命懸けで・・・最善の行動で・・・譲れないモノを守るの!! 稜・・・皆・・・あなた達ならそれができる。生きてそれを成し遂げられるって信じている。だから・・・早く行って!!!」 「・・・了解!!!いくぞ、お前等!!!」 「「「おぅ!!!」」」 リーダーの命令と信頼を受けたエースは仲間を率いて走り去って行く。以前のようにリーダーの意見を無視して無謀に走る部下では無い。 以前のように部下の顔色を覗って厳しい指示を送れないリーダーでは無い。176支部の真価が今ここに花開いた。 これは、リーダーと部下が一緒に作り上げた価値ある信頼(たからもの)である。 「・・・さてと。それじゃあ、いっちょ私も全力でいこっかな?ねぇ、水楯さん!!」 「・・・何?」 「どうせ界刺さんのことだから、あなたを私に差し向けたのには何か理由があるんでしょ!?」 部下の背中を見送った加賀美は、水楯を自分に差し向けた界刺の意図について思考を傾ける。あの男なら、両者の対決を仕組んだ明確な理由が必ずある筈だ。 「・・・さぁ?」 「・・・まっ、いいや。私も水楯さんと同じで時間の余裕とか無いし。悪いけど、さっさと勝たせて貰・・・」 ドッ!!! 今まで『水使い』で逸らしていた水塊の1つが加賀美の顔面すぐ横を通過する。これが示しているのは、『水使い』と『粘水操作』では馬力の面で後者に分があるという事実である。 「・・・・・・」 「(・・・マ、マズイ?)」 水楯の殺気さえ宿した眼光が加賀美を射抜く。対して、『粘水操作』の馬力を見せ付けられた形となった加賀美は背中に冷や汗をかく。 「・・・私も時間の余裕なんか無いわ。フッ・・・同じ意見で助かったわ」 176支部リーダーの鼓膜に“激涙の女王”の宣告が叩き込まれる。互いに譲れないモノを抱える少女達が織り成す水上の舞踏(せんじょう)が開演する。 「だから・・・加賀美雅。あなたを速攻且つ全力で潰す!!!」 「潰されて堪るモンか!!!私にはやらなきゃいけないことがあるんだから!!!」 加賀美雅VS水楯涙簾 Ready? ポコン!ポコン!ポコン! 空中に巨大な糸球が形成された後に、そこから様々な大きさの糸球が射出される中ウェインは空中に佇んだまま微動だにしなかった。 「(【精製蜘蛛】・・・チロシン及びセリン放出開始。カテコールアミン濃度をレベル4まで上昇。グルタミン酸濃度レベル2にてこれを補強。 グリシン及びGABA操作レベル3にて適切に抑制しつつ、セリン放出にて新陳代謝を最大レベル5まで上昇。・・・完了)」 射出された大小の糸球が更に分裂を繰り返したり、逆に合体したりしている中 “英雄”の提案を呑んだ“怪物”は、自分から駆動鎧部隊に攻撃を仕掛けようとはしなかった。 『どうせ、提案のある無しに関わらず警備員は自分へ攻撃を仕掛ける』。南部侵攻部隊へ自分が攻撃を仕掛けた以上。そう捉えていた。 「(・・・散布した糸と【意図電話 ストリングラフィ 】から感じた振動の限りでは、邪魔な“障害物”が一挙に押し寄せて来るな)」 心中でボヤくウェインが零した【意図電話】とは『蛋白靭帯』の能力応用術の1つで、能力で作った『普通』の蜘蛛の巣を糸電話とする。 ここで言う『普通』とは、自然界に当然のように存在する蜘蛛の巣と同じ形状(形としては“主に”『筒』に近いテント状)を指す。 念動力の応用として、コンピュータ等の画面に『膜』を貼り付けることで画面から伝わる熱や光量が『膜』を押し、それによって画面に映る文字等を判別するモノがあるが、 【意図電話】は蜘蛛糸に念動力を付与することで巣に伝わる振動を念動力によって詳細に感知している。 (蜘蛛も仕掛けた巣(受信糸)に伝わる振動を詳細に識別しており、風の振動等を獲物と勘違いはしない) “仕掛け”とは違い無意識では念動力を保てない(=意識がある時にしか使えない)。但し、巣を構成する蜘蛛糸の表面に念動力は纏っておらず、 糸内部に振動感知用の念動力があるため破壊や浸透等が無い限り一般的な念動力では探知不可能である。 通常の糸電話とは違い念動蜘蛛糸製蜘蛛の巣が『筒』、念動力が『糸』の役割を負っているため、念動力を感知するウェインと糸では繋がっていないし繋がる必要も無い。 仕掛け方としては直接設置の他にバルーニングを用いており、念動力も相俟って遠方まで拡散・設置することを可能としている。 この自由度の広さからウェインは【意図電話】を学園都市中に仕掛けており、必要に応じて近隣の【意図電話】に念動力を付与し、 【意図電話】付近に存在する『音声』や能力戦闘 兵器駆動時における振動の種類等を収集・自身の経験を元に分析している。自然界に普通に存在していることもあり、 様々な索敵・傍受網の裏を掻く擬態物として、またリアルタイムで『音声』を取得できる有用性を持つ。尚、極小の感知用蜘蛛糸や“仕掛け”は【意図電話】の一形態である。 また、他の一形態として蜘蛛の巣をより『筒』に近い状態にする+糸表面にまで念動力を行使する場合に限って、 念動力による振動を用いて『筒』である蜘蛛の巣から『音声』という名の振動を放出する―つまりは通信機代わり―こともできる。 この力はここ『ブラックウィザード』の本拠地内でも用いられており、無数に散布した極小の蜘蛛糸―実はこちらがブラフ―と合わせた“領域”によって戦場把握を為している。 無論、必要とあれば如何なる戦場においても躊躇無く使用している。たとえば・・・あの路地裏の邂逅でも。 『・・・では、この例えなら貴様等にも理解できるか?あそこにある蜘蛛の巣を見るがいい』 『何・・・!?』 狙い始めたのは弱者足る風紀委員の鬱陶しい言葉に付き合っていた頃。故に、敢えて問答に乗った。 『路地裏に蜘蛛の巣がある』という『意識付け』を行う事によって【意図電話】を察知される可能性を下げるために。 もっとも、【意図電話】を仕掛けた時期は加賀美の『水使い』の材料源であった水道管に蜘蛛糸を巻き付けた時。 その際に、後方支援の姫空や斑の近くに浮遊していた極小の蜘蛛糸を増幅・操作して気付かれないように【意図電話】を数箇所に設置した。 『・・・とにもかくにも、殺人鬼を地面(した)に引き摺り下ろさねぇと。あの状態だと空中を自在に動けるみてぇだから、下手に姫空のレーザーも撃てねぇ。 姫空の「光子照射」は細かいコントロールが効かねぇからな。建物や一般人を巻き込まない角度で撃つ必要がある』 【意図電話】に入って来る神谷の『音声』で姫空の能力及び弱点も知覚した。そして、姫空にレーザーを“撃たせ易い”ようにするためにわざと背を向けた。 幾ら光速とは言え、風紀委員として急所は狙えない立場(=狙撃箇所の限定)・状況の主導権は姫空では無くウェインにある・攻撃前の敵意及び殺気知覚・念動蜘蛛糸の牽引力等々、 ウェインに有利が傾いていたあの場では姫空のレーザーをかわすことができたのは必然とも言える。 他にも、固地や過激派救済委員と対峙したあの爆炎に包まれた倉庫街においても事前に【意図電話】を設置・極小の蜘蛛糸と合わせた“領域”によって、 雅艶達の迅速な捕捉に繋げている。『多角透視』にて極小の蜘蛛糸を看破した雅艶でさえ、【意図電話】の存在には気付いていない・・・というか“気を向けていない”。 探知系能力者が存在する場合、どうしても“目立つ”極小の蜘蛛糸の方に意識が向く。『極小の蜘蛛糸が感知用能力だ』と認識する。その認識は間違ってはいない。 だからこそ“誤認”する。能力戦闘における『戦略』の極意とは、如何に己が能力を十全に発揮できる“環境”を作れるかに尽きる。 「・・・全くもって鬱陶しい」 176支部の面々が疑問を抱いていたレーザー回避の『タネ』・・・その一端足る【意図電話】から伝わる振動と眼下の光景に“怪物”は心底うんざりした言葉を吐く。 ウェインの推測通り、西部侵攻部隊は対隔壁用ショットガンを迷わず“怪物”へ向けた。殺害許可は下りている。駆動鎧とて油断すれば駆逐される。 故に、駆逐される前に潰す。正確には・・・殺す。治安組織の一員として、しかし人の命を奪う機会はそうそう無い警備員達は、 駆動鎧の能力を活かして10m級の跳躍をした―地上からの銃撃では殺人鬼に命中しない場合、外れた弾が遠距離に居る仲間達を脅かす可能性がある故に―後に緊張を全身に走らせながら引き鉄を引く。 ドン!!ドン!!ドン!! 空砲では無く、正真正銘の実弾が次々に放たれる。一発で戦車を破壊する威力を有する弾丸を、しかし“怪物”は時に最硬の鎧で受けながら俊敏な動きで避けて行く。 念動力の糸に己が身を包む【獅骸紘虐】は、空中における縦横無尽の高速移動を可能にする。 各所―念動力の特性から空中にある糸球にも―に射出した糸を基点とした張力を利用する変幻自在の移動も組み合わせながら。 そして・・・ウェインは人間が放つ敵意・殺意を回避術に応用している。もっと言えば、『攻撃』という敵意・殺意が最も強くなる瞬間を察知し、回避・対処を行っているのだ。 駆動鎧も警備員という人間が操作している以上、例外にはなり得ない。しかも、距離が離れていることもあって、 弾丸の強大な衝撃を鎧で防ぎ切ることが可能な事実に加えて糸の砲弾を迎撃用として銃口の延長線上へ正確に射出する。 幾多の糸球も生い茂る枝場の如く邪魔をする。これ等殺し屋の恐るべき対処に更なる警戒感を募らせた警備員の殺意を感じ取ったウェインは、 腰から垂れ流している尻尾を駆動鎧の3倍以上の直径まで巨大化させる。 ギイイイイイィィィンンン!!! 先がドリル状になっている巨大な尻尾を、体の回転と共に駆動鎧部隊の横っ腹へ振り払う。一方、負けじと駆動鎧部隊も尻尾に向けて実弾を何発も叩き込む。 ボハッ!!! 至近距離なら数発叩き込むことで核シェルターの扉を抉じ開けることも可能なショットシェルを文字通り至近距離で幾発もまともに喰らい、遂に撃ち砕かれた尻尾。しかし・・・ シュアアアアアァァァッッ!!! 直後に尻尾が“再生する”。撃ち砕かれて散りじりになった尻尾だったモノに自身から伸びた糸を繋げる、又は付近の糸球からの補強によりすぐさま元の巨大な尻尾を形成したのだ。 一旦撃ち砕いたことで、ショットガンをウェインの方に構え直そうとしていた駆動鎧は虚を突かれる。もちろん、殺人鬼はその隙を見逃さない。 ドアアアアァァァッッ!!! 何機もの駆動鎧が尻尾に薙ぎ払われる。幸いドリル状の部分に接触はしなかったものの、この一撃を喰らった駆動鎧の装甲は盛大に凹み、内部の人間の体にも激痛が走る。 ドドドドドドド!!! 振り払った直後に、浮遊している糸球や尻尾の表面から糸の砲弾が次々に放たれる。比例的に巨大化していた尻尾が小さくなって行くそれ等の狙いは、今の一撃を喰らわなかった駆動鎧。 咄嗟に回避行動を取れた駆動鎧も居れば、回避が間に合わず腕を交差・身を屈める防御体勢を取る駆動鎧も居た。 獅子と骸骨が合体したかのような仮面を被る殺人鬼が放つ砲弾が防御体勢を取る駆動鎧へ次々に炸裂し、ショットガンが破壊され、交差している“腕”の装甲が窪み、遂には破壊される。 主に身体面や回復面を一定程度上昇させる通常の強化レベルでは無い、【精製蜘蛛】による最高レベルのドーピングによって実現させた、 糸を自身に繋いでいなくとも繋いでいる状態に並ぶ演算強度によって砲弾は強化されている。他方、何とか回避し得た駆動鎧が味方を助けようとショットガンを構える。だが・・・ ドドドドドドドドドドン!!! 左手に形成したクロスボウ型の弓から、合計10本の巨大な矢が連続して放たれる。照準を合わせる前に飛来した矢が、念動力の補正を受けて寸分違わず駆動鎧の“片方の肩”を次々に貫いた。 駆動鎧をモノともしない“怪物”の攻勢に、部隊の統率が乱れる。西部侵攻部隊の部隊長は最大限に危機感を募らせ、乱れた統率を立て直そうとするが・・・ ジャキッ!!! それを阻むかのように、“怪物”が自分目掛けて猛烈な速度で突っ込んで来た。右手に長槍を構えた白い殺人鬼は、今まさに自分を殺そうとしている。 本能が告げる『死の恐怖』。それに一瞬呑まれてしまった部隊長の反応は、必然的に遅くなる。死線の間合いにおける“一歩”に出遅れた。それは、文字通りの命取り・・・ ヒュン!!! にはならなかった。自分へ攻撃を仕掛ける直前に、“怪物”は―駆動鎧に貼り付けていた糸を用いた緊急回避によって―軌道を変更した。 一瞬何が起きたのかわからなかった部隊長は、駆動鎧の光学系センサーが欺かれている―正確には、光線と1人の少年の姿だけを偽装していた―事実に今更のように気付いた。 電波系センサーには反応していた男・・・光学系センサーを欺くことができる光学系能力者・・・“閃光の英雄”界刺得世は静かに歩を進めながら『光学装飾』の偽装を解き・・・こう宣言した。 「警備員!!俺と殺人鬼の戦闘から手を引け!!俺達の戦闘を邪魔するな!!そうすれば、俺達はこっから先はテメェ等に危害を加えねぇ!!」 「ふ、ふざけるな!!界刺得世!!あの殺人鬼は我等に・・・」 「わかってらぁ!!あの野郎はさっき警備員を殺してる!!だから言ってんだよ!!テメェ等は新“手駒達”の対処に全力を注げってな!!これ以上死者を出したくは無ぇだろ!!?」 部隊長と界刺が、互いに声を荒げながら己が意見を主張する。 「貴様!!我等に引き下がれと言うのか!!?」 「そうだよ!!テメェ等じゃあの殺し屋には勝つことは難しい!!もし、勝てたとしてもそれまでに犠牲者が何人出るかわかりゃしねぇ!!」 「治安組織に身を置いている以上、死は覚悟している。それ以上に、殺人鬼を目の前にしておきながらおめおめと引き下がることなどできる筈が無い!!」 「バカが!!テメェ等が最優先にしなきゃなんねぇのは殺人鬼かよ!!?違ぇだろ!?『東雲真慈討伐』だろうが!!?それか『新“手駒達”の救出』だろうが!!?」 「その『新“手駒達”の救出』に『殺人鬼の排除』が含まれている!!そんなこともわからんか、小僧!!そもそも、我等は貴様の手を汚させないためにも・・・」 「足りねぇな!!『界刺得世の排除』も入ってるだろうが!!?さっきの邪魔を見る限りよぉ!!何が俺のためだよ!!あぁん!!?」 「ッッ・・・!!」 「とりあえず、今は俺に任せろってんだよ!!もし、俺が野郎に殺された時は存分に立ち向かえよ!!それまでは出しゃばって来んな!!!つーか、邪魔すんな!!!」 「邪魔!!?貴様が言えた義理か!!?」 両者の主張は平行線を辿る。界刺としては無駄な犠牲を出したくは無い。だから、自分が戦っている・・・という側面もある。 しかし、警備員側も殺人鬼を目の前にして引き下がるわけにはいかない。実際にあの殺人鬼に仲間が殺されているのだ。そして、これは界刺の手を汚させないためでもあるのだ。 「チッ・・・頭が固ぇなぁ。テメェ等も警備員と同じ意見か!!176支部の連中!!!」 「「「「・・・・・・」」」」 苛立たしげに髪を掻き毟る界刺が、先程居た5階建ての建物の陰に居る風紀委員達に大声を掛ける。 そこから出て来たのは、神谷・斑・鏡星・姫空の4名。全員戦闘態勢を崩さないまま界刺へ歩を進める。 「・・・あぁ。そうだよ」 界刺の質問に答えたのは、先頭を歩く176支部エース神谷稜。以前の邂逅時に殺人鬼と戦い、痛い目を見た筈の少年の表情はリーダーから任された役目と信頼を胸に確と立つ。 「テメェ・・・前に痛い目見ただろうが。性懲りも無く、また痛い目見る気かよ?」 「・・・もう、あんな醜態を晒すつもりは無ぇよ。“変人”・・・いや・・・“閃光の英雄”。今の俺は、あの時のような無鉄砲に走る俺じゃ無ぇ」 『閃光真剣』を構える“剣神”は、“閃光の英雄”に宣言する。リーダー足る加賀美雅の意思を。自分の意志を。 「俺は・・・加賀美先輩に頼まれた。新“手駒達”の救出を。任された。その障害になる奴の排除を。 一緒に戦うってんなら、俺達はアンタに力を貸すぜ?アンタは俺達のために動いてくれた。アンタが何を思おうが、それは事実だ。本当に感謝してる。・・・どうだ?」 「・・・『邪魔するな』って言ったら?」 「・・・“ヒーロー”。たとえアンタの意見を無視してでも、俺は俺に課せられた役目を遂行する。任された信頼に応えてみせる。 あの殺し屋は、今ここで排除しなきゃなんねぇ。あの殺人鬼が、この戦場で新“手駒達”や俺達に危害を加えない保障は何処にも無ぇ。不意打ちかまされるなんてのはご免だ」 「(・・・一応最悪の事態を防げるかも的なギリギリの提案は呑ませたんだけど、言うわけにはいかねぇんだよな。取引として、俺が殺人鬼の行動を認めたことになるし。 つーか、『本気』状態の俺の邪魔なんだよ。こんだけ大勢居たら、俺が全力を出せねーじゃねぇか。テメェ等だって死ぬっつーの。そうなったら、誰が新“手駒達”を確保するんだ? ウェインは俺に任せて駆動鎧や斑達はそっちに専念しろっての。まぁ、神谷だけってんなら俺の補助アリで一緒に戦えないことも無ぇけど・・・メンドクセェ)」 神谷の言葉は至極もっともである。殺人鬼が新“手駒達”や風紀委員会に危害を加えない保障は無い。攻撃されれば、奴は必ず反撃する。 実際に、あの殺し屋は幾人もの人間を殺している。加賀美の判断も正しい。彼等に課せられた使命を鑑みれば、否定できるモノでは無い。 しかしながら、『ギリギリの提案』を呑ませた界刺としては『風紀委員会の行動が邪魔になっている』としか言いようが無い。 何より、全力を発揮するには風紀委員や警備員が邪魔でしか無い。彼等の位置取りを考慮しながら戦うのは、死闘において致命的な隙になり得るのだ。 「クッ。ククッ。クククククッッ・・・!!!」 その様を上空から眺めていたウェインは、未だ分裂と合体を繰り返している糸球を背景に込み上げる笑いを抑えられない。 弱者を思っての強者の言動が、当の弱者に否定されている。その不条理さに、笑わずにはいられない。 「界刺得世・・・。それでも、貴様は弱者のために動くのか!?何の契約も結ばず、助ける義務も無い弱者の勝手に翻弄されて・・・・・・段々貴様が哀れに思えて来たぞ?」 「殺人鬼・・・!!!」 「小僧。貴様に界刺得世の気持ちがわかるか?いや、わかるまい。強者の気持ちを真に理解できるのは強者だけだ。 弱者は強者にとって重荷以外の何者でも無い。弱者は弱者らしく、強者の戦いを黙って眺めていろ。そうすれば、貴様等の望みに近い結果が訪れるだろう」 敵意に満ち溢れた神谷の眼光を意に介さず、ウェインは弱者に翻弄される強者の擁護を行う。 西部侵攻部隊への攻勢で警備員達の命を積極的に奪わなかったのは、同じ強者である界刺の提案に乗ったからである。“あの程度”の怪我で済ます理由は本来無い。 本来であれば、邪魔する者を容赦無く殺すウェインの主義をウェイン自身が半ば放り捨てているのは、界刺との決着を着けた後の仕事を円滑に進めるためである。 ウェインとの利害の一致を叶わせた界刺の提案―これもまた、風紀委員会にとって利のあるモノ―に沿って、“英雄”と“怪物”は死闘を行いながらも動こうとしている。 それなのに、当の風紀委員会側が邪魔をすると宣言しているのだ。口に出せない事情があるとは言え―ウェインも話すつもりは無い―滑稽と言う他無い。 「何が俺達の望みに近い結果だ!!ざけんじゃ無ぇよ!!」 「神谷の言う通りだ。私を含めた皆にとって、今の状況からして最高の結果からは程遠い」 「この前のようにはいかないわよ・・・覚悟しなさい!!」 「・・・・・・今度こそ潰す」 ウェインの擁護を嘲弄と受け取った神谷・斑・鏡星・姫空は、いよいよもって臨戦態勢に移行する。 「隊長!!」 「わかっている!!風紀委員(こども)を守るのは我等の役目だ!!この程度で引き下がっては、あの子達に示しが付かん!!いくぞ、お前達!!!」 「「「はい!!!」」」 ウェインの攻勢を受けた西部侵攻部隊も、戦闘続行を表明する。ここで殺人鬼を仕留める。それが、治安組織足る自分達の役目。そう自負しているが故に。 「・・・・・・」 界刺は反応を示さない。無表情と言ってもいい。この瞬間に彼が何を考えていたかは彼にしかわからない。 「全く・・・身の程知らずめ。珍しく強者なりに気を遣ってやったというのに。その愚かな決断をすぐに後悔させて・・・」 敵意・殺意全てを向けられている殺し屋ウェインが、弱者達の愚か極まる決断に絶大な殺気を込めた言葉を・・・ ガシッ!!! キイィィンン!!! 「・・・ほぅ」 放っている最中に―感知用の極小蜘蛛糸や糸球の『抵抗力』から“避けるまでも無い”と看破したために―【獅骸紘虐】へ別種の念動力が作用する。 その上で超高周電波を蜘蛛糸越しに叩き付けられる。この場に念動力や電波を操作する能力者は存在しない。つまり・・・ 「隊長!!申し訳ありません!!新“手駒達”17名の突破を許しました!!」 「何!!?」 今のウェインが新“手駒達”による念動力の妨害を喰らっている事実を“予測している”のは、『光学装飾』で糸の僅かな+不自然な凹み具合を察知した界刺のみ。 そして、その念動力をウェインがモノともしていないと“予測している”のも界刺のみの中、部隊長に新“手駒達”に防衛線を突破された部下の緊急通信が入る。 「(清廉さんの“追加装備”が何処まで通用するか・・・)」 『光学装飾』で新“手駒達”の接近を察知した界刺は、 ダークナイト に追加装備された“手駒達”を操作する電波への一斉ジャミングの仕掛け時を計る。 少なくともウェインが攻撃を仕掛ける前に実施しなければならないが、周囲一帯には電気系“手駒達”の電波強化が掛かっている可能性は高い。 一斉ジャミングの電波自体を操作される可能性もある。故に、できるだけ引き付けた状態で一斉ジャミングを行い、電気系“手駒達”の妨害前に駆動鎧部隊に捕獲させる。 「あれが・・・標的」 「殺す・・・殺す・・・」 「・・・・・・」 新“手駒達”17名が接近して来る中、これが最良の手段。そうすれば、176支部も近付いて来る17名への対処に気を取られる筈だ。そちらへ差し向ける話術も用意してある。 誰よりも深く、深く思考している。様々な結果を出すために。その結果を出すタイミングの1つがもうすぐ訪れる。 ガシャン!!! 「「!!?」」 そんな最中、突如糸でできた尻尾の根元からスプレー缶のような容器が噴出・ほぼ同時に内部からの『破壊行動』にて容器がバラバラになる。 その中から無数の金属箔が空気中に飛散し、“怪物”を覆い、新“手駒達”が放った超高周電波を撹乱する。そう、これは電波撹乱装置の一種・・・『撹乱の羽 チャフシード 』。 本来はマイクロモーターを用いて空中を自動浮遊する代物だが、急激な大気の流れに弱いという欠点のため本来は今のような屋外戦闘には不向きの武器である。 それをウェインは蜘蛛糸を金属箔に巻き付け、粘着物質によって吸着力を強化し、蜘蛛糸を操る常のように念動力を用いて『撹乱の羽』を自在に操作しているのだ。 先の『破壊行動』も、容器内に仕込んでいた蜘蛛糸を用いたモノである。蜘蛛糸単体では電波を用いた高周波攻撃は防げない。ならば、防ぐ手段を常備しておく。 殺し屋を務めている以上これは当たり前の事。“手駒達”という『能力者』と戦う以上至極当然の事。セラミック製ナイフ然り、【鋏角紘弾】然り、【精製蜘蛛】然り。 この念動蜘蛛糸接着型『撹乱の羽』も応用すればレーダーも撹乱させる所か、電波を用いた制御を行っている新“手駒達”に対して有効に働く。 但し、能力で電波制御強化を施している可能性が高い故の金属箔を分散させるリスクを考慮したウェインとしては“確実”が見込める自身の防御に用いたのだ。 「フン!!」 同時にウェインが【獅骸紘虐】に掛かっていた念動力を振り払い、いよいよ迎撃準備に入った。 左手に長槍を作成し、本格的に新“手駒達”を迎え撃とうとする。駆動鎧部隊が、ウェインの凶行を止めようとショットガンを差し向けようとする。 「ウェイン!!風紀委員会も!!手を出すな!!!」 「「「「「!!!!!」」」」」 界刺の大声が皆の鼓膜を叩く。機は熟した。清廉止水が分析・割り出して実装した一斉ジャミングを仕掛けようとした・・・・・・その時!! バリバリバリ!!!!! ブオオオオオォォォッッ!!!!! 「「「「「!!!??」」」」」 突如発生した雷撃がウェインを襲い、幾つもの小型竜巻が新“手駒達”を巻き込んだ。ウェインは察知した敵意及び【意図電話】等による感知から回避行動を取り、 新“手駒達”の中に居る大気系能力者が竜巻に真空刃をぶつけることで吹き飛ばされながらも衝撃を緩和する。 「くそっ!!当たらなかった!!!」 「呆けるな、湖后腹!!」 「わかってます!!にしても、あの姿は一体・・・?」 「あれが殺人鬼の『本気』なんじゃないか!?気を抜くなよ!!」 「はい!!」 「よしっ!・・・あれは神谷達か!?何で『本気』の界刺の近くに!?幾ら駆動鎧が傍に居るとは言え、不用意過ぎるだろうが・・・!! しかも、西部侵攻部隊が界刺を鎮圧に動いた以上、少なくともあいつは邪魔をする警備員を敵と認識していてもおかしくないのに・・・!!」 それは、施設内東部から強力な風を周囲に伴って―光学攻撃対策も兼ねている―飛翔して来た159支部の2人・・・破輩妃里嶺と湖后腹真申。 2人は、眼前に見える光景に本能的な危機感を募らした結果、殺人鬼と新“手駒達”への攻撃を決断した。もちろん、新“手駒達”への攻撃は手加減をし、逆に殺人鬼への攻撃は本気であった。 界刺へ攻撃しなかったのは、風紀委員として現時点では敵対意思が無いことを証明するためのものである。 「破輩先輩達だ!!」 「湖后腹も!!これで、殺人鬼に対して更に有効な手が打てるわ!!」 斑と鏡星が強力な増援の到来を喜ぶ。湖后腹は殺人鬼に、破輩は新“手駒達”に有効な能力を行使できる実力者である。 その証拠に、破輩の『疾風旋風』で新“手駒達”は逆方向に吹っ飛ばされた後に、追いかけて来た駆動鎧部隊と交戦に入った。 また、湖后腹が放つ本気の雷撃は絶縁性を持たない蜘蛛糸を操る殺人鬼には脅威になり得る。そう・・・『雷撃』は。 ドシュン!!! 反撃とばかりに、“怪物”は振り向かないまま右手に持つ長槍の穂先を破輩達目掛けて射出した。凄まじい狂音を発しながら、ドリル状の穂先が2人に襲い掛かろうとする。 「湖后腹!!」 「わかってます!!」 破輩の声を受ける前から準備していた湖后腹は、右手に持つコインを穂先へ向ける。それは10m以内でなら実現可能な彼の必殺技・・・学園都市第三位の異名でもある超電磁砲。 「いっけええええええぇぇぇ!!!」 10m以内という制約(=加速に必須な『レール』の短さと精密電流操作の未熟)から第三位とは違い音速の3倍までしか初速を叩き出せないものの、 威力としては申し分無い―未熟さから10mを超える領域の弾道が不安定になるために緊急時以外では使用しない―超電磁砲が・・・満を持して湖后腹の手から放たれた。 グガガガガガガッッッ!!!!! 「「!!!??」」 刹那、湖后腹と破輩は眼前で起きた現実を理解することができなかった。音速を超えることで発生した衝撃波を伴いながら射出された超電磁砲が、 直撃したにも関わらず穂先を撃ち貫けずに弾かれてしまったからである。但し、穂先の進行自体は超電磁砲の威力によって変更させられた。 数瞬遅れて我に返った破輩の暴風―超電磁砲によって発生した衝撃波も用いて―による援護もあって、迫り来る脅威から何とか脱することができた。 「俺の超電磁砲が・・・弾かれた!!?そ、そんなバカな・・・!!!」 「糸を自身に繋いでいたなら超電磁砲の影響が殺人鬼にも及んでいる筈・・・!!!今のは糸を自身に繋いでいない攻撃の筈だ!! それなのに、湖后腹の超電磁砲を・・・!!?一厘や橙山先生の推測は間違っていたのか!!?まさ、か・・・それすらも奴の罠だったのか!!?馬鹿な!! これでは本当にレベル5に片足を突っ込んでいるぞ、あの殺人鬼は!!?幾らレベル5に近い実力とは言えこんなことが・・・!!何か・・・何かカラクリがある筈だ!! 奴がレベル5で無いのならば!!あれ程の出力を引き出す“代償”が・・・あれ程の出力を引き出すのと引き換えに顕在する『リスク』が絶対に!!!」 しかし、超電磁砲によって撃ち貫く所か弾かれた現実が齎したショックは2人に想像以上のダメージを与えていた。 加えて、確かな妥当性を持ち得ていた一厘と橙山の推測そのものにも疑問付を抱かざるを得ない状況が更なる追撃となっていた。 殺人鬼と繋がっている糸に比べて繋がっていない糸は強度も操作性も落ちる。それならば、破輩の暴風や湖后腹の電熱で強度・操作性の落ちた糸を迎撃し、 強度・操作性が凄まじい繋がっている糸には“繋がらざるを得ない”事由を逆手に取ることで、どうにかして湖后腹の高圧電流を伴った攻撃をぶちかます。 総合力では殺人鬼に劣っている2人が一厘と橙山の推測を基に導き出した最善。だが、繋がっていない糸の強度等が繋がっている糸と同等ならばその最善も最善で無くなる。 もし、この思考が当たっているのならばあの殺人鬼はレベル5の域に片足を突っ込んでいるのではないか。そう考えてしまったが故の大きなショック。 2人は知らない。一厘と橙山の推測は当たっているのだ。ある例外―【精製蜘蛛】―を除いて。 もっとも・・・レベル5の実力を見掛け上の“結果”でしか判断できていないレベル4の念動力系能力者破輩の推測は、実は『当たってもいる』し『外れてもいる』が。 「今の雷撃・・・ククッ、威力自体は本気だろうがそれでも躊躇が伴った一撃だったな。つくづく甘い。まぁ、風紀委員の1人2人殺しても別に構わないか。 俺の邪魔をしたのだから・・・!!殺しを躊躇する弱者が強者の尾を不用意に踏んだ意味をその身に刻んでやろう・・・!!」 他方、『牽制』を放った破輩達と同じ空中に居る“怪物”・・・レベル5とレベル4を分ける基準が見掛け上の“結果”には存在しないことを知っているレベル4の念動力系能力者・・・ 仮に念動力系能力者がレベル5として認められる場合に重大な要素に挙げられるであろう『大原則』における欠陥を自身の能力が抱える上に、 『今』の自分の実力でもレベル5の域には達していないことを熟知しているウェインは、長槍の穂先を作成しつつ自身へ襲来した湖后腹の雷撃の規模から手加減無用と結論付ける。 超電磁砲と思われる攻撃には意表を突かれたが、コインクラスのサイズならたとえマッハ6程度を超えた速度であっても逸らす必要さえ無く防御できる。 駆動鎧部隊については後の仕事の円滑な進行に配慮して手加減したが、“生身”の人間である風紀委員の数人程度は殺しても支障は無い。 「クッ・・・!!来るぞ、湖后腹!!覚悟を決めろ!!私も援護する!!」 「は、はい!!!」 怖気が走る仮面がこちらを向いた。本格的に標的を自分達に切り替えたのだろう。それも狙いの1つである。新“手駒達”には絶対に手を出させない。その決意の下攻撃を仕掛けたのだから。 「姫空!!」 「了解!!」 176支部視点では後ろを向けた形となったウェイン。これを好機と見た神谷が、姫空に『光子照射』の撃つように指示を出す。 以前のように避けられる可能性は高いが、破輩達に攻撃を仕掛けようとする殺人鬼を少しでも牽制できる筈だ。 施設内南西部にて、様々な人間が様々な思惑で様々な選択を決断し様々な行動を起こす。 「・・・・・・ギリッ。ギリリッッ。ギリリリリッッッ・・・!!!!!」 その中で・・・唯1人沈黙していた男が動く。血走った瞳を見開き、危うく割れそうになる程に歯を噛み締める。 自分の思惑を全て台無しにした、そしてこの戦場で今後も邪魔をし続けると本能が瞬間的に『判断した』存在へ。ブチ切れた『本気』の“戦鬼”が怒りの咆哮を放ちながら牙を剥く。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!」 ビュン!!!!! “閃光の英雄”界刺得世の『本気』・・・“絶望”を司る『光学装飾』の“戦闘色”・・・【閃苛絢爛の鏡界】が大きさを増して再び顕現する。今度は風紀委員も警備員も巻き込んで。 「な、何だこれは・・・!!?」 「破輩先輩・・・あれっ!?破輩先輩!!?」 殺人鬼の攻撃を待ち構えていた破輩は、突如視界に顕現した無数の星々が移ろう光景―【月譁紋様】―に平衡感覚を狂わされる。 また、湖后腹は視界に自分を抱きかかえる破輩が映らなくなったこと、そして己の体さえ映らなくなったことに驚愕する。 「(目・・・が!!!しまっ・・・)」 「(グウウウゥゥッッ!!!)」 その上、銀河の中・・・浮かび、廻り、奔っている星々へ次々に視点が移動→固定されるためにまるでジェットコースターの如き凄まじい眩暈を引き起こさせられた。 “初めて”『幻惑』を体験する2人故の混乱。直接的脅威である光学攻撃を警戒する余り、どうしても『幻惑』に対する警戒レベルが低くなってしまうが故の弊害。 本当に界刺に対する有効な対策―排除―を最初から打つ気があったのならば、不動が忠告したように即断即決・問答無用で遠方からブッ飛ばすべきだったのだ。 界刺が新“手駒達”へ仕掛けようとしていたタイミングだったからこそ、破輩達の攻撃は確かに届いていた筈なのだ。 仲間の存在に気付いていなかったとは言え、界刺を本気で鎮圧する気であれば結果として付近に居る神谷達の命を危うくさせたとしても攻撃を仕掛けるタイミングだった。 そもそもの話として、『幻惑』対策として自ら視覚を封じていては殺人鬼には勝てない厳然足る現実が、強力な能力者集団である新“手駒達”に対処できない無慈悲な真実があるからこそ、 破輩は心を鬼にして非情な決断を下すべきだった。しかし、結果として下さなかった。否、下せなかった。 『んなモンお互い様だろうがよ。俺がお前等を振り回していることを忘れてんじゃ無いって。その配慮は俺みたいな部外者なんかじゃ無くて傷付いた仲間に向けてやんな。 今愚痴をお前に零した所でどうにもなんねぇよ。どうにもなんねぇのに、愚痴なんていう無駄口を他人に叩いている暇は俺には無いよ。真刺達の行動を否定させないためにも。 そんなどうにもなんねぇことを何とかするために、今の俺は色々考えている最中でね。まぁ、何とかしてみせるさ。これが最後のメールだ。破輩。後悔の無い選択をしろよ? その中で俺達のために何かしたいってんなら、何でもしろよ。もっとも、そんな余裕があればの話だけど。そんじゃね』 『わかった。お前の言う通り何でもしよう。界刺。少なくとも、私はお前達をこの命を懸けて守るつもりだ。どうせ、お前のことだから鬱陶しがるのは目に見えている。 それでも私は1人の風紀委員として、1人の人間としてお前達を守りたい。治安組織やボランティアという括りを越えて、お前達と対等な関係を築きたい。 どちらが上でも下でも無い、真の意味で対等な関係を。だから・・・遠慮せずにお前の好きなようにやってくれ。・・・その結果として私がどうなろうとも文句は言わない。 私は受け入れるよ。その代わり、私も私に課せられた使命を果たす。自分の信念を貫こう。願わくば・・・同じリーダーとしてお前と肩を並べて立つ日が来ることを祈っているよ』 鎮圧したく無かった。排除したく無かった。攻撃したく無かった。戦いたく無かった。敵対したく無かった。己が手で・・・同じリーダーである彼を傷付けたく無かった。 それが、破輩妃里嶺の嘘偽り無い本音。私情。主観。男勝りで・・・実は根が気弱で・・・それでいてとてもとても情に深い少女の心意。湖后腹も理解を示した心優しきリーダーの“希望”。 以前の騒動で大怪我を負った親友の身を案じて後方へ待機させ、殆ど事件に関わっていない友を巻き込みたくないために助力を頼まず、 今もまた自分達の命を危うくさせる可能性を押し殺してでも最初から“英雄”に攻勢を仕掛けなかった。情に深く、心優しい少女の根底は今も昔も変わらない。 故に・・・故にこそ光学攻撃対策のために神経を尖らせていた『疾風旋風』による精緻且つ不規則な大気操作が乱れた。停滞してしまった。 その隙を・・・散乱の要因になる気流の流れや大気中に存在する埃等の位置を精密に捕捉・看破し得る【月譁紋様】を操る油断皆無の“戦鬼”は見逃さない。 ビュン!!! 目に映らぬ1条の光線―大気に吸収され難い性質を持つ“超近赤外線”で構成された【雪華紋様】―が・・・飛んだ。 「ッッッ!!!??」 「グアッ!!!??」 右太腿を焼き貫かれた激痛が湖后腹を、左太腿を焼き貫かれた激痛が破輩を襲う。収まらない眩暈も影響して、制御していた9つの竜巻が維持できなくなる。 「クウウゥッッ!!!」 それでもさすがは風輪第2位の実力と言うべきか、この不可思議な銀河世界に視界が切り替わる前に目に映していた建物の屋上に着陸するために、己の感覚を信じて風を制御する。 「ガアアァッ!!!」 「グフッ!!!」 風が維持できなくなるのと屋上への不時着のタイミングは然程変わらなかった。“そこ”に屋上の床があったことに確信を持てなかった破輩は、不時着時に肩から激突した。 しかし、何とか不時着には成功した。未だ太腿の激痛は続いているが、それがどんな原因で痛みを発しているのかがすぐにはわからなかった。 ビュン!!! 視界が元の世界の色に戻った。【鏡界】の支配者が、意図的にドームを縮小したためだ。 その結果として湖后腹には右太腿の外側の一部分に、 破輩には左太腿の外側の一部分に“鉛筆大”の穴がそれぞれ空いていることを“風嵐烈女”は認識する。加えて、頭から不時着してしまった湖后腹は血を流しながら気絶していた。 「湖后腹・・・!!!」 破輩は、足を引き摺りながらすぐに湖后腹の処置を行う。対外傷キットを用いて彼の頭及び右太腿の応急処置を行い、脈拍・呼吸等に異常が無いことも確認する。 そして、自分の左太腿の治療に取り掛かった破輩は自分達を狙撃した“碧髪の男”の行動について頭を働かせる。 「こ、これは・・・グウゥゥッ!!!ハァ・・・ハァ・・・か、界刺の・・・仕業、か・・・!!!」 彼の咆哮は耳にした。そこに込められた怒りの色も肌で感じ取った。だが、自分達の行動―界刺を邪魔しない攻撃―が咆哮を放つ引き鉄になるとは思わなかった。 “閃光の英雄”が自分を最優先することを前提として、それでもできるだけ他者を優先するべくあれこれ苦心して動いていたのを風紀委員会は(界刺視点で)悉く邪魔をした。 もしウェインが評価するのならば、『強者の気持ちを弱者は理解できない』と言った所か。もっとも、この評価は今の場合においては適切では無いが。 「わ、私・・・私達が殺し合いに手を出したから・・・か!?い、いや・・・あの咆哮はそれだけじゃ無い。な、何か・・・別の意味で私達・・・はあいつに・・・!!」 炭化を起こしている傷を認識しながらも、破輩は界刺の咆哮の意味について考えていた。『俺の邪魔をするな』。そう告げられ、それを理解してこの戦場へ来た。 現時点では敵対意思が無いとは言え、それが彼にきちんと伝わる保障は無い。故に、この南西部に到着した時から彼の攻撃も覚悟していた。もっと言えば・・・死を覚悟していた。 先日のメールでも伝えたこと。しかし、実際に攻撃される前に破輩は確かに“英雄”の声を聞いた。殺す相手には『不必要』とも取れる、嘆きと哀しみと憤怒が混じった咆哮を。 「も、もし私達を殺す気なら“この程度”で済ます必要は無い。レーザーで頭でも心臓でも撃ち抜けばいい。ハァ・・・ハァ・・・。それをしなかったということは・・・。 今の奴は、不動が言う『敵なら何でもかんでも殺しに掛かる』という状態じゃ無い。『本気』だとしても、“選べる”余裕が今の奴にはあるんだ。まだ分別が付けられるんだ。 でなければ、私達がここに来るまでに神谷達が五体満足で立っている状況になっている筈が無い。何故気が付かなかった!?くそっ・・・。 それなのに・・・それなのに私達は“嫌がる”界刺に私達を『本気』で敵に回すという決断を下させてしまったんだ!!」 まがりなりにも、あの男とは付き合って来た。だから、『わかる』。あの男は、自分勝手なだけの人間じゃ無い。他者と確かな信頼関係を築ける人間だ。分別を付けられる人間だ。 そんな人間を、自分達は遂に実力行使へ至らしめる程に『本気』で怒らせてしまったのではないか?あの男へ多大な迷惑を掛けてしまっていることも重々わかっている。 界刺の排除に動くという選択を採った裏切り行為についても申し訳無く思っている。それが譲れないモノのためだということを、当の界刺も理解してくれる。そう思っていた。 「そ、それが・・・甘えだったのか!!?『理解してくれる』・・・『わかってくれる』・・・そんな“安易”な考えをあいつに押し付け過ぎた結果・・・あいつが切れた!! それなのに、あいつは私達の命を奪わなかった。怒り狂いながらも、冷静な思考を保っていた。・・・保身のためだけじゃ無いだろう。ハァ・・・ハァ・・・不動め・・・嘘を付いたな。 何が、『邪魔する者達(おまえたち)を殺しに掛かる』だ。あいつは、『本気』でも冷静な思考を保ち続けて私と湖后腹を“守ったぞ”。・・・おかしいな。何だ・・・この気持ちは?」 おかしい。湧き上がって来る感情を理解できない。自分達は界刺に重傷を負わされた。これで、『ブラックウィザード』討伐や新“手駒達”救出に重大な支障が出るのも確実。 破輩の抱く譲れないモノを貫く手段を界刺は奪った。どんな覚悟をしていても多少以上の怒りが湧いて来る筈なのに、今は・・・今は悲哀の感情が彼女の胸に広がっていた。 何故なら、物事を全て手の平の上で転がし、時に愚痴を吐きながらも何処までも達観して物事を量ると感じていた碧髪の男の本音を聞いたから。 自分達のように悩み苦しむ1人の人間界刺得世の心意を感じ取ったから。 「フッ、界刺には散々振り回された筈なんだがな。迷惑を掛けてしまっていることを度外視すれば・・・な。 事件が終わったら、本当はフォローも兼ねてたらふく文句をぶつけたかった筈なのにな。ぶつけて・・・ぶつけられて・・・な。 界刺だって、私達のことをとやかく言えない筈なんだがな。あいつの言う自業自得の筈なんだがな。・・・・・・でも・・・・・・言えなくなっちまった。卑怯だろ・・・あれは。 あんな悲鳴(ほうこう)を聞かされたら、もう何も言えないよ。何で怒りのまま私を殺さなかったんだよ・・・界刺?そうすれば、瞬間的にでも楽になれただろ?・・・・・・。 やっぱり・・・殺すつもりなんて最初から無かったんだな。それか・・・湧き上がる殺意の衝動を懸命に抑えていたんだな。 あれが・・・界刺(ウソツキ)の本音か。ハァ・・・ハァ・・・・・・くそっ!!!」 拳を床へ叩き付ける。あの男は・・・あれだけ怒り狂っていても・・・他者のために命を取らなかった。破輩妃里嶺と湖后腹真申を切り捨てなかった。 おそらく、湖后腹の超電磁砲や自分の暴風を物ともしない『本気』の殺人鬼から“自分達を守るため”に重傷を負わせて強制的に離脱させた。 迸った光線に、抱く悲哀と憤怒も込めて。その意味を心底理解した“風嵐烈女”は、血が滲む程に拳を握り締めた。 バン!!! だがしかし、現実は彼女に後悔する暇を与えない。 「誰だ!!?」 「・・・やっぱり人が居る~。大きな音がしたからもしかしたらって思ってたんだ。それにしても、さっきの星空は何だったんだろうね? 今見えるのは変な模様が浮かんだドームみたいなモノだけど・・・別にいっか!ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」 旋風渦巻く屋上の入り口を勢い良く開けた少女が破輩の前に姿を現す。 「お、お前は・・・!!!」 破輩の瞳に映るのは、映倫中学のジャージを着用しノンフレームの眼鏡を掛けるボサボサ髪の少女。 「あっ!!!風紀委員の腕章だ!!私も、昔はその腕章を付けて一生懸命頑張ってたんだよねぇ。なのに・・・何で・・・どうして・・・私・・・私・・・ハハハハハハハ!!!」 ハイテンションからローテンションへ、ローテンションからハイテンションへ目まぐるしく移り変わる少女の態度は、彼女が服用した非合法の薬物の影響である。 「だ・か・ら・・・・・・フフフッッ・・・風紀委員なんてモンが・・・・・・この世から消えて無くなったらいいんだよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!」 元176支部風紀委員風路鏡子が、薬で暴走状態にある『風力切断』を159支部リーダー破輩妃里嶺へ振り向ける。 運命の悪戯に弄ばれながら、しかし必然であるかのように咆哮(ひめい)を挙げながら現役風紀委員へ挑む哀れな少女の瞳からは涙が一筋滴り落ちていた。 破輩妃里嶺VS風路鏡子 Ready? continue!!
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序章 闇の中で蠢く闇 Bartender. 学園都市、第七学区。 学生が多い学園都市の中でも特に学生が多く、教育機関、医療施設、警察施設……およそ人がイメージする中で『正』を連想しやすい施設が集中している学区でもある。 だが、一方で学生の多いこの学区は、夜になると急速に寂れる区画も存在していた。 そんな区画にある一つの雑居ビルの一室。 今にも倒壊しそうなビルの外観とは裏腹に、その一室は妙に小奇麗に装飾されていた。ともするとお洒落な街のどこかにあるバーか何かのように、どこか妖艶な雰囲気が漂っている。 『……緊張してるのかい?』 研究者を連想させる白衣に、ボイスチェンジャーと思しき機械じみたマスクを装備した、何か場違いな存在。 その人物の名は調合屋(バーテンダー)。 薬物合成(ケミカルブレンド)と言う能力を持つ、平たく言えば薬物を自在に合成できるクスリ売りだ。マスクを付け、常にボイスチェンジャー越しに話す調合屋(バーテンダー)は、本名を知るものはおろか、性別、年齢、その他諸々が全て不明という謎の人物である。分かっているのは彼(尤も性別は不明だが)が能力者であるところから、おそらく元は学生だったのだろう、ということだけ。 「……別に」 機械的な色で装飾された声に対し、カウンターを挟んで調合屋(バーテンダー)と向かい合っていた少女は気だるそうに答えた。 痩せぎすで、長髪の少女だった。少し突けば解(ほつ)れてしまいそうなほど細い、小枝のような腕を繋ぎ止めるように、全身に包帯を巻いている。二日間おいしいものを休まず食べさせ続ければ中々の美少女になりそうな容姿をしていたが、その顔も何割かは包帯で覆い隠されてしまっていて、表情は伺いづらい。 『なに、そう不安がるなよ。確かに君と同い年くらいの年齢のお得意様にも今や能力を吐き出すだけの機械に成り下がってる連中はいるが、アレは「馬鹿」な例だ。ウチが取り扱ってる薬物(モノ)は、使い方さえ間違わなければ下手な能力開発の薬物を超える成果を出せるよ』 調合屋(バーテンダー)は、まるで初めてタバコを吸う前に何か躊躇っているような後輩を落ち着けるような口調で、静かに少女を宥める。 「…………、」 『……ふむ、ここまで来て怖気づいてしまったかな? まあ、それでもいいけど。でも、君のその制服……風輪学園のモノだろう? あそこは、強度(レベル)による扱いの変化が顕著だからね……。君も、一六人しかいない「大能力者(レベル4)」の仲間入りをしたいんじゃないかな?』 この期に及んで渋っているような態度の少女に、調合屋(バーテンダー)は僅かに苛立ちを感じつつ、諭すような、それでいて確実に相手を奈落の底に突き落とすような口調で少女に語りかける。 実際、調合屋(バーテンダー)にとってこんなことは日常茶飯事だった。学園都市の学生にとって薬物の摂取は日常茶飯事だが、当然それだけに『授業以外での薬物摂取』については厳重な教育が成されている。専用の条例も出来ているし、おそらく『外』の学生のそれよりも学園都市の学生の『授業外での薬物摂取』に対する忌避感は強いであろう。 「……、」 少女はその質問には答えず、ちらりと部屋の脇の一角を見た。 そこには、中学生くらいの少年が虚ろな目をして転がっていた。 『……? その少年かい? それは、君にとっての「反面教師」だよ。いくらこちらが良心的に「商売」していても、やっぱりハマってしまう人はハマってしまってね。こちらとしてもそれは流石に良心が痛むから、ああして「堕ちて」しまった人を店頭に出して、「こうはなりたくない」と思わせているんだよ』 『維持費がかかるのが玉に瑕だけど、あれも結構具合がいいから、そっちでも儲けはあるんだ』と言って笑う調合屋(バーテンダー)。 「……? あれは、男の子なの」 『……、ああ。君にはまだ早い世界だったかな。まあ、世の中には「そういう」需要もあるってことだよ。彼、可愛いだろう?』 にやり、と。マスクで包まれているにもかかわらず、少女には調合屋(バーテンダー)が頬を吊り上げたのが理解できた。同時に、彼女も彼の言いたいことを理解し、不愉快げに表情をゆがめる。 『おっと、勘違いしないでくれよ。アレの出番が来るのは本当にたまにさ。何なら、君に貸してもいいけどね。「本来の用途」は後ろの穴だが、流石に前についてるモノでも妊娠は無理だろうけどまだ使えるだろう。……こっちだって、風俗をやるくらいなら最初からこんな危ない仕事はしない。最近は、こちらの締め付けもキツくなってきているんだ。「グループ」……って言っても、お嬢さんには分からないか。上の犬たちが最近色々とうるさくてね。ウチも、色んな隠れ家を転々としないといかないハメになってるんだ』 知り合いに愚痴を零すような調子の調合屋(バーテンダー)に、少女は小さく笑みを漏らした。その笑みを自身に対する警戒の緩みと判断した調合屋(バーテンダー)は、これ幸いとさらに話術による畳み掛けをはじめようとしたところで――、 腹を撃ち抜かれた。 『な、が、え? ッッ、がァァァあああああああああッ!! !!』 「ちょっと、勘違いさせて、しまった、みたいなの」 少女の手には、黒光りする拳銃が用意されていた。調合屋(バーテンダー)は激痛に蹲りながらも、テーブルの下から小型の拳銃を抜き取り応戦しようとする。が、 「遅いの。もしかして、平和ボケ、してる?」 調合屋(バーテンダー)が具体的に動く前に、少女は黒い握りこぶしほどの大きさの塊を放り投げた。――手榴弾だ。 『な、馬鹿が! こんな密室でそんなもの投げたら、どうなるか分かっているのかッ!!』 先ほどまでの余裕など全てかなぐり捨てて、調合屋(バーテンダー)は叫びながら無駄と知りつつその場から飛ぶ。 「馬鹿は、あなたなの。この手榴弾は、特別製なの。爆風の、指向性を、コントロールするの。吹っ飛ぶのは、あなただけ、なの」 瞬間、轟!! という音と共に、爆風がカウンターの先を蹂躙した。壁に立てかけてあった薬物のビンは爆風に煽られ吹き飛び、空中で無残にブレンドされる。 『ごっがァァァああああああッッ!! !?』 空中にあった調合屋(バーテンダー)は、爆風の後押しを受けてさらに数メートル飛距離を伸ばす。しかし、あれほどの爆風を受けても、調合屋(バーテンダー)の肉体は奇跡的に五体満足を保っていた。 「が、あ……」 爆風で変声機能が壊れたのだろう、重厚なマスクの下から、くぐもった声が聞こえる。 「奇跡、……だと、思って、いるの?」 痛みに身をよじっている調合屋(バーテンダー)の耳元で、少女のものと思わしき声が囁かれる。少し遠い位置から、がちゃり、という金属音が響き渡ったのを感じた調合屋(バーテンダー)は、即座に身の振り方を正す。 「わ、分かった、分かった分かった!! 抵抗はしない! そっちの目的はなんだ!?」 「そう。……殊勝な、心がけなの」 従順な態度になった調合屋(バーテンダー)に気を良くしたのか、少女は少しだけ声を和らげて応じる。その声を受けてすぐに起き上がろうとした調合屋(バーテンダー)は、背中に何かが乗ったのを感じた。 「…………おいおい、ウチはそういうサービスは扱ってないんだぞ」 変声機能は失っているものの、重厚なマスクのせいで相変わらず声からは性別が伺えない調合屋(バーテンダー)は、呆れたように呟いた。少女は、うつぶせで倒れている調合屋(バーテンダー)の背中に跨る様に座り込んでいたのだ。 「『情報』」 対する少女は、相変わらず冷たい声色で、囁くように言った。その声に、調合屋(バーテンダー)は背筋に薄ら寒いものを感じる。 「……チッ、あんたも『上』の犬か。分かったよ。どこの組織かは分からないが、話そう。お望みはなんだ? 組織構造か? 薬物の流通ルートか?」 「まだ、勘違い、している、みたいなの」 瞬間。調合屋(バーテンダー)の背筋に何か冷たいものが走る。 その直後。 ビギン!! という音さえ錯覚するような激痛が、調合屋(バーテンダー)の全身を満遍なく襲った。あまりの痛みに意識が飛びかけてから、調合屋(バーテンダー)は自分の背筋に走った何かが『戦慄』と呼ばれるものであることを思い出した。 「が、ぐァァァああああああああああああああッッ!! !! !!」 調合屋(バーテンダー)の絶叫が、夜の第七学区の片隅に響き渡る。 「は、なすって……言ってる、の……に……、な、ぜ、」 「勘違い、しないで、ほしいの」 縋り付く様な声で問いかける調合屋(バーテンダー)を、少女は感情を感じさせない冷たい声色で突き放す。 「私の、目的は、貴方の、尋問じゃ、ないの。貴方、薬物(クスリ)で、子供を、能力を、吐き出すだけの、機械、にした、って、言ってたの」 「……ッッ!! だから、断罪するっていうのか? ハッ! 暗部の犬が笑わせてくれる! あんたの方だって同じじゃないのか!?」 己の死期を悟ったからか、饒舌になった調合屋(バーテンダー)に対して少女は薄氷のように薄っぺらで冷たい笑みを向けた。それだけで、少女の笑みを見ることが出来ないはずの調合屋(バーテンダー)の喉が一瞬にして干上がった。極度に乾いた喉の内壁同士が張り付くような息苦しさが、調合屋(バーテンダー)を襲う。 「……かはっ、はっ!」 「だから、勘違い、しないで、ほしいって、言ってるの。これはもう、早とちりの、レベル? いい加減に、しないと、塵にするの。……早と『ちり』と、『塵』。…………ぷふっ」 極寒の殺気を当てたかと思えば、少女は下らない親父ギャグとも言えないレベルの言葉遊びで勝手に噴出した。しかし、それで場の空気が和むということはない。むしろ、この状況下で平然としていられる少女の異常さだけが、殺伐とした戦場で不気味に目立っていた。 「……閑話、休題なの。うふ。そう、貴方には……『能力』だけ、じゃなく、ぷくく……、『情報』も、吐き出せる、特別製の、機械に、なって、ほしいの」 堪えきれない笑みを無理やり手で押さえながら、少女はまるで何でもないお願いをするかのように、あっさりと調合屋(バーテンダー)に死刑宣告をした。 「……ッッ!!」 冗談じゃない、と調合屋(バーテンダー)は息を呑み、依然自分の背中の上に座っている少女を突き飛ばした。少女のほうは、まさか調合屋(バーテンダー)が抵抗するとは夢にも思っていなかったのか、調合屋(バーテンダー)の一か八かの抵抗にも対応しきれず、そのまま枯れ葉のようにあっけなく調合屋(バーテンダー)と距離を開けてしまう。 「あぅっ」 「動くなッッ!!」 受身すらとれず尻餅をつく少女。床に飛び散っていた薬剤が、その拍子に彼女の衣服に付着する。そんな少女に、調合屋(バーテンダー)は声を張り上げて余裕なく威嚇した。 「此処まで大胆に襲撃するってことは、こっちの能力も分かってるんだろう? ……『薬物合成(ケミカルブレンド)』。薬物を生み出し合成する能力だが、何も薬物っていうのはクスリのことだけを差す訳じゃない。――ニトログリセリン。あんたの方がなじみの深いモノだろう? コイツは爆薬だが、狭心症の治療薬としても使われていてな。当然、ウチにも変形させた形のクスリが並んでいる。さっきの接触で、薬物内に含まれているニトログリセリンを抽出して即席の爆薬を作っておいた。動けばすぐにお陀仏だ」 ニトログリセリンは、非常に爆発性の高い物質である。 火気は勿論のこと、ちょっとした摩擦でも爆発する可能性があり、純粋なニトログリセリンを取り扱うのは暗部のプロとはいえ専門の取り扱いをマスターしていない少女には厳しいものがあるだろう。 「……そうなの」 しかし、少女はそんな事実には全く興味を感じさせない声色でそれだけ呟いた。 勝利を確信し、目の前の少女がうろたえることを期待していた調合屋(バーテンダー)は、ついにその様子にキレた。 「……ッ!! !! ふざけるなッ!! お前は!! 今!! こちらが何か一つでもアクションを起こせば死ぬ状況にあるんだぞッ!? その事実を正しく認識できているのかッ!?」 「……あなたの、方こそ」 くぐもった声でそう叫ぶ調合屋(バーテンダー)に、少女は相変わらず億劫そうな表情で、ゆっくりと立ち上がる。 「もう、忘れたの? ……さっき、私に、触られたこと」 今度は、声すら上げる間もなかった。 憐憫すら感じさせる少女の視線が調合屋(バーテンダー)の喉元に当てられたと思った瞬間、彼の喉に耐え難い激痛が走ったからだ。 あまりの痛みに喉の筋肉が引きつり、絶叫はおろか呼吸さえできなくなる。調合屋(バーテンダー)は思わずそのままうずくまり、のた打ち回った。 そんな調合屋(バーテンダー)を、何の感慨も抱かずに見下ろしていた少女は、歌うように呟く。 「……痛覚遮断(ペインキラー)。発動には、接触、によって、相手の、『電気信号パターン』を、覚える、必要が、あるけど、一度、接触してしまえば、相手が、どこにいようと、発動できるの」 それだけ言った少女は、無造作に自らの纏っていたスカートとセーラー服を脱ぎ捨てた。ニトログリセリンが染み込んだ服は、ちょっとした摩擦や熱で爆発する危険性があるからだ。 少女の身体はやはり、悲しくなるほどに貧相だった。 肋骨が浮かび上がっているのは当然、脂肪が溜まるところがないのか胸は彼女の背丈にしても小さいし、腰骨や鎖骨の部分さえも骨が痛々しく浮かび上がってしまっている。 しかし、彼女はそんな自分の身体には全く意識を向けずに右手を耳に当てて話し始めた。どうやら、右耳の中に小型マイクが内臓されているらしい。 「…………ああ、持蒲さん? 終わったの。回収班と、私の、着替えを、用意してほしいの。……うん、回収人員の、性別? 気に、しないけど……。うん、分かった。じゃあ、女の人を、お願いするの」 そこまで言った少女は、チラリと視線を横に向ける。 「…………後、調合屋(バーテンダー)の、玩具を、見つけたの」 彼女の視線の先には、まともな衣服さえ身に着けていない中学生くらいの少年がいる。目の焦点は合わず、口の端からは涎を垂れ流していた。 そんな哀れな少年を見ても少女は眉一つ動かさずに、 「どうするの? こっちのほうで(ヽヽヽヽヽヽヽ)処分する?(ヽヽヽヽヽ)」 …………それが、彼女、いや『彼女たち』という人間の本質だった。 持蒲鋭盛、星嶋雅紀、陵原宮雹、そして少女こと超城万里。 彼女たちを総称して、『テキスト』と呼ぶ。 この街の闇の底に巣食い、そして闇の中で闇を食らう闇だ。 // 目次 第一章①
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『ねえねえ!わたしもゴリラさんみたいに、こまっているひとをたすけるヒーローになりたい!』 あれは、どれくらい前の出来事だっただろうか。数年前、自分はある警備員に助けて貰った事がある。 その男は、今では自分の師匠的な立ち居地に居る。筋肉をこよなく愛し、同志達と共に只管筋力を鍛えている暑苦しいゴリラ顔の男・・・緑川強。 彼には格闘術の手ほどきを受けたり、治安組織の一員としての心構えを教えて貰ったり等色々世話になっている。 彼が居なければ今の自分は居ない。彼と出会ったからこそ自分は風紀委員を目指そうと思った。 『あの時の借りを返す!!わかったか、このサイボーグ野郎!!!』 あれは、どれくらい前の出来事だっただろうか。数年前、自分はある警備員に助けて貰った事がある。 その男は、今では自分の師匠的な立ち居地に居る。“天から与えられた才”を失っても、“人として培って来た才”を研ぎ澄まして来たサイボーグ顔の男・・・九野獅郎。 彼には逮捕術の手ほどきを受けたり、治安組織の一員としての心構えを教えて貰ったり等色々世話になっている。 彼が居なければ今の自分は居ない。彼と出会ったからこそ自分は風紀委員を目指そうと思った。 『私には、お姉ちゃんみたいな電磁波を使った感知っていうのは現状だと無理みたいなんで。というか、電磁波関係の才能が無いのかもしれないです。 だったらということで考えに考えた末に、普段から使っていた電気を用いた感知方法を思い付いたんです』 176支部風紀委員焔火緋花は、緑川に憧れた末に風紀委員となって改めて自身の才能の在り方に疑義を抱くようになった。 近頃は安定するようになったが、結構前までは『身体測定』でレベル2とレベル3の間をうろつく程に不安定だった。 しかも、多才な応用が武器の『電撃使い』において彼女は電磁波や磁力操作を不得意としていた。『電撃使い』の観点から見ると中途半端と言ってもいい焔火の在り方。 そして、その改善に彼女は力を『注いでいなかった』。能力開発より学力重視の小川原に入学した影響も大きかった。 平均点ギリギリだったこともあり、学力に力を注ぐことが焔火には求められていた。同時に風紀委員になるための適正試験を1年時に受けて落ちたこともあって、 学業と共に適正試験突破対策に力を注いでいたのが以前の焔火であった。当然適正試験突破対策=能力上達策とはならない。 その“反動”が風紀委員になった後に露となった。他支部に出向するようになって、彼女はようやく自身の才能の在り方を見詰め直すようになった。 『「水昇蒸降」。それが、俺の能力だ。レベル3に該当する能力で、水を水蒸気に、水蒸気を水に変換して操作する能力だ。 逆に言えば、水を水のまま、水蒸気を水蒸気のまま操作するのは不可能という面倒臭い性質を持っている』 178支部風紀委員固地債鬼は、風紀委員になる前から自身の才能の在り方に疑義を抱いていた。 風紀委員になる前は、自身の才能の中途半端さにずっと不貞腐れていた。才能とは、単に超能力を指しているわけでは無い。 学力も、身体能力も、喧嘩の腕も、思考能力も何もかもが中途半端。特に、己に身に付いた超能力の中途半端さには歯噛みしかしなかった。 何せ、一々変換しなければ自在に操作することが叶わないのだ。低位能力者だった頃は、変換するのにも数十秒単位で時間が掛かっていた程である。 途轍も無く気に入らなかった。自身の才能の中途半端さに。だから不貞腐れた。延々と不貞腐れて・・・何時しか弱点の改善に力を注ぐことも無くなって・・・ 何度も失敗を繰り返して・・・その先で“天才”九野獅郎と出会ったことが彼にとっての転機となった。 彼の言葉や在り方に衝撃を受けた。不貞腐れていた自分が恥ずかしくなった。故に、風紀委員を目指した。助けられたあの男に負けまいと邁進するようになった。 『固地先輩。私はあなたの「欠点」を否定する!!私の信念でもって!!その代わり、あなたは私の「欠点」を否定して下さい!!あなたの信念でもって! あなたも私も正しいし間違っている。一方的な見方は危険なんだと私は学びました。色んな見方を知って、考えて、その上で自分の指針を決定する。 私はあなたに伝えたい。あなたはもっと成長できる人だって。傲岸不遜で意地っ張りで天邪鬼なあなたの「欠点」を改善できれば、あなたはもっと多くの人に認められる。 あなたは私の言うことなんか無視するのかもしれないですけど、それでも私はあなたと真正面からぶつかります。ぶつかり続けます。私のために。それ以上にあなたのために!!』 『但し、1人前の風紀委員では無い。結果を出せていないからな。前にも言ったが、俺が指導する以上お前が「本物」になるための指示や命令を下す!! その判断に正当な言い分があるのなら幾らでも言え。お前の言う通り、俺にも色んな「欠点」がある。俺も完璧じゃ無い。お前が指摘する「欠点」の改善に俺も努めるとしよう。 その上で、俺も正当な言い分でお前に返そう。俺を傷付けるとか俺へ押し付けるとか、そんな“俺にとって”どうでもいいことを一々気にするな。 俺はお前に心配される程落ちぶれてはいない。俺はお前に傷付けられる程やわじゃ無い。むしろ、俺を傷付けてみせろ。全力で来い。何倍にも増した上でキッチリ返してやる。 それで傷付こうが知ったことじゃ無い。傷付くことや傷付けることが最重要じゃ無いんだ。傷付いた先に見出せるモノがあるかどうかが大事なんだ。 焔火。そんな“恐怖”に呑まれているようでは“ヒーロー”にはなれんぞ?俺相手なら容赦無くぶつけられるだろう?その中でバランス感覚を磨けばいい。・・・俺もだが』 そんな2人が・・・焔火緋花と固地債鬼が出会い、紆余曲折を経て共に戦うこととなった『意味』がこの戦いにて示される。 歩んで来た道は違い・・・主義志向も違う両者・・・しかし何処となく“似た者同士”と見做すこともできる2人が交わることで見出されるであろう『意味』が。 「ハアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!!」 「・・・・・・」 汗まみれの焔火と朱花が『電撃使い』によって身体能力を活性化した状態で激しくぶつかり合う。今は、互いに接近戦を仕掛け仕掛けられている状態だ。 焔火は両手に『電気の網』を纏いながらの連弾を、朱花は砂鉄を用いた鞭による連撃を繰り出している。 「(やっぱ、お姉ちゃんってすごい・・・!!今の私じゃ、こんな磁力操作はできっこないし!!)」 身体能力や格闘術という面では焔火が、能力の応用性で言えば朱花に分がある。焔火が使いこなせていない磁力操作や電磁波操作によって戦いを五分以上にしている朱花の実力は、 薬による強化を差し引いてもやはり相当なモノであった。 姉とて、普段から能力開発の授業を受けている身。才能依存が大きくても、真面目に取り組んでいれば時間を経るごとに実力は増していく。 自分が身体強化から放電方面の実力を伸ばしているのと同じように、姉は放電方面から磁力・電磁波操作方面の実力を伸ばしていた。 以前第19学区にある自然公園からの帰り道に競争した際にも実感したこと。そして、今はレベル4相当と予測されている故に尚更凄まじい。 「(でも・・・だからと言って負けるつもりは無いよ、お姉ちゃん!!)」 しかし、焔火に気後れなど無い。総合力として姉に分があるのはわかり切っていたことである。ならば、それに応じた手段を用いるだけだ。 「(いくよ!!)」 焔火は拳に展開していた『電気の網』を、体全体を覆うような形に変更する。展開範囲としては自身から3m程。 電気そのものによる知覚能力。出会い頭の高圧電流を弾き飛ばす(=干渉する)上で重要な役割を負ったこれを、朱花が繰り出す砂鉄の鞭の軌道を読むために用いる。 ビュン!!ビュン!!ビュン!! 朱花の鞭が焔火に襲い掛かるが、紙一重の所でかわし続ける。レーダーと『電気の網』による知覚能力は互角。 であれば、身体能力に分がある焔火が朱花の攻撃を避け続けられる可能性は高い。それでも紙一重になっているのは、さすがは朱花と言った所か。 「(踏み込む!!)」 感知する鞭の軌道に僅かな隙を見出した焔火は、姉の懐に潜り込むために一気に踏み込む。電撃や砂鉄の妨害は自前の電撃で対抗すればいい。 “手駒達”化の弊害として、従来の臨機応変さには欠ける情報は既に聞いている。それは、きっと新“手駒達”も同様に。 更に、新“手駒達”には痛覚も存在することも知っている。だったら、自分が熟知している姉のような咄嗟の応変は不可能と見ていい。 「ごめん、お姉ちゃん!!」 鞭をかわして朱花の懐に入った焔火は、謝罪の言葉を口にしながら電流を纏った突きを繰り出す。だが・・・ ザッ!!! 「なっ!!?」 焔火の突きは空を切る。彼女の突きが決まる直前に、磁力操作によって朱花は妹の攻撃を後方へ浮遊することで回避したのだ。 「(・・・!!ほ、本当に“手駒達”化されてるの!?今の回避は、聞いている情報に合致していない!!)」 焔火は困惑の色を必死に隠しながら思考を働かせる。先程の朱花の行動と、少し前に敵が漏らした言葉の意味について。 『はい!!蜘蛛井さんの「調整」のおかげで朱花の暗示が解けることは無いでしょうし、思う存分姉妹同士で殺し合ってもらいましょうか!!』 「(『調整』・・・暗示・・・か。『電撃使い』に精神系能力が効かないケースが存在するってゆかりっちから聞いたことがある。お姉ちゃんくらいのレベルなら尚のこと。 だから、暗示が能力によるモノとは考えにくい。記憶や人格を壊し、能力を無理矢理強化する“手駒達”化に用いられているのは薬物・・・そうか。 新“手駒達”はきっと暗示系の薬物を使って思考を固められているんだわ!!これだけ早い速度で“手駒達”化できたのも、全てはそのおかげか。 普通の“手駒達”なら暗示なんていう非効率な調整は施されていない筈だし!!そのせいで痛覚が存在しているのか!!)」 図らずも、焔火は新“手駒達”化の成り立ちにおける核心へ足を踏み入れる。それは、自分達や朱花にとってとても大事な事柄。 すなわち、今なら取り返しがつくということ。固地の推測通り、人格や記憶が破壊されていない可能性がここに来てグンと高まって来たのだ。 「(きっと、固地先輩なら私より先に敵の言葉からこのことを推測している筈。・・・でも、あの応変さの理由にまでは辿り着いていない筈。 これは、実際に戦っている私だから答えを見付けられること。考えろ・・・考えろ私!!)」 次の出方を読み合う形となり膠着した状況に身を置く姉妹。その片割れである妹は、当事者の責務として師事を仰ぐ先輩が見出せていない真相に辿り着くために頭を働かせる。 思考を固められている筈の朱花が、どうしてあの反応を行うことができたのか。その理由を。 「(・・・やっぱり『調整』という言葉が引っ掛かる。アイツの言葉を聞く限り、暗示が解けることはあるみたい。速度を追求した弊害かな。 『電撃使い』の特性として電気信号である脳波にも影響は及ぼせるから、普通は精神系能力による暗示とかも・・・・・・あっ!!)」 辿り着く。“ある”1つの真相に。 「(そう、か。暗示による思考の固定化が薬を用いたモノだとしたら、それを固定“し続ける”モノは・・・敵の精神系能力か!!! 唯でさえ、今のお姉ちゃんはレベル4クラスの『電撃使い』。同系統の能力や精神系能力は効き辛い!!それは、“手駒達”を操作する電波に影響を及ぼす可能性がある!! 通常の“手駒達”なら人格とかを破壊するからどうにでもできるんだろうけど、新“手駒達”に関しては暗示に頼っている以上リスクが残ったままなんだわ!! 新“手駒達”も電波によって操作されていることには変わりない。だから、これに暗示薬と暗示の継続を為す精神系能力を組み合わせる『調整』が必要になったのか!!)」 自分でも驚く程理路整然とした推測を為しえていることに興奮を隠せない焔火。これもまた、苦難の道を経た彼女だからこそのモノ。 彼女の推測はおおよそ当たっており、追加するとすれば暗示が解けるリスクとして『肉親ないし親しき者との接触』が挙げられたことがあり、 焔火の意気を消沈させるための策として『新“手駒達”となった朱花との接触』を提案した網枷が蜘蛛井に命じて『調整』を施させたのだ。 ちなみに、この『調整』は朱花と同じく薬によってレベル4相当の実力となった電気系新“手駒達”にも施されている。 事のついでとばかりに、蜘蛛井が朱花の『調整』後に他の電気系新“手駒達”の面々にも施したのだ。 「(でも・・・これとさっきの反応は結び付かない。・・・偶然?それとも何か見落としているの、私?くそっ・・・)」 しかしながら、妥当性を持ったこの推測と先程の朱花の反応は厳密に言えば結び付かない。朱花は『調整』によって暗示が解けない―臨機応変に欠ける―状態に陥っている筈だ。 ならば、先程の反応は偶然なのか。または、未だ気付いていない何かが朱花の身に起きているのか? 今一番知りたい真相に辿り着けないことに苛立つ焔火の前で・・・突如“ソレ”は起こった。 バチバチバチ!!! 「「「「!!!??」」」」 朱花の高圧電流が、ここから少し離れた場所で戦闘を繰り広げている固地と永観・智暁組に向けて放たれたのだ。 狙いとしては固地目掛けて。こちらの状況も観察していたのだろう固地は、すんでの所で朱花の電流を回避することに成功した。 「(な、何今の!!?あの2人がピンチに陥ったから援護したの!!?で、でも・・・)」 予想していなかった姉の行動に、焔火は劣勢となった敵2人を守るために固地を攻撃したのかと訝しむ。 だが、当の永観と智暁は目を白黒させていた。事前に朱花に今のような対処を仕込んでいれば、目を白黒などさせずに固地に向かって追撃の1つや2つをしてもおかしくは無い。 「(あっちから目を離していたからはっきりとしたことは言えないけど・・・今のお姉ちゃんの攻撃は敵にとっても予想外なことだったりするのか・・・えっ!!?)」 内心で状況把握に努めていた焔火の目が驚愕に染まる。見れば、朱花が固地に追撃の電流を浴びせようと右手を固地に向けながら発射体勢に移ろうとしていた。 「お、お姉ちゃん!!待っ・・・ヒグッ!!!」 自分に攻撃を集中していたかと思えば、今度は固地の方へ攻撃を集中しようとする朱花のチグハグさが目立つ攻撃を止めるために焔火は『電気の網』を展開しながら動く。 その瞬間、体に強烈な刺激が充満する。これは、自分の体を冒していた媚薬剤の効果。見出した“有用性”の弊害。 「(く、くそっ!!こんな時に!!!)」 体を駆け巡る刺激に思わず蹲る焔火。彼女は、今襲っている弊害を理解しながらも“有用性”を活かすために我慢しながら能力を行使していた。 行使するのは『電気の網』と身体強化の併用。普通の状態であれば、併用など不可能な芸当を『今』為しえているのは、自分の体を冒す媚薬に理由がある。 『「静電気クラスの電気と他人が衝突した瞬間を、肌で感じ取れれば」って言ってたけど、どうなの?』 『予想通りでした。普段から電気を用いた身体能力の強化とかをしていたおかげだと思います。ようは、“中”で使うか、“外”で使うかの違いだけなんですよね。 “中”で電気を使っていた時は感覚とかも鋭敏になってましたから。その電気を“外”に持ち出して、私の感覚に繋げたってだけの話です。思った以上に神経使いますけど』 普通であれば、『電気の網』と身体強化は併用できない。何故なら、感知可能なレベルの『電気の網』を展開するだけで大幅な演算領域を使ってしまうからだ。 この感知方法で一番力を使うのは“外”と“中”の『繋がり』部分である。ようは『肌』の知覚機能である。 従来であれば、この知覚機能を大幅に強化した上で“外”と“中”を展開 強化するという手順を踏む。 故に、一番得意な放電に関しては問題無いものの身体能力全体の強化に手が回らない。この方法はまだまだ熟練度が足りていない不確実な力である。 『焔火。俺に考えがある。これは、お前にとって負担が増すモノだが同時に『今』限定で能力を強化することができるかもしれないモノだ。どうする?』 『・・・聞かせて下さい』 一生懸命努力して身に付けた技能“全て”を聞いた固地は、焔火に同意を取った上で彼女へある提案をする。 それは、彼女の体を冒している媚薬の効果を逆手に取るというモノ。正確には、『性感帯として敏感になった「肌」・・・すなわち“中”の感覚に割くべき力を、 身体強化方面等に回すことができないか』という提案であった。何も知らない人間がこの場にいれば『何を馬鹿なことを言っているんだ』と受け取るかもしれないが、 焔火はそうは受け取らなかった。確かに、今の自分の肌はとても敏感になっている。時間が経つにつれて薬の効果が落ちて来ているだろうが、感覚的には余り実感が無かった。 今まで能力によって知覚機能を強化していたために演算領域を消費していたが、『今』ならここに領域を割く必要は余り無い。とにもかくにも、焔火は固地の提案を試すことにした。 『どうだ、焔火?』 『い、いけます!これなら・・・ヒグッ!』 試した結果として、『今』の焔火は『電気の網』と身体強化を併用することが可能ということがわかった。弊害として、少しでも油断すれば強烈な刺激が襲って来ることもわかった。 だが、焔火は弊害を理解した上でこの強化策を用いることを決めた。相手は自慢の姉。薬で強化されている以上生半可な力では対抗できない。 そう理解してここに来たが、いざ弊害が露になるとどうしても歯噛みする感情を抑えることができない。 「(早く・・・早く静まれ!!!)」 幸か不幸か、朱花は蹲っている自分など眼中にもくれずに固地を攻撃し続けていた。その理由に考えを及ぼしたい所だが、現状ではそんな余裕は一切無い。 苛む刺激に耐える今の焔火は、師事を仰ぐ先輩の無事を祈ることしかできなかった。 「ハッ!何だ、朱花。妹を罵倒した俺への仕返しのつもりか?」 高圧電流や磁力によって飛来する金属の塊を避けている固地は、軽口を叩きながら今の状況を推察する。 「(朱花の様子が変化し始めている。雷速を誇るアイツの攻撃が“一度も俺に命中していない”ことも含めて。 仰羽智暁達の反応を見ると、これは連中にとっても不測と見ていい。操作している電波の大元が壊れれば気絶する筈だが・・・さて)」 固地は様々な選択肢の中から可能性が高いモノを選び抜いていく。その結果として、初瀬達の作戦―メインコンピュータへの仕掛け―によるモノでは無いと判断する。 こちらと同じく状況を整理している智暁達が追撃して来ないのは幸いだが、同時に焔火が朱花の行動を許してしまっていることも察する。 「(焔火の回復には、少し時間が掛かるか。・・・仕方無い)」 横目で蹲る焔火の姿を捉えた固地は、彼女に危害が及ばないように朱花や智暁達を自分に引き付ける。 『水昇蒸降』により発生させた幾十の水球を浮遊させ、朱花目掛けて射出する。 バチィィッッ!!! 当然のことながら、朱花は自前の高圧電流で飛来する水球を悉く撃破する。『水昇蒸降』で水蒸気から変換した水は、当初殆ど電気を通さない純水状態である。 しかし、空気中に含まれる物質が変換した水に溶け込むために電気伝導率が高まってしまう。 そもそも、絶縁体である空気を伝導する程の電流相手では純水であっても防ぐことが困難であり、他の要素も加味した結果固地の攻撃は無意味と成り果てる。 「チッ・・・」 仕掛ける前からわかっていたことではあったが、やはり自分と朱花ではこちらが不利である。 相性や能力でできることの差・・・生まれ持った才能の差がこの戦場でも厳然と固地の前に立ち塞がる。 「ならば、連中を巻き込む形にして電流攻撃を封じ込めることに専念した方が得策か」 しかし、固地に悲観など無い。能力的に朱花に分があるのはわかり切っていたことである。ならば、それに応じた手段を用いるだけだ。 固地は両手に水のロープを形成しながら永観達の下へ疾走を開始する。そんな敵を視界に収める汗だくの永観と智暁は、状況整理を完全に終えることができないまま迎撃準備に入る。 「永観さん!本当に大丈夫ですか!?」 「朱花は僕達に危害を加えることは無い!言い換えれば、僕達が巻き込まれる形になれば固地の思う壺になってしまう!あの水のロープに捕まらないように心掛けるんだ!!」 「は、はい!!」 いち早く永観は固地の目論見を看破し、警護を務める智暁に注意喚起を行う。彼等が、今まで攻撃を仕掛けなかった最大の原因は朱花の“暴走”にある。 『永観さん・・・!!今の朱花の電流・・・私達を邪魔するモノじゃなかったですか!!?』 智暁のこの問いが全てを物語っていると言っても過言では無い。あの時、永観と智暁は固地に総攻撃を仕掛けるつもりで攻め込んだ。 『電撃使い』である焔火を同じ『電撃使い』である朱花に任せ、自分達は厄介な“『悪鬼』”を仕留める。 相性的に固地が有利とは言え、『書庫』で得た限りの情報ではそこまで脅威では無かった。数の利もある。故に一気に攻め込んだ・・・その鼻っ柱を朱花の電流が撃ち砕いた。 こちらに危害が及んだわけでも無い。しかし、命令として焔火の始末を命じていた朱花がこちらの戦闘に介入して来た。しかも、自分達の攻勢を削ぐかのように。 理由は未だ不明。蜘蛛井に連絡を取ろうとしたが音信普通。電波自体には異常が無い様子であったために、混乱に拍車が掛かった。だが、戦場は待ってくれない。状況は動く。 「(僕の予想では、“『悪鬼』”の能力には致命的な欠陥がある。それが正しいかどうかを、この衝突で確かめる)」 永観は決断する。朱花がこちらを攻撃する意思があるなら、とっくにやっている筈だ。それも無く、今は固地を攻撃している以上こちらへの攻撃は無いと見ていい。 その上で、“『悪鬼』”の傲岸不遜な態度の裏に潜む欠陥の有無を確かめる。この戦いを有利な状況へ持って行くために。 ブン!!! 幾十の水球を侍らせながら、固地がこれみよがしに水のロープを振るい始める。侍らせている水球は智暁の『熱素流動』対策に間違い無い。 そう判断した永観は、同じく幾十もの火球を現出させ水球へ向けて殺到させる。 ボン!!ボン!!ボン!! 衝突する水球と火球。固地は素早く新たな水球を掌から生み出していく。その様子を眺めて内心で笑う永観はこれまた同じく火球を生み出していく。 その速度は・・・明らかに永観に分があった。『水昇蒸降』は手が能力の『噴出点』である。ようは、2つある手からしか水球を生み出すことができないのだ。 一方、永観にそんな制限は無い。集中すれば一時に十単位で火球を現出させることができる。 ボン!!ボン!!ボン!! 衝突を繰り返す水球と火球は、段々と火球の方がその数を増していった。相性もあってか、すぐに固地が崩れるということは無かったが、勢いは間違い無く永観にある。 疾走する足が止まり、次第に防戦体勢を取らざるを得なくなってくる固地・・・の足下付近にある金属の塊―朱花が操作していたモノ―へ火球の1つが衝突する。 ズガァァンン!!! 「グウウウゥゥッ!!!」 永観の『発火能力』は熱した物体を爆弾化させることもできるが、多少時間が掛かることが欠点だった。それを智暁の『熱素流動』によって解消し、 合体技として数瞬で爆弾化及び爆発を為すことを実現させた。固地も咄嗟に水のロープにて爆発を防ごうとしたが、猛烈な速度で飛来する金属片までは防げなかった。 脚や太腿付近に金属片が刺さり、その場で蹲る固地。その隙を狙うかのごとく、智暁は『熱素流動』を固地の人体外部へ差し向けることで完全に潰そうとする。 「ウオオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!!」 直後、強烈な刺激から立ち直った焔火が雄叫びを挙げながら電撃の槍を永観達へぶっ放そうとする。 以前の倉庫街で彼女の電撃をまともに喰らっている智暁達は、槍を発射する構えを見せながら突進して来る焔火の姿を見て挙動が鈍る。 ズチチチチチチチチチチチチ!!!!! 永観達に向かう電撃の槍を防ぐのは、新“手駒達”である朱花の高圧電流。互いの全力がぶつかり合い、拮抗しながら青白い電流が固地と永観達の間を通過していく。 まるで、先程の一幕を再現するかのような光景―今度は危うく永観達にも当たりそうになった―に今度こそ動きが止まってしまう永観達。 そして、負傷した固地を庇うように彼の前に仁王立ちする焔火。彼女の視線の先に立つのは、同じように永観達を守ろうとするかのように立ち塞がる朱花。 姉妹の視線が交錯する中、蹲る固地は・・・微かに笑っていた。 「大丈夫ですか、固地先輩!?」 「まさか、お前に助けられる日が来るとはな。俺もヤキが回ったか」 「・・・はいはい。それくらい軽口を叩く余裕があるなら大丈夫ですね。・・・すみませんでした」 物凄く心配して駆け付けたのにも関わらず、当人の減らず口を耳にした瞬間物凄く呆れてしまった焔火は固地の負傷具合を横目で観察する。 主に左の下半身に十数個の金属片が突き刺さっているようだった。命に別状は無いのだろうが、 蹲っている自分を庇うために無理をしたのだと推測している焔火は背中越しに謝罪の言葉を口にする。 「この程度どうということは無い。そこまで気にするな。そして、気にする相手を間違えるな」 「・・・はい!」 とことん減らない口から出る言葉の真意をしっかり把握する焔火は、相対する朱花や永観達に視線を戻す。 相変わらず無表情な姉の向こう側に・・・何故か嘲笑の表情を浮かべている―智暁に何らかの指示を出した―永観の姿が見えた。 それが・・・どうしてか気に喰わなかった。理由もわからないのに、どうしても気に入らなかった。 「・・・何がおかしいのよ?何か笑われるようなことでもしたのかしら?」 「フフッ。あぁ・・・実に面白い。君達の・・・いや、そこの“『悪鬼』”の滑稽さには笑うしかない。フフフッッ!」 焔火の厳しい視線を受けながらも、永観は嘲笑を崩さない。ついさっきの光景には動揺してしまったが、今はもう立ち直っている そんな永観の侮蔑の視線は、傷を負った“風紀委員の『悪鬼』”に注がれていた。 「どういう意味よ?また、突拍子も無いことを言って私達を混乱させようと・・・」 「いや・・・これから言うことは正真正銘本当のことだと思うよ。それは、そこの男が一番よくわかっている筈だ。ねぇ、“風紀委員の『悪鬼』”?」 「・・・・・・」 焔火の言葉を否定する永観。それは、長く『ブラックウィザード』に身を置いた者だからわかること。 自身の才能の無さに絶望し、『レベルが上がる』という誘い文句に乗り非合法薬物に手を出す人間を多く抱える組織の幹部だからこそ理解できるモノ。 「固地債鬼。今さっきの戦闘で理解したよ。お前には高みを目指すだけの才能が無い!レベルで言えば同じクラスなのに、お前は僕よりも劣る存在だ!! そんな人間が、よく“風紀委員の『悪鬼』”なんて仮面を気取った上に我が物顔でふんぞり返っていられるもんだね!!ハハハハハ!!!」 「なっ!?固地先輩に才能が無いわけ無いでしょ!!?現に、先輩は事件解決のためにどんな手でも使って・・・」 「そこが鍵だよね、焔火緋花!『事件解決のためならどんなことでもする』というのは、言い換えれば『そこまでしなきゃ事件を解決できない自分の才能の無さを示している』んじゃないのかな!?」 「ッッ!!」 愉悦に満ちた永観の言葉に焔火は息を詰まらされる。何故詰まったのか?それは、永観の指摘がある意味では的を射ていると思ってしまったからだ。 こんな人間の尊厳を踏み躙りまくっている人間の言葉に同意してしまっている自分が居たからだ。 今の自分には無い力を求め、求め過ぎた余り自分に絶望した己の感覚が永観の言葉を全て否定することを許さないのだ。 「例えば、さっきの戦闘で固地は僕の物量に防戦一方となった。答えは明白。水を発生する『噴出点』がその両手に限られているからだ。 しかも、一々水蒸気を水に変換してからじゃないと操作できないというお粗末さ。僕が彼の立場なら、そんな面倒臭い縛りを解消するために尽力しただろうね。 ところが、彼はその縛りを解消することがついぞできなかった。努力して駄目だったというなら、彼には最初から高みを目指す才能なんて無かったということだ!」 「せ、先輩が手の内を全て晒しているとでも思っているの!?私が知っている先輩なら隠し玉の1つや2つ隠し持っていても・・・」 「だったら、何故さっきの戦闘で使わないんだい?僕が予想するに、彼は大規模な水流操作もできないと思うよ?できるのなら演算負担の大きい『手数の多さ』に頼らずに、 『一個』の大水流でもって僕達を飲み込めばいい。そうすれば、朱花の電流も防ぐことができて一石二鳥だ。そうだろ、焔火緋花?」 「・・・!!」 「な、成程。確かに永観さんの言う通りですよね・・・あっ(ボソッ)。そ、それより・・・朱、朱花。・・・・・・」 永観の高説は留まることを知らない。しかも、そのどれもが事実であろうと思わせる的確さに焔火は反論の口を封じられ、智暁は永観の指摘に何度も頷いた後に自分の“役目”に戻る。 人の苦しむ姿を何よりも好む永観にとって、人の粗探しなど朝飯前もいい所である。そんな彼の嗅覚が告げるのだ。 『固地債鬼は、どんなことをしてでも事件を解決するという建前を使って自身の才能の無さを覆い隠している』と。 演算負担の大きい『手数の多さ』を実行しているのも、大規模な水流操作を実行できない己の未熟さを隠すための手段でしかないことも同時に。 「全く、こんな人間にビクついていた人達が哀れだよ。傲岸不遜の仮面を被りながら、内心では自分の弱さを隠し通している道化。それが“風紀委員の『悪鬼』”だ。 そんな人間なら、朱花を連れ去られても追いすがることができなかったのも当然かなぁ。知っているかい、焔火緋花? そこの“『悪鬼』”が朱花を拉致した車を捕捉しながらも僕達の部下が迎撃して追跡の芽を潰したことを」 「えっ!!?」 「・・・・・・」 「(やはり知らなかったか・・・フフッ)」 永観が披露する衝撃の事実―今度はハッタリでは無い。故の説得力―に、焔火は真後ろに蹲る固地を見てしまう。戸隠と西島の連携により固地の追跡は妨害した。 後々に警備員の手によって検問が敷かれたが、結果として朱花の拉致を防ぐことはできなかった。 そして、焔火はこの事実―朱花より焔火を優先した―を知らなかった。全てを伝える時間が無かったせいではあるが、それでも固地に対する信頼に瞬間的にでもヒビを入れるには十分であった。 「どうやら、君には知らされていなかったようだねぇ。まぁ、それも当然か。自分の失態を明かせば、朱花が拉致された責任を君1人に押し付けられなくなる。 彼は、才能無しの上に責任逃れをする卑怯者でもあったというわけだ。これは、いよいよ“風紀委員の『悪鬼』”の化けの皮も剥がれて来たようだね」 「そ、それは違うわ!!固地先輩は責任逃れをするような人じゃ無い!!」 「何が違う?どう違う?結果をどうだ?君には知らされていなかったんだろう?それが、何よりの証拠じゃないのかい?」 「うっ・・・」 「ハァ・・・やれやれだ。こんな純情な娘まで騙すとは、“風紀委員の『悪鬼』”も地に堕ち・・・」 「で?話はそれだけか、永観?」 平坦な声が夜の空気に拡散していく。焔火の後方に居るために永観達からはイマイチその姿を見ることができない男の酷く淡々とした声が少年少女達の鼓膜を叩く。 焔火は振り返る。彼女は見る。地面にあぐらを掻いて退屈そうな瞳を向けてくる男の姿を。 「・・・何だと?」 「だから、話はそれだけかと聞いたんだ。当たり前のことを並べるもんだから、退屈過ぎて思わず欠伸が出そうになったぞ?」 「・・・認めるのか?自分の才能の無さを」 「認めるも何もないだろ?俺はお前の言う通り、中途半端な才能を天から与えられた男だ。何処ぞのお人好しみたいに大規模な水流を操作することもできないし、 『噴出点』はこの両手の2つだけから一歩も進歩しない。おまけに、未だ変換せずに水や水蒸気を操ることができないというのだから笑える。 お前の言葉は正しいぞ、永観。俺はお前の言う高みを目指す才能は持ち合わせていないようだ。その推察力はさすがだと褒めてやるぞ?」 「・・・!!!」 永観は、不気味な悪寒を背中に感じずにはいられなかった。これは決して開き直りなどでは無い。本当に、心の底から自分が提言した高みを目指す才能の無さを認めているのだ。 事前の予測では、的を射た自分の指摘に反逆してくるモノとばかり思っていた。自分の言葉を否定し、そこに生じる粗を突くつもりだった。 開き直ったとしてもやることは変わらない。その手筈だったのに・・・出て来たのは突っ込むことができない“肯定”であった。 「『そこまでしなきゃ事件を解決できない自分の才能の無さを示している』や『傲岸不遜の仮面を被りながら、内心では自分の弱さを隠し通している道化』という評価も当たっているのだろうな。 現に、俺は傲岸不遜な態度を利用することで色んなことをやって来た。自分の弱点を覆い隠す手段としても使って来た。最近では、それも限界を迎えているようだが。 いや、本当にお前の指摘は当たっているな。見事な洞察力を示したお前に拍手を送ってやるぞ。パチパチパチ」 「・・・ふざけるな!!お前・・・悔しくないのか!!?自分の才能の無さを目の当たりにして何故そこまで平然としていられる!!?」 「固地先輩・・・」 「焔火。この際言っておくが、俺は朱花の捕捉を妨害された後にある事情があって朱花の追跡を・・・止めた」 「そ、それはどういう!!?」 「振り向くな!!!敵は目の前だぞ!!!」 「ッッッ!!!」 苛立つ永観の様子を眺めながら、固地は焔火の背中に真実を贈る。今の彼女なら、これから話す真相を背負うことができると信じて。 「・・・焔火。俺はその時お前が罠に掛かったことを知った。そして秤に掛けた。場所がハッキリしているお前と、場所が掴めなくなった朱花のどちらを優先するか? 『ブラックウィザード』の構成員と接触できる可能性を念頭に置いた上で、俺はお前を選んだ。もちろん、警備員に朱花確保の依頼はしたが・・・功は奏しなかったようだ」 「・・・つまり、私を助けるためにお姉ちゃんを・・・?」 「そうとも言える。お前を助けるために、俺は朱花を見捨てた。俺の責任でもって。その結果が目の前の光景だ」 「・・・・・・」 「俺が憎いか、焔火?俺を恨むか、焔火緋花?それもまたいいだろう。結局の所、俺はお前を助けることもできなかったわけだしな。 永観の言う通り、俺も心の何処かでお前に対する負い目があったのかもしれん。だから、お前にこの事実を今まで打ち明けなかったのかもしれん」 固地の淡々とした言葉が焔火の胸に突き刺さる。淡々としているから余計に『この人は真実を言っているんだ』と実感してしまう。 自分のために姉が助かる可能性の1つが消えた。その衝撃はやはり大きい。自分に対するやるせなさや、固地に対するモヤモヤも発生する。 「(・・・でも、過ぎたことを言っても仕方無い)」 だが、同時に思う。今更過ぎたことを言ってどうなるのだ。起きてしまったことは変えられない。変えたくても変えられない。 責任逃れをする方便では無い。これは責任を背負うための言葉だ。そして、今ここで固地は自身の言葉で自分に打ち明けてくれた。 その『意味』をもう一度確かめるために、焔火は背中越しに一言彼に問う。 「・・・固地先輩」 「・・・何だ?」 「その選択を後悔していますか?」 「していない。俺は俺の意思でその選択を選んだ。それだけだ」 「・・・フッ」 問うて、返す。その返しを聞いて、焔火は微かに笑う。後悔するということは、その選択を無くしたいと思うから後悔するのだ。 どんな時も後悔するなとは言わない。後悔から導き出されるモノもあるだろう。しかし、彼は後悔していないと言う。それすなわち、選んだ責任を今も背負っているのと同義。 「茶番もいい加減にしたらどうだ?『後悔していない』と言えば、全て許されるとでも思って・・・!?」 「少なくとも、私は許すよ!!全部を許すつもりは無いし、お姉ちゃんが許すかどうかわからないけど!!」 「なっ!!?」 茶番としか思えないやり取りに憤怒の色を隠せない永観を、焔火の真っ直ぐな視線が射抜く。 今まで永観に散々言葉で丸め込められて来た借りを返す意味でも、焔火緋花は自身が抱く正直な心情を言葉にする。 「確かに、固地先輩の選択は全肯定されるようなモノじゃ無いと思う。『見捨てた』という表現は確かに存在する見方なんだと思う。 でも、先輩はちゃんと責任をもって動いてくれた!!私を助けるために。『ブラックウィザード』を倒すために。だったら、私は許す。許す所は許す!! それでも固地先輩に罪があると言うなら、私にだって罪がある!お姉ちゃんの異常に気付かなかった自分のマヌケさも含めて。 私は固地先輩と共に罪を背負う!背負って・・・背負い切って・・・次に活かす!!それにさぁ・・・」 「んっ!?」 「アンタが許す許さないを決めてんじゃないわよ!!!このド悪党が!!!」 込み上げる怒りを表現するかのように、青白い電流が焔火の体を駆け抜けて行く。『電流の鎧』を身に纏った焔火の形相は、あの永観さえも慄かせる程凄まじい代物であった。 「そ・も・そ・も!何で、ド悪党のアンタの言葉に振り回されなきゃいけないのってことだよねぇ!!あぁ~イライラする!! こういう時は問答無用で黙らせるのが一番手っ取り早いかな!!?どう思います、固地先輩!!?」 「(・・・・・・永観に振り回されたせいで相当イライラしているな。あちらとしても、言動で再び焔火や俺を揺さ振ろうとしたのと同時に不安定な朱花の行動を抑制するために、 わざと口論を仕掛けて来てる節があるからな。確か、『ブラックウィザード』の非合法薬物を摂取した者は仰羽智暁の意見に従う習性がある。 奴が先程から永観と共に焔火へ口論を仕掛けないのも、“目立たないように小声で朱花に色々話しかけている”のも安定活用ができるかどうかのチェックのためか)」 「話聞いてます、固地先輩!!?」 「うるさいうるさい。そんな大声で言わなくても聞こえている」 「む~!!」 イライラする余り上司にも食って掛かっている焔火をあしらいながら固地は永観達の狙いを推測する。しかし、焔火の気持ちも理解できる。 あそこまで言われて腹が立たない方がおかしいのだ。とは言え、冷静さを欠いて貰っても困る。なので・・・ 「焔火」 「何ですか!?」 「今から口に出す内容は俺の独り言だから別に聞き耳を立てなくてもいいぞ?独り言を呟きながら、脚に刺さった金属片を抜こうとか思っているわけじゃ無いからそのつもりでな」 「・・・?」 背中越しに聞こえて来る固地の言葉に疑問符を浮かべる焔火。わざわざ永観達にも聞こえるくらいの声で言う意味がわからない。 もし、独り言を呟いている間に攻撃を仕掛けて来たらどうするつもりなのか等色んな疑問が湧いて来るが、そんな少女の思考などお構い無しに少年は言葉を連ねていく。 「俺はな、昔はそりゃ今が目じゃ無い程に荒れた人間だった」 「うわぁ。そんな人間見たく無いよぉ・・・」 「ゴホン!で、ずっと不貞腐れてばかりの性悪人間だった」 「今も性悪だと思います」 「・・・ゴホン!で、自分の悩みを人に打ち明けることもしない癖に文句ばかり言う独り善がりもいいトコな奴だった」 「今と大して変わっていないんじゃ?」 「話の腰を折るな」 「独り言ですよね?」 漫才のように阿吽の呼吸を見せる焔火と固地。これが今の2人の関係。紆余曲折を経て構築された揺らがぬ人間関係の一例。 「・・・でだ。どうしてそんな奴だったのかと言うと、自分の才能の無さにずっと悲観していたから・・・という理由だったりする」 「・・・えっ?」 こんな話を他人にするのは、きっと焔火が初めてだろう。永観達にも聞こえるのは癪ではあるが、連中への牽制にもなるだろうからここは目を瞑る。 「超能力も、学力も、身体能力も、喧嘩の腕も、思考能力も何もかもが中途半端。結果も碌に出せない半端者。それが、風紀委員になる前の俺だった」 「風紀委員になる前の・・・!!」 「特に、超能力の中途半端さには絶望に近い感情しか湧かなかったな。水を水蒸気に、水蒸気を水に変換しなければ自在に操作することができない。 “変換前の挙動”に関しては直に操作していると言えるのかもしれんが、そんなモノは何の慰めにもならなかった。 低位能力者だった頃・・・正確には小学生の頃は少量を変換するだけで数十秒もの時間を要した。全くもって使い物にならない能力なのは間違いなかったな。 だからというのは語弊があるが、延々と不貞腐れた。何時しか、能力の改善に力を注ぐこともしなくなり・・・荒れに荒れた。 そんな時に・・・ある警備員に助けられたんだ。風紀委員を目指す切欠となり、後に師と仰ぐことになる男にな」 「(・・・“天才”九野獅郎先生か!!)」 焔火は蠢き始めた動悸を抑えることができない。彼の成り立ち・・・彼のルーツの一端が、まるで自分のルーツと似通っているように感じられたから故に。 風紀委員になる切欠・・・警備員による救助。それは自分も同じ。彼と同じように、自分も警備員に助けられた。 「俺は、その男の言葉や有り様に甚大な衝撃を受けた。幼い頃から凄まじい頭脳を誇り、ゆくゆくは相当な高位能力者になる可能性が高いと周囲から言われていた男。 しかし、事故により能力開発の道が閉ざされたばかりか体に障害を持ってしまった不運な男。そんな男の信念には、一切の曇りも存在していなかった。 “天から与えられた才”を失っても、“人として培って来た才”を研ぎ澄まして来たが故の信念を前に俺は自分が恥ずかしくなった。 俺とは比較にならない程のハードルを越えて来たあの男に、俺はどうしても負けたくなかった。だから俺は風紀委員になった。 あの男とは違うやり方でも、あの男に並び立てるような人間になるために。たとえ、“天から与えられた才”・・・つまりは先天的才能が中途半端でも、 “人として培って来た才”・・・すなわち努力することで後天的に得られる力によって人間は高みを目指すことができることを証明するために。 まぁ、最近では色々と壁にぶつかって思うように行っていないのは事実だから、余り偉そうに言えないのが正直な・・・」 「・・・私も似たようなモノですよ」 今正に正直な想いを吐露している少年の独り言に、今度は話の腰を折るのでは無く自らも独り言を呟くために少女は口を開く。 少年は見る。少女の背中を。角度的に少しだけ顔の側面も見える。見えるのは・・・笑みを形作る唇の動き。 「これは私の独り言なんですけど、私も風紀委員になった切欠って警備員に助けられたことなんです。憧れました。すっごく憧れました。『あの人のようになりたい』って。 あの頃は治安組織の一員になることの重責みたいなのを心底理解していなかったんで、今になってすっごく苦労してるんですけど」 「(独り言になっていないのは俺も一緒だったから、指摘はやめておくか)」 「『電撃使い』って、その応用力の高さが注目されるじゃないですか?でも、風紀委員になりたいって躍起になっていた頃の私って全然安定していなかったんですよね。 『身体測定』を受けるごとにレベル2になったりレベル3になったり・・・。しかも、磁力操作や電磁波操作の才能が無いというか・・・鍛錬不足というか・・・とにかく不得手で。 入った学校が能力開発より学力重視で、自分の学力も毎回ギリギリだったからそっちを優先することにもなって。風紀委員の適正試験に落ちたことも影響があったのかな。 まぁ、単刀直入に言えば自分の才能を磨くことを怠ったんです。本当なら、磨きに磨けば光り輝くモノがあったのかもしれないのに。 それを怠った自分は、『電撃使い』として本当に中途半端になってしまっています。その“反動”が今自分を襲っています。 色んな苦難を味わって・・・悩んで・・・その末にようやく気付いたんです。私はあの人にはなれない。でも、私なりのやり方であの人に並び立つことはできるんじゃないかって」 「・・・似ているか?そもそも、俺とは順序が逆だぞ?」 「そうですね。でも、順序が違うだけで中身は結構似てると思いますよ。才能の中途半端さに苦しんだり・・・風紀委員になる切欠が同じだったり」 「少なくとも、俺は単純バカなお前と“似た者同士”と思われるのは心外だ」 「言っておいて何ですけど、私だって性悪な固地先輩と“似た者同士”と見られるのは心外だったりします」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「「フフッ」」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 『“似た者同士”では無い』と言った直後に全く同じタイミングで吹き出してしまったことにバツが悪いのか沈黙する焔火と固地。 それは無意識には理解している証拠。歩んで来た道は違い・・・主義志向も違う両者・・・しかし何処となく“似た者同士”と見做すこともできるモノを両者が持っていることを。 「とりあえず、その話は後にするか。やるべきことは山積みだしな」 「そ、そうですね。後にしましょう後に」 「・・・おや。どうした、永観?何時の間にか汗だらけだぞ?顔も紅潮しているようだし」 深く追求すれば後戻りができなくなりそうなので後回しにすることにした焔火と固地を、驚愕の表情で眺めていた。 問い掛けた固地はすぐに予想が付いた。そのための牽制でもあったのだから当然ではあるが。 「(な、何だこいつ等は!!?何で、そんな晴れやかな顔をしていられるんだ!!?何故苦しまない!?何故絶望しない!?高みも目指せない半端者なのに!!)」 永観には信じられない。才能の中途半端さに対して、ここまで晴れやかに応えられる人間の存在を。 無能力者なら最初から諦めもあるだろう。レベル4クラスの高位能力者なら、こんなことに悩むことはそこまで多くないだろう。 だが、レベル2やレベル3等の『中間層』はこの難題に苦しむ人間が圧倒的多数である。半端に力を持ってしまったがための弊害。それは・・・自分とて同じ。 だから、高位能力者が苦しみ悶える姿を見るのがたまらなく面白かった。能力の上昇を狙って非合法薬物に手を出して苦しむ中毒者を見るのがたまらなく面白かった。 その時だけが、自分が抱える難題を忘れられるような気がして。だがしかし、目の前の『中間層』は、自分の醜さを直視するよう迫っているように独白を見せ付けて来た。 このままでは・・・焔火と固地を潰せなければ・・・自分が自分で居られなくなる。そう、永観は判断した。 「うるさい!!お前には関係の無いことだ!!智暁!!」 「は、はい!!」 「朱花はいけるか!!?」 「は、はい!!だ、大丈夫だと思います!!」 「固地債鬼!!焔火緋花!!いい機会だ!!レベル4クラスの実力を持つ朱花の手でお前達半端者を潰してくれる!! 中途半端な才能を与えた天を恨みながら、肉親や顔見知りを血で染める屈辱を味わうがいい!!!朱花!!いけ!!!」 「・・・・・・」 怒声混じりの確認に智暁が肯定の意を発したのを耳にした永観は、焔火や固地にとって最大の弱点でもある朱花を前面に押し出した。 薬物によって無理矢理強化された状態・・・出力で言えばレベル4相当になる今の朱花は相性的にも心情的にも2人にとって荷が重い相手である。 「・・・なぁ、永観?何を勘違いしているのかは知らんが、俺は治安組織の1人としてこれからひっ捕らえるお前の体調に気を遣ってやっただけだぞ?」 「何を心にも無いことを・・・!! 「お前だけじゃ無い。仰羽智暁も朱花も、大層汗まみれじゃないか。水分補給はこまめにした方がいい。今日も熱帯夜だ。 熱中症には気を付けないといけないぞ?唯でさえ戦闘という極限の緊張状態だ。“通常に比べて熱中症に掛かりやすいと俺は思うが?”」 「(・・・・・・待て。確かに、僕達は途轍も無く汗を掻いている。固地達が突入して来る前に比べるまでも無い。 状況から来る緊張や『発火能力』による熱量のせいだけじゃな・・・・・・!!!)」 「・・・どうやら気付いたようだな」 「お前・・・!!!」 永観が固地の言わんとすることを遂に理解する。『熱中症』・・・『新“手駒達”の弱点』・・・『固地の能力』から連想できるそれは・・・・・・『水蒸気』。 中途半端な才能を与えられた固地が、それでも磨き続けて来た先天的能力の応用術。液体である『水』の操作を不得意と判断した彼自身が、 もう1つの操作対象・・・すなわち気体である水蒸気に目を付け、琢磨を重ねて来た後天的才能―努力―の『高み』。 「重ねて言うが、俺はお前の言う通り中途半端な才能を天から与えられた男だ。何処ぞのお人好しみたいに大規模な水流を操作することもできないし、 『噴出点』はこの両手の2つだけから一歩も進歩しない。おまけに、未だ変換せずに水や水蒸気を操ることができない。 だが、それがどうしたと言うんだ?無理ならば、無理じゃ無い方向へ進めばいい。目的を持ち、自分に見合った方向性を見出し、琢磨し、実現させる。 欠点の改善にも力を費やすべきだろうが、それ単体に固執する必要性は必ずしも無い」 「(『能力というのは先天的な才能、つまり素質等に依る所が大きい。だが、その伸ばし方や方向性を見極めることは後天的な才能、つまり意識の力が大きい。 例えば、風紀委員という環境と自分の能力を照らし合わせて、職務に応じた応用を思い付いたり、ある目的のために自分の能力を磨いたりする。 闇雲に伸ばせばいいというもんじゃ無い。目的あってこその能力研磨だ』・・・みたいなことを出向初日に言われたっけ。・・・確かにその通りだよね)」 「そんな俺が見出したのは『水蒸気』の操作だ。どうやら俺に中途半端な才能を与えた天とやらは、攻撃力が皆無にも等しい水蒸気に関しては才を割り振ってくれたようだ。 俺が今操っている操作範囲はざっと半径100mか。これが水になるとどれだけ落ち込むことか。全く、天の采配もいい加減なモノだ」 「(半径100m!?レベル3が!!?い、いや・・・範囲は大して重要じゃ無い。僕の予想が正しいのであれば、もっとやばいのは・・・!!!)」 手の内を晒し続ける“『悪鬼』”に背筋を震わせる永観は、固地が朱花を『熱中症』に近い状態に追い込むことで戦闘不能―暗示の解除―に追い込もうとしていることを察する。 だが、これはまだいい。問題は自分達を『熱中症』に追い込むために展開している『水蒸気』の・・・“量”だ。 「そして、この一帯は湿度が100%に近い多湿状態だ。加えて今の気温は摂氏35度を記録している。戦場で使用されている能力や火器の影響も大きいだろう。 永観。お前なら飽和水蒸気量と俺の『水昇蒸降』を関連づけることで、俺が実際に操作している水蒸気の“量”が数十トンに上ることくらい理解しているよな?」 「す、数十トン!!?」 「ま、マジですか固地先輩!!?た、確かに突入する前からやけにムンムンしているとは思ってましたけど!!」 「フッ・・・」 「(半径100mを操作範囲下に収めているのなら有り得ない数字じゃ無い。しかし、奴は所詮レベル3だ!!水蒸気とは言え数十トンもの量を支配できるとは思えない!! いや・・・奴がレベル4に近いレベル3なら・・・液体操作が相当不得手なためにレベル3に下げられているのであれば・・・くそっ!! 『書庫』の情報だけでは判断材料に欠ける!!隠し玉は水では無く水蒸気の方か!!?あの男の言葉を全て信用できるわけじゃ無いが、 当初の予定より奴が操る水分の備蓄量は大幅に上回っている可能性が大きくなって来た!!)」 目を瞠る智暁や焔火に不敵な笑みを見せ付ける固地に内心毒突く永観。おそらく、固地の言葉は全てが真実では無い。わざわざ手の内を全て晒すメリットは存在しないからだ。 言葉の何処か―“量”―に虚偽が混じっている筈である。しかし、全てが虚偽では無いと思わざるを得ない。自分達の体から噴出す尋常じゃ無い汗の量がそれを証明している。 人は無自覚を自覚した瞬間から変わる。『熱中症』という単語を出したのも、永観達に『熱中症』に関わる症状を自覚させるためのモノだろう。 「とは言え、やはり操れる水の量は水蒸気に比べれば遠く及ばない。まぁ、水分補給くらいにはなるだろう。 焔火。“朱花の近くで戦っている”お前にも補給が必要だ。塩は無いが顔でも突っ込んで飲んでおけ。気持ちいいぞ?」 「うおっ!?・・・じゃ、じゃあお言葉に甘えて(前にもリーダーの『水使い』で顔を洗ったことあるけど、この時期には便利だなぁ)」 「(これで、完全に頭も心も冷えただろう。さて・・・)」 他方『水昇蒸降』にて変換した水の球を『電流の鎧』を解いた焔火の水分補給及び心の整理に差し向けた固地は、急激な方針転換に打って出るためのタイミングを計る。 永観に『いけ』と命じられたのにも関わらずすぐに打って出ない朱花の状態も鑑み、焔火の身体も注視した結果として、正真正銘の速攻を仕掛ける切欠を見出すために。 固地としては朱花や焔火―今の焔火に関しては朱花と戦闘しているせいで・・・である―を命の危険もある『熱中症』に追い込む可能性がある行為は不本意も甚だしい。 そもそも、手が変換の基点である以上咄嗟の変換時に水蒸気が近場に無ければ話にならず、また命綱とも言える『水蒸気による知覚手段』として散布している事情もある。 永観達に比べたら、実際に朱花(と焔火)へ漂わせている水蒸気量も抑え気味だ。元々、朱花に対する固地の狙いは『熱中症』では無く『朱花の体力消耗』である。 体力が消耗すればする程身体を“無理矢理”動かすこととなる。その弊害・・・すなわち『痛み』が発生する可能性も高くなる。 固地は『熱中症』のリスクを冒してでも朱花の暗示状態を解除する―朱花を救助する―ための一助として自分にでき得る限りのことをすると決めた。 それは焔火とて同じ。一歩間違えれば朱花の命すら危うくさせる行為を行使してでも愛しき姉を人形状態から救い出すことを誓っている。 「どうした?『熱素流動』の特性を活かせば自分達の周囲の空気を冷却することはできるだろう。さっさとやればどうだ?」 「そう言って、僕の『発火能力』を封じるつもりなんだろう?」 「あぁ、そうだ。だが、俺としてもこの暑さには苦しんでいるんだぞ?団扇代わりになるモノが、この帽子くらいしか無いしな」 「!!」 挑発と疑心暗鬼が渦巻く戦場にて、固地は扇子代わりとして被っている帽子に“右手を伸ばす”。 固地が生み出した水球に顔を突っ込んでいる焔火は、おぼろげに見える固地の挙動の“意味”を悟る。 同時に知る。今自分が敵を前に水球に顔を突っ込まされたのは、この悟った“意味”を顔の表情で洞察力の鋭い永観に悟られないようにするためのモノであると。 今までの取り留めの無い話の数々は、『“右手で帽子を取った”瞬間に総攻撃を仕掛ける』という事前の“合図”を敵に気取られることなく実行する伏線だったのだと。 「暑い暑い。さっさと家に帰りたいな」 ダルそうな口調と表情の固地が“右手で帽子を取った”。それが・・・作戦開始の刻(とき)。 ギュルルッッ!!!!! バチバチイイイィィィッッッ!!!!! 響くは水流と電流の狂音。固地の左手から発生した水のロープが負傷した彼の左脚に巻き付き、血が噴き出ることも厭わずに無理矢理動かす。 一方、焔火は『電流の鎧』を再び纏い直す。急激な方針転換後の速攻。阿吽の呼吸を見せる固地と焔火に、永観達は少なからず虚を突かれる。 シュウウウゥゥッッッッッ!!! 「キャッ!!?」 「智暁!!?」 突如立ち上がった固地の右手から放たれた水の放射が智暁の胴体へ直撃する。威力そのものは大したモノでは無いが、小柄な彼女をブッ飛ばすには十分であった。 左手と水のロープが巻き付いた左脚、そして派手な音を立てながら『電流の鎧』を纏った焔火へ意識が向いてしまったため発生した死角。 能力の殺傷性及び朱花への影響力を持つ智暁の一時的排除は速攻成功の絶対的要素。それに成功した固地は痛みを押し殺して永観へ、焔火は朱花へ挑む。 「くっ!!!」 智暁が吹き飛ばされ、また自身の身を危うくさせる“『悪鬼』”の突貫に憤怒の表情を露にする永観は『発火能力』によって生み出した火炎弾を連発する。 対して、固地は水の盾を形成しながら迫り来る炎から身を守る。交錯する炎と水。相性は・・・後者が勝る。 「舐めるなああああぁぁぁっっ!!!」 「(拳銃か!!)」 初動に出遅れた永観は能力勝負での不利を瞬時に悟り、懐から拳銃を取り出す。咄嗟の判断であるため、正確な射撃は見込めない。 これは威嚇であると同時に体の何処かに当たればいいだけの射撃。それだけで、脚を負傷している固地の突貫は鈍る。 今更速度は緩められない。そんなことをすれば左脚に激痛が走って演算そのものが保てなくなる可能性も大きい。 当たるにしろ当たらないにしろ、今の突貫さえ防ぎ切れば立て直すことは幾らでも可能だ。激情する外見とは裏腹に心の中では有利を確信する永観が、躊躇無く拳銃の引き鉄を引く。 グラッ!!! スパアアァァンン!!! 「ぐっ!!」 「なっ!!?」 そんな永観の予想は、左脚に巻き付けてあった水のロープを外して“わざと”こけた固地によって外れることとなった。 盛大にこけた固地の頭上を銃弾が通過していく。勢いそのままに前方へ転がることで左脚へのダメージを抑えつつ、外した水のロープで永観の拳銃と手首を巻き取る。 「くそっ!!離せ!!」 後は水のロープの牽引力によって永観との距離を縮めるだけ。泥臭く地面に擦れながらも、一気に永観へ近付く固地。 『発火能力』対策として両手を水の膜で包み、更には水の盾を引き連れながらの突貫。そして・・・ ガシッ!!! 拳銃を持っていた右手首を己が左手でガッシリ掴む固地は、ほぼ同時に右手で拳銃を弾き飛ばす。 この0距離であれば、自身への被害も鑑みて不用意に『発火能力』も使えない。逆に、『水昇蒸降』は0距離であっても使用可能だ。 固地は水球を永観の顔に貼り付かせることで窒息寸前にまで追い込もうと侍らせていた水の盾を分割しようとする。 「ククッ・・・」 「!!?」 固地の耳を不敵な笑い声が襲う。拳銃も吹き飛ばされ、満足に能力も使えない筈の永観の唇が嘲笑を形作るモノとなっていた。 目の前の相手に嫌な予感を抱いた固地の挙動より早く、永観は自分の手首を掴んでいた固地の手首をもう片方の手で掴む。 反射的に、固地も自分の手首を掴む永観の左手を掴む。これが・・・これこそが永観の隠し玉。 「残念だったねぇ、固地債鬼!!!僕の『発火能力』は、単純に炎を出すだけじゃ無いんだよ!!! すなわち、僕に触れた物を直接燃やすこともできるんだ!!!さぁ、燃えて無様にカスとなれえええぇぇぇ、この半端者がああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!」 何処までも醜い嘲笑を浮かべる永観が、今度こそ“風紀委員の『悪鬼』”を殺害すべく能力を発動する。 直接触れている場合は一気に千度単位にまで燃焼威力を上げることができる。如何に水の膜で包まれていたとしても、如何に備蓄量が多くともその『蛇口』が狭い以上威力的にはこちらが勝る。 水など一気に蒸発させて両手を燃えカスにしてくれる。永観は固地の絶叫を予感しながら『発火能力』を発動する。 「ハアアアアアアアアアァァァァァァァッッッ!!!!!」 「・・・・・・!!!」 凄まじい電流が周囲一帯に散りばめられる。『電流の鎧』を纏った焔火とレベル4相当の出力を弾き出す朱花が、超至近距離で衝突していた。 焔火の左手が朱花の右手を、朱花の左手が焔火の右手を確と掴む。文字通りがっぷり四つの勝負。互いに電子干渉を行い、撥ね退け、また干渉するの繰り返し。 これが最後。これで最後。そう焔火は決意し、ここで全力を使い果たしてもいいくらいの演算力をつぎ込んでいる。 「(・・・お姉ちゃんの表情が動き出している。これって・・・やっぱりそうなのかな?)」 額をすり合わせ、鬼気迫る表情で姉とぶつかる焔火の瞳に映るのは今まで無表情だった朱花の変化であった。 智暁と共に自分へ様々なことをした頃に比べると、その表情には確かな動きが感じられた。 「(自分でも半信半疑だった。最初の突入の際に、お姉ちゃんの電撃を弾き飛ばせたのは本当に『今』の自分のおかげが全てなのかって)」 ここに突入する時に襲って来た朱花の高圧電流を、自分は『電気の網』との併用技で弾き飛ばした。『今』の自分の“有用性”を実感できた瞬間であったその時にふと疑問に思った。 『何故レベル4相当の高圧電流を弾き飛ばすことに自分は成功したのか』・・・と。 「(きっと、それは半分アタリで半分ハズレだったんだ。きっと・・・きっと・・・お姉ちゃんが手加減してくれたから私は弾き飛ばせたんだ!!!)」 疑問に思い、今までの状況から導き出した答え・・・それは『姉の自我が少しずつ復活していた』というモノ。 「(たぶん、自我を取り戻す切欠になったのはあの能力を抑える音響機械をお姉ちゃんが浴びた瞬間だ。すごい痛みが頭に走るんだよね、あれって。 そして、界刺さん達を抑える余波に巻き込まれたお姉ちゃんの暗示が解けかかった。あの時は何とか精神系能力で抑えたんだろうけど、 一度解けかかったモノを今も完全には抑え切れていないんだ。電気系能力者であるお姉ちゃんがレベル4相当になっていることも大きい。 お姉ちゃんも・・・戦っているんだ!!自分を押さえ込む精神系能力者や“手駒達”を操る電波と!!)」 こうやって超至近距離戦闘に持ち込んだのも、互いの発する高圧電流の衝突にてチップ型アンテナに届く電波を撹乱するため。 また、電子干渉等の複雑な演算を齎すことで朱花の脳波を活性化させる―自我を取り戻す一助―ため。 加えて、血の繋がった肉親との勝負である。暗示が不完全な今の朱花なら僅かでも影響はある筈だ。 「(その影響で本能が働いて私の攻撃も避けることができたんだろうな。でも、最初に比べて大分動きが鈍くなって来ている。 体力消耗を促す固地先輩の高温多湿戦略が効いて来ているんだろうな。しかし、熱中症とはねぇ。私には何も話してくれなかったなぁ。後で先輩をとっちめよう、うん)」 心中では後でボコボコにすること決定な固地を今の焔火は目もくれない。そんな余裕は無いし、電流の衝突音によってあちらで何が起きているのかもよく判別できない。 だが、焔火は信じる。信じている。自分が信じるあの男なら、必ず“後で”を実現させてくれると。 「だ・か・ら。この勝負だけは・・・お姉ちゃんをこんな酷い目に合わせた連中にだけは・・・絶対に負けられないんだよなあああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」 爛々と光輝く瞳に熱き炎を宿し、焔火緋花は命を賭してこの勝負に全力を注ぎ込む。呼応するかのように朱花も出力を上げ、青白い閃光が更に苛烈さを増していく。 出力では現状五分。ならば、何処で勝敗が分かれるか。答えは・・・応用力。そして、応用力では確実に姉の朱花が妹の焔火を上回っていた。 「(くっ・・・!!かえって動きが無いから、電子操作に全力を傾けられているのか!!まずったかも・・・!!)」 複雑な演算が要求される電子操作も、それに全力を注げばいいだけになると話は変わってくる。 自分が練った作戦が悪手とは言えないまでも妙手には至らなかった手際に顔を顰める焔火。そんな彼女の動揺を増幅させるかのように朱花の干渉力が大きくなっていく。 「(ま、まずい。何か・・・何かお姉ちゃんの気を散らす何かがあれば・・・。そうすれば、“あの技”も・・・・・・って!!!な、何弱気になってんのよ、私!!!)」 時間が経つにつれて押され始める焔火は、次第に外的要因による状況の変化を求め始める。 それが自分の作戦が上手くいかなかったため発生した『弱気』が起因であることを理解した少女は、不甲斐無い自身を叱咤する。 「(今ここで自分を信じられなくてどうするの!!?私に期待を掛けてくれた皆に対する裏切りじゃないの!!? お姉ちゃんを助けるのは私!!私がお姉ちゃんを助けるんだ!!私がこの手でお姉ちゃんを助けたいんだ!! 私は・・・私を信じる!!お姉ちゃんを助けるために!!お姉ちゃんを助けたい自分のために!!!)」 『他者を最優先に考える“ヒーロー”』を目指す焔火緋花が最後に信じたのは『自分』であった。『他者』を最優先に考えたいのであれば、まずは『自分』を確立する。 揺るがぬ『自分』を確立した後は信じ抜くだけ。そうすることで『自分』は『他者』を最優先に考えることができるようになる。 『“為せば成る”。俺は、この諺が大好きだ。結局、諦めたらそこでシメーなんだよな。だから、俺は諦めない』 「(拳。貴方の言葉を使わせて貰うね。・・・“為せば成る”!!なら、つべこべ言わずに為すだけよ!!!)」 歯を食いしばる。血が滲む程に手を握り締める。複雑な演算で頭痛が脳内を駆け回る。媚薬の副作用が体中を襲う。それでも、ここだけは引き下がるわけにはいかない。 「アアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」 「・・・・・・!!!」 焔火の雄叫びと共に再び拮抗状態に戻る干渉勝負。土壇場でのしぶとさにさしもの朱花も驚きの表情を浮かべる。 互いに全力を出しての勝負に、朱花の脳波が否応なしに活性化されていく。痛覚が存在することも影響してか、演算負担による頭痛は朱花をも襲っていた。 痛みは意識を活性化させる。暗示を精神系能力で補強した縛りを揺らがす程に。電気系能力者である朱花にとって、脳波への干渉は酷い違和感を発生させていた。 人格を壊されたのでは無い、あくまで暗示薬によって思考の固定化に留まっている現状など違和感を解消するために能力を用いれば突破することもできた。 それを精神系能力にて抑えていたわけだが、『キャパシティダウン』を浴びたことによる凄まじい激痛によって暗示が解けかかった。 それからは、違和感を押し付けて来る精神系能力と“手駒達”操作用電波との勝負であった。そして、同じ電気系能力者で妹の焔火と戦うことで活性化の速度が速まっているのだ。 「(緋・・・な・・・・・・花・・・・・・・緋、花・・・・・・くぅ・・・!!)」 虚ろな瞳に宿る光の輝きが少しずつ大きくなる。少し前から、朱花はようやく焔火や固地の存在をおぼろげながら認識し始めていた。 だが、まだ暗示が解除されないように干渉を強くする精神系能力によって自我が押さえ込まれようとする。 今の朱花は記憶が酷く混乱しているために状況が全く掴めていない。掴めていないが、妹と自分が戦わされていることくらいは感覚的に理解していた。 戦いたくないのに戦わされている。自分の意思とは関係無く。この齟齬や違和感に苦しむ朱花は本能的に願う。 これ以上妹と戦わない“何か”が起きることを。自分の願いを叶えてくれる“何か”―“ヒーロー”―が現れてくれることを。 「朱花嬢おおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」 故にこそ・・・とでも言うべきか、罪無き少女の想いに応えるかのように彼は現れた。弱者を救い、悪を刈り取る暗黒闘気(オーラ)を纏いし“ヒーロー”・・・啄鴉その人が。 「「!!!??」」 青白い閃光の音さえ呑み込まん程の大音量が焔火と朱花に叩き付けられる。その声に朱花は何処か頬を染めながら硬直し、声の発生源へ顔を振り向ける。 「やはり朱花嬢であったか!!!!!ハーハッハッハ!!!!!」 「テ、テメェ!!俺を無視しやがって!!!」 「ハーハッハッハ!!!!!朱花嬢!!!!!後でまた会おう!!!!!ホムラっち!!!!!朱花嬢は任せたぞ!!!!!さらばだあああああぁぁぁっっ!!!!!」 少し離れた建物の3階から戦場に木霊する高笑いを披露した後に姿を消す啄。凄まじい電流の衝突音を耳にしたために、彼は固地の『予測』から朱花が居ると判断。 阿晴と戦いながら何とか一望できる場所に足を運んだのだ。だがしかし、そんなことを朱花や焔火は知る由も無い。 「啄・・・さ、ん」 「(ぬ、ぬぬ、ぬおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!!!何で!!?何でお姉ちゃんの自我復活の第一声があの“変人”なの!!!??ふ、ふふ、不条理だああああぁぁぁぁっっ!!!)」 やはり恋というモノは意識を凄まじく活性化させるモノなのか、精神系能力による干渉を吹っ飛ばして恋をした(焔火視点)男の名前を口に出す朱花に焔火は全く納得できない。 実は、『肉親ないし親しき者との接触』に重点を置いた『調整』であったために『恋心を抱く者との接触』・・・つまりは啄のような人間との接触は想定外だったのが原因だったりする。 そもそも、暗示薬を盛られる前の朱花の頭の中は啄一色であったのだ。暗示による思考の固定化の際に、彼への想いが心中に凝縮されていた可能性も十二分にあったのだ。 「(で、でも!!!今がチャンス!!!事の経緯には全く全然これっぽっちも納得できないけど!!!)」 とは言え、さすがに目の前の状況を忘れるような愚行を犯すことはなかった焔火は啄の介入が最初で最後のチャンスと位置付け、最後の攻勢を仕掛けることを決意する。 「(ここで成功するかどうかはわからない・・・でも!!!)」 繰り出すのは“あの技”。殺人鬼との戦いに敗れた反省の途中で思い付いた彼女の隠し玉。本当なら従来の焔火の実力では実現困難と思われていた切り札。 それを、『今』の焔火なら実現できると示してくれたのは固地債鬼。現に、彼の前では成功している。後は・・・その成功をこの場で再現できるかどうか。 不安や弱気を焔火緋花は理解する。理解した上で超えていく。恋する少年の言葉を口に出しながら。 「“為せば・・・成る”!!!!!」 ブゥン!!!!! 『電流の鎧』が消滅する。否、消滅したのでは無く、焔火の右手に『鎧』の電流―電流が抑え目の代わりに電圧が強い―が集中する。同時に『電気の網』を左手へ展開し、両手を組み合わせる。 その結果焔火の手から出現したのは“剣”―“先輩”である神谷稜や麻鬼天牙のような―であった。内実はグロー放電による『電撃の“剣”』。 高位の『電撃使い』の中にはグロー放電より出力が上の放電、つまりはアーク放電制御によるプラズマ溶接ブレードを生成できる能力者も居る。 但し、アーク放電は威力次第で強烈な紫外線を生み出してしまうために長時間使用は能力者本人へのリスクも大きい。そもそも、焔火のレベルはそこまでには達していない。 故に、彼女はグロー放電に目を付けた。温度的には最高でも千度弱だが、電熱という武器は彼女の戦闘の幅を大きく広げる。 バチバチイイイィィッ!!! 見たことの無い妹の“剣”が姉の眼前へ迫る。命の危機に恐怖する朱花は、活性化した意識を“恐怖”によって持続したまま“剣”への電子干渉を行う。 応用力で言えば朱花の方が上。それを証明するかのように、『電撃の“剣”』が形を失っていく。 「お姉ちゃん!!!」 「ッッ!!!」 実は、必死に編み出した『電撃の“剣”』すらも囮。全ては、朱花の意識覚醒を持続させることが重要である。そのために、抵抗感を押し殺して“剣”を姉の眼前へ向けた。 固地が想定していた『使い所』とは違ったが、紛れも無くここが『使い所』であると焔火自身が判断した。故に後悔など無い。 迷いの無い妹は姉の名を呼ぶ。反応する姉にうっすらと笑みを浮かべる妹は、人形ごっこの終わりを告げる。 「私に着いて来て!!!」 焔火は干渉を受けている“剣”を解除し、両手に『電気の網』を形成しながら朱花の頭部を掴み取る。 狙いは姉を制御しているチップ型アンテナの破壊。痛覚が存在していることを利用して急所への攻撃によって気絶させる手段もあったが、焔火は選ばなかった。 理由はいわずもがな。故に、朱花へ危害を与えないように繊細な電子操作が求められる難題にハッキングなどできた試しが無い妹はそれでも果敢に挑む。 「愚妹(アホ)が・・・フッ。何か良い顔するようになったなぁ・・・」 姉は、妹の真剣な眼差しと声を受けて脳内を縛る違和感を解除するために残された力―薬物によってハッキング方面も強化された―を全て使う。 チップにおける脳波へ電気信号を送る部分に焔火と共に干渉し、一気にアンテナを破壊する。 最後の最後で実現した姉妹の協力。非情なる現実によって引き裂かれた焔火姉妹は、ようやく元の関係に戻ることができたのであった。 「どうだ、朱花の様子は?」 「チップを破壊した途端気を失って・・・とりあえず脈拍とかには異常無しです」 「そうか・・・。よくやった、焔火。正真正銘お前の手柄だ」 「・・・は、はい!!」 協力作業によってチップを破壊した直後に朱花は気絶した。負荷も大きかったのだろう、顔色から疲労困憊が見て取れたが命に別状は無いようだ。 姉の救出が叶ったことに半ば放心していた焔火だったが、固地の怒声によって我に返り今に至る。 「それに比べて、俺は何とも締まらない結果に終わった。これでは、秋雪や真面辺りにグダグダ言われそうだ」 「そ、そんなこと無いですよ!!ちゃんと、永観って奴を捕まえたじゃないですか!!な、何か気色悪い表情で気絶してますけど」 脚に刺さった金属片を取り除きなら応急手当をしている固地のすぐ横には、この世の絶望を目にしたかのような凄まじい形相で気絶している永観が横たわっていた。 その表情は焔火の目から見ても気色悪いとしか言いようがなかった。元からして醜い嘲笑を浮かべてはいたが。 「・・・・・・」 「あっ!どうせ、固地先輩のことだから水球を顔面に貼り付けて窒息寸前にまで追い込んだんじゃないんですか!? 全く、熱中症のことと言い先輩のやり方はちょっと過激過ぎじゃないですか!?どれも命の危険が伴うっていうか・・・」 「・・・それで事が済めばよかったのだがな」 「えっ?・・・違うんですか?」 「・・・あぁ」 自信満々に予測した末に外した焔火の訝しむ視線を受けながら、固地は永観との最後のやり取りを脳裏に思い浮かべる。 『残念だったねぇ、固地債鬼!!!僕の『発火能力』は、単純に炎を出すだけじゃ無いんだよ!!! すなわち、僕に触れた物を直接燃やすこともできるんだ!!!さぁ、燃えて無様にカスとなれえええぇぇぇ、この半端者がああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!』 固地の両手を燃えカスにするために永観が『発火能力』を発動する直前、固地は自身が持つ切り札を切った。 他人相手には一度も使ったことが無かった能力・・・実験対象は何時も『自分』だった切り札を生き残るために使用した。 『うっ!?』 『・・・・・・』 最初永観は自分の手や手首に何が起きているのかを理解することができなかった。自分が感じているこの感触を表現する適当な言葉が見当たらない。 だから瞳を向けた。自分の手付近に何が起きているのかを。そして目にした。自分の手付近が“極限の乾燥によって萎縮している”姿を。 『ハーハハハッッ!!どうした、目を白黒させて!?何が起きたのかわからん顔をしているな? フッ、いいだろう、特別に教えてやる。それはな・・・ミイラ化だ・・・!!ハーハハハッッ!!』 『う、うう、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!』 これこそ、固地債鬼が所持する能力『水昇蒸降』の真髄。水分を保持する人体から水分を取り出し水蒸気化することで、擬似的なミイラ化を為す対人戦用の切り札。 厳密に言えばミイラ化の要領とは違うのだが、ミイラ化という言葉が相手に与える精神的ダメージが大きいと固地は判断して使用することを決めていた。 どうせ、この技を喰らった直後はまともな論理的思考を保てない輩の方が圧倒的多数である。追い討ちとしては丁度いい文言である。 この直後、固地は永観の急所へ一撃二撃を入れて気絶させ萎縮した手付近に水分を戻した。早急に戻さないと取り返しがつかなくなるためである。 固地の手によって気絶した永観は最後まで固地の深奥―彼の切り札が『水』や『水蒸気』という『結果』では無く、変換という『過程』にこそあった―を見極められなかった。 「・・・・・・何というか、凄まじくえげつないですね。まぁ、今回はそうしないといけなかった事情があったのは理解できますけど」 「俺も対人で使ったのは今回が初めてだった。何時もは自分を実験台にしていたからな」 「・・・・・・余り使わないで下さいね。自分相手でも」 「・・・・・・」 「いいですね?」 「・・・ハァ。善処する」 朱花との戦闘に集中していたために固地と永観の戦闘がどんなモノだったのかを今知った焔火は、神妙な顔付きになって固地を“注意する”。 ミイラ化が中途半端な才能を与えられた固地が見出した代物であることは理解できたが、その危険性―自分を実験台にしていた事実―を鑑みて念押しする。 ストイックさに定評がある固地だからこそ、誰かが注意しなければとことん突き進んでしまう危うさがあると今の焔火は認識していた。 「で?何時までそこに隠れているつもりだ、仰羽智暁?」 「ッッッ!!!」 キットにて治療を終えた固地は、水の放射で吹き飛ばしてからずっと隠れていた智暁に声を掛ける。 彼女は、固地に吹き飛ばされた衝撃から回復した頃に永観の絶叫を耳にした。固地の言葉も耳にした少女は恐怖の余り手駒である朱花に懸命に声を掛けた。 しかし、激しく衝突する電流音に掻き消されて全く自分の声が朱花に届かない。そうこうしている内に固地の牽制を浴びたことにより身を隠した。 朱花さえ健在ならば何とかなる。そう願う少女の懇願も虚しく朱花が焔火に下されいよいよ後が無くなった。 逃走という手段も、周囲から断続的に聞こえる戦闘音にビクつく余り決断することができなかった。 つまるところ、仰羽智暁は『ブラックウィザード』という圧倒的有利な環境に身を置いていたせいで逆境に弱いのである。 「へぇ・・・あそこに居るんだ。・・・ねぇ、固地先輩?」 「何だ?」 「あの変態は私の手で捕まえていいですか?」 「好きにしろ。但し、程々にな」 「りょーかい」 智暁の存在に気付いた焔火は、恐ろしく冷淡な声を発しながら固地に捕縛行動の許可を取る。 横たわっている朱花に柔和な表情を向けていた時とは一変、冷酷という表現が似合う程に無表情になった焔火はゆったりとした足取りで智暁が隠れている物陰へ歩を進める。 「どうするの、アンタ?抵抗しないって言うなら、私も乱暴な真似をする必要は無いんだけど?」 「こ、来ないで!!来たら、緋花の体を爆発させてやるんだから!!!」 「へぇ~。だったら・・・やってみせなさいよ、このド変態!!!」 「ガッ!!!」 『電流の鎧』を纏った焔火が、タイムラグ無しで電撃の槍を放射する。焔火は知っている。彼女の『熱素流動』は基点を設定しなければ能力を行使することができない。 しかも、熱ベクトルを集中させるためにはタイムラグが発生する。永観の『発火能力』でタイムラグの縮小を行っていたようだが、今はそれも使えない。 「(『熱素流動』は物体の表面か内部のどちらかにしか基点を設定できない。俺は表面対策として水の球を、内部対策として熱を持った体内の水分を外へ出し、 支配下に置いてある水蒸気を体内へ戻す策を立てていた。だが、内部対策については結局使うことは無かった。 あの性格・・・あの反応・・・・・・俺の推測が間違っていなければ、奴は永観のように人を殺してしまうような真似を犯すことができないと見ていい。 重傷レベルに留まる可能性の高い人体外部への能力行使ならともかく、重篤もしくは死に至らしめる・・・つまりは一線を超える可能性が高い人体内部への能力行使は不可能なのだろう)」 電流によって胴体を貫かれた智暁は力無く地面へ崩れていく。その様子を眺める固地は智暁の有り様を正確に見抜いていた。 しかし、そんなことは恥辱を受けた焔火にとってはどうでもよかった。この期に及んで人体爆破などという発言を平気でする智暁に心底腹が立った。 「アンタさぁ・・・ちっとも反省していないよね。その様子だと、私へ行ったことについても全然反省も後悔もしていないでしょ?」 「そ、それは・・・・・・うぐっ!!?」 「反省も後悔もせずに、人体爆破なんてことを平気でほざく・・・か」 「ひぃっ・・・!!!」 電撃の槍によって体が麻痺している智暁の胸倉を掴み上げる焔火。その形相に智暁は顔を青くし、焔火はあらん限りの力を振り絞った右の拳を構える。 「歯ぁ食いしばれええええええぇぇぇっっ!!!!!」 咆哮と共に身体能力を最高まで強化した右拳が智暁の顔面へ突き刺さろうとする。手加減も何も無い。 許容できない怒りそのままに緑川強直伝の右ストレートを智暁の鼻っ柱目掛けて突貫させる。 ガシッ!!! 「ぐぅっ!!?」 「・・・・・・」 「・・・して!?どうして!!?どうして止めるんですか、固地先輩!!?」 「仰羽智暁は恐怖の余り気絶してるぞ?なら、もう俺達の脅威じゃ無い。その辺にしておけ」 智暁の顔面へ拳が直撃する手前に水のロープを焔火の腕へ巻き付かせることでストップさせた固地。 彼の呆れ顔が見つめる先には、恐怖の余り失神している智暁・・・そして凄まじい憤怒が表情から見て取れる焔火の姿があった。 「で、でも!!」 「でももくそも無い」 「固地先輩だって、永観に対して・・・!!!」 「それを控えるように言ったのはお前だろ?言ったお前が破ってどうする?お前は気絶した人間を殴り付けることを由とするのか? お前がやろうとしたことは、お前が目指す“ヒーロー”の在り方に沿っているのか?俺の言っていることは間違っているか?」 「うっ・・・」 「ソイツが気絶せずに抵抗していたなら止めはしなかったがな。仰羽智暁の無力化には成功した。永観や朱花も同様に。焔火。ソイツを拘束したらこっちに連れて来い」 固地へ行った“注意”がそっくりそのまま自分へ突き刺さり項垂れる焔火。全くもって納得できていないが、固地の言葉も正しいために仕方無く指示に従う少女。 木箱が積み重ねられた一角にて拘束した永観と智暁を横たわらせ、朱花は木箱の上へ寝かせる。そうして、固地と焔火は椎倉達へ連絡を入れる傍らで束の間の休息を取ることにした。 「・・・・・・」 「まさか、俺が止める側に回るとはな。このことを知ったら、真面辺りが驚くだろうな」 「・・・・・・」 「納得できていないよな?」 「当然です」 「納得したくないよな?」 「当たり前です」 「・・・それでいい。理解はできても納得できないことは幾らでもある。俺だって今まで何度も経験して来た。納得できないことはそのままでいい。 後々に納得できるようになるかもしれんし、納得できないままならそのことをずっと考えるといい。納得できないことを何度も起こさないように努める原動力になるからな」 へそを曲げた駄々っ子みたいに頬を膨らませながら体育座りをしている焔火を宥めるように固地は自身の経験談を語る。 ここまで怒気を露にするというのも焔火らしいと言えばらしいが、上司として看過できるモノでも無いのできっちり注意する。これも指導の一環である。 「・・・・・・固地先輩」 「何だ?」 「今夜で先輩の指導も終わりなんですよね?」 「そうだな。これからは加賀美がお前を指導してくれる。今のアイツなら、きっちり指導してくれるだろう。・・・リーダーのままで居られるかはさておいてな」 「・・・はい」 この事件が終わっても、全てが解決するわけでは無い。種類の違う問題が今後も待ち構えている。風紀委員である限り、これからもずっと。 「・・・固地先輩」 「何だ?」 「さっきは、私を止めてくれてありがとうございました。もし、あそこでアイツの顔面を殴り飛ばしていたら私は自分が目指す“ヒーロー”を自分の手で否定しまう所でした」 「お前じゃ無かったら止めなかったかもしれんがな。・・・『他者を最優先に考える“ヒーロー”』だったか?」 「はい。あの時の私は湧いた怒りの感情そのままに・・・つまり『自分』を最優先にしていました。・・・“ヒーロー”って難しいですね」 納得はしていない。今も。おそらくこれからも。でも、あそこで固地が止めてくれたからこそ、自分が目指す“ヒーロー”を自分の手で否定しなくて済んだ。 納得できることと納得できないことが、少女の心中を右往左往する。これも、これから自分が背負わなければならない葛藤なのだ。 「簡単なことなど、この世界にどれだけあるか・・・だがな」 「ですね。・・・大変だなぁ」 「あぁ・・・大変だ」 「何時になったら“ヒーロー”になれるのかなぁ・・・ハァ」 「・・・・・・」 「私は・・・焔火緋花はあなたを全肯定することは無いと思います。許せない部分はこれからも色々出て来ると思います。きっと、それはあなたも同じだと思います」 「・・・・・・」 「でも・・・これが人と接するということなんでしょうね。価値観の違う人間がぶつかるわけですから。 だから・・・私はあなたを嫌いになることはこれからも無いと思います。価値観が違うんですから、考え方が違うのも当たり前ですし。 受け入れる部分は受け入れて、受け入れたくない部分はきちっとその理由を考えて・・・」 「焔火。これだけは言っておく」 「・・・何ですか?」 様々な感情を言葉と容貌に表しながら喋り続ける焔火に、固地は真剣な眼差しで言葉を贈る。失敗を繰り返しながらも歩むことを諦めなかった少女に最大級の賞賛を贈るために。 「少なくとも、お前が朱花を助け出した時は紛れも無く“ヒーロー”だった。愛する姉のために命を懸けて戦い抜いたお前は・・・立派な『勇ましい者』だった。俺が断言してやろう」 「・・・!!!」 「後は、それを無理の無いように持続できるかどうかだ。ずっと“ヒーロー”で居続けるわけにもいかんしな。助けを求められた時に“ヒーロー”として動けるかが今後の課題だな」 「・・・・・・固地先輩」 「うん?」 「ちょっと気色悪いです。こんなに優しい固地先輩は有り得ないです。キャラ変もいい所です。無理の無い範囲で、もうちょっと私に罵声を浴びせてもいいんですよ? でないと、私が先輩へツッコミを入れられなくなりますし。急なキャラ変だと先輩だってストレスが溜まるでしょうし。さっ、レッツ罵声♪」 「失礼な!!お前、俺をどんな人間だと思っている!!?」 「辛辣・罵詈雑言・傲岸不遜の3拍子が揃った性悪先輩?」 「お前な・・・!!!(うん?何処かで聞いた台詞だな?)」 「あっ!先輩に“ヒーロー”として認められたんだから、この際固有名詞的なモノを考えた方がいいのかな?界刺さんにも“閃光の英雄(ヒーロー)”って異名があるし!」 「おい!人の話を・・・!!」 「そうだ!!私の名前には『寒緋桜』の花言葉が込められてるってお母さんが言ってたし、そこから・・・“『緋桜』のヒーロー”ってどう思います、固地先輩!?格好良くないですか!!?」 「俺の話を聞けえぇ!!!というか、女性は“ヒーロー”じゃなくて“ヒロイン”だろ!!?」 「えー。でも、私は“ヒーロー”の方が・・・」 「そんなことはどうでも・・・」 焔火の言葉の数々が、あの“『悪鬼』”に“ヒーロー”として認められたことにテレ隠しなのだと固地が気付くのにここから後数分が掛かった。 “風紀委員の『悪鬼』”から“ヒーロー”と認められた“『緋桜』のヒーロー”・・・焔火緋花は先輩をからかいながらもこの揺るがぬ実感を確と胸へ刻む。 “ヒーロー”になるのはあくまで通過点。ここからの長い道のりこそが本番。故に、本番を完走するための『歓喜』をこの瞬間だけ堪能する少女の顔は何処までも晴れかやなモノであった。 continue!!
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◆アークウィザード ←戻る(Lv15+メイジCLv5) 命力 魂力 腕力 体力 器用 素早 魔力 抗魔 集中 成長値 +2 +5 +1 +1 +1 +2 +7 +6 +4 HP 攻撃 防御 魔攻 魔防 命中 制御 行動 回避 補正値 - - - +15% +10% - - - - ◇ソウルアビリティ 名前 効果 SP AC 修得条件 ハイパーチャージLv1 『マジックチャージ』専用強化アビリティ / 『マジックチャージ』のAC+1 20%でダメージ上昇率が2倍、追加待機ゲージは3倍になる 2 0 マジックチャージLv3 ハイパーチャージLv2 『マジックチャージ』専用強化アビリティ / 『マジックチャージ』のAC+1 22%でダメージ上昇率が2倍、追加待機ゲージは3倍になる 1 0 アークウィザードCLv2 ハイパーチャージLv3 『マジックチャージ』専用強化アビリティ / 『マジックチャージ』のAC+1 24%でダメージ上昇率が2倍、追加待機ゲージは3倍になる 1 0 アークウィザードCLv3 ハイパーチャージLv4 『マジックチャージ』専用強化アビリティ / 『マジックチャージ』のAC+1 26%でダメージ上昇率が2倍、追加待機ゲージは3倍になる 1 0 アークウィザードCLv4 インシュランスLv1 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが20減少する 3 2 - インシュランスLv2 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが22減少する 1 2 アークウィザードCLv3 インシュランスLv3 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが24減少する 1 2 アークウィザードCLv5 コンセントレートLv1 魔法攻撃時、20%で制御力の10%分、一時的に魔攻力が上昇する 2 2 魔攻力アップLv3 コンセントレートLv2 魔法攻撃時、20%で制御力の12%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 アークウィザードCLv2 コンセントレートLv3 魔法攻撃時、20%で制御力の14%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 アークウィザードCLv3 コンセントレートLv4 魔法攻撃時、20%で制御力の16%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 アークウィザードCLv4 マジックブーストLv1 魔法攻撃に対し、10%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 2 2 - マジックブーストLv2 魔法攻撃に対し、12%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 1 2 アークウィザードCLv2 マジックブーストLv3 魔法攻撃に対し、14%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 1 2 アークウィザードCLv3 マジックブーストLv4 魔法攻撃に対し、16%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 1 2 アークウィザードCLv4 魔攻力アップLv5 基本魔攻力が18%上昇する 1 1 アークウィザードCLv1 魔攻力アップLv6 基本魔攻力が20%上昇する 1 1 アークウィザードCLv2 魔攻力アップLv7 基本魔攻力が22%上昇する 1 1 アークウィザードCLv3 魔攻力アップLv8 基本魔攻力が24%上昇する 1 1 アークウィザードCLv4 浸透力アップLv5 攻撃対象の魔防力を18%無視する 1 1 アークウィザードCLv1 浸透力アップLv6 攻撃対象の魔防力を20%無視する 1 1 アークウィザードCLv2 浸透力アップLv7 攻撃対象の魔防力を22%無視する 1 1 アークウィザードCLv3 浸透力アップLv8※ 攻撃対象の魔防力を24%無視する 1 1 アークウィザードCLv4 マジックチャージLv5 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが14%上昇する 自身の待機ゲージ+14 1 2 アークウィザードCLv1 マジックチャージLv6 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが15%上昇する 自身の待機ゲージ+15 1 2 アークウィザードCLv2 マジックチャージLv7 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが16%上昇する 自身の待機ゲージ+16 1 2 アークウィザードCLv3 マジックチャージLv8 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが17%上昇する 自身の待機ゲージ+17 1 2 アークウィザードCLv4 マジックカウンタLv5 魔法攻撃に対し、18%で反撃する / ガード 1 2 アークウィザードCLv1 マジックカウンタLv6 魔法攻撃に対し、20%で反撃する / ガード 1 2 アークウィザードCLv2 マジックカウンタLv7 魔法攻撃に対し、22%で反撃する / ガード 1 2 アークウィザードCLv3 マジックカウンタLv8 魔法攻撃に対し、24%で反撃する / ガード 1 2 アークウィザードCLv4 マジックスター 『マジックスター』のコスチュームを獲得する 3 0 Lv35 + アークウィザードCLv5
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◆アークウィザード ←戻る (PCLv15 + メイジCLv5) 命力 魂力 腕力 体力 器用 素早 魔力 抗魔 集中 成長値 +2 +5 +1 +1 +1 +1 +7 +5 +4 HP 攻撃 防御 魔攻 魔防 命中 制御 行動 回避 補正値 - - - +15% +10% - - - - 移動コスト 13 ◇アークウィザードソウルアビリティ 名前 効果 SP AC 修得条件 インシュランスLv1 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが20減少する 3 2 - インシュランスLv2 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが22減少する 1 2 インシュランスLv1+アークウィザードCLv2 インシュランスLv3 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが24減少する 1 2 インシュランスLv2+アークウィザードCLv3 インシュランスLv4 通常魔法攻撃時、制御失敗時の追加待機ゲージが26減少する 1 2 インシュランスLv3+アークウィザードCLv4 マジックブーストLv1 魔法攻撃に対し、10%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 2 2 - マジックブーストLv2 魔法攻撃に対し、12%で 受けたダメージの一部を魔攻力に変換する / ガード 1 2 マジックブーストLv1+アークウィザードCLv2 - - - コンセントレートLv1 魔法攻撃時、20%で制御力の10%分、一時的に魔攻力が上昇する 2 2 魔攻力アップLv3 コンセントレートLv2 魔法攻撃時、20%で制御力の12%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 コンセントレートLv1+アークウィザードCLv2 コンセントレートLv3 魔法攻撃時、20%で制御力の14%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 コンセントレートLv2+アークウィザードCLv3 コンセントレートLv4 魔法攻撃時、20%で制御力の16%分、一時的に魔攻力が上昇する 1 2 コンセントレートLv3+アークウィザードCLv4 魔攻力アップLv5 基本魔攻力が18%上昇する 1 1 魔攻力アップLv4+アークウィザードCLv1 魔攻力アップLv6 基本魔攻力が20%上昇する 1 1 魔攻力アップLv5+アークウィザードCLv2 魔攻力アップLv7 基本魔攻力が22%上昇する 1 1 魔攻力アップLv6+アークウィザードCLv3 魔攻力アップLv8 基本魔攻力が24%上昇する 1 1 魔攻力アップLv7+アークウィザードCLv4 マジックチャージLv5 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが14%上昇する 自身の待機ゲージ+18 1 2 マジックチャージLv4+アークウィザードCLv1 マジックチャージLv6 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが15%上昇する 自身の待機ゲージ+20 1 2 マジックチャージLv5+アークウィザードCLv2 マジックチャージLv7 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが16%上昇する 自身の待機ゲージ+22 1 2 マジックチャージLv6+アークウィザードCLv3 マジックチャージLv8 ウェポンスキル発動時、魔法ダメージが17%上昇する 自身の待機ゲージ+24 1 2 マジックチャージLv7+アークウィザードCLv4 マジックカウンタLv5 魔法攻撃に対し、18%で反撃する / ガード 1 2 マジックカウンタLv4+アークウィザードCLv1 マジックカウンタLv6 魔法攻撃に対し、20%で反撃する / ガード 1 2 マジックカウンタLv5+アークウィザードCLv2 マジックカウンタLv7 魔法攻撃に対し、22%で反撃する / ガード 1 2 マジックカウンタLv6+アークウィザードCLv3 マジックカウンタLv8 魔法攻撃に対し、24%で反撃する / ガード 1 2 マジックカウンタLv7+アークウィザードCLv4 - - -
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ウィザードリングとは 仮面ライダーウィザードのキーアイテム。 ウィザードリングを指に装着し、ウィザードライバーにかざすことで様々な効果を発揮する。 仮面ライダーウィザード公式サイトより引用 仮面ライダーウィザードが身に着ける魔力を秘めた特別な指輪。 魔力を秘めた魔宝石と金属製のリングで構成されている。 使用する魔法の効果や用途によってリングの形状は異なるが、いずれもウィザードライバーにかざし、秘められた魔力を解放することで効果は発動する。 ウィザードリングの種類 ウィザードリング 仮面ライダーウィザードが使用する指輪。 変身リングと魔法リングの2種類に分類される。 【変身リング】 仮面ライダーウィザードへの変身、およびスタイルチェンジを行う場合に使用する。 使用時は左手中指に装着する。 【魔法リング】 様々な魔法を発動するために使用する。 普段、ウィザードライバーは普通のベルトの姿をしており、右手の形をしたバックルにかざすことで変身前でも魔法を使うことができる。 使用時は右手中指に装着する。 当wikiでは白い魔法使いが使用する指輪(ケルベロスウィザードリング他)も含める。 なおドラゴタイマーは指輪ではないがウィザードライバーと連動するので例外として取り扱う。 ウィザードリング(ビースト) 仮面ライダービーストが使用する指輪。 ビースト変身リングとビースト魔法リングの2種類に分類される。 【ビースト変身リング】 仮面ライダービーストへの変身を行う場合に使用する。 使用時は左手中指に装着する。 【ビースト魔法リング】 様々な魔法を発動するために使用する。 使用時は右手中指に装着する。 レジェンドライダーリング 歴代仮面ライダーのフェイスの意匠が用いられているリング。 ライダーの目の部分が魔宝石になっている。 フェイスの色はシルバーで、魔宝石はライダーの目と同色である模様。 ウィザードリングの仕様 ウィザードリング DX玩具版:魔宝石の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 カプセル版:400円版と300円版(300バリューライン)がある。 400円版:魔宝石の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。(V=ベンダー事業部) 「魔法陣入り」も存在する。 300円版:魔宝石の部分がメタリック塗装。 ウィザードライバーにかざすとリングは発光せず、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。 食玩版:魔宝石の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA C」の刻印。(C=キャンディ事業部) ばんそうこう版:魔宝石の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA L」の刻印。(L=ライフ事業部) アパレル版:魔宝石の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA A」の刻印。(A=アパレル事業部) ウィザードリング(ビースト) DX玩具版:ウィザードライバーにかざすとウィザードライバーが鳴る。 ビーストドライバーにセットするとビーストドライバーが鳴る。 発光無し。 カプセル版:400円版と300円版(300バリューライン)がある。 400円版:ウィザードライバーにかざすとウィザードライバーが鳴る。 ビーストドライバーにセットするとビーストドライバーが鳴る。 発光無し。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。 300円版:ウィザードライバーにかざすとウィザードライバーが鳴る。 ビーストドライバーにセットするとビーストドライバーが鳴る。 メタリック成形色。発光無し。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。 食玩版:ウィザードライバーにかざすとウィザードライバーが鳴る。 ビーストドライバーにセットするとビーストドライバーが鳴る。 発光無し。 リング裏面に「~CHINA C」の刻印。 ばんそうこう版:ウィザードライバーにかざすとウィザードライバーが鳴る。 ビーストドライバーにセットするとビーストドライバーが鳴る。 発光無し。 リング裏面に「~CHINA L」の刻印。 レジェンドライダーリング カプセル版:400円版と300円版(300バリューライン)がある。 400円版:目の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。 ガシャポンオリジナルカラーVer.も存在する。 300円版:目の部分がメタリック塗装。 ウィザードライバーにかざすとリングは発光せず、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA V」の刻印。 ガシャポンオリジナルカラーVer.も存在する。 食玩版:目の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA C」の刻印。 ばんそうこう版:目の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング側面の下半分が未塗装。 リング裏面に「~CHINA L」の刻印。 アパレル版:目の部分がクリアパーツ。LED内蔵。 ウィザードライバーにかざすとリングが発光し、ウィザードライバーが鳴る。 リング裏面に「~CHINA A」の刻印。 DX玩具・カプセル・食玩以外の商品にもウィザードリングが付属する。 また、オリジナルカラーVer.も存在する。 細部の仕様については、全ウィザードリングのページの「同型リングの差異等」欄を参照。
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「 “キョウ”のアバターって普通だネ 」 「 別にいいんだよ。そういう“ヒメ”こそ、そのまんまじゃないか。つーか、ここって会員登録が必要だった筈なんだけど 」 「 へへ~ン!『ハックコード』を使って既に登録済みだヨ!!それに、このアバターは私のプログラムに組み込まれているのを使ってるだけだシ!! 」 「 ・・・やっぱりか。人のスマートフォンを勝手に使いやがって・・・ 」 ここは、電脳世界の一角にある『シークハンター』。初瀬と電脳歌姫は、アバターと呼ばれる姿でこの箱庭の世界に存在していた。 ちなみに、ここでは初瀬は“キョウ”、歌姫は“ヒメ”というネームのアバターである。 更に言うなら歌姫のアバターは自前であり、初瀬は『カタチ』を『阻害情報』で『シークハンター』内において用いるアバターに変換している。 「 “キョウ”の方から誘ったんだから、つべこべ文句言わなイ!フフフ 」 「 へいへい (少しは元気を取り戻したみたいだな。・・・感情があるかどうかはこの際考えないでおこう)」 “キョウ”達は『シークハンター』内にある道を歩いて行く。ここには、学園都市中から数多くのアクセスが為されており、それに比例して様々なアバターが存在した。 「 “キョウ”。それで、私のアピール会場は何処を想定してるノ? 」 「 施設内とかでいきなりやると反感を喰らいそうだから、近くにある公園とかを考えてるけど? 」 「 屋外ステージカ・・・!!アイドルなら、一度はやってみたいことだナ!! 」 等と言いながら、2人は公園へと足を踏み入れる。 「 ん?あれは・・・“イミュ”!! 」 「 “イミュ”? 」 そこで最初に目にしたのは、筋肉モリモリの青年アバター・・・名前は“イミュ”。とは言っても、その何処にでもある外見だけでは判別は難しいのかもしれない。 「 レベル0だろうとくじけるな!俺もレベル0だっ!とある高校の先生はレベル0こそ無限の可能性があると仰っていた! 」 「 わ、わかりました!僕・・・頑張ってみます!!ありがとうございました!! 」 それなのに、名前以外で“キョウ”が彼を“イミュ”と見抜くことができたのは、その吹き出しのおかげである。 熱い言葉を吐く“イミュ”の檄を受けた別のアバターは、丁寧に礼を言った後に去って行った。 「 あいつは“イミュ”って名前で、ああやって色んなアバターに熱い檄をぶつけている熱血漢なんだ。あいつ、この公園にはよく来るんだよな 」 「 うわァ。暑苦しそウ・・・ 」 “イミュ”の説明を聞いて“ヒメ”が正直な感想を述べる。そんな連れを無視して“キョウ”は顔馴染みに話し掛ける。 「 “イミュ”! 」 「 おおおぉぉ!!“キョウ”じゃないか!!久し振りだな!!元気にしてたか!!? 」 「 あぁ。最近は忙しくてここにも中々来れなかったんだ 」 「 それなら仕方無いな!!うん?お前の後ろに居るのは・・・・・・電脳歌姫のアバター!!? 」 「 ん?それがどうしたんだ? 」 電脳歌姫そっくりのアバターを目に映した“イミュ”の反応に“キョウ”は疑問を抱く。何故電脳歌姫のアバターを見ただけで、そんなリアクションが起きるのか? 「 “キョウ”・・・お前は知らないのか!?電脳歌姫のアバターは超レアなんだぞ!!?手に入れられる確率は0.1%を切っている!! 」 「 マジ!? 」 「 マジだ!!お前・・・そんな超レアアバターと何時の間に・・・ 」 「 “イミュ”・・・お前ってそっち系に詳しいんだな。意外だよ 」 「 そ、それは・・・ 」 今まで接していた知り合いの裏の一面を見てしまったかのような感覚を“キョウ”は抱く。そんな彼の反応にしどろもどろになっている“イミュ”の前に・・・ 「 こんばんワ!みんなの架空のアイドル!電脳歌姫だヨ!“学園都市レイディオ”と共によろしくネ!! 」 早速“ヒメ”が売り込みを掛ける。歌姫足る者、ここぞという時は大胆な行動を仕掛けなければならない。 「 ・・・かわいい(ポッ) 」 「 よっしゃああああああぁぁァ!!!ファン獲得一丁上がリ!!! 」 「 ・・・・・・こんなんでいいのかな? 」 その積極姿勢が功を奏したのか、初っ端からファン獲得に成功する“ヒメ”。こいつはどう考えても元からファンだったと言ってはいけない。彼女は気付いていないのだから。 「 この調子でガンガンいくゼ!!そうダ!!“イミュ”!!私って、どんな部分をアピールすればいいと思ウ? 」 「 ア、アピール? 」 「 そウ!!ここいらで、一発ファンを増やして増やして増やしまくル!!そのためにも、ファンである君の声を聞きたイ!! 」 「 確かに・・・。俺はこの手のことには疎いからさ。“イミュ”なら・・・ 」 「 そ、そうだなぁ・・・ 」 勝手に“イミュ”が電脳歌姫ファンだと決め付けている“キョウ”と“ヒメ”の催促に、筋肉モリモリアバターはしばし沈黙する。そして、こう言葉を発した。 「 決め台詞を高らかに宣言すればいい!!例を示そう!!黒き誓約の元、暗黒の眠りから目覚めよ――『暗黒時空(ダークネスワールド)』!!」 」 「 ・・・・・・ 」 余りにも想定外な言葉に、“キョウ”は言葉を失う。キャラが違う。さっきまで見せていた熱血漢ぶりは何処に行ったのだ? これは、熱血漢というよりは何か酷い妄想から生み出されたような言葉としか考えられない。 というか、妄想を声高らかに放った張本人は言った直後から何一つ喋らない。やはり恥ずかしかったのだろうか? 「 そうカ・・・。決め台詞カ・・・。そういえば、真剣に考えたことが無かったナ 」 一方、“ヒメ”はと言うと今まで軽んじていた決め台詞の重要性にこの瞬間気付いた。アイドルたる者、決め台詞の1つ2つはあって然るべきである。 「“イミュ”!!他に決め台詞的なモノは無いカ!?参考にしたいんダ!!」 「 え、え~と・・・。あっ、言っておくけどさっきのは僕じゃあ・・・ 」 “ヒメ”はその手のことで自分より先を歩んでいる“イミュ”に教えを請う!!対する“イミュ”は、決め台詞云々の前に先程の言葉を訂正しようとするが・・・ 「 我輩は“ゲルマ”である!! 」 「 “マッスル・オン・ザ・ステージ”!! 」 「 “ゲコイラルラッシュ”!! 」 「 “ゲダテン”GO!! 」 「 弱者を救い、悪を刈り取る我が“剣”が放つ暗黒闘気(オーラ)を見るがいいでござる!! 」 「 オーラって食べられないよねぇ。お腹減ったなぁ・・・ 」 「 これどうぞ~。余ってたお菓子です~ 」 「 あたしにも頂戴ーい!! 」 「 焚き火は、一種の神秘なのさ・・・ 」 「 焚き火とは、一種のキラピカ人生ですよね・・・ 」 「 焚き火ってのは、一種の魔力だぜ・・・ 」 「 焚き火・・・一種の儚き陽炎・・・ 」 「「「「 焚き火っていいよなぁ~ 」」」」 更なる現実世界からの介入を受けてしまう。その結果、堰を切ったように出るわ出るわの決め台詞を垂れ流す始末である。だがしかし、途中から変な方向へと流れてしまっている。 「(何で妄想激しい決め台詞から日常会話になった挙句に最後が焚き火の話で終わってるんだ!!?意味わかんねぇ!! それより・・・“マッスル・オン・ザ・ステージ”!!?勇路先輩の言葉が、この電脳世界にまで侵食していたとは!!恐ろしや恐ろし・・・そうか!! “イミュ”は『筋肉探求』のメンバーだったのか!!道理でアバターが筋肉モリモリなわけだ!!)」 “キョウ”は“イミュ”の正体に心当たりを付ける。勿論その心当たりは見当ハズレである。 もうお気付きだろうが、“イミュ”の正体は免力である。貧弱な彼が緑川主催の『筋肉探求』に行けば、即刻病院の世話になるであろう。 ちなみに、“キョウ”が何故勇路本人を疑わなかったのかというと、単独任務中の身であることとこの手のことに勇路は興味を持っていないことを知っていたからである。 「 フムフム・・・。参考になったワ。ありがとウ! 」 「 嘘っ!?何が参考になったの!!? 」 「 そういやぁ、あの往復する道の途中で棄てられたバイクを見付けたぜ。カギも付いたまんまだったし、まだまだ走れそうだったなぁ 」 「 それは、勿体無いでござるな 」 どうやら、さっきの意味不明な言葉は“ヒメ”にとっては参考になっていたようである。“キョウ”はそんな歌姫に意味不明だが。一方、“イミュ”は再び独り言を漏らし始めた。 「 よシ!!こうなったら、他の人にも聞いてみよウ!! 」 「 あっ!おい!ちょっと待て!! 」 “イミュ”に礼を言った“ヒメ”は、公園内に居る別のアバターに声を掛けに行く。そんな彼女に目に止まったのは、何処ぞの探検隊の格好をしたアバター。 「 うン!!あいつにしよウ!おーイ!!ちょっと、決め台詞について話をさせテ・・・ 」 「 そんなことより、虫の話をしようぜ!! 」 「 はイ? 」 「 虫だよ虫!!ハァ・・・この『シークハンター』には虫型のアバターが居ないのが不満点だね。虫はいい。本当に最高だ。 今日出会ったコガネムシもさ、すっごく気のいいヤツで・・・(ブツブツ) 」 「 な、何だこいツ!?電波カ!? 」 話し掛けた途端に虫の話をし始めたアバターに引いてしまう“ヒメ”。別に虫が苦手というわけでは無いのだが、初っ端から虫について語り出す態度が異様である。とそこへ・・・ 「 “イン”!!こんな所に居たのか!! 」 「 今日の獲得数は幾ら? 」 「 “カブッチ”!!“セツ”!! 」 これまた探検隊風のアバター2人が“イン”に近付いて来た。前もって正体をバラすと・・・“イン”=泉光陰、“カブッチ”=兜仲明、“セツ”=銅街世津である。 銅街の場合は、機械関係に疎いので親友の銀鈴が代行して書き込んでいたりする。もちろん方言では無く一般的な言葉遣いに何とか翻訳した上で。プライバシーを守るためである。 とは言っても、泉、兜、銅街の3人はリアルの世界でも顔馴染みである。虫を愛する者として、何度も顔を合わせている仲である。 「 私は34匹捕まえたぞ 」 「 マジでか!?俺なんか17匹だったぜ。やっぱり、“セツ”には叶わないなぁ 」 「 獲得数が全てじゃ無いぜ、“カブッチ”。大事なのは、その虫とお近付きになるために、どれだけの誠意を持つことができたか?そこが肝心なんだぜ。 虫の中にも色んな性格を持つヤツが居る。例えば、今日会ったコガネムシなんかは・・・(ブツブツ) 」 「 ・・・・・・蚊帳の外状態なんだけド 」 「 ・・・・・・近付かない方がいいと思うぜ? 」 虫談義に熱中してしまっている3名に“ヒメ”は愚痴を零し、“キョウ”はこの場からの速やかな離脱を促す。 ああいう連中に絡まれたら面倒臭いことになることを、“キョウ”は実体験をもって知り尽くしていた。主に筋肉コンビのせいで。 「 そ、そうだナ!!人なら他にも居るシ!!・・・よしッ!あそこに居る連中にしよウ!! 」 「 もう止めといた方がいいんじゃあ・・・ 」 「 う、うるさイ!!私が輝くためにも、これは必要なことダ!! 」 互いに文句を言い合いながら歩いて行った先には4名のアバターが居た。男2人、女2人という組み合わせである。 「 あ、あのゥ・・・!!1つお願いしたいことガ・・・ 」 「 うまくいかねぇんだよ・・・。俺ぁどうしたら歩み出せるんだ・・・!? 」 「 はッ? 」 「 くそっ・・・!!俺が臆病者だってのはわかってんだ・・・!!わかってんだけどよぉ!! 」 「 な、何ダ!?この酔っ払いみたいな荒れようハ!? 」 これまた“ヒメ”の予想外の方向に話は展開し始めた。延々続く愚痴を興味本位で聞いていると、 どうやらリアル世界で相思相愛になっている女性と一向に関係が進展しないことにイラついているようだ。 「 そんなに焦らなくても、“オマエ”君ならきっとうまくやれるさ。徐々に、ゆっくり、奥手なくらい慎重にいけば問題無いと思うよ。今の君は臆病者なんかじゃ決して無い 」 「 “ススム”・・・いっつもお前は俺を励ましてくれるな。ありがとよ 」 「 第19学区PR活動に比べたら、これくらいお安い御用さ (フフッ、正式な付き合いなんかさせてたまるか。フフッ)」 前もってネタバレすると、“オマエ”=御前肖像、“ススム”=薦道進矢である。この2人はリアルの世界での面識は無い。 この『シークハンター』の世界では、第19学区というワードで知り合った仲である。ちなみに、御前の進路に薦道は間接的に関わっているのだが、両者共そのことには気付いていない。 無論、現実世界での関わり合いも無い。そんな2人だが、今回は御前の(恋の)進路に薦道が直接的なアドバイスでもって関わっている。 御前の方は薦道が自分のためを思ってアドバイスしてくれていると捉えているが、当の薦道は『リア充爆発しろ』精神爆走中なので実は御前の恋の成就を緩やかに妨害していたりする。 「 最近はウチもバタバタしててさ~、もうさっさと見限ってやろうって感じ?でも、今は皆ピリピリしてて動けないんだよねぇ 」 「 “オヒル”さんも? 」 「 ・・・もしかして“アキ”も? 」 「 そうなんですよ。正直私もさっさとあんな厄介な所から逃げたいなぁって思ったりもするんですけど・・・それ以上の魅力があるというか・・・ 」 「 こっちはこっちで、何でこんな所で裏切り逃走話をしてるんだ? 」 “キョウ”が呆れた視線を送っている先に居る2人組の女性アバター。ネタバ(ry・・・ゴホン!正体は“オヒル”=中円真昼、“アキ”=仰羽智暁である。 『ブラックウィザード』の一員である2人。しかし、中円は智暁が、智暁は中円がこの『シークハンター』にアクセスしていることを知らない。 つまり、お互いに何とも滑稽な会話劇を繰り広げているとも言えるのだ。 「 あたしは魅力というか恐怖のせいで身動きが取れないわ。落ち着いたら、さっさと新しい寄生場所を見付けないと 」 「 早く始まらないかなぁ。可愛がりのある娘が入って来そう・・・フフッ 」 「(・・・これは近付かない方が良さそうだ。ネット上の会話は完全には信用できないし、引っ掛けっていう可能性も十分にある。 何より・・・“ヒメ”にこんなやり取りを見せるわけにはいかない。こっち方面まで学習されて堪るか!!)」 危うきには近寄らず。色んな意味で。“ヒメ”をスタッフから預かっている身としては尚のこと。 「 行くぜ、“ヒメ” 」 「 うおッ!?“キョウ”!? 」 その後、あっち行ったりこっち行ったりしてアピールという名の営業に回ってみたが、今日集まっているアバターはどいつもこいつも一癖二癖ある連中ばっかりであったため、 成果らしい成果は最初の“イミュ”1人だけであった。やはり、物事というのは最初から全て上手くいくとは限らないのである。 「ふぅ・・・。こんなに長くアクセスしたのは何時以来だろう?」 「だあああぁぁっッ!!上手くいかなかったあァ!!」 そんなこんなで現実世界に戻って来た初瀬は一息吐き、歌姫は芳しく無い成果に苛立ちの声を挙げる。 「まぁ、最初から全部上手くいくわけ無いと思うぜ?徐々にでいいんじゃないか?」 「・・・でも、こういう風に動けるのはキョウジと一緒に居られる時くらいだろうシ」 「あっ・・・」 歌姫が『ハックコード』に居るのは、偶然の産物である。期限が来れば、彼女は元居た出口の無いコンピュータという檻の中に戻らなければならない。 「・・・まぁ、わかってたことだけド」 「姫・・・」 「・・・こうやって、色んなモノに自分から触れるのは何時以来だろウ?最初は、どんなモノでも学習しようとプログラム(わたし)なりに頑張っていたんだよナ。 何時からだろウ?自分から学習する機会が殆ど無くなったのハ?プログラム(わたし)を生み出した本来の目的からすれば本末転倒だよネ?ハハッ・・・」 「・・・・・・姫」 「うン?何だよ、キョウジ?同情でもしてくれるノ?」 「・・・するなって方が無理じゃね?」 「・・・クスッ。そうだネ。キョウジは・・・優しいナ」 『ハックコード』から立体映像として現実世界に姿を現しているバーチャルアイドルは、隣人の優しさに感謝の念を述べる。 作られた存在である自分とは違う、正真正銘の人間。本当なら住む世界の違う住人が自分のために悩んでくれる意味を自分なりに噛み締めながら。 「・・・ありがト。移って来た先に居たのがキョウジで本当に良かったヨ」 「(・・・何とかできないか?姫が・・・姫が元居た場所に戻っても学習できる、成長できる、外と触れ合える環境を作れないか?)」 初瀬は知恵を振り絞って考える。『シークハンター』で共に一喜一憂した少女は、まるで太陽の如く輝いていた。活き活きとしていた。 そんな電脳世界に生きる少女のために、現実世界に生きる自分がしてあげられることが無いか。 「・・・・・・」 「・・・キョウジ。そこまで真剣に考えることなんて無いヨ。元の場所に戻るってだけなン・・・」 「嫌だ!」 「!!!」 電脳歌姫は見た。初瀬恭治の本気の瞳を。決して諦めない少年の覚悟を。初めて見た。プログラム(じぶん)のために、ここまで本気になってくれる人間を。 「俺なんかの頭じゃ、何も思い付けないかもしれない。それでも、最初から諦めるのだけは嫌だ。最後の最後まで考えて、考えて、考え抜いてやる!! 姫が思う存分動ける環境を・・・お前が幸せになれる環境を・・・俺はお前が『ハックコード』から出て行くまで考え続ける!!」 「キョウジ・・・!!!」 「だから・・・お前も最初から諦めてたら駄目だ。一緒に考えよう。俺だけじゃ無理でも、お前だけじゃ無理でも、2人の力を合わせたら何とかなるかもしれないだろ?違うか?」 「・・・!!!・・・そ、そうだ、ネ。・・・わかったよ、キョウジ!!!私も必死に考えてみル!!だから・・・力を貸してくれル?」 「もちろん!!」 「ありがとウ・・・!!!」 この瞬間、2人は本当の隣人(パートナー)となった。一過性では無い、アイドルとファンでも無い、本当に対等な関係となった。そこに・・・現実世界も電脳世界も関係無かった。 「ったく。利壱・・・紫郎・・・一体何を勘違いしてやがんだって話だ。しばらく俺の部屋に来ないってよ・・・ったく・・・(ブツブツ)」 初瀬と同じく成瀬台学生寮に住む荒我は、舎弟達の余計な気の回しようにブツブツ文句を垂れていた。 「俺と緋花はそんな関係じゃ無ぇって何回言っても聞きやがらねぇし・・・。こうなったら、俺の方からどっちかの部屋に殴り込みを掛けてやろうか・・・(ブツブツ)」 何やら物騒なことを吐きながら、荒我は昨日からずっと部屋の掃除をしていた。言ってることとやってることが違うとは、正にこういうことを言うのである。 『・・・今度さ、拳の部屋に行ってもいい?』 そして、こういう時に限って気になる相手の顔や言葉を思い浮かべたりするのである。 「ッッ!!こ、これは別に唯の気紛れで緋花が来るかもとかそんなのとは関係無ぇっつーか・・・!!うん?何で俺って独り言なのに言い訳してんだ?・・・くそっ・・・」 丁度掃除も一段落付き、ベッドの上に寝転がりながらずっと独り言を呟いている荒我。そんな時に・・・ ピンポーン! 「・・・はは~ん。さては、やっぱり我慢できなくて俺の部屋を訪ねて来たか。そりゃそうだよな。昨日のゲーム、ボス戦前でセーブしてっからな。我慢できねぇよな」 チャイムが鳴った。これを、荒我は梯と武佐が訪ねて来たと考えた。ベッドから身を起こし、急いで玄関へと赴く。そして・・・ 「ったく。利壱に紫郎よぉ。余計な意地を張らずに来たことは褒めて・・・」 「・・・や、やぁ。ひ、緋花だよ?」 「緋花・・・!!!」 ドアを開けた先に居たのは焔火緋花その人。荒我拳・・・貴様の漢(おとこ)が試される刻(とき)は来た!!! continue!!
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アークウィザード アークウィザードとは、魔術系の職業のひとつ。 分類は上級職業。 ステータス 職業名 剣術熟練度 魔術熟練度 神術熟練度 弓術熟練度 体術熟練度 忍術熟練度 その他 アークウィザード 0 5000 0 0 0 0 なし 基礎成長値 HP MP 力 生命 知力 精神 運 速さ 0 150 70 60 150 130 50 90 取得可能アビリティ 必要熟練度 条件 マジックパワー 300 なし マジックパワープラス 2000 マジックパワー取得 マジックライト 1000 なし マジックライトプラス 3000 マジックライト取得 エンドレスマジック 10000 マジックライトプラス取得 技 通常攻撃 タメ攻撃 応急手当 ファイア アイスミサイル サンダー ドレイン マジックバリア ストリング ファイアボール フリーズ フレア マジックドレイン ソウルドレイン ハイパワー サラマンダー フレア(手加減版) デスファイア スフィンクス ディープインパクト その他 MP・知力の基礎成長値が高い。 2種類のフレアを使用することが出来る。
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[部分編集] ウィザードリング リング名 リング色 部位 入手方法 同型リングの差異等 フレイム 左手 DXウィザードライバー DXウィザードライバー&ウィザードリングホルダーセット カプセルウィザードリング01 カプセル300バリューライン ウィザードリング1 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング2 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング ミラクルウィザードキャンペーン オリジナルカラーVer. 仮面ライダーアクションスタジアム オリジナルカラーVer. 仮面ライダーウィザード ヒップバッグ 仮面ライダーウィザード Dパック 仮面ライダーウィザード ボディバッグ 仮面ライダーウィザード 変身パーカA 仮面ライダーウィザード 変身パーカB 仮面ライダーウィザード 変身パーカC 仮面ライダーウィザード 変身パーカD 仮面ライダーウィザード ダンボールニットパジャマ 仮面ライダーウィザード トイパン 仮面ライダーウィザード リング柄Tシャツ 仮面ライダーウィザード 魔法陣柄Tシャツ 仮面ライダーウィザード 全身柄Tシャツ 仮面ライダーウィザード 魔法陣BP柄Tシャツ 仮面ライダーウィザード 魔法陣はみだし柄Tシャツ 仮面ライダーウィザード SHOOT柄Tシャツ RIDER CHIPSツアーマフラータオル 仮面ライダーウィザード フレイムスタイルTシャツ 仮面ライダーウィザード 4スタイルTシャツ ウィザードリングばんそうこう ウォーター 左手 DXウィザードライバー DXウィザードライバー&ウィザードリングホルダーセット カプセルウィザードリング01 カプセル300バリューライン ウィザードリング1 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング2 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング 仮面ライダーアクションスタジアム オリジナルカラーVer. ウィザードリングばんそうこう ハリケーン 左手 DXウィザーソードガン カプセルウィザードリング02 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング2 仮面ライダーアクションスタジアム オリジナルカラーVer. ウィザードリングばんそうこう2 ランド 左手 DXウィザーソードガン カプセルウィザードリング02 カプセルウィザードリング03 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング2 仮面ライダーアクションスタジアム オリジナルカラーVer. ウィザードリングばんそうこう2 フレイムドラゴン 左手 DXフレイムドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング04 魔法陣入り カプセルウィザードリング07 魔法陣入り カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング10 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 ウィザードリングばんそうこう2 ウォータードラゴン 左手 DXウォータードラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング05 カプセルウィザードリング08 魔法陣入り カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング10 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング5 ウィザードリングばんそうこう3 ハリケーンドラゴン 左手 DXハリケーンドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング04 魔法陣入り カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング10 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 ウィザードリングばんそうこう3 ランドドラゴン 左手 DXランドドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング07 カプセルウィザードリング08 魔法陣入り カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング10 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 インフィニティー 左手 DXアックスカリバー カプセルウィザードリング11 カプセル300バリューライン ウィザードリング10 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング10 チェンジ 左手 DX白い魔法使いドライバー カプセルウィザードリング12 カプセルウィザードリング12 魔法陣入り メイジ 左手 DXウィザードリング最後の希望セット メイジ(譲Ver.) 左手 ウィザードリングフィナーレセット メイジ(山本Ver.) 左手 ウィザードリングフィナーレセット ソーサラー 左手 ウィザードリングフィナーレセット ドライバーオン 右手 DXウィザードリングホルダー DXウィザードライバー&ウィザードリングホルダーセット カプセルウィザードリング02 カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング07 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング2 スペシャル 右手 DXフレイムドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング03 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 ウィザードリングばんそうこう2 ブリザード 右手 DXウォータードラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング05 カプセルウィザードリング11 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング5 サンダー 右手 DXハリケーンドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング04 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 グラビティ 右手 DXランドドラゴンウィザードリングセット カプセルウィザードリング06 カプセルウィザードリング11 カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 ドラゴタイマー 右手 DXドラゴタイマー ウィザードライバーに連動 キックストライク 右手 DXウィザードライバー DXウィザードライバー&ウィザードリングホルダーセット カプセルウィザードリング01 カプセルウィザードリング02 カプセル300バリューライン ウィザードリング1 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング ミラクルウィザードキャンペーン オリジナルカラーVer. ウィザードリングばんそうこう ビッグ 右手 フュージョンスイッチスペシャルセット カプセルウィザードリング01 カプセルウィザードリング08 カプセル300バリューライン ウィザードリング1 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング2 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング テレビマガジン4月号 オリジナルカラーVer. コネクト 右手 DXウィザードリングセット01 カプセルウィザードリング04 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 スリープ 右手 DXウィザードリングセット01 カプセルウィザードリング03 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 コピー 右手 DXウィザードリングセット02 カプセルウィザードリング04 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 スメル 右手 DXウィザードリングセット02 カプセルウィザードリング05 カプセルウィザードリング10 カプセルウィザードリング11 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング9 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 エクステンド 右手 DXウィザードリングセット03 カプセルウィザードリング05 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング5 リキッド 右手 DXウィザードリングセット03 カプセルウィザードリング05 カプセルウィザードリング07 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 エキサイト 右手 DXウィザードリングセット04 カプセルウィザードリング08 カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング7 ドレスアップ 右手 DXウィザードリングセット04 カプセルウィザードリング06 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 フォール 右手 DXウィザードリングボックス カプセルウィザードリング09 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング8 ドラゴライズ 右手 DXウィザードラゴン&マシンウィンガー カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング08 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 ウィザードリングばんそうこう2 エンゲージ 右手 カプセルウィザードリング02 カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング07 カプセルウィザードリング08 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 ディフェンド 右手 カプセルウィザードリング02 カプセルウィザードリング09 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング2 スモール 右手 カプセルウィザードリング10 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 プリーズ 右手 カプセルウィザードリング05 カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング7 ライト 右手 カプセルウィザードリング05 カプセルウィザードリング09 食玩ウィザードリング7 ドリル 右手 カプセルウィザードリング09 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング7 バインド 右手 カプセルウィザードリング03 カプセルウィザードリング10 カプセル300バリューライン ウィザードリング4 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング8 メリークリスマス 右手 キャラデコクリスマス 仮面ライダーウィザード キャラデコ限定 スペシャルラッシュ 右手 DXウィザードリングMOVIE大戦セット カプセルウィザードリング07 カプセルウィザードリング10 カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 タイム 右手 DXウィザードリングMOVIE大戦セット カプセルウィザードリング07 カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング6 フォーゼエンゲージ 右手 DXウィザードリングMOVIE大戦セット カプセルウィザードリング07 カプセルウィザードリング10 カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) スーパー戦隊 右手 DXウィザードリングスーパーヒーロー大戦セット ミラクル 右手 DXウィザードリングスーパーヒーロー大戦セット カプセルウィザードリング11 カプセル300バリューライン ウィザードリング9 メタリック塗装(発光無し) フィニッシュストライク 右手 DXウィザードリング超魔法決戦セット ホープ 右手 ウィザードリングフィナーレセット ドライバーオン(白い魔法使いVer.) 右手 カプセルウィザードリング10 カプセルウィザードリング12 カプセル300バリューライン ウィザードリング9 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング9 エクスプロージョン 右手 DX白い魔法使いドライバー カプセルウィザードリング12 テレポート 右手 カプセルウィザードリング10 カプセルウィザードリング12 カプセル300バリューライン ウィザードリング9 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング10 ホーリー 右手 DXウィザードリング最後の希望セット エクリプス 右手 DXウィザードリング最後の希望セット ファイナルストライク 右手 DXウィザードリング超魔法決戦セット ダンス 右手 てれびくん4月号 誌上販売企画 ガンバライドファンブック シャバドゥビ4号 誌上販売企画 昭和ライダーラッシュ 右手 スーパーヒーロー大戦Z 映画リングプレゼントキャンペーン 平成ライダーラッシュ 右手 ガンバライド大会 チャレンジカップ 参加賞 コングラッチュレーション 右手 祝!!大ヒット御礼 ウィザードリングプレゼントキャンペーン ガルーダ 右手 プラモンスター01 レッドガルーダ カプセルウィザードリング02 カプセル300バリューライン ウィザードリング2 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング2 仮面ライダー×スーパー戦隊 ヒーロークエスト2013 オリジナルカラーVer. ユニコーン 右手 プラモンスター02 ブルーユニコーン カプセルウィザードリング03 カプセル300バリューライン ウィザードリング3 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング7 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング3 クラーケン 右手 プラモンスター03 イエロークラーケン カプセルウィザードリング04 カプセルウィザードリング08 カプセル300バリューライン ウィザードリング6 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング4 ケルベロス 右手 プラモンスター04 ブラックケルベロス カプセルウィザードリング05 カプセル300バリューライン ウィザードリング5 メタリック塗装(発光無し) カプセル300バリューライン ウィザードリング9 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング5 ゴーレム 右手 プラモンスター06 バイオレットゴーレム カプセルウィザードリング09 カプセル300バリューライン ウィザードリング8 メタリック塗装(発光無し) 食玩ウィザードリング8 ガルーダ(ホワイトカラーVer.) 右手 プラモンスターEX ホワイトガルーダ カプセルウィザードリング12